『仮面ライダークウガ-白の執行者-』実際に書くにあたって Part1

はい、こんにちは。スパークリングです。
前回に引き続き、今回は『実際に書いてみて、どこをどう気を付けたのか』を記述していきます。

・地の文
書いていて一番大切だと思ったのがこれです。
ほのぼのとした日常とかを描くものならば、地の文よりもセリフのほうが重要になるのですが、今回書こうとしているのは殺伐とした、シリアスな内容の『仮面ライダー』です。
緊張感を持たせるためには、周囲の状況・戦闘シーン・人物たちの表情・その場の雰囲気・音を、地の文を使って、そしてなるべく擬音を使わないようにして、どれだけリアルに描写することができるかが書いていて重要なことだと思いました。
おそらく純物の『仮面ライダー』の小説が少ないのも、地の文を書くのが苦手な人が多いからだと私は考えます。実際、難しかったですから。

どれだけ地の文を書けばいいのかですが、それは書き終えた後の平均文字数が6000~7000字程度まで書けば大丈夫だと思います。それ以上書こうとすると読み手も疲れてしまうと思いますし、それ以下ですとよほどキリがよくない限りは緊張感が生まれませんでした。
とか言いながら途中から普通に10000字を超えてしまったりしていましたが……。長かったり短かったりして、文字数を安定させることができなくて申し訳ないです……。

蛇足で、我流の書き方を書きます。
簡単です。
私は最初に必要最低限のセリフだけ書いていって、それに装飾する形で地の文を書くようにしているのです。
そうすれば自然とその場の状況や展開を想像することができますし、失敗したときに修正を入れる個所も少なくなりますから。

・主人公について
次に重要視したのが、本作の主人公であるユニゴの考え方・価値観の変化です。
初期……ゲリザギバス・ゲゲルを行っていたときの彼女は、少し変質していましたがまだ生粋のグロンギ族でした。
『どうして人間を殺してはいけないのか?』という疑問があったのは確かですが、彼女は何の躊躇いもなく、何も感じることもなく涼しい顔で人間を殺せます。ですから、雄介やみのりの言っていることが理解できず、奈々の悲しみも『残念』で済ましてしまい、『答え』に辿り着くことができなかったのですね。
『同情出来て感情移入も出来るけど、やっぱりグロンギはグロンギ』。
これが『ゴ』だったときのユニゴでした。

ゲゲルクリアによって『ラ』にランクアップし、オリジナルストーリーから原作に突入すると同時に、本格的なユニゴの人間化が進みます。
途切れ途切れで断片的、しかもほとんど片言だった日本語も流暢なものに変わり、表情も豊かになりました。
ガドルのゲゲルを見物しながら連鎖的に起こる疑問。そのひとつひとつを解き明かし、ようやく自分がやってきたことが間違いだったことに気付き、物語は180度一転。
生き残るために試行錯誤を繰り返し、計画的に人間を殺していたユニゴが、今度はなんと自分が死ぬために人間を、そして五代雄介をガドルとダグバから守ろうと動き始めたのです。
しかし、現実は非情でした。
「ダグバを殺して自分も死ぬ」と粋がっていたユニゴはガドルに完敗し、今まで自分たちと戦っていた雄介がどういう人間なのかを思い知ります。自分の無力さと、自分がやってきたことに対する罪悪感でいっぱいになり、表情を崩して泣き出してしまうほどに。
明確な『怒り』から始まり、雄介を想って『悲しみ』、そしてとうとう無表情を崩して『涙を流す』。物語が進むにつれ、『ラ集団』にいる間、ユニゴは人間らしい感情を少しずつ習得していきました。

そして迎えたザギバス・ゲゲル。ダグバとの一騎打ちです。ここでもユニゴの人間化は止まりません。大人しかったユニゴが雄叫びを上げるなど、無表情さがどんどん崩れていきます。
急ピッチで手に入れた『電撃体』を使ってダグバの攻撃を受け続け、2時間半かけて身体を作り替えていき……綱渡りをしている思いをしてようやく『ン』の力である『究極体』に至ります。
しかし、『適応能力』を無視したダグバの猛攻はユニゴに次々とダメージを与えていき、ユニゴはもう自分の能力がダグバに通用しないことを悟り、原作でクウガとダグバが繰り広げられた『殴り合い』に発展。
急所であるバックルに致命的なダメージを与えても笑いながら攻撃を続行するダグバに、殺されるかもしれないという『恐怖』を彼女は味わい、心が折れながらも、最後は本能のままに攻撃をかわしてカウンターを入れ、ダグバに辛勝します。
このあと、『最高の状態』でクウガと会おうとして少し休みます。……が。
実はこのとき、彼女が癒していたのは外側の怪我と精神だけで、肉体的なダメージは一切治していません。つまり上っ面だけは平然を装っていましたが、中身はボロボロだったわけです。それでも、アルティメットキックを1回耐えてしまうあたり、彼女の体力と耐久力が優れていることがわかります。

物語はついにクライマックスを迎えました。
アルティメットフォームとなった雄介と、究極体となったン・ユニゴ・ゼダの戦いです。
原作では、悲しみに涙を流しながら殴り殴られる雄介と、喜びに満ち笑顔を浮かべながら殴り殴られるダグバという、2人の対比性と、人間とグロンギが相容れない存在であることを強調した戦いを繰り広げました。
しかし今回は、人間と分かり合えるかもしれないグロンギが存在しますので路線変更。
雄介がユニゴを一方的に殴り、ユニゴはそれを受け入れて無抵抗に雄介に殴られるという、原作とは違った痛々しい戦いがスタートします。
自分からの暴力に何も抵抗せず、望んで死を受け入れようとし、なおかつ今まで自分がやってきたことを全て後悔して改心し、ダグバと戦わせないために嘘までついて自分を守ろうとしてくれた敵となんて、雄介は戦ったことなどありません。優しい雄介は何度も固めたはずの覚悟を、彼女を殴りつけるたびに揺らしてしまいます。
しかし、ユニゴはそれを許しません。何としてでも自分を殺させようと画策をし、雄介に決意を無理矢理にでも固めさせます。
ここで注目して欲しいのが2人の戦っている理由です。
雄介は『ユニゴを含めたみんなの笑顔のため』に戦っています。
一方、ユニゴのほうは『自分を唯一殺せるクウガに自分を殺させ、罪を償うため』に戦っています。
つまり、雄介は最後まで『自分以外の人間のため』に暴力を振るっているのに対し、ユニゴは最後まで『自分のため』に暴力を受け入れていたのです。
まだ彼女が、『自分の笑顔のために戦う』グロンギから、『他人の笑顔のために戦う』人間になりきっていない証でした。

最終局面。
2回のアルティメットキックによって注入された封印エネルギーに身体が適応できなくなり、ユニゴはキックを受けた胸に大きな封印のリント文字が浮かび上がり、そこから流れる封印エネルギーがバックルに到達。
しかし彼女の身体は爆発することなく、黄金のバックルだけが砕け散ります。もし自分がここで爆発してしまえば雄介の心を大きく抉り、生物兵器にさせてしまうとユニゴは考え、最後の力を振り絞って何とか身体の形を維持させたのです。
また、これによってようやく、ユニゴは人間になることができました(人間なら身体が爆発するなんてありえませんし、グロンギの証であるバックルが破壊されましたから)。
互いに変身を解き、人間の姿で雄介とユニゴの最後の会話が始まります。
まず彼女は、泣いている雄介に「クウガは何も悪くない」と諭して、自分にしたことは「暴力ではない」と反論し、「笑って」と言います。「僕を笑顔にさせてよ」と願ったダグバとは対照的に、ユニゴは雄介に「笑顔を見せて」と願ったのです。
何とか雄介を立ち直らせて笑顔にさせた後、次に言ったのは『謝罪』。
自分たちのせいで大嫌いな暴力を強要して冒険をさせず、そして、最後の最後まで暴力を振るわせてしまったことを謝ります。
そしてようやく、ユニゴは『答え』に辿り着き、多くの人間の命を奪ってしまったから自分には生きる資格がないと涙を流します。しかし、ここで雄介も「生きることに資格なんて必要ない」と反論。全てに絶望しかけていたユニゴを救います。
ユニゴに残された時間は残り僅か。
彼女は雄介に、「またいつか出会って、そして一緒に冒険したい」と我儘を言います。
多くは望まず生きることだけを唯一の目標としていたユニゴが初めて、他人に我儘らしい我儘を言うことができました。人間に対して、完全に心を開くことができたわけです。
雄介に時計を託し、ユニゴは右腕でサムズアップをし、初めて笑顔を作って静かに息を引き取ります。細かいことなのですが、ユニゴが死ぬ直前にサムズアップしていた右手を崩させたのは、上に向けていた親指を下に向けさせないためです。
『怒り』→『悲しみ』→『泣く』→『恐怖』→『嘘をつく』→『喜ぶ』→『笑顔になる』と、人間の主な感情や行動を全てやり遂げて、彼女のグロンギとしての人生は幕を閉じました。

そして13年後……。
雄介と、人間に転生したユニゴは約束を果たして再会し、世界の冒険に出て物語は終了。
以上がトゥルーエンドでのユニゴの感情・価値観の変化でした。


さて、今回はここまで。Part2に続きます。


日時:2015年09月02日(水) 17:29

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返信コメント

安全第一

凄いですね……
同じ物書きとして、純粋に尊敬します。
一つの作品にここまで事細かくプロットを練るなんて早々出来ませんから。
しかも私なんて地の文を書かないと碌に台詞すら思い浮かばないんですよね……(汗

しかしあの雄介との最終局面の時、ユニゴの内側は満身創痍だったとは……
それを知ると、あの最終局面での悲壮感が増しますね。


日時:2015年09月01日(火) 21:07


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