魔法少女リリカルなのは!? 「時空管理セクハラ相談部隊+パンツ」 (ヘルカイザー)
しおりを挟む
第1着目《変態の消えた今》
メッセや感想で続編希望頂きましたので、書かせていただきます!
相変わらず投稿速度は遅いですが、よろしく願いします!
これはとある事件、JS事件と呼ばれる歴史に残る大事件の後に起きた私達の新たな戦いの記録。
それは私……リインフォース・ツヴァイが夫である草葉琶 真名と結婚して2年あまりが過ぎた時に起こった。
真名さんはこの頃管理局を辞め、自分の故郷に置いてきた弟に会いに行くと言って、1人私の主人であるはやてちゃんと同じ故郷の地球に出かけて行った。
いつもと変わらず、出かける前にキスなんかして、新婚ホヤホヤのバカ夫婦のように。
しかしそれからいくら待っても真名さんは帰ってこなかった。当初、1週間程度で戻ると言っていたのだが、連絡もないまま1ヶ月が過ぎていた。
「真名さん……いつ帰ってくるですか…………」
私は真名さんならどんな事があったって大丈夫だと信じて帰りを待っていた。ところが2ヶ月、3ヶ月と日が過ぎていき、帰っていると信じた想いは、それと同じぐらいの不安に変わりはじめる。
通信は当たり前のように出ず、有給をとって地球へ真名さんを探しに行ったが、手がかりは何一つなく。真名さんは私の前から完全に姿を消した。
もう私1人ではどうしようもないと判断した私は、みんなに相談を持ちかける。はやてちゃんやヴィータちゃん。それになのはさんやフェイトさんにも。
だがそれでも真名さんは見つからなかった。せっかく買った2人の新居は今日も私1人だけ。だからだろう、時より、はやてちゃん達は心配して訪ねてきてくれる。
「まだ……見つからんの? 」
「はいです……」
「心配やな。彼はすぐ無茶するところがあるし……はぁ、これじゃ〜『プロポーズ』できないやんか」
「はやてちゃん、聞こえてるですよ? 何、人の旦那様寝取ろうとしてるですか」
心配してくれるのはありがたいが、はやてちゃんは私達が結婚していてもまだ諦めていないようで、私のいないところで真名さんにアタックしているらしいのだ。しかもミッドが一夫多妻が可能ということもあり、なかなか諦めてくれない。
「ちぇ……リインは主人の幸せは願ってくれんのやね」
「そんな事ありませんですが、常識を考えてくださいです」
「冷たいなぁ〜」
「当たり前です。真名さんは私だけの真名さんです」
「リインがそこまで独占欲の強い子だとは思わなかった」
結局のところ……真名さんはこの後も見つからなかった。真名さんが行方不明になって2年が経過し、私の元気や生きる気力も段々薄れていった。幸せだった筈の日常は儚くも突然終わってしまったのだ。あの日、真名さんを送り出した2年前に…………
「真名さん……私もう生きているのが辛いですよぉ…………」
◇◆◇◆
「リオ〜コロナ〜おはよ〜! 」
「あ、ヴィヴィオ。おはよう」
「おはよう! 」
「えへへ〜……ごめん遅れちゃって」
今日私は友達のリオとコロナと待ち合わせをしていた。だが私が少し遅れてしまい、2人を待たせてしまったのだ。
「大丈夫だよヴィヴィオ、そんな待ってないもん。ね、リオ? 」
「うん! たまにはしょうがないよ」
「ありがとう2人とも〜。あれ? コロナ今日は『水色』なんだ。可愛いねぇ〜」
「水色? 一体何のはな……し…………はうっ!? 」
コロナは私がそう言うとスカートを両手で押さえながら顔を赤らめる。私が言ったのはコロナの『パンツ』の話だ。勿論見えているわけじゃない。さっきこっそりと覗かせてもらっただけ。
「ま、またヴィヴィオは人のスカートの中見て! もうっ! 」
「コロナはおっとりしてるからヴィヴィオの標的にされるんだよ。私はまだ覗かれた事ない! 」
「リオは黒しかはかないからつまらないだけだよ」
「ちょっ!? ヴィヴィオいつ見てたの!? 」
真っ赤になり驚くリオ。だが私は言ってないだけでリオのパンツもしっかりと把握している。リオはパンツが一色しかないからつまらないのだ。だから見はしても言ってはいない。
「違うよ、黒じゃない! 黒じゃないから! 」
「リオ〜? 」
「え? 」
「えへへ〜これな〜んだ? 」
「何って……パっ!? パパパパパ………」
「ご、ご愁傷様です」
私が手に持って広げている物を見て、あたふたし始めるリオとそんなリオに向かい手を合わせているコロナ。今日も平和な1日だと感じる。
「わ、私のパンツーーーーーー!!! 」
「も、もうやめてよ2人とも!? ぷっ!? ごめんリオ、もう無理、ぶふっ!? 」
「ちょっとー!? 笑わないでよコロナ!? 」
「うん、今日も絶好調! 」
あまりのリオの取り乱しっぷりにコロナは吹き出すように笑い始める。必死に笑いを堪えてはいるが我慢できていない。こんないつも通りの日常を見て私は思うのだ、私の師である変態さんに教わったセクハラは、本当に素晴らしいものだと。
「あはは! 」
「あ、ヴィヴィオパンツ返して!? 」
「ふふ、ごめんごめん。はい! 」
「も、もう……ヴィヴィオのセクハラ大魔神……」
「へへ、最高の褒め言葉だね! ……ん? 」
「ヴィヴィオ? どうしたの? 」
今日は2人と遊び目的で待ち合わせをしていた。でもそんな中、私は向こうの方から歩いてくるおかしな男の人を見つける。けどおかしいと思っているのは私だけ。2人は普通のサラリーマンだと言うが、私にはわかる。
あの人はセクハラーだと。
「ヴィヴィオ? あ……どうしたんだろう? 」
「うん。なんか怖い顔してなかったヴィヴィオ。コロナはどう思う? 」
私はコロナとリオから離れ、サラリーマンの男の人の方へ歩き始める。私のくだらないプライドの為に2人は巻き込めない。そう思っての行動だった。
「ん? 」
「おじさん、そういうのよくないよ! 」
「何だね突然」
「誤魔化しても無駄です! おじさん今すれ違う女の人のお尻触ってました! 」
「な、何を根拠にそんな事を……大人をからかうんじゃない! 」
「私……許せないんですよ。同じセクハラーとして。笑顔のないセクハラはただの悪です! 」
「このクソガキがぁぁ……ふへ、なら俺は悪でも構わねーよ。身の程を知れこのガキぃぃぃいいい!! 」
「「ヴィヴィオ!? 」」
おじさんは私に何をするつもりなのか、いやらしい感じで手を伸ばしてきた。けど私にとってはなんでもない事。やってる事がセクハラの類である以上、私にそんな行為を簡単にできると思ったら大間違いだ。
まず伸ばしてきているのは左手、そしてこの軌道は私の胸元を掴みにかかっているのだろう。おじさんはセクハラーの癖にロリコンでもあるようだ。
「おじさん……ごめんなさい、私まだそんなに胸の発育よくないよ? ふん!! 」
「っ!? ……え、いない? ど、どこに……ハッ!? な……無い…………」
「セクハラーの真髄はいかに相手にそれを悟らせないようにするか。おじさんのは欲望の塊、自分の欲の為にやる悪のセクハラ。だから簡単に見破られる。それじゃ、私のセクハラの足元にも及ばない。おじさん……早く服着たほうがいいよ? 」
「服が無い!? いつの間に!? ちょっ、 俺まっぱじゃねーか!? く、くそ! 覚えてろクソガキぃぃぃいいいい!! 」
脱兎の如く、私に剥ぎ取られた服を持って逃げるおじさん。最近、街でセクハラーをよく見る気がすると私は思っていた。
それはほとんどの場合、被害者が気づけるものではないが、同じセクハラーにはそれが分かる。
「ヴィヴィオー! 大丈夫!? 」
「うん! 平気平気、心配かけてごめんねリオ」
後、気がかりな事が一つ。行方が分からなくなった変態さんの事だ。私は死んでも死ななそうな変態さんだが、心配でならない。
何故なら変態さんがリインさんを放って何年もいるなど考えにくいからだ。
こう言っては何だが、2人のラブラブっぷりは表彰してあげたくなくような程。だから心配だった。
◇◆◇◆
「どうぞー! 」
「し、失礼します! 」
「どうぞ、お掛け下さい。それで……今日はどうされました? 」
「その……ご相談が……セ、セクハラについて! 」
ここは管理局にあるセクハラ相談部隊、通称セクハラ隊。ここでは主にセクハラの相談を受け、解決する事を目的としている部隊だ。
そして僕はここの部隊長。正確には2代目だが、管理局のセクハラは前にも増して増え続けている。
「あの……」
「はい? 」
「貴方が伝説の変態……何ですか? 」
「いえ、よく言われますが、それは初代部隊長の事ですよ、恐らく」
「そ、そうなんですか。なんだ…………」
僕はセクハラ隊で色々なセクハラを解決してきた。だがこうして少しガッカリされる事もしばしばある。
僕の先輩、初代部隊長……草葉琶 真名。彼はもう管理局をやめているが、女性局員の間では伝説の男となっているのだ。知る人ぞ知る伝説の変態男。変態の癖にセクハラ相談の評判は一級。
この局で、いなくなって尚、恋人にしたい男No. 1を欲しいがままにしている男。
でもだからだろうか、この仕事……僕では力不足の様な気がするのは。
「それでは数日中に解決して見せますので、しばらく我慢してください」
「はい! ありがとうございます! 失礼します」
依頼人の彼女は笑顔で出て行ったが、僕はあまりいい気分ではない。理由は簡単だ、僕が1人仕事をする様になって2年。セクハラは減少するどころか増えている。
だが2年前は確実に減っていた。つまりあの変態がいなくなったからだと僕は思っている。
「ハル〜いるか〜……って、どうしたんだ? 」
「あ、ヴィータさん。お疲れ様です」
「おう! というかお疲れはお前だろ? たくっ、何かあるなら言えよな。お前の為ならいくらでも協力するぞ? 私は、その……お前の彼女だかんな」
「あはは、大丈夫です。ヴィータさんの可愛い顔見れただけで僕は頑張れますから」
「ばっ!? 恥ずかしい事言ってんな!!! 」
「って!? 」
僕の隊舎にきた女性は前の部隊での先輩、八神 ヴィータさん。背は小さいが、僕より歳上で、僕の恋人。彼女とは付き合って4年だが、どうもこういう事をいうとよく殴られる。でもその時の顔は可愛くて僕は好きだ。
「それよりハル? 今日は早く帰れるのか? 」
「う〜ん……多分平気だと思いますけど……どうしてですか? 」
「へへん、飯行こうぜ! ハルの好きな魚料理がギガ美味な所見つけたんだ! 」
「本当ですか! それじゃ〜楽しみにしておきますね」
彼女の笑顔は僕の宝だ。僕はどんな事があってもこの笑顔を守る。彼女の笑顔を曇らせない。そう決めていた。
だが今夜、多少なりとも彼女に不安を与えたのは事実だった。夕飯を一緒に食べに行くという約束。それを僕は破ってしまった。勿論僕の意思でではない。ただ運が悪かっただけ。あるいは、僕がそんな性格になっていたからとも言える。
「草葉琶 真名さんとお見受けします」
「……(僕を変態と勘違いしている? ) そうだけど……君は誰? って言っても……答えてくれないのかな? 」
「いえ、そんな事はありません。ちゃんと名乗らせて頂きます。カイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・イングヴァルト。覇王を名乗らせて頂いてます」
「……覇王……ね。で? その覇王様が僕にどんな用があるの? 」
「はい、ここで……貴方と決闘を」
ヴィータさんと待ち合わせしている場所へ向かう途中、僕はバイザーをした女性と出会った。彼女はおかしな名を名乗り、僕に戦いを挑む。あの変態にどんな用があるのか気になった僕は、彼女の問いにうなずいたが、どうやら正解だったようだ。
もしロクでもない事であの人に危害を加える気でいるのであれば、僕は女性であろうと容赦はしない。真っ向から『燃やし尽くす』。
「覇王の力を証明したいんです」
「やめよう。こんな事していい事じゃない! 」
「それはできません。貴方と戦い、自分の拳が強いと証明するまでは」
バイザーを外し、僕を見る真っ直ぐな瞳。管理局の悪党を数多く断罪してきた僕には直感でわかる。この人は悪人ではない。ただ、何かに焦り、本質を見失っている。そんな感じだった。
ならば僕がしてあげる事は1つ。戦い、それを正してあげる事だ。それをあの変態から学んだ。口だけではダメ。力がなければ。それも正しくあろうとする力が。
「行きます! 」
「っ!? はやっ」
実際、戦ってみれば、彼女は強かった。スピード、間合いの取り方、技の練度。どれを取ってもいい筋をしている。これはどっかの教導官が見たら目を輝かせそうなもんだ。
「覇王……」
つまるところ、何が言いたいか。結果的に僕は敗北した。と言うより、危うく『本気』になる所だったと言った方がいいだろう。何故なら一般人の、悪人でもない人間にこの炎を使う事はできない。
「断・空・拳!!! 」
「かはっ!? 」
僕は地面に横になり、動けなくなった。少し直撃を逸らしたとはいえ、大した威力だと僕は思う。ただ、どうしようもなく勿体無い。これだけの子がこんな事をしていると考えればなおさら。
「手合わせありがとうございました。失礼な言い方ですが、伝説と言うにはあまりにもあっけなく……いえ、それでは」
「あ……まっ……ぁ」
朦朧とする意識の中、僕は去っていく彼女を見ていた。歩き、僕に興味がないと言わんばかりに消えていく彼女を。
そして……僕が次に目を覚まし、最初に見たのは泣いて目を腫らしたヴィータさんの顔だった。
「うっ、ひぐっ……ハ、ハりゅぅ? バガぁ! ハりゅのバガぁ!! 」
だがその頃、僕たちの知らないところで確実に運命という歯車は回り始めようとしていた。
僕達の前にあの子が現れた事によって…………
「ここが……ミッドチルダか。まずは探さなきゃ。『高町 ヴィヴィオ』って子を……兄さん。必ず僕がその子を……兄さんの大事な人達を守るから。だから、だから……無事でいてよ兄さん」
to be continued…………
短編・アリすず劇場
第0話《プロローグ》
2年前。真名が行方不明になった時期の事。
「きゃぁぁああああああああああああ!? 」
「ちょっ!? どうしたのよすずか、ドア開けていきなり叫ばないでよ」
ここに……月村 すずかとアリサ・バニングスという2人の女性がいた。歳にして22歳。彼氏はおらず、親友2人で日々を過ごしている。
ただ決してモテないわけではない。むしろ告白はしょっちゅうされていた。だがそれをことごとく2人は断る。それにはある理由があった。
それがこの家にきている理由。ここはある男の子の家だ。
「ア、アリサちゃん……こ、こんな恐ろしい物が」
「ん? 何々……ちょっ、これ!? 」
それは玄関に置かれた1枚の手紙。2年前に起こったこれは、事の始まりと元凶だった。
「私の下着君がいなくなったぁぁぁああああああああああああ!!! 」
すずかさんとアリサさんへ
僕はこれから旅に出ます。兄さんとの約束を果たす為、どこか分かりませんが『ミッドチルダ』という場所へ行かないといけません。
なるべく早く帰るつもりですので、心配しないでください。
下着より
「こ、こんな事なら……手足縛って監禁しておくんだったよぉ…………」
「あんたがそんなんだから何も言わないで逃げたんじゃないの? 」
「そんな!? 」
こうして唐突にも2人の物語は始まった。
to be continued…………
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
第2着目《覇王の憂鬱》
遅くなりました。
では! よろしくお願いします。
パンツとは……その人の色が出る。性格や癖、はたまた趣味や生活環境。プロは……パンツを覗き見るだけでその全てを見通すことが出来る。己の欲を力に変え、セクハラと呼ばれる一種の暴力を行使する者達。それは最低で、決して褒められることのない者達。
セクハラー…………
しかし私はそれを追い求め、変態さんに教えを請うた。私は証明したかった。それが悪のための照明だけではないことを。
誰であれ、どんな絶望的な状況でさえ、その場を笑顔に変えてきた変態さんのセクハラ。それを……私は素晴らしいと思ったのだから。
高町ヴィヴィオ。
変態さん達が助けてくれてあるこの命。なのはさんがなのはママになってくれて。フェイトさんがフェイトママになってくれて。私にできた家族という証。その名前。私が生きて行く上で最も誇らしく。感謝の絶えない高町という名。私はママのこの名に恥じないよう。生きて行く。
そんな決意がある私の日常に現れたのは、出会い。男の子。私と同い年か、それとも年下か。彼は私にとって一生出会えないと思った理想的な王子様。存在しないかと思われた王子様。
私達は出会った。
本来なら出会うはずのない私達が、最近起こり始めたミッドチルダ全体を揺るがす新たな事件をきっかけに。
でもその事を今説明するのは不可能というもの。彼の事を語る前にまず、彼女との出会いを先に話さなければならない。
アインハルト・ストラトス。
彼女と初めて会ったのは私の先生、コーチ。師匠。呼び方は色々だが、ノーヴェ・ナカジマさん。私はノーヴェと呼んでいる。アインハルトさんはそのノーヴェが連れてきた。そして、私達がやっているストライクアーツ。そのスパーリングする日に私とアインハルトさんは出会ったのだ。
彼女の第1印象は綺麗な人。落ち着いていて、年上らしいとても素敵な人。そういう印象だ。
「ね、ねぇ……コロナ? ヴィヴィオなんか…………」
「う、うん……たぶんリオの思ってる通りだと思うよ…………」
2人はスパーリングを始めようとしている私の後ろで何か言っているが、私はそれどころではなかった。高揚。顔が火照るほどの興奮。思わず口元が緩んでしまいそうな幸せな感覚。
何故なら今私の目の前にいるのは美しい女の子。私より年上のとても綺麗な女の子だ。故に私は気持ちを抑えられずにいる。どうしてこんな美しい子を目の前にして抑えられようか。否。答えは断じて否だ。
この人の恥ずかしがってる顔が見たい。この人の羞恥心で満ちた可愛い顔が見たい。この人の裸が見たい。私はそう思った。
これは1人のセクハラーとして、私が成さなければならない試練。義務だ。ここでセクハラをはたらかなけれなそれこそセクハラーの名折れ。この人に対しても失礼にあたる。
「よろしくお願いします! 」
「あ、はい……あの……どうしてそんなに赤くなって」
「いえ、問題ありません! なのではやく始めましょう! そうしましょう! 」
「ですがどこか具合が悪いのでは」
「ノープロブレムです! ドンと来いです!! 」
「そ、そうですか……では」
私達は互いに構えノーヴェの掛け声とともに前に出る。基本的な組手をしながら様子見の攻防。だが、アインハルトさんの方が私よりもはるかに強い。
シャツの下にあるブラと言う花園。短パンの下にあるパンツと言う天国。攻撃の合間に何度か狙うが、アインハルトさんはガードが固くてそれを許してくれない。私のセクハラが通用しない。そこにあるはずの花園に、天国に手が届かない。私はここで自分の未熟さを思い知らされた。
どうして届かない。私は今日まで、必死に修行をし、変態さんお墨付きのセクハラを免許皆伝まで極めたつもりだった。実際、変態さんにはもう教えることはないと言われている。
つまり私がセクハラを成せなければ、私の負けに他ならず、変態さんの技が負けたことになる。それだけは。それだけは我慢ならなかった。何とか一撃。何とかパンツを見るだけでも……だが現実は甘くない。まるで私ではその花園に、天国に行く資格がないかのように。
このスパーリングは突如勝負がついた。
私の攻撃を躱し、私の胸へ一撃。私は後ろに吹っ飛ばされ、その瞬間ノーヴェが止めに入った。
「手合わせありがとうございました」
「あ……すいませんでした!? 今のスパに失礼があったのなら謝ります! 」
全身全霊の謝罪。失礼だった。私は事もあろうに対戦相手にガッカリされた。セクハラ対象を不快な気持ちにさせてしまった。これではもう善ではない悪だ。私の目指すものはこんな雰囲気を作るものではない。本当に未熟の一言だった。
「失礼と……おっしゃいましたか……今…………くっ。今のスパに失礼がなかったかなどとよく言えましたね!! 最後の一瞬! 何をしようとしたかはわかりませんが貴方はまるで的外れな私の下半身に手を伸ばしました。私が決めにきてる事を分かっていながらです! 貴方は本当に本気でやっていたのですか! 」
「勿論です!!! 私は本気でパンツをめくろうと」
「は? ……すいません聞き間違えでしょうか? 」
「ですからアインハルトさんのパンツを」
「もういいです!! ……趣味と遊びのはいいでしたら貴方は確かに十分すぎるほど強いです。しかし」
「遊びではありません! 訂正してください! プロとして、私のセクハラを遊びなんて言われるのは堪え難い侮辱です!! ですからもう一度、もう一度私とスパーリングしていただけませんか! 」
「い、意味がわかりません。『どうして最近理解に苦しむ』事ばかり……と、とにかく、そういう事ですので」
「あ……そんな……もう一度……ぐっ、結局パンツ見れなかった」
「「残念がるところそこなんだぁ…………」」
私の友人2人が呆れ果てた顔を見せているがそんな事はどうでもいい事だ。何故ならそれはいつもの事。今に始まった事ではない。だが、そんな友人の対応が、余計に今の私を惨めにさせた。
彼女は初めての私がセクハラを失敗した相手。アインハルトさん。彼女の名は、この時初めて心に深く刻まれた。私の新たな目標と決意と共に。
「次は……絶対パンツみるよ! 」
「「それ以前に試合してくれないよ」」
「そんな!? 」
アインハルトさん……そんな彼女と出会いは突然に、私にとっては運命だった。セクハラしたくて堪らなくなる人。性的に。どこまでも性的に私を興奮させてくれる人。同じ女の子でなければ、猛烈にアッタクは間違いない。無論、性別など気にするつもりは私にはない。
何故なら彼女は私の未来永劫、セクハラする女性対象に認定されたのだから。
◆◇◆◇
私がまだヴィヴィオさん達と知り合う数日前。私は彼と出会っていた。彼は……なんと言えばいいか変わっている。何が変っているかと言えば……パンツが好きらしい。
私より1つか2つ歳下らしき彼に対して、この歳で……とも思った。しかしこの歳で以前に大人でもここまでパンツに対する想いや情熱はないだろう。何故なら彼はパンツという物に一種の愛があるようだからだ。
衝撃だった。
彼と最初にあったとき。私は彼に、有無も言わさず初対面でパンツを剥ぎ取られた。油断していたのもある。
私が毎晩、強い人間を求めては戦いを挑む通り魔まがいの事をしていた帰り……たまたま公園で座っていた彼を見て、何やら困っていた様子に見えた私は、彼に声をかけたのだ。だが彼が放った第一声。私は自分の目と耳を疑った。彼の姿はまるで蜃気楼のように消え、ふと……私の背後から声が聞こえる。
何て言っているのか、私は最初……信じられなかった。
「わぁ〜この柄、僕でも初めて見るよ。とってもいい趣味してるねお姉さん! すずかさん程じゃないけど……すっごく僕の好みだよ! 」
彼は笑顔で私にそんな事を言って来る。私の下着を奪って、それだけでは飽き足らず、こんな事言っているのだ。私は少しどころじゃない怒りを彼に抱いた。ただそんな時、私は気づく。重大にしてとんでもない事をやっているという事実に。
彼は一体どうやって……私に気づかれる事なくパンツを奪った。
無論、私の足は地面から少し足りとも動いていない。かと言ってパンツを破り取られたのかと言えば、パンツには傷1つない。つまり彼は、私に気づかれる事なく、私の足を浮かしてパンツを脱ぎとった事になる。
結果……私の頭の中でこの子はとんでもなく強いのではと言う期待にも似た思い違いをしてしまった。
「すいません……貴方が誰か知りませんが、私と戦っていただけませんか? それに……その……下着を奪われてこのまま帰すのも私の気が済みませんので」
「へ? あ……いや、僕戦えないというか……強くないと言うか……パンツが好きなだけで」
「問答……無用です!!! 」
「ひっ!? た、助けてぇぇぇえええ!? 」
しかし実際、彼は弱かった。戦いの経験も、ましてや、魔法すら使えない。そんな彼に、私は一撃をお見舞いしてしまったのだ。逃げる彼の前に回り込み、様子見の拳を一撃……私は彼のお腹へと叩き込んだ。私の見立てでは、簡単に躱して来るか、受け止めて来ると考えていたのだが、それは見事に直撃。彼はその場でお腹を押さえて悶絶し始める。
「けほっ!? けほっ!? 」
「す、すいません。まさか本当に戦えないとは思いませんでした。ですが……私も恥ずかしめられた事ですし……これでおあいこにしてください。あと……その下着は返してくださいね。それに……こ、この柄はたまたま……他のが洗濯中だったので着ていただけです。こんな恥ずかしい下着もう着ることなんてないですから。……それでは」
私は彼の手にあるパンツを取り、倒れている彼に背を向けた。
だが……
その瞬間、私の全身に鳥肌が走る。
殺気にも似た悍ましい感覚。全身を舐めまわされるような寒気と蛇のような執着にも劣らない視線。私はゆっくりとその視線の方向、彼が倒れているであろう背後を振り向いた。
が……そこにはさっきの彼とは思えない程の殺気を放ちながら私を睨む彼が立っていた。血走り、確実に私に敵意と怒りを向ける彼の姿を。
私は最初、彼はスイッチが入らないと、つまり怒りなどの感情を抱くと力を発揮するタイプだと考えた。
しかしそれは大きな間違いだったのだ。
「貴方が私の一撃に対して怒りを覚えたのなら、それは謝ります。確かに、私も少しやり過ぎたと思いますが……貴方はわ、私の下着を剥ぎ取ったのですよ? 私だって恥ずかしかったのですから少しは……っ!? 」
一瞬……いつの間にか俯いていた彼が何か呟いた。とても掠れるような声で。けどハッキリと聞き取れたその言葉は……私の思考を停止させるのに十分な物であった。
この世には本当に理解できないことが多々ある。おそらくこれもその1つ。常人が、一体このミッドチルダに住んでいる人間のうち、何割が今の彼の言葉を理解できようか。少なくても私は理解できないし、したくもない。
ましてや…………
『彼の怒りが私が私のパンツを恥ずかしい物だと言ったことに対しての怒りであるなら尚更』
「お姉さんはパンツをなんだと思ってるの? パンツを恥ずかしい? その柄を? 勘違いしないでよ。お姉さんはそのパンツを選んで手に取ったはずだ。少なからず『その子』に惹かれて。でもそれを何? ただの羞恥心でその子を馬鹿にするの? 蔑むの? もう着ないなんて酷い事……よくも…………」
「い、いえ……あの……貴方の怒りの矛先がな、なんと言うか……理解に苦しむのですが……と言うか下着は生きてなど」
「ふざけるな!! これ以上まだその子を愚弄する気か!!! 」
「ひうっ!? ……って、何故私が悪いみたいになってるんですか!? もう意味がわかりません! 」
「わかった。もういい。お姉さんにその子をはく資格は……ない!!! 」
「なっ!? 」
一瞬、まるで時が止まったかのように。その場は私の体感でスローモーションのように動き出す。彼はとても戦えないと思えないほどのスピードで私の前に移動すると、私が取り返したパンツを再び奪った。
私が動くどころか全く反応できなかった。今のこの子のスピードについていけなかったのだ。できたのは、かろうじて彼が何をしたのかがわかっただけ。彼の動く軌跡や下着を奪われた手からの喪失感。私はただただ呆然とした。目の前の彼が、強いのか弱いのか。全くわからなかったからだ。これだけのスピードと手捌き。一体どんな日常を送れば体得可能なのか。私では想像がつかない。
私とて、強くなる為の努力をしたつもりだ。自分なりにでも、怠けたと思ったことはない。でも目の前の彼は……私のそんな自信を粉々に打ち砕いた。
迷い……
悩み……
私は自分自信の強さを信じきれなかった。
それ故に……
「あ、貴方は一体……その動きといい。貴方本当は強っ……いえ、貴方は何者なんですか? 」
「僕の名は草葉琶 下着。パンツを愛し、パンツだけが僕の人生の全て。だから……この子を……パンツ達を傷つける者を僕は絶対に許さない!! ……この子が教えてくれる。僕は今……」
「な、何を言って」
「君の『全て』を知った」
それ故に私は…………
「覇王……」
「え……ま、待ってください!? その構え!? どうして貴方が……私の……こんな事あるわけが……っ!? 」
「断・空・拳!!! 」
「かはっ!? ……あうっ!? ど、どうし……て……私のわ、わ……ざ……を…………」
好きな物に真っ直ぐのなれる彼に……惹かれた。
to be continued…………
短編・アリすず劇場
第1話《取り乱した親友》
高町なのははある日、昔からの友達から連絡を受けた。通信という形でコールが鳴り響き、その通信に出る。だがそれは……彼女にとっては疑問しかない物だった。
「あれ? すずかちゃんから? どうしたんだろう……あ、もしもし? すずか「下着君はどこ!? 」ひっ!? な、なに……」
「下着君だよ下着君!! そっちにいるんでしょ! なのはちゃん今すぐ下着君を出さないとなのはちゃん所のヴィヴィオちゃんを誘拐して」
「バカ!? 少し落ち着きなさいすずか!? 」
通信の映像でアリサに羽交い締めにされて止められるすずかになのはの目は丸くならざる負えなかった。
見たことのない親友の取り乱したすずか。なのはは終始固まっている。
「ごめんなのは。今この子冷静じゃないからまた今度! 」
「え……ちょっ!? アリサちゃん!? ……切れちゃった……と言うか……下着君って……誰? 」
突然出たその名。
誰とも知らないその名を……
彼女は知ることになる。
自分の最愛の娘、その……初恋という形で…………
to be continued…………
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
第3着目《遭遇……セクハラーの力》
ではよろしくお願いします!
【なぁ〜頼むよ。もう一回だけあいつと試合してくれねぇか? 】
「その……私にもやることがありますので……探さなければならない人が」
【この間言ってた奴か? ん〜そだ! アインハルトこうしないか? ヴィヴィオともう一度試合してくれたら私も含めて知り合い総動員でそいつの事探してやるから。どうだ? 】
この間のヴィヴィオさんとのスパーリング以降、こうしてノーヴェさんはしつこく私にお願いしてきていた。探したい人がいる。これはただの口実だろう。勿論嘘ではない。あの子を見つけたいのは事実だ。だからノーヴェさんの提案は悪い提案ではない。私にしても、この間は言い過ぎたと思っていたところなのだから。
「わかりました。ならもう一度だけ」
【本当か!? いや、無理言ってすまねーな】
「いえ、それは構いませんが、約束の方を忘れないでください」
【それは勿論だ。にしてもどうしてそんなにこだわるんだ? 】
「それは……」
【ん? 】
「私が彼に負けた事が偶然であるか否か。それを証明したいからです」
私は別に負けたことを認めたくないわけではない。ただ、彼のあまりにも振り幅の大きい実力。それが本当にまぐれではないものか。仮にまぐれならばそれでいい。でも本当の意味で私が彼に負けたのならば、私は戦いたい。もう一度、油断することなく。彼と正面から正々堂々。それが私が彼を探す理由。彼にこだわる十分な理由だ。
【お前がそこまで言うんだから相当なんだろうな。ちょっと私も会ってみたくなった。そんじゃ、日時は後で連絡するから頼むわ】
「はい、こちらこそ」
ヴィヴィオさんともう一度試合をする事になった私は、半ば油断をしていた。あの子は一生懸命にしろそれはあくまで趣味の世界。だからいくらやったところで結果は変わらない。そう思っていた。
この当日までは。
ノーヴェさんから詳しい日時が送られてその当日。私は広い空き地で彼女と向かい合った。だがおかしい。この間よりも顔つきが鋭い。何かを見つめ、何かを狙っているかのごとく闘志がみなぎっている。言うなればハンターのような目だ。
私は彼女を見誤っていたのか。ならば私も答えなければならない。この拳で、想いを乗せて。
「言葉はいりません。拳をかわせば」
「ッ……ンツ……パ……ッ……アインハルトさんの……パ……ッ…………」
私達が向かい合い。これから試合が始まる。そんな時、私は気づいた。ヴィヴィオさんの口元が少しだけ動いている事に。さらにはブツブツと何かを言っている。内容は聞こえないが何やら不気味だ。
そして運命のゴング。開始の掛け声が放たれた瞬間、私は一気に血の気が下がった。
「え、なっ!? 」
「……草葉琶流 下着剥ぎ取り術……【蜃気楼】」
一瞬だった。開始の瞬間、ヴィヴィオさんはその場から消え、私に一撃。それを与えられる距離まで移動すると私の顔に拳を打ち込む。だがそれは完全なる囮。そう見せられた。何故なら私が彼女の拳を受け止めたその時、彼女はまるで蜃気楼のように消え、元の位置へ戻っていた。その手に……私の下着を握りしめて。
「な、なななな」
「……まずは1枚……今日は遠慮しません。全力でいきます。草葉琶流……下着剥ぎ取り術……」
「くっ、ハアッ!! ……え……いっ!? きゃぁぁあああああああああ!? 」
「【鍵外し】」
「な、何するんですか!? 私の下着返して……へ? 」
「うへ〜えへへ〜下着。アインハルトさんの下着ぃへへへぇ〜」
私はまんまと2手で下着を上下全て剥ぎ取られた。しかしこんなものは試合ではない。私は抗議をしようとヴィヴィオさんを見る。すると彼女は本当に女の子なのだろうかと言いたくなる衝動に襲われた。大人モードになりながら私の下着を舐めるような視線で眺め、緩み切った顔で変態のように嬉しがっている。終いにはヨダレを垂らすんじゃないかという雰囲気だ。
「このっ!? いい加減にしてください!!! 」
「えへ、ふへへ〜」
「ああなったらもうアインハルトさんに勝ち目なんかないよ。ね? コロナ」
「う、うん……たぶんこのまま……生まれたままの姿にされるんじゃないかな」
1枚。また1枚と私は服を剥がれ、とても言えないようなきわどい格好にされてしまっていた。ここまで見れば私はヴィヴィオさんに対して一撃も加えることができていない。前の時と違い何故か捉えられないのだ。消えては現れ、その度に私の服は一つ消える。でも流石に服の数が減れば相手の動きを読むのはさほど難しいことではない。
「もう少し……もう少しでアインハルトさんの美しい姿が! えへへ〜天使……あなたは私の天使です!! 」
「ど、どこのエロ親父ですか!? まったく……覇王……」
「これで……最後です! 」
「断・空・拳!! 」
ヴィヴィオさんは最後の布を剥ぎ取ろうと私の方へ向かう。だから私は羞恥心を全て捨て、捨て身のごとく一撃必殺の構えを取る。
ヴィヴィオさんの動きをギリギリまで読み。研ぎ澄ましながら相手の思考を自分の思考に重ね合せる。
先読みと言う意味では私の選択は間違っていなかった。しかしそれが自分に向けられた敵意ではなく好意である事を私はこの時……彼女から感じた。いや……真っ向から受け止めさせられた。
【愛してます貴方の存在全てに興奮します】
「うえっ!? 」
「伝わりますか? 私は……貴方が性的に好きです!!! 」
「あ……あ……で、ですが、それとこれとは……別です! フンッ!!! 」
彼女の心の声とも言うべき感情。それがまるで私に流れ込んでくるかの如く私に届いた。でも私の拳はそれを照れ隠しと言わんばかりに彼女の体に衝撃と敗北をもたらした。
「がはっ!? 」
「「ヴィヴィオ!? 」」
「はぁ……はぁ……へうっ!? ど、どうしましょう……わ、私……あ……ヴィヴィオさんが…………」
沸騰するように熱くなった顔。私は一体どうしてしまったのか。相手は女の子だ。自分と同じ性別の彼女に……私はなんと言う感情を抱いたのか。古の記憶があるとはいえ、私より年下の子に……心を揺り動かされてしまった。
「「ヴィヴィオー!? 」」
ヴィヴィオさんのお友達であろう2人の声が響き。そんな中私は顔を熱くして倒れているヴィヴィオさんをジッと見ていた。両手で顔を覆い、制御できないこの感情の正体を私は知らない。今まで感じたことがない。同級生の男子にすらこんな感情は抱いたことがない。真っ直ぐくけられた素直な好意が、欲望に忠実な好意が……こんなにも嬉しいと思ったことなど、今まで感じたことがなかった。
「ヴィヴィオさんあの……私は……」
「ひゃほぉぉぉい!! 」
私は少しモジモジしながらヴィヴィオさんの前に立った。みんなが見ている前で私は気持ちを伝えたくなった。でも恥ずかしい為、ヴィヴィオさんの気絶している今しかない。なにやらニヤニヤしている人達もいる。
しかしそんな時、どこからともなく場違いな声がこだました。雰囲気をぶち壊しにして突如現れた男。黒いハットを被り、茶色いコートを羽織った見るからに怪しい人間。私達は当然不思議な思いでその男を見ていたが次の瞬間、私を含めてその場にいた全ての人間が凍りつく。
「へい! レディ達ぃぃ? 見てくれ俺っちの芸術ふぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!! 」
『きゃぁぁぁあああああああああああああああああ!? 』
みんなの悲鳴が見事にシンクロした瞬間だった。男はコートを広げ、中を私達に見せびらかすように開く。だが、その中身は全裸。下着も無く、正真正銘の変質者であったのだ。
「ふ、ふざけんじゃないわよ変態!? 変なもん見せて、管理局として、あなたを逮……捕……す」
「ティ、ティア? どうし……ティア!? ……っ!? あ……れ? 」
ティアナさんが変態を逮捕しようと動き出すが、グラリと足元が崩れ、その場に倒れる。続いてスバルさんがティアナさんに近づくがスバルさんも何が起きたのかその場に倒れ、ピクリとも動かない。
「な……て、てめぇ何しやがった!? 」
「ノーヴェさんダメです!? 不用意に近づいては!? 」
仲間が倒れた事に逆上したノーヴェさんは私の言葉を聞かずに走り出す。止めようにも私はもう間に合わない。男が何をしているのかわからない以上どうすることもできない。
「ひゃっはー!! 」
「このっ……なっ!? 」
「ダメだノーヴェ下がれ!? 」
たった1人の男が現れただけでこの場は混沌。ノーヴェさんの姉であるチンクさんや他のご兄妹も冷静さを欠いているノーヴェさんの身を安じ、一斉に動きだす。
「え? ……あ……ヴィ」
瞬間、フワリと私の後ろから何かが風邪を切るように通り過ぎた。振り返ると、そこにいるはずの人間がいない。そう……ヴィヴィオさんだ。
彼女は変質者とノーヴェさんの間に割って入り、一体どのタイミングでノーヴェさんに下から撫でるように出していたであろう変質者の手を掴むと、真剣な顔で変質者を睨む。
「ハッ!? 何ィィィイイイイイ!? 」
「フフ、おじさん……なかなかいい腕してるね? 私今起きたから状況が呑み込めないけど……同じセクハラーとしておじさんの好きにはさせないから! 」
ヴィヴィオさんは変態の腕を掴んだまま、真横から男を蹴り飛ばし、ノーヴェさんと自分から遠ざける。さっきまで好意を丸出しにして私と戦っていたのが嘘のように、彼女は怒っていた。
「うぐぅぅ!? ……クク、ヒャハハ!! ひぃぃぃいいいやぁぁぁああああああ!!! なんだいお嬢ちゃん? 女の子の癖にセクハラ〜ぁぁ? 面白い事言うねぇ〜? 気に入った〜名前聞こうか? 俺はボルテぇぇぇるぅ! 栄光あるS◯Xし隊のメンバーにして自分の全てを見せる事に誇りを持つおとくぉぉおおおおおおおお!!! 」
「私は高町 ヴィヴィオ。おじさん達みたいなセクハラを悪用する人達を絶対に許さないと思ってる……だって私はみんなを笑顔にするセクハラを目指してるから! 」
「なっ!? 高町……ヴィヴィオ……だとぉう!? ……お前が……」
私はこの時嫌な悪寒を感じた。誰もが唖然として動けない中、変態がヴィヴィオさんの名前を聞いた途端、明らかに顔色を変えた。でもそれは恐怖などの感情ではない。言うなれば嬉しさ、喜び。まるで狙ったいた獲物が目の前に現れたかのように……変態はダラダラとヨダレを垂らし始め、気持ち悪さ全開でウネウネと両手の指を動かし始める。
「お前が高町 ヴィヴィオ……探していた……タぁぁぁあああゲッツかぁぁああああああああ!! ひぃぃぃいいいいやぁぁあああああああっはぁぁああああああ!!! 」
「っ!? く、草葉琶流セクハラ術……【突乳指】!! 」
「ひゃぁぁあああっ、あふん!? ……はぁ……ぁ〜」
ここでヴィヴィオさんが変態に何をしたかはとてもじゃないが言いたくもない。ただ、その手に速さや、正確さ。ある一部を指でピンポイントで突き刺した動きは……別の意味でズバ抜けてすごい事だ。やりたくはないが、実際……敵が襲って来ている状況であれをやれと言われたらおそらく無理だろう。何故なら、明らかにヴィヴィオさんの動きは洗練された技と呼ぶにふさわしい練度。それがどう言ったものかは別として、変態には効果抜群だった。敢えて言わないが、ある部分を押さえながら地面で悶えている。正直見ているだけで気持ち悪いのだ。
「くぅぅ〜……くそぉぉ……でも、クク。まだまだ未熟だ〜ね? お嬢ちゃん〜? 」
「え? ん……ふ……やぁ……あ、はぁぁん!? ……そ、そん……あっ!? 」
「ヴィヴィオさん!? 」
「S◯Xし隊……性闘術……【撫で殺し】! うひゃぁひゃぁひゃ!! 」
突然顔を赤くし、ヴィヴィオさんは息を切らせながらその場に座り込んだ。私は急いで側まで駆け寄ったが、よく見ると足がガクガクと震え、とてもじゃないがもう立てる状態ではない。おそらくティアナさんやスバルさんをやったのも同じ技だろう。何をされたのかはわからないが、股間を押さえながらトロけているヴィヴィオを見ればロクなことでない事は確か。
当然受けたくもないし、これ以上彼女にそんなものは受けさせない。
「ヴィヴィオ大丈夫か!? 」
「ノ……ヴェ? ……ごめん……やられひゃった……よぉ」
「馬鹿!? 私にはわかんねーよお前らの勝ち負けなんざ!? もういいからジッとしてろ」
「それ以上彼女に近づかないでください!! 」
「あ、待てアインハルト!? 」
「なんダァ〜? 俺っちと戦うって? お前よく考えろよ? セクハラ〜……ナメてんの? 」
「うっ!? ぁ……ぃゃ……こ、これは……」
「アイン……ハルトひゃん……らめれす……セ、セクハラに耐性のにゃい人が……セクハラーとたいひしたら…………」
ところどころ途切れ途切れで、ろれつの回っていない彼女の言葉はまさに的を射ていた。どうしてかわからないが、相手の気迫に私は呑まれた。身体中を舐められるような気持ち悪い感覚と悪寒。相手の目を見ているだけで、私は体の中をメチャクチャにかき乱されていった。ヴィヴィオさんと同じくその場に座り込み、私は両手で自分の体を抱きしめた。震えが止まらない。それと同時に体がどんどん熱くなる。息が切れ始め、気を抜けば昇天してしまいそうだった。
「アインハルトしっかりしろ!? 」
「ノーヴェ……さ、さん……わた……し………」
「ひゃっはー! たわいもない……さぁーレディ達ぃ〜そのセクハラ〜のお嬢ちゃんを渡して貰おうカァ〜なぁ〜イィィィィィハァァァアアアアアア!!! 」
「ら、らめ……ゔぃ、ヴィヴィオしゃん……っ!? ふぇ? …………」
「なっ!? 」
「くおっ!? お、おまっ……ぐあっ!? 」
得体の知れない変態の前に私達はなすすべがない。しかしそんな時、私達の方へ体を開きながら迫って来た変態と私達の間に1人の人間が割り込んで来た。ノーヴェさんも他の人も、どうやらその人には身に覚えがない。だが私にはあった。
忘れもしない。
「やっと……見つけた」
「なんでい!? 邪魔ものばっかり!? てめぇはナニモンだ!? ……ハッ!? お、おまっ、え? ……い、いや……待て……どうしてお前がここにいるんだ……何故……そんな筈は……なぁぁぁあああぜぇだぁぁあああああああ!? 」
「なにゃた……どうしれぇ? 」
「……少し遅かった。くっ……兄さんだけじゃなく……兄さんの大切な人達にまで……」
私達の目の前に現れた人間。それは私が探していた、あの夜私を負かした男の子だったのだから。
「絶対に許さないぞ、S◯Xし隊!!! ……僕に力を……この下郎を倒す為に!! パンツ・イン・ソウルシンクロ! でぇぇぇえええええりゃぁぁあああああああああ!!! 」
「しょ、しょれ……わ、わらひのパンちゅぅぅ…………」
短編・アリすず劇場
第2話《ストック》
最愛の人がいなくなってしばらく、すずかはアリサと下着の家に来ていた。誰もいなくなった家で、寂しそうに下着の帰りを待つ。
「ハッ!? そういえば下着くんストック持ってってない!? 」
「ストック? なんの話? 」
「下着くんに渡してあげてた私のパンツだよ!? それがあれば安心して眠れるって下着くん喜んでくれたから!? 」
「すずか……流石にドン引きよ……それは……」
下着ラブのすずかは今自分がどんなにおかしな事を言っているのか気づいていない。その為、アリサは親友を前にして本気で引いていた。
「え? アリサちゃんのだってあげてるよ? 何着か? うぐっ!? 」
「ちょっと!? いつの間に!? あ、ああああんた!? 私に黙っていつ渡してたの!? そ、そういえば最近下着が消えてた気がしてたのは」
「うん! 私のしわざ」
「ひうっ!? さ、最低よ!? ……ハッ!?……ちょ、ちょっと待って……下着がなくなってた時って全部洗濯だした時だったような……ま、まさ……か」
「えへへ、下着くんは〜脱ぎたてほやほやが好きな変態さんなんだよ? 柄は気に入らないけどアリサちゃんのも好きだって言ってたし」
「い、い、いやぁぁあああああああああああああああああああ!? 」
その日……すずかはアリサにいつも以上に怒られた。
to be continued…………
目次 感想へのリンク しおりを挟む