SKYRIM本格冒険小説の嚆矢となり得る作品
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
オープンワールドRPGの代表的大作 The Elder Scrolls V SKYRIM。
その舞台であるスカイリムにおいて、望まず転移してしまった日本人の少年が生き、戦い抜いていく物語。
厳しい気候風土、戦乱によって荒れた人心、跋扈する猛獣や異形のモンスター、そして極めつけはドラゴン。
(33行省略されています)
平和な日本で生まれ育った者にとっては、生きていくだけでも厳しすぎる逆境に主人公は叩き込まれる。
それでも少年は自らを鍛え、命を助けられた恩人であり、残された家族同然となった人を守れるようになろうと
精一杯足掻いていく。
まず、スカイリム二次作品というのが珍しく、さらに正統派な冒険小説の体裁をとっているとなると
私の記憶にも他にあまりないです。
その上これ程のクオリティの作品となると、個人的には随一と呼びたい。
苦悩、ピンチ、挫折、からの成長、勝利。物語の基本がきっちり抑えられて、読んでて本当に楽しかったです。
オリジナル要素について。
本作には原作ゲームの設定、シナリオ、登場人物等に関して大小いくつかの改変が見られます。
しかし、それは原作の世界観を壊すのではなく、あくまでエンターテイメント性を補強する方向で組み込まれている
のが好印象。
言ってみれば原作ゲームにロアフレンドリーなMODをいくつか組み込んだような感じ、と言えばPC版原作プレイヤー
には分かりやすいでしょうか。
特に戦闘アクション要素に小説という媒体ならではのテコ入れがなされていて、ゲームの正直いささか単調な戦闘とは
一線を画するバリエーションと格好良さです。
また原作をプレイ済みでなければ楽しめないか、というとそんなことはなく、知らなくても楽しめる作品だと思います。
丁寧な描写と相まって、主人公と一緒に広大なスカイリムを旅しているような気分を味わえます。
あなたがシリアス寄りのファンタジー冒険物が好きな方なら、本当におすすめですよ。
むしろこの機会に原作をプレイしたくなる、かも?
▼読む際の注意事項など
物語の始まりからしばらくは、かなり重い雰囲気の話が続くこと。
殺伐とした死の危険が一杯なスカイリムで、肉体的にひ弱な現代日本人が生きていくのですから、当然戦闘などでは
苦戦の連続、時には足手まといにもなりますし。
後々には成長して、そういうことはなくなっていきますけども。
また名前ありの登場人物(それも主人公側に好意的な)が無残に殺される場面が多く、その手の描写が苦手な方には
辛い面もあるかと。
個人的には、そういうストレスがあるからこそ後で乗り越えていくカタルシスを得られると考えます。
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藤堂/2019年08月03日(土) 10:26/★ (参考になった:40/ならなかった:2)