作品執筆のお話、その3-2。

 昨日に引き続いて具体的なお話に入ります。以下では執筆しながら考えたことなどを時系列で書いていきます。作品のネタバレが含まれますのでご了承下さい。

 なお私の作品は原作3巻終了時点で、全73話、UA10万6千弱、お気に入り314、総文字数49万弱、感想69、評価21でした。


■連載を継続した時の状況について

 2巻を書き始めた時点で3巻ラストまでの展開は考えていましたが、年末から年度末へと移行する時期なのでどうしても途中で中断期間を挟まざるを得ず、そうした時間的な制約に追われて焦るように連載を始めました。とにかく少しでも書き進めておかないと、という気持ちでした。

 既に文字数が30万を超えていたので、この先は読者数も頭打ちになるだろうと自分に言い聞かせながら、一般論の目標設定の項目で書いたように「自分に書けるものをとにかく書こう」という心境でした。

 2巻の最後の辺りから日曜の午前中に時間を確保するのが難しくなってきて、更新が月金に変わっていました。木曜更新は頑張れば可能でしたが、日曜深夜に何とか書いて月曜に更新という形なので平日に疲れが残りやすく、結局は月金で今に至ります。最近は帰宅時間の関係で夜10時の更新も難しくなっていますが、それは4巻の振り返りの際に書きますね。


■前半について

 いきなり重い展開で始まることもあり、上記のように時間的に余裕のない状況だったこともあり、書くのが辛い時期でした。各キャラが迷う様子を書きながら作者も一緒に迷っているという感じで、それが描写にも反映されたかもしれず反省しきりです。

 それに加えて、原作序盤のテーマでもある「始まり方が間違っていても」という気持ちで、1巻の冒頭5話の失敗を糧により良いものを書こうと頑張った末に叶わなかった2巻のことがあったので、気分が落ち込みがちだったのも影響したと思います。

 2巻の内容は、あの時の自分としては出せるものを出したと思っていますが、それだけに余計に、5話までに見限られる状況はこの先なにをしても変わらないと認めるのは勇気がいりました。実力不足だから仕方がないと考えるしかないですし、それでも読み続けて下さった方々もいるのだから、読んで良かったと3巻ラストで思って頂けるものを何とか、という気持ちで書いていました。

 さて、前半の構成は奉仕部3人の視点を代わる代わる書いていくという形式でした。これは冨樫先生がHUNTERの蟻編で、護衛軍が待つ王城に突入〜の展開を各人ごとにタイムテーブルを組んで描写した、という話を参考にして書きました。

 3巻を書き切れた今になって振り返ると、各3話を費やして展開を進めた上で締めの話(東京駅、部長会議、一色と対談)に至る構成は長すぎたなと思います。締めの話はそのままで行くとしても、そこまでは各2話で、特にさしたる展開のない由比ヶ浜パートは1話でも良かったと思いました。個人的には1巻の冒頭5話と並ぶ本作の失敗ポイントだったと考えています。

 しかし振り返るのは簡単ですが、当時は「重い展開なので各キャラの悪い印象を与えてしまわないように丁寧に少しずつ」と考えていたり、3人の話数を揃えなければと思い込んでいたわけで。やはり書きながらだと客観的に作品を見るのは難しいですね。

 そんな中で、複数人がお互いに微妙に干渉し合う展開を何とかタイムテーブル通りに書き切れたことは、書き手として満足できた点でした。また、サイドストーリーではありますが、由比ヶ浜両親の話を書けたのも嬉しかったです。これは20世紀中頃のアメリカの短編小説を意識して書きました。

 そして何よりも、ラストまで書き切れたからこそ改善点が見えやすくなるというのは本当なのだなと実感できたことも大きかったです。2巻から3巻も書き直したい欲求はありますが、自覚できた反省点は4巻で活かそうと考えて更新を続けています。


■各話タイトルについて

 3巻からは各話タイトルに縦読み要素を加えました。そして激しく後悔しました。今までは更新直前に思い付きで決めていたので、初めの一字が決まっているほうがやりやすいだろうと思ったのですが、当然ながら余計に苦労するはめになりました。

 特に途中から二字縛りになった時期は、自分がしたことながら馬鹿だろこれって思ってました。とはいえ終わってみれば何とかなるものだな、と懲りていない辺りが困ったところです。


■年明け以降のスケジュールについて

 何とか年内でオリジナル色の強い前半部分を終わらせて、年明けからは安心の原作沿い展開に入りました。書いていて楽でしたし、描写の質も向上したような感覚でしたが、それが実力だとは受け取れず、むしろ原作の力を再確認させられた気がしました。

 年明けに4話更新して1ヶ月休み、2月下旬に月から金の五日連続更新→次の月曜更新で、半ば無理矢理に3巻の本編を終えました。1月下旬から2月半ばは書くことも読むこともできない時期でしたが考えることはできたので、文字通り「あとは書くだけ」という状態に持って行けるように内容を練りました。

 2月半ばに年度末進行が一息ついた時点で更新予定日まで数日あったものの、開放感から溜まっていた他作を読み始めてしまい時間が足りず、結局は2話と半分しか書き溜めできませんでした。連載開始時もこれぐらいでしたが今回は毎日更新する必要があったので、最後のほうは必死だった記憶があります。

 6話分の書き溜めをして週2で予約投稿する案も一応ありました。しかし3月はまた年度末進行が再開するために、もしも感想などを頂いても即座の反応が難しいかと考えて、余裕のある時期に一気に更新する形にしました。

 とはいえ連日更新の最後の辺りは目に見えてUAなどが下がっていて、かえって読者さんにご迷惑をかける形になったかなと思いました。当時の自分も更新が多くて未読の回が溜まっている作品を後回しにして、単発で更新があった作品から読み進めていたわけですし。どちらが良かったのかを判定するのは難しいですね。

 その後はまた1ヶ月休んで年度末進行を頑張って、月末に番外編とBTと何とか時系列のまとめまでを書き終えて、月内で3巻を終わらせました。


■困った人への対応について

 年明け初の更新の時だったか、直近の10の感想全てにBadを付けられるという迷惑行為を経験しました。次の更新時に後書きで注意はしましたが、どうやらご理解頂けなかったらしく、今も感想が溜まるたびに同じ行為を繰り返されています。

 せっかく感想を書いて頂いた読者さんには申し訳ないと思いつつ、作者としては別にどうでもいい行為ですし、以後は生暖かい目で見守っています。前回どこまでBadを付けたかをおそらく覚えておらず、結果2度押しになってBadが0に戻った感想もあったりして、それを見た時には少し和みました。ちょっと性格が悪いなと反省しています。

 この件だけが理由ではないのですが、この時期には面倒な人たちに配慮する(目を付けられにくくする)のが馬鹿らしくなって、彼らが好んで標的にする葉山グループに関する描写にも斟酌しないようになりました。悪い部分は悪いとちゃんと書きますが、良い部分も普通に書くという当たり前の状態で今に至ります。

 葉山たちに制裁をしろと感想欄などで要求され消えて行った作品を見ていただけに、以前は彼らの良い部分を書く時にも少し茶化した描写にしたりと、自衛のようなことを行っていました。自意識過剰と言われればそれまでですが、そんなことで自作に泥を塗られたくなかったのです。そうした過去の描写を、2月に連載を再開する直前に修正しました。

 ちなみに、そんな心理状態の時に某作品が発表されたので、完結時にはきちんと名前を晒して作者さんに労いを伝えたいと考えて、まだあまり言及されていないように思えた話を加える形で感想を書かせて頂きました。


■後半について

 後半は独自色を加えつつも原作沿いの展開なので、どこまで書くかが難しかったです。原作にあるから削って良い部分と、それでも書かなければならない部分をどう判別するかですね。

 同時に、原作と似た展開であっても文字数を費やしてこの作品内で各キャラの交流を書いておかないと、その後の展開で説得力が違ってくるようにも思います。原作で仲が良いから二次作品でも仲が良いという前提で、色んな事をすっ飛ばして書くのは危険な気がします。

 その結果、書きすぎて冗長になったかもしれず、しかし書き切れていない部分もあって、こうした部分にも事前の段階でもっと時間を掛けるべきだなと思いました。ただ、時間を掛けても難しいものは難しいなと、4巻を書きながら思っています。

 あともう2つ悩んだ点を書いておきます。1つは各キャラのダメな部分(方向音痴とかアホっぽい部分とか)を可愛らしく書けないという問題。下手をすれば揶揄するような表現にすらなりがちで、一般論のネタの話にも通じるのですが、さらっと流すように書くのって難しいですね。

 もう1つは大詰めの部分で、自分が構築した作品世界の設定を使ったゲームを書いたことです。一歩間違えば手前味噌になるので、設定を詳しく把握していない読者さんにも雰囲気で楽しんでもらえるような形にしたいなと考えながら書きました。

 作者としてはゲーム勝負の回とその直前の交渉の回は主人公無双(良いタイミングでの失敗も含む)なので気に入っているのですが、今からでも反応が知りたいなと思う箇所ですね。


■最後に

 実は4巻の連載を始めた先月上旬に一度、3巻の振り返りを文章にしてまとめました。しかし内容があまりに悲観的というか反省が多すぎるというか、ダメな部分をこれでもかと指摘しまくるものだったので一旦お蔵入りさせました。

 とはいえ私としては、未発表でも手元で文章にした時点で少なからず達成感があり、なかなか公開できるものを書こうという気持ちになれませんでした。何とか一念発起して昨日今日で書いた内容は、初稿と比べるとかなりマイルドになっているのですが、それでも反省点が多めです。

 そんな流れで最後に私が主張したいのは、たとえこの文章が反省ばかりでも、自作の悪い点をここで書いた以上に把握・自覚していても、それでも私は、おそらくどんな読者様よりもこの作品が好きなんですよね。

 同原作の数多くの名作と比べると瑕疵はたくさんありますが、同時に他作にはない本作だけの特徴もあると思っていますし、自分にしか書けないものを書こうとしているつもりです。そして親馬鹿みたいな話ですが、今までに軽く10回以上は読み返していて、そのたびに新たな問題点を見付けて落ち込んで、それでも読み返すたびに面白いなとも思ってるんですよね。

 総文字数は既に60万字近いですし、何度か書いたように1巻冒頭に問題を抱えているので簡単にお薦めできる作品ではないのですが。もしもこの文章を読んで私の作品に興味を持って頂けたのなら、最初から読むのではなく。現在連載中の4巻冒頭から来月10日頃に更新予定のラストの場面までを通して読んで頂けるのであれば、私としてはそれに勝る喜びはありません。何故なら、そこに今の自分の精一杯があるからです。

 最新の章にも至らぬ部分は幾つもあります。文章量も4巻だけで15万字近くになりそうですし、簡単にお薦めできることではないのですが。もしも読んで頂けるのなら、ほんの少しでも「面白いな」と思ってもらえる箇所がありますように。そう願いながら、この文章を書き終えたいと思います。


日時:2017年05月26日(金) 01:11

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