Fate プリズマ☆アンリ (雨の日の河童)
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第1話

さぁ、終わりの先を見に行こう


「ええ、では背中合わせで行きましょう。・・・・・何というか、今のあなたの顔を見たらひっぱたいてしまいそうなので」

 

最後の最後に心残りが消えた。

ああ、まったくもって最高のエンディングだ。俺には上等すぎる。

高揚する気持ちを隠しながら踵を合わせた。

 

「せっかちですね。ここまでしたのですから、同時にスタートしましょう。三秒数えたら走り出すというコトで」

 

幸せだった。

望んだ願いは永遠に続けることも不可能じゃなかった。それでも

 

「あ、抜け駆けして二秒目に走り出す、というのはなしですよ。決闘ではないんですから」

「あっはっはっは。甘いな、オレだったら一秒目で逃げ出してる。相手が三秒待っている頃にはトンズラだ」

 

彼女には明日に生きて欲しいから。

 

「そうですね。私も、三秒待った後でその背中を狙い撃ちます」

 

時間だ。

さぁ、進めバゼット(マスター)

 

二人は自身の帰る場所へ走り出す。

衛宮士郎としての殻は崩れオレから私へと戻る。

さあ、夢から覚める時間だ。

虚無へと、あの何もない世界に帰ろう。

 

 

終わらない聖杯戦争は今、二人が望む最良の形で幕を閉じた。

少しばかりのボーナスステージを残して。

 

 

 

 

 

木々が生い茂るなか白黒の陰陽剣を持った男と男装の麗人が死闘を繰り広げる。

白刃が麗人の首を刈り取ろうと横薙ぎに振るわれ、拳にはじかれる。男は思いもよらぬ反撃を受けそのまま体勢を崩す。

その一瞬のスキを見逃さず彼女は自身の必殺の一撃を叩き込む間合いへと踏み込み、

 

「はぁッ!!」

 

己の拳に刻んだ硬化のルーンが男の身体を吹き飛ばす。

土煙をあげながら数m吹き飛びそのまま弓兵は動かなくなり、その姿をカードへと変えた。

今回、教会の依頼でクラスカードと言われる強力な力の源を回収する任務に就いたバゼット。

何でも、そのカードは全部で七枚ありそれらすべてに英霊と同じ力を発揮するほどの魔力が含まれている為、封印指定でありながら執行者である自分に依頼が舞い込むのはある意味当然の結果だったのだろう。

 

「クラスカード弓兵(アーチャー)を回収」

 

これで二枚目。

最初のカードは槍兵(ランサー)だった。

どちらも確かに強敵だった。並みの魔術師では相手にならないだろう。

それでも勝てない相手ではなかった。

 

「ん?」

 

ふと、下を見ると別のクラスカードが落ちているのに気づき拾い上げる。

 

復讐者(アヴェンジャー)?」

 

報告にはないクラスに少しばかり困惑するバゼット。

回収すべきか、否か。

 

「あ」

 

だが、そんな暇など無かった。弓兵のカードと同化してしまったからだ。

 

「・・・・なんだったんでしょうか、今のは。一応、報告すべきでしょうね」

 

信じて貰えるかは怪しいが報告しよう。そう考えながら、バゼットは依頼人の元へと向かうのだった。

 

その数日後、任務を解かれるとはこの時思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「士郎、イリヤさんを起こしてもらえますか?」

「わかった」

「いってらー」

「リーゼリット!!また貴方は朝からお菓子ばっかり食べて!!」

「む、そんなにおこらない。セラもいる?」

「いりませんっ!!」

「あはは・・・・」

 

家政婦のセラにイリヤを起こすよう頼まれる。リズは朝からお菓子を食べてセラに怒られている。衛宮家の日常風景としていつもの事なのでもう慣れたが。

階段を上り、部屋に入る前にノックをする。

 

「イリヤ、入るぞ?」

 

案の定、すうすうと規則正しい呼吸を繰り返す妹。あんまりにも気持ちよさそうに寝ているので起こすのが躊躇われてしまう。

いや、此処は心を鬼にして

 

「ほらイリヤ、朝だぞ。起きろー」

「う~ん。あと、五分だけー」

「なんてベタな・・・」

 

可愛らしい寝言に思わず笑ってしまう。

 

「まったく、五分だけだぞ~」

「えへへへ。・・・ありがとう、おにいちゃん」

 

嬉しそうな声を出して再び規則正しい寝息を立て始める。

 

「さて、セラの説得に・・・なんだこれ?カード?」

 

部屋から出ようとして机に置いてあったカードに目が留まる。

 

「イリヤのか?」

 

小学生の妹は魔法少女が好きでDVDなどお小遣いで買っているのだがその付録か何かだろうか。

 

「アーチャーとアヴェンジャー?」

 

一つは弓を引いた少女の絵、もう一つは鎖で身体を縛られた異様な男の絵。

 

「・・・・」

 

試しに、不気味なアヴェンジャーのカードを手に取り

 

「がっ!?」

 

手に焼けた火鉢を当てられたような痛みが走る。

 

「っ!!って、あれ痛くなくなった?」

 

が、それも一瞬で終わる。

先程の痛みはどこへやら、今は全く痛くない。

 

「・・・・何だったんだ、今の」

「う~ん。・・・・おにいちゃん?って、わわ!?今すぐ出ていってー!!?」

「なんでさ!?」

「う~、寝起きのだらしない恰好を見せたくないの!お兄ちゃんの鈍感!!」

「ちょ、わかったから。出るから枕を投げようとしないでくれ!!」

 

ドタバタと急いで下の階に降りる。

 

「まったく、今更だろうに」

「何が今更なのですか、士郎さん?」

 

黒い笑顔でセラが出迎えてくれた。・・・なんでさ。

 

「士郎、イリヤにイタズラでもしたの?」

「士郎、貴方っていう人は・・・!!」

「ちょ、ご、誤解だ!」

 

セラは結構思い込みが激しい方で一度火が付いたら大変なのだ。

どうにかこうにか、誤解を解いている内にイリヤが来て一緒に説明して事なきを得た。

 

「それじゃ、行ってきます」

「行ってきまーす」

「はい、二人とも気をつけてくださいね」

「いってらー」

 

愛用の自転車を押しながらイリヤと途中まで一緒に行く。

 

「あ、美遊さんだ」

「友達か?仲良くするんだぞ」

「もう、当たり前だよ!!」

「ははは、そうか。それじゃ、気をつけて学校行くんだぞ」

 

はーいっと元気に返事をするイリヤを見送り学校へと向かう。

 

 

 

 

 

 

いつの間にか今朝の出来事は忘れて。

それが衛宮士郎の人生に大きな転換を与えることになるとは知らずに。

 

 




完全に思い付きで書いているので更新はかなり遅いです。
感想誤字脱字の報告お待ちしています。


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第2話

少年は新たな日常を手に入れる


士郎side

「ただいまー」

 

時刻は午後七時。

家に帰るとセラがすでに夕食の用意を始めていた。

 

「お帰りなさい、士郎」

「おかえり、シロウ」

「ただいま、二人とも。セラ、手伝うよ」

「いいんです!これは私の仕事ですから士郎は座って待っていてください!」

「でも、一人より二人でやった方が早いだろ?」

「もう、そうやってまた私の仕事を……」

 

袖をまくり、念入りに手を洗う。

 

「今日は鮭ときのこのバターホイル焼き、小松菜の和え物とお味噌汁ですので」

「わかった、なら鮭の方は俺がやるよ」

「頼みます」

 

 

鮭の臭みを取るため塩をまぶして十分ほど放置。

しめじをほぐし、野菜を薄く切る。

鮭の切り身から出た水分をふき取り、塩コショウで味付け。

後はホイル巻いて蒸し焼きに。

 

「あ、お兄ちゃんおかえり」

「ただいま、イリヤ。もうそろそろご飯だから」

「うん、わかったー」

 

トタトタと自室に向かうイリヤを見て今朝のカードを思い出した。

 

「イリヤ、ちょっと聞いていいか?」

「?」

「イリヤの机の上に合ったカードなんだけど」

「え!?」

「いま、ああいうの流行ってるのかなって」

「う、うん!?その、は、流行ってるんじゃないかなぁ!!」

 

何だかひどく動揺している。

……見られたくないものだったのかも。

 

「そうか。あんまり無駄遣いするなよ?」

「うん。あ、そうだ今の内に宿題終わらせてくるから!!」

 

ドタドタと今度は急いで階段に上っていった。

 

「イリヤさんたらあんなに急いで。そんなに宿題が多いのかしら?」

 

不思議そうに首を傾げるセラ。

 

「ま、イリヤなら大丈夫」

 

とのんきにリズは返した。

 

 

 

イリヤside

『イリヤさん、これはマズイですねぇ』

「凛さんにばれたら冗談抜きで大変なことに!!」

 

ああもう、うっかりしていた。

カードってどんな感じなのかなぁと眺めている内に眠くなりそのままホルダーに直さず寝てしまいそれを凛さんにいうと

 

『はぁ!?カードをホルダーに直さず眠ってしまったぁ!? ……まったく。イリヤ、これからは気をつけなさい。次したらデコピンじゃなくて私のガンドだからね?』

『いたっ!?』

 

「ガンドって絶対痛いよね?」

『それはもう!デコピンの比じゃありませんよ』

「ひぇ~」

 

見られたのは弓兵のカード。

ああ、昨日に戻れるなら戻りたい!!

 

イリヤー、ご飯出来たぞー。

 

「はーい、今行く~」

 

とほほ、自業自得なのだから仕方ない。

今夜、凛さんに報告しよう。

 

気分がガクッと下がりながらも私は夕飯を食べる為、一階へと降りていく。

 

 

 

 

因みに、夕飯はすごくおいしかった!!

 

 

 

 

 

 

 

士郎side

「もうこんな時間か」

 

どうやら、勉強に没頭していた様だ。

英語の辞書を閉じ一通り自身の和訳を見直す。

 

「うん、たぶん大丈夫だろう」

 

仮に間違っていても今度休みの日に冬木の虎に会うのでその時に質問しよう。

さて、明日も早いし眠るとしよう。

 

ベッドに入りゆっくりと目蓋を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄を見た。

ある日突然奪われた。

――まずは目だ――

貧しくとも幸福が最低限約束された生活。

――おい、左目は残しておけよ――

どうやら、俺は悪魔だったらしい。

――やかましいな。喉をつぶしておいた方が――

自身も知らなかった事実に隣人は嘆き、嫌悪し、はては憤怒した。

――そうだな。息ができればいいだろう――

なぜ?俺は悪魔じゃない!! やめてくれ。

――手足の腱を切れ。腱だけだぞ、そいつの体は村みんなの物だ、全員に残しておかないと――

痛い痛いイタイ!? なんでどうして? どうしてこうなった? なぜ? 何故? ナゼ?

身体に呪いが刻まれる。

――舌も切っておけ。死なれてたまるか――

隣人も友も、果ては家族でさえ罵声を憎しみを怒りをぶつける。

――ざまあみろ。悪魔め、よくも――

どう……して……?

 

 

 

 

 

 

「よう、こんな世界に何の用だ?」

「ッ」

 

気づけば夜の街に出ていた。

ここは……新都?

冬木で発展した都心部でかなりの人が住んでいる、はずなのに。

(人の気配がない?)

 

「おーい、聞いてるのか?衛宮士郎」

「お前は……」

 

目の前には黒い影。

辛うじて、人型。

顔がないのにどんな表情を浮かべているのか分かってしまう。

 

「ん? オレか? 名前はないんだが呼び名ならある」

ま、名前負けしているけども。

 

きひひ、影は笑う。

 

「アンリマユってんだ。気軽にアンリって呼んでくれ」

 

この世全ての悪(アンリマユ)

ゾロアスター教の悪神。

確か、中学で習ったような気がする。

 

「で、単刀直入で聞くんだけど」

どうしてこの世界に来た?

 

悪神は笑いながらもその声は何処か咎めるように。

 

「……知らない。気づいたら此処にいた」

 

そう、俺にもわからない。

寝て起きたらここにいた。…………とんでもない悪夢を見たが。

 

「んじゃ、何か心当たりは?」

「そういえば、カードを触った」

「カード?」

 

そうだ。カードを触れたこと以外考えられない。

 

それを聞きアンリは、あーとかえーとか言いながら頭を掻いた。

そして、意を決したようにこちらを見据える。

 

「えー、誠に残念なお知らせ。お前、オレと同化しちゃいました」

「…………は?」

「正確には、オレがお前に同化した、だな。イヤー、運がなかったな」

 

ケラケラと影は笑う。

 

えっと、つまり?

事態を飲み込めない俺は簡単な説明を求める。

 

「つまりだな、オレとお前は一心同体。これから、毎日一緒ってこと」

ご愁傷さま。なんてちっとも悪びれることなく謝る、アンリ。

 

「なんでさ!? カードに触っただけだぞ!?」

 

訳が分からない。何をどうしたらそうなるのか見当もつかない!

 

「だとしても、結果こうなんだ。諦めろ」

 

アンリは笑いながら手を差し出す。

「あ」

 

……俺の馬鹿。

つい条件反射で握手してしまった。

 

「契約はここに成立した。これから面白おかしくそして、大切な物のため頑張ろうぜ」

 

それは影から少年へと変貌する。

影は人の形を成した。

髪の色や身体の呪い、服装以外は正にそれは自分だった。

 

「さて、どうやら起きる時間の様だぜ? まぁ、また後で会えるし今夜はお開きってわけで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ます。言いたい事、聞きたいことは色々あるけどまず一言。

 

「……なんでさ」

 

自室の布団の中あまりの出来事にため息と独り言がこぼれたのであった。

 




衛宮さんちの今日のごはん。毎度、思うんですけど凄くおいしそうですよね、あれ。
誤字脱字感想お待ちしております。
また、此処がおかしいなどの指摘もお待ちしています
(特に口調が難しいので)


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第3話

大切な家族/日々を守るため彼らは決意する


士郎?side

「行ってきます」

「あら、今日は早いですね?まだ、六時ちょっとですよ。どうかしましたか?」

 

ぎくっ

そうだ、いつもならもう少しゆっくりしてから学校に行ってた。

 

「た、たまには早めに出てみようかなぁ、なんて。ほら、早起きは三文の徳っていうだろ?」

「・・・・はぁ、そうですか。いってらっしゃい」

「い、行ってきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、危なかった」

『いや、あれは確実に怪しんでるぜ?』

「うるさいぞ、アンリ」

 

きひひと笑うアンリ。

まぁ、御覧の通り夢じゃなかった。

 

こんな朝早くに家を出たのも二人でこれからの方針を話し合うため。

 

「まず、最初の決定事項。人にばれない、ばらさない。特に家族には絶対に」

『えー、ばらそうぜ?そっちの方が後で楽なんだしよ。それに嘘つくの得意じゃないだろ?』

「う」

 

たしかに、嘘は得意じゃない。むしろ苦手な部類だ。それでも

「それでも、みんなに心配かけたくない」

みんなには今まで通り笑っていてほしいから。それを聞くとアンリはわがままだねぇ、なんて笑いながら了承してくれた。

 

『ま、いいぜ?なら、オレからも質問』

「なんだ?」

『あれなに?』

「あれ?」

 

アンリは冬木大橋を指しているが・・・・。

 

「何ってただの橋だろ」

『うーん、シロウには見えてないっぽいな。いいぜ、ならもっと近くまで行ってくれ』

「別にいいけど」

 

アンリに言われた通り冬木大橋の付近に向かう。

 

「なぁ、一体何があるっていうんだ?」

『まぁ見てなって』

 

見てなって一体・・・・ッ!!?

 

 

それはまさしくいきなりだった

先ほどまで何もなかった。

否、感じなかったが正しい。

 

「なんだよ、これ?」

 

まず、感じたのは倦怠感。

全身に重り付けたかのように身体がだるい。

更に人を拒絶するような感じもある。

 

「アンリ、これは」

『んー、シロウには見えないけど感じることは出来るみたいだな。たぶん、ここ、オレと同じものがあるぜ?』

「同じもの?・・・まさか!?」

『そ、カードがあるってわけだ。こりゃあ、きな臭くなってきたな』

 

イリヤが持っていたカード。

偶然じゃなかった?

俺がたまたまアンリを引き当てたわけじゃなくカード全てにアンリと同じナニカがいるとしたら?

イリヤはどうなる?

 

「・・・・アンリ」

『お、やる気だなシロウ。いいぜ、協力は惜しまない』

「・・・ありがとう」

 

 

それから俺はアンリに言われるまま色々と準備した。

 

「なぁ、アンリ」

『ん?どうした』

「どうしてここまで手伝ってくれるんだ」

人間は常に損得勘定で働く生き物。

俺にはどうしてここまで協力的なのかわからない。わからないからこそ裏を探ってしまう。

 

一瞬、きょとんとしながらお前がそれをいうのかとクツクツ笑う。

 

「おい、アンリ?」

『いや、わるいわるい。そうだな強いて言うなら楽しそうだから?』

「はぁ?」

『お前も見たと思うが俺って生きてた頃になーんにも出来なかったわけよ。だから、こうしてお前と一緒になってワクワクしてんだ。それに・・・・』

「それに?」

『・・・・いや、なんでもねぇわ』

・・・・あの二人に会えるかもしれないし。

 

一瞬だがアンリの声が聞こえた。

口には出していないから幻聴かもしれない。

それでもその声は何処か嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、あの場所から離れ現在、弓道場。

胴着に着替え朝練に向かう。

 

弓道場に一礼。

さっそく射ることにしよう。

いつものように呼吸を落ち着け的に向かう。

 

足踏み、いつもと変わらず。

胴造り、身体は常に自然体で。

弓構え、的を見据える。

打起し、感覚は研ぎ澄まされ。

引き分け、心は無心に。

会、最適の力で。

離れ、矢を射る。

残心、静かに終える。

 

 

「お疲れさん!」

「いて」

 

気を抜いた直後、背を叩かれた。

 

「流石先輩ですね!!とっってもきれいでした!!」

「桜、美綴きてたのか」

 

弓道部部長の美綴に後輩の間桐桜。

男勝りで頼れる姉御肌の美綴は後輩や同期に慕われる良い部長である。

桜は初めてにしてはそれなりに筋が良く期待の新人だ。

 

「衛宮、また腕上げたな。まったく、アンタの弓見てると努力すんのが馬鹿らしくなるよ」

「でもやるんだろ?」

「当たり前でしょ。卒業までに一泡吹かせてやるんだから覚悟しなよ?」

「はは、お手柔らかに頼むぞ?あ、そうだ。桜」

「は、はい!」

 

ごそごそとカバンの中をあさる。

 

「よっこいしょと。弁当作ってきたんだけど後で食べないか?」

「い、いいんですか!?」

「もちろん。美綴の分もあるぞ」

「お、さっすが衛宮」

 

今朝はばたばたしていたが前日の夜におかずは作っておいたのでご飯を詰めるだけで出来た。

 

今日は土曜日。

それに加え朝課外ないため普通はこない。

が、日曜日を除き桜や美綴は毎日練習を欠かさずに来ている。

そんな二人をねぎらいたくて時々お弁当を作って食べて貰っているのだ。

もちろん、無理矢理じゃないぞ?

それに自慢じゃないがそれなりに料理が出来ると自負している。

 

 

そのまま少し雑談しながら昼間で練習を行い。

三人で昼食を取った。

 

弁当はそれなり好評で安心。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いいなぁ』

 

学校帰り、アンリがそんなことを言い出した。

 

『弁当、すげぇ旨そうだったんだけど』

「?なら今度作ってやるぞ?」

『マジで!?』

 

ヤッター!!と喜びはしゃぐアンリ。

・・・・なんだかうれしいな。

 

『おっと、そういえば忘れてた』

 

いきなり真面目モードに。

 

 

『本当に後悔はねぇか?』

下手すりゃ死ぬぞ、シロウ。

 

 

 

最弱の英霊。

それが自分だと。

ある程度はズルできるがそれでも弱いのは変わりない。

切り札もはっきり言って三流。

それでも、家族の、イリヤの為に、自身の願いの為にその身を犠牲に出来るのかと。

アンリは問いかける。

 

 

俺は

「・・・・ああ、後悔は、無い。それにな?」

イリヤの

「死ぬつもりはさらさらない」

兄貴だから。

『はっ。ならお互い死ぬ気で頑張るとしようか』

「ああ」

 

 

戦いは何時か分からない。

今日か、明日か。はたまた一週間後か。

死ぬかもしれないと恐怖におびえながらその日を待つことになるのだろうとも。

それでも俺は後悔しない。だって・・・・

 

 

俺はイリヤの兄貴だからな。妹を守るのは当たり前だろ?

 




亀更新と言ったな?
・・・あれは嘘だ。
てなわけでストックがきれそうです。
投稿スピードがいきなり落ちることがあります。
読んでくれる皆さま。完結はさせますので気長に待ってもらえると幸いです
誤字脱字感想お待ちしております


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第4話

少年は自身の可能性に踏み込む。
さぁ、賽は投げられた。存分に足掻くと良い


アンリ&士郎side

「ただいまー」

 

さて、覚悟は決めた。

後はオレの努力次第。

 

「ああ、士郎丁度いい時に」

「どうかしたのか?」

 

ぱたぱたとエプロン姿のセラがこちらに駆け寄ってきた。

 

「実は、私としたことが洗剤を切らしていたのを忘れてしまいまして」

「珍しいな。わかった、今から買ってくる」

「お願いします」

 

本当に珍しい。いつもは完璧家政婦のセラが忘れるなんて。

 

「ついでに、これらも買ってきてほしいのですが」

「どれどれ」

 

手渡された紙を読み上げる。

 

台所用の洗剤に、菜箸、詰め替え用のシャンプーとリンス。最後にリズのお菓子。

 

少ないか多いか微妙な数だな。

 

「わかった、それじゃ行ってくる」

 

行ってらっしゃい、と見送るセラに軽く手を挙げて対応する。

 

 

 

 

 

 

 

「な、案外バレねぇだろ?」

『・・・そうだな』

 

さて、今のオレは誰でしょう?

正解はアヴェンジャーでした!

 

まぁ、伊達に何億回も衛宮士郎として生活していたからな。

ちょっとやそっとじゃ見破られない自信がある。

 

『それにしても、なんか変な感じだな』

「そうか?だとしても、慣れておかねぇとな。戦う時は常にこれだぜ?」

 

オレと士郎の戦闘法。

オレが士郎の体を使って戦う。

実にシンプル。

 

「それにな?今すぐってわけじゃないが平行世界のお前の体験を追体験しなきゃならないわけだしな。どっちにしろ通る道だ。あきらめろ」

『む』

 

それにしても久々だなこの街も。

 

あの四日間は楽しかった。

朝は衛宮士郎として日常を謳歌し、夜はバゼットと一緒に終わらない聖杯戦争であーでもない、こーでもないと敵のサーヴァント相手に作戦たてて。

あ、でもバーサーカー。テメェは駄目だ。

勝てるわけねェよ。

なに、オレ耐久値Eだぜ?

身体がもはや凶器だよアンタ。

 

 

「さて、ちゃちゃっと終わらせますか」

 

のんきにはなうたを歌いながら、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「おかえりなさい、疲れたでしょう。夕飯になったら呼びますんで」

「悪いな、ありがとうセラ」

 

 

自室に戻り、すぐさまベッドに横になる。

 

『アンリこれからどうする?』

(まずは、オレが衛宮士郎として体験した戦闘を追体験してもらう)

『わかった。俺は何をすればいい』

 

気合は十分だな。

・・・・まぁ、これは小手調べみたいなもんだ。この記憶にすら耐えきれないのなら家族を守るなんてできやしない。

 

(簡単だ。ただ、耐えるだけ。この世界の衛宮士郎としての自我を気持ちを失わないようにしろよ。さっきも言ったがそうしないと死ぬぞ?お前が変質すれば俺は別のナニカになる。『家族を守る』っていうお前の願いは完全に別物に成り果ててオレも別物になる。つまり、お前は自分の命とオレの命を握ってるわけ。だからガンバレヨ?)

『グッ!!?』

 

 

 

オレの記憶。

それは何度も繰り返し殺されるっていう常人なら発狂する代物。

だが、他の記憶はこれがまだましだと言えるぐらいの地獄なわけだ。

今回の目標は『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』に『左歯歯咬(タルウィ)』『右歯歯咬(ザリチェ)』『干将・莫邪』の宝具。(二つほど違うが気にしない)

 

これに加え、投影、強化、解析、変化ができれば上出来。

 

『ギッ!?ガァ!!』

 

士郎はだらだらと汗を流しながらベッドの上でもだえる。

魔術回路は驚くことに固定化された状態で開かれていた。

にも、関わらずそれを隠すかのように、封じるかのように、別の魔術が掛けられていた。

無意識にだがそれを壊したオレが言うのだから間違いない。

たぶん、この世界の衛宮士郎はどの世界の衛宮士郎よりも速く投影を十全に使いこなすことが出来ていたのだろう。それに気づいた正義の味方がいち早く引き取ったって感じか。

ま、オレにはどうでもいいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体を未知の化け物に裂かれた/それを奇怪な二刀で逆に裂く。

未来の自分に弓で射られた/信頼できる彼女を送り、攻撃を防ぐための盾を出した。

影のサーヴァントに首を刈られた/己が得意としていたあの二刀は・・・。

そういえば、俺を抉ったあの魔弾は・・・・。

 

 

「はっ!?」

目を開ける。

身体は汗でベタつき、呼吸も荒い。

心臓はこれでもかと早鐘を打ち、頭がイタイ。

 

『よう、どうやら耐えきったみたいだな?』

 

おめでとさんと気軽なアンリ。

 

「あれが俺?」

『そうさ、あれが別世界のアンタで更にオレが真似て偽った姿』

「・・・はは」

笑うしかできない。

もはや、次元が違う。

 

『ま、結果を確かめようぜ?』

 

 

アンリと俺が入れ替わる。

 

アンリが頭に思い描くは歪な短刀。

獣の牙の様な剣、それの本来の目的はソードブレイカー。

 

『よし、投影も出来そうだし大丈夫だな。・・・ま、お前の使い慣れた方は駄目みたいだが』

「とう・・・えい?」

『ああ、それがお前の唯一誇れる魔術。発動の言葉(トリガー・キー)は・・・』

投影開始(トレース・オン)

 

 

自然と出た言葉に呼応するように先ほどの短剣が手の上に現れる。

 

 

『上出来。んじゃ、とっとと風呂に入っちまえ。流石に汗だくで飯は食いたくねェだろ?』

 

 

それもそうだ。風呂に入りたい。

着替えを片手に意識が鈍い状態で風呂場に向かう。

 

 

さっさと、風呂に、入ろう・・・・。

 

それにしてもさっきからアンリの声がうるさいな。疲れすぎて聞き取れないが。

わめくアンリを無視しながら風呂の扉に手を掛け

 

「え?」

「あ」

 

後悔した。

 

「い、イリヤ?」

「お、お、お」

 

『あー、だから言ったのに。あれか?覗きたかったの、おたく?』

うるさい、アンリ。これは事故だ。

 

「お兄ちゃんのへんたーい!!」

「ぐはっ!?」

 

布に包まれた何かが顔面に飛んできた。更にぶすっと首筋に何か刺されてそのまま目の前が暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 

イリヤside

 

「はぁ、はぁ、はぁ!」

 

ま、まさか本当に入ってきちゃうとは!!

 

『いやー、イリヤさんのお兄さんはホントグッドタイミングできますよね!!』

「ルビー、うるさい!」

 

それにしても、お兄ちゃん何だかふらふらしてたし顔色も悪いような気がした。

 

「ルビー、お兄ちゃん運べる?」

『ええ、もちのろんですよ!!こう見えて身体は鍛えてるんで!!』

 

むはーっと謎のやる気を見せるルビー。

何だか心配になってくる。

それでも運ぶ手段がないので結局は頼むしかないのだが。

『イリヤさん、今日はイベント盛りだくさんですねぇ。空からは美遊さんが降ってくるし、そのままアニメの鑑賞会までして、その後にこれですよ?いや、イリヤさんは本当に退屈しません!!』

「人をおもちゃみたいにいわないでー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンリ&士郎side

うーん、ここは?

『ベッドの上だよ。まったく、俺まで気絶しちまったぜ』

う、めんぼくない。

 

 

「士郎―。ごはんできましたよー」

「わかったー、いまいくー」

 

その前に軽くシャワーを浴びなければ。

 

「なぁ、アンリ?」

『ん?』

「・・・なんで気絶したんだっけ」

『さぁ?そういえばなんでだ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕飯を食べそれなりにリラックスする。

さて、今夜か。明日か。はたまた明後日か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時計の針が十二時を指す。

その瞬間、身体に違和感がはしる。

 

きた!アンリ!!

『おうよ!!無限の残骸(アンリミテッド・レイズ・デッド)!!』

 

 

 

今日の朝準備したこと。

それは俺の血を一滴地面に垂らすこと。

アンリ曰く、自分は数字でいうなら0であるため人間がいる限り何処にでも現れることが出来る。

だが、0は1がないとその存在が証明できず意味がない。そこで、俺と言う1を媒体として特定の場所に出現するらしい。

少し訳が分からなかったが発動したのでいいとする。

 

 

次にアンリが言っていたズル。

それは何度でも死んでは甦る反則宝具。

『アンリミテッド・レイズ・デッド』

アンリが持っている『泥』を限定的に具現化し、アンリを通してそれを使う。

いうなれば、ラジコンみたいなものだ。

 

ただし、痛みはこちらにも反映されるため無理も出来ない。

鼓動はいつもの三割増しで速く緊張しているのが分かる。

だが、それでもイリヤの身に何かあるかも知れないのなら。

 

泣き言を言ってる場合じゃない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、聖杯戦争を始めよう/続けよう

 

 




四話で戦うと言ったな?
・・・あれは嘘だ。
因みに、無限の残骸ですがオリジナルで宝具にしました
いや、ほんとは其処までもっていきたかったんですけど無理でした。
誤字脱字感想お待ちしています。


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第5話

獣はやはり獣。
破滅すると分かっていてなおその歩を止めない。


イリヤside

「さ、リターンマッチよ。もう負けは許されないからね」

 

拳を掌に打ち付け気合を入れる凛さん。

あの魔方陣は厄介だけど今度は作戦たてたしきっと大丈夫だよね?

 

「行くわよ」

 

その言葉と同時に境界面へと飛び込んだ。

異物を巻き込んで。

 

空には変わらず大量の魔法陣が並び此方を見下ろす魔術師の姿が。

 

「一気に片を付けるわよ」

「二度目の負けは許されませんわ!」

「「了解」」

 

二人で宙に飛ぶ。

 

「おお!!」

 

美遊さんは空気を足場にして跳ねるように空を駆けていた。

あの、「人間、空は、飛べません!!」って言ってた美遊さんが!!

 

ッピピ

 

はっ!?

見とれていたら頭上から容赦のない魔力弾が!!

 

「うっひゃ~!!」

『イリヤさん、このまま魔法陣の上まで飛んでいってください!!そこなら攻撃は届きません!!』

 

無数の魔力弾を右へ、左へ避けながら進む。

 

「・・・・!?」

 

近づかれたことが予想外だったのか魔女は新たな魔法陣を展開。

先程の様に正確な攻撃ではなく乱射してくる。

 

けど、これならさっきよりも楽に躱せる!!

 

『距離を保って撃ちまくってください!!』

 

ルビーの指示のままステッキに魔力を送る。

 

「中くらいの散弾!」

 

魔女めがけて撃つも障壁に邪魔されて攻撃は一つも当たらない。

魔女はこちらを見ながら嗤っている。いくらでも、笑っていいよ。美遊さんに気づかなければ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美遊side

イリヤスフィールの陽動が上手くいっている。

距離は十分。ここなら!!

 

「ランサー、限定展開(イン・クルード)!?」

 

背後からの奇襲。

完璧なタイミングでさっきまで目標はそこに居た。

だというのに

 

(消えた!?一体何処に?)

 

「・・・ふふ」

「ッ!」

 

後ろから妖艶な笑い声が聞こえた。

 

(後ろを取られた!?)

 

直ぐに体勢を立て直すべく離脱を試みる。

が、おそかった。魔女は雷撃を纏った一撃をこちらに叩き込む。

 

雷撃はまるで意思を持つかのように迫り身体を吹き飛ばす。

 

「美遊さん!!」

 

「ぐっ」

『申し訳ありません美遊さま。物理保護の強化が間に合わず』

 

申し訳なさそうに謝るサファイア。

「ッ!」

『美遊さま足を・・・!?』

どくどくと流れる血。

いたい。けどまだやれる。

 

「このぐらい自動回復(リ・ジェネレーター)で・・・」

 

殺気を感じ上を見る。

魔女は既にこちらに特大の魔力弾を発射している。

 

(逃げきれない!!)

 

意味がないと知りながら痛みをこらえるため、目を固くつむる。

直後凄まじい爆音が響き渡る。

 

・・・・痛くない?

 

「ギリギリだったね。美遊さん大丈夫?」

 

イリヤスフィールが助けてくれた

 

「問題・・ない。怪我も直ぐ治る。離して、もう大丈夫」

「う、うん」

 

絶体絶命の時に助けてくれた。

下手をすれば死ぬかも知れなかったというのに。

兄の様に庇ってくれた。

 

『いやはや参りましたねぇ。流石、神代の魔女っ子といいますか転移魔術まで使えるなんて反則ですよー』

 

たしかに、反則級だ。でも、

「まだ手はある」

 

そう断言した瞬間、紅い魔弾がキャスターの肩を喰い破った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンリ&士郎side

 

遡ること五分前。

 

予め俺の血が付いた場所に出現した。はずだった。

目を開けると別の場所。冬木大橋ではなく近くの民家の屋根にいた。

アンリの姿なので転移に失敗したわけでもなさそうだ。

 

「アンリ、場所が違うぞ」

予定では橋の真下のはずだった。転移を任せたアンリは茫然としている。

 

「アンリ?」

『あー、うん。正直に言うわ。・・・早速死んだ』

「は?」

『いや、だから転移した場所で形造ってる最中に消し飛ばされた』

「なっ!?」

 

予想外すぎる。

出た瞬間殺されたっていうのか。

 

『そういこと。だから、こうしてある程度離れた場所から出現したんだが…』

あれ、無理じゃね?

 

アンリが指すあれとはあれだろう。

空には数えるのも馬鹿らしくなるぐらいの魔法陣。

そこから、壊れた蛇口からあふれ出る水の様に飛び交う閃光。

極め付きに、それをやっている本人は空の上。

手持ちの武器は全部近接武器しかない。

 

『あー、これは詰んだな』

 

そうまさしく詰んでる。

対抗手段がない。故に出来ることなどない。

 

「だとしても何か情報を・・・!!」

 

目を凝らせば魔女と何かが戦っている。

視力を強化。

ナニカ掴めるかと思い魔術で目を強化して、みてしまった。

 

「・・・イリヤ」

 

なんか、フリフリの服を着た魔女っ子の姿をしたイリヤが。

 

『おお、なんか派手な衣装!!あれの感想をどうぞ、お兄ちゃん?』

「なんでさ」

いや、本当に何でさ?

 

そんなふざけたやり取りをしている内にイリヤが魔女に魔力の球を撃つ。

が、全弾見えない何かで弾かれた。

それに焦ることなくただもくもくと撃ちこみ続けるイリヤ。

魔女はそれをどう感じたのかは知らないが口をゆがめ嗤っていた。

 

後ろから別の魔法少女が来ているのにも気づかず。

 

「あの子は・・・」

『お、知り合い?いや、流石だな衛宮の家系』

「どういうことさ」

 

お気になさらず~。などと言うアンリはいったん置いとくとして。

 

あの子はイリヤの友達で確か、美遊、だったか。

あの子も魔法少女って・・・・!?

 

「消えた!?」

 

意識は完全にイリヤに向いていたにも拘らず魔女は美遊の攻撃を避けた。

 

空間ごと移動して。

魔女はそのまま雷撃を纏った一撃で少女を吹き飛ばす。

 

「くそっ!!」

何もできない自分が恨めしい。

なにか、何かないのか?

追体験した記憶を探りに探る。そして、

「あっ」

見つけた。

そうだ、一つだけあるじゃないか。

 

「投影開始」

 

思い描くのは弓兵が持っていた黒い洋弓。

 

「投影開始」

 

更に、投影するのは右歯歯咬と左歯歯咬。

 

「材質変化」

 

歪な短剣はギシギシと形を歪め、歪な矢へと変わる。

『おい、まさかオレに弓兵の真似事させる気か?いや、無理無理!当たる自身ないしそこまで飛ばせ…』

「俺がやる。アンリは『泥』の維持を頼む」

『・・・本気か?』

「当たり前だ。ここまできて、何もしないのなら意味がない」

 

筋力の強化。

びきりと骨が軋む。

狙いは肩。

どくんと目に負荷がかかる。

 

ギリギリと洋弓は悲鳴をあげるように引き絞られ

 

「ッ!」

 

獣の牙が魔女の肩を喰い破った。

確かな手ごたえと共にそのまま二射目をつがえ放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美遊side

「え?」

 

何が起きたの?

目の前で肩を抑える魔女。

そして、息つく暇もなく胸に矢が撃ちこまれた。

 

魔女はそのまま形を保てなくなりカードへと変わる。

 

「み、美遊さん?」

「ッ!サファイア今のは!?」

『狙撃です。どうやら、ここから数百メートル後ろの民家からのようです』

 

「と、とにかく、いったん戻ろう!!」

「・・・わかった。あの、さっきはありがとう」

 

美遊が照れながらお礼を!?

 

『ほら、イリヤさんいったん戻りますよ~』

「わわ、ルビーいきなり動かないでよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンリ&士郎side

「・・・ふぅ」

『おお、すげぇな。今回、俺いらなかった?』

「そうでもない」

 

 

一撃目は自分の力で当てたが二撃目はアンリが手伝ってくれたおかげだ。

連射なんて弓道ではしないから若干、狙いがずれていた。

それに気づいてアンリはわざと体勢を崩した。

結果、無事に魔女を倒すことが出来たのだ。

そのまま、民家の屋根を飛び降り冬木大橋まで向かう。

 

『あーあ。本当はもっと暴れるつもりだったってのに』

「・・・・そういえば、アンリ。痛みって何時俺の体に反映されるんだ?」

 

一回死んだのだ。

たぶん、あの魔力弾に当たったのだろう。

 

『うーん、わかんねぇ』

「・・・・おい」

『だって、初めて使った宝具だし』

「・・・はぁ」

 

 

まぁ、いいか。

さて、今からイリヤたちの所に・・・・。

 

『!?シロウ、伏せろ!!』

「ッ!?」

 

尋常じゃない殺気を感じ地面に伏せ、その上を黒い魔剣が通り過ぎた。

 

「ッチ!!」

 

士郎の体の支配権を無理矢理奪い、剣の間合いから逃げ去る。

『アンリ!!』

「無事だぜ。ってそれにしてもついてねぇな」

目の前には黒い剣を携えた騎士。

それもただの騎士じゃない。

 

「よりにもよって、アーサー王かよ」

「・・・・・・・・」

 

彼女は衛宮士郎にとっての相棒で、オレにとっての宿敵。

たしかに、一度倒したこともあるがあれはバゼットありきで成しえたこと。

剣の腕では全く相手にされなかった格上も格上。

だというのに、

 

「ああ、まったくもって、嬉しくてたまんないなぁ!!」

「ッ!」

 

愛用の短剣で挨拶を一回。

 

そのまま、大きく後ろに下がり息を整えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、聖杯戦争を続けよう。

 

 

 




はい、次回セイバー戦です。
アンリが頑張って戦うと思うので応援してください。
誤字脱字感想お待ちしています。
また、アドバイスなども待っています


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第6話

確かに強くなった。
それでも、彼女には届かない。



アンリ&士郎side

「ハッ」

 

鋭く振り下ろした獣の牙は黒い魔剣に阻まれる。

 

「ハッ、ハッ」

 

ならば数を増やそう。

二撃で駄目なら四連撃。

 

「ハッ、ハッ、ハッ」

 

四連撃で駄目なら八連撃。

八が駄目なら十六連撃。

 

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハ!」

 

十六で駄目なら三十二連撃!!

最速のさらに先へ。肉体の限界を。

酸素が欲しい。目の前は既に黒い騎士しか見えない。

命を削る攻撃はそれでも

 

「脆い」

 

彼女には届かない。

 

バキッと言う音と共に歪な短刀が砕け散る。

 

「グオォォオ!!?」

 

逆袈裟切りに身体を切り裂く剣を辛うじて躱しそのまま流れるように続く上段からの首を刈る一撃を地面に無様に転がりながら距離を取る。

 

「はぁ、はぁ」

 

やはり届かない。

呼吸は未だに苦しい。だが、冷静な思考が戻ってきた。

『アンリ!!聞こえてるのか!?』

「わるい、武器・・・造ってくれ。次は仕留める」

『でも…!!』

「頼む」

 

圧倒的に筋力が足りない。

技量も未熟。勝てる部分は速さだけ。

なら、

 

「無限の残骸!!」

「ッ!」

 

数を増やせばいい。

 

周りには四日目に現れたオレの残骸が形を成した化け物。

 

「“潰せ、潰せ、殺せ!!”」

「・・・・」

 

あの時みたいには出さないがそれでもこいつ等を捌きながらどこまで持つ騎士王!!

 

その数、十以上。

周りには常に五体の化け物が取り付き上から下に。横から斜めに規則性なくただ本能のままに絶え間なく攻撃を仕掛ける。

その合間を縫って

 

「シャ、ハッ!!」

 

獣の長は襲い掛かる!

 

「さぁ、まだまだこれからだ!!」

 

振るう二刀は先ほどよりも速く、そして重い。

 

「フッ!!」

 

弾き、躱し、時にセイバーは邪魔な牙を折る。

だというのに、

『投影開始』

 

すぐさま牙は生えてくる。

 

ギャリリリッ!!!!!!!!

 

魔剣の腹を刃で滑らせ首を刈りに行く。

 

「ギィ!」

 

騎士王は剣を斜め下に。こちらの剣をそのまま上に跳ね除け、後ろに下がりながらこちらの体を両断。

すかさず新たな肉体を構築して、先ほどと違う別の攻撃パターンで挑む。

短刀が駄目なら足技も混ぜる。それでも駄目なら狙う部位を偽ろう。

 

 

 

武器の限界はない。肉体の限界もない。

そして、この戦い方に意味はない。

剣の英霊にただの少年が立ち向かうなどただの自殺行為だ。

だが、それでも届く可能性が少しでもあるというなら。

それはきっと無駄じゃないのだと彼は答えるのだろう。

これは衛宮士郎として生きた名残。セイバーに追いつきたい、超えたいという願い。

 

「オッラア!!」

「・・・ッ」

「もらったぁ!!」

 

士郎に身体強化をかけて貰い不意打ちの一撃を見舞う。

セイバーの体勢が崩れた。

これで!!

 

「ガヒュ!?」

 

魔剣が喉を突き破る。

魔力放出で魔剣を加速した突き。

 

『ぐっ』

悪いミスった。

 

 

先程までと違い身体は元の泥に戻りそのまま姿を消す。

 

「・・・・」

 

剣を一振り。イリヤたちに向かおうとする騎士王の背を

 

「・・・・!?」

「ガァア!!」

 

奇襲する。

 

「おい、まだ終わりじゃないぜ?」

 

追撃とばかりに四方から化け物が襲い掛かる。

 

「・・・・・」

 

それを一撃で消し飛ばす最悪の言葉を彼女は呟く。

 

「エクスカリバー」

「なッ!?」

 

黒い魔力が魔剣に纏われる。

それを上段から剣を振り下ろそうとする騎士王。

その方角にはイリヤたちがいるというのに!?

 

「さっせかァァァ!!」

 

渾身のタックルはセイバーの攻撃方向に僅かだがズレを発生させた。

直後、肉体も周りの残骸すらも巻き込みながら結界内を大きく抉る。

その一撃は地形すら変えたのだった。

 




はい、今回は短いです。
次回は、イリヤが覚醒します。
それを見てちょっとお手伝いするアンリ達。

誤字脱字感想お待ちしています!


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第7話

油断していたのだ。
誰も彼も。
故に絶望の足音に気づかない。


美遊side

「よくやったわ、イリヤ!まさか、アーチャーのカードを使いこなすなんて!!」

「美遊、次は勝ちなさい。そこのサルの喚き声など無視して!!」

「あら~?悔しいの?ねぇ、悔しんでしょ?おっほっほっほ、負け犬の遠吠えは心地いいわ~」

「あらぁ?いまウッホッホッホっていいました?ミス・ゴリラ?」

「「・・・・・・」」

 

醜い言い争いから拳と拳を交える熱血漫画の如く戦い始める二人。

 

『もう、これだからお二人の相手は嫌なんですよ!!』

『ええ、美遊様とイリヤ様を見習ってほしい物です』

「あははは・・・・・」

 

いつも通りの二人に思わず気を抜いてしまいそうになる。

イリヤスフィールに至っては転身を解いている。

 

確かに、キャスターには勝てた。だが、それに止めを刺したのは私でもイリヤスフィールでもないのだ。

 

「あの、ルヴィアさん。それと凛さんお話が・・・」

 

だが、それに気づかずまだ殴り合う元・魔法少女達。

 

「ねぇ、美遊さん?さっきのあの凄い攻撃何処から来たのかな?」

『ええ、それならこのルビーちゃんにお任せを!!あれは・・・!!』

『あれは、私達が戦っていた場所から約六百メートルほど離れた民家の上から放たれた物です。材質は何かわかりませんでしたがかなりの威力と思われます』

 

サファイアちゃんが私の言葉を!?

ガーンと器用に効果音を付けしくしくっと泣きまねをするルビーに。

姉さんは前置きが長すぎるので。

と妹からの容赦ない正論が刺さった。

 

「って、あれイリヤがやったんじゃないの?」

「は、はい。何だかよく分からないうちに・・・」

 

争っていた二人がピタリと喧嘩をやめる。

 

「そういえば、此処の空間崩れるのが少々遅くありません?」

「ってことは、もう一枚カードがある!?」

 

そう気づいた時には遅かった。

 

「ッ!?イリヤスフィール!!」

「え?」

 

黒い濁流がその場にいる全員を襲う。

どうにか、イリヤスフィールの手を引き物理・魔術障壁に保護することが出来た。

が、それも数秒。強制的に転身を解かれその濁流の余波に巻き込まれた。

 

 

「うっ」

 

痛い、気持ちが悪い。そうだ、イリヤスフィールは!?

 

「ううっ」

 

良かった。ちゃんと守れた。

安堵のため息が漏れる。

「イリヤスフィール、大丈夫?」

「な、なんとか」

 

よろよろと起き上がり、

 

「・・・・・・・・え」

 

彼女は絶句した。

黒い濁流が収まりあたりを見渡すとそこは何もなかった。

あるのは建物の残骸や抉れて捲れ上がりただの岩となった道路。

冬木大橋もあらゆるところが破壊されている。

これを意味すること即ち。

 

「・・・・・」

「凛さん」

 

ぽつりイリヤスフィールは呟く。

 

「ルヴィアさん」

「ルビー」

「サファイア」

 

その声は祈るように無残に変わり果てた大地へ響く。

 

「返事して。ねぇ、どこにいるのー!!お願い返事して―!!」

 

段々と涙交じりのその声を聴きながら何もしてやれない。

この世界で私を助けてくれたルヴィアさん。

魔法少女として自分を選んでくれたサファイア。

もうそのどちらもここにはいない。

 

何度か同じように呼びかけていたが遂にイリヤスフィールは地面に膝をついた。

 

「・・・・こんなの、うそだよ」

「・・・イリヤスフィール」

「いや、いや、いやーーー!!!」

 

泣きじゃくるイリヤスフィールに対して何もできないまま立ち尽くした。

 

 

 

 

 

「どうして、こんなことになっちゃたの・・・」

 

泣き疲れたイリヤスフィール。

 

「もうヤダ!!」

「っ」

 

その声には確かな悲しみと恐怖が感じられた。

 

「意味が分からない・・・。もうお家に帰りたいよぉ」

 

 

だが、そんな願いを嘲笑うかのように。

地面の一部が爆発した。

 

「「ッ!!?」」

 

そこには黒い鎧を着た騎士。

一目で分かる。

この騎士こそセイバーのカード。

そして、先程の攻撃を行った人物だと。

 

「こっち!!」

 

茫然としているイリヤスフィールの手を取り橋の鉄柱に身を隠す。

 

「・・・・・」

 

どうやら、まだ見つかっていない様だ。

だが、

 

「・・・・」

「っう!!」

 

暴風が身体を襲う。

一振りごとに魔力を纏わせ辺りをしらみつぶしに攻撃しているのだろう。

 

「ううっ!!」

 

そして、二度目の暴風がやんだとき

 

「ッ!!」

「・・・・・」

 

見つかった。

イリヤスフィールは動けず自身の体を抱きしめ震えている。

 

怖い。

恐怖で身体は震えている。

騎士が一歩近づく。

怖い。

息が上手く吸えない。

その距離はどんどんと無くなる。

怖い。

でも。

だが、此処を退いたりするものか。

怖い。

それでも彼女だけは何とか!

日常に帰して見せる!!

 

「ッセイ!!」

「・・・・!」

 

ガキィン!!

刃物と刃物がぶつかる音が耳に届く。

 

「え?」

 

その背に覚えがある。

 

「よっと、あー流石に効いたぜ。まぁ、次は同じ手は喰らわねぇけど」

 

その声は違えども。

 

「さぁ、まだ付き合ってもらうぜ?第三ラウンドだ」

 

その姿は違えども。

 

「ああっと、そういえば」

 

くるりと踵を返しながら

 

「よく頑張ったな。後は、オレに任せときな、美遊。イリヤを頼む」

 

安心させるように笑って見せた。

彼は足の調子を確かめるように軽く飛び跳ね

 

「シャ!!」

 

黒い騎士に駆けだした。

 

「「・・・お兄ちゃん?」」

 

その声を聴いて

 

「「え?」」

 

同時に顔を見合わせたのだった。

 




イリヤが覚醒すると言ったな?
・・・何度もスマンがあれは嘘だ。次回でします
はい、ある程度独自設定がありますので分からなければ質問など受けます。
そして、遂にストックがきれました。
よって、投稿は不定期になります。すみません。
誤字脱字感想お待ちしています。


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第8話

窮鼠猫を噛む。
さて、噛み付いた後はどうなるのか?
それは第三者が決めることになるのだろう。



イリヤside

「よく頑張ったな。後は、オレに任せときな、美遊。イリヤを頼む」

 

下を向いてただ震えている私の耳に声が聞こえた。

口調も声音も違うのに。

私はゆっくりと顔をあげた。

 

違う。

私のお兄ちゃんは赤銅色の髪だ。この人は夜みたいに黒い。

違う。

私のお兄ちゃんは身体に変な模様何て入れてない。

 

けど、此方を安心させるようなその笑顔は自分の知っている兄と同じであった。

 

「「・・・お兄ちゃん?」」

「「え?」」

 

美遊さんと自分の声がぴったりと重なる。

 

「え?あの人、美遊さんのお兄さん?」

「・・・違う、と思う。けど・・・」

「けど?」

「・・・・何でもない。あの人はイリヤのお兄さんなの?」

「・・・・わからない。・・・声も姿も違うんだけどね?あの安心させるように笑った顔がお兄ちゃんにそっくりで」

 

突然、現れて私たちから黒い騎士を遠ざけながら戦っているその少年に覚えはない。

だというのに、この胸のざわめきは何だろう。

ドクドクと心臓は早鐘を打ち私を急かす。

奇妙な剣で戦う少年が兄と重なる。

身体があつい。

少年から目が離せない。

 

一方的に攻撃を仕掛けている少年に対し、黒い騎士は黙々とその斬撃を捌き続ける。

そして、

 

「ッ!!」

 

少年の剣が砕け散り。

黒い剣が肩に吸い込まれ、紅い花が地面に咲いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンリ&士郎side

 

「ギ!?」

 

ザックリと肩を切り裂き振り下ろされた魔剣。

飛び退くのがあと数舜遅ければ即死だった。

 

まぁ、致命傷を貰って無事も何もありはしない。

さぁて、派手にやられたわけだが・・・・。

朦朧とした意識。それでも、口元に笑みが浮かぶのが止められない。

セイバー。最優のサーヴァント様よ。今から受ける痛みはテメエの自業自得だ!!

偽り写す万象(ヴェルグ・アヴェスター)

「・・・・!??!」

 

それは最も単純で最も解呪できない最古の呪い。

原初の呪いは速やかにその効力を伝え、セイバーに膝をつかせた。

『アンリどうするんだ。もう、俺も意識と魔力が持ちそうにないぞ。止めを刺す方法、考えてるのか?』

ああ、それなんだけど・・・。

『どうせ、ない、だろ?なら、あともうひと踏ん張り…』

 

「たおさなきゃ」

 

そして、それと同時に後ろで異変が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリヤ?side

 

・・・たお、さなきゃ。

どうやって?

・・たおさなきゃ。

どうやって?

「たおさなきゃ」

 

手に取るのは弓兵のクラスカード。

膨大な魔力が身体からあふれでる。

それに呼応するよう、何処からともなく魔法陣が現れた。

何処か大人びた表情で彼女は自身も知らない言葉を紡ぐ。

 

「夢幻召喚」

 

読み込む記憶は剣の丘。

幾たびの戦場を駆け、決して理想をあきらめずに生涯を駆け抜けた。

紅い外套に黒いボディースーツ。

黒の洋弓を手にし、彼女はこの場に顕現した。

 

セイバーはゆっくり彼女を見据え、一気に距離を詰め切り伏せようとして、ガキンッ!!

と剣を弾かれる。

その手に弓はなくいつの間にか二刀の陰陽剣が握られていた。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

一瞬の静寂。

そして、

「・・・・」

「・・・・」

 

騎士と弓兵の剣戟が幕をあげた。

 




誤字脱字感想お待ちしています。
試験が近いので更新はしばらくお休みします。


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第9話

その身に宿した力は新たな歯車を回し始める。


美遊side

 

黒の軌跡を残しながら黒色に染まった魔剣は目の前の敵を屠らんと風を切り裂き、唸り声をあげる。

それを風に吹かれた柳の様に受け流し、踊るように予測不可能な斬撃でカウンターを狙う陰陽剣。

激しく鳴り響く金属音。

それはただの少女が剣の英霊と渡り合えているという事実を示していた。

 

 

「・・・嘘」

 

ステッキもないのにイリヤスフィールは弓兵のカードを使った。

しかも、限定展開ではない。

完璧にカードに宿る英霊に力を使いこなしている。

 

「イリヤスフィール、貴方はいったい・・・」

 

右に左にと目まぐるしく立ち位置を変えながら弓兵は剣士と互角に、いや僅かながらも相手を押している。

剣の英霊が振るう魔剣には先程までの力強さはなく、表情も苦悶に満ちている。

 

(何処か傷を負っている?)

 

「ッ!!」

「・・・!」

 

そして、遂に魔剣の主はその身に陰陽剣を受けその場に膝をついた。

 

『美遊様!!』

「サファイア!?」

 

ちょうどいいタイミングで空から自身が契約したステッキが飛んできた。

 

「サファイア、ルビィアさんと凛さんは!?」

『ご無事です。いま、姉さんが障壁を張りながら二人の側についていますのでご安心を』

「良かった」

 

安堵のため息が口から洩れる。

 

『それにしてもイリヤ様のあのお姿は一体?』

弓兵の限定召喚でしょうか?と尋ねるサファイアに今まであったことを説明する。

 

 

『そのようなことが・・・・』

「サファイア、今からイリヤスフィールの加勢を」

 

先程からその場に膝をついて動かない剣の英霊だが何があるか分からない。

それに先ほどまで自分たちを守ってくれたあの青年を捕まえなければ。

 

賢明な判断。だが少しばかり遅かった。

 

その場から大きく後ろに下がる剣の英霊。

最後の一撃とばかりにその魔剣に膨大な魔力を送り始める。

 

「しまった!イリヤスフィール逃げて!!?」

 

宝具の解放。

 

吹き荒れる黒い魔力を真っ直ぐと見据えながらイリヤスフィールは呟く。

 

その瞬間、黒を打ち消すかのようにまばゆい光が辺りに広がる。

イリヤスフィールの手には黄金に輝く剣が握られ、

 

「「エクスカリバー!」」

 

影と光の聖剣同士の魔力がぶつかる。

 

「くっ!」

 

余りの余波に思わず身体を伏せた。

 

拮抗する影と光だったが段々と光が勢いを増し、影を飲み込んだ。

 

「・・・・・」

 

剣の英霊はその身をカードに変え地面へと落ちていく。

そして、イリヤスフィールはそのままふらりと地面に倒れ、

 

「よっと」

 

ようとしたところを血だらけで土埃だらけの青年に支えられた。

 

「あー、まったく。無茶しやがって」

 

優しく、まるで壊れ物を扱うようにそっと頭を撫でる青年。

 

『三体目のカード!?美遊様、今すぐ転身を!』

「・・・・大丈夫」

『美遊様!?』

 

そのまま、彼はゆっくりとイリヤスフィールを地面に寝かす。

此方を見て彼はおどけたように話しかけてきた。

 

「大丈夫か?なんて、聞くまでもないよな。まぁ、最弱にしては頑張った方だし許してくれよ?」

「最弱?」

「そ。最弱。って、あ~、もうもたねぇや。悪いあと頼んだぜ」

「ま、まって!!」

 

そのまま背を向け何処かへ行こうとする彼を止めるもまるで溶けるように消えてしまったのだった。

 




どうも、雨の日です。
感想を見ていたら8話目の戦いで士郎が弓兵のカードを使っている様に思われた方が居たので訂正を。原作同様、イリヤスフィールが夢幻召喚しています。
文章が稚拙なため読書の皆様にご迷惑をおかけしました。
これからも感想や文章の間違い、誤字脱字などの報告よろしくお願いします。


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第10話

夢を見た。







イリヤside

 

あの凄まじい戦いを終えた次の日。

 

「七.三℃。微熱ですね」

「うーん。これぐらい大丈夫なのに。セラ、過保護すぎー」

 

私は熱を出していた。

あの後、途中から気を失ってしまったみたい。

美遊さんが一人でカードも回収してしまっていた。

凛さんとルヴィアさんも無事だったようで安心した。

それで気が抜けたのかいつもならほとんどひかない風邪をひいてしまった様だ。

 

「駄目ですよ。士郎も熱出しているんですから今日は絶対安静です」

「え、お兄ちゃんも?」

「はい、朝いつも通りの時間に起きてこないので様子を見に行ったらひどい熱が」

 

そうなんだ。

お兄ちゃんも風邪なんだ。

もしかして、夏風邪が流行ってるのかな?

 

「イリヤさん、必要な物があったら買ってきます」

「う~ん。特にないかなぁ」

 

しいていうなら、ヒマつぶしの漫画ぐらいだろうか。

・・・・怒られるから言わないけど。

 

「そうですか。何かあったら呼んでください」

 

セラが出ていく。

 

はぁ、それにしても。

 

「ヒマだなぁ」

 

 

 

■■■side

 

あつい。

轟轟と燃え盛る街を目的もないのに進む。

暑い。

ここは何処だろうか?

見覚えがあるような無いような。

厚い。

煙で空にかかる雲は分厚く真っ黒だ。まるで、アンリの泥の様に。

熱い。

ああ、でも、もし本当にあるのだとしたらここは、

アツイ。

地獄そのものなのだろう。

 

 

ゆっくり瞼が開く。

全身は重怠く、力も上手く入らない。

『よう、お目覚めかい?』

「あん・・り?」

 

聞きなれた声が頭に響く。

 

『あんまり動かない方がいいぜ?結構、熱が高いみたいだしな。今日はゆっくり体の回復に使う方がいい』

「そう・・か」

 

ああ、でもあの夢をまた見てしまいそうだ。

だってあそこは苦しい。

永遠と終わらない地獄。

何もかも燃やして、溶かして、消してしまう。

寝たくない・・のに。

目蓋が重い。

意思とは別に重力に引っ張られるように目蓋は落ちる。

ああ、出来れば夢を見ませんように。

 

そう祈りながら俺の意識は深く深く落ちていった。

 

 

夢を見た。

少女は国を救うため人間をやめた。

夢を見た。

『王は人の心が分からない』

良き王であるため感情を殺した彼女のその小さな背に周りの人々は全てを預けた。

潰れまいと頑張る彼女に返ってきたのは容赦のない言葉。

夢を見た。

血の川が流れ、屍の山が周りに広がる。

多くの騎士たちが息絶えたその丘で彼女は悟る。

「ああ、私では駄目だった」のだと。

気づいた時には既に取り返しのつかない所まで来ていた。

故に。

汝、契約を此処に。

世界から出されたその甘い誘いに乗るしかなかった。

聖杯を手に入れ故国を救う。

その願いは多くの思いを踏みにじるとも知らずに彼女は世界と契約を交わしたのだった。

 

 

 

 

第四次聖杯戦争。

彼女はセイバーとして呼び出された。

そこで目にしたのは切嗣とアイリさんだった。

 

まるで、映画を見るように色々な情報が頭を駆ける。

呪いの黒子を持つ悲劇のランサー。

大陸を駆け抜けた大王のライダー。

身勝手な神に絶望した狂気のキャスター。

数多の人格を持ち本当の自分を知りたかった探求のアサシン。

王に自身を裁いてほしかった愚かなバーサーカー。

全ての財を手に入れ神さえ縛る傲慢なアーチャー。

 

噛み合わないマスターとのやり取りに苦しみ、王として生き様を否定され、生前でさえ行った事のない非道な勝利に自身の価値観を壊された。

だが、それでも勝ち抜いた。

勝ち抜きあと一歩だった。

それなのに

『令呪を持って命ずる、聖杯を破壊しろ』

自身のその手で奇跡を砕いた。

 

彼女は知らない。

聖杯は既に万能の願望機ではないことに。

故に、多くの同胞が息絶えたカムランの丘で間違いを重ねる。

「ああ、やはり私が王では国は救えない。選定のやり直しを」

そして、彼女は・・・・・・。

 

 

 

 

「ん」

 

ぱちりと目が覚めた。

身体はやはり変わらず重いが気分はましになった。

 

何か夢を見ていた様な気がするがどうにも思い出せそうにない。

 

「のど、乾いたな」

 

重い足取りで一階まで降りる。

冷蔵庫から冷えた麦茶を一杯。

 

「ぷはっ」

 

時間を見れば午後三時半。

セラは買い物にいったのかいなかった。

 

「あ、そうだ」

 

イリヤにも麦茶持っていこう。

ぼんやりした頭で思いついたことだからか、何も疑うことなく麦茶のボトルとからのコップを持って二階へ向かう。

 

「イリヤ、入るぞ」

 

いつもならノックもするのだがそのままガチャリとドアノブを回し、

 

「「・・・・・・・」」

「・・・なにやってんだ?」

 

メイド服を着た美遊ちゃんに息を荒げて抱き着く妹。

こうして、衛宮士郎は幼女同士の百合展開を見てしまうのだった。

 




今回、捏造というか自己解釈もどきが沢山あったので直した方がいい表現やこれ間違ってるという訂正などありましたら報告よろしくお願いします。
他にも、誤字脱字感想お待ちしています


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第11話

士郎side

 

「お、お兄ちゃん!?こ、これにはわけが!!」

「・・・・・・」

 

取り乱すイリヤに少し恥ずかしそうに顔を逸らす美遊ちゃん。

 

「その・・・なんだ。俺は何も見てないから。この部屋にも来てないから」

「凄く気を使われてる!!?」

 

取りあえず手に持ったお茶をコップに注ぎ、美遊ちゃんに。

うん、イリヤはただ美遊ちゃんハグしただけ。

息を荒げていたのもたまたまだろう。

よし、大丈夫だ。

 

「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして。君が美遊ちゃん?」

「え?何で名前を」

 

驚いた顔をしている。

まぁ、向こうからすれば初対面だもんな。

 

「イリヤに聞いたんだ。これからも仲良くしてくれるとうれしい」

「はい。イリヤは私の初めて(の友達)ですから」

 

イリヤside

 

「はい。イリヤは私の初めてですから」

 

特大の爆弾が今、私の部屋に落とされた。

お兄ちゃんは笑顔のまま固まる。

 

「主語が抜けてるよ美遊!」

「え?」

 

キョトンとした顔でこちら見る。

ああ、美遊って案外天然さんなんだね!

って、そんなことより誤解を解かなくては!!

 

「お兄ちゃん、今美遊が言いたかったのは・・・!」

「大丈夫だ、イリヤ」

「お兄ちゃん・・・!」

 

良かった。お兄ちゃんも気づいてくれて。

 

「セラや親父の説得は俺に任せろ」

「やっぱり駄目だったー!!」

 

目がぐるぐるしてるよ、お兄ちゃん!

って、そういえば!!

 

「あ」

 

ばたりとその場にお兄ちゃんは倒れた。

 

「「お兄ちゃん/さん!?」」

 

美遊と声が被るがそんなことは後回しだ。

 

「熱っ」

 

思わず額に手を置くとびっくりするぐらい熱い。息も何だか荒く苦しそうだ。

 

「ど、どうしたら」

「落ち着いてイリヤ。体温計と氷枕何処にあるか分かる?」

「それなら、確か・・・!」

 

美遊のお蔭で苦しそうな表情はだいぶ和らいでいる。

 

「美遊、どう?」

「九.七℃。まだ熱が高い。このまま看病するべき」

 

流石にお兄ちゃんの部屋まで運ぶのは難しく私のベッドに寝て貰っている。

 

「・・・酷い汗」

 

時節、何かに苦しむように顔を歪めている。

 

今、私にできることは・・・・。

 

美遊side

「イリヤ?」

 

不意に、立ち上がった彼女を私は目で追う。

何をするのかと思えば彼の手を握る。

 

「何をしているの?」

 

よく分からない行動に疑問をぶつける。

 

「えっと、何だか苦しそうだから少しでも安心して欲しくて」

「手を握ったら安心するの?寝てるのに?」

「うっ。た、たぶん」

 

言われてみれば少しだけ顔の険が取れたような気がする。なら、

 

「ちょ、美遊!?」

「?どうしたの?」

 

私が握れば効果も二倍。

 

「・・・・いや、なんでもないよ」

「???」

 

そういって、イリヤはただ彼の手を握りしめた。

温かいというより熱い掌が私の少し冷たい掌で冷まされ丁度良い。

それに・・・

 

(懐かしいな)

私の大切な人を思い出す。

私に幸せになって欲しいと送り出してくれた本当に大切なたった一人の家族。

彼は彼でないけれど苦しんでいる姿は見たくない。

私は早く治って欲しいと願い、今はただ、その手の温かさに身を委ねた。

 

■■■side

ここは何処だろう?

右も左も、上も下もない場所にいる。

この記憶は誰のだろう?

炎の地獄。

泣いて喜ぶ男の顔。

満月の夜の誓い。

校庭での死闘。

胸を貫かれる感触。

紅い何かが揺れる。

そして、彼女は・・・・。

『問おう。貴方が私のマスターか?』

青と黄色の鞘。黄金の剣。

 

 

 

 

 

 

「・・・・ん」

 

視界がぼんやりとする。

ああ、どうやら寝ていた様だ。

身体は朝に比べだいぶ楽になった。

身体を起こそうと両手に力を入れようとして気づく。

 

「イリヤ、美遊ちゃん?」

 

両手にはしっかりと自分の手をつなぐ二人。

どうやら、迷惑をかけたみたいだ。

 

「ふぁ」

 

そして、何故か睡魔が襲ってくる。

起きなければという思いとは裏腹に目蓋は落ちる。

どうやら、まだ完全に疲れが抜けてないようだ。

寝ては駄目だと思う毎に睡魔は強くなる。

駄目押しに二人の手の温もりが心地良く。

遂に、穏やかな気持ちと共にまた眠りについてしまったのだった。

 

 

 

 

『いや~、この後の反応が楽しみです』

『姉さん、あんまり大きな声出すと御三方が目を覚ましてしまいますよ』

 

 

 

この後、士郎は文字通り地獄を見るのだがそれはまた別の話である。

 




誤字脱字感想お待ちしています


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第12話

『駄目だな』

「なんでさ」

 

現在の時刻は午後十時。

何故か痛む後頭部と頬を気にしながらアンリと自室にて今後の方針を話し合っていた。そこで俺達は一つの壁にぶつかる。

戦力の不足。

確かにアンリの宝具はまさしく反則級。

だが、それでもカードに宿る英霊には届かなかった。

幾らでも死ねる代わりに決定打を与えることが出来ない。

つまり切り札が少なすぎるのだ。

キャスターを倒せたのは運が良かったからに過ぎない。

セイバーには指一本触れる事さえできなかったのだ。

ならいっそのこと平行世界の記憶を一気に体験すればいいと思ったわけなんだが・・・・。

 

『おいおい、最初に言ったこと忘れたのか?下手したら死ぬって』

アンリは呆れている。だが、その声の中にも微かに怒りが混じっているような気がする。

「仕方ないじゃないか。それに記憶の追体験だって」

『耐えれば問題ないってか?なぁ、士郎。それはいくら何でも舐め過ぎなんじゃないか?あれはお前自身であると同時に全く別の誰かだ。追体験ってのはその誰かの一生を体験するのと同義だ。痛みもある。悲しもある。怒りもある。そして、強烈な後悔も。お前はそれを一気に体験して無事だと思うのか?人の一生がそんなに軽い物だと思うのか?』

「っ」

 

その言葉を聞いて何処か靄が晴れるような気がした。

そうだ、自分はついこの間まで魔術すら知らない高校生だったのだ。

家族を。イリヤを守りたいから力を求めた。

なら、イリヤが悲しむ結果だけは避けなくてはならない。

力を手に入れて俺が俺でなくなってしまっては意味がないのだ。

それに俺だけの命ではない。アンリの命も預かっていることをもっとよく考えなくては。

 

「わるい。少し、・・・いや大分驕っていた。気をつける」

 

 

アンリside

「わるい。少し、・・・いや大分驕っていた。気をつける」

 

 

・・・・・・少し驚いた。

どうせ、『それでもイリヤを守らなきゃ!!』と暴走するかと思ったが。

やっぱり、オレの知っている衛宮士郎とは少し違うみたいで安心した。

誰かを守りたいならまず自分の力量を把握しなくてはいけない。

信念と想いだけじゃ人は救えないのだから。

『よろしい。他者の諫言を聞ける奴は結果的に聞かない奴より大成するもんだ。それでだ』

「?」

『次のカード回収は諦めるぞ』

「はぁ!?」

おお、怒ってる、怒ってる。

「どういう・・・!」

『どうどう。そう、怒るな。説明するから』

「説明?」

『そ、理由だ。いいか?現時点で回収されたカードは五枚で未回収が二枚。残ったクラスは暗殺者と狂戦士。多分この調子なら次イリヤたちが回収に向かうのは暗殺者のカードだろう。で、オレの予想通りだと今回の暗殺者のカードははっきり言って楽勝な相手だ。なにしろ遠距離攻撃を防ぐ術が極端に少ないからな』

「まるで見たことあるみたいな言い草だな」

『もちろん、あるとも。で、だ。明日、一つの記録を完全追体験してもらう。何を見るかは・・・お楽しみってところ』

 

暗殺者ははっきり言って鴨だ。

培われた技術を惜しみなく発揮し、戦を楽しむ武人だからこそあの剣士は強い。

それが出来ないならはっきり言ってオレでも倒せるかもしれない。

そのレベルまで落ちているのだ。なら、問題など全くない。

それより問題は狂戦士だ。

予想、いや絶対だな。

狂戦士のカードに宿る英霊。

あの四日間で嫌でも体感した暴虐の化身。もはや災害と言ってもおかしくないレベル。

タックルされただけで死んでしまうかもしれないレベルの耐久性。

皆さんご存知、ギリシャ神話の大英雄ヘラクレス。

あー、戦いたくねぇ。

 

「・・・・・・わかった。明日、頼むぞアンリ」

『おう!任せとけ』

どうやら冷静に考え自分の中で結論を出したみたいだ。

『んじゃ、そうと決まれば眠ますかね』

 

難しく考えても仕方ないか。後は士郎がどの夢を見るかで決まることだし。

それじゃ、良い夢を~。

 

 

 

そうして二人は眠りにつくのだった。

 




どうも、雨の日の河童です。
現在スランプ中の為書き直したり投稿が遅くなったりします。
亀より遅い更新速度ですが気長に待ってもらえるとありがたいです。
誤字脱字感想お待ちしております

フェイト/グランドオーダー第一部。
最高でした。
久々に心が躍りました。



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第13話

身体は剣で出来ている。

 

気が付けば俺は荒野に立っていた。

何処までも雲がかかった空。

辺りには担い手のいない無数の剣が墓標の様に刺さっている。

 

「あ」

 

そうして視線をあげて気が付いた。

浅黒い肌に色素の抜けきった髪に鷹のように鋭い目。

きっとあの目で捉えられた獲物は逃げる事は出来ないだろう。

限界まで鍛えた体は黒のボディーアーマーを纏い歴戦の猛者のようだ。

彼は誰もいない剣の丘で独り立っていた。

 

「さて、こんな殺風景な場所に誰かと思えば貴様か衛宮士郎。何、だいたいのことは察している」

 

男は。いつかどこかの俺の成れの果てが話しかけてくる。

そうして俺の側に来て目の前の荒野に手をかざす。

すると、俺の前に四つの剣が現れた。

 

「好きな剣を抜け。それが今のお前に必要な『モノ』なのだろう」

 

錬鉄の英雄は皮肉に笑いながらこちらを見る。

 

青の柄に黄色の鍔のロングソード。その剣には誰にも破ることは出来ない誓いが施されている。

交差した白と黒の夫婦剣。その持ち手には紅い宝石が巻いてある。

黒の刀身に紫色の鞘。その鞘には桜の意匠が凝らされている。

雪のように白い大剣。その大剣は無骨だが誰かを守る意思を持っている。

 

「ああ、それともお前にはあっちの方がいいか?」

 

錬鉄の英霊の視線を追う。

無限に広がる荒野のその奥先に『ソレ』はあった。

 

禍々しい奇怪な短剣。その剣はこの世全ての負を濃縮した悪魔の牙。

 

全身が震える。

今までに感じた事のない恐怖が全身を駆ける。

あの先は地獄だ。もし超えてしまえば二度と帰れない奈落。

 

「ふ。冗談だ。お前も其処まで愚かではあるまい」

 

怯えた俺を見て満足でもしたのか。

何事も無かったかのように錬鉄の英霊は此方を見る。

・・・・・・何だかその態度が癪に障った。

 

「あまり迷っている時間はないぞ?そら、もうそろそろ雲が明ける」

 

むっとしている俺を急かす弓兵。

その言葉に慌てて剣を握る。

俺が無意識で握った剣。

それは・・・・・・。

 

 

ぱちりと目が覚める。

 

『よう、どうだった?収穫はあったか?』

「・・・アンリ」

 

アンリの声で元の世界に帰ってきたことに気づく。

 

『ま、いろいろ言いたいことはあるがひとまず・・・・・・』

「お兄ちゃん、起きてる?」

 

アンリの言葉を遮るようにイリヤが入ってきた。

勿論、偶然だ。

 

「イリヤ?」

「?どうしたの、お兄ちゃん?もしかしてまだ熱がある?」

 

此方を気遣うように手を伸ばし額に触れてくる。それをきっかけに追体験した記憶を思い出し。

 

「イリヤ」

「・・・・・・ふぇ?」

 

気が付けば抱きしめていた。

 

「お、お、お兄ちゃん!?」

 

慌てた声が聞こえるがそのまま無視する。

ドクンドクンとイリヤの心臓の音が心地良い。

温かいというより熱い体温。当たり前のことなのに涙が零れそうになる。

 

「あ、なるほど!これは夢なんだね!?うん、そうだ夢だよ、夢!!ああ、早く起きろ私!あ、でもやっぱりもう少しこのままでも・・・・・・」

「イリヤ」

 

あわあわと目を回したイリヤの名前を呼び視線を合わせる。

 

「必ず守るから」

「え?」

 

驚いた顔が視界に広がる。

 

「悪いな、起こしてもらって。俺もすぐ行くから。先に行ってくれ」

「あ、うん。わかった」

 

不安そうな顔のイリヤに笑いかけながら見送る。

 

『・・・・・・どうやら上手くいったみたいだな』

 

アンリが確認する。

 

「ああ」

 

それに対する返答は短い。

それでもアンリには十分だ。

 

『なら、一丁気張るとしますかぁ!』

 

勿論だ。

さぁ、最後のカード回収を始めよう。




感想誤字脱字お待ちしています。

いや、それにしてもPS4/VRでマシュとイチャイチャできるゲームを開発中だとは・・・。
買わなければ(使命感

あと今度はエドモンが来ますように。


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第14話

士郎&アンリside

 

時間の流れはあっという間だった。

既に日は傾き、空は茜色に染まりあと数時間足らずに夜を迎える。

 

『さぁて、いよいよだ。こっからさきはあのセイバーよりも苦しい戦いが待っている。・・・・・・・・・覚悟はできたか?』

 

オレンジ色が広がる空を楽しそうに見上げながらいつもの調子でアンリは声をかけてくる。

いや違う。いつもと同じように勤めているだけでその声は少し震えている。

当然だ。

何せ相手はギリシャ神話の大英雄・ヘラクレス。

あらゆる難題を踏破した正真正銘の大英雄。

そんな相手とこれから戦うのだ。怖くない方がおかしい。正直、俺も怖い。

 

「・・・ああ。覚悟はできた」

 

だが、引くことはしない。

実力の差は絶望的だ。だが、だからこそ俺が俺達は気持ちだけは負けてはいけない。

他者など関係ない。常にイメージするのは最強の自分。

この前提条件が崩れた瞬間それが俺達の敗北に直結する。

敗北は即ちイリヤを日常に帰すことを諦めるのと同義。ならばこの気持ちだけは折れるわけにはいかない。

 

『・・・・・・だよなぁ。それでこそお前(衛宮士郎)だよ。なら・・・』

 

そこで一度言葉を区切り、いつもの調子でアンリは宣言した。

 

『最弱英霊の意地ってやつを大英雄様に見せに行きますか!!』

「別にアレを倒してもしまっても構わんのだろう?」

『おい、馬鹿、やめて』

 

さぁ、日常を取り戻すとしよう。

 

 

イリヤside

「はふぅー。やっぱりお風呂は落ち着くねぇ~」

 

久々にゆっくりとお風呂に入れる。

身体中が温かいお湯に染みわたり思わず声が漏れてしまう。

 

『イリヤさん、何だか爺臭いですよ?』

「なにぉ、お風呂は人類が生んだ至高の文化よ。ああ、日本人に生まれてよかったぁって思う瞬間よねぇ」

『イリヤさんはハーフでしょう』

 

・・・夜だ。いつもなら凛さんやルヴィアさん、美遊と一緒にカード回収をしている時間だ。

けど、もうそれはしない。いや、できない。

暗殺者のカードの時、私のせいでみんなを危険にさらした。

私は・・・邪魔にしか・・・・・・ならない。

 

「たっだいま~、イリヤちゃん!!」

「え?マ、ママ!?」

 

そんな暗い気持ちを吹き飛ばすようにママが帰ってきたのだった。

 

 

美遊side

 

『ジャンプ完了しました』

 

サファイアの声と共に私はイリヤ抜きでのカード回収が始まった。

場所は今までと比べかなり狭いビルだった。

 

「狭いわね」

「歪みが減ってきている証拠ですわ。ここの一枚を回収したら恐らくは・・・」

 

その声を遮る様な重量感を持った足音。

 

「―■■■■■■―――!!!」

 

そして、大気を震わせるほどの咆哮が響き渡る。

 

「なによ、アレ!?」

「冗談でしょ!?」

 

それは鉛色の巨人。

極限まで己の肉体を鍛え上げたその身体に纏う武具はない。いや、あの英霊には必要がないのだろう。

 

「―■■■■――!!!!」

 

巨人は天高く飛びまるで砲弾の様に凛さんとルヴィアさんのもとへ拳を振り下ろす。

が、既に二人は危険を察知し回避をしている。

 

英霊の拳は一撃でビルの屋上の一部を陥没させる。

 

「ルヴィアさん、凛さん!?射撃(シュート)!!」

 

慌てて巨人に一撃を与えるが。

 

「・・・・・・――■■■■―――!!!」

 

無傷。

魔力弾は巨人には通じていない様に感じた。

静から動へ。凄まじい速度でこちらに突撃し、一撃一撃が必殺である拳を乱打する巨人。

その攻撃は規則性など無い。ただ目の前の敵を殺すという原子的な暴力を後退しながらなんとか躱していく。

魔力で空中に跳び、一足で巨人から大きく離れたところで二人の援護が入った。

煌めく宝石は爆炎を上げ、足場を這うように亀裂が走り、巨石で押し潰した。

それでも。

 

「■■■■■■―!!」

 

巨人の身には傷すらつかない。

再度、咆哮が響かせながらこちらに狙いをつける巨人。

嵐のように激しく激流の様に速い拳を避け続けた。

 

「なんて出鱈目な腕力・・・!」

『絶対に直撃を受けないでください!あれは物理保護でも守り切れません!』

「避けろと言っても!」

 

狭い空間内で避け続けるのは限界がある。

サファイアもそれは知っている。

だが、現状攻撃が効かないのならそうするしかないのだ。

 

「――■■■■――!!」

「くっ!」

 

正拳突きを空中に避けそのまま境界を区切る魔力の膜を利用して大きく距離を取り二人の側に着地した。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)

「え?」

 

その瞬間、轟く様に空気を切り裂き見えない何かが巨人を抉りとる。

 

これは・・・!

 

すぐさま後ろを振り返る。

居た。あの青年だ。

浅黒い肌に不規則な黒い刺青。

赤い腰布とターバン。そして、私やイリヤのことを知っている何者か。

彼は少し高い場所から狙撃を行った様だ。

 

「よっと。案外、一殺目は簡単だな?」

 

笑いながらこちらの近くまで跳んでくる青年。

 

「ちょ、ちょっとミス・遠坂どういうことですの!?」

「私が知るわけないでしょ!?」

 

焦っている二人をにやにやと笑いながら彼はいう。

 

「アンタらアイツに勝てそうにないだろ?ってなわけでここはオレに任せな」

「そんなことできるわけ・・・!」

「安心しろよ。終わったらカードはくれてやるよ」

「・・・貴方、一体何者ですの?」

 

二人の疑問に青年はからからと笑い答えた。

 

「なに、ただの一般人だ。それより美遊?」

「は、はい」

 

いきなり声をかけられ驚いてしまった。

 

「悪いんだけどその二人連れて今日は帰れ」

「それは・・・」

「アイツの名前はな?ヘラクレスっていうんだよ」

「「「な!?」」」

 

ヘラクレス。

ギリシャ神話において最も強い英雄。

神々の十二の試練を突破した者。

高い神性と類まれ無い武勇を持った最強の英霊の一人。

 

「しかもたちの悪いことに・・・」

「―――■■■■■■―――!!!!!!」

「あと十一回殺さなきゃ死なないんだよ、彼奴は」

「そんな・・・」

 

咆哮。

その声は怒りが混じった叫びの様に辺りを飲み込む。

鉛色から朱色に染め上げながら巨人は復活した。

その手に石斧を持ち出して。

 

「美遊!一回撤退しますわよ!!」

「ッ!」

 

その声に弾かれる様に二人の元に駆けだす。

 

「一度、体勢を立て直しますわ!」

「ついでにそこのあんた!速くこっちに・・・・・・!」

「いや、それは出来ない」

「はぁ!!?」

『ジャンプします。もう間に合いません!』

 

青年はくるりと踵を返し背を向けた。

その背中ひどくあの人と重なった。

 

「俺は兄貴だからな。妹は守らないと」

 

その言葉と同時に駆けだす彼を見て私はジャンプさせたのだった。

 




誤字脱字感想などお待ちしております。
後、更新遅れてすみませんでした。


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第15話

生者を呪う残骸が大英雄(ヘラクレス)を包囲する。

 

あるものは跳びかかり、またあるものはその素早い身のこなしで大英雄(ヘラクレス)の命を刈ろうと牙をむく。

 

「ッ!」

 

だが、それは無意味だ。

跳びかかった者は巨大な斧剣に斬られ、懐に入った者はその剛腕に押し潰された。

包囲しても無駄と感じた残骸は一斉に攻撃を開始する。

それはまるで黒い波だ。

残骸たちのバラバラのようで各自が敵を殺す最適な動き。

様々な憎悪があらゆる角度から大英雄に襲い掛かる。

 

「――■■■■■■■―――!!!!!」

 

その波すら諸共せず怪物(ヘラクレス)はこちらに突き進んでくる。

 

それを真っ向から士郎は立ち向かう。

正気でない。

常人からすればもはや狂気の域だが士郎は別に狂っているわけではない。

勝てるからこそ真っ向から挑むのだ。

 

絶世の名剣(デュランダル)!!」

「―■■■■■――!!?」

 

煌めく剣は返り血すらその刀身に残さずにヘラクレスの身体を切り裂いた。

 

「残りっ!」

『十回!!』

 

素早くその場から離れ体制を整える。

 

「アンリ!」

『あいよ!無限の残骸(アンリミテッド・レイズ・デッド)!』

 

再び現れる残骸たち。

あとこれを十回続けなければならない。

精神をぎりぎり削る様な戦いをあと十回もだ。

 

投影開始(トレース・オン)

 

手に握るは稲妻を纏う槍の穂先の様な金剛杵(ヴァジュラ)

それを回復しかけているヘラクレスに投げつける。

その瞬間、腹の底から震えるような爆音が辺りに響き渡る。

コンクリートの粉塵が辺り舞い土煙を巻き起こす。

 

「―■■■■――」

「・・・・・・」

 

粉塵の中から現れた巨人は無傷。

まるで効いていなかった。

此方を見据え一歩、巨人が進んだ瞬間。

 

「―■■■――!?」

 

階下に落ちていった。

それを追うように残骸も穴に飛び込んでいく。

 

『少し休憩だな』

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

アンリの言葉を返す余裕もない。

今回はアンリが主体ではない。

全て自身が担当するのだ。

当然、今までの戦闘よりも数倍の疲れが身体を襲う。

 

残り十回。

されどその十回の壁が高い。

アンリのサポートがあるとはいえ苦戦は免れない。

 

『ッ!?シロウ、離れろ!!』

「ッ!!?」

 

アンリのとっさの警告に全力で答え前に転ぶような形で離れる。

そして、次の瞬間には斧剣が地面から生える。

 

「あぶなっ!」

 

喉が思わず干上がる。

一瞬でも遅れていたらアレに貫かれていたのだ。

 

「―■■■――!」

 

天井を突き破りヘラクレスが現れ、あろうことか斧剣を投げてきた。

 

「しまっ!!」

 

体勢を崩した状態。

回避も防御も不可能。

初めて自身が体験する死に身構え。

 

「え?」

 

横から何かがぶつかり斧剣を回避することができた。

 

「君は・・・!」

 

そこに居たのは青い魔法少女であった。

 

「加勢します。お兄さん」

 

凛とした佇まいと強い意志が宿った碧眼の瞳に思わず魅入られる。

 

「■■■――!!!!!」

 

それを引き戻す雄叫びが辺りに響き気合を入れなおす。

 

「危なくなったら逃げろ」

「了解です」

『うわ、信用ならねぇ。・・・やっぱ似るもんだねぇ』

「アンリ?」

『ま、ヤバくなったらオレが何とかしますか!ほら、来るぞ!』

「――■■■■■■■■■■!!!!!」

 

猛り狂う狂戦士との第二戦が始まった。

 




誤字脱字簡素お待ちしています


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第16話

アンリside

 

限定召喚(インクルード)

 

 

呪いの朱槍をその手に顕現させる美遊。気合は十分。

そして、本人は上手く隠しているつもりなのだろうが丸わかりな思惑に内心ため息をつく。

 

ああ、全く。嫌になるぜ。

 

これも運命とかいう奴の仕業なのだろうか?

幸せになって欲しいと願い自身を犠牲に送り出したあいつ。

危険を取り除くために自身で死地に飛び込んだこいつ。

 

だというのにその願いを嗤うかの様な現実に思わず中指を立てたくなっちまうな。

 

「来るぞ!」

「はい!」

「――■■■■■!!!」

 

狂った大英雄様が突撃してくる。

それはあの繰り返しの夜に出会った怪物と同じ殺意剥き出しの突進。

 

無限の残骸(アンリミテッド・レイズ・デッド)!』

 

その怪物の行く手を残骸達は立ち塞がるがまるで紙切れの如く弾き飛ばされる。

だが、二人が避ける時間は稼ぐことが出来た。

さぁ、手痛い一撃をくれてやれ!シロウ!

 

 

 

 

 

 

 

士郎side

 

こちらから少しばかり意識が外れたヘラクレスに不敵に笑う。

 

そのわずかな隙を逃すほど俺は甘くないぞ!

 

「――――投影、開始」

「――――憑依経験、共感終了」

「――――工程完了」

 

次々と撃鉄をあげる。

確実に当てる為、雑多な剣に本命を数本混ぜ合わせ引き金を引く。

 

「――――全投影連続層写!!!」

 

瞬間、虚空から無数の剣が射出される。

既に止まることが出来ない狂戦士に剣群は「■■■■――!」咆哮を伴ったヘラクレスの剛腕により砕き、逸らされ、弾き飛ばされる。

 

だが、一つだけ砕かれず狂戦士の腕を貫いた剣があった。

 

それは鮮やかな黄金の柄の剣。

その名は呪われた宝剣ダインスレイブ。

 

栄光の剣は破滅へと(ダインスレイブ)

「――■■!?」

 

瞬間、ヘラクレスの動きが鈍くなる。狂化されたその顔が驚愕したように見えた。

 

「はぁ!」

 

自身の横を疾風のように駆ける美遊。

彼女は手にした呪いの朱槍をヘラクレスの心臓へと突き刺した。

 

「―――■■■■■■―――」

「残り九回!美遊、直ぐに離れろ!」

「はいっ!」

 

残り九回。

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

「―――■■■■―――――!!!!!」

 

それは投影した宝具の自壊。

内包した神秘による大爆発は再生間際のヘラクレスの身体を吹き飛ばした。

これであと八回。

 

「・・・すごい」

『・・・まずいな』

 

感嘆の声と焦った声が聞こえる。

確かに、あと八回で大英雄を完全に倒すことが出来る。

 

「――■■■――」

 

大英雄の手には再び斧剣が握られていた。

恐らく、あの突進は最初から武器を確保するための行動だったのだろう。

思わず歯噛みしてしまう。

 

「・・・お兄さん。少し時間を稼いでください」

「美遊?」

 

短い間に連続で殺されたからかヘラクレスは動かない。

 

「私は・・・あれを倒す術を持っています」

『美遊様?その術とはいったい・・・』

 

その術はどうやら魔法のステッキすら知らない方法。

 

「・・・大丈夫なのか?」

「はい。必ず倒して」

「あ、いや違うんだ」

「?」

「それは使っても大丈夫なのかという意味だ。もし、自分の身体に負担がかかる様なものなら駄目だ」

「・・・大丈夫です」

 

「アンリ」

『大丈夫と思うゼ?多分だが、あれだ。イリヤがやったあれのはずだ』

「・・・・・・」

 

あれと言われると一つしかない。

完全なる英霊化のことだろう。

確かに、英雄に英雄をぶつけるのは間違いじゃない。

だが、アンリみたいにもしカードに意識が残っていたら?

もし、残っていた時、美遊はどうなる?

一度目が大丈夫だったから二度目も大丈夫?

 

「駄目だ」

「っ!?」

 

可能性はゼロじゃない。事故が起きてからじゃ遅い。

世界は目を覆いたくなるほど残酷なんだ。

それを俺は、俺達は知っている。

なら、より確実な方法でアイツを倒せる俺がやったほうがいい。

 

「何で、ですか!?私だって・・・!」

『おい、痴話喧嘩はあとにしろ!動くぞ!』

「美遊、一旦作戦を練る。隠れるぞ」

「・・・はい」

『・・・美遊様』

 

再び金剛杵を投影し、アンリの残骸を振り払いこちらに向かうヘラクレスの足下に投げつける。

 

「――■■■―」

 

二度も同じ手は喰らわんと言わんとばかりにそれを横にずれて避けようとして「―■■―――!」直撃した。

 

正確にはその余波を受けたというべきか。

アンリの残骸が自身の爪に当て起爆させたのだ。

 

「―――■■■■■■――――!!!!!」

 

怒りの大咆哮を背に士郎たちは入り組んだビルの中に身を隠すのだった。

 

 




オリ宝具の説明
ダインスレブとはファブニールが守っていた財宝の一つで凄まじい切れ味を持つ宝剣。
ただし、呪われている。
宝具ランクはBの対人。効果は斬りつけた相手と使った人物を一定時間呪う。


大変遅い更新ですいません。
誤字脱字感想お待ちしています。


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