遅ればせながら、完結の後書きを

 先日、めでたく拙作「吸血鬼さんは友達が欲しい」を完結させる事が出来ました。半年以上お待たせしてしまったにも関わらず、なんと一日に7千人以上の方から読んで頂けまして、大変大変嬉しい締めくくりを迎えることが出来ました。
 吸血鬼さんを書き始めた当初は初めて書いた作品であるにも関わらず、まさかここまで注目を集める事になるとは露程も思っておりませんでした。処女作という点もあって沢山の戸惑いもありましたが、それでも無事完結まで持って行くことが出来たのは、一重に皆様の応援あってこそだと考えております。
 最後まで読んでくださった方も、まだ読まれていない方も、ここまで拙作にお付き合い頂いて、本当にありがとうございました。

 さて。私事の感傷は一旦筆を置きまして。私としては初めての完結を迎えられた良い機会ですから、劇中では語れない吸血鬼さん作成の裏話をここに綴っておこうかなと思います。超絶蛇足なので、そう言ったお話が苦手な方、もしくはまだ最終話まで読まれていない方は、ここでブラウザバックをお勧めします。









 では、改めまして。
 先ずは拙作の主人公。いわゆるオリ主、ナハトについて少しだけ語らせて頂こうかなと思います。
 実は彼、元々は女主人公として登場させる予定のキャラクターでした。つまりプロット時点では『おばさま』だったわけであります。しかし、色々と考えていく内にそれを撤廃し、むしろ最後に持ち込んだ方が良いだろうと結論に至りました。

 理由は、彼のキャラクターコンセプト……というと少々仰々しいですが、まぁ、そんな事情があっての事であります。

 ナハトのキャラとしての中枢は、単刀直入に言いますと『矛盾』と『異端』でした。友人を求めれば蝕まれ、穏和なのに外観は凶悪で、消滅の塊でありながら生存しているという矛盾。そして、東方と言う世界観においてあまりに歪として映る異質さ。この二柱が要だったわけです。
 矛盾の部分は上述した要素で埋められたので良かったのですが、問題は異質さでした。これを解決するために、東方の少女が主体の世界観において異端と言わざるを得ない男妖怪として採用したわけであります。
 そんな背景もあってか、エピローグでは、吸血鬼さんは異端ではなく一つのファンタジアに受け入れられたという形を表すものとして、疑似TSを果たすに至った訳ですね。
 
 次にストーリーを書くにあたっての原動力をお話ししようかなと思います。これはずばり、『他にこんな作品が無かったから』の一言に尽きるでしょう。東方は先達様の素晴らしい二次SSが沢山存在しておりますが、私のニッチな趣味とマッチングするような作品が少なかったので、他作者様の作品に影響されて書きたくなったのも相まって、筆を執った次第であります。

 そしてもう一つの理由は、ほんの少しばかりの疑問?をシュミレートする事で解決する為でもありました。
 
 勘違いものは『実は能力ないけど話術やらなんやらで勘違いされてしまう』系か『自意識に反した結果が出て雪だるま式に勘違いが膨らんでいく、もしくは言葉が足りない無自覚』系の二パターンが主流だと思っております。極端に例えるなら、前者は「控えよ、私こそ神である(本当はそんなんじゃないの許して)」で、後者が「ボール投げるよ~それっ! ……え、ビル壊れた……? ま、待って待ってそんなつもりじゃ!?」という感じです。
 しかしこれ、紫や永琳を筆頭とした東方ですと中々厳しいんじゃなかろうかと思うところがあったのです。後者はよほどの天災的実力でもない限り無問題になりますし、前者は能力が無いと特殊な背景でも無い限りあっさり見抜かれてしまうでしょう。
 
 更にもう一つ疑問? というよりはあまり見ないなぁと感じる要素がありました。こういったお話の中で、明確なバタフライエフェクトが殆ど見られなかった事です。
 オリ主もの、もしくは原作キャラ改変ものの勘違い系は良くも悪くも第三者からは強大に映るケースが殆どです。加えて、オリ主だった場合主人公は長命な妖怪が多い。しかしながら、客観的には大きな影響を与えている筈なのに目立ったエフェクトが見られないことが、個人的にちょっぴり物足りない節がありました。 
 なのでそう言った疑問要素を出来る限り取っ払った物語を展開したら、幻想郷はどうなるのかなぁと思い立ち、この好奇心に従うまま考えていたら、此度のストーリーが出来上がったのであります。
 

 ざっくりと言えば、『どうしようもなく理不尽な要素があり、加えて実力もあるので第三者が勘違いせざるを得ない主人公が大きな禍根を生みつつも、楽園はそれすら克服して受け入れる』という物語です。異端極まりない主人公の理不尽性を克服し、勇猛果敢に活躍する楽園の少女たちが見てみたいという我欲の元、書き奔らせて頂きました。
 そういう意味では、序盤でナハトを活躍させ過ぎたのはちょっと失敗だったなと反省しております……。あの頃はキャラの動かし方などがよく分かっておらず、中々見苦しい部分をお見せしてしまいました。

 さてさて。肝心のバタフライエフェクトでありますが、この代名詞が拙作のラスボスにしてキーキャラクターの一人、スカーレット卿であります。
 彼は元々、野心を抱える紅魔一族の長として暮らしながら、紆余曲折を経て幻想郷に宣戦布告し、吸血鬼異変にて紫に討ち取られる事が正史となる筈だったオリジナルの吸血鬼でした。それがナハトと言う生粋のバグに出会ってしまった事で、あそこまで執念深い怨霊へと変貌を遂げたのであります。
 五百年前のイレギュラーが時を経て正史に無い筈の特異点を生み、しかしそれが起こったとしても、逞しく乗り越えていくファンタジアの少女たちと主人公を書きたかったのです。はい。

 という訳でありまして「吸血鬼さんは友達が欲しい」を書くことが出来た次第です。乱文で長々とつまらない話をしてしまいましたが、この作品に関しては最後という事で、どうかお目こぼしを。

 
 筆末となりましたが、ここまで支えて下さった皆様に改めてお礼を。
 そして、勝手ながら数々の素敵で貴重な体験をさせて頂けた東方Projectに、心より感謝を申し上げたく思います。
 
 本当に本当に、ありがとうございました。




 PS

 まだ未完の気紛れ妖怪のひまわり喫茶を筆頭に、まだまだ執筆は続けていくつもりでございます。
 新作として、吸血鬼さんを書いている内に溜まったアイディアを元にオリジナルも書いております。こちらはなろうの方に投稿する形となりそうですが、作品の体裁が整い次第、改めて活動報告で告知させて頂こうかなと考えております。

 ではでは。


日時:2018年01月22日(月) 23:16

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返信コメント

河蛸

>骸骨王様

こちらこそこちらこそ、読了ありがとうございました。
また機会がありましたら、その時はお付き合い頂けると嬉しいですっ


日時:2018年02月11日(日) 22:18

河蛸

>龍帝2号様

こちらこそ、拙作に最後までお付き合い頂きありがとうございました
色々と四苦八苦しながら書き進めたものではありましたが、最後は皆さまに喜んで頂けて良かったです。創作の大変さ、その楽しさを噛み締められました。今後も負けず劣らずの作品を書き続けていきたいですね

ではでは改めまして。読了ありがとうございましたっ


日時:2018年02月11日(日) 22:16

骸骨王

海蛸さんお疲れ様でした


日時:2018年02月09日(金) 19:49

龍帝2号

完結までお疲れ様でした
最初期から追っていた身としてはあそこまでの作品を作り上げ完結させてくださる方は大変素晴らしいと思います
読み応えもあり、伏線の回収の美味さ、読んでいてワクワクさせてくれる展開
どれを取っても私にとっては最高作として頭の中に置いとかれるでしょう
この作品を読ませていただきありがとうございます


日時:2018年01月23日(火) 00:05



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