我らはモノノフ、鬼を討つ者也。 (爆焔特攻ドワーフ)
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小説独自の設定
霊山:
討鬼伝世界にてモノノフの派遣を行っている派遣会社?的な存在。
この小説では平安時代に陰陽衆から分離したモノノフが立ち上げた。
現在の所在地は東北地方の恐山にある。
モノノフ:
見た目は人間だが、自分たちより強大な鬼に恐れず向かっていく戦士。
理念は【陰から人々を支え、鬼を討つ】。
現在は一般人に紛れながら、鬼の出現があったときに出動し迅速に鬼を葬 る。
陰陽衆:
日本帝鬼軍の基礎になった平安時代の組織。江戸時代周辺で柊家が陰陽衆の筆頭となった。
名前が日本帝鬼軍になったのは明治維新の後。
現在では霊山があるという事実は闇に葬られている。
鬼:
平安時代以前から確認されていた怪異。
その姿は絵本などに出てくる角を持つ巨人といった姿だった。
鎌倉時代が終わるころには人々の恐怖の対象は怪異から同じ人へ変わり、さらに江戸時代末期に黒船が来航したことによって怪異への恐怖心が限りなく薄れてしまった。
それによって人間が怪異を怖がることによって生きていた妖怪たちは次第に存在を薄れさせ消滅してしまった。
鬼はなんとか食いつないでいたがあと数年吸血鬼が世に出るのが遅ければ存在は消えてしまっていた。
近年、人々の勝手な妄想によって姿が同一だった鬼たちは様々な姿に変異していくことになる。
餓鬼:
小型の鬼。
体長は1メートルあるかないか。
特徴として額に一本の角が生えている。
この鬼は西洋の怪異ゴブリンと一緒くたにされたために生まれたと思われている。
グヒン:
特徴を挙げると
乱杭歯が並んだオオカミのような口。
なめらかな皮膚に覆われた細長い体躯。
魚のひれのような膜が張った扇状の尾。
体長は5メートル前後。
初めて発見されたのは河川が近い場所のため河川に近づいた人を引きずり込み捕食していたと思われる。
ヒダル:
特徴は
大きく膨れ上がった腹。
長く細い腕。
体長は3メートルほどだが腕の長さは身長の倍はあると思われる。
常に飢えており、人間が食せなければ動物や草木果ては同族である鬼まで喰う。
霊山ではヒダルが大量の物質を喰らうことでクエヤマに変化すると考えられている。
クエヤマ:
小さな個体でも10メートルをゆうに越え、過去の記録を見ると最大の個体は30メートルを越えていたらしい。
鬼が劇的に変化するタマハミ状態に移行するとクエヤマのでっぷりとした腹は巨大な咢に姿を変える。
また、クエヤマは体重が恐ろしく重いため下手を打つと骨まで砕かれる。
カゼキリ:
横浜大災害で暴れまわったとされる鬼。
姿は細見の鬣が白い獅子といったところ。
タマハミ状態に移行すると鹿の角が頭部に生えてきて、その角で広範囲を薙ぎ払ったり、身体能力の一時的な上昇によって通常では無理な行動を平気でしてくるようになるため注意が必要である。
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壱話
横浜大災害
死者:1216人 行方不明者:2409人 全壊家屋:357戸 半壊家屋:1465戸
今から約15年ほど前に旧横浜港付近で起きた未曽有の大事件である。
原因は不明だが、助け出された人々は皆口々に「鬼が出た」「化け物が襲ってきた」と言っていたが当時の警察は恐怖による妄想の類だと斬って捨てた。
そのような証拠は一切発見されず、おそらく竜巻や地震が起こったのだろうと警察は断定し被災者の話しを追及することはなかった。
ただ、ネット上では様々な説が飛び交った。
「どこかの科学結社が爆発事故を装って新型兵器を発動させた」
「日本で開発された生物兵器が持ち出されてそれが暴れた」
「暴力団とマフィアの大規模な抗争があった」
「忘れられたことに起こった妖怪が出現した」
その説のほとんどはありえそうもない妄想ばかりであり世間もそこまで興味を持つことはなかった。
しかし、横浜大災害以降日本各地で不可思議な事件が起こり始めたことによって世間の目は全ての始まりと思わしき横浜事件へ向くことになる。
歌潟町集団失踪事件
横浜大災害からちょうど一年後、東海地方のある町で人口の約半数にあたる1256人が一夜にして失踪したのである。
警察が被害者を調べたところ被害者に法則性はなく、一家全員が失踪したところもあれば誰も失踪していない世帯があった。
また、防犯システムがちゃんと動いていたにもかかわらずいなくなっているという報告もあった。
さらに、町の防犯カメラには怪しげな人物・集団・車両などは映っておらず、捜索活動を行っても被害者の痕跡を見つけることは出来なかった。
オカルトの専門家などからは今世紀最大の神隠しとも言われた事件である。
蓑崎村毒ガス発生事件
こちらの事件は横浜大災害からおよそ3年後に発生した事件である。
この村の近くには製薬会社の工場が存在していたため、何らかの事故によって薬剤が川に流出し反応したことによって人体に有害な物質が発生し村に流れたことによって犠牲者が出てしまった。 とされているが不審な点がいくつかあるためこれも横浜大災害と同じパターンだったのではないかと言われている。
・犠牲者の体内から毒物が発見されなかった。
・この事件が起こる数日前に山に行った人が異様な生物を見たと言っている。
・ガスが流れ込んだはずなのに、自衛隊などが到着した時には有害な成分が一切検出されなかった。
・川からガスが流れ込んだのならば、なぜ川に近い人たちには犠牲者が少なく、山の近くに住んでいた人たちの方が犠牲者が多いのか?
世界の滅亡
死者・行方不明者:不明
突如としてウイルスが世界各地に蔓延し地球全体の人口が大幅に減少した大災害。
また、吸血鬼が地球の主として君臨し、国規模の難民が世界各地で発生し海が汚染されたことでも有名である。
実はこの大災害が起こったとき、日本の各地で吸血鬼とは違った異形の化け物が確認されている。
人々は吸血鬼とは違うその荒々しさに恐怖し、はるか昔存在していたのではないかと言われていた妖怪である『鬼』と呼ぶことにしたのである・・・・・。
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弐話
彼らの起源は平安時代まで遡る。
彼らは世の中に跋扈する魑魅魍魎を身分の高い者に近づけさせないために生まれた特殊部隊であり、当時は『陰陽衆』と呼ばれていた。
彼らの立ち位置が変化したのはある鬼が貴族と協力して天皇の娘を攫い天皇の座を奪おうとした事件に端を発する。
その鬼・・・『茨木童子』は源頼光とその部下によって退治されたが『茨木童子』の子分である鬼は大将が倒されたことで逃げ出しそのうちの幾許かは京の町へ侵入し無辜の人々を襲い始めたのだ。
貴族らは彼らに無辜の民ではなく自分たちを守るように言った。
しかし、陰陽衆の中で大将格であった『嗣夜』はこれを拒否し無辜の民を鬼の脅威から遠ざけるため自分と同じ意思を持った陰陽衆を引き連れ京の町で暴れる鬼を討ち取りに向かった。
彼らに助けられた人々は彼らのことを『モノノフ』と讃え、彼らも自分たちは無辜の人々を魑魅魍魎から助ける組織『モノノフ』を立ち上げた。
モノノフは京の町から離れたところに拠点を置きそこで自分たちの跡を継ぐであろう若人の育成を始めた。
いつしかモノノフは霊山と呼ばれるようになり、人々を助ける彼等をモノノフと人々は呼ぶようになった。
しかし、明治が始まるころにはモノノフの存在は忘却された。
なぜなら技術の進歩と共に軍隊が作られ、モノノフ達は必要ではなくなってしまった。
鬼たちもこれまでと比べて活動をしなくなっていった。
『鬼』は生物としての種別ではない。
『鬼』は概念的な存在である。『鬼』が存在するには『鬼』が存在していると人々が感じている必要がある。
鬼たちの主な糧は人間の魂であるが、それ以前に人間たちが自分たちの存在が常にあることを実感させることで生まれる恐怖を喰らうことで生き延びてきたのだ。
だが、幕末後期に黒船が来航したことによって人々の恐怖は自分たち鬼ではなく亜米利加という大国に向けられていったのだ・・・・・
その結果、鬼は活発に活動することはなくなり細々と文明の陰で生きることになった。
このままいけば鬼は数を減らし死に絶えることになっただろう。
が、死を待つばかりであった鬼たちに転機が訪れる。
それは吸血鬼の出現である。
吸血鬼の出現によって少数ではあるが過去にも鬼という存在がいたことがわかり恐怖におびえる人が現れたのだ。
吸血鬼は日本だけではなく世界各地に現れるようになり、そのたびに吸血鬼に、鬼に恐怖を覚える人は増え始めた。
そして鬼には変化が訪れた。
鬼はこれまでは童話にあるような二つの角がある姿が多かったが、人々の吸血鬼を恐れる感情や人々が「こんな鬼もいたんじゃないか?」という妄想が鬼たちに影響を及ぼし始めた。
ある鬼は体躯が山のように巨大になった。
ある鬼は四足歩行の獣となり風を操るようになった。
ある鬼は神話に登場した生物を模した姿に変化した。
ある鬼は体に装甲を纏った。
そしてある鬼は因果を操るようになった。
鬼は多種多様に変化し始めた。
これに驚いたのはモノノフである。
これまで通常の武器で対処できた鬼がいつの間にか身体を硬い外皮が覆うようになり、外皮を剥がさなければ碌に体力を削れなくなってしまったのである。
この事態を霊山は重く受け止めこれまで使い道がなかった鬼の一部を素材にし武器を作ることにした。
世の中では吸血鬼が暴れていたがその陰では吸血鬼が現れたことによってその存在を凶暴性を増した鬼が跋扈し鬼から人々を守るためにモノノフたちが戦っていくのであった・・・・。
感想・評価・誤字修正
などお願いします。
ところで討鬼伝の鬼ってどうやって進化したんですかね。
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参話 2012年 東京 -昼-
2012年冬――――――
クリスマス間近となった東京では多くの人がクリスマスのプレゼントや料理を買うために行き来し、若者は仲間とともにカラオケボックスなどに向かっている。
時間帯は昼間を過ぎたぐらいか、外を歩く人は多い。
少し前までは、夜もこのくらいの活気があったのだが最近は物騒な事件が夜に何度か起きたため夜中の町を歩く人々はほぼいない。
人で交差点がごった返している中、その男はビルの間の路地に身をひそめていた。
年齢は20歳に届くかどうか、顔立ちは整っているがその双眸からは剣呑な光が見える。
茶色の革製のコートを着ており口にくわえた煙草からは紫煙が立ち上っている。
そんな男に声を掛けたのは男より若い黒い学生服をきた青年だった。
「時継さん、どうですか?なにか収穫は有りましたか?」
時継と呼ばれた男はため息と一緒に煙草の煙を吐き出しながらその声に応える。
「ああ・・・・・やっぱ都会は可愛い娘が多いねェ。シグナもそう思うだろ?」
その答えにシグナと呼ばれた青年はため息を吐く。
「はぁ・・・。そんなこと言ってると紅月の姉さんから怒られますよ?」
「おっと、これやるから紅月には黙っといてくれ。」
そういうと時継は懐からチョコレートを取り出しシグナに放る。
シグナはそれを受け取ると「子供じゃないんですけどね・・・」といいながらチョコレートをかばんにしまった。
「で、結局のところ鬼は見つかったんですか?」
それから30分後彼らはカラオケボックスの一室にいた。
ここならば他の人に話を聴かれる心配がないためである。
「いんや、見つからねえ。鬼の目を使っても痕跡すらないってことは鬼じゃない可能性が高いな。最近裏でよく聞く化け物かもしくは・・・・」
「吸血鬼ですかね」
彼らの正体はモノノフである。
近年鬼の出現率が上がってきており何年もしないうちに鬼たちが現世に大量に侵入してくる【オオマガトキ】が起こるという予想結果が出たため、最近頻繁に物騒な事件が起きている東京にモノノフの監視部隊を霊山が送り込んだのである。
彼らは監視部隊の一員であり、いくつかあるチームの内の一つ【マホロバ】の隊長である布笠時継と副隊長である雨宮シグナである。
「そっちの収穫はどうなんだ?シグナ」
「こっちもどっこいどっこいですね。ただ、少し気になることがあって」
「お、なんかあったのか?」
「ええ、関東地方のいくつかの病院にあった輸血パックがなくなっているらしいんです。一つ一つの病院ごとからなくなった輸血パックはそこまで多いものではないんですが、被害に遭った病院からなくなった輸血パックを合計するとおそらく関東地方だけで一万近くの数がなくなっているみたいですね」
「一万!?ってことは・・・・」
「近日中に吸血鬼が動き出すということでしょうね」
「もし、鬼がそれと同時に動き出すとしたら、ヤバくないか?」
「間違いなく東京は墜ちます。しかもその規模は関東地方だけではなく日本各地もしくは世界規模で起こる可能性が高いです。霊山にはこの可能性を伝えてありますが、それでもいくつかの町を防衛するだけで精一杯でしょうね」
「博士はどうだ・・・?なんかいい案とかはなかったのか?」
「どちらもお手上げだそうです」
「はぁ・・・そうか」
「とりあえず、一旦里に戻って準備を整えましょう」
「・・・そうだな」
世界に滅びが訪れるまであとわずか。
人物紹介
布笠時継:容姿はGE2の真壁ハルオミ。苗字はゲーム内で時継がいつもかぶっている帽子?から思いついた。「勇者」とは言わないが、作者の思惑でハルさんのようにナンパ癖がついた。 使用武器は銃。
雨宮シグナ:容姿はペルソナ3の主人公(男)の髪を薄い紫色にした感じ。
趣味は読書。 使用武器は盾剣。
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四話 2012年 クリスマス -夜- Ⅰ
主人公は一切出てきません
2012年冬は人間サイドと吸血鬼サイド、モノノフサイドがあります。
今回は人間サイドを書いています
次回は吸血鬼サイドを執筆する予定です。
その事件は初期はガス漏れによってばらまかれた有毒なガスを吸い込んだことによる中毒が起こったものだと思われた。
しかし、被害人数と死傷者が圧倒的なスピードで増えて行ったことによって間違いだと分かった。
分かったところで人類にはなすすべもなかった。
スーツ姿の男性が倒れた。
近くにいた女性は様子を見ようとして自分の異変に気が付いた。
自分の口や鼻から何かが流れている。
手で触ってみるとそれは生温かった。
目で見るとそれは赤黒かった。
それは血だった。
誰の?
私の?
なんで?
どうして?
頭の中が疑問で埋め尽くされ、パニック状態になる。
女性が限界を越して叫ぼうとした瞬間。
―――ぐしゃり
彼女の頭部は何かが当たって潰れたザクロのようにはじけ飛んだ。
周りについ先ほどまで人間だった人間の脳漿が赤黒い血がぐちゃぐちゃになった目が黒い髪の毛が夥しい量の血液が飛び散る。
彼女の頭に当たったのは、人の頭ほどもある石だった。
まともな判断が出来ていない彼らは彼女の後ろを見やった。
鬼がいた。
身体は1メートルあるかないか。
彼らに向かって邪悪な笑みを浮かべ一声哭いた。
するとその鬼の後ろから仲間と思わしき鬼が疎ましい色をした巨大な渦巻きから次々と湧き出て彼らに向かって走って、飛んで、這いずりながら向かってくる。
そのなかには
青い小鬼がいた。
巨大な腹を持つ手足が非常に長い鬼がいた。
狐のような容貌の鰐のような獣がいた。
頭部から羽が生えた犬がいた。
誰かが「逃げろ!」と叫んだ
だが遅すぎた。
青色の小鬼が子供を引きずり倒して腕にかぶりつく。
血が吹き出し子供は泣き叫ぶ。
近くにいた男性が小鬼を突き飛ばそうとして、横から飛び出てきた蛇のような胴体で肥えた身体を持つ鬼らしき生物が男性の腸ごと食いちぎり、男性の上半身と下半身は血をあたりにまき散らしながら地面に落ちた。
―――ぐちゃ
一瞬の間の後辺りは阿鼻叫喚の地獄と化した。
腰が抜けてしまい全身を鬼に引き裂かれながら泣き叫ぶ者。
恋人の名前を叫びながら生きたまま鬼に飲まれる者。
小鬼に甚振られながら逃げることは出来ないのに必死で逃げようとする者。
最愛の人が目の前で心臓を貫かれ呆然としているうちに頭を抉られて即死する者。
鬼の脚に潰され道路の紅いシミと化す者。
その場にいた幾人かの人々は命からがら逃げだしたが、あたりを見て絶望した。
視線の先には先ほどの鬼が出てきた渦巻きがそこかしこに展開しそこから異形の化け物が絶え間なく湧き出ていたのだから。
まもなく彼らは、呆然としていたところを腹が巨大な口に変化した化け物に喰われてしまった。
自衛隊や米軍はすぐさま出動しようとした。
しかし、それは叶わなかった。
なぜなら、基地内にも異形の化け物が溢れていたのだから。
この一夜だけで日本ではおよそ1500万人が犠牲になったといわれている。
鬼が攻めてきたことから平安中期に起こった似たような事例から【オオマガトキ】と呼ばれるようになった。
原作の終わりのセラフよりもこの世界は厳しいです。
吸血鬼VS人間ではなく
吸血鬼VS鬼VS人間という構図になり人口も原作では日本の人口は10分の1まで減少していましたが8分の1ほどまで減少します。
また鬼が攻勢を強めたことにより、日本の一部地域が鬼が生息し長時間いると瘴気によって身体が崩壊する異界に飲み込まれます。
この小説ではウィルスの力はそこまで強くありません。
あるていど身体が強ければ耐えます。
ただし、手術を終えたばかり人、風邪などの病気で体が一時的に弱っている人に対して致死性を発揮します。
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伍話 2012年 クリスマス -夜- Ⅱ
「糞ッ!なんなんだこいつらはァッ!?」
餓鬼がフードを被った者たちに襲いかかる。
餓鬼は上空から襲いかかり、頭を丸かじりしようと襲いかかったが頭に届く前に切り伏せられる。
「落ち着け、小型はそこまで強くない。家畜が喰われないように気を付けておけよ。クルル様にお叱りを受けても知らんぞ」
フードの奥から黒い髪がのぞく者が餓鬼を切り捨てた者窘める。
「チィ、なんで俺たち吸血鬼が家畜の面倒見なきゃいけねぇんだよ?というかこんなのがいるなんて聞いてねえぞ?」
「ラクス、しょうがないでしょう。それが任務なんですから・・・」
ラクスと呼ばれた吸血鬼は悪態をつきながら仲間の吸血鬼とともに吸血鬼の所持品となった人間たちを空港に運んでいく。
道中、小型の鬼が襲ってきたが人間の何倍もの身体能力を持つ吸血鬼に敵うはずもなくことごとくが切り伏せられた。
しかし、彼等吸血鬼は鬼の生態を知らなかった。
小型の鬼の死骸はあたりに瘴気を散布し、その匂いにつられて中型、大型の鬼が寄ってくることを・・・
それに気づいたのは人間たちを輸送用の大型ヘリに乗せた直後のことだった。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!
爆音が響いたかと思うと、飛行場の一角にナニカが落ちてきた。
ナニカが着地した瞬間地響きが起き、吸血鬼の幾許かが尻もちをついた。
「な、なんなんだ!?」
その姿はまさに異形だった。
筋肉質な身体。
巨大な捻じれた角が生えた頭部。
腕が四本、脚も四本あり、下半身は機械のようなもので覆われている。
極めつけは、背部から生えたと思わしき
さきほど移動中に遠目に見えた大型の鬼とは何もかもが違う姿に彼等吸血鬼は一瞬呆けてしまう。
その瞬間、その鬼は跳躍し輸送機から一番遠いところにいた吸血鬼の間近に迫り押しつぶした。
人間の何倍も身体能力があろうとも意味はなかった。
蟲を踏みつぶしたかのような音とともにその吸血鬼はアスファルトのシミになった。
「てんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
その様子に耐え切れなかった一人の吸血鬼が飛び出し、近くにいた三人も続く。
『俺の(私の)(僕の)(我の)血を吸えっっっ!!!!!!』
鬼に向かって突進しながら吸血鬼が持つ特殊な装備に血を吸わせ身体能力を劇的に向上させる。
そして日本刀の武器を持った吸血鬼がその腕力と活性化した武器を振るい―――――――
――――――――――――弾かれた。
「は?」
呆気にとられた瞬間彼は鬼に握り絞められ、はじけ飛んだ。
他の三人は一瞬で不利を悟った。
彼らは方向転換して他の吸血鬼と共に逃げようとして・・・・・・・・・・彼らを置いて上空へと消え去る輸送機を目の当たりにした。
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生きるか死ぬか
餓鬼の爪が振り下ろされる。
その爪を左手で持った盾で弾き返し、右手の剣を餓鬼の首に突き刺しそのまま首を刎ねる。
後ろから襲ってきた陰摩羅鬼を回し蹴りで吹き飛ばし陰摩羅鬼にぶつかったノヅチごと急所を貫いて止めを刺す。
生命力を削り取った鬼たちから瘴気が噴き出してきたところで博士特製の鬼祓い玉(投げると半径3メートルほどの鬼祓いの簡易結界が出来る。持続時間は15秒)を叩き付け確実に浄化する。
鬼たちが湧きだしてから一時間ほど近辺の住民を避難させながら延々と戦っているがいつまでたっても減らないどころかむしろ数が増えて行っている。
「はぁはぁ、時継さんどうですか?」
シグナは近くの信号機の上に器用に座ってスコープを覗いている時継に声を掛ける。
「駄目だな・・・どこもかしこも鬼だらけだ。ここを奪還するのは厳しいな」
「何とか一般人の方は回収班に連れて行ってもらいましたが、僕たちはどうします?」
本当なら今すぐここを脱出して一般人の避難に移りたいのだが陸もそうだが空にも鬼がうじゃうじゃいる。
時継さんの腕前であってもこの数を殲滅するのは無理がある。
「地下道があるだろうが、どうする?」
地下道か・・・地上に比べればこちらの動きが制限されるがそれは向こうも同じ・・・
「・・・いきましょう。死ぬわけにはいきませんから」
「りょーかいだ。じゃ、命がけの撤退戦を始めるとしますかぁ」
そういうと、時継さんは閃光弾を発射した。
◇
―東京地下道―
「結構、異界化が進んでいますね・・・」
数時間前までは線路しかなかったであろう地下鉄の線路は今は緑に覆われ、壁にはツタ性の植物がはびこり、文明的な光景は電灯の光が残るのみである。
線路もねじ曲がったりして奇妙なアートを描いている。
「でも、何も出ませんね・・・」
「あぁ・・・だが、鬼の気配はそこら中からする」
そう会話をしていると目につくものがある。
「ねぇ、時継さん」
「おう、なんだい?」
それにシグナは指をささずに目線で示した
「あんなものさっきまでありましたっけ?」
それは
「・・・ないな」
緑色をした巨大な瓜
「ってことは」
それは
「あれら全部が・・・鬼!?」
天井のいたるところにぶら下がっていた。
「クケケケケケケ!ウマソウナ飯ガキタ!」「アア、クッテヤル!」「ホォォォォ!!!」「シネシネシネ・・・」
それらは地面に降り立った。
顔は瓜、その下は細く長く薄緑の不気味な肉体。
爪は異様に長い。
「相手を待ち構えて、上からパクリと・・・餓鬼以上に知能が高いですね」
「見た感じ火に弱そうだな・・・シグナ、アレはまだあるか?」
「ええと・・・あと5つぐらいですかね」
「じゃ、あいつらにそれを投げつけろ。あとは俺がやる」
そう告げると時継は銃に弾丸を込める。
「ハラヘッタ!シネエエエエエエ!」
彼らに鬼が襲い掛かる。
「死ぬのは・・・」
「お前らだ!」
鬼にシグナが瓶を投げつける。
それは鬼に当たると液体をまき散らす。
「じゃ、死んでおけ」
液体に向けて時継は弾丸を発射する。
弾丸は着弾し、弾け、爆炎が巻き起こる。
そこにシグナがさらに瓶を投げ込みそれを時継が狙い撃ちにする。
鬼はどんどんと炎に包まれ焼かれていく。
「「「「グ、グァァァァァァァァァァ!?」」」」
「これで最後です」
シグナは腰からそれを取り出す。
「よし、逃げるぞ!」
炎に包まれている鬼に背を向けると彼らは脱兎のごとく逃げ出す。
「マテェェェ!」
それを追いかけるように集団の中から何匹かの鬼が出てきた。
「ふん、これでお前たちは死ぬんだよ」
炎が燃え盛っているところにシグナはそれを投げ入れる。
それに炎が移り、導火線に火がともる。
導火線は一瞬で燃え尽き、それから光が漏れ始め・・・・・
「ア?」
振り向いた鬼と炎に包まれていた鬼と地下道を丸ごと吹き飛ばした。
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