猫は空を翔ける (主任大好き)
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プロローグ〜始まりに向かう終わりの物語〜

完全な見切り発車。正直、どこから始めるのか、設定をどうしようか、それぞれまだ曖昧です。
それに、あれです。不定期更新です。ISの方がスランプに陥っているので、完全に趣味で息抜きしようかと思った結果です。

では、楽しんでもらえればと思います。


そこには黒がいる。

海の上でメインブースターを軽く噴きながら水面に浮かんでいる。

その付近には何も反応はないのか、その機体の搭乗者はコックピッドの中で静かに、これからの事に集中するかのように目を閉じていた。

 

      SYSTEM CHECK START

 

   HEAD:HD-HOLOFERNES・・・・・・・・・OK

   CORE:CR-LAHIRE・・・・・・・・・OK

   ARMS:XAM-SOBRERO・・・・・・・・・OK

   LEGS:XLG-SOBRERO・・・・・・・・・OK

   FCS:INBLUE・・・・・・・・・OK

   GENERATOR:GN-SOBRERO・・・・・・・・・OK

   MAIN BOOSTER:CB-JUDITH・・・・・・・・・OK

   SIDE BOOSTER:SB128-SCHEDAR・・・・・・・・・OK

   BACK BOOSTER:BB11-LATONA・・・・・・・・・OK

 

   R ARM UNIT:XMG-A030・・・・・・・・・OK

   L ARM UNIT:07-MOONLIGHT・・・・・・・・・OK

   R BACK UNIT:KAMAL・・・・・・・・・OK

   L BACK UNIT:KAMAL・・・・・・・・・OK

   SHOULDER UNIT:P-MARROW・・・・・・・・・OK

 

      SYSTEM CHECK ALL CLEAR

 

すると遠方から、なにやら甲高い音を出しながら高速で近付いてくる1機をレーダーが捉える。搭乗者である青年が振り向くと、後方数百m地点で着水して水面を滑る様子が映し出される。

近付いてきた機体は、青年の隣で止まるようにブーストを弱めるとちょうどの位置で横に並ぶ。

 

「よう、首輪付き」

「ああ」

「お前のところにも来たのか?」

「ああ。インテリオルからな」

「俺はテルミドールからだったなあ。まあ、間違いなく()、だろうな」

「寧ろそれ以外に考えられるはずがないだろうな。なんせあの(・・)インテリオルだからな」

 

オールドキングと呼ばれた男が口を三日月のように弧を描く。それに青年が続いて言う。

インテリオル・ユニオン、罠

オーメル、GAと並ぶ三大企業。それは、つい数ヶ月か前まで自身のオペレーターを務めていたが、既に袂を分かった人物の古巣である。

今でも覚えているのは、第八艦隊を相手取る時にAF(アームズ・フォート)スティグロと共に撃破する作戦だったが、作戦開始早々に裏切りこちらに向かってきたのだった。

所謂、『騙して悪いが・・・・・・』を一手に引き受ける腹黒企業、と言ったところだろうか。

そのため、インテリオル・ユニオンからカーパルス占拠のミッションの依頼が来た伝その時から、これが罠であることが解っていた。

 

『───人々の安全と世界の安定を望んでおり、その要となるのがこのミッションです。』

 

この言葉だ。

 

要は『インテリオル、いや、企業もとい全世界の敵として捉え、人類の脅威である貴方たちを今ここで殺しておきます。』

 

ということだ。

事の発端は数ヶ月前に、隣にいるオールドキングとともに出たクレイドル03を全て落としたことからだ。

1機に空に生きる者(高貴なる者たち)の2千万ほどの命が詰まった居住機。しかし、それは膨大な量の汚染物質を撒き散らし、清浄であった上空10000mの空域すら汚染し尽くされようとしていた。

それを止めるために青年はオールドキングともにクレイドルを5機落としたのだ。約1億ほどの人間が地上へ堕ちていく。その光景は壮大であり、過去に類を見ない大量殺戮であった。

しかし、それを赦さなかったのは自身たちが所属していたORCA旅団の団長、マクシミリアン・テルミドールであった。かつてカラードランク1、オッツダルヴァとして、天才的な機動で相手を翻弄し容赦のない攻撃で多くのリンクス屠り、数千mにも及ぶ巨大兵器を鉄屑へと変えてきた彼は、数回ほど青年とともに戦場へと赴き、勝利してきた。

しかし、企業がラインアークに対して直接手を下す時に、ホワイト・グリントと共に企業のネクストを迎撃した。初めに沈んだのは意外にもホワイト・グリントであった。リンクス戦争の英雄と呼ばれながらも、早々と墜ちたホワイト・グリントに大きな違和感を覚えながらも、2機を相手にすることになる。

次いで落ちたのはまたも意外にもランク1であるオッツダルヴァであった。オッツダルヴァの機動に対応できるようになった青年は、企業側のもう1機のネクスト、フラジールを狙うフリをして、後ろからオーバードブーストで接近するオッツダルヴァに向き直りアサルトアーマーを直撃させたのだ。そこからはスピード重視の機体同士で牽制のしあいで青年が粘り勝った。

そこから1、2年したころ企業ではなく、ORCA旅団からの依頼が舞い込んで来た。

 

『───これは先導だが、同時に事実だ。』

 

確かにそうだ。扇動以外の何者でもないが、それは確かな事実として、実際に問題が存在している。

 

『それをよしとしないのであれば、私の誘いを受けてはみないか?』

 

酔っている。ORCA旅団という勢力を率いるマクシミリアン・テルミドールという男は自分に酔っている、それが青年の第一印象であった。しかし、それは地上を見限り、宇宙(そら)への道を閉ざした企業の業を、自分たちが精算し、新たな道を切り拓く。それは確かな方法として青年の心に刻まれた。

だがそれは、直ぐに終わった。

 

『ORCAの連中、温すぎる』

『ああ』

『確かに志は大変素晴らしい。だが、あいつらは気づいていない。革命など、殺すしかない。アイツらのやっていることはただの延命措置だ。地上に引き摺り下ろし、衛星軌道掃射砲でアサルト・セルを払い除ける。それはいいだろう。だが、結局その先にあるのは生き残った上流階級が下の者を蔑み、差別からなる果てのない戦争だ』

『・・・・・・老害のせいで、クレイドル(高貴なる者)の連中はアサルト・セルどころか俺たちのことすら知らないだろうな。どれだけ地上が汚染され、今もどれだけの人間が死に、空をも侵食しているのかを空の連中は知らなければならない。コジマによるシュレディンガーの猫の原理を』

『ああ。戦いを、人類の種としての死をなくすのならサクッと一部分(老害)を殺すしかない。それ以外は全て無駄だ。結局は強い者(空の連中)だけが残り、弱い者(地上の連中)が死んじまうからな』

『・・・・・・何時決行だ?』

『ふっ、俺は何時でもいいぜえ?』

 

この瞬間に、数十億もの人類が殺される未来が決定した。彼らの言う未来の為の(いしずえ)として───

 

「そろそろ、か・・・・・・セレンもいるんだろうな」

「ああ。相棒の元オペレーターか・・・・・・いいのか?」

「俺が引くとでも思っているのか?」

「ふっ、ちょっとしたジョークだ」

「笑えないジョークだな。行くぞ」

 

2人は合わせたわけでもなく、同時にメインブースターを噴かせる。オールドキングの機体であるリザは青年の駆る機体、チェルカトーレより重量が大きく。後ろに控えるように着いてくる。

差が開き、施設内に入ると新たな声がコックピッド内に響いてきた。

 

「・・・・・・偽りの依頼、失礼しました。貴方がたには、ここで、果てていただきます。理由は、おわかり、ですね・・・・・・?」

 

ところどころ詰まっているところを見ると涙を流しているらしい。しかし、今ここで流すのは弱みを見せているだけだ。

それもそうなのかもしれない。懇意にしていただけに、青年の裏切りとも言えるその行動に一番驚き、悲しんでいるのは彼女なのかもしれない。

しかし、それを鼻で笑う青年と、隣の機体からイラついた雰囲気を漂わせるオールドキング。

彼らはここに来た時から既に相手を殺すつもりでいる。過去に仲間だったからだとか、そういった感情がない訳では無い。特に青年はこの5人と関係が深かったのだ。

 

「どうせ、確信犯なんだろう?話しても仕方ない」

「所詮は獣か・・・・・・お前たちを引き合わせた私の責任だが・・・・・・言葉も解散だろう。だが、ORCAの意思を踏み躙った貴様らはここで果てるがいい」

「お前とこうなるとはな・・・・・・残念だが、私の蒔いた種だ。刈らせてもらうぞ」

「戦争屋風情が・・・・・・偉そうに。選んで殺すのが、そんなに上等かね」

 

オールドキングがそう返す。怒気が先とは違い数段上に膨れ上がった。

 

「殺しすぎる。お前らは」

「互いが互いを裏切り、タイムオーバーするのが解らんのか?もっと賢いと思っていたが、存外無能だな・・・・・・」

「いいだろう・・・・・・貴様を真っ先に堕としやろう」

 

それらの言葉を皮切りに5人はオーバードブーストを展開。

青年は両背部に装備したKAMAL(スラッグガン)を展開する。

オーバードブーストを切り、降下してきた5人を待っていたのは、オールドキングのPOPLAR01(ハイアクトミサイル)だった。

 

「フンッ、こんな物でしか来れんのか・・・・・・大口を叩く割にッ!?」

 

牽制として放ったPOPLAR01を撃ち落としているオッツダルヴァにいつの間にか至近距離に移動していた青年が07-MOONLIGHT《レーザーブレード》を振るう。

しかし、さすがは元ランク1。気づいたオッツダルヴァは直ぐに回避する。

が、横薙ぎで振られたそれをクイックブーストで後ろに避けたことから、片背部のKAMALを放たれ、プライマルアーマーを剥がされる。

それを見ていたオールドキングはダメ押しとしてSAMPAGUITA(ショットガン)CG-R500(チェインガン)を斉射。プライマルアーマーが全て削られた。

 

「ッグ!」

 

オッツダルヴァがただでやられるわけもなく、ER-O705(レーザーバズーカ)でオールドキングへ当てる。

 

「下がれ、オッツダルヴァ!」

 

その声と共にウィン・D・ファンションがHLC09-ACRUX(ハイレーザーキャノン)を放って割って入るが青年は、それを知っていたかのように避けて2人の中間地点にたどり着く。

その瞬間、青年の機体は数秒緑色の輝きを纏ったかと思えば直ぐにそれが放たれる。アサルトアーマーは瞬時にステイシスとレイテルパラッシュを呑み込んだ。

 

「オールドキング」

「ああ」

 

素早い動きで外に逃げたオッツダルヴァをオールドキングに追わせて、青年は片背部のKAMALをレイテルパラッシュへ放つ。

 

「完全に削られた!」

「任せろ」

 

今度はローディーが目の前に現れる。その横にセレンがRG01-PITONE(レールガン)を構えている。

瞬時にそれを確認したと同時に、狙い振り切るために行動を起こす。

 

ドドドドドヒャウ!

 

そんな大きな音を立てていつの間にか、レイテルパラッシュの後ろへと回り込んでいた。

 

「・・・・・・は?」

「ウィンD、後ろだぁ!」

 

どちらの口から出たかわからない、呆然とした声が聞こえる。

離れたところにいたこともあってか、セレンはすぐに反応することが出来た。しかし、この場で一番驚いているのは彼女であった。

青年が使ったのは、俗に言う二弾クイックブーストと言われるものであった。

それは、リンクス戦争時代に特殊なクイックブーストの技法が噂をされた。それをよく使っていたのが、『天才』と評されていたジョシュア・O・ブライエンである。

最近まで確認されていたのはリンクス戦争時にそれを破り、『アナトリアの傭兵』と言われていた、ラインアークに所属していた男だった。

使える人物が限られるそのブースト方法を今まで使ったところを見たことがない相手が使用するのは驚くのも無理はないだろう。しかもそれだけでは無く、半端な軽量機体や中量機体ではなく完全な軽量機体のそれだ。目にも留まらぬ速さを体現したそれは、最早目で追う事は愚か、レーダーも本能できなかったようだ。

 

「っぐあ!」

 

ただでさえプライマルアーマーを削るための凶悪な武器で放たれたKAMALのそれは32発というとんでもない数を以て、ウィンDの機体に直撃する。伝わる衝撃が大きくないわけがない。片背部だけでそれだけの威力だったのだから両背部でなくて良かった、なんてことは無い。いつの間にか背部へ回り込まれていたウィンDは、青年の左腕で機体を切り裂かれる。残っているAPはほぼ底をついているはずだ。

それを見てオールドキングに任せるために、瞬間的に戦いを見る。

 

「ぐっ・・・・・・ORCAを、汚した貴様ら、に・・・・・・」

 

ちょうどのところでオッツダルヴァをPOPLAR01で撃ち落としところなようだ。

 

「オールドキング、ウィンDをやってくれ」

「分かったが、こっちも引っ付かれてる」

「ッチ、今から行く」

 

その言葉を残してその場を離脱しようとすると、後ろの方から殺気を感じる。脊髄反射のの要領で無意識に避けると、横をローディーのGAN01-SS-AW(武器腕:バズーカ)の2発が通り過ぎる。青年は冷や汗を垂らしていると、機体が一瞬だが止まるほどの衝撃が走る。

原因はなにかと考えると、すぐに分かった。それはセレンの持つRG01-PITONEの衝撃によるものだった。

APを確認すると、4000程減っている。残りのAPは19000台だ。小さく舌打ちするとともに、二弾クイックブーストによりあとの攻撃を躱すと、離れていた場所で戦闘していたオールドキングと合流した。

 

「来たか」

 

オールドキングはそう呟くと向き直り、レイテルパラッシュへとLABIATA(アサルトライフル)とPOPLAR01を数発ずつ放つ。

オールドキングはレイテルパラッシュへと向かっていく。青年はそれを邪魔させないようにと3人に両背部のKAMALを当てていく。

 

「クソッ・・・・・・お前らに・・・・・・カハッ」

 

2人目がやられた事により、完全に3人の攻撃対象が変わった。青年からオールドキングにだ。

だが、オールドキングもやられない。機体の速度がそこまで出ることは無いが、フェイクを上手く使い避けていく。さらには、POPLAR01や、SAMPAGUITAによる牽制で三人が避けている間に遠くに離れたりしている。

 

「首輪付き、早く殺してくれよ」

「なら、もっとマシな武器使えよ」

 

そう軽口を叩き合いながら、プライマルアーマーを根こそぎ剥ぎ取ったローディーの後につく。

こちらを牽制しているセレンはRG01-PITONEとLR02-ALTAIR(レーザーライフル)を向けて放つ。しかし、致命的な前者の攻撃を避けて被害を最小限に抑える。

一方で、リリウムは2つに対しての遊撃であった。ローディーの駆るフィードバックがリザを狙って、セレンのシリエジオが青年を狙う中でどちらも対処できるようにだ。

今は青年がローディーの背中にいる状態なので青年に向けて067ANLR(レーザーライフル)063ANAR(アサルトライフル)を撃つが、悉く避けられる。

フィードバックとの距離が次第に潰され、セレンが撃ったRG01-PITONEを避けた瞬間、青年の機体の左腕が紫色の光が(きら)めいた。その場から消えるように強い光を放つと同時に、フィードバックへ突っ込む。

 

「っぐぁぁ・・・・・・」

 

プライマルアーマーが全て削られていたためか、ブレードを当てられたところが音を立てて溶けていく。コックピッドであったであろう部分は跡形もなく溶けて消えている。

 

「貴様ぁぁぁぁ、何故裏切ったぁ!」

「・・・・・・裏切る?何を今更」

「何故あなたが・・・・・・あんなに人類の未来のために戦っていたあなたが何故!?」

「・・・・・・チッ」

「首輪付き、退いてろ」

「了解した」

 

青年はただただその行為にイライラするだけだった。ここは既に戦場である。既に3人は屠ったのだ。なのに、今もまだ説得が出来ると考えている。それがどうしようもなく、青年をイラつかせる。

オールドキングと短く言葉を交わすと、いた場所から離れる。

オールドキングはそれを確認すると同時に、機体の周りに翠の光を纏う。それを見た瞬間、2人はできるだけ離脱を図ろうとする。

 

カアオッ!

 

半径約200m強を包み込む翠の光は破滅を以てその場を喰らい尽くす。リリウムは若干範囲に入っていたのかカメラ系統に乱れを起こし、必要以上に離れていた。

離脱に成功していたセレンはリザにRG01-PITONEと向けLR02-ALTAIRを斉射。全て当たったのか、火花激しく散っている。

 

「チッ、当たりやがって」

 

青年はリリウムの動きを見ていると、あと数発で動かなくなるオールドキングに向かおうとクイックブーストを噴かせようとした瞬間、先ほどと同じく動きが止まる。

 

「・・・・・・チィッ!」

「今だ!殺せ!」

 

セレンが叫ぶと同時にリリウムは両腕のライフルを連射する。それらは先ほどのセレンと同じですべて命中。支援機としての仕事を十二分に発揮したのだった。

 

「すまねぇな、相棒・・・・・・どうやら、俺は、ここまでの器らしい・・・・・・殺してるんだ、殺されもするさ・・・・・・良かったぜ、お前とは・・・・・・」

「・・・・・・ああ」

 

オールドキングは死に際にそう残す。だが、青年はそれに対して背筋が凍るような雰囲気を以て短く頷くだけだった。

オールドキングの言うように相棒と言うのは同じ思考の下、利害が一致しただけの間柄だ。何もそんなに声を出しな悲しむどころか、何の感情も湧いてこない。

 

「あとはお前だけだな」

「・・・・・・貴方を、排除させていただきます」

「・・・・・・お前らにできればな」

 

3人は同時にブーストを噴かせる。

青年に向かっていく弾は悉く避けられる。タイミングをずらしても、今まで目にしたことのない機動で一瞬のうちに回り込まれて手痛い一撃を喰らう。

 

「・・・・・・切れたか」

 

そうつぶやきを漏らすと、今まで主に使っていた両背部のKAMALをパージする。腕部武器のみとなったが、左腕には弾数など関係ない07-MOONLIGHT、右腕には弾数1152発のXMG-A030(マシンガン)を携え、こちらに向かってくる。

 

バララララララララ!

 

と連射する音とクイックブーストを噴くが施設内に響く。

それはセレンたちにとって悪夢と言っても過言ではなかった。なぜなら、横でXMG-A030の音が響いたと思いそちら側を向くと既に後ろに回り込まれているのだからだ。

 

「クソっ!なぜお前がその機動ができる!」

「・・・・・・今聞く言葉ではないな」

 

そう言うと同時に、アサルトアーマーをセレンに直撃させる。カメラ系統がやられたセレンを置き去りに、リリウムへと青年は向かう。

未だAPは15000弱。既に2人のAPは10000を切っている。それに、一撃が怖いような武器は持っていない。

そう判断した青年はリリウムの後ろへ回り込み07-MOONLIGHTを振るうために、膨大な量のエネルギーをブースターへ回す。二弾クイックブーストによって、前方へと推力が増した勢いのまま、反応する前に期待に直撃させた。足を切り落としてAPが切れたのだろう。

その勢いで上半身部分だけ残った機体は、水上ではなかったためか、地面に転がるだけだったがコックピッドの中で転がった時にぶつかった箇所にはリリウムの血がへばりついているであろう。

それでも───

 

「最期まで、─────様を・・・・・・お慕い、して、おります・・・・・・どうか、来世では・・・・・・いっ、しょ、に・・・・・・」

「っ!チィッ!」

 

反応が消えた。

何故か、今になって、名前を呼ばれて初めて胸が痛む。

だが、青年は意識を切り替える。成し遂げなければならない。何故なら、自分が決めた、全人類に怖れられようと、疎まれようと、恨まれようともやり遂げねばならないことがあるからだ。

そして、数分後には青年が動けば終幕となる状況へとなった。セレンは機体の全ての弾が切れたのだ。アサルトアーマーを発しようにも、光がともった瞬間撃たれて終わるのだから。

 

「当然か・・・・・・私が、見込んだのだからな。お前に、やられるのも悪くない・・・・・・」

「・・・・・・」

「なあ、教えてくれ。何故、あんな事をした?」

「・・・・・・俺がORCAに入った理由は、この汚染された大地(地球)から人類の開放を願い、宇宙への進出を推し進めるためだ」

「それが、何故・・・・・・?」

「温いんだよ。終わらせたとしても、結局は残った膿(老害)のせいで人類全体が救われることは無い。なら、まずは要件を飲ませることを重要視しなければならない」

「・・・・・・他に方法、があった、んじゃないか?」

「・・・・・・本当にそう思うのか?それなら企業間での経済戦争は起きないし、汚染を広げながらも生きようと話ないだろう。結局は企業もORCAもやろうとしていた事は人類種の延命措置に過ぎない。今を生きるか、未来に生きるか・・・・・・それでも戦争は続くだろう。人々はコジマによる汚染を知らない。なら、その元凶を断たねばならない」

「なら、私たちも、お前も・・・・・・」

「・・・・・・俺が自害をするわけないだろう。でなければ、今まで殺してきたやつに対する最大の侮辱だ。俺は恨まれる道を選んだけだ」

「そうか・・・・・・無理は、するなよ・・・・・・ではな、─────」

 

小さくだが、確かに聞こえた自分の名前。それは青年に深く刻まれた。

 

(・・・・・・あんたまでも、まだその名で俺を呼ぶのか・・・・・・)

「ああ・・・・・・ではな」

 

その言葉と共に腕部のXMG-A030をコックピッドに向けて数発撃ち込む。

コックピッド周辺は蜂の巣の如く穴が空いていた。

それを確認した青年は、今まで殺してきた相手に感謝の念を送る。今となってはおかしなことではあるが、その過去があり今の自分の答えを出してそれを行動に移すだけだからだ。

既に、青年の持つ武器は左腕のブレードだけである。彼は、首に掛かっているロケットを握り締めながら2つ機体を悲しげな目で見つめたあと小さく呟いた。

 

「───ありがとう」

 

その言葉をカーパルスに残して消えていった。

それを最後に、カーパルス施設内は静寂が空間を支配していた。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「これが最後の目標、だな・・・・・・っ!」

 

そう呟きを漏らす青年は、AMSの連続接続により脳の端まで広がり続ける痛みに歯を食いしばる。

目標のクレイドルを全て落として地上へと急下降していく。10000m以上の高さからフリーフォールを行う青年は、カメラから見えるその景色を見る。

海や湖は水面が上昇したものの昔と相も変わらず、陽の光を尚も受けて自らを蒼に輝かせる。山や木は砂漠化は未だ広がり続け数も少なくなって入るが、依然として必死に生きようとしている。上を見ると、無限に広がる空は先にある筈の大きな宇宙を望むかの様にまだ青く光り輝いている。しかし、生物は見当たらない。それでも───

 

あぁ、やはり汚染されていようとこの景色は綺麗なままだ。

 

そんな想いが青年の心を占める。1000mを切ったところでメインブースターを垂直方向へ噴く。

すると、降り立ったところで新たな反応が幾つか感知された。それは、青年の中で1、2番を争うほど仲の良かったマイブリスを駆るランク7のロイ・ザーランドと、セレブリティ・アッシュを駆るランク28のダン・モロであった。

 

「おいおい・・・・・・こいつぁ勘弁してくれよ。マジできやがったか・・・・・・」

「兄弟!最近見ねぇと思ってたらお前・・・・・・!何でこんなことしたんだよ!?」

「ダン、やめろ。もう言葉だけでは解らねぇよ。既にトップ4と歴戦のリンクスを殺ってんだ」

「・・・・・・」

 

青年は07-MOONLIGHT以外のものは積んでいない。機体のダメージは整備が最低限しか出来ていないためか、APはカーパルスの時より、5000ほど減って既に10000を切っている。

青年はブースターを噴く。重量機体のマイブリスとセレブリティ・アッシュは一拍遅れて動き出す。

 

「クソッタレめ・・・・・・ダン、頼む!」

「ちっくしょぉぉ!」

 

ロイの声に大きく吠えてCHEYENE01(分裂ミサイル)を放つ。それは4つに分裂すると、それぞれが青年の機体を追う。それを全て避けるために動く青年にロイは追い討ちをかけるようにVERMILLION01(高速型ミサイル)を放つ。それと同時にGAN01-SS-WGP(ガトリング)が火を吹く。

しかし、1人で殆どの多くのネクスト、AF(アームズ・フォート)を潰してきた青年には通用しない。

青年はミサイルは全て避け、連続するガトリングの弾を被るダメージを最小限に抑えるために二段クイックブーストを使い回り込む。

 

「のろいな・・・・・・」

 

そう呟くと同時にマイブリスの後方上空から二段クイックブーストにより前方への推力を上げたうえに、紫色の光を発現させて踏み込むための加速も加わった。まるで姿を置いてきたかのような速度でマイブリスの目の前に現れた青年の機体に反応できるはずも無くブレードの直撃を受けてしまう。

 

「マジかよ・・・・・・こりゃきついぜ」

 

衝撃により瞬間的に動けなくなったマイブリスを置き去りに2人の攻撃範囲から逃れた青年は一瞬の隙も見逃さないように飛んでいる。

 

「クッソォォォ!やらせるかよ!」

 

ダンはセレブリティ・アッシュの左腕の047ANNR(ライフル)と先の右背部CHEYENE01を放つ。

ダンは連続してその2つを放ち続ける。一発の大きいロイに任せるために。

ロイもそれを理解し機体を動かす。左背部のDEARBORN03(近接信管式ミサイル)を放つ。

先程から2人の猛烈なミサイルとライフル、ガトリングによる攻撃により攻めあぐねていた青年は、それを捨て速度により振り切ることを決めた。ミサイルが正面から来るがDEARBORN03だけには当たらないように斜め下を潜るようにブーストを噴く。

それを待っていたかのようにロイのガトリングを真正面から数発喰らうが意に介せず、突っ込む。狙いはロイではなくダンに絞ったようだ。

突っ込まれたダンは懐に入られたら最後ではあるが、決死の覚悟を決めてロイに向けて叫ぶ。

それは、その一瞬だけは、彼の憧れた存在である機体の名前を表すようヒーローのように輝いていた。

 

「あんたァ!俺に構わず撃ってくれ!」

「チィ!済まねぇなぁ!」

 

ダンの視界から青年の機体が消えた。しかし、それを合図としてダンは前にブーストを噴かせたのと同時に右腕のEB-R500(レーザーブレード)が光を発する。それと同時に前方へ加速したダンは青年の攻撃を躱したのだった。

ダンは慢心しそうになる気を抑えロイへ叫ぶ。その瞬間だけは、彼の機体の名前である、とあるヒーローのように輝いて見えた。

ロイも解っていたのか躱したと同時に青年に向けて右腕の双発であるHLR09-BECRUX(ハイレーザーライフル)を放つ。

 

「チィ!」

 

ブレードが避けられたため空振り、体勢を整えるのとブーストを噴かせるための間の時間により、青年の機体が一瞬硬直する。その間に双発のハイレーザーの片方が直撃した。

青年の機体の初めてダメージらしいダメージを受けた瞬間だった。

しかし、動き出した青年の機体は先程とは違い、一切無駄のない起動を行い、攻撃を二弾クイックブーストにより避け切る。数分後にはロイは機体のマイブリスとともに青年により蒸発させられた。

 

「クッソォォォ!お前は、お前は何でそうなっちまったんだ!少なくとも俺はお前に憧れてたんだ!俺より経験が少ないのに活躍していくのを見るのは俺の支えだったんだよ!お前とこなしたミッションは俺も堂々と動けたんだ!お前は俺のヒーローだったんだよ!なのに・・・・・・こりゃあ、あんまりじゃねえか!」

「・・・・・・押し付けるなよ。俺はヒーローじゃなかった、 ただそれだけだ。俺は俺の答えのために動いただけだ」

 

最後の力を振り絞って047ANNRを連射するが、いつの間にか側方に回り込まれたダンは機体と共にを横一文字に切り裂かれた。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「・・・・・・これで終わり、だな。最初に、オールドキングと決めていた墜す対象のクレイドルは全部やった。最後のリンクスたちを殺した。あとは・・・・・・この衛星軌道掃射砲が発射するまで、か・・・・・・」

 

場所は"衛星破壊砲エーレンベルク"である。

青年は、数ヶ月前までの行動を思い出していた。カーパルスから戻った青年は07-MOONLIGHTだけで対象のクレイドルを全て落とした。落としたあとはそのままロイとダンと戦闘に入ったが、持てる力を以て2人を下した。

その際、機体も直す者がいるわけが無いので依然ボロボロのままである。

今、青年の目の前には衛星軌道掃射砲が自身の存在を示すかのようにエネルギーの充填が行われている。

青年は、残った一部の人類へ自身の答えを提示した。衛星軌道掃射砲により、アサルト・セルを払い除け、宇宙への道を切り開くように。

 

「もう既に3機は止まらない、な。膨大なエネルギーに耐えられるわけがないだろう・・・・・・」

 

まるで、他人事のようなつぶやきを漏らし着々とエネルギーが溜まるそれを見る。

数分後、発射準備が整ったそれは発射するためのエネルギーが本体から漏れ出している。

 

「やっとか・・・・・・これでORCAの連中とオールドキングも救われるな」

 

すると、視界の端のレーダーに新しい反応が生まれた。見るからに、反応の大きさはネクストである。しかし、企業のミッションで青年を殺しにきたネクストは全員の屠ってきたのだ。

初め、新しいリンクスかとも思っては見たが、この状況下ではありえない。すると、直ぐに青年は1つの可能性が頭に浮かぶ。それは、あの(・・)時に早々とご退場となった人物だけだ。

 

「・・・・・・ハハハハハハハハ!やはり生きていたか、ホワイト・グリントォ!」

『言わなくてもわかりますね?』

 

青年の狂った歓喜の声にホワイト・グリントのオペレーターであるフィオナ・イェルネフェルトの冷たさを感じる声が響く。

次いで、ホワイト・グリントは青年の機体の真正面に来るように滑るようにして止まる。

 

『・・・・・・幾つか、聞きたいことがあります』

「・・・・・・」

『何故、ORCAの理念に背くようなことをしたのですか?』

「・・・・・・今更何を言っても過去がかるわけでもあるまい。わざわざそんな話をしようとしに来たのか?無駄なことだな」

『答えてください。お願いではありません。これは、命令です』

「聞くとでも?」

『そうですか・・・・・・貴方の今の状況は誰がどう見ても不利ですが?』

「あ?いらん心配なんざするだけ無駄だ・・・・・・俺たちが今からするのは生きる死ぬかの殺し合いだ」

そんなもの(07-MOONLIGHT)だけでホワイト・グリントに挑むとでも?』

 

その言葉を掛けると、時間をかけて答えにならない答えが返ってきた。少年が友だちに自慢するかのような雰囲気を伴い、青年は聞かれたことを純粋に嬉しく思いながら話す。

 

「・・・・・・俺の、最高の相棒なんだよ。だから誰がどう言おうとこれは俺の機体だ。ガタが来ちまったが俺はこいつと果てれば、それでいい」

 

青年がそう言うと、彼の機体は各所から出ていた火花が一際大きく弾けたと思ったら直ぐにそれは治まった。

それはまるで、青年の機体が意志を持ち彼自身のことをお互いにパートナーと理解しているような、彼ら山猫(LYNX)の由来となった繋がる者(LINX)という言葉を体現していた。

 

『そうですか・・・・・・では、さようなら』

 

フィオナは短く別れを告げる。それと同時にブーストを噴かせて急加速を行う。

既に青年のAPは6000を切っている。その上、整備が行き届いていない動力系統の周りは既にボロボロとなり、今でも動いているのが不思議な程であった。

それでも青年は、圧倒的な速度にものを言わせて加速を行う。

 

「・・・・・・ッ!」

「・・・・・・っアァ!」

 

それは芸術であった。見ている者がいれば誰もが一様に口を揃えてそう言うだろう。

白が両腕の063ANAR(アサルトライフル)と051ANNR《ライフル》を斉射する。それを必要最低限の機動で全て回避し、急接近して左腕から紫が出たかと思えば儚げに消えたかと思えば、白の近くで紫が迸る。

 

   AMS深度120%───使用停止を推奨

 

コックピット内に無機質な声が鳴り響く。

ああ。この声がどれだけセレンの声なら良かったか。リリウムの支えがあればどれだけ良かったか。ロイとダンがいればどれだけ楽しかったか。

そんな思いが幾度となく頭に過ぎるが、青年は総てを振り払い動き続ける。

 

『止まりなさい、このままでは貴方は死んでしまいますよ!』

「・・・・・・そんなこト、この場にいる、時点で・・・・・・いや、生まれてから、ズッと死を覚悟して、生きてキタんだ。今更、ナんだヨぉ・・・・・・」

 

そろそろ限界が来ているのだろう。この数分間の命のやり取りで、もう既にジェネレーターのKP機関が働かなくなってしまっているためオーバーブーストは使用できず、プライマルアーマーが既に働いていない状態だ。

 

「ッぐ・・・・・・いテェなア。死ヌ、ほどいテェし・・・・・・今スぐヤめテェよ。ケド、俺はどこマで行っテもやっパりリンクスなんだ。それ以上デモそれ以下でモねぇ・・・・・・」

 

脳にも限界が近づいているのか、既に言語にも粗が出てき始めた。

しかし、ホワイト・グリントの搭乗者とオペレーターであるフィオナはその言葉を一字一句聞き逃さないようにする。

 

「ORCAノ連中は、温すギ、たんだ・・・・・・アの、ママデハ、結局救わレナイ者が多すぎル。一度、人類ハ弱くならナクテはならナイ。ある者ガ、完全ナ敵となリ人々が手ヲ組ム。そレが故ニ、戦イコソが人類ノ可能性なのかモしれン」

 

フィオナたちは青年が言わんとしていることが理解出来た。あのままでは結局、報われない者が多かった。

それでも、彼女は納得出来なかった。いや、したくなかった。力を持ちすぎた故の解決方法であり、事実だけを見るとすれば大量殺戮というものしか残らないのだ。

 

『それでも、不必要にクレイドルを落としすぎです!人類のためというのならば、その不必要なまでの人類は救うべきでしょう!』

「不必要だと?それはナイ。逆に聞くガ、ORCAのしヨウとしていタことはクレイドルを墜すコトだ。そして、ソレに賛同シタ貴様らモ、俺と同ジ穴の狢だ」

 

フィオナは彼の言いたいことがすべて理解出来た。結局、あの場で沈黙した以上その人類を殺したのは自分たちの責任でもある上、それから逃れようとしていることに過ぎないということを。

そして、彼は人類の最低の負の遺産を誰かがやらねばならなかった多くの犠牲を強制的に払わせ、自分たちを共通の敵と認識させることによって、多くを助けようとしているのだ。

 

「俺ガ、この道を選ンだ以上、既に言葉ハ意味を成サナい・・・・・・アト2分で全てが終わル。サア、最後だホワイト・グリント!俺が生きタ証ヲ・・・・・・リンクスとしテ生キた証を・・・・・・最後に残サセてくれ・・・・・・!」

 

悲痛とも歓喜とも憤怒とも狂気とも取れる言葉をを合図にして2人は自身を奮い立たせる。相手の全てをここで踏み潰すために。

 

───そして、自身の答えを成就するために。

 

まるで芸術のようだ、この場に人がいれば必ずそう言うであろう光景が目の前にはあった。白の右腕の051ANNR(ライフル)と左腕の063ANAR(アサルトライフル)が火を噴けば、黒は光を連続で発し明滅する。すると、白の近くで紫の光が迸る。

 

「・・・・・・チィ!」

 

ホワイト・グリントの搭乗者が焦っているのか珍しく舌打ちをする。基本的に喋ることがない彼は任務中であろうと殆ど声を発さないどころか、舌打ちすらしない。

 

「っアアアアアアアァァァァァァァアァァアアアアアア!!!」

 

黒は咆える。自分を潰さんとする白に向かって。

白はそれに気圧されたのか、動きが若干ズレた。勝利に飢えた青年は、殆ど条件反射の要領で腕の紫の光を纏う。それは少ない生命であると解っていながらも自らを煌めかせる箒星のようで。

それはホワイト・グリントの搭乗者とそのオペレーターのフィオナでさえも一瞬見間違えるほどの眩さを以て、左腕の07-MOONLIGHTを直撃させた。

ホワイト・グリントのPA(プライマル・アーマー)は全て消え去ったと同時に、ホワイト・グリントに致命的なダメージを与えることが出来た。

既に残り時間は30秒を切っている。

白は既に虫の息寸前の黒を潰せないでいる。

 

「ソウだぁ!ホワイト・グリントォ!俺たチハもウ必要なインだヨォ!あトハ、残された人類ニ未来ヲ託すだけダ!」

 

黒は嗤う。世界に響くように、彼という存在が残るように。

そして、多くを助けるために多くを殺した自分を歴史に、この世界に刻むために。

 

『もう戻って!貴方だけでも戻って来て!』

 

フィオナが叫ぶ。

だが、ホワイト・グリントを駆る搭乗者はそれに答えない。

彼の中の答えは青年と同じだった。彼の独白を聞いた。そこには、自分たちができなかったことをした青年への賞賛と同時に嫉妬もあった。だからお互いがお互いを認める。

それ以前に、宇宙への道を妨げるような自分たちは、人類にとって既に用済みなのだ。それを理解し、お互いがお互いをリンクスとして称え合い、殺し合う。

既に、彼らは何も聞こえていない。全ては目の前の敵を潰すために。

 

「・・・・・・ッ!」

「アアアアアア!」

 

白は周囲に緑を纏い、黒は左腕に紫を纏う。両者がぶつかり会う前に青年は口を開いた。

 

「・・・・・・アリ、がとウ・・・・・・答えの探求者(チェルカトーレ)・・・・・・」

 

そう小さく呟いた青年は誇らしげに笑っていた。自分の出した答えを実行することが出来たのだから。青年は想う。今を生きる人類と、未来に生きる人類、そして、人類の種としての存続を願った彼は想う。

 

世に・・・・・・人類に・・・・・・平穏の、あらんことを・・・・・・

 

それと同時に、衛星軌道掃射砲は莫大な量のエネルギーを射出し、漏れでたエネルギーは衛星軌道掃射砲をかき消すほどの熱を発した。

当然、青年の乗っている機体とホワイト・グリントが乗っている機体が耐えられるはずもなく、目の前は全て白に染まったのだった。

こうして、人類は数十億にも及ぶ大きな犠牲とともに宇宙へと発展を遂げていったのだった。

 




どうでしたか?楽しめていただけたらと思います。
さて、ストライクウィッチーズ要素は何処から出てくるのか・・・・・・


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こうして山猫は魔法使いへ

世の中は総てエゴの塊だ

総ての者が個人のエゴによって形成される

本来の意味の『自己、自我』なんていうのは言うまでもなく







だから祈り続けるのだ。幸福を

だから願い続けるのだ。平和を

それなら世界を救って見せよう

そのためならば自身を切り捨てよう

そのためならば絶対悪にすらなって見せよう

そうした先に答えがあるのなら


















────だからこそ、そのエゴが統一された時・・・・・・

────だからこそ、戦いこそが(・・・・・)人類の可能性(・・・・・・)』なのかもしれない


目が醒める。

 

「ッグ・・・・・・ガッ、カハッ・・・・・・ッ!」

 

動こうとしたことによって急に襲い掛かってきた身体の節々に広がる激痛。それによって、霞んでいた意識がはっきりと冴えわたる様に澄んで行くのが感じられる。

青年のいる空間、そこは何処からかほんの少しだけ光が漏れてきているのか、自身の周りの色がほんの少しぼんやりと見える状態だ。

しかし、目を開かなくてもわかるのは身体の至る部分が何か粘着質のある物質に塗れていることだ。そんな彼の視界はほぼ紅に黒が混ざったようなどす暗い色しか無い。所々に色の斑があるのがとても気にはなるのだが。

 

(大分、昔に・・・・・・セレンから、聞いたことが、あるな・・・・・・昔の、宗教にあった、地獄という、概念がある、とかなんとか・・・・・・まあ、それもそうか・・・・・・)

 

そんなことを思いながらも、彼は現状を把握しようと努める。

───視界はギリギリ見えるレベルで周りが見える。

───身体は動かそうとすると激痛が走り立つことはおろか腕すら動かせない。

現在の自分自身とその周囲の情報をある程度把握したところで、今度は自身の身体の情報を正確に把握することにする。

リンクスになる際に搭載された後付けの機能であるそれを起動させる。

 

    CONDITION CHECK START

 

  神経組織、筋組織ともに重大な欠損の確認・・・・・・修復率29%

  内蔵組織に複数箇所に致命傷を確認。生命維持の為、内蔵組織の修復を実行・・・・・・修復率21%

  ・・・・・・総修復率31% 最低、各修復率が65%を超すまで行動を非推奨。

 

    CONDITION CHECK CLEAR

 

淡々と頭の中に流れてくる情報の羅列を読み上げていく。

そうして漸く自身の置かれている現状を理解する。粘着質のある物質は自身の体から流れ出た血液なのであり、周囲のどす黒い紅に斑があるのも自身の血液が大量に付着したものなのだ。

一般的な人間であるのならば即死しているはずの大量の出血や、致命傷のような傷は彼と同じ存在である【|山猫(リンクス)】にとっては中途半端な傷であるらしく、ただ只管に苦痛が長く続くだけなのだ。それもそうだろう、医療用ナノマシンや、強化外骨格、臓器や他の人体を構成する上でネクストの機動に耐えられるように改造した身体は、戦闘中に致命傷を負うこと前提としているのだから。

しかし、ここまで自分の現状とこの場における現状を把握してしまうと殆どやることがなくなってしまった。周囲には未確認熱源反応は存在しないし、急に反応する気配もない。

 

「ククク・・・・・・さてッ・・・・・・どうした、もんか・・・・・・ねぇ」

 

既にクレイドルは総て地上に降りた上に、ホワイト・グリントとの戦闘の最後に起こった衛星軌道掃射砲エーレンベルクにより、アサルト・セルは払い除けたのだ。

どういうことか、多くのエネルギー漏洩による熱エネルギーの奔流に晒されながらもなんとか生き残ってしまった。

ならば、『現在(いま)を生きる人類のため』という大義を背負ったウィン・D・ファンションと、『未来を生きる人類のため』という正義を掲げたマクシミリアン・テルミドールとORCA旅団員の総意を打ち砕き、『人類の種としての存続』を答えに出した自分が、彼らの代わりにここから人類の行く先を見届けなければならない。

 

「人間が・・・・・・人類の・・・・・・天、敵か・・・・・・クククッ・・・・・・皮肉が、利いてるな」

 

そう。それが、【人類の天敵】とまで言われた彼の罪の業であり、使命でもある。

 

「成し遂げた、か・・・・・・セレン、すまねぇな・・・・・・俺は・・・・・・まだ、逝けねぇ、な」

 

カーパルス占拠という、リンクスとして受けた最後のミッション。そして、最後の最後に殺した恩人であり、師であり、親でもある人物を想う。

 

「リリウム・・・・・・悪ぃな・・・・・・お前、との・・・・・・時間は・・・・・・幸福だった。・・・・・・来世が、あれば・・・・・・なぁ」

 

自らの手で、いっときとはいえども恋仲にあった人物を殺めた。元々、リンクス同士で懇意にすること事態推奨されなかった。

いつ死んでしまうのか、いつ裏切られ淘汰されるのか、老害の策略によるものなのか、はたまたただの偶然か・・・・・・そんな世界で生きているのだ。そんな中、虚像だらけの世界の中で唯一自分で見つけた本物(他人への愛)の感情。

今ではこの大地も、大海も、大空も汚染されてしまったが、それでも未だに美しさを忘れさせないこの星が愛おしいし、セレンやリリウム、その他の友人だった者たちと別れなければならなかったこの星が憎い。

 

「俺の、役目は・・・・・・この星で・・・・・・朽ちる、まで・・・・・・」

 

ふっ、と目を閉じる。

いくら大量虐殺をしたところで所詮仮初の悪に染めただけ。当然、罪悪感はあって当然のことである。しかし、それ以上に自身の答えを貫いて見せた事への誇りがある。正反対とも言えるその感情は複雑に絡み合いながら彼の心を占め、義務感を(かたど)り続けている。

 

「チッ・・・・・・血が、ちっと・・・・・・足り、ねぇ・・・・・・か?」

 

自嘲気味に笑う。流れ出る血はある程度収まりつつあるが、如何せんコックピット内の見た目通り出血が常人の比ではない。

人などいないだろう、そう予測しつつ念のために周囲への警戒をさらに強める。すると、遠くの方に幾つか生体反応が湧いたように出たのだ。

 

───何故、こんな所に?

 

その疑問は彼にとって当然だった。何故なら、動物は急激に汚染されていった地球に対応することが出来ずほぼ全ての動物が死に絶えた。さらに言えば既にアサルト・セルは衛星軌道掃射砲(エーレンベルク)により払い除け、発射と同時に各地に全人類を宇宙へと運ぶ宇宙船を待機させていたのだ。

あれほどの膨大な熱エネルギーによる爆発。周囲はきっと消滅し、熱によりあの湖は水蒸気爆発の嵐となっていてもおかしくはない。故に、『アサルト・セルを払い除けた』という事実は全人類へと伝わったはずだ。よって、彼らは人ではないという事になるのだ。

つまり、仮定の話だがネクスト(チェルカトーレ)の扉をこじ開けられでもされたなら自身の命は未知の生き物の判断に左右されるのだ。

 

「クソッ・・・・・・まだ、見届けて・・・・・・ないんだが・・・・・・なぁ」

 

そう言いながらも自嘲気味に口を歪ませてその時を待つ。どうせ、ネクストが動かないどころか大怪我を負いながらも生きているだけの今、自分には出来ることなど何一つもしてない。ならば、反応がゆっくりではあるが近づいてきているモノの判断に委ねるしかない。

 

「・・・・・・戦闘時より、緊張・・・・・・するとは、なぁ・・・・・・まぁ仕方ない、か・・・・・・」

 

そう小さく呟くと、笑みを消して目を瞑りその時を待ち侘びるだけにした。自身には医療用ナノマシンが働いている。この程度は致命傷たりえないのだから、死んだフリさえしておけば放られるだろう。

これからの展開に多くの不安と小さな期待を込めて情報収集と演技に意識を集中させた。

 

 

 

  第1話 こうして山猫(リンクス)魔法使い(ウィザード)

 

 

 

「緊急だ!急げ、急いで整備を行うんだ!」

「こっちは完了した!終了してない場所に各員手を貸しに行け!」

 

あちらこちらで怒号が飛び交い、先程の休憩中にあった和気藹々とした空気は何処かへと吹き飛び一気に忙しくなっていた。

 

「各機準備が整いました!」

「離れろぉ!魔女(ウィッチ)飛ぶぞぉ!」

 

3人のずつの分隊が3組それぞれのタイミングで飛び立った。

これでもかと言うほどの蒼い空へと綺麗に並行しながら。

 

「しかし、いきなりでしたがどうしたんですかね?」

「さぁな。だが、急に指令が降りてきたんだ。只事ではないはずだ。正直に言えばこの人数で足りるかどうかの問題だ」

「状況の報告しだいでは近隣諸国に応援を要請するとらしいです」

 

彼女らが緊急要請に応じ現状に身を置いている原因は、現在より数分ほど前へと遡らなければならない。

彼女らの本部の捉えた情報はそこの人間たちの度肝を抜かすようなものであった。なぜならば、何も無いはずの空間から大きな反応が感知されたのだ。

それまで彼女たち魔女が主力として戦っていた【ネウロイ】という存在は、巣と呼ばれるモノから発生すると言われているからだ。

それが何故か何も無いところから発生するとなれば驚くのも無理はないだろう。

 

「・・・・・・周りに被害がなければいいんだがな」

 

その部隊隊長が何処か焦ったように口を開く。

彼女は、他の部隊員より詳しく聞いているからだ。新型である可能性である。偵察部隊が先に詳しく報告したのだが、新型のネウロイであると判断されたそれは約十数メートルであり、細く機動に特化しているだろう予測が立てられたのだ。

左腕部に細長く、意味の無い盾のようなモノが取り付けられているとのことだ。しかし、それが何なのかわからない以上慎重に事を運ばなければならないのは当たり前である。

 

「ん、これで視界が広がったな。各員、不審なモノ発見次第すぐに声を上げろ!」

 

『了解!』

 

森を抜けると、そこは高原が大きく広がっていた。数分も飛び続けていると、流石に景色が変わり始め、センターピボットがいくつか点在する箇所へ着いた。

しかし、そこには遠くの方で大きな塊がそこに存在し、その周りにその土地の所有者であろう人間たちが複数取り囲んでいた。

 

「チッ!速度を限界まで上げてくれ。何かあれば危険だ!」

 

各々から返事が上がる。3個隊がそれぞれ速度を上げて集まっている人たちの下へと急いだ。

 

「おぉ、魔女が来たぞ!」

 

その声を聞き、周りの人々が一斉に声を魔女に掛け始める。

 

「済まない!それは一応ネウロイとして判断されたモノ、で・・・・・・」

「これはネウロイじゃないんだ!おい、アンタたち!この人を助けてやってくれ!」

 

部隊長である魔女はその光景を見た時に唖然としたのだった。何故ならそれは、人が負って生きていけるような傷ではなかったのだから。さらにもう一つ、驚くことがあった。青年と思しき人物が居たであろうその場所は真紅の血で染まり、上下前後左右ほぼ全てを塗りつぶそうとしていのだから。

普通であれば生きていけるはずのない出血量である。なのに、この青年を助け出した人たちはこの青年を助けてくれと言った。その言葉が意味する事は、出された青年が生きているという事。

 

(普通なら有り得ないぞ・・・・・・どうする。このまま放置していても、目の前に人がいる時点で印象が悪くなってしまう。私の場合は、せっかく上り詰めた地位を失ってしまう・・・・・・)

 

一瞬のうちに下した判断は、その青年を手当して事情を聞くことにした。

 

「誰か、治癒魔法を使えるものはいないか!?」

「いや、いい・・・・・・」

 

不自然に途切れ、今にも消え入りそうな声がその場に響いた。虚ろながら、未だに強く意志が宿り続ける目は上を向いたままであった。

しかし、急に何かを思い出したかのように跳ね上がろうとするが、傷みによってそれは叶わなかった。

 

「お、おい!そんな傷で・・・・・・」

 

ガッ、と腕をを掴まれた魔女は驚愕を顕にした。怪我人の力ではなかったのだ。逃がさない、まるでそう言っているかのような力だった。

 

「・・・・・・済まない。俺、を・・・・・・立たせてくれ」

「いや、しかし・・・・・・」

「頼む」

 

その魔女は部隊長の魔女と顔を見合わせると頷き、2人でその青年を立たせるためにかたを組んで持ち上げようとしたが、有り得ないほど重かったのだ。

一苦労して持ち上げた男性は、痛みこらえるかのような声を上げるがすぐにそれはなくなった。

しかし、その後は何も発さずにただただ沈黙が流れる。重さに耐えるように下を向いていた部隊長である魔女は、青年の足元にポツリと堕ちた紅の混じった水滴が落ちたのを見落とさなかった。

何事か、そう思い青年の方へ顔を向ける。そこには何故か涙を流す青年の姿があった。頭からも出血しているためか、銀の髪が紅に染まり、髪を伝って顔を染めていた紅を涙で洗い流すかのように。

 

「綺麗だ・・・・・・」

 

まるでなにかに取り憑かれたかのように涙を流し続け、まるで初めて見たかのように目を輝かせていた。

その姿に周りの魔女と地主たちも静かに見届けている中、部隊長である魔女は青年の呆然とした顔の中で綯交ぜになった感情を感じた。

それは悲しみだった。苦しみでもあり、憂いでもあり、悔いでもあった。

 

「あぁ・・・・・・宇宙(ソラ)も空気も景色もきっと水だって・・・・・・何故、俺だけ・・・・・・」

 

彼女たちはその言葉の真意が解らない。しかし、青年が悔いて自責の念に駆られる程のことがあったのだと理解したのだった。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「ん・・・・・・ここは・・・・・・」

 

青年はいつの間にか眠っていたらしく、目を開くと白い天井が最初に飛び込んできた。

ちょうどその時である。最近、見たことのある顔の人物が彼の下を訪れてきた。

 

「ん?目が覚めたようだね・・・・・・それにしてもキミは人間かい?」

 

その言葉を聞いて確信を得た青年は、それでも念には念を、と思いいつ襲われてもいいように反撃できるように警戒する。

しかし、入ってきた魔女は知ってか知らずか飄々としながら話して来た。

 

「緊張しなくても構わないよ。まぁ、質問の応答次第で結果が変わるんだけどね」

 

ふっ、と鼻で笑うと先程の質問の答えを目だけで聞いてきた。それを瞬時に理解する青年だが、答えるかと問われるとそうではない。

 

「相手のことをよく知らない状況でか?・・・・・・本当に話すとでも思っているのか?」

 

まるで、自身の命をなんとも思っていないかのような言動に小さくない驚愕を覚えながらも辛抱強く続けようとする。

 

「まぁ、そう言うだろうと思っていたんだが・・・・・・こちらも上からの命令に逆らえなくてね。君がこれならいいという答えだけを聞かせてくれればいいよ」

 

そう軽く、話す。少しでも話しやすいように冗談を交えながら。

 

「おっと、自己紹介がまだだったね。私はアドルフィーネ・ガランドだ」

「はて、アドルフィーネとはフルネームの略称か?」

 

青年のボソッとした声を聞き取れず、アドルフィーネは聞き返す。しかし、青年はそれに答えず自身の名前を述べた。

 

「カーム・ヘイズ」

 

青年は、自身の手に掛けた恩人から貰った名前を名乗った。

青年は話を促すために、アドルフィーネへ顔を向ける。

 

「それで?聞きたい事はなんだ?どうせ、俺のような存在を知らない時点で企業とは無関係。それに今置かれている状況に確信を持ったんだ。信じたくはないがな・・・・・・」

 

しかし、先ほどとは一転した答えを見せる青年に振り回されてしまったアドルフィーネは溜め息をこぼした。

引き摺っていても仕方ないと判断した彼女は話を聞くことにした。

 

「先程の質問の答えだ。人間ではあるぞ?『一応』とか『元』という言葉が付いてしまうがな」

「・・・・・・」

 

しかし、その吐き出した言葉ともに青年の一瞬の暗い表情を見た彼女はそれが感情的な面で自己判断したものだと悟った。

恐らくではあるが、地主やあの場にいた者たちから聞いた事なのだろう。

自身もこの目で見たものを信じられなかったのだ。何故なら、首の後ろ側───神経の集中する頚椎(けいつい)という場所───に特殊な形をした差し込み口のようなモノがあったのだ。

 

「元、と言うのはやはり・・・・・・」

「見たのか・・・・・・まぁ、今更仕方のないこと、か。それに、その言い方だとある程度予測してたように感じるが?」

 

沈黙が続く。それが支配する空間は、時計の秒針が響き渡り数秒である筈の時間は数分にも数時間にも思えた。

 

「・・・・・・これは、あの機体を動かすために必要な特殊なコードの接続部位と言ったところか」

「・・・・・・」

 

その言葉は予想していた。しかし、本当であれば否定して欲しかったのだ。それ程、接続部位は彼女に恐怖、嫌悪を与えたモノだった。

 

「アレゴリー・マニュピレート・システム。通称AMS。脳の特殊な能力を使い、脳への過負荷を前提とし極めて高度な期待操縦技術を得るモノだ。これには適正というモノがあって後天的措置は望めない。所謂天然モノってことだ」

 

その事実を淡々と語る青年の心境を捉える事はその彼女にできなかった。

しかし、その後に呆然としてしまう事実を叩きつけられた。

 

「無理にAMS適性が無い者が使おうものなら、脳へのダメージが限界を超えて焼ききれて死ぬ。死を免れ、良くて廃人と言ったところか」

「・・・・・・君は大丈夫、なのか?」

「・・・・・・俺もそれだけが疑問なんだ。俺は最後の戦闘で脳への負担が限界を超えて言語に障害出て上手く話せなくなったんだがな」

 

その言葉を聞いた途端に青年に対する恐怖が増幅した。

 

───そんな危険なモノを何故、何も無いように使うのか。

 

有り得なかった。アドルフィーネは様々な分野で多くの実績を残し、上層部の考え方を良くするために行動した。しかし、そんな彼女だからこそ声に出して糾弾したかった。

だが、彼に言ったところで根本が変わる訳では無い。

 

「まぁ、あれくらいの傷じゃ俺たちは死なない。いや、圧倒的な力を操るがために強化されたのが俺たち(・・)なんだよ」

 

所謂、強化人間というものだ。彼女は、そう言った者たちは空想上のものかと思っていたが、本当に目にするとはお思っていなかった。

 

「それより、俺から1つ聞きたいことがある。あの機体を勝手に弄るなよ?特にジェネレーター周辺は絶対にだ」

「いや、触れてはいない。アレには厳重なセキュリティロックが掛かっていてな。君を外に出した者たちも相当苦労して物理的に扉を破壊していたからな」

 

その言葉に青年の顔は歪んた。

 

「どうした?」

「いや、別に・・・・・・あの機体はな、俺の相棒なんだよ。アイツ(チェルカトーレ)と俺は共に戦ってきたんだ。大きな敵も同類も、総べてを同じ様に屠ってきたんだ」

 

懐かしむように窓へ目を向ける。

しかし、1つ気になることがあった。そんな思い出を話すだけの為にそんな話を降った訳では無いはず。そう当たりをつけて聞いてみることにした。

 

「そんなこと言いたいが為に聞いた訳では無いのだろう?何が言いたいんだい?」

 

その質問に対する答えは、想像を絶するものだった。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「さて、君が例のアーマード・コア、《ネクスト》に乗っていたカーム・ヘイズかね」

 

あの問答から数日経った今日、軍上層部による新型ネウロイと判断された物体に登場していた青年、カームを巡っての問答が行われる。

議長である老人は、見た目通り渋い声を発してカームに問いかける。

 

「あぁ」

 

普通であれば萎縮してしまうであろう状況にも関わらず、何処吹く風とばかりに目を閉じたまま立って返事を返す。

 

「さて、あれは一体何だね?」

「・・・・・・アドルフィーネからの報告は聞いていないのか?」

「ふむ、私は聞いているぞ」

 

自分の口から説明するか?言外にそう聞かれたカームは鼻で一笑すると、目を閉じたまま沈黙した。

その姿を見て面白くないのは、議長と冷静な者以外の上層部。同席しているアドルフィーネが見渡すと、少なくとも半分以上の人物が額に青筋を浮かべている。

 

「何でも、未知のエネルギー物質というではないか?」

「そうなのか!?」

 

その言葉に反応した上層部の1人は、自身の座っている前にある机を叩き、大きな音を立てて立ち上がった。

その隣ではさらに青筋の立った者たちもいるが、議長の言葉によりざわめきが大きくなった。

 

「これで、物資などにも余裕が持てるぞ」

「さて、何にその物質を使えますかね」

 

あーだこーだと議論を始めた上層部の人間たちを、議長は咳払いで鎮めると今度はカームに問いかけるように話す。

 

「しかし、その未知のエネルギー物質は確か・・・・・・コジマ粒子、と言ったかね?」

 

その言葉に目を閉じたまま沈黙を返す。議長である老人はそれが肯定であると正確に理解するが、若くして上層部入りした男は面白くなかったらしく遂に立ち上がって声を上げた。

 

「貴様!今自分がどういった立場か理解しているのか!?聞かれたら言葉で返せ!人の言葉も理解出来ないのか!」

 

その言葉に反応したのかカームが目を開いてゆっくりとその男を見る。すると、騒いでいた男は膝や腰、それだけではなく、体全体にとても大きい重力のようなモノを感じる。息も苦しくなる上に、視界がぶれ始め終いには汗が一気に出始めた。

命の危機を感じるものの、カームが目を閉じて元の恰好へと戻るとそれらは幻であったかのように綺麗になくなっていた。

 

「・・・・・・続きを行う。それには一体どれほどの利用価値がある?」

「・・・・・・俺は見つけたとしても使う事は奨めない。もし、使うというのであれば俺が今この話しを聞いている者たち全てを殺しても止める」

 

その場に居る者たちは否が応でも理解させられた。それが唯の蛮勇などではなく、確固たる何かがそう足らしめているのだと。

しかし、強気を見せようとそんなカームに吠えるように叫ぶ声も上がる。

 

「お、おおい!こいつは危険だ!こんな状況で殺すなどと口にするとは異常だ!被害が出る前にこいつを連れ出せ!」

 

その声を聞いて、そうだと声をあげる者も出始めたが議長がその場を鎮めるために声を出した。

 

「静まれ、バカ者ども」

 

その言葉に、シンとなる。その空気を作り上げた本人は、何事も無かったかのようにカームへと問い掛ける。

 

「はて、何故使おうとするだけでこの場にいる者たちを「世界を滅ぼす力だからだ」・・・・・・ふむ。世界を滅ぼす、とな。それは報告で聞いていないな」

「言ってないからだ。あれは核分裂で起こるエネルギーよりも大きい。だが、その核よりも環境汚染が大きい」

「なっ・・・・・・!」

 

驚愕がその場を包む。先程、どう利用するかなどを話し合っていた人物たちは唖然とした表情でカームを見ていた。

しかし、核分裂で起こるエネルギーよりも大きいと聞いて信用しなくなる者もいた。

 

「おい、こいつは虚言を言っているのではないか?核分裂など、最近明らかになって使用を制限されたばかりだ。それを知っているなど怪しいにも程があるぞ」

「さて、数日前に技術者一同に無理を言って作ってもらったものがある」

 

カームはそう言葉にしてアドルフィーネをチラと見る。アドルフィーネは苦笑と溜め息を同時に零すと、その作られたものを見せた。

 

「む?それは・・・・・・テレビ、か?」

「いえ、これはカーム・ヘイズがこの場で見せる必要があると言ったもののために必要なモノです」

「そうか・・・・・・では、カーム・ヘイズ。君は我々に何を見せるつもりなのだ?」

「・・・・・・口だけで言っても信じるものでもあるまいと思ってな。その前に俺はこの世界すら揺るがしかねない存在だということを話さなくてはならない」

「・・・・・・ほう?例えば」

「俺のいた世界はこの世界では無い。また、俺のいた世界とは別であると同時に過去の世界へ付いてしまった」

 

その言葉を聞いて一瞬、沈黙が空間を支配するが先程とは違い大きな笑い声が響き渡った。

 

「ハハハハハハハハハ!本当は緊張していたのか!」

「滑稽、実に滑稽だ!強がりもここまで来ると不愉快を通り越して一種の芸だ!」

 

しかし、次のカームの言葉で歯を食いしばることとなる。

 

「並び貴様らは、俺が指示しないと俺の愛機どころかあのテレビモドキすら作れなかった無能どもという事になるが、自ら認めに行くのか?」

 

確かにそうなのだ。口をだそうにも、自分たちは技術屋ではなく門外漢なのだから。

しかし、カームの口はまだ続く。

 

「ふっ、やはり口ばかりか。田舎モノ共が」

 

鼻で笑うと同時に、彼らを侮辱する辛辣な言葉を吐くカーム。青筋が浮かぶ男たちを見ても憐れなモノを見る目で見つめ返す。

 

「まぁ、こういう奴らがいると思ってな。俺の機体の戦闘ログを貴様ら全員に見せる。それで信じるか信じないかは貴様ら次第だがな」

 

そう言って、ポケットから取り出したこれまた特殊な記憶機器と彼の頚椎辺りにある同じ接続部位を持つコードを繋げた。

最初に流れたのは《ラインアーク襲撃》だった。オペレーターの声が聞こえる。それをカームが懐かしむように見ていた。

 

「これが初めてのあの機体で行ったミッションだ。あの世界は数十年前にコジマ粒子が発見され、国家という枠組み取り壊し企業が支配する国家解体戦争が起こった。その原動力となったのが俺たちの乗っていた《ネクスト》だ。それから数年立つと、完全に企業支配体制へと入った。だが・・・・・・」

 

そこで区切ると、次々と表示されていくミッションが出てくる。

 

「その前に、貴様らに聞こう。貴様らは、圧倒的な力を持った個体依存性についてどう思う」

「ほう・・・・・・もちろん、敵を倒すのには持ってこい、か」

「それだけか?」

 

カームの質問に対して上層部が答えるという、当初予定していたのと逆になってしまったが答えた1人がそれだけだと答えるとカームは口を開いた。

 

「最初はそうだろうな。だが、それが自分たちに牙を向かれる、そう考えると危険だ。そう考えた企業がとった行動は何だと思う」

「それは・・・・・・代替可能で、多くの者に使える・・・・・・」

 

1人、真実にたどり着いたものがいたようだ。

 

AF(アームズ・フォート)。大型兵器で圧倒的物量により、力を持った個体を打ち負かす凡人による打倒天才計画。それがこれだ」

 

次に画面に映ったのは農業プラントを大型兵器2機とオマケにより占拠された場面。ランドクラブと呼ばれるそれは、主砲とミサイルを定期的に放つそれ。

その光景は上層部に圧倒的な驚愕を与えたが、それは次の画面に切り替わった時にさらなる驚きにより塗りつぶされた。

 

「これは俺が初めて対ネクストのミッション受けた時だ。ネクストは通常兵器などでは、コジマ粒子を応用したプライマルアーマーによって一切ダメージを負わない」

 

ワンドフルボディの搭乗者がなにか喚いているがオーバーキルでブレードで切り裂いた場面が映っていた。

それからも次々と画面は映り替わっていった。

 

───海上に浮かぶ固定砲台ではあるが、こちらを射殺さんばかりに主砲を発射するギガベース

 

───多くの自律型飛行兵器を持ったキャタピラの弱点を狙われたカプラカン

 

───圧倒的な物量を持った固定砲台であるが、ミサイルと主砲が必殺を秘めた一撃を放つスピリット・オブ・マザーウィル

 

───どんな攻撃も外部からは受け付けない重厚壮大な防御壁とミサイルと恐怖と言っても過言ではないガトリンググレネードを持ったグレートウォール

 

───水上を走る変態、アメンボを模して作ったスティグロ

 

───ランドクラブの主砲を空飛ぶ悪魔に替えた変態共が作った特殊なランドクラブ

 

───極めつけは、汚染物質を撒き散らす腹黒と腹黒のコンビで作ったAA(アサルトアーマー)をぶっ放す空飛ぶ変態傘のアンサラー

 

その他にも、ネクスト同士の戦闘もあった。ラインアーク防衛、カーパルス襲撃など多くあったが、遂に終わりが近づいていた。

 

───お前とは、もう一緒にやれんよ

 

───終わったか、首輪付き。まだまだ腐るほどいるがなぁ・・・・・・先は長いぜ、相棒

 

それからはカームから漂う圧倒的な雰囲気に気圧され、誰も言葉を発しない。

 

───私が見込んだのだからなぁ・・・・・・お前にやられるのも、悪くない

 

最後のセレンとの会話が流れた。そこからは友人であったロイとダンをブレードだけで捩じ伏せ、最後のホワイト・グリントとの一騎打ちにて、最後のぶつかる瞬間のホワイトアウトで戦闘ログは終了した。

 

「・・・・・・これが俺が、いや、俺たちが過ごしていた世界だ」

 

誰も口を開けない。目の前の青年は、その世界で人類史上最も多くの人間を殺し、最も多くの人類を宇宙へと飛び立たせ、救った相反する二面性を持ったじんぶつなのだからだ。

戦闘ログにもあった通り、彼はあの世界で圧倒的な強さを持っていたのだ。

 

「俺たちの世界は、企業の支配する世界は既に腐り果てていた。そんな中で三つの答えが生まれた。1つ目は先の戦闘ログに出ていたウィン・D・ファンションの答え。2つ目は俺と相棒だった男が所属していたORCA旅団の答え。そして3つ目が俺たち2人が出した答え」

 

そこで言葉を区切る。上層部の人たちもなんとかショックから少しずつ立ち直したようだ。

 

「あの世界は、きっと答えに正解なんて無いんだよ。あったとしてもどれも間違っていてどれも正解なんだ。だから自分の答えが正しいモノであると信じて、力でそれを示す。それが俺たちの世界だった」

 

それに、と続け口を開き続ける。上層部の人間たちは未だに口を開くことができなかった。

 

「俺は最後に壊れた。何故こうしていられるのか解らない。だから、あとの判断は貴様らに任せよう」

 

そう締め括ると、ストンと後ろにあった椅子に座って目を閉じたまま何も言わなくなった。

 

「諸君、君たちの答えはどうだろうか」

「・・・・・・あんなものを見せられるとねぇ」

「しかし、彼は多くの人物を───

 

カームは聞こえてくる声を総べて右から左へ、左から右へを繰り返していた。その後、難航していたらしいが青年はどうでもいいと言いたげに目を瞑ったままだった。

 

やがて、喧騒は収まり判決を言い渡される時が来た。

 

「さて、カーム・ヘイズ。君への処遇は1年ほど監視付きではあるが基地内で過ごさせてもらうことに決めた。何か、聞きたいことはあるかね?」

「・・・・・・ほう、温情に溢れかえった処遇だな」

 

そこまで言って思案する仕草を見せたカームはいい案を思いついた、と言わんばかりにイイ(・・)顔を浮かべた。

ここで『イイ』を強調したのは察しのいい人ならわかるだろう。

 

「俺を傭兵として雇わないか?」




前書き厨二病こじらせすぎててすみません。見てて恥ずかしくなってきた。

てなわけで前書きとか後書きとか何を書けばいいのか解らないです。すいません。

そう言えば、パズドラ2話目を制作してるんですが、アンケートで3話目に誰にスポット当てようかなと考えているので参加してみてください。出来れば12月2日前後まででおなしゃす。


いやー、IS手が進まない。どう進めればいいか迷ってきてしまった。どうしたらいいですかね?


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山猫は可能性を確かめる

私は罪を犯してしまった

私はその罪を悔やんだ

───彼とともに堕ちた
───彼を苦しませた
───彼を潰してしまった
───彼を壊してしまった
───彼を殺してしまった





私は誇りを持ってしまった

私はそれを歓喜していた

───彼とともに繋がれた
───彼とともに戦えた
───彼と嬉しさを共有した
───彼と強くなった
───彼は生き残った

相反するその感情

それは罪であると同時に私の誇りだ

きっと彼の中でもそであるはずなのだ





だからこそ私は願うのだ

───彼の願いが叶うことを
───彼の志が折れぬことを
───彼の幸福を
───彼の未来を



















───それが私であったことを


「俺を傭兵として雇わないか?」

 

已然として、イイ顔を浮かべながらカームは次の言葉を待つ。

 

「・・・・・・何故、そのような提案を?」

「ふむ、逆に聞くが俺はこの世界での通貨を一切持っていない。前の世界であれば多くあったが、それでもこの世界から取りに行く事は出来るはずもないだろう?・・・・・・つまり、俺はこの世界での足がかりが欲しいということだ」

「なるほどな・・・・・・」

「それに、どうせ1年ほどは監視付きで基地内で過ごすんだ。金が無ければ、買いたいものも買えないだろう」

 

確かにそれも一理あるのだが、もし傭兵として雇った時に彼がそれを用いて自分たちを攻撃してきた時はどうするのか、また、その時のリスクリターンを考えると直ぐに判断は下せないのだ。

ただ、それを考えているがカームに筒抜けであったのか声をかけられる。

 

「別に、共通の敵がいるんだから互いに争わない限り貴様らに干渉なんてしない。それでどうだ」

「ふむ、それではその言葉が破られ場合はどうするつもりだ?」

「煮るなり焼くなり?本来なら既に死んでいる身だ。前の世界があんな世界だから理不尽なんていくらでも耐えてきたさ。今更必死こいて生きようなんて思ってなどいない」

 

その言葉を聞いて議長を務めていた老人は考えるが、ある言葉に引っ掛かった。

 

「『傭兵』か・・・・・・それは、ストライカーユニットのことかね?」

「なにやら、面白そうなモノを使っているなと思ってな。・・・・・・しかし、2つ聞いても構わないか?そのストライカーユニットとやらを使用する際に何故、下着姿なんだ?ここの女どもは痴女しか居ないのか?ここに来るまでの間にすれ違った女達は皆下着だったから気になったのだ・・・・・・」

 

理解不能、そう言わんばかりにカームは首を傾げているが、それと同じように議長や上層部、またアドルフィーネなどのこちらの世界の人たちは首を傾げていた。

 

「何を言っているのかね?」

「は?いや、だから・・・・・・下半身に着ているものだろう」

「カーム。何を言っているのか知らんが、下着とやらではないぞ?あれはズボンだ」

「・・・・・・はぁ?」

 

逆に、それこそ意味がわからない、そんな表情を浮かべたと思うとアドルフィーネがその事について言及。流石にこれには人生で一度たりとも無い唖然とした表情を浮かべていた。

 

「まあ、いい。取り敢えず、カーム。君の適性を見ようか。整備場にストライカーユニットがあるからそこで確かめようか」

「・・・・・・了解した」

 

 

 

  第2話 山猫(リンクス)は可能性を確かめる

 

 

 

未だに公序良俗は大丈夫なのかと頭上に疑問符を浮かべているが、老人の後ろに着いて行く。すると、アドルフィーネが老人の後ろへと移動しカームの隣へと並んだ。

 

「おい、あの集まった上層部の人間はどうするんだ」

「彼等かね?彼らはまだあそこで話し合っているでしょうな。なにせ、君のようなイレギュラーは初めてでね」

「俺に言われてもな。言うのであれば、衛生機動掃射砲(エーレンベルク)の設計者に言ってくれ。俺にとってもあの規模は予想外だったんでね」

「ほっほっほっほ・・・・・・それは運が悪かったとしか言えないのでな」

 

皮肉の篭った言葉をカームに掛ける老人に、カームは特に気にした様子もなく片腕を上げ掌をひらつかせながら言う。その様子に老人は苦笑いを浮かべた。

老人とカームしか話していなかったためか、アドルフィーネはここで先程から気になっていたことを聞くことにした。

 

「そう言えば、先程見た戦闘ログの声と今の君の声は若干違うように聞こえるが?」

「ああ、それか。俺もこっちで鏡を見た時に驚いたが、この声と姿は数年ほど前のだな。ネクストに乗り始めた頃だ」

「つまり、何かしらの因果によって若返っている、そう言いたいのかね?」

「そういう事だ。ほれ、これがその証拠だ」

 

自身の血で塗れていたが、こちらの看護婦により洗われ綺麗になったパイロットスーツの胸元から3枚の写真を取り出した。そのうち2枚が違う女性とのツーショットで、もう1枚は男3人が仲良さげに話している写真だった。

 

「俺が消える1、2年前の写真だ」

 

その3枚に共通して写っている男性の顔を見てみると、なるほど、確かに今のカームの顔をより精悍にし、幼さを無くした顔をした男性があった。

しかし、カームを認識し唸っているとやはりと言うべきか、共に写っている人に対して興味が移ったようだ。

 

「む?こちらの男性2人は一体どういった関係だったんだ?」

「そいつらは、ロイとダンだ。同じ、フリーの傭兵仲間だったんだよ。つっても、殆ど一定の企業側の傭兵だったがな。まあ、ホワイト・グリントとの前に戦った奴らだよ」

 

彼の出す雰囲気が、気にするなと言っているようではあったが、それでも気にしないという事は出来ないだろう。カームについてもそのことは解っていたのか、罪悪感を軽くするためだけに言ったようなものだ。

 

「・・・・・・では、こちらの美しい女性2人は?」

 

やはりどこの世界でも『美女』というモノは目を引く事であったらしく、質問してきたのはアドルフィーネではなく老人の方であった。

 

「セレン・ヘイズとリリウム・ウォルコットだ。セレンについては知っているはずだ。まあ、言わば俺の恩人とか親代わりだな。リリウムは・・・・・・まあ、恋仲にあった関係とでも言っておこうか」

「この方も・・・・・・」

「まあ、な・・・・・・見ただろ?カーパルス占拠の戦闘ログを。最後の2人がセレンとリリウムだ。あの世界に正解は無い。話し合いで解決できる機会はとうの昔に失ってしまっている」

 

カームは淡々と語る。しかし、アドルフィーネと振り返っていた老人の目には後悔の念を引き摺っているようなカームの姿があった。

だが、それも一瞬で消えた。さて、と閑話休題の声を掛けたところでカームがアドルフィーネに疑問に思ったことを述べた。

 

「結局、そのストライカーユニットとやらは一体どういうものだ?」

「む、まだ説明しておらんかったの・・・・・・アドルフィーネ君」

「はい。ストライカーユニットの開発の経緯は省くとして、私たち魔女(ウィッチ)が戦うために必要な魔法の箒、そう捉えてくれればいい」

魔女(・・)、か・・・・・・女にしか使えない、そう言いたいわけか」

「まあ、そうなるのぉ・・・・・・」

 

老人の顔には若干の憂慮の影がさしており、無力感に苛まれているようだった。カームはその老人の様子を鼻を鳴らすと同時に一蹴する。

 

「・・・・・・貴様ら男たち何に悩んでいるかは知らんが、出来ることを全力でこなしていくことしか出来んだろう。貴様ならその事は解っているはずだろう?」

「ほっほっほ・・・・・・いやはや、言葉の重みが違うの。だが、思わずにはいられんのだよ。だがしかし、こちら側の男性諸君とは違う気がするのだよ、根本的ななにかがね」

「そりゃあ、人間という枠組みからだいぶかけ離れているとは思っているが」

「そういうことではないんだがの。まあ、老いぼれの戯言として受け取ってもらっても構わない」

 

それから移動すること数分、通りゆく人に誰何を問われる目を向けられながらも目的の場所へと辿りついた。流石に、多くの人に目を向けられたのか、若干辟易しているようにも見える。

整備場の中に入ると、自身の中で思っていたよりも小さくこじんまりとしていた。しかし、それもそうだろう。カームの考えていた整備場はネクストや、その武装を格納するための整備場なのだから。

 

「ほう・・・・・・割と多いのだな」

「でないとネウロイの侵攻がのぉ・・・・・・ここだけの話、視野に入れていた撤退作戦が現実味を帯びてきたかと思ったら、それしかないと言わざるを得ないところまで来ているのだ」

「・・・・・・タイミングを探っているのか?」

「聡いな。その通りだよ」

 

残念でならない、本気でそう思っているのがわかる程気落ちしている。しかし、だからと言ってカームは声をかけることなんてしないのだが。

 

「さて、魔法適性の有無を調べるとするかの。本来であればもっと段階踏まなければならないが、手っ取り早くストライカーユニットに足を突っ込んでくれないかね?」

「いっきに適当になったな・・・・・・まあ、いい。言われた通り足を突っ込めばいいんだろう?」

「ああ。あとはまあ何とかなるさ」

「何かしらのコツとかはないのか?」

「その時は教えてやろう」

 

ニヤニヤと笑い、先のカームのお偉いさんたちへの態度で胃が痛くなる思いをした意趣返しだ、そう目で訴えて来ているアドルフィーネの顔を見て、カームはきっちりとその意図を理解した。先程の態度と言われようとも、カームにとってみれば基本的にあれが普段の姿なのだが知らない人にしてみれば、目の前で行われる問答は精神的に削られる思いをしたのだろう。

カームを連れてきたのがアドルフィーネ自身ということもあるのだろうが。

 

「そうか」

 

それに対してカームは、特段気負うこともせずに彼の下にあるストライカーユニットへと目を向ける。ここで反論したところで動かさなければ意味は無いのだ。それを理解した上での行動だったらしく、アドルフィーネはつまらなさそうに顔を顰めた。

ふと、アドルフィーネが周りを見てみると議長を務めていた老人や、周りの男衆たちは、談笑しながらカームがストライカーユニットへ足を入れるその時を待っている。

 

(別に、罪滅ぼしがしたい訳では無い・・・・・・テルミドール、お前なら勿論手を貸すのだろう?いや、あいつだけではないか。ORCAの連中もウィン・Dやロイ、ダンたちもか・・・・・・)

 

自嘲気味に口を釣り上げるが、直ぐにその表情を消してもう1度ユニットを見直した。

 

「さて、どうなるかね」

 

周りに聞こえないようにそう呟くと、一息に足をユニットへと突っ込む。

───数秒。しかし、何も起こらない。周りは諦めたかのようにその光景を眺めていた。

しかし、カームだけは違った。

 

(なんだ、これは・・・・・・何に、干渉されている?)

 

自身の体に何かが入り込んでいるかのような、そんな感覚がカームの頭の中で溢れかえる。例えるならそう、自身を構成する総てを解析しようと試みているような感じだ。

きっと解析しているのだろう。俺がどちら側(男か女)なのかを。実際、人間に近しい人間という枠組みから離れた何かなのだ。可能性はあり得るだろう。

そう思った途端、彼の感じていた体に対する干渉は既に無くなっていた。不思議なものだと思っていたが、その瞬間だった。

 

───ふわっ

 

そう表現するのが適切であろう感覚をカームは感じた。

カームの顔に変化が訪れたのを数人は見ていたらしく、訝しむ様な顔を向けていた。そんな視線に気づきながらも、カームは今の感覚を身体に瞬時に覚えさせると徐々に高度を上げていく。

 

「お、おい・・・・・・マジかよ」

「う、浮いた・・・・・・」

「夢じゃ、ないんだよなぁ・・・・・・?」

 

ぽつぽつとあちこちから困惑混じりの声が聞こえてきたかと思うと、それはすぐに喜色1つの声に変わり整備場周辺にいた者たちへと届きお祭り騒ぎへと発展していった。

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」

 

男たちの歓声に釣られてやってきたユニットのパイロットたちも、先程の上層部の男たちも開発部のチームもその輪に加わり笑っていた。

ゆっくりと高度を下げて地面スレスレを維持する。すると、人垣の中から先の老人が出てくる。

 

「本当にユニットを扱えるとは・・・・・・我々男共はどれだけこの日を待ちわびたことか・・・・・・君が傭兵となれたことをここに祝福すると共に、我々と共に戦ってくれることに感謝を」

 

目の前の年老いた男の頬を一筋の雫が伝う。その組織の中で、一番偉い立場の男が見せたその涙につられ、周りの男たちもそれに従い嗚咽を漏らす。男なのに戦えないことを嘆き、表立って守ろうとする者を自分たちだけの手で護れない。そんな苦渋を嘗め続けたその想いが今晴れたのだ。

だが、カームにはそれが理解できない。なぜ、それだけで喜ばれるのか。それは、圧倒的な強者として戦ってきたからではなく、彼の過ごしていた環境のせいなのだろう。自分たちができなければ、それを全力でサポートして共に戦う。それが常だった。リンクスは数少ない世界の均衡すら壊すほどの存在であったとしても、それを支えているのは、整備したりしている者たちだった。そして、リンクスたちの多くは、そういった者たちに対してとても感謝していたのが事実。

 

「・・・・・・アドルフィーネ、動きに慣れたいから少し付き合え」

「クッ・・・・・・!扱えたらと言った手前断れないな」

「思い通りにならなくて悪かったな」

 

相当悔しいのか、アドルフィーネは渋りつつも自分のユニットを取りに行く。

カームは暫く、ユニットを意識した動きを少しずつ始めていた。重心移動と飛行体勢などを確認していく。足以外の部分は生身の身体のため、意識はしやすいがネクストに慣れすぎていたからか慣れるまで時間がかかるだろう。それでも、一定以上の水準には上がったのだが。

 

「遅くなった、と言いたいがお前はこの時間内に体勢制御も殆どこなしてしまったか・・・・・・もう私が教えることはないのではないか?」

「フン、そんな訳ないだろう。でなければその立場にいないだろう。まあ、よろしく頼むよ、アドルフィーネ」

 

 

────────────────

 

 

二時間程だろうか。空に飛び立った時には下にいた多くの人間は、本来の役割を全うするためにせかせかと働いている。疎らになった集団の中に、例の老人は未だに木陰に体を休めてこちらを見上げている。

 

「どうだ?」

 

アドルフィーネがカームに問う。たったそれだけの質問だったが、カームにはそれがどんな質問なのか深く理解出来た。

 

「ネクストとは全く違うな。あれに慣れすぎたせいか、すこし時間がかかった」

「あれの仕組みはどうなっているんだ?」

 

本来なら答えることはしない。仮にだが、もしアレを実現させてしまうことがあったらこの世界は滅んでしまう。それは何としても避けなければならない。可能性がないとは言えない。もし、アレを研究させることを許すのならば、せめて実弾兵器しか有り得ないだろう。それも、動力系は魔法で動かすことを前提にしなければならない。

 

「教えるとでも?」

「まあ、そうか」

 

それもそうかと言わんばかりに追求を止めるアドルフィーネ。意外に思いつつも、追求をされずに済んで良かった。

何はともあれ次の段階に進めそうだと判断したカームは、アドルフィーネに問いかける。

 

「おい、少しいいか?出来れば戦闘慣れもしたいので実践に近い形で相手してくれないか?一対多で頼む」

「む?それは私たちを少し舐めすぎてはいないか?」

「いや、そういうことではない。単に俺が一対多に慣れていること。それと、何処までやれるかの確認と───」

 

 

────────────────

 

 

「全く・・・・・・。どれだけ言いくるめるのが大変だったことか」

 

見据えた先には、空中でストライカーユニット(Fw190)を装着し、停止して右手にベレッタM1938A(サブマシンガン)、左手にM1919A6(重機関銃)を持って目を瞑っているカーム。その姿は策を考えているのか、ただただ感覚を研ぎ澄ませているのか。私には、どうしても後者にしか思えなかった。

 

「(圧が凄まじいな。・・・・・・流石、という訳か)」

 

苦笑いが生じてしまうのも仕方ないだろう。きっと、部下たちに刺激を与えるだろうな。いい意味でも悪い意味でも。

これからの苦労を思いつく限り考えて溜息をついた。それこそ仕方ないというものだろう。既にこちらは敵意剥き出しの部下たちがいる。落ち着いているのは・・・・・・、副隊長だけか。

 

「カーム、そろそろいいか?」

 

カームがゆっくりと目を開いた瞬間に背筋が凍るような怖気を感じた。問いかけたのは私だと言うのに、だ。副隊長はカームの常識外れのそれを敏感に感じ取ったようで目を見開いている。まあ、それ以下の13人の部下たちは未だに態度は変わっていないようだが・・・・・・。

 

「ああ、こちらの準備はとっくに済んでいる。お前の合図で開始してくれ」

「了解した。君たち、くれぐれも気を抜かないでくれ給え。では、模擬戦を開始だ」

 

合図を出す。すると、カームはいきなり体を後方へ傾けて、後へ退りながら高度を下げる。すると、それを見た部下たちが一瞬唖然とし、追うようにして攻撃を開始。瞬時に4つの3人の分隊を作り後を追う。それに、付随するかのように左右と上にそれぞれ別れて回り込む。

しかし、ある程度の距離を移動した途端、次の瞬間後ろへ回していた推力を前方へと最大出力まで上げた。その姿に、カームを追っていた分隊が驚いて一瞬だが攻撃が緩んでしまう。

 

I've got from hell(俺は地獄から這い出た)find it(見つけろ)hound it(攻め続けろ).」

 

カームは歌い始めた。

それと同時に攻撃を開始。左右のM1919A6とベレッタM1938Aで攻撃の止んだ瞬間を狙っていたかのように3人に数発ずつペイント弾を当てて撃墜判定をだす。そのまま、撃墜判定を出した部下を通り過ぎ次の左右へ分かれた分隊へと標的を変える。

私たち3人は何とかこれ以上、撃墜判定を出さないためにも動き始めた。

 

I've got to you alone(俺は1人で来た)stand it(抗え)beat it(消せ). 」

 

唄い続けた。

第二小節に入ったまま、今度は左の分隊へと狙いを定め、今度は先程とは立場が逆転し、追いながら攻撃し始める。先の部下たちとは違い、ペイント弾の横殴りの雨は外れることなく第二小節の半分で左の分隊は全員撃沈判定。

カームは途端に体を平行にする。その後、すぐに上に回り込んでいた分隊が後ろにつき銃撃を開始。しかし、その銃撃は当たることなくカームの体を通過していく。

私は驚いた。体を若干斜めにしてスライスさせるように飛行しているからだ。後ろを同じような体勢で追うっていても無意識的に横方向に移動しているため、ペイント弾は当たらないのだ。

すると、カームは後ろに着かれているにもかかわらず速度を上げず、逆にユニットに魔力の供給を辞めた。勿論、慣性に従いながらも高度を下げていく。いきなりの事に驚いた部下たちはそのまま、上を通り過ぎてまう。

カームはその瞬間を待っていたかのように魔力供給を開始。逆に後ろに着き、ペイント弾の嵐を降らせる。

 

「なッ!」

「チッ!・・・・・・遠いか」

 

私たちの方からも出し惜しみはしていられないようだ。すこし、今の戦闘で話されてはしまったため、ペイント弾が当たる現実的な範囲ではない。

 

I've got from hell(悪夢は放たれた)find it(探せ)hound it(責めろ).」

 

未だに謳い続ける。

まさに悪夢のようだ。歌の二小節のうちに三分隊も撃沈されたのだから。

右に回り込んでいた分隊に狙いを定めて今度は引き撃ちを始める。ペイント弾が全て見えているのか全てを避けるように動く。そして、お返しだと言わんばかりにペイント弾を斉射。右左で交互に撃ち続ける。片方が切れるとすぐにリロードし、その間は切り替えた方の腕で撃つ。

ただただ作業のようなその行動だが、私の部下たちは悉く撃沈判定。私たちの射程圏内に入る頃には残されたのは私たち3人だ。

 

「・・・・・・ここまでとはな」

 

ぼそっと呟く。ゆっくりとこちらに向き直るカーム。なるほど、あの世界を切り抜けられた訳だ。この私が、震えるとはな。

 

「・・・・・・I can still alone(独りでやれる)start it(始めるぞ)feed it(糧になれ). 」

 

詠った。

最後の一小節なのだろう。自然とそう思えた。私たちの方へ突っ込んでくる。カームと私たちは同時に引き金を撃つ。

しかし、その瞬間だった。急停止したかと思うと、いきなり横に移動したのだ。ロスタイムなしとは言えないが、限りなくあの動きに近い。あの、ネクストの動き。QB(クイックブースト)

その行動に度肝を抜かれた部下の二人はその間に撃沈判定。何とか、私は一発だけで済んだ。

 

「・・・・・・歌い終わりと同時に、とは行かなかったか」

「・・・・・・は、ははは。本当に度肝を抜かせるのが上手いな、君は。私の部下たちは割と優秀なのだがな」

「ふむ、あのレベルでか。この世界と俺のいた世界とではだいぶ違うようだ」

「当たり前だ。あんな、死がいつも隣にあるような生活など私たちが生きていけるはずないだろう」

「違いない」

 

嫌味でもなんでもなく、そこにあるのは純然たる事実。不快感も何も起こらず、ただ楽しげに会話を交わす。

 

「じゃあ、行こうか。見せてみな、お前の力を」

「ああ。では、やろうか」

 

『───お前達の実力を確かめたい』

 

同時に後へ退り引き撃ちをしはじめる。カームは普通によけているが、こちらはギリギリだ。掠るだけに留まって入るが、そのうち当たるだろう。しかし、今はこの時間が続いてくれればいい。この心地いい気持ちは久しぶりだ。

十秒、二十秒と時間が経過していく。1分だったか10分だったか一時間だったかなんて覚えてすらいない。私は勝負を仕掛けよう。

前に突っ込む私に、目を見開く彼は。口の端を少し歪ませる。

 

「これだから面白いんだ。人間ってやつは」

 

私に複数のペイント弾が炸裂。勿論撃沈判定を受ける。

ああ、やはりか。凄いな、君は。全力が一発(・・)で済むなんて。




すみませっ!ホントすみませっ!い、いやぁ、アレですよ、アレ。はい。アレです……。ゲームとかしてました。はい。最近買ったBF1とか友人とやってたら、はい。すみません。いや、コンナハズジャナイノニィ!だったんですよ。友だちとBF1して絶対☆裏切り☆ヌルヌルとかMr.ユナイテッド☆小沢とかやってたんです。はい。


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