ドラゴンクエスト ~受け継がれし勇者の魂~ (永遠の二番煎じ)
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バルサーク地方

城跡には杖を片手に黒い魔法使いが、
「これはこれは・・・バルセル国王・・・偽りの商人であることがばれましたか。」
「貴様がやったのだな。」
「そうだ国王。でももう遅い・・・」
地図を天にかざす、黒い魔法使いに黒い光が天空から落ちる。
「やっと・・・やっとだ。」
黒い魔法使いは溢れ出る暗黒の力にさらに心が惹かれる。
「全軍、奴の首を討ち取れ。」
大陸中に響き渡るかのような大声が飛ぶ。
「威勢はいいようだな・・・パルプンテ。」
杖のドラゴンの顔の部分の目が赤く光る。
黒い魔法使いはバルセル国王以外の兵士を魔物に変えた。
「おのれ・・・闇の力に堕ちた哀れな魔法使い・・・」
魔法使いは不気味に笑う。
国王は腹を決める。
「私は勇者の血筋ではない。勇者が必ず貴様を倒すだろう・・・」
バルセルはメガンテを唱えた。
そこにいた魔物はほぼ爆発で消え去った、黒い魔法使いをのぞいて。
「知ったことか、今や誰にもとめられんわ。モンスターも今頃町で活発だろう。」
黒い魔法使いは魔王の城跡の地下階段を下りていく。


 

大陸はバルサーク山脈が北東から南西を線対称のように山が連なっている、山脈の西にはバルサーク村、東にはバルサーク城と城下町がある、バルサーク城の東と南には船着き場やバルサーク港がある。

バルサーク城王の間でバルセル国王は王座に座っている。

「私は世界を旅する商人でございます。」

ひざまずき緑のローブから口元まで見えるだけだが禍々しい空気が流れる。

「南の信者の大陸から来たそうだな。」

「はい国王、砂漠の大陸を渡りこの勇者の大陸に来ました。」

杖を持っており、先にはドラゴンが口を開けた顔が彫られている。

国王は不気味な印象を持つ。

「まあ、ゆっくり城下町を観光していくがよい。」

怪しい商人はふしぎなタンバリンを国王に献上した。

「それはふしぎのタンバリン。」

国王は驚く。

ほくそ笑みながら、

「無理を承知でお願いがありますが宝物庫までこのふしぎなタンバリンを持って行ってもよろしいでしょうか?」

「・・・まあ、いいだろう。その者を宝物庫へ案内しろ。」

少しためらったが兵士に命令する。

 

バルサーク村長の遣いによりバルサーク山脈を越えて東のバルサーク城主に挨拶に向かう。城主に会うのは生まれて初めてだ。乗馬できるが山を越えるのに馬は不適切であると村長に助言をもらう。山頂まで自分の足で一日かけて登り、夜に備えて落ちている枝を集め、火をおこす。夕日が沈むころ山頂付近で焚火をしていると、

「ぷるぷる。」

スライムが現れた。

「良い人間だ、山賊とは違う。」

話を聞かず、突然スライムは襲いかかる。

背中の後ろに隠していた木の棒で思いきり弾き飛ばす。

スライムは力尽きた。

 

「子どもだと思って油断したか・・・俺がスライムに倒されるわけがない。」

液体化が始まる力尽きたスライムを可燃材料として運び焚火に燃やす。

ブライアンは少し魔物の心が読めるのだ。

普段移動は乗馬なので一日だけでも登山するのはつらい。

翌朝東を見ると草原が広がる、北に城跡らしきものと南にバルサーク城と城下町らしきものが見える、そのさらに東と南には海が見える。

焚火に土をかけた後下山する、そこに赤い鬣に黄色の毛色にまだらの黒が体中にある四足歩行のモンスターが現れた。

警戒して木の棒を構える、相手には四本の指に鋭い生えかけの爪がある。

「あ、新しい魔物か。」

「ガルル・・・」

どうやら威嚇しているのではないようだ、どこかに導きたがっている。

「分かった行こう。」

魔物はブライアンを背中に乗せて山を少し降りる、魔物は止まると降りてほしそうにこちらを見る。

木の茂みに魔物は姿を消すとブライアンも自然に魔物を追いかける。

茂みの先にはその魔物の親らしき魔物が力尽きている。

力尽きている魔物は二本の牙が鋭く鬣も尻尾の付け根ぐらいまである。

「ごめんな、復活の呪文も覚えてないし世界樹の葉もないんだ。」

「ガルル・・・」

悲しそうな鳴き声だ。

「でも弔いの言葉はかけてあげられるよ、人間の言葉だけどね。」

弔いの言葉をかけた後、魔物はお礼に背中に乗せてくれた。

 

馬より早く視界は低くて新鮮な気分である、たまに雑草が足に当たる。

魔物のおかげで太陽が真上に昇る頃にはバルサーク城下町付近に着いた。

「ここから先は野性の魔物は禁止だ。」

とバルサーク兵に止められる。

「ありがとな。」

「ガルー。」

獣の魔物は去った。

「少年、魔物使いか?あれはベビーパンサーじゃないか。」

「違うよ、バルサーク村から村長の命令で城主に挨拶に来たんだ。」

「そうか、ならばバルサーク公認証を見せてみろ。」

通学・通勤の定期ぐらいの固い紙を兵士に見せる。

「うぬ、間違いない、さあ通って。この者を王の元へ案内するんだ。」

他の兵士に案内される、町は活気にあふれ建物の前の通りに市場が並ぶ。

 

バルサーク城、王の間で王座に座り目を瞑って考えている。

「国王、バルサーク村からの遣いです。」

兵士が報告の後、ブライアンを王の目の前に誘導する。

目を瞑ったまま、

「・・・牢に。」

耳を疑う。

「おい、ま、待ってください、国王。」

兵士たちに両脇を抱えられ、地下の牢屋に留置された。

「君もか。」

鉄格子を両手で持っているブライアンに話しかける。

「おじさんは悪い人?」

「いや。そうかもな・・・でもバルサークには迷惑かけたつもりはないけどな。」

小奇麗で牢屋には最近入ったばかりなのだろう。

「おじさんは商人だ。君にだけ教えてあげよう、商人と王に面会に来たものはみんな牢屋に入れられてる。」

「なんで?」

おじさんはブライアンの耳元で、

「誰かがバルサーク城の宝物庫に侵入し、魔封の鏡の在処を示す地図を盗んだらしい。」

その時牢屋が揺れる。

 

牢屋に入れられどれくらいかは分からなかったが転機が訪れる。

「なんだ噴火か?」

さっきの揺れで天井は崩落し、おじさんの姿はなかった。

崩落した天井の瓦礫を上手く登れば混乱に乗じて逃げれそうだ。

城内に出た時、人々が慌ただしく逃げる用意をしている。

「ついに魔王が復活するぞ。」

「北の城跡に黒い稲光が落ちたぞ。」

と城内に不安の声が飛び交う。

混乱に紛れて少女がバルサークの兵士に連れて行かれそうになっていた。

「来い、お前を売り飛ばしてやる。」

ブライアンは助けようと思わなかった、だが少女を拉致しようとする兵士と目が合う。

「貴様、何じろじろ見ている。」

兵士は少女の腕を離して兵士の剣を抜く。

その隙に少女は隠れる。

「待てよ、俺は牢屋に閉じ込められてたんだ。だから見逃してくれ。」

「いいだろう、貴様を代わりにバルサークの山賊に売り飛ばしてやろう。」

どうやら話が通じないようだ。

ブライアンは一目散に走る。

「ま、待て。」

兵士は装備が重くてブライアンには到底追いつけなかった、そのまま城を出て、町の来た道を戻るように逃げる

 

城下町にはいなかったスライムやももんじゃが暴れまわり空にはたくさんのキメラが浮遊している。

「一体どうなってんだ?」

キメラが背後から低空猛スピードで襲いかかる。

「わあ。」

誰かが体にタックルしてきた、そのおかげでキメラの攻撃を受けずに済んだ。

「痛てて、誰か知らないけどありがとう。」

助けてくれた人はさっき連れ去られそうになった少女であった。

「お前・・・さっきの。」

「助けてください。」

「俺も自分の事で手いっぱいだ。」

「先ほどバルサーク城の北の見張り台から黒い稲妻が見えました。」

少女の後ろからスライムが襲いかかる。

ブライアンは勢いをつけスライムにグーパンチをかました。

「あ、ありがとうございます。」

「お礼はいいからとりあえず走ろう。」

魔物は凶暴化している、黒い稲妻のせいなのか。たまに黒い雷や黒い縦の光など町民が口にしている。

城下町にそこらじゅうにいたバルサークの兵士はほとんどおらず、魔物の支配下になりつつある。

最初に会った門番の兵士もいなかった。

「ここからはさらに魔物が増えるぞ。覚悟は?」

「はい、出来ております。」

城下町の入り口にベビーパンサーがいる。

「お前は・・・助けてくれるのか?」

少女は魔物に警戒してブライアンの後ろに隠れる。

ベビーパンサーの赤い鬣のすぐ後ろに乗る。

「大丈夫なのですか?」

「選択肢はない。乗るか乗らないのか?」

少女も恐る恐るベビーパンサーに乗る。

ベビーパンサーは西のバルサーク山脈に向かって走り出すが2人乗っているので重量がかかりかなり遅い。

「頼む、振り切ってくれ。」

これは魔物頼みだ。

疾走するベビーパンサーの鬣を撫でる。

キメラはブライアンたちに狙いを定め、直下してくるがベビーパンサーがかわす。

「いいぞ。」

そのままバルサーク山脈に逃げ込んだ。

 

少しふもとで休憩をとる。

「国王がご乱心だったとは村長に報告しないと。大丈夫か?」

ベビーパンサーの鬣を撫でる、気持ちよさそうに寝ている。

「はい、そういえばまだ名乗っていませんでしたね、私はマギーです。」

「マギー・・・国王の娘の?」

「はい。」

撫でるのをやめるとベビーパンサーは起きた。

「・・・」

それからブライアンは少女とバルサーク村まで会話することはなかった。

 

ブライアン投獄からわずか後、王の間に一人の兵士が報告に、

「バルセル国王、魔王の城跡に黒いローブの魔法使いが・・・」

と言い残して兵士は力尽きた。

「おい・・・分かったぞ・・・至急我と共に城跡へ行く兵士を召集せよ。」

兵士が力尽きた後頭の中で怪しい商人のたくらみを推測し結論に至る。

国王自らバルサークの9割以上の兵力を率いて城跡に向かう。

 

前置きに記載。

 

ブライアンとマギーは気まずい雰囲気でバルサーク村に無事たどり着く。

「村長の家あそこだから。」

「ありがとうございます。」

ブライアンは指で家を差した後、ベビーパンサーと共に住処に戻る。

マギーは村長の家に入る。

「おう、客人かの。」

「お邪魔します、マギーと申します。」

「あの国王の一人娘か。」

村長は国王の娘と知っても驚かなかった。

「はい。」

「やはり国王の娘であって礼儀があるな。なぜ国王の娘がこんな辺境の地に?」

マギーはここまでのいきさつを話した。

 

「なるほど・・・」

「どうすればよいのでしょうか・・・」

「まずはブライアンに謝る事じゃな。」

村長は優しく言う。

「謝る?」

「ブライアンは王に投獄されたのだから父親の代わりに謝るべきだ。」

「そうですね・・・私はそんなことも知らずに。」

マギーは反省する。

 

マギーはブライアンの家を訪ねる。

隅にベビーパンサーが藁の布団で寝ている。

「お邪魔します。」

「なんだ?」

ようやく落ち着いたブライアンはまた機嫌を損ねる。

「父が冤罪でブライアンさんを投獄したことを深くお詫びに来ました。」

マギーは頭を下げる。

「・・・」

「本当にごめんなさい。」

頭を下げ続けたまま謝る。

「・・・いいよ。俺こそ悪かったな。本当のところ・・・何度も君を見放そうと思ったよ、でも出来なかった。」

ブライアンも自分の考えた罪悪感に耐え切れず本心を話す。

頭を上げて

「そうでしたか、村長が話があるそうです。」

「そうなのか、じゃあその間留守番していてくれ。」

 

ブライアンはベビーパンサーのおもりをマギーに頼み、訪ねる。

「村長、俺になにか用ですか?」

「相変わらず忍び足が上手い、家に入ったことすら気づかん。それに魔物を黙って連れて帰るとは。」

村長はすべてお見通しのようだ、感心した後ちくりと注意をする。

「魔物を黙って連れ帰ったのは悪いと思ってます、バルサーク城のような厄介は嫌ですよ。」

「はは、御見通しのようだな。」

村長は空笑いする。

「・・・今度は何ですか?」

「マギーから話は聞いたぞ、バルサーク山脈の北東に家がある。」

「そこに行けと?」

「うぬ、ブライアンおぬしの父が住んでいる。」

「え?俺は捨てられてたんじゃ・・・」

「とりあえず行けば道は見つかる。だが強制はせん。」

「ちょっと考えさせて。」

 

自分の住処に戻る。

マギーがベビーパンサーに水をあげている。

「ありがとう、マギー。」

「はい。・・・どうかされました?」

ブライアンの複雑な心境が顔に出る。

「そんなに腑に落ちない表情が出ていたか。」

「話したくなければいいんですよ。」

と言い残して静かにマギーは出て行く。

 

翌日ブライアンはベビーパンサーに乗って山脈の北東に向かう。

山脈の魔物は活発で凶暴になっていた。

バルサーク山脈北東を探検していると男がいる、男は山菜を収穫している最中だ。

男はこちらを振り向く、茂みに身をかがめていたが、

「いるのは分かっている。出て来い、傷つけたりしない。」

ベビーパンサーは男に向かって走って行く。

男はかわいがり、

「ベビー、ほらザオリクで生き返らしてやったぞ。」

男の後ろの木からキラーパンサーが出てくる。

ブライアンは驚きを隠せない。

パンサーの親子は野生に帰って行く。

「あ、あんた何者なんだ?」

男は悟ったような顔で、

「君と同じ宿命を背負うものだ。」

「まさか・・・親父なのか?」

少し間をおいて、

「・・・とりあえず家に来い。」

 

北東の父親の家に着く。

「ここが俺の家だ。」

「母さんは?」

「母さんは死んだよ・・・」

「そっか。実感湧かないな。」

思いだすように、

「ブライアンはそうかもな。」

「なんで死んだの?」

「病気だよ。しばらくはここでお前と母さんと三人で暮らしてたんだ、短い時間だった・・・」

「なんで俺を・・・」

急に悲しみがこみ上げる。

「村長が引き離したんだ。母が死に・・・俺はおかしくなったからな。」

「そっか、俺には分かんないな・・・」

「いずれ分かる時が来る。」

父は長細い箱から剣を出す。

片手剣のクレイモア型で刃は銀色に光る。

鍔は鳥が白い羽で羽ばたこうとしているデザインだ、柄は螺旋を描くように彫られている。

「すごい。」

としか言えない。

「そうだろ、代々受け継がれてきた我が家の宿命を示す剣、そしてこの剣に風化さしてはならない記憶も詰まっている。」

「はあ。」

この時は言っていることが分からなかった。

「ブライアン、我が息子に剣術を教える時がきたようだな。」

「待ってくれ、頭が追い付かない。」

村長が言っていた道が見つかるとはこういうことなのか。

「ほら、持ってみろ。」

父からもらった剣は子どものブライアンでも軽く持つことが出来た。

「俺ははやぶさの剣でいい、お前は神鳥の剣を使え。」

「うん。」

言われるがままとりあえず従う。

家を出て父がくちぶえを吹くとスライムたちが現れる。

「うわぁ・・・こんなにたくさん。」

スライムがわんさか出てくる。

「ぷるぷる。」

「ぷるぷる。」

ブライアンはスライムを斬り払う。

父はその姿を見ながら、

「剣に慣れるんだ。」

その一言だけを言い残して家に戻る。

ひたすらスライムを斬る。

 



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魔王の城跡

父と出会い、一か月になるだろうかスライムを飽きるほど斬った。

朝起きると。

「慣れたか?」

「うん、剣は慣れたからそろそろスライム以外を斬りたい。」

父はその言動に憤慨し突然頬を叩く。

「神鳥の剣は殺生の道具じゃない。」

「なんだよ。人に剣術教えておいて。」

ブライアンは怒って外でまたスライムを片っ端から斬る。

父は叱り方に後悔した。

 

その日の夕方、怒りが収まり父の家に戻ると置手紙と鈴が置いてある。

手紙にはこう書いてある、

『ブライアン、お前にはまだ遅かった・・・いや遅すぎたかもしれない。父親の俺がお前の面倒を母さんの分までみるべきだったのにまったく逆の事をしてしまった。あの呪いの雷が落ちた時すでにお前は勇者じゃないとだめだったんだ。だが勇者になるには神鳥の剣が必要だ、あの剣は勇者にだけしか使えない。お前が勇者を引き継いだ今俺はもうその剣を持ち上げることすら出来ないんだ。あとその鈴を鳴らせば勇者の魅力に惹かれた魔物を味方に出来る。ベビーパンサーがお前に懐いているのを見てすぐにその素質は充分あると見た。お前には俺と同じ平和な世界を見せてやりたい。これを読むころには俺は魔王の城跡の地下に向かってる。もし帰って来なかったら・・・そんなことは想像したくないがバルサーク村長に助言をもらえ。元勇者兼父親ライアン・ゴッドバードより。』

 

父が後悔していたことを知ると同時に、あの時父に怒ったブライアンも後悔をした。

 

山脈を南東に下山して、魔王の城跡に。

ライアンははやぶさの剣と魔法の盾を背負っていた。

「ここが魔王の城の地下か・・・」

地下からは強い暗黒のオーラが感じ取れる。

地下階段の入り口に暗黒の魔物が出ないように光のバリアを張る。

地下階段を下りると大きな空間に出る、どうやら神殿のようだ。

神殿を支える柱一本一本に松明が置かれており暗い地下神殿を照らす。

 

ズシン、ズシンと重い足音が聞こえてくる。

一つ目の赤いアトラスが両柱に平行して中心を歩いて向かってくる。

「アトラス・・・20年ぶりに戦うな。」

ライアンは緊張感を持ちつつも久々の強力な魔物にわくわくしている。

「デスカイザー様が復活される。それを邪魔しようとするのか?」

ドスが効いていて渋い声を出す、耳に響くがアトラスはこれでも小声で問いかけたようだ。

「ああ、復活させてたまるかよ。」

剣と盾を構え臨戦態勢になる。

「ウオオオ―――。」

アトラスは雄たけびを上げる。

声の大きさが尋常でなく地面が少し揺れ、耳を塞ぐ。

「スライムの次はアトラスってこの地域モンスターの力に落差ありすぎだろ。」

突然アトラスは巨大な棍棒を振り下ろす、大理石は割れ地響きが。

ライアンは振り下ろされた棍棒を避けてその棍棒を昇りあがり、顔を狙い一気に蹴りをつけにいく。

「喰らえ、超はやぶさ斬り。」

見事顔にヒットし、アトラスは両手で顔を抑えひざまづく。

アトラスに時間を許さず、斜めに倒れている柱を駆け上がり、

「留めだ、ギガブレイク。」

はやぶさの剣から幻影の光の刃がアトラスを呑みこむ。

「グ・・・」

アトラスは力尽きた。

 

地下神殿を進むと次にベリアルが立ちはだかる。

黄色いウロコに包まれた頑丈な体、大きさは先ほどのアトラスの半分もない。

だが両手で持つ巨大なフォーク型の槍と魔力はいかにも魔王の兵士だ。

「ベリー、お前がそこをどかなけりゃあ、さっきのアトラス見たいに地獄に送り返してやる。」

口調は若い時の血気盛んなライアンに戻っている。

「フハハ、お前ごときにやられる私ではない。」

ベリアルはメラゾーマを唱える。

左手の魔法の盾を構えながら全力で前から向かう。

「マホカンタ。」

メラゾーマを弾き返すがベリアルは耐性がある。

「今度はこっちの番だ、火炎斬り。」

はやぶさの剣は炎をまとい、ライアンは高くジャンプする。

「甘いぞ。」

ベリアルは槍で先制攻撃する。

「くっ。」

盾でガードするが飛ばされ床に叩きつけられる。

「死ね。」

一本の槍から三本の槍先がライアンを襲う、ライアンは倒れながらも盾で防御する。

「しぶとい人間だ。」

ライアンは立っている。

ベリアルはメラゾーマを唱えながら、

「ついにあきらめたか。」

大きな炎の玉がライアンを包み込む。

ベリアルは目を疑う。

「喰らえ、スーパーハイテンション、火炎斬り。」

炎の中からライアンが油断をさせて勢いよく飛びだす。

「ま、まさか、修羅の大陸で、ガアアアァァ。」

魔物の断末魔が響く。

 

地下神殿を進むと徐々に空間が狭くなる、松明の明かりも乏しくなっている。

いきなり炎が波のように襲ってくる、盾で防御する。

「ギャース。」

という鳴き声と共に炎が襲ってきた先から聞こえる。

「ドラゴン?いやダースドラゴンか。」

ドラゴンであることは分かったが何ドラゴンかは分からなかった。

至る所にあるドラゴンの吐いた炎は魔物のフレイムに変わる。

「畜生、暗黒のオーラが炎を魔物に変えているのか。」

ドラゴンを倒すべく迅速に進むと、アトラスとは比にならない大きさの巨体が。

鎖に繋がれた巨大なドラゴンが後ろの扉を守るようにこちらを向いて炎を吐く。

そして炎はまたフレイムに変わる、この負の螺旋状況はドラゴンを倒すしか打開策はない。

だが魔力と体力を温存したいため、ドラゴンの長い背中を一気に尾びれまで渡る。

ドラゴンはこちらに振り向き、もさかるかえんを吐く、吐く炎の風圧で計算通り扉が吹き飛んだ。

「よし、ありがとな。」

ドラゴンに皮肉なお礼を言ってさらに下へ続く階段に進む。

 

階段を抜けると薄暗い円形の闘技場みたいな場所に出る、妙に物静かだが溢れるばかりの闘志を感じる。

「アトラス、ベリアル、ダースドラゴンを倒した強者よ。」

一気に闘技場の松明が灯り、一人の人間いや人型の魔物が姿を現す。

「私の名前はデュラン。名はなんと申す?」

筋骨隆々で最初裸に見えたがブリーフを履いており、マントを羽織っていて右手には上下に刃がある両刃刀を持っている。

「ライアン・ゴッドバードだ。」

これほどの熱い闘志を持つ魔物は初めてだ。

「やっと会話が出来そうな魔物が現れた。」

「会話?会話など興味ない。」

デュランは吐き捨てるように言う。

「ただし私に勝てば教えてやろう。」

「その約束果たせよ。」

ライアンは勢いよく攻撃に出る、同じくデュランも迎え撃ちに。

火炎斬りを繰り出すが、デュランは上手く交わす。

「なにっ。」

デュランはライアンの脇腹の下からかまいたちを放つ。

ぎりぎり避けたと思ったが左腹が少しかすり、布の服が赤く染まる。

「油断したな?本気で来いライアン。」

「やるじゃねえか、一度そういう腕の奴と一戦交えてみたかったんだ。」

ライアンはやくそうを使い、万全の状態で挑む。

「ウオオー」

ライアンはテンションを上げる。

「無駄だ。」

いてつくはどうで状態を元に戻す。

「だったらバイキルトもスカラも使えないってわけか。」

デュランはバイキルトを唱える、防御で様子を伺っているライアンに突進する。

身体が大きい割に攻撃に隙がなく、防御力も高い。

魔法の盾が壊れるのも時間の問題であった。

ライアンは一発の攻撃に賭ける。

「ギガブレイク。」

放った瞬間腹に両刃が刺さっていた。

「カッ。」

血が口と腹部から大量に出る。

「ライアン・ゴッドバード・・・その名は我の心に一生刻もう。」

闘技場の松明は徐々に光を消し始める、明かりがなくなるたびに意識が遠のく。

ライアンの敗因はほとんどごり押しに頼り、腕が訛っていたことだった。

 



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旅路

 

バルサーク村からブライアンが北東の家に出発した後、マギーは村長の家に招かれる。

「村長、どうされました?」

「まあ、座りなさい。」

マギーは用意された向かい合う二つの椅子のうち片方の木の椅子に座る、そして向かいに村長が座る。

「マギー王女、あなたは父バルセル国王を探したいのじゃろ?」

いつもにこにこしているマギーの顔がけわしくなる。

「はい、父が城跡に出向きすぐにあの黒い稲妻を見ました。」

「気持ちは分かる、だがバルセル国王の務めは勇者の影武者と魔王封印を存続することじゃ。」

「知っております・・・ただ受け入れられなくて。」

村長は眉毛を八の字にして。

「そうか・・・じゃが父の使命を受け継がねばならない。」

村長は杖を渡してきた、杖先は四本の獣の指が赤い水晶を握っている。

「これはまどうしの杖じゃ。受け取るがよい。」

「しかし私は戦いの経験がございません。」

マギーは拒む。

「それでもやるしかないんじゃ、さあ。」

マギーは村長からまどうしの杖を受け取る。

 

村を出て周辺を歩き、魔物と初めてエンカウントする。

「ぷるぷる。」

突然現れたスライムにマギーは尻もちをつく。

それでも勇気をふりしぼって杖で何回も攻撃する。

スライムは力尽きた。

「やった。」

初めて倒した自分に強さを感じる、今迄兵士が守ってくれるのが当たり前であったので自分には力がないと思っていた。

マギーは父の為に強くなるためにどんどんエンカウントし経験値を積む。

ある時、戦闘中に小さな炎が右手が放てるようになる。

小さな炎によってスライムは燃え尽きた。

 

驚喜して村長に尋ねに行く。

「ほお。」

「これです。」

マギーは小さな炎を見せる。

「これはメラじゃな。マギー王女はやはりバルセル国王と同じく魔法使いが向いている。」

「メラ?」

「もっと経験値を積むのじゃな。」

それから二か月経験値を積む。

 

「メラ。」

スライムを燃やす。

戦闘に慣れた矢先、ももんじゃが急に襲いかかる。

「きゃ・・・」

尻もちをつく。

ももんじゃが飛びかかって来た時、ももんじゃの後ろから何者かが攻撃し助ける。

マギーは目を見開く。

ベビーパンサーに乗った傷だらけのブライアンであった。

ブライアンはそのまま意識を失いベビーパンサーの背中から落ちる。

 

目を開けるとそこは村長の家であった。

「どうやら目が覚めたようじゃな。」

「村長・・・」

起き上がるとマギーも村長の家にいて家事手伝いをしていた。

 

バルサーク村周辺で意識を失い、マギーに連れてこられたようだ。

充分回復した後、村長にマギーと共に正座させられ話を聞く。

「どうやら勇者を受け継いだようだな。」

「ど、どうして。」

勇者を受け継いだことを知っていることに驚いたが村長にはオーラが見えるのだろう。

 

「修羅の大陸は父から聞いたか?」

「いえ。」

村長はかつて父が修羅の大陸で修行したことを話す、その大陸にはこの世界で最も強い魔物や戦士たちが集まるらしい。

「俺にそこに行けと?」

「そうじゃ、でなければ魔王復活を望む者には勝てないじゃろう。」

少し沈黙して考え、

「分かりました、その大陸に行き力を付けてまいります。」

その言葉に触発されマギーも沈黙を破る。

「私もブライアンさんにお供したいです。」

最初兵士に連れ去られそうになった少女とは同じ人物に見えないくらい覚悟が顔に出ている。

村長もマギーらしからぬ突飛押しな発言に驚くが、

「そうじゃな、ブライアンは魔王復活阻止。マギーはその後の監視のために力をつけるべきかもしれんのう。」

こうして修羅の大陸を目指してマギーと共に冒険が始まる。

 

村長いわく最初に目指すは南の砂漠の大陸だ。

翌朝ブライアンとマギーはベビーパンサーに乗ると、村長が、

「バルサーク港や船着き場はもう船がないかもしれんぞ?」

「あ、そうか。」

頭を掻いて考えるブライアン。

「大丈夫です、私は秘密の舟を知っていますから。」

 

「そうか、まあなければ作ればよい。」

随分楽天的な村長。

「分かったよ村長。必ず強くなって帰ってくるから。」

と言ってベビーパンサーの尻を叩く、ベビーパンサーは東へ走り出す。

 

昼頃バルサーク村から一気に東へ山脈を越えて魔王の城跡に着く。

城跡は禍々しい黒いオーラを放っているが、光のバリアによって外と中を遮断しているようだ。

「行きましょう。」

「そうだな・・・」

南のバルサーク港へ行くがやはり船は全て大陸を出払っていた。

「どうやらここには何もないみたいだな。」

そこに一隻の船が港に入る。

 

神鳥の剣を構え、マギーはまどうしの杖を構える。

船から波止場に船長らしき人物が下りてくる。

「君たち一体何があったんだ?」

荒れ果てた港を見てただ事でないことに気づく船長。

「見ての通りさ。」

「そうか・・・」

「あの何か用があったんですか?」

こんな時でもどこぞの知らないよそ者にマギーは丁寧に質問する。

 

「実は商人を偽った者にふしぎなタンバリンを取られたがこれじゃあ引き返すしかないか。」

「なあ、俺たちも乗せてくれないか?」

「ああ、いいぞ。少年、運がいいな。」

目でマギーに合図する、何も余計なことを言うなと。

それに反して、マギーの正義心が働く。

「私たちが取ってきましょう。」

「え?」

ブライアンは顔を背ける。

「盗賊から取り返せるのか?」

「いえ、私はバルサーク王の娘マギーでして・・・」

マギーは説明した。

 

夕日が沈むころ

「・・・なるほど。では頼んでもよいのですか?」

「はい。」

船長は手のひらを返した態度で、

「ちょうど私たちは砂漠の大陸のゴルビ地方から来た傭兵でございます。」

ブライアンとマギーは船に案内され船室で寝る。

 

翌朝、朝日が昇る前マギーを中心にゴルビ首長国に雇われた傭兵が索敵陣形を編成する。

ブライアンは船長に王女を護衛する兵士と言ってしまったために編成に組み込まれる。

 

バルサーク城まで一人の傭兵と会話する。

「俺はこの大陸しか知らないんだけど、海の向こうには何があるんだ?」

「海の向こうには夢がある。」

傭兵は楽しそうに世界の話をする。

 

「夢?俺を馬鹿にしてるのか?」

ブライアンは眉間にしわを寄せる。

「ははっ、そう怒るな若い衛兵殿。」

「そういえばまだ名前聞いてなかったな。俺はブライアン・ゴッドバード。」

「ゴッドバード?」

どこかで聞いたことあるが思い出せない。

「俺はドーチェ副傭兵長。昨日君たちが話した船長がチェスター傭兵長だ。」

「ってことは、あんたナンバー2か。」

「そういうことだな。だから敬意を払ってくれよ。」

話しているとバルサーク城下町にたどり着く。

 

野生の魔物は軍隊を見て襲って来なかった。

「よーし、ここからが難所だ。残された姫様を出来るだけ守れ。」

とドーチェは声を上げ、士気を高める。

 

城下町を歩いていると、突然矢の雨が降る。

盗賊に成り下がったバルサークの元兵士たちが立ちはだかる。

「まさか、最初に人間と戦うとは・・・」

ドーチェは不本意であったが攻撃命令を下す。

「こちらです。」

マギーは残りの傭兵たちを裏道に誘導して安全な場所に案内する。

 

だが、キメラやももんじゃなど大量に城を包囲するようにしてたむろしている。

胸ぐらをつかみ、

「ブライアン衛兵、ふしぎなタンバリンを頼むぞ。」

城門に向かって傭兵たちはドーチェを先頭に城までの道を開けるように魔物を掃う。

「今だ。」

マギーの手を取り、城内へ走り込む。

内門を閉める時、最後に傭兵たちが魔物に呑み込まれるのを見る。

荒らされた町や城を見てマギーは悲壮感が出る。

「・・・マギー、宝物庫を案内してくれ。」

「はい。」

悲しんでなどいられない。

 

宝物庫に案内され、マギーは合言葉を口にすると扉が開く。

「父が宝物庫を開ける時よく言っていました。」

宝箱がたくさんある中、硝子ケースに星形の楽器がある。

「あれです。」

硝子を割りふしぎのタンバリンを手に入れた。

宝箱から白い煙が噴き出る、そして魔物に変わる。

蓋は大きな口になり鋭い牙のような刃のようなものが襲いかかる。

神鳥の剣に宝箱の魔物が噛みつく。

「メラ。」

まどうしの杖を振り、呪文を唱え、小さい炎が魔物を包む。

魔物は熱がり、剣に噛みつくのをやめ離れる。

「今のうちに逃げよう。」

 

急いで北の城門から出てバルサーク港に戻る。

「他の仲間たちは?」

「分からない。」

船長は少し間を置いて、

「・・・そうか、ふしぎなタンバリンは手に入ったのか?」

ふしぎなタンバリンを渡すと、

「ありがとう、今日は休むが良い。」

傭兵たちの間で捜索活動をすべきかどうか会合が行われた。

船尾で2人で、

「俺たちの父親はまだ生きていると思うか?」

「はい、私はそう信じてこれから旅をしていきます。」

結果は多数決で決められ、捜索はしないことになったが数日バルサーク港で待つことに結論が至る。

翌日バルサーク城から帰還した傭兵たちが港に。

ドーチェは心地よい感じで、

「船長、これで全員いる。」

「分かった、出航しよう。」

南の砂漠の大陸に向けて船は帆をはる。

 



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