Charlotteの最終回にロマンス成分をぶち込んでみた (ぽんぽぽん)
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Charlotteの最終回にロマンス成分をぶち込んでみた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必ず帰るって約束したから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから どんなに辛くても

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心が壊れてしまったとしても

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たとえ化け物になったとしても

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______必ず君の元へ帰るから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女」に貰った大切な単語帳の表面を指で軽くなぞり、再び「少年」は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 月夜に照らされながら、「彼」はその場所に立っていた。

 

 

 

 

 その瞳に映るのは、いつか「誰か」が「誰か」とみた街の夜景。どこまでも広がっていく煌びやかな夜景に反して、「彼」の心は殺風景、また、その表情に変化は見られない。以前の剽軽な様子は身を潜めているが、その端正な顔立ちからは、かろうじて昔の面影が感じられる。

 

 

 「彼」は【“直接眼を見た”他者に数秒だけ乗り移る事が出来、対象が異能__思春期の間だけ発現する能力__を持っていた場合、それを奪い我が物とする】という、使い方によっては世界を支配する事が出来る、正に神のような能力を擁していた。

 しかし、膨大な数の異能を吸収し、それを一人で完全に制御するなどという事は、一人の人間には到底不可能なことであり、その弊害で記憶が混濁し、自分や家族の名前すら曖昧なものになっていた。今まで何を目的とし、何を行っていたのか殆ど覚えておらず、これまで奪ってきた能力により自動的に動いていく自分の身体。最早考えることすら億劫になっていた。

 

 

膨大な数の能力を奪ってしまったことで生まれた負荷、もはや呪いというべきものだろうか。意思を感じられないその眼、変化のない表情。まるで、いつ壊れるか分からない、「能力」という糸に繋がれた操り人形のように見える。こうしてみると一見、廃人のような立ち振る舞いだが、皮肉にも、旅の道中によって得た様々な能力の恩恵により、身体面“だけ”を見れば、健康体そのものであった。

 

 

 長い旅がようやく終わりを迎えるというのに、この事実に対して「彼」の中には何の感情も生まれず、また、何の感傷も無かった。旅を重ねるにつれ感じていた、自分が自分ではなくなっていく感覚。たとえ何かの拍子で強烈な感情が生まれたとしても、それは一過性のものであり、最早「人間」ではなく「機械」と呼んだ方が正しいのではないか、と錯覚させるほどであった。

 

 

 

 

 

 脳内で広がる世界地図に一つだけ残った、小さな赤い点____最後の能力者は近くにいる。以前の「彼」ならば、何の対策もせずに能力者の前に姿を見せる、ということはせず、事前に相手の能力を把握、それに対する対抗策を考え《最も対抗策を考える十分な時間も資源も無かったが》、また対処が困難な場合は相手の行動を先読みし不意を突く等、効率を重視した行動を選択していた。

相手を対処しようと、自動的に身体が動かないことから、相手の能力に危険、脅威は無く、即座に対処が可能なことが伺えるが、この場所でただ立っているのは、無意味だと本能的には理解していた。

 

 

 

 

しかし何故か「彼」は待ち続けた。何かを信じて待っていた。

 

 

 

どれだけの時間が経ったか分からないが、それでも待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

“誰もいない場所”から「誰か」の声が聞こえ

 

 

 

 

 

 

 

 

“誰もいない場所”に「誰か」が現れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 その声を聞いた瞬間、今まで失っていた、忘れていた記憶が蘇ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

_____ どうも。生徒会長の  です。別の学校の、ですが。

 

 

_____ ようこそ我が校へ。

 

 

 

 

 思い出せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

_____ あとは1ヒットでサヨナラです。たまにはガチで望んでみてはいかがでしょう?カンニング魔の    君。

 

 

_____ PVを撮ることが夢なんす。気に入ったんならそれ、プレイヤーごとあげますよ。

 

 

 

 

 思い出せ。

 

 

 

 

 

 

 

_____ 良い食事をとることが、元気の源となるのです。

 

 

 

_____ ここにライブのチケットが二枚あるっ!

 

 

 

 

 思い出せ。

 

 

 

 

 

 

_____ 未来の話なので覚えはありませんが、まああなたがそう言うんならそうなんでしょう。

 

 

 

_____ ぶっちゃけ力技です。ですがそれが、私の考えられる、能力者達を救う唯一の策です。

 

 

 

_____ だったら言いましょう。待ってます、と、

 

 

 

 

 

 

 

 

 思い出せ。

 

 

 

 

 思い出せ。

 

 

 

 

 思い出せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おおっと 私の能力を奪うのは最後にしてください

 

 

 

 

どうして? だって私が最後だったら 最終的にまた会えるじゃないですか

 

 

 

 

私らしくない発言をしているのは承知してますけど

 

 

 

 

 

なに弱気なこと言ってるんすか 必ずやり遂げるって 言いましたよね

 

 

 

 

...まあ気長に待ってますから 頑張ってくださいね

 

 

 

 

 

では約束 帰ってくること もう一度会いましょう 絶対です

 

 

 

 

 

元カンニング魔の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________『乙坂有宇』 君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一度は崩れて終わってしまった。

 

 

 

目の前に待つ困難が怖くなったり、前に進むのが嫌になった時もあった。

 

 

 

全てを投げ出して休みたいと思った時もあった。

 

 

 

自分が何者なのか分からなくなった。

 

 

 

好きだった君がどんな声だったかすら忘れてしまっていた。

 

 

 

だけど、君から託された単語帳。

 

 

 

もうボロボロになって破れかけているそれが。

 

 

 

どんな時も手離さなかったそれが。

 

 

俺はひとりきりじゃなかったと教えてくれたそれが。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも、俺に勇気を与えてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「全部終わらせてから、だよな」

 

 

 その呟きに「彼女」は静かに頷き、彼の目を見つめた。その仕草一つ一つが愛おしく感じられ、これまで溜めてきた想いが振り切れそうになる。思わずその小さい身体を抱きしめたくなる自分自身の理性をグッと抑え、その視線を受け止める。そして、まだ“光を感じることが出来る”左目に意識を集中させ、「最後の能力者」に乗り移り、その能力を奪った。

 覆い被さってくるように力なく崩れ落ちる「僕の身体」を抱きとめ、背伸びたか?等と考えながら苦笑して数秒、意識は「僕の身体」に戻った。全て終わらせた事の達成感により、異常分泌されている脳内物質のせいだろうか。あるいは神様が与えてくれた一時の奇跡なのだろうか。意識ははっきりとしており、能力のせいで身体が勝手に動いたり、能力の弊害による身体の痛みを感じなかったり、また、自動的に能力が発動している時の独特な感覚を感じられなかった。

 

 

「重いっす、寄りかからないでください」

 

 

 迷惑そうに放たれたその言葉に対し、満更でもないだろと思いつつもそれを言葉にせず、暖かな温もりを惜しみながらも静かに離れる。再び、互いに見つめ合う形に戻るが、上手く言葉が出てこない。随分口下手になってしまったな、と考えている内に、

 

 

「約束...守ってくれたんですね」

 

 

 大人びた雰囲気を纏いながら、「彼女」はそう呟いた。以前に比べて随分としおらしくなった態度に少し戸惑いを覚えつつも、記憶の中の「彼女」の面影が残るその表情に安心感を覚える。相手も成長しているが、こちらも負けてはいない。当時はあまり差がなかった身長差だが、今はこちらが頭一つ分抜けている。上目遣いでこちらを見つめる姿に見惚れつつも、

 

 

「当たり前だろ?」

 

 

 さも当然かのように言い返す。約束を守ったら、惚れた女が無条件で恋人になってくれるなんて破格の条件だ。格好良い所を見せたかったという子供じみた気持ちもあったけど、能力関係のゴタゴタで悲しむ人をもう見たくないという、アニメや漫画の主人公のような蛮勇じみた考えもあった。最も、アニメや漫画みたいに何事もストレートに解決するなんて事は無く、現実の厳しさを身を以て知ったけど。なんとか無事に帰って来ることが出来たのが不幸中の幸いだ。

 

 

「記憶に障害が出ていたり、どこか変な所はありませんか?」

 

 

 不安げな表情で「彼女」は尋ねる。恐らく彼女は能力を使い、話しかける少し前から、「機械」のように呆然と立ち続けている僕のことを見ていたのだろう。こんな垢抜けた態度の「彼女」を見るのは初めてで、少し変な気持ちになったが、以前と変わらずこちらのことを心配してくれる事が素直に嬉しかった。

 「大丈夫だよ」と冗談を織り交ぜつつおどけて答える態度が気にくわなかったのか、口を尖らせて「心配して損した」と不機嫌になっていく姿が可愛らしく、おかしく感じられたため、思わず笑ってしまった。あまり感情を表に出さなかった「彼女」が、躊躇なく感情を表に出している姿に、思っているより長い時間が経っていたことを感じさせられる。

 

 ひとしきり笑った後、一度深呼吸をして表情を整える。そしてまだ不機嫌な「彼女」に向かって、

 

 

「恋人になってくれるって約束だったよな」

 

 

 一瞬時が止まったかのような変な空気が流れたが、「彼女」は曖昧ながらもそれを肯定した。肯定の言葉を重ねながらも徐々に顔を赤らめていく姿が記憶の中の姿とあまりにも違い「誰だこいつ、偽物か?」と本気で思ったので、本人かどうか確認するために以前奪った【真偽を確かめる能力】を発動させようと試みたが、何故か発動しなかった。何故発動しないのか不思議に思っていたが、仕切り直しと言わんばかりの大きな咳払いによって思考が中断させられ、補足の言葉が続けられた。

 

 

「とにかく、貴方と私は恋人同士になりました。しかし、だからといって、ずっとそのまま、という訳にはいかないのでご注意を。私個人としては、貴方を見限りたくないので、期待を裏切らないよう、そこら辺よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 それと、と一呼吸おいた後に「彼女」は、

 

 

 

 

 

 

 「これからは楽しいことだらけの人生にしていきましょう」

 

 

 

 

 

 と告げた。「彼女」から静かに差し伸べられた手。それを壊れ物を扱うかの様に慎重に、だがしっかりと握り返し、二度と離さないと心の中で誓う。色々やらなきゃいけないことはたくさん残っているけど、「彼女」の言う通り、なんだかこれから楽しくなりそうな気がする。一瞬目を閉じ風を感じた後、目を開き、

 

 

 

 

 

 

 

 

二度と忘れないよう、眼に焼き付ける、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕がずっと守りたかった、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____「友利 奈緒」の笑顔を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 いつか「誰か」と「誰か」が見た夜景を見渡せる場所で、月夜に照らされながら重なり合う二つの影。二人を祝福するように、夜空に浮かぶ無数の星々が瞬き、二人の未来を願うかのように、街の光が輝いている。

 

 

夜空に浮かぶ幾千もの星 煌めくような街の夜景

 

 

決して交じり合うことのないその二つ

 

 

しかし、地平線の先では、確かに混じり合っているように見えるその二つ

 

 

その二つでも交じり合えるように見えるのだから

 

 

約束を守ろうとした「彼」 約束を信じ続けた「彼女」

 

 

二人が交じり合えない道理はない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____二人で紡がれていくこれからの記憶。物語は続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 満天の星空に、一筋の流れ星が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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