行別ここすき者数
小説本体の文章上でダブルクリックするとボタンが表示され、1行につき10回まで「ここすき」投票ができます。
履歴はこちら。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) ―――春季関西大会決勝。
(0)
(0)
(0)
(0) 東三局 親 竜華
(0)
(0) 苦しい。身体が必死に酸素を求めているのがわかる。
(0) 脳が働くために呼吸を繰り返しても、全く楽になる気がしない。
(0) 深い闇の中にいるような、出口のない迷路に迷い込んでしまったような。
(0)
(0) それでも歩くことをやめることはできず、歩き続けなければならない。
(0) どこが正しい道なのかも、わからないまま。
(0)
(0) いや、表現が違ったかもしれない。
(0)
(0) 正しい道なんて、そもそもあるのかもわからないまま。
(0)
(0)
(0) 『ロン』
(0)
(0)
(0) 恭子 手牌 ドラ{3}
(0) {⑧⑧33567二三四} {横四二三} ロン{⑧}
(0)
(0) 『3900』
(0)
(0) 振り込んだのは、自分ではない。しかしそのことに、安堵する暇などありはしない。
(0)
(0)
(0) 東四局
(0)
(0) 親番が流された。
(0) 姫松との点差は、とてもではないが一撃で埋まる点差ではない。この親番で、どうにかしなければいけなかったのに。
(0) ……後悔しても仕方ない。幸い、親番はあと1回残されている。
(0)
(0) 『ツモ』
(0)
(0) 竜華 手牌 ドラ{4}
(0) {2344赤56三三四四} {横⑦⑦⑦}ツモ{三}
(0)
(0) 『2000、4000』
(0)
(0) リーチ者をかいくぐって、なんとか満貫のツモ和了。
(0) 本音を言えば{二五}を引き入れての跳満クラスに仕上げたかった。けれど、それはかなわないことを、竜華は知っている。
(0) いや、教えてくれていると言うべきか。
(0)
(0) 南一局
(0)
(0) 『ロン』
(0)
(0) 放銃したのは自分ではないが、ビクリと肩を震わせた。
(0) ロン?まだ6巡目だぞ?
(0)
(0) 恭子 手牌 ドラ{2}
(0) {①②③⑧⑨123北北} {横④赤⑤⑥} ロン{⑦}
(0)
(0) 『3900、やな』
(0)
(0) 早い。瞬く間の一通の仕掛け。
(0)
(0) 今まで戦ってきたどの強者とも違う。圧倒的オーラもない。この世界の強者特有の圧迫感もない。
(0) なのに。打牌に迷いが見えない。淀みない。隙が、無い。
(0)
(0) 南二局
(0)
(0) 『ノーテン』
(0)
(0) パタリと、手牌を閉じた。
(0) 早い仕掛けで全員に圧力をかけつつ、安全度の高い牌を残し続けたのだろう。
(0) 終盤の恭子の河に、字牌が並んでいる。
(0)
(0) 結局誰も聴牌にすら辿り着けず、全員ノーテンで流局した。
(0) この半荘が誰によって支配されているかなど、誰の目にも明らかだろう。
(0)
(0) 南三局 親 竜華
(0)
(0) 卓の中央のボタンを押して、息を深く吐く。
(0) さあ、これが最後の親番。開いてみれば、配牌は悪くない。
(0)
(0) ここは出し惜しみなどできない。勝つには、ここで連荘するしかないから。
(0)
(0) 竜華は絶対的な信頼を置く親友に心の中で問いかける。
(0)
(0) さあ、私の、和了れる道はどこ?
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) ―――その問いに最愛の親友は。
(0)
(0)
(0)
(0) ―――悔しそうに、俯いて。
(0)
(0)
(0)
(0) ―――静かに、首を横に振った。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) ―――時は流れて。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) インターハイ決勝団体戦 東二局開始 点数状況
(0)
(0) 1位 晩成 巽由華 137200
(0) 2位 姫松 末原恭子 123400
(0) 3位 千里山 清水谷竜華 102400
(0) 4位 白糸台 大星淡 37000
(0)
(0)
(0)
(0) 由華の満貫ツモでもう一度晩成が抜け出す形になった。
(0) とはいえ、安全圏とはとてもではないが言えない点差。そのことを、他でもない由華が一番良く理解している。
(0)
(0) (何点差あったって、安心なんかできやしない。準決勝のことを思えば、まだまだ点差はつけておきたい)
(0)
(0) 4位だったはずの姫松が、南4局でトップにまで躍り出た。
(0) 比較的安全圏だと思っていたはずの点差は、一瞬で消え去った。
(0)
(0) (だからこそ、さっきのは最低でも跳満クラスに仕上げたかったが……)
(0)
(0) 出和了でも高目なら跳満。
(0) だからこそ由華はあの手をダマに構えた。
(0) それがリーチ者淡も警戒するならギリギリのライン。由華なりの線引き。
(0) リーチ判断に後悔はない。
(0)
(0) (さて……それでもってこっちも、油断はできない)
(0)
(0) 視線を正面に移す。
(0) そこには、落ち着いた表情で理牌する竜華の姿。
(0)
(0) (随分と、落ち着いてる……。いや、集中してるのか)
(0)
(0) 竜華の表情に、普段の穏やかな笑顔は無い。
(0) ただただ、その極限まで研ぎ澄まされた集中力で牌と向き合っている。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) 『実はですね』
(0)
(0) 切り出したのは、実況を務める針生アナウンサー。
(0)
(0) 『千里山女子の清水谷選手は、姫松高校の末原選手との同卓が結構あるんですよ』
(0)
(0) 『へ~まあ当然か。同地区だもんな。知らんけど』
(0)
(0) 『はい。同じ大阪の高校ということもあり、公式戦で何度も対戦経験があるんですが……実は区間成績は、全て清水谷選手に軍配が上がってます』
(0)
(0) 『へえ~、それはちょっと意外だねい。もちろん千里山のコも十分強いのはここまで見てりゃわかるけど……それにしても全部が全部姫松のコが負けてるっていうのは驚きだねい』
(0)
(0) 針生アナの言う通り、竜華と恭子の団体戦での直接対決はもう既に何度も行われている。
(0) 恭子が姫松の大将になった時には、既に竜華も千里山で大将を務める器になっていたから。
(0)
(0) 秋季大会から春選抜、春関西大会。その全てで同卓し、そして区間スコアは微差ながら竜華に軍配が上がっていた。
(0)
(0) 『ですが』
(0)
(0) そこで、針生アナは一つ区切りを入れる。
(0)
(0)
(1) 『――その全ての試合を、姫松高校が勝っています』
(0)
(0) 『ああ……なるほどねい』
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) 東2局 親 竜華
(0)
(0) 竜華 配牌 ドラ{9}
(0) {①④⑤⑧2499五六七八西北}
(0)
(0) 手牌を理牌して、深く息を吐いた。
(0)
(0)
(0) 『りゅうか、あの』
(0)
(0) 『ええよ。この局は――ウチにやらせて』
(0)
(0) 『……うん、見守っとるね』
(0)
(0) 『ありがとう。それだけで、勇気100倍や』
(0)
(0) 竜華のその言葉を、怜はなんとか笑顔で受け止めた。
(0)
(0) (りゅうか、この局は……)
(0)
(0) 内心は、決して穏やかと言えるものではなかったが。
(0)
(0)
(0) 気を取り直して、竜華の配牌はドラが対子。他の形も悪くない。
(0)
(0) 今の怜には、和了形が見えているだろうか、それともあの日と同じく、和了れない未来が視えてしまっているのだろうか。なんて考えつつ。
(0)
(0) (関係あらへん。ウチは、ウチの全力を)
(0)
(0) 怜の助言を受けた方が、和了れるかもしれない。
(0) けれど、それじゃダメなんだ。怜の隣で胸張って、一緒に優勝インタビューを受けることは、それではできない。
(0)
(0) 前回の対局時、竜華は恭子に言った。
(0) 末原ちゃん、強すぎるわ、と。
(0)
(0) 初めて会った1年生合宿の頃から分かっていたこと。
(0) 自らを凡人であると言うこの少女が秘めている強さは、並大抵のものではないと。
(0)
(0) しかし目の前の彼女は何と言ったか。
(0)
(0) 『え?……だいたいいつも区間スコアは清水谷が勝ってるやんか』
(0)
(0) 誇るわけでもなく。
(0) さりとて、謙遜というわけでもなく。
(0) 純然たる事実がそこにあるだけだろうと、そんな調子で。
(0)
(0) (区間スコアなんて、1ミリも気にしてへんくせに!)
(0)
(0) 知っていた。
(0) 自分の勝利なんてどうでもいいのだ、この打ち手は。
(0) 点数を稼ぐのは自分ではないから。
(0) このリードを守り切ることだけが自分の仕事だと。
(0)
(0) 割り切っている。だから、届かない。
(0)
(0) 姫松の大将、自称凡人は、竜華にとっていつも越えられない壁。
(0)
(0)
(0) この胸にたぎる想いをなんとか静めて、竜華が字牌から切り出していく。
(0)
(0)
(0)
(0) 同巡 淡 配牌
(0) {①③⑦⑧⑨123666二三} ツモ{二}
(0)
(0) 淡の手には、変わらずダブルリーチの手牌が来続けている。
(0) が、これもまた、ダブルリーチのみ。淡にもう一度選択の機会がやってきた。
(0)
(0) 『これは、リーチ打ちますか?三尋木プロ』
(0)
(0) 『……わっかんねー。けど、もうダブルリーチのみを和了ってる余裕はねーわな。きっと打ったなら、道中で当たり牌が出たとしても、ロンとは言いにくい。それだけの点差になっちまってるからねえ。だからといって、この手が高くなるか、と言われたら……難しいねい』
(0)
(0) 淡が静かに場を見渡す。
(0) 点棒を確認する。
(0)
(0) そうすること数秒、淡は持ってきた{二}を、そのまま河に放った。
(0)
(0) 『聴牌取らず……!ここも一旦聴牌を外します大星淡選手!』
(0)
(0) 『……おいおい外し方もいいんじゃねえか?下の三色を見つつ、カンまでたどり着いた時のために暗刻の{6}は残す。いいねいいね。前半戦とは別人じゃねえか!』
(0)
(0) 淡の額に汗が流れる。
(0) 初めてだった、こんなにも考えて悩んで打牌するのは。
(0)
(0)
(0) 6巡目 竜華 手牌
(0) {④⑤⑦⑧2499三五六七八} ツモ{九}
(0)
(0) 萬子が両面に変わる。
(0) 竜華は6ブロックになった手牌の形を変えないまま、{三}を切り出していく。
(0)
(0) 「チー」
(0)
(0) (……!)
(0)
(0) これに動いたのは、またも恭子。
(0)
(0) 恭子 手牌
(0) {⑦⑨11789七九北} {横三一二}
(0)
(0) 『ここも軽快に仕掛けていきます姫松のスピードスター末原選手!ジュンチャンの仕掛けで一向聴です!』
(0)
(0) 『迷いなく動いていくねい……点差は1万点ちょいあるけど、焦りはないっぽいねい』
(0)
(0) 恭子の仕掛けを見届けて、竜華が河全体を見渡した。
(0)
(0) (役牌は……白と、中が見えてない、か。せやけど役牌バックは考えにくいやんな)
(0)
(0) 見えていない役牌は多い。
(0) けれど、その所在は仕掛けた恭子というよりはどちらかというと。
(0)
(0)
(0) 由華 手牌
(0) {④④赤⑤⑥⑧⑨白白発中西西西}
(0)
(0) (あっち、やね)
(0)
(0) 明らかに染め手の気配が匂う由華の捨て牌。
(0) 役牌暗刻、または対子は、あそこにあると読むのが自然だろう。
(0)
(0)
(0) 8巡目 竜華 手牌
(0) {④⑤⑦⑧2499五六七八九} ツモ{9}
(0)
(0) (……!)
(0)
(0) ドラが暗刻になった。嬉しいツモではあるが、雀頭が無くなってしまう。
(0) 竜華がもう一度河を見渡した。
(0)
(0) (筒子が高い……)
(0)
(0) 明らかに筒子を集めてる由華に対して、その上家である恭子も筒子が出ていない。
(0) 淡の河にも筒子が少なく、全員が筒子のブロックを使ってるように竜華の目からは見える。
(0)
(0) とはいえ{3}に感触があるかと言われれば、それもない。
(0) なにより恭子の本命はチャンタ系の手役で、特に下の三色が濃いように見える。
(0)
(0) (和了れる道は……)
(0)
(0) 手を膝の上に置く。
(0)
(0) 頼れる親友は、今はただ固唾を飲んで見守ってくれている。
(0) 胸に暖かさが、残っている。
(0)
(0) 竜華が選んだのは、{④}。
(0)
(0)
(0) 『両面を壊していきましたよ?!これはどうみますか三尋木プロ』
(0)
(0) 『2度受けとはいえ、両面を壊すのは勇気いるけどなあ~。なにより対面の晩成のコに筒子が間に合わなくなるのを嫌ったかな?』
(0)
(0) 『更には下家の末原選手に端の牌を2枚は切りにくい。そんな側面もあったでしょうか。筒子の下のブロックを選びましたね!』
(0)
(0) 集中力を、五感を、研ぎ澄ます。
(0) 竜華の状態が、最高の状態へ仕上がっていく。
(0)
(0)
(0)
(0) 10巡目 竜華 手牌
(0) {⑦⑧124999五六七八九} ツモ{3}
(0)
(0) 絶好のカン{3}ツモ。
(0) これで手牌が大きく前進。
(0)
(0) (……)
(0)
(0) 竜華の目が、卓全体を何度も何度も行き来する。
(0) 脳が焼ききれそうになるくらい、回転しているのがわかる。
(0)
(0) (負けない……!あんな思いは、もうしたくない……!)
(0)
(0) 竜華の心の叫びが、聞こえてくる。
(0) ……その想いが痛いほどわかるから、隣で聞いている怜はどんな顔をしていいのかわからない。
(0)
(0) (あかん……せやけど、この巡目で、もう……!)
(0)
(0)
(0) そんなことは、竜華にはわからない。わかるはずもない。
(0) 竜華が勢いよく{4}を切り出すのを、見ていることしかできない。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) 同巡 淡 手牌
(0) {①③⑦⑦123666二三四} ツモ{②}
(0)
(0)
(0)
(0) 『ああ~っと!役なし聴牌を入れていた大星選手がここでツモ……!ツモるならダブルリーチをせめてしたかった形になってしまったのは、なんと皮肉な……』
(0)
(0) 淡がまさかの和了り牌を引き入れてしまった。
(0) これなら、ダブルリーチでツモれたカン{②}。
(0)
(0) これでこの局は終局。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) 誰もが、そう思った。
(0)
(0)
(0) 『いや。待て』
(0)
(0) 咏が、心底楽しそうに言い放つ。
(0)
(0) 見てみろ、と。
(0) あいつの目を、今見てみろよ、と。
(0)
(0)
(0) 『まだ、終わっちゃいねえぜ』
(0)
(0)
(0) 大星淡の目は、まだ前を向いている。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) 「リーチッ……!」
(0)
(0)
(0) 淡が河に放った{四}が、横を向いた。
(0)
(0)
(0) 『フリテンリーチ?!なんとなんとここで大星淡選手フリテンリーチ敢行です!!』
(0)
(0) 『そうだよ、そうだよなあ!!これじゃツモのみ。今欲しいのはこんなツモじゃねえ!白糸台優勝のための点棒が欲しいんだろ?!{一}をツモれば三色だし、なによりカンできるかもしれねー。お前さんならさあ!』
(0)
(0)
(0) 状況が加速する。
(0) 淡の魂の籠ったリーチに、三者が目を見開いた。
(0)
(0)
(0) 同巡 竜華 手牌
(0) {⑦⑧123999五六七八九} ツモ{⑥}
(0)
(0)
(0) 『ああっとここでドラ3の清水谷選手も聴牌!これは立直ですね!あ、でもこれは……!』
(0)
(0) 『流石に上の牌は切れないか……?さあ、どうするよ千里山……!』
(0)
(0)
(0) 竜華が深く息を吐いた。
(0) あの日と同じように。
(0) 涙に暮れた、あの日と同じように。
(0)
(0)
(0)
(0) 嫌だ。負けたくない。
(0) もう十分泣いた。
(0) もうそろそろ、笑ってもいいはずだろう?
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) 『いけ。竜華!!!』
(0)
(0) 江口セーラが、控室で叫んだ。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) 「リーチ……!」
(0)
(0)
(0) 竜華が選んだのは、{九}。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) 恭子 手牌
(0) {⑦⑧⑨11789七九} {横三一二} ツモ{南}
(0)
(0)
(0) (清水谷……!)
(0)
(0)
(0) 『切った!!危険牌を切り飛ばして、リーチだ清水谷選手!!』
(0)
(0) 『いややべーだろ!!唯一の正解辿れんのか?!おいおいどこが勝つんだよ!!』
(0)
(0) 『大星選手がフリテンの{一四}、清水谷選手が{五八}、末原選手がカン{八}!巽選手は大物手の一向聴ですが三者聴牌は感じているでしょう!』
(0)
(0) 『ここが一つ山場になるぞ!!おいおい一秒たりとも見逃せねえじゃねえか!』
(0)
(0) 竜華が{九}を選んだのには理由がある。
(0) 元々、{五八}の待ちが良いと思っていたことはもちろんあるが。
(0) それよりもなによりも。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) ――――姫松の末原さんは、片和了りの形が残っとることが極端に少ないです。意識しているかはわかりませんが、片和了りの形を自然と嫌ってるのかもしれませんね。まあ、比較的というだけで、絶対というわけではありませんが。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) ただ、後輩の言葉を、信じた。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) (そんな、こんな、ことって)
(0)
(0) 竜華の鬼気迫る表情の横で、誰よりも驚いているのは怜。
(0) 本来なら、この局はもう終わっているはずだった。
(0)
(0) 竜華の切り順によっては恭子が。恭子の打ち方が変われば由華が。
(0) そしてそうでなくとも、淡が和了りを手にする。
(0)
(0) それが、この局のはじめ、怜の出した結論。
(0)
(0) しかし、これは。
(0) この光景はなんだ?
(0)
(0) 今まさに、竜華が和了りにその手を伸ばそうとしている。
(0) 届こうとしている!
(0)
(0) 静かに、笑みを浮かべた。
(0)
(0)
(0) (ふふふ……やっぱり、りゅーかは私なんかよりずっと……)
(0)
(0) きっと知っていた。
(0) 自分が病弱で、いつも助けてもらっていたあの頃から。
(0) 目の前の少女は可愛くて強くて、カッコ良くて。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) ―――りゅーかは私のヒーローやから
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) 「ツモ!」
(0)
(0)
(0) 竜華 手牌
(0) {⑥⑦⑧123999五六七八} ツモ{五}
(0)
(0)
(0) 「4000オール!!」
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0) 清水谷竜華の。
(0) 千里山女子の執念が、王座への足掛かりとなる。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)