脱帽、只々その一言に尽きる
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
物心つく前に父親を、ホグワーツへと入学する前に乱心した母親を失い、
スリザリンへと組分けされた、半純血の主人公である少年、
ステファン・レッドフィールド。
(23行省略されています)
彼が初めて心を開いた魔法使いであり、
間違いなく、自身が単なる友人以上の感情を向ける存在―――ハーマイオニー・グレンジャーと、
時に向かい合い、時にすれ違いながら、
当事者、そして傍観者の一人として、魔法界に迫りくる波乱の行く末を辿ってゆく物語。
読み進めていくと、各登場人物の内面、そして世界観の描写の緻密さにまず驚かされる。
原作にて物語を織り成すキャラクター達の心情、行動論理、
魔法族と非魔法族、あるいは純血と非純血といった立場の違いによる理念の差、彼らを取り巻く魔法界が抱える問題、
そしてホグワーツにおける四つの寮の規範、存在意義、それらの隔たりが生み出した弊害などについて、
主人公…と言うよりは狂言回し的な存在であるステファンの目を通してそれらを俯瞰し、
各話の後書きにおいて、時に原作の一文、あるいは公式設定の文言を引用しつつ、
時にホグワーツが存在する英国の文化、歴史、社会制度などに触れつつ考察するという流れの組まれた本作は、
もはや一種の文章資料の如き様相を呈していると言っても良い。
本作の作者の知識の深さと分析能力の高さに、只々脱帽、感服させられる想いだった。
「ハリー・ポッター」という物語の舞台を、もう一歩踏み込んだ目線で見てみたい、
そのような方々に是非薦めたい作品である。
▼読む際の注意事項など
前述したように、本作は原作を一つの視点から考察する資料としての一面が大きく、
その影響か、特にステファンを始め、各登場人物の幾つかの発言内容について、
場合によっては、若干年齢不相応な、作者の目線が強く反映されたものであると感じられるやもしれません。
▲短縮する
him/2020年11月01日(日) 01:59/★ (参考になった:40/ならなかった:1)