作品執筆のお話、その3-1。

 既に原作4巻も終盤に入っていますが、ここで原作3巻を書きながら考えた事をまとめておきます。例によって一般的な話を先に、作品に関する具体的な話は後で書きます。

 さて、今回のテーマは「失敗」です。

 情けない話ですが、人様には「ここがダメだよ」などと指摘できても、自分が同じことを避けるのって難しいですよね。少なくとも一度は失敗して、それでやっと自覚できるという感じで。酷い時には同じ失敗をしているのに気付かない場合があり、それも珍しくはないのが残念なところです。

 以下、主に一般的なお話。


■ネタの問題

 原作主人公のモノローグの中で色々なネタが語られていること、どうしても硬い内容になりがちなので雰囲気を和らげたいこと、などの理由によって作中にネタを組み込んできましたが、3巻を書いていた頃には正直かなりの重荷になっていました。

 まず効果の点では寒いor冗長な印象しか生み出せておらず、どんなネタを入れるべきかという悩みは作品を書く上での負担になっていました。どういったネタなら通じるのか書くほどに判らなくなって来たからです。

 例えば10年少し前までならば、ジャンプ黄金期の作品をネタにすればギリギリ通じていたと思います。しかし今となっては、昔の作品に詳しい人は最近の作品には疎いことが多く、逆に最近の人には昔の作品ネタがほぼ通じないのではないかと思えます。

 そして私自身の問題として、漫画やアニメやゲームの話は人並みには理解できますが、ネタとして自作に組み込めるほど詳しい作品ってそれほど多くはないんですよね。

 上記ジャンプ黄金期の作品でも知る知らないの差が大きく、例えば北斗の拳は全く分からずキン肉マンは分かるとか、そのキン肉マンでも悪魔超人以前や二世の内容は全く知らないとか、そんな感じです。90年代の作品ならだいたいは分かりますが、それも言われたら分かるという程度です。

 そんなわけで、原作4巻からはネタは最低限に止めて、書きながら思い付いた時だけ組み入れています。ネタを効果的に使うには、少なくとも無理矢理入れるようではダメだと思ったからです。


■漢数字とアラビア数字

 数字の一とダッシュと長音符を文章の中で混在させないという話は2巻を振り返った際に書きましたが、アラビア数字ばかり使うのも、それはそれで読みにくい時がありました。

 ダッシュを使わないのは従前の通りですが、4巻では使い分けの基準を1巻に戻して漢数字メインにしています。これは厳密には失敗に含めるべきか微妙ですが、方針を変更したのは確かなので書き残しておきます。


■感嘆符・疑問符の後の空白

 同じく2巻の振り返りで思っていることをそのまま書いて、それで憑きものが落ちたのか、拘るのが馬鹿らしくなってきたのがこちら。スマホで読んでいて目が滑るのは今も変わりませんが、決まり事ならそのまま従おうという心境に近付いています。今は折衷案として、文が続く時にはできる限り使わないように心掛けています。

 こうした心理状態で以前に書いたものを読み返すと恥ずかしさで身悶えしそうになりますが、あれはあれで当時しっかり考えて書いたことですし、自説に拘泥せず再考した結果が今なので、まあ仕方がないという感じですね。


■前書きと後書き

 前書きや後書きで面白い事を書こうとしたり、本文の内容を誤魔化したり言い訳をしたり、そうした場合は多くが自爆に終わるのが切ないですね。

 特に1巻を書いている時に読者の反応が怖い回などで何度かやらかした記憶がありますが(理由を書き残した上で削除済み)、下手な小細工をするのではなく、作中の失敗は作中で返すぐらいの意気で書き続けるのが一番だなと思いました。

 悩ましいのはお礼などをどこまで書くかという問題。例えばUAやお気に入りがキリの良い数字を超えた時や、評価を頂いた時、ランキングに載った時(私は残念ながら縁が無いのですが)などに読者にお礼を伝えて良いのか、それとも催促と受け取られかねないので止めるべきか。

 まず、評価を頂いたからといって、それだけを理由に直接メッセージを送るのは微妙かなと思っています。なので以前は後書きで一言触れるようにしていたのですが、上記のような解釈があると聞いて考え込んでしまいました。

 UAやお気に入りは、お礼を書いたからといって催促も何もない気がしますが、それらも含めて現時点では保留にして何も書かないようにしています。たまに後書きで過去の回へのリンクを貼っていたのですが、それも最近は自粛しています。


■感想への返信

 これも凝ったことや面白いことを書こうとして自爆した記憶が何度かあります。もっとも先の展開を示唆しながら上手く返信できたと思えた時もありましたし、何とか許容範囲に収まっていれば良いなという感じですね。

 感想を頂けるのはとても嬉しいことなので、できるだけ満足して頂ける返信をしたいと思いつつ、先の展開は気軽に書けないという難しさがあります。区切りまで至った時点で返信に追記しても良いのですが、大抵は時機を逸する形になる気がしますし。

 特に至らぬ点をご指摘頂いた場合に、「批判も気軽に書いて欲しい」という意図と「ご指摘を真剣に受け止めた」という意図を同時に表現するのは難しく、前者を強調するとはぐらかされたという印象を与える可能性があり、後者が過ぎると読者さんに「感想も真剣に書かないと」と身構えられる可能性があります。

 今も時々悩んでいるのですが、早期に頂いた感想で「SAOとのクロスならタグを付けるべきでは」というご指摘がありました。その時も今もご指摘には感謝していて、自分の考えを述べる機会を与えて頂いたと思っているのですが、後書きでお名前を明記してそれを紹介したのは果たして良かったのか。返信の内容を見て頂ければ私に変な意図はないと伝わるはずだと思いつつも、「晒された」と受け取られたのではないかと思い悩む時があります。

 それから最近聞いたのは、返信を深読みされる場合があるのだとか。聞いたのはFBでの話でしたが、気に入らない相手への返信では感嘆符の数を減らすとか、そうした解釈があるのだと教えて貰いました。面倒なことだと思いましたが、知った以上は考慮すべきか、とも考えました。

 私の作品には長期に亘って感想を頂いている常連さんがお二方おられ、頂いた感想に返信する際には定型のお礼の言葉から書き始めていました。その語尾に片や「!」を1つ、片や2つ付けていましたが、でもそれは遙か昔に感想を頂いた時に「!」が2つあったから返信でも2つにしようとか、その程度の理由でしかないんですよね。一応、最近は2つに統一したつもりでしたが、今見てきたら他の方への返信も句点だったり感嘆符だったりで統一感がないですね。。

 私としては感嘆符を使わない感想には返信でもなるべく使わないとか、相手が「(笑)」と「w」のどちらを使ってもそれに合わせるとか、顔文字も「(^^)」でも「:)」でも相手に合わせるという程度で、それらの基準も厳密には程遠いものですし。少なくとも何かしらの底意を秘めて使い分けることはないのですが、深読みの可能性を考え始めると怖いですね。


■設定をどこまで明記すべきか

 今の作品は一言でいえば「仮想世界で俺ガイル」なので、上記のようにSAOとのクロスだと勘違いされる可能性はありました。クロスを忌避する方々がおられることに気付かず、むしろ分かりやすいかと考えて、ログアウト不可を伝達する場面などをSAO準拠にしたのも問題だったと思います。

 作者が書きたかったのは「仮想世界での日常」なので、ゲーム側とは完全に世界を分けて、時おり間接的に影響が来る(事件発生のトリガーにする)程度で考えていました。そのためゲーム側の進行は「SAOなどデスゲームにありがちな展開」ぐらいにしか考えておらず(本作品の設定に合わせて生じる幾つかの変化をもとにアウトラインを考えた程度です)、そこに根本的な原因があったのではないかと思いました。

 更に3巻の終盤で、この世界の設定を活かしたゲームが入る予定だったので、2巻(および直前の幕間)からは設定の話をより丁寧に、しかし一気に紹介するのではなく他の描写に溶け込ませる形で少しずつ書いていくことにしました。

 しかし結果としては、設定を曖昧にした反省が高じて、誤解されないように詳しく描写して冗長になりがちだったと思います。こうした設定の話や物語の裏側の動きなどは、どこまで書くべきか悩ましいですね。

 読者さんによっても知りたい内容と余計な情報は違ってくるでしょうし、この辺りは感想への返信で補足できたら理想かなと思っています。自分も感想を書くのは苦手なので、無理を言っているのは重々承知なのですが。将来に活かすという点でも、至らぬ部分の補足という点でも、感想をもっと気軽に書いて頂けると嬉しいなぁと思ったり。


■漢字への拘り

 多くの作品を読ませて頂いて、細かく漢字を使い分ける作者さんが少なくないという印象を得ていました。なので自作でも漢字の変換に拘ったり、普段は使わない言葉や言い回しを文中に混ぜてみたりと、普段の書き物よりも凝ったことをしていました。

 最近は漢字をもっと少なくして、ありきたりの言葉を増やすほうが良いと考えています。同じ言い回しを避ける、語尾が一定にならないように、等々の拘りも嫌いではないですし、珍しい言葉を使うのもそれはそれで楽しいのですが。

 結局は伝わりやすさが大事だなと、当たり前のことに思い至りました。そもそも私の書くものは難しい表現が多いと言われがちですし、意識して平易な言葉を使うぐらいがちょうど良いのかなと、色々と検討しながら書いています。


■冒頭の5話とあらすじ

 それなりの文章量を書いてきた今になって振り返ると、冒頭の5話、特に1話と2話と4話には地雷と捉えられても仕方のない部分が含まれていて、しかし書き直しを始めるとそのままエタりかねないのが辛いところです。そして正直、同じ失敗を繰り返さないとは断言できないのも辛いところです。

 結局は放置するしかなく、今なお最初の5話までで去って行かれる読者様が後を絶たないのが現状で、せっかく興味を持って頂いたのに申し訳ない限りです。1話のUAが2万と、読んで頂ける機会を充分に得られているのに応えられなかった形ですし、何も言い訳できないなと思っています。

 それから、連載を始めて一年の節目であらすじを変更したのですが、それまでは説明をくどく重ねるような内容でした。正直、この作品のダメな部分が凝縮されているような気すらしていたので、思い切ってシンプルなあらすじに変更しました。


■目標設定

 原作1巻を書いていた頃はまず書き続けるので精一杯という状況で、より良いものを目指したいという気持ちはあったものの、特に具体的な目標は掲げていませんでした。

 そのまま書き続けると決めた時に、話数や文字数に対するUAの数字とか、UAに対するお気に入りや評価の数などを同原作でざっと確認して、平均よりやや下、中の下から下の上ぐらいの数字を目標にしてみました。

 今にして思えば、大きな問題点が2つあります。まず、目標とする数字が全て他力だったこと。せめて地力で達成可能な目標を同時に掲げるべきでした。

 そして目標の数字が低かったこと。その為に、この目標にすら程遠いという現実を突き付けられてなかなか苦しい思いをしました。高い目標を掲げた末の実力不足という展開よりも、なまじ低い目標のほうが辛さが勝るようにも思いました。

 今は他力の部分は「1人でも多くの方に読んで頂ければ良いな」という淡い希望程度にとどめて、自分ができることを積み重ねながら、少しずつできることの幅を増やしていこうと思いながら書いています。


■つづく

 文字数の限界があるのでいったんここで切って、引き続き時系列に沿った具体的な話に移ります。もしかすると誤字報告の話が先になるかもしれません。あ、作品も書かないと。。

 ではまた後日。


日時:2017年05月25日(木) 01:11

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