スピリットが遊戯王モンスターになってた件 (ドロイデン)
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1 はじまりの鳥武神
第一羽 羽ばたく鳥武神


「ここは……どこだ?」

 

 俺、風山蓮は今絶賛迷子である。いやね、さっきまでバトスピのショップ大会出てたのまでは覚えてるんだよ、そのショップから出た途端、どういうわけか見たことのない町の風景になってたという。うん、どういうこと!?

 

「それとなんか左腕なんか重いし……って」

 

 違和感を感じてよく見てみれば、あらまビックリ、見たことあるような機械が付いてるではありませんか。

 

「まさか……」

 

 俺は恐る恐る機械を起動させると、やはりというかホロボードと液晶画面が光だした。まさかの遊戯王である。

 

「いったい……どういうことだよ」

 

 

 

 

 もう訳がわからなくなった俺は街のネットカフェへとやって来て、とにかく調べた。何がどうなってるのかさっぱりわからない俺にとって重要なのは情報だった。

 

(街の名前は住んでた所と同じ……そんで、やっぱり遊戯王がこの世界のメインカードゲーム、か)

 

 いくら調べてみてもバトスピのバの字も検索に掛からない。まぁそれに関しては仕方ないのかもしれないが、問題は

 

(ただデッキだよな……)

 

 そう、一番の問題がそれだった。何せ調べてみれば、大幅に効果が変わっていたり、『死者蘇生』とかが入ってたりしてるものの、だいたいが俺がバトスピで使ってるデッキのカードそのものだった。

 

(まぁ動き自体はそこまで変わるものでもないし、あとはルールとの差を埋めないと……)

 

 まぁ遊戯王のルール自体は把握してるから、そこまで問題になるとは思ってもないが、まぁ覚悟はしておかないとな。

 

「……そういや、俺の家ってどうなってるんだ?」

 

 今思い出したが、一応こっちに来てまだ数時間、現在進行形で自宅の場所が分からなくなっていることに気がついた。デュエルディスクにそんなのメモられてないかと確認すると、一応自宅(調べてみるとマンションの一室で、どうやら独り暮らし用の学生寮だった)の住所が書かれていた。

 

 既に夕方なため、自宅(仮)に向かうことにした俺は、受付で使用料を払って外に出ようとしたその時、ドアがいきなり割れた。

 

「な、なんだ!!」

 

 まさかの事態に俺が驚いて現場を見ると、そこには見るからに不良、ヤンキーといえる服装の男に一人の青年が倒されていた。

 

「テメェ!!人にぶつかっておいてなんだオラァ!!」

 

「す、すみません!!」

 

 どうやらただ単に喧嘩をしてるようだが、まぁ目の前でヤられて嬉しいものではない。

 

「店員さん、早く警察呼びなよ……」

 

 俺が目の前の店員にそう言うが、気の弱そうな店員は頭をブンブン振るっていた。

 

「む、無理ですよ!!相手は有名政治家のご子息なんです!!」

 

「あぁ、そういうわけね……」

 

 仕方ないというかなんというか、どこの世界でも警察というのは役にたたない代物らしい。仕方ないと思って俺は不良の方へ近づいていく。

 

「お兄さん、そこのところで勘弁してあげたらどうですか?」

 

「あァ?なんだテメェは!?」

 

「いたって普通の一般人ですよ。ほら、男の人も土下座してるみたいですし、これ以上やったら世間的にも……ね?」

 

「……チッ、次はねぇぞ」

 

 俺の言葉が通じたのか、不良は舌打ちと共に青年に軽く脅して受付の方へ向かっていく。

 

「おい、お前……」

 

「ん?なんです?」

 

「少しむしゃくしゃするんでな……デュエルしろよ」

 

 はい、呼び止められてお約束のデュエルしろ宣言ですね、分かります。やっぱりこういうのに絡んだらろくなことにならないな~。

 

「……別にいいですけど」

 

「へへ、おい店員!!ソリッドヴィジョンルームの用意しな!!」

 

 不良はそう言って財布からカードを取り出して渡すと、店員はへこへこと受け取って後ろに向かっていく。そして出てくると右手には部屋の鍵を持っている。

 

 店員に連れられて来たのは、それなりに大きな部屋で、背景に荒れた都市のような感じだった。

 

「先行はテメェにやる……好きなように掛かってきな」

 

「そうですか……それでは」

 

「「デュエル!!」」

 

蓮 LIFE 8000

不良 LIFE 8000

 

「俺のターン……俺は『森林のセッコーキジ』を攻撃表示で召喚!!」

 

『森林のセッコーキジ』 ☆1 風 A 800

 

 召喚し参上したのは、アニメでも序盤はかなり活躍した『セッコーキジ』、うん、やっぱりかっこいい!!

 

「さらに俺は永続魔法『神樹の切り株都市』を発動!!カードを一枚伏せ、エンドフェイズに『切り株都市』の効果発動!!山札の一番上を確認し、それが風属性モンスターならば特殊召喚できる。召喚しない、または違うカードならばデッキトップに戻す。……カードは風属性の『ゲニン・スズメ』のため、フィールドに特殊召喚!!」

 

『ゲニン・スズメ』 ☆1 風 A 500

 

「これで俺はターンエンド」

 

蓮 LIFE 8000 手札二枚

フィールド

『新樹のセッコーキジ』 ☆1 A 800

『ゲニン・スズメ』 ☆1 A 500

『神樹の切り株都市』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 序盤にしてはパワーソースが少ないが……まぁ展開できるだけマシだろうな。

 

「俺のターン!!……随分と見たことのないモンスターだが、俺にはそんなの関係ねぇ!!俺は魔法カード『暗黒界の取引』を発動!!互いに一枚ドローし、その後一枚墓地へ送る」

 

蓮 手札 2→3→2

不良 手札 5→6→5

 

「墓地へ送られた『暗黒界の術師 スノウ』の効果発動!!デッキから『暗黒界の門』を手札に加え、発動!!さらに『門』の効果で、墓地の『スノウ』を除外し手札の悪魔族モンスター、『暗黒界の龍神 グラファ』を墓地へ送り、一枚ドロー!!さらに『グラファ』が効果で墓地へ送られたとき、相手フィールドのカードを一枚破壊する!!俺は『セッコーキジ』を破壊!!」

 

「くそ!!すまない、『セッコーキジ』」

 

「そして手札の『暗黒界の番兵 レイジ』を通常召喚。そして『レイジ』を手札に戻して、墓地の『グラファ』を特殊召喚!!」

 

『暗黒界の龍神 グラファ』 ☆8 闇 A 2700

 

「『暗黒界の門』の効果で、『グラファ』の攻撃力は300アップ!!バトルだ!!『グラファ』で『ゲニン・スズメ』を攻撃!!」

 

「手札の『神帝マッハホウオウガ』の効果発動!!バトルフェイズにフィールドのカードを一枚デッキに戻すことで、手札から特殊召喚できる!!俺は『ゲニン・スズメ』をデッキに戻す!!」

 

『神帝マッハホウオウガ』 ☆5 風 D 2500

 

「構うもんか!!バトル続行!!」

 

「まだだ!!速攻魔法『ストームアタック』を発動!!自分フィールドの守備表示モンスターを攻撃表示にし、相手フィールドのモンスター1体を守備表示に変更する!!」

 

『マッハホウオウガ』 D 2500→A 2000

『グラファ』 A 3000 → D 1800

 

 いきなり吹き荒れた突風によって、グラファは膝をついて座り込んでしまう。

 

「ち、俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

不良 LIFE 8000 手札三枚

フィールド

『暗黒界の龍神 グラファ』 ☆8 D 1800

『暗黒界の門』 フィールド魔法

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……俺はカードを二枚伏せ、ユニオンモンスター『オオヅツナナフシ』を召喚!!」

 

『オオヅツナナフシ』 ☆2 風 A 500

 

「『オオヅツナナフシ』が召喚に成功したとき、自分の手札を全て捨て、相手の手札の枚数分ドローする」

 

「チッ……俺の手札は三枚」

 

 とりあえず引いたカードを確認すると、俺は少しだけにやりとした。

 

「『オオヅツナナフシ』は風属性モンスターに装備できる。俺は『マッハホウオウガ』に装備し、その効果で攻撃力及び守備力を200アップ!!」

 

『マッハホウオウガ』 A 2000→2200 D 2500→2700

 

「バトルだ!!『マッハホウオウガ』で『グラファ』を選択攻撃!!」

 

「ぐぉ!!」

 

 『オオヅツナナフシ』の砲弾がグラファの土手っ腹に風穴をあけ、大爆発と共にフィールドから消え去った。

 

「ちぃ、だが『グラファ』は墓地にいる限り甦る!!」

 

 不良は当然のように言うが、俺にとってはそれが一番困る。何せこっちはバトスピ勢だ、

 

「俺はエンドフェイズに入り、永続魔法『神樹の切り株都市』の効果で、デッキを一枚めくる!!……カードは『ゴクラクチョー』、風属性モンスターのため特殊召喚!!」

 

『ゴクラクチョー』 ☆4 風 D 1800

 

「『ゴクラクチョー』が特殊召喚に成功したとき、デッキから風属性・鳥獣族モンスターを手札に加える。俺はこれでターンエンド」

 

 

蓮 LIFE 8000 手札四枚

フィールド

『神帝マッハホウオウガ』 ☆5 A 2200

『ゴクラクチョー』 ☆4 D 1800

『オオヅツナナフシ』 ユニオン(マッハホウオウガ)

『神樹の切り株都市』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「俺のターン!!……俺は二枚目の『暗黒界の取引』を発動!!」

 

「この瞬間、ユニオンされてる『オオヅツナナフシ』の効果発動!!相手がドローフェイズ以外でドローしたとき、このモンスターの表示形式を変更できる!!」

 

「んな!!(これじゃあ奴にダメージをあたえられねぇじゃねぇか……!!)」

 

『マッハホウオウガ』 A 2200 → D 2700

 

蓮 手札 4→5→4

不良 手札 3→4→3

 

「墓地へ送った『暗黒界の狩人 ブラウ』の効果発動!!デッキから一枚ドロー……さらに俺は魔法カード『暗黒界の雷』を発動し、伏せカードを一枚破壊し、手札を一枚捨てる」

 

「ぐ……(『ミラーフォース』が破壊されたか)」

 

 数少なく入っていた本来のカードが破壊されて少し悔しく思うが、まぁ仕事しないと言われてるあれだからな、仕方ないと割りきる。

 

「墓地へ送った『暗黒界の武神 ゴルド』は効果で墓地へ送られたとき、特殊召喚する!!現れろ『ゴルド』!!」

 

『暗黒界の武神 ゴルド』 ☆5 闇 A 2300→2600

 

「俺は再び『レイジ』を召喚し、こいつを手札に戻して『グラファ』を特殊召喚!!バトルだ!!俺は『ゴルド』で『ゴクラクチョー』を、『グラファ』で『マッハホウオウガ』を攻撃!!」

 

「ぐ……ユニオンされている『オオヅツナナフシ』をリリースして、『マッハホウオウガ』の破壊を無効にする!!」

 

 金色の悪魔の鉄拳によって、俺のモンスターは一撃で吹き飛ばされる。

 

「俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

不良 LIFE 8000 手札一枚

フィールド

『暗黒界の龍神 グラファ』 ☆8 A 2700

『暗黒界の武神 ゴルド』 ☆5 A 2300

『暗黒界の門』 フィールド魔法

伏せカード二枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……ついでにファイナルターン!!」

 

「んな!!」

 

 俺の宣言に、不良はあり得ないと目を見開く。

 

「ふ、ふざけんな!!テメェの場には攻撃表示でも2000の『マッハホウオウガ』だけじゃねぇか!!」

 

「確かにな、けど、俺の切り札はお前のモンスターを圧殺する!!俺は魔法カード『死者蘇生』を発動!!墓地より蘇れ『ゴクラクチョー』!!」

 

『ゴクラクチョー』 ☆4 風 A 1000

 

「『ゴクラクチョー』の効果でデッキより風属性・鳥獣族モンスターを手札に加える。さらに魔法カード『トランスターン』を発動!!『ゴクラクチョー』をリリースして、デッキよりレベルが一つ上の鳥獣族モンスターを特殊召喚する!!」

 

 俺がデッキからそのモンスターを選択すると、耳に響くようにそのモンスターの鳴き声が谺する。

 

「疾風を纏いし武神よ、天高らかに翼を広げ、その爪で敵を裂け!!現れろ、『鳥武神シシグイ』!!」

 

『鳥武神シシグイ』 ☆5 風 A 500

 

 現れたのは黒い翼に白い鬣を纏った巨大な鳥がフィールドに舞い降り、巻き起こる暴風を体が襲う。

 

「攻撃力500?そんなモンスターでなにができるってんだ!!」

 

「まぁ待てよ、こいつの本気はここからさ、攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚に成功したとき、手札の速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動!!俺は『シシグイ』を選択し、デッキから『シシグイ』を二体特殊召喚する!!」

 

「だが、その効果によって俺もデッキから『グラファ』を選択して特殊召喚する……そんな雑魚モンスターでなにができるってんだ!!」

 

 まぁ確かに、バトスピの世界でもこのモンスターを侮る人間は数多くいたけど、このモンスターの最大の強みは三体揃う事にある。なぜなら

 

「『シシグイ』のモンスター効果!!自分フィールドの鳥獣族モンスターの攻撃力は、フィールドの風属性モンスター1体につき200アップする!!」

 

「そんなの関係……いや、ちょ、ちょっと待て、テメェのフィールドには三体の『シシグイ』が居やがる……てことはつまり……」

 

 漸くこいつも気づいたみたいだ。このモンスターの一番厄介なところに。

 

 『鳥武神シシグイ』のステータスはお世辞にもそこまで強いものではない。パワーも低ければアタッカーとしても微妙、バトスピではコストが低いだけのXレアと思われていたことも多々あった。

 

 けどその真価は『シシグイ』が複数体フィールドに存在することで輝く。何せフィールドに風属性(バトスピでは緑だが)がいれば居るほどに攻撃力は上昇し、複数いればその数値は二倍、三倍になる。これによって、数押しデッキならば最高峰の火力となるモンスターなのだ。

 

「俺のフィールドには、『シシグイ』が三体に『マッハホウオウガ』……全部属性及び種族は風属性・鳥獣族、よって攻撃力は200×4×3……2400アップする!!」

 

「さ、させるか!!永続罠『スキルドレイン』を発動!!LIFEを1000支払い、フィールドのモンスターの効果を全て無効にする!!」

 

不良 LIFE 8000→7000

 

「これでなんとか……」

 

「甘い!!魔法カード『ハーピィの羽箒』を発動!!相手フィールドの魔法・罠カードの全てを破壊する!!」

 

「そ、そんな!!ミラーフォースまでが!!」

 

「さらに俺は伏せカード『手札抹殺』を発動!!互いに手札を全て捨てて、捨てた枚数ドロー!!」

 

蓮 手札 2→0→2

不良 手札 1→0→1

 

「さらに魔法カード『貪欲な壺』を発動!!『オオヅツナナフシ』、『ゴクラクチョー』、『セッコーキジ』、『ゲニン・スズメ』、『マッハホウオウガ』をデッキに戻して二枚ドロー!!」

 

「くそ、『抹殺』で墓地に送ってやがったのか!!」

 

 そうだ。『ゲニン・スズメ』と二枚目の『マッハホウオウガ』は『ゴクラクチョー』の効果でサーチしていたのである。

 

「よし、俺は永続魔法『一族の結束』を発動!!墓地にあるのは鳥獣族のみのため、攻撃力が800アップ!!よって攻撃力は……」

 

『シシグイ』×3 A 500→1300→3700

『マッハホウオウガ』 A2000→2800→5200

 

「そしてラスト!!手札から『ケンゴーキジ』を通常召喚!!このモンスターも属性及び種族は風属性・鳥獣族、よってフィールドのモンスターの攻撃力はさらに600アップ!!」

 

『ケンゴーキジ』 ☆3 風 A 1500→2300→5300

『シシグイ』×3 A 3700→4300

『マッハホウオウガ』 A 5200→5800

 

「バトルだ!!『シシグイ』三体で、『グラファ』三体を攻撃!!迅雷のストームブリット!!」

 

「ヌァァァァ!!」

 

 『シシグイ』の翼による連激が『グラファ』の鈎爪とぶつかり合うが、『シシグイ』の起こした風によって身動きを封じられた巨龍の悪魔は、巨鳥の爪によって頭を模擬落とされて爆発した。

 

不良 LIFE 7000→5400→3800→2200

 

「とどめだ!!『マッハホウオウガ』で『ゴルド』を攻撃!!」

 

「グァァァァァ!!」

 

不良 LIFE 2200→0

 

 

「よし、とりあえず勝利!!」

 

 俺はデュエルディスクをもとに戻すと、対戦相手の不良に近寄る。さすがに攻撃力が6000以上のモンスターのパワーに吹き飛ばされたのか、彼はぺたりと座り込んでいる。

 

「おい、立てるか?」

 

「お、おう……」

 

 未だに状況が呑み込めないのか、不良は戸惑いながら俺の手を取って立ち上がる。

 

「あ、……あの……凄かったっす……」

 

「アハハ、まぁ今回は俺が勝ったけど、次はどうなるか分からないからね、君なら僕にだってすぐに勝ち越せるようになるさ」

 

「そ、そんなの……無理ですよ、だって……」

 

 彼が弱気にそういうが、俺はため息をついて軽く頭にチョップを入れる。

 

「別に負けたからって命が取られるわけでもないんだ、負けたならその理由を考えて、次勝てるように調整する、カードゲームのお約束だろ?」

 

「…………!!」

 

「まぁもっとも、他人が知らないカードで勝った俺が言うことでも無いけどね」

 

 俺はそう言って彼の肩を軽く叩いて部屋を去ろうとする。

 

「あ、あの!!」

 

「ん?」

 

「名前……聞かせてくれないすか?」

 

 彼が真剣にそう聞いてくる。別に誤魔化しても良いのだろうけど、それをしたらいけない気がして……

 

「風山蓮……一応高校二年生。名字呼びじゃなければなんとでも読んでいいさ」

 

 俺がそう言うと、彼は途端に畏まるように頭を下げた。え?なんで?

 

「蓮さん……いえ、連の兄貴と呼ばせてください!!」

 

「あ、兄貴!?ちょ、ちょっと待て!?いったいなんでそうなる!!」

 

「あ、兄貴に着いていけばもっと強くなれると思うんです!!お願いします」

 

「何でそうなる!!」

 

 俺は慌ててデュエルフィールドから出ようとすると、彼はすがり付くように俺の足にしがみついた。

 

「お願いします!!連の兄貴!!」 

 

「兄貴って言うな!!ていうか離れろ―!!」

 

 ……結局、話したところ同じ学校の同級生だったらしく、普通に友人として接するという条件でなんとか離してもらい、俺は舎弟を一人手に入れた。……理不尽だ……。




オリカについては纏めてから活動報告にあげたいと思います。


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第二羽 君臨する悪魔龍

「はぁ……」

 

「どうしたんすか、蓮の兄貴」

 

「兄貴って言うな……というか……うん、周りからの視線が痛い」

 

 やぁ、皆さん風山蓮です。今絶賛、クラスメイトからの視線に耐えています。

 

 なぜこうなったのかというと、昼休みになって食堂に行ったら、昨日の不良こと不動島亮(最初に名前を聞いたときは笑いそうになった)が着いてきていて、彼いわく『兄貴の飯ぐらい奢ります』ということで、あいつに豚カツ定食を奢ってもらい一緒に食べてる。ここまでは別にいい。というか俺には全く非がない。

 

 だが、問題は目の前にいる亮だ。というのもやはりというか学校でも一匹狼の不良と認知されていたらしく、その彼が俺にペコペコしてるのを周りが驚いているという感じだった。しかもそのせいで俺にまで奇異の目を向けられてる。食べづらいとしか言いようがない。

 

「……隣いいかな?」

 

 と、いきなり女子の声が聞こえたと思い振り替えると、そこにはボーイッシュというのがよく似合う黒のウルフカット美少女がそこにいた。

 

「ん?あぁ別に構わないよ」

 

「ありがとう」

 

 そう言って少女は俺のとなりに座り、手に持っていたホルモン定食に箸をつける。

 

「…………」

 

「……?どうかした?」

 

「あ、いや……女の子が学食でホルモン食べるなんて思わなくて……」

 

 それに同意するように亮も頷く。確かにホルモン女子というのは聞いたことがあるが、まさか高校生でそんな娘がいるとはおもってもなかった。

 

「別に、ただ食べたいから食べるだけ。他の娘みたいに外見を取り繕うのが嫌いなの」

 

「手厳しいことで、ていうか周りの視線とか気にしないの?」

 

「他人なんてどうでもいい。人は人、私は私、自分がやりたいことを他人にどう思われようが私の自由だし」

 

 そう言いのける少女に若干納得するものの、亮とは別の意味で一匹狼だな、と思う。

 

「……それより、早く食べないと授業に遅れるよ?」

 

「ん?やっべ!!」

 

 俺は急いで残ったカツとご飯を口にかっこむ。亮も同じようで自分のカレーを吸い込むように平らげる。そんな俺らのことを彼女は微笑ましく見ていた。

 

 

 

「兄貴!!デッキの調整手伝ってくれっす!!」

 

 放課後、特にやることもなくぶらぶらしようと思った矢先に亮に声をかけられる。

 

「調整って、お前の『暗黒界』ってどう調整したらいいかわかんねぇよ……」

 

「う……そりゃ兄貴のデッキから見たらそうなんでしょうけど……」

 

 実際、俺が持ってるデッキは基本的にバトスピ時代のカードと、それに対応するかのように入っている汎用カードだけ……はっきりいって調整のしようがない。

 

「あー、ならショップでも行くか?」

 

「良いっすね!!確かそろそろ『古代の機械』のストラクチャが発売する頃合いでしたし」

 

 ということで、亮いきつけのカードショップに来たわけだが……。

 

「なぁ亮、ここって本当にカードショップ?」

 

「そうですよ?」

 

「…………」

 

 まぁ確かに色々とカードがあるからそうなんだろうけどさ、いる人たち全員怖いんですけど!!なにグラサンとかスキンヘッドとかタトゥーとか、ここはヤクザが経営してるのか!?

 

「あ、い゛ら゛っしゃませ~」

 

 しかも店員まで同じだし、いやだもう帰りたい。

 

「うっす店長!!いつものテーブル開いてる?」

 

「おぉ亮じゃねぇか!!……いや、今は別の奴が使ってるな……」

 

 てか、普通に会話してるし……。

 

「ん?そっちのは見かけねぇ顔だが?」

 

 と、ここで俺がロックオンされたし!!なに、なんなの!?

 

「この人は蓮さんっていって、俺にライフ完全無傷で勝った人なんすよ!!」

 

「ほぅ、そいつはすげぇな!!まぁ、確かにおっかない顔のやつばかりだが、根は良い奴ばかりだから、贔屓にしてくれや」

 

「は、はい……考えときます」

 

 俺がそう言うと店長はガハハと、豪快に笑う。確かに根は良い人たちなんだろうな……外見がなければ。

 

 とその時、フリースペースで歓声があがる。何事かと見に行く。話を聞いてみると、なんと二対一の変則マッチで一の方のプレイヤーが完全勝利をしたというのだ。少し驚きながらそのプレイヤーの顔を見ようと体を入れると、そこにいたのは、

 

「……え?」

 

 なんと昼休みに一緒にいた少女の姿がそこにあった。

 

「……あ」

 彼女も気づいたみたいで此方に軽く会釈する。

 

「ん?坊主この嬢ちゃんの知り合いか?」

 

「え、ええ。同じ学校の……」

 

 観客に事情を話すと、観客たちはへぇという風に話している。

 

「……ん」

 

 と、突然彼女が俺の袖を掴んでくる。

 

「…………君、結構強いよね?」

 

「へ?」

 

 そう言われて少しだけ首を傾げる。まぁ確かに昔何度か遊戯王はやってたし、バトスピに乗り換えてからもアニメは見ていた。

 

「……勝負しよ?」

 

「直球ですね、ホント」

 

「私は回りくどいの嫌いって昼休みに言ったでしょ?やるなら直球で潰す」

 

 淡々と言ってるが、その目にはたぎるような炎が燃えている。

 

「……良いぜ、こっちも直球には燃える質なんでな」

 

 俺が言い返すと観客たちがヒューと口笛やらの歓声を鳴らす。俺達はデュエルディスクを展開し、互いのデッキを嵌める。

 

「あ、そういや名前聞いてなかったな、俺は」

 

「風山蓮……私の名前は朱志那蘭」

 

「蘭……か、まぁ良いや、それじゃ」

 

「「デュエル!!」」

 

蓮 LIFE8000

蘭 LIFE8000

 

「先行は私……私は『レッド・リゾネーター』を召喚!!」

 

『レッド・リゾネーター』 ☆2 炎 A 600

 

「『レッド・リゾネーター』が召喚に成功したとき、手札のレベル4『超電磁タートル』を特殊召喚!!」

 

「『レッド』……それに『リゾネーター』……なるほど、パワーデッキか」

 

 俺がそう言うと、蘭は微妙な表情を浮かべる。

 

「確かにそう、私のデッキは、とにかくパワーで勝つデッキだから……」

 

「ち、やりづらいデッキだなおい」

 

 というか俺のデッキに対してはほぼメタだ。何せ俺のデッキの火力は、シシグイが居なければ基本的に皆無といって良いほどに不足してる。

 

「私はレベル4『超電磁タートル』にレベル2『レッド・リゾネーター』をチューニング……シンクロ召喚、来て、『レッド・ライジング・ドラゴン』!!」

 

『レッド・ライジング・ドラゴン』 ☆6 闇 A 2100

 

「『レッド・ライジング・ドラゴン』の効果発動!!このカードがシンクロ召喚に成功したとき、墓地の『リゾネーター』を特殊召喚する」

 

「なるほど、今墓地にいるのは『レッド・リゾネーター』のみ、よってそいつを特殊召喚するわけか」

 

「それだけじゃない、特殊召喚された『レッド・リゾネーター』の効果で、『レッド・ライジング・ドラゴン』を指定して、その攻撃力分ライフを回復するつまり私のライフは」

 

蘭 LIFE 8000→10100

 

「1ターン目でライフ一万オーバーかよ……」

 

「続く、私はレベル6『レッド・ライジング・ドラゴン』にレベル2『レッド・リゾネーター』をチューニング、紅の炎に身を焦がす悪魔の龍よ、今その咆哮で天地を滅せよ……シンクロ召喚!!現れなさい『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』!!」

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』 ☆8 闇 A 3000

 

「……私はカードを二枚伏せて、ターンエンド」

 

 

蘭 LIFE 10100 手札一枚

フィールド

『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』 ☆8 A 3000

伏せカード二枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……!!」

 俺は引いたカードを確認すると少しだけ驚く。というのも、まさかこのカードを引くとは思ってもなかったからだ。

 

「……俺はモンスターを裏守備表示でセット、カードを三枚伏せ、永続魔法『神樹の切り株都市』を発動!!俺はこれでエンドフェイズに入り、『切り株都市』の効果を発揮する。デッキの上のカードを一枚めくり、そのカードが風属性モンスターならば特殊召喚する……」

 

「……ギャンブルカードね」

 

「にべもなく言えばな……めくったカードは風属性モンスター『ジョーニン・トンビ』、よって守備表示で特殊召喚!!」

 

『ジョーニン・トンビ』 ☆4 風 D 2000

 

「俺はこれでターンエンド」

 

蓮 LIFE 8000 手札一枚

フィールド

『ジョーニン・トンビ』 風 D 2000

セットモンスター

『神樹の切り株都市』 永続魔法

伏せカード三枚

 

「私のターン、ドロー。……『スカーライト』の効果発動、相手フィールドのこのモンスターより攻撃力の低い特殊召喚されたモンスターをすべて破壊し、その数×500のダメージを与える」

 

「俺のフィールドには特殊召喚された『ジョーニン・トンビ』がいる……」

 

「よってそのモンスターは文字通り焼き鳥になってもらう……アブソリュート・パワー・フレイム!!」

 

 スカーライトの口より放たれた熱戦によって、空を飛んでいた俺の『ジョーニン・トンビ』は破壊され、その炎が俺を襲う……かと思いきや

 

蓮 LIFE 8500

 

「!!ライフが寧ろ回復してる!?」

 

「俺は罠カード『絶甲氷盾』を発動させてもらった!!自分がダメージを受けたとき、ライフを1000回復し、このターン相手の攻撃を封じる!!」

 

 そう、バトスピでお約束のバーストカードだ。その強さはライフを削らればすぐに発動するという優れもの、例えどんな劣性だろうと、ライフを尽かさずに逆転できる程のカードだ。

 

「さらに破壊された『ジョーニン・トンビ』の効果発動!!フィールドに分身トークンを特殊召喚する!!」

 

『分身トークン』 ☆4 A 1000

 

「……私はカードを一枚伏せる。これでターンエンド」

 

蘭 LIFE 10100 手札一枚

フィールド

『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』 ☆8 A 3000

伏せカード三枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……よし、俺は守備表示のチューナーモンスター、『チューニン・ツバメ』を反転召喚!!」

 

『チューニン・ツバメ』 ☆3 風 A 1500

 

「俺はレベル4の『分身トークン』に、レベル3の『チューニン・ツバメ』をチューニング!!翠の羽纏いし不死鳥よ、今我が願いを翼に込めよ!!シンクロ召喚!!現れろ、レベル7!!『ゲイル・フェニックス・ピーコック』!!」

 

『ゲイル・フェニックス・ピーコック』 ☆7 風 A 2800

 

 現れたのは、緑と白の羽を持った巨大な怪鳥、俺のエースモンスター(シシグイ)並みのプレッシャーを放っている

 

「……シンクロ召喚……」

 

「まだだ!!俺は伏せカードオープン!!永続罠『リビングデッドの呼び声』!!これにより俺は墓地の『ジョーニン・トンビ』を特殊召喚!!」

 

『ジョーニン・トンビ』 ☆4 風 A 1800

 

「さらに俺は手札の『トランスターン』を発動し、『ジョーニン・トンビ』をリリース!!疾風を纏いし武神よ、天高らかに翼を広げ、その爪で敵を裂け!!現れろ、『鳥武神シシグイ』!!」

 

『鳥武神シシグイ』 ☆5 A 500

 

「さらに俺は魔法カード『マジックプランター』を発動し、『リビングデッドの呼び声』をリリースして二枚ドロー!!……バトルだ!!『ゲイル・フェニックス』で、『スカーライト』を攻撃!!」

 

「態々攻撃力の低いモンスターで?」

 

「『シシグイ』の効果で、フィールドに存在する鳥獣族モンスターは、このカードを含めた風属性モンスター1体につき攻撃力が200アップする!!」

 

『シシグイ』 A 500→900

『ゲイル・フェニックス』 A 2800→3200

 

「さらに『ゲイル・フェニックス』の効果!!このモンスターが攻撃するとき、手札を一枚裏向きでターンのエンドフェイズまで除外することで、このターンこのモンスターは二回まで攻撃できる!!」

 

「させない、罠カードオープン『デモンズ・チェーン』!!『ゲイル・フェニックス』の効果を無効にして、攻撃を封じる!!」

 

「まだだ!!手札のカードが裏向きで除外されたとき、フィールドにセットされたこのモンスターは特殊召喚できる!!現れろ『古の神皇 神鳥のガルダーラ』!!」

 

『古の神皇 神鳥のガルダーラ』 ☆8 風 A 3000

 

 現れたのは、正しく伝説とでも称えられそうなほど強大な姿をした怪鳥で、使ってる此方さえも萎縮しそうな程だった。

 

「『ガルダーラ』も風属性・鳥獣族モンスター、よって『シシグイ』の効果を受ける!!」

 

『シシグイ』 A 900→1100

『ゲイル・フェニックス』 A 3200→3400

『ガルダーラ』 A 3000→3600

 

「『ガルダーラ』で、『スカーライト』に攻撃!!」

 

「罠カード『キング・スカーレット』を発動!!戦闘破壊を無効にし、このカードを守備表示で特殊召喚する」

 

『キング・スカーレット』 ☆1 闇 D 0

 

「だがダメージは受ける!!」

 

蘭 LIFE 10100→9500

 

「『ガルダーラ』の第二の効果発動!!モンスター効果で裏向きで除外されているカードが存在する時、このモンスターのバトル終了後、相手フィールドの表側表示の魔法・罠ゾーンのカードを一枚破壊し、このカードはもう一度だけ攻撃できる!!俺は『デモーンズ・チェーン』を選択し破壊!!バーディア・ハウリング!!」

 

 『ガルダーラ』の鳴き声によって『デモンズ・チェーン』が錆び始め、『ゲイル・フェニックス』を押さえきれず壊れてしまった。

 

「いけ、『ガルダーラ』!!『スカーライト』にもう一度攻撃!!グローショック!!」

 

「ラスト罠カード『バスター・モード』を発動!!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』扱いの『スカーライト』をリリースして、デッキから『レッド・デーモンズドラゴン/バスター』を特殊召喚!!」

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター』 ☆10 闇 A 3500

 

「ぐ……『ガルダーラ』で『/バスター』を攻撃!!」

 

蘭 LIFE 9500→9400

 

「『/バスター』が破壊されたとき、墓地の『スカーライト』を復活させます」

 

「なら俺は『デモンズ・チェーン』が破壊されたことにより、攻撃可能になった『ゲイル・フェニックス』で『スカーライト』を攻撃!!」

 

蘭 LIFE 9400→9000

 

「続けて『シシグイ』で『キング・スカーレット』を攻撃。俺はカードを一枚伏せてエンドフェイズに入る。『切り株都市』の効果でデッキトップをオープン……カードは魔法カード『貪欲な瓶』、風属性モンスターではないためデッキトップへ戻し、『ゲイル・フェニックス』の効果で除外していたカードを手札に戻す」

 

蓮 LIFE 8500 手札一枚

フィールド

『鳥武神シシグイ』 ☆5 A 1100

『ゲイル・フェニックス・ピーコック』 ☆7 A 3400

『古の神皇 神鳥のガルダーラ』 ☆8 A 3600

『神樹の切り株都市』 永続魔法

伏せカード一枚

 

「私のターン、ドロー……私は魔法カード『死者蘇生』を発動、『スカーライト』を墓地から復活」

 

『スカーライト』 ☆8 闇 A 3000

 

「『スカーライト』の効果、特殊召喚された攻撃力3000以下のモンスターを破壊する。私は『シシグイ』を破壊し、相手に500のダメージを与える」

 

「ぐ……すまない、『シシグイ』」

 

 墓地へ送られた俺のエースモンスターに謝罪しながら、モンスターを墓地へと送る。

 

蓮 LIFE 8500→8000

 

「『シシグイ』が消えたことによって、あなたのフィールドのモンスターの攻撃力は下がる。バトル、『スカーライト』で『ゲイル・フェニックス・ピーコック』を攻撃!!」

 

蓮 LIFE 8000→7800

 

「……私はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

蘭 LIFE9000 手札0枚

フィールド

『スカーライト』 ☆8 A 3000

伏せカード一枚

 

「俺のターン、ドロー!!……俺はカードを一枚伏せ、『ガルダーラ』を守備表示に変更、カードを二枚伏せてターンエンド。この瞬間、『切り株都市』の効果でオープン……風属性モンスター、『ジョーニン・トンビ』、よって俺は守備表示で特殊召喚。これでターンエンド」

 

 

蓮 LIFE 7800 手札0枚

フィールド

『古の神皇 神鳥のガルダーラ』 ☆8 D 2800

『ジョーニン・トンビ』 ☆4 D 2000

『神樹の切り株都市』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「私のターン、ドロー」

 

「俺は罠カード『ゴッドバード・アタック』を発動!!『ジョーニン・トンビ』をリリースして『スカーライト』と伏せカードを破壊!!」

 

「……なら私は魔法カード『一時休戦』を発動、お互いに一枚ドローして、相手ターンのエンドフェイズまで一切のダメージを無効にする」

 

蓮 手札1→2

蘭 手札0→1

 

「……私はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

 

蘭 LIFE9000 手札0枚

フィールド

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……『ガルダーラ』を攻撃表示へ変更、俺はカードを一枚伏せる。そして伏せカード『貪欲な瓶』を発動し、墓地の『トランスターン』、『リビングデッドの呼び声』、『マジック・プランター』、『ゲイル・フェニックス・ピーコック』、『絶甲氷盾』をデッキに戻して一枚ドロー!!……エンドフェイズ時に『切り株都市』の効果でオープン……風属性モンスター『ゲニン・スズメ』のため、俺は守備表示で特殊召喚!!」

 

『ゲニン・スズメ』 ☆1 風 D 500

 

「俺はこれで、ターンエンド」

 

 

蓮 LIFE 7800 手札一枚

フィールド

『古の神皇 神鳥のガルダーラ』 A 3000

『ゲニン・スズメ』 D 500

伏せカード一枚

 

 

「私のターン、ドロー……私は永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動、三度復活、『スカーライト』!!」

 

『スカーライト』 ☆8 闇 A 3000

 

「『スカーライト』の効果発動、『ガルダーラ』と『ゲニン・スズメ』を破壊し、合計1000のダメージを与える」

 

「させない!!永続罠『安全地帯』を『ガルダーラ』を対象にして発動!!これにより『ガルダーラ』は戦闘及び効果で破壊されない!!」

 

「けど『ゲニン・スズメ』は破壊される」

 

蓮 LIFE 7800→7300

 

「『ゲニン・スズメ』が破壊されたとき、相手フィールドのモンスター二体まで守備表示に変更できる。俺は『スカーライト』を選択!!」

 

「なら私は手札から『チェーン・リゾネーター』を通常召喚」

 

『チェーン・リゾネーター』 ☆1 光 A 100

 

「自分フィールドにシンクロモンスターが存在する時、召喚時にデッキから『リゾネーター』モンスターを特殊召喚する。私は『ミラー・リゾネーター』を特殊召喚する」

 

『ミラー・リゾネーター』 ☆1 光 A 0

 

「私はレベル8の『スカーライト』に、レベル1『ミラー・リゾネーター』とレベル1『チェーン・リゾネーター』をダブルチューニング。赤き悪魔の龍王よ、我が言霊によって、世界を破する闇を砕け、シンクロ召喚。現れて『レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント』」

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント』 ☆10 闇 A 3500

 

「『タイラント』の効果発動、このカード以外のフィールドに存在するカードを全て破壊する。」

 

「全てだと!!てことは」

 

「そう、安全地帯も破壊される。これが王者の絶対の力、アブソリュート・パワー・インフェルノ!!」

 

 『タイラント』の巻き起こした炎によって、俺のモンスターを守護していた結界が崩壊し、それに伴って『ガルダーラ』も文字通り焼き鳥になって消えてしまった。

 

「く……(切り株都市までも焼かれちまった)」

 

「バトル、『タイラント』でダイレクトアタック」

 

「ぐぁぁぁぁぁ!!」

 

蓮 LIFE 7300→2800

 

「私はこれでターンエンド……」

 

 

蘭 LIFE 9000 手札0枚

フィールド

『タイラント』 ☆10 A 3500

 

 

「ぐ……俺のターン、ドロー!!俺は魔法カード『貪欲な壺』を発動!!『ゲニン・スズメ』、『ガルダーラ』、『チューニン・ツバメ』、『ジョーニン・トンビ』2体をデッキに戻し、二枚ドロー!!……(よし、これならなんとか)」

 

「……ねぇ、もしかして墓地の『シシグイ』を特殊召喚すれば何とかなる……そんな風に思ってない?」

 

「な!!」

 

 俺は驚いた。確かに俺の手札には今『死者蘇生』と『地獄の暴走召喚』、さらに攻撃力1500の『ケンゴーキジ』がある。それを全て使えば、『ケンゴーキジ』の攻撃力は3900まで跳ね上がり、そのまま『シシグイ』で止めを刺すこともできる。

 

「……私が一番最初に特殊召喚したモンスターの効果を、私はまだ使ってない」

 

「あ……」

 

 彼女に言われてようやく気づいた。彼女が最初に特殊召喚したモンスター……レベル4の『超電磁タートル』の効果を。

 

「『超電磁タートル』は1ゲームに一回だけ、墓地のこのカードを除外することでバトルを強制終了させる事ができる。つまり、君が幾ら攻撃力を上げても、その攻撃は私には届かない」

 

「ッ!!」

 

 悔しいが彼女の言う通りだ。それが今起こってる全てで、なおかつ自分の負けが決まった瞬間だった。

 

「……俺はモンスターを伏せて……ターンエンド」

 

 

蓮 LIFE 2800 手札二枚

フィールド

セットモンスター

 

 

「私のターン、ドロー。確かに君は強かった、戦略もデッキのコンセプト運用も、けど、それでも、全然、私を倒すには程遠過ぎる。行って、『タイラント』の効果を発動しフィールドを一掃、そしてダイレクトアタック。極炎のクリムゾンヘルダイト」

 

「ウァァァァァァ!!」

 

蓮 LIFE 2800→0

 

 

 

 

 俺はデュエルが終わるとペタりとその場に座り込んでしまった。強いとかそういう次元じゃない、言うなれば圧倒的、正しく強者という言葉が似合うと思った。

 

「れ、蓮の兄貴が、殆ど何も出来ずに負けた?」

 

 亮も驚いてるのか、彼女を見て震えていた。

 

「あー!!思い出した!!」

 

 と、観客の一人が驚くように声をあげた。

 

「朱志那蘭……か、彼女は『朱の悪魔』の異名を持ってる、今現在最年少のプ、プロデュエリストだぁ!!」

 

 その言葉にその場にいた全員が、まるで氷河期がきたかのように一斉に固まる。当人も冷や汗ながらに目を剃らすところを見ると、つまり……

 

「……な」

 

「……なな」

 

『ナニィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!?????』

 

 ……多分、叫んでしまったのは仕方ないと思うのはしょうがないんだと思う。

 



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第三羽 悪魔は喰らう

今回はデュエルを入れてないのですぐにできましたw次回は容れますw


 あの絶叫のあと、何とかギャラリーを静めた俺達はプロデュエリスト……朱志那蘭と一緒に近くのハンバーガーチェーン店に来ていた。

 

「はぁ」

 

「大丈夫すか?兄貴?」

 

「だから兄貴言うなって……」

 

 今日何度目かというこのやり取りに少しガックリしながら、俺は自分のコーラをストローで啜る。

 

「けど、まさかプロデュエリストがうちの学校に居たとは思わなかったすよ」

 

 亮が小声でそういうと、当の本人は黙々と一番安いチキンのバーガーを五、六個置かれたトレイを持ってきてやって来る。

 

「ん、表舞台では紅いウィッグ被ってるし、それに普段他の人と関わらないから」

 

「そうですかい……」

 

 何となく釈然としないが、俺もポテトを摘まんで一口食べる。

 

「でも凄いね」

 

「ん?何が?」

 

「君のプレイスタイル、あの時はああいったけど、ローパワーデッキをあそこまで巧みに使える人間はそうそう居ない。見たところ、デッキのモンスターって攻撃力2500以上ってエクストラデッキ含めてもそこまでないでしょ?」

 

「……まぁな」

 

 事実だ。元々はバトスピでどれだけ低コスト爪鳥を早く展開して、パワーを上げまくって殴るかを目的としたデッキだ、必然的に高コスト高パワーなモンスターはとりわけ少ない。

 

「それに君のエースモンスター……多分『ゲイル・フェニックス』でも『ガルダーラ』でもなくて、効果で破壊された『シシグイ』でしょ?」

 

「……そうだ」

 

「確かにあのモンスターなら、『激流葬』とかでもない限りは召喚除去されないだろうし、ステータス的に『落とし穴』系のカードは効かない。三体だけでも攻撃力は2300、単純だけど強い」

 

 ……はっきり言ってここまで言われると逆に裏がありそうで怖くなる。実際、バトスピでは三体揃えようともコア除去封じモンスターがいなければすぐに崩れてしまうんだから。

 

「……けど、それでもやっぱり最強は私だよ」

 

「……ま、だろうな。アマチュアがプロデュエリスト相手に善戦したってところだろうし」

 

 軽口風にそう言うが、実際負けたこと事態はかなり悔しいし、何よりデッキをうまく回せなかった事に対する苛立ちすらある。

 

「……そんなに悔しいならデッキ見てあげる?少しぐらいはアドバイスできるかもしれないし」

 

「…………」

 

 彼女の申し出は素直に嬉しいものだったが、同時に大事なデッキを他人に見せてよいものかという葛藤もある。

 

「そんな睨まなくても、ただどうすればいいかアドバイスするだけ、それにどんな構築してるのか気になる」

 

「……ならいいけどさ」

 

 仕方なくデッキを外して彼女に渡す。すると彼女は大雑把にカードを次々見ていき、約一分ぐらい観察すると、見ていたそれをもとに戻して軽くシャッフルして返してくる。

 

「…………」

 

「……メインデッキだけ見てはっきり言って良いなら、『シシグイ』に依存しすぎてるうえに、レベルがバラバラすぎる」

 

 そう言われ少しだけムッとするが、まぁ当たってることなので何も言えない。

 

「特に『セッコーキジ』はそこまで能力が高くないから抜いて、代わりに『ハーピィ・レディ1』とか、もしくは『神鳥シムルグ』とか入れて攻撃力を増強すべき」

 

「それは……」

 

「『ゲニン・スズメ』も能力はそれなりに使えるかもしれないけど、それでもステータスが貧弱すぎるから抜くべき、逆に『チューニン・ツバメ』と『ジョーニン・トンビ』は基本的な軸に使えるから二枚じゃなくて三枚にするほうがシンクロ召喚も『シシグイ』を呼ぶにしても効率がいい」

 

「あの…………」

 

「あとデッキ枚数多すぎ、なにメインだけで55枚って?これじゃ『トランスターン』どころか『切り株都市』すら手に来ないで事故る可能性高い」

 

「うぐ………………」

 

「このデッキなら、少なくともモンスターは25、魔法10、罠が5から7の40~42枚のデッキにするのが一番回るし、何よりどのカードが来ても戦術が組める」

 

「……………………」チーン

 

 ほぼほぼ完全否定である。まぁそりゃね?バトスピって一応デッキの枚数制限無いからね?コアブーストとかを入れて数で押す戦術だったから仕方ないよね……俺は悪くねぇ。

 

「……というよりも蓮、君他のデッキは無いのかい?どんなデュエリストでもサブデッキの一つや二つ持ってるはずだけど?」

 

「それは…………」

 

 ……一応あるにはあるのだが、鳥獣じゃないし風属性も入ってない、何より…………

 

「それ使ったら、絶対相手が嫌がる……」

 

「いやそれってどういう……」

 

「モンスター自爆特効させて相手だけにダメージ与えて永遠にループするスタイルの最悪ビートダウン」

 

「使用禁止、それ」

 

 だろうね。少なくとも威嚇する咆哮とかバウンスするカードが入ってなかったら出された瞬間負け確定するし。多分禁止制限なら絶対に制限に入るだろうね。

 

「何なら今使っても良いけど?」

 

「……それって、私が勝てる可能性あるの?」

 

「出されてもデモチェン引ければワンチャンある」

 

「……やめておく」

 

 残念と呟くと俺はふとデュエルディスクを確認する。

 

「げ!!わりぃ、おれ帰るわ!!」

 

「?どうしたんすかいきなり?」

 

「急がないとスーパーの特売に間に合わなくなるからよ!!片付け頼んでもいいか?」

 

「いいっすよ~というか、兄貴って一人暮らしなんすね?」

 

「……意外」

 

 失礼だと思いつつ俺はハンバーガーチェーンから出て全速力で走り出す。特売開始まで残り30分。

 

 

 

「…………なぁ?なんでお前がここにいるの?」

 

 さて特売から無事に帰還してマンションに辿り着いた俺は再び蘭と出会うことになった。

 

「……私の部屋、ここだから」

 

「……マジすか」

 

 まぁ学生寮じゃないし、普通のマンションだからそういうのは問題じゃないけどさ……幾らなんでもどういう偶然だよ?

 

「……部屋は?」

 

「…………俺は438」

 

「……437」

 

 はい、まさかのお隣さんでした。マジかよ……。

 

 と、その時突然クゥーと不自然な音が聞こえてきた。まさかと思い隣の少女に目を向けると、顔を赤くしてそっぽを向いてる。うん、分かりやすい。

 

「……夕飯作ってやろうか?」

 

「……貸しは作りたくない」

 

「ならデッキで足りないカードを貸してくれ。それで取引といこう」

 

「…………………………………………分かった」

 

 大分間があったが、そんなに考え込むことかな?

 

 

 

 そう思っていた時期が俺にもありました。うん、だってね

 

「……」ガツガツモキュモキュ

 

 まるでリスみたいに頬張ってるよ……というか既に丼で四杯目だし。

 

 ちなみにここまでニラ玉炒め、唐揚げ、餃子と少なくとも四人分の量は出してるんだが、既に半分が彼女の胃のなかに消えてしまっている。

 

「……ご飯おかわり」モキュモキュ

 

「いやおい、少しは自重しやがれ」

 

 ……ちなみにこの食事によって一週間分の食料の半分が消えたのは当然であり、この女に二度と奢らないと心に決めた。

 

 



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第四羽 塞がるは騎士王

 タイトルを見て『聖騎士』デッキだと思った人……勘違いしたらあかんですw


「「部活動?」」

 

 翌々日、再び昼休みに食堂にて集まった俺達は昼飯食べながらそんなことを話していた。

 

 ちなみに今日も亮の奢りで、個人的に少しだけ負い目を感じるのだが、まぁ蘭の食量が異常なため役にたってはいた。(ちなみに俺は玉子丼、亮はミートスパゲティ、蘭は何故か愉悦でお馴染みの真っ赤な大盛り麻婆豆腐定食である)

 

「そうっす、一応うちの高校は部活に入るのが義務になってるっす。調べてみれば亮の兄貴も蘭さんも帰宅部じゃないすか」

 

 亮はダメっすよとでも言いたいようにスパゲティをくるくる巻いている。

 

「部活って言ってもな……デュエル部みたいなのがあれば入るけど、お金がな……」

 

 というのも、お金に関することはデュエルするとDPが自然に溜まり、1DP=1円として扱えるためできればアルバイト代わりにデュエルしまくりたいというのが本音だ。

 

「……私も、というより私はプロとしての仕事もあるし」

 

 と、こっちはプロデュエリスト、当然シーズンとなれば学校を休まなきゃならないので普通の部活はできないのである。

 

「で、どうなの?デュエル部はあんの?」

 

「当然ありますよ。……人が少し面倒ですけど」

 

「そりゃ人格が?行動が?」

 

 俺がそう聞くと弟分はだらだらと冷や汗を流している。うん、どうやらどっちもかな?

 

「ま、まぁ行けばわかるっすよ!!」

 

((……逃げたな))

 

 

 

「で、放課後になって問題のデュエル部に来たはいいけどさ」

 

「…………なんか、色々と間違ってる気がする」

 

 俺達の言葉が最もなのか亮からは乾いた笑いしか聞こえない。というのも、部室のドアの回りにギターやら音符やらが所狭しと張り並べられ、『デュエル部』の文字が正しく血文字ではないかというどす黒い紅に塗られてる。さながら怨霊でも住み着いていそうだ。

 

「な、中はまともですから、うん、入りましょう、ね?ね!?」

 

「そこまで慌てるなよ……」

 

 とりあえず引き戸を開けて中に入ると、少しだけ目を疑った。外装とは裏腹に整理整頓された室内、机も綺麗に並べられていて、普通にどこにでもあるような学校の教室だった。

 

 そして奥のテーブルにいるのは、黒髪を長くしてる優等生的な少女が一人、本を呼んで座っていた。

 

「ん?あぁ、久しぶりだな不動島」

 

「お、お久しぶりです!!黒霧先輩!!」

 

 黒霧……そう呼ばれた彼女は手に持っていた本を閉じるとやれやれといった表情でこちらに来た。

 

「そういえば、そっちの二人は?」

 

「あぁ、二人は俺の友人の」

 

「風山蓮です」

 

「……朱志那蘭」

 

 俺達が自己紹介すると彼女は少しだけ驚いた顔をする。

 

「そうか、君たちが噂の……」

 

「「噂?」」

 

「ここ最近聞くようになったのさ、目の前にいる不動島が兄貴と呼ぶ男と、二人と一緒にいる謎の女子というね」

 

 ……何となく理解はできたが、まだ一緒にいるようになってたった二日だぞ?この学校の噂はどうなってやがる。

 

「まぁ不動島が連れてきたということはおおかた入部のことだろう。安心したまえ、軽いデュエルをしてくれればそれでいい」

 

 ……何とも軽い人だと思ったが、個人的に彼女はどこかで見たことがあった気がした。

 

「……蓮、トップバッターはあげる」

 

「おいおい、プロデュエリストがアマチュアを先に行かせるとか鬼か?」

 

「大丈夫、逝っても私の情報となって生き続けるから」

 

「怖いよ!!」

 

 軽いコントをしていると先輩からクスクスと笑い声が聞こえてきた。仕方なく俺はデュエルディスクを展開し、自分のデッキをセットする。

 

「……まぁ、そういうわけなんでよろしくお願いします」

 

「良いだろう、では始めに名乗っておく、私はデュエル部3年の黒霧劔菜(くろぎり けんな)だ。それでは尋常に……」

 

「「デュエル!!」」

 

蓮 LIFE8000

劔菜 LIFE8000

 

「先行は風山くん、君に譲ろう」

 

「お言葉に甘えて、俺のターン!!」

 

 とりあえず手札を確認する。昨日蘭から借りたカードによってデッキは強化されている。けどここは……

 

「俺は『ジョーニン・トンビ』を通常召喚!!」

 

『ジョーニン・トンビ』 ☆4 風 A 1800

 

 俺なりのデュエルをする!!俺がバトスピで培ってきた全てを使って!!

 

「さらに俺は魔法カード『ブレイブドロー』を発動!!デッキから三枚カードをオープンし、その中に『ユニオン』モンスターが存在すれば一枚だけ手札に加える。それ以外のカードは全てデッキの下に好きな順番で送る」

 

 もとは赤のマジックだけど、遊戯王の魔法カードに属性はない。ここは一気に手札を加速させる。

 

「カードオープン!!『武装鳥スピニード・ハヤト』、『リビングデッドの呼び声』、そして『ケンゴーキジ』……『スピニード・ハヤト』はユニオンモンスターの為手札に加える」

 

「…………」

 

「さらに永続魔法『神樹の切り株都市』を発動!!俺はカードを一枚伏せ、エンドフェイズに『切り株都市』の効果発動!!デッキを一枚めくり、そのカードが風属性モンスターならば特殊召喚できる!!……カードは『ハーピィ・レディ1』、風属性モンスターの為特殊召喚!!」

 

『ハーピィ・レディ1』 ☆4 風 A 1300

 

「『ハーピィ・レディ1』の効果で、フィールドの風属性モンスターの攻撃力は300アップする!!」

 

『ジョーニン・トンビ』 A 1800→2100

『ハーピィ・レディ1』 A 1300→1600

 

「俺はこれで、ターンエンド」

 

 

蓮 LIFE8000 手札二枚(『スピニード』)

フィールド

『ジョーニン・トンビ』 A 2100

『ハーピィ・レディ1』 A 1600

『神樹の切り株都市』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 フィールドアドバンテージはたった一枚だが、それでも充分に幸先が良い。問題は先輩のデッキだが……

 

「私のターン、ドロー!!……なるほど……君のデッキは面白いな……、ならば私も君に面白いものを見せてあげよう。私は永続魔法『闇の聖剣』を発動!!」

 

「んな!!」

 

 『闇の聖剣』……確かに彼女はそう言ったし、フィールドには巨大な紫の剣がそびえ立っている。まさか……

 

「さらに手札から永続魔法『水銀海に浮かぶ工場島』を発動!!」

 

「やっぱりかよ……」

 

 やはり出てきた紫のチートネクサスもとい永続魔法……ここまでくれば確定した。彼女は……『バトスピプレイヤー』だ。

 

「ふふ、ここで通常召喚しても良いけど……私は速攻魔法『手札断札』を発動!!互いに手札を二枚捨てて、二枚ドローする。あなたも安心してドローして良いよ」

 

「……『水銀海に浮かぶ工場島』の効果は俺が俺自身が発動した効果で手札が増えたとき、ですからね」

 

「ふふ、その通り、私はこの効果で手札の『ミーアバット』と『虚皇帝ネザード・バァラル』を墓地へ送って二枚ドロー!!」

 

「……俺は『スピニード・ハヤト』と『チューニン・ツバメ』を捨てて二枚ドロー」

 

 さっきの捨て札の言葉によって、恐らくドロー次第では大型モンスターの特殊召喚条件が揃ってしまっている。一番厄介な点はそれだった。

 

「ふふ、そう焦らなくても良いわ、ゆっくりじっくり楽しみたいしね……私は『闇騎士アグロブァル』を攻撃表示で召喚」

 

『闇騎士アグロヴァル』 ☆3 闇 A1000

 

「さらに私は手札を一枚伏せる。これで私の布陣は完成した!!」

 

「……ハンドレスデッキ」

 

 恐らくあの効果の発動の条件なのだとしたら、かなり不味い状況だ

 

「バトルに入るわ……『アグロヴァル』で『ハーピィ・レディ1』に攻撃!!」

 

「…………自爆特効?」

 

 蘭が不思議そうに言ってるが、あのカードは破壊されてこそ強みのあるカードだ。

 

劔菜 LIFE 8000→7400

 

「この瞬間、破壊された『アグロヴァル』と墓地の『ミーアバット』の効果発動!!チェーン処理にて『ミーアバット』の効果により、手札が0でフィールドのレベル4モンスターが破壊されたとき、このモンスターは墓地より特殊召喚できる!!」

 

「……でも、『アグロヴァル』のレベルは3、蘇生効果の対象外のはず……」

 

 蘭の言う通り、普通ならそうなんだが、今の彼女にその常識は通用しない。

 

「永続魔法『闇の聖剣』の効果により、破壊されたモンスターのレベルを元々のレベルに加えて3または4として扱う事ができる!!」

 

「な!!それじゃあ……」

 

「『アグロヴァル』のレベルは4として扱う事ができるため、『ミーアバット』は墓地より蘇る!!」

 

『ミーアバット』 ☆3 闇 D 500

 

「さらに破壊された『アグロヴァル』の効果!!『闇騎士』と名のついたモンスターが戦闘及び効果で破壊されたとき、相手フィールドのモンスター一体を破壊する……私は『ハーピィ・レディ1』を選択!!」

 

「ぐ……」

 

 影から現れた馬の姿をした騎士によって、『ハーピィ・レディ1』が闇の中へ消えていった。

 

「私はこれでターンエンド」

 

 

劔菜 LIFE 7400 手札0枚

フィールド

『ミーアバット』 D 500

『闇の聖剣』 永続魔法

『水銀海に浮かぶ工場島』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「く、俺のターン、ドロー!!……俺は魔法カード『一族の結束』を発動!!さらに『ビャッコウ・ハヤト』を通常召喚!!」

 

『ビャッコウ・ハヤト』 ☆4 風 A 1700→2500

 

「『ビャッコウ・ハヤト』のモンスター効果!!このカードが召喚に成功したとき、相手フィールドのカードを二枚まで手札に戻す!!俺は『ミーア・バット』と伏せカードを選択!!」

 

「へぇ、なるほどね……けど甘いわ罠カード『リミット・リバース』!!これにより墓地の『アグロヴァル』を特殊召喚!!」

 

「!!しまった!!」

 

「これにより『リミット・リバース』と『ミーアバット』を手札に戻して、さらに『リミット・リバース』が消えたことにより『アグロヴァル』は破壊される。これも効果による破壊のため『アグロヴァル』の効果発動!!『ビャッコウ・ハヤト』には退場願うわ」

 

「くっ!!速攻魔法『スワローズネスト』!!『ビャッコウ・ハヤト』をリリースして、デッキから『ハーピィ・レディ1』を特殊召喚!!」

 

 怒濤の連続によりフィールドが二転三転するも、俺のフィールドには攻撃力2400の『ハーピィ・レディ1』と2900の『ジョーニン・トンビ』……対して彼女フィールドにはモンスターが存在しない。

 

「バトルだ!!二体のモンスターでダイレクトアタック!!」

 

「くぅ!!」

 

劔菜 LIFE 7400→5000→2100

 

「俺はエンドフェイズに移り、『切り株都市』の効果でデッキをオープン……風属性モンスター『チューニン・ツバメ』の為特殊召喚しターンエンド」

 

 

蓮 LIFE8000 手札0

フィールド

『ジョーニン・トンビ』 A 2900

『ハーピィ・レディ1』 A 2400

『チューニン・ツバメ』 A 2600

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『一族の結束』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 あと一歩で伏せカードにしてやられた。その気持ちが俺の心に残る。

 

 

「ふふ、私のターン、ドロー!!……私はモンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

 

劔菜 LIFE 2100 手札0枚

フィールド

セットモンスター 

『闇の聖剣』 永続魔法

『水銀海に浮かぶ工場島』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……バトルだ!!『ジョーニン・トンビ』で守備モンスターを攻撃!!」

 

「この瞬間、手札の『ミーアバット』の効果発動!!このカードを墓地へ送ることでフィールドのモンスターの攻撃力を200アップする!!私は『ジョーニン・トンビ』を選択!!」

 

「く、巧く捨てやがったか……」

 

 『ジョーニン・トンビ』が持っていた剣で切り裂いたモンスターを確認すると、俺が恐れていたカードが姿を現した。

 

『ワーウルフ・コマンド』 ☆4 闇 D 1000

 

「破壊された『ワーウルフ・コマンド』の効果と、墓地の『ミーアバット』、『闇騎士アグロヴァル』の効果発動!!」

 

「くっ!!しまった!!」

 

「『闇騎士アグロヴァル』も『ミーアバット』と同じく手札が0のとき、フィールドのレベル4のモンスターが破壊されたとき特殊召喚できる……現れろ『ミーアバット』!!『アグロヴァル』!!」

 

『ミーアバット』 ☆3 闇 D 500

『闇騎士アグロヴァル』 ☆3 闇 D 1500

 

「そして『ワーウルフ・コマンド』の効果で、俺はデッキからカードを一枚ドロー!!」

 

「ハンドレスなのに……ドロー?」

 

 蘭は意味がわからないと言いたい顔だが、恐らく……

 

「続けて『チューニン・ツバメ』で『ミーアバット』を攻撃!!」

 

「フィールドの闇属性・アンデット族モンスターが相手によって破壊されたとき、墓地のこのモンスター達は蘇る!!まずは『ワーウルフ・コマンド』!!」

 

『ワーウルフ・コマンド』 ☆4 闇 D 1000

 

「そしてもう一体、闇の狭間から出し虚無の帝よ、汝の呪を世界に注げ!!現れろ、『虚皇帝ネザード・バァラル』!!」

 

『虚皇帝ネザード・バァラル』 ☆7 A 2000

 

「『ネザード・バァラル』のモンスター効果!!このモンスターが存在する時、相手フィールドのモンスターの攻撃力は1000ダウンする!!さらに攻撃力が500以下になったモンスターは除外される!!」

 

「…………なにそのインチキ効果」

 

 それが『ネザード・バァラル』の恐ろしい所なんですよ蘭さん。何せ殆ど『オシリス』と同じうえに、闇属性・アンデット族(今回の『ミーアバット』)が破壊されれば墓地からノーコストで特殊召喚できるという効果を持っている。

 

「これにより、風山君のフィールドのモンスターのステータスは下がることになる……」

 

『ジョーニン・トンビ』 A 2900→1900

『ハーピィ・レディ1』 A 2400→1400

『チューニン・ツバメ』 A 2600→1600

 

「ぐ……俺は『ハーピィ・レディ1』で『ワーウルフ・コマンド』を破壊!!」

 

「破壊された『ワーウルフ・コマンド』の効果で1枚ドロー」

 

「……俺はこれでターンエンド。そして『切り株都市』の効果を発動!!……魔法カード『貪欲な壺』なためデッキトップへ戻す……」

 

 

蓮 LIFE8000 手札一枚

フィールド

『ジョーニン・トンビ』 A 1900

『ハーピィ・レディ1』 A 1400

『チューニン・ツバメ』 A 1600

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『一族の結束』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 ライフをみれば此方が優勢……しかし実際には此方が後手に回っていてしかもやりづらいという状況、下手をすれば……

 

(このターンで一気に持っていかれる!!)

 

「私のターン、ドロー!!……ほんとはもう少し遊びたかったけど、ここで一気に決めさせてもらうわ。私は手札のチューナーモンスター『堕天騎士マモン』を攻撃表示で通常召喚!!」

 

『堕天騎士マモン』 ☆2 闇 A 100

 

「私はレベル7『ネザード・バァラル』とレベル3『闇騎士アグロヴァル』にレベル2『堕天騎士マモン』をチューニング!!漆黒の闇にて振るう暗黒の剣、覇の雷をその目に轟かせ!!シンクロ召喚!!現れろ、レベル12!!『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』!!」

 

『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』 ☆12 闇 A 3500

 

「出たな……『不死』の最強騎士が……」

 

「『堕天騎士マモン』が墓地へ送られたとき、フィールドの永続魔法一枚をリリースして私は一枚ドローできる。私は『水銀海に浮かぶ工場島』を選択!!『ソーディアス・アーサー』のモンスター効果!!1ターンに1度、手札を一枚墓地へ送ることで墓地の攻撃力2000以下の闇属性モンスターを特殊召喚する!!来い、『ネザード・バァラル』!!」

 

「ぐ……これは不味い……」

 

 フィールドには3500の『アーサー』に2000の『バァラル』、恐らくライフが半減で済めば御の字だろう。

 

「まだよ、私は手札の装備魔法『アロンダイザー』発動!!フィールドのレベル10以上のシンクロモンスターにのみ装備でき、装備モンスターの攻撃力は500アップする!!」

 

『ソーディアス・アーサー』 A 3500→4000

 

「バトル!!『ソーディアス・アーサー』で『ジョーニン・トンビ』を攻撃!!この瞬間、『ソーディアス・アーサー』の効果発動!!装備カードを装備してるこのモンスターがバトルするモンスターの攻撃力を500ダウンする!!」

 

「グァァァァ!!」

 

蓮 LIFE 8000→5400

 

「破壊された『ジョーニン・トンビ』の効果で、フィールドに『分身トークン』を守備表示で特殊召喚!!」

 

『分身トークン』 ☆4 風 D 1000

 

「さらに装備された『アロンダイザー』の効果により、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを破壊する!!私は『ハーピィ・レディ1』を選択!!」

 

「ヤバイ!!このままじゃ兄貴のモンスターの攻撃力が!!」

 

『チューニン・ツバメ』 A 1600→1300

 

「いけ、『ネザード・バァラル』!!『チューニン・ツバメ』を攻撃!!」

 

「グァァァァ!!」

 

蓮 LIFE 5400→4700

 

「私はこれでターンエンド」

 

 

劔菜 LIFE2100 手札0枚

フィールド

『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』 A 4000

『虚皇帝ネザード・バァラル』 A 2000

『闇の聖剣』 永続魔法

『アロンダイザー』 装備魔法(アーサー)

伏せカード一枚

 

「俺の……ターン!!」

 

 恐らくこのターン、何かできなければ本当に負ける。けど手札には『貪欲な壺』と『トランスターン』しかいない。完全に打つ手がない。

 

「(どうする……考えろ……墓地のモンスターはたった7枚だけ、『貪欲な壺』で何を残す……何を残せば――)」

 

「蓮……」

 

 俺が慌てていると、蘭が俺のことを呼ぶ。

 

「慌てたらダメ……プレイヤーが冷静にならなきゃ、勝てる勝負も勝てない……。少し焦りすぎ」

 

「っ!!」

 

 そう言われ漸く自分が焦っていることに気がつかされた。そう、俺は確かに焦っていた。相手がバトスピデッキの使い手だということに驚いて冷静に判断できなくなっていたのだ。

 

「……ふぅ…………はぁ……」

 

 俺は深呼吸し、再びフィールドを確認する。すると耳の奥でまた鳴き声が聞こえてきた。

 

「(今のは……っ!!そうか!!)俺は手札の『貪欲な壺』を発動!!墓地の『チューニン・ツバメ』二枚、『スピニード・ハヤト』、『ジョーニン・トンビ』、『ビャッコウ・ハヤト』をデッキに戻して二枚ドロー!!」

 

 来た手札を確認すると、俺は思わず顔を緩める。

 

「俺は『ビャッコウ・ハヤト』を攻撃表示で召喚!!」

 

『ビャッコウ・ハヤト』 A 1700→1500

 

「『ビャッコウ・ハヤト』のモンスター効果!!相手フィールドのカードを二枚まで手札に戻す!!俺は『ネザード・バァラル』と『闇の聖剣』を選択!!」

 

 『ネザード・バァラル』は手札に戻すことができたことにより、先輩の顔が少し歪む。

 

「これによってフィールドのモンスターの攻撃力はもとに戻る!!」

 

『ビャッコウ・ハヤト』 A 1500→2500

 

「そして俺は魔法カード『トランスターン』を発動!!『ビャッコウ・ハヤト』をリリースして、デッキより俺のエースモンスターを特殊召喚する!!」

 

 俺の宣言と共に、フィールド……いや教室のなかに風の渦が現れる。

 

「疾風を纏いし武神よ、天高らかに翼を広げ、その爪で敵を裂け!!現れろ、『鳥武神シシグイ』!!」

 

『鳥武神シシグイ』 ☆5 風 A 500→1300

 

「『シシグイ』……なるほど、パワー戦術って訳ね」

 

「フィールドに攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚に成功したとき、手札の速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動!!デッキより現れろ、『シシグイ』達!!」

 

「な!!どんな引きしてるのよ!!」

 

『シシグイ』×3 A 1300→1900→2500→3100

 

「だけど、三体でも攻撃力は劣る」

 

「なら四体目を使うまでだ!!伏せカードオープン『リビングデッドの呼び後』!!墓地より蘇れ『ハーピィ・レディ1』!!」

 

「!!それは今まで使ってこなかった伏せカード……」

 

「(俺も伏せカードを半分忘れてたしな)……これにより、『シシグイ』と『ハーピィ・レディ1』の効果で攻撃力がさらに上がる!!」

 

『シシグイ』×3 A 3100→3700→4000

『ハーピィ・レディ1』 A 1300→1600→4000→4800

 

「バトル!!『ハーピィ・レディ1』で『ソーディアス・アーサー』を攻撃!!」

 

「ぐ!!『ソーディアス・アーサー』の効果!!バトルするモンスターの攻撃力を500ダウン!!」

 

「それでもこっちの方が攻撃力は上だ!!」

 

劔菜 LIFE 2100→1800

 

「ぐ、『アロンダイザー』の更なる効果!!このカードを装備したモンスターが破壊されたとき、このカードを墓地へ送ることでフィールドに残る!!」

 

『ソーディアス・アーサー』 A 4000→3500

 

「続けて『シシグイ』で攻撃!!」

 

「ぐ……!!Arrrrrrthurrrrrrrrrrrrrr!!」

 

 ※違います。いや、まぁ確かに真名は同じだけどさ、ていうかあなたはどこの湖の凶戦士だよ。

 

劔菜 LIFE 1800→1300

 

「これで最後だ!!二体目の『シシグイ』でダイレクトアタック!!迅雷のストームブリット!!」

 

「グァァァァ!!」

 

劔菜 LIFE 1300→0

 

 

 

「んで……どうして先輩がああなってるんだ?」

 

 デュエルが終ったあと、何故か黒霧先輩がどこからか紫色の鎧……いわゆるバサ○ロットの格好をして叫んでいる。ていうか俺にも良く分からん。

 

「あぁ……先輩は円卓騎士物語の大ファンで……特に自分をランスロットだと思い込んでる節が……」

 

「詰まるところ……中二病?」

 

「にべもなく言えば……」

 

「Arrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!」

 

 ……うん、何だろうね、頭が痛くなってきた……。



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第五羽 白と赤の龍皇

なんか普通に書いていたらデュエルパート含めて一万字を越えてました……ヤバイ、こんなに書いてたら頭が……


「あー、とりあえず座ってくれたようだし、これからの予定を話したいと思う」

 

 バサ○ロットから漸く正気に戻った劔菜先輩(黒霧先輩って呼ばれるのがむず痒いらしく、俺と蘭はそう呼ぶように指示された)がホワイトボードに何やら書き込んでいる。

 

「まず今は五月なんだけど……来月の中旬に全国大会の地区予選がある。ルール上五人一組のチーム戦となってるわ」

 

「五人一組って、どうしてですか?」

 

 俺がそう聞くと蘭がジト目で睨んでくる。

 

「……チーム戦の公式ルールは先鋒、中堅、大将というふうになってる。その中で大将以外……つまり先鋒と中堅はタッグデュエルになる可能性もあるから、被りの出ないように五人一組になってる」

 

「ついでに言うと、予選もブロック制になっていて、ブロック全試合中に必ず全員がデュエルしなきゃならないっていうルールがあるんす」

 

 蘭の説明と亮の補足になるほどな、と納得する。が、そこで少し疑問がおこる。

 

「でもここには四人しか居ませんよね?もう一人は……」

 

「正確に言えば、プロデュエリストの私も、こんなの言ったら悪いけどアマチュア大会への出場は原則禁止されてるから、一応あと二人必要」

 

 俺と蘭がそう聞くと、劔菜先輩はアハハ、と乾いた声を出す。

 

「まぁ一応居ると言えば居るんだけどね……正直出てくれるかどうかは微妙ね……」

 

「そのこころは?」

 

「その二人、基本的にタッグデュエリストで、タッグデュエルで自分達より上の人間じゃないと従わないというか……なんというか」

 

 なるほど、つまり先輩一人だとタッグデュエルに成らないから首輪を付けられない、ということか。

 

「……タッグデュエリストね……」

 

「ん?どうした蘭?」

 

「少なくとも、この面子の全員、デッキがタッグデュエルに向くとは思えないと思って」

 

「「「あー……」」」

 

 何となく理解はできる。何せ俺のデッキはギャンブル要素が高い『ローパワー(?)鳥獣族ビート』、亮は純粋な『スキドレ暗黒界』、蘭は『レッドデーモン』、そして劔菜先輩は『疑似不死ループ』、見事に相性がそれぞれ合わない。強いて言うなら劔菜先輩と亮のデッキならワンチャンあるかないかというところだ。

 

「……なら俺のもう一つのデッキを使えば、劔菜先輩と」

 

「だからそれは使用禁止、ていうかせめてエースモンスターを見せてくれないと判断のしようがない」

 

 そう言われたので、俺はカバンの中から予備のデッキを取り出し、その中のエースモンスターを取り出して彼女に渡す

 

「何々……バトルフェイズ中に破壊されたら相手ライフを1000払って蘇る……しかもこのモンスターによって自分は戦闘ダメージを受けない……さらにターン一回制限すらない……レベル8だからってインチキ効果も大概にしなさい!!」

 

「デスヨネー」

 

 ちなみに見せたカードはバトスピプレイヤーなら確実に知ってるはずだ。一時期、緑の烈竜が出るまではある意味猛威を奮ったモンスターだしね。

 

「でも『強制脱出装置』とかバウンスすればワンチャンあるっすね」

 

「そりゃ『暗黒界』ならそうだろうがね、これは墓地で発動する効果だから『スキドレ』も『ヴェーラー』も意味を成さないよ」

 

 このカードの真の恐ろしさを知ってるからか、劔菜先輩は苦笑いで答える。

 

「で、その二人は今どこに?」

 

「あぁ、もうそろそろ……」

 

「「失礼します!!」」

 

 と、まるでタイミングを見計らったように似通った、しかし少し違う声が二つ聞こえてくる。俺が思わず振り替えると、そこには右目を髪で隠す長身の男子と、それと比するようにちみっこ……

 

「なんか言ったかな?」

 

「い、いえ……ナンデモアリマセン、サー!!」

 

 ……少し怖い少女がその場に立っていた。

 

「姉さん、顔怖いって」

 

「五月蝿いよ裕司、また身長伸びたからって偉そうにしない」

 

「いや偉そうにしてないし……つうか、一応歳上なんだから」

 

 …………ちょっと待て、今変なことを言わなかったか?

 

「えっと……お二人は?」

 

「あぁ、僕は三納代裕司(みなしろ ゆうじ)っていうんだ。で、こっちが一応双子の姉の」

 

三納代椿姫(みなしろ つばき)よ、一応言っておくけど、これでも三年生だからね」

 

「…………歳間違ってるんじうごぉぉ!!」

 

 意を決して聞いた瞬間に横っ腹に強烈な回し蹴りを食らい、一瞬でダウンしてしまった。

 

「誰が幼女じゃゴラァァァ!!」

 

「そ、そこまでは言ってな……ガク」

 

「姉さん、やりすぎだグホォ!!」

 

「うっさい!!だいたい双子でこんなに違うのよ!!身長差の半分を寄越しなさい!!」

 

 未だに暴れまわる先輩に、劔菜先輩と蘭がまぁまぁと嗜める。

 

「だ、大丈夫ですか先輩」

 

「大丈夫だいじょーぶ、こんなの毎日だからもう馴れたよ」

 

「……どうしてですかね、俺先輩と同じ空気を感じます」

 

「アハハ……どうやら君もかなり苦労人みたいだね」

 

 被害者である俺らは互いに手を取り合って笑いあう。

 

「大丈夫すか兄貴?」

 

「あぁ、ところで裕司先輩、全国大会の地区予選に出るんですよね」

 

 俺はとりあえず蹴られた脇腹を擦りながら彼に聞くと、少しだけ苦笑いを浮かべる。

 

「まぁね。もっとも……」

 

「ふん!!タッグデュエルをただの人数合わせとしか思ってないようなチームと組むつもりはないわ!!」

 

「……姉さんがあんな調子だからね。タッグデュエルで打ち負かしてくれればなんとかなるんだろうけどね」

 

 なるほど、詰まるところ裕司先輩はそこまで深く考えてはいないけど、お姉さんの方が過剰にそう思ってる……ということか。だったら……

 

「……劔菜先輩、二人とタッグデュエルしましょう」

 

「な!!」

 

 俺がそういうと先輩は驚いて目を見開く。

 

「ふーん、わざわざコンビネーションが難しいタッグデュエルをそっちから言い出すなんて、いい心がけね?」

 

「メンバーが居なければ試合にすらならないんでね。悪いけど勝たせてもらいます」

 

 俺が軽口を言うと、椿姫先輩はニヤリと口を歪める。

 

「裕司!!準備しな!!」

 

「言うと思ったから大丈夫だよ……」

 

 裕司先輩はデュエルディスクを二つ取りだし、黒いフレームの方を椿姫さんに渡し、白いフレームを自分の右腕に取り付ける。

 

「おいおい蓮、いいのか?お前はタッグデュエルは……」

 

「大丈夫です。それに、今回使うのは『紫』なんで」

 

「!!……なるほどな、それならまだチャンスはある」

 

 劔菜先輩がそう言うと、俺はデッキをさっき見せたあのカードのデッキに入れ換える。

 

「ルールは2対2のタッグデュエル形式、フィールド、墓地、除外ゾーンは共通、順番は……アンタが決めていいわ、後輩くん」

 

「そうですね……なら俺達は後攻を取らせてもらう」

 

「OK、なら私→蓮→裕司→劔菜の順番で行かせてもらうわ。それじゃ……」

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

蓮・劔菜 LIFE8000

椿姫・裕司 LIFE8000

 

 

「私のターン、私は魔法カード『手札抹殺』を発動!!私と劔菜は手札を全て墓地へ送る」

 

「ほう?墓地でこそ輝く私のデッキにカードを送ってよかったのか?」

 

 劔菜先輩の挑発を、椿姫先輩は軽く受け流す。

 

「そんなもの、一番最後のターンの奴ができるわけないでしょ。私はモンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド!!」

 

 

椿姫・裕司 LIFE8000 手札2・5

フィールド

セットモンスター

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン!!」

 

「風山……奴の墓地へ送られたカードを確認してるならわかってると思うが……」

 

「ええ、ここは速攻で展開します。俺は永続魔法『六分儀天文台』を発動!!」

 

「!!……へぇ、君も、か……」

 

「さらに魔法カード『手札断殺』を発動!!互いに手札のカードを二枚墓地へ送り、二枚ドロー!!」

 

蓮 手札 4→2→4

椿姫 手札 2→0→2

 

「さらに俺は『シキツル』を通常召喚!!」

 

『シキツル』 ☆4 闇 A 1000

 

「召喚時効果で、デッキから一枚ドロー!!……よし、俺はカードを三枚伏せて、エンドフェイズに永続魔法『六分儀天文台』の効果で、自分墓地の悪魔族またはアンデット族モンスターを特殊召喚できる。俺は悪魔族の『シュテン・ドーガ』を特殊召喚!!」

 

『シュテン・ドーガ』 ☆5 闇 A 2200

 

「『シュテン・ドーガ』が召喚、特殊召喚された時、墓地のレベル4以下の悪魔族またはアンデット族モンスターを特殊召喚する……俺はアンデット族『ミーアバット』を守備表示で特殊召喚!!」

 

『ミーアバット』 ☆3 闇 D 800

 

「……なるほどね、即席とはいえ中々にコンビネーションが取れてるわね。まさか私が『手札抹殺』で劔菜が捨てたカードさえも利用するとはね……」

 

「まぁな……俺はこれでターンエンド!!」

 

 

蓮・劔菜 LIFE 8000 手札 1・5

フィールド

『シキツル』 A 1000

『シュテン・ドーガ』 A 2200

『ミーアバット』 D 800

『六分儀天文台』 永続魔法

伏せカード三枚

 

 

「僕のターン……さて……それじゃキリキリといきますかね……俺はセットモンスターをオープン!!『チューニング・サポーター』!!」

 

『チューニング・サポーター』 ☆1 地 A 800

 

「シンクロデッキ!!まさか墓地へ送った手札はブラフ……?」

 

「まぁそれだけじゃないけどね……さて、ここからは殲滅戦だ、俺は手札の『ボルト・ヘッジホッグ』を墓地へ送ることで、魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!!デッキより現れろ『ジェット・シンクロン』!!」

 

『ジェット・シンクロン』 ☆1 炎 A 500

 

「『チューニング・サポーター』はシンクロ召喚の素材とするとき、レベルを2として扱う!!俺はレベル2の『チューニング・サポーター』にレベル1『ジェット・シンクロン』をチューニング!!現れろレベル3!!『ゴヨウ・ディフェンダー』!!」

 

『ゴヨウ・ディフェンダー』 ☆3 地 A 1000

 

「『チューニング・サポーター』の効果で一枚ドロー!!……自分フィールドに地属性・戦士族しかいないとき、『ゴヨウ・ディフェンダー』の効果でエクストラデッキから二枚目の『ゴヨウ・ディフェンダー』を特殊召喚!!さらに二枚目の『ゴヨウ・ディフェンダー』の効果で三枚目も特殊召喚!!」

 

「同名モンスターを三体?……エクシーズ召喚狙いか?」

 

「残念だけど違うんだよね……これが……俺は手札の『アンノウン・シンクロン』を墓地へ送ることで、墓地の『ジェット・シンクロン』を特殊召喚!!さらに墓地からモンスターが特殊召喚に成功したとき、手札の『ドッペル・ウォリアー』を特殊召喚!!」

 

『ドッペル・ウォリアー』 ☆2 闇 A 800

 

「さらにフィールド魔法『スターライト・ジャンクション』を発動し、効果を使う!!『ジェット・シンクロン』をリリースして、デッキから僕は『ジャンク・シンクロン』を特殊召喚!!」

 

『ジャンク・シンクロン』 ☆3 闇 A 1300

 

「僕はレベル2『ドッペル・ウォリアー』にレベル3『ジャンク・シンクロン』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ『アクセル・シンクロン』!!」

 

『アクセル・シンクロン』 ☆5 闇 D 2100

 

「『アクセル・シンクロン』の効果!!デッキからレベル2の『シンクロン・エクスプローラー』を墓地へ送ることで、このモンスターのレベルを2つ下げる!!」

 

『アクセル・シンクロン』 ☆5→3

 

「レベル4が四体……レベル12……!?まさか!!」

 

「僕はレベル3『ゴヨウ・ディフェンダー』三体に、レベル3シンクロチューナー『アクセル・シンクロン』をチューニング!!舞い降りろ星繋ぐ竜よ、その光で敵を伐て!!デルタアクセルシンクロ!!現れろレベル12!!『シューティング・クェーサー・ドラゴン』!!」

 

『シューティング・クェーサー・ドラゴン』 ☆12 光 A 4000

 

「マジかよ……裕司先輩のエースモンスターって……」

 

「まだまだ!!僕は姉さんが伏せていた罠カード『リビングデッドの呼び声』を発動!!墓地より姉さんが捨てたレベル5『リューマン・レイランサー』を特殊召喚!!」

 

『リューマン・レイランサー』 ☆5 炎 A 2000

 

「出たか……『リューマン』!!」

 

「さらに僕は魔法カード『死者蘇生』を発動!!墓地の『アクセル・シンクロン』を特殊召喚!!」

 

「……レベル5が2体……今度こそエクシーズか?」

 

「いや、僕のデッキにエクシーズモンスターは入ってないよ。僕はレベル5『リューマン・レイランサー』にレベル5『アクセル・シンクロン』をマイナスチューニング!!」

 

「マ、マイナス!?」

 

 そんな方法で出せるモンスターなんか居たか?というよりも引いたら合計レベルが0なような……

 

「このモンスターはフィールドのレベル5以上のモンスターとチューナーモンスターをリリースすることで特殊召喚できる!!現れろ『アルティマヤ・ツォルキオン』!!」

 

『アルティマヤ・ツォルキオン』 ☆12 光 D 0

 

「攻撃力……0?」

 

「俺はカードを一枚伏せる……この瞬間、『アルティマヤ・ツォルキオン』の効果!!エクストラデッキからレベル7または8のシンクロモンスターが特殊召喚できる!!」

 

「んな!!なにそのぶっ壊れ効果!!」

 

 そんなの本当の意味でぶっ壊れてやがるじゃねぇか!!

 

「俺は『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』を特殊召喚!!」

 

『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』 ☆8 風 A 2500

 

「バトルだ!!『シューティング・クェーサー』で『シュテン・ドーガ』を攻撃!!」

 

「俺は罠カード『聖なるバリア―ミラーフォース』を「『シューティング・クェーサー』の効果で無効にする」んな!!だったら速攻魔法『月の書』!!俺は『クリアウィング』を裏守備表示へ変更ウバァァァァァ!!」

 

蓮・劔菜 LIFE8000→6200

 

「ぐぅ……フィールドのモンスターが破壊されたとき、俺は最後の伏せカードを発動!!『呪の覇王 カオティック・セイメイ』!!」

 

「!!そのカードが本命ね!!」

 

「このモンスターは魔法、罠ゾーンに裏向きで伏せることができる!!そしてその効果により、俺は『シューティング・クェーサー』の攻撃力を、ターンの終わりまで半分にし、さらに闇属性モンスターが破壊されたことにより特殊召喚する!!現れろ、全てを呪う暗黒の陰陽師!!『呪の覇王 カオティック・セイメイ』!!」

 

 フィールドに五芒星が現れ、そこの中から紫の霧が立ち込めると、悪霊と見間違えそうなモンスターが姿を現した。

 

『呪の覇王 カオティック・セイメイ』 ☆8 闇 A 2000

 

『シューティング・クェーサー』 A 4000→2000

 

「ぐ……『シューティング・クェーサー』で『シキツル』と『ミーアバット』を攻撃!!」

 

「ぐぅ……」

 

蓮・劔菜 LIFE6200→5200

 

「本当なら『クリアウィング』で攻撃したいけど今は裏守備表示……僕は伏せていた『マジック・プランター』を発動!!意味のなくなった『リビングデッドの呼び声』をリリースして二枚ドロー!!……よし、俺はカードを二枚伏せてターンエンド」

 

 

椿姫・裕司 LIFE8000 手札2・0

フィールド

『アルティマヤ・ツォルキオン』 D 0

『シューティング・クェーサー・ドラゴン』 A 4000

『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(裏守備)

『スターライト・ジャンクション』 フィールド魔法

伏せカード二枚

 

 

 さてさてというか、一応ライフを半分いかずで防いだは良いものの、はっきり言って二回も効果無効とか洒落にならんし、ガチで

 

「私のターン、ドロー!!……さてさて、どうする?」

 

「伏せカードが気になりますね……俺が相手なら『かかし』はどちらかに伏せます」

 

「だろうね、だから私は魔法カード『ハーピィの羽箒』を発動!!相手フィールドの魔法、罠カードを全て破壊する!!」

 

「させない!!『シューティング・クェーサー』の効果でその効果を無効にする!!」

 

 ドラゴンの一喝によって、吹きそうになった風は消滅する。

 

「よし、次だ。私は手札の『闇騎士トリスタン』を墓地へ送り、魔法カード『ライニング・ボルテックス』を発動!!」

 

「ぐ……、『アルティマヤ・ツォルキオン』は対象を取らないカードには無力……けど、裏守備表示の『クリアウィング』は破壊されないし、『シューティング・クェーサー』が破壊されたことにより、エクストラデッキから『シューティング・スター・ドラゴン』を特殊召喚!!」

 

『シューティング・スター・ドラゴン』 ☆10 A 3300

 

「さらにフィールド魔法『スターライト・ジャンクション』の効果で、俺は『カオティック・セイメイ』を劔菜さんの手札に戻します」

 

「やれやれ、せっかく後輩が出したカードを戻すとはね……まぁいい、私は永続魔法『闇の聖剣』を発動!!モンスターを伏せ、カードを伏せてターンエンド。この瞬間、エンドフェイズに私は永続魔法『六分儀天文台』の効果で墓地の『シュテン・ドーガ』を守備表示で特殊召喚し、さらに効果で『ミーアバット』を墓地から特殊召喚する」

 

 

蓮・劔菜 LIFE 5200 手札 1・0

フィールド

『シュテン・ドーガ』 D 1800

『ミーアバット』 D 800

セットモンスター

『六分儀天文台』 永続魔法

『闇の聖剣』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「私のターン!!……(伏せカードは確実にセイメイ、下手に攻撃したら余計なことを起こしかねない……)……私はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

 

椿姫・裕司 LIFE 8000 手札1・0

フィールド

『シューティング・スター・ドラゴン』 A03300

『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(裏守備)

『スターライト・ジャンクション』 フィールド魔法

伏せカード三枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!…先輩、使わせてもらいます!!俺はセットモンスターをリバース!!『メタモルポット』!!」

 

『メタモルポット』 ☆2 地 A 700

 

「んな!!劔菜のデッキにあんなモンスター存在してないはず!!」

 

「ふ、今までは偶々引かなかっただけさ。このデッキには常に墓地を肥やせるカードは容れている」

 

「これにより俺と椿姫先輩は手札を全て捨てて5枚ドローします!!」

 

「け、けどあんたのフィールドのモンスターは攻撃力が3000に満たない、そんな状況じゃ……」

 

「さらに俺は魔法カード『サイクロン』を発動!!俺は先輩の伏せカードを破壊します!!」

 

「させない!!『シューティング・スター』の効果で破壊効果を無効にする!!」

 

「けどこれで『シューティング・スター』の効果は殆ど消えた!!俺は魔法カード『魔法石の採掘』を発動!!手札のカードを二枚墓地へ送って、墓地の『ハーピィの羽箒』を手札に戻し、発動!!」

 

「ぐ……『ミラフォ』、『くず鉄のかかし』、『絶甲』が……」

 

「なんつうカードを伏せてやがるんですか!!俺はさらに『メタモルポット』と『ミーアバット』をリリースする!!闇の星を操りし術師、蘇は呪う、混沌を呼べと猛り狂え!!現れろ、『呪の覇王 カオティック・セイメイ』!!」

 

『呪の覇王 カオティック・セイメイ』 ☆8 A 2000

 

「『シュテン・ドーガ』を攻撃表示へ変更し、バトルだ!!『カオティック・セイメイ』で『シューティング・スター』を攻撃!!」

 

「わざわざ攻撃力の低いカードで!?」

 

「『カオティック・セイメイ』がバトルするとき、このカードの戦闘によって発生する自分へのへのダメージは0になる!!」

 

「けど破壊はされ……っ!!しまった!!」

 

 今さら気づいても遅い。フィールドでは『シューティング・スター』のブレスによって『セイメイ』が爆発する。が、爆煙の中から紫の煙が現れる。

 

「バトルフェイズに破壊された『カオティック・セイメイ』は、相手のライフを1000奪うことで甦る!!呪滅撃!!」

 

 俺がそう言うと、紫の煙が一つに纏まり、再び『カオティック・セイメイ』の形を作り出した。

 

椿姫・裕司 LIFE 8000→7000

 

「バトルフェイズ中の特殊召喚のため、『カオティック・セイメイ』はもう一度攻撃できる!!二度目だ!!」

 

「させない!!……『シューティング・スター』のモンスター効果!!このカードを除外することで、戦闘を無効にする!!」

 

「けど召喚条件を満たしてないモンスターは舞い戻ることはない!!『シュテン・ドーガ』で裏守備表示の『クリアウィング』を攻撃!!」

 

「うぁぁぁぁ!!」

 

 とりあえずフィールドの厄介なモンスターが消えたことに少しだけ安堵する。

 

「メインフェイズ2に入り、俺は魔法カード『貪欲な壺』を発動!!墓地の『シキツル』、『メタモルポット』、『闇騎士トリスタン』、『堕天騎士マモン』、『冥総裁バーゲン』をデッキに戻して二枚ドロー!!……俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド!!『六分儀天文台』の効果で『ミーアバット』を蘇生!!」

 

 

蓮・劔菜 LIFE5200 手札 1・0

フィールド

『呪の覇王 カオティック・セイメイ』 A 2000

『シュテン・ドーガ』 A  2200

『ミーアバット』 D 800

『六分儀天文台』 永続魔法

『闇の聖剣』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「俺のターン……う~んどうするべきか……というよりも手がないな……」

 

「ちょ!!なに府抜けたこと言ってるのよ!!何か手の一つや二つがあるでしょ!!」

 

「残念だけど姉さん、僕の今引いたカードはモンスターじゃないし、『貪欲な壺』みたいなドローカードでもない……はっきり言って手詰まりなんだよ……」

 

 そう言って裕司先輩がため息をつく。

 

「それに、姉さんだって分かるだろ?僕たちももう三年生なんだから、これが最後の大会なんだってこと」

 

「それは……ぐ……」

 

「大丈夫だよ、彼は多分タッグデュエルをバカにするような人間じゃない……そうだろ?」

 

 彼はそう聞いてくるので、俺は何となく頷いた。

 

「俺、タッグデュエルはこれが初めてですけど……普通のシングルマッチとちがって、相方のカードをどこまで信頼して、互いに互いを支えなきゃいけないってのがよくわかります……」

 

「…………」

 

「分かったでしょ姉さん、彼はあいつらとは違うって…………」

 

 諭すように言って、それでも椿姫先輩は何かに耐えている。

 

「わかってる……そんな分かってるけど……負けたくない!!どんな試合でも、デュエルでも、絶対に!!」

 

「……!!はぁ、仕方ない、なら付き合ってあげようか、弟として!!俺は魔法カード『光の護封剣』を発動!!これにより、相手は三ターンの間攻撃できない!!」

 

「げっ!!」

 

 よりにもよってそのカードを引くか!!つか、どこが手がないだよ!!こっちにとっては思いっきり最悪のカードだよ!!

 

「っ!!アンタ……」

 

「俺はこれでターンエンド……」

 

 

椿姫・裕司 LIFE7000 手札1・0

フィールド

『光の護封剣』

 

 

「ふ、そう来なくては面白くないな……私のターン!!……私はチューナーモンスター『闇騎士ケイ』を召喚!!」

 

『闇騎士ケイ』 ☆4 闇 A 1800

 

「私はレベル5『シュテン・ドーガ』とレベル3『ミーアバット』に、レベル4『闇騎士ケイ』をチューニング!!漆黒の闇にて振るう暗黒の剣、覇の雷をその目に轟かせ!!シンクロ召喚!!現れろ!!レベル12!!『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』!!」

 

『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』 ☆12 闇 A 3500

 

 ここで先輩のエースモンスターの登場……騎士と呪、まさに紫の二大覇王の揃い踏みだった。

 

「『ソーディアス・アーサー』の効果で、墓地の攻撃力2000以下の闇属性モンスター、『ミーアバット』を特殊召喚、さらにエンドフェイズに入り、墓地の『シュテン・ドーガ』を特殊召喚、墓地に悪魔またはアンデット族が存在しないため、『シュテン・ドーガ』の効果は発揮しない……私はこれでターンエンド!!そして『光の護封剣』の持続時間が2ターンに減る」

 

『光の護封剣』 ターン 3→2

 

蓮・劔菜 LIFE5200 手札 1・0

フィールド

『呪の覇王 カオティック・セイメイ』 A 2000

『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』 A 3500

『シュテン・ドーガ』 A  2200

『ミーアバット』 D 800

『六分儀天文台』 永続魔法

『闇の聖剣』 永続魔法

伏せカード二枚

 

「私の……ターン!!……私は『カグツチ・ドラグーン』を召喚!!」

 

『カグツチ・ドラグーン』 ☆4 炎 A 1900

 

「さらに私はカードをセット!!バトル!!『カグツチ・ドラグーン』で『ミーアバット』を攻撃!!この瞬間、『カグツチ・ドラグーン』の効果で、一枚ドロー!!」

 

「フィールドの闇属性モンスターが破壊されたことにより、魔法、罠ゾーンに置かれていた『カオティック・セイメイ』の効果発動!!『カグツチ・ドラグーン』の攻撃力をターンの終わりまで半分にして特殊召喚!!」

 

「まだよ!!メインフェイズ2に入り、私は魔法カード『ブラックホール』を発動!!全てのモンスターを破壊する!!」

 

「あ、Arrrrrrthurrrrrrrrrrrrrr!!!!」

 

 なんというチートドローというか……『カオティック・セイメイ』はバトルフェイズで破壊されれば特殊召喚されるが、流石にブラックホール等で破壊されればひとたまりもない。ていうか先輩またバサス○ットになってるし!!

 

「私はこれで、ターンエンド!!」

 

椿姫・裕司 LIFE7000 手札1・0

フィールド

『光の護封剣』 永続魔法

 

「俺のターン!!……俺はエンドフェイズに入り、『六分儀天文台』の効果で、『呪の覇王 カオティック・セイメイ』は蘇り、『護封剣』が残り1ターンになる!!」

 

『光の護封剣』 ターン 2→1

 

 

蓮・劔菜 LIFE5200 手札 2・0

フィールド

『呪の覇王 カオティック・セイメイ』 A 2000

『六分儀天文台』 永続魔法

『闇の聖剣』

 

 

「俺のターン!!……俺はモンスターを伏せてターンエンド」

 

椿姫・裕司 LIFE7000 手札1・0

フィールド

セットモンスター

『光の護封剣』 永続魔法

 

私のターン、ドロー(Arrrrthurrrrrrrrrr)!!」

 

 もう声すらバサ○ロットになってるし!!これじゃデュエルできねぇって!!ていうかバサス○ット語をなんで喋れるの!?

 

私は魔法カード『死者蘇生』を発動(Arrrrrrthurrrrrrrrrrrrrr)!!これにより墓地の『ケイ』を蘇らせる!!(Thurrrrrrrrrrrrrrrr)!!私はレベル8『カオティック・セイメイ』に(rrrrrrrrrrr)レベル4『闇騎士ケイ』をチューニング(Arrrrrrthurrrrrrrrrrrrrr)!!シンクロ召喚(Arrrthurrrrr)!!『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー(Arrrrrrthurrrrrrrrrrrrrr)』!!」

 

 ……ルビが全部アーサーって言ってるよ……というかこの人頭大丈夫なのか?

 

「『ソーディアス・アーサー』の効果発動!!墓地の『闇騎士ケイ』を復活!!」

 

「あ、もとに戻った……」

 

「私はこれでターンエンド!!この瞬間、『六分儀天文台』の効果で、墓地の『シュテン・ドーガ』を復活させ、その効果で、『ミーアバット』を復活!!さらに『光の護封剣』の効果が終了する!!」

 

蓮・劔菜 LIFE5200 手札 2・0

フィールド

『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』 A 3500

『闇騎士ケイ』 A 1800

『シュテン・ドーガ』 A  2200

『ミーアバット』 D 800

『六分儀天文台』 永続魔法

『闇の聖剣』 永続魔法

 

「私のターン!!……私はセットモンスターをリリースしてアドバンス召喚!!現れろ『龍皇ジークフリート』!!」

 

「んな!!」

 

『龍皇ジークフリート』 ☆6 炎 A 2500

 

 ここでまさかのそいつが来たか……て、いうかマジでヤバイ!!

 

「さらに私はフィールドの『ジークフリート』をリリースすることで、手札のこのモンスターを特殊召喚する!!赤と白、龍と機械、反する物が交わりし聖皇が来る!!『聖皇ジークフリーデン』、今ここに姿を現せ!!」

 

『聖皇 ジークフリーデン』 ☆9 A 3500

 

「『ジークフリーデン』の効果発動!!相手フィールドのレベル8までのモンスターを破壊する!!私は『シュテン・ドーガ』と『ミーアバット』を破壊!!」

 

 まぁ原作にもあった破壊効果が飛んでくる。というか今日何回墓地へ行った二体とも?

 

「バトル!!『ジークフリーデン』で『闇騎士ケイ』を攻撃!!この瞬間、『ジークフリーデン』相手フィールドの攻撃力2500以下のモンスター2体まで破壊できるけど、残念ながらいないから関係なし!!」

 

 『ジークフリーデン』の発射した砲弾が、『ケイ』を襲い、フィールドに巨大な爆風が巻き起こる。

 

蓮・劔菜 LIFE 5200→3500

 

「ぐ……まさかモンスターを三体も消し飛ばすとはな……」

 

「ふん!!私はこれでターンエンド!!(ジークフリーデンの攻撃力は3500……いくら『ソーディアス・アーサー』と同じでも、『カオティック・セイメイ』がいなければどうとでもなる!!)」

 

椿姫・裕司 LIFE5200 手札0・0

フィールド

『聖皇 ジークフリーデン』 A 3500

 

 

「俺のターン!!……俺は魔法カード『シンクロキャンセル』を発動!!」

 

「んな!!『シンクロキャンセル』!?」

 

「これにより、『ソーディアス・アーサー』をエクストラデッキに戻し、墓地の『呪の覇王 カオティック・セイメイ』と『闇騎士ケイ』を特殊召喚!!」

 

 そして、この瞬間、俺の、いや俺達の勝利が確定する。

 

「先輩、ありがとうございます!!『カオティック・セイメイ』で『ジークフリーデン』に攻撃!!冥王封滅撃!!」

 

「「うぁぁぁぁ!!」」

 

椿姫・裕司 LIFE 7000→6000→5000→4000→3000→2000→1000→0

 

 

 

「どうでしたか?」

 

 デュエルが終わり、とりあえず椿姫先輩にそう聞く。

 

「ふん、即席にしては良くやった方なんじゃないかしら……まぁ……及第点ぐらいは上げてもいいわ」

 

「!!ありがとうございます!!」

 

 そう言われ、俺は思わず頭を下げる。

 

「ちょ!!頭なんか下げんなし!!」

 

「あ、でも」

 

「良いから!!あと先輩ってつけんな!!普通に名前で良いから!!」

 

「アハハ……姉さんも青春してるねグホォ!!」

 

「う、うっさい!!だいたいデュエル中になんであんな大法螺吹くのよアンタは!!」

 

 ……なんか分からないけど、一件落着でいいのか?これ?

 

「…………」

 

「ん?どうした蘭?」

 

「……別に、何でもない……」

 

「いや、そんなに剥れて何でもないわけが……」

 

「何でもない……」

 

「兄貴…………少し鈍感です……」

 

 亮がなんか言った気がするが、どういうことなんだ?



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第六羽 羽休むは過去

「さて、とりあえずこれで全員揃ったかしらね」

 

 さて、机に座った俺達は劔菜先輩……今は劔菜部長のありがたいお言葉というか、大会のルールについて話すこととなった。

 

「まず参加人数は五人まで……蘭さんがプロデュエリストだから出場はできないから、今いるそれ以外のメンバー……私、椿姫、裕司、亮、そして蓮の五人で出ることになるわ」

 

「それはさっきも聞きましたけど……具体的に誰が出るかはどうやって決めるんですか?」

 

 実際俺はまだ本格的にこの世界で遊戯王を始めてまだ数日、大会ルールなど分かるわけもない。

 

「各試合毎に、運営からどの対戦形式になるか組み合わせが決まり次第手渡されて、それを各チームが試合開始30分前までに誰が出るか記入して提出するの」

 

「ついでにデッキのその場での改良は、基本的に試合直前の各チームに用意される控え室でのみ許されてる。だからそれ以外の場所でデッキを広げるのはルール違反になるから気をつけなさい」

 

 そう言われるが、俺個人が持ってるカードなどたかが知れてるし、何より俺のデッキ自体が結構珍しいカード扱いだから、そこまで……

 

「蓮、君は大きな勘違いをしてるみたいだから言っておくが、試合内容は公式で必ず動画アップされる。つまり対策を取られることになる……よって、試合に出場したなら必ず相手は対策を取ることになる」

 

「つまり、最初に対戦する選手以外は、相手のデッキを確認して、それに対するメタカードを自分のデッキを崩さないようにいれるのが定石ね」

 

 なるほど、言われてみれば確かに相手のモンスターの対策をするのは言われてみれば当然だろう。

 

「ついでに言うと連、アンタのデッキは両方とも一番対策が難しく無いから、すぐにメタカードを入れてくるでしょうね」

 

 その言葉に俺は首を傾げる。すると劔菜先輩が口を開く。

 

「連、君のデッキは両方とも基本的にエンドフェイズに永続魔法の効果で展開するデッキだ。しかも効果自体がシンプルだけに、『エンドサイク』や『虚無空間』、『大天使クリスティア』一枚で充分デッキその物を封じることができてしまう」

 

「???どういう?」

 

 『サイクロン』はともかく、流石に後者のカードについては知識が全くといっていいほど分からない。

 

「兄貴、『虚無空間』と『大天使クリスティア』にはお互いのモンスターの特殊召喚を封じる効果があるんす。つまり、『切り株都市』も『天文台』も意味を成さなくなるって事です」

 

 あ、なるほど……ってちょっと待て!!

 

「そんなことされたら『トランスターン』や『暴走召喚』も封じられるじゃねぇか!!」

 

 そう、俺のデッキのキーカードや、トークンを特殊召喚する『ジョーニン・トンビ』すら使えなくなる。文字通りデッキそのものが封印される危険性があるのだ。

 

「まぁそうだろうな……だから場合によっては別のデッキをもう一つ作って貰わねばならないな」

 

 別のデッキ……詰まる所マルチデッキプレイヤーに暗に指してるのだろうが、個人的には微妙だった。

 

「けど、俺にはそこまでカードが……」

 

 事実だ。あれから自宅を汲まなく捜索したが、遊戯王のカードはそこまで多くは出なかった。

 

「ふむ……ちなみに聞くがどのシリーズぐらいのカードまではある?」

 

「確か……『ZEXAL』編のカードと汎用魔法・罠カードがそれなりって所です……」

 

 そのため持ってるカードの大半が『No.』主体、そう考えるとデッキ構成するのはかなり厳しい。

 

「シンクロテーマのアンタが、エクシーズオンリーしかないって……でも、それなら方法はあるわね」

 

「そうだね姉さん……それだったら『ホープ』、『インゼクター』、『銀河光子』、『聖刻』、『エヴォル』に『マーメイル』とかなりあるしね」

 

 結構なシリーズが出てきたが、俺としては殆どピンとこない。

 

「えっと……それってどういったデッキなんです?」

 

「……『ホープ』はメインデッキをレベル4モンスターでエクストラの『希望皇ホープ』を呼んでから、『RUM』と『ZW』っていうサポートカテゴリーを組み込んで戦う……一時期最強レベルを誇ったデッキ」

 

「『インゼクター』は昆虫族でカテゴリーされていて、墓地や手札から『インゼクター』を装備したり破壊することで、相手フィールドを除去したり、はたまたエクシーズ召喚するデッキですね」

 

「『銀河光子』はアニメの天丈カイトのデッキをイメージすれば良いとして、『聖刻』は高レベルのドラゴンをリリースして特殊召喚するっていう珍しいスタイルのデッキ、リリースされると今度はデッキから通常ドラゴンを持ってこれるから、それを組み合わせて高ランクエクシーズモンスターで殴る事を主体としたビートダウンよ」

 

「『エヴォル』は恐竜族デッキで、エクシーズ召喚して出てくるモンスターが『神の宣告』を使えるっていうデッキだね。あと『マーメイル』は召喚や特殊召喚といった物から、墓地へ送られたりしたら、別の『マーメイル』を持ってくるデッキだね」

 

 流石はプロデュエリトと先輩方、ある程度のデッキコンセプトは暗記しているらしい。が、個人的に言わせてもらえば……

 

「どれも鳥関係ないな……」

 

 そう、はっきり言えば俺は無類の鳥好きであり、趣味にバードウォッチグを兼ねた登山をするほどだ。バトスピで勝ちづらい『シシグイ』をメインにしてるのも(他人からは他のXレアがエースに見られてるが)それが関係してる。

 

「それを言われれば見も蓋もないがな。だが、そのデッキでは勝ちに行くには厳しいのも事実だ」

 

「けど……このデッキは俺の……」

 

 俺が言いたいことが分かったのか、劔菜先輩はため息をつく。

 

「ならはっきり言う、蓮、お前のデッキでは地区大会が精々だ。やるからには優勝を狙う私たちにとって、それではダメなんだ」

 

「!!でも……これは……」

 

「……蓮、なんでそんなに拘るの?」

 

 蘭が意味不明と言うように聞いてくる。

 

「……だって……俺と『シシグイ』は……()()()()()()

 

「?どういうこと?」

 

「……シシグイは確かに強力なモンスターだ。だが、それは数があればという話であって、単品では殆どが無力なんだ」

 

 劔菜先輩が分かるように説明してくれる。

 

「当時、『シシグイ』が登場したときはその能力から複数枚出せば、上手くいけばかの『F・G・D』ですら殴り倒せる程の火力を出せるとして少しだけ有名になった。が、同時に欠点でもあった。なぜか分かるか?プロデュエリト?」

 

「……フィールドのモンスターの数?」

 

「そうだ。遊戯王において、フィールドのモンスターは5体と決まっている。が、そこに『シシグイ』を三体出すとしよう、そうなったとき、他の高火力シンクロ、エクシーズモンスターを召喚できないという事になった」

 

 それはバトスピにおいても同じで、バトスピでのコスト要因たるコアは有限、幾らコアブーストしてもその数には限りがある。そして、幾らシシグイがコストが5と低くても、3体もフィールドに存在すればかなりコアを圧迫する。そして攻撃力をブーストするためにスピリットを増やそうとすれば、レベル1のモンスターは大量に現れるが、紫のようなコアを外されれば、それだけで戦線が崩壊する。

 

「故に『シシグイ』はその優秀な能力を無価値とされ、当たっても外れ扱い、名ばかりのUR、当初は換金要因と酷く言われ、誰からも使われないという運命を受けたカードなんだ」

 

「……もしかして、蓮がデッキに殆ど鳥獣族しかモンスターを容れないのも?」

 

「そうだ。『シシグイ』は単品で通常召喚するにはアドが悪すぎる。そこで当初から『トランスターン』や『リビングデッドの呼び声』等からの『暴走召喚』で一気にフィールドアドを取るスタイルだったんだ。自身の能力も、風属性モンスターに、フィールドの鳥獣族を参照にする、つまり、必然的に数の少ない風属性・鳥獣族を組み合わせたデッキを作る以外に他ならなかった」

 

「ついでに、『シシグイ』はレベル5だから『トレード・イン』や『アドバンスドロー』、『七星の宝刀』の対象にならないから手札に来たら確実に腐る事になるから、所謂『事故物件』とさえも言われてたわ」

 

 さらにバトスピでも、シシグイ軸にしても、他人から『結局三枚手札に来なかったら何もできないじゃんw』とか、『それ入れるならスザクロス三積みの方がまだワンチャンあるからw』といわれ、ネトオクでも三枚で3桁を切った事もあるほどに不憫な扱いを受けているカードなのだ。

 

「けど、それとあんたと同じってどういうわけよ?」

 

「…………俺には一人、妹が居ます。そいつは俺なんかよりも勉強ができて、運動もできて、人付き合いも良くて、誰から見ても()()でした」

 

 ――話されるは、俺の過去。そして、俺の闇。



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第七羽 喪失の将

「兄さん!!勝負しよ!!」

 

 ――それは二年前、俺が中学三年の夏だった。当時の俺は受験生で、いつものように勉強に明け暮れていた。

 

 中二の妹……飛鳥もそんな自分を応援してくれ、兄妹仲はそこまで悪くは無かった。寧ろ良すぎるくらいで、息抜きのように二人でカードゲームをすることもあった。

 

「またか……一応俺受験生なんだぜ?」

 

「大丈夫!!兄さん模試でA判定なんだし、それに私も居るから!!」

 

「妹に勉強教えてもらう兄ってなんだよ」

 

 軽口を叩きつつ俺は勉強机から離れ、ケースに容れていたデッキとコアを取り出してテーブルに対面で座る。

 

 ターンは着々と進む。お互いにライフを削りあい、化かしあい、笑いあう。

 

「『メイルシュトロム』ブレイブの『ゼルドナーグ』で攻撃!!ゼルドナ要塞(粉砕3)柱岩柱岩チャージ6……計34枚デッキ破棄な」

 

「うわぁぁ!!またデッキが飛んだぁ!!」

 

 妹は頭を抱えるように項垂れた。当時の俺はデッキ破壊勝利史上主義のプレイヤーで、デッキのカードの大半が相手のデッキを墓地へ送ることに特化したものだった。

 

「はい、これで俺の18連勝な。……まったく、なんでバトルスピードなら有利の緑カードで負けるんだ?」

 

「うう……」

 

 逆に妹は今の俺のデッキ……緑の爪鳥主体のデッキで、とにかく速攻パワーデッキなのだが、相も変わらずネクサスばかり引き当ててしまったらしい。

 

「だいたい、なんでネクサスで重たいのばかり入れてるんだ?『聖者の樹の実』はまだしも、『切り株都市』なんて事故要因だろ」

 

「だって!!爪鳥を出すにはうってつけだもん!!」

 

「だもんじゃねぇだろ。つか、シシグイ主体ってのもあんまりな……はっきり言って俺なら使わねぇぞ?」

 

「あぁ!!また私のエーススピリットを貶した!!」

 

 妹は悔しそうにそういう。俺自身、その時はどうしてそんな使いづらいカードをエースにするのか、良くわからなかった。

 

「というより兄さんの引きが強すぎるんだよ!!なんで初手でいつも『柱岩』と『要塞』を引けるの!!」

 

「そりゃ三枚積んでたら来るに決まってるだろ。これでも後攻じゃなきゃ確実に負けるんだからな」

 

「うぐぐ……兄さんのその強運が羨ましい……」

 

「はいはい……それで、お前の方は勉強良いのか?」

 

 当たり障りなくそう聞くと、妹はえっへんと、無い胸を張る。

 

「これでも学年段突一位ですから!!少なくとも、学年30位前後の兄さんには負けない!!」

 

「そうかよ」

 

 俺はそういうとデッキをしまい、夕飯作りのためにキッチンへ向かう。両親が共働きで、家に帰ってくるのが遅い俺達家族にとって、料理や家事は俺か妹がやる。それが日常だった。

 

 さて冷蔵庫の中身を見ると、殆ど空っぽだということに気づき、どうしようかと悩む。

 

「う~ん……」

 

 暫く考えた末に、俺は一人で買い物に行くことを選んだ。妹が一緒に行こうかと聞いてくるが、それを柔らかと断りマンションの部屋から出る。

 

 鍵をかけ、外の廊下を進む。途中で宅配業者の人間とすれ違い、仕事御苦労様です、と軽く思いつつエレベーターを降りる。

 

 それが、俺のなかで最後の妹との記憶だった。

 

 

 

 ――買い物を含め、自転車で往復二時間ほどで部屋に戻った俺が見たのは、警官によって非常線が張られたマンションだった。

 

「……何だろ?」

 

 そう呟いた俺は、たまたま近くにいた隣人に話を聞いてみた。その瞬間、俺の体から一切の力が抜け落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――妹が、宅配業者を名乗る男によって刺殺されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は慌てて警察官に近寄りどういうことか問い詰める。警官も俺のことを探していたのか、場所を移動し、事の次第を話し出した。

 

 話によると、事件が起きたのは俺が出掛けた直後数分後の事だったらしい。犯人は宅配業者の格好をして妹に近づくと、最初に妹は鈍器で気絶させられたらしい。

 

 その後犯人は部屋を物色したらしく、部屋のリビングはかなり荒れていたそうだ。そして、金目のものを奪った犯人は逃走前に意識を取り戻しかけた妹を、慌ててキッチンに置きっぱなしにしていた包丁で滅多刺し……殺したのだ。

 

 その後偶々近くの住人が逃げ去る犯人を目撃し、何事かと覗いた結果通報……そして今にいたる。

 

 しかし、俺はその説明の半分も頭に情報が入ってこなかった。死んだ?妹が?認められない現実に、俺は膝から崩れ落ちる。つい先程まで一緒にカードゲームをしていたのに……。

 

 俺は警察に連れられ、妹の場所へと来る。背中は血だらけ、目は光を発せず、顔も青白く……笑顔だった妹の無惨な姿に、俺は人目も憚らず泣き叫んだ。

 

 すぐに犯人は捕まった……が、それと同時に俺は家族の闇を垣間見るとこになった。犯人は依頼されていたのだ……俺を殺すことを。しかも両親……つまり実の親にだ。

 

 後に逮捕された両親の話によると、俺は父親の兄の息子……つまり血の繋がりは存在しなかったのだ。しかも二人ともが財政的に厳しくなって来たそうだ。はっきり言って両親には、俺か妹のどちらかしか高校へ進ませる事が出来ないほどに切迫していたのだ。

 

 そして二人は考えた……どちらかしか通わせられないなら、血の繋がってる娘にするべきだ、と。その結果、今回の事件が引き起こされ、結果両親の目的とは逆の形になってしまったのだ。

 

 面会に行きその事を直接言われ、俺は絶望した。他人からならいざ知らず、育ての親から要らないと切り捨てられた。さらには誰よりも愛していた妹さえ失った。喪失感は募り、受験勉強はおろか、生きることさえどうでも良くなってしまった。

 

 そんなある日の夜、俺は不思議な光を見た。それは亡くなった妹のデッキで、トップには大事に使われていた『シシグイ』が、どこかもの悲しげな表情をしていたのだ。

 

「…………要らない存在……か」

 

 その時思ったのだ。俺とシシグイは同じ存在なのだと、他人から必要とされず、無価値と扱われる。けど、俺とは違って『シシグイ』は、誰かのために力になる存在なのだ。

 

「…………俺は、誰かのために生きれるのかな?」

 

 一人呟いたその言葉に呼応するように、悲しくも雄々しい、鋭い咆哮が耳元を木霊する。まるで、居なくなった主人を思うかのような、そんな声だった。

 

「飛鳥……俺は……」

 

 この日、『破壊神』と呼ばれ畏怖された青デッキ使いが、『鳥将』と呼ばれる緑デッキ使いになるのだった。妹と、そのエースと共に……。

 

『がんばってね、兄さん!!』

 

 そんな聞こえるはずの無い、妹の声援を受けて……



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第八羽 悪魔刈るは死の絶神

 俺は兄貴の過去を聞いて少しだけ苦しくなっ。

 

「じゃあ、兄貴が今使ってるデッキは……」

 

「……そうだ亮、これの元は妹の生前デッキをベースにしてある。キーカードやエースカードは一枚たりとも抜いてない」

 

 やはり兄貴はそう言った。だからこそ、蘭さんがこの前指摘していたようにレベルが繁雑になっていたのだろう。

 

「…………理解できない」

 

 と、その時蘭さんがため息をついてそう言った。

 

「そのデッキが形見なのは分かった。けど、それに拘って負けたら意味がない」

 

「っ!!ふざけんな!!」

 

 その言葉に俺は少し……いや、確実にキレた。両手を机に叩きつけ、怒鳴るように叫ぶ。

 

「意味がないだ?大切なデッキに拘って何が悪いんだ!!あぁ!!」

 

「それは別に人の考えだから良いも悪いもない、でもデュエリストの意義は勝ってこそある。たとえ拘っても勝てないなら意味がないも同然」

 

「デュエルは勝ち負けだけじゃねぇだろ!!自分の信念を貫いて勝つからこそ楽しいって感じるんだろうが!!」

 

「……楽しい?勝つこと以外の何が楽しいの?」

 

「テメェ!!」

 

 俺は思わず殴りかかろうとするが、総司先輩に止められる。

 

「落ちついて亮、暴力はダメだって」

 

「離してください先輩!!こいつは!!」

 

「問題を起こしたら、それこそ大会に出られなくなるよ」

 

 それでも俺はこいつを殴らないと気が済まなかった。

 

「……ならデュエルで決着を着けなさい」

 

「姉さん!!何言ってるの!?」

 

「ふむ、確かにこうなってしまえば、あとはデュエルで語る他があるまいだろうな」

 

「劔菜まで何を言ってるんです!?喧嘩はダメです!!」

 

 女子の先輩二人のお言葉に、唯一の男の先輩である総司さんは突っ込む。

 

「総司、これはデュエリストの矜持に関わることだ。ならば我々が出る巻くではない、デュエリストはデュエルで語るのみ……それが我々デュエリストの本分の一つだろ?」

 

「それは……でも蘭さんはプロデュエリスト何だろ?大会前に心を折られでもしたら……」

 

 先輩の指摘は最もだ。相手は二つ名持ちのプロデュエリスト、しかも高火力全体破壊が得意の『レッド・デーモン』デッキ、だが

 

「……負けないですよ」

 

「む?それは私に勝つってこと?」

 

「ええ!!少なくとも、ただ勝つことしか意味を持てないテメェには負けるわけがない!!」

 

 そこまで言われて火がついたのか、蘭もゆっくりとだが、しかし殺意満面に気を当てながら立ち上がる。どうやら本気モードというやつだろう

 

「……いいよ。私が負ければこの事については謝るし、考え方を少しだけ変えてあげる」

 

「負けたときの事を先に言うたぁ随分な余裕だな、で、お前が勝ったら?」

 

「別に、プロデュエリストである私が負けるわけがない」

 

「上等だ!!」

 

 そう言って俺たちはデュエルディスクを構える。

 

「「デュエル!!」」

 

亮 LIFE8000

蘭 LIFE8000

 

「先行は俺だ!!俺は魔法カード『暗黒界の取引』を発動!!互いにデッキから一枚ドローして、手札を一枚捨てる」

 

「墓地肥やしね……私のデッキも、墓地で活躍するカードは結構ある」

 

「ほざけ!!俺はこの効果で墓地へ送った『スノウ』の効果発動!!デッキから二枚目の『取引』を手札に加えて、発動!!そしてこの効果で捨てた『ブラウ』の効果で一枚ドロー!!……俺はカードを二枚伏せ、魔法カード『手札抹殺』を発動!!俺は残った手札二枚を墓地へ送って二枚ドロー!!」

 

「私は五枚捨てて、五枚ドロー……」

 

「さらにこの効果で墓地へ送られた『暗黒界の尖兵ベージ』を、自身の効果で特殊召喚!!さらに俺はこいつを手札に戻して、墓地の『暗黒界の龍神 グラファ』を特殊召喚!!」

 

『暗黒界の龍神 グラファ』 ☆8 A 2700

 

「俺はこれでターンエンド!!」

 

亮 手札2枚(『ベージ』) LIFE8000

フィールド

『暗黒界の龍神 グラファ』 A 2700

伏せカード二枚

 

「私のターン、ドロー」

 

「俺はこの瞬間、永続罠『スキルドレイン』を発動!!ライフを1000支払い、フィールドのモンスター効果を全て無効にする!!」

 

亮 LIFE8000→7000

 

「……私は魔法カード『サイクロン』を発動。『スキルドレイン』を破壊「永続罠『宮廷のしきたり』を発動!!これにより『スキルドレイン』は破壊されない!!」……なら私は手札の『バイス・ドラゴン』を特殊召喚。デメリットは『スキルドレイン』の効果で無効になる」

 

『バイス・ドラゴン』 ☆5 A 2000

 

「そして『ダーク・リゾネーター』を召喚、私はレベル5の『バイス・ドラゴン』にレベル3『ダーク・リゾネーター』をチューニング!!シンクロ召喚、出てきて、『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』」

 

『スカーライト』 ☆8 A 3000

 

「バトル、『スカーライト』で『グラファ』を攻撃」

 

「ぐぅ……」

 

亮 LIFE7000→6700

 

「私はカードを一枚伏せ、ターンエンド」

 

蘭 手札二枚 LIFE800

フィールド

『スカーライト』 A 3000

伏せカード一枚

 

「俺のターン、ドロー!!……よし!!俺はカードを一枚伏せて、魔法カード『墓穴の道連れ』を発動!!互いに手札を確認して、相手の手札一枚を墓地へ捨てる。最も、俺の手札には『ページ』一枚だがな」

 

「……私の手札には『エフェクト・ヴェーラー』と『バトル・フェーダー』」

 

「なら『バトル・フェーダー』を墓地へ!!その後互いにデッキから一枚ドローする。さらに『ページ』を墓地から復活!!」

 

『暗黒界の尖兵 ベージ』 ☆4 A 1600

 

「そして俺は『ページ』を手札に戻して、『グラファ』を墓地から復活!!」

 

「……擬似的なループね」

 

 なんか蘭が言ってるが、そんなんはどうでもいい!!これでテメェは潰れる!!

 

「そして俺は『グラファ』をリリースして、手札から『シャドール・ビースト』をアドハンス召喚!!」

 

「!?『暗黒シャドール』……!?」

 

『シャドール・ビースト』 ☆5 A 2000

 

 やはり驚いてるだろうな。何せこいつは兄貴と一緒に考えて、考え抜いて入れたカードだ。そんで

 

「そして俺はさっき伏せた速攻魔法『超融合』を発動!!」

 

「っ!!しまった……」

 

「俺は『シャドール・ビースト』と蘭のフィールドの『スカーライト』を融合!!影の獣よ、傷持つ魔龍と合わさりて姿を見せろ!!融合召喚!!こい!!『エルシャドール・ミラージュ』!!」

 

『エルシャドール・ミラージュ』 ☆5 A 2200

 

「『ビースト』の効果で一枚ドロー!!……本来なら『ミラージュ』には特殊召喚の制限があるんだが、『スキルドレイン』の効果内だからそれもない!!俺は今引いた二枚目の『墓穴の道連れ』を発動!!手札確認……って言ってもまた俺の手札には『ページ』しかいないがな」

 

「……『ヴェーラー』と『ブラックホール』」

 

「なら『ブラックホール』を墓地へ捨ててもらう!!そして互いに一枚ドロー!!さらに『ベージ』を墓地から復活、そして手札に戻して、三度『グラファ』を復活!!バトルだ!!『ミラージュ』と『グラファ』でダイレクトアタック!!」

 

「ぐっ!!」

 

蘭 LIFE8000→5300→3100

 

「俺はこれで、ターンエンド!!どうだプロデュエリスト!!」

 

亮 LIFE6700 手札二枚(『ベージ』)

フィールド

『暗黒界の龍神 グラファ』 A 2700

『エルシャドール・ミラージュ』 A 2200

『スキルドレイン』 永続罠

『宮廷のしきたり』 永続罠

 

「……確かに少しはやる……けど、私のターン、ドロー。……私は魔法カード『貪欲な壺』を発動。『バイス・ドラゴン』『ダーク・リゾネーター』『レッド・リゾネーター』『バトル・フェーダー』『チェーン・リゾネーター』をデッキに戻して、二枚ドロー……」

 

(後半三枚は俺が墓地へ落としたカードか……)

 

 どうやら大分事故っていたらしく、仕方ないとはいえ少しこれは辛い。

 

「さらに私は魔法カード『死者蘇生』を発動、墓地の『スカーライト』を復活、バトル、『スカーライト』で『グラファ』を攻撃!!」

 

「ちぃ!!」

 

亮 LIFE6700→6400

 

「さらに罠カード『バスター・モード』を発動!!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』扱いの『スカーライト』をリリースして、『レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター』をデッキから特殊召喚」

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター』 ☆10 A 3500

 

「『/バスター』で『ミラージュ』を攻撃」

 

「うぁぁぁ!!」

 

亮 LIFE6400→5100

 

「……私はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

蘭 手札二枚 LIFE3100

フィールド

『/バスター』 A 3500

伏せカード一枚

 

「く……俺のターン!!……よし、俺は魔法カード『ブラックホール』を発動!!」

 

「けど、『/バスター』の効果で、墓地の『スカーライト』を復活」

 

「関係ねぇ!!俺はモンスターをセットして、ターンエンド!!」

 

亮 LIFE5100 手札一枚

フィールド

セットモンスター

『スキルドレイン』 永続罠

『宮廷のしきたり』 永続罠

 

「私のターン、……『スカーライト』で守備モンスターを攻撃」

 

「守備モンスターは『セルリ』だ」

 

「……私はモンスターをセットして、ターンエンド」

 

蘭 LIFE2100 手札二枚

フィールド

『スカーライト』 A 3000

セットモンスター

伏せカード一枚

 

「俺のターン!!……来た!!俺は魔法カード『テラ・フォーミング』を発動!!デッキから『暗黒界の門』を手札に加えて、発動!!さらに『門』の効果!!墓地の『ブラウ』を除外して、手札の『ベージ』を墓地へ送って一枚ドロー!!そして『ベージ』は特殊召喚され、こいつを手札に戻して『グラファ』を復活!!」

 

「なるほど……攻撃力3000になったから、相討ちにして、ページを通常召喚してからの復活……それが狙いね」

 

「バトルだ!!『グラファ』で『スカーライト』を攻撃!!」

 

「けど、罠カード『デモンズ・チェーン』を発動。『グラファ』を選択して、攻撃できなくする」

 

「ぐ……俺はこれでターンエンド」

 

亮 LIFE5100 手札二枚(『ページ』)

フィールド

『暗黒界の龍神 グラファ』 A 3000

『暗黒界の門』 フィールド魔法

『スキルドレイン』 永続罠

『宮廷のしきたり』 永続罠

 

「私のターン、私は『スキルドレイン』を墓地へ送って『トラップイーター』を特殊召喚!!」

 

「な!!」

 

 まさかそのカードを仕込んでくるとは思ってなかった。そのせいでこっちのフィールドはほぼがら空きになってしまった。

 

「これで『スキルドレイン』の効果は無くなった。『スカーライト』の効果、このカードの攻撃力以下の特殊召喚されたモンスター全てを破壊する。さらに破壊した枚数×500ポイントのダメージ」

 

「フィールドには特殊召喚された『グラファ』と『トラップイーター』がいる……てことは」

 

「1000ポイントのダメージを受けなさい……」

 

「うぁぁぁ!!」

 

亮 LIFE5100→4100

 

「そして『スカーライト』でダイレクトアタック、灼熱のヘルダイブ・バーニング……」

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

亮 LIFE4100→1100

 

「私はこれでターンエンド……」

 

蘭 手札二枚 LIFE3100

フィールド

『スカーライト』 A 3000

セットモンスター

 

「俺のターン……」

 

 かなりボロボロになりながら、俺はドローカードに手をかける。が、蘭は逆にどこか覚めた目でディスクを下げる

 

「……もう勝負はついたわ」

 

「あぁ!?どういうことだ」

 

「私の場にはスカーライトと伏せモンスターがいる。いくら貴方がグラファを出せたとしても、倒せるのは1体だけ、次のターンで貴方は確実に負ける」

 

「それでも、俺は絶体に逃げない!!」

 

「……勝ち目の無い試合に、意味なんてない」

 

 俺はかなりイラッとした。その発言にじゃない、そのやる気のない目にだ。

 

「ならテメェは、勝てるからプロデュエリストやってるのか!!絶対に勝てるからプロデュエリストやってるのか!!」

 

「…………る」

 

「あ?」

 

「貴様に何が分かる!!親もいず、家もまともな食事もない、お金もなく何も食べられないひもじさが……苦しさが……分かるというの!!」

 

「「「「!!」」」」

 

 その言葉は、今までの無感情な声ではなく、悲痛な気持ちを宿した本音だった。

 

「お前……まさか」

 

「……私には血の繋がった親が居ない、朱志乃の名字も、ただ私を拾ってくれた人がそうだったから。生活はいつも苦しくて、それでも満足だった。けど……」

 

 そこで蘭は口を閉ざした。いや、閉ざさるを得なかったのだろう。

 

「私はあの人に何もしてあげられなかった。読み書きやいろんな事を教えてもらったのに、何も返してあげられなかった」

 

「…………」

 

「そんなあの人が私に残してくれたのは、私のために作ってくれたデッキと、ほんの少しの貯金、はじめてデッキを持ったとき、運命を感じた。そして私は大会に出続け、勝ち続けた。スカウトマンの目に止まってプロになった。けど、あの人への恩返しはどうやってもできない……」

 

「…………なんだよ、それ」

 

 俺は歯を食い縛った。それ以上に苛立ちが募る。

 

「蘭……そのデッキはまだ持ってるのか?」

 

「…………もう、そのデッキは存在しない。けど、その時のカードの数枚は、今もこのデッキに眠ってる」

 

「そうかよ…………だったら、俺も何も言わねぇ、全力で叩き潰す!!ドロー!!」

 

 俺は引いたカードを見た瞬間、電撃が疾るような感覚が芽生えた。

 

「行くぜ!!俺は手札から魔法カード『暗黒界の取引』を発動!!」

 

「ッ!!三枚目…………」

 

「これにより互いに一枚ドローして、一枚捨てる!!さらに捨てられた『ページ』を墓地から特殊召喚して、さらに手札に戻して『グラファ』を復活!!」

 

「……それでも、私のモンスターは残る」

 

「まだだ!!俺はさらに墓地の『スノウ』を除外して、『暗黒界の門』の効果発動!!手札の『ページ』を捨てて、一枚ドロー!!……こいつは!!」

 

 俺は躊躇いなくドローする。そしてそのカードを見たとき、驚愕した。何故ならそれは、()()()()()()()()()()()()()カードだったのだ。

 

「(……このカードなら、もしかしたら!!)俺は墓地へ送られた『ページ』を蘇生!!」

 

「……それでも、私のライフにダメージは与えられない」

 

「かもな……けど、俺はまだ終わってねぇ!!俺はカードを一枚伏せ、儀式魔法『六絶神の生誕』を発動!!」

 

「!!儀式魔法……」

 

「「「ろ、六絶神!!」」」

 

 なんか先輩と兄貴がメッチャ驚いてるけど、気にしたら敗けだ!!

 

「このカードは自分のフィールド及び墓地から儀式モンスターに必要なレベルと同じようになるように除外して、手札の『六絶神』と名のつくモンスターを、儀式召喚する!!」

 

「……けど、貴方の手札は0、儀式召喚の対象になるモンスターはいないはず……」

 

「普通なら、な。だが『六絶神の生誕』は、相手よりライフが少ないとき、さらにライフを半分にすることで、デッキから対応する儀式モンスターを特殊召喚できる!!」

 

「!!なにそのぶっ壊れ効果……」

 

亮 LIFE1100→550

 

「俺は墓地の『シャドール・ビースト』を除外!!欲望の紫石から産まれし死の神よ、我がフィールドに舞い降り、あまねく全てを冥界へ送れ!!儀式召喚!!現れろ!!『六絶神 欲望のデス・ガル・ヴァトス』!!」

 

『六絶神 欲望のデス・ガル・ヴァトス』 ☆5 A 2000

 

 フィールドに現れたのは、紫の剣を持った漆黒の魔王といったモンスターで、その回りには魂のような物がORUのように浮遊してやがる。

 

「「「ぶっ壊れ効果モンスター出たぁぁ!!」」」

 

「……?ぶっ壊れ効果?」

 

「『デス・ガル・ヴァトス』の効果!!と、伏せていた速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動!!チェーン処理にて、『埋葬』の効果で、墓地の『ビースト』『ブラウ』『スノウ』を墓地へ戻す」

 

「……(このタイミングで戻す?いったいなんの意味が……)」

 

「そして『デス・ガル・ヴァトス』の効果!!このカードが儀式召喚に成功したとき、墓地に闇属性モンスターが5枚以上存在するとき、デッキから手札が5枚になるようにドローする!!」

 

「…………は?」

 

 蘭はまるで意味が分からないというように顔をぽかんとしている。

 

「……少しタイム、今の効果をもう一回言って?」

 

「?墓地に闇属性モンスター5枚以上あれば、手札が5枚になるようにドローする」

 

「……ぶ、ぶっ壊れ効果も大概になさい!!」

 

 なんか蘭にメッチャ怒られたんだけど……、というか先輩方もウンウンって頷いてるし……。

 

「バトルだ!!『デス・ガル・ヴァトス』で『スカーライト』を攻撃!!」

 

「……自爆で終わらせるつもり?」

 

「まさか!!『デス・ガル・ヴァトス』の戦闘によって自分はバトルダメージを一切受けない!!」

 

 巨大な紫の剣が、スカーライトの爪とぶつかり合う。互いに何度も何度もぶつかり、そしてスカーライトの炎の息吹によって、『デス・ガル・ヴァトス』は燃え尽きる。

 

「『デス・ガル・ヴァトス』の効果!!このカードが戦闘及び効果で破壊されたとき、このカード以外の自分の手札、フィールド、墓地のカードの枚数が合計20枚以上の時、相手フィールドのカードを全て墓地へ送る!!」

 

「な!!墓地へ送る効果!?」

 

「俺の手札、フィールド、墓地のカードの合計は29枚、よって、効果の条件を満たしてる!!『デス・ガル・ヴァトス』!!冥落のスペルヴィア!!」

 

 フィールドの地面が突然闇の渦に代わり、蘭のフィールドのカード全てが、飲み込まれるように消えていった。

 

「とどめだ!!『ページ』と『グラファ』でダイレクトアタック!!」

 

「キャァァァァァ!!」

 

蘭 LIFE3100→1500→0

 

 

 

 

「……」ムスー

 

「いや、何剥れてるんだよ蘭……」

 

 デュエルが終わった直後、蘭はまるで風船のように頬を膨らませ、いかにも私怒ってます、といったアピールをしていた。見た目が美人だから顔芸にしか見えないけど……

 

「……私は負けてない……あんなモンスター出なかったら私が余裕で捻り潰してた……」

 

「いや、プロデュエリストがそんなこと言ったらダメっすよ……」

 

 とりあえず機嫌を治してもらおうとポッ○ーを箱ごとあげると、まるでハムスターのようにぽりぽり食べ始める。けど、なんか俺のことは睨んでるし……

 

「しかし亮、お前あんなカード持ってたのか?」

 

 と、兄貴が驚いたように聞いてくる。

 

「えっと……俺も最初確認したときは入ってなかったんすけど……なんかドローしたら出てきたっす」

 

「……何それ、カードは創造したじゃねぇんだからよ……」

 

「いや、そんなことを言われてもっすね……」

 

 実際あのときまでは入ってるとは思わなかったのだ。見たことも無いカードだったし……

 

(けど、まぁいっか)

 

 俺は今日の勝利に貢献したこのカードに感謝しつつ、再びデッキに戻した。

 

「……蓮、お腹すいた」

 

「またか!!どんだけ燃費悪いんだよお前は!!」

 

「デュエルのあとは適度な食事……それがデュエリストの体調管理」

 

「なんでそうなる……まぁいっか、亮行こうぜ!!」

 

「う、うっす!!兄貴!!」

 

 部室から出る兄貴を俺は慌てて後を追いかける。

 

『…………精進しろ』

 

「え?」

 

 突然聞こえた謎の声に振り返るが、そこには誰も居ない。気のせいと考え、俺は兄貴達に追い付くために走り出した。



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第九羽 嘆き飛ぶは烈神

 休日、それは学生にとっては唯一遊ぶに相応しい日取りであり、また、ショップ大会が開催される日でもある。事実駅前やらのカードショップにはテーブルデュエルの大会をどこでも開いている。

 

 普通なら俺もそこに加わってるのだろうが、今日の俺は少し違った。首には双眼鏡をかけ、背中にはバックパック、帽子といった出で立ちである。

 

「ついたぞ……野鳥公園!!」

 

 そう、今日の俺はデュエリストではなくただのバードウォッチャーだ。趣味を全開にしており、蘭や亮達が見たらまず驚くような姿をしている。

 

「お!!早速ツバメ発見!!」

 

 もう五月の中旬、居ても当然なのだがやはり生で見るツバメはとてもカッコいい。

 

 さて、と他には居ないかと探してみると今度は珍しいコアザラシを見つける。中々日本では見つかり辛い種類なので、思わずカメラを身構える。望遠レンズ付の一眼レフでピントを合わせつつ、狙いを付けてシャッターを押す。

 

 とった写真を確認すると、ピンぼけを興しておらず、しかも羽ばたくシーンが撮られていて、少しだけ気分が高揚する。

 

「…………」

 

 と、その時後ろから何かの視線を感じた。まるで監視してるような……観察してるような……そんな視線を。

 

(気配的には男……しかも20代ぐらいか?いったい何を……)

 

 少し勘ぐるが、どうやらあちらから接触するつもりは無いのか、こちらを観察するだけで近づいてくる気配は全く無い。

 

 仕方ない、そう割りきり俺は趣味モードに戻る。さて、他に珍しい野鳥は居ないかね~

 

 

 

 お昼時、とりあえず上々ときりあげて振り返ってみると、どういうわけかグラサン掛けて大量に涙を流すスーツの大男が立っていた。

 

「…………まさか二時間以上、気付かれてるのに放置されるとは思わなかったぞ」

 

「えっと…………」

 

 ……なんと言って良いのか俺には分からないが、とりあえず昼飯用に持ってきていたお握り(自作)を渡してあげる。

 

 男はそれをすぐに受け取り、涙を片手で拭きながらもしゃもしゃと食べ進める。

 

「それで、アンタいったい何者なんだ?」

 

「……名乗るほどではない。……ナゾオトナとでも呼んでくれ」

 

(バトスピ一期の不審者じゃねえか、おい)

 

 まさかそんな丸パクリしてくるとは思ってなくて、少しだけ引いてしまう。

 

「……それで、わざわざ不審者みたいな事をしてまでなにやってるんですか?ナゾオトナとかいう厨二病臭い事やってまで?」

 

「頼むから気にしてることをずかずか言わないでくれたまえ……我々の目的は素質あるデュエリストの発掘のようなものだ。故に、才能のあるデュエリストを見つけ、デュエルするのが目的」

 

「ご高説どうも、それで、俺が勝てばなんか良いことあるのか?」

 

「当然、もし勝てばデッキエースを担えるほどのエースモンスターやカードを一枚やろう。最も、簡単に負けるつもりは無いがな」

 

「は、上等だ!!」

 

 俺はバックパックを下ろし、左腕のデュエルディスクを展開する。

 

「「デュエル!!」」

 

蓮 LIFE8000

ナゾオトナ LIFE8000

 

「先行は俺だ!!……俺は永続魔法『命の果実』を発動!!さらに永続魔法『聖者の樹の実』を発動!!そして『ジョーニン・トンビ』を召喚!!」

 

『ジョーニン・トンビ』 ☆4 A 1800

 

「俺はこれでターンエンド」

 

 

蓮 LIFE8000 手札二枚

フィールド

『ジョーニン・トンビ』 A 1800

『命の果実』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

 

 

「ふむ、私のターン!!……私は『ドラゴンフライ』を召喚!!」

 

『ドラゴンフライ』 ☆4 A 1400

 

「さらにフィールド魔法『大樹海』を発動し、永続魔法『一族の結束』を発動!!」

 

「昆虫族……リクルートデッキか!!」

 

「その通りさ!!さらに「だが、『聖者の樹の実』の効果で、相手ターンに相手が魔法、罠カードを二回発動した時、強制的にメインフェイズ1を終了させる!!」ち、ならバトルだ!!『ドラゴンフライ』で『ジョーニン・トンビ』を攻撃!!」

 

ナゾオトナ LIFE8000→7600

 

「破壊された『ドラゴンフライ』の効果と、フィールド魔法『大樹海』の効果が発動!!デッキから破壊された『ドラゴンフライ』と同じレベル4の『スパイダー・スパイダー』を手札に加え、さらにデッキから二体目の『ドラゴンフライ』を特殊召喚!!」

 

『ドラゴンフライ』 ☆4 A1400→2200

 

「『ドラゴンフライ』で再び『ジョーニン・トンビ』を攻撃!!」

 

「ぐぅ!!」

 

蓮 LIFE8000→7600

 

「『聖者の樹の実』と『命の果実』の効果!!自分のLIFEが戦闘によってダメージを受けたとき、デッキから一枚ドローする!!俺はこれにより二枚ドロー!!さらに破壊された『ジョーニン・トンビ』の効果で、フィールドに『分身トークン』を特殊召喚!!」

 

『分身トークン』 ☆4 A 1000

 

「グヌヌ……なら私はカードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

ナゾオトナ LIFE7600 手札三枚(『スパイダー・スパイダー』)

フィールド

『ドラゴンフライ』 A 2200

『大樹海』 フィールド魔法

『一族の結束』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン!!よし、俺は永続魔法『神樹の切り株都市』を発動!!さらに『チューニン・ツバメ』を召喚!!」

 

『チューニン・ツバメ』 ☆3 A 1500

 

「俺はレベル4の『分身トークン』に、レベル3の『チューニン・ツバメ』をチューニング!!穹飛ぶ巨鳥よ、今あまねく敵を凪ぎ払え!!シンクロ召喚!!現れろ!!『鳥獣烈神 ガルード』!!」

 

『鳥獣烈神 ガルード』 ☆7 A 3000

 

 現れたのは、鳥人という姿の巨大な鳥形モンスターで、俺のデッキに存在する、唯一といっていいほどの()()()()()()()()である。

 

「レベル7で攻撃力3000だと!!しかもそんなモンスター、事前の情報には無かった筈だ!!」

 

「そりゃデュエルディスク通して使ってないんだから情報も糞も無いだろ」

 

 というか、どうやって情報を手に入れたのかの方が気になるところだが、とりあえずこのバトルを続けるか。

 

「バトル!!『ガルード』で『ドラゴン・フライ』を攻撃!!この瞬間、ガルードの効果が二つ発動する!!まず相手フィールドのカードを五枚まで手札に戻す!!」

 

「な、なにぃ!!わ、私のフィールドのカードが!!」

 

 フィールドのカードが戻った事に動揺してるが、こいつの本領はここからだ。

 

「フィールドにモンスターが居なくなったことにより、この攻撃はダイレクトアタックになる!!グロウブラスター!!」

 

「グァァァァァ!!」

 

ナゾオトナ LIFE7600→4600

 

「そしてこのモンスターの攻撃によってダメージを与えた時、相手のデッキを1()2()()墓地へ送る!!烈神封覇!!」

 

「な!!私のデッキは40枚……初期手札とドローサーチを引くと残りは……20枚だと!!」

 

ナゾオトナ デッキ残り32→20

 

「俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド!!そしてエンドフェイズに『切り株都市』の効果によって、デッキを一枚オープン……風属性モンスター『ハーピィ・レディ1』の為、フィールドに特殊召喚!!」

 

 

蓮 LIFE7600 手札四枚

フィールド

『鳥獣烈神 ガルード』 A 3000

『ハーピィ・レディ1』 A 1600

『命の果実』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

『神樹の切り株都市』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「私のターン!!……私はフィールド魔法『大樹海』を再び発動!!さらに手札三枚をデッキに戻し、『ゾンビ・キャリア』を墓地から特殊召喚!!」

 

『ゾンビ・キャリア』 ☆2 A 500

 

「『ゾンビ・キャリア』?なんでそんなカードを……」

 

 というか、どうやったら12枚の中に三枚も同じカードが落ちるんだ?

 

「私は『ゾンビ・キャリア』二体をリリースし、『地縛神Uru』をアドバンス召喚!!」

 

『地縛神Uru』 ☆10 A 3000

 

「なるほどな、『ゾンビ・キャリア』はそのための……」

 

「さらに『Uru』の効果!!最後の『ゾンビ・キャリア』をリリースして『ガルード』のコントロールを「させない!!リバース罠『デモンズ・チェーン』!!これにより、『Uru』の効果は無効になる」なんだと!!」

 

 用心の為に何枚か容れておいた罠カードに見事に引っ掛かってくれた事に安堵しつつ、俺は相手を見る。見事に引っ掛かったナゾオトナはグヌヌと歯噛みしながら睨んできている。

 

「わ、私はこれで……ターンエンド」

 

 

ナゾオトナ LIFE4600 手札三枚

フィールド

『地縛神Uru』 A 3000

『大樹海』 フィールド魔法

 

 

「俺のターン!!……バトル!!『ガルード』で攻撃!!この瞬間、相手フィールドのカードを五枚まで手札に戻す!!」

 

「ぐ……」

 

ナゾオトナ LIFE4600→1600

 

「さらにデッキ12枚を墓地へ!!」

 

「ぬぅ……!!」

 

ナゾオトナ デッキ残り22→10

 

「そして『ハーピィ・レディ1』でダイレクトアタック!!ヒステリックネイル!!」

 

「グァァァァァ!!」

 

ナゾオトナ LIFE1600→0

 

 

 

「……」ズーン

 

 デュエルが終わった直後、ナゾオトナはまるで仲間外れにされた子供のように体育座りになって、地面にのの字を書き始めてしまった。

 

(もうやだ……無視されるし、)(デュエルでは何も出来ずに負けるし)(居る意味あるのかな……)

 

「……その、なんかすみません」

 

「あぁ、別に大丈夫、大丈夫、でもここまで何も出来ないと逆に清々しく感じるよね……アハハ」

 

 なんか色々と精神的におかしくなりそうな勢いで、俺はとりあえずバックパックから緑茶を取り出して差し出してあげることにした。

 

「その、自分が言えたことじゃないすけど……気を確り持ってくださいね?」

 

「うん……そうだね……あ、それとこれを渡すよ……」

 

 そう言ってナゾオトナが内ポケットから取り出したのは一枚のモンスターだった。

 

「これは……!!」

 

「勝てば君にあげるつもりだったカードだ。大事にしたまえ」

 

「あ、はい!!」

 

 それだけ言うと、ナゾオトナはフラフラとその場から去っていった。……とりあえずあの人がもとに戻る事を祈りながら、俺は再びバードウォッチャーへと戻るのだった。




『鳥獣烈神 ガルード』 シンクロ
☆7/水/鳥獣/A 3000/D 2000
チューナー+チューナー以外のモンスター一体以上
『鳥獣烈神ガルード』はフィールドに一体しか存在できず、エクストラデッキ以外から特殊召喚できない。
①このカードが攻撃したとき、相手フィールドのカードを五枚まで手札に戻す。
②このカードの攻撃によって相手に戦闘ダメージを与えたとき、相手のデッキからカードを12枚墓地へ送る。


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第十羽 吹き荒ぶ嵐前

 あのナゾオトナとのデュエルから二日後の月曜日、放課後の部室にて俺達は大会に向けてのデッキ調整をしていた。

 

「そういえば、今大会にあわせて新規の制限改訂が来るのだったな」

 

「あぁ、そういえばそうね」

 

 と、先輩方は思い出すように言ってる。まぁぶっちゃけバトスピカード主体の俺のデッキには関係ないと思いつつ聞き流す。

 

「む?聞き流すとはいけないぞ蓮、特に君にはだいぶ関わってくるところだろうしな」

 

「へ?」

 

 と、思いきやなんか先輩方がこちらに矛先を向けてきた。

 

「なんだ、今回の制限改訂、君のデッキのカードのうち少なくとも三枚が制限、準制限に飛んでるのを知らないのか?」

 

「はぁ!?」

 

 そう言われ俺は思わず公式サイトで確認すると、確かにその名前が書かれてあった。

 

「『ガンダーラ』に『ガルード』が制限……『スザクロス』が準制限……って、あんまり関係ないじゃ……」

 

 まぁ確かにどれも強いモンスターではあるが、三枚とも単品積みしかしてないモンスターであるため問題なかった。が……

 

「……あれ?『切り株都市』……制限……なんでさ!?」

 

 個人的にはこっちの方が被害甚大だった。

 

「そりゃ、『ドラグニティ』やら『幻獣機』やらの強力テーマにも応用が効くからな、寧ろ禁止にならないだけマシだろ」

 

「ウソダドンドコドン!?」

 

 三積みしてたエース魔法がほぼ失われてしまって、展開力のブーストをどうすればと、俺は頭を抱える。というかほぼ動きが止まったようなもんだぞこれ!!

 

「なに考えてやがるんだ作者ぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………という夢を見た」

 

「い、色々と凄い夢っすね」

 

 昼休み、今日も今日とて学食に来た俺たちはそんな会話をしていた。

 

「なんだろうな……俺、作者に恨み作ったかな?」

 

「あれじゃないすか?作者が欲しいカードとかが当たらないとかじゃないすか?」

 

「そうなのかな~?」

 

(そうだよ!!レイジング・テンペスト三箱も買って覇王龍一枚も当たらないんだよ!!なんで全部『混沌巨人』なんだっての!!ふざけんなっつーの!! by作者)

 

「「な、なんか変な電波が……」」

 

「…………何言ってるの?」

 

 と、ジト目で来たのはやはりというか蘭、どうやら今日は焼きうどんをチョイスしたらしい。俺の真横に座ると、なんの躊躇いもなくうどんを啜ってる。

 

「いや、なんか変な電波を……」

 

「冗談はデッキのチートドローだけにしなさい」

 

「……俺、そこまでチートドローしてないんですが?」

 

「初手または初引きで毎回のように『切り株』手札に加えてる癖に良く言う……」

 

 それを言われると元も子もないんだが、やはりそれでもチートドローではない気が……

 

「ていうか、チートドローなら亮の方だろ?必ず初手に『スノウ』と『抹殺』加えてるんだからよ」

 

「……確かにそれもそうね」

 

「ふ、二人して辛辣っす!?」

 

 いやいやいや、四十枚中三枚の俺の『切り株』に比べたら、なんで四十分の一の確率の『抹殺』を毎回のように初手で引けるんだよ。

 

「でも実際そこまで引けるのは寧ろ凄いと思う」

 

「そうすかね……寧ろ『抹殺』をデッキに組み込むと、どんなデッキでも初手引きするんで、逆に呪われてる気が……個人的には」

 

「「…………」」

 

 いや、もうそれ体質なんじゃねぇの?初手抹殺体質って、シャドールとか暗黒界……あと六部衆なんかからしたら最高クラスだろ……それ。

 

「……あ、それとこれ……」

 

 彼女は何かを思い出すと、胸ポケットから二枚のチケットを取り出して渡してきた。

 

「?これは?」

 

「私の今日のタイトル戦の観戦チケット。マネージャーに頼んで取って貰った」

 

「へぇ……タイトル戦ってことは、勝ったらなんか異名か何か付くのか?」

 

「当然、今回勝てば、プロ最年少記録と『悪魔』の称号獲得」

 

 そういうと彼女はまたポケットから一枚の紙を取って机に広げる。

 

「タイトルは合計で28、モンスターの種族または属性がそれぞれのタイトル王者のネームパーツになる。私の場合、タイトルが悪魔だから、元の二つ名と合わさって、『紅蓮の悪魔』ってところね」

 

「ふーん、そういやタイトル戦の参加条件もやっぱりそういうのと関係が?」

 

「無くはない、私が挑む『悪魔』はデッキ全体のモンスターのうち、7割が悪魔族または『デーモン』と名のついたモンスターであること」

 

 なるほど、と俺は呟く。確かに蘭のデッキは『レッド・デーモン軸リゾネーター』という、どこぞの元キングのようなデッキだ、充分満たしている。

 

「……そういう蓮はプロになろうとは思わないの?」

 

「う~ん、でなったとしても、後々タイトル戦で俺が出れるのは『鳥獣』だろ?だとしたら現タイトルの王者は多分『BF』か『RR』だろ?」

 

 どっちも展開力が鬼強いため、ロースピード型の俺のデッキじゃ相性が悪すぎる。

 

「一応聞くけど、鳥獣の参加条件は?」

 

「……確か二つ、まずデッキ全体のモンスターのうち、6割が鳥獣族であること、もう一つが、デッキ内の魔法カードのうち、永続魔法及びフィールド魔法が合計で2種類以上存在すること」

 

「参加条件は……まぁクリアしてるのか?」

 

 俺はそう言うと二人ともうんうん、と頷いてる。確かに俺のデッキのモンスターはエースの問題で全部が鳥獣族だし、永続魔法は三種類積んでる。まぁその分罠カードの割合がかなり薄いんだが。

 

「まぁ、もっとも、蓮の実力なら少なくとも下手なプロよりはマシだろうけどね」

 

「……いや、それはないだろ」

 

 一応俺はまだ初めて数週間ないし数日の人間だ、一からのデッキ構築なんか一人じゃ全くできない位だし。

 

「……まぁそういうことにしておく。あと、授業に遅れる」

 

「「ま、またか!!」」

 

 

 

「なぁ亮、これって現実なのかな?」

 

 俺は何処と無く魂の抜けた声で隣に座る友人にそう聞く。

 

「大丈夫っすよ兄貴、幻覚でも白昼夢でもなくて、ちゃんとした現実っす」

 

「いや、だからってよ……なんでVIP席なんだよ!!」

 

 そう、なんと俺たちが居るのは個室……プロデュエルスタジアムの最上級VIPルームを二人きりで座ってるのだ。

 

 そりゃ確かに、俺たちは蘭の同級生で友人だぞ?それだけでなんでこんな高すぎる部屋のチケットなんて持ってくるわけ!?パンピーの俺は緊張のしっぱなしなんだけど!!

 

「というか……亮は随分と馴れてるのな?」

 

「これでも親父が政治家っすからね、こういうところは何度か」

 

「ブルジョワめ……」

 

 もう仕方ないと割りきり、俺は試合開始時間までの暇を潰そうと部屋の外へ出る。とりあえず試合観戦なんだし、売店か何かやってるだろうという安易な理由で。

 

「……おい!!どういうことだ!!」

 

「ん?」

 

 と、何やらスタッフらしき男の人の怒声が聞こえてきた。興味本意で近づいてみると、男三人がどうしようかとうんうん唸っていた。

 

「どうかしたんですか?」

 

「ん?君はVIPの……実はエキシビションデュエルの対戦相手がドタキャンされてしまってね……」

 

「しかもエキシビションデュエルの対戦開始まで残り五分ぐらいしかなくて、正直言うと困ってるんだよ」

 

「まぁそいつも実の姉が事故にあったなんて理由だから、ドタキャンの理由も分からないでもないんだがね……それでも代理のデュエリストを呼ぶ時間も無いし……」

 

 と、スタッフがう~んと頭を抑えている。

 

「……大変ですね」

 

「うぉ!!」

 

 と、いつの間にか後にいた蘭の声に驚いて変な声をあげる。

 

「ら、蘭選手!!」

 

「……客席とかVIPの人間で他のプロデュエリストは?」

 

「ざ、残念ながら、ここには……」

 

「…………そう」

 

 そう言って蘭は少し考え始め、数秒して此方に目を向けてきた。うん、何を言いたいのか良く分かった。

 

「……一人だけ、私に心当たりがある」

 

「ら、蘭選手それは……」

 

 すると此方に顔を向けてニッコリと笑みを浮かべてきた。慌てて逃げようとするものの、襟を掴まれてしまいそれもできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……出番だよ、蓮?」

 

 どうやら俺には巻き込まれ体質があるらしい。



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第十一羽 再臨するは姫鳥

「……ドウシテコウナッタ」

 

 やぁ、読者の方々おはこんにちわ、風山蓮です。現在俺は――

 

「「「ワァーーーーーー!!!!!!」」」

 

 ――プロのデュエルフィールドに立っています。

 

 いやね、別にデュエルすること自体には対して問題はないんだよ?けどね、まさかエキシビションとはいえプロデュエリストとデュエルすることになるなんて誰が想像する?

 

 しかもTV中継されてるという羞恥プレイ!!絶対明日劔菜先輩とかにネタにされるじゃん!!

 

「やれやれ、対戦相手が急に変わるなんて、思いもしなかったぜ。しかもこんなガキによ……」

 

 相手の……なぜか第三部の空○承太○にの格好に似ているデュエリストも苦笑いだ。

 

「まぁ、いい。折角デュエルできるんだ……誰が相手でも叩き潰す!!」

 

「あはは、精一杯相手をさせてもらいます……」

 

 俺も軽く苦笑いでそう言うと、レフェリーの男性が真横に立った

 

『それではこれより、赤コーナー、一条承乃介選手と青コーナー、風山蓮選手によるエキシビションデュエルを開始します!!』

 

「「デュエル!!」」

 

承乃介 LIFE8000

蓮 LIFE8000

 

『コイントスにより、先行は承乃介選手です』

 

「やれやれ、俺のターン!!」

 

 相手選手がドローをした瞬間、俺は相手のデッキを予想する。

 

(見た目での俺の予想通りなら、恐らくは戦士族デッキ、それも多分……)

 

「……俺は魔法カード『手札断殺』を発動!!互いに手札を二枚、墓地へ送り二枚ドローするぜ」

 

承乃介 手札4→2→4

蓮 手札5→3→5

 

「俺はこの効果で墓地へ送った『BK グラスジョー』の効果を発動する。墓地へ存在する『BK スイッチヒッター』を手札に戻す」

 

(やっぱり肉弾戦の『BK』か!!となると次のターンが鬼門か……)

 

「俺はさらに今手札に加えた『BK スイッチヒッター』を通常召喚する。このとき、『スイッチヒッター』の効果で墓地の『グラスジョー』をフィールドに呼び出させてもらうぜ?」

 

「……手札にチェーンできるカードはありません」

 

『BK スイッチヒッター』 ☆4 A 1500

『BK グラスジョー』 ☆4 A 2000

 

「よし、ならば俺はレベル4の『スイッチヒッター』と『グラスジョー』でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ封じられし荒者、『BK 拘束蛮兵リードブロー』!!」

 

『BK 拘束蛮兵リードブロー』 ★4 A 2200

 

「さらに俺は『リードブロー』のオーバーレイユニット(スイッチヒッター)を取り除き、手札の『BK シャドー』を特殊召喚」

 

『BK シャドー』 ☆4 A 1800

 

「そして、『リードブロー』の効果が発動する。このカードからORUが取り除かれる度に、攻撃力が800アップする」

 

『BK 拘束蛮兵リードブロー』 A2200→3000

 

「さらに俺は魔法カード『増援』を発動する。デッキからレベル4『BK スパー』を手札に加え、自身の効果で特殊召喚」

 

『BK スパー』 ☆4 A 1200

 

「俺は二体のモンスターでオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ、二体目の『リードブロー』!!」

 

『BK 拘束蛮兵リードブロー』 ★4 A 2200

 

「俺はこれでターンエンドだ……」

 

承乃介 LIFE8000 手札一枚

フィールド

『BK 拘束蛮兵リードブロー』 A 3000

『BK 拘束蛮兵リードブロー』 A 2200

 

「(初手で『リードブロー』二枚も出すとはな……)俺のターン!!……俺は永続魔法『神樹の切り株都市』と『聖者の樹の実』を発動!!」

 

「ほう……風属性デッキか?」

 

「(まさか二枚だけでバレた!?)……まぁ『切り株都市』がある時点で分かりますよね」

 

「確かにな……まぁ、今の俺に対処するカードは無いがな」

 

「それなら、俺は魔法カード『死者蘇生』を発動!!墓地から俺のエースモンスターを呼ばさせてもらいます!!」

 

 まさか初手引きするとは思ってなかったが、相手のおかげで対応できた。

 

「疾風を纏いし武神よ、天高らかに翼を広げ、その爪で敵を裂け!!現れろ、『鳥武神シシグイ』!!」

 

『鳥武神シシグイ』 ☆5 A 500

 

「『シシグイ』……なるほど、鳥獣ビートって奴か……」

 

「さらに俺は速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動!!フィールドに攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚されたとき、そのモンスターと同名モンスターを手札及びデッキから特殊召喚できる!!」

 

「俺もモンスター選択して特殊召喚できるが……『リードブロー』はエクシーズモンスターだから不可能だ」

 

「よって、来い!!我がエース達!!」

 

『鳥武神シシグイ』×2 ☆5 A 500

 

「『シシグイ』の効果!!フィールドの風属性モンスターは、フィールドの鳥獣族モンスター一体につき攻撃力が200アップする!!」

 

「今そっちには『シシグイ』が三体……200×3×3……1800アップか」

 

『シシグイ』×3 A500→2300

 

「(モンスター1体出しても、『シシグイ』の攻撃力は2900……ぎりぎり『リードブロー』を破壊できない)……俺は『ジョーニン・トンビ』を召喚!!」

 

『ジョーニン・トンビ』 ☆4 A 1800

 

「『ジョーニン・トンビ』も風属性であり、かつ鳥獣族、よって『シシグイ』の効果で攻撃力がアップ!!」

 

『シシグイ』×3 A2300→2900

『ジョーニン・トンビ』 A1800→4200

 

「バトルだ!!『ジョーニン・トンビ』で攻撃力2200の『リードブロー』を攻撃!!」

 

「(なるほど、『シシグイ』が破壊されないように、か)『リードブロー』の効果!!ORU(シャドー)を一つ取り除き、破壊を無効にする!!」

 

「けどダメージは受ける!!」

 

承乃介 LIFE8000→6000

 

「ぐ……、『リードブロー』の効果で攻撃力が800アップ」

 

『リードブロー』 A2200→3000

 

「……俺はこれでターンエンド、エンドフェイズに『切り株都市』の効果でデッキトップを一枚オープンし、それが風属性モンスターならば特殊召喚できる!!……カードは『ハーピィ・レディ1』!!よって特殊召喚!!」

 

『ハーピィ・レディ1』 ☆4 A 1600

 

「『ハーピィ・レディ1』も風属性であり、鳥獣族、さらに『ハーピィ・レディ1』の効果でさらに攻撃力がアップ!!」

 

『シシグイ』×3 A2900→3500→3800

『ジョーニン・トンビ』 A4200→4800→5100

『ハーピィ・レディ1』 A1600→4600→4900

 

 

蓮 LIFE8000 手札一枚

フィールド

『シシグイ』×3 A3800

『ジョーニン・トンビ』 A5100

『ハーピィ・レディ1』 A4900

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

 

 

「俺のターン!!……やれやれ、攻撃力が全員3500オーバー、か……普通なら諦めそうなところなんだが……やられっぱなしはしゃくに触るな」

 

「!!(なんか、来る!!)」

 

「俺は魔法カード『エクシーズギフト』を発動!!フィールドの『リードブロー』二体からそれぞれ一つずつORUを取り除き、デッキから二枚ドロー!!さらに墓地へ送られた『グラスジョー』の効果で、『スイッチヒッター』を手札に戻す」

 

 い、いきなり二アドかよ!!しかも『リードブロー』のORUが消えたって事はつまり

 

「さらに『リードブロー』の攻撃力はそれぞれ800アップ!!」

 

『リードブロー』×2 A3000→3800

 

 や、ヤバイ!!このパターンは一番ヤバイ!!もし手札に『エクシーズ・ユニット』なんか持ってたりしたら……て、フラグ立てちまった!!

 

「俺は装備魔法『エクシーズ・ユニット』を『リードブロー』一体に装備!!」

 

(フラグ回収しちまったよぉぉぉ!?)

 

「これにより、『リードブロー』の攻撃力は800アップ!!」

 

『リードブロー』 A3800→4600

 

「け、けどこの瞬間、永続魔法『聖者の樹の実』の効果で、メインフェイズ1を強制終了させる」

 

「ならバトルだ、『エクシーズ・ユニット』を装備した『リードブロー』で『シシグイ』一体を攻撃!!」

 

「ぬぁぁぁぁ!!」

 

蓮 LIFE8000→7200

 

「この瞬間、『聖者の樹の実』の効果で、戦闘ダメージを受けたことによりデッキから一枚ドロー!!」

 

「だが、『シシグイ』が一体消えたことにより、フィールドのモンスターの攻撃力はかなり下がる」

 

『シシグイ』×2 A3800→2400

『ジョーニン・トンビ』 A5100→3700

『ハーピィ・レディ1』 A4900→3500

 

「続けてもう一体の『リードブロー』で『シシグイ』を攻撃!!」

 

「『聖者の樹の実』の効果で、一枚ドロー!!うぁぁぁぁぁぁ!!」

 

蓮 LIFE7200→5800

 

「『シシグイ』が再び消えたことにより、フィールドのモンスターの攻撃力は下がる」

 

『シシグイ』 A2400→1400

『ジョーニン・トンビ』 A3700→2700

『ハーピィ・レディ1』 A3500→2500

 

「俺はカードを一枚伏せてターンエンド……」

 

 

承乃介 LIFE6000 手札二枚(スイッチヒッター)

フィールド

『BK 拘束蛮兵リードブロー(装備有り)』 A4600

『BK 拘束蛮兵リードブロー』 A 3800

『エクシーズ・ユニット(リードブロー)』 装備魔法

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン!!……ドロー!!俺は永続魔法『一族の結束』を発動!!これにより攻撃力が800アップ!!」

 

『シシグイ』 A1400→2200

『ジョーニン・トンビ』 A2700→3500

『ハーピィ・レディ1』 A2500→3300

 

「だが、それでも攻撃力は及ばないな……」

 

「まだだ!!俺は手札の『チューニン・ツバメ』を召喚!!」

 

『チューニン・ツバメ』 ☆3 A 1500

 

「俺はレベル4『ジョーニン・トンビ』にレベル3の『チューニン・ツバメ』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『光牙鳳凰レックウマル』!!」

 

『光牙鳳凰レックウマル』 ☆7 A 2500

 

「『レックウマル』も風属性、鳥獣族!!よって攻撃力アップ!!」

 

『レックウマル』 A2500→4200

 

「さらに『レックウマル』が特殊召喚に成功したとき、フィールドに分身トークンを二体特殊召喚する!!」

 

『分身トークン』 ☆4 A1000

 

「バトルだ!!『レックウマル』で攻撃力の低い『リードブロー』を攻撃!!」

 

「やれやれ、それでもライフが同じぐらいになるだけだ」

 

「そんなわけあるか!!『レックウマル』の攻撃時、フィールドの風属性モンスターをリリースすることで、リリースした数分、相手フィールドのカードを手札に戻す!!」

 

「なんだと!?」

 

「私は二体の『分身トークン』をリリース!!そして選ぶのは伏せカードと攻撃力の高い『リードブロー』!!」

 

「ぐ、伏せカードはともかく、『リードブロー』は手札ではなくエクストラデッキに戻る……やるな」

 

「行け!!『レックウマル』!!ストライク・ストリーム!!」

 

承乃介 LIFE6000→5600

 

「続けて『シシグイ』でダイレクトアタック!!」

 

「ぬぁぁぁぁ!!」

 

承乃介 LIFE5600→3400

 

「この瞬間、手札の『BK ベイル』の効果が発動する!!自分が戦闘ダメージを受けたとき、このカードを特殊召喚し、受けたダメージ分ライフを回復する」

 

『BK ベイル』 ☆4 D 1800

 

承乃介 LIFE3400→5600

 

「く、『ハーピィ・レディ1』で『ベイル』を攻撃!!そしてカードを一枚伏せて、エンドフェイズに『切り株都市』の効果で、デッキトップ確認!!……カードは『霧の谷の戦士』!!よって特殊召喚!!」

 

『霧の谷の戦士』 ☆4 A1700

 

「さらに『霧の谷の戦士』も鳥獣族、よって攻撃力アップ!!ターンエンド」

 

 

蓮 LIFE5800 手札一枚

フィールド

『鳥武神シシグイ』 A 2400

『光牙鳳凰レックウマル』 A 4400

『ハーピィ・レディ1』 A 3500

『霧の谷の戦士』 A 3600

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

『一族の結束』 永続魔法

 

 

「ふむ、俺のターン!!……俺は『BK スイッチヒッター』を通常召喚!!さらに効果で、墓地の『グラスジョー』を復活。さらに手札から魔法カード『バーニング・ナックル・スピリッツ』を発動!!デッキトップを墓地へ送り、墓地の『シャドー』を特殊召喚!!」

 

「このタイミングで三枚の『BK』!?」

 

「俺は三体でオーバレイ!!光の拳、熱き魂の鼓動を持って立ち塞がるものを殴り飛ばせ!!エクシーズ召喚!!現れろ、『No.105 BK 流星のセスタス』!!」

 

『No.105 BK 流星のセスタス』 ★4 A 2500

 

「バトルだ!!『セスタス』で『シシグイ』を攻撃!!この時『セスタス』のモンスター効果を発動!!ORU(グラスジョー)を墓地へ送り、このカードは戦闘では破壊されず、バトルする相手モンスターの効果を無効にする!!」

 

「な!!てことはシシグイの永続効果も!?」

 

『シシグイ』 A2400→1600

 

「いけ『セスタス』!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「グァバ!!」

 

蓮 LIFE5800→4700

 

「だ、だか!!俺は『聖者の樹の実』の効果で、一枚ドロー!!」

 

「俺は『グラスジョー』の効果で、『ベイル』を手札に戻し、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

承乃介 LIFE5600 手札一枚(ベイル)

フィールド

『No.105 BK 流星のセスタス』 A 2500

伏せカード一枚

 

「俺のターン!!……ドロー!!」

 

 俺は引いたカードを確認するが、この状況を覆せるものではなかった。フィールドにも解決策になるカードはない。

 

(せめてエクシーズモンスターの『カステル』でも容れておくべきだったな)

 

「ん?なにもしないのか?」

 

「そんなわけあるか!!バトルだ、『霧の谷の戦士』で『セスタス』に攻撃!!」

 

「『セスタス』のORU(シャドー)を墓地へ送り、破壊されない上にダメージ反射、能力を無効!!」

 

「グゥッ!!」

 

蓮 LIFE4700→4400

 

「だが、『聖者の樹の実』の効果で、一枚ドロー!!」

 

「ほう、反射ダメージでもドローできるのか……厄介だな」

 

「『ハーピィ・レディ1』で『セスタス』を攻撃!!」

 

「(なるほど、ORUを使わせる作戦か……仕方ないとはいえ癪だな)俺はセスタスの効果発動」

 

「ぬぁぁぁぁ!!」

 

蓮 LIFE4400→4200

 

「ぐ……『聖者の樹の実』の効果で、一枚ドロー!!」

 

「まさか、ドローするために多少とはいえライフを削るとはな……」

 

「ついでにORUも尽きた、これで『セスタス』の効果はもう使えない!!いけ、『レックウマル』!!」

 

「罠カード『魔法の筒』攻撃を無効にして、その攻撃力分のダメージを受けろ!!」

 

「な!!うぁぁぁぁぁぁ!!」

 

蓮 LIFE4200→800

 

「ぐ……俺はカードを……二枚伏せて……ターンエンド。『切り株』の効果で、デッキをオープン!!……モンスターは『ジョーニン・トンビ』、よって俺は守備表示で特殊召喚!!」

 

蓮 LIFE800 手札一枚

フィールド

『ジョーニン・トンビ』 D 2000

『光牙鳳凰レックウマル』 A 3600

『ハーピィ・レディ1』 A 2700

『霧の谷の戦士』 A 2800

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

『一族の結束』 永続魔法

伏せカード二枚

 

「俺のターン!!……俺は速攻魔法『サイクロン』を発動!!『一枚の結束』を破壊!!」

 

「ぐ……(これでまた攻撃力が……)」

 

「……バトルだ!!俺は『ハーピィ・レディ1』に攻撃!!」

 

「これ以上ライフは減らせない!!俺は伏せていた速攻魔法『ストームウィンド』を発動!!自分フィールドの守備モンスターを攻撃表示に、相手フィールドの攻撃表示モンスターを一体守備表示に変更する!!」

 

「(なるほど破壊ではなく表示形式の変更……だが)手札より速攻魔法『RUM-クイック・カオス』を発動!!『セスタス』を素材に、ランクが一つ上の同じ『No.』の『CNo.』にエクシーズ召喚する!!」

 

「ぐ……まさかそこでその魔法を使ってくるなんて!!」

 

「現れろ、CNo.105!!混沌を貫く赤き彗星、その拳で立ちはだかる闇を凪ぎ払え!!ランクアップ・エクシーズチェンジ!!『BK 彗星のカエストス』!!」

 

『CNo.105 BK 彗星のカエストス』 ★5 A 2800

 

『ジョーニン・トンビ』 A2100

 

「くそ……まさか防いだと思ったのに……」

 

「『カエストス』はバトルフェイズに特殊召喚されたモンスター、よって攻撃権が存在する!!『カエストス』で『ハーピィ・レディ1』に攻撃!!今度こそこれで!!」

 

 カエストスの燃え盛る鉄拳が、ハーピィを貫いて爆発、爆煙をあげる。

 

「…………おかしい、なぜデュエル終了のブザーが」

 

「――罠カード『デルタバリア』」

 

「!?」

 

蓮 ライフ800→10

 

「このターン、相手の効果およびレベル、ランクが4以上のモンスターの攻撃によってダメージを受けるとき、ライフは10までしか減らない。そして『聖者の樹の実』の効果で一枚ドローする」

 

 煙に紛れて現れた俺を見て、相手は驚きの表情を浮かべていた。

 

「……まさか、二枚も防御札を積み込んでるとは思ってなかった」

 

「正直『樹の実』様々って感じですけどね、さっきのリフレクトダメージで引けたもので」

 

 正直、それでもぎりぎりだ。『デルタバリア』のおかげで『カエストス』のバーン効果も防げた。が、正真正銘、崖っぷちだ。

 

「……俺はこれでターンエンド」

 

 

承乃介 LIFE5600 手札一枚(ベイル)

フィールド

『CNo.105 BK 彗星のカエストス』

 

 

「俺のターン……」

 

 俺は正真正銘、最後になるであろうドローに心を澄ませる。

 

(相手のライフは5000以上、さらに手札にはダメージを回復する『ベイル』、正直戦況は最悪、けど)

 

 不思議と負ける気は更々なかった。そしてカードに指をかけると、何時ものように『シシグイ』の咆哮が聞こえてきた。

 

「(頼むぜ、俺に力を貸してくれ……)ドロー!!」

 

 運命のドロー、今まで五月蝿いくらい飛ばしていた観客の野次が、引いた瞬間に無へと還る。

 

「……こいつは」

 

 引いたカード、そのカードに俺は驚き戸惑う。けど、どこか納得してしまう自分がいた。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「(やっぱり、お前が見守ってくれてたんだな……)俺は手札から魔法カード『飛翔融合(フライフォース・フュージョン)』を発動!!」

 

「な!!融合魔法だと!?」

 

「この効果により、自分のフィールド、手札の鳥獣族モンスターを素材に融合召喚する!!俺は手札の『神帝マッハホウオウガ』とフィールドの『ジョーニン・トンビ』、『レックウマル』、『霧の谷の戦士』を融合!!天翔る神鳥、天覆う武の羽翼、別たれし狭間の世界より絆の力で現れろ!!『鳥武姫神シシグイ・アスカ』!!」

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 ☆10 A 2000

 

 現れたそのモンスターは、シシグイとほぼ同じフォルムだったが、翼の白かったところが朱色に輝き、二翼一対が四翼二対へと変貌した大鷲のようなモンスターで、その鬣には、妹の好きだった牡丹の簪が結われていた。

 

「『シシグイ・アスカ』……なんて強力なオーラを纏ってやがる」

 

「当然だ、こいつは俺の、いや、三つの気持ちが組合わさったモンスターだからな」

 

 俺がそういうと、『シシグイ・アスカ』は俺に頬擦りするように頭を擦り付けてくる。

 

「――行くぜ、飛鳥、シシグイ」

 

『『当然!!』』

 

 懐かしい妹の声と、野太く力強い声が俺の背中を押してくれる。

 

「『シシグイ・アスカ』の、モンスター効果!!このカードが融合召喚に成功したとき、素材となったモンスター一体につき、墓地の鳥獣族モンスターをフィールドに復活させる!!ハウリングテンポ!!」

 

 俺の言葉を受けて、野太く力強い雄叫びがフィールドを木霊する。すると天空から、『シシグイ』が三体と『ハーピィ・レディ1』が囲むように舞い降りてきた。

 

『鳥武神シシグイ』×3 A 500

『ハーピィ・レディ1』 A 1600

 

「四体のモンスターの効果で、攻撃力が全体で3300アップ!!」

 

『シシグイ・アスカ』 A2000→5300

『シシグイ』×3 A500→3800

『ハーピィ・レディ1』 A1600→4900

 

「攻撃力が上回っただと!?」

 

「バトルだ!!『シシグイ・アスカ』で『彗星のカエストス』を攻撃!!」

 

「だが、それでもこっちのライフは残る!!」

 

「『シシグイ・アスカ』が攻撃するとき!!フィールドの攻撃してないモンスターの攻撃権を放棄する代わりに、このモンスターの攻撃力に、放棄したモンスター全ての攻撃力を追加する!!シェイクハンドユニヴァース!!」

 

『シシグイ・アスカ』 A 5300→9100→12900→16700→21500

 

「こ、攻撃力……21500だとォ!?バカな!?」

 

「喰らえぇ!!烈風のスクラム・ブラスター!!」

 

 まるで某スイカバーのMSのように風のオーラを纏ったその一撃は、それなりに巨大なカエストスさえも土手っ腹に風穴をあけ、フィールド内に正しく裂くような鎌鼬の嵐が弾けとぶ。

 

「ぬ、ぬぉぉぉぉぉ!?」

 

承乃介 LIFE5800→0

 

 

 

 対戦相手、プロが吹き飛ぶと、回りが再びシンと静まり返る。息の荒い俺はなんとか気力を振り絞り、そして、右手を高く突き上げた。

 

『ワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』

 

 その瞬間に、待ってましたと言わんばかりに歓声が鳴り響く。指笛、拍手、声援、どれもが俺に向けて皆が送ってくれている。

 

「やれやれだな、まさか、プロでもそれなりに実力は高い方と自負してたんだが……まさか負けるとは思わなかったよ」

 

「承乃介さん……」

 

「Congratulations、間違いなく君は、過去最高レベルに熱いデュエリストだった」

 

「ありがとう……ござい…………ま……す」

 

 お礼を言おうとした瞬間、まるで見計らったかのように体から力が抜け、意識が朦朧となり崩れ落ちる。けど、それでも俺は、悪い気分はしなかった。

 

(俺も……プロに……)

 

 

 

 

視点 蘭

「…………凄かったよ、蓮」

 

 私は入り口付近でぼそりと呟くと、隣にいた亮がかなりウズウズとしていた。

 

「凄いっす……兄貴は本当に」

 

「うん、本当にそう……だね」

 

 私がそう呟くと、気絶した彼を背負ってやって来た承乃介さんが姿を現した。

 

「やれやれだな……蘭もそうだが、最近の若い奴は気が抜けないな」

 

「……当然、私は何れ、総合王者になるんだから」

 

「そうか……」

 

 そう言うと彼は亮に蓮の事を任せると、まるで風来坊とでも言うように去っていった。

 

「……蘭、俺も決めたよ」

 

「?」

 

「俺も……プロになる。そしていつか、プロの舞台でテメェから『悪魔』のタイトルを奪う!!」

 

 亮のその言葉は、正しく宣戦布告であり、友人として一番に嬉しいものだった。

 

「……貴方の実力で奪うなんて、少なくとも15年は早いわ」

 

「あ?そりゃ、15年はタイトルを守り続けるって見て良いんだよな?」

 

「当然、私がタイトルを譲るのは、プロの世界を降りるときだけ、それまで、私を越せる実力を付けなさい」

 

 私はそう言うと、デッキをディスクに嵌め込み、表舞台に上がる。ここからは一人の少女である朱志那蘭じゃない、プロデュエリストであり朱の悪魔の異名をもつ最凶のデュエリスト朱志那蘭としての出番。

 

「お楽しみは……これからよ、蓮」




オリカ紹介

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』
☆10/風/鳥獣/A 2000/D 2800/融合
鳥獣族モンスター×2体以上
①このカードが融合召喚に成功したとき、墓地からこのカードの素材となった数だけ、鳥獣族モンスターを特殊召喚できる。
②このカードの攻撃時、このターン攻撃権してないモンスターの攻撃権を任意の数無くす代わりに、このモンスターの攻撃力は、この効果で攻撃できなくなったモンスターの攻撃力の全てを加える。
③このカードが破壊されたとき、墓地からこのカード以外の鳥獣族モンスターを一体特殊召喚する。


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第十二羽 嵐のあとは台風 前編

 さて翌日、前日にプロとのいきなりのデュエルを終えて朝起きて俺が見たのは、外に大量に待ち伏せしてる報道陣の姿だった。

 

「……何これ」

 

「……多分、私と貴方のことを取材に来た連中よ」

 

 いきなりの声に驚いた俺が見たのは、なぜかYシャツだけを羽織って下に薄い朱の下着だけしか纏ってない蘭が……って不味い不味い!!

 

「おおおおま!?な、なななんで!?」

 

「…………昨日は、激しかった」

 

「なに勘違いされるような事を言ってるんですかお馬鹿様!!」

 

 そりゃ確かに、昨日はプロの試合があって体力的に激しかったのは分かるけど!?言い方ってものが!!

 

「?一緒のベットで寝てたのに?あんな熱い夜を」

 

「余計なこと言うなぁぁぁぁぁぁ!!あと、今すぐに服を着ろぉぉぉぉぉ!!」

 

 ちなみに熱い夜なんか過ごしてないからな!!絶対に、絶対にだからな!!

 

 

 

「それで、外のマスコミは……って、お前が勝ったからそのインタビューが目的か」

 

 とりあえず互いに着替えた(マンションが同じというのはこういうときに楽だな)うえで、俺の部屋で朝食のグラノーラを頬張っていた。

 

「ん。蓮がプロにああも勝ったんだから当然。でないと恥ずかしい」

 

「そうですかい……」

 

 そう、こいつは勝ったのだ。俺は気絶した為に序盤から中盤にかけては見てなかったが、終盤、目の前の女が『スカーレット・ノヴァ』を出して、相手の『デーモンの将星』をぶち抜いて勝ちを納めている所だけは見逃さなかった。

 

「今のところ、ネットじゃ俺ら二人とも大荒れしてるな……」

 

「まぁ、無名とはいえ、鬼門と呼ばれる鳥獣族の中で『コンセプトデッキ』で勝つなんて珍しいしね」

 

 ちなみに俺のことは、『期待の猛禽使い』やら『鳥獣の新星』やらと呼ばれているようだ。まるで某ゲームがモチーフのラノベ主人公が隠しスキルバレたときの反応じゃぁないか。

 

「それで、蘭の二つ名って結局どうなったんだ?やっぱり『紅蓮』?」

 

「いや、珍しいことに『深紅』だった。理由は鮮血を飛び出させるようなプレイングだからだって」

 

 失礼だな、と呟いてるが、個人的にはぴったりだと思った。

 

「ていうか、これ学校に行けるのかな……」

 

 既に時刻は7:30、登校時間は8:30なので、準備を含めるとそろそろでないとヤバイ。

 

「……一応マネージャーに頼んで、私と君を車で送迎してもらうように準備はしてあるから問題なし。学校側にも万が一の為に遅れる可能性も連絡済み」

 

「お早い事で……」

 

 そういいながら朝食を食べ終えた俺たちは、マネージャーさんが来るまでに皿洗いやら制服への着替えやら準備を進める。そして45分になると、勢いよくインターホンが鳴り響く。

 

 俺は相手の顔をモニターで確認すると、そこには明るめの茶髪を縦ロールに中央で束ねたスーツの女性が姿を現した。

 

「……どちら様ですか?」

 

『朝早くすみません、朱志那蘭のマネージャーで宇津瀬見金彌(うつせみ かなや)と申します。風山蓮さん……でお間違いないですか?』

 

 俺は蘭を手招きして確認すると、彼女から本人であると頷かれた。

 

「はい、ということは今回の送迎の?」

 

『はい。蘭から聞いていてくれて助かります。それで準備の方は?』

 

「とりあえず俺も彼女も何時でも出られますので、そちらに向かいましょうか?」

 

『ええ、では中の待合室で待機したいので中にお入れしてもらっても構いませんか』

 

 俺はそれを聞くとすぐに開場する。するとそれに乗じてマスコミが流れ込もうとするが、そこは警備熱心なガードマン達が立ちふさがって追い払ってしまうのが少しだけ見れた。

 

「さて……行きますかレディ?」

 

「……護衛はよろしくね、ナイト」

 

 なんとも不可思議なコントをしつつ、俺たちは一階へと出るのだった。

 

 

 

「さて、まず蓮さん、貴方は現状について分かっていますか?」

 

 車にのって移動する俺に、金彌さんは対面でそう聞いてきた。

 

 ちなみに今乗ってるのは所謂リムジンタクシーと呼ばれる奴で、運転手とは別に、俺と蘭、そしてそれに対面する形で金彌さんが座ってる。うん、少しだけ居心地が悪い。

 

「現状……ですか?」

 

「はい、昨日の試合、貴方はプロである承乃介選手に試合……それもエキジビションマッチとはいえ公式戦で勝った……これは事件レベルで大変なことです」

 

 まぁだろうね。それは何となくわかる。が、次の瞬間に固まってしまう。

 

「しかも相手は蘭さんの師匠とも呼べる彼です。戦士族のタイトルマスターである彼にです」

 

「…………へ?」

 

 蘭の師匠?タイトルマスター?それってつまり…………え゙!?

 

「もしかして……タイトルの奪取……とかしちゃったわけです?」

 

「いえ、そもそもデッキの分類カテゴリーが違うのでそうはなりませんが……問題は鳥獣のタイトルマスターなんです。彼は試合は愚か、練習戦ですら『爆炎の戦士』こと一条承乃介選手に勝てたことのない。……これが意味することは、分かりますよね」

 

 金彌さんが試すように聞いてくる。俺は何となくだが頷いて

 

「その鳥獣のタイトルマスターが興味を持った……とかですか?」

 

 俺の回答に、彼女は苦笑いを浮かべるだけだった。え、違うの?

 

「そうですね……それだったらまだ良かったんですがね」

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのタイトルマスターの称号、君に譲り渡したいと言ってきたんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 俺は思わずそう叫んだ。思わず立ち上がってしまいそうだったが、車の中なので自重するが、天井が高いところならまず立ち上がってるだろう。

 

「ちょっと待ってください!!俺はプロデュエリストじゃないんですよ!!戦績だって昨日の彼とのデュエルだけ、そんな若輩に務まるわけがない!!」

 

「ですが、そのタイトルマスターは頑固というか……こうと決めたら曲げないというか……」

 

「第一、俺なんかよりも強いデュエリストは多いはずです。昨日のだって、最後のカードを引けなかったらまず負けていた……紛れ当たりも良いところです」

 

「…………エキジビションとはいえ、紛れで伯父様に勝てる人なんてそうそういない」

 

 と、そこで止めに入ったのは蘭だった。

 

「あの人……プロデュエリストの中では最高位に有名、何故なら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()1()5()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総合……タイトルマッチ?」

 

「プロのタイトルマスターだけが出場できる大会で、その年の最強のタイトルマスターを決める大会なんです」

 

「……伯父様はその総合タイトルマッチで優勝を決めてから15回、数多のタイトルマスターをはね除けて勝ち続けてきた。最早伝説の偉人くらいに有名」

 

「つまり……現在最強のプロデュエリスト……ということですか?」

 

 俺が恐る恐る聞くと、当然のように頷いてる二人……マジかよ……。

 

「私も弟子として何度もデュエルしてるけど、まともにやって勝てたのは一度だけ、それも伯父様の手札事故が原因、それを価値の理由にしたくないから、結局は全敗」

 

「あ、あの蘭でさえ勝てない相手……だと!?」

 

 あれ?てことは俺はつまり…………

 

「もしかして……プロデュエリスト最強の座に?」

 

「そこまでは言いませんが、エキジビション用に調整されていたとはいえ、彼に本気……『RUM』を使わせたのは中々居ません、そういった意味では強者になるでしょう」

 

「あ、これ断れないパターンじゃん…………」

 

 そこまで言われてしまうと、必然的に受けなければ何されるか分からなくなりそうな状況に発展しそう……クソォ

 

「分かっていただければ良かったです」

 

「でもそうなると……高校の大会に出られなくなるのは……」

 

「大会?……あぁ、全国大会ですか、もしかして出場なされるんですか?」

 

「ええ、元々プロの蘭はレギュレーションで出られないので、それ以外のメンバーで出る予定なんですよ……五人で」

 

 俺がそう言うと、彼女は少し考えると

 

「……蘭、彼の所属するチームは、強さ的に言えばどうなの?」

 

「……少なくとも、全員が最低限プロとしてやっていける位には強い。うち二人はタッグデュエルなら私と蓮が組んでもギリギリ」

 

「ちなみにデッキはそれぞれ『スキドレ暗黒シャドール』、『アルティマヤシンクロ』、『ドラゴンビート』、『蘇りループ』ですよ」

 

 俺がそう言うと、金彌さんはポロリとペンを落としそうになった。

 

「……なにそのガチパ……」

 

「ちなみにこの中に俺がいて、実力なら恐らく三番目か四番目ですかね」

 

「…………分かりました」

 

 そう言うと車が停車する。窓を見るとどうやら学校に到着したようだ。

 

「この件に関しては帰りにまたお話ししたいと思いますので、よろしくお願いしますね」

 

「あ、はい……分かりました」

 

 そう言うと俺は金彌さんから名刺を受け取り、それを財布の中へしまった。

 

「では、勉学に勤しんでくださいね」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 それでは、と、マネージャーさんを乗せたリムジンタクシーはさっさと別の場所に行ってしまった……。

 

 因みに教室に入ったとたん、クラスメイトから質問やサインやらを求められたのは言うまでもない。



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第十三羽 嵐のあとは台風 後編

「まったく、君ら二人は大馬鹿なのかね……」

 

 部室に入って早々に、俺と蘭は二人揃って劔奈先輩に当然のごとく苦言を申された。椿姫先輩と祐司先輩も苦笑いを浮かべている。

 

「特に蓮、君は大会にも出るんだぞ?テスト明ければすぐに予選だ、それだというのに……」

 

「面目次第も御座いません……」

 

「いや、まぁ過ぎ足ることは仕方ない。……しかし、これは本格的に君の公式戦用のデッキを作らなくてはならなくなったな……」

 

 劔奈先輩は頭を押さえながら呟いてるが、実際問題、テレビであんな試合をすれば、地区予選で対策取られるのは必死だろうな。

 

「……まぁ今回の場合は不慮の事故も半分あるからな、多めに見るとしよう」

 

「あ、ありがとうございます。先輩」

 

「全くだ、その分地区予選で活躍しなければどうなるか……分かってるな?」

 

 暗に一戦でも負けたらボコるというお達しに俺は苦笑いで頬をひきつらせる。

 

「……蓮、マネージャーが到着したみたい」

 

「ん。了解、校門の前で良いのか?」

 

「勿論、それと大会メンバー全員を連れてこいとお達しがあった」

 

 その言葉に俺と蘭以外の全員が首を傾げるが、どうやら全員予定が無いようで黙ってカードを片付けて帰宅準備に取りかかるのだった。

 

 

 

 

 今日二度目、再びのリムジンタクシーに乗って連れてこられたのはなんの変鉄もないオフィスビルの一つだった。車を降りてエレベーターに乗り込むと、それはゆっくりと高く昇っていく。

 

「それにしても……劔菜と亮はよくもあれに乗って平気だったね?」

 

 そういう祐司先輩の表情は緊張感MAX、いつぶっ倒れてもおかしくないくらいにガチガチだった。

 

「まぁ私も亮も、リムジン系に乗るのは日常茶飯事だからな」

 

「あー、確か亮ってそういえば政治家の御曹子だったっけ?」

 

「そうですよ。ちなみに劔菜先輩は大手財閥の一人娘ですから、多分俺以上に格は上ですね」

 

 なんともはや、一人暮らしの俺や孤児の蘭にとっては羨ましい限りの家柄だったが、まぁ逆の立場だったときを考えるとそれも無くなってしまった。

 

「それにしても……いったいなんで私や蓮だけじゃなくて他の皆も?」

 

 と、話を変えるように蘭がマネージャーに聞いてくる。

 

「理由は三つですね。一つは地区予選についてのこと、二つ目が蓮君のプロないしタイトルについてのこと」

 

「あー、朝の続きですね?」

 

「その通りです。そして最後の一つについては……まぁすぐに分かるので今は言わないです」

 

 なんとももったいぶった事だが、別段どうでも良いし関係ない。

 

「で、俺たちはどこに行くんです?」

 

「それは……」

 

 カン、コン!!

 

 と、なぜかアニメでのデュエルの効果音に良く似た音と共にドアが開く。そこには

 

「ガッハッハ!!粉砕!!玉砕!!大喝采!!」

 

 何やら嫁好き社長のような事を口走ってる初老のスーツ男がテレビゲームでデュエルをしていた。しかも彼のフィールドと思われる場所にはライフ8000だというのに『青眼の白竜』『究極竜』『双爆裂竜』『真究極竜』『カオス・MAX』と、どうやったらフィールドに全て揃えられるのか甚だ疑問な展開をしていた。しかも相手側のフィールドは意識したかのように『ブラマジ』やら『カオソル』やらといった決闘王のエースモンスターばかり乱列してる。はっきりいって相当なカオス具合だ。

 

「「「「「…………」」」」」

 

「はぁ…………またですね」

 

「…………そうですね」

 

 さすがの蘭以外の俺たちは唖然、その蘭とマネージャーさえも呆れたように頭を抱えている。

 

「……社長、いつも通りなにやってるんですか?」

 

「ん?あぁ宇津瀬見くんか。なに、少しばかりループプレイして私の嫁たちを降臨させていたのSA!!」

 

「果てしなくどうでもいいので、とりあえず電源切りましょう。私がいる時点で、彼らが到着してるのは分かってますよね?」

 

 そう言って電源コードをあっさり抜いてしまうマネージャーさんに社長さんは阿鼻叫喚の悲鳴を、俺達はただ苦笑いを浮かべるだけだった……。

 

 

 

 

 

「さて、改めましてだねデュエル部の皆さん」

 

 と、漸く仕事モードらしくなった社長さんが椅子に座ってこちらを微笑む。

 

「自己紹介をと言いたいが……まぁ面倒だから社長と気軽に呼んでくれたまえ」

 

「いや気軽にって……それで、自分達をここに来させた理由は?俺と蘭はまだしも、他の皆は……」

 

「ふむ、当然だが、それ自体は簡単な事だ。君達デュエル部に()()()があるんだ」

 

「お願い……失礼ですが社長さん、この事は録音してもよろしいですかな?」

 

 と、劔菜先輩が自信たっぷりに懐からボイスレコーダーを取り出した。

 

「あぁ構わないよ。それで話というのはだね、君達に全国優勝してもらいたいのだよ」

 

「?なにそれ、そんなのどこのチームでもそれを目指すに決まってるじゃない」

 

「そういうことではない。君達に()()に優勝してもらいたいと言ってるんだ」

 

「つまり絶対優勝というわけですね……ですがなぜ?」

 

 祐司先輩が疑問を問うと、社長さんはタブレットを一つ取り出し、そこに映された画像をこちらに見えるように向ける。

 

 そこには色黒の男と整った顔の女性の二人が映し出されていた。

 

「この二人は?」

 

「……君達は自分達が目指す大会……デュエルフェスティバルのメインスポンサーは知ってるかね?」

 

「えっと、確かコンマ……K○N○MIだったような……それとこれどういう関係が?」

 

 おい、今コンマイ言いかけたぞ亮。

 

「まぁ最後まで聞きたまえ、今のデュエリスト達……主に高校生から中学生にかけては実力が高くなってきてる。それはプロは勿論、我々素人の大人から見ても明らかなんだ」

 

 その言葉で俺は言いたいことが分かった。そういう意味なら確かに俺や蘭だけでなく、全員に来て貰った方が手っ取り早いし効率がいい。

 

「……つまり社長は、この二人ないしその関係者が大会出場デュエリストに接触すると踏んでるんですね?」

 

「流石は黒霧財閥のご令嬢、話が分かるようで助かるよ。そうだ、今の時代、デュエルで借金を帳消しにしたり、罪を軽くしたりと、デュエル資本主義に傾いてる。そんな中で活動する連中……詰まるところ」

 

「…………デュエルギャングですか」

 

「その通りだ風山蓮くん。デュエルギャング達は必ずこの大会で君達未来ある子供達を引きずり込もうと企んでいる。故に……」

 

「ふざけるな」

 

 俺はそこでその言葉を口にした。社長の顔は驚きに満ちており、蘭以外のデュエル部の全員が俺と同じく殺気だった目をしてる

 

「この際だからはっきり言っておく。俺達はただ単純にデュエルを楽しみたいだけだ、ギャングだのなんだのと御託を並べてるが、結局のところアンタもデュエルを利用としてるだけだ」

 

「それは……だ、だが私は君達子供の未来を……」

 

「ワリィが未来は自分で作るもんなんだよ。親の、大人の、世間のレールなんかどうでもいい、自分が何をしたいか、それが今できる精一杯なんだよ!!」

 

「しかし……」

 

「だいたい虫が良すぎるっての。未来だのなんだのと、結局は自分の部下とかが欲しいだけじゃない」

 

「そうですね。僕は皆みたいに強くは無いけど、そういうしがらみにまみれてデュエルはしたくない」

 

 俺達の言葉に社長はたまらず口をつぐむ。

 

「社長さん、この際だからはっきりと言います。我々は貴方の目論み通り優勝はしましょう。ですが、それ以上に私達に首輪を着けたいなら話術ではなく、それこそデュエルで話を着けるべきでしたね」

 

 そう言って俺達は振り返る。蘭以外のメンバーもそれに続き部屋を出て行くのだった。

 

 

 

 

 蘭視点

 

「……やれやれ、だいぶ嫌われちゃったみたいだね」

 

 社長が肩を竦めながら言うのに、私は思わず睨んで返す。

 

「おいおい、蘭くんまでそんな目で睨まないでくれたまえよ」

 

「……社長はなんであんなことを言ったの?」

 

 私はそこまで大きな声じゃないがそう聞いた。

 

「社長は確かにキチガイだけどそこまでネジは緩くなってないはず」

 

「酷い言いおうだね。一応社長なんだよ?上司なんだよ?」

 

「だったら彼らの人間性はすぐに見抜けるはず、何せ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「無視かい?ねぇわざとかい?」

 

 そんな風に能天気に聞いてくる社長を睨み一閃する。

 

「わかったから。まぁ確かに彼らがデュエルに情熱を持ってるのは見なくてもわかるし、典型的な熱血キャラだって事もみたから分かってたさ」

 

「…………ならなんで?」

 

「だからこそなんだよ。熱血キャラってのは無理をし過ぎる。その無理は肉体だけじゃなくて精神にも負荷が掛かる」

 

「社長のせいでさらに負担が増えそうだけど?」

 

 ジト目で睨むが、社長は涼しい顔だ。

 

「その点は問題ないさ。確かにそうなるようには仕向けたが、どちらかと言えば彼らに目標を与えるという良い意味の負荷だからね」

 

「白々しい……」

 

「それに何より()だ」

 

 彼……詰まるところ蓮の事だろう。

 

「恐らく彼はカードに選ばれた人間だろうね。それも精励なんてレベルじゃないものに……君も感じてるんだろ?蘭くん?」

 

「……」

 

 私はその言葉に何も言わず、ただその場から立ち去るだけだった。

 



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第十四羽 対決 鳥獣vs闘神

だいぶ久方の投稿です!!遅れてすみませんでした!!

蘭「作者……遅れた理由は?」

FGOのイベントと第七特異点進めてて……あとデュエルリンクス始めてそっちに気を取られてました……

蘭「そう……光指す世界に……汝ら暗黒住まう場所無し……」

ちょ!!それはヤバイですって!!ていうかなんでデモンベイン!?

蘭「お仕置きには丁度いいから……渇かず飢えず……無に帰れ……レムリア……インパクトォ!!」

蓮「昇華!!」

ギニャァァァァァァァァァァァ!?


「くそ……」

 

 俺はイライラしながら家路に向かって歩く。今は一人で、先輩達や亮とは方向が逆なせいで尚更だった。

 

「デュエルを利用してるだけ……か」

 

 社長に呟いたあの一言、その言葉の本当に使うべき人間は寧ろ自分だ、それを認めたくないからこそ、社長の言葉の先にあることが分かって尚突っぱねてしまったのだ。自分がそうなのだと認めてしまう事になるから……。

 

「――風山蓮さん、ですよね?」

 

「……あ?」

 

 突然の声かけに、俺は亮のような低い声で反応する。見てみるとそいつは青いセーターにダメージジーンズという格好の青年であり、イケメンだった。

 

「こうして会うのは初めましてですね……自分は砕城凍士(さいじょう とうし)、ファンである貴方とお会いしたかったです」

 

「……ファン?」

 

 俺はその言葉に眉を細める。

 

「それはあの放送でのデュエルの事か?あれは偶々で――」

 

「あぁ、勘違いしないでくださいよ。私は確かにあなたのファンですが、それと同時に、()()()()()()()()()なのですからね」

 

「何?」

 

 俺はその言葉が良くわからなかった。すると彼は懐のポケットから一枚のカードを取り出すと、それを上空へ放り投げた。

 

 何を――そう思った瞬間、カードが突然輝きだして、俺たちを覆う。そして目を再び開くと、俺はその光景に愕然とした。

 

 周りは荒野のような土と壁、さらに上空にはまるで陽炎のように揺れる赤い空、それは正しく……

 

「……異界(ゲート)……だと!?」

 

「さぁ、戦いましょう!!私は貴方を倒したいためにここにいるのだから!!」

 

 彼はまるで狂気にとりつかれたような面持ちで、手元のデュエルディスクを展開する。俺も仕方なくディスクを展開する。

 

「「デュエル!!」」

 

蓮 LIFE 8000

凍士 LIFE 8000

 

「私のターン!!……キヒヒ!!私はフィールド魔法『鉄壁なる巨人要塞』を発動!!」

 

「な!!青デッキ!?しかもそれは……」

 

 そう、それはバトスピ時代、俺を破壊神と言わせしめた『闘神粉砕デッキ』の始まりの型だった。

 

 展開されたフィールドは、俺にとっては馴染みがある巨大な要塞だった。まるでコロッセオのような外観と馴染みのある白磁の壁に、俺は恐々とする

 

「続けて永続魔法!!『柱岩の海上都市』を発動!!このカードがフィールドにあるとき、『闘神』または『ゴレム』モンスターが召喚、反転召喚、特殊召喚される度に相手のデッキからカードを二枚墓地へ送る!!」

 

(『粉砕』の効果の変わりか……てことはかなりヤバイ!!)

 

 バトスピ時代、ただでさえ粉砕デッキには必須とまでされていたネクサスカードだったが、さらに範囲が広がってしまいだいぶ厄介なカードに成長してしまっている。

 

「そして私は『光の闘士ランダル』を召喚!!」

 

『光の闘士 ランダル』 ☆3 A 1600

 

「この瞬間、水属性線士族の『ランダル』は『巨人要塞』の効果を受け、『闘神』モンスターとして扱われる!!そしてそれにより、『柱岩の海上都市』の効果!!ランダルの効果を会わせて三枚墓地へ送れ!!」

 

(ぐ、『ランダル』や『光の』と名のつくモンスターの大半は、なにかしらの能力の範囲を広げる効果を持ってる……青は『デッキ破壊枚数の追加』だから厄介極まりない)

 

 ちなみにこのデッキは42枚で構成されてるため、残りのデッキ枚数は34枚だ。

 

「さらに私はカードを二枚伏せて、ターンエンド!!」

 

 

凍士 LIFE4000 手札0

フィールド

『光の闘士 ランダル』

『鉄壁なる巨人要塞』 フィールド魔法

『柱岩の海上都市』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……俺は永続魔法『聖者の樹の実』を発動!!そして『ハーピィ・レディ1』を召喚!!」

 

『ハーピィ・レディ1』 ☆4 A1300→1600

 

「バトル!!『ハーピィ・レディ1』で『ランダル』に相討ち!!」

 

「この瞬間、伏せていた罠カードを二枚発動する!!『退魔絶刀角』、そして『爆砕轟神掌』!!」

 

「な!!(ダブルバーストマジック!?しかもそれは!!)」

 

 俺の驚きに彼はニヤリと嗤うと、途端に空から雷が降り注ぎ、デッキが八枚も墓地へと飛んでいく。

 

「『退魔絶刀角』はモンスターが破壊されたとき、相手のデッキを5枚墓地へ送る。そして『爆砕轟神掌』は破壊されたモンスターのレベル×1枚、相手のデッキからカードを墓地へ送る効果を持ってる!!貴方も良く知ってるカードですよね!!嘗ての世界大会ファイナリスト、『破壊神の蓮』さん!!」

 

「っ!!……やっぱりそうか、道理で見覚えのあるカードを使ってくると思ったよ」

 

 予想していたとはいえ、ここまで完璧に真似されるとは思っても見なかった。

 

「……俺がデッキ破壊から逃げたことに許せないのか?」

 

「……確かにそれもあります。このデッキは当時公式に乗っていた貴方のデッキをベースにして作ったものです。魔法(マジック)の比率が極端に少なく、モンスター(スピリット)永続魔法(ネクサス)を重視した高パワーによる圧殺とデッキ破壊に特化したこれは、引きが強くなければ事故必死のそれでした」

 

「だろうな、それでも当時はまだデッキ破壊対策もネクサス破壊のカードもそこまで流通してなかったからな。だからこそそのデッキで決勝まで行けた」

 

「そうです。貴方は、デッキ破壊を主流としていたプレイヤー達にとっては正しくカリスマのような存在だった!!回しにくいと言われた『青の粉砕デッキ』を、『闘神粉砕』という別の角度から組み合わせることによって、デッキ破壊に新たな風を舞い込んだ。……なのに!!」

 

 そういうと彼はまるで憎しみを込めた目でこちらを睨んだ。

 

「貴方は事もあろうに翌年の世界大会で、『デッキ破壊』ではなく、『爪鳥ビート』等というデッキへ鞍替えした!!貴方はデッキ破壊から逃げたんだ!!」

 

「ッ!!」

 

「それだけならまだ良かった……けど、この前のテレビ中継での貴方は、本来のデッキである『デッキ破壊』を使わないでプロ相手に勝った!!ふざけるな……貴方がいつものデッキを使っていればもっと速く勝利していた!!それなのに……!!」

 

「……そうだな」

 

 俺は何も言えなかった。確かに俺はデッキ破壊を中心としてプレイはしていた。けど、

 

「でもはっきり言うぜ、俺はあの『デッキ破壊』……『闘神粉砕』を使ってたのは、ただ単に楽だったからだ。別段デッキ破壊が好きだったとか、そういうのは確かに少しはあったが、それでもただ楽だったっていうのが本音だった」

 

「な!?」

 

「考えても見ろ、デッキ破壊ってのは別にライフを削らなくても効果でどんどん回すことができる。しかも今の時代、可能な限りデッキ枚数を抑えることでの高速展開を重視されたスタイルで、一番辛いのはキーカードを墓地へ送ること、それを重視したデッキ破壊デッキは……まぁどこぞのサイバー流信者じゃないが、ある意味卑怯者と蔑まれても仕方ないけど、それ以上の強さを誇るんだ」

 

 何せ、中には『愚風ガルード』という相手のライフを削りながら、かつ相手のデッキを削り飛ばすという最悪極まりないデッキが流行した位だ。デッキ破壊の強さの証明としては充分すぎる。

 

「……けど、あえてそれ以外の理由を挙げるとしたら、俺はあのデッキが、カード達が悲しそうに感じたんだ」

 

「悲しそう?」

 

「お前も知ってるだろ?当時の環境を」

 

 そう、アイツが使ってるデッキの当時、バトスピ界では漸くといって良いほどデッキ破壊無効の効果を持つカードが発売された。それはステータスこそ貧弱で、パワー勝負になれば確実に負けてしまうだろうが、それでも、青デッキに対しては一枚だけしかフィールドに存在しないそれのために全てを封殺されてしまったという現象が起きていた。

 

 そのカードは白のスピリットだったが、その低レアリティと性能から各デッキに出張され、それと同時に『オリハルコン粉砕』、『愚風ガルード』、『闘神デッキ破壊』と呼ばれるデッキ全てを強デッキから雑魚と呼ばれる事になってしまった。

 

「だから、どうやったらデッキ破壊をしやすくできるか……そう考えたときに作ったのがそれだ。けど、多分今の環境なら中堅レベルが関の山だろうな」

 

「……それは」

 

「当然だろ?相手はそのデッキよりも強いカードを組み込んでるんだ、良くても辛勝が限界なんだよ。お前だって分かるだろ!!環境が動くのは、今の一瞬一瞬だって事が!!」

 

「ぐ……だが、貴方のそのデッキは、環境にも残れない底辺じゃないか!!ファイナリストが使うにはお粗末すぎるほど――」

 

「…………それ以上言うなら、俺はお前に手加減してやれなくなるぞ」

 

 俺は奴の言葉を遮って、睨みながらそう呟いた。

 

「別段、俺がどんなデッキを使おうと俺の勝手だ、デッキ破壊でファイナルに立ったから?そんな理由で俺を縛ろうって言うなら……俺はてめぇを許せなくなるぜ?」

 

「ぐ……ですが貴方のフィールドにはモンスターは存在しない!!もうバトルは不可能だ!!」

 

「……俺はカードを永続魔法『神樹の切り株都市』を発動、カードを一枚伏せてエンドフェィズ、効果でカードを一枚オープン……カードはレベル3の『チューニン・ツバメ』の為特射召喚、ターンエンド」

 

 

蓮 LIFE8000 手札二枚

フィールド

『チューニン・ツバメ』 A 1500

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「私のターン!!……私は『一時休戦』を発動……互いに一枚ドローして貴方のエンドフェイズまでの一切のダメージを無効にする。これでターンエンド……」

 

 

凍士 LIFE4000 手札一枚

フィールド

『鉄壁なる巨人要塞』 フィールド魔法

『柱岩の海上都市』 永続魔法

 

 

「俺のターン!!……俺は『幻のグリフォン』を召喚してターンエンド、この瞬間、『切り株都市』の効果でデッキをオープン……カードは『鳥武神シシグイ』、レベル4以下じゃないため、デッキトップに戻す」

 

 

蓮 LIFE8000 手札二枚

フィールド

『チューニン・ツバメ』 A 1500

『幻のグリフォン』 ☆4 A 2000

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「私のターン!!……私はモンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

 

凍士 LIFE4000 手札0枚

フィールド

セットモンスター

『鉄壁なる巨人要塞』 フィールド魔法

『柱岩の海上都市』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン、俺はこのままバトルフェイズに入る!!『幻のグリフォン』で守備モンスターを攻撃!!」

 

「罠カード『和睦の使者』!!このターン、互いのモンスターは戦闘では破壊されない!!」

 

 そして裏返されたモンスターは……『ヒゲアンコウ』?『闘神』関連じゃない?

 

「……俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド。この瞬間、効果でデッキをオープン……カードは『ハーピィ・レディ1』だから特射召喚!!」

 

 

蓮 LIFE8000 手札二枚

フィールド

『チューニン・ツバメ』 A 1800

『幻のグリフォン』 ☆4 A 2300

『ハーピィ・レディ1』 A 1900

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「私のターン!!……来た!!私は『ヒゲアンコウ』を二体分のリリース素材としてアドバンス召喚!!現れろ、『戦輝神ゼルドナーグ』!!」

 

『戦輝神ゼルドナーグ』 ☆7 A2800

 

「『ゼルドナーグ』も『巨人要塞』の効果で『闘神』と名のつくモンスターとして扱う!!そして『柱岩の海上都市』の効果!!『ゼルドナーグ』も『ランダル』同様に相手のデッキからカードを墓地へ送る枚数を一枚増加させる効果を持ってる!!よって三枚墓地へ!!」

 

「ぐ……(『飛翔融合』と『スピニード』、『マッハホウオウガ』が落ちたか……)」

 

「さぁバトルだ!!『ゼルドナーグ』で『ハーピィ・レディ1』を攻撃!!この瞬間、『ゼルドナーグ』と『柱岩の海上都市』の効果発動!!『ゼルドナーグ』は攻撃宣言時、魔法、罠のどちらかを選択し、相手のデッキを五枚墓地へ送り、その中に選択したカードが存在するとき、相手のモンスターをこのバトル終了後に相手のモンスター一体を破壊する!!私は『魔法』を選択!!

 そして『柱岩』はモンスターの攻撃時に、相手のデッキを一枚墓地へ送り、そのカードがレベル3以下のモンスターなら相手のモンスター一体を破壊する!!これで――」

 

「――させない!!自分フィールドのモンスター一体をデッキに戻し、手札から『生還者コウロコー』は特殊召喚できる!!俺は『ハーピィ・レディ1』を選択!!来い!!『コウロコー』!!」

 

『生還者コウロコー』 ☆4 D2000

 

「『コウロコー』がフィールドに存在する限り、お互いのデッキからカードを墓地へ送ることはできない!!」

 

「ぐ……余計なものを!!だが、モンスターが変化したことにより、『ゼルドナーグ』の攻撃対象を『コウロコー』に変更!!そして『ゼルドナーグ』は自身の攻撃時に相手のデッキからカードを墓地へ送れなかった時、1ターンに二度まで再び攻撃できる!!」

 

「生還者がすぐに墓地(死に場所)へ戻ると思うなよ!!永続罠『安全地帯』!!これにより『コウロコー』を選択し、戦闘及び効果で破壊されない!!」

 

「ならば残り二度の攻撃でライフを減らす!!『ゼルドナーグ』で『幻のグリフォン』を攻撃!!『ハーピィ・ツバメ1』がいなくなって元の2000の攻撃力だ、600のダメージを食らえ!!」

 

「(こいつ…………)罠カード『緊急同調』!!バトルフェイズにシンクロ召喚する!!俺はレベル4の『幻のグリフォン』にレベル3『チューニン・ツバメ』をチューニング!!現れろ!!『ゲイル・フェニックス・ピーコック』!!」

 

『ゲイル・フェニックス・ピーコック』 ☆7 A 2800

 

「攻撃力2800……!!」

 

「どうする?相打ち覚悟でモンスターで攻撃するか?」

 

「ぐ……私はバトルを強制終了する……これでターンエンド…………」

 

 

凍士 LIFE4000 手札0枚

フィールド

『戦輝神ゼルドナーグ』 A 2800

『鉄壁なる巨人要塞』 フィールド魔法

『柱岩の海上都市』 永続魔法

 

 

「俺のターン!!……とりあえず、お前……」

 

「?」

 

「いくらベースが扱いづらい俺のデッキだとしても、弱すぎなんだよ!!あの場面、アタックしていれば『ゲイル・フェニックス・ピーコック』を除去できてた。フィールドアドを少しは減らせてたんだ、それを怠ったな?」

 

「ぐ……」

 

「まぁ手札がゼロ、フィールドにそいつしか居ないんじゃ仕方ないけどな、それでも手札に『シシグイ』があるってわかってるのにそれをしなかったのは大問題だぜ?初心者でも分かるくらいにな」

 

 確かに『シシグイ』の能力は攻撃力上昇がメインで能力値は低い、けど、ほんの少しの数値を動かすだけならアドバンス召喚で事足りるのだ。

 

「そのツケを、この場で受けさせてやるよ!!俺は墓地の『飛翔融合』の効果発動!!」

 

「な!?墓地で発動する融合魔法だと!?」

 

「1ターンに一度、手札の鳥獣族一体……『チューニン・ツバメ』を墓地へ送ることでこのカードを手札に戻し、発動!!手札の『シシグイ』と『生還者コウロコー』で融合召喚する!!天翔る神鳥、天覆う武の羽翼、別たれし狭間の世界より絆の力で現れろ!!『鳥武姫神シシグイ・アスカ』!!」

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 ☆10 A 2000

 

「『シシグイ・アスカ』の効果発動!!墓地からこのカードの融合素材なった数まで、鳥獣族モンスターを特殊召喚できる!!俺は『鳥武神 シシグイ』を選択!!」

 

『鳥武神 シシグイ』 ☆5 A 500→1100

『ゲイル・フェニックス・ピーコック』 A2800→3400

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 A 2000→2600

 

「そして速攻魔法、『地獄の暴走召喚』!!攻撃力1500以下の『シシグイ』が特殊召喚されたため、デッキから『シシグイ』を可能な限り特殊召喚する!!そしてお前は自分フィールドのモンスターを一体選択して、そのモンスターをデッキから可能な限り特殊召喚できる!!」

 

「わ、私のフィールドには『ゼルドナーグ』一体だけ、よってデッキから『ゼルドナーグ』一体を特殊召喚!!」

 

 やっぱりというか、本来の俺のデッキには『ゼルドナーグ』は二枚しか容れてなかった、やはりこっちでもコストを考えても当然か。そしてこれにより俺のモンスターの攻撃力は

 

『シシグイ』×3 A 3500

『シシグイ・アスカ』 A 5000

『ピーコック』 A 5800

 

「バトルだ!!『シシグイ』二体で『ゼルドナーグ』を攻撃!!」

 

「ぐぅ!!」

 

凍士 LIFE8000→7300→6600

 

「続けて『シシグイ』でダイレクトアタック!!迅雷のストームブリット!!」

 

「うぁぁぁ!?」

 

凍士 LIFE6600→3100

 

 『シシグイ』の攻撃によって、奴は大きく吹っ飛ぶ。

 

「トドメだ!!『シシグイ・アスカ』でダイレクトアタック烈風のスクラム・ブラスター!!」

 

「そ、そんな馬鹿なぁぁぁぁぁ!!」

 

凍士 LIFE3300→0

 

 

 

 

 

 

 

「っと、どうやら戻ってきた……のか?」

 

 デュエルが終わった瞬間、今までの異界のバトルフィールドのような風景がもとに戻る。

 

「っと、そういえばアイツは……」

 

 俺はあの凍士とか名乗った奴を探す。デュエルのソリットビジョンとはいえ、だいぶ派手に吹っ飛ばしたんだ、どこかに倒れてるはず、そう思って周りを見渡す。

 

 案の定、奴はすぐ近くに倒れていた。俺は慌てて駆け寄ると奴に声をかける。

 

「おい、分かるか?」

 

「う……う、ここは……」

 

「どうやら意識はあるみたいだな、さて何から聞き出せば良いやら……」

 

 さっきの異界を出現させたカードとか、俺のデッキをこの世界のどこで知ったのかなど色々と聞き出そう、そう思った瞬間だった。

 

「あ、あぁ……嫌だ」

 

「ん?どうしたん……」

 

「嫌だ嫌だ嫌だ!!私は、私はまだ消えたくない死にたくない助けてくれ!!」

 

「お、おいいきなりどうし……ッ!!」

 

 あまりの奴の動揺に俺が肩を抑えようとした瞬間、俺は信じられない体験をした。奴の体に触れた瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「な!?これは……おい!!お前、どうやって異界のフィールドを呼び出した!!」

 

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!私は……私は選ばれた筈なのだ!!()()()()()に!!」

 

「闇の超新星?……おい、それってどういう」

 

 慌てて聞き出そうとした瞬間、奴の体は文字通り砕け散り、そこには奴が着けていたデュエルディスクだけが残る。

 

「アイツ……」

 

 俺は残されたデュエルディスクを拾い上げ、そこから奴が使っていたデッキを抜き取る。そこに入っていたのは、正真正銘、俺の使っていた青のデッキをベースにしたカード達が名を連ねている。が、一枚だけ、明らかにおかしいものを見つける。

 

「『海王神獣 トライ・ポセイドン』?なんでこれが……」

 

 そう、それは三王星と呼ばれるモンスターの一枚で、コストやデッキ相性などから組み込まなかったカードだ。それがなぜか組み込まれていた。

 

「『闇の超新星』……三王星……まさか……」

 

 俺は脳裏に過った考えにあり得ない、そう思った。だが、現状や『トライ・ポセイドン』のカードを見ると、考えざるを得なくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()



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第十五羽 決意纏う翼

「…………」

 

 家に戻った俺は凍士……おそらくは消滅したであろう彼のデッキを再び確認していた。机の上には奴のデュエルディスクが物静かに乗せられている。

 

 見たところは青の……俺の使っていたデッキに、一部のカードが遊戯王のカードになっているぐらいにしか最初は思わなかったが、眺めていくうちに段々と違和感を得始めた。

 

(『トライ・ポセイドン』、『英雄巨人タイタス』、どれもそれなりに強いけど俺のデッキに入れた覚えの無いカードだ)

 

 さらに言えば、エクストラにもメインにも、何枚か入れていたはずの『アルティメット』が抜け落ちて居たのだ。まぁあれは本当にオマケ程度の枠だったからどうでも良いのだが、ベースにしたならそれなりのカードはあっても良いはずなのに、それがなかった。

 

(…………それに、あの消え方……色々と細部は違うけど、どう見ても……()()()()()()()()()のそれだった。)

 

 両者とも、負ければ消え去るという意味では同じだが、恐らく、今回の場合は後者だ。カードの軸から考えてもそれが妥当。

 

「…………考えても仕方ねぇ、か」

 

 そう思い、とりあえずデッキを余っていたカードケースに収納し、さらに奴のデュエルディスクを、デュエルディスク専用のケースにしまって外に出る。向かうは隣の部屋……蘭の部屋だった。

 

 インターホンを押すと、少し時間を置いて中からタタタっと歩いてくる音が聞こえる。どうやら帰ってきてはいたらしい。そしてドアが開けられて……

 

「ブファ!?」

 

 盛大に吹いた。そこにいたのは、薄い黒の透けてるネグリジェに、妙に艶っぽいうなじに、少し紅くなった頬をした蘭が姿を現したのだ。しかも下着を着けてないのか、ネグリジェから素肌が……ってヤバイヤバイ!!

 

「お、オマ!!な、なんつー格好してんだ!?」

 

「……人がシャワー浴びてる時に訪ねてくる蓮が悪い……いや、タイミングが良い……かな?」

 

 なるほど、謎の艶っぽさと頬はそういうことか……言われてみれば確かに髪の毛が若干濡れてるし、濡れてるから余計に透けて……ってそういう問題じゃない!!

 

「よ、用事があるんだ!!と、とにかくお願いだから服を着てくれ!!」

 

「?ちゃんと着てるよ?」

 

「透けてるから!!察して!!」

 

「?…………!!///」

 

 漸く現状が分かったのか、蘭はみるみるうちに顔が紅くなって……ってなんでデュエルディスク展開してるんですか!?しかもスカーライト!?

 

「変態滅却!!アブソリュート・パワー・フォース!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」

 

 四階の廊下から文字通り吹っ飛ばされた俺は、この時ほど理不尽だと思った日は無かった。次からは夜にこいつの家に絶対に来ない……そう心に誓うのだった。

 

 

 

「……ごめんなさい」

 

 数十分かけて漸く戻ってきた俺にかけてもらった言葉は、それだけだった。まぁ、今回は俺のラッキースケベも有ったから仕方ないと言えばそうなのだろうが……

 

「だからってモンスター使ってぶっ飛ばす必要性を感じないんだが?」

 

「……仰る通りです」

 

 ちなみに彼女の現在の服装は先と変わらないネグリジェなのだが、下着やらなんやらを着たのかそこまで透けてない。……けど、個人的には勘弁して欲しいんだけど……

 

「……それで、用事ってなに?」

 

「あ、あぁそうだった。……あの社長の電話番号を教えてほしい」

 

 俺は漸く本題の内容を彼女に伝えると、彼女は訝しげに首を傾げる。

 

「?社長の?どうして?」

 

「……ちょっと気になることがあってな……もしかしたら何か知ってるかもしれないと……」

 

「そう、でも大丈夫だよ」

 

 大丈夫?その単語はどういう意味だろう?

 

「だって社長、()()()()()()()()

 

「………………はい?」

 

 そんな馬鹿な、そう思いながら振り替えるとそこには

 

「ハーイ♡」

 

 なぜか天井の板を外して忍者のように頭を逆さにして微笑んでるダメ男の姿が……うん

 

「…………」

 

「…………」ニヤニヤ

 

「…………『エターナル・アベンジ』!!」

 

「ちょっと待ってそれ君のデッキのモンスターじゃないよね!?あ、あれ?なんか白い光g」

 

 全く理不尽じゃないお約束である。

 

 閑話休題

 

「さて、いったい私に何のようかね」

 

「……爽やかに言ってないで服を着替えて天井を直してください、社長」

 

 蘭にジト目で睨まれながら涼しい顔の社長はどこ吹く風で自前の紅茶を飲んでいる。ちなみに格好はお約束のお約束でボクサーパンツにアフロに半裸である。……あとで多分蘭のアブソリュート・パワー・フォースを食らうんだろうな……。

 

「えっと、ちょっと例え話なんですが……デュエルで人が消えるなんてありえます?」

 

「…………」ピクッ

 

 俺のその言葉に、社長は紅茶を飲む手を不自然に止める。

 

「……それは、どんな感じにかね?」

 

「えっと、まるで5D'sの……負けたダークシグナーみたいに砂みたいな感じで……それが?」

 

「…………」

 

 社長は何かを迷う風に天を仰ぐが、すぐに紅茶をテーブルに置いて俺に向き直る。

 

「……簡潔に言えば、デュエルで人が消えることは、あり得ないことはない。寧ろ、エネルギー量だけで言えば簡単にできる」

 

「……」

 

「そしてその話……恐らくは今日見せた彼らが関わってる事は間違いないだろう。というより、そうとしか考えられない」

 

 社長さんはどことなく苦しそうに言ってる。

 

「あの写真の……って、それってどういう?」

 

「……デュエルマフィアやギャングの中にも、勢力図というものがある。その中で写真の奴等は最近のしあがってきた連中で、何やら変なカードをばら蒔いてると噂になってるんだ」

 

「変なカード?」

 

「あぁ、デュエルディスクを使わずに、まるでフィールド魔法を展開したような風景に様変わりするカード……名前は確か……『オープン・ゲート』だったかな?」

 

「!!」

 

 俺はそこで思わず立ち上がった。間違いない、そのカードは確実に……

 

「……どうやら、そのデュエリストと既に戦った後のようだね」

 

「…………はい」

 

 社長に俺は、さっきのデュエルのこと、負けたデュエリストが俺に恨みを持っていたこと、そして……そのデュエリストが砂のように崩れ落ちて消えてしまったことを全て。

 

「……なるほど、道理で君の名前を聞いたことがあると思ったものだ」

 

「?彼を知ってるんですか?」

 

「知ってるもなにも、二年前、全国大会個人中学生の部優勝者……当時デッキ破壊という珍しいデッキで勝ち進んだとして、一時期プロ評議会で新タイトルの『デッキ破壊』のタイトルホルダーとしてプロ入りすら考えられた実力者だよ」

 

「!!てことは、蓮がおじさまに勝ったのは……」

 

「少なくとも、構築と運用が難しいデッキ破壊をマスターしてるんだ、それを考慮すれば二年も経てば辛勝するのだって不自然じゃない」

 

 社長が自慢するように言うが、俺としては過去にそんなことになってたとは思いもよらなかった。

 

「買いかぶりですよ。優勝できたのも偶々運が良かっただけで、全試合、必ず一試合は負けて三本目でなんとか勝ち進んだんですから」

 

「謙遜も行きすぎれば傲慢だよ。まぁ別にそれは良いとして……、なるほど、確かにこれは君だけで対処は出来ないね」

 

「ええ、ですので奴が使っていたデッキとデュエルディスク、これを解析して貰いたいんですが」

 

 そう言って俺はディスクケースとデッキケースを机に乗せる。

 

「確かに、中身を確認しても?」

 

「ええ、一応俺が触れても特に異常は無かったので」

 

 そうか、と呟くと社長はディスクケースを開いて現物を確認する。

 

「ほう、中々珍しい機種だな……」

 

「珍しい?ですか?」

 

「ハデス社製の軽量仕様デュエルディスク、カスタマイズが他の機種に比べて簡単なのだが、生産数の少なさと単価が少し張った事で、あまり市場に出回らなかった代物だ。しかもこれは……」

 

 社長はそう言って上からじっくりと観察すると、数秒してケースを閉める。

 

「確かに受け取った。さて、私はそろそろおいとましよう……」

 

「すみません、さっきの今でいきなり頼んでしまって」

 

「なに、気にすることではないよ。その代わり、君たちに頼みたかったこと、それを受けてもらえないだろうか?」

 

 と、にこやかな笑みで言われ、俺は少し苦い顔をしながら頷く。

 

「結構、なに、内容は至って簡単だ、地区予選ないし全国大会に潜んでいるであろう彼らのばら蒔いたカード……本来遊戯王に存在するはずのないカード達を、可能な限り回収、または持ち主をこちら側に引き込んでほしい」

 

「……つまりそれって、俺のカードみたいな奴ですよね」

 

 確かに俺のデッキは遊戯王本来の物ではないし、元はバトスピのカードだ。それがどういうわけかこの世界で遊戯王のカードへと変換されてしまってる。しかも歴史までだ。

 

「そうだ。本来ならそれはすぐにでも処分する必要があるのだが……君たちは寧ろそのカードを使いこなせる、私の直感がそう言ってるんだ」

 

「……分かりました。でも、俺はアストラルみたいにカードを回収する能力もないし、何よりアンティーデュエルは禁止されてる……そんな中でどうやって……」

 

「そこは大丈夫さ、それに君は既にプロデュエリスト級の実力者だし、それにとある報告もあるからね」

 

「報告……ですか?」

 

「うむ、どうやら彼らがばら蒔いたカードは、情報隠蔽なのか、負けたら消滅するらしい。まぁそれも君が持ってきたデッキを解析すれば何か分かるだろうがね」

 

「…………そうですか」

 

 俺が呟くと、社長は自信満々に立ち上がる。

 

「それじゃあ私はここらで失礼するよ。分かったことがあれば後日、すぐに連絡させてもらうよ」

 

「ありがとうございます」

 

「なに、礼には及ばないよ、君は卒業したらプロ入りすることはほぼ確定してるようなものだ、これはその前依頼のようなものさ」

 

 そう言って社長は再び天井裏から去っていく。気になってそこを叩いてみるが、そこはまるで最初から繋がっていたかのようにびくともしなかった。

 

 



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第十六羽 悪魔の悲痛な叫び

 さて、あの突然の襲撃から早いもので二週間、文字通り何もなく平穏無事な生活をしていた俺達にとって、その日は突然やって来た。

 

「さて、あと三週間もすれば地区予選なのだが……その前に私達には乗り越えなくてはならないものがある。それは何かね、蓮?」

 

 いつも通りの部室で、俺は紙パックのオレンジジュースを飲みながら剱菜先輩の方を見る。

 

「そりゃ当然……()()()()()ですよね?」

 

 俺のその言葉にビクリと体を震わせる約三名……亮、蘭、そして椿姫先輩だ。

 

「そうだ。もし仮に誰か一人でも赤点でも取れば、補習が重なって大会出場不可になる……そこでだ、今すぐここ最近の小テストのプリントを出したまえ。特に椿姫」

 

「ウグッ!?」

 

 と、いつの間にやら部室のドアから逃げようとしてた椿姫先輩が、こちらを見てもないのに石のように固まってしまった。

 

「お前も大会メンバー、ひいてはこの部の部員なんだ、当然ながら見せる義務はあるぞ」

 

「グヌヌ……」

 

「唸ってもダメだよ、姉さん」

 

 というわけで、全員が小テストを鞄から取り出して見せるわけだが……(※成績は国・数・英・理・社の順であり、この作品の赤点ラインは35点です)

 

「まぁそれなりって感じかな?(蓮 78・70・100・81・95)」

 

「…………(蘭 23・65・21・37・5)」

 

「う~ん、暗記がやっぱり鬼門っす……(亮 88・80・55・68・41)」

 

「グヌヌ……(椿姫 80・91・15・50・50)」

 

「姉さん……(雄士 99・100・98・99・81)」

 

「やれやれ……┐( ̄ヘ ̄)┌(剱菜 100・99・100・100・100)」

 

 これは酷い、椿姫先輩は一科目、亮は暗記科目が微妙という意味ではまだマシなのだろうが、蘭が酷いを超えて絶望的だ、というか数学とギリ理科以外全部赤点とかどないしろと?剱菜先輩が呆れて顔文字使うレベルだし。

 

「……蘭、これから少し質問するからちゃんと答えろよ?」

 

「……ん」

 

「一つ目、大化の改新が起こった年号は?」

 

「……654年」

 

「……二つ目、ハンバーガーのスペルは?」

 

「……hanbagar」

 

「三つ目、自分が北を向いてるとき、左の方角は?」

 

「……東」

 

「……もっかい中学やり直して来いやぁ!!」

 

 流石のこれには俺もキレて蘭の肩を鷲掴みでがくがく揺らす。ていうかこれオコのレベルじゃ済まねぇから!!オコレベルで済ませたいのになんでこうなんですかバカ野郎!!

 

「……私元々孤児だから……勉強も遊戯王で学んでたし」

 

「お前はマーカー付きの鉄砲玉か!?幾らなんでもヤバすぎだよ!!インチキ入学も大概にせいや!!」

 

「いや~俺も人の事を言えた立場じゃないっすけど、幾らなんでも……」

 

 流石の元(?)不良の亮ですら呆れるレベルとはって、ちょっと待て

 

「お前は微妙なだけで赤点回避してるじゃん?どうしてさっき反応した?」

 

「あー、いや別に他意は無いんすけどね?ただこの場合あのパターンになるのが目に見えてるような……」

 

 パターン?なにそれ?

 

「と、言うわけだ、今日からテスト当日まで、勉強合宿と洒落こもうじゃないか」

 

「合宿って、どこで?」

 

「それは勿論、私の家だが?」

 

 当然に言いのける先輩に、やっぱり金持ちなんだと肩を落とす。

 

 そりゃね、俺だって一人暮らしだし、お金は『アレ』の賠償金でそれなりにあるけどね……それでもやっぱり世の中は理不尽だと思わずを居られない

 

「……言っておきますけど、とりあえず明日は休む予定なんで、それ以外なら……」

 

「休む?ずる休みはいけないんだが?」

 

「……両親の裁判がありまして……それの証人なんですよ」

 

 事実だった。あの事件から約二年経ってるが、あの屑親は未だに食い下がって刑を軽くしようと粘ってる。そして今回、俺は妹の義兄であり、最後に妹と会っていた人物ということで証人召喚されるわけだ。

 

「……そうか、それは担任には?」

 

「もう既に伝えてあります。ついでに、妹の月命日も近いんで、それも一緒に……」

 

「……分かった。では自分はこれで、明日の朝それなりに早いんで」

 

 そういって俺は部室から立ち去る。さて、買い物もしないとな……。

 

 

 

 蘭視点

 

「……蓮、まだ引きずってるんだ」

 

 私がそういうと、亮がさもありなんと頷く。

 

「まぁ兄貴の過去は簡単に振り払えるものではないしな、多分ずっと消えない傷として残るんだと思うっす……」

 

「それを乗り越えられるかはあいつ次第さ」

 

 剱菜先輩もそう言ってるが、私は少しだけモヤモヤする。

 

「……なんか、私とは別の意味でハードだね」

 

「う~ん、多分それ俺や剱菜先輩にも響くっすよ?」

 

 亮は欠伸しながらそう呟く。

 

「……二人は御曹司と御令嬢じゃん」

 

「確かにな。けど正確には、俺は次男で、兄と弟がどっちも優秀すぎて見放されてるし、剱菜先輩は先輩で確かに一人娘だけど……」

 

「まぁ私も蓮と同じ養子だからな、分家筋からは邪魔者腫れ物扱いだから、二人ほどではないがそれなりに、な」

 

 意外な事実に目を見開く。やはり家が家ならしがらみとかも大きくなるものなのだとおもった。

 

「ま、そんなことよりも蘭、君はさっさと教科書を出そうか?」

 

「……わ、私はプロだから地区予選どころか全国大会に出られないし……」

 

「む?先ほど君の社長から、蘭くんを控えメンバーに容れて大丈夫、というか絶対にメンバーに入れろとお達しがメールで来てたぞ」

 

「……あ、あのダメオヤジ……!!」

 

 私の中でサムズアップしながらいい笑顔をしているバカ社長の姿がまじまじと想像できる。

 

「……ならば戦略的撤退を……」

 

「させるわけないだろ?」

 

 窓から逃げようとするも、その前に襟首を猫のように取っ捕まえられてしまい動けなくなる。こういうときに椿姫先輩程じゃないけど、小さい身体を恨んだことはない。

 

「さて、テストまで本当に日がないのでな、悪いがアクセルシンクロ並みのスピードで教えてやるぞ!!」

 

「ノーン!!」

 

「「「いやそれ古すぎ……」」」

 

 私のムンクのような叫びにじとりとした目を向けてくる三人を見ながら、私はずるずると机に向かって引きずられるのだった。



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第十七羽 小夜鳴く群鳥

「…………」

 

 漸く裁判から解放された俺は、控え室のソファーにもたれ掛かっていた。

 

「すまないね、学生だというのに御足労願って」

 

 と、一応呼び出した主である検察官……三神さんが缶コーヒーを渡してくる。

 

「いえ、元々はといえばあの二人が元凶ですから」

 

「確かにな。だが本来ならば君が殺されても文句はなかった事件だ、こうして生きていられるだけで行幸だろう」

 

「代わりに妹を失いましたけどね……」

 

 皮肉染みたその言葉に、三神さんは失言だったと取り消す。

 

「まぁ、なんだ。今日は私もこれ以上やることはないうえに、君も学校には行かないのだろ?」

 

「はい、公欠届けは出してますし」

 

「ならば近くで昼食でもどうだい?ちょうど昼時だし、今日は私の奢りだ」

 

 そういう三神さんの瞳は、同情でもなく、ただ単純に大人としての義務感が伺える。ホント、この人のこういうところが無かったら多分……

 

「そうですね。なら近くで美味しいって評判のラーメン屋にでも行きませんか?三神さんの好きな濃厚豚骨醤油の店らしいですし」

 

「お、分かってるじゃないか。流石私と数年間近い間柄ではないな」

 

「三神さんが最近健康診断気にしてラーメン食べられなかったって事を知ってるぐらいですよ」

 

 そんなことを笑いながら言い合う俺達に、空は青く澄んでいた。

 

 

 

「しかし、お前さんも大変なことになったもんだな、色々と巻き込まれる体質で」

 

 ラーメン屋で三神さんはそう切り出した。彼の目の前には豚骨醤油チャーシュー麺(チャーシューマシマシ背油多め)と餃子二皿と半炒飯が鎮座しているはずなのに、餃子とラーメンは半分近くが消滅していた。ちなみに俺は豚骨醤油の野菜多めラーメン(針金背油多め)と餃子だけだ。

 

「ほんとですよ、誰でもいいんでこの巻き込まれた事象を誰かに擦り付けたいくらいに」

 

「ガハハ、だが今回は寧ろ行幸なんじゃあ無いのか?」

 

「どこが、知らぬ間に巻き込まれて、それがさらに威力を増して返ってくるなんて、予想外ここに極まれりですよ」

 

 愚痴を言っても、三神さんはその豪快な笑い声で描き消してしまう

 

「……そういや、このあとはやっぱり妹さんの墓に行くのか?」

 

「ええ、月命日もそろそろですし、何より地区予選になったら時間はとれそうにないですしね」

 

「そうか、なら花代ぐらいは出そう、それぐらいまでなら経費でなんとか落とせそうだからな」

 

 そう言いながら万札をこちらに渡してくる辺り、この人もイイ性格してるなと思う。

 

「しかしだ、俺も久しぶりにデュエルしたくなったわけでな……あとで一戦付き合えや」

 

「そのぐらいなら、喜んでお受けします。ここまで奢ってもらって何もなしは人としてどうかと思うので」

 

 そう言いながら俺達はラーメンを食べ進める。余談だが、二人とも替え玉を頼んだせいか、結構な額になったのは言うまでもない。

 

 

 

「はぁ食った食った!!」

 

 そう言いながらラーメン屋を出ると、まるでこれから焼肉屋にはしごしそうな様子の三神さんに軽く退いた。

 

「それで、一戦って言いますけどどこで?近くにカードショップなんて無いでしょ」

 

「甘いな風山くん、君もデュエリストなら持ってきてるだろ?ディスク」

 

「そりゃそうですけど、まさかARシステム使うんです?」

 

 ARシステム、屋外などでのフィールドデュエルの為の特殊システムで、いわゆる『ZEXAL』のようなデュエルを可能にするシステムだ。

 

 ちなみに学校や専用施設等には少なからずソリッドヴィジョンシステムが導入されてるので、あまり使われない代物だ。

 

「そういうわけだ、いくぞ!!」

 

「「デュエル!!」」

 

蓮 LIFE8000

三神 LIFE8000

 

「俺のターン!!俺は魔法カード『手札抹殺』を発動!!」

 

「早速手札交換か、俺のデッキ知ったうえで使ってくるとはな」

 

 それを言われると苦しいが、それでも確か三神さんのデッキは『スキドレバルバ』に近いものだったはずだから、今のところは問題なしだ

 

「さらに俺は手札から永続魔法『神樹の切り株都市』と『聖者の樹の実』を発動!!……そして『幻のグリフォン』を攻撃表示で召喚しカードを一枚伏せる、エンドフェイズ、『切り株都市』の効果でデッキをオープン……カードは『ハーピィ・レディ1』のため特殊召喚、ターンエンド!!」

 

 

蓮 手札0枚 LIFE8000

フィールド

『幻のグリフォン』 A 2300

『ハーピィ・レディ1』 A 1600

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、手札の『LL―ターコイズ・ワーブラー』を特殊召喚する!!」

 

『LL―ターコイズ・ワーブラー』 ☆1 A100→400

 

「んな!?」

 

 り、LL(リリカル・ルスキニア)!?『スキドレバルバ』じゃないのか!?

 

「こいつは最近組んだやつでな、火力だけなら今までのやつと比べても遜色はないし、何よりうまく使えば三体リリースの『バルバロス』の効果も使えるしな!!」

 

「マジかよ……予想GUYですよ、そりゃ……」

 

 まずい、今俺のフィールドには風属性攻撃力上昇効果を持つ『ハーピィ・レディ1』がいる。下手したらワンキルされかねない。

 

「続けるぜ!!『ターコイズ・ワーブラー』の効果発動!!特殊召喚に成功したとき、手札または墓地の『LL』モンスターを特殊召喚できる!!俺は墓地の『LL―コバルト・スパロー』を特殊召喚!!」

 

『LL―コバルト・スパロー』 ☆1 A0→300

 

「『コバルト・スパロー』の効果発動!!デッキから『LL』モンスター、『サファイア・スワロー』を手札に加える。そして『サファイア・スワロー』の効果発動!!自分フィールドに鳥獣族モンスターが存在するとき、手札の鳥獣族レベル1モンスター、『RR―ラスト・ストリクス』と一緒に特殊召喚!!」

 

『LL―サファイア・スワロー』 ☆1 A100→40v

『RR―ラスト・ストリクス』 ☆1 A100

 

「『RR』まで!?完全なガチデッキじゃねえか!!」

 

「これぐらい使わなきゃお前さんに勝てないだろうが!!フィールドに『RR』モンスターが存在するとき、そのモンスターの攻撃力または防御力の低い方の数値のダメージを受けることで、『RR―ペイン・レイニアス』を特殊召喚する!!」

 

『RR―ペイン・レイニアス』 ☆1 A100

三神 LIFE8000→7900

 

「俺はフィールドの五体のモンスターでオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!来い!!『LL―アセンブリー・ナイチンゲール』!!」

 

『LL―アセンブリー・ナイチンゲール』 ★1 A0→1000→1300

 

「ORUになった『サファイア・スワロー』の効果で、墓地の『LL―ターコイズ・ワーブラー』をORUに加える」

 

「攻撃力1500の六回攻撃かよ!?ワンキル確定じゃねえか!?」

 

「悔しかったから止めてみやがれ!!バトル!!『アセンブリー・ナイチンゲール』の攻撃!!こいつはORUの数と同じ数、連続攻撃とダイレクトアタックが可能だ!!」

 

「罠カード『ダメージ・ダイエット』を発動!!このターン受けるダメージを半分にする」

 

「洒落クセェ!!六回まともに喰らいやがれ!!」

 

「ウガァァァァ!?」

 

蓮 LIFE8000→7250→6500→5750→5000→4250→3500

 

「ぐ……『聖者の樹の実』の効果で、ダイレクトアタックを受けた回数……六枚ドロー……」

 

「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

 

三神 LIFE7900 手札二枚

フィールド

『アセンブリー・ナイチンゲール』 A1500

伏せカード一枚

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

 ヤバイ、はっきり言って勘違いしていた。まさか俺のデッキを利用してくるなんて……。だが、

 

「……俺は『チューニン・ツバメ』を攻撃表示で召喚!!」

 

『チューニン・ツバメ』 ☆3 A1500→1800

 

「(これで『ガルード』をシンクロ召喚して、『アセンブリー』を手札に戻すしか手はない!!)俺は」

 

「罠カード『激流葬』を発動!!さらにチェーンして『アセンブリー・ナイチンゲール』の効果を発動する!!」

 

「んな!?」

 

 まさかのカードに俺は虚を突かれてしまった。

 

「お前さんが『ガルード』を出して挽回しようなんて目に見えんだよ!!チェーン処理だ、『アセンブリー・ナイチンゲール』の効果により、ORUを一つ取り除き、ターン終了まで『LL』は戦闘及び効果では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージも0になる」

 

送られたORU

『RR―ラスト・ストリクス』

 

「そして『激流葬』の効果で、フィールドのモンスター全てを破壊する!!」

 

「く、だが『チューニン・ツバメ』は魔法、罠によって破壊されない!!」

 

 くそ、攻撃反応系だと思って『サイクロン』を後にしようと使い惜しんだ俺がバカだったな、これは。

 

「く、俺はカードを三枚伏せて、エンドフェイズに入る。……よし、オープンしたカードは『ジョーニン・トンビ』、よって特殊召喚しターンエンド」

 

 

蓮 LIFE3500 手札三枚

フィールド

『ジョーニン・トンビ』 A1600

『チューニン・ツバメ』 A1500

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

伏せカード三枚

 

 

「俺のターン!!ドロー、バトルだ!!『アセンブリー・ナイチンゲール』でダイレクトアタック!!」

 

「罠カード『聖なるバリア―ミラーフォース』!!相手の攻撃宣言時、相手フィールドの攻撃表示モンスターを破壊する!!」

 

「『アセンブリー・ナイチンゲール』の効果発動!!ORUを一つ使って、このターンの破壊を無効にする!!」

 

使用ORU

『RR―ペイン・レイニアス』

 

「けどこれで攻撃力は800にダウン、連続攻撃も四回までだ!!」

 

「ち、なら四連撃を食らいな!!」

 

「ぐぅあぁ!!」

 

蓮 LIFE3500→2700→1900→1100→300

 

「ぐ……『聖者の樹の実』の効果で、四枚ドロー」

 

「メインフェイズ2、俺は手札から『RR―ラスト・ストリクス』を通常召喚!!そして効果により『ラスト・ストリクス』をリリースして、エクストラデッキから『RR―アルティメット・ファルコン』を特殊召喚!!そしてランクアップ!!来い!!『No.77 ザ・セブン・シンズ』!!」

 

『No.77 ザ・セブン・シンズ』 ★12 A4000

 

「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

「エンドフェイズに速攻魔法『サイクロン』を発動!!さらに罠カード『デモンズ・チェーン』!!『アセンブリー・ナイチンゲール』の効果を無効にし、攻撃をできなくする!!」

 

「ち、『ミラーフォース』を破壊されたか……てか、『デモチェン』あんならダイレクトアタック封じれたろうが」

 

「ドローできる場面でしないのは愚の骨頂ですからね。それに仮に使ったとして、三神さんの手札に『融合』がないって言う保証はないから」

 

 そうなったら3000の効果ダメージと手札が次のターン四枚だけと言う厳しい状況になってたんだ、これぐらいは必要経費だ

 

「ち、まぁいい。どっちにしろエンドフェイズだ、次で倒すまでだ」

 

 

三神 LIFE7900 手札一枚

フィールド

『アセンブリー・ナイチンゲール』 A 0

『No.77 ザ・セブン・シンズ』 A 4000

 

 

「俺のターン!!……よし、俺は速攻魔法『非常食』を発動!!『切り株都市』と『樹の実』をリリースしてライフを回復する!!」

 

蓮 LIFE300→2300

 

「そして俺は魔法カード『愚かな埋葬』で、デッキから『シシグイ』を墓地へ送り、『融合』を発動!!フィールドの『ジョーニン・トンビ』と『チューニン・ツバメ』、手札の『ゲニン・スズメ』で融合召喚!!来い、『鳥武姫神シシグイ・アスカ』!!」

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 ☆10 A2000

 

「『シシグイ・アスカ』の効果!!墓地から融合素材になった数まで、墓地の鳥獣族モンスターを特殊召喚できる!!俺は『シシグイ』()()を選択!!」

 

『鳥武神シシグイ』×3 ☆5 A500→2900

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 A2000→4400

 

「な!?いつの間に……まさか抹殺で!?」

 

「大正解です!!まさか二枚被った時にはヤバイと思いましたけどね」

 

 実際もし抹殺が来なかったら、少なくとも前のターンには確実に沈んでたどころか、確実に二ターン目で『アセンブリー』の連打で危険域待ったなしだ。

 

「バトル!!『シシグイ・アスカ』で『ザ・セブン・シンズ』を攻撃!!『シシグイ・アスカ』の効果で、『シシグイ』三体の攻撃権を放棄しその攻撃力を加える!!」

 

『シシグイ・アスカ』 A4400→13100

 

「くそぉぉぉ!!ぬぁぁぁぁぁぁ!?」

 

三神 LIFE7900→0

 

 

 

「くそ~また負けたか!!」

 

 デュエルが終わると、三神さんはがしがしと自分の頭を引っ掻いていた。

 

「でも驚きましたよ。まさか『LL』なんて使うなんて、いつから作ってたんです?」

 

「お前さんがチャンプに勝つ少し前だな。『スキドレバルバ』じゃあ周りのやつに勝てなくなってな、それでも『バルバロス』使いたいから何か無いか探してたら、これと言うわけさ」

 

「そう言いながら全く使ってないじゃないですか」

 

 苦笑しながらそういうと、三神さんはディスクからデッキを取り出して此方へ渡す。そして中身を確認すると、ため息をつきたくなった。

 

「なにこれ……モンスター枠がピン積み『バルバロス』と『Neptune』除いて基本レベル1モンスターなのはまだわかりますけど、魔法、罠枠が『激流葬』みたいな全体破壊と融合関連とRUMばかり……これで良く回りますね……しかも蘇生系のカードは『死者蘇生』除いて四枚だけって……」

 

 『神警』も入ってないし、何より『リビデ』すら入ってないとは……しかもデッキ枚数が55枚とだいぶ大きいときた。

 

「あー、一応これで六割だからな、デッキ枚数減らそうにもカップ麺や融合、RUMも組み合わせたらこれが限界なんだよ」

 

「いやまぁもっと枚数減らすべきでしょ……とくになんでカップ麺を三積みしてるんすか、『インディペンデント』も単品で、『サクリファイス』が入ってることを考慮しても二枚で充分でしょ、というかだったら、『貪欲な瓶』三枚積んだ方がデッキ回りますよ」

 

 余談だが、一応中身を公開するとこうなっていた。

 

メイン

『LL―ターコイズ・ワーブラー』×3

『LL―サファイア・スワロー』×3

『LL―コバルト・スパロー』×3

『金華猫』×3

『神獣王バルバロス』×1

『RR―ペイン・レイニアス』×3

『RR―ラスト・ストリクス』×3

『The tyrant NEPTUNE』×1

『D.D.クロウ』×2

『バトル・フェイダー』×2

『ライトニング・ボルテックス』×2

『異次元からの埋葬』×1

『烏合無象』×1

『貪欲な壺』×1

『強欲で貪欲な壺』×1

『死者蘇生』×1

『ワン・フォー・ワン』×1

『ハーピィの羽箒』×1

『融合』×2

『融合賢者』×2

『カップ麺(簡易融合)』×3

『ブラックホール』×1

『RUM-幻影騎士団ラウンチ』×2

『RUM-スキップ・フォース』×2

『激流葬』×3

『大落とし穴』×2

『ハーピィの羽根吹雪』×1

『リビングデッドの呼び声』×2

『リミット・リバース』×2 計55枚

 

エクストラ

『LL―アセンブリー・ナイチンゲール』×2

『LL―インディペンデント・ナイチンゲール』×1

『LL―リサイト・スターリング』×1

『RR―アルティメット・ファルコン』×2

『RR―サテライト・キャノン・ファルコン』×1

『No.13 ケインズ・デビル』×1

『No.31 アベルズ・デビル』×1

『No.54 反骨の闘士ライオン・ハート』×1

『No.77 ザ・セブンシンズ』×1

『No.92  偽骸神龍 Heart-earthDragon』×1

『No.96 ブラック・ミスト』×1

『サウザンドアイズ・サクリファイス』×2 計15枚

 

 ……はっきり言おう、良くこれで回るものだ。ていうか、なんで『ブラック・ミスト』?

 

「作者曰く、『ケインズとかから使えば再利用できるべ』とか言う謎理論で採用してるんだと」

 

「って、作者の実在デッキかよ!?何度も言うけど良くこれでホント回るなオイ!?」

 

 うっさいぞ主人公!!これでも勝率六割叩き出してるんだから良いだろうが!!(by作者

 

「いや、まぁ確かに出せれば色んな意味で強力なデッキだからな……こりゃ確かに……」

 

「まぁそれでもメタ張られたりしたら即負けに近いのが現状になるからな……うむ」

 

 若干退いてる俺に、三神さんの言葉が追い討ちのように突き刺さる。俺、そんな事故しそうなデッキにライフ三桁に減らされたのかよ……

 

「……」ジー

 

「……いや見つめられてもな」

 

「…………」ジーー

 

「…………一応まだ作ったばかりだから……」

 

「………………」ジーーー

 

「……はぁ、わぁったよ、『バルバロス』以外はお前さんに譲ってやるからその目をやめろ」

 

 ついに折れた三神さんに俺は内心ガッツポーズが止まらなかった。

 

「まぁ元々お前さんに渡すつもりだったからな。つか、大事にしねぇとぶっ殺すからな?」

 

「はい!!分かってます!!」

 

「お、おう……さて、じゃあ俺は仕事に戻るから、お前さんはさっさと妹のところへ行ってきな」

 

 そう言って立ち去る三神さんの背中を少し眺め、俺は少しだけ喜びながら足を進めるのだった。



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1.5 とある異世界での決闘目録
コラボ編 プロローグ


これは大会編の直前辺りの時間軸です。後々章付しますが、とりあえず何とぞよろしくお願いいたします。


「……どうしてこうなった?」

 

 あ、ありのまま起こったことを話すぜ?俺達デュエル部の面々は大会直前ということもあってカード探しにいつもの強面カードショップに向かおうとしてたら、突然何やら近未来的な建物が並ぶ街の公園に一瞬で移動してた……

 

 何を言ってるのかわからないと思うけど、俺達自身さっぱりだった。精霊世界やらアクセルシンクロとかそんなちゃちなもんじゃ……

 

「蓮、それ以上はいけない」

 

「そうは言うけど蘭、この状況でポルらなきゃどないせい言うんです?」

 

「大丈夫っすよ兄貴!!逆に考えれば良いんす!!ここでも良いのさ、って」

 

「亮、君もそれはいけないと思うんだがね……」

 

 劔菜先輩も苦笑いを浮かべてる。そして逆に……

 

「あれ?椿姫先輩……どうしたんすか?そんなウキウキして?」

 

 彼女の方はまるでお伽の国にでも来たような面持ちで周りを見渡してる。

 

「なによアンタ達!!ここがどこか分からないの!!」

 

「む?そういう椿姫は分かってるような口ぶりだが?」

 

「当然!!寧ろ分からない方がおかしいくらいよ!!」

 

 堂々と胸を張って言うが、低身長でどこも育ってもない体でやられても子供のようにし「アディオスグラッシアー!!」アギャ!!

 

「誰が子供体型だこら!!誰が豆粒なめくじだあぁ!?後輩の癖に私より目線が高いなんて一万年と二千年早いのよ!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「姉さん!!ヘッドロック通り越して蓮の首が曲がっちゃいけない角度にまで曲がってるよ!!そしてなんでアク○リオ○!?」

 

 祐司先輩の突っ込みさえも無視して行われるこの地獄に、俺は口から出てはいけないものが出そうに……飛鳥、俺もすぐに向かうからね……

 

「蓮……それは向かってはいけない方向だからダメ」

 

「そうっす!!ともかく椿姫先輩、そこら辺でお願いしますっす!!」

 

 亮の言葉に未だにフシューと鼻息が荒くなってるが了承してくれた先輩が漸く首から離れてくれた。

 

「イタタ……なんでこんなことに」

 

「大丈夫かい蓮くん?」

 

「大丈夫だと思うんでしたら、できれば首をもとに戻してくれませんか?どうも視点が真横になってて……」

 

 自分で治すにもどう曲がってるのかさっぱりのため祐司先輩に頼むと、優しく、それでいて力強く元に戻してくれた。

 

「イテテ……それで椿姫先輩、ここってどこなんです?」

 

「ふっふっふ……それはね……」

 

「なぁ、何か困ってんのか? 俺たちでよければ相談に乗るぜ?」

 

「目上の方々に失礼でしょう、星史。すみません、私の幼馴染が……もし、自分たちに何かお手伝いできる事があれば、お話しいただけますでしょうか?」

 

 椿姫先輩が言おうとしてたちょうどその時、彼女の方の背後から2名のやや大人びた声が聞こえ、皆が皆そちらへと視線を向ける。

 

 そこに立っていたのは黄色のシャツに袖が黒の赤いジャンパーを羽織り水色のGパンに赤い紐の黒シューズを履いた少しクセッ毛の茶髪と青い眼を持つ、星史……と呼ばれた青年と、彼……星史を幼馴染と称する紫色の生地に淡い桜色の桜模様が描かれた浴衣のような和装に足袋と下駄というザ・日本人ともいえる服装をしている黒目がちのややぼんやりとした目に、丸いラウンドで長めの黒髪ショートで耳から顎下へと前下がりに切りそろえて横髪が輪郭にかかっているまだ小学生と中学生の間位の背丈の少年ともとれる程に小柄な男子の2名であった。

 

「(一人は兎も角、もう一人は随分と凝った服装だな)いやさ、ここってどこだか分かる?実は俺達カードショップに行くつもりだったんだけどさ、道に迷っちまって」

 

 俺がそう聞くと二人は苦笑いでこう答えた。

 

「カードショップ? つっても、どんな名前のお店なんだ?」

 

「そうですね、どんな感じのカードショップなのか、欲しいカードの種類は昔のカードなのか、最新パックなのか……それだけでも向かうカードショップは違いますからね」

 

「あれ?…………ちょっと待ってくれ?念のために聞くけど、ここって何市?」

 

 俺の知ってる限り、カードショップにそんな分類分けしてる店なんてなかった筈だ。恐る恐るといった質問に、少年は不思議がりながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、この舞網市のカードショップにご予定があったのでは?」

 ……どうやら俺達はパラレルワールドに来てしまったようだった。

 

 

 

 

「えっと……なんか悪いな、いきなり遊勝塾に連れてきてもらって」

 

 俺の謝罪に、星史と呼ばれていた少年は苦笑いを浮かべる。もう一人の彼……火無菊とかいう少年も大分ひきつっている。

 

 ちなみに現在俺達は台詞の通り遊勝塾に向かっていて、今現在塾の階段を昇ってる真っ最中だ。

 

「しかも道に迷ったうえに別の市に来てたとか……なんか情けない通り越して自分でも呆れちまいそうだよ」

 

「とんだ迷子じゃないですか、それ……方向音痴でも他の街なんてそうそう来ませんよ?」

 

「面目次第もないからな……まぁかの有名な遊勝塾に来れただけでもラッキーって考えればいいのか」

 

 俺の言葉に蘭や劔菜先輩達はうんうんと頷いてる。何せ調べたところアニメの第二、三話直後辺り……詰まるところペンデュラム召喚が出た直後だ、ラッキーどころの話じゃない。

 

「……そういえば、二人も遊勝塾のメンバーなんだよな?」

 

「おう! それが、どうかしたか?」

 

「いや、別に……」

 

 俺もアニメは半分以下ぐらいしか見てないが、少なくともこんなメンバーは遊勝塾に居たという記憶はない。詰まるところ……

 

(ARC-Ⅴの更なる平行世界か……まぁ別段どうでも良いんだけどな)

 

 ただ、まさか中坊らしき星史に未だにタメ口きかれるとは思ってなかった。まぁ自己紹介はおろか年齢すら言ってないんだから当然か。

 

「と、到着か」

 

 階段を登り終えて、星史によって開かれたドアを開けると、

 

「あ、遊輔先生ー。おはよー!」

 

「ん…………星史……と火無菊か。どうした……ってその人達は?」

 

 と、アニメに出てくる柚子を始め、何やら外に跳ねてる茶髪の少女と、かなり大人びた青年が中にはいた。

 

「なんか、舞網市までカードを買いに来たらしいんですけど、道に迷っていらしてて。お店の名前をお訊きしても分からないので先生や塾長なら何かご存知かと思ってお連れしたんです」

 

「風山蓮です。高校二年生だ」

 

「……朱志那蘭、同じく二年」

 

「不動島亮っす!!同じく二年っす」

 

「黒霧劔菜だ。一応高校三年生で私達の部活のリーダーだから、よろしく頼むよ」

 

「僕は三納代祐司、三年生でタッグデュエリスト。そしてこっちのが相方兼姉の」

 

「こっちの言うな!!……三納代椿姫よ、これでも三年生だから、小さいとか思ったら焼き尽くすからね?」

 

 椿姫先輩の台詞にどことなく全員苦笑いを浮かべてる。多分似たような人間が居たんだろうな……。

 

「まぁ、俺たちの自己紹介するまでもねぇが……改めて自己紹介するとしたら……俺は高井 星史(たかい せいし)! 中学2年の遊勝塾所属だ!」

 

「星史の幼馴染の同じく中学2年生。遊勝塾所属の本田 火無菊(ほんだ ひなぎく)と申します。お見知りおきを」

 

「私は柊柚子です。星史や火無菊と同じ中学2年生で、遊勝塾所属です」

 

「アタシは高校3年。柊杏子(ひいらぎ きょうこ)。遊勝塾所属よ」

 

「ここにいるメンバーでは俺がラストだな。星野 遊輔、18歳。一応これでも、遊勝塾の臨時講師だ。現在塾長は別件で不在でな……後は我が遊勝塾の誇るペンデュラムの開祖兄弟の中学2年の榊遊矢と俺と同い年の高校3年、榊遊牙(さかき ゆうが)がいるんだが……今は生憎とペンデュラム召喚の確認中で今は別室にいる。他にも小学生メンバーがいるんだが……今日は生憎と学校行事でな。他にも1人いるのだが、実家の手伝いで忙しいらしい。よって、今いるのは俺を含めて7人だけだが、まぁゆっくりしていきな」

 

 ゆっくりと言われても……と、なぜか蘭が遊輔さんの事を睨むように見つめている。

 

「おい、蘭さん?いったい何をするつもりなんですかね?」

 

「……別に」

 

「否定するならこっちの顔を見ろよ……」

 

 まぁもっとも気持ちは分からないでもないが、もう少しポーカーフェイスを覚えてほしい。

 

「あの、ここってアクションデュエルできるんすか?」

 

「おい待て亮、何を口走ってるんだ?」

 

 俺は突っ込むが、その表情は真剣そのものだった。

 

「折角舞網市に来た上にここは遊勝塾っすよ!!アクションデュエルしたいじゃないっすか!!」

 

「その気持ちはわかるけどすぐに言う奴があるか!!」

 

「それに自分達は大会直前なんすよ!!自分の見間違いじゃなかったら、全員トップクラスといっても過言じゃない実力を持ってそうですし、調整にはもってこいじゃないすか!!」

 

 なんともはや、ここまで来ると流石はデュエリストと言いたくなるような頭の作り方だ。いい意味でも悪い意味でも、

 

「はぁ、劔菜先輩からもなんとか言ってくれませ……」

 

「全員デッキの準備をしたまえ、遊輔さんと話して練習試合を組んで貰った!!これにメンバーの順番を書き込んで相手と交換すれば良いから、出撃順を決めるぞ。後、話し合いの結果ダブルバトルを3戦目に組み込んだ5回戦となっている」

 

「行動速いっすね!!あと人の話聞いて!?」

 

 もうなんなの、アンタら全員満足同盟員なの!?どんだけヒャッハーやら弾けたりしたいわけ!?

 

 

 

 というわけで話し合った結果……

 

「うっしゃあ!!俺が最初っす!!」

 

 一番手は生け贄……もとい特攻隊長こと亮になった。まぁぶっちゃけこの中だと実力的に最下位だし、本人がやる気だから大丈夫かな。

 

「あ、そういや亮、『超融合』は兎も角『スターヴ』は使うなよ?」

 

「へ?なんでっすか?」

 

「ここがARC-Ⅴの世界だって分かってる上でそれを言うなら、柚子さんからハリセン借りてぶっとばすぞ?」

 

 俺がそう言うとハッとしたのか、メンバーのうち亮、蘭、祐司先輩がすぐさまエクストラデッキから何枚かカードを抜き始める。

 

「いや、蘭は別に良いだろ、傷レモンの元キングはこっちの世界に来ないんだし……」

 

「……傷レモンって言わないで。なんだか価値が下がりそう」

 

「う~ん、『クリア』と『クリスタル』の枠……いっそのこと『魔王超龍』でも容れようかな」

 

「アンタのデッキに闇属性チューナー居ないんだから意味ないでしょ。普通に『スクドラ』とか『フォーミュラ』でも突っ込みなさい」

 

「蓮、可能ならば君の『アレ』を借りたいんだが……」

 

「アレって……あぁアレですか?別に構いませんけど、デッキバランス大丈夫です?」

 

「問題ない、それに私のデッキと『アレ』は相性が良いからな」

 

 そう言って急遽デッキ改造(主にエクストラデッキ)を改造してるのを眺めながらフィールドを確認する。ん?俺?……鳥獣属使うメンバー居ないから混ざれないんだよコンチクショー……(涙)

 

「さて、互いに決まったようだな。俺達遊勝塾チームは……」

 

「俺、高井星史が先発で行かせてもらうぜ!」

 

 どうやら相手は星史らしい。まぁ何となく初めに会ったときから亮と似たような感覚を覚えたから別にいいんだが……

 

「一応、ここは俺たちのホームみたいなもんだし……アクションデュエルかスタンディングデュエルか、好きなの選ばせてやるよ」

 

 この敬語の一切の無さ、まるで5D'sの龍亞を思わせるよ、ホント。

 

「まぁ当然俺はアクションデュエルをやらせてもらうんだがな……一応歳の差あるんだからよ、少しは敬語とか……」

 

「んなもん知るかっての。別に俺はいつもこんなんだし、変えろって方が無理だっつーの」

 

「ブチッ……えっと、管制さん?アクションフィールド展開お願いします」

 

(あ、亮のやつキレた……)

 

 俺は直感的にそう悟った。何せこめかみがかなり引きつってるからな……こりゃ荒れるな、初っぱなから

 

『アクションフィールド発動!!『悪魔の巣窟 伏魔殿』』

 

 その音声ガイダンスが流れた瞬間、フィールド内が重々しい姿へと変貌し、景色が暗黒に変わる。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!!」

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!!」

 

『見よ!!これがデュエルの最終進化系!!アクショ~ン……』

 

「「デュエル」」



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コラボ編 vs星史

亮 LIFE4000

星史 LIFE4000

 

「先行は俺だ!!俺のターン!!」

 

 どうやら先行はあのクソガキ(星史)らしく、手札を確認しながらフィールドを走り出した。

 

「……ま、手堅くいくか! モンスターセット、カードを4枚セットしてターンエンド!」

 

 

星史 LIFE4000 手札0

フィールド

伏せモンスター

伏せカード四枚

 

 

 いや、手堅くって、手札全部消費するってどんなデッキだよ……もしかしてAF先史なのか?でも確かスタンダード次元ってエクシーズもシンクロも器用貧乏程度にしか育ってないはずだし……

 

 

「俺のターン!!……よし、俺はまずカードを一枚伏せて、魔法カード『手札抹殺』を発動するぜ!!これによりお互いに手札を全て捨てて、その分だけドローする!!」

 

「その手札抹殺にチェーンしてリバースカード、オープン!! 『便乗』!!」

 

「なんつー古いカード使ってんだよ!?」

 

亮 手札 4→0→4

 

「墓地へ捨てられたカード、『シャドール・リザード』『暗黒界の術師 スノウ』、『暗黒界の龍神グラファ』の順番で効果発動!!『グラファ』でど真中の伏せカードを破壊!!スノウの効果で『暗黒界の門』を手札に加え、『リザード』の効果で『シャドール・ビースト』を墓地へ送る。さらに墓地へ送られた『ビースト』の効果で一枚ドロー!!」

 

「へぇ、『便乗』破壊しないんだな。他の奴は『便乗』を狙ってくるってのが殆どなのに」

 

 煽りやがって……破壊したカードは……『奈落』か。だったら

 

「うっせぇ、こっちにも戦術があんだよ!!てか、『ビースト』の効果でドローしたんだから、そっちもさっさと2枚引きやがれ!!」

 

星史 手札0→2

 

「伏せてた魔法カード『無の煉獄』を発動!!手札が三枚以上の時、デッキからカードを一枚ドローし、エンドフェイズに手札を全て捨てる!!」

 

星史 手札2→4

 

「そんでもってフィールド魔法『暗黒界の門』を発動!!」

 

 

 

 

 蓮視点

 

「……へえ、フィールド魔法か。珍しいな」

 

 蓮がいつものカードを発動した瞬間、遊輔がそんなことを呟いた。

 

「珍しいって、別段フィールド魔法なんて誰でもよく使うだろ?」

 

「ん、忘れたのかい? アクションフィールドでは……」

 

『ギャァァァァァァァ!?』

 

「!?」

 

 突然亮の悲鳴が聞こえたと思って振り返ると、まるで漫画のように落雷を体にうけて、全身が焦げてアフロになっていた。

 

「……ご覧の様にライフに1000のダメージを受ける。それに、アクションデュエル中にフィールド魔法を貼った状態でアクションマジックを使おうもんなら使うと同時に1000の追加ダメージ。しかも『加速』とかでのダメージ遮断も許されない。まぁ、要するにアクションデュエルでフィールド魔法を使う人物は滅多に居ない、と言うわけさ」

 

「……マジか」

 

 どうやら今回は亮の自爆みたいだった。なんだか平行世界とはいえすげぇ恥ずかしいんだけど

 

 

 

 

 

 亮視点

 

「イタタ……」

 

亮 LIFE 4000→3000

 

 あの落雷のせいでダメージは喰らうし、自分のせいでアクション魔法もほぼ封じられたとか、嗤うしかねえぞ、おい。

 

「ダッハッハ! お前……いくらリアル……ソリッドビジョンだ……からって漫……画みてーなことする……んじゃねーよ! あー、腹いってぇ……」

 

「(このクソガキ、絶対にいっぺん絞める!!)俺はフィールド魔法『暗黒界の門』の効果発動!!墓地の『スノウ』を除外して、手札の『暗黒界の尖兵 ページ』を墓地へ捨てて一枚ドロー!!」

 

星史 手札4→6

 

「さらに『ページ』は墓地へ捨てられた時、墓地から自身の効果で特殊召喚する!!こい、『ページ』!!」

 

『暗黒界の尖兵 ページ』 ☆4 A 1600→1900

 

「このまま『ページ』を戻しても良いんだが、その前に魔法カード『ツインツイスター』で、手札の『暗黒界の狩人 ブラウ』を捨てて、伏せカード二枚を破壊!!」

 

「……そんなの通すわけねーだろっ!!カウンター罠『大革命返し』でツインツイスターを無効にして除外する!!」

 

「けど『ブラウ』を捨てたから一枚ドロー!!」

 

星史 手札 6→8

 

「(ここでこれか……なら)俺は『ページ』を手札に戻して、墓地の『グラファ』を特殊召喚する!!」

 

『暗黒界の龍神 グラファ』 ☆8 A2700→3000

 

「バトルフェイズに入るが、そっちは何かあるか?」

 

「いや、今んとこはないな……強いて言うなら……」

 

 星史はそう呟くと辺りを見渡して……1枚のカードを地面から拾いやがった……ってヤバイ!!

 

「コイツをくれてやる! アクションマジック『伏魔殿の魅災硫』を発動! 相手プレイヤーに1000のダメージを与える!」

 

「ぬぉぉ!?」

 

亮 LIFE 3000→2000

 

 忘れてた、このフィールドにはあの高火力バーンみたいなアクション魔法がごろごろしてやがるんだった!!

 

「くそったれ!!『グラファ』で伏せモンスターを攻撃!!ダークネスブレス!!」

 

「甘い甘い! リバースカードオープン! 『攻撃の無敵化』! これでバトルフェイズ中の破壊を無効に! そして……」

 

セット→ブレイン・ジャッカー

 

「『ブレイン・ジャッカー』のリバース効果、発動! コイツをグラファに装備してコントロールを得る!」

 

「(コントロール奪取!?だが)……メインフェイズ2に入り、俺は手札から『暗黒界の取り引き』を発動!!互いにカードを一枚引いて、一枚捨てる。俺はこの効果で二枚目の『グラファ』を墓地へ捨て、その効果で『ブレイン・ジャッカー』を破壊する!!既に伏せカードを全て使いきったお前に発動できるカードはねぇぞ!!」

 

星史 手札8→10

 

「そして俺はカードをさらに二枚伏せて、今引いた『墓穴の道づれ』を発動!!互いに互いの手札を全て確認し、相手のカードを選んで墓地へ捨てる!!その後一枚ドローだ!!あ、俺の手札は『ページ』一枚だから確定な」

 

 これで漸くあのガキのデッキを割れる、さあ見せやがれ!!

 

「ッチ、ピーピングか……まぁ、良いぜ。俺の手札はこれだ」

 

手札

『デーモン・ソルジャー』×2

『神の恵み』

『砂塵の大竜巻』

『死霊ゾーマ』

『ダーク・ネフティス』

『エンド・オブ・ザ・ワールド』

『ポルターガイスト』

『高等儀式術』

『ニュードリア』

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………はい?

 

 

 

 

 蓮視点

 

「……なぁ、俺の見間違いだよな?なんかだいぶ片寄った手札してないか?」

 

 俺の言葉に、蘭が優しく右肩に手を乗せる。

 

「……大丈夫、これは現実だよ?」

 

「……ウン、シッテル……」

 

「うん、やっぱりアイツは何であのデッキをしっかり回せるのかやっぱわっかんねぇ」

 

「まぁ、あれでも勝率6割ですし……私も何度か負けてますからね……」

 

 驚く俺達をよそに苦笑いをする遊輔に、火無菊はウンウンと頷いて返していた。

 

 

 

 

 

 亮視点

 

「……うん、まぁ……砂塵で」

 

 というよりそれ以外ならなんとかなりそうだしな。とりあえずデッキから引くか

 

 星史 手札 10→12

 

「(よし、ここでこれなら)墓地へ捨てられた『ページ』を復活させ、手札に戻して二枚目の『グラファ』を墓地から特殊召喚!!そして俺はモンスターをセット、ターンエンド。この瞬間、『無の煉獄』の効果で手札を捨てる。捨てた『ページ』を復活!!」

 

亮 LIFE2000 手札0

フィールド

『暗黒界の龍神 グラファ』×2 A 3000

『暗黒界の尖兵 ページ』 A 1900

伏せモンスター

『暗黒界の門』 フィールド魔法

伏せカード二枚

 

 

 

「よし、俺のターン!!カードをドロー!!」

 

(くくく……あと早くて20だな)

 

 俺の小さな呟きは星史には聞こえなかったらしく、手札を確認しながら唸っている。

 

「うーん……まぁ、手始めに『ポルターガイスト』を発動。メインデッキ側の伏せカードを手札に戻す!!このカードの発動と効果は無効化されないぜ?」

 

 俺はその台詞に足下のアクション魔法を手にした。

 

「なら俺は選ばれたカードを、『レインボー・ライフ』!!アクション魔法をコストに、このターンのダメージを一切無効にし、その数値分ライフを回復する!!」

 

「ま、そう簡単にはいかねぇよな。けど、こいつぁどうだ?俺は儀式魔法『エンド・オブ・ザ・ワールド』を発動!!手札のデーモン・ソルジャー2体を儀式素材とする!!現れろ!!『終焉の王デミス』」

 

『終焉の王デミス』 ☆8 A 2400→2700

 

 まさかこのタイミングでそれまで出てくるとはな……まぁもっとも

 

「は、『ドーザー』が居ないデミスなんてチャーシューのないラーメンも同じだ!!」

 

 俺がそう言うと、グラファは分かったように俺を掴み挙げて……

 

「リアル人間大砲!!発射ぁ!!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()。それはもう音速に近い程の轟音をあげて

 

 

 

 蓮視点

 

「「「「「ぶー!?」」」」」

 

 余りの奇行に俺達は飲んでいた飲み物を一斉に吹き出してしまった。まさかそんなことをしでかそうなどと誰が考えるだろうか。

 

「あり得ない……あり得ない……いくら塔の上を狙いたいが為だけにそこまでするんだよ……普通に登れば良いだろう……登れない場所じゃねーだろ……」

 

「ん、まぁ実際に現実だしな……それにアイツもデュエリストだしなんとかなるだろ。それに遊勝塾の人間もあれぐらい簡単にできるだろ?」

 

「しない!ありえない!するはずがない!」

 

「できないとは言わないんだな……」

 

 俺の苦笑に、火無菊もまた苦笑を浮かべている。

 

「……ジェット塾という今はないデュエル塾がありましてね、そこはモンスターに()()()()()()()()アクションカードを拾う事が基本だと教える塾なんです。けども、怪我人が続出したのでオープンして3日で廃塾となったんです」

 

「まぁ、出来ないことはない。でも、怪我をしないためにしない。これが自然と暗黙の了解となったのさ」

 

「そりゃそうだ……」

 

 

 

 

 亮視点

 

 

「…………ぶっ飛んでんじゃねーの? 物理的と頭的に……まぁ、これ以上展開するつもりもねぇ訳だし……デミス、いけっ! デミスのモンスター効果! ライフを2000支払ってデミス以外のフィールド上のカードを破壊する! ついでに言うとラーメンに欠かせないのはメンマだろーが!!」

 

「罠カードォォ!!『バトルマニア』ァァァァァ!!そしてアクション魔法『ミラー・バリア』ァァァァァ!!対象はセットモンスターァァァァァ!!そして『レインボー・ライフ』の効果で1000回復ゥゥゥゥゥ!!」

 

亮 LIFE2000→3000

 

 流石にただで通すわけにはいかないし、丁度頂上に着いて手にいれたアクション魔法で凌がせてもらうぜ!!

 

「これで『デミス』はセットモンスターに攻撃しなければならない!!」

 

「……大丈夫か?色んな意味で」

 

「ふ、俺がいつ……大丈夫だと言った?」

 

 チーン、煙の晴れた瞬間、その言葉が似合うほど俺は頂上で横たわっていた。かなりボロボロにはなっているが、それでも立てないことはないし、動けない訳じゃない。

 

 のっそり俺が立ち上がると、星史はまるで化け物を見る目でこっちを見てやがった。

 

「こっち心配する必要なんざねぇよ?さっさとターン進めて攻撃しやがれ!!」

 

「……バトルマニア、か。でも、そう簡単に攻撃しねーよ!! アクションマジック『伏魔殿の酢凰琉』!」

 

伏魔殿の酢凰琉(スコール)  オリジナルアクションマジック

このターンの攻撃権利を放棄することで相手フィールドのセットモンスターを全て除外する。その後、除外したモンスターの数×1000ポイントだけ自分のライフを回復する

 

「この効果でお前のセットモンスターを除外し、ライフを1000回復! 」

 

「させない!!アクション魔法『ノー・アクション』!!相手の発動したアクション魔法を無効にする!!さらに『レインボー・ライフ』の効果で、俺はアクション魔法のペナルティダメージ分、ライフを1000回復する!!」

 

亮 LIFE3000→4000

 

「っ、だが攻撃権利の放棄はコストだから攻撃は出来ない!俺はカードを4枚伏せて墓地のデーモン・ソルジャーとブレイン・ジャッカーを除外して手札のダーク・ネフティスを墓地に送る! モンスターをセットしてターンエンド!」

 

星史 LIFE2000 手札2枚

フィールド

『終焉の王デミス』 A 3000

伏せモンスター

伏せカード四枚

 

「さて、俺のターン!!」

 

 引いたカードを確認すると、俺は再びニヤリと口許を歪めた。

 

「俺はカードをセット!!」

 

「……なんだ、セットするだけか。俺の思い違いか……?」

 

「……そいつは俺のセットモンスターを見てから言いな!!リバースモンスターオープン!!『メタモルポット』!!」

 

『メタモルポット』 ☆2 A 700

 

「っ、『メタモルポット』!?」

 

「こいつの効果は有名だよな!!互いに手札を全て捨ててカードを5枚ドローする!!俺の手札は0枚、そっちは二枚、さっきのピーピングで見るに、恐らくデッキに『ネクロ・ガードナー』はともかく『超電磁タートル』は入ってねぇ、そんなのはアクション魔法で代用すれば良いからな!!」

 

 何せ『回避』やら『奇跡』やら『大脱出』やらと汎用的で強力なアクション魔法が多いのだ。手札で腐ることを嫌がれば自然とデッキに組み込まないのは、ある意味デュエリストの性だろう。

 

「まぁ、普通は入れねぇだろうな……けど、決め付けも良くないぜ?」

 

「いーや、お前は容れてない。お前が今捨てたモンスター……『怨念集合体』を見ても、お前が使ったカードを見ても、お前のデッキのモンスターは基本的に、いわゆる『オカルト』系のモンスターを中心として組み上げてる!!なら狼男のような姿をした『ネクロ・ガードナー』はまだしも、機械的な生物の姿をした『超電磁タートル』は容れてない!!一枚でも容れればデッキコンセプトを破綻させるからな!!」

 

 コンセプトの破綻はデュエリストにおいて最も……特にエンタメデュエルを心情にする遊勝塾の人間なら絶対に嫌う。

 

「だから俺はこのカードを使う!!今引いた魔法カード『魔法石の採掘』!!手札の二枚を捨てて、墓地の『手札抹殺』を回収する!!そして捨てた中にある二枚目の『シャドール・ビースト』と『暗黒界の狩人 ブラウ』の効果で二枚ドロー!!そして、『手札抹殺』を発動する!!さぁ、手札を捨てな!!」

 

「……なら、試してみるか?」

 

 そういう星史の顔は、笑っていた。だがさっきのアクション魔法の時にライフの回復を止められたとき、アイツはかなり動揺していた。ということは奴の手札ないしデッキには防御または回復のカードは少ないのだろう。

 

(奴の墓地へ捨てられたカードは『死霊伯爵』、『冥界の魔王ハ・デス』、『絵画に潜む者』、『夢魔の亡霊』、そして『首なし騎士』……やっぱり手札誘発どころか攻撃回避のカードは無い)

 

 これではっきりした。やはりあのデッキのコンセプトは『オカルト』、そして今一番に危険なのは

 

「……墓地へ捨てられた三枚目の『グラファ』の効果発動!!俺が破壊するのは、その伏せモンスターだ!!」

 

 伏せカードのうち、三枚はピーピングして見つけた『死霊ゾーマ』、『高等儀式術』、そして『神の恵み』。だとすればさほど驚異には値しない。だったら不確定要素の伏せモンスターは一番厄介だ。

 

(破壊されたのは『ニュードリア』……破壊効果は厄介だが、それでもなんとかなるカードだな)

 

「まぁ、オカルトっぽいって言われると……あながち間違いでもないけどな」

 

 星史はそう苦笑いで返すが、俺の狙いについて分かってるのだろうか?

 

「……お前、今の状況分かってるのか?」

 

「大方、予想は付いてるさ。まぁ、一応『死霊ゾーマ』を発動し、特殊召喚するが……何かあるか?」

 

「……いや、何もないぜ。分かってるなら、このターンで終わらせるぜ!!手札から再び魔法カード『魔法石の採掘』を発動!!手札の『ページ』と『リビングデッドの呼び声』を墓地へ捨てて再び『手札抹殺』を加えて、発動!!俺の手札は残り二枚、そっちは五枚だ。伏せカードの発動はあるか?」

 

「……いや、何もない」

 

「……なら最後に俺の切り札を見せてやる!!俺はまず魔法カード『貪欲な壺』を発動し、墓地の『シャドール・ビースト』、『シャドール・ヘッジホッグ』、『シャドール・リザード』、『ページ』、『ブラウ』をデッキに戻して二枚ドロー!!そして儀式魔法、『六絶神の生誕』!!」

 

 

 

 蓮視点

 

「『六絶神』?!」

 

「なんだよ、あの儀式魔法……初めて、見る……!」

 

「……まぁ、それについては後々教えるから、とりあえず今は試合に、な」

 

 慌てる二人に苦笑しつつ、俺は二人の試合の最後を見届けることにした。

 

 

 亮視点

 

「フィールドまたは墓地のモンスターを除外して、手札の『六絶神』と名のつく儀式モンスターを特殊召喚する!!俺は墓地の『シャドール・ビースト』を除外!!」

 

 墓地から消えていくカードと共に、フィールドの上空が轟音と共に暗く闇に染まる。

 

「欲望の紫石から産まれし死の神よ、我がフィールドに舞い降り、あまねく全てを冥界へ送れ!!儀式召喚!!現れろ!!『六絶神 欲望のデス・ガル・ヴァトス』!!」

 

『六絶神 欲望のデス・ガル・ヴァトス』 ☆5 A 2000

 

「『デス・ガル・ヴァトス』が儀式召喚に成功したとき!!墓地に闇属性モンスターが5枚以上存在するとき、デッキから手札が5枚になるようにドローする!!俺の手札は今は二枚、よって三枚ドロー!!そして最後に俺は伏せていた魔法カード『一時休戦』を発動し、互いに一枚ドロー!!」

 

 そしてこの瞬間、星史のデッキは0に、俺のデッキは残り六枚……完全に勝負は確定した。

 

「俺はこれでターンエンドだ。そしてお前はドローフェイズにドローできない」

 

 その言葉に、星史はとても悔しそうな顔で笑っていた。

 

「まさか、あの時と同じデッキデスだなんてな……やっぱりオレには40枚デッキは性に合わねぇや」

 

「そうでもねぇよ。お前が『便乗』を使ってこなきゃ、ビートダウンを狙って多分返り討ちになってたしな。年下と思って少し油断してた」

 

 俺はそう言いながら星史に右手を差し出す。

 

「いいデュエルだったぜ。もし次に戦うなら、今度は油断無しで最初から本気で行くぜ」

 

「オレだって次やる時は負けねぇよ!」

 

 そうして俺達は互いに握手を交わし、フィールドから出るのだった。



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コラボ編 vs火無菊

「……では、第2試合目ですね。遊勝塾は私、火無菊が行かせていただきます。対戦相手となられる方はアクションデュエルとスタンディングデュエル、お好きな方をお選びください」

 

 次に出てきたのは、これまた俺達を案内してくれた火無菊だった。さてこちらはというと……

 

「ふむ、では二番手はこの私、黒霧劔菜がお相手奉ろうか?最も、私は運動は苦手なため、スタンディングデュエルを選ばせてもらおうか」

 

 そう言って劔菜先輩は微笑みながら前に出る。

 

「スタンディングデュエルですね、畏まりました。遊矢、背景だけ変更してくれます?」

 

「……ところで、君は本当に男子かい?見た目がどうも女子のそれに見えて仕方ないのだが……というより男の娘なのか?」

 

 俺も少し思っていたことを先輩が気後れすることなく口走った。実際声はあどけない少年のそれと同じなのだが……如何せん姿格好と髪型、さらに丁寧語な口調が合わさって少女に見えても仕方なかった。

 

「私は一応正真正銘の日本男子ですよ。まぁ、私自身が身に付ける着物も女性ものでも背丈は合いますし遊矢や星史みたいな口調は苦手ですから、余計にそう感じられるのでしょうね……しかし、それはそれです。星史の弔い合戦と参らせていただきます!」

 

「俺は死んでねぇって! ……まぁ、アイツは優しすぎるからな」

 

 なにやら星史が突っ込んでるが、それを言ったらおしまいだろ……

 

 さてデュエルフィールドはと確認すると、特徴的な龍の銅像に高層ビル……ってちょっと待て!!まさかこれって!?

 

「海馬コーポレーション!?」

 

 流石にこれはビックリだった。

 

「……なるほど、まさかかの有名なK.C.社前にするとは……いっそのこと海馬タワーの屋上でも良かったのだが……まぁ背に腹は変えられんか」

 

 そう言って先輩はデュエルディスクを展開する。ちなみにだが、劔菜先輩は最近デュエルディスクを新調したらしく、何やらⅢのデュエルディスクを紫よりの黒にした感じになってる。完璧にオーダーメイドだ、さすがは令嬢である。

 

「「デュエル!!」」

 

劔菜 LIFE4000

火無菊 LIFE4000

 

 

 剱菜視点

 

「では、私の手番からです。私は『伝説の黒石』を通常召喚致します。そして伝説の黒石をリリース……デッキより現れてください。レベル7、『真紅眼の黒竜』!」

 

『真紅眼の黒竜』 ☆7 A2400

 

「そして魔法カード『レッドアイズ・インサイト』をデッキより『真紅眼の黒炎竜』を墓地に送り発動します。デッキより……『真紅眼の鎧旋』を手札に加えます。更に『紅玉の宝札』を手札の『真紅眼の黒炎竜』、デッキより2体目の『真紅眼の黒竜』をコストに発動しまして2枚ドローします。そしてカードを2枚伏せてこれにて私の手番を終了致します」

 

火無菊 LIFE4000 手札2

フィールド

『真紅眼の黒竜』 A2400

伏せカード二枚

 

「私のターン、ドロー!!……ふむ、『レッドアイズ』……確かそれなりに貴重価値が高いうえに、バーン戦術も取れるデッキだったな……ならば私は手札から永続魔法『水銀海に浮かぶ工場島』と『闇の聖剣』を発動!!」

 

 するとどういうわけか私の背後に『闇の聖剣(アニメリアルサイズ)』が海馬コーポレーションと並ぶ形で姿を現した。

 

「……? どちらも初めて見るカードですね……」

 

「最もこの二つのカードは今は効果が適用されないから放っておいてくれて構わないさ。さらに私は『氷盾の守護者オーシン』を攻撃表示で召喚!!」

 

『氷盾の守護者オーシン』 ☆3 A100

 

「『オーシン』は召喚、特殊召喚に成功したとき、守備表示になる。そして私はカードを二枚伏せて、ターンエンドさ」

 

剱菜 LIFE4000 手札一枚

フィールド

『氷盾の守護者オーシン』 D1800

『闇の聖剣』 永続魔法

『水銀海に浮かぶ工場島』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 さて様子見の初手だが……はっきり言うとデッキ相性的には私より亮の方が相性が良いと思うが……まぁ仕方ないと諦めることにしよう

 

「出てきたモンスターも初めてみますね……まぁ、そこまで気にするものでもないですかね……私の手番ですね。ドロー!……あまり使いたくはありませんが、仕方ありませんね。魔法カード『真紅眼融合』を発動!」

 

 …………なに?

 

 蓮視点

 

「げ、融合!?」

 

「『レッドアイズ』だからあるとは思ってたが(この次元にしては)なんつーレアな物を……」

 

 俺と亮は思わず苦笑いだ。原作キャラより人が多いのは分かってはいたが、まさか融合を使ってくるとは……。 

 

「火無菊ん家は金持ちだからな、必要なカードはあっという間に集まっちまう。遊勝塾の中でもアイツだけだよ、融合召喚を使うのは……」

 

「へ~(てことは柚子はやっぱり時間軸的に融合なしか……)」

 

 

 

 剱菜視点

 

「私はデッキの『真紅眼の黒竜』と『真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン』を墓地に送り、融合!紅き目を持つ黒竜よ、紅き目の凶暴なる竜と混じりて、今ここに降臨せよ!融合召喚! レベル8! 『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』!」

 

『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』 ☆8 A 3500

 

「『流星竜』……なるほど、いきなり最高火力か……といっても伏せカードはまだ使わないがな」

 

「融合召喚に成功した『流星竜』のモンスター効果です。デッキより『真紅眼の凶雷皇-エビル・デーモン』を墓地に送り、その半分、1250のダメージを与えます!」

 

剱菜 LIFE 4000→2750

 

「……く、その効果の終了時罠カード『プレゼントカード』を発動!!相手は手札を全て捨てて、手札が5枚になるようにドローする!!」

 

 流石はソリッドヴィジョン、ダメージもスタンディングとはいえ大したものだが、私も負けては居られないな

 

「わざわざ、相手の手札を5枚に……?」

 

「この瞬間、『水銀海の工場島』の効果が発動する!!相手ターンに相手の手札がドローフェイズ以外で増えたとき、増えた枚数分、相手は手札からカードを墓地へおくる……墓地アドは怖いが、『レッドアイズ』で手札0なら『ダムド』も『レダメ』も無いだろう?」

 

「なるほど、そういう事でしたか。これでほとんどのドローソースの意味は無くなってしまった、と……まぁ、今引いたのはすべてモンスターですから、こちらとしては圧縮できた、と捉えさせてもらいます。」

 

 全てモンスター……これはまた良いのか悪いのか……おっと、捨てた中には『レダメ』もあるし、とりあえずはまぁ良しとしよう。

 

「……バトルフェイズです! 真紅眼の黒竜で氷盾の守護者オーシンに攻撃! 黒炎弾!」

 

「罠カード『攻撃の無力化』を発動!!バトルフェイズを強制終了だ」

 

 流石にここは凌がねば負け確定だしな、それに切り札すら出してないのに負けるのは勘弁被る。

 

「ふむ、……メイン2に移行しますがこのターンは手札もないですし、真紅眼融合のデメリットの効果で何も動けないですね……このままターンを終えます」

 

 

火無菊 LIFE4000 手札0

フィールド

『真紅眼の黒竜』 A2400

『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』 A3500

伏せカード二枚

 

「私のターン!!……私はモンスターをセット、さらに『一時休戦』を発動する。まぁ、最も、『オーシン』には『水銀海』と同じく、相手の手札が増えたときその枚数分捨てさせる効果がある。しかも相手ターンのみ指定が無いから、そちらは引いてすぐに墓地だがな」

 

「ふむ、実質そちら有利になるだけのカードと変貌しますか……心底胸糞悪くなりますね……潰したくなりますよ」

 

 なにやら物騒な言葉が聞こえたが……まぁ良い、さて引いたカードは……なるほど、ここでか

 

「私はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

剱菜 LIFE2750 手札一枚

フィールド

『氷盾の守護者オーシン』 D1800

セットモンスター

『闇の聖剣』 永続魔法

『水銀海に浮かぶ工場島』 永続魔法

伏せカード一枚

 

「では、私のターンです。ドロー……!」

 

(む、『黒炎弾』でも引いたか?)

 

 何やら引いたカードを見て少し驚いてるのを見ると、『黒炎弾』ないし『竜の鏡』でも引いたのかと感じる。

 

「メインフェイズは飛ばしてバトルフェイズです。真紅眼の黒竜で氷盾の守護者オーシンに攻撃! 黒炎弾!」

 

「まぁ流石に最優先で潰すか……」

 

 最もピン積みだったし、使えれば良い程度にしか考えてなかったし別にいいか。

 

「では、続いてセットモンスターに流星竜メテオ・ブラック・ドラゴンで攻撃! 黒炎流星弾!」

 

「セットモンスターは『ミーア・バット』だ。そして破壊された瞬間、伏せていたカード、『呪の覇王 カオティック・セイメイ』の効果を発動する!!」

 

「魔法・罠ゾーンにモンスターが……!?」

 

「このカードは魔法・罠カード扱いでセットできる。そしてフィールドのモンスターが破壊されたとき、相手フィールドのモンスターの攻撃力を、発動したターンのエンドフェイズまで半分にし、さらにこのとき、闇属性モンスターが破壊されたことにより、フィールドに特殊召喚できる!!私は『流星竜』を選択させてもらう!!」

 

 するとフィールドの空が暗雲に包まれ、空に雷鳴が鳴り響く。

 

「借り物だが、使わせてもらうぞ蓮!!祖は呪う、混沌を呼べと猛り狂え!!現れろ!!レベル8『呪の覇王 カオティック・セイメイ』!!」

 

『呪の覇王 カオティック・セイメイ』 ☆8 A 2000

 

 

 

 蓮視点

 

「なるほどね……剱菜が貸してって言ってたの、あのカードだったのね?」

 

 椿姫先輩が納得するように聞いてきて、俺はとりあえず頷く。

 

「今回は使うつもりが無かったですし、それに先輩のデッキとも相性が良いんで」

 

「まさかそれをいきなり成功させるとはね……いやぁ、凄いわ、誉めてあげるわ」

 

「……その身体で誉められてもグホァ!?」

 

 しまった。正直に口走ったせいで、椿姫先輩の裏拳がお腹に決まってグハァ!?

 

「な、なんで柊さん……まで…………ガクッ」

 

「あら、ごめんなさい。なんか自然と体が動いてしまってねぇ。普段はこうならないんだけど、何かね」

 

「…………これは蓮の自爆だね」

 

 ちきせう……今日は厄日だ……よ……バタン!!

 

 

 剱菜視点

 

『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』A3500→1750

 

「っ、『メテオ・ブラック・ドラゴン』!」

 

 彼はまるで苦虫を噛むように自分のドラゴンを見てる。まぁ当然だろう、自分のエースモンスターが攻撃力を半分にされればそうなる。

 

「……仕方ないですね。このままエンドフェイズに移行し、墓地の3体の真紅眼の飛竜の効果を発動します。通常召喚はしていませんので、3体を除外し……レッドアイズモンスターである真紅眼の凶星竜-エビル・デーモン、真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを特殊召喚し、そのままターンエンドです。これにより、カオティック・セイメイの効果が切れ、攻撃力が元に戻ります」

 

 

火無菊 LIFE4000 手札0

フィールド

『真紅眼の黒竜』』ATK2400

『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』 A3500

『真紅眼の凶星竜-エビル・デーモン』 A2500

『真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン』 D2000

『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』 A2800

伏せカード二枚

 

 

「私のターン!!……よし、私はチューナーモンスター『闇騎士ケイ』を召喚!!」

 

『闇騎士ケイ』 ☆4 A 1800

 

「私はレベル8『カオティック・セイメイ』にレベル4『闇騎士ケイ』をチューニング!!漆黒の闇にて振るう暗黒の剣、覇の雷を異界の地にて轟かせ!!シンクロ召喚!!現れろ、レベル12!!『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』!!」

 

『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』 ☆12 A3500

 

「流星竜メテオ・ブラック・ドラゴンと同じ攻撃力3500のモンスター……!? それに、シンクロ召喚ですか……!」

 

「『ソーディアス・アーサー』の効果発動!!1ターンに1度、墓地の攻撃力2000以下の闇属性モンスターを特殊召喚できる!!私は『カオティック・セイメイ』を復活!!」

 

『呪の覇王 カオティック・セイメイ』 A2000

 

「バトルだ!!『ソーディアス・アーサー』で『流星竜』を攻撃!!」

 

「相打ち狙い……? 迎え撃ちなさい、『流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン』!」

 

 『アーサー』の剣と『流星竜』の鉤爪がぶつかり合い、やがて剣がドラゴンの喉に突き刺さり、鉤爪は鎧を貫いて互いに爆発、四散する。

 

「……仕方無しとはいえ、これで『黒炎弾』によるワンショットキルは防げた……続けて『カオティック・セイメイ』で『レダメ』に攻撃!!」

 

「攻撃力が低いのに……攻撃?!」

 

「『カオティック・セイメイ』との戦闘によって、私は戦闘ダメージを受けない!!さらに破壊されたことにより、相手のライフを1000吸収して、墓地から再び特殊召喚する!!」

 

火無菊 LIFE 4000 → 3000

 

「さらに墓地の『ミーア・バット』は、手札が0でフィールドのレベル4モンスターが破壊されたとき、フィールドに特殊召喚できる!!永続魔法『闇の聖剣』の効果で、破壊されたモンスターのレベルは3/4としても扱うことができる!!」

 

『ミーア・バット』 ☆3 D500

 

「バトルフェイズに特殊召喚されたことにより、『セイメイ』は再び攻撃できる!!もう一度『セイメイ』で『レダメ』で攻撃!!」

 

「っ、させない! リバースカードオープン! 『次元幽閉』! カオティック・セイメイを除外します!」

 

「……ここで次元幽閉か……手札もフィールドもほぼ尽きた……ここまで、かターンエンド」

 

剱菜 LIFE2750 手札0

フィールド

『ミーア・バット』 D500

『闇の聖剣』 永続魔法

『水銀海の工場島』 永続魔法

 

「私のターン、ドロー」

 

「……墓地も有益なカードは見えなかった筈……なら、バトル! エビル・デーモンでミーア・バットを攻撃! 魔霧炎!」

 

「……ついにはモンスターすら居なくなった……これまでか……」

 

「……対戦、ありがとうございました。このデュエルは今後の良き糧とします。レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンでダイレクトアタック! ダーク・メガフレア!!」

 

剱菜 LIFE2750→0

 

 

 蓮視点

 

「Aaaaaaathrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」

 

「「「またか剱菜(先輩)!?」」」

 

 アーサー出した時点で今回もとは思ってはいたが、まさか試合後にこうなるとは思っても見なかった。

 

「ファッ!?」

 

「突然なんだよ!?」

 

「あー、気にしなくても良いですよ、剱菜先輩、自分を円卓の騎士のランスロットだと思い込んでる節があるんで」

 

「……サブデッキも確か、『聖騎士』で組んでたぐらいだし……いつもこんな感じだから気にしたら負け……」

 

「そ、それでいいんですか……?」

 

「Aaaathrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」



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コラボ編 タッグデュエル

「さて、三戦目……予定通りタッグデュエルの時間よ!!相手は誰かしら?」

 

「姉さん……挑発するのは無しだよ……ホント。あ、遊矢君だっけ?フィールドはスタンディングでお願いします」

 

 姉さんがそれはもう浮かれ頂点で、全然こっちの話を聞いてないや……まぁいつものことだけど。

 

「……あぁ、相手はアタシと柚子が受け持つよ。生憎と遊勝塾だけじゃなく大抵のデュエル塾はシングルデュエルプレイヤーが多くてね。一応タッグデュエル用のデッキは組んでたが、試せなかったんだよ。今回はデッキためしのつもりで胸を借りにいくよ」

 

「え、っと……宜しくお願いします!」

 

 ……なんか微妙に呆けてる感が否めないような……あ、

 

「……あー、もしかして剱菜のアレに動揺しちゃった感じ?」

 

「?祐司それって……あー、そう言えばこの子達初見だったわね、慣れすぎて忘れてたわ……」

 

 もうお約束となった剱菜のアレも、端から見たら普通に珍事だし、驚いて呆然とするのも当然っちゃ当然かな?

 

「慣れ……るもの、なのかな……?」

 

「慣れては絶対にダメなものよ……間違いなく」

 

 杏子の台詞は最もだが、私たちからしたらあれでもまだ暴走のレベルは低い方だ。何せここが私達の世界なら一瞬でバサスロット(コスプレ)に変貌してたし……

 

『それじゃあ、スタンディング用にしますね! 『天獄の大地』!!』

 

 と、フィールドが漸く変更されたね。見たところ……うん、なんか妙に薄黒い大地に蒼い空って、ミスマッチにも程があるね……。

 

 さらにデュエルディスクのディスプレイに順番が表示される。どうやら姉さん→杏子→俺→柚子→姉さんの順らしい。

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

祐司&椿姫 LIFE8000

杏子&柚子 LIFE8000

 

「先行は私よ!!私は手札から速攻魔法「『手札断殺』を発動!!私と……そっちの最後だから柚子は手札を互いに二枚墓地へ送って、二枚ドローする!!私は『ボルト・ヘッジホッグ』と『ジェット・シンクロン』を手札から捨てるわ!!」

 

「え、っと……それ、じゃあ……『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』と『幻奏の音女エレジー』を墓地に送ります!」

 

「続けて私は手札の『ネクロ・ガードナー』を墓地へ送り、魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!!デッキからチューナーモンスター『ガード・オブ・フレムベル』を守備表示で特殊召喚!!」

 

『ガード・オブ・フレムベル』 ☆1 D 2100

 

「そして私はカードを一枚伏せて、ターンエンド!!」

 

祐司&椿姫 手札5:1 LIFE8000

フィールド

『ガード・オブ・フレムベル』 D2100

伏せカード一枚

 

 

「さて、次はアタシね。アタシのターン、ドロー!」

 

 ドローした彼女は少し頷いて手札の中の1枚を手に取る。

 

「アタシは『クリバンデット』を召喚!」

 

『クリバンデット』  A1000

 

「そして、手札の『堕天使イシュタム』の第1の効果を『堕天使スペルディア』と共に捨てて発動するわ。これに何かチェーンはあるかしら?」

 

「特にチェーンは組まないわ、続けてどうぞ?」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて、2枚ドロー……うん、これなら……魔法カード『堕天使の戒壇』を発動。守備表示で『堕天使スペルビア』を特殊召喚」

 

『堕天使スペルビア』 D2400

 

「『堕天使スペルビア』の効果で『イシュタム』を特殊召喚する……けど、どうする?」

 

「悪いけど『イシュタム』からの『戒壇』のループは勘弁被りたいわ。永続罠『デモンズ・チェーン』!!『スペルビア』の効果は無効よ!!」

 

「おっと、これじゃあ仕方ないわね……カードを4枚セット。これでターンを終えるわ。そして『クリバンデット』のモンスター効果。この子をリリースしてデッキトップ5枚を公開、その後魔法・罠を1枚選択してそのほかを墓地に送るわ。デッキトップは5枚はこれね」

 

公開されたカード

『魅惑の堕天使』

『堕天使降臨』

『背徳の堕天使』

『堕天使の追放』

『アテナ』

 

「『堕天使の追放』を手札に加えて他は墓地に。ターンエンドよ」

 

 

杏子&柚子 手札1(堕天使の追放):5 LIFE8000

フィールド

『堕天使スペルビア』DEF2400(デモチェにより効果無効)

伏せカード四枚

 

 

「それじゃ僕のターン!!……僕は魔法カード『マジックプランター』を発動、その効果で役目を終えた『デモンズ・チェーン』をリリースして二枚ドロー!!……よし、僕は今引いた『ハーピィの羽箒』を発動!!そっちの伏せカード全てを破壊する!!」

 

「……チェーンしてこのカードを発動するわ。『アーティファクトの神智』、発動! こっちはもうないけど、何かチェーンはあるかしら?」

 

 まさかのカードに僕は驚いて目を見開く。

 

「『アーティファクト』!?た、確かに相性は良いのかもしれないけど……僕はそれにチェーンするカードはないよ(この場面『モラルタ』を使う意味は殆んど無い……ということはつまり……)」

 

「じゃあ、効果処理させてもらうわね。まずは神智の効果でデッキから『アーティファクト・カドケウス』を特殊召喚するわ」

 

『アーティファクト・カドケウス』DEF2400

 

「そして貴方の『ハーピィの羽根箒』で私たちのフィールドの魔法罠ゾーンのカードが破壊される、と……良かったじゃない。伏せカード、無くなったわよ?」

 

破壊されたカード

『アーティファクトの神智』

『アーティファクト・デスサイズ』

『アーティファクト・アイギス』

『アーティファクト・ムーブメント』

 

「やっぱり『デスサイズ』も仕込んでいましたか……」

 

「ふふ、このターンで決めようと焦りすぎたかな? では、破壊されたカードの効果発動よ。チェーンは『アーティファクト・デスサイズ』、『アーティファクト・アイギス』、『アーティファクト・ムーブメント』、『アーティファクトの神智』の順よ。まず神智の更なる効果、相手に破壊されたことにより『ガード・オブ・フレムベル』を破壊。『アーティファクト・ムーブメント』の効果で相手に破壊されたことにより次の相手のバトルフェイズスキップ。『アイギス』は相手ターンに破壊されたことで特殊召喚されこのターン中にアーティファクトは相手による効果破壊耐性と相手カードの対象にならない。最後にデスサイズの効果でこののターン中、エクストラデッキからモンスターの特殊召喚を封じるわ。あ、それとついでに『カドケウスの効果でドローもしておくわね」

 

『アーティファクト・アイギス』DEF2500

『アーティファクト・デスサイズ』ATK2200

 

杏子 手札 1→2→3

 

「さぁ、これで私はもう残念ながらチェーンするカードは今は無くなったわ。さぁ、お好きにどうぞ?」

 

 お好きにどうぞって、ここまで『ジャンド』にメタ張りしてるのにどないしろって言うんだよ。でも、まぁ……

 

「……確かに驚きはしました。けど、ある意味では予想の範囲内、寧ろフィールドを空っぽにしてくれてありがとうと言いたいですよ」

 

「……どういうこと、かな?」

 

「……こういうことですよ!!相手フィールドにモンスターが存在し、自分のフィールドにモンスターが存在しないとき、僕は手札の魔法カード『ガガガ学園の緊急連絡網』を発動!!特殊召喚を封じられてないデッキから現れろ!!『ガガガマジシャン』!!」

 

『ガガガマジシャン』 ☆4 A 1500

 

「確かにメインデッキは封じられてない、でも……その子の効果でなんとか出来るのかしら? 見たところ、そこまでこの場面で活躍するとも思えないのだけれど……」

 

「確かに『ガガガマジシャン』はシンクロ召喚の素材にはできないし、何よりこのターン、エクシーズ召喚すらできない……けど、このカードも、このデッキでの使いようはあるんですよ。僕はさらに魔法カード『手札抹殺』を発動!!これにより僕は残りの手札四枚を捨てる!!」

 

捨てたカード

『ドッペル・ウォリアー』

『超電磁タートル』

『ゾンビ・キャリア』

『馬の骨の対価』

 

「超電磁タートル、厄介なものが落ちたわね……良いわ、通しましょう」

 

「そして互いに捨てた枚数分ドロー!!……って『スペルビア』と『アテナ』かよ!?引き運良すぎでしょ!?」

 

 ていうかこれでどっちも二枚目だよな……もう一枚『アテナ』引いてアドバンス召喚とか勘弁してほしいから。

 

「(さて手札は……お、これなら)……俺はカードを二枚伏せ、モンスターをセット、バトルフェイズに入って『ムーブメント』の効果で強制スキップ、メインフェイズ2に入るが、何かあるか?」

 

「……いーえ、特には?」

 

「ならメインフェイズ2、僕は手札から魔法カード『太陽の書』を発動!!ひっくり返れ!!『メタモルポッド』!!」

 

『メタモルポッド』 ☆2 A 500

 

「メタモルポッド!? そうくるだなんて……!」

 

「『メタモルポッド』の効果で、手札を互いに全て捨てて、デッキからカードを五枚ドローする。いや~、まさかこんなに上手く使えるとは思ってなかった」

 

 何せ引いたカードの三番目と最後のカードがこれだったんだ、驚き通り越して少し呆れたよ。

 

「ちなみに僕の手札は今は0だ、だからそっちだけ捨ててください」

 

「草食系な顔して案外グイグイ来るのね、そういうのは嫌いじゃないなぁ?」

 

 ……うん、笑ってるけど目が笑ってないね。おお怖い怖い……。ついでに捨てられたカードは『モラルタ』に『堕天使マリー』に『エデ・アーラエ』か……次のターンライフ回復は確定かな?

 

 

 蓮視点

 

「草食系か……」

 

「まぁ強ち間違ってないけどさ、あの人の場合はな……」

 

「「うんうん」」

 

 剱菜先輩のため息に俺が肯定すると、蘭と亮もコクコクと頷く。

 

「ん、違うのか? とても礼儀正しいし、おとなしめ、というか……」

 

「なんと言いますか、虫も殺せぬ御人、と申しますか」

 

「っつーか、マジのベジタリアンじゃねーの?」

 

 なんだか祐司先輩が偉く辛辣に言われてるな……おい。

 

「まぁ確かに、普段のあいつほど、君達が思うところの人畜無害な草食系というのは間違ってないさ。けど……」

 

 そう言って剱菜先輩は苦笑いを浮かべながら再びフィールドを見る。

 

「フィールド、ことタッグデュエルにおいて、アイツほど煮ても焼いても食えない人間はそう居ない。寧ろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 椿姫視点

 

 あの馬鹿、また調子のって……これサポートする私の身にもなりなさいよ。

 

「姉さん」

 

「ん?何よ、まさか手札が悪いなんて言わせないわよ?」

 

 あんだけ手札交換してなお引きが良くないとか抜かしたら、マジで……って祐司のやつ指を1本立てて……!!そういうことね。

 

「……はぁ、わかったわ、とりあえずあんたの好きなようにやりなさい。その代わり、次のアンタのターン、絶対に王手しなかったら許さないわよ」

 

 私がそう言うと、祐司はニコリと笑って頷く。

 

「分かってるさ。僕はカードをさらに二枚伏せて、ターンエンド!!」

 

祐司&椿姫 手札3:1 LIFE8000

フィールド

『ガガガマジシャン』 A 1500

『メタモルポッド』 A 500

伏せカード四枚

 

 さて、祐司が伏せたカードを確認しとかないと……えっと…………なるほどね、そういうことか。

 

「私のターン……ドロー!」

 

 さて、柚子ちゃんのターンが始まったわけだけど……慣れてなさすぎて動揺が手にとって見てとれるわ~、多分このターン終わったら涙目で崩れ落ちるわね。

 

「えっと……スタンバイフェイズ、速攻魔法カード『サイクロン』。私から見て左から2番目を破壊します!」

 

「ならその伏せカード『トゥルース・リインフォース』を発動!!デッキから『ドッペル・ウォリアー』を特殊召喚するよ」

 

『ドッペル・ウォリアー』 ☆2 A 800

 

「っ……えっと「『堕天使マリー』は墓地で発動する効果を持つわよ、柚子」あっ、えっと……スタンバイフェイズに『堕天使マリー』のモンスター効果発動!私たちのライフを200回復する!」

 

杏子&柚子 LIFE8000→8200

 

 しかも相方にアドバイス貰ってるし……幸先悪すぎよ?ホント

 

「メインフェイズ! ここ、は……『デスサイズ』と『アイギス』をリリース! 天上に響く妙なる調べよ。眠れる天才を呼び覚ませ。いでよ! レベル8、『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』!」

 

『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』 ☆8 A2600

 

「それじゃあ……幻奏の音姫プロディジー・モーツァルトのモンスター効果! 手札から……幻奏の音女エレジーを特殊召喚!」

 

『幻奏の音女エレジー』 ☆4 A2000

 

「エレジーの効果! 自分フィールド上の天使族モンスターの攻撃力は300ポイントアップする!」

 

『幻奏の音女エレジー』 A2000→2300

 

『堕天使スペルディア』 D2400 (A2900→3200)

 

『アーティファクト・カドケウス』 D2400 (A1600→1900)

 

『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』ATK2600→2900

 

「これなら……魔法カード『死者蘇生』を発動! 対象は『アテナ』!」

 

『アテナ』 ☆7 A2700

 

「『アテナ』召喚確定時に速攻魔法『皆既日食の書』を発動、フィールドのモンスター全て裏守備表示ね。そっちのモンスターはエンドフェイズに元に戻ってその枚数分ドローだけど」

 

「っ……! まさか、こんな返し方されるなんて……」

 

(祐司のやつ、とんでもなく生き生きしてるわね……ホント)

 

 まるで水を得た魚の如くアイツは、(認めたくないけど)イケメン笑顔の内心に真ゲスのようなどす黒い悪魔が見えてならないわ。

 

「で、でも、まだ……! 堕天使スペルビアを反転召喚!」

 

『堕天使スペルビア』ATK2900

 

「バトル! 『スペルビア』で『メタモルポッド』に攻撃!」

 

 あ~あ、これは柚子ちゃん完全にミスしたわね。祐司も苦笑いだし、これは多分

 

「『ネクガ』でバトル強制終了ね」

 

 はい、これで次のターン私の手札が増えるの確定したわね。

 

「うぅ……カードを伏せて、ターン終了……エンドフェイズに『皆既日食の書』の効果で裏側守備表示のモンスターたちが表側守備表示になってその数だけドロー……」

 

杏子&柚子 手札5:7 LIFE8200

フィールド

『幻奏の音女エレジー』 D1200

『堕天使スペルディア』 A2900

『アーティファクト・カドケウス』 D2400

『幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト』 D2000

『アテナ』 D800

伏せカード一枚

 

 

蓮視点

 

「「「うわぁ…………」」」

 

 遊勝塾含め、控え室にいる全員が同じことを呟いた。

 

「ナニアレコワイ」

 

「アレですかね……美しい花には毒やトゲがあるっていう……」

 

「男だし、花は違うだろうし……何となく違う気がするぞ?」

 

「あれでもまだマシな方だけどな。というか今回は柚子ちゃんのプレイミスも何点か合ったから仕方ないけど……」

 

「……は? どういうことだ? 特にはプレミしてた様子もねぇだろ……?」

 

「すぐに椿姫先輩が解説するから、ここではノーコメントっす」

 

「「「メメタァ……」」」

 

 遊勝塾員のそんな発言が聞こえたような気がする……。

 

 

 

 椿姫視点

 

「私のターン、ドロー!!」

 

 さて、私の手札は今二枚、うち一枚は……よし、

 

「私はまずカードを一枚伏せる。そして私は『ドッペル・ウォリアー』を反転召喚!!そして手札の『ゾンビ・キャリア』を墓地へ送り、墓地の『ジェット・シンクロン』を特殊召喚!!」

 

『ジェット・シンクロン』 ☆1 A500

 

「私はレベル2『ドッペル・ウォリアー』にレベル1『ジェット・シンクロン』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『ゴヨウ・ディフェンダー』!!」

 

『ゴヨウ・ディフェンダー』 ☆3 D1000

 

「うぅ……」

 

「私はシンクロ素材になった『ドッペル・ウォリアー』の効果は使用せず、『ゴヨウ・ディフェンダー』の効果発動!!自分フィールドに地属性戦士族モンスターのみ表側で存在してるとき、エクストラデッキから二枚目の『ゴヨウ・ディフェンダー』を特殊召喚!!さらに『メタモルポッド』を反転召喚!!その効果で互いに手札を全て捨てて5枚になるようにドロー!!……そしてさっき伏せていた魔法カード『テラ・フォーミング』を発動!!デッキからフィールド魔法『神縛りの塚』を手札に加えて発動!!これにより、レベル10以上のモンスターは効果の対象にならず、効果では破壊されない!!」

 

 そう言うとなんだか柚子ちゃんの顔が涙目になってきてる。……うん、まぁいいや。

 

「そして私は手札の『ジャンク・シンクロン』を通常召喚!!そしてレベル2『メタモルポッド』にレベル3『ジャンク・シンクロン』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ、『アクセル・シンクロン』!!」

 

『アクセル・シンクロン』 ☆5 D 2100

 

「『アクセル・シンクロン』の効果!!デッキから『アンノウン・シンクロン』を墓地へ送って、このモンスターのレベルを1つ上げる!!私はレベル3『ゴヨウ・ディフェンダー』2体に、レベル6となった『アクセル・シンクロン』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れなさい!!白く輝く光の竜!!『シューティング・クェーサー・ドラゴン』!!」

 

『シューティング・クェーサー・ドラゴン』 ☆12 A 4000

 

「さらに私は、手札から『カグツチ・ドラグーン』を墓地へ送り、手札の『クイック・シンクロン』を特殊召喚!!」

 

『クイック・シンクロン』 ☆5 A 700

 

「そして『ガガガマジシャン』を反転召喚し、その効果で『ガガガマジシャン』をレベル5にする!!」

 

『ガガガマジシャン』 ☆4→5

 

「レベルが同じ……最近見付かったっていうエクシーズ……かしら?」

 

「悪いけど、私達のデッキにはエクシーズモンスターに割ける枠は無いのよ、私はレベル5となった『ガガガマジシャン』にレベル5『クイック・シンクロン』を()()()()()()()()()()!!」

 

「えっ……」

 

「マイナスチューニング……!?」

 

「正確にはシンクロ召喚じゃないのよ、このカードの特殊召喚条件は『チューナーとチューナー以外のレベル5以上の同レベルモンスターをそれぞれフィールドからリリースすること』、よってシンクロ召喚じゃなくて特殊召喚だから、『ガガガマジシャン』と『クイック・シンクロン』の両方の制約は無視できるの!!現れなさい!!原初の赤龍!!『アルティマヤ・ツィオルキン』!!」

 

『アルティマヤ・ツィオルキン』 ☆12 D0

 

「そして私はカードを一枚伏せ、この瞬間、『アルティマヤ・ツィオルキン』のモンスター効果発動!!魔法、罠ゾーンにカードがセットされたとき、エクストラデッキからレベル7/8のドラゴン族シンクロンモンスターを特殊召喚する!!私はこれにより『閃こう竜スターダスト』を特殊召喚!!」

 

『閃こう竜スターダスト』 ☆8 A 2500

 

「さらに私は手札を一枚デッキトップに戻して、墓地の『ゾンビ・キャリア』を特殊召喚!!そしてレベル8『閃こう竜スターダスト』にレベル2『ゾンビ・キャリア』をチューニング!!虚無の狭間より流れる氷の調べが、全てを凍てつかせ無へと帰す!!シンクロ召喚!!現れなさい!!レベル10!!『冥界濁龍ドラゴキュートス』」

 

『冥界濁龍ドラゴキュートス』 ☆10 A 4000

 

「バトルフェイズに入る前に……さて、柚子ちゃん、さっきのターン、アンタのミス、多分次のターンに回っても何もできないで杏子ちゃんは終わるしか無くなるわ。どうしてか分かる?」

 

「え、どういう……?」

 

「じゃあ分かりやすく言ってあげる、アンタ、どうして『スペルビア』だけを表側にしたの?同じ条件だった『カドケウス』も居たのに?」

 

 そう、これが柚子ちゃんのこの試合での最大のミス。そして、勝敗を決める決定的要因。

 

「もしあのターン、『カドケウス』も表側にしておけば、ドロー枚数は減るけど、もう一度攻撃できる。そうなったなら祐司は『ネクロ・ガードナー』ではなく、寧ろ『超電磁タートル』を使わざるを得なかった。『メタモルポッド』を私に使わせる為に」

 

「……あっ!」

 

「気がついたかしら?『ネクロ・ガードナー』も『超電磁タートル』も確かにバトルを強制終了させる効果だけど、前者は対象のバトルだけ、後者はバトルフェイズそのものを強制終了させるの、つまりもし柚子ちゃん、アンタがあのとき冷静にフィールドを確認して、『カドケウス』も攻撃表示にしていれば、私の次のターン、もし杏子ちゃんが私のモンスターを破壊できうるモンスターを二枚揃えれば、『ネクロ・ガードナー』で一度は防げても二回目で確実に戦闘破壊できたのよ」

 

 実際、タッグデュエル初心者にはありがちなミスだが、こういった少しのミスで負けが確定することもある。それが遊戯王なのだ。

 

「柚子ちゃん、この際だからはっきり言っておくわ。デュエルにおいて一番必要なのは、どんなときでもフィールドを冷静に観察し把握する技術と、相手の墓地やフィールドからどんな動きをすれば最善かを把握する知性よ。それを怠れば、その隙を突かれて敗北する。それがデュエルよ」

 

 と、その時祐司が私の肩に手を置く。

 

「姉さん、少し言い過ぎだよ」

 

「…………」

 

「柚子ちゃん、タッグデュエルはカードが単純に倍になる試合形式だ、その分、姉さんが言ったような技術とかはシングルよりも大きくなる。それを知ってるからこそ、一般的な塾はタッグデュエルをあまり勧めたがらないし、大会も大々的には開こうとはしない。けどね、タッグデュエルはやればやるほど、カードに対する知識を沢山深められるんだ」

 

 祐司はまるで語りかけるように喋る。そこにはさっきまでのゲス顔の悪魔のような心は微塵もない、正々堂々としたデュエリストの目をしている。

 

「……話が長くなったわね。デュエルを再開するわ!!バトルフェイズ!!『シューティング・クェーサー・ドラゴン』で『アテナ』を攻撃!!『神縛りの塚』の効果で、レベル10以上のモンスターが相手モンスターを破壊したとき、相手に1000ポイントのダメージを与えるわ!!」

 

杏子&柚子 LIFE8200→7200

 

「『クェーサー』はシンクロ素材になったシンクロモンスターにつき一回攻撃できる!!続けて『スペルビア』を攻撃!!そして再び『神縛りの塚』の効果発動!!」

 

杏子&柚子 LIFE7200→6100→5100

 

「続けて『ドラゴキュートス』で『プロディジー・モーツァルト』を攻撃!!さらに『神縛りの塚』の効果!!」

 

杏子&柚子 LIFE5100→4100

 

「『ドラゴキュートス』は相手モンスターを破壊したとき、もう一度攻撃できる!!今度は『カドケウス』よ!!」

 

杏子&柚子 LIFE4100→3100

 

「きゃあああああっ!」

 

「っ……!」

 

「私はこれでターンエンドよ。さぁ、最後の足掻きを見せてちょうだい!!」

 

椿姫&祐司 手札0:3 LIFE8000

フィールド

『アルティマヤ・ツィオルキン』 D0

『シューティング・クェーサー・ドラゴン』 A4000

『冥界濁龍ドラゴキュートス』 A4000

『神縛りの塚』 フィールド魔法

伏せカード三枚

 

 

「ご、ごめんなさい……私……!」

 

「まぁ、今回ばかりは仕方ないわ。それにしても、どう突破を狙うものかしらね……」

 

 謝る柚子に彼女は笑って気にしないで、と返す。そして私達のフィールドを見て、苦笑いを浮かべている。

 

「まぁ、とにかくやれるものはすべてやらせてもらうわ。ドロー!」

 

 彼女のドローを見た私は軽く深呼吸をする。

 

(もし彼女に二枚目の『アーティファクトの神智』を引かれたら、多分負けはしないけど長引くことになるわね。それに彼女には『堕天使』のギミックもある。『クェーサー』の効果の発動が運命の分かれ目ね)

 

「……全く、面倒な相手よね、『アーティファクト』っていうのは」

 

 一人呟いたその言葉は誰に聞こえるでもなくフィールドに消えた。

 

「堕天使マリーの効果でライフを200回復するわね」

 

杏子&柚子 LIFE3100→3300

 

「……とりあえず、まずはこれからかしらね。『ハーピィの羽根箒』発動! 貴方たちの魔法・罠カードを破壊する!」

 

「悪いけどそれは通さないわ!!罠カード『魔宮の賄賂』!!その効果を無効にして、相手は一枚ドローする!!」

 

「ま、それはそうよね。次は『サイクロン』!『神縛りの塚』を対象に発動! 今度はどうする?」

 

 ちぃ、厄介な所で厄介なカードを引いてくるなんて、防ぐカードは少しでも温存したいし……

 

「……仕方ない、私は『クェーサー』の効果を発動!!1ターンに一度、相手の発動した効果を無効にして破壊する!!」

 

「なら、それにチェーンしてチェーン3以降に発動可能な速攻魔法『一陣の風』! これにより……メインデッキ側の伏せカードを破壊させてもらうわ!」

 

「……特に何もチェーンしない。チェーン処理に入るわ、破壊されたのは『リ・バウンド』。よってチェーン処理終了後一枚ドロー!!」

 

「じゃあ、クェーサー・ドラゴンの効果でサイクロンが無効に、と……それじゃあ次ね。魔法カード『ナイト・ショット』を残った伏せカードに対して発動。これには対象のカードはチェーン出来ないわよ?」

 

 ここにきて面倒なカードを!?

 

「確かにチェーンはできないわね。ということで墓地へ送られたのは『ブレイクスルー・スキル』よ、良かったわね、モンスターの効果を無効にされなくて」

 

 一応ポーカーフェイスだけど、個人的にはいつどうなってもおかしくないんだけど!?

 

「まぁ、これからやること、1つでも止められたら困るもの。被害は少しでも食い止めなくちゃ。と、言うことで魔法カード『名推理』を発動よ。お好きなレベルを選んでね」

 

「……なるほどね、今のところ杏子のデッキのモンスターだ確認できてるレベルは5、7、8、10……そのうち堕天使ギミックは8と10……そして堕天使ギミックで墓地にある『背徳の堕天使』を発動できる残されたカードはレベル7の『マスティマ』かレベル9の『テスカトリボカ』……だったら選ぶのは簡単!!私はレベル7を選択するわ!!」

 

 理由?7には『アテナ』も存在するからね、それを警戒するのは当然よ!!

 

「7ね。さぁ、答えあわせよ。1枚目……『背徳の堕天使』、あなたが警戒している罠カードね……2枚目……なんだ、もうモンスター…………引いたのはこれよ。現れなさい、レベル6! 『堕天使アムドゥシアス』! 攻撃表示よ!」

 

『堕天使アムドゥシアス』 ☆6 A1800

 

「レベル6で攻撃表示……何をするつもり?」

 

「そして、貴女はこの場を切り抜けるのに最も必要なカードを見落としてるわ。アムドゥシアスのモンスター効果。ライフを1000支払い、墓地の魅惑の堕天使の効果を使用! 相手の場のモンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る! 知ってるかもだけど、これは対象を取らないわ。私は冥界濁龍ドラゴキュートスのコントロールをエンドフェイズまで得るわ! そして、その後墓地の魅惑の堕天使をデッキに戻す」

 

LP3300→2300

 

「……残念だけど、その効果は通らないわ。私は手札の『エフェクト・ヴェーラー』の効果発動!!その効果により『アムドゥシアス』の効果を無効にする!!これにより効果は無効になり、『魅惑の堕天使』をデッキに戻すことはできない」

 

「ど、どうしてそのカードを……!」

 

「そんなに驚くことじゃないわよ、だって私が『エフェクト・ヴェーラー』を効果でドローする事は、前から確定していたのだから……そう、『ゾンビ・キャリア』によってね!!」

 

 そう、私は確信していた、フィールドに高火力モンスターが並んで伏せカードが揃えば、フィールドのカードを破壊しに来ると、それがデュエルの定石だから。

 

「そう、じゃあ仕方ないわね。私は最後の手札として残ったこの魔法カード『命削りの宝札』を発動して5枚になるようにドロー。デメリットとして、私は私たちのターン数で数えて5ターン後に手札をすべて捨てなくちゃいけないけど……もう今更よね?」

 

手札

0→5

 

「ここに来て『命削り』ですって!?インチキ効果も大概になさい!!」

 

「「「『『『お前が言うな!!』』』」」」

 

 ちょっと!!なんで味方からまでこんなこと言われなきゃならないのよ!!おかしいでしょ!?

 

「……あら、そう言えば通常召喚してなかったわね。じゃあ……速攻魔法『帝王の烈旋』を発動よ。これを発動したターンはエクストラデッキから特殊召喚出来ないけど……元々ないもの、気にすることじゃないわね」

 

「れ、れれ『烈旋』!?ってそれよりも確かそれも!!」

 

「そう。当然、このカードも対象は取らない。よって、私たちの場のアムドゥシアスと……貴女の場のシューティング・クェーサー・ドラゴンをリリース! アドバンス召喚! 現れなさい。レベル10、『堕天使イシュタム』!」

 

『堕天使イシュタム』 ☆10 A2500

 

「『イシュタム』まで!?ていうかレベル10って事はつまり!?」

 

「まぁ、この子がレベル10だったのは偶然だけど……そっちよりも貴女の場の心配をしたらどうかしら? イシュタムの第2の効果でライフを1000支払って今度こそ魅惑の堕天使の効果を使用。冥界濁龍ドラゴキュートスのコントロールを得る。そして魅惑の堕天使をデッキに戻すわ」

 

LP2300→1300

 

「確か、この子は相手の場のモンスターを戦闘破壊できたら2回攻撃出来るのよね? まぁ、防ぐならさっさと防いだ方がいいわよ。冥界濁龍ドラゴキュートスでアルティマヤ・ツィオルキンを攻撃!」

 

「ッ!!『超電磁タートル』の効果発動!!バトルフェイズを強制終了!!」

 

 流石に防がなかったら大ダメージ必死じゃない!!ふざけんじゃないわよ!!

 

「まぁ、そうするしか無いわよね? メイン2。でも、この子はただでは返さない。魔法カード『アドバンスドロー』をドラゴキュートスをリリースして発動! デッキから2枚ドロー……うん、いいカードね私はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

杏子&柚子 手札2:5 LIFE1300

フィールド

『堕天使イシュタム』A2500

伏せカード×3

 

「まさかここまでやられるとはね……僕のターン、ドロー!!」

 

「スタンバイフェイズ、伏せカードダブルオープン! 手札の堕天使コストに『背徳の堕天使』、『サイクロン』! まず『サイクロン』で『神縛りの塚』を破壊して、その後『背徳の堕天使』により『アルティマヤ・ツィオルキン』を破壊する!」

 

 んな!?除去カード二枚引き当てとかどういう確率よ!?ていうか祐司は祐司で気楽そうだし……。

 

「やれやれ、フィールドは全滅、伏せカードも無しで、相手フィールドには攻撃力2500……これまた厳しい条件だね……でも……負けるつもりは毛頭ない!!手札から魔法カード『調律』を発動!!デッキから『ジャンク・シンクロン』を手札に加え、デッキトップのカードを墓地へ送る!!」

 

 送られたのは『クイック・シンクロン』か……でも、別に関係ない!!

 

「僕はさらに手札の『死者蘇生』をデッキトップに戻し、二枚目の『ゾンビ・キャリア』を特殊召喚!!そしてフィールドにチューナーが存在するとき、墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』を特殊召喚!!」

 

『ゾンビ・キャリア』 ☆2 A400

『ボルト・ヘッジホッグ』 ☆2 A800

 

「そして『ジャンク・シンクロン』を通常召喚!!その効果により、墓地の『ドッペル・ウォリアー』を特殊召喚!!」

 

『ジャンク・シンクロン』 ☆3 A1500

『ドッペル・ウォリアー』 ☆2 A800

 

「僕はレベル2『ドッペル・ウォリアー』にレベル3『ジャンク・シンクロン』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『ジャンク・ウォリアー』!!」

 

『ジャンク・ウォリアー』 ☆5 A2300

 

「『ジャンク・ウォリアー』の効果!!そしてそれにチェーンしてシンクロ素材となった『ドッペル・ウォリアー』の効果発動!!チェーン処理にてまずフィールドに『ドッペル・トークン』を二体、攻撃表示で特殊召喚!!」

 

『ドッペル・トークン』×2 ☆1 A400

 

「『ジャンク・ウォリアー』は召喚時、フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力全てを、このモンスターに加える!!パワー・オブ・ヴェローズ!!」

 

『ジャンク・ウォリアー』 A2300→4300

 

「そしてこれが勝利の為のカード!!速攻魔法『スクラップ・フィスト』を、フィールドの『ジャンク・ウォリアー』を対象に発動!!バトルだ!!『ジャンク・ウォリアー』で『堕天使イシュタム』に攻撃!!」

 

「リバースカード…………『ERROR! ERROR!』っ!?」

 

「『スクラップ・フィスト』の効果により、対象のモンスターが攻撃するとき、相手は魔法、罠、モンスターの効果を発動できない!!いけ!!『ジャンク・ウォリアー』!!」

 

 その祐司の言葉に呼応するように、機械の戦士の巨大な拳は唸りをあげて、そして……

 

「スクラップ・フィスト!!」

 

 巨大な爆発がフィールドを飲み込むのだった。

 

杏子&柚子 LIFE 300→0

 

 

「全く、あんた、良くもまぁあそこで『調律』なんて使えたわね……」

 

 デュエル終了直後、私は祐司にため息と共にジト目を向ける。

 

「あはは、まぁ『調律』も『スクラップ・フィスト』もあのときには手札に来てたから」

 

「それ一歩間違えば手札事故じゃない……まぁでも、今日はたまにはいいデュエルだったわ」

 

「そう……」

 

 そう言って私達はデュエルフィールドから退出する。残ったのは、泣きじゃくる柚子と、それを抱き締める姉の姿だけだった。



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コラボ編 vs遊輔

「……次は私がデュエルさせてもらう……」

 

 四人がフィールドから退出すると、軽く屈伸をしながら蘭が立ち上がる。

 

「……そっちからは誰が出るの?」

 

「ふむ、では俺が相手を承ろう。アクションデュエルとスタンディング……どちらを選択するかな?」

 

 現れたのは、臨時講師である遊輔さんだった。

 

「……当然アクションデュエル、ついでに勝って連の出番を失わす」

 

「おいこら蘭!!」

 

 流石のこれには突っ込まずにはいられない。確かに一応現在2:1で此方がリーチなわけだけどさ!!流石にここまで来てデュエルお預けなんて洒落にならないから!!

 

「ふむ……そこまで言い切るとはね……とんだ実力者とお見受けした。朱志那蘭……か、聞き覚えはないが……もしやどこか俺の知らない場所……外国でのプロデュエリスト……とかかな?」

 

 と、遊輔さんがまるで確信してるように聞いてくる。

 

「……!!……そうね、なら改めて名乗らせて貰うわ、私の名前は朱志那蘭、海外リーグのタイトルが一つ、『デーモン』の最年少カテゴリータイトルホルダー!!そして私のことをこう呼ぶ……『紅蓮の魔龍』と!!」

 

 その瞬間フィールドがアクションフィールドへと変貌する。そこはマグマと火山が特徴的な、薄暗いフィールドに……

 

「おや、やはりか……そして。こちらはしがないデュエル塾臨時講師の身。胸を借りるつもりで挑ませてもらうかな……!」

 

 そしてフィールドが変わると同時に、遊輔さんの眼差しも鋭く強いものへと変貌する。

 

「冗談、臨時とはいえ講師デュエリストがしがないわけがない……。全力で来ないなら……()()()()()()()

 

 流石はプロの迫力というか、雰囲気というか、一瞬にして控え室ですらピリピリ感じるほどの雰囲気がフィールドを襲う。というか二人の背後に龍と虎のオーラが見えるような……

 

「ご安心を……その燃え盛る炎が貴女に災いを呼び込まないことをお祈りしますよ…………」

 

「「デュエル!!」」

 

蘭 LIFE4000

遊輔 LIFE4000

 

 

 蘭視点

 

「私も一端のプロ、先行は貴方に譲るわ、挑戦者(チャレンジャー)?」

 

「では、お言葉に甘えて……俺のターン! とりあえず、これから行くか。手札を1枚捨てて……『炎帝家臣ベルリネス』を特殊召喚! 更に今墓地に送った『代償の宝札』の効果によりデッキから2枚ドロー!」

 

『炎帝家臣ベルリネス』 ☆4 D1000

 

 そのカードを見た瞬間、私は内心最悪な気分になった。とてもじゃないが相性が良くなさすぎる。

 

「……『帝』ね、それで、どんな帝王を呼び出すのかしら?」

 

「まぁ、そう言いながらも大体の目星は付けているのでしょう?」

 

「……さぁ、なんのことかしらね?」

 

 そう惚けるように言って私はアクション魔法を探しに走り出す。

 

「手始めはコイツから。炎帝家臣ベルリネスをリリースし……『炎帝テスタロス』をアドバンス召喚! テスタロス召喚時効果に何かチェーンは挟みます?」

 

「……チェーンは組まない……けど、アクション魔法は手に入れさせて貰ったわ。さぁ手札をシャッフル……」

 

「おや、そちらが何もないならこちらの処理が残っている。ベルリネスの効果をテスタロスにチェーンし……さらに速攻魔法『サモンチェーン』をチェーンして発動だ。これで処理するが……構わないかね?」

 

「……構わない、チェーン処理どうぞ」

 

 『帝』に召喚権を増やさせるのは悪手だが、生憎とこの場面で使えるカードはない。

 

「では、サモンチェーンの処理によりこのターン、自分の通常召喚権は3つとなり……『ベルリネス』の効果処理。相手の手札を確認し、1枚をエンドフェイズまで除外。どのような手札をお持ちかな……?」

 

「……ならこの中からどれを選ぶ?」

 

『奇跡』 アクション魔法

『バイス・ドラゴン』

『コール・リゾネーター』

『デモンズ・チェーン』

『代償の宝札』

『超電磁タートル』

 

「では、代償の宝札を一時的に除外してもらいましょう。そしてテスタロスの効果で手札を1枚墓地に……」

 

 彼は、私が手札をシャッフルしたのをしっかり確認してから、

 

「貴女から見て左から2番目を墓地に送ってもらいましょうか。モンスターカードなら、そのレベル×200のダメージを与えますが……」

 

「カードはアクション魔法『奇跡』……よって効果は不発……」

 

「では2回目の通常召喚権を使用して……テスタロスをリリース。現れよ、レベル8……『爆炎帝テスタロス』!」

 

『爆炎帝テスタロス』 ☆8 A2800

 

「爆炎帝の召喚時効果。貴女の手札のバイス・ドラゴンを墓地に送り、そのモンスターカードのレベル×200……1000ダメージを与え、炎属性をリリースして召喚したため追加で1000ダメージを与えます!」

 

 蘭 LIFE4000→2000

 

「……この程度かしら?」

 

 平然としながら、私はさらに近くのアクション魔法を手にかける。

 

「アクション魔法『フレイムウォール』!!このターン、このカードが発動するまでに受けた効果ダメージの数値以下の効果ダメージを受けない……」

 

「まぁ、最初ですからね。軽いジャブですよ……さて、手札も少々心許ない事だ。そろそろ補充させてもらうかな……まぁ、その前に……3回目の通常召喚権を行使。『爆炎帝テスタロス』をリリース……現れよ、『冥帝エレボス』!」

 

『冥帝エレボス』 ☆8 A2800

 

「『エレボス』の召喚時効果。デッキより帝王カード…………『真源の帝王』2枚を墓地に送り、貴女の真ん中の手札をデッキへバウンス! 更に魔法カード『命削りの宝札』を発動し、手札が5枚になるようにドロー。カードを2枚セットし、ターン終了。『代償の宝札』は貴女の手札に戻り……貴女のターンですよ」

 

遊輔LP4000

手札3(内1枚アクションマジック)

冥帝エレボスATK2800

伏せカード二枚

 

(送られたのは『デモンズ・チェーン』……まぁあのデッキにたいして意味は殆ど無いから別に良いんだけど)

 

「私のターン、ドロー!!……私は今引いた魔法カード『壷の中の魔術書』を発動、互いにカードを三枚ドローする」

 

「ふむ、ではそのドローはありがたく頂戴しましょうかね」

 

 これで互いの手札は六枚ずつ、さて、ここはどう攻めるべきか……

 

「……魔法カード『ツイン・ツイスター』を発動、手札の『代償の宝札』を墓地へ送って、その伏せカードを二枚破壊……」

 

 まずは邪魔なカードを退かす。ついでにドローしてアドを稼ぐ事にしよう。

 

「……仕方あるまい。速攻魔法『帝王の烈旋』を発動する。もう片方は『黄金の邪神像』だ。黄金の邪神像の効果で俺のフィールドに『邪神トークン』を特殊召喚」

 

『邪神トークン』 D1000

 

「『代償の宝札』の効果で二枚ドロー……さらに今引いた永続魔法『共鳴破』を発動、これにより私が『リゾネーター』モンスターを使ったシンクロ召喚を行ったとき、相手のフィールドのカードを一枚破壊する。」

 

「ふむ、シンクロ軸のデッキか……」

 

 さぁ、早速帝を一人喰らいに行くとする……そのためにもまずは

 

「私は手札から魔法カード『死者転生』を発動、手札の『ダーク・リゾネーター』を墓地へ送って、墓地の『バイス・ドラゴン』を手札に加え、『バイス・ドラゴン』自身の効果で特殊召喚!!」

 

『バイス・ドラゴン』 ☆5 A 1000

 

「そして魔法カード『コール・リゾネーター』を発動、デッキから『レッド・リゾネーター』を手札に加える。さらに手札から『暗黒界の取引』を発動、互いに一枚ドローして、互いに手札を一枚捨てる。私は『超電磁タートル』を手札から墓地へ送る」

 

「では、俺は今引いた『光帝クライス』を墓地に送らせてもらおうか」

 

「私は『ゴブリンドバーグ』を通常召喚、その効果で、手札の『レッド・リゾネーター』を特殊召喚!!そしてアクション魔法『紅蓮の誘い』!!墓地のモンスターを選択し、アドバンス及びエクシーズ素材にできない条件に特殊召喚する!!墓地の『ダーク・リゾネーター』を特殊召喚!!」

 

「ほう、中々の展開だな……」

 

「私はレベル5『バイス・ドラゴン』にレベル3『ダーク・リゾネーター』をチューニング!!悪魔の炎、闇を纏いて龍となれ!!シンクロ召喚!!現れろ『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!!」

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン』 ☆8 A 3000

 

「『共鳴波』の効果により、『冥帝エレボス』を破壊!!」

 

「ふむ、ところで……なぜ俺がさっき()()()()()()()()()()()()と思われるかな?」

 

「何を…………そう、既に手の中にあったわけね……」

 

 私は少し苦虫を噛み締めるが、まぁドローのために相手に引かせたのだから仕方ないと割りきる。

 

「そう、私は『烈旋』の効果とコイツの効果で墓地から『真源の帝王』を除外し……俺の場の『冥帝エレボス』と貴女の場にいる『レッド・デーモンズ・ドラゴン』をリリース。闇ある場所に光が射し込む。こい、レベル8、『天帝アイテール』」

 

『天帝アイテール』 ☆8 A2800

 

 

 蓮視点

 

「あれ?なんで相手ターンにアドバンス召喚してんだ?」

 

「天帝アイテールは、相手ターンのメインフェイズにアドバンス召喚出来る効果が内蔵されています。それで烈旋の効果も相まって相手のエースを処理しつつサクリファイス・エスケープを行った……と言うことでしょう」

 

 一応まだ初心者に毛が生えた程度の俺に、火無菊が丁寧に説明してくれる。

 

「なるほどな……流石は講師デュエリスト、知識は豊富というわけか。けど、エースかどうかは別なんだけど……」

 

 

 蘭視点

 

「更に、『アイテール』の効果も発動。デッキから『帝王の凍気』と『真帝王領域』を墓地に送る事で、デッキより……『光帝クライス』を特殊召喚するが……どうする?」

 

「……特にチェーンはしない。それで、『クライス』の効果でどれを破壊するの?貴方のフィールドには『クライス』と『アイテール』、そして『邪神トークン』、私のフィールドには『共鳴波』、『レッド・リゾネーター』、『ゴブリンドバーグ』が存在してるけど?」

 

「では、『クライス』を特殊召喚し…………どうせエンドフェイズにはバウンスされてしまうからね……ここは『クライス』自身と『共鳴波』を破壊。そして互いに1枚ずつ破壊されたことでお互いに1枚ドローだ」

 

 私はドローカードを確認すると、少しだけ頬を緩ませるが、相手には気づかせないようにする。

 

「結構……でも、アレを私の決め札だと思ってるなら早々に諦めた方がいい。というより、『アイテール』を引いてるのは何となく分かっていたから」

 

「ふむ、流石にバレてたか」

 

「見せてあげる、私のエースの一角を。私は残ったレベル4『ゴブリンドバーグ』にレベル2『レッド・リゾネーター』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『レッド・ライジング・ドラゴン』!!」

 

『レッド・ライジング・ドラゴン』 ☆6 A 2100

 

「レベル6……攻撃力は劣っているが……なにか突破できる効果でも備わっているのかな?」

 

「『レッド・ライジング』がシンクロ召喚に成功したとき、墓地から『リゾネーター』を特殊召喚する。私は『レッド・リゾネーター』を特殊召喚!!『レッド・リゾネーター』の効果、特殊召喚されたとき、このカード以外の自分フィールドのモンスターの攻撃力……つまり『レッド・ライジング』の攻撃力2100分、ライフを回復」

 

蘭 LIFE2000→4100

 

「私はレベル6『レッド・ライジング』にレベル2『レッド・リゾネーター』をチューニング!!魔界を統べる決闘竜、今ここに姿を現せ!!シンクロ召喚!!『えん魔竜 レッド・デーモン』!!」

 

『えん魔竜レッド・デーモン』 ☆8 A 3000

 

「ほう、さっきのと似ている竜か。先程のは効果も見ずにリリースさせて貰ったが……今度は効果を見せてもらえるのかな?」

 

「……残念だけど、この子の効果は使わない。今引いた私は手札から『命削りの宝札』を発動し、デッキからカードを五枚になるようにドロー」

 

 引いたカードを確認すると、私は少しだけにやりとする。

 

「私は手札を一枚墓地へ送り、『ライトニング・ボルテックス』を発動、相手フィールドの表側表示のモンスターを破壊する」

 

「アクションマジック、『ミラー・バリア』を発動……俺が破壊から守るのは邪神トークンだ」

 

「フィールドにSモンスターが存在するとき、手札の『シンクローン・リゾネーター』を特殊召喚!!そしてレベル8『レッド・デーモン』にレベル1『シンクローン・リゾネーター』をチューニング!!深淵より来たれり、その憤怒は天をも焦土とかす!!シンクロ召喚!!現れなさい!!『えん魔竜 レッド・デーモン・アビス』!!」

 

『えん魔竜 レッド・デーモン・アビス』 ☆9 A3200

 

「『シンクローン・リゾネーター』の効果で、墓地の『レッド・リゾネーター』を手札に戻す」

 

「ほう、進化形態か。となれば……その効果も強化されていると見るが……あっているかな?」

 

「それはこれから確かめると良い、バトル!!『アビス』で邪心トークンを攻撃!!」

 

 そしてそのうちにアクションカードを探しに走る。『レッド・デーモン』の全体破壊効果のお陰か、まわりにあった邪魔なオブジェクトが消え去り、難なくアクション魔法を手に入れる。

 

「アクションマジック『回避』。これで戦闘を無効にさせてもらう」

 

「『レッド・デーモン・アビス』の効果!!1ターンに1度、フィールド上の表側表示のカードの効果を一枚、ターンの終了時まで無効にする。これにより『回避』を無効!!……そしてアクション魔法『フレイム・オーラ』攻撃力を200下げる代わりに、モンスターに貫通効果を与える!!」

 

「っ……!」

 

遊輔 LIFE4000→2000

 

「さらにこの瞬間、『レッド・デーモン・アビス』の更なる効果発動!!このカードが戦闘によって相手にダメージを与えたとき、墓地のチューナー一体を守備表示で復活させる。私は『ダーク・リゾネーター』を復活」

 

『ダーク・リゾネーター』 ☆3 D400

 

「……私はこれでターンエンド、そしてこの瞬間、『レッド・デーモン・アビス』の攻撃力は元に戻る」

 

蘭 手札一枚(レッド・リゾネーター) LIFE4100

フィールド

『レッド・デーモン・アビス』 A3200

『ダーク・リゾネーター』 D400

 

 

 

蓮視点

 

「すごい……」

 

「さっきまで遊輔さんが有利だったのに……あの蘭って奴がたった1ターンで返しやがった……」

 

 蘭と遊輔さんの攻防に、遊勝塾メンバーが感嘆の言葉を呟く。

 

「……蘭のやつ、少し手を抜いてるな……」

 

「え、手を抜いてるって……アレでですか!?」

 

「『共鳴波』の効果……あいつ自身あの『アイテール』というのが分かっていたなら、除去効果の対象を『エレボス』じゃなくて、『レッド・デーモン』の効果の対象外の『邪心トークン』を狙えば、少なくとももう1200のダメージを与えることはできたはずだ」

 

「いや、あの場面は寧ろアレこそが最善の策だ。例え『邪心トークン』を狙ったとして、それをリリースして『アイテール』をアドバンスするとは限らない……ならば『エレボス』の破壊で無理矢理にでも出させて、そこを先のプレイで堅実に削る……最善かつ最大の攻撃をする、それが彼女だと、君も分かっている筈だろ?」

 

 剱菜先輩が諭すように言うが、俺は内心微妙な心持ちだ。

 

「けどあの『クライス』の場面で『シンクローン・リゾネーター』を引くとは限らない、別のカードの確率だってあった、そうなれば一気にフィールドはがら空き、2ターン後には敗北だった」

 

「それを引き込めるからこそ、最年少タイトルホルダーなのさ。さぁ、デュエルが動くぞ……」

 

 

 蘭視点

 

「さぁ、貴方のターンよ……貴方は見事、魔竜退治ができるかしら?」

 

 私がそういうと、彼は面白そうに笑みを浮かべる。

 

「魔竜退治、か。面白い……それに、うまく回りゃ……このターンで倒そうと思えば行ける……かな」

 

「……このターンで?やれるものならやってみなさい」

 

「まぁ、手札と要相談ってところだが……ドロー!」

 

 彼はデッキからドローすると同時にアクションカードを獲得する。そして私もアクション魔法を手に入れる。

 

「おっと、このカードか。アクションマジック『フレイム・ボルテックス』。相手の場のモンスターを1体選択しそのモンスターを破壊、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える! 当然レッド・デーモン・アビスを選択する!」

 

「エースの一角は消させない、アクション魔法『ノーアクション』!!アクション魔法の効果を無効にする!!」

 

「じゃあ、手札を1枚コストに『ライトニング・ボルテックス』を発動!」

 

「『レッド・デーモン・アビス』の効果発動!!フィールドのカード一枚の効果を、ターン終了まで無効にする!!『ライトニング・ボルテックス』は無意味!!」

 

「ふむ、相手ターンにも使えたか。まぁ、構わない。魔法カード『死者蘇生』。甦れ……『天帝アイテール』!」

 

「『アイテール』……いや、狙いは『邪帝』ね?既に引き込んでるのかしら?けど、そんなことはさせない」

 

 私は急いでアクション魔法を探しにいく。しかし探しても、近くにアクション魔法の影は一つもない。

 

「……だったらこうする、『レッド・デーモン・アビス』!!」

 

 私が『レッド・デーモン・アビス』に叫ぶと、私のドラゴンは分かったように地面に降り立ち、そしてその拳を地面へと突き刺す。

 

「一体何を…………っ!?」

 

「ここは火山のフィールド、なら闇とはいえ炎を操る『レッド・デーモン・アビス』の炎を大地が受ければ……」

 

 ドッガ~ン、まさしくその言葉が似合うほど、地面が一気に揺れ始め、地面は盛り上がったり崩れたりと大慌てを始める。

 

「フィールドを一変させられる……言うでしょ?太古の昔から伝説で龍は自然を壊して人々に恐れを抱かせる……私の『レッド・デーモンズ』はその中でも炎やマグマを象徴する、この程度は朝飯前よ……」

 

 そして私は『レッド・デーモン・アビス』の掌に乗り込み、再びアクション魔法を探し始める。

 

「邪帝……残念ながら俺の狙いは除外じゃない……バトルだ!」

 

「……?」

 

 私は攻撃力の劣るモンスターしかいない状況で攻撃宣言してきたことに不思議がりながらも、とりあえずアクション魔法を手に入れる。

 

「『アイテール』で『レッド・デーモン・アビス』へ攻撃っ!! そしてこの瞬間……手札の速攻魔法『大ギャンブル』を発動! このカードは攻撃力の劣るモンスターで攻撃をしたときのみ自らのライフを100にすることで『アイテール』を対象に発動できる。そして、ダイスを2つ振りその出目を掛け合った数に対象となったモンスターの攻撃力をかけた数値が対象となったモンスターの攻撃力となる。ただし、この効果を得るためにはゾロ目でなくてはならないが……な」

 

遊輔 LIFE2000→100

 

 

 蓮視点

 

「はぁぁぁ!?」

 

「ゾロ目の倍数って、ギャンブル効果も大概にしろっす!!」

 

「遊輔先生はあぁ見えてギャンブルカードはよく使うんだぜ。しかも、ほしい数値の的中率もたけぇんだ!」

 

「でも確率的には約1/36だし、蘭の墓地には……」

 

 

 蘭視点

 

「えっと…………『超電磁タートル』を除外するわ」

 

「アクションマジック『溶岩濁流』! 相手の墓地で発動するカードを無効にし、互いの墓地全てを除外する!」

 

「!!ならばアクション魔法『フレイム・ボール』!!相手に200のダメージを与える!!」

 

 彼はまだ走り続けていたが、その目前に二つのアクションカードがあった。遊輔は咄嗟の判断で()()()()()を手に取り、カードも見ずにそのカードを発動した。

 

「アクションマジック『加速』!『 フレイム・ボール』での効果ダメージを0に!」

 

「く、ならアクション魔法発動!!『粉塵爆発』!!自分フィールドのモンスターを1体リリースすることで、デッキから魔法カードが出るまでカードをオープンする。そして出た魔法カードの発動条件が満たされていた場合、発動する!!私は『レッド・デーモン・アビス』をリリース!!」

 

 彼はすぐさま体勢を変えると()()()()()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんのぉ! アクションマジック『ノーアクション』! 相手のアクションマジックを無効! 更にアクションマジック『マグマ・ソード』! 俺の場に表側表示モンスターが1体のみ存在する場合のみに発動出来る! 俺の場のモンスターを選択し、選択したモンスターは2回攻撃が出来、更に貫通効果を得る!」

 

 私はそれを確認すると、すぐさま別のアクション魔法を手に取る。

 

「だったら……これで正真正銘、全身全霊の最後だ!!アクション魔法『アクション・チェーン・マイン』!!このターン発動されたアクション魔法一枚につき、互いに1000のダメージを受ける!!死なばもろとも……よ!!このターン発動されたアクション魔法はこのカードを除いても5枚!!よって互いに5000のダメージを受ける!!」

 

「引き分けにさせ……ないっ! 最終戦へ希望(のぞみ)を繋ぐ!」

 

 遊輔はそう叫び近くに爆風で巻き起こった砂埃に埋もれていたAカードへと手を伸ばす。そして……それに手が届いた。

 

「アクションマジック『リ・アクション』! このターン中に発動されたアクションマジックの効果を1つ選択し、得ることが出来る! その代わりに俺は300のダメージをエンドフェイズに受ける! 俺はノーアクションの効果を選択! アクション・チェーン・マインを無効にっ!」

 

 

 蓮視点

 

「……ここまでAマジックの応酬が続いたの、いつ以来だ……?」

 

「……少なくとも、私の知る限りでは一度も存在しませんね……」

 

 控え室の二人のその言葉に、俺はただでさえプレッシャーが掛かるのが更に増した。

 

「いや~、流石にこのあとの試合は、凄いプレッシャーが掛かるだろうねー、蓮?」

 

「……お願いですからやめてください、胃に穴が空きそうです……」

 

 本当に、誰か胃薬ください……。

 

 

 蘭視点

 

「……流石に、これ以上の回避手段は無さそうね」

 

 私は流石に体力が限界に達し、フィールドに立ち尽くす……

 

「……けど、最後に私のエースだけは見せてあげる!!アクション魔法『熔岩再臨』!!墓地に存在するエクストラデッキのモンスターを1体除外して、除外したモンスターこレベルが一つ下で同種族同属性、同召喚方のモンスターを、フィールドのモンスターを1体リリースして、エクストラデッキから特殊召喚する!!私は『ダーク・リゾネーター』をリリース!!現れなさい!!我が化身の竜!!『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』!!」

 

『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』 ☆8 A3000

 

「さぁ、バトルは続行、運命のダイスを降りなさい!!」

 

「当然。ダイスロールっ!!」

 

 彼が手元に現れた2個のダイスを天高く投げ、それはソリッドヴィジョンの大きいものとなり降りてくる。地面にあたり、跳ね、互いにぶつかったりと様々な面が交錯し……2つはそれぞれ止まった。そして、一番上を向いていた面は……

 

「ビンゴ! 出目は6と6! よって、アイテールの攻撃力は6×6の36倍となり……」

 

天帝アイテールATK2800→100800

 

 

 蓮視点

 

「……なぁ、俺は夢でも見てるのかな?攻撃力10万オーバーって」

 

「……大丈夫だ。俺も……今それ思ったところ……」

 

 

 蘭視点

 

「天帝掌波撃!」

 

 その天帝の一撃は、一瞬にしてフィールドを拡散していき、辺りを白い光に飲み込んでいく。つまり何が言いたいかというと、

 

「「「ぬぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 

 控え室すら飲み込む大爆発に、私含めその場にいた全員が呑み込まれたのだった。

 

蘭 LIFE4100→0

 

 

「……帝には勝てなかったよ……!?」

 

 ふらふらと立ち上がった私が見たのは、ボロボロに皹が入ったアクションフィールド、バリバリに割られたガラス、そして死屍累々にぶっ倒れる遊輔さん以外のメンバー全員だった。

 

「あ~…………流石に……やり過ぎたか……」

 

「「「当たり前だ……!!」」」ガクッ

 

 その後、暫く遊輔さんは石抱きの刑にさせられ、大ギャンブル使用禁止令が出たのは、まぁ割愛する。



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コラボ編 vs遊牙 前編

「さてと、とりあえず俺の出番が回ってきたは良いものの……」

 

 俺はため息をつきながらチラリとフィールドを、というよりこの塾の惨状に目を移す。

 

 見るからに部屋中ボロボロで、アクションフィールドも半分くらいヒビやら瓦礫やらが散乱、さらにアクションフィールドの管理をしていたトマトこと遊矢まで目を回してノックアウト、これはもう酷いとしか言いようがなかった。

 

「……いったい誰がこんなことを」

 

「全くだな、どうしてこうなったんだか」

 

「「原因は間違いなくお前らだからな、二人とも」」

 

 悪びれなく言う二人に俺は柚子ちゃんから借りたハリセンで共に二人をぶっ叩く。。実際蘭の試合の最後、咄嗟に俺と剱菜先輩の『カオティック・セイメイ』二体で別室に居た遊矢を除く控え室の面々をガードしたから良いものの、そうでなければ確実に死人が出てもおかしくないものだった。

 

「まぁ、さっき動作確認はしてみたが……一応動くようだし。壊れたら壊れたで不良品掴まされたってレオ・コーポレーションに文書送るから」

 

 管制室から遊牙が姿を表すと苦笑いをしながらもシレッととんでもないことをいい放った。

 

「物騒な事言うなよ……まぁ俺はデュエルできるなら別に良いけどさ」

 

「でも遊矢伸びてて、他に操作できる人いるんすか?」

 

「それなら私が行きますよ。お姉ちゃんもお願い!」

 

 亮の問いかけに柚子が名乗りをあげ、姉の杏子さんにも声をかける。

 

「そうね、ここはアタシ達が管制室に行くわ。デュエルはアクションデュエルを選ぶかしら?」

 

「当然アクションデュエルだ。それに、ペンデュラムの開祖の一人って言われてるくらいだ、どんなデュエルをしてくれるか楽しみだぜ」

 

「……蓮、負けたらアレはちゃんと受けてね?」

 

「ゲ、マジか……」

 

 まさかここでそれを持ってくるとは思ってなかったぞ?

 

「アレ? アレってなんなんだ?」

 

「……蓮が、中々にタイトルを受け取ろうとしないから、私の前で一回でも負けたらタイトルを受けとるって言う賭けをしてるだけ」

 

「はあっ!? どういうことなんだ!?」

 

「まさか、2人目がいたとはね……」

 

「だから!!俺はそんな賭けをした覚えはないし、それに俺は実力で取りたいんだよ、何が悲しくて譲り受けなきゃならないのさ」

 

 そう言って俺はデュエルフィールドに向かう。ちょっとイラっとしたし、アレ使っても悪くないよな?

 

「……まぁ、俺のデュエルは父さん譲りのエンタメデュエルではないから満足させれるかは分からないが、俺のゼンリョクを出させてもらうよ」

 

 遊牙は苦笑いしながら俺の次いでフィールドに立つ。

 

『それじゃあ行くわよ。アクションフィールド、オン! 『クロスオーバー・ザ・ゲート』!!』

 

 

 

「さてフィールドは……ってマジか!!」

 

 どんなフィールドかと確認してみると、そこは沢山のステップと巨大な荒野、さらに空にはまるで星座が浮かんでそうな夜空……ぶっちゃけ言うとバトスピのブレイブの後半のバトルフィールドに変な足場が付いただけのそれだった。

 

「……? こんなアクションフィールドあったか……?」

 

「……いや、無いだろ……」

 

 何となく突っ込む気も失せた為、ため息を洩らし、デュエルディスクを展開する。なぜなら、

 

「寧ろ俺達の戦いにこれ以上無い程に相応しいものは無い!!だから、全力で相手をさせてもらう!!」

 

 俺のとてつもないやる気な発言に感化されたのか、遊牙も一瞬呆けるが、すぐに獰猛な鋭い目に変わる。

 

「まぁ、こちらとしても負けるつもりはないのでな。チーム遊勝塾の大将として最終戦は勝利させていただくぞ!」

 

「「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!!見よ、これがデュエルの最終進化系!!アクショーン……デュエル!!」」

 

蓮 LIFE4000

遊牙 LIFE4000

 

「先行はもらう!!……俺は早速だが手札から魔法カード『壺の中の魔術書』を発動!!互いに三枚ドローだ!!……いいカードだ。俺は永続魔法を三枚発動する!!来い、『神樹の切り株都市』、『聖者の樹の実』二枚!!」

 

 その瞬間、フィールド内に巨大な樹の根と、白い霊樹が二つ現れる。

 

「また知らないカード……一体どんな効果があるんだか……」

 

「ここまでは序ノ口、俺は手札から『幻のグリフォン』を通常召喚!!」

 

『幻のグリフォン』 ☆4 A2000

 

「俺はカードを二枚伏せて、エンドフェイズ時に『切り株都市』の効果発動!!デッキトップのカードを確認し、そのカードがレベル4以下の風属性モンスターならば、特殊召喚する」

 

 そう言いながら、俺はデッキトップのカードを確認する。そして、ニヤリと顔を歪める。

 

「カードはレベル3チューナーモンスター『チューニン・ツバメ』!!よって特殊召喚!!」

 

『チューニン・ツバメ』 ☆3 A1500

 

「これにて俺のターンは終了だ」

 

 

蓮 手札一枚

フィールド

『幻のグリフォン』 A2000

『チューニン・ツバメ』 A1500

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』×2 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「攻撃力2000の通常下級モンスター……中々珍しいモンスターを使ってくるようだが……幸いにも手札は潤沢だ。こちらも全力を尽くさせてもらおう。俺のターン、ドロー!」

 

 さぁて、お手並み拝見といこうか?ペンデュラムの始祖?

 

「とりあえず、まずはこいつからだ。『マジェスペクター・フロッグ』を召喚!」

 

『マジェスペクター・フロッグ』A1200

 

「『マジェスペクター』……なるほど、妨害されるのは厄介だな」

 

「マジェスペクター・フロッグのモンスター効果! デッキから『マジェスペクター・テンペスト』をセットする! フロッグ、行くぞ!」

 

 遊牙のやつはモンスターの召喚と同時に共に走り出して、って早速アクションマジックを加えやがった!!

 

「これは……とりあえず、相手の罠に突っ込みに行くしかないか。俺はスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』とスケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

「来たなペンデュラムス……さぁ!!ペンデュラム召喚してみろ!!もっとも、今のお前には何もできないがな!!」

 

「何……? どういう事だ……『Error! Error!』なっ……!?」

 

「そのままの意味さ、永続魔法『聖者の樹の実』の効果。相手のメインスェイズ1に、相手が二回目の魔法カードを発動したとき、発動終了後、そのメインスェイズ1を強制終了させ、バトルフェイズに強制移行させるのさ。Pカードの発動は即ち、魔法カードを発動するのと同じ扱いだ、そしてその効果で、今のお前はメインスェイズではなくバトルフェイズだから、ペンデュラム召喚は当然できない!!」

 

「まさか、そんな効果があったとはな……!」

 

「言っておくが、この程度はまだ序の口だぜ?俺は伏せていた罠カード『魔術師の交換』を発動する。自分のフィールドに魔法カードが表側表示で一枚以上存在するとき、その永続魔法をリリースして発動する!!デッキから永続魔法を発動する。俺は二枚あるうちの『聖者の樹の実』の一枚をリリースし、デッキから『端末世界』を発動する!!」

 

 これが通れば遊牙はメインスェイズ2もスキップさせられる。さぁ、ここでどう動く主人公?

 

「っ……! そのカードは悪いが通さない。『端末世界』発動後に手札から速攻魔法『サイクロン』! 端末世界を破壊する!」

 

「ち、そうは問屋が下ろさないってことか……まぁ除去カード一枚使わせたと考えれば良いか。あぁついでだからもう一つ教えておくぜ、『聖者の樹の実』にはもう一つ効果がある。それは俺が戦闘ダメージを受ける度に、デッキからカードを一枚ドローできるっていうな、下手なダメージは身の危険だぜ?」

 

 そう言いながら俺は近くのアクション魔法を一つ、空中の足場から手札に加える。

 

「(!!なるほど、こういうアクション魔法か。まぁまだ使う場面じゃあないな)さぁどうする?」

 

「どうするもこうするも……正面から突き進む! 俺はアクションマジック『究極のゼロ』を発動し風属性を選択する! そしてデッキトップが風属性のモンスターだったらそいつを特殊召喚できる!」

 

「……マジェスペクターは風属性魔法使い族のカテゴリー、選ぶのは当然か……」

 

「デッキトップは……!?」

 

 そこで遊牙の動きが止まる。なんだ?白紙のカードでもあったのか?

 

「ん?どうした?カードは?」

 

 俺がそう聞くと、奴はニヤリと嗤った。

 

「……安心しろ、今見せてやる。デッキトップは、こいつだ! 闇夜を羽ばたく鷲よ、その獰猛なる爪で敵を切り裂け! 『ナイトイーグル』を特殊召喚!」

 

『ナイトイーグル 』 ☆5  A2000

 

「んな!?ち、鳥獣だと!?ていうか、なんでそのカードを!!俺らの専売特許が!?」

 

 言ってるのも変だが、『ナイトイーグル』は確かにバトスピで存在してたモンスター……いわばこっちの世界にあるはずのないカードの筈なのに……。

 

「んなもん知るか! いつの間にか入ってたんだからな! バトル! 『ナイトイーグル』で『幻のグリフォン』を攻撃! そしてこの瞬間、『ナイトイーグル』のモンスター効果発動! こいつの攻撃宣言がなされたとき、フィールドに『分身トークン』を1体特殊召喚する! そして、こいつがいる限り俺の場の分身トークンの攻撃力は3000となる!」

 

「な、『グリフォン』と攻撃力は互角、自爆特攻するつもりか?」

 

「んなことさせっかよ。アクションマジック『白夜王の宝剣』発動。自分フィールドのモンスターの攻撃力を500アップさせ、このターン、対象のモンスターは闇、炎属性モンスター以外の効果を受けない! 効果対象は当然ナイトイーグル。後半の効果は意味ないが、攻撃力アップには十分だ!」

 

「流石にそれは洒落にならないぜ!!罠カードオープン!!『緊急同調』!!俺はレベル4『幻のグリフォン』に、レベル3チューナー『チューニン・ツバメ』をチューニング!!蒼き風纏う翼が、暴風となりて今ここに顕現する!!シンクロ召喚!!現れろ『鳥獣烈神ガルード』!!」

 

『鳥獣烈神ガルード』 ☆7 A3000

 

「なっ……! レベル7で攻撃力3000!?」

 

「まさか次のターンに出すつもりだったモンスターを引き出させるとはな。そして俺はアクション魔法『激突』を発動する!!お互いのフィールドのモンスターを一体選択し、そのモンスター同士を強制的にバトルさせる。俺は『ナイトイーグル』と『ガルード』を選択する」

 

 その宣言通り、『ガルード』に向かってそれなりの大きさの『ナイトイーグル』が突っ込んでいく

 

「まだ、終われない! アクションマジック『月光竜の死鎌』をナイトイーグルを対象にとって発動! 攻撃力を500あげる!」

 

「まだだ!!アクション魔法『オフェンシブ・オーラ』!!このターンの間、自分フィールドのモンスターの攻撃力を300アップさせる!!さらに……ガルード!!」

 

 俺がそう叫ぶと、『ガルード』はその大きな翼を一度振るう。すると巨大な烈風が遊牙を襲い、追加のアクション魔法を取るのに失敗してし宙を舞う。

 

「俺のモンスターの羽ばたきは突風なんて柔いもんじゃない!!烈々を超えて、暴風なんだ、これ以上簡単にアクション魔法を取れると思うなよ!!」

 

「ッチ! だが……『フロッグ』、『ナイトイーグル』!」

 

 暴風に両腕で顔を覆うが、あいつは自らの場にいるモンスター達の名を呼ぶ。すると『ナイトイーグル』に掴まった『フロッグ』が舌でアクション魔法を手に入れ、それをあの暴風の波に乗ったらしいあの鳥は遊牙のもとに蛙とアクション魔法を渡しやがった。

 

「アクションマジック『コールオブディープ』! 罠カードの効果を受け付けないモンスターを1体破壊できる効果があるがこれは意味はない……だが、自分フィールドに風属性モンスターが存在するとき、相手の場のモンスターを1体守備表示にする。ガルードを守備表示に!」

 

「なろ!!」

 

 流石の往生際の悪さに悪態を着きながらも、俺は妨害されずに別のアクション魔法を手に入れる。

 

「アクション魔法『サジット・フレイム』!!相手フィールドの永続魔法か、レベル5以下のモンスターを破壊する!!俺は『分身トークン』を破壊する!!さらにアクション魔法『太陽石の加護』!!モンスター一体を選択し、そのモンスターに貫通効果を与える。俺は遊牙、お前の『ナイトイーグル』を選択する!!ガルード!!もう一つ大仕事だ!!」

 

 そう叫ぶと、今度はガルードがとんでもない勢いで風を巻き荒らす。流石に今度は大型の鳥では無い『ナイトイーグル』に掴まるのは至難の技だ。

 

 ん?俺?ガルードの真後ろに居るから風は感じるけど何とか踏ん張ってるぞ?

 

「っ……もう発動するものはないが……『ナイトイーグル』、守備表示のガルードを切り裂け! フィンスターニス・ナーゲル!!」

 

 守備表示になったところで一瞬ガルードの起こす暴風が止まる。その一瞬の隙をついて猛スピードで襲い掛かる。その爪には闇のような漆黒のオーラが纏われており……その爪がガルードを切り裂く。

 

蓮LP4000→3000

 

「これでモンスターはいなくなった! フロッグで直接攻撃!」

 

「おっと、『フロッグ』の攻撃の前に、『聖者の樹の実』の効果でドローさせてもらうぜ」

 

蓮 手札 1→2

 

「来い、ライフで受ける!!」

 

蓮 LIFE 3000→1700

 

「ぐう……『聖者の樹の実』の効果で、一枚ドロー!!」

 

蓮 手札2→3

 

「……メイン2。今あるスケールでレベル2~7のモンスターが同時に召喚可能!

 

揺れろ、新風纏いしペンデュラム! 天空を翔ろ新風のアーク! ペンデュラム召喚! 舞い降りろ、俺の仲間達よ!

 

手札より現れよ! 『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』、『マジェスペクター・キャット』」

 

『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』A2500

『マジェスペクター・キャット』D1800

 

「更にカードを1枚セットしてターンエンド、この時キャットの効果発動。デッキよりマジェスペクターカードを手札に加える。俺は『マジェスペクター・クロウ』を手札に加える。これでターンエンドだ」

 

遊牙LP4000

手札3(クロウ)

マジェスペクター・フロッグATK1300

ナイトイーグルATK2000

オッドアイズ・ファントム・ドラゴンATK2500

マジェスペクター・キャットDEF1800

伏せカード(マジェスペクター・テンペスト)

伏せカード

 

スケール

赤:オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン スケール:1

青:オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン スケール:8

 

 

 

 蘭視点

 

「……お互いに一歩も譲らない……流石は、というべきだな」

 

「……蓮はああ言ってますけど、実力だけならプロの私に匹敵しても劣らない実力の持ち主です。しかも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……まぁ、鳥獣族ってイメージでしかないからな。カテゴリーでは確かになさそうだ」

 

 まぁ正確に言えば、蓮曰く『バトスピカテゴリー』とかいうらしいが、ここで話すのは無粋だろう。

 

「……まぁもっとも、蓮の話だと自分の実力は妹には及ばないって話ですが、というよりも、あのデッキは蓮の妹さんから貰ったものらしいですけど」

 

「へぇ、そんな妹さんがいたのか。いつかは会えるのかな?」

 

「……多分無理ですよ、彼女の心は、あのデッキの中にしか居ないですから」

 

 そこで察したのか、遊輔さんは何も言わなくなった。私も、彼のデュエルを見ることに集中することにした。

 

 

 

「俺のターン、ドロー!!……俺は速攻魔法『サイクロン』を発動し、とりあえずさっきセットしてた『テンペスト』を破壊する。さらにそのあと、手札から『ハーピィの羽箒』を発動し、ペンデュラム含めてそっちの魔法、罠カードを全部除去させてもらう!!」

 

 そして近場のアクション魔法を手に入れると、少しだけにやりとする。

 

「アクション魔法『輝石の光主』を発動し俺は風属性を選択する、そしてデッキトップのカードを確認する。そのカードが選択された属性のモンスターならば、そのカードをデッキに戻したあとシャッフルし、デッキからカードを二枚ドローする。……オープンしたカードは『ハーピィ・レディ1』、風属性のためデッキに戻して二枚ドロー!!」

 

 さて、引いたカードは……うん、まぁまぁなところか

 

「……! 輝石の光主の効果処理直後、アクションマジック『英雄皇龍の咆哮』! 自分の手札にある魔法・罠カード1枚をセットすることで、自分はデッキから1枚ドローする。俺はこのカードを伏せてドロー! 更に……あった!」

 

 ドローした遊牙は更に、手身近にあったアクションマジックを手に取ると笑顔で発動させた。

 

「いいもん引いたぜ。アクションマジック『覇王爆陽』発動! 自分フィールドの魔法・罠ゾーンの伏せカードを一枚リリースし、デッキからレベル6以上のモンスターを特殊召喚する。俺は……今伏せた伏せカードをリリースしデッキからレベル6以上のモンスター……」

 

 そしてデッキを確認すると少し考えんで、とあるモンスターを召喚した。

 

「…………俺は、こいつを特殊召喚させる。黄金の鬣震わせ戦場を縦横無尽に跳ね回れ! 己の跳獣王 ライオ・ビットを特殊召喚!」

 

『己の跳獣王 ライオ・ビット』 A2400

 

「またバトスピモンスターかよ……いったい何枚紛れ込んでやがる……っと手札手札……よし、俺はまずカードを二枚伏せる」

 

「……手札でも事故ったか?」

 

「残念なことに事故じゃあ無いんだな。俺は手札の魔法カード『マジック・オブ・オズ』を発動する!!手札をすべて捨てて、デッキから三枚ドロー!!」

 

 さて、引いたカードは……よし!!

 

「……ッ!!なるほどな、行くぜ!!俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、手札の『LL―ターコイズ・ワーブラー』を特殊召喚できる!!」

 

『ターコイズ・ワーブラー』 ☆1 A100

 

「LLって……マジかよ……」

 

 よしよし、どうやら狙いに気づいてるみたいだね?

 

「そして特殊召喚に成功した『ターコイズ・ワーブラー』の効果で、さっき墓地へ送った『LL―コバルト・スパロー』を特殊召喚!!さらに『コバルト・スパロー』の効果でデッキから『LL―サファイア・スワロー』を手札に加える。そしてフィールドに鳥獣族モンスターが存在するとき、『サファイア・スワロー』の効果で手札のレベル1鳥獣モンスター『森林のセッコ~キジ』と共に特殊召喚する!!」

 

「……アイツ、きそうだな……あれで収まるとは思えんが」

 

「さらに俺は先程伏せた魔法カード『ハンド・タイフーン』を発動!!互いに手札が一枚以上あるとき、お互いは手札を全て墓地へ送り、手札が四枚となるようにドロー!!」

 

 もとはバトスピ禁止カードだったが、遊戯王じゃこれくらい普通(?)の魔法だから大丈夫大丈夫!!けど、相手に手札アドを与えちまったが、これで準備は整ったぜ。

 

「行くぜ、俺はレベル1のモンスター全てでオーバーレイ!!次元を超え、小夜鳴く翼を顕現させよ!!エクシーズ召喚!!来い、『LL―アセンブリー・ナイチンゲール』!!」

 

『LL―アセンブリー・ナイチンゲール』 ★1 A800

 

「エクシーズ素材になった『サファイア・スワロー』の効果で、墓地へ送った二枚目の『ターコイズ・ワーブラー』をORUに加える。そしてこのモンスターの攻撃力は、ORU一つにつき、200アップするから……」

 

『アセンブリー・ナイチンゲール』 A800→1000

 

 さて、アクション魔法は……っと、まさかのこれか……

 

「アクション魔法『超新星爆発』!!自分のライフが相手より低く、尚且つ2000以下のとき、俺のライフを5000になるように回復する!!この効果の発動中、相手はアクション魔法を発動できない!!」

 

蓮 LIFE1700→5000

 

「バトル!!『アセンブリー・ナイチンゲール』でダイレクトアタック!!こいつは効果でダイレクトアタックが可能なモンスターだぜ!!」

 

「ッチ、面倒な奴を呼び出しやがって……!」

 

 遊牙はそう言うと走り出した。まるで、アクションカードを探しているかのように

 

「な!?アクション魔法で防ごうとも『アセンブリー・ナイチンゲール』には連続攻撃効果があるのに……」

 

 しかし、その言葉に耳を一切貸さず遊牙は走り続ける。そして、あるカードを手に取る……と、突然カードが発動された。

 

「……アクション罠『逆光特攻』が発動した。今行われているバトルは無効になる。そして俺の場の守備表示モンスターは攻撃表示となり、相手モンスターに攻撃する。その後、このターンのバトルフェイズが終了する……」

 

マジェスペクター・キャットDEF1800→ATK100

 

遊牙LP4000→3100

 

「バトルの強制終了かよ……まぁいい、俺はカードをさらに二枚伏せ、ターンエンド。この瞬間、『切り株都市』の効果でカードをオープン……よし、カードは『ジョーニン・トンビ』、よって守備表示で特殊召喚!!」

 

 

蓮 LIFE5000 手札二枚

フィールド

『アセンブリー・ナイチンゲール』 A1000

『ジョーニン・トンビ』 D2000

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

伏せカード三枚

 

 

「アセンブリー・ナイチンゲールとは驚いたな……だが、俺だって負けるつもりはねぇ! 俺のターン、ドロー!」

 

「遊牙のスタンバイフェイズに『アセンブリー』の効果を発動!!ORUを一つ取り除き、このターン『LL』は戦闘及び効果によって破壊されず、戦闘によるダメージを0にする!!」

 

使用ORU

『森林のセッコーキジ』

 

「まぁ、これはしょうがない……っと、またアクション罠か……『逃げ腰』の効果で俺、お前の順で俺の墓地のモンスターを選択。俺が選択したモンスターは俺のデッキの一番下に、お前が選択したモンスターはお前の場に特殊召喚される。俺はマジェスペクター・クロウを選択する。さぁ、お前も俺の墓地から選ぶといいさ」

 

 よし、ある程度ラッキーなカードだ。さて、墓地のカードは……

 

遊牙の墓地のモンスター

『聖鳥クレイン』

『聖鳥クレイン』

 

「さてどれか……ってどっちも同じカードじゃねぇか!!なんで二積みしてんだよ!?」

 

「ペンデュラムと相性がいいものでな『聖鳥クレイン(こいつ)』は。んじゃ、効果処理だ。俺の墓地のクロウをデッキに戻して……お前の場に『聖鳥クレイン』が特殊召喚される」

 

『聖鳥クレイン』 A 1600

 

「なら俺は『クレイン』の効果を発動!!」

 

「おっと、その特殊召喚時効果に対してアクションマジック『天翔龍神覇』! 相手の場にモンスターを召喚・特殊召喚された時、相手の永続魔法を2つまで選択して破壊する。その後ライフを500支払って相手の場に存在する攻撃力2000以下の相手のモンスター1体を破壊する! 俺は『神樹の切り株都市』と『聖者の樹の実』を選択する。そして何もなければ『ジョーニン・トンビ』にも消えてもらう!」

 

「させない!!アクション魔法『氷壁』!!相手の発動した魔法

、罠カードの効果を、攻撃表示のモンスターを守備表示にして無効にする!!俺は『クレイン』を守備表示へ変更!!そして『クレイン』の効果で一枚ドロー!!」

 

「ま、こんなもんだろ。どうせこれもあるからな。相手の場に魔法・罠カードが2枚以上存在し自分の場に魔法・罠カードが存在しない場合、手札から罠カード『タイフーン』発動。『聖者の樹の実』を破壊する」

 

「……手札罠とは洒落たもん使いやがって……だがそう単純に破壊させる訳にいかんのよな!!リバースカードオープン!!速攻魔法『非常食』!!『聖者の樹の実』と『切り株都市』をリリースして、ライフを2000回復!!」

 

蓮 LIFE5000→7000

 

「ま、そうするしかないわな。念押しでフロッグは守備表示にしておいて、と。俺もハーピィの羽箒を発動し、伏せカードを破壊するぜ」

 

「あ、『スタラ(スターライト・ロード)』で。エクストラに『スターダスト』居ないけど」

 

 まさか念のために容れて、偶々引いたカードが使えることになるとは……運も恐ろしきだな。

 

「あ、それならその後で『ナイト・ショット』で残った伏せ除去するぞ」

 

 いつも思うけど、除去カードそんなに積み込みたいか!?こっち全然上手く進まないぞ!?

 

「く、『破壊輪』が……」

 

「お前、意外に物騒なカード伏せてやがったな……まぁ、これで少しはマシになっただろう。『埋葬呪文の宝札』を発動し墓地の魔法カード……アクション魔法の『究極のゼロ』、『白夜王の宝剣』、『月光竜の死鎌』を除外して2枚ドロー。そしてバトル! 『ナイトイーグル』で聖鳥クレインを攻撃! 『ナイトイーグル』の効果で『分身トークン』を特殊召喚!」

 

「だが『アセンブリー・ナイチンゲール』の効果で、俺に一切のダメージは入らないし、破壊できるのは『クレイン』と『ジョーニン・トンビ』だけだ!!」

 

「構わないさ。『クレイン』撃破後に『分身トークン』でジョーニン・トンビを攻撃」

 

「『ジョーニン・トンビ』のモンスター効果!!このカードが破壊されたとき、フィールドに分身トークンを一体特殊召喚」

 

「なら、『ライオ・ビット』で『分身トークンを攻撃』。そしてメイン2に移行する。俺は魔法カード『痛み分け』をフロッグをリリースして発動。相手プレイヤーは自分のモンスターをリリースしなければならない。これはプレイヤーに干渉する効果だ。さぁ、モンスター……といってもお前の場には『アセンブリー』しかいないけどな」

 

「はいそうですか……なんてするわけないだろうが!!アクション魔法『粉砕!!玉砕!!大喝采!!』を発動!!フィールドのモンスター一体をリリースすることで、相手フィールドのカードを全て破壊する!!」

 

 なぜか発動した瞬間特徴的な社長の高笑いが聞こえた気がするが……うん、気にしたら負けだ。

 

「強靭!!」

 

「無敵!!」

 

「「最強!!……は!!」」

 

 何故か言わなければいけないような感じで言ってしまった。

 

「……流石にそううまくはいかない、か。だが、金満な壺を発動し……エクストラデッキにあるキャット、オッドアイズ・ミラージュ、オッドアイズ・ペルソナをデッキに戻して2枚ドロー!! そしてアクションマジック『フェイタルドロー』を発動! デッキからカードを2枚ドロー。更に、相手とライフを比べて自分のライフが少ない場合、更にデッキからカードを1枚ドローする!」

 

手札

0→2→4→5

 

「うげ、なにその某HERO使いみたいなチートドロー……」

 

 遊牙はドローしたカードを見ると、少し口角を上げた。

 

「行くぞ!! 俺はスケール1の『翼の覇獣スパ・ルーダ』とスケール8の『アルティメット・ショカツリョー』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

「またバトスピ……しかもペンデュラムだぁ?一体どうなってるんだよ……」

 

「揺れろ、新風纏いしペンデュラム! 天空を翔ろ新風のアーク! ペンデュラム召喚! 羽ばたきて舞い降りろ、俺の仲間達よ!

 

手札より『マジェスペクター・フォックス』、エクストラデッキより再び現れよ……『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』、『マジェスペクター・フロッグ』……そして『己の跳獣王 ライオ・ビット』、『ナイトイーグル』!」

 

 

『マジェスペクター・フォックス』ATK1500

『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』ATK2500

『マジェスペクター・フロッグ』ATK1300

『己の跳獣王 ライオ・ビット』ATK2400

『ナイトイーグル』ATK2000

 

 

「俺はカードを1枚セットして、ターンエンド」

 

 

遊牙LP3100

手札1

『マジェスペクター・フォックス』 A1500

『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』 A2500

『マジェスペクター・フロッグ』 A1300

『己の跳獣王 ライオ・ビット』 A2400

『ナイトイーグル』 A2000

伏せカード



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コラボ編 vs遊牙 後編

「俺のターン、ドロー!!……!!ここでこのカードか……。なぁ遊牙、俺はこれから、お前たちの絆をこのカードで確かめさせてもらうぜ?」

 

「絆?一体どういう……」

 

「魔法カード『トリックチェンジ』を発動!!俺はカードを宣言し、相手のデッキを確認して、その宣言したカードが存在してたとき、そのカードを俺は相手のデッキから手札に加える。存在しなかったとき、相手は俺のデッキから好きなカードを一枚手札に加える」

 

「ここでギャンブル……!? いや、俺のデッキ内容が分かっている時点でギャンブルとは言えんか……」

 

「俺が選ぶのは……魔法カード『スマイル・ワールド』!!」

 

 

 

 蘭視点

 

「なっ!?」

 

「まさか……!?」

 

「なんであのカード……?」

 

「遊牙さん……」

 

「蓮のやつ、ここに来て大博打に打って出たな」

 

 劔菜先輩や遊勝塾メンバーがかなり騒いでる。それはそうだ、まさかこんな所で原作でまだ登場してないカードを選択するなんて何を考えて……

 

「あ……まさか」

 

「どういうことだい?」

 

「多分ですけど、蓮は家族としての絆をあの遊牙って人から図ろうとしてるんじゃないですか?二人って、ある意味で似たような境遇ですし」

 

 蓮は今まで信じていた家族から裏切られ、最愛の妹を殺され、誰にも頼れないでいた。故にその喪失感から他者との繋がりを大切にしていた。

 

 そして遊牙は、多分だが原作の遊矢を守らねばという気持ちが少なからず存在していたならば、父である榊遊勝の代名詞の一枚であるをデッキに加えててもおかしくない。

 

 蓮は、遊牙のその絆を確かめようとしてるのかもしれない。だからこその『スマイル・ワールド』の選択だったのだろう。

 

 

蓮視点

 

「さぁ遊牙、お前の絆を見せてみろ!!」

 

「……なるほどな。お前の言いたいことはよくわかった」

 

 そう呟くと彼はデッキの公開を行う。その中には…………

 

『スマイル・ワールド』

『スマイル・ワールド』

『スマイル・ワールド』

 

 やはり存在していた。しかも何の因果か……

 

「容れてるとは思ったが三積みとはな……しかも山札トップたぁ……」

 

 俺は苦笑しながらそう呟く。てか俺が使わなかったら手札事故起こしかねなかったぞ、あれ。

 

「……俺も正直、驚きさ。普段はあまり表に出てこないからな……だが、これが俺のお前への回答にはなったか?」

 

「そうだな……とりあえずその回答に見合ったデュエルを見せてやる!!俺は永続魔法『王家の神殿』を発動し、カードを伏せる。この瞬間『王家の神殿』の効果で今伏せた罠カード『貪欲な瓶』を発動!!墓地の『非常食』、『切り株都市』、『聖者の樹の実』、『破壊輪』、『緊急同調』をデッキに戻して、一枚ドロー!!……さらに魔法カード『強欲で貪欲な壺』を発動!!デッキトップから10枚除外して二枚ドロー!!……速攻魔法『異次元からの埋葬』!!除外されている『鳥武神シシグイ』を三枚、墓地へ送る。さらに魔法カード『命削りの宝札』を発動!!手札が五枚になるようにドロー……そして魔法カード『貪欲な壺』!!『シシグイ』二枚、『ターコイズ』、『サファイア』、『コバルト』をデッキに戻して二枚ドロー!!」

 

「ここにきてデッキを圧縮しながらのドロー、か……」

 

 なんか冷や汗掻いてるようだが、俺にとってはこれが何時ものことなので無視無視っと

 

「さて、ここからが本番だぜ!!俺は魔法カード『飛翔融合』を発動!!手札の『ゲニン・スズメ』と『ジョーニン・トンビ』で融合!!集いし翼が、天風逆巻く覇をなさん!!融合召喚!!現れろ、レベル10!!『鳥武姫神シシグイ・アスカ』!!」

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 ☆10 A2000

 

「シンクロにエクシーズ、融合までも……!」

 

「『シシグイ・アスカ』の効果!!融合召喚に成功したとき、墓地から融合素材の数まで、フィールドに鳥獣族モンスターを特殊召喚する!!俺は『ハーピィ・レディ1』ともう一体!!我が分身にして我がエース!!『鳥武神シシグイ』を特殊召喚!!」

 

『ハーピィ・レディ1』 A1300

『鳥武神シシグイ』 ☆5 A500

 

「攻撃力500がエース……?一体どんな効果を」

 

「さらに速攻魔法『地獄の暴走召喚』!!俺のフィールドに攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚されたとき、同名モンスターをデッキと手札から特殊召喚可能な限り特殊召喚できる!!俺は『シシグイ』を選択!!デッキから来い!!二体の『シシグイ』達!!」

 

『シシグイ』×2 A500

 

「……俺の場はすでに埋まっている。一応選択はオッドアイズ・ファントム・ドラゴンとするが、こいつは1体しかデッキにいない」

 

 まぁ当然っちゃ当然だな。けど……

 

「俺のエースの本領はここからさ!!『鳥武神シシグイ』は永続効果として、自分フィールドの風属性モンスターの攻撃力を、フィールドの鳥獣族一体につき、200ポイントアップする!!そしてお前のペンデュラムモンスターの永続効果で、お前のフィールドのモンスターの種族は鳥獣または魔法使いとして扱う。よってフィールドの鳥獣族は10体!!そして同じ効果を持つシシグイは3体よって攻撃力は2×3×10×100だから……」

 

『シシグイ』×3 A500→2500→4500→6500→6800

『シシグイ・アスカ』 A2000→4000→6000→8000→8300

『ハーピィ・レディ1』 A1300→3300→5300→7300→7600

 

 

 

蘭視点

 

「こ、攻撃力……6000オーバーが5体……」

 

「総攻撃力は40000以上ですね……下手したらとんだオーバーキルですよ……」

 

「あはは、でもあれが蓮のデフォだからね……」

 

「しかもここで残ってる手札は『スマイル・ワールド』、その効果でフィールドのモンスター×100全体的に攻撃力が上がる。そうなったら7000オーバーね」

 

「実力は申し分ないし、ぜひとも講師として招きたいものだな……」

 

「ダメ……蓮は渡さない」

 

「こ、攻撃力40000って、10vs1余裕で出来るじゃねぇか…………」

 

「落ち着いてくださいよっ!?」

 

「カオスっすね……これは」

 

 

 

蓮視点

 

「はは、流石というべきだな……」

 

 これが俺の何時もの戦術、その圧倒的攻撃力に遊牙の冷や汗が止まらなくなってるみたいだ。まぁもっとも、今回は相手のフィールドのおかげで攻撃力が桁違いに膨れ上がったが。

 

「期待に応えられたみたいで助かるよ。というわけで『スマイル・ワールド』発動!!フィールドのモンスターは1000アップ!!」

 

『シシグイ』×3 A7800

『シシグイ・アスカ』 A9300

『ハーピィ・レディ1』 A8600

 

「そして……」

 

 俺は近くのアクション魔法を手札に加え、妹と同じ名を関する姫鳥に飛び乗った。それと共に、『シシグイ』三体が『ガルード』以上の暴風乱気流を生み出し、同じ鳥獣のモンスターですらあまりの勢いに悲鳴をあげてる。

 

「バトルだ!!『シシグイ・アスカ』で『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』を攻撃!!疾風のクロスフルバースト!!」

 

 さぁ、奴の伏せカード次第じゃ、このバトル、『シシグイ・アスカ』の攻撃力計上効果で俺の勝ちが確定だぜ!!

 

「リバースカード、オープン! 『攻撃の無敵化』! ダメージ遮断効果を選択!」

 

「む……(ダメージが入らないなら『シシグイ・アスカ』の攻撃力計上効果は無意味か)だったら他のモンスターもそれぞれ攻撃!!そしてモンスターが減ったことにより、モンスターの攻撃力はそれぞれ3000ずつダウン」

 

『シシグイ』×3 3800

『シシグイ・アスカ』 A5300

『ハーピィ・レディ1』 A4600

 

「だが、最後の攻撃で俺の場のモンスターが戦闘で破壊された時……『アルティメット・ショカツリョー』のP効果発動! 相手のコントロールするカードにより自分の場のモンスターが破壊されたとき、この効果は発動できる! Pゾーンに存在するこのモンスターを特殊召喚できる! 仲間の痛みを糧として舞い降りよ、アルティメット・ショカツリョー!」

 

『アルティメット・ショカツリョー』 A2000

 

「やべ!!確か『ショカツリョー』の効果って……」

 

「更に、俺の手札が2枚以下の時に自身の効果で特殊召喚された時、相手の場のすべてのモンスターを守備表示にする! アルティメット・ストーム!」

 

『シシグイ』×3 D2000

『シシグイ・アスカ』 D2800

『ハーピィ・レディ1』 D1400

 

 そうだったよ!?ていうかこのデッキの弱点突かれたし!?守備にされたら勝ち目低いんだけど!?

 

 と、ここは冷静に冷静に……ポーカーフェイスを心がけないと……

 

「俺はアクション魔法『マジックドロー』を発動!!自分フィールドの表側表示の魔法カード『王家の神殿』をリリースして一枚ドロー!!……俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

蓮 手札0枚 LIFE7000

フィールド

『鳥武神シシグイ』×3 3800

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 A5300

『ハーピィ・レディ1』 A4600

伏せカード一枚

 

 

 

「俺のターン、ドロー!! そしてこのドローフェイズにアクションマジック、『カオスドロー』を発動。相手フィールド上に守備表示で存在するモンスターの数だけドローする!」

 

 ちょ!!なんであんなぶっ壊れカードがアクション魔法になってるんだよ!!

 

「く……アクション魔法は……」

 

 俺は慌ててアクション魔法を探し、足元に見つけたそれを手に拾うが……

 

「げ、!?アクション罠『カムバック!!』が発動しちまった!?自分フィールドのモンスターが相手より多いとき、フィールドのモンスター一体を手札に戻して、互いに一枚ドローする……」

 

 さて何を戻すべきか……そう考えたときすぐに思考の回路が結び付いた。

 

「俺は……『シシグイ・アスカ』を手札に戻す!!」

 

「一番攻撃力の高いシシグイ・アスカを……どうするつもりだ……」

 

 引いたカードは……よし、これなら何とかなる!!

 

「そしてカオスドローの効果でお前のフィールドに存在する守備表示モンスターの数分……4枚ドロー!」

 

遊牙

2→6

 

「俺は空いているペンデュラムゾーンにスケール10のアルティメット・セッコーキジをセッティング!」

 

ペンデュラムゾーン

赤:翼の覇獣スパ・ルーダ:スケール1

青:無し

ペンデュラムゾーン

赤:翼の覇獣スパ・ルーダ:スケール1

青:アルティメット・セッコーキジスケール:10

 

「これでレベル2からレベル9までのモンスターがペンデュラム召喚可能! 揺れろ、新風纏いしペンデュラム! 天空を翔ろ新風のアーク! ペンデュラム召喚! 羽ばたきて舞い降りろ、俺の仲間達よ!

 

手札より『乙の跳獣女王アルレ・クイーン』、『マジェスペクター・ユニコーン』! そしてエクストラデッキより『己の跳獣王 ライオ・ビット』、そして……未来の幻を視る眼、『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!」

 

『乙の跳獣女王アルレ・クイーン』 A2900

『マジェスペクター・ユニコーン』 A2000

『己の跳獣王 ライオ・ビット』 A2400

『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』 A2500

 

 またバトスピモンスター出てきやがるし!!いったいほんとに何枚紛れてやがる!!っとアクション魔法っと!!

 

「アクション魔法『ブレイクシールド』!!フィールドのモンスターを任意の数リリースして、このターンリリースされたモンスターの元々の攻撃力分の合計まで、俺の受けるダメージを0にする!!俺は『シシグイ』三枚と『ハーピィ・レディ1』、よって2800までのダメージを0にする!!」

 

「っ……だが、俺は一切手を緩めない! 装備魔法『魔導師の力』をオッドアイズ・ファントム・ドラゴンに装備! そして手札を…………3枚セット!」

 

『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』 A2500→5500

 

「おま!!それ使わんでもオーバーキルできるだろうが!!」

 

 インチキ攻撃力も大概にしろ!!

 

「総攻撃力40000オーバーを出したお前には言われたかねーな! バトル! 『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』で直接攻撃! 夢幻のスパイラルフレイム!!」

 

「甘いわ!!速攻魔法『超融合』を発動!!このカードに対して、どんな効果も発動できない!!手札を一枚墓地へ送り、お前のフィールドの『ファントム』以外を素材に融合!!二度舞い降りろ!!『鳥武姫神シシグイ・アスカ』!!」

 

『シシグイ・アスカ』 A2000

 

「『シシグイ・アスカ』の効果で、墓地から素材の数となった枚数、四枚まで鳥獣を復活させる!!来い、『シシグイ』3体!!『ハーピィ・レディ1』!!」

 

『シシグイ・アスカ』 A5900

『シシグイ』×3 A4400

『ハーピィ・レディ1』 A5200

 

「……なんだ、また出すために一度エクストラデッキに戻したのか。それなら戦闘ダメージこちらにとっても好都合だ……いや、むしろさっき発動できなかった事も相まって、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……なに?」

 

 この場面でどう勝ち筋があるってんだ?

 

「そのままの意味さ、まぁ一種の賭けではあるがな。バトルフェイズは続行! オッドアイズ・ファントムドラゴンで鳥武神シシグイに攻撃! そしてこの瞬間、アクションマジック『お忍び姫の気まぐれ』を発動! 相手は俺の伏せカードを1枚選択して俺がオープンする。それが通常魔法・もしくは通常罠であればその効果を使用できる。ちなみにこの効果で発動する際にコストがあっても、それは踏み倒される。さぁ、どうするか今のうちに決めておきな!」

 

「おっと、その前にさっき墓地へ送った『仁王立ち』を除外し、『シシグイ・アスカ』を選択!!その効果で、このターン『シシグイ・アスカ』以外のモンスターを攻撃できない」

 

「それくらい、構わないさ。んで、俺の伏せカードのどれをオープンするんだ?」

 

 そう言ってくるが、なんか怪しさがヤバイな

 

「(恐らく伏せカードのうちの二枚は少なくとも対象になるカードだ……だとすれば……)……俺は真ん中のカードを選択する」

 

「オーケイ。選ばれたのは……ビンゴ、通常魔法『無の境地』!! 通常魔法のため、この効果を適応! これにより…………お互いの場にいる全てのモンスターは効果の使用を封じられ、【効果を持たない通常モンスターとして扱う】事とする!」

 

 なんつうカード入れ込んでやがるあの野郎!?俺のフィールドを機能不全にする気か!?

 

「さすか!!アクション魔法『ハミングトラップ』!!自分フィールドの除外されている罠カードの効果をコピーして発動する!!俺は『スリーカード』を選択!!フィールドに同名モンスター……『シシグイ』3体が存在するため、相手フィールドのカードを三枚破壊する!!俺は残りの伏せカード二枚と『オッドアイズ・ファントム』を選択!!」

 

「アクションマジック、『ノーアクション』。そのアクション魔法を無効にする」

 

 しかも防ぐとか勘弁しやがれ!?

 

「だったら別のアクション魔法を!!」

 

「させねぇ! オッドアイズ・ファントム・ドラゴン! 夢幻のスパイラルフレイム!!」

 

 双眼の龍の砲口と共に飛んでくるビームみたいな攻撃に、『シシグイ・アスカ』は貫かれ、かなりの大爆発を俺を襲う

 

「だが、2800分のダメージは無くなる……よってダメージは200だ!!」

 

連 LIFE7000→6800

 

「『シシグイ・アスカ』が破壊されたとき、墓地の鳥獣族モンスターを特殊召喚する!!俺は『チューニン・ツバメ』を特殊召喚!!」

 

「たった200だと思うなよ! 俺はこれでターンエンド!」

 

遊牙LP3100

手札0

『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』A5000

『魔導師の力』 装備魔法

伏せカード二枚

 

ペンデュラムゾーン

赤:翼の覇獣スパ・ルーダ:スケール1

青:アルティメット・セッコーキジ:スケール:10

 

 

「俺のターン、ドロー!!……俺はレベル4『ハーピィ・レディ1』にレベル3『チューニン・ツバメ』をチューニング!!シンクロ召喚!!『光牙鳳凰レックウマル』!!」

 

『光牙鳳凰レックウマル』 A2500

 

「バトル!!『レックウマル』で攻撃!!この瞬間、『レックウマル』の効果で、フィールドの他の風属性モンスター、シシグイ三枚をリリースして、相手フィールドのカードを三枚手札に戻す!!俺は『オッドアイズ』と伏せカードの二枚だ!!」

 

「『リバースカード』、オープン! 『強制脱出装置』! レックウマルをデッキ……エクストラデッキへと戻す! 更にチェーンしてアクションマジックを発動!」

 

 ここにきてそれかよ!?しかもアクション魔法?

 

「アクションマジック、『大脱出』。このバトルフェイズを終了させる!」

 

「だが、それでも残りの伏せカードとオッドアイズは手札に戻してもらうぜ、俺は魔法カード『一時休戦』を発動して、ターンエンドだ」

 

蓮 LIFE6800 手札1枚

フィールド

無し

 

「俺のターン、ドロー!」

 

手札

3→4

 

「……ペンデュラム召喚。現れよ、俺のモンスター達よ! 手札より『マジェスペクター・フォックス』、『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』。エクストラデッキより『乙の跳獣女王アルレ・クイーン』、『マジェスペクター・ユニコーン』、『己の跳獣王 ライオ・ビット』! 『フォックス』の効果で『マジェスペクター・スーパーセル』を手札に加え、手札を1枚セット。ターンエンドだ」

 

遊牙 LIFE3100 手札2枚

『マジェスペクター・フォックス』 D1000

『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』 A2500

『乙の跳獣女王アルレ・クイーン』 A2900

『マジェスペクター・ユニコーン』 A2000

『己の跳獣王 ライオ・ビット』 A2400

伏せカード

 

「俺のターン、ドロー!!……俺は魔法カード『魔法石の採掘』を発動!!手札のカードとアクション魔法『奇跡』をリリースして、墓地の『超融合』を回収する!!さらにコストとして捨てた『代償の宝札』の効果で二枚ドロー!!」

 

「っ……アクションマジック、『輝石の光主』! 風属性を選択しデッキトップをオープン……デッキトップは…………『風楯の守護者トビマル』! 風属性の為こいつを戻してシャッフル……2枚ドロー! 更にアクションマジック、『英雄皇龍の咆哮』で1枚セットしてドロー!」

 

 ち、手札を回復しやがったか……だが問題ない!!

 

「俺は魔法カード、『放浪者の採択』を発動!!お互いのフィールドのモンスター全てに神以外の他の属性全てを与える」

 

「神属性以外の属性を……? いったいどういう……」

 

 まぁわからんだろうな……普通なら俺もあまり使いたくないカードだし……

 

「そして俺は『森林のセッコーキジ』を通常召喚し、さらにアクション魔法『回避』をコストに速攻魔法『超融合』を発動!!互いのフィールドのモンスター全てを素材に融合!!紅玉、金剛、翡翠、紫石、黄玉、蒼玉の担い手が交わるとき、長き旅の放浪者が姿を現す!!融合召喚!!現れろ!!『放浪者ロロ』!!」

 

『放浪者ロロ』 ☆6 D3000 魔法使い族

 

「『放浪者ロロ』は融合召喚でしか特殊召喚できず、それも『神以外の全ての属性モンスター一体ずつ』というとてつもなく厳しい条件を持ってる。その代わりに相手の如何なる効果も受けず、リリースすることはできず、戦闘及び効果では破壊されない!!そしてこのモンスターの効果は無効にならない!!これが俺のデッキで、唯一の鳥獣じゃないモンスターであり、最後の壁だ!!ターンエンド!!」

 

蓮 手札0 LIFE6800

フィールド

『放浪者ロロ』 D3000

 

 絶対無敵、原典より強力な壁となったこのモンスターに死角はない!!だが、それだというのに

 

「なるほどな……だが、こうでないとな! 俺のターン! ドロー!」

 

 奴は全く笑顔を消してない。それがまるで当たり前だというかのように…… 

 

「(原典より強化されて、ほぼ除去する方法がない『ロロ』を前に笑顔とか)いいぜ……全力でかかってきやがれ」

 

「……ここで、このカードか……よし、ペンデュラム召喚! 手札より飛翔せよ、『霞の谷の巨神鳥』!! そしてエクストラデッキより何度でも舞い上がれ! オッドアイズ・ファントム・ドラゴン、乙の跳獣女王アルレ・クイーン、マジェスペクター・ユニコーン、己の跳獣王 ライオ・ビット!!」

 

『霞の谷の巨神鳥』 A2700

『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』 A2500

『乙の跳獣女王アルレ・クイーン』 A2900

『マジェスペクター・ユニコーン』 A2000

『己の跳獣王 ライオ・ビット』 A2400

 

「そして、揺れる眼差しを発動! フィールドにあるペンデュラムスケールを破壊して……相手に500のダメージを与えて、デッキからペンデュラムモンスターカードを1枚手札に加える!」

 

「ち、ちまちまとバーンダメージかよ!!」

 

蓮 LIFE6800→6300

 

 それなりの衝撃は受けたが、それを利用してアクション魔法を手に容れる。

 

「(よし)アクション魔法『アルティメットトリガー』!!デッキからカードを一枚オープンして、発動可能なカードの時、そのカードをこのカードの効果として適用する!!オープンしたカードは……魔法カード『異界見聞録・序章』!!この効果はこのカード以外のお互いの手札、墓地、フィールド、除外されているカードの全てをデッキに戻し、その後、互いに五枚ドローする!!そしてお互いのフィールドに六属性全てが存在するとき、この効果に対してチェーンできず、全ての効果は無効になる!!『放浪者ロロ』は本来闇属性だが、神以外の全ての属性として扱うことができる」

 

 さて、これで全てがリセット……まぁペンデュラムがエクストラデッキに何枚か奴にはあるが問題ないだろ。

 

「……! なるほど、なぁ。魔法カード『成金ゴブリン』で1枚ドローして、相手のライフを1000回復する」

 

 なんか妙に強気なんだけどって……

 

「あ、あれ?いきなり『成金』?ライフアドもあるし、手札も互いに潤沢にはなったけど、それはそれでこのターンギリギリ耐えれば次のターンに……ってあれ?これなんか説明フラグバンバン立ってね?」

 

 自分で言うのもなんだが、これは不味い、もしかしたら……

 

「……これが、このデュエルの結末か。悪いが、このデュエル……()()()()()()()()だ」

 

 そう思ってたらなんか勝利宣言してきたし!?

 

「はい!?勝利確定!?いったいなにを……おい、ちょっと待て?その後ろにいる鎖に繋がれてる両腕と両足にどこかで見たことのあるようなその威圧感たっぷりな顔って……マジか!?」

 

 はい、ここで皆さん問題です、俺はなんで驚いてるでしょう?

 

 まぁ面倒なので答えを発表しちゃいましょう、というか俺の台詞で分かるよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『封印されしエクゾディア』

『封印されし者の右腕』

『封印されし者の左腕』

『封印されし者の右足』

『封印されし者の左足』

 

 フィールドと手札をリセットしたらエクゾディア揃ってました~……うん、こんなの予想できるわけがないだろ!!

 

「楽しいデュエルをしてくれて、心から感謝する。ありがとう。俺からできる最大のお返しをもって……このデュエルを終結させる。エクゾディアよ! これまでの熱戦を繰り広げたデュエルに終焉を! 地獄の業火エクゾード・フレイム!」

 

「ぬぉぉ!?」

 

 エグゾディアの炎を受けた俺は、苦笑いでへたりこんだ。

 

「くっそ~、まさかエグゾディア仕込んでたとはな。次やるときは負けねぇ!!」

 

「こっちこそ、楽しいデュエルだったぜ……というよりも、服、燃えてるぞ」

 

「へ?……ギャァァァァ!!服燃やしてるしあのバカゾディア!!」

 

 どうやら炎が飛び火したのかマジで服が燃え始め、あわてて上着を脱いで叩きつけるのだった。というか寧ろ火が強くなってるし!?

 

「ちょ……ば、バケツ! バケツに水入れて持って来い!!」

 

「ええい、とりあえず不幸だ~!!」

 

 最後はなんかしまらないし……え?デュエルでは何時ものこと?……それは言わないのがお約束だ。



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コラボ編 エピローグ

「……」ズーン

 

 あのあと、どうにか火は消し止められたものの、それと同時に上着は燃え付き、現在上半身半裸に亮のコートを羽織ってアクションフィールドの隅で体育座りで俺は落ち込んでいた。

 

「あー……その、なんだ……服、すまん」

 

「……うん、大丈夫大丈夫、どうせ機械がぶっ壊れてエクゾディアの炎だけが実体化したんだろ……」

 

「いやぁ、俺も炎だけ実体化するとは思わねぇ「何してるんですかぁ!!」っでぇ?!」

 

 遊牙が苦笑いのまま返した瞬間、まさしく電光石火というように柚子ちゃんのハリセンが遊牙の頭にクリーンヒットする。

 

「いっつつ……あ、そういや、みんなって俺のあの試合を観てないんだっけ? 今から行くか?」

 

「ん?あの試合って「当然、見させてもらう」おい蘭、台詞奪うな」

 

 もうなに?服は燃えるし、台詞は奪われるしで今日は厄日だな、うん。

 

「まぁまぁ兄貴も悄気ないでくださいっす。ところで、どんな試合なんすか?」

 

「あぁ、俺が日本リーグのデュエルチャンピオンと決闘したやつだよ。ま、俺の方はスタンディングデュエルの方だけどな」

 

 亮のその問い掛けに、遊牙は笑って返した。

 

「日本リーグ……タイトルリーグみたいなものね」

 

「それとは違うと思うわよ……蘭」

 

「でもデュエルチャンプって誰っすかね?」

 

「……私としては嫌な予感しかしないが」

 

 俺らのその言葉に、苦笑いと共に遊牙と一緒に視聴覚ルームに入る。途中遊牙は他の面々に入らないように伝え、実質的に俺ら全員と遊牙の7人だけの密室になった。

 

「今から見せるのは……音声ナシの動画。もちろん、音声アリもあるにはあるけど、もろもろの事情で表立って公開しているのはこっちだ。色んな意味で驚くなよ? この世界の住人じゃないんだろうから、色々と突っ込みたいとは思うだろうが」

 

「あー、やっぱり気付いてたか……何時からだ?」

 

「遊輔さんが言っていた○○という遊輔さんが知らないカードショップの話題、かな? 遊輔さんが知らないって話を聞いて、最初はよっぽどコアな店かと思ったけど、遊輔さんはそういうのでも探したりしてたし……それで知らないってのは流石におかしいと思った。確信に変わったのは初戦……アクションデュエルでの暗黒界の門発動だな、あれで確信に変わったな」

 

「うげ、まさかそんなところでバレるなんて……」

 

「ふむ、しかし遊輔さんはそんな事してるのか……いったい何者なんだ、彼は?」

 

「……まぁ、俺もあの人は何者なのかわかんねーからな。デュエルの腕は本物らしいから臨時講師してもらってるみたいだけど……少なくとも、俺はあの人の事はまだ信用はしていない。生徒である身だから色々手伝ってもらったりはしたが」

 

 劔菜先輩の問いに、苦笑いをしながら録画されている試合のテープを再生するために色々操作をすれば無事に再生できる状態になったようで軽く頷いた。

 

「……これで、良し。多分、突っ込みたくなるだろうが……まぁ、見てくれ。観客席の位置の関係で手前が俺、奥がこの世界でのスタンディングチャンピオン……だ」

 

 彼がそう言うと、テレビ画面に映像が流れ始めた。徐々にズームされて映し出されていたのは、特徴的な丸眼鏡に緑の衣装……明らかに小者という感じの見たことのある風貌にまさかと嫌な予感がした。

 

 そして今度は電工掲示板が映し出されるとやはりというか、そこに出されていた名前はあの『インセクター羽蛾』の文字が映し出されていたのだ。

 

「アイエエエ!!HAGA!?HAGAナンデェ!?まさか自力で脱出を!?」

 

「俺だって対戦相手を知らされた時は驚いたんだし、無理もないさ……」

 

「ふーん、……そういえば昆虫のタイトルホルダーも『インセクト女王』使ってたわね……瞬殺できるけど」

 

 そんなこんなで試合が進み、防戦一方だった遊牙がここでペンデュラム召喚を行った。

 

「……ここ。ここから、俺のプレイングに関する記憶はデュエル終了まで途切れていたんだよ」

 

 ペンデュラム召喚をしたタイミングで一度止めた遊牙はポツリとそう告げた

 

「ふーん……意識がなくなる……ねぇ?」

 

「けど今回は何もなかったみたいだし、意識が飛ぶことは蓮とのデュエルから見ても大丈夫だったみたいだね?」

 

「そう、俺も今回のデュエルで意識を失うことはなかった事には驚いているんだ……何が条件でこうなっているのか……皆目見当もついてない」

 

 と、そう話してるうちに『グレート・モス』が体勢を崩したところを『オッドアイズ・ファントム』が破壊、さらにその効果であの羽蛾をぶっ飛ばして試合終了と相成った。そして遊牙が辺りを見渡したところで映像は途切れていた。

 

「さっき辺りを見渡していた時に俺の意識は回復した……って感じだな。何か聞きたいことはあるか?」

 

「……言いたいことはとりあえず山ほどあるけど、とりあえず蓮を元に戻さないとダメね」

 

「は? どういうことだ?」

 

 蘭がそう言ってる当の俺はというと……

 

「俺が羽蛾と同レベル……俺が羽蛾と同レベル……俺が羽蛾と同レベル…………」ブツブツ

 

 再びネガティブモードで部屋の隅で項垂れていた。

 

「……アホらしい」

 

 俺の様子を見ていた遊牙は小さくため息を吐くとそう言い放った。

 

「あ?」

 

「なんすかアホらしいって!!どういう意味っすか!!」

 

「あぁ、アホらしい。そう言ったさ……あんなマグレのエクゾディア揃いの勝利と俺が意識を失ってたとは言え……ライフキルで倒しての勝利。それが同じだなんて言おうとしているのがアホらしいと……そう言ってるんだよ。少なくとも、同じ相手とデュエルをした場合を考えてもインセクター羽蛾には何度でも勝てると言い切ってやる。だが、お前とデュエルをした場合は……何度も勝てる見込みなんて、まずねぇよ」

 

 ……まぁ遊牙の台詞も最もだから、それについては認めよう。だが、

 

「……そりゃ、俺だってあんな害虫野郎に負けるつもりは無いけどよ……それでも、結局のところ俺はエースモンスターでダメージを与えられてないうえに、自分からエグゾを組み立てさせちまったからな……それに……」

 

「……それに?」

 

「今回の負けで蘭との賭けが成立しちまったから……そっちも含めてショックが……な?」

 

 俺がそういうと、これまた遊牙は呆れたような顔を浮かべてる。

 

「……あぁ、あのタイトルの話か。そもそもな話……俺が知る範囲で蓮が賭けに乗ってる様子はなかったが?」

 

「俺はな、けど蘭の奴が妙に乗り気でな、まぁ蘭の師匠で俺らの世界のタイトルチャンプを、チャンピオンの手抜きとはいえ、テレビの生放送で倒しちまったせいで、色々とスポンサーになりたいと五月蝿いんだよ。仲でも鳥獣のタイトルホルダーが俺と世代交代したいと、これまた乗り気で……」

 

「あー、そういう事か……なるほどな、それは確かにな」

 

「……それに、蓮は私達の世界でデッキ破壊をメインにしたデッキで世界ベスト4になってるから、ブランド力は強い。……まぁ、今回はさすがにライフキルじゃないから、別に賭けはノーカンにしてあげるけど」

 

「……そうして貰えると助かる」

 

 もしそうじゃなかったら明日からプロのハードスケジュールをこなさなくてはならないとかホントに困る……うん。

 

「……まぁ、その件は一応落着したようだし……改めて、何か聞きたいこと、あるんだろ?」

 

「あぁ、まずは確認だがお前の正体は、所謂転生者って奴なのか?」

 

「……転生、と言えるのかは分からない、な。俺自身、気が付いたら『榊遊牙』の姿になっていた……としか言えない。というのも…………」

 

 そこからの事を買いつまんで説明すると、OCG次元(仮称)にいたどこにでもいるような高校生(の筈)だった、彼、榊野雄牙(さかきの ゆうが)がパックを購入した後、帰り道を歩いていると、蓋が空きっぱなしだったらしいマンホールの穴に落ちて、気が付いたら幼児化した姿の自分と赤ん坊の遊矢がいた。俺もこれ以上の事は分からない とのことらしい。

 

「なるほどね……何となくそうだとは思ってたけど、まさかマンホールとはなw」

 

「トラック事故とかで死ぬのが確定した状況じゃないだけマシだよ」

 

 いやまぁどっちもどっちだとは思うがな。

 

「まぁ確かにな、なら転生前の知識で悪いが、少し確かめさせもらうが、次の言葉に聞き覚えはあるか?ネクサス、マジック、ブレイブ、そしてスピリット」

 

「……別のカードゲームだって事は知ってるし、あっちにいた時の友人がやってたのを見たことはある。だが、簡単な単語でしか俺は知らない。強いて挙げるとすれば……『バトルスピリッツ』『ライフで受ける』『ネクサス、マジック、ブレイブ、スピリットというカード種類を示す単語』……ってだけだな。俺はそれをプレイしたことはないのでな。カード名なんて気にしたこともねぇからな、聞かれても知らねぇぞ?」

 

「それだけ分かれば上等、でだが……お前が生前までで見たことのないカードが、俺らとの戦いであったろ?」

 

「あぁ、あったな…………って、まさか……」

 

 ほんと、こういうときって転生者は楽だから良いよな。うん。

 

「そ、俺らの世界じゃ、そのバトスピのスピリットが遊戯王のカードになってるわけだ。んでだが、お前が使ったあの鳥達はお前が言ってたみたいにいつの間にか……だったんだよな?」

 

「……あぁ、俺が【今日、デッキの確認をするために中を見た時には無かった】な。えっと……」

 

 遊牙はそこまで言うと、先程まで使用していたデッキを確認する。すると……

 

「……やっぱり、50枚になってるな。確か……違うカードは……うん、この10枚だ」

 

『ナイトイーグル』

『己の跳獣王 ライオ・ビット』

『翼の覇獣スパ・ルーダ』

『アルティメット・ショカツリョー』

『アルティメット・セッコーキジ』

『乙の跳獣女王アルレ・クイーン』

『風楯の守護者トビマル』

『黄金の大翼ライチョークス』

『アルティメット・ハシビロウ』

『千刀鳥カクレイン 』

 

 出されたそのカードはどれもこれもバトスピのそれであり、

 

「わぁお、どれもこれもバトスピ関連のカードばかりだな、おい」

 

 ブレイブ、スピリット、極めつけにアルティメットと、さっきデュエルで出してきたモンスターばかりだ。

 

「そっか……ほら」

 

 すると遊牙は今手元にあるバトスピカードを差し出した。まるでこのカード達を俺達に託すように。

 

「……良いのか?不自然にとはいえ、自分のデッキに入ってたカードを渡しちまっても?」

 

 俺はそのカードを持つ遊牙の目を確かめる。言っては悪いが、どれもこれも強力な効果を持ったカードばかりだ、それを簡単に手放すという事に不思議でしかならない。

 

「そりゃあ効果も強力さ。俺のデッキにも合うし……でもな、仮にこれを公式試合で使ったらどうなる?」

 

「そりゃ……あぁ、なるほどな」

 

「少なくとも、今はまだこの世界にあるのはこのカードだけだが……いずれ増えてしまうだろ? そうなったら高いカードパワーや強力な効果を持つカードが優遇されるこの世界……いずれ本当の遊戯王カードの価値はグンと下がってしまうだろうな。バトルスピリッツのカードは結構強いし、それは認めるが……まだまともに出ていない今のうちに処理してしまう方が一番いいんだよ。それに、元々が遊戯王じゃないカードを持っていることで【そのカードを持っているから強い】なんて、言われたくないからな……」

 

 確かにこいつの言う通りだ。それと同時に、やはり流石はOCG出身者だけなことはあると感心すらしてしまった。

 

「そっか……そういうことなら、ありがたく回収させて貰うな」

 

 俺は受け取ったカードを別のカードケースにしまう。

 

「……私からも一つ忠告しておく」

 

「忠告? 何だ……?」

 

「この先、一筋縄じゃいかない事が続くかもしれない、けど、そのために力に呑まれないことね。でないと、逆になにも守れなくなるわよ」

 

 蘭の指摘は、恐らくはこの先の物語についての事だろうということは何となく分かった。

 

「……あぁ。俺は少なくとも、遊矢が暴れた時には……周りへの被害は…………それと、遊矢自身への被害も……すべてを最低限に抑える。その為にも……俺は力には呑まれないようにするさ」

 

「……ちょっとまちなさい、その言い方、全てを知ってる訳じゃないのね?」

 

「遊牙君、君はいったい、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……そう、だな。舞網チャンピオンシップス終了後、と言えばいいかな。シンクロ次元へ旅立つ所までは見た。その後にカードを買いに行って、それ以降は話した通り、だな」

 

 なるほどなるほど……つまり、

 

「……そうか、てことは『LL』を使うのは不味かったな……」

 

「……蓮、自分でそういうのはダメだって言ってたくせに……」

 

「そうだったな。俺はてっきり、蘭たちと一緒で全部を知ってるのかと思ったからよ。あ、言っとくがその事は一切口にする気はねぇぞ?」

 

「……一応聞くが、何故?」

 

「言ったら悪いが、遊輔さんみたいに、本来なら居るはずのない人間まで居るんだ、てことは未来が同じと決まってないし、何より未来ってのは自分で見つけるから良いもんだろ?」

 

 俺はニヤリと笑って遊牙に手を差し出す。

 

「今日は負けたが、次は勝つ。アクションデュエルで負けて、得意のスタンディングでまで負けるわけにいかねぇからな、覚悟して腕を磨いておけよ」

 

「そん時があれば……その時は次も勝たせてもらうさ」

 

 遊牙も俺の手をがっしりと掴み、握手を交わすのだった。

 

 

 

「……さて、本日は有意義な時間、感謝させて貰う」

 

 あのあと、塾の面々とデッキについて話したりと、時間があっという間に流れ、気付けば夕方近くになっていた。

 

「こちらこそ、とても塾生にとってもそして自分にとっても有意義な時間だった。とても感謝している」

 

 遊輔は笑って返す。そして塾のドアを開けた時……一閃の光が突然ドアの向こうより光り、俺達はあっという間に意識を失った。意識を失う寸前、先程発生した光とは別の小さな光が自分の方へと向かっているような感覚を俺は覚えたが、意識はあっという間にブラックアウトした。

 

 

 

 

 

「ん……あれ?俺の部屋?」

 

 いつの間にか寝ていたのか、机の上に寝ていたらしい俺は、重たい頭を持ち上げて軽く伸びをする。

 

「なんかすげぇデュエルした気がするような……ってあれ?なんで俺、亮のコート着てるんだ?」

 

 何となく意識が曖昧だったが、とりあえずコートを脱いで部屋着に着替える。

 

「夢だったのか……?いや、でも……」

 

 そんなときだった。聞きなれたインターホンが聞こえ何事かと思うと、見慣れた蘭の姿がそこにあった。

 

『……ごめん、お腹すいたから……料理お願いしてもいい?』

 

「たく、またかよ!!」

 

 大慌てで部屋着に着替え、ドアの前にいる蘭を迎えにいく。

 

「けど、まぁいいデュエルだった気がするな……」



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2 地区予選開幕
第十八羽 飛び交うは獣と剣


『これより、高校生デュエルモンスターズ、関東地区予選を開始いたします』

 

 そんな大会関係者の挨拶を聞きながら、俺はハッキリと分かるほどのため息をついた。

 

「……蓮、いきなりため息は作品的に不味いよ?」

 

「メタイ、ていうか誰のせいだ誰の」

 

 後ろに並ぶ蘭のその小さな言葉に、俺も小さくそう返す。

 

「そうは言うけど、予選ブロック一試合目は私も蓮も試合無いでしょ?」

 

「その分データ取りが大変なんだよ。相手のデッキ調べてこいなんてさ……」

 

「大丈夫さ、一試合目はタッグ戦も無かったし、それに僕も一緒にいくからさ」

 

 そういう祐司先輩も声からして若干苦笑いだ。まぁ当然だろう、何せうちのプロタイトルホルダーを、あの社長が無理矢理大会に出られるように直訴してチーム入りさせたんだしな……。っと、

 

「ん?そろそろ終わりかな……」

 

「ふむ、ならば我々は控え室に向かうとしようかな」

 

 そういう剱菜先輩と肩をコキコキと鳴らしてる椿姫先輩、そしてどこかやつれ顔の亮……って何があった?

 

「……『暗黒魔轟影エグゾ』作ろうとしたら昨日一昨日の休日と三徹しちまいました」

 

「……あほかお前?」

 

 『暗黒魔轟影エグゾ』って、アレか?『魔轟神』と『シャドール』も組み合わせて一気にドローしてエグゾするのか?絶対シナジーしないからそれ……

 

「……まさかそれで大将戦やるようならすぐに変わるぞ?」

 

「安心してください、そんな馬鹿なことはしないっすよ」

 

「……ならいいけどよ」

 

 まぁどっちみち、先鋒は椿姫先輩だし、それなりに大活躍してくれるだろ。

 

「あれ?そういえばうちの学校って名前なんだっけ?」

 

「今更っすか!?」

 

「まったく、私立聖奏学園だ……」

 

 普通に普通な名前でした。

 

 

 

『これより、地区予選Oブロック第一試合、聖奏学園対闇光字高校の対戦を始めます。先鋒シングルマッチの対戦者はフィールドに出てください』

 

「さて、派手にぶちかましてきますか」

 

 私は軽く伸びをしながら、デュエルディスクを展開する。

 

「ち、雑魚が相手かよ……」

 

「……む、どういう意味かしら?」

 

「そのままの意味だよ、折角プロタイトルホルダーと、あのタイトルチャンプに勝ったやつが居るチームだ、つまり二人以外はそこまでじゃねえってことだろ?」

 

 ……まぁ確かに、言いたいことは分かるし、戦えるならプロの対戦データ採ろうって気持ちも分かる。二人に比べたら実力は微妙だってことも。

 

 けど、それでも、頭のなかで何かがプチりと弾けとんだ。

 

「へぇ~なら貴方達は、そのプロすらフィールドに立たせることが出来ないくらいの弱者って、自分で認めたようなもんじゃないのかしら?」

 

「!!言わせておけば!!」

 

 相手も怒り心頭でデッキを構える。

 

「それでは、先鋒戦開始!!」

 

「「デュエル!!」」

 

 

闇光字先鋒 LIFE8000

椿姫 LIFE8000

 

 

「俺のターン!!俺はモンスターをセット!!カードを二枚伏せてターンエンド!!」

 

 

闇光字先鋒 LIFE8000 手札二枚

フィールド

セットモンスター

伏せカード二枚

 

 

 なるほど、初手はまずまずって所ね。

 

「私のターン!!ドロー……私は『カグツチ・ドラグーン』を攻撃表示で召喚!!」

 

『カグツチ・ドラグーン』 ☆4 A1900

 

「バトル!!『カグツチ・ドラグーン』でセットモンスターを攻撃!!」

 

「破壊されたのは『シャインエンジェル』!!よって俺はその破壊時効果で、デッキから『ビクトリー・バイパー XX3』を特殊召喚!!」

 

『ビクトリー・バイパー XX3』 ☆4 A1200

 

「【超時空戦闘機】……なるほどね、私は『カグツチ・ドラグーン』の効果、このカードがバトル宣言したことで一枚ドロー!!」

 

「アタックドローモンスター!?そんなカードがあるなんて」

 

「残念だけど、このモンスターはダイレクトアタックは出来ないのよね、私はカードを三枚伏せて、ターンエンド」

 

「このエンドフェイズに、俺は永続罠『空中補給』を発動しトークンを特殊召喚し、その後、コストとしてリリースする!!」

 

 

椿姫 LIFE8000 手札三枚

フィールド

『カグツチ・ドラグーン』 A1900

伏せカード三枚

 

 

 ふーん、【トークンデッキ】ね……珍しいものも使うわね。

 

「俺のターン、ドローだ!!俺はまず『幻獣機メガラプター』を通常召喚!!そして『空中補給』の効果で、フィールドに『幻獣機トークン』を特殊召喚!!」

 

『幻獣機メガラプター』 A1900

『幻獣機トークン』 A0

 

「さらに『メガラプター』の効果で、『幻獣機トークン』をもう一体特殊召喚!!バトル!!『ビクトリー・バイパー XX3』で『カグツチ・ドラグーン』を攻撃!!」

 

「(コンバットトリックアリね、これは)罠カード『重力解除』を発動!!フィールドのモンスター全ての表示形式を変更する!!」

 

「(く、伏せていた『収縮』が……)けど、俺はメインフェイズ2に入る!!手札より『愚かな埋葬』を発動し、『E・HEROプリズマー』を墓地へ」

 

「『プリズマー』?」

 

 おかしい、『幻獣機』といい『超時空戦闘機』といい、どう見てもトークン主体の戦法の筈なのに……

 

「そして伏せカード『リビングデッドの呼び声』で『プリズマー』を復活!!その効果を発動!!エクストラデッキの融合モンスターを相手に見せ、デッキからその融合モンスターの素材に指定されてるモンスターを墓地へ送ることで、そのモンスターとして扱う!!俺は『Dragoon D-END』を選択!!」

 

「な!?」

 

 で、『D-END』!?な、懐かしいというかなんというか……。ていうか構成メチャクチャじゃない!!

 

「そしてこの効果で、俺は『ドグマガイ』を墓地へ送る。さらに手札から『マジックプランター』を発動!!『空中補給』をリリースして、二枚ドロー!!」

 

 く、流石に止めるカードが無いわね。というか、どういうデッキ構成してるのよあれ!!

 

「そしてフィールドの『幻獣機トークン』2体と、『幻獣機メガラプター』をリリースして、『D・HERO Bloo-D』を特殊召喚!!」

 

『D・HERO Bloo-D』 A1900

 

「『Bloo-D』の効果で、その『カグツチ・ドラグーン』を装備!!そして魔法カード『強欲で貪欲な壺』を発動!!デッキから十枚除外し、二枚ドロー!!」

 

「く……」

 

「来た来た!!俺は手札から『融合』を発動!!『プリズマー』と『Bloo-D』を融合!!現れろ!!『dragon D-END』!!」

 

『dragon D-END』 A3000

 

「俺はこれでターンエンドだ。」

 

 

闇光字先鋒 LIFE8000 手札一枚

フィールド

『D-END』 A3000

伏せカード(『収縮』)

 

 

「私のターン!!ドロー!!」

 

 さて、この場面下手したら大変なことになりそうね……。

 

「(ま、関係ないけど)私は伏せカード『テラフォーミング』を発動し、『KYOOTOUウォーターフロント』を手札に加えて、発動!!」

 

「な!?【壊獣】デッキ!?」

 

「ただの壊獣じゃないわよ!!さらに手札のカードと伏せカードオープン!!永続魔法『壊獣の出現記録』!!永続罠『壊獣捕獲大作戦』!!」

 

 私のシングルデッキはバトスピの赤をサポートに置いた【純壊獣】、一応色々と派生は組み込んだりするけど、これが一番性に合うのよね。

 

「そして私は『D-END』をリリースして、『海亀壊獣ガメシエル』を、相手フィールドに特殊召喚!!」

 

『海亀壊獣ガメシエル』 A2200

 

「そんな!!俺の『dragon D-END』が!?」

 

「カードがリリースされたことと『壊獣』が特殊召喚されたことにより、『KYOOTOUウォーターフロント』と『壊獣の出現記録』に壊獣カウンターを一つ乗せる。さらに相手フィールドに『壊獣』が存在するので、手札の『壊星壊獣ジズキエル』を特殊召喚!!」

 

『壊星壊獣ジズキエル』 A3300

 

「再び『壊獣』が特殊召喚されたことにより、『壊獣の出現記録』に一つカウンターを乗せる。バトルだ!!『ジズキエル』で『ガメシエル』を攻撃!!」

 

「(くそ、『ジズキエル』には相手一体を対象にした効果を無効にしたうえに、俺のフィールドのカードを一枚除去できちまう!!そうなったら『ガメシエル』を破壊されてダイレクトアタックになっちまう!!)伏せカードは発動しない!!グォォォ!!」

 

闇光字先鋒 LIFE8000→6900

 

「(伏せカードを使わないなら、ここは一先ず温存ね)私はリバースカード『転生の預言』を発動!!互いの墓地のカード……『dragon D-END』と『ガメシエル』をデッキに戻すわ」

 

「そんな!?」

 

 フフフ、墓地の『D-END』なんて、除外かデッキに戻しちゃえばなにもできなくなるだけだしねぇ?

 

「フフフ、私はこれでターンエンド」

 

 

椿姫 LIFE8000 手札一枚

フィールド

『壊星壊獣ジズキエル』 A3300

『KYOOTOUウォーターフロント』 フィールド魔法

『壊獣の出現記録』 永続魔法

『壊獣捕獲大作戦』 永続罠

 

 

「お、俺のターン!!……俺はモンスターをセット、ターンエンド」

 

闇光字先鋒 LIFE6900 手札一枚

フィールド

セットモンスター

伏せカード(収縮)

 

 

「私のターン!!……そうね~、私は速攻魔法『サイクロン』を発動!!その伏せカードを破壊!!」

 

「くそ!!ただで負けるか!!速攻魔法『収縮』!!対象は『ジズキエル』を」

 

「『ジズキエル』の効果を発動!!その効果を無効にして、そのセットモンスターを破壊する!!」

 

 セットされてたのは……『D-HERO ダイアモンドガイ』?これだったら普通に攻撃表示で出せばもしかしたらワンチャンあったかもしれないのに……バカだねー。

 

「(まぁ切り札を簡単に除去されたらこうもなるわね)さらに装備魔法『魔導師の力』を『ジズキエル』に装備!!バトル!!『ジズキエル』でダイレクトアタック!!」

 

「ぬぁぁぁぁ!?」

 

闇光字先鋒 LIFE6900→2600

 

「ぐ、だがこれで……」

 

「悪いけど終わりじゃないわよ!!永続魔法『壊獣の出現記録』の効果!!『ジズキエル』を破壊して、デッキから『多次元壊獣ラディアン』を特殊召喚!!」

 

『多次元壊獣ラディアン』 A2800

 

「バトルフェイズに特殊召喚されたこのモンスターは攻撃できる!!殺っちゃいなさい『ラディアン』!!そして私達の事を雑魚なんて呼んだ事を後悔するといいわ!!ボルケーノ・テンプル!!」

 

「うぁぁぁぁ!!」

 

闇光字先鋒 LIFE2600→0

 

 

「そこまで!!先鋒戦、聖奏学園の勝利!!」

 

 審判がそう告げると、相手の先鋒は放心したようにへたりこみ、私はそれに一瞥をくれることなく控えベンチに戻る。

 

「やれやれ、いつになく本気だったな」

 

「当然よ、私達三年を、あの二人に比べて雑魚だから楽勝なんてふうに言われて、はいそうですねって簡単に折れるほど、人間できちゃいないもの」

 

 寧ろなけなしの闘争心という火にダイナマイトぶちこんでくれた気分よ。

 

「ほら、次あんたなんだからさっさと倒してきなさいよ」

 

「分かってるさ。それなりに準備はしてある」

 

 そういうと剱菜がディスクにセットしたのは……マジ?

 

「あんた、本気でやりなさいよ?」

 

「大丈夫さ、それに、あちらもいきなりの黒星で動揺してる筈さ。冷静でない相手など数のうちにもならないさ」

 

 そう言って剱菜はデュエルフィールドに立ち上がる。

 

「これより中堅戦を開始します!!」

 

「「デュエル!!」」

 

 

闇光字中堅 LIFE8000

剱菜 LIFE8000

 

 

「負け先を貰うぜ!!俺は魔法カード『融合賢者』を発動!!デッキから『融合』をサーチ!!そしてモンスターをセット、カードを二枚伏せてターンエンド!!」

 

闇光字中堅 LIFE8000 手札二枚

フィールド

セットモンスター

伏せカード二枚

 

 

「ふむ、私のターン!!私は『聖騎士モルドレッド』を召喚!!」

 

『聖騎士モルドレッド』 ☆4 A1700

 

「さらに装備魔法『聖剣カリバーン』を装備し、バトル!!『モルドレッド』で守備モンスターを攻撃!!」

 

「罠カード『マジカルシルクハット』!!この効果で、二枚の『おジャマジック』をモンスター扱いでセットする!!」

 

「なに!!」

 

 まさか【おジャマ】で来るとはな……物好きも居るものだが……まぁいい。

 

「これで攻撃対象が増えたから、巻き戻しが発生!!さぁ、どれを選ぶ!!」

 

「……ならば右側を選択しよう」

 

「右の守備モンスターは……『おジャマブルー』!!大当たりってな!!」

 

 どこが大当たりだ。私からしたら大外れも良いところだぞ。

 

「俺は破壊された『おジャマブルー』の効果で、デッキから『おジャマカントリー』と『おジャマデルタハリケーン』を手札に加える。さらにバトルフェイズ終了で、破壊された2枚の『おジャマジック』の効果で、デッキからそれぞれ二枚ずつ『おジャマグリーン』『ブラック』『イエロー』を手札に加える」

 

「く、私はカードを一枚伏せ、『カリバーン』の効果でライフを500回復しターンエンドだ」

 

 

剱菜 LIFE8500 手札二枚

フィールド

『聖騎士モルドレッド』 A2200

『聖剣カリバーン(モルドレッド装備)』 装備魔法

 

 

「俺のターン、ドロー!!俺はまずフィールド魔法『おジャマカントリー』を発動!!そして『おジャマレッド』を通常召喚!!」

 

『おジャマレッド』 ☆2 A0

 

「『おジャマカントリー』の効果で、おジャマが存在することで攻撃力と守備力が永続的に入れ替わる!!そして『レッド』の効果で、手札の『イエロー』、『グリーン』を1体ずつ、『ブラック』を2体特殊召喚!!」

 

『おジャマレッド』 A1000

『おジャマイエロー』 A1000

『おジャマブラック』 A1000

『おジャマグリーン』 A1000

 

「三体の『おジャマ』が揃ったことで、俺は手札の『おジャマデルタハリケーン』を発動!!」

 

「罠カード『スターライト・ロード』!!二枚以上破壊する効果が発動したとき、その効果を無効にして破壊する!!その後、エクストラデッキの『スターダスト・ドラゴン』を特殊召喚!!」

 

『スターダスト・ドラゴン』 D2500

 

「く、だがまだだ!!俺は『レッド』と『イエロー』、『ブラック』と『グリーン』それぞれ2体ずつでオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ!!ランク2!!『ガチガチガンテツ』!!」

 

『ガチガチガンテツ』×2 ★2 A 1800

 

「『ガチガチガンテツ』はORUの数だけ、攻撃力と守備力が200アップする!!よって2体いるため」

 

『おジャマブラック』 A1000→1800

『ガチガチガンテツ』 A1800→2600

 

「く、『スターダスト』を超えてきたか」

 

「まだだ!!魔法カード『融合』を発動!!手札の『イエロー』と『グリーン』、そしてフィールドの『ブラック』で融合!!現れろ!!『おジャマキング』!!」

 

『おジャマキング』 A3000→3800

 

「『おジャマキング』の効果で、相手の空いてるフィールドを使用不能に!!バトルだ!!『おジャマキング』で『モルドレッド』を攻撃!!」

 

「ぬぅ!!」

 

剱菜 LIFE8500→6200

 

「続けて『ガンテツ』で『スターダスト』を破壊!!さらにもう一体で攻撃!!」

 

「ぐ!!」

 

剱菜 LIFE6200→3600

 

「メインフェイズ2、俺は『おジャマカントリー』の能力で、手札の『手札抹殺』を墓地へ送って、墓地から『おジャマブルー』を特殊召喚し、ターンエンドだ」

 

 

闇光字中堅 LIFE8000 手札二枚

フィールド

『おジャマキング』 A3800

『おジャマブルー』 A1800

『ガチガチガンテツ』×2 A2600

『おジャマカントリー』 フィールド魔法

伏せカード

 

 

 まさかあの気色悪いモンスターを主軸として来るとはな……こいつらそんなに私達を煽りたいようだな。

 

「私のターン、ドロー!!……私は『ハーピィの羽箒』を発動!!魔法カードを全て破壊する」

 

「(ぐ、『ミラーフォース』が)『おジャマカントリー』が消えたことにより、攻撃力と守備力はもとに戻る」

 

『おジャマブルー』 A800

『おジャマキング』 A800

『ガチガチガンテツ』×2 A 1300

 

「さらに『伝説の予言者マーリン』を召喚!!」

 

『伝説の予言者マーリン』 ☆3 A1400

 

「『マーリン』の効果!!このカードをリリースして、デッキから『聖騎士モルドレッド』を特殊召喚!!さらにフィールドに光属性通常モンスターが存在することで、手札の『聖騎士ガウェイン』を特殊召喚!!」

 

『聖騎士モルドレッド』 A1700

『聖騎士ガウェイン』 A1900

 

「バトルだ!!『ガウェイン』で『ガチガチガンテツ』1体を攻撃!!」

 

「『ガチガチガンテツ』のORUを使って、破壊を無効にする」

 

「だがダメージは受ける!!」

 

闇光字中堅 LIFE8000→7400

 

「『ガチガチガンテツ』のORUが一つ減ったことにより、攻撃力が200下がる」

 

「続けて『モルドレッド』でもう一体の『ガチガチガンテツ』を攻撃!!」

 

「『ガチガチガンテツ』の効果!!」

 

闇光字中堅 LIFE7400→6800

 

「ORUが一つ減ったことにより、攻撃力はまた200ダウンする」

 

「さらに墓地の『マーリン』を除外し、2体のモンスターでオーバーレイ!!現れろ!!『聖騎士王アルトリウス』!!」

 

『聖騎士王アルトリウス』 A2000

 

「『アルトリウス』の効果!!墓地の『聖剣カリバーン』を装備し、その効果で攻撃力500アップ!!バトル続行!!『アルトリウス』で『おジャマキング』を攻撃!!勝利すべき黄金の剣(カリバーン)!!」

 

「それ作品違うだろうぁぁぁぁ!!」

 

闇光字中堅 LIFE6800→4700

 

 ふん、これであの気色悪い白い目玉を切り潰した事だ。次からはもう少し展開できるようにしないとな。

 

「メインフェイズ2、私は『カリバーン』でライフを回復し、ターンエンドだ」

 

 

剱菜 LIFE3600 手札0枚

フィールド

『聖騎士王アルトリウス』 A2500

『聖剣カリバーン(アルトリウス装備)』 装備魔法

 

 

「く、俺のターン、ドロー!!……俺はモンスターを全て守備表示に変更!!さらにモンスターをセットしてターンエンド!!」

 

闇光字中堅 LIFE4700 手札二枚

フィールド

『おジャマブルー』 D1400

『ガチガチガンテツ』×2 D2200(ORU×1×2)

セットモンスター

 

「私のターン!!私は手札から『増援』を発動!!デッキから『聖騎士ガウェイン』を手札に加え、召喚!!バトル!!『ガウェイン』と『アルトリウス』で『ガチガチガンテツ』2体をそれぞれ攻撃!!」

 

「ORUをそれぞれ一つずつ使う!!守備表示だからダメージも無しだ!!」

 

「だがこれで、次は無いぞ?『カリバーン』の効果を発動してターンエンド」

 

 

剱菜 LIFE4100 手札0

フィールド

『聖騎士王アルトリウス』 A2500

『聖騎士ガウェイン』 A1900

『聖剣カリバーン(アルトリウス装備)』 装備魔法

 

 

「俺のターン!!……モンスターをセットしてターンエンド」

 

 

闇光字中堅 LIFE4700 手札二枚

フィールド

『おジャマブルー』 D1000

『ガチガチガンテツ』×2 D1800

セットモンスター

 

 

「私のターン!!……私は『エフェクト・ヴェーラー』を召喚!!そしてレベル4『聖騎士ガウェイン』にレベル1チューナー『エフェクト・ヴェーラー』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『魔聖騎士皇ランスロット』!!」

 

『魔聖騎士皇ランスロット』 ☆5 A2000

 

「『ランスロット』がシンクロ召喚されたとき、デッキから『聖剣アロンダイト』をランスロットに装備!!よって攻撃力は3000となる!!バトル!!2体で『ガチガチガンテツ』を攻撃!!」

 

「ぐ、くそ、この役立たず……」

 

「自分のモンスターを役立たずとは、見下げたものだな。『ランスロット』が相手を破壊したことにより、デッキから『聖剣EX-カリバーン』を手札に加える。これでターンエンドだ」

 

 

剱菜 LIFE4100 手札1枚(EX-カリバーン)

フィールド

『聖騎士王アルトリウス』 A2500

『魔聖騎士皇ランスロット』 A3000

『聖剣カリバーン(アルトリウス装備)』 装備魔法

『聖剣アロンダイト(ランスロット装備)』 装備魔法

 

 

「俺のターン!!……俺はカードをセットしてターンエンド」

 

 

闇光字中堅 LIFE4700 手札二枚

フィールド

『おジャマブルー』 D1000

セットモンスター

伏せカード

 

 

「(伏せが来たか)私のターン!!この瞬間、『アロンダイト』を装備した『ランスロット』の攻撃力が200ダウンする……私は『アルトリウス』の効果発動!!ORUを一つ使い、フィールドの聖剣と名のつくカードの枚数まで、フィールドの魔法、罠カードを破壊できる!!私はその伏せを破壊する!!」

 

「くそ、『魔法の筒』が!!」

 

「さらに手札から『死者蘇生』を発動!!墓地より蘇れ『モルドレッド』!!さらに『モルドレッド』に『EX-カリバーン』を装備し、効果発動!!デッキから『魔聖騎士ランスロット』を守備表示で特殊召喚し、『聖剣アロンダイト』を破壊する!!」

 

『魔聖騎士ランスロット』 ☆5 D800

 

「『アロンダイト』が破壊されたとき、フィールドの『聖騎士』に装備する!!これにより『魔聖騎士皇ランスロット』に再装備!!攻撃力3000にアップ!!そして『聖剣』を装備した『モルドレッド』のレベルは一つ上がる!!私はレベル5となった『モルドレッド』と『魔聖騎士ランスロット』をオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ!!『神聖騎士王アルトリウス』!!」

 

『神聖騎士王アルトリウス』 ★5 A2200

 

「『アルトリウス』の効果で、墓地の『EX-カリバーン』を装備!!そしてORUを一つ使い、セットモンスターを破壊する!!」

 

「『おジャマブルー』!!」

 

 おい、まさか伏せてたモンスターも『おジャマブルー』だったのか……それはそれで想定外だったな。

 

「まぁ関係ない!!バトル!!『ランスロット』で『おジャマブルー』を破壊!!」

 

「ぐう……だが効果でデッキから『おジャマカントリー』と『おジャマンドラ』を手札に」

 

「次があると思うなよ!!2体の『アルトリウス』アルトリウスで攻撃!!約束された勝利の剣(エクスカリバー)&勝利すべき黄金の剣(カリバーン)!!」

 

「それなんてオーバーキール!!」

 

闇光字中堅 LIFE4700→2200→0

 

 

 

「そこまで!!中堅戦、勝者聖奏学園!!よってOブロック第一試合、2:0で聖奏学園の勝利」

 

 さて、初戦はこんなものか……ふむ、満足満足!!



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第十九羽 闇招く獄の者達

「お疲れさまっす、先輩方」

 

 試合が終わった直後、俺らは先輩たちと合流していた。

 

「おおすまないな。それで、そちらの見立てはどうだった?」

 

「う~ん微妙っすかね?単純にシングルだけなら負けるほどのもんじゃあないって感じで」

 

「そうか。たしか次はシングル、ダブル、シングルの順番だったが……どうする?」

 

 先輩がそう聞くと、

 

「う~ん、まぁ僕ら三人は確定として……ついでにまだ試合してない亮を組み込もうかな?」

 

「まぁそれが妥当ね。なら蓮のデッキは闇で亮とのダブルス、先鋒は蘭、大将に裕介が入りなさい」

 

 ……なんかトントン拍子に決まっていくな。

 

「ていうか、今日闇デッキ持ってきてないっすよ?」

 

「んな!!アンタあれ予備のデッキじゃないの!!他になんか「代わりに亮とのタッグ用に組んだデッキはありますけど」……それなら別に良いわよ」

 

「すんません、あ、亮今回なんだけど『スキドレ』の枚数一枚減らしてくれない?」

 

「兄貴がそういうなら……というか、どんなデッキ組んだんすか?」

 

「……それは試合でのお楽しみだ」

 

 

 

「バトル!!『えん魔竜レッド・デーモン』で攻撃!!」

 

「ぬぁぁぁぁぁ!!」

 

「そこまで!!先鋒戦は聖奏学園の勝利!!」

 

 正しく瞬殺というように蘭が相手に勝つと、周りから歓声が沸き上がる。何故かキングコールもなってるが、それを蘭は

 

「キングは一人!!この私だ!!」

 

 というある意味ではお約束なキング芸で答えている。

 

「さて、次は俺らだぜ、亮」

 

「うっす!!」

 

 俺達はそう気合いを入れ直すと、デッキをセットしてフィールドに上がる。

 

「くそ、ここまで全敗してんだ!!ここは無理でも勝つぞ!!」

 

「おうっす!!」

 

 どうやら相手の方も気合い十分といったようだった。

 

「それでは中堅戦タッグデュエル、開始です!!」

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

敵タッグA&B LIFE8000

蓮&亮 LIFE8000

 

「先行は俺だ!!俺は『ナチュル・パンプキン』を通常召喚!!」

 

『ナチュル・パンプキン』 ☆4 A1400

 

(なるほど、【ナチュルロック】か)

 

「『パンプキン』の効果発動!!手札から『ナチュル』モンスターを特殊召喚できる!!俺は『ナチュル・チェリー』を特殊召喚!!」

 

『ナチュル・チェリー』 ☆1 A200

 

「俺はレベル4の『ナチュル・パンプキン』にレベル1の『ナチュル・チェリー』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『ナチュル・ビースト』!!」

 

『ナチュル・ビースト』 ☆5 A2200

 

「いきなりビーストかよ!!」

 

「まだだ!!手札から魔法カード『暗黒界の取引』を発動!!これで俺と、そっちのエンドプレイヤーの鳥使いは互いに一枚引いてその後捨てる!!」

 

A 手札2→3→2

蓮 手札5→6→5

 

「そして、手札から墓地へ送られた『ナチュルの神星樹』の効果で、デッキから『ナチュル・アントジョー』を手札に加え、さらに魔法カード『二重召喚』!!これにより手札の『アントジョー』を通常召喚!!」

 

『ナチュル・アントジョー』 ☆2 A400

 

「俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド!!(『ナチュル・ビースト』が居る限り、相手が魔法カードを使えることはない!!これでほとんどなにもできまい!!)」

 

 

タッグA&B 手札0:5 LIFE8000

フィールド

『ナチュル・ビースト』

『ナチュル・アントジョー』

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン!!……よし、俺は『シャドール・リザード』を通常召喚!!」

 

『シャドール・リザード』 ☆3 A800

 

「そして速攻魔法『超融合』を発動!!」

 

「バカめ!!『ナチュル・ビースト』の効果を」

 

「『超融合』に対して、互いはいかなるカードも発動できない!!よって『ビースト』の効果も発動できない!!」

 

「ナイスだ!!亮!!」

 

 『ナチュル・ビースト』の効果の弱点、それは罠カードや火力とあるが、開始ターンでそんなことはまず難しい、だが『超融合』なら『ビースト』の効果も使えず、なおかつ除去できる。

 

「手札の『暗黒界の狩人 ブラウ』を捨て、フィールドの『ナチュル・リザード』と『シャドール・リザード』を融合!!現れろ!!『エルシャドール・シェキナーガ』!!」

 

『エルシャドール・シェキナーガ』 ☆10 A2600

 

「『リザード』、『ブラウ』の順で効果発動!!」

 

「そのあとにチェーンして『アントジョー』の効果をチェーンする!!チェーン処理に入って、俺はデッキから『ナチュル・モスキート』を守備表示で特殊召喚!!」

 

『ナチュル・モスキート』 ☆1 D300

 

「なら『ブラウ』の効果で一枚ドロー!!『リザード』の効果で『シャドール・ビースト』を墓地へ送る!!そして墓地へ送られた『ビースト』の効果で一枚ドロー!!」

 

 

亮 手札5→3→4→5

 

 

「そして魔法カード『手札抹殺』を発動!!互いに手札を全て墓地へ捨てて、その枚数分ドロー!!俺は四枚ドロー」

 

「お、俺には手札がない……よってドローはない」

 

「墓地へ捨てた『グラファ』と『スノウ』の効果を発動!!デッキから『暗黒界の門』を手札に加え、その伏せカードを破壊する!!」

 

「罠カード『威嚇する咆哮』!!このターン攻撃宣言できない!!」

 

 ち、ここでそれを使ってきたか……。

 

「……ならフィールド魔法『暗黒界の門』を発動し、効果発動!!墓地の『ブラウ』を除外し、手札の『ページ』を墓地へ捨てて一枚ドロー!!『ページ』の効果で墓地から特殊召喚!!」

 

『暗黒界の尖兵 ページ』 ☆4 A1700

 

「この瞬間!!『アントジョー』の効果でデッキから『ナチュル・スティングバグ』を守備表示で特殊召喚!!」

 

「な!?1ターン1制限無いのかよ!?」

 

『ナチュル・スティングバグ』 ☆3 D500

 

「(くそ、『グラファ』出しても余計に展開されて面倒なことになっちまう)……俺はカードを二枚伏せてターンエンド。すみません兄貴」

 

蓮&亮 手札5:2 LIFE8000

フィールド

『暗黒界の尖兵ページ』 A1700

『エルシャドール・シェキナーガ』 A2600

 

「いや、大丈夫だ。とりあえずこのターン凌ぐぞ」

 

「了解っす!!」

 

「キヒヒ、凌げるかな?俺のターン!!俺は『トリオンの蟲惑魔』を召喚!!」

 

『トリオンの蟲惑魔』 ☆4 A1700

 

「『トリオンの蟲惑魔』の効果!!デッキから『奈落の落とし穴』を手札に加える!!」

 

「【ナチュル蟲惑魔】……コンビでそう来るか」

 

 これはかなり厳しくなってきたぞ……。

 

「そして俺は永続魔法『ナチュルの神星樹』を発動し、『トリオンの蟲惑魔』をリリースして、デッキから『ローンファイア・ブロッサム』を特殊召喚!!」

 

『ローンファイア・ブロッサム』 D 1400

 

「『ローンファイア・ブロッサム』の効果発動!!このカードをリリースして、デッキから『ギガプラント』を特殊召喚!!」

 

『ギガプラント』 A2200

 

「さらにレベル 1『ナチュル・モスキート』とレベル2『ナチュル・アントジョー』にレベル3の『ナチュル・スティングバグ』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『ナチュル・パルキオン』!!」

 

『ナチュル・パルキオン』 A2500

 

「さらに手札から『死者蘇生』を発動!!墓地の『ビースト』を復活!!」

 

「罠カード『奈落の落とし穴』を発動!!」

 

「させるか!!『ナチュル・パルキオン』の効果発動!!墓地の『ナチュルの神星樹』と『二重召喚』を除外してその効果を無効に」

 

「『エルシャドール・シェキナーガ』の効果発動!!特殊召喚されたモンスターの発動を無効にして破壊する!!そして手札の『シャドール・ヘッジホッグ』を墓地へ送る!!よって『パルキオン』の発動は無効になりは破壊され、『ビースト』は『奈落の落とし穴』の効果で除外する!!そして『ヘッジホッグ』を墓地へ送った事で、『リザード』を手札に加える」

 

「ぐ、まだだ!!俺は『異次元からの埋葬』を発動して、『ビースト』を戻す!!そして、『ミラクルシンクロフュージョン』を発動!?」

 

 ……なんか自棄になってるような言い方だな……。

 

「墓地の『ビースト』と『パルキオン』を除外融合!!現れろ!!『ナチュル・エクストリオ』!!」

 

『ナチュル・エクストリオ』 ☆10 A2800

 

「バトルだ!!『ギガプラント』で『ページ』を攻撃!!」

 

「ぬぅ……!!」

 

蓮&亮 LIFE8000→7500

 

「『エクストリオ』で『エルシャドール・シェキナーガ』を攻撃!!」

 

「ぬぁぁぁ!?」

 

蓮&亮 LIFE7500→7300

 

「『シェキナーガ』が破壊されたことにより、墓地の『影衣融合』を手札に加える」

 

「『手札抹殺』で捨てたカードか……まぁいい、俺はカードを一枚伏せてターンエンド!!(伏せカードはさっき加えた『奈落の落とし穴』、これで1500以上のを出そうが一網打尽だ!!)」

 

 

敵タッグA&B 手札0:0 LIFE8000

フィールド

『ナチュル・エクストリオ』 A2800

『ギガプラント』 A2200

伏せカード(奈落)

 

 

「俺のターン!!……よし、俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、『LL-ターコイズ・ワーブラー』を特殊召喚!!」

 

『LL-ターコイズ・ワーブラー』 ☆1 A100

 

「な!?『LL』だと」

 

「(三神さん、早速使わせてもらいます)『LL-ターコイズ・ワーブラー』が特殊召喚に成功したとき、手札または墓地から『LL』を特殊召喚できる!!俺は墓地の『コバルト・スパロー』を特殊召喚!!」

 

『LL-コバルト・スパロー』 ☆1 A0

 

「な!?何時の間にそんなカードを!?」

 

「(お前の相方の『取引』のおかげさ)『コバルト・スパロー』の効果で、デッキから『LL-サファイア・スワロー』を手札に加え、『森林のセッコーキジ』と共に特殊召喚!!」

 

『LL-サファイア・スワロー』 ☆1 A100

『森林のセッコーキジ』 ☆1 A800

 

「速攻魔法『サイクロン』を発動して伏せカードを破壊!!そして『簡易融合』を発動!!」

 

「バカめ!!『エクストリオ』の「伏せカードオープン!!『デモンズ・チェーン』!!これで『エクストリオ』の効果を無効にする」くそが!!」

 

「エクストラデッキから来い!!小夜鳴き鳥の女王よ!!『LL-インディペンデント・ナイチンゲール』!!」

 

『LL-インディペンデント・ナイチンゲール』 A1000

 

「『インディペンデント・ナイチンゲール』の攻撃力はレベル1につき500アップする。が、もう一つ、このモンスターのレベル分のダメージを与える!!よって500ポイントのダメージを与える!!」

 

「こ、こんなもの!!」

 

A&B LIFE8000→7500

 

「まだだ!!俺は『インディペンデント・ナイチンゲール』と『セッコーキジ』をリリースしてアドバンス召喚!!現れろ!!暴虐の巨竜!!『The tyrant NEPTUNE』!!」

 

『The tyrant NEPTUNE』 ☆10 A?

 

「このモンスターの攻撃力はリリースしたモンスターの攻撃力の合計となり、さらに自身の効果で『インディペンデント・ナイチンゲール』を選択、よってその効果をコピーすることで攻撃力アップ!!」

 

『The tyrant NEPTUNE』 A0→1800→6800

 

「そして効果をコピーした『NEPTUNE』の効果で、レベル×500……5000のダメージを与える!!」

 

「ウアァァァァ!?」

 

A&B LIFE7500→2500

 

「まだだぜ、俺はフィールドの『LL』三体でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ!!小夜鳴き鳥の象徴!!『LL-アセンブリー・ナイチンゲール』!!」

 

『LL-アセンブリー・ナイチンゲール』 ★1 A0

 

「『アセンブリー・ナイチンゲール』の攻撃力はORUの数×200となる。そしてORUとなった『サファイア・スワロー』の効果で、墓地の『インディペンデント・ナイチンゲール』をORUにする!!」

 

『LL-アセンブリー・ナイチンゲール』 A0→800

 

「バトルだ!!『アセンブリー・ナイチンゲール』で攻撃力!!」

 

「バカな!!攻撃力800のモンスターで!?」

 

「『アセンブリー・ナイチンゲール』は、ORUの数×1回の攻撃とダイレクトアタックができる!!ソニックスマッシャーヨンレンダァ!!」

 

「「グァァァァァ!?」」

 

A&B LIFE2500→1700→900→100→0

 

 

「そこまで!!中堅戦は聖奏学園の勝利!!よって0:2でマッチウィン!!」

 

 審判のその言葉と共に、観客席から歓声が鳴り響く。

 

「くそ~鳥獣の予想はしてたんだが、まさか『LL』を使うなんて」

 

「俺も組んだばかりのデッキだったからな。もし『NEPTUNE』が手札に来なかったらもう少し時間が掛かってたさ」

 

 実際、三神さんから譲り受けたこれはまだそこまで改良してなく、レベル1だった『セッコーキジ』を数枚入れただけの、デッキバランスも危ないようなデッキだった。

 

「来年は勝たせてもらうぜ鳥使い(バードマスター)

 

「厨二臭いから止めてくれ……」

 

 こうして、俺達は地区予選のブロック突破は確実となった。

 

 

 

 

 

 剱菜視点

 

 信じられない。次の相手のデータを採ろうと来たは良いものの、個人的にそういいたくなるだけの光景が広がっていた。

 

「嘘……でしょ?」

 

 隣に居る椿姫でさえ、驚愕で体が震えている。周りの観客も、同じように恐怖してるのが見てとれる。

 

 それもそうだろう。フィールドは先程までまるで新品だったのに、今では半分……負けた方のフィールドだけがボロボロになっていたのだ。

 

 負けた方の……初戦で戦った闇光字学園のプレイヤーも悲惨だった。大怪我ならばまだ軽い方、酷い奴では精神崩壊をきたしてる者までいた。

 

「……ねぇ、剱菜」

 

「ああ……もしやすれば次の試合……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――負けるだけでは済まないかもしれない

 

『し、勝者……獄将学園』

 

 



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第二十羽 獄へ誘う天使

「……さて、どうしたものかな」

 

 初日が終わり、一度部室に戻ってきた俺たちに、劔菜先輩はため息を吐くようにそう呟く。

 

「……やっぱり、先輩もそう思いますか?」

 

「……そういうと、蓮が偵察した時もそう感じたか?」

 

「当然ですね……というか、対処法が決まったらまず見つからないですし」

 

 そう、それほどまでに凄いものだった。

 

 

 

 数時間前 獄将学園第一試合先鋒戦

 

「これより極将学園対吠総高校の先鋒戦シングルマッチを開始します」

 

「「デュエル!!」」

 

極将先鋒 LIFE8000

吠総先鋒 LIFE8000

 

 始まりはまるで嵐の前の静けさと言うような立ち上がりだった。

 

「俺はフィールド魔法『ユニオン格納庫』を発動し、その効果処理にてデッキから『A―アサルト・コア』を手札に加え、召喚!!」

 

『A―アサルト・コア』 ☆4 A1900

 

「フィールド魔法『ユニオン格納庫』の効果で、『アサルト・コア』に『B―バスター・ドレイク』を装備!!俺はカードを一枚伏せてターンエンド!!」

 

吠総先鋒 手札3枚 LIFE8000

フィールド

『A―アサルト・コア』 A1900

『B―バスター・ドレイク』 ユニオン状態

伏せカード一枚

 

 まずまずな出々し、それが吠総の先鋒に対して思った感想だ。【ABC】デッキの本命たるフィールド魔法を出して、恐らく次のターンには『ABC―ドラゴン・バスター』が出てきてもおかしくない。

 

「私のターン……ドロー」

 

 しかし、そんな状況でも相手の男は……なんの表情も動いてなかった。

 

「……私は手札から魔法カード『マジカルドロー』を発動します。自分は種族を一つ宣言し、デッキトップからカードを五枚確認し、その中に選択した種族があれば手札に加えることができる」

 

 そのカードの出た瞬間、少しだけ嫌な展開を思ってしまった。

 

「(最低一枚、最高だと五枚も手札に加えることができるカードだからな……本来なら『強化』オンリーなはずが、遊戯王らしく修正されたわけか)」

 

「……私は天使族を選択し、カードをチェックします。一枚目、天使族効果モンスター『オリンピアの天使 オク』、二枚目天使族効果モンスター『天使クレイオ』、三枚目速攻魔法『メロディアス・ハープ』、四枚目天士族モンスター『オリンピアの天使 ファレグ』、五枚目天使族効果モンスター『戦神乙女ヴィエルジェ』、よって四枚のカードを手札に加える」

 

「な!?」

 

 俺は驚くほかなかった。間違いない、あのデッキは……

 

「【天使ロック】……」

 

 その言葉が聞こえたのかは分からないが、獄将のプレイヤーはなぜかこちらを見て睨んできた。

 

「……私は手札のスケール8『宝の番人ズラトロック』とスケール1の『大天使イスフィール』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

「ペンデュラムモンスターまで手札に居やがるだと!?」

 

 吠総の先鋒がそう叫ぶが、内心俺も同じ意見だった。まさかこんなところで出てくるとは全くの予想外だった。

 

「天より駆ける翼、気高きラッパを鳴らし進軍せよ、ペンデュラム召喚!!現れろ!!我が手札のモンスター達!!」

 

『オリンピアの天使 オク』 ☆3 A1000

『天使クレイオ』 ☆2 A800

『オリンピアの天使 ファレグ』 ☆5 A2200

『戦神乙女ヴィエルジェ』 ☆6 A2000

 

「『ヴィエルジェ』の召喚、特殊召喚時の効果で、ライフを1000回復、さらに手札から永続魔法『天の階』と『星空の冠』を発動し、バトルフェイズ、『オリンピアの天使 オク』で攻撃します」

 

「攻撃力1000のモンスターで攻撃だと!?跳ね返せ『アサルト・コア』!!」

 

「いえ、『オリンピアの天使 ファレグ』が召喚、特殊召喚されたターン、天使族モンスターはダイレクトアタックが出来ます、よってモンスター同士のバトルは発生しません」

 

「なんだと!?」

 

吠総先鋒 LIFE8000→7000

 

 そう、これが『オリンピア』シリーズのエースモンスター、『ファレグ』の能力だ。召喚されたターンの天使族限定とはいえ、ダイレクトアタック効果を付与するという点から、今もなおデッキにピン刺しされていてもおかしくない強力なモンスターなのだ。

 

(加えて、奴のフィールドには『ヴィエルジェ』、『ズラトロック』、『オク』と、強力なロックモンスターも多数あるからな)

 

「続けて『天使クレイオ』でダイレクトアタックします」

 

「くそ!!罠カード『聖なるバリア―ミラーフォース』を発動!!これでお前の全てのモンスターは破壊だ!!」

 

 確かにその通りだ。あのデッキに恐らく耐性効果を持つモンスターは存在しない、が、それと同時に一番の悪手だ。

 

「『ヴィエルジェ』の効果、天使族モンスターが破壊されるとき、墓地ではなく手札に戻す。この対象には『ヴィエルジェ』自体も含まれてるため、四体全てを手札に戻す」

 

「な!!そんなのチートじゃねぇか!!」

 

 だがそれこそがあのデッキが、環境的に古くなった今でもバトスピ界で活躍できる由縁だ。破壊しても手札に戻り、コアさえあれば再展開、さらにライフを回復と防御無視の攻撃、まさに鬼のようなデッキなのだ。加えて、

 

「破壊された『天使クレイオ』の効果で一枚ドロー。私はモンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

極将先鋒 手札4枚 LIFE9000

フィールド

セットモンスター

『天の階』 永続魔法

『星空の冠』 永続魔法

伏せカード一枚

『宝の番人ズラトロック』 赤P8

『大天使イスフィール』 青P1

 

「俺のターン!!俺はユニオンしている『B―バスター・ドレイク』を特殊召喚し、『ユニオン格納庫』の効果で、『C―クラッシュ・ワイバーン』を『バスター・ドレイク』にユニオンし、三枚を除外!!機械合神!!『ABC―ドラゴン・バスター』!!」

 

『ABC―ドラゴン・バスター』 ☆10 A3000

 

「さらに『ゴールド・ガジェット』を通常召喚!!」

 

『ゴールド・ガジェット』 A1700

 

「『ゴールド・ガジェット』の効果で、手札の『アサルト・コア』を特殊召喚し、バトルだ!!『アサルト・コア』で守備モンスターを攻撃!!」

 

「守備モンスターは『天使クレイオ』、破壊されたので一枚ドロー」

 

「続けて『ドラゴン・バスター』でダイレクトアタック」

 

極将先鋒 LIFE900→6000

 

 ダイレクトアタックの衝撃を、奴はまるで何ともないように立ち続ける。

 

「『星空の冠』の効果発動、自分が1000以上の戦闘ダメージを受けたとき、デッキから一枚ドローする。そしてそのカードがレベル2以下なら特殊召喚できるが……生憎と違う」

 

「そのすまし顔が何時まで続くかよ!!『ゴールド・ガジェット』でダイレクトアタック!!」

 

 男はそういうが、ゴールドガジェットはピクリとも動かず、まさしく直立不動になっていた。

 

「な、なんで攻撃しねぇ!!」

 

「『宝の番人ズラトロック』のペンデュラム効果、相手のレベル及びランク3/4のモンスターのダイレクトアタックを封じる。ちなみにモンスター効果はレベル及びランク7/8のモンスターの攻撃を封じる」

 

 その説明に、会場が一層ざわめき出す。効果自体は聞いたことがあった俺も、まさか本物を見ることになるとは思ってもいなかった。

 

「くそ!!なら俺はメイン2に入り、レベル4の『アサルト・コア』と『ゴールド・ガジェット』でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ!!『武神帝―ツクヨミ』!!」

 

『武神帝―ツクヨミ』 ★4 D2300

 

「カードを一枚伏せ、『ツクヨミ』の効果発動!!ORUの『アサルト・コア』を墓地へ送り、残りの手札を墓地へ送り、二枚ドロー!!……俺はさらにカードを一枚伏せ、ターンエンド!!(伏せたカードは『激流葬』と二枚目の『ミラーフォース』、これでペンデュラムしようが、攻撃しようがぶっ潰してやる!!)」

 

吠総先鋒 手札1枚 LIFE7000

フィールド

『ABC―ドラゴン・バスター』 A3000

『武神帝―ツクヨミ』 D2300

伏せカード二枚(『激流葬』、『ミラーフォース』)

 

 何となく伏せカードが地雷な気がしてなら無いが、やはり俺は獄将のプレイヤーが勝つという感覚があった。

 

「私のターン……私は手札から『強欲で貪欲な壺』を発動」

 

「……確か、デッキから10枚除外して二枚ドローする奴か」

 

 そう、本来ならその通りだが、あのフィールドには『イスフィール』が存在する

 

「『大天使イスフィール』がPゾーンに存在する限り、私が発動する魔法カードにコストは発生しません」

 

「な!!それじゃあただの『強欲な壺』じゃねぇか!?」

 

 その通りなのだが、それ以上に厄介なのはもう一つの効果のほうだ。

 

「さらに手札から速攻魔法『サイクロン』を発動、貴方の伏せカードを破壊します」

 

「く、『激流葬』が破壊されたか(だがもう一枚の伏せカードは『ミラーフォース』だ、これでダイレクトアタックだろうが関係ねぇ!!)」

 

「『イスフィール』の第二のペンデュラム効果、1ターンに1度、発動した魔法カードの効果をもう一度続けて発動します。よってもう一枚の伏せカードも破壊します」

 

「な、なんだそりゃ!?」

 

「出たぁ……『イスフィールマジックコンボ』」

 

 出た当時はホントに酷かった。イスフィサンダンニレンダァとかイスフィストアタニレンダァなんて使われて、相手まともにブロックすらさせて貰えなかったし。しかも通常魔法にさえ範囲広がってるし……普通に制限カード待ったなしだからこれ。まぁバトスピカードに制限なんて無いも同然なんだけど。

 

「そして配置済みのペンデュラムスケールを使い、ペンデュラム召喚!!手札から『オリンピアの天使オク』、『戦神乙女ヴィエルジェ』、『オリンピアの天使 ハギト』、『オリンピアの天使ファレグ』、そして我がエース!!」

 

 『エース』、その言葉の発言に俺は刮目した。

 

「天駆ける白き翼、業火の光放ちて我を守護せよ!!『大天使アヴリエル』!!」

 

『オリンピアの天使 ファレグ』 A2200

『オリンピアの天使 オク』 A1000

『オリンピアの天使 ハギト』 ☆5 A2300

『戦神乙女ヴィエルジェ』 A2000

『大天使アヴリエル』 ☆6 A2500

 

「『ヴィエルジェ』の効果で、ライフを1000回復、バトル!!『ファレグ』でダイレクトアタック!!」

 

「ぐぅ!!」

 

吠総先鋒 LIFE7000→4800

 

「続けて『ハギト』!!」

 

「ぬぁぁ!?」

 

吠総先鋒 LIFE4800→2500

 

「最後に『大天使アヴリエル』で攻撃、この時、手札から速攻魔法『ブレイブフラッシュ』を発動!!手札またはフィールドのユニオンモンスターを、正しい対象のモンスターに装備する!!この効果で私は手札のこのカードを『アヴリエル』に装備する!!」

 

(来るか、『アヴリエル』の聖装が)

 

「巨大なる殲滅の翼、破壊の限りを照らし出せ!!『殲滅天使ネフィリム』よ、『アヴリエル』にユニオンブレイブ!!ユニオン効果で『アヴリエル』に装備したとき、攻撃力1500アップ!!」

 

『大天使アヴリエル』 A2500→4000

 

 それを装備した『アヴリエル』は、純白の一対二翼から、五対十翼の大翼に、上半身を金色に輝く鎧と紅いスカートが特徴的なモンスターだった。

 

「こ、攻撃力4000だと!!」

 

「神の怒りの裁きを食らえ……テンタロス・ブライトォ!!」

 

「ウァァァァァァ!!」

 

吠総先鋒 LIFE2500→0

 

 その攻撃はまさしく雷鳴を超えた轟雷という白い光がプレイヤーを襲い、衝撃でプレイヤーが壁に激突した。それを獄将の先鋒は気にすることなく振り返り、自分の控えへと去っていった。

 

 

 

 現在

 

「それに、あきらかにあれは普通のデュエルの範疇を越えてました」

 

 今思い返してみれば、デュエルのダイレクトアタックとはいえ、衝撃で壁に激突するなど、普通ならまず絶対にあり得ない。

 

「ちなみにですけど、先輩の感想は?」

 

「…………うむ」

 

「はっきりいって良いわよ劔菜、あれは普通じゃない、デッキもそうだけど召喚エネルギーなんて特にね」

 

 いい淀む先輩に、椿姫先輩が代わるようにそう言った。

 

「あの、俺はどっちの試合も見てないっすけど、そんなに凄かったんすか?」

 

「……プロである私が言うのも癪だけど、あれは間違いなくプロ級の実力者、デッキも、引きも、戦術も、どれをとっても一級品、そこに物理的な要因が加わるなら危険度高い。特に私達が見た先鋒戦のデュエリストとは相性最悪かもしれない」

 

 そう言う蘭の目は燃えてるものの、どこか冷めた感じが否めない。確かに『スカーライト』なら特殊召喚主体のあのデッキとは、単純に見れば相性が良いように見えるが、実際はダイレクトアタック中心のリサイクルデッキだ、しかも手札が万々増えるから、消費の激しい蘭のデッキでは対応が難しいのだ。

 

「マジかよ……そんなデッキと戦って勝てるんすか!!兄貴!!」

 

「……正直な話、ストレートは難しい。勿論勝つのがベストだが、明日の試合はオールシングルで、まだデュエルしてない祐司先輩が先鋒でデュエルしなきゃいけないし……」

 

「ハハハ、残念な話、僕のシングルデッキはそこまで強いものじゃないからね……ソリティアできなきゃ負けみたいなもんだし」

 

 楽観的に言ってるが、その実、言葉には悔しさがかなり滲み出てる。

 

「そして先輩以外は対策を取られてて不思議じゃない。俺のデッキも両方ともバレてるし、何より『セイメイ』デッキじゃ瞬殺されて終いだ……」

 

「となると、結局のところバレてないのは私の『不死ループ』だけか……ならば私が中堅に入ろう」

 

 そう言って劔菜先輩が中堅に入ることが決まった。

 

「……最後は……やっぱ椿姫先輩「何言ってるのよ、バカチン」椿姫先輩?」

 

「あんたが大将に決まってるじゃない。うちの最大戦力を使わないでどうするのよ」

 

 椿姫先輩のその言葉に、俺以外の全員が頷く。

 

「その通りっすよ、兄貴が居なかったら多分俺ら大会に出てなかったんすよ?中心である兄貴が出ないでどうするんすか」

 

「……タイトルキングに勝ったんだから、サクッと倒しちゃえば終わり、ただそれだけだよ、蓮」

 

「そうだな。何より、アイツらのデッキと戦うなら、アイツらのデッキの回し方を熟知してる蓮、君が出るべきだ」

 

「そうそう、それに僕らで二連勝しちゃえばいい話だし、蓮は姉さんでも弄ってリラックスしてれば「何言ってるのよアンタは!!」ゴホォ!?」

 

 まるで決まってるとでも言うような全員の口ぶりに、俺は唖然とした。

 

「け、けど俺が負けたら……」

 

「大丈夫っすよ、俺らは既に二勝してるんすよ?てことは上位二チーム入りは確実なんすから、地区大会本選に出るのは確定してるんす、練習試合だと思えば楽になるっす」

 

 亮の言う通りだが、それでも不安感は拭えないものがあった。

 

「それに、君はあの社長に頼まれてるのだろ?」

 

「あ……」

 

 そうだ、俺は確かに頼まれた。『バトスピカードの回収、または使い手を引き込む』……ならば。

 

「……はい」

 

「上々だ、私達に反対する意見は持ち合わせていない。頼んだぞ、蓮」

 

 そう言って置かれる先輩や、友人たちの手は、どことなく大きく感じた。

 

(勝ってみせる……それが俺の役割だとしたら)



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第二十一羽 月の龍と異合龍

 さて翌日、とりあえず何時ものメインデッキの調整を済ませ、祐司先輩と劔菜先輩の二人と共にフィールドに立つ。蘭や亮達もルール上の都合でフィールドには居ないものの、応援席から見ている。

 

「これより、聖奏学園対獄将学園の対戦を開始します。先鋒の選手は前に出てください」

 

 審判のその声に、獄将から金髪ロングの男がフィールドに立つ。

 

「頼みます、裕司先輩」

 

「ハハハ、まぁ頑張ってみるさ。一応、骨は拾ってくれると助かるよ」

 

 そう言って前に出る先輩の背を見ながら、俺は対戦相手の金髪を見ると、その目は濁ってるというより、光そのものを受け入れない闇のようなものに見えた。

 

「キヒヒ、テメェ見るからに弱そうな顔してるなァ~アァ?」

 

「それはどうも、一応ヒエラルキー的には僕が最下層だから、そんな言葉は慣れっこだよ」

 

 男の安い挑発に、先輩は飄々と返す。男はそれに対してイラッとしたのか、睨む目をさらに鋭く細めた。

 

「キヒヒ、まぁいい。どっちみちこの俺、月噛梁我様に負けることは決まってやがるんだ!!さっさと終わらせてやるよ、貧弱野郎」

 

「…………」

 

「無視すんじゃねぇよ!!」

 

 男……月噛の言葉に何も返さず、先輩はデッキをシャッフルしドローする。

 

「それでは、デュエル開始!!」

 

「「デュエル!!」」

 

祐司 LIFE8000

月噛 LIFE8000

 

「キヒヒ、先行は俺だ!!俺はスケール3『月光姫マーニ』とスケール8『月光竜機クレセントール』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 月噛が繰り出してきたのは、白のブレイブ時代のスピリット達、しかも

 

「テーマ『月光』……か、【ムーンライト】が関わってないにしろ厳しいな」

 

「キヒヒ、さらに俺は魔法カード『ブレイブドロー』を発動!!デッキからカードを三枚確認し、そのなかに存在するユニオンモンスターを一枚手札に加える。……カードは『突機竜アーケランサー』、『ザニーガン』、『虚皇帝ネザード・バァラル』、よってユニオンモンスター『アーケランサー』を手札に加え、他二枚はデッキ下へ戻す」

 

 俺の言葉を裏付けるように動く奴の表情はまるで狂喜というようなそれに似ていた。

 

「……来るかな、ペンデュラムが」

 

「キヒヒ、お望み通りやってやるよ!!俺は設置済みのペンデュラムスケールを使い、ペンデュラム召喚!!現れろ!!我が僕達!!」

 

『バルカン・アームズ』 ☆5 A1000

『突機竜アーケランサー』 ☆5 A1200

 

「キヒヒヒ!!『バルカン・アームズ』、『アーケランサー』の順番で効果発動しチェーン処理だ。まず『アーケランサー』の召喚及び特殊召喚効果で一枚ドローし、『バルカン・アームズ』の召喚、特殊召喚効果でデッキからカードを三枚引いて二枚捨てる、ただしこのターン攻撃はできないが、先行はもとより攻撃できないから関係ない!!」

 

「……なるほど、さすがは先鋒を任されるだけはあるということか」

 

「キヒヒ、そんな悠長な事を言ってる暇はねぇぞ!!俺は今引いた『イグア・バギー』を召喚し、効果発動!!このカードをリリースして、デッキまたは手札からからレベル6以上の火または光属性ドラゴン族モンスターを特殊召喚する!!」

 

 その瞬間、フィールド内が暗黒に包まれ、天上高くに煌めく月が浮かび上がった。

 

「来るな!!月光のエース!!」

 

「時は満ちた、蒼白なる月よ、闇を照らし貫く牙となれ!!『月光竜ストライク・ジークヴルム』!!」

 

『月光竜ストライク・ジークヴルム』 ☆6 A2400

 

「へぇ、『神竜』の方じゃないんだ」

 

「キヒヒ、テメェなんかにあれを使うなんてあり得ねぇよ!!ユニオンモンスター『アーケランサー』と『バルカン・アームズ』を『ストライク・ジークヴルム』にユニオン!!その効果で攻撃力が500ずつアップし3400になる!!俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ!!」

 

月噛 手札0 LIFE8000

フィールド

『月光竜ストライク・ジークヴルム』 A3400

『バルカン・アームズ』 装備状態

『突機竜アーケランサー』 装備状態

伏せカード一枚

『月光姫マーニ』 赤P3

『月光竜機クレセントール』 青P8

 

 

「僕のターン、ドロー!!……僕は魔法カード『隣の芝刈り』を発動!!互いのデッキを確認して、僕は君のデッキの枚数と同じになるように墓地へ送る。僕のデッキ枚数はいま54枚だ」

 

「キヒヒ、60枚デッキって訳か。俺のデッキは今残り29枚だ、よって25枚のカードを墓地へ送りな」

 

 先輩は軽く頷くと、なんの躊躇いもなく墓地へカードを送って……

 

「あれ?」

 

「む?どうした蓮」

 

「いや、俺の気のせいだと思うんですけど……()()()()()()()()()()()()()()()だったような」

 

 そう、当然モンスターも存在していたが、それ以上に送られたカードが『補給舞台』、『一族の結束』、『波動キャノン』といった、永続魔法ばかりだったのだ。

 

「あぁ、そういえば蓮は祐司がシングルでデュエルするところを見るのは始めてだったな。良く見ておけ、アイツのデュエルは少しばかり次元が違うからな」

 

 

 

 

 祐司side

 

 さて、墓地に送れた永続魔法は……うん、充分充分。

 

「墓地へ送られた『闇・道化師のペーテン』を除外して、デッキから『闇・道化師のペーテン』を守備表示で特殊召喚する」

 

「キヒヒ、『ペーテン』だと!?そんなモンスターで何ができる!!」

 

「なに、こうするのさ!!僕は儀式魔法『異合創成術』を発動!!」

 

「な!?異合儀式デッキだと!?」

 

 驚いてる驚いてる、まぁこのデッキ回すの難しいから当然といえば当然だけどね

 

「手札から『異合』と名のつく儀式モンスターのレベルと同じかそれ以上になるように、フィールドまたは手札からカードを墓地へ送る!!僕はフィールドのレベル3『闇・道化師のペーテン』と手札のレベル5『星海獣シー・サーペンダー』を墓地へ送る!!八首の巨龍、破滅の波を世界に示せ!!儀式召喚!!現れろ『異合魔龍ヤマタノヒドラ』!!」

 

『異合魔龍ヤマタノヒドラ』 ☆8 A3200

 

「攻撃力……3200だと!?」

 

「さらに手札から永続魔法『海魔巣食う海域』配置し、手札から二枚目のユニオンモンスター『ガイミムス』を召喚し、『ヤマタノヒドラ』にユニオン!!その効果で攻撃力300アップ!!」

 

『ヤマタノヒドラ』 A3200→3500

 

「バトル!!『ヤマタノヒドラ』で『ストライク・ジークヴルム』に攻撃!!攻撃宣言時、『ヤマタノヒドラ』は永続魔法をリリースする度に、相手モンスターにレベルの数まで連続で攻撃できる。さらにユニオンの『ガイミムス』の効果でデッキから一枚ドローし、相手フィールドの魔法カードを破壊する!!僕はペンデュラムゾーンの『月光姫マーニ』を破壊する!!」

 

「キヒヒ!!簡単に殺られてたまるか!!ユニオンしている『バルカン・アームズ』をリリースすることで破壊を無効にする!!」

 

月噛 LIFE8000→7900

 

「『ヤマタノヒドラ』の第二の効果!!バトル終了時に、このターン発動していない永続魔法を墓地から発動させる!!この効果で墓地の『波動キャノン』を発動する」

 

「だがダメージを受けたことにより罠カード『絶甲氷盾』を発動!!ライフを1000回復し、このターンのバトルフェイズを終了させる!!」

 

月噛 LIFE7900→8900

 

「……僕はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

祐司 手札0 LIFE8000

フィールド

『異合魔龍ヤマタノヒドラ』 A3500

『ガイミムス』 装備状態

『波動キャノン』 永続魔法 C0

伏せカード一枚

 

「キヒヒ、俺のターンだ!!俺は『アーケランサー』を自身の効果で特殊召喚する。特殊召喚に成功したことにより一枚ドロー!!……そしてチューナーモンスター『ブレイドラ』を通常召喚!!」

 

『ブレイドラ』 ☆1 A100

 

「キヒヒ!!俺はレベル6『ストライク・ジークヴルム』にレベル1『ブレイドラ』をチューニング!!闇を照らす銀鱗、夜を統べる崇高なる龍が舞い降りる!!シンクロ召喚!!来たれ我がエース!!『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』!!」

 

『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』 ☆7 A2700

 

「キヒヒ、さらに俺は手札の『死者蘇生』を発動し、墓地の『ブレイドラ』を特殊召喚し、レベル5の『アーケランサー』にレベル1『ブレイドラ』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『白夜の宝剣ミッドナイト・サン』!!」

 

『白夜の宝剣ミッドナイト・サン』 ☆6 A2000

 

「キヒヒ、『白夜の宝剣ミッドナイト・サン』はレベル5以上のユニオン以外のモンスターに装備できる!!俺は『ストライクヴルム』に装備し、攻撃力をこのカードの攻撃力の半分1000アップ!!」

 

『ルナティック・ストライクヴルム』 A2700→3700

 

「バトルだ!!『ルナティック・ストライクヴルム』で『ヤマタノヒドラ』を攻撃!!」

 

「罠カード『ハーフ・アンブレイク』を発動!!『ヤマタノヒドラ』の戦闘破壊を無効にし、ダメージを半分にする!!」

 

祐司 LIFE8000→7900

 

「キヒヒ、運の良い奴め……俺はこれでターンエンド」

 

月噛 手札0枚 LIFE8900

フィールド

『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』 A3700

『白夜の宝剣ミッドナイト・サン』 装備状態

 

 さて、ととりあえずモンスターの火力が落ちるのは回避できた。さて、次は

 

「僕のターン、スタンバイフェイズに『波動キャノン』のカウンターが1つ乗り、『ヤマタノヒドラ』の効果、このモンスターのレベルは2つ下がり、最大攻撃回数は6になる」

 

「キヒヒ、流石にデメリットは存在してるよなぁ……でなきゃぶっ壊れもいいところだ」

 

 敵ながらそれには完全同意だ。さらに言えばこのモンスターのレベルダウン効果には下限がないし、レベル0になれば強制的に除外される効果も持ってるから相応だ。

 

 さてフィールドを確認すると、何やら重たい音が聞こえてくる。はてと確認すると、そこにはなぜか知らないが切り落とされた『ヤマタノヒドラ』の首が二つ落ちていた。おそらくは効果の処理としてのエフェクトなんだろうが……。

 

「(そんなところを描写する必要ないだろソリッドヴィジョン)そしてドロー!!……僕は墓地の『異合創成術』の効果を発動!!このカードと墓地のモンスター……『闇・道化師のペーテン』を除外し、デッキから『異合創成術』以外の、『異合』と名のつく儀式魔法及び儀式モンスターをそれぞれ手札に加え、手札に加えた儀式魔法『異合反魂術』を発動!!墓地に存在するモンスターを、『異合』儀式モンスターのレベル以上になるように除外することで儀式召喚を行う!!」

 

 さて、それじゃあ僕のエースを呼ぶとしますかね。

 

「僕は墓地のレベル5『星海獣シー・サーペンダー』とレベル4の『アウグスドス』を除外!!異海より来たれり双首の龍!!闇を喰らいて進軍せよ!!儀式召喚!!現れろレベル9!!『異合双龍ハスターク』!!」

 

『異合双龍ハスターク』 ☆9 A3500

 

「『ハスターク』……だと!?」

 

 まさかここまで大型のモンスターを出してくるとは思ってもなかったのか、相手の目には恐怖の色が見え隠れしている。

 

「永続魔法『波動キャノン』の効果発動!!このカードをリリースして、相手に乗っていたカウンター1つに付き1000のダメージを与える!!」

 

「グゥッ……」

 

月噛 LIFE8900→7900

 

 これでライフは並んだ。後は……

 

「全力で殴り倒す!!バトルフェイズに入り、『ハスターク』の効果バトルフェイズ中、自分フィールドの『異合』と名のつくモンスターの攻撃力を500アップ!!そして『ヤマタノヒドラ』で攻撃!!」

 

 八首改め六首となった青白い大蛇の顎から、光のエネルギーが収束され始める。

 

「この瞬間、『ハスターク』のモンスター効果発動!!フィールドのレベル5以上の水属性・海竜族モンスターが攻撃宣言したとき、相手の手札を一枚墓地へ送る!!」

 

「キヒヒ、残念だが俺の手札は0だから……しまった!?『ハスターク』の効果は」

 

「そうだ!!『ハスターク』の効果で相手の手札を墓地へ送れなかった時、そのモンスターの攻撃を強制的にダイレクトアタックに変更する!!そしてユニオンしてる『ガイミムス』の効果で、デッキから一枚ドロー!!」

 

「(キヒヒ……『ルナティック・ストライクヴルム』の効果で、このモンスター以外への攻撃ができないことが裏目に出やがったコンチキショー!!)グヌヌ、ライフで受ける!!」

 

月噛 LIFE7900→3900

 

「トドメだ!!『ハスターク』で攻撃!!この瞬間効果が発動し、捨てることができなかったためダイレクトアタックになる!!スパイラル・シードラ!!」

 

「ヌァァァァ!?」

 

月噛 LIFE3900→0

 

 

 

 

 蓮side

 

「すげぇ……」

 

 裕司先輩のデュエルを見て、ありきたりだが、それでいて本質を違えていないその言葉しか出てこなかった。

 

「裕司は元々タッグ以外では儀式軸を中心にプレイするスタイルでな。中でもあれは高火力と高速展開を軸にしてるだけあって、一撃一撃の火力だけならば君にも劣らない」

 

「元からの【異合】を踏襲してる……というわけですか?」

 

「そうだ。加えて遊戯王の強力な永続魔法や墓地肥やしのカードが組み込まれているからか、初手『ヤマタ』なんてある意味いつものことさ。最も、弱点として『異合』儀式モンスターは1ターンに1体しか、自分フィールドに特殊召喚できない制約はあるが、そんなもの無いも同然だろうな」

 

 まぁ確かに妥当と言えば妥当なのだろう。というよりも、ただでさえコストが重いことで有名な『異合』モンスターがそんなポンポン出されたら対処なんてできるわけがない。寧ろそれなんてクソゲーだよホント。

 

 その時だった。

 

「キヒヒ!!い、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁ!?」

 

 突如として聞こえた奴の声に注目してみると、なんとやつの体の一部が消え始めていた。奴の正面には偉丈夫というような大男が、まるで睨み付けるように立っている。

 

「――我ら獄将に敗者は不要、よってここで処分する」

 

「そ、そんな……俺は……俺は俺は俺は俺は俺はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 そんな断末魔を叫びながら、やがて月噛はまるで最初から存在しなかったように消えてしまった。

 

「ち、獄ってだけあってやっぱりかよ……」

 

 敗者必滅、それがバトスピでの極将……ひいては極龍隊と呼ばれた奴らの基本理念、勝利以外に何の価値もなく、負ければすぐに切り捨てる。それこそが奴らなのだ。

 

「――少しは骨があるようだな、お前達は」

 

 と、先ほどの大男がこちらを振り向く。

 

「だがそれもここまでだ。貴様らはここで潰えるのだ……この獄将の長、褐料煉弍(かつしろ れんじ)の前にな!!」



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第二十二羽 天使と騎士

 褐料煉弍(かつしろ れんじ)、その名を聞いたときどこか頭の奥で何かを忘れているような……そんな感覚を覚えてしまった。

 

「蓮、どうやらこの先は楽にとはいかなさそうだ」

 

 隣にいる剱奈先輩も、どこか冷や汗のようなものをかいており、それだけ相手が強大だという裏付けでもあった。

 

「……そうですね、慢心は文字通り命取り……って考えた方が良さそうです」

 

「そうさね……次に出てくるデッキ次第だが、恐らく……」

 

 剱菜先輩がフィールドをちらりと見ると、そこにはあの天使デッキ使いが余裕の表情で立っていた。

 

「ま、天使だろうがなんだろうが、やれるだけやるだけの話さ」

 

 そう言って先輩は余裕の表情でフィールドへと向かっていった。

 

「……お見逸れしたよ、まさかあのようなデッキを使う人間が居るとはな」

 

 相手はまるで賛辞を送るように、だが軽くそう呟く。

 

「それにしては随分とこちらを軽く捉えているようだが?」

 

「なに、あのデッキは確かに強いとは思うがそれまでの話、はっきり言えば君の後輩とやらもどうしようもない雑魚としか思えなくてね」

 

「ほう?」

 

「あの程度の雑魚デッキしか使えないと見るに、私からしたら見るに耐えない、彼の本来のデッキならともかくな」

 

 ……どうやらこいつは昔の俺を知ってるような口ぶりをしていやがった。

 

「なら、試してみるか?私のデッキが、そこまでに雑魚というかを」

 

「ふ、良いでしょう、獄将中堅、三神アマツがお相手してくれます」

 

「それではデュエル開始!!」

 

剱菜 LIFE8000

アマツ LIFE8000

 

「先行は私です、私は手札からスケール1『大天使イスフィール』とスケール8『オリンピアの天使 ハギト』をペンデュラムスケールにセッティング!!」

 

『大天使イスフィール』 青P1

『オリンピアの天使 ハギト』 赤P8

 

「さらに手札から『強欲で貪欲な壺』を発動!!『イスフィール』の効果により、コストを支払わずにデッキから二枚ドローし、さらに『イスフィール』の第二のペンデュラム効果で、『強欲で貪欲な壺』の効果をもう一度適用し、さらに二枚ドロー!!」

 

「いきなりの四枚ドローか……厄介な」

 

 ホントだ。遊戯王においてハンド……つまり手札の消費が激しいというのに、それを意図も簡単に克服してくるとは……

 

「そして適用済みのPスケールを使い、ペンデュラム召喚!!現れなさい『アテナ』、『クレイオ』!!」

 

『アテナ』 ☆7 A2700 

『天使クレイオ』 ☆2 A800

 

「さらにカードを二枚伏せて、ターンエンド」

 

 

アマツ 手札二枚 LIFE8000

フィールド

『アテナ』 ☆7 A 2700

『天使クレイオ』 ☆2 A 800

伏せカード二枚

『大天使イスフィール』 青P1

『オリンピアの天使 ハギト』 赤P8

 

 

「私のターン、ドロー!!……私は『暗黒界の取引』を発動!!お互いにカードを一枚引き、その後手札を一枚捨てる。私は『ワーウルフ・コマンド』を墓地へ捨てる」

 

「紫使いですか……ならば私は手札の『オリンピアの天使 オク』を墓地へ捨てます」

 

「ならば効果終了時に『ワーウルフ・コマンド』の効果発動!!このカードが墓地へ送られたとき、デッキから一枚ドローする。そして続けて私はカードを一枚伏せ、『ミーア・バット』を通常召喚!!」

 

『ミーア・バット』 A 800

 

 ここまでで一応先輩のアド損は全くなし、ここからどう展開していくのやら……

 

「バトル!!『ミーア・バット』で『天使クレイオ』を攻撃!!」

 

「……通しましょう」

 

 蝙蝠の羽が生えたウサギと青い髪の天使がぶつかり合い、互いに小規模の爆発が引き起こる。

 

「この瞬間、墓地の『ワーウルフ・コマンド』と、伏せていた『呪の覇王 カオティック・セイメイ』の効果発動!!」

 

「ッ……紫不死ループデッキか」

 

 相手も気づいたようだが、時既に遅しだ。

 

「チェーン処理に入り、『アテナ』の攻撃力をターン終了時まで半分にし、闇属性モンスターが破壊された為、『カオティック・セイメイ』はフィールドに特殊召喚される!!」

 

『アテナ』 A 2700→1350

 

『呪の覇王 カオティック・セイメイ』 ☆8 A 2000

 

「そして闇属性・アンデット族モンスターの破壊により、『ワーウルフ・コマンド』を墓地から特殊召喚!!」

 

『ワーウルフ・コマンド』 ☆4 A1500

 

「『ワーウルフ・コマンド』で『アテナ』を攻撃!!」

 

「手札の『オネスト』の効果を発動!!このカードを墓地へ送り、攻撃力を『ワーウルフ・コマンド』の数値までアップする!!」

 

『アテナ』 A1350→2850

 

「返り討ちにしなさい!!『アテナ』!!」

 

「ぐ……」

 

剱菜 LIFE8000→6650

 

「『ワーウルフ・コマンド』の効果で一枚ドロー!!まだだ、『カオティック・セイメイ』で『アテナ』を攻撃!!」

 

「態々低い攻撃力のモンスターで攻撃……いや、効果の方ね」

 

「『カオティック・セイメイ』との戦闘で自分に発生するダメージは0となり、破壊された時、相手のライフに1000ダメージを与えて墓地から特殊召喚される!!甦れ『カオティック・セイメイ』!!」

 

アマツ LIFE8000→7000

 

「私はカードを三枚伏せて、ターンエンド」

 

 

剱菜 LIFE6650 手札二枚

フィールド

『呪の覇王 カオティック・セイメイ』 A2000

伏せカード三枚

 

 

「私のターン、ドロー!!」

 

「この瞬間、伏せカード発動『手札断札』!!互いに手札を二枚捨てて、二枚ドローする。私は手札から二枚目の『ワーウルフ・コマンド』と『仁王立ち』を墓地へ送り、さらにこの効果終了後に『ワーウルフ・コマンド』の効果によりデッキからカードを一枚ドローする」

 

「(なるほど、メイン2で敢えて撃たなかったのですか)……では私は手札の『ヴィエルジェ』と『ズラトロック』を墓地へ送ります」

 

 

剱菜 手札四枚

アマツ 手札三枚

 

 

 よし、先輩がロックカードを捨てさせたということは、相手は下手に攻撃できないぞ。

 

「私は『オリンピアの天使 ハギト』の効果発動、デッキからカードを一枚オープンし、そのカードが魔法・罠カードならば手札に、モンスターならば墓地へ送ります……カードは『堕天使スペルビア』ですので、墓地へ送ります」

 

「ち、余計なカードが落ちたか……」

 

 確かスペルビアの効果は墓地から特殊召喚されると墓地の天使を……あれ?まさか?

 

「さらに私は手札から『創造の代行者 ヴィーナス』を通常召喚し、『アテナ』の効果発動!!相手に600ポイントのダメージを与える!!」

 

「チィ……」

 

 

『創造の代行者ヴィーナス』 ☆3 A1600

 

剱菜 LIFE6650→6050

 

 

「さらにライフを1500払い、デッキから『神聖なる球体』を三体、フィールドを特殊召喚し、合計1800のダメージを与えます」

 

「ぐぅ……!!」

 

 

『神聖なる球体』 ☆2 A 500×3

 

アマツ LIFE7000→5500

剱菜 LIFE6050→4250

 

 

「さらに私は『神聖なる球体』二体でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れなさい『聖光の宣告者』!!」

 

『聖光の宣告者』 ★2 D1000

 

「アテナの効果でさらに600のダメージを与えます」

 

「ぐぅ!!」

 

剱菜 LIFE4250→3650

 

「『宣告者』の効果発動、ORUを一つ消費し、墓地の『クレイオ』を回収し、手札のカードを一枚デッキに戻します。そして『アテナ』の効果発動!!フィールドの『神聖なる球体』をリリースし、墓地の『スペルビア』、『スペルビア』の効果で『ヴィエルジェ』を特殊召喚」

 

『堕天使スペルビア』 ☆8 A2800

『戦神乙女ヴィエルジェ』 ☆6 A2000

 

「アテナの効果!!さらにヴィエルジェの効果でライフを1000回復する!!」

 

「ぬぁぁぁ!!」

 

アマツ LIFE5500→6500

剱菜 LIFE3650→2450

 

 たった1ターンで、剱菜先輩のライフをさっきまでの三分の一になってしまった。いくら『カオティック・セイメイ』の効果があるとはいえ、ここまでいくとオーバーキルも見えてきてしまう。

 

「私はこれでターン「この瞬間、罠カードを二枚発動する!!」なに?」

 

「『最終突撃命令』!!そして『竜星の極み』!!この効果で、相手フィールドのモンスターは全て攻撃表示になり表示形式を変更できず、可能ならばかならずこちらのモンスターを攻撃しなければならない!!」

 

 うまい、『カオティック・セイメイ』の効果を上手く利用できるカードの発動に、俺だけでなく観客まで少しだけざわめく。

 

「……なるほど、ならば仕方ありません、モンスター全てで攻撃します」

 

 どうやら発動できるカウンター罠カードが無かったのか、歯噛みしながら相手はダメージを受ける。

 

 『カオティック・セイメイ』のダメージ効果と、『ヴィーナス』、『聖光の宣告者』の自爆により、一気に4800のダメージが入る訳なんだが……

 

アマツ LIFE5500→1700

 

「チィ、足りなかったか」

 

「そのようです。ではメイン2に入り、私は配置済みのペンデュラムスケールを使い、ペンデュラム召喚します。現れなさい『クレイオ』!!」

 

『天使クレイオ』 A800

 

「さらに私は永続魔法『天の階』を発動し、ターンエンド」

 

 

アマツ LIFE100 手札0枚

フィールド

『アテナ』 A2700

『堕天使スペルビア』 A2800

『戦神乙女ヴィエルジェ』 A2000

『天使クレイオ』 A800

『天の階』 永続魔法

伏せカード二枚

『大天使イスフィール』 青P1

『オリンピアの天使 ハギト』 赤P8

 

 

「私のターン、ドロー!!……私は魔法カード『マジックプランター』を発動し『竜星の極み』をリリースして二枚ドロー!!さらに『手札抹殺』を発動!!互いに手札を全て捨てて、その枚数だけドローする。私は四枚だ」

 

「私には手札がありませんので、ドローはありません」

 

「さらに私は永続魔法『闇の聖剣』を発動!!そして手札より、スケール8の『闇騎士パロミデス』と、スケール2『冥総裁バーゲン』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

『闇騎士 パロミデス』 青P8

『冥総裁ハーゲン』赤P2

 

「ほう、だがペンデュラム召喚で出せるのは手札の一枚だけでは?」

 

「『冥総裁ハーゲン』のペンデュラム効果で、このカードを使用したペンデュラム召喚の際、墓地の闇属性モンスターも召喚対象に加える!!」

 

「なに!?」

 

 相手も驚いてるが、はっきり言えば俺も同様だった。元々『ハーゲン』は不死デッキのキーパーツに使われることもあるカードだったが……よもや強化されるとは……。

 

「ペンデュラム召喚!!現れろ、我がモンスター達!!墓地より姿を現せ、『闇騎士ケイ』、『虚皇帝ネザード・バァラル』!!」

 

『闇騎士ケイ』 ☆4 A1800

『虚皇帝ネザード・バァラル』 ☆7 A2000

 

「さらに私は、レベル8『カオティック・セイメイ』にレベル4『闇騎士ケイ』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れなさい『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』!!」

 

『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』 ☆12 A3500

 

「『ソーディアス・アーサー』の効果で、墓地の攻撃力2000以下の闇属性モンスターを蘇らせる!!復活しろ『カオティック・セイメイ』!!」

 

「……これはかなり厳しいわね」

 

「これだけではない!!『ネザード・バァラル』の効果で、このカードがフィールドに存在する限り、相手フィールドのモンスターの攻撃力を1000ポイントダウンし、500以下になったモンスターは除外される!!」

 

「……つまり『クレイオ』は除外されるわけね」

 

「バトルだ、『ソーディアス・アーサー』で『ヴィエルジェ』を攻撃!!」

 

 これで決まった、俺は少なくともそう思った。だが、

 

「カウンター罠『攻撃の無力化』、バトルフェイズを強制終了する」

 

 それさえも相手は防ぎきってしまった。

 

「ク、私はカードを一枚伏せ、ターンエンド」

 

 

剱菜 手札0 LIFE2450

フィールド

『ソーディアス・アーサー』 A3500

『カオティック・セイメイ』 A2000

『ネザード・バァラル』 A2000

『闇の聖剣』 永続魔法

伏せカード一枚

『闇騎士 パロミデス』青P8

『冥総裁ハーゲン』 赤P2

 

 

「私のターン、ドロー!!……私は魔法カード『アドバンスドロー』を発動!!フィールドの『スペルビア』をリリースし、デッキから二枚ドロー!!……そしてペンデュラム召喚!!現れなさい、我がエース!!『大天使アヴリエル』!!」

 

『大天使アヴリエル』 ☆6 A2500

 

「さらに罠カード『強制脱出装置』を発動し、『ネザード・バァラル』を手札に戻してもらいます」

 

「ちぃ!!余計なことを……」

 

「そしてアテナの効果でバーンダメージを与えます」

 

剱菜 LIFE2450→1850

 

「さらに『アテナ』の効果で、『ヴィエルジェ』をリリースし『スペルビア』、そして『スペルビア』の効果で『ヴィエルジェ』を復活!!そしてバーンダメージ!!」

 

アマツ LIFE1850→2850

剱菜LIFE1850→650

 

「さらに『天の階』の効果発動!!1ターンに一度、天使族のモンスターが召喚、特殊召喚に成功したとき、墓地のレベル4以下の天使族を手札に戻す。私は『オネスト』を戻し、バトル!!『アヴリエル』で『ソーディアス・アーサー』を攻撃!!」

 

「墓地の『仁王立ち』を除外し効果発動!!『カオティック・セイメイ』を選択し、このターン、『カオティック・セイメイ』以外への攻撃を不可能にする」

 

「罠カード、『盗賊の7つ道具』!!罠カードの発動をライフを1000支払い無効にします」

 

 

アマツ LIFE2850→1850

 

 

「これにより『ソーディアス・アーサー』への攻撃が可能!!よって『アヴリエル』で『ソーディアス・アーサー』を攻撃!!ダメージステップで『オネスト』を墓地へ送ることで、攻撃力を3500アップ!!」

 

 闇の騎士王が剣を振ろうと、白き翼の天使はひらりとそれを交わし続け、そして巨大な炎球を手元に召還し、闇の騎士に投げつける。

 

「テンタロス・ノウズ!!」

 

 それはまるで浄化するように、強大な炎の柱となり、爆撃のような衝撃波を発生させるのだった。

 

「ぬぁぁぁぁぁ!!」

 

 

剱菜 LIFE650→0

 

 

「先輩!!」

 

 倒れ伏す剱菜先輩に、俺と裕司先輩が大慌てで駆け寄る。見たところ火傷などの跡は見つからないが、それでもあれだけの衝撃をくらって無傷なわけがない。

 

「く……すまない、二人とも」

 

「先輩!!しっかりしてください」

 

「すぐに救護室に向かおう、かなりのダメージがあるはずだからね」

 

 裕司先輩は剱菜先輩の体を抱えると救護室に向かおうとする。

 

「蓮……勝ってくれ……」

 

 剱菜先輩の力なき呟きを残して……



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第二十三羽 獄将龍 前編

「……温いな」

 

 フィールドに立った俺に奴、褐料煉弍はまるで詰まらないとでも言うような面持ちで吐き捨てた。

 

「あの程度のデッキ、確かに強くはあるが我々には届かん」

 

「言ってくれるな、ならお前は俺らより強いっていう証拠がどこにある」

 

「ふ、すぐに分かるさ、デュエルをすればな!!」

 

 余裕綽々といった表情に嫌な空気を感じるが、それ以上にこの戦い、負けるわけにはいかないのだ。先輩のためにも!!

 

「それでは、デュエル開始!!」

 

「「デュエル!!」」

 

 

蓮 LIFE8000

煉弍 LIFE8000

 

 

「俺の先行!!俺は手札より『ヤミヤンマ』を通常召喚!!」

 

『ヤミヤンマ』 ☆4 A1500

 

「私はカードを一枚伏せてターンエンド、この瞬間、『ヤミヤンマ』の効果発動!!お互いのエンドフェイズごとにこのモンスターにコアカウンターを一つ(上限3まで)置く」

 

 

煉弍 手札3枚 LIFE8000

フィールド

『ヤミヤンマ』 A1500 C1

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

 『ヤミヤンマ』……たしかもとは破壊時にコアブーストするスピリットだったから……

 

「(ドローブーストの可能性が高いな)俺は永続魔法『聖者の樹の実』を発動、さらに『ハーピィ・レディ1』を通常召喚!!」

 

『ハーピィ・レディ1』 ☆4 A1300→1600

 

「バトル!!『ハーピィ・レディ1』で『ヤミヤンマ』を攻撃!!」

 

「ふん、通そう」

 

煉弍 LIFE8000→7900

 

「『ヤミヤンマ』が戦闘、及び効果で破壊されたとき、このカードに乗せられていたコアカウンター一つにつき一枚ドローする」

 

「やはりドローブーストか……俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

蓮 LIFE8000 手札3枚

フィールド

『ハーピィ・レディ1』 A1600

『聖者の樹の実』 永続魔法

伏せ一枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……魔法カード『ネクサスコラプス』を発動!!フィールドの表側表示の魔法・罠カードを二枚まで破壊する!!俺は『聖者の樹の実』を破壊する」

 

「……伏せカードは発動しない」

 

「ならば続けて永続魔法『七龍帝の玉座』を発動!!このカードが存在する限り、自分の手札の『龍帝』または『龍騎』と名のつくモンスターのアドバンス召喚のコストを一つダウンさせる」

 

 その言葉に俺は嫌な汗が流れる。『龍帝』そのデッキが意味するのはつまり……

 

「さらに俺は伏せていた速攻魔法『帝王の烈旋』を発動する」

 

「罠カード『ゴッドバード・アタック』!!『ハーピィ・レディ1』をリリースして『烈旋』と『玉座』を破壊する!!」

 

「……チッ」

 

 相手は舌打ちしてるが、こっちからしたらあのドラゴンが出されたらほとんど負け確定だからな。

 

「……俺はモンスターを伏せ、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

 

煉弍 LIFE7900 手札2枚

フィールド

伏せモンスター

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……俺は『癸の跳獣ベルジアン』を通常召喚!!」

 

『癸の跳獣ベルジアン』 ☆4 A1400

 

「バトル!!『癸の跳獣ベルジアン』で伏せモンスターを攻撃!!この瞬間、『ベルジアン』の効果、デッキから『癸の跳獣ベルジアン』以外の鳥獣族レベル5以下のモンスターを手札に加える、俺はこれにより『ゴクラクチョー』を手札に加える!!」

 

 これで次のモンスターの補充は済んだし、なんとかなるか……

 

「伏せモンスターは『メタモルポッド』だ」

 

「な!!……手札交換のカードを仕込んでやがったのか」

 

 当然と言えば当然なのだが、それでもあの場面で既に引き込んでいたことに驚愕した。だが、

 

「(それでも手札アドは取れた)俺はカードを一枚伏せ、永続魔法『神樹の切り株都市』を発動しターンエンド、エンドフェイズにデッキトップ確認……カードは『ナイトイーグル』、よって特殊召喚!!」

 

 

蓮 LIFE8000 手札三枚

フィールド

『癸の跳獣ベルジアン』 A1400

『ナイトイーグル』  A2000

『神樹の切り株都市』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「……温いな」

 

「?」

 

「その程度の盆百で雑魚なデッキを使うとは、貴様、やはり『破壊神』ではなくなってしまったようだな」

 

「ッ!!」

 

 奴の言葉に唇を噛み締める思いになった。破壊神……その事を知ってる人間……つまり奴は……

 

「そのような腑抜け、さっさと倒してくれる!!ドロー!!俺は罠カード『クラッシュアンドビルド』を発動!!相手フィールドのレベル5以下のモンスター一体を破壊し、墓地の永続魔法一枚を自分フィールドの魔法・罠ゾーンに発動する!!俺は『ナイトイーグル』を選択!!」

 

「だが『ナイトイーグル』はPモンスター、よってエクストラデッキへ送る」

 

 いつの間にか手に入れていたカードがあっさりと破壊され、若干頬がひきつる。

 

「だが俺も墓地の『七龍帝の玉座』をフィールドに発動し、さらに相手フィールドにのみモンスターが存在するとき、手札の『バイス・ドラゴン』を特殊召喚し、こいつをリリース!!」

 

 次の瞬間アドバンス召喚の素材となった『バイス・ドラゴン』が光の玉になり、それが闇の炎を噴出させた。

 

「我が憤怒を糧とし、闇の縁から現れよ!!『魔帝龍騎ダーク・クリムゾン』!!」

 

 現れたのは身体中を鎖に繋がれ、腕に剣と槍を握った巨大な黒龍……バトスピ時代、一時期は最強クラスのデッキとうたわれたそれのキーカードの姿だった。

 

『魔帝龍騎ダーク・クリムゾン』 ☆7 A2800

 

「『ダーク・クリムゾン』の効果発動!!このカードの召喚に成功したとき、エクストラデッキから『龍帝』または『龍騎』と名のつくモンスターを二体まで、正規召喚扱いで特殊召喚する!!」

 

「ち!!やっぱりそう来たか!!」

 

 『ダーク・クリムゾン』本来の効果はデッキを七枚めくり、その中の『龍帝』をノーコストで召喚するのだが、その『龍帝』はほとんどが『転召』することが必須のカードばかり、故にそれらがエクストラデッキのカードになることは必然なのだが、よもや『ダーク・クリムゾン』を基点に正規召喚してくるとは思ってなかった。

 

「魔滅に堕ちた黒き龍皇よ!!今龍帝となりて破壊の限りを尽くせ!!レベル9『魔龍帝ジークフリード』、そして龍帝に使えし極みの龍騎!!レベル6『極帝龍騎ジーク・クリムゾン』!!共に来ませい!!」

 

『魔龍帝ジークフリード』 ☆9 A3500

『極帝龍騎ジーク・クリムゾン』 ☆6 A2500

 

「さぁ!!我が贄となるがいい!!羽虫よ!!」




オリカ紹介
『魔帝龍騎ダーク・クリムゾン』
☆7/火/ドラゴン族/A2800/D2000
①このカードが召喚に成功したとき、エクストラデッキから『龍帝』または『龍騎』と名のついたモンスターを二体まで選択する。そのカードを正規召喚扱いでフィールドに特殊召喚する。
②このカードの攻撃宣言時、このカード以外の『龍帝』及び『龍騎』の数×800以下の攻撃力を持つ相手モンスターを一体破壊する


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第二十四羽 獄将龍 後編

煉弐 LIFE7900 手札4枚

フィールド

『魔帝龍騎ダーク・クリムゾン』 ☆7 A2800

『魔龍帝ジークフリード』 ☆9 A3500

『極帝龍騎ジーク・クリムゾン』 ☆6 A2500

『七龍帝の玉座』 永続魔法

 

 

「行くぞ!!バトルだ!!『魔龍帝ジークフリード』で、『癸の跳獣ベルジアン』を攻撃!!この時、『魔龍帝ジークフリード』の効果が発動!!相手モンスターとのバトルで発生する相手への戦闘ダメージを二倍にする!!ヘルフレイム!!」

 

「グアァ!!」

 

 

蓮 LIFE8000→3800

 

 

 黒い巨体から放たれた炎の一撃に、焼かれるような痛みが体全体を襲う。まるで本物の炎を受けてるような、そんな熱さまで感じた。

 

「そして『魔龍帝ジークフリード』の更なる効果、1ターンに1度、戦闘で相手モンスターを破壊したとき、デッキから一枚ドローする」

 

「ぐ……(戦闘ダメージ倍化はダブルシンボル、そしてアタック時のドロー効果まで再現されてるのか……)」

 

「続けるぞ!!『魔帝龍騎ダーク・クリムゾン』でダイレクトアタック!!」

 

「グアァ!!」

 

 

蓮 LIFE3800→1000

 

 

「トドメだ!!『ジーク・クリムゾン』で……」

 

「『ダーク・クリムゾン』の戦闘ダメージを受けたとき、罠カード『フリッグのリンゴ』を発動!!受けたダメージを回復し、その数値の攻撃力・守備力を持つ『邪精トークン』を特殊召喚する!!」

 

 

蓮 LIFE1000→3800

『邪精トークン』 ☆1 A2800

 

 

「……ほう?トークンとはいえ闇属性を容れるとはな……」 

 

「念のための防御札だよ、ライフ消費の激しいデッキだからな、リカバリーは必須だからな」

 

「ふん、それでなんとか出来るならな!!『ジーク・クリムゾン』で『邪精トークン』を攻撃!!この瞬間、『ジーク・クリムゾン』はバトルの間だけ、攻撃力を500アップする!!」

 

 

『極帝龍騎ジーク・クリムゾン』 A2500→3000

 

蓮 LIFE3800→3600

 

 

「くっ……そういえばそんな効果もありやがったな……」

 

「俺はカードを二枚伏せて、ターンエンド!!」

 

煉弐 LIFE7900 手札3枚

フィールド

『魔帝龍騎ダーク・クリムゾン』 ☆7 A2800

『魔龍帝ジークフリード』 ☆9 A3500

『極帝龍騎ジーク・クリムゾン』 ☆6 A2500

『七龍帝の玉座』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……」

 

 手札は四枚、フィールドには永続魔法が一枚、正直言えばかなり厳しい、けど、

 

「速攻魔法『手札断札』を発動!!互いに手札を二枚捨てて、二枚ドロー!!……来た!!自分フィールドにモンスターが存在しないとき、手札の『LL―ターコイズ・ワーブラー』を特殊召喚!!」

 

 

『LL―ターコイズ・ワーブラー』 ☆1 A100

 

 

 三神さんから譲り受けたこのカードで、状況を打破して見せる!!

 

「『LL』……やはり鳥獣か……」

 

「『ターコイズ・ワーブラー』が特殊召喚に成功したとき、さっき墓地へ送った『LL―コバルト・スパロー』を特殊召喚!!さらに『コバルト・スパロー』の効果で、デッキから『LL―サファイア・スワロー』を手札に加える!!」

 

 

『LL―コバルト・スパロー』 ☆1 A0

 

 

「そしてカードを一枚伏せ、魔法カード『ハンドタイフーン』を発動!!互いに手札が一枚以上あるとき発動できる。手札を全て捨てて、デッキから四枚ドローする!!」

 

「……(あちらでの禁止カードか)

 

「そして伏せていた魔法カード『死者転生』を発動!!手札の『鳥武神シシグイ』を墓地へ送り、墓地の『LL―サファイア・スワロー』を手札に加える!!」

 

 これで能動的に『シシグイ』を墓地へ送れた。あとは……

 

「(ダメージを与える!!)俺は手札の『サファイア・スワロー』を、手札のレベル1『ゲニン・スズメ』と共に特殊召喚!!」

 

 

『LL―サファイア・スワロー』 ☆1 A100

『ゲニン・スズメ』 ☆1

 

 

「俺はレベル1のモンスター四体でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ!!『LL―アセンブリー・ナイチンゲール』!!」

 

『LL―アセンブリー・ナイチンゲール』 ★1 A800

 

「(本当なら墓地に『LL』があれば良かったんだが……)バトルだ!!『アセンブリー・ナイチンゲール』でダイレクトアタック!!このカードはORUの数までダイレクトアタックが出来る!!」

 

「罠カード『聖なるバリア―ミラー・フォース』を発動」

 

「チィ!!『アセンブリー・ナイチンゲール』の効果発動!!ORUを一つ使い、このターン自分に対する戦闘ダメージ、及び『LL』は戦闘及び効果で破壊されない!!」

 

 

使用ORU

『ゲニン・スズメ』

 

 

「だがORUが一つ消えたことで、ダメージとダイレクトアタックの回数は減少だ」

 

「それでも合計1800ダメージを喰らえ!!」

 

 

煉弐 LIFE7900→6100

 

 

「ぐ……俺はカードを二枚伏せて、ターンエンド!!この瞬間、『切り株都市』の効果でデッキトップを確認……カードは『鳥武神シシグイ』、よって俺は守備表示で特殊召喚!!これにより『アセンブリー・ナイチンゲール』の攻撃力は400アップ!!」

 

 

蓮 LIFE3600 手札一枚

フィールド

『LL―アセンブリー・ナイチンゲール』 A1000

『鳥武神シシグイ』 ☆5 D2000

『神樹の切り株都市』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

「この瞬間!!『アセンブリー・ナイチンゲール』の効果発動!!ORUを一つ使い、このターンのダメージと、『LL』の戦闘及び効果での破壊を無効にする!!」

 

 

使用ORU

『ターコイズ・ワーブラー』

 

 

「……俺はフィールドの『ダーク・クリムゾン』をリリースし、2体目の『ダーク・クリムゾン』を攻撃表示でアドバンス召喚!!」

 

 

『ダーク・クリムゾン』 ☆7 A2800

 

「『ダーク・クリムゾン』のモンスター効果!!エクストラデッキから現れろ!!『五賢龍帝ハドリアヌス』、『五賢龍帝ピウス』!!」

 

 

『五賢龍帝ハドリアヌス』 ☆7 A2000

『五賢龍帝ピウス』 ☆8 A2200

 

 

「『五賢龍帝』まで組み込んでるのかよ……」

 

「さらに俺は魔法カード『七星の宝刀』を発動!!『ダーク・クリムゾン』を除外し、デッキから二枚ドロー!!バトルだ!!『ダーク・クリムゾン』で『シシグイ』を攻撃!!」

 

「ぐ……すまない、シシグイ」

 

「相手モンスターを破壊したことにより、『ダーク・クリムゾン』の効果で一枚ドロー!!……俺はこれでターンエンド」

 

 

煉弐 LIFE6100 手札5枚

フィールド

『魔龍帝ジークフリード』 ☆9 A3500

『極帝龍騎ジーク・クリムゾン』 ☆6 A2500

『五賢龍帝ハドリアヌス』 ☆7 A2000

『五賢龍帝ピウス』 ☆8 A2200

『七龍帝の玉座』 永続魔法

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……俺は永続魔法『一族の結束』を発動!!墓地には鳥獣しか存在しないため、攻撃力を800アップ!!」

 

『アセンブリー・ナイチンゲール』 A400→1200

 

「さらに装備魔法『進化する人類』!!これを『アセンブリー・ナイチンゲール』に装備する!!」

 

 

『アセンブリー・ナイチンゲール』 A1200→3600

 

 

「バトル!!『アセンブリー・ナイチンゲール』で相手にダイレクトアタック!!」

 

「悪いがそうはさせん、速攻魔法『サイクロン』!!『進化する人類』を破壊する」

 

 装備魔法が破壊され、『アセンブリー・ナイチンゲール』の勢いが下がっていく。が、

 

「それでもダイレクトアタック二回だ!!2400のダメージを喰らえ!!」

 

 

煉弐 LIFE6100→3700

 

 

 しかし、二撃食らったと言うのに、相手は寧ろ涼しい顔でこちらを睨んできた。

 

「く……俺はこれでターンエンド。『切り株都市』の効果……カードは『セブンストア』……魔法カードなのでデッキトップに戻す」

 

 

蓮 LIFE3600 手札0枚

フィールド

『LL―アセンブリー・ナイチンゲール』 A1200

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『一族の結束』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

 ここに来てデッキから嫌われ、俺は奥歯を噛み締める。

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

「『アセンブリー・ナイチンゲール』の効果!!」

 

使用ORU

『サファイア・スワロー』

 

「俺はチューナーモンスター『暴龍王ネロ・ドラグディウス』を通常召喚!!」

 

 

『暴龍王ネロ・ドラグディウス』 ☆3 A1000

 

 

「このカードが『龍帝』と名のつくモンスターのシンクロ素材となるとき、レベルを4として扱うことが出来る!!俺はレベル6『ジーク・クリムゾン』にレベル4扱いの『ネロ・ドラグディウス』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『五賢龍帝トラヤヌス』!!」

 

 

『五賢龍帝トラヤヌス』 ☆10 A2800

 

「『トラヤヌス』がシンクロ召喚でエクストラデッキから特殊召喚されたとき、フィールドの『龍帝』一体につき、ライフを1000回復する!!」

 

 

煉弐 LIFE3600→7600

 

 

 やっとの思いで削ったライフが、あっという間に元に戻る。それだけで精神的にかなりキツいものがあった。

 

「俺はカードを二枚伏せターンエンド……」

 

 

煉弐 LIFE6100 手札5枚

フィールド

『魔龍帝ジークフリード』 ☆9 A3500

『五賢龍帝トラヤヌス』 ☆10 A2800

『五賢龍帝ハドリアヌス』 ☆7 A2000

『五賢龍帝ピウス』 ☆8 A2200

『七龍帝の玉座』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……俺はセブンストアを発動……『アセンブリー・ナイチンゲール』をリリースし、デッキから二枚ドロー」

 

 手札に来たカードにも、逆転できる一枚は存在しなかった。

 

「……俺は『一時休戦』を発動、互いに一枚ドローして、相手ターン終了までダメージを0にする。これでターンエンド……『切り株都市』の効果……『ハーピィ・レディ1』のため、特殊召喚……」

 

 

蓮 LIFE3600 手札二枚

フィールド

『ハーピィ・レディ1』 A2400

『神樹の切り株都市』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……バトル!!『魔龍帝ジークフリード』で『ハーピィ・レディ1』を攻撃!!」

 

「ぐ……」

 

「相手モンスターを破壊したことにより、デッキから一枚ドロー。俺は『デブリ・ドラゴン』を召喚!!さらに罠カード『妖怪のいたずら』を発動!!フィールドのモンスターのレベルを全て2つ下げ、俺はレベル7となった『魔龍帝ジークフリード』にレベル2の『デブリ・ドラゴン』をチューニング!!シンクロ召喚!!現れろ!!『五賢龍帝ネルウァ』!!」

 

『五賢龍帝ネルウァ』 ☆9 A2500

 

「『ネルウァ』がシンクロ召喚でエクストラデッキから特殊召喚されたとき、相手フィールドのモンスターを三体まで手札に戻せるが……無いために不発だ。俺はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

 

煉弐 LIFE6100 手札5枚

フィールド

『五賢龍帝ネルウァ』 ☆9 A2500

『五賢龍帝トラヤヌス』 ☆10 A2800

『五賢龍帝ハドリアヌス』 ☆7 A2000

『五賢龍帝ピウス』 ☆8 A2200

『七龍帝の玉座』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!……よし、俺は『飛翔融合』発動!!手札の『幻のグリフォン』と『鳥武神シシグイ』を融合!!現れろ!!『鳥武姫神シシグイ・アスカ』!!」

 

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 ☆10 A2000

 

 

「『シシグイ・アスカ』が融合召喚に成功したとき、墓地から素材となった数まで、墓地の鳥獣族を特殊召喚する!!俺は『シシグイ』を二体特殊召喚!!」

 

『鳥武神シシグイ』×2 ☆5 A500

 

「さらに伏せカード『リビングデッドの呼び声』を発動!!墓地から三体目の『シシグイ』を特殊召喚!!」

 

「……なるほど、上手く展開したか」

 

「『シシグイ』の効果!!自分フィールドの風属性モンスターの攻撃力を、フィールドの鳥獣族一体につき200アップする!!これにより全体で2400アップ!!」

 

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 A2000→4400→5200

『鳥武神シシグイ』×3 A500→2900→3700

 

 

「バトル!!『シシグイ・アスカ』で『五賢龍帝ハドリアヌス』を攻撃!!この瞬間、『シシグイ・アスカ』の効果発動!!『シシグイ』三体の攻撃権を放棄し、その攻撃力の合計11100アップする!!」

 

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 A4400→15500

 

 

「喰らえ!!烈風のスクラムブラスター!!」

 

 巨大な暴風を纏った突撃が赤と青の巨大な龍に迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カウンター罠『攻撃の無力化』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、それは間に現れた巨大な渦に阻まれ、決まることはなかった。

 

「ぐ……俺はこれでターンエンド。『切り株都市』は……『ツインツイスター』……」

 

 

蓮 LIFE3600 手札0枚

フィールド

『鳥武神シシグイ』×3 A2900

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 A4400

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『一族の結束』 永続魔法

『リビングデッドの呼び声』 永続罠

伏せカード一枚

 

 

「俺のターン、ドロー!!俺は2体目の『暴龍王ネロ・ドラグディウス』を通常召喚!!俺はレベル9『五賢龍帝ネルウァ』にレベル3『ネロ・ドラグディウス』をチューニング!!五賢の龍を束ねし龍帝よ!!全てを破壊し、全てを消滅させろ!!シンクロ召喚!!現れろ!!『五賢龍帝アウレリウス』!!」

 

 

『五賢龍帝アウレリウス』 ☆12 A3500

 

 

「『アウレリウス』の効果!!このカードがシンクロ召喚でエクストラデッキから特殊召喚されたとき、相手フィールドのモンスター全てを除外する!!」

 

「な!!」

 

 『アウレリウス』の咆哮と共に巨大な闇がフィールドに現れ、俺のモンスター全てを飲み込み、全てを消し去った。

 

「さらにその後、墓地の『五龍賢帝』と名のついたモンスターを一体特殊召喚する!!俺は『五賢龍帝ネルウァ』を特殊召喚!!」

 

 フィールドに並んだ五体の巨龍、まるで圧迫するような威圧感に俺は後に下がってしまった。

 

「貴様のような雑魚!!俺の敵ではない!!バトル!!モンスター全てでダイレクトアタック!!」

 

 五体の龍の放ったブレスがフィールドに爆発を引き起こし、その中に埋もれて吹き飛んだ。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

蓮 LIFE3600→0

 

 

 バトルが終わった瞬間、俺は崩れ落ちるように倒れる。痛みやプレッシャー、色々なものが混ざりすぎてなにがなんだが分からなくなっていた。

 

「ふん、その程度で潰れるとはな……やはり既に破壊神ではないのだな」

 

 奴はそう言い残すと、背を向けて去っていく。俺は朦朧となっていた意識を手放し、闇の中へ落ちていった。




オリカ紹介

『魔龍帝ジークフリード』
☆9/闇/ドラゴン/A3500/D1500 融合
『ジーク』と名のついたモンスター+闇属性ドラゴン族
『魔龍帝ジークフリード』はフィールドに一体しか存在できず、②の効果は1ターンに一度しか発動できない。
①このカードが戦闘で相手にダメージを与える時、その数値を二倍にする。
②このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、デッキから一枚ドローする。


『極帝龍騎ジーク・クリムゾン』
☆6/炎/ドラゴン/A2500/D2000 融合
ドラゴン族モンスター2体
①このカードが融合召喚に成功したとき、相手フィールドの攻撃力1500以下のモンスターを破壊する。
②このカードがバトルするとき、ダメージ計算時まで攻撃力を500アップする。


『五賢龍帝トラヤヌス』 
☆10/光/ドラゴン/A2800/D2000 シンクロ
ドラゴン族チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター一体以上
『五賢龍帝トラヤヌス』はフィールドに一体しか存在できない。
このカードがシンクロ召喚でエクストラデッキから特殊召喚に成功したとき、自分フィールドの『龍帝』と名のついたモンスター一枚につきライフを1000回復する。


『五賢龍帝ネルウァ』
☆9/風/ドラゴン/A2500/D2000 シンクロ
ドラゴン族チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター一体以上
『五賢龍帝ネルウァ』はフィールドに一体しか存在できず、②の効果は1ターンに一度しか発動できない。
①このカードがシンクロ召喚でエクストラデッキから特殊召喚に成功したとき、相手フィールドのモンスター三体までを選択して手札に戻す
②このカードがバトルを行うとき、相手フィールドの表側表示の魔法カードを破壊する。


『五賢龍帝ハドリアヌス』
☆7/水/ドラゴン/A2000/D2500 シンクロ
ドラゴン族チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター一体以上
『五賢龍帝ハドリアヌス』はフィールドに一体しか存在できない。
このカードがシンクロ召喚でエクストラデッキから特殊召喚に成功したとき、墓地の永続魔法を任意の数までフィールドに発動する。


『五賢龍帝ピウス』
☆8/地/ドラゴン/A2200/D2000 シンクロ
ドラゴン族チューナー+チューナー以外のドラゴン族モンスター一体以上
『五賢龍帝ピウス』はフィールドに一体しか存在できず、②の効果は1ターンに一度しか発動できない。
①このカードがシンクロ召喚でエクストラデッキから特殊召喚に成功したとき、このカードの攻撃力以下のモンスターを一体破壊する。
②このカードが攻撃宣言したとき、このカード以外の『龍帝』モンスターをエクストラデッキへ戻すことで、そのモンスターの攻撃力以下のモンスターを一体破壊する。


『五賢龍帝アウレリウス』
☆12/闇/ドラゴン/A3500/D2500 シンクロ
ドラゴン族チューナー+チューナー以外の『龍帝』モンスター一体以上
『五賢龍帝アウレリウス』はフィールドに一体しか存在できず、②の効果は1ターンに一度しか発動できない。
①このカードがシンクロ召喚でエクストラデッキから特殊召喚に成功したとき、相手フィールドのモンスター全てを除外する。その後墓地の『五賢龍帝』モンスターを一体、フィールドに特殊召喚する。
②このカードが攻撃宣言したとき、相手の攻撃力1800以上のモンスターを一体選択し、破壊する。


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第二十五羽 嘆き雨に空風を

今回はバトル無しで短いです。ホントすみません……


 目を覚まして最初に見たのは、見覚えの無い白色の天井だった。どうやら感触からベットに寝かせられてるのは分かったが、どうにも身体中激しい痛みが襲ってくる

 

「ん、気がついたみたい」

 

 と、椅子に座ってチュッ○チ○ッ○ス舐めながら本を読んでいた蘭が、まるでいつも通りの無感情な声をかけてきた。

 

「……ここは?」

 

「劔菜先輩の家が所有してるホテルの一室、家まで運んでもよかったけど、ミーティングもしたいからって」

 

 ミーティング……その言葉に俺はガバッと起き上がろうとするが、

 

「ウッ……!!」

 

「無理に起きるのはやめた方がいい、リアルであんな爆撃を食らったんだから」

 

 痛みで思うように動かず、蘭から呆れるような声を頂くことになった。

 

「……予選は」

 

「一応ブロック2位だから大丈夫、数日開けて来週から地区大会本選」

 

「……そっか」

 

 一応納得するが、それでも気分は全くもって晴れない。

 

「……悪い、少しだけ一人にさせてくれ」

 

「……分かった」

 

 彼女はそう言うと立ち上がり、先程まで自分が座ってた椅子に、持っていたのだろう俺のデッキケースを置いた。

 

「……あんまり思い詰めたらダメだからね」

 

 そう言って出ていく彼女に俺は何も言わなかった。

 

「……くそ」

 

 悔しさ混じりにそう呟く。圧倒的だった、絶望的だった、壮絶だった……そう言うしかないほどに奴のデッキは強力で、かつ繊細に作り上げられた戦術、そしてそれを使いこなせる頭脳……どれもこれも俺以上の使い手だった。

 

 別段負けるのは仕方ないし、負けた分はそれ以上に研究すればいい。けど、

 

『その程度の盆百で雑魚なデッキを使うとは、貴様、やはり『破壊神』ではなくなってしまったようだな』

 

 奴の放ったその言葉は、俺のプライドを粉々にする程の衝撃だった。同時に、『魔龍帝ジークフリード』の一撃で俺の心が折れた。それを示すように後半は精細の欠いたデュエルをしてしまった。

 

 悔しい以上に、自分自身の打たれ弱いメンタルに腹が立った。今回、全くもって何も出来なかった同然の結果が、さらに無性に歯噛みしたくなった。

 

「……」

 

 おもむろにデッキを取り、中のカードを確認する。どのカードも自分が強いと思えるように組んだ一枚、けど、それ以上じゃない。

 

 ほとんどのカードが寄せ集め同然の組み方をされてるこのままじゃ、多分勝ち続けるのは難しいだろう。それでも……

 

「次は……俺が絶対に勝つ」

 

「俺達が……ッスよ兄貴」

 

 と、まるで見計らったように現れた亮に若干驚く。

 

「聞いてたのかよ」

 

「偶々ッスよ、なんでもかんでも一人で背負い込むのはダメだと俺は思うッス」

 

 そう言って持っていたレジ袋からお握りを二つ、俺の好きな昆布おかかと鮭わさびマヨネーズのそれを渡した。

 

「強くなるにもまず体から、これ食べて元気つけてください兄貴」

 

「……おう」

 

 勘のいい弟分の言葉を聞きながら、強くなることを誓うのだった。

 

 

 

 

「そうか……蓮は大丈夫そうだな」

 

 隣室、椅子に座りながら2Lペットボトルのジュースをがぶ飲みしていた劔菜はニヤリと笑いながら呟いた。

 

「毎度のことで突っ込むのもアレだけどさ、劔菜ってホント令嬢ってイメージから掛け離れた事するよね」

 

「偏見というものだろそれは……それに洒落た高級なものより、安くて旨いこういうのだからこそ、やけ酒ならぬやけジュースにもってこいだろ?」

 

「そりゃそうだけどさ……だからってコーラがぶ飲みに手元にスナック菓子って、それこそニートゲーマーみたいだよ?」

 

 僕の注意に我関せずという態度を取り続けてる劔菜にいつもながらに溜め息をついてしまう。

 

「……そんなに悔しかったの?」

 

「……悔しいで済めばこんなことはしていないさ。準備は怠ってなく、寧ろ少ない時間で研究した。それでも結果は惜敗だ、圧倒的に格が違うというやつだろう」

 

 その言葉に僕も重く頷く。事実、仮に僕があの天使使いと戦ったとして、確実に勝てるかと聞かれれば確実にノーと言える。

 

 僕の相手だって、結局的には僕が勝てたからいいものの、もしあの『ストライクジークヴルム』使いの相手が劔菜だとしたら、もしかすればストレート負けだったと考えても不自然はない。

 

「正直言おう……私達はまだまだカードを使いこなせていないと思っている」

 

「……どうして?」

 

「なに、それこそ私達のモンスターの元の敬称を考えれば一発だろう?」

 

 そう言われて成る程と苦笑する。確かに劔菜の言う通りだとすればそうだろう。だが、

 

「言っては悪いけど、それでも亮と蘭は……」

 

「それこそいらない心配だ、それに亮と蓮は既に第一段階に踏み込んでいる。いや……既に蓮は二段階目か」

 

 二段階目……その言葉が現す意味は……

 

「……確かに、でなければ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「その通り……詰まる所……私達はまだ強くなれる」

 

「――なら、頑張るしかないわね」

 

 と、いつのまに戻ってきたのか、レジ袋片手に壁に寄りかかる姉……椿姫の姿があった。

 

「後輩たちが進歩してるのに、先輩が負けるわけにはいかないものね」

 

「そうだな……実力で負けてたとしても、それ以外で負けるわけにはいかないからな」

 

「僕たちの場合、経験の質だね」

 

 僕が笑ってそういうと二人とも小さく笑った。

 

「忙しくなるぞ……」

 

「地区大会予選の決勝は一週間後だからね……」

 

「勝ち進んで、絶対に決勝に行くんだから!!」

 

 僕ら二年生の絆……元から固く結び付いていたそれが確かに、確実に深くなったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 屋上、冷たい夜風を浴びながら私は空を眺めていた。

 

「……」

 

『随分と、悩んでるようだな』

 

 取り出した一枚のカードから聞こえた声に、私はムッとして睨む。

 

「……私が何で悩むの?」

 

『さあな、我はお前ではあるまいてお前の考えなど分からん』

 

「……貴方を使えば、仮にあの『龍帝』とかいう奴に勝てた?」

 

 私がそう聞くと、謎の声はくぐもった声で笑う。

 

『勝てたかどうかで聞けばそうだろうな。でなければ、貴様の()()()()()として使われてはおるまい?』

 

「試すような口調だけど、本心ならどうなの?」

 

『…………正直言うなら分からん、見た限りだが、あのデッキの展開力は主のそれと同じと言って過言なし、仮に戦うとすれば、どちらが先にエースを出せるかに勝負がつく』

 

 それに、とその声の主は続ける。

 

『奴もまだ、自分の真のエースを隠しておる。そのカード次第では、我ですら勝てないと見ても不思議ではない』

 

「……かつて、異なる世界を統べた王の切り札だったあなたが?」

 

『その時と今とでは状況もカードプールも違う。故に、我が最強だとは大声で言えないものよ』

 

 貴様の思い人の切り札のようにな、とそれは続けた。

 

「……どういう意味?」

 

『なに、すぐに分かることよな主よ』

 

 そう言うと一切その声は聞こえなくなり、仕方なしにカードをしまった。




イッタイナンノカードナノカナァ~(すっとぼけ


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2.5章 再炎の儀式
コラボ 儀式使いの戦士①


「しっかし、流石高級ホテルの自販機というべきか……品揃えも意外と多いな」

 

 右手でレモンスカッシュのペットボトル飲料を選択しながらそう言ってる俺に、亮は少し苦笑いをしていた。

 

「そうっすね、コーラとかスポドリなら良く見かけるっすけど、流石にレモンスカッシュとかマッ缶が売ってるとは思わなかったっす」

 

 全くもって同じくだ。というかこんな高級ホテルに来てまでマッ缶を飲みたいと思うやつがいるのか?

 

「そう言いつつマッ缶1本買ってると説得力ないっすよ」

 

「ま、その通りだわな」

 

 そんな感じで自販機前で談笑していたその時、右の腰に付けていたデッキケースから仄かな熱を感じた。何事かと思っていた次の瞬間、壁を挟んだ所からドサリという音が聞こえた。

 

「なんだ?今の音?」

 

 不思議に思い音の方向に向かってみると、そこには何やら丸い玉のようなアクセサリーを頭に重ねて身につけていた青い髪の少年が倒れていた。

 

 慌てて近寄ってみると、若干焦げた匂いはするが、どうやら気絶してるだけで呼吸とかはちゃんとしていた。

 

「どうするっすか、兄貴?」

 

「どうするって言われてもな……」

 

 普通なら病院に送るべきなのだが、俺のデッキが熱くなった所から見ても何か関係がありそうだし……

 

「……しゃあない、俺の部屋に連れてくぞ」

 

「ウッス!!」

 

 

 

「お、どうやら起きたみたいだな」

 

 運び終えてすぐさま売店からおにぎりやらサンドイッチやらを買い込んで(腹が減ってはなんとやらだしな)戻ってみると、丁度良く目が覚めた所だった。

 

「まさかホテルの廊下でいきなり倒れてたからな、仕方ないから俺の部屋に運んだけど文句は言うなよ」

 

 俺はそう言いながらおにぎりとサンドイッチのどちらが良いか尋ねた。

 

「……ここは?」

 

「ん?ここは俺の先輩の親が経営してるホテルのスウィートだぜ。さっきも言った通り、お前は廊下でいきなり倒れてたところを俺と俺の友人が運んだんだよ」

 

 俺はそう言いながらさっき買ったレモンスカッシュをグビグビと飲む。

 

「しかし、随分と酷く焦げてたけど、デュエルディスクは……大丈夫じゃなそうだな」

 

 見た感じだいぶ年期の入った感じにボロボロで、雷にでも撃たれたのか、真新しい焦げあともチラホラと見える。

 

「俺はそっちに詳しくは無いけど、ここまでボロボロだと直す方が苦労しそうだな……主に金銭的な意味で」

 

 ここまで機能的に逝ってるとオーバーホールか、安く済ますなら買い直すほか無いと思う。そうなれば少なくとも三万近くは掛かるだろうな……。

 

「詳しく見てみないと分からないが、これくらいならパーツを取り換えれば何とかなるだろう」

 

 どうやらそっち系の知識があるところを見ると、記憶がないとかそういう感じじゃなさそうだな。

 

「ま、それは今は良いや……と、そういや名乗ってなかったな、俺は風山蓮だ。蓮って呼んでくれ」

 

 俺がそう名乗ると、

 

「……俺はユーキだ」

 

 と名乗った。しかしユーキ、その名前を聞いたとき何となく既視感を感じた気がしたが、まぁ別に大丈夫だろう。

 

「ユーキか……ま、しかしあれだな。とりあえずシャワーでも浴びてこいよ。ちょうど知り合いにデュエルディスクに詳しい人間が居るから、その人に見てもらえば良いしな」

 

「なぜ初対面の俺にそこまでする?」

 

 俺の言葉に疑問符を付けながら聞いてくる。まぁ確かにその通りなのだが……

 

「まぁ……こっちもちょっとした訳有りなんだよ。ギブアンドテイクってやつだよ」

 

 下手にカードが反応したなんて言って頭おかしいと思われるのも嫌だしな。

 

「俺を助ける事に何のメリットがあるんだ?」

 

「ま、深く考えんなって。人の親切にはある程度素直に受け取っておくのが、ある程度の信頼関係を結ぶにはちょうど良いんだよ。それに高級ホテルのスウィートでシャワーなんて中々に体験できないしな」

 

 俺はそう言いながら何となく買っておいたマッ缶をユーキの座っているベットに置くと、カードキーを持って入り口のドアを出ようとした時だった。

 

「ならありがたく使わせてもらうが1つ忠告をしておく、あまり人を信じない方がいいぞ。もし俺が犯罪者だったらどうするつもりだったんだ?」

 

「……悪いがそりゃ痛いほど知ってるんでな、けど、何もかも疑って掛かってたら何も信じられなくなる。そんな風にはならないって、妹の墓前に誓ったんだよ」

 

 俺は歯を噛み締めながらそう言って出ていくと、ドアに寄りかかるような体勢となったあとにため息をついた。

 

「……居るんだろ、社長さんよ」

 

「おや、やはり気づいていたかな?」

 

 いつも通りの神出鬼没さで登場する社長に再びため息をつく。ここカードキーがないと入れない仕組みなんだけど……

 

「それで、君がこうして話しかけてくるとは珍しいじゃないか」

 

「とぼけんな、あのユーキってやつ……もしやアンタが言ってた組織の人間って事じゃ無いよな?」

 

「その可能性は多分0だね、少し監視カメラを覗いてみたけど、彼、何処からともなくあの場に現れて、あの場で気絶してたから」

 

 かなりの問題発言をしていたが、とりあえずそこは置いておこう。今はそれどころじゃない。

 

「正直に言えば、俺はあの龍帝に勝てるとは思えない」

 

「ほう?何とも弱気だね、君ともあろうものが」

 

「茶化すな、俺が勝てないって言うのは単純に相性の問題だ、アニメの台詞じゃないが、幾ら数で圧倒できても、究極の一には勝てないってのが良く分かった」

 

 俺のデッキは数を揃えて、底上げした火力で連打するのが常套手段、だがそれも揃える前に潰せるあの火力を前には意味を為さない。

 

「だからこそ聞きたい、アンタから見て、俺はその相性を覆せるほどの力を持っていると思っているのか?」

 

 俺の疑問に、社長は頤に手を当てて少し考える。

 

「正直に言えば、恐らく君一人の力では難しいだろうね。それほどまでにあの戦いにおいて龍帝使いは強力な一と言わざるをえない」

 

「やっぱり「だが」」

 

 だが、と社長はイラっとする程の笑顔で続けた。

 

「それは君一人の場合だ。君のデッキは、いや()()()()()()()には、必ず側にいる者が、君の魂とそのデッキに存在している」

 

 そう言うと社長は背を向け、

 

「彼とデュエルをするといい、恐らく彼とデュエルをすればそれについて何か分かるだろうさ」

 

 

 社長との会話を終えた俺はやれやれと思いながらカードキーを使って中に入る。すぐそばのシャワールームから水音が聞こえてる事から、やはりシャワーは浴びてるのだろう。

 

「しっかし……カードが……か」

 

 机の椅子に座りながら、社長から言われた言葉と不思議な現象を思い出す。さっきのデッキの熱、微かにだが心地よいような風も感じた。あれはいったいなんだったのか……

 

「は、アニメじゃあるまいし、カードに精霊が宿ってるとでも言うのかね」

 

「何ぶつぶつ呟いているんだ?」

 

「うあだ!?」

 

 いきなり声を掛けられ驚いた俺は椅子ごとひっくり返り背中をぶつける。

 

「お、おま……シャワー浴びてたんじゃねぇのかよ」

 

「シャワーは軽く済ませただけだ」

 

「そうかよ。で、だ……これからっていうか……」

 

 俺はそう言いながらユーキのデュエルディスクをチラリと眺める。

 

「取りあえず、こいつを直さないとな。これで代金はどうにかなるかどうか……」

 

 そう言って取り出したのは、使用するであろうデッキの物ではないカードの束だった。しかもご丁寧にスリーブまで付けてある。

 

「デュエルのカード?まぁ一概には言えないけど、最新のカードとか希少価値の高いカードはそれなりに売れるけど、それでも高くても3~4千円程度だぞ?コモンとかなんか1枚一円になるかも分からないしな。」

 

 幾らデュエル資本主義に傾倒してるとはいえ、あくまでも娯楽の一つだ。アニメとかじゃあるまいしとんでもない金額とかはまずあり得ない。

 

「それにデュエルディスクの個人認証システムも必要になるしな。そっちはまぁ俺が付き添えばなんとかなるだろうけど、それでもデュエルディスクの正規パーツを買い揃えるならそれこそ傷無しのホルアクティ最低5枚無きゃ無理だろ」

 

「安心しろこのデュエルディスクは手作りで、中古でもなんとかなるだろう」

 

「いやデュエルディスク手作りって……まぁカード売るにしてもそれなりの枚数無いとな……どれくらい持ってるんだ?」

 

 ケースを見た感じ、多く見積もっても百枚前後、全てURカードならともかく、普通のレアやSRもあるなら、高く見積もって3~4万前後だろう。

 

「ざっと100枚と言った所だろ。もっとも売れるかどうかは分からんけど。」

 

「まぁ見た感じ状態もまずまずだからな・・・下手な買取りする所じゃなければ三万ぐらいは行くかな・・・多分」

 

 となると明日はユーキを連れてあのカードショップに行かないといけないわけか。まぁ今日の明日だし都合が言いと言われればそうなんだが。

 

「まあ実際に売ってみれば分かるはずだ。」

 

 そう言ってユーキはカードをしまうと立ち上がり、

 

「それじゃ俺はこのへんで。色々ありがとうな。」

 

 そう言ってユーキは部屋を出ようと……ってオイマテ!!

 

「ちょい待ち、いったいどこに行くつもりだ?」

 

 俺はそう言いながらユーキの足を止める。

 

「生憎今はもう深夜近くだ。カードショップも閉店してるし、コンビニぐらいしか空いてない。それなのにどこへ行くつもりなんだ?」

 

「そうか。寝ていたから時間の感覚が分からなかっただけだ」

 

 俺はその言葉に、やはり隠そうとするのかと舌打ちをする。ならば

 

「それに、お前このホテルのカードキーを持ってるのか?当然だが、見た時のお前は連れが居なかった。先輩の話だと部屋の鍵とエレベーターの移動装置、非常階段の出入口は連動してるんだ、持ってないのにどうやって移動する腹積もりなんだ?」

 

 俺はそう言いながら腕に付けていたデュエルディスクを構える。

 

「悪いが俺はお人好しだが、頭が悪い訳じゃねぇんだ。下手に動けば俺はモンスターでお前を攻撃しなきゃならない。だがそっちはデュエルディスクが使えない、どうやってもお前が不利だぜ」

 

 半分は嘘だった。正直言えば俺にはあの龍帝使いみたいに攻撃を実体化させることはできないし、何よりこの程度で目の前の奴が諦めるとは到底思えない。

 

「別に俺も鬼じゃない、どうせ身動きが取れないなら、今夜はここに泊まっとけ。今すぐ動こうが明日すぐに動こうが結果は同じなんだ、こっちも今日は色々あって余計な体力を使いたくないんだ」

 

 ここまで言えば、脳筋でもない限り騒ぎを起こして悪目立ちするのは嫌がる。だから

 

「……ならそうさせてもらう」

 

 大人しく部屋に戻ってくれる。やはりこいつ自身脳筋じゃないし、普通に理解ができると見ても大丈夫だろう。

 

「分かってくれりゃそれでいい」

 

 俺はデュエルディスクをしまうと、軽く伸びをする。

 

「はぁ良かった、最悪うちのプロとか先輩と亮の家の黒服連中にお願いしての大捜索になるかもしれなかったからな。そうならないだけ安心だ、うん」

 

 そう言って俺はさっきまでユーキが寝ていたベッドの隣にあったベットに靴を脱いで横になる。さらにカードキーをデュエルに挿し込む。

 

「んじゃそっちのベッドは使っていいから、俺は寝させてもらうぜ」

 

 そう言って俺は目を瞑り、ゆっくりと眠るのだった。



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コラボ 儀式使いの戦士②

 さて翌日、初のスウィートルームのベットで熟睡できた俺は、俺より早く起きていたらしいユーキと共に俺の馴染みのカードショップへやって来たわけだが……

 

「すまないが、カードを売りたいのだけど」

 

「意外に普通だな反応が……」

 

 普通は腕にアメリカンタトゥーを入れたスキンヘッドの店員とか、客もヤクザやチンピラのような格好なのに和気藹々とテーブルデュエルを楽しんでるのに驚くのが普通だ。。もはや馴れてしまった俺は兎も角、初めて来た人間は逃げ出すか唖然とするのがお約束だというのに

 

「お前が連れてきた時点でここが安全な場所なのは解り切った事だ。最もお前が俺を騙しているなら話は別だがな」

 

 そこまで言うのか……俺としては昨日のお前の不信発言を聞いてるから若干アレなんだが。

 

「お、今日は見慣れないのと一緒だな蓮の坊主」

 

「おい蓮坊、ちょっと新しくデッキ作ったから試しデュエルしようぜ」

 

「蓮坊や、お前さん『ソニック・バード』持ってないか?ちょいとトレードして欲しいんだが」

 

 しかし、毎度の事だがここの人間、見た目の怖さを反比例するようにコミュニケーション能力高いよな。

 

「あー、悪い、今日はちょっと隣のやつのカードの買取りでさ、デュエルとかトレードはまた今度にしてくれ」

 

 俺がそう断ると、少し不満そうだがそこは年上の大人、きっちりと分別をつけてくれるから助かる。

 

「悪いな、ちょっと見た目おっかないけど、カードの買取りは俺が知る限りすげえ高く見積もってくれるし、何より親切だからさ」 

 

「……そうか。ならこれなんかどうだ」

 

 出されたカードを見た感じ普通のレアカードに見えたのだが、スキンヘッドの店員の目付きが変わった。

 

「ほう、限定版のカードかそれも数枚……珍しいものを持ってるものだな」

 

「限定版って、そんなにすごいのか?」

 

「当たり前だ蓮の坊主、こう言った限定版のカードは一枚数万越えするものも良くある位だからな」

 

「うげ!?マジか」

 

 流石に初めて数ヵ月程度の俺じゃ知ってるわけないやな。 バトスピ時代の『ロロ』みたいなもんだな、うん。

 

「それでいくらで買ってくれる?」

 

「そうだな……状態もそれなりだからな、見積もってこんなところだ。」

 

「まあ妥当な所だろう」

 

 チラリと覗いてみると、そこには軽く万を超えた数字が電卓に書かれていた。

 

「それじゃさっさと行くぞ」

 

「お、おう……マジかよ……」

 

 ユーキに聞こえないように小さな声で呟きながらショップを後にし、次の目的地であるパーツショップに向かうのだった。

 

 

 

 結果から言うと、デュエルディスクのパーツショップで、新品のデュエルディスク丸々一つ買えるのを、ユーキはほぼ全てジャンクパーツに変換してしまった。

 

 正直言えばもったいないとも思うが、まぁそこは人の感性というかなんというかだろう。俺には分からないが。

 

 そのままユーキはそこの作業場でデュエルディスクの修理を初めてしまい、俺は明日もあるためいったん自宅へ帰るのだった。

 

 

 

 そして二日後、あのパーツショップに向かっていた。

 

(さて、そろそろ修理も終わってるんだろうけど、どうなったかな……)

 

 俺がそう思いながら到着してみると、丁度終わったのか、自分のデュエルディスクを左手に付けたユーキが立っていた。

 

「直し終わったみたいだな」

 

 俺がそう言うと、気づいたらしいユーキは驚いていた。

 

「なんだまだ何か用か?」

 

「ご挨拶だなおい、何となく今来ておかないと勿体ない気がしただけだよ。それで、見た感じ直ったって思っていいんだよな?」

 

 俺がそう聞くと、ユーキは当然とばかりに頷いた。

 

「まあな。後は最終チェックだけだ」

 

「ならそれは俺がやらせてもらうぜ。ちょうど暇だし、何よりどんなデュエルをするのか見たかったからな」

 

「はぁ……分かった。なら場所を移動しよう。」

 

 そういうわけで移動した俺達が来たのは、ユーキが倒れていたホテルの屋上だった。

 

「何故この場所を指定した?」

 

「うーん、何となくお前と会った場所の近くにしたほうがいいかなって思ってな。俺の直感だけど」

 

 そう言って俺はデュエルディスクを構えた。

 

「行くぞユーキ!!俺の全力で、お前をぶっ倒す!!」

 

「「デュエル!!」」

 

蓮 LIFE8000

ユーキ LIFE8000

 

「先攻は俺だ、俺は手札から永続魔法『聖者の樹の実』を発動!!そしてカードを二枚伏せる」

 

 さて、早速少し展開するかな。

 

「さらに手札から魔法カード『ハンドタイフーン』を発動!!お互いの手札が1枚以上存在する時、互いに手札を全て墓地へ送り、デッキから四枚ドローする」

 

 こっちは手札1枚だから2アド、対して相手は手札五枚だから1損、手札を考えれば合計こちらは3アドを取れたことになる。

 

「この瞬間墓地に送られた『再炎コール』の効果発動。このカードが墓地に送られた場合、デッキから再炎カードを1枚墓地に送る。『再炎像ブレイズ・ガーディアン』を墓地へ」

 

 聞いたことのないカテゴリーだったが、墓地を利用するデッキか何かなのか?

 

「(ま、序盤は考えすぎてもダメだな)今引いた永続魔法『神樹の切り株都市』を発動!!そして俺は手札から『ジョーニン・トンビ』を通常召喚!!」

 

『ジョーニン・トンビ』 ☆4 A1800

 

「俺はエンドフェイズに入り、永続魔法『神樹の切り株都市』の効果を発動!!デッキトップを1枚めくり、そのカードが風属性モンスターならばフィールドへ特殊召喚できる!!……オープンしたカードはレベル5風属性モンスター『ナイト・イーグル』、よってこのカードをフィールドに特殊召喚!!」

 

『ナイト・イーグル』 ☆5 A2000

 

「ターンエンド」

 

蓮 手札2枚 LIFE8000

フィールド

『ジョーニン・トンビ』 A1800

『ナイト・イーグル』 A2000

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 さあ、相手はどう出てくるのやら。

 

「俺のターン!『再炎獣ブレイズ・ビースト』を召喚!」

 

『再炎獣ブレイズ・ビースト』 ☆4 A1800

 

 現れたのは文字通り炎に燃えてる獣型のモンスターだった。

 

「さらにマジックカード『再炎ブラスト』を発動!このカードは自分フィールドに再炎モンスターが存在する場合に発動できる。フィールドのマジック・トラップカードを2枚で破壊し、破壊したカード1枚に付き400のダメージを俺は受ける。お前のセットカード2枚を破壊!」

 

「悪いがそれは困るな、罠カード『スターライト・ロード』!!カードが二枚以上破壊される効果が発動したとき、その効果を無効にして破壊する!!その後『スターダスト・ドラゴン』をエクストラデッキから特殊召喚できるが、生憎入ってないから関係ない」

 

 やはり入っていた除去カードを苦々しく思いながら、相手がすでに一枚目の魔法を使ったことにニヤリとする。

 

「手札からマジックカード『再炎ブースト』!このターンの間、ブレイズ・ビーストの攻撃力を1500ポイントアップし、俺は1000ポイントのダメージを受ける。」

 

『再炎獣ブレイズ・ビースト』 A1800→3300

 

ユーキ:LP8000→7000

 

 ライフを削ってまで攻撃力を上げてきたか。だが、

 

「『再炎ブースト』の効果が適用終了後、永続魔法『聖者の樹の実』の効果発動!!相手が二回目の魔法カードを使用したため、強制的にバトルフェイズへスキップする!!」

 

 俺のカードの効果を聞いてか、どうにも嫌な顔をしてるのが見てとれる。まぁ、普通に制限するカードは嫌がるのは当然か。

 

「俺は墓地の『再炎虫ブレイズ・ビートル』と『再炎クイックドロー』の効果発動!『ブレイズ・ビートル』は効果ダメージを受けた場合、墓地のこのカードを手札に加える。さらに『再炎クイックドロー』は効果ダメージを受けた場合にこのカードと再炎カードを1枚デッキに戻して、カードを1枚ドローする」

 

 さっきから自分に対する効果ダメージで発生する効果ばかり……バーンデッキなのか?これは?

 

「バトル!!『ブレイズ・ビースト』で『ナイト・イーグル』に攻撃!!」

 

「墓地の『仁王立ち』の効果発動!!『ジョーニン・トンビ』を選択し、このターン相手は『ジョーニン・トンビ』以外のモンスターを攻撃できない!!ぐぁぁ!!」

 

蓮 LIFE8000→6500

 

「くっ……『聖者の樹の実』の更なる効果!!自分が戦闘ダメージを受けたとき、デッキから1枚ドローする。そして『ジョーニン・トンビ』が破壊され墓地へ送られたとき、フィールドに『分身トークン』を特殊召喚する!!」

 

『分身トークン』 ☆4 A1000

 

「そして『ナイト・イーグル』の効果で、このカードが存在する限り、自分フィールドの分身トークンの攻撃力は3000になる」

 

『分身トークン』 A1000 → 3000

 

「『ブレイズ・ビースト』の効果!このカードが相手モンスターを破壊した場合、デッキからレベル4以下の再炎モンスター1体を特殊召喚する!俺は『再炎魚ブレイズ・シャーク』を特殊召喚!」

 

『再炎魚ブレイズ・シャーク』 ☆4 A1000

 

「更に墓地の『再炎星龍ブレイズ・ガイ・アスラ』の効果!自分フィールドの再炎モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、墓地のこのカードを特殊召喚する!」

 

『再炎星龍ブレイズ・ガイ・アスラ』 ☆6 A2200

 

「ッ!!ガイ・アスラ……だと……」

 

 厄介なカード名が出てきたことに冷や汗が止まらない。それほどまでに俺にとっては聞き覚えのある名前だった。

 

「『ブレイズ・シャーク』の効果!このカードの特殊召喚に成功した場合、墓地からレベル4以下の再炎モンスター1体を守備表示で特殊召喚する!甦れ!『再炎銃士ブレイズ・リボルバー』!」

 

『再炎銃士ブレイズ・リボルバー』 ☆4 D200

 

「『ブレイズ・リボルバー』の効果!このカードの特殊召喚に成功した場合、フィールドモンスター1体を選択し、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを受ける。俺は分身トークンを選択し1500のダメージを受ける!」

 

ユーキ:LP7000→5500

 

「そして受けた攻撃力以下の再炎モンスターを手札に加える!俺は『再炎鳥ブレイズ・バード』を手札に加える!さらに今手札に加えた『ブレイズ・バード』の効果!自分が効果ダメージを受けた場合、このカードを特殊召喚し、受けたダメージ分のライフを回復する!」

 

『再炎鳥ブレイズ・バード』 ☆3 D200

 

ユーキ:LP5500→7000

 

 やはりバーン限定の自己回復効果持ちも居るのか、厄介な。

 

「『ブレイズ・バード』の効果!このモンスターが特殊召喚に成功した場合、デッキ・墓地から再炎と名の付く魔法・トラップカードを手札に加える。『再炎の儀式』を手札に!そして『ブレイズ・シャーク』の効果!このカードが場に存在する時に効果ダメージを受けた場合、レベルが1つ上がる。」

 

再炎魚ブレイズ・シャーク レベル4→5

 

 さらに相手はまだメインフェイズ2に入ってすらいないという。インチキ効果も大概にしろ……人のことは言えないが。

 

「メイン2!俺は儀式魔法『再炎の儀式』を発動!フィールドのレベル5となった『ブレイズ・シャーク』とレベル3の『ブレイズ・バード』を生贄に捧げる!再生を繰り返せし炎の天使よ、恵の炎で我らを癒せ!儀式召喚!レベル8!『再炎天ブレイズ・ヘブン』!」

 

『再炎天ブレイズ・ヘブン』 ☆8 D3000

 

「『ブレイズ・ヘブン』の効果!1ターンに1度、墓地から再炎カードを1枚手札に加える。俺は墓地から『再炎死霊魔術師ブレイズ・ネクロマンサー』を手札に加える。

カードを2枚伏せてターンエンドだ。」

 

ユーキ LIFE7000 手札2枚(『再炎虫ブレイズ・ビートル』、『再炎死霊魔術師ブレイズ・ネクロマンサー』)

場 

『再炎天ブレイズ・ヘブン』 D3000

『再炎星龍ブレイズ・ガイ・アスラ』 A2200

『再炎獣ブレイズ・ビースト』 A1800

『再炎銃士ブレイズ・リボルバー』 D200

伏せカード2枚



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コラボ 儀式使いの戦士③

今回のコラボでとあるカードをエラッタしましたので、後書きに書きたいと思います。


蓮 手札2枚 LIFE6500

フィールド

『分身トークン』 A3000

『ナイト・イーグル』 A2000

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

伏せカード二枚

 

ユーキ LIFE7000 手札2枚(『再炎虫ブレイズ・ビートル』、『再炎死霊魔術師ブレイズ・ネクロマンサー』)

場 

『再炎天ブレイズ・ヘブン』 D3000

『再炎星龍ブレイズ・ガイ・アスラ』 A2200

『再炎獣ブレイズ・ビースト』 A1800

『再炎銃士ブレイズ・リボルバー』 D200

伏せカード2枚

 

 さて、相手のプレイスタイルは良くわかった所で、早速攻勢に出るとしようか。

 

「俺のターン、ドロー!!……俺は手札から『チューニン・ツバメ』を通常召喚!!」

 

 

『チューニン・ツバメ』 ☆3 A1500

 

 

「俺はレベル4の『分身トークン』とレベル3チューナー『チューニン・ツバメ』をチューニング!!烈風纏いし翼、その一閃で全てを凪ぎ払え!!シンクロ召喚!!レベル7『鳥獣烈神ガルード』!!」

 

 

『鳥獣烈神ガルード』 ☆7 A3000

 

 

「バトル!!『鳥獣烈神ガルード』で『再炎獣ブレイズ・ビースト』へ攻撃!!この瞬間、『鳥獣烈神ガルード』の効果発動!!このカードの攻撃宣言時、相手フィールドの表側表示のカードを3枚まで手札に戻す!!これにより俺は『再炎銃士ブレイズ・リボルバー』、『再炎星竜ブレイズ・ガイ・アスラ』、『再炎天ブレイズ・ヘブン』を手札へ戻す。最もこの効果を使ったターンのダメージは半分になる」

 

「バウンス効果か。だが甘い!俺は手札の『再炎虫ブレイズ・ビートル』の効果発動!自分フィールドの再炎モンスターが相手のカード効果の対象になった時、手札のこのカードを捨てる事でその効果を無効にし、お互いのプレイヤーに500ポイントのダメージを与える。さらに永続トラップ『再炎起動』!このカードがフィールド上に存在する限り、俺が効果ダメージを受けた場合、その数値分ライフを回復する!」

 

 

蓮 LIFE6500 →6000

ユーキ LIFE7000 →6500 →7000

 

 

「この瞬間『ブレイズ・ヘブン』の効果!自分のライフが回復した場合、その数値分のライフを回復する!」

 

ユーキ:LP7000→7500

 

「さっきからチマチマと効果ダメージ・・・バーンデッキか、だが!!」

 

 幾らバウンスを防がれたとしても、破壊されないうえにモンスター効果自体を無効にされないなら関係ない。

 

ユーキ LIFE7500→6300

 

「『鳥獣烈神ガルード』のモンスター効果発動!!このカードが相手に戦闘ダメージを与えたとき、サイコロを二回振り、その数の合計の枚数を、相手のデッキ墓地へ送る!!」

 

 その宣言と共に現れた巨大なサイコロを2つ投げると、それは空中で回転しゆっくりと3と5を上に向けて落ちた。

 

「サイコロの合計は8!!よって8枚墓地へ送ってもらうぜ!!」

 

「デッキ破壊か」

 

 まぁ8枚は大きいが、相手のデッキの厚さを見るとやっちまったという印象しか持てない。だが、そうは言っても居られない!!

 

「続けて『ナイト・イーグル』で『再炎銃士ブレイズ・リボルバー』を攻撃!!『ナイト・イーグル』が攻撃したとき、フィールドに『分身トークン』を特殊召喚!!」

 

『分身トークン』 ☆4 A1000 →3000

 

「さらに『分身トークン』で『再炎星竜ブレイズ・ガイ・アスラ』を攻撃!!」

 

「墓地の『再炎準備』の効果!再炎モンスターが破壊される場合、代わりに墓地のこのカードを除外する!」

 

ユーキ LIFE6300→5500

 

「俺はカードを1枚伏せエンドフェイズ、『切り株都市』の効果発動!!……デッキトップは『地獄の暴走召喚』、モンスターじゃないためデッキトップへ戻す」

 

 

蓮 手札1枚 LIFE 6000

フィールド

『鳥獣烈神ガルード』 A3000

『ナイト・イーグル』 A2000

『分身トークン』 A3000

『神樹の切り株都市』 永続魔法

『聖者の樹の実』 永続魔法

伏せカード二枚

 

 

 正直『ガイ・アスラ』の破壊失敗と最後の特殊召喚失敗は痛い気がするが、とりあえずキーカード引けることを確定できただけ無問題だろうな。

 

(さて、ユーキはどう出てくる……)

 

「俺のターン!!『ブレイズ・ヘブン』の効果!墓地から『再炎魚ブレイズ・シャーク』を手札に加えてそのまま召喚!『ブレイズ・シャーク』の効果で墓地から『再炎脳ブレイズ・ブレイン』を特殊召喚!」

 

『再炎脳ブレイズ・ブレイン』 ☆3 D200

 

「『ブレイズ・ブレイン』の効果!特殊召喚に成功した場合、墓地から再炎と名の付く魔法・トラップカードを手札に加える!俺は墓地から『再炎ブラスト』を手札に加えそのまま発動!再び2枚の伏せカードを破壊だ!」

 

「厄介なデッキだなおい、チェーンして罠カード『魔術師の交換』、それにチェーンして『強欲な瓶』!!チェーン処理に入り、まず『強欲な瓶』の効果で1枚ドロー!!そして『魔術師の交換』の効果、自分フィールドの永続魔法をリリースし、デッキから同名カード以外の永続魔法を発動する。俺は『神樹の切り株都市』をリリースしてこの効果で『命の果実』を発動!!『命の果実』が存在するとき、自分がダメージを受けたとき、それが1000以下ならば1枚ドローし手札1枚をデッキボトムに、1000以上の時はボトムに戻さず1枚ドローするだけとなる」

 

(既に『地獄の暴走召喚』は手札に加えられてる。後はあのカードを引き込めれば)

 

 まぁもっとも、永続魔法二枚のうちどちらかを破壊してくるのは確実だがな。

 

「永続トラップ”再炎起動”の効果!1ターンに1度互いのプレイヤーに500ポイントのダメージを与える!」

 

蓮 LIFE6000→5500

ユーキ LIFE5500→5000

 

「この瞬間”ブレイズ・シャーク”と”ブレイズ・ブレイン”さらに墓地の”ブレイズ・ビートル”の効果発動!ブレイズ・ビートルを手札に加え、ブレイズ・シャークのレベルを1上げる。」

 

「だが『命の果実』の効果で、デッキから1枚ドロー!!……そしてカードを1枚デッキボトムへ送る」

 

再炎魚ブレイズ・シャーク レベル4→5

 

「『ブレイズ・ブレイン』は自分が効果ダメージを受けた場合、フィールドのマジック・トラップカードを1枚破壊する!『聖者の樹の実』を破壊!」

 

 やっぱり儀式デッキ使いとしては魔法カード制限は取り除いてくるか。

 

「俺は手札から『再炎死霊魔術師ブレイズ・ネクロマンサー』の効果!手札のこのカードを捨てて、墓地からブレイズ・ネクロマンサー以外の再炎カードを2枚手札に加える!その効果で『再炎収』と『再炎鳥ブレイズ・バード』を手札に!」

 

「マジックカード『再炎収』!このカードは自分の墓地から再炎モンスターと再炎儀式魔法を1枚ずつ手札に加え500ポイントのダメージを受ける。。その効果で『再炎滅龍ブレイズ・ドラゴニス』と『再炎の儀式』を手札に!」

 

ユーキ LIFE5000→4500

 

「俺が効果ダメージを受けた事で『ブレイズ・シャーク』のレベルを1上がり『再炎起動』の効果でライフを回復し、回復した事で『ブレイズ・ヘブン』の効果でさらに回復!!」

 

『再炎魚ブレイズ・シャーク』 レベル5→6

 

ユーキ LIFE4500→5000→5500

 

「儀式魔法『再炎の儀式』!レベル6となった『ブレイズ・シャーク』とレベル3の『ブレイズ・ブレイン』を生贄に捧げる!再生繰り返せし黒炎の滅竜よ、味方を喰らい全ての敵を滅せよ!降臨せよ!レベル9!『再炎滅竜ブレイズ・ドラゴニス』!」

 

『再炎滅竜ブレイズ・ドラゴニス』 ☆9 A2600

 

「『ガイ・アスラ』に続いて『ドラゴニス』まで……」

 

「バトル!『ブレイズ・ガイ・アスラ』で『ナイトイーグル』に攻撃!」

 

蓮 LIFE5500→5300

 

分身トークン A3000→1000

 

「『命の果実』の効果発動!!手札を交換!!」

 

「『ブレイズ・ドラゴニス』で分身トークンに攻撃!この瞬間『ブレイズ・ドラゴニス』の効果発動!自分フィールドの再炎カード1枚を破壊する事で攻撃回数を1回増やす!さらに自分フィールドの再炎カードが破壊または生贄に捧げられるたびにこのカードの攻撃力はエンドフェイズまで1枚に付き500ポイントアップする!」

 

再炎滅竜ブレイズ・ドラゴニス A2600→3100

 

風山連 LIFELP5300→3200

 

「グッ!!再び『命の果実』の効果発動!!ダメージが1000以上だから1枚ドロー!!」

 

「相手モンスターを破壊した事で墓地の『ブレイズ・ガイ・アスラ』の効果!このカードを墓地から特殊召喚する!ただしこの効果で特殊召喚したターン相手が受ける戦闘ダメージは半分になる。だがお前のモンスターを倒すのに関係ない!『ブレイズ・ドラゴニス』で『ガルード』に攻撃!再び『ブレイズ・ドラゴニス』の効果で『ブレイズ・ガイ・アスラ』を破壊し攻撃力を500アップ!」

 

『再炎滅竜ブレイズ・ドラゴニス』 A3100→3600

 

蓮 LIFE3200→2900

 

「『ガルード』!?くそ、『命の果実』の効果で手札を1枚交換する」

 

「モンスターの破壊した事で”ブレイズ・ガイ・アスラ”を再び墓地から特殊召喚!ブレイズ・ガイ・アスラでダイレクトアタック!」

 

蓮 LIFE2900→1800

 

「グ……『命の果実』の効果で1枚ドロー」

 

「『ブレイズ・ドラゴニス』は自身の効果を使ったターン相手プレイヤーにダイレクトアタックは出来ない。俺はこれでターンエンドだ」

 

ユーキ LIFE5500 手札3(再炎鳥ブレイズ・バード、再炎虫ブレイズ・ビートル)

場 

『再炎天ブレイズ・ヘブン』 D3000

『再炎星龍ブレイズ・ガイ・アスラ』 A2200

『再炎滅竜ブレイズ・ドラゴニス』 A2600

『再炎起動』 永続罠

伏せカード1枚




『鳥獣烈神ガルード』 シンクロ
☆7/水/鳥獣/A3000/D2000
鳥獣族チューナー+チューナー以外の鳥獣族モンスター
このカードはフィールドに一体しか存在できず、シンクロ召喚でのみ特殊召喚できる
(1)このモンスターの攻撃宣言時、相手フィールドの表側表示のカード三枚まで選択する。そのカードを持ち主の手札に戻す。この効果を使用したターン、相手の受ける戦闘ダメージは半分になる。
(2)このカードによって相手に戦闘ダメージを与えたとき、サイコロを2回振る。その出目の合計と同じ枚数分、相手のデッキからカードを墓地へ送る。
 


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コラボ 儀式使いの戦士④

「俺のターン、ドロー!!」

 

 引いたカードを確認した俺はニヤリと笑った。

 

「俺は手札から『ハーピィ・レディ1』を通常召喚!!」

 

『ハーピィ・レディ1』 ☆4 A1300→1600

 

「そして魔法カード『トランスターン』を発動!!『ハーピィ・レディ1』をリリースして、デッキからレベル1つ上の同種族同属性モンスターを特殊召喚する!!現れろ、俺のエースモンスター!!『鳥武神シシグイ』!!」

 

『鳥武神シシグイ』 ☆5 A500

 

「攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚に成功したとき、手札の魔法カード『地獄の暴走召喚』を発動!!デッキ及び手札から同名モンスターを任意の数特殊召喚する。俺はデッキから『鳥武神シシグイ』を2体特殊召喚!!」

 

『鳥武神シシグイ』 A500

『鳥武神シシグイ』 D2000

 

「『シシグイ』が存在する限り、自分フィールドの風属性モンスターは、フィールドの鳥獣族モンスター1体につき200ポイントアップする。この効果は重複するため2×3×3×100……1800ポイントアップする!!」

 

『鳥武神シシグイ』 A500→2300

 

「さらに俺は手札から魔法カード『飛翔融合』を発動!!フィールド及び手札から鳥獣族融合モンスターの素材になるように融合召喚する!!俺は『シシグイ』三体で融合!!天翔る神鳥、天覆う武の羽翼、別たれし狭間の世界より絆の力で現れろ!!融合召喚!!現れろレベル10!!『鳥武姫神シシグイ・アスカ』!!」

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 ☆10 A2000

 

「今度は融合召喚か!」

 

「『シシグイ・アスカ』の融合召喚に成功したとき、墓地からこのカードの融合素材の数まで、鳥獣族モンスターを特殊召喚する!!現れろ!!『シシグイ』三体」

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 A2000→4400

『鳥武神シシグイ』×3 A500→2900

 

「だが地獄の暴走召喚の効果は俺にも及ぶ!俺はデッキから『再炎星龍ブレイズ・ガイ・アスラ』を1体特殊召喚!」

 

『再炎星龍ブレイズ・ガイ・アスラ』

 

「さらに俺は魔法カード『マジック・オブ・オズ』を発動!!手札が1枚以上あるとき、手札を全て墓地へ送ることで、デッキから3枚ドロー!!」

 

 引いたカードは……うん、だったらこうだな。

 

「今引いた魔法カード『貪欲な壺』を発動!!墓地の『ガルード』、『チューニン・ツバメ』、『ハーピィ・レディ1』、『ジョーニン・トンビ』、そして今捨てた『ゲニン・スズメ』をデッキへ戻し、2枚ドロー!!」

 

 引いたカードは今の場面で使えるカードではないが、それなりに有用なカードでもあった。

 

「バトル!!『シシグイ・アスカ』で『ドラゴニス』を攻撃!!この瞬間、『シシグイ・アスカ』のモンスター効果!!自分フィールドの攻撃表示モンスターの攻撃権を任意の数まで放棄する代わりに、放棄したモンスターの攻撃力をこのモンスターに加える!!俺はこの効果で『シシグイ』1体の攻撃権を放棄し、『シシグイ・アスカ』の攻撃力を2900アップする!!」

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 A4400 → 7300

 

「攻撃力7300!?くっ!『再炎起動』の効果!互いのプレイヤーに500ポイントのダメージを与える!」

 

蓮 LIFE1800→1300

ユーキ LIFE5500→5000

 

「効果ダメージを受けた事で手札の『再炎鳥ブレイズ・バード』を守備表示で特殊召喚し500回復する!ライフが回復した事で『ブレイズ・ヘブン』の効果でさらに回復する!」

 

「だがこちらも『命の果実』の効果で手札を交換する。さらに『シシグイ』の効果により、鳥獣族モンスターが増えたため攻撃力を600アップする。このカードの対象の鳥獣族モンスターは相手も含めるからな!!」

 

『シシグイ・アスカ』 A7300→8500(元々4400→5000)

『シシグイ』 A2900→3500

 

「ブレイズ・バード』の効果!墓地から『再炎ブースト』を手札に加える!」

 

「モンスターが増えたところで!!『シシグイ・アスカ』!!『ドラゴニス』を叩き潰せ!!」

 

「手札から速攻魔法発動!!『再炎ブースト』」

 

「なに!?速攻魔法は相手ターンに手札から発動できないんじゃないのか!?」

 

「このカードは相手ターンに効果ダメージを受けているなら相手ターンでも手札から発動できる!ブレイズ・ドラゴニスの攻撃力を1500上げ俺は1000ポイントのダメージを受ける!」

 

再炎滅竜ブレイズ・ドラゴニス A2600→4100

 

ユーキ LP6000→5000

 

「だが『再炎起動』の効果で今受けたダメージ分回復し、『ブレイズ・ヘブン』の効果でさらに回復!」

 

ユーキ LP5000→6000→7000

 

「チ、だが破壊されることには違いない!!いけ『シシグイ・アスカ』!!烈風のスクラム・ブラスター」

 

 『シシグイ・アスカ』の突撃による一撃は、その体の倍以上の大きさを持つドラゴンを貫通し、衝撃波と共に爆発させた。

 

ユーキ LIFE7000→2600

 

「ぐうううううううううう!!!!トラップ発動!『再炎の導火』!自分フィールドの再炎儀式モンスターがフィールドを離れた場合に発動!デッキから再炎儀式魔法と再炎儀式モンスターを手札に加える」

 

「続けて攻撃権の残っている『シシグイ』で『ブレイズ・ヘブン』を攻撃!!」

 

 ここであの回復能力は消し去っておかないと不味いからな。

 

「続けてもう1体の『シシグイ』で『ガイ・アスラ』を攻撃!!」

 

「『ブレイズ・ガイ・アスラ』の効果!このカードとバトルするモンスターの効果は無効になる!シシグイの効果が無効になった事でお前のモンスターの攻撃力はダウンする!」

 

『シシグイ・アスカ』  A8500→6500(元々5000→4000)

『シシグイ』×3 A3500→2500

 

「それでも攻撃力は此方が上だ!!行け『シシグイ』!!迅雷のストームブリット!!」

 

ユーキ LIFE2600→2300

 

「まだバトルフェイズは終わらないぜ!!フィールドの『命の果実』をデッキに戻すことで、手札の『神帝マッハホウオウガ』を特殊召喚!!」

 

『神帝マッハホウオウガ』 ☆5 A2000

 

「フィールドに鳥獣族モンスターが増えたことにより、攻撃力アップ!!」

 

『シシグイ・アスカ』 A6500→7300(元々4000→4400)

『シシグイ』×3 A2500→2900

『マッハホウオウガ』 A2000→4400

 

「『マッハホウオウガ』で残ったもう1体の『ガイ・アスラ』を攻撃!!」

 

ユーキ LIFE2300→100

 

「『ブレイズ・ガイ・アスラ』とバトルを行った事でマッハホウオウガの効果は無効になる!」

 

「そして俺は速攻魔法『神秘の中華鍋』を発動!!『シシグイ・アスカ』をリリースして、その攻撃力7300を回復!!」

 

蓮 LIFE1300→8600

 

「俺はカードを二枚伏せてターンエンド!!」

 

蓮 手札0枚 LIFE8600

フィールド

『鳥武神シシグイ』×3(1体効果無効) A2500

『神帝マッハホウオウガ』(効果無効) A4000

伏せカード二枚

 

 

 一応相手のライフは500以下、余程の事が無ければもうあの永続罠の効果を使えない。つまり、バーンギミックカードも死札になる。

 

 けど、『ガイ・アスラ』と『ドラゴニス』、あの二体を使ってきたということは……

 

「俺のターン!俺は儀式魔法『烈再炎儀式術ー裁きの陣ー』を発動!この儀式魔法は通常の儀式魔法と違いレベルを必要としない。このカードの生贄には幻竜族・恐竜族・獣族・鳥獣族・雷族・アンデット族の6体の生贄にデッキに戻す必要がある!」

 

「なんだその融合モンスターみたいな召喚条件!?儀式だろ?儀式なんだよな!?それ!?」

 

 しかも名前が『裁きの陣』ということは、つまり予想していたあのカードが

 

「儀式とはかつて特定のモンスターを儀式魔法でパワーアップさせると言うものだった。だがその条件の厳しさから今の儀式に変わったと言われている。そしてこれはその儀式を再現し進化させたものだ!

俺はフィールドから鳥獣族!”再炎鳥ブレイズ・バード”!墓地から幻竜族!”再炎滅龍ブレイズ・ドラゴティス”、獣族!”再炎獣ブレイズ・ビースト”!アンデット族!”再炎死霊魔術師ブレイズ・ネクロマンサー”!雷族!”再炎雷ブレイズ・サンダー”!手札から恐竜族!”再炎爆竜ブレイズ・レックス”!この6体をデッキに戻し生贄に捧げる!」

 

生贄となった6体のモンスターが炎の球体の形となると魔法陣の中心に集まり1つになると、天空に上ると雲の中へと姿を消す。

 

「六炎重ねし断罪の龍よ!!破滅と創造を司る神剣を手に全ての罪に裁きを与えよ!!」

 

やがて雲の中から巨大な炎の塊が姿を現すと爆発を起こし、その中からモンスターの姿を現した。

 

「儀式召喚!!「『断罪の烈再炎滅龍ブレイジング・ドラゴニス』!降臨!!」

 

『断罪の烈再炎滅龍ブレイジング・ドラゴニス』 ☆11 A3400

 

「!?やっぱり出てきたか『ジャッジメント・ドラゴニス』!・・・」

 

 細部こそ違うものの、やはりその姿はかのモンスターそっくり……っていうかデカすぎだろ!!ホテルの屋上の上に収まらないうえに首だけ出てるってドンだけだよ!?

 

「・・・何と勘違いしているのか知らないが『ブレイジング・ドラゴニス』は幻竜族、恐竜族、獣族、鳥獣族、雷族、アンデット族の6つの種族がある。よってお前のシシグイの効果で攻撃力は下がらない」

 

 しかも複数種族持ってるモンスター……なんとも厄介な効果を持ってやがる!!

 

「バトルフェイズ!手札の再炎カードを1枚捨てる事でフィールドの再炎モンスターの攻撃力をエンドフェイズまで800アップする!」

 

『断罪の烈再炎滅龍ブレイジング・ドラゴニス』A3400→4200

 

「『ブレイジング・ドラゴニス』で『鳥武神シシグイ』に攻撃!『ブレイジング・ドラゴニス』の効果!このモンスターとバトルするモンスターの効果は無効になる!そして効果が無効になった事でお前のモンスターの攻撃力もダウンする!」

 

 

『鳥武神シシグイ』×3 A2500→1500

『神帝マッハホウオウガ』 A4000→3000

 

風山蓮 LIFE8600→5900

 

「『ブレイジング・ドラゴニス』は1度のバトルで2回攻撃できる!2体目のシシグイに攻撃!再び『ブレイジング・ドラゴニス』効果でシシグイの効果を無効!」

 

『鳥武神シシグイ』×2 A1500→500

『神帝マッハホウオウガ』 A3000→2000

 

蓮 LIFE5900→2200

 

「この瞬間!墓地の2体の『ブレイズ・ガイ・アスラ』の効果発動!このカードを墓地から特殊召喚!『ブレイズ・ガイ・アスラ』で3体目のシシグイに攻撃!『ブレイズ・ガイ・アスラ』の蘇生効果を使用したターン相手が受けるダメージは半分となる!」

 

蓮 LIFE2200→1350  

 

「2体目の『ブレイズ・ガイ・アスラ』で『マッハホウオウガ』に攻撃!」

 

風山蓮:LP1350→1250

 

「これでお前のモンスターは全滅だ。俺はこのままターンエンド」

 

断罪の烈再炎滅龍ブレイジング・ドラゴニス A4200→3400

 

「だがこの瞬間『ブレイジング・ドラゴニス』の効果発動!このターンにこのカードが攻撃したターン終了時にデュエル中1度だけ発動できる!その効果でもう1度俺のターンを行う!」

 

「な、なんだと!?インチキ効果も大概にしろ!!」

 

 『アルカナフォース』ですらモンスター二体リリースしなきゃなんだぞ!?

 

「確かに強力だがそれに見合った条件を持つのだ。これくらいやってくれなきゃ困る。

ブレイジング・ドラゴティスの効果で再び俺のターン!そのままバトルフェイズ!手札の再炎カードを捨てる事で自分フィールドの再炎モンスターの攻撃力を800アップ!!」

 

『断罪の烈再炎滅龍ブレイジング・ドラゴニス』A3400→4200

『再炎滅龍ブレイズ・ガイ・アスラ』 A2200→3000

 

「ブレイジング・ドラゴティスでダイレクトアタック!」

 

 『ブレイジング・ドラゴニス』の持つ巨大な剣が俺の頭上にめがけて振り下ろされ……ってそんなこと言ってる場合か!?

 

「罠カード『デルタバリア』!!レベル及びランク4以上のモンスターによってライフが0になるとき、自分のライフは10になる!!」

 

 俺は慌てて伏せカードを発動させると、それと共に現れた三角形のバリアがギリギリの所で防いでくれた。

 

蓮 LIFE1250→10

 

 あっぶな!!いや、これガチであぶな!!下手したら屋上から紐無しバンジー一直線だぞこれ!!

 

「まさかそんなカードを隠し持っていたとはな。俺はこれでターンエンドだ。エンドフェイズ。『ブレイジング・ドラゴニス』の効果が終了し攻撃力は元に戻る。だが『ブレイズ・ガイ・アスラ』の効果でこのカードの攻撃力は下がらない。たとえそれが一時的な上昇であってもな。」

 

ユーキ LP100 手札2(再炎虫ブレイズ・ビートル)

場 

『断罪の烈再炎滅龍ブレイジング・ドラゴニス』 A3400

『再炎滅龍ブレイズ・ガイ・アスラ』 A3000

『再炎起動』



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コラボ 儀式使いの戦士⑤

 さて、手札は1枚、伏せカード1枚でライフは残り10という風前の灯、こりゃ次のカード次第で俺の命運が決まるよな。

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

 引いたカードは……

 

「魔法カード『壷の中の魔導書』!!互いにデッキからカードを三枚ドロー!!」

 

 よし、来た!!

 

「伏せカードオープン!!『貪欲な瓶』!!墓地の『シシグイ・アスカ』、『神樹の切り株都市』、『聖者の樹の実』、『マジック・オブ・オズ』、『貪欲な壺』をデッキへ戻し1枚ドロー!!さらに魔法カード『強欲で貪欲な壷』!!デッキからカードを10枚除外し、デッキから二枚ドロー」

 

 これで手札は合計六枚!!ここで一気に決める!!

 

「手札から魔法カード『融合準備』!!エクストラデッキから『紅陽鳥』を相手に見せることで、デッキから『セイントバード』と『融合』を手札に加え、そのまま発動!!手札の『ソニックバード』と『ゴクラクチョー』を融合!!現れろ!!『シシグイ・アスカ』!!」

 

『シシグイ・アスカ』 A2000

 

「『シシグイ・アスカ』が融合召喚に成功したときの効果で、墓地から『シシグイ』二体を特殊召喚!!」

 

『シシグイ・アスカ』 A2000→3600

『シシグイ』×2 A500→2100

 

「俺は速攻魔法『融合解除』を発動!!『シシグイ・アスカ』をエクストラデッキへ戻し、墓地から『ソニックバード』と『ゴクラクチョー』を特殊召喚!!」

 

『シシグイ』 A2100→2500

『ソニックバード』 ☆4 A1400→3400

『ゴクラクチョー』 ☆4 A1000→3000

 

「『ゴクラクチョー』は特殊召喚に成功したとき、デッキから風属性鳥獣族モンスターを手札に加える。俺は『シシグイ』を手札に加える!!そして墓地の『飛翔融合』の効果発動!!手札の『シシグイ』を墓地へ送り、『飛翔融合』を手札に戻し、発動!!『ソニックバード』と『ゴクラクチョー』を融合!!三度現れろ!!『鳥武姫神シシグイ・アスカ』!!」

 

『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 A2000

 

「『シシグイ・アスカ』の効果で、墓地の『シシグイ』と『マッハホウオウガ』を特殊召喚!!」

 

『シシグイ・アスカ』 A2000→5600

『シシグイ』×3 A2500→4100

『マッハホウオウガ』 A2000→5600

 

 いくら攻撃力収束はできないとしても、そもそも攻撃力をあげてしまえば問題ない!!

 

「バトル!!」

 

「バトルフェイズ開始時『ブレイジング・ドラゴニス』の効果!手札の再炎カードを捨てる事で再炎モンスターの攻撃力を800アップ!」

 

『断罪の烈再炎滅龍ブレイジング・ドラゴニス』 A3400→4200

『再炎滅龍ブレイズ・ガイ・アスラ』×2 A3000→3800

 

『シシグイ・アスカ』で『ブレイジング・ドラゴニス』を攻撃!!烈風のスクラム・ブラスター!!」

 

「俺は『再炎起動』の効果発動!!互いのプレイヤーに500ポイントのダメージを与える!!」

 

「チェーンして速攻魔法『サイクロン』!!『再炎起動』を破壊する!!これによりフィールドから離れたことで、『再炎起動』のバーンダメージは発生しない!!」

 

 やっぱり相討ち狙いをしてくるとは思ったが、まさかこのタイミングで使ってくるとはな。だがこれでもう!!

 

「俺は墓地からトラップカード”再炎起動”の効果を発動!」

 

 このタイミングでまだあるのか!?

 

「このカードを除外して自分のライフを500回復し、500のダメージを受ける!」

 

ユーキ:100→600→100

 

「態々回復してからのバーンダメージ……?」

 

 そんなことをして伏せカードも無い状況でなんの意味が……

 

「……このターン効果ダメージを受けた事でこのカードは相手ターンに手札から発動できる……」

 

「……オイオイオイ、まさかお前そのカードは!?」

 

「手札から速攻魔法発動!<再炎ブースト>!ブレイジング・ドラゴティスの攻撃力を1500アップする!」

 

『断罪の烈再炎滅龍ブレイジング・ドラゴニス 』A4200→5700

 

『グオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

 ドラゴニスに攻撃を仕掛けたシシグイ・アスカであったが、突如としてブレイジング・ドラゴティスの全身を炎に包まれると雄たけびを上げた。その雄たけびはフィールドを震わせシシグイ・アスカは体制を保てず、後方へと吹き飛ばされた。

 

「けど、確かその効果のデメリットは……」

 

「そして俺は再炎ブーストの効果で1000ポイントのダメージを受ける」

 

 

ユーキ:100→0

 

 

 

 

「幾ら負けるのが分かってるからって自爆するか普通」

 

 デュエルが終わった直後、思わず思ったことが口に出てしまった。

 

「しかも俺のエースがかっこ良く決める場面であんなの……デュエルに勝って勝負に負けたってのはこんな気分なのかよ」

 

 正直、俺とユーキのさっきのデュエルは多分拮抗していた。お互いの引き、プレイタクティクス、どこを取っても他人から見たら互角と言える。

 

(けど、それじゃダメなんだ)

 

 そう言いながら俺はふと思った。そういえばこいつって自分の切り札……エースモンスターを使ったのか?

 

「なぁ、お前のデッキのエースって……」

 

 俺がそう言おうとして顔をあげてみると、まるで何もなかったというように誰もおらず、ただ風だけが吹き去っていた。

 

「……ま、いっか。デュエルしていればそのうちまた戦うこともあるだろうしな」

 

 俺はよっこらせと立ち上がると、体を少し伸ばして屋上から出ていく。後に残ったのは、燃えたような焦げ痕と、まるで旋風にでもあったような小さく細い傷痕だけだった。

 

 

 

 

 

 

 翌日、なんの気なくテレビを付け、ニュースを見ていたときだった。

 

『次のニュースです。昨夜『○○グランドホテル』の周辺から黒い炎の火事が数ヶ所発生しました。当時刻ではデュエルが行われていた模様で、ソリッドヴィジョンが現実化していたと思われ――』

 

「…………」ピッ

 

 俺は何も見なかった事にしてテレビを消すのだった。

 

「俺は関係ない……俺は関係ない……」



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三章 驚異の合宿!!
第二十六羽 修行という名の合宿


「さて、タイトルにもある通り合宿をしようと思う」

 

「「「「「劔菜(先輩)メタイメタイ」」」」」

 

 そんな第一声を放った我が部長にツッコミを入れるという恒例行事をして、とりあえず本題に入ることにした。

 

「先の予選、私達は尽く辛酸を舐めさせられた。私達以上の実力である奴等を倒すには、それこそ奴等より強くなる他がない」

 

「けど、合宿って言いますけどそんな時間はないっすよ」

 

 事実今日は火曜日、地区本選が土日と考えると時間は全くといって良いほどにない。

 

「確かにその通りだ。だから合宿といっても私の家に来てもらう」

 

「先輩の家?」

 

「あぁ、そこで私の師匠とデュエルをしてもらおうと思う」

 

 なんだろう、嫌な予感しかしない。そう俺達は全員思った。

 

 

 

 

 ということで放課後、荷物を取りに戻った俺と蘭は、亮の家の車で先輩の家へと来たわけなのだが……。

 

「……でかいな」

 

「うん、大きい」

 

 まるで昔の任侠映画の根城とでもいうような超和風建築に、大きな

 

 初めて見た感想としてそれはどうかと思うのだが、目の前にある木の門に、武家屋敷のように聳え立つ白塗りの壁、さらにその上から見える松の枝葉等を加えるとどうしてもそうとしか思えない。

 

「まぁ中は普通の造りっすけどね、何度かお邪魔してるんで俺も」

 

「……ちなみに聞くが、先輩の家って何をやってるんだ?」

 

「結構色々幅広くやってるみたいっすよ?ホテル経営に料亭、警備関連に道路工事とか」

 

「……どんなマルチ企業だそれは」

 

 まぁ色々と突っ込んでたらキリがないので、とりあえず中に入ることにする。

 

 これまたなんというか、かなり広い庭に、松の木々が壁を隠すように並んでいて、見ただけで流石セレブだと言いたくなった。

 

「ホッホッホ……君たちが劔菜嬢が言っていた後輩たちかな」

 

「「ッ!?」」

 

 と、まるで瞬間移動したように現れた老人に驚いていると、老人はフム、と呟き腕を組む。そして何を思ったのかこちらを見て

 

「よし、そこの(わっぱ)よ、ワシとデュエルしようかの」

 

 そう宣った。

 

「えっと、貴方は?」

 

「そんなことはどうでもいい、さっさとワシとデュエルじゃ」

 

 そう言う老人の左腕にはデュエルディスクが展開されていて、どうにも先に進まないようだ。

 

「……分かりました。やりましょうか、デュエル」

 

「ヨイヨイ、それでは……」

 

『デュエル!!』

 

蓮 LIFE8000

老人 LIFE8000

 

「先行はワシが貰うぞ。ワシは『氷楯の守護者オーシン』を召喚!!」

 

『氷楯の守護者オーシン』 ☆3 A100

 

「『オーシン』は召喚後守備表示へとなる。そしてワシは手札から魔法カード『手札抹殺』を発動!!」

 

「な!?これは」

 

 『オーシン』の効果を知ってる俺からすれば、これが意味するのは

 

「お互いに手札のカードを全て墓地へ捨て、デッキから棄てた枚数ドローする。そして童は『オーシン』の効果で、手札を効果で増やしたから全て墓地へ捨てて貰うぞ」

 

「ぐ……」

 

 完全な手札破壊……ハンデスだった。自分は得をし、尚且つ相手にはなにもさせない、そういうことだった。

 

「ワシはカードを一枚伏せ、ターンエンドじゃ」

 

 

老人 LIFE8000 手札二枚

フィールド

『氷楯の守護者オーシン』 D1800

伏せカード一枚

 

 

「く、俺のターン、ドロー!!」

 

「この瞬間、罠カード『強烈な叩き落とし』を発動し、引いた手札を墓地へ捨てて貰うぞ」

 

 徹底的な手札破壊、この老人、かなり強い。

 

「く……ターンエンド」

 

 

蓮 LIFE8000 手札0

フィールド

無し

 

 

「ワシのターン、ドロー!!ワシは『オーシン』攻撃表示にし、手札から装備魔法『妖刀竹光』を『オーシン』へ装備させる!!」

 

「な!?」

 

 『竹光』……そのカテゴリーは確か、

 

「この効果で、『オーシン』の攻撃力は0アップする。そして魔法カード『黄金色の竹光』を発動!!『竹光』が存在するため、デッキから二枚ドロー!!……よし、手札から永続魔法二枚『燃え竹光』と『魂を吸う竹光』を発動!!バトル!!『オーシン』でダイレクトアタック!!」

 

「ぐ……」

 

 

蓮 LIFE8000→7900

 

 

「この瞬間、『燃え竹光』と『魂を吸う竹光』の効果が発動する!!次のターン、童はドローステップとメインフェイズ1をスキップしてもらうぞ」

 

「ち、だが、その手のカードにはデメリットがあるはずだ、それさえなんとか」

 

「……無理っすよ兄貴」

 

 俺が食いかかろうとしたとき、亮がそんなことを呟いた。

 

「兄貴、申し訳ないっすけどこの勝負、兄貴は絶対に勝てないっす」

 

「……どういうことだ、亮」

 

「確かに『魂を吸う竹光』は、二回目のスタンバイフェイズに自壊する効果があるっす、けど……それは意味が無いんすよ」

 

 ……意味が無い?

 

「……蓮、『妖刀竹光』には1ターンに1度、フィールドの『竹光』を手札に戻して、装備モンスターをダイレクトアタックすることができるようにする効果がある」

 

「それのどこが…………あ!!」

 

 漸くそこで亮が言いたいことが分かった。それと同時に、自分が絶対に勝てないということも。

 

「『妖刀竹光』の効果で、『魂を吸う竹光』を戻されたら、蓮はこのデュエル中ずっと、ドローする事が出来なくなる。そして蓮の手札は一枚も増えず0のまま、手札も無く、フィールドも空なら、相手はこれ見よがしに殴り続ければ勝てるんだから」

 

「無限ループ、ということか」

 

 しかも此方は手札を持つことすら許されない、かなり厳しい状況だった。

 

「その通り、童は何もできず、負けるのを待つだけじゃ。ワシはこれでターンエンド」

 

 

老人 LIFE8000 手札1枚

フィールド

『氷楯の守護者オーシン』 A100

『妖刀竹光』 装備魔法

『燃え竹光』 永続魔法

『魂を吸う竹光』 永続魔法

 

 

「俺のターン!!」

 

「永続魔法『燃え竹光』、及び『魂を吸う竹光』の効果発動!!メインフェイズ1とドローを封じる!!」

 

「ぐ……ならバトルフェイズからメインフェイズ2へ入る」

 

「フォッフォッフォ、手札もフィールドも空の状況でいったい何が出来る」

 

 確かにその通り、手札もフィールドも何も無い状況で勝つなど不可能に近い。だが、

 

「俺へのメタ張りしたいなら、そこに端末世界でも張るんだったな!!墓地の『ネクロブライト』の効果発動!!このカードを除外して、墓地の闇属性レベル3以下のモンスターを特殊召喚する!!」

 

「な!?闇属性デッキじゃと!?」

 

「悪いが俺は鳥獣デッキ以外にも持ってるデッキはあるんだよ、俺はこの効果で墓地の『金狐角』を特殊召喚!!」

 

『金狐角』 ☆3 A1500

 

「『金狐角』が召喚、特殊召喚に成功したとき、墓地から『銀狐角』を特殊召喚する!!」

 

『銀狐角』 ☆3 A1400

 

「『銀狐角』も召喚、特殊召喚に成功したとき、墓地から『金狐角』を特殊召喚できるが、存在しないから関係ない」

 

「ぐぬぬ……何故じゃ、何故鳥獣デッキを使わなんだ?お主のメインデッキであろう」

 

「アンタがいきなりデュエルを吹っ掛けてきたからだよ。恐らくは、劔菜先輩の入れ知恵だろ?だから最初から動かないで、アンタのやることが分かってから動かせてもらった」

 

 その通りと言うように、老人はぐぬぬと唸って盤面を見ている。

 

「行くぞ、俺はレベル3の『金狐角』、『銀狐角』でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ、『彼岸の旅人 ダンテ』!!」

 

『彼岸の旅人 ダンテ』 ★3 D2500

 

「『ダンテ』の効果発動!!ORUを一つ取り除き、デッキからカードを三枚まで墓地へ送る。これによりこのターン終了時まで攻撃力を送った枚数×500アップする。俺は上限の三枚墓地へ送る」

 

「守備表示で壁とするが墓地肥やしはすると……そういうことか」

 

「俺はこれでターンエンド」

 

 

蓮 LIFE7900 手札0

フィールド

『彼岸の旅人 ダンテ』 D2500 ORU1

 

 

「ワシのターン、ドロー!!『妖刀竹光』の効果で、『魂を吸う竹光』を手札に戻し、装備してる『オーシン』をダイレクトアタック出来るようにする。そして『魂を吸う竹光』を再び発動し、バトル!!童にダイレクトアタック!!」

 

「く……この程度」

 

 

蓮 LIFE7900→7800

 

 

「これで童は次のターンもメインフェイズ1とドローを封じられた!!ワシはメインフェイズ2に入り、手札から二枚目の『黄金色の竹光』を発動し、二枚ドロー!!そして『切り込み隊長』を攻撃表示で召喚!!」

 

 

『切り込み隊長』 ☆3 A1200

 

 

「『切り込み隊長』の効果は発動せず、ワシは2体のモンスターでオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れよ、『幻影騎士団ブレイクソード』!!」

 

 

『幻影騎士団ブレイクソード』 ★3 A2000

 

 

「なるほど、それが爺さんの本来のスタイルか」

 

 恐らく『オーシン』を引いたのは偶々で、本来は『幻影竹光』だったのだろうな。

 

「『妖刀竹光』が破壊されたことにより、デッキから『折れ竹光』を手札へ加える。そして『ブレイクソード』の効果発動!!このカードと『ダンテ』を選択し、破壊する!!」

 

「墓地の『スキル・プリズナー』の効果発動!!このカードを除外して、『ダンテ』に対する効果をターン終了時まで無効にする!!」

 

「何処までも想定外なことを……ワシはこれでターンエンド!!」

 

 

老人 LIFE8000 手札二枚(『折れ竹光』)

フィールド

『幻影騎士団ブレイクソード』 A2000

『燃え竹光』 永続魔法

『魂を吸う竹光』 永続魔法

 

 

「俺のターン」

 

「二種の『竹光』の効果で、メインフェイズ1とドローはできん!!」

 

「なにもするつもりも無いさ、俺はこれでターンエンド」

 

 

蓮 LIFE7800 手札0

フィールド

『彼岸の旅人 ダンテ』 D2500

 

 

「ワシのターン、ドロー!!『ブレイクソード』の効果発動!!このカードと『ダンテ』を破壊する!!」

 

「墓地の罠カード『仁王立ち』の効果発動!!『ダンテ』を選択して、このターン『ダンテ』以外のモンスターに攻撃できない」

 

「猪口才な真似を……破壊された『ブレイクソード』の効果発動!!墓地の同レベル幻影騎士団モンスターを、レベルを一つ上げて特殊召喚する!!現れよ『幻影騎士団サイレントブーツ』、『幻影騎士団ダスティローブ』!!」

 

 

『幻影騎士団サイレントブーツ』 ☆4 A200

『幻影騎士団ダスティローブ』 ☆4 A800

 

 

「ワシは2体のモンスターでオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ、『幻影騎士団皇(ファントムマスターナイツ)アヴァロ・パラディオン』!!」

 

 

『幻影騎士団皇アヴァロ・パラディオン』 ★4 A2800

 

 

「『アヴァロ・パラディオン』……!?(既存カテゴリーのに加わったのか……)」

 

「『アヴァロ・パラディオン』がエクシーズ召喚に成功したとき、墓地の『幻影騎士団』モンスターを1体、このカードのORUに加える、ワシは『ブレイクソード』を選択する!!」

 

 墓地から引っ張り出されたデュラハンの騎士は、要塞のようなモンスターへと吸い込まれ、回りを回る光の玉へと変化した。

 

「ワシはカードを一枚伏せ、これでターンエンドじゃ」

 

 

老人 LIFE8000 手札二枚(『折れ竹光』)

フィールド

『幻影騎士団皇アヴァロ・パラディオン』 A2800

『燃え竹光』 永続魔法

『魂を吸う竹光』 永続魔法

伏せカード一枚

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

 漸くドロー出来ると思いながら引いたカードを見た俺は、それだけでニヤリと笑った。

 

「俺は墓地から『ブレイクスルー・スキル』の効果発動!!『アヴァロ・パラディオン』の効果を無効にする!!」

 

「グッ……(『アヴァロ・パラディオン』は戦闘したモンスターをORUを消費して、バトル終了時に除外する効果を持ってるというに……)」

 

 どうせバトル後に除外するとか、おおかたそんな効果を持ってるんだろ。知ってるっつうの。

 

「続けて俺は魔法カード『貪欲な壺』を発動!!『金狐角』、『ダンテ』、『シキツル』、『Theトリッキー』、『シュテンドーガ』、『冥総裁ハーゲン』を手札に戻して二枚ドロー!!」

 

「ふ、高々手札二枚で何が出来る!!」

 

「このターンで終わらせることが出来るんだよ、俺は『死者蘇生』を発動!!墓地から蘇れ、『銀狐角』!!」

 

『銀狐角』 A1400

 

「カードを一枚伏せ、バトル!!『銀狐角』で『アヴァロ・パラディオン』を攻撃!!」

 

「攻撃力が低いモンスターで攻撃だと!?血迷ったか!!」

 

 

蓮 LIFE7800→6400

 

 

「いや、これで良いのさ!!伏せていた『呪の覇王カオティック・セイメイ』の効果発動!!相手フィールドのモンスターの攻撃力を半分にし、闇属性モンスターが破壊された為特殊召喚する!!」

 

「な!?そうはさせん!!カウンター罠『神の警告』発動!!相手の召喚、反転召喚、特殊召喚する効果が発動したとき、その効果を無効にして破壊する!!」

 

 

老人 LIFE8000→4000

 

 

 呪の覇王が現れようとした霧に雷鳴が鳴り響き、大型のそれがぶつかり消えてしまう。

 

「どうやらそのデッキのエースモンスターのようだが、無効にしてしまえば意味はあるまい!!」

 

「……いや、寧ろ()()()()()()()()!!」

 

 俺の言葉に呼応して、空から巨大な陰陽師の格好をした蛇……『カオティック・セイメイ』がフィールドに降臨した。

 

 

『呪の覇王カオティック・セイメイ』 ☆8 A2000

 

老人 LIFE4000→3000

 

 

「な!?どういうことだ!?なぜ無効にして破壊したモンスターが!!しかもなぜワシのライフが減ってる!?」

 

「『カオティック・セイメイ』の第二の効果、このカードがバトルフェイズ中に()()()()墓地へ送られたとき、相手のライフに1000ダメージを与え、フィールドに特殊召喚する……『神の警告』は無効にして()()()()効果、よって発動条件は満たされ特殊召喚される!!」

 

「なんじゃと!?」

 

 これがこのモンスターの強みの一つだ。バトルフェイズ中に関してだけはこのモンスターに対して戦闘破壊も効果破壊も意味はない、しかも自身の効果で自爆特効しても自分はダメージを受けない、強さだけなら禁止級の一枚なのだ。

 

 最もバウンスやブラックホールとかでのメインフェイズに破壊されたら絶望的なため、使うときはそのターンで決める……切り札としての使い方以外無いのだが。

 

「バトルフェイズ中の特殊召喚だから、『カオティック・セイメイ』は攻撃可能!!カオティック・バースト……三連打ァ!!」

 

「ぬぁぁぁぁぁぁ!?」

 

老人 LIFE3000→2000→1000→0

 

 

 

「見事なライフジャストキルだったな、蓮」

 

 どうやら見ていたらしい劔菜先輩と、その後ろから裕司先輩と椿姫先輩もやって来る。

 

「どうです師匠、中々に強いでしょ、我が後輩は」

 

「ええ確かに……まさかあのようなカードを使うとは思いもしなんだ、ワシもまだまだというところですかの」

 

「いや、そんなことは……」

 

 寧ろ本来の鳥獣デッキだったら、それこそ何もできずループで攻撃され続けるだけだったと思っている。

 

「ですが、まだまだ青い部分も多い、これは修行の甲斐がありそうですな」

 

「というわけだ、三人とも、ビシバシ扱いて貰うから、覚悟するように」

 

「「「うっす!!」」」

 

 ここに、初めての合宿が開始された。



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