ボツ話~ハロウィン~

気付いてたらハロウィン過ぎてましたが、許してください。





ハロウィン。
子供が仮装をして、大人に向かって「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ」などと脅迫じみた事を言い、お菓子を貰う。僕の記憶では、確かそういう行事であった筈だ。
僕のいた村でも、その日には仮装をした子供達が家という家を訪れていたが、僕自身はあまりそのような行事には参加したことがなかった。
お世話になっている方々に迷惑を掛けたくないという思いが先にあったからだ。姉にいえば、もっと子供らしくていいのに、と溜め息をつかれたことを覚えている。

ともかく、日本に来てもその行事の意味は変わっておらず、しかも麻帆良はその人口と学生の多さ故か村とは比べ物にならないほどのイベントとなっていて、街には仮装をして歩き回る人しか見当たらないほどだった。

そんな街の人達を書類を手にしながら、学校の窓より見ていると、後ろから声をかけられた。

「トリック オア トリート! お菓子をくれなきゃイタズラするぞ! 」

「……へ? 」

振り返れば、そこには黒い三角帽子とローブを羽織り、杖を持った少女がいた。妙に親近感の涌くその格好は、魔法使いの仮装なんだろうか。
少女は片手の掌を僕に向けて、くいくい、と動かしている。

「あの、ういさん? 」

「こどもせんせ! トリック オア トリート! ハロウィンだよ! 知らない? 」

「はい、あの、ういさん。それは分かるんですが、一つ分からないことがあってですね」

「え、何が? 」

ういさんは、僕の発言に首をこてんと傾げた。

「僕もまだ一応子供なんですが…… 」

そう。僕の記憶が正しいのならば、ハロウィン恒例のおねだりは大人に対してやる筈なのだ。少なくとも、子供相手に、それも自分より年下相手にはやらないものだと思っていた。

「でもさ。子供先生スーツ来てるし、先生だし、いいかなーって」

まったく気にする様子もなく、ういさんはあっけらかんと答える。随分と適当な子だなぁ、と思わず笑ってしまいそうになった。

「でも、すみません。僕お菓子持ってないですし、それにきっと、ちゃんと大人から貰った方がいいですよ? 」

「うーん。まぁ確かに。それもそうかぁー」

腕を組むようにして僕の言葉を受け止めてから、ういさんはキョロキョロと辺りを見渡した。

「お! あそこに大人の人発見! お菓子貰いにいこーかな! 」

「あ、あの人は大人じゃないですよ! 確かに大人っぽいですが……! 」

「え? あれ? よく見れば中学生の制服着たコスプレしてるし、子供ってこと? ん?でもわざわざ中学生の制服着るコスプレしなきゃいけないってことは、大人なんじゃない? あれ? 混乱してきた」

「だから……! あれはコスプレでも何でもなくて、正真正銘の中学生なんですって! 」





「……ネギ先生。私が、どうかしましたか? 」

「ひぃぃ! 」

かちゃり、と、どこからか物騒な音を立てて、いつからか僕らの会話を聞いていた龍宮さんが、いつの間にか僕達の後ろにいた。
その顔は、冷静そうに見えて、ゴゴゴという音が聞こえると勘違いしてしまうほど、恐ろしいものだった。

「「すみませんでしたーーー! 」」

僕らは同時に叫びながら、両手を上げて猛ダッシュでその場から離れた。







「……ういさん。貴方のせいでとても怖い目に会いましたよ……」

「あははー。ごめんごめん。でもほんとに怖かったねー」

玄関まで逃げ出した僕らは息を整えてから話をしていた。ういさんは相変わらず能天気な感じで、明るく笑っていた。


「……何をしているんだい。君達は」

「あ、フェイフェイ」

次に僕らに声を掛けたのは、フェイト君だった。どうして中等部に彼が、と疑問に思っていると、察したフェイト君が、学園長に呼び出された、と説明してくれた。

「あー! そーだ、フェイフェイ! トリック オア トリート! お菓子くれなきゃイタズラするぞ! 」

「えー……。結局見境なしに言ってるじゃないですか」

「フェイフェイは大人っぽいからいいの! 」

よく分からない自分ルールで彼女はまたしても対象決めていた。このような行事で私情を挟みまくるのはどうなんだろうか。

「……色々突っ込みたいことはあるけど、とりあえず置いておくよ。結論から言うと僕はお菓子は持っていない。それで、お菓子がないとどういうイタズラをされるんだい? 」

「え。イタズラ? どうしよ」

ういさんは、うーんと悩んでから、そうだ、とポンと手を叩いた。
それから、着ているローブについていたポケットをまさぐって、一つの飴を取り出す。

ういさんはその飴をしっかりと確認し、封を軽快に切ってから、はい、と無理矢理フェイト君の口に押し入れた。
突然のういさんの行動に呆然としたフェイト君は、一度だけコロコロと口の中で飴を動かしてから、ういさんを睨んだ。

「……どういうつもりだい? 」

「私の嫌いな味の飴を勝手に食べさせるイタズラだ! どうだ! 」

「……」

コロコロと、フェイト君はまた飴を口の中で動かす。その様子が余りにも不似合いで、僕は笑ってしまいそうになった。


「……これは、本当に不味い飴だ」

「でしょ! 」

フェイト君が不快そうにした顔を見て、ういさんは、してやったり、と何故か嬉しそうに笑った。


日時:2015年11月02日(月) 13:52

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返信コメント

美坂 遙

本編とちがって和む(`・ω・´)


日時:2015年11月13日(金) 23:00

xana

相変わらずのうい無双、ごちそうさまでした。
本編では大変なことになってますがいいものです。


日時:2015年11月05日(木) 10:17



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