誤字報告のお話、その3。

 久しぶりに誤字報告に関する諸々を以下でまとめておきます。


 まず何度か書いている基本方針を別の視点から説明すると、私が行っている誤字報告は「自分がやって貰ったら嬉しいな」と思う事を行っているつもりです。同時に、自分の希望と他の作者様の希望が違うケースも考慮して、とにかく作品重視・作者様の意向を最優先の姿勢で事に当たっているつもりです。

 とはいえ作者様にも色んな性格の方が居られますし、それらを全て把握して対処するのは現実的ではありません。過剰な指摘や、報告が間違っている事態などは、できる限り避けようと心掛けていますが、完璧を求められても不可能です。

 ここからは意見が分かれると思うのですが、私は自分の落ち度に関しては隠すことなく書き残しているつもりです。成功事例よりも失敗事例の方が、将来的に自分の為になると思うのが1つ。そしてもう1つの理由は、このスタイルの方が信頼を得られると私が考えているからです。

 後者には異論が出るかもしれません。失敗例をわざわざ紹介する人よりも、「失敗など一度もない」と主張する人を信頼される方は大勢おられると思いますし、それはそれで自然な事だと思います。

 しかし神ならぬ身であるのは勿論のこと、プロの編集者でもない身としては、報告数に比例して失敗を犯す可能性が増えるのは仕方のないことだと考えています。だからこそ、失敗した時の対処であったり、それを以後にどう活かすかという事を考えて、こうして定期的に書き残しているわけです。


 とはいえ、そうした方針を掲げていても、それを揺るがす不安要素はあります。その中で一番大きいのは、こうしてできる限りの配慮をしているつもりでも、相手の作者様に煩わしいと思われてしまうと全ては無駄になるという点です。

 基本的に報告を送る作品=自分が好きで拝読している作品なので、その作者様に嫌な思いをさせたり嫌われたりする事態は避けたいところです。一方で、報告を通して作者様と親しくなるなどの邪な意図は持っていません。結果的に仲良くなれるのであれば拒む理由はありませんが、報告を切っ掛けにするといった積極的な意図はありません。

 こうした前提を考慮すると、ゲーム理論などの観点からは「報告しない」が最適解になってしまいます。実際、誤字報告は割に合わない行動だなと思う事も、多くはないですが少なくもないという辺りが正直なところです。上記の邪な意図を仮に抱いたとしても、その場合は誤字報告を利用するよりも感想やメッセージを利用した方が遙かに効果的だと思います。

 ではそんな行動をなぜ継続しているのかという話になりますが、つきつめて言えば「見付けたから報告しているだけ」という事に尽きます。強いて加えるとすれば、既に書いたように「逆の立場なら報告されたら嬉しいから」でしょうか。


 一旦まとめると、誤字報告を受けた作者様にお伝えしたいのは、報告は割に合わないものだし報告する側も実はドキドキしながら送っているという実態です。

 もちろん報告者の中には自己顕示を前面に出したり、碌に辞書を使いもせずに間違った報告を送る人もいると思います。そうした輩と関わってしまった作者様が、報告者に不信の目を向けるのも仕方のない事だと思います。とはいえ可能であればそうした例外に惑わされることなく、作者・報告者がお互いに満足できる結果を得られると良いのになと思う次第です。


 さて、一口に誤字報告と言っても報告できる内容は多岐に渡りますし、それらは幾つかの段階に分けられるように思います。

 まず、最も難易度が低いのは、間違いの内容が明らかなケースですね。明らかな誤字・脱字・衍字などは報告する場合も気楽に行えるので、あまり緊張せず助かります。

 一方で、間違っているのは明らかなのに訂正先の候補が絞りきれないケースは厄介です。例えば最近ですと「(目的地に)着て」と書いてある箇所を発見したのですが、「着いて」と訂正すべきか「来て」と訂正すべきか少し悩みました。このケースでは後者で報告したのですが、候補を確定できない場合は報告そのものを行わないという結論になることもあります。

 少し難易度が高くなるのは、いわゆる「てにをは」の間違いや、主語と述語の不一致などのケースですね。これらは初回ではあまり指摘せず、何度か報告した後でこうした細かな事にも気を遣って書いておられる作品にだけ報告するようにしています。とはいえ後者の場合は訂正例が1つに絞れないことがほとんどなので、実際にはあまり報告しません。

 同じぐらいの難易度になるのは、言葉を誤用しているケースですね。自分の作品でも時々やってしまうので大きな顔はできないのですが、特に誤用の方が一般化しつつあるケースだと難しいです。具体例としては「すべからく」とか「檄を飛ばす」とか、時々ニュースになるような誤用ですね。時には誤用と理解して敢えて使っておられる場合もあるだけに、報告は避ける傾向にあります。

 気になるけどまず報告しないのは、同じ言い回しを頻繁に繰り返す文章などの場合です。適当に作ってみると、「屋上にのぼる為に階段をのぼり、のぼり口でのぼるのを止めて休む男の横までのぼった」という感じの文章ですね。これは誤字報告システムではどうにもならないと思います。

 個人的には単純な誤字報告はもちろん難易度の高いものでも指摘して貰えると嬉しいのですが、逆の立場になると、どの作者様にどこまで報告すべきかという問題は結論が出ず難しいですね。


 最後に、今月の誤字報告について。久しぶりに不適用が1件ありました。今までに報告したことのない作者様で、いきなり6点ほど指摘したのが少し不安だったので、不適用そのものは意外ではありませんでした。

 しかし念の為に確認に行ってみると、2点だけが修正されているという不思議な状態でした。特に当初という意味合いで「始め」と書いておられた箇所が2つあったのですが(正しくは「初め」)、1つだけ修正されていたので首を傾げる事になりました。他に修正されていたのは「崖の淵」という誤字で(正しくは「崖の縁」)、未修正だったのは「(周囲を)伺う」「罰が悪い」という誤字でした(正しくは「窺う」「ばつが悪い」)。

 作者様の意図が解らないのでその作品には以後は報告を控えて、楽しく読ませて頂くだけにしています。

 その少し後に、以前に不適用を頂いた作品で誤字を見付けました。その時も報告自体には間違いを見出せず、有名作品(お気に入り五桁)ゆえに報告が重なったからだろうと考えたケースでした。今回は時間繰りが厳しくなってきて読むものが溜まりつつあった時期で、見付けた誤字は最新話ではなく2話前のものでした。なので重なる事もないかと気楽に報告してみたら、問題なく適用して頂きました。ちょっと嬉しかった出来事でした。


 ここのところは自作を定期更新するのが精一杯で、あまり作品を読めていないのですが、こうした傾向は年度末まで続きそうです。なので書き残すような事もあまり無いかもしれませんが、とりあえず来月は感想の形で報告する予定です。

 では皆様、素敵なクリスマスと良いお年を。


日時:2016年12月25日(日) 02:08

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返信コメント

clp

丸米さま、コメントをありがとうございます。
そう言って労って頂けると、指摘して良かったなとほっとする気持ちになります。
また俺ガイル原作での新作も楽しみにしていますね。
こちらこそ、今後とも宜しくお願い致します。


日時:2017年02月23日(木) 00:20

丸米

少なくとも、私は貴方の誤字報告を大変ありがたく思いました。恥は出来うる限り残しておきたくないものですから。この報告を読ませて頂き、これ程深い意図を持って報告しているのだなと感心するばかりです。これからも、よろしくお願い致します。


日時:2017年02月22日(水) 23:40

clp

 活報の「今後の更新予定」で書いた通りという意味では予定通りですが、年明け早々に年度末進行が本格化して来たので、正直あまり他作品を読めていません。とはいえ作品を読んで誤字を発見した場合はいつも通りに報告していますので、以下ではそれについて感想の形で書き残しておきます。

 今月は放置は無く、不適用が1件でした。不適用の詳細としては、報告した内容のうち1つが採用で1つが不採用でした。作者様からは理由も含めた丁寧なメッセージを頂きました。

 不適用となった報告は迷った末に、却下されても良いかと思いながら報告させて頂いたもので、ローマ字入力で子音が抜けた疑いが払拭しきれなかったからです。しかし訂正せずとも意味が通じる事、一方で子音を補って別の言葉にした場合には付近に対義語が存在しているので収まりが良くミスの可能性も否定できない事と、それぞれ対立する根拠を考えついて悩みました。

 結局のところ、年末に追記した失敗談と同様に考えすぎ・踏み込みすぎ故の失敗で、短期間に同じような事をしてしまっただけに少し考えさせられました。加えて言えば、9月頃にメッセージで意図を説明して頂いて報告を取り下げた場合も同じ類いの失敗でした。

 3つの件に共通するのは、作者様が温厚な方で、いずれも文章を丁寧に書いておられる方だという点です。そうした方々の作品ゆえに踏み込んだ事を報告して失敗したわけですが、何と言いますか。丁寧な文章や温厚な為人は長所であるはずなのに、そうした方々に限って逆にお手を煩わせる事になってしまったのが申し訳ないと言いますか。

 いつか書いたように私の理想としては、見付けたことや気になったことを普通に報告して、問題が無ければ普通に適用して意図と違う報告があれば普通に却下して頂けるような、緩い共生関係のような形に至れると良いなと思っています。

 とは言っても、却下されるような報告をしてしまうのは申し訳ないし少し悔しいのも正直なところです。それに加えて上記のように、良い人ほど割を食う可能性があるという点にも引っ掛かりを覚えます。

 いずれにせよ自分にできる事は報告前により注意深く見直すという事ぐらいなので、今後も気を抜かず精進したいと思っています。

 来月と再来月はほとんど作品を読めないと思いますし、何も追記が無い場合はそういう事だとご理解下さい。


日時:2017年01月23日(月) 00:50

clp

馬鹿げた事をやらかしてしまったので、年内に追記しておきます。

実は上記の文章を書いていた時に、適用待ちの報告が1つありました。
その事を書かなかった辺り、自分でも何か引っ掛かる部分があったのかもですが、数日経って「適用済」となっても何となく気になったので確認に行く事にしました。
ちなみに普段は「適用済」となった場合はまず確認には行きません。

報告したのは「Aに怒りを覚えたBは」という文章で、私は確か「Aから怒りを覚ったBは」という修正案を送らせて頂いたと思います。
しかし特に修正はされておらず、そして前後を読み直して冷や汗が出ました。
私の中でB=怒らないor怒ってもすぐに沈静化する人というイメージが定着していたのが原因なのか、何の疑問も持たずにAが怒っているという文脈で受け取ってしまっていたのです。
これは恥ずかしい。。。

正直、作者様から「もっとちゃんと読めよ」と怒られても仕方がないと思いますし、この普段のイメージとは違うBの怒りが今後の重要な展開に関わってくるかもしれないわけで、とにかく全力で謝罪して、恥を忍んで事情を説明させて頂きました。
くどくどと言い訳は書かないようにして、ただ上記のイメージの事だけはお伝えしました。
私のような軽率な受け取り方をする読者様がどれほど居られるか分かりませんが、少しでも今後の描写の参考になればと思ったからです。


収穫としては、報告を受け取った作者様が幾つか(もしくは全てを)除外した後で適用ボタンを押した場合でも、報告者には「適用済」と通知されると知る事ができました。
作者様の側としては、削除ボタンを押してしまうと報告自体が無かったことになってしまうので、報告者の名前を残しておきたくて除外後に適用ボタンを押すようにしているとの事でした。
この辺りの話を運営様にお伝えして、一応は改善案も提案しておきましたが、年末なのに申し訳ないなと思っています。。
システム的な事は解らないので対応が可能な案件なのか不明ですが、報告者と作者様の両方にとってより良い仕組みになったら良いなと、そんな感じです。


以上、今までの中でも最大級の失敗でしたが、文中にあるように完璧は無理なので……でも少しでも失敗を減らせるように精進したいと思います。
来年も宜しくお願いします。


日時:2016年12月31日(土) 00:55

clp

紅のとんかつ様、コメントをありがとうございます!
活動報告は主に未来の自分に向けて、という側面が強いのですが、それを面白く読んで頂けると、作品の時とはまた違った嬉しさがありますね。

些細な事でも、他人に何かを指摘するのってハードルが高いですよね。
初歩的な誤字のように間違いが明らかなものでも、指摘される側の気持ちになるとドキッとしてしまうのも解りますし。
勇気や優しさとは過分な褒め言葉のようにも思いますが(照れてる)、そう言って頂けると何だか報われた気持ちになります。

確かに鼻毛ぐらいの小さな事でも現実では口に出し辛いですよね。
ただ、紅のとんかつ様はご自分の行いを冷たいと思いながらスルーしていると仰いますが、それってご自身を客観視できているわけで。
きっと身近な人や大切な人が相手なら指摘される事もあるでしょうし、私とあまり変わらないと思いますよ!
私も読んだ全ての作品に報告を送っているわけではないですし。

ちょっと本旨から逸れますが、学って何だろうな〜とたまに思います。
私のように小難しい事を書くのではなく、難しい内容を簡単に書けるのが学があるっていう事なのかなと思っていますが、じゃあどうやって身に着けるんだろう?と考えちゃいますね。

紅のとんかつ様の作品は、特にお世辞ではなくて自然と内容に引き寄せられてしまう面白さがありますので、不安とか仰らずに更新ををを……(笑)。

私の作品はずいぶんと長くなっていますし、特に序盤は合わない人には合わない感じっぽいので気楽に読んで貰って、もし楽しんで頂けたならそれだけで嬉しいです。

ではでは、また!


日時:2016年12月27日(火) 12:55

紅のとんかつ


どうも、球技大会で誤字報告頂いてる紅のとんかつです!
今回も考察、面白かったです! clpさんの話、考察は凄く面白いですね。

誤字の報告についてですか〜、自分は非常に興味深く感じました。

何故なら自分は他人に指摘、否定文が出来ない人間なので(笑)

でも自分はclpさんの誤字報告、勇気ある本物の優しさだと思いますよ。説明でもあった通り、否定されて怒られるのが怖いですもん。割に合いません。

汚い例えになりますが、目の前で鼻毛が出てる人がいたら、指摘したら恥ずかしい、自分がされたら恥ずかしい、という言い訳を使って、黙って会話を続けるを選ぶのが自分です。でも自分的には、ようは否定されるのを怖がって自分が嫌な思いをしないようスルーしてるだけの冷たい人間だと自分で思います(苦笑)だって指摘した方がその人が多くの人に”鼻毛出てる”と嫌悪されずに済むんですもん!

まあ変な例えでしたがもう一度言いますと、自分はclpさんの誤字報告は優しさです。ドキドキを乗り越えた勇気です。他の方はどう感じるかは解りませんが、自分は嬉しいですよ!

自分の作品を文章の間違いに気付く位読みこんでくれた事が。
他の人に”この作品誤字あってレベル低い(爆笑)”と切られる前に教えてくれた事が。

特に自分は正直学は無い上思い付くまま行動してるんで勉強になりますし!
今やってる海老名さん視点は視聴者さんからリクエスト頂いて書いてるからこそ感性が働かず苦戦して不安だからこそ!

普段の感謝に合わせて、今回の考察も楽しかったです!
実に理知的な客観視で、とりあえず行動の主観的な自分には無い刺激ですね。

自分の作品が落ち着いたら、clpさんの作品、是非読ませて頂きますね!

長々とすみません、おつでした!


日時:2016年12月27日(火) 00:41



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