アイドル格闘家キャリーちゃんとヒミツな恋愛 (孤高の牛)
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ヒミツその一『迷子の迷子のキャリーちゃん、貴方のお家はどこですか?あ、別に怪しい者ではないぞ?』

あんな可愛い子がゲストキャラで終わる訳ないだろいい加減にしろ!




 「……では、改めて。U-23世界大会で優勝された訳ですが、お気持ちの方、お聞かせ願いますか?」

 

 「いやーさいっこうっすね!!ええ!!ウチ等バトラージムって初優勝っしょ?まさか自分が優勝して、バトラージムと地元に大旗振って帰れる事になろうとは、ええ全く思いもよりませんでしたわ!ハッハッハッハ!!」

 

 ――U-23男子格闘技世界大会。

 

 俺はその大会において一番輝くメダルを手にしていた。

 

 フレイ・バトラー、18歳、それが俺の名前と年齢だ。

 親父のレイモン・バトラーが創設したジムの一員である。

 

 個性的な面々がいるジムでもあり、所謂暴れ馬や地元の大物ヤンキー、全国的に有名なストリートファイター等異色の経歴を持つ奴等が挙ってる。

 

 だが仲はどのジムにも負けないくらい良いと思っている。

 全員が全員力を試す為にジムに入り公式戦に出ては、プロの壁をひしひしと感じ努力を積み重ねて行く。

 

 地元一強いと言われた不良も、全国的に有名になり数多くの格闘家を倒したストリートファイターも、デビュー戦でボロボロにやられてから根本的な性格は変わらずとも。

 練習に対する姿勢は格段に変わっていた。

 

 暴れ馬と言われ前の所属ジムで問題を起こした奴も、親父と拳を交わし合い親父が手懐けた。

 

 そんなジムの初優勝がまさかのただの不良で、ちょっとばかし昔から努力してただけの俺に舞い込んでくるなんて夢の様だった。

 

 で、まあ今はとある雑誌の取材を受けているとこって訳だ。

 

 「ところでフレイさんは、先日行われたU-15女子大会も御覧になっているとか」

 

 「ああ、好きっすねー。まだまだ俺より若い女の子が迸る情熱をぶつけ合い青春するなんて、見ていてとても爽やかな気持ちになりますね!」

 

 「成る程、確かに私も見ていてとても爽快感があるように思います」

 

 てか何時の間にやら話題が若手女子の話に移ってるな。

 話題の切り返しが上手いなこの記者、評価を上げとこう。

 

 ま、U-15女子の方も絶賛やってるしタイムリーな話題だしな。

 

 「因みに、どなたのファンで?」

 

 「ファンですか……あー……」

 

 俺には一人、とても応援してる子がいる。

 大人気アイドルの如く人気で実力も確か、ただ……

 

 「どうかされましたか?」

 

 「昨日ぼろ負けしちゃったからね……相手がワールドランク一位だから差が有りすぎたのかも知れんけどね、ありゃかなりショック受けてそうで、ちょっとね……」

 

 「と、なりますと……」

 

 「ええ、俺はキャリー・ターセルの大ファンです」

 

 「ああ、やはり。昨日は悔しい敗戦でしたね」

 

 キャリー・ターセル。俺がずっと一途に応援している女の子だ。

 その仕草の可愛いところも然り、格闘技に真面目で一途に、ひたすらに向かっていく姿勢に惚れた。

 

 アイドルっぽい事を否定せず、且つ傲らず慢心せずに努力する姿に感銘も受けた。

 

 ただやはりスポーツと言うのはシビアな世界で、昨日はワールドランク一位、リンネ選手相手に手も足も出ず。

 

 キャリーちゃんも八位だしあの天下のナカジマジムの二番手、五位のミウラちゃんと三番手、七位ヴィヴィオちゃんに引けを取らない能力の持ち主ではあるんだがなあ。

 あと何かリンネ選手に言われてから精神的にもポッキリ逝ってしまったのか泣いていた。

 

 リンネ選手の何の発言が原因かは知らないが、これは教育やろなあ…とバトラージム全員が呟いていた事からリンネ選手の発言であると言う事は、俺の勘違いと言う事は無さそうだとは思う。

 

 「ええ、彼女全てにおいて一級品の強さがあるんですがね、その全ての上位互換がリンネ選手だった訳ですね。キャリー選手の得意どころか何一つ手出し出来なかったのはそう言う事かと」

 

 「はー、成る程。もしフレイ選手がリンネ選手と闘うとして、どの様な対策をしますか?」

 

 「あーっと、それはちょいとオフレコにしてもらって良いっすかね。結構問題発言になりかねないんでね」

 

 「え、あ、まあ、はい」

 

 「ゴホン、それでは。何と言いますかね、リンネ選手は確かに素晴らしく強い選手だとは思います。ですが、強者としての覇気が見えないのと、それと格闘技にやり甲斐を感じていない様に見えます。ですから、実力差は対して無いと思いますが、その点では明らかな弱点ですから対策はしやすいですし、まずあまり公式戦で戦いたいタイプではありませんね」

 

 「……と、言いますと?」

 

 「リンネ選手は、格闘家として一番重要な『格闘技をやる』と言うところがどうも抜け落ちている様に感じるんです」

 

 「成る程成る程、戦って楽しめる相手ではない、と」

 

 「そうとも言いますかね。他の選手は知りませんが、俺は全力で楽しんで戦うタイプでして。一回戦から血塗れになって息も絶え絶えでしたけど、とても楽しかったですし。だからもっとリンネ選手が格闘技にやり甲斐を感じた時、その時だったら俺と互角の可能性もあると思います」

 

 もうそのせいで一回戦終わった時点で結構ヤバかった記憶がある。

 無名選手だったが、どれだけ殴られても叩き付けられても立ち上がってきてゾンビかと思ったわマジで。

 

 お陰で何回もカウンター受けてビビったし。

 まあ、アイツは良い選手に成長するだろうと思った。

 

 「あそこまで圧倒的でも、まだ上があると」

 

 「寧ろ精神的にはかなり弱いと思います、だからこそ精神的に強くなった時が楽しみだと。その時なら、リンネ選手が俺達と混ざって戦っても堂々の優勝候補の一人だと思います」

 

 「ふむふむ、それはリンネ選手のこれからが楽しみですね。ですがそれだと、男子と女子ではそもそも闘っている土俵が全くの別物、と言う認識にも捉えられてしまいますが」

 

 「あ、別に女子に死線潜ってほしい訳じゃないっすよ!?若くて更に美少女揃いなのにわざわざ身体に傷が残るなんて絶対いけないですからね!ただ、他の選手よりも更に上がある、一番そう感じたのがリンネ選手だったんです」

 

 「成る程、確かに女性の身体は大切なものですからね。貴重なお話しありがとうございます」

 

 女子にあんな血生臭い死線なんて潜ってほしいと思ってる男子陣なんて、選手だと多分一人もいないと思う。

 血に汚れた女の子なんて誰得だって話だよ。

 

 女の子に流血なんて似合わない、華々しく闘うのが一番合ってる。

 女子格闘技のファンである俺が言うのだから間違いねえ。

 

 「いやいや、こちらこそあまりU-15女子格闘技戦ファンとは公にはあまり大きな声では言えないものでしてね、特に世間体的に。まあそう言う訳なんでここで話せたのは良かったですよ、こちらこそありがとうございます」

 

 まあそんなこんなでインタビューは終了した。

 取り敢えず帰ったら少し休暇でも取ろう、息抜き出来る時にしなきゃ流石に死ぬっての。

 

 てな訳で雑誌事務所を後にした。

 

 

 

 

 

 

 「家帰ったらまずはキャリーちゃんの今季これまでの試合のまとめ動画見て、その後はウィンターカップの上位入賞者予想のスレ建てでもしとくかね」

 

 俺は帰りのバス内で、今後の予定みたいなのをぼんやりと建てていた。

 

 インタビュー時には控え目に言っていたが俺はこの上なくキャリーちゃんが大好きなのである。

 それこそロリコンの気まであると自覚している。

 

 「同じ格闘技やってるんだし、一回くらい生で会ってみたいもんだけどな」

 

 縁が無いのか一回も会った事がないのが悲しい。

 

 「……まあ、いつか会えると良いけどなっと。そろそろ降りるバス亭か」

 

 会ったらどんな話をしようとか、お茶くらい一緒に行きたいなとか、そんなちょっとした下心な考えをしていたら降りる予定のバス亭に着いた。

 

 これと言った大きな建物やシンボルも無く、閑静で辺鄙な場所ではあるが、バトラージム兼自宅はこの近くにあったりする。

 

 「フッフッフッ漸くしっかりとみんなに自慢出来そうだな、チャンピオントロフィーも漸く家に持って帰れるし」

 

 実の話U-23の決勝戦は昨日行われた訳で、昨日は色々取材も多く近くのホテルに泊まった訳だ。

 んで今日のさっきの取材が一応としては一区切りと言う事で、決勝戦後初めての帰宅となる。

 

 「……ん?」

 

 足取り軽く軽快に歩を進めていたが、ふと前方に違和感を察知し足を止める。

 

 俺の視界に入ったのは前方にうずくまる少女。

 良く耳をすませば啜り泣く声も聞こえる。

 

 見た目中学生かそこらの感じだし迷子とは思えないんだが……

 

 何かまずい事に巻き込まれたとか?

 にしては外傷とかある様には見えんが。

 

 ええい、こうなれば話し掛けるより他無い!

 

 「あー、えっと。君、大丈夫?何かあったのか?」

 

 「……っ」

 

 しゃがみこんで話し掛けた俺に、泣いていた少女は一瞬ピクッと肩を反応させ一応としては泣き止んだ。

 怯えてるだけかも知れんが。

 

 「あ、あはは……別に悪い事しようとかじゃないよ。純粋に心配だっただけ」

 

 「……も、もしかして」

 

 何とか誤解らしきものを解こうと必死になっていたら、女の子が急に話してきた。

 こっちがびっくりしたが怯えてる様子は無さそう、良かった。

 

 「ん?どしたよ」

 

 「えっと、その……もしかしてフレイ・バトラー選手、ですか?」

 

 恐る恐る顔を上げてきた女の子。

 

 まだ多少身体を震わせながらも、目をキラキラさせながら聞いてくる辺りちょっとは元気になったのかね?

 まあそれなら良いんだけどね。

 

 ……って。

 

 てかこの女の子の顔ってもしかしてと言わずとももしかしなくても……

 

 「そうだけど……君こそ、もしかしてキャリー・ターセルちゃん!?」

 

 「へっ!?あ、あのフレイさんが私の事し、知ってるんですか?」

 

 「知ってるも何も大ファンさ!てかキャリーちゃんこそ俺の事、知ってんだ?」

 

 「だ、大ファンなんて……昔からの憧れの人に言われるなんて……」

 

 やはりと言うべきか間違いなく彼女は俺が長年ファンやってるキャリー・ターセルちゃんだった。

 

 すげえめっちゃ嬉しいんだけど!

 え、なに、マジで!?

 どう考えても本人だよな、俺見間違えてないよな!?

 

 ハッ、いかんいかんここは冷静にならなくては。

 

 はいヒッヒッフー……って待てそれはラマーズ法だ動揺するな俺ェ!

 

 ふぅ……よし、今度は普通の呼吸法だな、うん。

 

 いやしかし、何かさっきまで泣いてたのに若干トリップし始めたぞこの子。

 

 てか憧れの人って……え、俺!?

 

 「昔からの大ファンか……照れるな」

 

 っと、そういや本題を忘れかけていた。

 多分だが彼女、状況から察するに家出してるところだろう。

 ジムにも暫く顔出してないんだろうな。

 

 「……ところで、こんなとこで泣いてたのってやっぱり……」

 

 「あ……はい、恥ずかしいですけど。あの試合で気持ちが折れちゃって、家にいてもどうしようもない気持ちになってつい……」

 

 あーやっぱりか。

 しかし勢いだけの家出となると色々まずい事とか多いんだよなあ、若い子とか後先考えない事多いしね。

 俺もまだ若いはずだがな。

 え、若いよな?

 

 「……家とか、場所こっから分かる?」

 

 「あー、ええと……その」

 

 うんまあどう考えても図星だなこりゃ。

 分かる気はするんだよなあ、勢いで家出したは良いけどここどこだよ的なの。

 

 ううむ、しかしどうするか。

 

 ……あれか、最終手段『お持ち帰り』を使わないとアカンパターンですかこれは。

 事前に言っとくが俺はまずい気を起こす訳でも誘拐する訳でもないからな、誰か見てても通報だけはやめてくれよな……

 

 「んじゃさ、家来る?」

 

 「ふぇ?」

 

 「いや、あの女の子が一人こんな人通りの少ないとこは心配だし、ほら迷子じゃん今?だから……」

 

 「い、良いんですか!?」

 

 「あ、うん。良いのよどうぞどうぞウェルカム」

 

 適当な理由付けて誘導しようと思ったがキャリーちゃんの方からがっついてきた、さっきまで泣いてたんじゃないのか君は。

 

 まあ泣いてる顔より笑ってる顔の方が段違いで可愛いから良いんだけど。

 

 それはそうとして、正直ガチでこの子俺に気があるんじゃないかと錯覚しちゃいそうになるから俺の煩悩がマッハでヤバイんですけど。

 

 しゃーないそこは気合いで耐えるか。

 

 「ありがとうございます!」

 

 「いや、俺の方こそ。一度キャリーちゃんとは話してみたかったんだ、だから大いに歓迎するよ!キャリーちゃん!」

 

 まあそんなこんなで

 

 

 家にキャリーちゃんがやって来る事となった。

 

 

 

 やったぜ。



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ヒミツその二『事案発生じゃないですかやだー』

900UA越え←!?
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やっぱりみんなキャリーちゃん好きなんすね~

アニメ再登場あくしろよ


 「まあ、そんな訳で連れて帰ってきたぞ」

 

 「おまっ、ちょ、ええ……ウチの息子がまさか事案を起こすなんて……」

 

 「そりゃどういう意味だ親父、俺は善良な人間だ、間違いなくな」

 

 確かに突然中学生の女の子連れて帰って来たらこうなるのも多少は分かる、特に同僚から言われるのは最早仕方のない事と覚悟済みではあった。

 

 だが何故親父からそう言う反応を受けるんだ、お前の息子だろ多少は信じたらどうなんだよ。

 だからガチで困惑してる様な目はマジで勘弁してくれ、まるで俺が犯罪者みたいじゃねえかよ。

 

 「しっかしフレイも隅に置けねえなあ!」

 

 「優勝トロフィーを持って帰ってきたと思ったら少女まで持って帰ってくるとは、これが天才と言うものか」

 

 「いやいや絶対ちゃいまっせドレッグはん…」

 

 いやそこで納得する同僚陣もどうなのよ、親父のアホ差加減が余計露呈するぞ。

 

 因みに喋った順から説明していくが、まず一人目。

 

 ここから半径200km以内に敵なしとまで言われ、弱冠12歳、期間にして僅かに半年でその範囲全ての不良を従えさせた伝説の不良ことジェイリー・ベッケンハーク。

 U-23男子総合格闘技戦ワールドランク6位、マスターカップワールドランク11位だ。

 

 二人目のメガネを掛けて一見筋肉がある様には見えない細マッチョ系の伝説のストリートファイターことドレッグス・アントニー。

 

 コイツの力に興味があって近付き、勝負を仕掛けた格闘家曰く『舌を巻く位凄いセンスの持ち主』と言われそこから一躍ミッドで有名なストリートファイターに。

 ドレッグスは呼びづらいからと良くドレッグと呼ばれている。

 U-23男子総合格闘技戦ワールドランク4位、マスターカップワールドランクは10位だ。

 

 そして三人目、10歳で当時小学生とは言え、上級生の男子計100人以上と喧嘩し全員を病院送りにした逸話が有名。

 その後も度々喧嘩しては相手を病院送りにして、少年院出所後格闘家になるもそこでもジムの方針に従わず、暴れ馬と呼ばれたフィールドの喧嘩師の異名を持つ男ことギャラード・アルフォンゾ。

 

 こちらも呼びづらいとの事で良くラーディと呼ばれている。

 今でこそ普段はノリが良いだけの男だが、フィールドに立つと一変、流派なんて無く滅茶苦茶な戦闘スタイルで気性荒く相手に襲いかかる。

 U-23ワールドランクは3位、マスターカップワールドランクは8位だ。

 

 因みに俺はU-23が1位、マスターカップが4位のランキングだ。

 

 「てか親父もそうだがお前らも何か勘違いしてるだろ……良いか、俺は善良なる高校三年生だ、この意味が分かるか?つまり俺はキャリーちゃんにナニかしよう等と考えてない、OK?だよなーキャリーちゃん?」

 

 取り敢えず変な誤解はさっさと解くに限る。

 横にいる若干固くなってしまっているキャリーちゃんに、極力優しい感じで微笑みながら答えを誘導させる。

 

 「そ、そうです。泣いている私に優しく話し掛けてくれましたし……でもフレイさんにならちょっとくらいえっちぃな事されても……キャッ」

 

 「そうそうだから俺は善良だとなあぬぅ!?」

 

 誘導しようと思ったら爆弾を踏み抜いたでござる。

 

 いやいや何言ってんのこの子!?

 

 顔真っ赤にしてトリップしちゃってるしまた!

 さっきも若干トリップしてたし、俺の中のキャリーちゃんのイメージが崩壊に次ぐ崩壊をしていってるんですがそれは……

 

 ああでも俺なら良いとか言われて嬉しくない訳ないんだよなあもう可愛すぎて仕方ないっての。

 だからこそ俺の理性がしっかり働かないと襲っちゃうから怖いわ。

 

 まだ13歳の子襲ったら100%犯罪だからね仕方ないね。

 

 「ダメだこの息子、早くなんとかしないと……」

 

 「ダメなのはどう考えてもあんたの脳ミソだよ、糞親父」

 

 「まあしかしだ、何にせよ親御さんには連絡した方が良いのではないか?」

 

 「せやな、流石に心配しとるやろしな」

 

 「大慌てで探し回ってるかもしれねえし」

 

 ふむふむ、まあクソ親父の妄言は置いとくとして、まあ確かにそろそろ日も暮れる頃、親御さんが心配してない訳ないわなあ。

 それこそキャリーちゃんの言い方聞いてると家を急に飛び出したも同然だし。

 

 「俺のスマホ貸すからさ、流石に連絡取りな」

 

 「……はい、そうですね。確かに何も言わずに飛び出してきちゃいましたし。すいません、スマホお借りします」

 

 あーやっぱり何も言わずに飛び出してきてたか。

 まあ言動一つ一つ見てれば分かるけどかなり礼儀正しいし、本気でばつの悪そうな顔してるし、家族は良い人達なんだろう。

 

 家族が良い人達じゃなきゃここまで良い子に育たなかっただろうし何よりデビュー戦からキャリーちゃんの拳を見てきた俺には分かるが、キャリーちゃんの拳はいつも真っ直ぐだ。

 

 相手の実力と長所を何よりも尊重し、相手の弱点ではなく自分の長所を活かしたプレイスタイルで闘う。

 

 これが素直な優しい子じゃなかったら何だと言うのか。

 俺はそんな素直なプレイスタイルと純粋な可愛さに惚れたんだ、それ以外有り得ない断じて有り得ない!

 

 ロリコン上等じゃ!

 

 

 は、良いがところでキャリーちゃんの所属してるサニージムってここからかなり距離遠くなかったか……?

 

 帰り大丈夫かなこの子……

 

 「うん、うん……ご、ごめんなさい……え?今どこかって?あ、えー、その。とある同業者の男の人に助けられまして……え?電話をその人に代わって?……まあ、その」

 

 多分お母さんかお父さん辺りに怒られてたのだろう、顔を若干青くしながら謝っていた。

 

 怒るとかなり怖いタイプなんだろうなーとかボーッと見ていると、何故かキャリーちゃんの視線がこっちに向いた。

 

 ……え、なに代われって?

 

 ……まあ、親御さんからしてみりゃ何処の馬の骨とも分からない相手の、しかも男の家にいるとなりゃ確認もしたくなるわな。

 

 「代わって欲しいって?」

 

 「は、はい。その、ごめんなさい……」

 

 「ハハッ謝る事はないよ、そりゃあ親御さんからしたら知らない男の家なんて言ったら心配にもなるだろ」

 

 「でも、折角助けて頂いたのに」

 

 「良いのよ良いの。ちゃんと説明すりゃ良いだけなんだから」

 

 うぅ、と渋るキャリーちゃんからスマホを受け取る。

 そんなに渋るって親御さんはどれだけ怖いんですかね……

 なんて多少想像しては冷や汗をかいてしまうが、ここは何としてでも無害なのを証明しなくてはならない。

 

 ここで万が一にでも有害と判断されようもんなら一生キャリーちゃんと会えなくなるのは目に見えている。

 漸く出逢えたこの奇跡を繋がせるには、正念場のこの場面を切り抜けるより他ない。

 

 ゴクリ、と生唾を呑み込み意を決して電話へと応対する。

 

 「はい、お電話代わりました」

 

 まず声はいつも通り、緊張感を相手に思わせては不審に思われるからそこも冷静に。

 よし、取り敢えずは問題ないはずだ。

 

 後は相手の出方次第……

 

 「もしもし、キャリー・ターセルの父です。貴方が娘を拾ってくれた方かな?」

 

 「はい、そうです。俺の事は娘さんからはお聞きに?」

 

 「いや、名前は言わなかったね。どうやら本人に直接言わせた方が得策とでも考えたんでしょうが」

 

 まあ分からんでもないか。

 本人の口から言った方が信憑性は増すだろうし。

 

 ……あれ、本当に増すのか?

 

 逆にまずくないですかねそれ。

 

 「な、成る程……場所も、聞いていないですか?」

 

 「ええ、まあ」

 

 本当にまずくないですかねこの展開。

 キャリーちゃんも若干混乱してたんだろうけど、このではまずい。

 

 言ったところで信用されるか?

 

 くっ……ええいこうなればままよ!

 

 「……取り敢えず名前の方から先に紹介します。俺の名前はフレイ・バトラー。多分聞いた事もあると思いますが格闘家です」

 

 「……まさか、本当にそうだとは」

 

 「え?」

 

 真っ先に疑われると思い身構えていたが、まさかの信じてもらえた。

 マジかよ何がキャリーちゃんのお父さんを信用足らせたんだよ……

 

 いや嬉しいけどさ、うん。

 

 「お父さん、魔法で相手の心を声から読み取る事が出来るんです」

 

 「キャリーちゃんそれマジ?じゃ、じゃあ俺に電話代わったのって……」

 

 「えへへ、その……」

 

 成る程、この為に代わってほしかったと。

 そうすれば相手の声だけで分かるからと。

 

 全く、緊張して損した気分だ。

 

 

 あ、キャリーちゃんの笑顔で10000倍得したけど。

 

 

 「ハハハ、すいませんな。言わない方が印象がより分かるかと思いまして。いやはやしかし、そういう事であるなら一安心です」

 

 「ありがとうございます、こちらとしても一安心と言って頂いてホッとしましたよ」

 

 しかしこのお父さん良い人だな。

 気さくな感じで、天性的な人を見る目を持っている雰囲気が声からだけでも良く分かる。

 

 だからこそ、人の心を見る魔法に選ばれたんだろうけど。

 

 「ああ、それでそんな貴方に一つお願いがあるんですが、宜しいかな?」

 

 「あ、はい。なんでしょうか」

 

 ホッと一息ついていると、何やらお願いがあるとかでキャリーちゃんのお父さんが話し掛けてきた。

 

 まあ夜に差し掛かってきてるし一日くらい泊めてあげてほしいとかそんなもんだろうか。

 それならとても、とてーも有り難いお話ではあるな!

 

 「出来れば、なんだけどね。ウチのキャリーをしばらく其方に置いてもらえないかね?」

 

 「……ほ、本当ですかそれ」

 

 「勿論さ、最近元気が無かったのにとても嬉しそうに君の事を話していたからね。それにフレイ・バトラーと言えばつい昨日の試合で優勝を決めた実力者、あの子の実力と精神どちらも鍛えるには持ってこいの環境だと思いましてね」

 

 まさかまさかの予想の遥か先を行ったよこの人!?

 一日どころかしばらく置いてほしいとは、これが棚からぼた餅ってか。

 今まで絵に描いた餅だったのが棚から現物が落ちてくるとは……いやはや人生って分からんもんだわ。

 

 「取り敢えず親父に代わります、一応責任者なんで。その間にキャリーちゃんと話してみます」

 

 「分かったよ、では代わってくれるかな?」

 

 「はい。親父、一応責任者だし代わってくれ」

 

 「あーはいよ、お電話代わりましたバトラージム責任者レイモン・バトラーですが……」

 

 よし、これで俺はしばらくキャリーちゃんと話せるな。

 

 「……キャリーちゃん」

 

 「は、はいなんでしょう」

 

 「お父さんが、しばらく君を預かっていてほしいって。ここで修行してはどうかと。俺とか他の三人も大歓迎だけど、キャリーちゃんはどうしたい?」

 

 まあ、話してる途中から目が明らかに輝いてたし答えは分かりきってるけどね。

 一応よ一応、本人の口から聞けば悪い噂も立たないだろうし。

 

 「も、勿論喜んで!お願いします!」

 

 「よーし、それじゃこれからしばらく宜しくな!」

 

 「はい!」

 

 

 ええ、まあそんな訳でして家にキャリーちゃんがしばらく寝泊まりする事となりました、やったぜ。

 

 

 

 

 「寝る場所無いからキャリーちゃんはフレイの部屋で寝てもらう事になりそうだけど、大丈夫か?」

 

 「はい、喜んで!」

 

 「ぬわんですとぉ!?」

 

 

 一つ屋根の下、同じ部屋でキャリーちゃんと寝る事が何か勝手に決定してた。

 

 

 事案発生じゃないですかやだー(歓喜)



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ヒミツその三『まるで昔の自分を見てる様だあ(直喩)』

アニメ四話、中々に凄まじかったですな!

良いぞもっとやれ(ゲス顔)


 さて、結局あの後寝る場所が同じになると言う話からどんどん飛躍していき終いには同じベッドで寝る云々まで迷走していった。

 

 俺は流石にそれは自制心やら理性やらが保たないと必死の抵抗を見せるもキャリーちゃんの方は完全にノリ気だったらしく、目を潤ませて何かを訴える様な顔でこっちを見てきた為に敢えなく陥落した。

 

 やっぱり女の子の涙って最強の武器ですわ。

 

 と言うか少し俺の事どう思ってるか気になるんですが。

 いや正直言えば少しどころの問題じゃないんですがね。

 

 何が言いたいかってちょっと開幕から好感度おかしくねって話だ。

 

 いくら大ファンでも普通同じベッドで寝るとかおかしすぎませんかね!?

 

 それ恋人同士でするアレだと思うんですわ俺。

 更に言うなればその後チョメチョメでムフフな事するからこそ同じベッドに入ってたりする訳でしてね。

 

 今日初対面のそう言う欲真っ盛りのピッチピチ18歳の男の自室の更に言えば同じベッドで寝るとかどんな状況よ!?

 

 ……まあ、俺がその迸るなんちゃらを抑えれば良いだけとか言われたらそれまでなんだが。

 

 ええいこうなれば今日だけは何が何でも自制心と理性とモラルと刑法と大事なナニかを守り抜いてキャリーちゃんに男の事を分かってもらわねば。

 

 しかし考えれば考える程かなり役得だと言うのに、ああジーザス!

 どうして神はどうしてこうも苦しい試練を俺に与えるんだ!

 

 これが出逢いの代償と言うのかっ!

 

 「あ、あのーフレイさん?」

 

 「…………おお、キャリーちゃん。ごめん気づかなかったよ、どうしたの?」

 

 キャリーちゃんの言葉で我に帰ったが、まさかキャリーちゃんの気配に気付かないまでに深い思考を巡らせていたとは……くっ、不覚を取ったか。

 

 「少し、フレイさんのお話とか聞いてみたいと思いまして」

 

 「お、マジ?どんな話が聞いてみたい?」

 

 「えと、強くなれる秘訣とか……って、す、すいません!いきなりこんな事……」

 

 「ほうほう、強くなれる秘訣とな?まあ良いけどさ、為になるかは保証出来ないぞ。何せ俺もまだまだマスタークラスでは表彰台に上がるのに時間掛かりそうだし。それでも聞きたいなら俺としても是非話したい」

 

 でも、キャリーちゃんにとって俺が強い選手と言うイメージを持たれているという事実は今後の自信に繋がりそうだな。

 

 誰に強いと言われても自信に繋がるけど、キャリーちゃんは特別力がみなぎってくる様な感じがする。

 

 「勿論です!私の憧れですから!」

 

 おお、断言されたよ。

 

 何だろうこう言う年頃の女の子って俺みたいなちょっと強いチンピラに憧れを抱くもんなんかね?

 

 キャリーちゃんとの対応や取材時以外は不良みたいな言動ホイホイしてるし、容姿にしたって目つきが悪いとよく言われる鋭く相手を射抜く様な目と、完全にアッチ系の人間の若造みたいな厳つい顔、うん惚れられる要素は何一つ無いな!

 

 正直最近流行りの平凡な顔付きでハーレム形成してる様なアニメの主人公って相当スゴいんだろうなあと思うわ。

 

 「ごほん、そこまで言われたら言わないとな」

 

 まあそんな御託を並べはしたものの。

 嬉しくない訳ないんだよなあ、最高に嬉しいんだよなあ!

 

 そんな気持ちを自制させつつ、話し始めるとするかな。

 

 「まあ簡単な話だけどな、『躓いた時は誰かを越えようと思うより昨日の自分を越えようと思う事』、『肉体的にも精神的にも打たれ強くなる事』。俺の信念みたいなところだとこれくらいしか無いかな」

 

 「昨日の自分を越える……」

 

 「あくまで俺の考え方だけどな。躓いてどうしようも無いとき、他人を越えようとすれば他人と自分の差を見て焦って、それで悪循環になる事って結構あるんだよね。特にキャリーちゃんみたくまだまだ若ければ若い程。だから今も焦ってるのかも知れないけれど、一度立ち止まって自分を見つめ直すのも良いかも知れないよ。何も立ち止まるのは悪い事じゃない、そう言う事を俺は言いたいんだ」

 

 俺だってそう言う事はあった。

 U-15で順調に勝ててたのに、いきなりスランプに陥って、同列付近の選手どころか格下にすら負ける様になっていった。

 

 そんな時、まずは自分の頭をリセットしようと誰かを目指す事をやめて自分自身と向き合った。

 

 昨日の自分はどうだったか、パンチのキレは、キックのキレは、スピードは、魔力の込め方にムラは無かったか、最後まで攻めの姿勢だったか、弱気になっていなかったか、良かった点悪かった点をすぐに挙げられるか等、兎に角自分を見つめ直す事を徹底した。

 

 そうする事で、一度冷静になれて自分の見えなかった弱点、長所が見えてきたりする。

 まあ一度スランプにならないとこれが意外と見えてこないのがタチ悪いんだけどな。

 

 「私、リンネ選手に負けてから今度こそ私を見てもらわなきゃ、今度こそ見返さないとってばかりで。自分が見えていなかったのかも知れないです」

 

 「気付く事が出来た、それだけで立派な成長さ。気付けなかった事に気が付いただけでそれは今までの自分を越えた事になるし」

 

 「ありがとうございます!私、これで大分モヤモヤが消えました!」

 

 「お役に立てて何よりだよ。さて、そろそろ食事の時間っぽいしそれじゃあ行こうか」

 

 「はい!」

 

 その澄んだ瞳に、最初出逢った時の様な不安なものは無く、ただ純粋に前に向かっていこうとする希望と熱意が垣間見えた。

 

 とは言っても俺が言った事なんて当たり前の常識の事に過ぎない。

 

 ここまでお礼を言われる様な事じゃないとは思うんだけどな、まあそこは当たり前の事だからこそ灯台もと暗しみたいな感じで見えてなかったんだろう、若い子ならそれも良くある事だし。

 

 まあ兎にも角にもキャリーちゃんの役に立てて良かった良かった。

 

 

 

 

 

 さて、食べ終わったら夜の特訓(直球)といきますかね。

 

 

 

 

 そんな訳で食事が終わって約一時間後、そろそろ夜の特訓が始まる訳だ。

 

 あ、因みに食事の方は何か一品自分で作る事になっていたりするが俺は昨日作った肉じゃがが残っていたのでセーフだった。

 そしてキャリーちゃんには肉じゃがが大絶賛だった、やったぜ。

 

 しかし他の連中とか殆んどキャリーちゃんにデレデレしまくってたな。

 そりゃアイドル並に可愛いしアイドル並に人気あるし当たり前だろうけど。

 

 ちょっとだけ引いてたぞ。

 

 一気に押し掛けるとかお前ら飢えた狼かよ……いやアレはハイエナだったかも知れん。

 

 

 「んじゃあ夜の練習試合とかスパーリング始めるぞー」

 

 「ウィッス!」

 

 「ヨッシャ!」

 

 「お願いしますっ!」

 

 ふう、と息を吐きながらさっきの事を思い出していると、親父の気だるげな声が聞こえてきた。

 

 どうやら全員揃ったらしい。

 

 さっきの語りで分かったとは思うがこのジム、俺ら四人以外にも他にあと十人くらい選手が所属している。

 まあそりゃあジム経営してるんだからそこそこ人数いないと家計が保たないって、それ一番言われてるから。

 

 因みにジェイ、ドレッグ、ラーディの三人は住み込みの為半額になってたりする。

 

 俺は勿論タダだぞ!

 

 「おーいドレッグ!ちょっくら一試合付き合ってくれや」

 

 「ふん、丁度お前の様な重たい一発を持つ奴とやり合いたい気分だったところだ、良いだろう受けて立ってやる」

 

 「ほんならアダチくん、ワイに付き合ってや」

 

 「うぇ……お、お手柔らかに……」

 

 その三人も練習を開始したところで、俺はキャリーちゃんとマンツーマンでやるとしますかな、ウヘヘ!

 

 別に狙ってた訳ではない、三割程は。

 

 「うし、じゃあ俺と一戦交えてみようか!」

 

 「が、ががが頑張ります!」

 

 「そんなガチガチにならなくても、ただキャリーちゃんの実力を計りたいだけだからリラックスしてて良いのよ」

 

 まあそりゃね、俺の本気見て知ってるならそうなってもおかしくは無いけどね。

 

 あ、自惚れてる訳じゃないぞ。

 

 しっかりと実力差を見極めた上での発言だから踏み台とか言わないで!お兄さんそっち系のメンタルはクソザコナメクジなの!

 

 「分かりました、な、何とかリラックス出来る様に頑張ります」

 

 うーん大丈夫かなこの子。

 

 なんで試合より緊張してんのよ、俺そんな怖いの?

 それとも憧れだから緊張?やだお兄さん濡れちゃう!

 

 ……本当に憧れなら嬉しいんだけどな、うん。

 

 「そいじゃ全力全壊スターライトブレイカー並の一発お願いね!」

 

 「今のって、確か高町なのはさんの必殺魔法ですよねっ!」

 

 「そそ、管理局のエース様。因みにちょっとした知り合いだったりする」

 

 「本当ですか!?私なのはさんのファンなんです!」

 

 まあちょっとした知り合いとかぼかしたけどガッツリ知り合いなんだよなあ。

 その点の話とかは出来る時にでもするとして、ちょっと脱線し過ぎたかな。

 

 「この練習終わったらその話とか含めて色々話してあげるよ!だから全力全壊で頼むよ!」

 

 「はい、宜しくお願いします!行きます!」

 

 すぅ、と息を吸い力を籠めるキャリーちゃん。

 力の籠め方を見る限りムラは無し、筋はやっぱりワールドランク八位だけあって一流か。

 

 「はぁっ!!」

 

 そして勢い良く突き出される右手の拳。

 

 予想以上に重たい一発で、少しよろめくがイマイチダメージが入ってる気がしない様な感じを受けた。

 

 確かにファーストインパクトの重さはU-15女子勢でも随一、リンネ選手と同等の可能性すらある。

 が、如何せんセカンドインパクト、つまり深くダメージが入っているかと言われると少し首を傾げる様な感じとなった。

 

 「筋は一流、重たさは超一流。だけど少し魔力が相手のボディに辿り着くまでに分散してると思うんだ。多分、魔力を籠めた後そのまま普通に打ってるよね?」

 

 「あ、はい。腕を振る早さや動きには気を付けていましたけど、魔力は確かに普通に籠めていました」

 

 「もっと強くなりたいなら、ちょっとばかし高度だけど魔力の密度を上げたら良いと思う。それこそ鋭利な槍とかを想像して、その先端に籠める全魔力を集中させる事が出来ればリンネ選手もあんな態度じゃいられなくなるぜ」

 

 「魔力を、一点に……」

 

 ふむふむと真面目に話を聞いて覚えようと必死になってる姿を見ると、何だか昔の俺を見てるみたいだわ。

 

 俺もザフィーラさんやユーノくん、フェイトさんと格闘した時とか必死に真似出来る相手のスタイルとか吸収しようと躍起になってた時代が懐かしい。

 

 「おっし、兎に角考えるよりまずはやってみる、だぜ!キャリーちゃん!」

 

 「はい、こんな機会もう一生無いくらいの幸運なんです、もっと教えてください!」

 

 「よーし、来い!」

 

 「行きます!」

 

 

 

 そんな訳で練習に熱中になりすぎて数時間やり続けていて周りに呆れられてしまったのはまた別の話だ。



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ヒミツその四『深夜、二人の密会(全年齢対象)』

(シリアス要素あって)スマンな
あとここからキャリーちゃんの独自設定もちょくちょく入れていくので、そこんとこ宜しくオナシャス!


 「あ、やっべマジ疲れたわ……」

 

 「あはは……そうですね、私もつい気合い入っちゃって、でもとても充実した練習でした」

 

 練習も終わり夜も深まった深夜、俺とキャリーちゃんは色々あったこの一日に終わりを告げようとしていた。

 

 まあ簡単に言えば寝ようとしてるってだけなんだが、本当にこの日は色々あったとふと思い返した。

 

 もう前の日のU-23決勝戦が遠い昔の様な記憶になっている。

 そしてその次の日、インタビューの帰りの夕方近くに俺はキャリーちゃんと出逢った。

 

 あの時目を赤く腫らしながら泣いていた彼女の面影は、気付いた時には無くなっていた。

 

 いや流石に全部全部切り替えていた訳ではないだろう、あの不自然なまでのテンションの上がり具合いを見ていれば、彼女が無理を多少なりともしていた事は嫌でも分かる。

 

 彼女は、キャリーちゃんはまだ心に関しては良い言い方なら純粋、悪い言い方をするならまだ多少幼稚で大人にはほど遠い。

 

 それでも無理をしていたのは、憧れと言う存在、まあつまりは俺がいたからか……

 

 そしてこれから暫くの間、キャリーちゃんと過ごす訳になるのだが彼女が持つ心の苦しみや悩み、推測の段階だが或いはあるのではないかと踏んでいるトラウマ。

 

 この事に俺は関わっていく事になるだろう。

 

 勿論彼女が拒絶すれば踏み込みはしないが、出来る事ならば俺が幾分かの解決の糸口程度は見つけてあげたいと思う。

 

 もうただのファンみたいな視点じゃなくて、キャリーちゃんを一人の普通のまだ幼い少女として。

 これから触れ合って、もっと仲良く出来たら俺は嬉しいと思うし、キャリーちゃんもそれが本望なんじゃないかと思う。

 

 「……えと、まあ何と言うか。約束は約束だしほら、布団入るか?」

 

 「……い、良いんですか?」

 

 「俺は、そのキャリーちゃんさえ良ければ……良いけど」

 

 「は、はわわっ!ありがとうございます!で、では入らせていただきますっ」

 

 いやしかし、さっきまで難しい事考えてたけど一気に桃色空間になったなおい。

 まあ俺から言ったんだけどさ、キャリーちゃんの目が訴えてたんだよなあ、入れてって。

 

 そんな訴えられたらつい入れちゃうよな、だって可愛すぎるじゃん?

 

 勿論大歓迎でもあるんだけどな。

 

 ハハ、取り敢えず俺の理性持つかしら……

 

 「…………変な臭いとかしないよな俺?」

 

 「だ、だいじょぶです!シャンプーの良い香りがするので」

 

 「そ、そうか」

 

 やっべえよ女の子にシャンプーの良い香りがするとか言われるの初めてなんだけど。

 

 でもこの前間違えて女物のシャンプー買って来ちゃったけど、お陰で臭いとか思われずに済んだのはかなりラッキーだ。

 きっと間違えて買ってしまったのは神の暗示だったんだと思っておこう。

 

 「……なあ、キャリーちゃん」

 

 「……なんですか?」

 

 「キャリーちゃんが格闘技始めた理由って、どんなの?」

 

 本来そう言う話はもう少しだけ仲が深まったら聞こうと思っていたんだが、すぐ近くで、同じベッドで一緒に寝ててじっと見られてるのはどうにも理性が持ちそうになく、何とかかんとか暴走しない様に適当に話題を振っていた。

 

 まあ、正直な話適当とは言え聞きたかった事には変わりないし後悔は無い。

 

 あと暴走を抑えられていられるなら最早仕方ないとしか言い様が無い。

 

 「私、格闘技始める前までは、とても暗くて陰気な性格だったんです」

 

 「ほうほう」

 

 内心、キャリーちゃんからの言葉に驚き掛けたが何とか抑える。

 今では元気一杯でぷりちーガールなキャリーちゃんが、根暗で陰気な性格だったとか想像が付かない。

 

 まあ俺も陰気な女の子に格闘技の魅力やら何やらを語る機会が昔あったけど、やっぱりその子がキャリーちゃんみたく明るい子になっている想像が付くかと言われると答えは想像が付かない、に至る。

 

 「でもある時とても明るくてかっこいい格闘家のお兄さんに出逢って、一歩踏み出す力を貰って、そのお兄さんに少しでも近付こうと格闘技を始めたんです」

 

 「あーあるよな、始めた切っ掛けはテレビとか、実際見て凄いと思ったからとか。その格闘家の選手が羨ましいよ、キャリーちゃんの憧れになれるなんてさ」

 

 とある格闘家の選手が憧れで切っ掛けだったのか、まあ何と言うか、分かっちゃいたけど憧れの対象の選手が羨ましいのは勿論少し妬ましくもあったりする。

 

 どれだけ前に格闘技を始めたのかは知らないけれど、俺とかここ二年で漸くそこそこ有名になった程度だし、俺の確率は無いな、うん。

 

 自分で言っててあれだが悲しいなおい。

 

 「……」

 

 「ん?どした?」

 

 「あっ、い、いえっ!」

 

 「……?」

 

 ボーッとそんな事を思いつつぼんやりしていたら、何処と無くキャリーちゃんの顔が多少悲しげになっていた。

 まずい、人の話を聞いてるのに自分の思考に浸ってしまっていた……

 

 頭は良くない癖して、一度考えるとその事だけに没頭し過ぎてしまうのが俺の悪い癖だ。

 

 頭が良くないから色々考えないと相手の事を理解出来ないってのを、まあ一応の言い訳としておく。

 

 「ん、悪い悪い。俺頭良くないから想像力とか人より無い方なんだよ。だからこうして色々思考に浸っちゃうのが俺の悪い癖なんだ、本当ごめんね」

 

 「いえ、良いんです良いんです!今私も他の事を考えてただけなので」

 

 他の事……まあ大体予想は付くが詮索は止めとこう、それと聞いたら後悔しそうだし。

 

 「よっし、それじゃ今の話は終わりにして。聞かせてくれたお礼に俺の話も何か聞かせてあげるよ」

 

 「ふぇ?良いんですか?」

 

 「おう、だから遠慮とか気にしなくて良いよ」

 

 「えーとですね、あ、それでしたらフレイさんが格闘技を始めた理由聞きたいです」

 

 「おっとそこ聞きますか……まあ来るだろうとは思ってたけど」

 

 「どうかしたんですか?」

 

 「あーこっちの話こっちの話。ただこれ、ウチのジム連中以外に言うのは初めてだからちょっと、ね」

 

 ある意味でこの話は、俺のトラウマを抉りかねない事になる話である。

 事実それがあった時、暫く俺は脱け殻も同然にまで追い詰められ壊れかかってまでいた。

 

 同じジムの連中は家族と俺は捉えてるから、新人含めある程度親交が深まった時点でそれとなく伝えてきた。

 驚いて言葉を失う奴、グッと堪えて慰めの言葉を掛けてくれる奴、一緒に泣いて悲しみを分かち合ってくれる奴。

 

 色々な反応があったにも関わらず、その全員の出した答えは一緒だった。

 

 まあ、その話はまた後々出来れば、しようと思う。

 

 「……良いんですか、そんな大事なお話を私が聞いてしまっても」

 

 「良いんだよ、これはお礼だって。あと暫くとは言えキャリーちゃんもここの一員になるんだし、ここのメンバーは全員家族だからな。キャリーちゃんにも、多少は話せるかな、とね」

 

 ただ、余りにキツい話があるのでそこは隠さざる負えないけどな。

 まあそうやって言いつつただその話をして嫌われたくないだけなんだが。

 

 弱いよなー俺もさ。

 

 「家族……」

 

 「そ、ここのメンバー達とは家族同然の付き合いだからな」

 

 「素敵だと思います、そう言うのって」

 

 「キャリーちゃんも何れその一人になるかもね……っと、んじゃ話して行こうか。とは言っても最初はあまり大きな理由は無かったんだ。10歳くらいの時に、親父のジムでやってる事に興味を持って始めた、ただそれだけの緩い理由だったんだよ」

 

 素直に親父のやっている格闘技、その姿に見惚れていたんだ。

 

 いつも気だるげでやる気の無い表情の親父が格闘技を指導している姿を初めて見た時に思った『格好良い』と言う感情に突き動かされて俺も格闘技を始めた。

 

 本当に本当に、そんな些細な理由だった。

 

 「……母さんもそんな純粋で直球的な俺の事をいつも見守っていてくれた。あの日までは」

 

 「あの日……?あれ、そう言えばフレイさんのお母さんは……今日一回も見掛けて……」

 

 そこまで口にし掛けたところで、まさかと言う表情に変わる。

 流石に察してしまったか……まあ仕方ないわな。

 

 「……俺の母さんは殺された」

 

 「買い物帰りに、追われていた強盗に」

 

 「口封じにナイフで滅多刺しにされて、苦しみながらの死だったって」

 

 「あの時、Cランク魔導士でも一人さえ間に合えば強盗は取り押さえられて、母さんは助けられたって」

 

 「でも丁度一旦逃げ切った後で、暫く誰も来ない様な状態だったって」

 

 「そいつは母さんを刺した後見向きもせずに逃走していったって」

 

 「…………悔しくて、悔しくて。自分で、俺自身が探しだして殺してやるって。でも、見付けた強盗は強くて。俺じゃ勝てなくて」

 

 ポツポツと出てきた言葉はやがて大雨となり、降り注ぐ様に流れ出てきた。

 

 忘れたくても忘れられない、悪夢。

 

 そして俺が強くなろう、そう決心した切っ掛け。

 

 「…………」

 

 「あー……その、軽めに済ませようとしたんだけど、つい言葉が漏れ出てきて」

 

 「なんで」

 

 「ん?」

 

 「なんで、笑っていられるんですか……?」

 

 なんで笑っていられる、か……多分、母さんが殺されて塞ぎこんでた時の俺も、今の俺見たら同じ事言いそうだな。

 

 「俺だって最初は塞ぎこんでたよ。でも、ある日母さんの遺品を取りに行った日、渡された物があった……魔力で声を保存するネックレス、そこに母さんの遺言が遺されてたんだ」

 

 「――誰かを殺す、復讐の為に格闘技をやるな。誰かを守る為の格闘技を、どうか、だから誰かを恨まずに笑っていてほしいと」

 

 「息も絶え絶えで、刺されて気力だけで生きてる様な状態の時に保存したんだろう」

 

 「まあ、あれさ。母親との最後の誓いとして、笑って生きようと思ったんだ」

 

 「……凄いです、フレイさんは。本当に心が強い人です」

 

 静かに、ポツリポツリと。

 

 いきなりこんな重苦しい話をしてしまったのに、ちゃんと俺の言葉を噛み締める様に聞いて、心の底からの本音を言ってくれる。

 

 やっぱりこの子は、人を何よりも思いやる事が出来るとても優しい女の子なんだと、第一印象から思っていた事を改めてそう思った。

 

 ただ自分自身の事になると少し弱くなるのは確からしいが。

 

 「いや、俺は強くないさ。母さんの言葉が無きゃ今でも引きこもりよ……っと、そろそろ日付変わりそうだな……」

 

 「もうそんな時間……フレイさんと話していると、過ぎる時間も短く感じます」

 

 「そりゃ嬉しいわ、今度はちゃんと楽しい話聞かせてあげるよ」

 

 「いえ、今日のお話も聞けて良かったです」

 

 「……そっか。んじゃ、おやすみ」

 

 「おやすみなさいです」

 

 俺的にはまだ起きていても大丈夫ではあるけど、キャリーちゃんにはキツい時間帯だろうしね。

 本当今度は楽しい話も話さなきゃな、うん。

 

 ……あと何故に俺にくっついてくるんですかキャリーちゃん。

 

 俺の理性壊れるんですけど。

 

 でも……まあ、今夜くらいは、良いかな。

 

 ……勿論だが一緒に寝るって意味だぞ、諸君。



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ヒミツその五『それでも俺はKENZENだと言いたい』

今回はサービスシーンあるから、期待してるロリコンニキ達は最後まで見るんだゾ
byロリコン

本文中に出てくる難読?単語の読み方
幼気(いたいけ)


 

 

 

 

 

 「え?今、なんて……」

 

 「落ち着いて聞いてほしい。これは現実なんだ、紛れもなく」

 

 「ち、違う……そんな訳あるもんか!なんで、そんなの有り得ない!有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない!!」

 

 「……そんな訳なかったら、嘘だったら俺だって……俺だって、どれだけ、良いか……!!」

 

 まるで悪い夢を見ている様だった。

 

 何気無い平和な日々を過ごしてきて、今日も、そしてこれからもそれは変わる事なく続くものだと思っていた。

 

 なのに。

 それなのに。

 

 親父は言った。

 母さんが死んだと、殺されたと。

 

 俺は認めたくなかった、聞きたくなかった、知りたくなかった、現実から目を逸らして逃げていた。

 

 「あ……ああ……」

 

 それだと言うのに、当時12歳のガキの俺でさえも全てを察する程の親父の泣き顔を見て、嫌が応にでも閉じ籠ろうとした殻は、意識は、破られた。

 

 逃げ場も無ければ逃避する寄り道さえも無い。

 

 12歳の俺に、その無情なる現実を突き付けるには、余りに負担が大きすぎた。

 

 「うあああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 「ぐっ……ふぅっ……ハ、ハァ、ハァ、ハァ……クッソが、ふざけんなよ……本当に最悪な夢だった……」

 

 目を覚ますとそこは知らない天井だった、なんて事はなく見慣れた家の簡素な天井が目に入った。

 しかしあの夢は、とても久し振りに見た様な気がする。

 

 母親が死んだ、殺されたのは紛れもなく夢ではなく現実だ。

 そんな事は分かりきっている、今俺は真っ直ぐに前を見据えているし。

 

 

 ――母さんの死を引き摺っている?

 

 いやそれこそ有り得はしない。

 

 引き摺っていたら、前なんて向けていなかったに決まっている。

 だから悲しみは全て振り切った、そして今こうして他の連中やキャリーちゃんと笑い合えている。

 

 それこそが答えだ、それこそが俺が苦しみなんて全く無いと断言出来る理由だ。

 

 まあそんな重苦しい話は寝起きのアホな俺には頭痛がするからそろそろ止めとこう。

 

 

 と言うかそれより重要な問題が現在起こっていたりする。

 

 「はぁ……どうすっかなこれ……」

 

 隣でキャリーちゃん寝てるし、寝汗とか大丈夫かなとか考えていたが、最早そんな次元じゃなかった。

 悪夢を見ていたせいか中々にベッドがまずい事態になっていた。

 

 さて、この状況で何がまずいか皆さんはお分かりになっただろうか。

 

 そう、男の汗グッショリのところに女の子を寝かせておく訳にはいかないが、ゆったりと寝かせておける場所が無いと言う話だ。

 

 しかし本当にどうするか……うーむ……起こすのも気が引けるし、やはりソファーで寝かしておくより他無いか?

 

 「後で謝っとかないとなぁ……」

 

 そっと起こさない様にキャリーちゃんをお姫様抱っこの状態で抱きかかえ、ソファーまで移動する。

 

 てか昨日の夜はあんまゆっくり感じられなかったけど、キャリーちゃんやっぱり目茶苦茶可愛いし本当に良い匂いするな。

 

 あとめっちゃ軽くて柔らかい。

 

 男が持つムスコこと例のアレは朝、元気を増すと良く言われているがこれはかなりヤバい。

 多分あと少しでも油断したら理性とか何もかも吹っ飛ぶわこれ。

 

 ……昨日から何回吹っ飛び掛けてるんだよ俺の理性は、良く耐えてられるなオイ。

 

 いやいやそれよりか早くシャワーに入らねば、キャリーちゃんに失礼だな。

 

 んじゃ、まあ書き置きに『布団が汗でグッショリだったから移動しました、ごめんね』と、書いて。

 

 よし入ろうか。

 

 

 

 

 「ふぃー……」

 

 シャワーを浴び一息着く。

 全く朝っぱらから精神がゴリゴリ削られたわ本当によぉ……

 

 「母さん、か……」

 

 ふと母さんがいた昔を懐かしみ、ハッとして首を振る。

 

 俺にとって過去はタブー、俺の強さの中の弱点だ。

 思い出せば思い出す程、拳に迷いが、魔力に歪みが出る。

 それじゃあ折角の母さんとの最後の約束、誰かを守る為に強くなる事が出来なくなる。

 そんなの俺は論外だ、思い出よりも、強くなって母さんとの誓いを守る方が先決だ。

 

 それすら守れなくなってしまっては本末転倒も大概になる。

 

 だから俺は、迷いをかなぐり捨てる為に冷水を浴びた。

 自分を叱咤する為、冷静になる為に幾分も浴び続けた。

 

 「あ、さっむゥ!?」

 

 んで冷たくなりすぎた。

 

 正直シリアスも何も無いがこれが現状である。

 ほんのちょっとだけ後悔したりした、ほんのちょっとだけ。

 

 「しゃーね、お湯浴びtあっつゥ!?」

 

 んでもって冷たくなりすぎた身体にいきなり熱湯はクッソ熱かった。

 

 訂正しよう、かなり後悔した。

 畜生めェ!

 

 

 

 

 

 「あーもう本当散々だわ……」

 

 あの後、身体が熱湯に慣れるまでに時間が掛かりかなり疲れた。

 疲れを癒す意味でもあったこのシャワータイムだったがもう色々と台無しである。

 

 「もうはよ身体洗って出よ……」

 

 はぁーあと大きな溜め息をつき、気持ちを切り替える。

 アスリートたるもの、気持ちの切り替えも大切なのである。

 

 よし、とシャンプーを手に取った時であった。

 

 「フレイさん」

 

 「あ、キャリーちゃん?ごめんね、俺のせいでソファー何かに寝かしちゃって」

 

 「大丈夫です、書き置き見ましたし。それに昨日一日フレイさんといて、フレイさんはとても優しい人だって分かってますから」

 

 浴室のドアの向こう側から声が聞こえてきたと思ったらキャリーちゃんだった。

 やっぱり寝心地があまり良くなかったのか起きてしまった様だ、こりゃ後でケーキの一つでも奢らないとな。

 

 折角だしあれだな、なのはさん達に頼んで地球まで行ってアリサさん、すずかさんとかともあったりして、んで翠屋までケーキ買いに行こうかね。

 

 それこそちょっとした旅行感覚でキャリーちゃんも一緒に連れていければ、キャリーちゃんも喜ぶと思うし。

 

 ただクロノが色々文句言いそうなんだよなあ、アイツお固いからな。

 

 一応優勝報告って言うちゃんとした体があるから拒否されると言う事は万が一にも無いとは思うが、説教臭い話は聞きたくない。

 

 フェイトさん説得して、クロノを丸め込ませるのが先決か?

 

 「……フレイさん?」

 

 「ごめんごめん、ちょっとキャリーちゃんが良い子過ぎて感動に浸ってただけだ」

 

 「い、良い子だなんて……私は本当の事を言っただけですよ」

 

 よし間違った事は言ってないな、言った事は紛れもなく誤魔化し様もないくらいに事実である。

 

 礼儀正しくて練習熱心、そして良く笑う女の子が良い子じゃなかったら俺人間不審になれる自信があるわ。

 

 「ははっ、そう言うところが良い子なんだよ」

 

 「も、もうっ……恥ずかしいですよ」

 

 ドア越しだから分からないけど、多分顔赤くしてるんだろうなあとか思ってみたり。

 

 変態で悪かったな、俺はKENZENをモットーに生きるロリコンなんだよ。

 

 「そんな謙遜しなくても良いんだよ。それより、俺出たらキャリーちゃんもシャワー使う?」

 

 「あ、大丈夫です。今入っちゃうんで」

 

 「おー、そうk……ん?」

 

 あれ今何かキャリーちゃん妙な事言わなかったか?

 今入っちゃうとか何とか……

 

 ……ふむふむ、成る程。

 

 

 あ、これヤバいやつだわ。

 

 「え、え、えええええええ!?」

 

 「わ、私としてもかなり恥ずかしいですが、こう言うのって勢いが大事って良く言われますし!」

 

 「わー!わー!待て、落ち着け!いくら俺が身体にタオル巻いてるとは言え、それはまずい!シャレにならないから!」

 

 「ご、ごめんなさい失礼しますっ!」

 

 俺の静止も虚しく、身体にタオル巻いただけのキャリーちゃん登場。

 正直言って昨日あったばかりにしてはやる事が少々……いや結構?かなり?おかしい様な気がするんですがそれは。

 

 まあそれはともかくとして。

 

 白くきめ細やかな綺麗な素肌、その素肌と対極にあるが故に艶やかさを更に増した黒髪、そして幼いながらも整った美少女アイドル顔…………そんな幼気な少女の姿とか、俺には刺激が強すぎるんですが。

 

 まだ成長途上とは言えしっかりとメリハリのある身体付き、そしてそれに加え幼さもまだ残した部分も多少なりともある。

 

 タオルに隠されたその男のロマンこと桃源郷を想像するだけで頭がグルグル回ってくる程には理性のタガが外れてきている。

 

 「お、おお……!」

 

 「えと、どうしましたか?」

 

 「いや、その、えーっと……最高です」

 

 「え?」

 

 「え?あっ」

 

 思考がショートしたのが災いしたのか、ついとんでもない事を口走っていた。

 言った瞬間にキャリーちゃんの顔が赤く染め上げられるのを見て気付いたが本気で通報案件になり掛けてるよなこれ……うん言わずもがなかなりヤバい。

 

 ああどうしようか、その真っ赤に照れてる顔マジ可愛いわ。

 正直もう俺の理性と自制心はボロボロである。

 

 ただここでタガが完全に外れるとR-18案件になってしまう訳でして、ポケ○ンGOならぬカンゴクGOみたいな感じでポリスメンにゲットされてしまう、それだけは何がなんでも避けなければならない。

 俺の人生終わらせるのだけは絶対阻止。

 

 「あ、いやそのこれは違う……いや違わないけど!本心だけど!取り敢えず違うから!」

 

 「そ、そそそそそうですねっ!!違うけど違わないけど、取り敢えず違うんですもんねっ!」

 

 最早俺もキャリーちゃんも言語がおかしい。

 自分で言っといてあれだけど違うけど違わないけど、取り敢えず違うってなんだよ。

 

 今時小学生でもそこまで頭悪くないわ。

 

 「と、とにかくですねっ!入ってきてしまったからには、お背中流しますね!」

 

 「あ、うん。そうだね、お願いするよ」

 

 やっぱりそうなるのか……てっきりこのまま撤収すると多少思ってたりしたけど現実そう甘くなかった。

 

 この状況はホワイトチョコにクリーム塗ったよりも甘い感じに染まり掛けてるがな!

 

 「が、頑張ります」

 

 見るからに肩に力入ってるし、力加減とか大丈夫かな?とか思ってたけど……

 

 「おお、これは……良い力加減だ……」

 

 「ありがとうございます!よくお父さんの背中流していたんですけど、フレイさんに合う力加減で良かったです!」

 

 中々どうして、かなり気持ちの良い洗い方かも知れない。

 しかしこうして流されている分かるけども、キャリーちゃんの手、思ったより小さいよな。

 この手の中に、あの力強い拳と、夢と希望と、そして優しさと。

 

 色んなものが沢山詰まってるんだよな。

 

 そう思うと、俺の手何かよりもずっと大きく感じる。

 

 「……キャリーちゃんならきっと、努力次第でワールドチャンピオンに近付くのも夢じゃねえ。なれるかは保証出来ないけどな、近付ける事に関しては俺が保証するしその為にしっかり教えてくつもりだ」

 

 「はい、フレイさんの元でなら、サニージムで付けたもの以外のものも付けられる様な気がします。これからもお願いします。私、今度はちゃんと勝ちたいんです」

 

 「おうよ」

 

 身体を流しながら、流されながら決意を口にする俺とキャリーちゃん。

 

 ……この決意は、決して無駄にさせてはいけないな。

 

 

 「……これ、恋人同士みたいですよね」

 

 なお、上手く締められると思った矢先にそんな事を言われ、俺のムスコがナウい事になってしまいバレない様に必死になっていたが、決して通報だけはしないでほしい。

 

 俺はあくまでもKENZENである。



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ヒミツその六『俺の知り合いは管理局の白いあk伝説の英雄です。』

物語が一向に進まん……!


 シャワーから出て軽く雑談、天気は晴天、ああ何とも平和な一日である。

 現実逃避?いやそんな事はしていない断じてしていない、だから全員こっち見てニヤニヤしてるの止めろよ……

 

 「フッフッフ、どうやら今朝はお楽しみの様やったみたいやなあフレイさんや」

 

 「良いじゃねえかよ、裸の付き合いってのも大事だぜ!」

 

 「いやいやそんなんじゃないから……あとジェイは何か論点ずれてるから黙れ」

 

 「ま、精々警察の世話にならん様に戯れてろよ」

 

 「うんそれは分かってるからね!?」

 

 「ああ、俺の息子が犯罪者に……」

 

 「アンタの思考能力の方が犯罪だよ!何をどう聞き間違えれば犯罪者になるんだアホか!」

 

 どう考えても全員何か勘違いしている、そう思わずにはいられないくらい今の話はおかしい。

 

 てかシャワー一緒に入った……てかキャリーちゃんが途中から乱入してきた事は知られている訳がない。

 

 まあその前までの出来事はキャリーちゃんに喋られてしまったが。

 

 と言うかラーディが半ば強引に聞き出したんだがな、流石元ド外道やる事がエグい。

 キャリーちゃんもちょっとばかし引いてはいたけど、まあ迷惑そうにはしてなかったし一応その場は目を瞑ってやったが、後でちょっくらお仕置きが必要かも知れんな。

 

 つまりアイツ等はその前までの言動で俺を犯罪者扱いしている!

 

 てかジェイは何なのエスパーか何かかよ何で裸の付き合い(健全)してたの知ってるみたいな口振りなんだよ心臓に悪いわアホンダラ!

 

 「ふふっ」

 

 「いやいや、君被害者なんだけど……」

 

 「あ、その皆さん仲良いなって。本当の家族みたいで」

 

 全く、キャリーちゃんも相当大きい器してますわ本当。

 

 これが強者の持つ器ってか、こりゃ磨けば本当にヴィヴィオ選手やミウラ選手は勿論のこと、下手すりゃリンネチャンピオンに手が届く位置まで行ける可能性だって有り得る。

 

 人の器ってのはその人の人となりや意志の強さ、心が見えてくるものだ。

 子どもながらに、いや大人でも俺等の下世話な話をただのおふざけとして流せる人間なんてそうそういやしないだろう。

 

 いやそもそも流して良い話かどうか云々の問題にもなるけどな。

 

 「まあコイツ等五年くらいずっと住み込みだからな、そりゃ家族同然にもなるわ」

 

 「ま、俺等は三人とも所謂孤児って奴で、小さい時に捨てられてなぁ、だから親父さんとかに対する家族って感情が反動で高くなってるのかもな」

 

 「……まあ、俺は二人より幼い時に捨てられて、家族と過ごした記憶なんて無かったから最初家族なんてもの、分かりはしなかったが。今なら分かる気がする」

 

 「ワイも親父さんおらんかったら、ずっと荒れ果ててたやろうなぁ。あの時親父さんから貰った一発は、メチャメチャ痛かったけどそれ以上に優しかったって感じたわ」

 

 「お、お前ら朝から恥ずかしい事言いまくるなよな……」

 

 「いや何本気で照れてんだよ」

 

 顔を赤くして照れる親父、うん全くもって父親の威厳も何もあったもんじゃないな。

 格好良い時は本気で尊敬出来るスゲー父親な癖して、普段これだからあまり締まらない。

 

 「良いお父さんなんですね」

 

 「ま、普段これだから全く想像付かんだろうけれどね。普段から格好良ければもっとジムに入る奴も増えると思うんだけどな。なあ親父?」

 

 「うぐっ、それは勘弁してくれ……もう何十年と染み付いた性格なんだよ……」

 

 何度も見た光景とは言え、本当にこの親父が現役時代その時代最強とまで言われたレジェンドだったのか半信半疑になってくるぞ。

 

 まあ現役引退して7年も経ってるのに未だに親父との勝率は4割くらいだし、良く考えればバケモノって分かるんだけどな。

 

 「長くなりそうだしその話は置いとくとして。親父、今日ちょっとなのはさん達のとこ行きたいんだけど良い?」

 

 「ん?ああ、たまには休みも必要だからな。何ならジェイ、ドレッグ、ラーディも連れてって良いぞ」

 

 「おーマジで。良かったな三人共!今日は休みだぜい」

 

 「さっすが親父ィ!ありがとよ!」

 

 「確かに、たまには息抜きも必要かもな」

 

 「よっしゃ!ナイスやで親父さん!」

 

 親父今日に限ってやけに気前良いな。

 誉められて気分が良くなったか?

 

 まあ結構誉められるの好きだからな、親父。

 その代わりかなり恥ずかしがるけど。

 

 「な、なのはさん達に……会える……はわわわわ……」

 

 「いやそんな緊張しなくても」

 

 「いえ!そんな訳には行きません!世界を三度も救った英雄ですよ!?みんなの憧れなんですから……」

 

 おおう、なのはさん達メチャメチャ有名な上に大人気なんだな。

 

 まあロストロギア事件とはやてさんが命を落とし掛けた闇の書事件、そしてスカリエッティ事件と、約十年間で三度も世界が危機に陥っただけでも歴史上他を見ないと言うのに、三度も同じ人間達、そしてその仲間達『機動六課』がその危機を打破した。

 

 その中でも高町なのはさん、フェイト・テスタロッサさん、八神はやてさんは歴史上においても古代における伝説と称される王達と肩を並べられるとされる完全無欠の英雄、間違い様の無い事実である。

 

 そんな人達と俺は縁あって知り合い、まあちょっとした付き合いをしている。

 

 とは言っても俺が一番仲良いのは同性且つ歳が一番近い年下のエリオ、次いでフランクな物言いで明るくみんなの兄貴分ヴァイスさん、んで良く稽古をしてくれるザッフィーことザフィーラ兄貴、知識人で切れ者、はやてさんの右腕ことグリフィスさん、あとクロノくらいか。

 

 同性だと話合いやすいんだよなあ、あと安心感な。

 

 「なのはさん達もそんなに憧れられてるなら、とても喜ぶと思うぜ。特にフェイトさんとか恥ずかしがりやだし」

 

 「フェイトさんって恥ずかしがりやなんですか?てっきりクールで格好良いお姉さんなのかと」

 

 「おうとも。ちょっと誉めるだけで顔真っ赤よ」

 

 「し、知らなかったです……」

 

 その後も機動六課の話は続いた。

 

 なのはさんフェイトさんとはやてさんの話が多かったが、意外とザフィーラ兄貴の毛並みが気になると言う話も出た。

 

 どうやら触りたいらしい、女の子だしフワフワしてそうなものは興味出るわなそりゃ。

 

 それとやはり、一つ上の順位にいるなのはさんの娘ヴィヴィオ選手と手合わせしてみたいとか。

 

 さて、どうにかこの二つ、交渉してみるかな……

 

 

 

 

 

 

 「ま、そう言う訳なんで。ちょいとヴィヴィオちゃんと闘わせたい子がウチにいまして、ええ。それの次いでにちょっとなのはさん家の転送ポット貸して貰えますか?はい、そうですバニングスさんとすずかさん、それに翠屋のみなさんに優勝報告に行きたいんです。え、マジっすか!ありがとうございます!さっすがなのはさん!はい、ではまた後程」

 

 よし、交渉成立!

 

 実のところ急に行くと決めた為にアポ取ってなかった訳だが、快く家に来るのを承諾してくれた。

 

 もっと計画性のある行動を、とか怒られたけど。

 

 あと偶々今日は機動六課がなのはさん宅に集まって軽くパーティーするらしい、これでザフィーラ兄貴の件も行けそう。

 

 一応どれだけ機動六課が集まれるかは分からないとキャリーちゃんに伝えた手前、オールスターとなると笑みが溢れる。

 

 こりゃ驚かせられるぞ。

 

 

 

 

 

 

 「よし、着いた」

 

 高町、と言う表札。

 

 このちょっとした豪邸みたいな建物こそが高町家である。

 

 「ここが……なのはさんの家……」

 

 「相変わらずデケーな」

 

 「実績と比べるなら小さいとも言えるが」

 

 「それだけ謙虚言う事やろなあ」

 

 キャリーちゃんはすっかり緊張しきってしまっている様子。

 そこまで肩に力入れなくても、普段ならただの優しいお姉さんなんだけどなあの人。

 

 まあ良いやチャイム鳴らそ。

 

 「うぃっす、なのはさん」

 

 「あ、フレイくん。待ってて今開けるから」

 

 「お、おお……!!これがなのはさんの生の声!」

 

 インターフォン越しの声だけで感動しちゃってるよこの子。

 一々リアクションが可愛すぎて悶絶したいのを抑え込んでる俺を誉めて欲しい、今にもよしよししたいんだよ!

 

 「おはよう、フレイくんと……ジェイリーくん、ドレッグスくん、ギャラードくん、だよね」

 

 「オッス!お久し振りっす!」

 

 「覚えていて下さり、光栄です」

 

 「どもーおひさしゅう」

 

 この三人も、なのはさん、フェイトさんとはやてさんとは何度か会っている為に面識がある。

 

 「あと、この子が例の?」

 

 「はい、そうですね」

 

 「キャ、キャリー・ターセルです!今日はお会い出来て光栄です!」

 

 本人目の前にしてすっごい感動してるのがひしひしと伝わってくるけど、身体ものすごいガッチガチに緊張しちゃってるんですけど……

 

 「いやそこまで緊張しなくても良いと思うんだけど」

 

 「はわわ、すいませんっ!でも本人と出会えたと言う感動と緊張と嬉しさが一緒になって……」

 

 「……だって、なのはさん」

 

 「にゃ、にゃはは……そこまで言われると照れちゃうな」

 

 目を輝かせ武者震いみたいな事になってるキャリーちゃんと、それを見て若干照れ気味のなのはさん。

 

 そりゃここまでどストレートな好意を抱かれて、悪い気持ちになる人の方がいないだろう。

 

 「そう言えばヴィヴィオちゃんとは俺も初対面なんですよね、中々タイミング合わなかったですから」

 

 「確かに言われてみればそうだね。ヴィヴィオー、私の知り合いがヴィヴィオに会いたいって」

 

 「はーい!」

 

 トテトテトテ、と小動物みたいな足音が近付いてくる。

 間違いないロリっ子の匂いだ!

 

 好きなものには敏感に、正直に、法には触れず。

 これストレス解消する一番の近道ね。

 

 あと俺は紛れもなく法には触れないから変態ではない、ただの紳士である。

 

 「ママ、この人達がママの知り合いの?」

 

 「フレイ・バトラーだ。なのはさんから君の話は良く聞いてるよ」

 

 「ジェイリー・ベッケンハークだ、宜しく頼むぜ」

 

 「ドレッグス・アントニー。宜しく」

 

 「ギャラード・アルフォンゾ言います、よろしゅう」

 

 「はい、皆さん宜しくです!」

 

 「ああ、それとヴィヴィオちゃんに紹介したい子がいるんだ」

 

 一通りなのはさんの知り合い組の俺達は挨拶を済ませ、キャリーちゃんを見やると、なのはさんとの対面の時とはまた違った緊張した顔付きになっていた。

 

 ライバルだし、まあそうもなるよな。

 

 「キャリー・ターセルです。ヴィヴィオさんと一度お話したかったんです、宜しくね」

 

 「わっわっ、本物のキャリー選手だ!こ、こちらこそ!」

 

 うん何かぎこちない。

 仕方ないとは言え。

 

 「えっと、その。タメ口で良いよ?あと呼び捨てで呼んでほしいかな」

 

 「えっ!?でも歳上なのに」

 

 「良いんだよ、私もヴィヴィオちゃんって呼ぶから。それでお相子」

 

 お、ぎこちないと思ってたけどキャリーちゃん今日はグイグイ行くね、まだ出会って二日目だけど。

 

 本来こう言う積極的な性格なんだろうね、俺ら歳上の男ばっかはやっぱ緊張してるみたいだな。

 

 仕方の無い事実だけど。

 

 「えと、じゃあ。キャリーちゃん、で。良いかな?」

 

 「うん、宜しくヴィヴィオちゃん!」

 

 ……まあ、今はそれよりも素敵な友情の誕生を祝おうじゃあないか。



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ヒミツその七『機動六課オールスター(一部除く)』

え?ViVid Strike!はなのはの冠が降ろされてるから三期までのキャラは殆んど無し?

そんな訳ないだろ原作タグ魔法少女リリカルなのはだぞいい加減にしろ!


p.s Twitterで適当に作品名検索したら、なんと読んで宣伝にリンクまで貼って下さってる方がいてとても嬉しかったですぞ!



 「さ、みんなもう待ってるし入って入って!」

 

 「なんや、もう皆さん揃ってるんですか?」

 

 「うん、君達が来るって連絡したら何かすぐ集まっちゃって」

 

 今どれくらい集まっているか、それを聞こうとして丁度なのはさんの口から言われ、全員揃いも揃って俺達より早く来ていたのを知り苦笑いを浮かべる。

 

 まあ確かに、俺ら全員揃ってたのなんてスカリエッティ事件とあと数回くらいなもんだしな。

 てかコイツら三人と初めて会ったのもスカリエッティ事件だったし。

 

 その話とか、過去話とかはまた今度出来る時に纏めてしよう。

 

 取り敢えず今は、再会を待ちわびてるみんなのところへ行こうじゃないか。

 

 「うぃーす!皆さんお久し振り!」

 

 ドアを開け放ち開口一番ある程度爽やかさを意識した声を放つ。

 

 「あ!フレイくんにジェイリーくん、ドレッグスくんラーディくん!本当に久し振り、だね」

 

 「フェイトさん、おひさしゅう。相変わらずフェイトさんはべっぴんですなー!」

 

 まず挨拶を返してくれたのはご存知英雄の一人、フェイトさん。

 クールで物静かなイメージを持たれる事が多いけど、実は表情が顔に出やすい照れ屋。

 

 因みにラーディはフェイトさんにガチで惚れている。

 

 自分より遥かに強いのに、こう守りたくなる様な雰囲気があるとか何とか。

 分からんではないぞ、普段から木漏れ日みたいな人だからな。

 

 あと他の人がギャラード呼びなのに対し、フェイトさんだけラーディ呼びで、いつも顔が少し赤くなってるのを見る限り脈ありである。

 

 「ちょ、ちょっと!お世辞とは言え恥ずかしいよ……」

 

 「いやお世辞ちゃいますけど、本音ですよ?」

 

 「はぅっ」

 

 あらら顔真っ赤で目回しちゃってるよフェイトさん。

 天然でストレートにイケメンな事良く言えるよなアイツ。

 俺だったら絶対言えねえわ。

 

 「オッスはやてさん、久し振りだな」

 

 「おージェイリー!また見いへん内にたくましくなったなー!」

 

 「ハハッ!はやてさんこそ、また一段とスタイル良くなったんじゃねえっすか?」

 

 「やだもー!分かる?これ結構苦労してスタイル良くしたんよ?そう言うとこ分かってくれるとか乙女心分かってるね君!」

 

 「はやても、もう少しストレートに好意を伝えても良いと思うですよ……」

 

 そして此方はジェイリーとはやてさん、リイン。

 どっちも基本的に日常の中では大雑把且つ明るくストレートに本音を言えるからかラーディとフェイトさんみたく桃色空間にはなっていない。

 

 あとリインがいるのも要因か。

 

 が、結構どっちも狙っていたりする。

 

 頼れて明るい面白い美人なはやてさんは、実はフェイトさんやなのはさんみたいな高嶺の花的存在よりアプローチされる事が多かったりする。

 

 一緒にいて緊張しないとか、ホッとするとか、兎に角結婚を前提にしている連中からのアプローチは桁違いとか。

 

 そしてジェイリーもその一人。

 

 対してはやてさんも、いつも自分が前に出てばかりだからジェイリーみたいな強くていかにも守ってくれそうなタイプが好みとか。

 

 なお、お互い共お互いの気持ちにはあまり気付いてない模様。

 

 

 「ざ、ザフィーラさんふわふわで気持ちいいです……!」

 

 「…………」

 

 「……君がこうして触られてると、何だか本当に大型犬にしか見えないよ」

 

 「ハハハ!いーじゃねえか、結構様になっててよ。ええと、君はキャリーちゃん、だっけ。動物好きなんだな」

 

 「はい!昔から動物大好きなんです、特に大きくてふわふわしてる犬が」

 

 「……今日も世界は平和ですね」

 

 続いてキャリーちゃん+俺達以外の男集団。

 

 此方は此方でかなり個性的な面子が揃ったもんだな本当に。

 あとザフィーラ兄貴の背中触ってるキャリーちゃんマジ天使、超可愛い。

 

 ザフィーラ兄貴も、いつも無表情でクールだが小さい女の子の頼みにはほとほと弱いらしい、さっきチラッと見ていたがキャリーちゃんの頼みに一発OKしていた。

 

 あとさっきから各方面による犬連呼が始まってるけど、兄貴は一応狼なんだよなぁ……

 

 んで豪快にザフィーラ兄貴をからかってるのが、ヴァイス兄貴。

 

 管理局髄一のエーススナイパー兼ヘリのエリートパイロット。

 見ての通り明るくお茶らけてる性格だが、努力を欠かさず行う姿勢は俺含めみんなの憧れだったりする。

 

 母さんの死で落ち込んでいた俺を立ち直らせてくれたのも、実際のところヴァイス兄貴の言葉と、ザフィーラ兄貴の特訓のお陰だったりする。

 

 あと最後の一人はグリフィスさん。

 レティさんの息子さんで、生真面目秀才。

 はやてさんの参謀みたいな存在で、頭の切れる頭脳派だがこう言うノリにはあまり乗れず。

 

 今みたいな良く分からない状態になる事もしばしば。

 

 追記しておくが残念ながらティアナさんとスバルさんは仕事が忙しくて来れなかったらしい、残念だけど今や二人も立派な管理局のエース格だし、まあ仕方ないよな。

 

 「へぇ、また一段と筋肉の質が上がったんじゃね?」

 

 「そうだな、久々に私と剣を交えてみないか?」

 

 「……後で軽くなら、構わないが」

 

 「あまり無茶してやり過ぎちゃダメよ?」

 

 ドレッグの方はザフィーラ兄貴を除いた他のヴォルケンリッターの皆さんに囲まれていた。

 

 ドレッグの直接的な師匠とも言えるヴィータちゃん、ちゃん付けで呼ぶとキレられるからあまり呼ばないが、ツンデレロリである。

 

 はやてとアイスをこよなく愛しているという可愛い一面もある。

 

 シャマルさんは温厚なみんなのお姉さんタイプ。

 治癒魔法が得意だが料理は殺人級なので台所には決して立たせてはいけない。

 

 最後が剣士で若干戦闘狂が入ってるシグナムさん。

 格好良くて綺麗で、ヴァイス兄貴の想い人。

 ただことある毎に勝負を申し込んでくるのがたまにキズ。

 

 てか美女美少女に囲まれてるとか羨ましいなおい。

 これでドレッグは恋愛には鈍感だから勿体ないったらありゃしねえわ。

 

 「フレイお兄さん達と会うのっていつ振りだったっけ、エリオくん?」

 

 「うーんと、前の正月以来じゃないかな」

 

 そしてこっちは数少ない年少組。

 エリオも見ない内にまた一段とイケメンになっているが、キャロちゃんの成長が俺にとっては眼福だったりする。

 いやあまた一段二段と可愛さ増しちゃって……

 

 「何キャロをそんなジロジロ見てるんですか、フレイ先輩」

 

 「いやいや二人の成長を染々と感じ取っていただけさ。そうがっつかずとも、キャロちゃんはエリオのだから心配すんなって」

 

 「お、おおおおおおお兄さん!?開口一番恥ずかしい事言わないで下さいよ!」

 

 「そ、そそそそそそそうですよ!?な、何を言ってるんですか!」

 

 「いやあ、青春真っ盛りだね君達本当。見てて砂糖吐きそうだわ、うん」

 

 顔真っ赤で誤魔化してやんの、全くエリオは普段これだと言うのに、ラブコメ要素発動させてラキスケしたりラノベの主人公か何かかさっさとくっ付けよエロオ(唐突な暴言)。

 

 「……じぃ~」

 

 まあエロオの事は置いておくとして、何故かキャリーちゃんにすっごい見られてる。

 キャロちゃんの姿を見て頷いた辺りからずっと見られてるんだけど、これどう考えてもアレだよな、焼き餅だよな。

 

 それだけ俺の事好意的に見てくれてると思うと微笑ましくなりますな!

 

 好意的っても色々あるが……うん、良いお兄ちゃんみたいに思われてたら嬉しいよな。

 恋愛?無い無い、まだ二日目でガチ惚れされるとかどこのオリ主だよって話。

 

 「……焼き餅?」

 

 「……ダメ、ですか?」

 

 そのちょっと不安そうに上目遣いしながら聞いてくるのとか可愛さが反則なんだよなあ。

 つくづく自分の理性の固さに感謝するわ、並大抵の人間なら既に理性なんて修復不可能だぞ絶対。

 

 「ダメな訳ないよ、それだけ好意的に見られてるって証拠なら嬉しいさ。可愛い妹みたいな女の子に焼き餅焼かれて、怒る様な奴そうそういないって」

 

 「か、可愛いって……うぅ、面と向かって言われると恥ずかしいです……って、妹?」

 

 「あっ……その、まだ会って二日だし妹みたいとかは早かったか?」

 

 俺にしてはかなり攻めた方だが、胃が痛いなこりゃ。

 この流れならイケると踏んで一気に特攻したが、これ拒否されたらかなり……い、いや待て待て。

 

 昨日とか寧ろキャリーちゃんの方がべったりだったし大丈夫だろ……え?大丈夫だろ?

 

 アカンやっぱり腹痛してきたわ。

 

 「いえいえ!それだけフレイさんと距離を縮められたという事なら、とても嬉しいです!」

 

 「ふぅ……良かったぁ、流石にこう言う事言うのは時期尚早かとも思ったけども」

 

 「……寧ろ昨日の時点で私の方から言おうとしていたのをグッと堪えていたんです」

 

 え、何そのトンデモ発言は……

 

 俺本当にこの子に何したっけ、手は出してないよな。

 家出して迷子になってたのを拾って、泊めて、ちょっと練習を一緒にやって、同じベッドで……いや最後のは止めておこう、俺の精神衛生的に良くない。

 

 兎に角、この子に特別好かれる様な行動を起こした覚えは無いんだよな。

 キャリーちゃん曰く俺のファンだったらしいが、まあそれはそれだけだろうし。

 

 あ、俺に関してはキャリーちゃんが好意的にしてくれるから好感度が爆進したっていう確かな理由がある訳だからセーフだぞ。

 

 あ、別に引いてる訳じゃないのは皆さん理解してるとは思うけども。

 

 メチャクチャ嬉しいのは確かなんです、ただキャリーちゃんの将来が結構な心配なだけなんです。

 

 「そうかそうか、ならば俺の事はフレイさん、じゃなくてお兄ちゃんと呼んでも良いぞ、なんてな」

 

 だからその入り交じった感情を誤魔化す為に、そんな茶化す様な言葉を、お茶らけた様に言った。

 一応お兄ちゃん呼びしてほしいのはまごうことなき事実という事を付け加えておく。

 

 「……お、お兄ちゃん?」

 

 「ああ、俺もう死んでも良いかも知れねえわ。最高に可愛い」

 

 「ふええええええ!?」

 

 多分俺は世界の真理を見たと思う。

 可愛いロリっ子さえいれば世界は平和になると思うわ、真面目な話。

 

 こんな天使みたいにお兄ちゃん、なんて呼ばれたら争ってるのが馬鹿馬鹿しくなるし戦意も喪失間違いなし。

 

 これ以上無い幸せですわ、生きてて良かった。

 もうこれでこの世に未練は……うん多少あるな。

 

 「スマン、少しトリップしてたわ。兎に角これで、俺とキャリーちゃんの距離もグッと近付いただろ?」

 

 「はい、そうですね!私お兄ちゃんって存在に昔から憧れてて。だから、フレイさんがお兄ちゃんになってくれるのはとっても、とっても嬉しいんです」

 

 俺も一人っ子だったし、兄弟がいるってのは昔憧れたな、とふと思い出した。

 特になのはさんやフェイトさんの話を聞いてると、俺も美少女な妹がほしかったといつも思ってた気がする。

 

 「俺も、昔から妹がほしかったんだ。だから、俺もすっげえ嬉しいよ……で、ここで一つ頼みたい事があるんだけど」

 

 「なに、お兄ちゃん?」

 

 「……頭、撫でさせて」

 

 「……ど、どどどどどどうぞ」

 

 うん、妹だからセーフだな何も悪い事はしてないな。

 この後目一杯撫でた、そして周りから茶化された。

 

 後悔は無かった。

 



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ヒミツその八『もう(雰囲気が兄妹じゃ)ないじゃん』

キャリーちゃんにお兄ちゃんと呼ばれたい人生だった


 「……うん、何かごめんねキャリーちゃん。調子乗りすぎた」

 

 「…………へっ!?あ、いえいえいえいえ!私も気持ち良かったからといつまでも甘えちゃったからお兄ちゃんに恥をっ」

 

 「な、何言ってるんだよ恥なんて思ってないから!キャリーちゃんが恥と思ってなきゃ俺も大丈夫だから!」

 

 結局のところあの後茶化され過ぎた俺達は、何か変な雰囲気になっていた。

 

 とは言っても重苦しいとかじゃないけどな。

 

 具体的に言うなれば、さっきとは違う意味で少々甘い様な雰囲気に……なってそうな。

 取り敢えず兄妹っぽい会話じゃあないな、それは確信出来る。

 

 恋bよしその考えはまず捨てよう、これはいけない。

 

 第一にもうすぐ二十歳も見えてくる様な年齢の俺とキャリーちゃんとでは前提的に年齢差で釣り合わん。

 

 第二にこんなゴロツキ不良みたいな顔の奴と、美少女アイドル顔の子とじゃビジュアルでも釣り合わん。

 

 第三にキャリーちゃんの親が認めないだろう、いくら暫く泊めさせるのを軽く了承しているとは言え、それは俺がキャリーちゃんに手を出さないと言ったのと、魔法で真意を察知されたから。

 

 恋人になると言うなら話は全く別の方向へと変わっていく訳だ。

 

 てか何故かキャリーちゃんがOKする前提で想定してるよな俺……うん頭冷やそ、無い無い、それは無いわ。

 

 「どうかしたんですか?」

 

 「あー……いや、別に何でも無いんだ。ところで、本当にお兄ちゃん呼びしてくれるとは思わなかったよ……」

 

 「言ったじゃないですか、お兄ちゃんは憧れだったって。だからお兄ちゃんみたいな人が出来て、本当に嬉しかったんですよ、って。だからこれは私の本心なんです」

 

 自信満々に俺の目を見ながらそう豪語するキャリーちゃん。

 さっきも聞いたけどそう言う事バンバン言われると照れると言うか顔熱くなるんだよなあ。

 

 取り敢えず今が昼食後でみんなそれぞれ別々に行動してる時間で良かったわ、そうでなきゃまた最初の下りから聞かれてて昼食前のループになるところだったからな。

 

 特になのはさん、フェイトさん、はやてさんは真っ先に俺の事弄ってきたからな。

 

 この人達魔法だけじゃなくて口先とか言葉攻めや質問攻めまで恐ろしく強いから困るんだよ。

 

 弄られたら最後精神がゴリゴリ削られる。

 

 「たはは……そう言って貰えるなら安心したよ。本当に俺、格闘技以外に自信って無いんだよ。顔とか特によく怖いって言われるし、女の人に」

 

 性格は自称紳士で人畜無害だと豪語出来る自信はあるのに、顔のせいで性格見られる前に決め付けられる事の多い事多い事。

 

 やれゴロツキ怖いだの。

 

 やれ顔が野蛮だの。

 

 やれ襲われる助けてだの。

 

 やれ金は持ってねえ!後生だから見逃してくれ!だの。

 

 挙げ句の果てには夜出歩こうもんなら職務質問の嵐。

 

 まあ職務質問に関しては片っ端から聞いてくスタイルみたいだから多少は、多少は許せるとしても。

 

 全くもって顔のせいで理不尽な扱いばっかだよ本当に!

 

 あと顔が野蛮ってなんだよ意味分からんわ!

 

 「私はお兄ちゃんの顔、とてもワイルドで男らしくてかっこいいと思います!」

 

 「マ、マジで?普通怖がられる様なもんだと思ってたけど……」

 

 「私嘘は付けないタイプなんです、だから怖いと思っていたら絶対顔に出ます」

 

 そんな中キャリーちゃんがマジでガチで天使な件。

 

 年下とは言え女の人に褒められたのなんて母さんに小さい頃言われた記憶がおぼろ気にあるくらいで、他人に言われた事はおろかほぼ敬遠しかされて来なかったってのに、ワイルドで男らしくてかっこいい……ですと!?

 

 俺が普通の精神力の男だったら絶対勘違いしてるだろこれ。

 いや常人より精神力があってもこれは相当精神力鍛えてないと普通に陥落してるぞ。

 

 ああ、余りに純粋な心過ぎて俺はまたこの子の将来が心配になってきた……

 

 「本当良い子だなキャリーちゃんは……」

 

 「私は本音を言ってるだけですよ、お兄ちゃん?」

 

 「うん本当そう言うとこね、そうやって当たり前みたいに良い事言ってくれるところ大好き」

 

 「ふにゃっ!?か、可愛いって……そ、それって……おんn」

 

 「俺の妹になってくれてありがとう!」

 

 「…………」

 

 「ん?」

 

 渾身のお礼と感謝をぶつけたら、何かキャリーちゃんが固まってしまった。

 まずいな、なにかやらかしたか……?

 

 「えっと、俺何かやらかした?」

 

 「い、いえ大丈夫です、何でもないです……多分」

 

 どう考えても何かやらかしてるよねこれ!?

 

 鈍感難聴主人公なんてクソの塊みたいに思ってたけど、いざなってみると世界のなにか大きく壮大な力が加わってるとしか思えないくらい聞こえなくなるんですが。

 

 そして思わず「え、今なんて?」とかついつい口に出しかけてしまう。

 

 「あー……っと、ごめんね?」

 

 取り敢えず謝る、何があったか分からんけど謝るしかないんだよ。

 

 誰かこの空気変えて、頼むから。

 

 胃痛で死ぬ。

 

 「あれ、フレイと……噂の少女か。何やってるんだい?」

 

 「おおアルフ、久し振りじゃん!てかそういやお前もいないと思ったけどいたんだな、お前こそなにやってたんだよ」

 

 運が良いのか悪いのか、ここで良い意味でも悪い意味でも空気を一瞬で変えられる奴登場。

 

 フェイトさんがなのはさんと出逢う前からのコンビで、魔法を使うのはそこまで上手い訳じゃないが純粋な身体能力なら機動六課ナンバーワン。

 

 あと騙されやすい純粋な性格のフェイトさんの姉みたいな存在でもある。

 

 まあ、この様に頼りがいはあるんだがな……あの三英雄以上に噂話、それも浮わついた話が大好物と言うこの場面には一番現れてほしくなかった存在でもあったりする。

 

 「ああ、ちょいと時の庭園にね。またあの二人がバカやらかしかけてたからさ……」

 

 「まあ何と言うか、そりゃ御愁傷様としか……」

 

 あのバカ、と言うのはフェイトさんの母親と姉の事である。

 マッドサイエンティストで法律ギリギリのヤバい実験を行ってるプレシアさん。

 

 度々時空管理局における軽犯罪に引っ掛りそうになってはフェイトさんにドナドナされて泣く泣く止めている、法律を犯した事は『あの時』以来無いらしい、多分。

 

 んでフェイトさんの姉、アリシアさん。

 

 自他共に認めるTHE天才、基本興味本意だけでプレシアさんの実験にノリノリで参加してるそうな。

 勿論だが毎度毎度フェイトさんにドナドナされている。

 

 あと一回死に掛けてるそうな。

 

 と言うか正確には死に掛けじゃなく死んでいたそうだが、何で生き返ってるとかは良く知らない。

 

 プレシアさんがロストギア使ったってのと、『あの人』が関係してたくらいか、俺が知ってるのは。

 

 

 まあ兎に角二人共今はアホみたいに幸せそうなんで細かい事は気にしないでおこう。

 

 「今日はフェイトがなのはのところに遊びに行くって話だったし、流石にそんな日まで迷惑掛けらんないから何とか力ずくで止めてきた」

 

 「お、おうそうか」

 

 力ずくってどういう意味とか、何か嫌な予感がしたから聞かないでおくとする。

 取り敢えずあの二人がどうなったか分からんが、まあその話は置いといて。

 

 「犬耳……しっぽ……」

 

 さっきからキャリーちゃんが目を輝かせながらずっとアルフの犬耳としっぽを見つめている。

 

 ザフィーラ兄貴の時と同じで、どうやら触りたいらしい。

 

 この子、犬が特に好きなんだろうか。

 

 「ん、そう言えばまだアンタの名前、聞いてなかったね」

 

 「はっ、あわわそうでした!私はキャリー・ターセルと言います」

 

 「アタシはアルフ……って、まあ自分で言うのもあれだけど、そこそこには有名だし知ってるか」

 

 「はい、フェイトさんのパートナーで打撃戦が得意とか。私も格闘技やってるので、アルフさんは一格闘家として憧れなんです」

 

 「そ、そうかい。何だか面と向かって誉められるのって久々だからちょっとこっぱずかしいね……」

 

 しかし切り替えが早いのもキャリーちゃんの良いとこだな。

 

 可愛いモードから普段の礼儀正しいモードに一瞬で切り替えられるのは、まだ一般的な13歳の少女として見るのであるならとても立派な事だと俺は思う。

 

 「へえ、アルフが照れてるとことかフェイトさんに誉められた時くらいしか最近は見てなかったのに珍しい」

 

 「なっ、べ、別に良いじゃないかい!こんなにベタ誉めされたのなんて数年ぶりなんだよ!」

 

 あとキャリーちゃんが誉めるとみんな照れちゃうのも一種の特技かも知れないな。

 

 なのはさんやアルフもそうだけど、ザフィーラ兄貴も触られてる時に毛並みの事を誉められてたみたいで、もの凄くレアな事にほんの少し顔を染めていた。

 

 あと結構満足げだった気もした。

 

 てかアルフがベタ誉め数年ぶりは地味に衝撃受けたぞ、てっきりフェイトにいつもベタ誉めされてるものとばかり思ってたからなぁ。

 

 「そんな久し振りなのか……」

 

 「最近もね、フェイトは誉めてはくれるんだよ、普通に。そう普通に……」

 

 「ああ、確か昔とかアルフにベッタリくっついてたんだっけ?」

 

 ここだけの話、それってただ大人になったから少し恥ずかしくて出来ないだけだと思うんだよなあ。

 

 特に恥ずかしがりやのフェイトさんだし。

 

 「そう、あの頃が懐かしいよ」

 

 「ふふふ、ならキャリーちゃんが撫でたそうにしてるし、あの頃を懐かしむ次いでに昔の感触とか思い出してみるか?」

 

 「…………」

 

 ふむ、まだ13歳の頃ならフェイトさんもベッタリだった頃だろうしまあ悪くはないだろう。

 

 あとキャリーちゃんの無言無意識の訴えには大抵の人間が勝てない、たった二日だがこれは確信出来る事実だ。

 

 「……触りたいのかい?」

 

 「は、はい。出来れば、ですが」

 

 「ま、まあ……多少なら良いって事にしておくよ」

 

 勿論アルフも陥落した。

 

 てか寧ろアルフはこう言うお願い事には意外と弱いタイプなんだよね。

 そう言うとこが面倒見の良いお姉さん気質と言うか、フェイトさんにも良く似てるから本当の姉妹に見えると言う訳で。

 

 「ありがとうございます。で、では……」

 

 犬モードになり、身を預けるアルフの背中にそっと手を置くキャリーちゃん。

 ザフィーラ兄貴の時と全く同じ手つきだな。

 

 「どうだい?」

 

 「とってもふわふわ、もふもふで気持ちいいです……」

 

 「だ、そうだが。アルフはどうだ?」

 

 「……思い出すよ。どれだけ苦労しても、苦しくても、フェイトと二人で乗り越えてたあの頃を。手つきもあの頃のフェイトに何処と無く似てる感じがするよ」

 

 少し寂しげに懐かしむ様に笑うアルフを見て、何だかちょっぴり複雑な気持ちになった。

 

 すぐ近くにいるのに、通じ合えるはずなのにほんの少しのすれ違いでこうなるのはなぁ……何かもどかしい気分と言うか何と言うか。

 

 「――多分、フェイトさんも少し恥ずかしいんだと思います。私の勝手な考えですけど」

 

 「……そう、なのかな」

 

 「俺も、そうだと思うけどな」

 

 「なら……少しだけ勇気、出してみるよ」

 

 やっぱりお互い生きてる内は、その一瞬一瞬を大事に生きるべきだな。

 

 生きてるって、多分とてつもなく当たり前だけど、とてつもなく奇跡だと思うから。



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ヒミツその九『クロノの妹事情と本音と言う名のシスコンっぷり』

ここまでのメイン人物データ

フレイ・バトラー
年齢:18
体格:176cm 70kg 中肉中背
顔:歳相応ではあるものの兎に角怖いらしい
性格(仮):ちょいワル気取り
性格(真):紳士なロリコン
魔力:S
得意魔法:?
補足:一応表向きはちょいワル系格闘家として通ってるらしいが、今のところ面影のおの字も無し
キャリーの大ファンで、ひょんな事から彼女と出逢えた事を実は小学生のガキ並に喜びたいのを堪えて気取っている(?)模様

キャリー・ターセル
年齢:13
体格:ちっちゃい 軽い 細身
性格:明るく元気で基本的に本音を包み隠さず話すタイプ
魔力:AA+~AAA-
補足:リンネ選手との試合で惨敗し、それが原因で家出するも迷子になっていたところを主人公に拾われる
主人公の大ファンで、出逢って2日目にして既に端から見れば惚の字状態
大胆な言動で主人公の思考を無自覚に乱していく


8話補足

「ふにゃっ!?か、可愛いって……そ、それって……おんn」

本当は

「ふにゃっ!?か、可愛いって……そ、それって……女の子として、私のことを好きって……」

と、言うつもりだった模様


 あの後暫くキャリーちゃんもアルフも双方共感触を味わった後、偶々通り掛かったフェイトさんも一緒になってもう暫くアルフに抱き着いていた。

 

 何が言いたいかって?

 

 そりゃあ皆さん方お分かりでしょう。

 

 そう、俺にとってその光景は癒し眼福以外の何物でも無かった訳だ。

 

 アルフとキャリーちゃんの純粋な触れ合い、アルフとフェイトさんの長年培った絆の結晶、一粒で二度美味いとは正にあの事だった。

 

 そしてその後、ついさっきアルフはフェイトさんにお持ち帰りされた。

 

 久々にアルフの感触を堪能したいそうな。

 

 

 ……まあ、何だかんだで触れ合いの回数が減ってたのは単なる恥ずかしさ故にだったらしい。

 

 フェイトさんは一度トリガーが外れたら甘えん坊化するし、今頃ラーディが遭遇してたら鼻血もんの光景は必須だろう。

 

 

 んでまあまた二人きりになってしまった訳でして。

 

 「すぅ……むにゃ……」

 

 何故か今、俺の膝の上にキャリーちゃんの頭が乗っていた。

 

 「まあ模擬戦は夕食後の風呂前だから良いんだけどね……」

 

 相当アルフの感触が気持ち良かったのと、寒くなってきた頃の晴天、その昼間の優しく柔らかい太陽の日差しが二重で重なり合い眠気を誘ったのかも知れない。

 

 「……なんだ、ここにいたのか」

 

 俺も寝ようか、それともこのまま夕食までキャリーちゃんの寝顔でも拝んでようか考えてた矢先に、ふと声がした。

 

 若冠10歳で管理局の重役である提督の座に座った天才。

 

 あと一応俺の友人でもあるクロノだ。

 

 「……何だクロノか」

 

 「何だとはどういう意味だ、折角久々に再会したから雑談の一つでもしようかと思ったのにいないから探したんだぞ。あと僕の方が歳上なんだが」

 

 まあ俺は年齢も実力も権力も、あまつさえ顔もクロノより下だが何故だか呼び捨てで呼びたくなる。

 まあこう言う真面目系弄りたくなるタイプなんだよな。

 

 「見りゃ分かるっしょ、ちょっとしたイレギュラーでこっちから来るのを待つより他ない状況なんだよ」

 

 「ああ、それは見れば分かる。その子が例の?」

 

 「そっ、ウチで暫く面倒見る事になった子」

 

 クロノは言葉を聞くと、俺とキャリーちゃんを交互に見て、何やら意味深長に『ほぅ……ふむふむ』と呟く。

 止めろクロノ、折角キャリーちゃんが俺の顔誉めてくれたのにお前の純粋なイケメン面見るとまた自信無くすからあまり見ないでくれ。

 

 「成る程、珍しい事もあったもんだ」

 

 「ええお前にゃ一生分からんだろうさ」

 

 「いやいじける事無いじゃないか……しかし、今までこと昔の知り合い以外の女性には怖がられていた君にこれほど懐くとは……」

 

 「おい流石にキレるぞ」

 

 「だが事実だろう?」

 

 「ぐぬぬぅ……」

 

 非常に腹立たしい事ながら、事実であるから言い返せないのが更に悔しい。

 兎に角そのイケメン面が恨めしい。

 

 っと、まあなれないものは仕方ないし気持ちを切り替えて。

 

 クロノの言っている通り、確かにここまで懐くと言う事実は今の今まで無かった事だ。

 

 キャロちゃんとも、仲は良いけど近所のお兄さん感覚だろうし。

 

 ヴィヴィオちゃんだって全く警戒心が無かったが、なのはさんやフェイトさんの知り合いだと事前に言われたから問題無かったとも言える。

 

 あとなのはさんの娘と言う事で多少どこかしら抜けてるところがあるんだろう、そこは大問題かも知れない。

 

 何せヴィヴィオちゃんはまだまだキャリーちゃんより年下の小学生だ、幾ら高性能なインテリジェントデバイスを持ってる上にU-15DSAAランキング7位でも思考能力は小学生そのものなのだ。

 

 むむむ……お兄さん心配になってきたぞ……

 

 「……どうした、顔が凄い事になっているけど」

 

 「ん、あ、いやいやちょっと考え事。お前にゃ関係ねえから大丈夫だ」

 

 「まあ、君の事だし大方この子の事かキャロの事、若しくはヴィヴィオの事でも考えていたんだろうがね?」

 

 チッ察しの良い奴めが……まあ強いて強がりを吐くのであるのならば、その三人共の事を考えてたから惜しいがハズレだなって言うとこ?

 

 それ言ったら本気でドン引きされかねないから言わないけど。

 

 「……クッここは都合が悪いから引いてやる」

 

 「……そのちょっとした気遣いの優しさの十分の一でも、僕に分けてくれれば良いんだがな」

 

 「は?贅沢言うなよ、お前にも五十分の一くらいはやってるんだぞ、こう見えても」

 

 「一体僕は君から見てどれくらい低い価値なんだよ全く……」

 

 「今のコント染みたやり取りをするくらいには良好な関係性だとは思うけどな」

 

 実際に今のやり取りの流れで見て分かる通り、俺とクロノは仲が悪い訳じゃない。

 寧ろこんなアホみたいな冗談を言えるくらい仲は良いと思っていたりする。

 

 クロノも俺の事は悪く見てるって事は無いと思う。

 

 クロノ自身、昔から堅物で真面目だったからか幼少期とか小さい頃友達が今の奥さんである幼馴染のエイミィさんしかいなかったらしいし。

 

 初めて会った六年前も、友人らしい友人はいなかった。

 

 あ、でもフェイトさんの義兄やってたりなのはさんやはやてさんからもお兄さん感覚で頼られてたりと役得ではあったな、このタラシめが。

 

 まあ、とは言え塞ぎ混んでた俺が暴走しなかったのはコイツのお陰と言っても良いだろう。

 

 クロノも父親が死んでて、その辛い現実を非情に押し付けられた一人だから何となくフィーリングが合うし、何よりも俺の話を最初に聞いてくれて、最初に共に気持ちを分かち合えた貴重な存在だからな。

 

 「……また君はそうやって恥ずかしがる素振りの一つも見せずにさらっと本音を言う。正直、情を抜きにしても君とだけは何が何でも戦いたくないね」

 

 「へっ、そう言う時は素直に喜んどけっつーの」

 

 「まあ、嫌いな訳じゃないし素直に受け取らせてもらうさ」

 

 「素直と言いつつ紛らわしい遠回しな言い方だなおい」

 

 そこがクロノらしいっちゃらしいんだけどな。

 

 恥ずかしがらなくてもお前ならそう言う素直に格好良いとか、好意的な言葉をもっと言えれば周りからの好感度も桁違いで上がりそうなもんだと俺は思う。

 

 まあ、そしたら結構モテてエイミィさんが嫉妬で怒っちゃうかも知れないし、無い方がもしかしたらクロノ的には良いのかもなあ。

 

 「はぁ、あまりからかわないでくれるかい。エイミィにもその辺は口を酸っぱくして言われてるところなんだよ」

 

 「あ、そうなの……そりゃ悪かったな、うん」

 

 「いや、分かってくれたのなら良いさ。それにしても、君も兄と言う立場が中々板に付いてるんじゃないか?その髪を撫でる仕草とか、たまにチラッと見ては溢す笑みとか特にね」

 

 「うおっとそれマジか、顔に出てたか」

 

 クロノにそんな顔を見られていたとなると結構恥ずかしくはあるが、あまりに幸せそうに眠るキャリーちゃんを見てたら自然と笑顔になっちゃうのも仕方ないかね。

 

 あと兄が板に付くって言われたのは純粋に嬉しいわ、クロノはフェイトさんの義兄だから兄としては先輩だからな。

 

 「この子を見ていると、まだ中学生の頃のフェイトを思い出すよ。良く僕の膝の上でこうして無垢な顔で幸せそうに寝ていたものさ」

 

 「そうかぁ、クロノはロリフェイトさんを毎日拝めていた訳か……羨ましいなおい」

 

 「……今じゃあんまり甘えてくれなくて、ちょっとばかり君の今の姿の方が羨ましいよ」

 

 寂しそうに、過去を思い出しながら仕方ないな、と言う感じにフッと溜め息を付くクロノ。

 

 てかアルフに続きお前もフェイトさん関連で悩んでたか……

 

 いやしかし、意外なくらい表情表に出してるなクロノの奴。

 

 まあ隠れシスコンなのは前々から知ってたし、一年くらい前に会った時もフェイトはそろそろ結婚してほしいけど、結婚したらもう絶対甘えてくれないんじゃないかー、とか酒に酔っぱらいながら話してたしな。

 

 これラーディとフェイトさんほぼ相思相愛の両片想いとか話したらどうなるんだろうか。

 

 多分今の悩み事抱えたまま話したらラーディが虐殺されかねんな。

 

 「昔の性格と今の性格、結構違うって聞いたし。何よりもう大人だしそれはある程度仕方ないんじゃないかねえ」

 

 「昔の性格か……今の性格が嫌いな訳じゃないが、無性にあの頃の控えめなフェイトを抱き締めたくなる衝動に駈られるよ」

 

 「ちょっとお前本性出しすぎな気がするんだけど」

 

 酒飲まなくてもかなりの重シスコンじゃねえかよ!

 

 確かに今のちょっと抜けてる感じのお姉さんタイプのフェイトさんと人伝にしか聞いてないけど、昔の幸薄美少女タイプじゃ全く違うから昔を思い出せばそうなるのも分からなくないけど、完全にいつものクールで真面目な好青年どこだよ状態だよ!

 

 「……ん……むにゅ?」

 

 とか何とかクロノに呆れてると、どうやらキャリーちゃんが目を覚ましたのか膝の上でモゾモゾと動いて、半目がちでこっちを見つめてきた。

 

 勿論ながら鼻血もんの可愛さです。

 

 「起きたか?」

 

 なるべく優しく、小さめの声でキャリーちゃんの頭を撫でながら聞く。

 

 と言うか今までクロノの方に少し意識持ってかれてたからか、あまり気にしてなかったけどやっぱりキャリーちゃんの髪の毛サラサラで綺麗だし、触ってると気持ちいいんだよな。

 

 「……ふぁい、おはようございましゅ、おにーちゃん」

 

 「クロノくん」

 

 「ああ、分かる、分かるとも。君の言いたい事は良く分かるさ」

 

 「やっぱり妹って素晴らしいよな」

 

 「こうして腹を割って妹談義出来る人が出来て、僕は嬉しいよ。提督業はイメージも重要視されるから安易にシスコンが露呈すると部下の士気にも影響しかねない」

 

 「大変だったんだな……」

 

 謎の意気投合。

 

 俺もクロノみたく妹みたいな存在が出来たから、クロノも本音を包み隠さず話したのかもなあ。

 

 そう思うと結構嬉しかったりする。

 

 「ふわぁ……ごめんなさい、ずぅっと膝を占領しちゃってました」

 

 「良いんだよ、俺もする事なんて暫く無かったし。クロノと話せてたし」

 

 「君がキャリーちゃんだね。僕はクロノ・ハラオウン、フレイの友人だ」

 

 「ふみゅ、すいません私寝起きなのに。えっと、私はキャリー・ターセルです。格闘の方を一応やらせていただいてます……」

 

 「気にしないで、僕も偶然ここに来ただけだから。宜しくね」

 

 おお、何かクロノが凄く優しいぞ。

 昔のフェイトさんに通ずるものでもあったのか?

 それとも例の昔のフェイトさんを抱き締めたいのが発動したか?

 だとしたらどんだけシスコン何だよって話だな。

 

 っと、そう言えば気が付いたらもう夕方近くなってきてるな。

 だったらキャリーちゃんに夕食後のアレ、今言っておくか。

 

 「キャリーちゃん、そう言えばヴィヴィオちゃんと試合したいって言ってたよね」

 

 「はい、ヴィヴィオちゃんは私よりランキングが一つ上ですし。今の私の実力を測るには一番の相手にもなると思いましたから」

 

 「って訳でなのはさんに交渉したら、無事成立しました!イエーイ!」

 

 「ほ、本当に交渉してくれたんですか!?」

 

 キャリーちゃんがキラキラした様な目で聞いてくる。

 そうさそうとも、キャリーちゃんの為に、その輝いてる顔と目を見たいから頑張って交渉させていただきました。

 

 因みにヴィヴィオちゃんもノリノリだったとか。

 

 「勿論さ!」

 

 「はわわっ!ありがとうございます!」

 

 「いえいえ~キャリーちゃんの為だからね」

 

 まごう事無き真実である、嘘偽りは無い。

 

 ……俺の為ってのが少し入ってるのを除けば。

 

 「ふむ、やるじゃないか」

 

 「へへっ、どうだよ俺の交渉能力」

 

 「どうせまたなのはに怒られたオチなんだろう?」

 

 「うぐっ……」

 

 痛いところを突かれたなこりゃまた。

 かれこれ一時間くらいはお小言貰いましたとも、ええ。

 思い付きで行動するのが俺何だから少しくらい短めでも良かっただろうにさ。

 

 まあ終わった事だし良いけど。

 

 

 てな訳で次回!遂にキャリーvsヴィヴィオ!?



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ヒミツその十『女の子の格闘はちょっぴりえっちに見える……見えない?』

祝!お気に入り100件&10000UA!そして連載ほぼ一ヶ月!

どっちも初の大台、漸くここまでこれましたわ!(底辺並感)
しかしまさか一ヶ月でここまで来れるとは……それもこれもキャリーちゃんのお陰やな(確信)



ところでヴィヴィオちゃんは七位、キャリーちゃんは八位なのにリンネとのやり合い見てると順位一つ差には見えないんですが……幾ら一発だけのゲストキャラとは言え可哀想で可哀想で……

※今回の戦闘描写はかなり軽め


 夕食も終わり夜も本格的に始まった頃、正に今キャリーちゃんとヴィヴィオちゃんの模擬戦が始まろうとしていた。

 

 ヴィヴィオちゃんはDSAA U-15女子でキャリーちゃんより一つ上の順位だ。

 

 無論一筋縄で勝てる相手では到底無いのは俺含め今日来てる誰もが、そしてキャリーちゃん自身が誰よりも強く感じているはずだ。

 

 まあ、だからこそ昨日教えられるだけの事は教えておいた訳なんだが。

 

 たかが昨日一日の、更に言えば漸くまともに強くなってきた様な俺の教えと言う付け焼き刃ではあるが、練習を始めた直後と教えた後では、動きが大分速く、拳のキレも格段に上がっていた。

 

 しかしキャリーちゃん自身はそれをあまり実感していない様子に見えた。

 

 仕方ないとは思う。

 

 何せさっきも言った通り昨日一日、正確には夜の数時間だけの個別特訓だった訳だ。

 格闘技の基盤の部分の拳のキレ、後はディフェンス時のカウンターアタックか。

 

 取り敢えずキャリーちゃんのバトルスタイルに合うかも分からないし、下手に大技を覚えさせる訳にもいかない訳で昨日はそう言う事しか出来なかったが……

 

 「……この前はリンネ選手に惨敗して、カッコ悪いとこ見せちゃったけど。今日は格好いいとこ見せられる様に頑張るよ!」

 

 「ううん、キャリーちゃんの試合はずっと前から見てたけれど、ちゃんと格好いいところたくさん知ってるし、見習わないといけないところもたくさんあるって。だからこうやって友達になれて、一緒にこうして模擬戦出来るの、とっても嬉しいんだよ!」

 

 まあ、今日ここに連れて来て正解だったな。

 

 俺は確かに武術の先輩にはなるんだろうし、頼りにされてるんだとは思うが実力的にも年齢的にも『高め合えるライバル』にはならない。

 

 対してヴィヴィオちゃんは、年齢差もあまり無い、順位差も一つ差と此方も大差無し。

 

 だからこそヴィヴィオちゃんは、キャリーちゃんに一番最適な『ライバル』な訳だ。

 

 そして、これは悔しいがカウンターアタックや自分がダウンする直前に相手に出来る僅かな隙を狙った攻撃等の、洞察力を買ったのもある。

 

 まあここに関しちゃ才能の差ってかあの子が異常なくらいの化け物染みた洞察力を持ってるから、俺よりキャリーちゃんの為になると思ったんだが。

 

 化け物染みたと言うか聖王の遺伝子ド直球に引き継がされた子だったなそういや。

 

 うーむ、最近物忘れが激しいな。

 

 ヴィヴィオちゃんは五年前のスカリエッティ事件に大きく関わってたし、俺も一応概要は聞かされてたんだけどなあ。

 

 まあ直接会ってないし、仕方ないっちゃそうなのかも知れないか。

 

 結局の話カウンター系統は俺から十日学ぶより、ヴィヴィオちゃんから今一戦交えて学ぶ方がよっぽど為になるって事だ。

 

 「よし、それじゃあ二人共デバイスをセットしてもらえるか?」

 

 「はい!」

 

 「よーし、頑張るよクリス!」

 

 今回審判をするヴァイス兄貴の声で、二人がデバイスを前に掲げる。

 

 ヴィヴィオちゃんのはウサギ型のインテリジェンスデバイスな訳だが、感情は無いはずなのにヴィヴィオちゃんと同じ動きをしていて何処と無く可愛く見える。

 

 キャリーちゃんのは天使の羽根が付いたスマホ型。

 成る程間近で見れば、これもこれでキャリーちゃんに良く似合っているのが改めて分かる。

 

 そして二人同時に掛け声をあげる。

 

 「シャイニングエンジェル!」

 

 「セイクリッドハート!」

 

 『セットアップ!』

 

 ところで突然だが、女子格闘技は男子格闘技よりも人気が高い。

 それは単に可愛い女の子達が集結しているから、と言う事も大きい。

 

 が、それ以上に大きい理由がある。

 

 デバイス展開時の変身シーンである。

 

 と言うか下手したらそこが一番の盛り上がりでもあるかも知れない。

 

 

 その理由……それはっ!

 

 

 大人モードになる過程が観客……つまり女の子の生着替えが他人にも見えるからだっ!

 

 「お、おお……!」

 

 二人の変身シーンを、誰にも悟られる事なく必死に堪えながら見る。

 

 正直俺自身俺がこんな変態だとは思わなかった。

 

 観客として見てる時はここまで変態にはならなかったのに、今俺は歓喜に身体中が震えている。

 

 ああ、生きてるってこう言う事だよなあ……

 

 「なんやフレイ、身体震えてるけど寒いんか?」

 

 「へっ!?あ、いやいや違うって!これは、その……武者震いだ武者震い!」

 

 「……ほーん」

 

 うげっ何でラーディは勘づいたんだ……

 

 いや、全身に神経集中させて気が付かれない様に万全にしていたはずだ、まだ気付かれてると言う訳じゃない、多分。

 

 「ああ、分かるぞフレイ。私も騎士として、この一戦に既に高揚している……!」

 

 よし、良いタイミングだぜシグナムさん!

 

 その戦闘狂な平常運転も今回ばかりは助け船だ!

 

 「気が合いますねえシグナムさん!」

 

 「はいはい、そろそろ始めたいから静かになー」

 

 おっと、取り乱してしまった。

 

 そろそろ二人の練習試合が始まる。

 俺個人としてはキャリーちゃん寄りでいたいが、格闘家として見るなら中立じゃなきゃな。

 

 「制限時間は無制限一ダウンマッチ、どちらかがダウンを取ったと認められた時点で終了、その他のルールはDSAA準拠だ」

 

 「……お兄ちゃんに良いとこ見てもらわなきゃ。一日でも成長したって、誉めてもらいたいから」

 

 「私だって、なのはママやフェイトママに良いとこ見せたい!だから!」

 

 

 『手加減は無し!』

 

 

 「ヴィヴィオ……大きくなったね。嬉しいけど、何だか寂しくもあるなー」

 

 「それでも、まだまだ甘えん坊だけどね」

 

 昔を懐かしむ様にヴィヴィオちゃんを見るなのはさんとフェイトさん。

 昔のヴィヴィオちゃんの事はあまり知らないが、とても甘えん坊で寂しがり屋で我が儘で、でも純粋で無垢な可愛い女の子だと聞いた。

 

 ……俺からしてみれば今でも十二分に甘えん坊で寂しがり屋で、純粋無垢な可愛い女の子だと思うけどな。

 

 まあなのはさんの娘らしく、我が儘は少なくなったとも見えるけど。

 

 

 そしてキャリーちゃんのあの言葉。

 

 どんだけ俺の事好いてくれてるんだ、感動しちまったじゃねえか。

 

 「……全く本当に良い子だわ。ちょっと涙腺にグッと来ちまったじゃんかよ」

 

 何度も言うがまだ出逢ってたったの二日目、時間にすればまだ30時間も経ってない。

 

 それだけでここまで懐いてくれて、俺自身も本当の妹が出来て、新しい家族が増えたみたいで。

 

 暫く男ばっかりの場所で過ごしてきた事も相まって、嬉しくて嬉しくて堪らなかった。

 

 「君は本当に顔に似合わず涙脆い性格だよね」

 

 「な、何だよ悪かったな……って、ユーノさん!?」

 

 そんな感動に染々と浸っていると、隣から声が聞こえた。

 こっそり言った一人言を聞かれて恥ずかしくて、ちょっと反抗的に応えたがそこにいたのは一匹のフェレット……つまり英雄なのはさんの一番最初の魔法の師匠、ユーノ・スクライアさんだった。

 

 因みになのはさんとは正式にお付き合いもしている恋仲とか。

 

 「……しかし二人共動かないね」

 

 「ええ、最初に手の内は見せたくないって事でしょう。……ところで今日は無限書庫の仕事があったんじゃ?」

 

 事実こうして話していた間も、全く動かずじっと見つめ合っているままだ。

 

 どちらも手の内を見せればそれだけ自分が不利になる事を重々知っているからこそ、だからこその静止だった。

 

 良く言えば隙を虎視眈々と冷静に狙っていると見て取れるが、悪く言えば隙を狙いすぎて動けないとも言える。

 

 「昔の友人達が来るって聞いたからね、全力で終わらせて何とかこの時間には間に合わせたってところだよ」

 

 「後でなのはさんにしっかり会っといた方が良いですよ。多分、と言うか絶対気付かれてるんじゃ……」

 

 簡単な考察も一通り纏まり、束の間のユーノさんとの雑談に戻る。

 

 まあ俺が言った通りいくらフェレットの姿でこっそり合流していても、なのはさんには他の管理局員から畏敬と畏怖の念から『魔王』と呼ばれるトンデモ能力がある。

 

 その一つに魔法すらも越えた様な超絶染みた気配察知がある。

 

 勿論今もなのはさんは此方をじっと見詰めている、正直怖い。

 

 

 ……と、ユーノさんが真剣な目に戻る。

 

 俺もすぐに視線を試合中の、未だ硬直している二人に注ぐ。

 

 ――漸くか。

 

 「ところでそろそろあの二人、どちらか……」

 

 「いや、どちらか、と言うよりも……」

 

 空気が変わる。

 

 二人の周囲の空気が乱れる。

 

 

 『両方同時に来る』

 

 

 ――そして俺とユーノさんの声が重なったその刹那

 

 

 「はぁっ!」

 

 「今しか無いっ!」

 

 ヴィヴィオちゃんとキャリーちゃんが同時に相手へと勢い良く迫る。

 

 その姿はさながらチーターかヒョウを彷彿とさせる鮮やかさが見て取れた。

 

 

 そして二人の拳が全力でぶつかり合う。

 

 「うおっ、思ったより風圧来たな」

 

 「これが格闘技……ですか」

 

 俺がちょっと予想外に強かった風圧に驚いている中、一番驚いていたのはグリフィスさんだった。

 ほぼ船の乗組員として、はやてさんの参謀役として働いていたからこうして闘いを間近で見る、そう言う事が少ないんだろう。

 

 しかしこの模擬戦、一歩も目を離せなくなったな。

 

 

 

 

 

 「せやあ!」

 

 「なんの!」

 

 暫く立ち、未だ均衡状態の二人。

 

 今度はキャリーちゃんが鋭い蹴りを繰り出す。

 まともに喰らえば渾身の一撃、しかしそれをヴィヴィオちゃんはガード一本で凌ぐ。

 

 防御力は弱いと定評のあるヴィヴィオちゃんだが、それ故かガードの精密さは高い。

 ただここまで手数が少ない。

 

 対して連撃主体のキャリーちゃん。

 

 相手に攻撃の隙をなるべく与えず兎に角ダメージを入れていくスタイルではあるものの、ダメージらしいダメージは入ってる様子はなし。

 

 かれこれ十分はこうしたつばぜり合いみたいなのが行われている。

 

 「はぁ……はぁ……やっぱり強いやヴィヴィオちゃんは」

 

 「キャリーちゃんも……とっ、とっても……ふぅ……強いと、思うよ?」

 

 息も絶え絶えで話す二人。

 

 うーん、やっぱり女の子同士の格闘は華があって良いね。

 見てて青春だなーって感じる。

 

 別に首筋とかから滴る汗とかがちょっとエロいとか、そんな事は思ってない……思ってないからな?

 

 「……次の一撃辺りで魔力が切れそうだね」

 

 「多分、次どっちも今までに無い全力で来ますねえ。間違いない」

 

 隣のユーノさん同様、次辺りが最後の一撃になると俺も予想していた。

 

 今の二人共膝に手を付き絶え絶えに話す姿を見れば、誰だって分かる事だけどな。

 

 

 「……これが最後になりそうだね」

 

 「うん。でも、本当はもっと……キャリーちゃんと打ち合ってたかったかな」

 

 「私も、だよ」

 

 名残惜しそうに言い合うキャリーちゃんとヴィヴィオちゃん。

 

 

 ふっ、と微笑み合うとまた構えを作る。

 

 

 これがこの模擬戦最後の一発になるから

 

 名残惜しいけど

 

 名残惜しいからこそ

 

 

 全力全開で。

 

 

 (もっと、もっと、お兄ちゃんに見てもらいたい、ちゃんと私の本来の強さを、そして昨日教えてもらって出てきた新しい私を……なら!!)

 

 一瞬、静寂。

 

 

 そして、初撃より幾分も素早い動きで二人の拳が再びぶつかり合った――



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ヒミツその十一『嫌な予感がする時って妙な寒気感じる…感じない?』

非常に難産だった

唯一のキャリーちゃんヒロイン小説を途絶えさせてはならん…ならんのじゃ…


 

 

 模擬戦が終わり閑散とした広場。

 

 現在女性陣はお風呂、男達は自由行動となっているが俺達はその広場に残っていた。

 

 

 「いやあ、本当にさっきの模擬戦は凄かったなぁ!な、ラーディ」

 

 「ホンマな……キャリーはんがフレイから教わった事、もう実用出来るとは思わんかったで」

 

 「だが、まだ完全にものにしている訳ではない。現にヴィヴィオに入ったダメージは効果的と言うには心許なかった。そしてそのツケで負けたのも事実……ではあるが、良くやった方だとは思う」

 

 結局あの模擬戦はヴィヴィオちゃんの勝利で終わった。

 力ではキャリーちゃんが上回っていたものの、温存していた体力の差で先にキャリーちゃんが力尽きた。

 

 攻めあぐねていたのが最後に致命傷になった、という結末となった。

 やはりと言うべきか、ヴィヴィオちゃんのガードテクニックの高さが光る試合となった訳だが、キャリーちゃんも隙を作らせずカウンターを極力受けない様に徹底していたのは流石は上位ランカーといったところか。

 

 「……で、フレイ。本人おらへんから聞いとくけど、この模擬戦あの子が勝つ見込みは低かったやろ」

 

 「……ああ、低いってかほぼゼロに近かった。だがこれに関してはキャリーちゃんの性格考慮した上で、負けても自信が付くと確信したからやらせた、お前らだってその辺察し付いてたろ」

 

 「まあそれならええけど」

 

 「だが、本人には黙っておいた方が賢明だろうな」

 

 「自分で仕組んでおいてあれだが、言うのは何か可哀相だしな」

 

 そう言う意味でも、勝つ姿を見せたいと張り切って頑張っていたキャリーちゃんを見てると良心とか胃とか、色々痛かった。

 

 表には出してないけどな!

 

 「でもよォ、ほぼゼロに近い勝率であそこまで出来たって凄くねえか?」

 

 「ああ、本当に良く頑張ってくれたよ」

 

 「……次の、本番の試合にはお前の技術ももっと習得している。そう落ち込むな」

 

 「次……あと二週間後にあるジュニアワールドチャンプとのジュニアドリームマッチか」

 

 ジュニアドリームマッチと言うのは、毎年秋の、エキジビションマッチが行われた数週間後に開かれる言わばウィンターカップ前最後の試合である。

 

 その年の小学生限定で行われるジュニアカップの優勝者と、その一つ上のU-15階級の上位10人の中から、DSAA委員会が一人選び行うマッチングであり、ジュニアチャンピオンが壁を感じたり手応えを感じ成長する為に行われる。

 

 勿論ジュニアの方もU-15の方も毎年ネームバリューも実力も高く、人気も非常に高い。

 

 で、だ。

 

 そんな素晴らしい試合に、今年キャリーちゃんが大抜擢されたのだ。

 

 「楽しみやなー」

 

 「だな!ハッハッハ!」

 

 「……」

 

 「……やはりお前は不安か、フレイ」

 

 「まあ、それもあるんだがな……」

 

 何か、嫌な予感がする。

 

 はっきりとは分からないが、何と言うか言葉で表せない悪寒がする、という表現しか出来ない。

 

 もしかしたら気のせいかも知れない、杞憂かも知れない。

 

 それでも、今の俺にはどうしてもこの嫌な予感が気のせいには思えなかった。

 

 「……いや、今考えるのは止めとく。無駄に不安煽る様な真似になりかねん」

 

 「意外に冷静だな」

 

 「最善の選択をしたまでだ。それが一番、あの子の為になる」

 

 とは言っても、嫌な事考え出すと結構冷静になるの大変だったりするんだよな、これが。

 

 キャリーちゃんって、まだ一度も会った事無い時の印象はいつも元気で、負けた次の試合にも笑顔は絶やさず、本当にみんなに元気を与える向日葵とか太陽みたいな子、負けても悩まずポジティブっていう感じだと思っていた。

 

 この前の試合だって、ショックは受けていたけど、いつもみたく思っていた。

 

 でもこうして直接話して、表情見て。

 

 他の子よりずっとずっと悩みもあって、負けた試合にも人知れずずっと悔しがって、涙して、そう言う事が実際会って話して分かった。

 

 それでも尚、次の試合やイベントの時には最高の笑顔を振り撒いてみんなを笑顔にする。

 

 そう言うのを見ていると、無性に不安になる。

 

 一人で抱え込み過ぎていないか、悩み過ぎていないか、無理はしていないか、心から笑えているか。

 

 

 過剰に不安になりすぎているだけだと言われればそれまでの事だが、それだけ実は繊細な子だったという事だ。

 

 「ラーディ、オメエもキャリーちゃんに一つくらい技仕込んだらどうよ?」

 

 「いやいや、ワイのスタイルは合わへんて。合いそうなんは女子ならリンネ選手くらいやろ」

 

 そうやって俺が悩んでる近くでは、ラーディとジェイリーが完全に遠足前夜の子どもみたいな目で談義し合っている。

 

 どこからともなく溜め息が溢れる。

 

 「……ったく、時々アイツ等みたいな純粋に楽しめる脳ミソが羨ましいぜ」

 

 「お前もそこそこ大概だけどな」

 

 「オイそりゃどういう意味だ」

 

 「さあな」

 

 またも溜め息が溢れる。

 

 流石に能天気バカ&テンプレ関西人コンビと同じにはされたくないんだが……

 

 

 まあともあれ、今日でキャリーちゃんが成長出来たのなら、俺はもうそれだけで良いや。

 色々突っこみどころあるけど疲れたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、お兄ちゃんお風呂空いたよ」

 

 「おー、ありがとな。んじゃ入らせてもらうよ」

 

 あれから大体五分か十分経って、高町家witchキャリーちゃんのお風呂タイムが終わったらしくキャリーちゃんが俺等を呼びに来た。

 

 あ、因みにだが俺等バトラージム関係者とユーノさん以外は全員帰宅した。

 

 みんな朝早いし仕方ないね。

 

 え?ユーノさんは大丈夫なのかって?

 

 その辺はあれよ、なのはさんが管理局に職権乱用と言う名のOHANASIを持ち掛けたところ即刻了承された。

 

 ……ユーノさんの有給休暇も貯まってたみたいだから大丈夫……だったと思いたい。

 

 後でOHANASIされるであろうユーノさんは大丈夫じゃないだろうが。

 

 現在当の本人は俺の肩に乗ってるが、目からハイライトが消えててまるで生気が無い。

 

 うん、強く生きろ。

 

 

 と、まあ。

 それは兎も角としてだ。

 

 

 「どうかしました、お兄ちゃん?」

 

 「い、いや何でもないさ……」

 

 お風呂上がりの若干上気した頬、まだ乾ききってなくて光に反射していつもより艶やかに映える黒髪、そのちょっとアダルトな魅力とは相反した感じの可愛いピンクのネグリジェ。

 

 正に鼻血ものですよええ。

 

 神は二物を与えず、なんて言うことわざがあるがそんな言葉キャリーちゃんの前では意味を成さない。

 

 これが天使か、エンジェルなのか。

 

 爆発寸前の気持ちを何とか抑え込み平常心を保つので精一杯であった。

 

 「ラーディさん達も、お風呂空いたのでゆっくり入って、ってなのはさん言ってましたよ」

 

 「わざわざ言いに来てくれておおきにな、ほいじゃ入らせてもらいますわ」

 

 「サンキューな。ところでよ、ユーノさんが色んな意味でダメそうに見えるんだけど、どうすんだよ」

 

 若干心配そうにユーノさんを見るジェイ。

 

 なのはさんのOHANASIがそんなに恐怖なのか未だに屍と化している。

 

 単になのはさんのOHANASIを聞くだけならご愁傷様とも言えるが、なのはさんとユーノさんは所謂『デキてる』関係である。

 

 つまり何が言いたいかって惚気見せつけてんじゃねえよ勝ち組の癖してよォ!あぁん?(本性)って話。

 

 「まあ、桶に半分くらいお湯溜めて入れれば起きるでしょ」

 

 「……俺は知らんぞ」

 

 「バレそうになったら適当に誤魔化しゃ良いっしょ」

 

 これは自分がリア充である事を自覚してないユーノさんが悪い、俺は悪くねぇ!

 

 「お兄ちゃん、程々にね……?」

 

 「大丈夫大丈夫、キャリーちゃんが心配する様なこたあ何も無い。何も無いから」

 

 「な、なら良いんですけど」

 

 兎に角、キャリーちゃんに後の聖戦(笑)がバレるのだけは御免だ。

 これは男と男の戦いなのだ。

 

 「んじゃ、髪乾いたら早く寝なよ?」

 

 「今日は私も疲れたので、そうします。本当はお兄ちゃんと少しだけお話したかった気持ちもあるけど」

 

 分かるぞキャリーちゃん、俺だって本当は一緒にいられる時間削るのはあまりしたくないんだよ。

 

 でも明日は予定通り朝早くからまた出掛ける事になったんだ、これは一応伝えたし分かってくれるはず。

 

 まあどこに行くとは伝えてないけどな。

 

 「んじゃそろそろ行ってくるよ」

 

 「それじゃ、お休みなさいお兄ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 ――本当は、ずっと前から扉の前にいた。

 

 もう少しタイミングが早かったら、そのまま中に入れたのかも知れない。

 

 でも、聞いてしまった。聞こえてしまった。

 

 

 『……で、フレイ。本人おらへんから聞いとくけど、この模擬戦あの子が勝つ見込みは低かったやろ』

 

 『……ああ、低いってかほぼゼロに近かった。だがこれに関してはキャリーちゃんの性格考慮した上で、負けても自信が付くと確信したからやらせた、お前らだってその辺察し付いてたろ』

 

 『まあそれならええけど』

 

 『だが、本人には黙っておいた方が賢明だろうな』

 

 『自分で仕組んでおいてあれだが、言うのは何か可哀相だしな』

 

 

 私はとても、とっても悲しかった。

 

 負けると分かっていてやらせた模擬戦の事じゃなく、お兄ちゃんが私にその事を隠してしまう、その事が。

 

 これでも私の中では、お兄ちゃんへの信頼感はかなりあったと思う。

 だから、お兄ちゃんもそう思ってくれてると思ってたんだけど……

 

 たった二日で信頼してほしい、そう思う方がおかしい事くらい私でもわかる。

 

 でも、それでも。

 

 どうしようも無い気持ちに、溜め息が出る。

 

 

 そもそも『会って二日』という事すら、私の中では残念で堪らない。

 

 『本当は二日じゃない』のに。

 

 数年前、私が変わる切っ掛けをくれたのは貴方なのに。

 

 私が格闘家になろうと決心したのも、貴方のお陰なのに。

 

 私が勇気を出せたのは、貴方が私にかけてくれた言葉なのに。

 

 

 勿論、分からないという事を理解してない訳じゃない。

 

 わがままなのは分かってる。

 

 でも、私の人生をこうして明るく変えてくれて、一番の憧れで、一目惚れで初恋の人。

 

 そんな人に覚えてもらってないって、とっても悲しいって思う。

 

 

 「……だから、もっと積極的に行かなきゃ。これは神様が与えてくれた人生最大のチャンスなんだから」

 

 ギュッと手を握り締める。

 

 

 思えば、好きになったのは誰も彼もを優しく、明るくしてくれる性格に触れたからというとても簡単な理由。

 

 そこから更にあの人の格闘も好きになって、顔も好きになった。

 

 今じゃ全てを好きと言えるくらいに大好き。

 

 

 『よーしそーっと突っ込めよ』

 

 『よォし大丈夫だ。よっ……と』

 

 『んぐ?……ぼがごぼぼぼぼ!?』

 

 『本気で溺れてへんやろなこれ……』

 

 『大丈夫でしょ、溺れる様な深さにはしてない。現に浸かってるのは鼻の上までだ』

 

 『大丈夫な訳ないでしょう!?一体どうしたら僕が溺れてるんだい!?』

 

 『……ジェイが手を滑らせて桶に落としてしまった、済まないユーノさん』

 

 『あ、そうなん……って騙される訳ないよ!そんなのだったら絶対すぐ起きてるから!』

 

 『……チッ』

 

 『今舌打ちしたよねえ!?』

 

 『ヒュッヒューヒュッ』

 

 『下手すぎ!?口笛下手すぎだから!?』

 

 

 私は風呂場から聞こえてくる声の方を向き、もう一度拳を握った。



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ヒミツその十二『高町なのはという人、高町ヴィヴィオという人』

新年が明けた(5日)ので(2017年)初投稿です。イエーイあけおめー

さて、ビビストも終わりましたが、最終話まさかまさかのキャリーちゃん登場でしたな!
元気に立ち直ってて、そしてまた再戦を望むそのひた向きさには自称キャリーちゃんファン会員永遠のNo.1ことワイはホロッと涙が…
おう、公式はキャリーちゃん主役のスピンオフ作るんだよあくしろよ


それはそうと、ポケモン短編書いてたらこっちの書き方忘れてて遅れました、スマソ
てかお気に入りも総合評価も感想も全てあっちの方が圧倒的上なのは草、どうしてそうなった
まあ良かったら短編の方も見ていって、どうぞ


因みに、作中出てくる転送ポッドについてはstrikersのドラマCDにおいてその存在について触れられています


 風呂でのユーノさんとの激闘(?)の決着の行方は結局、五人全員が逆上せ掛けるという実質的ドローで終結した。

 

 俺等が四人なのに対し、ユーノさん一人でドローに持ち込んだのは流石なのはさんの元師匠、戦闘特化ではないがやはり、格が違ったと言える。

 

 まあ、その後ユーノさんはなのはさんにそのまま自室までお持ち帰りされていたから、真の勝者はなのはさんなのかも知れない。

 

 取り敢えずは、現在起床時刻になってもなのはさんとユーノさんだけ降りてこない事でヴィヴィオちゃん含む全員が全てを察していた。

 

 ユーノさん、強く生きろ。

 

 『ユーノくん……フフフ……』

 

 ふとなのはさんの部屋の真下のリビング、つまりは俺達一同が集まってる部屋になのはさんの艶かしい声が聞こえた。

 

 義理とは言え、精神的には完全に娘で本当の親子なヴィヴィオちゃんにこれ聞こえちゃう危険性は考えてないのか。

 

 流石に後で少しお話ししておく必要性がありそうだ。

 

 まあ運良くキャリーちゃんが耳抑えてくれたからギリギリセーフだったけど、キャリーちゃんはアウトだった。

 顔真っ赤である、可愛いけどその元凶は許すまじ。

 

 と言う訳で……済まないユーノさん、取り敢えずお話の件は和らげておくとしよう。

 

 

 

 

 リア充は爆hゲフンゲフンキャリーちゃんに及んだ被害に付いては、ユーノさんの方に適度に有給を取る様念入りに言っておく必要があるだろう。

 

 

 あと、やっぱりリア充は爆発してくれないですかね。

 

 

 

 

 

 

 

 「てな訳で、お二人共反省してくださいよー? 俺達男勢ならまだしも、ヴィヴィオちゃんとか、まだウブな年齢の女の子にR‐18スレスレな声聞こえてたんすよ?」

 

 「うっ……ごめんなさい」

 

 「……流石に今度からは、ちゃんとした有給を適度に取るよ」

 

 「ホンマ、こう言う事態以前に身体壊したらなのはさん心配しまっせ」

 

 全くである。

 

 なのはさんは心配性なんだから、万が一にでもユーノさんが倒れたなんて聞いた日には、別次元の管理世界にいようと物理的な意味で飛んできそうだ。

 

 「まあ、分かって下されば良いんですよ。……ちょっと役得気分味わったし」

 

 「むむむっ、何故かお兄ちゃんから私を呼ぶ声が聞こえた気がします」

 

 「お、おうそうかそうか、心の声が聞こえるくらいキャリーちゃんは俺の事好きなんだな。お兄ちゃん嬉しいぞー」

 

 まずい、さっきの事が聞かれていたら軽くどころじゃ済まない好感度の下落が待っている事だろう。

 しかしキャリーちゃんは俺の声にだけ敏感し過ぎやしませんかね……あれかなり小声だったはずなんだけど。

 嬉しいんだけど、これじゃ軽率な事は絶対に言えないな。

 

 「はい、お兄ちゃんの事大好きです!」

 

 「…………我が友等よ」

 

 「言わんでも分かりますがな」

 

 「応とも。分かる、分かるぜ」

 

 「お前のロリコン振りが、あの子が来て以降とんでもなく悪化している様に見えるぞ……」

 

 ロリコン振りが悪化しているのはどう考えてもキャリーちゃんが可愛すぎるのがいけない。

 と、何だかラノベのタイトルみたいな事を言ってしまったが、滅茶苦茶可愛い女の子からお兄ちゃん+大好きなんて完全に殺しに来てますわ。

 

 これで少しもクラッと来ない人間はこの世にはいないと俺は断言しよう。

 

 「……? どうかしたんですかお兄ちゃん?」

 

 「あ、いやー、ちょっと照れちゃって」

 

 「きゃんっ、嬉しいですっ」

 

 「いや絶対ちょっとやないやろ」

 

 「だな」

 

 「……全く」

 

 おいお前ら聞こえてるぞ、それは自覚してるから言うんじゃない。

 あとお前らにも超可愛い女の子から『お兄ちゃん』なんて呼ばれたらノックダウンしてテンカウントまで沈むだろ絶対。

 

 まあオールバック眼鏡のドレッグや猿顔のラーディ、ちょび髭で目に切り傷があるレスラー体型のジェイという面々が照れる姿はあまり見たくないがな。

 

 ……俺の顔の事は言わないでください死んでしまいます。

 

 

 やんやん、と手を頬に当てながら顔を赤くしているキャリーちゃんを見ると違う意味で死にそうだけどな。

 美人は三日で飽きるということわざがあるが、俺だったらキャリーちゃんを三億年だろうが三千億年だろうが見ていられる自信がある。

 

 「うんうん、やっぱりキャリーちゃんは可愛いな! よーし、撫でてあげるからこっちおいでー」

 

 「えへへ、お兄ちゃんに頭撫でられるの、とっても気持ちいいです」

 

 「そうかそうかー、今までキャリーちゃん以外の頭撫でた事無いけど、俺意外と才能あるのかもな」

 

 まあ撫でた事無いというか、近付くだけで女の子とか怯えて近寄って来ないどころの問題じゃなかったしな……

 全速力で逃げられた時は流石に心折れ掛けたわ。

 

 それにしても、俺にもキャリーちゃんみたいな妹欲しかったなあ……

 

 「オーイ、二人でイチャコラやってんのは構わねえが、昼前には地球に向かうんじゃなかったのかよ」

 

 「ん? ……あ、そう言えばそうじゃねえか!! 朝から一騒動あったお陰ですっかり忘れてたわ!!」

 

 「その張本人である僕が言うのもどうかと思うけど、それで忘れ去られるのか……」

 

 ユーノさん、本当に貴方が言うのはどうかと思いますよ。

 更に言えば『地球に行く』という用事を忘れていただけで、翠屋の皆さんやなのはさんとフェイトさんにひけを取らない美人な親友お二方の事はしっかり覚えている。

 

 特に美人や美少女は大好きだから、絶対に忘れる事は無い。

 

 とは言っても、お二方共結婚されているけどな。

 

 「お兄ちゃんお兄ちゃん」

 

 「ん、どしたよ」

 

 そんなアホみたいなやり取りをしていると、キャリーちゃんが目を輝かせながら話し掛けてきた。

 大方、初めての地球に興味津々なのだろう。

 

 「地球って、どんな場所なんですか?」

 

 ほら来た、俺ってばエスパーかな?

 

 まあ冗談は良いとしても、俺も最初地球に行った時は文明の進みの差や自然環境の差とかにそこそこ驚かされたものだ。

 

 「魔法が無くて、科学とかもミッドみたく発展はしてないけれど管理世界全体と比較すると、そこそこの文明で、割と自然も多い珍しい管理外世界、って聞いたな」

 

 珍しい管理外世界と言っても、今まで管理局が認知している世界の話だがな。

 一説によれば、管理局が管理、若しくは管理外であっても認知している世界は一割にも満たないとする学者も少なくない。

 

 とは言え、管理局が発足したのは明確な年数は記されていないが、古代ベルカと呼ばれる数千年に及んだ時代が終わった三百年前、その少し後と記されている為、大体二百八十~二百七十年前だろう。

 

 それを思えば、たかだか三百年にも満たない管理局の統治で一割近くも世界を見つけていると言う事になる。

 

 まあ俺の持論に過ぎないが、それなら立派なもんじゃないだろうか、そう思っている訳だ。

 

 所属していた、している魔導士や職員は全員能力が選りすぐりのエリートな訳だし、当然と言えばそうなのかも知れないが。

 

 「自然が多い、と言う事は動物も多そう……楽しみですっ。あ、あと今更ながら、管理外世界なのにミッドチルダからの移動方法がちゃんとあるんですねー」

 

 「まあ、なのはさんが魔導士になった切っ掛けは事故みたいなもんだって聞いてるしね。今や伝説の魔導士だしそれくらいの処置は管理局がしてくれたってさ。所謂特例ってやつ」

 

 確かユーノさんが乗った次元船が事故に遭い、ユーノさんが発掘し所持していたロストロギア《ジュエルシード》が地球にユーノさんと共に落下、色々あってなのはさんが地球に散らばったジュエルシード回収をする事になり、魔導士へ。

 

 そしてジュエルシードの反応を関知して来た管理局と遭遇し、協力する事になりジュエルシード含めなんやかんや大きい事件に関わり今やフェイトさん、はやてさんと不動の三大エース・オブ・エース。

 

 と、まあ予てより人手不足管理局には棚から牡丹餅、無くてはならない存在の為地球に帰してはいサヨナラ、みたいな事が出来ない。

 だからこその、せめてもの対処として地球とミッドを繋ぐ転送ポッドなのだろう。

 

 因みに、転送先はなのはさんの親友の一人であるアリサ・バニングスさんの別荘に設置してある。

 俺も毎度毎度お世話になっているが、それ専用の施設を管理局側が何処かに建てようかと言う話の時に、アリサさんが『設置費用と所有権を買い取る』なんて言った時は戦慄したものである。

 

 いくら大富豪のお嬢様と言えど、日本円換算で十億は下らない金を良く一括で、それも平然平気と出せるものだ。

 あと勿論だが、その後のアリサさん含むバニングス家に関わる人間の生活には一切影響は出ていないそうで。

 

 本当、あの人と結婚出来た人は凄いわ。

 

 「なのはさん達がいなかったらこの世界、何度か滅亡してそうですしね……世界を何度も救えるなんて、偶然魔導士になった人なのに本当に凄いです」

 

 「えへへ……そう言われると照れちゃうな。そんな大それた事した実感なんて無いんだけどな」

 

 「でも実際、なのはは凄いよ。私だって、なのはに救われなかったら今頃母さん、姉さんと一緒に次元の狭間で死んでただろうし」

 

 「私もなのはママに救われなかったら、きっと今いないと思う」

 

 「ヴィヴィオちゃんも、なのはさんに助けられた事あったんだね……」

 

 照れるなのはさんに、実際救われたフェイトさんとヴィヴィオちゃんが口々にその凄さを語る。

 

 そういえばキャリーちゃんのヴィヴィオちゃんへの一言で思い出したが、五年前のクローン事件、通称JS事件は最重要機密として機動六課と管理局上層部、そして偶然機動六課にいた俺達三人と混乱の最中で偶々知ってしまった一部の管理局員、当事者達以外にはヴィヴィオちゃんがクローンだと言う事はほぼ知られていない。

 

 まあなのはさんが言うに、学校の一番仲の良い親友達や親友兼同門師匠の現U-15女子チャンプ、アインハルト・ストラトスには話しているらしい。

 管理局側がヴィヴィオちゃんの性格を加味した上で、自発的に話すのだけは良しとするという処置を取っている。

 

 俺はこの処置に関して、ファインプレーだと思っている。

 

 自発的に話す事すら禁止だと、この事実を知っている人物にヴィヴィオちゃんと同年代がいないからだ。

 やはり、自分の一番の秘密を話せる同年代がいれば精神的に安心出来る。

 因みに、この事実を知っていた人達は全員自発的に話す事には賛同していた。

 

 「……ヴィヴィオちゃん」

 

 「……流石にまだ。怖いですから、やっぱり」

 

 「そっか」

 

 まだ、キャリーちゃんに話すには心の準備が出来てなかったか。

 そりゃあ何回カミングアウトしようと、自分がクローンだなんて話すのは怖いに決まってる。

 

 「お兄ちゃん、ヴィヴィオちゃんと何話してたんですかー?」

 

 「フッフッフッ、それは秘密なのだよ」

 

 「……お兄ちゃんがそう言うなら、流石に聞けないです」

 

 そして、そう言う秘密を聞きたいのが所謂小、中学生くらいの好奇心旺盛な年齢だが、キャリーちゃんはちゃんと一歩引いてくれる、引き際が分かる良い子だ。

 

 「まあ、キャリーちゃんとも二人の秘密的なのはあるし、ね?」

 

 だからしっかりフォローを交えたのだが、それが間違いだった。

 

 「二人で色んな事、しましたもんね~」

 

 まずい、そんな意味深な感じに言われると周りが……

 

 「……フレイはん、流石に手を出すのは……」

 

 「早まってくれるな、俺はお前を警察に突き出したくはない」

 

 「和○ならセーフだろ」

 

 「いやなにサラッと18禁な事を喋ってるのかな君は!?」

 

 「……少し、お話しするの」

 

 「???」

 

 「?」

 

 いやなのはさん怖すぎるんですけど……ヴィヴィオちゃんがイマイチ意味を捉えきれていなかったのが不幸中の幸いか。

 だがフェイトさん、貴方はちょっと鈍感過ぎやしませんか。

 ヴィヴィオちゃんより意味分かってなさそうなのは、もう二十も半ばに差し掛かってるのを考えると……

 

 あ、あと手、出してはいないからな。

 

 ……お風呂はノーカンよノーカン。



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ヒミツその十三『久々の地球、初めての地球Ⅰ』

未だにこの小説がキャリーちゃんヒロインの唯一のものらしいので初投稿です


 ……で、あの後結局なのはさんのお話を受けたり、キャリーちゃんが一緒のベッドで寝てるという、トンデモ爆弾をナチュラルに投下してくれたお陰でなのはさんが鬼になりかけたりしたが、朝食も食べ何とか俺は無事である。

 

 しっかしさっきの爆弾投下と言い、お風呂の一件と言い、まだ三日目なのに本当にキャリーちゃんには振り回されっぱなしだな。

 

 と言うか三日目なのに良くここまで仲良くなれたよなー、とふと不思議に思ったり。

 

 まるでもっと長い付き合いの様な……まあ、有り得ないとは思うがそんな感じがしたりする。

 

 そう言えば、キャリーちゃんを見ていると昔出会ったとある女の子を思い出すなぁ。

 あの女の子も確か、今キャリーちゃんと同年代くらいの年齢だっただろうか。

 秘かではあるが、出来る事ならもう一度会いたいと思ってたり。

 

 恋愛的な意味じゃなくて、まあ色々あって今どうしてるかとか、全く分からないから純粋に近況とか知りたいんだよな。

 

 あと、あの子俺のファン第一号なんだよな、自分で言うのも恥ずかしいけど。

 内気で怖がりだったあの子が興味を示して、そんで俺の話を聞いてる内盛り上がってそうなったんだ。

 まだ俺の事は応援してくれているのだろうか、なんて少し思ったりもしたり。

 

 「……自信過剰、かもな。やめやめ」

 

 まあ今更そんな昔の事を考えても、電話番号も住所も、ましてや名前すら知らない子だ。

 手掛かりなんてある訳が無い。

 

 「やっぱ名前くらいは聞いとくべきだったかなぁ」

 

 ぼんやりと呟きながら、荷物を纏める。

 そろそろ第二の故郷地球へ向かう時間だ。

 

 「えーと……忘れ物は無いな。うし、準備OKだな」

 

 忘れ物のチェックは、小さめの肩掛けカバンしか持ってきていない俺からすればただの念のため程度しかない。

 ただ、こっそり忍ばせてあるキャリーちゃんのブロマイド写真の確認の為にしただけである。

 

 「おにーちゃん? 準備終わりましたか?」

 

 「ナイスタイミング! 丁度終わったとこだよ」

 

 「分かりましたー! これで後はなのはさんとフェイトさんだけですね」

 

 丁度終わったタイミングでキャリーちゃんが声をかけてきた。

 本当に、狙った様な同時のタイミングだったから偶然とは言えちょっと嬉しかったりする。

 

 と言うかなのはさんとフェイトさんはいつまで準備してるんですかね……

 大人の女の人ってそんなに準備に時間が掛かる事があるんだろうか。

 

 ……まあ、文句言ったら終わりだろうなとは思った。

 

 

 

 そしてそこから約十分後、漸くお二方の準備も整った様で。

 

 

 

 「ごめんね、ちょっと時間掛かっちゃった」

 

 「私も、時間掛けすぎちゃったね……」

 

 「いや大丈夫っすよ、これで一応将来女の人への対応を間違えずに済みますし」

 

 「いや大丈夫ってそこなんかい!」

 

 「全く、ほとほと呆れる」

 

 「でもよぉ、女の人には避けられてばっかなのに使えるのかぁ?」

 

 「オイやめろ」

 

 何事にも運命と言うものは存在している。

 俺が格闘家になる運命、俺が女の人に避けられる運命……なら、結婚する人と出逢える運命もあるんじゃなかろうか。

 

 そう考えていた矢先にその考えをへし折ってきたジェイリーくん本当鬼畜。

 悪気無いのが更にタチ悪いし文句も言えん。

 

 「大丈夫、お兄ちゃんはかっこいいです! 私が断言します!」

 

 「やっぱりキャリーちゃんは良い子だなあ……」

 

 「毎度毎度同じパターンやめーや」

 

 同じパターンと言われても、毎回キャリーちゃんだけが俺の良心みたいな事になってるんだから仕方がない。

 それこそ、もう少し俺とキャリーちゃんの歳が近かったらお付き合いすら速攻で頼んでいたかも知れない。

 

 ……歳の差考えないなら、今だって下手したら思わず言っちゃいそうになるくらいには好きだけどな。

 

 悲しいかな年齢と年齢以外の面でも無理があるのが現状だし、俺にはそんな現状を覆せる度胸も無いからそんなの夢のそのまた夢、ということだ。

 

 「はいはい、それくらいにしないと置いてくよ?」

 

 「サーセンフェイトさん」

 

 「よしっ、みんな準備は出来たー?」

 

 「男子陣、全員おっけーやで」

 

 「私とキャリーちゃん、ヴィヴィオちゃんも出来てるよ」

 

 まあ男子陣は殆んど持ってく物なんて無いんだけどな。

 ちょっとした娯楽品と着替え一セット、というところか。

 

 そして全員の確認が終わったところで、転送ポッドの置いてある部屋へ。

 結構デカイから専用の部屋に置いとくしか無いんだよな、アレ。

 

 「さてと。これが転送ポッドだけど……キャリーちゃん、見た感想はどう?」

 

 「すっごく……大きいです……」

 

 確かに、毎年の様に見るが相変わらずデカイ。

 人が一気に十人は軽く入るスペースがあり、さながら巨大エレベーターの様な形になっている。

 

 「んじゃ、最初はキャリーちゃんに入ってもらおうか」

 

 「ふぇ? 良いんですか?」

 

 「良いぜ。なっ、みんな!」

 

 「……まあ、良いんじゃないのか」

 

 「なのはさえ良いなら、僕達から言う事は無いさ」

 

 「私は勿論、おっけーだよ」

 

 キャリーちゃんがこの転送ポッドに興味津々なのを全員察してか、一番乗りさせてあげる俺含めた面々。

 女の子ってこう言うメカニックな物にはそう興味無いものだと思ってたけど、どうやらキャリーちゃんはメカ系統のものにも興味はあるらしい。

 

 ……ふむ、これは地球に行ったらガンダムのフィギュアを買うのを検討しておくかね。

 

 「お、おお……すごい、すごいですっ! こんなの初めて体験しました!」

 

 「うんうん、良かった良かった」

 

 「ここ私の家なんだけどね……」

 

 「その辺は、まあ小さい事は気にしない方向性で、ね? なのは」

 

 思わずあたかも自分の家の様に振る舞ってしまったが、文面だけでも伝わる喜び様を見ればついついそうなってしまうのも理解出来るんじゃないだろうか。

 

 ぴょんぴょん跳ねながら喜んでる純粋なキャリーちゃんが見られるとか、全世界のキャリーちゃんファンが知ったら羨ましがるだろうか……それとも殺意の波動を覚醒させて殴り込んでくるだろうか。

 

 どちらにせよ俺はこの数日間でファンに殺されてもおかしくない、これより凄まじい騒動を何回か起こしているのはお分かりいただけるだろう。

 

 特に風呂の騒動は身内にすら知られたらヤバい案件である。

 そしてなのはさんやフェイトさんに知られたら半殺しにされる、間違いない。

 

 特になのはさんは怒ると我を忘れる傾向にある。

 

 そもそもだが、なのはさんは滅多な事で怒ったりはしない。

 怒るより前に悲しみが来て、それを断ち切ろうとするタイプの人間だ。

 それが怒るとどうだろう。

 

 一番の被害を受けたティアナさん曰く『二つの意味で二度と思い出したくない。一つ目は黒歴史として、二つ目はトラウマとして』と涙目で話すくらいらしい。

 簡単に言うなれば『この世の終わり』とでも表現するのが正しいかね。

 

 兎に角俺はそんな恐怖と共に殺されるなんて真っ平御免であるからして、もうさっさと乗り込んでパーッと忘れたいのである。

 

 「ほいじゃ俺達も乗りましょうか」

 

 「そうだね、流石に遅れちゃうとアリサちゃんやすずかちゃんに怒られちゃうか」

 

 「みんな、忘れ物とか大丈夫だよね?」

 

 「ワイ等は荷物少ないしへーきやで」

 

 「ああ、必要最低限のものだけ持っていくだけだしな」

 

 「俺ならこの身体一つで十分よ!」

 

 「……と言う事で男は問題ないみたいだぜ」

 

 俺がそう言うと、女性陣を代表してなのはさんが『こっちはもう確認し終わってるよ』と教えてくれた。

 流石はなのはさん、抜かりは無かった様子。

 

 「よしっ、それじゃ出発!」

 

 みんなが乗り込んだのを確認し終えると、なのはさんが号令をかけボタンを押す。

 一瞬目の前の光景がプツッと途切れたテレビの様になったと思ったら、久々に見るアリサさんの別荘の中にいた。

 いつも通りのハイテクノロジー転送だった……次元をあっさり越えた転送自体がハイテクノロジーと言うかチートそのものだがな。

 

 「フフフ……久々の日本やでえ……」

 

 「本当お前は毎回日本来るとテンション上がるよな」

 

 「当たり前やんけ! 日本の料理は最高や!」

 

 「……まあ、理解は出来るがな」

 

 「俺は早くこの一年放送されたアニメのDVDを買いたいぜえ!」

 

 「いやお前ら当初の目的忘れてるでしょ……あ、それはそうとキャリーちゃん、日本にようこそ!」

 

「にゃはは、フレイくんの故郷じゃないけどね」

 

「細かい事は良いんです! あと俺にとって地球は第二の故郷みたいなもんなんで」

 

「お兄ちゃんの第二の故郷……今からとても楽しみです!」

 

 うおっ、目が輝いてらっしゃるぞ……これは期待を裏切らない案内をしないとな、こんなに可愛いキャリーちゃんにはもっと可愛くいてもらいたいしな。

 

 因みに余談だが少なくとも日本のDVDとミッドチルダのDVDはほぼ一致してるらしく問題なく再生されるらしい。

 

 と、まあそんな無駄情報を提供していると部屋の外から足音が聞こえてきた。

 

「なのは! フェイト! それにみんな久し振りね、元気だった?」

 

「みんな久し振りだね、あい変わらず元気そうで嬉しいよ」

 

「うん、私もフェイトちゃんもみんな元気だよ」

 

「変わらないね、二人共」

 

「僕の事忘れてないかな……」

 

「忘れてないわよユーノ、アンタ背また伸びたんじゃない?」

 

「アリサさん、すずかさん、お久し振りです!」

 

「久し振りねヴィヴィオちゃん。うん、去年より更に可愛いわ! それに貴方も背、伸びたんじゃない?」

 

「アリサちゃんは本当にヴィヴィオちゃんにベタ惚れだね……」

 

 なのはさん達の小学生の時からの親友、そしてなのはさん達の事情を知る数少ない地球人であるアリサ・バニングスさんと月村すずかさん。

 どちらもめちゃくちゃ美人で、思わず見惚れてしまいそうになる。

 

 まあどちらも既に結婚しているんだが。

 

 双方タイプは違うとは言えアリサさんはお節介焼きで、ツンツンしてるけどデレるとヤバいとはなのはさん、フェイトさん、はやてさん談。

 そんなツンデレとお節介焼きな優しさが結婚に繋がったんだろう。

 

 すずかさんは典型的な大和撫子タイプで、男の人の二、三歩後ろを歩いてそうな献身的な人だ。

 だが本気で怒らせると自分が青二才だったとは言え危うく殺されかけたと密かに話していたティアナさんが体験した本気のガチギレなのはさんよりまずい。

 

 しかしガチギレなのはさんと言えば、あの時は俺達も見てたけど、アリシアさんの作った自慢のロボットとベテランで破格の強さのエリートプレシアさんの二人掛り+リニスさんのサポートでギリギリ止められたから良かったけど、あの一撃が当たってたら下手したらトラウマになりかねなかったからな……なのはさんも相当反省してたけど、何にせよ止められて良かった。

 

 因みにすずかさんがガチギレしたのはその話を偶然耳にしてなのはさんに対してキレた時でした、はい。

 あの鬼教官で有名だったなのはさんが青ざめた表情を見せたのは後にも先にもあれ以外無い。

 

 閑話休題、取り敢えずは挨拶しないとな。

 

「お二人共相変わらずお綺麗ですね」

 

「もうっ、口が上手いんだから! そんな事言ってもお菓子くらいしか出ないわよー」

 

「でもやっぱり、そう言われると嬉しいよね」

 

「むぅ……」

 

「おーおーフレイはん、キャリーちゃんが嫉妬してまっせー」

 

「難儀なものだな、女性と言うのは」

 

「まあでも今のはフレイの責任だぜ?」

 

「うっ……しまった」

 

 ついいつもの癖で言ってしまったが、今はキャリーちゃんがいるんだった……不覚、まさかキャリーちゃんの前でそんな事を言ってしまうとは

 

「でも俺はキャリーちゃんが一番可愛いと思ってるから! それは本心だから!」

 

「お兄ちゃん……えへへ、一番可愛い……私の事が一番可愛い……えへへ……」

 

「アカン」

 

「ん」

 

「もう見慣れたぜ……」

 

 キャリーちゃんが何かトリップし始めたけど、うん!

 これはこれでめちゃくちゃ可愛いな、写真撮らなきゃ。

 

「あ、そう言えばこの子は初めまして、よね?」

 

「そうだね、ええと……見た感じだとバトラージムの子かな?」

 

 あ、しまった。ちょっとキャリーちゃんの可愛い姿に興奮し過ぎて紹介するのが遅れてしまった。

 

「あ、えと。キャリー・ターセルです、今はおに……フレイさんの家……バトラージムの方でお世話になっています。よろしくお願いします」

 

「まあそう言う事っす。所謂ちょっとした訳ありなんだけど、めっちゃ良い子で可愛いんで!」

 

「……フレイがそこまで気に入る女の子かー、どんな子か気になるわね」

 

「あはは……あんまり質問攻めは強くしすぎちゃダメだよ?」

 

 あ、これ俺もキャリーちゃんも根掘り葉掘り聞かれるパターンだな、と心の中でキャリーちゃんに謝った上で覚悟を決める……と言うか悟りを開く俺だった。




※因みに途中作者はユーノの存在を忘れていました


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