魔法少女と偽りのヒーロー (カオスロイドR)
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転生編
第1話 第二の人生の幕開け


初めまして!至らぬ点もありますがどうか末永くよろしくお願いします。


俺の名は佐藤

 

もうすぐ三十代を迎えようとするしがない特撮好きの社会人だ。

 

子供の頃、両親と妹を交通事故で亡くし、親戚中をタライまわしにされて五年前に逃げるように上京して会社に入ったんだけど

 

これがいわゆるブラック企業という奴でサービス残業は当然

 

休日出勤は当たり前のとんでもない会社だったんだ。

 

そして今日も俺はいつも通りサービス残業を終え、ボロアパートの部屋に帰って来て扉を開けた。

 

「ただいまって誰もないけど。さて明日も六時起きか早く寝よ・・・・」

 

「あ、おかえりなさいなのです」

 

誰もいないはずの部屋で居る筈のない女の子が当たり前のように挨拶をする

 

自分の部屋のベットの上で女の子がポテチ食いながら俺の漫画を読みながらゴロゴロしていた。

 

「・・・・もしもし、警察ですか。知らない家出少女が我が家に不法侵入をしてるんですが・・・」

 

「ちょ!ちょ!ちょ!ちょっと待つです!家出少女なんかじゃないです」

 

スマホを取り出して警察に電話しようとすると慌てて飛びついて来た家出少女(仮)にスマホを取られて電話を切られた。

 

「で、君誰?駄目だよ勝手に人の部屋に入たら、あと布団の上でお菓子食べちゃ駄目でしょ。ほらお菓子のカスが布団に落ちちゃってるじゃないか。これを使って掃除して」

 

粘着式クリーナーを娘に渡す。

 

「ちょ!待つですよ。私女神なのですよ!」

 

「は・や・く・し・ろ!」

 

こっちとら仕事で疲れてる上に早く寝なくちゃいけないのにベットの上をお菓子まみれにされてイライラしてるんだよ

 

「うう・・・」

 

俺の気迫の圧されたの女神(仮)は渋々、布団の上を掃除し始めた。

 

しばらくして布団の上のお菓子のカスがと乗り逃れ綺麗になる。

 

「うう・・・女神の私にこんな雑用をさせるなんてとんでもない人間ですなのです」

 

「で、結局君ってなんなの?なんか女神がどうたらって言ってたけど?」

 

多少イライラは収まり冷静さを取り戻して腕組みしながらベットに座る

 

くそう、おれの貴重な睡眠時間が

 

「申し遅れました私の名は女神リュネって言います。あなた、あと一日で死にます!」

 

「・・・・はあ?」

 

突然何言ってんだこの女神(仮)は?最近暑かった所為なのか?

 

「ああ!私の事疑ってますね。証拠を見せます。」

 

疑いの眼差しに気づいたのか、プスっと頬を膨らませたリュネがカメラのフラッシュのように身体が光る。

 

「どうですか?えっへん」

 

「・・・・・」

 

驚きのあまり声が出なかった。なぜなら彼女の背中に対の十枚の白い羽が生えていたのだ。

 

「おおすげえ、これ本物?作りもんじゃなくて?」

 

羽を触ってみる。羽は暖かく作り物だとは到底思えない。

 

「な、な、な、なにするですか!」

 

「ぐはっ!」

 

真っ赤な顔をしたリュネの拳が俺の顔にクリーンヒットして吹っ飛んだ。

 

「あいててて、分かった取りあえず君が女神だって信じるよ。所でなんであと一日で死ぬ事を教えに来てくれたの?」

 

死神ならともかく普通女神が人の寿命を知らせるなんて聞いたことがない

 

「え、えっと・・・言わなきゃダメ・・・ですよね?」

 

「勿論」

 

なんで目線が泳いでるんだ?

 

「・・・・・実は人間の寿命が書かれてある本を悪戯してあなたの寿命を減らしちゃいました。テヘペロ☆」

 

「よろしいならば戦争だ」

 

俺は指をポキポキ鳴らしながら近づく

 

なんで悪戯で俺の寿命が削られにゃならん

 

こんな悲惨な人生だったけど納得できるか

 

「ま、待って!だから死なないようにあなたを並行世界で転生しようと思って私はここに来たのですよ!」

 

「並行世界で転生?」

 

「はい、物語が始まる9年前の魔法少女まどか☆マギカの世界なのです」

 

「おい待てや、なんでよりによって年端もいかない少女たちが絶望のどん底に落とされる世界なんだ?」

 

一度だけ会社の同僚で友人の鈴木君がこのまどか☆マギカのDVD-BOXを持ってきて全話を朝まで鈴木君と酒を飲みながらフルマラソンで視聴したことがある。

 

このアニメ絵柄は可愛いけど中身はインキュベーターという名の見た目は可愛いが中身はクサレ外道の淫獣が願いという希望を餌に少女たちを不幸と絶望に

突き落とす夢も希望もねえアニメだったな思ったのが俺の感想

 

鈴木君も酒の所為か怒り狂ってインキュベーターと手を怪我した男の子と緑髪の女の子に文句を言いまくっていたのを覚えている。

 

ちなみにその鈴木君のお気に入りは美樹さやかという青髪の女の子らしい

 

 

思い出はこの辺にして女神の話に戻そう。

 

「今転生できる世界はそこしかないですよ」

 

くっ仕方ないせめて巻き込まれても生き延びれるように頑張ろう

 

俺のしぶとさ舐めんなよ!

 

「で、具体的に転生の仕方ってどうやるの?」

 

「それはこの神の駒(ゴッド・ピース)を使うのですよ」

 

リュネが高級そうな小さな木箱を取り出し蓋を開けるとクリスタルのチェスの駒が並んでいた。

 

「おい、それってハイスクールD×Dに出てくる悪魔の駒(イーヴィル・ピース)のパク『神の駒(ゴッド・ピース)なのです!これは使っても人間のままなので他種族を悪魔に変えるあんな物騒な物と一緒にしないで欲しいのです!』お、おう」

 

深く突っ込むのはやめておこう、神様の世界にも事情があるんだ。

うん触らぬなんとやらに祟りなしだ

 

ハイスクールD×Dとはライトノベルの一種で鈴木君が特撮好きの俺に勧めてくれた本だ。

これが面白く1~3巻を借りて読んだあと本屋に直行して発売中の最新刊まで一気に買い揃えていた。後悔はしていない。

 

「じゃあさっそくこの王の駒(キング・ピース)を胸に軽く付けるです。そうすると5分間の間、今の力や魔力が十倍から百倍に強化されるから鍛えれば鍛えるほど強くなれるですよ」

 

つまり5の力を50や500に、10の力を100や1000にできるのか。

 

うん、これは悪魔の駒(イーヴィル・ピース)のパクリだ。

 

「えーなんで(キング)兵士(ボーン)がいいんだけど?」

 

(キング)って原作だと使用禁止で悪役が使ってるからいい印象ないんだけどな、どうせなら原作主人公と一緒の兵士(ボーン)がよかったな。

 

神の駒(ゴッド・ピース)は、最初に使うのは(キング)じゃないと使えないのです。一番いい駒なんだからゼータク言うな」

 

「分かったよ」

 

リュネのいたずらで寿命を縮められた事や転生の事は納得していないがとりあえずまだ死にたくないので言われた通りに自分の胸に軽く付ける。

 

すると駒が光だし、俺の身体に吸い込まれていった。

 

なんとなく分かっていたけどちょっと気持ち悪いな。

 

「これで完了なのです。あと任意の言葉を言うと発動できるように登録して下さい」

 

「それってなんでもいいの?」

 

「いいですけど卑猥な言葉や暴言はもちろん、日常生活で使う言葉はやめた方がいいですよ。言う度に発動して生活できなくなります。」

 

分かった『体内』と『キング』繋がりでこれにしよう

 

「キングス●ーンフラッシュ!」

 

「ちょ、キン●ストーンじゃなくて王の駒(キング・ピース)ですよ!いや確かに日常生活じゃ使わない言葉だけど!」

 

力があふれ出す感じがして試しに机を片手で持ち上げてみると羽根のように持ち上がった。

 

あと、任意の言葉はリュネにさんざん文句言われたのでチェス用語の昇格を意味する「プロモーション」と合わせて「プロモーションキング」に変えておきました

 

気にいってたんだけどな・・・

 

「すごいな、これ」

 

「堪能しましたか?あとこれは私からのお詫びであなたが望む力や武器を1つだけプレゼントしますアニメや特撮の武器や力でも可能ですよ」

 

本当に?なんでもいいの?

 

「はい、でも1つだけですから慎重に考えてください。あとあまり無茶のは勘弁してくださいね」

 

腕組しながら考えるけど神の駒(ゴッド・ピース)を貰った時点であれしか思い浮かばないわな

 

「じゃあハイスクールD×Dの赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)をお願いします」

 

「・・・・・・悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を知ってて兵士(ボーン)がいいって言ってた時点でなんとなく分かってましたよ。いいですその願い叶えます」

 

赤龍帝の籠手(ブーステッドギア)禁手(バランス・ブレイカー)に至れなくても自身や他者の力を倍加させる能力もいいし一般人の俺でも魔女との戦いになんとかなるな

 

「ところでハーレム王でも目指すんですか?」

 

「目指さねえよ、そんな面倒なもん」

 

赤龍帝の籠手(ブーステッドギア)の持ち主の主人公はハーレムを夢見てるが俺は一人が気楽でぼっちだったのにそんなの目指すわけねえだろ。

 

「まあいいです好きにしてください。転生させる都合上、(キング)の駒を体に馴染ませる為に転生した貴方の年齢は五才の鹿目まどかの時代に送り、同じ五才の頃からで九年後に物語が始まります。」

 

九年もあれば使いこなす特訓の時間はたぶんだけどそれだけあれば十分だろう

 

「それとおまけでハイスクールD×Dの兵藤一誠のオリジナル技を使えるようにしておくですよ」

 

「おい、それってまさか・・・」

 

いやな汗が背中に流れる。

 

「うふふ、変な事に使ったら駄目ですよ~」

 

これで確信した。洋服崩壊(ドレスブレイク)乳翻訳機(パイリンガル)だ。

 

俺が悪魔の駒(イーヴィル・ピース)のパクリだって言った仕返しか?

 

・・・・まあ、どちらも使いようによっては使える技だし、まあいいか

貰えるもんは貰っておこう

 

「あと、転生したあとは名前を変えてほしいのです。」

 

「なんで?このままでいいじゃない?」

 

「ダ、ダメなのです。いいですか転生と言う物は・・・・」

 

「・・・・もしかして、本名だと転生させて悪戯した事がバレるからか?」

 

ギクウウウウ

 

図星かよ。反応が分かりやすいな

 

この女神がインキュベーターと同じ俺を騙してるんじゃないかと思ったがそれはないな確信した。

だってこんな分かりやすく素直な女神じゃ無理だわ。

 

「と、とにかく今の本名は駄目、変えるのです!」

 

「分かったよ、じゃあ・・・」

 

自分の部屋を見まわしながら考えていると昔母親に買ってくれて上京した時に荷物に紛れ込んでたのでそのまま飾っていた

 

赤いドラゴンを宿し最後まで人を守る決意を貫き通した仮面ライダー龍騎とすべての人を守りたいという想いで自分のすべてと引き換えに世界と親友を救いその運命と戦い続ける決意した仮面ライダーブレイドの人形が目に留まる。

 

「(お名前、お借りしますね)」

 

リュカの方に振り向いて

 

棚から二体の人形を取り、握りしめてリュカの方に振り向く

 

「城戸・・・・一真・・・」

 

「え?」

 

「城戸一真、それが俺の新しい名前だ」

 

「分かりました城戸一真。あなたの未来に幸があらん事を」

 

笑顔でリュネが杖を振るうと周りの景色が一変し世界ひび割れが入る

 

 

 

「これで転生できたのか?」

 

景色は変わっていないが先ほどより物が大きくなったていた。

 

ふと、鏡を見るとヒーローの人形を握りしめた五歳くらいの黒髪の子供が映っていた。

 

間違いない。まだ父さんと母さんが生きていてなんの苦労も知らない幸せだった幼い頃の俺の顔だ・・・

 

『お前が城戸一真か?』

 

うお!左に丸い緑の光の模様が出てきて外道司令とマじでダんでぃなオじさまの声が!

 

すごい、アニメと同じ声だ。

 

『・・・一応、あの神がそういう風に生みだしたからな』

 

おお、あの幼女神の奴、ちゃんと分かってるな。今度アメちゃんを奢ってやろう

 

『ハッハッハお前という奴は、一応奴は女神なんだぞ、まあそんな事よりこれからの事考えてるんだろうな?」

 

「とりあえず、暁美ほむらが時間を遡って見滝原に来るまでの9年間みっちり修行して(キング)の駒に耐えれる体を作って魔女と戦える力を付けたい」

 

『まあ妥当だな。だがその口ぶりからだとまだ他にあるのだろう?』

 

「ああ、俺のワガママだけど彼女たちが魔法少女になるのを止めてあんな悲しくて報われない過酷な運命を防ぎたい。」

 

『そうか・・・だが難しいかもしれんぞ。運命の強制力という物はそれほど簡単な物じゃない』

 

やっぱり無理なのか。でも

 

『だがやらないよりはいい、できるだけ協力はしてやろう。それがお前の望みならな』

 

「ドライグ、ありがとう」

 

『さあ、話は終わりだ。さっそく修行を始めるぞ相棒!』

 

「おう!」

 

こうして俺の第二の人生の幕が開いたのだった。

 




ここまでお付き合いありがとうございました。
続きはルビ振りとチェックが終わったら追加していきます。


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第2話 その名は城戸一真

「ふう、だいぶ体が鍛えられてきたかな?」

 

日曜の朝、ジョギングから帰ってきて一息付きながら家のポストに入ってる手紙や広告を取りながら家に入る。

 

前世の頃はめんどくさがり屋で最初の頃はジョギングですら辛かったが人いう者は慣れるもので三か月もすれば徐々に体が慣れていって辛くなくなった。

 

「母さん、ただいま」

 

「おかえり、かず君。ご飯出来てるから先に手を洗ってきなさい」

 

転生してから二年すっかりこの生活にも慣れた俺は洗い物を終わらせてタオルで手を拭いている城戸一真の母親に挨拶する。

 

前世で早くに親を亡くした俺がいきなり見ず知らずの女性を母親として接するのにいささかぎこちなかったが2年もすればこちらも慣れ普通に接している。

 

家族か・・・やっぱりいいもんだな・・・

 

 

俺の名前は城戸一真

 

前世の記憶を持っていて今日のようにいざって時に備えて体を鍛えている7歳児だ。

 

家族構成は、敏腕ジャーナリストでギョーザ作りが得意な父親『城戸真司』

 

旧姓霧島で今は専業主婦をやっている普段は優しいが怒らせると怖い母親『城戸美穂』の三人で風見野市のマンションで暮らしている小学生だ。

 

うん、言いたい事は分かるよ。

 

俺も最初は驚いた。

 

だって両親がどうみても仮面ライダー龍騎に出てきたあの龍騎とファムの二人と同じ名前で顔までそっくりだったからね。

 

夫婦仲もいわゆるラブラブでどちらかというと母さんの方から父さんに外だろうが家の中だろうが遠慮なくイチャついていて父さんもまんざらではない様子

 

母さんの話だと俺がいない時は父さんからイチャついてる時もあるらしい。

 

知らんがな・・・

 

せめて息子の前ではイチャつかないで下さいと言いたいが劇場版龍騎の二人を思い出すと文句言えないのもまた事実。

 

そういえば親は俺が転生者って知ってるのだろうか・・・・

 

もし知らずに知られたら拒絶されるかもしれない

 

そうなったら・・・

 

怖い・・・

 

それとも打ち明けるべきなんだろうか・・・

 

どうしたものか・・・・

 

 

 

とりあえず手紙の確認しよう。

 

「ん?俺宛の封筒?あとこれは・・・・」

 

母さんの入れてくれた冷たいお茶を飲み、朝食を食べ終える

 

手紙や広告を分けながら自分の名を書かれた封筒を見つけてそれとある広告を持って部屋に戻り、俺宛の封筒から中身の紙を取り出した。

 

「・・・ドライグ、ちょっといいか?」

 

『どうした相棒?』

 

小声で話しかけると俺の左手に宝玉が出る、

 

今の声はドライグ。

 

ライトノベル『ハイスクールD×D』に出てくる神殺しの能力を持つ神滅具(ロンギヌス)の一つで赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)というの籠手に宿る赤い龍であり俺を転生者に仕立てた幼女神リュネからもらった相棒だ。

 

「これを見てみろよ」

 

『・・・ほう、あの女神もついに悪戯がバレてしまったか』

 

『転生者城戸祐介様、この度は神である我が娘リュネが大変なご迷惑をお掛けして誠に申し訳ございませんでした。』

 

手紙の冒頭にはそう書かれていた。

 

あの女神、神様の娘だったのか

 

『あの子は神としてまだまだ未熟な為本来転生させる力などありません』

 

え?でもこうして転生してるよな?

 

『その為、娘は本来なら絶対に転生に使用してはならないご禁制の神の駒(ゴッド・ピース)で貴殿を転生させてしまいました。あの駒で力が跳ね上がり邪な考えや世界に害悪を撒き散らす者が存在していたから禁止にしていたのです。』

 

おいおい、あのパクリ駒。ご禁制の品物だったんかい!ちょっと待て!こういう流れって神の使いが現れて「神の名に置いて君を始末する」とか「忌むべき存在に死を」とか命狙われるパターンじゃねえのか!

 

『あ、勘違いしないでね確かに禁止された品物使った転生だけど、だからって神の使いが現れて「神の名に置いて君を始末する」とか「忌むべき存在に死を」とか命狙われるパターンなんて漫画じゃないんだから絶対に神に誓ってないからね。』

 

すげえ神様、俺の考え読んでるよ、てか神様はあなたでしょうが!自分に誓ってどうするんだよ。

 

でもまあここまで言ってくれるなら信じてみよう。

 

『だが私は神だ。たとえ娘であろうと禁忌を犯した者には重い罰を与えた』

 

リュネ・・・・いくら悪戯で俺の寿命を削ってしまったけど責任を感じて禁忌まで犯して俺を転生させてくれたのになんだか可哀想だな・・・

 

『お尻百叩きと一週間おやつ抜きという重い罰を』

 

軽っ!俺の寿命と禁忌を犯した罰にしちゃ軽っ!俺の寿命って百叩きとおやつ抜きと同価値なの!心配して損した。

 

色々文句言いたいが気を取り直して続きは・・・

 

『さて本題なのだが私も君に能力を一つ与えようと思いこうして手紙を書きました、是非この機会をうまく使って欲しい』

 

能力をもう一つ増やせるのか、これは助かるな。

 

「手紙読んでいただいたようですね?」

 

「誰だ!」

 

咄嗟に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発動して構える。

 

「驚かせてすみません、初めまして神から使わされたミカエルという者です」

 

俺の目の前にハイスクールD×Dのミカエル様が優しい笑みを浮かべながらながら立っていた。

 

驚きのあまり声を出せずにいると

 

「ふふふ私の姿に驚いたようですね、このハイスクールD×Dのミカエルの姿は君に認識しやすいよう仮の姿ですよ。本来我々は概念の存在で実体が存在しないのです。なので人が認識しやすいように聖書や絵に出てくる自分の姿を借りて現れるのです。」

 

なるほどな神様や天使の姿なんて誰も見たことないもんな

 

という事はリュネの姿も仮の姿だったのかな?

 

「納得していただけましたか?では本題に移りましょう」

 

「あ、はい手紙読ました。能力を一ついただけるのですよね」

 

「ええ、本来なら転生に与える能力は一人一つまでなのですが今回は愛娘のリュネ様がご迷惑をお掛けしたこともあり、我が主も大変心を痛めており

なにか形に残る謝罪ができればとの事で特例としてもう一つお与えになる事になりました。」

 

神様も神様で俺の事気にしてくれてるのか。

 

「神様とリュネに伝えてもらえませんか?確かに最初は理不尽さを感じました。でも今はこの生活にも慣れ沢山の友人もでき楽しくやっているのでもう気にしないで下さいと」

 

「・・・・」

 

あれ俺なんか変な事言ったかな・・・・?

 

「お優しいのですねあなたは。本来なら罵倒の一つは行っても構わないのに。」

 

そうですか?隠すためとはいえ黙ってればよかったのにリュネも責任を感じて俺を転生してくれたんですから怒る理由はないのに?

 

「必ずお伝えしましょう。本来ならこちらの不手際なので怒鳴り散らしても仕方ない事なのに・・・あなたような方が神の駒(ゴッド・ピース)の転生者でよかった。

さてどのような能力がいいですか?今回は多少の無茶も聞き入れますよ。」

 

無茶は聞き入れてくれる。だったらどうしても必要な事なので遠慮なく無茶な願いを言おう。

 

「ではウルトラマンのウルトラ戦士の能力全てでお願いできますか?どうしても必要なんです。」

 

やっぱり駄目か?

 

「分かりました。今のあなたなら大丈夫でしょう。」

 

「よかった・・・・」

 

「ですが、ウルトラ戦士の能力についてはいきなり全部使えるとあなたの身体に負担が掛かるので強力な技にはリミッターを掛けさせてもらいます。

あなたが強くなりしだいRPGでレベルが上がり呪文をおぼえるように随時リミッターがカットされていく仕様になります。」

 

「分かりました。」

 

さすがにいきなりコスモミラクル光線みたいな強力技は使えないか。まあ強くなっていけばそのうち使えるだろう。

 

「いきますよ、城戸一真さん。」

 

ミカエルさんの光るオーラを纏った右人差し指と中指が俺のおでこに付けられると指から俺のおでこにオーラが伝わり俺の全身を包み込んだ。

 

やがて俺の纏ったオーラは胸の中心に集まり静かに消える。

 

「これで完了です。どうですか?ドライグ何か変わった事はありますか?」

 

『ああ、今は俺が抑え込んでいるがとてつもない力が相棒の中で溢れている、危険だが俺が相棒の体に馴染むように調整しておくから心配はない』

 

ミカエルさんの問いかけにドライグが答える。

 

そうだよな考えてみたら人間がウルトラ戦士の全能力なんて本来なら危険な行為だよな。

 

ドライグがいてくれて助かった。

 

「そうですか、ではわたしはこれで失礼します、あなた方の未来に幸があらんことを」

 

「ありがとうございますミカエルさん。神様にもありがとうございましたと伝えてください」

 

俺の言葉を聞き、微笑んだミカエルさんの体が一瞬の閃光に包まれるとその場から消えた。

 

これである程度の準備は整った。



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オリキャラとオリ設定紹介

今更ながら設定資料のような物を作ってみました。
新しい設定が増えたら追加していきます(本編を優先したいので遅くなるかもしれませんが・・・)


城戸一真

 

リュネに導かれて転生した青年

 

外見は黒目で黒髪の短髪

 

前世の本名は佐藤

 

幼少時に両親を事故で亡くし親戚中をタライ回しにされた過去を持つ

 

その為、家族と言う物に人一倍に執着を持っている。

 

性格は前世の頃から普段は絶対に揉め事に関わりたく無いと口ではよく言っているが困っている人を見るとほっておけずいつのまにか揉め事の中心にいて損をしている典型的なお人好し

 

のんびり屋と鈍感な面もあるが一度しょい込んだ事はキッチリやり抜く所がある。

 

その性格が災いしてブラック企業に就職してしまった。

 

転生する時体内に埋め込まれた王の駒と赤龍帝の籠手を使いこなせるように修行する為、原作開始前の九年前時間軸から五歳で転生人生をスタートした(つまりまどか達と同い年)

 

後に神様から全ウルトラマンの能力を授かる

 

まどか☆マギカは親友の鈴木君と一回見ただけなのであまり詳しくなく断片的な事しか覚えていない。

 

 

 

 

 

 

リュネ

 

神様の娘で少し抜けている所はあるが女神としての力は本物

 

だが一真からは外見から幼女神と呼ばれている

 

悪戯で城戸一真の寿命を1日に削ってしまいそれ隠蔽するために神の駒(ゴッド・ピース)を使って佐藤(後の城戸一真)ををまどか☆マギカの世界に転生させる。

 

外見は艦隊これくしょんの電

 

 

 

 

神の駒(ゴッド・ピース)

 

ぶっちゃけ悪魔の駒(イーヴィル・ピース)のコピー品・・・

 

木の箱に入っており、色は透明なクリスタル

 

最初の使用時は必ず王の駒(キング・ピース)から使用しないと使えないきまりがある。

 

人を転生させる機能を持ち、神様が人を転生させる為におまけ感覚で駒によってそれぞれの能力を一時的に大幅に上げる機能も備わっていたが転生先の世界でこれを悪用して

 

一般人を無理やり転生させ、能力を与えて悪事を働かせる転生者達が続出

 

その為、これを重く見た神は神の駒(ゴッド・ピース)を禁製品として封印していたのだが・・・・・

 

 

 

王の駒(キング・ピース)

 

神の駒(ゴッド・ピース)の一つで王を司る駒

 

特性はすべての能力(身体能力や魔力など)を強化する機能を持っている。

 

しかし転生者自身の身体を考慮して能力5分間だけしか使えない。

 

続けて使う事はできない事はないが体への負担がかなり激しいため安全に使用する為には三時間のインターバルが必要である

 

またこの駒だけには開発段階で発生したバグの影響で制作者の神も気づかなかった色々な隠し機能が生まれたらしいが今現在は調査中・・・

 

 

 



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小学生編
第3話 教会の少女


ついに原作キャラ登場。性格に違和感を感じたら迷わずブラウザバックして下さい。



「たまに道を変えるのも悪くないな」

 

ミカエルさんからウルトラ戦士達の能力を特典で貰ってから数日後

 

体力づくりの為に今日も基礎訓練の一環であるジョギングをしていたが何となくコースを変えて遠回りしながら走っていた。

 

いつもと違う道を走ると駄菓子屋、大きな犬、猫の家族などいつもと違う物が見え疲れた体に癒しを与えてくれる。

 

そんな俺の目の前に目の前に大きな教会が建っているのが見えた。

 

「この教会ってもしかして・・・・」

 

俺は教会の入り口まで着いて見上げると目の前に大きな教会がある。

 

ここは風見野市、そして大きな教会。

 

俺の前世の記憶が確かなら彼女が居る筈だ

 

「ちょっとだけ・・・」

 

顔だけ見たらチラっと帰るつもりでそっと教会の庭を見てみると

 

「ん?誰だお前?」

 

おそらくこれから遊びに行くつもりで仲良く妹さんと手をつなぐ後の魔法少女である佐倉杏子の姿があった。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

顔を見たらすぐ帰るつもりだったんだけど残念見つかってしまう。

 

原作が始まる前からあまり原作介入するのは得策でないと判断して原作キャラとの出会いはできるだけ避けていたんだけどマズったああああああああ!

 

露骨に警戒心を出し敵意を向ける佐倉杏子

 

妹さんも怖がって佐倉杏子の背に隠れてるし

 

そうだよね、いきなり見知らぬ子が家の庭を覗いてたらそりゃ警戒するわな

 

「初めまして城戸一真です」

 

本当は知ってるけど挨拶は大事なので知らない振りして自己紹介しておこう

 

「佐倉杏子だ」

 

「さ、佐倉モモです」

 

「・・・・私たちのこと知らないのか?」

 

「何が?」

 

「・・・・うちの親父の事だ。うちの親父は近所からタチの悪い新興宗教だって悪口言われてるんだぞ」

 

「お姉ちゃん、お父さんを悪く言わないで~」

 

怒鳴る杏子ちゃんが俺の胸倉をつかみ上げ涙目でモモちゃんが杏子ちゃんの反対の袖を引っ張る。

 

二人のその顔は辛そうに見える。

 

杏子ちゃんのお父さんは牧師をやっているが教会の教えとは別に新しい時代には新しい教えが必要であると考えて教会の教えとは別にごく当たり前の事を説きだしていた。

 

しかしその事が世間からはただの怪しい新興宗教としか認識されずに信者を失い、さらに教会を破門されてしまった。

 

それからというもの誰も話を聞いてもらえずに酷い時にはバケツ一杯の水を掛けられたそうだ。

 

彼女たちが見ず知らずの俺を警戒するのも仕方ない

 

だから俺はこう返事をしよう。

 

たとえ偽善と思われても・・・

 

「・・・・・だから何?それで友達になれない事と関係ないよ、それに俺、ここの神父さんの話を聞いた事あるけど悪い事言ってるって思ってない」

 

「「!?」」

 

ここに来る前の事、あれはいつぞやの下校中だったか、帰り道の公園で神父の恰好した男性が必死に説教をしているのを見かけた。

 

聞いていて思ったが別に変な事言ってない。ただ自然でいい事言ってるなと感じるだけだった。

 

ただ誰も話を聞かず素通りしているだけだったを覚えている。

 

それが杏子ちゃんのお父さんだったのかとは近所でヒソヒソ話しているおばさん連中の会話から知った。

 

「信じてもらえないならそれでも構わない。でも一人くらいは仲間がいると知って欲しい」

 

「信じられるか!」

 

ここまで子供の彼女たちの心を踏み躙った近所や世間に怒りを覚える。

 

それだけ彼女たちは辛い日々を送ってきたんだ。

 

「・・・・お姉ちゃん、私・・・このお兄ちゃんの事信じたいよ・・・・」

 

「モモ、お前何言って!」

 

「だってこのお兄ちゃん、他の人みたいにウソ言ってるような気がしないもん・・・・ねえ、信じてみようよ」

 

「・・・・もしモモ裏切ったら私がアンタを殴り殺す」

 

「ああ、その時は俺はどうなろうと構わない、好きにしてくれ」

 

「・・・・ほ、ほらよろしくな・・・」

 

「じゃあ改めてよろしくね、杏子ちゃん、モモちゃん」

 

視線を逸らし照れながら杏子ちゃんが手を差し出すのでその手を強く握りしめる。

 

この子達は絶対に守り抜く。絶望なんかに沈ませたりしないと神様じゃなく俺自身の心に誓って

 

「よろしく、一真お兄ちゃん」

 

モモちゃんは、警戒心を解いてくれたのか先ほどみたいにオドオドせずに笑顔で返してくる。

 

いい子だな。どうかモノクル付けた同じ名前の子みたいにならずこのまま素直に育ってくれよ。

 

「お、おまえ、いきなり杏子ちゃんとか言うな!」

 

顔を真っ赤にして怒る杏子ちゃんが手を振り解く。

 

流石に馴れ馴れしかったかな・・・・

 

「じゃあ佐倉さん?」

 

「さん付けもやめろ、なんか余所余所しくてムズ痒いし妹と一緒の時ややこしい!」

 

「杏子」

 

「呼び捨てすんな!」

 

「あんこ」

 

「ぶっ飛ばすぞテメエ!」

 

「杏子ちゃん」

 

「よし、それでいいんだ。そんじゃあ遊びに行くぞ!」

 

「うん」

 

杏子ちゃんって子供の頃から男勝りな子だったんだね。

 

「・・・・・・ん?」

 

「・・・・クスクス」

 

小首をかしげる姉を見て嬉しそうに笑うモモちゃん

 

警戒されてたけど警戒溶けたと思ったらすぐに腕を掴まれて日が暮れるまでモモちゃんと一日中遊びまくり仲良くなって、三人そろって門限破ってしまってそれぞれの母親に怒られたけど楽しかったからまあいいか

 

 

 

破門され生活が苦しくなったが杏子ちゃんとの仲は変わらず進級して小学三年生になりクラスも同じになった。

 

三年生になっても変わらず一緒に遊んでいたが父親の件でだんだん杏子ちゃんはクラスメイトからいじめられるようになった。

 

いつもは俺が割って入り杏子ちゃんを庇っていた

 

いじめっ子達も俺も一緒に殴ろうとするが

 

ギロッ!

 

俺が睨みを聞かせ殺気を放つといじめっ子はビクッと震え逃げて行く

 

だいたいいつもはこれで済んでいた。

 

俺と杏子ちゃんの仲を冷やかす連中もこれで黙らせた。

 

だがあの日事件は起きてしまった。

 

「やーい、おまえんち、あくとくしゅきょー!」

 

「い、痛い!!」

 

ある日の放課後の校舎裏

 

俺が委員の仕事でいない間にさんざん俺に邪魔され鬱憤がたまっていた同じクラスのいじめっ子数人が杏子ちゃんに詰め寄り杏子ちゃんがに殴られてた。

 

「やめろ!!」」

 

嫌な予感がして急いで帰ってきて杏子ちゃんを探し出し、気づけば俺は杏子ちゃんを庇う為に自分の身体で覆いかぶさった。

 

『何をしている?お前ならこんなクソガキ程度わけなく殴り飛ばせるだろう?』

 

ドライグが頭の中で呆れていたが馬鹿言うなと言い返す。

 

修行して一般の小学三年生いじめっ子以上の力を持った俺が普通の三年生いじめっ子を殴ったらそれこそいじめっ子が大けがして杏子ちゃんの立場がもっと悪くなるからこれが最善策なんだよ。

 

「お前、あくとくしゅきょーをかばうのかー?」

 

「いっしょにやっつけろー」

 

覆いかぶさってもいじめっ子達の暴力は止まらない。

 

「バ、バカ!早く退けよ!!」

 

杏子ちゃんが泣きながら叫ぶが退くわけにはいかない

 

だがいくら体を鍛えてると言っても体は小学生。その上相手は同じ小学生で手加減なしで数が多いから殴られたら痛い物は結構痛い

 

「・・・・うぐ!」

 

その内、いじめっ子の一発の蹴りが頭を直撃する。

 

頭を蹴られた時、額が切れて血が鼻まで流れてきた。

 

「やべえ!」

 

俺が血を流した事でいじめっ子達は恐怖し、一目散に逃げていった。

 

「お、お前、血が・・・」

 

杏子ちゃんが泣きながら震える。

 

「何の騒ぎだこれは!」

 

騒ぎを聞きつけた教師が今頃になってやってきた。

 

その後、教師は血を流す俺に驚き、慌てて保健室に運び込まれ、杏子ちゃんは教師に連れていかれた。

 

運び込まれた俺はおばさんの保険の先生が応急処置の包帯を巻きながらなにがあったか事情を聞かれたので俺は杏子ちゃんに対するいじめと杏子ちゃんは悪くない事を説明して、教師にも説明して欲しいと保険の先生にお願いした。

 

あの教師の剣幕じゃ杏子ちゃんが危ない

 

「分かった。君はここでおとなしく待っていてね」

 

保健の先生は俺の言葉にうなづき、保健室から退出する。

 

俺は杏子ちゃんを心配する事しかできずにそのまま待つ事にした。

 

保険の先生が出てしばらくした後、入れ替わりに杏子ちゃんが保健室に入ってきた。

 

「杏子ちゃん!大丈夫なの?」

 

「ああ、怒られてたが保健の先生がすぐに来て、事情を説明してくれたらすぐ解放された」

 

さすが保険の先生だ。あの先生、優しいけど怒ると教師陣はおろか校長ですら恐怖する存在だからな。

 

「そっか・・・よかった」

 

「よくねえよ!」

 

一安心する俺に杏子ちゃんが怒鳴リ、思わず驚く

 

「なんで、なんで、そんなになってまであ、あたしをかばうんだよ、あ、あたしはわるいやつなのに・・・」

 

そうか、杏子ちゃんは自分の所為で俺が怪我したと思ってるんだな。杏子ちゃんが悪いんじゃないのに

 

「杏子ちゃん・・・」

 

俺は杏子ちゃんに手を伸ばす

 

杏子ちゃんはたたかれると思い目をつぶって身構えるが

 

「そんな事なんかないよ!杏子ちゃんは優しくていい子で可愛い女の子だよ!だから俺、男だから杏子ちゃん守らなきゃいけないからね」

 

そう言って俺は泣いてる杏子ちゃんを慰める為に抱き寄せて頭を撫でた。

 

「・・・・・ば、ばかやろう・・・」

 

涙声で杏子ちゃんは顔を泣きながら真っ赤にして俯いた。

 

うーむ、ちょっとかっこつけすぎたかな。顔が赤いけどラノベのチョロインじゃあるまいし、こんな事ぐらいで女の子が惚れるわけないか。

 

杏子ちゃんをいじめてた連中は教師たちに大説教されておとなしくなったのだった。

 

ざまあ!

 

 

 

その後五年の時に親父の仕事場に近い場所にある一軒家に引っ越しする事になった。

 

引っ越し先が風見野から隣の市の見滝原だったが杏子ちゃんとの仲は変わらず一緒に勉強したり遊んだりと楽しい小学校生活を過ごした。

 

杏子ちゃんも笑うようになり女の子の友達も増えて、杏子ちゃん自身も心身とも強くなり女の子を味方につけて男子生徒をやり返して圧勝しているという話を杏子ちゃんの女友達から聞いた。

 

女の子強ええええ




徹夜で打っていて朝日が昇る頃には杏子ちゃんがヒロインになってたでござる


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第4話 初陣

ここでの杏子ちゃんは父親の事を彼女の親のしつけで声では『父さん』心中では『親父』と呼ぶようにしています。
ややこしいかもしれませんがよろしくお願いします


俺は五年生になり見滝原に引っ越し後、しばらくしてようやく身の回りが落ち着き久しぶりに杏子ちゃんの家の教会に訪れる。

 

「これはいったい・・・?」

 

いつもは人通りの少ない教会の入り口に人が並んでるのが見える。

 

「(まさか・・・・)」

 

急いで行ってみると教会の庭は人でごった返していた。

 

「お、一真じゃないか、久しぶり~」

 

「き、杏子ちゃん・・・」

 

恐る恐る振り返るとリンゴを齧りながら笑顔の杏子ちゃんが迎えてくれた。

 

「すごいだろ?みんな、父さんの話を聞くために来てくれたんだ」

 

背中に流れる冷汗が止まらなかった。

 

「でさ、モモの奴は・・・」

 

杏子ちゃんの話が耳に入らない。

 

油断していた!

 

原作では具体的に彼女が魔法少女になった日は説明されていなかったから

 

てっきり中学に入学してから契約したものだと勝手に考えいた

 

まさか小学生の時から魔法少女になっていたなんて!

 

「ん?どうしたんだ?怖い顔して?」

 

「あ、ご、ごめん。なんでもない。今日は帰るよ。またね」

 

「お、おう、またな」

 

 

杏子ちゃんと別れた帰り道

 

嬉しそうに話す杏子ちゃんの笑顔を見るのが辛かった。

 

あの笑顔が魔法少女に契約したことで曇っていく事と

 

そんな状況を止められなかった自分の不甲斐なさに怒り覚える

 

「一真じゃないか、こんな所でどうした?」

 

思考の海から現実に戻され顔を上げると停車したスクーターに乗る一真の父『城戸真司』の姿があった。

 

「あ、遊びの帰りだよ。父さんこそどうしてここに?」

 

「ああ、この先の教会の取材だ。沢山の信者が集まって話を聞きに来るという話題の神父様の取材なんだよ」

 

「そ、そうなんだ、気をつけてね」

 

確かに急に信者が集まり始めたら話題になってジャーナリストなら飛びつくよな。

 

言えない・・・それは話を聴きに行ってるんじゃなくて魔法で集められてるだけなんて・・・

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「・・・・なんでもないよ、いってらっしゃい」

 

取材の時間が迫っているとの事で父さん乗るスクーターは教会に向かって走っていた。

 

「くそが!」

 

父さんがだいぶ離れた後、俺は壁に憤りのない怒りを拳にして壁にぶつける

 

なにが彼女たちが魔法少女になるのを止めてあんな悲しくて報われない運命を防ぎたいだ

 

油断して護れてないじゃないか!

 

『相棒、あまり気に病むな』

 

「それはどういう意味だ!ドライグ』

 

『契約したのは佐倉杏子自身が決めた事だ。そしてこれから起こる事もあの女の責任でもある』

 

「なにが責任だ!このあとどうなるかお前も知ってるだろ!」

 

この後杏子ちゃんは『お父さんの話をみんなが聞いてくれる』という父親を思っての願いと引き換えに魔法少女になるがそれが父親にバレて自分の思いでなく魔力のおかげで聞いただけとショックを受けて娘の杏子ちゃんを魔女と罵り

お酒に溺れ母や妹に暴力を振るうようになってしまい教会は元の廃墟に逆戻りして、最後には父親は母親とモモちゃん刺し殺して後

 

父親自身も杏子ちゃんを残して首を括って自殺してしまうという悲劇が待っている。

 

ドライグの言葉に思わず怒鳴る

 

『過ぎてしまった事はもう取り戻せない。だったらそうならないように今度こそお前が支えてやればいいだろう。その為にこれまで辛い鍛錬をこなしてきたんじゃなかったのか?』

 

「あ・・・」

 

そうだ、その為にリュネと神様から力を貰い今日までがんばってきたんだ。

 

「ごめんドライグ、自分の事を棚に上げて怒鳴って八つ当たりして」

 

『いいさ、相棒はまだ若い。だから俺が時には叱咤して支えてやる』

 

「ありがとう」

 

さすが数万年以上生きた伝説のドラゴンだ。頼りになる

 

「さて気合い入れ直して次の行動に移るぞ!」

 

 

 

ある日の夜、俺は廃工場にいた

 

『相棒、どうやらこの辺だ。ここら辺で佐倉杏子は魔女と戦っている』

 

「分かるのかドライグ」

 

『ああ、俺は魔女の魔力と佐倉杏子の魔力を感知できるからな。』

 

俺は杏子ちゃんに一緒に戦う事を宣言する為に杏子ちゃんを探していた。

 

『おっとここだな』

 

ドライグがそう言うと目の前の空間が歪んでいる

 

これが魔女の結界か

 

『相棒、残念ながらお前はまだ禁手(バランス・ブレイカー)に至っていない。無理するなよ』

 

「・・・分かった。いくよ」

 

自分の力不足の悔しさをかみしめながら結界内に飛び込むと魔法少女になった杏子ちゃんが魔女と呼ばれるサーカスのピエロのような異形の怪物と戦っていた。

 

 

 

 

 

 

 

~~杏子サイド~~

 

「くそ・・・」

 

アタシはボロボロになりながらも槍を構える。

 

「ウケケケ」

 

対して余裕そうな魔女は相変わらず不気味に笑っている。

 

数日前

 

キュゥべえと名乗る妙な生き物が目の前に現れてどんな願いも叶えるから魔法少女にならないかと契約を持ちかけられた。

 

最初はそんな力に頼らなくてもみんなで頑張ればきっとなんとかなると思い追い返した。

 

しかしだんだんと家のお金が底を尽き始めて日々の食事すらままならない状況が続き、私とモモはいつも空腹だった。

 

母さんと親父も少ない食事を分け与えてくれたが日に日に痩せていく家族の笑顔を見るのがなによりつらかった。

 

ある日、空腹に耐えられなくなった私はついに一個のリンゴを盗んでしまう。

 

しかしそれも店員に捕まり殴られ剥奪されてた。

 

いつも助けてくれた一真が風見野からいなくなり誰も助けてくれない世の中に嘆いていた所にキュゥべえが再び現れ、

 

そして家族を助ける為に私は契約した。

 

今日も私魔法少女として世の中に災いを振りまく魔女と戦っている

 

「ウケケケケッ」

 

ピエロの魔女が戦法がジャグリングのように5本のナイフ投げまわしている。

 

「ウケッ!」

 

「このっ!」

 

5本のナイフを同時に投げ槍で払いのける。

 

「ウケケケケッ」

 

魔女の手元に新たなナイフと足元に使い魔が召喚される。

 

「くっ!」

 

ピエロの魔女が遠距離に戦法を変えたことに歯ぎしりする。

 

私の武器は近距離と中距離は戦えるが遠距離の攻撃方法はない

 

「どうすれば・・・」

 

 

 

 

【一真サイド】

 

 

 

「杏子ちゃん」

 

「え!?」

 

杏子ちゃんがびっくりして振り返る。

 

「か、一真、なんでここに・・・」

 

杏子ちゃんは知られたくなかったって表情で後ずさりする

 

「(さてこれが初陣だ。修行の成果を試させてもらう)」

 

「プロモーションキング!」

 

俺の中の王の駒(キング・ピース)が熱くなりどんどん力が沸いてくる。

 

『(相棒、自分の服装を見てみろ。面白いことになってるぞ)』

 

「これは・・・」

 

ドライグに言われてみてみると俺の服装が駒王学園の冬服バージョンに変わっていた。

 

しかもご丁寧にシャツは『ハイスクールD×Dの主人公』と同じ赤い色である

 

「お前、魔法少女だったのか?」

 

「俺、男だよ・・・」

 

杏子ちゃんの言葉に苦笑しながら俺は左腕を赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に変える。

 

「な、なんだよそれ!?」

 

杏子ちゃんは俺の左腕が赤い籠手に変わった事に驚きながらも俺は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)から自分の掌に留めた魔力弾を見せた。

 

「杏子ちゃん、終わったら全部ちゃんと説明するから今は目の前に集中して」

 

「お、おう。あとで説明しろよ!」

 

「俺が突破口を開く!行くよ」

 

赤い魔力弾『ドラゴンショット』を放つ

 

「ギャアギャア」

 

使い魔たちが爆発に巻き込まれ断末魔を上げる。

 

『Boost!』

 

「もう一発!」

 

倍加してドラゴンショットを放つ。

 

右手に持つナイフを吹き飛ばす。

 

「ギギャ!」

 

右手を吹き飛ばされ驚く魔女

 

走りながら倍加の時間を稼ぐ。

 

攻撃された魔女は怒り狂い何本ものナイフを投げてくる

 

王の駒(キング・ピース)で身体能力を何倍も上げてるので何時もより早い加速で走りながらナイフを避けて牽制技のウルトラマンのスラッシュ光線を放つ準備をする。

 

今の俺はスペシウム光線のような大技は無理で牽制技のスラッシュ光線やウルトラバリアのような補助技は使えるようになっている。

 

禁手(バランス・ブレイカー)に至れば大技も使えるようになるのかな

 

両手を合わせてスラッシュ光線で足を攻撃して体勢を崩してよろめき倒れる。

 

まだ空を飛べない俺はジャンプして魔女の鼻先に跳ぶ

 

『Boost!』

 

『Explosion』

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)から倍加完了の音声が流れ魔力弾を貯める。

 

「さらにおまけだ」

 

特大のドラゴンショットを魔女の顔面に放ち、直撃させる。

 

「ギャアアア!!!!」

 

爆炎に撒かれた倒れた魔女は苦しみながらのたうち回る。

 

「杏子ちゃん!」

 

「ああ!」

 

杏子ちゃんの持った槍が魔女の身体を刺さり、着地してすぐ走って俺も槍を掴みさらに押し込む。

 

「(ごめんね・・・)」

 

魔女の正体を知る俺は心の中で謝罪し、魔女を完全に仕留めた。

 

それと同時に魔女の結界は崩壊して元の空間に戻る。

 

元の廃工場に戻り杏子ちゃんの真正面に立ち、彼女の目を見て決意を話す

 

「杏子ちゃん、俺にも戦える力がある。だから俺も君と一緒に戦わせてほしい」

 

「な、なに言ってんだよ!これは遊びじゃねんだ!下手すりゃ死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「それは杏子ちゃんも一緒でしょ?杏子ちゃんも死ぬかもしれない」

 

「と、とにかく駄目なもんは駄目だ!」

 

「じゃあどうしたら一緒に戦わせてくれる?俺がここで杏子ちゃんと戦って勝ったら認めてくれる?」

 

「お、お前、本気なのか!」

 

「本気じゃなきゃこんな事言わないよ。」

 

杏子ちゃんは槍の先を俺の目の前に向ける。

 

俺は微動だにせず杏子ちゃんの眼を見る

 

「本気・・・なんだな・・・」

 

そう言って杏子ちゃんは槍を俺の前から引く

 

俺が顔を引いたり怯えたりしたら認めてくれなかったんだろうな

 

「分かった一真、これからよろしくな」

 

杏子ちゃんは一緒に戦える事に嬉しそうだったのを覚えている。その杏子ちゃんの顔に俺は彼女を魔法少女にしてしまった後悔があったが気づかれないように笑顔で返した。

 

《佐倉杏子、彼は危険なイレギュラーだ。今の内に倒した方がいい》

 

俺と杏子ちゃん以外の第三者の声がして、声の方を見るとインキュベーターがそこにいた

 

「(なるほど確かに見た目は可愛いマスコットキャラにしか見えないな、見た目だけは・・・)」

 

インキュベータ『キュゥべえ』この魔法少女まどか☆マギカの黒幕で悲劇の元凶

 

詳しい説明もしない、聞かなければデメリットも隠して話さない。

 

目的の為に願いを叶えると言って少女達に近づき願いを叶えたあと利用する自称魔法の使者。

 

だがこいつがいなければマミさんの命は助からなかったのもまた事実なんだよな・・・

 

「何言ってんだ!そんな事できるわけないだろう!!」

 

《彼とグリーフシードの取り合いになるよ、それでもいいのかい?》

 

「そ、それは・・・・」

 

ソウルジェムが穢れ魔法が使えなくなり、父親の話を聞いてもらえない生活に戻るのが嫌な杏子ちゃんが言いよどむ

 

「いきなり出てきて敵扱いされて気分が悪いが俺は杏子ちゃんを裏切らないし俺の力にグリーフシードは必要ない、この街に現れた魔女を倒して集めたグリーフシードも杏子ちゃんにすべて渡せばこれで問題ないだろう?」

 

《君は僕が見えているのかい?でも僕からしたら君が裏切らない保証はないよね?》

 

どの口が言うか、この野郎

 

「杏子ちゃん、俺は君の判断に任せる」

 

「私は一真を信じる」

 

杏子ちゃんははっきりとインキュベータに言ってくれた。

 

《やれやれ、じゃあ好きにすればいいよ》

 

そう言ってインキュベーターは姿を消した

 

「なんだよアイツ」

 

「・・・・・・」

 

俺は杏子ちゃんを魔法少女にしてしまった悔しさから消えたインキュベータを睨む事しかできなかった。

 

こうして俺の初めての魔女討伐は終わった。

 




戦闘描写は難しい・・・

頭では想像できるんだけど表現力ないからいざ文章に起こそうとするとね・・・


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第5話 偽りの力

休みの前日に徹夜で小説を書くと朝がつらい・・・
でもネタが頭に沸くと早く文章にしたいから興奮して眠れないというジレンマが・・・うぐぐ



「996・・・997・・・998・・・999・・・1000!」

 

夕方の山の中

 

千回の腕立て伏せを終えて汗だらけになった俺はそのままうつ伏せになって息を整える

 

六年生なった俺、城戸一真は相も変わらず基礎訓練の繰り返しをしている。

 

体力とスタミナ増加の為に走り込み、基本的な動きを見直し徹底して特訓していた。

 

継続は力なり

 

今だに禁手(バランス・ブレイカー)に至れないけど不貞腐れずに一歩ずつ確実に進んでいこう。

 

この特訓も無駄じゃない。

 

力を上げれば上げるほどそれだけ禁手(バランス・ブレイカー)赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)の強度と維持時間が上がる。

 

王の駒(キング・ピース)の能力で鍛えた基礎の身体能力であるパワーやスピードが数千倍に跳ね上がるから心強い。

 

それに今は一人じゃない

 

「一真、頑張ってんな」

 

赤いジャージ姿の杏子が長い棍とスポーツ飲料水を持って現れた

 

共同戦線したあの夜のあと

 

俺は杏子ちゃんに産まれた頃から身に着けていた神器(セイクリッド・ギア)の事、上位神器の神滅具(ロンギヌス)である赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)とそれに宿るドライグの紹介

 

そしてその能力である『倍加』『譲渡』転生者と王の駒の事を隠して『身体強化』の事を話した。

 

神様に仕える教会の娘である杏子ちゃんは神を滅ぼす武器がある事に驚きながらも納得してくれた。

 

そして杏子ちゃんも魔法少女として能力を俺に話してくれた。

 

彼女の持つ伸縮自在な槍は槍だけの機能のほかに、仕込み多節棍、分銅鎖、鞭と多種多様な変形する事や「父親の話を人に聞いて欲しい」と言う願いによる副次効果として眩惑や幻覚の能力を教えくれた。

 

その後学校が終わった放課後にお互いを鍛える為こうして近くの山で特訓中。

 

ただし、杏子ちゃんの場合魔法少女になって魔法を使うとソウルジェムが穢れる為、俺が制作した槍と同じ長さの仕込み棍で特訓している。

 

特撮好きが功を奏してかこういう前世の頃から細かい作業が得意でよくやっていたのをふと思い出した。

 

あの頃はまさか自分が魔法の世界にかかわるなんて夢にも思わなかったな。

 

「ほら、飲めよ」

 

「ハァハァ・・・ハァハァ・・・あ、ありがとう杏子ちゃん」

 

俺は起き上がりスポーツ飲料の入ったペットボトルを受け取り、それを喉に流し込む。

 

冷たい飲料水が喉を潤していく

 

「ふう…」

 

「お疲れさん」

 

一息つく俺の横に杏子ちゃんが腰を下ろす

 

「汗かいてるから今の俺匂うよ」

 

「気にしねえよ。あ、でも私の方が匂うかも・・・・」

 

自分の言葉に気が付いて慌てて自分のジャージを鼻を近づけて匂う杏子ちゃん

 

「そんな事ないよ、杏子ちゃんはいい匂いしかしてないよ」

 

笑顔でサムズアップして答えたら

 

「こ、こ、このヘンタイがー!!」

 

「ぐはっ!」

 

真っ赤な顔の杏子ちゃんに殴られた

 

正直に言っただけなのに・・・

 

解せぬ・・・

 

「・・・そういえば、一真ってやけに戦いなれてるけどなんでなんだ?」

 

落ち着いた杏子ちゃんが俺の横に座る。

 

「ああ、父さんの高校時代の友人である竹ノ内さんに戦い方を教わったんだよ」

 

殴れた頬を氷で冷やしながら答える

 

いっ、まだしみるな…

 

「竹ノ内さん?どんな人なんだ?」

 

「プロレスラーみたいな体格で、当時高校で父さん達の世代の番長をやっていてなんでも昔ゴリラの宇宙人が高校に攻めてきた時に親父達やゴリラやロボットと一緒に戦ったって言ってたな」

 

「・・・嘘臭せえな、宇宙人とかゴリラやロボットって・・・…」

 

「本当です!信じてください!話聞いたあと確かめる為に親父の卒アル見せてもらったら本当にクラスメイトにゴリラとドラム缶みたいなロボットとでかい馬に乗ったいかついおっさんが写ってたんだよ」

 

「おい!最後のおっさんどこから出てきた!それもう高校生じゃねえだろ!」

 

そんなバカ話をしていると・・・

 

グシャアアアアアアアアンンン

 

空気を引き裂くような金属がぶつかり合う音が辺りに響く

 

「なんだ!?」

 

「杏子ちゃん、あれ!」

 

ハイウェイ上で炎と煙が立ち上る

 

「なんだなんだ?事故か?」

 

「杏子ちゃん、これで警察と救急車を!」

 

「おい!一真!!」

 

呼びかける杏子ちゃんを無視して俺は携帯を投げ渡して走り出す。

 

「プロモーションキング!」

 

体内の王の駒(キング・ピース)の力を開放し、身体能力を強化してハイウェイに跳ぶ。

 

『相棒、上に人間でもなく動物でもないなにかいる、気を付けろ』

 

人間でも動物でもない?まさか!

 

六回ほど柱と柱を足場にして跳んでハイウェイ上に着く。

 

着地して顔を上げると車が大破して火と煙が上がる

 

前世で見たテレビの記憶で確か通常火災には水を使って消火を行うがガソリンは水よりも比重が軽いため水をかけるとかえって火災が燃え広がってしまう恐れがあるから

ガソリン火災は、酸素の供給を遮断して火を消す窒息消火を行わなければならないと言っていた事を思い出し、ここはウルトラ水流じゃなくて冷気を放ち相手を凍らせる

ウルトラフロストで炎を消化する。

 

炎が鎮火して焼け焦げた車のドアを力任せに引きはがして中の人を助け出す。

 

中には二組の男女と見滝原中学の制服を着た女の子が意識を失っていた。

 

男性の方の血を流し脈を確認したがすでになかった。恐らく衝突した衝撃でほぼ即死になってしまったのだろう…

 

女性の方はおそらく奥さんだな

 

意識はなく呼吸も脈も弱弱しい、このままではこの人の命まで・・・

 

「う…うう…」

 

女の子の方は生きているが意識が朦朧としている。

 

『相棒、その娘の体から魂を感じない。佐倉杏子と同じだ』

 

それってまさか!?

 

女の子の顔をよく見る

 

確かどこかで・・・・

 

・・・・あ!

 

思い出した。

 

確かこの子、巴マミって子だ!!

 

願いは彼女自身も死にかけていて助かるためにキュゥべえと契約して魔法少女になった子だ。

 

前世の頃、佐藤だった頃の鈴木君と一緒にアニメ見てた時に最初の方に出てきて数話で退場した時、あまりの衝撃で飲んでた酒を噴き出したんだった…

 

あの頃は転生して見てたアニメの世界に行くとは思わなかったな…

 

《へえ、魔法少女でもないのに他にも変わった能力を持ってるんだね。》

 

不意に聞こえた脳内に聞こえた第三者の声で現実に引き戻される。

 

この耳障り・・・いや頭障りな声の主は

 

辺りを見回すとインキュベータが壁の上に座ってこちらを見ていた。

 

「キュゥべえ!お前マ・・・この子に何をした?」

 

《何っておかしなことを聞くね?契約したんだよ、それが巴マミの願いだからね》

 

怒鳴る俺にあっさり当たり前のように答えるやがる

 

「くっ!貴様!」

 

《じゃあね、ここでの用事は済んだ。一応人が近づいて邪魔されないようにしてるけどもうすぐその効果も消えるから君も早く逃げた方がいいと思うよ》

 

飛びかかろうとするがキュゥべえは逃げた。

 

キュゥべえも気になるが今はそれ所じゃない

 

人が近づかないようにしてる!?

 

冗談じゃない!契約した巴マミならともかく早く手当てしないと巴マミの両親の命が危ないじゃないか!

 

俺は横に並べている意識のない夫婦に近づき、両手をのばして両手を合わせて『リライブ光線』を放つ

 

リライブ光線とは傷を癒し命さえも蘇生させる事ができるウルトラマンタロウやレオがの使った生命エネルギー光線の一つ

 

母親の方は顔色がよくなり呼吸も整ってきたようだ。

 

あとはこのまま病院に行けば大丈夫だ。

 

しかし父親の方は何も変わらない

 

「なんで・・・なんで生き返らないんだ!死者も生き返らせる事もできる光線なのに!?」

 

父親の方に集中的にリライブ光線を放つ

 

『Boost!』

 

俺は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発動して能力を倍加してリライブ光線を放つが状況が変わらない。

 

『・・・無理だ相棒・・・死んだ者は生き返らせる事はできない、それは例え神でも無理な事だ』

 

「そんなだってウルトラマンタロウとウルトラマンレオは生き返らせることはできたぞ」

 

かつて見た特撮のタロウやレオは亡くなった人や怪獣をリライブ光線で生き返らせたのに

 

『・・・・・あれは物語だからできた事だ。お前の能力や俺の存在は神に創られた偽りの力。だからこそ神ができぬ事はお前にもできない  』

 

「そん・・・な・・・」

 

膝から崩れ落ちる。

 

助けれないのか・・・この力を得てどこかでなんでも出来ると錯覚してしまっていた。

 

『相棒、酷な事言うが前にも言ったが人には運命の強制力があると言ったな。それがその男の運命だったんだ。」

 

偽りの力か…まあ考えてみれば俺の力はラノベや特撮の力を真似ているだけだ。でも

 

「諦めない!諦めてたまるか!赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の力だけじゃ足りないなら!プロモーションキング!」

 

『やめろ相棒!三時間のインターバルを無視した状態の(キング)の駒を力を使ったらお前の命に係わるぞ!」

 

ドライグが止めるが俺は無視して(キング)の駒を発動させると体に激痛が走る。

 

「リ、リライブ…光・・線」

 

大量の汗と流しながらリライブ光線を放つ

 

しかし男性は様子は変わらない。

 

『・・・・悪いがこれ以上は見てられん』

 

そう言って左腕の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が元の人間の腕に戻る

 

「ドライグ!くそ!!」

 

俺はドライグに文句を言おうとしたが、それより男の胸に両手に置き心臓マッサージを始める

 

「起きろ!起きろ!起きろ!起きろ!起きろ!」

 

何度も心臓マッサージをするが男は目覚めない。

 

 

~~杏子サイド~~

 

 

「一真!警察と救急車を呼んだ。ってその人・・・」

 

杏子ちゃんが走ってくるが無視して続ける。

 

『佐倉杏子か、丁度いい相棒を連れてここから離れろ!』

 

「え?ドライグか?」

 

共同戦線した後に一真から紹介されていたドライグが話掛けてくる。

 

『このバカは無茶をしてもう限界が近い、このままではこいつまで倒れてしまうぞ』

 

「なっ!?」

 

ドライグの言葉に驚いて一真を見る

 

よく見ると一真の顔は大量の脂汗が流れ目元に隈ができている。

 

確かにこのまま続ければ倒れてしまう

 

「おい!やめろ一真、そいつはもう・・」

 

「まだだ!まだなんだ!」

 

アタシの言葉さえも一真に届いてない。

 

「くっこうなったら」

 

私はソウルジェムを使い魔法少女に変身して一真の背後に回る

 

「一真、すまん!」

 

「ぐ・・・が・・・」

 

槍の石突で一真の首筋に突いて気絶させる。

 

あたしは一真を肩に抱き上げてこの場を後にする

 

数分後、アタシ達がいなくなった後にパトカーと救急車が到着した。

 

 

 

【一真サイド】

 

「・・・・ここ・・は・・・そうだ、うっ!・・・」

 

起き上が老とすると脱力感が襲ってくる・・・

 

確か・・・そうだ!マミさんのお父さんを助けないと!

 

立ち上がろうとするがうまく立ち上がれない

 

「気いついたか?」

 

声の方に杏子ちゃんが立っていた。

 

「杏子ちゃん・・・」

 

「安心しな、あの子と母親は助かりそうだ」

 

あの子と母親・・・じゃあ父親は・・・

 

「・・・なんで?」

 

「ん?」

 

「なんで止めたんだよ!」

 

「はあ?」

 

突然怒鳴られて驚く杏子ちゃんだがお構いなしに続ける

 

「もう・・・少しで・・・もう少しであの子のお父さんも助けられたのになんで邪魔したんだ!」

 

「何言ってんだよ。あの親父もう息してなかったぞ!」

 

『佐倉杏子の言う通りだ。相棒。あの男はお前が何をやってももう助からなかった」

 

「くっ!」

 

また駄目なのか・・・

 

助けれないのか・・

 

父さんと母さんの時のように・・・・

 

前世の頃を父と母の最後を思い出す。

 

あの日、家族で食事を食べに出かけた帰り道、信号無視してきたダンプカーと正面衝突し

 

ガソリンが引火して燃え盛る炎の車の中から今と同じ歳の俺を押し出した両親は炎に飲みこまれて亡くなった。

 

俺に力があれば両親を助けることができたのに・・・

 

あの時と違い俺には力があるのにそれなのに助けられなかった・・・

 

「やっと・・・やっと助けられる力を得たのになんで止めたんだよ。俺が命を賭けたら助けられたかもしれないに!」

 

「バカ野郎!」

 

杏子ちゃんに平手打ちされ、後ろに倒れ込む

 

「アタシはアンタに死んでほしくない!!」

 

目尻に涙を浮かべ怒鳴り散らす

 

「お前とはもうコンビは解散だ!もう二度とその顔を見せんな!!」

 

怒った杏子はそう言って走り帰って行った。

 

「俺は・・・俺は!!!!!!」

 

残された俺はただ叫ぶしかできなかった。




前半の佐倉杏子との会話は仮面ライダー龍騎と魁!!クロマティ高校の主人公の中の人ネタをふと思いついたからやってみたかった。


一真の試練その一

実際、マミさんの両親は即死だったそうですけどうちではちょっと設定を変えていますのでご容赦下さい。
ペスターの回でコンビナート火災の時ウルトラ水流を使ってたけど一真君はウルトラフロストにしました。
あと原作では杏子ちゃんよりマミさんが魔法少女の先輩になってますがこの小説では逆になっています。



*****警告*****   ここから先は作者の勝手な考えが入ってます。転生者や特典が好きな方は読まずに読み飛ばすかブラウザバックして下さい。





















というわけで今回タイトルにある【偽りのヒーロー】の意味を回収しました
一真君自身、転生したり特典で赤龍帝の籠手やウルトラマンの能力を得ましたが結局はどこにでもいる普通の【人間】であり全ての人に手を差し伸べて救い出せる【ヒーロー】じゃありません。
そしてサブタイトルの【偽りの力】も模倣した漫画やアニメのキャラクターの能力を神様から特典という形で貰っただけで自分で得た力ではないという事でこのサブタイトルにしました。
気分を害された方、申し訳ありません。


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第6話 暴かれた秘密

ストックはここまで。次からの話は完成してルビ振りと誤字脱字チェックが終わり次第更新します。


【一真サイド】

 

マミさんが魔法少女になったその日の夜

 

どうやって帰ったか覚えてなく気づいたら自分の家の前にいて

 

熱いシャワーを浴びて一息つき、冷静になった俺はドライグに謝罪した。

 

ドライグも『もういい次から気を付けろ』とだけ言ってくれた。

 

ただ意固地になった自分の所為で杏子ちゃんを傷つけた事に激しく後悔と自己嫌悪に陥りまったくいうほど眠れない・・・

 

次の日、杏子ちゃんに謝ろうと電話したが出てもらえず、直接会いに行っても会ってもらえなかった。

 

妹のモモちゃんから『けんかでもしたの?なかよくしなきゃだめだよ』ってダメ出しされちゃいました・・・

 

「ハァ・・・」

 

『(相棒、大丈夫か?)』

 

帰り道に他の人に聞こえないように心の中でドライグが話かけてくる。

 

「(ああ、大丈夫。謝罪しようにも会ってさえくれないなんて)」

 

相当怒らせちゃったな。はあどうしよう・・・

 

 

 

 

~~杏子サイド~~

 

深夜、杏子の部屋のベットの上

 

あ~むしゃくしゃする!

 

一真の奴、なんであんなに聞きわけがねえんだ!

 

あのままじゃアイツが倒れる事になってたのに!

 

なんで見ず知らずの他人の為に命を懸けようとするんだ!

 

ヒーロー気どりかアイツは!

 

・・・・まあ、アタシも魔法少女になってヒーローみたいなもんになったけどさ

 

そりゃあアタシだって見ず知らずの他人といえ、人が目の前で死ぬのは嫌で助けれるなら助けたいさ

 

でも助からないと分かっても自分の命かけてまでやることねえだろ・・・・

 

アイツが倒れたり、も、もし死んだりしたらアタシが悲しいのに!

 

って何考えてんだアタシは!

 

あ~もう、おかげで御飯も碌に食べれずに母さん達に心配されるは、モモの奴が『かずまおにいちゃんとけんかしたからだよね』って余計な事言って

 

母さん達に『早く仲直りしなさいね』って言われるわ、『でもかずまおにいちゃん。きょうあやまりにきたのにおねえちゃんあわなかったの』

 

『杏子謝りに来たのに会わなかったなんてどういうこと?』って怒られるし

 

なんかアタシが悪いみたいじゃねえか!

 

あ~もう!

 

・・・明日、アイツが来たら話だけでも聞いてやろ

 

ったくもう寝よ!

 

ん!?ソウルジェムが反応してる!

 

まさか魔女が近くにいんのか!

 

この反応、まさかこの家に!

 

一真に連絡を!

 

・・・・いやアタシのほうからコンビ解散したんだったな

 

丁度いいむしゃくしゃしてたんだ。腹いせにアタシ一人でぶっとばしてやる!

 

 

 

 

【一真サイド】

 

同時刻 一真の部屋のベットの上

 

ハァ・・・

 

『心配するな相棒、許してもらえるまで明日も佐倉杏子の教会に行ってみるぞ』

 

そうだね、許してもらえるまで明日も行ってみようか

 

『・・・あの時、相棒がおかしかったのは前世の両親と妹の事故が原因か?」

 

ッ!

 

『その反応、やはりそうか・・・』

 

ドライグ知ってたんだ?

 

『ああ、女神が俺をお前に会わせてくれた日の夜に話は聞いた。本来なら相棒から話をして聞くのが筋なんだろうがどうにも気になってな』

 

・・・うんあの時マミさんのお母さんとお父さんを見てたら前の母さんと父さんに見えたんだ。

 

だからどうしても助けたかった。

 

それに家族を失った辛い思いをした経験をマミさんにまで味あわせたくなかったんだ

 

俺の場合親戚中をタライ回しにされて成績が下がると食事も出なくて追い出されるかもしれなかったから自分の居場所を守る為に必死に勉強ばかりやって友達もいなかった

 

だからかな、アニメの登場人物だったとはいえこの世界に転生できると知った時マミさんや杏子ちゃんの家族の絆をなにがなんでも守ろうと決心して赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)とウルトラマンの力を望んだのは

 

『だが相棒それでお前が倒れたら本末転倒ではないか』

 

そうだね、だから最初杏子ちゃんに怒られた時、なんで怒られてるかわけが分からなかったけど彼女達は台本通り動くアニメの登場人物なんかじゃなくて怒るし心配もしてくれる一人の人間だって思い知らされたよ。

 

そして俺も物語の主人公なんかじゃなく一人の人間だってことも

 

だから考えを改めて彼女達だけでなく自分を含めて『みんなを守る』って決心したよ。

 

ドライグこんな俺だけどもう一度、力を貸してくれる?

 

『今のお前なら一度どころか何度でも力を貸してやる』

 

ありがとうドライグ、あらためてよろしくな

 

『こちらこそ・・・待てこの反応!』

 

どうしたの?

 

『相棒、魔女反応だ!しかも反応場所は佐倉杏子の自宅だ!」

 

!?まさかそれって杏子ちゃんがお父さんに魔法少女だって知られてお父さんが家族を巻き込んで一家心中する最悪の事件の原因

 

「ドライグ!今すぐ杏子ちゃんの家に行くよ!」

 

部屋を飛び出し、母さんが夜中に出かける事を止めるのも聞かずに急いで自転車に飛び乗り赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発動した後、倍加で脚力を上げて猛スピードで杏子ちゃんの家に向かう

 

間に合ってくれ

 

 

 

 

 

~~杏子サイド~~

 

 

白背景の魔女結界の中で発生した包丁を持った父さんがフラフラと歩きながら気絶している母さんとモモに迫っている。

 

父さんの目は正気でなく首元に魔女の口づけで操られていた。

 

家族に見られないよう即座に魔法少女になって幻惑で父さんを気絶させたあと魔女を探す。

 

「どこのどいつだ!アタシの家族にふざけた真似した奴は!」

 

アタシの怒鳴り声に反応してか結界の一部が揺らぎ錆びて赤茶色の腕とバイクの部品のような顔の魔女が現れた

 

「アンタか!よくもアタシの家族に手を出したな!」

 

槍を構えて魔女に向かって走り出すと魔女の前にバイクのチェーンを象った使い魔が往く手を遮る

 

「邪魔すんな!」

 

槍を横一線で振り払い使い魔を切り裂く

 

はあああああ!

 

魔女自体にも槍で身体を切り裂いて蹴りを入れる

 

錆びた手で捕まえようとするが動きが遅く簡単に避けれる。

 

いける!こいつ見かけ通り動きが鈍い

 

一真がいなくてもアタシ一人で倒せる。

 

 

 

 

 

 

 

「杏子・・・なのか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

!?

 

声の方をを向くと幻惑が浅かったのか気絶から目覚めた父さんが驚いた顔でこちらを見ていた

 

見られた!

 

そのショックで動きが止まってしまう

 

その隙を付くかのように魔女が消え結界が解け始める。

 

しまった逃げられる!

 

追いかけようとしたが結界は魔女と違い高速で移動してしまった。

 

「き、杏子、その姿一体・・・?」

 

もう隠しごとできないなそう観念して洗いざらい話した

 

ある日、キュゥべえって奴が来て魔法少女になる事と引き換えに願いを叶えてやるって言われた事

 

最初は断ったけど満足にご飯を食べられずに泣くモモや私達に少ない食事を分け与えて日に日にやせ細っていく父さんと母さんを見ていられなく、契約して魔法少女になった事

 

そして魔法少女として今日まで人に害を仇なす魔女と呼ばれる怪物と戦っている事をすべて話した。

 

「魔法だ・・・と、なんて・・・・なんて愚かなことを・・・・」

 

父さんは愕然とした表情で蹌踉(よろ)めいている。

 

何言ってんだよ悪いのは父さんの話を聞かないあいつらじゃないか!

 

父さんは正しいことを言ってるのに誰も話を聞かずに離れていったり水をぶっ掛けるみんなが悪いんだ

 

だからみんなが話をちゃんと聞くようにしただけだ

 

それにそのおかげでモモも学校でいじめられなくなったし

 

御飯もお腹いっぱい食べれるようにもなった。

 

父さんが表で正しい事を話をしてみんなに聞いてもらい、アタシが裏で魔女退治をすればそれでいいじゃないか

 

「なにが魔女だ!魔女は人を惑わすお前の方だ!!」

 

!?

 

アタシは父さんが最初に何を言ってるか分からなかった・・・

 

 

 

 

【一真サイド】

 

 

皆が寝静まっている深夜

 

俺はチャリを漕いで杏子ちゃんの教会に向かう。

 

「いやな予感がする・・・」

 

教会に着き、チャリを乗り捨てて扉を開けて跳び込んだ

 

「杏子・・・『なにが魔女だ!人を惑わす魔女はお前の方だ!!』!?」

 

遅かった・・・!?

 

魔女を追い払った魔法少女姿の杏子ちゃんをお父さんが問い詰め、魔法でこれまでの話を聞いてもらっていた事を知り、杏子ちゃんを「お前が魔女だ!」と罵っていた

 

また守れないのか・・・

 

いやまだだ!

 

「おじさん、やめてくれ!」

 

「か、一真ぁ・・・」

 

俺は杏子ちゃんを庇うように杏子ちゃんのお父さんの前に立ち塞がる。

 

「おじさん、頼むから落ち着いて俺と杏子ちゃんの話を聞いてくれ」

 

「うるさい!人を惑わし、私を騙した魔女の話なんかに聞く耳など必要ない!」

 

「確かにやり方は正しいくなかったかもしれない。でも杏子ちゃんは・・・あなたの娘さんはあなたや家族の事をなによりも心配してたんです。それだけは信じて下さい!」

 

杏子ちゃんのお父さんに説得をするが杏子ちゃんのお父さんは聞き入れてもらえない。

 

「そいつはもう私の娘なんかじゃない!人を惑わす汚らわしい魔女だ!」

 

「と、父さん・・・そ、そんな・・・・アタシはただ・・・」

 

父親の言葉にショックを受け悲しみと絶望が入り混じったような顔の杏子ちゃん

 

ただ家族に幸せになって欲しかっただけなのに

 

あ、駄目だ。もう抑えきれないわ・・・

 

「・・・それが・・・それが実の娘に対して吐く言葉か!馬鹿野郎!!」

 

父親の言葉と杏子ちゃんの顔を見て完全にブチ切れて拳で杏子ちゃんのお父さんの横っ面を殴り飛ばした。

 

前世で親を早く亡くした俺にとって子供にとって親に誰よりも愛されたい存在なのにその親から罵倒された杏子ちゃんの気持ちを考えると頭に血が上っていた。

 

「か、一真!」

 

俺の行動に驚く杏子ちゃん。

 

しかし俺の怒りは収まらない

 

耳障りの言い言葉を平然と並べ人に説いてた癖にテメエは話も聞かずに自分の子供の気持ちを平然と踏み躙ったこの男を許すことができず殴り続ける

 

「ぐ、か、一真君いきなりなにをするんだ!君も魔女の仲間の悪魔か!」

 

「俺の事は悪魔で結構!だが杏子ちゃんを・・・自分の娘を魔女と呼ぶな!!」

 

「ああ・・・・あ・・一・・・真・・・・・・・」

 

打撃音が教会内に響き渡る。

 

俺が殴れば杏子ちゃんのお父さんが殴り返し

 

鍛えてるといっても所詮は小学生と大人

 

組みあったら体格差や力の差で負ける。

 

だから頭突きもしたし嚙みついたりもした。

 

殴られて口の中で血の味がするが構わない。

 

この分からず屋の馬鹿親父に杏子ちゃんの気持ちを分かって貰うまでは

 

俺が馬乗りにして殴り続け、杏子ちゃんのお父さんに振りほどかれ蹴り飛ばされ

 

転がりながら椅子にぶつかっても起き上がる。

 

「ハァ・・・ハァ・・ハァ・・」

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

二人の顔は青アザができ、鼻血を流しながらお互い肩で息しながら口から流れる血を手で拭う

 

「か、一真君はその魔女の魔法で操られてるんだろ?早く正気に戻れ!」

 

「まだ言うかこの野郎!」

 

「もうやめてくれよ一真!アタシが・・・アタシが全部悪いんだから…」

 

俺の後ろから泣きながら杏子ちゃんが抱きしめ止める。

 

杏子ちゃんはやり方を少しだけ間違っただけでなにも悪くない。

 

家族を幸せにする為にどうすればいいか?落ち込むお父さんをどうしたら元気になってもらえるか?その二つを必死に考えたんだ。

 

ただどうしたらそれをこの石頭に分からせるかが問題だ

 

「・・・・もう、これしかないか・・・」

 

杏子ちゃんに止められ殴り疲れ冷静になった俺は、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出現させて念じる

 

あの技を使う為に・・・・

 

「人に自分の話を聞いて欲しいなら・・・・まずはテメエが人の話に耳の穴と心を開いてよく聞きやがれ!!」

 

俺は左腕の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を空に向ける。

 

「煩悩解放ォ!乳翻訳機(パイリンガル)

 

乳翻訳機(パイリンガル)の空間を教会内に広げる

 

「え?おい!なんだこれ!」

 

この技は女性の胸に直接語りかける技でその女性の心に秘める胸の内を文字通り翻訳して丸裸にして俺に教える卑猥な技だ。

 

『最低、女性の敵なのです』

 

うっせーよ、お仕置で尻叩きされた幼女神!久々に出てきたと思ったらいきなり罵倒かい!俺だって分かってるよ!けどな、この技は応用すればこんな事だってできるんだ!

 

俺は乳翻訳機(パイリンガル)が発生した事を確認すると俺は両手を合わせる。

 

すると別の空間が発生して乳翻訳機(パイリンガル)の空間を上書きする。

 

これは原作で洗脳された母親を元に戻すために子供が呼び続けて元の優しい母親に戻した乳翻訳機(パイリンガル)の上位技だ。

 

修行中どうにかできないか試行錯誤でやっていたがどうにか成功したぜ。

 

あとは二人っきりで会話できるように会話は俺には聞こえないように調整する

 

親子間のプライベートに立ち入る気なんかないし

 

しばらくして上書きされた乳翻訳機(パイリンガル)の空間が晴れる

 

 

「と・・・父さん・・・・父さん・・・ごめんよ・・・・ごめんよ。私・・・父さんや信者の人の気持ちも考えてなかった。」

 

「私こそ、杏子に心配かけた上にお前の気持ちも考えずにひどい言葉をぶつけてしまって本当にすまなかった。」

 

晴れ上がったそこには二人の親子が泣きながら抱き合う光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

さてここにこれ以上いるのは無粋だな。城戸一真はクールに去るぜ

 

「ちょっと待て」

 

立ち去れるとする俺に杏子ちゃんが声を掛ける。

 

これで終わればハッピーエンドだったんだがその後、俺は真っ赤な顔の涙目杏子ちゃんにマジ殴りされて土下座させられた上に乳翻訳機(パイリンガル)は二度と使うなと約束させられた

 

まああんな技、杏子ちゃんや鹿目さん、マミさん、まだ来てない暁美さんに使ったら敵認定されて魔女事葬り去れそうだから怖くて使えないよ

 

特に鹿目さんに使った日には鹿目さん大好きっ子の暁美さんにマジで殺される・・・

 

・・・・あれ?美樹さんが魔女化したら説得するのに使うつもりだったけど使えなくなってね。これ?

 

そうだ今の内にちゃんと話ておこう

 

「杏子ちゃん、ごめん」

 

「さっきの変な技の事ならもういい」

 

「違う、そうじゃないよ。もうできない事を無理してでもやろうとしない、杏子ちゃんと一緒に俺の出来ることを精一杯やる事にするよ」

 

「・・・・わかりゃいいんだよ、バーカ・・・・」

 

杏子ちゃんが自分の腕を組んで背を向け、殴れらた頬を擦っていると杏子ちゃんのお父さんが近づいて来た。

 

「城戸君、ありがとう。私はもう少しで取り返しのつかない事をしてしまう所だった。杏子の事これからも末永くよろしく頼むよ」

 

杏子ちゃんのお父さんが俺の肩に両手を置き頭を下げる。

 

「はい!」

 

勿論だ。杏子ちゃんは俺の大切な親友で仲間。なにがあっても絶対にも守る

 

「な、な、な、な、にゃに言ってんだバカヤロウ!」

 

なぜか杏子ちゃんは後ろで真っ赤な顔でなぜかあたふたしてた。

 

ただ杏子ちゃんのお父さん、肩に指が食い込んでてめちゃ痛いし、顔は笑ってるけど目が笑ってないっすよ・・・・

 

魔女の口づけちゃんと解けてるよね?

 

 

 

その後、杏子ちゃんは家族に魔法少女の事、これまでの事をすべて打ち明けてみんなで話し合いをしたそうだ。

 

お母さんとモモちゃんは最初は驚いていたがお父さんのフォローもありなんとか納得してもらい

 

最後はお母さんに抱きしめられた杏子ちゃんは、これまで溜まっていたものを吐き出すように涙を流して家族四人の絆は元に戻ったと公園で嬉しそうに話す杏子ちゃんから聞いた。

 

涙の部分はモモちゃんが話してしまい、怒った杏子ちゃんが追いかける

 

ただ杏子ちゃんもモモちゃんも笑っていた。

 

杏子ちゃんの教会も一時期のブームのように次第に世間から忘れていった事に俺の父さんは首を傾げていたけどまあいいか

 

『相棒、ちゃんと守れたじゃないか。』

 

「ああ、そうだなドライグ。もうなにがあっても俺は、絶対に諦めないよ」

 

「こら~モモ~!」

 

「ごめんな~い、かずまおにいちゃんたすけて~」

 

ドライグと話ながら視線の先で楽しそうに追いかけっこをする仲睦まじい姉妹の姿があった。

 

 




一真君、佐倉家の最悪の事態を回避する


本来なら杏子ちゃんは父親に魔法少女とバレる前にマミさんと出会っていますが一真というイレギュラーの存在の所為で若干時間の流れがおかしくなってます(と思ってください)

一真君、切れたら口調変わりすぎだけどまあいいか

一家心中を回避できたので杏子ちゃんの性格は、原作のような攻撃的な部分は抑えられ多少丸くなっています。


次回のお話は前後編、前編と後編を完成しだい一緒に更新する予定です。


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第7話 新たな魔法少女(前編)

今回、ゲームの魔法少女まどか☆マギカ ポータブル の要素が入っています。
そして今回のマミさんは、まだマスケット銃が使えない頃のマミさんです。



私の名前は巴マミ

 

見滝原中学生1年

 

数日前まで普通の女子中学生だった。

 

あの日までは・・・

 

ある日、下校時に私は家族で外食をする為くお父さんの運転する車でお店に向かっていた。

 

久々の外食でしかも前から行きたかった人気のお店で私は嬉しくてついはしゃいでしまう。

 

優しくて私を見守ってくれる両親

 

楽しい話をして遊びに誘ってくれる友人達。

 

そんな優しい人たちに囲まれた私は本当に幸せでこんな充実した幸せがいつまでも続いて欲しいと思った時、それは起きてしまった。

 

お父さんの運転する車が前から走ってきたトラックを避けそこないガードレールに衝突して自動車事故に巻き込まれた。

 

気が付いたら私の足は事故で変形してしまった車に挟まれ動けなく今まで感じた事ないくらい身体にも痛みが襲う

 

痛みで身体が動かなく私は必死にお父さんとお母さんを呼ぶが返事は返ってこない

 

このまま私は死んじゃうのかと思うと怖くなり誰かに助けを求めて手を伸ばそうたしたその時・・・

 

「巴マミだね?」

 

手を伸ばした先にと『キュゥべえ』と名乗る猫のような生き物が座っていた。

 

最初は幻覚と幻聴かと思ったがそうではなくて現実にキュゥべえは私と契約して魔法少女になって欲しいと言ってきた。

 

死にたくない・・・

 

だた一言「助けて」と願い契約して魔法少女となった

 

その後キュゥべえはどこかへ消えて、私は意識を失った

 

しかしそのすぐ後、ものすごく大きな物音が聞こえて目が覚めた

 

まだ意識が朦朧としてはっきりとしていなかったけどその時私はありえない光景を確かに見た。

 

つぶれた車を引き千切り運転席と助手席からお父さんとお母さんを車外に出して顔は見えなかったけどお母さんに優しい光を浴びせる左手に赤い籠手のような物を付けた少年の姿を

 

少年はお母さんに光を浴びせた後、お父さんにも浴びせていたがうまくいかなかったように焦っていたのを覚えている。

 

その後怒鳴り、必死に心臓マッサージをしているように見えたが意識が続かずそのまま気を失った

 

 

 

それから目覚めたのが病院のベットの上で横のベットでお母さんが寝ていた。

 

お医者さんが言うにはお母さんは軽傷で命に別状はないそうだ

 

本当によかった。

 

でもお父さんは助からずに亡くなっていた。

 

お父さんは即死で手の施しようがなかったとお母さんから聞いた。

 

優しかったお父さんがいなくなって、お父さんとの思い出を思い出しながら私達は泣いた。

 

お父さんを亡くして辛く、友達も気遣かってくれたけど私はやらなければならない事がある。

 

契約した魔法少女として魔女と戦っていく事だ。

 

それから私の生活は一変して変わった。

 

日常生活面に関してはお父さんが遺してくれた遺産や保険でなんとかなるがそれでも生きていく為にお母さんが外で働く事となった。

 

幸いにも仕事はすぐ見つかったが仕事が慣れるまで帰りは遅くなる事になった。

 

少し寂しいけど仕方ない。

 

放課後は友人達の遊びの誘いも断り、魔女や使い魔を探すパトロールに出かける毎日を繰り返していた私は次第に友人達とは疎遠になっていく。

 

いつしか私に話かけてくる子はいなくなっていた。

 

事故から数日経ち、お母さんに赤い籠手を付けた人の事を聞いたら『何それ?夢でも見たんじゃないの?』と笑われるし

 

キュゥべえにも聞いたら『それはイレギュラーで君に危害を加えるかもしれないから近づかない方がいいよ』と言うけど・・・

 

あの人はそんな風に見えなかったな。

 

 

 

それから数か月後

 

魔女や使い魔達と戦う日々を送っていた私は今日もソウルジェムで魔女の反応を見つけてパトロールで自然公園に来ていた。

 

ふう、今日は遅くなりそう、お母さんに帰りが遅くなった言い訳考えておかないと・・・・

 

そんな事を考えていると公園内では数台のパトカーが来ていて野次馬も集まり騒ぎになっている。

 

私は野次馬をかき分けて騒ぎの中心に行くと女性が警察官に詰め寄り我を忘れたように大声を出していた。

 

「本当なんです!本当に私の子が消えたんです!目の前から搔き消えるように消えたんです!」

 

「しかしねえ奥さん、掻き消えるって人間が消えるなんて事・・・・」

 

「ほんとうなんです!信じて下さい!早く見つけてコウちゃん!どこにいるの?コウちゃん!」

 

警察官は半信半疑の態度で聞いていた。

 

確かに普通なら人間が消えるなんてバカらしくて話にならないと思う。

 

以前の私でも警察官と同じ事を思っただろう。

 

でも魔法少女になった私には分かる。

 

ソウルジェムも反応してるし、これは魔女の仕業だ。

 

「そのコウちゃんって子の特徴を教えて下さい!」

 

「き、君はなにかね?」

 

「白いシャツに黄緑の上着で半ズボンを着た男の子よ!お願いコウちゃんを探すの手伝って!!」

 

「白いシャツに黄緑の上着で半ズボンを着た男の子ですね。分かりました」

 

時間がないので警察官の問いを無視して私は走り出す。

 

警察官さん、ごめんなさい。

 

私はソウルジェムの反応で結界を探しながら急ぎ現場に向かう。

 

≪マミ、魔女の結界を見つけた。急いで≫

 

私の肩にキュゥべえが乗ってきて指示されて林の奥に行くと魔女の結界を見つけた。

 

「行くわよ、キュゥべえ!」

 

私は結界に入る。

 

その時私はそこで運命的な出会いをする事にこの時は知り由もなかった・・・

 

 

 

魔女の結界内は首都高のようになっていた。

 

あの事故の事を思い出しそうで嫌な気持ちになる。

 

いけない!いけない!今は目の前に集中しないと!

 

「レガーレ!」

 

襲いかかってくる使い魔達を魔法で作った黄色のリボンで縛り上げて消滅させる。

 

私の武器は魔法で作ったこのどこまでも伸びるリボン。

 

《リボン?そんなので大丈夫なのかい?》

 

甘くみないで、相手を縛り上げて拘束して締め上げたり、リボン自体を螺旋状に伸ばしてドリルのような攻撃もできる上にリボンの生成場所は選ばないから多種多様な戦い方ができるのよ

 

「レガーレ・ヴァスタアリア!」

 

襲いかかる大軍の使い魔を大量のリボンで縛り上げて消滅させていく。

 

数が多い相手にはこの戦い方が合うと私は改めて実感した。

 

「こんな風にね!」

 

《すごいや、マミ》

 

 

 

「ここが最深部ね」

 

使い魔達を退けた私の前に閉められた大きなシャッターがあり、自動的に上がる。

 

最深部に入るとそこで錆びたボロボロの体と腕の生えたバイクの頭をした魔女と右腕だけ出され身体に体を魔女に埋め込まれて泣き叫ぶ子供を見つけた。

 

≪捕らわれた子供だ。魔女に取り込まれかけている。あれじゃ身動き取れない≫

 

許せない!小さな子供をあんな風に酷いことするなんて!

 

「その子を返してもらうわよ!」

 

私が魔女に向かっていくと魔女がこっちを向く。

 

≪気を付けてマミ!≫

 

黒い霧のようなものが子供の身体を覆う。

 

子供を盾にする気!なんて酷い!

 

《あの子供を取り込む気だ急がないと手遅れになる》

 

「そんなの許さない。その子を離しなさい!」

 

魔法で作った大量のリボンで子供を包んで助け出そうとするが一直線に子供に向かっていくが魔女は大きな腕で私のリボンを払い除ける。

 

「くっ」

 

体の大きさから予想はしていたけどこの魔女、力が強い!

 

だったら!

 

魔女の足元から大量のリボンを生やして魔女の腕や足、首に巻き付けて完全に動きを止める。

 

「これならどう、動けないでしょ?」

 

私は急いで子供を助ける為に動けなくなった魔女に近づいた。

 

魔女は暴れて引き千切ろうとするが二重三重にリボンを束ねて縛ってあるから簡単には引き千切れない。

 

だが時間を掛ければ引き千切られるので急いで子供の元に向かう。

 

「さあ、この手を取って」

 

子供を握り、引っ張るが・・・

 

「痛い、痛いよ!」

 

そんな・・・

 

抜けない、魔女の身体はまるでセメントのように固く子供を固定して抜くことができない。

 

ブチ・・・ブチブチ・・・

 

魔女を縛り上げてたリボンが魔女の力に耐えきれなくなって引き千切れていく。

 

「ウオオオオオオオ!」

 

咆哮を上げすべてのリボンを完全に引き千切り襲い掛かってきた。

 

「しまっ・・・」

 

リボンで慌てて再び縛り上げようとしたが思ったより早くリボンが引き千切られた事に慌ててた所為で行動が遅れ、逆に魔女の行動の方が早く

 

魔女の拳が私のお腹を殴り飛ばされる。

 

殴り飛ばされ転がる私

 

「う…うう・・・」

 

痛みで動けない私

 

痛い・・・体が・・・バラバラになりそう・・・

 

涙が止まらない・・・

 

魔法少女になってから治癒能力は上がっているので痛みはすぐに無くなって動けるようになったけど・・・

 

魔女を倒す手立てが思い浮かばない。

 

どうすればいいの?リボンで締め上げようとしても魔女の体は硬く。私の攻撃は効かない。

 

その上に魔女の胸には人質の子供。

 

助けたくても子供の体は私の力じゃ引き抜く事もできない。

 

誰かに助けを求めたくても私に一緒に戦ってくれる仲間なんていない・・・

 

《リボンじゃダメだ。リボンとあの硬い体の魔女じゃ相性が悪すぎる。もっと効果的な一撃を与えられる魔法じゃないとこの魔女には勝てない》

 

「じゃあどうすればいいの!?急がないとあの子が」

 

キュゥべえに当たり散らしたところで状況は変わらないのは分かっているがどうしょうもないこの状況じゃ・・・

 

「嫌だよ・・・怖いよ・・・ママ・・・怖いよ・・・」

 

子供も泣く元気さえなくなりはじめ弱弱しく声を出す。

 

《マミ、一度退却して体制を立て直すんだ。このままじゃ君までやられてしまう。早く逃げるんだ》

 

な、なに言ってるの!それじゃああの子が!?

 

《マミ辛いだろうけど諦めるしかない。今の君じゃ無駄死にするだけだ》

 

死ぬ・・・!

 

魔法少女になったあの日の事故を思い出す。

 

暗く、助けを求めても返事が返ってこない恐怖と孤独感。

 

嫌だ・・・もうあんな思いしたくない・・・

 

もうキュゥべえに助けれる奇跡なんて二度と起きないだろうから・・・

 

結界内で死ねば誰にも死んだ事を知られないという恐怖が襲ってくる。

 

私が死ねばお母さんが悲しむ。ただでさえお父さんが居なくなって上に私までいなくなったら・・・

 

《ここで君が死んだらこの魔女はもっと犠牲者を出す。だったら君がここで強くなって次あった時は確実に魔女を倒せるように強くなるんだ》

 

お母さん・・・お父さんがいなくなって大変なのに私に苦しい顔や愚痴一つ零さずにいつも笑顔で私に接してくれる。

 

あの子のお母さんもいなくなったあの子を泣き叫びながらも必死に探していた。

 

いなくなったらあの優しいお母さんとってどれほど辛いか想像もできない・・・

 

そんなのダメ!絶対私もあの子も生きて帰るんだから!

 

《結界の中で死んでしまったら遺体は残らない》

 

以前、聞いたキュゥべえの言葉を思い出す。

 

じゃああの子がここで死ねばあのお母さんはずっとあの子を探し待ち続ける事になる。

 

「・・・・キュゥべえは先に逃げて・・・私はソウルジェムが濁りきるギリギリまで戦ってみるわ・・・・」

 

《そんな無茶だよ、意地なんてはらずにマミも早く逃げるんだ》

 

意地でもなんでもいい。出来る限りの事しておきたい。

 

私は逃げずに戦う事を選んだ。

 

走り出して魔女の死角に入ると渾身のキックを浴びせる。

 

「(痛・・・なんて硬さなの!」

 

でもいくら硬くてもこの近距離ならどうかしら?

 

「トッカ・スピラーレ!」

 

螺旋状に回転したドリルが魔女の脇腹に直撃する。

 

ギュイイイイイイン

 

リボンの先と魔女の身体に火花が飛ぶ。

 

「(貫け・・・貫け・・・貫け・・・)」

 

必死に願う。この技が通用しなければもう打つ手がない。

 

私の技はリボンで相手の動きを拘束『トッカ』と『レガーレ』と『レガーレ・ヴァスタアリア』今使っている『トッカ・スピラーレ』だけのだから

 

だが私の願いもむなしく魔女はその大きな手で回転しているトッカ・スピラーレを握りしめ無理やり回転を止めて叩きつけた。

 

ソウルジェムも使い魔や魔女との戦いで大分穢れてしまった。

 

・・・もう打つ手がない・・・・

 

《マミ、君はもう十分にやったよ。きっとあの子も許してくれる早く逃げるんだ》

 

魔女の前に新たに三体の使い魔が召喚される。

 

私の死は誰にも分からなく行方不明扱いになればお母さんもあの子のお母さんも心配しながら探し続けるのかな・・・

 

「もう駄目なの・・・・お母さん・・・お・・・父・・・さん・・・」

 

私はあの子を見捨てて生き残る事を選択してしまった。

 

(・・・・ゴメンナサイ)

 

魔法少女なのに命が惜しくて逃げる私は子供に謝る事しかできない事に罪悪感を覚え、退却しようと背を魔女に向けて入ってきたシャッターに向かおうとしたその時!

 

「おりゃあああああ!」

 

《うわああああ!!》

 

第三者の男の子の声と共にシャッターが突き破られ、先にシャッターの金属片とドアの傍にいたキュゥべえが吹き飛ばされ空を舞う。

 

あ、金属片に包まれたキュゥべえが地面に落ちた・・・・

 

「ここか…祭りの場所は・・・」

 

砂煙と共にあの時見た赤い籠手を付けた少年が入って来ました。

 




マミさんも人間で自分の命が惜しいのでコウちゃんを置いて撤退するか後悔したくないから助ける為に無茶を承知で一真君が来るギリギリまで戦わせるべきか・・・どっちで書くか本気で悩んで予定より遅くなりました。申し訳ありません。

結果、マミさんはギリギリまで戦いましたが撤退する事になりました。

この苦い経験が今後、彼女をどう成長させるのか・・・(マミさんファンの方ごめんなさい)

後編は、一真君視点で探索から最深部に来るまでの出来事のお話です。


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第8話 新たな魔法少女(後編)

後編です。

最初に謝罪しておきます

蟹刑事、須藤雅史ファンの方、この話では嫌な役になってますので申し訳ありません。


【一真サイド】

 

 

「うめええ~おっちゃんの焼きそば、最高だな」

 

杏子ちゃんがおいしそうに屋台の焼きそばを食べて笑顔になっている。

 

 

「本当おいしい、俺もこの味出したいんだけどどうしても出せないんだよな」

 

俺と杏子ちゃんは教会に出現し逃げた魔女を追って見滝原にある大型公園に来ていた。

 

見滝原には魔法少女である巴さんがいるのだが本来、魔法少女同士が共闘することはほぼありえないとキュゥべえから聞いた杏子ちゃんは言う。

 

なぜなら魔法少女は魔法を使う度にソウルジェムが濁っていく。

 

濁りを取り除くには魔女が持つグリーフシードが必要である。

 

完全に濁ったらと魔法少女は魔法を使えなくなるという事になっている為、出来る限り濁りを取り除き続ける必要がある

 

だが数の多い使い魔にはグリーフシードはなく、数の少ない魔女にしかない

 

その上グリーフシードは消耗品で1,2回しか使えず使い続けたら再び魔女が孵化してしまう。

 

その為、グリーフシードの取り合いになり魔法少女同士が戦うことになってしまう。

 

だがグリーフシードを得る為に魔力を使って穢れができたら本末転倒。

 

その為、魔法少女は自分の縄張りで魔女狩りをするのが暗黙のルールになっている。

 

しかし俺達はそのルールを破って隣町の見滝原に来ている。

 

あの魔女を逃がしてしまったのは自分達の責任だ

 

手負いの魔女が何をするか分からない

 

傷を治そうと関係ない人を襲うかもしれない

 

だから偽善と罵られようと他人の縄張りに俺達は魔女を追ってきたのだ。

 

しかし肝心の魔女の手掛かりはなくお腹も空いたので公園で屋台をやっている知り合いのおじさんの所に来ていた。

 

「浅倉さん、いいかげん俺にもこの味の秘密教えてよ?」

 

「駄目だな、そいつは企業秘密って奴だ」

 

俺は焼きそば屋台の店主であるお願いするが蛇柄ジャケットにエプロンを付けた浅倉さんは嬉しそうに笑う。

 

はい、この浅倉さん。仮面ライダー龍騎に出てくる脱獄ライダー『浅倉威』と同姓同名のそっくりさんです。

 

あ、そっくりなのは顔と名前だけで本家と違ってイライラして鉄パイプで人を殴ったり犯罪も犯していないし、恰好で勘違いされやすいけど優しいお兄さんだからね。

 

この浅倉さんとの出会いは昔、父さんと母さんの三人でこの公園にピクニックに来た時に俺が見つけました。

 

どうやら母さんと父さんの昔からの知り合いらしく母さんはこれまでにないくらい殺意の込もった凄い目で浅倉さんを睨んでるし父さんは苦笑いしてるし浅倉は不敵にニヤニヤ笑ってるだけでした。

 

『何があったの?』って聞いても母さんは『子供には関係ない事よ』とだけ言って黙ってるし父さんも『うん、まあ色々とな・・・』って言葉を濁すし浅倉さんは笑ってるだけ。

 

ただその時『食うか?』って売り物の焼きそばをサービスでもらい、とても美味しかったです。

 

ただ母さんからは『こいつの所で焼きそば食べるのはいいけど、こいつから悪い事教わって実行したら家から叩き出すからね』と言われています。

 

いや、ほんとなにがあったの?

 

あ、俺の伯母で母さんのお姉さんはちゃんと生きてます。

 

「・・・・決め手はやはりこのソース?いや麺も自家製のようだから麺に秘密が・・・・」

 

俺と杏子ちゃんの後ろでブツブツと声が聞こえてくる。

 

声の主は通称ゴローちゃんと呼ばれている。由良吾郎さん。

 

そうです、スーパー弁護士の北岡秀一さんの秘書をやっているあのゴローちゃんです。

 

俺はさすがに年上なんで由良さんって呼んでるけど。

 

由良さんから料理を教わってます。

 

その関係で浅倉のおじさんの焼きそばや父さんの餃子の秘密を話し合ってます。

 

成果に乏しいく今だに謎なんだよな。

 

あと中学に上がったら由良さんからむやみに人に振るわない条件で拳法を習える事になりました。

 

これで魔女との戦いでより有利に戦える。

 

北岡さんも父さんが取材で知り合いなぜか親友になってました。

 

子供嫌いなのに北岡さんも俺には優しくしてくれます。

 

北岡さん自身は否定してるけど由良さん曰く『城戸さんや一真君と話す先生は楽しそうに見えます』との事だ。

 

俺には迷惑そうな顔にしか見えないけど由良さんが見たら違うんだろうな。

 

余談だけどやっぱりというかなんというかいました。

 

紅茶専門店で働く父さんとよく口げんかしながらも仲の良い秋山蓮さん。

 

秋山さんはお店がお休みの時バイクの後ろに俺を乗っけて海までツーリングに連れて行ってくれたりします。

 

 

 

「それにしても城戸の坊主が女連れて一丁前にデートするような年頃になっていたとわな…」

 

「ぶはっ!」

 

「違うよ浅倉さん、俺と杏子ちゃんはただの友達で遊びに来ただけだよ」

 

浅倉さんの言葉に杏子ちゃんは焼きそばを噴き出しかけてたのでフォローする。

 

そもそも転生した俺はともかく杏子ちゃんはまだ小学生なんだからそんな恋愛感情とかまだ早いって。

 

「・・・あ、ああ、うんそうだな・・・ただの友達だ・・・うん」

 

「・・・・お前も大変だな。ほらこいつはサービスだ」

 

「元気・・・出して下さい」

 

なぜか落ち込む杏子ちゃんに浅倉さんが杏子ちゃんの皿に焼きそば追加して由良さんが慰めてました。

 

そんな話をしていると・・・園内が何やら騒がしかった。

 

「なんだ?」

 

騒ぎの中心部に行ってみると

 

「コウちゃん!コウちゃん!どこなの!!」

 

「奥様落ち着いて、ねえ」

 

どうやらコウちゃんという子が迷子になり母親が半狂乱になって探してるようだ。

 

「ちょっとよろしいですか?」

 

警察官の制服を来た男が話かけてくる。

 

この男どこかで・・・?

 

「須藤か・・・屋台の許可とここでの営業の許可なら保健所でとってあるぞ」

 

浅倉さんが分かりやすいくらい不機嫌そうに答えている。

 

須藤・・・あ、そうかこの警官、仮面ライダーシザースの須藤雅史のそっくりさんか。

 

「そんな事は今はどうでもいいんです、この辺でこんな子供を見かけませんでしたか?どうせ親が子供から目を離していなくなった癖に母親が掻き消えるようにいなくなったと騒いで仕方がないんです」

 

そう言って写真を突き付ける須藤。

 

「知らねえな、見た事もねえよ」

 

「本当ですか?ずっとここで店を出していたんでしょ?隠すと営業許可を取り下げるように申請しますよ」

 

うわ~やな感じ、いかにも権力を笠に着てますって態度だな。

 

しかし、掻き消えるようにか・・・すこし気になるな。

 

杏子ちゃんはどう思うんだろう?

 

視線を杏子ちゃんに向けると

 

「(ん?杏子ちゃん?)」

 

杏子ちゃんを見ると須藤に見つからないように視線を下に逸らしていた。

 

「(なんだ?・・・あ!)」

 

その時、俺の脳裏に昔、杏子ちゃんが飢えに耐えきれずにリンゴを窃盗をしてしまった事を思い出した。

 

もしかしたらその時に会った警官で嫌な事を言われたのかもしれない。

 

「君、君はこの子を見なか・・・」

 

須藤が杏子ちゃんに話しかけようとしたので間に割って入る。

 

「すみません、おまわりさん。俺の妹、人見知りが激しいんで遠慮してもらえますか?今日、外では妹とずっといたので俺も見てないので妹も見てません。話なら俺が聞きますよ」

 

「しかしこの女の子、どこかで?」

 

須藤が俺を避けて杏子ちゃんに近づこうとするが俺が盾になる。

 

「なんですか?」

 

ニコニコと答える俺。

 

「いいからそこをどきたまえ」

 

俺を払いのけようと俺の肩を掴む須藤の手を誰かが掴む。

 

掴んだのは由良さんだった。

 

「・・・・おい、この手を離せ。公務執行妨害で逮捕するぞ」

 

「じゃあこっちは嫌がる女の子に必要以上迫ったと訴えてウチの先生に出てきてもらうッス」

 

「ハァ?先生?」

 

「これ、うちの先生の名刺ッス。もしまた来たらこの名刺もって二人で一緒に事務所に来てください。先生には俺から話を通しておくッス」

 

由良さんが掴んでいない手でポケットから名刺を出して俺に渡す。

 

「知らねえのか須藤、そいつはテレビでスーパー弁護士って騒がれている北岡秀一の秘書だぜ。訴えられたらお前も困るんじゃねえのか~」

 

「何!」

 

驚き後ずさりする須藤。どんな不利な裁判も黒を白にする北岡さんのすごさは有名だからな。ましてや疚しい事に心辺りがあったらそこを徹底的に調べ上げて突いてくるだろうし・・・

 

「くっ、と、とにかく子供を見つけたらすぐ知らせるんだぞ」

 

由良さんの手を振りほどき須藤は焦りながら離れていった。

 

「あ、ありがとう・・・ございました。あ、あのアタシ・・・」

 

「別に聞きたいと思わねえよ。俺の興味は焼きそばの味と今日の売上だけだ」

 

「俺も別にいいッス。この焼きそばの秘密を調べるのに忙しいんで」

 

言い辛そうにしている杏子ちゃんに笑って答える浅倉さんと由良さん

 

本当いい人達だな。

 

「浅倉さん、由良さんありがとうございました。あと焼きそばごちそうさまでした。行こう杏子ちゃん」

 

「お、おい」

 

俺は二人に頭を下げて赤くなった杏子ちゃんの手を引っ張って走り出した。

 

杏子ちゃんも引っ張られながら二人に軽く頭を下げ付いてくる。

 

「フッあいつのお人好しさは親父そっくりだな。霧島もそうだったが苦労するぜ譲ちゃん。さてさすがに今日は商売を続けれそうにないから店じまいの準備でもするか」

 

「売れ残った焼きそば全部買い取るッス」

 

「まいど~」

 

 

 

屋台から離れた先。

 

「杏子ちゃんは今日はもう帰った方がいいよ。さっきの警官に見つかるとやっかいだろうし」

 

「一真はどうするんだ?」

 

「俺は残って、さっき警官が言ってた掻き消えるように目の前から消えたって言葉が気になるから調べてみるよ。もしかしたら魔女に子供がさらわれたのかもしれないし」

 

「じ、じゃあアタシも残って調べるよ」

 

「無理しなくていいよ、さっきの警官と鉢合わせになったら杏子ちゃんが嫌だろうし」

 

「別に無理なんかしてないしもう大丈夫だ、それに・・・・」

 

「(アタシには一真がいるんだ。もう一人ぼっちじゃない)」

 

「ごめん聞こえなかったよ、何か言った?」

 

「な、なんでもねえよ、ほらあの警官が居ない間に母親から話を聞くぞ」

 

そう言って杏子ちゃんが俺の手を握って母親の元に行く

 

「どうかしたんですか?」

 

母親を止めている女性に声を掛けたら思った通りコウちゃんって子供がいなくなり皆で探している事を知る。

 

「分かりました。俺達も探すの手伝います。そのコウちゃんって子の特徴を教えてもらえますか?」

 

コウちゃんの特徴を聞き、探し始めた。

 

「ねえ?もしかして最近噂になってる神隠しにあったんじゃ?」

 

「しぃ!コウちゃんのママに聞かれたらどうするのよ」

 

「でも、さっき一緒に探すの手伝うって言ってた中学生もいなくなったし」

 

「飽きて帰ったんでしょ。早く探すわよ」

 

奥さん二人の会話をとりあえず頭の隅に置いておく。

 

どこにいるんだろう?

 

「コウちゃ~ん、どこだ~い?いたら返事してくれ~」

 

「お~いどこだ、返事しろ~」

 

少し歩いた所の公園の近くにある林の中でコウちゃんの名を呼ぶ。

 

だが返事は返ってこない。

 

『いいのか?相棒。魔女の事もあるのにこんな事してて?』

 

「手掛かりも見つからないしなによりコウちゃんって子がどこかで泣いてるかもしれないからほっとけないだろ」

 

「こいつのお人好しはいつもの事だろ」

 

『確かに相棒らしいな・・・ん!?』

 

「どうしたのドライグ?」

 

「相棒この先で魔女の結界反応がある!もしかしたら探してるガキもそこにいるかもしれんぞ!」

 

マジか!?

 

「ああ、アタシのソウルジェムもやばいくらい反応している急ぐぞ!」

 

急いで反応が強くなってる方へ向かうと魔女の結界の入り口を発見して二人で飛びこんだ。

 

跳び込んだ結界の中は首都高のような光景が結界内に広がっていた。

 

「子供はどこにいるんだろ?」

 

「おい、お客さんの到着だ」

 

槍を構える杏子ちゃん。

 

槍の先を見ると使い魔達が近づいてくる。

 

・・・・思ったより数が少ない?

 

「どけ!お前らに構っている暇なんてないんだ!」

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の先からウルトラマンメビウスの技に一つであるオレンジ色の光の刃『メビュームブレード』を出して使い魔に斬りかかる。

 

くそう!時間がないってのに!

 

杏子ちゃんも槍を多節棍に変形させて振り回し使い魔達を薙ぎ払う。

 

俺と杏子ちゃんは使い魔を退けながら魔女のいる最深部に向かった。

 

 

 

そして俺と杏子ちゃんは大きなシャッターの前にたどり着く。

 

「ここか・・・」

 

『ああ、間違いないこの奥から魔女と魔法少女と子供の反応がある。恐らく戦闘中だろう』

 

「魔法少女?アタシとは別に見滝原にも魔法少女がいるのか?」

 

『ああ、そうだ』

 

見滝原の魔法少女・・・・心辺りがあるとすれば巴マミさんか・・・

 

なるほど巴さんが先にいたから使い魔の数が思ったより少なかったんだな、おかげで思ったより早く最深部に来ることができた。

 

ただ、事故の事があったからできれば会いたくないけど子供が居るんじゃそうも言ってられない・・・

 

気持ち切り替えなきゃ!

 

俺はウルトラセブンのモロボシ・ダンがやってた透視能力でシャッターの向こうを透視する。

 

シャッターの向こうでは巴さんと魔女が戦っていた。

 

錆びたバイクのような魔女、確かに前もって杏子ちゃんから聞いていた魔女の特徴と一致する。

 

間違いなく教会から逃げた魔女だな。

 

さて子供は・・・・いた!あの魔女、自分の体に埋め込んで子供を盾にしてやがんのか!

 

とりあえず杏子ちゃんと作戦会議だな。

 

ぐずぐずしてると子供も巴さんも危ない。

 

巴さん自身も攻撃が効かなくて苦戦している。早くしないと!

 

「杏子ちゃん、この向こうに魔女と魔法少女がいる、そして子供は・・・・魔女の身体に埋め込まれている・・・」

 

「な!?」

 

驚く杏子ちゃんに中の状況を話続ける。

 

「しかも状況は最悪だ。中の魔法少女の攻撃は効いてないみたいでこのままだと子供を置いて撤退するかもしれない」

 

撤退に関しては別にどうこう言う気はない。

 

誰だって自分の命が惜しいし助ける義務もないのは分かる、それが例え魔法少女であったとしても。

 

「な、なあ一真、なんでお前中の様子分かるんだ?」

 

え?ああ、そういや話してなかったか。

 

「俺の能力の中に透視能力があって、さっきシャッターの向こうを透視したんだよ」

 

「と、透視だぁ!お前いったいいくつ能力持ってるんだよ!!」

 

さあ?赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)と全ウルトラマンの能力だから数えたらキリがないからな。

 

「な・・・なあ?」

 

何どうしたの?顔真っ赤にして?

 

「透視って事は服の中も見え・・・『できないし、仮にできてもやりません!』」

 

「う…信じるからな」

 

女の子だから心配する気持ちは分かるけど俺が憧れるウルトラマンの力使ってそんな悪用やるわけないでしょ。

 

気を取り直して作戦会議の続きするか。

 

「作戦はこうだ、俺が派手に登場してこちらに注意を引き付けるからその間に杏子ちゃんは子供の救出をお願い」

 

「任せな!派手に頼むぞ」

 

『Boost!』

 

「じゃあ行くよ・・・おりゃあああああ!」

 

特大のドラゴン・ショットでシャッターをぶち破る。

 

なんかシャッターの近くに白い外道が居たような気がしたけどまあ特に問題ないな。

 

砂煙がすごいな、そうだせっかく浅倉さんに会ったしあの台詞を言ってみるか。

 

「ここか・・・祭りの場所は・・・」

 

俺は首を傾けながら砂煙と共にシャッターの向こうに足を踏み入れたのだった。




屋台のシーンはノリと勢いで楽しく打ち込んでしまいました

だが私は謝らな(ry

次回、一真君、杏子ちゃん、マミさんがコウちゃんを助ける為にがんばります。 お楽しみに


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第9話 禁じられた力の代償

気づけば過去最高の文字数になってました。
しばらくバトルはお休みしたいけど・・無理だろうな・・・(溜まったアイディアのメモ用紙見ながら)


【一真サイド】

 

 

魔女のいる最深部に入った俺はまず状況確認。

 

巴さんは突然の乱入者に呆然としている。

 

キュゥべえの野郎は・・・なんかボロボロだけど問題なし。

 

さて魔女は・・・よしさすがの魔女も予想外の出来事に戸惑って動きを止めたな。

 

「(あとは頼むよ杏子ちゃん)」

 

「「「「任せろ!」」」」

 

四人に分身した杏子ちゃんが飛び込んできて四人の杏子ちゃんが魔女の前で現れたり消えたり目の前でアッカンベーしたりして撹乱する。

 

「「「「ここだ!」」」」

 

魔女の隙を見つけた本物の杏子ちゃんが子供を引っ張りだすとするが

 

「ぬ、抜けない!」

 

コウちゃんの下半身は完全に魔女の身体に埋もれて同化してるようだ。

 

「痛い!痛いよ!!」

 

「あ、ごめっ・・・」

 

コウちゃんの声に杏子ちゃんは動揺してしまい思わず手を緩めてしまう。

 

「ガアアア!!」

 

その隙を突いた魔女は体を振るい杏子ちゃんを払い除けた。

 

衝撃で三人の分身杏子ちゃんが消える。

 

「しまっ・・・うわ!」

 

ふっ飛ばされた杏子ちゃんはなんとか空中で体制を立て直しなんとか着地に成功。

 

事態は振出しに戻った。

 

 

 

~マミサイド~

 

「悪い、あの子を助けられなかった。」

 

「なあに、まだチャンスはあるよ」

 

『おそらくさっき聞いた神隠しの噂の原因は傷ついた体を癒していたあいつが原因だろうな』

 

「あ、あのあなた達は・・・・」

 

二人の会話に割って入る事にいささか躊躇したがこの状況で敵か味方か分からない相手には警戒しなくちゃ

 

「アタシは佐倉杏子、アンタ見滝原の魔法少女だろ?普段は風見野で魔女を狩ってるんだけどあの魔女がこっちに逃げてきたんで追ってきたんだ。」

 

振り返った女の子の方は私と同じ魔法少女だと分かる。でもこの同い年ぐらいの男の子は?

 

「俺は城戸一真。そして最後の声はドライグ。魔法少女じゃないけど戦える力があるから杏子ちゃんの手伝いをしている。あの子の事はあの子のお母さんから聞いたよ」

 

振り返らず魔女の動きに警戒しながら答える男の子。

 

じゃあこの人達もあの子を助けに来てくれたの?それならなんとかなるかも。

 

《やれやれ、君達も来たのかい?イレギュラーと佐倉杏子》

 

いつまにかキュゥべえが私達の後ろに来ていた。

 

あれキュゥべえあなたさっきまで傷だらけだったのになんでもう回復して無傷になってるの?

 

《まったく人間っていうのは訳が分からないよ。罪悪感とか責任感っていう感情で他人の縄張りに土足で割り込むなんて》

 

「んだと!」

 

「・・・邪魔だからどっか行ってろ!お前の声を聞くと虫唾が走り気が散る」

 

佐倉さんと城戸君が怒気を含んだ声でキュゥべえを見ずに答える。

 

イレギュラーって城戸君の事よね、じゃあ城戸君はキュゥべえにとって予期せぬ存在なの?

 

《やれやれ相変わらず君達には嫌われてるね。じゃあ僕達はここから離れさせてもらうよ。マミ行こう》

 

キュゥべえに言われて思い出す。

 

そうだ城戸君達の乱入で忘れてたけど私はあの子を見捨てて逃げようとしてたんだ。

 

「なんだよアンタ、あの子を置いて逃げるつもりだったのか?」

 

佐倉さんと呼ばれた魔法少女の言葉に胸が痛む

 

「杏子ちゃん!ごめん、杏子ちゃんの代わりに謝るよ。あなたが使い魔を減らしてくれたおかげで俺達はすんなりここまで来ることができた。ありがとう。あとは俺達がなんとかするから君は早く逃げるんだ」

 

逃げようとした私が感謝される筋合いないのに・・・・

 

「い、いえ・・・あ、あの私巴マミって言います。ごめんなさい役に立てなくて・・・」

 

「そんな事ないよ!」

 

謝る私に城戸君が強い口調で否定する。

 

「巴さんがいなければ俺達は使い魔に足止めされて魔力を消費してしまってここまで温存して来られなかったんだ。だからもうそんな事絶対に言わないで」

 

「・・・悪りいアタシも言いすぎた。それに元はと言えばアタシがあいつを逃がしたのが原因なのに」

 

《話はついたかい?じゃあマミ、あとは任せて僕達は撤退させてもらう》

 

「・・・キュゥべえ、私も最後まで残って結果を見届けるわ。このまま無責任に撤退なんかしたくない」

 

そうだ、このままここを離れたら私はもう二度と魔法少女として人を守る為なんて言って戦えない。そんな気がしたから。

 

《やれやれ僕には理解できないな。せっかくの逃げるチャンスを無駄にするなんて。じゃあ僕だけでも失礼するよ。マミ、最後にもう一度忠告するけど君も早く逃げた方がいい。彼らに構ってこんな所で命を落とすことなんてないんだからさ》

 

そう言い残しキュゥべえは、影に近づくとまるで潜るかのように消えていた。

 

「なんだアイツ!」

 

「いつもの事でしょ、気にしたら負けさ」

 

怒る佐倉さん城戸さんが冷静に宥めている。

 

いいコンビで羨ましいな。

 

「あの、私に出来る事があったらなんでもします。あの子を助けるのを手伝わせて下さい。」

 

「分かった、こちらこそよろしくお願いします。あの魔女のグリーフシードはそちらに差し上げますので改めてあの子を助ける為にあの魔女を倒すのに協力して下さい。」

 

「はあ!?なんでだよ、あいつはアタシらの獲物だぞ」

 

「あのね、杏子ちゃん。ここは見滝原。俺達は逃がしてしまった魔女を追って無断で彼女の縄張りに入って魔女退治をしようとしてるんだよ。だったらグリーフシードは彼女に渡すのが筋ってもんでしょ?」

 

「ぐっ・・・一真、この埋め合わせに今度なにかうまいもん作れよ!あとアンタ、足手まといになったら遠慮なく見捨てるからな」

 

「OK、リクエスト考えておいてよ」

 

なんなのこの二人・・・こんな状況なのになんで平然としているの。

 

「杏子ちゃん、受け取って」

 

『Transfer!!』

 

城戸君が佐倉さんの肩に赤い籠手を置くと赤い魔力が佐倉さんの身体を覆って魔力が格段と上がる。

 

「サンキューな」

 

赤いオーラを纏い佐倉さんが跳び出していく。

 

「あ、あの城戸君、今の何をしたの?」

 

「あれはこの赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の能力の一つ赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)。この赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)は使用者の力を倍加させることができるんだ、もちろん色々と制限があるけどね。

そして赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)はそんな溜めた倍加の力を相手や物体に譲渡する技なんだ。」

 

力の倍加に力の譲渡!彼はそんな事ができるの!

 

あまりの常識外れの出来事に頭が追いつかない

 

「さておしゃべりはここまでだ。俺も行くよ。魔女や使い魔の隙を見つけたら援護をよろしく」

 

そう言って城戸君が使い魔や魔女に向かって走り出して行った。

 

「はあああっ!」

 

佐倉さんは幻術の魔法や素早い動きで槍を巧みに使い次々使い魔を蹴散らしていく。

 

物凄い速さだ。

 

城戸君の赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)で能力を倍加させてる事を差し引いた普通の状態でもリボンだけの武器しか持たない私じゃ敵わないと思う。

 

生きて帰れたらリボンに変わる強力な武器を考えないと・・・

 

でもそれよりも私が驚いたのは城戸君の方だ。

 

本来、魔女や使い魔は魔法少女にしか相手できない筈なのに魔法少女じゃない城戸君が使い魔と戦っていた。

 

普通の人間と違う所は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)と呼ばれる赤い籠手が付いて籠手の先から光の剣のような物が出ていて器用に次々使い魔を倒していく。

 

動きも慣れているようで殴りかかってくる使い魔の攻撃を次々避けていく。

 

私たち魔法少女なら魔力を消費する変わりに治癒能力が上がっているから多少の攻撃を受けても大丈夫だ。

 

でも彼は少し人と違う力を持ってるだけの人間だ。一度でも攻撃に当たったら致命傷になるかもしれないのに・・・

 

にもかかわらずに城戸君は前へ前へと向かっている。

 

どうして・・・?当たれば死ぬかもしれないのにどうしてそんなに無茶な戦い方ができるの・・・・?

 

城戸君は使い魔の攻撃を避けながら時折赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宝玉が緑色の光を放ちながら音声が流れ、何かを待っているかのようだった。

 

『Boost!!』

 

「くらえ!」

 

『Explosion!!』

 

彼が左手を使い魔に向けると赤い塊の砲撃が放たれた。

 

「ギャアアア!!」

 

使い魔は断末魔の叫びをあげ砲撃に飲み込まれて消滅した。

 

あれは魔力!?

 

なんで一般の男の子が魔力弾を放てるの!?

 

 

 

【一真サイド】

 

「いよいよ本命だな」

 

「ああ、行くよ杏子ちゃん!」

 

全ての使い魔を葬った俺達はコウちゃんを摂り込みかけて盾にしている魔女と対峙する。

 

魔女は部下の使い魔がやられて怒り狂ってるのか不気味な声をだして威嚇している。

 

「気をつけて!その魔女は攻撃しようとすると私達があの子に攻撃できないのを理解してるようで、攻撃の矛先をあの子の方に向けてのよ」

 

巴さんが大声で俺達に向けて叫ぶ。

 

「卑怯な奴だ。で、どうすんだ?」

 

「ストレートが駄目ならボール球を振らせればいい・・・」

 

「はあ?」

 

「つまり・・・・・・で・・・こうして・・・こうするわけ・・・・・」

 

「なるほどな!分かった。で巴さんだっけ?あっちはどうするんだ?私が行って伝えるか?」

 

アイツ(キュゥべえ)・・・魔法少女同士は念話できるって杏子ちゃんに教えてねえのかよ・・・

 

まあすぐに俺が杏子ちゃんの相棒になったから不都合が生じると思い、奴自身が故意に隠したかもしれないが・・・

 

俺も念話が使えればいいんだけど魔法少女じゃないから使えない。

 

だけどウルトラマンの能力でテレパシーを一方的だけど送れる。

 

「いやいいよ。俺がテレパシーで伝えるから」

 

「・・・透視の次はテレパシーかよ、なんでもありだな・・・もうアタシはお前が何やっても驚かねえ・・・」

 

呆れる杏子ちゃん。

 

なんか寂しいなそれ・・・

 

《えっと・・・巴さん聞こえる?》

 

「え?城戸君!なんで頭の中から声が聞こえるの!?」

 

テレパシーで巴さんに話しかけると辺りを見回す巴さん。

 

そりゃ驚くよね・・・

 

《落ち着いてこれは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の力で俺から送るだけしかできないテレパシーみたいな物だから》

 

本当は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)にそんな機能ないんだけどね。

 

さすがに杏子ちゃんと違って会ったばかりの巴さんには本当の事を言えないからな。

 

巴さんがこっちを見ているので俺は横目で巴さんの方を見てうなづく。

 

《あいにく俺の方は巴さんの声を聞く事はできない。それであの子を傷つけずに魔女を倒す方法があるんだ。巴さんも手伝ってほしい。方法なんだけど・・・・・に・・・を・・・を・・・でお願いします。了解したなら二回うなづいて》

 

二回首を縦に振る巴さん

 

「巴さんもOKだ。いくよ杏子ちゃん!」

 

「分かった!先陣はアタシが行かせてもらうぞ!」

 

杏子ちゃんが突撃し魔女に向かって槍を振り下ろす。

 

魔女はコウちゃんを盾にしようと槍の矛先をコウちゃんに向けるが槍は当たらず幻の様に消える。

 

「ヴァア!?」

 

驚く魔女。

 

「バーカ!本命はこっちだ!!」

 

魔女の背後から背中を切り裂く杏子ちゃん

 

俺が赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で殴ろうとしてコウちゃんを盾にしようとしても

 

「おっと!」

 

寸止めしてコウちゃんのいない部分の魔女の身体を蹴って距離を開け。

 

魔女の頭の上に着地した杏子ちゃんが槍で頭を突きまくって苦しがる。

 

これがウルトラマンダイナのアスカ隊員が言っていたストレートが駄目ならボール球を振らせればいい作戦

 

一人が囮の攻撃をしてコウちゃんを盾に使用としたら寸止めして、反対側から本命の攻撃をして魔女にダメージを与える。

 

魔女は首を振り杏子ちゃんを振り落として殴るが殴られた杏子ちゃんは分身で消える。

 

「残念!そいつはハズレだ。」

 

本物の杏子ちゃんが魔女の右腕の肘の関節を大きく切り裂いた

 

「グオオォォォ!」

 

足元に転がる魔女の右腕

 

作戦内容の誰が囮で誰が本命の攻撃するかは俺がテレパシーで杏子ちゃんと巴さんに伝えている

 

例えば《俺と分身が囮2回で三回目が本命!》と指示しながら。

 

対応しようとしても奴の動きは遅いから対応しようにも体が追い付かない。

 

また本命が読まれて対応できたとしても。

 

「レガーレ・ヴァスタアリア!」

 

「グガッ!」

 

魔女の腕か足を巴さんのリボンで締め上げる。

 

リボンは引き千切られるけどそれでも数秒は動きを止められる。

 

その隙に次の本命が攻撃を仕掛ける。

 

巴さんに送ったテレパシーの内容は一言

 

《魔女が本命の方にあの子を向けたらリボンで拘束して動きを止めて》

 

「はあああっ!」

 

「おりゃああ!」

 

コウちゃんのいない死角に杏子ちゃんと俺の攻撃をたたき込む。

 

「ゴガッ」

 

俺と杏子ちゃんが攻撃した後、距離を開ける為にジャンプして横に並ぶ。

 

「やるな、一真。このまま一気に削りきるぞ」

 

「ああ、時間はかかるかもしれないど確実な方法だ。」

 

だがコウちゃんの体力を考えるとあまり悠長な事はできない。

 

なるべく早く決着を付けないと

 

次の一手を考えていたら魔女が急に動きを止めてまったく動かなくなる。

 

「なんだ?動きが止まったぞ観念して諦めたか?」

 

ニヤリと口元を緩める杏子ちゃん。

 

諦めた?魔女が?本当にそうなのか?

 

胸騒ぎがする。

 

警戒して魔女から距離を取る様に杏子ちゃんに指示を出しそれに従い距離を取る俺達。

 

「・・・・杏子ちゃんなにか聞こえない?」

 

「あぁ?」

 

「ブルルルル・・・・ブルルルル・・・」

 

二人で耳を澄ましてみると魔女から聞いた事ある音がしてきた。

 

「なんだ?この音は?」

 

これは・・・・エンジンを掛ける音!?

 

『ブルルル・・・ブロロロロロロ!!」

 

魔女のエンジンが点火して爆音が響き渡る。

 

こいつまさかいままで本気じゃなかったのか!?

 

「な、何が起こったんだ!うわあ!」

 

「くっ!」

 

「キャァ!!」

 

魔女を中心に引き寄せられるように空気が吸い込まれていく。

 

杏子ちゃんは槍を俺はメビュームブレードをそれぞれ地面に突き刺して、巴さんは地面から数本のリボンを出して自分に巻き付けて魔女に吸い込まれないように体を固定する。

 

そうだ!あの子は・・・

 

よかった。コウちゃんは吸い込まれずにそのままの状態のままだ。

 

魔女が吸引する事で何かが魔女に向かって飛んできている。

 

あれは俺達が倒した使い魔の残骸?

 

残骸は魔女の体にぶつかると次々摂り込まれていく。

 

「なんだ?この音は!?」

 

「おいおい洒落にならねえぞ、これ」

 

魔女がさきほどより一段と大きなエンジン音を出すと魔女を覆っていた錆がボロボロと落ち始めた。

 

残った錆も自身の身体を揺らすことで振るい落とした。

 

そこ現れたのはさきほどの赤茶けた錆だらけの魔女ではなく光を反射する美しい銀色の姿をした魔女が現れた。

 

コウちゃんはフロントタイヤを覆うフロントフェンダーの部分に縛られている。

 

さしずめ銀の魔女と言った所か

 

「へっ!錆が取れてギンギラになったからってなんだってんだ!」

 

杏子ちゃんが槍で銀の魔女の頭部に向かって縦一線に斬り掛かる。

 

タイミングは完璧だった。

 

「何!?」

 

しかし銀の魔女は消え槍は地面を叩いてしまう。

 

消えた銀の魔女は杏子ちゃんの背後に現れた。

 

「しまっ・・・!」

 

杏子が後ろを見ると魔女がその大きな右腕を振り上げ振り下ろそうとしていた。

 

「させるか!」

 

銀の魔女に向かって跳びかかる様にジャンプして赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)でパンチしようとするが。

 

「ブオオオオオオン」

 

「(消えた!)」

 

俺の拳は空を切り、杏子ちゃんと互いに背を預け警戒する。

 

「ありがとな」

 

「どういたしまして」

 

急にあたりが暗くなった。

 

「一真、上だ!」

 

違う。影だ!

 

俺と杏子ちゃんは前に跳び出してすぐに上から銀の魔女が降ってきて地面が陥没する。

 

杏子ちゃんが気づかずに声がなく、すこしでも跳び出すのが遅れたら俺と杏子ちゃんは魔女の下敷きになってしまっていただろう。

 

錆びた状態では動きが鈍いが、エンジンが掛かり錆が取れた事で攻撃力・機動力が上がるってわけか、

 

こんなに素早くてはもうボール球作戦は使えない。

 

厄介だな。

 

陥没した穴から銀の魔女がジャンプして出てくる。

 

さらに人型からバイクに変形して猛スピードでこっちに迫ってくる。。

 

変形はしたがコウちゃんはフロントフェンダーに縛られているので地面に擦られるような事がなかったのが幸いだ。

 

だが猛スピードで走るバイクに生身で縛りつけられるのは恐怖でしかない。

 

あれだけはなんとしても止めさせないと。

 

動きだけでも止める為に自分の力を倍加しする。

 

プロモーションキングは時間制限があるからまだ使う時じゃない。

 

走ってきた銀の魔女を真っ向から受け止める。

 

「ぐお!」

 

『相棒、無茶だ!』

 

無茶は承知。でもこれだけは止めないと。

 

何とか受け止めることはできたが倍加したとしても人とバイクじゃバイクの方が上。

 

徐々に押されていく。

 

コウちゃんの方を見ると泣き疲れ意識が朦朧としている。

 

これはヤバイ。

 

短期決戦で済まさないと直感的にそう思った。

 

「うああ!」

 

競り負けてふっ飛ばされて地面に叩きつけられる。

 

「ぐ・・・ああ・・・」

 

倒れている俺に追い打ちを掛けるようにタイヤを召喚し投げてくるバイク形態の銀の魔女。

 

ドラゴンショットで迎撃しようにも痛みで腕が動かない。

 

「一真!」

 

「城戸君!トッカ・スピラーレ!」

 

杏子ちゃんと巴さんが倒れている俺の前に立って槍がタイヤを切り裂き、螺旋状なったリボンがもう一個のタイヤを貫く。

 

「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!あ・・・ありが・・・とう二人とも・・・」

 

痛みでまだうまくしゃべれない

 

咳をする度に鉄の味が広がる。

 

さっきの突進でふっ飛ばされて落ちた時にどこか痛めたか?

 

「無茶すんなバカ!」

 

「今治療を!」

 

杏子ちゃんが警戒して巴さんが治癒魔法をかけてくれた。

 

その間に銀の魔女はバイクから人型に変形して戻っている。

 

「アイツ、なんでテメエの使い魔の残骸は摂り込んだってのに子供の方は残してるんだ?こっちとしてそれで助かってるけどさ。アタシらをここまで追い込んでるしあの子を盾を使う必要なんてないと思うけどよ」

 

『恐らくガキの泣き叫ぶ声を聞いて楽しんでいるのだろう。自分を助けに来た者達が手も足も出ずにやられる姿をガキにワザと見せてさらに絶望させる。魔女は絶望を好物し振り撒く悪趣味な奴らしいからな。』

 

杏子ちゃんの問いにドライグが答えてくれている。

 

じゃあこの状況も俺達を獲物として追い込んでいる奴を喜ばせる前菜って所か・・・

 

「終わったわ。城戸君」

 

「ありがとうございます。巴さん」

 

「一真、お前はすこし休んでいろ。お前は私らと違って自己治癒能力がないんだから!いくぞ巴さん!!

 

「ええ」

 

「二人とも、まっ・・・」

 

止めるのも聞かずに跳び出す二人

 

二人も分かっているんだな。早くコウちゃんを助けないと命が危ない事に。

 

さてどうする?

 

「レガーレ・ヴァスタアリア!」

 

巴さんが大量のリボンを出して銀の魔女を縛りつけて動きを止めようとするが

 

「そんな!」

 

錆の取れた銀の魔女はさきほどの錆を纏っていた時と違いエンジンが掛かっている為、パワーが上がりあっさりとリボンを引き千切り足止めにもならない

 

「うわ!」

 

杏子ちゃんが三人の分身で飛びかかるがスピードが上がった魔女は強化した杏子ちゃん以上のスピードで応戦し、杏子ちゃんが分身事払いのけられる。

 

錆が取れてエンジンの掛かった奴のスピードとパワーがさっきより格段に上がってる。

 

「ハァハァハァ・・・」

 

「ハァハァハァ・・・」

 

肩で息している杏子ちゃんも巴さんもすでに限界が近い。

 

杏子ちゃんも魔女が素早い上にコウちゃんを盾にしているから攻撃が上手く当てられない。

 

その上、疲れと攻撃を食らって体力を消耗している。

 

おまけに回復と幻術で魔力を消費してしまっているから杏子ちゃんの胸のソウルジェムが濁っているな。

 

特に巴さんのソウルジェムもほとんど濁ってしまっている。

 

無理もない支援とはいえ俺たちが来るまでたった一人で使い魔や魔女と戦っていたんだから。

 

このままだと彼女達は絶望感に押し負けてソウルジェムが完全に濁りきってしまい魔女化してしまう。

 

プロモーションキングを使えば銀の魔女に対抗できるかもしれないけど、あれは五分間しか使えない。

 

その間にコウちゃんを助け出せて銀の魔女を倒せるのか?

 

コウちゃんを助け出せる手は考えてあるがプロモーションキングだけじゃ今いち決め手に欠ける。

 

打つ手なしか…いや待てまだ手はある!

 

「(ドライグ、お前はハイスクールD×Dの原作を知ってるんだよな?)」

 

『(ああ、だが急にどうしたんだ?)』

 

「だったら兵藤一誠が二度目のライザー・フェニックス戦でやった”アレ”って俺にもできるか?」

 

「何!?まさかお前!」

 

「ああ、俺も兵藤一誠のように左腕を代価にして一時的に禁手(バランス・ブレイカー)に至る。もうここから生きて抜け出るにはそれしかない」

 

『バカな事言うな。ライザー・フェニックスが言ってたように二度と左腕は元に戻らないんだぞ!』

 

「もう逃げられないしここで負けたら俺や杏子ちゃんも巴さん、あの子も終わりなんだ。だったら勝てる方に賭けるさ」

 

さっき結界の出口を見たが出口は魔女が進化した時に消滅していた。

 

『・・・・はっはっはいいだろうその心意気、気にいった。こうなれば一蓮托生だ。俺もお前に命を賭けよう!』

 

ドライグがそう言い終わると左腕に激痛が襲う。

 

「ぐああああああ!!!」

 

「一真!」

 

「城戸君!」

 

二人の心配する声が聞こえる。

 

「だ、大丈夫だ!」

 

俺は二人に安心するように声を掛けたが・・・

 

痛い!

 

左腕が引き千切られたみたいな激痛だ。

 

これが代償の痛みって奴か!

 

本気で泣きそう!

 

でも痛くない!

 

痛いけどアイツを倒してあの子を助け出してみんなと生きて脱出できるなら我慢してやろうじゃないか!

 

赤いオーラが俺の全身を包み込むとそのまま固定される。

 

「(ドライグ、禁手化(バランス・ブレイク)するタイミングは俺に任せてくれないか?合図したら一気に禁手化(バランス・ブレイク)してくれ)」

 

『(分かった何をするか分からないが相棒を信じよう)』

 

「(さて問題はプロモーションキングが発動してる五分間の間に奴が俺の予想通りの行動を起こしてくれるかが鍵だな)」

 

「プロモーションキング!」

 

俺の服が駒王学園の制服に変化して左腕の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を右腕にウルトラマンアグルのアグルブレードを出して銀の魔女に向かって走り出す。

 

「あれって確か前に話してたプロモーションキングって奴だよな。」

 

「服装が変わった!彼も魔法少女なの?」

 

聴力があがった所為か杏子ちゃんと巴さんの声が聞こえてきた。

 

銀の魔女もバイクに変形して突進してくる。

 

ぶつかる直前に銀の魔女はバイクから人型に変形して右腕で殴りかかって来るのを赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で受け流して素早くアグルブレードを腹に突き立てる。

 

銀の魔女は痛みで腹を抑えながらも拳を振るう。

 

俺はそれを躱してカウンターでアグルブレードで突きまくる。

 

カウンターの為、銀の魔女もコウちゃんを盾にできていない。

 

見える!

 

プロモーションキングで身体能力を底上げした事で身体能力はもちろん、動体視力もアップしたからなんとか奴の放ってくる拳が見えるから避けられる。

 

ただ無理に動体視力を上げた弊害か頭がガンガンして痛いけど・・・これなら奴の動きにも対応できる。

 

あとは銀の魔女が追い込まれて五分間の間に俺の思惑通りの【行動】を取ってくれることを祈るばかりだ。

 

「すっげえ一真の奴、あの早い魔女の動きに完全に対応してやがる。」

 

「ね、ねえ彼は何者なの?魔法少女でもないんでしょ?」

 

「アタシの幼なじみだよ。ただちょっと変な能力を色々もってるけどな・・・」

 

銀の魔女はバイクに変形して突進してくる。

 

俺はギリギリまで引きつけてジャンプしてバイクになった銀の魔女の上に飛び乗りアグルブレードで背中を突きたてまくった。

 

銀の魔女は痛みで暴れて俺を振り落とそうとする。

 

俺は左手でスロットルを握り、銀の魔女の背中を突きまくる。

 

ある程度ダメージを与えたらジャンプして脱出する。

 

そして再び睨み合う俺と銀の魔女

 

拳とバイク形態からの突進攻撃

 

お前の攻撃は全部封じたぞ。もう最後の手段しかないんじゃないのか?

 

こっちもそろそろ時間切れなんだ。早く頼むぞ

 

「・・・・・ギュルルル!」

 

急に銀の魔女は後ろに向き

 

距離を開いた。そろそろか?

 

俺からかなりの距離を離れて人型に戻った銀の魔女、そして!

 

「うわあああん!たすけて!!」

 

コウちゃんが必死に手を伸ばし掴もうとするがどんどん身体が吸い込まれていく。

 

やつはついに人質であったコウちゃんを吸収してダメージから回復する手段に打って出る。

 

「いけない!あの子が!やめて!!」

 

「くそう!!やめろ!!」

 

杏子ちゃんも巴さんもコウちゃんが摂り込まれるという最悪の事態が頭に過って悲痛な叫びを上げて魔女に向かって行く。

 

だが俺は・・・・

 

この瞬間を待っていたんだ!

 

「ドライグ!!!!」

 

Welsh Dragon over booster!!!!(ウェルシュドラゴンオーバーブースター)

 

身体を覆っていた赤いオーラは物質化して、とある魔法少女と同じ赤い色の鎧になっていく。

 

全身にこれまでにない感覚と力が流れ込んでくるのがはっきりと分かる。

 

頭、両腕、身体、両足に装着されたドラゴンを模した赤い全身鎧(フルプレートアーマー)

 

疑似だけど憧れの赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を俺はついに纏うことができたんだ。

 

『Ⅹ』

 

お前は獲物を吸収する時の弱点を知っている。

 

だからこそ俺達にコウちゃんを吸収するのを邪魔されないように距離を開いたつもりだろうけど残念だったな。

 

王の駒(キング・ピース)のプロモーションキングだけなら間に合わなかったかもしれないけど、この距離でも最後の切り札を使えば俺の距離だ。

 

プロモーションキングで強化した脚力で地面を蹴り出し、さらに背中の魔力口から圧縮魔力を吐き出して猛スピードを超えた超スピードで一気に銀の魔女の懐まで一気に接近する。

 

『Ⅸ』

 

俺はジャンプしてアッパーで銀の魔女をぶっ飛ばすと同時にコウちゃんを引っ張り出しそうと掴む。

 

すると先ほどまで抜けなかったコウちゃんの身体は、まるで柔らかい泥から棒を引き抜くかのようにあっさり引き抜かれた。

 

「ふえ?」

 

当然の事に呆然とするコウちゃん。

 

左手でドラゴンショットを放ち、爆風の衝撃から右腕でコウちゃんを守りながら抱っこして爆風に乗って後ろにジャンプしする。

 

『なるほど考えたな。魔女は獲物を体内に摂り込む時、どうしても体を柔らかく軟化させなければならない。その隙をつくとはな』

 

「ああアイツが自分の使い魔の残骸を摂り込んだ時に思い付いた。」

 

『だが危険な賭けだったのには変わりない。もし間に合わなかったらそのガキは完全に魔女の餌食になっていたぞ。」

 

「それは大丈夫だよ」

 

『なぜだ?』

 

「俺もドライグの力を信じてたからな」

 

『・・・・フッ』

 

俺の言葉に照れくさそうに笑うドライグ

 

『Ⅷ』

 

「うう…うう、ママ・・・」

 

「大丈夫だよ」

 

「うえ?」

 

怖くて今にも泣きだそうとするコウちゃんに怖がらせないように優しく声を掛ける。

 

「俺やあそこにいる君を助ける為に頑張ったマミお姉ちゃんが君を絶対にママの所に送り届けるからね」

 

「まみ・・・おねーちゃん?」

 

「そう、優しいお姉ちゃんだよ」

 

『Ⅶ』

 

コウちゃんを抱っこしたまま優しく巴さんの前に着地する。

 

衝撃が強いとコウちゃんがまた泣いてしまうかもしれないからな。

 

「一真・・・なのか?」

 

「そ。その姿は?」

 

全身鎧(フルプレートアーマー)を着こんだ俺に驚きながらも駆け寄る杏子ちゃん

 

「痛い・・・痛いよ・・・」

 

よく見ると抱っこしているコウちゃんの膝から足に掛けて魔女の身体に挟まれていた為、傷だらけになっていた。

 

「ひでえ・・・」

 

「早く治療しないと」

 

時間はないがこのままにしておけない、

 

コウちゃんの足に左手でリライブ光線を浴びせて治療する。

 

鎧が解除されたら三日間は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が使えなくなるからウルトラマンの能力も使えるか分からないからな

 

リライブ光線でコウちゃんの足の怪我が治療されて傷が無くなっていく。

 

『Ⅵ』

 

「今の光!あの時の!?」

 

「この子をお願いします」

 

「は、はい」

 

驚きながらマミさんがコウちゃんを受け取る。

 

コウちゃんを預けて離れようとした時。

 

「お、おいちょっと待て、お前、その姿は!?」

 

「ごめん、杏子ちゃん。この姿は時間制限があるんだ。話はまたあとで」

 

『Ⅴ』

 

魔女の方にジャンプして蹴り上げ。

 

魔女の素早い剛腕を躱し

 

腕を潜り抜けてクロスカウンターの要領で殴る。

 

とにかく殴る!時間がないので何度も!何度も!

 

魔女はよろめきながらも巨大な右腕を振り下ろす。

 

その腕を衝撃で地面が陥没しながらも両手で受け止める。

 

『Ⅳ』

 

魔女が自分の影から使い魔三匹を召喚して使い魔たちが飛びかかってくる

 

一匹目を右腕の拳で殴り倒し

 

二匹目を左の裏拳でぶッ飛ばし

 

三匹目を回し蹴りで蹴り飛ばしたながら魔女に歩み寄って行く

 

「!!???!!!?」

 

魔女はバイクに変形して慌てて逃げようと結界を解き始めた

 

『Ⅲ』

 

『JIET!』

 

背中の圧縮した魔力を吐き出して猛スピードで接近して銀の魔女の顔先まで跳躍して拳を構える。

 

「(君も元は魔法少女でみんなの為に戦っていたかもしれない。辛かったよね・・・でも今の君は魔女で人に害を仇なす存在になってしまった)」

 

出来る事なら君を元の普通の女の子に戻したかった。

 

でも今の俺に君を戻す力はない・・・

 

一度、杏子ちゃんがいない時に魔女を魔法少女に戻せないかとウルトラマンコスモスルナモードのフルムーンレクトやルナミラクルゼロのフルムーンウェーブなどの浄化技を使ってみたが効果はなかった。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で能力を倍化しても効果は変わらず。

 

『・・・元に戻すのは無理だ相棒。すぐに魔女化したのなら可能性はあったかもしれないがコイツらは時間が経ちすぎてなにもかも完全に魔女になってしまってやがる・・・』

 

返ってきたのはドライグの残酷な回答・・・

 

『Ⅱ』

 

そっか・・・できればインキュベーターの被害者である彼女たちを元に戻したかったがそれができないなら勝手な言い分だけど魔女化した彼女らがこれ以上罪を重ねないようにここで消滅させる。

 

怨みなら俺が全部受け止めよう。

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

だからおやすみ・・・

 

『Ⅰ』

 

ドス!

 

鈍い音と共に赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)の赤い拳がバイクに変形している銀の魔女のヘッドライト部分を貫いた。

 

「ギャアアアアアアアアア」

 

銀の魔女は悲痛な叫びを上げ消滅していった。

 

消えていく銀の魔女を見送り、気づけば赤龍帝の仮面の下で涙を流していた。

 

 

 

魔女の結界の主であった魔女が消滅したことにより結界が壊れ元の林に戻ると同時にとプロモーションキングの効力と赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)も解除された。

 

俺の左腕、ドラゴンになっちまったしな・・・

 

チラっと赤い鱗に指から鋭い爪が生えていた。

 

・・・・どないしよう。

 

母さんや父さん見たら気絶するぞ。これ

 

厨二病を患った振りして包帯を巻いて誤魔化す?

 

駄目だ・・・あとで黒歴史確実だ。

 

とりあえず母さん達は保留して

 

杏子ちゃんには・・・・バレたらあとでケーキを買って許してもらい、それと杏子ちゃんのソウルジェムも今回の戦いで大分濁ってしまったから次は俺一人で戦おう。

 

うん、そうしよう。

 

そうだコウちゃんの方は、どうしてるんだろう。

 

辺りを見回して探してみると。

 

「えぐ・・・えぐ・・・」

 

「よくがんばったな、えらいぞ。」

 

コウちゃんを安心させる為に杏子ちゃんが抱きしめて頭を撫でていた。

 

この子が無事で本当によかった。

 

取りあえず左腕の事がばれない様にさりげなく後ろに左腕を後ろに回して隠してっと。

 

「あなたは・・・『コウちゃ~ん、どこなの~?』

 

巴さんが何かを聞こうとした時、コウちゃんのお母さんの声が聞こえてきた。

 

「あ、ママだ」

 

コウちゃんが母親の声を聞いて顔を上げる。

 

「ほら、ママが呼んでるよ。早く行っておいで」

 

「うん!ありがとお兄ちゃん」

 

「杏子ちゃん、悪いけどその子をお母さんの所に送って行ってもらえるかな?さっきの警官がいたら近くまででいいから」

 

「大丈夫だ任せろ、じゃあ行こうか」

 

「うん!ありがとお姉ちゃん」

 

杏子ちゃんがコウちゃんの小さな手を握り母親の元に連れて行こうとするとコウちゃんがこっちに振り返る。

 

「たすけてくれてありがとーマミおねーちゃん」

 

手をこっちに振りながら母親の元に向かって行った。

 

「!?」

 

名前をよばれて驚く巴さん

 

そういやさっき俺が教えたんだったな。

 

「・・・・私はあの子を見捨てて逃げようとしたからありがとうって言われる資格なんてないのに・・・」

 

「でも巴さんはあの子を助ける為に必死に戦った。」

 

「え?」

 

「そのソウルジェムを見れば分かりますよ

 

巴さんの持つほとんど濁った黄色のソウルジェムを指さした後、右手でグリーフシードを出して巴さんのソウルジェムにくっつけると濁りがグリーフシードに吸収されソウルジェムが輝きを取り戻す。

 

かなり濁ってしまっていたのか一回使っただけでもうこれは使えないな。

 

「そのグリーフシードは?」

 

「さっき倒した魔女のグリーフシードです。約束したでしょ?グリーフシードは渡すと」

 

「でもそれは・・・」

 

「杏子ちゃんには俺から伝えますから大丈夫ですよ」

 

「・・・ありがとう。城戸君」

 

足に力が入らなくなり膝を付く

 

「城戸君!?」

 

「すみませんさっきの戦いで結構力を使ったから」

 

「ご、ごめんなさい、じゃあこのグリーフシードはあなたが使った方が・・・」

 

「ああ気にしないで。俺は魔法少女じゃないんでソウルジェムを持ってないからグリーフシードは使えないんだ。しばらく休めば回復するんで」

 

「そ、そうなの、魔法少女でもないのにあの強さ」

 

立ち上がろうとするがまた立ちくらみがして倒れそうになる

 

「危ない」

 

巴さんが慌てて倒れそうになった俺を支えてくれたので膝を付く事はなかった。

 

「大丈・・・!?」

 

「ありがとうござい・・ます?」

 

なんか様子が変だな。

 

巴さんの視線を追うと視線が左腕に向けられていた・・・

 

 

 

~マミサイド~

 

私は助けてくれた恩人の城戸君が倒れそうになり肩を支え倒れないようにした

 

彼らが来てくれなかったら私はあの子を見捨てて一生後悔することになってしまっていただろう。

 

感謝してもしきれない。

 

だが城戸君の左腕を見てしまった。

 

城戸君はしまったという顔で慌てて腕を隠そうとするが完全に見てしまったからもう遅い。

 

彼の左腕は赤い鱗に覆われて長い爪が生えている。

 

どうみても人間の腕じゃない。

 

「そ、その左腕は何?あなたは何者?」

 

彼の左腕を見て疑問が一気に爆発した。

 

城戸君はどう見ても男の子だ。魔法少女である筈がない。

 

にもかかわらず彼は何もない所から赤い籠手を出してそこから光の剣で使い魔を斬ったり、自分や他人の力を上げたり赤い鎧を着て魔女を倒したりと人間ではありえない事をやってのけた。

 

もしかしたら男の姿に似せた魔女か新たな使い魔かもしれない。

 

「とりあえず話を聞いてほしい」

 

私は話だけでも聞こうとするが魔法少女になり警戒する。

 

 

 

【一真サイド】

 

「(マズイな完全に敵視してる。どうしよう)」

 

この状況を打破する手段を考えると。

 

「おーい一真、あの子お母さんの所に連れて行ったらすごい喜んでたぞ。よかっ・・・なにやってんだ!?」

 

俺と魔法少女になっている巴さんの間に飛び込んできた杏子ちゃんが魔法少女に変身して割って入り槍を構える

 

「アンタ、一真に今何しようとした!」

 

「違うわ!私はそこの彼に聞いてるの、そもそも魔法少女でもない男の子が魔女や使い魔を退治できるわけないじゃない!彼は何?魔女?それとも使い魔?」

 

混乱してるな、無理もない

 

魔法少女でもない俺が普通じゃありえない能力を使って魔女を倒したり、左腕が見た目怪物のドラゴンの腕になってたら人間だと思わないよな。

 

考えたらありえない状況だ。だから巴さんは俺が魔女か使い魔だと警戒したわけか。

 

一触即発の空気だ、最悪化け物扱いされてもいいからどうにか敵じゃないと誤解を解かないと・・・

 

「ふっざけんな!一真は魔女でもなければ使い魔でもねえ。人間だ!」

 

杏子ちゃんが怒鳴ってその上庇ってくれた。

 

「え、人間?」

 

「ああそうだ!こいつは城戸一真、アタシを庇ってくれた少しおっちょこちょいで無茶しやがる無鉄砲で大バカヤロウなアタシの大事な相棒だ!」

 

庇ってくれたのはうれしいけどなんかどさくさにまぎれて何気にひどい事言ってなかった!?

 

「じゃあその怪物みたいな左腕はなんなの?」

 

「怪物?何言って・・・お前!その腕どうしたんだよ!!」

 

杏子ちゃんがドラゴン化した俺の左腕を見て今気づいたのか驚きの声を上げる。

 

どう説明しよう。下手に嘘ついてもしょうがないので正直に銀の魔女を倒す為に禁手(バランス・ブレイカー)とそれにまだ至っていないから一時的に赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を装着する引き換えに左腕を代価しましたと話した。

 

「お前はなんでそんな無茶な事ばかりするんだ!!!」

 

「そんな・・・そんな事って・・・」

 

はい、杏子ちゃんの怒りは俺に向いてさらに怒りは大きくなりました。

 

巴さんは今にも泣きそうな顔してるし。

 

「いいんだよ。俺もみんなも助かったんだ。後悔なんかしていない」

 

「なんでそんなに呑気な事を言ってだよ!おいドライグ!元に戻す方法はねえのか?ないって言ったら止めなかったテメエもただじゃ済まさねえぞ!」

 

『・・・・・ない事はない。左腕のドラゴンの魔力を散らせれば一時的だが元の人の腕に戻る・・・・』

 

原作で朱乃さんやアーシアがやってた奴か、アレを杏子ちゃんにどう説明しろって言うんだよ。

 

「魔力を散らせればいいんだな。もうソウルジェムが濁りきってもいいからアタシの残った魔力すべて使って元の腕に戻してやる。」

 

ダメ!詳しくは言えないけどそれ以上魔力を使ったらダメ!!

 

慌てて腕を引っ込めようとしたがガッチリ握られた左腕は引っ込めることはできずにドラゴンの腕は杏子ちゃんの胸元のソウルジェムにくっついた。

 

するとソウルジェムが輝きドラゴンの魔力がソウルジェムに吸い取られて元の人間の左腕に戻る。

 

「なんだこれえ!よく見たら私のソウルジェムの穢れもなくなってるし!?でも一真の腕、元に戻ってよかったじゃねえか」

 

笑顔の杏子ちゃんに対してありえない事態に内心焦りまくる。

 

「(ド、ド、ド、ドドライグ、どうなってんだよ!?ドラゴンの魔力が杏子ちゃんのソウルジェムに吸収されたよ、てか杏子ちゃん大丈夫なのか!確かあれって杏子ちゃんの魂じゃあ?)」

 

ソウルジェムは魔法少女の魂だから明日の朝になったら杏子ちゃんが鱗だらけのドラゴンになってたりしたらどうしよう。

 

「(お、おおお落ち着け相棒!俺にもなんだか分からんが大丈夫だろう、多分)

 

多分ってなんだよ。杏子ちゃんなにかあったらどうしたらいいんだよ。

 

『(一真もドライグも落ち着くですよ。佐倉杏子は大丈夫です)』

 

慌てる俺達に第三者の声が聞こえる。

 

この声は幼女神のリュネか

 

『(本来、魔力と魂は密接な関係。一真の左腕が治ったのは行き場のないドラゴンの魔力が魂の物質化したソウルジェムに入り込んだからなのです。さすがにこれは私も想定外の事態ですよ)」

 

「{じゃあソウルジェムから穢れが消えたのは?)」

 

「(魔力を使ったらソウルジェムが穢れるのなら魔力が補充されたら穢れが消えるのは当たり前の事なのでドラゴンの魔力が佐倉杏子のソウルジェムに吸収された事で穢れが浄化されなくなったのです。

吸収されたドラゴンの魔力自体も佐倉杏子の魔力に変換されたから一切の害はないです。女神の名においてこれは絶対に保証します。それどころか魔力のおかげで彼女自身も強くなったですよ)』

 

そうなの?よかった・・・・

 

「さっきかから何一人百面相してんだよ?」

 

「な、なんでないよ」

 

急に杏子ちゃんに声を掛けられ現実に引き戻される。

 

人の気も知らないで・・・・

 

「で、ドライグ。これでこいつの腕は元に戻ったのか?」

 

『・・・・いや、相棒の腕は一生このままドラゴンの腕だ。」

 

「い、一生・・・そう・・・なのか・・・・」

 

『ああ、残念ながらな』

 

「そんな顔しないでよ、左腕が人間の腕じゃなくなったのは残念だけどこうしなければあの子も助からなかったし俺達も魔女にやられていた。さっきも言ったけど俺自身はみんなを守れたから後悔はしていないし、むしろそんな顔される方が辛いよ・・・」

 

心配や哀れみの目で同情される為にやったんじゃないんだから

 

「・・・こいつの呑気さは死んでも治らねえな・・・」

 

そんな呆れたような顔しないでよ。

 

「あの・・・疑ってごめんなさい」

 

魔法少女の姿から見滝原中学の制服に戻った巴さんが信じてくれたようだ。

 

よかった、よかった。

 

「だからなんでそんなに呑気なんだ!」

 

ポカッっと頭を叩かれる

 

痛い・・・

 

「お前は!お前という奴はいつもいつも自分の事は棚に上げて、他人の事ばかり考えて!」

 

同じく元の服装に戻った杏子ちゃんに胸倉を掴み上げられ絞められる。

 

ギブッギブッ

 

「・・・ねえこんな時に聞くのはなんだけど私、その赤い籠手に見覚えがあるの。あなた首都高の自動車事故の時その場にいた?」

 

「え!?」

 

マミさんの言葉に焦る。

 

あの時起きていて見られていた!

 

同時にあの時のマミさんのお父さんを助けられなかった苦い経験が蘇る。

 

「ア、アンタ、あの事故の時の奴か!?」

 

「やっぱり・・・教えて、あの時何があったの?」

 

突然の事に頭が冷えたのか胸倉をつかんでた杏子ちゃんから開放された俺はすべてを話した。

 

杏子ちゃんと修行中に事故を目撃して急いで駆けつけて巴さんが魔法少女に契約したのを知った事。

 

巴さんのお父さんとお母さんを助ける為にさっきあの子に使ったリライブ光線を二人に使った事。

 

お母さんの方は息があったから助けられたけどお父さんの事は助けられなかった事を。

 

巴さんは驚いた顔で黙って俺の話を聞いてくれた。

 

そんな巴さんの前に俺は膝をついて、頭を地面に付けて土下座する。

 

「一真!?」

 

杏子ちゃんが俺の横に腰を落として俺の頭を上げようとするが俺は頭を上げない。

 

「巴さんのお父さんを助けられなかったのは事実だ。今でもあの時の事は悔やんでも悔やみきれない!本当にごめんなさい。」

 

「な、なあ、アンタの父親の事許してやってくれよ。あの時の一真の奴、本当に死にそうなくらいに無茶してたんだ。」

 

数分ぐらい無音が続く。

 

『なんでお父さんを助けてくれなかったの!』と怒鳴られてもいい。俺の力が足りなかったのが原因で彼女のお父さんを助けられなかったのは事実なのだから。

 

俺があの事故現場にいた事を知られた時はどんなに罵声を言わたり詰られる覚悟をしていたが・・・

 

「ありがと・・・」

 

返ってきたのは罵声ではなく聞き取れないくらいの小さな声のお礼だった。

 

「ありがとうお母さんを助けてくれて・・・私お母さんまで失ったら本当に一人ぼっちになる所だった」

 

「でも俺は君のお父さんは」

 

「お父さんの事は残念で正直辛いわ。でも城戸君はボロボロになりながらもお父さんを助けようとしてくれたりさっきも自分の左腕を犠牲にしてまであの子や私達を助けてくれた。」

 

泣きながら巴さんが肩に手を置く。

 

「ありがとう城戸君。お母さんもそしてお父さんも許してくれるわ」

 

その言葉で心の中にあった重しが取り除かれたような気がした。

 

気づけばさっきの戦闘が終わった後に流れた涙と違う感情の涙が頬を流れる。

 

「あ、あれ?なんで俺も涙が・・・」

 

「よかったな、一真・・・」

 

杏子ちゃんも泣きながら笑顔を向けてくれる。

 

「うん・・・」

 

俺も笑顔で答えた。

 

「・・・・うらやましいな」

 

「え?」

 

「ご、ごめんなさい。わたし今までずっと一人で戦っていたから一緒に戦っているあなた達がうらやましくて」

 

「巴さん・・・」

 

「アンタ・・・」

 

そうだよな。魔力があって強い魔法少女っていっても所詮は十代の女の子。

 

友達にも相談出来ずにいままで一人で魔女と戦い。時には傷ついて一人で治療してたんだろうな。

 

傷つき不安に駆られながらも涙を我慢したり、時にはそれが抑えられずに一人で泣いた事は一度や二度だけじゃない筈だ。

 

だから俺が出来る事はただ一つだけ。

 

「じゃあ俺たち一緒に戦いませんか?」

 

彼女を仲間に誘う事だ。

 

「え?」

 

「はあ?」

 

俺の言葉に驚くマミさんと杏子ちゃん

 

「駄目かな?杏子ちゃん。」

 

「・・・分かったよ、一人は寂しいもんな」

 

同じ魔法少女の過酷さを知っている杏子ちゃんは赤くなり背を向ける。

 

素直じゃないなと苦笑する。

 

「ほんとうに私と一緒に戦ってくれるの?」

 

「はい、よろしく『傍にいてくれるの?』

 

「・・・はい?」

 

「あぁ?」

 

杏子ちゃんが振り返り

 

「私達仲間になったんですからこれから巴さんなんて他人行儀じゃなくてマミって呼んでください」

 

怒る杏子ちゃんと笑顔のマミさんを交互に見ながら俺は・・・また一波乱な生活が始まりそうな予感をしていたのであった。




おめでとう新しい仲間にマミさんが加わりました。
ソウルジェムにドラゴンの魔力を吸収されるって設定はさすがに無理があったかな。
これに関しては賛否両論があるだろうけどオリジナル設定のタグもあるし思い付いて書きたかったからできれば許してほしいです。


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第10話 譲れない信念

前々話のあとがきと前話の前置きで前話が小学生編の最後と書きましたが追加したいエピソードができたので今回を小学生編の最後とします。


【一真サイド】

 

 

マミさんが俺たちの仲間になり穢れのたまった銀の魔女のグリーフシードをキュゥべえに処理させてから数日後。

 

俺と杏子ちゃん、そしてマミさんは一緒に魔女や使い魔と戦いながらも休日の時は三人で色んな所にも出かけたり遊んだりしながら日々を過ごしている。

 

ただし、遊んでいるだけじゃない。日課のトレーニングや模擬戦闘はもちろんの事、市の図書館に足を運び戦闘の幅を広げる為に戦術や戦略の本を読んだり魔女や使い魔を効率よく捜索する方法を編み出すなどの研究を重ねながら。

 

マミさんも銀の魔女との戦いでリボンだけでは力不足だと実感し、リボンに変わる武器を求め、俺や杏子ちゃんは近、中距離専門なので遠距離をカバーできるようにすると言って銃火器の歴史の本や大型銃の本を読んで勉強してたりした。

 

リボンで銃を生成する事を思い付いたが現在の銃は構造が複雑で魔法では再現が難しいと判断し、比較的に簡単な構造の中世のマスケット銃を採用することにした。

 

俺は魔法少女の魔法は専門外なのでそこの所の特訓は杏子ちゃんに任せて、俺は特訓後の飲み物を用意したりと雑用の部分でサポートにまわっている。

 

実用的な部分も手伝いたいがこればかりはしょうがない。

 

杏子ちゃんの厳しい特訓とそれに付いていったマミさん。その甲斐あってついにリボンからマスケット銃を生成する事に成功した。

 

あとはこれを実戦レベルまで使えるようにさらなる特訓をするだけだ。

 

実戦への特訓なら俺も手伝える。

 

え?マミさん?うん、これからは俺も手伝えるよって言ったらすごく泣きそうな顔してたよ。

 

今までの杏子ちゃんが幻影で相手を惑わしながら前に出て俺が赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)でサポートしドラゴンショットで援護したり背後などの死角を守り合う形のフォーメーション

からマスケット銃を使うマミさんが仲間に入り遠距離支援も入りフォーメーションの形は強固な物になった。

 

前の戦いで左腕を代価にして左腕がドラゴンの腕になってしまったが週に一回、定期的に杏子ちゃんのソウルジェムでドラゴンの魔力を吸収してもらっている。

 

ドライグが言うにはその位の頻度で十分らしい。

 

マミさんや他のソウルジェムだと拒絶反応が出るかもしれないとの事だ。

 

だから吸収に関しては杏子ちゃんにお願いしている。

 

これは長い間、俺と一緒にいた事でドラゴンの魔力に慣れていったと話している。

 

一生か・・・人の左腕を失った事には後悔はないけど成人しても杏子ちゃんに迷惑をかける事に申し訳なく思う。

 

「アタシらの助ける為に戦ったアンタがつまんねえ事を気にしてんじゃねえ!」

 

謝ったら怒られた。

 

杏子ちゃんには本当に感謝している。

 

彼女が居なかったら俺は両親やみんなの元に戻れなくなっていたからな・・・

 

 

そして今日は、風見野の杏子ちゃんの家に集まって作戦会議と学校の宿題と予習復習をすることになりみんなで杏子ちゃんの部屋に集まっていた。

 

「佐倉さん寝てるわね・・・」

 

「そうですね」

 

座布団を出してもらい、俺とマミさんは向かい合ってそれぞれの宿題を済ませている俺のすぐ横で杏子ちゃんは両手を枕にして寝ている。

 

まあ、あと数日で俺と杏子ちゃんも小学校を卒業する春になって暖かくなり過ごしやすい時期だから仕方ないことかもしれないな。

 

俺も気を抜いたら寝そうだし。

 

「ん?」

 

ふと視線を感じてドアの方を見るとモモちゃんがドアの陰からこっちを見ていた。

 

「どうしたの?モモちゃん」

 

「あら、こんにちは」

 

「かずまおにいちゃーん、マミおねーちゃん・・・モモ、ここにきてもいい?」

 

どういうこと?

 

「おかーさんがおべんきょーのじゃましたらだめだからはいちゃだめっていわれたから」

 

ああ、そういう事か。ここに来たけどお母さんに注意されたから来づらかったんだな。

 

マミさんの方を見ると笑顔でうなづく

 

「いいよ、おいで」

 

そう言うと嬉しそうに入ってくるモモちゃん

 

最近戦いばかりだから癒されるな・・・

 

眠っている杏子ちゃんの横にちょこんと座るモモちゃん

 

「おねえーちゃん、さいきんいつもねてるの」

 

モモちゃん杏子ちゃんの頭を撫でると『ん、んん~」っと煩わしそうにゆっくりとモモちゃんの手を払う

 

「だからかずまおにいーちゃん、マミおねえーちゃんおべんきょうおわったらあそんでー?」

 

「ああ、いいよ。あと少しで終わるからもうちょっと待ってね」

 

「ええ、いいわよ」

 

頭を撫でるとくすぐったそうに笑うモモちゃん

 

その後、速攻で予習復習を片付けて俺とマミさんはモモちゃんと遊ぶことにした。

 

 

しばらくしてマミさんがモモちゃんの案内でお花摘みに行って、部屋に俺と寝ている杏子ちゃんだけ残される。

 

「(しかし、まったく起きないな。最近の杏子ちゃん夜は寝てないのか?)」

 

「一真君、ちょっと」

 

そんな事を考えていると俺を呼ぶ声がしてそっちを見ると杏子ちゃんのお父さんが手招きしていた。

 

杏子ちゃんのお父さんはあの殴り合い事件以降、立ち直り家族を養う為に牧師の道を捨てて再就職の道を選んだ。

 

最初は牧師をやめる事に反対していたがお父さんの意志は固く杏子ちゃん達も折れて今では応援している。

 

なんだろう?呼ばれて杏子ちゃんのお父さんの方に行く。

 

「一真君、魔女退治は放課後だけでなく深夜もやっているのかい?さすがにそれは親として止めなければならないのだが?」

 

魔女退治に関しては杏子ちゃんの家族は無茶だけは絶対にしないという条件で容認している。

 

「深夜に魔女退治?いやしてませんよ。さすがに放課後と休日だけで深夜は寝ています。」

 

寝耳に水だ。どういうことだ?

 

「そうなのか?実は杏子が夜中に家を抜け出してどこかに行ってるようなのでもしかしたら一真君達と魔女退治に向かっているのかと思ったがどうやら違うようだね。」

 

そうか。だからここ最近の杏子ちゃんは生活サークルが逆転して昼間はよく寝ているのか。

 

「一真君、こんな事を親として頼むのは心苦しいが杏子が夜中にどこでなにをしているのか調べてもらえないだろうか?親の私では魔女関係では喋ってくれないだろうし」

 

「分かりました。俺も気になりますしほっておくわけにもいかないので調べてみます。」

 

「すまない君にばかり頼りきってしまって親として情けないかぎりだ。」

 

そんな事ありませんよと否定して杏子ちゃんの夜間外出の実態を調べる為に毎日出かけるとの事で杏子ちゃんのお父さんからうちの親に外泊する事連絡してもらい一度家に戻って準備する。

 

「一応、こいつを持っていくか・・・」

 

家に帰った俺は外泊する準備した後、押入れの屋根裏に隠していた箱から右手だけの黒の革製グローブを出して鞄に入れる。

 

家を出ようとすると母さんがニヤニヤしてた。なにを想像してるんだか・・・・

 

そして杏子ちゃんに気づかれないようにあらかじめ開けてもらっていた杏子ちゃんのお父さんの部屋の窓から部屋に入り隠れて夜まで待った。

 

 

 

深夜、杏子ちゃんのお父さんの言う通りに家族が寝静まったのを見計らった杏子ちゃんが自分お部屋の窓から外に抜け出した。

 

どこに行くんだろう。

 

気付かれず見失わないギリギリの距離を保ちながらた杏子ちゃんの後を尾行している。

 

万が一気づかれて撒かれてもドライグが杏子ちゃんの魔力を感知できるから問題はないとけど。

 

数時間ほど歩いただろうか。

 

見覚えのある場所で杏子ちゃんは足を止めた。

 

「ここは杏子ちゃんと前までトレーニングをしていた場所?」

 

そうここはかつて俺と杏子ちゃんがトレーニングをしていた山の中だった。

 

前までは人目に触れにくい鍛錬所に使っていたがマミさんの事故現場から近いといことで思い出すと辛いだろうからと今は使っていない。

 

杏子ちゃんは魔法少女に変身すると走り込みを初め、木の枝に飛び乗ったり槍を振ったりとトレーニングを始める。

 

そうか、いつも夜に家を抜け出してここでトレーニングしてたんだ。

 

ややオーバーワーク気味な気がするが・・・

 

でもなんで一人で?確かにここはマミさんにとって思い出したくない場所に近いがだからって俺達に黙って一人でやる事はない。

 

場所を変えれば済む事だ。

 

時間も態々こんな深夜にやらなくてもいい事なのに。

 

しばらくして訓練に一段落して息を整える杏子ちゃんに声を掛ける。

 

「こんな夜中に特訓かい?」

 

「一真、なんでここに?」

 

いない筈の俺の存在に驚いた杏子ちゃんがこちらを振り返る。

 

「おじさんが心配してたよ」

 

「親父め・・・余計な事を・・・」

 

杏子ちゃんの顔が歪む。別に隠す必要ないだろうに

 

「とりあえず帰ろうよ。杏子ちゃんのお父さんには俺も一緒に謝るからさ。ね?」

 

何も言わない杏子ちゃん。

 

よく見ると何か考えているようだ。

 

やがて無言の杏子ちゃんが口を開く。

 

「・・・・一真、お前はもう戦うな!」

 

え?どういうこと?

 

「迷惑なんだよ。これはアタシら魔法少女と魔女との戦いなのに関係ない奴がしゃしゃり出てこられるのは」

 

杏子ちゃん、一体なにを?

 

「口で言っても分からねえなら実力で手も足も使えねぐらいに潰してやる。」

 

俺にめがけて勢いよく突き付けられた槍を赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で受け止める。

 

「ぐっ!重い。」

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)ごしで受けた槍の衝撃は重く腕に痺れがきた。

 

「ほう、今回は寸止めしなかったのにうまく受け止めたな。それとも前のはただ反応出来なかっただけか?」

 

今の本気だった。

 

避けなかったら確実に槍が体に当たり骨が折れていた。

 

こっちも本気で戦わなければ再起不能にされる。

 

冗談じゃない。俺はまだこんな所で立ち止まるわけにはいかないんだ。

 

「・・・杏子ちゃん、俺が勝ったらちゃんと訳を話してもらうよ」

 

「いいぜ、お前が勝ったらちゃんと話してやる!」

 

何度も突いてくる槍を赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で受け流したり防御する

 

「どうした?前に着た赤い鎧は付けないのか?」

 

槍を連続で突きながら杏子ちゃんが話しかけてくる。

 

「あいにく、今の俺じゃ代価を払ってあれ一回が限界なんだよ」

 

「・・・・そうか、そりゃ残念だったな」

 

それは本当の事だ。堕天使のアザゼル先生が開発した腕輪があれば代価なしで禁手化(バランス・ブレイク)できるがそんな便利ないアイテムは俺はもっていない。

 

だから次に禁手化(バランス・ブレイク)するとしたらまた代価で身体の一部分を払うか自分の力で禁手(バランス・ブレイカー)に至るしかないのだ。

 

正直よほどの事がない限り前者はお断りだ。なら後者しかない。

 

でも今の俺に悔しいがその力はまだない。

 

ならば今できる手札で勝負するのみ!

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)からメビュームブレードを出して斬り掛かる。

 

杏子ちゃん相手に生半可な攻撃は通用しない。

 

本気でやらないとこっちが負ける。

 

「やるじゃないか、一真!これならどうだ!」

 

俺から離れ距離を取った杏子ちゃんの槍から鎖が出てきて多節棍になり襲い掛かってくる。

 

正直あれはやっかいだ。

 

リーチが長い分懐に入れば楽だがそうはさせてくれない。

 

ドラゴンショットで多節棍ごとぶッ飛ばす手もあるがメビュームブレードだけじゃ魔力を溜める暇もない。

 

ならば多節棍の槍を右手からアグルブレードを出して回転させて盾にして防御に徹する。

 

「ほらほら、どしたどした守ってばかりじゃアタシは倒せないよ」

 

何度も多節棍で伸ばした槍の先端が襲ってくるが防御してる間に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に魔力を溜める

 

「させねえよ!」

 

地面を利用して槍の軌道を変えて顔の方に切っ先が迫ってきたので思わず赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》でガードしてしまう。

 

『Reset』

 

しまった倍加が解除された。

 

単調な攻撃はワザと隙を見せて油断させる為か。

 

「ほらほら次はどうすんだい?」

 

「くっ!プロモーションキング!」

 

プロモーションキングを発動して服が駒王学園の制服に変わり、強化した腕力で多節棍の槍を払いのけて、ジャンプして木々の枝を伝って森の方に逃げ込む。

 

あのリーチの長い上に仕込まれている鎖でさらに長く不規則に動く槍を相手にこの広い空間はこちらが不利だ。

 

ならば狭い空間に誘い込んでそこで決める。

 

「逃げんな!ちゃんと戦え!!」

 

杏子ちゃんは槍を元にもどして追いかけて来ている。

 

「相手にして分かるけどやっぱりすごいな」

 

『ああ、魔法少女の力のおかげもあるがそれ以上に天賦の才って奴がある』

 

枝と枝を飛びながら改めて杏子ちゃんの戦闘力を考える。

 

一緒に戦ってきたけどここまで強いと自信なくすな・・・

 

『自信を持て、確かに佐倉杏子は天賦の才があるかもしれんがお前はそれ以上に積み重ねた努力があるだろう』

 

おっと自信喪失してる場合じゃないな。

 

ここで負けるわけにはいかないんだから。

 

 

 

~杏子サイド~

 

一真の奴、禁手化(バランス・ブレイク)って奴ができないから切り札のプロモーションキングをついに使いやがった。

 

アタシの多節棍を封じる為に枝がある狭い森に入ったようだが墓穴を掘ったな。

 

この月明かりも届かない暗闇の森じゃアタシを見つけにくいだろう。

 

アタシは暗闇でも魔力を使えば昼間の様に夜目が効く。

 

例えお前の妙な能力で夜目が効いたとしてもアタシには幻術とスピードがある。

 

目で追えたとしても体は反応できない。

 

プロモーションキングを使わない限り。

 

一真、お前の弱点はまさにそれだ。

 

特殊な能力があってもプロモーションキングを封じられればちょっと強いだけのただのガキなんだよ。

 

たしかプロモーションキングと倍加は併用出来ねえって言った筈だ。

 

このまま見失わずに五分後のプロモーションキングが切れた時仕留める!

 

 

アタシの父親は教会で牧師をしている。

 

でも誰も親父の話を聞いてはくれない。

 

親父は当たり前で正しい事を言ってるだけなのに教会本部が教えていないただそれだけの理由で

 

誰も話を聞いてくれずどんどん信者が離れていった。

 

うなだれ落ち込みながら親父は精一杯がんばっている。

 

おふくろもそんな親父を支えて生活している。

 

だがアタシたち家族は近所で腫れ者扱いされる毎日

 

友達もどんどんアタシから離れて行った。

 

さびしそうにしている妹のモモと遊びに行こうとしたら門の横からこちらを見ている男子と目が合った。

 

最初はアタシと妹は親父の事で学校でいじめる奴らが来たと警戒してモモがアタシの背にすぐ隠れた。

 

でも話してみるとそんな事ないとすぐ分かった。

 

アタシもモモは心の底から笑えたと思う。

 

進級してからアイツは変わらずアタシに構ってくれた。

 

でも相変わらずアタシやモモをいじめる奴もいたが

 

「おまえら、俺のダチとその妹に何してくれてんだ?」

 

アイツが一睨みするとアタシ達をいじめる奴らは蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。

 

どうしてアタシたちを助けてくれるのかと?

 

そしたらあいつはこう返した。

 

「友達だからね」

 

まるで青臭い青春ドラマみたいだ。

 

でもそんなアイツの気持ちが嬉しかった。

 

そして事件は起こった。

 

小学三年生の時あいつはアタシをいじめる男子数人からアタシを庇って額に怪我をした。

 

今でもうっすら傷跡が残っている。

 

その事を一真に謝ったら

 

『俺は男だし傷が残っても大した事ないよ。それより杏子ちゃんが怪我して傷が残った方が大変だって』

 

そう言って笑っていた。

 

後日、一真の怪我の事でアイツの両親に謝りに家に行ったら

 

『まあ事情は一真の担任の先生から聞いたし、佐倉さんは悪くないよ』

 

『そうそう悪いのは杏子ちゃんを苛めてた奴らなんだから。かず君の怪我だって女の子を守ってできた名誉の負傷って奴よ。さすが私と真司の子ね。杏子ちゃんこんな事にめげずにこれからもかず君と仲良くしてあげて」

 

一真のお父さんとお母さんも一切アタシを攻めずに餃子パーティーまで開きお土産の餃子まで貰った。

 

本当にいい家族だ。

 

文句を言われても仕方ないのに。

 

今まで家族以外でこんな優しい言葉を掛けてくれた人達はいなかった。

 

魔法少女になった時も不思議な力を持ったアイツは一緒に魔女と戦おうと言ってくれた。

 

そんなアイツの言葉が嬉しかった。

 

いや甘えてしまっていた。

 

その結果、一真は人間の左腕を無くしてしまった。

 

一真はいい奴だ。アタシや他人の為に自分が傷つく事も顧みずに闘う。

 

魔法少女だと親父にバレて罵倒された時も一真が庇ってくれた。

 

一真がいなかったら親父は壊れて、アタシの家族はバラバラになっていただろう。

 

それを一真は傷つき親父と殴り合いしてまでも止めて説得してくれた。

 

嬉しかった。怒鳴る親父が怖くて何も言えなかったアタシを助けてくれた一真があの時、本当のヒーローに見えた。

 

そんな一真だからこそこれ以上アタシなんかの為に傷ついていい筈がない。

 

アタシが魔法少女になったのは家族の為にと自分で蒔いた種だ。

 

だからアタシが自分でやらなければならない事であって一真を巻き込んでいい筈がない。

 

一真は言っても聞かない奴だと分かっていた。

 

だから実力行使に出る。

 

さっきも言った通りに両腕、両足を潰してでも

 

人間の左腕を失い次は命を失うかもしれない・・・

 

そんなの、アタシが許さない

 

だから戦いながらそんな哀しい顔するなよ決心が鈍りそうじゃないか

 

一真に嫌われてもいい・・・

 

生きていて欲しいから・・・

 

左腕を失ってまでも戦い続けようとする一真を止められるなら。

 

そう決めたんだ。

 

自分で決めた事なのに・・・・

 

なんでこんな辛いんだろう・・・・

 

 

 

「一発ぐらい当たれよ」

 

「うるせえ!そんなひょろひょろ弾なんかに当たるかってんだ」

 

一真の奴、逃げながら光線技で攻撃してくるが避けながら追っていく。

 

逃げ続けた一真が着地する。それと同時に一真の服が元に戻る。

 

「しまった時間が・・・!」

 

ついにプロモーションキングが解けたな。

 

「鬼ごっこは終わりだ。倍加する暇も与えねえ貰った!!」

 

「・・・・いや俺の勝ちだ」

 

一真が右腕を上から下に振ると木の枝を切りながら無数の細い紐がアタシの周りから何かが出てきて縛りつけ、槍を手放してしまう。

 

これはワイヤーだ。

 

しかも見えづらい極細の!

 

よく見ると一真の右手のグローブからアタシを縛るワイヤーと繋がっている数本のワイヤーが出て伸びている。

 

「い、いつの間にこんなワイヤーを!」

 

「プロモーションキングで逃げながら戦っている時さ、言っておくけど魔法少女の力でも切れないよ。あらかじめ倍加で強度を上げてあるから」

 

「なっ!プロモーションキングとの併用はできないって」

 

事故の時、併用した一真はほとんど体力を失い立ってるのもやっとだった筈。

 

「それはあくまでも自分に対してだ。物を倍加するギフトなら問題なく使える。そして・・・杏子ちゃんの槍は内部に鎖を仕込んでいる分普通の槍より脆い」

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の人差し指を一本をグローブから伸びているワイヤーに付け赤い魔力を流されるとアタシの槍は粉砕されてしまった。

 

「森に逃げ込んだのは槍を封じる為じゃなくてワイヤーでアタシの動きを止める為か?」

 

「普段の冷静な杏子ちゃんなら見破れてたかもしれないけどね」

 

「バカみたいな演技してアタシを挑発したのも森に誘い込む為じゃなくてワイヤーから注意を逸らす為か」

 

「そういう事、俺が前の戦いを反省もせずに五分間しか使えないプロモーションキングに頼りきってなんの対抗策を考えていなかったと本気で思ったの?」

 

一真、やっぱりお前は強いよ。能力の強さだけじゃなくて頭も切れる。

 

なによりお前に背中を預けて一緒に戦えれたらどれだけ心強いか改めて実感する。

 

でもそれはもう許されない。

 

「杏子ちゃん俺の勝ちだ。なんでこんな事をしたのかちゃんと話してくれ」

 

「まだだ!まだ終わってねえ!」

 

ここでアタシが負けたら一真はまた魔女との戦いに出ちまう。

 

力を込めて無理やりワイヤーを切ってやる

 

ワイヤーが肌に食い込んで切れて血が出てきて痛てえが気にしねえ。

 

「なっ!き、杏子ちゃんやめろ!無理に引き千切ろうとしたら骨ごと腕が切断される!」

 

珍しく一真の奴、焦ってんな。

 

普段すました顔したお前がそんな焦った顔を久しぶりに見たぞ。

 

でも構うもんか!一真に勝ってお前を止められるくらいなら腕くれぇ!

 

アタシも一真の事文句言えねえな、こりゃ。

 

「くっ!」

 

一真が慌てて譲渡していた力を解除してワイヤーを緩めて解く。

 

ブチブチ

 

譲渡していた力がなくなり緩んだワイヤーが魔法少女になっているアタシの腕力で取れていく。

 

そして全部のワイヤーが取れて開放されたアタシは下に落ちる。

 

無理やりワイヤーを切ろうとした事で切り傷ができながらも着地して手元に落ちてた槍の残骸を拾い一真の腹を思いっきり突いた。

 

「グッ!」

 

「油断したな一真。お前の最大の弱点はその甘さだ。アタシに勝つつもりならワイヤーを解かずに本気で来るべきだったんだよ。」

 

一真が腹を抑え額に汗を流している。

 

「これでアタシの勝ちだ」

 

新しい槍を出して振り下ろそうとした時一真の顔が過る。

 

嫌だ・・・

 

振り下ろしたくない・・・

 

躊躇して動揺したアタシの隙を見つけ、腹の痛みを我慢したフラつきながら一真が飛びかかり押し倒されてしまった。

 

 

 

【一真サイド】

 

お、お腹痛い・・・

 

杏子ちゃんが動きを止めたからよかったもののあのまま振り下ろされてたら完全に俺の負けだった。

 

さて押し倒したのはいいけどここからどうやって杏子ちゃんを説得すべきか。

 

「なん・・・で・・・」

 

ん?

 

「なんで・・・なんでアタシの言う事聞いてくれないんだよ。アタシはもうお前が戦って傷付いて欲しくないだけなのに・・・」

 

杏子ちゃん?

 

「三年生の時も親父の時もそして今回もアタシやみんなを庇って傷付いて無理をしてそんなお前を止めたかっただけなのに・・・なんでだよバカヤロウ・・・」

 

そうか、だから杏子ちゃんは俺に戦うなと言ったり俺を戦わせないようにする為に腕や足を潰そうとしたのか・・・

 

自分が悪者になる事を分かっていながらも信念を通そうとしたのか。

 

なら俺も自分の信念を話そう。

 

「俺が自分でそう決めた事だから。杏子ちゃんが家族を思って魔法少女になったように幼馴染の杏子ちゃんが傷つくのをただ黙って見ていたくなんかない。ただ左腕を失くした事で杏子ちゃんを追い込んでしまった事は悪かったと思っている。

ごめん、でも戦う事はやめない。杏子ちゃんやみんなが傷つくのを見たくないから。」

 

俺も転生して最初はただ魔法少女達を守れたらいいなとしか思ってなかったけど杏子ちゃんやマミさん達に触れ。守り通したいって信念に変わった。

 

絶対に不幸になんかにさせない。

 

本気で助けたいと。

 

でなきゃ腕を犠牲にしてまで助けようなんてしない。

 

これだけは何があっても譲れない。

 

「一真・・・」

 

「一緒に強くなろう。お互いが傷つかない様に守り合えるように」

 

立ち上がれるようにと手を差し伸べてる。

 

「(幼馴染の為か・・・今はまだそれでいいや・・・)」

 

杏子ちゃんから憑き物が取れたように穏やかな顔になったのが気になり聞いてみる。

 

「どうかしたの?」

 

「うるせーなんでもねえそれより約束しろ。絶対に魔女に殺されないって!そしたらまた一緒に戦うことを許してやる!」

 

「分かった約束するよ」

 

その返事を聞いて俺の手を取り立ちあがった朝日に照らされた杏子ちゃんの笑顔は本当に美しかった。

 

そしてその後、二人仲良く朝帰りした杏子ちゃんと一緒に杏子ちゃんの両親にきっちりお説教されるのだった。

 

 

~オマケ~

 

その日の放課後の集まり佐倉家にて

 

「グーグーグー」

 

「スゥ・・・スゥ・・・スゥ・・・」

 

「かずまおにーちゃんもきょーこおねえちゃんもお昼寝してる・・・」

 

「・・・・・・・なんで今日は佐倉さんだけじゃなくて城戸君も寝てるの?」

 

気持ちよさそうに眠る二人を見て訳が分からずモモちゃんとマミさんの疑問は尽きることはなかったのだった。

 




本当は前回で小学生編を終わらせるつもりでしたが一真君の左腕を失くした事に対しての杏子の葛藤があった方がいいんじゃないと弟がアドバイスしてくれたので急遽追加しました。


次回から小学校を卒業した一真君達の新しい中学校生活が始まります。
お楽しみに


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見滝原中学生編
第11話 美学と暗躍の間に


あけましておめでとうございます。本年度もよろしくお願いします。
そして祝!お気に入り30人達成
これも応援して下さる方々のおかげです。ありがとうございました。




「ロ、ロッソ・ファンタズマ!」

 

広場で杏子ちゃんが赤い顔で叫んでいた。

 

「佐倉さん、声が小さいわよ!お腹から声を出すようにもっと大きくはっきりと他の人が聞いても分かるように!」

 

「そ、そんな事言ったってー」

 

同じくなぜか頭に鉢巻を巻いたマミさんが指導して涙目の杏子ちゃんが弱音を吐く光景。

 

俺はそんな光景をベンチに座って眺めていた。

 

なんでこんな事になってしまったんだろう…

 

ふとそんな考えが過る。

 

確か今日は、マミさんの部屋で俺と杏子ちゃんとマミさんでお茶会をしていた・・・筈だったが。

 

「私、魔法少女なら技名を叫ぶ必要があると思うの」

 

すべてはマミさんのこの一言から始まった。

 

「「はい?」」

 

杏子ちゃんと声がきれいに重なる。

 

マミさん曰く魔法少女たる者必殺技の名前は常識との事だ。

 

そんな常識初めて聞きました。

 

まあ、前世の魔法少女モノのアニメを思い出すとあながち間違ってないのもまた事実だな。

 

必殺技の説明を披露した後。技名の大切さを教える為と言って発声練習しても迷惑が掛からない広場に移動して冒頭に戻る。

 

「なあ、マミさんこれって本当に必要な事なのか?」

 

「そうよ、技の名前を叫ぶ事は魔法少女の美学なのよ」

 

そんな美学聞いたこともないんですけど。

 

「あと城戸君の必殺技の名前も考えてあるの。」

 

楽しそうにこちらを向くマミさん

 

え?魔法少女じゃないのに俺にも飛び火すんの?

 

杏子ちゃんは仲間ができたってガッツポーズとってるし。

 

そんなに嬉しいものなのか。

 

それとも単に道連れができて喜んでるのか。

 

まあ、そういかないがな・・・

 

「まず赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)から出す魔力弾は赤色のロッソは佐倉さんで使ってるのでイタリア語で紅を意味するクレミーズィ『ドラゴンショットです』」

 

マミさんがなにか言おうとする前に被せて封じる。

 

つうか、クレミーズィ何言おうとした?

 

少し気になる、止めたの失敗したかな。

 

「え、えっともう考えてあるの?」

 

「技名があった方が作戦を伝える時に便利だから考えてますがなにか?」

 

「じゃあ青い剣は・・・『アグルブレードです』」

 

「じゃ、じゃあオレンジのけ『メビュームブレードです』」

 

「う、うう・・・佐倉さ~ん、城戸君がいじめる~」

 

「はいはい」

 

バレバレの嘘泣きするマミさんが杏子ちゃんに抱き着く。

 

杏子ちゃんも嘘泣きだと分かっているから適当に相手をしている。

 

なんか俺が悪いみたいじゃないか・・・

 

「ううう・・・そういえば城戸君も佐倉さんも来年から見滝原中学校に通うのよね?」

 

「ええ、杏子ちゃんはお父さんの知り合いの家に下宿させてもらってそこから見滝原中学に通うらしいです」

 

露骨に話変えてきたな。まあ変えないと面倒だしここは乗る事にしよう。

 

杏子ちゃんもうんうん頷いてる。

 

「賑やかになりそうね・・・」

 

「よろしくお願いしますねマミ先輩」

 

「マミ先輩、よろしくな」

 

「せん・・・ぱい・・・マミ先輩・・・えへへ・・・」

 

なんかトリップしてるけど時間も遅いから今日の訓練はここまでだな。

 

「そういや今日だったよな。おまえちの家族とアタシの家族でご飯食べに行く日って」

 

「うん、家で待ち合わせして父さんが帰ってきたらすぐ出発だよ」

 

今日は杏子ちゃんの家族とウチの家族のみんなで外食する予定だ。

 

「・・・可愛い後輩が二人も・・・こんな気持ちになったのは初めて、もう何も怖くない・・・」

 

マミさん早く帰ってきてください。

 

 

その夜。

 

仕事から帰ってきた父さんと合流してみんなで外食した帰り道。

 

父さんの運転する車で杏子ちゃんが下宿する家に向かっていた。

 

立ち直った杏子ちゃんのお父さんは再就職が決まり引っ越しする事になり家族で引っ越ししようとしたが。

 

魔法少女の事情を杏子ちゃんから聞かされた杏子ちゃんのお父さんが引っ越し先に別の魔法少女がいて縄張り争いになるかもしれないと思い。

 

生活費などを仕送りして杏子ちゃんを信頼できる風見野に近い見滝原に住む友人の家に下宿させる事にしたのだ。

 

モモちゃんはみんなと外食して嬉しくてはしゃいでいたので疲れたのか眠っている。

 

考えたらお姉ちゃんと離れ離れになるんだ、そりゃはしゃぐよな。

 

杏子ちゃんを下宿させてくれる家の人達ってどんな人だろう?

 

元いた教会には、後任として仮面ライダー龍騎の神崎兄妹に似た牧師とシスターが住む事になってたしもうなにが出てきても驚かねえぞ。

 

「そういえばおや・・父さん、アタシが下宿する家ってどこ?」

 

「もうすぐ着くよ」

 

「うちから結構近い場所なんだな」

 

車は右折し左折して真っ直ぐ走った後にある家の前で止まる。

 

「お、着いたようだな。ここだよ」

 

「へえ、ここか・・・ってえ?ここって!?」

 

ほう、見なれていてまるで実家のような安心感を醸し出す見事な家だな・・・・って俺ん家かい!

 

「「どういう事だよ父さん!」」

 

真っ赤な顔の杏子ちゃんと親達の方を見ると

 

「城戸さん、娘の事よろしくお願いします。」

 

「悪い事したらビシバシ っていただいて構いませんので」

 

「いえいえ私達も娘ができたようで嬉しいですわ」

 

なんか親同士で当たり前のように挨拶し合ってた。

 

「「無視すんな!」」

 

我慢の限界に達して怒る。

 

それだけこの異常な事に冷静になれなかった。

 

「私がお願いしたんだよ」

 

マジですか杏子ちゃんパパ!?

 

「そして私がOKだした!サプライズで黙っておいたのよ」

 

ピースしてドヤ顔しやがる我が母

 

「すまないな、美穂に最後まで教えない方が面白そうだから絶対に秘密にしろて言われていて・・・」

 

父さん、あいかわらず母さんに甘いな・・・

 

「つうか一真。お前はこの家に住んでるのに気づかなかったのか?」

 

言われてみれば確かに。

 

荷物を運び込む音とか普段と違う気配とかで気づきそうなものなのに一切気づかなかった。

 

「そりゃ気づかないわよ。かず君が学校や出かけてる時を見計らってそうじしたり荷物を運びこんだりしてたから」

 

そこまでするか・・・

 

「・・・か、城戸のお母さん、お父さんこれからよろしくお願います」

 

杏子ちゃんが俺の両親に頭を下げる。

 

「いいの、なんか強引に巻き込んだ形になったのに?」

 

いくらなんでも女の子が同年代の男の子と一緒に暮らすのって抵抗あるんじゃないの?

 

「父さんや城戸のお母さんがそこまで考えてしてくれたんだ。無下になんかできねえよ。それとも一真はアタシが一緒に住むのは嫌か?」

 

「そうよ、かず君がここで断ったら杏子ちゃんは住む場所がないのよ?だからよく考えて答えてね」

 

か、母さんそれって脅迫じゃないか、しかも笑顔だけど殺気全開だし。

 

後ろで佐倉夫妻はもう答えは分かり切ってるんだから観念しろって顔だよ。

 

杏子ちゃんそんな子犬みたいな目でこっち見ないで。

 

まあ、答えならもう出てるけど。

 

「杏子ちゃん、これからよろしくね」

 

パアァっと明るい笑顔になった杏子ちゃん。

 

もしここで断れる奴がいたらそいつに問答無用でドラゴンショットをぶっ放してやるよ。

 

「はい、かず君からOKもらった!じゃあ杏子ちゃんあとで荷造り解くの手伝うわね。佐倉さん達もぜひうちに泊っていって下さい」

 

そして母さんと佐倉夫妻と佐倉パパにおんぶされた眠っているモモちゃんと一回こっちを見た杏子ちゃんが家に入っていく。

 

父さんが無言で俺の肩に手を置く。

 

うん、俺も母さんに一生勝てそうにないわ・・・

 

 

 

後日、杏子ちゃんが俺の家に住む事になった話を聞いたマミさんの手元のカップが震えて、紅茶が零れえらいことになりました。




神崎兄妹を牧師とシスターにしたのは兄の神崎士郎が映画でパイプオルガンを弾いてたから。
当時、映画のサントラ買って『神崎士郎』を聴きまくってたな。




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第12話 見滝原中学入学式

新章突入

入学式、それは良くも悪くも新しい出会いと生活の季節です。

ってなわけで新章突入です。

12/21 冒頭を追加しました。


~???サイド~

 

 

私は見た。

 

これから起こるであろう。

 

これまでにない巨大な魔女とそれに立ち向かう三人の魔法少女と赤い鎧の戦士の戦いを

 

巨大な魔女は話に聞いた大型魔女ワルプルギスの夜であろう。

 

戦いは熾烈を極めていた。

 

だが一人、また一人と魔法少女が倒され、最後に赤い魔法少女が倒れる。

 

赤い鎧の戦士が血だらけになった動かない赤い魔法少女を抱き上げ悲しみの叫びを上げる。

 

その瞬間、赤い鎧の戦士の体を怨嗟の声とどす黒いオーラのようなものが戦士を包み込む。

 

Juggernaut Drive!!!!!!!!(ジャガーノートドライブ)

 

やがてオーラがなくなりそこには戦士の姿はなく変わりに大きく禍々しい赤いドラゴンの姿があった。

 

赤いドラゴンは周囲の被害など考えもせずに街や建物を破壊し咆哮をあげながら赤い魔力弾をワルプルギスの夜に放ち、ワルプルギスの夜も負けじと炎やビルをドラゴンにぶつける。

 

それはもはや特撮映画の怪獣同士の戦いでしかなかった。

 

ドラゴンとワルプルギスの夜の戦いで崩壊していく見滝原市

 

大地は裂け、建物は崩壊してどこもかしこも火の海になるその光景はまさに地獄絵図そのものだった。

 

いつまでも終わらない戦いに終止符はついに訪れた。

 

Longinus Smasher!!!!!!!!!(ロンギヌス・スマッシャー)

 

ドラゴンの胸から放たれた天をも焼き尽きそうな赤く巨大な柱のような莫大なオーラがワルプルギスの夜を飲み込んで、ワルプルギスの夜は文字通りこの世界から跡形もなく消滅した。

 

勝ったのは赤いドラゴン。

 

しかし赤いドラゴンは暴れるのをやめない。

 

泣いてるような悲しみの叫びをあげながら見滝原市を破壊し続ける。

 

桃色の魔法少女が現れ攻撃をせずに必死になにかを訴えかけているがドラゴンは暴れ続ける。

 

そしてドラゴンが見滝原で災害が起きた時に指定している避難所を破壊した瞬間それは起きた。

 

 

ワルプルギスの夜を超えた大きさと巨大な絶望を纏った最悪の魔女の出現

 

 

そして私、美国織莉子は目が覚めた。

 

最強の魔女を生み出す魔法少女。

 

そしてもう一つ厄介な存在がいる。

 

ワルプルギスの夜を倒したあの赤いドラゴン

 

あれもほってはおけない、でないとこの見滝原市は消滅してしまう。

 

桃色の魔法少女と赤い鎧の戦士

 

この二人が生まれない様にすればいい・・・

 

でも今の私は自分の意志とは関係なく辺り構わず予知をして魔力を取られて思うように動けず戦えない・・・

 

だがワルプルギスの夜が現れるまでまだ時間はある。

 

その間に予知を自在にコントロールできるようにしなくては。

 

そして予知を伝え思い通りに動いて戦う『協力者』が必要だ。

 

すべては世界を守る為に!

 

 

【一真サイド】

 

 

「試着した時も思ったけどやっぱり似合ってないな」

 

俺、城戸一真は小学校を卒業して今日見滝原中学校への入学式の為、制服に身を通し全身鏡に映る自分を見ていた。

 

まさか成人を迎えた俺がまた中学生になるとは…

 

俺は俗に言う転生者という奴で本来の俺は二十代過ぎだったが女神さまのイタズラで転生したのである。

 

「かず君、準備できたの?」

 

母さんが声を掛ける。

 

「うん、できたよ。やっぱり変じゃない?」

 

「そんな事ないわ。よく似合っていてカッコいいわよ」

 

親のお世辞を聞き流しながら準備を終え玄関に立ち、見滝原中学に向かう。

 

「じゃあいってきます。」

 

「本当によかったの?一緒に行ってもよかったのよ?」

 

「うん、前に下見したから歩いて行ってみるよ」

 

その方がトレーニングにもなるし

 

「そう、じゃあ学校でね。かず君の晴れ姿お父さんと一緒にみてるからね」

 

「は~い、いってきます」

 

それじゃ遅刻しないように行くとしますか。

 

学校に向かう為に家を出ていく。

 

歩きながら今までの事とこれからの事を考える。

 

八年間の長い修行の末、どうにか倍化と赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)、ドラゴンショットは使えるようになったが残念ながら禁手(バランス・ブレイカー)だけは会得できなかった。

 

『まあ仕方ないだろう禁手(バランス・ブレイカー)に至るには実力の他にも強い意志と切っ掛けにそれを引き寄せる類稀な運がいる。予想の範囲内だ。いきなりできた奴もいれば何十年かけてやっと取得できた奴もいる』

 

そうか、でも何十年も気長に待ってられないんだあの大型魔女『ワルプルギスの夜』が現れるまでには会得しなければ・・・

 

植え込みのある歩道を歩いていると

 

「ないな・・・・ないよ・・・・どこにいったんだ・・・・」

 

「落ち着いて。この辺で落としたんだよね?」

 

二人の女の子が下を見ながらなにかを探していた。

 

なんだか巻き込まれる予感・・・

 

でも見ちゃったんだからほっておくわけにもいかないよな・・・

 

『(別に無視すればいいだけなのだが相棒のそういう所がお人好しというかまあそれが長所なのかもしれんが・・・)」

 

とりあえず声を掛けてみるか。

 

「どうかしましたか?」

 

声を掛けると見滝原中学の制服を着た二人の女の子がこちらを向いた。

 

「(なあ!?)」

 

振り向いた女の子の一人の顔を見て驚き言葉が詰まる。

 

その女の子は両側のピンクの髪にリボンを結んだ前世で見た事ある魔法少女まどか☆マギカの主人公鹿目まどかさんだったからだ。

 

「(ええーまさかの主人公とここでエンカウント!?)」

 

「あ、あの・・・?」

 

急に黙り込んだ俺に恐る恐る声を掛ける鹿目さん。

 

とりあえず気を取り直さないと。

 

「あ、すみません。なんでもないです。それよりどうかしたの?見た所なにかを探してるように見えたのけど?」

 

「実は『ないんだないんだ!大事なものなのに!』」

 

鹿目さんが訳を話そうとすると訳を話そうとすると黒髪の女の子に遮られる。

 

「え、えっとだからなにがないのかな?」

 

「えっとお財布を落としたそうなんです。ネコの顔の形をした」

 

慌てる黒髪の子の言葉に付け加える鹿目さん。

 

「(誰だこの子?暁美ほむらさんじゃないし本編でも見た事ないし見滝原中学の制服を着ているけど?)」

 

とりあえずこの子が誰なのかは置いておいて俺も彼女の財布を探す事にした。

 

さてこの子達の様子を見るとこの辺は粗方探したみたいだな。

 

となると誰かに拾われたか?

 

そうしたらちょっと厄介だな。交番に届けてもらえたら嬉しいけど最悪持って帰られる可能性もあるし。

 

「あったよー」

 

ベンチの下に頭を突っ込んでいた鹿目さんが声を上げる。

 

おいおい早く起き上がらないと下着見えちゃうよ。

 

まあ朝早いおかげかこの辺に人がいないし幸い俺のいる所からは角度的にみえないからいいけどさ

 

とりあえずベンチを動かして見ると下の溝に落ちていた。普通ならこのまま拾えばいいが運悪く溝には金網が敷かれてその下に落ちていた。

 

金網を持ち思いっきり持ち上げようとする。

 

重い・・・しかもかっちり填まって抜けそうにないな

 

「(かといって諦めようにも)」

 

心配そうに見ている鹿目さんと黒髪の子が見ている。

 

まいったな、これは頑張らないと。

 

「おりゃああああああ!!!」

 

完全に金網を引き抜いて持ち上げる。

 

「今の内に取って」

 

「はい」

 

鹿目さんが財布を取ると黒髪の子に渡した。

 

金網を元に溝に戻してベンチを元の位置に戻す。

 

ふう、普段から鍛えてたおかげでなんとかなってよかった。

 

急に女の子が俺の手を握ってくる。

 

え?何!まだ金網を持ちあげた時の土が付いてるから君の手が汚れるよ。

 

「ありがとう!ありがとう!恩人!!」

 

握ったまま俺の手をぶんぶんと振るう。

 

「よかった。私はあんまり役に立てなくてごめんね」

 

「でも見つけたのは君でしょ。だからおあいこだよ」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ、君も私のお財布を探すのを手伝ってくれてみつけてくれたんだ。ありがとう君も恩人だー」

 

「ふえ!?」

 

女の子が鹿目さんに抱き着き、突然の事に驚く鹿目さん。

 

感情豊かな子だな。

 

「私は呉キリカ。恩人に礼がしたい」

 

呉さんが両手をブンブン振るう。

 

「私鹿目まどかっていいます。いいですよ気持ちだけで」

 

はい知ってます。ですが知らない振りをさせていただきます。

 

「俺は城戸一真。俺もいいですよ。呉さんの探し物が見つかったんですからそれで」

 

「うう…恩人は礼を拒否なの?」

 

ええーなんで泣きそうなの!?なにかないと泣きそうだし、かといって礼と言われてもなにも思い浮かばないし。

 

「じゃ、次会った時まで保留って事でいいだろうか?」

 

「保留?愛を保留するのか?」

 

「愛は無限であり有限、保留はできないぞ」

 

うーむ困った。保留もできないか・・・

 

「あ、こうしたらどうかな?私達に困った事が起こった時に助けるもらうっていうのは?」

 

それだ。そうしよう。ナイスだ鹿目さん。

 

「分かった。困った事が起こったら絶対に助けるからな。期待して待っていてくれ。じゃあまた~」

 

呉さんがそう言って走って行った。

 

「なんだったんだろう?あの子?」

 

ポカーンと呉さんを見送っていると

 

「あの手伝っていただきありがとうございます。」

 

鹿目さん頭を下げる。

 

「いいですよ、ところで見た所見滝原中学の生徒のようだけど?」

 

「はい、今日は私の入学式なんです」

 

「そっか俺も入学式なんだ・・・って入学式!?」

 

慌てて腕時計を見ると時間が差し迫っていた。

 

やばい入学式から遅刻なんて笑えないぞ。

 

「鹿目さん、まずいこのままだと遅刻する」

 

「ええ!?」

 

「とりあえず走ろう!」

 

「は、はい」

 

しばらく走っていたけど体力がなくなり息ぎれをして立ち止まる鹿目さん

 

「はあはあ・・・わ・・・わたしはいいから先に行ってて」

 

いやそう言われても置いて行くわけにいかないでしょ。

 

まだ学校まで距離はある。

 

このままだと二人共遅刻確定だ。

 

ええい仕方ないあとで謝罪でも土下座でもするから許してね

 

俺は鹿目さんの手を取った。

 

「え?ええ!?!?あ、あの?・・・」

 

「ごめん、ほっておけないから今は走って」

 

そして鹿目さんの手を握り一緒に走って行く

 

しばらくして校門が見えて通り抜けて校内に入った。

 

クラス割り張り出している掲示板の元に行きクラスを確認する。

 

「えっと・・・あった五組か」

 

「あ、私も五組だよ」

 

「んじゃ行くか。急がないと遅刻する」

 

「そうだね、急ごう」

 

教室が全面がガラス張りってなんで公立の中学校でこんなデザインなんだよ?

 

えっと五組五組。

 

一組二組三組四組・・・ここか。

 

五組の教室を見つけて鹿目さんと教室に入る。

 

「ふう、どうにか遅刻せずにすんだようだ」

 

「はあはあ、そ、そうだね」

 

お互い走ってきて乱れた呼吸を整える。

 

ザワッ!

 

なんだ?いくら遅刻しかけて遅く最後に教室に入ったからって遅刻してないのにそんなに注目する事か?

 

「わ。私のまどかが男子と手を繋ぎながら登校だと!」

 

・・・・あ!そうだった。

 

ここまで鹿目さんの手を握り続けて離すの忘れてた!

 

誰かの声で今の状況に気付いて慌てて手を離す。

 

「あ、ごめん。気づかなくて」

 

「あ、いえ私の方こそありがとうございました。手伝ってもらったり引っ張って貰えておかげで遅刻せずにすみました。」

 

真っ赤な顔した鹿目さんがそう言って小走りで自分の席を探しに立ち去った。

 

ふう、失敗したな。

 

さすがにいくら遅刻しかけたからって普段から鍛えている俺が体力のない女の子の手を無理やり引っ張って登校したのは失敗だった。

 

冷やかしとかあったらまた風見野小学の時みたいに睨んで黙らせればいいけどあれやると怖がって誰も近づいてこなくなるからあまりやりたくないけど自分で撒いた種だしな・・・しゃーない

 

それに息切れした所為で顔が真っ赤だったし。

 

入学早々に貧血になって倒れたら申し訳ないな・・・あとで謝ろう。

 

ため息をついて収納されている自分の席と机が出てきて鞄を横に掛けて椅子に座って机に両手を枕代わりにして頭を置く。

 

なにこのハイテク・・・ほんとに公立校?

 

一説では当時の市長が私立のお嬢様学校(白女)に対抗してここまで大げさに設備を整えたって聞いた事あるけど所詮は噂だしな。

 

「城戸、お前いつの間にあんな可愛い子と?」

 

声がして頭を上げると一人の男子が立っていた。

 

「なんだ中沢か、お前もこのクラスかよ。あの子は今日会ったばかりの初対面だよ。」

 

中沢、見滝原小学校からの付き合いの腐れ縁の悪友。

 

魔女の捜索がない時は一緒に遊んだりしている。

 

勿論、俺が転生者であることや魔女や魔法少女の事は一切話していない。

 

普通の日常を過ごしてもらう為に。

 

「へえ~城戸君は初対面の奴の手を握って登校したのかい?」

 

こ、この声まさか・・・!

 

恐る恐る振り返ると制服を着て腕組みした杏子ちゃんが立っていた。

 

杏子ちゃんが魔法少女だとバレたあの後

 

立ち直った杏子ちゃんのお父さんは再就職が決まり家族を連れて引っ越しする事になったが魔法少女の事情を杏子ちゃんから聞かされ引っ越し先に別の魔法少女がいて縄張り争いになるかもしれないと思い

 

生活費などを仕送りして杏子ちゃんを信頼できる風見野に近い見滝原に住む友人の家に居候する事になったんだが・・・・

 

杏子ちゃんのお父さんの信頼できる友人が俺の父『城戸真司』だった。

 

なんでも父さんが教会の取材してた時に意気投合して飲み友達になったらしい

 

それでいいのか?ジャーナリスト。

 

その後、杏子ちゃんのお父さんも俺が城戸真司の息子だと知ってこの偶然に驚いていたが君の息子なら安心して信頼できるし問題ないだろうと笑っていた。

 

母さんも杏子ちゃんの事を気に入っていて下宿の話を即OKして俺に秘密で迎え入れる準備までしていた。

 

杏子ちゃん、お父さんとモモちゃんが杏子ちゃんのお母さんに俺の人柄やこれまでの事を話していて下宿の件を認めてもらえた。

 

引っ越しの前日、城戸家と佐倉家でパーティーが開かれ楽しい時間を過ごす。

 

ただ父親二人、酔っぱらっていちおうまだ未成年の俺に酒勧めるのは本気でやめろ

 

次の日、杏子ちゃんの両親と妹のモモちゃんは、引っ越しして行った。

 

杏子ちゃんは家族と離れて口では強がっているが寂しいのか週に何度か家族と電話で連絡を取り合い嬉しそうに話をしている。

 

そして俺と杏子ちゃんは、見滝原中学に入学したのであった。

 

「あ、あれ?杏子ちゃんも同じクラス?うわ偶然だね。これからよろしくね」

 

「いえいえよろしくしたくないです、色男さん」

 

なんか敬語になってるし!

 

杏子ちゃん、こ、これに深い訳があるんだ・・・

 

笑顔で殺気出すんやめてー

 

「な、なあ!城戸!誰だよこの子、さっきの子の他にもこんなかわいい子とも知り合いなのかよ!」

 

「中沢。頼むから喋らないでくれ」

 

これ以上事態をややこしくするな。

 

実は一つ屋根の下で暮らしてるなんて言ったらどうなるか分からんから黙っておこう。

 

「ちょっと!初対面のまどかと手を繋いで登校するなんてどういうつもりだ?」

 

青髪の女の子が怒った顔で近づいて来た。

 

察しの通り美樹さやかさんでした。

 

「さ、さやかちゃん、話聞いてー」

 

「これが三角関係の修羅場っというものなのですね!」

 

美樹さんの後ろでは困った顔した鹿目さんと面白そうに笑っている緑の髪の女の子もいた。

 

呉さん、できれば今から来てこのカオスな空間から僕を助けて下さい。

 

その時、天は僕を見捨ててはいなかった。

 

「みなさ~ん、そろそろ入学式が始まりますから移動しますよ」

 

眼鏡を掛けた女性の先生が教室に入ってきたからだ。

 

おそらくこの先生がこのクラスの担任なんだろうな。

 

ありがとうございます。助かりました。

 

どこかで見た事あるような気が?

 

まあ、いいか入学式会場に向かおう。

 

このままうやむやになってしまえば・・・

 

「(こっちの話はまだ終わってねえ。あとでちゃんと説明しろ!)」

 

「(同じく、私も色々聞くから覚悟しろ)」

 

去り際に杏子ちゃんと美樹さんから小声で釘を刺されました。

 

訂正 どうやらこの件はまだ終わってないらしい・・・

 

 

 

入学式は、俺達の後ろに在校生やその後ろに保護者席があって学校の外観と違い、意外と普通だった。

 

母さん・・・頼むから小学生じゃないんでデジカメ持ちながらこっち見て手を振るな。

 

父さん・・・ビデオカメラで撮ってないで母さんを止めろ。

 

あと娘の入学式に出席する為に残った杏子ちゃんのお母さん、あなたもデジカメを持って娘さんに向かって手を振りますか。

 

杏子ちゃんの顔が真っ赤で完全に恥ずかしがってますよ。

 

そして普通に校長や教頭、学年主任や偉い人の長くてすぐ忘れそうなありがたい祝辞をやって、それが終わり教室に退場した。

 

クラスに戻り一息ついていると先ほど俺達を呼びに来た眼鏡をかけた女性の先生が入ってくる。

 

俺達にクラスの担任に早乙女和子先生だ。

 

皆が席にに座り早乙女先生に注目する。

 

「はい、そこのあなた!豆腐は木綿か絹ごしどっちがいいですか?」

 

「え?俺!」

 

急に話を振られて驚く中沢

 

つうか何?いきなり何の話?

 

「ど、どっちでもいいんじゃないかなっと・・・」

 

「そう!そのとおり!どっちの豆腐がいいかななんてごときで女の価値は……」

 

なにこれ?

 

「さて最後に一つ、みなさん入学おめでとう。これから一年間よろしくね」

 

いやいやそっちが先だろう!?どういう先生だよ!

 

ふと回りを見るとみんな口を開けて唖然としてるし、わけがわからないよ

 

その後、クラスで定番の自己紹介をやりHRが始まった。

 

 

 

HRが終わり、一年生生徒は友達同士で集まったりそれぞれ親の元に向かっていた。

 

上級生達も今日は授業も部活もなく帰宅して行く。

 

そして俺は逃げようとした所を杏子ちゃんに首根っこを掴まれて運動場の隅に連行される。

 

この場にいるのは俺、杏子ちゃん、鹿目さん、美樹さんの四人

 

志筑さんは習い事があると言うことで先に帰った。

 

なんでも彼女はいい所のお譲様らしい。

 

「もう逃がさねえぞ。ちゃんと説明しろ」

 

「そうだ、そうだ。ちゃんと説明しろ」

 

ねえ?杏子ちゃんと美樹さんなんでそんなに息あってるの?確かアニメだと初対面では魔法少女としての方向性の違いで険悪になっていきなり戦いだしたよね?

 

とりあえず悪いことはしていないのでありのまま正直に鹿目さんと一緒に朝あった財布を落として困る少女と遅刻しそうだったから思わず手を握って走ってきた事を全部話した。

 

「なんだ~そうだったのか」

 

「まあ、一真は昔から困った奴をほっとけないお人好しな奴だからな」

 

分かってもらえてよかった。

 

鹿目さんも安心してホッとしているようだ。

 

「え?杏子って城戸の事を名前で呼んでるの?何?あんたの彼氏だった?」

 

「た、ただの幼なじみだ!」

 

「さやか」

 

とりあえず誤解が溶けて仲良くなって和んでいる所に一人の男子生徒が近づいて来た。

 

どうやら同じ新入生のようだ。

 

「あ、恭介。残念だったね。この可愛いさやかちゃんと同じクラスになれなくて」

 

「はいはいそうですね・・・」

 

「何その反応はーもっと悔しがってよ」

 

「まあまあ、さやかちゃん」

 

恭介・・・確か上条恭介だったか。美樹さんの幼なじみで天才バイオリニストだったが交通事故に会いその際に怪我した上に左手を負傷してバイオリンが引けなくなり自暴自棄になり周りに当たり散らして

 

そんな彼を見ていられなかった美樹さんがキュゥべえと契約してしまった上に上条自身はそれを知らなかったといえ彼女の親友の志筑さんと付き合う事で美樹さんの心は絶望に染まり魔女化促進の原因になっちまったんだよな。

 

まだ入院してない所を見ると事故前か。

 

とりあえず彼が事故に巻き込まれたら入院している病室に忍び込んで全部治したら不審がられるからそうならないように左手だけでもリライブ光線を浴びせておくか。

 

そうすれば少なくとも美樹さんの魔法少女になる願いを潰せて魔女化も防げるかもしれない。

 

そういや前世で上条と志筑さんが付き合っている描写になった時に横で見ていた親友の鈴木君は酒に酔っていたとはいえかなり怒っていたな。

 

まああんだけ世話になっておきながら退院したことさえ教えないのは鈴木君じゃないけどさすがに俺も軽くイラッっとしたけど

 

鈴木君、美樹さんのファンだったっけ

 

あいつ元気かな・・・

 

俺がまどか☆マギカの世界で生活してるって知ったらうらやましがるのかな、それとも・・・・

 

「そちらの二人は?」

 

「佐倉杏子だ。よろしくな。んだよ、さやかの方が惚れた男を名前で呼んでんじゃん。」

 

「た、ただの幼なじみだって」

 

杏子ちゃんが冷やかしてそれに赤くなりながら反論する美樹さん。

 

上条君と美樹さん、なんとかうまくいけばいいんけどな。

 

ん?

 

上条君が杏子ちゃんの名前を聞いて一瞬驚いて目を見開いたように見えたような気が。

 

なんでだ?

 

「君は?」

 

「同じクラスの城戸一真です。」

 

「上条恭介です。よろしく」

 

「ああ、こちらこそよろしく」

 

色々思う事はあるけどここでは初対面だし感情を抑えるとしよう。

 

上条君に右手で握手を求められ左手で握手する。

 

一応前日に杏子ちゃんに頼んで左腕のドラゴンの魔力は吸い取ってもらったから普通の人と同じ腕だから大丈夫だと思うが。

 

!?

 

なんだ今一瞬魔女と対峙したような感じた寒気は?

 

「かずく~ん!」

 

我に返って振り返ると母さんが手を振ってその横に父さん、それに杏子ちゃんのお母さんが立っていた。

 

「うちの親が呼んでる。ここで失礼するね」

 

「あ、一真の横にいるのうちの母親なんだ。アタシも行くよじゃあな」

 

「またね~」

 

「城戸君、杏子ちゃんまた明日」

 

後ろから美樹さんと鹿目さんの声に見送られ俺達は親の元に向かう。

 

この時、俺は背中を強い目つきで見据える視線に気づいていなかった。

 

 

 

入学式から数か月後

 

俺達は魔女退治を行いながら学生生活を送っていた。

 

その間にも色々な思い出ができた。

 

入学式の時に知り合った鹿目まどかさん、美樹さやかさん、中沢、上条恭介と友人となって一緒に遊びに行ったり中学生になった事で由良さんから秘書の仕事がない時には我流の拳法を習い新しい戦い方を覚えたりした。

 

また魔法少女方面も魔女を探すパトロールを俺と杏子ちゃんかマミさん、マミさんと杏子ちゃんのツーマンセル(二人一組)、俺達に三人のスリーマンセル(三人一組)のローテーションを作った事でマミさんの魔法少女としての負担が減り

 

一人でパトロールをしていた為に誘いを断り続けて疎遠になっていたクラスメイトの友人達と和解してパトロールがない時は友人達と一緒に放課後ショッピングに行ったりと遊べるようになった。

 

放課後だけじゃなく休み時間も一人になる事が無くなってきたそうだ。

 

その事でマミさんに感謝されたがマミさんや杏子ちゃんにはできるだけ普通の学生生活を送ってほしいという原作の悲劇的な二人の最後を知る俺の願いであったから感謝される事はないと思ったが転生者であることを話せないので素直に受け取っておくことにした

 

いつか家族だけじゃなくて二人にも俺の秘密を話さないといけないのだろうな・・・

 

そんな事を考えながら魔女と戦い充実した学生生活を送りながら時は過ぎ夏休み目前の一学期終盤を迎えてたある日の土曜日。

 

授業が午前で終わり放課後になって、スリーマンセル(三人一組)の日で俺と杏子ちゃんは下校して家に戻り着替えマミさんと合流して魔女探しのパトロールをする予定だ。

 

杏子ちゃんと今日の予定を話しながら靴箱の前まで来て蓋を開ける。

 

「ん?なんだこれ?」

 

靴の上に真っ白な封筒が置いてあり裏を見るが差出人の名前は書かれていない。

 

とりあえず封筒から手紙を取り出して広げて見る。

 

「・・・!?」

 

「どうしたんだ一真?」

 

「・・・杏子ちゃん、ごめん野暮用ができたから先に帰るよ。今日のパトロールは休むってマミさんに言っておいて!」

 

俺は手紙を握り絞めると無意識にズボンのポケットに押し込み靴を履いて校舎から走り出していった。

 

「え?お、おい!」

 

「杏子ちゃん。どうしたの?」

 

「あれ杏子、城戸は?一緒じゃないの?」

 

「まどかとさやかか、なんか靴箱にある手紙読んだら先に帰るって行ってとび出して行った。」

 

「え、靴箱に手紙?それってまさかラブレターってじゃないの?」

 

「なっ!?そうなのか!一真ちょっと待ちやがれって!・・・もういねえ!」

 

 

 

俺はただひたすら目的地に向かって走っていた。

 

『落ち着け相棒、ただのイタズラかもしれんぞ』

 

イタズラ?これがイタズラだと思うか?

 

『(赤き龍を宿いし光の戦士の力を持った転生者城戸一真様 市外にある五郷工業工場跡にて待つ。来なければ君の家族の命は保証しない)』

 

靴箱に入ってた紙にそう書かれていた。

 

『赤き龍』『光の戦士』『転生者』これだけのキーワードがあるのに偶然で済まされるかよ。

 

何者だ?俺が転生者であることは親はもちろんマミさんや杏子ちゃんにすら話していないのに!

 

俺は指定された封鎖されている工場跡に着いて壁を飛び越えて鍵の掛かっていない扉を見つけて工場内に入った。

 

工場内に入ってすぐ周囲を見回す。

 

どこだ?どこにいる?

 

「やあ、君の事だから家族に危害を加えると書いたら来てくれると思ってたよ」

 

俺とドライグ以外の第三者の声が聞こえて上を見ると二階に続く階段からゆっくり降りてくる見滝原中学の制服を纏った見覚えのある少年。

 

「お・・・お前は!」

 

「改めて自己紹介をしようか赤龍帝。僕は上条恭介。白き龍を宿いし上条恭介に憑依した君と同じ転生者さ」

 

そう名乗った上条の背中から俺に宿るドライグの宿敵であるアルビオンの白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)が出現した。

 




はい、というわけで原作キャラとスピンオフ作品キャラの登場回でした。

美国織莉子と呉キリカは『魔法少女まどか☆マギカ』のスピンオフ作品『魔法少女おりこ☆マギカ』の登場キャラクターです。

とりあえず今は語りません。

それは後程と言う事で・・・

そして一真君の家に同せ・・・居候する事になった杏子ちゃん。

いや、ぶっちゃけ杏子ちゃんを見滝原中学に登校させるにはこれしかなかったんや!

まあ、これでネタにする枠が増えたしまあいいか。




そして最後の上条恭介

ある日『上条恭介を白龍皇にしてみれば?」という電波が来て実行しちゃった。

仮面ライダーBLACKのシャドームーン、ビーファイターのブラックビート、ウルトラマンガイアのウルトラマンアグル。

主人公と同じ力か相反する力を持ったライバルキャラが好きなので赤龍帝のライバルである白龍皇にも登場していただきました。

しかしただライバル転生者を出すのではなく原作キャラの上条恭介に憑依させてみましたがどうでしょうか?

さ~て何者なんだろうね(棒)

彼らの存在がこの物語にどう係わっていくのか。

そして上条恭介が一真の前に現れた目的とは?

次回『第13話 強襲!白龍皇アルビオン』

お楽しみに


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第13話 強襲!白龍皇アルビオン

今俺の目の前で絶対にありえない事が広がっている。

 

原作キャラの美樹さやかの思い人の上条恭介に廃工場に呼び出されてその彼から白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)が現れたのだ。

 

「それは・・・まさか」

 

「君は知ってるだろう?そう白龍皇アルビオンの白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)だ」

 

「なんで君が・・・」

 

驚きを隠せず冷静になれない。

 

ハイスクールD×Dの白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)がなぜまどか☆マギカの原作キャラの上条恭介の背中に現れた事に。

 

「別に不思議じゃないさ。僕も君と同じように前世の記憶を持った違う世界から来た転生者だからね」

 

「じゃあお前も俺と同じように寿命を削られて幼女神に転生して貰ったのか」

 

「ああ、一つはこの上条恭介への転生、二つ目は君と言う存在がいると聞いて白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)、もっとも僕は君と違いあの幼女でなく父親の神様の方だけどね」

 

ベラベラと自分の情報をよく喋る。ただの自信過剰かそれとも喋っても勝つ余裕があるのか。

 

『久しぶりだな赤いの』

 

奴の方から聞き覚えがある別の人物の声がする。

 

俺の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)と同じ神器(セイクリッド・ギア)である白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の中に居るドライグと同じ二天龍、白龍皇アルビオンの声だ。

 

『ああ、白いの。お前もこの世界に来ていたとはな、気がつかなかったぞ』

 

『恭介に頼まれて時が来るまで力を隠せと言われたのだ。しかしこうして姿を現せたという事はその時が来たという事だ』

 

『なるほど貴様との因縁は、この世界でも変わらないと言うことかアルビオン』

 

『それはこちらの言葉だ、ここで終わらせるぞドライグ』

 

因縁のある二天龍同士の会話を邪魔するのは忍びないが俺も上条の奴に聞きたいことがある。

 

「・・・で、俺に自分が転生者だと教えてなにが目的だ。この世界で一緒に魔女と戦おうって言うか?」

 

「まさかインキュベーターから佐倉杏子と巴マミを守れずにいい気にヒーローごっこをしている君と手を組むなんてする筈ないじゃないか」

 

だよな、

 

そんなわけない。

 

なぜならこいつは俺を呼びだす為に俺の家族を人質にするような手紙を書き俺の怒りを煽った。

 

そんな奴が共闘を申し込むなんてまずありえない。

 

それにしても杏子ちゃんとマミさんを守れなかったのは事実だから痛い所を突く。

 

「じゃあお前はどうなんだ?お前だって彼女たちが契約を迫られた時に何もやってないじゃないか?」

 

「それはそうだろう。僕が守りたいのは美樹さやかただ一人。他の奴が魔法少女になろうかどうなろうか知った事じゃないがさやかを魔法少女に勧誘しようとする巴マミを魔法少女にしたツケは君の命で払ってもらう」

 

これで確信した。

 

こいつとは協力できないし考え方もまるで違う。

 

俺は自分の家族や親友、杏子ちゃん達やその家族も守りたい。だがこいつは美樹さんさえ守れるなら他の人間がどうなろうともかまわない考え方だ。

 

同じ転生者でもこうも考え方が違うのか。

 

「一つ聞かせろ。本来の上条恭介はどうなったんだ?」

 

輪廻転生を信じるわけじゃないけどこの世界に産まれる本物の上条恭介の意識がないなんてあり得ない筈だ。

 

「・・・・ああ、邪魔だから消えてもらったよ。」

 

「な!?お、お前自分が何言ってるのか!この世界の人間はアニメのキャラじゃない。俺達と同じ生きている人間なんだぞ」

 

「関係ないよ、ワルプルギスの夜とインキュベーターを倒してさやかを魔法少女にさせない為ならどんな犠牲も厭わない。」

 

俺は八年間この世界で生きて沢山の人達と触れたって来た。

 

その人達も前世の世界と同じ感情がある生きた人間だった。

 

その人間をこいつは自分の目的の為にあっさり消した言いきるだと。

 

「上条・・・いやお前はいったい何者なんだ?」

 

「さあ?僕に勝てたら教えてあげるよ。おしゃべりはお終いだ。ここで君には退場してもらう」

 

お互い話は平行線で歩み寄る気はない。

 

ならば答えは一つ。ここでこいつを野放しにしたらみんなに危害が及ぶかもしれない。ならばここでこいつを倒す。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出して構える。

 

あれ?いつもの音声が流れない。

 

それに宝玉も光が灯っていないし色も鮮やかな赤じゃなくて赤黒い。

 

まさかこれって!

 

『ああ、どうやら最悪のタイミングで禁手(バランス・ブレイカー)かパワーアップの瀬戸際に立ってしまったようだな』

 

よりによってこんな時にか!

 

『どうやら向こうは分岐点に立って神器(セイクリッド・ギア)が使えないようだな。どうする恭介』

 

「決まっているだろう。禁手(バランス・ブレイカー)だろうとパワーアップにしろ待ってやる義理はない。ここで始末してやるだけさ」

 

『運がなかったなドライグ、今回は私の勝ちだ』

 

恭介が手を前にかざして青白い魔力弾を放つ。

 

「くっ!?」

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)は使用不能ならウルトラマンの力だけで戦うしかない。

 

跳び退いて魔力弾を避けてスラッシュ光線で撃ち返す。

 

どうやら使えないのは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)だけでウルトラマンの能力は使えそうだ。

 

しかしスラッシュ光線は上条に当たる直前に魔方陣のような障壁に阻まれる。

 

あれはハイスクールD×Dの兵藤一誠のライバルである白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の所有者ヴァーリ・ルシファーや悪魔が使っていた魔力の障壁!

 

「この世界に来てすぐにアルビオンから魔力の応用で再現できると聞いて習ったのさ。本家ヴァーリほどの硬さはないけどこの程度の光線技など簡単に防げる」

 

『恭介はこれをわずか三日で習得した。天賦の才という物は恐ろしいものだな』

 

特典なしで三日でだと!俺にはないとんでもねえ才能だ。

 

「そうそう助けが来るかなんて考えない事だ。君がこの工場に入った瞬間に結界を張らしてもらった。魔法少女の巴マミや佐倉杏子でも破れない強力な奴をね」

 

それがどうした?むしろ好都合だ。元々彼女達をこれ以上厄介事に巻き込むつもりはない。

 

これは転生者同士の問題だ。だから俺が決着を付ける。

 

光線技が駄目なら接近戦はどうだ。

 

アグルブレードを出して障壁に斬り掛かる。

 

『不用意に近づくな。奴に力を奪われるぞ」

 

分かっているがこれしか今は手がない。

 

赤龍帝の力は倍加と他者に譲渡、それに対し白龍皇は触れた者の力を奪って十秒事に半減させ自らの力にする。

 

また奪いとった余分に溜まった力は白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)から排出する事ができるから溜まりすぎてオーバーフローを起こすことはない

 

アグルブレードで障壁を斬り裂こうとするが障壁は固くビクともしない。

 

俺のアグルブレードは鉄さえも斬る事ができる筈なのにこの障壁はどれだけ硬いんだ!

 

「障壁が邪魔かい?なら解いてあげるよ」

 

上条がそう言うと障壁が消えて上条がアグルブレードを避けて空を斬る。

 

馬鹿してるのか!?

 

怒りで頭に血が上りアグルブレードで単調な攻撃をしてしまい上条は俺の手首を掴む、

 

しまった!

 

力を吸い取られるかと思ったが上条は掴んだまま積み重ねられたドラム缶の山に向けて投げ飛ばす。

 

「うわああ!!」

 

ドラム缶の山に叩きつけれ崩れたドラム缶が降ってくるがなんとかドラム缶を押しのけて這い出る。

 

「いたた、な、なんで掴んだ時に半減の力を使わなかった。本気で戦う気あるのか?」

 

「君が赤龍帝の力を使えないなら僕も白龍皇の力を使わない、魔力だけで十分だ」

 

完全に舐められてるな、でもチャンスだ。

 

奴が油断してる間に勝負を決めてやる。

 

・・・とは思ったもののこっちも無傷じゃない。

 

頭をぶつけて切れた所から血が流れる。

 

見た目の出血に比べ幸いそんなに深くは切れていないの救いか。

 

「僕だってさやかを守るという目的の為に上条グループの財力を使って最新鋭の格闘技とトレーニングを積んで努力してきたんだよ」

 

こいつ、才能だけじゃなくて努力もしてきたのか

 

強い・・・なんて力だ。はっきりいって今の俺以上の強さだ

 

でも俺もここで負けてリタイヤするつもりはない。

 

一度体勢を立て直す為に数秒だけプロモーションキングを発動させてドラム缶を持ち上げて上条めがけて投げる。

 

「こんな姑息な手で僕が倒せるか!」

 

ドラム缶を紋章障壁で防ぐが障壁に当たり変形したドラム缶に穴が開いて中から黒い液体が飛びだす。

 

「この匂い・・・これはコールタールか!」

 

コールタールが障壁を覆っていく。

 

「くっ前が見えない。どこだどこにいる!」

 

やがて障壁全体がコールタールに覆われ全てのコールタール入りのドラム缶を投げ捨て奴の視界を防いだら急いで外に出た。

 

外に出て急いで工場の入り口から見えない物陰に隠れて座り込む。

 

さてどうする?あいつはとんでもない強くこれまで戦ってきた魔女なんかとはケタが違う。結界で逃げられない上に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)も使えない上に万全の状態でも勝てるかどうか分からない。

 

「ドライグ、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)はまだ使えないのか?」

 

『ああ、禁手(バランス・ブレイカー)かパワーアップか完全に迷っているようだ』

 

どうすればいいんだ、俺が弱い所為でウルトラマンの力は奴には通用しない。

 

プロモーションキングは能力が格段に上がるが五分で奴を倒せるかどうか。

 

失敗したら確実にやられる。

 

前に使った身体を代価を支払う疑似禁手(バランス・ブレイカー)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が使えないから無理。

 

もし使えても前の森での杏子ちゃんとの戦い事があるから使えても使う気はないが。

 

落ち着け城戸一真、泣き事は考えるな。ここから生きて出る方法だけを考えるんだ。

 

『相棒、あの建物はなんだ?なんであの建物だけ他と違い離れて造られてるんだ?』

 

何こんな時にのんきな事を言ってるんだ。

 

そう思いながら言われた建物を見るとそれは。

 

「あれだ!アレを使えば!」

 

奴に勝てる一筋の光明が見えた。

 

「どこだ!どこにいる!!」

 

上条が怒鳴りながら俺を探している。

 

あいつ、プライドを傷つけられてかなり頭に血が昇っているようだな。

 

上条に見つからないように音を立てずに目的の倉庫まで走る。

 

倉庫のドアの前まで移動に成功して扉のノブに手をかけたが鍵が掛かっていた。

 

だがウルトラマンの能力を持った俺は普通の中学生より腕力があるから鍵を強引に壊して中に入る。

 

工場の人、ごめんなさい。

 

ゴホッゴホッ閉め切っていただけあって埃っぽいな・・・

 

えっとお目当ての物はあるかな・・・あった!

 

跡地だからもう撤去されてるかと心配したが持っていくのが面倒か知らないがありがたいことに置いていってくれたみたいだな。

 

あとはこれとワイヤーを結んで罠を作ってあいつを待つのみ。

 

 

【恭介サイド】

 

「ここか・・・」

 

わずかに城戸の魔力をアルビオンが感知して倉庫内に入る。

 

「しまった見つかった!」

 

倉庫内にはドラム缶を運ぶ城戸一真がいた。

 

「鬼ごっこ終わりだ、城戸一真」

 

「もう少しだったのに!」

 

城戸一真が持っていたドラム缶を投げてくる。

 

何を企んでいるか知らないがまたコールタールか?

 

「同じ手がそう何度も通用するか!」

 

魔力弾でドラム缶を破壊する。

 

しかしドラム缶の中は空だった。

 

苦しまみれのハッタリか?

 

奴の姿を確認すると奴は右腕を手前に引く動作をする。

 

何をするつもりだ?

 

ガシャン

 

背後で音がして振り向くと開けていたドアが思いっきり閉まる。

 

「これは!」

 

よく見るとドアのノブの部分にワイヤーが結ばれていた。

 

慌てて奴を見ると次は両腕を上に向けて引っ張る動作をする。

 

「何をするつもりか知らんがさせるか!」

 

魔力弾を城戸に向けて放ったが

 

「なんだと!」

 

左腕を腕を上げた城戸が勢いよく浮かんで魔力弾外れて城戸の背後で爆発する。

 

上を見ると何かが落ちてくるのが見える。

 

そうか浮かび上がったんじゃない。

 

滑車の原理で重りになった何かが城戸を引っ張り上げたんだ。

 

最初のドラム缶は上の注意を逸らす為のブラフか。

 

上がりながら城戸の右腕から青い剣を出して振り回す。

 

よく見るとパイプにワイヤーで麻袋を吊るしていて、麻袋が斬り裂かれ空から大量の白い粉が降ってくる。

 

なんだこの粉は!落ちてきた麻袋を見る袋には石灰と書かれている。

 

くそ目に少し入った。こんな石灰の粉で目眩ましなど・・・

 

待て粉だと?そしてここは倉庫と言う名の密閉空間。

 

まさか奴の本当の狙いは!

 

痛みに耐えながら涙目で奴を睨むと障壁で防いでいた光線を下に向けて放った後、倉庫の小窓から外に出る姿が最後に見えた。

 

そうか奴の狙いはふんじんばくは・・・

 

言い切る前に俺の視界は粉に引火した炎に包まれてしまう。

 

 

 

【一真サイト】

 

「ふう、どうにかうまくいったな」

 

倉庫に入ってすぐにお目当ての品の石灰粉を探し出して準備をした。

 

『まったく、あんな大掛かりな仕掛け相棒の能力がなければ一人じゃ無理だったぞ』

 

そうだね【俺一人】じゃ無理だった。

 

ここは結界の中で助けは来ない。

 

ではどうすればいいか?答えは簡単だ。

 

【城戸一真】を増やせばいい。

 

だから俺はウルトラマンマックスがダークバルタンとの戦いで使った分身で【俺】を増やしてあの大掛かりな仕掛けの準備ができたんだ。

 

そして後はワザと魔力を感知されるようにして奴を誘い込み作戦は成功する。

 

燃える倉庫を見ながら白龍皇の力があるからさすがに死なないと思うがこれで奴が戦闘不能になって結界が解けてくれればいいんだけど。

 

いや気絶してたらそれ所じゃないか。

 

警戒しながら近づこうとしたその時。

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

Vanishing Dragon Balance Breaker!!(バニシングドラゴンバランス・ブレイカー)

 

真っ白なオーラがの柱が燃え盛る炎の倉庫から放たれ、炎がかき消される。

 

そして焼け焦げた倉庫の屋根を突き破りそれは空中に姿を現せた。

 

白いオーラを纏い、背中に神々しいまで輝きを放つ光の翼、そして俺の赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)に似た全身鎧(フルプレートアーマー)

 

ただ違うのは俺の赤に対して目の前に奴は雪のような白

 

「う、嘘・・・だろ・・・」

 

煙の中からそいつは現れた。

 

「例え君が数千数万の策や小細工を用意しても私はそのすべてを破壊する」

 

殺気を放つ白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)禁手(バランス・ブレイカー) 白龍皇の鎧【ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル】を纏った最悪の絶望が!

 




収拾つくのかな、これ・・・

これが今年最後の投稿になるのかな。できればもう一本投稿したかったがとりあえず今から13話作りをがんばってみよう

今年はお世話になりました来年も『魔法少女と偽りのヒーロー」をよろしくお願いします。


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第14話 大激突!白と赤の二天龍

【一真サイト】

 

工場跡地に呼びだされた俺は転生者でしかも白龍皇を宿した上条恭介と戦う事になった。

 

だが俺の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)は最悪のタイミングで禁手(バランス・ブレイカー)の瀬戸際に立ち使用不能になって苦戦を強いられる。

 

背中に白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)が装着された上条の魔力弾や障壁を何とかウルトラマンの能力で応戦し、奴を倉庫内に誘い込み石灰粉を使った粉塵爆発を起こし今の俺にできる最大の攻撃で奴を仕留めたと思っていたが。

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

Vanishing Dragon Balance Breaker!!(バニシングドラゴンバランス・ブレイカー)

 

上条は俺が至っていない禁手(バランス・ブレイカー)になり白龍皇の鎧を纏った姿で現れたのだ。

 

 

 

「粉塵爆発とは驚いたよ。まさかアニメや漫画によくある手を本当に使ってくるなんて、でもおしかったね。僕が禁手(バランス・ブレイカー)ができなければ君の勝ちだったのに」

 

空中に浮かんでいた白龍皇の鎧を装着した上条がゆっくり真下に降りて着地する。

 

最悪だ。

 

まさか上条が禁手(バランス・ブレイカー)に至ってるなんて・・・

 

どうする・・・

 

切り札の粉塵爆発も効かずにしかも工場全体を覆ている結界で逃げ道はない。

 

その上こっちは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が使えない状況で向こうはただでさえ強いのに力を一気に跳ね上げた禁手(バランス・ブレイカー)

 

チェスでいう完全にチェックメイトの状態。

 

どうすればいいんだ・・・!

 

「さすがにこの状況では声も出ないか。君に合わせて禁手(バランス・ブレイカー)するつもりはなかったけど君の事を見くびってた事を謝罪しよう。君の知略と能力に敬意を表してここからはこちらも本気でいく」

 

できれば油断してる間に倒したかったのに。

 

もう出し惜しみなしだ。時間内にやるしかない。

 

「プロモーションキ・・・「遅い!」

 

みがまえながら王の駒(キング・ピース)を発動としようとしたら俺の目にも止まらぬ速さで一気に接近を許してしまい腹に拳の重い一撃を食らってしまい。左手で頭を掴まれる。

 

肺にあった空気が一気に外に排出され、胃液を吐き出す。

 

『Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!』

 

俺の力が根こそぎ奪い取られ意識が朦朧としてきた。

 

「ぐはっ!」

 

頭を掴んでいた左手から右手に俺の首に持ち変えられ、白龍皇の鎧を着て二回り大きくなった上条に片手で持ちあげられ宙吊りにされる。

 

 

「声を出せなければ王の駒(キング・ピース)は使えないだろう」

 

く、苦しい・・・息ができ・・・な・・・い。

 

苦しくて振り払いたくても力が出ない。

 

「ここまでだ。情けを掛けて殺しはしないが君には全てが終わるまで病院のベットで寝ててもらう」

 

「あ・・・ああ・・・ググ・・・ッガッガ・・・」

 

・・・ここまでなのか・・・あんなにがんばって鍛えて魔女と戦って禁手(バランス・ブレイカー)にもなれず原作が始まる前にこんな所で・・・

 

い、いやだ、でも意識が・・・

 

『相棒!しっかしりしろ』

 

ああ、ドライグが呼びかけってんな・・・頭がボーっとしてきた・・・

 

『相棒!城戸一真!!一真!!!」

 

カズ・・・マ?あ、俺の名前か・・・はっはこんなことまで忘れるなんて相当ヤバイな・・・

 

記憶の隅にあった前世の事が思い出されていく。

 

幼稚園、小学生、親を失った事、中学生、高校生、大学生の頃の思い出。

 

あ、走馬燈まで出てきた。これは本格的にマズイ・・・

 

そして転生する前に会ったリュネとの出会い。

 

転生した出会った一真の母親と父親との思い出。

 

「かず君」

 

母さん・・・

 

「一真」

 

父さん・・・

 

「城戸君」

 

鹿目さん・・・

 

「城戸」

 

美樹さん・・・

 

「城戸」

 

中沢・・・

 

「城戸君」

 

マミさん・・・

 

みんなとの楽しかった悲しかった思い出が次々浮かび上がり頭の中を駆け巡っていく。

 

そして・・・

 

「・・・・バカ野郎」

 

杏子ちゃん・・・

 

「一真、早く立てよ」

 

杏子ちゃんの泣き顔やとびっきりの笑顔が浮かび上がり一つの感情が俺の頭の中で爆発する。

 

俺は・・・・俺は・・・・・みんなに生きてまた会いたい。みんなが好きだから・・・だからまだ終わりたくない!!

 

それはすべての生物が本能の中に持つ生きようとする意志

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宝玉に光が戻り赤黒い色から鮮やかな赤に戻る。

 

さらに赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)から放たれた膨大な赤いオーラが全身に駆け巡り包み込んでいく。

 

オーラが全身を巡り駆け回り先ほどまであった腹の痛みが引いていく。

 

これって、まさか!

 

「そうです、ついに至りましたね」

 

幼女神リュネの声が聞こえる

 

『なるほど相棒の禁手(バランス・ブレイカー)になるための欠けたピースは前世で蔑ろにされ自分の存在と命を軽んじて事か、だがそれは死にたくないと願ってそのピースは埋まった』

 

「一真は優しい子なのです。前世で家族を失い親戚中から疎まれながらもそれでも他人の為に自分を投げだせる。ですがそれは見方を変えればその優しさが時として自分を大切にせず自分自身を傷つけ成長を阻害していました。

ですが一真が家族や友人とまた会いたいと思い緒に生きたいと願う事で一真の世界が変わり禁手に至ったのです。今こそ叫ぶのです。あの言葉を!」

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

Welsh Dragon Balance Breaker!!(ウェルシュドラゴンバランス・ブレイカー)!!!!』

 

あの時、銀の魔女との戦いで纏った赤い鎧を再び装着されていく。

 

「その姿は能力を使いづづけても約2時間は維持できます」

 

2時間もあれば十分だ!兵藤一誠は最初の頃は三十分だったが俺はその四倍!九年間の修行の成果が役に立ったぜ。

 

『至った!この土壇場で至りやがった』

 

『このタイミングで禁手(バランス・ブレイカー)だと!?』

 

「ほう、そうでなくてはな」

 

歓喜の声を上げるドライグと驚くアルビオン

 

上条は心なしか喜んでるような気がする。

 

俺は脱出する為に赤いオーラが両手に集め

 

上条の両方の首元に両手で同時にチョップする。

 

「くっ」

 

俺の首を絞めていた手が緩み隙ができた所に延髄蹴りを入れる。

 

上条が手を離し後ろに跳び退いて距離を開ける。

 

『CutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCutCut』

 

膨大なオーラと共に聞き慣れない音声が流れる

 

『これは・・・相棒、喜べ!これまでリミッター掛かっていた光の戦士の技が禁手(バランス・ブレイカー)に至った事でほとんどが解除されていったぞ』

 

禁手(バランス・ブレイカー)になり今まで使えなかった技も使える、これなら・・・

 

上条、もうお前の思い通りにはならないぞ!

 

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)死の淵ギリギリの所からここに降臨!」

 

よし、声は問題なく出るな。

 

これでプロモーションキングも大丈夫だ。

 

あー喉が痛てえ・・後が残らなければいいけど。

 

もし手の跡が残ってたらみんなに何事かと質問責めされて心配するからな。

 

それにしてもこれが真の禁手(バランス・ブレイカー)か、前の疑似禁手(バランス・ブレイカー)と比べ物にならないくらい赤いオーラが溢れて力がみなぎってくる。

 

『相棒、おめでとう』

 

ドライグが祝福の言葉を掛けてきてくれる。

 

「なんだよ、ドライグもう一真って名前で呼んでくれないのか?」

 

『い、いやあれは勢いでつい出たというか・・・』

 

心なしかドライグが焦ってるような気がする。

 

こんなドライグを見るのも珍しいな。

 

「一真って呼んでくれよ。そっちの方が嬉しいし、あの時ドライグがそう呼んでくれたから俺は目が覚めて禁手(バランス・ブレイカー)に至れたんだ。禁手(バランス・ブレイカー)記念って事でさ」

 

相棒だと本家兵藤一誠と被るし名前の方が特別感が出てさらに気が引き締まるからそっちの方がいい。

 

『分かった一真、改めて禁手(バランス・ブレイカー)おめでとう」

 

「ああ、ありがとなドライグ!」

 

パチパチパチパチ

 

音がする方を見ると上条が拍手してやがった。

 

「やればできるじゃないか。禁手(バランス・ブレイカー)に至らなければワルプルギスやインキュベーターから彼女達を守る事なんてできないからね」

 

「・・・まさか俺を禁手(バランス・ブレイカー)にさせる為にワザと手を抜いてたのか・・・・」

 

「あと一年で原作が始まるんだ。のんびり禁手(バランス・ブレイカー)になられるより早めに禁手(バランス・ブレイカー)に至り強くなってもらわないと困るからね。」

 

こいつにまんまと乗せられてたのか。

 

どこまで上から目線で人を見下せば気が済むんだ。

 

こいつのやり方や言動は怒りを覚える。

 

先に禁手(バランス・ブレイカー)に至ったからって調子に乗ってんじゃないぞ!

 

でも一つだけ感謝はしよう。お前のおかげで禁手(バランス・ブレイカー)に至れたんだからな。

 

「さて、禁手(バランス・ブレイカー)になったばかりの状態でどこまで戦えるか見せてもらおうか」

 

「望むところだ!」

 

先に仕掛けてきたのは飛翔して拳を振り上げ殴りかかってくる上条

 

ガキキキキンンン!!

 

俺はそれを真っ向から受け止める。

 

金属音が鳴り響き足元が陥没するがどうって事ない。

 

『Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!』

 

白龍皇の力で俺の力は半減するが

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

奪われた力を戻す為、倍加して体制を立て直す。

 

「このお!」

 

「な!は、離せ!」

 

腕を掴んだまま何回か上条を振り回し上に投げ飛ばす。

 

追撃を入れる為にメビュームブレードで斬り掛かるがさらに高く飛翔して攻撃が空振りする。

 

俺も跳べる事は跳べるがそんなに高く跳べない。

 

飛翔し距離を取り魔力弾を撃ち込む上条

 

「くっ!!」

 

地上でなんとか避けながら両手をクロスして防御する。

 

このままじゃ負けてしまう。

 

「空さえ飛べたら・・・」

 

防御しながら悔しさを噛みしめる。

 

飛行能力はあるにはあるがあくまでも『浮く』だけで上条の様に自由に飛びまわれない。

 

浮くだけでは恰好の的だ。

 

「お前も飛んでみるか?一真」

 

ドライグそれってどう意味だ?

 

聞き返そうとする前に背中から龍翼が飛び出してくる。

 

これって原作じゃ禁手(バランス・ブレイカー)しても後の方に出てくるんじゃ?

 

『お前は九年間の辛い修行に耐えて禁手(バランス・ブレイカー)に至ったんだ。これくらいできて当然だろう。それにリミッターは光線技だけでなく空を飛ぶ能力も解除されてるから原作の俺よりもかなり速いぞ」

 

よし!これで俺も空中戦で自由に戦える。

 

しかもウルトラマンの飛行能力が付加されて強化されたからあいつにも負けない。

 

『空が初心者の一真では龍翼の制御は難しいだろう。だから俺が制御する。お前は奴をぶっ飛ばす事だけ考えろ』

 

頼む、ドライグ

 

これで奴に一泡吹かせてやる。

 

『JET!!』

 

龍翼を広げて魔力噴出口から圧縮した赤い魔力を一気に放出して爆発的に加速して上空にいる上条に目がけて突撃する。

 

「速い!」

 

上条は魔力弾を連続で放ってきた。

 

さっきまでの俺なら怖がってたかもしれないけどもう怖くないぞ。

 

左手の手甲からメビュームブレードを出して魔力弾を斬り裂いたり、右手で弾き飛ばす。

 

『Boost』

 

右の拳にオーラを纏わせて力を倍加させたとっておきの一撃をを上条の胸にお見舞する。

 

「ぐはっ!」

 

殴られた白龍皇の胸の鎧の部分が砕けて上条が胃液を吐き出す。

 

さっきのお返しだ。

 

「ゴホッ!ゴホッ!」

 

上条は俺から離れて後ろに距離を取り咳き込んでいる。

 

今の内にオーラを溜めておくか。

 

「ゴホッゴホッ・・・ふっふっふやるね、そうでなくては」

 

『あ、ありえん、同じ禁手(バランス・ブレイカー)といっても、奴は恭介と違い禁手(バランス・ブレイカー)に至ったばかりの未熟者の筈、なのに我らと互角だと・・・』

 

『当たり前だアルビオンよ、相棒のこれまで必死に修行してた力が禁手(バランス・ブレイカー)に至った事で一気に爆発したんだ。並みの禁手(バランス・ブレイカー)とわけが違う』

 

そうだ上条は美樹さんを守る為に必死にトレーニングをしてきたと言ってたがそれは俺だって同じだ。

 

過酷な修行内容なら俺だって負けはしない。

 

「ではこちらも障壁の縛りを解除させてもらうよ」

 

上条の前にさっきまで苦戦していた障壁が再び現れる。

 

あれをどうにかしないとこちらの攻撃は届かない。

 

だったら禁手(バランス・ブレイカー)に至って解禁された技を試してみるか。

 

今なら撃てる気がする。

 

俺は解禁された技の中から両手首を交差させて最初に使いたかった技の構えを取る。

 

「その構え・・・おもしろい!」

 

「いっけえええぇ!」

 

マイナスとプラスのエネルギーをスパークさせた光線が左手から発射される

 

幾多の怪獣を倒してきた伝説の初代ウルトラマンの必殺技『スペシウム光線』だ

 

しかし障壁はスペシウム光線を防がれる。

 

「こんなものか、この程度では僕の障壁は破れない」

 

ダメか

 

やはり俺は弱い偽りのままのか。

 

『ならば本物の威力に近づけてやろうか?』

 

ドライグそれって・・・

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

音声と共に俺の力が倍加されてスペシウム光線が勢いよく発射される。

 

『何!?』

 

障壁はスペシウム光線でどんどんヒビが入っていく。

 

防ぎきれると確信していた上条は驚きを隠せない。

 

「いけええええ!!」

 

強化されたスペシウム光線がついに障壁を破壊して上条に直撃した。

 

「ぐああああ!」

 

白き鎧はスペシウム光線の当たっている部分から亀裂が入っていく。

 

上条はなんとか防ごうと両手をクロスして防御の体勢を取ろうとするがスペシウム光線は鎧の腕の部分にも亀裂を走らせる。

 

スペシウム光線は腕を弾き光線は再び胸に直撃して・・・

 

『バ、バカな!こんな事が!」

 

そしてついに上条の纏っていた白き鎧は粉々に砕け散っていった。

 

パラパラと鎧の破片が光を反射しながら下に落ちていく。

 

「どうだ!上条!もう勝負はついたぞ!」

 

「・・・・まだだよ」

 

また再生される白龍皇の鎧

 

これだけやっても戦闘不能にならないのか!

 

鎧が再生しなくなるのは使用者が戦闘不能になった時

 

それまでは粉々に砕いても鎧は何度でも蘇る。

 

それが二天龍同士の戦い。

 

それにしても赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で強化されたスペシウム光線をまともに浴びたのにまだ戦えるなんて

 

どんだけタフなんだ!

 

「プロモーションキング!」

 

俺の体の中にある王の駒(キング・ピース)の力を発動させる。

 

体に赤いオーラが数段に膨れ上がる。

 

これで五分間だけ力が十倍にも百倍にもなれる。

 

王の駒(キング・ピース)・フルドライブ!」

 

奴の体の白いオーラが俺と同じくらいに増大される。

 

そうか奴も王の駒(キング・ピース)を体内に持っていたのか。

 

道理で王の駒(キング・ピース)は声を出さないと発動しないと知ってた筈だ。

 

「驚かないのかい?僕も王の駒(キング・ピース)を持ってた事に」

 

「転生者って聞いた時に予想は付いてたさ」

 

神様はご禁制の品だと言ってたけど俺に与えたなら口のうまい上条が神様を丸め込めて手に入れても不思議じゃない。

 

キッ!

 

両者が一気に接近してそのままお互いの拳が顔を殴り飛ばす。

 

何かが弾ける様な音がぶつかり空気が震える。

 

吹っ飛ぶ俺と上条。

 

「く!」

 

素早く起き上がり右手を付き出して構えると念じる。

 

すると全身の魔力を右手の手元に集まってくる。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

そして倍増して集まった魔力を発射。

 

サッカーボールぐらいの大きさの魔力弾『ドラゴンショット』だ。

 

ドラゴンショットはまっすぐ上条に向かって行く。

 

「甘いな、こんなのよければそれでいい」

 

上条は空を飛んで上に避けるが・・・

 

「上に曲がれ!」

 

ドラゴンショットは上に曲がり上条を追いかける。

 

「なんだと!」

 

原作でも兵藤一誠が魔王サーゼクス様の任意に方向を変える魔力弾を見て自分もできないかとやっていたを見て真似たように俺も修行して真似て見た。

 

いわば三番煎じだけど効果はあった。

 

「くっしつこい!」

 

悪態を吐く上条。

 

それもその筈だ。

 

ドラゴンショットは右へ逃げたら右に追い、左逃げたら左にどこまでも追っていく。

 

上条は避けるのを諦め立ち止まり、障壁で防ぐ。

 

「はああ!!!」

 

ベキベキベキ

 

力で押し切ろうとあと二発発射する

 

三発同時、プロモーションキング状態でも今はこれが限界か・・・

 

三発のドラゴンショットは障壁に亀裂を入れていく。

 

見た目はサッカーボールクラスだが実際は圧縮させまくった魔力弾だ。

 

「ここまでとは・・・だがこれくらいなら」

 

焦りを見せながらも防ぎきる自信を見せる上条

 

じゃあこれならどうだ!

 

龍翼を広げて飛び上がり上条よりさらに高い位置に着くと

 

赤い龍のオーラを右足に纏わせて上条に向けて落下の勢いと背中の魔力口を上に向けて魔力を放ち突撃して

 

「おりゃあああああ!!」

 

見様見真似のレオキックもどきを叩きこむ!

 

「な、何!?」

 

ピシッピシピシ・・・バギッ!

 

三つのドラゴンショットでヒビが入りレオキックで障壁を叩き壊した。

 

「くっ!」

 

スペシウム光線の時で懲りたのかすぐに上条が障壁を解きドラゴンショットを受け流し。

 

受け流されたドラゴンショットがあらぬ方向に飛んで消えていく。

 

ありがとうございます由良さん。

 

ここまで鍛えてもらえた事に感謝の意を心の中で示す。

 

あなたに鍛えていただけなかったらここまで大きな威力の打撃技を出せませんでした。

 

北岡先生の秘書の由良吾郎さんの顔を思い出す。

 

秘書の仕事がない時に道着を着て鍛えてもらっている日々。

 

中学生に対して厳しい鍛錬であったが必死に耐え抜き今こうしてその成果が出たことが嬉しかった。

 

「はあ!」

 

俺がワン・ツーと二段キックをするが上条も同じように二段キックをして相殺させる。

 

お互い後ろに飛び間合いを開けて俺が右へ、上条が左へ動き相手の出方を見る。

 

「でやあ!」

 

ジャンプして右ストレートで殴りかかる。

 

上条もジャンプして右ストレートで迎え撃つ。

 

ガキン

 

互いに空中ですれ違い着地して。

 

振り返りすぐにドラゴンショットを撃ち上条も魔力弾を放つ。

 

互いの技がぶつかり合い相殺される。

 

相殺され煙で身えなくなった所で右腕で殴りかかるが上条がそれを左手で受け止める。

 

上条も空いた右手で拳を振るうが俺も左手で受け止める。

 

「「ぐううううううううう」」

 

そのまま力比べに突入する。

 

『Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!Divid!』

 

上条が力を吸い取り押し出そうとするが

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!Boost!!Boost!』

 

俺も負けじと自分の力を倍加させて応戦する。

 

『やるね、だがこれだけは言っておくよ。僕の邪魔をする者はさやか以外誰であろうと容赦するつもりはない。たとえそれが魔法少女であってもね』

 

「させない!絶対にさせるか!」

 

ブンッ!

 

バキイィ!!

 

振り払って体勢が崩れた所にオーラを纏わせたパンチを放つと、白龍皇のマスクを被る上条の顔に見事にクリーンヒットした。

 

「くっ!くくく・・・・さすがだね、今の君こそ倒すのに相応しい相手だよ!!」

 

シュッ!

 

ザッシュ!!

 

「がはぁ!!」

 

何かががみぞおちに切り裂く。

 

痛みで口から空気が吐き出され、後ろへ数歩下がる。

 

その正体は上条の手をまっすぐに伸ばしたチョップだった。

 

でもそれはただのチョップじゃない。

 

自分のオーラを纏わせたチョップいわばオーラの手刀だ。

 

「体にオーラを纏わせるのは君の専売特許じゃない」

 

オーラ手刀で斬り掛かってる。

 

なんとかそれを避けると後ろにあった鉄の柱が切断され崩れる。

 

シュッ!シュッ!シュッ!

 

「チィ!!」

 

下がった顔に向かって踏み込んでのオーラ手刀三連撃。

 

しかし、これも避けて、最後の三発目を右の裏拳で弾きそのまま、懐に潜り込むとボディに拳を連続で当てる。

 

ドスドスドスドスドス!!!!!

 

鈍い音が鎧越しに上条の腹に響き渡る。

 

「ぐう!ぐう!ぐう!ぐう!」

 

何度か殴った後、剥き出しになった上条の顎に向かって、由良さんから教わった突き上げるような掌底を繰り出す。

 

ブオン!!

 

バキィィィ!!!

 

があぁ!

 

見事にヒットして、白龍皇の兜は割れて素顔になった上条が後ろへ下がる。

 

踏み込んで足元にローキックを繰り出す。

 

『シッ!』

 

『バキン!』

 

 

体勢を崩し、そのまま仰向けに上条は倒れた。

 

馬乗りになろうと飛びかかると、体を横に転がして避ける。

 

「・・・チィ」

 

軽く舌打ちをして、転がっていった方に目をやると、すでに起き上がり構えている上条が目に入った。

 

『・・・本気になった君がここまでやるとは思わなかったよ。』

 

兜を再生させる上条

 

「負けない、お前のような奴にだけは絶対に!」

 

『だったら、まだまだ楽しめそうだね!』

 

上条の白いオーラが増大されて右の拳に集束していく。

 

「これで最後だ。最高の一撃で終わらせよう」

 

迎え討つために俺も全身の赤いオーラを高めて右の拳に集める。

 

大地が揺れて地割れが発生するがお構いなしだ。

 

ちょっとでも手を抜けば負ける。

 

こっちも持てるだけの力を出さないと。

 

「これで終わりだ!」

 

上条が物凄いスピードで飛んで接近して、その勢いを加えた白いオーラの拳をを突き繰り出した。

 

「(来た!!だったら、もっと速く!もっと鋭く突っ込め!) 」

 

あれは仮に避けたり受け流したりしても余波でやられる。

 

なら小細工なしで迎え討って勝つしかない。

 

「おりゃああああ!」

 

俺も赤いオーラの拳を繰り出してぶつかり合う拳

 

衝撃波が発生して景色にヒビが入り粉々に砕け散る。

 

バチバチとオーラ同士が干渉しあい火花が飛び散る

 

お互いに負けじとぶつかり合って均衡状態になっていたが

 

拳と拳の間で爆発して俺と上条は吹き飛び倒れる。

 

そして上条と俺は立ち上がった。

 

だが勝敗は不意に起きた。

 

俺の方はすぐに前のめりにガクッと膝を突く。

 

そして王の駒(キング・ピース)の使用時間がきてしまいオーラが消えてしまった。

 

両手を地面に突き身体がうまく動く立ちあがろうにも力が出ない・・・

 

その場で崩れる。

 

奴の方を見るとオーラは消えずに王の駒(キング・ピース)は継続していた。

 

ほぼ同時に王の駒(キング・ピース)を発動させたのになんで奴の王の駒(キング・ピース)は発動し続けてるんだ。

 

「おしかったね、僕が神から貰った王の駒(キング・ピース)は君の幼女神が勝手に持ち出した試作型の王の駒(キング・ピース)と違って五分間しか発動できない弱点を改良された完全な王の駒(キング・ピース)なんだよ」

 

完全な王の駒(キング・ピース)!そんなものが奴の体内に!

 

失敗したな。もう少し慎重に行動するべきだったか・・・

 

「恨むならなら不完全な駒を持ってきたあの見習い女神を怨むんだね」

 

・・・今、何言ったこの野郎!?

 

「誰が恨むか!リュネがいなければ俺はあのまま何もない人生をただ送っていって死ぬだけだったんだ!感謝するけど怨みなど一切ない!」

 

辛い事も確かにあったが家族や友達ができて楽しい事もたくさんできた。

 

・・・だからそんな泣きそうな顔をするなよ。

 

「でも・・・でも概念の存在の私は助ける事も出来ずにその上また私の所為で一真が死にそうに・・・」

 

上条と俺の間に話を聞いていた半透明の幼女神リュネが立っている。

 

「一人でぶつぶつ言ってるが恐怖で幻覚でも見えてるのか?」

 

リュネの姿は上条には見えていないのか。

 

「俺は・・・転生した事を一度も後悔していない。だからリュネを悪く言うのはやめろ!」

 

くそ!あの野郎を一発殴らないと気が済まないのに身体が動かねえ・・・

 

「そんな死にぞこないの体で何ができるか知らないが所詮は負け犬の遠吠えだな。それにしても前世での君を知ってるけど正直禁手に至ったばかりでここまでやるとは思わなかったよ」

 

「ぜ、前世の俺、なんで知ってるんだ。お前は・・・一体・・・?」

 

「まだ分からないかい?薄情だな、昔一緒に会社で働いたり酒を飲みながらまど☆マギのDVDをフルマラソンで見た仲なのに」

 

「ま、まさか・・・す、鈴木君!!」

 

鈴木君、かつて前世の佐藤だった頃に勤めていた会社の同僚。会社では孤立していたが俺とは気が合いまどか☆マギカやハイスクールD×Dを教えてくれた親友。

 

彼も転生者としてこの世界に来ていたなんて。

 

でもこれで奴が美樹さんに固執する理由が分かったよ

 

鈴木君まどマギの中で美樹さんが一番好きって言ってたからな。

 

そんな彼女が辛い目にあう事が許せなかったのか。

 

あいつの美樹さんを守りたいって気持ちは本物なんだな。

 

「そうそうここまで戦えたから本当の事を教えてあげよう。本物の上条恭介の意識なんだど彼は無事だよ。神様も勝手に魂を消滅させるわけにはいかないようだから僕の一つ下の弟『上条透』としてこの世に生を受けている」

 

そうか、あまり好きじゃなかったけどだからといって居なくなってしまう事とは別だから生きているならそれでいい。

 

後はこの体さえ動いてくれたら最高なんだけどな。

 

なんとか動こうとするが痛みで身体が動かない。

 

「だが君はここで終わりだ。今とどめを刺してあげよう」

 

一歩一歩近づいて来る上条

 

本当に俺はここまでなのか・・・

 

『一真立て!立ってくれ!』

 

ごめんドライグ・・・ここまでかも

 

覚悟を決めて最後の時を迎えようとするが。

 

バギッ!!

 

多節棍の槍が飛んでくるが左手で槍を弾く上条

 

「!?」

 

「これって!」

 

突然の出来事と見覚えのある攻撃に驚く上条と俺

 

「一真、無事か?」

 

空から赤い魔法少女姿の杏子ちゃんが倒れている俺の前に着地する。

 

き、杏子ちゃん・・・!

 

「パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ」

 

「こざかしい!」

 

さらに無数の銃撃が上条に飛んでくるが障壁で防がれる。

 

「城戸君!」

 

杏子ちゃんの横に着地するマミさん。

 

杏子ちゃん、マミさん!?なんでここに?結界があって入れない筈じゃ・・・

 

『どうやら最後の一撃で結界が吹き飛んでしまったようだな。結構強固な結界を張った筈なのだが・・・』

 

アルビオンが説明する。

 

確かに二天龍+二つの王の駒(キング・ピース)の力ならどんな結界でも吹き飛ばしそうな気がするな。

 

「杏子ちゃ、マっ・・・ぐう」

 

まずい、さっきの戦いで受けたダメージで起き上がれず声まで出ない・・・

 

「城戸君!」

 

「一真!テメェは何者だ!顔を見せやがれ!」

 

マミさんが俺に触れて回復魔法を掛けてくれて杏子ちゃんが上条に怒鳴り散らす。

 

幸いにも上条は頭を覆う白龍皇の兜を被っているから素顔が見えていない。

 

「巴マミと佐倉杏子か。引け、僕はそちらが仕掛けてこなければ魔法少女と戦う気はない」

 

「ふざけんなテメエ!一真をこんな目にあわせて何が戦う気がないだ!!」

 

「佐倉さんの言う通りよ。私達の仲間を攻撃した人がそんな事言っても信じると思う?」

 

杏子ちゃん、マミさんそれ以上挑発したらダメだ。そいつは自分の目的の為なら君達でも躊躇いなく始末するような奴なんだ。

 

「その男は何も知らない君達の力をを利用してるだけなのにかい?」

 

「一真は今まで体を張って一緒に戦ってきたんだ。お前なんかと一緒にするな!」

 

「あなたが何者か知らないけど彼を侮辱するのはやめてくれるかしら?」

 

二人共そんなにも俺の事を信じてくれてるんだ。

 

ならば俺もなんとかして立ち上がらないと・・・

 

「佐倉さん、あの鎧・・・」

 

「ああ、前に一真が装着してた鎧に似てやがる。あれも神器(セイクリッド・ギア)禁手(バランス・ブレイカー)って奴か」

 

「前にだと?どういう事だ?城戸一真は禁手(バランス・ブレイカー)に至っていなかった筈だが?」

 

そうか、二人は銀の魔女との戦いで一度赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を見てるんだっけ。

 

『なるほど、道理で左腕から微かなドラゴンの魔力を感じると思ったがこれで合点がいった。どうやらその男、左腕をドライグに代価として奉げて疑似的な禁手(バランス・ブレイカー)に一度なった事があるようだな』

 

「何!?」

 

上条が驚きの声を上げる。

 

さすがに同じ二天龍のアルビオンには疑似禁手(バランス・ブレイカー)の事がバレていたのか・・・

 

説明を受けた上条が俺の方を見る。

 

顔は兜で見えないが声の感じでなんとなく驚きの表情だというのは分かった。

 

「・・・君はそこまでして本当に彼女達の為に戦っているんだね」

 

上条は白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を広げて飛翔する。

 

「命拾いしたな赤龍帝。せいぜい傷を癒して力を蓄える事だな。次に会う時は必ず決着を付ける」

 

「逃がすかよ!」

 

杏子ちゃんが追うとするが魔力弾を足元に撃ちこんで爆発して躊躇してる間に空を飛び退却する上条。

 

呆然と上条の飛んで行った方向を見つめる俺達。

 

コン

 

杏子ちゃんが槍で兜を軽く叩く。

 

痛くないけど振動が頭に響くな。

 

「一真、聞きたい事は色々あるがとりあえずその鎧を脱げ」

 

「・・・分かった」

 

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を解除して制服姿に戻る。

 

よく見ると戦いで大分汚してしまった。

 

母さん、怒るよな、なんていいわけしよう・・・

 

いや今はそれより白龍皇の事を説明しないとだめだよね、どう説明しよう。

 

「次は服も脱げ」

 

「・・・え?」

 

杏子ちゃんの予想外の言葉に思考が停止する。

 

「さ、佐倉さん!」

 

顔を真っ赤にしているマミさん。

 

気持ちは分かるよ。

 

「・・・あっ、か、勘違いするな!へ、変な意味じゃねえ!一真があの鎧を着てたって事はまたどこか体の一部がドラゴン化しちまってないか確認する為だぞ」

 

ああ、そういう事かビックリした。

 

「そ、そうよ!城戸君!また無茶してあの赤い鎧を!」

 

『大丈夫だ佐倉杏子。巴マミ。相棒は禁手(バランス・ブレイカー)に至った。もう身体を代価にする必要はない。それに一真はもうあんな馬鹿なことはしない」

 

体の一部を代価に疑似禁手(バランス・ブレイカー)を行なったと思い怒る二人に俺の代わりにドライグが説明してくれた

 

「驚かせやがって・・・・」

 

「そうなの、よかった」

 

安堵する杏子ちゃんとマミさん。

 

よかった分かってくれて。

 

マミさんの回復魔法で何とか立ち上がれるまで回復する。

 

ウーウー

 

「ん?サイレンの音?」

 

「ああ、パトカーと消防車っぽいなどこかで火事でもあったんじゃねえか?」

 

「・・・・・・ね、ねえ、ふ、二人共もしかしてあれじゃあ?」

 

「「あれ?」」

 

マミさんが震えながら指さす方を杏子ちゃんと見ると・・・

 

結界が無くなって粉塵爆発させた倉庫から煙が立ち上っている。

 

つまりここに来る

 

まずい見つかったら大変な事になる。

 

「と、とにかく逃げるんだよ!!」

 

「「さんせー」」

 

俺達は全速力で工場から逃げだし数分後パトカーと消防車が工場跡地に到着した。

 

 

 

俺達は工場跡地から離れた場所に辿り着き息を整える。

 

「で、なにがあってああなったんだ?」

 

息の整った杏子ちゃんが倉庫の煙の原因を聞いてくる。

 

隠しても仕方ないから話すか。

 

「実は・・・」

 

俺は倉庫に相手を誘い込んで粉塵爆発を起こした事を説明した。

 

「・・・おまえ、いくらなんでもやりすぎだ」

 

「だよね…」

 

杏子ちゃんが呆れた表情で俺を見て、自分でもやりすぎたと思っている。

 

消防所の人、警察の人、そして工場の人ごめんなさい。

 

「でもそれだけやっても城戸君が勝てなかった相手なんでしょ。さっきの人って?」

 

そうだ、二人が来てくれなかったら俺はあいつにやられていた。

 

上条が転生者の上に白龍皇だったなんて・・・

 

ただでさえ魔女との戦いもあるのに厄介な事になったな。

 

「一真、あいつは何者だ?お前と似たような鎧を着てなんで戦っていたんだ?」

 

そりゃ聞くよね。でもこれだけは・・・

 

「それは・・・言えない」

 

あいつは俺と同じ転生者で同じ天龍を宿す者。だからこれは俺とドライグの問題だ。

 

決着は俺自身で付けないといけなから二人を巻き込むわけにはいかない。

 

俺の返答に杏子ちゃんが胸倉を掴んで自分の顔の前まで俺の顔を引き寄せる。

 

「・・・ちゃんと話せ、お前は私やマミさんの問題に首を突っ込んだんだ。なら私達もお前の問題に首を突っ込む権利はある。なのに自分は駄目って虫がよすぎねえか?」

 

「そうよ城戸君、私達はあなたに感謝している。だから私達からお返しする機会を奪わないで」

 

「杏子ちゃん・・・マミさん」

 

「城戸君、あなたは男の子だから強がりたいのも分かるし私達に弱音を見たくないのも分かるわ。でもね私達女の子にも力になってあげたい支えたいって気持ちもあるの。それも尊重して」

 

「マミさん・・・」

 

「そうだ!別に私らだけでやるとか言わねえ、力を貸して欲しい時は遠慮なんかせずにちゃんと言えっていってんだ。」

 

二人の気持ちは嬉しい。でもこれだけは・・・

 

『・・・・いいんじゃないか一真。二人に頼っても』

 

突然左手の赤龍帝の籠手の宝玉が光りドライグの声が話しかけてくる。

 

『その二人はお前をここまで心配してるんだ。それ以上拒絶することは逆に二人を侮辱する事になる』

 

『それに一真が禁手(バランス・ブレイカー)に至った理由は生きてみんなにまた会いたいと思ったからだ。真っ直ぐなのは美徳だと思うが時には肩の力を抜いて頼るのも大事な事だ。片意地張っては見えるものも見えなくなるぞ』

 

そう言われると何も言えない。

 

「分かった話すよ。あいつが何者でドライグとの因縁を」

 

二人に悪いがさすがに俺と上条恭介が転生者であることは隠ながら話した。

 

「おいおい一真もそうだけどそいつもとんでもねえな」

 

「ドライグさんと同じドラゴン最強の天龍。だけど他者の力を半減して奪い取る。城戸君と真逆なのね・・・」

 

俺の説明を聞き驚き感想を述べる二人。

 

「あいつはとんでもなく強い、だから出会っても戦うなんて無茶せずに退いてくれ。あいつは魔法少女と戦う気はないから手を出さなければ向こうも攻撃してこない。だから俺一人で決着をつけなればいけないんだ」

 

二人の気持ちは嬉しい。

 

でも気持ちだけじゃ白龍皇には勝てない。

 

だから卑怯だけど白龍皇の能力とその恐ろしさを話せば二人も納得して手を出さないだろうと考えていたが

 

「私達の話を聞いてたのか?一人で抱え込むなって!」

 

「分かったわ」

 

「マミさん!」

 

「勘違いしないで佐倉さん、私が分かったのは一人で戦わない事よ、でも援護だけはさせてもらうわ」

 

マミさん?

 

「城戸君がここまでやられた相手に悔しいけど私や佐倉さんじゃまず勝てない。でも私と佐倉さんと城戸君が一緒なら勝てるって事よ」

 

「そっかそういう事か、じゃあ納得だ」

 

杏子ちゃんまで!手を出さないどころか余計にやる気を出させてしまった。

 

「お前は言ったよな一緒に強くなろうって?」

 

「だから私達も城戸君の足手まといにならないように一緒に肩を並べるように強くなるわ」

 

杏子ちゃんとマミさんを見ると

 

まっすぐな二人の目が俺の目と合う。

 

その目はけっして自分を曲げない目だ。

 

そうだ、俺は一人じゃない。こんなにも心配してくれる仲間がいる。

 

杏子ちゃんとマミさんが手を差し出す。

 

二人の言葉を聞いて説得は無理と観念した。

 

こんなにも頼りになる仲間がいる。

 

俺の中でなにかが熱く燃えていて

 

気づけば差し出された二人の手を強く握った。

 

上条に負けたこの悔しさをバネにして俺を信じてくれた杏子ちゃんやマミさんに改めて誓う。

 

もう二度と負けないようにもっと強くなると!

 

そしてみんなと一緒に笑い合える未来を掴む為に。




城戸君、ついに禁手(バランス・ブレイカー)に至り新たな目標ができる。

当初の予定ではお菓子の魔女シャルロッテにマミさんが嚙みつかれるシーンに割って入り変わりに捕食され禁手(バランス・ブレイカー)に至るという予定でしたが上条白龍皇の戦いがあるので急遽変更しました。


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第15話 結んだ影の協定と光の絆

上条との激闘からの翌日。

 

俺は昨日の戦いの事を問い詰める為に一時間目が終わった休み時間に上条のいる八組に向かおうとしたら

 

「やあ城戸君。来ると思ってたよ」

 

「上条!」

 

余裕の表情の上条が八組の教室前で待っていて昨日の事もあり声に思わず怒気が入る。

 

ザワッ!?

 

他の生徒達が何事かとこちらに注目し出す。

 

だが俺は上条に詰め寄り、また上条も気にせず二人の間に一触即発の空気が漂う。

 

「ちょ、ちょっと!なんで二人共そんなに険悪なの?」

 

「一真も何があったか知らないけど落ち着け」

 

たまたま近くにいたのだろうか。

 

異様な空気を読んだ美樹さんと杏子ちゃんが慌てて止めに入る。

 

「なんでもないよ、さやか。城戸君向こうで二人だけで話をしようか?」

 

「大丈夫だよ杏子ちゃん。俺は冷静だ。いいだろ上条」

 

そう言って上条の後に付いて行き

 

事情の知らない杏子ちゃんと美樹さんが残された。

 

・・・ごめんこればかりは話すわけにはいかないんだ。

 

なにかいいわけ考えておかないとな。

 

「ねえ杏子、あの二人になんかあったの?あんな城戸を私見た事ないんだけど」

 

「アタシだって分かんねえよ、ただ・・・」

 

「ただ?」

 

「あいつが他人に対してあんなに怒ってるの小学生以来久しぶりに見た」

 

 

 

人気のない校舎裏に着き、上条が生徒や教師とインキュベーター避けの結界を張って話し合いをすることになった。

 

あの結界、前は苦労したけど使用者にとったら便利だな。

 

練習したら俺にもできるだろうか。

 

できなくても俺の持つ技で代用できないかな。

 

「まずは君に謝罪させてくれ。僕は君が幼女神から貰った特典の能力を利用して何も知らないさやか達を兵藤一誠のように彼女達をハーレム要員にしようと企んでいるのではないかと思い込んでしまっていた。すまなかった」

 

頭を下げる上条。

 

なるほどそれで・・・

 

確かに赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の本来の所有者である兵藤一誠はハーレム王目指してるいるから同じ力を持った俺もハーレム王になる事を目論んでいるんじゃないかと誤解されたのか。

 

でも俺は目指してないよ。

 

興味ないから。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を選んだのは単純に倍加の力と赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)がカッコいいから選んだのが理由だったし

 

「で、謝罪をするって事は誤解は解けたと解釈していいんだな?」

 

「ああ、君は彼女達を守る為に左腕を差し出したのだろう?一時的とはいえ禁手(バランス・ブレイカー)に至る為に。自分の欲望しかない奴はそんな事しない」

 

上条が俺の左腕を指さす。

 

「ああ、銀色のバイクの形をした魔女が現れてそいつは物凄く強かった。その上そいつは年端もいかない子供まで人質に捕っていたんだ。子供を助けてみんなと生きて帰る為にどうしても禁手(バランス・ブレイカー)になるしかなかったけど俺が弱い所為でなる事はできなかった。だから俺は左腕を代価にして疑似禁手(バランス・ブレイカー)に至ったんだ」

 

「後悔と恐怖は無かったのかい?自分の身体の一部を失う事に」

 

「恐怖は無かった・・・のかな。無我夢中だったし襲ってくる魔女の恐怖の方が大きかったから。後悔は・・・杏子ちゃん、佐倉杏子に対して迷惑をかける事になってしまった事だ」

 

「迷惑?」

 

無言で左腕の制服の袖を捲って腕を上条に見せる。

 

「俺の左腕、みんなと同じ人間の腕に見えるだろ?でも違うんだ。本当なら兵藤一誠のように代価として支払った腕は鱗がぎっしりと生えたドラゴンの腕になっていた。でも偶然ドラゴンの左腕が杏子ちゃんのソウルジェムに触れて左腕のドラゴンの魔力がソウルジェムに吸収され元の人間の腕に戻ったんだ」

 

「そんな事が!」

 

『ありえん・・・そのようなこと』

 

上条とアルビオンが驚きの声を上げる。

 

この二人にとってもこの現象は想定外の事だったようだ。

 

「でもそれは一時的なものだ。時間が経てば元のドラゴンの腕に戻ってしまう。その度に杏子ちゃんに魔力を吸収してもらわないといけない」

 

「吸収する事で佐倉杏子自身に副作用とかないのか?」

 

「リュネが言うには女神の名においてそれは絶対にないと保証してくれた」

 

銀の魔女との戦いの後、しばらくして神様から手紙が来て神様も副作用はないと太鼓判を押してくれた。

 

「だから誓ったんだ。この力を使って魔女やインキュベーターと戦ってせめて近くにいる俺の大事な人達の希望や未来を守ると」

 

今までの人生が辛くなかったわけがない。それでも俺を支えてくれた人や助けてくれた人がたくさんいた。

 

だから俺も助けてくれた人達のようなヒーローになりたいと思ったから。

 

「・・・そうか、そんな覚悟があるなら提案がある」

 

「提案?」

 

「僕は君のようなみんなを助けれる楽観者じゃなく誰かを助けるには犠牲も必要だと考える傲慢な人間だ。さやかさえ助かれば他の人間などどうなってもいいと思っている。だから君と僕は敵同士だ」

 

こんなに言っても俺達は分かり合えないのか・・・認めたくないがそれが上条の考え方なら仕方ない。

 

「だが約束しよう。学校内と魔女関連と関係ない時はかつてと同じように君と親友関係を築いていくと」

 

「分かった」

 

そうか今はそれでいい戦いが終わり、いつか本当の意味で友達の戻れる日を楽しみに待っている。

 

「あと僕はさやかやインキュベーターに白龍皇だと知られたくない。さやかを守る為には影から動いた方が動きやすいからね。だからこの事は秘密で頼む」

 

こうして一応の休戦協定を結び学校にいる間は普通の友人として過ごす事になった。

 

向こうも美樹さんのいる学校ではむやみに力を振るわけにもいかずよほどの事がないかぎり破られることもないしこちらも無用な戦闘は避けたい。

 

こちらも破って周りの人間に危害が加えられるかもしれないので破るつもりもない。

 

あと上条の左手が怪我で動かなくなる大事故に関しては普通の人間ならまだしも白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を持った上条は弟の上条透を助けて無傷で生還した。

 

弟を助けた理由は肉親の情ではなく同じバイオリニストの弟が左手を怪我して美樹さんが願いで回復させて魔法少女化を防ぐ為らしい。

 

本心はどうなのかそれは鈴木君、いや上条にしか分からない。

 

ジリリリリリリリ!!

 

呼び鈴がなり思考の渦から現実に引き戻される

 

「じゃあまたね、今度戦場で相見える時までに”ソレ”は直しておいた方がいいんじゃないかな」

 

あいつ、何言ってるんだ?

 

『一真。足を見てみろ・・・」

 

え?あ!

 

ひ、膝が震えている!いつからだ?

 

『お前があいつと二人だけになった時からだ」

 

・・・気づかなかった。

 

俺は・・・あいつに怯えてる・・・

 

くそ!

 

こんなんじゃだめなのに!

 

『(無理もない。全戦全勝だった一真がようやく禁手(バランス・ブレイカー)に至ってさらに力を付けた上で全力を出し切って負けたんだ。体が無意識に恐怖しているのか)』

 

その後の俺は悲惨だった。

 

何をやっていても上の空で上手くいかずに。

 

「やる気ないならお前今日はもう帰れ!」

 

挙句の果てに路地裏で見つけた魔女退治中もつまらないミスを連発してしまい杏子ちゃんに怒られる始末。

 

はっは、駄目だなこんなんじゃ呆れられるのも無理はない。

 

魔女はマミさんが倒しグリーフシードを回収し、結界が解けていく。

 

「ごめん・・・」

 

フラフラと路地裏から出ていく。

 

「城戸君、最近様子が変ね」

 

「そうなんだよ、あいつあの白龍皇って奴と戦ってからいつもあんな感じだ・・・」

 

「私達に何か出来る事があればいいんだけど・・・」

 

俺は二人と別れトボトボと見滝原市中を歩く。

 

『(一真、佐倉杏子も巴マミも心配してるぞ)」

 

「(分かってる)」

 

分かってるんだ。心配かけてしまってる事を

 

俺だってこのままじゃダメだって分かってるのに

 

でもどうしてもアイツが姿が脳裏に横ぎり体がふるえてしまう。

 

せっかく禁手(バランス・ブレイカー)になれてほとんどの技が解除されたのに俺はあいつに勝てなかった。

 

最初の方までは互角だったのに。

 

アイツの持つ完全な王の駒(キング・ピース)が発動するまでは・・・

 

向こうの駒の発動は無制限、それに比べて俺の駒はたったの五分間

 

俺にも完全な王の駒(キング・ピース)があれば勝てるのに。

 

リュネの所為で・・・

 

ダ、ダメだ!こんなこと考えたら

 

俺は最低だ!

 

あの時は戦いで熱くなっていたが戦いが終わり冷静さを取り戻すとどうしても不完全な王の駒(キング・ピース)を持ってきたリュネの所為にしてしまう。

 

分かってる。リュネだって間違えたくて不完全な駒を持ってきたんじゃないのに。

 

命の恩人に対して俺はそんな最低な考えに至ってしまうんだ。

 

『力で勝てないなら技で勝て!』

 

人気が少なくなった所でドライグが声を荒げた。

 

『いつまでもウジウジした所でアイツには勝てんぞ!たしかに上条とアルビオンは強敵だ。しかしお前にはアイツらにない技がたくさんあるだろう。そしてお前にはこれまでの実戦経験もある。ならばそれを活かせ!幸いもうすぐ夏休みだ。その時間を修行に生かしてさらに強くなればいいではないか!」

 

そ、そうだな。あんなに頑張ったのにこのまま負けっぱなしなんて悔しいよ。

 

俺は夏休みを利用してさらにきつい修行に挑む事を決意した。

 

今できる事を成し遂げる為に。

 

でも我流では限界がある。生半可な修行をした所で完全な王の駒(キング・ピース)を持つアイツに勝てるか・・・

 

俺はもう二度と負けないと言う男の意地を貫き通す為、禁手(バランス・ブレイカー)の力を最大限に引き出せるよう夏休みを利用して修行をすると話す。

 

「アタシも付いて行くぞ!」

 

「私も行くわ!」

 

すると二人が付いて来るって言われた時はさすがに参った。

 

外泊になるから駄目だと言ってるのに一緒に行くと聞かない杏子ちゃんとマミさんを何とか説得できたけど・・・

 

「男の子の意地に答えてあげるんだから次はお返しに女の子の思いに答えて今度一緒にお買い物に行きましょう」

 

「ああ、荷物持ちくらいなら言ってくれたらいつでもいいけど」

 

「そういうんじゃなくてデートって意味よ」

 

「え、ええ!?デ、デート!?」

 

「あら私とじゃ嫌?」

 

「そ、そんな事は」

 

「ちょっと待て!なんでそうなるんだよ!」

 

「あなたは一真君の家に住んでるんだからいいでしょ。私だってたまにはいい思いしたいのよ!」

 

「これとそれは別だ!」

 

ギャーギャー

 

・・・一悶着あったが二人と別々に一緒に出掛けるという願いを叶える事で何とか解決することができた。

 

二人にも心配をかけたんだ。お詫びの意味を込めて修行から戻ったら出来る限りの事をしよう。

 

杏子ちゃん、マミさん。心配かけてごめんねそしてありがとう。

 

特訓内容はウルトラマンの新しい能力の確認と使いこなす特訓をする為にイッセーが冥界の山でやっていたサバイバル生活を無人島かどこかでやろうと思う。

 

たが一つ問題があった。

 

それは両親の存在だ。

 

いくら夏休みでも子供が数日間いなくなれば親なら心配して警察に捜索願を出される。

 

かと言って修行の時間がたっぷり取れるせっかくの夏休みにいつもの修行だけでは勿体ない。

 

どうにか解決策がないかと部屋で悩んでいるとドアの前が輝き出す。

 

こんな事する知り合いは一人しかいねえ。

 

「はろ~元気にしてたですか~」

 

やっぱりか・・・

 

俺と上条の寿命を削り俺を転生してくれた張本人である幼女神リュネか

 

いきなりだな。前に見たのが幻みたいなものだし実物見たのは転生前か。

 

「・・・久しぶり尻は大丈夫か?」

 

俺にご禁制の使った事で尻は百叩きになった件を出す。

 

「にゃ!にゃにいきなり言ってやがるですか!」

 

「ぐはっ!」

 

それを避けずに甘んじて受ける。

 

お約束って奴だ。

 

「まったくセクハラですよ!」

 

頬を膨らませ目の前でプンプン怒っている幼女神

 

「おう悪いな、で何の用だ?」

 

殴られた頬を擦りながら訪ねる。

 

今で脳内に声が来たリ幻影が現れることは何度かあったがこいつが直接来たことなんてなかったからな。

 

「セクハラするならせっかくご両親に心配かけずに本気で一真が戦えるとっておきの修行相手を用意したのにやめますよ」

 

「本当!」

 

最高の修行相手、もしそれが本当ならぜひお願いしたい。

 

とはいうのも正直一人だけの修行に限界を感じていたからだ。

 

杏子ちゃんやマミさんにお願いしたいが魔力を消費してソウルジェムが穢れる魔法少女では正直効率が悪いし負担を掛けられない。

 

由良さんという師匠もいるが

 

普通の人間の由良さんと能力を使って本気で戦えるわけにもいかない

 

だからこそリュネの言う本気で戦える修行相手は願ってやまない事だ。

 

「頼む!ぜひ紹介してくれ!俺は白龍皇に!上条恭介に勝ちたいんだ」

 

あいつに勝ちたい。

 

いくら協定を結んだといってもこのまま奴に負けっぱなしで奴の影に怯えていきたくない。

 

もしあいつが協定を破って仲間や家族が傷つけられたりでもしたら。

 

弱いままではみんなを護れない。

 

だから強くなりたい。

 

意地を貫き通す為に俺はプライドを捨てて膝を付き頭を地面に擦り着けていた。

 

「わ、わかったのです。だから頭を上げるです」

 

俺の予想外の土下座を見て慌ててリュネが駆け寄る。

 

「じゃあ!」

 

嬉しさで頭上げる。

 

「そんな事しなくても助けるですよ。その為に来たのですから」

 

「でも願いは叶えたのに助ける舟なんか出していいの?」

 

「いいのです、これくらいなら問題ないですよ。試作型の王の駒(キング・ピース)を渡してしまった償いをさせて下さい」

 

気にしてないと言えばうそになるが、それでもこれで問題は解決した。

 

まず両親の問題からだがこれは簡単にいうと俺の肉体と精神を一時的に分割して本体は修業、分身は普通に生活させるらしい。

 

ウルトラマンマックスの分身はあまり距離が離れると分身が消えてしますがこの方法なら消える事はない。

 

しかし肉体と精神を分割って改めて考えたらとんでもないな。

 

まあ転生や特典なんてできるんだから肉体と精神を二つにするくらい可能なのか?あれか某口笛の嫌いな宇宙人が地球の神様になる為に悪の心を追い出したみたいなものと理解すればいいのか?

 

でもこれで両親の事を気にせずに特訓ができる。

 

また本体と分身での夏休みでの記憶の食い違いが発生しない為分身が消えれば分身の記憶はそのまま本体と共有できるらしい。

 

すまん、ピッ〇ロさん方式でなく多重影分身方式だったてばよ。

 

やれやれ俺も現金なもんだ。

 

修行の目処が立ったおかげで軽口言えるぐらいに少しだけ肩の荷が軽くなるんだから・・・

 

ありがとう。

 

「あ、学校で出された夏休みの宿題はちゃんと本体である自分でやるのですよ。あと夏休みが終わったら回収するですよ」

 

・・・チィ、中学生の宿題でもめんどうだから分身の方に押し付けようと思ったのに・・・

 

「まったくそんな邪な考えでは強くなれませんよ。じゃあ修行相手のいる場所に送りますよ、えい!」

 

リュネが掛け声を出すと視界が歪み光に包まれて目を閉じる。

 

ほんの数分ぐらいだろうか

 

光が収まり目を開けれるくらいの明るさになったので恐る恐る目を開けるそこは

 

「ここはどこだ?」

 

辺りを見回すと俺の部屋の中がどこかの風の吹く荒野に変わっていた。

 

「そういや修行相手はどこにいるんだ?」

 

「君が城戸一真君だね」

 

後ろから聞いたことのある声がして振り向くと四人の男性が立っていた。

 

声を掛けたのはテレビで何度も見た事ある白髪の眼鏡をかけた男性だ。

 

「あ、あ、ああ、あなた方は!」

 

「時間が惜しい挨拶はあとだ。さっそく修行を始めよう」

 

カウボーイ姿の男性がそう言うと四人の姿が変わる。

 

思わず背筋を正し緊張する。

 

「あまり緊張するといい結果が出せないぞ。肩の力を抜け。」

 

「は、はい!」

 

「こりゃ前途多難だな、でもここまで緊張してくれるなんて嬉しいな。本当なら兄弟全員で来たかったがさすがに我々の宇宙も疎かにできないんでな許してくれよ」

 

「いえ、兄さん。僕は彼の気持ちがよく分かります。僕もはじめて教官達に会った時は彼の様になってましたから」

 

「はっは、そういやそうだったか?」

 

き、緊張するなって言われても無理です。

 

だってそうだろ、俺の目の前にはみんなが知っている本当のヒーロー。

 

ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック、ウルトラマンエース、ウルトラマンメビウス

 

人間サイズとはいえ子供の頃から憧れたウルトラ兄弟がいるんだぞ!

 

男なら緊張するなって方が無理です。

 

リュネさんよ、確かにとっておきの修行相手だよ!

 

本気出せるし、俺の特典のウルトラ戦士の能力の向上を考えたら本家本元なんだからこれ以上にない最高の師匠の方々だよ・・・でもな!

 

お前!とっておきにもほどがあるわ!!!!!

 

「まずは実践方式の組手から始める!鎧を着ろ。いくぞ!」

 

そう言うとセブンさんが右の拳を後ろに引き、俺に向かって勢いよく突き出して来た。

 

「うえ!いきなり!」

 

急いで赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を纏ってセブンさんの攻撃を受け止める。

 

うわ、鎧越しでもこの衝撃はすごすぎだろ!

 

たった一撃で受け止めた部分に亀裂が走ってるし。

 

白龍皇の時でもこうはいかなかったぞ!

 

「セブンらしいな」

 

「ええ、まったくレオの事を思い出します」

 

ちょっとジャックさん、エースさん和んでないで助けて下さい!

 

こうして夏休みの間、瞑想とサバイバル生活と共に俺は日替わりでウルトラ兄弟の皆さんに鍛えてもらうことになった。

 

主な修行内容は朝は光線技の修行と座学、夏休みの宿題の消化、昼は実践的な組手、夜は瞑想のスケジュール

 

朝は俺がメビュームブレードなどの多用している技や光線技をお手本として間近で見せてもらいそこから自分もやって悪い所を直していく訓練だ。

 

今日の教官はウルトラセブンさん

 

小屋の外でウルトラ念力を実戦で使いこなす為に俺は両の拳を合わせて水がいっぱいに入ったバケツを空に浮かせる基礎訓練を行っていた。

 

「(ぐ・・・)」

 

集中力が乱れ浮いてたバケツが下に落ちる。

 

「もう一度だ!」

 

両拳を合わせてウルトラ念力を発動してバケツを浮かす。

 

だがすぐにバケツは下に落ちてしまう。

 

「くそ!なんでうまくできないんだ!」

 

「精神を集中しろ。ウルトラ念力の基礎は磨かれた集中力にある。そして気合いだ。見ていろ」

 

右腕を伸ばしたセブンさんがそう言うとウルトラ念力で俺より大きな小屋ぐらいの岩を浮かす。

 

「イヤァー!」

 

セブンさんの気合いの入った叫び声で岩が爆発四散した。

 

すげえ、あんな大きな岩が粉々になるなんて

 

「集中力を一瞬の気合いで吐き出すのがウルトラ念力だ」

 

「はい!」

 

セブンさんから教わったが何度も失敗してしまう。

 

それでもセブンさんは俺を見捨てずにただ黙って見守ってくれた。

 

そしてついにその時が訪れた。

 

「・・・・・ハアア!!」

 

空に浮いたバケツは破裂して水が下に落ちることなくシャボン玉のように空に浮く。

 

「や、やった!できた!」

 

「そうだ!お前が諦めない限りそれは敗北ではない。ウルトラ念力を応用すれば様々な状況で役に立つ。その呼吸を忘れるな」

 

「はい!」

 

昼の日替わりで相手の変わる組手は正直きついってレベルじゃない。

 

「ぐあ!」

 

投げ飛ばされて倒れ込んでしまう。

 

「どうした?これぐらいで根を上げてるようでは魔法少女達を護る事なぞできんぞ!」

 

「ま、まだまだ!」

 

四人の中でも一番厳しいウルトラセブンさん

 

さすがと言うべきかこれまで戦った相手とは次元が違いすぎる

 

なにしろ鎧ありの状態でも光線技ありのルールだからむこうも遠慮なく光線をバンバン撃ってくるし、体術も俺なんか足元にもおよばないくらい凄まじく強い。

 

これが地球を護り抜いた歴戦の戦士の力なのか・・・すごすぎだろ

 

鎧なんて何度も簡単に壊されたし。

 

俺の光線技やドラゴンショットをものともしない

 

「ジュワ!」

 

セブンの頭部に付けられた必殺技『アイスラッガー』が飛んできて胸に直撃する。

 

「うわあああ!」

 

ま、また鎧が壊された。

 

とんでもない衝撃が体を駆け巡る・・・

 

正直この模擬戦がいちばんきついな。

 

それに恐怖心を克服する為とはいえ鎧の使用禁止でジープに追い掛け回されるのはもうこりごりです・・・

 

でもエースの北斗さんが作ってくれた料理やメビウスのミライさんのカレーはおいしいかったです。

 

夜は瞑想してドライグと昼間の組手の反省会中

 

『一真、昼間はだいぶ派手にやられたな、辛いか?』

 

「いや、この修行は得るものがたくさんあって辛いと感じる暇はないよ」

 

戦闘面だけじゃなく戦いの心構えや厳しさ、俺になかったものや足りなかったものをたくさん教えてもらった。

 

俺も教わった事を今後に生かして努力していこう。

 

『そうか、そうだな。じゃ今日の座学の事なのだが・・・」

 

こうしてドライグと反省会したあと。寝床に行き就寝して夜は更けて朝を迎えるの繰り返し

 

そんな普通なら一生体験できない貴重な夏休みの日々だった。

 

そしてついに夏休みも終わりが来る日が来た。

 

「ここまでよく付いてきたな、今日で修行は終わりだ」

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・はい、ありがとうございました」

 

最終日、ウルトラマンさんとの組手が終わり袖も取れてボロボロの道着から着替えて帰る準備をしていると

 

「最後の組手も終わったようだな」

 

声がした方に振り向くとセブンさん、ジャックさん、エースさん、メビウスさん

 

他の兄弟の方々が見送りに来てくれた。

 

小屋の入り口前

 

荷物を背負う俺の前に五人兄弟が横に並ぶ。

 

「これから我々がこの修行の締めに最後の言葉を送る」

 

最後の言葉、そうだ修行が終わるって事は厳しく優しかったこの人達とはもうお別れなんだ。

 

短い間だったけど寂しくなってきたな。

 

「我々は転生者の君と違い別の世界の住人だ。君の戦いに加わる事はできない。だが私達の一番弟子である君がいるなら安心して任せ平和を取り戻すことを祈っている」

 

ウルトラマンさん…

 

「それがどんなに辛い状況でも未来を信じる心が不可能を可能にする。信じる力が勇気になる。あと仲間を大切にしろよ俺が受けた悲しい思いは俺だけで十分だ」

 

セブンさん…

 

「例え貰った力であろうと信じて戦えばそれは本物になる。挫けず一生懸命に信念を貫き通すことが大切なんだ。負けてもいい倒れたら何度でも立ち上がればいい。我々がそうであったように、そして時には周りの悪い心、嫉妬、憎しみ、疑いといった悪意に触れてしまい苦しめられ絶望しすれ違い守るものに値するのか悩むときだってある。それでも一人でも信じてくれる人がいたらその人の事を思い出してくれ」

 

ジャックさん…

 

「その時は優しさを失わないでくれ、 弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人達とも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。 例えその気持ちが何百回裏切られようとな」

 

エースさん…

 

「そして魔法少女達の絶望をあなたの心の光と紡いた絆で希望に変えてあげてください」

 

メビウスさん…

 

「それが我々の最後の願いだ」

 

師匠達の言葉が心に染み込んでいく。

 

大変だったけど得たものがたくさんあった。

 

技や体術だけじゃなく大切なものを師匠達からたくさんいただいた。

 

あ、やべ涙が出てきた。

 

「今は本当の意味を理解できなくてもいい。だがさっきの言葉を忘れないでくれ」

 

「君が諦めない限りそれは敗北ではない 」

 

エースさんとジャックさんが俺の手を力強く握る。

 

託してくれたんだ、この俺に!

 

「ありがとうございました!何度負けて何度も立ちがり絶対に挫けません!」

 

そうだ白龍皇に一回負けたからってそれがなんだ。

 

負けても屈せず何度も立ち上がって強くなって向かって行ってやる。

 

それが希望につながる事なら

 

「がんばれ別の世界の私達の弟子よ」

 

「はい!」

 

ウルトラマンさんの声と共に景色と四人の姿が消えて見まわすと見覚えのある部屋にいた。

 

そう、自分の部屋に戻っている。

 

「帰ってきたのか、俺は」

 

「やあ、本体の俺、おかえり修行はどうだった?」

 

呆然としていると声を掛けられる

 

声を掛けたのは夏休みの間に俺の影武者をしていた分身。

 

座って漫画を読んでいた俺と同じ顔をした分身が立ち上がり出迎える。

 

「すごく充実した毎日だったよ。君も俺の身代わりになってくれてありがとう」

 

「かまわないさ、俺は君でもあるんだ。さあ一体化しよう手を出してくれ。一体化したら俺が夏休みに体験した家での出来事などが君の中に流れ込んでくるよ」

 

俺と分身がタッチすると分身が光の粒子なりながら消え、粒子が俺を包み込みやがて消えた。

 

なるほどこっちでも色々とあったんだな。

 

流れ込んだ記憶を見ながら思わず苦笑していると

 

「なんだ今の音!?あ、あれ一真?ほ、本物の方の?」

 

部屋に杏子ちゃんが入ってきた。

 

杏子ちゃんとマミさんにはあらかじめ分身が居ると事を伝えていた。

 

伝えた時になぜか一真(城戸君)なら仕方ないと言われたけど。

 

「ただいま杏子ちゃん。母さんは?」

 

「おかえりおばさんは買い物に出かけてるぞ」

 

「そっか」

 

杏子ちゃんやマミさんにもお世話になった。

 

いずれ出かけるだけじゃなくてなにかの形に残る物で返さないとな。

 

「・・・一真だよな?」

 

「なんで?」

 

「いや、なんか修行に行く前と顔つきが変わったような気がしたからさ」

 

変わったか・・・かもしれない。あの人達のおかげで俺はまた前に進めるんだから。

 

「憧れの人達に出会って忘れかけてた大事なものを取り戻せたからかな」

 

その後二年生に進級し、クラス替えがあったけど杏子ちゃんや鹿目さん、志筑さん、中沢と美樹さんとは変わらず同じクラスになり殆ど変わり映えないと思ったけど上条恭介と同じクラスにてしまった。

 

でももう俺は上条を白龍皇を恐れない。

 

さて今年から彼女が転校してくる。

 

ここから本番だ!




ウルトラ念力にくだりはウルトラマン物語を参考にしました。

ウルトラ兄弟の台詞回しや雰囲気を似せようと努力しましたがどうだったでしょうか?もしファンの方で不快に思われた方この場を借りて謝罪します。

あと最近まどマギ成分が薄くてごめんなさい。

ですが次回から新章『原作介入編』が始まりついにほむほむがやってくる。

一真の介入でいつも繰り返して見てきたクラスの光景と違う光景を見たほむほむの反応は?

お楽しみに


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原作介入編
第16話 転校生暁美ほむら


やっと原作が始まる・・・長かった・・・


【一真サイド】

 

 

見滝原中学の教室。

 

「目玉焼きとは、固焼きですか?それとも半熟ですか?はい、中沢君!」

 

「え、えっとどっちでもいいんじゃないかと・・・」

 

「(こないだはシュークリームに皿がいるかいらないかだったがどんだけ男運悪いんだよ・・・)」

 

朝っぱらから担任の早乙女先生が彼氏にフラれた愚痴を自分の受け持つクラスの生徒たちにぶちまけていた。

 

またですか・・・

 

一年の事から毎度毎度、早乙女先生は中沢を指名し中沢も律儀に答えている。

 

中沢も毎回聞かれて返答に困るよな。

 

ん?毎回?

 

そういや中沢以外で質問されたの見た事ないな。

 

もしかして中沢、早乙女先生に狙われてる?

 

・・・・深く考えないでこの事は早く忘れよう。

 

二人の未来に幸あれ。

 

「そう、どっちでもいいんです!いいですか女子の皆さん!卵の焼き加減にケチを付けるような男とは交際しないように!そして男子はくれぐれもそういう大人にならないように!!」

 

「(あちゃーダメだったか)」

 

「(ダメだったんだね)」

 

前の席にいる美樹さんと俺の横の席にいる鹿目さんが小声で話をしている。

 

早乙女先生に聞かれないようにね。

 

まあ、本人は熱弁してるから聞こえてないみたいだけど。

 

「(ちなみに城戸はどっち?固焼き?半熟?)」

 

美樹さんがこっちにも質問してくる。

 

なんで俺に聞くんだよ。そういうのは俺じゃなくて上条に聞け。

 

その方があいつが喜ぶから。

 

まあ聞かれたからには答えるけど。

 

「(中沢じゃないけどどっちでもいいよ。ただ味付けは俺個人の好みならシンプルに塩、コショウの方がいいかな)」

 

まあ好きな食べ物は好きに食べろって感じだから早乙女先生の元カレみたいに他人の好みに対して文句言う気なんてないけどね。

 

「(ほうほう城戸の好みは塩コショウっと、あとで杏子に教えてやろ)」

 

なんで俺の好みをわざわざ杏子ちゃんに教える必要があるんだよ。

 

そんな関係でもないのに。

 

「はい、では最後に転校生を紹介します」

 

「((((いやいや、そっちがメインだろう・・・))))」

 

やっと早乙女先生の愚痴が終わり、みんなの気持ちが一つになったあと、一人の長い黒髪の女の子が入ってくる。

 

暁美ほむら

 

まどか☆マギカのもう一人の主人公と言ってもいい少女。

 

魔法少女の秘密とインキュベーターの企みを知り人知れずたった一人で親友の鹿目まどかを魔法少女にさせない事、そしてやがて見滝原市に現れる大型魔女ワルプルギスの夜を倒す為に何度も時間を繰り返して戻る時間遡行者

 

彼女の登場は原作が始まることを意味する。

 

ついにこの時が来たか。

 

「暁美ほむらで・・・す!?」

 

クラスを見まわして自己紹介した暁美さん驚いてる驚いてる。

 

まあそうだよね教室に本来いるはずのない杏子ちゃんと上条がいればそうなるよね。

 

だがそこはさすがの暁美さん。すぐにポーカーフェイスに戻って何事もなかったかのように振る舞った。

 

さて彼女にどうやって接触するか早乙女先生の授業(愚痴)を聞き逃しながら考えるとしますか・・・

 

 

 

~~ほむらサイド~~

 

相変わらずあの先生は転校生が居るのに外で待たせてくれるわね

 

しかもどうでもいい失恋話で

 

妥協と言う言葉を知らないのかしら?

 

あ、やっと終わった。

 

さてここから本番

 

今度こそ成功させてみせる。

 

教室に入り早乙女先生の横に立って何度も繰り返した自己紹介をする。

 

「暁美ほむらで・・・す!?」

 

今回はいつもと違った!

 

な、なんで佐倉杏子と上条恭介がここにるのよ!

 

佐倉杏子は風見野にいる筈だし上条恭介は交通事故で入院している筈じゃないの?

 

お、落ち着きなさい暁美ほむら!驚いたら駄目、変に思われる。

 

なにか偶然が重なって二人が居るだけかもしれないじゃない。

 

そうよ、そうに違いない。

 

とりあえず冷静になって早乙女先生に言われた席に向かう。

 

チラッとまどかを見る。

 

まどかはこのイレギュラーな時間軸でも変わらずいるわね。

 

今度こそ絶対に助ける!

 

その後休み時間になり、転校生の物珍しさに女子が集まってきた。

 

何度も繰り返しているけどこればかりはなれないわね。

 

正直わずらわしい。

 

でもこれもまどかを守る為に仕方ない事

 

気分が悪いと席を離れて保健委員のまどかの所に向かう。

 

まどかは美樹さやか、志筑仁美、そして佐倉杏子と雑談をしていた。

 

「鹿目さん」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

「あなた保険委員よね?保健室に連れて行ってもらえる?」

 

「う、うん分かった。」

 

まどかと一緒に保健室に向かおうとした時、佐倉杏子とすれ違う。

 

どうみても佐倉杏子よね。そっくりさんとかじゃなくて。

 

「・・・何ガン飛ばしてんだ。ああ?」

 

佐倉杏子が睨み返してくる。

 

そ、そんなつもりはなかったんだけど・・・

 

私そんなに目つき悪いかしら・・・

 

「き、杏子落ち着け、ほらまどか早く保健室に行ってきなよ」

 

焦りながら美樹さやかが怒る佐倉杏子の肩を軽く叩き笑いながら宥めてくれた。

 

感謝するわ美樹さやか。

 

その後ろでおろおろしている志筑仁美

 

あなたはそうやって大人しくてて、特に男女の告白方面で。

 

私とまどか、歩き慣れた廊下を歩く。

 

すれ違う生徒達は転校生の私をちらちらと見てくる。

 

早く慣れてほしいわ。

 

そして人通りの少なくなった所を見計らってまどかに忠告しようとすると

 

「あ、あの暁美さん」

 

まどかの方から話し掛けてくるなんて。

 

「ほむらでいいわ、何?」

 

「え、えっとあ、あのね?」

 

なんでオドオドしてるの?

 

まどかって人見知りだったかしら?

 

「えっとほむらちゃんと私ってどこかで会った・・・かな?」

 

まどか!?あなた覚えて・・・

 

「なんて、そんなわけないよね」

 

・・・ええ、そうね”覚えてる”なんてそんなわけない。

 

「鹿目まどか」

 

「は、はい!」

 

「あなた家族や友達の事大切だと思ってる?」

 

「え?」

 

「どうなの?」

 

この時間軸はおかしなことが多い。もしかしたらまどかの性格も変わってるのかも

 

「・・・もちろん大切だと思ってるよ、家族も友達もみんな大好きだもん!」

 

よかったまどかは優しいまどかのままだ。

 

「なら忠告しておくわ、その気持ちが本当ならこれだけは守って。この先何が起こっても『自分を変えよう』だなんて決して思っては駄目よ。でなければ大切なものすべて失う事になる」

 

まどかは意味が分からない顔をしているけど今はそれでいい。

 

あなたは変わる必要はない。

 

そのままのあなたでいなさい。

 

 

 

【一真サイト】

 

暁美さんが転校は原作通りに進んだ。

 

杏子ちゃんと暁美さんがケンカになりそうになった以外は

 

あれ、居る筈のない杏子ちゃんに対して不信感でつい睨んじゃったんだろうな・・・

 

それから午前中の授業が終わりお昼になった。

 

屋上で俺、中沢、そして中沢が上条を誘って野郎三人で昼飯を食べてたら。

 

同じく屋上に昼食を食べに来た美樹さん、鹿目さん、杏子ちゃん、志筑さんが加わっての華やかな昼食になった。

 

そして話題は転校性の暁美さんの話になると

 

「ぎゃっははははは、ちょ!まどかなにそれマジで!」

 

大笑いする美樹さん。

 

原因は鹿目さんが暁美さんとは初対面なのに今日夢で暁美さんが出てきたと話した事だ。

 

「二人はあれだ前世かなにかで結ばれた運命だったんだ。これぞ宇宙の奇跡のなせる業」

 

「からかわないでよ、さやかちゃん」

 

美樹さんは笑っているがあながち外れって訳じゃないんだよな。

 

「(これは予知夢か?もしくは因果の影響なのかな)」

 

暁美ほむらが鹿目さんを護る為に時間軸を移動して鹿目さんに何度も会ってる事を知る俺は笑えなかった。

 

「美樹、笑いすぎだ。この年頃の子がこういう時期になった時は分かってる分かってるからねって目で優しく暖かい目で見守ってやるもんだ」

 

中沢が鹿目さんのフォローにまわったが。

 

「なるほど、こうか」

 

美樹さんがニヤニヤしながら鹿目さんを見ている。

 

いやそれはどっちかと言うとバカにしているような目だ。

 

「うう・・・さやかちゃんも中沢君もひどいよ」

 

「い、いや俺はそんなつもりは・・・」

 

ほぼ涙目の鹿目さんと慌てる中沢。

 

鹿目さん、その泣きそうな顔は逆効果だ。

 

中沢はあとで〆る。

 

ここらで助け舟を出すか。

 

「まあ案外、どこかで見た事あってそれが偶然今日の夢に出たんじゃないのかな」

 

「そ、そうだよね」

 

「なに城戸、あんた夢がないなー」

 

「その方が現実的でしょ。なあ上条君」

 

「・・・まあそういう考え方もあるな」

 

真相を知ってるけど言う訳にもいかないからそこで僕に振るなって目で睨んできているが。

 

イケメンぶってないで少しぐらい話に混ざれ。

 

「恭介もそっちの味方かー!」

 

「さ、さやか、ち、違うよ!?」

 

おやおや、じゃじゃ馬なお姫様の機嫌を損ねて上条が慌ててるな。

 

いい気味だ。

 

俺に非はない。

 

「面倒そうな話してんなー腹減ってるから怒りっぽくなるんだ。飯食えよ?」

 

「そ、そうですわどうぞ、食事をして落ち着きましょう」

 

「く~誰も味方いなくて悔しい。けどうまい」

 

杏子ちゃんと志筑さんが弁当のおかずを分けてあげて美樹さんがそれをヤケ食いする。

                 

どうやら機嫌が直ったようだな。

 

「おい待て!唐揚げまでやるとは言ってねえぞ!」

 

美樹さんがあげてない他のおかずにまで手を出して杏子ちゃんが怒って止めてるがこれはいつもの光景だ。

 

ん?

 

ふと反対側の建物の方に視線を感じた。

 

なんだ?よく見えないな。よし百メートル先のマッチ棒も見えるウルトラマンの視力で見るか。

 

あれは・・・

 

 

 

~~ほむらサイド~~

 

昼食の時間になり私は保健室のベットからこっそり抜け出して屋上の見える別の校舎の塔の天辺(てっぺん)からまどかを見守る。

 

監視しているようでまどかに悪い気がするけどこれもインキュベーターからまどかを守る為だと割り切る。

 

屋上にいるまどかは美樹さやか、志筑仁美、佐倉杏子、上条恭介、そして二人の男子生徒と楽しそうに昼食を食べていた。

 

・・・楽しそう。

 

私もあの中に入れたら・・・いけない今は弱音を吐いては

 

頭を横に振って気持ちを切り替えてまどか達の方を見たら。

 

「えっ?」

 

まどか達と一緒に食事を摂っている二人の男子の内の一人がじっとこっちを見ていた。

 

目が合った気がして驚いて思わず柱の影に隠れる。

 

み、見えてるの!い、いえそんな筈はない。

 

屋上からここまで何百メートル離れていると思ってるのよ。

 

魔力で視力を強化した魔法少女の私ならともかくただの人間の男子が見えるわけがない!

 

例え見えたとしても人と認識できない殆ど点のようにしか見えない筈だ。

 

そう自分に言い聞かせながら恐る恐る再び屋上を見てみると

 

「・・・・(チョイチョイ)」

 

笑顔でこっち見ながら手招きしてる!?

 

気づかれてる、絶対に気づかれてる。

 

そ、そういえば今まで時間軸を渡り歩いて来たけどあの男子の顔は見た事ない気が。

 

一体何者なの?

 

その後、あの得体の知れない男子が気になり食事が一切喉を通らなかった。

 

 

 

【一真サイド】

 

午後の授業の休み時間。

 

男子トイレで上条と二人横に並んで用を足しながら話をしていた。

 

ここは魔法少女でも入ることが許されない男の聖域

 

密談するには持ってこいの場所だ。

 

「さっき手招きした相手は暁美ほむらかい?」

 

「ああ、せっかく親睦を深めようと誘ったのにフラれちゃったよ」

 

「そりゃ残念だったね」

 

軽い口調で話していたがここから真面目な話に切り替えるか。

 

「で、本来の時間軸通りに暁美ほむらさんが転校してきたがお前はどう出るつもりだ?」

 

こいつの真意を知っておきたいから小細工なしで単刀直入で聞き出すか。

 

「別にどうもしないさ、彼女はさやかが魔法少女になる事を嫌がっているし行動理念も鹿目まどかを護るという謂わば僕側の人間だ。向こうが何もしなければ何もしない」

 

「その言葉信じていいんだな」

 

「ああ、かつての親友の言葉として信じてほしいな」

 

嘘・・・だな。

 

彼女、暁美ほむらさんがもし美樹さんを犠牲にして鹿目さんを助けようとしたらおまえは迷いなく暁美さんを手に掛ける。

 

逆に美樹さんを助ける為なら鹿目さんを犠牲にする事も厭わないくせに・・・

 

いかんな、あまり疑心暗鬼すぎるのも。

 

これはあくまで俺の推測にすぎないのに。

 

今は奴の言葉を信じて無用な戦いを避ける方向でいこう。

 

「暁美さんの事もそうだが彼女が転校してきたという事はもうすぐ消してもすぐ沸いて出るインキュベーターが暁美さんに襲われる事を利用して鹿目さん達に助けを求める茶番劇がある。あの茶番に関してもお前の出方を知りたい」

 

「無論、阻止する為に動くさ。あの茶番はさやかも関わるからね」

 

「そういうだろうと思ったよ」

 

「君の意見も聞こうか?」

 

「もちろん俺も阻止する。杏子ちゃんやマミさんの家族を助けた俺が言えた義理じゃないがそれが後の出来事にどう影響出るか分からないがな」

 

杏子ちゃんやマミさんの家族を助けた時と違って成功すれば今回は原作そのものを大きく変える事になる。

 

もっとも転生者の俺や上条恭介に憑依した鈴木君がいる事自体原作と大きく変わってしまってるけど。

 

「そうかでは今回は情報を共有して共闘という事でいこう。なにかあればメールで連絡する。それで構わないね」

 

「ああ、それでいい」

 

俺と上条は手を洗いながら話を続ける。

 

打てる手はすべて打ちこれで賽は投げられた。

 

「今日はマミさんと魔女捜索の日だから駐車場付近を重点的にパトロールして鹿目さんとキュゥべえが接触する前にカタを付けるつもりだがお前は具体的になにするんだ?」

 

「とりあえずさやかを誘って出かける事でインキュベーターのいる駐車場から遠ざけるつもりだ」

 

「なんだ、これ幸いとデートに行くのか?」

 

「デートじゃない、さやかを護る為に一緒に出かけてついでに時間稼ぎの為に買い物や食事などをするだけだ」

 

「それを世間ではデートって言うんだよこのリア充が!」

 

「君にだけは言われたくないな!」

 

「やるか!」

 

「かかってこい!」

 

この後、能力なしでケンカ(じゃれあい)してた所を杏子ちゃんと美樹さんに見つかり、俺と上条は正座させられ二人に説教されるのだった。

 

ワルプルギスの夜を倒しインキュベーターを地球から追い払い魔法少女の問題を解決して戦わないで済む日が来たらこんな風にまた鈴木君と昔のように笑いあえる事ができるのかな。




今回、一人称がコロコロ変わるからここで一旦区切ります。

一話分に対して二人までの方がいいのかな。
話自体は紙のメモ用紙に書いてるのパソコンで打ち込むだけなんだけど
ねこ様にパソコンの椅子を取られて下ろしたくても気持ちよく寝てるからできなかったんや、僕は悪くない。


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第17話 ひとりぼっちの魔法少女

今回のサブタイを考えてメモ帳に名前を付けて保存したら、ふとウルトラセブンにも似たようなサブタイトルがあったの思い出したorz

かまへんこのままいったれ!


~~ほむらサイド~~

 

 

放課後になりクラスの女子からの誘いを断って私は一人下校しながら今日の事考えていた。

 

一体この時間軸はどうなっているの?

 

風見野にいる筈のない佐倉杏子や入院中の上条恭介が普通に登校している。

 

何より数百メートル離れた場所にいた私の存在に気付いたあの男子生徒。

 

調べてみたが名前は城戸一真といいやはり名前にも聞き覚えがなく

 

今まで何度も繰り返した時間軸にあんな少年は存在していなかった。

 

何者なの?まどかや美樹さやか、佐倉杏子とも親しそうだったし

 

もしまどかに危害を加えるような存在ならその時は私の手で始末する・・・。

 

いえこの件は後回しにしてまずはインキュベーターがまどかに接触する前に始末するべきね。

 

「ありがとうございました~」

 

ん?あれは佐倉杏子・・・。

 

目の前にコンビニ前を掃除している店員とお菓子を詰めた袋を持った佐倉杏子が店から出て来ていた。

 

私が見てきた数々の時間軸の佐倉杏子はどれも家庭環境と自らの願いで家族を失った経験から笑顔の中にもどこか悲しげな顔をしていた。

 

しかしこの時間軸の佐倉杏子は別人と思えるくらい似ても似つかない本当に嬉しそうで幸せな表情だ。

 

店員もお礼を言ってるって事は盗んだんじゃなくて自分で買って手に入れた事になる。

 

幻惑の魔法を使ったのかと思ったがそんな素振りもない。

 

という事は自分でお金を払って購入した事になる。

 

失礼だけど両親のいない彼女にそんな余裕などない筈だ。

 

これは問いただす必要がある。

 

そうすればこの時間軸の事がなにか分かるかもしれない。

 

「佐倉杏子、少しいいかしら?」

 

私は彼女の背後から声を掛けた。このありえない事が起き続けている時間軸になにが起こっているか知る為に。

 

 

 

~~杏子サイド~~

 

今日は一真とマミさんが魔女捜索の日で私は休みの日。

 

さやかは上条の坊やとデート。

 

本人は真っ赤な顔で必死に否定してたが顔が嬉しがってたな。

 

仁美は習い事でまどかは親に頼まれたおつかい。

 

アタシは一真のお母さんから貰ったおこづかいでお菓子を買った帰り道。

 

後ろから声をかけられた。

 

今日来たすれ違いざまに睨んできた転校生で確か暁美ほむらとか言ったっけか?

 

なんでアタシの名前知ってるんだ?話してもないのに。

 

「これに見覚えはないかしら?」

 

暁美がポケットから何かを取り出した物を見て驚いて息をのむ。

 

取り出したのは魔法少女だけが持つ紫色のソウルジェム

 

って事はこいつも魔法少女か!

 

「その反応どうやらこれが何か知っているみたいね。ついて来てくれるかしら?ここでは人目が多いから」

 

「・・・嫌だって言ったら?」

 

ドジった。知らないふりすべきだったのに。

 

いきなりソウルジェムを見せられてつい反応してしまった。

 

「無理やりにでも連れて行くわ。どうしても知りたい事があるから」

 

「・・・分かったよ」

 

マミさんや一真に連絡を取りたいがこいつの目的が分からない以上迂闊な事はできねえから悔しいがここはこいつに従うしかない。

 

自分のマヌケさを呪いながら道を指示する転校生の前を歩いて行く。

 

アタシと転校生の背後にいる存在に気がつかないまま・・・。

 

 

 

~~杏子達から数十メートル離れたお店の前~~

 

「杏子ちゃんと・・・・・・ほむらちゃん?」

 

「お、本当だ!杏子と転校生だ」

 

「さ、さやかちゃん!?上条君とそのデ、デートじゃなかったの?」

 

「デートじゃないって。恭介が急に親に呼び出されて途中で帰る破目になっちゃってさ、失礼しちゃうよまったく」

 

「そ、そうなんだ大変だったね」

 

「それより何やらただならぬ気配をこのさやかちゃんレーダーが感じますな。よし尾行(つい)て行こう」

 

「だ、ダメだよさやかちゃんそんな事」

 

「だって気になるじゃない、まどかの夢に出てきた運命の転校生が杏子と一緒にいるなんて。もしかしたら昼間の事が原因かもしれないし」

 

「う、うんでも・・・」

 

「じゃあ私だけ見てくるよ、あとでまどかにも教えてあげる」

 

「ま、待ってよさやかちゃん」

 

 

 

 

~~ほむらサイド~~

 

ここらでいいわね。

 

破棄されたゴミやダンボールがある路地裏に着き佐倉杏子にゆっくり此方を向けという。

 

「単刀直入に聞くわ佐倉杏子。あなたなんで見滝原市にいるの?あなたの縄張りは隣の風見野市の筈なのに」

 

「なんでアタシが風見野市にいた事知ってるんだよ?」

 

「質問してるのはこっちよ、答えなさい!」

 

ただでさえイレギュラーな事態が起こりすぎて状況も分からない上に佐倉杏子の態度にイライラして怒鳴ってしまう。

 

「いきなり素性も知らない奴に教えるわけないだろ、バーカ」

 

佐倉杏子は素早くソウルジェムをかざして魔法少女に変身する。

 

「仕方ないわね」

 

私も魔法少女に変身して迎え討つ。

 

佐倉杏子は強敵だ。

 

戦って危なくなれば時間停止で逃げればいい。

 

と思っていたのに・・・

 

カランカラン

 

急に右の方から大きな音がして私と佐倉杏子そちらを向く。

 

「ちょっとまどか何やってるんだよ」

 

「ご、ごめんさやかちゃん」

 

そこには美樹さやかといてほしくなかったまどかが居て足元には誤って蹴ってしまい音を立ててしまった原因の空き缶が転がっていた。

 

「お前らなんでここに!」

 

「くっ、まどか!」

 

なぜまどかがここにいるの!?もしかして尾行(つい)てきてしまったの

 

しまった佐倉杏子に気を取られて気がつかなかった。

 

「お前ら早く逃げろ!」

 

くっ・・・そうね佐倉杏子にとったらまどか達は親友で初対面の私はあの子達に危害を加えるかもしれない敵って事になるわね・・・。

 

すこし胸が痛いわ。

 

時間を止めてこの場は逃げるしかないわね

 

盾に手を伸ばして時間を止めようとしたその時

 

《佐倉杏子と見覚えのない魔法少女がいるね、君は誰だい?》

 

こ、この忘れもしない耳障りで吐き気がする声は!?

 

積み重ねられた段ボールの上にソイツはいた。

 

まどかや私をそして何人もの少女達を願いと言う甘い毒で不幸に陥れた憎むべき敵

 

キュゥべえ・・・いえインキュベーター!

 

「ね、ねえまどか、私の耳が変になったのかな、あのヌイグルミみたいのがが喋ってるように聞こえるんだけど」

 

「わ、私も聞こえた・・・なにあれ?」

 

やはり二人にもキュゥべえの声が聞こえてるのね

 

魔法少女になってしまう素質が・・・

 

《おや、僕の声が聞こえるのかい?よかったら僕と契約して魔法・・・》

 

「その必要はないわ!」

 

私は即座に盾からベレッタを引き抜いてインキュベーターに向けて発砲した。

 

パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!

 

「おいおいいきなりぶっ放すか普通!あれ本物じゃねえか!」

 

佐倉杏子が驚きの声を上げるが無視する。

 

パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!

 

まどかと美樹さやかは発砲音に耐えきれず耳を両手で抑えて恐怖でしゃがみ込む。

 

感情のない無表情のインキュベーターは右へ左へ動き回り銃弾を避ける。

 

パンッ!パンッ!パンッ!

 

的が小さい上に動き回って当たらない

 

でもここで始末しないと!

 

他の時間軸で私とまどかでワルプルギスの夜を倒した後ボロボロのまどかが最後のグリーフシードを使って私のソウルジェムを浄化したあと・・・まどかが自分の命であるソウルジェムを私に破壊してほしいと言った時の哀しげな笑顔を思い出す。

 

あなたの・・・あなたの所為でまどかが!今すぐ消えなさい!

 

《助けて……》

 

パンッ!パンッ!カチィカチィ・・・

 

銃弾をすべて撃ち尽くし撃鉄の音だけが虚しく鳴り響く。

 

「え?声?」

 

「チィ!」

 

《助けて…まどか……!》

 

こいつまどかに助けを!?

 

相変わらず汚い真似を!!

 

ベレッタを捨て、怒りに任せて次の銃を取り出そうとした時

 

「ちょっと転校生なにやってるのさ!」

 

「やめてほむらちゃん」

 

まどかと美樹さやかに抑え込まれた。

 

「は、放して!」

 

邪魔をしないで!早くアイツの始末しないとあなた達も大変な事になるのよ!

 

《やれやれ僕と君は初対面の筈なんだけど?もしかして最近魔法少女を殺す為に動いている黒い魔法少女がいるんだけどもしかして君の事かい?》

 

何言ってるの?インキュベーター?

 

魔法少女を殺す魔法少女って何の事?

 

そんなの今までの時間軸にいなかった。

 

「・・・何の事?」

 

《見滝原、風見野を中心に魔女ではなくて同胞の魔法少女に殺された被害者がすでに何人もいるんだ。その中の被害者の一人が死に際に黒い魔法少女と言い残してね》

 

「それが私だと?」

 

やはりこの時間軸はなにかがおかしい

 

見滝原にいる佐倉杏子と無傷の上条恭介、そして城戸一真の件

 

魔法少女を殺す魔法少女・・・そんな事いままでの時間軸にはなかった。

 

いくらなんでもイレギュラーが多すぎる

 

一体この時間軸は何なの?

 

「おい!転校生!どういう事だよ」

 

美樹さやかが怒鳴ってるけど私の方がどうなってるか聞きたいわ

 

「ほ、ほむらちゃんが・・・人を・・・殺した」

 

ま、まどかが怯えた表情で見ている。

 

他の人にどう思われても構わないがまどかに拒絶されるのは嫌よ。

 

怖がらないで!わたしにも何が何だか分からないの

 

「ち、違う私知らない!」

 

怯えるまどかの視線に耐えきれず思わず後ずさる。、

 

《でも君は今さっき佐倉杏子を襲おうとしたよね》

 

「こ、これには訳が」

 

「あたし達は見たぞ、あんたがここに連れ込んでいたのも!そして杏子を襲おうとしたのも!」

 

状況的に私が佐倉杏子を路地裏に呼んで殺そうとしたように見えてしまう。

 

「私は・・・ぐっ」

 

理由を話すわけにもいかず言い逃れできない。

 

どうして・・・・?

 

どうしてこうなったの?

 

心の中に黒い感情が押し寄せてくる・・・

 

私はまどかを助けたいだけなのに・・・

 

ドウシテワタシヲキョゼツスルノ?

 

私の中に黒い感情が押し寄せて来てソウルジェムが穢れ始めたと同時に辺りの景色が歪み始める。

 

「おい!これって!」

 

見覚えのある光景になっていく事に佐倉杏子が上を見まわしながら怒鳴っている。

 

「しまった!」

 

無実の罪を着せられまどかの視線で私の弱ってしまった心が魔女の結界を呼び寄せてしまった。

 

「さやか、まどか早くここから逃げろ!」

 

状況を察した佐倉杏子が叫ぶが

 

「へ・・・何あれ?冗談でしょ!?」

 

「あわわ・・・・」

 

「くそ!まどかとさやかが居るって時に!」

 

槍を構える佐倉杏子

 

私の所為でまどかを危険な目に遭わせてしまうなんて!

 

私も銃を構え戦闘態勢に入る

 

目の前には私達を獲物として狙う一つ目の使い魔十体と大きな斧を持った一つ目の魔女が現れた。

 

 

 

 

【一真サイド】

 

どこだ!どこにいる?インキュベーター!

 

鎧を装着してマミさんとデパートの屋内駐車場にいた原作で鹿目さんと美樹さんが遭遇した蝶とヒゲの生えた綿帽子モドキの使い魔達を瞬殺した後

 

俺はこれから起こる鹿目さん達とキュゥべえが接触するを捜索していた。

 

修行で精度の上がった透視光線で周囲を見回しテレパシーでインキュベーターや暁美さんの存在を探知しようとするがインキュベーター所か猫一匹いない

 

早く見つけないと手遅れになる。

 

「城戸君?使い魔は倒したけどもうここには魔女はいないと思うのだけど?」

 

「城戸君?」

 

「城戸君!」

 

マミさん呼ばれていた事に三回目で初めて気づく。

 

「どうしたの?ボーっとして?いつもの城戸君じゃないみたいだけど、どこか具合でも悪いの?

 

「そ、そんなことないよ、元気いっぱいでいつもと変わらないよ」

 

「じゃあなんでこの場所にそこまでこだわるの?」

 

それは・・・言えるわけがない。

 

これから起こる事を知っているからそれ防ぐ為に躍起になってる事を・・・

 

父親に拒絶された事のある杏子ちゃんと違い今だにマミさんは魔法少女はきれいな正義の味方だと信じてしまっている。

 

鹿目さんと美樹さんに魔法少女の候補になる可能性のあると知れば迷うことなく二人を勧誘するだろう。

 

それだけはなんとしても防がなければ。

 

「そんな事ないよ、俺はいつもの俺だよ」

 

「・・・・城戸君、佐倉さんと一緒じゃないとつまらないの?」

 

「え、どうしたの急に?」

 

「だって城戸君今日はいつもより難しい顔をしてるから、城戸君の悩みは佐倉さんは相談できても私には相談できないの?」」

 

「別に杏子ちゃんだからとかマミさんだからとかそんなんじゃないよ。いずれちゃんと話すから今は何も聞かないで・・・ん?」

 

携帯にメール受信用の音が鳴る。

 

「マミさん、ちょっとごめん」」

 

鎧を解除して携帯を開きメールを見ると上条からでそこには。

 

【すまない!親の取引先で急遽演奏会を開く事になり僕だけ連れ戻された。もしかするとさやかがそちらに向かうかもしれない。すまないがさやかを頼む。僕もこちらが終わり次第すぐに向かう】

 

嘘だろ、こんな時に限って!

 

本来の上条恭介は入院中で演奏会なんてできない状態だったからな。

 

これも運命の修正力って奴なのか。

 

休み中に悪いけど杏子ちゃんに応援を頼むか。

 

いやダメだ。呼んでなんて説明する気だ。

 

考えろ、考えるんだ!

 

早くしないと最悪な展開に・・・

 

『一真、巴マミ魔女の反応を感知した場所はこの近くの路地裏だ。急ぐぞ(まさかと思うが修正力が働いているなら鹿目まどかと美樹さやかがいるかもしれん)』

 

鹿目さん達の件はマミさんに聞こえないようにドライグが小声で話す。

 

恐れていた事態が起きたかもしれない。

 

くっ先手を取る筈が後手に回ってしまった!

 

「分かった、行こうマミさん」

 

「・・・ええ」

 

気まずい雰囲気の中、マミさんと共に反応を追って結界を探しに向かった。

 

 

 

~~マミサイド~~

 

城戸君・・・

 

一体何があったの?分からない・・・

 

教えてほしい・・・頼りにしてもらいたいのに・・・

 

どうして・・・?

 

どうして一人で抱え込んでいるの?

 

なんで・・・?

 

なんで私に相談してくれないの?

 

私達仲間じゃないの?

 

仲間ってなんでも話し合える間柄じゃないの?

 

私じゃ城戸君のパートナーになれないの・・・

 

当然か、城戸君の事なにも知らないのよね。

 

分からない・・・私、城戸君の事が・・・

 

シンジラレナクナッテキテイル・・・。




すこしでも鬱展開な話を考えると胃が痛い・・・


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第18話 歪む時間軸

今回出た魔女は『魔法少女まどか☆マギカ ~The different story~』の上巻1話に出てきた魔女をモデルにしてます。


~~ほむらサイド~~

 

私、暁美ほむらは路地裏に佐倉杏子を連れ出しイレギュラーが多発しているこの時間軸の情報を少しでも得ようと接触していた所を突如現れた魔女と使い魔に襲われ苦戦していた。

 

苦戦の理由は二つ

 

私の不注意で佐倉杏子を見かけたまどかと美樹さやかにこっそり跡を追われ一緒に魔女の結界に巻き込まれてしまい

 

その為、二人を護りながらの戦いを強いられてしまう。

 

さらに私とこの時間軸の佐倉杏子は初対面で信頼関係がない上に私がまどか達に危害を加えると佐倉杏子は、思い込みながら護っているので二人から離れる事ができず使い魔を生み出す魔女に近づけない。

 

このままだとこっちが先に体力と魔力が尽きてしまう。

 

「佐倉杏子、あなたは魔女本体を叩きなさい。その方が確実よ」

 

相手の武器はあの大きな斧。

 

私だと懐に入られて接近戦になったら分が悪い。

 

「そんな言われなくても分かってる。けどなアタシがいなくなったら誰がさやかとまどかを護るんだよ!」

 

佐倉杏子も分かってたのね。

 

このまま消耗戦になると確実に負ける。

 

「二人は私が護るわ、だからあなたは魔女を倒してきて」

 

「それを信じろと?まどか達を見捨てて逃げない保証がどこにある?それにその銃でアタシの背後から撃たない保証もねえ!」

 

・・・くっそうね佐倉杏子が魔女に向かってる間に私がいなくなればまどかと美樹さやかの身が危ない。

 

でも私がまどかを見捨てるわけないし今あなたを撃つ事なんてしない。

 

「佐倉杏子、今だけは私の事を信じなさい!」

 

「テメェみたいな上から目線で命令する得体のしれない奴の事なんか信じられるか!」

 

やっぱりこの時間軸でもダメなの・・・?

 

店から出てきた穏やかな佐倉杏子を見てせっかくいい方向に進めると思ったのに。

 

「杏子ちゃん、私達は大丈夫。ほむらちゃんを信じてあげて」

 

まどか!?

 

「・・・本当にいいのか?アタシが向こうで戦ってる間にそいつがおまえらを囮にして逃げたら一巻の終わりなんだぞ?」

 

「分かってる、けどほむらちゃんが嘘をついてるなんて見えないの」

 

「うう・・・元はといえば私がついていこうって言ったのが原因だし何が何だか分からないけど杏子とまどかを信じるよ、だから杏子頼んだ」

 

美樹さやか・・・ありがとう。

 

「分かった、なるべく早く戻ってくる。おいこいつらを裏切ったらアタシが絶対に許さないからな」

 

そう言うと佐倉杏子は使い魔を薙ぎ払いながら魔女に向かって一直線に跳び出して行った。

 

 

 

【一真サイド】

 

俺とマミさんはドライグに案内され路地裏で発生している魔女の結界前に到着した。

 

「ここか」

 

俺達の前には空中に紋章のような絵柄が描かれている。

 

これが魔女の結界か。

 

「見て城戸君、結界が歪んでいる。誰かいるみたい」

 

紋章が一瞬歪む。つまり中で魔法少女が戦っていることを意味する。

 

「くっ遅かったか・・・」

 

中で戦ってるのは暁美ほむらだろう。そしておそらく近くには鹿目さんと美樹さんも・・・

 

「(遅かった?城戸君はこうなる事が分かってたの?)」

 

「マミさん急ごう!」

 

「え、ええ急ぎましょう」

 

マミさんは素早くソウルジェムで魔法少女に変身して俺も左腕に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を装備してマミさんと共に結界内に突入した。

 

 

 

~~再びほむらサイド~~

 

「きゃっ!」

 

私が襲いかかってくる使い魔を撃った銃声に驚いて両手で耳を塞ぎ叫ぶまどか。

 

「ご、ごめんほむらちゃん」

 

「別にいいわ」

 

そうね日本で普通に生活していたらまず聞く事のない本物の銃声だから怖いでしょうね。

 

優しいあなたにはこんな恐ろしい場所にいつまでも居てほしくない。

 

「まどか、怖かったら耳をふさいで目を閉じていて、あなたは絶対に護るから」

 

「う、うんありがとうほむらちゃん」

 

「転校生、あたしには?」

 

「・・・美樹さやか、邪魔にならないように大人しくしてなさい」

 

「ちょっとなんだこの扱いの差は!」

 

美樹さやかがギャーギャーと文句を言ってるが無視。

 

安心なさいあなたもちゃんと護ってあげるわ。

 

でないとまどかが悲しむ。

 

「(まだなの佐倉杏子、まだ魔女を倒せないの)

 

使い魔を撃退しながらチラっと佐倉杏子の方を見ると佐倉杏子の槍と魔女の斧がつばぜり合いになっていた。

 

佐倉杏子ほどの実力のある魔法少女と対等に戦えるなんてかなりの強敵だ。

 

使い魔も他の魔女の使い魔に比べてかなり強い。

 

でもここで引き下がる訳にはいかない。

 

私の後ろにはまどかがいる。

 

絶対にあなたは護り通して見せる。

 

「うお、杏子が四人に分裂した!?」

 

美樹さやか間違ってるわよ。

 

あれは分裂じゃなくて分身。

 

佐倉杏子、幻惑魔法を使ったって事はこれで決める気ね。

 

 

 

 

~~杏子サイド~~

 

くそ!こいつの馬鹿力で攻撃を捌くだけで精一杯だ。

 

それにしても今日はほんとに厄日だな。

 

変な魔法少女に絡まれて魔法少女だって事さやか達に知られるしよ。

 

魔法少女だってバレてアタシの事を気味悪がるだろうな。

 

せっかく友達になれたってのに。

 

でも大丈夫だ。

 

二人にどう思われようが絶対にここから生きて帰らせてやるからな。

 

分身して突撃する。

 

一つ目魔女が斧を構えて迎え討つ。

 

「はあああ!」

 

一人ずつ左右に別れ、残り二人がジャンプする。

 

魔女は混乱するが上のアタシに狙いを定めて斧で横に薙ぎ払い空中にいた二人のアタシらが斬られる

 

残念それはニセモノだ。

 

魔女は斬った分身が消えるとすぐに左右に別れたアタシに狙いを定める。

 

右側の槍を構え突撃するアタシが横に斬り裂くがそれもニセモノ。

 

すぐに魔女は最後の左のアタシに向かって斧を振りかぶる。

 

「しまっ・・・」

 

アタシの頭に目めがけ振り下ろした。

 

巨大な斧が振り下ろされ地面が陥没する。

 

「杏子ちゃん!」

 

「杏子!」

 

まどかとさやかが泣きながら叫ぶ声が聞こえた。

 

安心しろよ。

 

いつアタシが四人の中に本物のいると言った。

 

そんなデッカイ斧を地面が壊れるくらいの馬鹿力で振り降ろしたらすぐに体勢を立て直せないよな?

 

「残念、そっちもニセモノさ!」

 

姿を消して背後から近づいていた五人目の本物のアタシが魔女を縦真っ二つに斬り裂き斧が転がった。

 

 

 

~~ほむらサイド~~

 

「終わった~」

 

魔女を倒して槍を肩に置いて一息ついた佐倉杏子がこっちを向く。

 

「そんじゃあ、邪魔者も消えたし仕切り直しするか?」

 

槍を両手に持ち変えて切っ先を私に向ける。

 

そうだ魔女が乱入して利害の一致で共闘しただけで私達の問題は終わっていない。

 

緊迫した空気の中第三者の声が割って入る。

 

「あの杏子ちゃん、ほむらちゃんさっきの怪物は何?それにその姿や杏子ちゃんが四人に増えた魔法みたいなのもできれば説明してほしいな」

 

「そーだ、ちゃんと説明してよ」

 

この二人に魔法少女の事を知られてしまった。

 

こうなるのが嫌だからその前にインキュベーターを始末したかったのに。

 

邪魔されて毒気の抜けた佐倉杏子もバツが悪そうに頭を掻いてる。

 

あなたもこの二人に魔法少女だと知られたくなかったのね。

 

《それなら僕が教えてあげるよ、君達には素質があるからね》

 

インキュベーター!余計な事をまどか達に言わないで!!

 

「その必要はないわ」

 

ベレッタを取り出してインキュベーターを撃とうとすると

 

「やめてほむらちゃん!」

 

なんて事、まどかがインキュベーターを抱き抱えて庇いだてするなんて。

 

「助けてもらって言いたくないけどこんな小さな生き物にそんな物騒な物を向けるなんて最低だよ」

 

美樹さやかもインキュベーターを庇う。

 

やめて!そいつの見た目に騙されないで!

 

「・・・・・・」

 

「杏子ちゃん?」

 

今まで黙って事の成り行きを黙って見ていた佐倉杏子がまどかに近づき

 

「え?え?」

 

混乱するまどかを無視してまどかからインキュベーターの首根っこを掴み奪い取ると

 

自分の顔の前までインキュベーターの顔を上げて向かい合う。

 

「いいか、二人はアタシの大事な友達だ。こいつらは魔法少女になんかにならねえし絶対にさせねえ!こんな報われねえ事に巻き込むんじゃねえよ!!」

 

そう言うと佐倉杏子はインキュベーターを思い切りどこかに放り投げた。

 

「杏子ちゃん!」

 

「杏子、あんたなんて事を!」

 

二人が非難するけど佐倉杏子が言ってる事は間違っていないわ。

 

「あれくらいじゃくたばらねえよ。それよりあいつがまた来ても絶対に魔法少女になろうと契約なんかするなよ!命を危険に晒していいのはそうするしか仕方ない奴かどんなんになっても折れない本気の覚悟を持った奴がやる事だ。幸せな家族に囲まれ飢えも知らず不自由なく暮らしてる奴が気まぐれで魔法少女になろうなんてそんなのアタシが許さない」

 

佐倉杏子の言葉に二人が黙りこむ。

 

そうね佐倉杏子、あなたは家族を救う為に願いを込めて魔法少女として契約したけれどその所為でご家族の仲はバラバラの末、壊れた父親が佐倉杏子以外の家族を巻き込んで一家心中してしまった。

 

安易な他人の為の願いは自分やまわりの人間を不幸にしてしまう。

 

その事を誰よりもよく知っているあなただからこそ、その言葉はとても重いわ。

 

でも折れない本気の覚悟を持った奴って誰の事を言ってるの?

 

二人共何も言い返せないみたいね。

 

このまま二人が魔法少女になる事を諦めてくれたらそれでいいわ。

 

二人が巴マミに会う前に佐倉杏子と出会ってくれてよかった。

 

「杏子ちゃん!」

 

「佐倉さん!」

 

安心したと同時に二人の男女の声がした。

 

女性の方は今一番聞きたくない声だ。

 

声の方を見ると巴マミとあの屋上で私の存在を見つけた城戸一真がいた。

 

巴マミは魔法少女だから分かるけどなんでこの男がここに!?

 

せっかくうまくいきそうだったのに・・・!

 

「城戸君!マミさん!なんで?」

 

「え?城戸にマミさ!?ってマミさんもその恰好って事は魔法少女なの?あれじゃ城戸はなんでここにいんの?」

 

二人が巴マミを知っている、顔見知りだったの?

 

でもまどか達の反応を見ると巴マミが魔法少女だった事は知らなかったみたいね。

 

「あ~まどかとさやか、たまたま私らと一緒にいて魔女の結界に巻き込まれちゃったんだよ」

 

「そうか、二人共怪我はない?」

 

「うん、大丈夫だよ。ほむらちゃんと杏子ちゃんが護ってくれたから」

 

「私も大丈夫」

 

「って城戸!何その左腕に付けてる赤いの?」

 

「ああ、ちょっとした武器だよ」

 

城戸一真は佐倉杏子や美樹さやか、まどかと話し込んでいる。

 

一瞬まどかと美樹さやかを見て城戸一真の表情が辛そうに歪んだ気が。

 

なんで佐倉杏子は普通に魔女の結界内にいる城戸一真と話してるのかしら。

 

しかも武器とか言って赤い手甲まで付けて。

 

あんな手甲を付けた程度で魔女と戦えると本気で思ってるのかしら。

 

まさか巴マミがいつも連れてきているの・・・

 

「あなたも魔法少女なのね。私は巴マミよろしくね」

 

私に気づいた巴マミが笑顔を振る舞い話かけてくる。

 

知ってるわ・・・まどかを魔法少女に引き入れながら魔女と魔法少女の秘密の関係を知ると発狂して無責任に殺そうとした大罪人。

 

「暁美ほむらよ・・・巴マミなんで一般人をここに連れてきたの?」

 

一般人を危険な魔女の結界内に連れて来るなんて許されない行為だ。

 

それを巴マミは当たり前のように連れてきてこの危機感のなさそうな男も付いてきている。

 

私はそれが許せない。

 

「え?そ、その彼はちょっと変わった能力を持った協力者なのよ」

 

巴マミが言いにくそうに困った顔で言う。

 

なにが協力者よ。

 

魔法少女でもない非力な一般人を危険な場所に連れてきておいて。

 

相変わらず戦いを遊びかショーと勘違いしてるみたいね。

 

「巴マミ!あなたはどこまで!」

 

我慢の言外が来て一度本気で文句を言おうとしたら

 

「お~い城戸、マミさん見てよこのでっかい斧、こんなでっかい斧を振り回してた怪物を杏子が倒したんだよ。うわ重!?」

 

美樹さやかがいつのまにか魔女が持っていた斧の方にいて大声で叫んで持ちが上げようとしている。

 

なにやってるのあのお気楽娘は!?

 

危険だから離れなさい!

 

「さやかちゃん危ないよ」

 

「早く離れろバカさやか!」

 

まどかと佐倉杏子が心配してるのにまったく。

 

「やれやれまだ安全だと分からないからちょっと連れてくるよ」

 

城戸一真が美樹さやかの方に走っていく。

 

何他人事みたいに言ってるのよ、あなたもでしょ。

 

迷惑だからあまりウロチョロしないでちょうだい。

 

でもまずは彼の言う通りね早く魔法少女じゃない三人を結界内から脱出させて安全な所に避難させたいのに。

 

・・・・ちょっと待って結界内?魔女が死んだのになんで結界が崩壊しないのよ!

 

まさか!

 

つまりそれは・・・最悪な考えと答えが出る。

 

「美樹さやか、そこから離れなさい!」

 

叫んだと同時に突如体を何かに締め付けられた。

 

体を締め付ける何かを確認するとそれはさっきまで戦っていた使い魔だ。

 

「佐倉杏子!巴マミ!」

 

二人の方を見ると

 

「この!離せ!」

 

「くうう…」

 

佐倉杏子も巴マミも私と同じように拘束されている。

 

「ほむらちゃん!杏子ちゃん!マミさん!」

 

まどかは拘束されていない。

 

拘束されているのは私たち魔法少女だけのようだ。

 

どうやら魔法少女だけを脅威と感じて拘束してそれ以外は見逃したのか。

 

「ほむらちゃん達から離れて!」

 

まどかが私から使い魔を掴み引き剥がそうとするがビクともしない。

 

《まどか、みんなを助けたいなら願い事を決めて契約するんだ。早く》

 

「やめなさいキュゥべえ!まどかダメよ!!」

 

こんな状況でもインキュベーターはまどかに契約を迫る

 

その事に怒りを覚えるが拘束されているから時間停止も使えない。

 

「うわああ!く、来るな!」

 

叫び声が聞こえ、そこでは佐倉杏子が倒した筈の斧を持った一つ目魔女が復活して美樹さやかに迫っていた。

 

「さやかちゃん!」

 

《まどか早く間に合わなくなるよ!》

 

「・・・ほ、本当に私が魔法少女になればほむらちゃんもさやかちゃんもみんなが助かるの?」

 

《もちろんさ、君は他の人間と比べとんでもない潜在能力を秘めている。君が魔法少女になればあんな魔女なんかわけもなく倒してみんなを救い出せるよ》

 

「やめなさい、まど・・・ぐっ!」

 

使い魔に強く締め上げられ声が出ない。

 

やめて!・・・まどかが契約したらまたあの時と同じになってしまう。

 

もうあんな光景も思いも嫌・・・

 

誰か・・・

 

誰でもいい・・・

 

まどかを止めて!

 

 

 

 

 

 

「未来ある女の子を追い詰めて泣かしてんじゃねえよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・分かった。私魔法少女に・・・キャッ!」

 

《うあああ!》

 

まどかとキュゥべえの間に高速で飛来する『何か』が割って入る

 

風圧が起きてまどかは髪とスカートを抑えて体が軽いキュゥべえは飛ばされて行った。

 

飛来して来た『何か』は私を締め付けていた使い魔を斬り裂く。

 

「何今の!?」

 

その何かは空中で動きを止めた。

 

その正体はブーメランだった。

 

しかもただのブーメランじゃなく光り輝いており空中で止まっていたブーメランは方向を変え佐倉杏子や巴マミを縛っていた使い魔達を斬り裂いていく。

 

一体何が?

 

顔を上げるとそこには赤い手甲を付けた左腕を突き出した城戸一真。

 

まさか今のブーメランみたいなのを城戸一真が!?

 

彼はあの赤い手甲以外何も所持してなかった筈。

 

まさか何もない所から出現させたと言うの?

 

そんな事できるのは魔法少女だけ。

 

でも彼は男性だからそんな筈はない。

 

なら一体何者なの?

 

そのあと城戸一真はすぐ後ろを向いて走り出し美樹さやかに襲い掛かろうとしている魔女を勢いつけてそのまま手甲付きの左手の拳で・・・

 

「美樹さん、危ない!」

 

殴り飛ばした!?

 

魔女の殴り飛ばされた頭が吹き飛ぶ。

 

な、なんて威力

 

いやそもそも魔女って殴り飛ばせるものだったかしら・・・

 

あ、ありえないわ・・・

 

だがもっとありえないのは魔女の方だった。

 

ふっ飛ばされた魔女の頭部すぐに再生して元通りになってしまう。

 

城戸一真の一撃は完璧だった筈なのに

 

だが今は考えてる場合じゃない。

 

魔女が斧の柄を両手で持って振り上げる。

 

あれが振り下ろされたら例え魔法少女でも助からない。

 

ましてただの人間ならなおさらだ。

 

ここからでは距離がありすぎて佐倉杏子のスピードや時間停止しても間に合わない上に私の銃や巴マミのマスケット銃の射程距離外だ。

 

外したら城戸一真に当たってしまう。

 

「一真!邪魔だどけ!!」

 

佐倉杏子が憤怒の表情で槍を構えて魔女に飛びかかって行こうとするが使い魔達に行く手を遮られる。

 

槍を振り回し使い魔を斬り裂くがあまりの使い魔の数に遮られ城戸一真の元に近づく事ができない。

 

「くっこの数にこの距離じゃ・・・」

 

巴マミはどうにかマスケット銃を魔女に撃とうとしているが使い魔に遮られて動けないでいる。

 

「美樹さん早くそこから逃げろ!」

 

「あ、ああ・・・・あ・・・」

 

美樹さやかは恐怖で腰が抜けて座り込み動けないみたいだ。

 

あなたの軽率な行動がこんな結果を招いたのに何そのザマは・・・・

 

彼も分かってるのね。

 

今、逃げたら後ろにいる美樹さやかの命が危ない事に。

 

だから逃げる事はできない。

 

彼が美樹さやかを見捨てるなら話は別だが・・・

 

生き残るには魔女の攻撃を防ぐしかない。

 

でも魔法少女の私達ならまだしも彼は普通の人間に人とは違う毛が生えてるだけのような人間。

 

魔女の攻撃を防ぎきれるわけがない。

 

いくら人とは違う能力があるからって調子に乗って私達の戦いに介入するから。

 

そして無情にも魔女の斧は城戸一真の頭に振り下ろされた。

 

「一真!」

 

「「城戸君!」」

 

佐倉杏子と巴マミ、そしてまどかが叫ぶが結果は変わらない。

 

彼はもう助からない。

 

私は憐れみと同情の眼を向けどうやってまどかと魔女を倒して脱出するか考えていると。

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

Welsh Dragon Balance Breaker!!(ウェルシュドラゴンバランス・ブレイカー)

 

城戸一真の全身を赤いオーラに包まれる。

 

「な、何あの姿は・・・ありえない魔法少女でさえ助からない一撃を・・・」

 

一体なにが起こったの?

 

光が収まりそこには異形の赤い鎧を纏い魔女の斧を左腕から出る光の剣で受け止めている城戸一真の姿があった。



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第19話 赤き剛腕

警告;今回は作者が考えたオリジナル設定が加わりますので苦手な方はブラウザバックをお願いします。



【一真サイド】

 

 

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を装着し後ろで動けない美樹さんを庇いながら魔女の巨大な斧を両腕とメビュームブレードで受け止める。

 

美樹さんが襲われたのは誤算だったけど

 

嫌な予感がしていたから警戒を怠らなくてよかった。

 

それにしてもキュゥべえの奴、油断も隙もない。

 

優しい鹿目さんの弱みにつけこむなんて。

 

暁美さんが諦めず何度も戦ってるんだ。

 

契約なんかさせるかよ!

 

横目で美樹さんが無事かどうか確認する。

 

あ、やっぱり美樹さん驚いてるな。

 

まあいきなり何もない所から人間が鎧を着たら無理もないか。

 

杏子ちゃん達みたいにあとで俺の事も説明しなきゃな・・・

 

それにしてもこの魔女もかなりのパワーだな。

 

俺もそれなりにパワーに自信があったかこいつも負けていない。

 

長期戦になると時間制限のあるこっちが負ける…

 

「一真!」

 

「あれは城戸一真なの・・・」

 

「あ・・・あ・・・」

 

「美樹さん、杏子ちゃん達の方に早く逃げろ!」

 

魔女の斧を抑え込んで動きを封じその間に美樹さんにここから離れたもらいたかったが

 

恐怖で足が竦んで動けないないのか座り込んだままだ。

 

・・・早く移動させないとこのままじゃ美樹さんが危ない。

 

「一真、さやかは私に任せて思いッきりやれ」

 

美樹さんの近くにいつの間にか杏子ちゃんがやって来ていていた。

 

「分かった、頼んだよ」

 

杏子ちゃんが美樹さんの手を引っ張って起き上がらせてた。

 

「きょ、杏子・・・」

 

「ほら、そこにいたら一真の邪魔になるだろ。こっちに逃げるぞ」

 

「う、うん」

 

杏子ちゃんに手を引かれて美樹さんは鹿目さん達の方に避難した。

 

よしこれで全力で戦える。

 

背中の魔力口から魔力を排出して魔女を押し返し

 

後ずさり体勢を崩した所に蹴りを入れる。

 

追撃に回し蹴りを仕掛けたら一つ目魔女は身体を後ろに逸らして避けジャンプして距離を開けた。

 

当たれば儲けものだったけど・・・

 

欲張りすぎたな、そううまくはいかないか。

 

杏子ちゃん達に纏わりついた使い魔達はウルトラ念力で操った80(エイティ)さんのウルトラダブルアローで倒せたけどこの魔女どうなっているんだ?

 

確かに頭をぶっ飛ばしたのに。

 

お菓子の魔女みたいに第二形態があるわけでもなく。

 

なぜか殴った時の手ごたえみたいなものがまるでなかった。

 

この秘密を解き明かさないと奴には勝てない。

 

だったら色々試して答えを見つけてやる!

 

再び魔力を背中から出して一つ目魔女に向かって飛びこんで拳を振り上げる。

 

一つ目魔女も斧を構えて襲い掛かってきた。

 

「うおおおおお!」

 

鈍い金属音がして互いの拳と斧がぶつかり合った。

 

 

 

 

~~まどかサイド~~

 

私の目の前で見た事ない出来事が起きて頭が追いつかず言葉が出ない。

 

数時間前の学校でいつもと変わらない日常の中、笑ってた友達が魔法少女になって槍を振り回したりてっぽうを撃ったりそして・・・・

 

知り合いの男の子は赤い鎧を着て怪物と戦っている。

 

怪物の斧を掻い潜り自分より何倍も大きい怪物を殴り飛ばした。

 

左腕から出ている光の剣が怪物の腕を斬り裂き、傷口から黒い物が噴き出す。

 

私はその悲惨な光景に思わず目を背けた。

 

さやかちゃんもそしてほむらちゃんも呆然と城戸君の戦いを見ている。

 

入学式の時に私を助けてくれた城戸君は優しくて休み時間やお昼ご飯の時にいつも笑顔で話をしていたけど

 

今目の前のには私の知らない城戸君がいた。

 

どっちが本当の城戸君なんだろ。

 

「ぐああ!!」

 

「城戸君!」

 

城戸君が怪物に斧で肩から胸を斬られる!

 

幸い城戸君は鎧を着ているから怪我はしていないみたいだけどさっきの城戸君の叫びが頭から離れない。

 

「ちょ、ちょっと杏子何してんだよ!」

 

「決まってるだろ。一真の援護に行くんだよ」

 

槍をもって城戸君の所に向かおうとする杏子ちゃん

 

制止しようとするさやかちゃん。

 

杏子ちゃんはさやかちゃんの手を払いのける。

 

また戦うの?

 

杏子ちゃんやほむらちゃん城戸君、みんなが戦ってるのに私はただ見てるだけでいいのかな・・・

 

「まどか、大人しくしていなさい。これは私達の問題、あなたが入り込む資格なんてない」

 

私の考え読んだかのようなほむらちゃんの声で我に帰る。

 

「おい!転校生そんな言い方ないだろ」

 

「あなたもよ美樹さやか。あの時近くに城戸一真がいなかったら確実にあなたは死んでいたわ」

 

「う・・・」

 

「じゃあ魔法少女のアタシが行くのは問題ないよな」

 

「佐倉杏子、あなたもやめた方がいいわ。さっきの戦いでかなり魔力を消耗した筈よ」

 

「これくらい大したことねえよ。それより目の前で一真が戦ってるのをただ黙って見てるだけなんていられるか」

 

杏子ちゃん、なんでそこまでして戦おうとするの?

 

「いいえ、佐倉さん。ここは私が行くわ」

 

「マミさん?」

 

優しく杏子ちゃんの肩に手を置く巴先輩。

 

「幸い、ここに来る前に使い魔と戦ったけど数も少なく城戸君と二人だったからそこまで魔力を消費していない。私ならまだ戦える」

 

「・・・分かった。頼むマミさん」

 

 

 

【一真サイド】

 

な、なんて力と斧なんだ。赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を装着してるにも関わらず衝撃が体にまで伝わるなんて!

 

斬られた部分を撫でる。

 

幸いにも摩擦熱で煙が出てるだけで体までに届いていないのが救いか・・・

 

『・・・いや今の攻撃は本当に危なかった。夏休みの光の戦士達との修行で鎧の強度が上がってなければ鎧ごと骨まで真っ二つに切り裂かれていたぞ』

 

マ、マジかよドライグ・・・とんでもねえ馬鹿力ってレベルじゃないぞなこの魔女。

 

強度が上がる前の鎧を壊すってセブンさんのアイスラッガー並って事じゃないか。

 

おまけに俺が斬った部分もまるで手応えがないし

 

すぐに再生してしまう。

 

まるで幻を相手にしてるような感じだ。

 

幻・・・・

 

もしかしてこいつ杏子ちゃんと同じ幻惑の魔法を使ってるんじゃ。

 

俺の考えが正しければ。

 

よし透視光線で本体を見破ってやる!

 

透視光線で見ると魔女の姿は消え奴の持っている斧だけが浮かんでいた。

 

魔女の飛びかかって右手で柄を持って左のチョップで斧に付いている眼のような装飾を拳で叩く。

 

「グガ!」

 

「(今一瞬だけ身体が消えた?やはりそうか!)」

 

本体を壊せば幻影は消える。

 

だが俺一人では使い魔と幻影に護られて本体に近づくのは無理だ。

 

魔女の蹴りを入れて距離を取り、杏子ちゃん達の方に向かう

 

「マミさん奴の本体はあの斧だ。」

 

一つ目魔女の身体の方は使い魔で造られた幻影でその幻影を作ってるのは本体は斧の方だろう。

 

ならば!

 

「俺が本体の斧を叩きますので魔女の身体と使い魔をお願いします」

 

「分かったわ!」

 

俺の言葉を聞きマミさんがすぐに頭を戦闘に切り替える。

 

「悪い一真、後始末押し付けてしまって・・・」

 

「元々今日は俺達の当番の日だったんだ、気にしないで。それより杏子ちゃん達の分までアイツにとっておきの一撃をぶち込んできたあげるよ」

 

グッと魔力を込めた赤い拳を上げる。

 

「・・・・ああ!」

 

落ち込んでいたが笑顔になり、それを見届けたあと俺は魔女に向かって走り出した。

 

暁美さん達から離れたマミさんは帽子を上に投げると周囲に数えきれないマスケット銃が落ちてきて地面に突き刺さり、それを次々抜いて発砲し捨て持ち変え、無数の銃弾が俺の背中を追いこして使い魔を撃ち抜いていく。

 

マミさんを信じて撃ち抜かれていく使い魔を無視して通り過ぎる。

 

目的は魔女のみ

 

魔女は斧を横に振りかぶり待ち構えていた。

 

ワンパターンなんだよ、お前の攻撃はすでに見切った。

 

横に薙ぎ払う斧を身体を逸らして躱して大振りで隙だらけになった魔女

 

見せてやるよ夏休みの修行で得た新しい力の一部を

 

強靭な剛腕を振るう龍帝(ストロングパワーフォーム)

 

肩の鎧部分が大きくなりの両腕と両足の筋肉が膨れ上がり。肘がシリンダーのように変化した。

 

これが夏休みの修行中にたまたま修行場に来たウルトラマンゼロさんから「ウルトラ戦士の能力を全部覚えるなら俺や他の世界のウルトラマンみたいにタイプチェンジして力やスピードを強化出来るんじゃないか?」と言われてドライグやゼロさんと同じく体を変身できるメビウスさんに相談して実戦訓練の時にメビウスさんとストロングコロナのゼロさん二人がかり相手をにしてボロボロになりながらも会得した形態の一つだ。

 

この形態は装甲が厚くなる事で防御が通常の鎧と比べ格段に上がりさらに腕や脚の筋肉が膨れあがる事でパワーも上がる。

 

ただし装甲が厚くなり筋肉が重くなるので身体が鈍重なりその分スピードが無くなる欠点を持つが必要な戦況よってはこれほど心強いはない。

 

名前は尊敬するティガさんとダイナさんのパワー重視のタイプチェンジした名前からお借りした。

 

大きくなった剛腕で魔女の体を掴み自分の頭の上まで持ち上げそして

 

「ウルトラハリケーン!!!」

 

「!!!???」

 

魔女の身体が空高く投げ飛ばした。

 

空中で身動きが取れず竜巻の中で回転する魔女。

 

ウルトラハリケーン

 

ジャックさんが地球での最後の戦いで現れたゼットンに使った技だ。

 

この技を相手を空高く投げ飛ばすことで相手の動きを封じてその隙に必殺技を叩きこむ

 

相手は自由が効かないから防御も回もできない。

 

ジャックさんからこの技は便利だから使いこなせた方がいいよって言われ

 

体で覚えた方が速いと言う事で何度もウルトラハリケーンを仕掛けられた。

 

俺は空に投げ飛ばされ五十回くらい数えてから数えるのをやめた。

 

龍翼があるけど投げ飛ばされる時に回転を加えられることで体の自由が奪われてうまく飛べず何度も地面の上に落とされた。

 

まあ地面に落ちても鎧越しでそんなに痛くなかったしダメ押しのスペシウム光線がなかっただけマシか。

 

だけどセブンさんのジープの次くらいにあれもこりごりだ・・・

 

「マミさん今だ!」

 

「え、ええ、ティロ・フィナーレ!!」

 

大砲のような巨大なマスケット銃が出てきて弾丸が発射され幻影である魔女の身体は腹を撃ち抜かれる。

 

さあ後は仕上げだ。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

倍加し背中の魔力口から一気に魔力を吐き出し本体の斧に接近していく。

 

「!!」

 

拳を振りかぶると同時に肘のシリンダーが後ろに引かれる。

 

「はあああっ!!!!!」

 

倍加した赤いオーラを纏った右拳を斧に叩きこむと同時に肘のシリンダーが勢いよく前に打ち出され衝撃波が伝わり

 

本体の斧は粉々に砕かれ四散し消滅した。

 

「す、すごい」

 

「うん」

 

「彼は一体何者なの・・・」

 

その後、空に漂うグリーフシードを回収し、チラッと地上を見ると呆然とこちらを見る鹿目さん、美樹さん、そして暁美さんの姿が見えた。

 

着地して先ほど倒してた手元のグリーフシードを見る。

 

魔女に止めを刺すのはできるだけ俺がやるようにしている。

 

それは魔女が絶望に染まった魔法少女のなれの果てだと知ってしまった時、魔法少女いや人を殺めてしまったという罪悪感と心の負担を少しでもマミさん達から減らす為だ。

 

俺のやってる事はどんな理由を並べても偽善なんだろうけどやめるつもりはない・・・

 

「ふう・・・・」

 

元の赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)の姿に戻る。

 

「ハァハァハァハァ・・・」

 

普通の鎧姿に戻ると疲労感で思わず片膝をつく。

 

この変身形態は便利だけど短期間でも体力の消耗が激しいのが難点でこれはどう補うかは今後の課題だな。

 

「城戸君」

 

「城戸」

 

「一真」

 

声で我に返ると鹿目さん達が手を振りながらこっちに駆け寄って来ていた。

 

「おーい」

 

立ち上がってこっちも手を振り返す。

 

杏子ちゃん、マミさん、鹿目さん、美樹さんの四人がやって来た。

 

結局は運命の決定力に勝てずに鹿目さんと美樹さんを魔法少女の戦いに巻き込んでしまったな。

 

こうなったら絶対に二人をインキュベーターの手から守り通して見せる。

 

「あ、あの城戸君だよね?」

 

「そうだよ、ほら」

 

兜のマスクを収納して笑顔を見せる。

 

「よかった・・・いつもの城戸君だ」

 

「おお~恰好いいねこれ~」

 

鹿目さんは俺の顔を見て安堵し、美樹さんは目をキラキラしながらの鎧を触りまくっている

 

いくら鎧越しだからって年頃の女の子が男を触りまくるんじゃありません。

 

話をしていると結界が崩壊し始める。

 

どうやら今度こそ魔女は倒せたみたいだな。

 

ふと、こちらを見ている暁美さんと目が合う

 

「あ、あなたは一体」

 

さてどこからどう説明しようかな。

 

暁美さん達になんて説明するかを考えながら一息つく事にした。




強靭な剛腕を振るう龍帝(ストロングパワーフォーム)はHDD本編の赤龍帝の三叉成駒(イリーガル・ムーブ・トリアイナ)みたいなのを入れたいなと考えましたが

一真の神の駒(ゴッド・ピース)は一誠の悪魔の駒(イーヴィル・ピース)のように調整されていないのでティガやダイナの能力である【タイプチェンジ】を参考にするという形をとりました。

今後の形態は話が進むにつれて明かしていきたいと思います。


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第20話 まずは信じることから始めよう

祝20話と言いたいところですが
予定より更新遅くなってすみません。
『何やってんだあああミカアアアァァーー!』
私事で申し訳ありませんが体調を崩して微熱続きで風邪かと思ってたけど熱が下がらず病院行ったらライザ・エンザ・・・じゃなくてインフルエンザにかかっちゃってました・・・
とりあえず薬飲んでしばらくは大人しくしてたおかげでなんとか完治しました。
これからまた徐々に投稿していきますのでよろしくお願いします。


【一真サイド】

 

 

巨大な斧が本体であった一つ目魔女を倒し徐々に崩壊していく結界の中。

 

マミさんと杏子ちゃんの二人は俺に休んでいろと言って使い魔の残党が潜んでいないか捜索中。

 

暁美さんは離れた所でこちらを見ているし、美樹さんは落ち着いた事で魔女に襲われたのを今になって怖くなったのか座り込んでいる。

 

そして俺は先ほどの様に魔女が復活しないかと念の為に鎧だけ残し兜と仮面だけ解除した状態で座って警戒していた。

 

ふと視線を感じて顔を上げると何か言いたそうな鹿目さんと目が合う。

 

「どうかしたの?鹿目さん」

 

まあ目の前でいきなり景色が変わって怪物が現れたり同級生が全身鎧(フルプレートアーマー)を着てその怪物と戦ってるのを見たら言いたい事や聞きたい事なんて山ほどあるよな。

 

さて何を聞かれるかそれとも怖がられて何を言われるか・・・

 

覚悟しておかないと。

 

「城戸君、すごい汗だけど大丈夫?」

 

「え?汗?」

 

てっきり赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)関連の事を聞かれると思ったが予想外の質問に変な声が出てしまい顔と髪を触ってみると。

 

「いつの間に・・・」

 

言われて触ってみると気づかないうちに顔と髪がバケツ一杯の水を頭から被った様に汗で濡れていた。

 

どうやら強靭な剛腕を振るう龍帝(ストロングパワーフォーム)を使用した影響で体力をごっそり奪われて大量の汗をかいたらしい。

 

「ごめん汗臭かったよね。匂いを防げるか分からないけど兜と仮面を被り直すね」

 

「そ、そういう意味で言ったんじゃないよ。大丈夫なのかなって聞いただけだから。それに熱中症になるといけないからヘルメットだけじゃなくてその鎧も脱いだ方がいいと思うよ?」

 

兜と仮面を被り直すと俺の行動に慌てた鹿目さんが否定しアドバイスしてくれたので再び兜と仮面を収納して素顔を出す。

 

異質な力を見られた事を気にするあまり熱中症まで気が回らなかったな。

 

「・・・心配してくれてありがとう。でもこのおかしな景色が元に戻るまでなにがあるか分からないから警戒の為に鎧はまだ脱げないんだ」

 

「そ、そうなんだ…」

 

つい笑顔で答えると悲しそうな顔をする鹿目さん。

 

なんかこっちが悪い気がしてきた。

 

「あ、その…結界ももうすぐ崩壊し終わるだろうし完全に崩壊したのを確認したらおれも暑いから鎧をすぐに外すよ」

 

後頭部を掻きながら答える。

 

もっと気の利いた言葉を言えたら良いんだけど

 

残念ながらそこまで頭良くないもので・・・

 

「!?うん!」

 

でもそれを聞いて笑顔になってくれた鹿目さん。

 

心の底から心配してくれてるのが分かる。

 

鹿目さんが俺の横に座ってポケットから桜色のハンカチを出すと俺の額に流れる汗を拭き始めた。

 

「え?」

 

いきなりの鹿目さんの行動に驚き思わず後ずさってしまう。

 

「う、動かないで!そのままだと体冷えちゃうよ」

 

そう言うと再び俺の顔を拭き始めハンカチから何かの甘い匂いがして鼻をくすぐる。

 

「・・・ありがとう。ごめんねそのハンカチは明日洗って帰すよ」

 

「ううんいいよ、気にしないで。私やさやかちゃんを助けてくれたんだからこれくらいどうってことないよ」

 

本当に優しい子だな。

 

気味悪がって近づきたくないって思う人もいるのに。

 

暁美さんが時間を遡ってでも助けたいって気持ちが分かった気がする。

 

そして改めて決意する。

 

この子は魔法少女にさせちゃいけないと。

 

「そうだ、これよかったら飲んで」

 

鹿目さんが赤い顔で両手を前に出して手を左右に振ったあと思い出したかのようにレジ袋からお茶の入ったペットボトルを差し出す。

 

「いいの?ありがとう。喉が渇いてたから助かるよ」

 

汗を流した所為か喉が渇いてた俺はペットボトルを受け取ると蓋を開けそのまま一気に飲んで喉を潤した。

 

「あの・・・城戸君なんだよね?クラスメイトの・・・」

 

お茶を飲む手が止まる。

 

ついに来たか。

 

「まだ何が信じられないしもしかして夢を見てるかもしれなくて・・・それにさっきの怪物やこの変な景色も何が起こっているのか分からなくて、それでその・・・城戸君や杏子ちゃんやほむらちゃんの事どう・・・いったらいいのか・・・ごめん自分でもよく分からないよ」

 

普通に生きていれば決して出会う事のなかった魔女や結界。

 

現実離れした出来事が続いて起きた事に頭が追い付かず混乱しているようだ。

 

当事者である俺もそんな彼女に気の利いた言葉が思い浮かばず無言になってしまう。

 

これが上条なら鹿目さんが安心するような台詞を簡単に言えるんだろうが。

 

俺と鹿目さんの間に無言の気まずい雰囲気が流れる。

 

「鹿目さん・・・」

 

言葉が思い浮かばずに結局は素直に『姿は変わっても俺と杏子ちゃんも暁美さんも変わらないから、今までどおりでいいんだよ』と思っている事をを言おうとしたら

 

「ほらハンカチ一枚じゃその汗は拭き取れねえだろ!アタシも拭いてやるから少し頭を屈めろ!!」

 

いつのまにそばに来ていた杏子ちゃんが赤いハンカチで俺の頬を乱暴に擦り拭く。

 

「い、痛いって!いや鹿目さんにも言ったけどハンカチ汚れるからいいよ」

 

「馬鹿!そのまんまにしてたら風邪ひいちまうだろうが!」

 

「そうよ、城戸君が魔女を倒してくれたんだから。私も拭いてあげる」

 

マミさんも近づいていてハンカチを出して汗を拭いてくれた。

 

いつか三人になにかお礼しないと。

 

「そういえば、城戸君。さっき魔女と戦ってた時に体が大きくなってたけどあれは何?筋肉が膨れあがっていたからもしかしてこの異常な発汗の原因もそうなんでしょ?」

 

マミさん、鋭いな…

 

一目で見抜くなんて。

 

「そうなのか一真!?そういやあれなんなんだよ!初めて見たぞあんなの!」

 

杏子ちゃんが鎧の肩をつかんで揺さぶる。

 

ち、ちゃんと説明するから落ち着いて。

 

「杏子ちゃん落ち着いて、それじゃ城戸君喋れないよ」

 

鹿目さんが杏子ちゃんを宥めてくれたおかげで落ち着きを取り戻した杏子ちゃんが揺らすのを止めてくれた。

 

あーまだ世界が揺れる…

 

数秒ほど待って揺れが止まった所で強靭な剛腕を振るう龍帝(ストロングパワーフォーム)の説明を始める。

 

あれはフォームチェンジと言って去年の夏休みの修行で会得した力と鎧の装甲を特化した形態

 

この発汗も一時的な物でまだ慣れていないからこうなってるだけで体力が付いたら抑えられる事などを説明した。

 

説明が終わると鹿目さんはものすごく驚いていたが杏子ちゃんとマミさんはあまり驚きもせず城戸君(一真)らしいわ(な)と言って呆れ、杏子ちゃんが鹿目さんに一真の特殊な能力の事で一々驚いていたら体がもたねえぞと身も蓋もないアドバイスまでされている始末。

 

「あ、あはは…」

 

鹿目さんも乾いた笑い方してるし

 

いやもう別にいいんだけどさ…

 

ちょっと寂しい・・・・

 

「あなたは一体?」

 

汗を拭き終わりお礼の内容を考えていると暁美さんが話し掛けてきた。

 

そういえば何の説明も準備もなしに赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)とウルトラマンの能力を見られてしまったな。

 

得体の知れない能力って思われて警戒されたくないから少しずつ打ち明けていこうと思ってたのに。

 

とにかく今は普通に会話しないと。

 

「俺は城戸一真、君と同じクラスの・・・」

 

「そうだ!城戸!転校生は悪い奴なんだ」

 

「え?」

 

振り向くと怒りをあらわにして暁美さんに指さす美樹さん。

 

急に話に割って入ってきてなんの事?

 

もしかしてグリーフシードを独占しようとしてる事を言ってるのか。

 

それなら誤解を解かないと。

 

「転校生は他の魔法少女って子達を殺しまわっているそうなんだよ」

 

予想外の言葉に思考が止まる。

 

何を言ってるんだ?

 

どういう事?殺しまわる?

 

「なんか他の魔法少女達が黒い魔法少女って奴に襲われる事件が連続で起こっているってキュゥべえが言ってんだよ。んでその犯人の黒い魔女が・・・転校生って事になんてんだ」

 

混乱する俺に杏子ちゃんが説明を付け加える。

 

・・・・何それ初めて知ったんだけど!?

 

原作一回だけ見ただけでうろ覚えだけどそんな話なかった筈だ。どういう事?

 

俺の知らない話でもあるのか?

 

あとで上条に連絡して聞いてみるか。

 

俺は原作のアニメしか知らないけど、上条ならまどマギの事に詳しいから何か知っているかもしれないな。

 

「そういうわけなんだよ。城戸、さっきみたいに早くやっつけて!」

 

「さやかちゃんやめて!ほむらちゃんは私達を助けてくれたんだよ」

 

「でもその前に杏子を襲おうとしたじゃないか」

 

暁美さんと何があったか知らないけど美樹さんがとんでもなく物騒な事言ってるな。

 

何がどうなっているか知らないけどキュゥべえや美樹さんが言うその黒い魔法少女は暁美さんじゃない。

 

原作を知ってるからって訳じゃないけどよほどの理由がないかぎり彼女がそんな事するはずがないのはすぐに分かる。

 

「違う、私はそんな事しない」

 

彼女自身も色んな時間軸を移動して不信がられたけどさすがにいきなり人殺し呼ばわりされて混乱してるな。

 

こりゃシロだな。

 

さてどうするか。

 

下手に刺激したら暁美さんのソウルジェムが濁りきって魔女になってしまうし杏子ちゃんもマミさん警戒心むき出しで暁美さんもいざとなったら戦闘もやむなしって顔をしている。

 

「それはグリーシードを独占する為に他の魔法少女を狙っているという事かしら?もしそうなら許さない」

 

キュゥべえを信じているマミさんが身構えて戦闘態勢に入る。

 

暁美さんの事情と魔法少女の明かされていない秘密を知らずにキュゥべえと魔法少女を希望を振りまく絶対的な正義の味方と信じ切ってしまっているから無理もない。

 

それが裏切られた時の絶望感は深く別の時間軸で真実を知ってしまった彼女は失意と絶望に飲まれて錯乱し仲間の杏子ちゃんの命であるソウルジェムを撃ち砕いた・・・

 

あんな悲劇もう二度とあってはならないんだ!

 

だからこそ何とかしてこの一触即発の雰囲気を何とかしないと。

 

今の俺にできる事といったら・・・よし!

 

近付こうとしたら暁美さんに銃口を向けられ

 

それを見た杏子ちゃんが槍をマミさんがマスケット銃を出し、鹿目さんと美樹さんに隠れるように指示する。

 

俺は無言で赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を解除した。

 

「ちゃっと城戸なにしてんのさ」

 

「美樹さん悪いけど少し黙って見ててもらえるかな。俺は彼女が嘘をついてるとどうしても思えないんだ」

 

後ろで美樹さんが文句を言ってる。

 

話も聞かない一方的な偏見も彼女を追い詰める要因になってしまったのだろうな。

 

顔だけ美樹さんに向けた後、再度暁美さんの方を見て両手を上げる。

 

「もし少しでも怪しい素振りを見せたらその拳銃で頭か心臓を撃ってくれ、そうしたらさすがの俺も死ぬから」

 

「・・・あなた本気で言ってるの?」

 

「本気じゃないとこんな事言えないさ」

 

「何考えてんだお前!」

 

「そうよ危ないから早く禁手(バランス・ブレイカー)なって!」

 

杏子ちゃんとマミさんが心配して俺の無茶を止めようとするがごめんそれは聞けない。

 

打算的な考えで悪いけど杏子ちゃん達と暁美さんとの仲が悪くなればワルプルギスの夜との戦いに支障が出るし

 

なにより暁美さんを孤独なままにさせたくないんだ。

 

「二人はそのままでいいよ、でも絶対にこっちから手を出さないで」

 

「何を企んでいるの?まったく理解に苦しむわ」

 

「何も企んでなんかいないさ、ただ誤解を解いて話がしたいだけだよ」

 

なんてかっこつけてるけど生身で本物の銃を前にしているからものすごく怖い・・・

 

背中に冷汗が流れてるし。

 

けどまずは話をして誤解を解く事から始めないとなにも始まらないしこのままだとお互いが誤解の末不幸になってしまう。

 

「・・・どうしてそこまでして私を信じようとするの?」

 

銃口を向ける暁美さんの目に涙が溜まり一筋の滴が流れる。

 

「もし本当に犯人ならグリーフシードを独占しようとする時点で他者の犠牲をいとわない自分勝手な性格だろうから鹿目さんと美樹さんを見捨てただろうし、逃げるタイミングを失っていたのなら俺達が杏子ちゃんと合流した時に三対一だと分が悪いから魔女が復活したあのどさくさに紛れて逃げればいい。でも君は逃げずに今も必死に自分の疑いを晴らそうとしている。それに・・・」

 

本当に暁美さんが犯人なら今この瞬間にも時間を止めてここから逃げてる筈だしな・・・

 

まあ暁美さんの能力は無用な警戒心と疑念を持たれないように今はまだ知らない振りをするけど。

 

でも本当の理由は。

 

「平気で人を裏切ろうとする女の子はそんな悲しそうな目をしないよ」

 

俺が前世で親戚中をたらい回しにされてた時裏切られまくったけどそんな中にも俺の事を本気で心配してくれた人もいてくれた。

 

おかげで信用できる人間とそうでない人間がある程度見分ける事ができるようになったけど

 

その時の経験がこんな風に役に立つなんて皮肉なもんだ。

 

心の中で前世の時の辛かった事を思い出し苦笑しているとカシャンとなにかが落ちた音が思考を現実に引き戻した。

 

見ると暁美さんの足元に拳銃が落ちていた。

 

「私は・・・私はやっていない・・・本当に知らないの・・・」

 

耐えきれなくなった暁美さんは手で涙を抑え泣きながら必死に訴えた。

 

「分かってる信用するよ」

 

暁美さんが落ち着いたと頃を見計らって大きく息吸い吐いて深呼吸して落ち着いた後

 

「いるんだろキュゥべえ出てこい!お前がいいだしたんだ。マミさんと一緒に詳しく聞かせてもらおうか!

 

空に向かって叫んでこの事態を作った原因の名を呼ぶ。

 

《やれやれ詳しくと言われても佐倉杏子と美樹さやかが言ってたように最近黒い魔法少女が他の魔法少女を襲っていると教えただけだよ》

 

「や、やっぱり転校生の事じゃないか!魔法少女だし服だって黒いし!現に杏子を襲おうとしたじゃないか」

 

「さやかちゃん落ち着いて、まだほむらちゃんだって決まった訳じゃないよ」

 

なるほど状況は不利だな。状況証拠は暁美さんを指してしまっているから美樹さんは完全に疑い、鹿目さんは暁美さんを信用しようとしている。

 

杏子ちゃんとマミさんは判断に困っている。

 

もうひと押しっていった所か。

 

「キュゥべえ、被害者が魔法少女って事は他にも魔法少女がいるって事だよな。お前が今まで契約した女の子の中にも黒い魔法少女はいなかったのか?」

 

《いるね》

 

感情がないキュゥべえは淡々と答える。

 

相変わらず表情がないから何考えてるか読めないな。

 

「犯人の黒い魔法少女の顔。もしくは暁美さんがやったという物的証拠でもあるのか?」

 

《顔も見てないし物的証拠もない。あるのは証言だけだね》

 

「つまりあくまでも黒い魔法少女って証言だけで確たる証拠は一切なく暁美さんが魔法少女を襲っている黒い魔法少女とは断定できない事だな」

 

《そういう事になるね、今の所はね》

 

「よかったほむらちゃんは悪い人じゃなかったんだね」

 

暁美さんの疑いが晴れ鹿目さんが後ろで安堵し一息吐く。

 

「でもあくまでも可能性の一つであって完全に疑いが晴れた訳じゃないんでしょ」

 

マミさんが痛い所をついてくる。

 

まあ第三者から見たらそうなるね。ほとんど屁理屈だし。

 

「そうだ、それに杏子やその小さな生きものを襲おうとしたのはどうなのさ!」

 

「いやついかっとなって先に変身したのは私だしな・・・」

 

申し訳なさそうに後頭部を頭を掻く杏子ちゃん。

 

「じゃあどうしてキュゥべえを襲ったの?キュゥべえがいなくなったら新たな魔法少女が生まれなくなる。やっぱりグリーフシードを独占するつもりで!」

 

「そ、それは・・・」

 

暁美さんの返事が詰まる・・・

 

体験した時間軸の経験から今ここで魔法少女の秘密を話せばマミさんが何するか分かっているから言えないよな。

 

「言いづらいないなら魔法少女じゃない俺が聞いておくよ。すまないけどこの件は俺に預けてくれないだろうか。お願いします暁美さんの事信じたいんだ」

 

頭を下げる。それでもダメなら土下座でもなんでもやるつもりだ。

 

「ちょっと城戸君」

 

「・・・分かったこの件は一真に任せた」

 

「佐倉さん!」

 

「一真が頭下げてここまで言ってるんだ任せてみようぜマミさん」

 

「・・・分かった、あまり納得はしてないけど城戸君に任せるわ」

 

「ありがとう、杏子ちゃん、マミさん」

 

やはりマミさんや美樹さんの疑いを完全に晴らすには真犯人の黒い魔法少女を見つけるしかないか。

 

「それはこれから俺達が調べる。美樹さん鹿目さん二人は今日の事は忘れて普通の生活に戻ってくれ」

 

「ちょっと城戸!私達をのけ者にする気か!」

 

「二人が係わる必要はない、これは魔女と戦うオレと魔法少女の問題だ。いられても足手まといになるのがオチだ」

 

冷たい言い方だが心の弱い美樹さんと最悪の魔女になる鹿目さんの二人を巻き込むわけにはいかない。

 

鹿目さんと美樹さんにきつめに突き放さないとまた付いてきそうだ。

 

「なんだと!もういっぺん言ってみろ!」

 

「・・・そうだな、戦える城戸ならともかく魔法少女でもない二人にいられても迷惑だ」

 

「杏子まで!分かったじゃあ私も魔法少女になる!」

 

「本気で言ってるの!馬鹿な真似はやめなさい美樹さやか!」

 

「さっきも言ったがそんなことぜってえ許さねえからな!」

 

「じゃあ城戸が使ってるその赤い手甲を手に入れた場所を教えてよ。それがあれば私も戦える」

 

まだ諦めない美樹さん

 

ねばるな

 

「この力は産まれつきだから無理だ」

 

「ううう…」

 

美樹さんが悔しがってるとキュゥべえが美樹さんの近くに寄り。

 

《二人共魔法少女になりたいのかい?じゃあ願いご・・・》

 

契約をしようとしていたいきなりキュゥべえが爆発四散する!?

 

俺何もしてないぞ

 

暁美さんも驚いた顔してるし他のみんなも驚いている。

 

それに今の見覚えのある魔力弾ってまさか。

 

「あ、あそこに誰かいる」

 

鹿目さんが空に向かって指をさし皆がその方向を見ると

 

「魔法少女になろうなど考えない事だ。こうなりたくなければな」

 

建物の上に右人差し指をこちらに向ける白龍皇の鎧を纏った上条の姿があった。

 

「な、なんだあいつは!

 

美樹さん驚きの声と同時に杏子ちゃんが槍をマミさんがマスケット銃を即座に出して構える。

 

「テメェは白龍皇だったか!何の用だ!また一真を狙いにきたのか!」

 

上条は一年の頃に俺の前に白龍皇としては現れた後は一切現れる事はなく杏子ちゃん達も話題に出すことはなくなっていたがそれが現れた事で警戒のレベルが一気に跳ね上がった。

 

俺は学校で正体を知っているのでほぼ毎日会ってるが奴が何をするか分からないので鎧と兜を再度装着する。

 

「別に何もしない、今日は忠告に来ただけだ」

 

「よくもキュゥべえを!」

 

マミさんがマスケット銃を撃つが上条の障壁に防がれる。

 

「安心しろあの害獣はそう簡単にはくたばらん。すぐまた姿を現す」

 

「何を言ってるの現に今あなたが!」

 

マミさんが新しいマスケット銃を取り出して撃とうしたその時

 

《やれやれ、まさか他にもイレギュラーがいるなんて思わなかったよ。君たちは一体何者なんだい?》

 

肉片になったキュゥべえの上にもう一匹”キュゥべえ”が姿を現した。

 

「え?」

 

「嘘!」

 

「な、なんで!」

 

「お前さっき爆発したんじゃ!」

 

インキュベーターはバラバラにされても体の替えはいくらでもある事を知らないマミさん、鹿目さん、美樹さん、杏子ちゃんが驚きの声を上げる。

 

《代わりはいくらでもあるけど、無意味に潰されるのは困るんだよね。勿体ないじゃないか》

 

「代わりって・・・」

 

「そういう事だ巴マミ。そいつは身体を失くしてもすぐに新しいのが来る」

 

「だ、だからってこんなひどい事を!」

 

「ひどい事?ひどいのは無限に再生できる事を教えずに君達をましては一般人を危険な事に巻き込む事じゃないのか?」

 

「そ、それは・・・」

 

そうかインキュベーターが不死身だと教えたのは不死身の癖に助けを求める矛盾を見せて不信感を抱かせる為か・・・

 

自分が悪者になるのも顧みず美樹さんの為に・・・

 

俺と違いやっぱりすごいよお前は

 

「まあいい、今回はこれで失礼しよう」

 

そう言うと背中の白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)と広げる。

 

「え、何?」

 

白龍皇が美樹さんをチラリと見ると飛翔してその場を後にした。

 

「と、飛んでちゃった・・・」

 

呆然とする鹿目さん、暁美さん。

 

「一体誰?今着ている城戸一真の鎧に似てるけど」

 

「白龍皇アルビオン、俺の宿敵だ・・・」

 

さすがに正体が上条だと言うわけにもいかないのでそこだけ伏せて簡単に説明した。

 

「そうあなたとそんな因縁が。その因縁に私達を巻き込まないで欲しいんだけど」

 

「別に巻き込む気はないさ、アイツの狙いは俺一人で君達がちょっかいかけなければ向こうもなにもしない」

 

「なんでそんな事が分かるのかしら?」

 

「あいつは目的は俺だけだ。それ以外の事はしないからな」

 

上条の奴、美樹さんに魔法少女になって欲しくないから演奏会が終わってすぐに来たんだろうけどな・・・

 

「暁美さん、今は信じてくれと言わない、ただ話がしたいんだ聞いてほしい」

 

何度も繰り返した時間遡行の旅で誰にも信じてもらえず失敗の連続で人間不信に落ちいっているから彼女に隠し事や嘘は通用しない。

 

もし少しでも隠し事や嘘を付けば俺に対しての不信感を煽ってしまう。

 

だから信じてもらうには何も隠さずに俺の正体を明かして本音でぶつかるしかないと考えていた。

 

「・・・いいわ、あなたは私の事を信じてくれたし味方になるかどうかは別にしてさっきの白い鎧を着た人物についてもあなたの力にも興味があるし話だけでも聞いてあげる」

 

「・・・!ありがとう暁美さん!」

 

彼女の前向きな返答を聞いて笑顔になる。

 

話を聞いてもらえるなら一歩前進できる。

 

そう思っていた。

 

しかし・・・

 

この時の俺は暁美ほむらという人間の中に巣食う心の闇が思った以上に根深い事を知る由もなく

 

「佐倉杏子、一つ聞かせてなんであなたは彼の言葉を信じたの?私が敵だったら身の危険にさらされるのよ?」

 

「あ?そんなの一真を信じてるからに決まってるだろ?アイツはアタシが魔法少女になりたての頃から背中預けて一緒に戦ってる相棒なんだ。その一真がテメェを犯人じゃないって言ってるのに信じないでどうすんだよ」

 

杏子ちゃんと暁美さんが話すその後ろで

 

「相棒か・・・」

 

さらに・・・マミさんが哀しそうな顔をしたのに気づいてなかった・・・



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第21話 今日までの足跡

【一真サイド】

 

 

主の魔女がいなくなり崩壊した結界から脱出した俺達は反省会を兼ねて俺の家の部屋に移動していた。

 

魔女を倒した後は反省会を開くのがこうして日課になっている。

 

場所は俺の部屋か杏子ちゃんの部屋かマミさんの部屋。

 

今回の反省会は俺の部屋だ。

 

ただマミさんを連れてきたら母さんがニヤニヤしてるの嫌なんだよな。

 

あとなぜかマミさんのお母さんから気にいれられマミさんの家で反省会する度に歓迎される。

 

嬉しいけどなんでだろ。

 

もちろん魔法少女の事はマミさんのお母さんに話していない。

 

知ればどうなるか分からないからマミさんにも口止めしてもらっている。

 

もっともマミさんから心配かけたくないからと秘密にしてくれと言われているから知られる事はないと思うが。

 

おっと話を戻そう。

 

反省内容と言っても戦った魔女との戦いの反省と今後の戦い方と集めたグリーフシードの振り分けなどだ。

 

まあ、俺はグリーフーシードは使わないから集めたグリーフシードはマミさんと杏子ちゃんに渡している。

 

ただ今回は暁美さんへの赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の説明もあるけど。

 

魔法少女と違って服を変えられない俺はみんなを先に部屋に案内してさすがに女の子の前で汗くさいのは、嫌なので先にシャワーを浴びて来ると言ってシャワーを浴び私服に着替えて紅茶専門店【花鶏】で分けて貰った茶葉で紅茶を入れ由良さんから教わったケーキを出してみんなの待っている部屋に持って行く。

 

「みんなお待たせ」

 

「城戸君それって」

 

「紅茶とケーキ。甘い物があった方がいいと思って」

 

扉を開けてるとみんなが座って待っていた。

 

席順は左から杏子ちゃん、マミさん、対面にほむらちゃん、鹿目さん、美樹さんの順だ。

 

空いている杏子ちゃんとマミさんの間に座り紅茶とケーキを配る。

 

「「「「いただきます」」」

 

ふむ、今日のケーキは結構美味くできたな。

 

「うまっ!」

 

「おいしい!」

 

美樹さんと鹿目さんにも好評のようだ。

 

「一真、また腕上げたな」

 

「ええ、ケーキもだけど紅茶の淹れ方もさすがだわ」

 

反省会を俺の家でやる時はほぼいつも出しているから手作りだと知る杏子ちゃんとマミさん。

 

大変だけどみんなの喜ぶ笑顔を見る度に頑張った甲斐があったってものだ。

 

「「え!このケーキ城戸(君)が作ったの?」」

 

鹿目さんと美樹さんが驚きケーキを二度見する。

 

「うん、趣味の一つだけどね」

 

「いやいや趣味の範囲ってレベルじゃないでしょ、これ!」

 

そこまで褒められると思わなかったな。

 

頭をかきながら照れる。

 

ケーキの作り方と教えてくれた由良さんと紅茶の茶葉を分けてくれた秋山さんありがとうございます。

 

「まあ反省会の楽しみであるな。でもなんで人数分あるんだ?アタシらはともかくまどかとさやかと転校生が来るのは予想外だったろ?」

 

「ん?ああ、明日の杏子ちゃんのおやつの分も出しただけだよ」

 

杏子ちゃんが美味しそうに食べてくれるからつい作り過ぎちゃうんだよね。

 

母さんや父さんも喜んでくれるし両親の分は別に取ってあるから問題ない。

 

申し訳ないけど杏子ちゃんには我慢してもらおう。

 

「なあ!楽しみにしてた明日のケーキを!?」

 

当ての外れた杏子ちゃんが思わず立ち上が怒ろうとすると。

 

「ごめ・・「ずるいぞ杏子!こんなおいしいケーキを独り占めしようとしてたなんて!」

 

「う、うるさい!アタシのケーキ食べて文句言うな!」

 

楽しみにしていたケーキを食べてしまった鹿目さんが謝ろうとするのを美樹さんが遮り美樹さんが杏子ちゃんに文句を言って言い争いという名のじゃれあいが始まった。

 

杏子ちゃんが俺の家に同居しているのはここにいる暁美さん以外知っている。

 

あれは去年の今頃だったかな。

 

美樹さんと鹿目さんと志筑さんが突然杏子ちゃんの部屋を訪ねた時に帰宅した俺と鉢合わせてしまった。

 

特に美樹さんが「同棲だ…と・・・杏子どういう事!!」って騒いでたけど杏子ちゃんがはずかしかったのか真っ赤な顔して「居候だ!」と否定してたっけか。

 

あの時もこんな風にじゃれあってたな。

 

あれからもう一年経つのか。

 

「あのごめんね城戸君」

 

「大丈夫、杏子ちゃんにはまた別に用意するから気にしないで食べてね」

 

謝罪するが俺の言葉を聞いて安堵する鹿目さん。

 

気を使いすぎるくらい優しい子だ。

 

だからこそ友達が傷つくのが嫌で魔法少女になろうとするんだろうな。

 

「ふふ、仲いいわね」

 

「さやかちゃん・・・杏子ちゃん・・・」

 

マミさんが微笑みながら二人のじゃれあいを見てそんな二人に呆れる鹿目さん

 

あっちはあっちで楽しそうだな。

 

「暁美さん、ケーキと紅茶の味どうかな?」

 

「・・・おいしいわ」

 

そう言った後そっぽを向く暁美さん。

 

よかった暁美さんも喜んでくれてるみたいだ。

 

「その前になんで関係ないまどかと美樹さやかがこの場にいるのかしら?」

 

ケーキを食べ終えてお皿を載せたトレイを隅に置いていて反省会を始めようとすると魔法少女でない彼女達を巻き込みたくない暁美さんが静かに怒っていた。

 

「ご、ごめんほむらちゃん」

 

「そんな言い方ないだろ転校生!私やまどかは杏子達の事を心配で来てるのに事情を話してくれたっていいじゃないか」

 

確かに元をただせば杏子ちゃんと暁美さんが心配で巻き込まれてしまったからあまり強くは言えないな。

 

「別に来てくれなんて頼んでないわ」

 

「何だと!もういっぺん言ってみろ!」

 

怒る美樹さんに暁美さんも喧嘩腰で対応してるから空気が重い。

 

本当なら鹿目さんと美樹さんは家に帰したかったがどうしても付いていくと言って渋々了承するしかなかった。

 

暁美さんは帰ろうとしたけど俺の能力と秘密を教えると言ったら付いてきてくれた。

 

「コホンッ」

 

軽く咳払いして注目をこっちに向ける。

 

「ケンカするならよそでしてくれるかな?そろそろ説明と反省会したいんだけど?」

 

軽く睨んで注意する。

 

あんまり女の子相手にしたくなかったけどさらに暁美さんと美樹さんの間に溝が深まりそうだったからな。

 

さっきのじゃれあいと違って今回の暁美さんとの口ゲンカは美樹さんから掴み掛かりそうだから止めなくちゃならない。

 

「ご、ごめん城戸、私が悪かった」

 

「そ、そうね悪かったわ。説明してもらえるかしらあなたのあの力について」

 

暁美さん、自分を守る為に心に殻を被り人と距離を開けたい気持ちは分からなくもないが

 

不用意に敵を作るやり方は誤解を招き溝を広げるだけだからできれば止めてほしいな。

 

『例え裏切られても優しさだけは失わないでくれ』

 

夏休みの修行の最終日に送られたウルトラマンエースさんの言葉を思い出す。

 

本来の彼女は内気な性格ながらも優しい性格の女の子だった。

 

だが時間移動した体験やインキュベーターの企みを話しても信じてもらえないそんな状況に暁美さんは絶望し、一人で戦うことを決めその度に絶望を味わって人を信用できなくなっている。

 

その為にたった一人で鹿目さんを護る為に心に壁を作りマミさんや美樹さんに対して冷たい態度をとるようになってしまった。

 

でも俺は知っている。

 

最初に時間移動した時・・・

 

暁美さんがまだメガネを掛けていた頃、危なげながらも魔女を倒したが落ちそうになったがマミさんに助けられ鹿目さんと喜び合ったあの笑顔を。

 

だから・・・

 

だからこの時間軸で壁を叩き壊して仲を取り持ち彼女の孤独な旅を終わらせてやる。

 

ただこの様子じゃ前途多難って言葉じゃ言い表せないくらい大変そうだけど・・・。

 

「ご、ごめんそうだ城戸が付けてたあの赤い鎧何?そろそろ教えてよ。」

 

反省した暁美さんと美希さんの言葉にまどかちゃん達が俺に注目する。

 

「あれは赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)この神器(セイクリッド・ギア)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の切り札みたいなもんだよ」

 

左腕を赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に変えて暁美さん達に見せる。

 

二度目だが目の前で人間の腕が赤い金属の手甲に変わる様子を見て驚く鹿目さんと美樹さん。

 

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)?」

 

魔法少女の暁美さんは不思議な現象に耐性のあるのか表情に変化はないが他人に無関心な彼女も俺の能力に興味が湧いたのか根掘り葉掘りと興味津々で聞いてくるんだけど。

 

「間近で見るとやっぱり普通の腕じゃないんだな…」

 

興味深そうに美樹さんが触ってきて集中できない。

 

この子、好奇心旺盛すぎやしませんか。

 

あ、今一瞬だけ上条からの殺気を感じた気がする。

 

「さ、さやかちゃん城戸君に失礼だよ」

 

「ほらまどかも触ってみなよ、まるで金属みたいに硬いよ」

 

いやいや何、鹿目さんにまで進めてるの君は?

 

「う、うん、さ、触ってもいいかな?」

 

「…どうぞ」

 

そんな上目遣いで聞かれたら断れるわけないでしょうが。

 

興味があるのか恐る恐る触る鹿目さんと遠慮なしにベタベタ触る美樹さん。

 

『(一真…)』

 

「(ごめんね、ドライグもう少しだけ我慢して…)」

 

二人が十分に触った所で触るのを終わらせて元の人の左腕に戻して神器(セイクリッド・ギア)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の説明した。

 

「産まれた時から身に宿っていて数秒ごとに力を倍にしていくってそれチートじゃん」

 

「チートって言わないでくれる。この力をここまで使いこなすのは本当に大変だったんだから」

 

美樹さんにあらためて言われると確かにチートかもしれないが赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)をただ宿しただけじゃ強くなれないんだよ。

 

思い返せばここまで来た道は決して平坦じゃなかった。

 

転生したばかりの当初はまだ身体が幼なかった所為もあってか赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の力を使いこなす所か発動さえもできず自分の不甲斐なさに苛立ちを覚える日々が多かった。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の維持と倍加を発動した時に掛かる負担を耐えられる体とスタミナを作る為にいつも走り込みの時に付けている重りをさらに増やし、腕立てや腹筋やスクワットといった筋トレの回数を増やしたりと色々やった。

 

その所為で限界を超えて熱を出して倒れてしまうのは一度や二度所じゃなかった。

 

当時の年齢の子ではオーバーワークと言われるくらいの特訓をギリギリの所までこなす事でなんとか発動できる段階までできたがその間になんどか倒れそうになって両親に心配かけてしまったことは申し訳なかったと今でも思っている。

 

しかしそれで終わりというわけにはいかず発動できても今度はそれを維持する時間が短いという壁にぶつかってしまった。

 

ドライグ言わく『最低でも戦闘でない状態で丸三日間は維持ができないと話にもならないレベル』らしい

 

正直それを聞かされた時の努力してた分ショックはかなり大きかった。

 

それでもドライグに励まされ不貞腐れずにいられた事はドライグに感謝している。

 

一人では挫けて諦めてしまっていただろうから。

 

親のいない日の休日は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を常に発動して日常生活を過ごし体に掛かる負担を当たり前の状態にして慣れさせる訓練を続けた。

 

最初は維持できる時間が短く、疲労ですぐ解除してしまいながらも維持できる時間の記録が伸びたのが嬉しかったのを覚えている。

 

その努力が報われ小学生中に丸三日間の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の発動を維持ができるようになりこれにはドライグも驚いていた。

 

ドライグの目安では暁美さんの転校する一年前、つまり中一の頃だろうと思っていたからだそうだ。

 

ふふふ・・・あの時のドライグの驚きようは今でも忘れられないよ。

 

その後さらなる特訓と年齢を重ね体ができあがってきたおかげで三日間維持できるようになり杏子ちゃんと出会い、魔法少女になってしまった彼女と共に魔女と戦う日々

 

その日々の中でマミさんのお父さんを助けられなく挫折した事もあった・・・

 

それでも前を見て立ち上がり杏子ちゃんの家族と絆を護り通すことができた。

 

中学になると同じ転生者で赤龍帝の宿敵である白龍皇となった上条が現れ襲い掛かってきた。

 

その戦いの中、生死の境で禁手(バランス・ブレイカー)に至り互角の戦いを繰り広げていたが力の差で負けてしまい今までの努力が無駄になった気がして何も手が付けられないくらい落ち込んだ。

 

そんな落ち込んだ俺を見て杏子ちゃんやマミさんが気晴らしに一緒に遊びに行ったりと色々と励ましてくれたが立ち直れず、最終的にはドライグに『力で勝てないなら工夫と技で奴に勝て!今までもそうやって戦ってきただろう!』と叱咤されて

 

杏子ちゃん達に迷惑かけてしまった事を謝罪し、もう二度と負けたい為、夏休みにリュネの協力でウルトラ兄弟のみなさん厳しい特訓を付けてもらい強くなれた。

 

ここまでこれたのはみんなに支えられたから来れたんだ。

 

「最初から強かった訳じゃない支えてくれた人たちが居て努力してここまで強くなったんだ」

 

「そうだぞさやか!一真の努力を馬鹿にすんな!こいつはいつも毎日欠かさず鍛えてるんだ」

 

「ご、ごめん」

 

俺の剣幕に押され杏子ちゃんも加わって思わず頭を下げる美樹さん。

 

大人気ない気もするがこればかりは譲れない。

 

「あと遅くなったけど助けてくれてありがとう」

 

「無事でよかったよ。あ、怪我とかしていない?」

 

「え?うん大丈夫だよ」

 

「よかった美樹さんは女の子だから怪我して傷が残ったら大変だからね」

 

怪我なんかさせてたら俺が上条に殺される・・・

 

負けるつもりはないけど。

 

いざとなればリライブ光線があるけど怪我なんてしない事に越した事ないからな。

 

あれ?顔真っ赤にして俯いたけどどうしたの?

 

私には恭介がとかブツブツ言ってるけど?

 

「痛え!!」

 

スネに激痛が走り見ると睨みながら杏子が俺のスネを抓っていた。

 

「いきなり何するの!?」

 

「うるさい!無駄話してないでさっさと反省会しろ!」

 

なんで俺、スネを抓られたの?

 

「城戸一真・・・新しい火種にならなければいいけど」

 

火種ってそれどういう意味?

 

『・・・(いいのか相棒ここまで話して?あのくそ野郎(インキュベーター)もここでの会話をどこかで盗み聞きしてると思うが?)』

 

抓られた箇所を擦っているとドライグが俺にしか聞こえない声で話し掛けてくる。

 

「(いいんだよ、教えてるのは杏子ちゃんやマミさんが知ってる今までの戦いで見せた能力だけだし暁美さんにはあとで秘匿している情報を公開して彼女の信用を得て俺が敵じゃないって知ってもらうのが目的だから)」

 

インキュベーターに知られたらマズイ情報や能力は話していないから大丈夫だ。

 

「・・・・そう、あなたの事はだいたい分かったわ。」

 

とりあえず今は信用を得ることができたかな。

 

「じゃあ次は魔法少女について教えてあげるわ」

 

次はマミさんが自分のソウルジェムを見せながら魔法少女についての説明が始める。

 

どんな『願い』も一つ叶えその代償が魔法少女になって魔女と戦う。

 

魔法少女とは希望を振りまく者。相対する魔女は逆に絶望を振りまく存在。

 

そしてそんな魔法少女の魔法の源はソウルジェムで魔力を使用する度にソウルジェムの輝きが失われ穢れていき完全に穢れてしまうと魔法少女は魔法が使えなくなってしまう事。

 

穢れを取り除くには魔女を倒して魔女の持つグリーフシードを手に入れて穢れを移し続けなければならない事を話す。

 

話を聞いた二人は驚きの表情で口を開いたまま呆然としている。

 

そりゃ目の前で実際に見たとはいえこんなありえない現実離れした話を聞いたら誰だってそうなるよな。

 

「・・・・これで満足したでしょ?今日の事は直ぐ忘れなさい、そして家族や友人と平和に暮ら続けたければ私達に関わらない事ね」

 

暁美さんの方を見ると隠そうとしているが苛立ちと複雑そうな表情をしている。

 

無理もないか

 

マミさんが説明したのはすべて表向きの事でデメリットを含んだ魔法少女の二つの裏の秘密を一切知らない。

 

魔法少女の秘密とこれから起こる鹿目さんと美樹さんに振りかかる悲劇を知っている暁美ほむらにとってこのまどか達とインキュベータの出会いはなんとしても阻止したかった出来事だ。

 

だが運命の強制力は強大でまどか達が会った魔女とは別に出た魔女を放っておく事はできず

 

魔女自体は倒すことはできたがその所為でまどか達を危険な目に晒してしまった。

 

その事に俺も後悔している。

 

さて転生者であること以外の俺の秘密はすべて話した。

 

後は二人からどういう反応が返ってくるか・・・

 

「・・・そっか、杏子や城戸達は私達に黙って裏でそんな事してたのか」

 

今まで黙っていた美樹さんが口を開く。

 

その口調は少し怒っている。

 

「さやかちゃんそんな言い方」

 

「だってまどか、私達は友達なのに何も話してくれなかったんだよ」

 

心配してくれてたんだな。

 

なら怒られても仕方ない。

 

ただ事情が事情なだけに話すわけにいかなかったからな。

 

「さやか、悪かったな黙っていて」

 

「ごめん、友達だからって言いづらい事もあるよ・・・まして巻き込んで危ない目にあうならなおさらだ。美樹さんだって友達だからって言いづらい秘密があるんじゃないの?」

 

「う・・・」

 

美樹さんの顔が赤く染まる。

 

どこの両想いのバイオリン弾いている幼なじみを思い浮かべてるのやら。

 

「・・・分かった、まだ完全に納得できないけど黙ってたのを許す事にするよ。まどかは?」

 

「わ、私はただ城戸君がみんなの為の役に立つ事ができてすごいな思って」

 

「ありがとう二人共、今はそれでもいいよ」

 

でも鹿目さん違うんだ。

 

俺を正義の味方(ヒーロー)か何かと勘違いしてるようだけど

 

世界平和とか見知らぬみんな(・・・)の為に俺は戦ってるんじゃない。

 

本当の正義の味方(ヒーロー)は顔も名前も知らない人達の為に傷つきながらも見返りもなく命懸けで戦える人の事を言うんだ。

 

だけど俺は見知らぬみんな(・・・)の為に戦っているんじゃない。

 

だから俺は正義の味方(ヒーロー)じゃない。

 

杏子ちゃん、マミさん、暁美さん、そして美樹さんと鹿目さん。

 

俺の周りにいる大好きなみんな(・・・・・)が不幸になってほしくない自己満足から戦っているんだ。

 

その点だけは美樹さんの為に戦うと決めた上条と同類だな。

 

「あ!じゃあ前にマミさんと出かけてるのを見かけたのは魔女退治の為で二股じゃなかったんだ」

 

美樹さんが思い出したように手を叩く。

 

・・・ああ、そんな事もあったね

 

俺もすっかり忘れてたよ。

 

一年の夏から秋に変わる頃だったか。

 

俺とマミさんは、二人の魔女捜索の当番の時に偶然美樹さんに見られて次の日の学校で俺が杏子ちゃんとマミさんに二股しているというあらぬ疑いを掛けられた。

 

本当の事を言う訳にもいかずに小学生の頃から一緒に遊んでもらってるお姉さんみたいなものでそんな関係じゃないよって説明したけど。

 

そうしたらマミさんは落ち込むし美樹さんには怒られるし志筑さんには最低と言われた。

 

本当の事を説明しただけなのになんで俺が悪者になってるの?

 

事情を知る杏子ちゃんは俺を庇ってくれたけどその所為で美樹さんと言い争いになってしまい鹿目さんはそんな状況にオロオロしている。

 

許せないのはそんな修羅場を見て中沢が面白そうに笑ってやがる事だ。

 

中沢は物理的と精神的にあとで〆た。

 

おまけに上級生のかくれマミさんファンに襲撃されるし、女子からは汚物を見るような目で見られるし散々な目に遭い味方は事情を知るが話せない杏子ちゃんとマミさんと信じてくれたのは鹿目さんだけだった。

 

最終的にはマミさんが誤解を解いてくれておかげで疑いが晴れて志筑さんは謝ってくれたけど美樹さんだけは最後まで納得してくれなかったな・・・

 

あと美樹さんを魔法少女のマミさんと会せた事で軽く上条に文句を言われたが。

 

そもそも偶然だと対処しようがないし、人が魔女捜索をしている時に美樹さんとデートしてた奴に言われたくないわ!

 

・・・・思い出したらだんだんムカムカしてきたぞ。

 

あいつ転生前は確か二十代前半だった筈だよな・・・

 

歳の差を考えろよ・・・

 

いや転生して肉体自体は同い年になってるからいいのか?

 

しかしな・・・

 

うーむ・・・

 

「(城戸君がなんかブツブツ言い出したんだけど・・・)」

 

「(触れてはいけないものに触れたみたいね)」

 

「(さ、さやかちゃん城戸君なんか怒ってない?)」

 

「(あ、もしかして私地雷踏んじゃった?)」

 

「(おい、さやかどうすんだよ、なんとかしろよ)」

 

「(あ、あたしが!?)」

 

「(原因作ったのお前だろ!なんとかしろよ!)」

 

「よし!ね、ねえ城戸」

 

「何?」

 

美樹さんに呼ばれ思考の海から現実に戻り返事する。

 

「秘密を共有してみんな揃ってるし、いい機会だしいつまでも苗字じゃなくてわたしとまどかの事も杏子やマミさんみたいに名前で呼んでよ」

 

「は?」

 

いきなりなにを言いだすんだ、この子は?

 

「さ、さやかちゃん、いきなりなにを?」

 

ほら、突然の事に鹿目さんが顔を真っ赤にして驚いているし。

 

「えーいいじゃん、前から杏子やマミさんは名前なのに私らは苗字で壁作られてるみたいで嫌だったんだよ、でも城戸の秘密知っちゃたからいい機会だから私らも名前で呼んでもらおうかと思ってさ。という訳でいい?杏子?」

 

え?当事者の俺じゃなくて杏子ちゃんに聞くの?

 

「…なんでアタシに聞くんだよ?」

 

「いや~私らが城戸の名前を呼ぶと杏子がいい顔しないと思って」

 

「べ、別にアタシに聞かなくても好きに呼べばいいだろ!」

 

杏子ちゃんが顔を赤くして言い返す。

 

俺の意志は?

 

「あの~?マミさん、なんで俺の事を名前で呼ぶのに美樹さんは杏子ちゃんに訪ねて杏子ちゃんはあんなに怒ってるのでしょうか?」

 

「う~ん、一真君は体を鍛えるだけじゃなくて女の子の心も勉強したほうがいいと思うな」

 

隣いるマミさんに小声で話し掛けると同じくらいの小声で返された。

 

あれ?いつのまにかマミさんが俺を名前で呼んでいるし。

 

「よし杏子からOK貰った。とうわけで私とまどかはこれからは一真って名前で呼ぶからよろしく。私らも名前で呼んでいいからね」

 

「いやいや、名前で呼ぶのはいいけど、鹿目さんの許可もらってないよね」

 

手を左右に振って鹿目さんの方見ると先ほどの杏子ちゃんと同じくらい顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。

 

「まどかも恥ずかしがってないで友達なんだし一緒に名前で呼ばれようよ」

 

「え…えっと、その…」

 

「美樹さやか、まどかに余計な強要して困らせないで」

 

困る鹿目さんに暁美さんが割って入り助けようとするが

 

「なんだと!転校生!横から来て私達の邪魔しないでよ!」

 

「まどかが困っているのが分からないの?」

 

「私らは付き合い長いんだ!来たばかりのあんたとは違う!」

 

ちょっとまたケンカしないでよ!どんだけ仲悪いだこの二人・・・

 

「え…えっと、わ、私も城戸君の事を名前で呼んでいいかな?」

 

赤い顔してモジモジしながら鹿目さんが訪ねてくる。

 

「いいけど無理して呼ばなくてもいいんだよ、いつもみたいに苗字でも」

 

考えれば杏子ちゃんのように小さい頃から呼び慣れてるならともかく思春期真っ只中の子が異性の名前を呼ぶのは恥ずかしいものがあるよな。

 

思春期なんてかなり前に終わってたから忘れてたよ。

 

「ううん、私もみんなみたいに名前で呼びたいんだ。だ、だから改めてよろしくね、か、一真君」

 

頬を赤く染めて笑顔を見せる。

 

ここまで勇気出したんだ。

 

ここで答えられなきゃ男じゃないな。

 

「こちらこそよろしく、まどかさん(・・・)

 

俺も笑顔で答えまどかさんの顔がパッと笑顔になった。

 

「え?何これ?ちょっと一真、私も名前で呼べ!」

 

美樹さ・・・さやかさんが叫ぶ。

 

「さやか、そこは空気読んで静かにしろよ、アタシだってそれくらい分かるぞ」

 

「美樹さん、さすがにそれは…」

 

「美樹さやか、重ねて言うけどあなたはどこまで愚かなの?」

 

呆れ顔の杏子ちゃん、マミさん、暁美さん。

 

「ちょちょっと!なんで私が悪い事になってるの!一真!どういう事だ?」

 

「う、うん、さ、さやかさん(・・・)…と、とりあえず落ち着こう…ふっふふふ」

 

正直、契約して後から能力を身に付けた魔法少女と違い転生して産まれた時から備わった神器(セイクリッド・ギア)の事を話して二人からは化け物呼ばわりされるか怖がられて離れていってしまうかと心配したがそんな心配は杞憂に終わった事に思わず苦笑して笑い声をあげてしまう。

 

「ちょっといきなり何笑っての!」

 

「ごめんごめん、そうだ最後に一つだけ言っておく事があるんだ」

 

右人差し指を立て鹿目さん達の目を見ながらこう言う。

 

「さっき話した赤龍帝の力と魔法少女の事と魔女と戦っている事は…クラスのみんなにはナイショだよ」

 

暁美さんが驚いた顔して俺の話は終わった。



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第22話 許されない契約

~~まどかサイド~~

 

 

昼休みの屋上でフェンスに背を預けて左隣に座るさやかちゃんと二人でお昼ご飯を食べた後、昨日あった出来事を話し合っていた。

 

話を聞いて一日立ったけどまだ実感が湧ないな。

 

杏子ちゃんとマミさんが実は魔法少女で城戸く・・・ううん一真君が赤い鎧を着てみんなに秘密で悪い魔女や使い魔と戦っているなんて。

 

「ねぇ願いごと考えた?」

 

誰の役にも立てない私と大違いだ・・・

 

「まどか?おーいまどか!」

 

「え?何さやかちゃん」

 

「何ボーッとしてるのさ?願いごと決まった?」

 

「う、ううん、さやかちゃんは?」

 

いけないさやかちゃんの話聞いてなかった。

 

やっぱり駄目だな私・・・

 

「あたしも全然だわ。願いごとなんていくらでも思いつくと思ったんだけど命懸けてまで叶えたい願いと言われるとね・・・」

 

《意外だなあ大抵の子は、二つ返事なんだけど》

 

右隣にいるキュゥべえが座って無表情で首を傾げている。

 

キュゥべえは魔法少女や魔法少女の素質のある子、一真君のようなイレギュラー的な力を持った人間にしか見えないし声も聞こえないそうだ。

 

だからこうやって人前に堂々と現れても大丈夫らしい。

 

「きっとバカなんだよ」

 

「そ、そうかな」

 

バカって…どうしたんだろいきなり?

 

「そう幸せバカ」

 

幸せバカか・・・・

 

そう言われると心辺りがある。

 

「私達ってさ恵まれてたんだね、だから命を懸ける願いもない。マミさんや杏子の話を聞いて思ったんだ。なんであたし達なのかなって・・・命に代えても叶えたい願いがある人って世の中にたくさんいる筈なのに・・・なんか不公平って思ってさ」

 

そうだよね、

 

そうかもしれない・・・

 

私には帰る家もあるし温かく迎えてくれるママとパパがいて弟のタツヤがいてなんの不自由もない生活を送っている。

 

だから命を懸ける願いがないのかもしれない。

 

「だったら断りな。そんな中途半端な覚悟で魔法少女になられたらこっちが迷惑だ」

 

「杏子ちゃん」

 

「杏子」

 

いつのまにか杏子ちゃんが私達の前に立っていて見下ろしていた。

 

「じゃまだ、どけよ」

 

キュゥべえを足で押しのけてお弁当を持った杏子ちゃんが来て私の右隣に座る。

 

私達の魔法少女の契約に反対している杏子ちゃんはキュゥべえを嫌っている。

 

気持ちは分かるけど仲良くできないのかな。

 

「あれ?一真は?一緒じゃないの?」

 

「知らねえ、何時の間にかいなくなってて探してたらおかげで昼飯食いそびれかける所だった」」

 

お弁当のおかずを口に入れながら杏子ちゃんが答える。

 

一真君が見つからなくて少し怒ってるみたい。

 

「その杏子、なんていうか・・・」

 

言いにくそうなさやかちゃん。

 

私も同じだ、杏子ちゃんになんて言ったらいいんだろう。

 

「別に同情されたくて話たんじゃねえ。アタシが自分で選んだ道だし親父の事も整理がついてる」

 

私達は杏子ちゃんから魔法少女になったいきさつとお父さんの事を教えてもらった。

 

あの明るい杏子ちゃんにそんな過去があったなんて。

 

「私は昼飯を食べに来たついでにさやかとまどかに魔法少女にならないようクギを刺しに来たんだがアンタもその口かい?【転校生】」

 

「あんた・・・!」

 

「ほむらちゃん!」

 

杏子ちゃんの顔を上げた目線の先にはいつのまにか屋上に上がっていたほむらちゃんがこっちを見ていた。

 

「何?なんの用だよ?言っておくが一真は信じてるみたいだけど私の中であんたが魔法少女を襲っている黒い魔法少女の疑いはまだ完全に晴れた訳じゃないんだからね、それとも昨日の続きか?」

 

さやかちゃん・・・まだほむらちゃんを疑ってるんだ・・・

 

「・・・いいえ、そのつもりはないわ。」

 

ほむらちゃんが私達に見せない冷たい目でキュゥべえを睨む。

 

「そいつがまどかと接触する前に決着(ケリ)をつけたかったけれど…今更それも手遅れだし」

 

どうしてそこまでしてキュゥべえを襲おうと狙っているの?

 

ただグリーフシードっていうのを独り占めしたいってだけじゃないみたい。

 

他にも理由があるような気がする。

 

「昨日の話覚えてる?」

 

「え?う、うん」

 

昨日の話、変わらずそのままのあなたでいなさいって話だ。

 

もしかしてほむらちゃんは私に魔法少女の素質があるのを知っていていたのかな。

 

「そう・・・なら忘れないで、そいつの甘言に耳を貸して後悔することがないように。私の忠告が無駄にならない事を祈ってるわ」

 

「あ・・・待ってほむらちゃん!」

 

帰ろうとするほむらちゃんに思わず声を掛けて呼び止めてしまう。

 

どうして会ったばかりの私をそんなにも心配してくれるんだろ。

 

やっぱり私が忘れてるだけでどこかで会った事あるのかな

 

「ほ…ほむらちゃん!その…ど、どんな願い事をして魔法少女になったの?」

 

「っ!?」

 

そう聞くとほむらちゃんは驚き辛そうに表情を歪めて走って立ち去っていった。

 

「何アイツ?」

 

「気にすんなよまどか、中途半端な願いで魔法少女になっちまったらいつか後悔する時がどこかであるもんなんだ。あいつもそうなんだろう」

 

「う、うん」

 

杏子ちゃんはそう言ってくれたけど私はなぜか悪い事を聞いた気がしてなぜか胸が痛み、ほむらちゃんのあの泣きそうな表情が頭から離れる事ができなかった。

 

「そういやおまえら今日の放課後のマミさんが言ってた今日の″アレ゛ほんとに参加すんのか?」

 

「もちろん行くよ、まだどうするか決めてないけどこんな体験めったにできないからさ」」

 

「ごめんね杏子ちゃん、せっかくマミさんが誘ってくれたから・・・ほむらちゃんは心配してくれたけどこんな私に魔法少女の素質があって一真君達や誰かの為に役に立てれるならがんばってみたいんだ」

 

そう今日は私とさやかちゃんはある事で放課後マミさんに誘われている。

 

「・・・はああぁぁ~来るなって言っても行くつもりなんだろ?目をつむって許すのは今回だけだからな」

 

杏子ちゃんは呆れてため息を吐いている。

 

許してくれたけどやっぱり杏子ちゃんもほむらちゃんと同じで私達が魔法少女関連に係わるのは反対なんだね。

 

 

 

 

【一真サイド】

 

まどかさん達が屋上にいる同時刻

 

俺は上条に人払いの結界を張り巡らされた校舎裏に呼び出されて反省会であった事をすべて包み隠さずにすべて打ち明けていた。

 

あまり言いたくなかったが仕方ない事だ。

 

『勘の鋭い奴だ。隠していてもすぐバレる』

 

ならここで打ち明けておいた方が相手の出方が見れるとドライグと話し合って決めた。

 

さて話を聞いた上条がどう出るか。

 

うわぁ・・・

 

話を聞いて案の定、目の前に見るからに機嫌の悪い表情と態度の白龍皇こと同じ転生者の上条恭介。

 

あ~帰りたい・・・

 

「とりあえずこれが反省会であった事の出来事だ」

 

「そうか、まあ名前に関してはさやかから言い出したみたいだし僕は何も言わない・・・で?なにがどうしたらそこからああいう事になったんだい?」

 

噓つきめ・・・うまく隠そうとしてるけど悔しそうな顔してるじゃないか。

 

まあ今はそれを冷やかしてる場合じゃないな。

 

「色々あったんだよ・・・」

 

「その色々を聞いてるんだ!さやかがインキュベーターと接触してしまった事は僕にも落ち度があったから文句は言えない。けどなぜだ?なぜあの魔法少女体験コースなんてふざけたイベントにさやかが参加する事になってしまったんだ!インキュベーターを目の前で粉々にして警告したのに!」

 

怒鳴るなよ、俺だってそう思ってるんだから。

 

ほんとなんでこうなっちゃうんだろうな・・・

 

 

 

 

理由は遡る事昨日の反省会の時だ。

 

「杏子ちゃん、マミさん今後の放課後の魔女捜索は常に三人で行動する事にしよう」

 

俺の神器(セイクリッド・ギア)の説明が終わり今後の方針としては黒い魔法少女の件でいつマミさんや杏子ちゃん、暁美さんが襲われるか分からないので単独行動を控えできるだけ一緒に行動するようにお願いして魔女退治の方は魔法少女襲撃犯を見つけて事件が解決するまで三人一組(スリーマンセル)で行動をしようと提案した。

 

「分かった」

 

「・・・・分かったわ」

 

杏子ちゃんすぐ納得してくれたがマミさんはなぜか返事を渋り辛い顔になった。

 

「暁美さん、君も俺達と一緒に戦ってくれないか?」

 

暁美さんも誘ったがなれ合うつもりはないと断られた。

 

まあ時間停止を使えるし、魔法少女としてもかなりの実力者だから万が一黒い魔法少女に遭遇しても大丈夫だと思うけど。

 

「・・・鹿目さんと美樹さん、あなた達はキュゥべぇの声が聞こえたんでしょう?」

 

事の始まりは説明と反省会終了後みんなでゲームで遊んでたらマミさんの唐突な一言だった。

 

「は、はい…聞こえましたけど……」

 

「わ、私も・・・最初はに何が何だか分からなかったけど」

 

「……いずれ分かる事だろうから今、ここで言っておくわ」

 

「鹿目さんと美樹さんには魔法少女になるだけの資質がある」

 

「わ、私達が…魔法少女に……?」

 

いきなり魔法少女の素質があるって言われて驚くよね。

 

歓迎されない素質だけど・・・・

 

「余計に悩んじゃった?」

 

困った顔の二人を見て次にマミさんはとんでもない事言い出した。

 

「ねえそれなら二人とも私達の魔女退治を見学してみない?」

 

「ええっ!!」

 

マミさん当然何を言い出すんだ!

 

そう原作と同じようにまどかさんとさやかさんを魔法少女に勧誘し始めたのだ。

 

原作では魔法少女として戦う孤独感に耐えきれずまどかさんとさやかさんを魔法少女に誘っていたのだがこの時間軸では男性だが一緒に戦える俺と自分の願いの所為で家族を失い魔法少女としての方向性が変わり仲違い(なかたがい)してしまった杏子ちゃんがいて一緒に戦っているからもうまどかさん達を魔法少女に誘わないと思っていたんだけど。

 

「冗談じゃねえ!部活や遊びじゃないんだぞ!」

 

「何を考えてるの巴マミ、あなた…自分が何を言っているか分かっているの?」

 

これに杏子ちゃんと暁美さんが激怒して大反対。

 

そりゃそうだ。

 

杏子ちゃんは戦いの厳しさと魔法少女になった所為でお父さんに罵倒される辛い現実に直面した、暁美さんも何度失敗してくじけず時間遡行を繰り返してまどかさんの契約を防ごうとしているのに。

 

「でもこういうのって一度ちゃんと見てから決めた方がいいと思うの」

 

「アタシらがいるんだからさやか達まで契約させる必要ねえだろ!」

 

「私はこの子達が自分で決断できるように手伝うだけ、ただそれだけよ?」

 

「あなたは危険な命懸けの戦いに…ただの一般人を巻き込むというの?」

 

「キュゥべえに選ばれた時点ですでにただの一般人とは言い切れないわ」

 

いや選ばれたから一般人じゃないってそれおかしくない?

 

今はただ白い生物が見えるだけのそれ以外はどこにでもいる普通の女子中学生なんだから。

 

「巴マミあなたはどこまで……」

 

「一真!お前も黙ってないで何か言えよ!」

 

そうだね俺も疑問に思っている事と思っている事をぶつけてみるか。

 

「マミさんはっきり言って俺も杏子ちゃんや暁美さんと同意見で二人を魔法少女に誘う事は反対だ」

 

「城戸君まで!どうして?仲間が増える事は素晴らしい事じゃない」

 

「確かに仲間が増える事はいい事かもしれない、でもそれが命懸けの魔法少女なら話は別だ。杏子ちゃんも言ってたけど戦いは死と隣り合わせの危険な事なのにそれをこちらが強要する必要ない。それに今は魔法少女を襲っている黒い魔法少女の事件や白龍皇の警告もある、鹿目さん達が魔法少女になれば白龍皇達に襲われる危険性があるんだ。マミさんはまどかさん達を危険な目に遭わせたいの?」

 

「白龍皇ってあの白い鎧を着てた・・・」

 

「あいつが私達に・・・」

 

白龍皇の名前が出た瞬間、脅しが効いていたのかまどかさんとさやかさんが青ざめて震える。

 

魔力弾でキュゥべえが目の前でバラバラになったこと思い出しいるんだろう。

 

もし魔法少女になったら自分たちも同じようにバラバラにされるかもしれないと。

 

その恐怖で魔法少女になろうとする事にを歯止めをかけているようだ。

 

自分が悪者になるのも顧みず美樹さんの為に上条は動いた。

 

荒療治とはいえ大した役者だよ、ほんとに。

 

まあ白龍皇の正体はさやかさんを護ろうとしている上条だし、さやかさんも原作では上条の腕を治す為に魔法少女になったけど上条自体は転生者の特典で得た白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の力で交通事故から無傷で生還しバイオリンを弾く左手もなんともなってないから魔法少女になる可能性は楽観視できないが少ない筈だ。

 

ただ問題はまどかさんだ。

 

俺達が危険な事をしていると知った今、優しい彼女の事だ。

 

誘われれば自分も魔法少女になると言い出すだろう

 

原作でそうだったからな。

 

かといって魔法少女の秘密を話すわけにもいかない。

 

話せば杏子ちゃんやマミさん、暁美さんの見る目が同情的な目に変わり無意識に遠慮がちになってしまう。

 

そうしたらなにがあったかとまどかさんを攻めて耐えきれなくなったまどかさんが話してしまい真実を知ってしまったマミさんが錯乱して自分を含めた魔法少女を殺してしまう。

 

それだけは何としても防がないと。

 

結局の所はマミさんに魔法少女の勧誘を諦めてもらうしかないって事か。

 

はあ、頭痛い・・・どう説得すれば分かってもらえるのだろう・・・

 

「確かにそうね、でも経験は私達が教えて積ませればいいし白龍皇や黒い魔法少女は私達が二人を護ればいい。それでいいじゃない城戸君だって強くなってるんだから決して白龍皇にも負けはしないと思うの」

 

そういう事言ってるんじゃないんだよマミさん・・・

 

「いい加減にしろよマミさん、魔法少女って人とは違う力を得ただけで周りの人間から怖がられて避けられる存在になっちまうんだぞ!」

 

「どう言う事?」

 

杏子ちゃんの言葉にマミさんの驚きの表情が変わる。

 

「誰かを助けるのに戦っても助けた奴から化け物扱いされるって事もあるんだよ」

 

「そんな事ないわ。私達は絶望を撒き散らす魔女と戦ってるのよ。みんな話せば分かってくれる」

 

魔法少女はみんなの為に希望を振りまく存在と信じ切ってるマミさんが言い返し杏子ちゃんは一瞬だけ辛い顔をしてポツリと話す。

 

「・・・昔、親父に魔法少女だと知られて普段優しい親父からお前は魔女だとか悪魔だと怒鳴り散らされたんだよ」

 

「え?」

 

魔法少女は人を護り感謝されると思っているマミさんとまどかさんとさやかさんが驚きの声を上げる

 

まさか話すつもりなのか!?

 

「それだけ魔法少女になるってんのは覚悟が居るんだ。知られたら肉親ですら変貌するんだから」

 

「杏子ちゃん、それは!」

 

説得の為とは言え思い出したくない事態々言わなくても。

 

それに杏子ちゃんのお父さんもあの時の事は後悔してるんだ。

 

「いいんだ親父の事はちゃんと分かってるし、それにどうせいつか話すつもりだったから・・・」

 

寂しそうに話す杏子ちゃん

 

辛いなら無理しないでくれ。

 

「そ、そんな…」

 

マミさんショック受けてるな…

 

「そ、それで杏子。その後お父さんとの関係は・・・?」

 

「あん?今は親父も分かってくれたし家族とは親父の仕事の都合で別々に暮らしてるけどちゃんと月に何回か連絡取り合ってるから大丈夫だぞ」

 

「え!?」

 

本来の時間軸なら父親が杏子ちゃんを除く家族を巻き込んで教会に火を放ち一家心中のなる事を知っている暁美さんが驚いた声を上げる。

 

「なんだよその『え!?』って!まあもっともアタシが今でもこうして家族と仲良くしていられんのは一真のおかげなんだけどさ」

 

「一真君が?」

 

鹿目さんが小首をかしげて続きを聞こうとする

 

ちょっと待って杏子ちゃん。

 

お願いだからそれ以上は言わないで。

 

「ああ、アタシが魔女だって言われてショックを受けてた時に一真の奴が飛び込んできて親父と殴り合って説得してくれたんだ」

 

嬉しそうに笑顔で話してみんなの冷たい視線が俺に集まる。

 

やめてよ杏子ちゃん。あの時いくら自分の信者が魔法で操られて集められていたという真実を知りショックで情緒不安定になっていたとはいえ杏子ちゃんのお父さんの娘に対する扱いがひどく許せなかったから頭に血がのぼって殴り合いした事はさすがにやりすぎだったと結構気にして反省したんだから。

 

「一真、あんたって・・・」

 

「一真君、暴力はよくないよ」

 

「一真君、さすがにそれはちょっと・・・」

 

「城戸一真、ナイス」

 

はいそうですね返す言葉もありません。

 

だから美樹さん、鹿目さん、マミさんそんな目で見ないで自分でもやりすぎたって分かってるよ。

 

あと暁美さん、佐倉家の悲劇を回避できて嬉しいのは分かるけどできればサムズアップもやめてほしいな。

 

「おい!一真を攻めんなよ!一真が居なかったらアタシら家族の仲は崩壊してたかもしれないし、親父もあの時一真君が殴って止めてくれて本当によかったって言ってたんだ。でなければどうにかなっていたかもしれないって!親父は一真に感謝してたんだからな!」

 

三人の非難めいた視線を見て杏子ちゃんが怒る。

 

そう言ってくれて嬉しいけど暴力はいけないのでもう少しうまいやり方がなかったのかと反省してるんです。

 

杏子ちゃんのお父さん、その言葉だけで少しだけ心が軽くなりました。

 

「「「ご、ごめんなさい城戸君」」」

 

俺と杏子ちゃんに頭を下げる。

 

「いや気にしないで、俺もやりすぎたって反省してるから」

 

「話が脱線しちまったな。つまりだ魔法少女になるってんのは家族や友達なんかに化け物扱いされるかもしんねえって事があるんだよ」

 

スナック菓子を一つ食べる杏子ちゃんの話を聞いて黙り込む鹿目さんと美樹さん。

 

「・・・ねえ?一真、一真はなんで戦うの?」

 

「さやかちゃん!?」

 

「だって一真は魔法少女じゃないんでしょ?だったら戦う必要なんてないじゃん?」

 

「おい!」

 

怒る杏子ちゃんを片手で制す。

 

確かに俺は魔法少女と違ってグリーフシードを使わないから他人から見たら戦う理由がないと思うかもしれない。

 

「俺の戦う理由か・・・自分の中のこの力(神器)を知って最初は幼なじみが無茶しようとしてたを助けたかったからだけど今は家族や友人を護りたいから戦い続けるって決めたからだよ」

 

それを聞いてなにか考え込む暁美さん。

 

自分も鹿目さんの為に時間軸を遡って戦っているからなにか思う所があるのだろうか?

 

 

 

「それで巴マミを説得しようとしたが失敗に終わり、話は平行線を辿り結局最後は同伴を条件に一度だけ魔法少女体験ツアーを許して今日の放課後に行く事になったと?」

 

「ああ・・・その通りだ」

 

時間は現代に戻り話を聞いた上条が反省会の内容の確認を取ってくる

 

その後、どんなに危険な事だと説明してもマミさんは折れずに俺と杏子ちゃんが一緒に付いて行くのを条件に一度だけ魔法少女体験ツアーを許してしまう事になってしまった。

 

この不甲斐ない結果に暁美さんも怒りと呆れで帰ってしまう。

 

ただマミさんの説得にはまた来ると言っていたが。

 

できればまどかさん達が魔女との戦いを見て怖くなって諦めたらいいのだが・・・

 

「・・・やはり巴マミは早めに始末しておくべきだったか」

 

ビクッ!?

 

上条の身体から静かな怒りと白いオーラを感じる。

 

まさかこいつここ(学校)でマミさんの命を!

 

即座に籠手を出して臨戦態勢をとる。

 

最近は忘れがちだったが基本的にこいつと行動理念が相反する敵同士なんだ。

 

「なんのつもりだ?巴マミの説得に失敗した君に僕を止める権利はない」

 

さらに強大なオーラを放出して今にも人払いに張ってある結界軋み崩壊しそうだ。

 

学校で戦う気か!言葉を慎重に選ばないと本当に戦う事になるぞ!

 

「待ってくれまだ説得には完全に失敗したと決まったわけじゃない。それにさやかさんも魔法少女になってない俺にもう少し説得する時間をくれ、頼む」

 

マミさんの命もそうだけど今の二天龍同士がいまここで本気で戦ったらそれこそ学校はもちろん見滝原市が廃墟になってしまう。

 

しばし俺と上条は睨みあったあと。

 

「いいだろうそこまで言うなら待ってやる。期限はお菓子の魔女シャルロッテ・・・原作のアニメで巴マミの頭を喰い潰した魔女が生まれるまでだ。もしそれまでに巴マミの説得ができていなく巴マミがさやか達の魔法少女の勧誘を諦めてなければ俺は容赦なく巴マミをこの手で殺す!」

 

俺か・・・

 

普段一人称が僕の上条が前世の頃の俺に戻っている。

 

つまり本気だという事か・・・・

 

「分かったそれまでに必ず説得する。あと最後にこれだけは言っておく!美樹さんを魔法少女にさせない事は俺も賛成だ。けどその為にマミさんに危害を加えるというなら俺は全力でお前の前に立ち塞がる」」

 

「・・・お互い良い答えになる事を待っているよ」

 

あと一つ確かめておかないといけない事がある。

 

暁美さんの濡れ衣を晴らす為に。

 

「あ、そうだお前、魔法少女を襲う黒い魔法少女って知らないか?」

 

「いや、知らないし聞いたこともないよ」

 

そう言って上条は人払い用の結界を解いて校舎に戻って行った。

 

やけにあっさりしているな。

 

原作にない不測の事態が起きたら普通詳しく聞いてくると思ったが。

 

単にさやかさん関連じゃないから興味ないだけなのか?

 

それとも・・・何か隠しているのか。

 

・・・今は目の前の問題に集中しよう。

 

マミさん一人だとお菓子の魔女には勝てない。

 

かといって見捨てる事もできない。

 

こうして魔女との戦いと共にお菓子の魔女が孵化する前にマミさんの説得しなければならないという戦いが始まってしまった。

 

俺はどうにかしてマミさんが魔法少女勧誘を諦めてくれるか授業中もずっと考えていたがいい策がなにも思い浮かばないまま放課後になり。

 

魔法少女体験コースの時間が来てしまった。




祝!お気に入り登録数五十人突破に感謝感激です。
これからもどうかこの作品をよろしくお願いします。


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第23話 魔法少女体験コース

最近、投稿した後に発覚する誤字脱字が多いからチェックは厳しくしないと。


【一真サイド】

 

 

 

放課後、俺とマミさんと杏子ちゃん、そして見学者のまどかさんとさやかさんはカフェテラスに集まっていた。

 

「それじゃあ魔法少女体験コース第一弾。張り切って行ってみましょうか」

 

「おー!」

 

「「「お、お・・・」

 

張り切るマミさんとさやかさんとそのテンションに付いていけない杏子ちゃんとまどかさん。

 

そしてまどかさんの膝の上には魔法少女の素質がある子以外から見えないのをいい事に朝の登校からまどかさん達についてきたキュゥべえがいる。

 

まどかさんとさやかさんが魔法少女になる気になったら即契約する為らしい。

 

魔法少女とソウルジェムの秘密を知らなければその営業っぷりは元ブラック企業に務めていた俺から見れば称賛に値するかもしれないが秘密を知った以上絶対にやらせねえよ。

 

「お前、顔色悪いけど大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ちょっと色々あって疲れてるだけだから今日の魔女捜索に支障はないから平気だよ」

 

杏子ちゃんが心配そうに声を掛けてきてくれるがなにがあったか言えるわけがない。

 

なにしろ授業中に普通の人間に見えないキュゥべえが教室をウロウロしやがって上条がいつブチ切れて文字通り教室を爆発させないか冷や冷やしてたなんて・・・。

 

白龍皇の力を宿している上条はキュゥべえの姿が見えるし声も聞こえる。

 

だがさやかさん達の前では他のクラスメイト同様見えないフリしないといけないので怒りを抑え込んでいた。

 

時々右腕を左手で掴みながら・・・。

 

あれってキュゥべえに魔力弾をぶっ放そうとして左手で押さえ我慢してたんだろうな。

 

そして昼休みに上条に呼び出されお菓子の魔女が出現する前にマミさんがさやかさんの魔法少女への勧誘をやめないとマミさんの命が狙うと警告された・・・。

 

上条は本気だ。

 

説得できないと上条は本気でマミさんを手にかける。

 

確かこれまでの戦いで鍛えられベテランの域に達したマミさんは強い。

 

彼女の強みはマスケット銃だけじゃなくリボンを使った応用力と戦闘センスが極めて高く、特に判断力と対応力の高さは俺以上で魔女との戦いにも何度も助けられたし、また俺と模擬戦を何回かやって力押しができれば勝てるけど俺の動きを分析され読まれてリボンを使った絡み手された時はこっちが負けてしまうほど強くなった。

 

でもそれはあくまでも模擬戦での話で実戦というなら話は別だ。

 

なぜなら実戦は模擬戦と違って相手の命を奪う。

 

並の魔女なら倒せるかもしれないが白龍皇の強さは魔女とは次元が違いすぎる。

 

しかも上条は原作の知識から魔法少女の弱点であるソウルジェムがマミさんの髪飾りだと知っている。

 

もし戦えば確実にそこを狙うだろうし。

 

マミさんはソウルジェムが魔法少女の魂だと知らないから髪飾りを狙われたらどうしようもない。

 

けど当事者のマミさんは聞く耳を持たずに新しい仲間が増えそうな事に浮かれきってしまっているんだよな・・・

 

白龍皇に命が狙われているとマミさんに話せばいいかもしれないがそれを話せば『どうして美樹さん達が魔法少女になったら私の命を狙われなくちゃならないの?』と指摘され白龍皇の正体を明かさなければならない。

 

そうなれば上条と結んだ密約を破る事になりどっちみちマミさんは口封じに上条に消され杏子ちゃん、まどかさん、暁美さんまで危害が及んでしまう。

 

まどかさんが狙われるかもしれないのは現時点でまどかさんは魔法少女ではないがみんながいなくなったら優しい彼女は家族や友人を護る為に魔法少女になると言うかもしれない。

 

そうなればまどかさんはみんながいなくなった真実を知った時に絶望しソウルジェムが濁りきって世界を滅ぼす最悪の魔女となり、上条はさやかさんに危害が及ぶと判断し魔女化する前にまどかさんも消す。

 

結局マミさんやみんなを護るには魔法少女の勧誘をやめさせてお菓子の魔女と戦う前に俺か杏子ちゃん、もしくは暁美さんがお菓子の魔女を叩くしか道はない。

 

でも楽しそうに魔法少女の説明をまどかさん達にしている今のマミさんを見ると説得は難しそうだな・・・・。

 

「それじゃあ魔法少女体験コース第一弾始めたいのだけど・・・」

 

マミさんが言いにそうにしながら視線を横に向ける。

 

その原因は俺の横の席に座っている・・・。

 

「杏子いいかげんそろそろ機嫌を直しなよ」

 

「・・・別に怒ってねえよ」

 

さやかさんが止める先にはほとんどヤケ食い状態でケーキを食べている杏子ちゃん。

 

魔法少女が増え戦力増加という理屈では理解できてるけど二人を危険な戦いに巻き込みたくないという気持ちで納得いかないようだ。

 

気持ちは分かるよ。どう考えても人を襲う魔女のいる結界に一般人を連れて行くなんて許されない。

 

俺だってまどかさんとさやかさんを巻き込みたくない。

 

二人には魔女とか魔法少女とか命懸けじゃない普通の生活をして欲しい。

 

俺達が行く所は遊び場じゃなく命懸けの戦い。

 

なのにマミさんは二人を連れてきた。

 

その態度が許せなくて頭では分かってるけど気持ちが整理つかないから苛立ってるようだ。

 

おかげで注文を取りに来たウェイトレスさん、機嫌の悪い杏子ちゃんに少し怯えていたな。

 

注文したケーキと紅茶を置いてすぐ逃げるように離れて行ったし・・・。

 

ごめんなさい名前も知らないウェイトレスさん。

 

なにもできませんがせめて売り上げに貢献します。

 

俺のなけなしのこづかいを生贄にして・・・。

 

「それじゃあ気を取り直して準備はいい?」

 

「うむ、どんと来い!」

 

張り切るさやかさんが布を巻いた何かを取り出す。

 

なんだあれ?

 

「さっき体育館から拝借して来た」

 

さやかさんが巻いてた布を取り外すと野球で使うバットが出てきた。

 

バットか、ありきたりだけど悪くない選択だな。

 

でも学校の備品だから後で元の場所に返しておくんだよ。

 

「うん・・・まあ意気込みはいいわね・・・」

 

マミさんもこれには予想外だったらしく困った顔している。

 

「まあ素手よりいいんじゃねえか?」

 

相変わらずケーキを食べ続ける杏子ちゃん

 

それ以上食べるとに太・・・!?

 

杏子ちゃんから物凄い殺気を込められて睨まれた・・・

 

・・・そっとしておこう。

 

「まどかは何か準備してきた?」

 

「え!」

 

慌てふためきながらカバンから一冊のノートを取り出しして見開いて俺達に見せてくれた

 

「え、ええっと私は・・・こんなの考えてみた!」

 

ノートにはフリフリの魔法少女の衣装を着たまどかさんと武器の弓が描かれていた。

 

・・・うんでも、想像する事はいい事だ。

 

でもまさかこれから危険な魔女の結界に入るのに武器じゃなくて衣装から決めるなんてまどかさんは形から入るタイプだったのか。

 

「「ブッ・・・」」

 

「うぐっ!?」

 

拭き出すマミさんとさやかさん。

 

笑っちゃダメだよ。

 

「さー!準備も整ったし行くか!」

 

「そうね!行きましょう!」

 

「ひ、ひどいよ!マミさんまで!」

 

よく描けていてうまいけどこれはフォローのしようがないな。

 

あれ?杏子ちゃんやけに静かだな。

 

文句の一つでも言うんじゃないかと思ったがどうしたの?

 

「うぐうぐぐ!!!」

 

杏子ちゃんもまどかさんが持って来た魔法少女の予想絵が予想外だったのか驚いて拍子に口に含んでいたケーキが飲み込めず喉を詰まらせている!

 

「んんん!!」

 

いけない息ができなくて顔が青くなってる!?

 

「佐倉さん!」

 

「杏子!」

 

「杏子ちゃん!」

 

三人が異変に気づいて驚いて声をかける。

 

「杏子ちゃんこれ飲んで!ゆっくり飲むんだよ」

 

背中を優しく擦りながら渡した飲み物をゆっくりと飲ませて喉を詰まらせていたケーキを流し込んだ。

 

「うええ…苦!?」

 

俺が渡した飲み物を飲んだ後、舌出して泣きそうな顔をする。

 

あ、そういや俺が飲んでたのブラックコーヒーだったな。

 

前世からの癖で集中力高めたい時とかつい飲むのを慌ててたからうっかり渡しちゃった・・・

 

「お前こんな苦いのをアタシに飲ませやが・・・ってこれ一真がさっきまで飲んでた奴か!?」

 

杏子ちゃん、甘いのは好きだけど苦いのは苦手なんだよな。

 

「ごめん…手元にあったからつい…」

 

慌ててたとはいえ嫌いな物を渡して飲ませてしまったからさすがにこれは謝らないと。

 

「い、いい!気にすんな!」

 

顔がまだ赤いな。

 

かなり苦しかったのか。

 

「間接キスか、くく…よかったね杏子」

 

「な!?ち、ちがう!」

 

「照れんなって、お似合いだよ。ね、マミさん」

 

「そ、そうね・・・」

 

さやかさんとマミさんが立ち上がり慌てて杏子ちゃんが否定して杏子ちゃんが一方的に文句を言いながらお金を払って店から出る。

 

ああ、そういうことか…

 

確かにイケメンじゃない俺みたいな奴と間接キスはいやだよね。

 

でもだからってあそこまで嫌がられるのはさすがにへこむな…

 

「あの…一真君」

 

項垂れているとまどかさんが話しかけてきた。

 

おっといけない。心配かけちゃったな。

 

「うん大丈夫、嫌がられるのは仕方ないからね、けど魔女捜索とこれは別だから気持ち切り替えてしっかりするよ」

 

「いや杏子ちゃんの態度は嫌がってるんじゃなくて照れ…」

 

何を言おうとしてるか分からないけどこれ以上続けると悲しくなるからこの話題は打ち止めてもらおう。

 

「話は変わるけどまどかさんの絵よく描けてたよ」

 

「え?あ、ありがとう一真君」

 

よし話題そらし成功。

 

さて…落ち着いたし三人を追いかけて魔女捜索がんばるとするか。

 

 

 

 

魔法少女体験コースは原作と同じく魔女を探すところから始まった。

 

まず前の戦いで俺とマミさんが使い魔と戦った地下駐車場に行きソウルジェムで魔女の痕跡を辿り初め、辿り着いた廃ビルの屋上から魔女の口づけに操られた女性が飛び降りた。

 

このまま地面に激突すれば命がない。

 

けれど誰よりも早くマミさんが魔法少女に変身してリボンで飛び降りて女性を包み込み救助されこ事なきを得る。

 

魔女のいる廃ビルに突入しようと杏子ちゃんも変身して俺も鎧を装着しようとしたらマミさんに止められた。

 

「今回は一真君は魔女と戦わないで、これは魔法少女体験コースだから魔法少女じゃない一真君が戦ったら意味ないから」

 

・・・徹底してるな。

 

まあ確かに魔法少女体験ツアーという名目だから俺が戦うのはマズイかもしれないけど戦力の出し惜しみは愚策なんだが。

 

「マミさんいいかげんに「いいよ今回は大人しくしている。けど二人を護る為にいざって時すぐ対処できるよう禁手(バランス・ブレイカー)になるよ。いいね?」

 

「分かったわ、行くわよ鹿目さん美樹さん」

 

「あ、待ってマミさん」

 

マミさんとさやかさんが廃ビルに入って行き、まどかさんが心配そうにこちらを見た後二人について行った。

 

「いいのかよ?」

 

「今は何を言っても無駄さ、だけどできるかぎりのフォローはするよ」

 

杏子ちゃんが魔法少女に変身して俺も鎧を装着し廃ビルに突入する。

 

廃ビルの中は壁にむき出しの鉄材の錆や亀裂があったりツタが生い茂ったりと荒れ果てて人が入った形跡はほとんどない。

 

少し歩いたと階段前でマミさんが立ち止まり髪飾りのソウルジェムが輝き魔女の結界の入り口が出現させ俺達は入り口前に立つ。

 

結界に入る前にマミさんがさやかさんの持ってきたバットに魔法を掛けるとバットにビーズのような物が飾り付けれ外国のおとぎ話に出てくるようなメルヘンチックなバットに変化する。

 

「気休めだけどこれで身を守る程度の役には立つわ。絶対に私の傍を離れないでね」

 

「おお変わった」

 

「すごーい」

 

「派手すぎねえか?」

 

「あらそうかしら?かわいいと思うけど」

 

リボンをマスケット銃に変える魔法の応用だろうか。

 

マミさん魔法でいつのまにあんなことまでできるようになったんだろう。

 

気づかなかったな。

 

飾り付けられたバット『デコレーション・バット』を掲げながら眺めるさやかさんとまどかさん。

 

「じゃあ俺もサービスするかな」

 

こないだの原作にいなかった魔女や黒い魔法少女の件もある。

 

なにが起こるか分からないから念には念を入れて何もやらず失敗して後悔しないように打てる事は全部打っておくか。

 

さやかさんの背後に立ち。

 

「ちょっとくすぐったいよ」

 

「え?なにが?」

 

振り返ろうとした美樹さんの肩に籠手を置いて宝玉が輝く。

 

『Boost』

 

『Transfer!!』

 

「あふん!」

 

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)をさやかさんに掛けたら顔を紅潮させ変な声を出した。

 

何今の声?

 

もしかして俺の所為?

 

ワザとじゃないよ・・・

 

杏子ちゃんやマミさんに掛けた時は何ともなかったのに。

 

体質の問題かな。

 

でもこれで使い魔程度なら遅れはとらない筈だ。

 

二人は護る為だ。

 

マミさんに手を貸さないで言われているが最低限これくらいならやってもいいだろう。

 

「ちょっと!いきなりなにすんのさ!」

 

「おっと」

 

真っ赤な顔のさやかさんがマミさんの魔力で強化されたバットを振り下ろしてきたので籠手で受け止める。

 

倍加をかけて身体能力も上がっているが元がただの女子中学生なので小さな使い魔を潰せる程度の力しかない。

 

これなら使い魔が襲ってきても返り討ちにできそうだな。

 

「ごめんごめん驚かせて、念には念込めてさやかさんの身体能力を上げておきたかったんだ」

 

「そ、そういえば体が軽いし力があふれてくる。それにこの赤いもやみたいなのが?」

 

さやかさんがその場で駆け足したりバットを振り回す。

 

「こ、これは・・・そうか!私の中に眠っていたとてつもない潜在能力がついに開花したんだな。ようしマミさん、杏子、アタシも魔女と戦うよ!魔女は生まれ変わったスーパーさやかちゃんに任せなさい」

 

「え、えっと・・・」

 

困り顔のマミさん。

 

「アホか」

 

調子に乗ったスーパーさやかちゃん(笑)をばっさり一言で切り捨てる杏子ちゃん。

 

「だ、誰がアホだ!」

 

「元が弱いんだからその程度の力で魔女が倒せるかよ。それに一真の赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)は一時的に強さを上げるだけで時間が経てば効果なくなるんだよ」

 

「なんだと!?」

 

驚愕の表情でこっちを見るさやかさん。

 

「うん調子に乗らない。その力はあくまで一時的なもので時間が経ったら消えるんだよ」

 

「そ、そんな・・・」

 

うなだれるさやかさん。

 

ギフトを掛けたの失敗したかな・・・

 

「とにかく二人共あぶないから絶対に俺達から離れないでね」

 

「特に前にやらかしたさやかはよく聞いておけよ」

 

「うっさい!分かってるよ」

 

前回不用意に魔女の本体である斧に近づいてしまったさやかさんに杏子ちゃんが注意する。

 

たしかにあれは軽率だったな。

 

「それじゃあ行くわよ!」

 

結界に次々マミさん、さやかさん、まどかさんが跳び込んでいく。

 

彼女は・・・やっぱり来たか。

 

杏子ちゃんが結界に入り、最後に俺も突入する前に背後をチラッと見ると黒髪の少女の姿が見えた。

 

結界内に入ると無数の扉があり使い魔たちが待ち構えていた。

 

俺達は階段を駆け上がりながら魔女のいる最深部を目指す。

 

「使い魔の群れを突破すれば魔女の所に辿り着けるわ」

 

キュゥべえを抱き抱えた戦えないまどかさんを中心に護りながら陣形をとり、襲い掛かってくる使い魔に対してマミさんがマスケット銃を撃ち、

 

「数だけ多いくせに邪魔すんな!」

 

「来るな!来るな!!」

 

杏子ちゃんが槍で薙ぎ払い、さやかさんがデコレーション・バットを潰し俺は拳で殴り飛ばしながら魔女のいる最深部を目指した。

 

使い魔を蹴散らせながら走り、しばらくすると複数の使い魔が守る扉の前が見えてくる。

 

《ここが魔女のいる結界の最深部だ》

 

「パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ!」

 

マミさんの無数のマスケット銃から銃弾が発射されて扉の前の使い魔全てを一気に一掃する。

 

「出たわ、あれが魔女よ」

 

最後の扉の開けるとウジャウジャと通路にいたさらに多い使い魔とその中央には無数の薔薇と蝶の翅のある魔女が蠢いていた。

 

「うわぁ、グロい…。」

 

「あんなのと…戦うんですか?」

 

素直な感想だ。

 

俺は見なれたから何とも思わないけどやっぱり見慣れない人にはそう見えるんだろうな。

 

「行くぞマミさ・・・っておい!」

 

すでにマミさんは魔女に向かって走り出していた。

 

「ああもう!

 

イライラで左手で髪をかきむしり慌てて追いかける杏子ちゃん。

 

魔女の戦いは俺が加勢する必要なく一方的にこちらが優勢戦えると思ったが・・・

 

今日はいつもと様子がおかしい。

 

まず第一にチームワークに乱れが生じている。

 

「こ、これじゃあアタシが近づけれないよ!」

 

杏子ちゃんの攻撃に銃弾で割り込んで邪魔したり次々マスケット銃を召喚し撃ち続けて槍で攻撃する杏子ちゃんが攻撃できず立ち往生している。

 

マミさんのスタンドプレーが目立つ。

 

なんだろ、さやかさん達はマミさんの戦い方に興奮してるけど派手な大技を連発して何か焦ってるように見えるな・・・

 

どうしたんだマミさん?

 

銃弾も何発か外れているし。

 

杏子ちゃんと一緒に戦っているというより競っているように見える。

 

「キャッ!」

 

「マミさん!?」

 

足元から伸びた魔女の触手が腹部に巻き付いて逆さまにつるし上げられる。

 

「マミさん今助ける」

 

杏子ちゃんが向かおうとしたその時。

 

「来ないで!」

 

「な!?」

 

思わず足を止める杏子ちゃん。

 

なんで止めるんだ?

 

「大丈夫、これが私の戦い方未来の後輩にカッコ悪いとこ見せられないもの!」

 

外れたと思っていた弾丸から黄色いリボンが植物の蔓のように伸びて魔女の全身に絡みつき動きを封じる。

 

これが狙いか。

 

魔女がリボンで締め上げられひるんだ隙に新しいマスケット銃を出して腹部の触手を撃ち抜いて脱出する。

 

「ティロ・・・フィナーレッ!」

 

胸元のリボンを解きリボンが巨大なマスケット銃に変化して弾丸が飛びだし魔女は爆発四散した。

 

「「すごい・・・」」

 

「アタシ今日居なくてもよかったんじゃねえか?」

 

実際マミさん一人でも対処できる魔女だったからね。

 

なにはともあれお疲れマミさん、杏子ちゃん。

 

 

 

「これがグリーフシード、魔女の卵よ」

 

「た、タマゴ・・・」

 

結界が消滅して元に戻ったビル内でまどかさんとさやかさんにグリーフシードを見せてマミさんは自分の少し濁ったソウルジェムを出して濁りを移し替える所を見せる。

 

「うわ、きれいになった」

 

「吸収されこれで私の魔力は元通りと言う訳」

 

「なるほど」

 

「佐倉さん、あなたも浄化した方がいいわ」

 

「ん?ああ・・・そうだな」

 

杏子ちゃんのソウルジェムの濁りもグリーフシードに移された後。

 

穢れきったグリーフシードはキュゥべえに回収された。

 

「…と言うわけで期待してたようで悪いけど今回のグリーフシードは私達で使ってしまったわ…暁美ほむらさん」

 

マミさんがそう言うと視線の先に腕を組んで壁に背を預ける暁美さんの姿があった。

 

「あいつ・・・!」

 

暁美さんを見て敵意を向き出すさやかさん。

 

気にくわないからってそんな嫌そうな顔しないで。

 

暁美さんにも話したくても話せない事情があるんだから…

 

「それともまるごと自分のものにしたかったかしら?」

 

うーむ、説明不足な暁美さんのコミュ力の低さもそうだがマミさんのあの言い方は上から目線っぽいが壁を作ってるんだろうな。

 

それじゃお互い歩み寄ろうとしないよ。

 

初対面でキュゥベえに発砲した暁美さんの印象が最悪とはいえ、一度思い込んだら相手の言い分に聞く耳持たないのもマミさんの悪い癖だな。

 

まあ事情も知らず十五そこらの中学生にそれを察しろというのは酷な話か。

 

大人でも難しい事だしな。

 

「いらないわ。それはあなた達の獲物よ。二人で分けたらいい」

 

そう言い残し暁美さんは帰っていた。

 

「なんだあいつ!相変わらず感じ悪いやつ」

 

「もっと仲良くできればいいのに・・・」

 

鹿目さんの言う通りそれができたら一番いいのにね。

 

「・・・お互いにそう思えればね・・・」

 

一人で戦うと決めたとはいえ今も彼女は・・・暁美さんも心どこかでそう思ってるだろうか?

 

「でもよ、あいつほんとにグリーフシードを独り占めしたいだけなのかな?なんか別の目的がありそうな気がすんだよな。」

 

「なんだよ!あんな奴の肩持つのか!」

 

「そうじゃねえよ、ただあいつのあの目はグリーフシード独占なんてそんな小さな目的で動いてるような奴の目じゃねえなと思ったんだよ」

 

「じゃあなんだって言うんだよ。むこうからケンカ売ってきたのに!」

 

「んなのアタシが知るわけねえだろ!?」

 

「とにかく!佐倉さん言うとおり例えそうだとしてもその理由を話してくれないことには鹿目さんが望むように仲良くするのは難しいと思うわ!それより今は飛び降りようとした女性が心配だから外に行きましょ」

 

ビルの外に出て魔女の口づけで操られていた女性を介抱して落ち着かせる。

 

「私どうしてあんなことを・・・!」

 

「大丈夫ですちょっと悪い夢を見てだけですよ」

 

その後、女性と別れた帰り道。

 

「どうだった?今日の感想は?」

 

「うん、すげーかっこよかった」

 

「あの女の人助かってよかった」

 

話題はさっきの魔女との戦いと魔法少女についてだ。

 

マミさんは人を助ける魔法少女の素晴らしさを熱く力説している。

 

真実を知る俺にはそれがひどく哀しく見えた。

 

「アタシの出番ほとんど奪っておいて・・・マミさん二人を連れてくんの今回だけだからな」

 

「何を言ってるの佐倉さん。魔法少女体験コースはまだ始まったばかりよ」

 

「そうだよ魔女の戦いだってマミさん一人で十分楽勝だったじゃん」

 

「馬鹿野郎!前の魔女の戦いを忘れたのか、あん時ほんとに危なかっただろうが!」

 

一つ目魔女との戦いか。

 

後で杏子ちゃんから俺とマミさんが来る前の話を聞いたがまどかさんとさやかさんを護りながらギリギリの戦いをしたらしいからな。

 

怒るのも無理ない。

 

「あん時はマミさんがいなかったからじゃん。大丈夫だってマミさん強いんだから」

 

マズイな・・・さやかさん、今回の魔女との戦いがマミさん一人で圧勝したから完全に危機感をなくしてしまってる。

 

「アタシが弱かったからって言いたいのか!」

 

「それは違うわ、美樹さん」

 

険悪な杏子ちゃんとさやかさんの間にマミさんが割って入る。

 

「油断したらダメ、こんな事じゃ魔法少女になった時痛い目にあうわよ。きびしいかもしれないけどこれは先輩からのアドバイス」

 

「は、はいマミさんごめんなさい」

 

「謝る相手は私じゃなくて佐倉さんでしょ」

 

「ご、ごめん杏子言い過ぎた」

 

「あ、ああ・・・もういいよ」

 

さすがマミさんあの状況をいとも簡単に納めちゃったよ。

 

さすがみんなのお姉さん。

 

さやかさんも憧れのマミさんの言う事はしっかり聞くんだな。

 

「佐倉さん、次の体験コースも一緒に来てくれないかしら?二人はみんなで護るし美樹さんも油断しないって約束してくれたわ。それにあくまでも魔法少女になるならないは大切な事だから二人の意志を尊重して決めさせるべきであって強制したりしないわ」

 

「・・・・まあ体験コースだけならいいかな」

 

あちゃあ・・・今まで二人が魔女捜索に来るのを反対してた杏子ちゃんがケンカしちゃった罪の意識からマミさんに説得されて次の体験コースを認めてしまったか。

 

このままじゃお菓子の魔女の時まで二人がついて来てしまう。

 

さすがにこれ以上続けさせるわけにはいかない。

 

「じゃあ次の魔法少女体験コース第二弾の日時なんだけど・・・」

 

「・・・いや悪いけど魔法少女体験コースは今日でおしまいだ。これ以上続けるなら本気で止めさせてもらう」

 

俺は心を鬼とし、そう告げた。

 

それが後にとんでもない展開を起こす引き金になるのを知らずに。




ストックが無くなり忙しくなったって来たので更新が遅くなります。


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第24話 すれ違ってしまった思い

シリアス回


【一真サイト】

 

夕方、魔法少女体験コースと称して戦う力のないただの一般人であるまどかさんとさやかを魔女の結界に連れて 魔女を倒した帰り道。

 

「・・・いや悪いけど魔法少女体験コースは今日でおしまいだ。これ以上続けるなら本気で止めさせてもらう」

 

俺はマミさんにそう告げる。

 

「な、何を冗談言ってるの?一真君。まだほかに教える事が・・・」

 

俺の言葉に不信と驚愕の表情を浮かべるマミさん。

 

「冗談なんかじゃないよ、俺は本気だ。今日は我慢したけど本来なら危険な魔女の結界に一般人を連れて来るなんて許されない事だ。さすがにこれ以上は見逃す事はできない。」

 

「でも彼女達は選ばれた・・・」

 

まだ二人の勧誘を諦めきれないようだ。

 

何がここまで彼女を突き動かすのだろうか?

 

「ただキュゥべえが見えるだけで選ばれたんじゃない。ただの偶然だ」

 

「そ、それは・・・」

 

キュゥべえ・・・いやインキュベーターは絶望などの負の感情で黒く濁り切ったソウルジェムがグリーフシードへと変質し魔法少女が魔女になる時に発生するエネルギーを回収して宇宙の寿命を延ばす事らしい。

 

インキュベーター曰く人類は家畜で個人の意思や生命などなんとも思っていない。

 

彼女達は選ばれたのでなくインキュベーターにとって思春期特有の性格や問題を抱えそれがエネルギー効率にたまたま利用しやすかっただけだ。

 

だがそれをマミさんは知らない。

 

そしてそれを話すこともできない。

 

「一真君はやっぱり今でも私達が魔法少女になる事は反対なの?」

 

まどかさんが怯えながら訪ねてくる。

 

「当然だよ、友達が危険な事をしようとしてたら体を張って止めるのは当たり前の事だ」

 

正直に胸の内を隠さず話す。

 

杏子ちゃんやマミさんを助けられなかった俺が言えた義理じゃないがこれ以上犠牲者を増やすわけにはいかない。

 

ただの偽善で自己満足なのかもしれないが優しいまどかさんと明るいさやかさんに危険な目に遭わせたくない。

 

「で、でも・・・」

 

「まどかさん、選ばれたからって無理にする必要なんかないよ。他のみんなが戦ってるからって自分も戦わないとって思ってない?」

 

「・・・」

 

返事が詰まるって事は図星か・・・

 

思わず苦笑をもらしそうになる。

 

まどかさんらしいな。

 

「協力してくれようとする気持ちは嬉しいよ。でも自分を抑えてまで戦ってほしくない」

 

「み、みんなが戦ってるのに私だけ逃げたくないよ」

 

まどかさんが涙目で訴えてくる。

 

こ、これを否定しないといけないのか・・・

 

罪悪感が半端ないんですけど。

 

でも彼女自身のためにもここは優しさを捨て心を鬼にならなくちゃ。

 

「確かに友達が戦ってるのに自分は見てるだけでいいのかって思ってしまうかもしれない。でもそれだけで俺達に合わせて戦っていたらいずれ君の心が潰れる。一緒に戦うだけが仲間ってことじゃない、君は優しいから魔法少女として戦ってもらうより友人として平和な日常で魔女との戦いに疲れ果てている時に笑顔で俺達を迎えてほしいんだ」

 

「・・・・・・・」

 

考え込むまどかさん。

 

少しばかり卑怯な言い方だったかな。

 

分かってくれたらいいけど。

 

《やれやれ僕の邪魔しないでもらいたいな城戸一真、せっかくまどかがもう少しで契約する気になってくれてたのに》

 

黙れよ女の子を喰い物しているペテン師が…

 

色々と怒鳴り散らしたいが落ち着いて冷静になるんだ。

 

すでに魔法少女になってしまったマミさんと杏子ちゃんの為に。

 

「俺は戦いの恐ろしさと魔法少女じゃなくても出来る事を話してるだけだ。安易に契約して一生後悔しないように。メリットだけを話すのはフェアじゃないからな。それとも何か問題でもあるのか?」

 

《……》

 

だんまりか、そうだろうなここで魔法少女とソウルジェムの秘密を喋ったら誰も絶対に契約しなくなるから言える訳がないか。

 

感情が無いとか言ってるがさすがにそこは理解しているな。

 

もっと攻めてやりたい所だがここには杏子ちゃんとマミさんがいる。

 

攻めすぎてソウルジェムの秘密と魔女との本当の関係を喋られたらマミさんのメンタルがヤバイ。

 

ここらで退いておくか。

 

「一真、あたしは戦えるよ!みんなを護る覚悟もある!」

 

今度はさやかさんか。

 

さやかさんは他の四人に比べて精神が弱くて魔女化が早かったし何より上条が暴走しそうだからも彼女も魔法少女になってほしいんだけどな。

 

原作どおり魔女になったしまったら今の俺に打つ手はない。

 

それにしても覚悟だと・・・?何も知らずにふざけるなよ・・・

 

「みんなを護る覚悟?人知れず賞賛も感謝もされることもなく、さやかさんの言うみんなの中には犯罪者や人の善意を利用して食い物にしている最低な奴らもいる。さやかさんの言っている理想の魔法少女はそんな人間も分け隔てなく助けないといけない。そんな物語の勇者や英雄みたいな自己犠牲の覚悟が本当にあるの?」

 

「う・・・そ、それは・・・」

 

押し黙ってしまうさやかさん。

 

やはりそこまで考えてなかったか。

 

そういえばさやかさんは自分の理想の正義と現実の違いに押し潰されたのも魔女化の要因のひとつだったな。

 

だったらここではっきり言っておくか。

 

「命を懸けるほどの願いもなく生半可な覚悟で魔法少女になるな!」

 

「うう…」

 

強く叱咤されてうなだれるさやかさん。

 

さすがに自分の所為で女の子が泣きそうな表情になると気が重いな・・・

 

ごめんね、でもこれだけは強く言わないといけない。

 

君達が絶望に押しつぶされ不幸にならない為に。

 

まどかさんはしっかりしているし、さやかさんもお調子者の所はあるけど願いごとが決まらなければそうそうバカなマネには走らないと思うが用心に越したことはない。

 

「いいかげんにして一真君!鹿目さんや美樹さんの思いを踏みにじる気?」

 

後輩達を攻められついにマミさんが怒って怒鳴る。

 

せっかく魔法少女の仲間が増えるかもしれないのにそのやる気を削がれたら怒るのは当然か。

 

正直、魔法少女のデメリットとこれから起こるマミさんの死、さやかさんの魔女化とそれに伴う杏子ちゃんの自爆を知らなければ仲間が増えることに浮かれて俺もマミさんの考えに賛同してたかもしれない。

 

けど知ってしまってるからこそここで甘い顔を見せられない。

 

「俺は当たり前の事を言ってるだけだよ、魔法少女といってもただの人間で万能じゃない。それに前回と今回の魔女はまだ対処できたけど体験コースを続けていく内に俺達三人でも勝てない魔女が現れた時はどうするつもりなの?もし俺達が負けたらなんの力のない二人は犠牲になってしまう。魔女の犠牲になりそうになったコウちゃんのように・・・それともその場でどうでもいい願いで契約させて二人に後悔させながら魔女と戦う宿命を背負わせるの?」

 

「そ、それは・・・」

 

マミさんが俺に指摘され言葉がつまる。

 

小学生の頃、あの銀の魔女との戦いはマミさんにとっても決して忘れてはならない戦いの一つだから思う所があるのだろう。

 

 

 

~~まどかサイド~~

 

一真君に言われて私は何も言い返せなかった。

 

さやかちゃんも一真君に反論できず悔しくて泣きそうな顔をしている。

 

そして今も一真君とマミさんの言い争いをただ茫然と見ているしかない。

 

一緒に戦っている仲間なのになんで二人が言い争うの?

 

「ねえ?杏子、コウちゃんって誰なの?なんで悪い魔女と一緒に戦うって言ってるのに私達あそこまで一真に言われなくちゃならないんだよ!?」

 

泣きそうだったさやかちゃんが袖で涙を拭いて杏子ちゃんに話し掛ける。

 

そうだ、さっき一真君が言ってた『コウちゃん』って?

 

一緒に戦っている杏子ちゃんなら知ってるのかな。

 

「・・・そうだな、このまま一真が悪者になっちまうのも癪だし怒る理由を知ればお前らも納得するかもしれない。別に口止めされてもねえから教えてやるよ」

 

「やっぱりなにかあったんだね」

 

「・・・ああ、あれはあたし達がまだ小学生の頃だ」

 

「しょ、小学生って…」

 

そんな時から杏子ちゃん達は魔女と命懸けで戦ってたの!

 

さやかちゃんも同じ事を思ったのか驚いた顔している。

 

「続けるぞ…見滝原公園でいなくなった子供を探す母親が居てアタシと一真はその子供を探しながら魔女を追っていた。そして魔女の反応を見つけ結界に跳び込みその時に初めてマミさんと出会ったんだ」

 

それが一真君達とマミさんの出会い。

 

「魔女の結界の中で探してた子供、コウちゃんって五才くらいの男の子が魔女に襲われて摂りこまれそうになっていた」

 

「ひ、ひどい魔女はそんな小さな子供まで襲うの!?」

 

私には弟のタツヤがいる。

 

もしタツヤが襲われたらと思ったら怖くて体の振るえが止まらなかった。

 

「アタシと一真とマミさんの三人はなんとかして助けようとしたんだが魔女は子供を盾にしてその上戦いの中で魔女が使い魔をとりこんでパワーアップしやがってアタシ達三人はやられそうになった」

 

「そ、それでその子供どうなったの?」

 

「安心しろよまどか。魔女は一真が倒して助けた子供はちゃんと母親の元に送り届けた・・・」

 

よかったコウちゃんは助かったんだ。

 

私とさやかちゃんがほっと胸をなでおろしていると

 

「一真が左腕を犠牲にしてな…」

 

え?杏子ちゃん・・・今なんて言ったの?

 

「ひ、左腕!?一真の左腕ちゃんとあるよ、どういうことさ?」

 

私の聞き間違いじゃなかった。

 

さやかちゃんが杏子ちゃんの肩に掴み掛かる。

 

そうだ一真君の左腕はちゃんとあるし学校でも今日も普通に動いているの見ている。

 

杏子ちゃんがこんな事で嘘つくなんて思えない。

 

じゃああの左腕は?

 

「一真の禁手(バランス・ブレイカー)・・・・あの戦う時に着てる赤い鎧だ。今は自由に装着できるけど小学生だった当時の一真はまだ未熟で自分の意志で装着できなかったんだ。だから一真は・・・・」

 

「だからな、何さ?」

 

や、やめて杏子ちゃんそれ以上聞きたくない。

 

「魔女を倒して子供を助ける為に左腕を代価にたった一度だけ鎧を装着し、その代償として一真の腕は赤い鱗と鋭い爪の生えたトカゲみたいなドラゴンの腕になっちまった・・・」

 

話しながら辛そうな表情の杏子ちゃん。

 

「そ、そんな杏子ちゃん嘘だよね…?」

 

「じょ、冗談だよね杏子。だ、だって一真の左腕どう見ても普通の腕じゃん」

 

「今はそうさ、アタシが定期的にドラゴンの魔力をソウルジェムで吸い取る事で一時的に人間の腕になってるんだ。でもほっておいたら魔力が溜まってドラゴンの腕になっちまう」

 

「そんな、そんなのって・・・」

 

目の前が真っ暗になりそうだった。

 

あの入学式の日、一緒に呉先輩のお財布を探し私を助けてくれて学校まで走ってくれて、いつも優しく笑顔でいてくれた一真君にそんな過去があったなんて。

 

《おかしいな、ソウルジェムに魔力を吸収する機能なんてないのに?》

 

「知らねえよ、できたもんはできたんだから」

 

「…んで…?」

 

さ、さやかちゃん?

 

「なんで杏子達は一真を止めないのさ!そんなになってるのまだ戦わせるなんて!」

 

さやかちゃんが泣きながら杏子ちゃんの肩を掴む。

 

学校で一真君と冗談を話ながら笑って仲のいいさやかちゃんもショックを受けている。

 

私も我慢しないと泣いちゃいそう。

 

「止めたよ!力づくで!でもな一真は『みんなが傷つくのをただ黙って見ていたくなんかない』って言って止まらなかった」

 

杏子ちゃんも泣きながらさやかちゃんの手を振り払う。

 

そうだ私達以上にそれを目の前で見ていた一番仲が良い杏子ちゃんが辛くない筈がない。

 

ましてやそれが好きな人なら…

 

「ご、ごめん杏子何も知らずに生意気言って」

 

「いいよ、だから決めたんだよ。もうあんな事を起こさせねえ為に強くなってあいつの背中を支えるって」

 

涙を制服の袖で拭いて自分の決心を私達に話す杏子ちゃん。

 

一真君にそんな過去があったなんて・・・

 

そして杏子ちゃんも一真君を支えようとしている。

 

「これで分かったろう、アタシらの戦いはいつも今日みたいな生易しく甘いもんじゃねえ!左腕一本犠牲にしなくちゃならねえともだってあるんだ」

 

これが戦う覚悟・・・

 

ただ何の取り柄のない自分を変えたく憧れて魔法少女になりたいってだけの中途半端な私にはないものだ・・・

 

やっぱり一真君やほむらちゃんの言うとおり覚悟のない私達には魔法少女になる資格なんてないのかな…。

 

 

 

 

 

 

 

【一真サイド】

 

「でも魔法少女が増えれば今日みたいに魔女に襲われる人を一人でも多く助けられるのよ」

 

「だがその分魔法少女が増えたらグリーフシードは不足してしまう」

 

まどかさん達の心配もそうだけど現実問題、この見滝原だけに魔法少女が五人も集中してしまったら魔女しか落とさないグリーフシードの供給が追いつかない。

 

そうなれば五人の内誰がインキュベーターの思惑通り魔女になってしまう。

 

 

「・・・そ、そう…それがあなたの考えなのね・・・そうやって上から目線でお説教してるけど結局は人命より佐倉さんの為にグリーフシードが確保したいのがあなたの考えなんでしょ!」

 

「何を言ってるんだ?そんなわけないだろ」

 

違う!そうじゃない、そうじゃないんだマミさん。

 

「お、おいマミさん、一真は二人の事を心配して…」

 

まどかさん達と話を終えていた杏子ちゃんが止めようするが感情が爆発したマミさんは止まらない。

 

「佐倉さんはいいわよね!一真君がいるから!!でも私にはパートナーと呼べる人はいないの!」

 

「だからってそんな言い方!仲間ならアタシ達がいるじゃないか」

 

「仲間?じゃあどうして長いつきあいなのに佐倉さんのお父さんの事を私に教えてくれなかったの!?私だけ知らされずに仲間外れにして!」

 

「あ、あれは・・・」

 

「杏子ちゃんだって思い出したくない過去だから言い出せなかったんだ。分かってくれ」

 

杏子ちゃんは勇気出して話したのにそんな言い方!

 

「そうねそうかもしれない、じゃあ一真君はどうなのよ!こないだの二人で地下駐車場の使い魔との戦いも一人だけ何かに焦るだけでそれがなんなのかその後も結局話してもくれなかった!仲間ってなんでも話し合える間柄じゃないの?なのにどうして一人で抱え込んでいるの?」

 

「そ、それは・・・」

 

実は未来を知っていて、あの時はインキュベーターとまどかさん達との接触を避けたかったなんて言えるわけがない・・・・

 

「言い返せないわよね!私に一人で背負い込むなとか言いながらそうやって一人で背負い込んでるのはあなたの方じゃない!!それで人に説教するなんて馬鹿にしないでよ!!」

 

マミさんの怒りに言葉が詰まり何も言えない俺と杏子ちゃん。

 

たがマミさんの追撃はなおも続く。

 

「二人共、私をのけ者にして勝手に二人だけの世界を作り私は仲間外れ、その上せっかく魔法少女になろう考えている鹿目さん達の邪魔をする。なんで仲間が増えて一人でも魔女や使い魔の犠牲から助けられるのに邪魔をするの?彼女達は選ばれたのよ!!」

 

そ、それが頑なに反対を押し切ってまで二人を魔法少女に加入しようとした理由なのか。

 

まさか俺が魔女と戦いに割り込んだ所為でマミさんと杏子ちゃんの絆に亀裂が入るなんて…。

 

「もう貴方達とは一緒に戦えない。私は『私』だけの仲間と一緒に魔女と闘うわ!」

 

そう言うと泣きながらマミさんは走り去ってしまった。

 

「一真、あたし達を魔法少女にさせたくない事情は分かったけど女の子を泣かすなんてあんたのやったことは最低だよ!」

 

さやかさんが俺を睨みマミさんを追いかけ、まどかさんは軽く頭を下げてさやかさんの後を追って行った。

 

その場に残される俺と杏子ちゃん。

 

はああ・・・やっちまった・・・

 

マミさんを蔑ろにしようとなんてこれぽっちもなかったのに。

 

事情を説明するわけにもいかず一人で背負い込むしかなく。

 

さやかさんの魔女化やマミさんを上条から護る気持ちだけ先走ってしてマミさんの悩みに気づいてあげられなかった。

 

もっとマミさんの気持ち考えてあげて優しい言い方がすればこんな事には・・・

 

どうも前世ではマミさんより年上だったからつい上から目線で話してしまったな。

 

ここでは年下なのにあんな言い方されたら怒るのは当然だよな。

 

手を顔に添えて俯く。

 

「一真・・・あんま気にすんなよ。マミさんやさやかの奴、気が立ってて何言ってるか分かってなくて本心じゃないと思うからよ」

 

杏子ちゃんだって辛いのにそんな心配そうに声を掛けてくる。

 

「分かってる、ありがとう大丈夫だよ杏子ちゃんの方こそ大丈夫?辛い過去まで話したのに…」

 

「あ、ああ…前にも言ったろ、もう吹っ切れたって…」

 

少しの間無言の時間が過ぎていく。

 

「あの一真…」

 

暗い雰囲気に耐えきれなくなり話しかけてきたけど。

 

「ごめん・・・杏子ちゃんは先に帰ってて、俺は頭冷やしてから帰るから、心配してくれてほんとにありがとう」

 

「…分かった、あんま気にすんなよ」

 

なんとか作り笑いをしてそう言い、気持ちを理解してくれた杏子ちゃんは家に帰る。

 

 

杏子ちゃんもいなくなり一人、夕暮れの空を見ながらさっき起こった事を整理する。

 

・・・マミさんを説得どころか怒らせてしまったな。

 

でもだからって上条の件とお菓子の魔女にマミさんが殺される件があるからこのまま体験コースを続けさせてまどかさん達を魔法少女にさせるわけにはいかない。

 

どうしたらいいんだ…

 

「城戸一真、少しいいかしら」

 

背後から声がして振り返るとそこには見知った顔があった。

 

「暁美さん帰ったんじゃなかったのか」

 

声の主は先ほどグリーフシードをマミさんに突き返した暁美ほむらさんだ。

 

「気になって残ってたの。あなたとまどかの会話を聞かせてもらったわ。ずいぶん魔法少女の契約をさせる事に反対なのね」

 

君と同じで魔法少女の秘密とこれから起こる事を知っていれば反対もするさ。

 

お互い先の事を知っているのに上手くいかないものだね。

 

「それにしても魔法少女と言ってもただの人間か・・・何も知らないくせに随分と大口叩けるわね」

 

いきなり挑発か…彼女らしいといえば彼女らしいけど。

 

幸いマミさんも杏子ちゃんもキュゥべえもいないし心に余裕もないから悪いけど今は本音で相手するよ。

 

「・・・それは魔法少女になった女の子の魂がソウルジェムになって肉体と別れてしまったからそう言ってるのか?なら許さないぞ」

 

「あ、あなたどこでそれを!?」

 

驚いた顔の暁美さんが後ずさる。

 

暁美さんとキュゥべえしか知らない真実をぶつけてみたがやっぱりか、原作の時間軸でさやかさんがそれを知ってしまい悲観して自分の事をゾンビだと言っていたからもしやと思ったが…

 

あのシーンは今思い出しても辛いな。

 

「答えなさい!どこでそれを知りあなたの本当は何者なの?」

 

俺の予期せぬ返答に普段のクールな冷静さを失った暁美さんが拳銃を向ける。

 

だが人に向けて撃ったことがないか銃口は振るえている。

 

「答えてるからそんな物騒な物下ろして落ち着きなよ。誰かに見られたら騒ぎになるから。いい機会だし教えてるよ、場所を変えよう。道の真ん中じゃ落ち着いて話もできない」

 

遅い時間帯だから人気(ひとけ)がなくてよかった。

 

結界内ならいいけど町中だと銃刀法違反になるから勘弁してよ。

 

大人びても中身はやっぱり中学生なんだな。

 

「…分かった。あと佐倉杏子の話を聞いてあなたの左腕の一部始終も知ったわ。それを踏まえて私もあなたに話があるの。いいかしら?」

 

向こうから接触してくるなんて話すには丁度いい機会だ。

 

教えてあげるよ。

 

俺の過去と正体を・・・

 



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第25話 時間遡行者と転生者(その1)

今回長くなったので二つに分けます。

暑くてもネタは出るけど文字を打ち込む気が出ねえ・・・・

本格的に暑くなってきたからみんなも水分はこまめに摂ろうね。


~~マミサイド~~

 

「一真君とケンカしちゃったな・・・」

 

私、巴マミは自室のベットの上で横になりながら今日の事思い出していた。

 

冷静になって振り返ると結構酷いこと言っちゃったな。

 

一真君と佐倉さんはお母さんの命の恩人で私が魔法少女として戦ってた時に出会った仲間。

 

いや仲間だった。

 

私が今日…二人と決別したから。

 

もう後には戻れない。

 

あの反省会の日・・・

 

一真君が黒い魔法少女事件が解決するまでこれからの魔女捜索は三人で行動しようと言われた時。

 

私はすぐに返事ができなかった。

 

一人で行動するのは狙われる可能性があるから言ってることは分かる。

 

でも私は魔法少女の活動がない日に遊んでいたクラスの友達と遊べなくなりまた疎遠になって教室でひとりぼっちになると思うと怖かった。

 

転校してきた魔法少女の暁美ほむらさんは仲間になってくれないと言う。

 

そして一真君のクラスメイトの鹿目まどかさんと美樹さやかさんに魔法少女の素質があると聞いた私は魔法少女体験コースを開いて二人に魔法少女になってもらおうと提案した。

 

私達は小学生の頃に比べ格段に強くなっている。

 

私はマスケット銃を使えるようになって攻撃力が向上し一真君も禁手(バランス・ブレイカー)に至り攻守共アップし佐倉さんも体が出来上がり最大の武器のスピードが上がった。

 

これに鹿目さんと美樹さんが加わればどんな魔女や黒い魔法少女にも負けない。

 

そう思っていたのに・・・

 

鹿目さん達が魔法少女になる事を一真君と佐倉さんに反対されてしまった。

 

確かに魔女との戦いは危険も多いけどそれは私達でフォローすればいい。

 

確かに一真君達の言い分も分かる。

 

魔女が見つかるのごく稀でグリーフシードは魔女しか落とさず使い魔は持っていない。

 

そして使い魔が成長して魔女になるには人を襲うしかない。

 

でも私達は犠牲者を出さないように魔女が成長する前に使い魔を消滅させているから魔力だけを消費してグリーフシードは手に入らない時もある。

 

ただ今は佐倉さんは一真君の左腕のドラゴンの魔力を吸収してソウルジェムが浄化できるので私だけならギリギリなんとかなっているけど。

 

転校してきた暁美ほむらさんもグリーフシードは必要な筈だし、その上に鹿目さん達が魔法少女に加われば確実に足りなくなるだろう。

 

かと言って魔女に成長するまで使い魔を放置するわけにはいかない。

 

放置してしまったらそれだけ多くの罪のない人達の犠牲が出てしまう。

 

それにソウルジェムが濁りきっても魔法少女として魔法が使えなくなるだけ。

 

少し辛いけどそれでもこの見滝原を守り一人でも犠牲を出させないために仕方ない事なのに…

 

なんて犠牲を無くしたいとか平和を守りたいとか言い訳してるけど結局それは建前で本当はお互い通じ合って私が割り込めない一真君と佐倉さんの仲の良さに嫉妬してるだけ。

 

本音は一人の寂しさを埋めたいから鹿目さんか美樹さんを魔法少女にして私だけの仲間を作りたいだけなのかもしれない。

 

いつからこんなにも・・・心が弱くなったのだろう。

 

いえ私はみんなを守る魔法少女。

 

甘えは許されない。

 

目の前の人だけを護りたいと考えている一真君達と考え方が違うから。

 

私は魔女に襲われるすべての見滝原の人達をを護る。

 

それがどんな悪い人であろうと。

 

それが魔法少女としての私の在り方。

 

一真君・・・なんで分かってくれないの?

 

 

 

【一真サイド】

 

夕日もすっかり暮れて辺りが暗くなり俺と暁美さんは公園の街灯の下に移動していた。

 

「それでこんな所まで連れて来たのだからちゃんと説明してくれるのでしょうね」

 

警戒してるな。

 

まあ年頃の女性をこんな人気のない所に連れてきたら当然か。

 

でもかといって家では杏子ちゃんがいるから話せないし中学生二人でこんな時間にお店に入ったら補導されてしまうからな。

 

「ごめんね、あまり聞かれたくない内容の話なんだ。特にキュゥべえにはね」

 

原作のこの時間帯ならキュゥべえはまどかさんの家にいる筈だから大丈夫だと思うが用心はしっかりしておこう。

 

「ドライグ、近くに魔力や人の気配はある?」

 

念のためにドライグに周囲を索敵してもらい警戒しておこう

 

『安心しろ、近くにネコの子一匹いない』

 

左の手の甲に話し掛けると緑の円の形をした光が甲に現れて答える。

 

「い、今の声、誰!?」

 

そういや余計な混乱を避けたくて反省会の時、暁美さん達にドライグの事を詳しく話してなかったな。

 

まあ知られたならここで説明すればいっか。

 

「今の声はドライグ、この赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に宿るドラゴンだ」

 

『はじめましてと言っておこうか、暁美ほむら』

 

「そ、そう、であなたは一体何者なの?」

 

「その質問の前にここで話す内容はマミさんや鹿目さん達そして杏子ちゃんにも話さないでほしい。特にインキュベーターに知られたくない話だ」

 

「インキュベーターの事を知っているの!?」

 

キュゥべえの正式名称を俺が知っててさらに驚いてるな。

 

まあ奴は余程の事がないと自分から話さないか。

 

宇宙人と知られたら契約を考える子に警戒心を持たれるだろうし。

 

さてついに俺の本当の正体話す時がきてしまったな。

 

果たして信用してくれるかどうか…

 

頭のおかしい奴とか思われないかな。

 

不思議な体験をしている魔法少女が聞いても変に思われる内容だし。

 

しかも話を聞いた暁美さんのソウルジェムがショックで濁らないようになるべくオブラートに包みつつ信頼を勝ち取る為に本音で話さないと。

 

何この難しい問題…。

 

本当の事を話して吉と出るか凶と出るか…

 

暁美さんも表情を崩さないけど事情を知りたくてそわそわしている。

 

さて覚悟を決めるか。

 

 

 

~~ほむらサイド~~

 

私は城戸一真に話がしたいと言われて彼と夜の公園に来た。

 

彼の左腕にドライグという名のドラゴンがいる事も驚いたがそれ以上に驚いたのは彼は魔法少女の秘密の一つであるソウルジェムは魔法少女の魂のであると知っていた事だ。

 

どこでそれを知ったのだろう。

 

彼の仲間である巴マミや佐倉杏子はこの事を知っているのか。

 

そして彼は何者なのか。

 

私の敵になるのか。

 

それを問いただす為に私はここにいる。

 

あの一つ目魔女の結界で会った時、誰にも心を開かなかった佐倉杏子が心酔する彼の強さと能力をうまく利用できればワルプルギスの夜を倒してまどかを護り抜く事ができる存在。

 

それだけの存在の筈だった。

 

しかし佐倉杏子から語られた今までどの時間軸には無かった彼女の家族を助けた出来事と大切な人を護る為に自分の腕を犠牲にし、魔女との戦いを真剣にとらえている彼にならなぜか話を聞いてみてもいいと思った。

 

「まず俺が知ってるのはワルプルギスの夜っていう他の魔女と比べ物にならないくらい強い最強の魔女がいるのを知っている」

 

「ワルプルギスの夜を知ってるの?」

 

まさか魔法少女でもない彼が知っていたなんて。

 

佐倉杏子か巴マミから聞いたのかしら?

 

「ああ、話だけで実際には見た事ないけどね。そしてその前にマミさんその後にさやかさんそして杏子ちゃんが亡くなる事も知っている」

 

「なんであなたがそれを知ってるの!?」

 

ワルプルギスの夜の事は佐倉杏子か巴マミから話を聞けば分かるとして巴マミが次に現れる魔女との戦いで亡くなる事や美樹さやかと佐倉杏子の事も他の時間軸で見てきた私しか知らない筈。

 

まさか彼も私と同じ時間を遡った!?

 

「多分暁美さんが考えてる事とは違うよ、俺は時間遡行者じゃない」

 

「知ってるの!私が他の時間軸の未来から過去にやってきた事を」

 

一体何者なの?

 

私の中の警戒心がより一層強くなる。

 

ここで始末した方がいいのかしら…

 

でも何者か正体を確かめないと…

 

私やまどかに害を及ぼす存在なら時間を止めてこの銃で・・・

 

そんな黒い感情が湧き上がってるのを知ってか知らずか城戸一真は話を続ける。

 

「うん、そしてこれからから話す内容は嘘偽りないすべて真実でマミさんはもちろん杏子ちゃんにさえ話していない俺の秘密で信じられない話だけど本当の事だ」

 

「・・・前置きはいいわ、話してちょうだい」

 

「まどろっこしいことなく単刀直入に言おう、俺は別の平行世界から輪廻転生した人間だ」

 

警戒する私に彼はゆっくりとした口調で自分が何者であるかを打ち明けてくれた。

 

彼が自ら話した秘密は途方もなく私の想像を遥かに超えたものだった。

 

自分はこの世界と全く違う別の平行世界で生きていたがある日女神の手違いで死ぬ事になり赤龍帝の力と光の巨人の力を貰いこの世界に転生して来たのだと。

 

そして自分の世界でこの先起こる巴マミの死、美樹さやかの魔女化、魔女化した美樹さやかと戦い自爆する佐倉杏子、そしてワルプルギスの夜の出現やまどかが魔女化して滅ぶ未来を物語で知りそれを防ぐ為に今日まで鍛えて戦ってきた事を。

 

私の行動や思いが誰かのシナリオで動かされてたなんて信じたくない。

 

こんな荒唐無稽な話、普通誰が信じるのだろう。

 

でも私が未来から過去に時間移動した話やインキュベーターが私達を騙していると話したけど誰も信じてくれなかった辛さと悲しさを思い出す。

 

それに真剣な彼の話を聞くと嘘ついてるとは思えないし納得できる部分がいくつかある。

 

まず私はいままで歩いて来た他の時間軸で一度も彼に会ったことがない。

 

これはあり得ない事だ。

 

彼がこの世界の人間なら学校のどこかで会う筈。

 

そして第二に常人にはあり得ない力である神器(セイクリッド・ギア)の存在、そして屋上で数キロ離れた私を見つけたあの能力と魔女を単身で倒した真実。

 

そして本来なら亡くなる筈だった佐倉杏子の家族や巴マミの母親、上条恭介の左手の大怪我。

 

佐倉杏子の教会に跳び込んで父親を説得したり巴マミの事故現場に居合わせたりと予め先の未来を知らなければできない事だ。

 

知れば先回りして防ごうとする。

 

いずれの事件も佐倉杏子や巴マミ、そして美樹さやかの心に暗い影を残した。でも城戸一真が助けた事で彼女たちの心の負担は大きく減った。

 

これだけやってきた事を見せつけられたら彼の言葉を信じるしかない。

 

ならどうしてここまでして彼は魔法少女と共に戦うのだろう?

 

彼ほどの力があれば自分の身を護るだけでいい。

 

にも拘らずわざわざ彼は身体を鍛え上げ魔女と戦う険しい道を選んだ。

 

なぜ?まどかや私達魔法少女への同情?

 

いえ違うわね、同情なんて安い感情で普通あそこまで動かない。

 

なら巴マミと同じただの独りよがりな正義感?

 

いえ、それも違うわね。

 

彼は魔女が魔法少女のなれの果てだと知ってなお自分の手を汚している。

 

巴マミのような正義感だけの人間にはできない事だ。

 

ならばなぜ?

 

「ここまでが俺の秘密だ・・・え、えっと…信じてくれるかな?」

 

考え込む私を話が大きすぎて呆然としてると勘違いした城戸一真が辛そうな表情で恐る恐る話しかけてきた。

 

「・・・・・・ええ信じるわ、そう言われたら今までの時間に存在しなかった貴方がいる事と私の疑問すべてに辻褄があうもの。でもなんであなたはそこまでして戦う道を選んだの?話を聞く限り魔女と戦わなくても普通に生活する道も選べた筈なのに」

 

彼は自分の秘密を話してくれた。

 

けどだからといってそれだけで彼を信用するのは危険だ。

 

私は彼の本心が知りたい。

 

どうして危険を冒してまで私達と戦ってくれるのかを。

 

「それを教えないとあなたを味方と認めない」

 

「よかった。ありがとう俺の話を信じてくれて。前にも言ったけど無茶する幼なじみの杏子ちゃんを助けたかったから助けようとしただけだよ。確かに転生する前は一般人の俺が魔女に襲われた時の自衛ができればそれでいいと思ってこの力を選んだけど・・・」

 

私の質問にそう言って彼は照れ臭そうに笑う。

 

「でも今は違うんだ、杏子ちゃんやマミさん、まどかさんやさやかさん、転生した世界の父さんや母さん、大勢のこの見滝原市の人達と触れ合ってこれ以上誰も失いたくないからみんなを護る為にワルプルギスの夜を倒す!そしてこの世界で触れ合ってきた人達と暁美さん達や俺の家族が笑顔でいられる幸せな未来を目指す、それが俺の戦うと決めた理由だ」

 

この人は口だけじゃなく助けたくても助けられなかった悔しさと無力さを知っている。

 

私と同じように・・・

 

そしてそれを糧に前に進もうとしている。

 

私にはもう諦めてないものだ。

 

この人なら…この人と一緒に戦えたらまどかを救い私も前に進めるかもしれない。

 

「でも笑顔を居られる未来を目指すと言うけどその一人である巴マミはどんなに説得しても体験コースをやめようとしないしあろうことか恩人であるあなたに暴言を吐いた。最悪巴マミは見捨てるしか・・・・」

 

彼の助けようと差し出した手を振り払った巴マミは助ける価値はあるの?

 

「大切なのは最後まであきらめない事」

 

「え?」

 

「どんなに辛い状況でも未来を信じる心の強さが不可能を可能にする。信じる力が勇気になる」

 

「それは?」

 

「去年の夏休みに俺を鍛えてくれた憧れのヒーローが教えてくれた言葉だよ」

 

私も希望を持っていいの?

 

まどか達と笑顔でいられる未来に私も生きたい。

 

繰り返される時間軸の中に私だけ取り残されるのはもういや…

 

「わ、私と一緒に闘かってくれるの?」

 

「ああ、暁美さんは一人じゃないよ俺も一緒に闘う。その為に今日まで鍛えてきたんだ」

 

わ、わたしは一人じゃない。

 

 

 

【一真サイト】

 

 

正直話が突拍子すぎて信じてもらえないかと思ったけど信じてくれてよかった・・・

 

「そういえばなんで佐倉杏子にも話していない事を私にだけ話そうと思ったの?別に隠し通せばよかったと思うんだけど?」

 

う…やっぱりそこに気づいちゃったか。

 

明美さんの言う通り余計な混乱を防ぐにはそれが一番だと思うけど

 

できれば気づかれて欲しくなかったな。

 

「言わなきゃダメ・・・だよね?」

 

「当たり前でしょ」」

 

暁美さんが睨んできた。

 

こ、怖い・・・

 

「・・・いや時間遡行者の暁美さんに下手に隠していると疑われるからもういっその事全部ぶちまけちゃえばいいのかなと思って」

 

後頭部を掻きながら渋々答える。

 

何度も時間を繰り返してそこには城戸一真という男は存在していない。

 

怪しまれるくらいならいっそ全部暴露してやろうと考えていたからな。

 

「・・・それだけの理由で?」

 

「うん色々考えたんだけどそれしか思い浮かばなかった」

 

「・・・ふ、ふっふふ、あ、呆れたわ・・・そんな今まで隠し通していたすごい秘密を打ち明けてくれたからどんな理由かと思ったらそんな事だったなんて・・・ふふふ」

 

「笑うなんてひどいな暁美さん、そんなにおかしいかな?」

 

こっちは結構な緊張と覚悟をして話したのに。

 

まあ暁美さんも警戒を解いてくれてし暁美さんの態度も中々の好感触だ。

 

話して最初はどうなるかと心配してたけど杞憂に終わってよかった。

 

これで暁美さんと仲間になってもらえなくてもせめてワルプルギスの夜の時だけでも共同戦線を結べてマミさんと仲直りできれば負けはしない。

 

そう思ったその時・・・

 

 

 

 

 

「やれやれ他人に聞かせたくない大切な話を何の対策もなしにしないでもらえるかな?」

 

 

 

 

 

一番来てほしくない最悪なタイミングで最悪なやつがぶち壊しに来やがった。



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第26話 時間遡行者と転生者(その2)

【一真サイド】

 

俺、城戸一真は夜の公園で暁美さんに俺の秘密をすべてを打ち明けて彼女に見滝原市に出現する超大型魔女ワルプルギスの夜との共同戦線を要請した。

 

暁美さんも俺の話に理解を示してくれて上手くいきかけたその時、俺でもドライグでも暁美さんでもない第四の声が耳に入ってくる。

 

あの声は!?

 

突如、星が出ているのも関わらず稲妻が走り周囲の景色が歪み始める。

 

「何これ、まさか魔女の結界!?」

 

「違う!これは・・・」

 

この見覚えのある現象はまさか…

 

「どこを見てるのさ、こっちだよ」

 

声の先には見滝原の制服を着て街灯に背を預け腕を組んだ上条恭介の姿があった。

 

「上条!?いつからそこに!」

 

やっぱりこの現象は上条の人払いの結界か。

 

くそ!よりによってこんな時に・・・

 

いやこんな時だからこそか。

 

「か、上条・・・・恭介?なんで?」

 

突然現れた上条に驚きを隠せな暁美さん。

 

「君達が町中で再会してソウルジェムの秘密を話して暁美ほむらが銃を抜いた時からだよ」

 

『バカな!?魔力はもちろん気配すら感じなかったぞ!』

 

『当然だ、私は入学式の時のように感知されないように魔力を遮断すればいいし恭介も気配を消すぐらい動作もない」

 

ドライグの疑問に上条の白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)に宿る二天龍の一角アルビオンが答える。

 

最初からだと!?

 

全く気がつかなかった。

 

くそ!俺はまだまだ修行が足りないか。

 

だが今は落ち込んでる場合じゃない。

 

深呼吸して何とか落ち着きを取り戻す。

 

「自分が別の世界から来た転生者である事を暁美ほむらに話したようだね」

 

「・・・ああ、じゃないと未来から来た彼女に味方である事を信じてもらえそうになかったからな。悪いなもしかしたら転生者の話をしたんでお前の正体も薄々感づいてしまうかもしれないが」

 

俺は上条の約束を守り白龍皇の正体は話していない。

 

だがそれは屁理屈で上条が納得してくれるのかどうか分からなかった。

 

隠し事していたら勘のいい暁美さんはそれに気づいて関係に溝ができてしまう。

 

暁美さんに危害を加えれるなら気ならワルプルギスと戦う前に上条と決着をつけるしかない。

 

そう思って俺は籠手を出して構える。

 

「・・・まあいいさ彼女の性格を考えるとベラベラと僕の正体を他人に言いふらさないだろうし」

 

だが俺の予想に反して暁美さんに自分の正体を知られても関係ないといった口ぶりの上条。

 

俺が危惧していた理由は本来の時間軸通りなら『上条恭介』は事故で入院中だと暁美さんは知っている。

 

けどこの時間軸の上条は元気にしているのでさやかさんを気に掛けるイレギュラーな存在の白龍皇の姿を見て、いずれ正体に気づいてしまうかも知れないと予感があったからだ。

 

奴が暁美さんに危害を加えない保障はどこにもないので構えを解くわけにはいかない。

 

街灯から離れ組んでいた腕を外し上条がゆっくりと俺達の方に近づいてくる。

 

「それにこちらから出向けばわざわざ話さなくていいから手間が省けてちょうどよかったよ」

 

上条の身体から魔力が発せられる。

 

まさか公園で戦う気か!

 

「ど、どういうこと!?なんでここに上条恭介がいるの・・・それにその魔力は!」

 

上条がただの人間と思っていた暁美さんが驚いてるな。

 

こうなったら話すしかないか。

 

「・・・上条恭介、奴も俺と同じ並行世界から来た転生者だ」

 

「え!?嘘・・・上条恭介は他の時間軸でも存在しているのに」

 

暁美さんが俺と上条の顔を交互に見る。

 

「正しく言えば憑依って言うんだけどね。最初から自分の肉体である城戸君と違って僕は自分の魂を上条恭介の肉体に移し替えてもらったからね」

 

憑依っていうのか。

 

色々言いたい事もあるけど今はそれどころじゃない

 

「今まで俺以外に正体を明かさずに魔法少女の誰とも積極的に接触しなかったお前が今更何の用だ?」

 

「暁美ほむらを勧誘に来た」

 

「何?」

 

暁美さんを勧誘だと?

 

今までマミさんや杏子ちゃんが魔法少女になった時は勧誘なんかしなかったのに。

 

どういうつもりだ。

 

文句を言いたいが今は我慢してこいつの話を聞こう。

 

何を企んでいる。

 

「わ、わたし?」

 

いきなり名前を呼ばれ暁美さんも驚いてるな。

 

「そうだ、暁美ほむら、僕と手を組まないか?君は佐倉杏子や巴マミと違い魔法少女の秘密を知り目的の為なら他者を切り捨てられる合理主義だ。そしてこれから起こる事態も知っている。君は鹿目まどかを護りたい、そして僕はさやかを護りたい。互いに護りたい者がいる者同士利害が一致すると思うんだけど?」

 

なるほどそれが暁美さんを勧誘しようとする理由か。

 

「そ、それは」

 

突然の事で頭が困惑してるな。

 

「理想しか語らない城戸君より強い僕と組んだ方がお得だと思うけどね」

 

この野郎、一回勝ったぐらいで調子に乗りやがって

 

こっちはあれからさらに強くなってんだ。

 

もう二度と負けるかよ。

 

「本当にそれがお前の本心なのか?お前の言ってる事怪しすぎなんだよ」

 

「・・・どういう意味かな?」

 

「確かに利害が一致してるように見えるよ。けど例えばまどかさんかさやかさんどっちかしか助けられない状況になったらどうするんだよ?お前はさやかさんだけを護りたいって言ってたよな?」

 

以前思い至った予想をぶつけてみる。

 

「まさか・・・」

 

暁美さんは俺が何を言おうとしてるのが分かってしまったみたいだ。

 

「つまりその時はまどかさんがどうなろうと知ったことじゃない。暁美さんの背後から攻撃してさやかさん助けてまどかさんを見捨てるって事もあるよな?その証拠にお前はさやかさんを魔法少女にさせない為にマミさんを狙っている」

 

「・・・・」

 

「無言は肯定と受け取るぞ」

 

図星か、当たって欲しくなかったよ。

 

できればかつての友である上条・・・鈴木君とも一緒にワルプルギスの夜と戦いたかった。

 

さやかさんを護りたい気持ちも分かるし君が味方になればこれほど心強いものはないから。

 

けどマミさんやまどかさんも傷つけようとするなら俺はお前と戦う。

 

「まあ暁美さんに選択する余地なんて本当の所ないんだけどね、これ以上インキュベーターが望む鹿目まどかの魔法少女の素質を高めたくなければ」

 

こいつまさか無理やり仲間にする為に暁美さんも知らない秘密をここで話すつもりか!

 

「やめろ!上条!」

 

「何それ・・・なんでまどかが関係あるのよ・・・」

 

だめだ暁美さんそれを聞いたら!

 

「教えてあげよう、君が並行世界を渡り歩き繰り返す事で今の時間軸の鹿目まどかにこれまで歩いてきた並行世界の鹿目まどかの因果線が螺旋の様に絡みついてしまった。その結果鹿目まどかの魔力係数が各段に跳ね上がり強力な魔法少女の素質が誕生したって訳だ」

 

「そ、そんな嘘よ!」

 

ほむらさんが狼狽する。

 

そりゃそうだ、まどかさんの為に今まで苦しみながらもやってきた事が結果、それはまどかさんを最強の魔女に育てる最大の要因になってしまったのだから。

 

「嘘じゃないさ、僕は君達の物語をすべて見ているんだ。そもそもおかしいとおもわなかったのかい?ワルプルギスの夜でさえ町一つを壊滅させるのがやっとなのに聖女だの女神だの呼ばれる偉人達でなくただの女子中学生にすぎない鹿目まどかが世界を滅ぼす最強の魔女に変貌する事態にさ」

 

「そ、それじゃあ私がやってきた事は・・・」

 

「そうだ、結果的に鹿目まどかを最高の魔法少女にそして最強の魔女に育て上げたのは他でもない暁美ほむら君自身だよ」

 

「そ、そんな…」

 

震えながら涙を流して膝から崩れ落ちる暁美さん

 

「上条!貴様!!」

 

俺はこの事は出るだけ隠したかった。

 

暁美さんの自分の願いを使ってまで時間を遡って理解されず一人で苦しんででもでもまどかさんを必死に護りたかった思いを馬鹿にされて頭に血が上り鎧を装着して上条に殴りかかるが上条も鎧を装着し障壁で俺の拳を防がれる。

 

「くっ!またこの障壁か!」

 

「やれやれまだ話は終わってないんだからもう少しおとなしくしていてくれないかな」

 

障壁の中から魔力弾が放たれ、とっさに両腕をクロスしてガードするが吹き飛ばされ距離を開けられる。

 

うっ!相変わらずの障壁の硬さと魔力弾の威力だ。

 

ピシッ・・・

 

「・・・へえ障壁に亀裂が・・・なるほどすこしはやるようになったみたいだな」

 

前にも戦って分かってけどあの障壁はやっかいだな。

 

普通のパンチじゃ亀裂は入れる事ができても割る事ができない。

 

あの障壁を普通のパンチでも割れるくらい強くならないと。

 

「さて城戸君の所為で話が脇道にそれてしまったがここからが本題だ暁美ほむら、君は鹿目まどかさんをこれ以上強くさせないためにもこの時間軸でワルプルギスの夜を倒さないといけない。君のかつての師である巴マミを犠牲にしてでもね」

 

「ど、どういう意味よ、なんで巴マミを!」

 

「城戸君にはもう伝えたけどさやかを護る為に本来の時間軸で巴マミの頭を食い潰した魔女『シャルロッテ』が生まれる前に体験コースをやめさせないと巴マミを僕が排除すると宣言した」

 

「そんな!」

 

暁美さんが俺を見て、俺も嘘をつくわけにもいかず悔しいが奴の言葉を肯定する意味でうなづく。

 

「驚くことないだろ、巴マミの所為で鹿目まどかは魔法少女の世界に足を踏み入れてしまった。彼女を生かせばどのみち鹿目まどかは魔法少女になってしまう。そしてそれは僕が護りたいさやかも同じだ。巴マミは害悪でしかないならここで始末するべきだ」

 

「そ、それは・・・」

 

まずい奴の言葉に乗せられて暁美さんもマミさんを消そうと考えてしまっている。

 

「それに君だって鹿目まどかを助ける為に美樹さやかを犠牲にしようとした考えてたじゃないか。君は僕と同類だよ」

 

「ち、違う・・・私は・・・」

 

「違わないさ!さあ!選択しろ暁美ほむら鹿目まどかを護って世界を救うか巴マミを犠牲にして絶望的な未来とやらを掴むか!」

 

「わ、私は・・・・・・」

 

俯く暁美さん。

 

「お前と一緒にすんなよ!」

 

俺の声に顔を上げた暁美さんと上条、二人が俺の方を向く。

 

彼女の選ぶ選択に口をはさむつもりはなかったがもう我慢できない

 

「・・・何?」

 

「確かに暁美さんはまどかさんを助ける為に誰かを犠牲にしようとしたかもしれない。けどな!暁美さんは信じてもらえなかったり助けようとしても失敗して何度も辛い現実に遭遇してもギリギリまで悩み苦しみ抜いて出して思いとどまった。お前みたいに楽だからって簡単に出した答えとはまるで違うんだよ」

 

「城戸一真・・・」

 

俺だって人の事をとやかく言えない。

 

運命の決定力の所為で杏子ちゃんとマミさんをインキュベーターの契約から守れなかった俺にはな

 

でもだからって暁美さんが悪く言われるのは黙って見ていられなかった。

 

「テレビのヒーローの台詞を言葉巧みに使って彼女を引き込もうとした男の言葉とは思えないね」

 

ここで暁美さんにそれをばらして俺の評価を下げて失望させて引き込む気か。

 

「確かにあの言葉はセブンさんの受け売りで俺の言葉じゃない、だがそれを聞いたのはテレビの中じゃない。一年前お前に敗れて不完全な王の駒(キング・ピース)を渡してしまって責任を感じた幼女神リュネが夏休みに別世界にいる本物のウルトラ兄弟にひき合わせてくれたんだ。そしてウルトラ兄弟から直々の猛特訓を受けた最終日に直接言われた言葉なんだ」

 

夏休みの辛かったけど楽しかった修行を思い出す。

 

「他にも俺はセブンさん以外のウルトラ兄弟から言葉を貰った。その言葉を胸に刻んで俺は杏子ちゃんやマミさん、暁美さんと一緒にワルプルギスの夜を倒して希望の未来を掴む」

 

強くなっただけじゃない。

 

あの特訓のおかげで俺はまた立ち上がる事ができたんだ。

 

「なるほど君の技がさらに鋭さを増し僕の障壁にヒビが入るほどの威力が増したのはそれが理由か・・・それで僕に勝てるとでも?」

 

「勝つさ、なにがなんでも」

 

負けてやられそうになったあんな悔しい思いはもうたくさんだからな。

 

「実に根拠のない君らしい可能性だけの話だな」

 

自分でも分かってるよそんな事。

 

俺は頭が悪いからうまく言葉にできなかったけど伝えたい事も全部言ったんだ。

 

これで暁美さんがお前の所に行っても俺は考え方を曲げない。

 

まどかさんもさやかさんを護り、マミさんと杏子ちゃんと一緒に戦う。

 

これが俺だから。

 

「そう…それがあなた達の答えなのね…」

 

ゆっくり俺から離れて上条の方に歩いて行く。

 

俺は鎧を解除してただ見ているしかなかった。

 

彼女が決めた事だ。

 

止める権利は俺にはない。

 

悔しいな…

 

やっぱ俺の考えが現実的じゃない上に他人から借りた偽りな言葉じゃ暁美さんには信じてもらえないのか。

 

「聡明な判断に感謝するよ、暁美ほむら」

 

鎧を解いた上条が手を差し出す。

 

暁美さんも手を出して上条の手を掴もうとする。

 

上条の手を取ると覚悟したその時・・・

 

パシッ!?

 

上条の近づいて手を振り払う乾いた小さな音が公園内に響く。

 

「・・・なんのつもりだ?」

 

予想外の事態に暁美さんを睨む上条。

 

「あなたが私の同類ならあなたは美樹さやかの為にまどかを犠牲にする。私はあなたの同類なんかじゃない!私もまどかと美樹さやかを護って城戸一真や佐倉杏子、そして巴マミと一緒にワルプルギスの夜を倒して一緒に希望を掴むわ!」

 

突然暁美さんがなにかを取り出して口でなにを引き抜くのが見えた。

 

あれは・・・スモークグレネード!

 

「しまっ・・・!?」

 

驚く上条の目の前でほむらさんの手元から緑色の煙が発生して公園全体を覆う。

 

「ゴボッ!ゴボッ!ほ、ほむらさんどこ?」

 

煙で視界を防がれさらに喉に痛みを感じながらも暁美さんを探す。

 

「え!何!?」

 

「黙ってついてきなさい、こっちよ」

 

ふいに腕を引っ張られ見えないけどとりあえず引っ張られる方へ走っていった。

 

「ゴホッ!くそ!どこだ!!」

 

見えないがおそらく目を抑え痛みに苦しむ上条の怒声がする。

 

「まどかに危害を加えるようとしたら録音したここでの会話を美樹さやかに聞かせるから覚悟しておきなさい!」

 

走りながら振り向きほむらさんが上条に叫ぶ。

 

録音何ていつの間にしたんだ。

 

こうして俺とほむらさんは煙が充満する公園から逃げだした。

 

「・・・やれやれ主導権は向こうに握られてしまったか。まあいい今はそちらに譲ろう取り返す手段はいくつもある」

 

結界は解かれ上条は公園から姿を消した。

 

その後煙幕が覆う公園に警察が押し寄せてきたが空になったスモークグレネードが落ちているだけで首謀者は見つからず警察は質の悪いイタズラとして処理したと次の日の新聞に片隅に小さな記事が載っていたのだった。

 

 

 

「ハァハァハァ」

 

「ハァハァハァ」

 

俺とほむらさんは長い距離を全速力で走り、公園の外にあるビルの裏で汗を流しながら肩で息をする。

 

途中で人や車が石のように止まっていたけどあれって暁美さんの時間停止の魔法なのかな。

 

「と、ところでいつのまに録音なんかしたの?」

 

息を整えながら俺は上条から逃げる時にほむらさん言っていた録音を思い出して訪ねる。

 

状況的に助かったが上条が証拠隠滅を図り暁美さんを狙わないとも限らない。

 

「あれは嘘よ、ああ言えばあの男も軽率にまどかに手を出さないでしょ」

 

ブラフか、確かにああ言われれば上条はまどかさんには手を出さないだろうな。

 

暁美さんなら逃げきれるだろうけど無茶したもんだ。

 

「私が本当にあんな男の誘いに乗って付いて行くと思ったの?」

 

う…合理主義な暁美さんなら理想しか語れず弱い俺より現実的で強い上条に付いて行くとあの時は思ってしまった。

 

「はああ・・・私はあなたを信じているんだからあなたも私を信じてほしかったわ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

俺の態度を見て察したのかあきれ顔になったので頭を下げて謝る。

 

俺も心のどこで暁美さんを信じ切れてなかったのか

 

反省しなきゃ。

 

「冗談よ。でも約束して必ず巴マミを助けるって」

 

「分かっている、けどどうして?」

 

「な、なにがよ?」

 

「どうして俺を信じてくれたの?」

 

あの時、俺はほむらさんが上条側に付いて行くと完全に思っていた。

 

だが彼女は上条の手を振り払い俺の手を取って上条から逃げた。

 

二人共信用できないのなら俺をあの場に置いて行けばいいのにもかかわらず。

 

なのになんで・・・

 

「上條恭介は言ってる事は理にかなっていたわ、けどあなたの言葉には上条恭介にない気迫と優しさと説得力のようなものがあった、だからあなたを信じてただけよ」

 

それって・・・

 

「仲間になってくれるの?」

 

「ええ・・・でも勘違いしないであくまでも仮に信じているだけ、信頼できないと思っらすぐに切り捨てて今までのように私だけで戦うわ、あとはあなたのこれからの行動で示して」

 

「分かった約束するよ暁美さん」

 

「・・・ら・・・よ」

 

あれ?なんか不満顔になった。

 

俺に何か気に障るような事言ったかな。

 

「……ほ、ほむらよ」

 

赤い顔した暁美さんがモジモジしながら小さな声が聞こえた。

 

「へ?」

 

「か、仮とはいえ私も佐倉杏子達の様に仲間になったんだから、わ・・・私の事もほむらって・・・な、名前で呼びなさい」

 

「あ、あのなんか無理してるような気が・・・」

 

「し、仕方ないでしょ!男の子に名前で呼んでいいなんて言ったの今までなかったんだから」

 

「う、うん分かったよ、ほむらさん」

 

そう言うと彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。

 

これがほむらさんの本当の笑顔なんだな。

 

「さん付けしなくていいわ、あなたは私より年上なんでしょ?年上にさん付けされるのはくすぐったいから」

 

「え?いやそれはさすがに異性に対して呼び捨てで呼ぶのは抵抗があるんので」

 

「な、何か問題あるの?例えば佐倉杏子に申し訳ないとか…」

 

「なんでここで杏子ちゃんの名前が出るの?」

 

「・・・まあいいわ佐倉杏子達に黙って動かないといけない時は私にちゃんと言いなさい。フォローしてあげるから」

 

「いいの?」

 

今回のマミさんとのケンカの要因の一つは俺が焦って動き事情を知らないマミさんに不信感を煽ってしまったのが始まりだからほむらさんの申し入れは正直嬉しい。

 

「私に協力してくれるんでしょ?なら私もあなたに協力するわ」

 

「ありがとう助かるよ」

 

「あと学校では私の事は暁美さんと呼んで今まで通りに接しなさい」

 

「なんで?仮だけど仲間になったんだから仲良くしようよ」

 

「佐倉杏子から余計な誤解をされたくないからよ」

 

「だからなんで杏子ちゃんの名前が出てくるの?」

 

「それくらい自分で考えなさい!!」

 

なんで怒られたのかよく分からないけど仮とはいえほむら…さんが信じてくれて仲間になってくれたんだ。

 

よし気合い入った。

 

この笑顔を裏切らない為にも必ずワルプルギスの夜を倒してやる!

 

その為にまずはマミさんと仲直りしないと。




ほむほむが仲間になりました。
わりとあっさり仲間になった事に不満や違和感を感じたかもしれませんがそこは御容赦を、これが今の私の精一杯です。

長くなったから二つに分割したけど一真パートと上条パートできれいに分けれてよかった。


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第27話 無自覚な悪意

【一真サイド】

 

 

「ごめんね巴さんが会いたくないってさ」

 

「・・・そうですか、すみませんお手数おかけしました」

 

マミさんのクラスの前で三年生の女子の先輩に頭を下げてその場を離れる。

 

「やっぱり避けられてるな」

 

ほむら・・・さんにすべてを打ち明けた次の日

 

マミさんと和解しようと三年の教室に行きクラスメイトの方に頼んで呼んでもらおうとしたが会いたくないと言われ拒絶されてしまった。

 

杏子ちゃんはもうマミさんの事はほっておけと言うけどそういう訳にもいかないし。

 

ほむらさんも巴マミの事は自分でなんとかしなさいって言われてしまう。

 

ただまどかさんとさやかさんが契約しないように見張っておくから巴マミとの和解に専念しなさいと言ってくれたんだ。

 

それだけでもヨシとしよう。

 

しかし昨日の今日とはいえさやかさん達まで避けられるなんて。

 

さやかさんは話かけても返事してくれず、まどかさんに話し掛けようとしたらすぐさやかさんがまどかさんを連れて行くからな。

 

まどかさんは申し訳なさそうにこっちを見てたけど。

 

まあ仕方ないか、彼女たちが慕っているマミさん相手に目の前であんなケンカしたんじゃ・・・

 

予想はしてたけどやっぱ辛いわ。

 

「仕方ないまた来よう…」

 

今日は諦めて明日また出直そうと三年の校舎から二年の自分の校舎に戻ろうとしたら。

 

「お、そこにいるのは恩人じゃないか」

 

「呉先輩?」

 

背後から声を掛けられ振り返ると入学式以来会っていなかった呉キリカ先輩の姿があった。

 

「久しぶりだね恩人、元気してたかい?」

 

「お久しぶりです、入学式以来ですよね?今までお見掛けしませんでしたがなにかあったんですか?」

 

マミさんに会いに何度か三年の校舎に訪れたが直接会ったのはこれが初めて。

 

いくら学年が違うからって何度か三年の校舎に俺は訪れていたからすれ違うくらいはする筈だ。

 

もしかして病気か事故で休んでいたのか?

 

「なにもないよ、織莉子に言われて久しぶりに登校したんだ。けどやっぱり登校しても楽しくなかったけど恩人にまた会えたのが幸運だったよ」

 

織莉子さんって呉先輩の友達かな?

 

相変わらず自由すぎる人だ・・・。

 

「で、恩人はどうしてここに?ここは三年の校舎だよ」

 

「え?ああ、知り合いの三年生に会いに来たんですけど会ってもらえず帰る所だったんです」

 

二年の俺が三年の校舎をうろついてたら気になるか、まあ隠してもしょうがないし正直に話そう。

 

「なんだってそれはひどい!よし私が連れて来てあげる。何組の誰だい?」

 

「い、いえいえいいんです。ちょっとケンカしているだけですし、これは俺自身で解決しないといけない問題ですから」

 

呉先輩の気持ちは嬉しいけど先輩を魔法少女の問題に巻き込む訳にはいかないしマミさんを無理やり連れて来られたら余計に話がややこしくなりそうだしな。

 

「そうか、なにかあったらいつでも私に言うんだよ恩人。私はまだ君から受けた愛を返していないんだから」

 

あ、愛って・・・。

 

こんな人通りの多い廊下で誤解を招かれる言い方は恥ずかしいな。

 

「じ、じゃあせめて恩人って呼ぶのやめてもらえますか?」

 

「え?恩人は私に恩人って呼ばれるの嫌なのかい!?」

 

わかりやすいぐらいショックを受ける先輩。

 

「う、うう・・・まだ愛を返していないのに恩人に見捨てられた」

 

さらに先輩は膝をついてうなだれる。

 

だから誤解を招かれる言い方はやめてくださいって!

 

う、うわ三年の先輩方がこっち見てヒソヒソしてるし。

 

「そうじゃなくて俺には城戸一真って名前がありますから名前で呼んでほしいんです」

 

先輩の財布を見つけたのはもう一年も前の事で見つけたのは俺一人の力じゃなくまどかさんも手伝ってくれた。

 

だから恩を感じてもらえるのは嬉しいけどいつまでも恩人って呼ばれるのはちょっと恥ずかしい・・・

 

「そ、そうか名前で呼べばいいんだね。分かったじゃあ恩人はカズマって呼ぶよ」

 

顔をあげて喜んだ表情の先輩。

 

う、うん確かに名前で呼んでと言いましたがまさか苗字の方じゃなく本当に名前で呼ぶなんて思わなかった。

 

本当に今時珍しいくらい純粋なんだな。

 

少し唖然としていると午後の授業を開始するチャイムが鳴り響き始める。

 

ヤバイ、次の授業は早乙女先生だ。

 

遅れると愚痴の相手に付き合わされる。

 

「呉先輩、次の授業が始まったのでこれで失礼します、じゃあ」

 

「あ、待って!カズマ!」

 

先輩が呼び止めようとするが遅れると非常にマズいので手を少し上げ挨拶し急いで教室に戻った。

 

え?授業に間に合ったかって?ハッハハもちろん遅れて愚痴の相手に付き合わされたさ。

 

外見は思春期まっさかりの十四歳の生徒相手に男女関係のドロドロした愚痴こぼしてストレス発散なんかしてんじゃねえ!

 

そんなんだから男に逃げられるんだよ。

 

コンチキショー!!

 

 

 

~~まどかサイド~~

 

私、鹿目まどかはマミさんとさやかちゃんに第二弾魔法少女体験コースに誘われて夜の公園に訪れていた。

 

ママにはさやかちゃん達と遊ぶから遅くなるけど門限までには帰るからと前もって話をしてある。

 

さやかちゃんとマミさんがいるから大丈夫だと思うけどつい先日にこの公園に煙が充満する事件が起きたばかりだから少し怖い。

 

「ティロフィナーレ!」

 

マミさんの魔法の鉄砲で撃たれた使い魔は消えていった。

 

「ふう」

 

「さっすがマミさん」

 

「こら美樹さん、遊びじゃないんだから気を抜かないの」

 

「えへへ、ごめんなさい」

 

マミさんに叱られ笑いながら自分の頭を軽く叩くさやかちゃん。

 

杏子ちゃんがいたら緊張感ないって怒られそう。

 

「なんかここんところはずればかりですね。さっきの奴もグリーシード落とさなかったし」

 

さやかちゃんがグリーフシードが落ちてないかと辺りを見回すが当然落ちていない。

 

《あれは魔女から分裂した使い魔だからね》

 

「使い魔だって成長すれば魔女になるし成長する為に人を襲うからほっておくわけにはいかないのよ」

 

マミさんとさやかがいるけど前の体験コースに来てくれた杏子ちゃんと一真君は来ていない。

 

なぜならマミさんが二人を呼ばなかった。

 

二人は私達が魔法少女になるのに反対で体験コース自体をやめるようにマミさんに言ったけどそれが原因でマミさんが怒って一真君達とケンカしてしまった・・・。

 

二人が反対する理由は分かる。

 

魔女と戦うことは命懸けの危ない事でマミさんも一真君も杏子ちゃんも戦って何度も怪我をしてしまったそうだ。

 

私も痛いのは好きじゃないし怖い。

 

一真君はしっかりした戦う理由もあるし杏子ちゃんも家族を助ける為に魔法少女になったやむおえない事情があった。

 

世の中には病気や怪我などで今も苦しんでいてそれを変えてたいと命を賭けてでも願う人達がいる。

 

でも私は何不自由なく幸せでただなにもできない自分を変えたいだけで戦う理由も事情も願いもない。

 

困っている人達を押しのけてまで私は願いを叶えてもらう権利を貰い魔法少女になっていいのかな・・・

 

「・・どか?まどかってば!」

 

「え?何さやかちゃん」

 

さやかちゃんに呼ばれて考え事から引き戻される。

 

「何かじゃないよ、何ボーッとしてるのさ、そろそろマミさんが次行くって」

 

「ご、ごめんね」

 

またやっちゃった…。

 

「なにもしかして一真の事、まだ気にしてんの?」

 

「う、うん…」

 

またさやかちゃんに考えてた事を当てられちゃった。

 

そんなに私は分かりやすく顔に出やすいのかな。

 

「やっぱりそこまで気にしないでいいんじゃないの?」

 

「でも一真君はマミさんとケンカしてまで私達を心配してくれたから…」

 

「そ、そりゃそうかもしれないけど、私も一真にひどい事言っちゃったし」

 

一真君の左腕の事を知っているさやかちゃんも落ち込んだ顔になる

 

「そうね、でもだからってあなた達がそこまで気にする必要ないわよ…私が決めた事だから」

 

「マミさん…」

 

そう言ってるマミさんも少し寂しそうな顔してる。

 

今まで一緒に戦ってきた一真君や杏子ちゃんと別れてやっぱりマミさんも辛いんだ。

 

同じ仲間なのにどうしてこうなっちゃったんだろう?

 

《確かに左腕を失った城戸一真の言っている事は正しいのかもしれない、でもだからってそれに君達が従う必要はない。君達は君達のやり方で魔法少女になって彼に認めさせたらいいよ》

 

「ほ、ほら、キュゥべえもこう言ってるんだからさ、気にする必要なんてないって」

 

「う、うん…」

 

うまくはぐらかされて気がするけど本当にそうなのかな。

 

キュゥべえの言ってる事は正しいんだよね。

 

私たち間違ってないよね。

 

「そうだ!いいこと思いついた。私の願いで一真の左腕を元の人間の腕に治してもらおう。そしたら一真も私に感謝して魔法少女になった事も認めてくれるよ」

 

え、えええええ!

 

「ねえキュゥべえ、それって可能?」

 

《可能だよ。他者の病気や怪我を治す願いを叶えたのは前例がないわけじゃないからね。でもいいのかいそんなことに願いを使って?魔法少女になってくれるなら僕としてはそれでもいいけど》

 

「いいよいいよ、めちゃくちゃ強い一真や杏子、それにマミさんだっているしむしろ私に役に立つかなって思ってるから」

 

だ、だめ、止めないと!

 

そんなことしても杏子ちゃんも一真君は喜ばない。

 

「だ、ダメだよさやかちゃん」

 

「ええ別にいいじゃん一真は腕が治って私も魔法少女になるきっかけができて一石二鳥じゃない」

 

「ダメよ!美樹さん!」

 

マミさんが本気で怒り声を荒げる。

 

「マ、マミさん」

 

普段の優しいマミさんに怒られて私とさやかちゃんも驚いてマミさんを見る。

 

「美樹さん、あなたは一真君の恩人になりたいの?それとも認められたいから魔法少女になりたいの?」

 

「え、えっと…それは…」

 

「他人の為に願いを叶えるならなおのこと自分の望みをはっきりさせておくべきだわ。同じようなことでも全然違う事なのよ」

 

「・・・・・・っ」

 

さやかちゃんが辛そうに視線を逸らし押し黙ってしまう。

 

「マミさん・・・」

 

「きつい言い方でごめんなさい。だけどそこを履き違えたまま進んだらきっと後悔してしまう。私は事故でそうするしか道がなかったから選択の余地のあるあなたちはきちんと考えて決めてほしいの」

 

マミさん・・・私達の為に真剣に考えてくれたんだ。

 

そう思ったら変わりたいからと魔法少女になろうとする自分が少し恥ずかしくなった。

 

「あたしの考えが甘かった、ごめん」

 

よかったさやかちゃんが考え直してくれて。

 

「難しい事よね…でも大切な事だから焦って決めるべきじゃないわ」

 

《僕としては早い方がいいんだけどね》

 

「だ~め!女の子を急かす男は嫌われちゃうぞ」

 

「「あはは・・・」」

 

今日の魔法少女体験コースが終わり私達は笑いながら公園を出て家に帰るのだった。

 

 

 

まどか達が数分後、なにもなかった所から空間を裂いて二人の男女が姿を現した。

 

「ったく、バカさやかの奴!一真、すまんアタシがさやかに左腕の事を話した所為で・・・」

 

「杏子ちゃんの所為じゃないさ、俺が反省会の時に隠さずにきちんと説明しておくべきだった、それよりマミさんに見つからないように幻惑の魔法まで使って俺のワガママに付き合ってくれてありがとう」

 

「気にすんなよ、あいつらも今日はこれで帰るみたいだしアタシらも帰るとするか」

 

「・・・そうだね(もう時間が無い…明日は無理やりでも話を聞いてもらわないと)」

 

 

 

次の日、学校が終わって帰宅中に私はキュゥべえを抱っこしてさやかちゃんと今日起こった事を話してた。

 

「しかし一真の奴、何考えてんだろうね」

 

「う、うん」

 

話題は今日の一真君とマミさんの出来事だ。

 

「いくら私らを魔法少女にさせたくないからってあんな風に無理やりマミさんに詰め寄ったらそりゃいくら温厚なマミさんだって怒ってビンタぐらいするよ」

 

聞いた話で直接見たわけじゃないけど今日一真君は屋上に呼びだそうとしたらしい。

 

けどマミさんはそれを無視して屋上には行かず、業を煮やした一真君はマミさんの教室に乗り込んでマミさんの手を無理やりに掴んで屋上に連れて行こうとしたけど一真君の手を振り払ったマミさんが一真君に平手打ちしたそうだ。

 

その後一真君はマミさんに強め寄ろうとしたけど教室にいた男子の先輩達に教室から追い出されたと聞いた。

 

周囲は痴話喧嘩とか痴情のもつれとか修羅場とか言って騒いでいるけど事情を知る私とさやかちゃんには一真君がマミさんに何を話そうとしたのか分かる。

 

きっと私達を魔法少女にさせない為に魔法少女体験コースを止めるように言いに行ったんだ。

 

「まったくそんなに私らを魔法少女にさせたくないのかな、選ぶのは私らなのに」

 

一真君なんでそこまでして私達を魔法少女になる事に反対なんだろ。

 

いくら私達を心配しているからってすこし行き過ぎのような気がする

 

何か別の理由があるのかな。

 

明日聞いてみよう。

 

え?今何か病院の駐車場の中で車に光が反射したとかそんなんじゃないなにかが光ったような?

 

「ねえ?さやかちゃん」

 

「何?」」

 

「あの柱にあるのってもしかして…」

 

私とさやかちゃんは急いでちかづくとそこには

 

《グリーフシードだ、孵化しかかっている!》

 

「嘘!?なんでこんな所に」

 

《まずいよもうすぐ結界が出来上がる》

 

そんなまたあの迷路みたいなのが病院の近くで出来上がるの。

 

ここには動けない入院患者さん達や救急車で運ばれる人達もいるのに。

 

もしその人達が魔女と使い魔に襲われたら。

 

想像したら怖くて振るえが止まらない。

 

どうしよう私は携帯電話は持ってないからマミさんの電話番号を聞いていないから連絡できないし。

 

携帯電話を持ってるさやかちゃんもいつも会っていたから連絡先を聞きそびれて悔しそうな顔をしている。

 

話し合って危険だけどさやかちゃんとキュゥべえが残って魔女を逃げないように見張ってその間に私が急いでマミさんを呼びに行くことになった。

 

キュゥべえが残るのはテレパシーで結界の中で魔女の居場所までマミさんを最短距離で誘導する為だと言う。

 

「あと一真と杏子には内緒にしておいて。今日の事でマミさんも一真と杏子に会いたくないだろうからさ」

 

え?今日は使い魔だけじゃなくて魔女もいるんだから一真君達もいた方がいいんじゃ…。

 

「待ってさやかちゃ…」

 

「じゃあまどか、マミさんだけを呼ぶの任せたよ」

 

一一真君達も呼びに行くべきだと言おうとしたら遮られさやかちゃんとグリーフシードを交互に見る。

 

いつ孵化するか分からないしマミさんを呼びに行くのが遅れたらそれだけさやかちゃんとキュゥべえが危ない目に遭っちゃう。

 

迷っている暇はない。

 

「・・・分かった。私すぐマミさんを連れて来るから」

 

急いでマミさんを呼びに行こうと駐車場を出たが走りながらもずっと悩んでいた。

 

ど、どうしよういくらケンカしているからって呼ばない方がいいのかな。

 

でもグリーフシードが孵化するって事は相手は魔女でこの前の目が一つの大きな斧を持った魔女みたいな強い魔女だったらマミさん一人だとほむらちゃんと杏子ちゃんの時みたいにまた私達が足を引っぱる・・・

 

だったら一真君と杏子ちゃんがいた方がいいんだけど。

 

さやかちゃんとマミさんに嘘をつきたくないし、けど二人にもしものことがあったら…

 

マミさんにひどい事をしようとした一真君は本当は悪い人なのかもしれない…

 

でも一真君はみんなの為に戦っていると言っていたし。

 

ど、どうしたらいいの・・・?

 

「あ…」

 

ふと目が一つの魔女と一真君と戦った次の日に放課後の教室でほむらちゃんの事を相談した出来事を思い出した。

 

それはキュゥべえを鉄砲で撃ったほむらちゃんが悪い魔法少女じゃないかと私に疑われてその所為で魔女の結界にとらわれた事を知り、どうしたらいいか分からず一真君に尋ねた時だ。

 

手を顎に置いて一真君は少し考えた後。

 

「暁美さんを信じてあげたらいいんじゃないかな。ほむらちゃんは悪くないって、そうしなければならない何か事情があったんじゃないかって。まどかさんが信じるあげる事こそが暁美さんが一番望んでいる事だと俺は思うよ」

 

「一真君・・・うんそうだね。私がほむらちゃんの事信じてあげなきゃダメだよね」

 

「うん、がんばってねまどかさん」

 

一真君はほむらちゃんを信じてあげるべきと優しくアドバイスをしてくれた。

 

だったら一真君も悪くないって私が信じなきゃ!

 

「あれは・・・」

 

その時今は珍しい公衆電話を見つける。

 

さやかちゃんには止められたけど迷ってる暇はない。

 

私は電話ボックスに入って紙に書いてる電話番号にかけて電話をする。

 

さっき慌ててたからさやかちゃんに言い忘れてたけどこの紙には一真君の携帯電話の番号が書かれている。

 

何かあったときは電話してほしいとこっそり渡された物だ。

 

お願い電話に出て。お願いだから一真君。

 

私は祈りながら電話のコール音を聞き一真君が電話に出るのを待った。




第二弾体験コースのくだりは一真の腕と事故に遭った原作上条の腕が左腕繋がりだったから書いてみた。
当初は体験コース中にさやかが使い魔に怪我させられて病院に行く流れ(包帯は巻いてあるけど骨に異常がなく打撲程度の怪我)にしようと思ったがマミさんが心情的に怪我させたことに責任を感じて一緒に来そうでまどかがマミさんを呼びに行く時に一真に連絡取れそうになく色々不都合が生じるからあえなく没にしました。



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第28話 タイム・リミット(前編)

おいしい絶望の作り方

希望という名の養分をたくさん含んだ上質な土

幸せという名のみずと不幸という名のストレス

ただしどっちも与えすぎたらだめ

おいしくなくなるから。

バランスよくね




※食堂で晩飯を食べてたら思い浮かんだのを書いただけなので特に本編とは関係はないです。


【一真サイド】

 

失敗した!

 

お菓子の魔女シャルロッテの孵化する日。

 

つまり原作でマミさんが亡くなる日を前もってほむらさんから聞いていて分かっていたのに。

 

孵化するまで時間がなかったとはいえ焦って説得が粗暴になってしまい怒ったマミさんに頬をぶたれ、早乙女先生に居残り説教されてしまった…。

 

その後待っていてくれた杏子ちゃんと合流してマミにひどい事をした件で杏子ちゃんにも叱られたけどそれ所じゃない。

 

ほむらさんが先に向かってくれたが原作通りに進むならほむらさんもマミさんの説得に失敗して怒ったマミさんに魔法で拘束されてしまう。

 

その後まどかさん達にいい所を見せたと油断したマミさんがぬいぐるみ形態からイモ虫形態に変化したシャルロッテに頭から噛みつかれる最悪の展開だ。

 

なんとかしてそれだけは防がなければ!

 

それとシャルロッテが孵化したらマミさんを始末すると宣戦布告した上条もこのまま黙って見ている筈がない。

 

時間がない急がないと。

 

それなのに・・・くそ!

 

「お前の相手をしている暇なんてないのに!」

 

俺とこれからマミさんに起きる悲劇を知らない杏子ちゃんはシャルロッテが孵化する見滝原病院に急いでいたがシャルロッテとは違う魔女と遭遇してしまい結界の中で戦闘になってしまっていた。

 

相手は大きなスカートと両手が巨大な剣、首にフワフワな白いマフラーを巻いた魔女と二股のナイフに変化する使い魔。

 

魔女の指示でナイフに形を変えた使い魔が次々飛んできて襲ってくる。

 

「これじゃあ奴に近づけねえ!」

 

俺は鎧を装着し、杏子ちゃんも変身して結界内になった巨大なサイコロのような置物の陰に隠れナイフをやり過ごす。

 

そしてさらに魔女の身体から冷気が発せられ、周囲が寒さで凍っていく。

 

「寒みいい」

 

俺は鎧のおかげで寒くないが袖のない魔法少女衣装の杏子ちゃんが両手を組んで寒さに耐えている。

 

とろあえず無いよりマシだろうと俺の長袖の制服を寒さにふるえる杏子ちゃんに投げ渡す。

 

「わるいな、た、助かる」

 

受け取りよっぼど寒かったのかすぐさま杏子ちゃんが制服を羽織る。

 

さて問題はこの状況だ。

 

遠距離攻撃の(すべ)のない杏子ちゃんの変わりにドラゴンショットで応戦するが使い魔達が身を挺して盾となるから魔女に攻撃が届かない。

 

距離を詰めた杏子ちゃんも槍を多節棍にして魔女を狙ったが使い魔に防がれてしまい逆にナイフ使い魔に襲撃されて何とか持ち前のスピードで傷を負いながらも逃げ切り危ない所だった。

 

傷はすぐ俺のリライブ光線で回復させたから致命傷じゃない。

 

しかし状況は最悪だ。

 

長期戦はこっちが圧倒的に不利だ。

 

このままじゃ寒さで体力と体温を奪われてこっちが先に参ってしまう。

 

そのうえ時間がないのに使い魔達は減る気配はなくどんどん増えていく。

 

「ど、どうすんだよ一真」

 

白い息を吐きながら俺にこの状況を打破する方法を尋ねる杏子ちゃん。

 

さてどうするか、鎧の防御を当てにして痛み覚悟で突撃するか?

 

いやあのナイフになる使い魔達の大量の数相手じゃ鎧の強度はどこまでもつか・・・

 

それにいまだ破壊力未知数の魔女の剣状の両手。

 

あれもどうにかしないと

 

強靭な剛腕を振るう龍帝(ストロングパワーフォーム)で鎧の強度と防御を上げられるがあれは筋肉が膨れて力が増す分スピードが失われる。

 

さっきから一定の距離を開ける素早い魔女に攻撃が当たるかどうか怪しいものだ・・・。

 

だがこのままなにもしないわけにはいかない。

 

早くしないとシャルロッテが孵化してしまう。

 

時間がない。

 

こうなったら疲労を覚悟で新フォームで一気に勝負をつけさせてもらう。

 

「杏子ちゃん危ないからそこから顔を出さないでね」

 

「お、おい」

 

俺は物陰から出てきて魔女や使い魔達の前に立ち塞がる。

 

魔女が右手の剣を向けると二股ナイフの使い魔達が俺に目掛けて飛んでくる。

 

「ふうう…はああ!!」

 

両手を頭の前でクロスして左右に振り下ろすと俺の全身が赤い光を放ち鎧の一部がはじけ飛ぶ。

 

「うわ!」

 

杏子ちゃんがまぶしくて右腕で目をガードする。

 

ごめん杏子ちゃん。

 

今は気にする事はできない。

 

せめて鎧の破片は杏子ちゃんの当たらないようにするから。

 

はじけ飛んだ鎧の一部が使い魔をはじき墜とす。

 

光が収まると鎧の二の腕と足の太股部分の装甲が無くなり赤い筋肉が露出し空気を切り裂くような鋭角な兜と肩アーマーに変化してさらに背中の龍翼も一段と大きくなっていた。

 

「一真の姿が変わった。それってまた新しいフォームか?」

 

「そう、これが奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)だ!」

 

左手甲からメビュームブレードを出して魔女にものすごい速度で向かって行く。

 

「は、速ええアタシ以上のスピードじゃねえか・・・」

 

そのスピードに唖然とする杏子ちゃん。

 

使い魔達を掻い潜ってどんどん魔女に近づいていく。

 

すれ違って置いていかれた使い魔達も慌てて引き返すが追いつけない。

 

魔女の前に来て、魔女が刃状の腕を振り下ろすが刃は当たらず空を斬る。

 

「一真が消えた!・・・いや違う速すぎて見えないんだ」

 

「はああああっ!!!」

 

消えたり現れたり目にも止まらぬ速度で動き回り魔女をメビュームブレードで何度も斬り掛かり次々と魔女の身体に切り傷が増える。

 

「か、一真の姿が全然見えねえ・・・なんか魔女が一人で勝手に切り刻まれてるように見える・・・」

 

戻ってきた使い魔達がキョロキョロと俺を探してその場に立ち止まり隙だらけになった所を次々真っ二つにしていく。

 

やがてすべての使い魔が消滅して一匹もいないと確認する。

 

これでいける。

 

とどめを刺そうとしたその時。

 

急に寒さを感じ始めた。

 

「これは・・・しまった!」

 

魔女の身体から再び冷気を放たれ動きが封じられそうになる。

 

奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)はスピードを上げる為に装甲を削っているので防御力が低下している。

 

その為今戦っている魔女の冷気を使った全体攻撃には非常に弱い。

 

ここのままじゃ凍ってしまう。

 

「させるか!」

 

「え!杏子ちゃん!?」

 

「お前があんだけ派手に動いてくれて気を引いてくれたからな、後ろに回り込むのが楽勝だったよ」

 

いつの間にか魔女の背後に移動していた杏子ちゃんがひし形のチェーンで魔女を縛り上げる。

 

魔女が急にビクッと体を硬直させたと思ったら急に首だけ左右に振り何かを探し始めた。

 

「どうしたんだ魔女の様子がおかしい?」

 

「一真、そいつはお前が見えていないやるなら今だ」

 

親指を立ててウインクする杏子ちゃん。

 

そうか、杏子ちゃんが拘束魔法で魔女の動きを封じて幻惑魔法で魔女の視界に俺を映らなくしてくれたんだ。

 

よしこれならいける。

 

「プロモーションキング!」

 

王の駒(キング・ピース)の力で発する熱が全身に凍り付いてできた氷を吹き飛ばす。

 

『Boost!』

 

さらにメビュームブレードに倍加の力を掛けてブレードの刃が赤くひとまわり大きくなる。

 

「これで・・・どうだ!」

 

動きを封じられた魔女に向かって突撃して腹部を赤いメビュームブレードが突き破った。

 

断末魔の叫びさえ上げず魔女は最後まで無言のまま消滅した。

 

悲鳴なしか、元々無口な魔法少女だったのかそれとも声が出せなかったのか・・・

 

倒した魔女の事を考えながら俺は奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)を解き元の赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)に戻る。

 

削った装甲が元に戻った為か体が少し重いな。

 

けどどうやらこっちの奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)強靭な剛腕を振るう龍帝(ストロングパワーフォーム)と違いそんなには体力を消耗しないようだ。

 

あれからも毎日鍛えてたおかげかな。

 

よかったこれならシャルロッテとまだ戦える。

 

「やったな一真!お、グリーフシードだ」

 

「ああ、お疲れさ・・・杏子ちゃん危ない!」

 

「え?うわあ!」

 

魔女がいなくなり地面を覆っていた氷も解けて結界も消滅し俺の足元に落ちているグリーフシードを拾おうとした杏子ちゃんを押し倒して庇い杏子ちゃんの立っていた場所にボーリングの玉サイズの水晶玉のような球体が飛んできて地面に直撃して穴を開けた。

 

「今のは一体!?」

 

もし杏子ちゃんがあそこに立っていたら無事ではすまなかったぞ。

 

「きゃ、きゃ、きゃずま!え?え?」

 

突然押し倒された杏子ちゃんが真っ赤な顔で混乱している。

 

無理もない命を狙われたんだから。

 

だが妙だ、周囲に結界は発生していない。

 

魔女じゃないのかじゃあ一体・・・まさか!

 

すばやく起き上がって混乱する杏子ちゃんを立たせて水晶玉の飛んできた方角を確認する。

 

「な、なんだこれ!」

 

後ろで杏子ちゃんが水晶玉が落ちてえぐられた地面を見て驚いている。

 

「誰だ!?」

 

水晶玉が飛んできた方向には浮遊するの五つの水晶玉を従えた白い帽子と純白のドレスを着た少女がこちらを見つめていた。

 

飛んできた水晶玉と浮遊してるのは同じ水晶玉。

 

じゃあこの子がさっきの攻撃を!?

 

結界が発生していないって事はこの子は魔女じゃなく魔法少女か。

 

一瞬例の魔法少女襲撃犯を連想したが証言は黒い魔法少女、だがこの子はどうみても服の色は白だし違うのか?

 

「なぜ俺達を攻撃した、目的はこのグリーフシードか?」

 

先ほど倒した魔女のグリーフシードを掲げて尋ねるが目の前の純白の魔法少女はなにも答えない。

 

「おい、こら何とか言えよ!」

 

自分が狙われたのを理解した杏子ちゃんが怒鳴る。

 

「黙ってないでいいかげんに!」

 

白い魔法少女の態度に業を煮やした杏子ちゃんが槍を振りかぶって突っ込んで行こうとした瞬間。

 

浮遊していた五つの水晶玉が杏子ちゃんに襲ってきた。

 

「危ない!」

 

素早く杏子ちゃんの前に割り込んで右腕を上に左腕を下にして垂直に構えて発生するプリズム状の光が相手の攻撃を防ぐウルトラマンガイアさんの『ウルトラバリヤー』を張って飛来してきた水晶玉を防ぐ。

 

けど水晶玉の数は増えて次々ウルトラバリアーを削っていく。

 

このままじゃバリアが持たない。

 

そして無情にも今までより一際大きい水晶玉が放たれてバリアがガラスの様に粉々に破壊され破られてしまった。

 

「うわあああ!」

 

バリアが壊れた事で衝撃でふっ飛ばされ倒れる。

 

「一真大丈夫か!?」

 

「こ、これぐらいなんともないよ」

 

杏子ちゃんが駆け寄ってきて倒れた俺を起こそうとしてくれる。

 

「よかった・・・てめえ!」

 

怒りの表情の杏子ちゃんが斬り掛かろうとするが白い魔法少女の周りを新たに召喚された大小様々な大きさの無数の水晶玉がこちらを向いており警戒して立ち止まる杏子ちゃん。

 

「・・・三十秒後、携帯電話に電話が掛かってくる」

 

「え?」

 

初めて喋る白い少女。

 

「オラクルレイ・・・」

 

どういう意味か尋ねようとする前にすべての水晶玉の先端に魔力で作られた刃が現れて次々襲ってくる。

 

あの数はバリアでも防ぎきれない。

 

あれが当たれば杏子ちゃんのソウルジェムが・・・

 

そんな事になったら杏子ちゃんの命が!

 

俺は杏子ちゃんに覆いかぶさり背中で魔力刃を受ける覚悟をして魔力刃の水晶玉が地面を削り砂煙を巻き上げた。

 

「ぐ・・・ぐあ・・・」

 

「か、一真!」

 

背中に大小さまざまな石の破片が跳んできて背中に当たる。

 

だがなぜか水晶玉自体は直接俺に当たっていない。

 

ど、どういうことだ?

 

数十分後、浮遊していた水晶玉がすべてなくなり砂煙だけが覆う。

 

「・・・赤い鎧の戦士・・・いずれ自分のやっている愚かさに気づいて貴方は後悔して絶望するでしょう、御機嫌よう」

 

そう言い残してその場から消える白い魔法少女。

 

数秒後、俺は龍翼を展開し羽ばたかせて風を起こし砂煙を吹き飛ばした。

 

「き、杏子ちゃん大丈夫?」

 

「な、なんとかな・・・あれアイツは?」

 

見ると白い魔法少女の姿はどこにもなかった。

 

逃げる為の威嚇だったのか?

 

だがもしあの攻撃が直撃していたら…

 

「くそ!なんなんだ!アイツ!」

 

杏子ちゃんが右手を握りしめ左手で受け止めパチンッと音がして悔しがる。

 

「グリーフシードは手元にあるし・・・あの魔法少女は一体なにが目的で・・・」

 

ピッピッピッピッピッピ・・・

 

「まさか!」

 

考え込む俺のポケットから電子音が鳴って響く。

 

それは俺の子供用の携帯電話だ。

 

「三十秒後、携帯電話が鳴る」

 

俺は最後に言ったあの白い魔法少女が言った言葉を思い出す。

 

この事を言っていたのか。

 

杏子ちゃんも驚いた顔をしている。

 

なおも鳴り響く携帯電話。

 

俺は恐る恐る通話ボタンを押し、耳に付ける。

 

「もしもし・・・」

 

「もしもし一真君?助けて!!」

 

電話からまどかさんの焦った声がする。

 

電話を掛けてきた相手はまどかさんだった。

 

だがその口調はいつもと違い焦っているように聞こえる。

 

まさかもう孵化が始まろうとしているのか。

 

「落ち着いてまどかさん」

 

なんとか冷静さを保ちながら答える。

 

「見滝原病院で魔女が生まれそうなグリーフシードをみつけたの!今さやかちゃんが見張ってるんだけどいつ生まれるか。私はマミさんを呼んでくるから一真君も早く来て!」

 

くっ!やっぱり原作通りシャルロッテは病院に現れてまどかさん達が巻き込まれてしまっている。

 

なんでだ?上条が入院していなければ病院に近づかないと思ったのに。

 

「分かった!俺もすぐに向かう。まどかさんはマミさんを呼んだら近づかな・・・」

 

突然電話が切れた。

 

向こうが切ったのか分からないが最悪な事になったぞ。

 

このまま原作通りに進んだらマミさんの命が危ない。

 

「おい一真、まどかたちになにがあったんだよ?」

 

「・・・まどかさんとさやかさんが見滝原病院に今にも魔女が生まれそうなグリーフシードを見つけて、まどかさんはマミさんを呼びにさやかさんはグリーフシードを見張っているらしい」

 

「はあ!?あのバカさやか何考えてんだ!」

 

「時間がない、急ごう杏子ちゃん!」

 

「けどここから見滝原病院までまだけっこうあるぞ」

 

確かにここから病院までかなり離れている。

 

まだ戦いは控えてるだがやるしかない。

 

両手を頭の前でクロスして左右に振り下ろし再び奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)に変身する。

 

「杏子ちゃん、ちょっとごめんね」

 

「え?ええ?お、おい!」

 

杏子ちゃんを両腕に抱えて横抱きする。

 

別名お姫様抱っこって奴だ。

 

「時間がない。文句なら終わってから聞くから」

 

「え?ええ?う、うわああああ!!!!」

 

龍翼を広げて飛翔すると一高速の為に一筋の光の線になって俺達は見滝原病院に向かった。

 

「お、なんだ、あの赤い光?・・・よしうまく撮れたぞ。帰って編集長に記事にできないか聞いてみるか」

 

しかしこの時誰かに俺達の写真に撮られたのに気づいていなかった・・・

 

 

 

 

 

 

~~マミサイド~~

 

「マミさんここです!」

 

「ええ!」

 

何も話してくれない自分勝手な一真君が無理やり話を聞かせようとした乱暴な態度に腹を立てて思わず叩いてしまい落ち込んでたけど魔女が現れたなら落ち込んでなんかいられない。

 

落ち込む気持ちを切り替えてソウルジェムを掲げて結界を開く。

 

《キュゥべえ、グリーフシードの状況を教えて》

 

《大丈夫すぐに孵化する様子はないよ》

 

結界の中にいるキュゥべえにテレパシーで連絡をとる。

 

私たち魔法少女はキュゥべえを介してキュゥべえや他の魔法少女、魔法少女の素質を持った子と離れた場所でも連絡を取り合えるが離れすぎていると連絡できない。

 

だが幸いにも結界外からでも連絡はとれた。

 

《急がなくていいからなるべく静かに来てくれるかい?迂闊に大きな魔力を使って刺激する方がマズイからなるべくならここに来るまで変身しないでほしい》

 

《オーケー分かったわ》

 

鹿目さんと一緒に魔女の結界に跳び込んだ。

 

「まったく無茶しすぎ・・・って言いたいけど今回は二人に感謝しないとおかげでこれなら魔女を逃さずに・・・誰!?」

 

結界の最深部に向かう道中、目の前に暁美さんが立つ塞がる様に物陰から現れた。

 

「ほむらちゃん・・・」

 

「またあなたなの?暁美さん」

 

「今回の魔女にはあなたじゃ勝てない、だから今日の獲物は私が狩る。もちろん二人の安全は保証するわ」

 

この先に孵化しようとする魔女がいて近くには美樹さんとキュゥべえが待ってる。

 

こんな所でグズグズなんかしてられないのに・・・

 

「・・・どういう意味かしら?私じゃ勝てないって?」

 

なぜ私が魔女に戦って負けると断言できるか分からないけどキュゥべえを襲った事実がある。

 

そもそも生まれてもいない魔女に私が勝てないとどうして暁美さんに分かるのか?

 

「そのままの意味よ、それにあなたは魔女より恐ろしく強い城戸一真の宿敵である白龍皇に命を狙われてる。狙いはまどかと美樹さやかの契約を防ぐ事。あなたが二人の契約を諦めれば狙われることはない」

 

一真君のライバルである白龍皇が私を狙っている?

 

白龍皇は一真君との決着をつけるのが目的なのにどうして私を?

 

「白龍皇ってあの白い鎧の人がマミさんを・・・」

 

鹿目さんが驚いているが私を引き下がらせる為の出まかせかもしれない。

 

「だから手を退けと?そもそも私が狙われているのをなんであなたが知ってるの?それを信用すると思って?」

 

魔力を感知して魔女が孵化しないか心配だが地面に手を置き魔法を発動させると暁美さんの足元から鍵付きチェーンが編み込まれたリボンが出て暁美さんを縛り上げる。

 

目的を教えず信頼もできない暁美さんの作り話をこれ以上聞く筋合いはない。

 

「しまっ・・・!?ば、バカ!こんな事やってる場合じゃ・・・!」

 

「大人しくしていたら帰りに解放してあげる。怪我させるつもりはないけどあんまり暴れたら保証しかねるわ」

 

暁美さんが暴れて拘束魔法を解こうとするが私の魔法はそう簡単には解けないわよ。

 

なにしろ模擬戦で赤龍帝の鎧を纏った一真君が力を込めても切れなかったんだから。

 

暁美さんが後ろで叫んでいるけど魔女が生まれる近くで美樹さん達が待っているのに聞く暇ない。

 

「くっ巴マミ、城戸一真の思いをムダにする気!!」

 

一真君の名前が出て思わず足を止めてしまう。

 

「確かに彼はやりすぎたしまった事は私も認めるわ・・・けどそれはすべて白龍皇からあなたを護る為だったの」

 

「・・・・・・・」

 

「マミさん・・・」

 

鹿目さんが心配そうに声をかける。

 

私だって一真君に対して思う所はある。

 

あなたより付き合いは長いんだもの。

 

城戸一真君。

 

年下だけど頼りになる男の子。

 

初めて会ったのは私がまだ魔法少女として新米だった頃

 

私は魔女に囚われた子供を助けようとしたが力不足で助けることができず自分の命惜しさに逃げようとした時。

 

彼は魔女の部屋の扉を突き破って現れた。

 

最初見た時なんで魔法少女でもない男の子がこんな所にと思った。

 

でも彼は普通の男の子とは違い魔女と戦える力を持っていて子供を助ける為に懸命に魔女と戦い。

 

魔女を倒す為に自分の左腕を犠牲にして私が倒せなかった魔女を倒してくれた。

 

彼がいなかったら私は子供を見殺しにして今でも後悔し続けてたかもしれない。

 

魔女を倒した一真は逃げようとした私を攻めずに一緒に戦おうって誘ってくれた。

 

一緒に戦ってくれる仲間ができて私はもう一人ぼっちじゃ無くなったんだと嬉しかった。

 

その後、魔女や使い魔と戦いの日々は続いたけど辛くはなかった。

 

一緒に笑ったり魔法の特訓したり魔女と戦う作戦を考えたり遊びに出かけたり勉強を教えてあげたり食事を一緒に摂ったり魔法少女になって初めて心の底から楽しい時間を過ごせたから。

 

……でも一真君の隣には佐倉さんがいた。

 

暁美さんと初めて会ったあの日、一真君は今日みたいに珍しく焦っていたわね。

 

訳を尋ねても彼は結局何も話してくれなかった。

 

どうして仲間なのになんで相談してくれないの?

 

私の中で彼に対する不信感が生まれたのはこの時だったと思う。

 

そして巻き込まれた鹿目さんと美樹さんを助けた時、美樹さんから他の魔法少女を襲撃する黒い魔法少女の存在を知り、黒い魔法少女服を着た暁美さんがキュゥべえを襲ったと聞かされ私は暁美さんにマスケット銃を向けた。

 

キュゥべえは魔法少女という希望を振りまく私の友達だ。

 

そんなキュゥべえをグリーフシード独占という私利私欲の為に襲った暁美さんが許せなかった。

 

でも一真君はマスケット銃の銃口前に立ち身を挺して暁美さんを庇った。

 

どうして暁美さんを庇うの?

 

一真君は暁美さんが襲撃犯じゃないと言って佐倉さんも暁美さんは信用できないが背中預けて一緒に戦ってる相棒の一真君の言葉なら信じると・・・。

 

その言葉を聞いた時あの二人の間に入り込む余地はないと悟った。

 

そっか私って一真君の事が・・・

 

でももうなにかも遅いの・・・

 

私から彼の差し伸べる手を振り払ったから。

 

彼に助けられる資格なんてもうない。

 

「・・・・行きましょう鹿目さん」

 

「は、はい!」

 

「ま、待ちなさい!今度の魔女は・・・これまでとは訳が違う!!」

 

後ろで叫んでいる暁美さんを無視して先を急いだ。

 

「あ、あのマミさん」

 

「何?」

 

鹿目さんに後ろから声をかけられ振り返る。

 

「その、私なりに願いというか色々考えて見たんです・・・考えが甘いって怒られるかもしれないんですが歩きながらでいいんで聞いてもらえますか?」

 

「もちろんよ、でも歩きながらなんかじゃなくてちゃんと止まるから聞かせて」

 

私は足を止めて体を鹿目さんの方に向けた。

 

キュゥべえの気配はだいぶ近くなっている。

 

この距離なら万が一に孵化が始まったと連絡がきても魔法少女になれば十分間に合うと判断したからだ。

 

それになにより決心したような鹿目さんの目を見て無下になんかできない。

 

「・・・わたし、引っ込み思案でさやかちゃんや杏子ちゃんみたいにみんなを引っ張れる明るい性格じゃなく、かといって成績優秀な仁美ちゃんやバイオリンの上手い上条君のように得意な教科や自慢できる才能とかも何もなくて、誰かの為に戦える一真君と違い役に立てないまま毎日を過ごしていく自分がずっと嫌だったんです・・・」

 

鹿目さん…

 

「でも誰かを助ける為に戦っているマミさんや一真君を見て、それと同じことが自分にも出来るかもしれないって知った時何よりもそれが嬉しくて、だからわたし魔法少女になれればそれで願いが叶っちゃうです」

 

鹿目さんが笑顔を向ける。

 

その笑顔が今の私には眩しかった。

 

「こんな私でも役に立てるんだよって胸を張って生きていける事が一番の願いなんです」

 

すごいわね鹿目さん。

 

そこまで考えられるなんて。

 

それに比べて私は・・・

 

「あ、ご、ごめんなさい。ダ、ダメですよねこんな甘い心構えで魔法少女になっちゃ・・・」

 

攻められるわけないじゃない。

 

佐倉さんに嫉妬して自分だけの仲間を作ろうとしている私が・・・

 

「私、鹿目さんが憧れるほどのものじゃないわよ・・・」

 

「ホントは一真君と佐倉さんの仲が羨ましくてあなた達を誘ったの・・・」

 

私の弱音と本心を聞いて鹿目さんはどう思うだろう。

 

きっと軽蔑するでしょうね。

 

でも鹿目さんの笑顔を見たら私の卑しい本心を隠し通せなかった。

 

「がんばってカッコつけて先輩をしてるけど一真君や佐倉さんから離れて独りに戻ってからは後悔して泣いてばかり・・・」

 

だんだん鹿目さんをまともに見れなくなって視線をそらそうと俯いていく。

 

軽蔑しただろうな。

 

頼りになる先輩の正体がこんな情けない先輩だったんだから。

 

「そんなことないです!マミさんはもう独りじゃないですよ」

 

力強い鹿目さんの声。

 

その声は軽蔑なんかじゃなかった。

 

鹿目さんの予想外の対応に思わず顔を上げる。

 

「わたしじゃあ頼りないかもしれなけど…それでもマミさんの傍にいます。わたしも一緒に戦ってもいいですか?」

 

受け入れて…くれるの?

 

私の弱さを…?

 

こんな私を?

 

「・・・あ、あはは・・・わたし・・・ちゃんと先輩らしくしてなきゃいけないのに・・・やっぱダメだな私・・・・」

 

思わず涙がこぼれ慌てて拭う。

 

「でも、ありがとう・・・魔法少女コンビ結成だね!」

 

鹿目さんは私の弱音を聞いてもなお魔法少女になって私と一緒に戦ってると言ってくれた。

 

こんなにも心が晴れ渡ったのは小学生の時に一人で戦ってた時に一真君と佐倉さんに出会った以来かな

 

一真君と佐倉さんの二人には悪いけど私にも私だけの仲間ができた。

 

これで・・・戦える。

 

心が軽くなった、もう何も怖くない。

 

 

 

 

使い魔を倒しながら最深部の部屋に入ると大きなケーキやキャンディなどのお菓子が部屋全体に辺り一面に散りばめられていた。

 

よっぽどお菓子が好きな魔女なのね。

 

魔女じゃなかったら気が合いそうだったのに。

 

おっとそれより早く美樹さん達とグリーフシードをみつけないと。

 

小さなグリーフシードを探すより美樹さん達のいる近くに卵はある筈だから二人を見つけた方が早い筈。

 

えっと美樹さんとキュゥべえを探す・・・。

 

「うう・・・マミさん早く来て・・・」

 

いた!

 

小さな声がしてそちらの方を見ると大きなドーナツの物陰に隠れてたキュゥべえと怯える美樹さん。

 

そして今にも魔女が誕生しそうな真っ黒なグリーフシードを見つけた。

 

「おまたせ」

 

「マミさん!」

 

急いで美樹さんの方に駆け寄ると美樹さんの不安そうな顔から嬉しそうな表情に変わる。

 

「もう無茶をして・・・」

 

「ご、ごめんなさい・・・でも・・・」

 

「分かってる、あとは任せて」

 

怖いのに未来の後輩が勇気を出してここまで頑張ってくれたんだ。

 

あとは先輩の私に任せなさい。

 

《来るよ》

 

グリーフシードが孵化してお菓子の箱から白い生クリームがあふれ出して椅子の上にちょこんと座るピンク色のぬいぐるみのような魔女が誕生した。

 

ちょっとかわいいけど魔女は魔女。

 

放っておいたら人に危害を加える。

 

だから遠慮なんかしないわよ。

 

「せっかく生まれたばかりで悪いけど・・・」

 

野球のバットのようにマスケット銃で振りかぶり。

 

「一気に決めさせて…もらうわよ!」

 

生まれたばかりの魔女をマスケット銃で打ち上げ巨大なマスケット銃を召喚する。

 

これでとどめよ。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

決まった。

 

そう思った時、煙の中から人影が見える。

 

・・・違うさっきの魔女じゃない!?

 

煙がゆっくりと晴れていくそこには…

 

「そんな!」

 

「アイツは!」

 

背後で鹿目さんが驚き美樹さんの怒った声する。

 

いつのまに結界内に入ってきたの!

 

いえ、それよりなんで魔女を庇ったの!?

 

タイム・リミット(時間切れ)だ巴マミ、お前の命運も魔法少女としての戦いも今日この日を持って終わる」

 

暁美さんが言ってたのは本当だったの・・・。

 

私達の前に逃げようと必死にもがいて暴れる魔女を左手でしっかり捕まえ右手で私のティロ・フィナーレを防いだ魔方陣を形成している白い鎧を身に纏った白龍皇が大きな翼を広げて空に浮かんでいた。




14話のあとがきでも書きましたがマミさんが食べられるあの有名なシーンは上条さんがそげぶしました(爆)

なぜ上条が魔女を助けたのかは次々回で明かされます。

今回の一真と杏子の前に現れた魔女は以前の斧を持った一つ目魔女と同様『魔法少女まどか☆マギカ ~The different story~』に出てきた幻惑の使えなくなった杏子が苦戦した魔女を出しました。
漫画で苦戦した借りを使えなかった幻惑で返してリベンジできたかな。

そして一真君の新しいフォームその名は「奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)

パワー強化もあるならスピード強化もお約束だからね。

そしてついに姿を現したスピンオフ作品おりこ☆マギカのラスボス兼主人公の今後の活躍は?

次回を楽しみに待ってくれたら嬉しいです。


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第29話 タイム・リミット(後編)

気がついたら評価バーに色がついていて驚きのあまり叫んでしまいました。

これも評価して下さった方、お気に入りに登録して下さった皆様方のおかげです。
ほんとうにありがとうございました。
至らない所や表現が下手で読みにくい部分が色々と出てきて不快にさせてしまうかもしれませんが気をつけて直していきますのでどうかこれからもよろしくお願いします。

話の展開的にどうしても必要だったとはいえ今回は特にやりすぎたと思ってますのでマミさんファンの方や原作ファンの方は不快に思われるかもしれないのでご注意してください。


~~マミサイド~~

 

鹿目さんと美樹さんの協力で生まれたての魔女を追い詰めてとどめのティロ・フィナーレを放ち勝敗は決まったと確信した時にソレは現れた。

 

魔女を抱きかかえて光の障壁でティロ・フィナーレを防いだ白い鎧の人物。

 

白龍皇アルビオン。

 

城戸一真君の宿命のライバルであり一真君の左腕に宿る赤いドラゴン【ドライグさん】と相反する力を持った仮面(マスク)と鎧で正体を隠して今だに素顔を見たことない。

 

一真君もその正体は知らないと言う。

 

ただ分かるのは声からして男性だということ。

 

私が彼に会ったのはこれで三度目だ。

 

一度目は去年の夏に赤龍帝の鎧を纏った一真君が白龍皇に負けた時。

 

あの時は信じられなかった。

 

あんなに強かった一真君が負けたのだから。

 

そういえばあのとき一緒に強くなろうって約束したっけ。

 

でももうその約束は果たせない・・・。

 

二度目は鹿目さんと美樹さんが魔女の結界に巻き込まれ二人と契約しようとしたキュゥべえを粉々にされた時。

 

キュゥべえは無事だったけどキュゥべえにひどいことをした暁美さんと白龍皇は許せない。

 

そして今、白龍皇は三度(みたび)私の前に現れた。

 

彼がなぜ魔女を助けたのか分からない。

 

分かっているのはただひとつ。

 

私の命を狙ってる。

 

理由は分からない。

 

魔女を掴んだまま浮遊してた白龍皇がゆっくりと降りてくる。

 

その間に白龍皇を迎え打つ準備をする為に銃弾の入ったマスケット銃を新たに召喚する。

 

相手は一真君ですら倒せなかった相手だ。

 

油断しないのはもちろんだけど作戦なしでまともに正面からぶつかっても勝てる相手じゃない。

 

それに…チラッと後ろを見るとキュゥべえと不安そうにこちらを見ている鹿目さんと美樹さん。

 

なんとしても二人をここから逃がさないと。

 

そして静かに着地する白龍皇。

 

すごい威圧感だ。

 

立って向かい合ってるだけなのに息苦しい…

 

すごいわね一真君。

 

こんな恐ろしい相手とたった一人で戦ったなんて…

 

「赤龍帝は来ていないようだが?」

 

周囲をゆっくりと見回し一真君を探している。

 

そうか白龍皇は私と一真君が仲違いしたのを知らないんだ。

 

なら当然私と一真君が一緒に行動してると思ったのね。

 

「鹿目まどか、赤龍帝はどこだ?」

 

「え、ええ?」

 

いきなり鹿目さんの方を見て名指しで尋ねる白龍皇。

 

鹿目さんも突然質問され驚いている。

 

しまった、私なら上手く誤魔化せるけど嘘が苦手そうな鹿目さんなら正直に答えてしまう。

 

「あ、あの、一真君には連絡したんですけどまだ来てないんです」

 

申し訳なさそうに打ち明ける鹿目さん。

 

「まどか、もしかして一真にも連絡したの?」

 

「ご、ごめんね、さやかちゃんなにが起こるか分からなかったから」

 

一真君に連絡した事に美樹さんが鹿目さんに怒っている。

 

元はといえばケンカしてしまったのは分からず屋の一真君の所為。

 

あなたがそんなに気にしないでいいのよ。

 

現に今、白龍皇が魔女を助けるという予想外の出来事が起きているのだから。

 

鹿目さんを攻められないわ。

 

「なるほど、そういうことか」

 

鹿目さん見ていた視線が再び私の方に向けられる。

 

この中で戦う力があるの私だけ。

 

だから注意しているのだろうか。

 

仮面(マスク)のせいで表情が読み取れなく考えが読めない。

 

ただ分かるのは私たちの敵である魔女を助けたこと。

 

「どうして魔女を助けるような事をしたの?」

 

白龍皇を睨む。

 

もう少しで魔女を倒せたのに…それを邪魔して。

 

「別に魔女を助けたというわけではない。あのまま黙って巨大化させて君が負けて見捨てるのもまた一興だと思ったがそれだと大きすぎて私の計画に支障が出てしまうからな」

 

「巨大化?私が負ける?一体何のことよ?」

 

あのままなら私が勝っていたのに何を言ってるか分からない。

 

「知る必要はないだろう。今から君はここで消滅するのだから」

 

白龍皇から殺気か出る。

 

私は見滝原の魔法少女としてみんなを護る為に魔女や使い魔と戦ってきた。

 

人から恨みを買うことなんかしてない筈。

 

白龍皇は何が目的なの?

 

「ちょ、ちょっとなんでマミさんを狙うんだよ。あんたの狙いは一真じゃなかったの?!」

 

「・・・少し違うな美樹さやか。私が狙うのは私が邪魔だと判断した者だ」

 

私が邪魔者ってどういうこと?

 

「なにか誤解をしてるんじゃないかしら、私はあなたに恨まれる覚えはないんだけど?」

 

「今しているさ、戦う力の無い少女を危険地帯に連れて来て追い込み、願いという甘いエサでいつ終わるか分からないグリーフシードを巡る地獄のような魔女と魔法少女の闘いに平然と友達を引き込もうとしているじゃないか」  

言いたい放題って言ってくれわね。

 

確かに魔法少女同士のグリーフシードの奪い合いという問題はある。

 

でもそれは互いに分け合えたら解決し魔法少女が増えたらそれだけ魔女に襲われる被害者が減る。

 

それのどこがいけないことなのよ。

 

「あなたも一真君のように白龍皇の力で鎧を着ている人間なんでしょ?ならどうして人を襲う魔女を庇ったり魔法少女の私に攻撃したりするの?今なら許してあげるからこんなこと今すぐやめなさい」

 

忠告しているのにも関わらず白龍皇はこれ以上なにも答えない。

 

そうあくまでも無視して戦うつもりなのね。

 

残念だわ、あなたが味方になれば心強かったのに。

 

だったらその兜と傲慢な自信を打ち砕いて正体を暴き二度と表れないように警察に突き出してあげる。

 

マスケット銃を構えたその時。

 

「いきなり出てきてなんなんだよ!魔法少女が増えたら平和になっていいじゃん!それにその魔女はマミさんのだ!勝手に取んな!」

 

私の代わりに怒った表情の美樹さんが白龍皇の前に割り込んできた。

 

(っといけない、挑発に乗って近づいたら力を奪われてしまう。接近戦は不利ね・・・なら!)

 

怒った美樹さんを見て逆に私は落ち着く事ができた。

 

自分以上に怒った他人を見たら自分は冷静になれるって本当だったのね。

 

「……この魔女にはまだ実験材料としての利用価値がある。渡すわけにはいかない」

 

「魔女を使った実験?あなたは一体何を企んでいるの?」

 

「お前には関係のない事だ。これからいなくなるのだからな」

 

右手をこちらに向ける白龍皇。

 

やっぱり戦う気なの

 

「ど、どういう意味だよ」

 

殺気に押された美樹さんが一歩下がる。

 

「そのままの意味だ、魔女の結界内で亡くなれば死体も残らないので後処理が楽に済む、それと安心しろ巴マミを始末したら美樹さやかと鹿目まどかは逃がしてやるつもりだ」

 

やっぱり思った通りこの人をこのままにしておくのは危険だ。

 

鹿目さん達は見逃すと言ってるけど信じられない。

 

なら私にできる事は白龍皇に勝って魔女も倒してここから鹿目さん達と抜け出るだけ。

 

「あら、あまり女の子を甘くみていたら痛い目に遭うわよ」

 

悪いけど病院送りにして二度と私達の前に現れないようにしてみせる。

 

「美樹さん、危ないから隠れていなさい」

 

「わ、分かりました」

 

慌てて美樹さんが鹿目さん達の隠れているところに戻った。

 

よしこれで遠慮なく戦える。

 

「その魔女をどうするのか知らないけどあなたに渡すわけにはいかないわ」

 

即座にマスケット銃を出して発砲するが障壁に弾き返される。

 

「くっ!やっぱりその障壁は厄介ね」

 

「あいかわらず狭い視野と感情だけですべてを分かった気になり物事を進めようとするのは君の悪いクセだ」

 

「黙りなさい、あなたに私のなにが分かるっていうの!」

 

正面からの攻撃が駄目と判断し即座に白龍皇の左真横に移動してから射撃するが真横にも障壁が発生してまたも防がれてしまう。

 

「ならこれならどう?」

 

ジャンプして数十、数百のマスケット銃を召喚する。

 

「無限の魔弾よ私に道を開いて!パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ!!」

 

一斉に撃鉄が落ち数百丁のマスケット銃から銃弾が発射され微動だにしない白龍皇に直撃して爆煙が舞う。

 

ことわざの中に塵も積もれば山となるという言葉がある。

 

その意味はどんな小さな塵でも積もれば山の様に大きくなるという事。

 

一発二発が無理なら百発同時に打ち込んで障壁を破ればいい

 

つまり数で押した物量作戦だ。

 

「これでとどめよ!ボンバルダメント!」

 

さらにダメ押しとばかりにさきほど魔女に放ったティロ・フィナーレを超える両手で保持できない車輪の付いた巨大な大砲を召喚し砲身の上で乗る。

 

ボンバルダメント。

 

あまりの威力と魔力の消費が激しいので模擬戦では使用できない私のとっておきの技。

 

威力が大きすぎて本来なら人間相手に絶対に使ってはならない技だけどティロ・フィナーレさえ防いでしまう障壁を破るにはもうこれしかない。

 

超巨大大砲から凄まじい爆音と共に放たれた砲弾は一直線に白龍皇に直撃し土煙が巻き起こり姿が見えないが手応えを感じた。

 

「キャッ!」

 

「うわあ!」

 

爆音と爆風、それに伴って起きた空気が震える振動に慣れていない鹿目さんと美樹さんは目を閉じて耳を両手でふさいで座り込んで身を屈める。

 

「はぁはぁ・・・さ、さすがにやりすぎたかしら。これだけの攻撃を浴びさせたらいくら何でもただで済まないわよね・・・・」

 

体力と魔力を一気に消費し疲労した今の私に鹿目さん達を気遣う余裕はなかった。

 

魔力をかなり消費した為に髪飾りのソウルジェムの穢れがかなり進んでしまったけどこれだけの攻撃を浴びたんだ。

 

白龍皇の鎧の強度が赤龍帝の鎧と同じなら鎧は砕け大怪我を負うくらいで死にはしないと思う。

 

(けどやっぱり悪い人とはいえ魔女以外の相手に攻撃魔法を使うのは後ろめたさと罪悪感を感じるわね)

 

煙が徐々に晴れていく。

 

煙が晴れたら魔女がいなくなり結界も消えるだろうから例え悪人でも救急車を呼んで助けないといけないわね。

 

幸い病院の近くだから大事に至らないと思うけど。

 

煙が少し晴れてそこに何かが見えた。

 

人影・・・まさかっ!?

 

ありえない気絶してるならともかく立ち上がってられる筈がない。

 

「う、嘘…!?」

 

そこには身を守る為の障壁を二枚に展開させている無傷の白龍皇の姿があった。

 

「赤龍帝だけでなく君にまでこの障壁を破るとは・・・正直計算外だったよ。片手が塞がっているから二重障壁を張らなければ私も危なかった」

 

一枚目の障壁は割れて地面に落ちて二枚目はひび割れを起こしている。

 

(信じられないパロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータと切り札のボンバルダメントを使ったのに障壁一枚破るのがやっとだなんて・・・勝てない私一人じゃ・・・)

 

このままでは待っているのは自分の死だ。

 

思わずその光景を想像してしまい後ずさる。

 

「マ、マミさん」

 

「出てきちゃだめ!あなた達は隠れていなさい」

 

いけない弱気になっちゃ!

 

でもどうしたら?ただのマスケット銃じゃ障壁で防がれる・・・。

 

障壁のない角度から撃っても防がれるし全方位どこから狙っても本人には当たらない。

 

遠距離攻撃が駄目なら接近戦しかないけど私はそんなに接近戦は得意じゃないし掴まれたら半減の能力で力を奪われてしまう。

 

どうすれば・・・

 

「今度はこちらから攻撃してもよろしいかな?」

 

バカにして!

 

悔しいけどこうなったら。

 

「レガーレ・ヴァスタアリア!」

 

「むっ!」

 

白龍皇の足元から黄色いリボンが縛り上げて拘束する。

 

「おまけよ!」

 

さきほど暁美さんをを縛った金の鎖を縫い込んだ巨大なリボンも白龍皇に絡みついて雁字搦めに縛りつける。

 

これなら動けないでしょ。

 

「これは・・・」

 

動こうとする縛られて動けない白龍皇。

 

「強引な男の子は嫌われるわよ。そっちは戦う気でもこれ以上付き合う気はないわ」

 

悔しいけどリボン魔法で動きを封じて態勢を立て直す為に逃げるしかない。

 

「さあみんな今のうちに・・・」

 

『Divid!!』

 

「・・・え?」

 

白龍皇とは違う声がして振り返ると白龍皇を縛り上げていたリボンがまるで氷から水のように溶けていく。

 

まさかレガーレに纏っていた魔力を奪ったの!

 

「私の半減の能力の方向性を調整すれば魔力も吸収して自分の力にすることができる残念だがこの程度の魔法など私には通用しない」

 

「う、うそ・・・」

 

背後で驚く美樹さんの小さな声が聞こえる。

 

私も美樹さんと同じ気持ちだ。

 

一真君ですら破れなかった私の魔法がこんなにも簡単に破られるなんて・・・

 

「い、いや来ないで!?」

 

どうにもできない恐怖に逃げようと白龍皇に背を向ける。

 

白龍皇が魔力弾を放ち私の足元で小さく破裂し足が止まる。

 

外れた?いえわざと外したの?

 

「逃げようなどと考えない事だ。逃げれば変わりにお前の母親の命はないと思え・・・」

 

今なんて?

 

「あ、あなたまさか私のお母さんを!?」

 

予期せぬ言葉に振り返る。

 

「それが嫌なら逃げない事だな」

 

そんな!?お母さんが私の所為で危険に晒されるなんて…。

 

「ひ、卑怯だぞ、マミさんのお母さんは関係ないじゃないか!」

 

「戦いとは常に非情なものだよ美樹さやか。先ほども言ったが君達は二人が魔法少女にならないというのなら見逃してやる」

 

「……美樹さん、鹿目さんと早く逃げなさい」

 

「で、でもマミさんを置いて逃げるなんて」

 

「いいから早く行きなさい!」

 

どうすれば・・・思い出しなさい巴マミ。

 

幸い白龍皇の能力を教えてもらってるし赤龍帝の鎧を纏った一真君にも模擬戦で何度か勝っている。

 

それに私自身も強くなっているから簡単には負けない。

 

「マミさん、私は逃げない三人で一緒に帰ろう」

 

「だから負けないで!マミさん」

 

それに私の後ろには逃げず応援してくれる鹿目さん達がいる。負けるわけにはいかない!

 

「そうか、それがお前達の答えか、ならよく見ていろその答えが間違いであることを」

 

「絶対に負けないわ」

 

白龍皇の魔力弾をなんとか避けながら対策を考える。

 

魔力弾は私の近くで爆発してマスケット銃を撃ち返すが効かない。

 

このままじゃ負けてしまう。

 

考えるのよ巴マミ。

 

一真君が白龍皇の技や特性を教えてくれた。

 

そこにきっとヒントがあるはず。

 

「どうした?人を護ると言ってきたがその程度か」

 

掴まれて力を奪われたら終わりだ。

 

私は一真君のように力を倍加して元に戻せばいい。

 

でも私にはそれがない。

 

・・・そうだ!これならいけるかも

 

「レガーレ!」

 

白龍皇の身体をリボンで縛り付ける。

 

「またこれか、私には効かないと知ってる筈だが」

 

魔力を吸収されながらも次々リボンで縛りつけていく。

 

「何?これは」

 

リボンが集中的に白龍皇の光の翼を重点的に縛りつけていく。

 

「まさか…!?これを狙っていたのか巴マミ!」

 

「余分なエネルギーを吐き出す排出口を防がれたら溜まった魔力はどうなるかしらね?しかも排出した魔力は元々私の魔力。あなたの翼を縛っているリボンが吸収してどんどん大きくなって締め上げていくわよ」

 

「貴様・・・」

 

そうこれが本当の狙い。

 

あらかじめ一真君から白龍皇の能力と特性を聞いていた私はこれを狙っていた。

 

白龍皇は吸収した力が許容範囲を超えると余った力を翼から放出して常に力を最大限の状態に保ち続けると一真君は教えてくれた。

 

なら余った力を逃がさないように翼を塞いでしまえば白龍皇は空気がいっぱいになった風船のように破裂して自滅する。

 

でなければワザワザ吸収した魔力を外に出す必要がないもの。

 

それが嫌なら鎧を解くしかない。

 

生身なら魔法少女の私に勝機がある。

 

「さあどうするの?このまま魔力を吸収し続けて破裂するか鎧を脱いでおとなしく降参するかどちらか好きな方を選びなさい」

 

油断せずマスケット銃を出して照準を白龍皇に定める。

 

「やったあ!マミさんの大逆転勝利だ!」

 

「うん、すごいよマミさん」

 

後ろで美樹さんと鹿目さんの歓声が上がる。

 

その歓声に答える為に振り返り二人に向かってウインクで答えた。

 

膨れ上がった魔力に耐え切れなくなったのか白い鎧や兜に亀裂が走っていく。

 

その相手の力を半分にする能力が逆に仇となったわね。

 

「やせ我慢していないで早く降参しないとあなた自身ただじゃすまないわよ」

 

これで勝てる。

 

そう思っていた。

 

「(さやかがいるから使うつもりはなかったんだけど仕方ない巻き込まないように手加減しないとな)」

 

「え?何か言った?降参するのなら大きな声で・・・っ」

 

HalfDimension!!!(ハーフディメンション)

 

白龍皇が腕を広げ宝玉から音声と共にオーラが発せられる。

 

何これ・・・

 

白龍皇の周辺の徐々に空間が歪んでいく・・・・。

 

さらに歪みは広がり結界内にあった巨大なイチゴケーキや板チョコレートが歪みに触れると半分の大きさになっていく。

 

まさかこの技に触れると物体の大きさ半分になってしまうの!?

 

半分?白龍皇の狙いは。

 

白龍皇の方を見ると白龍皇を縛っていたリボンが細くなって行く。

 

このままじゃリボンが切られる。

 

急いで新しいリボンを召喚して縛り直さないと。

 

けど召喚して巻き付いたリボンも次々細くなっていく。

 

リボンが細くなったことで隙間ができて光の翼から魔力が排出される。

 

いけないこのままじゃせっかく封じた魔力が逃げてしまう。

 

「レガーレヴァスタ・・・」

 

「遅い!」

 

白龍皇は白いオーラで細くなり弱くなったリボンを吹き飛ばしてしまった。

 

「ここまで私が追い込まれるとは君の事を見くびっていたよ、しかし…」

 

白いオーラが全身を覆うとあんなに苦労してヒビだらけにした鎧が修復されて新品同様に元に戻る。

 

「ここからは遊びでなく本気を出す事にする」

 

さっきまでとは違う空気とオーラが放たれ。

 

私は疲労と恐怖で足に力が入らなくなり膝をつく。

 

私の全力が白龍皇にとったら遊び程度だったなんて。

 

「そ、そんな・・・」

 

魔力もほとんど残ってなくマスケット銃を一、二発撃つのが精一杯・・・。

 

対して白龍皇はダメージ一つ無い

 

だ、だめだ…どうやっても私じゃあ勝てない・・・

 

「そんなマミさんがあんなにがんばったのにチートすぎじゃないか・・・強すぎるよアイツ・・・」

 

「こんなのってないよ・・・」

 

白龍皇の理不尽すぎる強さに二人の顔が絶望に染まる。

 

「ど、どうして・・・どうしてそこまでこの二人の魔法少女になろうとするのを邪魔するの?あなたは一真君と同じで魔力を使ってもグリーフシードを必要としないのに・・・」

 

この負けるくらいならせめて私を狙い二人の契約をここまで反対する理由を知りたく尋ねた。

 

「ふ、グリーフシードか・・・そんなものいらないさ。君は現実を理解していない。ただでさえグリーフシードを落とさない使い魔を狩ってグリーフシードは不足しているにもかかわらず魔法少女を無責任に増やそうとする。そうなれば君のようなベテランの魔法少女がグリーフシードを独占し弱い新人の魔法少女はグリーフシードは回らず魔法少女でいられなくなり淘汰される運命しかない。これを地獄と言わずになんと言う?」

 

「で、でも分け合ったらそんなの・・・」

 

確かにそうだけど私達ベテラン魔法少女がサポートするそれでいい筈。

 

私がそう言おうとしたが…。

 

「君は他の魔法少女が命懸けで必死に戦った報酬を強要するのか?それとも君一人であの二人に分け与えると?共倒れもいい所だな」

 

「そ、それは・・・」

 

言い返せなかった。

 

みんなで協力して魔女を倒してグリーフシードを均等に分ける。

 

それが一番いいと思っていた。

 

けど暁美さんや魔法少女襲撃犯のようにそれに納得できない魔法少女もいる。

 

グリーフシードは魔法少女が魔女との戦いで命懸けで手に入れた貴重な戦利品。

 

それを他者と分け与えて、その上魔女に成長する前のグリーフシードを落とさない使い魔を狩っている事はもしかして間違いではないかとずっと考えないようにしていた。

 

「城戸一真はそれを理解しているみたいだがな」

 

私は一真君もグリーフシードを分け与える考えを受け入れてくれると思っていた。

 

いや思い込んでしまっていた。

 

「魔法少女といっても万能じゃない。もし俺達が負けたらなんの力のない二人は犠牲になってしまう」

 

「魔法少女が増えたらグリーフシードは不足してしまう」

 

体験コースの別れ際に一真君に言われた忠告を思い出す。

 

けど何も分かっていなかった私は忠告を聞かなかった。

 

魔法少女を増やすデメリットに気づけなかった自分の考え方の甘さとワガママで大切な友達を過酷な戦いの渦に巻き込もうとしていた心の弱さに情けなく自然と涙が流れる。

 

一真君の言ってたように人を護る為に魔女だけでなく使い魔も倒す私の考えは独りよがりな綺麗事だったと白龍皇にそう思い知らされ漏れる嗚咽を止める事が出来なかった。

 

「覚えておく事だね、分け与えるいう言葉は良い言葉だが現実的ではない害悪な言葉でもあると言うことを」



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