行別ここすき者数
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(0)「武器……だと……!!!?」
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(0)哲郎は確かに自分に武器 を使うと言った。しかし、それはありえない。彼の両腕は今、根源魔法で麻痺しているからだ。
(0)もっとも、麻痺で済むはずのない攻撃だったが。
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(0)『武器を使うと言いました!テツロウ選手!!
(0)彼の体は既に満身創痍!!!
(0)遂に決着の時か!!!?』
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(0)アナウンサーの声に応じるように、観客の熱狂も再び最高潮を迎えた。
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(0)哲郎が何を考えているかは分からないが、それをやらせる訳にはいかない。
(0)根源魔法を使った反動は大きく、全身を激痛が走っているが、魔界公爵家の名にかけて、こんな所で不覚を取る訳には行かない。
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(0)そのことは、彼の身体をさらに動かした。
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(0)「終わりだ!! 《白雷 》!!!!」
(0)「!!!?」
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(0)『こ、これは 何という光景でしょうか!!!
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(0)レオル選手、両手で白雷 の乱射を始めた!!!
(0)これは決定打になるのか!!!?』
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(0)何故だ…………!!!!
(0)何故この下等種族 は倒れない…………!!!!!
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(0)レオルの口から、腕から、手からどくどくと血が吹き出した。根源魔法を使った身体は限界を迎えているのだ。
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(0)両腕を動かせない哲郎の身体に、白雷 は確実に当たっている。しかし、彼が倒れる気配も自分が勝つ予想も全くしなかった。
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(0)倒れろ!!!
(0)倒れろ!!!!
(0)倒れろ!!!!!
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(0)レオルの虚ろな意識は、その一つに集中していた。しかし、それも終わりを告げる。
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(0)「……タイムリミットだ」 「!!!?」
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(0)哲郎の意識と腕が、完全に復活した。
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(0)『テ、テツロウ選手、走り出しました!!
(0)ここから何を見せる!!?』
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(0)哲郎が一瞬でレオルとの距離を詰めた。そして空高く飛び上がった。
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(0)そこからは一瞬だった。
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(0)「ッッ!!!? 貴様……ッッ!!!!」
(0)「終わりです。」
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(0)ズダァン!!!!!
(0)「!!!!!」
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(0)哲郎が落ちる反動を乗せてレオルの首に組み付いた。そのまま一回転して全体重をレオルの首にかける。
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(0)レオルは後頭部から地面に叩きつけられ、辺りに血飛沫が舞い、レオルは完全に動かなくなった。
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(0)哲郎以外の全員、何が起こったのか分からなかった。
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(0)哲郎の体力も尽き、その場に仰向けに倒れた。それが場内に決着を告げた。
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(0)「しょ、勝負あり!!!!!」
(0)『決着ゥゥゥーーーーーーーー!!!!!
(0)テツロウ・タナカ ゼースに続きレオル・イギアを打ち破ったァァァーーーーー!!!!!
(0)彼の言う武器とは、この武道場の地面のことだったのです!!!
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(0)イギア家の血筋を退けてテツロウ・タナカ
(0)遂に準決勝に駒を進めたのです!!!!!』
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(0)アナウンサーと観客達が熱狂に包まれる中、哲郎はよろけながら立ち上がった。
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(0)そして、
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(0)『こ、これはどうしたことでしょう!!?
(0)テツロウ選手、レオル選手を抱えました!!』
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(0)哲郎はレオルを抱え、レフェリーの元に歩いて言った。
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(0)「彼を早く医務室へ!!」
(0)『これは驚きました!! 齢11 テツロウ・タナカ!!なんとレオル選手の身体を気遣っています!!! なんと美しい光景!!相手の健闘を称え、敬意を表す これもまた魔界コロシアムのあるべき姿と言えましょう!!!!』
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(0)アナウンサーの言葉により、観客席の熱狂は次第に拍手に変わっていった。
(0)その観客席に一礼し、哲郎は去っていく。
(0)その姿に命を軽んじたレオルへの怒りは微塵も無かった。
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(0)***
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(0)(……これは どういうことなのだ…………)
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(0)ベッドの上でレオルは思考を巡らせていた。
(0)自分が負けた事はすぐに理解出来た。
(0)そして、ここが医務室だということも。
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(0)両手両足はベッドの端に縛られており、口には枷がつけられている。何より分からないのは、魔法を使えないようにされていることだ。
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(0)「兄者!!!」
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(0)医務室に男が入ってきた。レオルの実弟 ゼース・イギアである。
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(0)「返事はしなくていい。ただ、ある奴 から伝言を預かってんだ!!」
(0)(伝言?)
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(0)この状況で言う事のある人間は1人しかいない。
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(0)まず、自分をこうするように指示したのは哲郎だった。
(0)きっと目を覚ましたら、自害しようとする筈だから、それをさせないように両手両足の自由を奪うように と。
(0)それから、舌を噛み切ることもないように、口に枷もつけて欲しいとも言ったそうだ。
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(0)レオルの顔は苦痛に歪んだ。それは肉体ではなく、敵に情け をかけられた故だ。
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(0)「それからもう2つ、伝言があんだ。」
(0)まだ何かあるのか とレオルは意識を向けた。
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(0)「まず1つは、自分の"完全決着の定義"は、あなたとは違い、『相手の思うことを1つもさせずに倒す』ことだと。
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(0)それから、これは情けではなく、あなたという誇り高い戦士への敬意のためだ と。
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(0)あいつはそう言ってたぜ。」
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(0)「………!!!!!」
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(0)レオルはその言葉でハッとした。
(0)自分の考えを、あんな子供に見透かされていたのか と。
(0)そして 瞼から一筋の涙が零れた。
(0)叶うことなら、「完全に私の負けだ」と声に出して言いたかった。
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(0)***
(0)
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(0)息を切らしながら、哲郎は廊下を歩いていた。
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(0)「テツロウ選手、準決勝を戦えますか!!?」
(0)「……休めば 何とかなります…………。」
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(0)レフェリーに哲郎は息を切らしながら返答した。彼はレオルへの怒りを完全に断ち、意識を準決勝にだけ 集中させていた。