究極の「米帝無双戦記」
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
ご存知の通り『日本国召喚』は、日本が国ごと異世界に転移し、生き残りを賭けて戦う仮想戦記です。その二次創作の世界では、様々な国が多くの作者さんの手によって転移させられて来ました。当然そこには、地球最強国家アメリカ合衆国も存在します。ていうか、誰でも一度は思いつきますよね、アメリカ召喚。
この作品は、アメリカ合衆国が『日本国召喚』の世界で大暴れする話です。でも、転移したのは飽くまで日本――意味が分かりませんね。それが知りたい方は、とりあえず読んでみましょう。
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本作は、ナレーションのみで淡々と物語が進みます。セリフらしいセリフは、ごく初期の頃にほんの少しだけ。心を熱くする演説も、軽妙な掛け合いも、寒いアメリカン・ジョークもありません。作者さん曰く『USA!USA!な小説描きたくなった』そうなのですが、米国民が「USA!USA!」してる場面はどこにもありません。
ナレーション主体で構成された戦記物は、探せば他にも見つかります。でも大半は哀しいほどに「タダの文章」で、小説なのか論文なのか、はたまた本格執筆前のプロットなのかもよく判りません。言い換えれば、エンタメ性が極度に低いんです。でも本作は違います。スラスラ、サクサク読めて、めっちゃ面白い。しっかりエンタメしてる。1話あたりの分量は少なめですが、逆にそれが丁度いい感じ。長文って、意外と疲れますからね。
詳しくは本文に譲りますが、懐かしい旧式兵器が近代化改修されて戦うところが、ワタクシ的にツボでした。デタラメと言えば確かにそうなんですが、こういうのって商業作品ではまず不可能じゃないですか。100%趣味の小説で、しかも良い意味でユルくて懐の深い『召喚』世界ならではの楽しさと言えるかもしれません。
▼読む際の注意事項など
本作最大の特徴であるナレーション進行が、そのまま最大の注意点となります。会話がないということは、人間ドラマがないということです。小説のセオリーによくある「葛藤」とか「成長」といった要素は、清々しいほど皆無。いや、絶無。官僚たちの駆け引きも、兵士たちの奮闘もありません。そもそも、転移した日本が気の毒なくらい空気です。
これに絡めて言うと、原作に出て来る魅力的なキャラクターたちも一切登場しません。外交官A氏すら出て来ない。こういった点を指して「これって『日本国召喚』なの?」と疑問を持つ人が、中にはいるかもしれません。もちろん、そういった人はスルー推奨です。
ただ、語弊を恐れずに言えば、もともと『日本国召喚』は人間ドラマに重点を置いた小説ではないわけでして、この意味で本作はとても『召喚』らしい作品と言えるのではないか、とも思います。
最後に、本作の戦闘描写は、徹底して「オーバーキル」です。クソ真面目に考えれば、その下では異世界人が大量に死んでいるわけです。そういった描写に不快感を覚える人は、避けた方が無難ですね。「エンタメをエンタメと割り切れる人向け」と言えるでしょうか。私は、そんな本作が大好きですけど。
本作は、究極の米帝無双戦記です。
そう。本作は、究極の米帝無双戦記なんです!
大事なことなので「3回」言いましたよ?
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ブライストン/2023年05月09日(火) 23:14/★ (参考になった:11/ならなかった:5)