第三話



「フン、『波動砲艦隊計画』を何処で聞いたやら……」
「まぁちょっとした伝手で聞きましてね……」
「……親父の情報網か」
「まぁそんなところです」

 将和は防衛軍総司令部で芹沢司令副長と面会をしていた。話の内容は芹沢が主導で進める『波動砲艦隊計画』の事である。

「それで貴様も『波動砲艦隊計画』を止めろと?」
「いえ? 寧ろ推し進める方ですがね」
「ほぅ……」

 ジロリと睨む芹沢に将和は呑気にコーヒーを飲む。コーヒーも代用のタンポポコーヒーではなくなり漸く豆のコーヒーが出来るようになってきたのだ。

「ただ……やり過ぎはよくないという事です」
「……谷少将が提案した自動化艦隊のか」
「えぇ、結局は人の判断と知恵で戦争に勝ちますからね」
「……まぁいい」

 芹沢はそう言って立ち上がる。

「……『波動砲艦隊計画』のはガミラス側にも伝えてある。今度交代で来るバレル少将は切れ者らしいがな」
「成る程。何故それを自分に?」
「出迎えの艦隊が貴様の艦隊でするからだ」
「……理解しました」

 将和は苦笑する。

「全てはガトランティスに備えるためだ」
「……そうですね」

 芹沢の言葉に将和はそう言うのであった。数日後、将和は護衛艦隊を率いて冥王星付近まで航行していた。護衛艦隊と言っても巡洋艦1、護衛艦6の7隻なのだが……。

「ワープアウト反応、ガミラス艦隊です」
「ん」

 護衛艦隊の前に四隻のガミラス艦隊がワープアウトしてきた。程なくガミラス艦から通信が届いた。

『ガミラス帝国地球大使のバレル少将です』
「第33護衛隊司令官の三好准将です。地球までの同行を致します」
『感謝します』

 二人は互いに敬礼をするのである。

『……ミヨシ准将の事は聞いています』
「ほぅ?」
『何でも父君は地球艦隊を支えた猛者であると』
「恐縮です」
『何れ、話を』

 バレル大使はそう言って通信を切るのであった。そして将和はガミラス艦隊と共に地球に帰還すると再び芹沢に呼ばれた。

「バレル大使と主に交渉する役を貴様に任せる」
「……えっ?」
「地球とガミラスの溝は深いが貴様はそこまでじゃないだろう?」
「まぁ……やるかやられるかの戦争というのを理解してますし……」
「ではそういう事だ。暫くは陸勤務だ」

 そうなった将和であった。





「ではこのように……」

 将和はバレル大使と握手をする。2200年8月下旬、地球はガミラスと密かに秘密条約を締結した。これはガミラス艦艇の一時譲渡だった。というのも『ヤマト』が帰還途中に遭遇したガトランティス帝国、これの脅威に備えるためだった。なお、地球艦艇が配備され次第譲渡した艦艇は順次返却する予定でもある。

「ほぅ、ミヨシ大佐は元戦闘機乗りだったのですか」
「えぇ、土星沖で左足を切断したので戦闘で乗るのは断念しましたが乗れる事は乗れますね」

 将和はバレルと共に東京のとある料亭で飲んでいた。なお、バレルは地球人に襲撃される懸念があったので肌色を変える特殊なリングを身に付けて将和と同じ地球人に変装している。
 幾分か酒も進んでいるのか両人とも顔の頬は赤らみを帯びている。

「……これからの地球は復興の道が加速化するでしょう」
「ですがその先、どうなるかは不明ですな。何せガトランティスという新たな敵がいますからな」
「ミヨシ准将は……事が起こりうると……?」
「……ガトランティスの動向が分かりませんがね……だが個人としては……ガトランティスとの戦争はあるでしょうな」
「………」

 将和の言葉にバレルは何も言わなかったのである。数日後、地球政府は波動砲艦隊計画を発表した。勿論、様々な反響はあった。そんな時に将和の元に古代少佐が訊ねてきたのである。

「どうした古代少佐? ま、かけろ」
「………」

 将和は古代が訊ねてきた理由は何となく分かっていた。運ばれてきたコーヒーに口を付けてから将和が切り出した。

「『波動砲艦隊計画』の事か?」
「………」

 将和の言葉に古代は無言で頷いた。

「波動砲を……波動砲を使用してはいけません」
「……成る程。波動砲を特に扱ってきた者にとってはそう言うわな」
「ならば……!!」
「だがな古代」
「……ッ…」

 将和はジロリと古代を見る。その表情に古代は一瞬、息を呑む。

「相手がガミラスだけなら波動砲を使用しない別の艦隊計画はあっただろう。だが相手はガトランティスだ」
「………」
「ガミラスからのある程度の情報で知っているだろう? ガトランティスの戦力はガミラスを遥かに越える戦力だ。バレル大使からの情報では100万を越えるとも話だ(まぁそれ以上だがな)」

 内心はそう思う将和である。

「だからと言って……!!」
「感情論で喚くな!!」
「ッ!?」
「……当たり前の事を当たり前にしたいと思っているのは確かだろう。だが、それに囚われ過ぎて地球自体が滅んだらどうするつもりだ!!」
「………」
「古代……お前には覚悟が足りない」
「覚悟……」
「古代、端から見ればお前の行動は納得出来ない子どもが喚くのと同じだ」
「………………」
「お前の覚悟を示せ」

 そう締め括る将和だった。



日時:2021年05月29日(土) 00:08

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返信コメント

fgr

まぁ、現場の慎重意見を無視してその場で首にして攻撃させたり。
ヤマトクルーの中にイズモ計画の賛同者を入れ艦長が意識不明になった時クーデターさせたりと色々と信用ができませんからな~、あの人。
そんな男に波動砲艦隊計画を任せていいのかと古代が疑心暗鬼になるのはしょうがないかな?。


日時:2021年05月29日(土) 13:13

零戦

修正は完了しました。


日時:2021年05月29日(土) 00:08

黄金拍車

>それに時間断層の件も知っているのだ。何か意見でもあるのか?
あれ?今回は時間断層は無しじゃなかった?


日時:2021年05月28日(金) 23:00



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