『Dies irae』試し書き2
どうも、遂にKKKを購入した阿部です。イカベイ? 知らない子ですね…………。
KKKをプレイするので精一杯でまともに執筆が出来ていませんが、Dies二次だけは筆が進む進む。厨二成分が補充された所為です。八命陣もDL版が発売されているので、是非プレイしたいと思います。SSはちゃんと更新するから(震え声)。
今回も試し書きです。クリスマスの夜、物語は動き出します。
1935年12月25日――――星々が煌めく聖夜にて、彼らの運命は脈動を始める。
「うォォォおおおおおッ!!」
「ハァァァァァッッッ!!」
妖しく光る赤月の元、二匹の凶獣が激しくぶつかり合った。
奇しくも彼らは似ていた。白髪に白肌、同じストリート育ちであり――――畜生にも等しい外道である事も。月光に照らされし髪は白く、血によって艶めかしく彩られた生肌もまた白い。髪や肌が白い分、身体中にぶちまけられた血液は酷く目立つのだ。色はより濃くなり、臭いは嫌になる程際立つ。
いや――――臭いに限っては、この血液が原因ではない。早い話、
凶獣の片割れ――――徒手空拳で向かい合う男は、名をヴィルヘルム・エーレンブルグと言う。大戦によって生まれた負の産物で育った彼の腕力、胆力は正しく人外のそれ。型に嵌っていない獣の如く一撃は絶大であり、ゲシュタポの警官達を一掃した程だ。ただし、その獣の一撃も目の前の狂人には通用しなかった。
もう片方は少年か少女か見分けの付かない存在だった。ウォルフガング・シュライバーと名乗った者はナイフと鉈を扱い、ヴィルヘルムと対峙していた。身形こそは純白のドレスに身を包んだ麗しい少女だが――――蓋を開ければ、現れるのは血臭を漂わせる気狂い。ドレスすら血という化粧で赤く染めた狂人は、倍近い体格を持つヴィルヘルムと互角の勝負を繰り広げている。
武器持ちの相手に対し善戦しているヴィルヘルムを称えるべきか、少女のような細腕で成人を翻弄するシュライバーを褒めるべきか。どちらにせよ、この二人が名誉などという下らないものに興味を欠片も示さない事だけは確かだった。
「オラッ、こいつはどうだァ!?」
「ハハハハハ――! 甘い甘い、甘すぎるよお兄さん! そんなもんじゃ僕を殺せないよぉ!?」
「このクソガキが――――死に晒せェェェッ!」
ヴィルヘルムの足蹴りを跳ねる事で回避し、狂喜の笑みを浮かべながらナイフを振り下ろすシュライバー。容赦など存在しないし、殺す事だけに重点を置いた一太刀だった。速度も尋常ではなく、ナイフの軌道は傍から見れば一筋の閃光にしか見えなかっただろう。
しかし――――闇に生きてきたこの男にとって、ナイフは些か眩しすぎた。
紙一重で凶刃を躱し地面を転がって一旦距離を取り、自身の不甲斐なさとシュライバーの異常さに逆上したヴィルヘルムが吠える。その咆哮によって自身を奮い立たせ、先程の突貫とは比べ物にならない程の速度をもってしてシュライバーへ迫った。
嬉々として迎撃準備に入るシュライバーだが、ヴィルヘルムの速さは彼の想像以上だった。予想よりも数テンポ速く肉薄してきた彼の鉄拳を辛うじて回避できたのは、彼が本能で生きる獣だったからに他ならない。もしも理性と経験で動く人間ならばヴィルヘルムの拳を直に喰らい吹き飛ばされていただろう。
その事実に歓喜し、そして苛立つ。ああ楽しい――――そして煩わしい。先程ヴィルヘルムは自分の事を類似品などと抜かしていたが、それは此方も同じ事。同じ色の髪と肌、本当に気持ち悪いから消えてくれ。
シュライバーが後退したことによって、両者の間に五メートルほどの距離が空く。この程度の距離なら彼らは余裕で踏破できる。一通りの攻防を経て沈静化するかと思われた殺意の衝突は、留まるところを知らない。
際限なく殺意は掻き立てられ、敵意が向けられる。あくまでこの静けさは殺意の波が落ち着いているだけで、再び昂った瞬間二人はぶつかり合うだろう。
視線が交差する。ヴィルヘルムは鬱陶しげに、シュライバーはあくまで嬉しそうに。
愛憎によって更に激しさを増そうとしていた二人のいがみ合いは――――
「良い夜だね、お二人さん。一緒にワインでも如何かな?」
――――パチパチと軽快な拍手の音と共に現れた男によって中断させられる。
「…………ああァ? てめえ何者だ。折角昂ってたとこだったのによ――可笑しな回答したら、ぶち殺すぞ」
「白けるなあ、もう。お兄さん空気が読めないってよく言われない?」
「生憎と言われた事は無いね。気味悪いとはよく言われるが――――取り敢えず自己紹介を。
モーゼス・フリードリヒ。よろしくね」
にっこりと優しい笑みを浮かべる男を、怪訝な視線で見るヴィルヘルムとシュライバー。
男はまだ青年と許容できる程に若い。恐らくは二十歳前後であろう年齢に加えて、ヴィルヘルムよりも低い身長が更に幼い印象を与えている。服装はヴィルヘルムと同様に服として機能するか怪しい布切れだが、美しい黄金の髪が薄汚いイメージを沸かせなかった。その黄金の髪もかの首切り役人のような全てを塗り潰す激しい威光ではなく、淡く照らし出す月光のような黄金だ。
簡単に言えば優男だが――――今、この状況で人外の戦いを見せていたヴィルヘルムとシュライバーに話しかけるあたり、彼も相当な狂人らしかった。
「本来ならあの素晴らしい殺陣を眺めておきたかったのですが…………上質なワインが入りましてね。折角ならお二人と一緒に飲もう、と。勿論金など取りませんし、美食は他人と共用すると更に美味しくなりますから」
「はぁ、成る程な」
「ふーん」
ニコニコと笑いながら続けるモーゼスを、じっと見つめる二匹の獣。
今の状態はお預けされているに等しい。餌を投げかけてくる人間を観察し、品定めしているのだ。ただし獣にも意思があり、決断する権利は存在する。そしてモーゼスは飼い主では無いし――――何よりも、許せない事が一つある。
ヴィルヘルムはそんな下らない事で喧嘩を妨害したことに怒り。
シュライバーはそんな下らない事をしたモーゼスを殺そうと決めた。
「ふざけんじゃねえよオイ。飲みたきゃ自分の血でも飲んでなァ!」
「楽しかったのに萎えちゃったじゃないか……! 代わりに君で楽しませてくれ!」
ヴィルヘルムの剛腕が、シュライバーの投擲されたナイフがモーゼスに迫る。最大級の殺意と憤怒がモーゼスに向けられた。これを常人が受ければ発狂しかねない程の感情の爆発。それを直に受けて尚、微笑みを崩さない彼に――――二つの殺意が襲い掛かった。
「は?」
「え?」
「ごふっ…………ぐぁ…………い、いてて……」
呆気なく、回避行動すら見せず鉄槌に殴られナイフが刺さった。その滑稽さに、思わず二人は変な声を上げていた。何だコレは――――その自殺願望者のような行動に、失笑を禁じ得ない。只々殺されるためだけに出てきたのか、この莫迦は。
しかし。顔に痣を浮かべ腕から血を垂れ流そうと…………彼、モーゼスは笑っていた。憎しみなど欠片も無い笑顔で、傷付けられたことを全く意に介していない。
「チッ、今日はついてねえな。こんな気狂いに二人も会うなんてな」
最早ヴィルヘルムとシュライバーの視界にモーゼスの姿は無かった。あるのは再び敵意を向けてくる野獣のみ。拳を構えてナイフを向ける。
そこに倒れている肉人形などどうでもいい――――白い怪物たちは、再び衝突した。
という感じです。この後エレ姐さんとベア子が来ます。
しかしながら、これだけ見ると主人公がドMにしか見えない。まあ彼の渇望からするとどうしても攻撃を受けてしまうのですが………まあ、それは追々出てくるでしょう。
感想意見等ありましたら、コメントしていただけると幸いです。
日時:2016年03月28日(月) 22:54
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返信コメント
阿部高知
感想ありがとうございます。
ヴィルヘルムとシュライバーを書くのが難しかったです。あんな基地外、よく正田卿は書けるなあ……。
裸エプロン先輩は思想と行動が歪んでいますが、此方は思想は正常でそこから齎される行動が歪んでいます。この時点ではエイヴィヒカイトが無いので、ただの変態ですね。
ヒロイン…………足引きBBAはロートスが、エレ姐さんには獣殿が、ベア子には屑兄さんが――――大淫婦しか残ってないじゃないか(歓喜)。
日時:2016年03月29日(火) 13:25
うりゅぅ
ドMだっていいじゃない。みちだもの。 うりゅぅ
戦闘シーンかっこよかったです!
ドMな渇望ってなんぞや…
はやく続きが読みたいんじゃあ〜^
ヒロインどうなるかなぁ。
日時:2016年03月29日(火) 09:47
桜 餅
良い!とても良い!最高です!!作者様のファンとしても、神座のファンとしても、興奮が止まらない!血沸き肉踊る!とても楽しみにしてます、なんだか主人公は方向の違った、某過負荷見たいですね。
日時:2016年03月29日(火) 09:41