眼が覚める。深い深い眠りから。
体が怠い、力が入らない。
いや、動かそうにも動かない。まるで金縛りにあったかの様な、それに起きたはずなのに見渡す限り闇ばかり。顔も動かないので眼だけをギョロギョロ動かしても真っ暗闇。
何だこれ? どうなってんだ? 誰かの悪戯か?
様々な疑問が頭に浮かび始め焦りを覚える。叫びたくなる衝動を抑え、冷静になれと自分に言い聞かせる。
そしてグルグルと頭の中で回る不安を押しのけ一つの考えが浮かび上がる。
そうか、これは“夢”だ。きっとそうに違いない。次に目覚めたらきっと別の場所に居るんだ。そう言い聞かせ再び眠ろうとする。
しかし、現状は変わらず。
あぁ、やっぱりこれは現実なんだ。だとしたら自分はどうなっているんだ、まさか生き埋めにでもされたのか?
……怖い怖い怖い!
全てを飲み込む濁流の様に絶望が押し寄せ心を蝕む。助けてくれと叫びたくなるが焦りと恐怖のあまり声が出ない。
嫌だ、こんな所で死にたくない!助けて!そう思いながら。
足掻き、踠き、必死に体を動かそうとする。
そして数分程経った時、自分の体にぴっちり張り付いている何かがもぞもぞと動き始める。そして、まさかここは何かの腹の中なのではないかと、このままでは溶かされてしまうと思い更に焦る。
また数分程経った時右腕の肘の部分までが外に出た感触を覚える。
やった!外に出られた!
右腕を必死に動かし穴を広げようとする。
そうして右腕が完全に外に出た時、自分が地面の下に埋まっている事に気付いた。
良かった、生き物の腹の中じゃない。
そう思い少し安心するが生き埋めになっている事には変わりない為すぐさま脱出を試みる。
そしてどれぐらい眼が覚めて数時間経ってからようやく全身が外に出る。
助かった、ただただそう思った。そして周りを見る。しかし何処を見ても特に何もなく木に囲まれ草と石が転がっているだけ。
空を見上げると月がポツンと佇んでいるのみ。
何処だここ? こんな所しらねぇ。
そんな事を考えているとふと違和感に気付き木に近寄ってみる。そして分かった。
大きい。木ではなく自分が。
明らかに大きいのだ。周りには石ころと草しかない為比較対象が少なかった為気付きにくかったが軽く10メートルはある。どうなっているんだと思い木が小さいのかとも思った。そして木に触れると眼が飛び出るかと思うほど驚いた。
木に触れている手に“皮膚が無い”。
いや、皮膚どころか血管も肉も無い。
そこにあるのはただの骨。
「何だぁ⁉︎ これ⁉︎」
体の彼方此方を見て触れて知る事実。自分は骨だ。骨だけで歩き回っている。
そして初めて発声した事により又しても気付く違和感。はて、自分はこんな声だっただろうか? それよりも此処は何処なのだろうか? 目覚めた時から続く数々の疑問、おかしい、全てがおかしい。俺は昨日普通に寝ていた筈だ、あれ? いつ寝たんだっけ? てか俺って何処に居たんだっけ? そして最後の疑問はこんな事だった。
「てか、オラぁ誰だ?」
これは心優しい化物が様々な葛藤をしながらも必死に頑張るお話。
どうも、凝りもせずにまたも新しい物を書き始めました栗ンプです。(・ω<) テヘペロ
今回はほのぼのメインでやってみたいと思っています。
たまに鬱な描写や残酷な描写があると思いますがほとんど気にしなくて良いレベルだと思いますのでよろしくお願いします!(^ ^)
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困惑する妖怪
「ん〜? 何でだ? 何で自分の事なのに思い出せねぇんだ? ……分がんねぇ何も思い出せねぇ。」
彼は困惑していた。先程までの不安や恐怖が嘘の様に吹き飛び、今はただ自分が何者なのかを考えていた。草木も眠る丑三つ時に巨大な骸骨が体をカタカタと鳴らしうんうん唸る姿は不気味そのものである。
彼は数分考え込むと組んでいた腕をだらんと下げて肩をがくりと落とす。
はぁ〜と溜息をつくと青紫色の息が溢れてくる。しかし骸骨から息が出る訳は無い。
実はこれ息ではなく彼の瘴気なのだ。故に近くにあった木の一部は彼の瘴気をもろに受けてボロボロと腐り落ちる。だが彼はそんな事には気付く事もなくただただ項垂れていた
「駄ぁ目だぁ、何も思い出せねぇ。どうなってんだ? もしかして記憶喪失って奴かぁ? あれ? でも何で記憶喪失って言葉は知ってんだ? ……分がんねぇ。でも、オラぁ多分幽霊か妖怪とか言うやつだよなぁ。」
彼はこれからどうしようかと考えていた。
そして取り敢えず自分が何者かは後にしよう、まずはこの場所について知らなければいけないと思い移動しようと考えた。
そして歩き始めようと思った時ふと何処かから気配を感じた。彼はギョロギョロと眼窩の部分にある赤い目玉の様なものを動かすと木の後ろから尻尾の様なものがぴょこんと飛び出しているのが分かった。
彼は何かと思いガシャガシャと体から音を立てドシンドシンと歩く。そしてその木に近づき後ろを見てみると小さな女の子がいた。その女の子には鼠の様な耳と尻尾が生えているのが分かった。少女はこちらに気付くや否や目を見開き顔を真っ青にして口を開く。
次の瞬間。
「ぎにゃああああああああああ!!!!!!」
「うわあああああ!!!!!!」
突然少女が叫び出したので思わずビックリして自分も叫んでしまう。少女はひとしきり叫んだ後白目を剥いて仰向けにバタンと倒れてしまった。突然事にどうしょうかと思ったが取り敢えず放置はいけないとだろうと思い少女が起きるまでしばらくこのままでいる事にした。
「はぁ〜、色々見て回ろうと思ったのになぁ。」
彼はまた溜息をつくとどかっと少女の傍に座り込んだ。
時は少し遡り数十分前
一人の少女がフラフラと歩いている。少女の名はナズーリン。毘沙門天の直属の部下であり代理でもある。彼女はブツブツと何かを言いながら帰宅していた。彼女は無縁塚と呼ばれる墓の近くに小屋を建て普段はそこで寝泊まりしているのだがどうやら先程まで主人である寅丸星に呼ばれ命蓮寺にいた様だ。
時刻は既に午前2時、家に着いた彼女は早く寝ようかと寝床について目を閉じた。その直後彼女の耳に謎の音が響く。
ゴゴゴと響く音に彼女は目を眠そうに開けて体を起こす。
「何の音? 地震?」
彼女は最初地震かと思ったが揺れが無いためそうでは無いらしい。では何かと思い耳を澄ますと無縁塚の方から聞こえてくる。
彼女は眠そうだった目をパチリと開けて音のする方を見る。
「無縁塚から? 何だろう? ひょっとしてお宝⁈」
彼女は家を飛び出して無縁塚の方へ走り出す。きっとお宝が掘り出されたんだ!そんな期待を胸に笑顔で無縁塚に到着する。しかし彼女はその笑顔を消し去り目を見開くとボソリと呟く。
「何、あれ。」
目の前に見える光景はお宝などでは無く巨大な骸骨がカタカタと音を鳴らし地面から這い出てくる光景。体の周りには煙の様に瘴気が漂い、周りを青紫色に染め上げている。骸骨が全身を露わにするとより一層分かる。
デカイ。10メートルは優に超えている、骸骨が一歩また一歩と歩くたびに足元にある植物が枯れ果て腐っていく。
不味い、あれ不味い。
そう思い咄嗟に木の後ろに身を隠す。どうしよう、逃げようか? そう考えるも恐怖で体が硬直して動かない。それにもし音を立ててバレたらどうしようか。そう考えるたびに彼女の顔は青ざめていく。
ここはガマンだ。あいつが何処かへ行くまでじっとしていよう。そう思い必死に気配を殺す。少し経ってからか木の向こうからガシャガシャと骸骨が歩く音が聞こえる。
やっと何処かへ行ってくれる!彼女はふぅと一息着いた、そう思ったのもつかの間再び彼女は青ざめる。
音がこっちに近づいてくる。
そんな馬鹿な!気配は完璧に隠せているはず、見つかる筈もない!そんな事を思っていた。(恐怖と焦りで分かっていない)
そして音が止むとぬぅっと彼女を影が覆う。彼女はゆっくりと振り向き顔を上に向けると真っ赤な目を持つ巨大な髑髏がこちらを覗き込んでいた。
彼女は訳が分からないまま叫び気絶した。
次回もよろしくお願いしますm(__)m
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彷徨う妖怪
少女が気絶してから数時間がたった。
もう夜も明けておりお日様が顔を覗かせる。
自分は妖怪の類と思ったため太陽などは大丈夫なのかと思ったがどうやら何ともないらしい。隣を見ると年端もいかない少女がスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。
自分はお前の為に此処に座りっぱなしだというのに呑気な奴だなぁ。そんな事を思いながらボーッと過ごしていた時、彼女が目を覚ます。まだ眠いのか目を擦りながら地面に手をついてゆっくりと起き上がる。彼はそれを見ると彼女に声をかけた。
「大丈夫け? 急に叫んだと思ったら倒れたからビックリしただ。ほれ、目を擦るな。バイ菌が入っちまうぞ。」
倒れた原因が自分だと言うことにまったく気付かない彼は少し天然だった。
声をかけられた少女は何でこんな所に居るんだと思い声のする方を見る。そして夜と同じく顔を青くさせると即座に起き上がり叫びながら走り去っていった。
「化け物ーーー!!!!!!」
取り残された彼はぽりぽりとこめかみを掻きながら呟く。
「変な女だなぁ、まぁあれだけ元気なら大丈夫だろ。オラもそろそろ此処がどこだか知らねぇとな。」
彼は腰を上げゆっくりと歩いて行く。
そして気付く、自分のいる所が腐って行くことに。驚愕した彼は咄嗟に跳びのき別の場所に足を置く、しかしそこも同じように腐って行くので右へ左へ足踏みを繰り返す。その様はまるで変なダンスを踊っているかの様に見え滑稽だが、不気味だった。
「もしかしてこれ、オラの所為か? だとしたら申し訳ねぇ!こんなに草枯らしちまったぁ!取り敢えずこれ如何にかしねぇと!」
彼は念じた、腐るのを止めろと。
そうすると全身に纏わりつく瘴気が心臓の部分に集まり始め一つにまとまった。
そしてそれを見た彼はもう大丈夫なのかと思い腐っていない場所へと足を向ける。
足が地面に触れると草は腐る事も枯れる事も無かった。
良かった、そう思い彼は少し軽い足取りで森の方へと進んでいった。
一方少女は未だに顔を真っ青にしながら主人の元へと走っていた。
無縁塚を抜け森に入るとそこは瘴気が漂う不気味ながら何か惹かれる場所であった。此処は魔法の森と呼ばれる場所で瘴気や化け物茸の胞子が宙を舞い人間どころか妖怪ですら余り足を踏み入れない場所である。
所が彼はそんな中を表情が分からない骨だけの顔なのにどこか平気そうな、それでいて楽しそうな顔でズンズン歩いている。それどころか瘴気の塊がある彼の心臓部に胞子や瘴気がさながらブラックホールに吸い込まれる様に集まりだしている。
「ん〜、やっぱり自然は空気が澄んで気持ちいいだ。年取ったらこんな所に住んでみてぇな。」
そんな事に気付かず彼は更に森を歩き続ける。数分歩いたところでおっ、と声を上げふと足を止める、先を見ると少し開けた場所に一つだけ家がぽつんと建っていた。
「もしかしたら人が居るかもしれねぇだ、留守じゃなかったらいいけど。」
彼はその家へと向かって行く。
少女がいた。金色の髪に青い瞳透き通る様な白い肌、まるで人形の様な見た目を持つ彼女の名はアリス・マーガトロイド。姿形は人と一緒ではあるが彼女は元人間の魔法使いである。そんな彼女はいつもの様に人形を使い料理をしている。ちょうど朝ごはんが出来上がった様で料理の乗ったお皿をテーブルに乗せるとうん、と満足そうに頷いた。
「今日も良い出来ね、さてじゃあ頂きましょうか。」
椅子に座り料理を口に運ぼうとした時、テーブルが少し揺れる。最初は地震かと思ったがその揺れは一定のテンポで起こり次第に大きくなっていく。まるで巨大な何かが歩いてる様な、不気味に思った彼女は不安そうに周りをキョロキョロ見回す。すると揺れと音が止み良かったと息を吐き出す。
そして、ふと窓の外を見て見ると外から赤い
大きな目玉が此方を除いているのが見えた。その目玉は自分一点だけを見ていると気付いた時、彼女は声を上げる事もなく気絶した。
「ありゃ? 倒れちまっただ、もしかして眠かったんか? お〜い、そんな所で寝てたら風邪引くぞ〜。困ったなぁ、ここが何処だか教えてもらおうと思ったのに。」
自分のせいだとは気付かず彼はすっとぼけた事を言う。
「どうすんべ、この身体だと家に入る事も出来ねぇ。しょうがねぇ、歩くのも疲れたしちょっと休憩していくか。」
彼は裏に回りドスンと音を立て地面に寝そべった。
お久しぶりです。かなり遅れてしまい申し訳ございません。
そのくせに短く話が全く進んで無い……すみません!
次回もよろしくお願いします。
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