【寄稿】タコ壺の信念と、視線の話 あとがきの補遺(後)

4.書こうとして書けなかったもの
 2点あります。
 『コナン原作のキャラ』と『ど健全なる世界の本編キャラの1人称』です。

4-1.コナン原作のキャラのこと
 時系列上、登場させるのは無理がありました。
 新一君は7~9歳の頃の話になるので絡む余地がありません。毛利探偵や優作さんも、ストーリーの展開上登場させることができませんでした。

 襲撃未遂事件で暴れる父を抑える辺りで『ちょうど別件で脅迫状が送りつけられるなどして、実は刑事がその場にいた』という描写を入れようかとも思いました。
 捜査一課の面々でも目暮さんならこの時警視庁に勤めています。しかし捜査一課の警護というのは不自然ですし、警護以外の理由だったら、刑事以外にもパトカーと警官がたくさんいるシチュエーションしか創作できません。そんな状況で『カラメル半月が事前スケジュール通りTV局に行く』としても、牧師個人が落ち着いて待ち伏せ襲撃するどころではありません。没になりました。
 では公安はどうでしょう。カラメル半月は既に公安でスケベの先生になってる年です。脅迫状等が来た場合、警察上層部の判断次第で警護されるかもしれません。しかし当時21歳でまだ学生の降谷さんの警護は有り得ません。風見さんも警察に入った年齢が原作上不明確な人のため出しにくいです。
 仮に殺人未遂事件発生時に公安の人がいたとしても、その人は原作レギュラーではないモブで、仕事の性質から存在自体が伏せられたことになるのだと思います(最初に父に気づいて乱闘したのは『会社のスタッフ』なので、別に刑事がいたと公にする必要性は皆無)。
 
4-2.ど健全なる世界の本編キャラの1人称のこと
 本編が基本的に1人称のコメディ調ですから、この短編でもこうした回顧を最後に入れるべきかどうか検討しました。お分かりの通り、最終的にはそういう視点は含まずに構成しています。

 途中で誰かの視線を割り込ませると蛇足になります。「私」の手記スタイルは最初から最後まで通した方がスッキリしそうです。1人称を入れるとしたら手記の後になり、必然的にカラメル半月の目線なら雰囲気はハマります。
 しかし、『襲撃未遂事件から10年は経過している時期(31歳以降)のカラメル半月の考え方が想像つかない』という点。加えて、『原作後の描写を細かく書いた場合、ど健全なる世界の本編の記載と矛盾するかもしれない』という2点がネックになりました。
 前者の理由については特に大きく、突き詰めてしまえば、作者の技量面の問題から(そもそも31歳以前の年齢描写であっても)充椎十四様の描き方とは似て非なるテンションの『それっぽい1人称』になるしかないのではないかと感じています。


5.作中の年代設定について
 最初に『狂信的な個人が、カラメル半月を一人で襲おうとする事件』を描くことを決めました。つまり狂信的な人が何となく『単独犯で殺せるんじゃないかと思いそうな時期』の話になります。
 書ける構図を考えて『公開されたスケジュールから逆算して待ち伏せ、会社を出た瞬間のカラメル半月を不意打ちで襲おうとした話』になりました。そうなると、企業規模がビル一棟で収まっていた頃(複数箇所にオフィスが出来るより前)に、その『唯一のビルの目の前』で襲おうとした話にした方が良さそうです。

 充椎十四様にビル一棟で済んでいた時期の設定をお尋ねしたところ、「カラメル半月が18歳~23歳の時です。スケベなお店開店で業務内容が増え、部署が足りなくなりました」と御回答を頂きました。
 まず、ピンクウェーブ本社前殺害未遂事件のタイミングをこの時期内に収めることが固まりました。

5-1.物語の起点について
 宗教法人が攻撃的になりそうな出来事を考えます。上記期間内のトリガーとして説得性が出るのは、一般的に知名度が劇上がりするタイミングです。
 TVに出演し始めても、メイク済みの顔がモザイク処理されていた頃までは(「私」の父を含めて)宗教法人内の指導者の内輪で「変態的で有害な事をほざいている変な奴。あんなの真に受ける信徒はうちの団体にはいないだろう。もしいたら注意しましょうか」という扱いだった、モザイクが取れたデビルメイク顔で地上波に出演した事を機に、この団体の牧歌的対応が一変した、……ということにしてみます。
 リアルな存在として『カラメル半月』の世間での知名度が爆上がり、連動して団体内部の危機感を爆上がりさせます。そして小学5年の「私」は大人達の剣幕に困惑し、後には、TV出演というこの出来事を振り返ることになるのです。

5-2.殺害未遂事件発生の時期について
 「私」の父が激発に至るまでの経緯を考えました。カラメル半月の知名度が上がって即座に殺害を考えるという性格は、アグレッシブすぎて書きにくいです。
 教会で淫らさへの警戒レベルが爆上がりしたタイミングを起点に考えます。
 完全に教会の教義に染まった熱心な信徒が、姉の進路さえ許容できなくなって面前で当てこするまで1年と少々とします。個人差がある事象ですが、一応ありそうな期間です。
 それで姉が教会の日曜礼拝に来なくなるという事態が発生し、父がこの姉を認容できなくなるまでの期間を考えます。ごく短い期間ならば牧師にしては短気すぎる気がして、逆に長期間すぎると古い事を気に掛けすぎる気がします。ちょうど1年間ならリアルさが出そうですし、充椎十四様の御回答にも沿います。

こうして、
・カラメル半月19歳の年のTV出演の頃を起点にする (「私」=小5、姉=高3、従兄=仮面浪人の大1。本編上は季節が不明の話なので、季節の描写はボカす)
・2年と少々の期間の間に、「私」が経験した様々な事柄を描写する
・カラメル半月が21歳の学年末に襲撃未遂事件が発生する(「私」=中1、姉と従兄=大2)
という形で話を組み立てることになるのです。
カラメル半月が地上波デビューしてから2年+αで、牧師が暴発して露骨に路上で殺しに行こうとするのですから、それでも過激な存在という気がします。フォローとして『アグレッシブな傾向の宗教法人だった』という記述を入れました。


以上、『タコ壺の信念と、視線の話 あとがき補遺』でした。
改めて、皆様方には心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

文責:2020/6/19にマシュマロを送った人(仮)


日時:2020年07月31日(金) 01:11

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