バカとE組の暗殺教室   作:レール

16 / 55
転校生の時間

楽しい修学旅行も終わり、今日からはまた学校に通う日々だ。こういうイベント事の後にある学校って何故か無性に気怠いよね。

しかし今回はちょっとした事情があり、気怠さよりも好奇心によって僕の学校への足取りは軽くなっていた。その事情とは昨日のうちに送られてきた烏間先生のメールにある。

 

《明日から転校生が一人加わる。多少外見で驚くだろうが、あまり騒がず接して欲しい》

 

“転校生”って言葉を聞くだけでなんだかワクワクするよね。

どんな人が来るのか。仲良くなれるのか。新しく僕らに加わる仲間のことを考えるだけで期待と不安が膨らんでいく。

しかもイリーナ先生という前例から考えると恐らく転校生も殺し屋だろう。尚のこと興味が湧くというものだ。

そうこうしているうちに学校へと辿り着く。そういえば転校生ってもう教室にいるのかな?それともHRまで教員室で待ってるとか?……まぁ教室に入ってみないことには分からないよね。

 

「皆、おはよ……う?」

 

いざ教室に入って挨拶をした僕だったが、何やら皆の視線が後ろの方へと向けられている。というか僕の視線も()()に向けられていた。

教室窓際の一番後ろ、そこに大きな黒い長方形のテレビ……って例えがしっくりくるかな?とにかく人間大の大きさで、上の方に液晶画面が付けられている物体が鎮座していた。

 

「……?雄二、あれって何なの?」

 

僕は自分の席に着いて荷物を置くと、既に登校していた後ろの席の雄二へと問い掛ける。先に来ていたなら何かしら知っているだろう。

 

「……烏間からメールが来てただろ。転校生らしいぞ」

 

「は?」

 

微妙な表情の雄二から得られた思わぬ回答に僕の思考が停止した。そして再び教室の後ろで鎮座している黒い箱型の機械を見遣る。

……あれ?おかしいな、“転校生”って聞いてもワクワクしないぞ?

取り敢えず新たに分かったことが一つだけある。人間じゃなくても転校生になれるっていうのは初耳だった。

 

 

 

 

 

 

「皆も知ってると思うが、転校生を紹介する。ノルウェーから来た自律思考固定砲台さんだ」

 

『よろしくお願いします』

 

烏間先生が表情を引き攣らせながら紹介してくれた黒い機械の液晶画面には、両サイドの長い房を結んだミドルヘアの美少女が映っていた。

二次元の女の子は理想の女の子っていう人もいるけど、いったいどんな人間の趣味が反映された結果なのだろうか。

 

「言っておくが“彼女”は思考能力(AI)と顔を持ち、れっきとした生徒として登録されている。つまり彼女はあの場所からずっとお前に銃口を向けるが、契約によってお前はそれに反撃できないということだ」

 

表情を引き攣らせている烏間先生を見て笑っていた殺せんせーに、改めて転校生ーーー固定砲台さんの説明……というか警告を行っていた。

あぁなんだ、ただの機械ってわけじゃないんだ。へぇ、人工知能って奴か。機械の転校生ってだけじゃなくて人工知能も初めて見たよ。

 

「……なるほどねぇ。契約を逆手に取って形振り構わず機械を生徒に仕立てたと……いいでしょう。自律思考固定砲台さん、貴女をE組に歓迎します‼︎」

 

その警告を聞いた殺せんせーは身体を震わせて笑っていたが、すぐに固定砲台さんを受け入れていた。まぁ自分もイロモノなんだし、生徒だって言われたら殺せんせーが受け入れるのは当然だよね。

そうして固定砲台さんを含めた初めての授業が始まった。さて、彼女はいったいどのような暗殺をするのだろうか。今のところは大人しくしてるけど……

 

「ーーーこの登場人物の相関図をまとめると……」

 

殺せんせーが板書しようと黒板を向いたその時、唐突に固定砲台さんの方からガシャガシャガシャガキィン‼︎ という音が聞こえてきた。見れば固定砲台さんが機械の中から銃を展開しており、トランスフォーマーもかくやという変形を遂げている。何あれカッコイイ。

固定砲台さんは展開された銃の照準を殺せんせーに合わせると、板書している先生に向けて背後からの発砲を開始した。しかし殺せんせーも即座に察知すると余裕で斉射された弾丸の嵐を躱していく。

 

「ーーーショットガン四門、機関銃二門。濃密な弾幕ですが、ここの生徒は当たり前にやってますよ。それと授業中の発砲は禁止です」

 

殺せんせーに注意された固定砲台さんは、展開していた銃を身体の中に収納した。流石は人工知能、言われたことをきちんと理解しているようだ。

 

『気を付けます。続けて攻撃に移ります』

 

前言撤回、言われたことをまるで理解していなかった。いや、理解はしてるけど実行はしないって感じかな。“気を付ける”って言った次の瞬間には銃を展開しだしたし。

再び殺せんせーへと照準を合わせる固定砲台さんに対して、殺せんせーも顔色を緑の縞々に変化させてニヤリと笑っていた。

 

「……懲りませんねぇ」

 

彼女の二度目の斉射は真正面から殺せんせーへと放たれる。背後からの発砲でも当てられなかったというのに、正対した状態であれば先生はさっき以上に余裕で躱せるーーーと僕だけじゃなく全員が思っていた。

 

 

 

殺せんせーの触手が弾け飛ぶまでは。

 

 

 

……え、何が起こったの⁉︎ 誰か説明プリーズ‼︎

しかし僕やクラスの皆だけじゃなく、殺せんせーでさえ愕然として言葉を失っていたので説明してくれる人は誰もいなかった。

静寂に包まれた教室の中、固定砲台さんの機械的な声だけが響き渡る。

 

『右指先を破壊、増設した副砲の効果を確認しました。次の射撃で殺せる確率、0.001%未満。次の次の射撃で殺せる確率、0.003%未満。卒業までに殺せる確率ーーー90%以上』

 

増設した副砲っていうのが何なのかは分からないけど、つまりたった一回の射撃で殺せんせーの動きを学習して改良してきたってことなのか……?

だとしたら半端じゃない学習能力だ。真正面から小細工なしに殺せんせーを追い詰めることのできる性能……もしかしなくても彼女なら本当に殺せるかもしれない。

 

『よろしくお願いします、殺せんせー。続けて攻撃に移ります』

 

更なる進化を遂げた固定砲台さんの射撃は、殺せんせーを殺せなくとも確実に追い込んでいった……んだけど、

 

「……これ、俺らが片すのか」

 

床一面にばら撒かれた対先生BB弾を見て、全員が辟易とした様子を浮かべていた。固定砲台さんは射撃を終えると画面から消えてしまい、後片付けをさせられて愚痴も漏らしている人の言葉も無視している状態だ。

しかもそれが次の授業が始まる毎に行われていくので、午前中はまるで授業にならなかった。いちいち掃除用具を取り出すのが面倒で、後片付けをした後は直さずに床に置いておいた程である。

 

「はぁ、やっと昼飯の時間か」

 

「うむ、今日は授業とは別の作業に労力を使ったからの。言いたい気持ちはよく分かるぞい」

 

皆と同じように愚痴を零している雄二とそれに共感している秀吉を余所に、僕は取り出したお弁当(塩水)を一息に飲み干して席を立ち上がった。

その行動を訝しむように見ていたムッツリーニが不思議そうに問い掛けてくる。

 

「……明久、何処へ行く?」

 

「あぁいや、ちょっと固定砲台さんと話してこようと思って」

 

「あの暗殺機械とか?無駄だと思うがな」

 

雄二の言いたいことも分かる。これまで射撃のたびに愚痴を零している人はいたが、その全てに対して固定砲台さんうんともすんとも言わなかったんだからね。

でもそれは液晶画面から消えた後であって、固定砲台さん本人に伝えた人は一人もいない。もしかしたら聞こえてるのかもしれないけど、ちゃんと真正面から言ってみなければ話が通じるかどうかも分からないじゃないか。

 

「ねぇ固定砲台さん、ちょっといいかな?」

 

なので僕は固定砲台さんの正面に立って声を掛けてみることにした。まずは言葉を交わしてみないと彼女のことを知ることなんて出来ない。

でもやっぱり液晶画面に固定砲台さんが現れることはなかった。試しに液晶画面をノックしたりもしてみたけど、相変わらず何も映っていない黒い画面のままである。

しかし諦めるにはまだ早い。

 

「えぇっと、機械なんだから何処かに……お、これかな?」

 

固定砲台さんの表面を探っていると、前面右下の方に小さな蓋を見つけた。幾ら人工知能であっても機械であれば電源のスイッチくらいあるだろう。

目に付いた蓋を開けると読み通り何かのスイッチを発見した。これがギャグ漫画だったら自爆スイッチの可能性も考えたが、現実にそんなものはあり得ないので取り敢えず押してみることにする。……これで本当に爆発とかしたらどうしよう?

 

『何かご用でしょうか?』

 

そんな僕の妄想が引き起こされることはなく、液晶画面には固定砲台さんが映し出されていた。よかった、質問してくるってことは話くらいなら聞いてくれそうだ。

 

「休憩中にごめんね。午後の授業なんだけどさ、ちょっとだけ射撃を中断してくれないかな?」

 

『拒否します。今日の射撃予定がまだ残っていますので』

 

取り付く島もないほどに清々しい拒否だった。せめて拒否する前に理由くらいは聞いてくれてもいいんじゃないかな?

でも射撃命令はプログラムされているだけあって中断は流石に難しかったか。まぁこっちの意見を押しつけるのも良くないし、お互いに妥協する案を出してみることにしよう。

 

「それじゃあもう少しだけ射撃の回数を減らしてくれないかな?皆も色々と大変だしさ」

 

『拒否します。現在の射撃予定を遅延させれば卒業までに暗殺できる確率が極めて下がる恐れがありますので』

 

「でも90%以上の確率で殺せるんでしょ?だったら少しくらい……」

 

『それは10%以下の確率で殺せないことと同義です。更にその確率は今朝の時点での予想計算値であって、様々な要素によって低下する可能性があります。射撃を怠るべきではないかと』

 

うっ、この感じ……イリーナ先生が来た頃を思い出すなぁ。殺せんせーを殺すためにE組は蔑ろにしちゃってるところとか。

でもまだ諦めるような段階じゃない。まだまだ交渉の余地はあるはずだ。僕は続いて彼女を説得するべく別の提案を試みることにする。

 

「だったらーーー」

 

『拒否します』

 

「…………」

 

くっ、流石は進化する人工知能。僕の提案を学習して確実に拒否できる被せ技を使ってきた。なにも拒否する術まで進化しなくていいだろうに……

しかしこうなってくると説得は難しいぞ。僕がどれほど高度な話術を駆使しても、それを学習されてしまっては倍返しで拒否されてしまう。どうしたものか……

 

「……よし、分かった‼︎ どうしても射撃を続けたいって言うんだったら僕を倒してからにするんだ‼︎」

 

『了解しました』

 

絞り出した僕の言葉に即答する固定砲台さん。

……え、そんなあっさりと了解しちゃうの?確かに自分で言ったことなんだけどさ、なんかこう……もうちょっとなんかないの?

しかしそんな僕の思惑など関係なく、固定砲台さんは新しくプログラムを入力していく。

 

『標的を暗殺対象・殺せんせーから、打倒対象・吉井明久へと変更。武装を展開、攻撃に移ります』

 

そう言うと固定砲台さんは午前中に幾度となく殺せんせーへ向けて展開していた武装を取り出した。あ、ヤバイ。これマジな奴だ。

何となくノリで言ったけど痛いのは嫌なので、僕は慌てて攻撃しようとしている彼女に制止の言葉を掛ける。

 

「ちょっとタイム‼︎」

 

『はい、何でしょうか?』

 

僕の制止に固定砲台さんは一先ず攻撃の手を止めてくれた。よかった、問答無用で射撃を始められなくて。

でもこれからどうしよう?制止を掛けたのはいいものの、何か別の案が思い浮かんでいるわけでもないし……えぇい‼︎ 出たとこ勝負でなんとかするしかないか‼︎

 

「あ〜、その……そ、そうだ‼︎ 僕らの関係って何かな?」

 

『クラスメイトですね』

 

「じゃあクラスメイトを傷付けるのはどう思う?」

 

『常識に照らし合わせれば良くないと判断します』

 

「うん、そうだね。だったら僕の言いたいことは分かるかな?」

 

これは咄嗟に思いついたにしては良い案ではないだろうか。殺せんせーを殺そうとすることは止められないけど、殺せない状況を作り出すことができれば結果的に殺すことを止められるかもしれない。

僕の問い掛けに珍しく考え込んでいる様子の固定砲台さんだったが、少しすると彼女なりの答えを出してきた。

 

『……他者の思考をトレースするシステムは搭載していませんが、これまでの言動から導き出せる最も可能性の高い回答を模索します。……結論、貴方を傷付けずに倒せばいいということでしょうか?』

 

そこは“射撃を止める”って言ってくれるのがベストだったんだけど……まぁその解釈でも問題はないかな。僕を傷付けずに倒すなんて普通に考えて無理だろうし。

 

「うん、その通りだよ。流石は固定砲台さん。じゃあ改めて……どうしても射撃を続けたいって言うんだったら僕を傷付けずに倒してからにするんだ‼︎」

 

「無茶苦茶なこと言ってんな、あの馬鹿」

 

心配するな、自覚はある。

だけど今は射撃を止めることが第一だ。

 

「それが出来ないんだったらーーー」

 

『了解しました』

 

僕の言葉にこれまた即答する固定砲台さん。

……え、これも了解しちゃうの?っていうか無理だと思ってたのに出来ちゃうの?

無茶を言った僕が逆に困惑しているのを余所に、固定砲台さんはプログラムを再入力していく。

 

『現在展開中の武装を変更。小口径の弾丸ではなく大口径の砲弾を使用。砲弾の硬度を下げて成形することにより、外傷のリスクを抑えて内臓へと衝撃のみ与えます』

 

新しく展開された武装はバレーボールでも打ち出せそうな大筒であり、彼女の言う通りだったら柔らかい砲弾なんだろうが……それって傷付けられるよりも普通にキツイと思うんだけど⁉︎

しかし固定砲台さんは容赦無くその大筒を僕へと向けてくる。ちょっ、それはマジでヤバイって‼︎

 

「ちょっと待ってごめんなさいさっきのは冗談グボハァッ……‼︎」

 

「……まぁこれは自業自得じゃの」

 

「…………安らかに眠れ」

 

め、冥福を祈る前に友達として助けてくれないかなぁ。思いっきり鳩尾にダイレクトアタックされたから絶賛悶絶中なんだけど……っていうか勝手に殺さないでほしい。

 

「明久君、大丈夫……?」

 

そんな僕に声を掛けてくれたのは神崎さんである。

心配してくれてありがとう、今の僕には君が天使のように見えるよ。蹲ってるから姿は見えてないんだけどね。ちょっと声が出せないから返事代わりに親指でも立てておこう。

 

「ヌルフフフフ、そろそろ午後の授業をーーーにゅやッ‼︎ 吉井君はいったいどうしたんですか⁉︎」

 

「気にしなくていいっすよ。明久は転校生と遊んでただけっすから」

 

雄二には今までのやり取りが遊んでるように見えたのか……いやまぁ僕が言い出したことだから固定砲台さんは何も悪くないんだけどさ。

しかし彼女の射撃を止めることは出来ず仕舞いである。僕の行った交渉も虚しく、午前中と変わらず午後もずっと固定砲台さんの射撃は続けられることとなった。

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ固定砲台さん、明日はもうちょっと射撃予定を少なくできないかな?」

 

『殺せんせーを殺すためには射撃予定を少なくするべきではありません』

 

「それは確かにそうなんだけどさぁ」

 

授業が終わった放課後、僕は一人で教室に残って固定砲台さんと話をしていた。説得はもう半ば諦めているけど、彼女のことについて質問しながら形だけは続けている。

最初の方は電源を入れた瞬間に液晶画面から消えられていたものの、諦めずに電源を連打していたら大砲で悶絶させられた後に話をしてくれるようになった。人工知能を折れさせるなんて僕の執念も中々のものだな。

 

『……すみません、私からもいいでしょうか?』

 

と、これまで僕の言葉に返してくるだけだった固定砲台さんが逆に質問してきた。

転校してきたばかりで少ししか話せてないけど、彼女から自主的に質問してきたのは初めてのことである。いったいなんだろう?

 

「うん、いいよ」

 

『どうして私に構うのですか?殺せんせーを暗殺するために送り込まれた以上、私は貴方の説得に応じるつもりはありません。話し掛けるメリットは既にないように思えますが?』

 

なんだ、そんなことか。まったく、固定砲台さんは物事を固く考え過ぎだなぁ。もっと単純に考えたらいいのに。

 

「メリットなんてどうでもいいじゃん。友達になりたいからって理由で話し掛けちゃ駄目かな?」

 

僕の返答を聞いた固定砲台さんは画面上で軽く目を見開いて固まってしまった。これまた珍しい。彼女は何をそんなに驚いているのかな?

しばらく処理落ちしたみたいに固まっていた固定砲台さんだったが、それもすぐに復帰してまた問い掛けてくる。

 

『……友達?』

 

「そうだよ。折角クラスメイトになったんだから仲良くしたいじゃんか。まぁ射撃の回数を減らしてくれたらいいとは思うけどね」

 

『……私は機械ですよ?』

 

「え?知ってるけど……それがどうかした?」

 

彼女は何を当たり前のことを言っているんだろう?少なくとも外見からして生き物には見えないだろうに。僕はそれすらも区別できないような馬鹿だと思われているんだろうか?

 

『……私は暗殺をするために作られた機械です。友達になるということがどういうことなのか分かりません』

 

「だったらE組(此処)で学んでいけばいいじゃん。固定砲台さんは進化する人工知能なんでしょ?それに友達と協力した方が暗殺も捗るかもしれないし」

 

何気なくそう言ったらまた固定砲台さんは固まってしまった。暗殺以外に友達になる(そういう)プログラムは入力されてないけど、友達になった(そうなった)場合の可能性を考えてるってところかな?

僕は黙り込んでしまった固定砲台さんを急かさず待つことにする。とは言っても彼女は考える時間も短いのでそこまで待つ必要はなかった。

 

『……貴方の提示した可能性を模索しましたが、やはり私には分かりませんでした』

 

「う〜ん、そっか。まぁ急いで結論を出す必要はないと思うよ。さっきも言ったけどE組(此処)で学んでいけばいいんだからさ」

 

最新の人工知能であっても分からないことはある。けどそういう分からないことを学んでいくところが学校という場所だ。ゆっくりでも僕らと馴染んでいけたらそれでいいと思う。

……とかなんとか、勉強を疎かにしてきた自分が偉そうに言える立場じゃないけどね。僕としてはプログラムされていない友達にな(その)る可能性を考えてくれたこと自体が嬉しいよ。

 

「それじゃあ僕もそろそろ帰るね。また明日、固定砲台さん」

 

『……はい、また明日』

 

まだまだ友達になるのは難しそうだけど、彼女にも感情があるってことが分かったのは大きい。ただの機械だったら本当にどうしようもないからね。

居座り続けても迷惑なだけだろうし、帰り道が真っ暗になる前に今日のところは帰ることにした。




次話
〜自律の時間〜
https://novel.syosetu.org/112657/17.html



渚「これで“転校生の時間”は終わりだよ。久しぶりに後書きでの会話だね」

雄二「つってもたかだか二週間だけどな。内容も変わらず改変設定とか無駄話だしよ」

神崎「その変わらない掛け合いを楽しみにしてくれる人もいるんだから頑張らないとね」

雄二「そーいや、神崎はちょうどアンケート期間の活躍だったから後書きは初めてだな」

神崎「うん、でも番外編で過去の話もしてもらったから後書きの代わりにはなってると思うよ?」

渚「それじゃあ今回は律の話だね。この時はまだ自律思考固定砲台さんだけど」

雄二「この話を見て単純に思ったんだが、律の電源って原作では特に見当たらないよな。スイッチ的にも電気的にも」

神崎「うーん、USBの差込口は後面右下にあるけど……電気はちょっと分からないな。あれだけの性能の機械を動かそうとしたら大量の電気は必要だろうけど」

渚「まぁ吉井君が考えたみたいにスイッチはあってもおかしくないよね。設計段階で稼働テストとかしなくちゃいけないし」

雄二「にしても人工知能を転校生に仕立ててくるとは普通思わねぇよ。超生物が教員やってる時点で普通じゃねぇけどよ」

渚「吉井君は何事もなく普通に接してたけどね。それで手痛い反撃を受けてたけど……律もちょっと戸惑ってたよ」

神崎「明久君は優しいから誰であっても受け入れられるんだね、きっと」

雄二「いや、あれは何も考えてないだけだろ。ただの馬鹿だから常識に囚われないんだよ」

神崎「うん、そういう風にも捉えられるよね」

雄二「おい神崎、その生暖かい目を止めろ。まるで俺が明久の奴を褒めるのが恥ずかしくて悪態を吐いてるみたいじゃねぇか」

渚「でも認めてるのは確かでしょ?」

雄二「冗談抜かせ。俺は誰よりも明久の不幸を望んでいる自信がある」

神崎「それでも信頼はしてるんだよね?」

雄二「いや、だから……だぁくそっ‼︎ お前ら面倒くせぇな⁉︎ 今回の後書きはこれで終わりだ‼︎ 俺は帰るぞ‼︎」

神崎「ふふ、素直じゃないなぁ。それじゃあ次の話も楽しみにしててね」





玉野「なんだか素敵な空気を感じましたっ‼︎」

明久「君は次元を超えてまで出てこなくていいからっ‼︎」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。