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(0)哲郎はサラの試合を見終わった後は再び控え室に戻り、心を落ち着けていた。
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(0)「テツロウ選手、まもなく2回戦が始まります。」
(0)「カードは?」
(0)「ノア・シェヘラザード選手と、ネロ・サムワン選手です。」
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(0)「ノア…… 分かりました。
(0)観戦しましょう。」
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(0)哲郎は立ち上がり、試合会場に足を運んだ。
(0)彼は無意識の内に彼と戦うのではないかという予感がしていていたのだ。
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(0)聞くところによると、サラ以降の試合も瞬殺だったそうだ。
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(0)「おぉ、小僧 来てくれたのか!」
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(0)会場に足を運ぶ最中、哲郎はノアと会った。
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(0)「えぇ。何となくあなたの試合は見ておいた方がいい予感がするんですよ。」
(0)「そういうことなら、お前の前では少し 本領発揮といくか。」
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(0)ノアが見せた笑顔からも哲郎は彼の強さを感じていた。間違いなく彼は自分に立ち塞がると。
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(0)「もうすぐだな。失礼するぞ。」
(0)「えぇ。僕もお邪魔しました。」
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(0)***
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(0)哲郎が足を運んだ試合会場は輪をかけて熱くなっていた。
(0)2回戦になり、さらにすごい試合が見られるという期待が膨らんでいるのだ。
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(0)『さぁ皆様。この魔界コロシアム、早くも2回戦が始まろうとしています。』
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(0)アナウンサーの宣言は観客達をさらに盛り上げる。
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(0)『まずはAブロック 第一試合から。
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(0)片や 魔法と体術を組み合わせた一族特有の格闘術を引っさげて、魔界コロシアムに名乗りを上げた
(0)ネロ・サムワン!!!!』
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(0)ネロ・サムワンという男は、長めの金髪に特徴的な腕輪を両腕に付けていた。
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(0)『それを迎え撃つは、1回戦を回し蹴り一発で勝ち上がった今大会一のダークホース、
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(0)ノア・シェヘラザードォォォ!!!!』
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(0)ノアは悠々と立っていた。1回戦の印象がそんなに良かったのか、観客達は歓声を上げた。
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(0)『さぁ 両者とも1回戦をノーダメージで勝ち上がって来ました。
(0)この試合、いや もはやどの試合においても誰が勝ってもおかしくありません!!!』
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(0)2人は初めの位置に立った。
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(0)「殺害 以外の全てを認めます。
(0)両者構えて、
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(0)初めェ!!!!!」
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(0)試合開始と共にネロは身構えてその場に静止した。
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(0)『これはネロ選手、防御に徹した構えをとりました。 両腕には既に魔法陣の展開されています。
(0)この魔力を込めた拳こそがネロ選手の一族の十八番。
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(0)さぁノア選手、これにどう応える?』
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(0)身構えたネロに対し、ノアは予想外の行動をとった。
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(0)『こ、これは予想外だ!
(0)ノア選手、何の構えも見せずにネロ選手との距離を詰めていく!!
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(0)悠々と、ゆっくりとその間合いが詰まっていく!!!』
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(0)「………!!!? な、なんの真似だ!!?」
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(0)警戒して下手に手が出せないネロが啖呵を切った。
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(0)「一族の誇りを持つ者よ、悪いな。
(0)本命 が見てくれているんだ。
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(0)だから、」
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(0)「本気を出させてもらう。」
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(0)ドクゥン!!!!! 「ブフォッッ!!!!?」
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(0)ネロが全身から血を吹き出した。
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(0)「な、一体何が起こった!!!??
(0)ネロ選手がいきなり血を吹き出した!!!!」
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(0)そのままネロが膝をつく。それを見下ろしてノアは口を開いた。
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(0)「聞こえたか?今の音 が。
(0)そう。鼓動だ。魔力を込めた鼓動がお前の体を内側から攻撃した。
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(0)そして、」
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(0)ひざまつくネロにノアが手をかざした。親指と中指を伸ばして付けている。俗に言う指パッチンの構えだ。
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(0)カンっ! ブシャッ!!!!
(0)「!!!!!」
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(0)その指パッチンが起こったと同時にネロの体がバラバラになって吹き飛んだ。
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(0)『こ、これはいった………… あれ??!!!』
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(0)アナウンサー、観客達、そして哲郎までもが目を疑った。バラバラになったはずのネロの体が元通りになっていたのだ。
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(0)場内にいる全員が呆気にとられていた時、ノアが口を開いた。
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(0)「おい レフェリー、これで勝負ありじゃないのか?」
(0)「あ、しょ、勝負あり!!!」
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(0)こうしてAブロック2回戦 第一試合が唐突に終わりを告げた。一瞬のことに観客席から歓声はなかった。
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(0)『い、一体何が起こったというのでしょう
(0)しかし、これは決して反則ではありません。
(0)確かに、確かにネロ選手は生きています。
(0)そして、これは自他ともに認めざるを得ない完全勝利です!!!!!
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(0)これほどの差を誰が予測できたでしょう!!!
(0)圧倒的な実力差を見せつけたノア・シェヘラザード選手、3回戦進出を決めました!!!』
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(0)アナウンサーの言葉が決定打になり、呆然としていたネロも自分が完敗した事実を痛感し、うなだれた。
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(0)***
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(0)(まさか、あんなことが……………………!!!!!)
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(0)試合を見終わった哲郎は再び控え室に足を運んでいた。
(0)観客達には見えなかった恐るべき事実を彼は目撃していたのだ。
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(0)あの時、ネロの体がバラバラになった瞬間、彼は手から液体のようなものを飛ばした。
(0)それは血だった。
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(0)そう。彼はバラバラになって死んだはずの彼を蘇生させてみせたのだ 。勿論そんなことができるのならの話だが。
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(0)この時、哲郎は既に彼と真っ向からぶつかるのだと確信していた。
(0)そしてそのことは、彼の気を十分すぎるまでに引き締めることになる。