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(0)「そういうわけなので、一先ず宿をお取りになりたいのでしたら観光区へ行くことをオススメしますわ。中央区にも宿はありますが、やはり中央区で働く方々の仮眠場所という傾向が強いので、サービスは観光区のそれとは比べ物になりませんから」
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(0) フューレンに到着してギルドで依頼の完了を報告後、彼らはどこかに宿を取る事にし、ギルドにてこの町のガイドであるリシーという人物を紹介してもらい、今はギルド内のカフェで軽食を取りつつ町の説明を受けていた。
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(0)(つまり中央区はビジネスホテルで観光区が普通のホテルみたいなものか……)
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(0)「なるほどな、なら素直に観光区の宿にしとくか。どこがオススメなんだ?」
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(0)「お客様のご要望次第ですわ。様々な種類の宿が数多くございますから」
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(0)「そりゃそうか。そうだな、飯が上手くて、あと風呂があれば文句はない。立地とかは考慮しなくていい。あと責任の所在が明確な場所がいいな」
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(0) 最初は、ハジメの要望を「ふむふむ」と聞いていたリシーだが、最後の一言で「うん?」となった。
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(0)「あの~、責任の所在ですか?」
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(0)「ああ、例えば、何らかの争いごとに巻き込まれたとして、こちらが完全に被害者だった時に、宿内での損害について誰が責任を持つのかということだな。どうせならいい宿に泊りたいが、そうすると備品なんか高そうだし、あとで賠償額をふっかけられても面倒だろ」
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(0)「え~と、そうそう巻き込まれることはないと思いますが……」
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(0)「まぁ、普通はそうなんだろうが、連れが目立つんでな。観光区なんてハメ外すヤツも多そうだし、商人根性逞しいヤツなんか強行に出ないとも限らないしな。まぁ、あくまで〝出来れば〟だ。難しければ考慮しなくていい」
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(0) ブルックの町でも彼女達をめぐる騒動はあったが、あれはある意味一種のお祭りみたいなもので、結果的に笑い話で済む範疇だった。けれどこのフューレンは違う、街についた時に感じた視線からも一歩間違えば流血沙汰なトラブルの可能性もある。ならば、遠慮なく暴れられる環境を整えておくに越した事は無い。
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(0)「しかし、それなら警備が厳重な宿でいいのでは? そういうことに気を使う方も多いですし、いい宿をご紹介できますが……」
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(0)「まぁ、それでも良いんですけど……」
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(0) そこで口を挟んだのはカナタだった。
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(1)「警備員さんだって、同じ人間。ならば、当然暴走する可能性はありますからね」
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(1) 職務規程や職業理念、誰もがそれらを遵守する職業人なら警察の汚職や介護における故意の虐待と言った事件など起きない。そして、そういった事態の直接の被害者であるカナタの中では既にそれらの言葉はキレイ事としか思ってない。無論、身近な所に一人、それを頑なに遵守する例外が居る事も知っているが……。
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(0)「何かあった時に、自分達だけでも対応しやすい状況の方が安心できるって事です」
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(0)「なるほど、それで責任の所在なわけですか」
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(0) こちらの言葉に納得したリシーは次に香織達にも要望を尋ねた。
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(0)「……お風呂があればいい、但し混浴、貸切が必須」
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(0)「えっと、大きなベッドがいいです」
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(0)「やっぱり、プライベートはキチッと守られてるところが良いかな」
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(0) と、上からユエ、シア、香織の要望である。これが女の子三人だけであれば良くある要望と言える。けれど、男女混成のパーティの上で、これらの条件を纏めるとある意図が成立する。察したリシーも表情こそ普通だが、頬が僅かに赤くなっている。
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(0) なおその瞬間、周囲のテーブルから感じていた視線の大半が一気に嫉妬と恨みに満ちたモノに変化したのはいうまでも無い。
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(0)「お、おい、ガキ共。ひゃ、百万ルタやる。この兎を、わ、渡せ。それとそっちの2人はわ、私の妾にしてやる。い、一緒に来い」
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(0) その時だ。良い言い方をすれば恰幅の良い、悪い言い方をすれば体重3桁は行ってそうなデブが一人の武装した男を同伴してこちらに近づいてきた。そして、香織達三人に舐めまわす様な視線を向けた後、シアに首輪がついてる事に少しめんどくさそうな表情になると、その視線をカナタに向けて、こう言って来た。
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(0)(早速来たか……さて)
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(0) 見た目も雰囲気も明らかに甘やかされて育ったボンボンは身なりだけは良い。恐らくはどこかの貴族と言う所だ。
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(0)(んでもう一人は……明らかに専属って雰囲気では無いな。あらくれか、それとも同業者か……)
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(0) 鍛え上げられた巨体に腰に剣を挿して武装した男性。だが、目の前のボンボンの専属のガードマンとかならもっと身なりは良いはず。その時点で金でそこら辺の荒くれか冒険者を雇った事になる。しかしここは冒険者ギルドだ、そんな場所にあらくれがホイホイ出入りするはずも無い。となれば――
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(0)(あの巨漢は冒険者……となるとこのボンボン、よほど欲に目が眩んで状況判断を思いっきり誤ったな)
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(0) この状況下であれば、ある条件さえ満たせば手っ取り早い方法で事を済ませられる。
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(0)(後はどうやってそれを引き出すか……)
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(0) と、次の瞬間。目の前のボンボンが突然「ひぃっ!?」と悲鳴を挙げて尻餅を付いた。どうやらハジメが威圧をぶつけたらしい。殺気ではなく威圧程度に留めてる辺り、ハジメの考えもこちらと同じのようだ。
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(0)(もっともこの場合だと、恐怖に駆られて逃げられる可能性もあるが……)
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(0) 今、この場で相手から特定のアクションを引き出す事が最も事が簡単に済むケースだ。そして、その為には相手の要求を蹴りつつ、さり気無く煽るのが手っ取り早かったのだが。
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(0)「行くぞお前ら、場所を変えよう……」
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(0) そう言って、ハジメが席を立ちギルドから出て行こうとすると、先ほどの巨漢がハジメの前に立ちはだかった。
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(0)「そ、そうだ、レガニド! そのクソガキ共を殺せ! わ、私を殺そうとしたのだ! 嬲り殺せぇ!」
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(0)「坊ちゃん、流石に殺すのはヤバイですぜ。半殺し位にしときましょうや」
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(0)「やれぇ! い、いいからやれぇ! お、女は、傷つけるな! 私のだぁ!」
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(0)「了解ですぜ。報酬は弾んで下さいよ」
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(0)「い、いくらでもやる! さっさとやれぇ!」
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(0) ボンボンが叫ぶとレガニドと呼ばれた冒険者はこちらを見下すような不敵な笑みを浮かべている。
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(0)「お、おい、レガニドって〝黒〟のレガニドか?」
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(0)「〝暴風〟のレガニド!? 何で、あんなヤツの護衛なんて……」
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(0)「金払じゃないか?〝金好き〟のレガニドだろ?」
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(0)「おう、坊主共。わりぃな。俺の金のためにちょっと半殺しになってくれや。なに、殺しはしねぇよ。まぁ、嬢ちゃん達の方は……諦めてくれ」
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(0)(ふむ、恐怖に駆られて逃げはしなかったか…………好都合)
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(0) これで条件は成立した。カナタ達の今の状況は連れの女の子を、無理やり連れ去ろうとする連中に絡まれたと言う構図だ。つまりは被害者サイドであり、抵抗しても正当防衛を訴えられる。当然相手は貴族である以上、金と権力でそれをもみ消す算段もあるのだろうが、それはもはや意味を成さない。このレガニドと言う冒険者をけしかけた時点でこの騒ぎは冒険者同士のトラブルとして成立する。そして冒険者ギルドの運営規程に置いて冒険者同士のトラブルは双方から事情を聞き、公正に判断が下すのがルール。加えて冒険者ギルドは特定の貴族と癒着していたり、懇意にしていては他の住民からの信頼に響く為、貴族の権力や袖の下と言ったものは受け付けない。
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(0)(最も、そんなのは建前で。裏では……って可能性もあるがな)
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(0) 仮にそうだったとしてもやる事は変わらない。冒険者の資格を剥奪されようが、指名手配されようが必要なら実力行使に訴えるのみ。ただ、こちらの正当防衛を成立させる方が後々面倒くさくないと言うだけだ。
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(0)「まぁ、余計な手間が増えただけで比較的穏便に済むだろうけど、流石にあのボンボンの意識も刈り取るのはやりすぎだぞ。アレの意識が戻るまで数日足止め喰らう可能性もある」
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(0)「どうせ、あの手の奴は親もロクでもない奴って相場が決まってるからな。泣きつかれて親まで出てきたら更に面倒だ。だったら、最初の一回でしっかりと俺らにちょっかい出す気が失せるぐらいトラウマ植え付けるに限るんだよ」
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(0) あの後、良い女は守られるだけじゃないとユエたち三人でレガニドを叩きのめした。シアのハンマーで打上げられ、ユエの重力魔法による落下補正のついた風礫で空中で滅多打ちにされながら、更に香織によるゴム弾による急所への追撃が刺さった。そしてコレだけで済めば後はギルド職員からプームとこちら双方の事情を聴取後、何事も無ければ正当防衛成立で閉廷!と言う流れだったのだが、ハジメがボンボンの顔面にスタンプを喰らわせ彼の意識を刈り取ってしまった事であっちの意識が戻るまで足止めを喰らう可能性が生じた。
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(0)「それにしても、本当に何者なんだろうね? キャサリンさんって」
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(0) 加えて、何時かの門番の時と違い、奴隷だから、紛失したという理由でシアとユエのプレート未所持で事を通す事が出来ず(料金が高いからと言ったら、立て替えるとまで言って来た)、その後、キャサリンから貰った例の手紙を渡した所、この応接室に通されたという状況だ。やがて、一行が手紙を渡したドットと言う人物と一緒に金髪にオールバックの三十代後半の男性が入ってきて、自分達の向かいに腰を下ろした。
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(0)「初めまして、冒険者ギルド、フューレン支部支部長イルワ・チャングだ。ハジメ君、カナタ君、ユエ君、シア君、カオリ君……でいいかな?」
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(0)「あ、はい。でもどうして私達の名前を?」
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(0)「先生の手紙に書いてあったのさ。将来有望、ただしトラブル体質なので、出来れば目をかけてやって欲しいという旨の内容だったよ」
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(0) 曰く、あのキャサリンと言う女性は元はギルド本部の長、即ち冒険者ギルドの元・秘書長だった女性だったらしい。そして現役引退後も本部で教育係として教鞭を振るい、今現在の各地の支部の重役の多くはみな彼女の教え子に当たる。嘗ての恩師の口ぞえとあれば確かに無下には出来ないだろう。因みにブルックで受付をやっていた理由は結婚や育児の都合上、ブルックに異動したと言う事らしい。
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(0)「はぁ~そんなにすごい人だったんですね~」
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(0)「……キャサリンすごい」
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(0)「元本部の秘書長なら、支部の一つや二つ、余裕で制御できても当然か」
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(0) 加えて子供も生まれ、母性が生じると共に女としての逞しさも身に付けばあのオカン振りも納得だ。
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(0)「まぁ、それはそれとして、問題ないならもう行っていいよな?」
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(0)「少し待ってくれるかい……」
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(0) 兎に角、キャサリンのお陰で身分証明は完了。ならばもう用は無いだろうとハジメがソファから立ち上がろうとするが、イルワがそれに待ったを掛けると、一枚の依頼書を彼らに差し出した。
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(0)「実は、君達の腕を見込んで、一つ依頼を受けて欲しいと思っている」
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(0)「断る」
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(0)「ふむ、取り敢えず話を聞いて貰えないかな? 聞いてくれるなら、今回の件は不問とするのだが……」
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(0)「身分証明の件については終わった筈では?」
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(0)「あくまで終わったのは身分証明だけ、騒ぎを起こした事については許した覚えは無いよ」
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(0) つまり碌に話も聞かなければ規程に従い、ボンボンの意識が戻るまで待ってもらうぞと言う事だ。しかも依頼を受けたら、ではなくあくまで話を聞けば、という所がまたいやらしい。こちらとしても聞くだけで不問ならそれを突っぱねる選択肢は無い。それはつまり、交渉の席につくと言う事でもある。
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(0)「手札の切り方が上手いですね……こちらとしては交渉に応じる以外選択肢がなくなったわけですか」
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(0)「コレぐらいできなければ、大都市の支部長はやっていけないからね」
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(0) 事のいきさつはこうだ。クデタ伯爵家三男のウィル・クデタが北の山脈地帯で目撃されてる魔物の群れの調査依頼を受けた冒険者一行に同行したのだが、その調査パーティがそのまま消息を絶ったらしい。依頼の内容はそのウィル・クデタの捜索と保護。
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(0)「最初に調査依頼を引き受けたパーティーはかなりの手練でね、彼等に対処できない何かがあったとすれば、並みの冒険者じゃあ二次災害だ。相応以上の実力者に引き受けてもらわないといけない。だが、生憎とこの依頼を任せられる冒険者は出払っていてね。そこへ、君達がタイミングよく来たものだから、こうして依頼しているというわけだ」
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(0)「前提として、俺達にその相応以上の実力ってやつがないとダメだろう? 生憎俺は〝青〟ランクだぞ?」
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(0)「さっき〝黒〟のレガニドを瞬殺したばかりだろう? それに……ライセン大峡谷を余裕で探索出来る者を相応以上と言わずして何と言うのかな?」
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(0)「! 何故知って……手紙か? だが、彼女にそんな話は……」
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(0) と、そこでハジメは言葉を止めるとカナタと一緒に香織達の方に目を向ける。
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(0)「え~と……てへ?」
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(0)「……ごめんなさい」
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(0)「キャサリンさんとの話が弾んじゃって、つい……」
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(0) つまり、ランクを理由に対外的に実力不足を偽る事を防止する為に香織達から実力に関する情報を抜き取っていた。俺らに便宜をはかるだけでなく、こう言う風にギルド側が何らかの交渉を持ちかけた際のギルド側の交渉材料もキチンと考慮されていたと言う訳だ。
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(0)(オカンの会話テクって奴か……恐ろしいな)
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(0)「生存は絶望的だが、可能性はゼロではない。伯爵は個人的にも友人でね、できる限り早く捜索したいと考えている。どうかな。今は君達しかいないんだ。引き受けてはもらえないだろうか? 報酬は弾ませてもらうよ? 依頼書の金額はもちろんだが、私からも色をつけよう。ギルドランクの昇格もする。君達の実力なら一気に〝黒〟にしてもいい」
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(0)「いや、金は最低限でいいし、ランクもどうでもいいから……」
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(0)「なら、今後、ギルド関連で揉め事が起きたときは私が直接、君達の後ろ盾になるというのはどうかな? フューレンのギルド支部長の後ろ盾だ、ギルド内でも相当の影響力はあると自負しているよ? 君達は揉め事とは仲が良さそうだからね。悪くない報酬ではないかな?」
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(1)「随分と羽振りがいいですね。幾ら友人の息子とは言え、一ギルド長としては入れ込みすぎでは?」
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(1) 友人の一人息子の為とはいえ、ここまで大盤振る舞いとなると友人の息子だから、と言う理由だけでは無い気がする。カナタの頭の中には“癒着”と言う単語が浮び、自然と目つきが細くなる。
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(0)「彼に……ウィルにあの依頼を薦めたのは私なんだ。調査依頼を引き受けたパーティーにも私が話を通した。異変の調査といっても、確かな実力のあるパーティーが一緒なら問題ないと思った。実害もまだ出ていなかったしね。ウィルは、貴族は肌に合わないと、昔から冒険者に憧れていてね……だが、その資質はなかった。だから、強力な冒険者の傍で、そこそこ危険な場所へ行って、悟って欲しかった。冒険者は無理だと。昔から私には懐いてくれていて……だからこそ、今回の依頼で諦めさせたかったのに……」
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(0)(自分の不手際の尻拭い……と言う訳か)
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(0) それについてはイルワ自身の判断ミスによるものだ。そこについて自分達が言う事は特に無い。それよりも大事なのは提示された報酬の後半。フェアベルゲンへの貸しと違い、こちらは永続的なパイプが出来るのは魅力的だろう。
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(0)「どうする? ハジメ?」
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(0)「……二つ条件がある」
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(0) カナタがハジメに話を振るとハジメは少し考えてから二本の指を立てながら口を開いた。
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(0)「条件?」
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(0)「ああ、そんなに難しいことじゃない。一つはユエとシアにステータスプレートを作って欲しい。そして、そこに表記された内容について他言無用を確約すること、そして二つ目はギルド関連に関わらず、アンタの持つコネクションの全てを使って、俺達の要望に応え便宜を図ること。この二つだな」
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(0)「何を要求する気かな?」
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(0)「そんなに気負わないでくれ。無茶な要求はしないぞ? ただ俺達は少々特異な存在なんで、教会あたりに目をつけられると……いや、これから先、ほぼ確実に目をつけられると思うが、その時、伝手があった方が便利だなっとそう思っただけだ。面倒事が起きた時に味方になってくれればいい。ほら、指名手配とかされても施設の利用を拒まないとか……」
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(0)「指名手配されるのが確実なのかい? ふむ、個人的にも君達の秘密が気になって来たな。キャサリン先生が気に入っているくらいだから悪い人間ではないと思うが……そう言えば、そちらのシア君は怪力、ユエ君は見たこともない魔法を使ったと報告があったな……その辺りが君達の秘密か…そして、それがいずれ教会に目を付けられる代物だと…大して隠していないことからすれば、最初から事を構えるのは覚悟の上ということか……そうなれば確かにどの町でも動きにくい……故に便宜をと……」
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(0) それから、少しの間無言の時間が過ぎ、やがてイルワが頷くと彼らに視線を向けた。
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(0)「犯罪に加担するような倫理にもとる行為・要望には絶対に応えられない。君達が要望を伝える度に詳細を聞かせてもらい、私自身が判断する。だが、できる限り君達の味方になることは約束しよう……これ以上は譲歩できない。どうかな?」
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(0)「まぁ、そんなところだろうな……それでいい。あと報酬は依頼が達成されてからでいい。お坊ちゃん自身か遺品あたりでも持って帰ればいいだろう?」
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(0)「本当に、君達の秘密が気になってきたが……それは、依頼達成後の楽しみにしておこう。ハジメ君の言う通り、どんな形であれ、ウィル達の痕跡を見つけてもらいたい……みんな……宜しく頼む」
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(1) こうして、思わぬ所から思わぬ寄り道をする事になったハジメ達。そして、彼らにとってこの一件は再会、そして彼にとっての太古からの縁との出会いの騒動になる事に彼らが気付く術は無かった。