君に届け(仮) (風霧奏)
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1話





昔、と言っても10年20年ほど前じゃない。

 

 

2年前、

 

 

僕は、

 

 

魅せられた。昂った。名残惜しんだ。

 

 

『恋をした』のだろう。

 

 

母の勧めで大きなコンクールの各都道府県予選を見れるだけ、見に行くことになった。

 

 

 

 

東は千葉、西は長崎までの計17つのコンクールを観に行った。それも1ヶ月でだ。相当馬鹿だと思う。

 

 

 

だけど僕は、久しぶりの日本だったし、久しぶりの親子で行く旅行にとても心が揺らいでいた。どの演奏も素晴らしいと思う。彼ら彼女らの努力が伝わる演奏も多々あった。でも、何か物足りなく感じた。

 

例えるなら、ご飯を食べているけれど、満腹感がなく食べている実感が湧かなかった。

 

 

最後に来たのは、僕の生まれ故郷である京都府。実際ここにいた期間は保育園を卒業するまでだったため、あまり覚えていない。

 

 

「コンクールか、僕とは、もう縁のないものだな。」

 

 

この時には、僕はこの違和感の正体に気づき始めていたのかもしれない。

 

 

♪〜♪〜〜〜♪〜♪♪〜♪〜〜

 

 

この曲は?フルート?それにオーボエも?

 

これは僕が幼い頃に母に弾いてもらっていた。

お気に入りの曲だ。

 

音につられ僕は歩き出した。

 

どこか儚く壊れてしまいそうで、でもそれでいて強い想いが詰まった音色。

 

あぁ、好きだなぁ。この初心な音色が何処と無く、昔を思い出させてくれる。

 

幼馴染の二人は元気にしているだろうか?

二人はまだ、音楽に関わっているのだろうか?

 

 

「ちょっと!星詠!どこ行くの?!」

 

背後から母の声が聞こえて、振り返るとそこには息を切らした母がいた。

 

 

「急にいなくなったから心配したじゃない!」

 

相当心配したみたいだ。

 

「ごめんなさい。」

 

素直に僕が謝ると母はニコッと微笑み

 

「もうじきコンクール始まるわよ。行きましょ」

 

母は会場へと向かう。

 

僕はもう一度メロディが聞こえてきた方を向くが、もう聞こえることはなかった。

 

「行くわよ!星詠!」

 

母が僕を呼ぶ。

 

 

「今、行く!」

 

 

名残惜しい気持ちを抑え僕は母の後を追いかけた。

 

 

その後、僕はコンクールの会場へと行ったが、さっき聞いた。音が離れなくてすぐに会場を出た。母には申し訳ないが、この感情が僕の心を駆り立てる。

 

走る。走る。走る。僕を呼ぶあの声のもとに、僕をそうさせる感情に身をまかせる。

 

 

風を切る音、車が止まる音、鳥が羽ばたく音、人々の足音、声、全てが心地よいこんな気持ちのいいメロディは久し振りに聞いた。

 

 

あの頃のように、とても美しい、温かい、眩しい。

 

僕が見ていた世界が姿を変える。

 

世界が変わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違う。そうじゃない。

 

 

 

 

 

 

僕が変わったんだ。

僕が戻ったんだ。

 

 

 

 

 

家に着くと僕は自分の部屋に行くと、この8年間何一つ変わらない部屋がある。

 

机の上に僕の体の一部、僕の心の一部であるそいつは昔も今も変わらない姿で待っていてくれていた。

 

 

「ごめん。待たせたね。」

 

 

僕が持ち上げると僕の体に馴染んだ。

 

 

 

「もう二度と離さないから。」

 

 

と言うと、そいつは「二度と離すな」と言った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大学生になって色々始めて、初めてのことすぎてなかなか投稿できませんでした。けど、


また、始めていきます。

よろしくお願いします!


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2話

『20:50発、東京行きは7番搭乗口にて、搭乗受け付けを開始します。繰り返します‥‥‥』

 

 

星詠は目を見開いた

 

 

もうそんな時間か

 

 

「懐かしい夢を見たな。」

 

 

僕は椅子から立ち上がり背伸びをする。

 

 

何年ぶりだろうかあの夢を見るのは、最近は忙しくて見ることはなかった。以前はしょっちゅう見ていた気がする。

 

 

あの出来事からもう2年

 

僕の髪も身長は少し伸び、声も前よりも低くなった。

けれど、僕のそばにあるこいつはあの時と変わらない。

 

 

「あれからもう2年‥か。」

 

 

そうだ。もう2年も過ぎたのだ。

 

あれから色々あった。ここへ戻り、己の技術をもう一度磨き直し己をさらなる高みへと届くように練習を続けた。

 

 

その甲斐あってか皆に認められ、世界中から賞賛された。

 

 

あの時、母さん喜んでくれてたな。

 

 

 

 

あの時母さんと一緒にコンクール巡りをしなければ、京都府大会を見に行かなければ、あの音色を聴かなければ、今頃僕は何をしていただろう?

 

違う夢は見つけられなかっただろうな。

 

音楽から逃げていたのかな?

 

音楽を嫌ったのかな?

 

音楽を‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忘れていたままだったのかな‥?

 

 

 

 

 

けど、僕はあの音色に導かれた。

 

そしてこうしてまた、ここで音楽を続けられた。

 

 

『夜月星詠様、間も無く受け付けが終了してしまいますのでお早く。』

 

 

言われて僕は慌てて相棒が入った鞄を持って、飛行機に乗り込んだ。

 

案内役の人に言われるまで気づかなかったよ。危ない危ない。

 

 

僕はCAにチケットを見せ椅子に案内してもらった。二階にある8席しかないファーストクラスだ。これでも僕はお金持ちだ。エコノミーでもいいがせっかくファーストクラスが使えるし、それに何よりこいつをできるだけそばに置いておきたかったから。

 

 

席に着き、ウェルカムシャンパンを頂き一口飲む。日本では違法だけどフランスでは16歳から飲めるので、これは当たり前だ。まだあまりシャンパンの味にはなれないけれど、この匂いは少し癖があって好きだ。

 

しばらくシャンパンを楽しんでいると機体が動き出したので、もうすぐ離陸するのだろう。

 

 

僕は外の景色を見ながら、ここでの出来事を思い出す。一度は逃げ出した場所なのに今ではここを旅立つのはとても名残惜しい。悲しい。

 

 

そして離陸準備が整ったのか機体が停止した。

 

 

「フランスはとてもいい国だったな。また来たいな。」

 

 

機体が急激にスピードを上げ離陸する。これから10時間以上の空の旅だ。

 

 

 

「さよなら、第二の故郷

今いくよ。日本!」

 

 

僕の潤んだ瞳には、これから起こることに目を輝かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ダッタン人の踊りいいですよね!

二期目の展開とても気になりますー!!

ちなみに僕は実はフルートを吹いてました!


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3話

吹奏楽コンクール京都府大会が開かれた京都コンサートホールでは、

 

 

「はーい、こっち向いてー」

 

『いぇーい☆』

 

「滝先生」

 

「なんでこんなところいるんですか」

 

「賞状は誰か持って」

 

「私はいいよ」

 

「あすか先輩。頭もう少し下げてください。うわぁぁぁ」

 

季節外れに冬服を着た少年少女たち

京都府立北宇治高校吹奏楽部は全日本吹奏楽コンクール京都府大会で金賞を獲り、関西大会への出場が決まり誰もがその喜びを分かち合っていた。

 

 

そんな中一人の少女は、戸惑っていた。

 

『あの北宇治が金賞で関西大会なんて、悔しい。』

 

去年まであんなに腐っていた吹奏楽部が、たった一年で関西大会なんて‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私バカみたいじゃん。

 

 

 

 

 

少女はもう一度彼らを見つめその場を去った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

歓喜に満ちた雰囲気の中、松本美知恵は、自分のことのように涙していた。

彼女が北宇治に赴任して吹奏楽部の副顧問として初めての金賞初めての関西大会出場だ。これに感動できないほど彼女は軍曹先生と言われるほど冷酷ではない。

 

 

そんな彼女に電話がかかって着た。

 

 

彼女は涙を拭い電話に出るとその相手は高校時からの親友夜月奏だった。

 

 

『もしもし美知恵!北宇治優勝したんだね!おめでとう!』

 

相変わらず、情報を集めるのが早い。

 

「えぇ、ありがとう。でもこれは彼らにとってまだスタートラインに過ぎないわ。目標は全国大会だもの。」

 

 

『おぉー、いいねいいね!ロマンがある!私そういうの好きだよ!!』

 

 

うるさすぎるくらい元気なやつだ。

 

 

『そんな美知恵に良いこと教えてあげる。息子、今日フランスから帰国してくるの!!しかも!最高のお土産を持ってね!』

 

 

奏の息子は確か、音楽を勉強するために小学6年生の時からフランスへ行っているのは聞いていたが、最高のお土産とはどういうことか?奏が言うことだから相当凄いのだろう。

 

 

『あと!夏休みが終わって少ししたら息子を北宇治に通わせるから!よろしくね!それじゃぁね!』

 

 

「あっ!おい!切れてしまったか。」

 

 

どういうことだろうか?と考え出した時

 

 

「松本先生!集合写真撮りますよ!早く早く」

 

 

と女子生徒3人に手を引かれ輪の中に加わる。

 

 

今は、この喜びを分かち合おう。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「2年ぶりの日本だ。」

 

 

僕は関西国際空港に到着した。

 

 

検問所を抜けゲートをくぐるとそこには、

 

 

「おかえりー!星詠!」

 

 

母さんが笑顔で待っていた。

 

 

「うん。ただいま。」

 

 

僕は飛び込んでくる母さんを受け止め抱き締めた。

 

 

「ヨーロッパツアーお疲れ様でした。あなたは私の自慢の息子だよ。」

 

 

「ありがとう。」

 

これだけのために

 

 

僕の夢は母さんの夢だった。

 

母さんが果たせなかったことを成し遂げること。

 

それで母さんが喜んでくれるなら。

 

母さんが幸せになってくれるならと。

 

 

 

僕は母さんに恩返しができたのかな?

 

 

 

このために、僕はフランスで頑張ってきたのだから。

 

 




次回から原作キャラとの出会いに入ります。


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4話

懐かしい景色、初めて見る景色、そんな景色を車窓から眺めながら隣にいる母さんに

 

 

「もう身体は大丈夫なの?」

 

と運転席に座る母さんに聞く。

 

 

「もちろん!もうバッチリだよ!」

 

 

「そっか」

 

よかった。

 

 

「ふふっ、星詠が頑張って私の医療費を稼いでくれたんだもんね。」

 

 

「怒ってる?僕のこと嫌いになった?」

 

 

「まさか、全部私のためにしてくれたことでしょう?貯めたお金を使ってフランスに行って、演奏家としても指揮者としても成功して私の医療費を全額負担しちゃうんだもん。あなたは私の自慢の息子よ。それにそれを聞きたいのは私の方だよ。あなたには辛い思いをさせた。一緒にいることもできなかった。甘えることすら満足にさせてあげられなかった。こんなダメダメなお母さんは嫌い?」

 

その一言一言を口にするたびに母さんの目は潤んでいく、声がだんだん涙声になっていく。

 

 

「そんなことない!僕がこうして音楽と出会えたのは母さんのおかげだよ!母さんがあの曲をいつも聞かせてくれてなかったら僕は、今の僕はなかった!母さんがいたから今の僕があるんだ!」

 

 

「ありがとう星詠。私あなたのお母さんになれてよかった。」

 

 

「僕も、僕もお母さんの子どもになれてよかった。」

 

 

そしてお互い笑い合いながら家までの道のりを過ごした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

京都府立北宇治高校では、吹奏楽部員楽器を校舎内に運び入れていた。

 

 

そんな中、職員室では先生二人が話していた。

 

 

「伸びしろはあったと」

 

 

「まだまだ、課題だらけですけどね。」

 

 

「話が変わるのですが、滝先生は夜月というお名前をご存知ですか?」

 

知らないですね。

 

「夜月ですか?はて、私は知りませんがその子がどうかしたんですか?」

 

 

「そうですか。なら星詠というお名前はご存知ですか?」

 

 

 

 

 

星・詠

 

 

 

 

 

『お兄さんたちは、なんのために音楽をするの?夢だから?それとも‥』

 

 

 

頭を過る少年の言葉いつ会ってどこで会ったかもよく覚えてないはずなのに、言葉は覚えている。けれど、

 

 

「いえ、私はその名前も知りません」

 

 

「そうですか。「先生!」?どうしたお前たち?」

 

 

 

「相談があって」

 

 

 

 

あの違和感は一体、

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ここが北宇治高校か。」

 

 

その頃星詠は北宇治高校の正門の前にいた。

 

小高い山の上にある校舎は白くこの前まで通っていたフランス式の校舎とは違い、日本式の校舎だ。ここでまた改めて日本に帰ってきたんだと自覚する。

 

 

「それじゃあ、先に家に帰ってるからね。」

 

母さんの声で振り向き、頷く。

 

 

「相変わらず、探検するのが好きね。帰りは気いつけてね!」

 

 

「うん。また後で」

 

母さんが車を発進させ家へと向かった。

 

 

「そういえば、帰りはどうしよう?」

 

 

そこでふと自分が日本円を持っていないことを思い出す。携帯は解約したから持っていない。

 

 

 

「まぁ、なんとかなるかな?」

 

 

そう言って僕は校舎に歩み寄る。

 

 

すると、メロディが耳に入った。

 

 

「この曲は、確か、『学園天国』だったかな。」

 

 

個人的にはあまり好きな曲ではないけれど、

これを演奏している子たちの心からのエールは聞いていてとても気持ちのいいものだ。

 

しかし、さぞ、悔しかったであろうに。

 

 

けれど、そのエールにもそれ相応の悔しさ、悲しさ、もどかしさが伝わってくる。

 

 

僕も久しぶりに吹きたくなった。

 

 

僕は手荷物の漆黒のケースを開ける。そこには新品と見間違うほどに輝くフルートと表面にフランス語が彫られた白い指揮棒が顔を見せた。

 

 

僕はフルートを手に取り、

 

 

「そーだな。勝利を手にした彼らに相応しい曲は、アレかな。」

 

 

僕は構え、フルートに息を吹き込んだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

夏紀先輩と葉月ちゃんたちサポートメンバーの『学園天国』を聴き終えこれから解散という時にどこからかフルートの音色が聴こえた。

 

 

「あれ?誰だろう?」

 

みんなも気づいたのか。

周りを見ても誰一人としてフルートを吹いていない。

 

 

「これは、『凱旋行進曲』。それにこの音色はまさか!」

 

と滝先生が音楽室を急いで出て行った。

 

 

私たちもその後を追いかける。

 

 

階段を降り、入口を抜けるとそこには、

 

 

 

滝先生と一人の少年が向かい合っていた。

 

 

少年の手にはフルートが握られていた。

 

 

「松本先生の言っていた星詠とはあなたのことだったんですね。

 

 

 

La nuit étoilée 」

 

 

 

 

「その名前をこの国で聞くとは思いませんでした。その名前を知るのはまだまだ一握り程度の人たちだけです。

Bonjour Le frère aîné . Il a été si longtemps . 」

 

 

 



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5話

 

 

 

「皆さん初めまして、夜月星詠といいます。ここにいる滝先生とは、昔フランスで知りあった友人みたいなものですよ。」

 

 

 

北宇治高校の音楽室にて、皆の前でそう挨拶をする少年は長い髪をポニーテールに纏め、その中性的な顔を隠すように眼鏡をかけている。けれど、彼の纏う雰囲気は、なぜか惹きつけられる。惹きつけさせられる雰囲気だった。

 

 

「それにしても、良い演奏でしたよ?さっきの『学園天国』は、演奏者の想いがひしひしと伝わってきましたよ。」

 

 

葉月ちゃんや夏紀先輩達が照れる。

 

 

「さて、君がどうしているのかを教えてもらっていいかな?」

 

 

「そんなの夏休み明けから僕がここの生徒になるからだよ。今日はその下見だよ。」

 

オォォーと歓声が上がる。

 

 

「フランスから戻って来てまで、ここに来た理由は?」

 

 

 

「ある演奏者を探しているんだ。一人はフルート、もう一人はオーボエだ。僕は彼らに会って感謝を伝えたいんだ。今の僕があるのは彼らのおかげだからね。」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!お二人だけで話さないでください!」

 

 

晴香先輩が二人の間に入る。

 

 

「それもそうだね。それじゃ、何か質問がある人ーきょーしゅ!」

 

 

ここにいるほぼ全員が手をあげる。

 

 

「こんなに?!えーっと、それじゃぁ、トロンボーンを持ってる一年生の男の子!」

 

 

塚本が当てられ席を立つと

 

 

 

「さっきのフルートは夜月さんが吹いてたんですよね!」

 

 

 

「うん、そうだよ。僕の一番好きな楽器だからね。他には、クラリネット、オーボエなんかも得意だよ。」

 

 

夜月さんの返答に皆口々に「ヤバくない?!」「さっきの演奏綺麗だったよね」などとザワザワする。

 

 

 

「それじゃ、次は黒髪ロングのトランペットの子!」

 

 

麗奈が当てられ

 

 

「なぜ、フランスにいたんですか?」

 

 

 

「僕の場合は単純に音楽を学びたかったからかな?それだけだよ。」

 

 

そこから次々と質問に答えていく。

 

 

 

時の流れは早く楽しい時間はあっという間だった。気づけばもう18:00になっていた。

帰宅しなければいけない時間になり、私たちはそのまま解散となった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「お兄さんが本当に教師やってるよw」

 

 

 

吹奏楽部員が帰宅するのを見届けた星詠と滝先生、松本先生は職員室にいた。

 

 

「私は今、教師ですからね。生徒たちのためにこうして音楽を続けいるんですよ。」

 

星詠は笑いその顔を綻ばせるが

 

 

「それで、もう答えは見つかった??迷いはないのかい??」

 

 

鋭い一言を言うと夜の闇のように不気味な静けさを漂わせる

 

 

滝先生は一度は暗い顔を覗かせるが、

 

 

「ないとは言い切れません。けれど、あの時よりもはっきりとした理由が今の僕にはあります。」

 

 

数分間もしくは數十分だったかもしれない時間彼らは見つめ合った。

 

 

「そうか。ならもうここにいる意味はなくなったね。」

 

 

星詠は椅子から立ち上がった。

もう闇はそこにはなくキラキラと輝く星が一つあった。

 

 

「それじゃあね!滝先生っ☆」

 

 

彼はそう言って職員室を出て行った。

 

 

「夜月君とは以前に出会っていたのは正直驚きました。」

 

今までじっとしていた松本先生が口を開いた。

 

 

「彼との出会いがなければ、今の僕はなかったと言っても過言ではありません。」

 

一息つき、

 

 

「彼が入ったことで生徒たちに良い刺激が生まれれば嬉しいのですが、」

 

 

と言って滝先生はいつもは見せない悪人のような顔をした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ふーん、ふふふんー、ふーふーん

 

 

「ふふん、今日は楽しかったなー。」

 

 

どこに行くのか、どこに着くのか、知らない道、わからない道を歩きながらも心は踊っていた。

 

 

先ほどまでつけていた眼鏡も髪を縛っていた紐を解き髪がなびき、瞳の中に無数の輝きを秘めていた。手には白銀の指揮棒を持ちリズムよく振っていた。

 

その姿は夜そのものだった。

 

瞳には無数の星

 

髪は暗闇

 

白銀の月

 

なぞる線は流れ星

 

 

 

その姿は夜そのもの

 

 

 

「でも、一つ残念だったな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「心をうちに秘めたままの子があと数人いたな。」

 

 

 

 

 

 

 

彼はまた鼻唄を始める。

 

 

夜のマエストロは夜の闇に溶け込み姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




プロフィール


名前:夜月星詠(よつき ほしよみ)
誕生日:10月10日 天秤座
血液型:AB型
趣味:読書、映画鑑賞
特技:5ヶ国語を喋れること(日本語、英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語)
好きな食べ物:バゲット、パニーニ
嫌いな食べ物:ゴーヤ
得意教科:体育、英語、世界史
苦手教科:現代社会、古典
好きな動物:ネコ、狐
好きな曲:月の光、??????
得意な楽器:フルート、クラリネット、オーボエ、ピアノ
尊敬する人物:母親





遅くなりました!気づいたら30人の方々がお気に入りにしてくれてハッピーです!


3話はビックリでしたねー

この作品はオリジナルストーリーはちょっと入れると思います。まだ未定ですけど、


今後ともよろしくお願いします !


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6話

 

 

ここどこだ??

 

星詠は絶賛迷子であった。

 

 

「伏見に行くつもりが、なんで金閣寺の近くなんだろう?てか僕はどこに今いるんだろう??」

 

 

もう時刻は既に20:00。

お腹空いたなー。

 

 

そんなことを考えていると不意に風を感じた。僕は誰かに導かれているのだろうかと錯覚をした。なので、導かれるままに歩み始めた。

 

 

伏見稲荷神社に着いた。ここまで来れば家までの道はわかる。

 

 

♪〜♪〜♪〜♪♪♪〜♪

 

 

フルート?

 

 

僕は音がする方に行くとそこには少女がいた。黒い綺麗な髪を後ろでショートポニーテールにし、目を閉じながらフルートを吹いていた。

 

 

綺麗な子だなぁ。

 

 

僕は見惚れていたけど、音色が悲しそう。聞いていてこっちまで胸を締め付けられる。

 

 

「なんで、そんな悲しそうに吹くの」

 

 

居ても立っても居られなくなった。

 

 

振り返った彼女は、

 

彼女の瞳は潤んでいた。

 

頰には涙が道を引いていた。

 

 

涙を流しながら演奏していた。だから放って置けなくなった。

 

 

だってこの子は

 

 

僕にとって大切な女の子だったのだから

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「なんで、そんな悲しそうに吹くの」

 

 

突然聞こえた声に驚き振り返るとそこには黒くて長い髪が風に靡いて月の光を受けてキラキラしていた。顔は可愛らしいけれど、どこか不思議な雰囲気を醸し出していて妖艶な香りもする。

右手には頑丈そうな黒いケースを持っていた。

 

 

「なんで、涙を流しながら吹いているの?辛いの?辛いのにフルートを吹くの?音楽は悲しいから吹くものじゃないよ。」

 

 

声からして男の子だけど、明らかに外見女の子っぽいし、でも

 

 

「君はなんでフルートを手に取ったの?」

 

 

この子の喋り方はどこか懐かしく感じる。

 

 

『のぞみちゃん!のぞみちゃん!いっしょにフルートやろう!!』

 

 

幼い時、まだ私が幼稚園児だった時、フルートを初めて見た時、初めて夢を持った時、初めて恋をした時。

 

 

「よみくん?」

 

 

私はつい今しがたまで忘れていた名前を呟いた。忘れられない思い出を作ったのに忘れないって、誓っていたのに、ずっと側にいたいと願った。

想い人が今目の前にいる。

 

 

 

「僕はまだのぞみちゃんとの約束覚えてるよ。」

 

 

彼ははっきりと私の名前を呼んだ。

大切なのに、忘れちゃダメだったのに、約束まで破ったのに、そんな私なのに

 

 

「ただいま、のぞみちゃん」

 

 

こんな私がなんでこんなにも幸せな気持ちになっているんだろう。視界がボヤける。頰を伝う感触。暖かいものが溢れ出してくる。

 

 

「頑張ったね。辛かったよね。傷ついたよね。苦しかったよね。泣いて良いんだよ。涙は流すためにあるんだから」

 

 

彼は優しく抱きしめてくれた幼い日のあの頃のように、だから、

 

 

 

 

「おかえり。よみくん」

 

 

私は笑いながら泣いた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

しばらくして、のぞみちゃんは泣き止んだ。

 

「服を汚しちゃってごめんね。よみくん」

 

 

「ううん、気にしなくていいよ。」

 

 

「久しぶりにおもいっきり泣いた気がするな。少しスッキリした!」

 

 

のぞみちゃんは笑顔でそう言う

 

 

のぞみちゃんには笑顔が一番似合ってる。改めてそう思った。

 

 

「よみくんはいつ帰って来たの??」

 

 

「今日帰って来たばかりだよ。」

 

 

「えっ?!でもでもなんでこんな時間にここにいるの??」

 

 

「えーっと、道に迷ったんだよね。のぞみちゃん僕の家ってどこだっけ??」

 

男として情けなく感じる。

 

 

 

「えっ?!携帯とかは、持ってないの?」

 

 

「解約しちゃったからもう持ってないです。」

 

 

 

「そうなんだ。それは災難だったね。よしっ!それじゃよみくんの家に行こう!」

 

 

我ながらすごく情けない、女の子に家まで送ってもらうなんて、

 

 

そんなことを考えながら僕らは歩き出した。

 

 

 

 




遅くなりました!ごめんなさい!



気づいたら、50件もお気に入りをしていただけて感謝感激です!ありがとうございます!!!


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7話

お待たせしました!

どうぞ!


夜空の星々は明るくて見えないけれど、家の灯、車の灯、街灯がそれぞれの色を輝かせながら揺れている

自然の幻想的な美しさと異なり、人が作り出した風景はいつの時代、どんな場所でも美しい。

 

 

けれど、

 

 

「本当に久しぶりだね!四年ぶりかな?」

 

隣に君がいるからだろうか?

君が隣にいるだけでこの輝きが霞む。君の笑顔が何よりも眩しい。君の笑顔を見るだけでこんなにも気恥ずかしさを感じる顔がだんだん紅潮していく鼓動が早くなる。

この感じがとても心地よいと思える。

 

こんなに好きだという気持ちがあるのに、日々増すばかりなのに、僕は隣にいる彼女とのこのたった30cmの距離にまだ甘えている。

 

 

例えるなら、星空の星々の中でも控えめに輝く小さな星の気持ちのよう。

隣に強く輝く星の側で控えめに輝くことに甘んじている。一緒に強く輝くことができない臆病者。

 

 

「そうだね。僕が小学生の時にお別れしたからね。」

 

夢のため、お母さんのためにフランスへ飛び立った時は今でも辛い思い出の一つだ。

 

「あの時は、すごく悲しかった。よみくんとお別れなんて信じたくなかったよ。あの頃の私ってよみくんにべったりだったよね。」

 

「うん、そうだった。どこに行こうといつも一緒だった。トイレに行くのも付いてきたこともあったよね。」

 

「えぇー?!そんなことあったかな〜?アハハハハ」

 

けどね、僕ものぞみちゃんにべったりだったよ。何かをしようとする時は必ずのぞみちゃんと一緒にやりたかった。フルートを始めた時だって、のぞみちゃんと一緒にやりたかったから誘った。

 

「あっ!よみくんよみくん。ここ覚えてる?」

 

そこは公園だった。僕らが幼い頃、フルートの練習やおにごっこなどした懐かしい場所

 

「昔と何一つ変わらずにあったんだ。嬉しいな」

 

「ふふ♪私ね。たまにここでよみくんのこと思いながらフルート吹いてるんだ。」

 

えっ?

 

「私にとって君は、大切な人だから」

 

それって、

 

「さっ!行こっか?もうすぐよみくんの家に着くよ。」

 

のぞみちゃんはそう言って足早に歩いて行ってしまう。

僕は呼び止めることもできずにそのまま彼女の後ろ姿を見つめる。

 

「どしようもないほど、僕は臆病者だな。」

 

僕は彼女を追うために駆ける。

 

 

少年は知らない。

 

少女の耳が真っ赤に染まっていることを

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「着いたよ!」

 

あれから数分で僕の家の玄関に着いた。

家に着くまで僕らは終始無言で歩き続けた。

 

「ありがとうね。家まで連れて来てくれて。」

 

「いいよいいよ。困ってる人がいたら助けてあげるのが、当たり前でしょ?」

 

「そうだね。のぞみちゃんなら絶対そうする気がする。」

 

「そうかな?誰でも困ってる人がいたら助けてあげると思うけどなぁ?」

 

誰でもではないと思うな。他人を助けることなんて誰でもできることじゃない。他人と関わるのは誰だって怖いけれどその怖いと思う心の壁を乗り越えようとする勇気を持ってる人と持ってない人で分けられる。

その勇気を持ってない人が魅力的ではないとは言えないが、やっぱり勇気を持っている人の方が魅力的だし美しいと思える。

 

「それじゃあ、バイバイよみくん。」

 

彼女は僕に背を向けて帰って行く。

 

「バイバイのぞみちゃん」

 

彼女が帰りたいのなら呼び止めるなんてことをしたくはない。まだいたいっていうのは僕の我儘だ。それを言って彼女を困らせるのは嫌だ。

 

「よみくん!」

 

 

僕は呼ばれたことに驚きビクッとしてしまう。振り返るとのぞみちゃんがすぐ後ろにいてまた驚く。

 

「明日!明日もしも時間が空いてるならどこか遊びに行かない?」

 

頰を少し朱に染めながら言うその姿がとても愛おしく感じる。

 

「もちろん」

 

僕の返事を聞くと両目に星々を輝かせ

 

「明日の11時によみくんの家に行くから待ってて!」

 

それだけを言うと彼女は駆けていく。

 

僕をその後ろ姿が見えなくなるまで見つめたいた。

 



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8話

間が空いてしまいすみませんでした。


 

 

 

 

朝、目が覚めると天井がいつもとは違うことに気づく。内心焦ったがよく考えてみるとここが自分の家の自分の部屋であることそして帰って来たんだと改めて認識する。

いつも、僕を起こそうとする日差しも部屋の空気もここではとても優しく包み込んでくれる。ついつい二度寝してしまいたくなる気持ちを抑え込み脚に力を入れる。

机に置いてある置き時計の長針は12を短針は6を指していた。まだ寝れたと後悔したが、起きたのだから何かしようと思い、机の上にある黒色のケースを持って扉に手をかけた。廊下をキシキシと鳴かせながら縁側に出る。

腰を下ろし、ケースの錠を解く。分解されたフルートを一つ一つ丁寧に組み立てる。

フルートを持って草履に足を突っ込み庭に唯一ある桜の木に近寄る。彼女はすっかり華やかな姿から爽やかな姿へと衣替えをしていた。僕は彼女の側で息を吹き込んだ。

 

さぁ、踊れよ。踊れ。あなたはどこまでも不思議だ。

あなたはどこまでも美しくそして儚い。故に僕らはあなたに魅せられる。始まりであり、終わりでもある。

始まりを祝う舞を魅せ、終わりを悲しみ涙を散らす。

あぁ、それでも尊きあなたは踊り続ける。喜怒哀楽を僕らの代わりに全力で表現してくれるあなたはどこまでも優しいお人好しだと思う。

 

 

口を離したところで背後から包み込まれる。

 

 

「おはよう。星詠」

 

 

「おはよう。母さん」

 

 

「朝から感動させないでよ。」

 

母さんの声は震えていた。

 

「無理」

 

だって

 

「僕は演奏者だから」

 

忘れられない感動をプレゼントするのが、僕の仕事だから

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そういえば、あの曲は新作?」

 

朝食を食べながら母さんと話しているとさっき演奏していた曲について問われる。

 

 

「まだ、完成したばかりだけどね。名前はまだ決めていないけど、いい名前をつけたいな。」

 

いくら良い曲を作っても名前が決まらないとかわいそうだ。

 

 

「今日は何か予定はあるの?」

 

 

「のぞみちゃんとデートだよ。何時に帰るかはわからないから決まり次第連絡するよ。」

 

 

「あらあら、デートなんてハッキリ言っちゃって勘違いだったら恥ずかしいぞ〜wそれにまだスマホも持ってないでしょ?」

 

「からかうなよ。いい歳した母親が。それにのぞみちゃんのケータイを借りれば問題ないだろ?」

 

 

「歳は関係ないでしょ。それにお母さん早く孫の顔が見たいわ。」

 

 

「まだ、結婚してないし、ましてやプロポーズも告白もしてないのにもう孫が見たいなんて言い出すか?」

 

 

「だって〜〜〜ばぁばだよーって孫に言ってみたいんだもん!」

 

 

だもんって、

 

 

「ごちそうさまでした。それじゃ、行ってくるから体には気をつけてよ。」

 

僕は未だに妄想に浸る母さんを置いて玄関を出る。

 

「おっ!おはよう!よみくん!」

 

ちょうどのぞみちゃんも来た。

 

「おはようのぞみちゃん。服似合ってるよ。可愛いね」

 

「そう?えへへ////」

 

頬を朱色に染め、はにかむ姿は幼さを感じる。

白色のブラウスに深緑色のスカート、黒色のローファー

制服っぽいなと思ったけど、僕も立派紳士だから言わない。

 

「そのリボン大切に使ってくれてるんだね。ありがとう」

 

 

のぞみちゃんの髪を縛っている白色のリボンは僕が小学生の時彼女に贈ったものだ。

 

「もちろんだよ。1番大事な宝物だもん。/////」

 

のぞみちゃんはそう言うとリボンを触る。その姿に心が踊るのを感じ

 

 

微笑みながら

 

「ありがとうのぞみちゃん、嬉しいよ。」

 

今日1番の笑顔で感謝を伝えると彼女に手をのばして

 

「それじゃ、行きましょうか?お嬢さん御手をどうぞ。」

 

差し出された手と僕の顔を行ったり来たりした後、

 

また頬を染めて、

 

「はい…喜んで…//////」

 

恥ずかしながらも僕の手に重ねた。

 

僕はその手を握り、絡ませる。恋人繋ぎだ。

 

 

赤い頬はさらに赤くなりゆでダコみたいだ。

 

やっぱり、僕はのぞみちゃんのことが好きだ。

好きで好きで好き過ぎて堪らない。

思いを伝えるのはまだ早い。早いわけじゃないむしろ遅いくらいだ。けど、もうしばらくこの子のことを見たい。

 

 

 

 

 

 

 

 



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