【ショーン】授業風景【オマケ】

「どうだ、美しかろう?」

 自信たっぷりのハグリッドの言葉に、しかし頷く者は少ない。
 普段から危険な魔法生物に目がないハグリッドが連れてきた動物だ、警戒するのも無理はないだろう。
 加えてハグリッドが連れてきた『ヒッポグリフ』はどう控えめに言っても“美しい”というより“恐ろしい”だった。ちょっと背中を掻いただけで大怪我になりそうな爪と、あんまりおしゃべり向きじゃない嘴を持っている。目なんかも、鷲が逃げ出しそうなくらい鋭い。

「誰か最初に乗ってみろや。早い者勝ちだぞ」

 早い者勝ちというか、参加者がそもそもいなかった。
 みんな下を向いてハグリッドから見えないように縮こまっている。少し残念そうにしたハグリッドだが、それでもめげない。ヒッポグリフの素晴らしさを理解してもらえればみんな絶対に好きになってくれるだろうと疑わなかった。

「よっしゃ! ショーン、やってみろ。ほれ、遠慮すんな。ちぃーっとだけ獰猛だけどな、ちゃんと礼儀を払えば心配ねえ。猫見てえなもんだ。はっはっはっ!」

 最初のひとりとして、ハグリッドはショーンを選んだ。彼なら間違いなくヒッポグリフに気に入られ、模範になってくれるだろうと思ってだ。
 しかしこれが間違いだった。

「なんだこのヘンテコ動物は。全然凶暴そうじゃないな」

 誇り高いヒッポグリフをコケにしたような発言。
 ハグリッドは慌てて止めようとしたが、もう遅い。ヒッポグリフがショーンに襲いかかった。

「きゃあ!」

 鋭い爪が振るわれる。
 ショーンが血みどろになると思い、女子生徒達は目を覆った。しかし意外にもショーンは無事に立っていて、反対にヒッポグリフは二、三本下がっていた。
 ヒッポグリフが思いとどまった、あるいは和解したのだろうか? 否、そうではない。
 目にも留まらない速さでショーンがかわしたのだ。
 ほかの誰もそのことに気がつかなかったが、猛禽類顔負けの目を持つヒッポグリフ本人はショーンの動きを捉えていた。それ故に、警戒して距離を置いたのだ。

 その距離をショーンが詰める。

「鳥なのか馬なのか、食ったらどっちの味がすんのかねえ」

 再度、今度はさっきよりも速く爪を振る。
 これもかわされた。

「ショーン退がれ! おれの話を聞いてなかったのか!? まずはお辞儀をするんだ」
「なんでだ?」
「言っただろ! ヒッポグリフって連中は誇りだけえんだ。だから……」
「初対面の奴に一方的に頭を下げさせるのがか? そんなのは誇り高いって言わねえな。傲慢って言うんだぜ。そんな奴になんで俺から頭を下げなきゃいけない」

 止めに入ったハグリッドを手で制する。

「本当に誇り高いなら礼節を持って相手をもてなしてから、付き合い方を考えるもんだろ。
 俺は自分が認めた相手にしか頭は下げない。こいつ自分のルールがあるように、俺にも俺のルールがある」

 再度、ヒッポグリフが襲いかかって来た。
 今度は左と右のワン・ツーだ。
 ひとつ目はかがんで、次のは首をひねってかわす。

「キエーー――ッ!」

 我慢ならなかったのか、今度は体全身で突進して来た。

「そら来た!」

 飛びかわしながら、ヒッポグリフの背中に着地する。
 なんとか振り下ろそうと暴れながらヒッポグリフが突っ走った。しかしショーンがこの程度で振り落とされるわけがない。
 躍起になったヒッポグリフは勢いを増し、そしてそのまま……。

「おいショーン! 降りてこい! 危ねえぞ!」

 空の彼方に飛んで行ってしまった。
 まったく、あいつってやつは……ハグリッドは少々不機嫌になった。

「流石ショーンのやつだぜ。あの身のこなしったらたまんねえよな」
「映画のワンシーンみたいだったな! 俺もやってみるか!」
「人間が出来るわけないでしょ、あんなの」
「私、悲鳴なんかあげちゃった。馬鹿みたい。ヒッポグリフの方を心配するべきだったわ。帰って来る頃には焼き鳥になってるかも」

 生徒達の関心はヒッポグリフから逸れて、圧倒的なパフォーマンスを見せたショーンの方に行ってしまった。
 女子生徒は憧れの目で見ているし、男子生徒は次は自分もと息巻いている。自分の授業が潰れかかっている気がして、ハグリッドは益々気分を悪くした。

「いいかおまえら! ショーンみたいにやってみろ、八つ裂きになるからな!」

 真似しないようにと、生徒達に厳重注意する。
 同じようなことをされたらたまったものではない。
 ショーンがあほすぎるだけで、ヒッポグリフは本当に危険なのだ。普通の生徒がやったら大怪我するのは間違いない。

 ……と、その時。生徒の中からヒッポグリフの前に躍り出た生徒がいた。

「なによこいつ、全然危険そうじゃないわね」
「じ、ジニー……おまえさん、罰則だったんじゃ」
「終わらせて来たわよ」

 罰則でスネイプの手伝いをさせられていたはずのジニーがいつのまにか来ていた。
 機嫌が悪かったハグリッドだが、もはやにっこり笑っていた。
 この二人が揃ったら真面目な授業なんて出来るはずがない。笑うしかねえのである。

「なにガンくれてんのよ」

 お辞儀をしろ、と睨むヒッポグリフを斜め左下からにらみ返す。

「あ?」
「クエーーーーッッ!」
「あ゛あん?」
「クエーー!」
「あ゛あ゛あ゛あんっ!」
「く、くえ……」
「はあああああああああああッ!?」
「わ、ワン」
「それでいいのよ」

 ヒッポグリフは犬のように両ひざを曲げてジニーの足元にひれ伏した。険しい目からはちょっと涙が出てる。よっぽど怖かったのだろう。
 すっかり満足したジニーは機嫌良さげにヒッポグリフの頭を撫でた。

「よーしよしよし。誰が一番強いか分かってる奴は好きよ」
「くぅーん」

 ヒッポグリフは完全に犬だった。
 完全に服従しきってる。

「あー……一応言っておくが、真似するんじゃねえぞ。危ねえからな。分かっちょるか?」

 そんなこと言われんでも分かっちょる。
 生徒達はそんな顔をした。


日時:2019年02月27日(水) 17:58

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返信コメント

班長利根川

よく考えたら普通罰則は休み時間や夜など授業に影響が無い時間にいれるものだと思うが、ハグリッドの授業の時間に入るということは、罰則が多すぎて授業の時間にもいれるしかなかったのかな?


日時:2019年03月08日(金) 15:28

いりや2351

 俺は自分の信念を貫く! 確かに格好良いけど格好良いだけなんだよなぁ~……でもやっぱり格好良いなΣ(・ω・ノ)ノ! あとジニーはヤバいな。


日時:2019年03月08日(金) 11:28

芋娘@飽き性

知 っ て た 。
うん、そうなりますよね(遠い目)


日時:2019年03月06日(水) 13:41

不条理な味噌汁

>>そんなこと言われんでも分かっちょる。

読者達もそんな顔をした。


日時:2019年02月28日(木) 20:22

熊谷剛志

仕事中、噴出したwww
スネイプせんせーの授業風景をとても見たい。


日時:2019年02月28日(木) 16:33

水城悠理

また教師、スネイプ、スリザリンに続く被害者の会(幻獣・魔獣部門)が設立されてしまうのか

多分この後アズカバンとか魔法省とかが加盟したんだろう


日時:2019年02月28日(木) 10:30

犬飼太奈

お、俺は確かにホグワーツ魔法魔術学校の授業を読みに来たはずだった…しかし読んでみたら男の子はヒッポグリフでロデオを始め、女の子は喧嘩を売りガンの着け合いだけで服従させてしまった…真面目とか反抗的とかそんな次元じゃねぇ…もっと恐ろしい『なにか』を見ちまった…そんな気分だぜ……。


日時:2019年02月27日(水) 22:48

ずわい

だめだこの二人、早く何とかしないと…


日時:2019年02月27日(水) 22:33

カガヤ

魔法界でボルさん並みに逆らってはいけないトップ2相手では分が悪すぎるw


日時:2019年02月27日(水) 20:28

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言われんでもわかっちょる。


日時:2019年02月27日(水) 20:16

皇 翠輝

待ちたまえ、声帯とかどうなってんだ?!
まさか睨んだだけで生体錬成を?!!
でもヒッポグリフは自業自得だと思いましたまる


日時:2019年02月27日(水) 19:26

シャル=ティア

服従の呪文(物理)ですねわかります


日時:2019年02月27日(水) 19:23

アーマードコアの新作

これはひどい……ヒッポグリフがなにをしたっていうんだ…


日時:2019年02月27日(水) 19:12

西勇生

なんか、こう、いつか2人が酷い目に合えばいいと思ってしまった。


日時:2019年02月27日(水) 19:00

義孝

案の定やらかしたよこの2人…
そして当然のように罰則受けてるジニー…


日時:2019年02月27日(水) 18:07

シフミ

ヒッポグリフがどうやったらワンなんて声だせるんだ!?


日時:2019年02月27日(水) 18:03


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