行別ここすき者数
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履歴はこちら。
(0) 頭の中で鳴り響くファンファーレの音。
(0) あまりの大音量に驚き目が覚めるとそこはフレイの部屋のベッドの上だった。
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(0) 周囲を見回すとカーテンから朝日が差し込んでいるのが見える。
(0) そしていつの間にかパジャマに着替えていた、多分フレイが着替えさせてくれたのだろう。
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(0) 手をニギニギして身体の不調を確認してみるも体調は万全だった、どこも悪い所はない。
(0) 部屋の中にはフレイの姿はない、もう起きたのだろうか。
(0) まだ眠い目を擦り昨日の記憶を思い出す。
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(0) 「……あの後どうなったんだっけ」
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(0) 正直あまり覚えていない。
(0) お腹が痛くなって『たちゅけて……たちゅけて……』と言った所までしか記憶にない。
(0) その後は多分気絶でもしたのだろうと予想する。
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(0) 徐々に覚醒していく頭。
(0) そして目の前にはステータスウィンドウが表示されている。
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(0) レベルアップしました!確認しますか? yes/no
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(0) なるほど、レベルアップか……。
(0) しかし……。
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(0) 「なんのレベルアップだよ……」
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(0) 起きただけでLvが上がるのなら今頃最強なのでは?。
(0) だけどステータスさんなのだ、多分意味はない事など知っている。
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(0) 起き抜けのまだ寝ぼけてる頭を振って、ステータス画面に手を伸ばし、恐る恐るyesをタッチしてみると。
(0) ステータスウィンドウの表示が変わる。
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(0) サイキョウ・ミソギ Lv1
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(0) 12時05分位
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(0) スキル
(0) ・変質操作
(0) ・痛覚耐性
(0) ・逆腹パンに快感を覚える
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(0) 「……………」
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(0) なんか変な事が書いてある、これは本当にステータスなのだろうか。
(0) ちょっと不安になって来る。
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(0) 俺は逆腹パンに快感を覚えてしまったのか、どんな変態なんだよと思ってしまう。
(0) それと同時に、時間が間違ってないか?とも思ってしまう。
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(0) もう何が何やら分からないが、とりあえず起きなくてはならない。
(0) 俺は、まだ寝ぼけている頭を左右に振って、ベッドから這い出ようとすると、ドアが開く音が聞こえた。
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(0) そちらへ視線を向けると、今日も今日とて可愛らしい、赤髪ポニテのフレイがそこに居た。
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(0) 「あ、ミソギ起きてる? おはよう!! 着替えたら、朝ごはん食べましょう?」
(0) 「……あ、うん。おはよう、すぐ行くよ……」
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(0) 元気なく答えると、フレイは笑顔でドアを閉め、パタパタと足音を響かせて、リビング方面へと歩いて行く。
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(0) ……やっぱり朝じゃねーか……。
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(0) 空中に浮かぶ、ステータスへと視線を向けて言ってやる。
(0) 「やっぱり朝じゃん!! 時間、間違ってるじゃねーかよぉぉぉ!?」
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(0) すると目の前のステータスは、また表示が変わった。
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(0) ------------------------------------------------------
(0) 時差です。
(0) ------------------------------------------------------
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(0) …………。
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(0) 「どこの時差だよ! ここの大陸の時間を表示してくれよ! てかステータスに、時刻を乗せるんじゃないよぉぉぉ!!」
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(0) 起き抜けなのに、テンション高めに魂の叫びをステータスにぶつけるも。
(0) 『細かい事は気にすんなYOー』と表示されている。
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(0) 「…………。細かいのだろうか……、割と大きな事だと思うけど……」
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(0) 何故だろう、朝っぱらから精神がガリガリと削れて行くのが分かる。
(0) 有用なのに無能なステータスさん、もう真剣に構うのは辞めておこうと決心した。
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(0) 『YOー、YOー』とか書いてある、ステータスを無視しながら、ベッドを降りて立ちあがり。
(0) 「着替えるかぁ……」
(0) と、テンション低めで小さく呟いた俺。
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(0) ベッドの横には、着替えと言う名のコスプレ衣装が置いてある。
(0) それは勿論、下着+バニースーツにパンスト付きだ。
(0) ……これしかないのか、これしかないのかぁぁぁ……。
(0) 頭を抱えて、唸るも現実は変わらない。
(0) 女性物の下着を着るのは、ノーパンよりも抵抗はないが……。
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(0) 出来ればフレイの服を借りたいのだけど、ここにバニースーツが置いてあると言う事は、これを着ろと言う事なのだろう。
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(0) バニースーツを手に取って眺める。
(0) 「またこれを着るのか……、俺のスーツないもんなぁ……」
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(0) そう、俺のスーツは、服屋へとサイズ調整に出している。
(0) 金を出してくれたフレイには、感謝しているけど。
(0) なんかこう……、もうちょい違う服とか欲しいなぁ……。
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(0) そう願うが、スーツが返って来るまでバニーガールの服、いやコスプレしかない。
(0) 諦め半分で顔を引きつらせて、パジャマを脱いだ俺は、バニースーツへと白く細い指を伸ばす。
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(0) ……今日は心が折れない事を願いつつ、着替える痴女の俺がここにいた。
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(0) ◇
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(0) 今の俺は、フレイ宅でソファーへと腰掛けて、お茶を飲みながら思案している。
(0) 隣には、この家の主であるフレイが居る。
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(0) 今日は珍しくチンコの事ではなく、魔法の事で頭がいっぱいだった。
(0) ファンタジーと言えばやはり魔法だろう。
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(0) フレイは昨日のスライム達との戦闘で、火の玉を出していた。
(0) ゲームで言う所のファイヤーボール的な奴。
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(0) 勿論俺は、滅茶苦茶興味をそそられたのだけど、昨日はそれどころではなかった……。
(0) だけど今なら大丈夫だ、たっぷり睡眠を取って気力も精神も……、朝の事は忘れてしまおう、そうしよう。
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(0) お茶をズゾゾゾッっと啜りながら『ふぅ』と一息ついて、フレイへと魔法の話を振ってみる。る。
(0) 「なぁフレイ、魔法? みたいなのを、俺に教えて欲しいんだけども……」
(0) 「魔法? アタシは魔法は使えないわよ。魔術なら使えるわ?」
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(0) ……ほほほう、魔法じゃなくて、魔術なのか。
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(0) 俺には違いは分からないけど、どっちも一緒位に興味がある。
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(0) 「そうなのか、それじゃー、その魔術を教えてくれよ。ちょっと興味あってさ!!」
(0) 「いいわよ? 火の魔術なら、教えてあげるわよー」
(0) 「マジか、やった!!」
(0) その言葉を聞いた瞬間小さくガッツポーズをしてしまう。
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(0) ちょっとだけでも良い、魔物を倒せるような火力じゃなくてもいい。
(0) ほんの少しだけ火の玉を出せたのならそれで満足だった。
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(0) 出来ない事が出来るようになる快感はチントレで充分理解している。
(0) ……あの感覚は忘れられない。
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(0) そしてここはファンタジー世界。
(0) 日本で生きている限りでは絶対不可能な『魔術を使える』と言う可能性に心を躍らせてしまうのも無理はない。
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(0) フレイが立ち上がり、お茶を啜る俺に向かって。
(0) 「それじゃー魔術書持って来るわ?流石に町の中で魔術は危ないから、今日は、草原まで出かけましょう?」
(0) そう言うと、違う部屋へと歩いていくフレイ。
(0) それに『おねしゃーす!!』と手を振ってそのまま待つ。
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(0) 「……今日は良い事ありそうだなー」
(0) 残された俺は、茶柱が立つお茶を飲み干し、ご機嫌だった。
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(0) ◇
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(0) 町から歩いて徒歩10分の草原、そこに俺とフレイは来ている。
(0) 周囲にはスライムが、ぴょんぴょん跳ねる光景が見えるのだけど、こちらに来る様子はない。
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(0) フレイはページ数が少ない赤い魔術書を持ち、俺は興味津々な様子でそれを眺めている。
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(0) 俺へと向き直ったフレイは、魔術書を掲げながら。
(0) 「ここまで来たら充分ね!! ……それじゃーやりましょうか。まず『プチファイヤー』から行きましょう?」
(0) 「フレイ先生、おねがいしまーす!!」
(0) お願いされたフレイは、上機嫌になりつつ、何もない場所に右手を前に突き出した。
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(0) そして『プチファイヤー』と短く唱えたその瞬間。
(0) 右手から、火の玉が真っ直ぐと草原を駆けていく。
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(0) あまりにも簡単なその行為に、拍子抜けしてしまう。
(0) 「なんか簡単そうだな、てか魔術書いるの?」
(0) 「これ位ならね? アタシは魔術書とか要らないのだけど、初心者のミソギは必要でしょう?」
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(0) ……あ、なるほど、そういう事か。
(0) つまり、フレイは魔術書が無くても使えて、初心者の俺には必要なのか。
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(0) うんうんと頷きながら。
(0) 「まぁ、確かに、俺は初めて魔術とか使うしなー」
(0) 「ええ、そうよ? だからこれが必要なのよ。……はい、これを持ちなさい?」
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(0) 俺は、フレイから薄い魔術書を手渡される。
(0) そして、すぐさま本を開いてみるも。
(0) ……なんだこれ、わっかんねぇ……。
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(0) パラパラと読み進めるも、肝心の中身が理解出来ない。
(0) 全て知らない文字や、魔法陣みたいな絵で埋め尽くされている中身。
(0) なんかちょっと不安になってきた。
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(0) 「これ、内容が分かんないんだけど……」
(0) 素朴な疑問にフレイは、自信満々な表情で答える。
(0) 「大丈夫よ? 魔術書って、魔術が使えない人でも使えるようになる物だから……。中身は魔術の術式なのよ、覚えきったら、詠唱だけでも使えるようになるわ?」
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(0) ……!?。
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(0) 「……え˝? これ全部覚える必要あるのか、マジかよ、フレイって凄いんだなぁ……」
(0) 「ふふん! 当たり前じゃない!! それよりも、それに念じて言えば良いのよ『プチファイヤー』って」
(0) 小さな胸を張って自慢気になるフレイ。
(0) もうちょい胸があれば……、完璧だと思う。
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(0) それにしても……。うーむ、便利だけども……。
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(0) 「……後でさ、文字と一緒に教えてくれよ。よーし、んじゃ、やってみる!」
(0) 「わかったわ? 意識するのは魔術を使う方の手よ。後は勝手に魔術書がやってくれるからねー」
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(0) それを聞いた俺は、頷きながらフレイと同じように右手を突き出してみると。
(0) 初めての魔術にちょっとドキドキしてる。
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(0) 狙う先は、誰も居なさそうな草原。
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(0) 目を瞑り、意識を集中させると、先ほどまで高ぶっていた心が冷静になっていくのが分かる。
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(0) ……突然、魔術書と手の平が、同時に熱くなる感覚に陥ってしまう。
(0) それは、熱い塊がそこにある感じ。
(0) あとは『プチファイヤー』と発言すれば良いだけだろう……。
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(0) 初めての感覚に戸惑ってしまうが、これで俺も魔術が使える事が出来る。
(0) 冷静になった心がまた高ぶって来る。
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(0) ……よし、やってみよう。
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(0) 「プチファイヤー!!」
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(0) 目を見開き、詠唱した瞬間、何もない空中にステータスウィンドウが見えた。
(0) ……とんでもなく嫌な予感がした。
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(0) 火の初級魔術を獄炎魔法に変換しました。おほぉ!!。
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(0) 「……え˝?」
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(0) 突如右手から、黒炎が噴き出した!!。
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(0) ……あ˝っ!?!?!?。
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(0) 俺の右手から、発現したのは地獄の業火。
(0) 目の前に広がる光景は漆黒の色彩。
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(0) それは、俺の知っている赤色の炎ではなく……。
(0) ……どこまでも全てを塗り潰していくような、漆黒の色。
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(0) 広範囲に広がるそれは、全てを焼き尽くす勢いで草原へと発射された……。
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(0) 「ちょっ!」
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(0) 慌てて手を上にあげるのだけど、もう遅い。
(0) 草や木や土、果てには、無害なスライム等、様々な生命を飲み込み、周囲を漆黒の色に染め上げた。
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(0) そして地面に着弾したのだろう、突如聞こえる爆裂音と閃光。
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(0) ……あああああぁぁぁぁ……。
(0) 心の中で叫びながら俺は、目を瞑り、耳を塞いでしまった。
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(0) 猛烈な突風が吹き抜けて、俺の身体を叩きつけられ転んでしまう。
(0) それはもうコロコロと……。
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(0) ……どこも痛くはないのが幸いだった。
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(0) 恐る恐る目を開けて、立ち上がると、目の前の全てが融解している。
(0) それはもう、ドロドロと……。
(0) 地面は赤い線を帯びて、所々黒く変色しててヤバイ。
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(0) 「………」
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(0) 唖然と見つめる俺の隣で、ステータスウィンドウが変わる。
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(0) また何かやっちゃいました? おっほっほほぅ!!。
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(0) 俺の初魔術は初魔法へと昇華した瞬間だった。