作品執筆のお話、その4-1。

 何度か作品を通して読み返して、最新の章だけですが最低限の修正は済んだので、続きを書く前に(再開はできれば明日、無理なら明後日を予定しています)連載当時のあれこれを以下でまとめておきます。自分のために、「書いていた時にあったことを忘れないように」が主たる目的ですが、他の作者様にとっても参考になる部分があれば良いなと。

 時系列に沿って連載を振り返りつつ、見出しを付けて項目分けしていますので、興味を惹かれる部分だけでも読んで頂けると嬉しいです。

 なお原作4巻が完結した現時点で全91話、計65万字弱、平均7,100字弱、UA13万ちょい、お気に入り385、感想79、評価投票者25人でした。以下ネタバレがありますのでご注意下さい。


■本章の課題

 まず4巻を書く際の課題として、描写の繋がりを今まで以上に意識しました。

 例えば1話で運営の人が語った内容を章の終盤で振り返ることになるのですが、最初の時点で後の場面を明確に思い浮かべながら書くように心掛けました。他にも主人公が語る歴史ネタが後々再登場したり、さりげない手抜き行動が展開を進める理由になったり、多少強引でも別の場面と関連付けて描写に意味と広がりを与えようと考えました。

 プロットと一口で言っても、そのまま更新できそうな域まで詳しく書く人もいれば数行の人もいると思いますが、私の場合は箇条書き程度です(4巻完結後にゼロ魔21-22巻のプロットを見て「これでも良いんだ」と一安心しました)。

 今までも「この伏線はここで回収」といった注意書きは入れていましたし、回収時の前後の流れも考えてはいましたが、本章ではより具体的に「パスを出す時点で、パスの受け手がそれをどう活用するか」をイメージしながら書くようにしました。


■「実は仕組まれていた」という導入の形

 さて、最初の2話の段階で問題になったのは、主人公が巻き込まれる(陥れられる)形が続いたことでした。

 結末まで書き上げた時点でやっと話せることですが、最終話の展開に抵抗できるように「仕組まれた状況への対処」を章中で確定しておく必要があり、それを一日目に済ませる構成にしました。更に前章ラストでそれを一度問題にしておく事が本章で活きるという流れでした。

 なので前章ラストと本章冒頭の「主人公が知らない間に決まっていた」という状況は覆すことができず、ならば間に位置するおまけ話(ぼーなすとらっく)は導入を別の形にすべきだったのが一つ目の問題点でした。

 一日目の終わりまで話を進めると、「企画者(雪ノ下・小町)に落ち度のある形で主人公を巻き込む展開にする」ことに意味があると判明するのですが、冒頭では「読者に少し引っかかりを持たせつつも軽く済ませる」程度を目指していました。しかし原作者と違って私がそれを書こうとすると悪意が強調されがちで(なかなか改善できない二つ目の問題点です)、与える引っかかりが強すぎるという結果になりました。

 複数の読者様からの反応を受けて、「企画者二人に主人公への甘えがあり、一日目の夜にそれを取り上げる」ことを地の文で明記して、1話と2話の描写に変更を加えました。それに加えて、3〜4話で「小町が留美を助けたい理由」として、兄の現状(実は我慢を強いているのに小町は理想的な状況だと思っている)を挙げる予定だったのを却下しました。

 この改変の結果、家族や部活仲間とも重い展開が待ち受けていることを始まって早々に示唆する形になりました。また小町の理由があやふやになり、「最初は助けるのに乗り気だったけど主人公の様子を見て躊躇する」という対応が戸塚と完全に重なってしまいました。

 しかし仮に当初案のまま小町の描写をしていたら、冒頭2話とは比べものにならない程の反感を読者様に与えていた可能性が高く、結果として私は上記のデメリットを軽く覆せる程のメリットを得られたと考えています。

 理想を言えば、これらの説明が出来る段階まで話を進めた時点で改めて、ご指摘を頂いた方々にお礼を言いたかったのですが。既に見切られていた場合は連絡を差し上げるのも失礼になりますし、感想やメッセージを何度も頂けるようになるにはどうすれば良いのか、悩ましいですね。。


■序盤

 さて、章の序盤は基本的には原作沿いですが、いじめ問題にどう対処するか作中キャラに考えてもらうことを通して、各々の性格や関係性が深まっていく様子を描写できればと思いました。各キャラが考えを述べ合う中で少しずつ手掛かりを掴んで行き、それらが主人公の提案する解決策へと繋がる様子を書きたいと思いました。

 ただ二次創作の難しいところで、細かな積み重ねを進めて行く構成は地味で盛り上がりに欠ける印象になりがちです。かといって派手な展開を用意したり作中キャラを無用に対立させるのは私の作風に合っておらず、特殊能力を持たない高校生たちの物語という制限の中でリアリティを失わないようにと考えながら話を進めていきました。

 これは突き詰めると「リアルとリアリティは違う」という話に発展する気がします。リアルさを追求するよりも作品の中である程度デフォルメした方が良い場面もありますし、逆にとことんリアルさに拘るべき場面もあります。つまり書き方・読ませ方の問題になりますが、一部分で終わる話ではなく前後の流れにも大きく左右されるだけに難しいですね。


■評価

 本章を書き始める直前に同原作のとある作品が完結して、そこで長々と感想を書かせて頂きました。何よりも作者さんに労いを伝えたかったからですが、同時にこの機会に自分が他作品を見聞きして思った事を述べたいという気持ちもありました。他の感想もそうした主旨のものが多かったので便乗した形です。

 後者の動機は突き詰めると「面白い作品が増えて欲しい」に尽きるのですが、アンチ作品しか認めない読者さんの反感を買うかもしれないとは覚悟していました。それでも名前を出して感想を書くのが礼儀だと考えたのです。

 さて、それが以下の出来事にどの程度影響したのか。まず本章開始前後に赤評価に一瞬戻って、すぐに陥落しました。そこまでは今までにもよくあった事ですが、今回は続きがありました。確か調整平均が7.9ぐらいの状態から☆1が3つ入って、一気に6.9ぐらいまで落ちました。ほんの二週間ほどの出来事でした。

 もしも感想が原因なのであれば、やはり評価の数字を上げるには長所を伸ばすよりも短所を抑え悪目立ちしないことを重視すべきなのかもしれません。しかしアンチに配慮したり言い訳を片手に執筆するのは止めようと決めた以上は、この反応を受け入れるべきなのだろうと思いました。

 この時に評価を下さった方の中で、上記作品にも低評価を付けていた方は、程なく評価を撤回されました。その理由は判りませんが、基本的に私は葉山グループの悪い部分もきちんと書いていますし、ただ必要以上に彼らを虐めて楽しむような作品にするつもりはないだけで、よほど過激なアンチ(もしくは主人公全能主義)でもない限りは理解し合える部分があるはずだと考えています。そうした姿勢を感じ取って下さった結果の評価取り下げだったら嬉しいのですが。

 それから当初は匿名評価だった方がいつの間にか名前を出していたと思ったら、アカウントロックによりハーメルンを去って行かれました。低評価を頂いた方がロックされるのは確認できた範囲で3人目ですが、複数アカウントや暴言という理由を見ると、低評価をきちんと受け止めようとした過去の自分が何だか馬鹿らしくなりますね。

 結論として、事ほど左様に評価の数字とはあやふやなものなのだから、それに一喜一憂せず内容を追求すべきだなと思ったのでした。


■7話

 上記の評価急落によって初めて6点台に落ちて、負けん気を発揮して書いたのがこの回でした。前章14話と15話の反省点(戸塚とのデートを2回に分けて書いた事)を活かして、一度で濃密な内容を書き切るつもりで書きました。

 ここで書いた情景描写の話と音楽の話を取り上げたいと思います。

・情景描写

 私の場合は「必要だから書く」というスタンスです。逆に必要でないと判断した場面では視覚情報を大幅にカットしています。特に各キャラの服装や外見にはほぼ言及していません。書くのは主要キャラが初登場の時、ラッキースケベ等の記述することに意味がある場面、原作と異なる場面ぐらいです。

 情景描写を多くすると作品世界の説得力が増しますが、大抵の場合それは物語の本筋とは関わりのない記述です。少なくとも他で代替可能な事が多いと思います。例えば作中人物の気持ちを比喩的に表現するといった書き方がありますが、それは情景描写でなくても可能です。視点(カメラ)の移動という効果を狙う場合も同様です。

 それらを承知の上で、この7話では特に音を表現するために情景描写を利用しようと考えました。参考にしたのはチェーホフの短編で、国外・墓地・逢い引き待ちぼうけ→国内・キャンプ地・思いがけず逢い引きという対比にしてみました。元ネタを上手く隠した描写が出来ていたら良いなと思いつつ、見破って欲しい気持ちもあり、書き手の心理は複雑ですね。

・音楽

 作品の中で楽曲について描写するのはなかなか難しいものです。特に著作権への配慮が必要な事が描写の難易度を上げている気がします。英語やドイツ語に改変した歌詞を見て、白けた気持ちになった読者様もおられるだろうなと思います。

 それでも作中で音楽作品を持ち出すのは、一つは上記の情景描写と同様にそれが必要だから。そしてもう一つは、上手く書ければ長々とした描写を省略できるからです。

 前者について。極端な例ですが「私はこんなにセンスの良い曲を聴いてるの!」などという意識で曲に言及しても、あるいは深い意味を与えず曲の話を持ち出しても、読者にはお見通しになると思います。ゆえに「この時この場面にはこの曲しかない」と思えないようでは書くべきではなく、逆に作り手が曲の存在を必然と思うのなら絶対に書くべきだと私は思います。2巻幕間でもこの7話でも、そう考えて書きました。

 後者について。これは小説や映画に言及する際も同じですが、「この作品のこの場面みたいな感じ」と言っただけで非常に多くの情報を伝えられるのが他作品に言及する醍醐味ではないかと思います。例えば同じ7話の中で「三四郎」の話を出しましたが、あれも美禰子たちのやり取りを前提にできるからこそ意味が広がるわけで、単なる英文和訳の話なら雑談の域を超えないはずです。


■UA

 UAは基本的に話が進むほどに減少するもので、しかし1巻(1/3減)にしろ3巻(1/4減)にしろ1話目で引き返す読者様が多い事が拙作の問題点でした。つまり序盤に問題を抱えがちという傾向を何とかしたいと思っていました。

 幸いなことに本章では話数が進んでも大幅な減少になった回はなく、繋がりを意識するという課題を掲げたのが功を奏したのかなと思います。

 この7話と次の8話は本章前半の山場でもあり、緊張感を維持しながら書いたのですが、2話続けて前話のUAを上回ったのが嬉しかったですね。今までも章の最終話には多くのUAを頂いてそれを喜んでいたのですが、物語の半ばで、特に8話は賛否が分かれるかもと覚悟していただけにほっとしました。

 それに加えて最終話が数字を伸ばし、1話すら上回ったのも驚きでした。本章のUAベスト3は18話・1話・8話の順になるのですが、たかが数字とは言えそれを見るだけで「書いて良かった」と思ってしまう辺り、作者って単純ですよね。


■執筆状況

 GW直前に急な仕事が入ったこの頃から時間の確保が難しくなって来て、更新も23時が基本になりました。

 一番焦ったのは9話を更新する時で、連載開始からちょうど1年に当たるこの日は絶対に更新したいと思っていたのに帰宅が間に合わない可能性が出て来て、夕方頃の気分は最悪でした。何とか間に合って助かりました。

 本編の文字数が多い上に活報に載せる目的でゲーム展開の詳細を書いた15話(普段の倍近い時間が掛かりました)からは火土の更新になりましたが、何とか書き切れて良かったです。最後はさすがに疲れ果てていました。


 文字数の関係で、続きは別稿にて。


日時:2017年08月10日(木) 01:54

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