行別ここすき者数
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履歴はこちら。
(0) 起動要塞デストロイヤーとやらが接近していても町の様子は変わらなかった。話を聞く限りでは物騒だが、この世界にはモンスターやらなんやらがいる。
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(0) 全てを蹂躙するとか言っているが実際は大したものでもないのかもしれない。ヤバかったらもっと焦ったりしてるもんだ。
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(0) 暇潰しのままに町を歩いていると明らかに不審者の動きをしているダストとキースを見つけた。警察に出すべきか、一旦翔太郎らに預けるべきか。
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(0) 「なにしてんだ」
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(0) 「カズマ?!バカ、声が大きい!」
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(0) お前の方が大きいぞ。
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(0) 「あそこまで不審だったら聞くだろ。何だったら通報も考えたわ」
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(0) 「マジか……いや、今はそれじゃない。この路地裏の奥にサキュバスの店があることを知ってるか?」
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(0) 「詳しく」
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(0) 二人の話を聞くにサキュバスの店があるのは本当らしい。何でも男性冒険者が次世代へ脈絡と受け継いでいっている。
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(0) 概要と言っては風俗とかではない。お金と性気を少し貰う代わりに好きな夢を見させて貰う。内容は何でもいいらしいがそりゃサキュバスと聞けばそりゃ卑猥なものにもなるさ。
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(0) ま、つまり男性の性欲発散に使われてる模様だ。女の冒険者が来ているかどうかは知らないがそれならインキュバスになるんだろうな。
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(0) 俺達は意を決して店内に入ると想像通りの格好をしたサキュバス店員と幾つかの男性客。そしてーー
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(0) 「何しにきてんだお前ら」
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(0) 翔太郎とフィリップがいたーーいや、こっちの台詞だよ。お前らみたいなのは逆に来ないと思ってたんだけど。
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(0) 「ほー、ハードボイルドとか未成年がとか言ってる割に自分はちゃっかりか。フィリップに関してはまだ同じ未成年だろうが」
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(0) 「言っとくがこんなことに金を使える程稼げちゃいない。俺達が来てるのは調査に関してだ」
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(0) 何でもこの店を見つけたのはフィリップが最初らしい。探偵にとって幅広い交遊関係を築くのも仕事の内。人だけでなく悪意のない悪魔を信じてみるのもいいかもしれないというのが始まり。
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(0) 先のメリッサとの一件で警察やらとの繋がりが出来た翔太郎。サキュバスらにとって危ないのではと思ったが、下手に手を出さなければ通報もしなければ寧ろ庇うことを条件に関係を築いたという。
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(0) 「ここに来る殆どの客は下世話の夢を依頼する。だが、例えばテロ行為などのシュミレーションとして利用する手もある。そういう要望があれば要注意人物としてマーク出来るだろう」
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(0) 「事前に犯罪を防げればそれだけ町の安全に繋がる。感謝状とかお金に関しては店に付与。それに悪魔にしか知らないこともあるだろうしな」
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(0) 割とごもっともな意見でぐうの音も出ない。サキュバスのお姉さん達もお客さんが減るのは望んでないだろうし。
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(0) 「こう言うのもなんだが、よく悪魔を信じてみようとか思ったな」
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(0) 「ほいほいやってきてるお前らが言うか」
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(0) 悪魔との相乗りなら幾らでもしてきた。今そんなこと言ったら怒るだろう。俺だって自分のことみたいに怒る。
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(0) 「俺からすればお前らがこういう店に来てることが通報もんだけど?」
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(0) 机をとんとん叩きながら圧をかけてくる。尋問所がここは。
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(0) 「あの、ここは夢を提供するだけですのでそういったサービスは……」
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(0) ですよね、はい。
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(0)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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(0) 俺達はカズマらを残し先に店を出た。やることは終わったし、どうやら町は平和なようだ。
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(0) ただここ最近、こことそう近くないところで凄まじい魔力を感じているという。その正体がウィズなのか、はたまた別の何かかーー少なくとも地位的にも高水準の悪魔のようだ。
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(0) 被害が出る前に調査を進めたいところだ。
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(0) 「好きな夢と言っていたが、翔太郎なら何を見る?」
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(0) 「急にどうしたよ」
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(0) 「世間話かな」
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(0) 好きな夢、か……ときめのことが頭をよぎった。しかし、二度と会えない訳じゃない。また風都に戻れれば前と同じ時間を過ごせる。
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(0) 「こっちの一ヶ月は向こうでは一年かもしれない」
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(0) 「……なにが言いてぇんだよ」
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(0) 「可能性の話さ。正直なところ僕は未だこの世界について興味を失っていない。知ってるかい、秋刀魚だけは畑で採れるんだ」
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(0) 絶妙にどうでもいい情報をありがとよ。
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(0) 「僕達が帰ってきた風都は、本当に僕達が知ってる風都なのかとたまに不安になる」
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(0) 「らしくねぇな。例えどんな姿であっても俺達の町は変わらない。今は依頼を達成して帰ることを考えようぜ」
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(0) 路地裏を出て大通りを歩いていく。一ヶ月は一年かもしれないなんてのはただの仮定に過ぎない。
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(0) 戻ったらフィリップとときめ、それに亜樹子に照井。また皆で事件解決すればいい。夢は見るもんじゃなくて叶えるものだってーー
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(0) 「……おやっさん」
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(0) 夕暮れの人混みの中でかき消される程の小さな声で俺は呟いた。
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(0) 屋敷に帰ると女子三人がダクネスの実家から送られてきた蟹を調理していた。どっかの借金持ちは隠し持っていた酒を飲んでいたので即刻取り上げた。
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(0) 調理が終わる頃、カズマが帰ってきた。いらないとらしくない反応に俺達二人は察しそのまま食べ進めた。
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(0) その日の深夜。報告書を済ませた俺は入浴に行こうと部屋を出るとガタン、という音が聞こえた。
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(0) アクアは最初に飲んでいた酒が回ったのと取られて泣き疲れた反動で眠っている。
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(0) フィリップはめぐみんのボードゲームリベンジに付き合わされている。最初の一戦はルールを知らずに負けたもので、それ以降はずっとめぐみんが負けを積み重ねている。
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(0) となるとカズマかダクネスか……可能性はカズマだな。思春期特有の緊張で寝れないんだろう。だが万が一ダクネスで入浴で鉢合わせたら問題になるので間を開けてからにするか。
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(0) 適当に屋敷を歩いていると開かれた窓に気付いた。見に行くとめぐみんと同い年ぐらいの女の子がいた……いや、あれサキュバスじゃねーか?
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(0) 「あ、えっと……翔太郎さんでしたっけ?結界のせいで逃げることも出来ないので助けていただけないかと……」
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(0) 「待ってろ」
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(0) 少し強引にサキュバスを助け屋敷に入れる。結局頼んだのかあいつ。
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(0) 「こっからカズマの部屋まで少しある。教えてやるから別のルートで行け」
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(0) 着ていた部屋着を脱ぎサキュバスに着させる。お前らにとってそれが正装でも色々とまずい。風で寒いけど仕方ない。
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(0) 「そこまでよ!さぁ、観念……」
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(0) 「……翔太郎はそういう趣味だったのですね」
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(0) 駆けつけるようにアクアとめぐみんが滑り込んできた。一足遅く来たフィリップは状況をすぐさま理解し頭を抱えた。
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(0) サキュバス言えど姿は中学生程度。それに対し俺は部屋着を貸したせいで上半身半裸状態。
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(0) おい、これまずいんじゃねーか。
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(0) 「いくらアクシズ教でも許されない範疇よ」
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(0) 「んなもん求めてねーよ!第一これはカズマが」
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(0) 「確かにカズマはあれかもしれないけど、そんな年端もいかない少女に興奮しないわ」
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(0) お前はあいつの何を知ってるんだよ。
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(0) 「待ってくれ二人とも。確かに犯罪のように見えるのは仕方ないが、翔太郎には恋人もいる。あの子とは真反対の容姿だ」
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(0) 「へぇ……え、恋人?!」
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(0) 「ああ。ぶっちゃけると建前なんてもういいから早くくっついてくれと思っている」
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(0) ぶっちゃけるなぁおい。
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(0) 「ときめはーー」
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(0) 「ほうほう。ときめという人ですか。アクセルに来てまだ三ヶ月も経っていないのにもう恋人というのは考えづらいので、遠距離というやつですね」
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(0) こんな時だけ頭回るの早すぎるだろ中学生。
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(0) そんなことを思っている後方からドタドタと足音を立てながらまだ少し濡れたままで服を着崩れた状態のダクネスがやってきた。
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(0) 「やはりか!カズマの様子がおかしいと思ったらサキュバスが……翔太郎、まさか……」
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(0) 「その下りはもうやったわ。今は翔太郎の彼女について話をしてるの」
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(0) 「彼女?ああ……え、彼女?!」
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(0) お前ら俺をどういう風に見てたんだ。
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(0) 「っ、ではなくてだな。あのサキュバスはカズマを操ってる。じゃなきゃ私があんなことをーー」
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(0) 「あんなことって、お風呂場で何やってたのよ?」
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(0) 後を追うように腰にタオルだけを巻いたカズマがやって来た。……おい。嘘だろ。
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(0) 「まだ何もしてませんけど……」
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(0) サキュバスの発言が完全にダクネスに止めを刺した。全員が察したように石のように固まった。つまりだ。状況的にそういうことしか考えられないよな……
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(0) 「アクア、とりあえず結界を外してこいつを解放してやれ」
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(0) 「悪魔を野放しにするの?!」
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(0) 「生憎職業柄、悪魔より外道な奴を見てきてる。それに今はそれどころじゃないだろ」
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(0) 最後の言葉を受けてアクアは結界を解除する。サキュバスは流し目に俺を見ながら窓に飛び立った。部屋着……まぁ、また行った時でいいか。
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(0) こうして内輪揉めの夜は更けていったーー