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(0) グリューエン大砂漠、辺り一面赤銅色のきめ細かな砂で溢れ、常に一定方向から吹き付ける強風が砂を巻き上げることで地面だけでなく360度見渡す限りの赤銅色一色で覆われている場所。照りつける太陽、砂粒を孕みながら吹き付ける強風、その強風で砂粒が動き回り、形や場所を絶えず変える大小様々な砂丘、これらがこの場所を訪れた旅人の体力と気力を悉く奪っていく。
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(0) しかし、一行に限ってはあたり一面、赤銅色一色と言う見ていて面白くもなんとも無い視界だけが障害だった。人数の増加に伴い、荷台をなくして多人数様のワゴン車とも言える形になった魔導四輪ブリーゼが吹き付ける砂と風を物ともせずに突き進む。道なき道、視界不良により方向を見失うと言うリスクも運転席に設置された方位磁針がその問題を解消する。
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(0)「……外、すごいですね……」
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(0) 後部座席の窓にビシバシと砂粒が当たる様子を見ながら呟いたのは兎人族の少女シア、嘗てブルックの町で購入した軽装に改良を加え、胸の部分にフリルが付けられており、更にずれ防止の為に下の部分にベルトを巻いているのだが、それが胸の形を強調している。濃紺の一色だったローブも縁の部分だけが黒くなってる白一色のそれになり、肩と肘の部分は間接の動きを阻害し無い様にあえて露出させ、フードも兎人族である事を隠す必要がなくなったと言う事で耳を折り曲げなくても良い様なデザインとなってる。
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(0)「普通の馬車とかじゃなくて本当に良かったです」
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(0) 首周りも普通に飾り布を巻いてその上にチョーカーを付けていただけだったのが、布飾りはワイシャツの襟の部分の様なデザインに変わり、首輪も竜と剣の飾りが付いた部分を正面にむけている、彼女が隣に座っていたティオの方を向くと同時にチャリンと音を立てて揺れた。
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(0)「全くじゃ。妾達がどうこうなるわけではないが……」
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(0) そんなシアの言葉に答えたのは竜人族のティオ。彼女も着ている和服をノースリーブのそれに替え、肘から手首にかけて袖飾りを別に付けて呉須色 の細い羽衣を纏っている。また彼女の耳にはお馴染み神結晶をあしらったイヤリング、デザインは勿論シアのチョーカーについてるのと同じだ。
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(0)「ミュウの様な幼子を連れて進むような場所ではない事だけは確かじゃのう」
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(0)「前に来たときとぜんぜん違うの! とっても涼しいし、目も痛くないの! パパはすごいの!」
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(0)「そうだね~。ハジメパパはすごいね~」
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(0) その時、二列目の席に座っている香織の膝の上に抱えられているミュウがはしゃぐ様な声を挙げ、香織がそれに笑顔で言葉を返した。彼女もフィンガーレスのグローブを履いて、今までは膝の辺りまで覆っていたスカートの丈を更に短くし下にはスパッツを着ている、それにより完全に露出した太股にホルスターを巻いて、そこに愛銃であるナイチンゲールを収めてる。
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(0)「なぁ、香織。ハジメパパって言うのは止めてくれよ。何か、物凄くむず痒いんだ」
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(0) そんな香織の言葉に車の運転をしながらも、複雑な表情で返事をしたのは一行のリーダーを務めるハジメだ。彼の服装はそれをほど大きく変わってはいないがコートの肩から首にかけてフードの付いてないケープの様なデザインに変わっている。
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(0)「? でも、ミュウちゃんには普通に呼ばれてるよね?」
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(0)「いや、ミュウはもういいんだ。ただ、他の奴からもパパと呼ばれるのは流石に抵抗が……」
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(0)「ん、ハジメ。それじゃダメ……」
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(0) そんな彼の言葉に反論したのは香織の隣にユエだった。彼女もコートをハジメと同じデザインにして、下に来ているゴシック調の服をバッサリノースリーブにしている。
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(1)「いずれは私やカオリ、ユウカがハジメの子供生んで、本当のハジメパパになる。だから、今から慣れておかないと……」
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(0)「「なっ!?」」
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(0) そんなユエのバクダン発言にハジメと一緒に顔を赤くしつつ驚愕の声を挙げたのはその隣に座っている優花だった。彼女も今まで着ていた白と黒のフード付きのベストから袖を取っ払い、また額にはハジメが錬成で作った金属繊維のバンダナを巻いている。また腰のベルトには今まで使っていた投げナイフの他に少し大振りのナイフを二本鞘に収めている。とは言え、メインは投擲師である事からこちらはあくまで距離を詰められた時の護身用の武器だ。扱い方については得物は違うが、接近戦の基本的な立ち回り程度なら言う事で雫から指導を受け訓練中である。
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(1)「お~お~、お盛んな事で。将来は3児のパパになること確定か。なぁ、ハ・ジ・メ・パ・パ」
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(0) と、そんなハジメに対してからかうような言葉をかけたのは助手席に座っているカナタだった。彼は今までの服装から一転。黒一色のジッパー式の襟付きシャツとズボンを着ている。剣を持つ左手は完全にノースリーブにしているが、逆に右腕の方は少しブカブカの袖をしており、右肩の部分をアーマーで保護。同じく右足部分を黒い厚手のウエストスカーフで覆い、アーマーとウエストスカーフはベルトで固定している。
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(1)「うっせぇ! てめぇにハジメパパって言われると虫唾が走るわ!!」
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(1)「あら? じゃあカナタは、私やシア、ティオに貴方の子供、産ませてはくれないのかしら?」
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(0) と、声を荒げるハジメの様子にカナタは「クックックッ」と笑っていたが直後、シアやティオと一緒に座っていた雫からの言葉にピシリと硬直する。雫も今までの洋風な剣士服から一転、ズボンの変わりに袴(下の部分のみ)、胸の辺りにはサラシを巻き、その上から唐草色をメインに袖と裾に赤と黄色のラインの入ったローブの様な服を羽織り、赤色の帯を巻いてそこにカナタから貰った刀を差している。そしてその首からはカナタがつけているものとお揃いのネックレスをかけている。なお、胸を抑える為に巻いてるサラシだが某学園生徒会の会計曰く、サラシ巻いてどうにかできるのはDまでと言う事もあり、結果サラシとしては機能しておらず単に開けた胸元を覆い隠すのみとなっている。
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(0)「あ~、えっと、その、だな……」
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(0) 予想外な所からの一言にカナタはしどろもどろになり、視線は辺りを泳いでいる。そんな穏やかかつお熱い雰囲気の中砂漠を進んでいた一行だったがカナタの視界にあるものが映る事でそれは終わりを告げる。
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(0)「ん? なんだあれ?」
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(0)「でかい……ミミズか?」
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(0) それは右手の砂丘に集まっている無数のミミズの様な魔物だった。
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(1)「あれは、サンドワームじゃな。しかし――」
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(0) サンドワームは、平均二十メートル、大きいものでは百メートルにもなる大型の魔物だ。このグリューエン大砂漠にのみ生息し、普段は地中を潜行していて、獲物が近くを通ると真下から三重構造のずらりと牙が並んだ大口を開けて襲いかかる。察知が難しく奇襲に優れているので、大砂漠を横断する者には死神のごとく恐れられている。とは言え、サンドワーム自身の索敵能力は決して高くなく。不運にもサンドワームが潜んでいるそばを通らない限りは襲われる事は無い。逆に言えばああして表に出ていると言う事は格好な餌を見つけ地上に出てきたと言う事になるのだが……。
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(0)「なんか様子がおかしいのう? サンドワームは獲物を見つければ瞬く間に襲い掛かり、それが終わればすぐさま地中に戻るのが普通の筈じゃ」
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(0) だと、言うのに今彼らの目に映るサンドワームの群れはある一転を中心にその周囲をグルグルと回っている。その様子はまるで――
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(0)「まるで、食うべきか食わざるべきか迷っているようじゃのう?」
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(0)「まぁ、そう見えなくも無いわね。そういう事ってあるの?」
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(0) 雫の問い掛けにティオは首を横に振る。
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(0)「妾の知識にはないのじゃ。奴等は悪食じゃからの、獲物を前にして躊躇うということはないはずじゃが……」
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(0) 一行の最年長、更にはユエと違い幽閉されておらず幅広い知識を有するティオにして前例の無い挙動。と来れば、明らかに異常事態の気配がする。調べるべきか、見つかる前にスルーするべきか。その判断を仲間達に相談しようとハジメが口を開こうとした。が、その前に彼の気配感知が何かを捉える。
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(0)「っ!? 掴まれ!」
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(0) ハジメは、そう叫ぶと一気に四輪を加速させた。直後、四輪の後部にかすりつつ、僅かに車体を浮き上がらせながら砂色の巨体が後方より飛び出してきた。大口を開けたそれはサンドワームだった。
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(0)「ちっ、傍にもう一匹潜んでやがったかっ!!」
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(0)「いや、一体じゃない……」
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(0) 一体目の奇襲が不発に終わったと同時にその左右に一匹ずつ、計3匹のサンドワームがその大口を彼らの乗るブリーゼの方に向けていた。
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(0)「“サン”ドワームなだけに、ってか……」
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(0)「はっ、捻りが無さ過ぎてつまらねぇな、っと」
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(0) その時、三体のサンドワームがその巨体に物を言わせて頭上から襲いかかろうとした。これが唯の馬車であったなら、その攻撃で終わっていたかもしれない。しかし、これは、ハジメのオタク魂の片鱗が作り出したアーティファクトだ。ただ食らいつかれたくらいでは、ビクともしない。
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(0)「そう言えば、何げに使うの初めてだな!」
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(0) そんな事を言いながら、ハジメは、四輪をドリフトさせて車体の向きを変え、バック走行すると同時に四輪の特定部位に魔力を流し込み、内蔵された機能を稼働させる。ボンネット部分の一部がスライド。中から四発のロケット弾がセットされたアームがせり出してきた。そのアームは、獲物を探すようにカクカクと動き、迫り来るサンドワームの方へ砲身を向けると、バシュ! という音をさせてロケット弾を発射。それは大きく開かれたサンドワームの口の中に吸い込まれ、サンドワームを内部から爆散させ、真っ赤な血肉がシャワーのように降り注ぎ、バックで走る四輪のフロントガラスにもベチャベチャとへばりついた。
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(0)「うへぇ……おい、香織」
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(0)「うん、分ってる」
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(0) 流石のハジメもそのグロテスクな光景に表情をしかめながら香織に声を掛けると、香織もわかってると言わんばかりにその光景をミュウには見せまいと抱き締めている。その後、その騒動からこちらの存在に気付き、こちらへと向かってきたサンドワームの群れもブリーゼに内蔵された銃火器で掃討してから、群れがいた場所に向かうとそこには白いガラベーヤ(エジプトの民族衣装)に似た衣服に身を包んだ人が倒れ伏していた。
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(0) おそらく、先程のサンドワーム達は、この人物を狙っていたのだろう。ローブを外せば、見た目20代の青年の顔が表れ、香織はそのまま彼に対して浸透看破を使い症状を確かめる。
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(0)「……魔力暴走? 摂取した毒物で体内の魔力が暴走しているの?」
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(0)「つまり、どう言う事なの? 香織」
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(0)「えっとね。この人は今、性質的には魔物の肉を食べたのと同じ状態になってるの。人の身体では制御しきれないほど魔力の循環が活発になってて、それを制御しきれていない状態。私やハジメ君、優花の時と比べると極めて微弱だから、まだ苦しそうにしてる程度で済んでるけど」
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(0) このまま放置し続けると、肉体崩壊とまではいかずとも、血管や内臓の破裂。それに伴う、出血や衰弱により命を落とす可能性がある。香織はすぐさま万天を使い、青年の体内の毒を浄化する。が、毒は浄化できても既に引き起こされた魔力暴走は治まらず、青年は今尚苦しそうに呻き声を出している。
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(0)「廻聖」
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(0) やがて、彼の治療方法を考えていた香織は廻聖を発動させる。この魔法は術者の魔力を他者に譲渡するとされているが、その本質は魔力の移し変え。なにも移し変える対象は自分自身である必要は無い。難易度こそ跳ね上がるが他者から他者へ映す事も可能なのだ。今回の場合は青年の活発化した魔力を神結晶のアクセサリへと移し変えていく。程なくして、青年の呼吸は落ち着き、異常に赤くなっていた肌も元の色を取り戻していく。見るからに危機は脱した様子だが、香織の表情は今尚険しいままだ。
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(0)「取り敢えずこれで……今すぐ、どうこうなることはないと思うけど、根本的な解決は何も出来てない。魔力を抜きすぎると、今度は衰弱死してしまうかもしれないから、圧迫を減らす程度にしか抜き取っていないの。このままだと、また魔力暴走の影響で内から圧迫されるか、肉体的疲労でもそのまま衰弱死する可能性が高いと思う」
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(0) そう言うと、香織はその視線をユエとティオの方に向ける。
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(0)「私がオスカーの隠れ家で読んだ医学書とかにもこんな症状は記されていなかった。二人は何か知らないかな?」
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(0) 香織の質問にユエとティオは記憶を巡らせるも二人にとっても未知の症状らしく、結局原因不明の病とされた。
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(0)「念のためみんなの身体も診察させて。感染経路とかもハッキリして無い以上、空気感染を警戒しないといけないし」
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(0)「だな。結構大人数だがたのんでいいか?」
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(0)「うん、任せて」
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(0) その後、香織によって全員の診察が行われたが、特に同等の症状は確認されず、一先ず空気感染するタイプでは無いと仮定された。
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(0)「女神? そうか、ここはあの世か……」
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(0) やがて全員の診察が終わった辺りで青年は意識を取り戻したのだが、そんな彼に「大丈夫ですか?」と心配そうに声を掛けた香織の姿に見惚れて口にしたのがこの一言。
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(0)「あだっ!」
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(0)「ハ、ハジメ君!?」
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(1) さっきまでとは違う理由で体を熱くし始めた青年の様子に、いい加減、暑さと砂のウザさにうんざりしていたハジメは、イラッとした表情を隠しもせずに、香織に手を伸ばそうとしている青年の額にデコピンをお見舞いしたのだった……。