1998年
日本帝国領佐渡島
佐渡基地 資料室
「ふぅ…」
ある一冊の本を閉じ本棚にしまう第三戦術予備部隊A中隊第1技術試験小隊に属する織場秀夫技術中尉は日本帝国軍が運用する戦術機『撃震』の改良計画を練っていた
資料室の扉が開きある女性が秀夫に話しかけられる
「熱心だな、勉強するのは良いが少しは鍛錬に付き合いなさい」
「坂崎大尉…いいえ、これは僕の趣味の一つで昔から勉強が大好きだったのですよ」
A中隊中隊指揮官、坂崎都大尉
秀夫は緊張し積極的に都に問いかける
「ところで坂崎大尉、聞きたい事ありますが」
「何だ?」
「大尉は何故衛士になったのです?国の為に貢献したいのは分かりますが」
「何が言いたいの?」
秀夫はしどろもどろになり少し都の顔を伺うだけで照れ始める
「ほぅ…まさかと思うが私を?」
「な…そ、そんな訳ないじゃないですか!」
少し動揺する
「動揺し過ぎだ、それが貴様の悪いところの一つだ」
「……役に立てなくて申し訳ありません……僕は大尉の事が」
秀夫は話し続けるがそこで会話が途切れB中隊の大倉鈴乃大尉が都の耳に近づき何か囁く
「それは本当か?」
鈴乃は頷く
「たった今、この基地に着任した衛士が来たわ。駒木咲代子少尉よ」
「え?」
「話の続きはまたの機会で付き合うわ」
そう言って都は鈴乃を連れつつ資料室から去っていった
「またの機会……か」
秀夫は部屋に戻り今まで書いた技術試験報告書を纏め佐渡島防衛報告書をノートパソコンで打ち作成する
「撃震の改良計画は凍結された今、坂崎大尉や大倉大尉に何か役に立つ事をしなければ」
内心、秀夫は都と付き合いたいという願望はあるがいつBETAが佐渡島に襲来してくるかわからない為、心の中にしまっている
そう綴りつつただひたすらに報告書を作成した。
「もっと、もっと頑張らなければ……!」
部屋に籠ってから数時間経ち、報告書は完成し書き終えた
「うむ、この内容で上層部に送るだけだ」
書き終えた報告書を封筒に入れ、机の引き出しに保管する
「あ、そういえば僕は基地に籠りっぱなしだから住民と話せてないな、坂崎大尉に頼んでお散歩デートの約束取り付け……」
突如、震動が揺れ始める
秀夫は部屋から飛び出し、廊下へ走りつつブリーフィングルームに向かうが蛻の殻だ
各部屋へ虱潰しに誰かいないかを確認するが強化装備を着た1人の女衛士に止められる
「大尉?」
「無駄だ、既に人は取り払われてる」
「BETAがここに来たというのですか!?」
海底を歩いて振動があったならその地震は地震ではなく恐らく、海面に設置した機雷の爆誕だ。
「……」
BETAが襲来
この佐渡島にBETAが襲来してきた、秀夫は信じがたく困惑している
警報が鳴り響く
「最後の命令だ、生き延びろ…貴様だけでなくここにいる佐渡島の住人を避難させろ」
「大尉はどうするのです?」
都は優しい笑みを浮かべ秀夫にこう言い放った
「…私はここに残ってBETA共を一匹残らず殲滅する。それが日本帝国軍の坂崎都大尉としての最後の役割だ」
そう言いつつ秀夫の肩にポンと優しく叩き笑みを崩さない
「僕は好きでした!」
秀夫は大声を出し都は少し驚く
「……私も、貴様の事が好きだったよ」
後悔の念を押しつつ衛士らしく誇らしい表情を秀夫に向け、立ち去った。
これが坂崎都が秀夫との別れを意味することになった。
佐渡島防衛戦報告書
佐渡島におけるBETA侵攻阻止に際しA中隊は合計50体殲滅なり
12機の撃震が基地から放ち、生存者1名
試験運用した99式衛士強化装備の性能は抜群なり
基地にいた司令官はBETA群が侵食する中基地に残り運命と共にした。
剰え、懸命に戦った坂崎都大尉が喪ったことが我が日本帝国軍にとって遺憾である
一般住民の避難は無事成功したが島の人口が半分喪失
仮に坂崎大尉が生き延びても結果は同じとなる
1998年9月24日、織場秀夫技術中尉
坂崎大尉が乗った撃震は未だに陥落した佐渡島で壁の中に残ったままである
終
この話の主人公はA中隊の中隊長、坂崎都と同じ部隊にいた織場秀夫ですが、実はこの主人公のモデルは機動戦士ガンダム MS IGLOOの主人公、オリヴァー・マイを演じた声優さんの石川英郎です。
秀夫の年齢は都と鈴乃と同じ年齢だと思ってください。
都に関しては咲代子を生かせ佐渡島に襲撃してきたBETA群によって戦死しましたが、生存ルートを確保する方法はあるのでしょうか?難しそうです(-_-;)
鈴乃は咲代子と共に生き延びました(?)が、都と並んで良いキャラしていますね
EXでも都と鈴乃は幸せに過ごしてほしいですね
では皆様の胸の中でこの先の幸せが訪れる事を願って。
都を主人公にした作品書くかも?