NEXUS of the Heroes ~英雄達との絆~ (0.1tトラック)
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第一特異点 邪竜百年戦争オルレアン
第1話 目覚め


夢を見た。

 

それは、とても酷い夢だった。

 

人々が叫び、逃げ惑う。

 

家は崩れ、木には火が燃え移り、周りは火の海。

 

 

夢を見た。

 

それは、とても辛い夢だ。

 

其処は温かい居場所があった所。

最早跡形もなく崩れている。

家族は逃げたが、生きているかは分からない。

 

 

 

夢を見た。

 

それは、とても残酷な夢だ。

 

其れは世界に生命が無くなった、死の世界。

 

此処にはもう、生きる場所は無い。

 

 

もう此処は、この世界は、燃え尽きるのを待つだけだった。

 

 

 

夢を見た。

 

それは、とても明るい夢ではなかった。

 

 

 

其れでも、生きる事を諦めず、前へ、先へと、進もうとする青年がいる。

 

 

諦めない・・・、絶対に!

 

 

青年の瞳には、まだ光があった。

 

 

 

 

夢を見た。

 

それは、青年が頑張る夢だ。

 

それは、彼の憧れる、英雄達に向かって。

 

 

未来に向かって。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

肌に違和感を感じて、眼を開ける。

 

頭がぼんやりしていて、身体もだるい。

 

だが、未だに眠気がある頭の中に響いてきたのは草木の音だった。

 

 

なぜ、俺はここで寝ていたんだ?

 

 

 

周りを見渡すと、そこは自分の部屋ではない。

まるで森の中・・・夢にしてはリアルすぎて疑問が消えなかった。

 

風に吹かれて木が揺れ、葉っぱが舞う。

 

 

・・・いや、夢じゃねぇ。ドコなんだココは?

 

 

 

住宅街等がない。ましてや、空気が全く違う。

 

 

まるで、何百年前の時代のようだ・・・。

 

 

とりあえず、このままでは状況が分からないので、辺りを散策してみることにした。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

三十分ほどだろうか。

 

森から出て、辺りを歩いていたら村のような所があった。

 

誰かに会える。そう思えたらどんなに期待したことか。

 

 

村のような所から黒煙が上がっているのが無ければ。

 

 

嫌な予感がする・・・。

 

 

そう思いながら走って到着したら、その予感は的中することになった。

 

 

此処は既に、生き物の気配は無かった。

 

 

人と思わしき遺体があちこちにある。

ある物は黒焦げに。ある物は引き裂かれたかのように。眼を背けたくなるような光景だった。

 

 

・・・戦い、にしては一方的な感じだったのか?

 

 

そう思うのには根拠があった。

 

戦いでは、近くに武器があるはずだった。

 

人には鎧が付けられているはずだ。

 

それが全くと言っていいほど、無いのだ。

 

 

全員が逃げながら、皆殺しにされたのか・・・。

 

 

 

きっと情けなんて掛けず、女子供まで手に掛けたのだろう・・・。

 

 

目の前には子供を庇いながら背中に穴が開いている母親らしき遺体があった。

 

 

胸糞悪くなる。吐き気がする。

 

ああ、絶対・・・絶対、ぶっ飛ばしてやる!!

 

 

怒りが頭の中を埋め尽くしてくる。今にでもすぐに探し出してぶん殴りたかった。

 

だが、落ち着くように深呼吸をする。焦ったり、我を忘れそうになった時ほど死ぬ確率が高まることを知っている。

 

だが、怒りの炎は消しはしない。その時が来た時に、一気に燃え上がらせるように。

 

 

頭が冷静になって、人がいる所を探すことにする。

 

 

次は、こんな結果になっていないように願いながら。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

あれからどれくらいの時間が経っただろうか。

 

不思議と腹の減りも疲労も全く感じず、走り続けた。

 

しかし、道中で幸運と言えるのか分からないが、人に出会うことが出来た。

 

 

・・・普通ではない格好ではあったが。とても綺麗な女性である。

 

 

 

「ん?貴方は?」

 

 

女性が足を止めた俺に気付いて振り向く。

 

なぜか振り向く瞬間に薔薇が一面に咲いているような錯覚がした。

 

彼女は・・・美人過ぎるのだ。

 

 

「・・・どうかしたの??」

 

 

その綺麗な顔がずずいっと近づいてきた。

 

 

「うわわわぁ!!」

 

思わず声が出て、数歩距離を取ってしまう。

 

 

「ああ、驚かせてごめんなさい。大丈夫??」

 

 

「え、ええ・・・此方こそすいません」

 

彼女に非礼を詫びつつ、話しかけた。

 

 

「あの・・・此処はどこか分かりますか?」

 

 

「ココ?此処はオルレアン。多分近くに街があると思うから向かっていたの」

 

 

オルレアン・・・日本では明らかに違うと分かった。

 

なぜ日本にいた俺がココにいるのか・・・。謎が深まるばかりだ。

 

 

「あの・・・良かったら俺も一緒に行ってもいいですか?」

 

「あら!良いわね、旅の仲間が出来て良かったわ!」

 

「あ、あはは・・・旅の仲間って・・・」

 

 

「あ、それなら名前を聞かないと良くないわね。貴方の名前は??」

 

「え、ああ、はい・・・俺の・・・」

 

 

笑顔で話しかけてくる彼女に、詰まりながらも自己紹介をする。

 

 

「俺の名前は、進一。真木進一です」

 

「改めて、よろしくね、シンイチ!」

 

彼女は手を差し伸べてきた。握手なのだろう。

俺も握手しようを手を伸ばして、握り合う瞬間、彼女の名前を聞いたとき、頭が真っ白になった。

 

 

「わたしはマリー、マリー・アントワネット。マリーでいいわ!」

 

 

 

マリー・アントワネット。

 

その名前は、いくら歴史に弱い俺でも分かった。

 

彼女は記憶が正しければ、三百年以上の昔に実在した人物だということを。

 

俺の驚きの絶叫は、とても青い空に吸われていった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2話 出会い

「あんた・・・誰?邪魔をしないでくれる?」

 

目の前にいる黒い服装の女性がイラつきながらこっちに話しかけてくる。

 

周りには槍や弓矢を持った人達(一部すごい露出してるのがいる)が其々構える。

 

後ろには大きな盾を持った少女と青年、身の丈より長い刀を持つポニーテールの男性。

 

そして極め付きが、黒の女性と瓜二つの白い服の女性がいた。

 

 

ココに乱入したのは良いが・・・つい勢いで突っ込んだのは不味かった。

いざという時に冷静さを欠くことはいけないと、さっき自分で説得していたのに、この様だ。

 

 

「ねぇ・・・ちょっと!?無視しないでくれる?」

 

黒い女性が声を荒げる。その目は虫を見るかの如くだった。それも威圧感が半端じゃない。

 

状況も合わせると、普通の人なら逃げ出すか何かのリアクションをするだろう。

 

 

だが、俺の場合は、不思議と怖さは無くなり、胸が熱くなるのを感じていた。

 

足は震えず、頭の中もある程度冷静だ。後は、この一言に、相手がどう返事するかだった。

 

 

 

「なぁ・・・向こうに村があったんだが、あれをやったの・・・君か?」

 

 

黒い女性に問いかけると、彼女はニタリと煽るようなドヤ顔で言い放った。

 

 

 

「ええ、あれは私達ですよ?それが何か」

 

 

 

ーー私達、か・・・。

 

 

全身の血が沸騰するような感覚。胸の熱さは一気に燃え上がった。

 

 

「そうか・・・。なら、決まりだな」

 

 

「何がです?私達を倒すというの?貴方一人でですか?」

 

 

「ああ、そうだな・・・」

 

 

脚にグッと力を込める。

 

 

 

「あんたら全員、一発ぶん殴るって事だ!!!!」

 

 

 

飛び出しながら頭の片隅で、この状況になる数分前の事が頭をよぎる。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「ふむ・・・サーヴァント、ねぇ・・・」

 

「そう、わたし達サーヴァントは何らかの理由で召喚されて、主となるマスターに従ったりするの」

 

 

 

歩きながら粗方の説明をマリーさんから教わった。

 

英霊・・・サーヴァントの事、魔力、魔術師、そしてマスター・・・。

 

 

ーーーどこからどう見ても、俺の世界じゃねぇよなぁ・・・。

 

 

魔術師だけでも俺の世界では大昔とかの時代にいる者だとてっきり思っていたが、どうやらこちら側の世界は現代でもいるようなのだ・・・。

 

信じられない事を聞くばかりで、もう考えるのをやめたくなるが、現に目の前にあのマリー王妃がいるのだ。

 

最早、否定などできんだろう。なにせ、答えが目の前にいるのだから・・・。

 

 

「それで、シンイチ。多分もうすぐ街に着くのだと思うんだけど」

 

 

「・・・ん?え、ええ・・・なんですか?」

 

 

マリーさんがスッと空に指を差す。

 

「あの輪みたいなの、あれは少なくともフランスには無いものだわ」

 

 

確かに。あんな大きな輪があったら、少しは歴史や現象として何か記されているはずだ。

だが、俺の知識の中では、あれは全く分からないものだ。

 

「すみません、マリーさん。あれは俺にも分からないです・・・」

 

 

「そう・・・。少なくとも、あれは良くないもの・・・と感じるのだけど」

 

 

ハァとため息をつくマリーさん。一つ一つの仕草が花びらが舞うように見えるのは気のせいだろうか・・・。

 

 

そんな時、身体に悪寒が走った。ある方向で、何か起きてる・・・と。

 

ーーー何か、嫌な感じがする。

 

マリーさんも気付いたようで、どうするか此方を見てくる。

多分、答えは彼女も同じなんだろう。

 

「・・・行きましょう」

 

「ええ、分かったわ!急ぎましょう・・・って速い!?」

 

 

全速力で走る。

 

なぜここまで速く走れるのか分からないが、そんなことはどうでもいい。

 

考えるよりも先に身体を動かす事に集中する。

 

なぜなら、向かっている方向こそ、マリーさんが言っていた街の方角なのだから。

 

 

 

 

「シンイチ・・・なぜ貴方は英霊のワタシより速く走れるの・・・?貴方ももしかして・・・」

 

 

 

 

 

 

マリーさんより速く着き過ぎたのか、マリーさんの姿が見えない。

 

とにかく、目的地の街に着いた。だが、此処は街と呼べるにはかなり酷い状態だった。

 

しかし、中で行われている戦闘の音が聞こえてきた。

 

 

ーーーー生存者か!?

 

 

物凄い音とギャアギャアと煩い鳴き声がするため、身を隠しながら進んでいく。

 

俺の目に飛び込んできたのは、大盾を持つ少女と刀を持つ男性、白い旗を持つまるで神官みたいな女性がが黒髪の青年を守るように戦闘をしていた。

 

相手は・・・竜、そして後方には白い女性と瓜二つの女性、そして護衛するかのように数人がいた。

 

 

ーーーーってちょっと待て!竜!??なんで存在しているんだ!?空想上の生物じゃなかったのか!??

 

 

ゲームに出てくるかのような竜が、目の前にいる。しかも1匹2匹の単位ではない。空には多くの竜がいたのだ。

信じられない光景に、呼吸するのを忘れそうになる。

 

大盾の少女が竜の攻撃を防ぎながら、刀で首を斬り落としていく男性。

そしてそのサポートをするように立ち回る白い女性。

 

指示はあの青年が出しているようだった。まだ身体に力が入りすぎているのか、足が少し震えていた。

 

対して、黒い女性の方はというと。

 

まるで余裕を見せるように嘲笑っていたのだ。

 

 

「さあ、もう終わりにしましょう・・・。バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン」

 

 

男性と女性が動き出す。多分あの二人が呼ばれたのだろう。

 

ランサーとアサシン。それは槍と暗殺と英語力の低い俺の知識でなんとか分かった。

 

しかし、このままだと不味い状況になるだろう。

 

 

まだ竜に手こずっている青年達に、あの二人が戦闘に加わるとなると、圧倒的劣勢になってしまう。

 

だが、俺も易々と動けない。

 

何しろ、どちらが味方で、どちらが敵になるのか、俺には分からない。

 

双方の目的も知らない。ギリギリまでどちらに加担するか見極めたかった。

 

 

 

ーーー本当に、分からないのか?

 

 

疑問が湧く。なぜ、そこに理由が必要なのかと。

 

 

ーーーああ、なぜ動けないんだよ。

 

 

 

身体が動かない。動こうとしない。恐怖に負けそうになっている。

 

 

 

あの二人からは尋常ではない殺意が感じられる。もし、対峙したとすれば・・・。

 

 

 

自分の首と身体が離れるのを想像してしまい、震えてしまう。

 

 

 

 

どうすればいい・・・。どうすればいいんだ・・・。

 

 

 

 

頭の中を恐怖で埋め尽くされようとした時、ある光景が見えた。

 

刀の男性が逃してしまったのか、竜が青年に攻撃をする。

 

白い女性のサポートも届かない。竜の顎が青年に喰らいつこうとする。

 

 

「先輩!!!」

 

大盾の少女の叫びが聞こえた。その手を必死に伸ばし、青年もまた、手を伸ばしていた。

 

 

 

ーーーーああ、もう・・・なにグズグズしてんだ俺はぁ!!!!

 

 

その場面を見たとき、既に俺の身体は動いていた。恐怖は既に忘れていた様に、震えていなかった。

 

 

助走をつけて、大きく跳躍する。

 

 

脚が熱く感じた。

 

全身が、魂が燃えるように力が漲った。

 

 

 

目標は、あの竜。

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおりゃあああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

竜の頭に目掛けて、あのヒーローと同じキックをした。

 

 

 

 

バキバキと嫌な音がする。

 

 

しかし、それは俺の脚が折れた音ではない。竜の頭が砕けたのだ。

 

そのまま竜の身体は大きく吹き飛び、二つの陣営の中心・・・にらみ合いの位置に着地した。

 

 

驚きの顔をする青年達。俺の背後で警戒する黒い女性達。

 

 

ゆっくりと着地姿勢から立ち直る。

 

背後からイラついた様な声が掛けられた。

 

 

 

 

「あんた・・・誰?邪魔をしないでくれる?」

 

 



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第3話 変身

「ふっ・・・存外、甘く見られた物だな」

 

一気に黒い女性との距離を詰めようとしたが、突然目の前に黒い霧が広がる。

 

 

「っ!?」

 

咄嗟の判断で急停止をし、頭を下げた。

 

霧の中から一本の槍が突き出された。あのまま頭を上げていたら深く突き刺さっていただろう。

 

 

「ほう・・・避けるか・・・ならば」

 

 

足元の方に違和感を感じて、すぐにその場から下がると何本もの槍が突然突き出てくる。

 

 

ーーー色々おかしすぎるんだがっ!??

 

 

目の前で起きてる漫画の様な攻撃に驚きながらも、身体を勘に頼って動かす。

 

 

続々と槍が、霧が俺を確実に殺そうと攻撃してくるが、それを紙一重で避けることが出来た。

 

「ふむ・・・面白いな」

 

 

霧が一つに集中すると、人が形成されていく。

 

先ほどの髪が長いランサーと呼ばれた男性だった。

 

 

「・・・おいおい、マジで頭おかしいんじゃないのかサーヴァントって」

 

 

未だに魔術とか英霊とか良く分からないのに、目の前で起こり続けている現実を、俺は無理矢理納得するしかない。

でないと、その隙に心臓を貫かされそうだった。

 

 

「余の槍を避けるとは中々骨のある奴だ・・・」

 

「ちょっと・・・いつまで遊んでいらっしゃるの、串刺し公」

 

「何・・・少し遊んでいただけだ・・・これからは、血を啜るとしよう」

 

 

全身に悪寒が走る。あの串刺し公とかいう人から、殺意が膨れ上がったのが分かった。

 

今ので遊びでこれから本気ってことは聞きたくない言葉であった。

 

 

「なら、私は聖処女の血を浴びるとしますので・・・失礼」

 

仮面を付けた女性が消えたかと思うほどのスピードで白い女性達に近づく。

 

 

「はぁっ!!!」

 

 

「・・・っ!」

 

 

目にも止まらぬ速さで斬撃が仮面の女性に襲い掛かるが、杖で防御をした。

 

 

「すまぬが、あの御綺麗な少女を守るというマスターからの命でな・・・付き合ってもらうぞ、ご婦人」

 

 

「ふん・・・男って・・・目障りよ、じっとしてなさい。殺してあげるから」

 

 

仮面の女性と侍が攻防戦を繰り広げる。

 

 

一方、俺の方はというと・・・。

 

 

「あっはははは!!燃えなさい、獄炎に身を焼かれて!」

 

 

黒い女性がワイバーンと自らの力で俺の周りを炎で取り囲むようにしていた。

 

その炎の円の中には俺と串刺しさんがいる・・・。つまり、決闘場みたいな感じだ。

 

ーーーくそ熱い・・・。早く後ろの人達を守らなければ・・・っ!?

 

 

串刺しさんが突然動き、槍を振るってきた。

 

耳元を風が切るような音がしてくる。皮膚が切られ、少し痛い。

 

「ぬぅん!」

 

 

「ごはっ!!??」

 

 

相手の蹴りがお腹にメリメリとめり込むような感じがした。

そのまま俺は逆らいきれず吹き飛ばされた。

 

ーーー痛い・・・。どっか折れたか?

 

身体中が痛すぎて、どこが骨折したのか分からずにいた。

 

「・・・ごっほ・・・」

 

口の中が鉄のような味しかしなかった。咳き込むと血が滴り落ちた。

 

 

「ふむ・・・もう少し愉しめるかと思ったが、まあ良い、仕上げだ」

 

 

目の前にいる串刺し野郎が嘲笑って、未だにうつ伏せでいる俺にトドメを刺そうとしてるのが分かった。

 

 

ーーー結局、夢でしかなかったのか・・・。

 

殺される。

 

そう分かった瞬間、諦めようとした。この状況、この敵、どんなに頑張っても覆しきれない。

 

相手は霧になったり、地面から槍を出したり等、出鱈目すぎる。

 

勝てるはずが無い・・・。

 

もうすぐ死ぬのだと・・・。

 

分かっているのに。

 

 

ーーーなんで、立とうとしてるのかな、俺は・・・。

 

 

全身が悲鳴を上げる。知った事じゃない。無理矢理動かす。

 

 

ーーーああ、そういえば、あの人達も、頑張って立ち上がってたなぁ・・・。

 

 

昔、そして今でも見る番組で、敵に絶望を叩きつけられても、何度も立ち上がってくる。

 

死が待っているのに、それを物ともせず立ち向かう。

 

それを見ていた俺は、子供の頃からずっと憧れていた。目指していた。成ろうとしていた。

 

 

いじめをしている、してくる奴らに立ち向かって、何度も立ち上がって。

 

 

絶対に諦めない。

 

 

それが習慣付いてしまったのか、こんな時でも立ち上がろうとする。

 

昔の英雄達に憧れて。

 

「我が神はここにありて!」(リュミノジテ・エテルネッル)

 

近くで誰かの声がした途端、身体の痛みが引いた。

 

何かの衝撃音が鳴り、顔を上げる。

 

そこには、距離を取った串刺し野郎と、目の前にはあの、白い女性が居た。

 

「大丈夫ですか?立てますか?」

 

「あ、ああ・・・なんとか・・・」

 

女性に驚きながらも返事をしながら立ち上がる。傷や痛みが無くなっていて内心驚いていた。

 

「逃げてください、今なら私が食い止めます」

 

「はっ!?君は・・・まさか!?」

 

 

あのワケ分からん生命体に立ち向かうのか。一人で。

 

その目は、しっかりとした決意を感じた。必ずやり遂げる・・・死んででも。

 

 

そんな風に見えた。自分を犠牲にしてまで、俺を逃がす・・・。

 

 

「はい・・・だから、貴方は早く・・・」

 

 

「逃げん・・・」

 

「えっ・・・?」

 

女性が驚いたように目を見開く。

 

ーーーまあ、言い出した自分も驚いているがな。

 

かっこつけたかったのかもしれない。

誰かに守られるのがイヤだと思ったかもしれない。

 

だが何よりも。

 

 

「女の子を、守らない男は男じゃないって思ってるからな!」

 

 

だから守る。守ってみせる。

 

あの人のように。

 

全力で、死にそうになっても、守ってみせた、あの人みたいに。

 

 

「な、何で・・・!?」

 

「俺は・・・誰かが死んで、誰かが泣いたり、哀しい顔をするのが大嫌いだ」

 

身体が熱い。

 

 

「俺は、守りたいものを守る・・・。だから、アイツとは、俺が戦う」

 

胸が熱い。

 

何かがこみ上げてくる感じがする。

 

 

「貴方は・・・一体・・・」

 

「俺は・・・ん?」

 

腰に違和感を感じて、視線を落とす。

 

 

そこに・・・俺の腰に巻かれていたのは、あの何度も好く見たベルトだった。

 

 

ーーーいや、待って、え、これって・・・

 

 

石の様な鈍い色。見た事もある普通でない文字。

 

赤、青、緑、紫。そして真ん中に何かが嵌め込まれていた。

 

 

いつの間に付けたのだろうか。そう何回も考えたが、付けた行為はしていなかった・・・。

 

 

ーーー待って。これアレやったら・・・マジで出来る?

 

色々とこの世界は常識が壊れていると思っていたが、いつの間にかコレが付けていたとしたら、もうあの可能性が有るとしか考え切れなかった。

 

「雑談に興じている場合か・・・?」

 

興奮しすぎたせいか、串刺しさんの存在を忘れていた。

 

「ならば、大人しく・・・血を捧げよ!」

 

串刺しが此方に突撃してきた。

女性が俺の前に出て守ろうとするが、それを手で制する。

 

なぜと言わんばかりの表情だが、ここはイチかバチか、試したくなった。

 

 

ーーーあの人と同じように、変身したい。

 

 

 

「なあ・・・見ていてくれるか・・・俺の・・・変身を」

 

 

「変・・・身・・・?」

 

 

あの人と同じようにポーズを取る。

 

時間がゆっくりと進む感覚。

 

 

『ああ・・・。君が進一君かぁ』

 

 

とても優しい声がする。

 

 

『君はすごく真っ直ぐで、諦めない根性が良いね!だから、きっと、その力は使えるよ』

 

 

とても聞き覚えのある声だ。

 

 

『だから、頑張れ!応援してるからね!』

 

 

 

ーーーはい、頑張ります。五代さん!

 

 

 

「変身!!!!」

 

 

身体に何かが起きてくる。だがもう目の前で串刺しをしようとする敵に向かって殴った。

 

 

「おりゃぁ!!」

 

右手が赤になる。

 

 

「うおりゃぁ!」

 

左手が赤になり、身体も赤に染まっていく。

 

 

「グフッ・・・!貴様・・・!?」

 

「うおぉりゃああ!!!!」

 

 

渾身の右ストレートを食らわせると、串刺しの身体が吹っ飛び、倒壊した家の壁にめり込んだ。

 

 

両手を見る。身体を見る。顔を触ってみる。

 

 

自分の姿が、まさに、あの姿に変わっていた。

 

 

「あ、貴方・・・一体・・・」

 

 

震えるような声で掛けてくる女性。

 

俺は、あの仕草・・・サムズアップをしながら、語りかける。

 

 

 

「俺は真木進一。今は・・・クウガ。仮面ライダークウガ!」

 

 

 



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第4話 撤退

色々仕事が忙しくなって筆が進みませんでした・・・。



あと、やっぱり小説は難しいなと改めて感じました。

それと、ぐだ男くんの名前が公表されたので、此方も藤丸立香でいきます。


◇ ◇ ◇ ◇

 

 

あれは一体、何なのでしょうか。

 

 

突然、胸から赤い光が出たと思ったら、次には腰にベルトのような物がありました。

 

 

彼からは人としての魂と、途轍もない魔力を感じられました。

 

 

 

私達英霊に似た・・・そして、とても眩しいような魔力・・・。

 

 

彼の体の奥から、多くの霊基、英霊の存在を感じられました。

 

 

 

「変身!!」

 

 

 

彼はそう叫び、ヴラド公を迎撃しながら姿を変えていきました。

 

 

その姿は、赤い鎧を纏い、黄金の短い角が2本。そして赤い瞳・・・。

 

 

彼の右手の親指だけを立てた仕草。

 

それだけなのに、何故かとても安心できる。

 

 

「俺は真木進一。今は・・・クウガ。仮面ライダークウガ!」

 

 

 

彼がそう名乗り、立ち上がってきたヴラド公に向かい合い、激しい戦闘を始めました。

 

 

ヴラド公が槍を地面から出現させて彼の動きを束縛させようとします。

 

ですが、彼はそれを叩き折り、ヴラド公の槍を身体を逸らして掴み取り、重い一撃を叩きつけていきます。

 

ダメージを受けすぎたのか、身体を霧に変えてヴラド公は去りました。

 

 

「クウ・・・ガ・・・?仮面・・・ライダー?」

 

 

聞いた事もない真名、そしてクラス。

 

敵や他人の前で真名を知られるのは、それは自分の首を絞める行為・・・。

 

 

ですが・・・何故でしょうか。

 

 

私は・・・その名の英霊を知らない(・・・・・・・・・・・)

 

 

 

聖杯から得た知識にも無い。(・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

あのもう一人の私は知っているのでしょうか・・・。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

「・・・何、今のは・・・?」

 

私が展開した獄炎の中で、あの無鉄砲な男とヴラド・・・そしてあの忌々しい聖女様がいる。

 

 

ヴラドはあの串刺し公、そしてさらに狂化をしているのだから、負けは想像できない。

 

 

だけど・・・。

 

 

あの光は何だったのか・・・。

 

 

感じるはずがない。

 

 

この完璧にして最強のサーヴァント達で憎きこの地、そして敵対する者たちを焼き尽くす。

 

 

そこにあるのは、勝利の快感、絶望を叩きつける愉悦。

 

 

ただそれだけのはずなのに・・・。

 

 

「なぜ・・・私の手は震えてるの?」

 

 

それは恐怖なのか・・・。未知に対する不安なのか・・・。

 

突然、目が開けていられないほど強い突風が吹き荒れた。

 

 

 

そこから歩んでくるのは、獄炎を背に、燃えるような瞳を持つ、赤い戦士が歩んできた。

 

 

 

 

□ □ □ □

 

 

 

あれから串刺しさんと対決していたが、連続のパンチとキックで効いたのか、また霧になって何処かに逃げていった。

 

最後に憎らしげな目線を送られたが、今はこの身体に起きた事に対して、意識を傾けていた。

 

 

しかし・・・。

 

 

「俺・・・クウガになってる・・・」

 

 

しかも、多分かなり強くなっちゃってる感じだ・・・。

 

だってあんな壁にめり込むとかそんな描写あったか?

 

槍で斬られてもそんなに痛くはなかったし、もう何がなんだか分からなくなってきた・・・。

 

 

だけど・・・これで、この先にいる黒い女性に・・・。

 

 

炎が未だに激しく燃え続けていて、いっそこのまま走り抜ければいいんじゃないかと思ったが・・・。

 

 

「いっちょ・・・試してみるか!」

 

 

 

そのまま右腕に力を限界と思うほど振り絞り・・・。

 

 

「うおおおおおお!!!!」

 

 

正拳突きを繰り出すと、自分でも驚くほどの風が起こる。

 

 

その結果、粗方の炎は消え去り、驚いているような感じの黒い女性が見えた。

 

 

うん・・・俺も驚いてるよ・・・。ここまで強くなってるなんて・・・。

 

 

だけど・・・。

 

 

 

これで、アレになったらと思うと、怖くて身体が凍りつくような感じがした。

 

この力・・・。人を軽く殺せる程の力を、怒りに任せないように戦う事は、とても至難の業だと思う。

 

 

 

(五代さん・・・やっぱりスゴイなぁ・・・)

 

改めて、五代さんの偉大さが身に染みた。

 

 

「アンタ・・・一体・・・」

 

 

憎悪を込めた目で睨んでくる黒い女性。

 

その目は金色で、さっきの白い女性との違いは其処にもあったのかと分かった。

 

 

ーーーこの女性を、本当に倒さなきゃいけないのか?

 

一瞬そんな事を考えてしまう。

 

本当に、彼女が元凶ならここで倒さねばならない。

 

だけど・・・。

 

彼女はどこか、無理矢理悪になろうとしている気がする。

 

確証はない。だけど、そう感じたのだ。

 

 

しかし、今は其れよりも早く後方のお兄さん達を助けるために走ろうとした。

 

 

 

「うぐっ・・・!?」

 

 

突然全身に痛みが走り、その場で膝をついてしまう。

 

 

ーーーなんだ、すごい・・・いてぇ!!

 

 

後を追いかけるように強い疲労感が襲ってきたと同時にクウガの姿が光を発したと思ったら、消えていた。

 

 

ーーー変身が、解除された!?

 

 

あまりの突然の事に固まってしまう。

 

なぜ、このタイミングで解除されたんだ?

 

いや・・・この疲労感、まさかとは思うが・・・。

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

いつ間にか近くに白い女性が俺を守るように黒い女性と向かい合う。

 

「動けますか!?今なら私が時間を稼ぐので、早く!」

 

いや、駄目だ。この人を置いて行くなんてしたくはない。

 

「駄目です!貴女も一緒に・・・!?」

 

脚に力を入れようとするが、まるで生まれたての小鹿の様に震えが止まらず、上手く立てない。

 

ーーーなんで、なんでなんだ!?

 

こんな時に、目の前で戦おうとする人がいるのに。

 

なんで俺だけ・・・戦えない状態なのだろうか。

 

この二人が戦って、どちらが勝つか分からない。白い女性が必ず勝つという確信は無いのもあった。

 

焦りが頭の中でグルグルと回っている。

 

何とかしなければ・・・足手纏いだけでも回避しないと。

 

 

「・・・フンッ!少し驚いたけど、所詮は脆弱な魔術師ですね・・・」

 

黒い女性はそう言うと、旗を構え今にでも突撃してこようとしている。

 

対する白い女性も構えるが、いつまで睨み合いが続けれるだろうか・・・。

 

早く動けるようにしないと・・・。そんな事を考えてた時、影が俺を覆った。

 

 

いや、詳しく言うと、空に、誰かが跳んでいた。

 

 

「えぇーーーーーい!!!!」

 

 

とても聞き覚えのある声がした瞬間、誰かが黒い女性に蹴りを浴びせていた。

 

黒い女性はそれを難なく防御したが、反動のせいか大きく距離を取るように後ろに下がっていた。

 

スタッと俺と白い女性の前に降り立ったのは・・・。

 

 

「うふふ、正義のヒーロー参上!!・・・ってこんな感じかしら?」

 

 

「ま、マリーさん!??」

 

 

振り向きながらピースするマリーさん。

 

 

ーーー今の跳び蹴り、まさか俺がした時のヤツを真似したのか?

 

「ん、よいしょ・・・っと」

 

 

そんな事を考えていたが、マリーさんが俺をおんぶした。

 

 

ーーーえ?

 

いやいやいや、待て待て!

 

 

「ま、マリーさん!何を・・・」

 

 

「何って・・・撤退するんでしょ?」

 

 

「いや、そうですけどなんで俺をおんぶして・・・」

 

 

「え?だって動けない人を移動させるには、コレが一番でしょ?」

 

 

俺にウィンクしてくるマリーさん。

 

正論すぎて言葉も出ない・・・。途轍もなく恥ずかしくて穴があればすぐに隠れたかった・・・。

 

 

「他にいた黒髪の人たちももうここから逃げてます、早く行きましょう!」

 

 

「は、はい!」

 

 

マリーさんの声に返事をした白い女性は一緒に走り出した。

 

さすが英霊というのだろうか。すごいスピードで戦場と化してた街が離れていく。

 

 

後ろが気になって、視線をチラリと向けてみた。

 

 

背中から炎が見えそうなほど、憎しみを滾らせた目をした黒い女性と目が合った気がした。

 

 

その目は、なぜだろう。とても悲しそうな目に見えたのは、俺の気のせいなのだろうか・・・。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「と、いう事があったんですよね・・・」

 

 

「なんというか・・・色んな事が起きすぎて情報が整理しきれなさそうです、先輩・・・」

 

 

「う~ん・・・もう考えるのをやめたい気分だよマシュ・・・」

 

 

色んな事実を受け入れるのに時間が掛かりそうな二人・・・マシュさんと藤丸さん。

 

 

この二人と一緒にいたのは、なんとあの佐々木小次郎という宮元武蔵との話が有名な剣士だった。

 

 

マシュさんのデミ・サーヴァントの説明、藤丸さんとの知り合った出来事、不思議な生物フォウ、そしてカルデアという施設、そこで起こった出来事を話してもらった。

 

そう・・・特異点、聖杯、そして・・・人類史の焼却を。

 

 

それは人類が今まで刻んできた歴史がなくなる。未来も無くなり、人類は滅びの運命を辿る事になったらしい。

 

 

最初の特異点は何とか聖杯を回収したが、次の特異点・・・つまり、今ココにいるオルレアンでの聖杯探索をしているとの事。

 

そして色々探索していたらあの白い女性・・・ジャンヌ・ダルクに出会い、そしてあの黒いジャンヌに出会ってしまい、戦闘をしていた時に俺が乱入した・・・という。

 

 

 

ーーー色々掻い摘んでのヤツだが、想像以上の事が起きてるのか・・・。

 

 

最早俺がココにいる問題よりもそっちの方が大問題だ。

 

未来が無い。人類が滅ぶ。それだけでどれだけ大事なのか・・・。

 

 

そして・・・。目の前にいるこの藤丸さん唯一生き残りのマスターであり、それを背負うというのだ。

 

それは自己申告で言い出してないだろう。背負う事になったのだ。自分の意思とは無関係に。

 

 

ーーーこの人、精神すげぇなぁ・・・。

 

いきなり世界と人類の運命は君に委ねられたなんて言われたら、誰もが戸惑い、嫌だと言うのが普通じゃないだろうか。

 

それを受け止めるのは考えられないほどのプレッシャーだろう。

 

それを彼は受け止めているのだ。

 

彼の隣にいるマシュさんや小次郎さん、そして他にいる英霊やカルデアの人達に支えられてると言っていた。

 

ーーーこの人達を、助けてよかった。いや、これからも。

 

 

この人達を助ける事が俺のやるべき事。そう思えた。

 

 

「なら、俺も藤丸さん達を手伝います」

 

 

「えっ、本当!?」

 

 

「はい、俺が出来る事がそれぐらいしかないのですから」

 

 

「ありがとうございます、真木さん!」

 

 

「あはは・・・進一でいいですよマシュさん」

 

 

やった!とばかりに目を合わせて嬉しそうにする藤丸さんとマシュさん。

 

 

 

これが、俺が出来る事なら。人類を、世界を救う事が出来るなら、手伝おう。

 

 

 

 

いつまでも、俺の心の中にある、英雄になろうとするため。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

 

彼・・・進一さんが微笑ましそうに二人を見つめている時、私は聞きたい事があって声を掛けました。

 

不思議そうにこちらを向く彼に、これはこの場にいる藤丸さん、マシュさんにも知っていたほうがいい。

 

他のマリーさん達は見回りをしているので一緒に聞いておいて欲しかったですが、この機を逃すわけにはいきませんでした。

 

 

「あの・・・仮面ライダー・・・クウガというのは、アレは一体何なのですか?」

 

 

「え?」

 

 

目を丸くさせる彼ですが、さらに疑問をぶつけます。

 

 

「そしてあの時、貴方から数多くの霊基を感じました。一体、何なのですか。仮面ライダーって」

 

 

藤丸さんとマシュさんも聞いた事無い言葉に興味を持ったのか、進一さんに視線を集中させます。

 

 

「いや・・・仮面ライダーって・・・知らないの?」

 

 

その言葉に進一さんを除いて頷く全員。

 

 

「えーと、仮面ライダーは特撮で代表の一つで・・・」

 

 

「特撮・・・・?」

 

 

また聞いた事無い言葉に戸惑いを感じる私。他のお二人も反応を見る限り、知らないみたいです。

 

 

 

「進一さん・・・私達、マシュさん達も、その・・・特撮という言葉を聞いたことがありません」

 

 

「・・・・・・え?」

 

 

「英霊はある程度の知識は召喚された時からあるのですが・・・」

 

 

 

「・・・・えっと、じゃあ・・・」

 

 

 

「はい、私達は、その『特撮』というのが知らないのです」

 

 

 

彼が信じられないような物を見るような顔をしていました・・・。

 

 

彼にとっては常識な物でしょう・・・。ですが、私達は知らない。

 

 

この違いは、一体何なのでしょうか。

 

 




あ~、早く邪ンヌ愛でたいんじゃ~・・・。


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第5話 召喚

この作品の邪ンヌ、及び少しのキャラの性格が変わっている所があります。


今回は休息回ということで、戦闘は無いです。


◆ ◆ ◆ ◆

 

「クソッ・・・くそっ・・・くそっ!!!」

 

 

あの聖女を・・・殺せなかった!

あの時あんな予想外な奴が居なければ・・・!!

 

頭の中で憎悪の炎が渦巻く。

 

あれから本陣に帰還したけど、あの絶好の機会を逃したのは痛手だった。

 

それに・・・。

 

「なんなのよ・・・アイツは!」

 

あの赤い戦士になっていた魔術師・・・。

アイツからはなんだか嫌いな部類の人間だ。なぜだか分からないけど、顔を思い出すだけで無性に腹が立つ。

 

そしてあの目・・・。あの目は、なぜ・・・。

 

「おお、ジャンヌ・・・どうされたのですか?」

 

 

守りを任せていたジルが私を案じるように声を掛けてくる。

 

いつもならなんでもないはずなのに、今回ばかりは全てに対して苛立つ。

 

 

「うるっさいわよジル!焼かれたいのですか!?」

 

 

「おおお・・・ジャンヌよ、どうか落ち着いてください・・・」

 

「これが落ち着いていられるものですか!あの聖女を・・・あの偽者を消せるチャンスだったのに!!」

 

「ジャンヌ・・・今は心を落ち着かせて、状況を把握するのです・・・焦ってはなりません」

 

ジルの言葉は正しい。未だに燃え盛る憎しみを落ち着かせ、且つ消えさせないよう、深呼吸する。

 

「・・・すみませんジル・・・。かなり嫌な出来事があったので」

 

「嫌な出来事・・・それは一体?」

 

改めて冷静になれた私は、戦場であの女に出会った事、他にもいた大盾を持つ少女とマスターと思われる青年、そして付き添いのサーヴァントと出会った時から全てを話した。

 

あの訳の分からない奴のことまで。

 

 

「なんと・・・赤き戦士・・・ですか」

 

「何か知っていますか、ジル?」

 

考え込むが、最後には首を横に振るジル。

聖杯の知識にも無い、あの赤い戦士は何なのでしょうか・・・。

 

「ジャンヌ、今は色んな事が起きて疲れたのでしょう・・・もう夜です、お休みになられては」

 

「そう・・・ね、分かりました。今はワイバーンや他の英霊達に任せて私は休みます」

 

「はい、今までの戦いでも貴女はほぼ休まずその身を奮われました。今はゆっくりとお休みに・・・」

 

深々と頭を下げるジルに私はありがとうと答え、寝室に向かいます。

 

 

(今までの戦い・・・ですか)

 

 

あの旗を掲げてから民を率い、そして最後には裏切られた忌々しい記憶。

 

私は蘇った。私は舞い戻った。

今度は、その憎しみを、国に、民達にぶつける為に。

 

だけど・・・。

 

 

 

|なぜ、私は戦う前の記憶が無いのでしょうか。《・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・》

 

 

本当に、私は本物で、あの女が偽物・・・・でしょうか。

 

(なんで・・・こんな事考えるの)

 

分からない。分からない。

 

なんで急にこんな事を考えたのか・・・。

 

 

そして、どうしてアイツの目を・・・。悲しそうな目を思い出すの・・・。

 

 

 

□ □ □ □

 

 

 

ーーーいやぁ、参ったねこりゃ・・・。

 

あれからジャンヌさん達と話していたら、この世界はまさかの特撮が無い事が分かるとは・・・。

 

あれだよ、日本に住んでて『白米?え、何ソレ・・・』とかすごい訳分からないヤツだから・・・。

 

 

あの時、俺は絶句するしかなかった。寧ろそれ以外の反応が出来なかった。

 

よもや、ゴジラやガメラ、戦隊モノやライダーシリーズ、それ以外の特撮文化だけが無いのだ。

 

なぜこんなピンポイントに無いのか・・・。俺は悲しくてしょうがなかった・・・。

 

 

ーーーだって、あの文化を知らないなんて損してるにも程がある!!!

 

 

一つの作品で人生変わる人もいるんだし、その作品をずっと愛し続けている人もいるし、ちょっと暴走しちゃってリアルすぎるフィギュアやコスプレも作っちゃう人だっているんだ。他の文化でもあるけどね。

 

俺はずっと子供の頃から特撮が大好きで、生まれる前の特撮作品を見るたびに「あぁ・・・なんでもっと早く生まれなかったんだ・・・映画館で見たかった・・・」なんて何回思った事か・・・。

 

・・・まあとにかく、クウガの事で興味津々のジャンヌさんにありったけのクウガの魅力を説明した。

実際は見た方が一番良いのだろうが、生憎DVDなんて持っていないし、機器も無い。

 

それからは特撮について知ってるだけの事を皆に説明していたが、やはり未知の分野だったのか、開始数分でギブアップが出た。

 

まあかなりの作品があるし、許容値オーバーするのも無理はないだろう。

だが、皆興味を持ってくれただけでも有り難かった。

マシュさんや藤丸さん、そして本拠地にいるというDr.ロマン、男性じゃなかったのかダ・ヴィンチちゃん、他のサーヴァントさん達も真剣に聞いてて嬉しかった。

 

まあ、そんなこんなで。

 

今現在は龍脈・・・という所に召喚サークルを設置し終えた所らしい。

 

なんでも新たな英霊を召喚できるらしい。あの小次郎さん並みにすごい剣士の人も運が良ければ出るらしい・・・。

 

『あ、そうだ!』

 

そのとき、通信からダ・ヴィンチちゃんの何か思いついた声が聞こえた。

 

『ねぇねぇ、真木くん!調べたところ、君にもマスター適性があるみたいだよ。だから・・・君も召喚しない?』

 

「は、はい!?」

 

 

「え、ちょ、ちょっと待ってくださいダ・ヴィンチちゃん!今は先輩しかマスター登録されてない筈ですが」

 

余りの突拍子な提案に驚きの声が出てしまう。

 

召喚するにはカルデアでマスター登録をしないと、召喚する事が出来ないと聞いていた。

マシュさんの質問にダ・ヴィンチちゃんはさらっと答える。

 

「ああ、それには及ばないよ。真木君、ちょっとサークルの中心に立って」

 

ちょっと怖いが、了解をしつつ、サークルの中心に立つ。

一体何をするつもりなのか不安だったが、立った瞬間、スキャンするような光が上下に動く。

スキャンが終わったと同時に、右手に軽く火傷のような痛みが走り、見ると紋章のような物があった。

 

『うーんと・・・。はい、コレでよし!マスター登録完了だよ~』

 

「え、出来るんですか!?」

 

『この天才、ダ・ヴィンチちゃんに不可能はないのだ~!!』

 

アッハッハと笑う声に、手を腰に当てて笑うダ・ヴィンチちゃんの姿を思い浮かべた。まだ会ったこと無いけど。

 

『ま、まあともかく、まずは藤丸くんから召喚をやっていこうか』

 

いきなり登録したての新人が分かるわけないと、それもそうだなと思い、ロマンさんの指示で藤丸さんから始まる事になった。

 

「ちょ、ちょっと・・・緊張するなぁ」

 

「だ、大丈夫です、先輩。いざという時は私が守ります!」

 

「マシュ・・・うん、頑張るよ!」

 

マシュさんに後押しされて、藤丸さんが星のような七色の石を並べて、手を翳す。

 

 

 

 

 「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

              

 「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。(みたせ みたせ みたせ みたせ みたせ)

  繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

              

 「―――――anfang」

 

 「――――――告げる」

 

 「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

長い詠唱が終わると同時に石がクルクルと円を描くように回りだし、光と雷がパッと発生した。

 

眩しさが無くなると、そこには赤いマントのようなのを着た、白髪の浅黒いお兄さんが立っていた。

 

「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ、参上した。君が、私のマスターかね?」

 

「は、はい!宜しくお願いします、え~っと・・・」

 

「私の名前か・・・私はエミヤ、エミヤでいい。そう固くならなくていいぞ」

 

「エミヤさん・・・うん!改めて宜しく、エミヤ!」

 

固く握手を交わすエミヤさんと藤丸さん。なんだか最初から仲良さげな雰囲気で良かった・・・。

 

 

『さあ、次は真木くん、君だけど・・・星晶石って持ってる?』

 

「あ、え~と確か・・・」

 

マリーさんと来るときに道中でチマチマ拾っていたのを思い出して、ポケットから取り出す。

 

ーーーこれ、集めてといて良かったなぁ~

 

マリーさんが綺麗だから集めましょう!って言い出して集めてたんだけど、ここに来て役立つとは思わなかった。

 

無事に石を6個のうち3個をセットする。残りの3個は藤丸さんに渡しておいた。

 

『さて、君は何も知らないだろうから、さっきの詠唱は無しでも構わないよ。あれは強いサーヴァントが来るように願掛けを掛けるようなもんだから、気持ちを楽にしてね』

 

ーーーあ、願掛けのようなものなのか。

 

後ろで「必死に覚えた僕って・・・」と少し泣きそうな藤丸さんの声が聞こえて、マシュさんとエミヤさんがフォローしているのが分かる・・・気がした。

 

とりあえず、ダ・ヴィンチちゃんの言うとおり、深呼吸して心を落ち着かせ、身体を楽にする。

 

ーーー大丈夫、大丈夫だ。

 

さっきの詠唱はやらない。そのまま俺は手を翳した。

 

ーーーだれか、来てください!

 

目をつぶり、願いを込めた。

 

右手の甲が熱くなったと同時に、またエミヤさんが召喚された時のような光が発せられた。

 

ゆっくりと、俺は目を開ける。

 

そこには。

 

 

 

「召喚に応じ、参上した。貴様がマスターというヤツか?」

 

 

黒い仮面を左手に、そして黒く染まったような剣を右手に持つ、黒い鎧の金髪の女性が立っていた。

 

 




まさかのお気に入り数、そしてランキングに乗っていた事に驚きが隠せない作者です。

ここまで多くの人たちに読んで貰えてとても嬉しいです。


本当に、ありがとうございます。



そして邪ンヌヒロインとして早く書きたいよぉ・・・・。


追記

はい、まさかの28日からとうとう来た邪ンヌイベントが来たので、かな~り遅れます。走りきる覚悟ですので。

あと、ちょっと展開的に今とても悩んでいる所です。

下手をすればここから大きく物語りが変わるので・・・。

一人で行くのか二人で行くのか、皆さんはどっちが楽しんでくれるのでしょうか。

光と闇、正義と悪、一応これがこの作品のテーマとして作者の頭フルバーストでやっていますので・・・。

多分2人の方が当初からの考えですので、多分こちらに行くかと思いますが・・・。

どうか、もう少しだけお待ちください。


あと、感想、考察、大歓迎ですので、ドシドシください。
作者の原動力ともなりますので・・・。よろしくお願いします。
 



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第6話 覚悟

前話の後書きと違う方向で行きます!


今回駆け足ですけど、宜しければどうぞ!



追記:少しだけ文章を訂正しました。


? ? ? ? 

 

『なぁ・・・いつまで待てばいいんだ?』

 

まだだ。コイツがまだ闇に染まらない限り、俺達は身体を奪うどころか、借りることさえ出来ん。

 

『ちっ・・・アンタでも無理となると、策は無いな』

 

・・・策が無い?ふん、そんな物は今は必要ないだろう。

 

コイツは自分が思ってるより、とんでもない事に巻き込まれてる事を知らないのだからな。

 

すると、自然と踏み入れてしまうのさ。影にな。

 

『あ?つまり、闇に染まる時は来るって事か・・・これは手間が省けるな!フハハハハ!!!』

 

そう、線が見えずにそれを踏み越える。それは好奇心やら何やらでな。

 

『・・・』

 

フフフ・・・ああ、機会が来るまで待つのだ。1番手はお前に譲ってやる。

 

『フン、言われなくてもそうするつもりだ。俺様が・・・暴れまわってやる』

 

楽しみにしてるぞ。

 

・・・さあ、早く絶望し、怒り、憎しみ、そして染めろ・・・。

 

 

進一・・・。闇は、お前を見ているぞ。

 

 

□ □ □ □

 

 

 

・・・さて、ここで状況を整理しようか。

 

 

まず、目の前でめっちゃ黒いビーム打とうとしている騎士・・・アルトリア・オルタさん。

 

 

なんでこうなったかと言うと、いきなり「貴様は弱いな。いいだろう、少し鍛えてやる。死に物狂いでやれ」って言い出して、それからはありえん速さの斬撃を繰り出してはビームを打ったり蹴ってきたり・・・。

 

マジで死に掛けた時が何回有った事か・・・。もう2時間は経っているのか、もう辺りは真っ暗だ。

 

 

「ちょ・・・ちょい待って・・・息を・・・」

 

 

「知らん。死ぬほど動け。動かなければ死ぬぞ」

 

ーーー死ぬほど動かないと死ぬって・・・絶望的すぎません?

 

「ではこれで最後にするか・・・生きろよ」

 

いや待ってください。最後の言葉なんですか。不安すぎるよ!?

 

 

「光を飲め・・・」

 

彼女の黒い剣が魔力を纏って大きな剣を形成していく。

 

それはとても怖い剣だ。今まで避け続けてはいたが、どれも紙一重で何とかしていた。

 

だが、今度のは最後と言ったとおり、全力でやっているのだろう・・・。

 

変身して耐えようとしても、そもそも変身が出来ない。(・・・・・・・)

 

 

なぜか変身しようとしてもベルトが腰に出現しないし、そして変身できても耐えれるかどうかが怪しかった。

 

 

「やっぱり・・・頑張って避けるしかないか!!」

 

身構えて、いつでも横に跳べるようにしておく。今までギリギリ避けてきたのだ。

 

空気がビリビリする。死が目の前にあって、悪寒が背筋を何度も通る。

 

 

だけど、諦めない。

 

 

絶対、折れる訳にはいかないんだ。

 

 

まだ、俺は目指しているから。

 

ずっと見てきたヒーロー達に!

 

「まだ俺は・・・死ねないんだ!!」

 

 

彼女・・・オルタが少しだけだが、笑った様に見えた。

 

 

 

「約束された勝利の剣!!!!」(エクスカリバー・モルガン)

 

 

視界が全て黒に覆われそうな程、範囲が広かった。

 

だけど、全力で蹴れば!

 

 

「ぬおおおおおおおお!!!!!」

 

 

ありったけの力で地面を蹴り、横に跳ぶ。

 

抜けろ、抜けろ、抜けるんだ。

 

避けろ、避けろ、避けるんだ。

 

生きるんだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

ジャンヌさんが傍に駆け寄ってきた。

 

とりあえず疲れたので、寝転がったまま手を振って大丈夫と伝える。

 

 

「良かった・・・。いくらなんでもやりすぎではないですか、騎士王」

 

「コレぐらいが丁度良かったのだ。マスターの事も少しは理解できたからな」

 

サクサクと音を立ててオルタも近づいてきた。ジャンヌさんが厳しい目で見ているが、彼女は受け流すようにしていた。

 

 

「ちょ・・・丁度良かったって・・・・あれでですか・・・オルタさん」

 

「ああ、貴様の心意気も意地も見れた。良い顔していたぞ?」

 

あんな必死に避けたのに良い顔ですか・・・。全くスパルタすぎる・・・。

 

 

あのビームを無事に避けて、今は避けた際に転がってそのまま仰向けでいた。

 

理由としては簡単。疲れて動けない。動きたくない。今までぶっ通しでやってきたのだ。

 

「とにかく、終わったのなら戻りましょう。既に藤丸さん達の料理が出来てますよ」

 

「ほう・・・ジャンクフードは無いのか?」

 

「ジャン・・・それに関しては分かりませんが、エミヤさんが何か鬼気迫るような感じで作っていたので、美味しいと思いますよ?」

 

 

「ほほう・・・ならば冷めぬ内に食べるとしよう。先に行くぞマスター」

 

 

そのまま早足で藤丸さん達の方に行くオルタ。

 

その場にいるのは俺とジャンヌさん二人だけになった。

 

「・・・ゆっくりで良いですよ、私もいます」

 

「はい、ありがとうございます・・・」

 

ゆっくりと身体を起こすが、脚がまだプルプルして動けそうにない。

 

「・・・はぁ。死ぬかと思った」

 

「はい、見てるこちらもヒヤヒヤしてました・・・強引というか、やり方が極端すぎます」

 

「はは・・・まあ、そういう人なんでしょう。そういえば、あれから藤丸さん達は一体何を?」

 

序盤の頃は俺達の死を賭けた修行を見ていたが、途中で居なくなっていたのだ。

 

「それが・・・彼らもエミヤさんと小次郎さんに稽古をしてほしいと・・・」

 

「え!?なんで・・・」

 

「彼らもさっきの戦闘で分かったのでしょう、自分達がどれだけ経験が浅いのか・・・」

 

なるほど、その理由なら納得だ。彼らもあの襲撃で命からがらだったのだ。

 

俺の姿を見ている内に思ったのだろう。

 

自分達も、強くならねば、と。

 

 

「・・・あの」

 

「あ、はい、なんですかジャンヌさん」

 

「あ、私のことは呼び捨てで構いません。敬語もいりませんよ」

 

「ん・・・それだとジャンヌさ・・・ジャンヌも敬語は」

 

「私のは・・・これは中々直らないと思いますので」

 

頬をポリポリと困った顔で搔くジャンヌ。

 

その一つ一つの仕草が絵になるような仕草だ。

 

だけど、その姿を見ていると、唐突に思い出すのだ・・・。

 

脳裏に焼け付いたような・・・。あの顔と目を。

 

 

「・・・彼女の事ですか?」

 

「・・・ああ」

 

心の内を見られたように、当ててこられた。

 

「彼女に関してはまだ分からない事ばかりです」

 

「だけどあの子は・・・フランスを、国を、民を憎んでいたと」

 

「はい。確かに私の最期は悲しい結末になりました。ですが、民や国を恨んではいませんでした」

 

「なら・・・君がそうなのなら、彼女は一体」

 

ジャンヌは無言で首を横に振る。

 

これ以上の事は本当に分からないのだろう。

 

「・・・貴方は、どうしたいのですか?」

 

「え、俺?」

 

真剣な瞳で見てくるジャンヌ。

 

「貴方は・・・彼女になぜ、そこまで気にされるのですか?彼女は敵側、人理焼却側なのです、なのに・・・」

 

「・・・」

 

 

「なぜ、貴方は彼女に優しさ、慈しみを抱くのですか」

 

「・・・それは」

 

ーーー分からない。なぜここまで敵の彼女を気になってしまうのか。

 

 

なんで、ここまで胸が締め付けられそうな気分になるのか。

 

なぜ、助けたいと思ってしまうのか。

 

 

あの目を。あの顔を。

 

 

「貴方は・・・っ!?」

 

 

突然旗を振るうジャンヌ。

 

すると、なにかが飛んできて、それを旗で弾く。

 

何かは地面に当たり爆発する。そこは黒く焦げていた。

 

 

 

「流石は、能力が衰えているとはいえルーラーですね。私に気付くとは」

 

 

草原でいるのは俺達二人だけだったはず。

 

その声は空から聞こえてきて、其れは降りてきた。

 

 

「・・・!貴女は向こうの陣営の!」

 

 

「はい、竜の魔女のサーヴァント、ライダーです」

 

相手はあのジャンヌ側の人。杖を持った紫色の女性だ。

 

いつの間にか脚の震えも治り、直ぐに立って身構えた。

 

 

「あら、貴方は・・・赤い戦士の」

 

 

「・・・」

 

 

「まあ良いでしょう、向こうも同じようにやってくれているでしょう」

 

 

向こう?ちょっと待て。

 

それはもしかして。

 

嫌な想像をしてしまい、急いで藤丸さん達の方に向かおうとするが、足元に突然爆発が起きて動けなかった。

 

 

「あちらには行かせません。私を倒してから行きなさい」

 

 

「真木さん!こうなっては急いでライダーを倒すしかありません!力をお貸しください!!」

 

 

とても向こうが気になって仕方ないが、ライダーも本気なのだろう。

 

最早、戦うしかないのか・・・。深呼吸し、一心に願う。

 

 

ーーーお願いだ、現れてくれ!変身させてくれ!

 

 

目を瞑って念じるように願うと、腰にズシリと重みがきた。

 

 

見るとベルトが付いていた。良かった!

 

「赤い戦士には・・・させません!」

 

「私が守ります!真木さん!早く!!」

 

ライダーが光弾を放ってきたが、俺を守るようにジャンヌが動いてくれる。

 

 

大きく息を吸い、ポーズを構える。

 

戦うしかないんだ。戦わないと、藤丸さん達が危ない。だから・・・。

 

 

「変身!!」

 

ベルトが言葉に反応して、すぐに身体に力が漲るような感覚になった。

 

 

徐々に身体が変わっていき、顔を覆っていく。

 

 

そして、ベルトの変身が完了した音が鳴り、無事に変身できたか、改めて自分の身体を見た。

 

 

 

それは、赤とは違う、白い装甲のクウガ・・・グローイングフォームだった。

 

 

「な、なんで!?」

 

「ま、真木さん・・・!?」

 

 

思わず疑問の声が出てしまい、何事かと振り向いたジャンヌが驚いていた。

 

 

なぜ、弱体化のグローイングフォームになったんだ?

 

前の戦闘ではマイティフォームだったのに、こんな時に限って・・・。

 

「あら・・・また違う姿ね・・・」

 

ライダーが此方を興味で見ているが、そんな事を気にしてる場合じゃない!

 

とにかく、ライダーを倒して藤丸さん達のところに向かわなくては!

 

 

「せいやぁ!」

 

 

脚に力を込めて大きくジャンプし、蹴りをライダーに当てはした。ライダーは腕をクロスさせて防御し、俺はジャンヌの隣に着地する。

 

だが、ここで俺は大きな違いを感じる事になった。

 

(な、全体的にパワーが落ちてる!?)

 

ヴラド公との戦いではパンチ1発で大きく吹き飛ばしていたのに、ライダーは防御しただけでその場から全く動いていない。

 

ライダー本人も失望したような表情だった。

 

「はぁ・・・串刺し公から聞いた話とは全く別ね・・・それに・・・」

 

するとライダーは杖を地面に突き立てる。

何をするのかと身構えたが、何もしてこない・・・?

 

「白い戦士、私を殴ってみなさい」

 

「・・・はっ!?」

 

「いいから、私に一発ブチかまして見なさいつってんの!!」

 

なんでちょっとキレ気味なのか分からない!

ジャンヌとアイコンタクトをしてみるが、明らかに困惑な顔で「ど、どうします・・・?」と目をするジャンヌ。

 

「ほら、何もしないから、掛かってきなさい。小僧」

 

明らかに言葉遣いが変わっているが・・・最早一か八か、本当にやるしかない!

 

 

走り出し、拳が届く距離まで来て、思い切り右ストレートを繰り出す。

 

「ぬおおおお!!」

 

「・・・はぁ!」

 

ガキィン!

 

俺の右拳をライダーの右拳が迎え撃った。鉄がぶつかり合うような大きな音を立て、衝撃波に揺れる草原。

 

とても痛く、力負けしそうなぐらいにライダーの拳は強かった。

 

 

「・・・弱いわね・・・いや」

 

ドゴォッ!!

 

 

「かふっ・・・」

 

 

「貴方、覚悟が足りないのよ!」

 

ドゴォッ!!

 

 

腹に何か衝撃が走ったと気付いた時には、身体は宙に浮いており殴り飛ばされたと認識した時にはジャンヌに受け止めてもらった時だった。

 

「真木さん・・・!しっかりして、真木さん!」

 

身体から力が抜けると同時に発光し、変身が解けた事が自然と分かった。

 

ーーー覚悟?どういうこと・・・だ・・・。

 

俺には、覚悟が足りない。そう言われた。

 

視界が黒くなっていく。

 

もう・・・考えれそうには・・・ない。

 

「真木さん!真・・・さん!・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それは、戦う覚悟だ』

 

 

 

 

 

 

 

身体が浮遊している感覚だ。

 

 

 

ーーーどこだ、ここは。

 

 

 

 

『ここは君の中・・・心の中だよ』

 

 

 

ーーー俺は一体。

 

 

 

『気絶したんだ。彼女に鋭い拳を受けてね』

 

 

ーーーああ、そうだった。ライダーから腹に二発貰ったんだっけ。

 

 

 

『君は、まだ明確な理由がなくて、戦おうとした』

 

 

ーーーだって、戦うしかなかったんだ。戦わないと、死んでしまう。

 

 

 

『そう、だが・・・理由がない状態で戦おうとしたら、それこそ待っているのは死だ』

 

 

 

ーーーじゃあ、俺はどうすれば良いんだ・・・。戦わないとジャンヌが・・・藤丸さん、マシュさん達が・・・。

 

 

 

『・・・君は一瞬戦う事を躊躇った。本当に戦うしかないのか、倒すしかないのかと』

 

 

返答ができない。

確かに、俺は少し戦うのを拒んだり、迷った時もあった。

 

 

『君は、本当に思っている事を隠している』

 

 

ーーー俺が・・・本当の思っている事・・・。

 

 

『今まで君の人生では多くの英雄を見てきたのだろう。そう、そして君は思うようになった事があるんだ』

 

 

ーーーそれは・・・。

 

 

思い当たる節がある。

ずっと子供の頃から特撮を見てきて、多くの英雄を、生き様を見てきた。

 

だけど、それは必ず戦いがあった。誰かと衝突し、誰かを倒す事が多かった。

 

 

そう、俺は思ったんだ。

 

本当に戦いが必要な時しか無いのか。不要な時だってあるはずだ。

 

だけど、それは今まで見てきた英雄を傷つけ、汚してしまうのではないのかと、ずっと言えなかった事。

 

 

『・・・やっと、気付けたみたいだね』

 

 

ーーーうん。

 

 

『君の考えは、例えば百の内一つの考え、もしくは願いだ。それは悪い事ではないよ』

 

 

その声はとても優しかった。とても暖かい言葉だった。

 

 

 

『それは誰かが否定し、肯定する。必ず意見は分かれるんだ。誰かと衝突するだろう』

 

 

ーーーじゃあ、結局俺の考えた事は。

 

 

 

『そう、必ず否定する人はいるだろう・・・』

 

 

冷たい様に聞こえる言葉だった。だけど、とても優しく聞こえたのはなぜだろう。

 

 

『だけど、肯定する人もいる。そして、それを信じ、貫き通し、最期まで続ける事が必要なんだ』

 

 

ーーーそれじゃあ、俺はこの考えを・・・信じ切れていなかったのか・・・。

 

 

『ああ、それが大事なんだ。霊石(アマダム)もそれが分かってて、少しだけ力を貸してたんだ』

 

 

ーーー迷っていて、道を外さないように、少しだけだったんだ・・・。

 

ごめん、アマダム・・・。俺を、守ってくれていたんだね。

 

俺が、迷っているばかりに・・・。

 

 

 

『・・・君は普通の人間だ。本当に貫き通せる程にはまだまだだ』

 

 

ーーーうん。

 

 

『だけど、灯りを見つける事が、たった今、出来たんだ』

 

 

ーーーうん。

 

 

 

『ふら付いたり、外してしまったりするだろう・・・。だけど、外しても道に戻ることが出来る。灯りがあれば』

 

 

 

ーーーもう、隠したりしないよ。これからは。

 

 

『人生とは、暗闇の中歩く事。それは何かの灯りで道を探すんだ。そして戻ったり出来るんだ』

 

 

 

胸がとても熱くなる。視線を向けると、まるでVの様な模様がとても赤く輝いていた。

 

 

 

『君は、どんな灯りで、道を歩くんだい?』

 

 

 

俺は・・・・。

 

 

 

「俺の信念(灯り)は、手を取り合うんだ!例え、敵だったとしても!!」

 

可能な限りでいい。

それは、とっても難しい事だと分かってる。だけど、きっと手は取り合えるんだ。

 

 

『・・・それが、君の灯りなんだね』

 

 

 

「・・・ああ、俺がずっと夢見てた事なんだ。もう、隠したり、考えを消したりしない」

 

 

 

『・・・それは、茨の道だとしても、か・・・』

 

 

「そう・・・でも、やっぱり、これは俺の本心なんだ」

 

 

 

『・・・もう、覚悟は良いみたいだね。これは、君の人生だ。私達は、少しだけ手伝わせてもらうよ』

 

 

「ありがとう・・・」

 

 

 

周りが白くなってきた。それでも、胸の光は輝きが益々強くなっていた。

 

 

 

『もう、目が覚める頃だろう・・・』

 

 

 

「ああ、今度は頑張って見せるよ、ありがとう」

 

 

 

『・・・少しだけ、君と話す事ができて良かった』

 

 

 

「俺もだよ、じゃあ、行って来る!」

 

 

視界が真っ白になり、浮遊感が無くなっていく。

 

 

 

 

『・・・真木。君とよく似ている名前だった。中身は、理由は違うけど、強さは君と同じぐらいかもしれない』

 

 

その声はとても懐かしそうに、誰かに語りかけているようだった。

 

 

 

 

『彼がどんな道を歩むのか、私も手伝うよ・・・、彼も、立派な・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ・・・。



可愛すぎて毎日悶えている作者であった。


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第7話 優しさと願い

遅れて非常に申し訳ありません・・・。

これからなんとか執筆していきますので、気長にお待ちしていただければ幸いです。


◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「真木さん!目を覚まして、真木さん!」

 

 

私は彼が気絶してから呼び掛けていました。ですが、彼は未だに反応してくれない。

 

ライダーは未だに起きるのを待っているのか、ずっと立ち続けています。

彼を・・・試しているのでしょうか。

 

 

「貴女は・・・一体なぜ、彼に対してトドメを刺さないのですか」

 

「殺さないわ。彼を、彼の力が本当に彼女を倒せるのか・・・それを確かめたかったの」

 

 

「確かめる・・・?貴女は、敵である筈・・・なのに?」

 

「ええ、彼の去り際の目を見たら、彼女に哀しそうな視線を向けていたの・・・」

 

私はその時・・・撤退の時は彼の顔までは確認できていなかった。

 

敵である同じの黒い私に対して、なぜそんな視線をしていたのか、分からない。

 

だがその表情を彼女が見て、それを確かめに・・・。

 

 

「だから、殺さずに奇襲を掛けて来たのですか・・・ライダー」

 

 

「いいえ、貴女達を殺せと命令されたのは事実です。ですが・・・私は見たかった」

 

 

すると、彼女はまるで優しさ溢れる母の様な微笑みで、此方を・・・彼を見ていました。

 

 

「まるで、少年の様な真っ直ぐな目をした戦士を、この目で、そして戦ってみたかった」

 

 

「・・・それは、命令に背いても、ですか?」

 

 

「そうです。まあ・・・狂化を掛けられているので、力加減はあまり効いていませんが・・・」

 

 

やはり、彼女達は全員狂化を掛けられて、基本能力を上げていたのですね・・・。

 

彼女達の霊基も負荷が掛かっていたようにも感じられたのはこのせいだと理解できました。

 

そのまま数分でしょうか・・・互いに目を逸らさずにいたら、腕の中の彼が苦しそうに呻きました。

 

 

「・・・うぅ・・・いたた」

 

 

「っ!真木さん!真木さん、私が分かりますか!?」

 

 

「アイタタタ・・・!ゆ、揺らさないで、ジャンヌ・・・!」

 

意識をしっかり取り戻してきた彼を揺すってしまい、謝りながら彼が立つのを補助しました。

 

 

「あら・・・やっと起きたわね。しかも、何か・・・覚悟が決まったようですね」

 

 

「・・・ああ。おかげ様でな。こっちも迷っていてすまなかったな。ライダー」

 

 

「真木・・・さん?」

 

 

「おう、ジャンヌ。これからは手出しは無用だ。これは俺とライダーの戦いだ」

 

 

 

その顔は、その目は、さっきまでと違うように見えました。

 

それは、不安そうな感じはなく、躊躇いは無く、さらに真っ直ぐ見るような目をしていました。

 

彼が何か、気絶している時に、何かが分かったのでしょうか。

 

 

「危ないから離れていてくれ・・・もう、真っ直ぐに、目指すんだ」

 

 

彼がまた、あの時のような姿が変わる構えをします。

 

すると、また胸から、赤く強い光が発せられ、鈍い銀色のベルトが腰に現れます。

 

 

「・・・・・・変身!!」

 

 

彼のベルトの中心がとても眩く赤く光って、同時に彼の体が赤の戦士へと変わっていきます。

 

 

「・・・真木・・・さん?」

 

 

ですが、あの時と少し違っていました。装甲はさらに赤く、目はさらに紅く、そして黄金の角は長く(・・・・)なっていました。

 

 

「・・・それが、本当の姿なのですね」

 

 

「そうだ・・・今度はアマダムが、本当に力を貸してくれている。頑張れって、応援してくれてるみたいに」

 

 

優しくベルトを撫でる真木さん。

 

 

「俺は・・・真木進一、仮面ライダークウガ!」

 

 

「ならば・・・私も名乗りましょう!我が名はマルタ!そしてタラスク!」

 

 

突如、空から降ってくるように岩が落ちてきました。

 

ですが、その岩は巨大な竜だと分かりました。

 

ーーーマルタ・・・タラスク・・・!聖女マルタですか!!

 

 

「そうか、マルタさんか・・・。どんな英霊かはサッパリだけど・・・」

 

 

「さあ、拳を構えて。今度こそ見せてみなさい・・・貴方の覚悟を!!」

 

 

「ああ!行くぞ、マルタ!!」

 

 

彼は一瞬でマルタの近くまで移動し、また拳で攻撃しようとします。

 

 

対する彼女は少し驚いた様子でしたが、また拳で迎え撃とうとしています。

 

 

「うおおおりゃあああああ!!!!」

 

 

 

「はあああああ!!!!!」

 

 

ドゴォンッ!!!!

 

 

二人の拳がぶつかり合い、今度は私の身体が吹き飛ばされそうな程の衝撃波が起きました。

 

何とか旗を地面に突き立てて耐えましたが、また直ぐ同じような爆風が来ます。

 

 

何発も。何十発も。二人は互いに下がらず、拳を拳で迎え撃っています。

 

 

ですが・・・。

 

 

私は、彼が・・・真木さんが勝つ。その様に思ってしまいます。

 

 

去り際の紅い目。そして以前よりも大きな背中。そして・・・彼から感じる思いの強さが。

 

 

とても・・・カッコイイと、思いました。

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆

 

真木達が敵からの奇襲でカルデア内は騒然となっていた。

 

 

「藤丸君達、敵サーヴァントから奇襲!敵クラスは・・・セイバーとアサシンです!」

 

「真木君の方でも戦闘を確認・・・敵クラスはライダーです!」

 

 

数少ない生き残りであるカルデアスタッフ達の報告を聞きながら、ロマンは対応していく。

 

 

「落ち着いて!各自藤丸君達のバイタルを確認!それからその周辺にさらに接近している反応が無いか監視してて!」

 

『は、はい!』

 

 

ロマンの冷静で的確な命令で少し落ち着きを取り戻したのか、スタッフ達はさらに効率を上げるよう必死にデスクと向かい合う。

 

だが、ロマンは内心、混乱したままだった。

 

 

(どうしようどうしよう!?このカルデアからだと物理的な支援なんてできないし、出来るとしたら状況の説明とかぐらいしか・・・どうしたら・・・)

 

 

ぽん。

 

「なにやってるのロマニ?まさか諦めたとか逃げ出したいとか考えてない?」

 

「れ、レオナルド!そ、そんな事は考えてないよ!?」

 

肩を叩いたのはあの名画で有名な美人とそっくり、というかそのままである天才、ダ・ヴィンチちゃんであった。

 

ロマンは少しだけ考えてた事を当てられ隠そうとするが、ダ・ヴィンチちゃんは笑みを絶やさない。

 

 

「さあ、私が一緒にサポートに入るから、安心したまえ♪黒き騎士王さん、何とか藤丸君の所に間に合いそう?」

 

『フン、もう目の前だ。言われずとも分かっている。このまま戦闘に参加する』

 

「了解。藤丸君、そっちに黒セイバーさんが援護するから、なんとか持ちこたえたまえ!」

 

『は、はい!マシュ、頑張るよ!』

 

『はい、マスター!マシュ・キリエライト、耐えて見せます!』

 

敵セイバーとアサシンの二人からの攻撃をマシュが守り、そこへ小次郎が隙を突き斬撃を繰り出し、アーチャーが狙撃をする。

 

マリーもセイバーに対して蹴りを繰り出しているが、いつまでこの状況を維持できるか分からない。

 

「ありがとうレオナルド」

 

「なに、礼を言われるほどでもないよ。それよりロマニ、あの真木君なんだけど・・・」

 

ダ・ヴィンチちゃんが怪訝な顔で真木のバイタルが表示されている画面を見ていた。

ロマンもそれに釣られて視線を画面に移すが、そのバイタル値が人間ではありえない数字を表示していた。

 

「・・・これ、って・・・英霊並みのステータスじゃないか・・・」

 

 

「うん、しかもこの数値は一流サーヴァントだ・・・。やっぱりあの子は普通の人間じゃない」

 

 

「だ、だけどさっきまでは普通の人間と変わらなかったのに、あの姿になってから・・・」

 

 

「そう、しかも直前の時に取ったデータなんだけど・・・」

 

端末を操作し、データを表示させその内容にロマンは息を呑む。

 

 

「なん・・・だ、これは・・・霊基がいくつも・・・それも膨大な魔力数値!?」

 

 

「彼はマシュと同じデミ・サーヴァントだと私は考えている・・・。だけど、それは一人だけだよ」

 

 

「それが、彼の一つの体にいくつも・・・一体どういうことなんだ?」

 

 

「それはさすがに天才な私でも分からないよ。すっごく興味があるけどね!」

 

目をキラキラさせている彼女にロマンは苦笑するしかない。彼女・・・もとい彼の探究心が刺激されたのなら仕方の無い事である。最早誰にも止められない。天才は留まる事を考えず、真理を見るまで止まらないのだから。

 

「さて・・・敵ライダー・・・聖女マルタと殴りあいしていた彼なんだけど・・・」

 

 

「ああ・・・傷ついてる所か、むしろ魔力反応がドンドン上がっている。もう溢れんばかりにね」

 

 

「一体彼は何なんだろうね・・・ん?」

 

 

その時ダ・ヴィンチちゃんはまたも何かに気付いたのか、端末を素早く操作している。

 

気になってロマンが声を掛けようとしていたその時。

 

 

微かに。それは少しずつ聞こえてきた。

 

 

 

カルデアスタッフも聞こえてきたのか、その言葉に聞き入る。

 

 

それは、とても強い言葉だ。とても熱いモノを感じる。

 

 

画面に映っていた、真木を除いたジャンヌやマルタの様子もそれが聞こえてきたのだろう。

 

二人は周りを視線だけで見るが、何もない。

 

だが、真木だけは。力強く、拳を握っていた。

 

 

その様子に気付いたのはやはり、ダ・ヴィンチちゃんだった。

 

 

(・・・真木君、君は本当に何だい?)

 

ロマンも、スタッフ達も、全員が思わず手を止めてしまう。

 

 

はっきりと聞こえてきたそれは、歌だ。

 

それは誰も知らない曲だ。

 

だが、身体が自然と昂ぶるような。

 

それは、とても力強い。とても心を動かすような・・・。

 

 

 

それは、英雄の歌だった。

 

 

□ □ □ □

 

 

それは全身の血が熱くなって、身体が燃えそうなほどに滾っている時だった。

 

 

突然、周りがグニャリと歪んだ感覚と同時に、懐かしい歌が聞こえてきた。

 

俺がまだ小さい頃、目を輝かせて夢中に見ていた番組のOPだった。

 

今でも普通に歌えるし、大好きな歌だ。

 

「真木さん・・・この歌って・・・」

 

ジャンヌがおずおずと聞いてきた。最後の仮面ライダークウガという言葉が気になったのだろう。

 

「そうだよジャンヌ。これはクウガの歌なんだ。とてもかっこいいでしょ?」

 

 

「あ、確かにそうですけど・・・周りで歌っている人がいないのに・・・なんで?」

 

「ん~・・・そこは俺も分からないけどね・・・」

 

周りには俺とジャンヌ、そしてタラスクと呼ばれる大きな亀っぽい竜を従えているマルタだけだ。

 

マルタにも聞こえているのか、周りを目だけで確認していた。

 

本当に不思議だけど・・・。

 

 

これほど、俺が盛り上がらない場面はない!!

 

 

「行くぞマルタ!これで決めにするぞ!!」

 

「・・・ええ、いいわよ。ただ、ひとつだけ私の問いに答えてください」

 

マルタが戸惑うような顔で一呼吸をし、俺に聞いてきた。

 

「貴方・・・まるで私を倒すつもりが感じられない・・・むしろ・・・助けようとしていない?」

 

 

「当たり前だ。俺の覚悟・・・出来る限り、敵でも手を取り合いたいんだ」

 

 

「・・・」

 

 

「それはとても難しい事だって分かってる。だけど、目指したいんだ。人から無理ですと言われてハイそうですかとそう簡単に諦めれねぇよ」

 

 

「・・・貴方は、優しいですね。ですが、それは時に相手を侮辱する時もあると肝に銘じておきなさい」

 

 

「・・・分かった。だがアンタ・・・否定はしないんだな?」

 

 

「まあ・・・私も色んな事を見てきたもの・・・してきたんだもの・・・」

 

 

一瞬暗い顔をしたような気がした。だがすぐにいつものキッとした表情のマルタだった。

 

 

「さ!話は終わりです!これで決着としましょう!!」

 

タラスクがグルルと唸り、空高く跳んでいくと同時にマルタから膨大な魔力を感じた。

 

これで決着のつもりか、大技を出してくるのだろう・・・。

 

 

「いけません!真木さん、逃げてください!相手は宝具を使うつもりです!いくら今の貴方でも・・・」

 

 

「分かっている。流石に受け止めようなんて考えていないよ。その代わり、ジャンヌは遠くにいてくれ」

 

 

「で、ですが・・・」

 

 

「なに、死ぬつもりは全くないからな!安心して見ててくれ!」

 

 

ジャンヌにグッとサムズアップした後、マルタに向き直る。

 

 

「覚悟は決まったの?」

 

 

「ああ、いつでも・・・来い!」

 

 

両足に力を込めて、体勢を整える。いつでも、動けるように。

 

 

「愛を知らない哀しき竜……ここに」

 

 

マルタが祈るかのように手を組み、目を閉じていた。

だが、上に飛んでいたタラスクがギュオオオオオと音を立てながら回転していた。

 

心臓が早くなる。身体が熱くなるように血が滾った。

 

不思議と怖くは無い。それは・・・アレよりもまだマシな攻撃が来るだろうと予想できていたからだろう。

 

 

「星のように!『愛知らぬ哀しき竜よ(タラスク)』!」

 

 

「うおおおおおお!!!!!」

 

 

回転していたタラスクが流れ星のように俺に向かって落ちてきた。

 

そして同じタイミングで俺はマルタに向かって走り出していた。

 

最初の位置から動いていてもタラスクが軌道を修正しながら向かってくる。

 

まだだ。まだだ。

 

 

「真木さんっ!!」

 

悲鳴に近いジャンヌの声が聞こえた。だが振り向くな。動じるな。

 

まだだ。まだ堪えるんだ。

 

あと少し・・・。あと少し。

 

 

もうタラスクは走っている俺の正面から落ちてきていた。距離はもう1メートルになるだろう。

 

だが、これが俺の狙いだった。

 

 

「・・・でああああああああああっ!!!!」

 

 

両足で思い切り跳んだ。

 

ギリギリまで我慢した。我慢せず、直ぐに避けていたら直撃していただろう。

 

だが、当たるか当たらないか、あの訓練で死ぬかと思ったぐらいの経験が今活躍した。

 

タラスクは至近距離で避けた俺を追従できずにそのまま地面に激突する。

 

 

「そんなっ!?タラスクを避けた!?」

 

 

驚きを隠せないマルタが見えた。月の光でその表情がはっきりと見れた。

 

 

何メートル高く跳んだかは分からない。

 

だが、身体が勝手に動く。

 

自然とあの技をするかのように。

 

ーーー俺の思いは、敵であった者でも手を取り合いたい。

 

身体がクルリと一回転した。

 

まるで沁み込んでいるみたいに。

 

 

ーーーこの技、もう怪人達を倒すため、殺すためではない。

 

 

熱くなっていた右足を真っ直ぐ伸ばした。

 

そう、憶えているみたいに。

 

ーーーアマダム。俺の思いに応えてくれ。あの人の、邪悪なモノを取り除くために!

 

霊石が輝いたように見えた。

 

まるで、応えてくれたかのように。

 

 

「うおおりゃああああああああああああああ!!!!!」

 

 

「くっ・・・宝具使った直後で・・・!!」

 

 

ドゴンッ!!!!

 

 

「ぐっ・・・かはっ!?」

 

 

キックがマルタの胸に当たった直後、俺は離れた所に着地し、マルタは大きく後方に吹き飛んでいた。

 

「ギャオオオオオ!!!」

 

大木に直撃寸前の所をタラスクがマルタを受け止める。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

マイティフォームの技、マイティキックを使ったのか身体に大きな疲労感が来た。

 

動けないほどではないが、それでも体力がゴッソリ無くなった感覚だ。

 

「真木さん・・・!」

 

 

「おお・・・ジャンヌ・・・どうだ?訓練、生かせただろ?」

 

 

「・・・もう、無茶しすぎですよ・・・」

 

 

「ははは、すまん。だが、こうするしかなかったんだよ」

 

「・・・マルタは」

 

 

駆け寄ったジャンヌは旗を構えて吹っ飛んだマルタの方を見る。

 

 

土煙が晴れてユラリと立つマルタの姿が其処にあった。

 

 

 

「・・・まだっ!!」

 

 

「待つんだジャンヌ・・・もういい」

 

 

前に出ようとするジャンヌを止める。もう、戦う必要は無いのだから。

 

 

「ぐっ・・・あぁ・・・」

 

 

ゆっくりと歩くマルタ。だが、その胸には、クウガのキックの後にある古代文字が光っていた。

 

 

「あぐ・・・これ・・・は・・・」

 

激痛なのか身を屈めるマルタ。そして益々光を増す古代文字。

 

 

「真木さん・・・あれは一体?」

 

 

「大丈夫・・・」

 

あれはもう、怪人を殺すための力ではない。

 

 

「ああぁ・・・・アアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

古代文字が一際強い光を出した途端、マルタがのけぞり、背中から黒い靄みたいなのが出た。

 

それはマルタから完全に離れるとパンッと爆ぜるように消えた。

 

 

俺はゆっくりとマルタに近づく。止めようとするジャンヌの声がするが、それでも向かう。

 

 

グルルルと警戒するタラスクだが、膝を着いていたマルタが片手を挙げる。

 

 

「・・・何とか、上手くいったみたいだな・・・」

 

 

「上手くいったか・・・どうかなんて・・・貴方は何をしたの?」

 

 

「いや・・・只単に、アンタを縛り付ける悪いのを消しただけだ」

 

 

「・・・?何を言って・・・っ!?」

 

 

マルタは何か気付いたのだろう。手を胸に当て、少し目を閉じた後、ゆっくりとため息を吐いた。

 

 

「・・・貴方、狂化を解いたの・・・?ありえない・・・何でこんな事が」

 

 

「霊石が応えてくれただけだ。俺の思いにな」

 

 

あの時願ったのだ。それがどう作用したのか分からないが、アマダムが封印エネルギー等を今までの事とは違う風に纏めてくれたのだろう。

 

 

それしか浮かばない。

 

 

「思いって・・・アイタタ・・・それでもキック自体は強力すぎるんだけど・・・」

 

 

「それは・・・すまん」

 

 

「全く・・・ホントに、面白い人ね。まさか本当に覚悟を実行するなんて・・・」

 

 

クスクスと笑ってイタタ・・・と痛みに耐えるマルタ。

 

俺は、彼女に提案を持ちかけるために、変身を解除した。

 

タラスクの方も変身を解いた俺を見て警戒は少しだけ減ったようだ。

 

 

「なあ・・・マルタ。アンタ・・・これからどうするつもりだ?」

 

 

「と、唐突ね・・・でも、私を倒さないの?私、貴方達の敵だったのに」

 

 

「倒さない。なぜなら・・・アンタ、誰一人として殺してないだろう」

 

 

「っ!なんでそれを・・・」

 

 

「アンタからは血の臭いが全くしなかったからな」

 

 

「だ、だからって・・・私がワイバーン達に命令して直接手を下していなかったとしても・・・」

 

 

「いいや、アンタからはそれらの臭いが全くしてなかった。多分本拠地とかで俺達が来るまで城の警護だったろ?」

 

 

「・・・」

 

驚いているのか目を見開いているマルタ。

 

 

実は臭い以外の考えはジャンヌが考えたんだがな!

 

 

臭いは実際していなかった。そこから皆で敵の情報を整理している時に推理したのだ。マシュさんだけ少しテンション上がっていたように見えたのは気のせいだろうか・・・。

 

 

そして、その推理は正しかったみたいだ。

 

 

「なあマルタ・・・近くに村があるんだ。そこで休んで、ついでにその村の警護を頼めないか?」

 

 

「・・・情けのつもりですか?」

 

 

「違うってば・・・。俺は極力倒したくないんだ。ただ手を取り合えるなら積極的にするだけだって」

 

 

「・・・貴方は、本当に底抜けの明るい方ですね・・・」

 

 

「そりゃどうも・・・あれ、ジャンヌ?」

 

 

「・・・はっ!?な、なんでしょうか真木さん!?」

 

 

「あー・・・余りの突拍子な提案で放心してたか?」

 

「い、いえ・・・その・・・なんでもないです!」

 

 

いつもと様子が違うのが気になったが、向こうで爆発の音が聞こえてきた。

 

 

「あそこは・・・藤丸さんたちか!」

 

 

「急ぎましょう・・・いくらオルタさんが駆けつけたとはいえ、やはり不安が・・・」

 

 

「そうだね・・・よし、変身!」

 

今度はグローイングフォームにならずに変身できた。

 

 

「すまんマルタ!後で来るから少しの間隠れていてくれ!答えは後で聞く!!」

 

 

「え・・・ちょ・・・」

 

 

ちょっとアレが出せるかどうか分からない。だけどより藤丸さん達の所に行くにはこれしかない!!!

 

 

右手をグッと力を込めて、サッと右に振る。

 

想像する。

 

 

彼と一緒に、素早く現地へたどり着くための最初の相棒。

 

それは子供の頃の俺に衝撃を与えた物。

 

 

 

「来い・・・」

 

 

それは、仮面ライダーならではの相棒であった。

 

 

 

「トライチェイサー!!!!」

 

 

霊石が眩い光を放つ。

 

同時に、右側から何かが形作られていく。

 

それは、紛れもない、トライチェイサー2000だった・・・。

 

 

「ま、真木さん・・・これは・・・」

 

 

「ば、バイク・・・?貴方・・・一体・・・」

 

 

「説明している暇はない!ジャンヌ、本来は一人用なんだけど後ろに乗って!ちょっと危ないけどな!」

 

 

「え、えぇ!?は、はい・・・」

 

 

何故か少し顔が赤いジャンヌが俺の後ろに座り、腰に手を回してしっかりと準備が出来たようだ。

 

バイク免許を持っているとはいえ、後ろに人を乗せるのは初めてだから慎重に行きたい所だが・・・

 

 

ドゴォォォン!!!

 

 

「そうも言っていられない!!行くぞジャンヌ!!!」

 

 

ブオォォォォォォォン!!!!

 

 

「は、はい!ってきゃあああああああ!!!!」

 

 

ジャンヌが悲鳴を揚げる中、フルスロットルで藤丸さん達に向かう。

 

 

間に合ってくれ・・・!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・あの子、本当に面白い子ね・・・。だけど・・・どうやって隠ればいいのかしら・・・?なんとか霊力ギリギリに抑えて霊体化していくしかないでしょうね・・・」

 

 

「姐さん、大丈夫ですかい?」

 

 

「何とかね・・・・さて、あの子達の戦闘が終わるまで、魔女さんから隠れましょう。」

 

 

「へい、ではあの森の中で・・・」

 

 

「ありがとうタラスク。・・・頑張りなさい、優しい英雄さん」

 

 

 

 




お疲れ様です。
話を書くのがすごく遅くなって申し訳ないです。
話はチマチマ書いていたのですが仕事繁忙期とか色々と…疲れてましたのです。
そしてFGOの方は既に新宿などの1.5部が始まりましたね。
まだクリアしていない方もいるかもしれないので詳しくは言えませんが、これだけは言っておきたいです。

邪ンヌ来たら、目一杯可愛がって下さい。


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第8話 聖女は夢を見て、そして出会う

今回詰め込みすぎたような気がします・・・。


ですが、これが一番書きたかった場面でもあります・・・。


許してください・・・・。

あとキャラ崩壊が最近酷いと感じてます・・・。特に小次郎が未だにキャラ掴めない。

EXTRAから初めてFate世界に入った作者にはちょっと厳しいです・・・。


☆ ☆ ☆ ☆

 

藤丸達の目の前には、バーサーク・セイバー、バーサーク・アサシンが立っていた。

 

エミヤは剣撃と狙撃を合わせた攻め手でセイバーと互角の勝負を繰り広げていた。

 

アサシンにはマリー、小次郎が、そして主を守るようにマシュが盾を構えている。

 

 

「くっ・・・!君は本当にアーチャーなのかい!?剣を扱う弓兵なんて・・・」

 

 

「悪いが、それはもう聞き飽きたんでなっ!!」

 

 

独特のコンビネーションで繰り出すエミヤの怒涛な攻めはセイバーを段々と追い詰める。

 

 

「ちっ・・・セイバー、何をタラタラとしているの?早く切り裂いて・・・!?」

 

 

「余所見は・・・いかんでござるよ!!」

 

鋭く急所を狙う小次郎。そして・・・。

 

 

「ライダー・・・・キィーーーーーック!!!!」

 

月を背に、空高く跳んだ王女は敵に向かってキックするが、後少しのところで避けられてしまう。

 

 

「っ!? 何なのソレは・・・あの戦士の真似?」

 

「あら、悪い?だって真木の技ってかっこよくて・・・ついやっちゃった!」

 

 

「つい、で実行するとは・・・この女王様はすごいアグレッシブでござるなぁ~」

 

 

マリーの蹴りは当たらなかったが、敵を藤丸からさらに遠ざける事が出来た。

 

そして、それを見ていた藤丸は叫んだ。

 

 

「オルタさん!今です!!」

 

 

突如、膨大な魔力がその場を威圧する。

 

それは、伝説の剣の一振り。

 

その剣は黒く染まったとしても、その力は揺るがない。

 

それは全てを圧倒させる、奔流である。

 

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!!」

 

 

 

黒い光が敵目掛けて放たれた。

 

エミヤ達はすぐさま場所から退避していく。

 

 

 

「・・・凄い、まるであの時のようです」

 

 

マシュがぽそりと呟く。反転の極光が通った場所には、木々は残らず地面が深く抉れていた。

 

オルタとは特異点冬木で最期の戦いでぶつかり合った。

 

藤丸とマシュは真木に召喚されたとはいえ、あの黒王が現れたのだ。

 

二人は一瞬悪寒が走ったように感じたが、あの時は違う。彼女は味方なのだと。

 

強大な力を持った敵だった人が味方になった。

 

それだけで、どんなに心強いものなのか。

 

 

「今のを避けるか」

 

 

しかし、二人は生きていた。

 

身体は先ほどのエミヤ達の細かい傷だけであり、オルタの攻撃を完全に躱していた。

だがその表情には焦りの表情だ。いくら狂化されているとはいえ、奇襲は失敗の形になっており、尚且つあのオルタの攻撃が加わると考えているのだろう。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・危なかった」

 

 

「セイバー・・・私は撤退するわ。これ以上は無意味よ」

 

 

「くっ・・・次は必ず・・・」

 

 

「おい、待てそこの二人」

 

 

引こうとするアサシンとセイバーにオルタはなんと話しかけた。

 

 

その表情は、少し笑っていた。

 

 

「お前達は分断して襲おうという計画だったようだが、それは崩れ去った」

 

 

「・・・それがどうしたと言うの?次は絶対に」

 

 

「そして・・・改めて紹介しておこう。そこにいるのは藤丸立香とその愉快な仲間達だ」

 

 

「その表現はやめないかセイバー・・・」

 

 

「あら良いじゃない♪私は楽しいわよ?」

 

「はっはっは、見事に省略化されたでござるなぁ。世知辛い世の中よのう・・・」

 

頭が痛むのか額に手を当てるエミヤ、そんなエミヤに対して心底愉快そうに笑うマリーと小次郎。

 

 

「そしてこの私、セイバー・オルタと名乗っておこう」

 

 

「だから、一体何のつもりなの!?」

 

苛立つようにアサシンは目を光らせる。それは威圧しているのだろうが、受け流すようにオルタは話し続ける。

 

 

「そして・・・私のマスターとなるのが、真木進一だ。首領に伝えておくと良い。奴はどうもそっちの黒い聖女様が気になっているようでな」

 

「気になる・・・?敵としてではないのか?」

 

「いや、奴の場合は違う。だがそれは私の口から伝えては面白くない。故に、それだけを伝えておけ」

 

 

藤丸達もアサシン達もどういう意味なのか分からず戸惑っている表情だった。

 

だが黒い騎士王は、まるで楽しむように微笑を浮かべていた。

 

 

そして、あの音が聞こえてくる。

 

 

 

「ふん・・・ようやく来たか。後で鍛えてやろう・・・。さて、本人が来たみたいでな。改めて教えてやる」

 

 

「まさか・・・時間稼ぎ!?」

 

「セイバー、急いで撤退するわよ・・・!?」

 

 

その場を音楽が満たしていく。それはロマン達のいるカルデアに届いた曲だ。

 

 

 

 

だが、藤丸達は初めて聞いた。(・・・・・・)

 

 

それは、心が高鳴る曲だ。

 

それは、身体が熱くなる音楽だ。

 

それは、何かが現れる期待感に満ちた。

 

 

「紹介する、コイツが・・・真木進一だ」

 

 

ブオォォォン!!!!!

 

 

エンジン音を轟かせ、オルタの背後から高く跳んでソレはアサシン達に突っ込んでいく。

 

 

二人は寸での所で避けた。だが、唸りを上げるソレは急ターンをしてまた突っ込んでいく。

 

 

今度もまた避けようとする二人だが、ソレは一瞬止まったと見せかけ、後輪を浮かせて二人に当てようとする。

 

 

予想外の攻撃に避けきれず吹き飛ぶ二人。大ダメージとまではいかなかったが、傷を負わせた。

 

 

月明かりがソレを照らす。銀色と赤、金、黒、そして蒼い瞳を持つ鉄の馬、バイクである。

 

それに乗っているのは、月光に照らされ鮮やかに輝く炎のような赤の鎧と瞳、そして黄金の角を持つ、赤の戦士。

 

 

そしてもう一人、黄金のような色をした長い三つ編みの髪が風で揺れて、そしてその姿からまるで聖なる雰囲気を持つ・・・。

 

 

「きゅぅぅぅ・・・・」

 

 

目を回したのか気絶している聖女だった。

 

 

 

「・・・締まらんではないか!」

 

 

思わずオルタが突っ込みを入れる。折角かっこよく登場させようと気を使ってやったというのにこれでは締まらない。

 

 

「ま、まあまあオルタさん、そんなに怒らないでください。俺の運転が荒かったのもあるかもですし・・・」

 

 

「それとこれとの話は別だ。今のは格好良く登場して決める場面だろうが!それなのになんだこの聖女は!!!」

 

 

ちょいとキレ気味なのか気絶しているジャンヌの頬を引っ張るオルタ。それでも起きないジャンヌはある意味凄い。

 

 

「く・・・覚えておきなさい。今度は全力で地獄におとしてみせるわ」

 

 

「マリー・・・」

 

 

そんな状況を見て好機だと思ったのか、その場から一瞬でいなくなるアサシンとセイバー。

 

 

とりあえず、何とか危機を乗り越えた藤丸とマシュは現れた英雄(ヒーロー)に駆け寄るのだった・・・。

 

 

 

□ □ □ □

 

 

 

「そして、敵ライダー・・・聖女マルタを無力化してきて、こちらに向かってきたのですか・・・」

 

 

「まあ、そういう事だね。本当はこの後合流するつもりだったけど、彼女も傷を癒すまでどこかに隠れるみたいだし、大丈夫だよ」

 

 

マシュさんと藤丸さんに説明しながら焚火を囲んで話す。

 

 

オルタさんは先ほどの怒りがまだ収まっていないのか、エミヤさんが調理したワイバーン肉をもきゅもきゅ食べまくっている。

 

最早何頭分なのか分からないぐらい食べていて、さっきからエミヤさんが鬼のような表情でカルデアから支給された調味料を使って調理している。

 

 

小次郎さんは木の上で優雅に月を見ながら酒を飲んでおり、マリーは楽しそうにエミヤさんとオルタさんの様子を見ていた。

 

 

ジャンヌはあれから目を覚まさず起きていない。ロマンさんからによると霊基は安定しているから問題は無いらしい。

 

 

彼女を木を背に預けて寝かせてはいたのだが、適当に隣に座ったせいなのか彼女の頭が肩に持たれ俺は動けない状態だった。

 

 

「ただ・・・これからどうすれば良いのでしょうか、先輩・・・」

 

 

「う~ん・・・取り敢えず、明日の朝になってから状況を整理しよう。今日は色んな事が起こりすぎたからね」

 

 

「俺もそれに賛成するよ藤丸さん。未だにジャンヌが起きてくれないからどうしようもないからな・・・」

 

 

「あはは・・・そういえば、俺の事は藤丸、若しくは立香でいいよ」

 

 

「そ、そうか?じゃあ俺の事も真木か進一で呼んでくれ、立香」

 

 

「ありがとう真木」

 

 

俺と立香は固く右手で握手する。あれからまだ出会ったばかりに近い俺に対してこんなにフレンドリーにしてくれるのはきっと立香くらいだろう。俺もなぜか自然と心を許してしまう。それが彼の魅力なんだろう。

 

 

 

それからしばらく俺達は楽しく会話していた。特に特撮の事について。

 

彼も男の性なのかこちらの世界に無い特撮、その中でも仮面ライダーやウルトラマン、戦隊にまで興味を持ってくれた。

 

彼もクウガの姿を見たときは自然とワクワクとかが湧いてきたらしい。

 

 

だが、やはり疑問が出てくるのもあった。なぜ俺がマルタさんと戦っているときに流れたクウガのオープニングが、俺の様子を見ていたカルデアには届いて、なぜ立香の所には聞こえていなかったのか。

 

それについてはロマンさんやダヴィンチちゃんも調べたりしてくれるみたいだ。

 

 

俺も少し考えていたのだが、少しずつ視界が狭くなり、遂には起きていられなかった。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

 

私は真木さんとバイクという物に乗った所までしか覚えていません。

 

気がついたら暗い空間にいました。その場所は何もなく、歩いても先が全く見えませんでした。

 

 

しかし、座ってからどれくらい経ったのでしょうか。

 

 

 

パチパチと、何かが燃えるような音がしました。

 

もしや、私が火炙りにされた時の・・・と思って目を開いたら、全く違う光景が広がっていました。

 

 

それは、街が全て燃えていました。木々も灰になり、人々の姿も燃やし尽くされたような跡が彼方此方にありました。

 

 

そこは正に地獄の様な光景。生命が感じられない場所になっていました。

 

 

私は走り、僅かな望みでも誰かが生きているかもしれない・・・、そう思って探していました。

 

 

それからどれくらい走った事でしょうか。

 

未だに生存している人は分からず途方に暮れていたら、何故か、自然と足がある方向に向かっていました。

 

 

この街の地形なんて分からない。だけど、そこに向かえば誰かがいる。

 

そう、直感に等しい感覚で動いていました。

 

そして、生きている人がいました。

 

ですが、その背中は、見た事がありました。あの強い意志を持つ、大きく見える背中を。私は見た事がある。

 

 

「・・・・・・諦めない、絶対に!」

 

 

その人は身体の至る所に傷があり、血を流しながらも力強く立っていました。

 

 

私は少しずつその人に近づきます。まるで確かめるように手を伸ばしていました。

 

 

 

 

 

「ならば、諦めるまで叩き潰してやろう」

 

 

 

 

 

 

ゾン・・・と貫く音と共に、彼が鋭い何かに貫かれていました。

 

 

「真木さん!!!!!」

 

 

私は思わず叫び、走りました。ですが、距離は一向に縮まらず急速に離れていきました。

 

 

「真木さん!!真木さん!!!」

 

何度も叫んでも、走っても近づけませんでした。そして、今まで見ていた光景も共に離れていきます。

 

 

 

 

 

 

「この世界も、私の計画に組み込んでやろう・・・はは、ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

男の声を最期に、また私は暗い空間に取り残されました。

 

 

 

 

 

 

あれからどれくらい経ったのかもう分かりません。

 

最期のあの光景が頭に焼き付いたように離れません。

 

 

まさか、あの人が。でもなぜ。

 

 

なぜ、あの人は、真木さんは生きているのでしょうか?

 

 

 

 

そんな疑問と共に、またパチパチと燃える音が聞こえてきました。

 

 

周りを見ても暗闇だけでした。ですが音だけが聞こえてきます。

 

 

私は深呼吸をして一旦目を閉じて、ゆっくりと開きます。

 

 

 

それは、また燃えるような光景でした。

 

 

だけど、まだ生命があると感じられました。道には何かから逃げ惑う人たち。

 

そして大きな機械、戦車でしょうか・・・。それらが空に向けて轟音を立てて攻撃していました。

 

 

空は夜でした。ですが、何かが。大きな鳥が飛んでいるように見えました。

 

 

それは急降下で地面に向かっていきます。

 

 

その先は・・・。

 

 

「そ、そんな!?」

 

 

其処にはまだ逃げ惑っていた人たちがいました。

 

 

そしてソレは・・・。

 

 

グシャリ。グシャリと。 人を食べていきました。

 

 

 

 

すぐさま戦車が地面に降り立った鳥のようなソレに対して攻撃していました。

 

ですが、ソレはまるでイラつくように戦車の方を向きます。

 

何か悪寒が走りました。途轍もない、嫌な予感が。

 

 

 

「ギャアオオオォォォォォォ!!!!!!」

 

 

ソレは口から何か黄色に見えるビームを出すと、戦車が何かに切られたようにズルリと動いた後爆発しました。

 

 

 

(これは・・・一体!?)

 

 

銃を持った人々も抵抗しようと試みますが、先ほどのビームに切られてゆきます。

 

人々の攻撃が殆ど効かず、虐殺に近い状況でした。

 

ソレは愉快そうに一声鳴くとまた空に飛ぼうとしました。

 

 

 

「うぇ・・・・うえぇぇぇぇん!!!」

 

 

何処かで、子供の泣き声が聞こえてきました。

 

 

(子供・・・いけない!!!!)

 

 

ソレも気づいたのかキョロキョロと辺りを見回しています。

 

奴よりも早く声がした方向に走りました。

 

 

絶対に見つけて助けなければ!!!

 

 

声の方向に向かうと足を怪我したのか、男の子が泣いていました。

 

周りには人が避難し終えたのか、それとも奴に殺されたのか、誰もいませんでした。

 

 

「おかぁさん・・・おとうさぁん・・・痛いよぉ・・・」

 

 

「良かった・・・今すぐ私と行きましょう。さあ背中に乗って!」

 

 

「うぅ・・・おねぇちゃん・・・」

 

 

その子は泣きながらも聞いてくれたのか素直に抱っこさせてくれました。

 

 

「よし、では逃げま・・・」

 

 

バサリ、バサリと。

 

 

ソレは私の目の前に下りてきました。

 

ゆっくりと、ソレは歩いて近づいていきます。

 

すぐに私は逃げようと走りました。私が時間を稼げても、この子の安全が確保できない。まして、奴の狙いはこの子供だと分かっているのですから。

 

 

 

「ギャオオオオオオオ!!!!」

 

 

バサリと羽ばたく音が聞こえて振り向くと、奴がニヤリと嗤ったように見えました。

 

 

そのまま低く滑空して、大きく口を開けて向かってきます。

 

 

 

「こわい・・・こわいよぉ!!!!」

 

 

子供がガタガタと身体を震わせていました。

 

私も全力で走っていましたが、どんどん距離は縮まっていきます。

 

 

 

「ギャアオォォォォォォ!!!!」

 

 

(もう・・・・駄目!!!)

 

 

奴の口がもう私達を飲み込もうとしていました。私は、子供を守れずに死ぬのかと・・・。

 

諦めようとした時でした。

 

 

 

 

 

 

ズン!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあ!!!」

 

 

「うわぁ!!」

 

 

突然起きた地響きと風圧で私達は吹き飛ばされます。

 

 

辺りが一層暗くなり子供を見つけてすぐに駆け寄り、大丈夫かどうか確かめます。

 

「大丈夫ですか!?怪我は・・・」

 

 

「あ・・・あ・・・」

 

 

子供が指差す方向・・・奴のいる方向を見ます。

 

 

そこには、何かに踏み潰されている無残な死体でした。

 

 

「これ・・・・・・は・・・!?」

 

 

ズダン!!という音と共に私達の隣で何かが振り下ろされました。

 

 

それは、とても大きな尻尾のようでした。

 

ガコンガコンと音を立てる方を見ると、まるで山のような岩が動いていました。

 

 

そして、それは大きな亀みたいな生き物だと気付くのに一瞬遅れました。

 

 

「あ・・・・貴方・・・は?」

 

 

 

自然と問いかける言葉が出ていました。通じるかどうかも定かでは無かったのに。

 

 

 

ですが、彼はゆっくりと振り向いてくれました。

 

 

その身体は彼方此方に傷があり、緑色の血が流れており、片腕は千切れているのか、酷い傷でした。

 

甲羅辺りにもかなりの流血が見られており、満身創痍な状態だと思っていました。

 

ですが、その緑色の瞳は強く光っているように見えました。まるで、最期まで戦う戦士のように。

 

 

「ガメラ・・・」

 

 

「え?」

 

 

「ガメラだよ・・・ガメラが、助けてくれた!」

 

先ほどまで泣いて、絶望に染まっていた子供の顔が・・・希望に満ちた笑顔になっていました。

 

 

「ガメラ・・・貴方は・・・」

 

 

「ギャオオオオオ!!!!」

 

 

奴の鳴き声が後ろから聞こえてハッと振り向くと、こちらに向かってきていました。

 

 

思わず旗を構えますが、彼が大きく息を吸い込み始めます。

 

 

地面に深く突き立てて子供を抱きかかえるように必死に踏ん張ります。

 

 

そしてどんどん奴が近づいてきて、彼がズンと響くほど脚に力を込めるのが分かりました。

 

 

奴の距離がもうすぐ近くにまできて・・・・。

 

 

 

彼が火の玉を3連続で口から発射します。

 

 

「ギャアァァァァァァァ・・・・!!!!」

 

 

1発、2発当たり、そして3発目で奴は不快な断末魔を残し、爆散しました。

 

 

圧倒的な威力を目の当たりにして、私は絶句していました。

 

 

そんな私を、彼は見つめているように感じました。

 

 

「貴方は・・・その身体で・・・戦うのですか?」

 

 

私は満身創痍な身体でまだ奴と戦う彼に問いかけます。

 

 

彼は一体、何を守るために戦っているのか。どうしてそこまで戦おうとするのか・・・。

 

 

彼は、しばらく私を見ていましたが、私に背を向けてゆっくりと歩き始めました。

 

 

その先は、その先の空には数え切れないほどの奴が飛んでいました。

 

ですが、彼は怖気づくことなく、歩いていきます。

 

 

 

また、周りの光景と共に彼との距離が離れていきます。

 

 

「待って、待ってください!!!」

 

 

走り出そうとした瞬間、彼は振り向いてくれました。そして。

 

 

 

「グルアアアアアオオオォォォォォォォォン!!!!!!!!!!」

 

 

 

その声は、私の奥深くまで響いたように感じて、そして耳からずっと消えませんでした。

 

 

彼・・・ガメラは、絶望だったとしてもそれでも立ち向かう・・・。

 

 

 

そんな強さに、どこか・・・。

 

真木さんとどこか似ているような気がします。

 

 

 

 

 

 




いつの間にかCCCコラボ今日からだとかもう貯金やばいですよ・・・・。

早いよ・・・そしてメルトが星5って邪ンヌの時みたいに心が死にそう・・・。


そしてウルトラマンジードとか・・・楽しみすぎて貯まりませんよぉ!!!!



あ、髑髏島の巨神3回見ましたけど、いや~本当に楽しかったですよ!

久々の怪獣バトルで凄い面白かったです。まだ見てない方は是非見たほうが良いと思います。


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第9話 過去と兆し

ああ・・・なんだこれは・・・。

 

 

なんで、俺の手は血で塗れてるんだ。

 

 

なんで、俺は誰かに必死に呼び掛けているんだ。

 

 

目の前に倒れている人達は誰だ・・・。

 

 

『いや、知っているはずだ。お前は』

 

 

なんで、俺は泣いているんだ。どうして・・・。

 

 

『それは、お前が出来なかったからだ』

 

 

なんで、この人達は死んでいるんだ。

 

 

『それは、お前が無力だったからだ』

 

 

駄目だ、死なないで。いつもみたいに。笑ってよ。

 

 

『無理だ、死んでいるのだからな』

 

 

ねえ、なんで・・・。おれ・・・ぼくがわるいの?

 

 

『そうだ、お前が悪いのだ』

 

 

ぼくが・・・わがままいったから?ぼくが、ショーをみたいっていったから?

 

 

『そうだ、お前の我侭で、死んだのだ』

 

 

ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・。もう、わがままいわないから・・・おきてよ・・・。

 

 

『もう遅い・・・。死んだのだ』

 

 

おとうさん・・・おかあさん・・・。

 

 

『分かっているはずだ・・・』

 

 

おきて・・・。まだみてないのがいっぱいあるんだよ?いっしょにみようよってやくそくした・・・。

 

 

 

『お前のせいで・・・』

 

 

 

ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・。

 

 

 

『お前の身勝手で・・・』

 

 

ごめんなさい・・・!ごめんなさい・・・!!

 

 

『お前が無力で・・・』

 

 

 

ごめんなさいごめんなさい・・・・!!!!

 

 

『お前が、殺したのだ!!』

 

 

おかあさん!!!おとうさん!!!!

 

 

 

『お前が・・・お前が・・・親を殺したんだ!!!』

 

 

一人に・・・しないで・・・。

 

 

『お前が・・・弱いからだ!!!!』

 

 

 

 

一人はいやだ・・・。暗いよ・・・怖いよ・・・・。なにも・・・みえないよ・・・。

 

 

『そうだ!お前は弱い!!!弱いのだ!!!だが、お前を強くしてやる・・・』

 

 

誰なの・・・?誰かいるの・・・?

 

 

『そうだ・・・私はお前の目の前にいる・・・さあ』

 

 

 

誰なの・・・。ぼくは強く・・・なれるの?

 

 

 

『ああ、強くなれる。さあ、こっちへ来い・・・。さあ・・・』

 

 

 

強く・・・強く・・・。

 

 

 

『さあ・・・お前の・・・』

 

 

 

強く・・・。強く・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

[そこまでだ]

 

 

 

『っ!??貴様ぁ・・・』

 

 

 

眩しい・・・。あ・・・あれは・・・光?大きな・・・手?

 

 

 

[君は、まだ灯りを持っている筈だ。照らすのだ。君の道を]

 

 

 

灯り・・・?

 

 

さっきから何だか、胸が熱い。見てみると、何か紅く輝いている。

 

 

 

[君の灯りは、その思いは消えない光だ。さあ、進むんだ]

 

 

 

周りが明るい真っ白な空間になっていく。

 

 

そうだ、ぼくは・・・俺は。

 

 

 

『ふん・・・まあいい。いずれこっちの方にまで成るさ。それまでは、少しの幸福を味わうがいい・・・』

 

 

暗闇が去っていく。

 

さらに周りが眩しい光に包まれているようだ。

 

 

 

[さあ、真木・・・皆が待っているぞ・・・]

 

 

皆・・・そうだ・・・。

 

俺には、仲間が待っているんだ・・・。

 

 

大事な、大事な仲間達が・・・。

 

また、一段と視界が眩しくなる。

 

ああ、これは・・・夢から醒めそうだ・・・。

 

 

 

 

 

{アァ・・・}

 

 

 

 

突然、背筋が凍るような、唸りが背後から聞こえた。

 

悪寒が止まらない。汗が吹き出してくる。

 

 

 

そして、俺は振り返った。振り返ってしまった。

 

 

 

 

 

 

そこに居たのは・・・黒だ。全てが黒だった・・・。

 

 

 

 

{アァ・・・}

 

 

 

何かが、唸っている。聞くだけで身体が凍るかと思うほど恐ろしい。

 

 

 

 

 

 

[不味い・・・真木!!それには関わってはいけない!!!]

 

黒に向けて大きな手が突き出されたと同時に、強い光が放たれる。

 

その黒は少しずつではあるが、引き下がっている。

 

 

ああ・・・でも、俺はとても知っている気がする。

 

 

 

[アァ・・・・・・]

 

 

 

俺は、知っている。

 

 

 

[アァ・・・・・・い・・・・・・]

 

 

 

俺は・・・これを・・・・。

 

 

その目を、知っている。

 

 

「・・・木さん・・・・・真木さん!!!」

 

 

 

 

 

何処かで、とても聞き覚えのある声が聞こえる・・・。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「・・・ごほっ!!がはぁ・・・!!!はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

 

「真木さん・・・!大丈夫ですか!?私が誰か分かりますか!?」

 

 

「あぁ・・・ジャンヌだ・・・ごほっ・・・ごほっ・・・あぁ、死ぬかと思った・・・」

 

 

 

「真木さん・・・何か凄く呻いてましたから、みんな心配していたんですよ」

 

 

 

そう言われて周りを見ると、立香達が心配そうに(オルタさんは相変わらずの無表情だが)俺を見ていた。

 

 

『本当に・・・こちらでも色々心配したんだよ?心拍数とか脈拍とか、その他諸々急激に悪化したと思ったら、気付いたと思ったら元に戻ってたり・・・よく分からないよ』

 

 

ドクターからも本気で心配していたような声色で言われる。

 

そこまで酷かったのか・・・。

 

確かに夢・・・?まあ夢にしては現実味が溢れすぎてキツイんだがな・・・。

 

 

思い出すだけで嫌な光景を思い出す・・・。

 

あの血まみれの二人。あれは両親だと、思い出したんだ。(・・・・・・・)

 

 

だけど、なんで俺は大事な事を覚えていなかったんだ。

 

なぜだ。大事な両親のはずだ。なんで俺は覚えていなかったんだ。

 

 

 

「あの・・・真木さん?まだどこか・・・」

 

 

「ん?ああいや、大丈夫だジャンヌ。もう異常はない・・・んんん???」

 

 

立ち上がる瞬間、ジャンヌが持っている物に、俺は気付いた。

 

 

 

「じゃ、ジャンヌ・・・それは一体・・・どこで??」

 

 

「えっ、ああこれは・・・。起きたら、何故か持っていたんです。」

 

 

そう言って手の中にある物を見せて貰う。

 

 

 

その時、全身の血が沸騰するようにも思える衝撃が走った。

 

 

それは、何回も見た物だ。だけど、それが何故ここにあるんだ。

 

 

震える声で、自然と口に出ていた。

 

 

「赤い・・・勾玉だ・・・」

 

 

「はい、勾玉なのは間違いないんですが。手に持っていると、とても温かくなるんです」

 

 

「いや、ジャンヌ。俺も勾玉は知っている。だがこの勾玉は、普通の勾玉じゃない」

 

 

「そ、それはどういう・・・」

 

 

ガサリ・・・と草むらが音を立てた。

 

瞬時に全員体勢を構えたが、出てきたのは意外な人だった。

 

 

「はぁ・・・全く、迎えに行くとか言っていたのに、こんな所で寝ているだなんてね」

 

 

「ま、マルタさん・・・あっ」

 

 

「その顔・・・すっっっかり忘れていたようですね?」

 

 

 

なぜこの人は俺が考えた事が分かるんだ!?

 

 

 

「まあいいわ。これでチャラにしてあげる」

 

 

「あ、あの・・・これで、とは?」

 

 

「ん?そりゃもちろん・・・・」

 

 

 

ドゴォ!!!

 

 

顔、詳しく言うと頬に衝撃が来てから打撲音が聞こえてきた。

 

 

ああ、この人いつも殴ってくるんだな・・・・・・。

 

 

■ ■ ■ ■

 

 

「ふふふふ・・・これで・・・あと少し・・・・」

 

 

イラついてその辺の村を焼きに行こうとしたら、ジルが何かをしている所を見た。

 

 

「ジル・・・?なにをしているのです?」

 

 

「おお・・・ジャンヌ!!相変わらずお美しい・・・」

 

「はいはいお世辞は良いから・・・って、ワイバーン?」

 

見ると陣の中に縛り付けられたワイバーンが居ました。ワイバーンは一切動こうとしていない。

 

 

「そうなのです!!ワイバーンに更なる改良を施して、この国を滅ぼせるようにと考えまして!!!」

 

「ふーん・・・それって魔竜にもやっていた奴ですか?」

 

「ええそうです。魔竜と同じようにしようとしたら身体ごと爆裂していましたから・・・今回はワイバーン用に改良をしてみたのです・・・・」

 

「・・・まあ、これで効率が上がるのなら、徹底的にやっても構いません」

 

 

「おお・・・ありがたきお言葉・・・。このジル・ド・レェ、必ずや遂げてみせましょう!!!」

 

 

ワイバーンの緑だった体色がやや赤黒くなっていく。

他にも赤色や黒色のワイバーンはいますが、このようなワイバーンはいませんでした。

 

 

そう・・・。これなら、私が。

 

 

私が、本物のジャンヌ・ダルクだと、あの偽者に・・・思い知らせる事ができるのでしょう。

 

 




お久しぶりです。気がついたらここまで掛かりました・・・。

そして、8月から新規水着ですよ・・・。


爆死・・・するだろうなぁ・・・。


あと、今回からタイトル等を変更することにしました。

前までのタイトルは主人公のテーマでしたが、分かりやすく普通のタイトルにしようかなと・・・。

これからも宜しくお願いします。


もっとfateらしさと面白さが書けれたらなぁ・・・。辛い。


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