作品執筆のお話、その5。

 前章(原作5巻)はまとめを含めても全5話の構成なので振り返りを書くべきか悩みましたが、書き残しておきたい出来事もあったので書くことにしました。

 各項目には見出しを付けていますので、一部分だけでも読んで頂ければ良いなと。また今回は5巻2話のプロットを載せてみました。理想のプロットには程遠いと思いますが、執筆に興味がある方の参考になれば幸いです。

 なお原作6巻開始直前の時点で全96話、計70万字弱、UA15万弱、お気に入り461、感想79、評価投票者29人でした。


■構成について

 3話の後書きで書いたように、前章には1〜4巻と6〜9巻を繋ぐ役割と、6巻以降へのプロローグという役割を課しました。内容的には原作5巻のダイジェストに本作特有の諸要素を入れ込んで、あとは作中キャラに夏休みを楽しんでもらう形でした。

 主人公と各キャラとのエピソードは、順番を変更したり細かな部分で違いを出してはいますが概ね原作に即しています。その中で川崎とのエピソードだけが様変わりしている形ですが、5巻の内容は既に3巻13話で先取りしているので、幕間の内容に留めました。


■原作の小ネタについて

 以前の振り返りの中で、他のラノベや漫画などを作中でネタにするのが難しく、最近は避けているという話を書きました。それに類する話で、原作の小ネタを自作で再現することについて。

 例えば3巻なら10話の東京駅ネタ(京葉線はホームが遠いし総武線快速は階段が長い)とか16話のコボちゃんとか、2巻なら2話のヒエログリフとか、原作を読んだ人なら気付いてくれるかなという細かな話を時々拾っていました。

 ただ、ネタの使い方が悪いだけという話もありますが、描写が微妙になりがちで効果的とは思えなかったので4巻では控えていました。

 今回も、例えば炎色反応の話を組み込もうと思いつつも結局は出さず、原作を去年の話としてさらっと流すに留めました(去年扱いは3巻16話のペンギンの語源などと同様)。

 そんな中で、5巻2話では久しぶりにネタを多めに入れて、こっそりオマージュも含めてみました。以下ではそのプロットをお蔵出ししてみます(使わなかった箇所と未来への伏線はほぼ削除しました)。


■2話のプロット

お盆は人が少ないので集中的に予備校に行く予定、妹の自由研究・周囲から浮かないこと
サブレにリードをつけてお散歩
町並みの変化、過去を懐かしみ変化を悲しむ、成長は本当に正しく喜ばしいものなのか、変わらない・逃げるという選択によって得られるものもあるのでは→留美の話
いつかは離れる日が来る、大学も通学範囲内で選ぶ予定だし限界まで働かないつもりだが、残される側の気持ち、一人暮らしの雪ノ下
小町からリードを引き継ぐ、手を繋いで
あざと可愛さを伝えられるように、擬態を見抜いた人向けの対策も怠っていない(←4巻9話)、これまでよりも少しだけ
親戚は肉親に入りますか、この世界でも結婚式に出席させられる、場所限定というシステム
行列は秩序があるから嫌いじゃない、フォーク並び、どうでもいい行列に並んでもみた
花火大会と雪ノ下家、自治体のイベント、陽乃の外面、気付いても内面のしたたかさに惹かれる、文化祭で二年連続ベースを弾かされた
おごりは拒否、秩序を潔癖に求めない時・許せる時がいつか来る、抱き合わせなんだろう孤独と自由はいつも
めぐりの第一声:そのまま引用
今は亡きマリンピアの映画館で小町と、中学からは一人で
戸塚とホラー、最前列で真夏なのにコートを着た男が鼻息荒く、手すりで指が触れる
下りた先のカフェ、原稿の話
やおい=やまなしオチなし意味深長、やめておしりがいたい
お土産のお菓子をクラス全員に、もうハブられることはない
海老名が高評価の理由、自己評価の低さ
花火大会のお誘い、浴衣をデータで送って貰った、小町は知らんぷり、勘違いしないでね別に悲しくはないのさ
サブレに忘れられる原作の由比ヶ浜→サブレを忘れて帰る由比ヶ浜


■10評価と日間ランキング

 こんな感じでこの章は割と気楽に書いていたのですが、ここで予想外の嬉しい出来事がありました。既に削除されたり評価を訂正して頂いたものも含めて☆0〜☆9は経験済みだったのですが、自分には縁が無いと思っていた☆10評価を頂いたのです。

 そして数字以上に嬉しかったのが評価に添えて伝えて下さった内容で、作品の中身はもちろん私が書く時に気を付けていたことなども含め色んなことを評価して下さって、更には問題点も一つお伝え頂いて、様々な事が一気に報われた気がしました。

 以前に活報に書いたようにランキングの計算式は理解していたので、これで日間に載れるかもしれないと思いつつ。それでも、すぐに低評価が入って圏外になるだろうと心の準備をしていました。

 しかし幸いなことに丸一日の間ランキングに載り続けることができて、そしてこの日は更新予定日だったのですが、敢えて翌日の0時更新にしてみました。

 その結果、連載開始直後に二度経験して以来(←調べた)のお気に入り二桁増。そして最新話を更新して一週間が経つのにUA四桁という嬉しい数字を得られました。とは言っても四割の方が1話で、八割の方が4話までで見限るという傾向は相変わらずでした。この点は項目を改めて書きます。

 翌日0時に最新話となる5巻3話を更新して、この日の朝5時頃にランキングからは姿を消したはずですが、それでもお気に入りが9も増えました。初めて評価の色が付いた後の更新でもお気に入りが9増えたので、面白い一致だなと思いながら最初で最後の経験を堪能したつもりでした。

 しかし驚きはここで終わらず、深夜にまたもや☆10評価を頂きました。おそらくランキングに載ったことで作品に興味を持って頂いたのだと思いますが、「4巻まで一気に読み耽ってしまった」と仰って頂いて、嬉しくてちょっと泣きそうでした。

 その結果、更新翌日の朝5時頃から再び丸一日間ランキングに載ることができて、二日連続でお気に入り二桁増、四日間トータルで44もお気に入りが増えるという事態に。更新ごとにお気に入りが5人増えれば絶好調という私の作品に何が起きたのかという感じで、夏の終わりに貴重な体験をさせて頂きました。

 実はその数日後にも☆9評価を頂いて、その際に「お気に入りの数次第では再び日間に」という思いを抱かなかったと言えば嘘になります。しかし結果的にはランキングに載らなくて良かったと思いました。

 というのは、頂いた評価をランキングに関連付け過ぎだと思ったからです。高評価を頂くのは確かに嬉しい事です。しかし私の作品を読んで頂いて、更には評価まで頂けた時点で既に恵まれた状況なわけで。それなのに、下手をすると数字によって感謝の気持ちに優劣が生まれかねないわけで。

 上で少し触れた最初に評価の色が付いた時のことですが、たしか一両日中に三人の方々が立て続けに評価を下さいました。ランキングがどうあれ、調整平均がどうなれ、とにかく評価を下さった方々への感謝を忘れないようにしないとなと、この時の事を改めて思い出したのでした。

 そんなわけで、一過性の盛り上がりに惑わされず、興味を持って読み進んで頂いた方々のご期待に沿える内容にしないとなと思いながら、良い精神状態で八月を終えることができたのでした。ここで言う事でも無いですが、6巻も頑張ります。


■失敗と書き直し

 上記の出来事を経て改めて浮き彫りになったのが冒頭数話の問題でした。やはり書き直した方が良いのかなと、何度目になるか分からないお馴染みのテーマで頭を悩ませました。

 大前提として「書き直すのが面倒なだけなのに、もっともらしい言い訳を用意する」形にならないように用心しつつ思うのは、私自身も問題があったと考えている1話〜4話で見限らず、その先まで読んで下さった方々が存在する事。そして書き直しは、そんな方々にとって益の無い行為である事。それよりも、過去の失敗を今に活かして書き進めた方が遙かに良いのではという事でした。

 もちろん時間の余裕があれば書き直したいとは思っていますが、現状では優先順位が低くならざるを得ないと考えています。と言いつつ、しばらくしたらまた悩み始めるんですけどね。


■原作改変の難しさ

 原作の特定の部分に引っかかりを覚えて二次作品で訂正しようとした場合、大抵はより難しい問題に遭遇する事になります。プロが避けたルートに踏み込んで行く以上は当然と言えば当然ですし、だからこそやりがいもあるのですが、ご都合主義を訂正するはずが更なるご都合主義を呼び込むだけという結末に至る事も珍しくありません。

 例えば4巻12話では、「団体行動にうるさい林間学校で小学生が班から置いて行かれる」「先生に見付かる事も厭わず出歩いて高校生と出会う」といった原作では曖昧に処理されていた部分をリアルに書こうとした結果、状況が更に悪化しています。

 その変化を高校生達の積極的な動きに繋げて何とか結末まで書き切れたものの、改めて難しいものだなと思い知らされた気がしました。市販の作品でも瑕疵を指摘するだけなら難しくないですが、それを改善しようと取り組んでみると、さすがは市販の作品だなとなりますね。


■まとめ回とご指摘について

 長編になったので定期的に原作との相違点や時系列をまとめていますが、これも少し形式を変えようかと悩みました。各キャラごとに現時点までのダイジェストをまとめるべきかと考えて、しかし体調不良もあって果たせませんでした。

 原作からの変更点については、ご指摘がある以上は説明責任があると考えています。まとめを書くために自作を読み返すのは当然として、今回は原作も一気読みして(8巻までで時間切れになりましたが)引っかかりそうな点を列挙しました。ただ正直に言うと、自分の限界を超えているのが現状です。

 というのも、率直に言ってこの作業は楽しくないのです。自作の描写不足を反省するのは、将来にも繋がりますし当然のことだと思います。しかし原作の記述と摺り合わせて厳密に矛盾を排除して行く域まで求められると、原作の粗探しをしているようで嫌な気分になりますし、この程度の矛盾なら見逃して、と言いたくなる時があります。「作品の質を少しでも良くしたいと言いながら、それが君の限界か」と言われても、無言で頷くしかない時があります。


 4巻1話の小町の失敗を6話で三浦が指摘する場面があって、それに対して「キャラが違う」というご指摘がありました。その際に、この三浦の役割も8話の内容に対しても「感想で指摘されて無理に展開を変えたから仕方が無いけど」という前提で話されるのは何故だろうと不思議に思っていました。

 それが今回のまとめで、1巻16話に過去の話を書いて以降は三浦の性格を深く描写していなかったのが原因かなと気付きました。だから三浦の言動に唐突な印象を抱いて、それを根拠に「展開を無理に変えた」と思われたのだろうと。

 そもそも1巻の言動を一旦チャラにして、トップカースト・女王・おかん・中学テニスで県選抜などの要素からキャラを作った上で、細部を原作の言動にできるだけ近付けるようにと修正したのが拙作の三浦です。だから確かに原作とはキャラが違うなと納得できたのでした。

 誤解されないように明言しますが、ご指摘には心から感謝しています。ただ対応しようにも私が相手の意図を理解しきれなかったり、上記作業のように気が進まない場合も時にあります。特に、決め付けをされると厳しい事が多いです。先に触れた「感想で指摘された」件も、私が嬉しく受け取ったものを否定的に言われると、ご両者に対して申し訳ない気持ちになります。

 私は感想やご指摘に対して「嫌な事を書くな」と口を封じるつもりはありません。できるだけ自由に書いて欲しいと思っていますし、仮に見当違いがあっても気にせずまた書いて欲しいと思っています。同時に、ご指摘を私が作中でどう活かすかは私の自由だと思いますし、根拠が提示できるなら反論も自由だと思っています。いずれにせよ、「書いたのは失敗だったか」とは思って欲しくないですし、結論もシンプルです。つまり。

「感想がもっと増えたら良いなぁ……」

 ではまた6巻の振り返りでお目にかかれることを願っています。


日時:2017年09月21日(木) 00:44

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