感想返信232(原作内における、評価される戦いとされない戦いに関する考察)

>もし原作のヤンがこの物語のエリヤ・フィリップスの軌跡を観たら、作中のヤンと違って主人公に対して異なる認識を抱く様な気がする。
エリヤは原作に登場した場合、ヤン・ファミリーからは嫌悪され、ラインハルト陣営からは軽蔑され、読者からは戦犯扱いされます。そういうキャラとしてデザインしています。

原作は相対主義を謳いつつも、実際はある一つの価値観を至上としています。それに沿ったものは称賛されます。それに外れたものは非難されます。ラインハルトもヤンもこの価値観を共有しており、それゆえに原作世界の英雄たり得ます。彼らが敬意を持ちながら戦えたのは、価値観が一致していたからです。

エリヤはこの価値観から外れた人物、原作の基準では外道です。命を百回賭けても評価されません。

ヤンやラインハルトは、命を賭ける者を称賛し、そうしない者を非難します。しかし、命を賭けるだけでは評価されるかというと、そうではありません。

ゼークトは逃げることを良しとせず特攻を仕掛けましたが、ヤンの評価は「一人で死ね。こんな奴がいるから戦争が絶えないのだ」というものでした。

第11艦隊はほぼ全員が死ぬまで戦いましたが、ヤンの評価は「無意味な善戦。さっさと降伏してくれたら良かったのに」というものでした。

地球教徒は総本部を守るために自爆じみた戦術まで使いましたが、帝国軍には気味悪がられただけで、ラインハルトやその配下からの敬意は得られませんでした。

命がけで戦うだけでは評価されません。彼らの基準で”命を賭けるに値するもの”のために戦った時のみ、評価を得られるのです。ゼークトは体面のため、第11艦隊は国家や軍隊のため、地球教徒は信仰のために戦ったので、軽蔑されました。

エリヤは国家や軍隊のために命を賭けます。己の矜持に命を賭けることはありません。己の信念(個人を重んじるものに限る)に命を賭けることはありません。不自由を克服するために命を賭けることはありません。主君(器量は問いません)への忠義に命を賭けることはありません。強者相手に激語して気骨を示すことはありません。権力者相手に命がけの諫言をすることはありません。ですから、原作では決して評価されません。「無意味な善戦で不要な犠牲を出した」と言われるか、狂信者として気味悪がられるかの、いずれかです。

余談ながら、ロイエンタールが反乱後もさほど糾弾されないのは、徹頭徹尾、自分個人の矜持のために戦ったからだと思われます。


日時:2021年04月24日(土) 14:10

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返信コメント

甘蜜柑

>その価値観は一般市民の中でも尊ばれ、多数派を占める価値観何だろうか?
違うと思います。
多数派であったなら、同盟市民はここまで無責任ではなかったし、門閥貴族はここまで堕落していなかったでしょう。

>「異なる認識」とは言っても、好意的評価というより、主人公の立場と状況から来る止むを得なさを
理解した上でのネガティブな評価を抱いた感じになるのではないかと私は考えてますが。
原作善玉陣はそこまで優しくありません。ヤンがレベロに「国のために死んでほしい」と遠回しに言われた時、一瞬同情しかけたものの、「殺されかけている自分の方が同情されるべきだ」と思い直しています。彼らは自分の価値観から外れる存在に対しては、徹底的に冷淡です。無意識ゆえの冷淡さではありません。「なんで奴らの事情に忖度してやらねばならんのだ」と思っており、冷淡であるべきだと信じています。これが顕著なのは、同盟軍ではヤンとシェーンコップ、帝国軍ではラインハルトとロイエンタールとビッテンフェルトです。

>アンスバッハがその逆ですね。
>「キルヒアイス殺害」という(ラインハルト的)大罪を犯しているけど、動機が「主君ブラウンシュヴアイク公への忠誠」というものであったためラインハルトにそれほど憎まれていないという。
まさしくその通りです。個を重んじる彼らにとって、個と個の関係に殉じたアンスバッハは称賛すべき存在なのです。

>寧ろトリューニヒトに心酔したまま戦死できたら、ヤンやラインハルトの心証は良くなったかもなのか。
彼らがエリヤをトリューニヒトの忠臣と認識しているならば、良くなったかもしれません。
認識されないでしょうが。


日時:2021年06月05日(土) 16:54

ZsbGbc

寧ろトリューニヒトに心酔したまま戦死できたら、ヤンやラインハルトの心証は良くなったかもなのか。


日時:2021年05月16日(日) 02:58

坂本圭助

アンスバッハがその逆ですね。
「キルヒアイス殺害」という(ラインハルト的)大罪を犯しているけど、動機が「主君ブラウンシュヴアイク公への忠誠」というものであったためラインハルトにそれほど憎まれていないという。


日時:2021年04月28日(水) 12:52

オルブラヒト

「異なる認識」とは言っても、好意的評価というより、主人公の立場と状況から来る止むを得なさを
理解した上でのネガティブな評価を抱いた感じになるのではないかと私は考えてますが。

(こちらでの直接的な軋轢が無い分だけ、感情的な嫌悪感無しにもっと客観的に観れるのではないかと)


日時:2021年04月26日(月) 10:29

貫太郎

その価値観は一般市民の中でも尊ばれ、多数派を占める価値観何だろうか?


日時:2021年04月25日(日) 14:03


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