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履歴はこちら。
(0) ——数日前、新豊州。
(0) ——SID本部にて。
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(0)「なんだよマリル……。突然こんな時間に呼び出して……」
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(0) 寝癖髪と眠気で落ちる目蓋を必死に堪えながら俺はマリルがいるブリーフィングルームへと向かった。
(0) 時刻は午前4時……。運動部でもない俺にはこの時間帯に起きるのは、ネットゲームのイベントを消化する時以外はありえない。つまり何かしらが起きない限り起きることはないということだ。しかもこの場には俺とマリルしかいないという非常に珍しい状況だ。否が応でも何か人員が集めることさえままらない重要なことがあったのではないかと思ってしまう。
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(0)「……やはりお前はここにいるよな」
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(0)「……そりゃそうだろ? 流石のマリルも寝ぼけてるのか?」
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(0)「夢とかで済ませられるならそうしたいところだ。これを見てみろ」
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(0) マリルは眠気か、それとも事態の深刻さから鋭い目つきのまま俺にタブレットを手渡してくる。
(0) 画面にはいつか見た覚えがある俺のプロフィールが記載されている。……確かこれは俺が最初に女の子になった時、SIDの力で改竄してくれた時の情報画面だ。こんなのを俺に見せて何になるんだ?
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(0) 寝ぼけた頭のまま自分のプロフィールを眺め続ける。上から下へ、下から上へ。変わったところなど見当たらない…………と思っていた。
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(0) 何度か往復したところで記載されている情報におかしな点があることに気づいた。といっても不具合の一言で片づけられそうな些細な情報の齟齬だ。少し前にマサダブルクに行ったし、何なら『OS事件』で海底にまで行ったことで反応が途切れた可能性もある。しかし、それしか異変らしい異変は見当たらない。
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(0) それは俺の新豊州の滞在状況だ。おかしなことに『出国』として現在の状況が登録されている。
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(0)「出国……? 俺はここにいるのよな?」
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(0) そこでようやく眠気が覚める。確かに不思議な状況ではあるが…………そんなに事態を焦るほどのことか? 愛衣やアニーに声を掛けて、時間を改めて話しても十分なことではないのか? 疑問が疑問を呼び、尚更俺とマリルしかいない状況に、俺が思っている以上に事態は深刻ではないのかと不安が走る。
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(0)「レン、覚えているか? 『イージスシステム』とSIDの情報が連携していることは」
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(0)「ああ、覚えてるよ。なにせ『イージス』が俺のことを俺と証明してくれたじゃないか」
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(0) 俺とマリル、そしてアニーと初めて会った日を思い出す。あの日、女の子初心者だった俺は何とかして、俺が『俺』であることを証明しようとした。学生証やらスマホやら色々と証拠を提示したけど、なによりも決定的だったのは、新豊州が持つXK級異質物『イージス』が自発的に持つ保護機能による新豊州市民の識別方法によるところが一番大きい。
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(0)「そうだ。『イージス』の力で、お前はお前という証明をした。だがな……この証明は絶対だからこそ絶対に有り得ぬ状況さえ生み出す」
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(0) 絶対だからこそ生み出す状況……? マリルの言葉にはある部分を暈すように説明を続ける。
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(0)「そもそも、どうやって『お前』は『お前』だと証明させた? 性別か、名前か、動作か、仕草か、脳波か……。どれも正解であり不正解だ。『イージス』はその個人によって定めた『魂』によって登録を振り分けている。それらが導き出した情報からSIDはお前の元々あった情報と照合……にわかに信じがたいがお前がお前という証明を得た。ここまではいいな?」
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(0)「問題ない」
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(0)「だがな……。『イージス』が定めるのはそこまでだ。ある程度の自己判断能力を持つ『イージス』は己の中で情報を処理し、己の中で情報を保護する。それを解析してSIDは正式な住民IDを発行する。ここで初めて情報の齟齬が発生しうる」
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(0)「じゃあ、ただのヒューマンエラーってこと?」
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(0) それはもう別の意味で深刻ではある。天下のSIDが杜撰な管理をするなんてエージェントや組織の教育が行き届いてないか、あるいはスパイによる情報工作か……。どちらせよ穏やかなことじゃない。
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(0)「ヒューマンエラーじゃない。むしろ『イージス』が優秀すぎるから発生するんだ。再度言うが『イージス』とSIDの情報は絶え間なく情報を交換し続けており、そこに本来データの齟齬などが普通は発生するはずがない。何故なら『イージス』の判断基準は『魂』だ。その『魂』によって判断をして、新豊州市民だけでなく旅行客などもIDを振り分けて極力保護対象にしようと『イージス』は常に動き続ける。そのIDの数はそれこそ人類の総人口と常に同じ数を刻み、IDの数値が同じということはあり得ない…………。同じ『魂』など本来二つと存在しないのだからな」
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(0) 同じ……『魂』は、本来『二つ』と存在しない……。
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(0) マリルの言いたいことが段々と理解してくる。それは俺にとって喜報や朗報と言った最重要事項の一つかもしれない。
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(0)「だからこそ……。肉体が違うとしても、同じ『魂』を持つ人間を『イージス』が観測した場合どうなる? 『同一人物』として扱って、『イージス』は自己で情報整理と完結を済ませて再度保護に努める。我々SIDは『イージス』と違って『魂』ではなく、それに基づいたデータを照合する。そこで初めて我々は気づくのだ。『イージス』が更新した履歴と、我々SIDが更新した履歴に決定的な違いが生まれることにな」
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(0)「それって……つまり——」
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(0)「ああ。結論から言えば、ついにお前が『男』だった時の姿を持つアイツが捕捉できた。『イージス』がお前の『魂』が海外へ旅立つ時、SIDのデータは確かに自室で熟睡中のお前を捉えた」
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(0) 熟睡中をつけるのは余計だよっ!
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(0) ……だけど、それはとんでもなく俺にとって貴重な情報だった。『男の姿を持つ俺』と『レンの姿を持つ俺』……。これはだいぶ前から気になり続けていたことだ。
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(0) 男の俺について忘れたことはない。イルカと出会った日からすぐのこと、突如として俺の姿をしたアイツはニューモリダスにあるアルカトラズ収容基地を襲撃。その中に保管されていたEX級異質物『天命の矛』を強奪して逃走。以降、姿を表すこともなく行方不明な状況が続いていた。
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(0) 今の今まで音沙汰なしだったはずなのに、まさかここに来て初めて痕跡らしい痕跡を残すなんて……。
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(0)「となると『魂』の行き先……つまりは男のお前がどこに行ったのか気になるだろう?」
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(0) マリルの言葉に俺はすぐに頷く。
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(0)「だからこちらも調べておいた。アイツは…………新豊州からニューモリダスへと旅立ったという履歴を『イージス』から手に入れた。それに伴ってニューモリダス首都航空の空港にある監視カメラから、入国する男のお前が目撃されている。まず間違いなくアイツは、ニューモリダスに今潜伏している」
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(0) ニューモリダス——。世界最高の貿易港にして、絢爛華麗な風光明媚を地とする銃社会。そんな硝煙と共に胡散臭さが香る街で再び男の俺が現れたということに、俺は疑問しか浮かばない。
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(0) アイツは一度『天命の矛』を強奪した都市へとまた向かっていったというのか? 一体何のために?
(0) アルカトラズ収容基地を襲撃した一因もあって、現在ほとんどのEX級異質物は『サモントン協定』によってサモントン教皇庁に管理のもと収容されている。アイツがもしも再び異質物の強奪目当てで来襲したしたら、目指すべきはサモントンであるべきだ。
(0) だというのに何故? 無い頭でも考えればいくつか理由は推測できる。
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(0) ニューモリダスについて詳しい話はマリルから聞いているし、何よりスクルドの出身地ということもあってサモントンやマサダブルクと並ぶほど政情は把握している。そしてニューモリダスが第二学園都市として象徴するXK級異質物『リコーデッド・アライブ』の詳細についても。
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(0) もしアイツがニューモリダスに再び出向く理由があるとすれば、まだ移送途中のEX級異質物を強奪するか、もしくはニューモリダスの別の収容基地で管理されているsafe級異質物の強奪。あるいは『リコーデッド・アライブ』自体に目的があると考えるのが自然だ。
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(0) XK級異質物『リコーデッド・アライブ』——。
(0) 新豊州が持つ『イージス』の防護特化やマサダブルクが持つ『ファントムフォース』の攻撃特化と違い、その異質物の効力は『一定の対価を払うことで、同等の価値を持つものへと変換する』という、いわば『等価交換』という言葉がこれ以上にないほど相応しい異質物だ。
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(0) 最も恐ろしいところは『対価』とは『何でもいい』という点に尽きる。故にニューモリダスではあらゆる物に価値が生まれる。塵も積もれば山となるという諺があるが、所詮塵は積んだところで塵に過ぎない。だが『リコーデッド・アライブ』の前ではどんな塵であろうと、瞬く間に金や食料に変換されるという奇跡にも等しいことが起こりうる。
(0) とはいっても、あくまで『交換』に過ぎないので、地表上に存在しないものに変換することはできないらしいが……。問題はニューモリダスがこれほどまでの情報を惜しげもなく『公表』しているという点だ。
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(0) 新豊州もマサダブルクも……いや六大学園都市すべてがXK級異質物について本質的な能力については機密事項にしていることはいくつかある。実際『イージス』の判別方法が『魂』で行われていたなんて、新豊州市民の俺でさえレンになるまで知らなかったことだ。
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(0) ニューモリダスが『リコーデッド・アライブ』の情報をそこまで公表する以上、何かしらの情報や効力はまだ隠し持っているのは明白だ。それをアイツが知っていて、その秘匿された効力を目当てにニューモリダスに向かったとしたら…………向かう理由としては十二分にあり得る可能性だ。
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(0)「アイツの目的も気になるが、そんなものは捕らえてから尋問すれば幾らでも分かることだろう。第一優先はとにかくアイツの随時追跡、並びに確保だ。そのためにも、いの一番にエージェントを派遣する必要がある」
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(0)「とはいってもな」とマリルはそこでため息をつく。
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(0)「ニューモリダスが誇る情報機関『パランティア』との連携は政府側からの圧力もあって、新豊州の情報機関であるSIDが大手を振って入国をするわけにいかん。下手したら外交問題にも繋がる」
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(0) ……気のせいかな。その流れどこかで、というかつい最近マサダブルクで入国するための手筈と似ている気がしてならないんだけど。
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(0)「そ・こ・で、お前には身分を偽装してニューモリダスへと潜入。現場に到着次第、ある人物と協力してアイツを追跡することになった」
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(0)「やっぱり? だとしたら、その人物って……」
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(0)「実態としては二人なのだが、協力者の関係で三人いる。…………その内二人は想像はつくだろう。ニューモリダスの件なら協力を仰がない方が無理というものさ」
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(0) マリルの言う人物にすぐに思い浮かんだ。先ほどあげた少女、スクルド・エクスロッドとメイドであるファビオラに違いない。
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(0)「もう一人の人物は…………個人請負業者として世界各地で活動を行う仕事人『イナーラ』だ」
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(0)「イナーラ?」
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(0)「国のトップなら一度は耳に挟む極秘人物だ。元老院のジジイ共は全員知っているし、他国ならランボット、エクスロッド議員、デックス博士…………恐らくはラファエルやエミリオも知っているであろう有名人さ」
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(0) 全然聞いた覚えがない人物だ……。まあ諜報員や忍者は存在が認可された時点で三流というらしいし、一般人である俺に噂も聞かないほどの人物となるとそれだけ優秀ということだろう。
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(0)「どういう人なの?」
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(0)「何でも屋、とでも言えばいいだろう。護衛、情報収集、暗殺、窃盗、テロ行為…………どんなことでも金さえ積めば熟す仕事人さ」
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(0)「聞く限り大悪党じゃないか!? そんな奴に頼んでSIDの立場は大丈夫なのか!?」
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(0) 俺の疑問にマリルは鼻で笑いながら答えた。
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(0)「事情が複雑でな。有り体に言えば義賊的な扱いを世界各国から扱われている。もちろん世界中で捉える方針はあるが……彼女のおかげで政界のパワーバランスが保たれている一面もあることで各国全てとは言わないが、イナーラに弱みを握られてる。そんな奴が捕まりでもしたらどうなると思う?」
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(0)「弱みが漏れなくてハッピーとかじゃないの?」
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(0)「頭の中は未だに夢心地か? マサダブルクの一件、ある人物の死亡を引き金として衛星『STARDUST』を落としたように、逮捕がキッカケでイナーラが持つ情報漏洩したらそれこそ各国がパニックになる。ただでさえ七年戦争の影響で世界はボロボロな上にそんな事態が起きてみろ。まず間違いなく六大学園都市以外の国は壊滅状態になるし、学園都市も無事では済まない。破滅へのスイッチは何もマサダが持つ『ファントムフォース』だけじゃないんだ」
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(0)「……あくまでかもしれないだろ?」
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(0)「その『かもしれない』が起こすのが全人類バッドエンドなら、例え天文学的な確率でも触れない方がいい。もしイナーラを確保する時があれば、それはもっと未来の…………世界が安定期になってからだ」
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(0)「その頃にはお前もイナーラもおばあちゃんかもしれないがな」といってマリルは笑みを溢す。
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(0) てか、おばあちゃんって、俺はそんな長くまで女として生きるのがマリルの中では確定されてるの!?
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(0)「イナーラのことは資料を渡すから移動中にでも見ておけ。そんなことより今後のお前の動き方と役割について説明しなければならない」
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(0)「入っていいぞ」とマリルが手に持っていた端末に言うと、ブリーフィングルームの自動ドアが開かれる。
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(0)「久しぶり〜、レンお姉ちゃ〜〜〜〜ん!!」
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(0)「スクルド! ラーメン屋以来か!」
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(0)「お久しぶりね、駄メイドことレンさん」
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(0)「駄は余計だよ、ファビオラ!」
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(0) 俺の前にニューモリダスの御用人であるスクルド・エクスロッドと、そのメイドであるファビオラが姿を見せた。
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(0)「レン、お前にはスクルドのSPとしてファビオラ共々行動を共にしてもらう。お前自身の自由となる時間は少なくはなるが……スクルドは第二学園都市ではある程度自由に行動できる権限がある。それに同伴してターゲット探ってくれ」
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(0)「分かった。ターゲットについて、二人はどこまで知っているんだよな?」
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(0)「お嬢様と違って、私はターゲットの詳細までは聞かされておりませんが……メイドとは常に一歩退いて事態に当たり君主に傅くもの。気にはしておりません」
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(0)「私も政治家の娘だからね、ターゲットがアルカトラズ収容基地で強奪とかの部分も聞いてるよ。これはファビオラも知っているけど…………私自身は……うん、特にはないかなぁ」
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(0) その言葉には明らかに嘘が入り込んでいた。以前、ファビオラの一件で親しくなった時にスクルドは言っていた。彼女自身が持つ能力『未来予知』——、それで俺の『姿』を見たと。
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(0) その姿とは、奇しくも俺が夢に見た学園都市の崩壊と同じ光景であり、俺が男だった時の姿だという。顔も身長も髪の長さまで全て覚えている様子で、女の俺を見た時にはかなり疑問に満ちた質疑応答をしたのは覚えている。
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(0) ……そこまで鮮明に覚えているのなら、俺がニューモリダスの空港で姿を見せたと知った時はスクルドも驚愕したんだろうな。何せ本来いるはずがない人物がそこにいるのだから。
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(0)「そういうわけだ。レン、SPの訓練は覚えているだろう?」
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(0)「覚えています。護衛対象の安全を第一に考えて行動する。第二に連絡を常に絶やさないこと。第三に身を危険に晒して事態の究明に当たらない。あくまで護衛が目的だろう?」
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(0)「よろしい。ならば特殊作戦用の服に着替えておけ。今回は……喜べ、こういうものだ」
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(0) マリルは手元のスーツケースからクリーニング屋で仕立てたばかりと見間違うほど綺麗な黒のスーツが出てくる。
(0) それを手渡されて俺は感じた。これ完全に防弾製だ。通常よりも遥かに重く、裏生地には関節部以外に鉄板が仕組まれていて、軽く羽織るだけでも姿勢が矯正されて、見てくれだけは逞しく見えてくる。
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(0)「おぉ……念願の男物……ッ!!」
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(0) おかえり、俺のマイフェイバリット。こんなタイプの服を着るのは入学式以来だけど、それでもこの胸にこみ上げるワクワク感は何とも言えない。メン・イン・ホワイトを見た時と同じ興奮が激ってくる。
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(0)「ほら、動きやすさ重視で下はスラックスと革靴だ。中に着るのはカバーバンドとベスト、どっちがいい」
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(0)「ベストでいいよ。……ネクタイはどうしようかな♪」
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(0) お洒落にリボンタイとかにしてみようか。それともオーソドックスにダービータイや蝶ネクタイにしようか……。
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(0)「随分と楽しげですね、レンさん。男装の趣味でもおありですか?」
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(0) ファビオラの何気ないツッコミに俺は固まる。
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(0) そうだよな、普段ラファエルから女装癖、女装癖と言われてずっと潜在意識で女の子の服を着るのに抵抗感を覚えていたが、改めて考えると俺は現在女の子ではあるから、逆に男物の服を着たら『男装癖』と呼ばれる存在になるんだよね……。どちらにせよ、俺はどんな服を着ようが変態の道は避けられないのか?
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(0)「……あっ、そう言えば忘れてた。ファビオラ、レンお姉ちゃんが『男の子』かどうか確認しなくていいの?」
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(0)「分かり切ってるので大丈夫ですよ、レンさんは『男の娘』ではありませんから。しかしボーイッシュではあるので私的には全然アリですけどねっ♪」
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(0) ——意外ッ、迫りくる新たな性癖ッ!
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(0) ファビオラにも、ソヤやハインリッヒに負けない秘めたる何かがあるのではないかと、俺の本能が警鐘を鳴らす。
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(0)「レンさん……見た感じ、男装は初めてでしょうか?」
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(0) 初めてじゃないけど、初めてですッ!!
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(0)「ええ、ええ……。女性が男性の服を着るのは気苦労がありますから……。サラシを巻いたり、肩幅を調節したりとありますからね……。胸に余分なスペースもないで、スーツのボタンが付けられなかったり、ヒップが大きくて丈は十分なのにズボンが入らなかったりと……」
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(0)「く、詳しいっすね……」
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(0)「仕事と趣味は兼用していますから。ですが、私はそういう頑張ろうとする女の子にも控えめに言って『超萌えます』」
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(0) ひえっ……!! 控えめで超までいくのかよ……っ!?
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(0)「レンお姉ちゃん……。私も興味あるから観察するね♪」
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(0)「嘘だろっ……!?」
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(0)「はいッ! というわけでファビオラ自らが男装というものを伝授致しますッ!! さあ、まずは全てを脱いでもらいます!! 話はその後で!!」
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(0)「や、やめてくれぇぇえええええええ!!!」
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(0) これから重大な任務が起こるというのに、何でこんな目に合わなきゃいけないんだよッ!