狂気を抱え、その道を歩こう、葛藤の果てまで
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
心や体に問題がある行き場のない艦娘たちが、最後に集められる場所である大湊警備府。
普通には生きられない欠陥品扱いの彼女たちが、様々な苦悩を抱えながらも生き足掻く物語です。
(27行省略されています)
物語の進行は基本的に『平穏な日常』で展開されますが、読み進めていくうちに、グラスの水が溢れこぼれそうになるような緊張感が湧き。
次々とわかってゆく彼女たちの背景を読み進めると「どうかお願いだ、これ以上水を注がないでくれ」と、祈るような気持ちになるかも知れません。
そんな危うい均衡の世界で生きる彼女たちですが、皆何かしらに縋って精神の均衡をとっており、そこにほんの僅かに救いが垣間見えます。
かつて機能不全に陥りかけた大湊警備府を立て直した『女提督』。彼女自身もまたどこか危うさを抱えており、まさにタイトル通り金剛がその寄る辺になっています。
しかし読み進めると『女提督』こそが誰よりも何かが欠けた存在であり、他の艦娘同様、むしろそれ以上に危うい存在だと気がつくでしょう。果たしてこの愛の行方は……
さてさて、そんな一見読み進めるのが辛く感じる話なのかと思いきや。
ウェットに富んだ台詞回しや、文章表現がうまくちりばめられているからか、それらが推進力のようになってスイスイと読めてしまう部分があり、人は選ぶかも知れませんが波のあるいいテンポで読み進められます。
そして最後まで読み終えた感想としては、ひどく抽象的な表現になってしまうのですが
輝く満月に手のひらをかざし、涙を流し叫びながらもその光を手にしようと、孤独に戦い続けた誰かの姿。
そんな悲しい様子を幻視するかのような、美しい作品という感想が湧きました。
非常に重い話ではありますが、だからこそ感じられるおもしろさを求める方にお奨めです。
▼読む際の注意事項など
① 必須タグが幾つかついているので、それら要素が嫌いな方は控えた方がよろしいかと。特に『残酷な描写』に関しては偽りのない描写が含まれます。
② 粗筋などに書いてあるように順番通りに読むと思わぬネタバレがある話数が一話だけあるため、粗筋及び該当話数の前書きの注意事項をよくご確認下さい。ノンストップで読み進めたい場合は番外編を飛ばして、目次を参照して本編を先に読まれるのもアリです。
③ SPAM(スパム)という肉の缶詰に取り憑かれる恐れがあります。
▲短縮する
源治/2018年07月23日(月) 22:48/★ (参考になった:3/ならなかった:6)