東方変守録 (ほのりん)
しおりを挟む

番外編『皆との日常です』
If世界『ハロウィンパーティーです!』


書けたー
いやですね、昨日後書きを書いてから書き始めたんですよ
でもなかなか書けなかったです
そのうち色々やってたら夜中になってましたし、すぐ終わらせるって思ったら詰め込んで長くなりましたし、また書けなくなったし
学校行ってる間に考えたので帰ったら書けるようになりました

さて、今日はハロウィンってことで番外編です!
一応紅霧異変が終わったあとの年の出来事になってますが、あくまでif、もしもの世界です
本編には関わらない話となってます
後、長いです。長いです。(大事なことなので二回言いました)
出来るだけ時間が空いてる時に見ましょう
読み終わらないかも知れません

それでもいい方は
ゆっくりしていってね!


榛奈side(セリフ多め)

 

 

[大図書館]

 

フ「ねぇ榛奈ー」

 

榛「?なんですかフラン様」

 

フ「今日ってハロウィンなの?」

 

榛「そうですね、今日は10月31日ですからハロウィンですね」

 

フ「ハロウィンってどんな日なの?」

 

榛「簡単に言うなら仮装して誰かの家を訪ねてその人にハロウィンだけの呪文を言うとお菓子を貰えるイベントですかね」

 

フ「呪文ってことは魔法なの?」

 

榛「いえ、呪文は言いすぎましたね、言葉です。Trick or Treat、ハロウィンでの意味はお菓子くれなきゃイタズラするぞって言葉です」

 

フ「お菓子くれなかったらイタズラしていいの?」

 

榛「そうですね、まぁイタズラしていいですよ。ただイタズラの範囲で、ですよ?嫌がらせや暴力にはなってはいけませんからね」

 

フ「それでもしていいんだ」

 

榛「家の人はイタズラをされたくないからお菓子を用意しなくてはいけないんです。イタズラされてもいいならいいんですけどね」

 

フ「ふふふ♪榛奈!」

 

榛「はい?」

 

フ「Trick or Treat お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ♪」

 

榛「あー、お菓子をあげなきゃイタズラされてしまうんですか...それは困りましたね...」ニヤニヤ

 

フ「困るって言ってるのになんで笑ってるの?」

 

榛「何ででしょうねぇ」ポケットゴソゴソ

 

フ「?」

 

榛「おや?こんなところにクッキーを包んだ袋が... そうですねぇ、これをあげますからイタズラしないでください」っ(袋)

 

フ「え!?なんで持ってるの!?」

 

榛「ふふ、さぁ何ででしょうねぇ」

 

フ「むぅ、...イタズラしたかったのに」ボソボソ

 

榛「何か言いましたか?」

 

フ「何でもないよーだ!」ムス-

 

榛(もしかしてと思って用意したけどこれじゃダメだったのかな)

 

フ「それじゃ、お姉様とか咲夜のとこに行ってくるね!」プンスカ

 

榛「は、はい。いってらっしゃい...」

 

 

バタンッ←勢いよくドアを閉めた音

 

 

榛「どうしてフラン様はあんなに不機嫌そうにしてたんだろ。お菓子はあげたのにな......」

 

パ「はぁ、鈍いわね」

 

榛「あ、師匠、居たんでしたね忘れてました」

 

パ「貴女言うわね......」

 

榛「素直に正直に言っただけですよ?」

 

パ「はいはい」

 

榛「それで鈍いってなんのことです?」

 

パ「分からないならいいわ。それとTrick or Treat」

 

榛「」キョトン

 

パ「な、なによ///いいじゃないそれくらい///」

 

榛「はい!お菓子ですね!どうぞ!」(≧∇≦)っ(袋)

 

パ「あるのね」

 

榛「一応沢山作っておきましたから」

 

パ「用意周到ね。余っても知らないわよ?」

 

榛「その時は私が食べるので大丈夫です!」

 

パ「そう」(まぁ、榛奈のお菓子は咲夜並だから逆に足りなくなりそうね)

 

小「いいなぁパチュリー様」

 

榛「コアにもどうぞ!」っ(袋)

 

小「わぁ!ありがとうございます!」

 

榛「いえいえ、まだまだ沢山ありますからね。てことで配りに行ってきますね」

 

パ「お菓子を配る祭りじゃないけどね。まぁいってらっしゃい」

 

小「いってらっしゃーい」バイバイ

 

榛「いってきまーす!」

 

キイィ......←静かに閉めた

 

 

 

 

~少女移動中~

 

 

 

 

 

[紅魔館廊下]

 

 

榛「さて、どうしようかな」

 

妖精メイド1「あ、榛奈様!」コンニチワ

 

妖精メイド2「榛奈様~」コンニチワ

 

榛「こんにちは2人とも。あ、そうだ。2人にこれをあげるよ」っ(袋)×2

 

妖精メイド1「え!?いいんですか!?」

 

妖精メイド2「やったぁ!ありがとうございます~!」

 

榛「いいよー。そうだ、今日の夜って妖精メイドの皆予定空いてる?」

 

妖精メイド1「はい、仕事が終われば皆、空いてると思います」

 

榛「うん、それだけ聞ければいいや。また後でね~」バイバイ

 

妖精メイド1「あ、はい!お菓子ありがとうございます!」┏○ペコ

 

妖精メイド2「ありがとーございます!」ワ-イ

 

榛「いえいえ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

榛「さて、どうしようか」

 

咲「あら、榛奈」

 

榛「あ、咲夜さん。どうかしました?」 

 

咲「いえ、見かけたから声をかけただけよ。ところで妹様の傍に居なくていいの?」

 

榛「それが先程色々ありまして、私のせいでフラン様が不機嫌になったみたいなので傍にいられないというかなんといいますか......」

 

咲「一体何があったのよ」

 

榛「ハロウィンについて聞いてきたので答えたらTrick or Treatと言われまして、お菓子をあげたら何故か不機嫌に......」

 

咲「あぁなるほど、なんとなく分かったわ」

 

榛「分かったんですか?」

 

咲「気づいてないの?」

 

榛「お恥ずかしながら...」シュン

 

咲「ホントに鈍いわね」

 

榛「それ師匠にも言われました......」

 

咲「まったく」ヤレヤレ

 

榛「ところで咲夜さんは何か用意しました?」

 

咲「えぇ、用意したわよ。ということでほら」

 

榛「?あ、はい!Trick or Treat!お菓子をくれなきゃイタズラしちゃいます!」

 

咲「そこは察することが出来るのね。はい」っ(袋)

 

榛「やったー!咲夜さんのお菓子だぁー!」ワ-イ!

 

咲「美味しさは貴女と同じでしょうに、なんでそこまで喜ぶのよ」

 

榛「同じじゃないですよ!お菓子の中に入ってるまごころが違います!咲夜さんのお菓子には咲夜さんのまごころが入ってますから!そんなお菓子を食べられるから喜ぶんです!むしろ喜ばずにはいられない!」

 

咲「そう。で、Trick or Treat」

 

榛「はい!どうぞ!」っ(袋)

 

咲「ありがとう、後で頂くわね」

 

榛「はい!あ、ところで今日の夜の妖精メイド達の仕事ってどうなってますか?」

 

咲「一応、夜8時には終わる予定よ。それがどうかしたの?」

 

榛「実は......」ゴニョゴニョ

 

咲「あぁなるほど。それはいいけど用意とかはどうするの?」

 

榛「えっと... その...」アセアセ

 

咲「はぁ、私も手伝うわよ」

 

榛「え!?いいんですか!?」

 

咲「たまにはね。でもまずお嬢様から許可を頂いてからよ」

 

榛「分かりました!では行ってきます!」タタッ

 

咲「あ、まったく。今日は落ち着きがないわね」

 

 

 

 

~少女移動中~

 

 

 

 

 

[レミリアの書斎の前]

コンコンコンコン

 

レ「誰?」

 

榛「榛奈です」

 

レ「入っていいわよ」

 

榛「失礼します」

 

 

 [レミリアの書斎]

 

レ「それでどうかしたのかしら」

 

榛「レミリア様に許可して頂きたいことがありまして、実はーーーー」

 

~少女説明中~

 

レ「へぇ、なるほどね」

 

榛「いかがでしょうか?」

 

レ「いいと思うわよ。ただ...」

 

榛「ただ?」

 

レ「私もやりたいわね」

 

榛「あ...あの、正直に申し上げてもよろしいでしょうか」

 

レ「何?」

 

榛「レミリア様も参加なさるとその...彼女達もそれどころじゃなくなってしまうといいますかなんといいますか。出来れば彼女達だけでやらせてあげたいのですが...」

 

レ「それぐらい分かってるわ。私たちは私たちでやるのよ。てことでどうかしら?」

 

榛「いいと思います。フラン様も喜ぶでしょうし」

 

レ「なら霊夢や魔理沙も誘いましょうか。でも2人を誘うと別のものに変わってしまいそうね」

 

榛「いいじゃないですか。パーティーは日本語で言うなら宴会。騒いで楽しむことに変わりありません」

 

レ「そうね、咲夜」

 

咲「はい、ここに」スタッ

 

レ「榛奈と一緒に二つのハロウィンパーティーの準備をしなさい。一つは妖精メイド達の、もう一つは私たちのよ」

 

咲「かしこまりました」

 

レ「それと榛奈は霊夢と魔理沙を招待しに行きなさい。咲夜は妖精メイド達にこのことを伝えて。時間は夜6時頃から、いいわね?」

 

榛「了解しました!」

 

咲「かしこまりました」

 

榛「それでは失礼します!」

 

咲「失礼します」

 

 

 

ス-...←静かすぎるくらいのドアを閉めた音

 

 

 

咲「それじゃあ、私はメイド達に伝えてくるわね」

 

榛「あ、咲夜さん待ってください」

 

咲「どうかしたの?」

 

榛「できれば妖精メイド達のはサプライズパーティーにしたいんです。なのでその事は内緒にして伝えてくれませんか?」

 

咲「分かったわ。それじゃ後でね」

 

榛「はい!また後で!」

 

 

 

 

 

~少女移動中~

 

 

 

 

 

[博麗神社]

 

霊「はぁ~、今日も参拝客が来ないわね...」

 

魔「それはいつものことだぜ」

 

榛「おーい霊夢~、ってあ!魔理沙姉も居たんだ、丁度いいね」

 

魔「ん?榛奈、どうしたんだぜ?」

 

榛「話す前に...っと」ポイッ...チャリ-ン

 

霊「御賽銭っ!」ダッ

 

榛「ぅお、相変わらずだね...霊夢」

 

霊「あ、榛奈。いつもながらありがとうね」

 

榛「いいよ、代わりに私は博麗神にお願い事を叶えてもらってるんだから」

 

魔「どんな願い事だぜ?」

 

榛「言わない、言ったら叶わなくなるって言うから」

 

魔「そんなの迷信だぜ?」

 

榛「ただの後付け理由だよ。とにかく内緒なの」

 

霊「それより何か用なの?」

 

榛「うん。実はーーーー」

 

 

 

 

~少女説明中~

 

 

 

 

 

霊「ハロウィンねぇ」

 

魔「外の世界には不思議な行事があるんだなぁ」

 

榛「元々はとある民族がこの日に死霊が家族の元を訪れると思って始めた行事だけどね。今じゃただ仮装してお菓子を貰う、そんな行事だよ」

 

魔「仮装って何をしたらいいんだぜ?」

 

榛「そうだねぇ、例えば幽霊、魔女、コウモリ、黒猫、悪魔、吸血鬼、狼男など基本的「恐ろしい」と思う仮装から、最近じゃメイド、看護師、巫女、お姫様、海賊、ヒーローといった可愛い、かっこいい系もあるね」

 

霊「巫女って私のような感じの?」

 

榛「脇は出てないよ」

 

魔「海賊ってなんだぜ?」

 

榛「海...あー塩水で作られてるでかい湖のような場所を船で旅しながらお宝を探す盗賊みたいなもの。海の賊だから海賊」

 

魔「旅するほどそんなに広いのか?その海ってのは」

 

榛「幻想郷が、そうだな...100個は軽く覆えるくらいデカイな。幻想郷はその海に囲まれた島国にある小さな郷だから」

 

霊「幻想郷って結構広いと思うんだけどね」

 

榛「大体のはしからはしまで行くのに幻想郷最速が全力で飛んで半日もかからないなんて狭いよ。外の世界はもっとずっと広く、はしからはしまでは幻想郷最速でも休憩なしで何週間かはかかるんだからって話がズレた... とにかく今日の夜6時頃から始まるから、いきなりだし仮装は出来ないだろうからパーティーだけだけど来てね!」

 

魔「もちろん行くぜ!仮装なら今着てる服でいいだろ」

 

榛「まぁ魔理沙姉の服は普段から仮装って言ってもおかしくないんだよね...」(^_^;

 

霊「私も行くわよ。仮装はめんどくさいからいいわよね」

 

榛(魔理沙姉と同じく霊夢も普段から仮装してるといってもいいんだけどね)

 

 

榛「それじゃ、私は手伝いがあるから帰るね。また後で~」

 

魔「おう!またな!」

 

 

 

 

 

~少女移動・準備中~

 

 

 

 

 

午後6時

[紅魔館・パーティー会場]

 

 

レ「皆!今日は集まってきてくれて感謝する!急遽開かれることとなったハロウィンパーティーだが皆、ゆっくりしていってくれ!それでは、乾杯!!」

 

「「「「「乾杯!!」」」」」

 

 皆集まったといっても周囲にいた私とよく遊ぶ妖精や妖怪を誘っただけ、だから小さなハロウィンパーティー。ちなみに人間は霊夢と魔理沙、咲夜さん、私しかいない。後、妖精メイド達は別の部屋で妖精メイドだけでパーティーをやってる。料理やお菓子は私と咲夜さんが時間を止めながら作った

 

 

チ「榛奈~、トリックオア...なんだっけ?」

 

大「トリックオアトリートだよ、チルノちゃん」

 

ル「お菓子くれなきゃイタズラするのだー」

 

榛「はい、クッキーだけどどうぞ」っ(袋)×3

 

チ「おぉ!さすがさいきょーなアタイの友人ね!」

 

大「ありがとうございます!」

 

ル「ありがとーなのだー」

 

榛「あはは、イタズラされたくないからね」

 

チ「大ちゃん!ルーちゃん!今度はあっちの人に貰お!」

 

大「あ、チルノちゃん待ってよ~」

 

ル「それじゃまたなのだー」

 

榛「またね~」

 

魔「おぉ、榛奈もお菓子用意してたのか」

 

榛「あ、魔理沙姉。うん、今日はハロウィンだからね。いざという時のために用意してなくちゃ。ところで「も」って?」

 

魔「咲夜も用意してあったんだ。レミリア、フランの他に美鈴とか小悪魔とかにも配ってたぜ。私も貰った」っ(袋)

 

榛「あ~、私もお昼前くらいに貰ったよ」

 

魔「そうか、じゃあTrick or Treat お菓子くれないとイタズラするぜ?」

 

榛「何が「じゃあ」なのか... まぁはい」っ(袋)

 

魔「ありがとうだぜ」

 

榛「魔理沙姉のイタズラは凄そうだからね。見てる分には面白そうだけど」

 

魔「お菓子貰ったがイタズラやろうか?」

 

榛「悪い意味での凄いだよ。受ける本人には悪いが、見てる方が面白い。だからいらないよ」

 

魔「ちぇ」

 

霊「あら、榛奈もお菓子持ってたのね。私たちと同じ年だから受け取る側かと思ったのに」

 

榛「私より色々と小さいのが多いからね紅魔館って。といってもなんとなくだったけどね。あわよくば自分のお菓子と他の人のお菓子を交換出来ないかなぁって」

 

霊「それで貰えたの?」

 

榛「咲夜さんから貰ったよ。咲夜さんのお菓子ゲットだぜ!」

 

霊「そう、よかったわね」パクパク

 

魔「おいおい、そんなに腹減ったのか?」

 

霊「モグモグ...ゴクッ食べれる時に食べとかないとって思ってね。最近は榛奈がお賽銭くれるから前よりはいい方よ」

 

魔「榛奈ー、お賽銭あげなくてもいいぜ~」

 

霊「ちょっ!?魔理沙には分からないの!?お金がなくてお米すら買えず、モヤシしか食べれないときの貧相感が!」

 

榛「あはははは...... とりあえずはい、霊夢」っ(袋)

 

霊「あら、ありがと」

 

魔「言わないのにあげるんだな」

 

榛「言われる前にあげるんだよ」

 

霊「それにしても一体どれだけ作ったのよ。さっき妖精達にもあげてなかった?」

 

榛「足りなくならないよういっぱい作ったんだよ。といっても知り合いが多くないからそこまで用意する必要は無かったけどね」

 

魔「余ったらどうするんだぜ?」

 

榛「湖の妖精達のおやつかな」

 

霊「そう」

 

榛「」キョロキョロ

 

魔「ん?どうしたんだ?」

 

榛「あ~いやえーと、あ、いた」キョロキョロ、ア、イタ

 

霊「ん?あー」パクパク チラッ

 

魔「??あ、あー」チラッ

 

榛「あー、えーと、その」チラチラ

 

魔「はいはい、遠慮せずに行ってこい」

 

霊「何をそんなに遠慮する必要があるのよ」

 

榛「いや、遠慮じゃないけど... とりあえず行ってくるよ」

 

魔「おう!いってらっしゃいだぜ」

 

霊「いってらっしゃい」

 

榛「行ってきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レ「ふふふ、それで咲夜が~~」

 

フ「うんうん!」

 

榛「あ...えっと...フラン様!」オドオド

 

フ「!?は...榛奈...」

 

榛「えっと、その...」ドウシヨウ

 

フ「あの、その...」

 

榛・フ「「ごめんなさい!!」」

 

榛・フ「「え?」」

 

レ「フフッ」

 

フ「あ、お姉様!笑わないでよ!」

 

レ「ごめんなさい、ついね」

 

フ「もう...」

 

榛「あ~、で、何故フラン様が謝るんですか?」

 

フ「それは榛奈だって」

 

榛「私は朝、フラン様の機嫌を損ねてしまったので」

 

フ「そ、それは私のせいだよ!勝手に不機嫌になって榛奈を困らせちゃった...」

 

榛「いえ、私が悪いんです...」

 

フ「違う!私だよ!」

 

榛「いいえ、私です!」

 

フ「私!」

 

榛「私です!」

 

フ「わたsレ「はいはい、そこまでよ」お姉様...」

 

咲「榛奈もね」

 

榛「咲夜さん...」

 

レ「今回はどっちも悪かった...そしてどっちも反省してる。なら今回の事はなかったことにすればいいじゃない」

 

咲「それに言い争いなんてパーティーに似合わないわよ?」

 

榛「はい...」

 

フ「うん...」

 

レ「うん、最後に2人が謝って、今回の件は無しよ?」

 

榛「分かりました」

 

フ「はーい」

 

榛「あの...」

 

フ「えっと...」

 

榛・フ「「ごめんなさい」」

 

レ「よし、じゃあパーティーの続きをしましょ!」

 

魔「なんか分からんがやるか!咲夜~!この「わいん」って酒くれ~!」

 

霊「日本酒はないの?」

 

咲「はいはい、持ってくるわよ」

 

榛「私も手伝います!」

 

フ「あ、榛奈!」

 

榛「はい?」

 

フ「今朝のこと無しになったから、ね」

 

 

 

 

 

 

フ「Trick or Treat!お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、会場は酔いつぶれた人で溢れたのは言うまでもない

なお、榛奈のお菓子は全て配り終わりました




後書き~
ここまで読んでくださりありがとうございます!
はい、今回はフランと榛奈ですね!フラ榛です!(そこまでユリユリしてない)
一応ヒロインはフランですから、こうゆう立ち位置に立たせないといけないんです

次回は本編やりますよ!
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去話 番外編1『フラン様とクリスマス』

前書き~

書き終わったあああああぁぁぁ!!
合計文字数1万超え!
今までで1番長いです!

クリスマス終了まで後わずかですね......

初めの時系列としては紅霧異変後、春雪異変前となっていますが、サブタイトル通り過去話が出てきます。
こちらは前回のハロウィンと違い、本編と同じ世界です

それではクリスマス番外編!
今回はside変更が多々ありますのでそのへんが大丈夫な方はゆっくりしていってね!


[紅魔館 門前]

 

 

 12月の曇り空なある日、紅魔館の門の前には普段からいる門番の他に、白黒の魔法使い、魔理沙がいた

 魔理沙は誰かを待っているようで、その暇つぶしにと門番と話していた

 

美「それにしても、最近妹様の機嫌が少し悪かったので、昨日魔理沙さんが妹様を誘ってくれたのは私達としてもありがたかったです」

 

魔「ん?フランの機嫌が悪いって何かあったのか?」

 

美「ほら、あれですよ。榛奈ちゃんが―――」

 

魔「あ~、なるほど。それで最近、フランが変だったんだな」

 

美「はい。榛奈ちゃんも愛されましたね~。お嬢様がヤキモチ焼いてましたよ」

 

魔「あのレミリアがか?ってアイツも姉だからな。それもそうか」

 

美「えぇ。お二人共、仲がいいですからね」

 

魔「...そうだな」

 

美「おや?魔理沙さんもヤキモチですか?」

 

魔「モチは焼いてないぜ」

 

 そこへ、誰かが門を開き出てきた

 

フ「お待たせ、魔理沙」

 

 魔理沙が待っていたのはフランだった

 

魔「お、来たか」

 

美「あらら、この話はまた今度ですね」

 

魔「また今度じゃないぜ......」

 

フ「2人で何の話をしていたの?」

 

魔「なんでもないのぜ」

 

フ「?」

 

 すると2人は、美鈴が微笑ましい表情で見ていることに気がついた

 

フ「どうしたの?美鈴。そんな微笑ましそうな顔して」

 

美「おや、顔に出てましたか?」

 

魔「あぁ。なんというか孫を見るおばあちゃんの目だったぜ」

 

美「そんなにですか」

 

 すると美鈴は頷きながらフランの方を見て、いや、フランの首元と手を見てこう言った

 

美「そのマフラーと手袋。本当に気に入られたんだなと思いまして」

 

 そう、フランは紅色で端に白色の模様がついたマフラーと、同じような手袋をしていた

 それを見た魔理沙はフランに質問した

 

魔「ん?フランのそれらって何かあるのか?」

 

フ「まぁ、ね...... 私にとってこの2つは宝物なんだよ」

 

 フランはそう言いながら愛おしそうにマフラーと手袋を見た

 

魔「へぇ。綺麗に出来てるな。誰かからのプレゼントだったりするのか?」

 

フ「うん」

 

魔「ふむ、それってレミリアはー、裁縫出来なさそうだな。じゃあ咲夜か?咲夜ならそれくらい作れそうだぜ」

 

美「えぇ。お嬢様はともかく、咲夜さんならそれくらい作れますよ」

 

フ「これらを作った本人は咲夜に教えてもらったって言ってたからね」

 

魔「ん?じゃあ咲夜は違うのか。ってえ!?咲夜以外のやつが作ったのか!?」

 

 そのマフラーと手袋は素人目でもハッキリと分かるくらい丁寧に編み込まれていた

 職人以外が作ったというのなら、これらを編んだ人物は相当な腕前ということが分かる

 だからこそ、魔理沙は驚いたのだった

 

フ「うん。去年のクリスマスプレゼントにね」

 

魔「ん?くりすます?くりすますってあれか?外の世界で冬にやるイベントか?」

 

美「はい。12月25日にやる、西洋の方から発祥したイベントですよ」

 

 魔理沙はクリスマスを知らないようなので美鈴は説明した

 ちなみに本来ならキリスト教が信仰しているイエス・キリストの誕生を祝う日なのだが、現代ではパーティーやってケーキ食ってプレゼントを貰う日はいいとして、イチャつく日になっているのはどうなのか......

 

 

 

~少女説明中~

 

 

 

魔「つまり、24日のクリスマス イブと25日のクリスマス、2日間行われて、主に宴会をする日だが、メインは深夜に勝手に家の中に入ってくる白髭で紅白の服を着た「サンタクロース」という爺が勝手にプレゼントを置いていく行事ってことなのか?」

 

美「え、えぇまぁ。そう聞くとサンタさんが凄く怪しく見えてきましたけど......」

 

 合ってはいるんだが......

 そう聞くとサンタクロースは警察に捕まってもいいんじゃないのか......

 幻想郷には警察はいないが

 

魔「じゃあ、それらはサンタクロースがくれたのか?」

 

フ「ううん。違うよ」

 

 魔理沙はサンタがくれたのかと思い、言ったが、フランは首を横に振りながら違うと言った

 

魔「じゃあ誰なんだ?そのマフラーと手袋をあげたやつ」

 

 するとフランは不思議と少しだけ顔を赤らめながら言った

 

フ「...榛奈だよ」

 

魔「え!?それ榛奈が作ったのか!?」

 

 驚くのも無理ない、のかもしれない

 魔理沙にとって榛奈という人物は妹だからだ

 

魔「あ~、なんとなく分かったぜ。それらが何故フランにとって宝物なのか」

 

美「分かりますよね」

 

 それは何故なのか。魔理沙と美鈴には、いや、ここ数ヶ月のフランを見ていれば大抵の人は分かるのだろう

 だが、その話は別で

 

魔「にしても榛奈のやつ、よくこんなの作れたな。凄い出来だぜ」

 

フ「本人曰く、マフラーは毛糸で作る防寒具の中で1番簡単な編み物だから、丁寧にやれば大抵の人は同じように出来るって。手袋は少し難しくなるみたいだけど」

 

魔「この出来は簡単にはできないと思うぜ」

 

フ「まぁ榛奈だから」

 

美「榛奈ちゃんですからね」

 

魔「ははっ...... 我ながら妹が怖いぜ......」

 

 

 

美「にしてもあの頃の榛奈ちゃんは忙しそうでしたね」

 

フ「うん。私の勘違いでパーティーやったりして」

 

魔「いやいや、何があったんだぜ?」

 

フ「それはね―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

《一年前》

榛奈side

 

[大図書館]

 

 

 季節は秋から冬になり始めた11月

 その日の朝は、朝食を作って食べて図書館で読む本を選ぶまでは普段通りだった

 その本を手に取るまでは

 

榛「クリスマス特集?」

 

 どうやらそれは、外の世界から流れてきた女性向けの雑誌のようで、クリスマスのことについて書かれていた

 少しだけ気になった私はその雑誌を手に取り、近くにあった椅子に腰掛け、読んでみることにした

 

 

 

~少女読書中~

 

 

 

 内容としてはクリスマスのデートについてだったり、ケーキについてだったり。外の世界を知っている人でないと意味の分からない内容で、少しだけ懐かしく感じた

 但し、記憶に残っている時代より少し古いようだが

 

榛「そういえば来月はクリスマスなんだよな......」

 

 クリスマス......

 紅魔館の皆はクリスマスパーティーとかするのかな。咲夜がケーキや料理を作ったり、誰かが何か芸をやったり、プレゼントを交換したり......

 でもレミリア様は吸血鬼だからキリストの祭りなんてやらないって言うのかな。いや、案外そんなの気にしないでやったりしてそうだな

 今度咲夜さんか美鈴、コア辺りに訊いてみようかな。レミリア様の親友である師匠でもいいのか?

 レミリア様本人に訊いてその話を出すなー的な感じで変なことになったら嫌だしな

 フラン様は...... あれ?2人は姉妹なはずなのに妹の方が訊きやすいぞ?

 あ、でも今年まで地下に閉じ込もってたから知らないのかもしれない

 うん。やっぱどっちも訊きずらいや

 とりあえず今度、師匠や紅魔の従者辺りに訊いてみるか

 

 そして、本をめくっていると、一つの特集が私の目についた

 それは手作りのクリスマスプレゼント特集

 本には手作りのキーホルダーや毛糸で作られた物などが載っていた

 

榛「プレゼントか......」

 

 そういえばフラン様と出会ってから1度も、何かプレゼントしたことなかったな

 出会ってまだ半年だけど

 これを期にプレゼントしてみようかな

 でも、プレゼントって何をあげればいいんだ?

 やっぱりクリスマスにあげるからクリスマス風の物で、できれば食べ物とかじゃない残る物が良くて、私が作れて、フラン様が気に入ってくれる物

 日傘か?

 いやフラン様外には出られないし。それに作れないし

 なら新しいぬいぐるみ?

 作ることは出来そうだけど...... でもそれは能力を使いこなしてからあげたいし

 この雑誌の中にヒントとか載ってないかな

 

 私はそう考えながら本を見ていると、マフラーについて載っているページにマフラーの作り方が次のページに載っていると書いてあった

 なんとなく気になった私はそのページをめくると、マフラーの作り方が書かれていた

 

榛「マフラーか...... アリかもしれない......!」

 

 マフラーならクリスマス風に出来て、壊れない限り残る物で、作り方はここに載っていて、もしくは咲夜さんに訊けば大丈夫で、柄によってはフラン様が気に入ってくださる物!

 

榛「あ、でも......」

 

 マフラーは外に出かける時にする物

 外に出れないのに渡していいのか?

 だからといって、他に思いつく物って手袋で、同じような物だし......

 この際、マフラーと手袋をまとめて作ってやろうか

 ん?結構ありか?

 うん。ありだな

 

榛「よし決めた!」

 

 どっちも作ってフラン様にプレゼントしよう!

 フラン様は外には出られないけど、でもそれは今だけ。能力さえ使いこなせるようになったら行けるんだから!

 フラン様が外に行けるようになったら、冬なら妖精達も誘って一緒に雪遊びをして、それでその時マフラーと手袋、どっちも必要だろうから!

 

榛「よーし!頑張る!」

 

 私がそう意気込んでいると......

 

小「どうかしたんですか?榛奈さん」

 

榛「ぅえ!?コア!?」

 

 え?見られてた?見られてたのか!?

 

榛「えっと...... いつから......?」

 

小「大体 「よし!決めた!」の辺りですね」

 

榛「~~~っ///」

 

 見られてた~~!!

 1人で意気込んでて、ある意味見られたくなかったところを見られた!!

 この恥ずかしさを例えるなら部屋で1人で歌を熱唱していたら何も知らない親に聴かれたくらいだよ!人によっては大丈夫かもだけど!

 

榛「ぅぅ...... 穴があったら入りたい......」

 

小「えっと...... だ、大丈夫ですよ?誰にも言いませんから」

 

 私は恥ずかしさから若干涙目にしながらコアを見て言った

 

榛「......ほんと?」

 

小「ふぇ!?え、ええ。本当です」

 

榛「......ならいい。私、これから寄るとこあるから。行ってくる」

 

小「は、はい。分かりました」

 

 恥ずかしさで早くコアの前から去りたかった私はそう言い、逃げるように小走りで図書館を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小(まさか榛奈さんにあんな可愛い表情が出来るとは...... たまに涙目にさせるのもありですかね」

 

パ「そんなことしたら、妹様が怒るわよ」

 

小「ぅえ!?パチュリー様!?いつから聴いていらして!?」

 

パ「「たまに涙目に~」の辺りからよ。まったく...... 仕事サボってるんじゃないわよ」

 

小「すいません......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

[紅魔館 廊下]

 

 

榛「さて、気持ちを切り替えて、裁縫、というより主婦スキルを習うなら咲夜さんが1番だな」

 

 掃除洗濯料理おもてなし、メイドに必要な基礎はいつも教えてもらってるからな

 レミリア様達の服が破けたりしたら咲夜さんが直してるみたいだし。紅魔館の何処かが壊れた時も、咲夜さんを中心に直してたようだし

 

榛「咲夜さん、万能だなぁ」

 

 なんというか。人に対する評価じゃないかもだけど、そう思ってしまうんだよな

 一家に1人は欲しい!

 但し、忠誠心はレミリア様とフラン様にしかありません

 なんてね

 

榛「それで、肝心の咲夜さんはどこにいるn咲「呼んだかしら」だああぁぁ!?」

 

 私が独り言を話していると、突然咲夜さんが現れた

 何を言ってるのか分からないと思うけど、文字通り突然現れたんだ!

 見えない所にいたわけじゃない!

 見間違えのない真正面に現れたんだ!

 まぁ咲夜さんの能力だと思うけど…...

 

咲「何変な声出してるのよ」

 

榛「咲夜さんがいきなり現れるからです!」

 

 まさか出てくるなんて思わなかったよ......

 そういえば前に咲夜さんから、メイド長になるとレミリア様やパチュリー様が呼んだ時、聞こえない場所でも聞こえるって...... それか!?

 

咲「榛奈に呼ばれた気がしたのよ。それで、何か用があるのかしら?」

 

 やっぱりそれかーー!!

 まぁ、それは1度置いといて、要件を言おう

 

榛「咲夜さん!私にマフラーと手袋の編み方を教えてください!!」

 

 そのついでの必殺土下座!......はしないけど。腰を90度に曲げてお願いする

 

咲「......いきなりどうしたのよ。欲しいなら作るわよ?」

 

榛「いえ、そうではなくて―――」

 

 私はどうして編み方を教えて欲しいのかを咲夜さんに説明した

 というか言ったら作ってくれるのか。ありがてぇ

 

 

 

~少女説明中~

 

 

 

咲「なるほど、妹様へのプレゼントということで教えて欲しいのね」

 

榛「はい。そういうことです」

 

 すると咲夜さんは少し悩みながら言った

 

咲「さすがに私もメイドの仕事があるから昼間は無理で、お嬢様がお眠りになられた後なら大丈夫だけど、それでもいいかしら」

 

榛「はい!教えてもらう立場なんですから文句無いです!むしろ睡眠時間を取らせてしまってすみません」

 

咲「謝らないでちょうだい。睡眠時間なんて、私の能力でどうとでもなるのだから」

 

榛「じゃあ、ありがとうございます!!」

 

咲「ふふっ。それで、榛奈は何色のマフラーを作りたいの?」

 

榛「えっと......」

 

 色か......

 特に決めてなかったんだよな......

 クリスマスっぽくてフラン様に似合う色......

 

榛「紅と白......」

 

 紅はスカーレットの名から

 白はフラン様の純粋な心から

 そしてこの2つの色はクリスマスの色......!

 

榛「紅色と白色でお願いします!」

 

咲「2色...... 少し難しくなるわよ?模様を付けるなら尚更」

 

榛「それでもです!それに難しい方が出来た時の達成感や、喜んでもらえた時の嬉しさが倍増するじゃないですか!」

 

 そう言うと、咲夜さんは少し微笑みながら言った

 

咲「そう。榛奈がそう言うなら2色の編み方を教えるわ。それじゃ、今日は毛糸を用意するから。明日から始めましょうか」

 

榛「はい!よろしくお願いします!」

 

咲「えぇ。よろしくされたわ」

 

 そう言って咲夜さんは笑顔で去っていった

 

榛「......」

 

 咲夜さんの笑顔...... 惚れたぜ☆

 

榛「...なんてね」

 

 さぁ!プレゼント作りは明日から!

 それまで私もお仕事だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから私は昼間は図書館で本を読んだり、フラン様の相手をしたり、メイド達の仕事を手伝ったりした

 そして次の日―――

 

咲「それじゃあ、さっそく始めましょうか」

 

榛「はい!よろしくお願いします、咲夜さん」

 

咲「えぇ。じゃあまずは毛糸を―――」

 

榛「ふむふむ......」

 

 

 そうして、マフラーと手袋は着実に出来上がっていったのだった

 

 

 

 

 

______________________

フランside

 

[大図書館]

 

 

 最近、榛奈の様子が変だ

 昼間ボーッとすることがあったり、なんか1人でいるときはニヤついてたり

 一緒に寝よって言ったら今までは大丈夫だったのに最近はダメって......

 不思議になった私は何かあったのか直接訊いてみたんだけど

 

榛「なんでもありませんよ♪」

 

 と、音符が付くような感じで言って......

 

フ「なんでもないわけないよ!絶対何かあるんだよ!だって何も無いのにニヤつくわけないでしょ!ボーッとしてるのも変だし!てことで何か知らない?!」

 

パ「...なんで私を頼るのかしら......」

 

 気になった私はパチェのところに訊きに来ていた

 

フ「そりゃ榛奈の師匠だから」

 

パ「それなら貴女はその榛奈の主なはずだけど」

 

 確かに私は榛奈の主だけど......

 知ってたら訊きに来てないよ!

 

フ「ぅぅ...... とにかく!何か知らない?」

 

 するとパチェは考える仕草をして言った

 

パ「そういえばこの前、榛奈と小悪魔が何か話してたわね」

 

フ「何かって?」

 

パ「さぁ?本人に直接訊いてみましょ。小悪魔ー!」

 

小「はーい!お呼びですか?」

 

 パチェがこあを呼ぶとこあは急いで飛んできた

 

パ「この前、榛奈と何か話してたわよね。何の話をしていたのかしら」

 

小「この前ですか?えっと...... 一応言わない約束なんですが......」

 

フ「なら何か榛奈に変なところはなかった?」

 

小「確か...... 外の世界から流れてきた本を読んでいましたね」

 

 もしかしてその本が原因?

 

フ「ねぇ!その本って?!」

 

小「え、えっと...... 今持ってきますね」

 

 そう言いこあは本棚の奥に行き、1冊の薄い本を持ってきた

 

小「確かこれだったはずです」

 

フ「これ何?」

 

 それは写真や文字がいっぱい書いてある本だった

 

パ「それは外の世界の雑誌ね」

 

フ「雑誌?」

 

パ「娯楽系の情報を伝える本よ」

 

フ「へぇ」

 

 表紙にはその雑誌の名前なのか上の方に大きく書いてある文字があって、次に大きい文は「クリスマス特集」と書いてあった

 

フ「クリスマスって?」

 

パ「キリストの祭りよ。まぁ今じゃただパーティーやってるだけだけどね」

 

フ「へぇ」

 

 ページを捲ってみるとパーティーに使うのか彩られた料理やケーキの写真が載っていた

 

フ「もしかして、榛奈はパーティーをやりたかったのかな。うん!お姉様にパーティーやらないか相談してくる!」

 

 そう言い私は急いで図書館を出た

 

 

 

 

小「行っちゃいましたね」

 

パ「そうね」

 

小「......おや?次のページって......」

 

パ「クリスマスプレゼントの情報ね」

 

小「あ、もしかして榛奈さんは......」

 

パ「多分、こっちが本命なんでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

《12月24日》

 

榛奈side

 

[紅魔館 大広間]

 

レ「さぁ!今宵はクリスマス イブ!キリストが生まれた日とかなんとかみたいだけどそんなの気にしないで2日間騒ぎなさい!皆グラスは持ったわね!それでは乾杯!」

 

 「「「「「「乾杯!」」」」」」

 

 レミリア様の挨拶から始まったクリスマスパーティー

 なんでもイブの夜とクリスマスの夜、2日間やるそうで、料理担当のメイド達は忙しそうだ

 え?私はって?

 フラン様と一緒に料理を食べて楽しく喋っていますよ

 ちなみに咲夜さんもレミリア様のお傍にいます

 時折時を止めてキッチンの方に行ってるみたいですけどね

 

フ「榛奈!これ美味しいね!」

 

榛「はい。そうですね......っとフラン様、そのままじっとしていてください」

 

フ「?」

 

 私はフラン様の口元に付いていた汚れを常備しているハンカチで拭いた

 ......別に指で拭いてそれを食べるっていうお茶目もありだとは思ったんだよ?

 たださすがに従者としてダメかなって思って

 

フ「ん...... ありがと、榛奈」

 

榛「当然のことです」

 

 あ、ちなみにフラン様へのプレゼントは既に完成、包装もして四次元エプロンの中に入ってます

 

美「榛奈ちゃん、妹様。お2人とも楽しんでますか?」

 

 そこへ、酒気を帯びた、といっても酔ってなさそうな美鈴が来た

 

榛「美鈴、そろそろちゃん付けやめてください」

 

 だからといって、さん付けも嫌だけど

 

美「まだまだ私にとって榛奈ちゃんは子供ですから。しょうがないしょうがない」

 

榛「私だってもう13歳なのに......」

 

 そりゃ長いこと生きる妖怪にとってまだまだ赤ん坊当然かもしれないけど......

 それでも中1と同じ年齢だよ!

 咲夜さんと5歳離れてるかないかくらいだよ!

 

美「それより榛奈ちゃんは食べないんですか?」

 

榛「いや食べてますよ」

 

 私のお皿にはそれなりに料理が盛ってあるし、食べてもいる

 なのになんでそんなこと訊くんだろう

 

美「いえいえ、もっと食べなきゃダメですよ。育ち盛りなんですから。ほら」

 

 そう言いながら美鈴は私のお皿に料理を盛っていった

 

榛「いやいやいや、自分で取れますから......!」

 

美「遠慮しないで、ほれほれ♪」

 

 そう言う美鈴の顔はよく見ると赤くなっていて

 

榛「え?もしかして酔ってる!?」

 

美「妹様も持って来てくださ~い」

 

フ「うん!いっぱい持ってくるね!」

 

榛「いやいや持ってこなくていいですから!ちょっ!待ってください~!」

 

美「ほらほら~......ギャっ!?」

 

 そうやっているといきなり美鈴の頭にナイフが刺さった

 

咲「騒ぐのはいいですが、困らせるのは駄目ですよ」

 

美「いてて......」

 

フ「はーい」

 

榛「た、助かりました......」

 

咲「まったく......」

 

 すると咲夜さんが近付いてきて小声で言った

 

咲「(あれ、大丈夫なの?)」

 

 一応耳の良い妖怪対策なのだろう

 聞こえてもよく分からない言葉で咲夜は訊いてきた

 

榛「(大丈夫です。問題ありません)」

 

咲「(ならいいわ)」

 

 咲夜さんはそう言うとレミリア様の傍に戻った

 

フ「どうかしたの?」

 

榛「いえ、なんでもありません」

 

 なんか少しだけ緊張してきたな

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後もパーティーは盛り上がったが、2日間あるということで今日は早く終わった

 私はフラン様の寝る準備をして、フラン様とおやすみの挨拶をした後、部屋に戻った

 

 

[榛奈の自室]

 

 

 あの後、紅魔館が寝静まるまで時間潰しに本を読んでいた

 

榛「さて、静かになってきたし、着替えるか」

 

 私はクローゼットの中から紅白で暖かそうな服を取り出した

 全体的には赤色で、白いフワフワしたのが付いていて、下は普段履かないようなミニスカート。先端に白色ボンボンが付いたニット帽もかぶった

 ついでに白い袋にプレゼントを入れて持った

 

 えぇ。サンタガールです

 暖かいですよ?

 

榛「これ、いつの間に調達したんだろうな......」

 

 いつの間にか咲夜さんが持ってきてたんだよな

 それで今回の計画を思いついて......

 

榛「さて、ソリもトナカイもいないけどプレゼントはあるし、行くか」

 

 いざ!フラン様のお部屋へ!

 

 

[紅魔館 地下室]

 

 

 はい、地下室にやってきましたよ

 ちなみにフラン様はまだ能力の制御が曖昧なので地下室が自室です

 能力を使いこなしたら上のレミリア様の隣の部屋になるらしいです

 

榛「(寝てるよな?)」

 

 私は寝てるのか確認する為に扉の奥の方に耳をすました

 

榛「......」

 

 ごめん。わかんないや

 地下室の扉は他の扉と違って厚いからな

 しょうがない。入って確認するか......

 音をたてないように、慎重に―――

 

フ「...榛奈......?」

 

榛「ぅにゃ......!?フラン様!?起きていらしたんですか?」

 

 なんともまぁ、起きてました。といってもフラン様はベットに横になってたけど

 

フ「うん。眠れなくてね」

 

榛「そ、そうでしたか」

 

 しょうがない。出直すしかないのかな......

 

フ「それで、榛奈はどうして来たの?」

 

榛「ぅえ!?えっと...... それは......」

 

フ「それにその格好......」

 

榛「えっと...... それは......」

 そうだったよ忘れてた!

 私今サンタガールの格好だよ!

 明らかにサンタさんですって格好だよ!

 

フ「その服、似合ってるね」

 

榛「え...?あ、ありがとうございます///」

 

 褒められると照れるな......///

 

フ「それで、どうして?」

 

榛「それは......」

 

 こうなったら腹をくくるしかない......!!

 

 私は担いでいた袋の中からリボンで飾られた箱を取り出した

 

榛「これをどうぞ」

 

フ「え?これって?」

 

榛「あ、開けてみてください」

 

 フラン様が丁寧にリボンを解き、蓋を開けると......

 

フ「ぅわぁ!これって!」

 

榛「メリークリスマス、フラン様。私からささやかですが、マフラーと手袋のクリスマスプレゼントです」

 

フ「凄い!可愛い!」

 

 フラン様はすぐに取り出して手袋をして、マフラーを首に巻いた

 

フ「暖かい......」

 

 その暖かいだからかフラン様は笑顔になってくださった

 その笑顔が、直接染み込むようで、心がふんわりと暖かくなった

 

 

 

 

 

 

フ「それで、どうしていきなりプレゼントを?しかも夜中に」

 

榛「クリスマスの日にプレゼントといえばサンタですよ」

 

フ「......サンタって?」

 

榛「あ、そこからでしたか。そうですね...... サンタというのはサンタクロースのことで、今私が着ているような、いやこれはアレンジされてますが、似たような配色の服を着た人で、トナカイが引くソリに乗っていて、クリスマス イブの夜中に子供たちにソリに乗ったプレゼントを配る人のことです」

 

フ「なんで夜中に?」

 

榛「サンタクロースは人に見つかったら駄目なんですよ。ですから人が寝静まった夜に配るんです」

 

フ「そうなんだ...... それじゃあ榛奈はサンタさんなの?」

 

榛「そうですね...... フラン様に見つかってしまいましたのでサンタはもう終わりですね」

 

フ「え!?いなくなっちゃうの!?」

 

榛「いえいえ、いなくなるわけじゃないですよ。それに私がプレゼントを渡す相手にはもう渡しましたから。また来年、やるかもしれませんね」

 

フ「なら榛奈。お願いごと、いい?」

 

 フラン様は上目遣い気味に言った

 

榛「はい。私に出来ることなら」

 

 そう言うと、フラン様はベッドに横になって

 

フ「私が寝るまでそばにいて。今日はなんだか眠れなくて......」

 

榛「...わかりました。フラン様がそう望むなら」

 

 私はそう言い、フラン様が横になっているベッドに腰掛けた

 

フ「......撫でて?」

 

榛「はい......」

 

 私はフラン様の頭を撫でた

 私にとって、とてつもなく嬉しく、愛おしい時間

 東方キャラとか推しキャラとか関係なく、愛おしいと思う人

 ......これが、“家族愛”なんだろうな......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくすると、フラン様は寝息をたてながら眠った

 それを見届けた私は、惜しみながらもフラン様を撫でていた手を止め、離した

 そして起こさないよう、ベッドから立ち上がり、部屋を出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

《現在》

 

[紅魔館 門前]

 

 

魔「へぇ。そんなことがあったんだな」

 

フ「うん。パーティー楽しかったよ!」

 

美「あの時は...... あはは。少し調子に乗り過ぎましたね」

 

魔「羨ましいぜ」

 

フ「今年もやるみたいだから来る?」

 

魔「もちろん行くぜ!」

 

フ「それじゃ、榛奈がいない間、榛奈が羨ましがるくらいいっぱい楽しもう!今日のお出かけやクリスマスパーティーも!」

 

魔「おう!楽しみだぜ!」

 

フ「じゃ、美鈴。行ってきます」

 

美「はい。行ってらっしゃいませ」

 

 

 フランはそう言うと、魔理沙と共に空へ飛んでいったのだった




後書き~

今回の話、いかがだったでしょうか
クリスマスの夜にふさわしい物語になっていることを願います

後日談も書いていますので、そちらもどうぞ

それでは次回もゆっくりしていってね


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去話 番外編1.5『クリスマスの後日談』

前書き~

クリスマスの後日談を書くと後書きに書いておきながら書いてなかったので今更ながら書きました!
後日談を楽しみにしていた方、本当に申し訳ありませんでした......
今回の話は番外編1『フラン様とクリスマス』の直後にあった話です
もしかしたら本編で出る話もあったりなかったり?
それではゆっくりしていってね!


《一年前》

榛奈side

 

[紅魔館 廊下]

 

 

榛「ふぅ...... 終わった終わった」

 

 今はクリスマス イブの深夜

 といってもそろそろ日付が変わるだろう

 私はフラン様へプレゼントを渡し、部屋へ戻るところだった

 

 それにしてもフラン様が起きてるなんて予定外だったな

 でも喜んでくれたみたいだし、嬉しいね

 さて、明日も仕事やらなんやらあるし、早く部屋へ戻って着替えて寝なきゃ

 

 

 

 それにしても静かだなぁ

 私の足音しか聞こえないや......

 こんなに静かなら誰かが居ても足音とか聞こえそう――

 

ガサッ......

 

榛「誰!?」

 

 廊下の曲がり角から突然物音が聞こえた

 ここにいるのは私だけ

 居るとすれば咲夜さんや妖精メイドだが、こんな時間だ。皆寝ているはず

 とすれば侵入者だと思う

 私は警戒しながらそこへ近づいていくと......

 

?「ふぉっふぉっふぉ。見つかってしまったのう......」

 

 そこには赤い服で所々白いフワフワした物が付いていて、頭には服とお揃いの帽子、中に色々入っているのか膨らんだ白い袋を持っている白髭で若干太ってる男がいた

 

榛「えっ!?サンタクロース......?!」

 

 思わず声がでかくなりそうなのを抑えながらも驚いた

 まさにお話に聞くサンタクロースが目の前にいたのだから

 

サ「いかにも、わしはサンタクロースじゃ」

 

 マジかよ......

 あ、でももしかしたらサンタに扮した侵入者かもしれない......

 ここで侵入者を取り逃がしたとなれば私の名誉が傷つくかも......

 

榛「失礼ですが、その証拠はありますでしょうか?」

 

サ「証拠かの?」

 

榛「はい。もし貴方様がサンタに扮した侵入者であれば取り押さえなければなりませんので」

 

 私がそう言うと、サンタ?は特に気にした様子もなく言った

 

サ「ふぉっふぉっふぉ。どうやらわしは疑われてるようじゃの」

 

榛「もしサンタであれば失礼にあたってしまうことですけどね」

 

サ「ならばわしの仕事に付き合ってみるかの?」

 

榛「仕事、ですか?」

 

サ「そうじゃ。サンタクロースのお仕事じゃ。どうやらお主は誰かにプレゼントを渡したようだからの」

 

榛「え?どうして分かって......?」

 

 そんなの咲夜さん以外知らないのに......

 

サ「その姿とこの時間まで起きてたことが物語っとるぞ?」

 

榛「あ、そういえば......」

 

 今の私の格好、サンタガールだっけ

 

サ「それにの、実はわしは迷子になっておるのじゃ」

 

榛「え?迷子?サンタが?」

 

 サンタが迷子って聞いたことないよ......

 

サ「そうじゃ。この館の住人にプレゼントを渡しに来たのじゃが、どうにも広くてのぉ。お主、ここの住人じゃろ?案内してくれると嬉しいのじゃが......」

 

 確かに咲夜さんの能力で広くなってるから始めてくる人は迷いやすいだろうな

 んで、サンタのお手伝いってことか......

 でも、彼がまだ本物のサンタか分からないし......

 

サ「それにじゃ。わしはプレゼントを渡したらすぐここを去る気でおる。だからまだ疑ってるようなら一緒に来てわしを監視していたらいいと思うぞ?わしはプレゼントを渡せて嬉しい。お主はわしが侵入者じゃなかったことに安心。win-winの関係になる。どうじゃ?」

 

 まだ疑わしいが、此処は幻想郷

 サンタがいてもおかしくないし、まぁここは乗ってやるか

 

榛「なるほど。それは良い考えですね。では最初はどなたに差し上げるのですか?」

 

サ「助かるのぉ。ならばまず、ここの門番に渡したいのじゃが......」

 

榛「美鈴ですね。彼女の部屋はあちらですよ」

 

 私は美鈴の部屋へ歩きだした

 それにサンタ?は着いてきた

 

 

 

 

 

サ「次は力の弱い悪魔のところじゃな」

 

榛「小悪魔ですね。それなら向こうで――」

 

 

 

 

 

サ「今度は紫の魔女のところじゃ」

 

榛「パチュリー師匠は隣の部屋に――」

 

 

 

 

 

サ「次は銀髪のメイドじゃ」

 

榛「咲夜さんの部屋はあちらに――」

 

 

 

 

 

サ「今度はここの主のじゃな」

 

榛「レミリア様の寝室はこちらに――」

 

 

 

 

 

サ「これらは妖精メイド用じゃな」

 

榛「妖精達の休憩室は向こうに――」

 

 

 

 

 

 そうして、私とサンタは順調に、誰にも見つからず部屋にプレゼントを置くことが出来た

 幸運にも誰も起きておらず、睡眠の必要が無い師匠でさえ寝ていた

 おそらくパーティーによる影響なのだろう

 そんな中私は眠気より興奮の方が勝っていた

 何せ隣に本物らしいサンタがいるのだ

 あの白い袋から様々なプレゼントを出していくのを見て、私は彼が本物なんだと実感したのだから

 それにしても、本当に様々な物が出てくる

 いったいあの袋はどうなっているのだろう......

 魔法使いとしての私の本能が調べたがってるよ......

 

 

 

 

 

サ「さて、今度のは...... お主がプレゼントを渡してきた相手じゃな」

 

榛「え!?どうして分かって!?」

 

サ「サンタの勘じゃ。さて、案内頼むぞ」

 

榛「え、えぇ。分かりました」

 

 私は彼を地下まで案内した

 

榛「こちらです」

 

サ「ふむ。どこか寂しいところじゃが、彼女は何故ここに住んでおるのじゃ?」

 

榛「能力が危険だから、とのことです。ですが、今は地上にいることが多く、就寝時以外は地上にいますよ」

 

サ「そうなのじゃな。まぁよい。わしは喜んでもらうためにプレゼントを渡すだけじゃからの」

 

榛「そうですか。では開けますね」

 

 そう言い、私がフラン様の部屋の扉を開けようとすると......

 

サ「まぁ待つのじゃ」

 

榛「はい?」

 

サ「ここはお主が渡してきてはどうじゃの?」

 

榛「え?私がですか?」

 

サ「そうじゃ。何もわしが全部あげなきゃならんというのはないからの。それにお主が渡した方が彼女も喜ぶじゃろ」

 

榛「いや、フラン様は寝てるので感情は......」

 

サ「いいから行ってくるのじゃ。ほれ、これがプレゼントじゃ。起こさないようにの」

 

榛「は、はい...... 分かりました」

 

 私はそう言い、サンタから渡されたプレゼントを持ち、フラン様の部屋に入った

 

 

榛(ここでいいよな......)

 

 私は抜き足差足でフラン様の眠るベッドまで近づくと、近くにあった机にプレゼントを音を立てないよう静かに置いた

 ふと、ベッドを見ると、フラン様が可愛らしい顔で寝ている

 思わず抱きしめたい衝動に駆られるが、それを抑えつけ、部屋を出た

 

 

榛「置いてきましたよ」

 

サ「(...ヘタレ)」

 

榛「え?」

 

サ「なんでもないぞ?」

 

 サンタが何かボソッと言ったが本当に小さな声だったので聞こえず、聞き返すと誤魔化された

 何を言ったのだろうか......

 

サ「さて、では帰るとしようかの」

 

榛「では門まで送りますね」

 

サ「ありがとうなのじゃ」

 

 私はサンタを連れ、門へ向かった

 

 

 

 

 

[紅魔館 門前]

 

 

榛「ほぇ...... 本物だ......」

 

サ「当たり前じゃ」

 

 なんと門の前には赤いソリと、紐で繋がれたトナカイが2頭居た

 鹿ですら転生前に見て、今世では見たことなかったなのに、まさか初めて生で見るトナカイがサンタのになるとは......

 人生何が起こるか分かんないな......

 

サ「さて、最後のプレゼントじゃな」

 

榛「はい?もう渡した終えたのでは?」

 

サ「いいや、まだ1人残っておるぞ」

 

 そう言うとサンタは袋を漁り、小さなラッピングされた箱を取り出した

 

サ「ほれ、お主のプレゼントじゃ」

 

榛「え?私のですか?」

 

サ「そうじゃ。ほれ、受け取れ」

 

榛「は、はい」

 

 私は差し出された箱を受け取ると、サンタはソリに乗った

 するとソリは少しだけ地面から浮いた

 

サ「今夜は手伝ってくれて感謝じゃな。今夜のこと、皆には内緒じゃぞ?」

 

榛「大丈夫です。分かってます」

 

サ「それなら安心じゃな。それじゃまた会えたらの」

 

 サンタはそう言うと、紐でトナカイに指示を出すと、ソリは空高く浮き始めた

 私はそんなサンタの姿に向かって言った

 

榛「はい!また会えたら!」

 

 そう言うと、サンタはその声に応えるかのように言った

 

サ「ふぉっふぉっふぉ。メリークリスマス!!」

 

 ソリは一定の高さで止まると、一気に飛んで行った

 その姿にはどこか神々しさがあるのを私は感じていた

 

榛「また、会えたらです」

 

 私はプレゼントを抱え部屋に戻り、未だ興奮で眠れない中、布団の中に潜った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

《翌日》

 

[紅魔館 大広間]

 

 

レ「見て見て咲夜!プレゼントがあったの!それも2つもよ!」

 

咲「良かったですね、お嬢様。私も今朝、机の上を見たらプレゼントが......」

 

美「私もです。気配なんて感じませんでしたのに......」

 

小「パチュリー様~♪私もプレゼント貰っちゃいました♪」

 

パ「私のところにもあったわ。不思議なものね」

 

フ「私も机の上に見知らぬプレゼントがあったよ。榛奈なの?」

 

榛「いえ、私も起きたらいつの間にか机の上に......」

 

レ「それじゃあ皆!開けてみましょ!」

 

 レミリア様のその言葉と共に、皆はリボンを解き、蓋を開けた

 

レ「あら!新しいティーカップね!もう一つは新しい万年筆!丁度欲しかったのよ!」

 

咲「新しい銀のナイフね...... 切れ味良いのかしら」

 

美「私のはマフラーです!これで暖かくできます!」

 

小「私はネックレスです♪さっそく着けて...... パチュリー様、似合ってますか?」

 

パ「まぁいいんじゃないかしら。私は新しい魔導書ね。後で読んでみようかしら」

 

フ「私のは...... 人生ゲーム?」

 

榛「ん?それは外の世界のボードゲームですね。2人から4人でやるゲームです」

 

フ「へぇ...... 楽しそう♪今度皆でやろうよ!」

 

レ「えぇ勿論よ!良かったわね、フラン」

 

フ「うん♪それで、榛奈のは?」

 

榛「私のは...... ペン?ですかね」

 

 それは白黒のペンだった

 といっても色は丁度半分に分かれていて黒い部分の先はペン先が収納されている状態で、白い部分は丸くなっている

 説明書か何かないか箱の中を見てみると、手書きの紙が入っていた

 

 

【説明書】

『これは魔法のペンです。黒い部分のペン先を紙に当てると文字が書けます。通常のペンで書けないものには書けません。書いた文字を白い部分の先でなぞると消せます。このペンで書いたもの以外は消せません。このペンで書いたものはこのペン以外で消すことはできません。インクは所有者の魔力です。初期状態の際はマスター登録をしないと使うことはできません。登録をしますと、マスター(所有者)となった人物以外は使うことが出来なくなります。登録方法は以下の通りです

 

1. まず初めに所有者の名前をこのペンで紙に書き、白い部分でなぞってください。文字が消え、ペンが白く光るはずです

 

2. 次に所有者の血にペン先を当ててください。黒く光ると成功、マスター登録完了となります

 

それでは良いペンライフを』

 

 

榛「なんだか凄い物が手元に......」

 

 魔法やらマスター登録やら血やらなんやら......

 何このペン、凄すぎない?

 いや用途は書いて消すだけだけど!

 そしてなんだよ「良いペンライフ」って!

 あのサンタなに渡してるの!?

 皆さんにあげたのは普通そうなのに!

 まぁ便利そうなんだけどさ......

 

フ「なんだった?」

 

榛「えっと...... 凄いペンでした」

 

フ「え?」

 

パ「どうしたの?」

 

美「そんなに凄いものでしたか?」

 

 私の様子を見た皆さんが集まってきた

 

榛「えっと...... 魔法やら血やら登録やら...... うん。とにかく凄い。用途は普通だけど」

 

レ「ちょっとその紙見せなさい」

 

榛「はい、どうぞ......」

 

 私はレミリア様に説明書を渡した

 そしてレミリア様は説明書を読むと呆れ顔になった

 

レ「なによこのマスター登録って...... 用途は普通なのに......」

 

 そう思いますよね!?

 やっぱりそう思いますよね!?

 用途は普通なのに!

 

パ「どれどれ......なるほど。これは一種の主従契約のようね」

 

榛「え...... 主従......!?」

 

 それって「問おう。貴方が私のマスターか?」ってやつ!?

 いやサーバントなんていらないよ!?

 むしろ私が従者なんだから!

 というかペンを従者にって!?

 

フ「榛奈のプレゼント、凄いね......」

 

榛「そうですね...... とりあえず私はこれをどうすれば......」

 

 サンタのやつ......

 本当になんでこれ渡したんだよ......

 

レ「契約してみればいいじゃない」

 

榛「契約...... するしかないのでしょうか......」

 

パ「特に悪いところは見つからないし、別にいいんじゃないかしら」

 

榛「はぁ......」

 

レ「ってことでやってみましょ。咲夜、紙を」

 

咲「こちらに」

 

 咲夜さんが一瞬で紙を取り出した

 

榛「本当にやるんですか......?」

 

レ「あら?私が貰ってもいいのよ?」

 

榛「いえ、それなら私がやります」

 

 こんな便利なペン、無くす訳にはいかない

 それにどうなるのか私も興味あるし......

 

榛「では、まずは名前ですね」

 

 私はペン先を紙に当て、悩んだ

 

フ「どうしたの?」

 

榛「いえ...... 名前をどうしようかと......」

 

パ「そんなの、霧雨 榛奈って書けばいいじゃない」

 

榛「それは...... そうなんですけども......」

 

 私は悩んだ末、こう書いた

 

『榛奈』

 

榛「そして、これを白い部分でなぞるっと」

 

 書いた文字に白い部分を当て、なぞり、紙から離した瞬間、文字は消え、白い部分が発光し始めた

 

榛「えっ?」

 

咲「これって......」

 

小「本当のようですね......」

 

パ「次は血ね」

 

榛「血か......」

 

 私は前に咲夜さんから頂いたナイフを取り出し、指の腹を薄く切った

 

榛「っ......」

 

 うぅ...... 痛い......

 まぁ、切ったんだから当たり前なんだけど......

 

 切り傷から出てきた血にペン先を当ててみる

 すると、黒い部分が発光し始める

 しかし、それも一瞬

 すぐ消えた

 

榛「これで、契約完了でしょうか......」

 

パ「試しに書いてみれば分かるわよ」

 

 私は試しに〇を書いて、消してみる

 

榛「使えました」

 

パ「で、マスター以外は使えないんだったわね」

 

フ「私がやってみるよ」

 

 そう言いフラン様はペンを手に取り書いてみようとしたが、書けなかった

 

フ「本当に書けない......」

 

 フラン様は何度も試してみるが、インクが出ることは無かった

 他にもその場にいた全員が試してみるも、誰1人書けなかった

 

パ「...榛奈。もう1度書いてみて」

 

榛「分かりました」

 

 私はペンを受け取り、ペン先を紙に当て、動かしてみると、黒い線が書かれた

 

フ「...書ける......」

 

榛「ほぇ......」

 

 本当に、私だけが使えるんだ......

 私だけの、特別なペン......

 なんだか少し嬉しくなってきた

 

パ「良かったじゃない。自分専用のペンが出来て」

 

榛「...はい!サンタクロースに感謝です!」

 

美「サンタクロースですか?」

 

榛「はい♪クリスマスに謎の贈り物、そんなのサンタクロースのプレゼントに決まってるじゃないですか!」

 

 というか実際サンタクロースが皆さんのプレゼントを配る時、私も居たし、プレゼントも直接手渡されたんだけどね

 

レ「サンタねぇ...... ま、感謝してあげようじゃない」

 

パ「図書館に無い魔導書が貰えるのは有難いわね」

 

美「私は冬の門番の仕事がやりやすくなります♪」

 

咲「いつも寝てるだけじゃない。まぁ私も銀のナイフは有難いわ。丁度銀が手に入れにくくなってたのよ」

 

小「見せる相手もいませんけど、ネックレスも可愛くて嬉しいです♪」

 

フ「私も誰かと遊べる物が増えて嬉しいよ♪」

 

榛「せっかくですしそのゲーム、今やってみましょうよ!」

 

フ「うん!やってみよ!」

 

レ「あら、いいじゃない。私も参加するわ。パチェはどう?」

 

パ「私はいいわ。眺めてるだけでも楽しいもの」

 

フ「それなら美鈴!一緒に遊ぼ?」

 

美「はい!お相手致します!」

 

レ「これで4人ね」

 

咲「私は紅茶をお持ちしますね」

 

小「私はパチュリー様のお側に......」

 

パ「あら、別に参加してもいいのよ」

 

小「いえ...... 定員が......」

 

榛「それなら終わったら私と交代しましょう。何回やっても楽しいゲームですから」

 

小「あ、ありがとうございます♪」

 

美「それで、これはどういう遊びですか?」

 

榛「確か...... ルーレットを回して出た数進み、ゴールを目指して、最終的に所持金額が1番多かったので人が勝つというゲームです」

 

レ「ふふふ、ルーレットなんて私の独壇場じゃない。この勝負貰ったわね」

 

フ「えぇ!お姉様ズルイ!」

 

榛「大丈夫ですよ、フラン様。レミリア様の能力がルーレットの結果に影響しないよう守ればいいんですから」

 

レ「ぐぬぬ...... その手があったのね......」

 

パ「そもそもレミィの運命(笑)なんて気にする程でもないじゃない。言ってるだけなんだから」

 

レ「ちょっとパチェ!?何よ(笑)って!」

 

榛「それもそうですね~」

 

レ「ちょ!?榛奈は榛奈でなんで納得するのよ!」

 

榛「早く遊びましょー♪」

 

レ「ちょっと!?」

 

フ「お姉様、うるさい」

 

レ「うぅ...... こうなったら実力で勝ってみせるわよ!」

 

榛「その意気です♪」

 

 こうして、私達はクリスマスを楽しんだ

 後に、サンタから貰ったペンの秘密が分かったが......

 それはまた、別のお話......




後書き~

更に後日談ですが、榛奈は後に紫から「毎年、クリスマス イブの深夜に突然結界を破って幻想郷にくる老人がいるのだけれど、毎回捕まえられないし、姿も見えないのよね...... そのうちに外へ逃げちゃうし...... 一体誰なのかしら」という話を聞き、サンタクロース何者だよ......と思ったそうな

それでは本編でもゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去話 番外編2『私の幼少期の事件』

前書き~

はい、皆さんこんにちは。さて、さっそく注意書きです。
*今回の話は榛奈の寺子屋時代に起きたある事件を扱っております。章タイトルと全くと言っていいほど噛み合いませんが、番外編ということでここに投稿させていただきます。
*実は本編に使う予定だったのが没になったけど、ここまで書いたのならって中途半端に編集して完成させました。そのため本編と噛み合わない場面が多々あるかと思いますが、スルーしてください。
*ここで出たことが本編で出る可能性はあります。ですが胸糞悪いものとなっていたり、二万文字もあるので長かったりします。暇な方と読みたい方のみお進みください。
*テーマは虐め。これだけはハッキリ言っておきます。苦手な方は絶対にこれ以上進まないでください。
*「こんなの書くな」的な批評の感想は私が読んだあとひっそりと消させていただきます。そんな感想さえも貰えない気もしますが、感想はどれだけ語彙力がなくても投稿してくれていいんだよ......?

改めて以上の注意書きをよく読んで、さらに本編を読んでも後悔しない人だけ、
ゆっくりしていってね!!


 思えば最初のころ、幻想入りしたばかりのころは親となったお父さんのことが苦手だった

 いやこの表現は変だな......

 正確には男の人が苦手だったのだ

 何故男の人が苦手になってしまったのか今となっては忘れてしまったが、同世代、年上、高齢者......。流石に赤ん坊や自分より小さい子は平気だったが、とにかく男が苦手で、これが俗にいう男性恐怖症というものだと後で知った。別にどこかの漫画みたいに男性を前にすると思わず手が出てしまうわけではない。ただ逃げ出したくなるだけ

 でも日常ではそれは支障となっていた。そりゃそうだ、義理とはいえ父親でさえ苦手とし、外もまともに出歩けなかったのだから

 だから治そうとお母さんと舞理沙姉に協力してもらってあれこれ試したが、そう簡単に治るようなものではなかった。そのうちに私は治すことを諦めそうになってしまったが、2人は諦めず私を説得してくれた

 そして私たちは試行錯誤を繰り返し、寺子屋に入る数週間前にはお父さんと正面から話ができる程度にはなり、2人のうちどちらかがそばにいるという条件下であれば人里の中を歩けるようにまではなった。かといって男性恐怖症が治ったわけではないので寺子屋に入った頃はそれが原因の問題ばかり起きていた

 自分で言うのも何だが、私と舞理沙姉、霧雨姉妹は寺子屋じゃ可愛い分類に入っていたわけで、当時5、6歳とはいえそれなりにモテたわけだ。そしてモテるということは何人かは告白してくるわけだ。告白と言えば他に誰もいない状況で言われるわけだが、それはつまり一対一。当時の私にとってそれは拷問でしかなく、そういったものや男子を含めた遊びのお誘いは全て断っていて、しつこいのは舞理沙姉が間に入って断っていた。慧音先生もそのことを知っていたため授業の内容に配慮を入れてくれていたので最初のころはそれらだけが問題であり、後のことを思うとまだ優しい方だったのだ

 そのうちにそれらを断る時の態度が...いや例え寺子屋の中で一番カッコいいと言われている男子を皆の目の前であろうと断ったのがその男子どころか、彼を慕う女子の気にも障ったらしく、悪質な悪戯や態度、所謂虐めが始まった。幸いなのかは未だに分からないが、虐めが始まったばかりのころは相手も私が『霧雨』の娘であることをそれなりに理解していたのかそこまで過度なものではなく、舞理沙姉に見つかると厄介だと思っていたのか舞理沙姉のいない一人でいるときに肩をど突かれる程度だった。今の私なら怒る程度で精神的ダメージは無いが、何故だか当時の私にとってただただ恐怖でしかなかった

 しかし家族に心配をかけまいと人前では普段通りに、彼らからしてみればへらへらと過ごしていたのが更に気に障ったらしく、今度は物を隠されることが頻繁に起きたり、虫を投げつけられたり、物が隠された上に壊されていたり......。どんなに虐められてもめげなかったのが彼らの癪に障ったのか、彼らの行動は段々と酷さが増していったのだ。律儀なことに毎日筆を持ってくる度に折られた日なんてあって、その時は先生に筆を貸してもらったのだが、毎回理由がただ忘れたと言っていたため本当かどうか怪しまれたが、その場はなんとか誤魔化すことができた

 そのうちに舞理沙姉が何も言わない私に対して心配で怒ってきて、それでも私は何も言わなくて...喧嘩になって......。舞理沙姉に嫌われたって思ったら涙が出るくらい悲しくて......

 そしてそれが私たち姉妹の初めての喧嘩っていうのもあって、お母さんや慧音先生にすごく心配されて......。周りは心配してくれてるのに何も言えなくて......悲しくて......あいつらに何も言えない私が悔しくて......憎くて......。負の感情が私の心を這いまわって、少しずつ楽しいとか嬉しいといった正の感情を失っていって......。自分の気持ちすらわかんなくなっていって、今自分がうまく笑えているか、周りにこのことが気付かれてないかとかそういったのを気にするようになっていって......

 思えばその時、私の心は壊れかけてたんだと思う。でも“自分が変になってきてる”なんて自覚なんてなかった。ただただ周りを悲しませちゃ駄目だ、なんて思うだけで......。その行為自体が悲しませてたっていうのにね

 まぁそんなわけで虐められていることを意地でも隠していた私だが、何事にも終始点というのがあるわけで。ある日の授業が終わった夕方、帰路に就く者、校庭で遊ぶ者、居残りする者などそれぞれがそれぞれの行動をするとき私は舞理沙姉に先に帰るよう言い、独り人気の無い路地裏に来ていた。何故なら手紙で呼び出されたからだ。そのころになるとそうやって手紙で呼び出され集団で暴力を振るわれることも多くなっていた

 抵抗は出来なかった

 なにせ相手方には上級生がいたわけで、当時弱かった私はなすがままに殴られる。相手の顔はもう覚えていたから慧音先生とかお母さんに言う事もできた

 でもそれもできなかった

 いざとなれば相手を蹴散らす幻想の力もあった。魔法...前世を思い出せず、何の知識もなかった頃、たまたま偶然扱えるようになった攻撃魔法。それをうまく使えば子供相手なら立てなくなる程度の怪我で済む威力から相手を殺す程の威力まで、幅広く威力が調節できる魔法。それを使えば私一人で集団を懲らしめることができるが、これも出来なかった

 何故できなかったか

 それはつまるところ家族が大切だったからだ。今の私もそうだが、どうやら私という人物は身内と認定した人を大切だと思う傾向にあるらしい。そのことを知ってか知らずかあいつらは私が抵抗しようとすると舞理沙姉をダシに脅してきた

 「もし誰かに言ってみろ。お前の姉がどうなっても知らないからな」なんて定番の台詞まで吐いて

 だからって本当になすがままだったわけではない。手が出せないなら口を、つまるところ説得という手に出ていたわけだ。しかし効果は薄く、一人二人は説得出来そうだったが、他のメンバーに脅され無意味となった

 それでも他に手は考え付かなかった

 いっそのこと相手を殺してしまおうかなんて考えてしまったが、即却下した。当たり前だ、人を殺すなんて大切だと思っている家族を裏切るようなものだったんだから

 そしてその日もまた暴力を振るわれ、傷だらけの体を隠して、誰かに指摘されれば嘘をついて、そして笑うんだって思ってて......

 でもそんな日も唐突に終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙side

 

 

フラン「そういえばだけど魔理沙。魔理沙はどうして魔法使いになったの?」

 

 紅魔館に遊びに来て、たまたまフランと二人でお茶をしていた時、フランが唐突に質問してきた

 

魔理沙「ん?魔法使いになった理由か?」

 

フラン「うん。榛奈も魔法使いになりたくて此処(紅魔館)にいるでしょ?私達みたいに生まれながらの吸血鬼とは違って魔理沙たちは選べたわけだからさ。何かあるのかなぁって」

 

 何か、か......

 あると言えばある。それも私の人生に大きな影響を受けた出来事が

 今の私が人間の魔法使いになったのもその影響の一つだ

 別にそれに関しては話してもいいが、そうなると必然的にあの話をすることになる

 私としてはもう過ぎたことだし別に話してもいいが、榛奈は嫌がりそうだ

 それにあいつはフランのことを特に気に入っているみたいだからな

 できれば話さないのがいいんだが......

 

魔理沙「まあ何もないと言えば嘘にはなるが、別にそんな大したことじゃないぞ?」

 

フラン「それでもいいから教えてよ。暇つぶし程度にさ」

 

魔理沙「...まあ、少しだけだぜ?」

 

フラン「やった!」

 

魔理沙「さて、どこから話したものか......」

 

 そうだな、私が人里にいた頃、榛奈の異変に気付いた時の話からしようか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今でも思い出せる、あの出来事

 最初の変化は寺子屋に入って半年が経ったころだな。突然榛奈の様子がおかしくなった頃があったんだ。ただ表面上はいつも通り、それは本当に些細な違いだったんだ。それこそ私たちのことなんて何の気にもかけてないあのクソジジイや仕事が忙しい母さんじゃ分からないような違い。常に一緒にいた私だからこそ気づけた違いがな

 だからといって榛奈の様子が少し違うと思っただけでその時の私は何かするってことはなかった。今でも思い出すとあの頃の私をぶっ飛ばしたい気分になる。「どうして異変に気付いたのに何もしなかったんだ」ってさ

 そしてそのまま一か月くらい経ったころだったか。今度は榛奈が物を無くすようになったんだ。最初は机の下とか教室の隅とか

 でもそのうち教室にも見つからなくなって

 私も探すとかって出たんだが、榛奈は自分で探すと言い張ったんだ。それとこのことを母さんには言わないでくれってさ。あんなにも必死にお願いされたことなんか榛奈の男性恐怖症を治してた時ですら見たことなかったからその通りにしてたんだが、その選択も間違っていたんだろう

 そのころ少し離れていただけで榛奈のもとに戻ってきたら榛奈がなぜだか汚れているときがあるようになった

 またしばらくした頃、次は物をよく忘れるようになった......いや壊されるようになったんだ。毎日続けて筆を家に忘れてきたってときの榛奈の言い訳は苦しかったな。何せ朝家でちゃんとあるか確認したのに授業が始まるころには無くなってたんだぜ?

 さすがにおかしいと思った私は榛奈を問い詰めたんだ。だが榛奈は決して口を割らなかったんだ

 後で教えてくれたんだが、それは私たち家族に心配をかけさせないため、そして脅されていたからなんだが、当時の私は知らなかったし、分からなくてな。どれだけ言っても口を割らない榛奈に私は苛立って思わず言ってしまったんだ。「榛奈のことなんて大嫌い!何があったのか言わない限り口もきかないからね!」ってさ。その言葉が効いたんだろうな。口は割らなかったが涙目になりながら「...何も知らないくせに...何も分からないくせに...!私だって舞理沙姉のことなんて......っ!」って最後までは言わずに部屋に戻って行ったんだ。きっとそれ以上言ったらダメなんだと知っていたから抑えたんだろうな。そういった意味じゃ榛奈の方が大人だったってことだ

 そこから私たちの仲は険悪に、事が終わるまで互いに口をきかず、お互いに距離を取るようになった。いわゆる喧嘩ってやつだ。しかも私たち姉妹が出会ってから初めてのな。母さんや慧音は心配して私に声をかけてきたが私は「何も言わない榛奈が悪い」って意地張って......

 そのうちに榛奈の様子がおかしくなってることに気が付いたんだ。負の感情を全く見せなくなって......まるで仮面で心を隠してしまったような、そんな感じ。誰に対しても、だれを前にしても笑って......笑って......わらって......

 もしかしたら榛奈の心は壊れかけてたのかもな。それも私との喧嘩が榛奈の心にヒビを入れた。でも当時の私は心が壊れかけてるなんて思いつきもしない。我ながら馬鹿にもほどがあると思う。で、榛奈の様子が変だってのはさすがに母さんも気づいて、そのことを私に聞いてきたんだ。その時私は「榛奈には言うなって言われてて、律儀にそれを守ってたが、それじゃ何も変わらない。それどころか現状が悪化していくだけだ」と思った。この現状を打開するにはこのままじゃ駄目なんだって。だから私は仕方なくありのままに話したら母さんは少し考えてから私に言ったんだ

 「もしかしたら榛奈は虐められているのかもしれない」って

 母さんはすぐに「あくまで私がそう思っただけだけどね」って付け足したが私の頭の中じゃ母さんの言葉が反響して、少しの間理解できなかったんだが、理解できた途端怒りが溢れてきた。榛奈を虐めてる奴らやそれを隠していた榛奈。そして何よりそのことに気づけず、むしろ榛奈を傷付けていた自分に対してな。すぐ榛奈の所に行って謝って、虐めについて問いただしたかったんだが母さんが「まだそうとは分からないよ。それにそうだとしても榛奈の今の様子を見るに、絶対に口を割らない。まずは榛奈や相手方が口を開かざるを得ないような証拠を集めなくちゃ」って私を止めてな

 私たちはそうと決まったらすぐさま行動を起こした。母さんは里で話を聞き、私は寺子屋でわざと榛奈と離れて陰から何かアクションが起こるか見たり、榛奈が私から離れてどこかに行こうとしていた時はつけていったりな。まあついて行ったときは気づかれたり見失ったりと失敗もあったが、それらの行動により虐められている可能性は確実なものになり、誰がやってるのか大体わかる程度にはなった

 そしてそいつらを懲らしめてやろうと準備していたある日、榛奈が手紙を貰っていたのに気づいたんだ。その時は恋手紙でも貰ったのかと思ってたし、榛奈もそう言ってたから関係ないと思ってたんだが、それがほぼ毎日続いてな

 流石におかしいだろ?同じ相手でも違う相手でもほぼ毎日だなんてさ

 それで榛奈の様子を見ていたっけ手紙を貰った時の榛奈の顔の微妙な変化に気づいたんだ。手紙を貰った時、榛奈の顔がわずかながらに歪んだんだ。そして手紙を貰った日は必ず寺子屋が終わった後、私に先に帰るよう言ってそそくさと何処かに向かってたんだ

 んでわずかな変化に気づいた日もまた何処かに向かった。それで私もつけていったんだ。その日は運よく最後までつけていけてな。榛奈が人気のない路地裏の奥で誰かに会ってるのを隠れて見ていたんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

~回想~

 

 

 日が暮れはじめ、太陽が真っ赤になりはじめた時間。薄暗い行き止まりの路地裏がさらに暗くなるころ、まだ幼き面影を残す6名の男女がいた。その中心には彼らの中で一番年上とみられる、彼らの通っている寺子屋の中で一番(容姿だけ)カッコいいと言われている男『一条(いちじょう) 高冨(たかふみ)』は待ちくたびれたように大げさに息を吐いた。その様子に彼の取り巻きと思われる男女がそれぞれの反応を見せる。肩を震わせ怖がる者、彼を待ちくたびれさせている人物に対し怒りを覚える者、これから来る者をどう虐めるか考えている者

 そう、彼らはある人物を待っているのだ

 

 高冨は寺子屋の中で一番(容姿だけ)カッコいいと言われていて、家も代々人里を支えてきた名家の一つ『一条家』の息子であるため多くの女子から告白されてきた。そんな彼は自身の容姿が良いこと分かっていたため、それを手に気に入った女子、自分のものにしたいと思った女子に片っ端から声をかけてきた

 そして反応は主に二択。彼の声に応えるものと彼の誘いを嫌がるもの

 応えるものは彼についていく。例えば此処にいる『日野(ひの) 綾子(あやこ)』は彼に惚れ、彼に声をかけられついてきたものだ

 逆に嫌がるものだが、彼女たちは最初断った。しかし彼は自分の家の名をダシに脅し、無理やり彼女たちを自分のものにしてきた

 それだけ『一条』の名は人里では強力だったのだ。そして名家の恩恵を受けようと彼についていくものも出てくる

 『二条(にじょう) 義孝(よしたか)』と『三条(さんじょう) 廣道(ひろみち)』は彼から恩恵を受けようとしているものたちの中でも彼に気に入られ側近にまで出世したものたちである

 しかし『風音(かざね) (みなと)』のように無理やり付き合わされているのものや、『北条(ほうじょう) (たかし)』のように金で雇われているものもいる

 そうやって手下を増やしていった高冨は、今年寺子屋に入ってきた子供の中に可愛い姉妹がいるのを見つけ、目につけた。様子を見ていると入学早々様々な男に告白されていたものの、誰の手にも入らなかった。そこで俺なら彼女を手に入れられると姉の方をいつものように誰もいないところに呼び出し「俺のものになれ」と言うときっぱりと断られた。どれだけ脅迫しても彼女は断り、その場を去ったことで彼は怒りに震えた

 しかしその怒りを鎮め、ならば妹の方を、と同じ手口で呼び出そうとしたが、自分が近づくだけで嫌がり、仕方なく周りがいる前で言った。彼は知らなかった。彼女が男性恐怖症だということを。そして彼は過信してしまっていた。自分の家は人里の人間ならば誰もが知っているだろう、だから公衆の面前ならば断われないだろうと。それは姉が彼の名を知っていたのも後押ししている

 しかし彼女は知らなかった。彼の名も、彼の家も、彼の存在も。だからこそ彼女は断った。彼女からしてみれはいつも通り断っただけ。しかし彼からしてみれば公衆の面前で自分の顔に泥を塗ったのと同じ

 そしてそのことはあっという間に寺子屋中に広まった

 しかし彼や彼の手下が口止めしたため寺子屋の外に広がることはなかった。そして彼や彼を慕っている手下は彼のものにならなかった姉妹に激怒した。だから彼らは妹の方を虐めることにした

 何故姉をやらなかったか、それは彼らにとって姉より妹の方が虐めやすく、泥を塗ったのは彼女だったからだ

 そして彼らは行動を開始した

 まず彼は自分の手下に教師や姉に見つからぬように彼女を虐めるよう指示した。一応彼の手下は彼女が名家の娘であることを理解していたため、過度なものはやらなかった。しかし彼女はヘラヘラと過ごしていたため彼は段々と過度な命令をしていった。そうして遂には人気のない場所に彼女を呼び出し、自分の目の前で手下に虐めさせた

 そして今日も呼び出していたのだ

 

 高冨が溜息を吐いてから少ししたとき、ようやく彼女が現れた。丁寧に手入れされた夕日に輝く綺麗な短い金色の髪、名家であることを知らしめているのかの質の良く動きやすい和服

 『霧雨家』次女、霧雨 榛奈が彼らの前に現れた

 その顔はどんな感情も映していない無表情。目に光なんて存在しない。そのことに高冨は苛ついた。榛奈の、負の感情すら映していない顔に対して

 

高冨「...ようやく来たか。てっきり逃げたのかと思ったよ」

 

榛奈「.........」

 

高冨「チッ...おい義孝、廣道、奴を俺の前に這いつくばせろ」

 

二人「「へい!」」

 

榛奈「.........」

 

義孝「なんか言えよ餓鬼ッ!!」

 

榛奈「ガハッ...!!」

 

 義孝は榛奈を掴み、膝で榛奈の腹を蹴り、榛奈はそのまま倒れてしまう。そして痛みと衝撃で榛奈の口から息が一気に吐き出されるが、言葉が出てくることはない

 

高冨「チッ、まだ何も言わんのか。お前が「私は高冨様の雌奴隷になります」って言いさえすれば痛みの代わりに快楽を与えてやるのによ」

 

榛奈「......ッ!!」

 

 その言葉に、ついに榛奈の顔は憎しみに歪んだが、言葉は発さない。それは先ほどの高冨の言葉を否定しているのも同じことだった

 

高冨「おいおいそんな顔をするんだったらこっちもそれ相応に対応しなければな......。隆、出番だ」

 

隆「へい、いつも通りボコればいいんですよね」

 

高冨「いや、今日はいつもより惨めな姿にしてしまえ。服も破っていい。なんなら性欲のはけ口にしたっていいさ」

 

隆「おいおいマジですかい?これは貴方様のもんになるんじゃなかったんでは?」

 

高冨「最初はその予定だったがあんまりにもこいつがうざいんでな。予定変更だ。こいつを犯したい奴なんてそれなりにはいるだろ?ならただ捨てるより有効的に使ったほうがいいからな。あぁ、霧雨の奴らに気づかれない程度にな。俺の家より弱いだろうが、気づかれたら気づかれたで面倒だ」

 

隆「へへっ、分かってますよ。あくまで気づかれないよう、ですね。いやはやお坊ちゃんはよく分かってらっしゃる。こんないい女なかなかいないですからねえ。まだまだ幼いのがあれですが、きっといいんでしょうねえ」

 

高冨「そうだ湊、お前もやれよ?」

 

湊「へ...い、いや僕は遠慮しておくよ......」

 

高冨「遠慮?おいちゃんと話を聞いたのか?これは命令だ。お前もこいつを犯せ」

 

湊「ぇ......」

 

 そう言われ湊は榛奈の顔を見る。榛奈は黙って倒れているが、その目は湊に向けられてる。まるで反応を見るかのに

 

湊「い、嫌です...僕には出来ない......」

 

 湊はその瞳に自分を見た。自分たちがこれからやろうとしていることがどんなことなのか。それがどれだけ悪いことなのかを

 そして冷静に考えた。この一線を踏み越えれば、確実に戻れない。そのことを恐れた湊の口は無意識に開いていた

 しかし高冨はそれを許すことはない

 

高冨「俺に歯向かうってのか?誰のおかげで今生きていられるか分かってるのか!」

 

湊「うぅ......」

 

 彼湊の家は前にとある一件で一条に貸しを作っている。あくまで親同士での貸し借りだが、高冨はそれを利用し湊を仲間に引き入れ、彼を自分の駒として使っているのだ

 そのため湊は高冨が逆らえない

 

高冨「もう一度言おう。こいつを犯せ」

 

湊「...わ、わかり...ました......」

 

榛奈「...っ!」

 

 彼の言葉に榛奈の瞳が揺れた。明らかに恐怖に対してだ。高冨はそれに気づきニタニタと笑った

 

高冨「ふっ、何を期待していたのかわからんが、ここにお前の味方なんていると思うか?残念だったな。いないんだよ!」

 

榛奈「っ!...いやだ......」

 

 ついに榛奈は弱音を吐いたが、それは彼を喜ばせる材料にしかならない。恐怖と痛みで地べたに倒れた榛奈はなすがままでしかない

 

綾子「ねえ高冨?貴方もこいつをやるの?」

 

高冨「いいや俺はやらないよ。こいつをやるなら愛しいお前との時間を過ごしたほうがよりいいだろう?」

 

綾子「高冨...///」

 

高冨「ってことでお前ら。俺はここからいなくなるが、容赦なくこいつをヤれよ?」

 

三人「「「へい!」」」

 

湊「.........」

 

高冨「おい湊、返事はどうした?」

 

湊「は、はい...分かりました......」

 

高冨「よし、それでいい。いいか?よく聞けよ?もしこいつに味方しようなんて考えたら、お前とお前の家族を人里にいられなくするからな?」

 

 無論名家の息子だからと言って、まだ子供である彼にそんな権力は存在しない。しかし湊はそれを理解していないため、素直にうなずくしかないのだ

 

湊「わ、わかってます......」

 

高冨「わかってるならいい。それじゃあ行こうか。綾子」

 

綾子「ええ、行きましょう」

 

 そのまま二人は路地裏から立ち去って行った

 それを見届けた湊を除いた三人は気味の悪い笑みを浮かべながら彼女に詰め寄る。恐怖で足が竦み動けない、立ち上がれたとしてもすぐに捕まってしまうと思った彼女はこれから自身に身に起こることを想像し、身体を震わせた

 腕力もない、魔法は使えない

 そんな彼女ができる最後の事、無意識に彼女の口から発せられた言葉、それは――

 

榛奈「助けて...お姉ちゃん......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 その日は運よく最後まで後をつけられた。今までは榛奈に気づかれたり、見失ったりしてたから最後まで後をつけれることが少なかったんだ

 それでも最後までつけていけて、虐められてる現場を見たことがあるのに未だ何ともできてないのは主犯が出てきてないからだ。主犯自体に心当たりはあるし、ほぼ確定してたけど、実際に虐めてたり、そうするよう命令してるところを見たことはない。そのことが未だ何もできていない理由だった

 しかし今日、ついていった場所に、あいつはいた。そして虐めが始まった。これでもう確定。あとは家に帰ってお母さんに言って、先生にも言って、それで終わり。なのに私はどうしても動けなかった。いつもなら榛奈が虐めるところを見たくなくてさっさと帰るのに、その場から後ろに行こうとは思わなかった。それは多分これ以上榛奈が傷ついてるところが見たくなかったからだと思う。榛奈は家に帰ってくるたびに傷ついた体を隠し、張り付けたような笑みを浮かべて「何でもない」と言う。そんな姿を見るのはもう、私の心が耐えれなかったんだ

 でもあの場に飛び出して何とかできるなんて思ってもない。なにせ相手は全員上級生。私が敵うはずもない

 でもこのまま離れるのは嫌だ。でも......

 そうやって心の中で葛藤していると、気づいたら事が進んでて、主犯とその彼女らしき人がこちらに向かって歩いてきた。一瞬私がいることがバレたかと思ったけど、ただその場を手下に任せてその場から去るだけだった。私は何とか物陰に潜むことでバレずにすんで、二人がいなくなったのを確認してから再び状況を確認した

 そしたら榛奈が倒れてて、3人の男が気持ち悪い顔をしながら榛奈に詰め寄ってて、榛奈は震えてて......

 何とかしなきゃって思っても足が出なくて......弱い自分に泣けてきて......

 だけど、妹の声だけはハッキリと聞こえて——

 

榛奈「助けて...お姉ちゃん......」

 

 気づいたら私はその中に足を踏み入れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

?「——ぅわああああ!!!」

 

義孝「ぐへっ!?」

 

廣道「な、なんだなんだ!?」

 

湊「えっ......!?」

 

隆「......!?」

 

 突如大きな叫び声と共に仲間の一人が何かに押され倒れ、いきなりのことに動揺する彼ら。その”何か”は彼らと倒れていた榛奈の間に立ちふさがった

 

義孝「いってぇな......てめぇなにしやが......ってお前霧雨の!!」

 

舞理沙「...榛奈を......榛奈をこれ以上虐めるな!!」

 

 彼らの前に立ちふさがったのは舞理沙だった。怖いのか足が震えている。しかし彼女は榛奈を守らんとばかりに両手を目一杯広げ、彼らを睨みつけていた

 

榛奈「舞理沙姉......」

 

廣道「お前一体いつから......!」

 

舞理沙「さ、最初からだ!おお、お前らのリーダーがお前らに命令して榛奈を虐めてることはもう発覚した!このことはお母様や慧音先生に報告させてもらう!お前らはもう終わりだ!これ以上榛奈を虐めるな!」

 

 恐怖で震え、出だしは噛んでいたものの、怒りの方が勝ったのか途中から強気に出る舞理沙。しかし彼らはそのことを嘲笑うかのように笑みを浮かべる

 

舞理沙「な、何がおかしい!」

 

義孝「いや何。テメェは何もわかってないなと思ってな」

 

廣道「ああ。全く、焦って損した」

 

舞理沙「何が言いたい......!」

 

義孝「テメェ、一人でここに来ただろ」

 

 確かに寺子屋から直接榛奈を追いかけてきたのだから自分は独りだ。だがそれがどうした

 そう思う舞理沙に廣道が答えた

 

廣道「つまりだ。ここでお前をボコって黙らせれば、別に問題はないんだよ!」

 

義孝「そういうことだ。隆先輩、やってもらっていいっすか?」

 

隆「ああ。一人も二人も変わらん。任せろ」

 

舞理沙「っ......!」

 

 隆はそう言い、手をポキポキと鳴らしながら舞理沙に詰め寄る。舞理沙は恐怖で一瞬身体を大きく震わせ、縮こまりそうになったが、なんとか抑え彼を睨みつける。その目には未だ恐怖の色が浮かんでいたが、それでも彼女は引こうとしない。それは彼女自身のプライドもあるだろうが、それ以上に榛奈を守りたい。榛奈を助けたい。そんな気持ちが彼女を奮い立たせていたのだ

 隆はそれが気に食わなかった。いつもならこうやって脅すことでどんな相手もひれ伏してきた。何せ彼は寺子屋の上級生の中でも特にガタイが大きく、喧嘩強い。さらには高冨が金で雇っているため後ろには一条家。暴力と権力。彼はどちらも兼ね備えていたのだ。だからこそ彼に逆らうものなど、彼に逆らえるものなど高冨以外にいなかった

 だというのに目の前にいる彼女は妹を守りたい、ただその一心で彼の前に立ちふさがった。その行動が彼の癪に障ったのだ。

 いや隆だけではない。後ろの二人もそんな舞理沙の行動が面白くないようだ。彼らには暴力という名の力こそなかったが二条家、三条家、それぞれが一条家に次ぐ権力の家柄だったため、彼らにもまた逆らうものは少なかった。そのため舞理沙の行動を理解できず、また思い通りにいかない彼女に怒りを覚えた

 

義孝「先輩!徹底的にやっちゃってください!そいつも高冨様のお顔に泥を塗った奴ですから遠慮はいらねぇっすから!」

 

廣道「そうです!バレなきゃ問題ないんですから!」

 

隆「分かってる。それに俺自身、こいつのこの目は気に食わねえ。この俺に逆らうやつがどんな目に合うかその身に叩き込んでやる!!」

 

 隆はそう言い終えるか否か、舞理沙のその小さな顔にその凶悪な拳を叩き込み、足で彼女の華奢な体を蹴り飛ばした

 

舞理沙「ぅぐ...!ぐあぁ!!」

 

榛奈「舞理沙姉......!」

 

 彼の拳の威力は元から強く、さらには舞理沙の身体はまだ幼く小さい。たった二回、それだけで動かなくなってしまうほどだった

 その時ようやく舞理沙の瞳を恐怖が支配した。怖い痛い恐い......そればかりが彼女の心を駆け巡り、彼女を立ち上がらせてはくれなかった。どれだけ立ち上がろうとしても恐怖と痛みで力が入らず、空振りに終わるだけ

 そんな彼女の様子に隆や後ろ二人は気分を良くした。そうだ、こうでなくっちゃ面白くない、と

 

隆「はっ、俺に逆らうからこんな痛い思いをするんだ。自業自得だな」

 

 いや......そこで何もできないでいるお前の妹のせいか......

 と、彼は言葉を続けた。その言葉に榛奈は身体を震わせた。それは恐怖でなのか......はたまた別の感情でなのか......

 それは定かではないが、榛奈は身を震わせ、縮こまるだけで何もしてこない。彼らは怯えて何もしてこないのだろうと思った。彼らにとって今まで散々虐めてきた榛奈など取るに足らない存在だと思っていたからだ

 

義孝「さて、それじゃ姉妹がどっちも動けなくなったところで予定通りヤるとするか」

 

廣道「いや、予定変更で姉妹どんぶりといこうぜ」

 

隆「俺はどっちでもいい。いやどっちもといこうか」

 

 そう言って彼らは気持ち悪い笑みを浮かべつつこれから行うことにある場所を膨らませていった

 舞理沙の心は既にズタボロ。この場に出てきたこと自体を後悔しそうになっていた

 そんな時だった——

 

榛奈「.........んな......やら..................だろう.........」 

 

義孝「ああん?なんつった?」

 

榛奈「そ......こと......せる............だろ............」

 

義孝「聞こえねえよ。言いたいことがあるならもっとはっきり言いやがれ!!」

 

榛奈「っだから!そんなことさせるわけねえって言ってんだろうがああああ!!」

 

 そう榛奈が叫んだ瞬間、彼女の周りをとてつもない暴風が吹き荒れる。そして暴風は彼らに襲い掛かった

 

義孝「ぐへぇっ!」

 

隆「なぁっ!?!?」

 

廣道「ぐああああっ!」

 

湊「っ......!この力はっ!」

 

 風は瞬く間に彼らを吹き飛ばし舞理沙から遠ざけた。吹き飛ばされた彼らはそれぞれ壁にぶつかり動けなくなる者、何とか受け身をとることができる者、ただ吹き飛ばされる者。それぞれだ

 そしてもはや空気となっていた湊は彼女達から最初から離れていたためか強い風に吹き飛ばされそうになっただけで吹き飛ばされてはいなかった。しかしその暴風を身に感じた瞬間、驚きを顔に出していた。それは暴風に対してではなく、暴風を“起こした力”に対して驚いていたのだ

 

廣道「な、何が起こって......ひぃっ!」

 

隆「なな、なっ......!」

 

 吹き飛ばされただけの者、義孝は何が起こったのか把握しようと榛奈を見た瞬間、驚きで悲鳴をあげた。何とか受け身をとることができた者、隆も同じように榛奈を見て絶句していた

 榛奈は立ち上がり、舞理沙の前に立ち自分たちを今までにない形相で睨みつけていたのだ。その表情は語るまでもないほど怒りに満ちている

 しかしそれだけならば彼らもここまで驚きはしなかっただろう。彼らが驚いた理由、それは榛奈の周りを風が渦巻いていたからだ。それは不自然で、おかしい。その得体のしれない現象と、その現象を引き起こしたであろう人物に彼らは圧倒されていた

 そしてそれは榛奈のすぐ後ろにいた彼女も例外ではなかった

 

舞理沙「...はる......な......?」

 

榛奈「............」

 

 舞理沙からは榛奈の表情は見えない。しかしその雰囲気から彼女が今まで見たどの感情よりも強く、怒りを露わにしていることは感じていた

 そもそもとして当時の榛奈は悪感情を表に出すことが少なく、ある程度付き合いが長くなると分かる程度だった。だというのに今、榛奈は怒りを隠そうとすらしていない。それだけで彼女が相当激怒していることが窺えるだろう

 そして舞理沙は気づいた。先ほどから風が吹いているというのに自分にはそよ風程度にしか感じないことに。彼らが吹き飛ばされた時も、風をまとった榛奈が近くにいる今も、舞理沙にはそよ風のように感じていた。それはまるで彼女の周りだけ風が弱くなっているかのようだった。いや、実際に彼女の周りでは風が弱くなっていたのだ

 そのうちに両者無言の静寂が訪れる。その場には榛奈の周りを渦巻く風の音と外の音しか聞こえない

 そんな静寂を榛奈の周りの風が止み、先ほど壁に当たって動けなくなった廣道が起き上がったことで打ち破られた

 

義孝「このぉ......!」

 

隆「な、なんなんだ今の......」

 

廣道「あ、明らかに自然じゃなかったよな......」

 

義孝「テメェ何なんだよそれは!」

 

 彼らがそう思うのも無理はない。ただの暴風が吹くのならまだしも、こんな行き止まりの路地裏に、人を飛ばすほどの威力のある風が吹き荒れ、彼女を中心に渦巻く。そんなの超常現象、普通なら起こりえない現象だ

 しかし、彼らの住んでいる場所が何処だか忘れてはいけない。彼ら人里の人間ならば普通じゃないことも、一歩外に出るだけでそれが“常識”なのだから

 

湊「......魔法だよ」

 

義孝「魔法......だと......?」

 

 意外にも彼の質問に答えたのは後ろにいた湊だった。彼は義孝の疑問に答えるかのように言葉を続ける

 

湊「うん......いまの、あきらかに魔力を感じられたんだ。今のだけじゃない。前々からその子から魔力を感じることがあったんだ......」

 

隆「魔力に魔法......ってことは妖怪っ!?」

 

廣道「よ、妖怪って......ひぃっ......」

 

義孝「う、うわああああ!!」

 

 彼らはそう認識すると一斉に榛奈から距離をとった。人間にとって妖怪とは恐ろしいもの。それは彼らのような者も分かっており、彼らもまた妖怪という得体のしれないものに恐怖を抱く者たちでもあったのだ

 さて、もしこの場にいるのが榛奈と彼らだけならば榛奈がこれ以上何かをすることはなかっただろう。しかし彼らは先ほど、榛奈だけではなく彼女の姉に暴力を振った。それは彼女にとって耐え難き屈辱であり、決して許すことのない罪である。そもそもとして彼らが舞理沙に暴力を振るわなければ彼女がこれほど怒ることも、魔法を使うこともなかったのだ。これは彼らが榛奈を下に見ていたことで起きてしまった出来事であり、これから起こることは彼らの自業自得だ

 

榛奈「...貴様ら......覚悟はできてるんだろうな......?」

 

廣道「ひ、ひぃぃ......」

 

義孝「や、やめろ!来るなっ!」

 

 既に二人は怯え切っていて、先ほどに威勢が微塵も感じられなくなっている。しかし彼は憶することはなかった。今まで散々虐めていた相手に憶するなどプライドが許さなかったのだ

 

隆「へへっ、どうせ妖精とかと同じくらいだろ......そんなこけおどし、俺には通用しない!」

 

榛奈「そうか......じゃあ」

 

 ——死ね

 榛奈がそう言い終えるか否か、風は衝撃波となり彼を襲う。先ほどと違って明確に相手を傷つけるために放たれた風は、先ほどとは比べ物にならないほどの威力を持ち、彼を簡単に吹き飛ばし、壁に強く打ち付けた

 

隆「ぐあっ!」

 

義孝「せ、先輩っ......!」

 

 彼の様子を見ると壁に強く打ち付かれた衝撃で気を失っており、衝撃波の影響で体には先ほどまでなかった擦り傷や切り傷があちこちにできていた

 

義孝「そ、そんな......隆先輩が倒れるなんて......」

 

廣道「ば、化け物だぁ......こいつ化け物だぁ......」

 

榛奈「......次は、貴様らだ......」

 

 もはや榛奈を妖怪ではなく“化け物”と称す彼ら。怯える彼らに榛奈は容赦なく鉄槌を下そうとした。しかし......

 

舞理沙「榛奈っ!待って!」

 

榛奈「っ!?......舞理沙...姉......?」

 

 彼女の行動を止めたのは舞理沙だった。

 なぜ......どうして......?なんでとめるの......こいつらは悪い奴なのに......舞理沙姉を傷つけたやつなのに!

 榛奈はそう言いたかった。舞理沙を......自分の大切な姉を傷つけた彼らに怒りをぶつけたかった。もはや彼女には自分が虐められていたことより、舞理沙を傷つけたことしか頭になかったのだ

 だからこそ後ろから伝わってきた温もりが何なのか、一瞬分からなかった。何が起こったのか理解できなかった

 でもその温もりは温かさとは反対に榛奈の頭を冷やすのには十分だった

 そして冷えた頭でようやく理解できた。舞理沙が自分に抱き着いてるのだということに。温もりは舞理沙が抱き着いている部分から伝わっていたのだ

 

舞理沙「榛奈、言いたいことは分かるよ。今まで散々虐めてきた相手だもん。やり返したいのは分かる。でもここは一旦退こう?大丈夫、お母様や慧音先生に言えばこいつらなんていっぱいいっぱい叱られるから。だからね......?」

 

榛奈「...分かった」

 

 榛奈がそういうと、榛奈の周りに吹いていた風は止み、何事もなかったかのように静寂が訪れた

 そして榛奈は怯えている彼らを一睨みすると、舞理沙の手を引いてその場を去っていった。睨まれた彼らはしばらくの間恐怖で動けなかったが、何とか動けるようになると隆を担ぎ、高冨の家へ歩いて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

魔理沙side

 

 

フラン「それからどうなったの?」

 

 家に帰った私たちはまっすぐ母さんの元に向かってな。そしたらちょうど慧音が来てたんだぜ。慧音も榛奈の様子が変なのに気づいてたから心配になって母さんに様子を聞きに行ったんだと。で、聞きに来たはいいけどとっくにうちに帰ったはずの本人に私まで帰ってなくて自警団に相談するところだったんだ。そんなとこに帰ってきたんだからそりゃもう怒られたさ。でも母さんは事情を知っていたから、すぐ慧音をなだめて、私は母さんに報告した。「榛奈を虐めてた主犯が誰か分かった」って。その一言を聞いて慧音はひどく驚いてたな。で、私の後ろに隠れてた榛奈に色々質問をかけようとしてたけど、母さんが止めて、自分たちが聞いておくから先生には明日報告するってことで帰らせたんだ。母さんは身内だけの方が話しやすいと思ったんだろうな。その行動は正解だった。一つの部屋に私と母さん、それに距離をとってクソジジイが集まって、少しずつ話を訊くと、榛奈はいろんなことを話してくれた。主犯に告白されたこと。それを断った結果虐めが始まったこと。最初は軽度のものだったのに段々エスカレートしていったこと。私たちに話そうにも心配をかけたくなかったし、話そうものなら私がどうなるかわからないぞと脅されていたこと。暴力も振られていたことも話してくれた。それで母さんが榛奈に服を脱いで見せてほしいって言ったら榛奈は嫌そうにしながらも見せてくれた

 ——ひどい数の傷跡だった。それはもう普段の生活なら絶対にならないほどの傷の数。服を着ていなければ誤魔化しようのないほどの。痛々しくて見ていられなくて、思わず目をそらした時に気づいた。どうしてこんなにも傷ついているのに気づかなかったのかって。そう思って色々思い出してみれば、その理由が分かった。うちでは幼いころは母さんか榛奈と一緒に風呂に入ってたんだ。でもここ最近は...榛奈が虐められ始めて少ししたときから榛奈は一人で風呂に入るようになったなって。私が誘っても頑なに入ろうとしなかったし、着替えるところとかも見なかった。それは榛奈が自分の肌を隠してたからって気づいたら、どうしても自分が情けなく思えてさ。もっと前から気づけたはずなのに気づけなかった。喧嘩する前に気づけたはずなのに

 自分が情けなくて、でもその感情は怒りに変わって「あいつらに榛奈と同じ思いをさせてやる」って思わず体が動きそうになったけど、それを察した母さんが止めてくれた。そしたらあのクソジジイは榛奈に色々訊いた。誰がやったのか、どんな暴力を振られたのか、どんな風にされたのか事細かく。そんなこと聞いて思い出させたらどうすんだって怒鳴ろうとしたけどまた母さんが止めて、反抗しようとしたけど、私を止めていた母さんの手が震えていて、榛奈の話を聞いていくほどに震えが強くなっていって、「あぁ、母さんも本当は私と同じように怒ってるんだ」って。そう思ったら不思議と心は落ち着いていったんだ

 で、それらを榛奈が話し終えると、今度は私も加わってその日に起こったことを話した。榛奈は呼び出されたところから、私はあの路地裏に着いてからのことを全部。でもあの榛奈の周りに吹いた風のことは教えず、何とかして逃げたってことにしておいた

 それも話し終えると母さんは榛奈を抱きしめて「気づいてあげられなくてごめんね。こんなになるまで助けてあげられなくてごめんね。でももう大丈夫だから。私たちが守ってあげるから」って。そしたら榛奈は泣いたんだ。今まで涙目にはなっても涙なんて見せなかった榛奈が、大粒の涙を流しながら大声で泣きじゃくった。私もそれにつられて榛奈と母さんに抱き着いて泣いた。母さんは私たち二人を抱きしめた。とても力強く。でも優しく。それがとても嬉しくて。榛奈は一人で頑張ってきて、寂しかったんだろうな。その寂しさがようやく無くなって、辛かったのが無くなって。私も知らず知らずのうちに寂しくて辛かったんだ。そりゃ榛奈ほどじゃない。でも泣いた。榛奈に負けないくらいな

 その後のことはよく知らない。泣き疲れた私はそのまま寝ちゃったし、朝起きれば今日は寺子屋は臨時休校だって言われて、榛奈は慧音とジジイに連れられてどっかに行って。帰ってきたときの榛奈の顔はなんだかすっきりしてたからな。母さんも知らない方がいいって言ってたし、そのまた次の日に寺子屋に行けばあいつら全員が勢ぞろいして他にも人がいる中で全員土下座で謝ってきたからな。その中には特に榛奈を虐めていた主犯とか取り巻きとか女とか。そいつらもいた。でも主犯と三人は前には見なかった傷がそこら中についてた。全部殴られた跡だ。それはもうひどい有様で、でもあいつらのやってきたことを考えると自業自得だなって。でもまさかあのプライドの高いあいつらがこうやって謝ってくるとは思ってなかったな。何せそのプライドのせいで今回の事件は起こったんだからな

 で、謝ってきても私は怒りがわいてきたから怒鳴ろうとしたんだが、榛奈が止めて、あいつらに土下座をやめさせた。もう榛奈の考えることが分かんなかったぜ。本当なら私より榛奈の方が怒ってるはずなのに、怒りを見せず、あいつらを許したんだから。訊けば前日に既に主犯に家に行って散々やってきたんだとか。それで奴がああなるところも見せられたからもう怒りはなくなったんだって。私にはそれでも許すことは出来ないだろうな。今でも怒りを感じるんだ。でも皮肉なことにその出来事のおかげで榛奈の男性恐怖症は軽減されたし、どことなく前より吹っ切れた感じがした。だからってのもあるが、本人がいいならいいのかなってな

 それからそこまで経たないうちに主犯は寺子屋で、いや人里でも姿を見なくなって、取り巻きに聞いても「しらない」か「教えられない」のどっちか。榛奈はどうも何があったのか知っていた...というより勘づいていたみたいだが、どうでもよかったし、それ以上何かが起こることもなかった。噂じゃ人里を追い出されたとか言われてたな

 で、このことがあって私は強くなろうと決めた。この事件は周りの力に頼って解決した物だからな。それじゃ駄目なんだって、それじゃいざというときに守りたいものが守れない。それが嫌なんだ。だから私は強くなるための手段を探して、そのうちに家に居候してた香霖に私には魔力があるって聞いて、我儘言って魔導書を貸してもらって親に隠れて練習して。それだけじゃって思って見た目はどうにもならなかったから態度を変えた。強く見えるように、強くなれるように男みたいな口調にな。丁度そのころから霊夢とも会ってたし、魔法の練習相手には事欠かなかったからな。その態度が定着するころぐらいに私はジジイから勘当されて、そうやって今の私が出来たんだ。いやはや全く、こうやって誰かに語ってみるとホントにあの頃の自分が情けないぜ......

 

フラン「そんなことないと思うよ。魔理沙は榛奈のために頑張ったんでしょ?魔理沙は妹思いで優しくて勇気があったからそうやって榛奈を助けることができたんだし、普通なら逃げだしそうな時も逃げなかった。本当に凄いね」

 

魔理沙「そ、そうか?そう言われると照れるな......」

 

フラン「それに魔理沙と榛奈、本当に似てるんだね」

 

魔理沙「ん?どういうことだ?」

 

フラン「榛奈もね。守りたいものを守れるようにって魔法をパチェに習ってるんだって。強くなろうとしてるんだって。だからそこが似てるなあって」

 

魔理沙「そうか......なら私ももっと頑張らなくちゃな。よし、じゃあフラン。早速強くなるために弾幕ごっこしようぜ!」

 

フラン「ふふっ、今日は負けないんだから!」

 

魔理沙「今日も負けてなんてやらないんだぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

榛奈side

 

 

 家族に全部話した次の日。私は朝からお父さんに連れられて寺子屋に行って、お父さんは慧音先生を呼び出すと部屋に案内されて、昨日お母さんたちに話したのと同じことを言った。そしたら先生は怒りで身体中を震わせて、まず私を叱った。どうして言わなかったんだって。私は何も言えなかった。だって結局後になって考えてみれば私のやっていたことはただ意地を張っていただけなんだから。それで自分を傷つけてちゃ意味がない。本当なら誰でもいい。誰か大人に相談すればよかった話なんだから。でも過ぎてしまったものはしょうがない。私は黙って先生の説教を聞いた。反論しようとは思わなかった。それは先生の話が正論だったのもあるが、何より慧音先生も心配していたんだ。私は一人じゃない。そう思えば奥から何かがこみ上げてきたけど、昨日散々まき散らしたんだ。眼から溢れることはなかった

 それから三人で私を虐めていた主犯である高冨の家、つまり一条家へ行った。穏やかに言うなら責任を取ってもらいに来た。ストレートに言うなら殴り込み

 家に行って、一条家当主、つまり高冨のお父さんにお宅の息子さんはこんな悪行を働いていたんですよって説明。向こうも最初は疑ってたけど、霧雨家の当主、さらには人里の代表者でもある慧音先生が揃って来たんだ。さらには私に刻まれた傷、その一部を見せた。そうすればほら、後は分かるかな。一条家当主は従者に高冨と取り巻きの三人、そしてその親を呼び出すよう命令。全員揃えば慧音先生が代表して事情を説明。わざわざ本家の当主が呼び出したんだから何事かと思ってた各家の当主は驚き。最初は私たちを疑ってそんなことないっていう親もいたけど、心当たりのある親は自分の息子を怒鳴りつけていた。それで一人がボロを出せばもう隠し通せない。その部屋が怒鳴り声の嵐で満たされる前に、説明するとき以外ほとんど言葉を発していなかったお父さんが怒鳴って、その声にビクッて固まってるとお父さんは高冨に近づいて殴った。パーとかじゃない。思いっきり拳で、思いっきり力を入れて。普段道具屋なんてやってると力が衰えてくるみたいなことを思う人もいると思うけど、実際は力仕事ばかりだ。だって商品の入った重たい木箱を毎日何十個も運んで、立ち仕事ばかり。出張販売なんてのもやったりしてるから足腰鍛えまくり。そんな男の拳だ。別に相手も小柄なわけじゃないのに吹っ飛んだ。凄い音がした。それに驚いてると先生が「何してるんだ」って言いそうになって、それを意外にも殴られた本人の父親が止めた。そして一条家当主はお父さんに「息子がこんなことをしてしまったのはキチンと教育していなかった私たち親も悪い。なので思う存分息子共々殴ってくれて構いません」って言って、他の親も同じように言った。『蛙の子は蛙』とか『この子供にこの親あり』とかそんな言葉があるけど、今回の場合は当てはまらないなと思った。やはり一家の当主だからなのだろうか。息子が似たのは顔だけだったわけだ。で、お父さんは親子どっちも殴るのかと思ったら、そんなことはなかった。「さっきのは感情に流されて殴っただけだ。まだきちんとお前たちの息子に話を聞いていない。追加で殴るのはそれからだ」って言った。そこで彼らがなぜ私を虐めたのか。言ってしまえばまだ私からの視点でしか話していない。それでも十分かもしれないが、やはりお互いの言い分を言った方がいいからね

 で、聞いた話がこうだ。私たち姉妹を自分のものにしようとした高冨。でも姉には断られ、妹...まあ私なんだけど、私には近づくだけでも無理。周りもいる状況で告ったっけ断られた挙句人のいる前で顔に泥を塗られた。だから私相手に虐めを始めた。それで脅せば自分のものになるかと思ったら虐められている本人の様子は変わらない。それが気に食わなくてどんどんエスカレートしていってしまい、歯止めが利かなくなった。そして名家である霧雨家の娘を虐めて、後が怖くなかったのか、みたいなことを聞けば、「名家であろうと俺の家には敵わないと思ったから、脅せば何とでもなると思ってた」って言われたね。そう言った瞬間、今度は彼の父親が彼を殴って、無理やり土下座させて、自分もして必死に謝ってきた。「自分の息子が世間知らずで申し訳ありません。愚かな息子で申し訳ありません」って。なんでそんなに......って思ったら、彼も同じことを思ったというか、下の家なんだから謝る必要はないだろ的な事思ったんだろうね。でも彼の父親がわざわざ説明してくれた。人里での一条家は確かに高い位置にいる。でもその上にも名家はあるんだって。一番はやはり稗田家。そして驚くのが、霧雨家は五番以内に入る名家だったのだ。そして肝心の一条家は10番近く。つまり大きな差があって、霧雨家は家系的に事を起こすような家柄ではなかったから道具屋として目立っていただけで、実は彼の家よりも遥か上の立場だったわけだ。それなのに彼は「自分の家、つまり自分が最強なんだ」って感じに家を過信しすぎていたんだ。で、そのことがその霧雨家の当主であるお父さんに聞かれた。それはもう顔真っ青な出来事だ。自分の息子をあまりにも甘く育てすぎてしまったね

 ともかく両方からの意見を聞いても、結局は彼らが悪いってのは変わらず、親たちは自分の息子を私に差し出して、思う存分殴ってくれて構わないって言った。当たり前のように彼らは反抗したけど、親が怒鳴りつければ静かになった。あの隆までもがだ。私としては別に殴らなくても良かったんだけど、それじゃ親たちが納得しないからってことで一人一発ずつ殴って終わった。それでも本気で殴ったため自分の手が痛い。相手も痛がってた。でもそれだけじゃ足りないって親たちが言って、「私はもういいです。納得ができないのであれば自分達で自分の息子を殴ってください」って言った。ある意味他人に殴られるよりも精神的に辛いだろうに、私はそこまで考えずに言ったんだから子供の残虐なところが出たのかもね。親たちも自分で殴るのは......ってなってたけど、高冨のお父さんは違った。自分の息子を何度も殴った。たとえ高冨が泣こうと喚こうと殴って、ようやく終わったころには彼の顔や体は痣だらけ。口の中を切ったのか口に血がついてた。いやはやよくも自分の息子相手にここまで殴れるものだよ。ってお父さんも結構舞理沙姉を殴ってるな......って他人事のように思うくらいには。いや他人事だから間違いではない。それを見た周りの親たちも高冨のお父さん並みではないが、殴って、痣付けて

 それから私たちは殴られて泣いたりしてる彼らを放ってこれからの話をした。彼らは自分たちの息子がやらかしたことだが、教育ができていなかった親である自分たちにも責任があるって言って私とお父さんに判断を委ねた。お父さんも私に判断を任せるって言って、私は悩んだ。正直なところさっき殴ったときに怒りは沈んでたし、さらに彼らが殴られてるのを見てスッキリしてる面もある。だから私としてはもうよかったし、むしろもう彼らと関わりたくなかった。でも人里にいる間は彼らと家柄関係で話をすることもあるだろうから、それは無理だろう。だから少し考えて言った。「私から彼らにやることはもうないです。ですが今後このようなことが再発しないように教え込んでおいてください。そして私達に酷いことをしないでください。私達の平穏を壊さないでください。もう自分勝手に相手を傷つけるような真似をしないようにしてください。以上のことを守っていただけるのであれば私はもう個人であなた方に関わることはないでしょう。それで納得できないのであれば自分たちで彼らの処遇を考えてください」って。我ながらなかなか大人な発言した気がする。そしてそれに初めに納得したのは高冨のお父さん。彼は納得したようにうなずくと、高冨にこう言い放った。「今の話をよく聞いたな?私はこれだけでは納得していない。だからお前とは後でじっくりと今後の話をしよう」って。言葉は普通なはずなのに威圧感は凄くて、拒否権なんて傍から見てる私でもないって分かった。元々泣いてた高冨がさらに涙流して震えてたね。ご愁傷様

 で、取り巻き三人の処遇は簡単に言うなら私の忠実なる僕?まあ使い勝手のいい駒になった。何か頼んだら悪いことでない限り絶対にやってくれる家来?まあ関わること自体嫌だったのでその後頼むことなんてなかったけど

 それからそういうことが決まったら私はもう彼らを見てることさえも嫌になってきたからさっさとお父さんと一条家を出て、家に帰った。慧音先生も家まできてくれて、お父さんと一緒にお母さんに話してきたことを説明。私は舞理沙姉に「もう大丈夫だよ」って言って、それで話はおしまい。かと思うじゃない?

 その次の日は寺子屋がいつも通りあったから舞理沙姉と行ったらあいつら他の取り巻きや綾子を連れて全員が土下座してきた。正直こんな人数で土下座って邪魔くさいなって思ったし、自分的にも昨日のでもう終わりだと思ってたから土下座を辞めさせて許した。それからまた数日経ったころ、高冨が突然寺子屋に来なくなって、周りが里でも見かけなくなったとか聞いたときは「あ、勘当されたんだな」って予想した。実際その通りなのかは当の本人とそれに関わった人だけにしか知らないだろうけど、それもどうだってよかった。ただこれで私の平穏は取り戻せたんだなって

 そして事が終わってから気が付いた、というかそれまで気づく余裕がなかっただけなんだけど、この事のおかげか何かで私の男性恐怖症は和らいだ。今気づけば話し合いをしたときなんて慧音先生以外男性だし。その中で平気だったんだから彼らのおかげで相当和らいだみたいだ。ある意味感謝だが、もっと丁寧な改善がよかったよ。もっとも記憶が戻った今はその名残しか残ってないけどね

 

 ともかくこれで私は男性恐怖症が完全にではないけど治った。彼らとはあれから寺子屋でも関わることはほとんどなく、私が里を出たことで余計に関わらなくなった。だから今まで思い出すことはなかったんだけど、先日霖さんにあったからかな。思い出しちゃった

 ま、とりあえずこの番外編はこれで終わりだよ。...え?メタいって?まあ気にするな。今の私『霧雨 榛奈』は元気に幸せに暮らしてますってことで、また次回会おうね




後書き~

何でこんなの書いたかって?
...本当は30話で使う予定だったんです。でも「あれ?話戻らなくね?」的な感じになって。でも消すのはもったいない。「そうだ、番外編に使おう」
こうしてこの話はできました。作製期間分かんない。シリアス?物によっては美味しいよね
ちなみにすでに投稿している話にこの香りを嗅がせています。意味わかんない?大丈夫、私も深夜テンションで書いてるから意味わかんない。
ともかくこの事件がきっかけで榛奈さんの男性恐怖症は薄くなりましたが、記憶が戻った今は関係ないってね。...多分......

さて、また次回もゆっくりしていってね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

If世界『8月20日。それは私の生誕祭』

前書き~

うん。なんでこの時期に8月の話をしてるんだろうな~とか、本編どうしたんだー!とか、思う人はたくさんいるとおもうんですけど、言わせてください。
「本編が思うように書けない!」
そう、書けないんです。だから気分転換に書いたら、一日で書けました。この意欲を本編に持ち込みたいです。
それはともかくタイトル通り、彼女の誕生日を祝ったお話となります。
「え?あの子に誕生日とか設定してあったの?」という質問に対してはこう答えます。
「私(ほのりん)が誕生日なんです!」と。
それはともかく、今回簡単に書いたものなので、地の分全くありません!それと『GL』、『ヒロインはフラン』タグが正常に機能する作品です。

そういうわけで、コーヒー片手にゆっくりしていってね!!


「――8月20日。それは世間から見たら何の変哲もない日であり、しいて言うならば、真夏である。

 そんな日を、私は何故ここに持ち出したかというと......」

 

「今日は私の誕生日だからである!!」

「いや、急に来てどうしたのよ」

「だから!今日は私の誕生日なんだよ!」

「そうなのね。おめでと」

「ありがとー!...って、そうじゃなくてね!?」

「何よ、祝って欲しかったんじゃないの?」

「そう、祝って欲しいんだよ!この年にもなってまだ誕生日を祝って欲しいのかって呆れられるかもしれないけど、祝って欲しいの!なのにレミリア様達ってば酷いんだよ!?「午後の仕事ださぁ頑張るぞー!」って気合入れてたのに急に「外に出てろ」って紅魔館から追い出すし、帰ろうとしても美鈴が見張ってるし!!」

「あーはいはい。そういう話はアンタの姉にでもすればいいじゃない。まったく、なんで私に......」

「.........だもん」

「え?」

「だから、魔理沙姉もあっち側なんだもん!」

「あ~...そう...」

「フラン様も魔理沙姉もレミリア様達と一緒に何かやってて、私だけ除け者だよ!?何かしてるなら私も混ざりたいのに!!」

「...うん。そればっかりはアンタが混ざっちゃいけないんじゃない?」

「なんで!?...はっ、まさか私、気付かぬうちにレミリア様を怒らせるようなことをしてしまったから、これは私に対しての精神攻撃!?罰なのか!?」

「それはないから。とにかくそういう厄介事をうちに持ち込まないで。里にでも行ってればいいじゃない」

「うわあん!霊夢まで追い出すのぉ!」

「うざいわねぇ......」

「うざいって言われた!霊夢にうざいって言われた!これだけでもう私幻想郷で生きていけないよぉー!」

「その程度で生きていけないんなら、アンタはもうとっくの昔に死んでるわよ」

「なら大丈夫か」

「そうね。ほら、里で甘い物でも食べてこればいいじゃない」

「甘い物...うん!あっ、霊夢も行こうよ!」

「嫌よ。...お金ないし」

「だいじょーぶだいじょーぶ!私が奢るから!」

「ホント!?なら行くわ!支度してくるから少し待ってなさい!」

「わーい!霊夢とデートだー!」

「...アンタ、今日私と出かけたことを『でーと』って言うんじゃないわよ。アンタの主に知られたらこっちに被害が飛ぶんだから」

「......?よく分かんないけど、分かった!」

「なんか今のアンタって幼児退行してない?」

「知らなーい!」

「はぁ...まったく...これは後でレミリアのやつに何か貰わないとね」

 

 

 

~少女移動中~

 

 

 

「ん~♪やっぱり此処の餡蜜は格別ね~♪」

「おいしいね!れーむ!」

「...うん、アンタが更に幼児退行してなかったら、もっと良かったんでしょうね......」

「ん~?あっ、れーむも私のよーかん食べたいの?いいよ~!はい、あ~ん!」

「いや、別にアンタに食べさせてもらわなくても......」

「...たべてくれないの?」

「ぐっ......わ、分かったわよ......」

「やったー!れーむ、あ~ん!」

「あーん...もぐもぐ......うん。やっぱり此処は羊羹も最高ね」

「だよね!あっ、れーむのあんみつもちょーだい!」

「えぇ......」

「...くれないの?」

「うぐっ...わ、分かったわよ......どうせアンタの金なんだし」

「わーい!ほら、はやくはやく!」

「はいはい。ほら、口開けなさい」

「うん!あー―――」

「...お前ら、甘味処で何してんだ?」

「んぐっ!?んッんぐっ、けほけほっ」

「あら魔理沙じゃない。アンタも此処の餡蜜食べに来たの?」

「いや、私は榛奈を捜しに来たんだが...大丈夫か?」

「だ、大丈夫...というかどうして魔理沙姉が......?それに一体何時から......」

「榛奈が霊夢に羊羹を食べさせようとした辺りからだ。ったく、食べてもいないのに口の中が甘くなったじゃないか」

「あっ...あれは、そのっ......///」

「榛奈がアンタらに追い出された~っていうから不満解消に付き合って上げたの」

「だからってわざわざ甘味処で食べさせあいなんてするか?普通」

「そこは榛奈に聞きなさいよ。私は榛奈の行動に付き合ってあげただけなんだから」

「ふーん。で、榛奈?」

「あうぅ......あうあう......///」

「...あーうん。暴走したのか?」

「あうぅぅ......!」

「したんだな。まっ、榛奈がフランから何かしら拒否されたらこうなるのは分かってたし、何かしら起こすんだろうなーっとは思ってたが、まさか霊夢となぁ......」

「だ、だって、他に話せるような人、思いつかなくて......」

「そうかい。とにかく、フランが榛奈を呼んでるんだ。紅魔館へ―――」

「フラン様がっ!?じゃあじゃあ、私紅魔館に戻っていいの!?」

「あ、ああ。というか戻って貰わんとせっかくの準備が......」

「分かった!よく分かんないけど、私はフラン様の元へ帰ってもいいのは分かった!あっ、これ代金ね!霊夢、残り食べていいから!今日は付き合ってくれてありがとう!またね!」

「えっ、ちょっ、お釣り!...って、行っちゃったわね......」

「ははっ、相変わらず榛奈はフランが好きだな」

「そうね...というか準備ってやっぱり榛奈の?」

「お?なんだ霊夢、お前今日が榛奈のって」

「あの子が来た時に祝って欲しいだなんだって騒いだのよ」

「あー、そりゃ悪かったな。フランの希望を叶えるには、榛奈が紅魔館にいるとまずかったんだ」

「それ、榛奈に言ってあげなさい。あの子すごく寂しがってたわよ」

「ああ。まっ、それはフランが言うと思うけどなー。おお、そうだ霊夢。お前も参加するか?」

「そうね。これを食べ終わってから参加するわ」

「なら榛奈の分は私が......」

「ダメよ。これは私が貰ったんだから」

「ちぇっ。いーよ。私は先に紅魔館へ行って霊夢の分の御馳走も食べてやる!」

「ならその分魔理沙のを頂くわ」

「それじゃお前に食べられないよう両方とも確保しないとな!それじゃ、お先だぜ!」

「はいはい...ふぅ。今日も平和ねー」

 

 

 

~少女移動中~

 

 

 

「おや、おかえりなさい榛奈ちゃ―――」

「ただいま美鈴!フラン様は!?」

「えっ、フラン様でしたら食堂に―――」

「わかったありがと!」

「あっ、はい。...ふふっ、本当に榛奈ちゃんとフラン様は相思相愛ですね」

「そうね。見ていて羨ましいほどだわ」

「おや咲夜さん。どうされましたか?」

「お嬢様からの伝言。「今日は中で、一緒に祝いましょう」だそうよ」

「本当ですか!?あっ、ですが門番は......」

「妖精メイドに任せるわ。どうせ今日来るのはあの子を祝いに来る人ぐらいだもの」

「そうですね!わーい、何を食べましょうか!」

「色々作ったわよ。ほら、連れてくわね」

「ありがとうございます、咲夜さん!」

 

 

 

「んー、なんでフラン様は食堂へ......?夕食にはまだ早いような......まっいいか。フラン様ー!」ガバッ!

パンパンパンッ!

『榛奈、お誕生日おめでとう!!』

「......へっ?...え?え?」

「ほーら!そこに立ってないで、こっちだよ!」

「え...?あの、これは一体......?」

「今日は貴女の誕生日でしょう?色々と準備したのよ」

「いや、あの...ちょっと待ってください!」

「どうしたの、榛奈......?もしかして今日じゃなかったの......?」

「い、いえ。確かに今日は私の誕生日なのですが...どうしてそれを皆さんが知ってるのですか?私は言った覚えはありませんが......」

「数日前に魔理沙が教えてくれたのよ。今日が貴女の誕生日だって」

「それをパチェが私達に教えてくれて、だったら祝おうってフランが」

「うんっ!だって一年に一度しかないことだもん。それに、今日は榛奈が生まれてきてくれた日だから!」

「フラン様...皆さんも......うぅ...うええぇ......」

「えっ!?ど、どうしたの榛奈!?も、もしかして、嫌、だった......?」

「ち、ちが...ぐずっ......」

「あらら、泣いちゃいましたね。いよっ、さすが妹様!罪な女~」

「こあ、あんまり茶化さないの」

「ど、どーしよお姉様!」

「慌てなくてもいいわよ、フラン。榛奈のあれは、嬉し過ぎて涙が出ただけよ。ほら、榛奈もそのままでいいからそこに座りなさい。いつもは私の席だけれど、今日ばかりは主役である貴女が座る席よ」

「うぇっ!?そ、そんな、座れませんよ私なんかが......」

「こらっ!“私なんか”なんて言っちゃダメ!それに今日は榛奈が主役だから、いいの!ほらほら!」

「は、はい!」

 

「それじゃあ、咲夜!あれを持ってきて♪」

「はっ。どうぞ」

「わぁっ......!美味しそうなケーキ......!」

「えへへっ。私が作ったんだよ♪」

「フラン様が!?すごい...すごいですよフラン様!」

「うんっ!」

「あら?咲夜に教えてもらいながらじゃなかったかしら~?」

「お、お姉様!それは言わなくていいの!それに、私が作ったのはホントだもん!」

「ええ。それはもう、一生懸命、何度失敗しても諦めずに作り続けた、妹様の努力の成果ですわ」

「さ、咲夜!失敗したとか言わなくても......!」

「フラン様っ......!私のためにそんなに努力されて......!すっごく嬉しいです!もう、私は世界一...いえ、全次元一幸せ者な従者です!!もう従者とか抜きにしても幸せ者ですよ!!」

「ほんと......?...えへへ、そんなに喜んでもらえて、頑張ったかいがあったよ!」

「あ~でもそうなると食べるのがおしいっ!フラン様の努力の結晶...そのままの形で部屋に飾れたり出来ないかな?」

「生ものだから早く食べなさい。腐るわよ」

「食べずに腐らせるのはもっと嫌です!!うぅ、どうすればこのままの形で保存できるのか......いっそ写真でも撮れば......」

「あやや、どうやら私の出番のようですね?」

「あ、文!?どうやってここに......!」

「門にいた妖精達に招待状を見せたら、素直に通してくれましたよ。あぁレミリアさん、お招きいただきありがとうございます」

「いいのよ。今日は是非、そのカメラで色々と写真を撮って頂戴。後で買い取るわ」

「ええ、では早速ケーキをパシャリと。もひとつ本日の主役とパシャリと」

「わわっ、きゅ、急に撮らないでよ」

「いいではありませんか。ではでは、続きをどうぞどうぞ」

「ええ。パチェ」

「はい」

「あっ、ロウソクに火が......」

「榛奈、ロウソクに息をふーってかけるんだよ。ふーって」

「は、はい。はぅ...ふーっ!」

パチパチパチ......

「それでは改めて、せーのっ!」

『お誕生日、おめでとう(ございます)!!』

「皆さん...あ、ありっ、ありがどうごじゃいばじゅっ!!」

「ああほら、これで拭きなさい」

「びゃい......ずずっ...ありがとうございます、咲夜さん。後で洗って返します」

「どういたしまして」

「榛奈榛奈!早く食べてみて!」

「はいっ!...ぱくっ。もぐもぐ......」

「ど、どうかな......」

「ごくっ......う、うぅ......」

「は、榛奈!?も、もしかして不味かった......?ご、ごめんね!無理矢理食べさせて......!」

「ぢがいまず...おいじいんでず......!おいじずぎで、じあわぜずぎで、涙が......!」

「も、もう!驚かせないでよ、榛奈」

「おー、もうやってるなー!」

びゃびばべぇ(まりさねぇ)......」

「おぉいおいおい。酷い顔してるなぁ。どいつだぁ?私の妹を泣かせた奴は?」

「へっ、ま、魔理沙!これは、あのね!」

「やっぱりフランか。私の妹を泣かせやがって、うりゃうりゃー!」

「わあっ!魔理沙ってば、もう、やめてよ~!」

「にししっ。おぉ、それがフランが作ってたっていうケーキか。美味しそうだな」

「えっ...だ、だめっ......!」

「あっ、いや。別に欲しいわけじゃ...いや、欲しいけど、それは榛奈の物だからな。奪わないぜ」

「...欲しいの?」

「そりゃ、それだけ美味しそうなら...って、いや、いらないからな!?それは、お前の物だから......」

「...咲夜さん。ナイフを貸していただけますか?」

「いいけれど......はい」

「ありがとうございます。では、ナイフを入れるのがもったいないですが八等分に...えいっ!後はお皿に......はい!魔理沙姉、どうぞ!」

「おっ、くれるのか...っていやいや。それは榛奈が貰ったケーキだから......!」

「でも一人で食べるより、皆で食べた方が美味しいよ。皆さんも、どうぞ!」

「自分で作ったケーキ...本当に大丈夫だったかなぁ......?」

「大丈夫ですよ、フラン様。まあ、榛奈さんならフラン様の作ったもの全部に美味しいと言いそうではありますが、絶対美味しいですよ」

「パチュリー様♪見てください!妹様の作ったケーキですよケーキ♪」

「はいはい、私も貰ってるから、自慢にならないわよ」

「私も貰ってよろしいのでしょうか......?」

「いいわよ。今日の主役が言うんだもの。食べない方が失礼だわ」

「あっ、文の分忘れてた...わ、私の食べかけでよければ......」

「いえいえ、それは榛奈さんが食べてください。私は皆さんのことをこのカメラでたっぷり撮らせていただければそれで十分ですから。ほらほら魔理沙さんも、主役が良いって言うんですから、受け取らないと」

「お、おう。そうだな。それじゃ、お言葉に甘えて......ぱくっ...もぐもぐ...おぉ!美味しくできてるじゃないか!やったなフラン!」

「う、うん!よかったぁ......」

「そうね、咲夜のと比べるとまだまだだけれど、一応合格かしら」

「レミィ、咲夜のと比べるのはどうかと思うわよ」

「お嬢様、ここは素直に妹様の成長を祝いましょう」

「いやこれ、榛奈の誕生日を祝うもののはずだけど...ま、美味しいわよ」

「んん~!まさか妹様の手作りケーキを味わえるなんて......!パチュリー様に召喚してもらってよかった~!!」

「くぅ...あんなに小さかったのに、いつの間にかこんなにも成長されていたのですね、フラン様。嬉しい...嬉しいですよフラン様!」

「いや貴女を雇った時にはもうフランは今と同じぐらいだったはずなのだけれど......」

「お嬢様、精神的な問題ですよ、精神的」

「う、うん。どうして私は二人の従者に責められたのかしら......」

「ははっ、まあいいじゃないか!で、もう他の料理も食べていいだろ?」

「ええ。色んな人や妖怪に声をかけたから、たくさん用意させたわ。もちろんお酒もあるわよ」

「よっしゃ!それじゃあ楽しむぜ~!!」

「主役を置いて行かないでよー!」

「勿論榛奈もだよ!」

「さてさて、どれから食べましょうね、パチュリー様!」

「軽いものを適当に取ってきてちょうだい」

「かしこまりましたー!」

「うんうん、相変わらず咲夜さんの料理は美味しい...いえ、違いますね。日々上達してますね!」

「ありがとう美鈴。貴女もいつもお疲れ様」

「いやぁ、咲夜さんにそんな言葉をかけられたら、また明日から頑張れますね!」

「じゃあもう居眠りしないでね?」

「そ、それは...あはは......」

「もう...美鈴ってば」

「まあまあ、咲夜。今日はめでたい日なんだもの、怒るのは明日にしなさい」

「明日怒られるんですねー......」

「あや、あやや、あやややや!皆さん良い表情です!これは良い写真が沢山撮れますよー!!」

 

「もう始まってるわねー。当然料理は無くなってないでしょうね?」

「おー、霊夢。意外と早かったな」

「あの後すぐ食べて来たの。それとこいつらも来たわよ」

「おーい榛奈ー!アタイ達が来てやったぞー!」

「わはー、誕生日、おめでとうなのだー」

「おめでとうございます、榛奈さん!」

「八目鰻いっぱい焼いてきましたー。これぐらいでいいですか?」

「ええ、ありがとう。机の上に適当に置いておけば、誰かが食べるわ」

「いえいえー。どうぞ皆さん!ミスティア特製八目鰻ですよー!」

「ボクからも。虫たちが頑張っていっぱい蜜を集めてくれたんだ。とっても美味しいから、食べてみてよ!」

「わぁ...綺麗な金色......」

「まるで榛奈の髪の色みたいだね!」

「えぇ!?そ、そうですかね......?」

「フランちゃんもそう思う?ボクもそう思ったから、集めてもらったんだ!」

「うえぇ?そ、そんなに甘そうな色かなぁ......」

「普通に綺麗な色ってことだろ。まっ、お前は甘そうというより、甘やかしそうだけどな!」

「うぐっ。否定できない......」

 

「おや、もう始まっていましたか」

「あやや、椛も招待されてたの?」

「はい、此処のメイド長から是非にと。もっとも、少しばかり哨戒仕事が長引いてしまい、出遅れてしまいましたが......」

「大丈夫よ、まだ始まったばかりだから、椛も楽しんでいきなさいな」

「どうして文様がデカい顔して言うんですか。まあ楽しんでいきますけど」

「そうそう、それでよし。もちろんその可愛らしい顔に出る表情を色々とこのカメラにおさめさせてもらうわね!」

「あんまり調子に乗らないでくださいね」

 

「あらぁ?ちょっと来るのが遅れちゃったかしら~」

「いえ、幽々子様。どうやらまだ始まったばかりのようです」

「そう~?ならまだいっぱいごちそうがあるわね~」

「...あの、幽々子様?本日の主役は榛奈さんですから、あまり目立たぬよう......」

「分かってるわよ~。妖夢ってば心配症ね~」

「幽々子様がやらかしそうで怖いんですよ......」

 

「もう賑やかになってるわね」

「来たのね、アリス」

「ええ。榛奈の誕生日パーティと聞いたら来ないわけにはいかないでしょ。せっかく呼んでもらったんだし。それにあの子には色々助けてもらってるから」

「アリスにもそう言われるって、あの子は一体いつも何をしてるのよ」

「さあ?私のところでは人形作りを手伝ってもらってるから。今日はそのお礼よ」

「ふぅん。それがあの子へのプレゼント?」

「ええ。上手にできてるでしょ?あの子に直接聞いて作ったの」

「わ、私のもあるのね......」

「パチュリーもって榛奈がね。じゃ、これを渡してくるから、またね」

「ええ、また」

 

「ずいぶん盛り上がってるわね。私達も早く混ざりましょうか」

「はい、紫様」

「あら、隙間妖怪じゃない。まともに門から入って来るなんて、明日は嵐かしら?」

「榛奈の誕生日ですもの。正式に招待されているし、今日くらいは普通にお邪魔させてもらいますわ」

「そう。貴女にもそんな心があったなんてね。...そういえば貴女の式ってもう一人いなかったかしら?」

「橙は藍の式。あの子ならあっちよ」

 

「にゃー!また一つ年を取ったのね、榛奈!」

「う、うぅん。確かにそうなんだけど言い方......」

「間違ってないでしょ?ほらこれ!藍様と選んだのよ!」

「マタタビ...?しかも大量......」

「私からのいっぱいの気持ちよ!ありがたく受け取りなさい!」

「ははぁ......それではありがたく頂きます。そして後日その辺に撒いて猫を招きます」

「紅魔館中に猫がいっぱいとか、掃除が大変そうだな」

「いいんじゃない?来るのが神社だったら許さないけど」

「さすがに館に入れないよ~。湖の外でね」

「...喜んでもらえた?」

「勿論!ありがとう、橙!」

「っ...!ふ、ふーん!あんたが誕生日だからだもんね!それじゃ私はチルノちゃんのところに行ってるから!」

「うん!...マタタビ...使いどころを誤れば天国は地獄へと変化する代物を貰ってしまった......」

「そんな危険なものじゃないだろ......おっと、そうだった。私からもプレゼントな。ちょっと目を閉じてろよ?」

「え?うん、わかった」

「じゃあこれを......ぐぐっ...こっれをぉ......!」

「ぷぷっ」

「あっこら霊夢笑うな!あーくそっ、榛奈、しゃがめ!」

「わ、わかった!」

「よし、これで......できた!もういいぞ」

「う、うん。えっと...これってもしかして......」

「白いリボンだけじゃ寂しいからな。私お手製の星の飾りだ。あー、せっかく付けたんだ。後で鏡で確認しろよ?」

「わあっ!うん!うんうん!分かったよ魔理沙姉!ありがとう!すっごく嬉しいよ!魔理沙姉!」

「わっ、きゅ、急に抱き着くなって!倒れるだろうが...ったく、しょうがないやつだなぁ」

「えへへ......」

「流石ねぇ魔理沙。榛奈が喜ぶものをちゃんと用意するなんて。てっきり変なキノコでも渡すのかと思ってたのに」

「お前の誕生日ならそれを渡すのもありかもな?」

「やめてちょうだい。ほら、榛奈。私からもね」

「これ...お札だ」

「アンタが誕生日だって今日知ったから、碌な物を用意できなかったの。来年は覚えてたらもう少しいいものを用意するわ」

「...ううん。これでも十分嬉しいよ。だって霊夢の想いが籠ってるんだもんね」

「そ、そう言われると照れるわね......」

「...クーデレ万歳......」

「くー...なんて?何が万歳よ?」

「なんでもないよー。とにかくありがとう!魔理沙姉!霊夢!」

 

「榛奈、お誕生日おめでとう」

「アリスさん!はい!ありがとうございます!」

「その髪飾り...魔理沙からはもう貰ったのね」

「あれ?アリスさんはこれが魔理沙姉のプレゼントって知ってるんですか?」

「ええ。だってその髪飾りの作り方を教えたの、私だもの」

「そうだったんですね...アリスさんに教えてもらって魔理沙姉が作った髪飾り...家宝ものですね!」

「それ、魔理沙が自分で作ったものを自分の家の宝にされるのと同じよ?とにかく、はい。私からも」

「わあっ!フラン様にレミリア様に師匠、それに魔理沙姉の人形!可愛い~!って、これってもしかして前に訊いてきた......」

「ええ。貴女が大切だって言ってた人達を模した人形。さすがに全員はやらなかったけど、十分でしょう?」

「はい...はいはい!それはもう、魔理沙姉からのプレゼントに匹敵するぐらいです!ほんとにもう、すっごく嬉し過ぎて......!」

「ちょっ、泣くほど?」

「な、泣きませんよ...まだ泣きませんから!まだフラン様のプレゼントが残ってますから......!」

「そ、そう......ふふっ、そんなに喜んでもらえると、その子達も喜ぶわ。あぁそれと、来年の貴女の誕生日は、他の霊夢や咲夜の人形をプレゼントするつもりだから、そのつもりでね」

「う、うぅ...私、生きる!来年も再来年も、何度でも誕生日を迎えて、アリスさんから人形を作ってもらって、いつか幻想郷の住人全員分作ってもらいますから!」

「それは大変そうね。頑張って生きてちょうだい」

「はいっ!」

「それとこれも。香霖堂の店主からよ」

「これ...外の世界の本だ。しかも今は懐かしきGB(ゲームボーイ)のとな......」

「ここに来るときに寄って来たの。そしたら自分は行けない代わりにって」

「これはこれは...後で霖さんにもお礼を言わなくては。持ってきて頂いてありがとうございます!」

「ついでだもの、お礼されるようなことでもないわ」

「...相変わらずアリスさんは平和ですね......」

「いやどういう意味よ」

 

「はぁい。貴女の大好きなゆかりんよ~」

「ゆっかり~ん!」

「相変わらずノリが良いですわね。それで、どう?色々貰っているようですけれど」

「うん!いやぁ、我ながら交友関係が広いと自覚するぐらいの量だよ。転生前じゃ絶対こんなに貰えなかったもん。...友達が少なかっただけだけどさ」

「あらら。今の人生を楽しんでるようで何よりですわ。では私からも一つ......」

「これは...まさかのインスタント麺!?」

「ええ。外の世界で暮らしていた貴女には懐かしいものでしょう?いつも貴女が食べているものに比べれば貧相で味も劣り、しかも健康に悪いけれど、それもまた良いでしょう?」

「うんっ!幻想郷じゃ絶対手に入らないからなぁ...懐かしいものをありがとう、紫!」

「いえいえ、どういたしまして。インスタント麺なんて安いものですわ」

「そうだね。価格にしたら大体一個約200円ぐらいだもんね」

「ええ。その程度で喜んでもらえたのですから、安い女ですわね?」

「いやっ、確かに安いカップ麺で喜んだ私だけど、そういう意味とは違うからね!?」

「ふふっ、冗談ですわ。そうそう、藍も渡す物があるのでしょう?」

「はい、では失礼して、これを」

「これは...え?まさかの油揚げストラップ!?こんなの売ってるの!?」

「外の世界に行った際に見かけたのだ。この形、この艶...間違いなくこれをデザインした職人は油揚げが好きだな!」

「う、うーん。確かに嬉しいけど、まさかの物で驚きの方が増してるよ......」

「せっかく私があげたんだ。大切にしろ」

「わ、わかった...大切にする」

「それでよし」

「しかしこれ、藍のストラップの方が価格的には金がかかって......」

「ならば増やせばいいですわ。貴女のお部屋にいっぱい置いておきますわね」

「そ、それはそれで困るような......贅沢を言うなら、色んな味をお願いします」

「はいですわ」

 

「榛奈-!アタイ達からもプレゼントを持ってきたぞー!」

「おー!チルノが用意したプレゼントって、別の意味で気になるよ!」

「おぉ!そうかそうか!なら喜んで受け取るといい!アタイが今朝湖で見つけた蛙の氷漬けだ!」

「うわぁ、予想を裏切らないチルノのおかげで、逆に安心したよ」

「なんだ?嬉しくないのか?」

「いやいや、嬉しいよ。...気持ちが、だけど」

「嬉しいか!なら良かった!ほら、大ちゃんもルーちゃんも!」

「う、うん!あの、これ、私と妖精達(みんな)で作ったんです」

「これは...わぁ、可愛い...これってポプリって言うんだっけ?」

「はいっ。幽香さんに教えてもらって、皆で材料を集めて作ったんです。榛奈さんはよく本を読んでいるので、読書に合った、ゆったりした香りを集めて......」

「どれどれ、すんすん...おぉ、これはこれは。確かに読書に合う香りだね。うん、こういうのって名前しか知らなかったけど、なかなか良いものだね」

「あの、喜んでいただけましたか......?」

「それは勿論!ありがとう、大ちゃん!皆にもよろしくね!」

「はい!榛奈さんが喜んでくれたって伝えますね!」

「私からもこれをやるのだー」

「これ...綺麗な石だね」

「その辺を飛んでたら見つけたのだー。綺麗だから宝物にしてたけど、あげるのだー」

「えっ、そ、そんなに大事な物なのに、私が貰っちゃっていいの......?」

「うんー。もちろんなのだー。それに他にも宝物はあるのだー」

「そっかー。じゃあありがたく貰うね!ありがとう、ルーミア!」

「喜んでもらえたようで何よりなのだ」

「うん!」(...これ、ペリドットの原石だよね......?私の誕生日石の......本当にこんな高価なものを貰っていいのだろうか......?...ま、いいか)

 

「これは...沢山貰っていますね」

「椛!椛も来てくれたんだ!」

「はい。招待されましたので。ではどうぞ、誕生日の贈り物です」

「おぉ、川の幸に山の幸...なんだか誰が用意したのか分かる様な選別......」

「ご想像通り、魚などはにとりが、山菜などは山の神が選んだものです。...私も手伝いましたよ?」

「そんなこと疑ってないよー。わぁ、どれも美味しそうだなぁ......」

「喜んでいただけたようで何より。...っと文様は何か渡さないのですか?」

「私?私はほら、今撮ってる写真が贈り物だから」

「それでいいのですか......?」

「いいよいいよ、椛。写真って形で今の楽しい日々を残せるんだもん。だからどんどん撮っちゃって!」

「はい!この私、『文々。新聞』の射命丸文にお任せください!皆さんの生き生きとした表情、いっぱい撮っちゃいますよー!」

「まあお二方がそれでいいのならそれで」

「はっ、フラン様の可愛らしい笑顔!」

「シャッターチャーンスッ!」

 

「榛奈~、お誕生日おめでとう」

「こちら、幽々子様のご用意した贈り物です。お受け取りください」

「こ、これは...!」

「うちで咲いた桜の花を押し花の栞にしたのよ~。綺麗でしょう?」

「はい、凄く綺麗で可愛くて...って、どうして真夏に桜の花が?」

「先日の異変では、冥界の桜も全て満開となりましたので」

「そういうことよ~」

「そういえば冥界なら余計に魂があっちこっちですもんね」

「そうなのよ~。それで、その時咲いた花をいくつかを取っておいたから、そこから選んだの~。本に挟むのにちょうどいいんじゃないかしら?」

「はい!それにそういう花なら魔力の通りもよくて、ずっと魔法をかけておけばずっと綺麗なままですし...ありがとうございます!こんな素敵な物をプレゼントしてくださり......」

「うふふ~。喜んでもらえたのなら何よりだわ~」

「はい!」

 

「さて、そろそろ私達もプレゼントを出しましょうか。はいこれ」

「これは...新しいティーカップですね。デザインが凄く綺麗で繊細で......」

「でしょう?私が選んだのよ」

「レミリア様が!?わわっ、気楽に触れてしまいました!傷や汚れを付けないようにしないと......」

「別にティーカップなんだから、普段のお茶に使っていいのよ?割れたらまた買ってあげるわ」

「そんな...!勿体ないお言葉です......!ですが、せっかくレミリア様から頂いたティーカップ。極力壊れぬよう、扱いには気を付けます!」

「そう...人の趣向はそれぞれだものね」

「レミィの次は私ね。はい」

「本...?って、これ......!」

「私の魔法の一部を書いたものよ。私の弟子なら、少しでも再現してほしいものね」

「それはもちろん!一生懸命読み解いて、練習して、師匠の技を盗んでやりますとも!」

「それは楽しみね」

「えへへっ、師匠の魔法の一部~♪師匠の一部~♪」

「肝心なとこを略さない」

「はーい」

「パチュリー様の次は私ですよー。はい、どーぞ!」

「座布団...いやクッションだ」

「どちらでも同じ意味な気がしますが...そうです、クッションです!長時間椅子に座ることの多い榛奈さん用に柔らかくてお尻の痛くならないものを作らせていただきました!」

「...ってことはコアの手作り!?すごい!ありがとう!」

「いえいえ、簡単な物でしたから。それで喜んでいただけるなんて、やはり榛奈さんは安い女......」

「って、それ聞いてたの!?あと全然違うからね!?」

「ふふふ~冗談ですよ~もう~」

「小悪魔の冗談もほどほどにして、私からもね」

「咲夜さんまで!?しかもこれってもしかして......」

「ええ。私がブレンドした、オリジナルの茶葉よ。その紙は上手に淹れるためのレシピ」

「わぁっ、嬉しいです!嬉しいですけど...上手に淹れれるでしょうか......?」

「大丈夫よ。貴女なら私と同じくらい美味しい紅茶を淹れれるわ」

「そうでしょうか......?っと、まだ淹れてみてもいないのに弱気じゃ駄目ですね。頑張ってこの茶葉で美味しい紅茶を淹れてみせます!」

「ええ。頑張って」

「はい!」

「咲夜さんの次は私ですね~。どうぞ、榛奈さん」

「これは...カーディガン?」

「はい。今の季節は必要ありませんが、これから寒くなってきますから。夜に本を読むときなど、身体を冷やさぬようにと思いまして......」

「じ、実用的な物が多い......」

「おや?気に入りませんでしたか?」

「ううんっ!すっごく気に入ったし、嬉しいよ!しかしこうも皆さんからのプレゼントを並べてみると、なんだかこれを使ってる光景が鮮明に頭に浮かびますね......。咲夜さんから貰った茶葉で淹れた紅茶を、レミリア様から頂いたティーカップに注ぎ、美鈴から貰ったカーディガンを羽織って、コアから貰ったクッションを椅子に敷き、師匠から貰った魔導書を読む......うん。すごく頭の中で描ける...というかこれ、もしかして示し合わせましたか?」

「あら、よく分かったわね。そうよ。私達皆で決めたの。そしてまだ、残っているでしょう?ほら......」

「あっ...う、うん......」

「......フラン様?」

「えっと、えっと......や、やっぱり私は後で!///」

「えっ、あっ、フラン様!?」

「...さっき覚悟は出来たって言ってたのに」

「あはは...先はまだ長いですねー......」

「え?え?あの、皆さん、フラン様はどうして逃げて...?」

「ちょっとまだ覚悟が固まってなかったみたいね。まっ、そのうち出来るわよ」

「案外その前に榛奈さんの方からいったりして...きゃっ」

「こあの妄想も意外とありえそうね。でも、まだしばらくかかるかしら」

「あ、あの、出来れば私にも分かるように説明を......!」

「そのうち分かるわ」

「それまでの辛抱ね」

「ええ?ど、どういうことなんですかー......」

 

 

 

~少女お開き中~

 

 

 

「...フラン様、こんなところに居ましたか」

「...榛奈......もう終わったの?」

「はい。皆さん帰っていきましたよ。酔いつぶれた方は咲夜さんがベッドまで運びましたが。その中に魔理沙姉の姿を見た時は頭を抱えました」

「ふふっ、魔理沙らしいね」

「そうですね」

「.........」

「...フラン様、夏とはいえ、夜は冷えます。あまり外におられると、風邪を召されてしまいますよ」

「...うん。でも、もう少し......」

「...かしこまりました。何か温かいものをご用意いたしましょうか?」

「ううん。いらない。だから、榛奈。少しでいいから、一緒に......」

「...はい。少しと言わず、いつまでも」

「...ありがとう」

「...今宵は満月ですね」

「うん...綺麗だね」

「はい......」

「...星も、綺麗だね」

「そうですね、星も月に負けないぐらい綺麗で......」

「...うん」

「......?」

「...ねえ、榛奈。今なら渡せるから、これ。誕生日プレゼント」

「これは...紅い宝石の付いた指輪のネックレスですか?」

「うん。この間里を歩いてたら見つけたの。宝石の名前は『スカーレット・レッド』って言うんだって」

「...まるでフラン様やレミリア様のためにあるような宝石ですね」

「...うん、そうだよ、ね」

「...どうかされましたか?」

「ううん。なんでもない」

「そうですか。...フラン様、ありがとうございます。こんなにも素敵で、綺麗な贈り物。一生の宝物です。本当に、すごく素敵で...大切で......」

「...榛奈?もしかして、泣いてるの......?」

「...はい。凄く嬉しくて、幸せで、もう怖いくらいで......」

「...大丈夫だよ。怖くないよ」

「...はい。フラン様、本当にありがとうございます。ずっとずっと、大切にしますね」

「うんっ」

「あっ、でもこれ......」

「あっ、そっか...もう榛奈には大切なネックレスがあったんだった......」

「...でしたら、こちらを外して、指輪の方の鎖に通して......」

「わぁ...すごく綺麗......」

「はいっ。陰陽玉と龍、そして紅い宝石...スカーレット・レッドの付いた美しい指輪。とっても綺麗で、美しくて......」

「(...榛奈がいつまでも、幸せでありますように)」

「...?何か言いましたか?フラン様」

「ううん。なにも。それよりほら、付けてあげる」

「...ありがとうございます。では、お願いしますね」

「うん。...はい、出来たよ」

「はい...本当に、凄く嬉しいです......」

「えへへ...喜んでもらえてよかった。...そろそろ中に戻ろっか」

「はい。そうですね」

「...ねえ榛奈、我儘言ってもいい?」

「はい、何なりと」

「...今夜は榛奈と一緒に寝たいな」

「...喜んで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後書き~

20日の月がどんなのか調べた結果、たまたま2005年の8月20日は満月の日だったらしく、更にその数日前には花映塚がコミケで発売した日......
これはその要素を取り入れるしかないと書いた所存でございます。
そうそう、皆さん、「月が綺麗ですね」というフレーズを御存じですか?
そして「星が綺麗ですね」というフレーズも。
意味を知ったのなら、後は分かりますね?

そういうことですよ。切ないです。

それでは次回も、ゆっくりしていってね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章『紅魔郷です!スカーレットさんですよ!』
第0.5話『紅霧異変の前日談です!』


初めましての方は初めまして
編集後に来てくださってる方はありがとうございます
本作は私が初めて書いた作品、所謂処女作です
駄文、誤字脱字等が含まれているかもしれません
それでもいい方はゆっくりしていってね!!


主人公side

 

 

 皆さん初めまして

 いきなりですが、私は『霧雨(きりさめ) 榛奈(はるな)』といいます

 紅魔館に住みながら『動かない大図書館(パチュリー・ノーレッジ)』の弟子として魔法を学びつつ『悪魔の妹(フランドール・スカーレット)』様の従者として毎日を幻想郷で過ごしています

 

 さて、皆さんは東方projectをご存知でしょうか。もし東方をご存知でこの作品を読んでいるのでしたらこんな疑問が頭に浮かぶと思います

 「“霧雨”って『普通の魔法(霧雨 魔理沙)使い』と苗字が一緒だが、何か関係はあるの?」とか「どうして紅魔館に住んでいるの?」とか......

 もっというのであれば「何故東方を知っているのか」と疑問に思われると思います

 

 一つ目の疑問に答えますと、関係はあります

 ただ、今は言えませんね

 二つ目の疑問の答えは少し長くなります

 三つ目の疑問を先に答えましょう

 

 まず三つ目ですが、私は転生者なんです

 転生前の憶えている記憶は、自分が女性だったこと。自分は二次元が好きということ。その二次元の好きな作品のこと。趣味が音楽ということ。その中でも特に東方のことを憶えていました。何故なら東方projectは私が転生する前に自分の中で流行っていた作品ですから

 ちなみにですが、これらの記憶は今世では生まれてた時から憶えていたわけではありません

 私はもともと外の世界で暮らしていたんですが、5歳の頃、何かがきっかけで幻想入りし、人里で暮らすようになったその時から少しだけですが思い出せるようになりました。といっても本当に少しだけで一年程前のあの日、とある出来事がきっかけで転生前で今の私が思い出せる記憶を全て思い出した時は混乱しましたね......

 逆にその前の外の世界で暮らしていた時の記憶を忘れてしまいましたが、5歳程度の記憶ならば忘れてもおかしくはないですよね

 

 二つ目の疑問ですが、10歳の頃に人里を出て修行をしようとしましたが倒れてしまい、紅魔館の皆さんに助けられました。その時、館の主の勧めがあり、魔女の弟子として紅魔館に住むようになり、一年程前にあったとある出来事、フラン様との出来事をきっかけに妹様の従者になりました

 あ、これは三つ目より短かったですね

 

 ともかく紅魔館に住み始めて約4年、季節は夏。本来なら日本独特の蒸し暑さが襲いかかる季節ですが、そんな気配はまったくなし。むしろ肌寒さすら感じてしまう気温

 現在、私は自室の机に向かい、考え事をしているのですが、いつもなら窓から部屋を明るくしてくれる日光は、外に広がる霧が遮ってしまい光が届かず、窓を見ればこれでもかって程紅い

 何故こうなっているのかという理由は簡単、外に霧が広がっているからです。しかも紅いやつ

 こうなった原因は1週間程前に遡る――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 この日は朝食まではいつも通りだった

 まだ日も浅い時間に起き、普段着とは別の動きやすい服に着替えて紅魔館の門番『(ほん) 美鈴(めーりん)』と日課のランニングをし、終われば汗を流すために身体をお湯で洗い、普段着に着替え、厨房に行き朝食作りを手伝う

 私は普通の従者と違い、基本的に自分優先に行動することが出来ていて、(あるじ)とはたまに一緒にいる感じで、館の仕事もしなくていいのだが、私がやりたいので極力やらせていただいている。一応私も従者だからね

 館の仕事は紅魔館の瀟洒な従者の『十六夜(いざよい) 咲夜(さくや)』さんとやることが多いです

 朝食を作り終えると私と咲夜さんはそれぞれ自分の主の部屋へ行き、起こして着替えなどの身支度を手伝い、済ませると食堂へ向かわせ、私達は厨房に戻り、食事を運ぶ

 食堂に入ると食事を待っていた館の住人、私の魔法使いとしての師である『パチュリー・ノーレッジ』師匠やその使い魔の『小悪魔』、朝一緒にランニングした美鈴、紅魔館の主『レミリア・スカーレット』様、そして私の主でレミリア様の妹、『フランドール・スカーレット』様が既に席についていて、私達は朝の挨拶をする

 そして私と咲夜さんがテーブルに食事を置き、終えると私はフラン様の隣の席、咲夜さんはレミリア様の斜め後ろという定位置についた

 いつもならここでレミリア様の合図で食べ始めるのだが、この日は違った

 

レ「皆、後で話し合いたいことがあるわ。だから食事が終わってもここに残っていてて」

 

フ「お姉様、話し合いたいことって?」

 

レ「後で話すわ。とりあえず食事が冷めないうちに食べましょう」

 

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

 

 

 

~少女達食事中~

 

 

 

 

パ「それでレミィ、話し合いたいことってなにかしら?」

 

レ「実は今度、異変を起こそうと思うの」

 

美「異変ですか?」

 

レ「えぇ、そうよ」

 

パ「でも確か、八雲に異変を起こしてはならないと契約させられてたわよね?」

 

 そう、紅魔館の住人は異変を起こしてはならない

 理由は私や咲夜さんが生まれるよりも前にあった【吸血鬼異変】が原因である

 西洋の妖怪が幻想郷に侵略しにきた異変。当時の幻想郷の妖怪達は長いこと戦いをやらずに、というより出来ずにいたため言ってしまえば腑抜けてて、突然の侵略にすぐには対抗出来なかった。更には異変の中心にいた妖怪、吸血鬼の魔性(カリスマ)に惹かれた一部の幻想郷の妖怪までも異変に加担し、大混乱に陥ったそうだ

 しかし、その異変も妖怪の賢者八雲(やくも)(ゆかり)率いる大妖怪や当時の博麗の巫女が結束し、異変を収めたらしい

 で、その時生き残ったのがレミリア様、師匠、小悪魔、美鈴。それと異変が起こってたことすら知らなかったフラン様

 この5人は元々異変に乗り気ではなく、本当の目的は移住だったために八雲 紫が提案したいくつかの条件を呑むことで幻想郷に住むことを許可したそうだ

 その条件の一つが異変を起こしてはならないというもの

 悪魔は契約を破れないから、異変は起こせないはずだけど......

 

レ「大丈夫よ。昨日の夜、八雲がその話をしに来たわ。そもそもこの話は八雲が持ち込んだのよ」

 

パ「八雲がいったい何故?」

 

レ「ほら、最近幻想郷の決闘方法が変わったじゃない?スペルカードルールってやつ。それを広める為にやって欲しいそうよ」

 

 【スペルカードルール】それはスペルカードと呼ばれる技を込めたカードを使った決闘方法のこと。

 幻想郷ではその決闘方法で戦わなければ八雲 紫や博麗の巫女から罰を受け、下手すれば幻想郷追放もありえるらしい

 内容としてはスペルカードと呼ばれる技のカードを用意し、それを使いルールに沿いながら美しさを競う戦いだ

 といってもまだ制定されたばかりで定着しておらず、特に長い時を生きた頭の硬い男の妖怪には「女子供の遊びなんかやるわけないだろ」と受け入れられてないらしい

 噂によれば、その一例が妖怪の山の大天狗共らしいが、今の私には関係ないね

 

パ「レミィのことだから考えなしに受けないわよね。何か考えでもあるの?」

 

レ「異変を起こしてくれたら契約内容の一部を破棄してくれるそうよ」

 

フ「その内容って?」

 

レ「“異変を起こしてはならない”“幻想郷の主要場所へ行ってはならない”といったものね」

 

パ「なるほど、そういうことね」

 

榛「え? どういうことですか?」

 

パ「いえ、なんでもないわ」

 

咲「しかし、本当にそれだけでしょうか......」

 

レ「咲夜、それはどういうことか言ってもらえるかしら」

 

咲「八雲のことです。他に何か企んでいるかもしれませんわ」

 

パ「そうね。企んでてもおかしくないわね」

 

榛「そうですか?他には新しく代替わりした博麗の巫女さんの育成とかだと思いますが......」

 

 つい最近読んだ新聞の号外に載せてあったことと、原作知識から推測したことを言うと、皆さんは目を見開いた

 

レ「よく知ってたわね。咲夜も知ってたのかしら?」

 

咲「すみません。存じませんでした」

 

 咲夜さん、その記事が書かれた新聞を渡したら窓拭きに使ってましたもんね

 

小「ということは出来レースですか?」

 

レ「まぁ負けろなんて言われてないけどそうなんでしょうね」

 

フ「それでお姉様はどんな異変をするの?」

 

レ「それを今から決めるのよ。ということで何か案はないかしら?」

 

 途端に皆さんは黙った

 

 

 

 

 

 

 ということもなく......

 

フ「太陽を壊しちゃうのはどう?」

 

美「流石にダメですよ!?」

 

榛「太陽系の崩壊ですね......」

 

 ボケとツッコミの嵐が始まった

 

咲「雨の代わりにナイフを降らせるのは......」

 

レ「貴女なかなか残酷なこと言うわね!?」

 

 咲夜さんが怖いです......

 

 他にも様々な案が飛び交ったが、どれも決定にはいたらず、時間ばかりが消費されていった

 誰もがこのままでは終わらないと思った時、その思いを救ったものがいた

 

美「紅い霧を出すのはどうでしょう?」

 

レ「紅い霧、ねぇ。ちなみにそう思った理由を教えてくれないかしら?」

 

美「霧を出せば日光を遮れます。そうすればお嬢様達は外に出ることができると思ったからです。色をつける理由は普通の霧だと思わせないためです。紅いのはお嬢様方の“スカーレット”の名に沿って」

 

レ「なるほど、なかなかいい案ね。他に案や反対意見はないかしら?」

 

 

「「「「「「......」」」」」」

 

 

レ「...ないようね。なら美鈴の案にしましょうか。異変は紅い霧を出すことにするわ。それじゃあ解散。皆、長く付き合わせて悪かったわね」

 

パ「別にいいわよ。いつものことだから」

 

レ「ちょっとパチェ?それはどういう意味よ」

 

パ「なんでもないわ。それじゃ小悪魔、行くわよ」

 

小「は、はい!分かりました!」

 

美「さて、お仕事お仕事♪」

 

フ「榛奈、今日は何をする?」

 

榛「そうですね...... 今日は道具を使ってみましょうか」

 

フ「うん!」

 

 師匠とコアは大図書館へ、美鈴は門番の仕事、咲夜さんはティーセットの後片付け、私とフラン様は今日やることについて話していると

 

レ「フラン、ちょっといいかしら?」

 

フ「なぁに?お姉様」

 

レ「今回の異変、フランは参加しちゃダメよ」

 

フ「え!?どうして!?」

 

レ「貴女まだ力を制御出来ていないと聞いているわよ。」

 

フ「ど、どうしてそれを......?」

 

レ「榛奈からね」

 

榛「すみませんフラン様。報告しろと言われたものですから......」

 

 実はフラン様は1年程前まで地下に籠っていた。

 いや、正確には閉じこめられたという方が正しい

 理由はフラン様のもつ能力【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】のせいだ

 人や物には必ず急所があるのだが、この能力はそれを“目”として視認することが出来、フラン様はそれを手に移して壊すことが出来るのだ

 その能力のせいか破壊衝動(狂気)が人一倍多く、それが原因でレミリア様によって地下室へ閉じ込められていたのだ

 ただ、1年程前のある日、私はフラン様と出会い、その時ちょっとしたことがきっかけでフラン様が暴走してしまった。それを当時、まだ発現したばかりの私の能力【ありとあらゆるものを守る程度の能力】を使い、理性と狂気を分け、理性に能力を使い狂気を静めることで、騒動は収まったのだ

 それがきっかけで私はフラン様の従者となったのだが、それはまた別の機会に

 そして、閉じ込められていた時、紅魔館の皆さんは顔を出していたそうだけど、力加減の仕方を教えてもらわずにいたため、私と出会った当時は加減の仕方を知らず、様々なものを壊してしまっていた。そのことを悲しんだフラン様は加減ができるようになるために特訓を重ね、今ではかなり加減が出来るようになっている。それは私も間近で見ていたので分かっている。しかし、それを弾幕ごっこに向けるにはまだ力が強すぎる。レミリア様はその事を言っているのだろう

 

 

レ「大丈夫。弾幕ごっこだけなら異変後でも十分出来るわ。なんだったら私が相手にお願いしてあげる。だから今回は我慢してちょうだい」

 

フ「お姉様がそこまで言うなら...... でも制御できるようになったら外で遊んでもいいよね?」

 

レ「......えぇ。力を制御できるようになったら外に出てもいいわ」

 

フ「やったー!ありがとう!お姉様!」

 

レ「但し、出来ないうちは外に出ちゃダメよ」

 

フ「はーい。榛奈、いこ!」

 

榛「分かりました。それではレミリア様、失礼します」

 

レ「えぇ」

 

 

 

 

 それからはあっという間だった

 レミリア様は師匠と霧を広める為の魔法作り、小悪魔はそれを手伝い、咲夜さんは美鈴と仕事の合間に弾幕ごっこの特訓、フラン様は力の制御の特訓をした

 そして私はというと――――

 

 

 

 

 

 

 

榛「ぅにゃああぁぁ!スペルカードが出来ないぃぃ」

 

 スペルカードを作れずにいた

 いや、正確にはスペルカード自体は出来てる

 ただ、名前や弾幕の形が他作品の要素が多い

 東方関連のものもあるが、原曲やアレンジ楽曲をテーマにしたものばかりだ

 そうだ、今の二つ名は『動かない大図書館の弟子』だけど今度から『音楽好きの魔法使い』にしようかな......って話がズレた

 一応これらを幻想郷で使う分には問題ないと思うが、なんとなく味気ない......

 まぁ能力も攻撃どころか反対の防御系だし、極力弾幕ごっこはやめておこう。遊びでやるのは別だけど

 それに強者の弾幕、いやそれ以外の弾幕もだけど見てて綺麗だからね

 よし、その方針でいこう




ここまで読んでくださりありがとうございます。
前書きにも書いた通り、初めて書いた小説なので感想や誤字報告など、様々な反応をしてくださると嬉しいです
ダメだしもOKです
それを糧にこれからも不定期ですが書いていこうと思います

最後に主人公、榛奈のプロフィールです

霧雨(きりさめ)榛奈(はるな)
 幻想郷、紅魔館所属
【種族】人間
【職業】魔法使いの弟子、従者
 妖怪の住まう紅魔館で魔法使い『パチュリー・ノーレッジ』の弟子、吸血鬼『フランドール・スカーレット』の従者として暮らしている
【能力】『ありとあらゆるものを守る程度の能力』
 使う力は主に魔力。稀に霊力
 主に使う魔法は属性魔法、召喚魔法
 得意魔法は生活に役立つ魔法
【交友関係】『紅魔館、人里の一部の人、??』
 元は人里で暮らしていたため、一部の人間と知り合いだが、数年間会っていない
 紅魔館に住んでいるので紅魔館の住人とそれぞれ関係がある
【容姿】
 D.C.III 森園立夏がモデル
 金髪を腰の少し上くらいまで伸ばしていて、髪型は左右をそれぞれ白色のリボンで結んだツーサイドアップ。青眼。身長約150cm

それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第0.9話『巫女さんがまだ来ないです......』

前書き~

はい!異変開始から少し経ってますが、原作開始してないです!
次は原作突入かなぁと思ってたんですが、思いつくとどうしても書きたくなってしまって

それでは今回もゆっくりしていってね!


榛奈side

 

 

 皆さんこんにちは!

 現在、お昼すぎの図書館に来ております!

 ついに、原作での記念すべき初の異変が起こり、原作開始を今か今かと待ち続けて早十数日。未だに巫女さんたちは来ておりません!

 いや早く来てくださいよ!レミリア様が退屈してるんですから!

 ま、それはともかく、ここで問題!

 私には悩んでいることがあります

 それは一体なんでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正解は......

 

榛「やっぱり思い浮かばないぃ......」

 

 スペカの名前でした〜

 やっぱりですね、あった方がいざって時に役に立つじゃないですか

 そう思って空いた時間は図書館で調べてたんですが......

 何せ私......

 前世はただのオタクでしたから(笑)

 しかも戦闘シーンとかのないやつ

 四コマが特に好きでしたね

 だからいざ必殺技の名前ってなると想像出来なくて......

 調べ方もよく分からず......

 パチュリー師匠に聞こうにもあの魔女凄いスペカ作っちゃってますし

 コアや咲夜さんは自分の受け持つ場所で忙しいし、美鈴は中国だし、レミリア様に相談するのは...... ネーミングセンスがねぇ...... そしてフラン様は加減の練習で忙しい......

 

 あれ?どうして私は暇なんだ?

 一応レミリア様と師匠からは「異変解決者が図書館に来たら対峙するように」と言われてて、私も参加してることになってて、だから弾幕ごっこの特訓をしなきゃいけなくて......

 師匠はたまに小悪魔相手にやってるし、レミリア様はフラン様や咲夜さん達とやってて、美鈴は咲夜さんとやってて......

 あれ?私は?

 異変発案前の、スペルカードルールが出来たと聞いてからはよく湖にいる顔見知りの妖精達や妖怪と遊んだり、美鈴や咲夜さんやコアと戦ったりするときに弾幕ごっこをしてたけどスペカを考え始めてからはやってないな

 あれ?てことは......

 

榛「私って弾幕ごっこ弱いまま!?」

 

 弾幕ごっこしてたときも妖精や妖怪には勝ててたけど、コアと美鈴は五分五分、咲夜さんには運がよかった時にしか勝てなかったし......

 ってことは......

 私凄く弱いじゃないですかぁ......

 

榛「うにゃぁ......」

 

パ「何奇声発してるのよ」

 

榛「あ、師匠......」

 

パ「いきなり大声が聞こえたから来たのよ」

 

榛「すいません......」

 

 そこまで大きな声だったかな?

 やっぱり図書館だから響きやすいのかもなぁ......

 

レ「私もいるわよ」

 

榛「いたんですね」

 

レ「居ちゃ悪いかしら?」

 

榛「一応今は異変の最中ですし、いつ解決者がくるか分かりませんから、こんなところで呑気にしてていいのか悪いのか......」

 

レ「どうせまだ来ないわよ。運命がそう語ってるわ」

 

榛「運命様様ですね」

 

 そういえば言ってなかったですね

 レミリア様の能力は【運命を操る程度の能力】ってのがあるんです

 それで可能性のある未来、運命が見れたりするんですが、今回の場合は巫女達がいつくるのか運命で見たようですね

 

パ「レミィの運命(笑)はいいとして、何か悩んでたみたいだけどどうしたの?」

 

レ「ちょ!?(笑)って!?」

 

榛「実は......」

 

レ「無視!?主を無視!?」

 

パ「レミィうるさい黙って」

 

レ「はい......」

 

 

 

パ「それでどうかしたの?」

 

榛「実は私、弾幕ごっこじゃ凄く弱いんじゃないかと思いまして」

 

レ「フランの暴走を耐えた癖によく言うわね」

 

榛「あの時は自身の能力のおかげでしたから。それにこの能力は弾幕ごっこでは使いたくないですし...... 弾幕ごっこ自体得意ではないので」

 

 弾幕から自分を守ってたら勝負にならないからね

 

レ「なるほどねぇ。たまに貴女がやってるのを見てたけど、確かに貴女は美鈴と同じで弾幕ごっこは苦手みたいね」

 

榛「えっ!?見てたんですか!?」

 

レ「外でお茶してるときにね」

 

 あ、あの思わずテンションがハイになってしまっている時の姿を見られただと......!?

 ...拝啓フラン様、私はそろそろ紅魔館からいなくなりそうです......

 

パ「それはともかく、弾幕ごっこで悩んでたのね」

 

榛「はい......」

 

レ「その割にここ最近はずっと図書館にこもってたみたいだけど?」

 

榛「スペカの名前を考えてまして」

 

レ「最低1枚で出来るんだから特訓してればよかったじゃない。1枚はあったでしょう?」

 

 そりゃあ、ありましたよ?

 でなきゃあの娘達と弾幕ごっこなんて出来ませんから

 でもね?それはシンプルな弾幕なんですよ。だから異変の時くらいはもっとカッコイイとか可愛いとかが欲しいじゃないですか

 

榛「納得のいくスペカを考えてから特訓しようと思ってたら異変当日に......」

 

パ「納得って...... 何が納得いかなかったのよ」

 

榛「名前」

 

レ・パ「「え?」」

 

榛「名前が納得いかなかったんです」

 

 だって半分パクリですよ?

 確かに魔理沙は幽香の光線パクってたけど私の場合名前だからなぁ

 

パ「名前って......」

 

レ「スペカって白紙のカードを持って弾幕を想像して、その形で名前が思い浮かぶものじゃないの?」

 

榛「私の場合、名前から入っていったんです」

 

レ「それはまた変な風に入っていったのね」

 

榛「名前から想像してって感じにしてたら色々と出来てました」

 

 ほとんど東方の原曲やアレンジを名前にしてますからね

 それにあった弾幕を考えればいいんですよ

 

パ「それなのに納得いかないの?」

 

榛「名前自体は音楽の曲名などを使ってやったので」

 

レ「自分で考えたスペカの名前じゃないから......と?」

 

榛「そゆことです」

 

パ「ところで、どんなのがあったのかしら?」

 

榛「えっと...... 確かここに」

 

 ポケットを探る

 一応普段持ち歩いてはいるからすぐに出てくる...... ってあれ?

 

榛「あ、あれ?え?どこだ?」

 

パ「ちょっと?」

 

榛「だ、大丈夫です、大丈夫......」

 

 いつも上着のポケットの中に入れてたし、あるはずだけど......

 

レ「もしかして無くした?」

 

榛「服に入れてたはずなんですが......ってあったあった!」

 

 なんだスカートのポケットに入ってたのか

 そういえば昨日はここに入れてたな

 

レ「もう、焦らせないでよ」

 

榛「すいません」

 

 謝りつつ、私は自分のスペカを机に並べる

 といってもまだ少なく、曲名を使ったスペルも紅魔郷しかない

 さすがにまだ妖々夢はやめとこうと思ってね

 

レ「なになに、【魔符】『ラクトガール ~ 少女密室』、【紅符】『亡き王女の為のセプテット』、【狂符】『U.N.オーエンは彼女なのか』、他にもあるわね」

 

パ「いいんじゃないかしら」

 

レ「そうね、結構いいと思うわよ?」

 

榛「そうなんですかねぇ」

 

レ「とにかく戦えればいいのよ。っと、忘れてたけど今日、巫女達が来るわよ」

 

パ「達ってことは巫女以外にも来るのかしら?」

 

レ「元々それを伝えるために此処へ来たのよ。どっかの誰かさんの大声のせいで忘れてたけど」

 

榛「うぅ......すみません」

 

パ「あんまり素直に受け取らないの」

 

榛「んにゃ......」

 

 師匠が私の頭を本で軽く叩く

 痛くはないが、思わず変な声が出てしまった

 

レ「ふふっ」

 

 それをレミリア様に笑われた......

 でもレミリア様の笑顔は可愛いから許す

 それにしても巫女と一緒に来るのってやっぱり......

 

パ「それでどんなのが来るの?」

 

レ「あら、気になるの?」

 

パ「わざわざ言いに来たってことは此方(図書館)に来るんでしょ?一応聞いといて損はないじゃない」

 

レ「それもそうね。じゃあ特徴を言っておくわね」

 

 あぁもしかして......

 

レ「特徴は金髪で目は金色、白黒の童話の魔女の様な格好をしてるわ。なんとなく榛奈に似た感じのがあるわね」

 

 あぁやっぱり......

 主に「だぜ」口調が特徴の原作主人公ですか

 やっぱり来ますよねぇ

 

パ「榛奈に似てるの?」

 

レ「なんとなく雰囲気がね」

 

パ「そう...... って榛奈?」

 

榛「...はっ!な、なんですか......?」

 

パ「さっきから固まってたけどどうしたの?」

 

榛「いえいえいえ、何でもないですです」

 

パ「......?」

 

 あはは......

 いやはや分かってたとはいえ改めて聞かされると緊張してきますね

 実は私、男勝りな主人公さんとある関係がありましてね

 しかも昔、色々ありまして、それから会ってないんです

 まぁその色々がなかったら今私はここにいませんからいいんですが、あったらあったで色々とね

 やっぱり身構えた方がいいですよね......

 

 

 

 隠れてたいなぁ




後書き~

ここまで読んでくださりありがとうございます!
タグでもありましたが、私は低脳で、スペカの名前が思いつきません
そこで、榛奈(主人公)のスペカは原曲や東方アレンジ楽曲の名前になりましたが、どのような弾幕かは書かれません(多分)
強いていうならその曲のボス(例:おてんば恋娘=チルノetc……)の弾幕が交わった形ですかね
それと、主人公達は原作では夜に出発していましたが、本作では昼に出発してます

それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1話『異変ね、めんどくさいわ』

前書き~

どうも!
これを本編を書き終えたのは夜中の2時頃で半分徹夜テンションなほのりんです!
不定期更新なのに2時まで書いてたのはただ単に眠くなかったから
でも書き始めたら眠くなっても区切りがつくまで書きたいと思い、今日の学校大丈夫かなと心配してたりします

今回は本編には主人公の出番がありません!
霊夢sideでやっていきます!
それではゆっくりしていってね!


霊夢side

 

[博麗神社]

 

 

 ここ最近、幻想郷の住人や此処にやってくる騒がしいやつは異変だなんだと騒いでいるが、私は今日もいつも通りに過ごすのだと思っていた

 朝日の出と共に起きて、境内の掃除をして、洗濯物を洗って干して、日が昇っていくにつれて蒸し暑くなっていく縁側で、お茶を飲みながらボーっとして、日が真上にある時に昼食を食べた。後はまたお茶を飲みながらボーっとして、夕方になれば夕食を摂り、日が沈めば寝る

 今日もそんな1日だと思っていたのに......

 

霊「ついにここまで来ちゃったか......」

 

 お茶を汲み、台所から戻ってきたら辺りが霧のせいで紅く染まっている。明らかな異変だ

 といっても今月の初め頃からこの異変は起きていた

 それは騒がしいやつが言っていたことや幻想郷を一望出来るこの神社から見える景色で分かっていた

 しかし、すぐに解決する気にはなれなかった

 理由?そんなもん面倒臭いからに決まってるでしょ?

 で、そのまま放置してたんだけど、ついに幻想郷の最東端に位置する博麗神社まで辿り着いちゃったか......

 こうなったら巫女である私も動かないといけないのだが......

 

霊「面倒臭いし、まだいいか」

 

?「いやいやいや、よくないぜ?霊夢」

 

霊「あら魔理沙、どうかしたの?」

 

 誰かが空を飛んでやってきた

 どうやら騒がしいやつが来たようだ

 まぁ騒がしいけど嫌じゃないのよね

 彼女の名前は『霧雨(きりさめ) 魔理沙(まりさ)

 【普通の魔法使い】を自称していて【魔法の森】に住んでいる一応私の親友だ

 事あるごとに(何もなくても)うちの神社に来るけど今回もなのかしらね

 

魔「「どうかしたの?」じゃないぜ霊夢。お前が異変を放置してるからここまで霧がきちゃったじゃないか」

 

霊「そうねー」

 

魔「ってことで霊夢!早く異変解決に行こうぜ!」

 

霊「嫌よ、面倒臭い」

 

魔「おいおい、面倒臭いってな...... 人里の人間や作物にも影響が出てるんだぜ?このままじゃ外の世界にも影響が出るぞ?」

 

霊「そうは言ってもねぇ......」

 

魔「それに異変解決は巫女の仕事だぜ!」

 

 確かに魔理沙の言った通り、私は【博麗の巫女】『博麗(はくれい) 霊夢(れいむ)

 ここ博麗神社の巫女で、幻想郷で唯一の巫女だ

 だから人里からくる妖怪退治に関わる依頼を受けていて、異変解決もまた、巫女である私の仕事だが......

 

霊「嫌よ、面倒臭いじゃない」

 

魔「面倒臭いって......」

 

 面倒臭いものは面倒臭いのだ

 あ、いいこと思いついた

 

霊「そうだ。アンタが代わりに解決してきなさいよ」

 

魔「はぁ!?」

 

霊「どうせ解決しに行くつもりだったんでしょ?だったらいいじゃない」

 

 そう言って魔理沙を見ると身体を震わせて

 

魔「だったらお望み通り私が解決してきてやる!お前はずっとそこでぐーたらしてろ!」

 

 そう言い魔理沙は愛用の箒に乗り飛び去っていった

 声に怒気が入ってたし、怒ったのかもしれないわね

 にしてもこの霧、妖力が含まれてるわよね......

 これだけの量の霧を出せるのはそんじょそこらの妖怪じゃ出来ない。ってことは大妖怪並の力を持つ妖怪かもしれないわ......

 ...魔理沙だけだと不安ね。私も行こうかしら

 そう思い私は急いでお茶を飲み干すと、お札と御幣を持ち、魔理沙の飛び立っていった方向へ向けて身体を浮かせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

霊「魔理沙ー」

 

 幸いまだ時間があまり経っていなかったため魔理沙にすぐ追いつくことが出来た

 

魔「ん?...霊夢か。縁側でグータラしてるんじゃなかったのか?」

 

霊「それはアンタが言ったんでしょう。一応私は博麗の巫女だから異変は解決しなきゃならないんだし」

 

魔「さっきまで面倒臭がってたくせに」

 

霊「それに魔理沙だけだと心配になったからね」

 

魔「私はそこまで弱くないぜ~?」

 

霊「少なくとも何ヶ月間かあんなに落ち込んでたやつの言う台詞じゃないわね」

 

魔「う、うるせぇ!あの時はしょうがなかっただろ!それにアイツが居なくなったのは私にとってそれぐらいショックなことだったんだから......」

 

霊「まぁ、気持ちが分からなくもないわね」

 

 魔理沙は10歳の頃、父親に勘当されて人里を出て魔法使いになったという過去があると聞いた

 そして里にいた頃、彼女には義妹がいたらしいが今は行方不明だそうだ

 2、3年ほど前、魔理沙が魔法使いになってから初めて里に行ってみた時には既に行方不明になっていて、そのことを知っている者に聞くと、魔理沙が人里を出てすぐに行方が分からなくなったそうで、もしかしたら魔理沙を探しに里を出て妖怪に食われたのではと噂されている。噂されていると言っても人里じゃ里の人間が外に出て妖怪に食われるのはよくある話なのですぐに噂されなくなった

 そして、義理とはいえ妹が行方不明、もしかしたら妖怪に食われて既に死んでいるかもしれないと知った魔理沙は数ヶ月間ずっと泣き、悲しみ、悔やみ続けた。何せ妹はもしかしたら魔理沙を探すために安全な人里を出たのかもしれないからだ

 そんな魔理沙を見た私はいくつか言葉を投げかけてやった。何の言葉をかけたか忘れてしまったけれど、その言葉をかけた次の日から魔理沙は明るくなっていった

 それでもまだ悲しみはあるんだろうけど、いつまでも落ち込んでるよりはいい

 そう思いながら魔理沙を見てたら

 

魔「な、なんだよ!そんな優しい目で見るな!///」

 

霊「あら、そんな目をしてたかしら?」

 

魔「そんな目をしてたぜ、まったく......」

 

霊「それより早く行きましょ。アンタの言ってたように外の世界に影響が出るかもしれないわ」

 

魔「っく、急にやる気出しやがって。んで、どこに異変の犯人がいるんだ?」

 

霊「そんなの知らないわよ。私の勘じゃあっちの方に行けばいると思うわよ」

 

 そう言いながら私はその方向はを指差す

 

魔「あっちは霧の湖だったな。霊夢の勘はよく当たるし行ってみるか」

 

 魔理沙の言った通り、私の勘はよく当たる

 それこそ一種の未来予知とも言えるくらい

 そうして私達は勘の指す方向、霧の湖へと向かった




後書き~

ここまで読んでくださりありがとうございます!
ようやく原作主人公達の出番です
ちなみに二人はお互い親友同士だと思っているし、相手が親友だと思ってくれているのも分かってます


ちなみに会話風後書きを活動報告に書いてありますので、是非見てくださいね!
私(ほのりん)や榛奈が、世間話や設定などを話してますから
後、稀にゲストを招く(予定)

では、次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話『敵に情けを掛けるほど私は甘くないわ』

前書き~

1日空きましたが元々不定期なので気にしない!
本当は学校行事があって書けませんでした
本当は今日も投稿するつもりはなかったんですけどね
初めての感想を頂いて、テンションが普通より下だったのに一気に上がって、自分チョロイなって思いました

今回は常闇の妖怪が出ますよー
後、今回も霊夢sideです
私的には魔理沙sideは書きにくいですね
次回は書きたい

では、今回もゆっくりしていってね!


霊夢side

 

 

 あれから飛んでいると森の方に出た

 確かこの先に霧の湖があるんだったわね

 そういえば異変で興奮してるのか妖精達が襲ってきたわ。それも大量に

 とは言っても所詮は妖精

 私の近くを浮いている博麗に代々伝わる秘具【陰陽玉】が勝手に霊力弾を出して1発当てればすぐやられていく

 中には数発当てなければいけないのもいたが、気に止めるほどでもない

 魔理沙の方も自分で魔力弾を打っているが、妖精の方向を見て打っているだけ、しかも数発当てないと駄目な妖精も1発でやられていく

 私は戦いにおいてはバランスタイプだが、魔理沙はスピード、パワータイプだ

 しかも魔理沙のスピードは幻想郷じゃ一二を争うほど速い

 パワーについては本人が「弾幕はパワーだぜ!」と言っている通り、1発1発が強い

 しかし、弾幕ごっこは当たらなければ意味はなく、その辺はスピードで補っているようだ

 

魔「それにしてもこの霧はうっとおしいな」

 

霊「そうね。今はもう慣れたけど、見慣れてない時は目が痛かったわ」

 

魔「魔法の森なんかただでさえ1年中湿ってるのに、この霧のせいでせっかく干した洗濯物が乾くどころかビショビショで困ってたぜ......」

 

霊「あんたの好きなキノコにとってはいい事なんじゃない?」

 

魔「霧が変な妖力を纏ってるから魔法に使えそうにないキノコばかりが育つんだ。そんなんだったらいらないぜ」

 

霊「あっそ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔「それにしてもこうも霧で視界が悪いと変なやつが出てきそうだな」

 

?「変なやつって失礼なやつだなー」

 

魔「誰もお前のことを言ったわけじゃないぜ」

 

?「そーなのかー」

 

 魔理沙が独り言を言うと1人の幼い少女が現れた

 金髪ボブに全体的に黒い服、胸には赤いリボンをしてて、頭にも片方だけ赤いリボンをしている

 そして何故か両腕を左右垂直に広げているのはなんで?

 

魔「ところでなんでそんなに手を広げてるんだ?」

 

?「聖者は十字架に磔られましたって見える?」

 

魔「人類は十進法を採用しましたって風に見えるな」

 

霊「何馬鹿な会話してんだか」

 

 ...ん?よく見たらあの髪留め、リボンに見せかけた御札ね......

 御札が付いてるってことは何かを封印してあるのかしら?

 もし封印してあるのだとして、自分で取れたりするのかしら......

 って自分で取れるなら封印なんてされてるわけないわよね

 でも、後々面倒臭いことにならないためにも訊いておきましょうか

 

霊「ねぇ貴女」

 

?「ルーミアなのだー」

 

霊「じゃあルーミア、頭に着けてるリボンって封印の御札よね?」

 

ル「よくわかったのかー。なんでわかったのだー?」

 

霊「巫女だからよ」

 

ル「おー」

 

魔「なんか話についてけないぜ」

 

霊「その御札って自分で解けたりするのかしら?」

 

ル「私じゃ触ることも出来ないのだー。何かを封印しているのは分かるんだけどなー」

 

霊「それならいいわ」

 

 自分で触ることすらできないのなら心配ないわね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ル「ところで2人は食べていい人間なのかー?」

 

霊「食べれない人間よ」

 

魔「食べようとするなら逆に返り討ちに合わせるぜ」

 

ル「なら試してみるのだー」

 

 そう言ってルーミアはポケットからカードを取り出した

 

魔「弾幕ごっこか、ならわt霊「私がやるわ」っ、おい霊夢......」

 

霊「いいじゃない、次は譲ってあげるわよ」

 

魔「っく、絶対だぜ」

 

霊「分かったわ」

 

 

 

ル「カードと被弾は3回でいいかー?」

 

霊「えぇ、それでいいわよ」

 

ル「それじゃあ始めるのだー!」

 

霊「良薬口に苦しって知ってる?」

 

 

 

 

 

~少女達弾幕中~

 

 

 

 

 

ル「わは~......」

 

霊「良薬って言っても飲んでみなけりゃ分かんないけどね」

 

 結果はスペル被弾共に0で私の勝ち

 そこまで手応えのない相手だったわ

 そしてルーミアは気絶したのか真っ逆さまに森へ落下していった

 

魔「相変わらず容赦ないなぁ~」

 

霊「あら、先に行ってなかったのね」

 

魔「まぁ一応な」

 

霊「そう。それじゃ先を急ぎましょ。さっさと帰ってお茶が飲みたくなってきたわ」

 

魔「さっきはあんなにやる気だったのにな」

 

霊「さっきはさっきよ」

 

魔「はいはい」

 

 そうして私達は再び霧の湖へ向かって飛び始めた




後書き~

ここまで読んでくださりありがとうございます!
第0.5話~第1話までは三日連続で書きましたが昨日は前書きに書いた通り、学校行事があったんです
詳しくは活動報告にて、榛奈と会話してます!

それではまた次回!
ゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話『前が見えにくいぜ』

前書き~

書けました!
この話を書き始めた時は全然筆?が進まなかったのに1度寝たら頭がスッキリして一気に書けました!

今回は魔理沙sideとなっておりますが、心の声少なめで、セリフ多めです
後、氷精や氷精のお友達も出てきますよ
原作じゃ、2人の関係性は分からないですけどね
本作では2人は友達です

それでは皆さん!今回もゆっくりしていってね!


魔理沙side

 

[霧の湖]

 

 

 あの両手を広げた変な妖怪を霊夢が倒し、森を抜け、霧の湖に着いた

 ただ、この湖は名前の通り1年の内のほとんどが霧に包まれている為視界が悪い

 しかも今は紅い霧も出ている

 紅い霧だけでも見えずらかったのに湖の霧で更に見えずらくなった

 そこまでの高さを飛んでいるわけでもないのに下は見えないし、隣を飛んでる霊夢と少しでも離れたら、はぐれてしまうかもってほどだ

 それにしても

 

魔「この湖ってこんなに広かったか?」

 

霊「霧で視界が悪くてそう感じるだけよ」

 

?「ねえちょっと!!あんたたち!」

 

?2「ねぇ、やめようよぉ~......」

 

?「大ちゃんはそこで見てて!大丈夫!あたいはさいきょーだから!」

 

魔「なんか出てきたぜ?」

 

霊「妖精でしょ、気にする程でもないわ」

 

 目の前に全体的に青色で背中に氷の羽が生えた妖精と、緑色の髪に青色の服、背中に虫のような羽が生えた妖精が現れた

 

?「ここはあたいのナワバリなんだぞ!ここを通りたければあたいと勝負しろ!」

 

 そう言いながら青色の妖精はカードを取り出して......

 

?「【氷符】『アイシクルフォール』!」

 

魔「なっ!?いきなりかよ!」

 

霊「今度は魔理沙に譲るわね。弾幕が当たらないよう離れたとこで見てるわ」

 

魔「たっく、やってやるぜ!」

 

 

 

 

 

~少女達弾幕中~

 

 

 

 

 

?「うわっ」ピチュ-ン

 

魔「これで被弾3回目。私の勝ちだな」

 

?「ううぅ」

 

 

 

霊「お疲れ様、魔理沙」

 

魔「妖精相手だからそこまで疲れてないけどな」

 

 

 

大ちゃん?「チルノちゃん!大丈夫!?」

 

チルノ?「大ちゃん...... あたい負けちゃった......」

 

大ちゃん?「えっと... えっと...」

 

 どうやら緑の妖精はかける言葉が見つからないようだ

 しかたない、私が言ってやるか

 

魔「なぁ、そこの......えっと名前なんだ?」

 

チ「チルノだけど......」

 

魔「チルノ、お前の弾幕はそこらの妖精より強かったぜ。なぁ霊夢」

 

霊「そうね、妖精の割にスペルカードを持ってたとことか良かったんじゃないの?」

 

チ「あたいはさいきょーじゃなきゃ駄目なの!」

 

魔「何をそんなに最強にこだわるんだ?」

 

チ「いつかあの人間を倒すためよ!」

 

魔「人間?」

 

大ちゃん?「霧の湖には離れ小島があって、そこに建ってる紅い館に住んでる人間のことです」

 

魔「えっと、お前は?」

 

大「大妖精、皆からは大ちゃんと呼ばれてます。あなた方の名前は?」

 

魔「そういや言ってなかったな。私は魔理沙、普通の魔法使いだ。こっちの紅白は霊夢だぜ」

 

霊「その紅い館って向こうにあるのかしら?」

 

 霊夢はそう言いながら何処かを指さした

 

大「あ、はい。確かそっちの方向です」

 

魔「よく分かったな霊夢」

 

霊「勘よ」

 

魔「それでチルノはそいつに勝ちたいから最強になりたいのか?」

 

チ「そーゆーことよ!」

 

霊「ねぇ、どうせ話すなら向かいながら話なさい。それと大妖精、その館まで案内頼めるかしら」

 

大「はい、大丈夫ですよ」

 

魔「じゃあ行くか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

魔「それでその勝ちたい人間ってどんなやつなんだ?」

 

チ「魔理沙みたいなやつよ。服は白色だったけど」

 

魔「私みたいな?」

 

大「金髪でロングヘア、魔理沙さんの服と色違いのような服を着ていて、飛ぶ時は箒を使って飛んでるんです」

 

霊「ホントに似てるわね」

 

魔「もしかしたらそいつも魔法使いだったりするのかもな」

 

大「確か魔力を使ってましたので魔法使いだと思います。本人は魔法使いの弟子って言ってました」

 

魔「ふぅん。魔法使いの弟子か...... それでチルノ、どうしてそいつに勝ちたいんだぜ?」

 

チ「それは......」

 

魔「それは?」

 

チ「それは......!」

 

魔「それは......!?」

 

チ「あれ?なんでだっけ?」

 

魔「っておい!」

 

チ「とにかく勝ちたいのよ!前はよく遊んでたのに最近は全然見かけないし!弾幕ごっこで1度も勝てた事無いし!だから1度でいいから勝ちたいのよ!」

 

霊「妖精とよく遊ぶ人間、ね......」

 

魔「不思議な人間もいるもんだな」

 

大「お菓子もよく持ってきてくれるのでありがたいんですよ」

 

魔「ますます不思議なやつだぜ」

 

大「って着きましたよ」

 

魔「ん?ってうわっ......」

 

霊「紅いわね」

 

魔「霧のせいじゃないよな」

 

チ「あそこはいつもあんな色よ?」

 

霊「今は周りの霧で目が慣れてるけど、霧が出てない時に見たら目が痛くなりそうね」

 

魔「館の主は趣味悪いぜ」

 

霊「多分ここに異変の犯人がいるわね」

 

大「用があればあそこに門番がいますので一言声をかければ入れてくれると思います」

 

魔「いや、多分入れちゃくれないだろうな」

 

霊「私達はあいつらにとって敵として来たのよ」

 

大「敵、ですか?」

 

霊「このうっとおしい紅い霧を出してるのは多分あの館の主だからよ」

 

魔「私達はその霧を止めるために来たんだぜ」

 

霊「だから戦闘は免れないでしょうね。その証拠にさっきからずっとこっちを睨んでるわ」

 

大「そうですか......」

 

霊「それじゃ、私達はもう行くわね」

 

魔「2人が言ってた不思議なやつにも会いたいしな」

 

チ「それじゃあ魔理沙、アイツに会ったら言っておきなさい!今度はあたいが勝つって!」

 

魔「会えたらな」

 

大「お二人とも、頑張ってくださいね!」

 

霊「言われなくても分かってるわ」

 

魔「同じくだぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

チ「それじゃ、二人共またね!」

 

大「お二人とも、お元気で」

 

魔「おう!またな!」

 

霊「また会えたらね」

 

 そうして私達は館へ乗り込むためにあの門番のとこへ飛び始めた




後書き~

はい!後書きです!
今回はチルノと大妖精が出てきましたね
それと魔理沙sideです!
2人とよく遊んでいた人間の魔法使い、読者の方々なら分かりやすいですよね
答えは活動報告の後書きにて
私と榛奈でトークを繰り広げてますよ!
この小説の情報も書いてますので是非見てくださいね!

それでは皆さん!次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話『霧が紅ければ館も紅いって趣味悪いわね』

前書き~

今日は日曜日!
でも特に予定はないんですよね
強いていうなら家でゴロゴロ、ゲームです
さて、今回は紅魔館の門番さんが出ますよ
ただ、名前は出ません
最後まで「?」だったりします
それでも良い方は今回もゆっくりしていってね!


霊夢side

 

 

 私達は一応用心して、門から離れたところに着地した

 その間もあの門番はこちらを凝視していた

 それに加え、私達が着地してからは殺気を溢れ出している

 戦闘は免れそうにないわね

 

魔「さあて、あの門番、妖怪みたいだがどうするんだぜ?霊夢」

 

霊「とりあえず話して通じる相手ではないことは確かね」

 

魔「あの様子じゃあな」

 

霊「それに私達に話し合いは似合わないわ」

 

魔「だな。なら他のとこから入るか?」

 

霊「他って?」

 

魔「塀を越えるとか......」

 

 塀ねぇ......

 そう思い私は塀の上の方を見ると違和感を覚えた

 よく見ると、結界のようなものが館全体を囲うように張られている

 魔理沙の作戦は無理そうね

 

霊「それだけど、門以外から出入り出来ないみたいよ。館を覆うように結界が張ってあるわ」

 

魔「つまりあの門番を倒していかないと行けないわけか」

 

霊「もし戦うとしたら今回は私の番よ」

 

魔「2人でってのは無しなのか?」

 

霊「スペルカードを使うなら2人もいらないでしょ?」

 

魔「まぁな」

 

 それに、相手はスペルカードルールに基づいた戦いをするとは限らない

 出来れば私が戦ってる間に魔理沙には先に行っててほしいんだけどね

 でも門以外に入れる場所は無いように見える

 とにかく、考えてるだけじゃ埒が明かないわね

 

霊「とりあえず話しかけましょ」

 

魔「私は後ろで待ってるぜ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊「ねぇアンタ」

 

?「何?」

 

霊「ここに異変の犯人がいると思うのだけれど、通してもらえるかしら」

 

?「残念だけど、お嬢様の命令でここを通らせるわけにはいかないわ。通りたければ私を倒すことね」

 

霊「そう、ならこれで倒すことにするわ」

 

 私はそう言ってスペカを取り出した

 これで無理なら実力行使なんだけど......

 

?「スペルカードね、いいわよ」

 

霊「あら、意外に話が通じるのね」

 

 決闘法としてスペルカードルールが制定されてからまだ数年

 日が浅いことからこれに従う妖怪は少なく、スペルを使わない闘いも覚悟していたのだが、相手の妖怪は話が通じる妖怪のようだ

 

?「お嬢様からこの異変の最中、解決しに来た者をこれで追い返せと命令されたからね」

 

霊「そう。ルールだけど、スペカは5枚、被弾は3回でいいかしら?」

 

?「ええ、いいわよ」

 

霊「なら、遠慮無く倒すわね」

 

?「倒せるものならね」

 

 

 

 

 

~少女達弾幕中~

 

 

 

 

 

霊「【霊符】『夢想封印』!」

 

?「ガッ!?」ピチュ-ン

 

 結果としては私の勝ち

 しかし、被弾はしていないが、最後の最後でスペカを1枚使ってしまった

 私としてはスペカを使わずに勝ちたかったのだけれどね

 

魔「あ~あ、本当に霊夢は容赦ないぜ」

 

霊「それ、今日で二回目よ」

 

魔「それほどってことだぜ。あの門番、壁に打ち付けられて気絶してるじゃないか」

 

 そう言われて妖怪の方を見ると、魔理沙の言う通り壁に打ち付けられた衝撃で意識を失ったようで力なく倒れていた

 ま、でも私にそんなこと関係ないわね

 

霊「そんなの知らないわ。とにかく先に進みましょう」

 

魔「おう、行くか」

 

 そう言い、私達は門を開き、先に進んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 門を越えた先は意外にも整備されていて、中庭の花壇には色とりどりの花が植えてあった

 その光景に私は顔に出さず、魔理沙は顔に出しながら驚いていた

 

魔「意外にも整備されているんだな」

 

霊「そうね、こんなにデカイ家だからそこまで手が行き届いてないと思ってたのにね」

 

魔「門番は妖怪だったし、異変は妖怪が起こしてるだろうし、妖怪の住む館だと思ってたんだが......」

 

霊「妖怪は基本的、人間みたいに集団生活をしないと思ってたんだけどね」

 

 そう、妖怪は基本的、集団生活をしない

 一人一人単独でいることが多い

 例外としては幻想郷には妖怪の山という、その名の通り妖怪が住む山があって、そこに天狗や河童といった妖怪が同種族達と集団で生活している

 

魔「でも、チルノはここに魔法使いの弟子だが、人間も住んでるって言ってたぜ」

 

霊「そういえば言ってたわね。その人間もそうだけど、人間と住む妖怪なんて、結構変わり者なのね」

 

魔「霊夢も結構変わり者だけどな」

 

霊「変わり者ってなによ、私は私なんだからいいでしょ。それに、魔理沙だって相当変わり者だと思うわよ?」

 

魔「私は普通、普通の魔法使いだぜ!」

 

霊「はいはい」

 

 私達はそんな会話をしながら館の扉を開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 扉を開いた先は外の館の壁同様、そこらじゅう紅い玄関だった

 中央には階段があり、そこから2階へ行ける、そんな作り

 いうなればとにかく紅く、広い

 さて、どうやって異変の首謀者を見つけ出しましょうかね

 

魔「改めて思うが、このデカイ館の中から見つけるのって相当大変じゃないか?」

 

霊「ならここで二手に分かれましょうか。とりあえず私の勘はあっちに居ると思うからあっちに行ってみるわ」

 

 そう言いながら私は2階の扉を指さした

 

魔「あっちか、なら私は下の方に行ってみるぜ。何かお宝が見つかるかもしれんからな」

 

 魔理沙はそう言いながら私の指さした方向とは別の、正面の奥を指さした

 

霊「そう、なら後で会いましょう」

 

魔「分かったぜ。そんじゃ霊夢、また後でな」

 

霊「また後で」

 

 そう言い、私達はそれぞれの方向へ飛んでいった




後書き~

いや~ストーリー上しょうがないとはいえ、主人公なのになかなか出てきませんねぇ
それでも近々出てきますよ
次の第5話は霊夢sideと魔理沙sideの2つに分けていきます
活動報告には私と榛奈の会話風後書きを載せています
だんだんと後書きじゃなくなってきてる気がしますけどね
是非見てくださいね!

それでは、読んでくださりありがとうございます!
また次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話A『瞬間移動、いや時間操作系ね』

前書き~

あの後すぐ書いたらすぐ書けました
びっくりですね。短いですけど。片手間で読めます(多分)
今回は霊夢side、5,6面ボスは彼女に任せます

それでは今回もゆっくりしていってね!


霊夢side

 

 

 ここの門番を倒し、館の中へ入って魔理沙と分かれた後、私はこの館の長い廊下を飛んでいた

 本来なら廊下は飛んで行くものではなく、歩いて行くものだが、歩いていた方が後悔するほど長い

 それに早く解決して、お茶を飲みたいわ

 

 とにかく勘にしたがって飛んでいる

 途中、襲いかかってくる外にいた妖精とは違った妖精が弾幕を仕掛けてきた

 他の妖精とは違いメイド服を着ていて、さきほどの氷精のように少しは頭が使えるようで、弾幕の密度が上がっていたが、精神まではそうとはいかず、弾幕を当てればすぐ逃げていった

 しかし、妖精をここまで育て上げるなんてこれを育てたのは誰なのかしらね

 人間といい、妖精いい、ここの主は物好きなのかもね

 

?「まったく、全然掃除が進まないじゃないの」

 

 いきなり目の前に1人の女性が現れた

 本当にいきなり、まるで瞬間移動したかのように現れた、銀髪に青いメイド服を来た女性

 彼女も妖怪なのかしら......?

 

霊「あなたー......はここの主じゃなさそうね」

 

?「なんなの?お嬢様のお客様?」

 

霊(倒しに来たって言っても通してくれないわよね)

 

?「通さないわよ。お嬢様は滅多に人と会うことはないわ」

 

霊「軟禁されてるの?」

 

?「お嬢様は暗いとこが好きなのよ」

 

霊「暗くない貴女でもいいわ。ここら辺一帯に霧を出してるの貴女達でしょ?あれが迷惑なの。何が目的なの?」

 

?「日光が邪魔なの。冥い好きだし」

 

霊「私は好きじゃないわ。止めてくれる?」

 

?「それはお嬢様に言ってよ」

 

霊「じゃあ呼んできて」

 

?「って、お嬢様を危険な目に逢わせるわけないでしょ」

 

霊「ここで騒ぎを起こせば出てくるかしら」

 

?「でも貴女はお嬢様には会えない。それこそ時間を止めてでも時間稼ぎが出来るから」

 

 

 

 

 

~少女達弾幕中~

 

 

 

 

 

霊「【夢符】『封魔陣』!」

 

?「グッ......!」ピチュ-ン

 

霊「さて、貴女の被弾は3回、この勝負、私の勝ちよ」

 

?「お嬢様...... すみませんでした......」

 

 彼女はそういうと気絶してしまった

 せっかくここの主の居場所を教えてもらおうとしたのに、最後のは強すぎたかしら

 それにしても彼女は不思議な能力を使っていた。おそらく時間操作系

 最初は瞬間移動系かと思ったが、彼女の使うナイフがまるで初めからそこにいたかのように設置されていて、弾幕中の会話から時間だと言うことが分かった

 更に弾幕を擦るだけで擦り傷が負ったみたいだから人間なのかもね

 とにかく先を急ごう。彼女はここに置いといても大丈夫だろうし

 

 そうして私は再び勘を頼りに進みはじめた




後書き~

はい!短いね!
実はここのサイトで小説を投稿するとき、本文が1000文字以上ないといけないんですが、今回1042文字、うん!短いね!
次は長くなれるといいなぁ

それでは読んでくださりありがとうございます!
感想、評価、お気に入り登録など、どんどん来てください!待ってます!

では次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話B『死ぬまで借りてくだけだぜ!』

前書き~

花粉症だと思ってたら本当と書いてマジの風邪でした
友達は花粉症って言ってたのに......

さて、今回はBパート、魔理沙sideです
ただし、前半だけ。後半はようやく出番、榛奈sideです!
少し魔理沙が勝手になってる気がしますので魔理沙ファンは気をつけてくださいね

それでは、今回もゆっくりしていってね!


魔理沙side

 

 

 あの後、箒で飛びながら移動していたら妖精達が攻撃してきた

 だが、1発弾幕を当てれば逃げていく

 弾幕はパワーが大事だからな

 それにしても何で妖精達がいっぱいいるんだ?

 まさか、妖精を雇ったりしてるのだろうか

 妖精は頭が弱く、覚えたり考えたりすることが苦手とするのに......

 まぁ湖で会った大妖精の様なものなのかもな

 

 私は考え事をしながら飛んでいると奥の下の方に何かが見えた

 近づいていくと階段が下へ続いており、その奥には扉がある

 扉といっても他にたくさんあった扉より大きい

 私の身長を遥かに上回る大きさで、それが中の部屋の大きさを表してるかのようだ

 ここは突き当りのようだしもしかしたらここにお宝......じゃなかった、異変の犯人がいるかもしれない

 そう思い、私は箒を降りて、その大きい扉を勢いよく開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔「おぉ......すげぇ......!」

 

 扉を開けた先には沢山の本棚がところ狭しと並んでいる大図書館だった

 それも、どの本棚にも本がぎっしり詰まっている

 軽く見ただけだがほとんどの本が魔導書やその類の本

 まさに、知識を欲する魔法使いにとって聖地、生き甲斐が詰め込まれた場所

 そんな場所がこの幻想郷にあったなんてな

 後でこっそり借りて(盗んで)いくか

 

?「ちょっ!?誰ですか貴女は!」

 

 私が見て回ろうとしたとき、奥から誰かが駆けてきた

 紅い髪に黒い服。そして人外だと示す、頭と背中に生えている蝙蝠のような羽に槍みたいな尻尾

 まるで悪魔だな

 

魔「お前こそ誰だ?」

 

?「小悪魔ですけど...... って質問に答えてください!」

 

魔「私は普通の魔法使いだぜ」

 

小「で、その普通の魔法使いさんがここに何のようですか?見たところお客さんには見えませんが......」

 

魔「異変を解決しに来たんだぜ!で、ここに犯人はいるか?」

 

小「いませんよ。だから帰ってください!」

 

魔「いいじゃないか。ちょっと見て、良さそうなのがあったら借りていきたいんだぜ」

 

小「ここは貸出禁止です!出て行かないのなら無理矢理追い出します!」

 

 彼女はそう言いながらスペカを構えた

 

魔「いいぜ、やってやるぜ!」

 

 

 

 

 

~少女達弾幕中~

 

 

 

 

 

小「ぅきゅ~~」

 

 弾幕の密度はそこまでなかったが、粘り強く思わず強めの弾幕を放った

 それに小悪魔は当たり、気絶して落ちていってしまったが、まぁ大丈夫だろ。妖怪だし

 

魔「私の勝ちだな!本は借りてくぜ!」

 

?「持っていかないでー」

 

魔「ん?」

 

 私が貰っていく本を選ぼうとしたら、奥から声が聞こえた

 ここは薄暗いからよく見えないが、人の形をしている

 色は全体的に紫。ゆったりした服を着ている

 それだけでインドア派ということが分かるな

 

魔「誰だお前」

 

?「人に名を尋ねる時は自分からよ?」

 

魔「あぁ、そうだったな。私の名前は霧雨 魔理沙!普通の魔法使いだぜ!」

 

?「霧雨......?」

 

魔「で、お前の名前は?」

 

?「パチュリー・ノーレッジ。この図書館の司書よ」

 

魔「そうか、じゃあここの本を借りていってもいいか?」

 

パ「ここの本は貸出禁止なの」

 

魔「じゃあ無理矢理借りてくぜ!死ぬまでな!」

 

 そういいながら私は箒に乗り、浮かび上がりながらスペカを構えた

 

パ「スペルカードね、いいわよ」

 

 そう言い、相手もスペカを構えた

 

 

 

 

 

~少女達弾幕中~

 

 

 

 

 

パ「【土&金符】『エメラルドメガrっ!ゴホッゴホッ」

 

 パチュリーはスペル宣言中、咳き込んでしまった

 飛行もフラフラと落ちそうになったが、地面スレスレで止まった

 一瞬心配になったが、相手は妖怪だ。体調不良なんてあるわけないだろう。これは隙、チャンスだ

 そう思ってしまい、私は自分が今所持しているスペカで1番強いのを選んでしまった

 

魔「この隙を逃すほど、私は甘くないぜ!くらえ!【恋符】『マスター―――」

 

 このとき、私はパチュリーが喘息だということを知らなかったし、弾幕ごっこに夢中になっててパチュリーが苦しそうな顔をしてるのが見えなかった

 だからスペル宣言をしてしまったし、この後に起こる出来事を考えることが出来なかった

 

 だから、物陰からアイツが出てくるなんて思いもしなかったんだ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

榛奈side

 

 

 皆さんお久しぶりです、榛奈です

 私は今、物陰に隠れて我らが師匠パチュリー様と男勝りな主人公さんの弾幕ごっこを見ながら、さきほど主人公さんに負けて気絶したコアを手当しています

 といっても外傷は特になく、ただ気絶してるみたいですから、

 

 ちなみに何故、隠れているのかというと身体が勝手に動いたんです

 バタンッて勢いよく扉を開ける音が聞こえて逃げ足の早いネズミも驚きの速度で隠れました

 まぁそろそろ主人公さんが...... いえ、仮に魔理沙といいましょう

 魔理沙が来ると思ってたから何でしょうね

 そして魔理沙は来るや否やコアと弾幕ごっこをして勝ち、コアは最後の1発で気絶

 今は師匠が戦っているというわけです

 それにしても......

 

パ「【木&火符】『フォレストブレイズ』」

 

 

魔「【魔符】『スターダストレヴァリエ』!」

 

 美しいですねぇ......(現実逃避)

 

 いや現実逃避しないとやってけませんよ!?

 私今まで難易度でいうならEASY(イージー)NORMAL(ノーマル)ぐらいしかやってませんから!

 なのにあの人達はHARD(ハード)とかLUNATIC(ルナティック)とかでやってますからね!?

 私にとってはもう現実逃避して美しいと言うしかないですよ!

 あそこに私が居たらなんて考えられるか!

 考えた瞬間ピチュりますよ!?

 

 そんなことを考えてたら

 

小「んんぅ......」

 

榛「あ、起きた」

 

小「榛奈さん...... ここは......?」

 

榛「図書館の本棚の陰です。気絶する直前のこと覚えてますか?」

 

小「ええっと...... 確か白黒の女の子が来て、追い返そうとして、それでってそうだパチュリー様!!」

 

榛「ぅわ!声が大きいですよ......!」

 

小「す、すみません。それでパチュリー様は?」

 

榛「あれ」

 

 そう言いながら、私は光が恐ろしいほどに溢れ出している場所を指さした

 

小「ぅわぁ......」

 

榛「とりあえずまだゆっくりしてましょうか」

 

小「え......?でも大丈夫なんですか?別にパチュリー様が負けるとは思いませんが......」

 

榛「私達があの場に居ても師匠にとって足で纏にしかなりませんから。それに、もしもの時を考えてすぐ行動できるよう待機していればいいんです」

 

小「分かりました」

 

 私達がそんな会話をしていた時

 

 

パ「【木&金符】『エメラルドメガrっ!ゴホッゴホッ」

 

 

小「パチュリー様!」

 

 スペル宣言の最中、師匠が咳をし始めた

 師匠の持病である、喘息による発作だ

 咳をし始めたらなかなか治まらず、息がまともに出来なくなる病気

 いつもはコアか私が吸引薬を常備しているが、あの弾幕の中じゃまともに近づけない!

 しかも魔理沙はそのことに気づいていないようで......

 

魔「この隙を逃すほど、私は甘くないぜ!くらえ!【恋符】『マスター―――」

 

 まずい!

 そう思った瞬間、私は頭で理解するよりも早く口と身体が動いていた

 

榛「コア!私が盾になるからその間に師匠を!いいね!?」

 

小「は、はい!」

 

魔「―――スパーク』!!」

 

 間に合え......!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間には目の前が真っ黒ならぬ、真っ白になった




後書き~

はい!今回は力を入れに入れまくりましたよ~!(文章力?知らんな)
何せ前から考えてたネタですから、書きたかった話です
次回、第6話は魔理沙達の方を書きますね
霊夢は少しお休みです

さて、今回も読んでくださりありがとうございます!
感想、評価待ってます!
誤字報告があれば気軽にどうぞ!
では次回も、ゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話『会っちゃったなぁ』

前書き~

ついに再会、な話です
最初魔理沙side、後半榛奈sideの構成となっております
さて、お気づきの方も居られると思いますが、サブタイトルの文、基本的にはその話に出てくる登場人物の心情を言葉にしてます
今回は誰なんでしょうね?

それでは今回もゆっくりしていってね!


魔理沙side

 

 

魔「『―――スパーク』!!」

 

 私が愛用している、料理用の火力から山一つ消すことの出来る火力が出る【ミニ八卦炉】から虹色の魔力砲が飛び出し、辺りを白く染める

 この大きさなら物凄い速さで逃げるか、私のマスパを防げるくらいの結界等を張れないと無理だ

 大妖怪なら逃げれたり防御等できるがパチュリーはどうなんだろうな

 

 段々とミニ八卦炉から出る光線が縮んでいった

 スペカ宣言をする前にミニ八卦炉に詰めた私の魔力がなくなったということ、つまりスペルカードブレイクだ

 さて、パチュリーはどうなったかな

 

?「っつぅ...!間に合ったぁ......!」

 

魔「...え?」

 

 さきほどの光で目が眩んでいたため、目を慣らしている時、パチュリーのいた場所から声が聞こえた

 それもパチュリーでも、さきほどの小悪魔でもない、また別の声

 しかもどこか聞き覚えがある

 不思議と聞くと安心するようなその声

 

 目が慣れていき、その声の主の姿を視認した時、私はどの感情より驚きが上回った

 服装や身長は違うが、その髪、顔の形、あの声、そして青空の様な澄み切った瞳

 もしかして......

 

魔「榛奈......なのか......?」

 

榛?「あ、あはは......」

 

 彼女はパチュリーを守るかのように両手を左右に広げ仁王立ちしながら私を見て苦笑いをした

 

 

 

 

 

 

魔「え...?どうしてこんなところに......?」

 

榛?「えっと......じ、人生色々あるよね!」

 

魔「は......?」

 

 榛奈?の答えにどういう意味だと聞こうとした時

 

パ「ゴホッゴホッ! ヒューヒュー......」

 

小「パチュリー様!早くこれを!」

 

 小悪魔がパチュリーの口に何かをつける

 あれは、もしかして薬か?

 え?どういうことだ?

 あれは隙じゃなかったのか?

 

魔「あれは...?」

 

 私は3人の下へ近づき、訊いてみる

 

榛?「あれは吸引薬。喘息の症状を治める薬だよ」

 

魔「喘息......?」

 

榛?「咳をし始めたらなかなか治まらず、呼吸困難になる病気」

 

魔「え......?じゃあ私はパチュリーに追い打ちをかけてたのか?」

 

 心の中に罪悪感が湧いてきた

 あれは隙じゃなく病気で、本気で苦しんでたのに追い打ちをかけてしまった

 例え相手が人外だろうと罪悪感が沸くものは湧く

 そう落ち込んでいると榛奈?が

 

榛?「大丈夫、攻撃は師匠に当たってないよ」

 

魔「え?どうしてだ?あれは並大抵の防御じゃ防げないんだぜ......?」

 

榛?「私、防御だけは大妖怪以上だからね」

 

魔「は......?」

 

 大妖怪以上って......

 

魔「あ~、ちょっと待て。頭が混乱してきたぜ」

 

榛?「あはは...... 驚きの連続だったからね」

 

 とりあえず状況把握をしよう

 

魔「えっと、まず、パチュリーは喘息で弾幕ごっこ中に発作が起きてしまった、でいいのか?」

 

榛?「そうだよ」

 

魔「それを私は隙だと思い、マスパを打ってしまった」

 

榛?「うん」

 

魔「それをお前が防いだと......」

 

榛?「そゆこと」

 

 状況は把握した

 次はこいつがあいつかってことだが......

 

魔「それで、お前は榛奈なのか...?」

 

榛?「う、うん、まぁ、そうだよ...... 魔理沙姉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

榛奈side

 

 

 ついに魔理沙”(ねえ)”と対面してしまった

 私が彼女を呼ぶ時、姉とつく理由は彼女が私の姉だから

 かといって血は繋がってない、義理の姉妹

 私が養女で魔理沙姉が養親の実娘

 でも両親は魔理沙姉も私も可愛がってくれたし、魔理沙姉自身もまた私を妹として見てくれていた

 ......詳しくはまた別の機会に話そう

 

 簡単に言えば10歳の頃、魔理沙姉と父親が喧嘩して、魔理沙姉が人里を出て行ってしまった

 その頃には私は東方知識や前世を少しだけ思い出していたから別に心配はしていなかった

 でも、いやだからこそ、人里を出て修行しようとしたのだが、途中で空腹で倒れて、散歩に来ていた美鈴に助けられた

 それ以降魔理沙姉とは会っていなかった

 人里にだって行っていない。だから今頃死んだと思われていてもおかしくない

 だから、もし魔理沙姉が人里で私のことを聞いたら、きっと自分を追いかけていったと勘違いするかもしれない。そして悔やむかもしれない。そして、私を見たら怒るかもしれない。もしかしたら悲しむかもしれない

 全て私の「もしも」だけど、無い可能性じゃない

 だから会いたくなかった

 いや、別に会いたくなかった訳じゃない

 むしろ会いたかった

 ただ、会って何を話せばいいのか、わからなかっただけ

 だから会いづらかった

 

 

 

 

 結局、私は昔と変わらず臆病なんだな




後書き~

はい!魔理沙と榛奈。2人の再開が今回の話でした!
次回から過去編となります
過去編は出来るだけ早めに終わらして本編を再開しようとは思ってますので多分大丈夫です(今のところ3話)

それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去話1『私が幻想入りしたばかりの頃』

前書き~

☆祝☆色がつきました!感想と同じくらい嬉しいものですね!この喜びを共有したくて出張中の父にLINEしました!意味は分かってなかったですけどね(笑)

後、先に言っておきます、今回シリアスです
苦手な方はバックしてください。そのうち後ろにぶつかります
ただ、あんまりシリアスが長続きしないと思います

今回はサビタイトル通り榛奈が幻想入りしたばかりの頃の出来事を書きました
これが案外長くなってしまいそうでして、とりあえず分けることにしました
一応魔理沙との出会いを書きますので読んで下さると理解が早くなるかもしれません

それでは今回もゆっくりしていってね!


 これは、霧雨 榛奈が幼かった頃、昔の彼女から今の彼女へと変えてくれた家族との出会いを書いた物語だ

 

 

 

 彼女は現代から何らかの理由で幻想入りした幼い少女だった

 幻想入りしたばかりの頃は前世どころか東方知識でさえなく、後に気づく自身の魔力にも気づいておらず、あることを除いては何の力も持たない人間だった

 だから彼女は今いる場所が幻想郷で、妖怪や神といった幻想の存在がいるなんて思いもしなかった

 

 その日、まだ外の世界にいた彼女が外出していた時、彼女の周りの風景がいきなり変わり、いつの間にか何処かの山にいた

 とにかく山から出ようと彼女は周りを見渡そうとすると、物陰から妖怪が現れ、吠えながら襲いかかってきた

 彼女はそれが自分を襲うものだと一瞬で理解し、逃げ出した

 だが子供の逃げ足なんて遅いもの

 幸い、襲いかかってきた妖怪はそこまで足が速くなく、しばらくは逃げ続けることが出来た

 しかし、彼女の体力は刻一刻と無くなってきていた

 彼女の足が段々と遅くなり、少しづつだが差が縮まってきた時、前の方から声がした

 

?「早くこっちへ!」

 

 彼女が前方に視線を向けると暗い森の先に光が、出口が見える

 彼女は最後の力を振り絞ってそこへ走る

 森を抜けた瞬間、一気に視界が明るくなり、眩しさに目をつぶってしまい、先にいた人物に勢いよくぶつかってしまうが、その人物は彼女を受け止めた

 彼女が上を見上げてみると、それは声の主の身体だった

 声の主は彼女を見るとニッコリ微笑んで

 

?「怖かったね、でも大丈夫。私が安全なとこまで連れて行ってあげるから」

 

 そういい、彼女は榛奈の手を握り走った

 榛奈もそれに必死に着いて行った

 妖怪はまだ追ってきている

 でも、彼女の足は速く、すぐ距離が開き始めた

 

 

 

 しばらくすると木で作られた門が見えてきた

 彼女は門の前にいた人に後を任せるとすぐ門を開き榛奈を連れて中に入った

 

?「もう大丈夫、ここなら万が一のことがない限り安全だから」

 

 その言葉に榛奈は安心したのか、へたり込んだ

 そんな榛奈の頭を彼女は榛奈の息が整うまで撫でていた

 

 

 

 それから少しして榛奈は彼女に連れられて何処かの立派な家に着いた

 彼女は榛奈の手を引き、扉の前へ行くと扉を叩いた

 

?「先生ー!いませんかー!?」

 

 彼女がそう言い、しばらくすると廊下を歩く音が聞こえ

 

?2「今出るよ」

 

 その言葉とともに横に引く式の扉が開いて、中から銀髪に青いメッシュの入った全体的に青い服の女性が出てきた

 

?2「あぁ、舞梨果だったか。ん?その子は?」

 

?「それが、この子のことで先生に相談したいことがあって」

 

?2「なら中に入ろう。立ち話というのもあれだからな」

 

 そう言い、女性は彼女達を家の中に招いた

 そしてある部屋へ通されると榛奈と彼女は座布団に座り、女性はお茶を汲みに行き、戻ってくると彼女へ質問した

 

?2「それで、その子はどうしたんだ?」

 

?「実は―――」

 

 彼女は先程のことを説明した

 自分が人里を出ていたこと、走っていた榛奈に気づき、榛奈を連れ、妖怪から逃げてきたこと、それらを説明した

 

?2「なるほど、そんなことがあったのか。とりあえず、舞梨果!」

 

?「は、はいぃ!」

 

 女性はそれらを理解するといきなり――おそらく彼女の名前を怒り気味に呼んだ

 

?2「お前にはもう親以外に家族が、舞理沙だっているんだぞ!なのに人里を出て...... 今回はそれが良い結果を招いたが、もしかしたらお前が死ぬ可能性もあったんだからな!」

 

?「はい、すみません......」

 

?2「まったく。それで、その子はどこの子なんだ?」

 

?「えーと、貴女、どこから来たの?」

 

?2「聞いてなかったのか」

 

?「あはは......」

 

榛「......」

 

?「えっと......」

 

榛「わかんない、ここじゃないとこ、あんなのいない」

 

?2「あんなのって妖怪のことか?」

 

榛「知らない」

 

?「えっと......」

 

?2「どうしたものか......」

 

 幻想入りしたばかりのころの榛奈は感情表現が少なく、妖怪に追われている時も、安心した時も、ずっと泣かなかったが、笑いもしず、ほぼ無表情だった

 だから二人にはとても無愛想な子供に見えただろう

 それでも二人は榛奈に声をかけてくれた

 

?「んー、そうだ!ねぇねぇ、貴女の名前は?」

 

榛「名前......?」

 

?「そう!私は霧雨(きりさめ) 舞梨果(まりか)!家は霧雨商店を経営してるよ!」

 

榛「まり...か...」

 

舞「うんそうだよ!」

 

?2「次は私だな。私は上白沢(かみしらさわ) 慧音(けいね)。人里の寺子屋で教師をしている」

 

榛「けい...ね...」

 

慧「あぁ、そうだ」

 

舞「それで貴女の名前は?」

 

榛「......榛奈(はるな)

 

舞「榛奈って言うの?」

 

榛「うん......」

 

舞「それで榛奈ちゃんはどんなとこに住んでたの?」

 

榛「...あんまり覚えてない」

 

慧「覚えてない......とは?」

 

榛「多分、此処じゃないとこにいた。そこはここより空気が汚れてたから。人の心も。そんなとこ」

 

舞「此処、人里じゃないとこ......ね」

 

慧「もしかしたら外の世界かもしれないな。外は空気が汚れているというし」

 

榛「外......?」

 

 すると慧音は躊躇いがちにこう言った

 

慧「...榛奈、今のお前には難しい話かもしれないがよく聞いてくれ」

 

榛「うん」

 

 そして慧音は1拍はさんでこう言った

 

慧「此処は幻想郷。【博麗大結界】によって外の世界から隔離された忘れ去られし者の楽園だ」

 

榛「忘れ去られし者の楽園......」

 

 不思議とこの時の榛奈にはその言葉が頭に残った

 

舞「...榛奈ちゃん......?」

 

榛「......」

 

舞「榛奈ちゃん!」

 

榛「......何?」

 

舞「いや呼んでも返事しなかったから」

 

慧「大丈夫か?」

 

榛「考え事してた」

 

慧「...そうか」

 

 すると、舞梨果は何を思ったのかこんなことを聞いてきた

 

舞「ねぇ、榛奈ちゃんはお家に帰りたい?」

 

榛「っ!?」

 

 榛奈は驚いた

 舞梨果の言ったことは別に驚くことはない。小さい子が家族の元へ帰りたくなるのは普通のことだからだ

 しかし、それは“普通であれば”のこと

 榛奈の中には家に帰りたいと思う気持ちも、寂しいと思う気持ちも、どちらも無かった

 代わりに榛奈の中には

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『恐怖』が溢れ出していた

 

 

榛「あ......あぁ......いや......やだ......いやだ...よ......」

 

 恐怖が溢れた瞬間、榛奈の身体は震えだし、両手は自身を押さえるように抱え、身体を丸めた

 彼女の頭の中には「家に帰りたくない」、ただそれだけしか考えることが出来なかった

 

 いきなり私の様子が変わった姿を見て、2人は驚き戸惑った

 

慧「お、おい!どうしたんだ!?大丈夫か!?」

 

舞「え......え?ど...どうしたの......?え......?そんなに嫌なの......?」

 

榛「いや...だ......帰りたく...ない......帰ったら......殺される......っ!」

 

舞「こ、ころ......っ!?」

 

慧「ど...どういうことか説明出来るか......?」

 

 慧音にそう訊かれたが榛奈は首を振るどころか受け答えが全然出来なかった

 

慧「と、とにかく落ち着こう。ほら、お茶を飲んで......な?」

 

 榛奈は震える手で差し出された湯呑を受け取り、お茶を一気に煽った

 それでも震えは止まらなかった

 むしろ更に震えが止まらなくなったようにも見える

 彼女は舞梨果や慧音を困らせないよう、必死に震えを押さえつけようとしていると、不意に温かい何かが榛奈を抱きしめた

 

舞「大丈夫だよ」

 

榛「...え......?」

 

慧「舞梨果......?」

 

舞「大丈夫、ここには貴女を殺そうとする人はいない。もし居たら私が貴女を守る。だから安心して」

 

 舞梨果だった

 舞梨果が榛奈を抱きしめてきたのだ

 そして彼女を安心させるかのように言葉を呟いたのだ

 榛奈にとってそれは、まるで母のような、ずっと感じていたい温もりだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次第に榛奈の震えは収まっていった

 彼女の中の恐怖がなくなったわけじゃないが、それでも幾分かは楽になったようだ

 舞梨果はそれを見ると離れようとしたが、榛奈はそれを良しとせず、彼女は舞梨果の膝に座った

 

榛「んー」

 

舞「えっと...... あはは......」

 

 流石にこの変わりようには舞梨果も驚きを隠せないようで苦笑いだった

 

慧「ははっ!どうやら気に入られたようだな。良かったじゃないか」

 

舞「気に入られたのは嬉しいんですが、少しついていけない感じが......」

 

榛「ん」

 

舞「あはははは......」

 

 

 

 この時の彼女は少しだけ笑ってるように見えた




後書き~

舞梨果(まりか)』本作オリジナルキャラです。オリキャラのタグを付け足していると思います
魔理沙の母です。でも普段は女性というより女の子っぽいです。でもいざという時母の顔になります
↑後書きに参加します

次回、シリアスは分からないです(感じ方による)

感想、評価よろしくです!
誤字報告も気軽にどうぞ

では次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去話2 『慧音の家に泊まった日』

前書き~

だんだんとセリフが多くなり、地の文?が少なくなってきてるのを感じる話です

今回もサビタイトル通りですね。慧音の家です
と言ってもお風呂シーンしか長くないですが

では今回もゆっくりしていってね!


[慧音宅]

 

 

慧「それで、榛奈はここに留まるんだな?」

 

榛「うん」

 

慧「ふむ、しかし住むところはどうする?」

 

榛「......土の中?」

 

舞「芋虫か!」

 

榛・舞「「ども、ありがとーございましたー」」

 

慧「息ピッタリだな...(苦笑)」

 

舞「それで榛奈ちゃんはどうしたい?」

 

榛「ん」

 

 榛奈は舞梨果の腕をギュッと掴んだ

 どうやらそれだけで意思は伝わったようで

 

舞「私の家かぁ」

 

慧「舞梨果の家はちょっとな。家が店を経営してるし、何より舞梨果自身、まだ幼い娘もいる。だから酷しいと思うが......」

 

榛「んー!」

 

 それでも榛奈は諦めなかった

 それほど、舞梨果のことを気に入ってたからだ

 

慧「いやだからな?」

 

舞「いいよ」

 

慧「は!?おい舞梨果!?」

 

舞「こんなにも榛奈ちゃんが私の家に住みたいって言ってるんですから。だったらいいと思いませんか?それに他にアテは無いんだから」

 

慧「しかし旦那さんにはどう説明する気だ?舞理沙にも言わなきゃならないんだぞ?」

 

舞「旦那は駄目とは言わないと思います。あの人は優しい人ですから。舞理沙は姉妹が出来るって喜ぶと思いますよ?」

 

慧「しかしだな......」

 

舞「なら今から帰って聞いてきます。それならいいですよね?」

 

慧「それならいいが...... だが、来るのは明日にしておいた方がいい。そろそろ暗くなるからな」

 

 そう言われて外を見ると既に空が茜色に染まっていた

 

榛「......私は?」

 

慧「とりあえず榛奈は今日はここに泊まるといい。1泊だけなら世話してやれるからな」

 

舞「榛奈ちゃんもそれでいい?」

 

榛「うん。慧音、お世話になります」

 

 そう言いながら榛奈は慧音に頭を下げた

 それから玄関まで舞梨果を見送りに行った

 

舞「それじゃ先生、よろしくお願いします」

 

慧「あぁ、任された」

 

舞「じゃあ榛奈ちゃん。また明日ね」

 

榛「舞梨果、また明日」

 

 扉がガラガラと閉まる。一気に静かになった気がした。でも不思議と寂しくはなかった

 

慧「とりあえず先に風呂に入ろう。薪を取ってこなくちゃな」

 

榛「手伝う」

 

慧「自分から言うとはな。よし、なら手伝ってくれ」

 

榛「何手伝えばいい?」

 

慧「それじゃあ薪を運ぶのを手伝ってくれ」

 

榛「分かった」

 

 それから二人は風呂の準備をして、お湯を沸かした

 そしてどちらが先に入るかという話を榛奈がすると、慧音は二人で入ればいいと言った

 榛奈はその誘いを断ったが、慧音が半端強制的に一緒に入ることとなった

 

 

 

慧「かゆいところはないか?」

 

榛「ない。というか自分で洗える」

 

慧「いいじゃないか。ほら流すぞ~」

 

 榛奈は今、頭を洗ってもらっている

 それは榛奈は自分で洗えるって言ってるのに慧音が洗いたがったからだ

 そういえばだがこの時、榛奈の身体はとても汚れていた

 多分妖怪に追いかけられてた時に汚したのだと思われる

 その時の服は外の世界の服だったが、汚れていたり、破れていたりしたので榛奈の同意の元捨てた

 

 

 

慧「さて、今度は身体を洗うぞ」

 

榛「それだけは絶対に自分で洗う!」

 

慧「あ、あぁ。そんなに嫌だったか?」

 

榛「嫌じゃない。ただ恥ずかしい」

 

慧「羞恥心って、お前は本当に何歳なんだ......」

 

榛「5歳」

 

慧「じゃあ私は身体を洗ったから先に湯船に浸かってるぞ」

 

榛「うん」

 

 暫くの間、浴室には水の音とゴシゴシと身体を洗う音だけが響いていた

 

 

 

 

 

慧「そういえば榛奈はどうして舞梨果の家に住みたがったんだ?」

 

榛「......抱きしめられたとき、母親みたいな感じがしたから」

 

慧「そうか......」

 

榛「ねぇ慧音」

 

慧「なんだ?」

 

榛「舞梨果には子供がいるの?」

 

慧「あぁ、舞理沙という娘がいる。そういえば舞理沙も5歳だったから榛奈と同い年だな」

 

榛「そうなんだ」

 

慧「それがどうかしたのか?」

 

榛「......」

 

慧「?」

 

榛「......仲良く出来るかな」

 

 その言葉を聞くと慧音はふっと微笑んで

 

慧「仲良くなれるさ。絶対にな」

 

榛「......うん......!」

 

慧「さあ!身体も綺麗に洗ったし、泡を流して湯船に入ってこい!」

 

榛「わかった」

 

 それから榛奈と慧音は十分温まってから浴室を出て、身体を拭いてもらって、着替えをして、遅めの夕食を食べ、寝床についた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

~次の日~

 

 

舞「先生!榛奈ちゃん!おはようございます!」

 

慧「舞梨果か、おはよう」

 

榛「舞梨果、おはよう」

 

 榛奈と慧音が朝食を食べてゆっくりしていたら舞梨果が来た

 

舞「で、聞いて聞いて!榛奈ちゃん!」

 

榛「...テンション高い」

 

舞「テンション?」

 

慧「外の世界の言葉で気分が高まってることを指摘する言葉だと聞いているが」

 

榛「それ」

 

舞「でも気分が高まるのも仕方ないよ!」

 

慧「一体何をそんなに......」

 

 

舞「榛奈ちゃんを養女として霧雨家の娘になることが決定しました!!!」

 

 

榛「え......?」

 

慧「それは...本当か......?」

 

 舞梨果の言葉に榛奈と慧音は驚き過ぎてその言葉しか言えなかった

 

舞「本当だよ!旦那も良いって!舞理沙も姉妹が出来るって言ったら嬉しがってた!」

 

慧「そうかそうか!それはよかったな!榛奈もよかったな!」

 

榛「うん」

 

 

 まるで2人は自分の事のように嬉しがってくれた

 この時の榛奈の心の中は不思議と嬉しさと温かさで満ち溢れていた




後書き~

はい!慧音の家に泊まりました!後慧音とお風呂です!慧音の裸( ゚∀゚)・∵ブハッ!!ってならない私は変である

会話風後書きにはあの人がまた出ますよ~
しかし日曜日なのに学校に行かなくてはならないので、投稿するのは夕方になりそうですけどね

では、皆さん!
次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

過去話3『私が姉と出会った日』

前書き~

昨日は避難訓練ということで朝から出かけて夕方帰って来ました
日曜日にやらないで欲しいですね。代わりに今日は休みですが

今回もサビタイトル通りですね
榛奈がお姉ちゃんに会います
今回で過去話は一旦終了。本編に戻ります

では今回もゆっくりしていってね!


舞「という訳で榛奈ちゃんは霧雨家の養女になりました!」

 

慧「ん?そういえば養女にするのか?」

 

舞「はい!榛奈ちゃんはまだ子供ですから、私達が親代わりになろうと思いまして」

 

慧「そうか。それにしてもよく説得できたな」

 

舞「嫌味に聞こえちゃうかもしれませんが、家は結構儲かってるから、生活に余裕はあるんですよ」

 

慧「霧雨商店は人里じゃ知らない人はいないくらいだからな」

 

舞「だから子供が1人増えても大丈夫なんです。旦那は否定どころか賛成的でしたし、舞理沙は嬉しそうでしたし」

 

榛「嬉しそう?」

 

舞「うん!あ、そうだ。榛奈ちゃんっていくつ?」

 

榛「5歳」

 

舞「5歳かー。誕生日は?」

 

榛「8月20日」

 

舞「じゃあ舞理沙の妹になるんだね」

 

榛「......姉ができる?」

 

舞「そうゆうことだよ」

 

慧「それで、もう連れていくのか?」

 

舞「はい!昨日の内に大体の物は用意できましたので。あ、榛奈ちゃん、聞きたいことがあるんだけど。舞理沙と同じ部屋でもいい?」

 

榛「私は住まわせてもらえる立場だから、そうじゃないとダメなら文句は言わない」

 

慧「本当に何歳なんだか......」

 

榛「5歳」

 

舞「さっきのは5歳の発言じゃないと思うけどね......」

 

 榛奈の発言に2人とも苦笑いする

 

舞「でも、嫌だったら嫌って言っていいんだからね?これからは私の娘になるんだから」

 

榛「立場関係なくても嫌じゃないから大丈夫」

 

舞「ならよかった。それじゃ、そろそろ行く?」

 

榛「......うん!」

 

 榛奈の心の中には新しくなる生活と新しい家族に不安や心配があったが、それ以上に楽しみな気持ちがあった

 舞梨果の家族だからきっと優しい人達だろうと思ったからだ

 

舞「それじゃ慧音先生、私達はもう帰りますね」

 

慧「あぁ。榛奈とは次に会うのは、里の中か寺子屋かな」

 

榛「慧音、お世話になりました」

 

 榛奈はそう言いながら頭を下げた

 

慧「本当に5歳とは思えない礼儀正しさだな」

 

榛「最低限のマナー」

 

慧「今度は敬語を使えるようになろうな」

 

榛「頑張ります」

 

慧「使えてたのか」

 

榛「曖昧だけど」

 

慧「ははっ!それじゃあな、舞梨果、榛奈」

 

舞「慧音、また今度です」

 

榛「また今度ー」

 

 ガラガラと扉が閉まる

 外はポカポカと暖かく、まるで榛奈を祝福しているようだ

 

舞「それじゃ、行こっか」

 

榛「えっと...」

 

舞「ん?どうかした?」

 

榛「これからよろしく、その......”お母さん”」

 

舞「~~!!これからよろしくね!!榛奈ちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

[霧雨家前]

 

 

舞「ここが私の家だよ!そして今日からは榛奈ちゃんの家でもある!」

 

 そう言いながら舞梨果は家を指さした。その家はお屋敷と言ってもいいくらいで、とても大きい。隣には[霧雨商店]と書かれた看板が付けてある店があった

 

榛「デカイね」

 

舞「店が儲かってるからね」

 

榛「凄いね」

 

舞「私が凄いわけじゃないんだけどね......」

 

 舞梨果はそう言いながら複雑な顔をしていた

 

榛「旦那さんが凄いなら、それを支えるお母さんも凄いと思う」

 

舞「......本当に榛奈ちゃんは大人な発言をするね」

 

榛「たまたま」

 

舞「そっかー」

 

榛「店と家、分かれてるんだね」

 

舞「うん。私が生まれた頃にはもう分かれてたね」

 

 榛奈は何となく聞きたかったことを口にした

 

榛「ねぇ、旦那のこと、”お父さん”って呼んだ方がいい?」

 

舞「そうだね、そう呼んだ方が嬉しがると思うよ。でも無理しないでね」

 

榛「わかった」

 

舞「そろそろ行く?舞理沙もお父さんも待ってるよ」

 

榛「......」

 

 慧音の家では心に期待が溢れていた榛奈の心は、時間が経つにつれて不安や緊張に押しつぶされそうになっていた

 そのことを感じ取ったのか舞梨果は榛奈の両肩に手を置いて榛奈を正面から見て言った

 

舞「大丈夫。私がいるから安心していいよ」

 

 その言葉に彼女の不安や緊張はほぐれていった。それでも不安や緊張が少し残っていたが、先程よりは楽になった

 

舞「それじゃ、行こっか」

 

榛「うん」

 

 舞梨果がガラガラと扉を開け、家に帰ってきたことを知らせる言葉を言った

 

舞「ただいまー!」

 

 榛奈はそれに続いて

 

榛「おじゃまします」

 

 そう言うと舞梨果から頭を軽く叩かれ

 

舞「「おじゃまします」じゃないよ?今日からここは榛奈の家なんだから、分かるよね?」

 

 榛奈は少し気恥しい気持ちになったが、その言葉を口にした

 

榛「......ただいま」

 

舞「うん!おかえりなさい!」

 

 ただの「ただいま」と「おかえり」

 たったそれだけの言葉が彼女の胸に温かく響いた

 

 そんなやり取りをしていると奥から誰かが来た

 

?「あ、お母様!おかえりなさい!」

 

舞「ただいま~、舞理沙」

 

 榛奈より少し濃いめの金髪、背丈は同じくらい、瞳の色は黄色。誰もが可愛いと言いそうな娘だ

 

?「お母様、この娘は誰ですか?」

 

舞「この娘が新しく家族になる榛奈ちゃんだよ。ほら自己紹介」

 

舞理「はい!初めまして、私の名前は霧雨(きりさめ) 舞理沙(まりさ)だよ!よろしくね!」

 

榛「榛奈、よろしく」

 

舞「あはは……簡潔だね......」

 

舞理「それで榛奈は何歳なの?」

 

榛「5歳、でも私の方が誕生日遅いらしい」

 

舞理「そうなんだ、じゃあ私がお姉さんだ!」

 

榛「そゆこと」

 

舞「てことで榛奈は舞理沙のことを「お姉ちゃん」って言わなきゃだね」

 

舞理「あ、そっか!じゃあ榛奈!「お姉ちゃん」って言って!」

 

榛「...え?言わなきゃダメ?」

 

舞「まぁ榛奈ちゃんが嫌なら無理にとは言わないけど」

 

舞理「えぇー」

 

舞「舞理沙、我儘は駄目だよ?」

 

舞理「はーi榛「いいよ」ホント!?」

 

榛「うん、えっと。...舞理沙お姉ちゃん」

 

舞理「~~!もう1回!もう1回だけ言って!」

 

榛「......変」

 

舞「何が変なの?」

 

榛「やっぱり言わない」

 

舞理「えぇ!言ってよー」

 

榛「舞理沙姉がいい」

 

舞「は~、これはまた榛奈ちゃんの印象にあった呼び方だことで」

 

舞理「まぁ「姉」って付いてるからいいか。じゃあ改めて、これからよろしくね!榛奈!」

 

榛「よろしく、舞理沙姉」

 

 

 

 

 これが、榛奈と舞理沙、もとい魔理沙との出会いであり、彼女が霧雨 榛奈として生きていくこととなった始まりの物語

 後は簡単に書こう

 

 その2年ほど経った年、彼女達は寺子屋に通うようになった

 彼女達が寺子屋に通うようになってからは、二人の父の態度が変わった。今までも厳格な父だったが、舞理沙がなにかを間違えたり、失敗してしまったりする度に叱るようになった。普通なら笑って許すようなこともだ。周りからは厳しい親だと思われるが、榛奈と舞梨果には不器用な愛の伝え方だと感じていた。だからこそ二人は父を憎めなかった

 

 二人が寺子屋に通うようになってから数年、舞梨果が病気になり、亡くなった

 それから父は舞理沙を叱るだけではなく暴力を振るうようになった。おそらく舞梨果が安心できるよう舞理沙を立派な人間にするためにしているんだと榛奈は分かった。しかし傍から見たら、特に舞理沙から見たらそれはただの虐待で、結果として舞理沙は魔法使いになりたいと父に言い、喧嘩して、勘当されてしまった

 舞理沙が勘当されたすぐあとに榛奈も家出という形で家を出て行った

 

 これが榛奈が紅魔館に来る前、人里に住んでた頃の話。詳しくはまた、機会があれば




後書き~

はい!今回で過去話は一旦終了です
また機会があれば書きますのでそこは安心してください

次回から紅魔郷の続きですが、霊夢の方はまだ出てきません
一応魔理沙の方を何とかしないといけないので

活動報告では会話風後書きがありますので、是非見てくださいね!
今回で舞梨果さんの出番終了ですから

感想、評価などお待ちしてます!
誤字報告もお気軽にどうぞ!
では次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話『私と魔理沙姉の関係』

前書き~

昨日は平日でしたが、うちの学校は前日に避難訓練をやっていて代休だったので友達とカラオケに行きました!
平日料金うまうま(o´艸`)

今回の話は魔理沙と榛奈の関係を、誰かさんが質問する話もあります
色々詰めてきた気がする話ですが、是非読んでいってくださいね!

では今回もゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[大図書館]

 

 

魔「え?どうしてこんなところにいるんだ?いや、そもそもどうして生きてるんだ?」

 

榛「魔理沙姉、その言い方だと生きてちゃダメみたいだよ......」

 

魔「あぁ、それは悪かった。ってそうじゃなくて本当にどうして、死んだんじゃなかったのか?」

 

榛「あ~、とりあえず私は生きてるよ。健康そのものでね」

 

魔「そうか......」

 

パ「2人共、私のこと忘れてないかしら」

 

榛「あ、師匠。大丈夫ですか?」

 

 どうやら私が魔理沙姉と話してる間に師匠の喘息がおさまったようだ

 まだ少しだけ顔色が悪いけど、それはいつもな気がする

 

パ「えぇ、大丈夫よ。守ってくれてありがとうね」

 

榛「弟子として、師匠のピンチに駆けつけるのは当たり前です。まぁ守ることしか出来ないんですけどね」

 

パ「それでも十分よ。さて、そこの白黒」

 

魔「な、なんだよ」

 

 魔理沙姉はいきなり呼ばれて動揺した

 先程のことで師匠に申し訳ないと思ってるのかもしれないな

 

パ「さっきはいきなり倒れて悪かったわね」

 

 ......うん、驚いた

 傍らにいた小悪魔の顔も驚いている

 別に師匠は謝らない性格というわけでもないが、一応侵入者にあたる魔理沙姉に謝るなんてことしないと思ったからだ

 

魔「あ~、こっちこそ喘息だって知らなかったとはいえ攻撃しちまって、すまん!」

 

 そう言いながら魔理沙は頭を下げた

 小悪魔は魔理沙姉の謝罪にも驚いていたが、私にとっては予想通り

 魔理沙姉は基本、自分が悪いと思ったらちゃんと謝る性格だからだ

 

パ「意外ね。素直に謝るなんてことすると思わなかったわ」

 

魔「失礼なやつだな。まぁ悪いと思ったからな」

 

パ「そう」

 

 魔理沙姉と師匠がお互い謝っていると小悪魔が質問してきた

 

小「あの~、質問なんですが、白黒の...えーと...名前何でしたっけ?」

 

魔「あー、私は言ってなかったな。魔理沙だぜ。霧雨 魔理沙だ」

 

小「そうですか。で、魔理沙さん、榛奈さん。お二人は知り合いなんですか?お互い名前を知っているみたいで。それに榛奈さんが魔理沙さんのことを『魔理沙姉』と呼んでますし」

 

パ「それは私も気になってたわね。まぁお互い姓名が『霧雨』だから予想はつくけど」

 

魔「まぁ、訊かれるよな」

 

榛「そりゃ訊かれるよ」

 

小「えーと?」

 

榛「まぁ簡単に言うと姉妹なんですよ。私達」

 

小「姉妹って......えぇ!?」

 

パ「小悪魔、うるさい」

 

小「あ、すみません。それで姉妹とは?」

 

魔「そのまんまの意味だぜ」

 

榛「まぁ血は繋がってませんけどね。代わりに絆が繋がってる!なんて」

 

魔「いや、案外それはあってるだろ。お互い姉と妹と思ってるんだから」

 

榛「だね~」

 

パ「なんというか、呑気ね」

 

榛「私の場合、魔理沙姉に会ってるって実感がないだけなんですけどね」

 

魔「それは私もだぜ。てっきり人里を出たあと、そこらで野垂れ死んだり妖怪に食われたりしたのかと思ったのによ...」

 

 不意に魔理沙姉の顔が曇った

 といってもほんの一瞬のこと、すぐに元の元気そうな顔に戻った

 あ~、うん。これは凄い心配かけたみたいだね。なんか、申し訳ない気持ちが凄いや

 

榛「あはは...... ......ごめん魔理沙姉。心配かけて」

 

魔「いやそもそも、私が人里を出ていったのが悪いし、こっちこそごめん」

 

榛「......いや、実はそれ関係なかったり、知ってたり......」

 

魔「ん?悪いよく聞こえなかった。もう一回言ってくれるか?」

 

榛「いやいいよ。うん、聞こえなくて大丈夫なこと」

 

魔「?」

 

 思わず声が小さくなってしまった

 まぁ聞かれない方がいい事だったから良かったけどね

 魔理沙姉には本当にいらない心配をかけてしまった。謝ったら向こうも謝り返してきそうだから心の中で謝っておこう。ごめんなさい

 

パ「まぁ何だか分からないけど良かったわね、お互い再会できて」

 

榛「はい!」

 

パ「ところで魔理沙」 

 

魔「ん?なんだぜ?」

 

パ「さっきの勝負、私の負けよ」

 

小「パチュリー様!?」

 

パ「私は持病の発作とはいえ、これは勝負を投げたのと同じ。なら私の負けよ。榛奈もそう思うわよね?」

 

 師匠が私の方を見ながら聞いてきた

 確かにあの勝負は傍から見たら師匠が勝負を投げたのと同じかもしれない。でも持病なのはしょうがないけど、だからって負けとは限らない気がする。だから師匠の意見はあっているようで、間違っている気がする

 私は思ったことを素直に言った

 

榛「えっと、私もそう思うかと訊かれれば違うと答えますね。師匠が負けを認めたということは先程の勝負は魔理沙姉の勝利となりますが、持病の発作は誰にも予測できません。なので先程の勝負は無効な気がします」

 

小「わ、私もそう思います!」

 

榛「一応聞くけど魔理沙姉はどう思う?」

 

 私は魔理沙姉の答えを予想できたが一応聞いてみた

 

魔「一応って予想できてたんだろ?まぁ私も榛奈の意見に同意だぜ。それに勝った気もしないからな」

 

パ「そう、なら勝負は無しにするのかしら」

 

魔「いや、それよりいい事を思いついたぜ」

 

 魔理沙姉はそう言いながら不敵な笑みを浮かべた

 

パ「......それって?」

 

魔「パチュリーの代わりに誰かが私と弾幕ごっこをするんだぜ。その勝敗がさっきの勝負の勝敗となる。もちろん相手はパチュリーが決めていいぜ」

 

パ「なら榛奈を指名するわ」

 

 魔理沙姉の出した条件に師匠は二つ返事で私を指名して......っては!?

 

榛「え?は!?私?私なのか!?何故nパ「うるさいわよ」すいません......」

 

魔「ぷくくっ......!」

 

 思わず大声を出してしまい師匠に怒られてしまった

 って魔理沙姉は笑ってるし~!

 

榛「笑わないでよ魔理沙姉〜」

 

魔「くくっ、あははははは!いやー悪い悪い、榛奈があんまり慌てるもんだから。くくく......」

 

榛「まだ笑うか!」

 

パ「はぁ。それで榛奈、やってくれるかしら?」

 

 うぅ、まさか私を指名するなんて

 他にも適任者はいっぱいいるのに......。咲夜さんとか美鈴とかレミリア様とか

 

榛「あのー、なんで私なんですか?魔理沙姉は『誰か』と言いました。なので私じゃなくてもいいと思うんですが......」

 

パ「あら、怖気づいてるのかしら?」

 

榛「まぁ、はい。それに他の人の方が適任だと私は思います」

 

パ「はぁ。いい?私は榛奈がいいと言ったの。榛奈に任せられるから任せたの。それを否定するということは私を否定するのと同じよ?」

 

榛「しかし、私だと勝てないと思います......」

 

パ「何も勝てなんて言ってないわ。ただ、戦ってくれればいいの。だからやってくれるかしら?」

 

 ”勝たなくてもいい” ”戦ってくれればいい”

 それはそれで嫌で”戦うなら勝ちたい”と思う私は意外と負けず嫌いなのかもしれない

 私が勝負を引き受けるか悩んでいると、奥から足音が聞こえてきた

 

?「榛奈にパチェにコア、3人とも何やってるの?それにその白黒さんは?」

 

 我らが天使、いや悪魔が来た




後書き~

最後の誰なんでしょうね?
といってもこの作品を見てる人は分かると思いますが
うん、天使みたいに可愛いけど種族的には悪魔なあの方です
いつも通り次回分かります

感想、評価お待ちしてます
誤字報告も気軽にどうぞ!
では次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話『天使だけど悪魔なんだよなぁ』

前書き~

今回のサブタイトルは特に意味はありません
しいていうなら思いつかなかっただけです
でも今回の話にちょっぴりだけ関係あるかもです

では今回もゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[大図書館]

 

 

榛「フラン様!?どうしてこちらに!?」

 

フ「あ、榛奈~!聞いて聞いて!私、力が制御出来るようになったよ!これで弾幕ごっこも出来る!」

 

榛「そうなんですか!?それは良かったです!今度記念パーティーでもやりますか?異変が終わったらレミリア様に相談してみますね」

 

フ「やったー!で、榛奈榛奈」

 

榛「はい?あ、分かりました」

 

 私の名前を呼びながらフラン様は私に頭を向けた

 あ、これはあれだ。いつものことだな

 そう考えながら私はフラン様の頭に手を乗せ、左右に揺らした

 

榛「フラン様、よく頑張りましたね。凄いです。偉いです」

 

フ「えへへ」

 

 フラン様が何か頑張った時やいい事をした時に思わずやってたこと。それは“頭を撫でる”こと

 いつの間にかフラン様からねだってくるようになったんですよね

 あぁ、今日もフラン様は可愛いなぁ

 なんて、そんなことを考えていると

 

魔「なぁ、私を忘れてないか?」

 

榛「あ、忘れてた」

 

魔「ひどいぜ」

 

榛「あはは、ごめんごめん」

 

 魔理沙姉には悪いけど完全に忘れてた

 だってフラン様が可愛いのがいけないんだ。可愛いは正義であり、最大の敵なんだよ!

 

パ「それでフラン。もしかしてこっちに来たのは力が制御出来るようになったからなのかしら」

 

フ「うん。後、誰か来てるみたいだったから。そこの白黒さんはお客さん?」

 

魔「私は異変を解決しに来ただけだぜ」

 

フ「そっか。私はフランドール・スカーレット。ここ紅魔館の主の妹だよ。気軽にフランって呼んでね」

 

魔「主の妹か... 私は霧雨 魔理沙。普通の魔法使いだぜ」

 

フ「霧雨?」

 

榛「魔理沙姉は私の姉なんです」

 

フ「え!?榛奈ってお姉さんいたの!?」

 

 あ~、そういえば言ってなかったっけ

 いや、そもそも紅魔館の住人全員に言ってないんだっけ

 

榛「いたんですよ~。義理ですが」

 

フ「義理?血が繋がってないってこと?」

 

榛「はい。私が養女で霧雨家に拾われたんです。今は家出中ですけどね」

 

フ「家出って...... 何があったの?」

 

 うん、訊くよね

 でもあんまり言いたくないんだよね

 原作知識があったからこそやった家出だから

 それに自分でも夢見すぎと思うことをしようとして家出したって感じだからなぁ

 

榛「あ~、言わないです。言えなくはないですが、言いたくないです」

 

フ「えぇ」

 

榛「そのうち話します。......多分」

 

 フラン様が不満げだけど言いたくないからなぁ

 特に魔理沙姉の前だし

 とりあえず話を変えなきゃな~

 そう思っていると

 

パ「で、榛奈。結局どうするの?」

 

 あ、忘れられてませんでしたか

 出来ればやりたくないんですけどね。NORMAL(ノーマル)ですら勝敗が半々なのに、HARD(ハード)LUNATIC(ルナティック)なんて無理ゲーすぎる

 

フ「パチェ、なんのことなの?」

 

パ「榛奈が魔理沙と弾幕ごっこするかって話」

 

榛「師匠~......」

 

 言わないでくださいよ!これ後の予想がつくんですが!?

 

フ「榛奈、魔理沙と弾幕ごっこするの?」

 

榛「あはは......迷ってる最中です......」

 

小「あ、妹様、少しこっちに来て耳を貸してくれませんか?」

 

フ「?わかった」

 

 コアは何を思ったのかフラン様を呼び寄せた

 

パ「こあ?」

 

小「大丈夫ですよ、パチュリー様。悪いことはしません」

 

 それ、悪くなかったら何かするってことですね分かります

 フラン様が近づくとコアは小さな声でフラン様と話し始めた

 私の位置だと声が聞こえないから何を話してるのか分からないが、多分、ろくでもないことだと思う

 だって既に2人の顔からその感じが漂ってきてるし

 

 そしてフラン様は話が終わったのか私の方へ来てこう言った

 

フ「ねぇ榛奈、弾幕ごっこやるか迷ってるんだよね?」

 

榛「は、はい...... そうですが......」

 

フ「なら」

 

 フラン様は胸の前で両手を組んで、目を潤ませながら言った

 

フ「私のために戦って勝って?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

魔理沙side

 

 

 ――プチン

 

 どこかで何かが切れた音がした

 そう思った瞬間には既に榛奈の雰囲気が変わっていた

 先程まではどこかのんびりと、そして弱気な雰囲気だったのにそんな面影を見せないほど

 いや、若干のんびりとした雰囲気はある

 だが、弱気な雰囲気なんてどこにもない

 まるで人が変わったような感じだ

 

榛「......分かりました。勝てるかは分かりませんがやってみることにします」

 

 そう言い、私の方を向いた榛奈の目は、どこか熱さを感じる目だった

 

榛「てことで魔理沙姉。勝負を引き受けることにしたけど――」

 

 あ~、これは―――

 

榛「魔理沙姉、本気で来てね?」

 

 確実に―――

 

榛「私も本気でいくから」

 

 榛奈の本気だ




後書き~

えぇ、最後、スイッチの切り替えといいますか色々とプッツンしたといいますか
とにかく雰囲気変わる榛奈さん
次回、戦闘シーン書くつもりです

感想、評価、誤字報告いつでもどうぞ!
では次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話『魔理沙姉との弾幕ごっこです』

前書き~
1日1話投稿をしてたせいか今回の投稿が久々な気がします
読者の皆様、おまたせしてしまってすみません
今回の話で肝心な戦闘シーンですが、あまり良くない出来だと思います
それでも読んでくださるのなら嬉しいかぎりです
今回の話は長くなっておりますので時間の空いた時に読むといいですよ

サブタイトルに懐かしいと感じてしまったのは“です”が付いてるからなのだろうか

それでは今回もゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[大図書館]

 

 

フ「私のために戦って勝って?」

 

 ――プチン

 

 自分の中で何かが切れた音がした

 そう感じた瞬間、自分の中の何かが変化した

 変化したといっても思ってることは一緒

 「戦っても勝てない」「期待に添えられない」

 そんな思考に一つの要素が加わっただけ

 「フラン様の為に戦う」、ただそれだけ

 「戦って勝てない」なら「フラン様の為に戦う」

 「期待に添えられない」なら「フラン様の為に戦う」

 ネガティブ思考がポジティブ思考に、ポジティブ思考がネガティブ思考になるように

 ただフラン様の為に戦えばいい。それだけしか考えられなかった

 

榛「...分かりました。勝てるかは分かりませんがやってみることにします」

 

 気付いたらそんな言葉を口にしていた

 相手は今後異変解決者として名を広めるであろう魔理沙姉

 異変解決で使われるスペルカードルールでは勝てる確率は低いだろう

 でも、フラン様の為に戦う

 スペルカードで、弾幕ごっこでフラン様の為に戦い、運が良ければ勝つ

 とりあえずそれでいくことにする

 

榛「てことで魔理沙姉。勝負を引き受けることにしたけど――」

 

 あ、一応言っておくかな

 

榛「魔理沙姉、本気できてね?」

 

 そうじゃないともし勝った時素直に喜べないから

 そして、これも言っておこうかな

 

榛「私も本気でいくから」

 

 

 

 

 その言葉を合図に私は弾幕ごっこをする準備をした

 準備といっても簡単なこと

 スペカをいつでも取り出せるところにしまって、いつも身につけている四次元ポケットならぬ四次元エプロンからしまってあった愛用している白いとんがり帽子を取り出しかぶって、帽子の先にある青い星から箒を取り出して乗って浮くだけ

 弾幕ごっこは場所さえ気をつければ気軽にできる遊び、それこそスペカさえあればできる遊びだ

 そして私は準備をし終わり、いつでも弾幕を出せるようにしていると魔理沙姉が箒に乗って浮きながら話しかけてきた

 

魔「お前も魔女帽子被るんだな」

 

榛「まぁね。色々機能があるし」

 

魔「さっきの箒を取り出したりするやつのことか?」

 

榛「収納機能はある意味基本」

 

魔「箒に乗るのは?」

 

榛「ただの力不足」

 

魔「そうか」

 

 話している間にも私たちは浮き続け、ある程度距離を離していき、丁度いい距離になった

 

魔「よし、これぐらいでいいな。ルールはどうする?」

 

榛「被弾スペル共に3で」

 

魔「了解だぜ!それじゃ、いくぜ!」

 

 その言葉を合図に魔理沙姉から星型の魔力弾が飛んできた

 数は多い。難易度でいうならLUNATICくらい

 でも避けれないわけじゃない

 心は熱くても頭は冷静に

 いつもは頭で理解して動くけど、今回は勘に任せてみる

 そうしたら避け方が自然に見えてきた

 これからは多少勘に任せるのも悪くないかもしれない

 回避している間も弾幕を張るのを忘れたら駄目

 相手に当たるように、でも数は多くならないように。通常弾幕だからね

 弾幕に込める力も丁度よくしなければならない。弱すぎても駄目、強すぎても駄目

 弾幕ごっことはそういうもの。そして弾幕ごっこに勝つにはとにかく躱して、弾幕を張る

 スペルカードを使うのも手だが数が限られてる

 それに初っ端から使うのはあまり得策といえないし、いざという時に使いたい

 ひとまずは躱して通常弾幕を当てることに集中しよう

 

 にしても綺麗な星だなぁ

 定番の黄色から青や赤や緑まである

 私も星型の弾幕を撃つけど青一色なんだよなぁ

 そして魔理沙姉のはカラフルだからなぁ

 弾幕ごっこは美しさも必須だから美しさだけなら魔理沙姉の勝ちだね

 でも、必須なだけで美しさが勝利へ導く鍵となるわけではない

 だから私にも勝つ確率がある。低いけど

 とりあえずボム落ちしないようにしないとなぁ

 

 そんな事を考えていると魔理沙姉がカードを構えた

 

魔「そっちがこないならこっちからいくぜ!【黒魔】『イベントホライズン』!」

 

 魔理沙姉がスペル宣言をすると魔理沙姉を中心に10個の魔法陣が出てきて......って!?

 10個!?それ難易度LUNATIC(ルナティック)ですよね!?

 そもそも『イベントホライズン』は師匠に使ってた『スターダストレヴァリエ』の上位版じゃないですかやだぁ!

 確かに本気できてって言ったけどぉ!

 しかもスペル宣言中は弾幕に当たっても被弾とされない。けど、スペルカードに定められた時間まで逃げきったり、体力ゲージを削りきることができればスペルカードブレイク、つまり攻略したということになる

 つまり何が言いたいかと言うと、ブレイクまで追い込むか耐えるしかない!

 

 10個の魔法陣一つ一つから様々な色の星型の弾幕が大量に出てきた

 赤紫水色青黄緑橙黄...... あ、黄色多い

 とにかくカラフルな星を出していて、思わず目を惹かれるような光景を見ていた私の顔は無表情だったが、心の中は半泣きになりながらこんなことを思っていた

 (星星星ぃ!?)

 うん、だってLUNATIC(ルナティック)なんて初めてなんだもん

 HARD(ハード)ですらやったことないんだもん

 そんな私が主人公さんの弾幕を見て半泣きになりながらパニックにならないなんてありえないもん

 思わず「もん」ってつくぐらいなんだもん

 やばい、まともな思考回路が出来なくなってきた

 とりあえず弾幕の隙間をギリギリ回避しながら弾幕を当てていく

 一応ホーミング機能付きの魔力弾も混じらせて撃つ

 ホーミング機能付きの魔力弾は使い勝手は良いけど1度に大量発射できないのが難点だね

 なんて考えながら回避&攻撃していると魔理沙姉が皮肉気味にこう言った

 

魔「随分と余裕そうだな!」

 

榛「......そう見える?」

 

魔「無表情で躱してたらそう見えるぜ!」

 

榛「そう」

 

 違うんだよ魔理沙姉。余裕そうにしてるんじゃなくて現実逃避してるだけだよ

 だから今にも弾幕に当たるかもしれないんだよ

 ほら、今にも当たりそうに......ってやば!

 

榛「【雷符】『雷狼龍の遠吠え』!」

 

 私は慌ててスペル宣言をした

 その瞬間、辺り一面に青白い光が散った

 とりあえず間に合ったぁ

 

 このスペルはあの有名なゲーム『モン○ン』の『ジン○ウガ』の落雷をイメージしたスペルで、私を中心にどこからか青白い雷が落とされる。この雷はランダムで落とされるのだが、私にもどこに落とされるのかは分からないという欠点があったりする

 他には青白く小さい弾が漂うようになる。これはジンオ○ガの周りにいる『超電○光虫』をイメージした

 『竜』じゃないのは誤字じゃないよ?

 

 とりあえず、ブレイクしないよう魔理沙姉の弾幕を避けながらこちらも当てていこう

 時間切れを狙ってもいいが、耐えないかもしれない

 なので弾幕を当てながら時間切れも狙う

 それが今の私にとって最善の選択だと思う

 

 しばらく避けていると魔理沙姉の弾幕がなくなった

 スペルカードブレイク、攻略である

 対して私のスペルはまだ宣言中

 ここで魔理沙姉に被弾させておきたい

 しかしまぁ、相手はこれから異変解決者として名を広める魔理沙姉ですから、そう簡単に被弾してくれないわけで......

 でもね?そう易々と回避してるのもどうかとおもうの

 一応落雷はランダムなのに......

 そうこうしているうちに時間切れが迫ってきた

 体力ゲージを削りきられるのは避けられたからいいけど、まだ魔理沙姉に被弾させてない

 できればこのスペカの最後の仕掛けに引っかかってくれると嬉しいが......

 あ、そろそろ

 

榛「10...9...8...7...6―――」

 

魔「何ブツブツ言ってるんだぜ?」

 

榛「5...4...3...2...1――」

 

 うまく引っかかってね、魔理沙姉

 

榛「0!」

 

 その瞬間、私の周りに大きな音を出しながら雷が落ちた

 そして辺り一面青白い光でよく見えなくなる

 私の狙い、それは目眩まし

 敵が近くにいれば私の周りに落ちる雷で被弾するし、遠くなら目が眩むほどの光を浴びる

 大妖怪やもしかしたら巫女相手には使えないが、初見さん相手なら使える技

 しかも、かかればしばらく目が見えなくなる

 ちなみに光による後遺症はないから安心だよ

 

魔「うわ!?眩し!」

 

 よし!かかった!

 これで近くに行って通常弾幕を当てれば......

 

 ポンッ

 

魔「わ!?な、なんだぜ!?今何か当たったって弾幕か!?くそ!よく見えないぜ!」

 

 やった......!

 

榛「~~!よっしゃあああぁぁ!」

 

 思わずガッツポーズするくらいだよ!

 初めて魔理沙姉に被弾させることが出来た!

 いや、魔理沙姉との弾幕ごっこ自体初めてだけど、卑怯って言われそうな当て方だけど、当てることができた!

 

 ポンッ

 

榛「あ......」

 

 あ~、当たった

 うん、油断してた

 これでお互い一つずつ減ったね!

 

魔「ん?当たったのか?」

 

榛「......うん」

 

 なんか微妙だなぁ

 

魔「なんというか、油断大敵だぜ?」

 

榛「わかってるんだけどね......」

 

 ほら、嬉しくなると周りが見えなくなるといいますか、なんといいますか

 とりあえず再開再開

 

 再び図書館内に光が溢れる

 今度はこっちから仕掛けてみるか

 

榛「【星符】『星屑の竜巻(スターダストトルネード)』」

 

 星型の魔力弾が私を中心にクルクル回るというスペル

 時折飛ばされてきた物ということでデカイ魔力弾が出てくるというおまけ付き

 これで攻略されたら後がないのだが......

 このスペルは魔理沙姉自慢のスピードが生かせないから精神ダメージくらいは負わせるくらいできそうなんだけどなぁ

 

 でも簡単にはいかないわけで、魔理沙姉は弾幕を躱しながら私に通常弾幕を撃ってきた

 あの、ちゃんと私の方を見ながら撃ってる?

 明らかに見てない時も私の方にきてるってどゆこと

 貴女は巫女さんの勘とかホーミング機能とか無いはずでしょうに

 うん、魔理沙姉はやっぱり主人公の人だね

 しかもこのスペルって私自身も動きにくいんだよね

 このままじゃ体力ゲージを削りきられるなぁ

 なんて思ってる内に時間切れでもないのに周りに漂っていた星が消えた

 うん、体力ゲージ削られたぁ!

 って思いながら躱してるけど、魔理沙姉?それはカードだよね!?もしかしてくるの!?

 

魔「今度はこれだぜ!【彗星】『ブレイジングスター』!」

 

 え?『ブレイジングスター』って確か猛スピードでこっちにくる技だったよね!?

 しかも体力ゲージが設けられてるけど速すぎて実質耐久スペルとなってるやつ!

 って思ってる間に方角決めてるし!?

 

魔「行っくぜぇぇ!」

 

 来ないでー!?

 

 ゴオオゥゥゥン!

榛「うわっ!?」

 

 なんとかギリギリ回避

 でもこのスペカってまだくるんだよね......

 

魔「まだまだいくぜ!」

 

 だよねー!?

 

 ゴオオゥゥゥン!

榛「うお!?」

 

魔「おらー!」

 

 ゴオオゥゥゥン!

榛「うにゃー!?ってあ!?」

 

 魔理沙姉の突進から逃げるのに必死だったせいで忘れていたが、このスペルは魔理沙姉の通った後には魔力弾がばらまかれて、しかもゆっくりと動くやつで......

 何が言いたいかというとつまり......

 

 ポンッ

 

 被弾である

 2回目の被弾だから後1回残機がある

 また、スペルカードも残り1枚

 対して魔理沙姉はまだ2回残機が残っていてスペルカードは残り1枚

 あと1回、被弾とスペカのどちらかが無くなれば私の負けとなってしまうところまで来てしまった

 

 その後はスペカの時間切れまで逃げきれたが勝算は絶望的なもの

 あと1回で勝負が決まってしまう

 

 ――もう、諦めてもいいんじゃない?――

 

魔「なぁ榛奈。次に出すスペカで勝負を決めないか?」

 

榛「......いいよ」

 

魔「そうか。じゃあ私はこれで行くぜ」

 

 そう言いながら魔理沙姉はカードを構えた

 カードの絵は魔力砲を出している絵

 つまり、マスパ系のスペルということ

 ならこちらも砲撃系のスペルでいこう

 

 ――どうせもう、勝てないんだから――

 

魔「それじゃ、いくぜ。【恋符】『マスター――」

 

榛「【星光】『スターライト――」

 

 魔理沙姉はミニ八卦炉に自分の魔力を溜めて、私は自分の両方の手のひらに魔力を溜めて構えた

 

魔「――スパーク』!!」

榛「――バスター』!」

 

 お互いの魔力砲がぶつかりあう

 最初はどちらも引けを取らなかった

 しかし、私の方は魔力が無くなりそうで少しずつ魔理沙姉が押していった

 別に魔理沙姉の方が魔力が多いというわけではない

 ただ、私は手のひらから直接魔力を出しているのに対して、魔理沙姉の方はミニ八卦炉という増幅装置から出しているため、少しの魔力で威力の高い砲撃ができるようになっている

 つまり、道具を使っているか否か

 それだけで私の敗北が決まってしまうのだから嫌なものだ

 いや、私の努力不足なんだろうな

 未だに箒でしか空を飛べず、弾幕ごっこだって弱いまま、今だって負けそうになっている

 

 ――いっそのこと、もう諦めよ?――

 

 そう思いながら出していた魔力を少しずつ減らしていくと遠くから声が聞こえた

 

 

 

フ「榛奈!!頑張って!!」

 

 

 

 ドクンッ

 

 フラン様の声が聞こえた瞬間、私は魔力を減らすのをやめた

 そうだ、この勝負は私の為じゃない。ましてや魔理沙姉の為じゃない

 フラン様の為に戦ってるんだ!

 だったら諦めてどうする!

 情けなく負けるか!?いや、どうせ負けるなら最後まで抗ってやる!

 それが今の私がフラン様の為にできる勝負だから!

 

――魔力が足りないなら別ので補えばいい。“私”には霊力がある。周りには魔力の残骸だってある。それを自分の魔力に“変えれば”いい。そうすれば魔力が増幅するから――

 

 霊力や残骸を自分の魔力に変えた瞬間、私の中の魔力量が増えた

 代わりに霊力がほとんど無くなってしまったが魔力さえあればこの砲撃は持続できる

 これで、逆転できる!

 出す魔力を少しずつ増やしていって、段々と私が押していった

 だが、魔理沙姉も負けずと魔力を増やしていって、丁度魔力砲の接触している部分が真ん中になった

 少しずつ時間切れに迫ってきているのが分かった

 とにかく出す魔力を増やそう、時間切れまでに押し切ろう

 これならもしかしたら勝てるかもしれないから

 

 シュゥゥゥ......

 

 しかし、時間切れとなり魔力砲が出なくなってしまった。スペルカードブレイクである

 この場合、勝敗は私の負けだろう

 魔理沙姉はまだ残機を2回残していて、私は1回しか残っていない

 やっぱり姉には勝てないか......

 フラン様にも勝利を納めることができなかった......

 ......悔しいな......

 

魔「そう悔しそうな顔をするな。この勝負は引き分けだぜ?」

 

榛「......え?」

 

魔「だって最後のスペル、お互い引けを取らずにブレイクしちまっただろ?そして私と榛奈はお互いスペカを3枚共使ってしまった。その場合、残機関係なく引き分けなんだぜ」

 

榛「そうなの?」

 

魔「そうなんだぜ」

 

 そっか......

 でも悔しいな

 勝ちたかったな




後書き~

いや~戦闘シーン、駄目駄目でしたね。スペカの説明は伝わってるといいな
そして榛奈の本気スイッチ、フラン様はポチポチ押せちゃいます
弾幕ごっこの結果は引き分けとしましたが、本気の勝負でも引き分けな気がします(魔理沙は攻撃力が、榛奈は防御力があるから)

それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話『図書館がぁぁ......』

前書き~

1日1話、やめました!
理由はリアルが忙しくなってきたので......
受験生の忙しさが私にもついに来てしまった......
それでも1週間に1話は出そうと思いますので大丈夫です!

今回は図書館がぁ...というか小悪魔がぁ...かもしれない
見てのお楽しみです。予想はつきやすいかもしれませんが

では今回もゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[大図書館]

 

 

 戦いが終わり、魔理沙姉と共に床に降り立つと

 

フ「榛奈ー!!」

 

榛「ふぎゃっ!?」

 

パ「何変な声出してるのよ......」

 

 フラン様が凄い勢いで私に抱き着いて(突進して)きた

 うん。状況的にはフラン様に抱きつかれたってことは嬉しい状況なんだけどさ、抱きつく時の勢いがね......

 吸血鬼の力って強いからさ......

 力加減を忘れて抱きつかれたら普通なら吹っ飛ぶんだよ

 そうじゃなくてもダメージくらうんだよ

 つまり何が言いたいかというと

 

榛「フラン様...... 抱きつく時の勢いを弱めてください...... じゃなきゃ私が死ぬ......」

 

フ「あ、ごめん!その、大丈夫?」

 

榛「大丈夫です......なんかもう慣れました......」

 

小「慣れてしまったんですか」

 

 あはは......

 まだ力加減を覚えてなかった頃からずっと抱きつかれてたからなぁ

 慣れるのも仕方ないというかなんというか

 慣れって恐ろしいね!

 

パ「それにしても最後の魔力砲同士のぶつかり合い、凄かったわね」

 

小「そうですね。まさかあんなに威力の高い魔力同士がぶつかりあうなんて思いませんでした」

 

魔「私だって榛奈があそこまで威力の高い魔力砲が撃てるなんて思わなかったぜ。途中のところは弱くなってたけどな」

 

榛「あれは魔力が無くなりそうになってて。後諦めそうになってて、フラン様の応援のおかげで最後まで頑張れました。ありがとうございます」

 

フ「えへへ。どういたしまして!」

 

 すると師匠は何か悩んだ仕草をすると訊いてきた

 

パ「最後の砲撃の時、魔力が無くなりそうになったって言ったわよね?」

 

榛「はい。そうですが......」

 

パ「じゃあ何故最後の最後で魔力砲の威力が増したのかしら」

 

榛「魔力が無いなら代わりの物を力にしようと思いまして。私には霊力もありますし、周りには戦いでの魔力の残骸が漂っていたのでそれを自分の魔力に変えれないかなぁ、と思ってやってみたら出来ました」

 

パ「なっ!?」

魔「はぁ!?」

小「えっ!?」

 

フ「?」

 

榛「え?そんなに驚くこと?」

 

 あれ?魔法に詳しい3人に驚かれたぞ?不思議だなぁ

 

魔「驚くのも当たり前だぜ!?」

 

パ「もしかして意味、分かってないの?」

 

榛「あはは...... 分かってないです」

 

 すると師匠はため息をつきながら説明してくれた

 

パ「まず、この世界にはいくつかの力があることは分かるわよね?」

 

榛「はい。『霊』『魔』『妖』『神』の力ですね」

 

パ「他に美鈴の使っている『気』の力もあるわね。それで、どの力がどの種族に宿るかも分かるわね?」

 

榛「“人間”には『霊力』『魔力』が、“妖”には『妖力』『魔力』が、“神”には『神力』でしたね」

 

パ「えぇ。どうやらその辺りはちゃんと分かってるみたいね」

 

榛「最初に教えてもらった基礎ですから」

 

パ「なのに先程貴女のやったことの意味が分からないと......」

 

榛「すみません......」

 

パ「はぁ、いい?極端に言うと力を別の力に変換させるのはできないの。ましてや周りに漂う力の残骸を自分の力にするなんて私でも出来ないわよ?」

 

榛「......え?」

 

 え?つまり物凄いことしちゃったってこと?

 

魔「ちなみに榛奈は何か能力はあるのか?」

 

榛「うん、あるよ」

 

魔「へぇ、何の能力だぜ?」

 

榛「あ~、師匠。言っちゃっていいですか?」

 

パ「別に私の許可を取らなくてもいいわよ」

 

榛「分かりました。私の能力は【ありとあらゆるものを守る程度の能力】だよ」

 

魔「守る...か。能力とは関係ないみたいだな」

 

フ「ねぇ、榛奈って凄いことしちゃったの?」

 

榛「しちゃったみたいですねぇ、自覚ないですが」

 

 でも考えてみればそうなのかもしれない

 『霊力』と『魔力』、どちらも幻想の力だが同じではないだろうし

 つまり本来なら変えることの出来ない力を変えてしまった......ということ?

 あ、あれ?段々と自覚が湧いてきたぞ?

 まぁとりあえず

 

榛「ここは幻想郷ですから。不思議はいつも傍にいるものですよ~」

 

 現実逃避だぜ~

 

魔「本当にどうしたらそんなこと出来たんだぜ?」

 

榛「うーん。“変えたい”って思ったからかな?」

 

 私にもさっぱりなんだよね

 こう無意識に出来たというかなんというか

 

フ「あ!そういえば魔理沙!」

 

魔「ん?なんだぜ?」

 

フ「今度異変が終わったら弾幕ごっこして!」

 

魔「いいぜ!でもなんで異変が終わったらなんだぜ?別に今でもいいが......」

 

フ「異変の最中はやらないってお姉様と約束だからだよ。後、榛奈が異変が終わって数日経ってからの方が相手が全力で戦えるからって」

 

魔「そんなこと言ってたのか......」

 

フ「違うの?」

 

魔「まぁ異変での疲労がとれた状態で戦えるだろうな」

 

 フラン様と魔理沙姉がそんな会話をしていると

 

パ「で、こあ、榛奈」

 

小「はい、なんでしょうか?」

 

榛「なんですか?」

 

パ「図書館の片付け、よろしくね」

 

 そう言われて周りを見渡すとそれはある意味地獄絵図だった

 近くにある本棚はほぼ倒れており、中にしまってあったであろう本もそこらじゅうに散らばっている

 幸い、本や本棚には傷がつかないよう魔法が掛けられてあるがこれは酷いね

 さすがに3回も同じ場所で弾幕ごっこをすれば、こうなるよね。しかもそのうち2回は激しい戦いだったからなぁ

 

小「~~!?」

 

 あ、コアが声にならない叫びをあげてる

 まぁ叫ばずにはいられないよね......

 

榛「あは...はは......は......」

 

 私も苦笑いにならずにはいられないよ......

 片付け、大変だなぁ

 

魔「いや~、散らかっちまったなぁ」

 

榛「ま、魔理沙姉。手伝ってくれたりとか......」

 

魔「あー、手伝ってやりたいのはやまやまだが、私はこれから一緒に来たやつのとこに行かなきゃならないんだぜ。頑張ってくれだぜ!」

 

 いやそもそも魔理沙姉が暴れたのもあるんだよ?

 まぁ多分巫女さんとこに行くんだろうけど

 あ、そうだ

 

榛「わ、私も行く!」

 

魔「へ?」

 

小「こぁ...?」

 

 あ、コアが泣きそうになってる......

 ごめん、私にはやりたいことがあるんだ

 私、霊夢にあってみたいんだよ

 後、もしかしたら咲夜さんがどっかで倒れてそう

 

榛「いいですか?師匠」

 

パ「片付けはどうする気?」

 

榛「後でやります!徹夜してでも頑張ります!なので行かせてくれませんか?」

 

 すると師匠はため息をつきながら

 

パ「いいわよ。但し、帰ってきたら片付けよ」

 

榛「分かりました!」

 

フ「榛奈が行くなら私も行くー」

 

榛「では、フラン様も一緒に行きましょうか」

 

魔「それじゃ、行くか。榛奈!主のとこまで道案内頼むぜ!」

 

榛「了解、それじゃ師匠、行ってきます。コア、帰ってきたらちゃんと手伝いますから」

 

フ「いってきまーす」

 

パ「2人ともいってらっしゃい」

 

小「早く帰ってきてくださいね~......」

 

 そうして私とフラン様と魔理沙姉は紅魔館の主の下へ飛び始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小「榛奈さんは何故あんなに魔理沙さんについていきたがってたんでしょうか?」

 

パ「姉についていきたかったのか、もしくはレミィや咲夜の様子を見に行きたかったのかもしれないわね」

 

小「2人とも大丈夫だと思うんですけどね......」

 

パ「あの子のことだから片付けから逃げたわけではないわね」

 

小「それは私も思います」

 

パ「さて、こあ。片付けを始めてちょうだい」

 

小「わかりました!パチュリー様!」




後書き~

榛奈が魔理沙について行った理由は巫女(霊夢)が来てると思ったので会いたかったからですが、パチュリーが推測した考えも理由になります
咲夜とレミリアが霊夢との戦いで怪我をしていないか心配になったからです

次回、お待たせしました霊夢sideです
霊夢と6面ボスの戦いです!
但し、戦闘シーンはなし!

感想など待ってます!

では次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話『妖怪は見た目に騙されたら駄目ね』

前書き~

テスト勉強週間なので書けないと思ってたんですが、意外と書けました~!
てことでようやく最新話です!
今回は紅魔郷6面ボスと霊夢の勝負です!
時刻は既に夜!夜の王の時間だァ!
最初から最後まで霊夢sideでいきますよぉ!

では、今回もゆっくりしていってね!!


~魔理沙が榛奈と弾幕ごっこをしている頃~

 

霊夢side

 

 

 私はメイド服を着ていた女性、おそらくここ従者を倒した後、館の中を探索していた

 もともとはあの従者に案内させる気だったが、戦いの後気絶してしまい、気がつくまで待つのもめんどくさかったから勘に頼って飛んでみたのだが、館が広いのか、未だ首謀者の元へたどり着けず、お昼すぎに神社を出たせいか、既に外は暗くなっている

 館が広いといえば、この館の廊下はやけに長い

 外から見た長さを遥かに超えている

 何か術式でも掛けてあるのだろうか

 こんなに広かったら掃除も大変でしょうに

 

 そんなことを考えながら飛んでいると他の扉より大きな扉があった

 中からはとても大きな妖気を感じる

 他の妖怪より強い妖気、おそらく大妖怪並ね

 おそらくここに首謀者がいるのだろう

 気を引き締めていきましょうか

 そう思いながら私は大きな扉を両手で開けた

 

 

 

 

 

 

 

霊「ここは...... 大広間かしら」

 

 扉の先は広い空間があった

 壁には色の付いたガラスで絵が描かれてたり、ところどころに高級そうな壺が置いてある。...売ったらいくらになるのかしら......

 そして、扉から部屋の奥にむけて紅い絨毯がひいてあり、奥には王座があった

 そしてそこには少女、いや幼い女の子が座っていた

 青みがかった銀髪に全体的に紅みがかった桃色の服

 紅い目と背中に生える蝙蝠のような翼、そして彼女から溢れ出る圧倒的な妖気が彼女を人外だということを示している

 おそらくこいつが異変の犯人なのだろう

 

レ「あら、お客さんかしら」

 

霊「アンタは?」

 

レ「人に名を尋ねる時は自分からじゃなかったかしら?」

 

霊「......博麗 霊夢、人間よ。で、アンタは?」

 

レ「レミリア・スカーレット。誇り高き吸血鬼で、ここ紅魔館の主よ」

 

霊「そう。で、アンタが異変の犯人ね?」

 

レ「霧のことを指しているのならそうよ。ところで、ここにくるまでにメイドを見かけなかったかしら?貴女を倒すよう命じたんだけど」

 

霊「あの銀髪のこと?それならさっき私が倒したわ」

 

レ「そう、人間って使えないわね」

 

霊「彼女、やっぱり人間だったのか」

 

レ「貴女、殺人犯ね」

 

霊「一人までなら大量殺人犯じゃないから大丈夫よ」

 

レ「で?」

 

霊「そうそう、迷惑なの。アンタが」

 

レ「短絡ね。しかも理由が分からない」

 

霊「とにかく、ここから出てってほしいのよ」

 

レ「ここは私の城よ?出ていくのは貴女だわ」

 

霊「この世から出てってほしいのよ」

 

レ「しょうがないわね。今、お腹いっぱいだけど......」

 

霊「護衛にあのメイドとやらを雇っていたんでしょ?そんな箱入り娘なんか一撃よ!」

 

レ「咲夜は優秀な掃除係。おかげで首一つ落ちてないわ」

 

霊「貴女は強いの?」

 

レ「さぁ?あんまり外に出して貰えないの」

 

霊「......なかなか出来るわね」

 

レ「こんなにも月が紅いから、本気で殺すわよ」

 

霊「こんなにも月が紅いのに」

 

 

「「永い(楽しい)夜になりそうね」」

 

 

 

 

 

 ~少女弾幕中~

 

 

 

 

 

 周りを紅色に染めていた弾幕が一斉に消える

 

レ「クッ......!」

 

霊「スペルカードブレイク。これで私の勝ちね」

 

レ「まさかこの私に勝つなんてね。本当に貴女、人間?」

 

霊「失礼ね。私は正真正銘、人間の巫女よ」

 

レ「その割に強すぎると思うけど」

 

 強くなかったらこの幻想郷じゃ生き抜けないのよ

 しかも私は巫女。妖怪退治を専業としてるのだから強くなかったら余計生き抜けないわ

 ってとにかく霧を出すのを止めさせないと

 

霊「それより早く霧をなんとかしてちょうだい。私は早く異変を解決してお茶を飲みたいのよ」

 

レ「すぐには無理よ。今霧を出すのをやめてもすぐには消えないわ。自然に消えるのを待つだけね」

 

霊「それをどうにかできない?この霧には妖力があるから人里の人間に被害が出てそうだし」

 

レ「え?こんなに薄めたのに?」

 

霊「薄めたって......」

 

 まったく......

 人間は妖怪より弱いっていうのに......

 こいつらは人間をなんだと思ってるのかしら

 

レ「とにかくすぐには無理よ。......多分」

 

霊「いや多分って。何か方法があるのかしら?」

 

レ「もしかしたら親友に頼めばなんとか出来るかもしれないわね」

 

霊「アンタ親友いたのね」

 

レ「えぇ。とても頼れる魔女がね」

 

霊「やっぱり人外か......」

 

レ「吸血鬼の親友は魔女でしょ?」

 

霊「そんなの知らないわよ。幻想郷じゃ吸血鬼なんてアンタぐらいなんだから」

 

 そもそも幻想郷には吸血鬼がいなかったらしく、ずっと前に起きた【吸血鬼異変】でようやく吸血鬼が幻想入りしたけど、幻想郷を侵略しようとしてたから妖怪の賢者達に倒されたから滅多にいない、というか目の前にいる吸血鬼ぐらいじゃないかしら

 そんな吸血鬼の事情、というより妖怪の事情すら知らないのに分かるわけないじゃない

 

霊「とにかくその魔女に頼みなさい。すぐに霧を無くす方法を」

 

レ「妖怪使いの荒い巫女ね。まぁ負けたのは私だからそれなりに対応するわよ」

 

霊「で、その魔女はどこにいるの?」

 

レ「紅魔館(うち)にある大図書館にいるわ」

 

霊「ならさっさといきましょ」

 

 図書館ねぇ

 魔理沙が行きたそうな場所ね

 そう思いながら身体を扉の方に向けると、扉の奥から話し声が聞こえてきた

 

バタンっ!

魔「霧雨 魔理沙!参上だぜ!」

 

?「ちょっ!?そんな勢いよくドア開けたら壊れ......ないか」

 

咲「そこまで壊れやすくないわよ」

 

?2「稀に吸血鬼の力を耐えきれるくらいの丈夫さだもんね」

 

 勢いよく扉が開く音がして、見馴れた親友が勢いよく入ってきた

 他にも魔理沙みたいな服装の娘や廊下で倒したメイド、枝に宝石が付いたような羽?を持つ娘もいた

 いったい彼女達は誰なのかしら




後書き~

今回のレミリアと霊夢の戦い(カット)でしたがいかがでしょうか?
戦闘シーンが無く、物足りない方が多いでしょうね......
しかし!私に戦闘シーンなんて求めてはいけない......
何故なら榛奈と魔理沙の弾幕ごっこが書いた中で1番いい文章だから!これ以上は酷くなる!(まだ1回しか書いてませんが(笑)

さて、次回は図書館を出た後の魔理沙sideを書く予定です!

感想、評価、その他色々お気軽にどうぞ!

では次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話『少女は憧れ、嫉妬し、怒りを抱いた』

前書き~

前回の投稿から14日目!
え?1週間投稿?
何それ食べれるの?

すみません間に合いませんでした
活動報告にも書きましたがこれから3月下旬まで不定期更新になりそうです
受験オソロシイ((((;゚Д゚)))))))

さて、今回の話は榛奈達が図書館を出た後の話です
そこでとある人物に出会うのですが......
前回、魔理沙sideを書くと言ったな
あれは嘘だ

はい、後々予定を変えました
というより気付いたら榛奈sideを書いてました
ということで今回は榛奈sideです

サブタイトルに関しては書けた日に思いついたのを付けております

それでは今回もゆっくりしていってね!


~図書館を出た後~

 

榛奈side

 

[廊下]

 

 

フ「そういえば魔理沙は誰と一緒に来たの?」

 

 図書館を出た後、私と魔理沙姉とフラン様はレミリア様のところへ向かっていた

 その途中、フラン様は魔理沙姉に質問していた

 

魔「紅白のめでたいやつだぜ」

 

榛「いや誰だよ」

 

 確かに巫女服は紅白で日本ではめでたい色だと言われてるけど......

 

魔「ん?榛奈、その口調だと誰だか知ってるのか?」

 

榛「うん。まぁ、多分ね......」

 

 原作知識ですなんて言えるわけがない

 でも実はまだ原作知識が曖昧だった時に1度だけ会ったことがある

 その時は互いに自己紹介してなかったけどね

 

魔「ふぅん。まぁ一応言っておくと、名前は博麗 霊夢。特徴は紅白の脇の出てる巫女服で、髪を大きなリボンで止めてるぜ」

 

フ「脇?」

 

榛「気にしたら負けです」

 

 私も初めて霊夢にあった時気にしたけど、指摘しづらかった......

 なんだかその事を言ったら御札が飛んできそうで......

 

 

 そんな雑談をしていると、一時的に廊下を抜けた

 紅魔館の玄関、エントランスホールだ

 ここから2階に上がり、奥へ進めばレミリア様のいる大広間へ行くことができる

 ただ、図書館と大広間は上か下かなだけでほぼ同じ位置に存在している

 つまり、ここから2階に上がり、大広間へ行くには先ほど通ってきた道と同じ距離を飛ばなければならない

 まだまだ道のりは長いなぁ

 なんて私は思いながら私達は2階の奥へ進む

 

フ「やっと半分だ~」

 

魔「げっ...... あの廊下がまだ半分もあるのかよ......」

 

フ「1階の図書館の真上が大広間だからね」

 

魔「ぅうぇ......」

 

 ちなみに時計塔は1階2階を貫いて3階の大広間の上、つまり紅魔館の中央にある

 

魔「それにしてもなんでこんなに長いんだ?外から見た時も大きかったがそれ以上だぜ」

 

フ「紅魔館には時間を操れるメイド長がいるからね。それで広くしてるんだよ」

 

魔「そりゃまた凄い能力だが、時間とこの広さがどう関係するんだぜ?」

 

榛「師匠が言うには時間と空間は密接に関わっていて、時間を操るということは空間を操ると同義ってことらしい」

 

魔「分かるようで、分からないぜ」

 

榛「私も詳しくは理解してないけど、とりあえずあの人は空間も操れるんだなって思ってるよ。そして空間を操ることで紅魔館は異常な広さになっている」

 

 一応、私なりの解釈もあるけどね

 時間を止めたり、早めたり、遅めたり。それらは空間の時を操っていて、つまり空間を操っているという事だと思っている

 

魔「確かに異常だぜ。こんなに広いんじゃ生活に支障が出るんじゃないのか?」

 

 確かに魔理沙姉の言う通り移動するのに時間が掛かるから時間が足りない時もあるけど......

 

榛「今日は特別。弾幕ごっこができるように廊下を長く広くしているだけで普段は少し短いよ。それでも長いけどね」

 

魔「具体的には普段よりどれ位長くなってるんだぜ?」

 

榛「そうだなぁ。1.5倍くらいかな?」

 

フ「うん。多分そのくらいかな」

 

魔「おいおい、それでも長いぜ。掃除とかどうしてるんだぜ?」

 

 掃除かぁ......

 掃除、ね......

 

榛「妖精メイド達がやってるよ。......やってはいるよ......」

 

魔「?」

 

フ「あはは......」

 

 やってはいるんだよ

 でも、出来てないというか、なんというか......

 ちゃんと出来てる子もいれば遊んじゃう子もいたりするんだよなぁ

 だからって叱っても悪影響だし、ちゃんとやろうとしてるのが分かるから憎めないし......

 その分咲夜さんがフォローしてるから大丈夫だけどね

 

 そう話をしていると廊下の様子が変わってきた

 壁や床、天井にまで切り傷や何かが当たった跡があったり、「大入」と書かれた御札が散らばっていたりする

 

魔「霊夢のやつ、派手に暴れたなぁ」

 

フ「んー。その霊夢と咲夜が戦った後かな?」

 

榛「でしょうね。この切り口は見たことがあります。御札は霊夢、切り傷は咲夜さんのナイフだと思います。この館で武器に刃物を使うのはフラン様と咲夜さんしかいませんからね」

 

 ちなみにだがフラン様が剣、咲夜さんがナイフだ

 どうやら移動しながら戦ったようで、その光景は奥まで続いている

 私達は更に奥を目指し飛んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一応、博麗 霊夢以外の侵入者の可能性も考え、警戒しながら進んでいると、前方に誰かが壁に寄りかかって、いや倒れているのを発見した

 銀髪の頭に白のカチューシャを付けていて、何かがかすった跡なのか所々破けてボロボロになっている青と白のメイド服。そして周りに刺さっていたり落ちていたりするナイフ

 うん、ここまで特徴があれば分かる人は分かりますよね。家族なら余計にね

 

フ「咲夜!?」

 

榛「大丈夫ですか!?」

 

 私はそう言いながら箒を降り、咲夜さんに駆け寄った

 はい。咲夜さんです

 え?心じゃ妙に落ち着いてるって?

 予想はしてましたから

 それにしても咲夜さんが気絶するぐらいって......

 霊夢は容赦ない人みたいだね......

 仲良くしたいけど、出来るかな......

 

咲「ぅぅ......」

 

フ「あ!咲夜、大丈夫?」

 

 そんなことを呑気に思っているとどうやら気がついたようだ

 

咲「ぅぅ...くっ......早くお嬢様の元へ行かなくては......」

 

 しかし、どうやら咲夜さんは周りが見えていないようでそんなことを言いながら身体を起こそうとしていた

 

フ「ダメだよ咲夜!安静にしてなきゃ!」

 

咲「っ......フラン様......」

 

 その声で目が覚めたようでハッとした表情で周りを見渡した

 

榛「フラン様の言う通りです。今は安静にしてください」

 

咲「榛奈......」

 

 しかし、咲夜さんは身体を起こすのをやめなかった

 

フ「咲夜!」

 

咲「......すみません、フラン様。私はお嬢様の元へ向かわなければなりませんので......」

 

榛「咲夜さん!」

 

 困った

 咲夜さんが全然言うことを聞いてくれない

 身体を動かした時傷が痛むのか、若干顔を苦痛の色に染めるのに、それでも起き上がろうとする

 傷はおそらくここを通った霊夢と戦闘になった際に負ったのだろう

 傷といってもほとんどが弾幕がかすった跡なのか擦り傷だが、それでも身体中にある

 その姿はまるで私と魔理沙姉がやった

弾幕ごっこ(遊び)】ではなく、まさに

スペルカードルール(戦闘)】で、霊夢と張り合ったということを示しているようで、美しく見えた

 その反面、少しだけ嫉妬して、それだけ傷を負いながら自身の心配をせず、主の元へ行こうとするその咲夜さんに怒りを覚えた

 従者にとっては相応しい姿勢なのかもしれないが、私にとってはただ自分を疎かにする人に見える

 ......まぁ、立場が逆なら同じことをしてる気がするから人のことは言えないけど

 さて、どうしたら咲夜さんを説得できるのか......

 

 

 

 

魔「なら一緒に行けばいいんじゃないか?」

 

榛「それだ!」

 

 その手があった!




後書き~

とある人物、咲夜さんです
霊夢との戦闘で結構傷ついてますね
ちなみに魔理沙は服がほんの少し破けてるくらいです
え?榛奈は傷付いてないのかって?
榛奈は服ですら傷がついていません
こういう時って榛奈の能力便利ですね

図書館のとある一角では時計の振り子がゆらゆらと......
大広間からは見えず、屋上に大きな大きな時計が......

次回、二つに分かれた話が一つになる、かもしれない
では次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話『魔力尽きれば倒れもする』

前書き~

今年最後の投稿です

今回、霊夢が我が儘っぽく見えてしまいそうですが、我が儘ではないんですよ?

今回はside変更はないです

それでは今回もゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[廊下]

 

 

フ「うん、その方がいいね」

 

 魔理沙姉の提案に私とフラン様は賛成した

 確かに一緒に行けば咲夜さんがレミリア様のところに行くということを達成出来るし、私達も咲夜さんの近くにいることで無茶しないか見ることが出来る

 それに、どうせ道が同じなら一緒に行ったほうがいいだろうから

 

咲「しかし......」

 

 それでも咲夜さんは1人で行こうとする

 そんな咲夜さんに私はだんだんと苛立ってきていたわけで......

 

榛「あ~もう!しかしも何も無いです!はい!私の後ろに乗る!魔理沙姉!咲夜さんを抱えて乗せて!フラン様も手伝ってください!」

 

魔「あ、あぁ... 分かったんだぜ......」

フ「う、うん...分かった......」

 

 私は箒に跨り、後ろに人1人乗せれるぐらいのスペースを空け、乗りやすいよう高さを低くした

 その間に魔理沙姉とフラン様は咲夜さんを抱え、というより立つのを支え、私の後ろに乗せた

 その瞬間、背中と箒に確かな重みがかかり、咲夜さんが倒れてきたということ、それほど疲れているということが分かった

 そして、そんなに疲れているのに1人で行こうとしていた咲夜さんにまた少しイラついたが、背中に咲夜さんの温もりが伝わり、気持ちが落ち着いてきた

 ついでに何とは言わないが、柔らかい感触が伝わってきて、少しだけ心臓が跳ねたのは秘密だ

 

榛「あ、飛行中に落ちたら駄目なので腰に手をまわしてくださいね」

 

咲「...えぇ」

 

 咲夜さんはそういうと腰に手をまわした

 なんというか、ふとこの時頭に浮かんだ文がある

 

『咲夜さんが 仲間に 加わった!』

 

 いや元々仲間だけどね?

 

フ「それじゃあ、早く行こうか!」

 

榛「はい!」

 

魔「いざ!異変の犯人の元へだぜ!」

 

榛「いやそれ私達も含まれるんだけどね?」

 

 

 

 

 

~少女達移動中~

 

 

 

 

 

榛「あ、見えてきた」

 

 咲夜さんが旅の......ではなく道中の仲間に加わり、暫く飛んでいると、図書館とは違う大きな扉が見えてきた

 これが大広間へ繋がる扉だ

 近づいてみると、中から誰かの話し声が聞こえる

 おそらく、片方はレミリア様、もう片方は霊夢だろう

 もう既に戦い終わってそうだな。ここまで結構長かったし

 

魔「ん?ここか?」

 

フ「うん。そうだよ」

 

咲「......中に誰かいるようね。おそらく片方はお嬢様で、もう片方はあの巫女ね」

 

魔「そうか...... よし、入るか」

 

 そういい、魔理沙姉は箒から降りて、扉に手をかけると......

 

バタンっ!

魔「霧雨 魔理沙!参上だぜ!」

 

榛「ちょっ!?そんな勢いよくドア開けたら壊れ......ないか」

 

咲「そこまで壊れやすくないわよ」

 

フ「稀に吸血鬼の力を耐えきれるくらいの丈夫さだもんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 まさか勢いよく開けるとは思わなかった

 いや、“魔理沙”の元々の性格を考えれば予想つくだろうけど

 ついでに壊れないか心配したが、流石紅魔館の扉

 フラン様が言うに吸血鬼の力に耐えきれるってどれだけだよ、丈夫すぎるよ。素材何?

 

レ「あら、フランに榛奈に咲夜。3人とも来たのね」

 

霊「魔理沙、そっちはもう見終わったの?」

 

 そして中には咲夜さんが予想したとおり、レミリア様と紅白で袖が肩から離れていることが特徴的な服を着た巫女『博麗 霊夢』がいた

 

魔「あぁ、既に終わらせたぜ。反対側は宝の山だったぜ」

 

榛「......」

 

 なんというか......

 魔理沙姉は宝って言うが“魔理沙”みたいに「死ぬまで借りてくぜ☆」なんて言って盗んでいかないことを願おう

 もし盗みそうだったら止め......れるか?

 うん。自信ないから盗まないことを祈ろう

 後霊夢?そんなに目を輝かせないで。宝の山といっても君にとってはただの紙束だよ?

 知識が欲しいなら十分宝の山だけど......

 

霊「そう。......後で貰っていくわね」

 

榛「貰っていくな!」

 

 考えてたことが的中してしまい、思わず声が出てしまったし、でかくなってしまった

 幸い、周りはそこまで気にしてないみたいでよかった

 ...後ろに乗っていた1人を除いて

 

咲「......榛奈も怒鳴る事があるのね」

 

 咲夜さんが何か言ってるが、あえて反応しない

 ......一応言っておくけど、怒鳴るというより突っ込んでるだけのつもりだけどね

 

 そして、箒に乗っているものは降りて、飛んでいるものは床に足をついた

 

レ「それで咲夜、何故貴女は榛奈の後ろに乗ってるのか、説明してもらえるかしら」

 

咲「......はい」

 

 あ、若干落ち込んでる

 まぁレミリア様の命令をこなすことが出来なかったからね......

 レミリア様は気にしないと思うけど

 

 

 

~Pッ...メイド長説明中~

 

 

 

 咲夜さんは自分が霊夢と戦い、負けたこと。気がつくと私達がいたこと。無理してレミリア様のところへ向かおうとする自分を止め、箒の後ろに乗せ、ここまで連れてきてもらったことを説明した

 

レ「なるほどね。......咲夜がそんな風になるほどってどれだけやったのよ」

 

霊「別に普通よ。ただ、容赦しなかっただけ」

 

 いや容赦しなかっただけで咲夜さんが気絶するわけないだろ

 ただ単に貴女の力が強かっただけだよな?

 ......色々突っ込めるぜ......

 

レ「とりあえず咲夜は分かったわ。それで、何故3人はそこの白黒と来たのかしら」

 

榛「それは私から」

 

 私は図書館にいると、いきなり白黒(魔理沙姉)が来たこと。コアが倒され、師匠も喘息で戦えなくなってしまったこと。途中でフラン様が来たこと。師匠の代わりに私が戦い、引き分けになったことなど、咲夜さんに会うまでの出来事を話した

 ただ、私が魔理沙姉の妹だということ。魔理沙姉が発作中の師匠にマスパを撃ったことは言わなかった

 なんとなく、その方がいい気がしたから

 

レ「そう。なら、この異変は紅魔館の敗北なわけね」

 

咲「っお嬢様!私はまだ戦えます!」

 

レ「咲夜」

 

咲「っ......!」

 

 咲夜さんがそういうと、レミリア様から多大な妖力が溢れ出た

 その妖力の前にフラン様や巫女を除いたその場にいた全員が息を飲んだ

 

レ「貴女は1度、この巫女に負けた。榛奈は引き分けだったみたいだけど」

 

榛「いえ、先程は引き分けと言いましたが、あの戦いは私の負けです。この白黒に手加減をしてもらった結果、引き分けでしたから」

 

 そう。負けだ

 魔理沙姉は意識的なのか無意識なのか、手加減をしているのが分かった

 それは弾幕を受ける立場にいたから分かったのか、はたまた姉妹だからなのかは分からないが分かった

 手加減をしている相手に引き分け、それは私にとって負けを意味する

 

魔「おい榛奈......」

 

榛「......」

 

 するとレミリア様から溢れ出ていた妖力が無くなった

 それと同時にレミリア様のため息が聞こえ、私と咲夜さんは思わず身構えた

 

レ「なら私達は()()、この紅白と白黒に負けたってことね」

 

咲「......え?」

 

榛「全員?」

 

フ「ってことはお姉様も?」

 

レ「えぇ。私もこの紅白に負けたわ。本気だったのにね」

 

霊「異変を解決するのが巫女よ。負けるわけないじゃない」

 

魔「私は手加減したつもりはなかったぜ」

 

榛「なら無意識......ってどっちにしても私の負けだから」

 

 何故か諦めない魔理沙姉

 私が負けだと思ってるのだから諦めてほしいよ......

 

霊「それで、あの霧。どうするのよ」

 

レ「だからそう急がなくてもいいじゃない」

 

霊「もし晴れるのが明日だったら報酬が減るかもしれないのよ」

 

フ「なんの話なの?」

 

霊「あの趣味の悪い霧のことよ。早く晴らしてほしいの」

 

魔「ん?霧を出すのを止めれば消えるんじゃないのか?」

 

 魔理沙の疑問も最もだけど

 

榛「残念ながら、既に出ている霧は自然に消えるのを待つしかないよ」

 

霊「だからそれをなんとかして欲しいのよ」

 

 そんな無茶苦茶な

 気長に待ってれば大丈夫なのに......

 あ、いや。原作じゃこの霧って人体に悪影響及ぼしてるんだっけ

 なら早めに晴らしたいって気持ちも分かるな......

 

レ「......パチェのところに行くしかないのかしらね」

 

 確かに師匠ならそれくらい出来そうだな

 

榛「しかし、師匠は今日の戦いで疲れてるでしょうから」

 

フ「なら榛奈はなんとか出来ないの?」

 

榛「......え?」

 

 え?私?

 

レ「そうね。パチェの弟子なんだから何か出来ないかしら」

 

榛「......へ?」

 

 レミリア様まで?

 

フ「榛奈、何かできない?」

 

 フラン様やレミリア様に見つめられ、更に咲夜さんに魔理沙姉に霊夢までこっちを見始めた

 いやあの、こっちを見つめられてもこまるんですが

 

榛「......一応、出来なくはないですけど......」

 

霊「ならなんとかしてちょうだい」

 

 いや霊夢?出来なくはないけどさ。あまり使いたくないんだよ

 何せ結構な大技だから、後で疲れる

 

榛「自然に待ってh霊「いやよ」ですよねー」

 

 やるしかないわけか

 

魔「何か問題があるのか?」

 

榛「いや、まぁ、特には......」

 

霊「ならやりなさい。貴女達がこの異変をやったんだから」

 

榛「あはは...... 分かったよ。でも外に行かなきゃ出来ないよ?」

 

霊「ならさっさと行きましょ」

 

 そういい、霊夢は扉の方に歩き始める

 それにならって私達も外に向かった

 

 

 

 

 

~少女移動中~

 

 

 

 

 

[紅魔館 門番前]

 

 

榛「わーあかーい」

 

魔「いや知ってるだろ」

 

榛「今日はまだ外に出てなかったの」

 

 霧が出始めた頃は図書館で師匠の魔法陣の手伝いをしてたから

 ちなみに壁にめり込んで気絶していた美鈴はそのままです

 

咲「何か手伝えることはないかしら」

 

榛「特にありませんよ。この魔法陣は私か師匠しか書けませんし、それ以外はコマンド(呪文)を言うだけですから」

 

 咲夜さんのお気持、心に染みます......

 

 私は箒の先を地面に当て、箒にインク代わりの魔力を流しながら、筆で描くように魔法陣を描いた

 そして、書き終わるとその真ん中に立ち、諦め気味に言った

 

榛「......本当にやらなきゃ駄目?」

 

霊「他に今すぐやれる方法があるならいいわ」

 

榛「わかってるよ。やるよ。やればいいんだろ。どうなったって知らないからな」

 

 主に私の魔力的なことで

 

 私は目を閉じ、少しずつ魔法陣に魔力を注ぎつつ、頭の中で魔力を魔法へと変換させる

 少しずつ......少しずつ......

 そして、魔力が十分に溜まったところでコマンド(呪文)を口にした

 

 

榛「...数多なる精霊よ......闇を消し去る聖なる力よ...... 我が生み出しし風と共に、魔の霧を晴らせ!『 浄化の風(プリフィケーション ウィンド)』!」

 

 

 コマンド(呪文)を口にした瞬間、風がピタリと止まったと思えば次の瞬間、暴風が吹き始め、瞬く間に霧が晴れていった

 幸いなことに今は日が沈み終わった夜

 フラン様方吸血鬼の弱点である太陽は沈んでいる

 このまま霧を晴らしても大丈夫そうだ

 

 

 

 

 

 しばらくして、風が止み、魔法陣が自動で消えた

 霧を晴らい終えたということだろう

 少しずつ目を開けると普段は霧に包まれている湖は霧が無くなり、月光の仄かな光が辺りを明るく照らして、幻想的な光景を創り出していた

 頬に感じるのは先程の暴風が無かったようなそよ風

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅霧異変が終わった瞬間である

 

榛「でき...た...ぁ......」

 

 そう感じた瞬間、私の身体から力が抜けた

 

魔「榛奈!?」

霊「ちょ!?」

フ「榛奈!?」

咲「榛奈!」

レ「榛奈!」

 

 皆がわたしを呼ぶ声を聞きながら、私は意識を手放した

 あぁ、やっぱり幻想郷は綺麗だなぁ......




後書き~

最後に倒れてしまった榛奈さん。さてさてどうなることやら

次回、来年投稿です

それでは来年もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1.4章『紅魔郷EXまでの日々です』
第14話『夢と紅茶と過去の気持ち』


前書き~

今回は主に榛奈sideでいきます(sideが無くなる部分もあります)

それでは今回もゆっくりしていってね!


《?年》

??side

 

[???]

 

 

 ......暖かな日差しを感じる......

 ......鳥の声が聞こえる......

 ......髪を撫でる風を感じる......

 ...ここはどこ?

 

 そう思い、閉じていた目を開けると、私は赤い鳥居の前に立っていた

 ......箒を持って

 

 なんで私はここにいるの?

 さっきまで別の場所にいたはず

 ......別の場所ってどこ?

 思い出せない......

 それになんで私は箒を持って―――

 

?「はぁい。何をしているのかしら?」

 

 目線の先の空間が裂けて中から誰かが出てきた

 

 ......誰?

 女性のようだが顔に靄がかかったように見えない

 でも私の勘だと知っている人みたい。空間を裂いたのが人なのかは知らないけど

 

私「特に何もしてないよ。ただ掃除をしていただけ」

 

 勝手に私の口が喋る

 いや、そもそも私の身体なのかな?

 なんだか私の身体じゃないみたい

 

?「そう?ボーッとしてたみたいだけど」

 

私「考え事をしていただけ」

 

?「何を考えていたのかしら?」

 

私「今日も此処(??)は美しいなって」

 

 此処とはどこだろうか

 

?「......そうね」

 

 彼女はその言葉を言うのに躊躇ったように感じた

 

私「...―はそう思わないの?」

 

?「......」

 

私「まだ此処(??)が、楽園じゃないから?」

 

?「......ごめんなさい」

 

 彼女が何に対して謝っているのか分からないが、それは彼女のせいじゃないと思えた

 

私「いいよ。私に――――は出来ても此処(??)を楽園にすることは無理だろうから」

 

 所々、靄のかかったように聞こえない部分がある

 

?「――......」

 

 彼女が私の名を呼んだのは分かったが、言葉までは分からない

 

私「私の役目、事実上は――――だけど、私にとっては次の世代への基礎作りだと思ってるから。――の技術や切り札を増やして、――――に活かす。次の世代、その次の世代が寿命まで生きられるように。そして、此処(??)を楽園に出来るように」

 

?「貴女はそれでいいの?」

 

 所々聞こえない部分があるから何のことか分からないけど、それでも分かる

 

私「「私は、それでいいんだよ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

榛奈side

 

[紅魔館 自室]

 

 

榛「...ん......」

 

 ......なんだか不思議な夢を見ていた気がする。どんな夢だっけ

 ってあれ?私寝てる?

 いつ寝たんだっけ

 記憶が曖昧だなぁ

 ひとまず起きてみるか

 

 そう考えながら目を開けようとすると

 

フ「あっ榛奈!」

 

榛「ぐへっ!?」

 

 誰かが私に抱きついてきたが、重い......

 あ、これ重さじゃなくて衝撃だ

 むしろ軽かったわ

 ってそうじゃなくて

 

榛「フ...ラン......様......?」

 

フ「ぅぅ...ぐすっ......はるなぁ......」

 

 抱きついてきたのはフラン様だった

 そのフラン様の顔をよく見ると、元々紅かった目が更に赤みがかっており、頬には涙の跡が残っている

 なんで泣いているんだ?

 にしても痛い痛い痛い......!

 そんな強く抱きしめないで!骨がギシギシいってる!折れる!ヤバ...あ......

 

レ「フラン。榛奈が苦しがってるから離してあげなさい」

 

フ「...うん......」

 

 レミリア様に言われ、フラン様は大人しく離してくれた

 

 よ、よかった。ギリギリ骨が折れなかった。ナイスレミリア様。よく頑張った私の骨。後でカルシウムとってやる

 ってレミリア様もいたの?

 

咲「榛奈、大丈夫?」

 

榛「え......?咲夜さんまで?って師匠も...... どうしてここに......?」

 

 よく見れば周りにはフラン様、レミリア様の他にも咲夜さん、師匠がいた

 さすがに寝たままだと失礼だと思い、身体を起こそうとすると

 

咲「まだ寝てなさい」

 

 と言われ、また寝かされた

 それにしても身体を起こそうとした時、身体が重かったけどなんでだろ

 それにこの状況は?

 

レ「それにしても、急に倒れるから驚いたわよ」

 

榛「え?倒れた?」

 

フ「そうだよ。......もしかして気絶する前のこと覚えてないの?」

 

 泣き止んだが、まだ目元の紅さが戻ってないフラン様が訊いてきた

 

榛「気絶する前......?」

 

 気絶してたっけ?

 そもそも目が覚める前の記憶が曖昧だからなぁ

 あ、思い出した。魔法使って霧を晴らしたんだっけ

 そしたら急に力が抜けて意識が......

 

榛「あ......」

 

 あ、気絶してたな

 

フ「「あ」じゃないよ!凄く心配したんだから!」

 

榛「すみません......」

 

 フラン様や皆さんに心配をかけてしまった......

 でも、どうして倒れたんだろ?

 

パ「話を聞いたけど、倒れた原因は霧を晴らす時に使った魔法による魔力切れね。それも、調べて見たら生命維持に必要な分以外全て無くなってたわよ」

 

 あぁ、魔力切れか......

 でも、必要な分以外全て無くなってたってそんなに魔力を込めてない気がしたんだけどな

 あの魔法は込める魔力を調節出来る魔法だったし、余分に入れてなかった気がするんだけどな

 

榛「そんなに、ですか?」

 

パ「えぇ。はぁ...... まったく。貴女馬鹿じゃないの?あの規模の霧を広げることでさえ大変で、数十日掛かったのに、その霧をたった数分で晴らすなんて...... そんなの魔力を多く使うに決まってるじゃない。それに、あの時は魔理沙との戦いで魔力の大半失ってたのよ?倒れるのも当たり前ね」

 

榛「あはは......」

 

 苦笑いしか出てこないぜ......

 そういえばどれぐらい寝てたんだろ?

 

榛「あの、私ってどれほど寝てたんでしょうか」

 

レ「昨日の夜から今まで、約1晩ね」

 

榛「あ、そこまで寝てなかったんですね」

 

パ「魔力の殆どを失ったのだから3日は寝ててもおかしくないのだけれどね」

 

 少ないとは思ったけど、本当ならもっと寝てないとダメだったのか

 え?というかあれから1晩?

 じゃあ、あの二人は?

 

榛「あの、異変解決に来ていた2人はどうしたんですか?」

 

レ「あぁ、霊夢と魔理沙ね。昨日は2人とも帰らせたけど、魔理沙は今日も来たわね。理由は教えてくれなかったけど」

 

榛「そうでしたか」

 

 魔理沙姉、来てるんだ

 後で図書館に行かなきゃ

 霊夢にはいきなり倒れて、悪いことをしてしまったな

 神社にも行かないと。お賽銭とお供物を持って行ったほうがいいよね

 

榛「あっ、師匠。本棚とかの方は......」

 

パ「小悪魔と魔理沙が片付けてくれたわ」

 

榛「え?魔理沙姉が?」

 

 小悪魔はともかく、なんで魔理沙姉が?

 

パ「なんでも、「自分も散らかしてしまったし、榛奈が頑張っていたから」だそうよ」

 

榛「そうだったんですか......」

 

 魔理沙姉......

 私、貴女のこと見直したよ......

 いや別に馬鹿にしてた訳じゃないけど

 なんか、感動したよ......

 

レ「......ところで榛奈。貴女、何か隠してることないかしら?」

 

榛「え?隠してること、ですか?」

 

レ「えぇ。さっき魔理沙のことを「魔理沙()」と呼んでいたけど、どういうことかしら?」

 

榛「あっ......」

 

 さっき師匠の言葉に反応した時だ......

 やっちゃったなぁ

 いや、別に隠してなかったけど

 

榛「別に隠していた訳ではないのですが」

 

レ「あら、じゃあなんだって言うのかしら?」

 

 あれ?レミリア様少し怒ってらっしゃる?

 レミリア様から怒りオーラを感じますが......

 少し怖いですよ?恐ろしいですよ?

 咲夜さんは咲夜さんで「早く言いなさい」と目で語りかけてくるし!師匠は呆れてるし!フラン様は苦笑いだし!

 まぁ隠してるわけじゃないから言えるけどね

 

榛「霧雨 魔理沙は私の義姉なんです。なので魔理沙姉と呼んでいます」

 

 それを言うと、レミリア様から出ていた怒りオーラが無くなった

 あぁ、恐ろしかった怖かった

 なんで怒ってたのか分からなかったけど

 

レ「そう。それで、何故姉がいることを今まで言わなかったのかしら?」

 

榛「訊かれなかったから......じゃ駄目ですかね?」

 

 言う必要がなかった、というのもあるけどね

 

 そう言うと、レミリア様はため息をつきながら言った

 

レ「......まぁいいわ。ひとまず私は部屋に戻るわね。咲夜、後のこと頼んだわよ」

 

咲「かしこまりました」

 

パ「私も行くわね。榛奈、今日は寝ていること。それと、しばらくの間、無理は禁物よ」

 

榛「...はい......」

 

 魔理沙姉のところに行けないのか......

 後でこっそり......は駄目だろうなぁ......

 

フ「私は魔理沙を呼んでくるよ」

 

 お、ありがたい

 色々と謝らないといけないからな

 お願いしておこう

 

榛「お願いします」

 

 そう言うと、咲夜さんを除いた3人は部屋を出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

[紅魔館 廊下]

 

 

 フランと別れ、書斎へ向かう途中、パチュリーはレミリアに話を切り出した

 

パ「それにしてもレミィ。さっきは何故怒ってたのかしら?」

 

レ「それは......」

 

 レミリアは言おうか言わないか悩んだ後、言った

 

レ「......榛奈が、姉妹がいることを言わなかったからよ」

 

パ「......レミィのことだから、それだけじゃないんでしょ?」

 

 パチュリーがそう言うと、レミリアは諦めたかのように肩をすくめた

 

レ「......流石は私の親友ね」

 

パ「何年貴女の親友を務めていると思ってるの。レミィの考えはある程度のことなら分かるのだから」

 

レ「えぇ、貴女とは100年来の親友ね。......ねぇパチェ?あの娘(榛奈)は紅魔館に来てから1度でも家族の話をしたかしら」

 

パ「......そういえばしていないわね」

 

レ「私はね、あの娘が家族の話をしなかったのは私達をまだ信頼していなかったからだと思うの」

 

パ「......それはレミィの勝手な憶測よ」

 

レ「えぇ、私の勝手な憶測よ。でも、そう思うとなんだか私に対して怒れてきたのよ。「あぁ、私はまだあの娘に信頼されていなかったのか」って」

 

パ「......」

 

レ「咲夜も家族の話をしないけど、それは嫌な過去があるから。でもあの娘は違う。嫌な過去があるわけじゃない。魔理沙の様子を見るに、逆にあの娘は愛されていた。それなのに何も言わなかった。思えばあの娘は自分の過去を話さなかった。それに、私が引き留めていたからあの娘は紅魔館に居たけど、もしかしたら本当は家族のもとへ帰りたかったのかもしれない。私が無理矢理引き留めてしまっていたから――」

 

 パンッ――

 

レ「......え?」

 

 不意にレミリアの頬に痛覚が走った

 

パ「いい加減にしなさいレミィ」

 

 痛覚の正体はパチュリーがレミリアの頬を平手打ちしたときのものだった

 レミリアは親友の突然の行動に驚き、固まる

 それでも、パチュリーの行動は止まらない

 

パ「あの娘が何も言わなかった?それはあの娘も言っていたとおり、私達が訊かなかっただけじゃない。信頼されてない?これから信頼されるようにすればいいじゃない。引き留めたから何?そのおかげでフランが救われたのよ。それにね、レミィ。あの娘は無理矢理なんて思ってないみたいよ」

 

レ「...そんなの、パチェの勝手な憶測じゃ......」

 

パ「レミィのなんて妄想じゃない。それにあの娘言ってたわ。レミィが能力を使って拾ってもらわなかったら今頃死んでいたかもしれない。そして、拾ってもらえたから私達と出会えた。引き留めて迎え入れてくれたから紅魔館に居れる。感謝してるって」

 

レ「パチェ......」

 

パ「それにね、貴女は吸血鬼よ?無理矢理ぐらいが丁度いいのよ」

 

レ「......ふふっ、それはそれでどうなのかしらね。......ごめんなさいパチェ。なんだか私らしくなかったわね」

 

パ「別にいいわよ。それで、これからレミィはどうするのかしら?」

 

レ「今度、直接榛奈に訊いてみるわ。信頼については得てみせるわよ。だって榛奈も私達の()()だからね」

 

パ「えぇ。それでこそレミィよ」

 

 「「ふふっ」」

 

 2人はお互いの顔を見つめると、笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

榛奈side

 

[紅魔館 自室]

 

 

咲「......」

 

榛「......」

 

 気まずい......

 いや別に咲夜さんと2人っきりになるのは初めてじゃない、むしろよくあるし、無言で作業することもある。でもこの雰囲気は気まずい......

 どうしよう......

 咲夜さんは咲夜さんで黙ってこっちを見てるし......

 

榛「あの...... なんで私の方をじっと見てるんですか......?」

 

咲「......なんでもないわ。それより、何か飲む?」

 

榛「は、はい。いただきます」

 

 私がそう言うと、寝ていた私の身体を起こし、時間を止めたのか一瞬で紅茶を用意し、差し出した

 

 ってなんか誤魔化された気が......

 

 流石に差し出されていたままでは悪いので、私はそれを受け取り、中身を口に含んだ

 

 あ、美味しい

 ってそうじゃなくて

 

榛「それで、どうして私をじっと見てたんですか?」

 

咲「......流してくれないのね」

 

榛「気になりますから」

 

 私がそう言うと、咲夜さんは躊躇いながら言った

 

咲「......なんで貴女が姉がいるってことを言ってくれなかったのか考えてたのよ」

 

榛「それは先程も言った通り訊かれなかったからであって」

 

咲「本当に?」

 

榛「え?」

 

咲「本当にそれだけなの?」

 

榛「......どういう意味ですか?」

 

 咲夜さんの言葉に、私は思わず怪訝な顔をしてしまった

 

咲「もし訊いていたら貴女は正直に答えてくれたかしら」

 

榛「それは......」

 

 私は...... 本当に答えていただろうか

 正直に答えていたのかもしれないし、誤魔化すかもしれない

 私の気持ちがわからない......

 

 実のところ、自分の気持ちを思い出せるのは一年前の転生前の記憶が戻った時からのしかなく、それまでの自分の気持ちを思い出せない

 別にその時の記憶が無いわけじゃない

 記憶はある。けど、その時の自分の気持ちが分からない

 要は見聞きしたものや自分で言ったことは覚えているが、その時の心情が思い出せないのだ

 だから過去を語るとしても、話す時に語る自分の気持ちは、今の私がその記憶を思い出して感じたことか、強い思い故に憶えている気持ちだけ

 今の私が楽しかったと思っている思い出も、もしかしたら昔の私は全く別の感情を抱いていたのかもしれない

 だから此処(紅魔館)に来た当時、私がどんな気持ちだったのか思い出せない

 紅魔館(悪魔の棲む館)についても、人里で得た知識でしか知らなかっただろうし、恐怖していたのかもしれない

 だからこそ、人格のハッキリしていなかった頃に訊かれたら正直に答えていたかもしれないし、答えていなかったのかもしれない

 つまり、分からないのだ

 だからこそ、咲夜さんの問いにはすぐに答えれず、俯いてしまった

 

 そんな私を見た咲夜さんは、私からは表情が見えないが、どことなく悲しそうな声色で話した

 

咲「もしかしたら、私達は榛奈に信頼されてなかっt榛「そんなことない!」っ榛奈......?」

 

 私は誤解を解くため...... いや、今の気持ちを伝えるため、咲夜さんの言葉を遮り、俯いていた顔を上げ、咲夜さんの目を見て言った

 

榛「私は咲夜さんが好きです。フラン様が好きです。レミリア様が好きです。師匠が好きです。コアが好きです。美鈴が好きです。紅魔館の皆が大好きです。そして、好きだからこそ信用しているし、信頼もしています。魔理沙姉のことを言わなかったのは私が紅魔館で過ごしていく上で今は言う必要がないと思ったからであって、決して皆さんのことを信頼していなかったわけではありません!」

 

 ...少なくとも、今の私はそう思っている

 

咲「......そう。ごめんなさい。疑うようなことを言って」

 

榛「謝らないでください。今まで話してなかったのが原因なんですから」

 

咲「あら、それならどうしたらいいのかしら?」

 

 そんなの決まってる

 

榛「お相子、ですよ。どちらも悪くなかった、なんて言いません。どちらも悪かったんです。だからお相子です」

 

咲「そう...... ならありがとう」

 

榛「いえ、お礼を言われる筋合いも......」

 

咲「私達を好きだと言ってくれたことよ」

 

榛「......家族を好きじゃなかったら何になるんですか」

 

咲「......」

 

 咲夜さんから返事がない

 顔を見ればいつもの瀟洒な顔ではなく、ポカーンとした顔だ

 

榛「えっと...... 何か間違ったこと言いましたか?」

 

咲「......ふふっ。そうね、家族だものね」

 

 咲夜さんは女の私でも見惚れるほど綺麗な笑顔でそう言った

 

榛「......」

 

咲「どうかした?」

 

榛「......あ、いえ。なんでもないです」

 

 やばい、真面目に見惚れてた

 ......咲夜さんの笑顔は美しいなぁ

 

咲「それじゃ、私は仕事に戻るわね。何かあったら呼びなさい」

 

榛「はい。分かりました」

 

 私がそう言った後、咲夜さんは静かに部屋を出ていった

 

榛「......」

 

 私は手に持ったままだった中身の入ったカップを口につけ、傾けた

 

 紅茶、美味しいなぁ




後書き~

凄くどうでもいいですが、榛奈はダージリン(砂糖入り)かアールグレイのミルクティーが好きです
...アールグレイのミルクティーってどことなくチョコの味がすると思うのは私だけだろうか......
そして、しばらく会話風後書きは休みます
何か新しい設定やらなんやらが出来たら書きます

それでは次回もゆっくりしていってね


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話『妹と不審者と勘違い』

前書き~

今回もそれなりに早目に投稿できました!
これはアイディアが浮かびまくったんですよね

さて、今回は魔理沙side→榛奈sideとなってます
オリキャラも登場しますよ

それでは今回もゆっくりしていってね!


魔理沙side

 

[紅魔館 図書館]

 

 

魔「ふぅ......」

 

 私は今、紅魔館の大図書館に来ている

 そして、パチュリーから勧められた魔導書を一通り見終わったところだ

 にしても......

 

魔「これ、読めるのが少ないな......」

 

 そう独り言を言ってしまうくらい、その魔導書を全て読むのに必要な知識を私は持ち合わせていなかった

 魔導書は基本、何の知識も持たない者が見るとその者の視界では文字が歪んで見える。そのような者が読める魔導書は入門や初心者用などしかない。 魔導書を読むにはその魔導書を読むのに必要な知識を身につけなければならないからだ

 そして私が今手にしている魔導書を全て読むには相当な知識が必要になってくる

 ただ、最初の方は読める部分があり、そこに書かれていたのが魔法の基礎だったこと、そしてタイトルに書かれていた『The Grimoire of H.G. vol.1』の文字から察するに、これは著者が自身の魔法を記録した物なのだろう。つまり上級者は勿論、初心者もそれなりに読める本なのだ。これを書いた人物は一体どんなやつなのか気になるが、もう死んでる確率が高いだろうな。何せ自身が著書した魔導書を自分から手放す魔法使いなんてそうそういない。いるとすればその魔法使いが弟子を取っていて、その弟子に向けた本か、自身が死んだから自然に手放された時か、物好きな魔法使いがこの図書館に贈ったかぐらいだろう

 ま、とにかく会えないってことだな

 よし、暇だし、もう1度読み返してみるか

 

 そう思い、再び本を開こうとしていると――

 

バタンッ!

 

フ「魔理沙!榛奈が起きたよ!」

 

ガタッ!

 

魔「なっ!?本当か!」

 

 扉が勢いよく開いたと思えば、この館の主の妹であるフランが、私の大切な妹である榛奈が起きたことを知らせてくれた

 その言葉に私は思わず勢いよく椅子から立ち上がる

 

フ「うん!だから早く行こ、魔理沙!」

 

魔「お、おう!分かったぜ!」

 

 私はそう言うと、隣の椅子に乗せていた愛用の魔女帽子と、机に掛けて置いた箒を手に取り、先に行ってしまったフランの後を追った

 

 

 

 

 

~少女移動中~

 

 

 

 

 

[紅魔館 榛奈の自室前]

 

 

フ「さて、着いたね。魔理沙」

 

魔「あぁ。そうだな」

 

 私達の目的の部屋である、榛奈の自室

 昨日、榛奈が倒れた時、この部屋に運んだ

 その後は、レミリアに言われるがままに帰ったが、心配で今日も来たんだよな......

 昨日はそこまで話してなかったからまだ会いずらいし、いつ起きるか分からないから大図書館で待ってたんだが、結構早く起きたな

 くそっ、なんだか緊張してきた

 

フ「魔理沙...... もしかして緊張してる?」

 

魔「えっ?あ~、いや、まぁ...な...... なんで分かったんだ?」

 

 まさかフランに見抜かれるとは......

 緊張が表に出てたか?

 

フ「ふふっ。なんだか魔理沙、緊張した榛奈と同じような感じだったもの。感覚で分かったんだよ」

 

魔「なんだそれ」

 

 榛奈と同じか

 何の辺がそうなんだろうな

 

フ「でも、何時までも扉の前に立ってるわけにもいかないから、中に入ろ?」

 

 そうだな

 何時までも扉の前にいるわけにはいかない

 逃げちゃダメだ

 特に、妹のことではな......!

 

魔「......あぁ。行くか」

 

 フランは私の言葉を聞くと、取っ手に手をかけ、開けようとして――固まった

 

魔「?おいどうsフ「しっ」......?」

 

 私が問いかけようとすると、フランはジェスチャーで静かにと言い、扉の奥に耳を傾けた

 

魔「(どうしたんだ?)」

 

フ「(誰かの話し声が聞こえる)」

 

 小声で訊いてみると、話し声が聞こえるようだ

 

魔「(榛奈や咲夜じゃないのか?)」

 

フ「(1人は榛奈だけど、もう1人は違う。男の人の声だよ)」

 

魔「(は?)」

 

 男の人の声?

 榛奈は男の人が苦手なはずだ

 実際、人里にいる時は、年下や親父はともかく、年上や同級生でさえ苦手としていた

 だから、男の人が話しかけてきたら、榛奈はいつも逃げるか、私の後ろに隠れてた

 その榛奈が男の人と話してるだって?

 

 私もフランと同じように耳を傾けてみるが、声すら聞こえない

 防音はしっかりしているみたいだ

 

魔「(くそっ。全然聞こえないぜ)」

 

フ「(妖怪特有の耳のおかげだね)」

 

魔「(なんて言ってるんだ?)」

 

フ「(うーん。誰の声かは分かるけど何を話してるか分からない)」

 

魔「(そうか......)」

 

 榛奈が人里を出て既に4年ほど経ってるからな

 男の人と話せるようになったのかもしれん

 実際、最初は苦手だった香霖とも仲良くなってたし

 

フ「(でも変だよ)」

 

魔「(ん?何がだ?)」

 

フ「(紅魔館は私が知ってる限りじゃ、男の人を招いたことないの。それに、私達が幻想郷に来てから1度も男の人と仲良くなったこともないよ。榛奈からもそういう話を聞かないし)」

 

魔「(え?じゃあ、中にいるのは......)」

 

フ「(......分かんない。警戒しといて損は無いかも)」

 

 つまり、もしかしたら榛奈は襲われてるのかもしれないってことか!?

 いや、榛奈なら抵抗――いや駄目だ!榛奈は今魔力が無い状態。魔法が使えないじゃないか!

 くそっ!榛奈!今助けるぜ!

 

 私はそう思い、無我夢中で扉を開けた

 

フ「えっ!?ちょっと待って魔理沙!」

 

バタンッ!

 

魔「榛奈!大丈夫か!」

 

榛「え?あっ......」

 

男「ん?あっ......」

 

 部屋の中には、ベッドの上で無防備に横になっている榛奈と、そのベッドに腰掛け、榛奈にキスしそうなぐらい顔を近づけている、和服の青年が居た

 

 この...... クソが......!

 

フ「はるn魔「私の妹に何しようとしてるんだ!!このド変態が!!」

 

 普段の私なら到底出さないような低い声で怒鳴り、怒りのままにミニ八卦炉を構えて

 

榛「えっ!?ちょ!?魔理沙姉待って!」

 

男「お、おい待て!」

 

魔「問答無用だ!!【恋符】『マスタースパーク』!!」

 

 私はありったけの魔力をつぎ込み、マスタースパークを撃った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 それは、咲夜が部屋を出ていった後の話

 

榛奈side

 

[榛奈の自室]

 

 

男「よっ、久しぶりだな」

 

 紅茶も飲み終わり、ベッドに横になっていると、何も無いはずの空間に穴が空いたと思えば、中から1人の青年が出てきた

 

榛「......久しぶりだな。だが何も無いはずのところからいきなり現れるな、(りゅう)

 

男「そういうなよ。ま、名前を憶えてくれててありがとな。榛奈」

 

 青年の名前は『神月(かみづき)龍夜(りゅうや)

 呼びやすいため、私は龍と呼んでいる

 一応、古くからの仲だ

 

 彼の容姿としては、黒髪黒眼、髪は短く、全体としては整っており、100人中99.5人はカッコイイと言うほどのイケメン

 服は紺を基調とし、所々に白銀の線が入っている和服だ

 その服がより一層、彼を引き立てているのは、一目瞭然だろう

 

榛「まぁ、お前みたいなやつは憶えておいて損はないだろうしな。最後に会ったのはあの時か」

 

龍「損得問題かよ。ま、あれ以降、元気にやってるみたいじゃないか」

 

榛「今は魔力を無くしてこの有り様だけどな」

 

龍「それはそれでいいんだろ?」

 

 龍は私の寝ているベッドに腰を下ろしながら言った

 

榛「あぁ。魔力を使い果たしたのはアレだが、皆が私を心配してくれているってのは分かった。まぁ罪悪感はあるが」

 

龍「それもまた人生だ」

 

榛「ははっ。私にそれが当てはまるのか」

 

龍「あぁ、当てはまるさ。だってお前は“人”だからな」

 

榛「?なんか含んだような言い方だな」

 

龍「気にするな。今のお前には関係ないさ」

 

榛「?まぁいいか」

 

龍「それで、結局能力には気づけたのか?」

 

榛「は?【ありとあらゆるものを守る程度の能力】のことか?」

 

龍「え?いや、もう一つの方だが」

 

榛「...え?」

 

龍「...ん?」

 

 

 「「......」」

 

 

榛「ハァァァァ!?」

 

龍「えぇぇ!?知らなかったのか!?」

 

榛「いや知らないよ!なんだよもう一つって!そしたら私2つも能力持ってるじゃねーか!どんな能力だよ!!」

 

龍「おい色々崩壊してるぞ!」

 

榛「こんな時に気にしてられっかー!」

 

龍「キャラ崩壊がぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

榛「ハァ......ハァ......ふぅ......」

 

龍「で。落ち着いたか?」

 

榛「あぁ、すまん。取り乱して」

 

龍「まぁいいさ。それで、本当に心当たりないのか?」

 

榛「心当たりか......」

 

 そんなのあったような......なかったような......

 

龍「ほら、普通の魔法使いとの弾幕ごっこの最後の方、使ってたじゃないか」

 

榛「え?確か...... 霊力を魔力に変換させたこと?」

 

龍「あぁ。それもあるな」

 

榛「それじゃ、私のもう一つの能力は【霊力を魔力に変換させる程度の能力】?それなりに使えそうだな」

 

龍「いや違う。似てるが、もっといい能力だ」

 

榛「え?他には......」

 

龍「お前の周りにあった魔力の残骸を自分の魔力に変化させただろ」

 

榛「あぁ、そういえば。なら【ありとあらゆるものを魔力に変換させる程度の能力】か?」

 

龍「それも違う。近づいてきてるけどな」

 

榛「はぁ?じゃあなんだっていうんだよ」

 

龍「俺から教えるのはタブーだからな。答え合わせぐらいなら出来るが」

 

榛「つまり、自分で考えろってか。うーん......」

 

 能力......能力......

 龍の物言いだと、魔力に変換出来たのは能力のおかげで、変換系の能力だよな......

 変換...... 変換......

 うーん...... うーん......

 

龍「ん?お前顔赤くないか?」

 

榛「......え?」

 

龍「もしかして、知恵熱か」

 

 龍は笑いながらそう言った

 

榛「知恵熱って...... 赤ん坊じゃあるまい」

 

龍「ははっ、冗談だ。でもまぁ、顔が赤いのは本当だぞ?よく見れば気だるそうだし」

 

榛「そう言われれば、そうだな。さっきの衝撃で気づかなかったが、少し身体がだるい」

 

龍「ふむ。もしかして熱か?」

 

榛「いや、風邪を引くようなことしてないが......」

 

龍「体内にある魔力のほとんどを無理矢理、いやお前にとっては無意識だが、消費してたんだ。その前には霊力も消費してたし。その反動が、今になって来てるんじゃないか?」

 

榛「無意識だったのか」

 

龍「無意識の内に、どれくらい注げば霧が晴れるか分かってたんだろ」

 

榛「そうか」

 

 すると龍は、身体をこちらに向けてきた

 

龍「とりあえず、どれくらい熱があるかみるか」

 

榛「ん?体温計でもあるのか?」

 

龍「いいや、昔ながらによくあるだろ?額をあわせるやつ」

 

榛「別にそこまでやらなくても」

 

龍「いいじゃねーか、俺とお前の仲だし。それに、手で測るのもあるが、それだと分かりにくいだろ?てことで、大人しくな」

 

榛「はぁ。分かったよ」

 

 私はそう言い、身体から力を抜いた

 

龍「......襲っていいか?」

 

榛「SLB(スタ-ライトバスタ-)を御所望で?」

 

龍「冗談だ」

 

 そう言い、龍は段々と顔、というより額を近づけてきた

 あと数センチ、勢いよく当たらないようゆっくりやってると―――

 

バタン!

 

魔「榛奈!大丈夫か!」

 

榛「え?あっ......」

 

男「ん?あっ......」

 

 魔理沙姉が扉を壊しそうな勢いで開けてきた

 後ろにはフラン様もいる

 

 ......あれ?なんかフラン、固まってるな

 魔理沙姉なんて身体をワナワナと震わせて......

 

フ「はるn魔「私の妹に何しようとしてるんだ!!このド変態が!!」

 

 え!?なんでそうなった!?

 しかも魔理沙姉はミニ八卦炉をこっちの方に向けて構えて――

 ってその方向だと私も被害がぁ!

 

榛「えっ!?ちょ!?魔理沙姉待って!」

 

男「お、おい待て!」

 

魔「問答無用だ!!【恋符】『マスタースパーク』!!」

 

 スペカなはずなのに、とても非殺傷な風には感じないマスパがこちらに向かってきた

 私は思わず目をつぶるが、龍が空間に穴を空けてたのは見逃さなかった




後書き~

知恵熱って大人も発症するようですよ
正式名は別ですが
ストレスが原因だとか......
作者には今のところ縁の無い話ですね

そして、オリキャラ紹介
名前『神月(かみづき) 龍夜(りゅうや)
性別『男』
種族『??』
年齢『??』
能力『???』
交友関係『???』

今のところ、謎に包まれてる人物ですね
では次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話『そういえば謝ってもらってない。ま、いいか』

前書き~

今、私には続きを書きたいという欲が溢れ出ていまして......
ということで書けました

魔理沙の勘違いによるマスタースパークを受けた2人は無事なのか?
原因となった榛奈は風邪を引いていたのか?
更には瀟洒なメイドが龍夜を殺そうとして......!

はたして、龍夜の運命はいかに!?(主人公は榛奈です)

という勢いはありませんが
ゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[榛奈の自室]

 

 

シュゥゥゥ......

 

 目をつぶっているから分からないが、マスタースパークの魔力が無くなっていったのは分かった

 「分かった」ということは、予想通り私はマスパに当たらなかったみたいだ

 ちなみに能力は発動していない

 では、何故当たらないと予想できていたか?

 それは――

 

龍「ったく、いきなり砲撃してくるなよ。俺がいなかったら当たってたぞ」

 

 そう。こいつの存在がいるから

 それに、目をつぶる前に空間に穴を空けていたからな

 ......空間に穴開けてそこにマスパ入れるってこいつぐらいしか出来ないだろうなぁ

 あ、ゆかりんがいるか

 

フ「えっ!?」

 

魔「なっ!?マスパが効かないだと!?」

 

龍「まず届いてないんだがな」

 

 ......ん?なんだか頭がボーッとする......

 

魔「こうなったら肉弾戦で――」

 

龍「いやちょっと待った!お前ら勘違いしてるぞ」

 

魔「はぁ?何をどう勘違いしてるって言うんだよこのド変態が!」

 

フ「榛奈を襲おうとしていたんでしょ!」

 

龍「だからそれが勘違いだ!ほら、榛奈も何か言ってくれ」

 

 ......え?何話してた?

 駄目だ、頭が......

 あ、誤解の件?

 

榛「......え?あ、あぁ。魔理沙姉、フラン様。2人が何故怒っているのか分かりませんが、彼は特に悪いことはしてませんよ?」

 

龍「そういうことだ」

 

 あ、よかった合ってた

 

魔「......本当か?」

 

榛「本当です」

 

フ「この変態に言わされてるわけじゃない?」

 

榛「言わされてません」

 

 すると魔理沙姉は怪訝な顔をして

 

魔「じゃあ、さっきのは何してたんだぜ」

 

榛「えっ?あー、それは......」

 

 熱がありそうだったからって言うのは心配かけそうで嫌だな

 まぁ心配されているほど大切にされているって分かるわけだが、もう既に大切にされてることは知ってるから必要以上の心配はさせたくない

 だからといって説明しないわけにはいかないし

 

 そのことを感じとったのか、はたまた長い付き合いだから分かったのか、龍が代わりに説明してくれた

 

龍「榛奈の顔が赤かったから熱があるんじゃないかと思って測ろうとしてたんだ。生憎俺は体温計を持ち合わせていないからな」

 

フ「え!?熱って、大丈夫なの榛奈!?」

 

榛「...ぇ?あ、はい大丈夫ですよ。少し頭がフラフラして意識がボーッとしてるだけで――」

 

龍「おいさっきより悪化してるじゃないか。お前少し寝てろ」

 

榛「いや...... これぐらい乗り越えなきゃ紅魔館の従者じゃ――」

 

龍「お前、昨日此処のメイド長が似たようになっててイラついてたじゃないか......」

 

榛「あれは自分を犠牲にして欲しくなかっただけで――」

 

龍「ならお前も大人しく寝てろ」

 

 そう言い、龍は私の頭に手を乗せ、何かの力を使った

 なんて考えてるうちにだんだん睡魔が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

榛「...zzz......」

 

龍「寝たか」

 

魔「今榛奈に何したんだ」

 

フ「変なことしてないよね?」

 

 魔理沙とフランはまだ龍夜を疑ってるのか、言葉に少し棘があった

 だが、龍夜はそんなこと気にしてないようだ

 

龍「なに、榛奈の中の睡魔が働くよう施して、ちょっとやそっとじゃ起きないよう熟睡させただけだ。ちゃんと時間が経てば自然と起きるから安心するといい」

 

フ「ふーん。それならいいわ。でも......」

 

龍「ん?」

 

 フランは1拍置いて

 

フ「私の従者に手を出したら許さないから」

 

 フランは龍を睨み、威圧感を出しながら言った

 

龍「...ふっ、ははっ......」

 

 しかし龍夜は、そのフランの威圧感をまるで気にしてないかのように乾いた笑いをした

 

フ「...何?」

 

 その龍夜の笑いに、フランは怪訝な顔をした

 それは、魔理沙も同じだった

 

魔「何がおかしいんだよ」

 

 すると、龍夜はまるで安心したかのような顔をした

 

龍「まぁなんだ、榛奈をこんなにも愛してくれる人が出来たんだなと思ってな」

 

魔「...は?どういうことだぜ?」

 

龍「なんでもないさ。それじゃ、用が済んだから帰るな」

 

 龍夜はそう言い、ベッドから立ち上がった

 

フ「え?ちょっと待って――」

 

?「一応貴方はこの紅魔館の侵入者ですので、帰らせることは致しかねます」

 

 その言葉とともに、龍夜の首にヒヤリと冷たい物が当てたれた

 

龍「...おいおい...... 此処は客に刃物を当てる館なのか?」

 

 龍夜の首に当てられたのはナイフだった

 そしてナイフといえば――

 

咲「貴方は客でなく、侵入者です」

 

 そう

 此処(紅魔館)のメイド長、十六夜 咲夜だ

 

龍「そうだな。確かに俺は客なら通るはずの門を通らず、能力でここまで来た。何せ榛奈以外に姿を見られず去る予定だったからな。お前らに見られたのは想定外だ。そしてお前らにとっては侵入者だろう。だが――」

 

咲「なっ!?」

 

 龍夜は目で追うのがやっとなスピードで咲夜達から離れ、壁を背にした

 

龍「俺は帰る。何せ仕事の合間に来たからな。そろそろ帰らないと閻魔に怒られそうだ」

 

 そう言い、龍夜は空間に穴を空けた

 

フ「えっ!?穴が......!」

 

魔「おい逃げるのか!?」

 

龍「なんとでも言え。俺にとっては用が済んだから帰る、ただそれだけだ」

 

 龍夜はそう言うと、穴に向けて歩き出した

 

龍「あぁ、そうそう」

 

 龍夜は足を止め、振り返りながら言った

 

龍「榛奈に伝えておいてくれ、「答えのヒントは“変換”じゃなく“変化”だ」と」

 

 そう言い、龍夜は穴の中に入って行き、穴は閉じられた

 

魔「...一体誰なんだアイツ」

 

フ「さぁ......?」

 

咲「只者ではないとしか分からないわね」

 

 3人は暫く穴の空いていた場所を見つめていた




後書き~

榛奈さん。完璧に風邪引いちゃいましたね
そして榛奈を心配しながらも龍夜を疑う魔理沙とフラン
2人の龍夜への疑いはいつ晴れるのか......
そして龍夜は帰ろうとしたが、咲夜がそれを妨げる
しかし龍夜はそれを難なくあしらい伝言を残し、帰っていきました
さて、伝言の意味はどういうことか
皆様には分かるかも知れませんね

では次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話『しばらく暇かと思えばそうでもないみたいです』

前書き~

多分ね
今の私には小説の神様が舞い降りてるんだ
それか創造の神様
そんなわけで書けました

今回、~少女〇〇中~が多いです
それでもいい方は
ゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[榛奈の自室]

 

 

榛「...ん......にゃ......」

 

 なんかすごい寝てた気がする

 あ、すごい寝てたのか

 なんかすごいデジャヴを感じる......

 ん?外が少し暗いな

 それにお腹も減ってるし......

 今何時......ってそうじゃなくて

 私、いつ寝たんだ?

 

榛「...うーん......あっ」

 

 そういえば龍に寝かされたんだっけ

 風邪引いてるみたいだったから

 今は大丈夫かな

 

 私は試しに身体に力を入れてみる

 

 うん。大丈夫そうだ

 息苦しくないし、暑くもない

 お腹は減ってるけど魔力も回復してる

 とりあえず起き上がってみるか

 そう思い、私は身体を起こした

 起こすと同時に蹴伸びもした

 

榛「ぅくぅぅ...ふぅ......うん、問題なし。で、今何時だ?」

 

 私は壁に掛かっている時計を見た

 

時計「4時52分」

 

 うん。午前か午後か、どっち?

 あ、夏でこの暗さなら午前かな......って!

 

榛「時間!」

 

 美鈴とランニングとか朝食の手伝いとか!

 この時間ならまだランニング出来る!早く行かなきゃ!

 

 私は急いで支度を始め、部屋を出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

[紅魔館 廊下]

 

 

榛「いっそーげ急げ~」

 

 私は廊下を走らないよう早歩きをしつつ、エントランスへ向かっていた

 そして、後少しでエントランスにつくと思ったら――

 

咲「榛奈」

 

榛「ぅえぇい咲夜さん!?」

 

 あ......ありのままに今起こったことを話すぜ!

 廊下を歩いていたら目の前に咲夜さんが現れた

 ニーソとか PAD長だとか

 そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ

 もっと恐ろしい、咲夜さんの片鱗を味わったぜ......!

 

咲「貴女何か失礼なことを思わなかったかしら?」

 

榛「イエ、滅相モゴザイマセン」

 

 危ねぇ

 危うくナイフの餌食になるところだったぜ

 

咲「それで、榛奈は何処へ行こうと――ってランニング?」

 

 咲夜さんは私の格好を見て言った

 

榛「はい。あ、その後仕事もちゃんとやりますよ」

 

 私がそう言うと、咲夜は頭を抱えながら

 

咲「はぁ...... 貴女ね。昨日パチュリー様から言われたこと忘れたの?」

 

榛「えっと...... 無理をしないこと、でしたよね」

 

咲「覚えてるのに行くのかしら?」

 

榛「?無理はしてませんよ?」

 

咲「はぁ......」

 

 咲夜は再度ため息をつくと、右手を顔の斜め前ぐらいに持っていき

 

咲「『ザ・ワールド』時よ止まれ」

 

 パチンッ

 

 指を鳴らした

 

 そう思う暇もなく、いつの間にか自室にいた

 

榛「......あれ?」

 

咲「しばらく運動は禁止よ。本を読むのはいいけど、魔法を使うのも駄目。仕事はやらなくていいわ。分かった?」

 

 えぇ......

 それだと凄い暇になるよ......

 

 そして、そんな不満が無意識に口から出てしまった

 

榛「...えぇ......」

 

咲「「えぇ」じゃない。皆どれだけ心配したと思ってるの。一昨日は魔力切れで倒れて、昨日は風邪を引いて。こうなってもしょうがないのよ?」

 

榛「...はーい......」

 

 心配をかけたという自覚があるから咲夜さんの言葉が重くのしかかって辛い

 

咲「あ、そういえば榛奈」

 

榛「?」

 

咲「昨日来てた侵入者、あれって榛奈の知人?」

 

 あ、龍のことか

 

榛「はい。一応、私の友人です」

 

咲「そう。彼が帰り際に伝言を残していったわよ。「答えのヒントは“変換”じゃなく“変化”だ」って。何のことか分かるかしら」

 

榛「え?答えのヒント......?」

 

 答え...... ってことは問題のだよな?

 昨日何が問題出されたっけ?

 

榛「えっと...... あ、あれか」

 

 能力か

 

咲「分かったみたいね。私にはさっぱりだけど」

 

榛「あはは...... ...はい。ちゃんと伝言伝わりました。伝えてくださりありがとうございます」

 

咲「別にいいわよ。無理矢理聞かされた様なものだから」

 

榛「そうだったんですか...... ご苦労様です」

 

咲「それじゃ、食事が出来る時間に呼びに来るから、それまで大人しくしているのよ?」

 

榛「はい。分かりました」

 

 そう言い、咲夜さんは部屋を出ていった

 

榛「...ふぅ。あ、着替えなきゃ」

 

 咲夜さんに言われた通り、しばらくは大人しくしていよう

 それに、能力についても考えたいからね

 

 

 

 

 

~少女着替え中~

 

 

 

 

 

榛「よし、着替え完了!...なのはいいけど...... 朝食まで時間があるな」

 

 時計を見ると、あれから数十分しか経っていない

 朝食までは約2時間もある

 他にやること思いつかないし、能力について考えようっと

 そうだ、ノートにメモしたり、記録をつけたりもしよう。私のもう一つの能力は何ができて、何ができないのか。ちゃんと分かってないと使えなかったり、暴走したりするかもしれないからね

 ついでに一つ目の能力についても書いておこう

 

 そう思い、本棚から偶然あった白紙の本を取り出し、机に向かった

 

榛「っとそうだ本の名前。付けておいた方がいいよね。わかりやすいし」

 

 そうと決まればさっそくペンを取り、書こうとした、が......

 

榛「...名前決まってねぇ......」

 

 能力名を書こうにも能力が分からないし、というか分かりやすい名前だと私の能力がバレるかも

 出来れば他の人には知られたくないし......

 

榛「...そういえば龍は“変化”だって言ってたな」

 

 正確には咲夜さんから伝えられた、だけど

 

榛「“変化”...... 私の能力の“守る”...... 能力の記録...... っそうだ!いい名前思いついた!」

 

 私は再びペンを取り、迷いのない筆で背表紙に本の名前を書いた

 

 

【変守録】

 

 

榛「うん!これでいいよね!不思議としっくりくるし!ではさっそく......」

 

 私は本を捲り、一ページ目を開いた

 

榛「これで......こう書いて...... ......うん。一つ目の能力はこれでいいかな。次は二つ目で...... 龍の言ってたことも書いて...... 一昨日のことも...... ......うん。大体このぐらいだね。......ふむ、それじゃあ何で試そうか...... そうだ、これとかいいかも――」

 

 

 

 

 

~少女記録中~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

コンコンコン

 

小『榛奈さーん!朝食ですよー!』

 

 .........

 

小『榛奈さーん?寝てるんですかー?入りますよー!』

 

ガチャ

 

小「榛奈さーん?......って居た。榛奈さん、朝食だそうですよ」

 

榛「.........」カキカキカキ

 

小「あの...... 榛奈さん?」

 

榛「.........」カキカキカキ

 

小「榛奈さん!!」

 

榛「......ん?あ、コア。入るならノックしてくださいよ」

 

小「しましたよ!呼びかけもしましたし......」

 

榛「あ、そうでしたか。それはすみません。少し集中してたので」

 

小「そんなに興味のあることが出来たんですか?」

 

榛「まぁそんなところです。それで、どうしたんですか?」

 

小「あ、そうだった。咲夜さんが朝食出来たので呼んできてと」

 

榛「え?もうそんな時間なんですか。......分かりました。すぐ行きます」

 

小「では、私は先に行ってますね」

 

榛「はい」

 

 

 

 

 

~少女準備&移動中~

 

 

 

 

 

[紅魔館 食堂]

 

 

ガチャ

 

フ「あ、榛奈!」

 

 扉が開き、私の姿を見るなりフランはこちらへ文字通り飛びついてきた

 

榛「うわっ......っとと。フラン様、おはようございます」

 

フ「うん!おはよー榛奈!」

 

 勢いよく飛びついてきたが、そこは長年の(1年しかないが)経験

 受け止めることに成功した

 そして、朝から元気なフラン様を見て和んでいると――

 

パ「おはよう榛奈。......意外と早く元気になったわね」

 

榛「あ、師匠、おはようございます」

 

 師匠は椅子に座っており、本を読む手を止め、こちらを見て挨拶してきた

 

美「おはよう榛奈ちゃん」

 

榛「美鈴もおはようございます」

 

 その場にいた住人に挨拶し終わると、私はフラン様と自分たちの席に座った

 

 そして、しばらくすると――

 

ガチャ

 

レ「あら、榛奈も含めて皆揃ってるわね」

 

フ「あ!お姉様おはよう!」

 

榛「レミリア様、おはようございます」

 

パ「おはよう、レミィ」

 

美「おはようございます!お嬢様」

 

 レミリア様が来ると同時に全員が挨拶した

 

レ「えぇ、おはよう」

 

 そして、レミリア様が自身の席に座ると

 

コンコンコン

ガチャ

 

咲「皆様、お食事をお持ちいたしました」

 

 タイミングを図っていたかのように(実際図っていたのだろうけど)咲夜さんが料理と共に入ってきた

 そして、私達の前に料理を並べ、それが終わるとレミリア様の斜め後ろに控えた

 

レ「それではいただきましょう」

 

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

 

 

 

 

~少女達食事中~

 

 

 

 

 

 料理を食べ終わると、咲夜さんが食器を片付け、紅茶を用意してくれた

 

パ「そういえば榛奈」

 

榛「はい?」

 

パ「魔理沙が今日も来るそうよ」

 

榛「はい。分かりました。後で図書館に行きますね」

 

パ「えぇ。分かったわ」

 

 そう言うと師匠は立ち上がり、食堂を出ていった

 それをキッカケに仕事のあるものは持ち場へ行き、食堂にはレミリア様とフラン様、そして私が残った

 

レ「フラン、私は榛奈に訊きたいことがあるから、先に部屋に戻ってなさい」

 

フ「え?どうして?」

 

レ「いいから」

 

フ「う、うん。分かった。それじゃ榛奈。また後でね」

 

榛「はい。また後で」

 

 フラン様はそう言うと、席を立ち上がり、食堂から出ていった

 食堂に残ったのはレミリア様と私だけになった

 

レ「...それで榛奈、いくつか訊きたいことがあるのだけれど」

 

榛「はい、なんでしょうか」

 

レ「昨日、貴女のところに知人の男性が来そうね」

 

榛「あ、はい。来ました」

 

レ「どういった関係なのかしら?」

 

 不思議とレミリア様の目が鋭くなっている

 

 どういった、と言われてもなぁ

 

榛「私と彼、神月 龍夜は古くからの友人です」

 

レ「何故彼は侵入するような形で榛奈の部屋に来たの?」

 

榛「彼には色々と事情がありまして、あまり人や妖に姿を見られるとまずいので能力を使い来たのかと......」

 

レ「そう。それで、昨日彼と何をしていたのかしら?」

 

榛「昨日彼は私と世間話をしに来ただけで――」

 

レ「本当に?」

 

榛「...え?」

 

レ「昨日、フランと魔理沙が話してるのを聞いたのよ。なんでも彼、貴女にキスしようとしてたそうじゃない」

 

 ...きす?

 鱚......期す......帰す......

 どれ?

 

榛「えっと...... 魚?」

 

レ「違うわよ!接吻よ!マウストゥーマウス!」

 

榛「はいっ!?接吻!?」

 

 え!?なんでそんな話になってるの!?

 

レ「...違うの?」

 

榛「違うも何も何故そんな話になってるんですか!?」

 

レ「何故って...... 彼が貴女の顔に自分の顔を近づけていたから――」

 

榛「何故そんな風に見えたのかってことです!何をどう見たらそう見えるのか分かりません!」

 

レ「あ、近づけてたのは本当なのね」

 

榛「まぁ、それは本当ですが......」

 

レ「それじゃ、どうして彼は顔を近づけていたのか、説明してもらえるかしら」

 

榛「はい。昨日は―――」

 

 私は彼が来たこと。色々と話していたこと。熱が出てきて額で測ろうとしていたことを話した

 

レ「そう。額を当てて測る......ね。それで勘違いされたのね」

 

榛「はい。ですので、正確には額を近づけていたんです」

 

レ「そこに運悪く2人が...... なるほど、理解したわ。ということは彼とは特別な関係ではないのね?」

 

榛「...特別が恋情という意味であれば違います」

 

レ「あら?じゃあ彼と貴女はどんな特別なの?」

 

榛「そう言われると分かりませんが、彼は私の良き理解者であり、共通の趣味や守りたいものを持っている友人...... いえ、仲間です」

 

レ「仲間?......とりあえず、彼と貴女は恋人同士ではないのね?」

 

榛「はい。それは確実に」

 

レ「ならいいわ。もう訊きたいことは訊いたから行っていいわよ」

 

榛「はい。それでは失礼します」

 

 私はそう言い、席を立ち食堂を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲「...お嬢様。榛奈に何故あのようなことを訊かれたのですか?」

 

レ「聞いてたのね、咲夜」

 

咲「すみません」

 

レ「いいわ。それで、訊いた理由だったわね?」

 

咲「はい」

 

レ「...あの娘が誰かに突然嫁ぐとするじゃない?そしたらフランは悲しんでしまう。それが嫌なのよ」

 

咲「...お言葉ですがお嬢様。一つ宜しいでしょうか?」

 

レ「何?咲夜」

 

咲「榛奈に限って、そのようなことで妹様を悲しませたりすることはないと思います。あの娘は妹様を本当に大切に思っているようですから」

 

レ「...そうね。私の疑い過ぎだったのかも。ありがとう、咲夜」

 

咲「いえ、お気になさらず」

 

レ「それじゃ、今日も神社に行こうか」

 

咲「はい。かしこまりました」




後書き~

次回!遂に魔理沙と話し合う榛奈
無事、仲を戻すことは出来るのか!?
それでは次回も
ゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話『2人の溝が埋まった日』

前書き~

今回の話は榛奈sideです
魔理沙の榛奈への疑問
榛奈が強くなろうとした理由
そんなお話になります

では、ゆっくりしていってね


[紅魔館 門前]

 

 

 朝の紅魔館の門前

 そこにはいつも通り、仕事中のはずなのに寝ている門番がいた

 そこへ、1人の金髪少女が箒に乗ってやってきた

 

魔「っと、よっ!美鈴」

 

美「...Zzz......」

 

魔「って朝っぱらからまた寝てるのかよ。まぁいいか。それじゃ、お邪魔するぜ~」

 

 本来なら門番が開けるはずの門をまるで勝手知ったる自分の家のように開け、中にズカズカと入っていく魔理沙

 

美「...Zzz......」

 

 そして、門を勝手に開けられ、そのうえ入っていかれても起きない美鈴

 

 昨日から繰り広げられている紅魔館の光景であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

榛奈side

 

[紅魔館 廊下→エントランス]

 

 

榛「なーかーなーいーやーくそくしーた(泣かない約束した)限りなく続く未来に♪みーぎーてーにー(右手に)握りしーめーた破壊された「(モノ)」を~♪めーいーろーにー(迷路に)迷いこーんーで彷徨い続けるフロンティア♪しーんーくーいーろぉーにそーまーる(蒼黒色に染まる)己の翼よ~♪」

 

 皆さんおはようございます!

 現在運動や魔法を禁止されて図書館に着くまで暇なのでとりあえず歌っています榛奈です!

 ちなみに周りには誰もいません

 妖精メイドですらいませんよ?

 いたら歌ってません。恥ずかしいですし

 そういえば私が2日間寝込んでいる間に紅魔館の修理が完了していたみたいです

 廊下がいつも通り綺麗です

 それと、今日もまた魔理沙姉が来るそうです

 何時来るんでしょうかね

 とりあえず私は図書館に行く~♪

 

榛「くるくる~時計の針~♪ぐるぐる~頭回る~♪だってーつぶら目玉 二つしかないのに三本の針なんてちんぷんかん♪」

 

ガチャ

 

榛「次々~問題出る~♪まだまだ~授業続く~♪凍る~部屋の中ひんやりした温度も時間も気にせずゆっくりしていってね!」

 

?「ぷっくく――」

 

榛「誰!?」

 

 ふいに笑い声が聞こえ、聞こえた方向――玄関の扉へ顔を向ける

 

魔「あ、いやー、その...... 悪かったぜ☆」

 

 そこには悪かったと言う割に悪びれもなさそうに笑う魔理沙姉の姿があった

 

榛「ま、まま、ま......!」

 

魔「っておい榛奈?大丈夫か?」

 

 え?見られてた......?聞かれてた......?

 見知らぬ誰かじゃない、その逆の魔理沙姉に......?

 あは......

 あはは......

 はは......

 は......

 ......

 

榛「~~っ/// 魔理沙姉のバカー!!///」

 

【星符】『スターダストシャワー』

 

魔「え!?うわっ!ちょ!」

 

 私は思わず弾幕を、それもスペカを発動していた

 そして、いきなりの事で驚きながらも箒に乗りつつ避ける魔理沙姉

 

榛「避けるな!バカ姉!」

 

魔「いやいやいや、当たったら嫌だから避けるぜ!それとバカじゃないぜ!」

 

榛「とにかく大人しく当たってさっきの記憶をこの世から消せぇぇぇ!!」

 

魔「お断りするぜぇぇぇ!!」

 

 そんな会話をしながらも弾幕を撃ち続ける私と避け続ける魔理沙姉

 次第にエントランスが壊れていくが気にせずどんどん撃つ

 

?「ちょっと。榛奈、魔理沙」

 

榛「当たれ!!」

 

魔「嫌だぜ!!」

 

?「ちょっと?」

 

榛「当たらんかこのバカ姉が!!」

 

魔「当たらんしバカじゃないぜ!」

 

?「ねぇ!」

 

 さっきから誰かが私を呼んでる気もするがそんなのに構っている暇はない

 とにかく魔理沙姉の記憶が定着する前にさっさと当てて記憶を消さなければ......!

 

榛「こうなったらSLB(スタ-ライトバスタ-)で......」

 

?「...貴女達!いい加減にしなさい!!」

 

榛「いだっ!?」

 

魔「いづっ!?」

 

 急に私と魔理沙姉の頭を打撃的な痛覚が襲い、思わずお互いに動きを止めてしまった

 

?「やっと止まったわね」

 

榛「あ、咲夜さん......」

 

 声のした方向を見ると、そこには咲夜さんがいた

 

魔「いつつ...... なんで殴るんだぜ!」

 

咲「周りをよく見てみなさい」

 

 そう言われ周りを見ると一昨日の図書館の悲劇並の酷さがありました

 

榛「あ、あはは......」

 

魔「おぉ、こりゃ派手にやらかしたなぁ」

 

咲「...これ、誰が修理すると思ってるの?」

 

 咲夜さんの言葉に怒気が見え隠れしている

 

 やばい、こいつぁやばい

 咲夜さんを怒らせちまった

 さて、どうしよう......

 

魔「とりあえず私は逃げるぜ!」

 

 魔理沙姉はそう言いながら逃げようとした

 

榛「あっこら魔理沙姉!私を置いてくな!」

 

 私も続けて箒に乗り逃げようとした

 

咲「させないわよ」

 

 咲夜さんがそう言った瞬間、私達から箒が無くなった

 

榛「...あれ?」

 

 ......ご丁寧に私は地面に下ろされて

 

魔「いっつぅ......!!」

 

 だが魔理沙姉は空中にいた為、いきなり箒が無くなったことに対応しきれず落ちてしまった

 

咲「まったく...... で、榛奈?」

 

榛「は、はい!」

 

 急いで咲夜さんの方へ身体を向ける

 

咲「朝言ったこと、もう忘れたのかしら?」

 

榛「ひっ......!」

 

 咲夜さんが笑みを浮べ、しかし目は笑っていない顔で訊いてくる

 それが咲夜さんの笑顔を余計に怖くさせていて

 

榛「いいえわわ忘れてないですすすみません!!」

 

 私は反射的に土下座をした

 

 何これ......

 昨日のレミリア様より怖いよ......

 1度だけ見たことがある狂気に満ちたフラン様より怖い気がするよ......

 

咲「はぁ...... 仕方ないわね。さっきのは見逃してあげるわ」

 

榛「...え?」

 

 予想外の言葉が出てきて思わず顔を上げ咲夜さんの方を見た

 

咲「見逃す、と言ったのよ。何?嫌なの?」

 

榛「いいえいえいえありがとうございます!!」

 

 再び私は土下座した

 

咲「で、それで2人とも。この惨状はどうする気?」

 

榛「あ......」

 

魔「どうするって言われてもなぁ」

 

 私達は再び酷い状態になったエントランスを見渡す

 紅い塗装が剥がれところどころ白い岩が見えていたり、欠けていたりする床と壁と天井

 絨毯は禿げ、階段の手すりは折れ、大きなシャンデリアは落ちかけ、周りの照明も使えない状態

 誰がどう見ても酷い惨状である

 逆にこんなにやってしまった私って凄くない?

 なんて場違いなことを思いつつ、私がやるしかないんだろうなぁと思う

 

咲「2人で修理しなさい」

 

魔「はぁ!?」

 

咲「貴女達が暴れたからこうなったのよ?責任くらい取りなさい」

 

魔「っく、分かったぜ。やればいいんだろ?簡単だぜ」

 

咲「本当に簡単だといいわね。榛奈、魔理沙に修理の仕方教えてあげなさい。材料はいつもの場所よ」

 

榛「はい。わかりました」

 

 魔理沙姉?簡単だという言葉、覚えとけよ?

 

 

 

 

 

~少女準備中~

 

 

 

 

 

魔「それで、まずはどうすればいいんだ?」

 

榛「まずは壁かな。塗装の乾きが一番時間がかかるから。いつもは咲夜さんが時間を速めるから大丈夫なんだけどね」

 

魔「それじゃ、さっさとこの趣味の悪いペンキを塗っちまおうぜ」

 

 そう言いながら魔理沙姉はペンキの入った缶とペンキを塗るためのハケを持った

 

榛「それはまだだよ」

 

魔「え?なんでだぜ?」

 

榛「ほらこれ」

 

 私はそう言いながら壁の一部を指した

 

魔「ん?」

 

榛「壁に欠けてるところあるでしょ?そういうのがあちこちにあるから、まずそれを埋めないと。ということでこっちね?」

 

 私は魔理沙姉にある物の入った袋と道具を渡した

 

魔「...これらは?」

 

榛「それは壁用の粘土。そっちは広げるためのコテと置くためのコテ台。それらで欠けたとこを埋めて、段差が一切無いように仕上げる。それがとりあえず最初の修理だよ。魔理沙姉はそれで壁の欠けたとこ埋めて。私は柱とかの部分を修理するから」

 

魔「分かったぜ」

 

 そして、私達はそれぞれ作業に取り掛かった

 

 のだが......

 

榛「あ、魔理沙姉。ここ隙間あるよ。それにほんの僅かに段差も」

 

魔「え?......細かっ!?」

 

榛「簡単だって言ってたんだから、これくらい出来なきゃ」

 

魔「ならそういうお前の方はどうなんだぜ......ってすげぇ。凸凹してるとこまで出来てるぜ......」

 

榛「何度もやってきてることだからね。これくらい出来なきゃ」

 

魔「くそっ、こっちだってやってやるぜ!」

 

榛「ファイトだよ!」

 

 流石に建築初心者な魔理沙姉は完璧には出来ず、ところどころ私が教えていた

 そして、魔理沙姉が苦戦してる間に私は階段、手すり、シャンデリア、照明を直した

 といってもシャンデリアや照明は魔法で直してたけど

 ちなみに途中で妖精メイドの1人が来て

 

妖精メイド「あの、私もお手伝いしましょうか?」

 

榛「ううん。貴女は自分のことをやってて。これは私と魔理沙姉がやっちゃったことなんだから。その気持ちだけ受け取っておくね」

 

妖精メイド「はい!お二人とも、頑張ってください!」

 

榛「うん。ありがとう。頑張る!」

 

魔「頑張るぜ!」

 

 なんてやり取りもあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから魔理沙姉は壁と格闘しているとコツを掴んだのか一気にうまくなっていき、私も安心して他の修理をした

 その間、しばらく沈黙が続いた頃

 

魔「...なぁ榛奈」

 

榛「なぁに?」

 

魔「訊きたかったことがあるんだが」

 

榛「うん」

 

魔「榛奈はどうして此処に住んでるんだ?」

 

榛「...人里を出た後、食料が取れなくてね。倒れてたところを運良く美鈴に見つかって、レミリア様が行き場が無いならってことで住まわせてくれたんだよ」

 

魔「なら、なんで人里を出たんだ?家出するなら他にもあっただろ?慧音の家とかばあちゃんの家とか」

 

榛「それ、魔理沙姉にも言えるよね」

 

 というか慧音の家だと強制的に家出終わるよ

 

魔「私は魔法使いになるという夢があったからな。人里じゃ駄目だぜ。って話を逸らすな」

 

榛「別に逸らしたわけじゃないよ」

 

魔「で、どうしてだ?」

 

 どうして、か......

 答えはいつも思ってる事だけどね

 

榛「...強くなりたかった」

 

魔「なんで強くなりたかったんだ?」

 

榛「幻想郷を見て回りたかったから」

 

 紅魔館はもちろん。幽霊の沢山いる屋敷、永遠を過ごすものが住んでいる屋敷、幻想となった物が流れ着く場所、様々な妖や神の住む山、天人の住む世界、危険な妖怪が住む世界、他にもいろいろと

 東方とか関係なしに、見たかったから

 

魔「それなら私が連れていってやったのに......」

 

榛「それは思いついたんだけどね」

 

魔「思いついてたのか」

 

榛「うん。魔理沙姉がそのうち人里に帰ってくるって分かってたから」

 

魔「え?分かってたって......」

 

 実のところを言うと、原作知識無くても分かってしまった

 

榛「今だから言うけど、魔理沙姉が私に魔法使いになりたいって相談してきた日があったでしょ?私、その時点で魔理沙姉が将来的にお父さんから勘当を言い渡されて、人里を出ていくって分かってたんだ。まぁ魔理沙姉がお父さんにそのことを話したら、だけどね」

 

魔「あの頃って家出する1年以上前だぞ?何でそんなことが分かったんだぜ?」

 

榛「勘だよ」

 

 正確には、2人の性格や行動を見た結果のだけどね

 

魔「勘ってお前な......」

 

榛「私の勘がよく当たるの知ってるでしょ?」

 

魔「まぁな。それで、なんで私が大丈夫だと分かってたのに強くなりたくて人里を出たんだ?私に頼んで幻想郷を見て回るってこと思いついていたのに」

 

榛「...どうしてだっけ?」

 

魔「おいおい......」

 

 どうしてなんだっけ

 頼めば魔理沙姉は快く幻想郷の各地に連れていってくれただろう

 一部はそれぞれの異変が始まり、終わるまで行けないだろうけど

 でも、それじゃダメだったんだ

 ダメって気持ちがあったはずなんだ

 でも、なんでダメだったんだ?

 異変解決に参加出来ないから?

 その後の宴会に参加出来ないから?

 魔理沙姉の隣に立てないから?

 

 ...あっ......

 

榛「...ふふっ」

 

魔「いきなり笑い出してどうしたんだよ」

 

榛「なんでもないよ♪ただ、疑問が解消されただけ」

 

 そうか......

 そうだったんだ......

 私が強くなりたかった理由

 さっきの疑問全てだったんだ

 魔理沙姉と一緒に異変を解決したかった

 魔理沙姉と一緒に宴会に参加したかった

 魔理沙姉に連れていってもらうんじゃない

 魔理沙姉と一緒に見て回りたかった

 魔理沙姉の隣に居たかった

 対等な立場に居たかったんだ

 

 なんだ、簡単なことじゃないか

 それに私、すっかり魔理沙姉のこと、“姉”として認識してたんだ

 前世があって、実際には魔理沙姉より生きてたのにね

 ...私も、“妹”になったんだな

 

榛「ねぇ、魔理沙姉」

 

魔「なんだ?」

 

榛「これからもよろしくね」

 

魔「な、なんだよ改まって......///」

 

榛「ふふっ、なんでもない♪」

 

魔「...こっちこそ、よろしくな」

 

榛「~~!うん!!よろしく!魔理沙姉!」

 

魔「えっ!?ちょ、抱き着くなだぜ~!///」

 

 

 

 

 こうして私は、魔理沙姉との妙な溝を埋め、一つの疑問を解消しながらエントランスを修理した




後書き~

別に最初の方で語るなんて言ってないんだからね!

...はい。謎のツンデレです
序盤、榛奈歌ってましたね
2曲歌ってましたが、知ってる方も多いと思われる曲を選びました
特に2曲目は東方ファンで知らない人は少ないと思います
一応曲名ですが、1曲目はU.N.オーエンは彼女なのか?のアレンジ曲『孤独月』、2曲目はおてんば恋娘のアレンジ曲『チルノのパーフェクトさんすう教室』です
もし知らなかったら、是非聴いてみてくださいね

それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話『あれは誰でも可愛いとは思うのぜ』

前書き~

そろそろEXに行きたいと思うが、なかなか行けないほのりんです
とりあえず紅霧異変は終わっていたので章分けしました
それでは本編へ
ゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[紅魔館 エントランス]

 

 

魔「よし!これで終わりだぜ!」

 

榛「うん。お疲れ様」

 

魔「お疲れだぜ」

 

 私と魔理沙姉は今、エントランスの修理をしていた

 といっても先程終わったが

 理由は前話を見てください

 

榛「で、どう?簡単だった?」

 

魔「いや、コツを掴んでからは多少簡単にはなったが、それでも難しかったぜ」

 

榛「だろうね。私も最初は大変だったよ」

 

魔「榛奈がなんでこんなに修理上手なのか気になるんだが」

 

榛「...紅魔館ってさ。悪魔の館なんだよ」

 

魔「いきなりどうしたんだ?」

 

榛「一度さ。館が崩壊寸前まで壊れた日があったんだよ」

 

魔「...は?」

 

榛「それでさ、私も一緒に修理したんだよ。このバカデカイ館を。1から作り直す勢いで」

 

魔「あ......」

 

榛「修理の練習するには大きかったね......」

 

魔「...ドンマイだぜ」

 

榛「...ありがと」

 

 そうやって2人で干渉に浸っていると

 

フ「あ!榛奈に魔理沙!こんなところにいたんだ!」

 

榛「あれ?フラン様?」

 

 図書館方向の廊下からフラン様が来た

 

魔「おー、フラン。おはようだぜ」

 

フ「魔理沙、もう昼だよ?」

 

魔「えっ?マジか」

 

榛「結構時間かかったんだね」

 

魔「それでフランはどうしたんだ?」

 

フ「2人が一向に図書館に来る気配がないから気になって探してたの。それで、2人はこんなところで何を?なんだか2人の雰囲気が前より良くなってる気もするけど」

 

魔「ははっ、ちょっとな?」

 

榛「うん。ちょっとです♪」

 

フ「??」

 

魔「そういやフラン。異変の時、弾幕ごっこしようって言ってたよな」

 

 あ、そういえばそんなやり取りしてたな

 

フ「うん!覚えててくれたんだ♪」

 

魔「約束だからな。で、丁度今時間あるし、今やるか?」

 

フ「うーん...... 今日はいいかな。また今度――」

 

 ...そういえばだけど、紅魔郷EX的な出来事って起きないのかな

 あの話はフラン様が最後まで隠れてて、ある日主人公達が来て~、って話だった気がする

 うーん。この世界じゃ異変の最中に出てきたし、無いのかもな......

 

魔「――。それじゃ――」

 

 そういや異変解決後の宴会もやったのかな

 あ、でも私、まだお酒飲めない歳だっけ

 幻想郷じゃお酒は15歳の成人年齢までダメって決まりだったからアルコール類は飲んだことないし

 パーティーとかやった日もあるけど、その時も飲んでないしな......

 でも今は14歳、日付は8月1✕日

 後少しで誕生日だし、15歳になったらお酒、飲んでみてもいいかな

 あ、でも酔っちゃうんだよね

 酔って変なことしたら大変だし、初めて飲む時は1人の方がいいかも

 独りで月見酒ってのも風情があって良さそう......

 杯に月を映して飲む!

 いいね。やってみたい

 赤ワインでやれば赤い月を飲む感じで......

 ってそもそもお酒の味、大丈夫かな

 口に合わなくて飲めなかったら意味無いし......

 ...うん。その時は自分に合うお酒を探そう

 あ、アルコール中毒には気をつけなきゃ

 それでそのうち鬼と一緒に飲んだり騒いだりして――

 

フ「――てことしよう...って榛奈?聞いてる?」

 

榛「......へ?あ、すみません。聞いてなかったです」

 

魔「ぼーとしてたが、何考えてたんだぜ?」

 

榛「EXと宴会」

 

魔「はぁ......?」

 

フ「なんのこと?」

 

榛「あぁいえ、なんでもないです。ただ、宴会とかしないのかなぁって」

 

魔「ん?やりたいのか?」

 

榛「え?いや、異変が解決したらそこに関わった人達で宴会をやるんじゃないの?」

 

 原作はクリアしてないから分からないけど、東方で異変解決後といえば宴会とEXだと思ってたんだけど......

 

魔「いや、やらないぜ?榛奈がやりたいならやってもいいが......」

 

榛「あ、いや、やらないならやらないでいいんだよ」

 

 そっか......

 てっきりやるのが当たり前だと思ってたけどやらないのか......

 

フ「...榛奈?」

 

 フラン様が心配そうにこっちを見る

 

榛「フラン様...... なんでもないですよ。それより何を話していたんですか?」

 

 私はフラン様を心配させまいと、話を逸らした

 

フ「あ、うん。この後図書館で本でも読まないかなって。魔理沙の魔法も見てみたいし」

 

 魔理沙姉の魔法か......

 うん。私も気になるな

 あのカラフルな星とか星とか星とか......

 星しかねぇ......

 うん。とりあえず、私も見たいってことだな

 

榛「それは良い考えですね。あ、でも図書館を散らかす様なのはちょっと......」

 

魔「大丈夫だぜ。この間みたいなのはやらないのぜ。また図書館を片付けるのは懲り懲りだからな」

 

榛「その節はどうも......」

 

 魔理沙姉、私が寝てる間に片付けてくれたんだもんな

 今度魔理沙姉の家を掃除しに行ってあげよう

 それか魔理沙姉のやって欲しいことでも......

 

フ「それじゃ、図書館に行こ!パチェも待ってるよ!」

 

魔「おう!」

 

榛「はい!」

 

 フラン様の言葉に応え、私達は図書館へ向かった

 

 

 

 

 

~少女達移動中~

 

 

 

 

 

[紅魔館 図書館]

 

 

ガチャ

 

フ「パチェー!2人が来たよー!」

 

榛「師匠ー。遅くなりましたー」

 

魔「遊びに来てやったぜ」

 

パ「あら、やっと来たのね。魔理沙はてっきり午後になったら来るのかと思ってたわ」

 

魔「色々あって、ちょっと遅れただけだぜ」

 

 そして、私達は師匠の近くにあった席に座ると

 

咲「あら、もう終わったの?」

 

魔「うおぉ!?」

 

榛「あ、咲夜さん。はい、終わりました」

 

 咲夜さんがいきなり現れた

 魔理沙姉は初めてなのか、慣れてないのか、咲夜さんの突然の登場に驚くが、それ以外は驚かなかった

 何故なら師匠とフラン様は慣れていて、私はタイミングさえ分かれば驚かない

 ...不意打ちは驚くけど

 

咲「そう。それで魔理沙。簡単だったかしら」

 

 咲夜さんが意地悪そうな顔で、持ってきていたティーポットの中身をカップに注ぎながら訊くと、魔理沙姉は不機嫌そうに言った

 

魔「っく。あぁ簡単じゃなかったぜ。むしろ難しかった。というか2人して訊くなよ」

 

咲「ふふっ、魔理沙が簡単だって言っていたから思わずね」

 

榛「咲夜さんと同じ意見です」

 

フ「むぅ...... 私にも何の話か教えて!」

 

 私達が魔理沙姉の発言について話していると、フラン様が突然そう言い出した

 

榛「はい。実は今朝――」

 

 私は今朝の喧嘩、暴れたことによる建物の被害、そしてそれを修理していたことを話した

 ただし、喧嘩した理由と修理中の会話は誤魔化したりした

 勿論だが信頼していないわけではなく、ただ私が恥ずかしいから

 

 

 

 

 

~少女説明中~

 

 

 

 

 

フ「へぇ...... そんなことがあったんだ......」

 

榛「それで、フラン様が来た時は修理が終わった頃だったんですよ」

 

魔「タイミングばっちしだったってことだな」

 

フ「そうだったんだ。で、訊きたいことがあるんだけど」

 

榛「はい?なんですか?」

 

 フラン様は首を可愛らしく傾けながら訊いた

 

フ「喧嘩の原因――」

 

ゴンッ!

 

 頭に痛覚が走ると同時に机から何かがぶつかったような音がした

 

魔「お、おい!?」

 

咲「ちょっと!?」

 

 それは私が机に頭をぶつけた音だった

 そして、そんな私を魔理沙姉と咲夜さんは驚きながら心配してくれるが、それに反応するほど今の私に余裕はない

 

榛「......かな...で......」

 

フ「え?」

 

榛「訊かないでぇ......」

 

 私は恥ずかしさから顔が赤くなってるのを自覚しながらもなんとか声を絞り出した

 

4人((((か、可愛い...///))))

 

フ(...もっと問い詰めたらどうなるんだろ......///)

 

フ「でも私、気になるなぁ......」

 

 何故か皆が一斉に顔を赤くしてるように見えたと思ったら、フラン様がまた訊いてきた

 

咲「わ、私も気になるわね......」

 

パ「......」

 

 咲夜さん、そして師匠も目で訊いてくる

 

榛「ぅぅ......」

 

魔「お、おい3人とも......」

 

ガタンっ

 

4人「え?」

 

榛「皆さんなんて......」

 

 私は席から立ち上がり、そして図書館の扉の方に身体を向けて

 

榛「大好きだけど嫌いだー!!」

 

 その場から逃げた

 

フ「えぇ!?榛奈!?」

 

パ「あら......」

 

咲「あらら......」

 

魔「あちゃー......」

 

 その場には驚くフラン様と、少しだけ驚いた表情をする師匠、苦笑いする咲夜さんと、やっちゃったって顔をする魔理沙姉が残った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

[紅魔館 門前]

 

 

榛「――ってことがあってね...... 皆意地悪なんだよ......」

 

美「あはは...... そういうことがあったんですか......」

 

 私は図書館から逃げた後、廊下をまっすぐに行ったからかエントランスに着いた

 そして、無性に誰かと話したい気持ちになって、よく相談相手になってもらっている美鈴に話を聞いてもらっているところだ

 ちなみに私が来た時は起きてた

 

美「でも皆さん、榛奈ちゃんのことをもっと知りたいから訊いてきたんですよ」

 

榛「そうなのかなぁ...... ......うん。その気持ちは嬉しい気もするけど、やっぱり言うの恥ずかしいし......」

 

美「ところで差し支えなければ私も喧嘩のきっかけをお聴きしたいのですが......」

 

榛「...歌ってた」

 

美「あ~、1人で」

 

 どうしてか美鈴は納得した

 理由は分かってる

 私がたまに中庭で作業する時に歌う時があって、その歌を聞いてるからだ

 だから美鈴に聞かれるのはもう慣れてしまった

 

榛「そこを魔理沙姉に見られた」

 

美「なるほど、それで弾幕を......」

 

 別に歌ってるのを見られてもあそこまでしない

 ただ、歌ってた内容がダメだった

 ...だってチルパだよ?チルノのパーフェクトさんすう教室だよ?

 こう...... 何も知らない人に聞かれると恥ずかしいでしょ

 

榛「でもまぁ最終的には魔理沙姉との仲が人里に居た頃と同じくらいになったから喧嘩したのは結果オーライだけど......」

 

美「きっと今頃、皆さんもやりすぎたと反省していると思いますよ。ですので許してあげたらどうでしょう」

 

榛「...うん。私も突然逃げ出しちゃったし、後で謝っておく」

 

美「はい、それがいいです。...それにしても......」

 

榛「?」

 

 私は美鈴の顔を見ると、美鈴は何か懐かしむような、それでいて少し悲しそうな表情をして言った

 

美「榛奈ちゃんが此処(紅魔館)に来てからまだ4年しか経ってないんですね......」

 

榛「...そうだね。まだ4年しか経ってない」

 

美「おや?榛奈ちゃんもそう思うんですか?」

 

榛「うん。普通、人間なら4年という時間はとても長く感じるし、確かに私もこの4年間を長く感じた。でも、こう、言葉にすると「あぁ、まだ4年しか経ってないんだな」って思ってしまう。多分、此処(紅魔館)に住んでる歴が1番短いからかな。周りと比べちゃうんだ......」

 

美「...そうなんですか......」

 

榛「私は此処じゃ1番の新参者だからね......」

 

 だから皆のお互いの信頼度はとても高いけど、私との信頼度は、それと比べたら低い

 それが少し、寂しく思えてしまう......

 

美「確かに榛奈ちゃんは此処では1番遅く来た。ですが時間なんて関係ない。私達は榛奈ちゃんを家族だと思っている。それでいいじゃないですか」

 

 まるで、私がそのことを気にしているのが分かったかのように美鈴は言った

 ...いや、分かったのだろう。私が寂しく思ってしまったのを

 こういうとき、彼女の【気を使う程度の能力】は便利だ

 本来は相手の気を察知したり、気を使って攻撃したりと戦闘に使う能力だが、その副作用のようなものである程度相手の気持ちが分かってしまう

 ...ホント、皆さんには敵わないな......

 

榛「...うん。そうだね。私も、皆さんのこと家族だと思ってる。それでいいんだよね」

 

美「そういうことです」

 

榛「...ねぇ、美鈴」

 

美「...なんですか?」

 

榛「もう少し、ここにいていい?」

 

美「...はい。気の済むまで、ここにいていいですよ」

 

 その言葉を最後に、私達はしばらくの間、口を開かなかった

 でも、気まずいなんてことはなく、とても心地の良い時間だった

 ...あの子が来るまでは

 

?「あ!榛奈!ここで会ったが......えぇっと...... とにかくアタイと勝負しろ!」

 

榛「あ、貴女は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

~榛奈が逃げた後の図書館では~

 

 

フ「榛奈...... 逃げちゃった」

 

魔「榛奈は恥ずかしがり屋だからな。あんまり弄りすぎるとああやって逃げるぜ」

 

フ「ふむふむ...... さすが榛奈の姉。よく分かってるんだね」

 

魔「と言われても、私だって榛奈のことをなんでも知ってるわけじゃないぜ?むしろ分からないことだらけだ」

 

パ「それで、結局喧嘩の理由は何なのかしら」

 

魔「あぁそれな。私が館に入ったとき、丁度榛奈が歌いながら歩いてたんだ。そんでその歌詞が面白かったから思わず笑っちゃって。多分笑ったことに怒ったんじゃないか?」

 

フ「そうだったんだ......」

 

咲「榛奈が歌、ねぇ......」

 

魔「ん?どうしたんだ?」

 

咲「いえ、榛奈が歌ってるところ見たり聞いたりしたことないから......」

 

フ「あ、それ私も」

 

パ「私もそうね」

 

魔「そう言われれば私も初めて見たぜ」

 

フ「いいなー魔理沙は。私も榛奈が歌ってるところ見てみたい!」

 

魔「榛奈のことだから周りに誰かいる時は歌わないと思うぜ」

 

フ「むむむ...... どうしたら......」

 

咲「尾行したり、とか?」

 

フ「それだ!榛奈を尾行しよう!」

 

魔「面白そうだな!私も参加するぜ!」

 

フ「パチェと咲夜はどう?」

 

パ「私はやらないわ。別に見たいものでもないもの」

 

咲「私は仕事がありますので......」

 

フ「分かった!それじゃ魔理沙、作戦会議しよう」

 

魔「おう、分かったぜ」

 

パ「まったく...... あ、咲夜。おかわり」

 

咲「はい」

 

パ「ありがと」

 

 榛奈の話を聞いた美鈴の予想に反して特に反省の色が見られない4人であった




後書き~

書くことがない......
本文のスランプの次は前書き後書きのスランプになりました
ということで次回、榛奈に勝負を仕掛けたのは誰?
フランと魔理沙の企みはどうなる?
次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20話『榛奈ちゃんは恥ずかしがり屋ですね』

前書き~

前話で榛奈に挑んだのは誰?
今回、榛奈と挑戦者が戦います!
それではゆっくりしていってね!



榛奈side

 

[紅魔館 門前]

 

 

?「あ!榛奈!ここで会ったが......えぇっと...... とにかくアタイと勝負しろ!」

 

榛「ん?お前はチルノ!久しぶりだなぁ」

 

 私が美鈴とゆっくりしていると、湖の方から氷精チルノが飛んで来た

 チルノに会うのは本当に久々だ

 前は毎日のように会ってたからなぁ。最近はフラン様とか異変とか気絶とか寝込んだりしてたからな

 そして、何故か会った瞬間いきなり勝負を挑まれるのもまた久々だな

 

大「チルノちゃん待ってよー」

 

 チルノの後ろの方から大妖精も来た

 

チ「大ちゃんおっそーい!」

 

大「チルノちゃんが速いんだよ~......って美鈴さんに榛奈さん!」

 

美「こんにちは」

 

榛「大ちゃん久しぶり」

 

大「美鈴さん、こんにちは。榛奈さんはお久しぶりです」

 

榛「相変わらずチルノに振り回されてるみたいだね......」

 

大「あはは...... でもチルノちゃんと一緒にいるのは楽しいですから」

 

榛「そっか、ならいいけど」

 

 チルノの行動は色々と凄いからな

 まさに(バカ)な行動から子供のような純粋な遊び心からくる行動、無茶なことなど、本当に色々で、さすが妖精と思える行動ばかりだ

 しかもチルノはそこらにいる妖精より強い

 通常なら妖精は持てないだろうスペカを持っていたり、強者に挑むその姿勢がチルノの強さを物語っている

 だからこそ、通常の妖精より無茶な行動をしやすい

 そして、そんなチルノが無茶しないよう抑えるのが大妖精。愛称大ちゃん

 チルノのお姉さん役って感じだ

 言ってしまえばチルノの我儘に付き合わされる不憫な子なのだが、本人が楽しんでるならそれでいいよな

 実際私も前は大ちゃんと一緒にチルノに振り回されたことがあったけど、楽しかったし

 

チ「むぅ......アタイを無視するな!」

 

榛「いや無視してないよ。挨拶したでしょ?」

 

チ「それじゃあアタイと勝負しろ!」

 

榛「うん、いいよ。弾幕ごっこだよね。スペカと被弾は?」

 

チ「うーん...... スペカは3枚!被弾も3回!」

 

榛「了解、それじゃあやろうか」

 

 そう言い、私は箒を取り出して乗り、飛び上がった

 

チ「よーし!まずアタイから!【氷符】『アイシクルフォール』!」

 

榛「おぉやっぱり初めはそれか。そして攻略法は分かってるんだよ!」

 

チ「ふっふ~ん。今日のアタイがいつもと同じだと思ったら大間違いよ!」

 

大「2人とも頑張って~!」

 

 

 

 

 

美「いやぁ、榛奈ちゃんが元気になったようでなにより......」

 

?「あら、今日は寝てないのね」

 

美「...咲夜さん。そんな私がいつも寝ているような言い方しないでください......」

 

咲「事実じゃない」

 

美「それはそうですが......」

 

魔「おぉ、やってるやってる」

 

フ「おー、綺麗だね」

 

美「魔理沙さんに妹様まで...... どうかされましたか?」

 

フ「榛奈が図書館から逃げちゃったから探してたの。それでこっちに来てないかなぁって思って来てみたら......」

 

魔「居たってわけだぜ」

 

美「あぁ、なるほどです」

 

咲「それにしても、榛奈はまた魔法を使ってるのね。今朝注意したばかりなのに......」

 

魔「そういえば今朝も言ってたな。魔法を使ったら駄目だって」

 

咲「えぇ、榛奈はまだ病み上がりだから無理しないようにって思ってね、運動や魔法を使うのを止めさせたのよ。なのにあの娘ったら......」

 

美「まぁまぁ咲夜さん。お気持ちは分かりますが、榛奈ちゃんはただ遊んでるだけですから。これぐらい良しとしましょう?」

 

咲「...美鈴がそう言うならそうするけど......」

 

フ「それより見てよ!綺麗だよ!」

 

魔「あぁ、そうだな。真昼の星だぜ」

 

咲「そうね」

 

美「氷もキラキラとしてて綺麗です」

 

 

 

 

 

榛「ほっ、はっ、ふっ......」

 

チ「むぅ...... なんで当たらないのよ!」

 

榛「弾を5つ増やしたくらいじゃ私には当たらないよ!」

 

 チルノが宣言したスペカは【氷符】『アイシクルフォール』だったが、難易度は少し上がったノーマル。つまり5way弾が加わった弾幕だが、これくらいじゃさすがに私でも避けれる

 まぁ今までイージーだったのがノーマルになっただけでもチルノは成長したのかな

 でも、妖精が妖精の枠を越えたら色々と問題になるんだが......

 ま、私は知らないぜ

 とりあえず弾幕弾幕~

 

榛「それじゃ、チルノが成長したスペルなら私は初披露のスペルで!【魔符】『ヴワル魔法図書館』!」

 

 スペカ宣言後、私の周りに5冊の魔導書が現れ、そこから熱い火の玉、雨のように降りそそぐ水玉、風に舞う木の葉、分裂する金属の玉、当たると汚れる泥玉の五属性の色とりどりの弾幕が放たれる

 

 ふっふっふ...... 分かる人には分かると思うが名前は紅魔郷4面道中の曲名で、これはパチュリー師匠のスペカを混じらせた弾幕なのだ!

 そして名前の通り図書館っぽくするために魔導書を付けてみた。これは特に意味はない。魔力を本の形にしただけです。はい

 勿論4面ボスの曲名のスペカもあるが、こちらは月属性と日属性を付け足していて、結構な難易度になると自分で思ってるからその一段下のこのスペカにしておいた

 それでもノーマルの4ボスぐらいにはなってるけどね

 ...え?何故このスペカを魔理沙姉との弾幕ごっこに使わなかったのかって?

 ...このスペカは初披露だが同時に発動させるのも初めてなんだ

 もしあの時出して失敗したら......な?

 それにあの時出したスペカの方が魔理沙姉のようなスピード系にはいいんだよ

 

大「凄い......」

 

チ「ふん!それくらい避けきってみせるわ!」

 

榛「おう!やってみろ!避けきったらお菓子を大量に作ってやる!」

 

チ「お菓子!?」

 

大「チルノちゃん!頑張って!」

 

 お菓子という言葉とともに2人は目を輝かせた

 うん、楽しみなのは結構だけど勢いで言ってしまった......

 もしチルノが避けきっちゃったら大量にお菓子を作る作業はいいとして、その材料費で咲夜さんに怒られそうだな......

 その時は謝っておこう

 ...でもまぁ、2人のあの顔を見たらそれくらいどうでも良くなってくるか

 

チ「よーし!絶対避けきってやる!」

 

榛「ならば私は容赦しないぜ!」

 

 その言葉とともに5種類の弾がチルノに襲いかかる

 

榛「さぁ!避けきって見せろ!」

 

 

 

 

 

 

 ...後々思ったことだが、この時の私は凄い調子に乗っていて、普段と比べると物凄く違う口調になってたが、チルノや大妖精、美鈴の前ではこの口調になることが多く、別に気にしてなかったのだが......

 地上には美鈴の他にフラン様、魔理沙姉、咲夜さんが居たのを知らなかったし、見えてなかったので......

 

 

 

榛「なんで居たんですかぁ!」

 

フ「なんでって探しに来たからだけど......」

 

魔「お前本当に榛奈か?」

 

咲「意外ね......」

 

 まぁあの口調を聞かれた

 

 うぅ...... 恥ずかしい......

 ほら、普段と違う口調、特にノリに乗ってる時の口調を家族とか友達とかに聞かれると恥ずかしいでしょ?

 今まさにその状況だよ......

 というか魔理沙姉なんて私を私として疑ってるのはどうなんだよ......

 

榛「探しに来てくれたのは嬉しいですが、私は私だし、ノリに乗ってただけなんですよー...... というかなんで今日はこんな出来事が続くのー......」

 

美「ま、まぁまぁ。そんな日もありますよ......」

 

榛「そんな日があって欲しくなかった......」

 

チ「ところでアタイのお菓子は?」

 

榛「あぁそうだったそうだった。避けきっちゃったんだよね」

 

 なんと驚くことにチルノはあの弾幕を時間いっぱいに避けきったのだった

 確かにあのスペカは難易度をイージーにしているが、それでもそれなりに難しくしている。普通の妖精は避けれないほどだ

 それを避けたのだからやはりチルノは凄い

 いや、前回はこれより簡単そうな弾幕に当たってたから今回はもしかしたらお菓子が食べたいから避けれたのかもしれない

 言わば『お菓子パワー』かな

 

 結論、お菓子パワーすげぇ

 

 まぁ勝負は、私が被弾0のスペカ1枚使用、チルノは被弾2回スペカ3枚使用で私が勝ったんだけどね

 

榛「それじゃあ作りに行く――」

 

...ぐぅぅ......

 

榛「...か?」

 

フ・咲・美・チ・大「?」

 

 お菓子を作ろうと思っていたら何処からかお腹の鳴る音が聞こえた

 思わず音の鳴った方を見てみると......

 

魔「......///」

 

 魔理沙姉が顔を真っ赤にしてお腹を手で押さえてた

 

榛「...魔理沙姉?」

 

魔「...何も言うなのぜ......///」

 

 あぁ、なるほど

 状況から察するに魔理沙姉のお腹の音だったんだ

 それで恥ずかしがるとは魔理沙姉も乙女だなぁ......

 

美「そういえばもうお昼でしたね」

 

榛「そう言われてみれば太陽が真上に......」

 

 太陽が眩しいぜ......

 

フ「咲夜ー。お腹すいたー」

 

咲「今すぐ準備いたしますね」

 

チ「アタイのお菓子はー?」

 

大「チ、チルノちゃん......」

 

 あ、そうだ。いいこと思い付いた

 

榛「なら2人も一緒に食事はどう?お菓子はその後で作ればいいし......」

 

チ「ご飯!?アタイも食べる!」

 

大「えぇでも......」

 

榛「咲夜さん、いいですか?」

 

咲「私は別にいいわよ。今更2人分増えたところで何ともならないわ。ただ、お嬢様に訊いてみないとね」

 

榛「わかりました」

 

魔「私のも頼むぜ~」

 

咲「それは分かってるわ」

 

フ「そうだ!どうせお菓子作るならスイーツパーティーしようよ!今はお昼でお腹いっぱいになるから夕方にさ!」

 

榛「いいですね!それなら他にも誰か呼びますか?」

 

魔「霊夢とかどうだ?どうせアイツのことだから暇してるだろうし」

 

チ「アタイの友達呼んでいい?」

 

榛「うんうん。咲夜さん――ってあれ?いない......」

 

 辺りを見回しても姿が見えない......

 さっきまでそこに居たんだけどな......

 霊夢とかチルノの友達とか呼んでもいいか訊こうとしたのに......

 

美「あぁ、咲夜さんでしたら――」

 

咲「ここよ」

 

榛「え?あれ?さっきまでいなかったような......」

 

咲「今の話をお嬢様にしてきたのよ。それで、昼食にそこの妖精2人を招待してもいいそうよ。それと、パーティーについても好きにしていいとのこと」

 

榛「そういうことでしたか。ありがとうございます!」

 

魔「それじゃ、とりあえず今は飯だぜ」

 

チ「ごっはん~ごっはん~♪」

 

大「お邪魔します......!」

 

咲「私は準備してきますので、先に食堂へ行っててください」

 

フ「うん!」

 

榛「あ、仕事......ってやったら駄目なんだっけ......」

 

咲「榛奈は妹様方と先に食堂に行ってなさい。料理は私やメイドで作るわ」

 

榛「はい......」

 

咲「ただし」

 

榛「え?」

 

咲「パーティーのお菓子は貴女が作りなさい。元々は貴女が言い出したのだから」

 

榛「...はい!霧雨 榛奈!全力でお菓子を作って見せます!」

 

咲「夕方によ?」

 

榛「大丈夫、分かってます!それじゃフラン様に魔理沙姉達!早く食堂へゴー!」

 

フ「おぉ榛奈が張り切ってる......」

 

魔「いったいどんなお菓子が出てくるんだろうな」

 

チ「大ちゃん!楽しみだね!」

 

大「そうだねチルノちゃん♪」

 

榛「何作ろうかな~♪」

 

美「私の分ってあったりします?」

 

フ「あってもなくても私が取ってきてあげるよ!」

 

美「妹様......! ありがとうございます!」

 

 こうして私達は昼食を取り、夕方まで弾幕ごっこをしたり、それ以外で遊んだのだった




後書き~

次回、お菓子のシーン書きます
どんなお菓子が出てくるか、お楽しみですよ!

それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話『スイーツパーティーです♪』

前書き~

バレンタインに投稿ですが、あまりバレンタインに関係ない本編を更新です!
強いて言うならサブタイトル通りスイーツが大量に出てきます

ちなみに私はバレンタイン、お菓子作って家族で食べるというあまりバレンタインらしくない過ごし方をしました

ではゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[紅魔館 キッチン]

 

 

 現在、時計塔は3時を示している頃。私は咲夜さんと今日急遽やることになったスイーツパーティーのため、キッチンにいた

 

榛「さて、お菓子作りです!頑張りますよ~!」

 

咲「張り切ってるわね」

 

榛「2日間何もしなかったんです!こう、職業病というか、なんといいますか...... とにかく何かやりたいんですよ!主に仕事関連で!それに楽しいじゃないですか、何かを作るのって」

 

咲「まあ分からなくはないわね。で、私を呼んだ理由は?」

 

榛「咲夜さんにはお菓子作りを手伝って欲しいんです。作業については私1人でなんとでも出来ますが、時間に関しては咲夜さんにしか出来ませんから」

 

咲「なるほどね。それじゃ、まず何を作るのかしら?」

 

榛「まずはあれから――」

 

 

 

 それから私はパーティーの時間までお菓子を作り続けた

 出来たお菓子は次々と咲夜さんが会場となった大広間へ持っていった為、どれほど作ったか忘れたが、それより紅魔館の食料の方が気になる

 結構な量を作ったはずなのにまだ材料があるらしい

 流石紅魔館。元領主の館だっただけある。蓄えは沢山あるようだ

 

咲「榛奈、そろそろ時間よ。切り上げなさい」

 

榛「分かりました。これで最後にしますね」

 

 私は丁度手をつけていたお菓子で最後にし、作り終えると咲夜さんが持っていったので器具等の片付けをし、会場へ向かうことにした

 

 

 

 

 

~少女移動中~

 

 

 

 

 

 会場に着くと既にパーティーは始まっていた

 見た感じ参加者は紅魔館メンバー、チルノと大ちゃんとルーミア、魔理沙姉と霊夢だ

 皆さんがお菓子を美味しそうに食べているのを見て私は、味は大丈夫かという不安が安心に変わると同時に、顔に自然と笑みを浮かぶのを感じた

 

フ「あ、榛奈!遅いよ!」

 

 そんな私の元へフラン様が来てくれた

 フラン様も片手にお菓子を乗せた皿を持っている

 

榛「すみません。片付けをしていたもので......」

 

フ「もう...... ほら、早く行こ♪美味しいからすぐ無くなっちゃうよ?」

 

榛「...そうですね。私も食べたいですし、行きましょうか」

 

 「無くなっても作ればいい」なんて考えは邪だな

 今は純粋にこのパーティーを楽しめばいい

 私が日本の次によく知る国の言葉で言うならアフタヌーンティーのようなものなのだから

 お菓子食べて紅茶を飲んで、めいいっぱい楽しまなきゃ

 

魔「よっ!やっと来たか」

 

霊「...こんにちは」

 

榛「魔理沙姉。それに巫女さん、こんにちは」

 

フ「霊夢、こんにちは♪」

 

 私がフラン様とお菓子を取りに行こうとしたら、魔理沙姉と霊夢がやってきた

 一応霊夢に名前を訊いてなかったからとりあえず巫女さんと呼ぶことにする

 

霊「博麗 霊夢よ。霊夢でいいわ」

 

榛「うん。私は霧雨 榛奈。よろしくね、霊夢」

 

霊「えぇ。よろしく、榛奈」

 

 そうだ、この間のこと謝らなきゃ

 

榛「で、霊夢。この間はごめん」

 

 私は霊夢に頭を下げた

 

霊「は?いきなりなんのことよ」

 

榛「異変の日。霧を晴らした後、私いきなり倒れちゃったから......」

 

 私は頭を下げながら話した

 すると霊夢は不機嫌そうな声で言った

 

霊「...別にアンタが謝らなくてもいいじゃない。顔を上げなさいよ」

 

榛「でも、迷惑かけちゃったから......」

 

 私は霊夢の言う通り顔を上げながら話す

 

霊「別にいいわよ。私こそ倒れるなんて思わなくて無理言って...... ごめんなさいね」

 

榛「霊夢が謝らないでよ。私は私の判断ミスで倒れたんだから。私もまさか倒れるなんて思わなくて......」

 

魔「じゃあこの話は終わりにしようぜ。せっかく美味しいお菓子が大量にあるんだ。湿った話ばかりしてたら不味くなるぜ」

 

霊「...そうね。この話はこれで終わり」

 

榛「うん。そうだね」

 

魔「よし。あ、そうだった。ほいこれ、やるぜ」

 

 魔理沙姉はそう言いながら手に持っていたお菓子の乗った皿を渡してきた

 

 これは一体どういう意味なのだろう......

 

 そう思い私は首を傾げていると

 

魔「榛奈の分を取っておいたんだ。お前の分が無くなるかもと思ってな」

 

榛「なるほどね...... 魔理沙姉、ありがとう♪」

 

魔「どういたしましてだぜ」

 

霊「それにしてもこのスイーツ美味しいわね」

 

魔「だな。こっちのも美味しいぜ」

 

フ「あれも美味しかったよ!」

 

 うんうん。3人とも嬉しいことを言ってくれるじゃないか

 これは作ったかいがあるよ♪

 

榛「喜んでくれるのは作った人としては嬉しいね」

 

霊「あら。これ榛奈が作ったの?」

 

榛「うん。全部ね」

 

魔「えっ......!?全部って本当かよ!?」

 

榛「といっても量が多いだけで種類は少ないよ」

 

霊「これで種類が少ないって......」

 

魔「ちなみにスイーツの名前とか言えるか?」

 

榛「えっと...... 確かアフタヌーンティーで定番のスコーン、夏にイギリスでよく食べられるサマープディング、後ヴィクトリアスポンジケーキとバタフライケーキ。定番としてショートケーキ、スポンジケーキ、パウンドケーキ、タルト、アップルパイ、ロールケーキ、チーズケーキ、ガトーショコラ、フォンダンショコラ、シフォンケーキ、マカロン、マドレーヌ、シュークリーム、カップケーキ、クッキー、ゼリー、プリン。和風に栗羊羹。夏らしくかき氷とアイス。確かこれぐらいかな」

 

 あ、改めて言うとケーキ系が多いな

 まぁスイーツなんてケーキ系が多いか

 

魔「榛奈、それは多いぜ」

 

榛「え?」

 

 そんなに多かったかなぁ?

 

フ「それって全部咲夜に教えてもらったの?」

 

榛「いえ、スコーン、プディング、ヴィクトリアスポンジケーキ、バタフライケーキ、栗羊羹は元々作れましたよ。他は教えてもらいましたが」

 

魔「......?家にいる時榛奈ってスイーツ作ってなかったよな......?」

 

 え!?そこ気になっちゃう!?

 そこ訊かれると困るんだよな......

 元々前世で覚えたレシピだったから......

 

榛「あ、あぁえっと、レシピだけ知ってて、実際に作ったのは紅魔館に来てからだよ」

 

 嘘は言ってないよ嘘は

 レシピを知ったのは前世だけど、今世で初めて作ったのは紅魔館に来てからだから

 

魔「そうだったのか。うーん...... 栗羊羹なら里の食材でも作れたから頼めば良かったな......」

 

榛「頼まれたらいつでも作ってあげるよ」

 

 すると霊夢が周りを見渡しながら訊いてきた

 

霊「ねぇ、栗羊羹ってどこにあるの?」

 

榛「え?さぁ?私は作ってただけで並べたりはしてないからな......」

 

フ「栗羊羹なら向こうにあったよ」

 

 フラン様がそう言うと霊夢は

 

霊「栗羊羹は私の物よ......!」

 

 と威圧感を出しながらフラン様が指した方へ歩いていった

 なんだか霊夢が凄い怖い......

 あの威圧感が私に来たら即土下座するよ。謝るようなことしてないけど

 

榛「ねぇ魔理沙姉...... 霊夢は一体どうしたの......?」

 

魔「ああ、栗羊羹は霊夢の好物なんだ。だからじゃないか?」

 

榛「あ、なるほど......」

 

 霊夢は栗羊羹が好物なのか......

 公式じゃお茶が好物って書いてた気がするからちょっと意外......

 いや、霊夢は和菓子が好きなイメージあるし意外じゃないかもしれない

 だからといってあそこまで必死になるものか......?

 

フ「うーん...... 好きな物だからってあそこまで必死になるものなの?」

 

 フラン様も同じことを考えていたようだ

 

魔「ほら、霊夢って博麗神社に住んでるだろ?博麗神社って人里から離れてるし、道中は整備されてるが妖怪が襲ってくるかもしれないからな。参拝客が少ないから収入源である賽銭も少ないんだぜ。妖怪退治も依頼されることが少ないしな。栗羊羹とか買えないからじゃないか?」

 

榛「あ...... うん。悲しい現実だね......」

 

 原作知識では一応知ってたけど、いざ実際聞いたりあの様子を見てると、本人じゃないけど悲しくなってるな......

 

フ「そういえば異変の時も報酬とか言ってたね」

 

魔「あぁ。異変を解決すると依頼達成みたいな感じで報酬が貰えるんだ。霊夢が、だけどな」

 

榛「ほぉ...... で、どうだったの?減ったりしてなかった?」

 

 レミリア様と戦って勝ったのは霊夢だけど、完全に霧を晴らしたのは私だからな

 早くしないと減るとか言ってたし、訊く権利はあると思うんだ

 

魔「さぁな。元々いくらとか決めてなかったらしいから減ったのか増えたのか霊夢にも分からないぜ。ただ、それなりに貰ってたみたいだ。米とか野菜とか買ったら無くなったみたいだが」

 

 霊夢......

 今度絶対神社に参拝しに行こう......

 手土産にお菓子とお賽銭を持ってね......

 そんなふうに魔理沙姉とフラン様、途中で栗羊羹を大量に持って帰ってきた霊夢と喋っていた

 

 

 

魔「そういえば一昨日、パチュリーから魔導書を借りたんだが、榛奈は読んだことあるか?」

 

榛「ん?借りるってそのまま受けとっていい?」

 

魔「おい榛奈。それはどういう意味だぜ」

 

 そりゃどういう意味かって言うと、原作又は二次創作で魔理沙がよく「死ぬまで借りてくZE☆」って言う感じで借りてる(盗んでる)のかなって意味だけど......

 もしそうだったら師匠の弟子として、魔理沙姉の妹として返してもらわなきゃならなくなるし......

 まぁこれらを直接本人に言えないんだけどね

 

榛「ほら、魔理沙姉が図書館に来た時、師匠に「無理矢理借りてくぜ!死ぬまでな!」って言ってたから。もし本当にそんなことしてたら私もそれなりの対応をせざるおえないから......」

 

 私は魔理沙姉の声を真似ながら話した

 

魔「そういえばそう言ったんだっけな。まぁ安心しろ。榛奈が寝ている間にパチュリーと話し合って本を期限を決めて貸し借りするって決めたんだ。これはそれで借りた本だぜ。(...さすがに妹の職場からは盗めないからな......)」

 

 ん?最後に何か言ってた気がするけど、まぁいっか

 

榛「それならよかった。うん、本当によかったよ。魔理沙姉の家に爆裂魔法(エクスプロージョン)を掛けずに済んで」

 

魔「...え?それって冗談だよな?な?」

 

榛「いやー、よかったよかった。うんうん♪」

 

魔「お、おいぃ......」

 

 魔理沙姉が何か言いたそうだけど気にしない気にしない♪

 うんうん。ホント魔理沙姉の家を爆発させずにすんでよかった~

 

榛「で、その本ってどんなの?」

 

魔「え?あ、あぁ、えーと...... あぁこれだこれ」

 

 魔理沙姉は近くのテーブルに皿を置き、帽子の中から1冊の本を取り出した

 その本は表紙は白色で、金色の線があって、辞書並に分厚い本だった

 

 ...あれ?これどこかで見覚えが......

 

フ「あれ?これって確か前に榛奈が持ってた魔導書だよね?」

 

榛「そう......でしたっけ?」

 

魔「ん?読んだことあるのか。ならここに書いてある魔法って使えるのか?」

 

榛「さぁ......?内容が思い出せないからなぁ...... ちょっと見せて」

 

魔「ほい」

 

 私は皿をテーブルに置き、差し出された本を受け取りまず表紙を見ると、金色でタイトルらしき文字が書いてあった

 

『The Grimoire of H.G. Vol.1』

 

 ...え......!?これって......!!

 

榛「ね、ねぇ魔理沙姉?これってどこで見つけたのかな......?」

 

魔「パチュリーから私にオススメだって言われて渡されたから何処かは知らないが...... その本がどうかしたのか?」

 

榛「い、いや、何でもないよ...... うん......何でもない......」

 

魔「?」

 

 あの紫モヤシめ......

 なんでわざわざこの本を魔理沙姉に渡した......

 しかも「オススメ」って......

 これってあれか?これが()()だからか?

 だからなのか紫モヤシ師匠......

 

霊「もしかしてそれ、榛奈が書いたんじゃないの?」

 

 ふげらっ!?!?

 

魔「いやいやまさか、そんなわけ――」

 

パ「あらよく分かったわね紅白」

 

フ「え?パチェ?」

 

レ「楽しんでるかしら?」

 

魔「レミリアまで...... どうしたんだ?」

 

 魔理沙姉の持っていた本に引き続き、霊夢の発言で思わず(心の中で)変な驚き方をしていると師匠とレミリア様がやってきた

 

パ「貴女達がその本について話してたからどういう会話をしているのか気になったの」

 

 師匠は私の手にある本を目で指しながら話した

 

レ「私はパチェの付き添いね」

 

フ「ふぅん」

 

魔「で、さっきのは本当なのか?」

 

パ「えぇ。それは榛奈が書いた魔導書よ」

 

 うぅ......

 なんで師匠、話しちゃうかなぁ......

 出来れば誰にも読まれないことを祈って見つけにくい場所にしまっておいたのに......

 まさかそれを見つけるなんて......

 

フ「へぇ...... 霊夢はそのことを知ってたの?」

 

霊「知ってるわけないじゃない。勘よ、勘」

 

 勘で当てるなんて......

 彼奴め...... なかなかやりおる......

 

魔「霊夢の勘はよく当たるからなぁ」

 

榛「いや当たるにも程ってものがあると思うの」

 

 霊夢の“勘”はもう“未来予知”レベルだと思うの

 

レ「榛奈って自分で本も書いてたのね」

 

榛「どちらかといえば魔導書(教科書)というより魔術書(記録書)ですけどね。Grimoire(グリモワール)なんて付けてますけど」

 

 ちなみにタイトルの元ネタは旧作で登場する通称ロリスとも呼ばれる小さいアリスのテーマ曲である『The Grimoire of Alice』...... ではなく、魔理沙が書いたスペカ本の『The Grimoire of Marisa』の方なんだよね

 残念ながら転生前の私は旧作には疎かったから、タイトルを考えた時に最初に頭に浮かんだのが魔理沙の方だったんだよね......

 まぁどっちにしても原作が元ネタだってことに代わりはないね

 

 そして、それになぞって付けたのがこの『The Grimoire of H.G.』

 私が()()()()使っていて、今は使わなくなった魔法や、今使っている魔法の基盤となった魔法を記録している魔術書

 使わなかったり、アレンジを加えた方しか使わなかったりすると、忘れてしまうかもしれないと思って書いていたんだ

 ただ、書くことが多すぎて何冊も書いたからシリーズ化してみた

 ただ、何冊書いたかは忘れた

 何せ1年ほど前の出来事で、書き終わって図書館の至る所に隠した後は完全放置だったからな

 表紙でさえ忘れてて、タイトルを見るまで分からなかったほどだ

 その本の1冊がまさか魔理沙姉の手元あったとは......

 今度他の巻も探してきて纏めて部屋に隠した方がいいかもしれない

 多分見つからない確率が上がると思うから

 

魔「とりあえずその本が榛奈の書いた本だということは分かったが、タイトルの『H.G.』ってどういう意味だ?文字の構図からして名前だとしても榛奈の頭文字(イニシャル)は『H.K.』だろ?」

 

フ「そうだね...... 霧雨を直訳してもDrizzleやMist RainでGにはならないね」

 

 あぁ......

 そこは気にしたらいけないのに......

 にしても、実はその名前も私の名前の頭文字なんて言えないし、嘘もあまりつきたくないからな......

 誤魔化すしかないか

 

榛「それは......その...色々と事情がありまして...... そ、それよりお菓子食べましょうよ!早く食べないと無くなっちゃいますから!」

 

魔「...露骨に話を逸らしたな」

 

 うぐっ......

 

レ「まぁいいじゃない。その話はまた今度でも出来るんだから、今はパーティーを楽しみましょう」

 

魔「ま、それもそうだな。よし、それじゃフラン。あそこのお菓子取りに行こうぜ」

 

フ「うん♪榛奈も行く?」

 

榛「そうですね......」

 

 ふと周りを見渡すと妖精2人と常闇の妖怪がいた

 

 あ、そうだ。チルノ達のところにも行ってみよう

 チルノと大ちゃんは昼間に会ってるけど、そばに居るルーミアとは久しいからね

 

榛「私はチルノ達のところに行ってきます。久しぶりに見た方に挨拶をしたいので」

 

フ「分かった。じゃ魔理沙、行こ♪」

 

魔「おう!じゃあまた後でな、榛奈」

 

榛「うん。また」

 

霊「私もまた取りに行ってこようかしらねー」

 

レ「そういえばパチェ、この間の話なんだけど――」

 

パ「はいはい」

 

 ということで解散してそれぞれ自由に行動し始めた

 

 

 

榛「チルノ、大ちゃん、ルーミア。楽しんでる?」

 

チ「お?榛奈!このお菓子達の美味しいよ!」

 

大「はい♪お菓子が美味しくて幸せです♪」

 

ル「おー、榛奈だー。久しぶりなのだー」

 

榛「うん、久しぶりだね、ルーミア」

 

 実はルーミアとは既に会ったことがある、というか友達だ

 初めて出会ったのは2、3年前、チルノ達と森でかくれんぼしていて、私が鬼で皆を探していた時のことだった

 昼間なのにいきなり辺りが真っ暗になって、光を付けても明るくならなくて困っていた時にルーミアが「貴女は食べてもいい人間?」なんて原作ならではのセリフを言いながら近づいてきたのだ

 前世の記憶を取り戻す前だったから最初、ルーミアのことを一切知らなかったが、言葉だけで人喰いだと分かって必死に闇の範囲内から逃げたのは今となれば良い思い出だ

 その後、なかなか見つけにこないってチルノ達が来て、ルーミアがチルノ達の友達だって分かって、「アタイの友達は榛奈やルーミアの友達でもある!」なんてチルノが言い出したのがルーミアと友達になったきっかけだ

 それからはチルノ達と遊ぶ時、ルーミアもいて、私が森でたまたま会ったときもお喋りをしたりする仲のいい方の友達となっている

 

榛「3人とも楽しんでるみたいでよかったよ。で、チルノと大ちゃんが連れてきたのってルーミアだけ?」

 

チ「うん。他にもみすちーやリグルも誘ったんだけど、用事があるんだって」

 

榛「みすちー?リグル?」

 

 それって夜雀のミスティア・ローレライと蛍のリグル・ナイトバグのことだよな?

 

大「あ、えっと。みすちーちゃんは夜雀の妖怪で、リグルちゃんは蟲の妖怪のことです」

 

榛「あ、なるほど。大ちゃん、教えてくれてありがとう」

 

大「いえ......」

 

 合ってたようで良かった

 そういえばここにいる3人とは会ったことあるけど、ミスティアとリグルとは会ったことなかったな

 今度会ったりできるかな

 もしかしたら原作みたいに永夜異変にならないと会えなかったり?

 いやそれはないか

 3人とは紅霧異変前に出会ってるからな

 そのうち2人とも出会えるだろ

 

榛「そのうち2人とも会ってみたいな」

 

大「なら今度2人も誘って皆で遊びましょうよ!」

 

榛「そうだね。多分私はこれから忙しくなるから都合が合ったときに遊ぼうか」

 

チ「その時は負けないわよ!」

 

榛「ふふっ、次も負けないぜ!」

 

ル「楽しみなのだー♪」

 

 そんなこんなでスイーツパーティーは終わっていった

 さすがにあの量だと余るだろうな、なんて思っていたのに全て無くなっていて驚いたのは良い思い出となるだろうな

 またこんなふうに皆で集まって楽しみたい

 次は宴会かな?それともまたパーティー?

 何かの企画に参加するのもいいよね

 これからが楽しみだなぁ

 

 

 

 この時の私はまだ知らなかった

 2週間後、まさかあんなことが起きるなんて――




後書き~

「リア充爆発しろ」とは言いません
ただ、「リア充目の前でイチャコラするな」とは言います
なんで人前でイチャコラ出来るんですかねあの人達
ただ、初々しいのは応援したくなるのが不思議

そんなわけで次の投稿は(本作の時間で)2週間後です!
リアルで2週間かからないようにしたいですね
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1.5章『紅魔郷EXです!』
第22話『計画の準備中です』


前書き~

受験生の皆さんはもう試験終わったでしょうか
殆どの方が結果通知を待っているか、既に分かった頃でしょうね
ちなみに私はまだ受けてすらいません
早く来い受験日よ!

と、関係ない話でしたが、今回も
ゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[紅魔館]

 

 

 皆さんこんにちは!

 あの楽しかったスイーツパーティーから約2週間が経ち、後少しで8月も終わる頃です!

 この2週間、レミリア様が霊夢を気に入ったとかで咲夜さんを連れて神社に2日に1回のペースで遊びに行っていたり、魔理沙姉が本を読みに図書館へよく来るということが新たに日常に加わったこと以外は特に何も起こらず、平和に過ごしてました

 ただ、暇です

 今までやっていたフラン様の力の制御の練習は、練習のしたかいがあり出来るようになり、それに費やす時間が空いたので、暇になりました

 それなら魔法使いなんだから本を読めばいいだろって言う人は言うと思いますけど、別に師匠みたいに知識を欲してる訳では無いし、とりあえず強くなる手段として魔力があったから魔法使いになっただけという、「魔法使い」というより「魔法を使う者」と言った方がしっくりきそうな感じですから

 え?違いがわからない?

 そのうち分かりますよ

 まぁ、そんなわけで暇な私は今、何をしているでしょうか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正解は〜

 

コンコンコン

榛「フラン様、榛奈です。入っていいですか?」

 

フ「うん!いいよ〜!」

 

ガチャ

榛「失礼します」

 

フ「いらっしゃい榛奈。いきなり部屋に呼び出してごめんね?」

 

榛「いえ、フラン様からの呼び出しでしたら苦になるどころか嬉々として駆けつけますよ」

 

 正解はフラン様のお部屋にお邪魔していました〜

 先程は「2週間何も無かった」と言いましたが、すみません。前言撤回

 一つだけ良いことが起こりました

 なんとですね!?フラン様のお部屋がお引越ししたんですよ!

 地下の......正直言って壁や床、天井が物凄くボロボロだった部屋から、地上のレミリア様の部屋の隣になりました!

 ただ、素直に喜べないんですよね......

 私の活動範囲は基本図書館で、地下の部屋に近かったんですが、今のフラン様のお部屋は私の部屋から見て図書館の正反対の位置にあるんですよね......

 つまりフラン様の部屋まで行く頻度が少なくなってしまったんですよ

 まぁ、毎朝お部屋へフラン様を起こしに行ってたり、フラン様がよく図書館へ来るのでそこまで問題じゃなかったですけどね

 

 ま、それはさておき、なんでフラン様は私を部屋に呼んだんだろ

 

榛「それで、何かありましたか?」

 

フ「ちょっと話したいことがあって...... 長話になるかもしれないから、ここに座って」

 

 フラン様は自身が座っているベッドの隣を手で叩いた

 

榛「分かりました」

 

 もしここに咲夜さんがいたら怒られそうだな、なんて思いながらフラン様の隣に座った

 

榛「...それで、話したいこととは?」

 

フ「えっとね。私が魔理沙と弾幕ごっこの約束してるの覚えてる?」

 

榛「はい。勿論覚えてますよ」

 

フ「そのことでなんだけどね。私、まだ約束を保留させてるの」

 

榛「あ〜、そういえば......」

 

 この2週間、魔理沙姉はよく紅魔館、というより図書館へ来ていたが、フラン様と弾幕ごっこをしているのを見たことがない

 魔理沙姉も「やるか?」って誘ってるけど、フラン様が「ううん。また今度」って引きずってたな

 

フ「魔理沙も誘ってくれてるんだけど、私としてはただ弾幕ごっこするのも味気ないと思ってね。そこで!」

 

 フラン様は私の目の前に勢いよく立ち、宣言した

 

 

 

 

 

フ「私!異変を起こしたい!」

 

榛「......はぁっ!?!?!?」

 

 

 

 

 

 それが、後の紅魔郷EXに繋がる出来事なのだと、この時の私は悟った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

《数日後》

 

[博麗神社]

 

 

 幻想郷は今日も快晴だった

 幻想郷は平和なはずだった

 白黒の魔法使いは、何故か胸騒ぎがしたので今日も神社に来ていた

 

魔「暑いぜ暑いぜ、暑くて死にそうだ」

 

霊「死んだら、私が鳥葬にしてあげるわ」

 

レ「あら、私に任せてくれればいいのに」

 

魔「お前に任すのは、絶対に嫌だ」

 

 神社には何故か、しかしいつも通り、紅い悪魔が居た

 

魔「レミリア。お前、そんなに家を空けて大丈夫なのか?」

 

レ「咲夜と榛奈に任せてるから大丈夫よ」

 

霊「きっと大丈夫じゃないから、すぐに帰れ」

 

 そのときである、3人を脅かす雷鳴がなったのだった

 

霊「夕立ね」

 

魔「この時期に、珍しいな」

 

レ「私、雨の中、歩けないのよねぇ」

 

 しかし、しばらく経っても雨は降ってこない

 外の様子を見ると、幻想郷の奥の一部だけ強烈な雨と雷が落ちているという、不思議な空だった

 

レ「あれ、紅魔館の周りだけ雨が降っているみたい」

 

霊「ほんとね。何かに呪われた?」

 

魔「もともと呪われてるぜ」

 

レ「困ったわ。あれじゃ帰れないわ」

 

魔「いよいよ追い出されたな」

 

レ「いえ、あれは私を帰さないようにしたというより......」

 

魔「実は、中から出てこないようにした?」

 

霊「やっぱり追い出されたのよ」

 

レ「まぁ、どのみち帰れないわ。食事()はどうしようかしら」

 

霊「仕方ないわね...... 様子を見に行くわよ」

 

魔「楽しそうだぜ」

 

 そうして、2人はレミリアに神社の留守を任せて、紅魔館へ向かったのだった

 

 レミリアはその姿を見て、思わず言葉をこぼした

 

レ「...ふふっ。計画通りね。パチェもタイミングよく雨を降らしてくれて助かったわ。......咲夜!」

 

 レミリアは何を思ったのか遠くの館にいるはずの自分の従者の名を呼んだ

 

咲「はい、此処に」

 

 すると、主の声に反応するかのように、誰もいなかったはずの場所に瀟洒な従者が現れた

 

レ「紅茶」

 

咲「どうぞ」

 

 レミリアが一言、言っただけで、咲夜は一瞬で紅茶を取り出した

 

レ「相変わらず、仕事が速いわね」

 

咲「お嬢様の従者として当然ですわ」

 

 咲夜は少し誇らしげに言った

 

レ「そうね......」

 

 レミリアは紅茶を飲むと、独り言のように言った

 

レ「さて、あの娘達の戯れが終わるまで暇ね。私も、あの娘も、雨の中は動けないもの」

 

 雨は、一部の悪魔には歩くことすらかなわないのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

榛奈side

 

[紅魔館]

 

 

フ『私!異変起こしたい!』

 

榛『......はぁっ!?!?!?』

 

 

 そんな会話をしてからこの数日間。私はフラン様の計画の為の準備をした

 まず手始めにレミリア様、師匠に協力してもらい、霊夢と魔理沙姉が紅魔館に来るよう仕向けた

 具体的に言うなら、レミリア様には神社に行ってもらい、師匠が雨を館の周りに降らした後、2人が館に来るよう促したという原作みたいな流れだ

 勿論だが、この世界では原作のようにフラン様が狂ってる訳では無いので、そこは安心していい。というか安心したい

 ある意味これはフラン様にとっての最終試験なのだから

 

パ「...降らしたわよ」

 

榛「ありがとうございます。師匠」

 

フ「これで本当に来るのかなぁ?」

 

榛「大丈夫、絶対2人は来ますよ。だって......」

 

フ「......「だって」?」

 

榛「いえ、やっぱり何でもありません♪」

 

 ――だって、異変を解決するのは、あの2人の仕事(運命)なのだから――

 

 なんて、言えるわけないよな




後書き~

今回は最近のに比べて短めです
もしかしたら「最近の」の方が異常だったのかもしれない
なんて思い始めてすらいます

次回!EX突入だぁ!
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話『計画開始直前ですね』

前書き~

どうも皆さんこんにちは!
前の投稿からしばらく経ってしまいましたが、お元気にしてましたでしょうか?
ちなみに私は先日、学校を卒業しました!
ということでしばらく休みがあるので、投稿ペース上がる......かもしれない
やっぱり不定期更新になると思います
とりあえずは今回もゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[紅魔館 エントランス]

 

 

 私は現在、玄関近くで探知魔法を使っている

 これから来るであろう来客者が何処にいるか把握するためだ

 

榛「...範囲内に新たに二つの反応、現在霧の湖を横断、此方に向かっている模様。おそらく霊夢と魔理沙姉ですね。そろそろ着くと思いますよ」

 

 私は地下室にいるフラン様に通信魔法で話す

 

フ『うん、分かった。榛奈、準備の方は大丈夫?』

 

榛「はい、大丈夫です」

 

 数日前のあの日、フラン様が異変を起こしたいなんて言い出した時は驚いたが、聞けば「ただ弾幕ごっこするだけなのも楽しくないから、やるならお姉様みたいにやりたい」ってだけで、安心した

 紅霧異変みたいに異変を起こされたら私としても困るからな

 あの紅い霧は人里にも影響を及ぼしたらしいし......

 

フ『それにしてもよくこの計画を思いついたね』

 

榛「まぁ、考えつくだけの材料は頭にありましたから」

 

フ『“材料”?』

 

榛「そこは気にしなくていいです」

 

 材料とは原作であった紅魔郷EXのストーリーの知識

 つまり今回私が思いついた計画とは紅魔郷EXのストーリーを再現するというものだ

 といっても、この世界では私というイレギュラーにより、フラン様の狂気は改善したようなものだから、細部が違ってしまうのだが、まぁ気にしないでおく

 で、計画の内容は簡単

 まず初めにレミリア様と師匠に協力を煽ぐ

 そして、師匠には合図を出したら雨を降らせるようにしてもらい、レミリア様には雨が降る前に神社にて霊夢と魔理沙姉と会話。師匠が雨を降らせたら、レミリア様は霊夢達に様子を見てくるよう促してもらい、二人を紅魔館へ来させるようにする

 その時、フラン様は地下室に、私はエントランスにスタンバイ。私が探知魔法で二人が今何処にいるか通信魔法でフラン様に報告

 二人が来たらまず私がどちらかを相手にし、もう一方をフラン様のいる地下室へ誘導、といった計画だ

 

フ『それで、榛奈は霊夢か魔理沙、どっちを相手するの?』

 

榛「そうですね......」

 

 どちらを相手するか、か......

 霊夢とはまだ1度も戦ったことがない、というより2週間前のあの日以来会っていない。何せ霊夢は紅魔館に来ないし、私は神社に行かなかったからだ

 魔理沙姉とはこの2週間、たまに誘われて弾幕ごっこをしたりするし、紅魔館にもよく来て師匠と魔法談議している

 ってなると1度も戦ったことのない霊夢か?

 いや、戦い慣れてる魔理沙姉もいいよな......

 ふむ...... 決まらないし、その場のノリに任せるか

 

榛「とりあえず、その場のノリに任せることにします」

 

フ『分かった。二人のうちどっちかを地下に誘導したら教えてね。待ち構えるから』

 

榛「了解です」

 

 っと、フラン様と会話していたら二人の反応が門の前まで移動していた

 反応は門の前で止まり、そこから動かない

 おそらく門番(美鈴)がいないからなのだろう

 美鈴には計画が終わるまで館の中で休憩を取ってもらっている。この計画が終わればまた通常営業に戻ってもらう予定だ

 

榛「現在、二人は門前にいます。少しの間、通信が切れますが、大丈夫ですか?」

 

フ『うん、平気。それじゃ、頑張ってね。榛奈』

 

榛「...はい!頑張ります!」

 

 フラン様の応援の言葉、それは私に何よりもの力をくれる

 多分、今の私の心情は、レミリア様という主を持つ咲夜さんのような気持ちなのかもな

 

 なんて思いながら発動していた探知魔法と通信魔法を切ると、まるで待ち構えていたかのようにタイミング良く扉が開いた

 一瞬、扉の先が逆光でシルエットしか見えなかったが、二つの人型を見た瞬間。直ぐに誰なのか分かった

 1人は頭にリボンを付け、御幣を持つ者

 もう1人は魔女帽子を被り、竹箒を持った者

 これだけ特徴があるんだ。分からない人の方が少ないだろうな

 

榛「ようこそ紅魔館へ。霊夢様、魔理沙様」

 

 さて、フラン様の従者として、頑張りますか!




後書き~

はい!また短いね!
待たせてしまった割に短くてすみませんm(_ _)m
でも次回は出来るだけ来週あたりには出すつもりでいます
ということで次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話『計画の進捗?順調ですよ』

前書き~

こんにちは!
私はついに明日、受験日を迎えます!
さぁ来い受験日よ!落ちる覚悟は出来ている!
...面接、大丈夫かなぁ......
ちなみに友達は先日高校の制服を買ったそうです
......パルパル......

そんなこんなで今回は魔理沙sideです!
それではゆっくりしていってね!


魔理沙side

 

[霧の湖 上空]

 

 

 私達は神社を出て、霧の湖まで来ていた

 ふと、私は周りを見渡した

 

魔「相変わらず此処は視界が悪いなぁ」

 

 やはり霧のせいで一寸先が白く見えなくなっている

 ただ、『紅霧異変』と呼ばれたあの異変の時と比べれば薄いとも言える

 あの時は下の湖の色ですら見えず、紅しか見えなかったからな

 いや、あの時は色が反映されて湖が紅く見えていただけか?

 ま、今考えることでもないか

 

霊「そうね。ま、あの異変の時みたいに寒くないからいいのだけれど」

 

魔「そうだな。にしてもレミリアのやつ、なんで私達を紅魔館に行かせたんだ?咲夜でも呼べばいいだろうに」

 

 咲夜なら神社からでもレミリアが呼べば即現れそうな気がするんだがなぁ

 榛奈も「紅魔館の住人が彼女の名を呼べば彼女は現れる。それこそ時を止めてね」って言ってたぐらいだし......

 

霊「知らないわよ、そんなの。とりあえず紅魔館に行って文句の一つでも言えばいいでしょ」

 

魔「それもそうだな。っとそろそろ防壁魔法使うか。雨に濡れるのは勘弁だぜ」

 

霊「霧のせいで既に服が湿ってるのは気にしないのね」

 

魔「湿ってる程度、飛んでたら直ぐ乾くぜ」

 

霊「流石、年中湿ってるとこに住んでるだけあるわね」

 

魔「褒めてもマスパしか出ないぜ」

 

霊「それはアンタの妹にでもあげなさい」

 

魔「ちぇ、霊夢も相変わらず冷たいな~」

 

霊「いつものことでしょ」

 

 ま、これも霊夢なりの愛情表情ってか?

 

霊「それはないから安心しなさい」

 

魔「えぇ...... って心を読むな心を」

 

霊「読んでないわよ。勘よ、勘」

 

魔「勘ってあのな......」

 

 本当、霊夢の勘は末恐ろしいぜ......

 

 そんな会話をしつつも、私達は雨の降っているエリアに入った

 雨のおかげか霧は薄くなったが、今度は土砂降りのような雨のせいで見えずらくなった

 しかも、雨雲が邪魔して日光が届かず、暗い

 こりゃさっさと館に入った方がいいな

 

魔「あぁ暗い暗い。見えずらいし暗いし人の目には最悪だな。さっさと茶を出してくれる館に行ったほうが良さそうだ」

 

霊「ついでにお茶菓子もあると嬉しいわ。家にあったのは全部アンタらに食べられたもの」

 

魔「客にお茶と菓子を出すのは礼儀だぜ?」

 

霊「その言葉はお賽銭を入れてから言う事ね」

 

魔「へいへい、っと見えてきた見えてきた」

 

 そんな会話をしていたら、島が見え、趣味の悪い色をした館が見えてきた

 私達は門の前の方に着地した

 

霊「相変わらず趣味の悪い色ね。目が痛いわ」

 

魔「私はもう慣れたが、色に関しては同意する......って、ん?美鈴がいない......」

 

 雨で視界が悪いが、館の門の前をよく見るといつも居眠りばかりしてる奴がいない

 どこいったんだ?もう昼は過ぎたっていうのに

 もしかしてサボりか?

 

霊「めいり...... あぁあの門番ね。それがどうしたのよ」

 

魔「いや美鈴の奴がいなくてよ。もう昼は過ぎたから休憩してるとは思えないが......」

 

霊「そんなの知らないわよ。いないならいないでさっさと行きましょ」

 

魔「あ、あぁ。分かった」

 

 私達はそのまま門を開け、中に入った

 ...ふむ、この不自然な雨といい美鈴といい、館で何かあったのか?

 榛奈が無事だといいが......

 

 そして中庭を過ぎ、扉の前に着いた

 

霊「じゃ、開けるわよ」

 

魔「あぁ、いつでも来い」

 

霊「いや何がよ」

 

 そう言い、霊夢は扉に手をかけ、引いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

榛「...ようこそ紅魔館へ。霊夢様、魔理沙様」

 

 私達を出迎えてくれたのは私の妹であり、フランの従者、パチュリーの弟子をやっている榛奈だった

 榛奈は丁寧にお辞儀すると、私達をじっと見据える

 その目はいつもの榛奈とは違い、鋭い目をしていて、雰囲気もまた鋭い

 どこか咲夜を連想させるようだった

 

魔「は、榛奈......?」

 

霊「今日は随分と雰囲気が違うのね」

 

榛「これが(わたくし)の仕事時の状態ですので、お気になさらず」

 

 榛奈は淡々とした口調でそう答えた

 

 本当に目の前にいるのは榛奈なのか......?

 私の知っている榛奈とは、違う気がする......

 まぁ榛奈だってことには変わりないんだが

 

霊「あっそ。それで、咲夜はいないのかしら」

 

榛「十六夜 咲夜でしたら現在館を空けております。彼女がいない間は私がメイド長代理を務めておりますが、何か?」

 

霊「まぁアンタでもいいわ。アンタんとこの吸血鬼がうちに入り浸ってるのよ。で、帰そうと思った矢先にこの館に不自然な雨が降ってきて、帰せなくなったの。このままじゃアイツを帰せないし、アイツを見た人間から妖怪神社なんて呼ばれて参拝客が寄り付かなくなるわ。だから雨を止ませてくれないかしら」

 

榛「そう言われましても、此方には此方の事情がありますので、雨を止ませることは出来ません」

 

魔「その事情とやらは美鈴がいなかったことにも繋がるのか?」

 

榛「そうですね、繋がるといえば繋がりますし、繋がらないといえば繋がりませんよ」

 

魔「いやどっちだよ」

 

榛「捉え方次第です」

 

 捉え方次第か......

 もしかして、この奥で何かあるのか?

 ここに来る前、レミリアが言っていた「帰れなくしたというより......」の言葉も気になる

 もしかして、その後私が言った通り、何かを出てこれなくしたのか?

 それに美鈴が駆り出されて、門の前にいなかった

 榛奈がここにいるのは見張りか何かで......

 いや、これはあくまで私の憶測だ

 きちんと場を見極めなければ、魔法使いとして笑われる

 

霊「それで、どうしても無理なの?」

 

榛「はい。無理ですね。しかし、どうしても止ませたいのであれば、この先へ行くといいでしょう。この先へ行き、そこにいる者に勝利すればこの小さな異変は解決すると思いますよ」

 

 やっぱり、この奥に何かあったのか......

 それに小さな異変って......

 よし!ここは私が華麗に解決してみせるぜ!

 

魔「よし!それじゃあ早速行こう――」

 

榛「ですが」

 

 榛奈は私の言葉を遮る

 

榛「この先に進めるのは1人だけ」

 

魔「なっ!?どういうことだよ!」

 

榛「そのままの意味ですよ。魔理沙様」

 

霊「...つまり、私達の内どちらかがここに残らないといけないってわけね」

 

魔「お、おい!?霊夢!?」

 

 どういうことだ?

 何故1人だけしか行けない?

 謎だ。榛奈の考えがよく分からん

 

榛「物分りがよくて助かりますよ、霊夢様。...それで、どちらが残りますか?どちらがこの先へ行きますか?」

 

 私が混乱している中でも榛奈は淡々と告げる

 

 ...落ち着け、ここは冷静になるんだ

 今までの話を要約すると、この先に何かがいて、そいつが何らかの異変を起こしている

 それで私と霊夢、どちらかがこの先に行けるってことだな

 よし、異変を解決したとなれば私の知名度も上がるだろう

 紅霧異変の時は霊夢に持っていかれたからな

 ここは私が行こうじゃないか!

 

魔「それなら私が行くぜ!」

 

霊「...そうね。私は面倒臭いし、今回は魔理沙に譲るわ」

 

魔「おう!...ってえ?本当にいいのか?」

 

霊「えぇ、いいわよ。それに、そちらとしても魔理沙を行かせた方が都合がいいんじゃない?」

 

榛「...本当、貴女様は恐ろしいですね。流石楽園の素敵な巫女様だ」

 

霊「褒め言葉なら受け取っておくわ」

 

 おいおい、張り合いがないな

 それに都合ってなんだ?

 霊夢は何か知ってるのか?

 本当、今日は分からないことばかりだな

 

魔「なんだかよく分からんが、私が先に進むってことでいいんだよな?」

 

霊「えぇ。てことで榛奈。私がここに残って、魔理沙が先に行くことになったわ」

 

榛「分かりました。では魔理沙様、この奥へ行くと異変の下へ辿り着けると思いますよ」

 

 そう言い、榛奈は奥を手で指す

 

魔「ん?そっちは図書館だよな?」

 

 榛奈が指していたのは図書館へ続く廊下だった

 

榛「はい。とりあえず行ってみれば分かるでしょう。百聞は一見に如かずと言いますし」

 

魔「ま、確かにな。それじゃ、行ってくるぜ」

 

 私はそう言い、箒に乗る

 

榛「あ、待って」

 

魔「ん?」

 

榛「1つアドバイス、下を目指すといいよ」

 

魔「あぁ分かった......って、ん?榛奈?」

 

榛「どうかしましたか?」

 

 私は榛奈の方を見る

 そこにはさっきと同じ、鋭い感じの榛奈がいた

 ...さっき、確かに口調が崩れたよな?

 

魔「...いや、何でもないぜ」

 

 まぁ多分聞き間違えだろ

 それより早く異変を解決しなきゃな

 

魔「じゃ、改めて。行ってくるぜ!」

 

 私はそう言い、2人の返事を待たずに飛ぶ

 

榛「頑張ってくださいねー!」

 

 後ろから榛奈の声が聞こえ、私はより一層スピードを上げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

榛「...大丈夫かな。壁にぶつからなきゃいいけど」

 

霊「大丈夫でしょ、アイツなら。で?やっぱりさっきのは演技なわけ?」

 

榛「やっぱりって...... まぁ確かに演技というかノリに乗ってただけだけど。なんで分かったの?やっぱりお得意の勘?」

 

霊「えぇ、勘よ。お得意のね」

 

榛「ははっ。本当、霊夢は怖いなぁ」

 

霊「アンタの演技も凄かったわよ。どこかのメイドを連想させたわ」

 

榛「...あれは演技じゃないよ」

 

霊「は?」

 

榛「ふふっ、人って幾つもの顔を使い分けることが出来るんだよ」

 

霊「...どういう意味よ」

 

榛「さぁて、どういう意味だろうね。私にも分かんないや」

 

霊「...ホント、アンタって何なのかしらね。ずっと前にアンタが神社に来た時も不思議だったわよ」

 

榛「おぉ、覚えててくれたんだ。嬉しいね」

 

霊「あんだけ不思議だったんだもの。覚えてるわよ。それに数少ない参拝客だったし......」

 

榛「あはは...... さて、魔理沙姉が帰ってくるまで私達は何する?弾幕ごっこ?」

 

霊「お茶でも出してくれると嬉しいわ」

 

榛「生憎うちに緑茶はないよ。紅茶なら色んなのがあるけど」

 

霊「お茶なら何でもいいわ。あ、お茶菓子もよろしくね」

 

榛「はいはい。分かったよ。でも、まずは私の相手になってもらおうかな。霊夢とは1度もしたことなかったから」

 

霊「それが終わったらちゃんと用意してくれるんでしょうね?」

 

榛「お土産としてクッキーも作るよ?」

 

霊「よし、さっさとやって、さっさと終わらせましょ。スペカは3枚、被弾も3回でいいわよね?」

 

榛「うん。いいけど...... 霊夢は欲望に忠実だね」

 

霊「それが私だもの」

 

榛「そっか。それじゃ、始めよっか」

 

霊「えぇ。始めましょう」

 

 その言葉とともに、エントランス内に光が溢れ出したのであった




後書き~

次回!また魔理沙sideだと思います
え?霊夢と榛奈の弾幕ごっこ?
............

それでは次回もゆっくりしていってね!(逃)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話『結局お前は誰なんだよ』

前書き~

皆さんお久しぶりです!ほのりんです!
いや~、前の投稿からまた日が空いてしまいましたね......
それでも毎日少しずつ書いてはいたんですよ!
でも、考えつかなかったり、受験だったり......
うん。言い訳ですね。すみません

そういえばですが、前期受験、不合格しました
そして後期受験を受け、先日合格発表日だったのですが......
見事!合格してました!
いやぁ、遅い合格でした!
これで晴れて4月から高校生!
青春ですよ!青春!
本当に青春出来るかは不明ですが

そんなこんなで今回は1万文字超!
シリアスあり!意味不明あり!オリ?キャラあり!
それでもいい方はゆっくりしていってね!


榛奈side

 

[紅魔館 エントランス]

 

 

榛「ところで茶葉は何にするッ!?本日のオススメはアイスティーで飲むのがオススメのアールグレイだよッ!」

 

霊「じゃあそれでいいわ。特に希望は無いもの」

 

 私達はそう言いながら互いに弾幕を撃ち合う

 ちなみに場所はそのままエントランス

 外は雨で大荒れだし、館の中で広い場所といえば大広間と図書館と地下室

 そのうち図書館と地下室は今回の計画で使ってるから駄目で、大広間は遠いから嫌って霊夢が

 ということでそれなりに広くて移動の必要が無いエントランスでやることにした

 え、壁に傷とか大丈夫かって?

 大丈夫です!私が自分の能力を魔法と組み合わせて周りをコーティングしてあるのでちょっとやそっとじゃ壊れないようになってます!

 しかも効力は術が壊されるまで!

 つまり、鬼並みの力で無理矢理壊されるか、術を解除出来る人が解除するまで効力が続くということ!

 そして時間も無限!魔力の補給もいらない!

 例えこの館が廃墟になろうが術がある限り劣化もしません!

 ...ホントこれ、紅霧異変の時使えればよかったな......

 まぁこの魔法を見つけた、というより作ったのはつい最近で、あの頃は無かったからかけようもないんだけどね

 ただ、代償もそれなりにありまして......

 一昨日のお昼頃、その魔法を館全体にかけたんだけど......

 その後疲れからか強烈な睡魔に襲われ、まわりにはそれを誤魔化しながら部屋で勉強するって言って、昼寝感覚で部屋で寝たら、そのまま朝まで爆睡コースでした

 途中、夕食時に咲夜さんが呼びに来たそうですが、寝てて起きなかったから、そのままにしたって言われた時は、それほど体力やら精神力やらを消耗する魔法なんだなぁと驚きましたよ

 ちなみにこの魔法のこと、そして館全体にかけたことは師匠にしか教えてません

 なので他の皆さんから見たら、一昨日の私は何故か疲れて寝てたんでしょうね

 昨日1日何もしなかったら完全回復しましたけど

 ホント、私は魔力が少ない割に回復力は多いんだなぁ

 今度は魔力を増やそう

 個人の保有魔力は生まれ付き限界が決まってるって昔師匠に教えてもらったけど、私の保有魔力はまだ増やせるはず!

 更には私の保有魔力は既に限界値だって言われてしまったけど希望は捨てないぜ!

 

 っと頭の中で話が大幅にズレた

 とにかく、この弾幕ごっこでは館が傷つくことはない

 そしてうちのお嬢様達が本気の喧嘩とかしたり、大妖怪が少し力出して攻撃して来たりしない限り大丈夫なはずだ

 

 っと危ない危ない。思考に浸りすぎた

 後ちょっとで弾幕に当たるところだったよ

 

霊「随分と余裕そうね。さっきまで何か考え事してたみたいだけど?」

 

榛「ちょっとねッ!魔理沙姉がフラン様との戦いで館を壊すことはないだろうなって思っただけだよッ!後余裕はないんだけどねッ!さっきからギリギリでしか躱せないんだけどッ!少しは攻撃を緩めてくれないかな!?私にこの難易度はキツイよッ!」

 

 といいつつ避けることの出来る私は意外と出来るやつなのかもしれない

 いや通常弾でこれなんだからスペカ使われたらおしまいだな

 

霊「フランって確かあのレ...レ......レプリカの妹だったわよね?」

 

榛「レミリアお嬢様!“レ”と“リ”しかあってないよ!フラン様がレミリア様の妹って意味ならあってるけどッ!後攻撃は緩めてくれないんだねッ!」

 

 あの、怖い怖い

 弾幕ごっこって楽しいものだって聞いてたけど、難易度が自分に合わないと恐怖しか感じないな

 というかこの霊夢を美鈴と咲夜さんとレミリア様は相手にしたんだよな......

 あれ?実は本当に魔理沙姉に手加減されてた?

 おぅまぃがぁぁ......

 

霊「確か吸血鬼って雨の中を歩けないんだったわよね?もしかして今日のこの雨ってそのフランってやつを閉じ込めるためのもの?」

 

 おぅ......

 霊夢は鋭いなぁ

 ま、普通?はこう考えるだろうね

 原作でもそのために雨降らせてたし

 ただ、今回のは特に関係ないんだよね

 ただアイディアとして使ってただけで

 

霊「あぁ違うわね。どっちかっていうと閉じ込めてるように見せるためにやってる感があるわ」

 

榛「おいちょっとまて!貴女人間だよな!?どっかのサトリ妖怪みたく心を読んでないよな!?何!?勘なの!?お得意の勘なの!?後私の意見無視しないで!」

 

 勿論サトリ妖怪とは小五ロリで知られるあの方

 というか本当に霊夢は凄い

 勘っていうのは五感では感じ取れないものを感じ取る第六感とも言うけど、ここまでくると能力とも言えてくる

 いや、私も結構勘が鋭くなる時があるけど......

 

霊「は?何言ってんの?私が人間かなんてそんなの決まってるじゃない。心も読んでないわよ。ま、貴女の言う通り勘よ。後その意見は聞き入れられないわ」

 

榛「そーなのかーってうわッ!」

 

 やっぱ巫山戯てると駄目だな。集中出来ん

 でも集中したらしたで私は必要最低限のこと以外話さなくなるし......

 弾幕ごっこってその最中で交わす会話も楽しむ要素だと思うんだよね

 

 結論、私に集中した弾幕ごっこは無理だ

 

霊「で、魔理沙はフランのとこに行ったってわけね。貴女はその案内人」

 

榛「まぁその辺は勘に頼らなくても洞察力の高い人なら分かるね。あ、茶菓子は何がいい?まぁクッキーしかないけど、他のを希望なら作るよ」

 

霊「...ねぇ、ホントはこの弾幕余裕なんでしょ?」

 

榛「え?いや余裕じゃないよ?さっきから必死に避けてるから」

 

 だから別に狙ってないのにグレイズ(かすり)しまくってるよ

 

霊「ふぅん......」

 

 霊夢はそう言うと弾幕の密度を更に上げてくる

 通常弾幕なのにその光景は綺麗なんだけど、とてもその光景を綺麗だなぁって見てる余裕は私にはないんだけど......

 あぁもうダレカタスケテー!

 

榛「このままじゃ負けるな。仕方ない、【魔符】『ラクトガール ~ 少女密室』!」

 

 『ヴワル魔法図書館』の火水木金土に月属性に日属性を加えた七属性だ!

 これぐらい巫女なら避けれるだろ!

 いや当たって欲しいんだけどさ!

 

 そして難なく避けつつ弾幕を当ててくる霊夢を見てショックを受けたよ、うん......

 いや避けれるって思ってたけどさ......

 でもさ......

 

榛「やっぱりそうやって避けてるのを見てるとショックを受けるんだよ!うにゃあ!」

 

霊「はぁッ!?」

 

 私はスペルの弾幕密度を上げる

 それはもう私が避ける立場にいれば卒倒しそうな程に

 勿論だがきちんと避けれるようにしているし、それなりに美しい

 それがスペルカードルールだからね

 

霊「アンタ無茶するわねッ!また倒れても知らないわよッ!」

 

榛「あの日は魔理沙姉と弾幕ごっこで魔力を多く使った後に一気に膨大な魔力を使ったせいだから今日は大丈夫だよ!それより自分の心配したらどう!?」

 

 ここで被弾一回...... いやボム一つでもいいから潰したい

 霊夢なら避けれるなら避けて、避けれないならスペカを使うと思うから、使わせるように弾幕を配置して、なんとか......!

 

 そう思っている間にも時間は過ぎていく

 スペルカードブレイクまであと少ししかない

 これでスペカか被弾、どちらも削れなかったら私の勝率は大いに下がる

 霊夢相手で最初から勝率が低いっていうのに、これ以上下げられたら私はどうやって貴女に勝てというのかね

 そんなことを思ってる間にも霊夢は避けつつ、カードを取り......出したッ!

 

霊「チッ!【霊符】『夢想封印』!」

 

榛「その言葉を待ってましたぁ!」

 

 思わず口に出すほど待ってましたよ夢想封印さん!

 私がどれだけ君のことを待っていたか分かるかい!?

 それはもう心がぴょんぴょんするくらいだよ!

 いや癒されてはないけど!

 

 そう思ってる間に夢想封印で出てきた七色の弾が近づいてくる

 確かこれって追尾系だったよな

 ってことはここで避けても当たるってことか

 レミリア様やフラン様みたいに霧化出来れば当たり判定は出ないんだけど......

 そういう能力でもない限り人間にそんなこと出来るわけないので、ここは素直に当たって残り少ない体力ゲージを削り切ります

 

ポンッ

 

 あ、やっぱり少し痛いね

 

霊「まさか最初から使わされるなんてね......」

 

榛「そりゃあの異変以来、修行をしてきたからな。どっかの修行しない巫女さんも修行すればいいのに」

 

霊「その巫女は努力するのがめんどくさいのよ」

 

 

 

榛「それじゃあ君はいつか妖怪に喰われて惨めにこの世から死ぬんだね」

 

 

 

 一瞬、その言葉が自分の口から出ていることに気づくのに時間を要した

 それ気づいた時にはもう霊夢の顔は険しくなっていた

 

霊「...喧嘩売ってんの?」

 

榛「巫女に喧嘩を売るなんて命知らずにも程があるよ。まぁ、修行してない巫女なんかに負けるとは思わないけど」

 

 なんなんだ?口が勝手に喋る

 まるで私じゃない別の誰かが操ってるかのようだ

 

霊「そう。よく分かったわ。アンタが私に喧嘩を売ってるってことが」

 

 霊夢はそう言いながら御幣を突きつけてくる

 その顔には怒りが表れていて、その顔が怖く感じ、私のヘタレ神経が身体に土下座するよう指示を出しているのに身体が言う事を聞かない

 それどころか勝手に身体が動き、ある1枚のスペカを構える

 

榛「このスペカ、受けてみる?これを避けきれたなら君に修行は必要ないだろうね」

 

霊「ふんっ、いいわ。やってやるわよ。私の力を思い知らせてやるわ」

 

榛「...ふふっ、避けて見せてね。今代の巫女さん。【人妖】『悪魔に取り憑かれし者とそれを殺す者』」

 

 ダメだ!そのスペカは威力に問題が!

 そう思って止めようとするが、身体は、力は勝手に暴れ出す

 私の中の魔力が、霊力が、私の意識とは無関係に毒々しい紫、血のような赤、禍々しい黒の弾を作り、霊夢に襲いかかる

 どれだけ止めようとしても身体は全く動かず、まるで意識だけが取り残されたような。そんな気分にさえなる

 どうしたら止められる?どうしたら霊夢を傷つけずに済む?

 そう思ってる間にも弾幕は霊夢へ襲いかかる

 霊夢はそれを避けていくが、先ほどのラクトガールとは圧倒的密度の差があり、苦戦しているようだ

 一見すれば...... いや、よく見なければ隙間すら見えないほど弾幕同士の間隔が狭く、多く、速い

 そんな弾幕を見て私はこんな弾幕を作れたのかと驚くが、霊夢の短い悲鳴で意識が戻る

 

霊「ッ!?」

 

 霊夢の顔が苦痛の色に染まり、左の肩から赤い液体が垂れ、袖を赤く染める

 その様子から弾が霊夢の腕を掠ったのだろう

 一瞬こちらを睨みつけてきたが、余裕が無いのかすぐに回避行動に戻った

 

 この弾幕の弾は威力が強い

 試したことはないが、普通の人間に当たれば意識が飛び、掠れば皮膚を裂き、打ちどころが悪ければ骨が折れ、死に至るだろう

 本来ならば弾幕ごっこ用に威力を調節しなければならないが、どうしてもこのスペカは今発動してる威力より弱くならない

 だから使えないと思い、今までポケットの奥に閉まい、肌身離さず持っていた

 それはどこかに置いておくと誰かが使いそうで怖かったのもあるが、一番の理由は誰にも見られたくなかったから

 そもそもとして、どうして私はあのカードを作ってしまったのだろう

 ただ初めてスペカを作る時、白紙のカードを持ってボーっとしてたら出来ていたのだが、不思議と嬉しくはなかった

 むしろその弾幕、名前、そして雰囲気

 その3つとも私には好きになれないし、なりたくもない

 ならば一層の事、捨ててしまえば良かったなんて、霊夢の顔を見てるとそう思えてきた

 でも、きっと私はこれを捨てることは出来ないんだろうなって無意識に思えてしまう

 だってこれは私のスペカなんだ。きっと何か私に関連していて、なのに私にはそれが何なのか分からない

 だからそれが何なのか分かった時、その時初めてこのスペカの意味を理解するんだろうし、それまでは捨てれないだろうな

 

霊「アンタ、弾幕の威力を間違えてるでしょ!」

 

榛「そうでもないよ。これでも威力は最低にしてあるからね」

 

 少しだけ話せる余裕が出来たのか霊夢が怒鳴る

 確かに私の口から出た通り威力は最低だが、あくまでこのスペカ基準だ

 スペルカードルールの基準では強すぎる

 

霊「アンタ、ルール分かってる?!」

 

榛「抜け道が必要で、美しく、だっけ。抜け道もあるし、美しくないこともないと思うよ」

 

霊「それと威力を人間に当たっても軽傷程度にすることよ!」

 

榛「んー。これでも本当に最低の威力なんだよ?それに当たらなければ怪我はしないでしょ?それにメイド長のナイフだって当たれば怪我をするじゃない。紅い悪魔(スカーレットデビル)のグングニルもさ」

 

霊「それとこれとは話が......ッ!【夢符】『封魔陣』!」

 

 その宣言と共に赤い御札が八方向に飛び、一定距離飛ぶとそこから更に5つに分かれる

 更には霊夢を中心に霊弾が円を書くように放たれる

 と思っていたら御札がゆっくりと回転し始めた

 例えるなら回転式スプリンクラーのようだ

 まだ私がスペル宣言してからそこまで時間が経っていない

 それなのに再びスペカを使ってくれた霊夢を見て私は喜ぶどころか罪悪感が襲ってくる

 そりゃそうだ。今この身体は何故かは知らないが私の制御下にないから私が戦ってるわけではないが、明らかに威力の強すぎるスペカを使い、ルールに違反し、霊夢を傷つけてしまったのだから

 

――別に君が気に病む必要はないよ。君は私に身を委ねてくれればいい――

 

 罪悪感に襲われていると、どこからか声が聞こえてきた

 視界に入っていた霊夢を見れば変化はない

 ということは霊夢には聞こえてない?

 

 

 

 ...誰だ!お前は誰なんだ!

 

――ここは私は君、君は私って言った方がいいけど、正確に言うなら私は君じゃないけど、君は私だよ――

 

 訳分からんこと言うな!直球で話せ!

 

――無理。直球(ストレート)に言っても君は理解してくれないから――

 

 なんでそんなことが分かる!もしかしたら理解してくれるかもとかあるだろ!なんで最初から諦める!?諦めんなよ!

 

――い、いきなり熱血になったね...... 今の状況分かってる?――

 

 とりあえずお前はわけわかんない奴で、私の身体を乗っ取って動かしてるってことは分かった。あ、後お前の声は私にしか聞こえないってことも

 

――わけわかんないはともかく、他はあってるんだけれども...... それで最初に戻るけど、君が罪悪感を感じる必要は無いから。私が勝手に君の身体を使ってやってるだけだからね――

 

 いや無理。感じるなって方が無理。後私の身体返せ。霊夢傷つけんな。そのスペカ使うんじゃねぇ

 

――文句のオンパレードだね...... とりあえず罪悪感は感じてても私には関係ないし、君の身体は後で返す。今代の巫女の怪我は彼女が躱せなかったのが悪い。私に責任はないよ――

 

 確かに霊夢が躱せなかったのが悪かったが、お前がそのスペカを使ったのがそもそもの原因だ。とにかく身体は今すぐ返せ。これ以上霊夢を傷つけられてたまるか

 

――このスペカが終わるまで待ってね――

 

 嫌だ。それまで霊夢が傷つく姿を黙って見てろってことだろ?そんなの大人しく見ていられるか!

 

――そうは言っても君の身体は私の制御下にある。君がどうこう言っても私が身体を返すまで君には何も出来ない。強いて言うなら文句を言うくらいだけど、それも私が聞こうとしなければ無意味だ。無駄に精神力を消耗するより大人しくしてた方が得だよ――

 

 ...確かに私が身体を動かせない限りお前に抵抗することは出来ない。その状況でお前を怒らせてしまえば私は身体に戻れなくなるだろうな。ということで非常に不本意だがお前の言う事聞いてやるよ

 

――君が賢い娘で良かったよ。でも勘違いしないで欲しいな。私は絶対に君に身体を返さないことはないから。借りたなら必ず返す。それは神に誓ってもいい――

 

 神は約束を破れるから駄目だ。誓うなら悪魔に誓え。悪魔との契約は絶対に破れないからな

 

――...そうだね......――

 

 で?お前は何故私の身体を乗っ取った?

 

――君の身体を使ってる理由は今代の巫女の修行したくない発言だよ。彼女はどうにも博麗の巫女ってものを甘く見ている節がある。それを叩き直したいんだよ。だから一度勝負で完膚無きまで倒す。そこで君の身体を借りたんだ――

 

 何故私の身体を乗っ取る必要があった?自分の身体は無いのか?

 

――言ったよね?君は私だって。つまり君の身体は私の身体でもあるんだ――

 

 ...多重人格ってやつか?

 

――それとはまた違うけど、感覚としては同じかな――

 

 ふぅん。つまりお前は私の身体でしか動けないってわけか

 

――そういうこと――

 

 で、いつになったら身体を返してくれるんだ?

 

 こうやって話し?てる間にも時間は過ぎていく

 丁度霊夢の封魔陣が終わったところだ

 これで霊夢はスペカ2枚、被弾0回

 対する私は被弾0回にスペカ2枚目宣言中。それも時間体力まだまだある

 このままだと霊夢は負けるかもしれないな

 いや、霊夢は幻想郷最強と謳われる巫女だ

 そう簡単に負けるはずは......

 

 ――本当にそう思う?――

 

 ...え?なんで......

 

――「なんで考えてることが分かるんだ?」って?それもさっき言ったよ――

 

 あぁ、そういうことか

 同じ身体にいるからか、はたまた魂が同じだからか私の考えが読めるってことか

 ...ん?待てよ......

 あいつが私の思考を読めるってことは私もあいつの思考を読めるはずだよな......?

 

――残念ながら君に私の思考を読むことは出来ない。一方通行なんだよ――

 

 んだよそれ。で?本当にそう思うかってどういうことだ?

 

――今代の博麗の巫女は歴代の中で一番天才と言われている。確かに修行なんてしなくても強いからそう言われるのも頷けるよ。でもね、天才ってだけじゃこの幻想郷は生きていけない。今はスペルカードルールがあるけど、それは闘いを甘くしてるだけだ。もし手強い妖怪がルールを無視して巫女を襲ったら...... 彼女は生きていられるかな?――

 

 つまりなんだ?お前は霊夢を心配してこんなことしてるってことか?

 

――まぁそうだね。彼女のような天才を見殺しなんてしたら勿体無いからね。博麗の巫女自体は替えがきくけど――

 

 なら直接修行しろって言えばいいじゃないか。いやまぁ、お前は私の身体でしか言えないから私が言ってるみたいに受け取られるんだろうけど

 

――それで本当に聞いてくれると思う?――

 

 ま、まぁ、それで聞いてくれたら山の仙人は苦労しなかっただろうな......

 

――ってことで一度完膚無きまで倒し、悔しさを覚えさせて、それを糧に自分から修行するようになってもらおうかなって――

 

 なるほどなぁ。つまりお前は自ら悪役を演じるわけだ。私の身体を使って私を巻き添えにして

 

――それに関してはごめんね。魂の器さえあれば一時的に移れるんだけど、今はそれが無いから......――

 

 魂の器か...... そんなもの用意出来るわけないだろ。強いて言うなら人形、それも1から作る時に何らかの力を一緒に縫い合わせた物とか、死体を用意してゾンビとか...... 死体ならこの館でも調達出来るな。吸血鬼は血を吸っても肉は喰わなくても生きていけるし。今度用意する?

 

――ゾンビは腐ってるから!いやその時は新鮮でも腐るから!せめて人形して!というか人形だって君の知識があれば用意できるよね?――

 

 は?私の知識?私の知識でどうやって人形を......人形?...あ......そうか、そういうことか

 まだ出会ったことはないけど、あの魔法使いに依頼すれば力の篭った人形くらい作れそうだ

 

――ようやく分かったようで何より。まぁ人形だけ用意しても本当に一時的にしか無理だから他にも用意するものがあるけどね――

 

 他には何を用意すればいいんだ?

 

――今は用意出来ない物だよ。でもそれを入手する機会が必ず来る。その時はまた身体を貸してね――

 

 ...ま、お前は悪いやつではなさそうだし。このままじゃお前は私の中に居るままだからな。お前を追い出せるなら協力してやるよ

 

――...ありがとう。これから宜しくね――

 

 どういたしまして。宜しくされてやるよ

 

 

 

 さて、こいつと話すことも無くなったし、協力するって言ってしまった手前、身体を返されるのを待ちながら霊夢を見てるしかないか

 ってあれ?今気づいたがこのスペカの体力ゲージ、全くと言っていいほど削られていないじゃないか

 

――巫女の弾幕は全て私に到着する前に他の弾幕によって打ち消されてるからね。もし辿り着いても君の能力で守ってるから――

 

 いや待て!私の能力を使っただと!?

 そんなの反則じゃないか!

 

――そう?でもルールでは個人の能力を使ってはならないとは書いてないよ?それにメイドの時間能力、吸血鬼の霧化、運命操作、巫女の空を飛ぶ能力。それぞれ反則だと思わない?それなら君も能力で弾幕が自分に当たる前に守ってしまえばいいよ。君に勝つ方法はその盾を突き破ることにあるのだから――

 

 確かにそういう捉え方もあるが......

 でも、私は遊びでそうやって勝つのは嫌いかな

 死闘なら手は抜かないけど

 

――だから君は甘く、弱いんだ。まるで押し潰せば形が崩れてしまう甘いショートケーキみたいに――

 

 ケーキは潰れても美味しくいただけるぜ。苺はグチャっとするがな

 

――皮肉な返し?――

 

 さぁな。思ったことを言ったまでだぜ

 ってかお前、この状態を保つんだな

 

――ま、暇だからね。私が君に身体を返した後もこうやって会話をさせてもらうね。どうにも今まではもやもやした意識だったのが今ではハッキリとしてるからさ。暇という感情をハッキリと受け取れるようになっちゃったんだ――

 

 つまり、暇だから首を突っ込みに来るってことか

 ま、四字熟語にするなら二心一体ってことか

 

――そうなるね。ところで話は変わるけど、君は霊夢が勝てると思う?――

 

 そうだな......

 霊夢は後一枚しかないが被弾は1回も減ってない

 なら被弾で時間を稼いで時間切れを狙うってのもアリだろうし......

 

――1回でも当たれば意識が飛びそうな弾幕なのに?――

 

 ぐっ......

 で、でもそれ以外なら本当に避けきるしかないし

 当たっても気合いで意識を保てばなんとか......なるよな?

 

――ま、それは彼女次第だね。さ、時間がようやく半分を切ったよ――

 

 え、まだ半分なのか......

 この時間の長さについて後で霊夢に怒られそうだなぁ......

 仕方ない...... 私がおやつに食べようとしてたシュークリームで手を打ってもらおう

 

――あ、私もシュークリーム食べたい――

 

 意識だけの存在がどうやって食べるんだよ

 自分の身体が持てるまで我慢な

 

――えぇ......――

 

 ところでお前に名前とかあるのか?

 ずっと“お前”って呼んでてもお前のことだって伝わるが、どうせなら名前を知ってた方がいいだろ

 

――うーん...... まぁ君は私だから“榛奈”でいいんだけど...... なら――でどうかな?――

 

 ま、それでいいか

 

霊「――グッ!」

 

 また悲鳴で意識が戻される

 今度は霊夢の身体に弾幕が当たっていて、霊夢が少しだけふらつく

 だがすぐに体制を立て直し、回避行動をとる

 凄いな霊夢。この弾幕を受けても意識を保ってられるなんて......

 もしかして思ったより威力は弱いのか?

 

――いや君の思ってる通りの威力だよ。ただ彼女が耐えきれただけで――

 

 ってことは時間切れを狙うことも出来るのか

 いや、そこまで霊夢自身の体力が持つかどうかだよな

 霊夢!頑張れ!勝てばお賽銭あげるから!

 

――賄賂は良くないと思うんだけどなぁ――

 

 賄賂じゃないぜ。報酬だ

 

――はいはい――

 

榛「粘るね。ささっとくたばるかなぁって思ってたんだけど」

 

霊「私がこの程度でくたばると思ってるの?」

 

榛「そうだね。思ってるよ」

 

霊「アンタ、相当私の怒りを買いたいようねッ!」

 お前、相当霊夢の怒りを買いたいようだなッ!

 

榛「いや2人して同じようなこと言わないでよ!」

 

霊「は?2人?」

 

榛「いや、何でもないんだよ何でも......」

 

――そういえば反射的に隠したけど、私がいることは内緒にした方がいいよね?――

 

 そりゃあな。教えたら教えたでややこしいし、バレるまで隠すか

 

――つまり私は君みたいにしなければならないのか...... そうなると手遅れ?――

 

 だ、大丈夫だ。霊夢とは接点は少ないから、他を気をつければなんとか......

 

――大丈夫だといいね......――

 

 ホントだよ......

 

榛「ふぅ...... あ、危ない」

 

 え?

 

霊「―ッ!」

 

 あ、本当に危なかった。霊夢が

 

榛「この短い時間に2回も当たってるのに耐えるねぇ......」

 

霊「これぐらい......っどうってことはないわよ!」

 

榛「ま、どっちにしても君は残り1回しか残ってない。対する私は被弾はまるまる3回残ってる。勝負は目に見えてるね」

 

霊「っこうなったら......」

 

 突然、霊夢の周りの雰囲気が変わった

 ...いやこれは、力の方向が変わったのか?

 

――あ~、こりゃ来るね。奥義が――

 

 奥義?霊夢の奥義といえば夢想...天...生......!?

 

霊「『夢想天生』」

 

 そう宣言すると同時に霊夢の身体は半透明に、所謂不透明な透明人間状態になった

 そして、目は閉じられているのに、弾幕が自動でばらまかれる

 更にはこちらの弾幕が霊夢のとこに辿り着いてもすり抜けてしまう

 うん。霊夢の夢想天生さんだね。怖い怖い

 ...ねぇ、これクリア出来る?

 

――弾幕は相殺出来るとして、問題は時間だね。多分この夢想天生は遊びとして時間制限が設けられてるだろうけど、夢想天生の時間切れまでに、こっちのスペルの時間切れがくるよ――

 

 だ、だよねー......

 ってことはこっちも終わったら回避に徹するか、思い切ってスペカを使うかしかないわけか

 

――ま、その辺は君が頑張ってね――

 

 おう!......ってえ!?なんで!?

 お前がやるんじゃないのか!?

 

――残念ながら私が表に出られる時間も限ってるんだよ。だから頑張ってね。ファイトだよ!――

 

 ファイトだよじゃねーよ!

 自分で火種付けといて......

 ちゃんと消してけよ!火事起こすだろ!

 

――山火事は嫌だなぁ...... 小さい火種が大規模な火災になるから......――

 

 それなら消してけよ!霊夢に水ぶっかける勢いで!

 

――夢想天生宣言中の霊夢に攻撃が当たると思ってる?――

 

 いや、当たらないだろうけど......

 

――とにかく今代の巫女の夢想天生は耐久スペル、体力ゲージなんてものは存在しない......というか存在してもまず攻撃が当たらないから意味がない。だから必然的に時間切れを狙うしかない。そして原作では1度でも被弾(ミス)すればその時点でまた最初から。流石に此処にそのシステムが入ってるとは思えないけど、念のため被弾は避けてね――

 

 そんな事言われたってなぁ!

 私にあの大量の御札を避けれると思ってるのか!

 出来るわけないだろ!

 

――最初から諦めたら駄目って君も言ったじゃないか。頑張ってみようよ――

 

 でも......

 

――分かった。なら私がサポートする。大丈夫、負けても何もならない。これは遊びだから――

 

 ...分かったよ......

 遊びだもんな、これ

 それに逃げてばかりじゃ強くはなれない

 

――そういうことだよ。さて、時間切れ前の最初のアドバイス。今代の巫女の夢想天生は円のように中心から外側へ御札を直線に並べ、それが自機に向かって飛んでくる8way弾だよ。では問題、これはどういう避け方をしたらいいと思う?――

 

 問題って......

 向かってくる御札をちょん避けか?

 

――うん。まぁ余裕がある時にね。簡単なのは巫女を中心に円を書くように避けることかな。その時の注意は避けてる途中で新たな御札が飛ばされること。向かってくる御札に気を取られすぎて飛ばされてくる御札に当たってしまうってこともあるからそれも気を付けてね――

 

 お、おう...... やってみる

 

――うん。頑張れ!――

 

 その言葉と同時にこちらの弾幕が一斉に無くなった

 よぉし!避けてやる!

 

 

 

 ~少女回避中~

 

 

 

 避けてやると意気込んでから時間が経ち、周りにあった御札が一斉に無くなる

 ちなみに私は1回も被弾していない

 これって......つまり......?

 

――やれば出来たね!おめでとう!――

 

霊「...まさか避け切られるとはね......」

 

榛「ぅえぇ?避け...きれ...た......?」

 

 なんだか実感が湧かない......

 でも、夢想天生を途中からでも避けきれたんだ......!

 

榛「~~!!」

 

 出来た......

 やれた......!

 勝った!

 

榛「勝ったんだ......!」

 

 なんだろう......

 段々と実感が湧いてきた......!

 それに純粋に嬉しい!

 

霊「カードを3枚使い切ったから私の負けね」

 

 そう霊夢は何でもなさそうに...... いや、よく見たら少し悔しそうにしながら言った

 

 あ、この後どう言う?

 お前が好き勝手に会話してた内容と噛み合わせないと......

 

――なら私がここで言うから君はそれを口に出して――

 

 心配だけど、分かった。やってみる

 

榛「うん、君の負け。私の勝ち。これで少しは懲りた?」

 

霊「懲りたって何がよ」

 

榛「修行しないことに。君は天才みたいだけど、それだけじゃ幻想郷は生きていけないんだよ?特に君は...... 博麗の巫女は幻想郷の要。特に命の危険に晒される機会が多くなる役職だ。そして、その機会が訪れてしまった時、力不足だと簡単に殺されてしまうよ。殺され方は分からないけどね。人間による殺人なのか、妖怪に喰われるのか、はたまた精神崩壊か...... でも、そのうちのどれもが力不足でなってるわけで、力は修行次第でどうにでもなる。それなのに君はそれをしない。それはつまり、君は自分は修行しなくても大丈夫だと過信してしまっている証拠なんだ。知ってる?それは、傲慢、身の程知らずって言うんだよ?」

 

霊「.........さい......」

 

榛「え?」

 

霊「っうるさいって言ったのよ!!アンタなんかに何が分かるのよ!たった1回、弾幕ごっこで私に勝ったくらいで調子に乗らないで!」

 

 霊夢が顔を真っ赤に染めて怒鳴る

 そんな霊夢を見て私は、なんだか小さい子を理不尽に叱ってる気分になってくる

 ...なぁ、これは言い過ぎなんじゃ......

 

――全然、むしろ言わなさ過ぎなくらいだよ。もしかしてこれ以上は言いづらくなってきた?それなら交代する?――

 

 ...お前が直接言った方が早いからな......

 でも、あんまり霊夢を虐めるなよ?

 

――分かってる。でも、少しだけ嘘をつくね――

 

 え......?

 

榛「確かに私には博麗の巫女がどういうものなのかは分からないよ?でも、その弾幕ごっこは君の得意分野だよね?更には君が使った『夢想天生』。これは博麗の巫女の奥の手だよね?得意分野で奥の手まで使ってるのに私に負けたってことは君が私より弱いってことになるんだよ」

 

霊「っ!今日は偶々、偶然、まぐれよ!」

 

榛「なら、もう一回勝負する?正々堂々と、スペルカードルールに基づいた戦いか、ルールを無視した戦いか」

 

霊「なっ!?」

 

榛「私はどっちでもいいよ。弾幕ごっこでも、殺し合いでも。大丈夫、君がルールを無視しても私は誰にも言わないし、誰にも言う気は無い。何せ私から誘ったんだからね。咎められるのは私だ。それに殺し合いといっても命の取引はしない。骨が折れたり、血が大量に出たりするけどね。そっちは殺す気で来てもいいけど......」

 

 おい!――!?

 霊夢を傷つけるなって言っただろ!?

 

――殺しはしないよ。それに、怪我をするのも一つの経験。この幻想郷、傷つかずに天寿を全うするなんて出来ないよ。妖怪がいる限りね――

 

 だからって自分から傷つけに行くのは嫌だ

 それに私は人間だ。霊夢を傷つける理由が無い

 

――君はそうでも、私は違う。それに私は君みたいに甘くはない。その気になれば、誰だって殺せる。例えそれが君の家族でもね――

 

 貴様......ッ!

 

――あくまで例え話だから怒らないで。それに今は必要ではないからね。彼女達の死は――

 

 ...さっさと魂の器を用意して貴様を追い出したいところだ......

 

――そのためにも頑張ってね――

 

 私達が心の中で会話してる間、霊夢は俯き、怒りで身体を震わせている

 それは私達が会話を終えた後もずっとだ

 どちらを選ぶのか、答えが決まらないのだろう

 当たり前だ。自分のプライドを傷つけられ、今すぐにでも私の中にいるコイツが操る私の身体に殴りかかりたいのに、それではルールを無視した戦いを選んだことになってしまう

 そうしたら自分からそのプライドを捨てたと同じことになるのだろうから

 

榛「...そんなに悩んでるなら今日は止めておこうか。もしどちらで戦うか決まった時、相手になるよ。私には仕事があるから忙しくない時だけどね」

 

 そう言い、私の身体は図書館の方向へ進む

 

霊「っちょっと!どこ行くの!?」

 

 その声に私の身体は歩くのを止め、後ろを振り返らずに言った

 

榛「そろそろ2人の戦いが終わる頃だろうからね。迎えに行ってくるよ。君は先に客室にでも行ってて。迎えに行った後、お茶を汲んでくるから」

 

 そう言うと私の身体は再び歩き始めた

 今度は霊夢に止められることもなく、私達はその場を去った




後書き~

榛奈の中に現れ、榛奈の身体の制御を自分の元に置けるあの人?は誰なんでしょうね?
そして何やら霊夢に思うところがあるようで......
次回!いつの投稿になるんでしょうね!?
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26話『ある事実が発覚してしまったぜ......』

前書き~

サブタイ、どんな意味でしょうね
最後まで読めば分かります

そういえば先日、高校の入学式がありました
その次の日は始業式で、先輩方を見てきたのですが席が一番前で後ろを見れず、声だけの判断ですが、私、高校生活大丈夫かなって思いましたが、なんとかやっていこうと思います
担任の先生は優しく若い女性だったのでそこは安心です

さてさて今回は魔理沙side、途中side無し。弾幕カットでお送りします
それでもいい方はゆっくりしていってね!


魔理沙side

 

 

 エントランスからしばらく、私は誰にも会わないまま図書館へ繋がる大きな扉の前へ辿り着いた

 榛奈はここに犯人がいるとは言ってなかったが、手で指したのはこっちの方で、更には「下を目指せ」と言われた

 つまり下、地下寄りにある図書館か、行ったことはないがフランが言っていた地下室に犯人がいるのだろう

 しかし、どうやって入ろうか......

 もし図書館に犯人がいるのならいきなり攻撃されないよう慎重に行くか、中を覗くだけにするか......

 ...ここでゴチャゴチャ思っててもしょうがないな

 とりあえず入ってみるか

 そう思い扉を開けた先はいつも通り本棚が所狭しと並んでおり、扉から正面に見える場所には机や椅子、片付けられてない本があった

 そこに、普段ならいるはずの図書館の主は居らず、司書もいない

 まさか、誰かに捕まっているのだろうか......

 

魔「パチュリー!小悪魔!いるかー!?」

 

 

 ............

 

 

 聞こえるよう大声で呼んでみたが、私の声が図書館内に響くだけで何の反応もない

 もしかして、本当に捕まってるのか......?

 いやパチュリーは喘息を患ってることを除けば簡単に捕まるほど弱くはないだろう

 小悪魔もだ。二人ともたまたま図書館にいないだけかもな

 そんなことを思いながら地下室に向けて箒で飛びながら図書館を進む

 

魔「...そういえばフランは何処だ?」

 

 此処(紅魔館)に来ると大体フランは榛奈の近くにいたから探す必要も無かった

 図書館ではそれぞれ本を探しに行っていたが、椅子の場所は隣で、食堂も席が隣で、そしてそれぞれ何処かに行く時お互いついていっていた

 それはまるでアヒルの親子みたいだなと思っていたのは覚えている

 しかし今日は既に榛奈には会ったがフランはいなかった

 榛奈も私が訊いた美鈴のことや咲夜のことしか言っていなかった

 ということはフランもパチュリーや小悪魔と同じく何処かにいるか、犯人に捕まってるか......

 いやそれこそないか

 フランはレミリアと同じ吸血鬼だ。日光や流水、銀と弱点が多くてもそれを補う余りある力がある。負けるどころか反対に相手をボロボロにするだろう

 もしも捕まったとして、紅魔館に他のメンバーがいなくても榛奈と美鈴が助けるはずだ

 それこそ榛奈があそこにいることはない

 となればフランも何処かにいるのか?

 というかこれは本当に異変なのか?

 あまりにも静かすぎやしないか?

 

魔「どうなってるんだよ。今日の此処(紅魔館)は......」

 

 その後も地下室へ繋がる階段の扉の前に着くまでの間、ずっと周りを見渡していたが、小悪魔どころか妖精一匹すら出てこなかった

 私は仕方なくそのまま地下室へ行くことにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 図書館の中にある一室

 ベッドにテーブル、クローゼットなど生活に必要な家具と大量の本があるその部屋の机の上には水晶玉があり、その周りには二人の女性がいた

 一人はゆったりとした服、帽子、髪色まで紫の女性

 もう一人は赤い髪に蝙蝠の羽根、黒い服を着た女性

 二人は水晶に映し出されていた人物が図書館からいなくなるのを見届けると、ふぅっと息を吐いた

 

?「......どうやら行ったみたいね」

 

?2「そのようですね...... ...あのパチュリー様。どうして私達は隠れる必要があるのですか?」

 

パ「榛奈の計画の一つよ。小悪魔」

 

 そうパチュリーと呼ばれた紫の女性は小悪魔と呼んだ赤い女性の方を向き言った

 

小「榛奈さんの......?どうしてでしょう......」

 

パ「知らないわよ。今回の計画はフランの発言からきてるけど、計画自体は榛奈がしてるのだから」

 

小「パチュリー様が雨を降らしたのもですか?」

 

パ「えぇ。それとレミィが神社に行ったのも、咲夜がいないのも、美鈴が門にいないのもね」

 

小「榛奈さんはいったい何を考えてるのでしょうか......」

 

パ「それは後々本人に訊けばいいわ。それより今は紅茶をいれてくれるかしら。魔理沙が地下の方に行ったからもうこの部屋から出ていいでしょうし」

 

小「畏まりました。それではいれてきます」

 

 小悪魔はそう言うと部屋を出ていった

 それを見届けたパチュリーはため息をついた

 

パ「...本当、あの娘は何を考えてるのかしらね......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 [地下室 螺旋階段]

 

 

魔「へぇ。結構深そうだな......」

 

 地下室へ繋がる階段は円を書くような螺旋階段のため、手すりから下を覗くとまるで大きな穴が空いているかのように底の方まで見える

 壁には蝋燭が一定の間隔で設置されているので暗いということはない

 まぁ明るいともいえないがな

 とりあえず階段を使わずに降りるか

 罠はあるかもしれないから用心してな

 

 

 

 

 ~少女移動中~

 

 

 

 

 

魔「っと、着いたな」

 

 上の扉から下の地下室と思われる扉の前まで直線距離で飛んできたが罠等はなく、何事も無く着いてしまった

 これこそ罠なんじゃないかって疑うほどだ

 いや、犯人がいないだけかもしれない

 さっさと扉を開けて、確認するか

 

 私はそう思い、扉を開ける

 扉の先には地上と同じように壁や床、天井、家具に至るまで全て紅く、ベッドの上には棺桶がある

 衣食住の住が揃っているみたいだな。棺桶は人間にはいらないが

 そして、地上と違うことがある。それは、全体的に広いことだ

 端から端まで歩くより飛んで移動した方が速いくらいだ

 なんでこの館はこんなにも広いのが好きなのかね

 なんて考えながら扉を開けたまま中に入り、少しだけ進むといきなり扉が閉まった音が聞こえた

 

魔「なっ!?誰だ!......ってなんだよ。フランか......」

 

フ「ふふふっ♪そうだよ、魔理沙♪」

 

 私が後ろを振り返ると笑顔を浮かべる虹色の翼を持った吸血鬼がいた

 なるほどな。今日は榛奈とは別行動だったのか

 

魔「驚かせるなよ。心臓に悪いぜ」

 

フ「ふふ、ごめんね。驚かせたくて」

 

 なんだよ、わざとだったのか。タチが悪いな

 

 魔「ま、いいか。それより異変の犯人が何処にいるか知ってるか?」

 

フ「異変の......犯人?」

 

魔「あぁ。榛奈が下の方に小さな異変の犯人がいるって言ってたんだが......」

 

フ「(あぁ、榛奈はそう言ったんだ。なるほどね......)」

 

魔「ん?何か言ったか?」

 

フ「ううん。何でもないよ。それより魔理沙。もし私が――」

 

 ――異変の犯人だって言ったらどうする?――

 

魔「なッ!?」

 

 その言葉と共に圧倒的な妖力が空間を支配する

 いきなりのことに一瞬たじろぐがすぐに持ち直し、フランと距離を取る

 どういうことだ?フランが異変の犯人なのか?

 状況を正確に把握するには情報が足りなさすぎる

 もう少しフランから聞ければいいが......

 

魔「...それはどういう意味か教えてくれると助かるんだが......」

 

フ「そのままの意味だよ。榛奈が言った小さな異変の犯人が私ってこと。で、魔理沙は異変を解決しに来たんだよね?」

 

魔「あぁ。その通りだ。ってことはお前を倒せば異変は解決するんだな?」

 

フ「うん♪」

 

魔「ならやることは1つだな」

 

 私はそう言い、懐から数枚のカードを取り出し、箒に乗る

 フランもまた数枚のカードを取り出す

 その数はおよそ10枚

 弾幕ごっこにしては多い数だ

 

フ「弾幕ごっこね。スペカは10枚でいい?」

 

魔「あぁいいぜ。被弾はどうする?」

 

フ「3回」

 

魔「いくらだす?」

 

フ「コインいっこ」

 

魔「1個じゃ人命も買えないぜ」

 

フ「貴女がコンティニューできないのさ!」

 

 

 

 

 ~少女弾幕中~

 

 

 

 

 

フ「まさか私が負けるなんて......」

 

魔「いやあ危なかったぜ」

 

 結果はフランの負け

 私は9枚使い2回被弾、フランも2回被弾し、10枚全て使い切った

 まさかこんなに苦戦するとは思ってなかったぜ

 こっちがスペカ使っても向こうは霧化して無効化しちまうし

 もっと強くならないとな

 

フ「はぁ、これで終わりかぁ。もっとやりたかったな」

 

魔「で、1人になったら首を吊るのか?」

 

フ「何で?」

 

魔「She went and hanged herself and then there were none.(1人が首を吊ってそして誰もいなくなった)

 

フ「誰から聞いたの~」

 

魔「有名な童謡だぜ」

 

フ「私の予定では魔理沙が最後の1人だったんだよ?」

 

魔「さっきの攻撃の時だな」

 

 フランがスペル【秘弾】『そして誰もいなくなるか?』を宣言した途端、フランは何処かに消えた

 つまり、体力ゲージがなく、制限時間まで避け続けなければなかったのは痛かったな

 

フ「She died by the bullet(1人が弾幕を避けきれず) and then there were none.(そして誰もいなくなった)

 

魔「予定通りにならなくて悪かったな。あいにく弾避けは得意なんだ」

 

フ「ま、いいけどね。首を吊ったって死なないから」

 

魔「首吊り死体は醜いぜ。大人しく本当の歌の通りにしとけよ」

 

フ「本当の歌って?」

 

魔「おいおい知らんのかよ。She got married and then there were none. . .」

 

フ「誰とよ」

 

魔「私の妹とかどうだ?」

 

フ「え......は、榛奈と......?」

 

魔「ん?ああそうだが。どうした?」

 

フ「ふぇ!?い、いや何でもないよ......///」

 

 フランの顔を見れば周りの紅にも負けないくらい真っ赤になっている

 まるで照れているような......

 ...もしかして、そういうことなのか?

 いやまさかないだろ

 でもフランの顔は依然として赤い

 元々白い肌だった故にその赤さがよく分かる

 ただ赤くなったなんてことはないだろう

 ってことは私の魔法にも使ってるあれか......?

 

 

 

 

 

 どうやら妹は大変なやつに好かれてしまったらしい




後書き~

最近///←これがただの棒にしか見えなくてちゃんと伝わってるかなと心配になっていたりします
さて、魔理沙がある事実に勘づいてしまったのですが、それは果たして本当にその通りなのか......
魔理沙の魔法とはスペカの一部にも書かれていることですね。星じゃないですよ?

それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第27話『考えてない!考えてないです!』

前書き~

お久しぶりです(何度目でしょうね......
地の文、難しいんですよ
そのおかげでアイディアが出ても地の文が出来ず、そのまま忘却の彼方へ葬られることがしばしばありまして......
ついでにキリがつかなかったので、途中のキリがいいところで区切って投稿します

今回は榛奈sideです
サブタイの意味?読めばわかる人が多いですよ
分からなかったら感想か個人メッセージを書いていただければ答えを書きますよ
それでは今回もゆっくりしていってね!


榛奈side

 

 

榛「...これからどうしよう......」

 

――「どうしよう」って、今は吸血鬼と白黒を迎えにいくんじゃないの?――

 

榛「それじゃなくて、霊夢とのことだよ。私、このままじゃ霊夢と仲良く出来ないよ......」

 

――まぁ、私が言ったって巫女が分かれば君の印象は前と同じになるけど、私がいるってことは言ったらダメだからねぇ――

 

榛「ホントだよ...... お前がいるってことさえ言えればお前のせいだって出来るのに......」

 

――まあまあ。今は二人を迎えに行こうよ。もしかしたらあちらはもう既に終わって図書館で魔女と一緒にいるかもね――

 

榛「うぅ...... 今後が心配だよ......」

 

 ...というか会話は口に出さなくても出来るんだっけね

 

――あ、今頃気づいた?傍から見たら独り言ばかりしてる痛い少女みたいで面白かったんだけどね――

 

 お前...... 気づいてたなら言ってくれよ

 危うく紅魔館での立場が変なやつになるところだったじゃないか

 

――今更だね――

 

 今更ではない。私はまともな方に入る

 

――魔法が使えて、空が飛べて、吸血鬼の従者をしてるのに?――

 

 ...幻想郷ではまともだ

 

――ハイハイ。ソウダネ。君ハマトモダヨ――

 

 どうせ言うなら棒読みで言うなよ......

 

 なんて会話?をしていると、図書館の扉の前に着いた

 本当に、いつ見てもここの扉はでかいと思う

 もう見慣れてしまったけど、初心にかえると本当にそう思う

 いや館の中も十分でかいんだけどね

 そんなこと思いながら扉を叩く

 

コンコンコンコン

 きっちりノックは4回

 2回はトイレで3回は親しい人、4回はきちんとした場面って回数が決まってるからね

 此処に来たばかりの頃、咲夜さんに教えてもらいました

 ノック習慣の無かった日本では馴染みはないけど、洋風の家は人里の外なら少しあるから覚えておいて損は無いね

 

榛「入りますよー」

 

 私は返事を待たずに開ける

 元から返事は期待していない

 そこにいないこともあるからだ

 それに前にノックしなくてもいいと師匠から言われたから、ノックもしなくてもいいのだが、まあそこは癖みたいなものだ

 扉を開けると正面に見える机にいつも通り師匠がいたが、それ以外はいなかった

 

パ「...来たわね。そっちはもう終わったの?」

 

榛「はい。霊夢とスペルカードで戦いました。...ところで魔理沙姉とフラン様は?」

 

 周りを見渡しても2人の姿を見られない

 小悪魔が本棚の間を行き来してるのは見えたけど......

 

パ「2人ならまだ下にいるんじゃないかしら。まだ上がってきてないわよ」

 

榛「そうですか......」

 

 もしかして原作みたいにスペカ10枚でやってるのかな?

 もしそうならこっちより長引くなぁ

 その間どうしよう......

 霊夢を呼びに行こうにも私だけだと気まずいし......

 でも待たせるのも悪いし......

 

 なんでお前は客室に行ってって言ったのさ!

 

――いやぁ、その場のノリ?――

 

 ノリで言うなよ!いや図書館までの道のりで気まずいのも嫌だけど!

 あ、後で霊夢の怪我を治さないと......

 

パ「それで霊夢は?」

 

榛「客室で待たせてます。2人が来たら向こうでお茶にしようかと思いまして」

 

パ「そう。なら下まで迎えに行ったらどうかしら」

 

榛「そうしようと思います。後で師匠の方にもお茶をお持ちしますね」

 

パ「お茶はいいわ。こあが持ってきたから」

 

榛「そうでしたか。では茶菓子を持ってきます」

 

パ「えぇ。お願いね」

 

榛「はい。では失礼します」

 

 私はそう言い師匠と別れ、箒に乗り図書館の奥へ進む

 そういや咲夜さんはレミリア様のとこに行くって言って出かけたけど2人とも今は神社かな?

 後で迎えに行った方がいいかも

 

――吸血鬼とメイドなら雨が止んだら勝手に帰ってくると思うよ。魔女も勝手に雨を止ませると思うし――

 

 そうだな。気にしなくてもいいか

 

――にしても良かったの?魔女に巫女と戦って勝ったことを言わなくて――

 

 訊かれない限り言わなくていい

 あれは半分お前の勝利なんだ

 それにルール違反もしちまったからな

 

――本当、君は謙虚というかなんというか......――

 

 いいだろ。謙虚でもなんでも。私自身が認めないんだからさ

 

――君がそれでいいならそれでいいよ――

 

 分かってくれたようで何よりで

 

 

 

 

 

 しばらく飛ぶと扉が見えてきて、私は一旦箒から降りた

 そこから扉を開け、少しはしたないが手すりを越え、螺旋階段の中心を飛び降りる

 といっても地面が近くなったら落下速度を遅くして、静かに着地する

 勢いよく着地すれば足に負担がかかるし、大きな音も出て、誰かを呼んじゃうかもしれないからね

 さて、まだ2人は弾幕ごっこやってるかな?

 そう思い扉に耳を傾ける

 幸いなのか此処(地下室)の扉の防音は普通並だ

 だから耳をすませば多少は聞こえてくる

 というか私の部屋以外は大体防音は普通だ

 私の部屋は私が防音魔法をかけて内側からの音が外に漏れないようにしてるため、吸血鬼の耳でも誰が話してるかは分かっても言葉までは聴き取れないようになっている

 今度は今かけている魔法の上位版でも作ったり見つけたりしてかけようかな

 なんて思いながら耳をすませていると、中の声が少しだけ聞き取れた

 どうやら弾幕ごっこは魔理沙姉の勝利で幕を閉じたらしい

 ええっと?なになに?

 

魔『予定通りにならなくて悪かったな。あいにく弾避けは得意なんだ』

 

フ『ま、いいけどね。首を吊ったって死なないから』

 

 まぁフラン様は吸血鬼だからね

 もしかして窒息しても死なない?

 ...死なないかもしれないな......

 

魔『首吊り死体は醜いぜ。大人しく本当の歌の通りにしとけよ』

 

フ『本当の歌って?』

 

 あ、私も知らない

 本当の歌ってどんな歌詞だろ......

 

魔『おいおい知らんのかよ。She got married and then there were none. . .』

 

 へぇ、そんな歌詞だったんだ

 その歌詞通りにするならフラン様は誰とかな?

 

フ『誰とよ』

 

魔『私の妹とかどうだ?』

 

 ...え......ふ、フラン様と......私?

 私とフラン様が......?

 

――どうしたの?――

 

 えっ!?な、何でもないよ!///

 ただ少し想像しただけで......///

 

――フランドールとのことを?――

 

 うぇ!?う、うん......///

 少しだけだけど......///

 

――ふぅん。なら本当に歌詞通りにしてみたらどう?楽しそうだよ――

 

 い、いやいやいや!

 私はフラン様の従者であってその......そっちの方向の関係は無いから...... というか従者だから主とその......///

 

――また考えたね――

 

 と、とにかく無し!///

 その話無し!///

 フラン様と私は今まで通り!主従関係なの!///

 

――自分に素直になるのもいいことだよ?――

 

 素直になりすぎるのも駄目なの!///

 素直すぎて可愛いのは子供の時まで!///

 と、とりあえず2人はもう少ししたら戻ってくるみたいだから私達は先に上に行こ!///

 

――え?いや一緒に行けばいいんじゃ......――

 

 そんな声など気にする余裕はなく、私はそのまま中心を通って図書館に戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

[図書館]

 

 

榛「......///」

 

――まだ考えてる......――

 

榛「う、うるさいっ!もうこの話は終わりっ!おしまい!」

 

――そう言いながら考えてるのは君自身なのに......――

 

榛「ぅにゃぁぁ......」

 

――フランドールとの―― ――

 

榛「言うなぁぁ...... 思い出させるなぁぁ......」

 

小「え、えっと。榛奈さん?」

 

榛「ふぇ?コア......?いつからそこに......」

 

 私が傍から見たら独りでに怒鳴って頭を抱える変人になっていたらいつの間にか傍にコアがいた

 本当、いつの間にいたんだろ?

 

――君がぅにゃぁって言った時だね――

 

小「榛奈さんが頭を抱え始めた時ですよ。怒鳴り声が聞こえたので来てみたのですが......」

 

榛「あぁそうでしたか。すみません、大きな声出して......」

 

 図書館だから静かにしないとね

 ところでお前、よくコアが近くに来たって分かったな

 私は分かんなかったのに

 

――そりゃ君は吸血鬼のことを考えててそれどころじゃなかったからね。私は気配で分かったんだよ――

 

 ふぅん。気配か......

 私も気配は少しなら把握出来るんだけどね

 

――ま、修行してれば私ぐらいにはなるよ――

 

 それはそれでなりたいが、お前の実力をそこまで理解してないから微妙だなぁ

 

小「もし何か悩み事があったら何時でも相談に乗ってくれてもいいんですよ?」

 

榛「いえ、相談するほど大したことではないので大丈夫です」

 

 というかこいつのことは言えないからなぁ

 相談しようにも出来ない......

 

小「そうですか......?遠慮しなくてもいいんですよ?」

 

 あ、あれ?

 今日はやけに積極的というかなんというか......

 ど、どうしよう......

 なんとか適当に誤魔化さないと......!

 

榛「い、いえ。本当に......今日の夕食は何にしようかな程度なので......」

 

小「今日ですか?今日はハンバーグって咲夜さんが言ってましたよ」

 

 え、いやそれ例え話だったんだけど......

 ま、いいや。この流れに乗って話を逸らさないと

 

榛「えっあ、そうだったんですか。ハンバーグかぁ。楽しみですね」

 

小「そうですね♪」

 

榛「そっそれでは私はこれでっ!」

 

 その言葉とともに私は出口に向かって走る

 

小「えっ!?榛奈さん!?」

 

 そんな私にコアは驚きの声を上げるが気にせず走り去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

榛「はぁ...はぁ...はぁ...」

 

 あの後走ったまま図書館の出入口付近にある机まで行った

 そのおかげで息が切れたり、口の中が乾いたが、コアから離れることが出来た

 後々問い詰められるかもしれないが、今はやり過ごせる

 ...とりあえず誰か水ください......

 

パ「だ、大丈夫?」

 

榛「だ...だい...じょうぶ...でっゴホッゴホッ!」

 

 や、やばッ

 喉に埃がッ

 

パ「全然大丈夫じゃないじゃない。ほら、そこに座って」

 

榛「ゴホッゴホッ......」コクコク

 

 師匠が私の背中を擦りながら椅子まで手を引いてくれる

 私は咳で言葉を発せない代わりに頷く

 そして私が椅子に座ると師匠の場所にあったカップにポットの中身を注いて私に差し出してきた

 

パ「ほら、私が使っていたやつだけど飲む?」

 

榛「......」コクコク

 

 咳は止まったが口が乾いてまだ声が発せなかったので頷き、師匠からカップを受け取りその中身を口に含む

 まだ肩で息をしていたり、口が乾いていたこともありむせそうになったが、少しずつゆっくりと飲んでいく

 そして中身が空になったところでカップを机に置き、深呼吸した

 

パ「落ち着いた?」

 

榛「...はい。落ち着きました...... 師匠、ありがとうございます」

 

 私は声が発せなかった分も含めて口に出してお礼を言った

 本当に助かった。口の中が乾きすぎて苦しかったからな

 師匠には本当、感謝だらけだよ

 

パ「別にいいわよ。それよりどうしたのよ、息切れまでして......」

 

榛「少し、地下室へ向かう扉のところから全速力で走ってきただけですよ。それで体力と口の中の水分が無くなっただけです」

 

パ「一体何があってそんな慌てたのよ。それに走るんじゃなくて飛んでこればよかったじゃない」

 

榛「あ、その手が......」

 

パ「まさか思いつかなかったの?」

 

榛「あはは。...すみません......」

 

パ「別に謝る必要はないのだけれど...... まぁいいわ。それで何かあったの?フランや魔理沙は?」

 

榛「いえ、特には...... 2人は私が行った時にはもう既に勝敗は着いていたみたいで、少ししたらこちらに戻ってくると思いましたので先に帰ってきました」

 

パ「...そう」

 

 そうだ。すぐお茶が飲めるように先に用意しておこう

 咲夜さんみたいに時を止めたり出来ないから、準備に時間が必要になるからね

 

榛「それでは私はお茶の準備をしてきます。2人が戻ってきたら客室に向かうよう伝えておいてください」

 

パ「分かったわ」

 

榛「では失礼します」

 

 私はお辞儀をし、図書館を去り、そのまま厨房へ向かった




後書き~

え?英語の意味?
...いや答えますよ?えぇ答えます
ただし感想や個人メッセージで、です
え?なんで榛奈が恥ずかしがったのか?
察してください。榛奈の心の声は魔理沙並かそれ以上に男っぽいですけど、これでも一応乙女なんです

次回、榛奈は厨房で見た!何を!?PA...ゴフッ!
......何かを見た!
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第28話『紅魔郷EX、完です!』

前書き~

前回からまた日が空きましたね。お久しぶりです
最近はバイトバイトと調べていて忙しかったのですが、皆さんはどうでしたか?
今日は平日ですが、一応ゴールデンウィークですけど、どこか行く予定はありますか?
私はあります。電車で片道1時間の場所に行きます。バイトで
えぇ仕事ですね。日給が良いんです
そのついでにポケモンの店に寄ってキテルグマをゲットしてきますね

さてさて、そんな本編に関係の無い話は置いといて、今回は榛奈side、最後side無し、フラグ確認ありでお送りいたします
ということで今回もゆっくりしていってね!


榛奈side

 

 

 厨房の扉を開けるとそこには先客がいた

 

榛「あれ?咲夜さん、もう戻っていたんですね」

 

咲「えぇ。雨が止んだということは計画は終了したのでしょう?ならそれ以上無人の神社にいる必要もないもの」

 

 咲夜さんはそう言いながら慣れた手つきで既に沸かしてあったお湯をティーポットに入れ、ポットを温めるとそのお湯を捨て、中に茶葉をティースプーン数杯分入れ、お湯を注いだ

 どうやら咲夜さんもお茶の準備をしていたみたいだ

 

咲「榛奈はどうして厨房へ?お茶の準備?」

 

榛「はい。フラン様と魔理沙姉、霊夢の分を入れに」

 

咲「なら大丈夫よ。お嬢様の分も含めて人数分を今やってるから」

 

榛「え?」

 

 そう言われて見てみるとトレイの上に乗っているカップの数は5つ、5人分だ

 ん?5つ......?

 フラン様に魔理沙姉に霊夢に私

 で、レミリア様で、それだけなら数はあってるけど......

 

――一つ足りないね。それともう一つ、私の分は無いの?――

 

 ...とりあえずお前の分はねぇ(無い)のは確かだな。いらないんだからよ

 

――ぶー......――

 

 そんな声を無視して私は棚からカップをもう一つ出してトレイに乗せた

 

咲「あら?一つ足りなかったかしら?」

 

榛「はい。6人いるのに5つしかありませんでしたよ」

 

咲「6人?でもパチュリー様は既にお茶は用意されていたわよ?」

 

榛「はい。知っていますよ。フラン様、魔理沙姉、霊夢、レミリア様、私、咲夜さんの6人分です」

 

咲「...別に私の分はいらないのだけれど?」

 

 え?あ、やばっ

 もしかして余計なお世話だったかな?

 でも声は怒っているような風には聞こえなかったけど......

 そう思い横にいた咲夜さんの横顔を見ると何だか表現しづらい顔......

 あ、これ、照れてるのと嬉しく思ってるのを顔に出さないようにしてるんだ

 よかった...... 余計なお世話じゃなかった......

 にしても咲夜さんのこの顔、レアだなぁ

 うん。咲夜さんはいつもはかっこよくて美しいけど時々可愛くなるね

 いやいつも可愛くないって意味ではなくて、いつも可愛いけどそれよりかっこよさとか美しさとかが表に出てて...その......

 

――君は何を言っているの?――

 

 ...結論、咲夜さんは完璧で瀟洒なメイド長

 

――完璧が別の意味になってるね......――

 

 咲夜さんは完璧、それでよし

 

 なんて会話してる間、咲夜さんはティーポットの中身を、別の氷の入ったポットに茶漉しで茶葉を取り除きながら注ぎ、かき混ぜる

 あ、これアイスティーか

 確かに茶葉はいつもより多めに入れてたし、体感だけど蒸らす時間が短かった

 匂いは......アールグレイかな?

 うん、いい匂いだなぁ......

 

――よく銘柄が分かるねぇ......――

 

 匂いに特徴があるからね

 それに元は紅茶が有名なとこに住んでたんだ。有名な銘柄の匂いを嗅ぎ分けることぐらい出来るよ

 

――あぁ、そういえばそうだっけ――

 

咲「ねぇ、霊夢が左肩に怪我していたのだけれど、何か知ってるかしら」

 

榛「えっ...... 肩の...怪我......っ!」

 

 それって弾幕ごっこの最中、掠った時に出来た怪我だよな......!

 

――あぁ、後で治さないとって言ってたやつだね――

 

 そうだよ!その“後で”がこの後だったのに先に咲夜さんに見られたってことは......

 説教......?説教されるかも......?

 私がやったわけじゃないのに私が怒られるのは嫌だぁぁ!

 うにゃああぁぁ...... 説教はいやぁぁ......

 

咲「...?榛奈?」

 

榛「あ、あの...説教はやめてください...... れ、霊夢に怪我をさせたのはこ、故意でわ、私がやったような感じですけどわ、私がやったわけではな、なくてそ、その...か、身体が勝手にと言いますか威力が加減出来なかったと言いますかなんと言いますか...... と、とにかく説教はやめて......!」

 

咲「...ふぅん。そういうことだったのね」

 

榛「...ん?え、あ......も、もしかして自爆?」

 

――綺麗な自爆ご苦労様――

 

 いや綺麗な自爆ってどんな自爆だよ!

 

――よくある自爆の仕方で自爆したこと?――

 

 自爆はしたけどよくある形ではない...はず......

 

咲「えぇ、自爆ね。霊夢は何も言わなかったわよ。「自分の不注意で負っただけ」って」

 

榛「霊夢が......?」

 

 私が...... 正確にはこいつだけど、あんなに酷いこと言ったのに、何も言わなかったの......?

 私が怪我をさせてしまったことも?

 ...霊夢...... ごめんなさい......

 

――それは本人を前に口に出して言った方がいいよ――

 

 ...分かってるよ

 というかお前が怪我させたんだけどな!?

 

――あっはは~――

 

咲「手当はしておいたけど、これからは気をつけなさいよ?」

 

榛「はい...... これからは気をつけます......」

 

咲「ん、よろしい」

 

 咲夜さんはそう言いながら粗熱が取れたと思われる紅茶をまた別のポットに氷を取り除きながら移す

 これらは濁らないアイスティーを作る時の手順だね

 ちなみに飲む時はコップの方に氷を入れ、保存する時は常温が良い

 と考えていたところで、ふと机の上を見る

 そこには使い終わったポットが置いてあった

 

榛「...っとポットを洗わなきゃ」

 

咲「それは私が後でやっておくから貴女は先に客室行って」

 

榛「は、はい。では先に行ってますね」

 

 あ、クッキーを用意しておかないと霊夢が怒りますよー

 なんて言おうと出口の方に向いていた身体を後ろの咲夜がいる方向に向けると、既にトレーの上にはクッキーの乗った皿が置いてあった

 はい、仕事早いですね

 さすがメイド長、その肩書きに恥じない仕事ぶりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

[紅魔館 客室前]

 

 

 ...ふぅ......

 さて、ノックしなきゃな......

 ぅわぁぁ......緊張してきたぁぁ......

 

――何を緊張する必要があるの?君にとっては自分の家の客室だよ?――

 

 確かに私が住んでる家の客室だから、そこは今更緊張しないよ?

 でも中にいるであろう人が問題なんだよ

 

――確か吸血鬼と巫女が中にいるんだよね。うーん、緊張する要素は無いように思えるけど......――

 

 お前、私の考えが読めるんだろ?

 それなら分かるはずだ

 

――ああ、あれね。嘘だよ――

 

 はぁっ!?

 嘘って......

 じゃあなんであの時私の考えが分かったんだよ!

 

――だから君は私って言ったじゃない。ようは考えが読めたんだよ。そのまんま心を読んだんじゃなくて「あぁ、この状況なら君はこう考えるんだろうな」って――

 

 あぁそういう......

 

――で、なんで緊張するの?――

 

 そりゃ入って何されるか分からないからだ

 暴言吐かれるならまだしも、もしかしたら殴られるかもしれないじゃないか

 

――うーん。霊夢ってそういう娘だっけ?――

 

 いや多分人間相手ならそういう娘じゃない

 でも緊張するもんはするんだよ!

 

――でもここにいても埒が明かないよ?早く入りなよ――

 

 埒が明かないのは分かってるよ......

 というかこの状況作り出したのお前だからな!

 

――なんのことだっけねー――

 

 お前に実体があったら今すぐ殴り飛ばしたいよ......

 

 とにかく緊張をほぐすために深呼吸

 ...すぅ......はぁ......すぅ......はぁ......

 何時も通りに......普段通りに......

 ...よし!

 

コンコンコンコン

レ「だれー?」

 

榛「榛奈です。入ってもよろしいでしょうか?」

 

レ「いいわよー」

 

ガチャ

榛「失礼します」

 

 レミリア様の許しを得て、私は扉を開き、中に入る

 きちんと扉の方に身体を向けて扉を閉めるのも忘れずに

 そして視線を中央へ向ける

 そこには椅子に座り、手に中身の入ったカップを持っているレミリア様と、その斜め後ろに立つ咲夜さん、机の上に置かれているお菓子を次々に口へ運ぶ霊夢、その3人がいた

 ...咲夜さん、いつの間に来たんだ?

 いや咲夜さんお得意の時間停止だろうけど

 

霊「...遅かったわね」

 

榛「2人を呼びに言ってたからね。私が行った頃には既に終わってて会話をしていたから、師匠に伝言を残して私だけ戻ってきたんだよ」

 

霊「ふぅん......」

 

レ「どうせなら一緒に来ればよかったじゃない」

 

榛「微かに聞こえた声での判断なのですが、なんだかは入れるような雰囲気ではなかったので......」

 

――実際にはバッチシ盗聴して、自分が入れなかったから先に戻ってきただけだけどね――

 

 うるせぇ、黙っとれ

 

――はーい――

 

レ「そうだったのね。で、聞いたのだけれど霊夢と弾幕ごっこをしたそうじゃない」

 

榛「ふぇっ!?い、一体誰から......」

 

レ「咲夜」

 

咲「ふふふ......ごめんなさいね」

 

 涙目で見ると、まるで悪戯が成功したかのような顔の咲夜さんがいた

 いや言わないでくださいよぉ......

 まぁ口止めはしてないですけど......

 

レ「で、勝負の結果は聞いていないのだけれど、どちらが勝ったの?やっぱり霊夢?」

 

 ...“やっぱり”...ですか......

 

榛「...なんか......すみません......」

 

霊「はぁ......」

 

レ「えっ?なんで榛奈は謝るの?霊夢はなんで溜息を吐いたの?」

 

霊「察しなさいよ。レプリカ」

 

レ「レミリアよ!誰が複製品よ!」

 

 前の方でなんか騒いでるが、私はそれどころではない......

 というより本当にすみません。レミリア様

 期待に添えそうにないです......

 

榛「いや、ホント...すみません......」

 

レ「いやだからなんでまた貴女が謝るのよ!?」

 

榛「期待に添えそうにないので......」

 

レ「え?」

 

咲「つまり、榛奈が勝ったってこと?」

 

榛「はい......」

 

レ「えっ?うそ...... 榛奈が勝ったの!?あの霊夢に!?」

 

霊「だからそう言ってるじゃない。ホント鈍いわね......」

 

レ「いやでも!あの霊夢によ!?私でも負けたあの霊夢に勝つって...... 一体何したのよ!?」

 

榛「ホントにすみませんホントにすみません!ある意味あれはルール違反でした!色々と言い過ぎました!罰でもなんでも受けます!お望みとあらばこの口も縫います!舌も抜きます!むしろ一層の事私を殺せぇ!」

 

 もう土下座をする勢いで頭を下げて言う

 むしろ既に土下座してます

 額も床に擦り付けてます

 でも絨毯が敷いてあるので柔らかいので罰になってないです。流石です

 

レ「いや何があったのよ!?」

 

霊「ふぇふにふぃふぃふぁふぉ。ふぁなふぁふぁふぁっふぁふぉふぉふぁふぃふぃふふぁんふぁふぁふぁ」モグモグ

 

咲「喋るか食べるかのどっちかにしなさい」

 

霊「(モグモグ...ゴクッ)...だから別にいいわよ。貴女が勝ったことは事実なんだから」

 

榛「霊夢......」

 

 少しジーンときたよ......

 さっきのも合わせて目から汗が零れそうだよ.....

 

霊「それにあれ、貴女じゃないでしょ」

 

榛「えっ...?な、何のことかな?」

 

 ま、まさか......バレたんじゃ......

 いや流石に勘のいい霊夢でもこれはバレないはず......

 

霊「...いえ、私の思い過ごしならいいわ」

 

榛「え?あ、そうだね!霊夢が何を思ったのか分からないけど多分、いや絶対思い過ごしだよ!」

 

レ「いきなり大声出してどうしたのよ」

 

霊「何をそんなに必死なのよ...... もしかして本当に――」

 

榛「い、いやぁそれにしてもいい天気だなぁ!先ほどまでの雨が嘘のようだね!うん!これなら洗濯物もよく乾くよ!うん!」

 

 私は急いで立ち上がり一つだけ取り付けられている窓の外を見ながら言う

 ちなみに雨は既に上がったようで、外は雲が少しあるくらいで晴天と呼べる天気だ

 日光がダメな吸血鬼には悪い天気といえるが、人間にとってはいい天気だ

 植物は良く育つし、光合成により酸素も増える

 濡れたものはすぐ乾いて、冬は暖かい

 まぁ夏は暑いけどな

 でも記憶にある外の世界よりは涼しいから耐えれる

 ...その記憶が無かったら耐えれなかっただろうけど

 

霊「...まぁいいわ。それより話があるんだけど」

 

レ「話?」

 

霊「えぇ。でも魔理沙達が来てからでいいわ。いちいち話すのも面倒だから」

 

レ「そう、咲夜」

 

咲「なんでしょうか」

 

レ「ちょっと二人の様子を見てきてくれない?もし廊下にいればそのまま連れてきて構わないわ」

 

咲「畏まりました」

 

 その瞬間には咲夜さんはそこにおらず、数秒後廊下から話し声が聞こえた

 そしてノックと共に扉が開き、魔理沙姉とフラン様が来て、皆でお茶とお菓子を片手に会話に華を咲かせた

 会話の途中、「結局フランは何の異変を起こしたんだ?」と魔理沙姉が言い、フラン様が「私は異変を起こしてないよ?榛奈に異変を起こしたいとは言ったけど」と言った

 「え?じゃあどういうことだ?榛奈は嘘をついたってことか?」と魔理沙姉が私を見ながら言ったので「あはは、まぁ嘘かな。ごめんね、こうでもしないと2人を引き剥がせないし、まるで異変が起きてるって風には見せれなかったからさ」と言った

 そのことでも会話が進み、解散するまで会話が途切れることは無かった

 しかし私には終始気になっていることがあった

 大体の人は誰かと会話をする時、相手の顔を見て、もっといえば目を見て話すだろう

 私も相手の目を見ながら話す。何か手が離せない作業中であれば話は別だが

 そして今回のように複数の人と会話する時は相手方の顔を交互に見ながら話すだろう

 それでフラン様の顔を見た時、目が合ったのだがすぐに逸らされてしまった

 その後も同じことが続いたが原因は分からず、頭を悩ませた

 他の3人もフラン様の様子に気づいたみたいだがレミリア様は何でなのか分かっていないようで、咲夜さんは何故か微笑ましそうにしていた

 その顔を見て聖母のようだなんて思ったのは言うまでもないだろう

 そして霊夢は興味無さそうにしていたから原因を分かっていないと思う

 ただ魔理沙姉は苦笑いしていたから原因を知っていると思われる

 そのことに気づいて原因を訊こうと思ったが、結局聞きそびれてしまった

 今度会ったら聞いてみようかな

 それまで私が覚えてればの話だけど

 

 

 

 こうして紅魔郷EXは終わったのだった

 宴会?それはやらなかったな

 もしかしたらこの世界では異変後の宴会は普通はやらないのかもしれないな

 まぁ花見ぐらいはやるだろうからその時参加させてもらおうかな

 なんて思いを胸に抱きながら柔らかいベッドに潜り込み、意識を夢の世界へと沈めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「...やっと―が目覚めたか。一番時間がかかったのは―を目覚めさせることだったな。かれこれ500年は経ったのか...... 彼奴(あいつ)と関わる前は500年なんて一瞬だったのに今では長く感じるな。...とにかく彼奴を―にするための土台が出来た。後は彼奴自身の心を強くしなければならないが、それは―が勝手にやってくれそうだな。それにいざとなれば―に代わりになってもらえばいい。彼奴が最適だが―にも資格がある。ともかくまだまだ道のりは長い。幸い今までよりは時間が少なく済みそうだが、それでも年単位で時間がかかる。より早く彼奴を――にならせるためにも俺の方からも手を出した方が良さそうだ。さて、何をしようか...... そうだな、彼奴を彼処へ連れていくのも良いだろう。死んでしまえば元も子もないが、俺が陰で見張っていれば特に問題は無いはずだ。よし、近いうちに行動に移すとするか。勿論、手伝ってくれるよな?―。盗み聞きは良くないぞ」

 

?2「...私をあの娘から引き剥がしたのは君の仕業だよね?なら私にも聴く権利はあるでしょ?」

 

?「まったく、ちゃんと手伝ってくれさえすれば教えるぞ。手伝ってくれさえすればな」

 

?2「了解。やってあげるよ」




後書き~

前に異変の犯人(フランドール)のことを「小さな異変の犯人」と魔理沙が言っていましたが、これには2通りの意味に捉えることが出来ましてね......
皆さんは分かりますか?
正解は......





「“小さな異変”の犯人」と「小さな“異変の犯人”」
つまり小さいのは異変なのか犯人なのかということです
皆さんは最初見た時どう捉えましたか?

今回で紅魔郷EXは終わり、次回から次の異変までの間を書きますね
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

主人公紹介

前書き~

すごく前の話になりますが、私、主人公の説明を出す時絵をつけると言ったんですよ
それで書いてくれたクラスメイトもいたわけです
ですが正直言いますと榛奈というより魔理沙だなぁとおもったわけです。ついでに白紙で書いて欲しかった
そんなわけで絵は無しの方向で、投稿しますね
友人Kちゃんごめん!

今回は榛奈の紹介文、真面目で不真面目に書きましたので、是非ゆっくりしていってね!


・二つ名

【動かない大図書館の弟子】

【音楽好きの魔法使い】

 

 

・能力

【魔法を使う程度の能力】

 主に『召喚魔法』『属性魔法』を使う

 得意魔法は植物に関した魔法、生活に役立つ魔法

 不得意魔法は今のところ見つかっておらず、万能型と思われる

 

【ありとあらゆるものを守る程度の能力】

 これがあれば例え火の中水の中草の中森の中である。例えば水の中には“酸欠”から守ることで長時間居れる等

 フランに出会うまでは【怪我をしない程度の能力】だった。まさに程度

 フランの破壊衝動は“理性”を守ることでなんとかなっていた(今は守っていない)

 

【???】

 ???

 

 

・人物

 5歳の頃に何らかの理由で幻想入り。母親である舞梨果や教師の慧音にも理由は分からない。家に帰りたいかと訊いた時、酷く怯えていたので何かあったと思い訊かずにいた。今では榛奈自身、何に怯えていたのか忘れてしまった

 魔理沙とは義姉妹。仲がいい。魔理沙が姉の理由は同い年だが魔理沙の方が誕生日が早かったから。当時の寺子屋じゃ知らない人はいないくらい仲のいい美人姉妹

 この頃、榛奈は男性が苦手だった。年下や父親は大丈夫だったが、同い年や年上は駄目で、よく魔理沙の後ろに隠れていた。原因は不明

 10歳の頃に人里を出る。理由は強くなりたかったから。曖昧な記憶(前世や東方知識)をはっきりとしたものにしたかったから。幻想郷を見て回りたかったから。だが、空腹で倒れてしまい、そこを散歩していた美鈴に助けられた。それからレミリアの勧めでパチュリーの弟子として紅魔館に住むようになった

 原作開始一年前、レミリアやパチュリーから行ってはならないと言われた地下室に行き、フランと出会う。会話の最中、フランの地雷を踏んでしまい、暴走されてピンチに陥るが、能力が覚醒し、フランを止めることに成功。以後、フランの能力が効かないことから従者(教育係、遊び相手、暴走をとめる役)に指名される。立場上、口調は若干堅くなってしまうがお互い家族のように接している

 本人に自覚はないが、技術や知識の吸収力が凄い。咲夜の技術、パチュリーの魔法技術をそれぞれ1年、美鈴の体術は現在会得中である

 ただ、パチュリーの魔法は魔力や身体が追いついていないため、理解はしているものの完璧には会得していない

 前世の記憶が戻ってからは霊力や魔力が多くなり知識も増え、魔法の他に霊術も使えるようになっていたが今のところ、彼女の前世を知る龍夜しか知らない

 転生前の趣味はアニメ、ゲーム、音楽で、東方の原作も持っていたが、弾幕STGが苦手でクリアしていない。東方の曲(原曲、アレンジ)が好きで、よく歌っている。但し、1人でいるときだけ

 榛奈は自身の能力は【守る】能力しかないと思っていたが実はもう一つあり、紅霧異変にてその力が無意識に発動した

 紅霧異変後、彼女の中にもう1人の人格が現れたが、正体は不明。何故生まれたのかも、何時生まれたのかも不明である

 

 

 

・榛奈に対する周りからの反応(と呼び方)

 

魔理沙(榛奈⇔魔理沙姉)

「いやー、数年別れてただけであそこまで性格や雰囲気が変わってるとは思わなかったぜ。見た目はあまり変わってなかったけどな!」

 

榛「私からしてみれば魔理沙姉も同じこと言えるよ?まぁ見た目はもっと可愛くなってたけど」

 

 

 

フラン(榛奈⇔フラン様)

「榛奈のことは大好きだよ!仕事とか魔法の練習とかあるのによく遊んでくれるの!絵本も読んでくれるんだよ♪ただ、呼び捨てにしてくれないのは残念かな」

 

榛「私も大好きですよ、フラン様。だけど呼び捨ては流石にダメです」

 

 

 

パチュリー(榛奈⇔師匠)

「実はもう榛奈に教えることはないのよね。あの娘ってフランと戦ってからほとんどの魔導書を理解することが出来るようになったから」

 

榛「師匠といることで教わることは沢山ありますよ。フラン様と戦った後に色々と理解出来るようになったのは......ね?」

 

 

 

小悪魔(榛奈さん⇔コア)

「最近じゃ咲夜さんのお菓子より榛奈さんのお菓子を沢山食べてる気がします。でも美味しいので幸せです」

 

榛「出来は咲夜さんより劣りますけどね。美味しいと言ってくれるなら作ったかいがあります」

 

 

 

レミリア(榛奈⇔レミリア様)

「咲夜の運命を見た時、フランを救う童話の魔女のような格好をした少女、榛奈が見えたのよ。だから榛奈を館に置いたの。でも無理矢理な感じだったから、榛奈には悪いことをしたわね」

 

榛「紅魔館に居られたのはレミリア様のお陰ですので気にしないでください。紅魔館に居なかったら死んでいたかもしれないんですし」

 

 

 

咲夜(榛奈⇔咲夜さん)

「正直なところ、フラン様を助けてくれて感謝していると同時に嫉妬もしているのよ。でも、榛奈のことは好きよ、家族だもの。それに私にとって榛奈って妹って感じがするのよ」

 

榛「咲夜さんに嫉妬されるほどのことはしてないような気がしますけどね。咲夜のこと、私も好きですよ。私にとって咲夜さんは第2のお姉ちゃんって感じですね」

 

 

 

美鈴(榛奈ちゃん⇔美鈴)

「ある日突然お嬢様が散歩してこいって命令されたので館の付近を散歩していたら倒れている榛奈ちゃんを見つけたんです。なんとなく咲夜さんを見つけた時と同じような感じがしたので館に連れ帰ったんですが、ここまで成長するなんて思いませんでしたね。咲夜さんにも同じことを言えますが」

 

榛「あの時は拾ってくれてありがとうございます。私もここまで成長出来るなんて思いませんでしたよ。でも、そろそろ「ちゃん」付けはやめてもらえませんか?だからといって今更「さん」付けも嫌ですけど」

 

 

・使用スペル

 

通常スペル

【雷符】『雷狼龍の遠吠え』

【星符】『星屑の竜巻(スターダストトルネード)

【星光】『スターライトバスター』

『スターダストシュート』

 

特殊スペル

【人妖】『悪魔に取り憑かれし者とそれを殺す者』

 

原曲スペル

【魔符】『ヴワル魔法図書館』

【魔符】『ラクトガール ~ 少女密室』

【紅符】『亡き王女の為のセプテット』

【狂符】『U.N.オーエンは彼女なのか』




後書き~

なお、スペルカードにつきましては常時更新予定です
そして誤字脱字、矛盾、感想いつでもお待ちしております
矛盾に関しては感想欄にではなくメッセージに書かれることをオススメします

それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2章『強さへの憧れ』
第29話『強さに憧れ、焦る』


前書き~

こんにちは!
お久しぶりの方はお久しぶりです!
いやはや前の投稿から25日も空くとは思いませんでしたね。すみません

さてさて今回は榛奈さん、少し本性が表に出かけてますよ
え?心じゃいつもこんな感じだって?
ぐうの音も出ませんね......

それでは今回もゆっくりしていってね!


《?年》

??side

 

[???]

 

 

 瞑っていた目を開く

 すると無限に広がっていそうな青空と、緑豊かな自然が目に映る

 遠くには背の低い建物が密集した場所があった

 その近くには川が流れていて、畑や田んぼが並んでいる

 少し目を横に移すと、雲を突き抜けそうなほど高く大きな山がそびえ立っている

 その美しき幻想の風景に気を取られていると、蝉の合唱が聞こえてくることに気づく

 ミーンミーンと、短き命を謳歌しているのだろう

 ふと、喉の渇きに気づき、横にあったお盆の上から湯呑みを手に持ち、口に運ぶ

 少しぬるくなってしまったものの、冷たく美味しいお茶に一息吐く

 時折そよ風が吹き抜け、縁側に飾られている風鈴をチリンチリンと鳴らす

 此方に来て初めて出来た友人から初めて貰った美しい音色だ

 あれから一体どれほどの時間が流れたのだろう......

 私にとっては長い年月が経ったと感じるが、それ以上の時を生きているあの友人にとっては本当に一瞬にも満たない時間だと感じているのだろうな

 そのすれ違いが少し寂しいが、それもしょうがないのだと思う自分がいる

 そりゃそうだ。だって私は人間で、彼女は妖怪なのだから

 だからこそ私は彼女より長く生きていないし、彼女は私よりも長く生きている

 そして、彼女はこれからも生き続けるだろうし、これからもこの幻想を守っていくのだろう

 それに対して私は――

 

 

 

?「おーい、誰かいないのかー!」

 

 

 

 ――本堂から声が聞こえる

 どうやら客が来たようだ

 時折来る参拝客は勝手に参拝していくから私を呼ばないんだけど、さてさて一体誰が来たんだか......

 

私「はいはい、いるよ。素敵な賽銭箱は鳥居から入って正面だけど、それ以外に何か用?」

 

 そう言いながら顔を出すと、そこには年端もいかない金髪の女の子がいた

 その女の子は私を見つけると駆け寄ってきた

 

?「別に私は参拝しに来たわけじゃないぜ。それよりお前が此処の巫女か?」

 

私「うんそうだけど......」

 

 なんだか可愛らしい容姿に合わない男勝りな口調に戸惑う

 

?「ふぅん...... お前があの......」

 

 「あの」がどのかは分からないが、どうやら彼女は私を訪ねてきたらしい

 身なりから彼女が人里の人間だと分かるが、よく此処まで来れたなと思う

 何せ人里から此処までは飛べば早いが、歩けばそれなりに距離がある

 更には道は整備されているが、道中は妖怪に遭う可能性もある

 そんな中彼女はここまで無事に来れたんだ。感心したって良いだろう

 

 そこまで考えてふと頭に疑問が浮かぶ

 彼女は一人で来たのだろうか?親は何処にいる?もし勝手に一人で来たのなら心配しているのではないだろうか

 もしそうならこの娘を人里まで送らなければならない。このまま送り返してしまえば妖怪達の格好の餌となってしまう

 とりあえず彼女から話を聞いてみるか

 

私「ねぇ君。君は一人で来たの?」

 

?「あぁそうだぜ」

 

私「親御さんは?」

 

?「いないぜ」

 

私「人里にいるの?それなら早く帰らないと心配――」

 

?「死んじゃったんだぜ。二人とも」

 

私「...そっか。二人とも、いないんだね」

 

 こういう時、他の人ならもう少し別の言葉をかけてあげるのだろうけど、私には無理だ

 だって私も、今はいないのだから

 

?「でも悲しくないんだぜ。お父さんは私が産まれる前に妖怪に喰われたし、お母さんは私が産まれてすぐ死んじゃったから」

 

私「それなら仕方ないね」

 

 そうだ、仕方ない

 記憶にもない親など、見知らぬ他人と区別つかないのだから

 

私「今は何処で暮らしてるの?」

 

?「お母さんの従妹の家、夫婦とその息子がいるんだぜ」

 

私「へぇ、いいね」

 

 特に何とも思ってないが、そう相槌を打っておく

 すると彼女は不機嫌な顔になった

 

?「良くなんてないのぜ。夫婦は私のことを毛嫌いしてて仕方なく世話してるだけだし、アイツなんて手下を連れて私をいじめてくるんだ。だからあそこを出てきたんだぜ。あれ以上あそこにいたら気が狂っちゃうから」

 

私「ふぅん、そうなんだぁ......」

 

 人里の事情など、人里に暮らしていない私に分かるわけがないが、いつの時代もそういう人種がいるのは変わらないんだなぁ

 このことに人里の守護者は気づいているのだろうか

 

?「それでだっ!」

 

 そう彼女は表情を一変させ、少しだけ俯いていた顔を上げる

 

?「お前、魔法が使える巫女なんだろ?」

 

私「うん、そうだけど、よく知ってたね」

 

?「人里でよく言われてるぜ?『巫女なのに魔法を使う変人だ』って」

 

私「へ、変人......」

 

 あいつら...... 前々から嫌なやつはいると思ってたが、人里を守ってるのはハクタクだけでなく、私もなんだぞ......?

 あいつらはそのことを分かって言ってるのか......?

 あぁもうやる気無くすなぁもう......

 まぁ仕事だからこれからも守ってはやるけどさ......

 

?「ん?どうかしたのか?」

 

私「...何でもないよ。それで君の家出と私が魔法を使えること。どう関連してるの?」

 

?「ふっふ~、それはな......?」

 

 彼女はくるっと一回転しながら私から距離を離すと、私を指さして――

 

?「私はお前から魔法を教わって人里の外でも生き抜けるようになるんだぜ!!」

 

 ――と、そう自信満々に宣言したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

榛奈side

 

 

 今年の夏は色々なことが起こった

 まず初めに紅霧異変

 霊夢たちがなかなか来なくて暇だったなぁ

 その次に起こった出来事『紅魔郷EX』

 その時に私の中に現れた正体不明の人格

 たった一か月ほどでこんなにも色々なことが起これるんだなぁと感心さえしてしまうほどだ

 そしてそんな出来事達から早数日

 私の中に新たな人格が現れたこと以外は特に変わったことは......

 あぁいや、いくつかあったか

 なんとフラン様が自分から外に出られるようになったのだ

 紅霧異変が終わった後も引きこもってらっしゃったのに、一体どんな心変わりをしたんだろうか

 とりあえず嬉しいので祝いの言葉以外特にありません

 そしてそんなフラン様にお友達が出来ました

 しかも一気に5人も!

 5人といえば皆さんお察しになられると思いますが、湖でよく遊んでいるチルノ、大ちゃん、ルーミアの3人に加え、ミスティアとリグルとも友達になったそうです

 “そうです”といった理由は私はその時図書館で勉強をしていたので実際に友達になったところを見てないからです

 ......フラン様に友達が出来るところ見たかった......

 まぁそんなわけでここ最近のフラン様はよく湖にお出かけなされるようになった

 そしてそれを私は親が子供の成長に対し喜ぶのと同時に寂しさを感じるような気持ちで送り出していた

 

 そしてそんな日常を過ごしているうちにある考えが頭の中を占めるようになっていた

 

 『私は弱いのではないのか』

 

 別にその考えは昔からあった

 だからこそ日々勉強やら特訓やらなんやかんやしているのだ

 そして前まではそれらを欠かさずやっていくことで強くなっていると思っていたし、実際強くなっていたと思う

 しかしここ最近は全くと言っていいほど変化がないのだ

 いつも通り走ったり筋トレしたり、その日によって様々だが色々なことをしていても、強くなった気がしない

 そのことに焦った私はつい先日、普段であればやらかさないような失敗をしてしまい、皆さんに心配をかけてしまった

 そのことを反省するも焦る気持ちは変わらない

 一体、どうしたらいいだろうか......

 

 

榛「はぁ......」

 

 

 

魔「(お、おいフラン。榛奈の奴どうしたんだ?さっきから溜息ばかりついてるが......)」

 

フ「(わかんないけど最近の榛奈、ぼーっとしたり溜息ばかりついてるよ。この間も掃除中、それで失敗しちゃったみたいだし)」

 

魔「(ふむ、久々に来てやったというのに見向きもしないで...... いっちょ話を聞いてみるか)」

 

 

 

魔「お~い榛奈~、この魔理沙様がわざわざここまで来てやったぜ~」

 

榛「.........」

 

魔「お、おい?見えてるか?聞いてるかー?」

 

榛「...はぁ......」

 

 

 

魔「...駄目だ。全く話にならん」

 

フ「うーん。榛奈は何に悩んでるんだろ......」

 

 

 

榛「はぁ......いでッ!」

 

 思考に浸っていると、突然頭の上を何かが落ちてきたような衝撃がきて、一瞬で意識が現実に戻ってきた

 思わず上を見上げると何もなく、下を見るとそれなりに分厚い本が転がっていた

 ...もしかしてこれが落ちてきたのか......?

 ...なんだろう...... ムカムカしてきた......

 

榛「あぁもう誰だよ!人の頭に本落とすやつは!」

 

小「ご、ごめんなさい......!」

 

榛「ん?あぁコアだったんですね、ならいいや」

 

 申し訳なさそうに出てきたコアに怒りが静まっていく

 何せもう諦めてるのだ。コアが咲夜さんみたいに完璧になることは無いね

 私なんてコアのせいで命なくしかけちゃったことあるし

 頭に本がぶつかった程度、別にどうってことはない

 

 

 

フ「は、榛奈が怒鳴った......」

 

魔「それほど悩んでるってことなのか......?」

 

 

 

榛「...はぁ...... よし」

 

 再び思考に浸ろうとするも気が失せたのでとりあえず気分転換でもしてみよう

 ここ最近は紅魔館から出てなかったし、ちょっと外に出てみようかな

 ついでに少し遠出してみるかな

 幻想郷の風景を見れば少しは落ち着くかもしれない

 

榛「そうと決まったら早速行動だ」

 

 私はそんな独り言を言い、外へと足を運んだ

 

 

 

フ「ね、ねぇどうする?榛奈は何か言って図書館から出ていっちゃったけど......」

 

魔「追いかけてみるしかないぜ。いくぞ、フラン」

 

フ「う、うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

[紅魔館 門前]

 

 

榛「いい天気だなぁ......はぁ......」

 

美「おや榛奈ちゃん、いきなりどうしたんですか?溜息まで吐いて......」

 

 いつもなら仕事をサボって居眠りしているのに今日は珍しく起きていた美鈴が話しかけてくる

 ...なんだろう......ここ最近、会う人皆に同じようなこと言われてるよ......

まぁ会う人って言っても紅魔館の皆さんしかいないんだけどね

 魔理沙姉は最近来てないし......

 ん?そういえばさっき白黒の魔女服を着た金髪少女がいたような......

 ま、気のせいだろうな

 

榛「んー?いやぁ何でもないよー...... 少し悩み事がねー......」

 

美「そうですか。私でよければ相談に乗りますよ?」

 

榛「ありがとう、美鈴は優しいね」

 

美「いえいえ、当たり前のことですよ」

 

 その“当たり前”が出来ない人が多いのが現代なんだけどねぇ

 ま、いいか

 

榛「それでもだよ。美鈴の優しさが心に沁みるなぁ。でもごめんね、誰かに相談するほど大きなことじゃないから大丈夫だよ。それと少し気分転換も兼ねてその辺飛び回ってくるねー」

 

美「はい、行ってらっしゃいませ」

 

 その言葉に手振りで返し、箒に跨って空へ繰り出した

 さてさて、どこへ行こうかねぇ

 

 

 

美「...おや?妹様に魔理沙さん。お二人もお出かけですか?」

 

フ「う、うん...... ちょっとね......」

 

魔「榛奈の様子がおかしいからな。後をついて行ってみるんだぜ」

 

美「そうでしたか。...確かにここ最近の榛奈さんの様子はおかしかったですね。日課のランニングも前より何周か多くなってましたし......」

 

魔「うへぇ、あいつ、ランニングもしてんのか...... まあそれはともかく、ちょっくらフランと榛奈がああなってしまった原因を探ってくるぜ」

 

美「はい、わかりました。ではお二人とも、お気を付けて行ってらっしゃいませ」

 

フ「うん、行ってきます♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[幻想郷 上空]

 

 

 目の前には青い空、白い雲、緑あふれる自然

 久しぶりに幻想郷の空を飛んだのだが、やはり美しい

 外の世界の、所謂コンクリートジャングルと呼ばれる風景に見慣れている私にとってはいつ見ても、何回見ても感動出来る風景だ

 しかしその感動もほんの少しの間だけ

 すぐに思考は自身の悩みに持っていかれた

 はぁ...... ホント、どうしたらいいものかねぇ

 

 なあ、お前はどう思う?

 

――君がこれ以上強くなるにはどうしたらいいのかってこと?――

 

 うん、どうしたらいいものかねぇ......

 

――とりあえず私が言えることは君が今やってるトレーニングだけじゃもう限界だよ。それ以上は強くなれない――

 

 なっ...... ってことはこれ以上私は強くなれないのか?

 

――そもそもどうしてそんなに強さを求めるのか教えてよ。その答えによっては何か答えられるかもよ?――

 

 別に強くなりたいだけだよ。力が欲しい、ただそれだけだ

 

――...何事にも理由が存在する。君が強くなりたいのも何か理由があるからでしょ?それとも君自身も分からないの?――

 

 強くなりたい。強くなって...誰よりも強くなって皆を...大切な人たちを守りたい。ただそれだけだ

 

――ちゃんと理由が存在するんだね。でも君の守りたい人、例えば吸血鬼たちだね。あの娘たちは君に守ってもらうほど弱い存在かな?逆に君が守ってもらうほど強い存在だよね。なのに君は強さを求めるの?――

 

 だからこそだ。私は守られてるだけだなんて嫌だ。最低でも一緒に戦える程度でいい。だって守られる立場だといざというとき守れないから。大切な存在を失いたくないから.....

 だから私は強くなりたいんだ。大切な人を守るために...... 大切な人を失わないために......

 

――...君が強くなりたい理由は分かった。でもさっきも言った通り君が普段やっているトレーニングだとこれ以上強くはなれない―――

 

榛「それだったらどうしたらいいんだよっ!!」

 

 ......っ...!

 

――...焦りすぎだよ。少し落ち着いて――

 

 ...あぁ、すまん......

 

――いや、私も遠まわしに言い過ぎたね。こちらこそごめん――

 

 いやいいんだ。それより“遠まわしに”ってどういうことだ?

 

――さっき言ったでしょ、“今やってるトレーニングだけじゃ”ってさ――

 

 ...あっ、そういうことか......!

 

――そう、要はやる事を変えればいい。例えば走るだけなら重りを仕込んだ服とか重いものを引きずりながらとかね――

 

 そうか......

 つまり工夫が大事ってことなんだな

 

――そういうこと。でも、それだと少しずつしか強くなれない――

 

 ん?まぁそうだろうけど......

 その言い方だと他に一気に強くなれる方法があるのか?

 

――うん。あるよ――

 

 本当かっ!?ならそれを教えてくれ!

 

――教えても何も君はもうやってるよ――

 

 え?何のことだ?

 

――ほらよく言ってるじゃない。「私は魔法使いの弟子だ」って――

 

 あ、あぁ......

 パチュリー師匠のとこに弟子入りしてるからな。確かに私は魔法使いの弟子だが、それがどう関係してるんだ?

 

――もう...... そこは鈍いんだね。つまり誰かに教えを受ければいいんだよ。魔法使いからなら魔法を、巫女からは霊術を、妖怪からは妖術、武術家ならその手の武術をね――

 

 ...だが、そう都合よくいくか?

 まずさっきお前が言った技術を持ち合わせてる奴はいくらでもいるんだろうけど、その中で弟子をとれるほど強い奴はこの幻想郷でも多くはないし、そもそもとして弟子を取ってくれるかもすら分からないんだぞ?

 それに弟子をとってくれる奴がいたとしてもそいつが何処にいるか分からないし、私にその技術が合うかもわからん

 パチュリー師匠は私の魔法の師匠になってくれたが、それだって偶然その条件が揃っただけなんだ

 その方法は難点だらけだぞ?

 

――強くて弟子をとってくれる人...いや妖怪ならあてがあるよ。君が知らない人だけどね。その人なら君を強くできると思う。それに君には自覚がないみたいだけど君には人の技術(スキル)を盗む才能に恵まれている。その才能があればどんな技術も君のものにできる――

 

 いやそんな才能私には......

 

――じゃあ聞くけど君はパチュリー・ノーレッジの魔法技術を何年で得た?――

 

 えっと...記憶が戻る前を合わせるなら四年かな

 

――記憶が戻ってからでいいよ。記憶が戻る前なら基礎とかも含めてしまうからね――

 

 なら記憶が戻った状態でなら一年くらい...かな?

 

――その意味がわかる?――

 

 え?んー......どういうことだ?

 

――パチュリー・ノーレッジは原作知識で言うなら百年は生きているんだ。つまり君は百年もの時を生きた魔女の知識をたった一年未満で得たわけだよ――

 

 でもそれは前世での経験と知識があったからであって......

 それに私自身、魔力が少ないから理解はしても使えるかは別だけどね

 

――まあ確かに使えはしないけど理解出来ている。それは君が昔...... いや、この話はやめておこう――

 

 彼女は何を言おうとしたのだろう......

 もしかして私の前世のことだろうか

 もしかしたら彼女は私の過去も知っているのかもしれない......

 もしかして私が幻想入りする前のことも知っているのかもな

 知りたいような...知りたくないような......

 ...いや、過去に何があろうと今ここにいる私が今の私だ。別に知らなくてもいいよな

 

――そういえば君は十六夜咲夜の従者(メイド)技術(スキル)も得ていたよね――

 

 うん、フラン様の従者になったからね

 それも自分でなるって言ったんだ。咲夜さんほどとは言わないけど少しは従者として役目を果たさないといけないからね

 

――それで?そのスキルも会得してるんだよね?――

 

 いやまあ...得たといってもあくまで咲夜さんの劣化版だけどね。お菓子は別だけど

 

――その技術だってメイドが数年かけて、いや彼女には時を操る能力があったね。それで止めた時間も含めると十年以上かけているのかもしれないけど、その技術も一年ほどで、それも魔女の知識も会得もしながらだよね――

 

 まあ魔法と従者の仕事、それぞれの勉強を始めたのは記憶が戻ってから、フラン様に逢ってからだからね。館に籠って必死に勉強してたのが懐かしいよ......

 あの頃頑張れたのは日に日に強くなってるのを実感できてたからねぇ......実際に強くなってたし

 でも今は......

 

 今は...どれだけ頑張っても強くは......

 

――だからそのために話をしてるんだよ?ものすごい勢いで話がそれたけど――

 

 あ、あぁすまん。それでその心当たりのある妖怪ってのは何処にいるんだ?

 そもそも私は人間、相手は妖怪だろ?

 妖怪が人間を弟子として受け入れてくれるのか?

 

――それ言ったら君を拾ってくれたあの館の妖怪たちはどうなるの?――

 

 それは...ほらレミリア様は能力の副作用で複数の未来ともいえる運命を見て私を置いてくれたからさ

 咲夜さんもそんな感じに紅魔館に来たみたいだし、ぶっちゃけちゃったらレミリア様は私を最初、利用するためだけに紅魔館に置いてただけだからねぇ

 

――利用するだけのつもりが情が芽生えてしまった...ってことなのね。まあそれはともかく、心配は無用だよ。彼...男なんだけど彼は種族なんて気にしないやつだからさ。人間だろうと神だろうと彼はその人自身を見てるからね。ただ問題は場所だね......――

 

 ん?もしかして外の世界にいるやつなのか?

 

――いや幻想郷にいるんだけど...... でも正確には幻想郷ではないというか......――

 

 ん?どういうこと?

 

――.........――

 

 なぜだか口ごもっているこいつに疑問を抱く

 ただその妖怪の居場所を教えるだけだろうに

 まさかそいつに何か問題でもあるのか?

 例えば昔凄い悪いことをして身を隠していて、一部の人しか教えられないとか、風来坊で居場所が分かんないとか......?

 いやそこまでして強くならなくても...いやでも強くなりたい......

 そう考えていると、ようやく彼女が口を開いた

 

――...正確には幻想郷と呼ばれる場所にいるわけではないんだよ。かといって外の世界でもない......――

 

 ん?だったらあとは...魔界とか?

 

――いや違うよ。確かに幻想郷とも外の世界とも違うと言われれば魔界という選択肢は出てくるけど、でも三つとも全て地続きではない...... 彼のいる場所は幻想郷と地が繋がっているんだ――

 

 んー、そうなると冥界?

 いや冥界は天にあるから地は繋がってないな......

 じゃあ天界?

 いや冥界と同じだ

 ...そうか!三途の川か!?

 三途の川は幻想郷と繋がってるし、幻想郷ではないとそれなりに言い切れるし......

 

――いいや、残念ながらどれも違うよ。そもそも三途の川に妖怪は住めないと思うよ。てことでヒント、下にあります――

 

 “下”......?

 下...下...下......

 ...あっ!そうか!地底!

 

――お見事。そう、地底。人間に嫌われる妖怪の中でも特に嫌われている凶悪な妖怪たちの住み処。其処には鬼をはじめ、橋姫、土蜘蛛、釣瓶落とし、地獄鴉、さとり妖怪など、様々な妖怪がいるといわれている――

 

 うん、原作でいうところの『東方地霊殿』の舞台だから、さっきお前が言った種族に心当たりはあるが......

 まさかその誰かに教わるのか!?

 いや原作キャラだから嬉しくないわけではないけど...... でも絶対断られるぞ!

 

――いや“彼”っていったでしょう?つまり男、原作キャラじゃないよ――

 

 そっかぁ......

 少し残念な気分......

 

――残念で結構。それでどうする?地底に行って彼に弟子入りする?――

 

 んー、鍛えてくれるなら是非とも行きたいけど......

 でも地底だよな......

 紅魔館から遠いから行って帰ってくるって出来ないよな......

 そしたら向こうに住み込みになるわけだし......

 向こうにいる間に紅魔館に何かあって、皆さんに何かあったら......

 

――それなら修行の旅ってことで少しの間だけっていうのは?今からなら来年の四月か五月までさ――

 

 ん?なんでそんな時期が決まってるんだ?半年とか一年とかあるだろうに

 

――忘れたの?ほら少し前に紅霧異変があったから、その次は?――

 

 えっと...そうか!春雪異変!

 

――そう、春雪異変が起こるのは、正確には解決されるのは五月。だからその間、鍛えてもらったらどうかな?それまでの間はこれといって何も起こらないだろうし――

 

 そうだな......

 私としては行きたいって気持ちはあるけど、皆さんが許してくれるだろうか......

 

――ま、その辺は君が皆を説得するしかないね。それか黙って行くとか――

 

 それは駄目。黙って行くと皆さんに物凄く心配されるし、帰った時凄く怒られる。最悪クビになる可能性も否定できない。もっと言うなら殺されるかも

 

――それじゃ説得するしか他になさそうだし、頑張ってね――

 

 おう!これも強くなるためだ、頑張るぜ!

 

 っとと、頭の中であいつと喋ってるといつの間にか紅魔館から結構離れたところに来てしまった

 えぇっと?ここは何処だ?

 周りを見渡すと少し離れたところに木製の背が低い建物が並ぶ場所、人里が見えた

 下は木で鬱蒼としている

 どことなくジメジメしていそうだ

 ...ん?これは魔力?

 森中から魔力が漂ってくるが......

 もしかして此処はかの有名な『魔法の森』という場所か?

 瘴気だかキノコの胞子だかで満ちていて普通の人が入れば体調を崩すと言われていて人里で行ったら駄目と言われていたあの......

 確か魔理沙姉もここに住んでるんだっけか

 んー、悩みもある程度道が見えて焦りもなくなったし、様子でも見に行こうかなぁって思ったけど止めた

 魔理沙姉は魔法使いのわりにアウトドア派だからいない可能性が高いもんな

 それに加え私は魔理沙姉宅を知らないし、言ってしまえば時間の無駄になるかもしれないからな

 それじゃどうするか......

 このまま帰るのも味気ないし......

 

 そう考えててふと思い出した

 その昔、お母さんがまだ元気に生きていた時、つまり私が人里にいた頃、お父さんに連れられて来たあの男の人のことを

 確か霧雨商店で店について学んだあと、自分の店を開いたとか聞いているが......

 ...まあなんだ。今日は特に急ぐような用事もないし、お金はないけど、挨拶がてら寄ってみるかな

 

 私は箒の向きを変え、箒を握りなおすとその店を探すため気のままに飛び始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔「ふう、危ねえ。危うく榛奈に見つかるところだったぜ」

 

フ「そうだね...... そういえばさっきいきなり怒鳴ってたけど一体どうしたんだろう......」

 

魔「さあな......確か「それだったらどうしたらいいんだよ」って言ったんだったか。もしかしなくても榛奈がおかしかった原因に関係することだろうな......」

 

フ「うん...って魔理沙!榛奈が何処か行くみたいだよ!」

 

魔「よし、尾行再開だぜ!」

 

フ「うん!」




後書き~

一応できる限り月に二回は投稿しようと思っています
あぁ、最初のころの毎日投稿が懐かしい......

それはともかく次回、新たなオリキャラ“は”出ません
感想、誤字報告お気軽にどうぞ!
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30話『兄貴分との再会です』

前書き~

......
あれ?この間投稿したのっていつだっけ?
んー、カレンダーの見方わかんないなー
まあ大丈夫大丈夫(現実逃避

てなわけで久々すぎる投稿ですが、言い訳させてください
この話、実は何回も付け足したり無くしたり、最初から書き直したり、保存されず消えてたりして出来たんです
だから遅れたんです。すみません......
かわりに番外編的なものはなんとなく出来ました。今回の話に使おうとしてたのを没にしたやつですが

今回、東方の中で昔は唯一を誇っていた男性キャラの登場です
一部原作と違う設定がございますが、それが許せる人だけゆっくりしていってね!


 あの人がうち(霧雨商店)に来た日のことは覚えている

 私たち姉妹がまだ寺子屋に入っていなかった頃だ

 あの日、無縁塚に商品になりそうなものを探しに行ったお父さんが帰ってくると一人の白髪の男性を連れていた

 そしてお父さんは私たち家族を部屋に集めると唐突に言った

 「今日からこいつは住み込みで俺の弟子だ。いいな」って

 私たち三人は驚いたが、すぐに状況を理解した

 そしてお母さんは男性を住まわせるのに賛成した

 どうやら霧雨家というのはいろんなものを受け入れてくれる家族のようだ

 そのおかげで私という存在はいまだこの世界に居れるのだから感謝しかない。それこそ足を向けて寝られないってくらいだ

 だからこの男性も私のようにこの家族のおかげで将来が出来るんだろうな。なんて考えていたら意外にも舞理沙姉は反対だった

 理由は言わず、ただ頑なに男性を拒む

 その舞理沙姉の様子にお母さんは困り、お父さんは目を瞑り黙っていた

 肝心の男性は遠くから事の成り行きを見ていた

 そんな中賛成の意も反対の意も示さず、男性のように遠くから事を見ていた私は舞理沙姉になんで反対なのか訊いた

 すると舞理沙姉は私からしたら予想外の発言をした

 「私は別にいいけど、榛奈は大丈夫なの?」と

 その一言ですべて理解した。舞理沙姉は私が心配だったんだ

 実のところ私は男性が苦手だ

 いや、今は平気だが昔は苦手で、それこそお父さんとは顔を合わせず少し離れて会話をするのがやっとだった

 そんな中でのお父さんの言葉。舞理沙姉にはお父さんが私に無理やり苦手な環境で過ごさせようとしているのではと考えたのだろう

 舞理沙姉の心配は嬉しい。でも私が家族の足かせになるのは嫌だ

 私のせいで男性の将来が潰れるのは嫌だ。私のせいで物事が悪い方向へ進むのが嫌だ

 結局のところ、賛成も反対もしていない者に最終的な選択権が委ねられるのだと、後に私は思った

 そして私が出した答え、それは賛成だった

 自分を犠牲にすれば良い方向へ進むのなら私は喜んで自分を犠牲にしよう

 なんて考えていたからだ

 舞理沙姉はその答えに「本人がそういうなら......」と渋々男性を家に住まわせることを許した

 その後お母さんと舞理沙姉は男性の名前を聞き、色々質問したり、男性の住む部屋を決めたりと色々とやっていた

 その間、お父さんは私に近づき――といっても普通より離れているが――黙って隣に少しの間だけ立った後、店に戻っていった

 その時、その行動の意味はよく分からなかったけど、舞理沙姉が男性に気を取られてる間にお母さんが教えてくれた

 「お父さんはきっとお礼を言いたかったんだよ。そしてこれはお父さんの代わりにね」と言い頭を撫でられた

 少しだけ心がぽっとして、実は不安だった心が和らいだ気がした

 それから男性は昼は店で働き、その間と夜はお父さんから、時にはお母さんから商売について教えを受けていた

 そして店が暇な時は舞理沙姉の遊び相手をしていた

 おかげで舞理沙姉は男性に懐き、将来男性が建てるという店の名前をなぞったあだ名で呼ぶ仲になっていた

 私は残念ながら男性恐怖症のせいでなかなか馴染めなかったが、それでも兄を持った気分ではあった

 それから色々あって、男性恐怖症も少しだけ改善されて、私も少しだけ男性と仲良くなれてきた頃、自分の店を建てるとのことで家を去った

 男性が去った後もお父さんは男性の店に行ったりしていて交流が続いていたみたいだが、私たちはまだ子供で、外は危険だったために会えなかった

 その後私自身にも色々あって人里を出て今の生活があるんだが、男性とは人里で会ったっきりだ

 魔理沙姉はもう会ったんだろうけど、私はまだだったからな

 あの人の店がどんなのか知りたいし、久しぶりに会いたい

 咲夜さんと同じようなものだ。魔理沙姉が私の義姉なのは分かっているし、姉として慕っているけど、咲夜さんは咲夜さんで姉のような存在だと思っている。それの兄版だ

 あの人は事情があるからきっと成長していないんだろうけど、私は成長したから、自分の成長を見てほしいって気持ちもある

 でもまあ、“今”の私にとってあの人は兄みたいな存在だけではなくなってるけどね

 

 

 

 確かこっちが人里の方向で、人里の方向から魔法の森を見た時にある建物が......っとあったあった

 日本らしい木造建築で、明治時代やら昭和時代やらの物が置きに置かれまくってる

 まあコレクターにとっては宝の山だろうけど、私にはなんの価値もないガラクタだから大して気にしないけど、もう少し片付けたらどうなんだろか

 あ、明〇チョコの看板。多分最初の頃のパッケージだろうな。初めて見たわ

 あ、この昭和のやつは見たことあるなぁ

 おぉ、案外平成物も多いな。でもこれ平成初期だ。私が生まれるより前だから分からないのが多いな......

 

 なんて周囲を見渡して、さっさと入らないのはただの現実逃避

 逃げているのはあの人に会うのが少しだけ怖いから

 昔と今の違いを否定されるのが怖いから

 “()”と“()”はそれぐらい違うだろうから

 魔理沙姉は気づかなかったけど、あの人も気づかないとは限らないから

 でもきっと大丈夫

 もし私が昔と違うことが分かっても、彼は受け入れてくれるだろうから

 だから逃げるな。霧雨榛奈

 魔理沙姉の時はきちんと心の準備も出来ずに会っちゃったけど、どうにかなったじゃないか

 だから今回も大丈夫。心の準備ができるから余計にだ

 

榛「すー...はー...すー...はー......よし!」

 

 霧雨榛奈、いざ『香霖堂(こうりんどう)』へ突撃ィィ!

 

 

 

 カランコロン......

 

榛「...こんにちはー......」

 

 ............

 ..................

 ........................

 

 って居ねえのかよ!

 

 ..............................

 

 ほんとに誰もいねぇ!

 客一人も居ないどころか店主もいないぜ!

 ま、まぁ店の中を見てればそのうち来るだろう......

 

 そんなわけできちんと扉を閉め、中を見渡す

 壁や床、隅々の至る所に物が置かれている

 中には壊れかけ、もしくは既に壊れている道具があったり、薄汚れた本があったり、明らかに賞味期限が切れてそうな缶ジュースがあったりと、店の外と同じか、はたまたそれ以上にガラクタが積み重なっていた

 扉から見て正面にはカウンターらしき台と、椅子があるが、そこに居るべき人はいない

 よく見るとカウンターには本が置いてある

 気になりカウンターまで近づき本を手に取ってみた

 『初心者向けPCの扱い方』というタイトルとともに奥行が分厚そうなPCのイラストが描かれているが......

 うわー、これ凄い昔のやつじゃないか?

 いや妖怪にとっては最近のやつになるのか?

 中身の方は如何程......あ、意外に最近のでもいける知識が多い

 でも外の世界を知らなかったら分かんない単語が多いな

 カウンターに置いてあるってことはあの人が読んでたってことだよな

 ......読んで理解出来たのかな、あの人

 私だったら予備知識があるから平気だけど、それが無い幻想郷の住人だったら分かんないだろうな

 

 なんて本に目を取られていたら店の奥から足音がして、視線をそちらに向ければ足音の主がそこに立っていた

 

?「ん?おや君は......」

 

 此処、香霖堂店主であり過去霧雨店に住んでいた白髪の男性、『森近(もりちか)霖之助(りんのすけ)』がそこにいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

榛「お、お久しぶりです。霖さん 」

 

霖「本当に久しぶりだね。親父さんから行方不明になったと聞いていたけど、元気そうでなによりだよ」

 

榛「あはは...... 少し色々ありましてね。気づけば人里を出てからこんなに月日が経ってました」

 

霖「そうだったのかい。...っとごめん、立たせたままだったね。適当な場所に座っていいよ」

 

榛「は、はい。それではお言葉に甘えて......」

 

 そう私は言い、近くに転がっていた椅子を適当に置いてそこに腰掛けた

 それら一連の動作は適当に何も考えず、ほぼ無意識下で行っていたが、その無意識は椅子を霖さんから少し離れた位置に置いていた

 龍のやつのときは平気だったし今も男性は大丈夫だと思ってたんだが、案外まだ駄目なのかもしれないな

 まぁ龍は男性として見てないからな。例外だったんだろう

 まあとにかく大丈夫。人里にはまだ行かないつもりだし、見知らぬ男性と会う用事なんて今のところないからな。問題ないだろう

 

 なんて思いながら彼を見ようとすると、彼は先程までいた場所には居らず、奥から物音がするから奥に引っ込んだんだろう

 水音も聞こえるからお茶を用意してくれているのかな

 何だか落ち着くな。我が家みたい

 紅魔館は紅魔館で好きだし、実家となる霧雨家も好きだけど、此処も此処で好きになりそうだ

 ......まあ物が散らかってることには異議申し立てたいけどね

 もう少し片付けたらどうなのかな。あの人、どうせ暇なんだろうし

 それともお客さんが来ることあるのかな?

 今のところ誰一人来てないけど......

 あ、私はお客じゃないから別で

 

霖「お待たせ。はい、お茶。緑茶しかなかったけど良かったかい?」

 

榛「は、はい。お構いなく......」

 

 そう言いながら私は手渡されたお茶を受け取り、口に運ぶ

 

榛「ッあつ......!」

 

霖「はははっ、そりゃ入れたてだからね。少し冷まさないと飲めないよ」

 

榛「あはは......」

 

 ......おかしい。いつもの調子が出ない

 いつもならもう少し元気な対応ができるはずだ

 なのに何故だ?何故なんだ!?

 ううむ......難題じゃのう......

 

――変な口調にならないの。調子が出ないのは緊張してるからじゃない?――

 

 あぁ、そっか。緊張してたからか......

 ちなみに口調は巫山戯てただけだぞ?

 

――それは分かってるから。それで何かするの?――

 

 へ?何かって?

 

――もしかしてただ遊びに来ただけ?――

 

 あー、うん。まあ、遊びにというより顔を見せに来たかな

 それと店を見にね。此処は唯一外の世界の道具を扱うお店だから欲しいなって思うのがあるかもなーって

 あ、でもお金持ってないや

 紅魔館って食事とかお茶(紅茶)とか衣類とか住むところ、衣食住には困らないし、私としては図書館もあるから別に不便という不便はないんだけど、働いてても給料はないからなぁ......

 むしろ衣食住が保証されて、しかもどれも質のいい物ばかりが揃ってるからそれだけで普通に働くより贅沢な暮らしをしてるんだろうけどさ

 でもやっぱり自分の欲しい物を買えないのは少し不満かな

 そういや紅魔館の裏の方に畑があるって咲夜さんや美鈴が言ってたっけ

 その辺りを耕して畑作って野菜を作って売ろうかな

 買い手は......まあなんとかなるでしょう

 最悪楽市楽座やフリーマーケットみたいに売ればいいし

 それで残っても紅魔館は消費者が多いから、どうにかなる

 それでも余れば野菜の肥料にもなるって聞いたことあるから肥料にすればいいし

 よし、大変だろうけどやってみよう

 あわよくばフラン様に何か買ってあげようかな......♪

 

――はいはい、思考だだ漏れ。最後のは口が甘くなって珈琲が飲みたくなったよ――

 

 口が甘いってお前は人格だけで身体を持ってないんだから何も食べてないだろ

 それと珈琲は無いぞ。まあ探せばあるだろうけど、今手元にあるのは緑茶だけだ......ってちょうど良く冷めてる冷めてる

 

 ズズゥ......

 

 ふぅ、今日もお茶がうまい!

 

――人里出てから紅茶しか飲んでないやつが何言ってるんだか......――

 

 紅茶だって発酵度の違いだけで緑茶や烏龍茶と同じ茶葉から作られてるんだからね

 まあ紅魔館にある茶葉の種類は多数だから全部が全部緑茶になるかと言われれば別なんだけどね......

 

霖「そういえば君はもう魔理沙には会ったのかい?」

 

 なんて周りには聞こえない会話をしていると、本を読んでいた霖さんが話しかけてきた

 というか客がいるのにお構い無しに本を読むのもどうかと思うんだが

 まあそこが霖さんの個性ってことで納得してあげようじゃないか

 

――上から目線だー――

 

 客を放っておくのはあまり褒められたことじゃないからいいのだ

 って返事しないと

 

榛「はい、この間の異変の際、魔理沙姉が解決に来ていたのでその時、偶然的ですが会いましたよ」

 

霖「この間の異変......というと『紅霧異変』かい?」

 

榛「えぇ、そうです」

 

霖「そうか......あの娘が異変を解決しに...... あれだけ止めておいた方がいいと言っておいたのに全く......」

 

榛「...魔理沙姉は平気でしたよ。弾幕ごっこというルールが設けられ、命の保証はそれなりにされていたとはいえ、師匠に臆することなく立ち向かっていったんですから。それに私自身も魔理沙姉と戦いました。魔理沙姉の魔法はとても素晴らしかったです。とても難しく、とても美しい。最後なんて魔理沙姉の魔力砲に飲まれそうになりましたよ」

 

 それは自然と言葉に出ていた

 最後の方は少しだけ冗談めかして言った

 きっと霖さんは魔理沙姉が異変解決することに対して心配だったんだ

 そしてきっと魔理沙姉の言葉だけじゃ霖さんの心配を拭いきれない

 だからこうして実際に相手をした私からも大丈夫であると伝えなければならない

 それは一種の義務感なのかもしれないけど、今はその気持ちに従っていても良いと思った

 だって、本当のことなのだから

 

霖「...そうか......」

 

 その言葉のあと、しばらくの間沈黙が漂った

 その間、霖さんは本を読み――いやあれは本を読んでない。思いに耽っているようだ

 だってページが捲られてない。目は何処か遠くを見ているようだから

 私はというと、お茶を啜り、これからのことを考えた

 まず地底に修行の旅に出て、それから異変を解決する側として参加して、畑を耕して収入を得て、そして人里にも......

 ..........

 ...これは我儘だけど、まだ人里には行きたくない

 頭では理解してる。お父さんに会わなきゃ。おばあちゃんや慧音先生、心配してくれているであろう人里の皆。皆に私が生きてるって知らせないといけないってのは分かってる

 でも頭で理解していても心は拒否する

 多分怖いんだ。皆のことが。否定されることが

 此処(香霖堂)に入る時と同じだ。魔理沙姉とあった時も同じだった

 だからそのためにも強くならなければならない

 肉体的にも......精神的にも......

 

霖「...魔理沙を気にかけているのは僕個人としての感情もあるが、一番の理由は親父さんから頼まれてたからなんだ」

 

榛「お父さんから......?」

 

霖「あぁ。親父さんが「もし娘達が此処に来た時は頼んだ」ってね。親父さん、感情が表に出にくいけど、君たちのこと凄く心配していたよ」

 

榛「...はい。分かってますよ。お父さんが感情を表に出しにくいことも、表ではそう見せないけどとても心配していることも、周りには見せにくいけど私達のことを大切だと思っていることも......」

 

霖「魔理沙にはミニ八卦炉を持たせているんだが、それも頼まれた物なんだ」

 

 ミニ八卦炉......

 魔理沙姉がマスタースパークや魔法の実験に使ったりと幅広い範囲で使える道具

 原作では霖之助が作ったとなってたけど、そもそも霖さんが作った理由はお父さんが頼んだからなんだ......

 本当に......正直に言えばよかったのに......

 じゃなきゃ魔理沙姉が家出することもなかったのにね

 でもそういうのがあったから今がある。悪いことばかりじゃないからいいのかな

 

霖「そしてこれは君に。親父さんに頼まれ、ある人物から託されたものだよ」

 

 そう言いながら霖さんは引き出しから何かを取り出し渡してきた

 私はそれを素直に受け取る

 それは透き通るような黒と白の陰陽玉に透明な龍が巻きついているアクセサリーだ

 ご丁寧に紐までついている

 恐らく首にかけるために付けたのだろう

 小さなそれは石のような冷たさがありながら、どこか暖かく、直感だが何らかの力が秘められているのが分かった

 これは......神力だろうか......

 

霖「それは陰陽龍の宝玉という道具だよ。用途は所有者の能力を引き出す物だ。使い方はよく分からないが、つけていればいいと思うよ」

 

榛「陰陽龍の宝玉......」

 

 ......そのまんまのネーミング?

 まあそれは今は置いておくか

 陰陽......"陰"と"陽"、光と影、太陽と月、様々な物事の裏表

 その名がついているからきっとそれに関係した力を引き出すことが出来るのかな

 なんにしてもこんな素敵な道具をくれた霖さんには感謝しないとな

 つけてみるか。留め具も付いているから付け外ししやすそうでよかった

 

霖「...うん。よく似合っているよ」

 

榛「ふえ?あ、ありがとうございます......///」

 

 ま、まさか霖さんに褒められるとは......

 その辺は朴念仁だと聞いていたのに......

 不意打ちは卑怯だぜ!

 

霖「それにしても少し見ない間に大きくなったね」

 

榛「そりゃ私は人間で、今は成長期ですから。これからも身長は伸び続けますよ」

 

霖「もう既に魔理沙を越しているのに、まだ伸びる気かい?」

 

榛「身体の成長なんて、自分じゃ操作できませんからね。カルシウムを大量に取って身長が上がるよう促したり、栄養をバランス良くきちんと取って丈夫な身体になるようにしたりってくらいしかできませんよ。身長は家族からの遺伝で決まることが多いですし」

 

 魔理沙姉はお母さんの血を色濃く受け継いでるらしい。その証拠にお父さんは黒髪なのに対し、お母さんの金髪を受け継いでる

 そしてお母さんは同性の中でも身長が低い方だ

 だからまあ、魔理沙姉の身長はお母さんと同じぐらいになるんだと思う

 希望は......望み薄だね

 

霖「そうかい。そういえば今日は何をしにきたんだい?」

 

榛「今日は特に何も。ただお散歩で適当に飛んでたら魔法の森に着いて、ふと此処のことを思い出したので顔を見せに、と」

 

霖「...飛んでた、という発言と、君の服装からして君も魔法使いになったのかい?」

 

榛「えぇまぁ。あくまで人間の、それも魔女の弟子ですけどね」

 

――ちなみに実力は弟子を卒業出来るほどであった――

 

 いやいやまだまだ。師匠を追い抜くなんてまだ無理だよ

 

――どの口が言ってるのかね......――

 

霖「魔女の弟子?魔女というと幻想郷ではこの森に住んでる人形師くらいしか思いつかないが、その弟子かい?」

 

榛「いえ、紅魔館の魔女パチュリー・ノーレッジですよ」

 

霖「あぁ、確か新聞に紅魔館の住人が載ってて、そこにその名前があった気がするな......」

 

榛「へぇ、それって何年前のやつですか?」

 

霖「確か君たちが生まれて間もないくらいの年だったか......」

 

 あー、それ完全に私いなかった時だ

 幻想郷にいたとしても紅魔館にはいなかったな

 あ、咲夜さんはどうなんだろうか......

 

榛「ちなみにですが、そこに『十六夜 咲夜』という名前はありましたか?」

 

霖「その名前は確かあったような気がするよ」

 

榛「え、ほ、本当に?」

 

霖「ああ。横文字の多い名前の中で唯一、幻想郷で使われている言葉の名があったのが印象的だったからよく覚えてるんだ」

 

 おいおいおいマジかよ!?

 え?咲夜さんって私より年上とはいえ数年違いだよな!?

 あの人まだ20歳にすらなってないよな!?

 なのに私が生まれて間もないとか言われてる年から紅魔館にいたの!?

 下手すれば吸血鬼異変にも参加してた可能性があるよ!?

 咲夜さん!貴女一体何歳なんですか!?

 

榛「...現実は小説よりも奇なりってほんとにそう思いました......」

 

霖「幻想郷だからね」

 

 あぁ、美しき幻想郷......

 常識と非常識を隔ててるからって何も人の年齢も変えなくても......

 

霖「それにしても君は今、紅魔館に住んでるのかい?」

 

榛「えぇはい。人里を出たあと色々ありまして、紅魔館でお世話になっています」

 

霖「大丈夫なのかい?確か彼処の主は吸血鬼だったと記憶しているが......」

 

榛「えぇ吸血鬼ですけど、大丈夫ですよ。現に数年経った今でも私は元気です。むしろ衣食住が保証されてて快適なんですよ?こうやって自由もできますし」

 

霖「それならいいが...... もし何かあったらすぐ周りに頼るんだよ?君は昔から問題を溜め込む癖があるから――」

 

榛「だ、大丈夫ですよ!むしろ何か問題が起きれば周りに頼りまくってるくらいなんですから!」

 

霖「それはそれでどうなのか......」

 

榛「と、とにかく大丈夫です!...ってあっ、そろそろ帰らなきゃ」

 

 ふと部屋に飾ってある時計を見れば結構な時間が経っていた

 懐にある懐中時計を見ても壁掛け時計と同じ時刻を指している

 とくにズレているってことはないから、ほんとにそろそろ帰らなければならない

 この後仕事があるのをすっかり忘れていたよ

 

霖「おや、もう帰るのかい?」

 

榛「はい、お茶ご馳走様でした。ネックレスありがとうございます。大切にしますね。ではお邪魔しました」

 

霖「またいつでも来るといいよ。その時は商品も買っていってくれると嬉しいな」

 

榛「...はい!お金を貯めたらですけどね!」

 

 そのまま私はお店を飛び出し、その勢いのまま箒に飛び乗る

 そのまま魔力で上昇するのはもうお手の物だ

 人里に住んでた頃の私だったら空を飛べるようになるなんて思わなかっただろうな......

 そのかわりに魔理沙姉が魔法使いになるって言い出した時はそのうち飛べるようになるんだろうなって思ってたのにね

 ......人生とは本当に、予想ができないな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

フ「魔理沙、あの男の人は誰?」

 

魔「アイツは森近 霖之助。私は香霖。榛奈は霖さんって呼んでるぜ。まあ私達の兄貴分だな」

 

フ「ふーん。そっか。それ以外には何かある?」

 

魔「ん?それ以外か?特に何も無かった気がするが......」

 

フ「例えばアイツが榛奈を狙ってるとか」

 

魔「え?狙うってどういう意味だ?」

 

フ「ほら、榛奈って可愛いから襲おうとしてないかなって」

 

魔「え、いやそんなこと思ってないと思うが......」

 

フ「ならいいや」

 

魔「あ、ああそうか......」

 

 今のフランの発言、それとむすっとした表情

 もしかして嫉妬か?

 いやまさかな......




後書き〜

実は先月、本編は投稿しなかった代わりに活動報告は投稿したんですよ
特にオリキャラとか設定とかの話はせず、気まぐれの産物ですが、是非読んでいってくださいね

それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30.1話『いや寝てないでよ!起きてよ!』

前書き~

※今回の話は本来ならば第30話に付け足そうと思いつつ、投稿予約した時間に間に合わなかったため単体で出すことにした話です。今までと比べると、とても短くなっているので少しの時間で読み終わります
そのためゆっくりできないかもしれませんが、ゆっくりしていってね!


[紅魔館]

 

 

 ......っと、着陸成功、無事帰還!

 さて、最初は何から手をつけようかなー

 なんて思いながら門の前に立ってるはずの門番を見た

 

美「Zzz......」

 

榛「...シエスタしていらっしゃった......」

 

 えぇ......

 まあいつもの事だけど、それでも起きててよ。夜も一晩中仕事してるわけじゃないんだから......

 仕方ない。このままじゃ咲夜さんに見つかって美鈴がお仕置き食らうのは目に見えてる

 ここは一つ、起こしてみるか

 

榛「おーい、美鈴。めーりんさーん?めーりんやーい。めーりーん?めーりんめーりんたすけてめーりん!」

 

美「Zzz......」

 

榛「あーあー、どうしよう。高く振り上げたこの腕。貴女は門番だ、紅魔の門番だー♪」

 

美「Zzz......」

 

榛「......起きてよ!起きなさいな!起きろ!起きやがれこの野郎!起きてくださいお願いします!」

 

美「Zzz......」

 

榛「これだけ騒いでも起きないなんて...... もはや手がつけられないな」

 

 もう諦めるしかないね

 今日も美鈴は仕事中に居眠りしたことで頭にナイフを生やすのであった。めでたしめでたし

 

榛「私は何も見なかったし、見えなかった。門の前で独り騒いでいました。おわり」

 

 カチャッ...ギィ......

 

 独り言を呟きつつ門の横に設置してある扉の鍵を開け中に入る

 普段は美鈴が起きていれば門から入るのだが、寝ている時はこちらから入っている

 客がいるときは別だ。さすがにその時は無理にでも美鈴を起こして開けさせる

 まあ客なんて来る時が少ないし、来るとしたら魔理沙姉とかだし、魔理沙姉は自分で開けて入ってきちゃうからな

 レミリア様達が外に出る時も開けなければならない

 まあそもそもレミリア様達が外に出る時が少ないんだけどね

 あ、でも最近はそうでもないか

 フラン様がよく妖精達と遊びに行くのが見られるもんな

 とにかくこの扉は基本、従者が使っている。咲夜さんや美鈴、私なんかだ

 ......そういえば、さっきの誰かに見られたかな?

 

榛「...誰にも見られてないよな?」

 

 思わず周囲を注意深く見渡すが、特に誰かいるということはない。強いていうなら美鈴だけだ

 ふぅ、誰にも見られてなくてよかった

 見られてたら恥ずか死ぬ

 

榛「いや恥ずかしくなるならやるなって話だけど、思わずやってしまうのが私なんだよな......」

 

 とにかくさっきのは誰にも見られてなかったし忘れよう

 さて、最初はそうだな......

 図書館の掃除から始めようかな

 よし、そうと決まれば早速行動だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________

魔「...何だったんだ?さっきの」

 

フ「多分美鈴を起こそうとしたんだろうけど......歌ってたね......」

 

魔「...アイツのことが全然分からんくなってきたぜ......」

 

フ「......かわいい」

 

魔「えっ、そ、そうだな。可愛いかったな」

 

フ「...あげないよ?」

 

魔「いや盗らないぜ」

 

 ふむ......

 こりゃもう決まりだな

 よし、ならば恋の魔法使いである私が2人を結ばせてあげようではないか!

 ま、榛奈の気持ちも大切だがな




後書き〜

( ゚∀゚)o彡゜えーりん!えーりん!たすけてえーりん!
今更ですが、ニコ動のタイムシフトであまねりおの披露宴を少しだけ見ました
行きたかった......

さて、次回は榛奈さん、さっそく行動するようですよ
最初はどなたに声をかけるのでしょうか
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第31話『旅の事前準備①』

前書き~

今回文字数は前回よりは多めです(それでも少ないってね)
実はこれを完成させたのは、遠い実家に行く前の家を出る前なんです
いやぁ......楽しみだなぁ......
実家は観光名所が多く存在する、都会とは言えないけど田舎とは言えない中途半端な場所なんです
ホテルも良いところを取れたので今から楽しみです!

今回は榛奈さん。あの人に許可を貰いに行くそうですよ
無事取れるでしょうか......?
それでは今回もゆっくりしていってね!


[紅魔館]

 

 

 昨日はあの後心がスッキリというか、焦る気持ちが無くなったからか比較的普段通りに過ごせたと思う

 仕事も生活も特に問題はなかった

 だからなのか、周りから安堵の声が聞こえた

 ほとんどの反応がため息に関することだったから、相当ため息を吐いていたんだと思う。そんなにか?

 そういえば魔理沙姉が遊びに来ていて、私が出かける前に声をかけたらしいけど、私は反応しなかったそうな

 うん、魔理沙姉の存在に全然気づいていなかった。フラン様の気配は感じたんだけどな......

 ちなみに私が魔理沙姉が館に来ていたことに気づいたのは夕食時。フラン様から教えてもらった。その時には既に魔理沙姉は帰った後だった

 もし教えてもらってなかったらずっと気づかなかったと思う

 どこまで周りが見えてなかったんだと過去の自分にツッコミたくなった

 まあそんな一日を過ごした昨日の今日。私はさっそく行動することにした

 え?何をするのかって?

 そんなの決まってる。皆さんに許可を貰いに行くのだ。修行の旅をするためには必要だからな

 てなわけでレミリア様の書斎の前に立ってるわけだが......

 

榛「急ぎすぎた......」

 

 いや確かに思い立ったが吉日とは言うが、何も考えずに来すぎた。せめて何て切り出そうか考えてくるべきだった

 うぅ......

 ここまで来て引き下がるのも私の決意が無駄になるし......

 でもこのまま突撃してもな......

 どうしようか......

 

レ『榛奈、そこに突っ立ってないで早く入りなさい』

 

榛「えっ!?は、はい!失礼します!」

 

 

 中からレミリア様の声が聞こえて、思わず条件反射で身体が勝手に扉を開け、中に入ってしまう

 うわぁ...... さっきまで少しだけ思いついてたのがあったのに、頭真っ白になってどこかに消えちゃったよ......

 

レ「全く...... 貴女の気配を扉の前から感じて待ってたのに、いつまで経っても来ないんだから、待ちくたびれたわよ」

 

榛「す、すいません。その、少し考え事をしていたので」

 

レ「そう。それで私に何か用?」

 

 レミリア様はそう言い、机に置かれたカップの中身を口に含む

 その何気ない仕草がとても優雅に見えるから不思議だ

 

榛「実はその...... 紅魔館を出ようかと思いまして」

 

レ「ブフゥッ!?!?」

 

榛「えぇ!?だ、大丈夫ですか!?」

 

 主に書類とカリスマが大丈夫!?

 急いでレミリア様の下まで近づき確認する

 大丈夫だった。ケホケホ咳き込んでるけど、特に問題無かった。よかったよかった

 そう思いながら次は机の上を確認すると、机の上も大丈夫だ

 多少汚れてしまったが、見たところ書類にはかかっていない。奇跡だ......

 

レ「え、えぇ大丈夫よ...... ってそれより出てくってどういうことよ!も、もしかしてなにか不満があるの!?何か不満があるなら言ってちょうだい!出来る限り改善できるようするわ!だから何でも言っていいわよ!だからだから――」

 

榛「いや不満なんてないですから、落ち着いてください!言い方を間違えました!ですから落ち着けぇぇ!」

 

 

 

 

 

榛「...落ち着きましたか?」

 

レ「え、えぇ。ごめんなさい、いきなり取り乱して」

 

榛「いえ、こちらも変な言い方をして勘違いさせてしまいましたから。すみません」

 

レ「それでどういうこと?」

 

榛「最近ある目標が出来まして、それを達成するためにはある場所へ行かなければならないのですが、そこが此処からは遠く、更には何ヶ月とそこにいないと目標を達することが出来ないのです。ですのでその許可を貰いに来ました」

 

レ「なるほど...... それでその目標って?」

 

榛「えぇっと......」

 

 これって言っていいのかな?

 いや普通言ってもいいだろうけど、なんか言い難い

 だから「ある目標」って内容を伏せたのに......

 でも答えないのも駄目だからなぁ......

 

レ「何?答えにくいの?」

 

榛「...いえ、答えます」

 

 答えなきゃ許可なんて貰えないだろうし、別に答えにくいことじゃない......と思わないと答えにくいな......

 とにかく答えなきゃ

 

榛「実は私、強くなりたいんです」

 

レ「強く...ね。それは此処でも出来ることだと思うけど?」

 

榛「いえ、失礼ですが、此処ではこれ以上自分の力が格段に上がるとは思えないです」

 

レ「貴女は魔法使いになりたいのよね?なら幻想郷で唯一と言っていいほど本がある此処ならその目標が達成できると思うのだけれど」

 

榛「...確かに昔の私は魔法使いになりたかった。しかし今の私の目標は違います。ただ強くなりたい。魔法だけでなく、武術や霊術といったものも得たいんです」

 

 いや、今も昔も同じか

 魔力があったから魔法使いになりたいと思っただけで、もしあの頃の私が自身にある霊力に気づいたなら霊術を極めていたかもしれない

 どちらにも気づかなければ武術だったのかもしれない

 どちらにしても共通しているのは強くなりたいという気持ちなのだ

 

レ「武術なら美鈴に教わりなさい。霊術は霊夢に頼めば教えてくれるでしょう」

 

榛「それでもっ――」

 

 それでも今回の話には乗りたい

 確かに美鈴は強い。霊夢だって同じだ。それに時間も限られていない。それこそ何時でも教わることが出来る

 だが今回の話は時期が限られてしまっている

 そして今を逃すと長期間、纏めて時間が取れるのはそんなに無いだろう

 これから数々の異変が起こる。ならばその前に強くなっておきたい

 いついかなる場合も対応できるように

 

レ「...分かったわ。そんなに行きたいのならどこへなりと行きなさい」

 

榛「えっ......」

 

 それってもしかしてクビ......?

 い、嫌だ!確かに強くなりたいけど紅魔館に居られなくなるなら弱いままでいい!皆さんと......フラン様と一緒に居られなくなるなんて絶対に嫌だ!!

 

レ「そんな悲しそうな顔しないの。別にクビにするわけじゃないわ。ただね......」

 

榛「......?」

 

レ「榛奈、貴女はフランにその話をしたのかしら?」

 

榛「いえ、館の主はレミリア様ですから、まずはレミリア様の許可を貰ってから話に行こうかと...... それが何か?」

 

レ「確かにその判断は正しいわ。でもね、貴女の主は誰かしら?」

 

榛「フラン様です」

 

レ「ならこの話を最初にすべき人物も分かるわね?」

 

榛「...なるほど、フラン様から許可を貰えばいいんですね」

 

レ「ええ。でも貰えなかったら今回の話は無しよ。それと許可をもらえたならいつからいつまでか期間を決めて教えなさい。行く場所も大まかでいいから」

 

榛「分かりました。期間はもう既に決まっているので許可を貰え次第教えますね。では早速行ってきます!」

 

 私は急いで部屋を後にする

 ん?最近こんな風に部屋から出ること多い気がしてきた

 ま、いいか

 とにかく今はフラン様からの許可を貰おう

 それさえ取れれば後は荷物をまとめて地底に向かうだけなんだからな!

 よーし!頑張るぞい!

 

 

 

 

 

 ん......?

 そういえばフラン様ってどこにいるんだ?




後書き〜

昨日夕食に西瓜をお腹いっぱい食べたので、飛行機の中でお腹を壊さないか心配です......
ま、まあ大丈夫ですよね......?
昼はきちんと水分少なめな固形物を食べたので大丈夫なはず......
そして現在の残高が少ない......
給料日は月末なのに、帰ってくるのは来月の1日朝だからあまりお土産買えなさそうだぁ......
とまあ前書きは前向きなこと書きましたが、後書きは後ろ向きなこと書いたほのりんであった

次回、榛奈さん。フランに許可を貰いに?
事が順調に進むといいですね
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第32話『旅の事前準備②』

前書き~

①の前書きに書いたように北海道行ってきました!
どんな風だったかは私のTwitterのツイートに載せておきましたので、興味のある方は是非(ただ、他のツイートに埋もれる可能性もある)

今回は当たり前ですが①の続きですね
今回は榛奈さん、フランを探すようですが見つかるのでしょうか......?
物事というのはそう簡単に進まないわけで......?
今回もゆっくりしていってね!


 あの後急いでフラン様のお部屋に行くも、誰もいなかった

 まあフラン様が今のお部屋にいることは少ないから望み薄だったけどね

 んじゃまあ次は図書館に行ってみるかな

 図書館にいる可能性は高いからな

 その次に高いと思うのはレミリア様の書斎だけど、そこはさっき行ったから無し。すれ違いをしていない限りフラン様は彼処にはいない

 そしてその次となると、何処だろうか......?

 そもそも館内にいるだろうか?外にいるかもしれないな

 とにかく一度図書館に行けばいいよね

 それで居なかったら色んな所をまわればいいんだし

 じゃ、図書館へレッツ、ゴー!

 

 

 

〜少女移動中〜

 

 

 

[図書館]

 

 

 トントントンッ ガチャ

 

榛「おはよーございます!フラン様はいらっしゃいますかー!?」

 

 なんて元気に挨拶しながら図書館に入る

 目の前の若干本に埋もれている机に座っていたこの図書館の主は本から目を離さず私の言葉に反応してくださった

 

パ「...おはよう。今日はやけに元気ね。フランならいないわよ」

 

榛「朝から元気に過ごした方が良いですからね。それでフラン様がどちらに居られるか分かりますか?部屋に行ってもいなかったんですが......」

 

パ「多分外じゃないかしら。貴女が来る少し前に魔理沙が来て連れていったから」

 

榛「え?魔理沙姉が来てたんですか?」

 

パ「えぇ。でも貴女がいないことを知ったら貴女の代わりにフランを連れて何処かに行ったわ。まだ紅魔館にいるのか、外にいるのか分からないけれどね」

 

榛「そうですか......」

 

 いつの間にか魔理沙姉が来ていたとは......

 多分まっすぐ図書館へ向かったんだろうな

 今日は私、朝食終わって部屋に戻ったあとすぐレミリア様の書斎に向かったから会わなかったんだろう

 にしても魔理沙姉と一緒か......

 そうなると、どこへ向かったかへ検討もつかないな

 魔理沙姉が行きそうな場所と言えば......

 博麗神社に香霖堂に......

 河童のところはないとして、アリスのところ?

 いやアリスと面識があるのかすらわかんないからな......

 人里は避けて通りたいし......

 ...仕方ない。探すか

 

榛「では私はちょっとフラン様を探してきますね!もし戻ってこられたら私が探していたと伝えてください!」

 

パ「分かったわ」

 

榛「では!」

 

 さて、最初は紅魔館の中にいるか探さないとな!

 

 

 

 

 

パ「あ、そうそう。魔理沙なら人里に...ってもういない。まあいいわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________

榛「うーん。いないなぁ...... この辺りにもいないとなると、外に行ったのかな?」

 

 地下室は魔理沙姉が行くような場所じゃないし、キッチンとか風呂場とか食堂とかめぼしい所は回ってみたけどいない......

 外となると範囲は広がってしまうしな......

 なんて考えながら廊下を歩いていると......

 

咲「あら榛奈。ここで何してるのかしら?」

 

榛「あぁ咲夜さん。いやまあ少し人?探しをしていまして。そうだ咲夜さん、フラン様を見かけませんでしたか?」

 

 やった!ここで咲夜さんに会えるなんて幸運だ!

 館内を(仕事で時を止めながら)走り回ってる咲夜さんならフラン様の居場所が分かるかもしれない!

 

咲「妹様なら魔理沙と人里に行くと言っていらしたわよ」

 

榛「へぇそうですか。人里に......ひとざと?え?咲夜さん今なんて......?」

 

咲「だから人里よ。妹様が行きたいと仰ったから行くそうよ」

 

榛「そ、そうですか...... ちなみにその「ひとざと」は人が集団生活しているあの人里のことですか......?」

 

咲「それ以外に何があるのよ」

 

榛「多分無いと思います......」

 

咲「どうしたのよ、いきなり元気を無くして。何かあったの?」

 

榛「いえ特に何も...... 私は少し部屋に戻って準備してきます......」

 

咲「え?ちょっと......!?」

 

 私は重くなった足を無理やり動かして部屋に向かう

 咲夜さんには悪いが話せるほど余裕が無い

 別にフラン様には夜帰ってこられたら話せばいいけど、待ってる時間も惜しい

 人里......行くかなぁ......




後書き〜

次回は榛奈、いやいやながらも人里に?
行きたくないのは理由があるから。人里が嫌なわけではないから。ただ会うのが嫌なんだ
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第33話『人里に突入です』

前書き~

バイトで初めて6連勤というのをやらされました
それには事情があったのですが、そのことに気づいたバイトの先輩が店長にそのことを言ってくれたおかげで7連勤を避けることが出来ました。ありがとう。多分バイト先で1番年上の先輩!おかげで三連休です!

まあそれはともかく、今回は榛奈さん。人里に向かうそうですよ
さて、人里に入るにも難問があって......?
名前を気にする人は後ろにGOだよ!
気にしない人は今回もゆっくりしていってね!


[幻想郷 上空]

 

 

榛「はぁ〜♪やっぱ幻想郷の空はいいなぁ。今日は少し曇りなのが残念だけど、そっちの方がフラン様がお出かけしやすいから良いのかな。あ、でもこの雲の様子と空気の匂いだと夕方あたりには雨が降るかな。それまでに見つけないと......な......」

 

 風景とかで現実逃避してみるけど無理だな

 それもそうか。今実際に人里に向かって飛行中だもんな......

 一応秘密兵器を部屋から持ち出してきたが、まさかこんなにも早く使うはめになるとは思いもしなかった

 そうだ。ついでだからあの人たちの様子も見に行こう

 別に人里自体が嫌なわけじゃなく、私を知ってる人に会わなければいいのだから、様子を見るくらいならいいだろう

 そしてフラン様を見つけたら......

 あ、どうしよ。私だってわかってくれるかな?

 ま、その時になったら考えるか

 

 

 

 

 

[人里 門前]

 

 

 人里の出入口である門から少し離れた、門番にすら見えない位置に着陸する

 此処からなら人里から絶対に見えない位置だな

 さて、此処から秘密兵器を身にまとっていくか

 そう思いエプロンポケットから黒いフード付きのローブに狐の面を取り出す

 正体を隠すには黒いフードか狐の面は定番だからな。きちんと足首まで隠れるぜ?最近作ったやつだからまだ隠れるはず......

 こういう時のためにローブは自分で手作り、お面は咲夜さんに頼んで買っておいてよかった

 では早速......

 

 

 

〜少女変装中〜

 

 

 

榛「これで周りには変なやつ扱いだな。...ん?それもそれで嫌だな。ま、我慢だぜ」

 

 後は変声魔法で声を男っぽくして...... 口調も男のようにしよう

 これなら背の低い男の人のように見えるかな

 

 では早速突入!......したくないなぁ......

 

――今更何言ってるの?そこまで来たんだから頑張りなよ。あの人たちの様子も気になるんでしょ?――

 

 そりゃ気になるさ。お父さんとかおばあちゃんとか慧音先生とか健康に暮らしてるかなって

 正直言ってしまえば当時の寺子屋の人たちはどうでもいいけど

 

――どうでもいいとはそりゃまた正直な――

 

 あの頃の私は寺子屋じゃ魔理沙姉だけいれば他の人とは仲良くしなくてもよかったからな。ただそれだと店の評価が落ちるかもしれないから仲良くしてやってただけで

 あ、あの娘と慧音先生は別ね?

 

――そう。とにかくバレないと思うから行ってみたら?里の人の中には君が生きてるかすら分からない人が多いんだから、バレやしないよ――

 

 うん。まずはあの2人の門番だ

 あの人たちは確か昔私が居た頃の先輩の中にいた気がする

 まあ私のことなんて覚えてないよな。何せ5年も前の話なんだし

 私の足、行きたくないのは分かるが動け。どっちにしてもいつかは行かないといけないんだ。なら予行練習として行こうじゃないか

 大丈夫。バレない。これだけ変装してれば性別すら分かんないんだから

 そう言い聞かせながら私の足はぎこちなく歩み始める

 これじゃ怪しまれる。もっと普通にだ。普通に、普段通りに......

 そう意識するほど自分の歩みは変な風に思える。当たり前だ。普通は無意識にやってることを意識してやるなんて出来るわけがない

 それでも意識しなければ変な風に歩いているように感じてしまう

 そうだ。現実逃避しよう

 ......

 ............

 いざ逃げようとすると何考えていいのか分からなくなるな......

 あ、既にこれ現実逃避出来てる?

 おぉすげぇ

 なんて考えてる間に門前にたどり着きましたー

 わーい、門番さん二人が私を睨んでるよー。槍で門を塞いでるー。まさか現実で見られるとは思わなかったよー。いや、昔はよく見てた光景か

 

門番1「おい、そこのフードを被った怪しいやつ。貴様は妖怪か?」

 

榛「え?あ、えっと......」

 

 え?ここは素直に人間って答える?

 それとも妖怪?

 そう考えると不意に悪戯心が顔を出した

 ここは妖怪って名乗ってみるかな

 

榛「わた...じゃなかった。俺はただのしがない妖怪だが、それが何か?」

 

門番1「妖怪が人里に何の用だ」

 

 えっと、此処はどうやって言うか......

 

榛「なに、最近人里は妖怪の出入りも許可するようになったのだろう?人里とはどのような様子なのか気になったのでな。中に入らせてはくれないか」

 

門番1「駄目だ。貴様のような怪しい妖怪を安易に入らせるわけにはいかない。人を殺されては堪らんからな」

 

榛「ふむ......」

 

 まずいな。まさか妖怪と言っただけでここまでの反応とは......

 だからって最初から正直に人間と名乗ってても同じ結果だっただろうし、どうすればいいのか......

 

榛「俺は別に人を食う妖ではない。人を殺す必要も無い。何より人里にいる人間を殺せば妖怪の賢者から裁きを受けるのだろう?余計なことはしない。ただ見て回るだけだ」

 

 あと人探しね

 

門番1「妖怪のことなど信じられん。妖怪は昔からそうやって嘘をつき人間を騙してきた。妖怪の賢者の言うことだって信じられんな。よって入らせるわけにはいかない」

 

 んなこと言われてもな......

 今更だけど人間だって正直にいうか?

 でもこいつ相手だとまた嘘つき呼ばわりされるな......

 ん?そういやこいつ、寺子屋時代に祖父を妖怪に喰われたって言われてた先輩じゃないか?あー、だからこんなにも妖怪を毛嫌いしてるのか

 もう一人の考え込んでるやつは......ダメだな。考えに夢中で話ができなさそうだ

 

門番1「分かったならとっとと帰んなって――」

 

門番2「なあ門番1。こいつなんだかおかしくないか?」

 

 おい!?

 考え込んだ後の第一声がそれか!失礼なやつだな!

 いやまあ今の私の格好ならその意見も分かるけどな!?

 

門番1「は?おかしいも何も最初からこいつはおかしいだろ」

 

門番2「そうじゃなくてだね......」

 

 そう言いながら私を変人呼ばわりした男は近づいてくる

 おいなぜ近づく。なりきってる自分で言うのもなんだが妖怪にそうやって安易に近づくと真面目な話怪我するぞ?

 

門番1「おい門番2!近づくと殺されるぞ!」

 

 いやそんな人を殺人兵器みたいに言わなくても......

 

門番2「いや大丈夫だよ門番1。だってお前さん、人間だろ?」

 

榛「...なぜそう思う?」

 

 え!?なんで分かった!?

 フードにマントにお面で肌の露出度が0に近いのに!

 

門番2「最初魔力を感じた時、魔法使いとかそっち方面の妖怪かと思ったが、微かに霊力も感じてね。逆に妖怪にあるはずの妖力は残り香のような形でしか感じない。といっても濃厚だけどね。そこから察しただけだよ。もし本当に妖怪なら失礼」

 

榛「...いや。確かに俺は人間で合っている。しかもお前が感じたもの全て合っている。俺は魔法使いだし、霊力も持っている。妖力は住んでる環境故にな」

 

門番2「そうか。合っててよかったよ」

 

榛「しかし何故力を感じ取ることが出来た?見たところお前は何か特別な力があるようには思えんが......」

 

門番2「なに、僕は昔からそういったのを感じることができるだけさ。力なんてないし、ましてや能力だってないよ」

 

榛「ならこれからはそれを能力と自称すれば良いのではないか?名付けて『相手の力を感じ取る程度の能力』なんてな」

 

門番2「ははっ、使う機会はないだろうけどせっかくだから貰っておくよ。その能力名」

 

榛「うむ」

 

 こいつ、隣のやつと違って良い奴だな

 って待てよ......?

 こいつどこかで見たことが......

 

門番2「さて門番1、人間ならここを通さないわけにはいかないよな?」

 

門番1「チッ、こいつは気に食わんが人間だというなら通さないわけないだろ」

 

榛「ふっ、そりゃどうも」

 

 よかったぁ......

 これで駄目なら反対側まで行くか、壁を乗り越えないといけないところだったよ

 門番2って人には感謝だね

 

門番1「にしてもお前、何故そんな格好をしている?しかも妖怪だなんて嘘ついて。人間だとはいえ問題を起こすなら容赦はしないぞ」

 

榛「格好なんて俺の勝手だろう。妖怪って嘘をついたのは気まぐれだ。気にするな」

 

門番2「さ、開いたよ」

 

 なんて門番1と呼ばれていた男と会話をしている間に門番2は門を開けていた

 

門番2「気をつけてね。もし何か困ったことがあったら寺子屋の慧音先生を頼るといいよ」

 

榛「あぁ、分かった。困った時は頼ることにする」

 

門番1「ふんっ、だからって問題を起こして先生を困らせたら追い出すからな」

 

榛「だから問題を起こす気は無いから安心しろ」

 

 まったく、少しは門番2を見習ったらどうだ

 奴は事を穏便に進めてくれるから平和にやれるというのに......

 ま、疑うことを知らなければ社会の中では生きていけないからしょうがないか

 さて、私だとバレないように気をつけながらフラン様を探すとしよう

 霧雨榛奈、いざ出陣!

 

 なんて緊張した気持ちを解すように変な気合を入れながら私は門をくぐり抜けた




後書き〜

前書きを書いたのは三連休前
後書きを書いたのは三連休の3日目
投稿するのは三連休明けの朝
差があるなぁ......
あ、友達に貸してもらった東方原作返さないと

それはともかく次回!
榛奈さん。人里を歩くようです
無事フランと魔理沙を見つけれると良いのですが......
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第34話『人里の中です。泥棒は駄目ですよ』

前書き~

よし、間に合いました
今月は無しかなぁって思ってたら意外とかけるものですね。1万文字になりましたけど
さて、今回は榛奈さん。人里の中でフランと魔理沙を探します。無事見つけられるでしょうか......
...一波乱の予感......

それでは今回もゆっくりしていってね!


[人里]

 

 

 門を潜った先にある表通りをある程度歩いてみて分かった事がある。人里が昔より活気づいているのだ

 それはもしかしたら昔より人口が増えたからなのか、はたまたさっきからちょくちょく見かける妖怪のおかげなのか

 おそらくどちらもなのだろう。人の数も多いし、妖怪達はそれぞれ人里を堪能している

 ある者は店で買い物。ある者は新聞を配り、ある者は何故か働いている

 一昔の幻想郷では有り得なかったと思われる光景だ

 といっても私が人里を離れてから4、5年しか経ってないからそんなに言えないけどな

 

――これはこれは、昔を知ってたら驚くね、この光景は。人里の外を出れば昔のままかもしれないけど人里内では両者が上手く共存出来てる。本当に、あの子にも見せてあげたかった......――

 

 “あの子”?

 あの子って誰のことだ?

 

――...なんでもないよ――

 

 ...そうか

 

――訊かないんだね――

 

 なんでもないならなんでもないんだろ。そういうのは深く踏み込まないようにしてるんだ

 深く踏み込みすぎると昔みたいに死にかけるからな

 

――ふふっ、君は昔から変わらないね――

 

 お前の指してる“昔”ってのが分からないからそう言われてもピンとこないな

 

――そう。それより周りに耳を傾けてみたら?――

 

 周り?フードで聞こえづらいから聞こえるか......?

 

 そう言われ近くでコソコソと話していた女性2人の話に耳を傾ける

 何故彼女達はあんなコソコソ話してるんだ?そんな周りに聞かれたくない話をするならもっと別の場所があるだろうに......

 

 

 

「ねえ、聴きまして?さきほど人里に見かけない妖怪が来たんだとか......」

 

「まあ、どのようなお姿だったのですか?」

 

「なんでも金色の髪を右に束ねていて、血のような赤い目。木の枝に宝石をぶら下げたような気色悪い羽を持っていて、口には牙のようなものがある小さな女の子の妖怪だそうですわ」

 

「まあ、なんて恐ろしいお姿をしていらしているのでしょう。どのような種族なのでしょうか......」

 

「先程言った特徴に加え、陽の当たるところでは日傘を差していたとのことから先日異変を起こされた吸血鬼なのかもしれませんわね。もしそうなら恐ろしいですわ......」

 

「本当に...... 人を襲わなければ良いのですが......」

 

 

 

 ......

 これってフラン様だよな。特徴がバッチリ同じだし

 にしても......

 

榛「(何が気色悪い羽だよ!全然気色悪くないよ!むしろ美しくて綺麗な翼だよ!それと恐ろしい?んなわけないだろ!可愛らしいの間違いなんじゃないか!?いや妖怪としてなら恐ろしいんだけどさ!)」

 

 これはもう怒れるね。というか既に小声で怒鳴ってるし

 幸いフードで遮られてるおかげで相手には聞こえてないけど

 

――まあまあ落ち着いて。君にとってはとても大切で可愛くて愛らしい主でも、ただの人間にとっては恐ろしい妖怪なんだから。それもつい最近異変を起こした吸血鬼なら尚更恐がるのも無理ないよ――

 

 そうだけど......

 まあ、フラン様の魅力は私や館の皆さんがよく分かってるからいいのかな

 

――いいんだよ。それより探そうか。悪魔の妹がいるのは間違いないみたいだからね――

 

 そうだな

 早いとこ見つけて話をしよう

 そのためにここまで来たんだから

 

 

 

〜少女捜索中〜

 

 

 

榛「駄目だ。情報が少なすぎる。どこにいるんだよフランさまぁ......」

 

 かれこれ一刻ほど歩いてみたが、見つけられずにいた

 いやまだ一刻しか経ってないけどね

 もう少し情報が欲しいところだ。こう、何処どこにいたとかそういった情報が......

 

 

 

村人「おい見たか?この人里に吸血鬼が来てるぞ」

 

村人「今時妖怪なんて人里にいてもおかしくないだろ」

 

村人「いやそうじゃなくてな。その吸血鬼、これがまた凄く可愛いんだ」

 

村人「へぇ。どれぐらいだ?」

 

村人「ほら、たまに人形劇をしに来る女がいるだろ?あの人形というかなんというか...... 西洋の人形並の可愛さなんだ」

 

村人「ほう。そんなに可愛いのか。一目見てみたいな」

 

村人「さっき中央広場に向かうのを見たんだ。もしかしたらそこにいるかと思うから行ってみようぜ」

 

村人「あぁそうだな!行ってみよう!」

 

 

 

 は?西洋の人形並?

 そんなもんじゃねぇだろ!

 もっとだよ!もっと!

 悪魔なのに天使ってくらいに可愛いんだよ!

 コアじゃないけどたまに見せる小悪魔みたいな可愛さもまたいいんだよ!

 それはもう全幻想郷に広めたいくらい可愛いんだよ!

 だがまあ可愛いと思っているなら良しとしよう

 さて、フラン様はどこだー?

 

――いやさっき男性が言ってたでしょ!中央広場だよ!広場!悪魔の妹の可愛さとかどれぐらいだとかに気を取られすぎてないの!――

 

 あ、あはは。すまんすまん

 とりあえず確証はないけど広場に行ってみるか

 

 

 

〜少女移動中〜

 

 

 

 大通りを抜け、辿りついたのは中央広場

 その名の通り人里の中央にある広場で、イベントなどの出し物のほとんどがここで行われる

 他にも中心には龍神像が祀ってあり、毎日里の住人の誰かしらが参拝しに来る。生きている者であれば誰であろうと龍神に感謝しているものだ

 私も昔、お母さんがまだ生きてた頃に何度も来て参拝していった。あの頃はまだ幼かったからなんで石像なんかにお辞儀しないといけないの?と思いつつ、お母さんの動きを見よう見まねでやっていたが、今なら理由が分かっているから参拝しに来る人たちの姿がおかしいとは思わなくなった

 それに龍神像には一つの大きな宝玉が飾られている。これはなんでも今後の天気を教えてくれる玉なんだとか

 言わば幻想郷の天気予報だな。それも結構正確な予報だ

 それを目当てに来る人も多い

 これはこれで龍神には感謝だね。明日の天気がわかるって結構良いよ。洗濯物を干す時とかにね

 いやぁ、感謝感謝。家に1台は欲しいかな

 でも私は雲の種類や空気の匂いでなんとなく分かるから別にいらないか

 

 なんて考えながら辺りを見渡してみた

 人が多いな......

 流石に夏祭りの時とかのように人で溢れかえっている訳では無いが、そこそこ人口率が高い

 特にイベントが無くても人が多い中見つけられるかな?

 

――彼女達は混じりっけなしの金髪なんだから、日本人の黒髪が多い中なら分かると思うよ。人間で金髪なのは君と白黒の魔法使いぐらいしか私は知らないからね。妖怪には様々な髪色をした者が多いから見つけにくいかもしれないけど......――

 

 それもそうか。此処は幻想郷とはいえ先祖は日本人で、その血が流れてるもんな

 黒髪が多い中なら分かりやすいだろう

 それこそ大豆の中から小豆を見つけるようなものだ

 

――その喩えは初めて聞いたけど......――

 

 そりゃそうだ。私が今つけたんだから

 

――そ、そう。まあその表現はあながち間違ってないからいいか――

 

 そゆこと。さ、どんどん雲行きが怪しくなってきたし、早いとこ見つけるか

 金髪紅白黒七色の宝石の翼を探せー!

 さっきの男性の話じゃ中央広場にいるって言ってたけど......

 

 

 

 

 

 適当に歩いていると、人混みの中から人と同じくらいか少し上くらいの高さに日傘を差す少女を見つけ出した

 傘で頭がよく見えないが、特徴的な翼に紅を基調とした服を着た少女。そして隣には白黒の服ととんがり帽子を被り、箒を担ぐ人間

 間違いない。フラン様に魔理沙姉だ!

 

榛「見つけたっ!フランさ――」

 

 

 

女「――きゃああ!泥棒!!」

 

?「どけ!邪魔だ!」

 

フ「え?キャッ!」

 

 

 

 私が大声でフラン様の名前を呼ぼうとすると、女の叫び声が聞こえた

 そう認識していると声の聞こえた方向から物凄い勢いで走っている男性がフラン様にぶつかりながら此方に向かって走ってくる

 フラン様は男性にぶつかった衝撃から倒れてしまい日に当たりそうになったが、魔理沙姉が急いで日傘を差したおかげで大丈夫そうだ

 そして此方に向かってくる男は右手に小刀が、反対の左手には盗んだ物が入っていると思われる袋を持っている

 

男「どけっ!さもなくば刺すぞ!」

 

 男はそう言いながら小刀片手に私に突進してきた

 なるほど、そうやって脅して道を譲らせ、里から逃げる。もしくは隠れようとしていたのか

 へぇ。普通の人間相手なら素直に道を譲ってただろうね

 ましてや私はあまり問題を起こしたくない。だから少し前までなら道を譲ってた

 でもね。フラン様を傷つけ、剣を手にしたこの男。ちょっと見逃せないかなぁ......

 男が物凄いスピードで近づいてる

 あと数メートル......

 

男「どけと言っているだろうッ!!」

 

 男が小刀を構え振り下ろそうとした

 ...はぁ、むり。少し暴れるわ

 

 ――プチンっ......

 

 

 

 

 

榛「......」

 

男「んなッ!?」

 

 私は左手で小刀を受け止め――

 

男「なにッ?!?!」

 

 そのまま男の腕をつかみ、手元に引き寄せながら身体を後ろに向け――

 

男「なッ......!?!?」

 

 ――前にぶん投げた

 所謂背負い投げというものだ

 

男「ガハッ......!」

 

 男は背中を地面に打ち付けられた衝撃で呼吸が出来ないようで、口を開いたままピクピクとしか動かなくなった

 

榛「......」

 

 私はそれを見ながら男の右手首を踏みつけ、小刀を奪い取る

 そしてその小刀を男の目に勢いよく振り下ろした

 

男「うわあああァァ!!」

 

村人「きゃあああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし私はそれを寸でで止めた

 

男「...ぅあ......ああっ...あっ......」

 

榛「どうした?怖いのか?」

 

男「...あっ......あぁ......」

 

榛「...チッ」

 

男「ヒッ......!」

 

 恐怖とさっきの衝撃でまともに話せなさそうだな

 ただの舌打ちだけで怯むってどれだけだよ

 全く、こちとらお前を殺さないよう心を制御してるってのに......

 

榛「おい。何故人に刃物を向けた?」

 

男「そ、そんなの脅しに決まって......!」

 

榛「脅しで剣を手に取っただと?ふざけるなッ!」

 

男「ヒィィ......」

 

榛「確かに脅しは刃物を用いる理由としては十分だろう...... しかしお前のやろうとしていたことはなんだッ!そんなことのために剣を手に取るなど......ましてや人に向けるなど愚の骨頂ッ!死んで詫びても許されぬものだッ!恥を知れッ!」

 

男「そ、そんなこと言ってもなぁ!お、俺にはもう生きる手立てがねぇんだよ!!僅かに残った物の中に小刀があった、だから俺はそれを使って生きようとしたッ!そんな俺のどこが間違っているというんだッ!!」

 

榛「確かにお前は剣があったからそれで生きようとしただけ。それは別に否定はしない。しかしッ!そのやり方は誰がどう言おうが間違っているッ!何故人のものを奪おうとする!?もし仮にその奪ったものが価値あるもので、売れば一生遊んで暮らせるものだったとしよう。お前はそれでいいのかもしれない。しかしそれを奪われてしまった人の気持ちはどうなるッ!?「あぁ盗まれてしまった。仕方ない、諦めるか」なんてなるとでも思うかッ!?それは断じて否ッ!物によってはそれで終わるだろう。しかしそれはあくまで物によるッ!もしそれが大切なものだったら、命にかえても守りたいものだったら...... その持ち主はどれだけの悲しみを背負って生きていくのか......どれだけの憎しみを背負って生きていくのか、お前はそれ考えないのかッ!?」

 

男「うるせぇ!そんなん俺の知ったことじゃねえよッ!だいたい盗まれる方も盗まれる方だッ!そんなに大事なら鍵でもした箱の中にでも入れておけッ!きちんと守らねえから奪われるんだろうがッ!」

 

榛「......ッッ!... そんな大切なものを守りたくても守れない。貴様はそんな人々がいることも分からないのかッ!!」

 

男「それこそ知らねえよッ!守れないならそれこそ盗まれたって仕方ねえよなぁッ!」

 

榛「ッ貴様はッッ!!――」

 

 

 

 

?「そこまでだっ!」

 

 

 

 

 

 私がもう少しで本気で刀を目に突き立てそうになっているところに制止の声がかかった

 チッ、まだ言いたいところがあったのに......

 

――落ち着いて。いつもの君らしくないよ。それにこんなことしに来たわけじゃないでしょ?――

 

 ...あぁそうだな。私としたことが頭に血が上ってたようだ

 

男「クソっ、よりにもよって慧音せんせーかよ......」

 

 そう男は声のした方向を見て悔しそうに呟いた

 ってえ?“慧音せんせー”......?

 男の言葉を聞いて思わず私も声のした方向を見るとそこには昔は見慣れていた顔がいた

 

慧「お前達、一体そこで何をしている!今すぐ両者とも離れろ!」

 

 あちゃぁ、慧音先生かぁ......

 流石に慧音先生の言うことは従わないといけない。じゃなきゃまたあのお仕置きが......

 あれはもう味わいたくないぜ...... 本気で天国の扉が見えそうになったんだから

 私が渋々男の上から退くと、慧音先生は堂々とした足取りでこちらに近づいてきた

 

男「くっそぉ...... こんなところで諦めてたまるかッ!!」

 

 男はそう叫び最初男が来た方向に向かって走って――

 

フ「きゃあ!」

 

男「ハッ!刀はひとつじゃねえんだよ!!」

 

慧「なっ!?お前何を!」

 

魔「お、おい!フランを離せ!」

 

 男はあろう事か事の成り行きを見ていたフラン様を捕まえ、懐に隠し持ってたのかもう一刀の小刀を首に構えた

 それに思わず魔理沙姉は男との距離を空け、身構えた

 幸いフラン様は日陰にいたおかげで捕まった拍子に日傘が落ちて日に当たるということはなかったが捕まってしまったことには変わりない

 

慧「何を馬鹿なことをやっている!その子は関係ないだろう!」

 

魔「そうだ!巫山戯たことしないでフランを離せ!」

 

男「馬鹿だと?巫山戯たことだと?なんとでもいえッ!こちとら命かかってんだよ!いいから道を開けろ!」

 

 男は怒鳴りながら小刀を首に近づける。恐怖のあまり手が小刻みに震えているのが見える。これでは手違いがあったらフラン様の大切な首に傷がついてしまうではないか。まあ吸血鬼だからすぐに治るんだろうけど

 ま、このまま見てるのは無理だな。主に私の精神状態的に

 仕方ない、やるか

 

榛「道を開ける必要は無い。慧音、魔理沙」

 

魔「はぁ!?お前なんで私たちの名を...... じゃなくて開ける必要は無いってどういうことだ!?」

 

慧「このままでは彼女が傷ついてしまうんだぞ!?」

 

榛「別にフラン様は傷つかないし、傷つかせない。本当なら指一本でも触れさせたくないんだがな」

 

 そういいながらゆっくりと男に近づく

 男は震えながらも声を張り上げた

 

男「お、おい!それ以上近づくな!この子供がどうなってもいいのか!?」

 

榛「とりあえず言うと、そのお方は子供ではなく立派な女性だし、どうなってもよくないから近づくんだけどな。まあこれは最初で最後の忠告だ。フラン様を離せ。さもなくば貴様の命は保証できかねん」

 

男「ハッ!この状態でお前に何が出来るってんだ!」

 

榛「そうだな...... 言ってもわからなそうだから実演してやろう。......フラン様、出来る限り動かないでくださいね」

 

フ「え?う、うん......」

 

男「な、何をするって言うん――」

 

榛「可愛らしいフラン様をその汚ねえ手でずっと触ってんじゃねえぞ溝鼠野郎がッ!!」

 

 その瞬間、私は全力で男との距離を縮めた

 そして男がそのことに戸惑ってる間に男の右手首を左手で叩き小刀を落とさせた

 

榛「フラン様ッ!しゃがんでッ!」

 

フ「う、うんっ!」

 

男「な、なにを!?」

 

 フラン様が素直にしゃがみ込んでくれた隙に懇親の一撃をッッ!

 

榛「ぶっ...飛べぇッ!」

 

男「グハッ!」

 

 男が大きく隙を見せたおかげで私の拳は男の顔面にクリーンヒット。そのまま数メートルくらい吹き飛ばされていった。

 よかった、他の人にはぶつかってないな。てかおいおい、私そんなに力入れたのか?まあフラン様を傷つけようとしてたんだからこのぐらい当然か。あぁでも咲夜さんに怒られそうだなぁ。従者ともあろう者が主を危険な目に合わせてしまったんだから。後で報告するのが怖いぜ...... ま、それはともかく......

 

榛「フラン様、お怪我はございませんか?」

 

フ「う、うん。大丈夫だよ」

 

榛「それなら良かったです。すみません、危険な目に合わせてしまって」

 

フ「...別に榛奈が謝る必要はないんだよ?」

 

榛「いえ、私の軽率な行動で彼の興奮を高め、フラン様を人質に取るという行動をさせてしまったのですから――ってえ?()()?」

 

 思わず普段通りに答えてしまったが、確かに今フラン様は私を“榛奈”だと言ったよな?

 あれ?なんでフラン様は私を榛奈だと見抜いたんだ?私ちゃんと変装してたよな?

 

フ「ふふっ。フード、脱げてるよ」

 

榛「え?あっ......」

 

 そう言われ頭に触れてみると、普段は帽子に隠されてるリボンで結ばれた二つの髪束が見えてることに気づいた。きっとさっきの一気に距離を詰めた時に脱げたのだろう。でも幸いなのかお面は外れてないから私だと分かる人は少ないはず...... とにかく被り直さないと

 そう思い被り直してる間に、完全に伸びている男を自警団と思われる男共がせっせと運んでいた。どこへ連れていくのか分からないが、とりあえずあの顔は暫く見たくない。そして忘れたい。だって覚えてるうちに見たら殴ると思う。確実に

 

魔「いやぁ、見事な拳だったな。凄いな、お前」

 

慧「本当に見事だったぞ。お前さんのおかげで被害が少なく済んだ。感謝する」

 

榛「え?あ、あはは......」

 

 あれ?もしかして気づいてるのフラン様だけ?

 魔理沙姉は私に対して“お前”だなんて何故か使わないし、慧音先生も“お前さん”って言ってるし......うん。バレたくない相手にバレてないならそれでいい。後はこの場を離脱出来れば......

 

――悪魔の妹に用があることも忘れないでよ?――

 

 あ、そうだった。さっきの怒りで忘れてたよ。フラン様に用があってここまで来たっていうのにこのまま別れたら水の泡じゃないか。危うい危うい......

 

魔「そういやお前は誰だ?私たちのことを知ってるみたいだし、フランのことを様付けで呼んでたが......」

 

慧「是非とも名前を聞かせてくれないか?」

 

榛「え!?え、えーと......」

 

 何で!?どうしてこうなった!?

 そして今更だけどいつの間にか変声魔法切れてるよ!普段通りの声だったよ!

 だからまあ今更男だと取り繕っても無駄なわけで......

 

フ「あれ?魔理沙、もしかして気づいてないの?この人ははる――」

 

榛「おーとフラン様。少しこちらに来てくださいますか?」

 

 思わずフラン様の口を手で塞いでしまったが、まあ許してください。じゃなきゃ死にます

 そして私はそのままフラン様を二人から離れたところに連れていった

 事情を説明しなければならないからね

 

フ「むごむご......」

 

榛「ん?あっとすみません」

 

 フラン様の口が動いたのを感じてすぐに手を離した

 

フ「ふぅ...全く、いきなり何するの!」

 

榛「えっと、少し耳を貸して頂けますか?」

 

フ「え?うん。いいけど......」

 

 フラン様が顔を寄せてくる。その時香ってきた紅茶の香りと可愛い顔にこんな状況ながらドキッとなるけど、そのことは顔に出しませんでした。ナイス、私の顔

 さて、ここからは小声だ

 

榛「(その、実はですね。私が榛奈だってことを言わないでほしいんですよ)」

 

フ「(え?なんで?)」

 

 私が小声になったことでフラン様も小声で話す

 

榛「(フラン様にはこうしてバレてしまいましたが、出来ればこの里の人間には私が榛奈だってこと......私が生きてるんだってことは知られたくないんです。特に里に顔が知れ渡ってる慧音先生とかには......)」

 

 慧音先生にバレたらなんて想像がつく。霧雨の家に連れてかされてお父さんに会うってのはやっぱ当然だろう。他にも知り合いとかに報告して、大騒ぎとかになるんだ。それはつまり昔の私を知ってる人たちと今の私が出会うってことであって、拒絶される可能性もないわけではないわけで......

 

フ「(それは分かったけど、“生きていることを知られたくない”ってどういうこと?)」

 

榛「(私って昔は何の力もない、そこらの子供と同じだと思われてたんです。そんな私が人里を出てから行方知れず。喰われて死んだと思われてもおかしくないんです。妖怪にとって人間の子供など格好の餌ですから。実際喰われるとは違いますが、美鈴に拾ってもらわなければそこら辺で野垂れ死んでたんですから)」

 

フ「(そうだったんだ......)」

 

榛「(ですから里では私は死んだと思われてて、もし生きてたってなると大騒ぎになると思うんです。それは嫌なので、私が榛奈だということは秘密にしておいてくださいね)」

 

フ「(分かった。でも魔理沙も口封じしないと生きてるのはバレちゃうよ?)」

 

榛「(まあその辺はまた後で。とりあえず私は一旦この場所を離れます。フラン様も魔理沙姉を連れてこの場所を離れてください。そして裏のうどん屋で待ち合わせしましょう)」

 

フ「(私そのうどん屋さんの場所知らないよ?)」

 

榛「(魔理沙姉に“ばあちゃんちのうどん屋”って言えば分かります。...そう言えばフラン様、この後予定はございますか?)」

 

フ「(うーん、人里を見て回る以外はないよ)」

 

榛「(でしたらそろそろお昼ですし、そこで昼食を取りながら話をしましょう。少し今回の件とは違う話が私からあるので)」

 

フ「(分かった。ところで今はどうやって抜けるの?)」

 

榛「(とりあえず「用事がある」と言えば解放してくれると思いますので試してみます)」

 

魔「おい、どうしたんだ?そんな隅でコソコソと......」

 

榛「あ、なんでもないぞ。ただちょっとな......」

 

魔「ふうん。まあいいか」

 

榛「それより私はこの後ちょっと用事があるんだ。だからこの辺で失礼するよ」

 

慧「あぁそれは済まなかったな。引き留めてしまって」

 

榛「いやいいさ。それじゃ私はこれで」

 

慧「今回は本当にありがとうな」

 

魔「私からも礼を言うぜ。フランを助けてくれてありがとう」

 

榛「おう。じゃあな」

 

 あー、ある意味じゃフラン様を助けたのって従者とか家族だとかの感情があったから礼を言われるとなんというか、こう...... 複雑な気持ちになるな......

 それはともかく私はここから逃げるんだぜ〜!

 そんなこんなで私は表向きはクールに、しかし心の中ではいつも通りな私のままその場を去った

 さて、すぐにフラン様と待ち合わせたあの場所に向かうか、少し寄り道するか...... どうしような

 

――なるべく寄り道せずに行ったら?君の実家?はここから近いけど......――

 

 いや、実家はまた今度機会があったらで。さっき慧音先生の前でバレてないか冷や冷やしたからもう十分だ

 

――そう、なら早めに待ち合わせ場所に向かおうよ――

 

 おう!そうだな!

 ここでまた問題起こしたら今度こそバレるかもしれないし、何も無いうちに先生や里の住人から離れたいしな

 よし、そうと決まればいざ!あの方が経営している裏にあるうどん屋へレッツゴー!

 

 

 

――...うどん......シンプルなかけうどん......卵の乗った月見うどん......辛いけどその辛さが美味しいカレーうどん......――

 

 や、やめて!そう言われると物凄く食べたくなるから!フラン様たちが来る前に我慢出来ずに食べてしまいそうになるから!

 

――......私も食べたい......――

 

 また今度!今度体を入れ替えて食べさせてあげるから私を誘惑しないでぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慧「...行ってしまわれたか...... 名前だけでも聞いておきたかったのだがな......」

 

魔「また今度聞けばいいじゃないか。幻想郷広しといえど人里はここにしかないからな。人里に居たってことは偶に人里へ来る人だろうし、また会えると思うぜ」

 

慧「それもそうだな。では私もこれで失礼するよ。先程の男をどうするか決めないといけないからな」

 

魔「そうか、慧音も大変だな」

 

慧「ははっ、これも人里の守護者としての仕事だからな。それにもう慣れたさ」

 

フ「お仕事頑張ってね!」

 

慧「ああ、ありがとう。そういえば君の名は......?」

 

フ「フランだよ。フランドール・スカーレット」

 

慧「フランだな。今回は里の揉め事に巻き込んでしまってすまなかった。里の代表として私から謝らせてもらう」

 

フ「ううん、大丈夫だよ。はる――じゃなくてあのフードの人に助けてもらったから」

 

慧「そう言ってくれると助かるよ。それと魔理沙、くれぐれも不健康な生活はするなよ。何か困ったらいつでも寺子屋に来ていいんだからな。それと親父さんのことも少しは気にかけて――」

 

魔「はいはいわかったわかった。私は大丈夫だから心配しなくてもいいぜ。それとあのジジイは私がいなくても平気だろ。むしろ私がいないほうがいいんじゃないか?」

 

慧「何を馬鹿なことを言う。あの人もあの人なりにな――」

 

魔「はいはい説教は勘弁だぜ。それじゃ私達も人里観光の続きをするからまたな。フラン、行くぞ」

 

フ「え?う、うん......」

 

慧「全く...... ああそうだフラン。フランもいつでも寺子屋に来てもいいからな」

 

フ「うん!また今度行くよ!それじゃあね!」

 

慧「ああ、またな」

 

 

 

 

 

慧「しかし“スカーレット”か...... どこかで聞いたことある名だな......確か天狗の新聞に載ってたような......っもしかして紅魔館の吸血鬼かっ!?」

 

 

 

 

 

魔「さて、問題はあったが広場はあらかた見たな。フラン、次はどこを見てみたいんだ?」

 

フ「あ、その前に魔理沙。少しいいかな?」

 

魔「どうしたんだ?」

 

フ「“ばあちゃんちのうどん屋”って分かる?」

 

魔「......どういう意味だ?」

 

フ「えっと、さっきの人が魔理沙にそう言えば裏にあるうどん屋さんの場所がわかるって」

 

魔「裏にあるばあちゃん家のうどん屋といえば私と榛奈がよく行ってたところしか知らないが......」

 

フ「あ、うん!そこだよ!そこで待ち合わせたの!だから行こ!」

 

魔「...しかしさっきのやつは何で私達の名前を知ってたり、あの店を私が知ってると知ってるんだ......?」

 

フ「そ、その辺も会えば分かるよ!だから行こう!」

 

魔「あ、ああ。何をそんなに焦ってるのか分からんがとりあえず行ってみるか」

 

フ「うん!」




後書き〜

皆さん。どんなことがあっても泥棒ダメ、絶対
魔理沙?榛奈さんのとこの魔理沙は泥棒はしてません。借りてるだけ借りてるだけ
まあ死んだら返すって泥棒と同じような気もしますがね。気にしない気にしない

さて、最近急激に寒くなりましたね。皆さん体調にはお気をつけて。昼間が暑くても夜は寒いですからね。上着を忘れずに
そのまま次回予告。榛奈さん、うどん屋にてフラン達と合流。その時また一波乱が......?
次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第35話『お久しぶりです、ばあちゃん』

前書き~

すみませんでしたァァ!
そう、思えば前回投稿したのは何時だったか......
お久しぶりの方は絶対話を覚えてない人が多いでしょう。いや多いに決まってる。むしろ覚えててくれた人がいたならば私は感激し、感謝しまくるでしょう。ありがとうございますっっ!

というわけで少し前回のあらすじを

前回、変装して人里に入った榛奈さん。目的をこなすためフラン(とついでに魔理沙)を探すと、広場で二人を発見。声をかけようとした瞬間、泥棒騒ぎに遭ってしまいましたが、無事榛奈さんが事を収めました。しかしその拍子にフランに変装を見破られてしまいましたが、何とか他の人にバレることはありませんでした。榛奈さんはフランと「裏にあるうどん屋さん」で待ち合わせと言うと、その場を去りました。

今回は、榛奈さんがうどん屋さんに入る話です。
是非今回もゆっくりしていってね!


[人里 裏道]

 

 

 ここは人里の表通りから隠れた裏道。ここは人通りが少なく、いたとしても怪しい人ばかり

 そんな怪しい人の中に今は私も含まれてるんだと思うと今すぐこの身に纏ってるフードを脱ぎ捨てたいところだが、そんなことをすれば折角ここまでバレずに来たのが水の泡になってしまうので我慢する

 それはともかく私は今、とある目的地、フラン様たちとの待ち合わせの場所として指定した場所に向かって歩いている。自分から約束を取り付けたからには待たせるわけにはいかないのだ。そうじゃなくても従者たるもの主人を待たせてはいけない。それは咲夜さんからみっちり教え込まれた。ただまあ咲夜さんの場合、能力があるからこそ主人を待たせることが少ないんだけどね

 ...と、段々と美味しそうな匂いが漂ってきたな。出汁の匂いだ。あぁこれを嗅ぐとお腹が......

 

 ぎゅるるぅぅ......

 

榛「......腹減った......」

 

 うん。仕方ないね。だってお日様はもう天高く登ってるはずだもん。雲に隠れちゃってるけど、そこまで雲は厚くないから大まかに場所がわかるし

 まあ腹が減ったところで私はフラン様たちが来るまで我慢するしかないんだが、そこは気合いで乗り切るのだ

 

 なんて心の中で思ってる間にとうちゃーく。人里の裏道の寂れたところにあり、尚且つ人の目に付きにくい場所。そんな場所にある一軒のうどん屋さん

 昔お母さんが生きてた頃、よくこのお店には、いやお店の店主であるお婆ちゃんにお世話になってたなぁ。よくお父さんと喧嘩した魔理沙姉を連れてここで落ち着かせてたっけ。それに裏道とはいえ家からさほど遠くはなかったから立ち寄りやすかったんだよな。私自身うどんが好物だったのもあってお小遣い片手によく来てうどんを食べていったっけ

 いやはやあれから数年。昔よりボロくなったように見えるけど、この匂いは健在。ということはつまり......

 

 ガララララ......

 

榛「...こんにちはー......」

 

?「おやいらっしゃい。これはまた怪しげな人が来たねぇ」

 

 店の中には一人の老人、私や魔理沙姉が昔お世話になった『ばあちゃん』が変わらずにいた

 いや、昔より老けたか?元気そうなのは変わらないんだが......

 

ばあちゃん「どうしたの?扉の前に突っ立ってて。好きな席に座っていいわよ。今日はまだ誰も来てなかったからねぇ」

 

 まってばあちゃん!?誰もってそれでよくこの店を保ってられるね!?

 いや昔も私達以外の客と会うことがレアだったけどね、今でもそうだと流石にどうやって食べていってるのか心配になるよ?

 

 まあそんなこと心の中で言っててもしょうがないので適当に選んだ席に座った。ばあちゃんはお茶を持ってくるのか奥に行ってしまってこの場には私しかいない

 ...うん。暇だ

 お品書きでも見て食べるものを決めてもいいけど内容はほぼ覚えてるし、既に決まってるし、そもそもフラン様たちが来るまでじっと待っていないといけないし

 ......早く二人とも来ないかなぁ。お腹すいたぜ......

 

ばあちゃん「...はい、おまたせ。緑茶よ。温かいのでよかったわね?」

 

 考え事をしていたら奥に行ったばあちゃんがお盆に湯呑みを乗せて戻ってきて、机のうえに置いてくれた。見るからに湯気が出ていることから温かいことがわかる。うんうん。ばあちゃんよく分かってるねぇ

 お茶はお茶でも紅茶や麦茶、烏龍茶は冷たいのでもいいけど緑茶は温かいのじゃなきゃ私は好きになれないからね

 

榛「はい。夏でも秋になりそうな日でも緑茶は温かいのが一番ですからね」

 

 飲めるようにお面を少し上にずらしてっと

 ズズッ......

 

榛「...ふぅ......」

 

 いやぁ、今日もお茶がうまい!

 

ばあちゃん「それで注文は決まったかしら?」

 

榛「いえ、あの......実は私、ある人達と待ち合わせをしていまして......注文はまだ......」

 

ばあちゃん「そう、それじゃあその時また呼んでちょうだい。私はそれまで奥に行ってるからね」

 

 ばあちゃんはそう言うとまた奥に行ってしまい、また私一人だけになってしまった

 そうなると暇になってしまう。手元に暇を潰せるものがないから余計にだ

 フラン様達、早く来ないかなぁ......

 

 ズズゥ......

 

榛「...ふぅ......」

 

 何か起こらないかなぁ......

 

――そう何度も事件が起こられても困るけどね。特に里側としてはね――

 

 そりゃそうだけど、二人が来るまで暇なんだよ

 暇つぶしくらい持ってくればよかったな

 

――そういえばあの本は?今日は持ってきてないの?――

 

 『変守録』のことか?

 あれは鍵付きの引き出しの中だ。特に持ち歩こうと思うようなものでもないからな

 

――どうせ君のポケットはなんでも入るんだから入れておけばよかったのに――

 

 だが今は何かに集中するようなのはダメだからな。持ってこなくてもよかっただろ

 

――あぁ、君は確か集中し過ぎると周りが見えなくなるんだっけ?――

 

 まあ周りが見えなくなるとは違うと思うけど、そんな感じかな。前にあの本を書いてた時もコアが来ても気づかなかったし

 

――集中するのも程々にね――

 

 おう

 

榛「...ふわぁ......」

 

 にしてもこうも暇だと眠くなるなぁ......

 

――なら寝たらどう?――

 

 でもいざ二人が来た時に起きてなきゃダメだし......

 

――目を閉じてるくらいは大丈夫だよ。なんなら来たら起こそうか?――

 

 いやお前がどうやって起こすんだよ

 

――その辺は気にせずに――

 

 まあ目を瞑ってるだけならいっか......

 おや......す...み......

 

――あ、寝るのね――

 

 

 そんなやつの言葉を片隅に聞きながら私は意識を手放した。お腹空いたままだから食べ物系の夢が見れたりするのかなぁ......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________

 

 ??said

 

 [???]

 

 

 ...ここはどこ?

 あれ?前にも同じことがあったような......

 

?「どうしたんだぜ?ぼーっとして」

 

私「...なんでもないよ」

 

 そう私?は目の前の幼い少女に答えた

 その下を見れば料理がある。私?は食事中だったのか

 左手に持った箸で右手に持つ茶碗の御飯の一部を口に運び、咀嚼した

 もぐもぐ......美味い

 普通に美味しいな。ただのお米のはずなのに......

 

?「...変なのっ。んでかあさん。そろそろ私に魔法を教えて欲しいんだぜ!」

 

私「今は食事中。また今度ね」

 

?「それ前にも言った〜。どーして私に魔法を教えてくれないんだぜ?...もしかして実は魔法なんて使えなかったりするのか......?」

 

私「私、これでも上級魔法使いだよ?取り乱してる時だったらまだしも、通常時に魔法が使えないわけないでしょ」

 

 と言いながら川魚の身をほぐし、御飯と共に口に運ぶ

 うんうん。この魚、塩加減が絶妙で米によく合う。これを作ったやつはどんな人なのだろうか。きっと素敵な人だろうな......

 

 

 

 って何私はこの光景に馴染んでるんだよ......

 ようやく思い出してきたが、これって前に見た夢と同じようなものなのか?

 この少女......いや幼女は見たことない......いやある?ない?......いやどっちでもいい!

 ともかくここは何処だ!?この私がいる視点の人物は誰だ!?目の前の幼女は!?この料理作ったやつは!?

 疑問が湧き水どころか間欠泉並に湧いてくるぞ!

 誰か答えとおかわりをくれぇ!

 

 

 

?「じゃあなんで教えてくれないんだぜ〜......」

 

私「そりゃ私はまだ君から魔法を教えてもらいたい理由を聞いてないからね」

 

?「だから前にも言っただろ?私は人里の外で暮らすために力が必要なんだ。その為に魔法がいるんだ!」

 

私「それは私が聞きたい理由じゃない。それに力が必要なだけなら人里で身体を鍛えるとか霊力を扱えるようにするとか色々とね?霊力は人によって武器にできるぐらいある人とない人とあるからそこは運だけど」

 

?「それじゃダメなんだ!体を鍛えたって意味は無いし、霊力なんて私にはあるわけない!とにかく人里の外で力を付けたいんだよ!」

 

私「ふぅん。...あ、ほら。魚の一番美味しいって言われてる部分。はい、あーん」

 

?「は?え?あ、あーん......」

 

 夢中で魚を食べていると魚の脂身が出てきた。それを私は箸で纏めて掴み、幼女の口に入れようとする。幼女も素直に口を開けてくれたおかげで脂身は幼女の口の中に入っていった

 幼女はそれの味を確かめるみたいに慎重そうに咀嚼しているんだけど......別に気軽に食べてくれてもいいんだけどな......

 

?「もぐもぐ......うん、美味しいんだが......」

 

 なんだかちょっと不服そうな顔をしてるけど美味しいというお言葉をいただきました。うん、美味しいよね。素直でよろしい

 

私「とにかく今は教えられないよ。君から理由を聞いてないのもそうだけど、君のことをまだハクタクに言ってないし、これから君を預かることも言ってない。君の衣類や生活用品も無いし、此処(博麗神社)で暮らすならそれなりの準備や許可がいるわけでね。そんなわけでしばらくはそれらの準備だよ」

 

?「えぇ...... 私は今すぐ教えて欲しいんだぜ!!」

 

 幼女はその言葉と共に勢いよく机に手をつき身を乗り出した。そのせいで机に乗っていたものが跳ねたり湯のみが傾いたりするが零れるような気配はないから大丈夫だ

 

私「無理なものは無理だよ。諦めて」

 

?「嫌だ!今すぐ教えろ!」

 

私「......」

 

?「おい!」

 

私「...はぁ......」

 

 全く......

 相手は幼女とはいえ食事中くらい静かに食べれないのか?

 ましてや机を叩くなんて......

 ここは一つ礼儀というものを教えてやるか

 

私「ねえ?君は確か私に魔法を教わりに来たんだよね?」

 

?「ああ、だからそう言って――」

 

私「それなのにその態度は何?」

 

?「――え?」

 

 幼女は私が纏う雰囲気が変わってることに気づいたのか、ハッとした表情になった。が、もう時すでに遅し

 

私「君は私に教えを乞うために来てるんだよ?それは私に得なんてない。なんなら教えなくても私は損をしないし、むしろ君に教えてる時の時間を私は損してる。だってわざわざ君のために私の時間をあげるんだからね?それで実らなかったら余計に損でしょ?だっていうのに君のその態度は?なんで偉そうに「教えろ」?身の程知らずにも程があるよ。そんな態度ならこの話はお終い。私は君に何一つ教えようとは思わないよ」

 

?「なっ!?は、話が違うぜ!!」

 

私「違うって何が?別に約束した覚えは無いよ?だいたい君は私に教えてもらう立場なんだよ?なのにそれ相応の態度もできないクソ餓鬼なの?」

 

?「う、うぅ......」

 

私「私に教えてもらいたいなら、自分の立場を自覚し、それ相応の態度で示しなさい。君が本当に強くなりたいならね」

 

?「ぅ......」

 

 どうやら叱ったのが効いたのか大人しく座って顔を下に向けてしまった。でも実際態度がなってなかったのは事実。私は間違ったことを言ったつもりはない。これで彼女が此処を立ち去るというなら私は人里まで送ってあげようと思う

 魔法というのは簡単そうで実は複雑。扱うだけでも難しいのだ。それを簡単に教えてもらえると思ってるだけでも頭の中お花畑なのに、扱うことが出来ると簡単に思ってるなんて夢の見すぎだ

 だから私は簡単には教えてあげない。谷で例えるなら、何度落としても這い上がって来る根性がないなら教えない

 逆に言えばそんな根性があるなら教えてあげようかな。私自身も誰かに教わって魔法を得たから、彼女の魔法が使えるようになりたいと思う気持ちは少しならなんとなく分かるからね

 

 そう考えながら、()は彼女の答えを待った――――




後書き〜

次に投稿できるのはいつなのか......
更には本編を更新するのか、番外編でも出すのか......
というか最後の方の話は何なのか......
最近になってようやく榛奈さんの髪型をツーサイドアップと呼ぶことを知った私ですが、頑張ります。
大丈夫、小説アカのTwitterが更新されてたりする限り、失踪はしません。絶対に

次回、どっちを投稿しよう......
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第36話『あいつの正体はなんだ?』

前書き~

お久しぶりです。毎回同じこと言ってる気がしますほのりんです。
いえ、別に活動が疎かになっていたわけじゃないですよ?地味にもう一つの小説で月一投稿はできていますから......
え?毎週投稿しろと?無理無理、あれができるのは時間があるのとモチベ上がってるのと文章を書くのが得意な人だけです。私はマイペースに行きましょう。
さて、前回のあらすじ...はないです。前話見てください。

それでは今回もゆっくりしていってね!!



 中央広場での一件の後、あの変なフードを被ったやつがあの場から離れたあと、私たちも慧音と少し話してから別れ、表とは反対の裏道に来ていた。何故こんな場所に来ているのか、それは今私の後ろを付いてきている吸血鬼――フランが言い出したのがきっかけだ

 なんでも、あの変なやつと二人でコソコソと話したとき何か言われたらしく、そいつの指示で裏道にある“ばあちゃんちのうどん屋”に向かっているところだ

 

魔「なあフラン。いい加減教えてくれないか?どうしてそいつはあのうどん屋に来いって言ったんだ?」

 

フ「そ、それは多分着いたら分かるから。とにかく行こ?」

 

魔「...はぁ......」

 

 さっきからフランに何度もあの場所に向かう理由を訊いてるが、何度訊いても「着いたらわかる」としか言わない。答える時の様子からするに恐らく理由を知ってるんだろうけど頑なにそれを言わない

 そんなフランも変だが、私の中にはもっと引っかかるものがあった

 さっきの変なやつがフランを助けたとき、そいつのフードが少しの間取れたんだ。そしてそのフードの下に隠されていたあの金髪、そしてあの二つ結びにそれを止めるリボン。何処かで見たことある気がするんだが、何処なのか思い出せない......

 つい最近見かけて、更にはよく見る髪だった気がするんだが......

 

フ「...ねぇ魔理沙。この美味しそうな匂いは何?」

 

魔「...ん?匂いか?......あぁ出汁か」

 

 フランにそう訊かれて一旦考えをやめ周囲の匂いに意識を向けると、確かに美味しそうな匂いがする。昔はよく嗅いだこの匂い、嗅ぐと思わずうどんが食べたくなるんだよなぁ......

 

フ「ダシ?」

 

魔「この匂いはうどんに使われてる出汁の匂いだぜ。出汁の匂いがしてきたってことはつまりうどん屋に近づいてきたってことだな」

 

フ「そっか、これがうどんに使われてるスープの匂いなんだね......」

 

魔「なんだフラン。うどん食べたことないのか?」

 

フ「うん。榛奈から少しだけ聞いてたことあるけど、食べたことは無いよ。咲夜も料理自体は知ってるんだろうけどレシピは知らないだろうし。お姉様は知ってるかどうか知らないし」

 

魔「レミリアはともかく、あの何でもできそうな咲夜がレシピをしらないのか?...あぁいや、うどんとかなら有り得るか」

 

 そもそもコイツらは幻想郷よりもっと遠くの“西洋”ってとこから来たらしいからな。そこは外の世界ってのもあるが、幻想郷と文化や使われてる言語が全くと言っていいほど違うらしい。よく紅魔館で飯を食わせてもらってるが幻想郷じゃあまり、もしくは全くお目にかかれなさそうな料理がたくさん出てきた。もしかしたら向こうじゃうどんという料理は無いのかもしれないな

 

フ「うん。訊いたことはないけどね」

 

魔「ならこれが初めてのうどんになるんだな」

 

フ「うん!実は榛奈に話を聞いてからずっと食べてみたかったんだ♪話を聞いたころはまだ私館を出れなかったし、榛奈も作り方は知らなかったから食べれなかったけどようやく食べれるよ♪」

 

魔「そうかそうか。それなら言っとくが、ばあちゃんの作るうどんはそんじょそこらじゃ食べれないような美味しさだぜ。それを食べると他のうどんが食べれなくなるほどにな」

 

フ「えっ!?そんなに美味しいの!?」

 

魔「おう。だから覚悟しとけよ?本当に物凄く美味しいんだからな」

 

フ「うん!楽しみだなぁ♪」

 

 ま、何にしてもばあちゃんのうどんを久しぶりに食べれるならいいか

 

 

 

魔「さ、着いたぜフラン。ここがばあちゃんちのうどん屋だ」

 

フ「え?でもお店みたいには見えないよ?“ノレン”っていうのも扉の前に掛かってないし、看板も無いし......」

 

魔「あぁ、ばあちゃん曰く「隠れ屋的でかっこいいでしょう?それに金儲けのためにやってるわけではないからねぇ」だそうだ。おかげでたまに来る客は大体常連だとかな」

 

フ「ふぅん。確かにこの中からスープの匂いがするけど......やっぱり普通の民家にしか見えないね」

 

魔「ならやめるか?」

 

フ「え!?いや止めないよ!だって待たせちゃってるんだもん!」

 

魔「“待たせる”?...あぁ、そういや待ち合わせがどうこう言ってたな」

 

フ「う、うん。だから入ろっ?ね?」

 

魔「あ、あぁ分かったが......」

 

 やっぱり訳がわかんないな。ま、入ればわかるらしいし、入るだけ入るか

 

 ガララララ......

 

魔「こんちわー、きてやったぜー」

 

フ「こんにちはー......」

 

 シ-ン......

 

 挨拶をしながら扉を潜れば見慣れた机や椅子。奥へ繋がる通路、シンプルで簡素な見慣れた店内が広がっていた。しかしその店の主からの返事は返ってこない。奥にでも引っ込んでるのか?ばあちゃんもいい歳だから耳が遠くなってるのかもな

 

フ「えーと、あっ!魔理沙、いたよ」

 

魔「ん?」

 

 そう言われてフランの見ていた方向を見ると、そこには机に伏せた黒い物体がいた。というか黒いフードを被った人物がいた。どうやら寝てるのか背中が規則正しく上下している。他に客もいないし、もしかしなくてもこいつ、さっきのフードの変なやつだな

 しかし待ち合わせで寝てるとは。よほど疲れてるのか、或いは寝るのが好きなのか......

 後者だな。多分

 それはともかく、こいつを起こさないことには始まらないな。って思ってたらフランがそいつの元に駆け寄って、肩を揺さぶっていた

 

フ「ねえ、起きて。ほら、起きてってば」

 

?「ぅ...ぅぅん?...あぁフラン様、おそよう......」

 

フ「うん、おはよ――っておそよう!?おはようじゃないの!?」

 

?「だってお昼だから...そういうには遅い......すぅ......」

 

フ「あぁ確かに...って言ってるそばから寝ないでよ!ほら起きて!魔理沙も連れてきたんだから!」

 

?「ん...うん......起きる......」

 

フ「ふぅ、よかった」

 

 なんともまあ傍から見たら漫才をしてるようにしか見えない光景だが、それより驚いたのが奴が面を着けたまま寝てたことだな。外せばいいのによ

 ともかく起きたってことで何でここに呼び出したのか聞くとしようか

 

魔「よお、さっきぶりだぜ」

 

?「あー...うん。さっきぶり...だったっけ......ついさっき神社で会った気がする......」

 

魔「...お前まだ寝ぼけてるのか?」

 

?「うん...かも......少し変な夢見た......」

 

フ「どんな?」

 

?「......なんだっけ。わすれた」

 

魔「なんだそれ......」

 

フ「あ、あはは......」

 

?「いいにおい......ここどこ?」

 

魔「ここは裏道にあるうどん屋...ってお前が呼び出したんだろ?」

 

?「あー、そうだったっけ」

 

 と言いつつ眠そうな雰囲気を出している変な奴。私とフランが机を挟んでやつの向かいの席に座ろうとしている間に、机に置いてあった湯呑の茶を面をずらして飲み干すと、ようやく起きたみたいだ

 

?「あーうん。思い出した。そうそう、私が二人を呼んだんだった。とりあえずばあちゃんを呼ぶ?」

 

魔「そうだな。じゃなきゃ注文もできん」

 

?「分かった。ばあちゃーん!!」

 

 そう奴は大きな声でばあちゃんを呼んだ。そうじゃないと来ないからだ

 まずこの店はよく店の者が店内にいない。というか店員が店主であるばあちゃんだけだ。で、そのばあちゃんはお客がいようといまいと奥によくいる。例外は客と話している時くらいだ。だから用がある時だけいなかったら大きな声で呼ぶ。それがこの店なんだ

 それだと商売する気あるのかと聞きたくなるが、本人はそんな気さらさらないらしい。店がある場所や外見的にもその様子がひしひしと伝わってくる。普通に暮らしていたらこの店の存在自体知らないだろう。なのになんで私や榛奈がこの店を知ってるかというと、母様がばあちゃんの知り合いで、母様が生きていたころはよく来ていたからだ

 と考えていると、奥からこの店の店主であるばあちゃんがようやく出てきた

 

ばあちゃん「はいはい。おや舞理沙。それに可愛らしい妖怪さんも。こんにちは」

 

魔「おう、久しぶりだぜ」

 

フ「こ、こんにちは......」

 

 フランはそう言いながら私の陰に隠れた。これが今日分かったことなんだが、フランはどうやら人見知りをするらしい。里の中を歩いてるといろんな人に声をかけられたが、大体は私の後ろに隠れていた。どうも長い間紅魔館の住人と、時々来る“食材”としか話したことがなかったらしい。まあ食材ってのはアレなんだがな......

 それで初対面の人と接するのが少し緊張するらしい。私が初めて会ったときはそんな様子全く見なかったけどな。目の前の変な奴に対しても......ってそういやフランとこいつは知り合いみたいだから初対面じゃないか

 

ばあちゃん「あら大丈夫?もしかして人見知りだったりするの?」

 

魔「あ~、そうみたいだな。里で話しかけられたりしたが私のそばに隠れてな......」

 

ばあちゃん「あらあら、それって昔の榛奈みたいね」

 

フ「え?榛奈も人見知りしてたの?」

 

魔「ん?まあ、ある意味人見知りしてたな。特定条件下だったが」

 

 榛奈のあれは人見知りというか男性恐怖症だったからな。ちょっと違うが、まあ似たようなものだと思ってもいいだろう

 

ばあちゃん「今はどうなのかしらね?」

 

 そうばあちゃんは首を傾げた。ってん?今一瞬ばあちゃんの目が変な奴に向いたような......気のせいか

 

魔「さあな。この間榛奈の部屋に勝手に入ってたやつとは普通に話してたみたいだが......」

 

ばあちゃん「勝手って......榛奈は一体今どんな生活してるのよ......この間配られてた天狗の新聞にも載ってたし」

 

?「......!?」

 

魔「あー、この間の異変だろ?あんなのいつの間に撮ってたんだろうな」

 

フ「え?新聞に載ってたの?私見たことないから見てみたい」

 

魔「そう言われても私は香霖に見せてもらっただけだからな......」

 

ばあちゃん「それなら私が持ってるわよ。今飲み物と一緒に持ってくるわね」

 

フ「う、うん。お願いします......」

 

 そう言ってばあちゃんは奥へ行ってしまった。その間食べるものでも決めとくか?

 

?「フラン様。その間に注文を決めますか?」

 

フ「うん。そうしようかな」

 

?「ではこちら、この店の品書きです」

 

 フランはそれを礼を言いながら受け取ると表を見始めた。私は私で頼むものは決まってるから別に見る必要はないんだが、それは目の前のこいつも同じようだ。これは既に決めてあるのか、あるいは食べないのか。訊いてみるか

 

魔「なあ、お前は品書き見なくていいのか?」

 

?「うん。もう決めてあるから。そういう貴女は?」

 

魔「私も決めてあるからな」

 

?「ふーん」

 

 自分から訊いておいて素っ気ない返事だな。表情もお面で隠れてて見えないから何考えてるか分からないし。というかそれで思い出したが、どうやってお面付けたまま食べるんだろうな。さっきお茶を飲むときはずらしてたけど

 

フ「...ねえ、この“きつねうどん”とか“月見うどん”ってなあに?」

 

?「きつねはうどんの上に油揚げが。月見は卵が乗ってるものですよ」

 

フ「じゃあこの釜揚げは?」

 

?「茹でた麺を茹でた時のお湯と一緒に器に入れて持ってくる料理ですよ。食べ方はざると同じですね」

 

フ「へえ、色んな種類があるんだね」

 

?「一言でうどんと言っても他の料理と同じで様々な食べ方がありますからね。麺の名前も形も様々なものがありますし。カレーをかけて食べたり、麺が細く長くなかったり、地域によって出汁の取り方が違ったり......」

 

フ「深いね......」

 

?「どんなものでも大抵深いものですよ」

 

フ「だね......」

 

魔「いや注文決めるだけでそんな深い話してるなよ」

 

 どうして「何を食べるか」の話から「うどんの食べ方や麺の種類」とかになってるんだぜ......

 

フ「じゃあ魔理沙。オススメを教えてよ。私それ頼むからさ」

 

魔「オススメか......フランはうどん自体食べるの初めてだし、最初は冒険せずにシンプルな『かけ』か『ざる』じゃないか?」

 

?「単に温かいか冷たいかの違いだよね。それでもつゆで味が違うんだけど」

 

フ「えぇ、どうしよう......」

 

 まあ悩むよな。初めて食べるものだと余計に。どうするかな

 

ばあちゃん「ならそれぞれ半分ずつ頼む?それなら両方味わえるわよ」

 

フ「え?」

 

 そう言って現れたのは奥に行っていたばあちゃん。手にはコップが二つと折りたたまれた紙が乗っている盆を持っていた

 

ばあちゃん「ごめんなさいね。ちょっと新聞を探してたら遅くなっちゃったわ」

 

魔「別に待ってないから大丈夫だぜ」

 

ばあちゃん「あらそう?じゃ舞理沙にはお茶要らないわね。舞理沙の分はお面の子にあげようかしら」

 

魔「冗談だぜ。だから私にもください」

 

ばあちゃん「はいはい。どうぞ。お嬢ちゃんもね」

 

フ「ありがとうございます......って“お嬢ちゃん”?」

 

ばあちゃん「ええ。はい、あなたにもおかわりね」

 

?「ありがとうございます」

 

ばあちゃん「どういたしまして。それでさっきの続きだけど、そんなに悩むなら二つ味わってみればいいわ」

 

フ「え?でもいいんですか......?」

 

ばあちゃん「こっちから言ってるのだからいいの。どうせ一玉分を湯がいた後、半分に分けてそれぞれ用意するだけなんだから。それにさっきから話を聞いてればあなた、うどんを初めて食べるのでしょう?なら料理を作る身としては色んな味を楽しんでもらいたいのよ」

 

フ「そうですか......ありがとうございます!じゃあかけとざるを半分ずつおねがいします」

 

ばあちゃん「畏まりました。舞理沙やあなたはいつものかしら?」

 

魔「ああ。いつもので頼むぜ」

 

?「...はい、それで」

 

ばあちゃん「分かったわ。それじゃ作ってる間、新聞でも読みながら待っててね」

 

 そう言ってばあちゃんは再び奥へ引っ込んだ。しばらくすれば調理の音や出汁の匂いが強まるだろう。それまでさっきばあちゃんが持ってきた新聞やこの目の前の奴について調べとくか

 

フ「えっと、『幻想郷を覆う謎の紅い霧』って書いてあるね」

 

?「へえ、いつの間に撮ったのかって思うような写真も載ってますね」

 

魔「まあその記事書いてるのって鴉天狗だからな。その程度の盗撮なんて簡単なんだろ」

 

 私もいつの間に撮ったんだって思うような写真を載せられることがある。まだ本人には会ったことがないが、いつか見つけ出して殴ってやりたいぜ

 

?(この写真...私の写真を無断で載せるとか許可取れってんだ。くそっ、あの天狗今度会ったら一発殴ってやる)

 

魔「ん?お前何か言ったか?」

 

?「いや、何でもない。ただちょっとこの新聞に対して少しね......」

 

魔「そうか......」

 

フ「あっ、この写真榛奈が霧を晴らした時だ。えっと、『紅霧異変、解決したのは巫女ではなく白い魔法使い!?』って」

 

?「はぁ!?」

 

魔「なっ、どうしたんだよ。いきなり......」

 

 

 

?「いやだって!異変解決したのは霊夢と魔理沙姉でしょ!?この白い魔法使いって写真的にも見た目的にも私だろうし!私はレミリア様側の人間だっての!なのにこの見出しって......二人に失礼にもほどがあるよ!!」

 

 

 

魔「ぇ......」

 

?「......あっ」

 

フ「......あはは......」

 

 え、こいつ今“魔理沙姉”って......それに白い魔法使いにレミリア側の人間って......

 驚いて前にいる奴をじっと見れば「まずった」と固まって、横を向けばフランが苦笑いをしていた。ってことはそういうことで?

 私だって別に察しが悪いわけじゃない。そりゃこの店に来てから何となく似てるとは思っていた。フランとのやり取りとかを見てると余計にだ。声だって聞き覚えがあるんだから。でも目の前にいる奴はさっき広場にいたやつと同じ人なわけで、この目の前にいる奴があいつだとすればさっき広場にいたやつもあいつなわけで......

 ただただ目の前に突き付けられた衝撃の事実に驚きながらも私が出せた言葉ってのは何とも情けない言葉だった

 

魔「......もしかしてお前...榛奈なのか......?」

 

榛「あ、あはは......」

 

 榛奈はまるで久しぶりに会ったあの日みたいに、でもあの時と違ってお面の下で苦笑いをしていた




後書き~

もしかしたら最後のやつはあと一回ぐらい使うかもしれない......
ともかく次回はどれぐらいで出来るかな。

次回、魔理沙と榛奈、ときどきばあちゃん?
次回もゆっくりしていってね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第37話『まさかこいつの正体があいつだとは......』

前書き~

あのですね、小説って一度スランプに陥ったり、続きが書けなくなったりすると、長い期間書けなくなるんですよ。でもその代わり復活できると、その後が早い早い。またつまずくまで結構時間がかからないんです。おかげさまでストックが出来ました。多分月一が可能になるかな

前回、フードのお面野郎の正体に気づいた魔理沙。というか正体がバレてしまった榛奈さん。どんなふうに接していくのでしょうか。そして榛奈さんの目的は達成できるのでしょうか
そんなことよりおうどんたべたい。

今回もゆっくりしていってね!!


 私の体は驚きで固まった。そんな中で頭に浮かんだのは、さっきの広場での出来事。私とフランが人里を見て回っていると女性の叫び声が聞こえて、男がこちらに走ってきてぶつかって、その衝撃でフランが倒れたけど何とか日に当たらずにすんで、その男は先にいたフードとマントとお面を纏った明らかに怪しいやつにキラリと光る小刀を構えて走り抜けようとして、でも奴は避けずに振り下ろされた腕を掴んで技をかけて男を地面に叩きつけた。そして奴は小刀を奪い取ると男の目に突き付けて、それから数回言葉を交わしていて、だんだんと奴らの声が大きくなったところで慧音が来て、奴が男から離れたところで男がフランを人質にとって、それを奴は殴って吹っ飛ばした。

 その怪しい奴が榛奈だとするなら、昔の榛奈を知ってる身としては驚くのも無理はないのだ。何せ榛奈の性格は温厚な方で、人に刃物を突き付けたり怒鳴るなんて考えられないくらいだった。昔一緒に暮らしてた時もよほどのことがない限り怒ることがなかったし、数年だけだったとはいえ怒ったのを見たのは片手で数えれる程度。そりゃこの間ちょっとした喧嘩みたいなこともしたが、あんなの怒鳴るうちには入らない。それに体も丈夫じゃない方だ。今は大丈夫みたいだが、昔、一時期熱を頻繁に出していた。その榛奈が成人男性を投げた挙句、殴って吹き飛ばすとか......誰がそんなことを予想できたんだろうか。少なくとも私や人里の私たちの知り合いにはいないと思う。そりゃ数年も会ってなかったんだから少しくらい変わっててもおかしくはないが、この変化は予想なんてしていなかった

 

フ「...どうするの?」

 

榛「...仕方ありません。元々話すつもりだったんですから、丁度よくタイミングが出来たと思っておくことにしましょう」

 

魔「......なんのはなしだ?」

 

 二人は一言交わすと、奴はフードを脱ぎ、面を外した。その下にあった顔はやはり榛奈で、数日前に見た時と同じだった

 

榛「とりあえず魔理沙姉。私がなんでこの姿をしていたとか、人里に来ていたとかは置いといて、お願いがあるんだ」

 

魔「なんだ?」

 

榛「私が生きてるってこと。それを人里の誰にも教えないでほしいんだ。本当に誰にも。慧音にもね」

 

魔「なんでだ?」

 

榛「...大騒ぎになるから。それが嫌だから」

 

魔「...そりゃ皆驚くだろうな。何せ今まで死んだと思われてた里の人気者が実は悪魔の館で生きてたなんて。その結果大騒ぎになるのは分かる。だけどそれだけか?」

 

榛「何が?」

 

魔「理由だ。榛奈が自分が生きてることを教えたくない理由。それだけなのか?」

 

 榛奈が理由を話した時、私は榛奈のちょっとした変化を見逃さなかった。だからこそ訊く。それだけが理由なのかと

 

榛「それだけだよ」

 

魔「本当にか?」

 

榛「...本当にだよ」

 

 そう榛奈は目を伏せ気味になりながら話した

 ほら、ボロを出した。榛奈は昔から嘘をつくのが下手だ。といってもそもそも榛奈は基本的には正直者で嘘をあまりつかない。だからこそ「これは嘘だ」ってわかってしまう。特に嘘をつきたくない相手と、罪悪感を感じるような嘘が重なればなおさら分かりやすい。だからこそ私は苛立つ。本当のことを言わず、隠す榛奈に対して。そして榛奈に信頼されてない自分に。姉妹とはいえ、元は血の繋がりのない赤の他人。確かに信頼されていると確実には言い切れない関係だけど、それでも私は榛奈のことを大事に思ってるし、家族()として榛奈()のことが好きだ。だから苛立つし、悲しい。せめてあの時みたいなことにはなってほしくない。でも榛奈が嘘をつくってことはそれなりの理由があるんだと思う。なら私はそれを受け入れるしかないのか......

 

魔「分かった。でも納得はしてないからな。だからもし本当の理由が話せるようになったら教えてくれ」

 

榛「...うん。だいじょうぶ、覚悟が決まったら私が生きてるってこと、皆に話すから」

 

魔「ああ」

 

ばあちゃん「あらあら、なんだか重たい話をしてるわね」

 

 そう言いながら奥からばあちゃんはお盆を持ってきた。その上には先ほどとは違い、汁の入った小瓶にざるの上に盛られたうどん。それと白い湯気の見える丼を乗せていた。他にもそれと同じような丼が二つ。

 

ばあちゃん「はいお嬢ちゃん。ご注文のざるとかけのうどんね」

 

フ「あ、ありがとうございます」

 

ばあちゃん「いえいえ。舞理沙にはこれ、あなたには......って榛奈じゃない。ま、いいわ。榛奈にこれ」

 

魔「え、おいおい、いいのかよ」

 

ばあちゃん「いいのよ。それにしても榛奈ったらいつの間に来ていたの?言ってくれればよかったのに......」

 

魔「...あっ......」

 

 そういや皆ってのにはばあちゃんも含まれてるはずだ。なのに大丈夫なのか?

 そう思って榛奈を見れば、榛奈は目を細めてじっとばあちゃんを見ていた

 

榛「......ばあちゃん、演技はいらないよ」

 

ばあちゃん「あら、なんのこと?」

 

榛「知ってたでしょ。私が榛奈だってこと」

 

魔「なっ......」

 

フ「えっと、どういうこと?」

 

榛「私、ここに来るのは人里を出る少し前以来なんですよ。人里にだって出て行ってから初めて来た。勿論フードとお面をかぶってなんて今日が初めて。なのにばあちゃんは私に対して注文を聞くとき、『舞理沙やあなたは“いつもの”かしら?』って聞いたじゃないですか。もし本当に私のことを気付いていなかったらそんな質問できるわけがない」

 

魔「あっ、そういえば......」

 

 確かにばあちゃんは私たちに対してそう言った。私はたまに違うメニューを頼むときもあるが、大体いつも同じメニューだ。だからばあちゃんには『いつもの』って言えばそのメニューが出てくる。榛奈も同じだ。だから相手もここの常連なのかと思ってたんだが、榛奈がその姿で初めて来たってことはばあちゃんは始めから......

 

榛「それに今はまだ暑い時期が続いてる。魔理沙姉やフランに出したのは冷たい緑茶。なのに私が来た時は温かい緑茶を出したよね。それも私が熱い緑茶が好きだって知ってたからだよね。他にも心当たりがある行動があったけど、上げたらキリがないから言わないでおくよ」

 

ばあちゃん「...ふふっ、さすがあの子が育てただけはあるわね。ちゃんと気づくなんてね」

 

榛「私としてはばあちゃんが“私”だって気づいたことに驚きだけどね」

 

ばあちゃん「当たり前よ。あなたと舞理沙のことは昔から見てきたんだから。その程度の変装なんて、雰囲気や仕草、それに声で分かるわ」

 

魔「うっ......」

 

 ばあちゃんがそう言って、私は思わず目をそらしてしまった。なにせ昔から、それこそばあちゃんより榛奈のことを見てきたのに榛奈の変装に気づかなかった。ヒントなんてそこら中に散りばめられていたのに。それこそ広場でフードが取れた時とか、フランとの会話とか、声とか。なのに気づかなかった私って......

 

ばあちゃん「それより食べちゃいなさい。せっかく茹でたうどんが冷めたり温くなったり、しまいには伸びちゃうわよ」

 

榛「っと、そうだった。じゃあ話は後にして食べましょうか」

 

フ「うん!いただきます」

 

魔「お、おう。いただきますだぜ」

 

榛「いただきます」

 

 私たちは手を合わせ、そう言って食べ始める。私の目の前に置かれたのはいつも頼んでいる月見うどん。食べ方はその時によるが、卵の黄身に箸を刺し、中身を出す。それから卵とうどんを絡ませながら啜る。つるっとしたのどこしと出汁の味、それに卵でマイルドになった味が口の中に広がる。私が昔から食べてきた変わらない味だ。榛奈の前にあるのはシンプルなかけ。それを啜り、噛み締めている。よく見れば目が潤んでる。それに口が弧を描いてる。そういえば榛奈は前の異変まで紅魔館とその周りぐらいしか行ってないと前に聞いた。紅魔館じゃうどんは出なかったそうだからな、きっと数年ぶりのうどんなんだろう。それも人里にいたころはほぼ毎日のように食べに来たり遊びに来たりしていたばあちゃん家のうどん。懐かしいんだろうな。フランは温かいうどんが熱いのかまずざるから食べてる。麺をそのまま食べそうになったフランにばあちゃんが横にあったざるのタレに付けて食べることを教えてる。それでタレに麺を入れてから榛奈の食べ方を見て頑張って啜ろうとしてる。ばあちゃんはそんなフランを見て啜り方のコツを教えている。それを見た榛奈も加わって、さらに私も加わって。ざるを食べ終わるころにはフランは見事啜れるようになってた。懐かしい、私も幼いころ、初めて食べた時は母さんの真似をして挑戦したんだが、なかなか啜れなくてな。麺を啜れるようになったときは嬉しかったな。もっとも榛奈はあっさり出来てたんだが

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

ばあちゃん「お粗末様でした」

 

 食べ始めてから数十分。私たちは丼、もしくはざる網にあったうどんを完食し、手を合わせた。感想は、いつもながらばあちゃんのうどんは美味しいなってところか

 

フ「お腹いっぱい。すごく美味しかったよ」

 

ばあちゃん「あら、吸血鬼さんのお口にもあってよかったわ」

 

魔「何せばあちゃん家のうどんは人里の外でも通用するからな。このうどん目当てに人里に来る妖怪もいるそうだぜ」

 

榛「へえ、さすがばあちゃんのうどん。すごいなあ」

 

ばあちゃん「ふふ、そんなに褒めてもお茶しか出ないわよ」

 

 ばあちゃんはそう言いながら空になった私たちのコップにお茶を注ぐ。それにお礼を言いながら私はコップに口をつける。氷で冷たくなった緑茶が喉を通り、熱くなった身体を冷ましてくれる。もう夏も終わるころだが、まだまだ暑い日々に冷たいお茶は欠かせないな

 その時ふとある疑問が頭に浮かんだ。どうして榛奈がここにいるんだってことだ。いや、この店にいるのは榛奈が呼び出したからなんだが、どうして榛奈は変装までして人里に来たんだ?私はその疑問を榛奈に問いかけてみた

 

魔「なあ、そういえばどうして榛奈は人里にいたんだ?変な格好までして......」

 

榛「へ、変って......一応変装なんだけど......」

 

魔「いやマントにお面とか変な格好だぜ?」

 

榛「いやだってそれ以外に顔を隠す方法思いつかなかったし、せっかくローブ作って咲夜さんにお面買ってきてもらったし......」

 

魔「あー、はいはい。で、どうして人里にいたんだ?」

 

榛「それは...まあ咲夜さんからフラン様が魔理沙姉と里に行ったって聞いたから、探しに来たんだよ」

 

フ「私を探しに?どうして?」

 

榛「...ちょっと、許可をもらいに......」

 

 そう言って、榛奈はフランを探しに来た理由を話し始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 私がボロを出して魔理沙姉に変装がばれた時、私は魔理沙姉に「生きてることを言わないで」と言った。そんなの普通変な話だ。どうして自分が生きてることを周りに知られたくないのか。別に私は里の人間から追われてるわけでも、嫌われてるわけでもない。むしろ好かれていると自覚はしている。なのに知られたくない理由は、まあいつものことながら昔と今の私の違いだ。それを出す勇気がない。でもそんなこと素直に言えるわけないから、理由は隠して、いや表面上の理由だけしか言わなかった。どこか魔理沙姉に嘘をつくみたいで後ろめたくて、魔理沙姉が「それだけか?」と訊いてきて「それだけだよ」と答えた時、私は魔理沙姉に嘘をついて、罪悪感が押し寄せてきて。お願いだからこれ以上は聞かないでほしい。そう思ってたら魔理沙姉は引いてくれた。もっとも理由がそれだけじゃないってことは気づいちゃったみたいだけど

 その後ばあちゃんが料理の乗ったお盆を持ってきて、私がいることに気づいて「いつの間に」みたいな反応してたけど、白々しい。というか私に温かい緑茶を持ってきたり注文を予測したり、新聞の話の時に私に目をやったりして、私の変装が見破られてるって分かりやすい。というかわざとだろ。思わずジト目で見ちゃったよ。白々しいぞって。魔理沙姉はばあちゃんは私の変装に素早く気付いてたのに自分は気づけなかったって落ち込んでたみたいだけど、一言言わせてね......

 ばあちゃんが特殊なだけだから!!

 いや特殊ってのは妖怪みたいとかそういうんじゃなくて、単に私や霊夢みたいに勘が鋭いんだ。それは昔から見てて分かってた。それに観察力もずば抜けてる。いっそうどん屋じゃなくて探偵にでもなった方がいいんじゃって思ったけど、人里じゃ需要がないな。ばあちゃんの頭なら依頼殺到間違いなしだけど、そもそもそんなに依頼が舞い込むほど事件ってないし、物が無くなるとかは妖怪の仕業とか言われてて、実際その通りなのがいくつかあるし、人が死ぬ系は大体妖怪の仕業か寿命だし。何でもかんでも妖怪の仕業にすればいいってわけじゃないけど、実際本当に妖怪の仕業なのが多いから困る。今日みたいな人間同士のいざこざは少ないし

 それはともかくばあちゃんは変装を見破れたのはある意味当たり前なわけで、魔理沙姉が気にすることでもないんだけどね

 え?ばあちゃんには生きてること知られても良かったのかって?

 バレちゃったものはしょうがない。そう思っておくに限るよ

 それから私たちはばあちゃんの作ったうどん。なんと麺も自家製。毎日足で踏みこんで練りこんで作ってます。まあそんなうどんを食べるんだ。麺を口に含んだ瞬間の出汁の風味とか麺のモチモチ感とか、美味しい懐かしい。思わず目頭が熱くなるし、顔はにやけてただろうし。ばあちゃんのうどん、まじ凄い。フラン様も麺を啜るのに手こずりながらも美味しそうに食べてたし、魔理沙姉も美味しそうにしてた。さすがばあちゃん。さすがばあちゃんのうどん。食べてるだけで幸せな気持ちになる料理ってなかなかないよ。そういった意味じゃ本当に凄いよなぁ。咲夜さんの料理も負けてないけど

 そんなこんなで食べ終わって、少し雑談してると魔理沙姉が「どうして人里に~」って聞いてきて、ハッとなった。というか正直目的を忘れてました

 

——何やってるのさ......魔法使いの言う通りわざわざ変装までして来たのに......——

 

 いやあ、悪い悪い。泥棒とか怒りとかうどんとかで思いっきり忘れてた。というか忘れない方が凄くないか?何せこんなにも濃厚な日を過ごしながら忘れてないとか......

 

——はいはい。それはともかく言わないと。吸血鬼から君の主に許可貰わないとこの話はなかったことにって言われてるんだから——

 

 うん。そうだな。でも変な話し方をしたらフラン様がレミリア様の時みたいに勘違いして悲しむかもしれないから、慎重に話そうか

 

榛「...実は今度、紅魔館を離れて遠い場所に修行しに行こうと思っているんです」

 

フ「紅魔館を離れて修行......?」

 

榛「はい。そしてその場所で修行するなら何か月間か紅魔館に帰れなくなります。そうなると従者としての仕事もお休みしなければなりません。ですのでしばらくの間の休暇の許可をいただきたいのです」

 

フ「...それは、本当に行かないとだめなの?」

 

 そう言うフラン様の目は寂しげだった。まるで私に自分のところから離れてほしくないと言ってるようで......って自意識過剰かな

 でもこれは将来的にフラン様のためにもなる...と思う。強くなって損なことはないだろうし、この幻想郷。強くてなんぼだ

 

榛「はい。数か月とはいえフラン様の元を離れるのは心苦しいです。しかし先日の紅霧異変、私は自分の未熟さを痛感いたしました。そしてここ最近に至っては自分が全く成長している感覚がないのです。その状況を変えるには環境を変えるのがベストだと私は思います。...弱くては貴女様のお側に立っている資格もありませんから」

 

 ここに来るまでに考えていた言葉。さすがに忘れていたとはいえ考えなしに発言はできないからどうやって言おうか悩んで、考え出した言葉だ。でも、最後の言葉は言おうとは思ってなかった。だって私は、心の奥底では自分は昔より強くなった。そう思ってた。いくら表面上で“弱い”と言ってても、本当のところそこまでとは思ってなかった。でも今の私は強くない。弱くはないだろう。でも強くもないんだ。私は、そんな現状に甘えたくない。甘えてたら、フラン様の傍に立つ資格なんてないんだから。そう思っていたら口がそう言っていた。躊躇いもなく言ったんだから不思議だ

 そう思っていると、フラン様は考えるような仕草をして、それから私の目を見てハッキリと告げた

 

フ「いいよ。榛奈に、休暇の許可を上げる」

 

榛「え...本当ですか!?」

 

魔「なっ、いいのかフラン?」

 

フ「うん。榛奈がこんなに言うんだもの。主として、許可を上げないわけにはいかないよ」

 

榛「フランさま......」

 

 フラン様......いつの間にそんなに成長なされたのですか......?不肖私、感動いたしました。それはもうジーンと

 

フ「ただし!」

 

榛「ぅぇっ?」

 

フ「絶対に強くなってくること。そのために許可を上げるんだから、ね?」

 

榛「...はい!!」

 

 嬉しかった。フラン様が許可をくれたことにじゃない。フラン様は私に期待して、送り出してくれる。そう分かったから。正直なところきっとフラン様は少し反対しながらも渋々といった感じに許可をくれるか、何とか説得し倒さないといけないかなとか思ってた。なのにフラン様はあっさりと、でもちゃんと私のことを考えたうえで期待して許可を......

 本当に、いつの間にこんなにも成長していたんだろう。ずっと、レミリア様の妹様、可愛い天使(吸血鬼だけど)とか思ってて、心のどこかでフラン様(の精神)は子どもだと思っていたんだ。でもフラン様はしっかりと成長なされていて......

 これはもう、そんな扱いはできない。無意識にだってそんな態度をとってしまえばフラン様に......我が主の失礼に当たる。絶対にそんなことあってはならない。ならば今私ができること。それは絶対にフラン様の期待に応えること。それが今の私の使命なんだ。ならばどんな困難でも乗り越えて見せよう。主のためなら、私はどこまでも努力してみせよう。それが、今の私ができる心の誓いだ

 

魔「...本当にいいのか?フラン。これってつまりしばらくの間榛奈に会えなくなるんだぜ?」

 

フ「えっ.....あっ.......う、うん......モチロンワカッテルヨー......」

 

榛「ふ、ふらんさま......」

 

 あの、目が泳いで、棒読みで......

 えっ......?あの、フランさま......!?

 

——ふふっ、よかったじゃない。許可をもらえたんだから。まあ前言撤回はしないでしょ。“君の主”なら、ね?——

 

 そう......だよね......ね?そうだよね!?上げてから落とさないよね!?

 し、心配だなあ......




後書き~

次回、多分サブタイトルは『旅の事前準備③』とかになると思います。多分。多分だけど。大事なことなので三回言いました

次回もゆっくりしていってね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第38話『旅の事前準備③』

前書き~

まああれです。いつもの時間に遅れたのは単に話は出来てたけど(短いけど)、この部分が出来てなかったり、執筆してるノートPCをインターネットに繋がる場所で開かなかったり、昨日は夜遅くまで仕事をしてて、疲れて寝てたりしただけです。べ、別に話が出来てなかったわけじゃないんだからねっ!

それはともかくあらすじを...
前回フランに修行の旅のための休暇を頂いた榛奈さん。今回は再び旅の準備のようです。

今回もゆっくりしていってね!!



 休暇の許可をいただいてあの日から数日。私はこの数日間何をしていたのかというと、まあ別に難しいこととか忙しいことはしていない

 いつも通り仕事して、魔法使いとしての勉強もして、たまに魔理沙姉とかフラン様相手に弾幕ごっこをする。そこに新たに荷造りや私がいない間も咲夜さんの負担があまり増えないようにしたりと、そういったのが増えた程度だ

 そして今日は午後から休暇、というか準備時間をいただいた。なにせ荷造りとかは夜にもできるけど、こればかりは時間がかかる

 その準備とは『地底への入り口を見つけること』

 地底とは地上で妬み嫌われた存在が集まる場所。そして旧地獄跡地のある場所でもある。そんな場所への入り口が分かりやすい場所にあるわけないと気づいたのがあの日の夜。さすがに地底まで穴を掘るわけにはいかない。そうなるといざ出発して地底への入り口を見つけられませんでしたーなんて恥ずかしすぎる。下調べもしっかりしておかなくては。そう思いスケジュールを調整して何とか時間を空けることができたのだ

 ということで今日は紅魔館を離れ、地底への入り口を探すためいざ幻想郷の空へ、いざ行かん!

 

——それはいいけど、大体の目星はついてるの?——

 

 ...はっ......!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________________

[妖怪の山]

 

 

 えー......入口が大体どの辺にあるか分かってたか、という件ですが......

 うん、ハッキリ言いましょう

 すっかり忘れてた

 いえですね。言い訳させてください。私も転生してそれなりに生きているんです。数年前にやっと転生前の記憶、東方とかの記憶や知識が思い出せたといっても今日に至るまでに数年経っているんです。しかもそれなりに充実、つまり密度の薄くはない生活を送ってきていたわけですから......ね?少しくらい忘れててもおかしくはないでしょ?それが丁度今回必要だった知識を忘れていただけなんだから、許してください

 

——許さない——

 

 いや許してよ。こうやって何とか思い出して妖怪の山の近くまで来たんだから

 

——ま、君のいうことも分かるけどね。人間の記憶力なんてたかが知れてるわけだし——

 

 そゆことそゆこと

 ともかく今は妖怪の山の近くにあるという地底へ続く穴を探さないと。下手に山に近すぎないようにしながら

 

——あー、山には天狗が......——

 

 ああ。気をつけなくちゃ面倒なことになるからな

 どうもこの間の新聞で私のことは知られてるようだし

 

——ってあれ?あの天狗の新聞って里にも配られてたんだよね。だったら里の人間に君が生きてるってこと知られてるんじゃない?——

 

 んー?それは多分大丈夫だ

 何せ新聞は白黒、私は帽子を被ってるわけだし、あのアングルだとあの場面を知ってる人と勘のいいひとぐらいにしか分からんだろ

 だがここには写真を撮った本人がいる。それに天狗の情報網も馬鹿にはできん

 万が一突っかかってきたら......

 

——きたら?——

 

 その時は諦めて逃げよう

 

——......まあそれがいちばんか...なぁ......——

 

 などと会話しつつ、私は山の周りを飛び回る。入り口は原作知識だと妖怪の山の麓にあるという大きな縦穴。その場所を見つけなければ、私の修業は始まりすらせず終わる。それだけは勘弁願いたい

 

 

 

 

 

 それからしばらく飛び回ったところで違和感を覚える場所に着地した。まるでここだけ何かで覆われている感覚。しかも私の勘はここに何かがあると指している

 こういう時に使える魔法、実は取得してるんだよな~。名前はそのまんまだけど

 ってことで——

 

榛「『フィールドサーチ』」

 

 そう言った瞬間、私を中心に魔法陣が現れ、頭の中にこの辺の情報が一気に流れ込む。その情報量に頭が痛くなってくるが、耐えられないほどではないので何とかその情報の中から必要なものを選び出し、考察する

 その結果、どうやらこの辺一体に何か結界のようなものが張られているみたいだ。おそらく種類は幻覚系結界。多分ここにある何かを隠すために見えないようにしているのだろう。もしかすると縦穴の入り口を隠しているのかもしれない

 しかしそうなるとまんまと術の効果にかかっている私はどうしようかねぇ......

 

——一旦術の効果範囲から離れて、それから能力で自分を守りながら術式内に入ってみれば?効果を受けないかもね——

 

 そう、するかな......

 

?「ちょっとそこのあなた」

 

 術の突破方法を考え、アイツが思いついた方法を実践してみようと思っていると、背後から誰かに声をかけられ、驚きで身体が一瞬硬直した。息も一瞬だが止まった

 思わず声のした方向を振り向きながら急いで距離をとる。心臓は驚きで激しく振動し、血の気が引いたような感覚がしたが、頭は冷静考えていた

 まず驚いた理由が、先ほどまで生き物の気配は感じなかったからだ。いくら魔法に集中していたとしても、私が気配を察知する能力がアイツより低くても、普通の人よりかはあると自覚している。その私に気配を察知させなかった。余程実力のある持ち主なのか、あるいは影の薄い人なのか。前者で尚且つ人食い妖怪の場合はもうこの時点で食われているだろうから、とりあえず人食いではない、もしくは話ができる(言葉が通じるという意味ではない)存在だということ。後者ならば......まあ影が薄くとも存在する価値はあるさ

 ってそうじゃない

 ともかく相手を確認しよう。人型ならまだ会話できる。獣型でも言葉を発した時点で大丈夫なはず......

 と、考えながら相手の姿を見ると、再び驚いた。でもさっきのは恐怖でだとしても、今度は...そう、嬉しいような感情。心が興奮するのを感じた

 ピンクの短い髪、頭の上に二つあるシニヨンキャップ。右腕には包帯が全体に巻かれており、左手首には鉄製の腕輪。胸元には花の飾りがあり、服の前掛けには茨の模様

 間違いない、山の仙人の一人、茨華仙こと茨木華扇だ

 

——なっ......!?話が違う...彼女の出番はまだ......——

 

 え?どうしたんだ?どういう意味だその言葉......

 そう聞くも黙ったままのアイツ。このまま口を割るまで声をかけ続けたいところだが、今は我慢だ。まずは今向き合っているこの仙人をなんとかしなくては......

 すると華扇は私の姿をジロジロと見て、それから何かを考えたそぶりをした後口を開いた

 

華「ねえあなた、人間ね?」

 

榛「...ええ、そうですが。私に何か?」

 

 いくら相手が原作登場人物だとしても警戒は怠らない。例え相手が原作で『人間の味方』を自称していようと、目の前にいる彼女と私は初対面。彼女にとっては私は自分のことを知らない人間だ。もし下手でも打って敵対心を持たれでもされれば、私の人生はあっけなく終わるかもしれない。能力がある限り簡単には傷つきやしないけど

 

華「人間が何故こんなところにいるのですか。ここは人里から見て背にあたる場所です。道にでも迷いましたか?」

 

榛「いいえ、私は私自身の意思でここにいます。道に迷ってなどいません」

 

華「ではなぜここに?ここには妖怪の山のなかでも特に何もない場所です。早く里にお帰りなさい」

 

榛「...『特に』、ねぇ......」

 

 “妖怪の山のなかでも特に何もない場所”か。それはむしろ“何かある”と言っているのと変わらないのでは?

 だって、特に何もない場所に結界なんて張っているわけないだろう?

 それに華扇の態度、まるで私にここから離れてほしいみたいだ

 それらの考えから導き出される答えは『ビンゴ』、だ

 ならやることは決まったな

 

榛「申し訳ありませんが私は里の人間ではありません。そしてここに何があるのか確認するまでは帰る気もしません」

 

華「...ここには何もない。このまま居続けても何も起きません。最悪貴女が妖怪に食べられて終わるでしょう。妖怪の餌食となりたくなければ早く家に帰りなさい」

 

榛「生憎とそこらの低級妖怪に負けるほど弱い気もしないので、ご心配なく。それよりどうしたんですか?そんなにも私をここから遠ざけたいですか?」

 

華「そうですね。いくら貴女が強いといえど、此処は妖怪の山。あなたの考えている以上に妖怪とは恐ろしいものですよ」

 

榛「それはまたご忠告ありがとうございます。しかし私は妖怪の怖さを、恐ろしさを存じております故、そんな建前の心配なんていらないんですよ。例えば鬼の恐怖とか、ね?」

 

華「っ!?」

 

 その瞬間、華扇は一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに元の顔に戻った。しかし警戒心を持たれたのは分かり切ったことだった

 そりゃそうだ。今の幻想郷には鬼の存在を知るもの、そして鬼も恐怖を知るものは数少ない。長い時を生きる妖怪なら鬼のことを知っていてもおかしくはないが、長くて百年しか生きられない人間が知っているなんて思いもしないだろう

 でも私は知っている。何せ主が西洋では悪魔。漢字で書くなら“鬼”と付く種族なんだ。その主から数年前に教えてもらったよ。妖怪の恐怖も、鬼の怪力も、天狗の速さも。いろんなことを、ね

 そんな私が知らないわけない。あまり、甘く見ないでほしい

 

華「...今時鬼の存在を知ってるなんてね。どこで聞いたのですか?」

 

榛「生憎とおいそれと話せるようなものではありませんので」

 

華「...あなた...一体何者?」

 

榛「さあ?ま、ともかく今は貴女に免じて退散するとしますか。収穫はありましたし」

 

華「収穫?一体あなたはここで何をして......」

 

榛「元地獄の入り口探しですかね。ちょっとそこに用がありまして......」

 

華「地底のこと......?そんなところに行って何する気?」

 

榛「それは私の勝手です。まあ大丈夫。悪いことはしませんよ」

 

華「地上で生きる者が地の底に行くなど、それ自体が悪いことですよ」

 

榛「では、色々と悪いことをしに行くだけなので、ご心配なさらず」

 

華「とにかく駄目です。地上の者が地底の者に関わるなど......」

 

榛「先ほども言いましたでしょう。何処へ行こうが私の勝手...ってほど言い切れませんが、少なくともあなたには関係ないんですから。邪魔をしないでくださいね」

 

華「残念ながら人間を、地上に生きる者を地底に関わらせるわけにはいきません。もし地底に行こうとするのであれば......」

 

榛「『あれば』?」

 

華「私は、あなたを殺してでも止めます」

 

榛「仙人が人間を...ねぇ?ま、殺されないよう少しは大人しくしておきますか」

 

 私はそう言って片手に持ったままの箒に飛び乗る。箒は重力に従わず私の魔力によって浮かび上がり、私を空中に浮かばせる。その行動に華扇は驚くが、そもそも妖怪の山の、人里から正反対の場所にいる人間が普通の人間だなんて思っちゃいけない。そういった人間は大抵何かしらの能力を持ち合わせているのだから

 さて、これ以上この場にいては仙人に殺されかけない。さすがにそんな状況になってまでこの場にいたいとは今は思わないし、帰ろうかね。帰って早めに仕事に戻るとするか

 

榛「では私はこれで。また次回会うときは友好的な会話ができることを期待していますよ」

 

華「あなたが地底に関わらなければ時と場合によってはできるでしょうね」

 

 おっと、それじゃあ次回もまた似たような会話をすることになっちゃうのかな。できればこの幻想郷で生き抜くために敵は増やしたくないんだけど

 ともかくそんな華扇の言葉を無言で受け流しつつ上昇。追ってくる気配はないし、天狗の気配もないから少しだけゆっくりしながら家路につく

 ゆっくりなのは単に早めに戻ってもやることといえば魔導書を読み進める程度しかない。後はフラン様のお相手くらいだ。なら今だけはゆっくりと空中散歩といこう。他にも次回来た時あの仙人をなんとかして、そして地底に行く方法も考えなきゃならないし

 はあ......先が思いやられるなあ......




後書き~

妖怪の山で華扇に会い、実質地底へ行くなと言われた榛奈さん。地底へ行くには仙人を突破しなければならなそうです。
そして私は久々に活動報告の方で後書きを書いてみようかなと思ってます。更新されたら是非ほのりんの活動報告を覗いてみてくださいね

次回、どんな話になるか決めてません!!無計画です
でも何とかやってみます
それでは次回もゆっくりしていってね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第39話『生半可でも、覚悟は覚悟だ』

前書き~

眠い。以上!

前回地底の入り口探しを頑張った榛奈さん。今回はようやく旅立つようで......

今回もゆっくりしていってね!



?「時は満ちた。彼奴も出る準備が整ったことだろう。さて、行動を開始する。お前も準備いいな?」

 

?「ふふっ、大丈夫。あの娘は無事入り口を見つけた。ただ問題はあの仙人だよ」

 

?「なに?彼女が出てきたのか?」

 

?「どうも君の予言した運命は、奴によって妨害を受けたみたい。どうするの?」

 

?「どうするもなにも、当たるも八卦当たらぬも八卦の気持ちだったからな。別に構わん。計画通りに行くぞ。急ぎ―の完成を目指すのだ」

 

?「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

[紅魔館]

 

 

フ「榛奈......」

 

榛「フラン様......」

 

 そう言ってフラン様は私に抱き着く。身長差があるから腰に抱き着いてる感じになるが、私もそれに応えるように頭を撫でる。心の中は悲しみでいっぱいだ。それを癒すように撫でる。そんな行動で思うのは、あぁフラン様の髪さらさらだ~とかいう場違いな考えだ

 そしてフラン様もまた私の撫でる手にこれからのことを思ってか抱き着く腕の力が強くなる。でも今までみたいなマジで骨が折れそうなほどの力ではなく、人間の子供が力強く抱き着くような程度の力加減。それが何処か心地いい。私が帰ってきてもいい場所がここにあるんだと、そう実感する

 でも時々外の音に打ち消されず聞こえてくるすすり泣く声が私の心をきゅっと締め付ける。自分まで泣きそうになる

 お願いだから泣かないで。私の好きなフラン様は、泣き顔より笑顔の方が好きなんだから

 

 

 

魔「...なあ、いつまでそうしてるつもりだ?」

 

榛「あっ、思わず......」

 

 魔理沙姉の声にハッと気づき、フラン様から離れる。フラン様が私の元から離れると、レミリア様がフラン様を慰めていた

 周りを見ればジト目の魔理沙姉。少し呆れ顔の師匠。フラン様ほどではないが涙ぐむコア。微笑ましい顔をしている咲夜さん。心配そうな美鈴

 そんな皆さんの様子に少し恥ずかしくなって誤魔化すように苦笑いをする私

 

 ——私は今日、修業に出る。

 期限は来年の五月頃までの数か月。その間に地底に行き、私の中にいるあいつが教えてくれた男に会いに行く。その男の元に弟子入りし、私は今まで以上に強くなる。そうして戻ってきたころには皆さんが見違えるほどに強くなってるという計画だ

 そのためにこの数週間、準備をきっちりしてきた。そのついでになんか巻き込まれたこともあったな。フラン様に休暇をもらうために人里に行ったっけ強盗現場に居合わせたり、地底への穴を探してたら仙人様に会って、次来たら殺すと宣言されてしまったり

 ...あれ?私ってこんなにトラブル体質だったっけ?

 いやここが幻想郷だからだ。そう思うことにしよう

 

 ともかく旅の準備を終えた私は昨日、皆さんに『明日出る』と伝えた。すると今日、紅魔館住人総出でお見送りに来てくれたのだ。なんと彼女達の後ろには妖精メイドが数名だがいる。私が特に指導してきたメイドたちだ。彼女達も私をお見送りに来てくれたのだ。そしてどこから聞きつけたのか魔理沙姉までもいる。こんなにも人に囲まれて、お見送りをしてくれるなんて、私は本当に好かれているんだと実感する。同時に感謝だ。数年間世話になった紅魔館の皆さんに。私の姉になってくれた魔理沙姉に

 でも本当に感謝の言葉を伝えるのはまだかな。せめて無事に帰って来た時、お礼を言おう。数年間育ててきてくれてありがとう。これからもよろしく、と

 

 さて、あまり別れを惜しんでいると時間が無くなってしまう。今日中には地底の旧き都に着く予定なんだから

 そう思い私は箒を握りしめる。そして皆さんの顔を頭に刻み付けるように見渡してから、瞳を閉じ、大きく深呼吸をする

 

 さあ、旅立ちの時間だ。大丈夫。来年には帰ってくるよ。この場所に。私の帰ってきてもいい場所に。

 

榛「皆さん、そろそろ出ます」

 

パ「...そう」

 

小「ぅぅ...はるなさぁん...無事に帰ってきてくださいねぇ......」

 

美「...あまり無茶をしないようにしてくださいね。挫けそうになったらいつでも帰ってきていいんですから」

 

咲「館のことは任せなさい。貴女が来る前は私だけでもやってこれたのだから。...でも、私だって楽がしたいのだから、早く帰って来なさいよ」

 

レ「貴女のために皆お見送りに来てくれたんだもの。絶対に強くなって帰って来なさい」

 

榛「...はいっ!」

 

 皆さんそれぞれに言葉をくれる。私はその言葉に元気な返事で返す

 フラン様はレミリア様の陰に隠れてた。フラン様からもお見送りの言葉が欲しかったけど、しょうがない。もう二度と会えないわけじゃない、むしろ一年以内には帰ってくるんだから

 じゃあ、行こうか

 荷物のほとんどはエプロンのポケットに入れた。すぐに取り出せるものや咲夜さんから事前に頂いたお弁当は風呂敷に包んで箒の先に付けた。忘れ物はないはずだ

 もう一度、気持ちを入れ替えるように深呼吸。それから箒に乗り、浮かび上がる。それと同時に魔理沙姉も自分の箒の乗り、浮かび上がった

 

魔「そんじゃ、近くまで送ってくぜ」

 

榛「...うん、ありがと」

 

 別にそういうのは必要なかったのだが、何故か途中までは着いていくと言い張った魔理沙姉に気力負けし、送ってもらうことになった。あくまで途中までだから、ある程度妖怪の山に近づいたら別れるつもりではあるけど

 

フ「——榛奈」

 

榛「はい?」

 

フ「...絶対に、絶対に無事に帰ってきてね!約束だよ!」

 

榛「...はい!絶対に、ぜぇぇぇったいに皆さんの、フラン様のところに帰ってきます!だから——」

 

 自然にこぼれる笑顔を浮かべながら——

 

榛「——いってきます!」

 

「「「「「「いってらっしゃい」」」」」」

 

 その瞬間と飛び立つ。目指すは地底...いやフラン様の隣に並び立てるような強さ。私、霧雨榛奈はフラン様の騎士になれるよう頑張るんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

[上空]

 

 

魔「——ご機嫌だな。てっきり少しは寂しくて気落ちするかと思ってたが」

 

榛「寂しくはあるよ。これから数か月、皆さんと会えなくなるんだもん。でもそれ以上に皆さんが私を大切に思ってくれてるってことが分かって嬉しいし、皆さんのために強くなって、絶対に皆さんの元に帰るんだって気持ちが強くなるからさ。あんまり気分が落ち込むことはないかな」

 

魔「そうか。それはよかったぜ」

 

榛「一応言うけど、魔理沙姉もその“皆さん”の中に含まれてるんだからね?」

 

魔「は?」

 

榛「だってこうやって送ってくれるのはそれだけ私のことを大切に思ってるってことでしょ。違うの?」

 

魔「...ま、まあそうともとれるよな...///」

 

榛「ふふっ。照れなくてもいいのに」

 

 隣を飛ぶ魔理沙姉の横顔は少し赤くなっていて、それがなんだか嬉しくて、もう少しだけこの時間が続けばいいなって

 でも私達は今、目的地に向かって飛んでいて、尚且つ紅魔館から妖怪の山付近まではそう遠くはない。だからこの時間は長くはなかった。

 

 そろそろ、山に差し掛かる。魔理沙姉とはここで別れよう

 

榛「魔理沙姉、この辺りでいいよ」

 

魔「ん?この辺りにその...修業に適した場所があるのか?」

 

榛「ううん。もう少し先だよ」

 

 今回の地底行きの件は、実は内緒。フラン様レミリア様方には『妖怪の山の近くに修業に適した場所があって、そこで修業してくる』と言ってある。それは魔理沙姉にも言ってあった。何せ忘れちゃいけない地上と地底の約束の一部『地上の妖怪を地底に入り込ませない』があるからだ。この約束はあくまで“妖怪”に限定されていて、私のように人間なら別に大丈夫そうだから...というかそもそも人間が地底の存在を知ってることが稀で、あの穴に辿り着く前に天狗に見つかっておしまいだ。私の場合は防御は鬼相手でも大丈夫...なはずで、攻撃も魔法があるから。他の人間と違い、平気なのだ

 だが念には念を。魔理沙姉達には悪いけど、少しだけ嘘を入れて、地底の存在に触れなかったのだ

 だからこのまま行けば魔理沙姉にその存在を知られてしまうかもしれない。いやまあ、その内知ってしまうわけだからいいって言えばいいんだけどね

 でも他にも魔理沙姉をこれ以上先へ行かせてはならない、ある厄介事があるからね......

 

魔「ならそこまで送るぜ?」

 

榛「いやいいよ。これ以上行くと、天狗が絡んできたりして面倒なことになるし」

 

魔「まあそれはそうだが......」

 

榛「それにこれ以上は一人で行きたいんだ」

 

魔「...わかった。じゃあ私はここで別れるぜ」

 

榛「うん。せっかくついてきてまでお見送りしてくれたのに、ごめんね」

 

魔「謝らんでいいぜ。勝手についてきただけなんだからな。だが、別れる前に言わせてくれ」

 

榛「...うん」

 

魔「お前がこれから何をしようとするのか分らんが、とにかく絶対に帰って来い」

 

榛「...うん」

 

魔「フラン達は『無事に』と言ってたが、私としては怪我をしててもいい。心が折れてたっていい。とにかく絶対に、生きて帰ってくるんだ。帰ってきて...そしたら宴会でもやろうぜ。お前、まだ宴会ってやったことなかっただろ?」

 

榛「うん。パーティはたまにやってたけど、宴会はやったことないよ」

 

魔「じゃあ思いっきり盛り上がる宴会をしようぜ。だから生きて帰って来い。命あっての人生なんだからな」

 

榛「...うん。絶対に...絶対に“生きて”帰ってくるよ。約束する」

 

魔「じゃ、これだな」

 

 そう言って魔理沙姉は右手の小指を出してくる。何をするのか察した私も同じように右手の小指を出し、魔理沙姉の小指と絡ませる

 

「「ゆーびきーりげーんまーんうそつーいたーらはーりせんぼんのーますっ、ゆーびきった」」

 

 昔ながらにある約束の儀式。子供っぽく見えるこの儀式は、約束を守ると宣言すると同時に、約束を破るなと言われているのと同じ

 そして私にとっては、魔理沙姉とのこれは絶対の証。私達がまだ幼いころから交わされてきた、大事な儀式。だからこそ絶対に守らなくてはならないし、今回の場合、守れなかった=死も同じだからこそ、破ることは許されない

 ...それにゲンコツ一万回なんて食らいたくないし、針千本だって飲みたくないからね

 

榛「それじゃ、いってくるよ」

 

魔「...ああ。行ってこい!」

 

榛「うんっ!」

 

 そのままビューンと飛んで行く。魔理沙姉は多分そのまま私の後姿を見てるんだろう。でも振り向きはしない。今はただ真っ直ぐに突き進めばいいんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

[妖怪の山]

 

 

榛「さて、そろそろだ」

 

 そろそろ、この間行った違和感のある場所、地底への入り口に着く

 能力を発動させ、自分を他の能力から守るよう結界のようなものを展開させる。原理は使ってる私自身も知らないけど、とりあえず結界のイメージで展開すると上手く展開できるのは何故なのだろうか

 ま、今は関係ないけどね

 そういえば最終的にはどういうものなのか確認してないんだよね。この間は仙人に邪魔されて結局能力発動して確認してないし。ただそこにあるだろうっていう予測と勘でしかないから、もしかしたら外れてるかも......

 いやここまで来て外れとかやめてくれって感じだし、あの仙人がただあそこにいるわけないし......

 ま、あと少しで結果は分かるし、今はどう仙人を撒くか考えるか

 

——撒くの?戦うんじゃなくて——

 

 そりゃ戦うだろうけど、それはあくまで殺されたくないから防御手段としてな。さすがに今の私の実力じゃあの茨華仙に勝てるわけないからね。かといって諦めるわけにもいかないし

 

——ふーん。じゃあどう撒くの?あの仙人は地底への入り口を見張ってるからそう簡単にその場を動かないと思うけど......——

 

 うーん......

 例えばこういうのはどうかな———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華「やはり来ましたか......」

 

 例の場所に着くと、まず見えたのは大きな穴だった。そしてその穴の中央空中にいたのは先日見て、出来ればいないでほしかった人物

 でも予想はしていた。けどまさか本当にいるとは思わないだろ?だってあの日の次の日でもなく、数日は経過してるんだぜ?だってのに待ち伏せって...いくらなんでも暇すぎないか?

 

榛「えー...最初から待ち伏せ?いつ来るかも分からない相手を待ち伏せってよっぽど仙人って種族は人間と違って暇なんですか?」

 

華「暇ではありませんよ。仙人たるもの、日々修業に明け暮れているものです」

 

榛「なら今日も大人しく修業しててくださいよ。そうしたらこっちも簡単に行けたのに......」

 

 ホント、修業してくれてた方が大人しく行けたのに......

 でもそうもいかないのが彼女の性格というか事情というか......

 

華「やはり諦めていなかったのですね。まあそうだとは思いましたが」

 

榛「だからって待ち伏せする?普通...って幻想郷じゃ非常識が常識だっけ。ま、とにかくそこをどいてくれません?私はその穴の中に行きたいんですけど」

 

華「穴...?もしや貴女、この穴が見えるので?」

 

榛「もちろん見えますよ。仙人様の下に空く大穴...地底への入り口がね」

 

華「なっ...!?術を突破してきたというの......!?」

 

榛「いえいえ、突破というほど大したことはしてませんよ。ただ私には条件さえ満たせれば術にはかからないんです」

 

 ま、条件と言ってもその場に術が展開されていると気づく。そこから術の範囲外に出てから能力発動して中に再び入れば術をかけられずに済むというだけのことだけどね

 しっかしこれじゃ交戦は免れなさそうだな。しかたない。あの作戦で行くか

 

華「...なるほど。ところで再びこうして来たということはそういうことと解釈してよろしいのですね?」

 

榛「ああ、殺される覚悟はできてるかーい?ってこと?ノンノン、生憎と殺される覚悟も殺す覚悟もできてないですよ。ま、ここを切り抜ける覚悟はできてますけど」

 

華「でしたらここから立ち去りなさい。生半可な覚悟で私を倒し、そして地底へ行けるとは思わないことです」

 

榛「...生半可でも、覚悟は覚悟だ。未熟な私でも強くなりたいという願いを持って生まれた覚悟なんだ。それをあまりバカにしないでいただきたい」

 

 少しだけ、自分の中の何かが変わる。そんな気がした

 でもその何かが何なのか注意を向けようとは思わなかった。それだけ今私は目の前の仙人に『怒り』という感情を抱いてるんだと思う

 でも怒りに身を任せるな。いつも師匠が言っている『魔法使いは冷静であれ』。未熟な私だって少しは冷静になれる。冷静になるだけで心に余裕ができる。その余裕で考えるんだ。今この場で最高の行動を、言動を。弱い(人間)がこの場を切り抜ける方法を

 

榛「そもそも、何故あなたは私を止めるのかお聞かせ願いたい」

 

華「それは先日も言ったはずですよ。地上の者が地底に関わるなどあってはならないこと」

 

榛「それは妖怪に限ったことでは?確か地上と地底との契約で『地上は地底の存在を認める代わりに、地上の妖怪を地底へ入り込ませない』というものがありましたよね?それ、わざわざ妖怪って区切ってあるのに、人間までダメなんて決まってませんよ」

 

華「...とにかく駄目なものは駄目です。本当に、この先へ行こうとするのならば......」

 

榛「“殺してでも止める”そう先日も仰ってましたよね。しかし私にはこの先へ行かねばなりませんし、尚且つあなた以外に止める者はいない」

 

華「この先へ行けば、あなたは死ぬかもしれないのですよ?」

 

榛「そんなのわからないし、案外中にいる鬼たちと仲良くなって帰ってくるかもしれない。地底の屋敷の主とかともあって、交流をするかもしれない。どうなるのかは私にもあなたにも分からないし、強いて言うならうちの主の姉君が分かるかもしれないね」

 

華「それでも行くというのですか......」

 

榛「ええ。それでも行きますよ」

 

華「そうですか...では」

 

 そう言うと華扇の身体に変化があった。といっても目に見える変化ではない。一気に体に纏う力が溢れたというか、凄い気迫を感じる

 そう、これは威嚇であり、最終警告。『今ならまだ逃げてもいい』という警告。でもそんな威嚇は私には通用しない

 だってこの程度の力、紅魔館にいれば偶に感じる。例えばうちの主姉妹が喧嘩したときとかね。それでいて数年前のこともあるし、この程度なら能力使わずとも受け止めれる

 でも威嚇程度でこれだけの力...さすが仙人ということか。これは倒すとしたら骨が折れる

 ...ま、“倒す”としたら、だけどね

 こちらも相手をしますか。こういったのは一応護身術として美鈴に叩き込まれてるんだから...ねっ!

 

華「っ......」

 

榛「あなたに怨みとかはないけど、ここで果ててもらいます!」

 

 

 

 

 

 そうやって戦闘が開始されて一時間か、あるいは二時間か......

 戦況は優勢だった。あの仙人の方が

 私は劣勢。どうにか攻撃が手加減されているから回避できてるけど、それも時間と体力の問題。いくら鍛えているといっても人外と比べるとその差は圧倒的だ。だからだんだんと動きが鈍くなってきてしまう。でもまだ...まだだ......

 

華「動きが鈍ってきましたよ。そろそろ諦めたらどうです?」

 

榛「諦めなんて言葉、この場にはいらないってね」

 

華「では...!」

 

 きたっ、チャンス到来っ!

 華扇は大技を仕掛けてくる。何の大技かなんて知らないけど、大技なんだから威力があるのは間違いない。そして衝撃もあるだろう

 ...今回の作戦はここにかかってる。華扇が大技を出すため力を溜めるこの一瞬。そこに今回の作戦全てがかかってるんだ!

 うごけ、動け、動けっ!とにかく避けるかのように見せて動け!勝てなくても...負けて堪るかぁ!

 

華「はぁっ!」

 

榛「くっ...ぅわあああああ!!」

 

 華扇の拳が私を吹き飛ばす。それはとんでもない威力を持っていて、もし能力を少しも発動していなかったら...と思うだけで恐ろしい......

 だがこれで作戦通りになるはずだ

 そのまま私の身体は吹き飛ばされ壁に当たり、落ちる。そこで私の意識は身体と共に暗闇に落ちた———

 

 

 

 

 

華「なんてこと...しかしあの程度の実力なら地底の妖怪に喰われておしまいね。...でもさっきの気...人間とは思えないほどの殺気だった。それなのにあの実力...何か隠していたのか、あるいは実力を気で誤魔化すのが得意だったのかしら......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

[???]

 

 

「————...?そんなものが今この世界では行われているの?」

 

「はい。しかも————を行う組織...彼らは自らを“——”と名乗ってますが、そいつらの進行方向がこちらの——のお宅なのです。おそらく——が魔法使いだということが世間に知れて......」

 

「そう。それはそれで構わないよ。それで貴女は私にどうしてほしいの?貴女の頼みなら何でも叶えてあげたいけど、生憎と手を汚すような真似はいくら貴女の頼みだとしてもやりたくはないの」

 

「そんな...滅相もない。そんなことを頼みに来たのではありません。——には...その......」

 

「ハッキリ言いなさい。貴女と私の仲でしょう?」

 

「はい...——にはこの—から逃げてもらいたいのです」

 

「この—から?何故?」

 

「世間で————が行われ始めてからこの—の空気は変わりました。——の活躍を知り、——のことを知っている—の年老いた者は昔と変わらず——のことを慕っておりますが、逆に—の若い者は——のことをあまり知らない故に——を————で—そうと企む者が増えてきているのです。そして近々——を捕まえようと年老いた者の話を聞かず、策略立てています。私は——に捕まってほしくない。死んでほしくないのです!」

 

「そう...でも私はここを離れることはできないよ」

 

「何故!」

 

「私にはここを守るという大切な役割を担っているの。それを放棄するわけにはいかないよ」

 

「...そう、ですか......」

 

「せっかく教えに来てくれたのにごめんね。でも私は絶対に大丈夫だよ」

 

「...わかりました。ですがもしものときはお呼びください。この私『ハル—・グ——ン——』。——の為なら命も捧げる覚悟です」

 

「...ありがとう。でも貴女は生きて。生きて...そして後世に今の人間達の愚かな行為を伝えて。それを貴女はできるはずだよ」

 

「...はい。我が命は——のためのもの。——が生きてというのならばこの忠誠心にかけて生き抜きましょう。例えこの肉体が滅びようと、我が精神は不滅です」

 

「...じゃあ契約をしましょう。貴女はこれから先死んでも、再び新たな命にその精神を宿らせ、生きていくと」

 

「はい。喜んで」

 

 

 

 

 

魔女だ!魔女がいたぞ!

捕まえろ!捕まえて十字架に吊るせ!

火を灯せ!こんな気味悪い家、燃やすんだ!

気味の悪い子...誰がこんな子を放っておいたのよ

全く、老人共はなんでこんなのを慕ってるんだかねぇ

こんな子、さっさと燃やしちゃえばいいわ

ん?何薄ら笑いなんてしてやがる!さては何か隠してやがるな!

おい!あの方たちはまだ着かないのか!

あの方たちが着くまで何日でも吊るしておけ!

へへっ、干からびるのが先が、飢え死にするのが先か...あるいは生き残って燃やされるのがオチか......

魔女が殺されるってだけで酒の肴には困らねえなぁ!

へっ、さっさと火を灯せねえかなぁ......

 

 

 

 

 

「っ...!...なんで、こんなことに......」

「それが人間という種族だからだ」

「だからって...——は何も悪いことしてないんだぞ!?むしろ—を救ったのに......」

「彼らの中ではそんな過去、なかったことにされたんだ」

「そんなっ...!そんなことって......」

 

「......」

 

「...ねえおしえて。どうしたらこんなせかいをただすことができるの?」

「それはお前自身が行動を起こせばいいんだ」

「ならおしえて。いまのわたしになにができるの?」

「...一度死んで、なってみるか?」

「...こんなわたしでもなれるの?」

「そんなお前だからこそなれるんだ」

「ならなりたいな。こんなせかいをただしく変化させる力をもったそんざいに」

「長い時間が必要になるぞ」

「だいじょうぶ。じかんはたっぷりあるよ」




後書き~

眠い。終わり!

仙人の攻撃をくらい落ちた榛奈さん。はてはて、どこへ落ちたんだろうか

次回もゆっくりしていってね!

*感想、評価いつでもお待ちしております!誤字報告もいっぱいくれてもいいんだからねっ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第40話『地底へ続く洞窟の中です』

前書き~

お久しぶりです。本日は博麗神社秋例大祭ですね
私はというと財布を無くして(後日警察署から通知が来て見つかりました)ライブに行けないわ例大祭も行けないわってやってて、その代わりにこれを書いてました
いやぁ、一応月一での投稿を最近は心がけていまして、その中でも毎月1日投稿をしてたんですが、何せやることが多い。せめて10月の初め頃には投稿しようとしてたら既に中旬......
楽しみにしてくれていた読者の皆様には大変申し訳ないです
と、長ったらしい前書きですが、今回は榛奈さん、洞窟の中に突入できたみたいですよ
では、ゆっくりしていってね!!



[地底の横穴]

 

 

 ヒューって風を切る音が耳元でする。それと自分の身体が背中から重力に沿って落ちている感覚も

 薄目を開けてみれば光なんて映らない真っ暗な場所

 何があったっけって思い返せば「あ、そういえばあの時仙人の攻撃を受けて......」って思い出した。私地上で仙人と戦って、それで攻撃を食らって落ちたんだ

 で、今現在真っ暗な中を落ちているってことは、作戦通りあの仙人から逃れつつ地底の穴に入り込むことができたというわけか

 順調順調。案外作戦通りに行くもんだなぁ......

 

——まさか本当に作戦が上手くいくなんて思わなかったよ。てっきり落ちた時仙人に拾われるかと思ったのに......——

 

 そんな予想ごめんだぜ。それに即興で考えた割にいい案ではあっただろ?『華扇の攻撃を食らうふりしてその反動で穴に落ちる』作戦。最初に強い気を出して相手に緊張を与えつつ、実際は弱くて拍子抜けさせて、更に挑発もして威力が強い技使わせて...ってね。そのまま落ちれば「どうせ下で食われる」と思わせて拾われない。ホント、こんな作戦を思いついた私の頭脳が憎いぜ

 

——はいはい。それよりそろそろ落下から飛行にチェンジしたらどう?このままだと地面に激突するかもしれないよ?——

 

 おっと、そうだった。ちょっとの間とは思うけど気絶してたんだし、どれぐらい落ちてるのか分らんしな

 魔力で落下速度を緩めて、落下する時に収納した箒を取り出してっと。後は跨って落ちる方向に体の向きを合わせたら......

 よし、これで自分の速度で落ちれるぜ

 後は地面が見えてきさえすればいいけど......はて、この穴はどこまで続くんだか

 

——地底だし、ずっとずっと奥深くじゃない?——

 

 うわぁ長い。どうせならそこまで気絶してた方が楽だぜ

 

——それで地面にぶつかってジ・エンド?——

 

 それは勘弁だ

 

?「あれ?人間さんだ。こんにちは!」

 

榛「おう、こんにちは」

 

?「どこに向かってるの?」

 

榛「地底って所だ。そこに用があってな」

 

?「へえ。ここからだとちょっと遠いけど頑張ってね!」

 

榛「ああ。お前さんもあんまり外に出歩いてお姉さんに心配かけさせるなよ」

 

?「うん!分かったー」

 

 そうか。こっからだと遠いか。ならちょっと魔力で落ちる速度を上げるかな

 

——そうだね。出来るなら移動時間は短縮させたいし——

 

 ああ。その通りだ———

 

 

 あれ?私今誰かと話してたか?

 ...ま、いっか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 気絶から復帰して数時間。かれこれずっと飛びっぱなしで、真っ暗なのは相変わらず。さすがに本当に何も見えないのは何かあった時マズいから魔法で視力を上げてるけど、それでも先が真っ暗だ

 そろそろ何か見えてきてもいいだろ?何か見えてきてよ......

 って、ん?なんか細い線があちこちに......

 

——っ!?まずい!急いで速度緩めて!!——

 

 っては?いや待てこの速度で緩めるっつったってそんな無茶な......

 

——いいから!とにかくあの糸に絡まったりしたらダメ!——

 

 はぁ!?そんなこと言われたって......

 そう言っている間にも前方には細い糸が至る所に張り巡らされていて、まるで蜘蛛の巣のようで...“蜘蛛”?...あっ!

 

——やっと気が付いた?!とにかく妖怪に喰われたくなかったら絡まらないでよ!——

 

 お、おう!がんばる!

 そう言って意識を集中する

 そういえばこんなこともあるかもって予想はしてたんだった。でもこれが来たってことはそろそろ地底は近いかな?

 とにかく今は速度を下げつつ避けることに集中しよう

 まるで3D縦スクロールのゲームをリアルで遊んでいる感覚になってきてるけど、ゲームオーバー=死だし、リセットは効かないんだから必死にならなきゃ。何度も言ってる気がするけど、地底に着く前に終わるとか嫌だよ私

 

——そう思うんだったら速度減速!避けるのに神経集中させて!——

 

 はいよっ!

 だんだんと迫りくる糸をどう動いたら避けれるのか考えつつ体を動かす。そうやって避けて避けて避けて......

 あまりにも必死になってたせいか視界から糸が無くなった途端ふっと力が抜けてしまった。でも次の瞬間には気を引き締める

 だってさっきのが本当に蜘蛛の糸だったのなら、次に来るのはご本人様の登場じゃないかなってね

 

?「おお?すごいねぇ、まさかあんなに速度出してたのに避けきっちゃうなんて」

 

榛「...まあ、地上でその手のことに関してはよくやってたからね。弾避けゲームとか」

 

?「ああ、地上で流行ってる遊びだあね」

 

榛「で、貴女は誰?見たところ蜘蛛に関係した妖怪のようだけど」

 

 そう言いながら会話相手を見据える。金髪をポニーテールにしていて、茶色のリボンを結んでいる。瞳は茶色で、服装は黒いふっくらした上着の上にこげ茶色のジャンパースカートを着ていて、スカートの上から黄色のベルトのようなものをクロスさせて何重にも巻き、裾を絞った不思議な格好の女の子。どう見たって1ボスですね分かります

 

ヤ「私?私は黒谷(くろたに)ヤマメ。見ての通り土蜘蛛の妖怪よ。そういうあんたは?」

 

榛「私は霧雨榛奈。見ての通り魔法使いだよ」

 

 そう言って一礼する。相手は私を食べようとしてるのかも分からない状態だけど、とりあえず礼儀は大切。礼儀を欠かして即パクッとかやだもんね

 だから警戒はする。だってヤマメの能力を知っているから

 

ヤ「魔法使いね...人間じゃないのかい?」

 

榛「人間ではあるよ。人間の魔法使い」

 

ヤ「あら、ならよかったわね。上の糸に絡まらなくて」

 

榛「まあ私としてはそれでよかったけど、あなたにとってはよくないんじゃないの?餌が取れなくてさ」

 

ヤ「別にそこまでして食う必要はないもの。それにせっかく地底に遊びに来てくれたんだし」

 

榛「ま、私としても無駄な争いは避けたかったから、その考えは嬉しいよ」

 

ヤ「んー、だけど少し付き合っちゃくれないかい?ちょっと流行りのスペルカードとやらを試したくってね」

 

榛「...なんで地底にまで広まってるんだよ。あれはまだ地底で流行らなくたっていいだろうに」

 

ヤ「そりゃ私達だってその遊びとやらに参加したいからね」

 

榛「はぁ...出来るだけ先を急ぎたいから、また今度ってのは?」

 

ヤ「それまでにあんたが生きてる保証がないじゃない」

 

榛「逆に死んでる保証だってないんだが...まぁいいか。被弾もスペルも一回一枚だよ。その条件なら付き合ってあげる」

 

ヤ「あら、人間の癖に偉そうだねぇ。いいわ、その条件であんたを打ち落としてあげる!」

 

榛「その言葉、一部変えてお返しするぜ!!」

 

 

 

 

 

~少女弾幕中~

 

 

 

 

 

ヤ「くっ...まさか私が人間に負けるなんてね......」

 

榛「ふぅ......これ弾幕ごっこじゃなきゃ私の負け確定だろ......」

 

ヤ「凄いわねあんた。上の糸も避けて私の弾幕も避けるなんて」

 

榛「まあ地上でそれなりに遊んでるからね。弾幕ごっこ」

 

ヤ「経験が違ったってわけね。まあいいわ。じゃあ改めてようこそ地底へ。もう少し下にいけばこの洞窟を抜けれるわよ」

 

榛「教えてくれてありがとう。じゃ、私は旧都に行くね」

 

ヤ「ああ、それなら気を付けなさいよ。旧都は鬼が沢山いるからねぇ」

 

榛「うん、それは知ってるよ。それじゃあね」

 

 そう言って私は急ぎ足でヤマメと別れる。こんなところで時間を食う予定はなかったし、目的地が近いと分かると心が早く行けと急かしてくる。今はその心に身を任せてもいいだろうから、さっさと降りる。さ、地底まであと少しだっ!

 

 

 

ヤ「...“知ってる”って、どうして地上の人間が地底のことを知ってるのかぁね......」




後書き~

ヤマメに会って挨拶代わりの弾幕ごっこを吹っ掛けられる榛奈さん
何とか勝ち、先を急ぎます
さてさて、このまま何もなく地底の旧都へ辿り着くことができるのでしょうか......

へ?途中で誰かに会わなかったかって?
いやぁ、気のせいですよ。あるいは無意識に何かを感じ取ったのでは?
そろそろ本格的に寒くなってくる季節。はろうぃんも近いですね。
次は、はっぴーはろうぃんの次の日に出せるといいなと思いつつ、
次回もゆっくりしていってね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第41話『嫉妬の姫の登場です』

前書き~

...皆様、はろうぃんはいかがお過ごしだったでしょうか。私は同学年に沢山「トリックオアトリート」と言ってお菓子を貰いました。その場でお返しもしました。
...え?前回はろうぃんの次の日に投稿すると言ったって?
エ?ナンノコトデスカ?キョウハ11月1日デショウ。オクレテナンテオリマセンヨ

......(汗)

ぜ、前回のあらすじィ!
地底の穴へ入ることに成功した榛奈さん。途中土蜘蛛の黒谷ヤマメと戦闘に入りましたが勝負内容が弾幕ごっこだったことによって勝利。先に進みました。
残念、キスメの出番はなかった。
それではゆっくりしていってね!



[地底]

 

 

 よ、ようやくだ。ようやく私は地底に辿り着いたぞぉぉぉ!!

 見ろ!目の前に広がる光景を!

 光が無く暗い道を抜ければ火で明るくともされた旧日本のような景色を!

 赤やオレンジで照らされた旧き都を!

 その奥にそびえ建つのはもしやあの屋敷では!?

 ここまで...ここまで長かったっ!休暇を取りに主に会いに行けば人里で盗難事件に遭遇するし、入り口では山の仙人に会って戦う羽目になったし、さっきは病気を操る土蜘蛛に会って戦う羽目になったし......

 それでも私は着いたんだ!この地底に!妬み嫌われた妖怪達の暮らす場所へ!

 

榛「ぅぅ...いやっふぅー!」

 

——喜びすぎ——

 

 いやぁ、嬉しすぎて思わず......

 だってあれだよ?原作の舞台だよ?道中なんだよ?聖地巡りみたいな感覚になってるんだよ

 

——君がいつも暮らしてる紅魔館だって聖地なはずだけど?悪魔の館だけど——

 

 それはそれ。というか転生前の記憶とかが戻った時には既に紅魔館で師匠に弟子入りしてたんだし、あんまり聖地って感じじゃなくなってるんだよな

 人里も同じで、紅魔館で暮らした時間と同じだけの時間を過ごしてるけど聖地って感じがしないんだよな。どっちかというと故郷とか実家みたいな感じで

 

——まあ5年も暮らしてればそんなものかもね——

 

 そうそう。だからこうして人里、紅魔館以外の原作の舞台って地底が初めてなんだよ。いやぁまさか冥界でも竹林でもなく地底が初めて訪れる聖地になるとはなぁ......

 

——そうやって思いに耽るのもいいけど、一先ず旧都に行かないと。ここに来たのは観光じゃないんだから——

 

 おっと、そうだった。

 私が地底に来たのはあくまでも修業のため。そこを忘れちゃいけないよな

 さ、じゃあさっさとお前の言ってた修業を付けてくれる妖怪の元へ案内してくれ

 

——はいはい。ま、とりあえず旧都に向かってよ。そこから案内するからさ——

 

 はいよ。じゃあ目的地、旧都!いざ全速ヨーソr——

 

——それ以上はやめてよ!?——

 

 ...はーい......

 

——しょんぼりしないでよ......——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今度は味わうようにゆったりと旧都に向かって飛んでいると、少し何かが見えてきた

 

榛「...ん?あれは......」

 

——どうかした?——

 

 あれ、川じゃないか?それに橋も...人影もだ

 

——...どうやらまた原作の道中の舞台に来たみたいだね——

 

 ...ってことはあの人影は......

 

——うん。原作キャラかもね——

 

 うわぁ、ってことはあの妖怪だよなぁ

うーん。あんまり会いたくない

 

——何で?せっかく会えるのに——

 

 そりゃ原作キャラに会えるってのは嬉しいけど、それはそれ。これはこれ。さっきのヤマメもそうだけど、能力的にあんまり会いたくないんだよなぁ

 

——ふぅん。そういうものなの?——

 

 そういうものなの。私は長生きしたいんだから

 

——だったら里で大人しくしてればいいのに——

 

 それは面白くないだろ?やっぱ楽しく生きたいじゃないか。せっかく転生前の記憶、原作知識も持ってるんだしさ

 

——あっそ——

 

 ...反応薄いなぁ......

 

 

 

?「...こんなところに人間が来るなんてね」

 

榛「こんにちは。それともおはよう?貴女は何の妖怪なのかな?」

 

?「見て分からないなんて、妬ましいわね」

 

榛「その程度で妬まれても困るよ。橋姫さん?」

 

?「...分かるんじゃない」

 

 暗い中でも視力を上げているから分かる。金髪のショートボブ。緑の目をしていて、耳は尖がったいわゆるエルフ耳だ。そして外の世界のある国ではよく見る礼装に似た服。主に和服が中心の幻想郷でその服を着ている人は限られてくるだろう。ここまで特徴があれば分かりやすいよな

 

榛「残念、橋姫がどんな妖怪なのかは実のとこ分からないんだよ。外で有名なのは夫を取られた橋姫が憎しみを抱いて鬼になったとか」

 

?「そんな感じの妖怪よ」

 

榛「ふぅん。他にも橋を守る女神だとも聞いたけど......」

 

?「それはあまり私を捉えた説明ではないわね」

 

榛「そっか。それで貴女は誰?」

 

?「人に名を尋ねる時は自分からじゃない?」

 

榛「それもそうだ。私は...ルナ。空から落ちてきた記憶喪失少女だよ」

 

?「嘘ね」

 

榛「即答かぁ。ま、嘘なんだけど。...霧雨榛奈。地上に生きる人間の魔法使いだ」

 

パ「魔法使いなのね。私は水橋(みずはし)パルスィ。さっきあなたが言った通り橋姫よ」

 

榛「パルシィ?」

 

パ「パル“ス”ィよ。人の名前を間違えないで」

 

榛「あはは。ごめんごめん。冗談だよ。地上式ジョーク」

 

パ「地上じゃ人の名前を間違えるのが流行っているのかしら?」

 

榛「まっさかー。人の名前を間違えるだなんて礼儀知らずにもほどがあるじゃないか」

 

パ「さっきあなた私の名前を間違えたわよね」

 

榛「それはそれ。これはこれ。それより旧都ってこの先であってる?」

 

パ「強引に話を逸らしたわね」

 

榛「いいじゃん。で、答えは?」

 

パ「...この先よ。でも行かない方がいいわ。あなたは輝かしい光の注ぐ地上の人間。あそこに行ったらあっという間に食べられるわよ」

 

榛「生憎とそう簡単に食べられるほど弱くはないのでね。...でもまぁ、もし妖怪に食べられるのなら主に食べられたいなぁ」

 

パ「自分から妖怪に食べられたいだなんて変な人間ね」

 

榛「妖怪に食べられたいんじゃなくて、我が主にだったら食べられたいと思ったの。極力食べられたくないし、死因は寿命でお願いしたいけど」

 

パ「なら尚更地上に帰った方がいいわ。ここはいるだけで寿命を縮める...かもしれないわよ」

 

榛「“かも”なら私は食べられないんだろうね。これでも強いので」

 

パ「愚かな人間ね。せっかく警告してあげているのに」

 

榛「警告じゃなくて心配だったら私としては嬉しいんだけどなぁ」

 

パ「警告よ。私が人間を心配するなんてあるわけないじゃない」

 

榛「そっか。残念。ま、ともかくこの先に私は用があるんだ。先に行かせてもらうよ」

 

パ「ダメだと言ったら?」

 

榛「無理にでも通らせてもらう」

 

パ「...なら通れば。警告はしたわよ」

 

榛「...貴女は勝負を仕掛けてこないんだね」

 

パ「私はあの蜘蛛と違って好戦的ではないもの。それに......」

 

榛「“それに”?」

 

パ「...あなたは今何かに嫉妬を抱いてる」

 

榛「...え?」

 

パ「人が誰かを嫉妬すればそれは私の糧となるわ。そしてあなたの嫉妬も私の糧となっているの。せっかく食事をくれているのだから、生かしておいた方がいいでしょ」

 

榛「いやまあそうだけど...私が何かに嫉妬しているって?」

 

パ「あら?自覚はなかったのね」

 

榛「...ああ。自覚はない。というかその話自体疑うね。一体この私が何に嫉妬しているってのさ」

 

パ「それは自分で探しなさい。私はただその嫉妬を食べるだけよ」

 

榛「ああそうかい。よく分からんね、妖怪の話って。力ある妖怪はどうしてそうよく分からん話ばかりするのかね」

 

パ「あなたの理解力が少ないだけよ。そこまで難しい話はしてないわ」

 

榛「そりゃ貴女達基準じゃそうだろうさ。私達人間基準で話せとはあまり言えないけどさ」

 

パ「そう。それより早く行けば。用があるんでしょ」

 

榛「おっとそうだった。じゃあねパルスィ!また時間があったらお茶でもしようね!」

 

パ「それまであなたが生きていればね」

 

榛「あっはっは!私は死なないのぜぇ!」

 

 あっという間に遠ざかる橋と姫。嫉妬心を操るって知識で知ってるから警戒してたけど、案外良い人なんだな。心配もしてくれた...んだよね?そう思ってた方がいいよね。精神の健康のためには

 ...でも、私が何かに嫉妬してるって、何にだろう

 

 

 

パ「ホント、変な人間ね。こんな私ともっと話がしたいだなんて。そう思えるあなたが妬ましいわ」




後書き~

あっ、『ルナ』って私が書いてるもう一つの小説の主人公です。ちょっと自分のとこでパロネタ使ってみました。彼女と榛奈さんは色々と違うところがありますけどね
そして今回後半はほぼセリフのみでしたけど、たまにはいいよね!決してさぼってませんよ?ちゃんと地文も仕事しました。ほんの少しね

それはともかく次回もゆっくりしていってね!


...だんだん執筆時間が取れにくくなったなぁ......


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第42話『旧都です。なんであなたがいるんですか!?』

前書き~

今年も残すところ一か月もありませんね。今回も少し遅刻のほのりんです
さて、前回の榛奈さん。旧都へ向かう途中で橋姫と遭遇。特に何もなく進みました
今回は旧都に着くようですが......
今回もゆっくりしていってね!!


[旧都]

 

 

 橋姫と別れてしばらく道に沿って飛んでいれば着くのは日の光の届かない地底でも火で明るく灯された旧き都であった

 入り口には扉の付いていない門が建っていて、都の中では人ならざる者達が行きかっていた。中には人の姿すらしていない妖怪もいる。皆それぞれ騒いだりお酒を飲んだりして騒々しい。どうやらここが旧都で間違いないさそうだ

 

榛「はー。まさか本当に着いてしまうとは......」

 

――何言ってるの。さっきから見えてたのに――

 

 それでもいざ目的地に着くと実感が湧かないの。そりゃ見えてたけどさ

 

――はいはい。それよりも早く彼の元へ行こう。待ちくたびれてるかも――

 

 “待ちくたびれてる”って私が今日来ること知ってるのか?

 

――ちょっと連絡を取り合ってね――

 

 どうやって?

 

――禁則事項です♪――

 

 それを使われると困る......

 

――ま、とにかく行こ。道案内は向こうから来るだろうから、適当に歩いてれば会えるよ――

 

 はいよ。とりあえず真っ直ぐ歩くか

 

 そう会話して門をくぐり歩く。すると周りから聞こえてきていた騒々しさが別のものへ変わるのを感じた

 できるなら絡まれるのは勘弁なんだけどなぁ......

 とか思ってたら目の前に巨体が立ちはだかった。視線を上にあげるとそこには赤い体、二本の角を持った所謂赤鬼が私を見下ろしていた

 はぁ、やっぱりそうなるか......

 しょうがない。とりあえず強気でいきますか

 

赤鬼「よぉ、嬢ちゃん。ちょっといいか?」

 

榛「おういいぜ。何か私に用か?」

 

赤鬼「嬢ちゃん、人間だろ?こんな地下深くまで何しに来たんだ?」

 

榛「すごいな。さすがは妖怪。私を一目で人だと分かるとは」

 

赤鬼「そら分かるだろう。で、人間が何でこの旧都にいるんだ」

 

榛「何、ちょっと人探しに来ただけだ。私はそいつがここにいると聞いてな」

 

赤鬼「ほう、なるほどな」

 

榛「だからここを通してはくれないか?」

 

――気付いてる?――

 

 ああ。周りが囲み始めてやがる。まあこの程度、想定済みではあるがな

 ああくそ。そのニヤケ面、今すぐブッ飛ばしてぇ......

 

赤鬼「それはできねぇ相談だな。俺みてぇな優しい妖怪ならまだしも、ここには人間を食う妖怪がうじゃうじゃいる。食われねぇうちにさっさと地上に帰ってねんねした方がいいぜ」

 

榛「はははっ。自分で自分を優しいという妖怪がいるなんて面白いな。だが生憎と私はお前らのような妖怪に食われるほど弱くはないんでな。ご心配ご無用だ」

 

赤鬼「おいおい、せっかく人が心配してやってるのにその言い草はねえじゃねぇか??」

 

榛「何を言ってる。人じゃないだろうに」

 

赤鬼「ハッ、違いねぇ。ってことはよ、嬢ちゃん。喰われる覚悟はできてるってことだよな」

 

榛「ん?そんな覚悟はいらんだろう?お前“達”程度、すぐに片付けられる」

 

――あんまり挑発すると後が怖いよ――

 

 知るか。私はさっさと先に進みたいのに立ちはだかってくる奴が悪い

 それにこいつらは美鈴ほど強くもないからな。一人くらいならいけるだろ

 

赤鬼「へっ。言ってくれる。なら一発、俺たち妖怪の恐ろしさを教えてやらなきゃなぁ!!」

 

 そう言いながら赤鬼は右手の拳を突き出してくる。安直な攻撃だが、スピードが違う。見えないわけじゃないが、拳をはっきり目で捉えられるほどの速度ではなかった

 だが......

 

赤鬼「んなっ!?」

 

 私の能力があれば、この程度の攻撃は喰らわない。だって守ればいいのだからな

 

――...あまり自分の能力を過信しないで――

 

 何を言ってる。こいつら程度なら平気だろうが

 

――.........――

 

榛「...ふん。たかが人間、と甘く見るなよ」

 

赤鬼「く、クソがッ!」

 

 今度は左手を突き出してくるが、それも通らず、私の目の前で見えない何かに阻まれて止まる。向こうからすれば壊れない壁を殴っている感覚かもな

 

赤鬼「な、なんだこれ...まるで見えねぇ壁を殴りつけてるみてぇだ」

 

 ざわ...ざわ......

 周りで見てた妖怪たちの雰囲気がまた変わる。さっきまでは格下を見るような眼だったのに、まさか格下の相手が自分たちと同じぐらいの力を持つ鬼の拳を受け止めるなんて思わなかっただろう

 だが私は元々この能力は鬼の拳だって受け止められると何となく感じていた。だから心に余裕を持つことができる

 まぁ、こちらの攻撃は力不足で通らないだろうけどな......

 

赤鬼「...てめぇ、何者だ」

 

榛「霧雨榛奈。地上に住む人間の魔法使いだ」

 

 

 

赤鬼「...がっははははは!そうかそうかっ!人間か!がははははは!」

 

榛「...え。ど、どうした......?」

 

 名乗るといきなり笑い出す鬼。戸惑い周りを見れば妖怪達も同じような反応だった。皆笑う。それも嘲笑うのではなく、まるで楽しそうに

 よく分らん。何がどうなってる。私が人間だってのは最初から分かってただろうに

 

赤鬼「あー、悪い悪い!いやなんせ俺たち人間と会うのは久しぶりなんだ。それも弱いやつじゃなく、嬢ちゃんみたいな強いやつとはいつぶりだろうってぐらいなんだ。しかも昔いた人間みたいに正面から来るとはな!まさか嬢ちゃんのような人間がまだいたとは驚いた!」

 

榛「そ、そうか......」

 

 さっきと打って変わって砕けた話し方をする赤鬼

 なんだなんだなんなんだ。昔いた人間みたいってどういうことだ?

 

赤鬼「なあ嬢ちゃん。よかったら俺と戦わないか?」

 

榛「えっ......」

 

 うわっ。超断りたい

 って思ってるのに周りは「いいないいな!」とか「おいおい、俺だって戦いたいんだぞ!」とかそんな感じの声が湧く

 いやだいやだ。私は防御ができる程度で攻撃はあなた方相手だと無に等しいんだからなっ!?

 

赤鬼「な?ちょっとだけでいいんだ。勿論命だって奪いやしないし喰いもしない。いいだろ?」

 

 嫌良くない。全く良くないだろ!

 あなた方私を何だと思ってるんだ!こちとら純粋な人間なんだぞ!?ちょっと吸血鬼の館で働いてて、何度か死にかけてて、能力のおかげで防御が固いだけの弱い人間なんだぞ!?それなのに戦いたいとか馬鹿なのか!一発で死ぬわ!

 

――「私は弱くない」とか言ってた人が何言ってるんだか――

 

 それはそれ。これはこれ

 鬼相手とか余裕で死ぬからな!?

 

榛「い、いや...あの...えっと......」

 

 戦いたくない。マジで戦いたくない。というか死にたくない

 ど、どうしたら......

 

?「おいおい、そこまでにしとけ。彼女が困ってるだろ」

 

赤鬼「へっ!?あ、兄貴!?」

 

榛「は?“兄貴”?」

 

 声のした方を向けばそこにいたのは紺を基調した所々に白銀の線が入った和服を着た黒髪黒眼の男性だった

 というかすごい知ってる顔なんだけど......

 

龍「よぉ榛奈。久しいな。だがこんな短期間にもう一回会うなんてこと今までなかったし、久しぶりでもないか」

 

榛「あ、ああ。そうかもな」

 

龍「あ、なんで俺がここにいるんだ?って思ったんだろ?それなら道すがら教えてやるから、とりあえず移動しよう」

 

榛「わ、わかった」

 

 くっ、見事に私の思考を当てやがった。ま、まぁ大体の人がこういう時に思うことを考えてただけなんだけどな

 とりあえず龍の言う通り場所を変えよう。色々話を聞きたいし

 

赤鬼「ま、待ってくれ兄貴。俺その嬢ちゃんと戦いたいんだが......」

 

 まだ戦いたい気でいたのか!?私は本当に嫌だぜ!!

 

龍「おおそういやそんなこと話してたな。だが今はダメだ」

 

赤鬼「そんな。せっかく俺たち鬼とまともに戦えそうな人間に会えたのに」

 

龍「おいおいお前ら。こいつがお前らとまともにやり合えると本当に思ってるのか?」

 

赤鬼「え?どういう意味で......」

 

龍「こいつは人間だ。ちょっとその場の雰囲気に流されやすくて、そのくせ人間には打ってつけな能力を持っただけの弱いやつだ。その人間が、鬼とまともにやり合えると思ってるのか。と訊いているんだ」

 

赤鬼「だが確かに俺の拳を受け止めたんだ。その人間は相当のやり手だと俺は思うんだよ」

 

龍「それは能力あってのことだ。能力が無ければ妖怪にすぐ殺されるような弱いやつだよこいつは。大体こいつの攻撃だってお前らに通用するわけない。今のままならな。てなわけで悪いが今こいつを死なせる訳にはいかないんでね。対決だか喧嘩だかはしばらく待ってくれ。こいつを鍛えるからよ」

 

赤鬼「...わかった。兄貴がそう言うなら」

 

龍「おう。納得してくれたようで何よりだ。それじゃ行こうか榛奈」

 

榛「...ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________

 龍の後をついていく形で私は旧都の中を歩く。周りの妖怪たちは私の姿を...人間を見て色々と話そうとして、龍の姿を見た瞬間やめる。さっきの赤鬼が龍を“兄貴”と呼んでいたことにも関係あるだろうが......

 

榛「なあ、そろそろ話してくれないか?何故お前が此処(地底)にいる?お前の住む場所は此処とは真反対の上だろう?」

 

龍「まあなに、色々あるのさ。例えばお前を鍛えるための下ごしらえをするとかな」

 

榛「...もしかしてあいつが言ってた教えてくれるやつってのは......」

 

龍「○○が言ったのは残念ながら今回は俺じゃあない。あくまで俺は話を通すのと案内役だけだ」

 

 ...違和感がして、その正体はすぐわかった。

 私はまだ龍に教えてない。さっきっから黙りっぱなしのこいつのことを

 そもそもこいつは最後に龍に会った日よりも後に私に干渉してきた。だから話したことあるわけない

 なのに何故龍は私の中にいる○○のことを知っている?

 

榛「...私は確かお前に話したことなかったはずだよな。私の中にいるこいつのこと」

 

龍「これでも神様だからな。お前の中にいるもう一つの人格みたいなやつのことは既に認知してるさ」

 

榛「ふぅん。全知全能ってわけか?」

 

龍「まさか。知ってることは知ってるし、知らないことは知らない。できることもできないこともある。神だって完全な奴は少ないぞ。というか完全だとつまんないじゃないか」

 

榛「そうかよ」

 

龍「ははっ。ま、話を順番に話すとな。まずお前の中の奴が意識だけで俺に会いに来た。...いやこの表現は正しくないな。正確には奴が願い、俺を呼び出した。お前が寝ている間にな。俺はそれに応えて彼女と話したんだ。誰しもが持ってる意識だけの空間でな。そこで奴は俺に相談してきたんだ。『私を認知できるようになってきたってことはあの娘はそろそろ限界を感じ始めると思う。今のままの環境での成長の限界を。だから新しい成長の環境を作れないかな。あの娘はきっと今以上の強さを求めてるはずだよ』って。だから俺は提案した。誰かお前に強くなるためのやり方を教えてくれる奴を探してみる。それでそいつにお前を預けてみないかって。奴もそれに賛同し、さっそく探したんだ。そしたらこの地底に丁度いい妖怪がいた。そこで俺が此処の来て、その妖怪にお前を指南してやってほしいって頼み込んだんだ。色々あったが話はついた、ってやってた時に丁度お前が例の成長の限界を自覚し始めたんだな」

 

榛「そんなことがあったのか......」

 

 まさかあいつがそこまで私のことを考えてくれていたとは......

 普段は素っ気ないくせに、隠れて心配してくれてるなんて優しいんだな。お前

 

――.........――

 

 ...いつまで黙ってるんだか。

 

榛「もしかしてさっきあの妖怪がお前を“兄貴”って呼んでたのは......」

 

龍「あぁ、あれはちょっと最初に来た時に色々とな。それ以来何故か俺のことを兄貴兄貴って呼ぶんだ。まぁそう呼ぶのはノリのいい奴らか、或いは俺と戦ったことのある奴だけだけどな」

 

榛「...さっきの鬼はそこまでノリのいい奴には見えなかったけど」

 

龍「あいつとは素手で戦ったなぁ」

 

 ...つまり鬼と素手の殴り合いをしたんですね分かります

 はは、さすが神様......

 

榛「で、その私が限界を感じ始めたタイミングであいつはお前に言ったってことか?」

 

龍「そうそう。だから旅立つ前日ぐらいにまた連絡くれって言って、俺は俺で一度離れた此処にまた来たってわけだ。そして今日お前が来るってことは伝えてある。もう待ち構えてるぞ」

 

榛「まじか。待たせてしまったな」

 

龍「そんなことはない。むしろもう少し遅くなるかと思ったのに、意外に早かったな」

 

榛「そうか?途中仙人とか土蜘蛛とか橋姫とかと会ってたぞ?」

 

龍「だからこそもっと遅くなると思ったんだが、戦闘にならなかったのか?」

 

榛「いや、仙人には殺されかけたし、土蜘蛛とは強制的に弾幕ごっこをさせられたし、橋姫とは話すだけだったな。心配してくれたけど」

 

龍「...なあお前、殺されかけること多くないか?」

 

榛「いやそんなことは...ない...はず......」

 

 あ、あれ?そんなことない...よね?私極力戦闘は避けたい派だよ?遊びはともかく

 

龍「ま、いいか」

 

榛「...そうだな」

 

 人生そんなもんだよね。殺されかけることが多い人生とか勘弁だけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 そんな会話をしながら奥へ奥へと進んでいけば大通りからは離れていって、気づけは人気...じゃなくて妖気?がなくなっていた。どうやら旧都の中でも妖気の少ない場所にその妖怪とやらは住んでいるようだった

 しかし周りに建つのはまるで寝るためだけに建てられたような小屋ばかり。表の酒屋ばかりとは正反対だな。まあ妖怪の都だし私には関係ないけどね

 と周りを見ながら歩いていたら前を見るのをおろそかになっていて、足を止めた龍の背中に追突してしまった

 

榛「わぷっ」

 

龍「っと。ちゃんと前見ながら歩いてないと危ないぞ」

 

榛「あはは、悪い悪い。ちょっと里とは違った感じで思わず見渡してたんだ」

 

龍「里と違うのは当たり前だろう。ここは妖怪の都なんだから色んなところが妖怪基準だ」

 

榛「それは分かってるんだけどな」

 

龍「ま、田舎者が都会に出てきたときと同じような反応するのも無理ないか」

 

榛「...それは私が田舎者だと言いたいのか?」

 

龍「まさか。お前は外来人なんだから、幻想郷の中じゃ都会の人間のようなものだろう?住んでるとこなんて貴族の館だ。そんな人間が田舎者だなんて、それだと幻想郷中の人間妖怪が田舎者になっちまう」

 

榛「ふん。本心はどうだかな」

 

龍「おいおい。...ま、それはともかくついたぞ。ここに例の妖怪がいる」

 

榛「...こんな辺鄙なとこにか?」

 

龍「まあ確かに大通りからは離れているが、逆に大通り付近に住んでると昼夜問わず喧しいから眠れないだろ」

 

榛「あ、そう考えれば確かにこれぐらい離れてたほうが逆にいいのか」

 

龍「そういうことだな。それに対して不便でもないらしいぞ」

 

榛「ふぅん。そうなのかー」

 

龍「そうなのだー」

 

榛・龍「わはー」

 

?「...なに人の家の前でふざけている?というか話が長い。待たせすぎじゃ」

 

 別にわざとふざけていたわけじゃなくて、ただそうなのかーって言ったら龍も乗ってきただけで、そしたら思わず言ってしまうだろ?“わはー”って

 ってこのおじいさんどちら様?目の前の小屋の扉から出てきたけど......

 

龍「おおじいさんすまんな。ほら、こいつが例の魔法使いだ」

 

?「ほう。こやつがお主の話しておった娘か」

 

榛「え、えっとはじめまして。霧雨榛奈です」

 

妖忌「うむ。儂は魂魄(こんぱく) 妖忌(ようき)と申す」

 

榛「...はぃ!?」

 

 お、おいまて今この爺さん魂魄妖忌とか名乗らなかったか!?

 魂魄といえばあの白の玉の楼の庭師の家系の名だったよな!?

 しかも妖忌って現庭師の祖父じゃ......!?

 

妖忌「どうした?」

 

榛「い、いえちょっと待ってください。おい龍!!」

 

龍「お?どうしたそんな驚いた顔して」

 

榛「そりゃ驚くだろ!?ちょっと面貸せ!」

 

龍「お、おいおい。そんなカツアゲするような学生っぽいこと......」

 

榛「い・い・か・ら!こっちこい!」

 

 一旦妖忌から離れ、ついでに少し魔法かけて声が聞こえないようにして龍と小声で話す

 

榛「(お、おいどういうことだよ。何であの魂魄のおじいさんがいる。ここは地底だろ?冥界じゃない)」

 

龍「(その辺りは俺も知らん。地底でお前の師となりそうなのを探した結果、偶々あのじいさんがいただけだ。で、以前弟子がいたんならまた弟子を取るくらいはしてくれるだろうって思っただけだし)」

 

榛「(そ、それであ、あの庭師の師に声かけたってのか?)」

 

龍「(その通りだが...何をそんなに驚いて...って怯えてるのか?)」

 

榛「(そ、そりゃ怖いもん。だって相手はあのピンクの悪魔さえ苦手とする厳格な存在だぞ?その相手とか怒られるかもって怖くもなるわ......!)」

 

龍「(ああ、その辺りは心配しなくてもいいぞ。どうもその辺りは現役を引いた身だからか、緩くなってるみたいだし)」

 

榛「(そうはいうけどなぁ......!)」

 

妖忌「おい、そろそろいいか?」

 

榛「はははぃ!いいです!大丈夫ですぅ!!」

 

妖忌「そうか。ならひとまず上がるとよい。茶を出してやろう」

 

榛「あ、ありがとうございます!」

 

 お、怒られるのは嫌だよ私。怖いの嫌いだもん

 と、ともかく怒らせないようにいけばいいんだよね。それで色々教えてもらえれば......

 

 素直に玄関から小屋に入れば中は言うなれば1Kのアパートみたいな感じだった。ホントに寝れればいいやみたいな。ただ隅々まで掃除されているのは、誰の目で見てもわかるくらいだ。荷物も整理整頓してあって、全く散らかっていない。私の部屋も職業柄日頃から片づけてあるが、彼には敵わないな。さすがだ

 

妖忌「そこに座って待っておれ。すぐ茶を入れよう」

 

榛「ありがとうございます」

 

龍「さんきゅー」

 

 ちょっ、龍!?

 そんな言葉遣いだと怒るんじゃ......

 そう思っていたけど、妖忌は特に気にした様子もなく茶を沸かし始めていた。龍の言う通り本当に緩くなっているらしい。私の知識だと自分にも相手にも厳しい、厳格な人だって情報だったんだけど、そう構える必要もないのかな

 龍は部屋の中央にあるちゃぶ台の周りに敷いてある座布団の一つに座る。私もそれに続いて隣の座布団に座る。しばらくすれば妖忌はお盆に載った急須と三つの湯飲みをちゃぶ台に載せた

 湯気の立つ熱々の緑茶。お茶の中では好きな分類に入るそれも、少しは解れたけど今の私は緊張で手が出ない

 今までの相手はそう大して礼儀とかいらなかった。でも今回はまさに事欠くとすぐ切られそうで怖い

 

妖忌「霧雨よ。あまり怖がるでない。別に取って食いやしないぞ」

 

榛「そ、それはわかってます」

 

龍「大丈夫だ妖忌。こいつはちょいと昔色々あってな。初対面の男相手だと怖がるだけだ。時期に慣れる」

 

妖忌「そうか。それは配慮が足りなかったな。すまない」

 

榛「い、いえ!妖忌さんのせいではありませんから!」

 

妖忌「ならばよかった。それで本題に入るのじゃが......」

 

 その途端空気が変わった。とても真剣な場。ふざけるなんてできないな

 ここでもし本人に断られてしまったら、何のためにここまで来たんだ、となってしまう

 そのまま紅魔館に帰るなんて、恥知らずにも程があるからな

 絶対ここで修行する。強くなるんだ!

 

龍「ああ。前にも言ったとおりだ。こいつを鍛えてやってほしい」

 

榛「お願いします!」

 

妖忌「ふむ......」

 

 私は頭を下げ続ける。その間妖忌の見定めるような視線が刺さってくるが、我慢我慢......

 

妖忌「...よかろう。じゃが儂の修行は厳しいぞ」

 

榛「覚悟の上です」

 

妖忌「ほっほっほ。ならば今日から鍛えてやろう」

 

榛「~~!ありがとうございます!!」

 

妖忌「じゃがお主が儂の期待を裏切るようならば即中止じゃ」

 

榛「無論、そのようなことのないよう精進してまいります」

 

妖忌「ならば着いて参れ」

 

榛「はっ!」

 

 そのまま妖忌は外へ出ていき、私もそれに続く

 これからの修行。きっと...いや絶対厳しいだろうが、絶対に負けない

 主フラン様のために!

 

龍「...俺も少しは教えてやるかなぁ......」

 

 そんな龍の言葉は誰にも伝わることなく響くだけであった




後書き~

最近ノートPCを軽くて薄い最新の格安に買い替えた...というより執筆用に買ったので少しは書ける時間が増えるかなと考えてます
とは言っても書けるかはまた別の話なのがなぁ......
次回、もしかしたら数か月くらい時間が跳ぶかもしれませんが、
ゆっくりしていってね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3章『妖々夢です。強くなったかな』
第43話『春がこないのは絶対異変だぜ!』


前書き~

インフル、怖いね!
投稿した日には体調はある程度回復してますが、これ書き終わったのインフルになる前日とかいう偶然。その日のうちに投稿しておけばもっと早く皆さんに続きを見せられたのにな、とか思ってます。
それはともかく、今回から書き方を変えました。そのうち前に投稿してある分も変えようとしてます。
違和感あるかもしれませんが、ゆっくりしていってね!


《5月》

 

 幻想郷は今5月で、例年なら桜はもう咲き散って、だんだんとジメジメしていくこの時期。でも今年はおかしなことに外では雪が降り積もっている。それは今日だけかといえば、そうでもなく。冬からずっと春に変わらず、毎日のように寒い気温と雪が続いている。

 これは明らかに異変だ。そう思い行動した一人、魔法の森に住む魔法使い『霧雨 魔理沙』は暖かい服へ着替え、箒と帽子を片手に空へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 時を同じくして紅魔館では瀟洒な従者が頭を悩ませていた。

 去年までの冬と違い今年はずっと春が来ないため、そろそろ館にある暖炉の薪が切れそうになっていたのだ。このままでは部屋を暖かくできなくなる。かといって里に行っても、もう売り切れているだろう。どうするべきか。

 そう考えている従者の元へ彼女の主がやってきて言った。「これは異変よ。てことで咲夜、この異変を解決して紅魔館の名を幻想郷中に知らしめてきなさい」と。

 従者はこの寒い中出るのは嫌だなと思ったが、主に命令されてしまった以上しょうがない、と気持ちを切り替えていつものメイド服で門を出ようとすると門番からこのままでは寒いから、とマフラーを着けさせられ、そのまま異変の手がかりを探しに向かった。

 

 

 

 

 

 それから少しして、神社では巫女が部屋で炬燵に入り込んでお茶を啜っていた。するとそこへ襖が勢いよく開かれ、魔理沙が現れた。

 

「おい霊夢!異変だぜ!」

「...ええ分かってるわよ。だから早く閉めて。寒いんだから」

「お、おぅ悪かったぜ...じゃなくて!異変だぜ!?異変!解決しなくていいのか?」

「そうねー、解決しなきゃねー」

 

 そう言いつつも霊夢は剥いた蜜柑を一粒口に入れた。完全に興味なさげである。

 しかしそんなことお構いなしに魔理沙は霊夢を連れ出そうとする。

 

「だったら蜜柑なんて食べてないで行くぞ!さっさと解決して花見するんだぜ」

「花見、ねぇ」

 

 『花見』という言葉に少しだけ反応する霊夢だが決断には至らない。自分ひとりで行ってもいいが、霊夢といた方が楽に...ごほん。楽しく異変解決ができるんだが...と魔理沙が思っていると、そこへもう一人神社に降りてくる人がいた。

 

「こんにちは霊夢。何か情報は持ってないかしら?」

 

 紅魔館の銀髪の従者、十六夜咲夜だった。

 何か異変を解決する手掛かりがないか考えると、神社に行って霊夢に聞いた方が早いと考えた彼女が神社に来たのだ。

 

「おう咲夜じゃないか。どうだ?調子は」

「そうね、あの子がいない分仕事が忙しいこと以外は変わりないわよ」

「ってことはまだあいつは帰ってきてないのか......」

「ねぇ、それはいいから早く閉めて」

「いやいや、だから異変なんだぜ?異変だって分かったら解決しに行くのが巫女だろ?」

「別に異変なんて人間が解決すればいいんであって(博麗の巫女)が解決しにいかないといけないわけじゃないわ」

「あら、それじゃあ貴女(博麗の巫女)がいる意味がないわね」

「そ、そんなことは...ない...だろ......?」

「そりゃそうよ。他にも悪さをする妖怪退治や神社の掃除だってあるのよ」

 

 昔から霊夢を...博麗の巫女の仕事を見ていた魔理沙はどんなものがあるのかある程度は知っていた。だから異変解決以外に大きな仕事があるかと言われれば特に思いつかず、思わず霊夢を見る。霊夢は霊夢で咲夜に言い返す。

 しかしそれも他の者でもできるのでは、と咲夜は思うもあえて言わず、今起きている異変に関して訊くこととした。

 

「それで霊夢、この長く続く冬について何か知らないの?」

「知らないわよ。そこらの妖精にでも訊けば?」

「もう訊いたわよ。うちの前によくいる馬鹿(チルノ)に」

「そしたらなんだって?」

 

 魔理沙は多分倒されたんだろうなと同情しつつも、何か得られたのか気になり訊く。

 それに咲夜は肩をすくめて答えた。

 

「残念ながら何も分からなかったわ。館の前で騒いでたから何かあるのかと思ったのだけれど......」

「あ~、多分氷精だから冬が長く続いてはしゃいでるんだろうな」

「ええ。本人もそんなことを言ってたわ。それに私が冬を終わらせたいと言ったら攻撃してきたし」

「落としたのか?」

「真っ逆さまに」

「おぅ、こりゃ咲夜も霊夢と同じで敵には容赦ないな」

「あら、これでも自重している方よ」

「ああそうかい」

「だからさっきから言ってるけど閉めなさい。あと出ていきなさい」

 

 ついに、というかさっきから魔理沙達を睨みつけていた霊夢は、とうとう二人に出ていくよう言った。しかし魔理沙も魔理沙で諦めない。

 

「だから霊夢、外に行こうぜ。なんならどっちが先に異変を解決するか競争だ」

「あら、それは私も参加させてもらおうかしら」

「おういいぜ」

「私はしないわよ。二人で勝手にやってなさい」

 

 どこまでも行かないと強情な霊夢。

 ここまでくると自分が何言っても無理だなと、とうとう諦めた魔理沙はため息を吐いた。

 

「はぁ、わかった。だったら私が異変の犯人をぼっこぼこにしてやる。後から来て出番がなかったって嘆いても知らないからな!」

「はいはい」

「あら魔理沙。異変を解決するのは私よ。お嬢様の名も広めなければならないし」

「へへっ、どっちが先に解決できるか勝負だな!」

「望むところよ」

「わかったからさっさと出てけ」

 

 霊夢に追い出されつつ、二人は相手よりも先に異変を解決しようと繰り出す。魔法使いは妖怪の山の方向へ、従者は里の方へと。

 ようやく人がいなくなり落ち着いてゆっくりできると思った霊夢。

 しかしどうやら周りは彼女を放っておかないようだった。

 

「......ねぇ、そこで見てないで出てきたらどうなの?」

 

 誰もいないはずの部屋で、霊夢はそう言う。すると霊夢の向かいに一筋の切れ目が出て、パックリと割れた。気味の悪い目がギョロギョロとこちらを見ているその空間から出てきたのは、白い帽子を被った九尾の狐。

 

「気づいていたか」

「隠す気なかったでしょ」

 

 霊夢は睨みつけながらそう言った。

 霊夢にとって目の前の狐...妖狐が出てくるのは厄介事を持ち込まれることが多く、そんなものに首を突っ込みたくないと考えている霊夢はどうしてもこの狐の相手をするのは苦手だ。何分この狐の主でさえ来ると毎回お茶か茶菓子を無断で持っていき、自分の前に現れれば何修行だのなんだのと面倒事だらけになる。

 毎日お茶を飲んでだらだらしていたいのに。

 そんな霊夢の気持ちとは裏腹に目の前の狐は問題事を持ち込んだ。せっかく先ほど追い返した問題を。

 

「先ほどの人間も言っていたが、霊夢。これは異変だ」

「それは分かってるわよ」

「ならば分かるだろう。異変を解決するのは博麗の巫女としての仕事」

「確か何かの決め事だと異変は妖怪が起こして、人間が解決すればいいんでしょ。私じゃなくても......」

「その人間の一例が博麗の巫女だ。そして博麗の巫女の仕事は異変を解決することでもある。お前が博麗の巫女として生きている以上、幻想郷で起こる異変は解決してもらわなくては困る。でなければ......」

「チッ...あーもう!分かったわよ!異変の犯人とっちめればいいんでしょ!分かったから用件がそれだけならさっさと出ていきなさい!」

「分かったのならそれでいい。それではな」

 

 そう言うと狐は気味の悪い空間へ戻ると、そのまま空間は閉じ、消えた。

 霊夢はめんどくさそうに頭を掻き、盛大にため息を吐くとようやく炬燵から立ち上がった。

 そして箪笥から必要な物を取り出すと、外に出て空を見上げた。

 相変わらず空は雲で覆われ、白く小さなものが降っていた。

 息を吐けばもう見飽きた白い息。

 それらを見ながら、霊夢は諦めたように空へ飛んだ。

 行く先は勘の向くまま。その体は自然と空へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

【???】

 

「紫様、巫女が漸く動くようです」

「そう。他に動く人はいたのかしら?」

「私が言う前に二人程。巫女と仲の良い魔法使いと紅魔館のメイドが」

「思ってた通り、その二人も動くのね。でももう一人動きそうな子がいた気がするけれど......」

「現在式神を使い探しておりますが、全くと言っていいほど姿が見えません」

「そう、彼女、どこへ行ってしまったのかしら」

「申し訳ございません。私がしっかり監視していなかったせいで」

「それはもういいわ。どちらにしろ、彼女の力は私には遠く及ばないでしょう。藍、しっかりと彼女たちを監視しておきなさい」

「御意」

 

 

「さて、ここまで異変を放っておいたんだもの。きっと幽々子のところは凄いことになってるでしょうね。あの桜が復活しなければいいけれど......」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第43.5話『久しぶりの登場です!え?そうでもない?』

前書き~

久々の〇.5話です。
タイトルがメタいのは愛嬌ってことで許してね!
それはともかく前回のあらすじ。
榛奈が修行に行って早数ヶ月。暦は5月だと言うのに冬が続いていました。魔理沙はこれを異変だと思い、咲夜は燃料が切れそうだったので、霊夢は仕方なく。
ですが彼女達は異変解決に乗り出しました。
今回は、同じ頃の別の場所からお届けします。
それでは今回は少し短めですが、ゆっくりしていってね!


【妖怪の山】

 

 

「ひっさしぶりの外だあああああああ!!!」

 

 とか叫んでるのは紅魔の普通の魔法使い...と呼ばれるのもいいかなと思っている私、霧雨 榛奈だった。

 いやね、ほんと久しぶりなの。そう叫びたくなるくらい下って暗いのよ。物理的に。

 そりゃ旧都は火とか提灯の光で明るいと思うかもしれないけど、上を見上げたら何が映るかって言ったらそりゃ暗い暗い暗闇。少し飛べば岩肌だし、青い空白い雲なんて全く見えなかったよ。偶にキラッと光る鉱石を見ては「採ろうかな......」って思ったけど、大体そういうのは地獄の怨霊云々で、良くないものが多いらしいから採らなかったけど。というかそんな暇なかった。

 ともかく戻ってきたわけだけど......

 

「はぁ...白い」

 

――まぁ春が来てないしね――

 

 そう私の中で言ったのは、夏から私の中の同居人?となった――。

 あっ、伏字なのは色々あるんだよ。

 

――メタいメタい――

 

 はっはっは!

 ともかく白い。

 何が白いって色々と。

 まず空が白い。というか雪雲で覆われてる。

 更に白い雪が舞っている。

 更に更に吐く息まで白いと来た。

 もう私、この中なら隠れられるんじゃないかな。服白いし。

 

――はいはい。それよりこれからどうするの?――

 

 さあね。とりあえず5月だってのにこの寒さ。明らかにあの異変だし、解決に向かいたい気もするけど......

 

――異変の犯人がいる場所だよね......――

 

 冥界だってのは分かってるけど、その場所が空の上で、何処かに出入り口があるってところまでは分かってるんだけど......

 

――...一応分からなくはないけど......――

 

 ...え?マジで!?分かるの!?

 

――一応わね――

 

 おぉ!じゃあ案内してくれ!

 

――どうして知ってるのかとか聞かないの?――

 

 どうせ龍から教えてもらったとかそんな感じだろ?

 なんかお前、私の意識が無いときは好き勝手やってるみたいだし。

 

――そこまで気づくようにはなったんだ――

 

 いや予想。というかそう言うってことはそうなのか?

 

――好き勝手にはやってないよ。ただ君が寝た後、ちょっと体の制御を私に移して彼と話してるだけ――

 

 私の意識のないところで私の体を使ってる時点で好き勝手やってるぜ。

 

――そりゃその体は今は君の体だろうけど、私の体でもあるんだよ!――

 

 だがメインは私だ!そう簡単に体の主導権を渡したくはないんだよ!

 

――あーもう!分かったよ!これからは必要ある時以外は体を使わない!それでいいでしょ!?――

 

 あ、あぁ。な、なんでそんな怒ってんだ?

 

――...なんでもないよ。いいからさっさと行こ。具体的な場所は分かんないけど、大体なら分かるから――

 

 ...なんだかよく分からんが、おう!

 

「さってと。ひっさしぶりの空を飛ぶとしますか!幻想郷のこの空を!」

 

 手慣れた手つきで箒を取り出し、飛び乗る。この動作にも本当に慣れてきた。

 それだけこの世界の生活に馴染んだんだなってしみじみ思いながら空を駆ける。

 

「さぁて!地底で強くなった私の力の見せ場は何処だぜ!」




後書き~

多分近いうちにまた投稿できると思います。多分......

それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第44話『普通の黒幕って何なのかしら』

前書き~

前回のあらすじ
妖怪の山の近くではようやく地底から帰ってきた榛奈が久々の幻想郷の空気を楽しんで、それから異変解決へ乗り出しました。
今回は前々回で異変へ乗り出した魔理沙、咲夜の話です。
それではゆっくりしていってね!!




 雪の舞う中、人里へ向かって飛ぶ影が一つ。

 先ほど博麗神社から出てきた咲夜だった。

 彼女はよく買い物で人里を訪れる。そこから誰か冬の妖怪を知っている人物に会おうとしていたのだった。

 彼女には霊夢のように勘が鋭いわけでもない。魔理沙のように幻想郷を知っているわけでもない。

 ならばこうして、自分の持つ人脈を頼りにしてみるのも一つの手だと考えたのだ。

 まぁ最も、彼女は人里で異変の犯人の情報が見つかるとも思ってないが。

 ついでに今日の夕飯の材料でも買っていこうと考えている程度である。

 しかし彼女のそんな思いとは別に何かに当てられた妖精達は飛び回り、彼女に襲い掛かり、即座に落ちる。所詮雑魚妖精である。

 そんな彼女の前に、現れたのはさっき見た気がする青い妖精だった。

 

「あーっ!みつけたわ!さっきの人間!」

「あら貴女は...さっき落とした妖精ね。何?復讐でもしに来たのかしら?」

「ええそうよ!ってことでレティ!やっちゃって!」

 

 そうチルノに言われて出てきたのはウェーブがかった髪に白い帽子を被った1ボスだった。

 

「くろまく~」

「そう、貴女が黒幕ね。なら早速貴女を倒してこの長い冬を終わらせるわ」

「ちょい、待って!私は黒幕だけど、普通よ」

「普通の黒幕って何よ。大体貴女妖怪でしょう。何妖精に従われてるのよ」

「別に従ってるわけじゃないわ。この子がちょっとうるさかっただけよ」

 

 そう言ってレティは目線をチルノへやる。チルノはそんな会話をしているなんて知らず、少し遠くで「いけー!レティ!生意気な人間なんて倒しちゃえー!」なんて言っている。思わず咲夜も同情しかけた。

 

「...そういうわけだから、形だけでも戦ってもらえないかしら」

「時間がもったいないわ」

「まぁまぁ。私自身、さっさとこの長く続く冬を終らせてもらって、早く春眠したいのよ。だから正直あなたの邪魔をしたくはないのだけど、だからってあの子がうるさいままなのも嫌なの」

「だからあなたに付き合えと?」

「そういうこと」

「嫌よ」

「そこをなんとかね?」

「こうやって話してる時間だってもったいないわ」

「少しはこの異変について教えてあげるから」

「...それは欲しいわね」

「ほんと?」

「あなたの知ってる情報って何かしら?」

「ええ、それはね...って教えるわけないじゃない!私に勝ったら教えてあげるわ!」

「はぁ...仕方ない」

 

 咲夜は諦めてレティと距離を取る。

 そしてお互いにカードを構えたら、誰に言われずとも勝負が始まった―――

 

 

 

 

 

 場所は変わって妖怪の山。その麓を飛ぶ箒に乗った魔法使いがそこにいた。

 

「あーくそ。レミリアの時もそうだが、こうも視界が悪くっちゃ周りが見えにくくていけないぜ。しかも霧の時は暑さを和らげてたからいいが、今回は寒いのが続いてるもんだからなー。どうせならもう少し着こんでくるべきだったか?」

 

 なんて独り言を言う彼女に反応するものはいない。山の中でも麓だからか、哨戒天狗も突っかかってこないようだった。

 だがどうせなら今回は一人でも来てくれれば話でも聞けたのに。面倒な時ばかり来て、肝心な時に来ない奴らだぜ、と魔理沙は思った。

 そうこうしているうちに、ついに自分の居場所も分からなくなってきた魔理沙。森の中を飛んでいたのが悪いのだろうか。迷子にでもなってしまったかと思っていると、視界に気になるものが映った。

 

「お?ありゃ家か?なんでこんなところに......」

 

 そう思っても知識がないのだから分かるわけもない。とりあえず異変の手がかりでもないか、と少し寄ってみることにした魔理沙は、その場所へ向かって飛ぶ。すると魔理沙の体は森を抜け、空けた空間にたどり着いた。そこには古く、あまり手入れされているようには見えない家が立ち並んでいた。

 

「どれも廃家だな...此処は昔村だったのか?」

 

 魔理沙もかつて住んでいた人里は幻想郷でも主に人間が集団生活する場の代表ではあるが、それ以外にも村はある。とはいっても人里以外は幻想郷の法に守られているわけではないので、大体は知性のない妖怪の餌食となることが多い。この村の人間も妖怪に食われてしまったのだろう、と魔理沙は思った。

 しかしこういうところにこそ、お宝は眠っているものだ。

 

「ふむ...ならばここはお宝をぬす...借りていくか。ほらあれだ、異変に関係するものがあるかもしれないからな!」

 

 誰に言い訳しているのか分からないが、とりあえず魔理沙のいつもの泥棒癖...もとい借りる癖が出たようだ。

 早速家に入り込もうと近くに降り立つと、物陰から何かが飛び出してきた。

 

「おわっ。...なんだ猫か。ってそういやなんか多いな。この辺り」

 

 飛び出してきたのは茶色の毛の猫だ。そこで魔理沙はこの辺りに猫がやたら多いことに気が付いた。里でもそこそこ猫はいたが、こんな廃家が並ぶ場所にこんなにいるとは、もしやここは猫の巣か何かか?

 

「ま、私としては良いものが手に入ればそれでいいが......」

「呼ばれて飛び出て......」

「出る杭は打たれる、か?」

 

 魔理沙が声の聞こえた方を見ると、そこには緑の帽子を被った少女がいた。しかし頭には猫の耳、後ろには細い二本の尻尾が見える。間違いなく妖怪だ。

 

「私は(ちぇん)!この辺りのボスよ!」

「四本足の生き物に用などないぜ」

「迷ヒ家にやってきたって事は、道に迷ったんでしょ~?」

「道なんてなかったけどな」

「さっきから吹雪で視界悪いし、風向きもころころ変わってるから」

「そうか、風向きが変わっていたのか」

「もう帰り道も判らないでしょ」

「どうりで」

 

 ここまできたらやることはただ一つ。

 相手の妖猫もそれは分かっていた。

 互いにカードを構えれば誰の合図もなし。

 迷ヒ家は本人たちが舞いつつ星やら球体やらが舞う弾幕の光で包まれた。




後書き~

次回は榛奈があの人の下へ向かいます。
次回もゆっくりしていってね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第45話『魔法の森で、人形遣いに会いました』

前書き~

今日はひな祭りですね。いわゆる女の子が主役の日です。私はもう子供ではないので関係はないのですが、ひなあられうまうま。
最近ようやく中古で買ったボロバイクがまともに乗れるようになったので走り回してます。原付の頃から片道60kmとかいう距離を毎月のように走ってたので、そのうち中型でも長距離を走りまくると思います。事故には気を付けたいですね。この小説やもう一つのも完結まで頑張りたいですし、まだまだ書きたい物語はありますから。

さて長くなったので前回のあらすじは簡潔に。
地底から榛奈が帰ってきました。以上!
それでは今回もゆっくりしていってね!!



 空へ駆けだした私は、当てもなく飛び回ってた。アイツ曰く冥界への入り口は本当に何となくしか分からないらしく、その近くまで行けば少し分かるかもしれないという程度で、その“近く”とやらもどこなのかも分からない状態だったからだ。

 できれば偶然でも起きて、この異変に関係する人...例えば魔理沙姉辺りにでも会えれば只々その辺を飛び回ってるよりかは冥界へ...異変の犯人の下に近づくと思うのだけれど......

 あっ、そうだ。もしかしたら魔理沙姉は家にいるかもしれないし、魔法の森に行ってみようかな。魔法の森ならあの人もいるわけだし。

 進路変更して魔法の森へ行くか。

 

――そうそう、もしあの魔法使いに会うなら、好感度を上げて、私の体を......――

 

 あぁ、そんなことも言ってたな。まあ努力はしてみるさ。会えるかは分からないけどな。

 

 

 

 

 

 魔法の森の方向へ向かって空を飛んでいると、すぐに見えてきた。

 そりゃそこそこな速さで飛んでたし、元々魔法の森に少し近い場所を飛んでいたから当たり前なんだけど、ここに来るまでに誰にも会わなかった。

 正確には知ってる人には会わなかった。異変に乗じて騒いでる妖精とかはそこら中にいっぱいいたし、何匹か落としたけど。

 まぁ雪も降ってるし、そこそこな強さだから誰も外出したくないからだとは思うけど......

 っと、魔理沙姉の家は何処だー?

 

 

 

 ...見つからない。空から森を見ていけば見つかるかなーって思ったけど、全く見つからない。視力は魔法で上げてるから通常よりいいはずなんだけど、何分木々の枝が入り組んでいるし、吹雪で地面が見えにくい。これじゃ空から見つけるのは難しいかな。

 と、どうやって見つけようか悩んでいると、建物が見えてきた。この幻想郷じゃなかなか見ない洋風の家。紅魔館のように大きくはないけど、一軒家としては十分な家だ。

 もしやあれが魔理沙姉の家...?それともあの人の?それともそれ以外の魔法使いの家なのかな。

 とにかく訪ねてみれば分かるよね。大丈夫大丈夫。何かあっても自分を守ればいいし、地底である程度扱えるようになった新しい能力でも使えばいいしね!

 そう思い立った私は早速家の前に降りて、扉をノックして呼びかけた。

 

「こんにちはー。どなたかいらっしゃいませんかー?」

 

 しかし声はただそこに響くだけ。誰も応えてくれない。

 こんな長続きする冬に雪まで降っているのにこの家の主は何処かへお出かけだろうか。

 或いは居留守?アポ...は取れるわけないんだけど、アポなし訪問だから警戒して出てこないのかな。

 家の中を覗きたいけど、勝手に人の家の窓から中を覗くなんてプライバシーの侵害だし、だからって魔理沙姉みたいに勝手に扉を開けて人の家に入るわけにはいかないし......

 でもこの辺りの家って此処しか見つからなかったから魔理沙姉の家を訊きたいし、あの人の家だったら余計会わないといけないと思うし...というか本音は会いたいし......

 うだあああぁぁ!もう一回だ!

 

「すぅ...こんにちはー!!誰かいたら返事だけでもしてくださいなーー!!」

 

 ふぅ、これだけ大声を出せば聞こえてなかったなんてことないだろう。

 ...あっ、でも相手が耳に障害を持ってたらどうしよう......

 ...って、そんなのピンポイントでいるわけないだろ。

 と、独りボケとツッコミをやっていたら、中で物音が聞こえた。

 やっぱり誰かいるようだ。どうやら警戒して出てこなかったようだけど、私が大声出したからか、ようやく出てくれるようだ。

 足音は扉の前まで来ると、ピタリと止まった。扉が開くのかと思ってたけど、その気配はない。まぁ得体のしれない人がいきなり来たんだし、すぐ扉を開けるわけないか。

 すると中の人物は扉越しに話しかけてきた。

 

「...何の御用?」

「えっと...ちょっと家をお尋ねしたいのですが......」

「家?」

 

 そう言うと、中の人物、声から察するに女性は少しの間黙った後、ガチャっと鍵が開く音がして扉を開けた。

 やっと人に会えた、と思ったら、扉の前に立っていた...いや浮いていたのは金髪の洋服を着た人形だった。

 

「...え?に、人形?」

 

 人形は驚く私を見ながら微笑み、片手を上げた。まるで挨拶をしている動作だ。

 

「えっと...こんにちは。あなたがさっきの声の人?」

「違うわ。私はこっち」

 

 と、扉の近くにやってきたのは人形と同じように金髪のショートへアにヘアバンドのように着けた赤いリボン。青い洋服に白いケープのようなものを羽織った女の人。

 ...おぅ。人形といい女性といい。なんか見たことある人だぜ......

 

「あぁごめんなさい。えっと、それで家をお尋ねしたいのですが、よろしいですか?」

「ええ。とは言っても私、あまり誰かと交流とかないから分からないかもしれないのだけれど、それでいいのなら」

「構いません。それで私が探しているのは人間の魔法使いである私の姉の霧雨魔理沙の住む家なんですが......」

「...魔理沙の?」

「ご存知ですか?」

「ええ、彼女のことは知っているけど...魔理沙が姉ってことはあなたが魔理沙の妹さん?」

「はい。霧雨榛奈と申します」

「話だけは聞いていたけれど...本当に見た目以外は全然似てないわね」

「あはは......」

 

 まぁその似ているっていう金髪も、魔理沙姉と比べると少し色の濃度が違うけどね。

 しかし彼女は魔理沙姉を知っていて、それでいて魔理沙からか、誰からかは分からないが妹がいることも聞いていたようだ。

 ってことはもしかしてあの人なのか?

 

「そうね。あなただけに名乗らせてるのも悪いし、私の名前は『アリス・マーガトロイド』よ。魔理沙とは...まぁそれなりの関係だと名乗らせてもらうわね」

「...それなり?」

「まぁ、色々とあるのよ」

 

 はて、その色々とは......

 ...まさか魔理沙姉。原作の魔理沙と同じことをしているわけ...ないよな?な?

 しかしまさか本当に目の前の女性があの人...魔法使いで人形遣いのアリスだったとは。

 確かにアリスの服を着ているし、人形が自動で動いて...いや一応命令してはいるのか、動いている。

 いくら魔法の森の上を飛んでいたからって最初に尋ねた家でアリスの家を引き当てるとは思わなかった。もしかしたらこの幻想郷じゃアリスや魔理沙姉、ついでの霖さん以外魔法の森に住んでる人っていなかったりするのかな。それだったらもっと探し回って見つけた家が魔理沙姉の家の可能性が出てくるよね。

 と考えても、そんな手間は暇なときにしかかけたくないから、今は普通にアリスさんに聞くけどね。

 

「それでマーガトロイドさん」

「アリスでいいわ。長いでしょう」

「え、えぇと。ならお言葉に甘えて。アリスさん、魔理沙姉の家をご存じないですか?」

「知っているけれど...今行ってもいないんじゃないかしら」

「え?どうして......?」

「少し前に私の家の上空を飛んで行ったのを、この子...上海(シャンハイ)が見てたのよ」

 

 そう言ってアリスさんは傍らにいた先ほどの人形、上海の頭を撫でる。上海は本当に命令で動いているのか分からないほど嬉しそうな感情を顔に浮かべた。

 そういえばアリスの上海と今は姿が見えないが蓬莱は確か、半自動化まで進んでいたという話を転生前の人生で聞いたことがある。アリスの目標である完全自立型人形とはいかないが、ほんの少しの命令を貰えれば後はその命令をどうやってやればいいのかとか考えながら動くことが出来るんだとか...そんな感じだったはず。その辺りの記憶は時の流れで風化し、曖昧になってきてしまっている。私とて記憶力は転生の影響で通常より良い方ではあるが、完全記憶能力者ではないのだ。あっきゅんみたいなのはないのだ。

 と、頭の中で話が脱線してしまった。まぁここまでの思考はものの数秒で終わってる辺り、私もそろそろ人間を辞め始めてるのか、魔法使いに近づいているのか分からないな。

 

「ということは今行っても無駄足ですか......」

「そういうことね」

 

 どうせいないのなら魔理沙姉の家に行くのはただ単に場所を確認するぐらいしかなくなってしまうし、それなら魔理沙姉が紅魔館に来た時にでも訊くか、案内してもらえばいい。

 それに魔理沙姉が飛び立っていき、尚且つこの異常な季節の中で行く場所といえば、原作を知ってる影響と魔理沙姉を自分なりに見てきたので少しは予想がつく。そうじゃなくても神社に行けば何かしら分かるはずだ。

 となれば次に向かうのは博麗神社かな。霊夢がいるかいないかで結構その後の行動が変わってくるし。

 

「なら私、別の場所に行ってみます。教えてくださり、ありがとうございました。では――」

「ちょっと待って」

「はい?」

 

 早速箒に跨ろうとしていると、アリスさんは私を引き止め、何か考えながら私に話しかけてきた。

 

「これは完全に私個人の興味なのだけれど、何故あなたはそこまでして魔理沙...姉に会いたがるの?」

「何故...ですか」

 

 そう言われても偶然会えたらなーとか思ってて会えなかったから、ならこっちから会いに行ってみるかという考えだけれど、はたしてそれをそのまま伝えていいものか......

 ...うん。こう答えるか。

 

「理由としてはもう五月だというのにこの季節なのは異変だと思ったので、せっかくなら姉と一緒に解決したいな、と思ったからですよ。後、実は数か月間会える状況ではなかったので、久々に会いたいなって」

「そう、あなた異変を解決したいと思って動いているのね」

 

 アリスさんの言葉に「はい」と答えると「ならちょっと待ってて」とアリスさんは家の中に入っていってしまった。はて、何かあるのだろうか。

 それからほんの少ししてアリスさんは家の中から出てきた。その手には小さな小瓶が握られている。アリスさんは私に近づくとその小瓶を差し出してきた。

 

「これをあげるわ」

「...これは?」

「春の欠片よ。研究のために集めたのだけれど、研究成果はもう十分取れたし、異変を解決するのに使えるかと思うの」

「春の...欠片?」

「簡単に言えば今現在来ない春が欠片となって目視できる状態になった物よ。沢山集めれば春が訪れるんじゃないかと私は思っているわ」

「春が...欠片に......」

 

 そんな馬鹿な、と普通は思うだろう。

 しかし此処は幻想郷。その普通が通用しないのだから、春が欠片になることもあるだろう。実際原作でも春がどうとか度がどうとか言ってた。それにアリスさんから受け取り、透明なガラス越しに見た春の欠片は桜の花びらの形をしていて、ガラス越しにでも暖かい気配がする。これは本当に春の欠片なのだろう。

 

「ありがとうございます。こんな貴重なものを......」

「いえ、その辺に落ちてたりするわよ。それも拾ったものだし」

「あっ、そっすか」

 

 貴重でもなんでもなかった。

 まぁ原作でも妖精とか毛玉とか倒せばいっぱいゲットしてたしね。

 ここでも妖精とか倒していけばいっぱい春の欠片はゲットできるのかな?

 でもさっき倒していったときはそんなもの見えなかったけど......

 

「まぁ頑張って早く冬を終らせてちょうだい。あまり寒いのが続くと、里での影響も大きいでしょうし」

「分かりました。色々と親切にありがとうございます。今回の異変が終わったら後日、お礼をさせてもらいますね」

「それはありがたいわね」

「それでは」

 

 と、今度こそ箒に跨って空を飛ぶ。

 飛びつつ振り返ればアリスさんはこちらを見ていたので、手を振ると、アリスさんも小さく手を振ってくれた。それに少し嬉しくなりながら正面を向いて、一気に加速する。

 修行を終えた今の私なら魔理沙姉にも負けないぐらいの速度が出せるんじゃないかと思いながら、向かうは幻想郷の端の方。博麗神社だ。

 霊夢はいるかな~♪

 

 

 

 

 

____________________

[???]

 

 

「紫様。例の人間を見つけました」

「そう、ようやく見つかったのね。どこにいたのかしら?」

「どうやら地底にいたようです」

「地底に?...どうやって地底の存在に気付いたのかしら。人間達にはもうすでに忘れ去られている場所でしょうに」

「申し訳ありません。そこまでは調べられておらず......」

「いいわ。とにかく彼女を見つけたのなら監視して。彼女の言動全てに注意しなさい」

「御意」

 

「...幻想郷は全てを受け入れる。それはとても残酷なこと。...けれど彼女だけは別。彼女は幻想郷には毒だもの。なら早いうちに消毒しておかないと、大変なことになるものね」




後書き~

正直八雲家ポジションをどうしようか今更悩んでます。なんか意味深な会話させてますけどね。
それでは次回予告。多分合流するんじゃないかな。
次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第46話『雲の上に来てまで妖怪退治とか面倒ね』

前書き~

ついに動き出す博麗の巫女。しかし彼女の前に強大な敵が現れ......
三人の妖怪姉妹。黒きヴァイオリニスト。赤きピアニスト。白きトランぺッター。
はたして彼女たちに博麗の巫女は勝てるのか......!
今、史上最大の決戦が始まる......。(嘘)

たまにはふざけたいと思いつつ、こんな感じの話で始まります。
後半は博麗神社からお送りいたします。
では今回もゆっくりしていってね!


 時は進み幻想郷上空。

 紅白の巫女は当てもなく...しかし確かに異変の犯人のもとへ飛んでいた。

 

「はぁ...寒いったらありゃしない。しかも雲の上まで桜が舞ってるのは何故?」

 

 地上では僅かにしか見られなかった桜の花びらが、雲の上ではチラチラと雪に交じり舞っていた。

 何故なのか考えても霊夢の中には答えなど出ない。そもそも考える気も答えを出す気もない。

 ただそんな彼女の独り言に答える者は、近くにはいなかった。

 

「...いつもだったらここで、誰かが答えてくれるんですけど」

「ああ、分かったよ」

 

 出てきたのは黒い服や帽子。金髪でヴァイオリンを持った、人の形をした少女だった。

 しかし霊夢は瞬時に目の前の少女が人間ではないことを見抜いていた。

 

「ほら、それはアレだ。この辺はこの季節になると気圧が...下がる」

「なんかテンションも下がりそうね」

 

 物静か、とは違う。テンションが低い人外はそう言ったが、それは先ほどの霊夢の言葉に対する言葉なのだろう。霊夢としては彼女のテンションの低さに面倒くさいなと思っただけだが。というよりさっさと異変を解決して神社でお茶を飲みながら蜜柑を食べたいのに行く手を邪魔する奴の相手が面倒くさいのが本音だ。

 そんな雰囲気を出していたからなのか、彼女は黙ってしまった。

 霊夢はそれを自分はこのまま此処から去ると思っていると思った。

 

「悪いけど私、このまま引き下がらないわよ。せっかくなんだからアンタに色々聞くんだから」

「誰もそんなこと言おうとしていない。上昇気流と言いたかっただけだ」

「ともかく今起きてる異変について何か知ってたりしない?」

 

 と、その時人外の後ろから明るい薄水色の髪の薄いピンクの服装をしたトランペットを持った少女と、薄い茶髪の赤い服装をした楽器のキーボードを持った少女が現れた。

 

「姉さんってば早いって。って、それ誰?」

「上昇気流」

「私達の天敵ねー」

 

 トランペットの少女は霊夢の姿に気付き姉と呼ぶヴァイオリンの少女に問うと、簡潔に答える。キーボードの少女はどこかのんびりとしていた。

 霊夢は妖怪が増えたことにまた面倒なやつが増えたと思いつつ、質問に答えてもらうことにした。

 

「敵かどうかはあんた達の態度次第ね。で、あんたら何者?そこの暗いのにはさっきの質問に答えてもらってないんだけど」

「私達は騒霊演奏隊~。お呼ばれで来たの」

「これからお屋敷でお花見よ。私達は音楽で盛り上げるの」

「異変のことは知らないわ。気にもしてないもの」

 

 と、順にキーボードの少女、トランペットの少女、ヴァイオリンの少女が答えた。

 その言葉に霊夢は反応した。

 

「私もお花見したいわ」

 

 神社で魔理沙が言った花見という言葉に反応したように、霊夢は花見が好きだ。というより幻想郷の住人の大概が楽しく騒いだり酒を飲みながら桜を眺める花見が好きだ。霊夢はその一人というだけである。

 でもそのための春が訪れず、冬が続いている。

 決めた。絶対解決して宴会を開く。片付けとか考えると億劫だけど、その辺りはレミリアのとこのメイドに任せればいいわよね。

 そんな考えで霊夢は札を手に取る。今やることはただ一つ。目の前の妖怪を倒して、色々聞きだす。さっきの会話の内容だと何かしら知っているようだとも思ったからだ。

 

「あなたはお呼びでない」

「幽霊にお呼ばれ、ねぇ。あんまりされたくないなぁ」

「あらら?そんなので私達を退治する気?」

「雑音は、始末するまで」

「姉さん頑張ってー」

「手助け歓迎よ」

「さ、花見をするためにも仕事しましょうかね」

 

 ヴァイオリンの少女は霊夢同様構え、他二人は後ろで見守る。どうやら助ける気はないらしい。

 その方が霊夢にとっても楽に事を運べる、と珍しくやる気だ。いやこのやる気は花見をしたいからだろう。

 ともかく互いにスペルカードを構えたら、それが始まりの合図だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________

 

 場所は変わり、博麗神社。

 主のいないその場所に、一人の少女が降り立った。

 

「ふぅ...いくら速く飛べるようになったからってここまで超特急で飛んでくる必要はなかったよね。うぅ...さむいさむい」

 

 その少女――榛奈はお賽銭箱の前まで行くと、懐から一枚の小銭を出し、投げ入れた。

 その後二度お辞儀をし、手をパンパンッと二回叩く。そして両手を胸の前で合わせて、いるのかいないのか分からない博麗神社の神様にお願いをする。

 ――どうか無事に異変を終らせられますように――

 祈らなくても自分で何とかしようとは考える榛奈だが、それでもひょっとしたら聞いているかもしれない神様に、少しでも事を良く運べるように運を分けてもらおうと思ったのだ。

 というより、せっかく神社に来たんだから祈らないとね、というのが本音かもしれない。

 

「...さて、霊夢はいるかな~」

 

 のんびりと縁側に行ったり、神社の周りを歩いてみたけど、人の気配は何一つしない。それどころか戸締りもしっかりしてあった。

 どうやら霊夢はいないらしい。ということは――

 

「...よし、もうすでに始まってるってことだよね!」

 

 そう誰もいない中、榛奈は独り言を言った。

 となれば早速冥界への入り口を探しに行かなければ、異変解決までに間に合わないかもしれない。冥界に辿り着いた時にはすでに終わった後でした~は彼女としては回避したいのだ。

 ということでさっさと空へ飛び出したいのはやまやまなのだが、それはできなかった。

 

 

 少し前から感じる視線。姿の見えない何か。

 神社には人の気配は全くしない。だから視線何て感じるわけないだろと思うかもしれないが、人の気配“は”しないだけだ。人でない者の気配は、ずっと感じられる。

 神社に着いた途端に、感じられたのだ。まるで自分を監視するかのような視線。なのに周りには誰もいないように見える。

 ああ、何となくわかる。こういうことが出来る人外にいくらか心当たりがある。仕えてる主だって、その姉だって似たようなことは出来るが、彼女たちとはまた別の気配。じゃああの何かを萃めたり、散らしたりするのが得意な鬼かといえば、分からない。私はまだ彼女に会ったことがないからだ。だが彼女が活動し始めるのはこの異変が終わってからのはず。ならばこの異変に関係のある者。と、なればすぐに二人ほど、該当する妖怪が出てくる。

 ああ、そうだ。あいつらだ。

 

「...なあ、そこで何してるんだ?どうせなら出てきたらどうだ。“八雲”」

「...ほう、私がいるとよくわかったな」

 

 その声と共に、私の背後から、とてつもない妖気が放たれる。普通の人間なら、即気絶物かもしれない。

 だが私は普通じゃない。そうだ、私はもう普通の人間じゃないんだ。

 だから正気を保ったまま、彼女たちと対峙できる。

 振り向けばそこにいるのは人の形をした美しい金色の毛並みを持つ九尾の狐。

 

「別にお前がいるとは分からなかった。だがお前か、お前の主のどちらかがいるとは思ったぜ」

「.........」

 

 目の前の九尾は黙って目を細め私を睨む。私を見定めているのか、あるいは警戒しているのか。

 私だって警戒をしている。だから自然と彼女を睨むような眼になってしまうのは仕方ないと思ってくれ。

 とりあえずこうしていては話が進まない。どうして私を監視するかのように見ていたのか、話を聞かなくては。

 ...素直に教えてくれるとは思わないけど。

 

「んで、どうして私を見てた?それも監視しているような視線で」

「お前には分からなくていいものだ」

「そりゃないぜ。せっかくお前に気づいて声をかけたってのによ」

「ふん......」

 

 九尾は笑うように鼻を鳴らした。

 正直その仕草は癪に触る。どうしてこうも強い妖怪は本当のことを隠したがるのか。それも素直に教えて欲しいのに、教えてくれないどころか自分を笑うのだ。まるで私はお前を遥かに凌駕する力を持っているのだぞと見下すように。

 正直それは本当のことだ。人間は、どれだけ頑張ろうと、その命は短い。途方もない時を生きる彼女の足元にも及ばないだろう。それだけ力の差があるのは認めよう。だが、だからといって初対面ですぐに下に見るのは気に入らない。私にだってフラン様にも譲れない、人間としての意地ってのがあるのだ。

 ようは、プライドが傷ついたってことだ。

 

「ははっ、なるほど。天下の九尾の妖狐様は、人間風情には自分たちのことを知る必要はない、と言いたいわけか」

「...私は忙しいのだ。何が言いたいのか、はっきりしろ」

「...おいおい、そりゃこっちの台詞だぜ?」

 

 威嚇の意味を込めて、一気に魔力を開放する。周りを警戒させないために今まで抑えつけていた分、余計に威圧感があるだろう。

 その魔力を浴び、九尾は眉を一瞬ひそめた。たったそれだけ。恐らく九尾は「普通の人間にしてはやる方ではあるか」程度にしか思ってないのかもしれないけど、それだけでいい。

 それだけでも、私には価値がある。原作知識を思い出し始めた頃は到底敵わない相手だと思っていた相手が、私の価値を見直したからだ。それだけでも、私は彼女に歯向かおうと思える。それだけでも私は自分の力に自信が持てる。

 

「それとな、私はさっきのお前の態度が気に入らない。私を人間だと小馬鹿にするその態度が気に入らない。私のことを何も知らない癖に、初対面でそんな態度をとるお前が気に入らない。だから、ちょいと私の実力をお前に見せてやる」

「ほう、人間如きが私に勝てるとでもいいたいのか?」

「普通なら勝てないだろうな。私だってルール無用のガチバトルなら負けるだろ。生きてきた年月も実力も違うんだからな。だが今はお前の主が考え付いた決闘法があるだろう」

「スペルカードルールのことか」

「そうそう、それなら私だってお前に敵うかもしれないだろ?」

「...いいだろう、受けて立つ」

「そうこなくっちゃ。...ああそうそう。どうせなら私が勝ったら冥界の場所を教えてくれよ。そこへの行き方と、結界の破り方...はどうせ霊夢あたりが壊してくれるか。出入口への行き方でいいぜ。もしくはお前の主の能力で冥界まで直接送ってくれるのもよし。隙間って気色悪いらしいけど、一度通ってみたかったんだよな~」

「...物好きだな」

「そりゃ吸血鬼に仕えてるくらいですから」

 

 なんて会話をしつつも私は相手の出方を見る。今回は負けても死なないが、負けたくない。負ければ何も失わない...ああいや、しばらく肩書きを気にせずにいたから忘れかけてたけど、私はフラン様の従者だ。私が負ければ、フラン様の名に傷がつくか。なら余計負けられない。

 だとしても、やるべきはただ一つ。簡単なことだ。

 

「...さぁ、勝ちに行こうかっ!」

 

 私が勝てばいいだけの話だ!!




後書き~

地底での修行で色々鍛えられた榛奈さんですが、それでもガチバトルで藍に勝てるとは到底思っていません。さてさて、それは自己評価が低いだけなのか、自分の力を自覚してそう思っているのかは分かりませんが、多分しばらく彼女達は放っておくかもしれないことを、先に伝えておきます。
さてさて、次回、多分霊夢、魔理沙、咲夜達の話ですね。
次回もゆっくりしていってね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第47話『ああ言ってたわりに大したことないな』

前書き~

今年はまだまだあるけど、今日で平成最後ですね!
次の『令和』を口に出すのは慣れないですけど、平成と同じくそのうち慣れるものでしょうね。十回くらい言えば慣れるかな。令和令和令和れいわれいわれいわれいわ......
は、ともかく前回のあらすじ!

前回、霊夢は騒霊三姉妹と戦いました。魔理沙は山で猫又と戦って色々拝借しました。咲夜は里で買い物しました。榛奈さんは九尾の狐と戦うようで......
今回は騒霊を倒し終わった霊夢さんと、そこに合流した魔理沙さんと咲夜さんのお話です。
是非ゆっくりしていってね!!



 しばらく時間の経った頃、死者の世界へ繋がる道に、三人の少女がいた。

 一人は紅白の巫女。一人は白黒の魔法使い。もう一人は銀髪のメイド。

 彼女達は、少し前に霊夢が倒した三人の騒霊から、冬が終わらないのは春が奪われたから。その春が冥界に集められているとの情報から、冥界に異変の犯人がいると目星を付け、霊夢の勘で冥界へ繋がる結界を見つけ、それを突き破って此処にいたのだった。

 

「ここが冥界って場所か。あんまり居たくない感じがするぜ」

「そりゃそうでしょ。普通私達人間は生きている間は来ないはずなんだから」

「にしても、あの妖怪たちが言っていたのは本当のようね。結界を破った先はこんなにも暖かい」

「さっきあいつらが言ってた春の欠片ってやつが集まってるんだろ。ったく、せっかくあいつがいつ帰ってきても宴会が開けるようにって思ってたのに、春にならないから花見もできないだろ」

「アンタそんな準備してたのね」

「そりゃあいつはまだ宴会をしたことはないって言ってたからな」

「そうね。紅魔館じゃパーティーはやっていたけれど、まだ日本形式の宴会っていうのはやってなかったわね」

「そうそう、だから私が絶対開いてやるって約束したんだ。だからあいつも約束を守って“生きて”帰ってきてくれるはずだ」

「でも、もしかしたら此処にいたりするのかもね......っ」

 

 霊夢はそう口に出してから後悔した。その言葉は、遠回しに魔理沙の妹がもうこの世からいなくなっているのを指していたから。

 別に霊夢は魔理沙を悲しませたいわけじゃない。彼女が悲しんでいると自分も調子が狂うのは過去に、自分の妹が里からいなくなったと彼女が知った時に経験済みだ。

 だが霊夢の気持ちは杞憂だった。魔理沙は大きく「大丈夫だぜ」と言うと、霊夢の方を向いた。

 

「私の妹が、約束一つ守れない軟弱者なわけがない。だから絶対、榛奈は帰ってくる。怪我をしてでも、心が壊れていようと、“生きて”帰ってこいって約束したんだからな!」

「...そう。そうだといいわね」

「そうじゃなきゃ私の方も困るのよ。あの子がいない分楽が出来ないし、妹様の機嫌も悪くて」

 

 横から話に参加してきたのは咲夜。彼女もまた自分の部下の帰りを待っているのだ。

 

「そういやあいつが出てってから図書館の空気が妙に暗かったんだが、それも榛奈がいないからか?」

「パチュリー様にとっても榛奈は大切な家族だもの。いなくなって落ち込んでるのも無理ないわ...ってお嬢様が」

「お前が思ったんじゃないのかよ」

「そんなこといいから、さっさと異変を解決しに行くわよ。この上に犯人がいるようだし」

「はいはい。ちぇ、神社じゃあんなにも行くのを断ってたくせに」

「事情が変わったの」

「意見がころころ変わる巫女ね」

 

 そんな咲夜の言葉を無視して、霊夢は、そしてそれにつられて二人も上へと続く長い長い階段を見上げる。石段作りの階段は、遥か遠くで途切れていた。そこが冥界への出入口のはずだ。

 霊夢たちがいるのは冥界の中心よりも少しばかり遠い場所だが、それでも肌に纏わりつく死気は、霊夢たちに、ここが死者の国であることを体感させる。

 さっさと異変を解決して、さっさとこんな場所を出る。

 霊夢たちは、こんなところ早く出たいと思っていた。

 死者の気配は、生者には毒なのだ。

 

 

 

 

 

 しばらく階段の上を飛んで進めば、ようやく見えてくる階段を上ったその先。そこには大きな門と、高い塀が此処から先が冥界だと区切っていた。

 とはいえあくまで目に見える形で区切っているだけで、霊夢たちが結界を破りながら入ってきた時点で冥界だが、あそこはあくまで道だ。地上より辺りを漂う死気が強いだけで、門から先は、これまで以上に死の気配が強いだろう。普通の人間なら精神が侵されて廃人同然となるかもしれない。

 そして、その門の前には、一人の少女がいた。

 真っ白な髪に黒いリボンを着け、白いシャツに青緑のベストとスカートを着た少女。その腰には二刀の長さの違う刀が携えており、傍らには白く、通常よりも大きな霊魂が浮いていた。

 

「この先は白玉楼。人間がここに来るということは、それ自体が死のはずだけど」

「少なくとも私は生きてるぜ」

「死んでてもこんなところ来たくないのだけれど」

「あぁなるほど。勘だと思ってたらあの世にお呼ばれしてたのかぁ」

「あなた達はまだお呼びではないから、帰りなさい。この先へ進むことは、生きた人間の常識で物を考えると、痛い目にあうわ」

「それはちょいと出来ぬ相談だな」

「相談なんてしてないんだけど」

「とりあえずその門を開けてくれない?アンタ門番でしょ?」

「私はこの白玉楼の剣術指南役兼庭師だ!門番ではない!」

「じゃあなんで門の前にいるのよ」

「私はこの冥界に侵入者が入りこまぬよう見ておくようにとお嬢様より仰せつかったの」

「...ねぇここってもう冥界じゃないの?」

「いや、あの結界を超えた時点でここは冥界だろ?」

「もうすでに侵入者が入りこんでるわね」

「......あっ」

「まぁ見ておくだけなら私達が入ったのを見てればいいじゃないか。何も行動せずにだ」

「それってうちの門番より役に立たないじゃないの」

「ぅえーい!侵入したからにはこの先へは死んでからじゃないと進ませない!」

「死んだら進めたのか」

「どっちにしても生きて異変を解決するけれどね」

「さっさと冬が終わってくれないと、薪がなくて凍え死んでしまうわ」

「いいからお前たちの持つなけなしの春を奪ってやる!」

「へぇ、やるのね?」

「いいぜ、相手になってやる」

「時間のムダな気がするんだけれど、お嬢様に命令されちゃったしね」

「妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬものなど、あんまり無い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

「とか言ってたが、大したことなかったな」

 

 そういう魔理沙の背後には、ボロボロで倒れ伏した、先ほどの少女の姿があった。

 無論死んでいるわけではない。きちんとスペルカードルールに則り(のっとり)正々堂々と三対一で戦った結果、相手が気絶してしまったのだ。そう、正々堂々とやったのだ。

 とかなんの罪悪感もなく思えるのは、彼女の人格故である。普通の人は相手の承諾なく三対一の勝負になった時、正々堂々とやったなどと胸を張るのは、ただの恥知らずなのでやらないように。要は相手に許可を取ればいいのだ。

 

「そりゃそうでしょ。さすがに三人でやったんだから」

「むしろよく三対一でよく持った方よ」

「そうかい。で、この先がこいつの言っていた白玉楼とかいう処だな」

「“お嬢様”とか言ってたし、間違いなくこの先にいるんでしょうね。春を奪った犯人が」

「なら行きましょ。早く異変を終わらせて花見をするわよ!」

 

 そう言って彼女達は門を潜る。

 門の先には大きな和風の屋敷があり、庭園まであった。その屋敷を囲むは、今年はまだ見れてない満開の桜の木々。地上でもあまり見れないほど美しい光景だ。

 だがそれ以上に、此処が冥界であると証明するかのように漂う霊達の姿が目に付く。

 こんなところじゃ例え呼ばれてたとしても宴会はしたくないなと三人は珍しく意見を揃えた。

 そしてそんな大きな屋敷を跨ぐと、石畳の道が奥へと続いており、その先にはここからだと視界に収まることがないほど大きな大きな大樹にはピンク色の桜をつけているように見える。その樹の元には、誰かがひとり、浮いていた。

 なるほど、おそらくあそこにいるのが春を独り占めする犯人だな。

 そう思った魔理沙はさっそく行こうとするが、それを霊夢が止めた。

 

「おいおい、なんだよ霊夢。まさかこんなところで怖気づいたなんて言わないよな?」

「私が怖気づくわけないじゃない。そうじゃなくて、この先、妙に嫌な予感がするのよ」

「それを怖気づいたというんじゃなくて?」

「まあまあ。霊夢、それってお前の勘か?」

「ええ」

「なら警戒した方が良いな」

「前から思ってたのだけど、どうして魔理沙は霊夢の勘をそこまで信じるのかしら?」

「まぁ昔から霊夢と居て、霊夢の勘がよく当たるのは知ってるからな。榛奈のも当たるし」

「ふぅん。なら警戒しときましょうかね。あの従者だと主も大して強くなさそうではあるけど」

「まっ、それもそうだな」

「相手を侮るのはいいけど、警戒はしときなさい。何かあっても知らないわよ」

「あいよ。じゃ、一番乗りだぜ!」

「ちょっと!話聞いてないでしょ!」

「警戒、ね。私が負けるとは思えないけど」




後書き~

...これが、平成最後の投稿です......
次は令和に投稿ですよ。というか変守録投稿し始めてもう数年なのに、まだ妖々夢とか投稿スピード遅いなぁと思いつついますが、まあこれから少しずつ上がっていけるといいな、と思います。令和はそれとなく頑張る。
次回、桜の亡霊姫との闘いです。多分カットはしません。弾幕表現は控えめですが。
久々に言いますが、誤字報告お気に入り感想評価いつでもお待ちしております!!
それでは次回もゆっくりしていってね!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第48話『こうなるのは想定外なんだよ』

前書き~

こんにちは。もしくは今晩はご機嫌よう。
今日は令和初の博麗神社例大祭の日ですね。自分も顔を出してきます。
それはともかく前回のあらすじ。
冥界に着いた霊夢、魔理沙、咲夜の自機三人。
あっさり5ボスを倒し、6ボスと対決です。
しかしどうやらそうもいかないようで......
書いてるうちに前半がおまけっぽくなってしまったのは許してください。何でもしますから(ん?何でもするとは言ってないぜ)
前半魔理沙視点、後半榛奈さん視点と霧雨姉妹でいきます。
では今回もゆっくりしていってね!



 目の前に広がるとてつもなく大きな桜。今まで見た桜の、何十倍も大きいその桜は満開かと思うぐらい桃色の花を枝いっぱいに付けていた。

 だがその桜が普通の桜じゃないのは、一目で分かる。

 何せこれでもかというほど妖力を纏っていたからだ。

 そしてその桜の前、桜の花びらが舞う中、私達は春を奪った犯人と戦っていた。

 こうなった始まりは簡単。私達が向こうに近づくと、向こうは私達を敵だと見なして撃ってきただけだ。

 最初は一瞬だけ見惚れた。だがすぐに意識を切り替えて相手に立ち向かった。そんな余裕ができないほどに、相手の弾幕はこれまで戦ってきたことのある相手よりも強く、それでいて美しいものだったからだ。

 しばらくやりあっても終わりが見えない弾幕の嵐。目の前に迫りくる弾幕に、無意識に箒を握る力が強くなる。そう熱くもないのに手汗が凄いのは、少し前から気付いている。

 必死に避ける。身体を捻ったり、時に箒から飛び降りたりしながら。

 

 

 

 撃ちながら避けるだけ。言ってしまえばそれだけなのに、それが楽しいと、いつも思っていた。

 久しぶりに妹と再会して、初めて弾幕ごっこをした時だって心がワクワクして、心臓がはちきれそうだった。ずっと顔には笑みを浮かべていたと思う。アイツは私が手加減したとか言ってたが、それはアイツが自分の実力を自覚してなかったからだ。私はあの時、自分がやりたいように弾幕を放った。アイツが全力で向かってくるのを、受け止めるのが楽しくてしょうがなかった。最後に魔法と魔法のぶつかり合いになったときなんて、途中まで負ける気がしなかったのに、アイツの魔法の威力が急に上がってからはもう撃ち負けるとさえ思った。それもまた楽しくて、時間切れで引き分けになったのが、すごく惜しかった。またやりたいと思ったし、その後もアイツの休憩時間を見計らって勝負を挑んだ。最も、その後はギリギリだろうが圧勝だろうが、私の連戦連勝だったのが不思議だったんだが。

 だがアイツが修行に出てからしばらくして、霊夢から聞いた。初めてフランと弾幕ごっこをしたあの日、アイツは霊夢と戦って、勝ったそうだ。それも今目の前に広がるぐらいの高密度の弾幕をぶつけたって。その後、霊夢の夢想転生を躱しきったって。そう、霊夢本人が悔しそうに言っていた。霊夢がこういうので悔しがるのが珍しくて驚いたが、私はそれ以上にアイツが霊夢に勝ったという事実に驚いていた。だって私は心のどこかで、アイツはずっと私の隣にいてくれると思っていたから。私の手が届かないほど強くなるとは思わなかったからだ。

 そのアイツが、私がいつか超えると決めた壁を、いとも容易く超えて先に行ってしまった。努力の差とかじゃない。それを言ったらアイツの方が一日にやることが多くて、自分の技を磨く時間が少ないからだ。だから努力する時間ならば、私の方が確保できているはずだった。

 なのにアイツが壁を越えて行けたのは、...悔しいが才能と環境の差なんだと思う。アイツは、私よりも先に魔法に触れて、その才能を開花させていた。それを知ったのは、まだ幼かったアイツに向けられるいじめを解決しようとしていた時だったが。

 それに私が里を出た後、一人魔法の森で魔法の研究をしていた時、アイツはパチュリーに弟子入りして、魔法を基礎から習っていた。普通の人ならば独学よりも、誰かに教えてもらった方が早く上達できる。それはアイツにも当てはまることだったということだ。

 だからアイツはきっと強い。まだ私に勝ったことはないけど、それこそアイツが自分の力を自覚してなくて、無自覚に手加減してしまってるからだ。きっと本気でやられたら、私は一回も勝つことが出来なかったと思う。

 

 ――悔しかった。アイツが今の私が越えられない壁を越えたことが。

 そしてその実力を持っていたことを、姉として気づいてあげられなかった。

 でも何より寂しかった。アイツがどこか遠くに行ってしまったように感じて。いやまぁ実際今どこで何をしてるのかすら分かんなくなってるんだが。物理的な距離じゃなくて、精神的な距離の話だ。

 だからアイツがいない間も努力した。図書館から自分の力になりそうなものを色々と借りて、同じ森に住む人形遣いの家からも色々と拝借した。寝る間だって惜しんだ。パチュリーから色々教えてもらったりもした。たまに変なキノコを食べて体調を崩したが、それはいつも通りだった。

 だから今の私は、昔の私よりもずっとずっと強いはずなんだ。

 なのに何故だ。どうして。

 目の前に広がる弾幕に、楽しいと思う気持ち(余裕)が湧いてこなかった。目の前にいるはずの二人の背中を、遥か遠く感じてしまった。

 二人はこの弾幕をすいすい避けてる。余裕そうに、口元に笑みを浮かべながら。

 対する私はどうだ。笑みを浮かべることなんてできない。当たりそうになる度に肝を冷やす。頬には嫌な汗が伝っていって、箒を握る手は白くなるほど力が入っていた。

 駄目だ。こんなんじゃアイツに追いつけない。今まで目標だった霊夢にも、榛奈にも。

 嫌だった。アイツ等が私を置いて行ってしまうのが。先へ先へと進んで、いつか私が追いつく前にいなくなってしまうんじゃないかって。アイツ等の隣に、私はいられないんじゃないかって。

 そんなの嫌だった。だからこの勝負、私も活躍してやる。私だってお前らと同等でいられるんだぞって、そう笑って胸を張っていられるように。

 

 ――あぁそうだ、この程度、なんてことのない。ただ当たらないように良ければいいだけなんだ。今までと変わらない。

 今だけは、楽しいか楽しくないかは捨てろ。とにかく勝つんだ。堂々と胸を張れる、そういう戦い方で!

 

 そう思う私のところに、ひらひらと妙に光っている紫の蝶が、近づいてきて――

 

「――――っ!?」

 

 なんだ、今の。

 体中の毛がぞわっと逆立ったかと思ったら、心臓が鷲掴まれたと錯覚するぐらいぎゅっとなって、訳も分からず蝶を見れば、蝶は私から離れていた。

 ――いや違う。私が本能的に、こいつから距離を離したんだ。

 こいつはやばい。触れただけで死ぬんじゃないだろうかとさえ思えた。

 そして、その私の感覚はあながち錯覚でもなかった。

 

「魔理沙!その蝶に触れないで!」

「なっ?霊夢、どういうことだ?」

「その蝶からとてつもない死気を感じる......。触れたら最悪、死ぬかもしれないわよ」

「あら~、よく分かったわね~」

 

 のんびりとしたその声は、この弾幕を作り出している存在。桃色の髪を持ち、水色と白の着物を着たふわふわ浮かぶ、まるで幽霊みたいな女性。いや、この土地にいるってことは幽霊かそれに似た類のものなのだろう。他の白い奴らとは違って、身体はあるあたり、亡霊か。

 

「ごめんなさいね。ちょっと楽しくって、思わず能力を使っちゃったわ」

「思わずで人を殺さないでくれ」

「そうねぇ。それで死んじゃったら、成仏も出来なくなっちゃうし。あっ、それで心配はしなくてもいいわよ。もし死んじゃったら、私が責任もってこの白玉楼で働かせてあげるから~」

「悪いがまだ死にたくはないんでな。心配ご無用だぜ!」

「うふふ」

 

 何がそんなに楽しいんだか、満面の笑みで弾幕を放つヤツ。

 のん気な奴だ。それほど余裕があるとでもいうのか。それとも元からそういう性格なのか。

 まったく、楽しいからって人を殺さないでほしいぜ。

 

「この桜はね、後ちょっとなのよ」

「何が後ちょっとよ?」

「後ちょっとで、満開になる。貴女達のなけなしの春があれば、封印が解けるの」

「封印?何を封印してあるんだ?」

「何者かが封印されてるわ」

「誰だよ......」

「封印が解ければ、それも分かるわ。私はその何物かが誰なのか知りたいのよ」

「興味本位で封印解いたら駄目でしょ。何者か分からないんだし」

「でも私は知りたいのよ。だから覚悟しなさい。貴女達のなけなしの春、奪ってあげるわ!」

「ふん。そっちこそ覚悟しやがれ、死人嬢!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

「やぁッ!!」

「ふん......」

「まだまだぁ!」

「甘い!」

 

 次々に作って繰り出しても、あっさり避けられる弾達。

 まあいい。元より当てる気何ぞさらさらない弾なんだから。

 

「この程度か悪魔の犬!」

「悪いけどそれは咲夜さんを言い当てた名称なんでねぇ!」

 

 私は確かに犬っぽいと言われるような性格をしているかもだけど、咲夜さんの方が忠犬だ。しかも完璧で瀟洒な。私なんかに使っていい称号じゃない。

 

「それと人間を犬呼ばわりするなああああ!」

「ちぃ......!」

「おりゃあああ!!」

 

 避けて避けて避けられまくって、一回も掠ることもなく避けられ続けるけど、正直それで構わないと思っている。

 だって本命はそれじゃない。

 

「...まさか!?」

「遅い!」

「ぐっ...!?」

 

 複数の弾幕が、それぞれ奴を葬ろうとしていたかのように見えたか?

 だが本命は私自身の拳だ。それは確実に目の前の奴を捉えていて、今一撃を加えた。

 しかしそれで倒れるほど奴も弱くないのは分かってる。

 すぐさま飛びのけば、さっきまで私がいた位置に奴の弾が通り過ぎて行った。

 

「...まさか人間が私に一撃入れれるとはな」

「人間だって馬鹿にできたものじゃないってことだぜ」

「どうやらそのようだな。紫様が貴様にご執心なのも頷ける」

「...?なんで幻想郷の管理者が私に...?」

「貴様のような者が、人と妖のバランスを崩すからだろう!」

「はあ?何言って......」

「食らえ、式神『橙』!」

 

 私の疑問に答えずに取り出したスペルカードは、彼女の式神を呼び出すもの...だったはずだ。

 実際その通りのようで、空に隙間が現れると、そこから黒い物体が、私と九尾の間に落ちてきた。

 どしんと落ちてきた衝撃で砂ぼこりが舞う中、私はいつ彼女の式が飛び出してきてもいいようにと、警戒しながら砂ぼこりの中を凝視する。

 

「.........」

「.........」

 

 ...しかし、いつまで経っても何のアクションも起こさない。

 不思議に思うが、もしかしたら不意を突くための作戦なのかもしれない。

 いくら2ボスのキャラだからって、あの藍の式神だ。そういう罠を仕掛けることができてもおかしくはない。

 

「.........」

「.........?」

 

 はて、先に疑問に思ったのはどちらだったのか。

 少しずつ晴れてきた砂ぼこりの中。うっすら見えてきた黒い物体に、私は眉をひそめた。

 ありゃ、人の姿ではないのでは?

 その私の思考は当たっていて、完全に砂ぼこりが消えた中、そこにいたのは緑の帽子を被った二本の尾を持つ黒猫。

 但し仰向けに倒れ、目を回している。

 

「ちぇ、ちぇーーーーん!!」

 

 急いで猫に駆け寄り抱える藍。変わらず目を回し気絶している橙(猫形態)。

 はて、私達は戦っていたのだよな?

 ...何がどうしてこうなった......

 

「あ、あはは......」

 

 もはや苦笑いしか出なかった。

 

 

 

 

 

 その後とりあえず一時休戦にして、神社で橙を休ませてはどうか?と藍に提案すると、案外あっさりとそれを承諾してくれた。意外である。意外過ぎて一瞬私を葬るための罠かとも思ったが、それはルール違反以前にルールに則って正々堂々と戦う者としてどうなのかという考えに至ったので、無駄に警戒はせず布団を敷いたりお茶を淹れたりした。

 いや勝手に人の家でこんなことしちゃ普通は駄目だと思うけど、そこはほら、幻想郷だし......

 あ、駄目ですか?ごめんなさい。

 まあ霊夢なら後で茶菓子でも渡せば許してくれるでしょう。何ならさっきお賽銭も入れたんだし。

 そう思いながら寝ている橙の枕横に座る彼女にお茶を差し出した。

 

「...すまない」

「そこはお礼を言って欲しいかな~」

 

 そう言いながら私は私で座布団を出して、胡坐をかく。気を抜いて良いときは、この姿勢が一番だ。

 

「...確かお前は、黒いのの義妹だったか」

「んー?魔理沙姉のことだったら、そう。血は繋がってない同い年の妹だよ」

「血が繋がっていない割にはそういうところは姉に似ているのだな」

「“そういうとこ”ってどこが似てるの?」

「人の家を堂々と使ったり、そうやって座るところだろうか」

「うっ...前者は痛いとこ突くね......。私としては別に霊夢の家を好き勝手に使おうとは思ってないんだよ?ただほら、ここ神社だし、霊夢は魔理沙姉の友達兼ライバルだし、お茶くらいならいいかなーって。さっきお賽銭も投げといたし」

「どうやら、アイツほど常識に欠けているわけではないようだな」

「魔理沙姉も常識の欠けた人ではないよ。分かっててやってるだろうからね」

「それは余計タチが悪いな」

「ごもっとも」

 

 最初は藍も私のことを警戒していたのかお茶に手を出さなかったが、私がずずっ......とお茶を啜る様子を見てやっと警戒を少し解いたようだった。部屋の中に二人分のお茶を啜る音がこだまする。

 その音の中に、呻き声が混じるまで私達はのんびりと過ごしてたと思う。

 

「ぅぅっ......」

「橙!?大丈夫か?橙!」

「ぅ......らん...しゃま......?」

「橙......!」

 

 ようやく意識を取り戻したらしい橙をぎゅっと抱きしめる藍。橙は橙で猫形態だからあんまり表情の変化は分からないんだけど、なんだか嬉しそうだ。

 これなら特に何か問題が起きるわけでもなさそうだな。

 

 そう思ったのはフラグでしょうか?

 橙は私に気づくと、じっと見てきました。

 

「っ...らんしゃま、どうしてこの人間が?」

「...?こいつは紫様が見張っておけと言っていた人間だ。こいつがどうかしたのか?」

「この人間、服装とか容姿が橙を倒した人間に似てます!倒すべきです!」

「何...?橙を傷つけた人間だと...?」

 

 ギロリと睨む藍。橙も橙で私を睨んでいますが......

 

「はて...私に何か......?」

「橙を倒した人間が、お前に似ていたそうだ。心当たりはあるか?」

「まっさかー。貴女の愛猫を倒した人に心当たり?そんなものあるわけないじゃないですかー。ハハハ」

 

 そう言ってみるが、二人の視線は私に向いたまま。これはどうやら私を敵だと認識している模様。

 ...いやね、正直心当たりはあるのよ。ほら、私って簡単に言える特徴なら魔理沙姉に似てるじゃない?金髪とか髪は長い方とか髪は縛ってるとか。服も意図していないのに魔理沙姉の色違いバージョンだし。とんがり帽子被ってるし。

 だから似てるって言われても仕方ないと思うのよ。それどころか普段ならそう言われて喜んでるはずなのよ。

 でもね、心当たりっていうのはそれだけに留まってなくてね。

 ほら、今って春雪異変で霊夢達が異変解決に出向いているでしょ。で、橙って妖々夢の2ボスキャラでしょ?

 後は分かるよね...?

 

「橙、その人間の特徴は言えるか?」

「確か黒い帽子に、白黒の服を着てて、箒を持ってました!髪はこの人間と少し違う金色の女です!」

「なるほど、十分な特徴だな。さて人間、ここまで言えば心当たりはあるだろう?」

「...アッハハ。いやぁ、ほら今って霊夢達は異変解決してるんでしょう?ならその過程で犯人と疑われちゃったんじゃないでしょうかねー」

「私を倒す前は、迷ヒ家の物を盗もうとしていました」

 

 魔理沙姉えええええぇぇぇぇ!!

 なんでそんなことしちゃったの!てっきり図書館でやらないからこの世界の魔理沙は私の影響で物を盗むことはしない手癖の悪い子に育たなかったと安心してたのに!

 まさか魔法の森で会ったアリスさんが魔理沙姉との関係を色々とあると言っていたのは、魔理沙姉がアリス邸から借りて(盗んで)いたからか!?アリスさんがそれを言わなかったのは、妹の私に言うのは...って躊躇ったからか!?

 藍は藍で橙の話を聞いて「ほう......?」と私を見る視線の温度が変わってるし!?

 私に救いはないんですか!?

 

「さて、さっきまでの戦いは一時休戦だったな。橙も目覚めたことだし、続きといくか」

「いやぁ、私としては興が削がれちゃったからもういいかなーって思うんですが......」

「大丈夫だ、問題ない」

 

 それは問題ある時の台詞だってー!

 えー、これはまた戦わないといけない雰囲気でしょうか。興が削がれたのは本当なんですよ!さっき橙が落ちてきたこととか、魔理沙姉のやっちゃったこととか聞いたらもう戦おうなんて気が無くなっちゃって!

 なんとかこれを回避することって出来ないかな。例えばほら、これ以上に驚きの事態が訪れるとかさ......

 

「――っ!?」

「なっ...!?」

 

 瞬間、私と藍はある力を感じ取った。

 とても強く濃い、死を誘う力。

 幽霊とか亡霊とか、その手の分野にしても生半可な者が持っているわけがないほど、強い死の力。

 私の中で一人、これほどの死の力を持てる亡霊に心当たりがあったが、それにしてはおかしいほどに強く、暴力的だ。

 しかもそれを感じるのは空の上の方から。

 ということは、つまり......

 

「...おい、今の感じたか?」

「うん、感じた。むしろ感じない方がおかしい...!」

「え?え?どうしたんですか藍しゃま。何かあったんですか?」

「...橙は何も感じなかったのか?」

「はい......」

「これほど強く濃い力を感じられないとか、ある意味幸せ者だね......」

「橙。異変が終わったら特訓だ。今度は人間にやられるようなヘマをしないよう鍛えてやる」

「わ、分かりました......」

 

 橙、ご愁傷様。

 ともかくこれほどの気配を持つモノの正体。私が思いつく限りじゃ、あれしかない。

 

「ねえ八雲の式。一つ聞きたい」

「手短にな」

()()の封印は、どこまで解けた?」

「っ!?...戦う前の発言といい、今のといい、お前は一体どこまでこの異変のことを知っている......?」

「いいから答えろ!西行妖は復活したのか!?」

「...まだのはずだ。でなければ、私達だけでなく、橙も含め全ての人間妖怪が死の気配を感じ取るはずだからな」

「ということは、まだ復活はしていない...と?」

「完全には...だ。この調子なら後数時間後には完全に復活してしまう。そうなれば紫様とはいえ、奴を抑え込めることが不可能になってしまうだろう......」

「数時間もあれば十分だ。それだけあれば、どうにかすることも出来る」

「どうするつもりだ?」

 

 そう、問題はそこだ。

 『どうにかする』とは言ったものの、その方法を私は考えてなかった。

 だってそうだろう。原作じゃ、封印が解ける前までには霊夢達主人公が6ボスを倒して、宴会だ。後日談に紫達八雲家が出てくるけど、それは関係ないしな。

 だから私も、霊夢達の後を追って、一緒に西行寺幽々子を倒すか、その手前で妖夢を倒すかのどちらか。或いは私が着いた頃にはもう終わってましたってのが私の中で描いてた未来だ。

 西行妖が復活するなんてこと、私には想定することが出来なかった。

 どうする?どうすればいい?

 今から行って霊夢達と一緒に西行寺幽々子を倒すか?

 それとも話し合いに持ち込むか?

 駄目だ。もう既にこれだけ封印が解けてるんだとすれば、今更西行寺幽々子を止めたところで自力で春を集めて復活してしまうのではないか。

 なら再封印か?

 これは可能性がなくもない。一度封印することが出来た紫を味方に付ければ霊夢とのコンビで封印してくれるはずだ。

 

――それは少し無理だね。今の霊夢は弱い――

 

 霊夢が弱い?そりゃ冗談だろ?

 霊夢は歴代の博麗の巫女の中で一番強いんだぞ?

 その霊夢が弱いって。じゃあお前はどれだけ強いんだって話になるぞ?

 

――どれだけ強いか。その力の片鱗くらいは、この異変で見せれるかな――

 

 ...交代するのか?

 

――今はいい。変わる時はこっちで判断するから。とにかく、八雲の式には、今から言うように伝えて――

 

「...簡単な話だ。復活する前に、再封印する」

「貴様如きができるとでも思っているのか?アレの封印は、紫様でさえ苦労したと聞いた。それを一人間が出来るとは思えん。逆に貴様が命を落とすのが落ちだ」

「出来る出来ないの話じゃない。やるしかない。でなければ幻想郷は自殺者で溢れ、すぐに崩壊するぞ」

「...ならば勝手にしろ。私は知らないからな」

「ああ。そうさせてもらう。...が、お前に一つ頼みたいことがある」

 

 あいつが言えと言った言葉をそのまま口にし終わったところで、その言葉の意味を理解して驚いた。いや、どうしてそう言えと言ったのかに対して驚いた、と言う方が正しいか。

 藍も私の口から伝えられる言葉に、驚きはしないが疑問を隠せないようだった。

 だが今は非常事態。藍はその言葉の真意を確かめるのは後だと考えたのか、紫にその言葉を伝えると言って、橙を抱えて隙間に消えた。

 さて、冥界への入口はこの死気を伝っていけば着けるだろうけど、時は一刻を競う。こうしている間にも、魔理沙姉達が心配だ。

 人間にとって、死者の気配は毒。なら、死そのものの力は、猛毒だ。

 私は帽子を深く被り直すと、飛び乗るように箒に跨って、宙に浮いた。

 目指す先は冥界。西行妖の元だ。

 

 お願いだから、生きててよ。皆。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________

「よかったのか?藍を通して紫に接触して。しかもあいつじゃなくてお前が」

「いいんだよ。いずれ紫には説明しておかないといけなかった。なら、向こうから接触してきた以上、こちらも手の内を明かしておいた方が、紫を味方に付けやすい。この状況も、言い換えれば絶好の正体を明かす機会とも言えるからね」

「しかしあいつにお前の過去...いや、あいつが忘れ去ってしまった過去を触れさせてしまう切っ掛けになるかもしれないぞ?」

「いいんだよ。いずれあの子も思い出さなきゃいけなかった。まだ過去を知るにはあの子の心は弱いけど、紫に接触すること自体にマイナス要素はないと思うよ。むしろ向こうを味方に付けることで、こちらの命が確保されるというメリットがある。なら、それに乗らない手はないよね」

「『○○○計画』。その対象は榛奈だ。貴重な人材、絶対に無駄死にさせるなよ」

「はいはい。()をそんな風に使うのはいただけないけど、ためになるなら、手伝ってあげるよ」

 

 さて、私の友人はどう動くかな。式がきちんと伝言を伝えてくれてるといいけど。

 

 

 

――紫に伝えて。幻想から忘れ去られた巫女が帰ってきたって――

 

 

 

 

 




後書き~

ようやくここまで来たって感じです。この筋書きを頭の中で描き始めてから一体どれだけ経ったでしょうか。リアル経過月日2年な気がします。
ここから物語が急速に動いていって......なんてことはないと思います。いつも通りグダグダしますかね。
次回、ようやく榛奈さんが主人公組と合流です。そこからどう動くのか。私でさえ分かりません。(それでいいのか作者)
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第49話『大丈夫だよっ!』

前書き~

遅刻したようで、いつも通りかなと最近思っています。毎月最低一話をモットーに、ほのりんです。
最近楽器を演奏し始めました。まだお遊びレベルです。というかお遊びです。そのうちコンサートに出る予定みたいですが。
それはさておき、前回のあらすじ。
少し落ち込み気味の魔理沙。西行寺家の亡霊姫と戦います。
神社にいる榛奈さんは、藍と戦っていたらいつの間にか橙を看病していました。その後西行妖の妖力を感じてそれぞれ行動に。

今回は榛奈さん視点からの魔理沙視点です。
今回もゆっくりしていってね!


 飛ぶ。飛ぶ。飛ぶ。

 何よりも速く。風よりも。音よりも!光よりも速く!

 

 実際にはそんな速度は出せない。魔理沙姉の最高速度より遅いかもしれない。当たり前のようだが鴉天狗にすら追いつかない遅さだって分かってる。自覚してるし、人間である以上、限界なんて妖怪のものより早くぶち当たるのも理解しているつもりだし、そこまで強くなるには私が今まで生きてきた時間の倍以上の年月がいることも分かってる。

 でも今だけはそれがどうしてももどかしかった。

 

 もっと早く、速く、はやく!

 

 早くしないと、魔理沙姉達が...取り返しのつかないことになっちゃう。

 そんなの嫌なんだ。何よりも耐え難いんだ。そんなことになるなら、代わりに自分がって......

 

――自分が代わりに、なんて、君の周りが許さないんじゃない?――

 

 ...分かってるさ。

 でも、そんなこと考えてしまうくらい、今の私には余裕がないんだよ。

 魔理沙姉達が今、危機に陥ってるかもしれないんだ。

 西行妖に殺されるかもしれない、そうやってずっと考えてしまうんだよ!

 

――そう考える余裕があったら、その余裕を西行妖をどう封印するか考えるのに回したら?――

 

 ...そうだな。

 でも、さっきお前この異変で力の片鱗を見せるって言ってたな。

 ならお前が倒すんじゃないのか?

 

――あくまでその体の主は君だよ。私も表に出てやる時は来るだろうけど、それまでは君が動くんだ。それに“倒す”んじゃなくて“封印”。私は実際に西行妖の満開状態を見たことは無いけど、聞いた話だと私が倒すことは到底不可能だね。あくまで封印しかできないよ――

 

 そうか。

 ...指示くらいはくれよ?

 

――最低限のね――

 

 それで十分だ。

 

 目の前には見えにくいが、空に穴が開いているようなものがある。

 おそらくあれが冥界への入口であり、きっと霊夢辺りが結界を破った跡なんだろう。近づいてくるにつれ濃厚になっていく妖力の気配も、あそこから漏れ出ているようだ。

 

 あの穴を抜ければ、魔理沙姉達の下まで後少し。

 はやる気持ちと心臓を抑え、私は地上を飛んでいた速度でその穴へ勢いよく飛び込んだ。

 

 

 

 

 はて、穴に飛び込むのは二回目かな。

 半年ぐらい前、山の仙人の攻撃で突き落とされた(という形で飛び込んだ)のが一回目のはず。それ以外は記憶にないからね。そんな状況も訪れなかったはずだし。

 まあ今回は前回と違って上に飛び込むんだけどね。

 で、なんでこんなことを呑気に考えているかって言うと。

 

ゴンッ!

「ぃったあぁっ!」

 

 何故か飛び込んで早々天井にぶつかったからなんだけどね。

 そのまま落ちるか、と思ったけど、いつまでたっても体が天井に張り付いて落ちない。

 というかあれ?これ張り付いてるというか、寝っ転がってる?

 もしかしてこれ、天井じゃなくて床か?重力が反対になってるのか?

 

――冥界もまた幻想の一つ。重力なんていう現実は関係ないからね――

 

 それもそっか。そもそも空中に空間が存在すること自体幻想郷ならではだったね。

 

「くっそぉ......!」

 

 思いっきりぶつかった頭がまだヒリヒリ痛むけど、そんなのに構ってる余裕はない。早く早くと気持ちが身体を急かす。それでも帽子は忘れずに。

 再び箒に飛び乗り真っ暗な中、石畳や階段が明るく見えるのでそれに沿って飛ぶ。

 少しすると石に何かがぶつかったような痕跡がちらほら見えてきて、やがて木製の和風の門が見えてきた。その門の前も酷い有様で、抉れた地面には、一人の女の子が倒れていた。

 こんな時ではあるが、見捨てることもできず女の子に寄ってみる。

 白髪に黒いリボン。緑の服に長さが違う刀が二刀。そして私に気付き、女の子を守ろうとしているのか私と女の子を遮るように浮く少しばかり大きい白い霊魂。

 どことなく見たことある容姿だなぁ...なんて。

 

――いやそれ明らかに魂魄妖夢(原作キャラ)だよね?――

 

 だよねー

 

「あー、もしもし?起きてる?」

「.........」

 

 駄目だこれ早くなんとかしないとマジで。

 このまま放っておいても別にいいんだろうけど、気絶した女の子を放っておくってのも心痛いし......だからってここでうだうだやってられないし......

 

――なら君の力で回復させて、戦力に加えたら?――

 

 戦力?

 

――彼女は半人半霊。半分死んでるってのと同然だから、死の気配や力に強いはずだよ。君もお世話になったあのお爺さんはこの子の祖父兼師匠なわけだし。それにこの状況にしたのは彼女のせいでもあるわけだからね。尻拭いぐらいさせないと――

 

 それもそっか。なら早速......

 

「悪いけど、少しどいててね。その子をちゃっちゃと回復させちゃうから」

 

 そう言うと、半霊は私の言葉を理解したのか、退けてくれた。

 だから遠慮なく横たわる彼女に近づき、回復魔法をかける。

 少し説明すると、この魔法は龍のやつが教えてくれた今まで使ってたのとは比べ物にならないぐらいの効力を持った上位回復魔法だ。(というか今まで使えた回復魔法が雑魚だった)死にかけの状態でさえ死んでいないのなら回復できる。これを修行開始当初に習得させられたおかげで、今私が生きていられる、って言えるぐらい凄い魔法なのだ。...誰でも出来るってわけでもなく、才能や適性が必要みたいだけど。

 だからこそ、恐らくは弾幕によるダメージ程度しか負っていない彼女程度なら回復させるなんて容易いことだ。

 

「――っ...ぅぅ......」

「あっ、気がついた?」

「え...?...敵っっぅ!」

「動いちゃダメだよ。まだ回復できてないんだから」

 

 私を敵だと認識した女の子は動こうとするが、身体が痛むようですぐにまた横たわった。

 

「...違う人...?」

「ん?あぁ、もしかして魔理沙姉...多分ここを通った金髪の魔法使いだとでも思った?残念、私は榛奈。その魔法使いの妹だよ、魂魄妖夢さん」

「な、なんで私の名前を......」

「知り合いから貴女のことを聞いてたんだよ。貴女の容姿と名前をね。それで聞いてた容姿と同じだったからそうだと思ったんだけど...違ってた?」

「い、いえ、あってます」

「ならよし。ほら、もう動いて良いよ」

 

 私が少し離れると、彼女はゆっくり上半身を起こし、体の状態を見ていた。

 大丈夫なはずだ。あの魔法は私自身が自分にかけまくって実証している。かけまくったせいで他の魔法より得意になってしまったけど、それはそれで良いことなので気にしない。

 

「...ありがとうございます。助けていただいて」

「どういたしまして」

 

 素直にお礼を言う彼女に返事をしながら、私はある方向を向いた。

 死の気配が強い方。つまりは西行妖があると思われる方向だ。

 こうして妖夢の相手をしている間にも気配はどんどん強くなっている。これほど強いと、通常の人間ならば即気絶するんじゃないか?

 ともかく妖夢が起きた以上、ここでうだうだやってる必要はもうない。

 

「さて妖夢。貴女は周りに漂う死に気付いてる?」

「“死”......ぇ、なんですかこの妖力!?」

「気付いてなかったのか。まあいいや。とにかく動けるようになったのなら付いて来て。元凶をぶちのめしに行くよ。私にとっては家族や友人を助けるために。貴女にとっては貴女の主を助けにね」

「幽々子様が...?その話はどういうことですか?」

「貴女が気絶してる間に色々あったみたいなの。私も人伝えで聞いただけだけどさ。詳しくは道中話すから」

 

 そう言って私が浮かび上がれば彼女もまた浮かぶ。

 それを確認して、私達は一直線に西行妖の下へ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な...なんなんだよこれ......」

 

 目の前に広がるとてつもなく大きな桜。

 『春の欠片』を与えられていたからか妖力を纏っていたその桜は、先ほどまではそれだけの印象だった。

 しかし今はそんな印象を吹き飛ばすような光景が今私の目の前に広がっていた。

 先ほどまであったあののんびりな奴の弾幕は無くなっていて、代わりに先ほどよりも多くの花びらが舞っていた。

 

「枝が...うねっている?」

「というより意思を持って動いているわね」

「どういう冗談だぜ?まさかあの桜に意識があるとでもいうのか?」

「魔理沙のその発言。あながち間違ってないんじゃない?」

「おいおい、まじか......」

 

 霊夢の肯定に私は密かに冷や汗を掻いた。

 いつの間にか消えている異変の犯人といい、あの妖怪桜といい、一体全体何がどうなってるんだぜ......

 

「死気が強くなっている...このままじゃまずいわね」

「どうまずいのよ、霊夢」

「さっきあの亡霊が言ってたでしょ。あの桜は何かを封印してるって。もしそれが復活したら...これだけ死気を放ってるのよ。幻想郷が破滅しかねないわ」

「じょ、冗談だよな?それ......」

「こんな時に冗談なんて言うわけないじゃない!」

「...くそっ」

 

 霊夢の言う通りだ。私がその事実を受け入れたくなかっただけだった。

 しかしあの亡霊でさえ苦戦してたってのに、今の私があれを倒せるのか?

 

 ――無理だ。そんなの。あんなの勝てっこな――

 

「――っ!?」

 

 なんだ...いまの......

 一瞬思考が消極的になった。

 でも、なんでだ?こんなの、勝てるに決まって......!

 

――勝てるわけがない。霊夢でさえ焦ってる感じが伝わってくるのに、霊夢より弱い私が倒せるわけが――

 

 そんなわけないだろ!

 

 ――私には無理なんだ。倒せるわけない。勝てるわけない。殺されるぐらいしかできない――

 

 

 

 

 

――無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ――

 

 

 

 

 

「ぁ...ぁぁ......」

「...魔理沙?魔理沙、どうしたの?」

「ぅ...ぅぁ......ぁぅ......」

「ちょっと!どうしたっていうのよ!魔理沙っ!」

 

 誰かが身体を揺さぶってくる感覚がするが、そんな感覚が遠く感じるぐらい、私の意識は何かに呑まれかけていた。

 

――今更私に何ができる?死ぬしかないだろ。勝てないなら死ぬしかない。これはスペルカード決闘法の戦い(ごっこ遊び)じゃないんだ。負けたら死ぬ。勝てないから死ぬ。それしかないだろ――

 

「魔理沙!魔理沙!」

「何が起こってるっていうの?まさか魔理沙が怖気づくなんて思えないけど......」

「何が起きてるなんてこっちが聞きたいわよ!――チィッ!」

 

 身体が揺れる。無理矢理引っ張られるような感覚。

 何かが横を通って行ったように感じた。

 

「...何が起こってるか分からないけど、この馬鹿を放っておくわけにはいかないわ。どこか安全な場所に連れていかないと」

「なら私に任せて霊夢はこの妖怪の方を」

「ええ。頼むわよ咲夜」

「任せて」

 

 不意に身体が浮いたかと思ったらすぐに誰かが私を掴んで、気づいたら地面に降ろされたような感じがした。

 

「魔理沙、貴女はここで待ってなさい。貴女に死なれると、妹様やあの子が悲しむもの」

「.........」

 

 

 

 ...あれ、私何してるんだ......?

 ここは何処だ?どうして私が此処にいるんだ?

 

 上の方では凄い音が聞こえていて、上を見れば大きな桜の木がゆらゆらと枝を振り回していた。その間を紅白の巫女服の誰かと、メイド服を着た誰かが飛び回っている。

 

 あれは...霊夢と咲夜か?

 どうしてアイツ等が......

 ...そうだ。私は異変を解決しようとして...それで......

 ...霊夢達は怖くないのか......?

 あんなの、勝てるわけないのに......

 怖い...嫌だ...死にたくない......

 

 

 

『大丈夫だよっ!』

「...ぇ......?」

『舞理沙は大丈夫。こんなところで死ぬわけないよ!!』

 

 怖がって、ただ震えてただけの私に聞こえてきた声。

 心が落ち着くような、安心できるような、優しい声。

 その声は何故か私の耳に馴染んでいて......

 

『だって―――』

「――りさ!逃げてっ!」

「えっ?...ぁ」

 

 急に叫ぶような声が聞こえて、その言葉を理解できないままに声の方を見れば、目で追うのがやっとなぐらいの速度で迫ってくる一本の枝。

 先端が尖っているのと、真っすぐ私めがけて伸びているのでわかる。

 確実に私を殺そうとしてるんだ。

 死が迫って来てるからか、周りの時間が急に遅くなったように見えた。

 遠くで霊夢が私に手を伸ばそうとしている。そんなことをしても私に手が届くわけじゃないのに。

 咲夜はポケットから懐中時計を取り出そうとしてる。でも能力を使う頃には私の体を枝が貫いてるだろう。

 

 あぁそっか。私ここで死ぬんだ。

 こんなとこで、私、終わっちゃうんだ。

 そんなの、嫌だよ......

 

 助けて...榛奈っ!!」

 

 

 

 

 

 

「了解っ!」

「――っ!?」

 

 その場には聞こえないはずの声。

 その声が聞こえた時には私の目の前に、私と同じぐらいの女の子の背中があった。

 金色の髪を靡かせて、真っ白でふんわりした服を着て、大きく頼もしく見えるその背中。

 本当なら私がその姿を見せていないといけないのに、霧に包まれたような私の心を、穏やかな風で晴らしてくれる、安心してしまうその姿に私は情けなく声を漏らしてしまって......

 

「――ぁあ...ああ......」

「お待たせ魔理沙姉。助けに来たよっ!」

 

 ――霧雨榛奈(私の妹)が、笑顔で私の前にいた。




後書き~

もう少しカッコいい返事をさせたかったと思ってます。

それはともかく、前書きで『毎月最低一話』と言っておきながら言います。
しばらく変守録の方はお休みさせていただきます。
ここに書くと長くなってしまいますので、詳細は活動報告にて。
執筆活動をお休みするわけではありませんので、ご安心ください。

それでは次回予告。
次回、まだ書いてないけど多分榛奈さん本気モード出すんじゃないかな。魔理沙、落ち込まないでねっ!
そして謎の声の正体が明らかに......なるかもしれません。
それでは次回もゆっくりしていってね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。