行別ここすき者数
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履歴はこちら。
(0) ここは宿の3階奥の部屋、ベッドの上には鼻提灯を膨らませながら『チンコォ……』と寝言をほざきつつグースカピーと幸せそうに寝る黒髪少女がそこにいた。
(0) 時刻は朝の7時丁度、ステータスウィンドウが突然開き、少女の脳内にファンファーレの音を叩きつける。
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(0) 「ふぉぉぉ!? なんだ!! 朝か!!……チンコの良い夢見てたのに……」
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(0) 寝惚け眼で周囲を見るとステータスウィンドウ、通称『ステータスさん』が表示されている。
(0) 内容なんて見なくても分かる、多分『レベルアップ』だろう。
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(0) レベルアップしました!確認しますか? yes/no ×
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(0) ほらこれだ、またこれだ、レベルなんて上がって無いのにレベルアップしている摩訶不思議なステータス、それにいつものツッコミを入れつつ起き上がる。
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(0) 「レベル上がってねぇからな? ステータスさんおはよう、今日も良い天気だなぁ……」
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(0) カーテン越しにでも見える朝日からステータスへと視線を移す。
(0) 画面の『no』をタッチしようと人差し指を伸ばしてウィンドウを消そうとした。
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(0) グイッと動いて避けられた。
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(0) 「なんでだよ!! 消させろよ!! 朝の挨拶しただろうがよぉぉぉ!!」
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(0) 朝っぱらから叫びつつステータスに言ってみるも無駄みたいだった。
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(0) 心が籠ってないタッチはNGです。
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(0) 「知らねぇよ!! なんだよ心を籠めろって、訳わかんねぇよ!! なぁ、最近ステータス見てないから見せてよ……」
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(0) 半分諦めの気持ちでお願いしつつ触ろうとして。
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(0) また避けられた。
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(0) 「またかよ!! ステータスが避けてんじゃねぇよぉぉぉ!! 触らせてくれよ、俺のステータスだろ!?」
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(0) 朝っぱらから叫びつつ立ち上がり身体ごと腕を伸ばすが避けられてまた表示が変わる。
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(0) 変態! その厭らしい手付きでタッチして乱暴するつも
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(0) 「見切れてんだよぉぉぉ!! ステータスさぁぁぁん!? ちゃんと改行しろよ!? 見えねぇよ!!」
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(0) ここ最近ちょっと楽しくなってきたステータスさんとのやりとり。
(0) ステータスさんも間違えた様でその後『りでしょう!薄い本みたいに!!』と改行して表示された、やらねぇよ……。
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(0) ……朝から疲れた……まぁ良いや、さっさと着替えよう、そうしよう。
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(0) 机の上で大人しく鎮座するスキルで実験しまくったピンク色に変わったふぐり。
(0) 立ち上がって、その隣にある着替えに手を伸ばす。
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(0) そこにあるのは少し前に戻って来たおばあちゃんに買って貰った大事なスーツ。
(0) シャツに腕を通して背広を着て見るとピッタリだった。
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(0) 服屋でサイズ調整して貰ったおかげだろう。
(0) 160ほどの身長にそれなりに豊満な胸のある身体でも違和感なく着こなせる懐かしのスーツ。
(0) 真新しい洗剤の匂いを感じながら腕と背筋を伸ばしてみると、社会人時代を思い出した……。
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(0) それはいつも、いつも、窓際一歩前だった自分、適当に仕事して『おつかれっすー』と大体定時で帰ってた。
(0) 以上だった、それ以外にはない。
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(0) ……会社の思い出短くないか? まぁ、別に苦労なんてしてないな、うん。
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(0) と自問自答で頷きながらも特に思い出深い物はない、強いて言うなら上司に連れられて行ったノミニケーションくらいだろう。
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(0) 飲んでは毎回『ゲロゲロオエー』する上司に慣れた手つきで介抱する俺。
(0) それなりのメンタルを持つに至ったのはこのせいだろう。
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(0) まだ頭はボッーとしているが自身のケツを撫でながら窓へと向かう。
(0) 昨日の朝から夜に掛けてずっと馬車に乗っていてケツがまだちょっと痛い。
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(0) 「馬車で1日掛けてここまで来たもんなぁ……大変だったなぁ……」
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(0) 途中で馬車酔いして『ミソギ、ゴメンね? ありがゲロゲロオエー』するフレイ。
(0) その隣でスヤスヤ眠る図太いアイギス、妬ましく思う俺は慣れた手つきで介抱してた。
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(0) 昨日の出来事を思い返してカーテンを開けると眩しい朝日で目が眩む。
(0) 手で日光を遮って、3階の宿の窓から見える景色は武器屋防具等のお店が所狭しと立ち並ぶ。
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(0) 「おー、今更実感湧いて来たな、鉱山都市アステロイドだっけ、スゲーなぁ……ファンタジーの鉱山都市って感じだなぁ」
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(0) 今、俺達がいる場所は貴重な鉱石や鉱物が良く取れる鉱山が近くにある都市『アステロイド』。
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(0) この大きな都市の特徴は、何といっても武器や防具の品質だろう。
(0) 近場の鉱山から搬入した様々な鉱石や鉱物を織り交ぜた装備品。
(0) それは中級冒険者から上級冒険者のステータスであり羨望の的。
(0) ドル大陸一の鍛冶職人が作り上げた最高品らしく、有名すぎてちょっとやそっとじゃ手が出ない。
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(0) まぁ、フレイの受け売りですが、勿論その自慢を褒めちぎりましたとも。
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(0) 「んじゃ、行くか―」
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(0) ポーチの中にふぐりを入れて荷物を持って部屋を出る。
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(0) ……これからクエストだ、今日も応援頑張ろう。
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(0) 他力本願、そんな思いを胸に宿を出る。
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(0) ◇
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(0) ダラダラと平坦な岩場を歩く俺達は、トカゲみたいなモンスターを探している。
(0) 思い返すのは鉱山都市のギルド内での事。
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(0) フレイが『アタシが炎の魔術で倒すから見ておきなさい!!』と小さなお胸を張って依頼書を引っぺがして来た。
(0) そのクエスト内容は『ダイナマイーター討伐』と言う何とも物騒な名前を持つトカゲのモンスターのクエスト討伐。
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(0) もう探して彷徨い2時間位歩いているのだけど、一向に現れないモンスターに疲れ始めた俺は、愚痴りながら二人に聞いてみた。
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(0) 「……まだ歩く? 結構疲れてきたんだけど……」
(0) 「えぇ、もうすぐよ、あと少しだから頑張りなさい?」
(0) 「そうですよミソギさん! もうちょっと頑張りましょう!!」
(0) 「二人共、元気だなぁ……」
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(0) 俺は、真新しい皮鎧を着たアイギスに背中を押して貰いながら、息を切らせてひたすら歩く。
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(0) 「それでそのダイナマイーターって何なのさ、トカゲって聞いても良く分からんのだけども」
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(0) 先頭を歩く、物知りフレイに聞いてみる。
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(0) 「ダイナマイーターはね、ダイナマ岩を食べるトカゲよ」
(0) 「うんうん、うん? トカゲが岩食べるの? マジで?」
(0) 「食べますよ? ダイナマイーターはダイナマ岩しか食べませんよ?」
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(0) 補足を入れてくれるアイギスに首を傾げながらとりあえず分かったような素振りで頷いてみた。
(0) 引き続き笑顔で語り出すフレイに耳を澄ませて聞いてみる。
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(0) 「それで、鉱山内の発破作業で良く使われるダイナマ岩を食べちゃう害獣みたいな扱いのダイナマイーターを討伐しましょうってクエストね。あまり強くないから大丈夫よ」
(0) 「発破って事はダイナマ岩って爆発でもすんの?」
(0) 「しますよ? ダイナマ岩は爆弾なんですよ、良く鉱山の中で使われてますね!」
(0) 「……爆弾落ちてるファンタジーやべぇな……あとダイナマってなんなんだ……」
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(0) 俺はそう呟きながら、ダイナマダイナマ言われ過ぎてダイナマが分からなくなって来た。
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(0) 続けて説明してくれるフレイ。
(0) 「ダイナマ岩は赤いスイッチが付いてるから分かりやすいわ、ほら……これとか、あれとか、それとかね、これを食べるダイナマイーターが近くに居るはずよ? 擬態してるから分かりにくいけど」
(0) 「擬態もするのか、カメレオンみたいだなぁ……」
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(0) フレイの指を差す方向を見ると確かに赤いスイッチが付いて居る岩が無数にある。
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(0) スイッチ付いてる岩とか、その岩食べるトカゲとか、ツッコミたいけど異世界なんだ。
(0) その程度ではインパクトが足りない。
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(0) 俺はそんな事を思いながら歩いていると、足が石に引っ掛かり転んでしまった。
(0) もうそれはツルンと擬音をが出るくらいに……。
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(0) そして、受け身を取ろうとした俺の手を伸ばした先には、小さなダイナマ岩のスイッチが何故かある。
(0) 勿論『ポチッ』と言う音が響き渡り、全員が『あっ……』と言う声があがる。
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(0) ……ヤッベッ! ヤっべ!! 押しちゃったよぉ……。
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(0) とか思いながら、四つん這いの俺は、後ろに居る二人へとすぐさま振り返るのだけど。
(0) 「……逃げましょう」
(0) 「はい、逃げましょう」
(0) と、何やら不気味な事を呟いた後、俺の身体を掴み駆け出した。
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(0) 「あああああ……スーツが破けるぅぅぅ……」
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(0) 絶叫を上げる俺に対して、真顔の二人に引きずられるていると『ジジジ……』と導火線に火が付いたような音がする。
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(0) すると突然後方で爆発が起こった。
(0) それはもう、耳をつんざくような大きな爆発。
(0) 小さなダイマナ岩から想像出来ない程の音に、俺は少しだけ顔を青くさせてしまう。
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(0) そしてその爆発は連鎖する。
(0) 至る所から爆発音が聞こえてくるこの状況、まるで新人スタントマンになったかのような感覚に陥ってしまう。
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(0) 「……あああああ、ああああ! すいませ! すいませ! ごめんなさいぃぃぃ!!」
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(0) あまりにも爆発音が怖すぎて、叫びつつ謝る俺。
(0) 二人の声は爆風で、搔き消されて聞こえない。
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(0) その後、無事に逃げ切った俺は二人にそれなりに怒られた。
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(0) ◇
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(0) あの爆発の後、怒られた俺は涙を流しながら土下座ポーズで涙を流している。
(0) 平坦な岩場だった場所は無数のクレーターがあちこちと作られてとんでもない事になっていた。
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(0) 「二人共、ホントにありがとねぇ……俺死ぬかと思った……ごめんよぉ……ごめんよぉ……うっ……うっ……」
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(0) 必至に謝りまくったおかげなのか。
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(0) 「ほらほら、もう大丈夫だからね?」
(0) 「危なかったのですがケガがなくて何よりです! これどうぞ、お水ですよ、ゆっくりのんでくださいね?」
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(0) とフレイに背中を摩られて、アイギスがバッグから取り出した皮の水筒を渡された。
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(0) 怒られたけど何だかんだ優しい二人。
(0) 俺は改心した、もうあんまりパンツをパクらない事を多分、心に……誓う気がしたような事もあるかもしれない。
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(0) つまりあんまりない。
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(0) 「もう大丈夫ね?」
(0) 「ありがてぇ……ありがてぇ……」
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(0) 摩るのを止めたフレイは俺から離れて心配そうに見ている。
(0) ちょっとだけ精神を回復した俺はそう言いつつ座り込み、ポーチから取り出したピンクのふぐりを握り締めて、ギルドカードを眺めて見ると『ダイナマイーター5/5』と書かれている。
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(0) ……あれ? もうクエスト終わりじゃね? ダイナマ岩のスイッチ押したの俺だからダイナマイーター倒したのは俺の功績じゃね?。
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(0) そう、ダイナマイーターは連鎖して爆発したダイナマ岩ごと消し飛んだみたいだった。
(0) つまり俺のお陰じゃね?と考えてしまった。
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(0) 「どうしました? もしかしてお怪我とかされてましたか? 結構強引に引き摺ってしまいましたので……」
(0) 「いや、違う、そうじゃない……水筒返すよ、ありがとう」
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(0) アイギスは心配してくれている、俺は水筒を渡し返す。
(0) そしてゆっくりと立ち上がってギルドカードをフレイとアイギスに見せた。
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(0) 「……クエスト終わったぞ? あの爆発でダイナマイーター倒したぞ、ハハッ! 楽勝だったな!」
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(0) ドヤ顔の俺にフレイからは感情が消えた目で見られた。
(0) アイギスは見下した目で俺を見る。
(0) 俺は瞬時に悟った『これ選択肢を間違えた』と。
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(0) 「すいません……ホント、すいません……ちょっと調子に乗って……痛ひ……痛ひ……抓らないで引っ張らないで、そこはもう回らないし伸びないからぁ……」
(0) フレイに両ほっぺを抓られアイギスに耳を引っ張られた俺はちょっとだけ涙目だ。
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(0) 痛かったけども少しだけ興奮した。
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