ボツ話~「インキュベーター? 」~

本文が難航し中々進まないため、息抜きに書いたもの。
かなり適当かつ、しょーもない話ですが暇潰しにでもどーぞ





「ねぇねぇ! 今からここの喫茶店いかない!? 」

小難しい授業が終わった放課後。皆は解放感に満ち溢れていて、いきいきとした顔をしている。私も同様で、ベルが鳴り終わると同時に机の中にあったチラシを勢いよく引っ張り出して、木乃香の前に突き出していた。
木乃香は、明日菜はほんま元気やなぁ、と呟きながらチラシを受け取って、じっと眺めた。

「これ、あそこの喫茶店のチラシやんか。これどしたん? 」

「今日さ、学校来るとき、私途中で忘れ物に気付いて戻ったっしょ? そんとき、喫茶店のマスターに会って、くれたの。ほら、ここ」

私はチラシの右下にある、点線で切り取れるようになっている部分を強調するように指差した。

「『本日発売新ケーキ30%OFF』かぁ。……ええやん! うちもいきたいわぁ 」

「でしょでしょ! 」

同意をしてもらったことに嬉しさを覚えて、気付けば私は鼻息を荒くしていた。

「他にも誰か誘ってええ? せっちゃんとかにも声掛けたいわー」

「いいよいいよ! 皆でいこ! 七海とか暇かな」

ぐるりと首を回してクラスを見渡してみる。部活の準備で忙しそうにしている人から、放課後のお喋りを楽しんでいる人が目に入ったけれど、七海の姿はない。

「あれー。今日も大学かな。それとももう帰っちゃった? 」

放課後しょっちゅう大学へと顔を出している七海だからいないこと自体は珍しくないのだけれど、こんなに早く教室を出ているとは。

残念がって私が肩を落としている間に、刹那さんが木乃香に連れて来られていた。事情を聞かされる前に手を引っ張られて混乱している刹那さんに、私はチラシを差し出した。

「なるほど、あそこの喫茶店のクーポンですね」

「せっちゃん! 一緒に行くやろ? 」

「……はい、今日はちょうど部活もないので、一緒に行きましょう」

「やたっ」

刹那さんが来ると聞いて、木乃香が可愛くガッツをした。それを見た刹那さんは微笑んでいて、本当に良い組み合わせだな、と思った。

「七海も誘おうと思ったけど、もう行っちゃったみたい」

「明智さん、ですか? 確か今日は部屋にいると言っていましたが」

「部屋に? 大学じゃなくて? 」

「休み時間にたまたま話したんですが、今日は何か用事あるそうです。 確か、インキュベーターとやらが来るやらなんやらと、嬉しそうに言っていました」

「……はい? インキュベーター? 」

全く聞き覚えのない言葉だ。首を傾げた私を見て、刹那さんは、私もよく分かりませんけど、と言った。

「ま、よく分かんないけど、七海は来れないってことね。それじゃ、三人で……」

「ちょっと待て 」

突然、ガシリと肩を掴まれた。振り返れば、そこには千雨ちゃんがなんだか怖い表情で立っている。

「ち、千雨ちゃん? 千雨ちゃんも一緒にケーキ食べに行く? 」

「ちげーよ。その話じゃない。明智の話だ」

「……七海がどしたん? 」

千雨ちゃんの雰囲気に只ならぬ様子を感じたのか、木乃香が恐る恐ると訊ねた。
千雨ちゃんは、刹那さんの方を向いた。

「あいつ、確かにインキュベーターが来るって言ったのか? 」

「は、はい。そうですが……。それがどうかしたのですか? 」

「……お前ら、インキュベーターって何か知ってるか? 」

「いや、知らないけど……。千雨ちゃん顔怖いよ? 」

なんだろ。何かに恐れている、っていう顔をしていて、私は思わず息を飲んでしまう。

「……お前ら、ちょっとこい」

「え、え、ちょっ、ちょっとーー! 」

千雨ちゃんは無理やり私の手を掴んで、教室の外へと引っ張っていく。木乃香と刹那さんは二人で首を傾げた後、そんな私達の後を付いてきていた。







「これが、インキュベーターだ」

千雨ちゃんは、『インキュベーター』がプリントされた紙をホワイトボードに張り付けて、コンコン、と指で叩きながら言った。何で部屋にホワイトボードなんか、とは誰も突っ込まなかった。

「人の純粋な心を弄ぶとは……なんたる卑劣なやつ」

「なぁー。姿は愛らしいんやけど」

怒りの混じった声を出す刹那さんの側で、木乃香が間の抜けたように言う。
その『インキュベーター』とやらは、白くて耳長であり、まるで兎のような生き物だった。黒い目もクリクリとしていて可愛らしいのだけれども、千雨ちゃんによればたいそう酷いことをする奴らしい。
だけど……

「それって、アニメの話なんでしょ? 」

千雨ちゃんは一生懸命説明してくれたが、このインキュベーターとやらは何かのアニメのキャラクターらしい。七海がアニメ好きとは聞いたことがないし、それと七海の関係性はいまいちである。

千雨ちゃんは、ゆっくりと首を振った。

「神楽坂……。七海が嘘を言うと思うか? 」

「……いや、思わないけどさ」

「それに、お前らは分からんかもしれんが、この街は不思議なことが多い。だから、もしかしたら……」

そう言われて、私もハッとなった。確かに、最近気付いたことだけど、この世の中には魔法というものが存在するのだ。今までは魔法使いなんてアニメの世界の話と思っていたのだけれど、そうではなかった。ならば、この「インキュベーター」たるものが存在する確率は0とは言えないんじゃないか。

刹那さんと木乃香の方を向くと、二人も真剣な顔をしていた。私達は目を合わせて、頷く。

「……! それじゃ、すぐ七海のところに行かないと! 」

千雨ちゃんの話によれば、騙されてからでは、魔法少女になってからでは遅いのだ。
私達はすぐに立ち上がって千雨ちゃんの部屋を出て、七海の部屋へと向かった。








「七海! 大丈夫!? 」

「明智さん! 例のやつは! 」

放課後。突然私の部屋を勢いよくノックする音が聞こえ、何事だ、と思いつつもドアを開けると、外から明日菜と桜咲が転がり込んできた。止める間もなく二人は部屋へと入っていき、呆然としている私を無視して木乃香と長谷川さんまで部屋に上がっていった。

「千雨ちゃん! あの子おらんよ! 」

「くそ! あいつは契約者以外には見えないんだ! それに、いくら倒しても無限に沸いてくる! 」

「なん……だと! それじゃ、どうすれば……! 」

「まてまてまて。皆。一体なにをしているのか、そろそろ教えてくれないか? 」

何か演劇ごっこでもしているのかと思ったが、それにしては演義が迫真すぎる。桜咲は刀まで持ち出しているし、このままだと部屋が危ない。

「七海ぃ! インキュベーターはどこ! 」

「インキュベーター? ああ、それを探してるのか」

何故、インキュベーターを探しているのか、そしてインキュベーター探しに何故そこまで必死なのか全く理解出来ないが、とりあえずこの状況をどうにかしてほしいので、私は今日届いたばかりのインキュベーターを指差した。

「これがインキュベーターだ」

「……どれ! やっぱり見えないの! 」

「いやいや。そこにあるじゃないか。その四角い奴だ」

「……四角……い? ……はい? 」


全員が私の指が指す方向を見て、固まった。

「……あれがインキュベーターなの? 」

「そうだが」

「……白い兎みたいなやつは? 」

「私は昆虫以外飼わないが」

「……魔法少女は? 」

「何の話だ? 」

私が持っている『インキュベーター』の中には、いくつかの昆虫が入っている。
生物学や細菌学でよく用いられる『インキュベーター』は、熱による保温性に優れているため、ある温度を保っていなければならない物を入れておくという使い方ができる。小さい昆虫などはこれに入れておくことで、常に温度を維持出来るため季節に関係なく実験が行えるし、冬眠期間などを飛ばして飼うことも出来る。温度管理に優れているこれはあれば中々に便利なので、お年玉や切り詰めた生活費を使ってようやくネットで購入したのだ。

そう説明すると、皆の顔がキリキリと音を立てながら回り、長谷川さんの方を向いていた。

「……千雨ちゃん? どゆことや? 」

「いや、そのあれだ」

「……喫茶店の時間、もう終わっちゃいますね」

「お、おお。その、うん」

「……千雨ちゃん。責任、とってくれるよね? 」

「…… 」

長谷川さんはだらだらと汗を流した後、突然足を全力で上げながら走り出して、部屋から出ていった。

「あ! 逃げたわよ! 」

「追いかけて捕まえましょう! 」

だだだっ、と音を立てて、残りの三人も私の部屋から去っていく。



「……何だったんだ。一体」

私の呟きが、1人となった部屋に寂しく響いた。


日時:2015年07月14日(火) 23:05

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返信コメント

草花内木蔭

インキュベータ(孵卵器)
漢字の通り卵を孵す機器。

インキュベーター(孵卵器)
魔法少女まどか☆マギカのマスコット兼黒幕。

最後を伸ばすか伸ばさないかが判断基準。


日時:2016年03月14日(月) 17:27

くらばーと

ボクと契約して昆虫博士になってよ!


日時:2015年07月19日(日) 10:17

T・P・R

確か、受精卵とかを孵すために温度とか湿度とかの環境を保つ機器でしたっけ?(うろ覚え)

あのアニメの所為であっちの方が有名になりすぎましたからね……


日時:2015年07月15日(水) 19:08

xana

元の意味のほうじゃないですかーやだーwww


日時:2015年07月15日(水) 00:12



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