ガンダムSEED 白き流星の軌跡
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遅くなりましたが、第69話の感想いきます。作者さんの更新速度が速すぎて、あれこれ感想文を推敲し練ってる内に、もう次の話が投稿されてる事が多いので、鈍くてすみません。
本当に今回の件で、大気圏での戦いで我が身を呈して民間シャトルを守り、大気圏の彼方へリークが消えていった時からの悲しみ、一人で枕を泣き濡らした医務室での慟哭、そこからのどす黒い感情による暗い決意、貼り付けたような違和感ありありの不気味な笑顔を浮かべたキラに抱いたフレイの嫌な予感、そして今回のラリー機の体当たりによる墜落で、遂に奥底に眠っていたSEEDの力に怒りと憎しみが加わって、何やらとんでもない事になってしまいました。
まるで、海外の人から絶賛された時代劇アニメの傑作として有名なOVA『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 追憶編』で、長州藩の手先となり人斬り抜刀斎となった緋村剣心が、あちこちで幕府の要人や敵対した者を鮮血を撒き散らしながら斬りまくる恐ろしいシーンを、今回のキラからは感じました。
主人公が活躍しているはずなのに爽快感は一つもなく、読んでて悲しくて恐ろしくもあり、どんどん修羅の道へと足を踏み入れ、いずれ外道に成り果てるのは時間の問題という痛ましく絶望感しか感じない所が、人斬り時代の剣心とそっくりでした。
原作ではジョージを救えずフレイに怒りをぶつけられた事を発端に、コーディネイターへの復讐鬼と化した彼女に良いように利用され、傀儡のように戦わされる内にSEEDに目覚めるという、何処かしまらない形でしたが、この作品じゃ、リークの死を目の当たりにしてハルバートン提督の忠告を忘れ、自分で自分を追い詰めてしまい、ラリーとトールまで死んだと思い込んだキラは、「これ以上、奪われてたまるか!殺られる前に全員殺ってやる!!」と自ら狂気に染まって、『DESTNIY』でSEEDを発動させ怒り狂いながら、敵を片っ端から殺しまくってたシンを彷彿させる暴走ぶりでした。
しかも、雄叫びをあげまくるシンと違って、何も喋らないのが余計に怖さを感じました。この時のキラの顔には、怒り、憎しみ、恐れなど感情らしいものが一つもなく、目は野獣のように瞳孔が開ききっていて「どうやったら相手の息の根を確実に止めて絶命させる事ができるか」のみを考えた、食事にありつけず空腹で彷徨っていた所を目の前に御馳走が現れたのを目にして、仕留めて腹を満たすべく獲物を狙うギラついた肉食獣のような表情が浮かび上がっていたのが容易に想像できました。
分かりやすく言えば、「世界のクロサワ」の異名を持つ日本映画界の巨匠・黒澤明さんが、長年コンビを組んで監督作の看板役者であった同じく「世界のミフネ」の異名を持つ三船敏郎さんと初めてコンビを組んだ作品『酔いどれ天使』で、三船さん演じる結核に犯されたヤクザの松永と、山本礼三郎さん演じる松永の兄貴分で刑務所帰りのヤクザ・岡田が、終盤で情婦のアパートでペンキ塗れになりながらナイフを持って殺し合いの決闘をするあの場面です。あのシーンは、初めて見たとき背筋が凍り付くほど怖かったのを今でも覚えています。
「砂漠の虎」の異名を持つバルトフェルドも、ストライクのパイロットであるキラが、強さを動物で例えると「犬」か「猫」ではなく、「牙を剥いた狼」か「激怒した雄牛(レイジング・ブル)」ぐらいには見ていたでしょうが、まさか「暴れ狂う獅子」だったとは思わなかったでしょうな。あの時のキラの鬼神の如き戦いぶりは、まさに後に言う「敵であるものをすべて滅ぼす」という言葉を地で行く勢いだったのでしょう。例えその先に破滅が待っていたとしても…。
地球連合軍やザフトに限らず、戦争に参加した者は皆最初は…
「戦いを止めたい」
「大事な人を守りたい」
「国のために役に立ちたい」
「自由を勝ち取りたい」
「世の中を平和にしたい」
…と各々の理由で志を持って、参加したのにいつの間にか戦争の持つ暴力や狂気に支配され、今回のキラのような殺人マシーンのようになってしまったのでしょう。
戦いや憎しみが、如何に人間をケダモノに変えてしまうのかが徹底して冷徹に描かれていたのも、紅乃 晴@小説アカさんの作家レベルの凄さを感じさせられました。戦争というのは、引き算にしかならず、自分が相手から奪わなければ自分が誰かに奪われるというのが真理ではありますが…。
中には「人殺しをゲーム感覚で、合理的に楽しみたい」「この機に乗じて、自社の兵器を軍に売りつければ一儲けできる」だなんて理由で戦争に加担した腐れ外道も、嘆かわしい事ですが一定数はいた事は否定しませんがね…。
フリーダムに乗り換えたばかりの頃の、原作の不殺とは正反対のコクピットばかりを狙った殺る気満々の戦い方は、よく面倒を見てくれたリークとの思い出がキラにとってとても尊かった事の裏返しでしょう。
人は誰かを愛するから、その人を理不尽に奪われた時に、奪った相手に怒り憎みもするし、復讐もする。愛憎は表裏一体とはまさにこの事です。
今回は運よく、墜落したラリーとトールは気を失っていただけで、彼らの呼びかけによりバーサーカーモードが普通の状態に戻りましたが、あのまま一人で戦い続けていたらどうなっていたのでしょう。
しかし、慣性の法則という言葉があるように、人間一度感情に火が付くと引っ込みがつかず、中々気持ちを切り替えるのは困難なもので、一度振り上げた拳を簡単に下ろす事ができず、ブスブスと燻っていたキラの怒りは、恒例のラリーの正座説教という形で決着がつきましたな。
恐らく、ハリーやフレイ、トールの彼女であるミリアリアからもビンタを食らったのでしょうけど、キラも何発か鉄拳制裁をラリーにかまし、頭に大きなたんこぶ、目元に青い痣、殴られた頬は腫れ上がって唇が切れて血が出てる様子が大いに想像できました。まさか、ここでハリーじゃなくてキラが説教するとはね…。
戦いのパートが凄惨なものであっただけに、こういうコミカルでほっこりとしたオチで終わって、リズム感もありバランスもよく出来たストーリー構成だと感じますな。そうでないと救いがありませんしな。
他の読者の方も仰るように、今話のサブタイトルは、キラの事のように見えて、実はトールの事だったのではという韻を踏んだダブルネーミングだったのでは、という考察はまさにその通りだと思います。
最後に戦う事自体が目的になってしまってるカガリにラリーが鋭い眼差しで、勝手気ままに喧嘩を売って返り討ちにされてレジスタンスに引導を渡すシーンは、常に白刃の刃を潜り抜けてきた歴戦の戦士ならではの貫禄がありますが、正座しながらでは何だか締まりがありませんな(笑)
でも、一番心配なのはキラの動向です。僕も彼と同じぐらいの頃に似たような経験をしたので、気持ちは痛いほど分かるのですが、憎しみというのは一時的には強くはなりますが、いつまでも持ち続けていたら、絶対に幸せにはなれないものなのだと言う事です。
ましてやどんなに強い力を持っていたとしても、その力を振るって戦う事の本当の『意味』を見失い、今のように追い詰められて癇癪を起こした子供のように、感情任せに暴れてばかりいては、いずれキラはとてつもなく大きな代償を払わされる事になるでしょう。
その代償というのは遥かに大きく、失ってから後悔したのでは遅いのです。原作ではキラもフレイから父親を守れなかった事を詰られ、その弱さに付け込まれ彼女に篭絡される形で戦わされ、アスランと敵対し、一緒に戦ってくれたトールを眼前で失ってしまいましたから。
その意味を見失った悪い手本が、増長したコーディネイターの代表格であるパトリック・ザラなどのタカ派プラント議会、それに考え無しに賛同してナチュラル全滅に走ったザフトの軍人。コーディネイターへのコンプレックスを拗らせて環境保護団体に過ぎなかったブルーコスモスを過激派組織へと変えた原作のムルタ・アズラエルをはじめとする、コーディネイター排斥を訴えた死の商人達、それに便乗したウィリアム・サザーランド大佐のような地球軍のタカ派軍人ども、そしてそんな世界の在り方や自身の運命に絶望して、全世界を巻き込んだ大規模な集団自殺を試みたクルーゼのようなダメ人間を言うのです。
いくら人類最強のスーパーコーディネイターという出生から来る強い力を持っていたといっても、中身はまだ16歳の精神的に未熟な子供で、まだ周囲が見れていないばかりか、自分を客観視する事さえ出来ていないのです。そんな状態で、今のように激情に駆られるまま力任せに暴れ続けていれば、その末路は言わずもがなです。
力は信じても良いけど、決して溺れてはならないというのが私の経験上から学んだ信条です。
「驕れる者久しからず」という言葉があるように、謙虚さを失い自らの力を過信して溺れ傲慢になった者は、より大きな力を持つ者の前には必ず敗れ、己が不明を悔いる羽目となったことは数多くの歴史が証明しています。『必滅』という名の運命のもとに…。
そのあたりが、キラの今後の課題でしょう。でも、それはキラ自身が誰の力も借りないで、自分の力で克服しなければなりません。仲間は辛くなった時の心の支えや、助言はしてあげられますが、こればかりは助けたくとも助けようがないのです。
でも、何れはこの戦士としての心の試練をキラは乗り越えられると信じております。
そのためのストッパーとして、共に戦うラリーやムウといったメビウスライダー隊のメンバー、ラクスを交え人種を超えた不滅の友情を誓い、何が何でもキラの心の支えになると決めたサイやフレイの夫婦カップルをはじめとしたヘリオポリスの仲間たち(カズイはどうか分かりませんが)、ドレイク艦長の教えを胸に、クラックスのメンバーの影響を受け、頼り甲斐のあるカッコいい大人となったマリュー艦長やナタル副長達アークエンジェル隊のクルー達もいるのです。原作のように孤立してはいないのですから…。
どんな形にせよ、「別れ」というのは誰にとっても辛いもの。でも、その辛さを乗り越えた先に、キラは新たな強さと、これまでの自分では手に入れられなかった「何か」を掴み取り、そこに「希望の光」を見出だすのでしょう…。
長々と身勝手な事をつらつらと書き重ねた支離滅裂な感想になりましたが、せめてこれから歩むであろう修羅の道で待ち受ける数多くの厳しさに直面したキラ君が、たった一人の身近な人間の死に入れ込むあまり、それを引き摺って流した多くの血に溺れて、外道に堕ちない事を、一読者として願っております。
鬼や悪魔になるには、彼は優しすぎますから…。
この戦争のおかしいところがちょこっといい方向に向かってきてるのかな
(ただしBC過激派とザラ派からは目逸らし
アズえもんがアップをはじめました
メビウスとスピアヘッドを魔改造したやつがWGを弄らないなんてあるわけ無いだろ(歓喜
とんだゲテモノを生み出しそうだけど(º﹃º )
というかさ、さっさとくっつけよこの二人
星乃椿 2019年05月28日(火) 03:48 (Good:30/Bad:0) 71話 報告
だめだ。ラリーとトールがルーデル閣下とガーデルマンにしかみえねぇ。
そのうちラリーが「足が無くなってしまった」とか言ったら「何言ってんですか。足が吹っ飛んだら話なんかしていられるもんですか。そんな事より左翼が燃えてます。不時着しましょう」とかいいそう
更新乙でした
AAの皆さん、スピアヘッドで敵MSに突撃する馬鹿は、残念ながら前例がいますw
しかも、そいつは翼で切り裂いて撃墜するという変態じみた事をしてますw
切り裂きエドって言うんですがね。
さて、今回でラリーがオーブの馬鹿姫に突っ込みを入れましたが、どうなる事やら
絶対に曲解してさらに事態悪化させるだろうな、という負の信頼しかない
次回更新も楽しみにしております
鬼神の片鱗というか鬼嫁の片鱗…?
カガリ達に叱咤していた時も正座のままのラリーとすぐ側で仁王立ちしてるであろう鬼嫁を想像して若干ゃ草
トールの今後に期待を込めて!
彼ならきっと光り輝いてくれるはず
そう思えました
今回のタイトルの鬼神の片鱗って最初はキラの事かと思ったけど、話を読んでいくと実はトールの事なんじゃと思うようになった。
将来トールがラリーに鍛えられて凄腕パイロットになってそうw
でもエースコンバット的にPJの影がチラついてトールがフラグ立てて撃墜されそうで心配だw
>「ラリーさん!死にたいんですか?!」
同じようなことをTV版でレジスタンスに言っていたときには悲痛で
『もう言ってやるな、キラ』
と思っていたのに、ラリーに対しては
『いいぞもっと言ってやれ!キラ!』
となってしまうw
まあ怒られるだろうなとは思ってましたが、まさかキラだったとは…。大人しい人程起こらしたら怖いと言いますが、この後悪鬼羅刹の如く怒りの形相でスパナ担いだ整備班一同による折檻があると思うと…ねえ…。その内ハガレンのウィンリーに滅多打ちにされたエドみたいな惨状になりそうな…。ラリーは生き残ることが出来るのか?
トールが「休んでいる暇はないぞ。出撃だ。」を言う異次元人の領域に突っ込んでしまっている…。