戦国武将と近代国家の軍隊の例から鑑みた鎮守府の軍閥化についての考察

【注意!!】

・この考察は第二部九話『ダブルノックアウト』までの【ネタバレ】を含みます!そこまで作品を読んでいない場合絶対に読まないでください!

・これはあくまで私の考察と拙作における設定であり、公式設定とは一切関係はありません

・これの考察を読んでも読まなくても本編をお楽しみ頂く上で一切不都合はございません。

上記の事をご理解頂いた上でお読みいただくように御願い致します。

↓以下考察
























「戦国武将と近代国家の軍隊の例から鑑みた鎮守府の軍閥化についての考察」

 軍閥とは如何なるものかを語るにはまず、戦国時代の軍と近代国家の軍隊のどこが違うかを知ってもらわねばならない。

 戦国時代の軍隊は、一つの殿様の下に、大勢の武将が集まって構成されている。

 近代国家の軍隊は、一つの国家の元に、大勢の兵士が集まって構成されている。

 上記の二つは似ている様で全く異なるのだ。

 殿様の元に集まる武将は、それぞれ独立した領地と領民をもち、独立した統治を行い、独自に兵士を集めて殿様の元に集まってくる。その為兵士達は『殿様の兵隊』ではなく、『武将の私兵』であり、多くの私兵を抱えた武将を纏める事で全軍を纏めているのである。

 これがどのように問題になるかというと、あくまで兵士は武将の私兵であるため、明智光秀の謀反の様に武将が離反すると部下の私兵も一斉に離反する危険性を孕んでいるのである。

 軍閥とはつまり、この様な個人に依存する私兵化された軍隊の事をさす。近代国家の軍隊の中にこんな個人に依存する部隊があっては怖すぎるというのはわかるだろう。

 この内部の権力の二重構造は廃藩置県によって藩という『独立国』が解体され、中央政府によって全ての領土と領民が管理されるようになってようやく解消される事になる。日本においては比較的穏便に解消されたが、多くの国家においてこの二重構造の解消は多大な流血を伴う『革命』によってなされる事を併記しておく。

 権力の二重構造を解消してようやく、兵士を全て直接管理することが可能になる。強力な中央政府によってしっかりと軍隊を管理することが近代的な軍隊には必須なのだ。

 だが、この構造を常に維持し続けるのは実際のところ難しい。大日本帝国陸海軍しかり、中華民国時代の軍閥しかり、強大な軍事力を背景に中央に対して反抗を始める場合がある。

 ブリタニカ国際大百科事典によれば、軍閥とは『局地的に割拠している常備軍的性格をもつ軍隊の長が,それを私軍化し,その軍事力を背景として,政治的独立を保持し,半封建的権力者としてふるまうものをさしている』とある。大日本帝国の関東軍などもろにこれに該当するだろうし、当時は陸海軍共に議会と対立することがかなりあったのだから怖いモノである。(これの原因については大日本帝国憲法の構造的欠陥にも起因しているのだが、長くなるので割愛する)

 つまり軍隊が近代化していく過程とは、本質的に軍隊を中央に縛り付けていく歴史なのである。トップの命令をしっかりと隅々まで履行させることが近代的軍隊には必須なのだ。

 ここまで説明すれば、艦これ世界の海軍の危険性がなんとなく見えてくるかもしれない。

 艦これ世界では一人の『提督』を中心にして大勢の艦娘が『鎮守府』という形で纏まっている。彼女達の言動から鑑みるに国家に対する愛着と同時に、提督個人に対するとても強い忠誠が感じられる。ゲーム本編中においては、大本営からは『任務』という名の『努力目標』しかおりてこず、提督を飛び越えて配下の艦娘に命令が行くという事態も発生しない。つまり、艦娘という『兵士』を国家の中枢が直接管理出来ていないのである。ゲーム本編中の描写をそのまま受け取れば、大本営は提督個人に対して物資等の配給などを行い財布を管理する事で、間接的に艦娘達への統制を行っているのが現状の様だ。

 提督を武将、鎮守府を領地、艦娘を私兵と見るなら、せっかく解消した権力の二重構造がまた復活していることに気が付くだろう。艦これ世界の海軍は戦国自体の軍隊に逆戻りしているのである。

 拙作においてはこういった点を小説に落とし込むにあたって、本質的に提督も艦娘も『善人ばかり』であるため、辛うじて軍隊として機能しているのだろうという結論に達した。『国家への反逆』よりも『国家への愛着』や『国民を思う心』が強い善性人間ばかりであるため、反乱が起こっていないのだろう。(個人の理性によって天秤が保たれる軍隊というのは冷静に考えるととても怖いが。)

 作中において南雲が石壁への対応に強く頭を悩ませていたのも、提督一人一人が『独立性をもった軍閥』である事に起因しているのである。提督の感情をあまりに逆撫ですれば、最悪本能寺になりかねないのだ、南雲も慎重になるだろう。

 青葉が目を付けたのがこの部分なのだ、個人の理性に強く依存するこの海軍のシステム上、提督や艦娘に不信感を持たれれば作戦行動に大きな影響が出てくるのだ。誰だって不信感のある大本営に部下の嫁艦の命を載せたくないだろう。群狼作戦によって石壁の存在と大本営への不信感を植え付けられた彼女達の前で、石壁が『不審死』などした日にはどんな反応がまっているか予想できるだろう。これによって大本営の直接的な動きを阻害することが、青葉の作戦の狙いだったのである。






日時:2017年12月26日(火) 22:33

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返信コメント

鉄血☆宰相

>芭匠さん

コメントありがとうございます!

>艦これのシステムはとても日本っぽくて皮肉のようだと感じていました。この考察にある通り、物資などの最低限の条件を整えてあとは現場の人に任せる業態は現在でも日本で顕著に見られる統制の仕方でしょう。日本の外交や、国際援助などにおいても、最終的な行動の部分や戦略の決定に関しては現場にいる人に丸投げされているようです(アメリカやイギリスと比べ本部機能が弱い。)それでも日本のパスポートが世界中あらゆる国で使えるだけの成果を出しているのは、現場の人でなんとかやっていく日本の強さなのでしょう。

昔から日本人は現場は有能だっていろんな人から言われてますからね、ええ、現場はね(目そらし)

実際上から余計な指示しないほうがよく回る奇妙な国ですからねえ……

>本編・考察共々、読んでいて非常に面白く目が釘付けになっていました。それもストーリーの「日本らしさ」が妙にリアルであったからかなと感じております。すごいです。

それなりに長い間日本の歴史・文化・風俗等々色んなモノにふれてきて私の中に形作られた
「日本とは如何なる国か」という理解を土台に物語をくみ上げておりますので
恐らくはそのあたりにリアルさを感じて頂けたのかなと思います。
こうやって褒めて頂けるととても嬉しいです。

>今後ともこうした考察たのしみにしております。最終章も気長にお待ちしております。

巻末の作者の後書きレベルの部分まで楽しんで頂いてありがとうございました。
今後も精一杯頑張って書きますので、どうかよろしくお願いいたします!


日時:2018年09月30日(日) 19:41

芭匠

艦これのシステムはとても日本っぽくて皮肉のようだと感じていました。
この考察にある通り、物資などの最低限の条件を整えてあとは現場の人に任せる業態は現在でも日本で顕著に見られる統制の仕方でしょう。
日本の外交や、国際援助などにおいても、最終的な行動の部分や戦略の決定に関しては現場にいる人に丸投げされているようです(アメリカやイギリスと比べ本部機能が弱い。)
それでも日本のパスポートが世界中あらゆる国で使えるだけの成果を出しているのは、現場の人でなんとかやっていく日本の強さなのでしょう。
本編・考察共々、読んでいて非常に面白く目が釘付けになっていました。それもストーリーの「日本らしさ」が妙にリアルであったからかなと感じております。すごいです。

今後ともこうした考察たのしみにしております。最終章も気長にお待ちしております。


日時:2018年09月11日(火) 14:14

鉄血☆宰相

>人形ふぇちさん

コメントありがとうございます!

>ここのアオバは中野学校出身の陸軍艦の可能性が微レ存?

世の中には要塞に立てこもってゲリラ戦を行いながら騎兵隊が抜刀騎馬突撃をかます
『艦隊これくしょん』の二次小説があるんですから、
青葉が陸軍所属の可能性も微粒子レベルであるんじゃないですかね?

これからも拙作をよろしくお願いいたします!


日時:2017年12月28日(木) 01:46


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