遊戯王~武神使いの波乱万丈な転生生活 (コズモ君v)
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第1章
第1話 武神使いの転生


どうもこんにちはー、コズモ君vです。
すいません、こんなの投稿してる暇あったら間違い転生出せよって話何ですけど、間違い転生の方で指摘を沢山貰いまして、それを全部取り入れようと悪戦苦闘してたら軽いスランプが起きちゃいまして。
リフレッシュの意味もかねて新しい作品を投稿しようかなと思いました。
是非生暖かい目でみてやって下さい。
でわでわ


~とあるカードゲームショップにて~

 

 

ここはS県T市に存在するとあるカードゲームショップ屋。この店の中には多種多様な年齢層の人が思い思いの時間を過ごしていた。店の中は結構広く、周りの声も賑やかだ。そんなカードショップで、ある1人の男がデュエルをしていた。

友人A

 

LP7300

 

手札0

 

魔法罠ゾーン2枚

 

セット1枚

(装備状態)真紅眼の黒竜剣(レッドアイズ・ブラックドラゴン・ソード)

 

モンスターゾーン5枚

 

蒼眼の銀龍(そうがんのぎんりゅう) ATK2500

竜魔人(りゅうまじん)クィーンドラグーン (ORU1) ATK2200

悪魔竜(あくまりゅう)ブラック・デーモンズ・ドラゴン(真紅眼の黒竜剣装備) ATK3200+7500

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン) ATK3000

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン ATK2800

 

フィールド魔法1枚

 

竜の渓谷

 

 

 

出雲

 

LP1300

 

手札3枚

 

魔法罠ゾーン1枚

 

セット1枚

 

モンスターゾーン0

 

 

 

「よし、俺のターン終了な。」

 

「この状態で俺のターンかよ。」

 

絶望的な顔でフィールドを見直しているこの少年の名は

出雲 光遊(いずも こうゆう) 10歳の頃に遊戯王を初めて以来、今の17歳に至るまでずっと遊戯王をやり続けた男である。

成績はまちまち。但し数学は得意。

運動神経が抜群な事と数学が得意な事以外は至って普通の高校生である。

そんな彼だが、今彼は友人Aとデュエルをし、崖っぷちにまで追い込まれていた。

 

「この布陣をどう崩すか……このドローにかかってる!」

 

出雲は左拳を握り、そう言う。

 

「……お前またあのドロー方法やるのか。」

 

友人Aが呆れ気味に問う。

 

「当たり前だろ。あれは俺のルーティーンみたいなもんだからな。」

 

と、出雲が返す。

 

 

「でもあれくそ恥ずかしいじゃん。一緒にいる俺も恥ずいし。前なんかお前笑われてたじゃんかよ。」

 

「良いんだよ、そんな奴等ほっぽっておけば。てゆうか俺そんな大きい声で言ってないだろ。せいぜい2、3メートルくらい近付かないと聞こえない位には。」

 

「まあ確かに。お前変な所で気を配るよな。」

 

「誉め言葉として受け取っておくよ。あ、そう言えばその笑った奴から今度デュエルして下さいって言われたんだ。」

 

「まじかよ!え、あれって嘲笑じゃなかったのかよ。」

 

「いや、現実の世界でシャイニングドローしてる人初めて見てつい笑っちゃったんだとさ。」

 

「へ~。ま、俺もお前のそういう所が気に入ってんだけどな。」

 

「え、お前アッチ系だったのか。やべぇ、掘られる!」

 

「無言の腹パンすっぞオラァ。」

 

「悪かったよ。んじゃま、やるか。」

 

出雲は左手を天高く翳す。

 

「最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえも、デュエリストが創造する!

全ての光よ!力よ!我が左手に宿れ!」

 

そこまで言った一息でいった出雲はデッキの上に手を置き

 

「シャイニングドロー!!」

 

と、気合を込めて引いた。

 

 

 

 

 

~30分後~

 

「ありがとうごさいまいたぁ~」

 

ショップを出る時にそう言った店員を横目に見ながら出雲は友人Aと共に帰路につく。

結局あの後、逆転の攻撃をカウンターされて負けた出雲は、今日のデュエルを振り返っていた。

 

「くっそぉぉ、フォトンリードを引いた所までは良かったんだけどなぁ。あそこで、あそこであいつを墓地にやってたら。」

 

「お前が伏せ警戒しないからだろ。」

 

「ちっ、魔法の筒(マジック・シリンダー)を伏せているとは……姑息な手を。」

 

「黙ってろ白き盾(むのう)。」

 

 

 

そんな軽口を叩きあいながら友人Aはじゃあなと手を振り出雲とは違う道を歩いていこうとするが、ふと止まり

 

「そうだ、知ってるか出雲。」

 

「ん、何をだ。」

 

「何かこの近くの高校で集団失踪があったんだってさ。」

 

出雲は今朝のトップニュースにそんなニュースがあった事を思い出す。

 

「あぁ、そんなニュースあったな。確か……水瀬高校だっけ?」

 

「あぁ、お前も気を付けろよ。」

 

「分かったよ。」

 

友人Aは帰路についていった。そして出雲は友人Aと別れた後、考え事をしていた。

 

「(今回のデュエル、やっぱりプレイングの詰めが甘かった。伏せ警戒しておけばもう少し良いところまでいけたのに。デュエルやって7年経つのに……何てミスしちまったんだよ。)」

 

「ハァ、」

 

今回のデュエルの反省をしながら出雲は横断歩道まで歩いていく。

信号が赤になっていた為、待っていた出雲。するとその時、赤ちゃんの乗ったベビーカーが車道の中に入っていってしまった。

どうやらママ友同士で喋っており、途中でベビーカーを持つ手を離してしまったようだ。さらにベビーカーが動いたのに気付いておらず、まだ喋っていた。

どよめきだす周りの人々。

ベビーカーはそのまま車道の真ん中まで動いていた。

そして向こう側から猛スピードで走ってくるトラックの姿が、

ここでようやくこのベビーカーの持ち主が気付き慌て始める。誰か助けに行って下さいと周りの人達に懇願する母親。

元々正義感の強かった出雲はこの言葉を聞くと直ぐに車道に飛び出した。

 

「うおぉぉぉ!今助けるからなあぁぁぁ」

 

出雲は急いでベビーカーの元に走っていった。途中転びそうになるが、何とか体勢を立て直し、そしてベビーカーの元にたどり着いた。

出雲ベビーカーをおもいっきり押した。

 

「オォラッ!」

 

シャーッと、音を立てながらベビーカーは元の場所に戻り、ホッとした出雲。

しかし、出雲が戻ろうとした時、出雲の足が絡まってしまい倒れてしまう。

 

「うわっ!」

 

ドサッ

 

「痛ててて」

 

出雲は立ち上がろうとするが、急に目の前が真っ暗になった。

 

「(あれっ?なんで……なんも見えないんだ。もしかして……俺跳ねられた……のか。俺、死んじゃい………そうなのか、な。もっと……見たい………アニメ……いっぱいあった……………………のに嫌………………だな………………)」

 

周りから沢山の声が聞こえるが、もう出雲にそれを聞く意識はなかった。

 

 

 

 

 




次回はちゃんとしたデュエルをします。


―追記―

修正してみました。


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第2話 実体化するモンスター!

どうも、コズモ君vです。
まず……投稿遅れてすいませんm(。≧Д≦。)m
出来るだけ早く書こうとは思ってたんですけどリアルが忙しくなってきちゃって。
失踪したかと思っていた人も居るかも知れませんが、するとしたら絶対に報告するので、してないという事はまだ頑張ってる途中という事なので是非気長にお待ち下さい。
後今回思った程デュエルが出来ていないのでそこだけ注意を。
でわでわ


~ファミリーレストラン~

 

「うぅぅ、……ここは?」

 

出雲はとあるファミリーレストランで目を覚ました。どうやら机に突っ伏して寝ていたようだ。

 

「(あれ?この机…でかくないか?)」

 

「お待たせしました~。」

 

そんな声が横から聞こえた。

 

「え?」

 

「こちらポテトフライとエビのグラタンになります。ごゆっくりして下さい。」

 

そう言い店員らしき人は立ち去っていく。

 

「……頼んだ覚えは無いんだけどなぁ。」

 

ポテトフライを摘まんで口に入れながら出雲は首を捻り

 

「あ!」

 

と、大声を出す。

 

「ど、どうしたの僕?」

 

と、店員が心配してくるが、出雲の耳には入ってこなかった。

 

「(俺確か…トラックか何かに跳ねられて。じゃあ何でファミレス何かに居るんだ?)」

 

「僕?」

 

「ん、あぁすいません!何でもありません。」

 

周りの人も迷惑そうにこちらを見ていたので周りの人にも謝っておく。

 

「ふぅ。」

 

出雲は一通り謝った後、考える。

 

「(まずハッキリさせたいのはここが夢の世界なのかどうかか。)」

 

出雲は自分の頬を引っ張ってみる。

 

「いてててて。」

 

引っ張った部分が少し赤くなり、腫れた。

 

「(夢じゃ無さそうだな。)」

 

じゃあここはどこなんだと考え、出雲は何気なく外の景色を見る。

すると外では実体化した風帝(ふうてい)ライザーが、

アーマード・サイキッカーを攻撃していた。

 

「(ふ~ん、ここでも遊戯王はあるのか。)」

 

出雲は冷めない内にとエビグラタンを1口食べる。

 

「ん!美味しい。」

 

そこらのファミレスより味は上だなと、出雲は2口目を…

 

「はぁ!」

 

「ぼ、僕どうかしたの?」

 

しかし、出雲の耳にその声は届かなかった。

 

「な、なんでモンスターが実体化してるんだ?ま、まさか、自力で実体化を?」

 

立て続けに不可思議な事が起きた為、出雲は思った事を口に出して取り乱していた。

 

「僕?」

 

しまったと、出雲は心の中で思う。

 

「あ、すすすいません。気にしないで下さい。」

 

「あ、そうですか。」

 

店員は首を傾げながらその場を離れる。

 

「(て言うかさっきから僕?僕?って、失礼じゃないか?俺高校生だぞ。まあ良いか。)」

 

周りの客に再度謝ると出雲は考える。

 

「(なんで遊戯王のモンスターが実体化を?)」

 

出雲はまた外の景色を見る。風帝ライザーがマスター・ジーグに潰され、光となり四散した。

 

「(やっぱりおかしい。俺のいた世界だとこんなソリッドビジョンは無かった筈だ。じゃあやっぱりここは夢の中の世界なのか?)」

 

ポテトフライを摘まみながらう~んう~ん唸る出雲。すると

 

「あの~」

 

と、誰かが声を掛けてきた。知り合いかと思ったが、声を聞く限り心当たりが無かったので、その方向に振り向く。

 

「はい、どなたでしょうか?」

 

そこにいたのは高校生の筈の自分より大きい中性的な顔立ちをした男?だった。

 

「(あれ、そう言えば)」

 

と、出雲は今更ながらに気付く。

 

「(ここに居る人達、背大きくない?)」

 

出雲はその瞬間、嫌な予感がした。

 

「ま、まさか…な。」

 

「あの~」

 

「あ、はい何でしょうか?」

 

「う、うん。」

 

中性的な顔立ちをしたその男の人はこう言った。

 

「君子供だよね。お母さんはどこかな?」

 

「………」

 

出雲は今の一言で確信した。

 

「(俺、背も低くなってるかも。)」

 

「ええっと……」

 

某頭脳は大人な小学生と同じ気分を味わった出雲は必死に言い訳を考える。

 

「ええっと……実は田舎からお母さんを探しに来たんです。」

 

「い、田舎から?」

 

「はい、数年前にこの町に来たと聞いたのでもしかしたらこの町にいるかな~と思って。」

 

「そ、そうなのか。だが、どんな理由があろうと子供が一人でこんな所に来ちゃ危ないよ。さ、セキュリティまで連れていってあげるから、荷物を持ってお兄さんについてきて。あ、決して怪しい者じゃないよ。安心して。」

 

その言葉に嘘を感じなかった出雲は、取りあえずその男についていく事にした。

 

「は、はい。分かりました。」

 

「(取りあえず危機は脱した……のか?)」

 

出雲はそう考え、何か持ち物が無いか席を探す。すると向こう側の席にパッド(恐らくデュエルディスク?)1つと前の世界で使っていたデッキケース(恐らく中も入っている)のついたベルトが3つ、そしてスポーツバックが1つあった。

 

「お兄さんが運んであげようか?」

 

と、聞かれたので

 

「是非お願いします。」

 

と、出雲は言った。

 

「(正直運べる気がしないからな。)」

 

出雲は腰にデッキケースを巻き、パッドを持ち上げる。

 

「それは最近発売された最新モデルのデュエルディスクじゃないか!」

 

「え?そ、そうなんですよ。気前の良いお兄さんに貰いまして。」

 

「ふーん、世の中捨てたもんじゃないな。」

 

出雲は苦笑いしながら外の景色を見る。すると、このファミレスに明らかに怪しい全身黒色の服を着た5人の集団が入っていったのを見た。

 

「(嫌な予感がする。)」

 

そして、

 

バンッ!

 

「ツインバレル・ドラゴンを召喚!」

 

突如、黒づくめの連中の中でも一番がたいの良い男がデュエルディスクにカードを召喚した。

すると、彼の肩にツインバレル・ドラゴンが召喚された。

 

「手を上に挙げな。さもないと俺のツインバレル・ドラゴンが貴様の顔面を撃ち抜くぜ。」

 

「ひ、ひいぃぃぃ!」

 

会計をしていた男の人は手を上に挙げ、悲鳴を挙げた。

 

「お前らは一ヶ所に固まれ、早くしろ!」

 

バンッ!

 

と、ツインバレル・ドラゴンが上空に向けて発砲した。

その瞬間、そこにいた客全員が一ヶ所に固まり始めた。

 

「(う、嘘だろ。)」

 

出雲は驚きのあまり行動出来なかった。

 

「(つ、ツインバレル・ドラゴンで強盗とか……まじかよ!)」

 

……驚く所が若干ずれているが。

 

「おい!そこのお前!!」

 

「へっ……俺?」

 

「そうだ。何故移動しない!さっさとそこから離れろ!」

 

やばい、と出雲は思った。逆らったら絶対ろくでもない事される。出雲は移動しようとするが、

 

「そこまでです!」

 

と、先程まで話していた男の人が、その男にアンカーのような物を投げた。

そのアンカーは男の手首に装着され、繋がれた状態になった。

 

「な、このアンカーは!」

 

「僕はセキュリティだ。おとなしく投降するか、デュエルしろ!さもなければこのアンカーは取れないぞ。」

 

「せ、セキュリティだ!」

「やった!これなら一安心だ!」

「私達助かるのね!」

 

集まっていた人々は口々にそんな事を言う。

 

「黙ってろ!お前ら!」

 

が、その喧騒は強盗団の男によって止んだ。

 

「良いだろう、デュエルしてやる。但しお前、デュエルに負けたら覚悟しておけよ。」

 

男がディスクを構える。

 

「名乗っておこう。僕の名前は 夏目 汐里(なつめ しおり) だ。」

 

「ふん、女みてぇな名前だな。俺の名前は 立野 銃火(たちの じゅか)だ。」

 

その瞬間、ギャラリーがざわめく。

 

「た、立野 銃火って、」

「あぁ、あのリボルバー強盗団の団長だ。」

「嘘!、プロデュエリスト並みの強さって噂のあの立野?」

 

どうやら相当有名なようで、中にはもう諦めムードの奴もいる。

 

「皆さん、落ち着いてください!」

 

「さてと、デュエル、しようぜ?」

 

「くっ、」

 

 

「「デュエル!」」

 

立野 銃火

LP4000

 

手札5枚

 

 

夏目 汐里

LP4000

 

手札5枚

 

 

「ルールはマスターズルール2で良いな!」

 

「あぁ、」

 

「俺のターンドロー!」

 

立野がカードを引く。

 

「俺は手札から魔法カード 亜空間バトルを発動する!」

 

「はあぁ!?」

 

「な、何だ坊主。文句があるのか。」

 

「い、いえ別に。」

 

「まったく、我らが兄貴にミスなんてあるわけないのに。」

 

と、したっぱが言う。

 

「(亜空間バトルって、未OCGだよなぁ。)」

 

「このカードの効果で、互いにデッキからモンスターカードを三枚選ぶ。俺はこの三枚にするぜ。」

 

「僕はこの三枚に。」

 

「そして選んだカードをお互いに一枚ずつ相手に見せ、攻撃力の高い方を見せたプレイヤーはそのカードを手札に加える。低い方を見せた場合、そのプレイヤーはそのカードを墓地に送り500ポイントのダメージを受ける。つまり、」

 

「最大1500のダメージだね。」

 

「あぁ、じゃいくぞ!一枚目」

 

亜空間バトル (アニオリ)

通常魔法

お互いのプレイヤーはデッキのモンスターカード3体を選択し、

選択したモンスターカードを互いに1枚ずつ同時に相手に見せる。

相手より攻撃力の低いモンスターカードは墓地に送られ、

そのカードのコントローラーは500ポイントのダメージを受ける。

相手より攻撃力の高いモンスターカードは自分の手札に加える。

 

 

 

 

 

 

「俺が選択したのはリボルバー・ドラゴン!」

 

「僕は戦士ダイ・グレファー」

 

夏目

LP3500

 

「二枚目!ブローバック・ドラゴン!」

 

「す、スピリット・ドラゴン。」

 

夏目

LP3000

 

「三枚目!グローアップ・バルブ!」

 

「エルフの剣士!」

 

 

立野LP3500

 

 

「よしよし、俺はモンスターをセット、カードを2枚伏せ、ターンエンド。」

 

 

 

 

立野

LP3500

 

手札6枚

 

魔法、罠 ゾーン

セット2枚

 

モンスターゾーン

裏守備表示モンスター1枚

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕のターンドロー!」

 

「僕は手札からエルフの剣士を攻撃表示で召喚!」

 

エルフの剣士ATK1400

 

「さらに、手札から二重召喚(デュアルサモン)を発動!」

 

 

二重召喚

通常魔法

このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。

 

 

「このカードの効果により、手札からコマンド・ナイトを召喚!」

 

コマンドナイトATK1200

 

「コマンドナイトが場にいる時、場の戦士族モンスターの攻撃力を400アップさせる。」

 

 

コマンドナイト

効果モンスター

星4/炎属性/戦士族/攻1200/守1900

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。

また、自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、

相手は表側表示で存在するこのカードを攻撃対象に選択する事はできない。

 

 

 

「これにより、エルフの剣士と、コマンドナイトの攻撃力が400アップ!」

 

エルフの剣士ATK1400+400=1800

 

コマンドナイトATK1200+400=1600

 

「バトル!エルフの剣士でセットモンスターに攻撃!

精・剣・斬」

 

エルフの剣士がセットモンスターを切り裂こうとしたその時、そのセットモンスターがエルフの剣士の体にくっついた。

 

セットモンスター…スフィア・ボム球体時限爆弾(きゅうたいじげんばくだん)DEF1400

 

「スフィア・ボム球体時限爆弾の効果発動!裏守備表示のこのカードが攻撃されたダメージ計算前、このカードを相手の攻撃してきたモンスターに装備させる。」

 

エルフの剣士にくっついたスフィア・ボム球体時限爆弾は体を赤く点滅させている。

 

「このカードが装備されたまま次のお前のスタンバイフェイズになった瞬間、こいつのもう1つの効果が発動する。装備モンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

「な、何だって!」

 

 

スフィア・ボム球体時限爆弾

効果モンスター

星4/闇属性/機械族/攻1400/守1400

(1):裏側守備表示のこのカードが相手モンスターに攻撃されたダメージ計算前に発動する。

このカードを装備カード扱いとしてその攻撃モンスターに装備する。

(2):このカードの効果でこのカードを装備した次の相手のスタンバイフェイズに発動する。

装備モンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 

「確かにこれはきついな。」

 

「いい調子ですぜ!兄貴。」

 

ライフが4000のこのデュエルでは少しのダメージが命とりとなる為、かなり凶悪な効果である。

 

「(だけど、抜け道もある。)」

 

「うぅ、ぼ、僕はコマンドナイトでダイレクトアタック!

コマンドスラッシュ!」

 

「罠発動、ガードブロック、そのダメージを無効にし、デッキから1枚カードをドローする。」

 

コマンドナイトの攻撃が透明の壁に阻まれる。コマンドナイトはその衝撃で後方に吹き飛ばされる。

 

「た、ターンエンドだ。」

 

 

 

夏目

LP3000

 

手札4枚

 

魔法、罠ゾーン

無し

 

モンスターゾーン

エルフの剣士(スフィア・ボム球体時限爆弾装備)ATK1800

コマンドナイト ATK1600

 

 

 

「(え、えぇ!)」

 

出雲はそのままターンエンドしてしまった夏目に驚く。

スフィア・ボムのこの効果は融合、シンクロ、エクシーズなどで簡単に除去が出来る。

特に、今回場にいたのはレベル4のエルフの剣士とコマンドナイトの二体。

現在のカードプールだと例えば、相手のレベル5以上のモンスターの特殊召喚を封じる インヴェルズ・ローチや、

デッキからホール、または落とし穴 通常罠を落としてその効果を発動出来る フレシアの蠱惑魔

さらに相手の場の攻撃力が変動しているモンスター一体を破壊し、デッキからカードを1枚ドロー出来る

No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロなど、強力な効果を持つモンスターが沢山いる。

なのにそれをしないという事は

 

「何か作戦でもあるのか?」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

立野

LP3500

 

手札7枚

 

魔法、罠ゾーン

スフィア・ボム球体時限爆弾

セット一枚

 

モンスターゾーン

無し

 

 

 

 

俺はセットしていた魔法カード、七星の宝刀(しちせいのほうとう)を発動!」

 

七星の宝刀

通常魔法

「七星の宝刀」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):手札または自分フィールドの表側表示モンスターの中から、

レベル7モンスター1体を除外して発動できる。

自分はデッキから2枚ドローする。

 

 

 

「俺はこの効果により、手札のリボルバー・ドラゴンを除外して2枚ドロー!」

 

立野

手札8枚

 

「ふん、この勝負貰った。」

 

「な、何だと!」

 

「俺は手札から魔法カード融合を発動!」

 

 

 

融合

通常魔法

(1):自分の手札・フィールドから、

融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、

その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する

 

 

「このカードの効果により、手札のブローバック・ドラゴンとヴォルカニックバレットで融合!」

 

 

ヴォルカニックバレット

効果モンスター

星1/炎属性/炎族/攻 100/守 0

このカードが墓地に存在する場合、

自分のメインフェイズ時に1度、500ライフポイントを払う事で、

デッキから「ヴォルカニック・バレット」1体を手札に加える。

 

 

 

立野の背後に光が表れ、その中にブローバック・ドラゴンとヴォルカニックバレットが入り、混ざっていく。

 

「ドラゴンの魂を持ちし凶悪な銃よ、今炎の弾丸と1つになりて、世界を炎で埋め尽くせ!」

 

立野は手を頭上で合わせ、胸元に持っていく。

 

「融合召喚!現れろ、全てを灰塵と化す炎の化身、

重爆撃禽 ボム・フェネクス!!」

 

立野の召喚したボム・フェネクスは、しかしフィールドに居なかった。」

 

「?ボム・フェネクスという者らしきモンスターが見当たらないのだが。」

 

と、夏目が疑問を投げ掛ける。立野も一瞬ディスクの故障かとディスクを見たが、瞬時に原因を探り当てた。

 

「ふ、どうやらここはボム・フェネクスには狭すぎたらしい。」

 

と、立野が言った。

 

「な、何を言って、」

 

「!まさか、外です、ボム・フェネクスは外にいます!」

 

と、出雲がボム・フェネクスの居る場所を推測する。

するとその直後、外の景色が黒に染まっていく。いや、正確にはボム・フェネクスの影に……だ。

 

キュグァァァァ‼

 

と、鳥の鳴き声と人叫び声を混ぜたような声が、上空から聞こえてきた。

やはり出雲の言うとうり、ボム・フェネクスはこのファミレスの上にいるようだ。

 

 

 

重爆撃禽 ボム・フェネクス

融合・効果モンスター

星8/炎属性/炎族/攻2800/守2300

機械族モンスター+炎族モンスター

自分のメインフェイズ時、フィールド上に存在するカード1枚につき

300ポイントダメージを相手ライフに与える事ができる。

この効果を発動するターンこのカードは攻撃する事ができない。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

 

「この俺がボム・フェネクスをだして負けたデュエルは……無い!ボム・フェネクスの効果発動!フィールド上に存在するカード1枚につき、300ポイントのダメージを与える。」

 

今現在、フィールドのカードは4枚よって、

 

「1200ポイントの……ダメージか!」

 

「ふっ、喰らえ不死魔鳥大空襲(フェネクス・ビック・エアレイド)!」

 

ファミレスの上空から、雄叫びのような声が聞こえたかと思うと、上から隕石のような物が幾つも落ちてくる。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

夏目

 

LP1800

 

 

「う、うう。」

 

「(このコンボを使うまでも無かったか……)」

 

「俺はこれでターンエンド。」

 

 

立野

手札6枚

 

LP3500

 

魔法、罠ゾーン

スフィア・ボム 球体時限爆弾

 

モンスターゾーン

重爆撃禽 ボム・フェネクス ATK2800

 

 

 

「ぼ、僕のターン」

 

夏目

手札5枚

 

LP1800

 

魔法、罠ゾーン

無し

 

モンスターゾーン

エルフの剣士(スフィア・ボム球体時限爆弾装備)ATK1800

コマンドナイト ATK1600

 

 

 

 

「このスタンバイフェイズ、スフィアボムの爆弾が作動する。これで1800ダメージで俺の勝ちだ。」

 

エルフの剣士に取り付いていたスフィアボムの点滅が今までのものよりも速く点滅し、全体が赤く光った瞬間

ドカーンと音がし、エルフの剣士が爆散した。

そしてその爆発でできた爆風が、夏目を吹き飛ばした。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!」

 

夏目

 

LP0000

 

 

WIN 立野

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、負けました。」

 

ライフポイントが無くなり、頭を垂れる夏目。そんな夏目を見て、盗賊達は

 

「ふん、あれだけ威勢が良かったのに兄貴に与えたダメージはたった500ぽっちかよ。」

 

「しかもそのダメージも兄貴自身が自分から受けたダメージ。」

 

「実質兄貴のパーフェクト勝ちじゃあねえかよ。まじウケるわ~。」

 

と、盗賊達はその様を見て笑い転げていた。

一方の人質達も

 

「嘘だろ!こんなに簡単にセキュリティが負けるなんて。」

 

「あの立野とかいう奴強すぎだろ。」

 

「て言うかセキュリティってあんなに弱かったっけ?」

 

「あいつ本当はセキュリティじゃ無いんじゃないのか。」

 

「はぁ?じゃ俺達のあの喜びは……」

 

「ぬか喜びって奴だな。」

 

「ふ、ふざけんなよ!この役立たず!」

 

そうだそうだという声がどんどんと広がっていく。夏目はその言葉にただ唇を噛み締めるしかなかった。いつの間にか、その目には涙が溜まっていた。

 

「……ふんっ!」

 

立野は取れたアンカーを投げ捨て、夏目の方を向く。

 

「まっ、現実こんなもんだ。さてと、お前にはこれから人質になって貰うぜ。そろそろセキュリティが来てもいい頃合いなんでな。」

 

そう言い、夏目に手を伸ばす立野。が、

 

ヒュッ

 

と、何かが立野の前を通りすぎ、柱に刺さる。よく見てみるとそれは……

 

「……カード?一体誰だ。こんなもんを投げたのは。」

 

「………僕だ!」

 

その場にいる全員が声をした方向を向く。そこにいたのは

 

「何のマネだ糞ガキ。」

 

「糞ガキじゃない、出雲だ。そしてお前、今から俺とデュエルしろよ。」

 

出雲 光遊 その人だった。

 

 

 

 




次回予告

立野にデュエルを挑んだ出雲。だが立野に子どもだからという理由で断られてしまう。
そこで出雲は立野の部下を4人同時に相手をして勝ったらデュエルをしてくれと頼み込む。
何とか条件を呑んでもらった出雲は、立野の部下4人とバトル・ロワイアルを開始する!

次回、スサノオ降臨 デュエルスタンバイ!


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第3話 スサノオ降臨! 前編

投稿遅くなってすみませんした!少しバタバタしてて中々文字を打てなかったんです……
あと予定より文字数が多くなってしまったので前後編に分けました。後編はなるべく早く上げます。
でわでわ


スフィア・ボムの効果により吹き飛ばされる夏目。

その夏目を心配そうに見つめる出雲。

 

「(大丈夫かな夏目さん。)」

 

数十秒の付き合いだったが、それでも見ず知らずの自分を心配し声を掛けてくれた人なので、やはり不安になる。

 

「(確かデュエルで負けたら覚悟するような事をされちゃうんだよな……。

まあデュエルの結果はともかく自分達を守ってくれた人なんだから周りの奴等がカバーするだろ。

さすがにそこまで残酷な奴等でも無いだろうし。)」

 

が、人間というものは出雲の思っている以上に残酷な生物だったらしい。

 

「何だよあいつ、ふざけるなよ!」

 

「そうだよ。何がセキュリティだ、負けてんじゃねえか!」

 

「ハァ、これでもう助けは来ないのか。」

 

「チッ、期待はずれだったぜ。」

 

それらの声が次々と夏目に浴びせかかる。

夏目の目に涙が貯まっていく。

 

「涙を流したからって許されると思ってんのか!」

 

「そうだそうだ、悲劇のヒロイン気取りかぁ!」

 

と、また心無い言葉を浴びせるやからが。

 

「(こいつら……まじて俺と同じ人間か?)」

 

出雲は思わずそんな事を思った。

 

「(まっ、今の俺には強盗団を迎え撃つ事なんて出来っこないし、助けを待ってるか。)」

 

出雲はそう心の中で思うと、目の前の現実から目を背けた。当然だ。今の出雲はただの非力な子供なのだから。

 

「(また人助けして死ぬなんてもうごめんだからな。悪く思わないで下さいよ。)」

 

出雲は若干の罪悪感を覚えつつも、夏目の事を見捨てようとする。

が、出雲は一瞬見えた夏目の目を見て、驚く。

 

「(あの顔、まだ諦めてない?)」

 

そう、夏目の顔はまだ闘争心に燃えていた。どんな罵声を浴びせられながらも、その人達を助けるという信念が、その顔に宿っていた。思えば先ほど流していた涙もあの人達を守れなかったから流していたのかもしれない。

自分なら絶対に折れてしまうであろう状況で、しかしその人は自分の意思を貫いていた。

 

「(ハァ、そんな顔してたら自分が恥ずかしくなってきちまった。)」

 

 

そんな事を思った出雲は、頭を一旦冷静にする。

 

「(よし落ち着け出雲。まず状況の整理だ。目の前には強盗が5人。今俺が持ってるのはカードの入ったバックとDパットみたいな物体とポケットに財布。そしてデッキが3つ。

…この世界は恐らくアニメの遊戯王の中の世界かそれに類似する世界か。アニメ準拠ならどんな事でもデュエルで解決出来る筈。そうだよ、デュエルなら何度もやってきたじゃないか!俺の得意分野だ!)」

 

その頃、目の前では立野が、夏目を人質にしようとしていた。

 

「(やべっ!どうしよう。……ん?ポケットにカードが……逆転の女神?これでいいや!)」

 

出雲は見よう見まねでカードを立野の進行方向の柱に投げつける。

ヒュッ と、空を切る音がし、なんとそのカードが柱に突き刺さったではないか。

 

「(……ここ絶対遊戯王の世界だ。)」

 

出雲はそう確信したという。

 

「……カード?一体誰だ。こんなもんを投げたのは。」

 

「(レアカードに傷が付いたわ!……じゃなくて!)」

「………僕だ!」

 

この場にいる全員が出雲の方を向く。

 

「(は、恥ずかしい!)」

 

「何のマネだ糞ガキ。」

 

と、立野がイラついた声と鋭い目付きで出雲に問う。

 

「糞ガキじゃない、出雲だ。そしてお前、今から俺とデュエルしろよ。」

 

この言葉を発した瞬間、店内がシーンっと静かになった。そして、次の瞬間

 

「「「「「はっはははははは!」」」」」

 

と、強盗団の奴等は笑い

 

「何だよあいつ、英雄気取りかよ。」

 

「はぁ、また期待するだけ無駄無駄。」

 

「早くこの茶番終わらせろよぉ。」

 

と、ネガティブな声が聞こえる。

 

「そ、そんな……」

 

唯一、夏目だけが本気で出雲を心配していた。

 

「お前、俺とデュエルする気か?悪い事は言わねえ。さっさと黙って座れ。そうすりゃ今の事は無かった事に…」

 

「あっれ?もしかして俺とデュエルするの怖い系かな?こんな子供に負けちゃったら威厳台無しだもんねぇ。まっ、しょうがないかな。」

 

出雲は強盗団4人を指差して

 

「こいつら位だったら余裕で負かせるし。」

 

と、言った。

 

「てめぇ!ガキだと思って調子にのりやがって!」

 

「ぶっ殺してやる!」

 

「どうやらお仕置きが必要みたいだな!」

 

「俺のデッキでなぶってやらぁ!」

 

と、まんまと挑発に乗る強盗団達。が、

 

「お前らぁ!頭冷やせぇ!」

 

思わずビクッとなってしまうようなバカデカい声を、強盗団のボスの立野は発した。

 

「(こいつは多分強盗団の中でも別格だな。挑発にも乗らなかったし。)」

 

思わず冷や汗が垂れてきた出雲。

 

「おい、お前いい加減しろよ。そんなデュエルをこっちが引き受けるメリットがねぇだろ。たとえガキ相手に逃げたと笑われても無駄な事はしない主義なんでね。」

 

「メリットならありますよ。」

 

「…なに。」

 

出雲はこの世界で絶対必須のアイテムを見せる。

 

「あんたかあんたの仲間が勝ったら俺の3つあるデッキ全部やるよ。」

 

そう言い、自分の持ってたベルトに付いてた3つのデッキを見せる。

 

「そ、そんな!自らの魂とも言えるデッキを賭けに出すなんて!そんな事しちゃ駄目だよ!」

 

と、夏目が止めに入ろうとするが、出雲はそれを手で制した。

 

「心配しないで下さい。こんな奴等には負けませんから。」

 

と言い、立野の反応を待つ。

 

「……全部使えないカードじゃねぇだろうなぁ?」

 

と聞いてきたので、

 

「あぁ、俺が丹精込めて作ったデッキだ。」

 

と、出雲は答えた。立野は数秒考え

 

「良いだろう。おい、一郎、お前が相手してやれ。」

 

「(よし!そうと決まれば…)」

 

「分かりました。おい、さっさと構えろ!」

 

「おいおい、お前一人だけか?」

 

出雲はなるたけうざく聞こえるように言う。

 

「あぁ?どういう意味だ。」

 

「四人同時に相手してやるって意味だよ。」

 

今度こそ強盗団四人の堪忍袋の尾が切れた。

 

「ならお望み通り四人で相手で相手してやるよ!四郎、三郎、二郎、、やるぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

四人が一斉にディスクを構える。

それに合わせて出雲もディスクを……

 

「(あれ?どうやってこのパッドをデュエルモードにするんだ?)」

 

思わぬ伏兵が居た。

出雲は電源を頑張って入れようとアチコチを触るが、

 

「(だ、駄目だ。ウンともスンとも言わねえ。)」

 

デュエルする前から大ピンチである。

 

「おいどうしたぁ!さっさとディスクを構えろ!」

 

「お、おう。ちょっと待っとけ。」

 

出雲は、このまま引き下がるか!と、アッチコチを弄ってみる。

 

「くそ、どうやったら……」

 

すると、

 

「音声入力をするんだ。」

 

と、夏目が助け船を出した。

 

「(お、音声入力?)」

 

出雲は一か八か賭けに出ることにした。

 

「デュエルモード 起動!」

 

すると、

 

ok デュエル モード スタンバーイ

 

という電子音と共に、手にあったパッドが変形する。

収納されていた部分が飛び出し、半透明のプレートを形成していく。

 

「おぉ!」

 

軽い感動を覚えながらも、出雲はデッキを1つ取りだしセットする。そのデッキは出雲が前世で一番よく使っていたデッキだ。

 

「夏目さん、ありがとうございます!」

 

「いや、良いんだよ。それよりも」

 

夏目は出雲に近付き、

 

「済まない、私が不甲斐ないばかりに。」

 

と、頭を下げられる。

 

「いえいえいえ、別にこれは俺がやりたいから吹っ掛けただけの勝負ですから!気にしないで下さい。」

 

「だ、だか…」

 

「だからそんなに心配しないで下さいって。あんな奴等には負けはしませんから。」

 

「……分かった。そういえば自己紹介がまだだったね。

私は夏目 汐里だ。君は?」

 

「はい、出雲 光遊です。」

 

「じゃあ出雲君。頑張ってくれ。」

 

「はい!頑張ります。」

 

出雲はそう答えた後、強盗団四人に向き合う。

 

「待たせたな。それじゃぁ始めようぜ!」

 

「ルールはどうする。」

 

「る、ルール?じゃあバトルロイヤルで先行は全員攻撃出来ないで。」

 

「マスターズルールは。」

 

「えっと…2で。」

 

「おう。じゃあ入力しろ。」

 

「にゅ、入力?」

 

画面を見てみるとM2、M3というタッチパネルとBRというタッチパネルがあった。他にもSWやAF等というパネルもあったが、今は関係無いので、M2とBRをタッチする。

 

マスターズ ルール 2&バトルロイヤルモードスタンバーイ

 

画面が切り替わり、自分のライフとフィールドが表示される。

 

「よし、先行はくれてやる。」

 

「ありがとさん。じゃあ」

 

 

 

「「「「「デュエル!」」」」」

 

 

出雲 光遊

LP4000

 

手札5枚

 

 

中川 四郎

LP4000

 

手札5枚

 

 

中川 三郎

LP4000

 

手札5枚

 

 

中川二郎

LP4000

 

手札5枚

 

 

中川一郎

LP4000

 

手札5枚

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

出雲

LP4000

 

手札6枚

 

 

出雲はドローしたカードを含めて手札を見る。

 

「よし、俺は手札から武神―ヤマトを召喚!」

 

出雲はそう言い、カードをプレートの上に置く。

すると、ファミレスの床がひび割れ、石像が浮かんできた。

その石像は、先程のカードにイラストとして描かれた武神―ヤマトの姿をしていた。

段々と石像にヒビが入り、中からオレンジ色の光が漏れてきた。

そして出てきたモンスターは、オレンジ色に光る体に

昔風の鎧を被った人形のモンスターだった。

何処と無く神々しいオーラを放っているそのモンスターは、地上に降りるとファイティングポーズをとった。

 

 

武神―ヤマト

ATK/1800 DEF/200

 

 

「武神―ヤマト?聞いたことのないモンスターだな。」

 

「大丈夫っすよ。多分弱すぎて知らないだけっすよ。」

 

「そ、そうだよな。」

 

そう言い、心を落ち着かせるしたっぱ達。

 

「さらに俺はカードを2枚伏せる。そしてエンドフェイズ時、俺は武神―ヤマトの効果を発動!」

 

効果の発動を宣言した瞬間、ヤマトが床に手を翳す。

すると、鳥形のモンスターが勢いよく床から突き抜けてきた!

そして、そのモンスターはカードとなり、出雲の手札に収まった。

 

「1ターンに1度、自分のエンドフェイズ時、デッキから武神と名のついたモンスター1体を手札に加える事が出来る。」

 

その説明を受けた瞬間、周りがどよめきだす。

 

「つ、強すぎるだろ……。」

 

「おい、あのモンスターお前知ってるか?」

 

「い、いや知らねぇ。」

 

「きっとプロの人達がよくやってるみたいにカードを創造したのよ!」

 

「「「「「「な、成る程!!!!!」」」」」」

 

………聞き捨てならないような声が聞こえたような気がするが、無視する出雲。

 

「が、その後手札を1枚捨てなければならない。俺は

武神器―ヘツカを墓地へ。」

 

「な、なんだ。」

 

「結局手札の枚数は変わらないのか。」

 

「思ったより弱いんだな。」

 

と、捕まっている人達の声が聞こえる。

そして一郎達も

 

「な、なんだよ。拍子抜けしたぜ。」

 

「そのくらいなら瞬殺だな。」

 

「まったく、脅かしやがって。」

 

「さっさとぶっ潰してやる!」

 

と、息巻いていた。が、立野だけは、このカードに得体の知れない何かがあると感じた。

 

「(この感じ……何かあるな。)」

 

武神―ヤマト

効果モンスター

星4/光属性/獣戦士族/攻1800/守 200

1ターンに1度、自分のエンドフェイズ時に発動できる。

デッキから「武神」と名のついたモンスター1体を手札に加える。

その後、手札を1枚墓地へ送る。

「武神-ヤマト」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

 

出雲

LP4000

 

手札…2枚

 

フィールド……武神―ヤマト ATK/1800 DEF/200

 

セットカード2枚

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

四郎

LP4000

 

手札…6枚

 

 

 

「俺は手札から魔法カード、リロードを発動!このカードは手札を全てデッキに戻し、シャッフルする。

その後、デッキから今戻したカードの数と同じ数、カードをドローする。」

 

四郎は手札を5枚デッキに戻した後、カードを5枚ドローした。

 

「へっ、いくぜ!俺は手札から切り込み隊長を召喚!」

 

四郎の場に二刀の剣を持った、歴戦の戦士が現れる。

 

 

切り込み隊長 ATK/ 1200 DEF /400

 

 

「さらに、切り込み隊長の効果を発動!このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚できる。俺はその効果により、チューン・ウォーリアーを特殊召喚!」

 

今度は色んな所にメーターの付いている赤色の戦士が現れる。

 

 

チューン・ウォーリアー ATK /1600 DEF/ 200

 

 

「へっへぇ、このカードはただのモンスターじゃねぇんだぜ?このカードは「チューナーなんでしょ。そんくらい分かってるよ。」こんの餓鬼!俺はレベル3の切り込み隊長に、レベル3のチューン・ウォーリアーをチューニング!」

 

チューン・ウォーリアーが3つの光の輪となり、切り込み隊長がその3つの輪の中に入る。

切り込み隊長の体が半透明となり、その後、切り込み隊長のレベルと同じ数の3つの玉となり、そこから光が溢れだした。

 

「荒ぶる獣の牙もて捕獲せよ!シンクロ召喚!レベル6!《ゴヨウ・プレデター》!」。

 

四郎のフィールドに十手を持った凶暴なモンスターが現れた。

 

 

ゴヨウ・プレデター

シンクロ・効果モンスター

星6/地属性/戦士族/攻2400/守1200

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「ゴヨウ・プレデター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。

そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターがプレイヤーに与える戦闘ダメージは半分になる。

 

 

「ハッハッハァ!どうだ!これがシンクロ召喚だ!」

 

「(どうだと言われてもなぁ…… )」

 

正直シンクロ召喚の演出には興奮したが、出てきたモンスターはあの赤い権力の殆ど下位互換のようなモンスターだし…と、非常に複雑な心境である。

 

「(まっ、取りあえず)」

「トラップカード発動!針虫の巣窟(はりむしのそうくつ)。」

 

「は、針虫の巣窟?」

 

 

針虫の巣窟

通常罠

(1):自分のデッキの上からカードを5枚墓地へ送る。

 

 

この場にいる全員が静まりかえる

 

「(…あ、あれ?何でみんな固まってんの?)」

 

すると

 

「「「「「ワハハハハハハww」」」」」

 

と、デュエル中の強盗全員が笑う。

 

「な、何が可笑しいんだよ。」

 

まさか、何か知らない内にやらかしたか?と出雲は焦る。

 

「な、何でってww」

 

「そんなメリットの無いカードw」

 

「使ってる奴がいるなんてw」

 

「知らなかったぜw」

 

「あー腹痛いww」

 

「………ハッ?」

 

「(こいつらは何を言っているんだ?確かに普通のバニラのデッキとか墓地利用しないデッキならやる意味は精々デッキ圧縮位だろう。だけど墓地利用をバンバンするデッキにとっちゃメリットの塊みたいなカードだぞ。……まあ採用率は低いけど。)」

 

そんな事を思いながら、出雲はデッキから5枚墓地に送る。

 

 

墓地に送られたカード

武神器―ハチ

貪欲な壺(どんよくなつぼ)

武神器―オキツ

武神器―サグサ

光子化(フォトナイズ)

 

 

「(お、良い感じに落ちたな。)」

 

出雲は落ちたカードを見てそう思った。

 

「へっ、俺は手札から永続魔法、連合軍を発動!」

 

 

連合軍

永続魔法

自分フィールド上の戦士族モンスターの攻撃力は、

自分フィールド上の戦士族・魔法使い族モンスターの数×200ポイントアップする。

 

 

「このカードの効果により、俺の場のゴヨウ・プレデターの攻撃力が200ポイントアップする!」

 

 

ゴヨウ・プレデター ATK/2400➡2600

 

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンド。」

 

 

四郎

LP4000

 

手札…無し

 

フィールド……ゴヨウ・プレデターATK/2600 DEF/1200

 

永続魔法…連合軍

 

セットカード……2枚

 

 

「俺のターンドロー!」

 

恐らく三郎と思われる人物がカードを引く。

 

 

三郎

LP4000

 

手札…6枚

 

 

「俺はリロードを発動!」

 

先程の四郎と同じ様に5枚のカードを戻した後、同じ枚数ドローする。

 

「俺は手札から切り込み隊長を召喚!その効果によりチューン・ウォーリアーを特殊召喚!2体でチューニング!

こい、ゴヨウ・プレデター!」

 

 

ゴヨウ・プレデター ATK /2400 DEF /1200

 

 

「ちっ、またか。」

「(だがどれだけ並んでも攻撃力は2000台。警戒するまでもない。)」

 

そんな出雲の心の声に反応するかのように三郎はニィと笑う。

 

 

ゴヨウ・プレデター ATK/2400➡2800

ゴヨウ・プレデター ATK/2600➡2800

 

 

「なっ!」

 

あり得ない……と、口にする前に出雲は思考する。

 

「(この状況であり得る可能性は何だ?考えろ!)」

 

目の前にある全ての不可能を除去し、残った只1つの真実は、例えどんなに奇妙な物だったとしても真実である。……A君が前に言っていた言葉だ。そして出雲はある1つの仮説を建てる。

 

「お前ら……まさか!」

 

「ほおぅ……気づくのが早いな。そうだ、俺等のデュエルディスクは少々壊れていてな。」

 

「例えバトルロワイアルだったとしても、」

 

「同じ波長を出しているディスクが近くにあれば」

 

「ある一定のカード効果をそいつのフィールドに及ぼす事が出来るんだよ。」

 

「ちっ、何が壊れているだ!んなもんイカサマじゃねぇか!」

 

「おぉっと、お前が4人一辺にデュエルするなんて言わなきゃこんな事にはならなかったんだぜ?」

 

「くっ、」

「(まさかこんな手があったとは。)」

 

「出雲君……」

 

「あいつら、またあんな手を………」

 

「さぁ、まだまだいくぜ餓鬼!俺も手札から連合軍を発動!」

 

 

ゴヨウ・プレデター ATK/2800➡3200

ゴヨウ・プレデター ATK/2800➡3200

 

 

「もう3000越えか。」

 

依然として強盗団達はニヤニヤしている。

 

「さぁ、次は俺のターンだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ミスや批評等あれば感想下さい。


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第4話 スサノオ降臨! 後編

見事に期限を粉砕☆玉砕☆大喝采☆してしまいました。
コズモ君vです。
全然遅くに投稿する事になってしまいましたね汗)
これからは気を付けたいです。
でわでわ


「シンクロ召喚!ゴヨウ・プレデター!」

 

 

ゴヨウ・プレデター ATK/2400➡5600 DEF/1200

 

 

四郎

LP4000

 

手札…無し

 

モンスター…ゴヨウ・プレデター ATK/5600 DEF/1200

 

魔法、罠…連合軍、セット2枚

 

 

三郎

LP4000

 

手札2枚

 

モンスター…ゴヨウ・プレデター ATK/5600 DEF/1200

 

魔法、罠…連合軍

 

 

二郎

LP4000

 

手札1枚

 

モンスター…ゴヨウ・プレデター ATK/5600 DEF/1200

 

魔法、罠…連合軍、セット1枚

 

 

一郎

LP4000

 

手札2枚

 

モンスター…ゴヨウ・プレデター ATK/5600 DEF/1200

 

魔法、罠…連合軍

 

 

「さぁ、お前のターンだ!」

「言われなくても!」

 

あの後、二郎と一郎にも同じくゴヨウ・プレデターを召喚され、二郎にはカードを1枚セットされた出雲。

相手の場には攻撃力5000越えのモンスターが4体。そしてセットされたカードが3枚。恐らくどれもがこちらの手を妨害してくるだろうカード達。

 

「(さて、どうやってこの状況を打破するか……取りあえず)」

「ドローしてから考えるか!俺のターン、」

 

出雲は深呼吸をして頭を冷静にする。そして気合いを込める意味もかねて、あの言葉を言う。

 

「(頼む、デッキよ、俺に力を貸せ)」

「シャイニングドローっ!」

 

そして勢いよくカードを引いた。

 

出雲

LP4000

 

手札…3枚

 

モンスター…武神―ヤマト ATK/1800 DEF/200

 

魔法、罠…セット1枚

 

 

ドローしたカードを横目でチラッと見た瞬間

 

「きたぁぁっ!」

 

と、歓喜の声をあげる出雲。そんな出雲を見て、強盗団4人は警戒を強める。

 

「(あいつ……何かこの状況を逆転するカードでも引いたのか?)」

「(大丈夫だ、俺のセットしたカードは神の宣告と聖なるバリア―ミラーフォース、隙は無い。)」

「(俺ももしもの時の為に突進をセットしておいた。この布陣はさすがに崩せねぇだろ!)」

「(あぁ、これであのガキは絶対おしまいだ!)」

 

「俺は…」

 

「(さぁこい!何がきても神の宣告で)」

 

「俺は墓地に存在する武神器―ハチの効果を発動!」

「「「「……………ハッ?」」」」

 

強盗団達は一瞬何が起きたか分からない…というような顔をしていた。

 

「(な、なんでそんな驚いてんだ?)」

「このカードは自分の場に獣戦士族の武神モンスターが存在する時に、効果を発動出来る。このカードをゲームから除外することにより、相手の場の魔法、罠カードを1枚破壊する事が出来る。俺が破壊するのは……そのカードだ!」

 

出雲がカードを指すと同時に床が割れ、そこから青色の光が溢れだしてきた。そして、その床から青色に発光した石像が浮かんできた。その石像は少しの間浮遊した後、一際強い光を発すると、出雲の指したカードがパリンという音と共に破壊された。そしてその石像も空気に溶け込んだかのようになくなった。

 

 

武神器―ハチ

効果モンスター

星4/光属性/獣族/攻1700/守 500

自分のメインフェイズ時、自分フィールド上に

「武神」と名のついた獣戦士族モンスターが存在する場合、

墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。

相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

「武神器-ハチ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「(ぼ、墓地からモンスター効果とは、少し度肝を抜かれたぜ…。しかも)」

 

一郎は密かに共有されていた墓地をチラリと見る。

 

「(破壊されたのが神の宣告とは。しかし、お前の運もこれまでだ!)」

「ふん、墓地からモンスター効果を発動するなんてな。少しだが驚いたぜ。だがなぁ、」

 

一郎は出雲の場を指差す。

 

「お前の場には攻撃力1800のちとばかし珍しい効果をもったモンスター1体のみ。対してこちらは攻撃力5000越えのゴヨウ・プレデター4体。この状況をどうやって乗り越えるってんだ?あぁ!」

 

一郎は出雲を睨み付けてそう言う。対して、出雲はこう答える。

 

「この状況、確かに脅威的な状況だと俺も思うよ。でも、昔の偉い人は言いました。」

 

出雲は一郎を睨み返す。

 

「デュエルとは、一瞬一瞬のビッグバンだと!俺は、今この状況で、ビッグバンを起こす!俺は手札から武神器―オハバリを召喚!」

 

 

武神器―オハバリ

効果モンスター

星4/光属性/鳥獣族/攻1600/守 300

自分のメインフェイズ1で、このカードを手札から墓地へ送り、

自分フィールド上の「武神」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。

このターン、選択したモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、

その守備力を攻撃力が超えていれば、

その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 

「ククク、それがお前のビッグバンか?随分と小さいビッグバンだな。」

「まぁそう焦るなって。これはビッグバンを起こす為の下準備だよ。」

「何?」

「下準備」

「だと?」

「一体……」

 

出雲はニッと笑い、腕を天に掲げる。

 

「俺は、レベル4の武神―ヤマトと、武神器―オハバリで、オーバーレイ!」

 

「「「「お、オーバーレイだとぉぉ!!」」」」

 

「(オーバーレイ・ユニットを構築することにより召喚されるエクシーズモンスター。最近出たばかりの召喚方を何で出雲君が?)」

 

ヤマトはそのまま仁王立ちし、オハバリのみが光の玉となり、上空にある渦の中に入っていく。

 

「2体のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築……エクシーズ召喚!」

 

上空の渦が、その声と共に爆発する。

 

「現れろ、ランク4!悪しき者の策略により力失いし英雄よ、今こそその力取り戻し、悪を滅せよ!」

 

爆発した事により飛び散った粒子が、床に降り注ぐとそこから5つの石像がオレンジ色の光を発しながら出てくる。

その石像は出て来て直ぐにひび割れ、中から様々な姿、形をした武神器達が現れた。その武神器達はヤマトの側にくると様々な形に変化し、分離し、ヤマトの体に装着されていく。

 

「武神帝―スサノオ!!」

 

そうして現れたのは、凄まじい存在感とプレッシャーを放つ英雄だった。

手には2つの剣が握られており、頭は兜で覆われ、その背には翼のような物まであった。その存在はファミリーレストランという小さい空間では抑えきれず、ミシミシと至る所が軋んでいた。

 

 

武神帝―スサノオ

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/獣戦士族/攻2400/守1600

「武神」と名のついたレベル4モンスター×2

このカードは相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃できる。

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

デッキから「武神」と名のついたモンスター1体を選び、手札に加えるか墓地へ送る。

「武神帝-スサノヲ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

 

「(か、かっけぇぇ。)」

 

「こ、これが……」

「そうだ、これが俺のビッグバンだ!俺は墓地の武神器―サグサをゲームから除外しておき、武神帝―スサノオの効果を発動!オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、デッキから武神と名のついたモンスター1体を手札に加えるか墓地に送る。俺は」

「させるか!」

 

と、一郎が叫ぶ

 

「俺は手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動!このカードを捨てて、そのカード効果を無効にする!どうだ、これで手も足もでまい。」

「………」

 

出雲が黙りこんでいるのを見て、打つ手が無いと確信する一郎。

 

「やれ!エフェクト・ヴェーラー!」

 

実体化したエフェクト・ヴェーラーは武神帝―スサノオに近づこうとして

 

バチッ

「キャァァ!」

「ど、どうしたエフェクト・ヴェーラー。」

 

エフェクト・ヴェーラーは武神帝―スサノオから溢れでたオーラに弾かれてしまっていた。

 

「な、何故エフェクト・ヴェーラーの効果が…ま、まさか!」

 

出雲はその問いに答える。

 

「あぁ、俺は墓地に存在する武神器―ヘツカの効果を発動していた。」

「(これ一回言ってみたかったんだよなぁ。)」

「このカードをゲームから除外することにより、自分の場の武神モンスターを対象としたカードの効果を無効にする!」

「く、また墓地から効果か。」

「だ、だが」

「その程度の攻撃力じゃ」

「「俺達は倒せない」なっ!」

 

「再開するぜ?俺は武神帝―スサノオの効果を発動し、デッキから武神器―イクタを墓地に送る。」

 

武神帝―スサノオが両方の剣を床に突き刺すとそこから青色の光が溢れだし、石像が1つ現れた。その石像は光の玉となって墓地に吸い込まれていく。

 

「そして俺は武神器―イクタの効果を発動!」

 

墓地から青色の光が溢れだす。

 

「相手の場のモンスター1体を守備表示にし、守備力を0にする。俺はお前のゴヨウ・プレデターを選ぶぜ。」

 

 

武神器―イクタ

効果モンスター

星4/光属性/獣族/攻1100/守1900

自分のメインフェイズ時、自分フィールド上に

「武神」と名のついたモンスターが存在する場合、

墓地のこのカードをゲームから除外し、

相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する

モンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターを表側守備表示にし、

その守備力をエンドフェイズ時まで0にする。

 

 

出雲が選んだのは三郎の場にいたゴヨウ・プレデターだった。

 

 

ゴヨウ・プレデター DEF/1200➡0

 

 

「く、だがその程度で…」

「さらに、俺は罠カードを発動する!剣現する武神!」

 

 

剣現する武神

通常罠

以下の効果から1つを選択して発動できる。

●自分の墓地の「武神」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える。

●ゲームから除外されている

自分の「武神」と名のついたモンスター1体を選択して墓地に戻す。

 

 

「このカードは墓地に存在する武神モンスターを1体手札に戻す事の出来るカード。俺はその効果により、武神器―オハバリを手札に加える。」

 

オハバリを手札に加えた出雲は最後の仕上げとばかりにカード効果の発動を宣言する。

 

「そして俺は武神器―オハバリの効果を発動!このカードを墓地に送り、自分の場の武神モンスターに貫通能力を与える。」

「なん…だと!」

「俺の見立てだと、お前らの場の連合軍はプレイヤーが負けたらその効力も無くなると見た。」

「くっ、」

 

事実、出雲の言うとおり連合軍のカードはその操っているプレイヤーが負けた場合は場に残らず自動的に破壊されるようだ。

 

「だ、だが攻撃力2400じゃ三郎の場のゴヨウ・プレデターしか破壊出来ないだろ!」

「それはどうかな?」

「「「「な、何!」」」」

「バトルフェイズ!俺は武神帝―スサノオで守備表示にしたゴヨウ・プレデターの右側のゴヨウ・プレデターに攻撃!」

「「「「な、何だとぉぉ!!」」」」

 

 

「わ、わざわざ手間をかけて無力化したゴヨウ・プレデターじゃなくてその隣を攻撃するだなんて」

「あの小僧……何か隠し玉を持ってるな……。」

 

 

「(く、あいつの事だ、絶対何か仕掛けてくるに違いねぇ。)」

「四郎!罠使って身ぃ守れぇ!」

「わ、分かった!罠カードオープン!聖なるバリア―ミラーフォース!デュエリストなら知らぬ者はいないこの効果でお前の場の武神帝―スサノオを破壊だぁ!」

 

 

聖なるバリア―ミラーフォース

通常罠

(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。

相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 

 

「セットカードの対策くらい、してないと思うか!俺はもうすでに墓地に存在する武神器―サグサの効果を発動していた!」

「「「「また墓地からだとぉぉ!!」」」」

 

 

武神器―サグサ

効果モンスター

星4/光属性/獣族/攻1700/守 500

墓地のこのカードをゲームから除外し、

自分フィールド上の「武神」と名のついた獣戦士族モンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターはこのターンに1度だけ

戦闘及びカードの効果では破壊されない。

この効果は相手ターンでも発動できる。

「武神器-サグサ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「このカードをゲームから除外し、自分の場の武神と名のついた獣戦士族モンスターはこのターン1度だけ、戦闘及び効果により破壊されない!」

「なんだとぉ!」

 

ゴヨウ・プレデターの目の前に神聖な輝きを放つ壁が出現し、スサノオを破壊しようとしたが、墓地より現れた石像の放った黄色の光がスサノオの身を守った。

 

「さらに俺は手札のオネストと武神器―ハバキリの効果を発動!」

「い、一気に2枚もだと!」

「チェーン順に処理するぜ?俺はまずチェーン2の武神器ハバキリの効果を処理する。

 

 

武神器―ハバキリ

効果モンスター

星4/光属性/鳥獣族/攻1600/守 300

自分フィールド上の「武神」と名のついた獣戦士族モンスターが

相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、

このカードを手札から墓地へ送って発動できる。

戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力は、

そのダメージ計算時のみ元々の攻撃力の倍になる。

 

 

「ハバキリの効果により、俺の場の武神帝―スサノオの攻撃力は倍の4800となる。そしてチェーン1のオネストの効果により、その攻撃力は10400!」

「こ、攻撃力」

「10400の」

「モンスター」

「だと……」

「「「「あり得ねぇ!」」」」

「いっけぇ!武神連斬!!」

 

ミラーフォースのバリアを蹴り砕いて飛び上がったスサノオは、その体に一層強いオレンジ色の光を纏い、背中にある翼らしきものを広げる。

その姿は正に神そのものであり、そのあまりの輝きと神々しさに、ゴヨウ・プレデター達は思わず目を瞑る。

その一瞬の隙をついたスサノオは急降下して、ゴヨウ・プレデター達を横凪ぎに斬りつける。

 

「「「「グワァァァ!!」」」」

 

と、4体のモンスターは断末魔の悲鳴を上げながら破壊される。

 

「「「「ぐわあぁぁぁ!」」」」

 

 

四郎

LP4000➡0

 

 

三郎

LP4000➡0

 

 

二郎

LP4000➡0

 

 

一郎

LP4000➡0

 

Win 出雲 光遊

 

 

4人のLPは全員一気に0になり、吹き飛ばされた。

 

「な、何故」

「全員一気に」

「負けているのだ!」

「あり得ないぞ…。」

 

その問いに出雲が答える。

 

「武神帝ースサノオは相手のモンスター全てに1回ずつ攻撃が出来る。その効果であんたらの場のモンスター全てを破壊させてもらったんだよ。」

 

「ま、まさか」

「そんなモンスターがいるなんて」

「知らなかった…。」

「ふ、不覚なり……。」

 

「さてと。これで後はあんただけだ。」

 

出雲はその目で奥に佇んでいた立野を睨み付ける。

 

「さぁ、俺とデュエルしろ!立野 銃火!」

 

「……ふぅー、やれやれ。名前を教えた覚えは無いんだがな?お前さては俺のファンか?」

 

「……他の人から聞いたんだよ。お前が有名な強盗団のリーダーってこともな。」

 

「で?そんな俺に何か用か?」

 

「だから俺とデュエルしろ!ぶっ飛ばしてやる!」

 

「……お前とデュエルしたい気持ちはやまやまだ。だが…」

 

立野は外に目を向ける。遠くの方でサイレンが鳴っているのが分かる。

 

「警察がもうすぐきちまうんでな。ここらで失礼させてもらうぜ。おい、お前ら!行くぞ!」

 

「「「「う、ウッス!」」」」

 

立野は部下達を連れてここから離脱しようとする。

 

「あ!お、おい待ちやがれ!」

 

「またいつか会おうな、坊主!」

 

強盗団達は驚異的な逃げ足の速さでその場から離れていった。その際に強盗に使ったと思われるツインバレル・ドラゴンを落としておった。

カードをまた投げつけようかとも思ったが、手持ちに直ぐに投げられそうなカードが無かった為断念する。

 

「あぁ~、逃げられちった……。」

 

少し残念そうにする出雲。

 

「出雲君!」

 

すると、そこに夏目 汐里が走ってくる。周りを見ると助かった人々は皆既に家族や親しい者達と喜びあっていた。

 

「な、夏目さん。大丈夫ですか?」

 

「そ、それはこっちの台詞だよ出雲君!大丈夫かい?どこか痛む所とかないかい?」

 

えぇ大丈夫ですと返す出雲。そんな事よりも

 

「か、顔が近いです夏目さん……。」

 

「あ、あぁ!ごめん……。」

 

ものすごく至近距離に近付かれて言われた為、鼻息が顔にかかってくすぐったかったのだ。

嫌な臭いという訳でも無く、むしろ逆にいい香りだった。

 

「(やばい、何かに目覚めそう。)」

 

夏目の顔は中性的で、女と言われても気づかないくらいには美形なので心が少しドキドキしてしまった出雲。

 

「あ、そう言えば強盗団の奴等強盗に使ったツインバレル・ドラゴンが落ちてますよ!僕取りに行きますね!」

 

半ば逃げるようにその場から離れる出雲。

 

「(こんなので強盗してたのか……。)」

 

ツインバレル・ドラゴンを手に取り、眺める出雲。その時であった。

 

「突入ぅ!」

 

突如バンと扉が蹴破られ、そこから大型犬とそれを連れた警官のような格好をした人達が中に入ってきた。

 

「(も、もしかしてセキュリティ的な奴等か?助かった!)」

「あ、あの~」

 

「む?……!そのカードは!…確保ぉ!」

 

出雲は突然大の大人に組伏せられる。体が9歳程度の大きさしか無くなってしまった出雲は、簡単に組伏せられてしまい、あっという間に身動きがとれなくなってしまう。

 

「は、はぁ??!!」

 

安寧の日は、まだまだ遠そうだ…。

 

 




間違ったルール、解釈、批評等あれば感想欄まで……

―追記―
活動報告の所にアンケートがあるのでそちらにも気が向いたら………

次回予告
セキュリティに連れられ取り調べを受けることになった出雲。
何とか夏目の力も借り、疑いを晴らすことが出来たが、また新たな問題が出雲を襲う!

「やべぇ!住む家ねぇ!」
「あ、家で良ければ」
次回 夏目ン家 デュエルスタンバイ!


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第5話 夏目ン家

こんにちは、コズモ君vです。はい、言いたい事は幾つかありますがまずは……
(祝)コズミック・ブレイザー・ドラゴンOCG化
この情報自体は去年からあったのですが、やはり現物を見ると実感が湧いてきちゃって。
(ちなみにセカンドウェーブ二箱買って1枚しか出なかった……orz)
まぁとにもかくにも、自分のジャンクドッペルが息を吹き返してきました。レベルスティーラーさえ禁止にならなければ……ガク
あ、後ひとつ言いたい事があるのですが、それは後書きの方で。
後今回デュエル描写は無いので悪しからず。
でわでわ


「確保ぉ!」

 

その声と共に、出雲のまだか弱い体は地面に叩きつけられる。

 

「ガッハ!こんにゃろ!」

 

あまりの衝撃に肺から空気が吹き出た出雲。逃れようと必死に抵抗するが、9歳程度の体になってしまった出雲の非力な力では大の大人の力には逆らえず、その内無駄だと分かったのか抵抗しなくなった。

 

「おいお前、早く手錠かけろ。」

 

厳つい顔にドスの効いた声。遊戯王のモンスターに例えるなら無敗将軍 ジェネラルフリードと言った所か。他のセキュリティとは違う少し濃いめのカラーの制服に身を包んでいる。恐らく隊長であるその男は、同僚と思わしき男にそう言う。

 

「で、ですが隊長、相手はまだ10歳程度の子供ですよ?なにもそこまで…」

 

そこまで言った所で

 

「バカヤロー!!こいつはリボルバー強盗団を捕まえられる滅多にないチャンスかも知れねぇんだぞ!」

 

と、怒鳴った。反論した男はすっかり畏縮してしまった。

 

「あ、おいお前とお前。奥の様子見てこい。」

 

その声にコクリとセキュリティ達が頷くと連れている大型犬と一緒に奥の調理場へと進んでいく。

そして

ガチャリ

と、決定的な音が聞こえてきた。セキュリティが出雲の手首に手錠をはめたのだ。

 

「よし、連れてけ。」

 

抵抗する気力の失せた出雲は足を引きずられながら連れてかれる。

 

「ま、待ってください!」

 

が、それを止めようとする者がいた。

 

「ん?お前は」

 

「セキュリティ第3部隊所属、夏目 汐里です。」

 

夏目である。彼女は自身の所属を答える。

 

「第3部隊ぃ?あぁ、あの問題児ばっかりいるあの。」

 

と、その隊長は夏目を訝しげにみる。

 

「一言よけいです。それよりも隊長!あの子は私達を助けて」

「あぁいい、いい、そう言うのは取り調べ室であいつに直接聞くから。」

 

と、軽くあしらわれる。

 

「で、ですが隊長……」

 

「手伝わねぇならもう帰ってろ。おい、お前はあの客達を保護しといてくれ。」

 

その有無をいわさぬような発言をし、隊長と呼ばれた男は奥に行く。

 

「出雲君……」

 

夏目の吐いたその言葉は、空気に溶けるように無くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~車内~

 

 

「はぁ、だりぃ。」

 

そんな出雲は現在、セキュリティの車の中で、そんな言葉を漏らしていた。

 

「おい貴様、今何か」

「いえいえ!天下のセキュリティ様の気にするような事ではないので!」

「む、そうか。」

「はい!」

「(はぁ、だりぃ。)」

 

セキュリティの車に乗せられ、車が発進してから数分たつ。出雲は億劫そうな目で外の景色を見ている。

 

「(人助けして死んだかと思えば訳のわからない世界に転生させられて、背も小さくなって、それでまた人助けしたら警察的な組織に連れていかれる。………これって何て罰ゲーム?)」

 

出雲はそんな事を考えていた。

数分の間、車内には何とも言えない空気が広がっていた。

彼らだってこんな子供を確証も無いのにあんな乱暴に捕まえたくは無かっただろう。しかし、それほどリボルバー強盗団という連中を捕まえたいのだろう。彼らは必死に感情を抑えていた。

 

「(ちくしょぉ、俺だって本当はあんな奴等に絡みたく無かったですよ!ですけど!ですけど!誰も助けたら捕まっちった☆何て展開予想出来ないでしょ!て言うかさっきのデュエルも何だよ ビッグバンを起こしてみせる キリッ……て!訳わかんねぇよ!半分その場の勢いだよ!黒歴史確定だよ!!)」

 

………セキュリティ達の心情など微塵も感じていない様子である。むしろ新しい黒歴史を作っていた。

 

「(それにしても………これからまじでどうなんだろ…服役はしないよな……流石に。子供だし。でもなぁ、あっちの常識がこっちで通用するかと言われるとなぁ~。

正直かなり心配だわ。マーカーとか刻まれない?大丈夫だよね?)」

 

うがーっと、これからの自分の処遇が不安になってきた所で

キキー

と、車のブレーキ音がする。

 

「着いたぞ。でろ。」

 

半ば押される感じで降りた出雲は、よろめく体を安定させる。そして、目の前の圧倒的質量を持つ建物を直視する。

 

「(で、でっけぇ。)」

 

目の前にはそうとうな大きさを誇る建物があった。

外観は都会にある巨大なビルのようだったが、入口は警察署と同じようになっており、見張りが二人いた。

ビルのてっぺんには赤色の看板があり、その中に男性の絵が描かれていた。

 

「(誰だ?あの看板に描かれてるの。あんな目立つ所にあるって事はセキュリティにとって重要な人物……創設者かあるいは……)」

「おい、早く歩け。」

「あ、すいません。」

 

その言葉で現実に戻った出雲は、言われるがままその建物の中に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~セキュリティ本部内~

 

「ではまず名前と年齢から聴こうか。」

 

薄暗いコンクリート作りの部屋。中にあるのは机と椅子、そして容疑者とそれを照らす為のスポットライト。

そんな簡素な部屋にセキュリティの隊員二人と出雲がいた。あの後デュエルディスクを取り上げられた出雲はこの取り調べ室に連行されてきたのだ。

 

「えーっと、出雲 光遊です。年齢は9歳位………じゃなくて9歳です!」

「出身は?」

「えーっと、T市って所です。」

「T市?聞いた事の無い地名だな……。使用デッキは?」

 

「(使用デッキなんて聞くのか。)」

「全部ですか?……」

「複数あるのか?」

「い、いえ。武神というカテゴリーを使っています。」

「これまた聞いた事が無いなぁ。………少し待っていろ。」

 

質問をしたセキュリティは取調室から出ていく。出雲はそんなセキュリティを横目で見ながら今後の事を考える。

 

「(取り合えず俺は真実だけ話せば大丈夫なはずだ。変に嘘をつくとかえって怪しまれるからな。……大丈夫だよね?)」

 

一抹の不安が拭えない出雲。そのせいか汗が全身から吹き出て、心臓の鼓動が早くなってきている。

 

「(お、落ち着けよ出雲 光遊。心まで9歳になっちまったか?今の状態の方が絶対に怪しまれる。俺は平常心を保ってれば良いんだ。そ、そうだ、こういう時こそ俺の生涯のアイドルカード、月光舞獅子姫(ムーンライト・ライオダンサー)を思い出すんだ!)」

 

自分の心の中で必死に月光舞獅子姫を思い出す出雲。

すると

ガチャリ

と、扉の開く音がする。目を開けてみるとそこには先程いたセキュリティでは無く、自分を捕まえるように指示したあの隊長と呼ばれる人物がいた。

 

「っっ!!」

 

声を押し殺す出雲。自然と強ばる体に止まらない汗。おまけに手まで震えてきた。

それもその筈、出雲にとっては自分をここまで悩ますにいたたった原因にして、ここに居ることになった元凶なのだから。

 

「よう、今から俺がお前の取り調べをすることになった。

自己紹介しておこう。俺の名前は五津川 (いつがわ)剛鬼(ごうき)だ。宜しくな、出雲 光遊。」

 

この剛鬼という男の発する一言一言が出雲の心の中を覗こうと攻撃しているよえに思えてきた出雲は、その壁をより強固な物にしようと口を開く。

 

「それで……貴方は何を聞きにここに来たんですか。」

 

「そいつはお前が一番よく分かってんだろ?」

 

「……わ、分かりませんよ。逆に教えてほしい位です。」

 

と、少し強めに返してみる出雲。

 

「はぁ、これだから餓鬼は……」

 

そう小声で言うと、机の上に書類をダンッと置いた。

 

「こ、これは?」

 

「リボルバー強盗団について纏めた書類だ。取り合えず読め。」

 

出雲は言われるがままその書類を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

報告書;リボルバー強盗団の変化について

 

ここ数年で約10億円相当の貴金属を盗み、世間の話題をさらっている犯罪者集団、リボルバー強盗団。

メンバーは6人おり、その内5人が血の繋がっている兄妹と思われる。

その活動内容は、主に裏金や違法カジノ等を所持している権力者からその裏金や違法カジノで儲けた汚い金を盗んだり、レアカードを盗んだり等の、偽善者紛いの事をしている。

噂によると盗んだ金の60%と盗んだレアカードは恵まれない子供に寄付をしているだとか。

セキュリティとしては捕まえておきたい犯罪者達ではあるが、その捕まえる優先順位は低く、署内にファンクラブができる有り様だった。

しかし、ここ数ヶ月、リボルバー強盗団の様子に変化が起きた。

彼らは汚い有力者からだけではなく、銀行から一般家庭まで、幅広い範囲で盗みを行っている。

盗みに入られたその銀行や家庭には、背後に何らかの陰謀がある等の噂も聞かず、調査もしたが怪しい痕跡は一切ない。

これは、今までの彼らの行動理念から大きく外れている行為であり、署内だけでなく世間でもここ最近の話題になっている。

この街にはまだ出現情報が無いため、その類いの噂はあまり広まっていないが、それも時間の問題だろう。

これから先、より一層注意が必要な相手である。

 

セキュリティ第5部隊隊長 五津川 剛鬼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ふへぇ」

「(あいつらそんな今話題の人物だったんだ。……やべぇ、凄い勢いで啖呵切った気がする。)」

 

「さぁ、ここに書かれていないことを話してもらおうか。」

 

「ですから、僕はツインバレルだとかリボルバーだとか、そんな強盗団には属してません!いい加減信じてくれませんかね?」

 

「じゃあ何で貴様がこれを持っている!」

 

出雲に突きだされたのはファミレスで出雲の拾ったツインバレル・ドラゴンだ。

 

「そのカードがどうかしたんですか?」

 

当然だが出雲には何の事だかサッパリ分からなかった。

 

「しらばっくれんじゃねぇぞ!リボルバー強盗団はなぁ、メンバー全員がこのツインバレル・ドラゴンを持ってるんだ。そして!奴等の持っているツインバレル・ドラゴンには特殊な加工がしてあるんだよ!」

 

シュッ

と、投げつけられたカードを手を合わせて受け止める出雲。

 

「(た、確かにちょっと普通のカードよりもざらついてんなぁ。)」

「た、確かに何か加工がされてますけど………」

 

「そいつをお前は突入時に持っていた!そいつだけでお前がリボルバー強盗団に関与していたという証拠は充分だ!」

 

「(んな無茶苦茶な………)」

 

「どうだ!こいつが証拠だぁ!」

「いや、そんなの只の状況証拠じゃないですか!それだけで断定するのは少し無理があるんじゃないですか!」

「だったらとっとと決定的証拠を吐けぇ!」

「んな無茶苦茶な!」

 

そんな会話を矢継ぎ早に言っていると

ガチャン

と、取調室のドアを開ける音が聞こえた。そのドアを開けた人物は……

 

「な、夏目さん!」

 

あの夏目 汐里だった。

 

「あぁ?ここには俺が出てくるまで誰も入れるなと言った筈だが?」

 

と、五津川がドスみを効かせて言うが、

 

「すみません。しかしどうしても見せたいものがありまして。」

 

と、軽く受け流された。

 

「(あの人オリハルコンハートでも持ってんのか?)」

 

と、出雲は思ったという。

 

「見せたいもの?そりゃなんだ。」

 

「これです。」

 

夏目はその手に持っていたタブレットのような物を五津川に見せる。

 

「なっ!これは……」

 

そのタブレットを見た瞬間、五津川の顔の色が変わった。

 

「お前っ!……まさかっ!!」

 

「はい。そのつもりです。」

 

その瞬間、五津川の顔が怒りに染まった。

 

「お前……分かっていってるのか!!こいつをここでじっくり調べればどんなに有益な情報が得られるのかを!」

 

しかし、夏目はいたって冷静にその言葉に対処する。

 

「残念ですが出雲君を調べても何も出ませんよ。監視カメラの映像や様々な方からの証言も揃っているので。このままでは貴方の立場も危ういと思いますが。」

 

「……チッ、さすが問題児ばかりが居ると噂の第3部隊所属だ。どこまでも邪魔しやがって!さぞお父さんも泣いてる事だろうなっ!」

 

その言葉に夏目の顔が曇る。

 

「……私は私の信念を貫いただけです。今も昔も……」

 

「(……えっ?何々この状況!凄く重い。どれくらい重いかと言われるとリアルで【武藤 遊戯】のデッキを使うくらい重い!)」

 

一人おいてけぼりな感じになっている出雲をほっぽいて二人の話は続く。

 

「まぁ良い。俺はまたあいつらの足取りを追うだけだ。そっちにも何か情報あったら連絡くれ。」

 

「はい、分かりました。五津川第5部隊隊長。」

 

「ふん、今言われても皮肉にしか聴こえねぇよ。」

 

手をヒラヒラさせながら取り調べ室から出る五津川。

 

「あっ、そうだ。おい坊主。」

 

「えっ?何でしょうか。」

 

「ほらっ」

 

そうやって五津川が投げたのは没収されてたデュエルディスクだった。ちゃんとデッキもある。

 

「おっとと。これって俺の……」

 

「ふん、じゃあな。」

 

五津川は今度こそ取り調べ室から出ていった。

 

「あっ……えっと、夏目さん、ありがとうございます。助けていただいちゃって。」

 

「良いんだよ。それよりもごめんね。早く来てあげられなくて。ちょっと用事があってね。」

 

「用事?それって何ですか?」

 

「ん?あぁ、ちょっと住民票を捏造してたんだよ。」

 

「ふぅん、住民票を捏造してたんですか。それは大変でしたね。………って!本当に大変じゃないですか!それって普通に犯罪なんじゃ」

 

「大丈夫だよ、ばれてないから。」

 

「何だばれてないのか。それなら安心……出来るかぁ!!」

 

「アハハハ!、出雲君って面白いんだね。」

 

「誰のせいですか誰の。」

 

「いやいや、元々君の為なんだからね?」

 

「えっ?……あ!」

 

そう言えばと、出雲は今更ながらに自分はこの世界の住民じゃ無いことを思い出す。

 

「全く、君の実家に電話しようと調べてみたら NODATE

って出たから焦っちゃったよ。咄嗟に改竄したから良かったものの。」

 

「あぁ!俺のせいで夏目さんが犯罪者にぃぃ!」

 

出雲は頭を抱えてそう言う。

 

「大丈夫だよ。僕の知人ここの偉い人だから。それよりも自分の心配した方が良いんじゃない?」

 

「えっ?えっと……」

 

「君、田舎からお母さんを探しに来たんだよね?」

 

「いやそんな理由でここに来てなんか無いで……あっ!」

 

出雲はしまったと心の中で思う。

 

「ふふ、やっぱり嘘だった。怪しいと思ってたんだよね、田舎から探しに来たという割には持ってるのはカードとディスクだけ。それに住民票も無いって、怪しすぎるもん。」

 

「あ、あはははは。」

 

笑ってはみせたがその笑いには明らかに感情が籠ってなかった。

 

「それでね、そんな怪しい君は今日どこに帰るのかな?」

 

その問いの意味を何秒間か考えて出雲は…

 

「あ、あああああああああああああああああああ!!!!しまったあああああ!!帰る家がねぇー!」

 

思わず叫んでしまった。だがそれも無理はないだろう。だって彼には帰る家が無いのだから。

 

「(うぅぅ、出雲 光遊人生最大のピンチかもしれん。)」

 

割りと本気で焦っていた彼に、夏目は優しく微笑む。

 

「まぁそんな訳でね、今日から僕は君の保護者だから。」

 

「うわあああああああああ!!……へっ?」

 

突然の急展開に頭がついていってない出雲。そんな出雲に夏目はもう一回言う。

 

「だから、今日から僕は君の親代わりになるから。、よろしくね。」

 

「な、何で……?」

 

「何でって、こんな小さな子を見捨てられる訳ないでしょ。それに、怪しい君は間近で監視してないと良からぬ事をしそうだからね。」

 

「ていう事は……俺……帰る家ある?」

 

「うん、今日から僕の家が君の家だよ、出雲君⭐」

 

「う、うわあああん!」

「(うぅぅ、ちくしょー、俺が女だったら即惚れてたぜ!)」

 

夏目のあまりにも優しい、まるでメシアのようなその行動に、涙を流す出雲。

 

「うんうん、やっぱり子供は泣くのがなんぼだよね。

さぁ、早くお家に帰ろうか。」

 

「は、はい!夏目さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、まさかこんなもんを見せられるとは。」

 

セキュリティ本部の廊下を歩きながら五津川はそう言う。

 

「全く、何を考えてるんだ?あいつは。」

 

五津川の持っているタブレットには夏目が出雲の保護者になるという事が綴られた文の他に、

 

また、出雲 光遊をデュエルアカデミアに入学させる事とする。

 

という1文があった。

 

「出雲……光遊か。」

 

五津川のその呟きを聞いたものは、誰一人としていなかった。




言いたい事二つ目はですね、なんとこの小説初アンケートを活動報告の方で実施しております!
ドンドンドンドン パフパフパフパフ
内容はモンスターの技名です。詳しい事は活動報告の方にあるので是非。
あ、後今回の話の感想やおかしなところなどを感想欄で指摘してくれるとたすかります。
では次回予告(今回は出雲視点で)

ー次回予告ー
夏目さんの家に着いた俺は、早速デッキを調整しようとカードを確認する。だがそこに夏目さんが現れてデッキを見て欲しいと言われ、ってえぇぇぇぇ!!何なんだよこのデッキ!無茶苦茶だ!ようし、こうなったら、俺がそのデッキを魔改造してやる!
みてろよぉ、これが夏目さんの新デッキだ!
次回 安息 デュエルスタンバイ!


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第6話 安息

こんにちは、コズモ君vです。
今回もデュエル描写はありません。
後投稿遅れてすいません。次はもう少し早く投稿したいです。
でわでわ


「綺麗な街だなぁ。」

 

車の窓から見えるネオン街を見て、出雲はそんな感想を漏らす。

 

「そうでしょ。この街夜景がとっても綺麗なんだよね。」

 

出雲の感想に合わせ、車を運転している夏目もそう言う。

あの後、セキュリティの本部から出た出雲と夏目は夏目の運転で家に向かっている所だった。

 

「(この世界に来てからこんなに落ちつけれたのって初めてかなぁ。はぁ、平穏万歳。)」

 

この世界に来てから平穏とは程遠い困難を乗り越えてきた出雲はこのいつまで続くか分からない平穏をぎゅっと噛みしめる。

 

「(て言うか)」

 

出雲は今まで思いもつかなかった事を考える。

 

「(俺って、誰が何の目的でここに飛ばされたんだろう。考える時間無かったけどこれって結構重要な事なんじゃないのだろうか。)」

 

腕を組み、ウ~ンと唸る出雲。

 

「あ、もうすぐで着くよ。」

 

が、夏目のその一言でその思考を止める。

 

「(まあ今考えても仕方がないか。今は生きることに専念しよう。)」

 

出雲はまだみぬ家にワクワクしながらそんな事を思う。

 

 

 

 

 

 

 

「うお!すげぇ!!」

 

夏目の家を見て出雲の発した第一声はそれだった。

1人はおろか5人で住むにも広いであろう3階建ての一軒家など、前世でも数えるほどしか見ていなかった出雲はそのでかさに驚いていた。

 

「そ、そんなに凄いかなぁ?」

 

「いやいや、これは凄いですって。セキュリティの給料ってばかでかいんだなぁ。」

 

「い、いやこれは父親が無視やり押し付けたというかなんというか……」

 

「ん?どうしたんですか?」

 

「い、いや。それより早く入ろうか。」

 

夏目は扉のドアの紋章にデュエルディスクをかざす。

 

ピッ! ガチャ

 

電子音と共にドアが開く。

 

「さ、入って。」

 

「は、はい。お邪魔します。」

 

「違うでしょ出雲君。」

 

夏目が拗ねたように言う。

頬を膨らませたその顔に、自分の中の目覚めてはいけない性癖が目覚めそうになるのを必死に抑え、出雲はこう返した。

 

「あっ、えっと……ただいま?」

 

「はい、おかえり出雲君。」

 

笑顔でそう言われた出雲は、やはり性癖が目覚めそうになった。

 

「ええっと、このバッグは一旦リビングに置いておくね。」

 

そう言い、車に積んであるカードが詰まった3つのスポーツバックをリビングに運ぶ夏目。

 

「(………あれ?増えてね?)」

 

確か1つだけだった筈なのに……と、首をかしげる出雲。

きっとスポーツバック1つだけじゃそんなにカード入らないんじゃね?と危惧したどっかの作者が事実を書き換えたのだろうがそんな事は今どうでもいい。

 

「ええっと、今は確か8時くらいだったか。何だかんだでもう夜か……。」

 

「もしかして……お腹空いたかな?」

 

「あっ、いえそんな事は」

グ~

 

「………」

 

「ハハハ!正直なお腹だね。しょうがないなぁ、出雲君は。」

 

「ちょ、笑わないでくださいよ!」

 

「ごめんごめん、直ぐに何か作るからね。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「ふふ、どういたしまして。」

 

そう言い、キッチンに向かう夏目。

手持ちぶさたになった出雲はとりあえずデッキの調整を行う事にする。

 

「(この世界じゃデュエルが生命線だからな。ちゃんと組んでおかないと。)」

 

それに…と、出雲は立野と呼ばれていたデュエリストを思い出す。

 

「あいつはまだカード化されてない筈の 【亞空間バトル! 】を使っていた。という事はこの世界にはあのレベルのぶっ壊れアニオリカードが幾つもあるってことだ。それらも早急に対策していかないと……」

 

そうブツブツ言いながら、出雲は近くに置いてあったスポーツバックを開ける。

 

「これは……すげぇ品揃えじゃねぇか!」

 

思わず叫んでしまう程、そのスポーツバックの中のカードは品揃えが良かった。

初期のカードから自分が死んでしまったあの時時点の最新パックのカードまで全てが揃えられており、またご丁寧にもカテゴリ順に並んでおり、何処にどんなカードがあるのかもいち早く見つけられた。

前世では手がつけられなかったあんなカードやこんなカードまで、全てが3枚ずつ入っており、もう出雲的にはこれだけで今日起きた悪い出来事全てをチャラに出来るくらいの喜びに満ち溢れていた。

 

「こんだけカードがあれば、もう3つくらいデッキ組めるな……。って、そんなの作るよりもデッキ調整しねぇと!」

 

出雲はケースから自分の武神デッキを取り出す。

 

「(さてと……どんなカードと組み合わせようかね。)」

 

出雲は密かに考えを巡らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~1時間後~

 

「「ご馳走さまでした!」」

 

出雲と夏目は手を合わせそう言った所で皿を流しに持っていく。

 

デッキ調整をしていた出雲であったが、調整が終わる前に夕食が完成する方が早かった為、先に夕食を食べていた。

ちなみに夕食はハンバーグだった。

 

「ありがとうね、出雲君。」

 

「いえいえ、これくらい自分でやりますよ。」

 

そんな会話をした後、出雲は夏目にこう問いかける。

 

「ねぇ…出雲君。」

 

と、夏目が遠慮がちに出雲を訪ねる。

 

「ん?何ですか?。」

 

と、出雲は夏目の方を向く。

夏目は胸元に入れていたデッキケースから自分のデッキを抜き取った。

 

「少し僕のデッキを見てもらえないかな。」

 

「それくらいなら別に良いですけど……。」

 

「ありがとうね。出雲君。」

 

いえいえと言い、出雲は夏目から渡されたデッキに目を通す。

その内容は

 

「(うっわ……ナァニコレェ)」

 

思わずそう思ってしまう程、そのデッキは酷かった。

まずモンスターが少ない。デッキの4分の1程度しか入っておらず、効果モンスターの割合はさらに少なかった。また辛うじてある効果モンスターも切り込み隊長とコマンドナイト、スピリットドラゴンくらいしかおらず、後はバニラのカードしか無かった。

また、魔法や罠もそれ単体では意味をなさないカードが幾つもあり、使えるのは二重召喚やメテオ・ストライク、そしてドレインシールド等全10枚程だった。

 

「あ、あのぉ夏目さん。このデッキは……」

 

思わず訪ねてしまう出雲。

それに対して夏目は恥ずかしそうに頬を染めた。

 

「あはははは、笑っちゃうだろ。実は僕今デッキがそれしか無くて…、元々持ってたデッキがある事情で使えなくなったから仕方なく使ってるんだけど……見ての通りろくなカードが無くて。

それでお願いなんだけど、余ってるカードがあれば何枚か貸してくれないかな。流石にこのデッキだと録に戦えないから…。あ、本当に余ってるカードで良いんだ!この通り!」

 

と、頭を下げてお願いされる。

出雲はそれくらいの事か…と言い、夏目の顔を上げさせる。

 

「それなら借りるなんて言わず、自分が夏目さんのデッキを作りますよ。こう見えてもデッキ作りには自身があるんです。」

 

出雲は自分に任せろと言わんばかりのどや顔で胸を叩く。

 

「え!で、でも、カードを貸してくれるだけでもありがたいのに、デッキを作ってくれるだなんて…」

 

夏目は手をブンブンと振り、恐縮する。

 

「夏目さん、俺は貴方がいないと今頃牢屋の中で暮らしてたかもしれないんです。いわば……命の恩人的な?

もっと威張っててもいいんですよ?」

 

出雲は夏目にそう説く。

 

「で、でも…」

 

「いいですから、自分に任せてください!」

 

気に入らない所があったら変えてもいいですからと、つけ足して出雲は夏目を説得する。

 

「えっと、じゃあ……お願いします。」

 

カクカクとした動作で腰を曲げる夏目。

 

「ははは、了解しました。夏目さんはゆっくり風呂にでも入っててください。」

 

出雲はカードの入ったバックを持ち、リビングにある小さなテーブルの近くに置き、デッキをいじり始めた。

 

「出雲君……」

 

夏目は悪いなと思いながらもさっぱりしたい気持ちがあった為、風呂に入りにいった。

 

出雲がデッキをいじくり回して30分くらいたっただろうか。

 

「ふう、取りあえずは原型は完成した。後はこのデッキを夏目さんが気に入ってくれるかどうか……か。」

 

出雲は風呂場に居ると思われる夏目の所に歩いていった。

 

「夏目さ〜ん、取りあえずデッキの原型的な物が完成しましたぁ!見てもらってもいいですかぁ!」

 

この世界のカードはある程度の防水加工がしてあるらしく、長時間水につかったら駄目だが、少しの水滴くらいなら弾いてしまうのだ。その事にデッキをいじくっている途中に気づいた出雲は夏目さんに風呂にいながら見てもらおうと思ったのだ。

 

「!い、出雲君!?ま、待ってて、今服を…きゃあ!」

 

「!な、夏目さん!どうしたんですか!」

 

夏目の悲鳴を聞いた出雲は夏目の身に何かあったのかと心配になり風呂場に直行する。

幸い風呂場の鍵は開いており、出雲でも中に入れた。

 

「夏目さん!」

 

風呂場の中を覗いた出雲が見たものは…

 

「い、出雲君……」

 

風呂場の床に尻餅をついている、豊かな双丘をその胸元につけてる、女性の姿だった。

 

「な、夏目……………さん?」

 

次の瞬間、出雲は赤い霧を吹いた。

 




ラッキースケベ、許すまじ。


感想、批評受け付けてます。

修正:タイトルを修正しました。


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第7話 伝説の後継者VS炎の獣王

こんにちは、コズモ君vです。
今回は久しぶりのデュエル回という事で少々文字数がいつもより多くなってしまいましたw
そしてこの回、いつもより少しテンポが早いので少し不自然に思う所もあるかもしれませんがご了承下さい。
余りにも致命的な部分等があった場合、感想欄で指摘して下さると幸いです。
でわでわ


「それじゃあ昼食代とお小遣いここに置いておくね。」

 

「あ、はい。ありがとうございます。」

 

「う、ううん。良いの良いの。それじゃあ行ってきます」

 

「い、行ってらっしゃい。」

 

その声を聞き終えた夏目は扉を開けて外に出る。

 

「…………はぁ。」

 

出雲は何処か重い雰囲気から解放されたのかのように床に身を投げ出した。

 

「気まずいなぁ…」

 

昨日のある出来事……実は女性だった夏目とその裸体を見てしまった出雲。

あの後あまりの出来事と刺激に鼻血を吹き、気絶してしまった出雲。

風呂から出た夏目に介抱され、何とか10分後に目を覚ました。

すぐ側にいた夏目の胸は、先ほどと違い豊かな乳は無く、平らな胸だった。

恐らくさらしか何かを巻いて圧迫しているのだろう。

出雲はそう察した。

夏目は先ほどの出来事を無かったことにしようと気さくな感じで話しかけようとしたが明らかにぎこちない喋り方でかみかみだった。

 

出雲はその場から逃げるように風呂場に向かい、ひとっ風呂浴びた後にはもう夏目は寝ていた。

予め案内されていた自分の部屋に行くと、明日は仕事だから家には居ないという旨の手紙が置いてあった。

どうやら今日までの3日間は休みの日だったらしい。

出雲は休みの日にあんな事件に巻き込まれてたのか……と内心同情した。

 

そして今日夏目が出かける直前に起きていた出雲は見送りをしていたのだ。

 

「(夏目さん……俺の作ったデッキ、持っていってくれたみたいだけど、まだ試作品の骨組みデッキだからなぁ…心配だなぁ。)」

 

そんな心配をしていた。

そのふわんを和らげる為に出雲は外に出かけに行くことにした。

時刻は午前8時、出かけにはまだ早い。

出雲は夏目が作り置きしてくれた朝ごはんを食べた後、

デッキでもいじろうとリビングに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

「賑やかな商店街だなぁ。」

 

出雲は異世界の商店街を見てそう思った。

異世界の、それも遊戯王の世界の商店街だという事で遊戯王カードの専門店もいくつかあるが、それ以外は概ね出雲の居た世界の商店街とあまり変わらないようだ。

出雲は誘惑に負けて買った焼き鳥を食べながら商店街を歩いていく。

少し奥に進んでいくと、何やら人だかりが見えてきた。

よく耳を澄ませてみると沢山の人々の声に混じってこんな声が聞こえた。

 

「どいつもこいつも弱いなぁ?こんなもんじゃわいのデッキは満足せぇへんでぇ!」

 

「………何言ってんだこいつ?」

 

疑問に思った出雲は近くを歩いていた男の人に訳を聞く。

 

「あの、この人だかりってなんですか?」

 

「ん?あんたこの商店街初めてか。あいつはこの商店街じゃちょっとした有名人でな。名前は釣海 南人(つがい なんと)、この商店街じゃ負けなしのデュエリストさ。この商店街はあいつに挑みに来る奴等が居るからこんなに繁盛してんだよ。まっ、全員負けてんだけどな。」

 

「なるほど……」

 

出雲は人だかりの奥に向かう。

 

「ん?なんや坊主、迷子か?」

 

出雲に気がついた釣海は出雲に声をかける。

 

「いえ、僕は貴方にデュエルを申し込みに来たんです。

相手……してくれますよね?」

 

と、挑発気味に言う出雲。

 

「ははは!、威勢のいい子供がいるもんやなぁ、いいで、その威勢に免じて相手してやる。おら!野次馬ども、どけどけぇ!」

 

人だかりをどけてデュエルが出来るスペースを開ける釣海。

 

「ルールはスタンダードでええな。」

 

「?す、スタンダード?」

 

聞きなれない言葉に首をかしげる出雲。

 

「マスタールール3のことや。相手から何の申しでもなけりゃ基本的にこのマスタールール3で起動させるんや。1つお利口になったな坊主?」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

ひきつりそうになった頬を押し込め、デュエルディスクを操作する出雲。

 

マスタールール3 スタンバーイ

 

デュエルディスクからそんな電子音声が聞こえた後、ディスクを構える両者。

 

「「デュエル!」」

 

 

出雲

LP4000

 

釣海

LP4000

 

 

「先行は譲るで、坊主。」

 

「坊主じゃなくて出雲だ!俺のターン!」

 

出雲は5枚の手札を見る。

 

「(まずは様子見だ……)」

「俺は手札から永続魔法、炎舞ー「天キ」を発動!」

 

炎舞ー「天キ」

永続魔法

「炎舞-「天キ」」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):このカードの発動時の効果処理として、

デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加える事ができる。

(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、

自分フィールドの獣戦士族モンスターの攻撃力は100アップする。

 

 

「このカードの効果により、デッキから武神ーヤマトを手札に加える。そしてそのまま召喚!」

 

地面からヤマトをかたどった石像が現れ、そこから光が溢れたかと思うとそこに甲冑を纏った戦士が現れる。

 

「さらにカードを二枚伏せて、エンドフェイズにヤマトの効果を発動!デッキから武神器ーハバキリを手札に加え、武神器ーヘツカを墓地に落とす。」

 

出雲

LP4000

手札二枚

 

フィールド……武神ーヤマト(モンスター)、炎舞ー「天キ」(永魔法)

 

伏せカード……二枚

 

 

「わいのターンやな、ドロー!」

 

釣海

LP4000

手札…6枚

 

 

「しょっぱなから飛ばすでぇ!手札から、フィールド魔法を発動や!伝説の都 アトランティス!」

 

突如、地鳴りと共に周りの景色が変わっていく。

活気の溢れる商店街から海中に佇む大きな遺跡へと

 

「わわ!ま、周りが海に!お、溺れる」

 

周りの景色が突然海中に変わった為、焦る出雲。

しかし、直ぐにソリッドビジョンだと言うことに気づく。

 

「……うぇっほん!、どうぞ続けて。」

 

「な、なんやおぬし……まあええわ。このフィールド魔法わな、わいの仲間が力を発揮するのに最適なフィールドなんや。今それを証明するでぇ。」

 

「(伝説の都 アトランティス。その厄介さは俺も理解してるつもりだ。水属性のモンスターの攻撃力を上げ、レベルも1つ落とすというその効果はシンプルだが故に強い……けど、)」

 

出雲は自分の手札の武神器ーハバキリを見る。

 

「(俺の手札にはハバキリがある。こいつは自分の場の武神と名のついた獣戦士族モンスターが戦闘を行う時、手札から捨てる事によりその武神獣戦士族モンスターの攻撃力を倍にする。アトランティスの影響下で手札から素で召喚出来る最高攻撃力は確かギガ・ガガギゴの2450、攻撃力1900にアップしてるヤマトで充分対処出来るレベルだ。

返り討ちにしてやるぜ、)」

 

出雲は心の中でそんなフラグを立てていた。

 

「わいは手札から、伝説のフィッシャーマンを召喚!」

 

「で、伝説のフィッシャーマン!?」

 

思いもよらないモンスターの登場に驚き、焦る出雲。

そうこう思っている内に伝説のフィッシャーマンのカードがデュエルディスクに置かれる。

すると、上空…いや、上海からでかい魚にまたがっているモリを持った男が現れた。

その男は上海でグルグル回った後、釣海の前に止まる。

 

 

伝説のフィッシャーマン

効果モンスター

星5/水属性/戦士族/攻1850/守1600

(1):このカードがモンスターゾーンに存在し、

フィールドに「海」が存在する限り、

このカードは魔法カードの効果を受けない。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在し、

フィールドに「海」が存在する限り、

このカードは攻撃対象にされない。

(この効果が適用されたモンスターしか自分フィールドに存在しない状態での

相手の攻撃は自分への直接攻撃になる。)

 

 

「(ま、まさかそのモンスターを出すとは……いや、この世界だと案外強力なのか?)」

 

出雲はこのモンスターを出した釣海の思惑が分からず混乱している。

 

「(攻撃力で劣っているフィッシャーマンを出すなんて……ここからどうするつもりだ?)」

 

「お前、わいがこれで終わりやと思ってないか?」

 

怪訝な顔を見せる出雲にそう言う釣海

 

「続きがあるなら是非見せてもらいたいもんだね。」

 

と、少し挑発気味に言う出雲。

 

「こんのませがきが……わいはフィッシャーマンをリリース!」

 

「フィッシャーマンをリリースだと!」

 

突如として現れた渦に呑み込まれたフィッシャーマンを見ながら、出雲は今度こそ驚愕した。フィッシャーマンをリリースして出されるカードなど出雲は知らない……いや、1つだけ心当たりがあった。

 

「ま、まさか…」

 

「ふっ、こい!伝説のフィッシャーマン三世!」

 

渦を突き破って出てきたそのモンスターは、伝説のフィッシャーマンによく似ていたが、手に持っていたのはモリではなく水中銃で、乗っている魚にも額に宝石のような物が埋め込まれていた。

 

 

伝説のフィッシャーマン三世

特殊召喚・効果モンスター

星7/水属性/戦士族/攻2500/守2000

このカードは通常召喚できない。

自分フィールドの「伝説のフィッシャーマン」1体をリリースした場合のみ特殊召喚できる。

(1):このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。

相手フィールドのモンスターを全て除外する。

このターンこのカードは攻撃できない。

(2):このカードは戦闘・効果では破壊されず、

魔法・罠カードの効果を受けない。

(3):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

除外されている相手のカードを全て墓地に戻し、

このターン、相手が受ける戦闘・効果ダメージは1度だけ倍になる。

 

 

「やっぱり、三世だったか。」

 

 

伝説のフィッシャーマン三世ATK2500→2700

 

 

出雲は目の前をアクロバティックに動きまわるフィッシャーマン三世を見ながらそう言う。

前世では出されると厄介だな程度の認識で使ってる人も少なかったのであまり記憶になかったのだ。

 

「わいは伝説のフィッシャーマン三世の召喚時効果を発動や!」

 

直後、伝説のフィッシャーマン三世がその手に持つ水中銃を上空に向ける。

 

「このカードが特殊召喚に成功した時、相手のモンスター全てを除外するんや!」

 

「(くそ!対象にとってないからヘツカの効果を使えねぇ!)」

 

 

武神器ーヘツカ

効果モンスター

星4/光属性/獣族/攻1700/守1200

自分フィールド上の「武神」と名のついたモンスターが

カードの効果の対象になった時、

墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。

その効果を無効にする。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

「やれ!伝説のフィッシャーマン三世!」

 

その声がトリガーになったのか、伝説のフィッシャーマン三世は水中銃の引き金を引く。

水中銃からモリの形をしたエネルギーが発射され、ヤマトに降り注ぐ。

 

『グワァ!』

 

「ヤマト!」

 

武神ーヤマトは苦しそうにうめきながらその体を光の粒に変えていく。

 

「この効果を使った後、このカードは攻撃できへん。

カードを二枚伏せてターン「ちょっと待った!」な、なんや。」

 

釣海のターンエンド宣言に待ったをかける出雲。

 

「罠カード発動!針虫の巣窟。」

 

針虫の巣窟、デッキの上からカードを五枚墓地に送る罠カードだ。出雲はデッキの上に手を置き祈る。

 

「(伝説のフィッシャーマン三世の耐性は強力だ。戦闘でも効果でも、その上魔法や罠まで効かないだなんて……でもつけいる隙はある。その為にはこの墓地送りにあるカード達が一枚でもいけば……)」

「デッキの上からカードを五枚墓地に送る。」

 

出雲はデッキから五枚カードを引く。

 

「(!来た)」

「俺はこのカード達を墓地に落とす。」

 

墓地に送られたカード……炎舞ー「開陽」、武神ーアラスダ、暗炎星ーユウシ、武神器ーオキツ、オネスト

 

「なんやよう分からんけど……わいはこれでターンエンドや。」

 

 

釣海

LP4000

手札一枚

 

 

フィールド……伝説のフィッシャーマン三世(モンスター)、伝説の都アトランティス(フィ魔法)

 

伏せカード……二枚

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

出雲

LP4000

手札三枚

 

 

フィールド……炎舞ー「天キ」

 

伏せカード……二枚

 

 

「俺は手札から微炎星ーリュウシシンを召喚!」

 

出雲がそう言い、カードを召喚する。

すると炎の渦が海中にも関わらず起こる。

そしてその中から龍のような炎のオーラを幾つも身に纏った戦士が現れる。

 

 

微炎星ーリュウシシン

効果モンスター

星4/炎属性/獣戦士族/攻1800/守 400

1ターンに1度、自分が「炎舞」と名のついた魔法・罠カードを発動した場合、

デッキから「炎舞」と名のついた罠カード1枚を選んで自分フィールド上にセットできる。

また、1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する

「炎舞」と名のついた魔法・罠カード2枚を墓地へ送って発動できる。

自分の墓地から「微炎星-リュウシシン」以外の

「炎星」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

 

 

『ハァッ!』

 

力強い声を上げたその戦士は得物の槍を構える。

 

「いくぞ!俺は手札から魔法カード、炎舞ー「天枢」を発動、そのカード効果により、俺の場の獣戦士族モンスターの攻撃力が100ポイント、「天キ」と合わせて200ポイントアップする!」

 

 

微炎星ーリュウシシン ATK1800→2000

 

 

「せやけど、ちょっとパワーアップしたくらいで伝説のフィッシャーマンは倒されないで!」

 

フィッシャーマン三世が水中銃を突きつけてリュウシシンを威嚇する。

 

「そうあせんなって、リュウシシンの効果を発動!炎舞魔法、罠カードが発動された時、デッキから「炎舞」と名のついた罠カードを一枚セット出来る。

俺は炎舞ー「天権」をセットする。

さらにリュウシシンの効果、自分の場の「炎舞」と名のついた魔法、罠カードを二枚墓地に送り、自分の墓地から仲間を呼び起こす!俺は「天キ」とさっきセットした「天権」を墓地に、そして暗炎星ーユウシを特殊召喚!」

 

リュウシシンが独特な動きの舞を踊ると二枚のカードを生け贄として墓地から暗炎星ーユウシが復活する。

 

『デェヤッ!』

 

 

暗炎星ーユウシ

効果モンスター

星4/炎属性/獣戦士族/攻1600/守1200

1ターンに1度、このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、

デッキから「炎舞」と名のついた魔法カード1枚を選んで自分フィールド上にセットできる。

また、1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する

「炎舞」と名のついた魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。

フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。

 

 

「お、同じレベルのモンスターが一気に2体……せやけどそのモンスター達じゃフィッシャーマン三世は……ハッ!同じレベルのモンスターが2体っちゅうことは!」

 

ニヤッと出雲が笑う。

 

「俺はレベル4の獣戦士族モンスター2体で……オーバーレイ!」

 

この時、今まで静観していたギャラリーが一気にどよめく。

2体の炎星モンスター達はお互いの得物……剣と槍を空中で重ねる。

すると2体のモンスターが炎の光の玉となり上海の渦に吸い込まれる。

 

「2体の獣戦士族モンスターで、オーバーレイネットワークを構築……エクシーズ召喚!」

 

上海の渦が爆発する。

 

「現れろ!ランク4!数多の戦士を従えし炎の王よ、いま君臨せよ!魁炎星王ーソウコ!」

 

新たに現れたそのモンスターは、どこか重厚感漂う黄金の鎧を着用しており、その手には扇子が握られており、止めどなく強烈な炎のオーラを発していた。

釣海は最初、そのモンスターがソリッドビジョンにより構成されたモンスターだと言うことが信じられなかった。それほどまでにこのモンスターの発するオーラはどこか異質な物だった。

 

『フンッ!』

 

 

魁炎星王ーソウコ ATK2200→2300

 

 

「なんちゅうオーラや……でも、攻撃力はわいのフィッシャーマン三世の方が…」

 

「まあ待って下さいよ。俺はソウコの召喚時効果を発動する。デッキから炎舞魔法、罠カードをセットする。

俺は「天キ」をセットする。そして炎舞ー「天キ」をそのまま発動!デッキから武神ーミカヅチを手札に加える。そして俺は炎舞「天枢」の効果を適用する。

俺はこのターン、獣戦士族モンスターに限りもう一度モンスターを召喚出来る。こい!武神ーミカヅチ!」

 

 

炎舞ー「天枢」

永続魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、

自分のメインフェイズ時に1度だけ、

自分は通常召喚に加えて獣戦士族モンスター1体を召喚できる。

また、このカードがフィールド上に存在する限り、

自分フィールド上の獣戦士族モンスターの攻撃力は100ポイントアップする

 

 

突如、アトランティスの都の建物が一部崩れた。

そしてその中から一体の石像が現れ、青色の光を放つ。

そして石像がひび割れ、中から武神ーヤマトと似た、しかしヤマトに比べると幾分かスマートで頭部の形状と色彩の違う戦士が現れる。

 

『デヤッ!』

 

 

武神ーミカヅチ ATK1900→2100

 

 

「もう一工夫だ、俺は罠カードを発動、リビングデッドの呼び声。墓地のモンスター一体を攻撃表示で特殊召喚する!こい、武神器ーオキツ」

 

アトランティスの海底を突き破り出てきたのは犬によく似た石像だった。その石像は直ぐにひび割れ、中から一体のモンスターが現れる。

 

 

武神器ーオキツ ATK200

 

 

「ま、また同じレベルのモンスターが2体やて…まさか!」

 

「ご名答、俺は2体の武神モンスターでオーバーレイ!」

 

ミカヅチとオキツが紫色の渦に光の玉となり吸い込まれる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築……エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!伝説の武具を纏い、降臨せよ!武神帝ースサノオ!」

 

爆発した渦から現れたのは幾つもの伝説の武具を身に纏ったヤマト…スサノオだった。

 

『ハアァァッ!』

 

武神帝ースサノオ ATK2400→2600

 

 

「お、王と帝が揃いよった……」

 

釣海はその2体の発するとてつもない濃度のオーラに完全に押されていた。フィッシャーマン三世もどことなく体を後退させたような気がした。

 

「そして仕上げだ、俺はソウコの効果を発動、オーバーレイユニットを1つ取り除く事により、フィールド上の獣戦士族モンスター以外のモンスターの効果を次の相手ターン終了時まで無効にする!」

 

「な、なんやて!そんなん擬似的なスキルドレインやないか!」

 

魁炎星ーソウコ

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/炎属性/獣戦士族/攻2200/守1800

獣戦士族レベル4モンスター×2

このカードをエクシーズ召喚した時、

デッキから「炎舞」と名のついた魔法・罠カード1枚をセットできる。

また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、

獣戦士族以外のフィールド上の全ての効果モンスターの効果を

相手ターン終了時まで無効にする。

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、

自分フィールド上の表側表示の「炎舞」と名のついた

魔法・罠カード3枚を墓地へ送る事で、

同じ攻撃力を持つレベル4以下の獣戦士族モンスター2体を

デッキから守備表示で特殊召喚する。

 

 

 

そんな釣海の悲鳴を無視し、ソウコは手に持つ扇子をひと凪ぎする。すると、扇子を振ったその空間から幾つもの動物や伝説上の生き物の形を模したオーラが飛び出して、伝説のフィッシャーマン三世の体にまとわりつく。

 

『ウグアァァッ!』

 

「フィッシャーマン!」

 

「まだだ!、スサノオの効果!オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから武神モンスターを手札に加えるか墓地に落とす。俺は落とす方を選択し、武神器ーハチを落とす。

 

 

武神帝ースサノオ

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/獣戦士族/攻2400/守1600

「武神」と名のついたレベル4モンスター×2

このカードは相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃できる。

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

デッキから「武神」と名のついたモンスター1体を選び、手札に加えるか墓地へ送る。

「武神帝-スサノヲ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

 

武神器ーハチ

効果モンスター

星4/光属性/獣族/攻1700/守 500

自分のメインフェイズ時、自分フィールド上に

「武神」と名のついた獣戦士族モンスターが存在する場合、

墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。

相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

「武神器-ハチ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「俺はさらに武神器ーハチの効果を発動!自分の場に「武神」と名のつく獣戦士族モンスターが存在する時、このカードをゲームから除外し、相手の場の魔法、罠カードを一枚破壊出来る。俺は自分から見て左のカードを破壊する!」

 

スサノオの体が青色のオーラに包まれた。スサノオは片手をその伏せカードに向け、体の青色のオーラをその片手に全て集中させ、光弾のように放つ。

その光弾は伏せカードを容易く撃ち抜く。

 

破壊されたカード……攻撃の無力化

 

「っし!」

 

思わずガッツポーズをとる出雲。

 

「(ソウコの効果で効果は失われ、攻撃の無力化も破壊した……今がチャンスだ!)」

「バトル、俺は武神帝ースサノオで伝説のフィッシャーマン三世に攻撃!そしてダメージ計算時に手札の武神器ーハバキリの効果を発動!こいつを捨てる事により、場の武神獣戦士族モンスターの攻撃力を元々の倍にする!

やれ、武神連斬!」

 

武神帝ースサノオ ATK2600→4800

 

『ハァッ!ディヤァァァァ!』

 

スサノオが雄叫びと共に空に飛び上がる。その背中の翼のような物が通常の倍近く大きくなり、いつもの倍の推進力を得たスサノオは伝説のフィッシャーマン三世の水中銃による攻撃を巧みな動きでかわし、すれ違い様にその体を乗っている魚ごと真っ二つにする。

 

『ガアァァァッッ!!』

 

苦悶の声を上げた後、フィッシャーマン三世は爆発した。

 

 

釣海

LP4000→1900

 

 

「くっ、効くなあ今の攻撃。」

 

「これで最後です、行けっ!魁炎星ーソウコ!」

 

「魁炎星ーソウコの攻撃力は2枚の永続魔法の効果で2400、わいのLPは1900……」

 

「いっけぇぇ!炎虎爆炎斬!!」

 

ソウコの扇子が炎のオーラを纏い、剣のような形状になり、釣海を襲う。

 

轟音が轟き、辺りを煙が覆う

 

「……なっ!」

 

煙が晴れ、出雲が見たものは

 

 

釣海

LP1900

 

 

ライフの減っていない釣海と

 

 

『グルルルル、』

グリズリーマザー ATK1400→1600

 

 

グリズリーマザーの姿だった。

 




釣海の顔とかは遊戯王DMの梶木漁太にコナンの服部を混ぜたみたいな感じです。


攻撃力とかLPの計算とかが間違っていたので修正しました。



次回予告(出雲)
俺の必殺の連続攻撃を凌ぐ釣海。グリズリーマザー一体で何が出来るのかとたかをくくっていた俺に、釣海は新たなエースモンスターを召喚する。
絶対絶命のピンチ、だけど俺はこんな所で諦めない!
このドローに全てがかかっている、来てくれ…逆転のカード!
次回 決着、氷槍の破壊龍VS蒼炎の帝


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第8話 決着、氷槍の破壊龍VS蒼炎の帝

こんにちはー!コズモ君vです。
さて………投稿の期間空きすぎましたね。
まあ投稿の遅れた訳書くより本編見て欲しいんであんま何も言いませんよハイ。
後今回の話、結構急ぎ目&時間がかなり空いてる時に書いたんで前の時とキャラが若干ぶれてる可能性&おかしな文があるかもです。
そこら辺は感想の所に書いてくれると嬉しいです。
でわでわ


「……なんでグリズリーマザーがあんたの場にいるんだ。」

 

 

出雲

LP4000

手札…0

 

フィールド……魁炎星王ーソウコ(モンスター) ATK2400

武神帝ースサノオ(モンスター) ATK2600

炎舞ー「天キ」(永魔)

炎舞ー「天枢」(永魔)

伏せカード……一枚

 

 

釣海

LP1900

手札…無し

 

フィールド……伝説の都アトランティス(フィ魔)

グリズリーマザー(モンスター)ATK1400→1600

伏せカード……一枚

 

 

「今の攻撃はむっちゃ危なかったで。いやまじの方で。だが、わいの方が一歩上手やったようや。」

 

ここで出雲は釣海の手札と場のカードが一枚ずつ無くなっている事に気づく。

 

「まさか、罠カードを発動したのか!」

 

釣海はニヤリと笑う。

 

「そうや、わいはさっきダイレクトアタックを受ける前にこのカードを発動していたんや。罠カード、ヒーロー見参!」

 

 

ヒーロー見参

通常罠

(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。

自分の手札1枚を相手がランダムに選ぶ。

それがモンスターだった場合、自分フィールドに特殊召喚し、

違った場合は墓地へ送る。

 

 

「ヒーロー見参……手札をランダムに一つ選び、そのカードがモンスターなら手札から特殊召喚できる罠カード。」

 

だが、それならば何故釣海は出雲の選択を待たず、モンスターを出せたのか

 

「(いや、あいつの手札は一枚だった。恐らくあいつの残っていた手札はグリズリーマザー一枚のみ……だからあいつはピンポイントでグリズリーマザーを出せたのか。そして破壊されたグリズリーマザーの効果で同じグリズリーマザーを出した……と。)」

「(でも!)」

「武神帝ースサノオは相手モンスター全てに一回ずつ攻撃が出来る!グリズリーマザーに攻撃!武神ニ連斬!」

 

『フッ!』

 

スサノオは上空に高くジャンプし、両手に持ったその剣をクロスさせ、グリズリーマザーに向けてX字に切り裂く。

 

「っっ!」

 

 

釣海

LP1900→900

 

 

「だがわいはグリズリーマザーの効果を発動!デッキから氷結界の番人ブリズドを特殊召喚や!」

 

 

氷結界の番人ブリズド

効果モンスター

星1/水属性/水族/攻 300/守 500

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、

デッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「(ここでブリズド?まさか罠カードはダメージ無効系か……だとしたら早めに使わせるに限る!)」

「俺はスサノオでブリズドに攻撃!武神三連斬!」

 

『ディヤァッッ!』

 

スサノオはその場で高速回転しながらブリズドに突っ込み、すれ違い様にその体を無数に刻む。

 

『キィアァァ!!』

 

と、断末魔の声を上げ、ブリズドは無数の氷片になる。

 

「わいはダメージを受ける前に罠カードを発動や!ガードブロック!」

 

 

ガードブロック

通常罠

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、

自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「やっぱり…」

 

「このカードの効果により、わいはカードを一枚ドロー、ブリズドの効果と合わせて二枚ドローや!」

 

一気に手札を二枚も補充した釣海。

出雲はこれ以上やる事がない……というか出来ないので釣海にターンを回す。

 

 

出雲

LP4000

手札…0

 

フィールド……魁炎星王ーソウコ(モンスター) ATK2400

武神帝ースサノオ(モンスター) ATK2600

炎舞ー「天キ」(永魔)

炎舞ー「天枢」(永魔)

伏せカード……一枚

 

 

「わいのターン……ドローや!」

 

 

釣海

LP900

手札…3枚

 

フィールド……無し

伏せカード……無し

 

 

「いくで……わいは手札から魔法発動や!エクシーズ・トレジャー!」

 

 

エクシーズ・トレジャー(アニオリ)

通常魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスターエクシーズの数だけ、

自分のデッキからカードをドローできる。

 

 

「エクシーズ・トレジャー…展開したのが裏目にでたか。」

 

「わいはこのカードの効果により、デッキからカードを二枚ドローや!」

 

 

釣海

手札2枚→4枚

 

 

「きたでぇぇ!わいは手札から魔法発動や!ダブルサイクロン!」

 

 

ダブルサイクロン

速攻魔法

(1):自分フィールドの魔法・罠カード1枚と、

相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

 

 

「こいつの効果は、わいとお前の場の魔法、罠カードを一枚ずつ破壊するっちゅう効果や。

こいつによりお前の場の伏せカード一枚とわいの場のアトランティスをそれぞれ破壊させるで!」

 

フィールドに発生した2色の竜巻がアトランティスの建物を壊していく。

余りの強風に目を閉じた出雲は、数瞬後に目を開ける。

すると、先ほどまであったアトランティスの遺跡や海の水などがきれいさっぱり無くなっていた。

そして出雲の伏せカードも……

 

破壊されたカード……伝説の都アトランティス、光子化(フォトナイズ)

 

「さらに!わいは深海のディーヴァを召喚や!」

 

 

深海のディーヴァ

チューナー(効果モンスター)

星2/水属性/海竜族/攻 200/守 400

(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。

デッキからレベル3以下の海竜族モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

釣海の場に美しい人魚のようなモンスターが召喚された。

 

「深海のディーヴァの効果を発動や!このカードの召喚に成功した時、デッキからレベル3以下の海竜族を特殊召喚するんや!こい、海皇の重装兵!」

 

深海のディーヴァがかん高い声で歌を歌うと、商店街の地面がまるで液体のように揺れ、その中から大きな盾を持ったモンスターが現れる。

 

 

海皇の重装兵

効果モンスター

星2/水属性/海竜族/攻 0/守1600

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

自分のメインフェイズ時に1度だけ、

自分は通常召喚に加えてレベル4以下の海竜族モンスター1体を召喚できる。

また、このカードが水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた時、

相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して破壊する。

 

 

「さらにわいは手札から、死者蘇生を発動や!その効果により、墓地から伝説のフィッシャーマンを特殊召喚や!」

 

こうして、釣海の場に一気に3体のモンスターが現れた。

 

「(一体何を……!待てよ、あの3体レベルの合計が……9!)」

 

「わいはレベル2の海皇の重装兵とレベル5、伝説のフィッシャーマンに、レベル2の深海のディーヴァをチューニングや!」

 

深海のディーヴァが二つの緑色の輪に変化し、その輪に2体のモンスターが入り込む。すると、そこから光が溢れだす。

 

「極限まで研磨されし絶対零度の氷龍よ!万物を凍てつかせるその吐息で、全てを停止させろ!シンクロ召喚や!こい、氷結界の龍 トリシューラ!」

 

光の中から現れしそのモンスターは3つの首を持ち、体からは絶対零度の冷気が溢れていた。

 

『Giaaaaaaa!!』

 

 

氷結界の龍 トリシューラ

シンクロ・効果モンスター

星9/水属性/ドラゴン族/攻2700/守2000

チューナー+チューナー以外のモンスター2体以上

(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。

相手の手札・フィールド・墓地のカードを

それぞれ1枚まで選んで除外できる。

 

 

「くっそ!ここでトリシューラだと!ふざけんのも大概にしろ!」

 

顔を思いっきりしかめてそう文句を言う出雲。

 

「まあ堪忍な。油断してたらこっちが負けそうやし。

ちゅう訳でトリシューラの効果を発動や!相手の場、墓地、手札を一枚ずつ除外やで!わいはスサノオと墓地の武神器ーオキツを除外や!

いけ、千年氷結(ミレニアムフリーズ)

 

トリシューラがその3つの首を持ち上げ、口を大きく開く。そして口から氷槍を放つ。

3つの氷槍の内、一つは出雲のデュエルディスクに着弾し、もう二つは武神帝ースサノオに迫る。

 

『ハァ!』

 

しかしスサノオは背中のエネルギー状の翼で空に舞い上がる。負けじと氷槍もそれを追尾する。

複雑な起動を描き、飛ぶスサノオの後ろにピッタリくっつく氷槍。

トリシューラは3つの首から次々と氷槍を生み出しては飛ばすが、スサノオはその全てを両手の剣で叩き落とすかギリギリで避ける。

気づくと無数の氷槍がスサノオを追いかけるように飛んでいた。

やがて氷槍は球状に再構築され、スサノオを閉じ込めようとする。

スサノオは唯一空いていた隙間から外に飛び出そうとする。

だが、それはトリシューラの作戦であり、隙間から飛び出したスサノオの一瞬の隙をつき、氷槍を放った。

放たれた氷槍はスサノオの体を貫き、侵食していった。

 

『グアァァァ!』

 

「スサノオ!」

 

スサノオはその体を無数の光に分解され、消滅した。

 

「さらにわいは手札から、装備魔法 ビッグバンシュートをトリシューラに装備や。これにより攻撃力400upと貫通能力をトリシューラに与えるで!」

 

 

ビッグバンシュート

装備魔法

装備モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。

装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、

その守備力を攻撃力が超えていれば、

その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

このカードがフィールド上から離れた時、装備モンスターをゲームから除外する。

 

 

氷結界の龍 トリシューラ ATK2700→3100

 

 

「また厄介なカードを……」

 

出雲は赤色のオーラを纏ったトリシューラを見ながらそう呟く

 

「バトルや!トリシューラでソウコに攻撃や!絶対凍結(アブソリュートフリーズ)

 

トリシューラの三つ首から放たれた極温の冷気がソウコの体を一瞬にして凍らせ、その後トリシューラの放った氷槍により粉々に砕け散った。

 

「くぅ!ソウコが……」

 

 

出雲

LP4000→3300

 

 

ソウコが破壊された事により、出雲の場は使い終わった永続魔法二枚と永続罠が一枚。おまけに手札も0に。

 

「これでわいはターンエンドや。どや、これがわいのエースや。つよいやろ!」

 

「確かに、あんたのトリシューラは無茶苦茶強い………だけどなぁ……インフェルニティの奴らのトリシューラの方がもっと恐ろしいんだよ!」

 

「(な、何のこっちゃ?)」

 

出雲はダンッ!と踏み込みながらデッキトップに手を置く

 

「俺の……ターン!ドロー!」

 

 

釣海

LP900

手札…0

 

フィールド……氷結界の龍 トリシューラ(モンスター) ATK3100(ビッグバンシュート装備)

ビッグバンシュート(装備魔法)

伏せカード……無し

 

 

出雲

LP3300

手札…0→1

 

フィールド……炎舞ー「天キ」(永続魔法)

炎舞ー「天枢」 (永続魔法)

リビングデッドの呼び声 (永続罠)

伏せカード……無し

 

 

「(よし!このカードならまだ希望がある!)」

 

出雲はドローした先程ドローしたカードを見ながらそう考える。

 

「俺は手札から魔法発動!マジックプランター!」

 

 

マジックプランター

通常魔法

(1):自分フィールドの表側表示の永続罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。

自分はデッキから2枚ドローする。

 

 

「このカードの効果により、俺はリビングデッドの呼び声を破壊してデッキからカードを二枚ドローする……ドローォ!」

 

勢いよくカードを引いた出雲。引いたカードを見た出雲は若干苦い顔をしながらも行動する。

 

「俺はモンスターをセット…カードを一枚伏せて、ターンエンド。」

 

 

出雲

LP3300

手札…0

 

フィールド……セットモンスター一体

炎舞ー「天キ」(永続魔法)

炎舞ー「天枢」 (永続魔法)

伏せカード……一枚

 

 

「わいのターン!」

 

 

釣海

LP900

手札……一枚

 

フィールド……氷結界の龍 トリシューラ(モンスター) ATK3100(ビッグバンシュート装備)

ビッグバンシュート(装備魔法)

伏せカード……無し

 

 

「わいは手札から魔法カード、アカシックレコードを発動や!」

 

 

アカシックレコード(アニオリ)

通常魔法

カードを2枚ドローする。

ドローしたカードを互いに確認し、そのデュエル中に使用したカードだった場合、

ドローしたカードを全て除外する。

 

 

「このカードの効果により、わいは手札からデッキからカードを2枚ドロー!そして、ドローしたカードの中にわいがこのデュエル中使用したカードがあれば墓地に送らなあかんが、あいにくわいのドローしたカードは2枚ともこのデュエルで使用しておらん。」

 

「(ディスクがエラーしてないから本当っぽいな。)」

 

ディスクを確認しながらそう思った出雲。

 

「わいは手札から魔法カード、サルベージを発動や。」

 

 

サルベージ

通常魔法

自分の墓地の攻撃力1500以下の水属性モンスター2体を選択して手札に加える。

 

 

「このカードの効果により、わいは2体のグリズリーマザーを手札に戻す。そしてわいは強欲なウツボを発動や!」

 

 

強欲なウツボ

通常魔法

手札の水属性モンスター2体をデッキに戻してシャッフルする。

その後、デッキからカードを3枚ドローする。

 

 

「手札からさっき戻したグリズリーマザー2体を戻し、わいはデッキから3枚のカードをドローや!」

 

 

釣海

手札0→3

 

 

「(きたで!)」

「わいは手札からガガギゴを召喚!」

 

 

ガガギゴ

通常モンスター

星4/水属性/爬虫類族/攻1850/守1000

かつて邪悪な心を持っていたが、

ある人物に会う事で正義の心に目覚めた悪魔の若者。

 

 

「(よし!これで相手のモンスターの守備力が1450以下やったらわいの勝ちや!)」

「バトル!トリシューラでセットモンスターに攻撃!絶対凍結!」

 

トリシューラの3つの首からそれぞれ冷気を発し、セットモンスターを凍らせようとする。

 

「罠カード発動!ダメージダイエット!」

 

 

ダメージダイエット

通常罠

このターン自分が受ける全てのダメージは半分になる。

また、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、

そのターン自分が受ける効果ダメージは半分になる。

 

 

「なっ……ダメージダイエットやと!」

 

「そして、俺のセットモンスターはこいつだ!」

 

セット状態から表になり、姿を表したモンスターは、まるでブリキのオモチャのような形をしたモンスターだった。

 

 

カードガンナー

効果モンスター

星3/地属性/機械族/攻 400/守 400

(1):1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って発動できる。

このカードの攻撃力はターン終了時まで、

この効果を発動するために墓地へ送ったカードの数×500アップする。

(2):自分フィールドのこのカードが破壊され墓地へ送られた場合に発動する。

自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

カードガンナーはトリシューラの冷気により完全に凍り、砕け散るがその破片は半分しか出雲に直撃しなかった。

 

「くっ!」

 

 

出雲

LP3300→1950

 

 

「ガガギゴで追撃や!」

 

 

出雲

LP1950→1025

 

 

「へへ……耐えきったぞ!」

 

と、出雲はライフを保つ。

 

「そして俺はカードガンナーの効果で、カードを1枚ドローする!」

 

 

出雲

手札0→1

 

 

出雲はドローしたカードを横目で見て

 

「(!きたっ!)」

 

と、笑みをこぼす。

 

「カードを1枚伏せて………ターンエンドや。」

 

 

釣海

LP900

手札……1枚

 

 

フィールド……氷結界の龍 トリシューラ(モンスター) ATK3100(ビッグバンシュート装備)

ビッグバンシュート(装備魔法)

伏せカード……1枚

 

 

このターンで仕留めるつもりだった釣海は苦々しい表情でターンエンドを宣言する。

 

「(だが!わいの場には攻撃力3100のトリシューラが居る!さらに伏せカードは聖なるバリア・ミラーフォース、さらに手札にはエフェクト・ヴェーラーがある……このデュエルもろたで!)」

 

「さあお前のターンや!はよドローせい!」

 

と、催促する釣海。それに対して出雲はわくわくした様子でデッキトップに手を置く。

 

「言われなくても……ドローしますよ!俺のターン、ドロー!!」

 

光る軌跡を残しながら、カードをドローする出雲。そしてドローしたカードを直ぐ様発動させる。

 

「俺は手札から魔法発動!武神降臨」

 

 

武神降臨

通常魔法

相手フィールド上にモンスターが存在し、

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、

自分の墓地の「武神」と名のついたモンスター1体と、

ゲームから除外されている自分の「武神」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスター2体を特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターをエクシーズ召喚の素材とする場合、

獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスターのエクシーズ召喚にしか使用できない。

 

 

「このカードの効果により、墓地と除外ゾーンからそれぞれ一体ずつ武神モンスターを選択し、場に特殊召喚する!」

 

「除外されてる武神モンスターやて?ま、まさか!」

 

「そう、俺はあんたのフィッシャーマン三世により除外された、武神ーヤマトと、墓地の武神ーアラスダを特殊召喚!」

 

大地と空からそれぞれ亀裂が入り、2体の武神がフィールドに舞い戻る。

 

 

 

武神ーアラスダ

効果モンスター

星4/光属性/獣戦士族/攻1600/守1900

自分のフィールド上・墓地の「武神」と名のついたモンスターがゲームから除外された場合、

このカードを手札から表側守備表示で特殊召喚できる。

また、このカードがフィールド上に表側表示で存在し、

「武神」と名のついたカードがドロー以外の方法で自分のデッキから手札に加わった場合、

そのターンのエンドフェイズ時に1度だけ発動できる。

デッキからカードを1枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる。

「武神-アラスダ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

 

2体の武神が、圧倒的威圧感を持ちてトリシューラを威嚇する。

 

『guaaaaaaaaaaaaa!!!』

 

しかしトリシューラはそんなものどこ吹く風と言わんばかりにけたましい咆哮をあげる。

 

「レベル4のモンスターが2体……ま、まさか!」

 

「今貴方の考えてる事で間違いありませんよ、釣海さん!俺は2体の獣戦士族レベル4モンスターでオーバーレイ!」

 

ヤマトとアラスダは互いの掌を重ね合わせ、光に包まれていく。

 

「2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築……エクシーズ召喚!」

 

この段階で、2体は完全に光と化し、1つになっていく。

それと同時に地面から合計4つの石像が光の中に加わり、渦になる。

 

「悪しき者の企みに気づきし者よ、今仮初めの姿を解放し、悪を焼きはらえ!武神帝ーカグツチ!」

 

 

 

武神帝ーカグツチ

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/獣戦士族/攻2500/守2000

獣戦士族レベル4モンスター×2

このカードがエクシーズ召喚に成功した時、

自分のデッキの上からカードを5枚墓地へ送る。

このカードの攻撃力は、この効果で墓地へ送った

「武神」と名のついたカードの数×100ポイントアップする。

また、自分フィールド上の「武神」と名のついた獣戦士族モンスターが

戦闘またはカードの効果によって破壊される場合、

その破壊されるモンスター1体の代わりに

このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる。

「武神帝-カグツチ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

 

光の渦から蒼炎が吹き荒れ、現れたのはスサノオと異なり右手に剣を持ち、左手に盾を持っている蒼炎を纏いし戦士だった。

スサノオとはまた違うプレッシャーを放つその戦士は、己の敵を確認するとその体から蒼炎を吹き荒れさせ、フィールドを制圧しようとする。

対するトリシューラも自身のテリトリーを制圧されないよう体から絶対零度の冷気を一気に解き放つ。

 

『ヌゥゥゥゥ……』

 

『gigugugugu.....』

 

両者共お互いただならぬ気配を感じとったのか、下手な行動にでず、威嚇しあう。

 

「(すげぇ……どっちもソリッドビジョンには見えねぇ位カッケぇぇ!)」

 

と、出雲はその光景をキラキラした目でみながら見ていた。

 

「………あっ、やべ!俺はカグツチのエクシーズ召喚時効果を発動、魂の懺悔(スピリットジャッジメント)!デッキトップからカードを5枚墓地に送り、その中に武神モンスターがいた時1体につき100ポイント攻撃力が上がる、」

 

「な、なんやて!」

「(でもまて……トリシューラの攻撃力は3100、あのモンスターがこの攻撃力を越えるには少なくとも4枚の武神カードが必要やでも流石に4枚も落ちないやろ。所詮運任せっちゅうこっちゃな。……どうにしろここでエフェクトヴェーラーは使わんとこ。)」

 

釣海がエフェクトヴェーラーを使わないと決めたとき、出雲はデッキトップ5枚を墓地へ送る。

 

 

墓地へ送られたカード……スキルサクセサー、武神器ーハバキリ、武神器ーオロチ、武神器ータルタ、武神器ーツムガリ

 

武神帝ーカグツチ ATK2500→3100(場に炎舞永続魔法が2枚あるため)

 

 

「(こ、この小僧、ほんまに4枚落としよった!でも)」

 

 

そう、釣海の伏せカードは聖なるバリア・ミラーフォースなのだ。釣海には武神カードの効果は分からないが例え相手が自分のガガギゴを攻撃しようとしてもミラーフォースを発動すれば良いだけなのだ。

 

「この勝負、どうやらわいの「俺は手札から、」ん?」

 

「武神器ーヤツカの効果を発動!メインフェイズ1にこのカードを手札から墓地に送るとこにより、自分の場の武神モンスター1体はこのターン2回攻撃が出来る!」

 

「(今さらそんなカード出してなんになるんや?!まさか……まだカグツチには隠された効果が?)」

 

「釣海さんの思う通り、カグツチの効果にはもう1つ、武神獣戦士族モンスターの破壊をオーバーレイユニットを身代わりに無効化する効果があります……つまりその伏せカードが聖なるバリア・ミラーフォースとかだったら簡単に突破できます……どうします?」

 

と、出雲が揺さぶりをかける。

 

「そ、そんな効果があったなんて……だが、わいは手札からエフェクトヴェーラーの効果を発ど「墓地から武神器ーヘツカの効果を発動!対象効果を無効にする!」……んなアホな!」

 

「バトル!カグツチでガガギゴ、そしてトリシューラに攻撃!」

 

カグツチの背中のX字の装飾物から蒼い炎が吹き荒れ、カグツチを空へと運ぶ。

 

「いっけぇぇぇぇ!!武神蒼炎斬!」

 

カグツチはその体から溢れる蒼炎によりガガギゴを手を触れる事なく焼く。ガガギゴは抵抗しようとのたうち回るがやがて力尽き、破壊。しかし攻撃直後の隙を狙ったのかトリシューラが氷の槍を幾つも作り発射する。

カグツチはそれらの氷槍を蒼炎の火球により全て落としてみせる。

トリシューラは並の攻撃では駄目だと感じたのか零度の冷気とミラーフォースを纏い突撃……カグツチは極温の蒼炎を剣に纏わせ、オーバーレイユニットを2つ取り込み、体を金色に包ませてから突撃……溢れでた水蒸気の中、現れたのは

 

『……フンッ!』

 

剣を払う動作をしたカグツチと、体を3つに斬られたトリシューラの姿だった。

 

 

釣海

LP900→0

 

 

「……ったく、子供の癖になんちゅう強さや。完敗や完敗。」

 

四肢を地面に投げ出し、寝転がりながらそう言う釣海

 

「いえ………俺も貴重な体験が出来て良かったと思ってます。」

 

と、手を差しのべる出雲。

 

「………アホ、その身長でわいを引っ張れるわけないやろ。」

 

と、時分で立ち、差しのべたその手に握手する釣海。

 

「「「「……………う、うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」

 

二人が握手した途端、沸き立つ周りの観衆。

 

「あいつ勝ちやがったよ!」

「あぁ、しかもエクシーズ召喚使ってたぜ!ありゃプロ相手にも善戦できる位の力は確実に持ってるぜ!」

「んな分析はいいから!おい、俺ともデュエルしてくれよ!」

「ちょ、ずりぃぞ!俺、俺とやってくれ!」

「ずるいわ!ねぇ僕、お姉さんとやりましょ☆」

 

「わわわわ!ちょ、落ち……落ち着いて!た、助けて釣海さ……って居ない!」

 

いつの間にか居なくなっていた釣海の逃走スピードに驚きつつも呆れる出雲。その間にも人混みは増えていく

 

「だ………誰か助けてくれぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、やっと解放されたよ……。」

 

結局あの後、30人人くらい相手にした出雲。流石に勝てないと悟ったのか勝負を挑むものはいなくなり、その隙に家に逃げ帰ったという訳だ。

 

「もう6時か………晩飯食いたいな。」

 

しかし渡された金は昼食代とカード代で殆ど使いきってしまった。………ちなみに出たカードは全部ゴキボールだった。

そんなこんなでソファーに座りながら足をぷらぷらさせていると

ガチャ

 

「ただいまぁ、出雲君帰ってる?」

 

と、夏目の声が。

 

「はい!帰ってますよぉ!」

 

夏目に聞こえるよう大きめの声で返事する出雲。

 

「良かった、ちょっと待っててね!」

 

そう言うとガサゴソ……という音がし、その後こちらに向かってくる。

 

「あ、いたいた。出雲君、ちょっと立ってもらえる?」

 

後ろに何やら隠しながら言う夏目。少し不審に思うが、まあ別に良いだろうと思い立つ出雲。

 

「ふふ……ジャーン!」

 

と、夏目が隠していた物を見せる。どうやら服……それも学校の制服のような服だった。

 

「夏目さん……これは?」

 

と、聞く出雲。

 

「あ、言ってなかったっけ?出雲君明日からデュエルアカデミアに通ってもらうことになったから。準備とかしないといけないんだ。………うん!制服のサイズは大丈夫そうだね。」

 

「………ファ!?」

 

突然のカミングアウトに思わずそんな声を出してしまう出雲。その間にも夏目は明日の準備とやらを進めていた。

 

「そ、そんな急に……というかデュエルアカデミアとかって入学試験とか受けなくてもいいんですか?」

 

「あ、大丈夫大丈夫、そこら辺は法に触れない程度にちょこちょこっとやっといたから。」

 

「全然大丈夫じゃないですよね!」

 

と、ツッコミ出雲。夏目はそんな出雲を見てクスっと笑う。

 

「まあ大事な事は明日そのアカデミアの校長が話してくれる筈だから。取り敢えず明日の準備終わらせちゃお?出雲君。」

 

出雲は色々と聞きたい事が山ほどあったが……取り敢えず夏目の言うことを聞く事にした。

……このデュエルアカデミアに入る事により、この後の自分の運命が大きく変わるとは……この時の出雲は思ってもみなかった。




感想、批評、お待ちしております。


次回予告(出雲)
デュエルアカデミアに入学し、校長から説明を受けた俺は指定されたクラスに向かう。
感じのいいクラスメイトと仲良く交流でき、これからの学校生活を思い描く俺だったが、ある異様な光景を目撃してしまう。
まったく…どこの世界にもこんな下らない事をするやつがいるもんだな。
目標変更だ……お前らを裁く!
次回 お仕置きデュエル!


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第9話 お仕置きデュエル!

………はい、コズモ君vです(土下座)
はい、分かってます。遅れたか理由を聞きたいんですよね?
えっとですねぇ、まぁ簡単に言うなら……バ○ドリとメモ○フにはまってしまってね………後正直モチベが上がらんかった。
まぁでも遊戯王自体は好きだし最近モチベも上がってきたんで半年も待たすなんて事にはならないと思います。
そして改めて、半年近くも更新できず本当にごめんなさい!これからはもうちょい早めに更新していきたいです……
でわでわ


「えー……君が出雲君だね。話は夏目君から聞いてるよ。何でもエクシーズ使いだとか。」

 

「は、はい。一応エクシーズ使いです。」

 

新品の制服に身を包み、中年くらいの男性と話をしている出雲。

そう、今話しているその中年の男性こそ、出雲が今いるデュエルアカデミアの校長、 釈 杯人しゃく はいとだ。

出雲は今、校長からこの学校についての説明を受けているのだ。

 

「えー…知っての通りこの学校はこのギアルシティでも随一の学校です。並大抵の腕前なら門前払いしている所ですが………夏目君の紹介に加え、貴方がエクシーズ使いという事を込みにして、貴方のこの学校への入学を許可したのです。くれぐれも変なマネをしないよう。」

 

「わ、分かりました。」

「(ここギアルシティって言うんだ……。)」

 

校長の話を聞いていた出雲は、そんな事を思っていた。

 

「えー…夏目君から聞いていると思いますが、君には5年のクラスに入ってもらいます、ですが!……くれぐれもエクシーズ召喚を使わないようにしてもらいたい。」

 

「?何故使っては駄目何でしょうか?」

 

と、疑問に思う出雲。その言葉に校長が気だるそうに口を開く。

 

「えー……この学校の生徒はですね……少々エリート思考の方が多くてですね、自分より多く召喚方を使える貴方を見たなら……最悪いじめられる可能性があるのですよ。ほら、そうなるとめんどうでしょ?」

 

「は、はぁ。」

「(たったそれだけの事でいじめられんのかよ……あとこの校長若干軽いな!)」

 

とにかく出雲は、これからの学校生活を守る為にも、この学校内ではエクシーズ召喚をしない事を胸に誓った。

 

「えー…後は……」

 

校長は手元の書類をぺらぺらめくりる。するとピタッと手が止まり、ある一枚の書類を凝視する。

 

「あ、あのぉ……どうしまたか?」

 

と、校長に問いかける出雲。

 

「……君が今から行くクラスですが、いささか問題のあるクラスでして……まあ大丈夫でしょう。」

 

いきなりそんな事を言われても訳の分からない出雲はどういうことか校長に聞こうとする。

 

「それってどういう……」

 

「話は終わりです。貴方のクラスは三階にある5ーオシリスです。さあ、楽しい学校生活を送って下さい。」

 

有無を言わさずそう言うと、校長は出雲に背を向け椅子に座る。

 

「(すっげぇ気になるけど……まぁとりあえずいっか。)」

「分かりました、失礼しました。」

 

ぺこりとお辞儀をすると、出雲はその場から外に出る。

 

「(……色々と気になる事だらけだけど、折角夏目さんが通わせてくれるんだ。変なマネだけはしないように頑張ろう!)」

 

グッと拳を握り、出雲はそう誓う。

 

「取り敢えず、階段はこっちかな?」

 

目の前に飾ってある学校案内の地図を見ながら言う出雲。テクテクと階段を登って行く。

 

 

 

 

 

 

「はい!今日から新しい友達がこのクラスにやってきます!」

 

教室の中からそんな声が聞こえる。

出雲は廊下で壁によっかかりながら教室の中の反応を待つ。

 

「まじかよ!男かな?女かな?」

「私カッコいい男の子がいいなぁ!」

「私も!でもデュエルの腕のいい人も良いよね!」

「少なくともこの学校に入学出来た時点でそれなりの腕前を持っている事は確かでしょうね。」

「先生、早く紹介して下さいよ!」

 

「(………思ったより普通の反応だな。)」

 

少し拍子抜けする出雲。エリート思考な奴らだとか、問題のあるクラスだとか言われて内心はビクビクしてた出雲だったが、今の喧騒で大分緊張がほどけた。

しかしまだ油断してはいけない。あの校長は問題のある……と言ったのだ。もしかしたら教室の中は結構世紀末な事になってるかもしれない……そんな事を思っていた出雲である。

 

「分かった分かったから、今みんなに紹介するわね。」

「出雲君、こっち来て(小声)」

 

「はい、分かりました。」

「(さぁて、鬼が出るかモヒカンが出るか……)」

 

と、恐る恐る教室の中に入る出雲。

 

「(………普通だ。)」

 

机がカウンターのように一直線に続いていたり、ディスプレイが机にはめ込まれていたりちょくちょく普通でない所も見受けられるが教室内は清潔で広く、生徒達からもある種の品を感じられ、何より誰一人モヒカンじゃなかった。

 

「出雲君、自己紹介して。」

 

と、優しそうな女性の先生に催促され、出雲は教室内を観察するのを止めて自己紹介する。

 

「出雲 光遊です。よろしくお願いします。」

 

と、礼儀正しくお辞儀する。こういうのは第一印象が大事なのだ。

 

「みんな、出雲君と仲良くしてあげてね。」

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

と、クラス内のほぼ全員が声を上げる。

ざっと見たところ、クラス内の人数は(休みがいなければ)39人といった所か。男女比も半々くらい……

 

「(なんだ、何も変な所なんてないじゃん。)」

 

そう思うと変に力んでいた肩が自然と落ちる。そのまま先生に指示され空いていた席に座る。

 

「はい、一時間目は20分後だから、それまで出雲君と交流してあげて下さい。では号令!」

 

その声と共に日直と思わしき人物が号令をし、休み時間になる。

案の定多数の生徒が出雲の元に集まる。

 

「なぁなぁ、どこ住んでんだよ!」

「どんなデッキ使ってるのぉ?」

「どのプロデュエリストが好き?やっぱり瞬人選手?」

「何でこの時期に転入してきたんだよ。」

 

ちなみに今の時期は6月の中盤くらいである。(出雲が飛ばされたのは2016年の12月前半くらい。あの次元箱が発売されて間もない頃くらいである。

 

「えぇっと………」

 

無論、セキュリティの人の家に居候してますともエクシーズ使いですとも異世界から来ましたとも言えない……てかこの世界のプロデュエリストの名前も知らない。

 

「おいお前たち」

 

と、そんな出雲に助け船を送った人物がいた。

 

「出雲君が困っているだろ?あんまり質問責めにすんのはよしなよ。」

 

と、出雲を質問責めにしてた人達に言う。

 

「あっ、悪い出雲。」

「ごめんなさい……」

「ごめんね?」

「悪かったな。」

 

と、各々謝ってくる。

 

「あ、別に全然迷惑してないから。むしろこっちこそ気を使わせてごめん。」

 

と、出雲も謝り返す。

 

「出雲君が謝ること無いよ。あ、僕の名前は新島 勝人(にいじま しょうと)、宜しくね出雲君。」

 

「あ、うん宜しく。」

「(爽やかで優しい人だな……)」

 

出雲の持つ第一印象はそれだった。

小学五年生とは思えないそのフォローに、出雲は少し感動した。

 

「一応このクラスの学級委員をやらせてもらってる。分からないことがあったら何でも聞いてよね。」

 

そう言いニカッと笑う勝人。

 

「ありがとう勝人君、頼りにさせてもらうよ。」

 

こちらも笑い返す出雲。

 

「あら、先を越されてしまいましたか…。」

 

ふと、そんな声が出雲の耳に聞こえてくる。透き通るような声はその主の品格を、その口調からは性格をにじませていた。

勝人は苦笑いしながら紹介する。

 

「紹介するよ、彼女はもう一人の学級委員でこの学校の出資者の一人娘の…」

 

瀬女 姫華(せな ひめか)よ、宜しく転校生さん。」

 

両サイドに取り巻きと思われる女子生徒を従えて現れたその少女は格好こそ他の生徒と同じ学生服だが、その顔と雰囲気だけはこの場の誰より一線を画していた。

 

「(苦手なタイプだな……)よ、宜しく瀬女さん。」

 

いわゆるスクールカーストでトップレベルであろう彼女と話すのは苦手なようだ。

 

「貴方!気安く姫華様の事を呼ばないでくれますか!」

 

「そうよ、新入りなのだからまずはお嬢様と……!」

 

と、取り巻きの二人が息を荒げる。

 

「止めなさいシナ、由美。」

 

シナと由美と呼ばれた二人は姫華の声を聞くとすみません と言い黙る。

 

「ごめんなさいね、この二人少し忠誠心が高すぎるの。」

 

「い、いえ。大丈夫ですよ……(絶対関わりたくねぇ……)」

 

勝人とは全く逆の第一印象を抱く出雲。

ふと、自分の隣の席を見る。すると先程までは無かった瓶とその中に立て掛けてある白い花を見る。

 

「(あの花………確か前A君が写真で見せてくれた花に似てるな。確か……スノードロップだっけ?何でそんなのが机に……)」

 

気になった出雲は勝人に聞こうとする。

 

「ねぇ、その花って……」

 

その時、

キーンコーンカーンコーン……

 

と、チャイムの鳴る音がする。それと同時に先ほどの女の先生が教室に入ってくる。

 

「授業を始めまーす!みんな席についてくださーい!」

 

と、よく響く声で生徒たちに言う。

その声を聞いた生徒達は一斉に席につきはじめる。

それは勝人も同じで、小声でまた後で……と言うと自身の席につく。

 

「はい、それじゃあ一時間目の授業を始めますね。

ではまず出席を確認します。阿河 優君。」

 

ハイ!と、前方の方で声が聞こえる。

その後数人の名前を呼んだ後

 

「出雲 光遊君。」

 

と、呼ばれ控えめに返事をする。

その後もどんどん名前を言う先生とそれに返事をする生徒。そして

 

「春咲 瑠奈ちゃん………春咲ちゃん?………」

 

と、ここで先生の点呼が止まる。

 

「おかしいわね、お休みの連絡はきてないのに……新島君、瀬女ちゃん、何か連絡を貰ってる?」

 

と、学級委員の二人に聞く先生。

 

「いえ、連絡の類いは受け取っていませんわ。」

 

と、冷静に答える姫華。

 

「さぁ?何処かで道草でも食ってるんじゃないですか?」

 

少し小馬鹿にした態度で答える新島

 

「(…………うん?)」

 

と、ここで違和感を感じる出雲。

姫華の方は問題ない、先ほどの印象通りの返答だ。しかし

 

「(勝人君……さっき話した時はあんな感じじゃ無かったんだけどな……)」

 

新島の返しはまるでその春咲という女子を馬鹿にするような印象を受ける。

 

「(いや、誰でも嫌いな奴の一人や二人いるか……でも普通あんな露骨に言うものか?)」

 

と、疑問に思う出雲。その間も先生が無差別に誰か知らないか聞いていた。

 

ガラララ

 

と、そんな時教室の後ろの方の扉が開く。入ってきたのはこの学校の制服のような物を着てきてる女子だった。

ような物……というのは周りの生徒の着てる制服に比べて損傷が目立ち、泥にまみれていたからだ。

 

「は、春咲さん!どうしたのその格好!」

 

と、担任の先生が急いで春咲と呼ばれた少女に近づく。

 

「す、すみません……来る途中車の跳ねた泥に当たっちゃて……それと学校に来たとき上履きが無くて探してたらこんなに時間が………」

 

目を涙目にしながら言う春咲。今言った言葉の中に制服の損傷についての事がないという事はその損傷は前についたものなのか……なんて考えを一瞬で振り払う出雲。

表情では怒りを隠しているが内心は穏やかでは無かった。

 

「(ったく、何処の世界にもいるもんだな。イジメってのは……まぁ泥の件についてはツイてなかったとしか言えないが……)」

 

なんて事を思う出雲。そんな出雲の思いに一歩遅れ

 

「誰ですか!春咲ちゃんの上履きを隠した人は!」

 

と、怒鳴る先生。

 

「先生、無駄ですよ。春咲ちゃんを恨んでる人はこの学校中に居るんですよ?」

 

声の主は……新島 勝人だった。

 

「そうだぜ先生。聞くだけ無駄だと思いますよ。」

「だな。」

「それより早く出席確認の続きしてくださいよ、誰かさんのせいで時間とってるんですから!」

 

口々にそんな事を言う生徒達。

 

「(………同じだ。)」

 

出雲は立野と夏目がデュエルし、夏目が負けたときに周りの客が浴びせた声と似たようなものを感じた。

 

「……取り敢えず廊下で体育着に着替えなさい。」

 

小さな声ではい……と言った春咲は教室を出る。

 

「……では出席確認の続きをします。」

 

そうして出席確認をし終えた後、春咲が体育着姿で教室に入り、下を向きながら出雲の方へと歩いていく。そして辿り着いたのは……あの花瓶の置いてある席だった。

 

「っっ!」

 

下を向いていたのでその存在に気づかなかった春咲は、その花瓶に気づいた瞬間顔面を蒼白にする。

隣に座っている出雲はその瞬間を一部始終目撃し、前の席の方で笑みを浮かべている勝人の姿を見る。

この瞬間、出雲はこの花瓶を置いたのも、上履きを隠したのも勝人だということを確信する。

先生も花瓶の存在に気付き声をかける。

 

「春咲さん!それは…「大丈夫です!この花好きですから……」」

 

嘘だ、目に浮かべている涙からも震えているその手からもその事は分かるが口にはせずそう と言う先生。

 

「……一時間目は…」

 

そう言い授業を始める。

授業自体はシンプルかつ小さな子供でも分かりやすく説明しておりとても分かりやすかった………が、今の出雲の頭には入ってこなかった。

 

「(校長先生の言ってた事ってこれだったのか……)」

 

問題のあるクラス……確かにこの規模のいじめは充分問題だ。

 

「(……まずは恨まれるようになった原因を探ってみよう。)」

 

全く知らない子ではあるのだが、いじめを放っておけない出雲は気づかれないようチラッと隣の春咲を見る。

春咲は泥で汚れたノートに必死に板書を写している。

まだ目は涙で滲んでいたが、それでも何度も腕で目をこすり、前を向いていた。

 

「(……見た限り恨まれるような事をする子には見えないんだよなぁ

 

仮に春咲自身が何か恨まれる原因を作ったとしたならまだ救いようがあるのだが、理由のないいじめだったとしたら……

 

「出雲君?どうしたのボーッとして…」

 

考え込む出雲を見て先生が心配し声をかけてきた。

 

「!べ、別に何でもありません。」

 

そう言い板書を写す。

そんなこんなで時間はあっというまに過ぎていき、とうとう授業終了間際になる。

 

「はい、一時間目の授業はここまでです。で、少しお願いがあります。5時間目のデュエルの実技にて戦う相手を休み時間の間に見つけて組んでおいて下さい。では」

 

そう言うと同時にチャイムが鳴り、休み時間となる。

 

「なぁなぁ、俺と組もうぜ出雲!」

「何言ってるんだ、出雲君は僕と…」

「私と組もうよぉ〜」

 

と、沢山の生徒が出雲に誘いをかけてくる。

 

「あ、あははははは…」

 

と、出雲はどうしたものかと考える。

ふと、隣の春咲さんを見てみると、勝人が春咲と話していた。

 

「春…ちゃ…………僕とデュエル………もし召喚したり………君の居場所は……………」

 

と、途切れ途切れに声が聞こえてくる。春咲は遠慮しているようだったが勝人が黒い笑みを浮かべて威圧すると程なくして首を縦にふる。

 

「(今の…)」

 

完全に思考モードに入ろうとする出雲。その時、コツン……と出雲の頭が軽く叩かれる。

反射的に叩かれた方を向く出雲。

 

「転校生さん?どうか私と組んではくださらないかしら?」

 

目の前を見ると姫華が出雲に手を差し伸べていた。

 

「え?あぁ……その、」

 

返事に困る出雲。果たしてYESと言っていいものか……そんな事を考えていると姫華の取り巻き二人が凄い……もうスカゴブリンのような表情でこちらを睨んでいた。

その顔には 断ったらコロス ……という信念が大量に込められていた。

 

「……ひゃい。」

 

そんな情けない返事をもらす出雲。

姫華はふふっと笑い、では……と言った後手を引っ込め取り巻き二人と談笑を開始した。

 

「(思わず返事しちゃったな………でもさっきの勝人君と春先さんの会話……)」

 

周りの質問責めの声を受け流しながら出雲は一人考える

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は飛んで5時間目、各々が支給されているデュエルディスクを装着し、とある部屋にやってきた。

 

「みなさん、休み時間の内にペアはもう組めましたね?では好きな場所でデュエルして下さいね!」

 

 

は〜いと生徒達が間延びした声で言いそれぞれデュエルをし始める。

 

「ふふ、宜しくお願いしますね。」

 

と、出雲の目の前で姫華がニコニコしながらディスクを構えている。

 

「………」

 

しかし、出雲は無言のままだ。

 

「?転校生さん、どうしましたか?」

 

異変に気づいた姫華が出雲に話しかける。

 

「……やっぱり放っておけない。」

 

ポツリ……と、そんな言葉をこぼす出雲。

 

「すみません姫華さん、デュエルはまた後で!」

 

そう言い突然走り出す。

 

「………ふふ、分かりました。悔いの残らないよう頑張って下さいね。」

 

出雲の背中を見つめ姫華は笑いながらそう言った……。

 

 

 

 

 

 

「さぁ、ディスクを構えてよ春咲ちゃん。」

 

ドス黒い笑みを浮かべ勝人はディスクを構える。それにピクリと反応する春咲。傍目から見れば蛇に睨まれているカエルのように見えるだろう。

 

「ふふ、休み時間に言ったけどもし君がモンスターを召喚したりカードをセットしたら……分かるよね?」

 

その言葉に春咲は顔を俯かせて頷く。そう、彼女がこれ以上の嫌がらせを受けないためには承諾するしかないのだ。デュエルでサンドバッグ役になり彼のストレスを発散させるしか……

 

「さぁ、デュエルを「ちょっと待った!」……この声は」

 

勝人は勢いよく声の聞こえた方角を見る。

 

「そんな八百長したってデュエルは楽しくないよ勝人君。君の相手は……僕がしてあげるよ!」

 

頭を俯かせていた春咲もその声を聞き頭を上げる。そこに居たのは今日転校してきたばかりだという生徒

 

「出雲……君?」

 

出雲 光遊が居た。

 

「……出雲君、何の真似だい?僕は春咲さんとデュエルがしたいんだ。それに八百長だなんて心外だな。僕はそんな卑怯な真似しないよ。」

 

やれやれという風に首を横に振る勝人。

 

「だから早くそこを退いてくれよ。君だって転校してきたばかりなのにこの学校での居場所を失いたくないだろう?」

 

と、普通に見れば人懐っこい……しかしどこか影のある笑みを出雲に向ける。

 

「………別に。」

 

たった一言、本当になんでもないように言う出雲。

 

「……ちっ、転校生だからって調子に乗りやがって。いいよ!僕が相手してあげる。その代わり僕に負けたら君の立場は無くなると思え!」

 

そう言いデュエルディスクを構え始める。それに呼応するように出雲もディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

 

出雲

LP4000

 

 

勝人

LP4000

 

 

「へっ?……ど、どうなって……」

 

と、状況が分からず二人を交互に見る春咲。しかしそんな春咲の頭を後ろから優しく撫でる人物が居た。

 

「ふぇっ?!ひ、姫華ちゃん!…あっ、じゃなくて様?!」

 

と、声を上げる春咲。

 

「姫華ちゃんでいいわよ、春咲さん?それより出雲君、私とのデュエルをお預けにしたと思ったら貴方を助ける為にあいつとデュエルをするなんて……素敵な殿方だと思わない?」

 

と、優しく語りかける姫華。

 

「ふむ、姫華様とのデュエルを投げ出した時は島流しの刑に処してやろうと思ったのだが、中々に根性のある男だな。」

 

「あぁ、ああいう根性のある男は嫌いじゃないぞ……無論姫華様が一番だがな!」

 

と、いつの間にか姫華の取り巻きまでもが居た。

 

「あ、あの……私…」

 

と、顔を俯かせる春咲。

 

「自分には助けてもらう資格なんてない……そう言いたいのかしら?」

 

と、春咲の考えを見通す姫華。

 

「そもそも()()()()は貴様が起こしたものでは……」

 

取り巻きの一人、ユナが何か言おうとするが

 

「しっ、始まるわよ。」

 

姫華の真剣な声に3人は目の前を見る。

 

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

出雲 光遊

 

LP4000

 

手札5枚→6枚

 

 

どうやらルールはマスタールール2のようだ。

 

「俺は手札から魔法カード、「炎舞-「天キ」」を発動!これによりデッキからレベル4以下の獣戦士族モンスターを手札に加える。これで俺は武神ーヤマトを手札に!そしてヤマトを召喚!」

 

大地が割れると同時に石像が飛び出し、中から和風の甲冑を着た戦士が現れる。

 

武神ーヤマト ATK1800 DEF200

 

「俺はカードを2枚伏せ…ヤマトの効果、デッキから武神器ーヤタを手札に加えオキツを捨てる……これでターンエンド。」

 

 

出雲 光遊

 

LP4000

手札…3枚

 

フィールド……武神ーヤマト ATK1800→1900

伏せカード……2枚

 

 

「さぁ、君のターンだよ、勝人君。」

 

「ふん、僕のターン!」

 

 

新島 勝人

 

LP4000

手札…6枚

 

 

「よし、僕は手札から魔法カード、光神化を発動!」

 

 

光神化

速攻魔法

(1):手札から天使族モンスター1体を特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は半分になり、エンドフェイズに破壊される。

 

 

「その効果により手札から堕天使スペルビアを特殊召喚する!」

 

カッとフィールドが強く光り輝き、辺りを眩しく照らす。そして直視できるレベルになった時、そこには身を黒に染めた、異形の天使がいた。

 

 

堕天使スペルビア

効果モンスター

星8/闇属性/天使族/攻2900/守2400

(1):このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、

「堕天使スペルビア」以外の

自分の墓地の天使族モンスター1体を対象として発動できる。

その天使族モンスターを特殊召喚する。

 

 

そのモンスターの出現により、辺りの視線が二人へと注がれる。その視線を受けながらさらに勝人は場を動かす。

 

「さらに僕は堕天使スペルビアをリリース!現れよ、僕の絶対なる正義!光神機(ライトニングギア)轟龍(ごうりゅう)

 

スペルビアの漆黒の体にドンドンとひびが入ったかと思うと、そこから光が溢れ、爆散する。そしてその場に新たに出現したのは、先ほどの堕天使とは打って代わり、体を純白に染めた龍だった。

 

 

光神機ー轟龍

効果モンスター

星8/光属性/天使族/攻2900/守1800

このカードは生け贄1体で召喚する事ができる。

この方法で召喚した場合、

このカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。

また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、

その守備力を攻撃力が越えていれば、

その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 

「……一応お決まりのセリフを。どうしてレベル8のモンスターを1体の生け贄で出せる。」

 

と、分かりきっている事だが質問する出雲。

 

「轟龍は確かにレベル8のモンスター。普通なら2体のリリースが必要だ……けど!」

 

そう言い勝人は手を広げ

 

「このモンスターは1体のリリースでも出せるんだ!しかも攻撃力が守備力を越えていればその分ダメージも与えられる!……まぁその代わりにエンドフェイズになれば破壊されてしまうが……僕は手札から装備魔法愚鈍の斧、団結の力、魔導師の力を轟龍に装備!これによりデメリットは消えさらに攻撃力が3300ポイントアップ!」

 

 

愚鈍の斧

装備魔法

(1):装備モンスターの攻撃力は1000アップし、効果は無効化される。

(2):自分スタンバイフェイズに発動する。

装備モンスターのコントローラーに500ダメージを与える。

 

 

団結の力

装備魔法

(1):装備モンスターの攻撃力・守備力は、

自分フィールドの表側表示モンスターの数×800アップする。

 

 

魔導師の力

装備魔法

(1):装備モンスターの攻撃力・守備力は、

自分フィールドの魔法・罠カードの数×500アップする。

 

光神機ー轟龍 ATK2900→6200

 

「これで僕の轟龍は無敵の攻撃力を得た……バトル!そのモンスターを殲滅しろ!裁きの狂閃光(ギガレイズジャッジメント)

 

光神機ー轟龍はまるで人形かのように感情を感じさせない雄叫びを発し、その口から極太の閃光を放とうとする。

 

 

「……やっぱり無茶だよ、出雲君。」

 

と、春先が今にも消えそうなか細い声を上げる。

 

「勝人君は学年一のデュエリストなんだよ?……敵いっこないよ。出雲君はまだ引き返せる……まだ勝人君と友達になれる……だからもう私の事は放っておいて!」

 

春先の聞いたことのないような大声に驚くクラスメイト達。恐らく産まれてから初めて出したような大声……春先の目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。

その言葉を聞き、出雲はハァ……とため息をつく。

 

「本当なにやってんだろ俺……変なマネするな言われたばっかなのにクラス1の人気者にたてつくなんて……まじ頭イカれてるわ。」

 

「じ、じゃあ「でも」」

 

と、出雲は勝人を……そしてほぼ全てのクラスメイトを睨み付ける。

 

「もっとイカれてるのはこいつらだ。一人の女の子をよってたかってイジメ、あたかもそれが日常のように振る舞う……なんだ、この子が何をしたんだ?盗みか?放火か?殺人か?納得できる理由を示してほしいね。」

 

と、敵意を込めた目を向ける出雲。

 

「………」スッ

 

と、勝人が轟龍を制止させるよう手を上げる。

 

「いいだろう、話してやるよ。」

 

黒い笑みをニヤニヤと浮かべ勝人は叫ぶ

 

「そいつは!5年前に起きたギアル工業爆破事件を起こし、逃亡した犯人の一人娘なんだよ!」

 

 

 

…………………………………

 

 

 

 

「で?」




スノードロップの花言葉は………へへへへへ



次回予告
私を庇い、勝人君に戦いを挑んだ出雲君。私がイジメられた理由を聞いても全く意にもかえさず、勝人君をやっつけた。でもその瞬間、勝人君の体から何かが出て来て…
「なんだか知らんがぶっ潰す!かかってこい化け物!!」

次回 闇のゲーム
でゅ、デュエルスタンバイ!

※本当にこんな内容になるかは分かりません……頑張って近づけますが
あと感想、批評、問題点の指摘等はどんどんして下さい!

修正:ルビが正しく機能していなかった為修正


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第10話 闇のゲーム

はいどうもぉ!コズモ君vです!!
どうです!前の投稿から12日しか経ってませんよ!
これはもう革命……レボリューションですよ!
……という訳で10話です
でわでわ


「そいつは!5年前に起きたギアル工業爆破事件を起こし、逃亡した犯人の一人娘なんだよ!」

 

 

 

 

 …………………………………

 

 

 

「で?」

 

その言葉を発した瞬間、辺りがまるで凍ったかのように止まる。

 

「………話をちゃんと聞いてたのかな?そいつは殺人者の娘「だからなんだよ」!!」

 

今度こそ、完全に勝人が黙る。

 

「俺からしてみればそんなのはイジメの理由にはならない。春咲ちゃんが君たちに直接危害を加えたのかどうか……僕が聞いてるのはそれだ。」

 

その言葉にクラスメイト一同が黙り………

 

「彼女がいるだけでクラスの空気が悪くなるんだ!理由ならそれだけで充分だ!!轟龍!」

 

狂ったようにそう言うと勝人は攻撃の指令を下す。

主の命令を待っていた機械仕掛けの白龍は口から極大の閃光を武神ーヤマトに放つ

 

 

出雲 光遊

LP4000

手札…3枚

 

 

フィールド……武神ーヤマト ATK1800→1900

 

伏せカード……2枚

 

 

新島 勝人

LP4000

手札…無し

 

 

フィールド……光神機ー轟龍 ATK2900→3900→4700→6200

装備魔法 愚鈍の斧…光神機ー轟龍

団結の力…光神機ー轟龍

魔導師の力…光神機ー轟龍

伏せカード……無し

 

 

「出雲君!」

 

思わず声に出してしまう春咲。そんな春咲に心配しなくていいよ……なんて目線を一瞬向け

 

「俺は手札から武神器ーヤタの効果を発動、相手の攻撃を無効にし、その攻撃力の半分のダメージを相手に与える。」

 

 

武神器ーヤタ

効果モンスター

星4/光属性/鳥獣族/攻1700/守 800

自分フィールド上の「武神」と名のついた

獣戦士族モンスターが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、

このカードを手札から墓地へ送って発動できる。

攻撃モンスターの攻撃を無効にし、

そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。

「武神器-ヤタ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

極太の光がヤマトを呑み込む直前、ヤマトの体を青色の光が包み込む。青色の光が極太の閃光を弾き、勝人に向かい跳ね返される。

 

「ば、馬鹿な……グワァァッ!」

 

 

新島 勝人

LP4000→900

 

 

凄まじい衝撃とまさかの反撃による驚きにより、勝人は半身を起き上がらせたまま立ち上がれなかった。

 

「………言いたい事が幾つかある。」

 

そう言い出雲は人差し指を立てる

 

「一つ、愚鈍の斧はずっと効果を無効にしてしまうから使うなら小回りのきく禁じられた聖杯の方がいい」

 

続いて中指を立てる

 

「二つ、攻撃力が高いだけの木偶の坊なんて、かっこうのカモだ。もう少し考えてカードを入れろ。」

 

そして……

 

「三つ、以下の点から言うと……お前、弱いよ。デュエルの腕も……精神も。」

 

そしてゆっくりと出雲はカードを引き

 

「手札から武神器ーオロチを捨て効果を発動、勝人……お前に直接攻撃する。」

 

 

武神器ーオロチ

効果モンスター

星4/光属性/鳥獣族/攻1700/守 500

自分のメインフェイズ1で、このカードを手札から墓地へ送り、

自分フィールド上の「武神」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。

このターン、選択したモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できる。

 

 

ヤマトはゆっくりと勝人を向いて歩き、軽く拳を当てる。それだけで、勝人は完全に倒れた

 

 

新島 勝人

LP900→0

 

 

ライフが0になった瞬間、勝者を称えるブザーが鳴り響く。直ぐに動けた者は居なかった……誰もがそのデュエルに目を奪われ、驚き、恐怖と尊敬が混じったような目で出雲を見ていた。そんな出雲わというと

 

「………(やっべぇぇぇ!!ちょ、調子のり過ぎたぁぁ!!)」

 

この空気に耐えきれずプチ発狂していた。

 

「(やべぇよ…やべぇよ……完全に失敗したよ、完璧怖いやつ認定されたよ……みんなぜってぇ内心 こわいよぉぉ(>_<)とか思ってるよ!)」

 

そんな感じに焦っていると

 

パチパチパチ

 

と拍手の音が聞こえる。

 

「素晴らしい戦いでしたよ出雲さん、私たちの見たことのないカードを自在に扱うその姿に思わず目を奪われてしまいました……ね?由実にシナ?」

 

「っ!は、はい、とても素晴らしい戦いでした。」

 

「えぇ!まるでプロの戦いを見てるようでした。

 

取り巻きの二人は姫華の声に急いで反応し、言葉を出す。

 

「(…………助け舟のつもりか?)」

 

一方の出雲はその声を受け若干落ち着き、一応軽く会釈する。

姫華はそれを受けニコっと返す。

 

「(……ほんとうに小学生かよ。)」

 

出雲はそう思った。

 

「い、出雲君……。」

 

と、姫華達の後ろから春咲が遠慮がちに話しかける。

 

「お、春咲ちゃん。どうよ、俺強いでしょ」

 

そう言いニカッと笑う出雲。

その言葉に何かを言おうとする春咲……その時

 

「チガウ……」

 

「!!」

 

急いで声のした方向を向く。そこにはなんと、体を浮かせ目が虚ろになっている勝人の姿が……

 

「お、おい勝人?」

「勝人君……大丈夫?」

 

恐る恐る声をかけるクラスメイト達……しかし次の瞬間

 

「ガァァァァァァァッッッ!!!」

 

そんな異質な叫び声と共に、勝人の体から濃密な闇が溢れ出す

 

「っ!キャァ」

 

女子生徒が叫び声を上げる間もなく、辺りがその闇に包まれ始める

 

「うわっ!」

 

反射的に目をつむり、腕で顔を隠す出雲。

数十秒程経ち、体になんの影響も感じなかった為目を開ける……すると

 

「お前……ヤマト?」

 

なんと自身の目の前で武神ーヤマトが自らの体を使い出雲を闇から守っていたではないか。

 

「お前が…助けてくれたのか?」

 

そう問いかける出雲に、ゆっくりと頷くヤマト。

 

「!他の人は」

 

そう言い辺りを見渡す出雲。幸い闇といっても霧のようなもので、少し先くらいならヤマトから発せられる光もあり辛うじて見えた。

しかしそこにはさっきまでの自分と同じく顔を腕で隠したままピクリとも動かないクラスメイト達がいた。

 

「これは……」

 

その光景に言葉が詰まる出雲……その時

 

『!ハァァ!!』

 

ヤマトがいきなり大声を出し、出雲の前方に光を纏った拳を突き出す。いきなりの出来事に固まる出雲だが、その拳に先ほど放たれた濃密な闇がぶつかる。光の拳と闇……二つは真正面からぶつかりあい、拮抗している。

その事に半瞬遅れ気づいた出雲は自分にできる事はないか考える

 

「?デュエルディスクが起動して……」

 

出雲が見たものはデュエルが終わったのに何故か起動していたディスクとその上にある武神ーヤマトのカード

 

「(!もしかしたら)」

 

そう言い出雲はデッキからカードをドローする

 

「俺は手札から武神器ーハバキリを捨て効果!ヤマトの攻撃力を倍にする!」

 

出雲のサポートを受け、力を増したヤマトは先ほどの拮抗が嘘のように闇を押し返す。

 

「やっぱり……カードの力が具現化してる。」

 

この空間の引き起こした現象なのか……それとも自分の力なのか……出雲が思考していると

 

『ギギギ…マダ立ッテイルカ』

 

闇の放たれた方向からそんなかすれ声が聞こえてくる。

ヤマトは出雲の前に立ちその何かに向けて構える

 

『オマエ、コノ世界ノ人間違ウ。ナンデコノ世界、イル。』

 

その何かは出雲へ一歩、また一歩と歩んでゆく。

辺りに充満している闇のせいでぼんやりとしか見えないが、それは辺りの闇より一際濃い闇を放っており、一目でこの現象の原因だという事が分かった。

 

「お前、何者だ。何で俺がこの世界の人間じゃない事を知っている。」

 

その何かを警戒しながら出雲は質問を投げ掛ける。

 

『ギギ……答エル必要ナイ。オマエ、イマココデ俺ニ負ケルカラ。』

 

そう言いその何かは姿を現す。

 

「!お前…勝人?」

 

そう、その何かは勝人の形をしていた。

 

『勝人、違ウ。俺コイツニトリツイタダケ。コイツノ感ジル愉悦、俺ノ飯。ダカラコイツノ闇増幅サセ辺リニヒロメタ。』

 

「なるほど、要約すると……お前がイジメの原因って訳だなくそったれ。」

 

そう言うと出雲はカードを全てデッキに戻しシャッフルさせる。

 

「リアルアタックはこれまでだ。俺とデュエルしろ!」

 

そう言いディスクを構える出雲。その言葉を聞きギヒヒ…と笑う何かは

 

『イイゾ、ダガタダノデュエルジャツマラナイ。』

 

そう言い何かは黒い鎖のような物を出雲の心臓に向け投げつける。

 

「っ!………」

 

いきなり投げつけられたそれを回避する間もなく受ける出雲。それは出雲の心臓をがんじがらめにする。

 

『ソノ鎖、ライフガヘルゴトニオマエノ体ムシバム。ライフガゼロニナレバ、オマエ死ヌ。』

 

「な、なるほど、つまり闇のゲームって訳か。」

 

出来る限り冷静に答えたつもりだったが、やはり動揺は隠しきれなかった。負けたら死ぬ……前に一回その経験をしてるからこそ、出雲はその言葉に嫌なリアリティを感じる。またあの苦しみを味わうかと思うと冷や汗が出てくるし、次死んでも今回のように別の世界へ行けるとも限らない。

嫌な想像ばかりが出雲の頭をよぎる。

 

「(なに弱気になってんだ 、ようは勝ちゃいいんだろ勝ちゃ!!それに、このくそったれがイジメの元凶ならこいつをぶっ飛ばせば春咲ちゃんはイジメから解放されるんだろ?)」

「それだけでやる意味はあるってもんだ!」

 

そう言い再びディスクを構える。

 

『ククク……サァ!!』

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

出雲 光遊

LP4000

 

勝人??

LP4000

 

マスタールール3、ステンバーイ!

 

 

『先行ハモラウ、俺ノターン!!』

 

 

勝人??

LP4000

手札…5枚

 

 

『オマエノ戦術、観察シテタカラワカル。オマエノデッキ、ヤマトガ起点。ダカラソレヲツブス』

 

何かは手札からあるカードを発動させる。

 

『俺ハ手札カラ魔法カード、次元の裂け目を発動』

 

 

次元の裂け目

永続魔法

(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、

お互いの墓地へ送られるモンスターは墓地へは行かず除

外される。

 

 

『コレデオマエノ墓地ヲ封ジタ。サラニ手札カラ魔法カード、平和の使者ヲ発動』

 

 

平和の使者

永続魔法

フィールド上に表側表示で存在する攻撃力1500以上のモンスターは攻撃宣言をする事ができない。

このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に100ライフポイントを払う。

または、100ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。

 

 

『コレデヤマトノ攻撃モ封ジタ。オレハ手札カラ悪夢の拷問部屋ヲ発動!』

 

 

悪夢の拷問部屋

永続魔法

相手ライフに戦闘ダメージ以外のダメージを与える度に、

相手ライフに300ポイントダメージを与える。

「悪夢の拷問部屋」の効果では、このカードの効果は適用されない。

 

 

『オレハボーガニアンヲ召喚』

 

ボーガニアン

効果モンスター

星3/闇属性/機械族/攻1300/守1000

自分のスタンバイフェイズ毎に相手ライフに600ポイントダメージを与える。

 

 

『ソシテ波動キャノンヲ発動』

 

 

波動キャノン

永続魔法

自分のメインフェイズ時、フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送る事で、

このカードの発動後に経過した自分のスタンバイフェイズの数

×1000ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

 

『ククク……オレハコレデターンエンド』

 

 

勝人??

LP4000

手札5枚→0枚

 

フィールド……ボーガニアン ATK1300

永続魔法……次元の裂け目

平和の使者

波動キャノン

悪夢の拷問部屋

伏せカード……無し

 

 

「……俺のターン、ドロー!」

 

 

出雲 光遊

LP4000

手札…5枚→6枚

 

 

ドローしたカードを見た出雲は、苦虫を潰したような顔になり

 

「……俺は武神ーヤマトを召喚」

 

 

武神ーヤマト

効果モンスター

星4/光属性/獣戦士族/攻1800/守 200

1ターンに1度、自分のエンドフェイズ時に発動できる。

デッキから「武神」と名のついたモンスター1体を手札に加える。

その後、手札を1枚墓地へ送る。

「武神-ヤマト」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

 

「カードを2枚伏せ、エンドフェイズにヤマトの効果、武神器ーオハバリを手札に加え、カードガンナーを墓地へ……遅れないので除外する。」

 

 

出雲 光遊

LP4000

手札…6枚→3枚

 

フィールド……武神ーヤマト ATK1800

伏せカード……2枚

 

 

『オレノターン、ドロー』

 

 

勝人??

LP4000

手札…0枚→1枚

 

フィールド……ボーガニアン

 

永続魔法……次元の裂け目

平和の使者

悪夢の拷問部屋

波動キャノン

伏せカード……無し

 

 

『コノスタンバイフェイズ、平和の使者とボーガニアンの効果、平和の使者の効果デライフヲ100払イカードを維持、ボーガニアンの効果デ600ポイントノダメージ!』

 

 

勝人??

LP4000→3900

 

 

ボーガニアンの放った弓が出雲の体を貫く

 

「ぐあぁぁっ!!」

 

 

出雲 光遊

LP4000→3400

 

 

『サラニ悪夢の拷問部屋ノ効果ニヨリ300ポイントノダメージ!』

 

悪夢の拷問部屋のカードから現れた影が出雲の体を締め付ける

 

「あぁぁぁっ!!」

 

 

出雲 光遊

LP3400→3100

 

 

「はぁはぁはぁ………」

 

地に足をつけ息を荒くする出雲。その姿を見て何かは興奮する

 

『ソウ!ソノ感情ダ!ソノ感情ガオレノゴ馳走ナンダ!モット苦シメ!』

 

そう言いドローしたカードを瞬時に使う

 

『オレノ手札カラ火炎地獄ヲ発動!オレニ500ノダメージヲ、オマエニ1000ポイントノダメージヲ与エル!』

 

 

火炎地獄

通常魔法

相手ライフに1000ポイントダメージを与え、

自分は500ポイントダメージを受ける。

 

 

出雲と何かの体を地獄の業火が包み込む。

 

「あぁぁぁっ!!うあぁぁぁっっ!!!」

 

『ハハハハハ!苦シメ苦シメ!!』

 

地面に倒れもがき苦しむ出雲の姿を見て更に愉悦に浸る何か。顔を大きく歪め出雲を嘲笑う。

 

 

勝人??

LP3900→3400

 

 

出雲 光遊

LP3100→2100

 

 

『更ニ悪夢の拷問部屋ノ効果!』

 

「あ……がっ……!!」

 

 

出雲 光遊

LP2100→1800

 

 

最早叫ぶ気力すらないのかかすれた声を出す出雲。

 

「(や……やばい、想像以上に……きつい。それに……なんか目が霞んできた……)」

 

フラフラな体で起き上がる出雲。彼の心臓を縛っている鎖は確かに彼の体を蝕んでいた。

 

「(これ以上ダメージを受けるのはまずい!何とかして逆転のカードを引かないと……)」

 

そう言いデッキトップに手を置く出雲。

 

「俺の……ター『誰ガターンエンドト言ッタ?』…まさか!」

 

出雲は青ざめた顔で波動キャノンを見る

 

『オレハ波動キャノンノ効果!コノカードヲ墓地ニ送リ1000ポイントノダメージ!悪夢の拷問部屋ト合わせて1300ポイントノダメージダ!』

 

カードから現れた波動キャノンが出雲へ照準を合わせる。

 

「嘘だろっ!あんなの今受けたら……」

 

ただでさえ今でもギリギリの状態なのに今そんな大ダメージを受けたら、おそらくライフが残っていてもまともにデュエルできる状態ではなくなるだろう。

 

『最高ニウマイ悲鳴ヲ聞カセテクレヨォォ!!』

 

よだれをたらしながら狂気の表情で言う何か。

そして、波動キャノンが放たれた。

 

 

 

 

 

 

「(あれ?苦しく……ない?)」

 

苦しみに耐えようと目を閉じていた出雲だったが、いつまでたってもこない衝撃に首をかしげていた。

 

『バ……バカナ!』

 

なにやら何かが叫んでいる。出雲はそっと目を開く

 

『グゥゥゥ……』

 

そこには出雲を波動キャノンから必死に守るヤマトの姿があった。

 

「お前……また俺を庇って……。」

 

ヤマトはその身にヒビが入ろうとも決して主の前から退こうとはしなかった。

 

 

出雲 光遊

LP1800→500

 

 

やがて波動キャノンが破壊され、今度こそ何かは発動するカードがなくなる。

 

『クゥゥ、オレハターンエンドォォォ!!』

 

イライラした様子でターンを回す何か。出雲はまだ苦しむ体を引きずり、ヤマトに近寄る。

 

「お前は……何で俺を守ってくれるんだ?」

 

その言葉に何も答えないヤマト、その代わり手を出雲の心臓にあてる。すると体を支配していた苦しみが和らいだ。

 

「……ありがとう、絶対勝つから。」

 

そう言いデッキトップに手を置き、集中する。

 

「!最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえも、デュエリストが想像する!全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、勝利への道筋を照らせ!……シャイニングドロォォ!!」

 

出雲は今までで一番力強く、想いを込めてドローする

 

 

出雲 光遊

LP500

手札…3枚→4枚

 

フィールド……武神ーヤマト

伏せカード……2枚

 

 

「!来た」

 

そう言い出雲はドローしたばかりのカードを発動させる。

 

「俺は手札から魔法カード、炎舞ー「天キ」を発動!」

 

 

炎舞「天キ」

永続魔法

「炎舞-「天キ」」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):このカードの発動時の効果処理として、

デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加える事ができる。

(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、

自分フィールドの獣戦士族モンスターの攻撃力は100アップする。

 

 

「このカードの発動時の効果により、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスターを手札に加える。俺は勇炎星ーエンショウを手札に加える。そして勇炎星ーエンショウを召喚!」

 

闇が包み込むフィールドを眩い炎が吹き荒れていく。そしてその中心には勇ましく獲物を構える戦士がいた。

 

 

勇炎星ーエンショウ

効果モンスター

星4/炎属性/獣戦士族/攻1600/守1000

1ターンに1度、このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、

デッキから「炎舞」と名のついた魔法カード1枚を選んで自分フィールド上にセットできる。

また、1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する

「炎舞」と名のついた魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。

フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

 

 

「俺はエンショウの効果、場の炎舞ー「天キ」を墓地へ送り、お前の場の平和の使者を破壊する!」

 

『ナンダト!ダガ次元の裂け目ノ効果デお前ノカードハ除外サレル筈』

 

「次元の裂け目で除外されるのはモンスターカードだけだ、魔法、罠は除外されない!……ってかそうじゃないと波動キャノン使えないだろ……」

 

エンショウは手に持つ青龍偃月刀と呼ばれる太刀に炎を纏わせ、平和の使者のカードを一刀両断する。

 

「よし、バトル!俺はエンショウでボーガニアンに攻撃!そして罠カード、炎舞ー「天セン」を発動、俺の場の獣戦士族モンスターの攻撃力を300アップさせ、更にエンショウの攻撃力を700ポイントアップ!」

 

 

炎舞ー「天セン」

永続罠

このカードの発動時に、自分フィールド上の獣戦士族モンスター1体を選択する。

選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで700ポイントアップする。

また、このカードがフィールド上に存在する限り、

自分フィールド上の獣戦士族モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。

 

 

「更にさらにぃ!罠カード幻獣の角をエンショウに装備!更に攻撃力アップ!」

 

 

幻獣の角

通常罠

発動後このカードは攻撃力800ポイントアップの装備カードとなり、

自分フィールド上の獣族・獣戦士族モンスター1体に装備する。

装備モンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、

自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

武神ーヤマト ATK1800→2100

勇炎星ーエンショウ ATK1600→2300→2600→3400

 

 

『ハァァッ!!』

 

エンショウはその手に持つ太刀でボーガニアンを串刺しにし、破壊する。

 

ボーガニアン ATK1300 vs 勇炎星ーエンショウ ATK3400

 

『グギャァァァァ!!!』

 

 

勝人??

LP3500→1400

 

 

「幻獣の角の効果で1枚ドロー……そして、俺は武神ーヤマトで…」

 

『ヤ……ヤメロォォォォ!!!』

 

「ダイレクトアタック!」

 

武神ーヤマトは高速で何かに近づき、拳を思いっきり引き絞る。

 

「武神連打!!」

 

ヤマトの拳が何かを何度も何度も殴打する。その途中、勝人の体から何かが引き剥がされ、尚も殴られ続ける。

 

『アァァァ!!体ガァ!オレノ体ガァァァ!!』

 

段々と周りの闇が……出雲の心臓の鎖が薄れていく。

そして最後に渾身の一撃を受けた瞬間

パァッ……と、周りの闇も、鎖も、何かの姿も無くなる。

 

 

何か

LP1400→0

 

 

「…………………」

 

ドサリ

 

と、出雲は体から一気に力が抜ける。

 

「や……やばかったぁ。あそこで天キが来てくれなかったらどうなってたことやら……ツイツイとか入れた方がいいかなぁ?」

 

出雲は先ほどのデュエルを軽く振り返る。

 

「………あれ?私……」

 

段々と周りのクラスメイトの意識がハッキリし始める。そして

 

「う……あれ?僕は………」

 

そう言って勝人の意識も覚醒する。

 

「!出雲君大丈夫?」

 

そう言い出雲のそばに春咲が駆け寄る。

 

「大丈夫です、ちょっと疲れただけですから。」

 

そう言い自力で立ち上がる出雲。

 

「さて……勝人君、何か言いたい事は?」

 

「………僕は……」

 

出雲の言葉につまる勝人。

 

「私も是非聞きたいわ、去年までは彼女を庇っていた貴方が何故いじめる側にまわったのかを……」

 

「(………え、そうなの?)」

 

まさかの姫華のカミングアウトに内心驚く出雲。春咲にマジ?……と聞く。

 

「…うん、前は私の事一生懸命庇ってくれて……でも春休みが明けてから様子が変わってきて………」

 

成る程……と、出雲は思考する。

 

「(大方春休みの間にあいつにとりつかれたんだろうな。)」

 

と、考察する。

そして勝人は口を開く

 

「………ギアル工場の爆破事故、その現場には僕の両親もいたんだ。」

 

「っっ!!」

 

勝人の言葉に口を押さえる春咲。相当のショックを負ったようだ。

 

「分かってたさ、春咲ちゃんは悪くないって……悪いのは春咲ちゃんの両親だっていうのは……何度も何度も自分に言い聞かせた!でも……」

 

言葉を重ねる事に、勝人の目には涙が浮かぶ

 

「でもやっぱり……春咲ちゃんへの憎悪は隠せなかった!日に日に大きくなってた!春咲ちゃんを庇うたび、僕の心の中ではドス黒い感情が荒れくるってた!」

 

今までためていたものを解放するかのように、辺りに吐き散らす勝人。あまりの迫力に誰もが口を開けずにいた。

 

「そんな時……夢を見たんだ。闇のようなものが僕の中に入ってくる夢……そいつが入る事に、僕の中にあった善の心みたいなのが無くなっていくのを感じたよ……その日からかな?僕が春咲ちゃんに対して憎悪をむき出しにしたのは………」

 

自嘲気味に笑う勝人。しばらくは辺りを沈黙が支配していた。

 

「………ごめんね」

 

途端に、春咲が口を開く

 

「私のせいで……貴方の人生を滅茶苦茶にしちゃって……ごめんね……ごめんね…ごめんなさい………」

 

顔をくしゃくしゃに歪め、涙をポロポロ落とす春咲。何度も何度もごめんなさい……ごめんなさい……と、繰り返す。

 

「……今ならまだ間に合う、今の勝人君なら……いや今の君たちなら!春咲ちゃんと仲直りできる。一人のクラスメイトとして接せられる事ができる。…さぁどうする!」

 

と、出雲は部屋いっぱいに響くように言う。

 

「……まだ、僕の事をクラスメイトと思ってくれるかい?」

 

「私は……ヒグッ………一度も勝人君の事をクラスメイトじゃないなんて思った事はないよ?」

 

途中しゃくり上げながらも、言葉をつむぎだす春咲。

 

「……俺も今まで悪かった!これからは優しく接するぜ!」

「私も!これからいっぱい仲良くするね!」

「今まで悲しくしちまった分これからいっぱい楽しくしてやるよ!」

「いっぱいガールズトークしようね♪」

「……仕方ないから仲良くしてあげるよ」

「俺たちの満足はこれからだ!」

「いい話だ……感動的だな……」

 

次々とクラスメイト達が春咲に駆け寄り、暖かい言葉を浴びせる。春咲は涙をポロポロ流しながらうん……うん……と、答える。

 

「……とりあえずは一件落着か………」フラリ

 

ドサッ……と、倒れかけた出雲の体をいつの間にか近くにいた勝人が支える。

 

「君が僕を解放してくれたんだろ?……ありがとね。」

 

「へっ、どういたしまして。」

 

そう言い勝人の肩を借りる。

 

「……これからは光遊って呼んでいいかい?」

 

一瞬キョトンとする出雲だが、すぐに笑顔になり

 

「もちろん!」

 

そうサムズアップする。その言葉を聞いた勝人も、人懐っこい笑顔を浮かべるのだった。




次回予告
未定!!


2018.4.23 追記
次回予告
今回の話は夏目さんの話!他の部隊との連携作戦でデュエル強盗のアジトを叩く夏目さん。
後一歩まで追い詰めたその時!その男の様子がおかしくなる
「僕は負けられないんだ……このデッキに賭けて!」
頑張って下さい……夏目さん!
次回:大地の騎手 デュエルスタンバイ!
※次回予告の内容は変わる可能性があります


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第11話 合同作戦

どうもみなさんこんにちは!コズモ君vです。
すいません、次回予告から変更になりまして、今回デュエルは無しと言う形になりました……次回はデュエルするので許して下さい、なんでも((ry
でわでわ


 

「よっと。」

 

ガタン……と、自分のプライベート用の車を駐車場に置き、歩く夏目。時刻は8時50分、出勤時間の9時ギリギリの時間だった。

 

「うわぁ……時間ギリギリだ。隊長に怒られちゃうなぁ。」

 

腕時計を見て、その事を知った夏目は小走りでセキュリティのビルの中へ入っていく。

 

ウィーン

 

と自動ドアが開き、夏目の体をひんやりと冷たい空気が包み込む。周りにはせわしなく動く職員達がおり、みなが自分の仕事を果たすために汗をかきながら働いていた。

夏目はそんな彼らに心の中でお疲れ様です……と言いながらエレベーターの前へ歩き、そこでIDカードのような物をかざす。数秒待つと電子音が鳴って扉が開き、夏目はその中へ入る。

 

するとエレベーターはIDカードから読み取った情報を元に最小限の駆動音を鳴らしながら目的の階へ誘う。

26……27……28……そして電子パネルの文字が29を差した時、甲高い電子音が鳴り扉が開く。

夏目はその階にある自身の職場へ向け歩を進める。

 

「(何だか職場も懐かしく感じるや……)」

 

数日見なかっただけなのにそんな感想を抱いてしまった夏目は、僕も歳かな?なんて思いながら廊下の突き当たりを角に曲がり、そこからずーっと真っ直ぐ歩いた所にある職場の前まで行こうとする。

 

しかしここで夏目は立ち止まる。なぜなら、職場の前の扉で見知らぬ顔の女性が辺りをキョロキョロしながら挙動不審な行動をしていたからだ。

 

「(これは……見なかった事にには出来ないよね。)」

 

困っている人を放っておけない性格な夏目はすぐさま彼女へ駆け寄る。

 

「どうしましたか?何かお困りなら話を聞きますよ。」

 

警戒心を与えないよう穏やかな笑みを浮かべ訪ねる夏目。その声を聞き夏目の方を振り返る女性。一瞬警戒心をあらわにした彼女だが、夏目の笑みを見て警戒心を薄める。

 

「あの……本日ここの第3?部隊に入る事になったんですけど……事前の説明でここの部隊の責任者が中へ案内してくれる筈なのに誰も居ないんです……。」

 

「…………」

 

その言葉を聞き全てを悟ったような顔をする夏目。どうやら思い当たる節があるようだ。

 

「うん………大体分かったよ。うちの上司がごめんね、えっと……」

 

今更ながらこの女性の名前を知らない事に気づく夏目。

そんな夏目を見て、その女性は慌てて自己紹介する。

 

「あっ!!私新山(にいやま)(もも)っていいます!えっと……」

 

「夏目です、夏目 汐里。多分……君の先輩になる人だよ。まぁ詳しい話は中に入ってからで……あの人に説教をしないといけないですし。」

 

困ったような呆れたような顔で扉の前に立つ夏目。横にある機械に持っているIDカードをかざす。ディスプレイに写し出されたOPENの文字を見ると扉を開け、桃に入るよう促す。

 

「し、失礼します!」

 

中に入り大きな声で挨拶をする桃。すると中に入る職員ほとんど全員が桃の方を見る。

そしてその奥、回転椅子にて雑誌を頭に被せ寝ていた男が雑誌を床にドサッと落としながら気だるそうに口を開く。

 

「誰だお前、ここは第3部隊の人間以外立ち入り禁止だぞ……迷子なら迷子センターに行ってろ。」

 

そう言いまた寝ようと床の雑誌を手に取る男。そのだらけっぷりを見て夏目はため息をつきこう切り返す。

 

「大地さん、何か今日忘れている事ありませんか?……あとうちに迷子センターはありません。」

 

その言葉を聞き、大地と呼ばれた男は胸ポケットにあるスケジュール帳を開き、そのまま固まる。そして髪をかきながら口を開く。

 

「………あー夏目、お前今日遅刻寸前だったぞ。つい昨日まで休みだったからって気を抜くなよ。」

 

その明らかに話題の転換を狙おうとした言葉に、夏目がキレる

 

「先輩は年中気を抜いてるじゃないですか!いい加減気持ちを引き締めて下さいよ!先輩のせいでこの子扉の前で困ってたんですよ!?」

 

本当何考えてるんですか!と、説教をする夏目。その言葉をうるさそうに聞いている大地は、耳をふさぎながら桃の方へ歩く。

 

「あぁ……悪かったな。ちょいと寝不足だったもんですっかり忘れてた。えっと確か……新妻とか言ってたか?」

 

「新山です‼新山 桃です!」

 

急いで自分の名前を訂正する桃。それを聞きあぁ……そうだったか?と言う大地。

 

「俺の名前は神山 大地だ。まぁ適当によろしく頼む。」

 

そう言って手を振ると自分の席に戻ろうとする大地。その肩をがっちりと掴む夏目。

 

「先輩、この子の案内ちゃんと頼みますよ?」

 

「………………」

 

めんどくさいというオーラを隠そうともしない大地。

夏目がまた説教をしようとしたその時

 

「……?すまん、電話だ。」

 

突如大地の腰のデュエルディスクが鳴る。それを手に取り、通話を開始する大地

 

「……あぁ………分かった、直ぐ行く。」

 

そう言い電話を切った大地は

 

「すまん、何か呼び出しくらったわ。そいつの案内はお前に頼む」

 

どこか嬉しそうにそう言うと大地は部屋から出ていく。

 

「何か……うまく逃げられた気が……」

 

ギリギリで説教できず、なおかつ仕事を押し付けられ悔しがる夏目。そのやり取りを見て アハハハハ………と乾いた笑みを浮かべる桃。

 

「あら、隊長ににげられちゃったのぉ?もぉ駄目じゃない!ああいう子はちゃんと調教してあげないと!そんなんだから何時までたっても私みたいな乙女になれないのよぉ!」

 

突如、ドスの効いた、聞いただけで背筋のぞくっとするような声が桃の後ろから響き渡る。

その声に驚き、桃は後ろを振り向いてしまう……

 

「ひぃっ!」

 

「あ、オルゴ先輩、おはようございます。」

 

オルゴと呼ばれたその乙女……という括りには絶対に入らないであろう屈強な筋肉と身長を持つ生物は夏目の姿を見るとおぞましい笑みを浮かべる

 

「おはようなっちゃん♥色々大変だったみたいねぇ……ん?何でこの子背筋伸ばしたまま固まっちゃってるの?」

 

「あれじゃないですか?先輩の姿が美しすぎて固まってんじゃないですか?」

 

「もぉ!本当の事言わないでよぉ!」

 

そう言い近くの机におもいっきり拳を叩きつける

……それだけでその机は使い物にならなくなってしまった。

 

「あらやだ、また壊しちゃった。ごめーん、ここ夏目ちゃんの席でしょ」

 

「あ、大丈夫です。予備のがあるんで。」

 

そう言い予備の机を設置する夏目。

 

「あ……あの……この人は?」

 

オルゴの顔面の破壊力により固まっていた桃だったが、なんとか会話出来るまでには回復したようだ。

 

「この人はオルゴ・デミラ先輩。あんな感じだけどすっごく優しくて頼りになる人だから、何かあった時はオルゴ先輩に頼るといいよ。」

 

どこぞの大魔王みたいな名前だが、良い人物らしい。

 

「それに……僕と違ってデュエルの腕だって凄く強いんだ。セキュリティ内の検挙数でも毎回トップ10に入る人なんだよ。」

 

「トップ10ですか!それは確かに……とてもお強いんですね、オルゴ先輩!」

 

その言葉を聞きオルゴは恥ずかしさで頬を染める

 

「いやん///そんなに褒められちゃうと私……穴にぶちこみたい……じゃなくて入りたくなっちゃうわ!」

 

そう言い壁を力任せにドンッと叩きつけるオルゴ。案の定壁には大きなへこみが出来る。

 

「あんな感じに褒めすぎると回りの物を無差別に破壊するから注意してね。」

 

「てかその忠告遅くないですか!?」

 

そんなやり取りをしていると、

 

「おいおい夏目!お前だって輝かしい記録を持ってるだろ?」

 

ある一人の男が椅子に座りながらそう問いかける。

 

「……赤鵺(あかや)ちゃん、それは別に言わなくてもいいことでしょう?今の夏目ちゃんには関係ない事「関係なくねぇだろ?ちゃんと知っとかないと勿体ねぇって!」……はぁ。」

 

そう言いため息をつくオルゴと、愉快そうに喋る赤鵺という男。

 

「え!夏目先輩も何か持ってるんですか記録!知りたいです!」

 

と、無邪気に言う桃

 

「……………」

 

対する夏目は、苦い顔をしたままだ。これから自分の……いわば武勇伝を語られるのに、その顔は重く暗い表情をしていた。

そして赤鵺がヘラヘラ笑いながら喋りだす。

 

「そいつはセキュリティ史上初、5年連続で検挙数1位を取った超敏腕セキュリティだったんだぜ?閃光のデュエリストなんて大それた通り名がつくくらいな」

 

その言葉を聞き、桃は先程の比じゃないくらいに驚愕する。

 

「えぇ!そ……それって物凄い快挙じゃないですか!そんなの……下手すりゃデュエルチャンピョンになるくらい難しいんじゃ……」

 

と、桃が一人で興奮していると

 

「2年前まではね。今は検挙数はビリっけつだよ。」

 

という夏目の声で、桃の興奮は一気に冷める。

 

「え?……でもそんな……急にビリっけつになるなんて……」

 

という桃の言葉に赤鵺は そうなんだよ! と、相づちを打つ

 

「そこが謎な所なんだよ。2年前までは無敵のセキュリティ最後の切り札だった奴が一瞬で……ポン!ビリっけつだ。そいつが気になって気になって……そろそろ教えてくれませんかねぇ?夏目さん。」

 

と、赤鵺がヘラヘラ笑いながら夏目に言う。

 

「……別に、君には関係ないだろ。いいから早く職務に戻ったらどうだい?赤鵺君。」

 

「ちぇ、つまんない先輩。」

 

そう言い席に戻りつまらなそうにパソコンを弄る赤鵺。

 

「……あ、あの……すいません、何か一人で勝手に興奮しちゃって……」

 

と、申し訳なさそうに言う桃。夏目はそんな桃を見て表情を和らげる。

 

「うんうん、別に気にしてないよ。あ、オルゴ先輩もすみません、気をつかって頂いて。」

 

その言葉にオルゴも

 

「何言ってるのよ、こういうのはお互い様でしょ♥」

 

と言いウィンクをする。

 

「あ……アハハハハ……」

 

と、苦笑いする夏目。

 

「あ、それじゃあ私も仕事に戻るわね」

 

それじゃ……と言い、彼女も自身の席へ戻る。

 

「……よし、それじゃあこれから事務仕事について……」

 

と、夏目が言おうとしたその時

 

ガチャン!

 

「おぉいお前ら、仕事だ仕事。」

 

そのやる気のない声と共に、この部隊の隊長…神山大地がその姿を表した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テロリストのアジト制圧……ですか?」

 

その問いに大地はあぁと答えこう続ける

 

「どうやら最近起きてるリボルバー強盗団の無差別強盗に便乗して各地で事件を起こしてる奴らがいるらしい。

けっこう大規模な組織らしくてな……捜査員の奴らも手をこまねいてた所で、どうやら奴らの一人に発信器を取り付ける事に昨日成功したらしくな。アジトがさっき判明したってんで各隊長に召集がかかったって訳だ。そんで各部隊から5人ずつ計60人の精鋭部隊を作ろうって話なんだが……今ここ何人いる?」

 

「えっと……私と桃ちゃんとオルゴ先輩と赤鵺君と…先輩で丁度ですね。」

 

「……おい、他の奴らはどうした。」

 

と、こめかみを押さえながら聞く大地。

 

「さぁ?あの子達自由奔放だし、何処にいるかなんて分からないわよ。」

 

オルゴのその言葉を聞き深いため息をつく大地。

 

「結局俺が働くのかよ……」

 

「あはははは……」

 

「ま、どんまいってことだよ隊長さん。」

 

愛想笑いしか出来ない桃と楽しそうにニヒヒと笑いそう言う赤鵺。

 

「まぁしょうがないですよ隊長。今までサボってたつけが回ってきたと考えて下さい。それで、作戦開始は何時ですか?」

 

あぁ……といい大地が腕時計を確認する。

 

「作戦決行は今夜7時だ。それまでに各自準備をしとけ。」

 

「「「了解!」」」

「えっ!えとぉ……了解!」

 

そう言い5人は各自準備を始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クックックッ、次は誰にこいつを渡そうか………」

 

この作戦の裏に潜む悪意に気づかぬまま………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近の楽しみは積んでいたアニメを消化する事……でも後少しでテストだよチクショウ!


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第12話 降臨せし大地の騎士

はいどうもみなさんこんにちは!コズモ君vです。
いやぁあれですね、もう忙しすぎてヤバイですね。うん、ヤバイ。
これ今年中に30話更新無理なんじゃねぇのかな……夏休み頑張ろ
でわでわ


「第1部隊、配置完了しました。」

 

「第5部隊配置完了。」

 

「第10部隊も完了ッと。」

 

 

とある廃工場…夜もふけて現在の時刻は7時になろうとしていた。

その廃工場は普段は人っ子一人も近づかないような場所なのだが、今日だけは違った。

闇夜に紛れ、何人ものセキュリティ達が建物を取り囲んでいたのだ。

そしてそのセキュリティの隊員の中で、一際濃い色の服を着た者がいた。

 

「五津川隊長!」

 

と、ある隊員が五津川の名を呼び、近づく。

五津川はその声に あぁ と返事をしながらその隊員へ振り向く。

 

「どうした?何か問題でも起きたか?」

 

その隊員はその言葉を聞き、言いにくそうに顔を泳がせる。

 

「問題というか……その……まだ来ていない部隊があって……」

 

「はぁ!!?何処の部隊だ!その腑抜けた部隊はぁ!」

 

と、物凄い剣幕で迫る五津川。

その剣幕に押されながらも、その隊員は口を開く

 

「それが……」

 

と、その時、ある1台の車が猛スピードで廃工場前に突っ込んできた。

その車は五津川にぶつかる寸前でドリフトをし、その動きを停止させる。

 

「ちっ、この部隊だな遅れてきやがったのは!」

 

そう言い五津川はドスドスと車の方へ歩き

 

「こらぁ!出てこい腑抜けども!」

 

そう言い勢いよく車のドアを開ける。

 

「うっぷ……おい夏目ぇ、もうちょいスピード押さえろ……うっぷ」

 

「ちょ……夏目先輩………まじでこんなのこれっきりにしといてほしいっす……うっぷ」

 

「もう……ジェットコースター乗りたくない…うっぷ」

 

「あら、私は結構楽しかったわよ?」

 

地獄絵図が広がっていた。

 

「ほらほら、みなさん立って下さい!……あぁ、もう10分も過ぎちゃってる……もう、こんなんだから問題のある部隊だって言われちゃうんですよ。」

 

と、運転席から聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「あ!お前夏目汐里!!」

 

「あ、五津川隊長じゃないですか、ご苦労様です。」

 

五津川の声を聞き、夏目は笑顔で敬礼する。

その敬礼を見ていくらか毒気の抜かれた五津川は夏目にこの惨状について聞く

 

「そんで……どうしてこんな状況になってんだ?」

 

「あぁ、先輩が集合場所に何分待っても来なかったんで探してたんですよ。それで時間がなくなっちゃったんで」

 

「こんな乱暴な運転になった……と。ったく、相変わらずぶっとんだ部隊だよ。」

 

そう言い頭を押さえる五津川。

 

「もういい、早く降りろてめぇら。作戦を説明してやっから。」

 

「「「はぁい……うっぷ」」」

 

そう言い3人+2人は車を降り、五津川の説明を聞く。

 

「いいか、まずは状況の整理だ。」

 

そう言い五津川は廃工場の見取り図を取り出す。

 

「奴らは今酒盛りをしてる。こいつは偵察班からの情報だ。どうやらどっかの金持ちの家から相当の金銀を奪いとったらしい。ま、狙うにはもってこいの状況だがな。」

 

そう言い五津川は廃工場の正面の出口を指差す。

 

「俺ら合同部隊のうち3分の2はここから正面突入し、各自デュエルにて奴らを拘束する。」

 

「けどそれじゃあ逃がしてしまった敵が裏口とかから逃げちまうんじゃ……」

 

「いや、その心配はねぇ。」

 

そう言いマジックを取り出した五津川は廃工場の周りに赤い×印を3つ書き始める。

 

「偵察班の事前情報じゃ裏口はこの3つしかない。そこに残り3分の1の部隊を配置させる。これで奴らは袋のネズミ状態……後はゆっくり物量で押しきるだけだ。」

 

五津川の説明をしっかり頭に入れた夏目達。そして五津川が夏目達の配置を説明する。

 

「そんでお前らの配置だが……大地、オルゴ、夏目、お前らは正面からの突入部隊を任せたい。やれるな?」

 

「拒否権があるなら発動してえが……しょうがねぇか。」

 

「私頑張っちゃう♥」

 

「はい…任せてください。」

 

それぞれ返事をする夏目等。

 

「じゃ、残った俺らは」

 

「あぁ、お前らは裏口に待機してろ。」

 

「だ……大丈夫かなぁ…もし沢山押し寄せてきたら……」

 

そんな桃の弱気な言葉にオルゴが胸を叩きいう

 

「そうならない為に私たちが一人でも多く奴らをぶちのめすのよ。だから安心しなさいな。」

 

「……はい。」

 

桃はオルゴの力強い言葉にうなずく。

 

「よし、じゃあこれで……「いや、待て。」あ?何だよ大地。」

 

突如声を発した大地に怪訝な目を向ける五津川

 

「俺は夏目が突入部隊に行く事に反対だ。」

 

「なっ!……先輩、何を言って……」

 

大地の言葉に目を見開きながら問う夏目。

 

「お前が行った所で何になる。夏目を行かせるくらいならおれは赤鵺が突入部隊に居る方がいいと思うがな。」

 

そう自分の意見を出す大地。その言葉に対して五津川が口を開く。

 

「まあそうしてぇのは山々だが、もし万が一腕の立つ野郎が裏口から逃げていったら並の奴らじゃ止められねぇ可能性があるからな。お前らの部隊は問題はあるが……悔しい事にほとんど全員が隊長級のデュエルの腕前を持ってやがる。だから赤鵺には裏口に回ってもらった方がいいんだ。」

 

「……だが夏目は」

 

と、大地がまた何か言おうとした瞬間

 

「先輩!」

 

と、夏目が大地に近づき

 

「私……やれます。口だけじゃありません……ですからどうか……私にチャンスを下さい!」

 

「……………まぁこうするしかねぇならしょうがねぇな。」

 

「っっ!ありがとうございます!」

 

そう言い頭を下げ大地に例を言う夏目。

 

「……話は済んだな。それじゃあ30分後に作戦を結構する!」

 

その言葉を聞いた夏目達第3部隊は、各々の持ち場につく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がははははは!!今回は大量だったなぁ!」

 

「そうですねボス!こんだけありゃしばらくは贅沢できやすよ!」

 

「ほんと、ボスに付いてきてよかったぜ!」

 

「おう!もっと崇め奉れお前らぁ!!」

 

埃があちこちに舞う廃工場内の一室……無残に壊れたスクラップ類があちこちに積み重ねられており、それがもうここには夢の跡しか無いことを表していた……そんな廃工場内に、今再び活気が集まっていた。

沢山の男達が、この廃工場で酒を飲んでいたのだ。

中央のスクラップの山の上には大きながたいをした大男がおり、その周りではその男の部下と思われる者達が酒を溺れるように飲んでいた。

大男はそんな部下達を見下ろしながら自身も酒を浴びるように飲んでいた。

 

「(クックックッ、ようやくここまでの規模になりやがった。今までは小さな銀行から金を掠めとる程度だったが今じゃ一発でがっぽりよ!このままいきゃあこの国……いや世界に名をはせる大組織にだってなれる!そうすりゃ……俺の天下の始まりだぁ!)」

 

そんな事を心の中で思い、ほくそ笑む男。

するとその時

 

ガシャン!

 

と、正面のシャッター破られると同時

 

「セキュリティだぁ!大人しくしてろ!」

 

その言葉と同時に無数のセキュリティの隊員がその場へ流れ込んできた。

セキュリティ達はワッカのついたワイヤーのような物を次々とテロリスト達に投げ、逃げられないようにする。

 

「さぁ、デュエルだ!」

 

テロリスト達も最初はあたふたしていたが、ある程度思考がクリアになってくると上等だと言わんばかりにディスクを展開させる。

 

「「デュエル!」」

「「デュエル!」」

「「デュエル!」」

「「デュエル!」」

「「デュエル!」」

 

続々とデュエルが開始される。

 

「あらぁ、そんな華奢な体で大丈夫あなた?」

 

「うるせぇ!てめぇがバケモンなんだよ!」

 

「……決めた、てめぇはぶち殺す。」

 

「へ、ラッキー♪こんな弱そうな奴が相手だなんてな」

 

「あぁ…まあお手柔らかに頼む。」

 

「「デュエル!」」

「「デュエル!」」

 

と、オルゴと大地もデュエルをするなか

 

「(どうしよう……やる相手が居ない……)」

 

夏目は辺りを見渡してみる。

何処を見ても余ってる相手等居なくみなセキュリティ相手に奮闘していた。

 

「(ちょっと居づらいなぁ……)」

 

そんな事を思っていると、何者かが二階へ逃げていくのを目撃する。

 

「(ん?あれ……確か……テロリスト達のボスだ!)」

 

「おい夏目ぇ!デュエルしねぇなら後ろに下がりやがれ!」

 

と、夏目の後ろから五津川がもの凄い剣幕で怒鳴るが

 

「五津川隊長!僕を二階に飛ばして下さい!」

 

「あぁ?何でだ「二階にテロリスト達のボスが逃げるのを見たんです」なっ!……ったく、何で残ってる奴がてめぇしかいねぇんだ!」

 

頭をかきながら言う五津川。

 

「おいお前!今お前のターンだろうが!さっさとしろ!」

 

と、ターンが止まっているのをテロリストに咎められる五津川。

 

「ちっ、お望み通り進めてやるよ!シンクロ召喚!」

 

五津川は力強くカードをディスクに叩きつける

 

「輝竜星ーショウフク!」

 

呼び出されたモンスターは金色の輝きを放ち、その竜のような体をうねらせ周囲へ圧倒的存在を示していた。

 

「夏目ぇ!」

 

その呼び掛けに夏目は頷くとその場で跳躍しショウフクの頭に乗る。

 

「飛べ!ショウフク!」

 

ショウフクはその体をうねらせると廃工場の中を縦横無尽に飛び回る。

夏目はショウフクが二階へ近づく瞬間を狙う。

機械のように規則的に動かないショウフクの動きを捉えるのに苦労する夏目。しかしショウフクの体と二階の位置がぴったり重なった瞬間……

 

「………今!」

 

夏目は廃工場の二階へ跳び移る。

 

「五津川隊長!絶対捕まえてみせます!」

 

そう言い夏目はテロリストのボスを追いかける。

 

「……ふん、当たり前だ!」

 

そして五津川も目の前のデュエルに集中する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ………」

 

夏目は錆び付いた廊下をかれこれ10分ほど走り続ける。

しかしそれでもボスに追い付く様子は無い。

 

「くそ!一体いつになったら追い付くんだ!!」

 

したたる汗を拭いながら夏目はさらにペースを上げ走る。

それから5分程経った時

 

「あった!」

 

夏目は角を曲がった先にあった扉を見ると歓喜の表情を見せ、ドアノブを捻る

しかしその時

 

「……キャー!」

 

と、中から女性の悲鳴が聞こえてくる。しかもその声に夏目は聞き覚えがあった。

 

「まさか……桃ちゃん!」

 

夏目は急いで中へ入る。

中にはディスクをつけ、勝ち誇った笑みを浮かべる大男と、地面に倒れ伏す桃の姿があった。

 

「桃ちゃん!」

 

夏目は桃に駆け寄り、その体を起こす。

 

「す、すいません先輩……外で怪しい人物を目撃して……後をつけたら把握していない裏口を見つけて……中に入ってみたらこの男がいたので、デュエルを仕掛けたんですが……私では……倒せませんでした!」

 

桃は悔しそうに叫びながら、自身に起きた事を話す。

 

「全くよぉ!そいつのせいで新手が来ちまったよ……なぁおい、どうしてくれんだぁ?あぁ!?もうお前を人質にするしかねぇじゃねえかよぉ!!」

 

そして奥の方で、体から闇の瘴気を放ちながら現れるテロリストのボスである大男。夏目はその放たれる闇の瘴気を見て、この男がただ者のデュエリストでない事を悟る。

 

「……前までは護ろうと思っても護れなかった。僕の力が足りなかったせいだ。」

 

でも今は違う……と、夏目はディスクを構える。

 

「今は護れる力がある!君を倒し、確保させてもらう!」

 

「そ…そんな夏目先輩ダメです!この男は次元が……」

 

「やれるもんならやってみろやぁ!!」

 

と、桃がなにかをいいかけるが大男の声にかきけされる。そして二人はディスクを構えて……

 

 

「「デュエル!」」

 

 

 

夏目

LP4000

 

 

大男

LP4000

 

 

マスタールール2 スタンバーイ

 

 

「先行は貰うぜ、俺のターン!ドロォー!!」

 

 

大男

LP4000

手札5枚→6枚

 

 

大男は手札を見て、ニヤリとほくそ笑む。

 

 

「俺は手札を1枚墓地へ送り、THE トリッキーを特殊召喚!」

 

 

THE トリッキー

効果モンスター

星5/風属性/魔法使い族/攻2000/守1200

(1):このカードは手札を1枚捨てて、手札から特殊召喚できる。

 

 

大男の場にポンッと煙が立ち、その中に奇妙な格好をした奇術師が現れた。

 

 

「さらに、俺は手札からゾンビキャリアを召喚!」

 

 

ゾンビキャリア

チューナー・効果モンスター

星2/闇属性/アンデット族/攻 400/守 200

(1):このカードが墓地に存在する場合、

手札を1枚デッキの一番上に戻して発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、

フィールドから離れた場合に除外される。

 

 

続いて現れたのは、体中が腐敗している、見ただけで嫌悪感を示すような見た目のモンスターだった。

 

 

「俺はレベル5のTHE トリッキーにレベル2のゾンビキャリアをチューニング!」

 

「!1ターン目からシンクロ召喚だって!」

 

ゾンビキャリアが2つの輪となりTHE トリッキーを包み込む

 

「シンクロ召喚!目の前の障害を凪ぎ払え!Xセイバーウルベルム!」

 

現れたモンスターは二刀の刀を背中に差した、傷だらけの戦士だった。

 

 

Xセイバーウルベルム

シンクロ・効果モンスター

星7/地属性/戦士族/攻2200/守1300

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

相手の手札が4枚以上の場合、このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、

相手の手札をランダムに1枚選んで持ち主のデッキの一番上に戻す。

 

 

「俺はカードを一枚伏せて、ターンエンドォ!」

 

 

大男……LP4000

手札……2枚

セット……1枚

 

フィールド

Xセイバーウルベルム……ATK2200

 

 

「僕の……ターン!」

 

 

夏目……LP4000

手札……5枚→6枚

 

 

「えっと………」

 

夏目は手札にあるカードを見てどんな戦術をするか考える。何て言ったって今の夏目のデッキは今までの寄せ集め等ではないちゃんとしたデッキなのだ。

カードの効果等は事前に覚えたがそこからどんな戦術に派生させていくか……それはまだ未知数だった。

 

「……よし、これで行こう。」

 

夏目はある程度の動きが決まったらしく、動き始める。

 

「僕は手札から魔法カード、予想GUYを発動する。」

 

 

予想GUY

通常魔法

(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。

デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「このカードの効果により、僕はデッキからチューン・ウォリアーを特殊召喚する。来てくれ、チューン・ウォリアー!」

 

 

チューン・ウォリアー

チューナー(通常モンスター)

星3/地属性/戦士族/攻1600/守 200

あらゆるものをチューニングしてしまう電波系戦士。

常にアンテナを張ってはいるものの、感度はそう高くない。

 

 

夏目のフィールドに火花が散ったかと思うと球状のエネルギーが現れ、その中から赤色の戦士が現れる。

 

「さらに手札から音速ダックを召喚!」

 

夏目の場にバケツを頭に被った緑色のアヒルが現れる。

 

 

音速ダック

通常モンスター

星3/風属性/鳥獣族/攻1700/守 700

音速で歩く事ができるダック。

そのすさまじいスピードに対応できず、コントロールを失う事が多い。

 

 

「低レベルモンスターを幾ら並べた所で……ってまさか!」

 

大男は驚愕の表情で夏目を見つめ、夏目はそれに行動で答える。

 

「スゥ……ハァ……僕はレベル3の音速ダックに、同じくレベル3のチューン・ウォリアーを……チューニング!」

 

チューン・ウォリアーの体にある計器が限界まで振り切ったかとおもうと、その体が3つの光の玉になり、音速ダックの上で輪になる。

 

「誇り高き疾風の騎士よ、今大地の希望をその身に宿し、全てを穿て!シンクロ召喚!」

 

夏目のフィールドが一際まばゆく輝き、そのタイミングで夏目は勢いよくカードをディスクに叩きつける。

 

「現れよ、大地の騎士 ガイアナイト!」

 

 

大地の騎士 ガイアナイト

シンクロモンスター

星6/地属性/戦士族/攻2600/守 800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 

 

段々と光が薄まり、夏目の場を直視できるようになった時……夏目の場には鮮やかな鎧を纏い、主人と同じ鎧にその身を包んでいる馬に跨がった一人の騎士が居た。

 

「こ……攻撃力2600?!星6だろそいつ!」

 

自分のモンスターより攻撃力の高いモンスターを見て、目に見えて焦る大男。

 

「いくよ……ガイアナイト!」

 

夏目の言葉にゆっくりと頷き、ウルベルムと対峙する。

 

「僕はガイアナイトでXセイバーウルベルムに攻撃!」

 

ガイアナイトは馬を駆りウルベルムに急速に接近する。

そして手に持つ槍を一旦後方へ引き……思いっきり突き出す

 

大地槍殺(ガイア・シェイバー)!!」

 

突き放たれた槍はウルベルムのあらゆる防御を貫いてその身を突き破る。

 

「っぐわぁぁぁ!!」

 

 

大男……LP4000→3600

 

 

大男の体がおよそ3mほど吹き飛び、壁に激突する。

 

「さぁ、桃ちゃんの仇、とらせてもらうよ!」

 

夏目は堂々と、そう宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでもいいけどコード・トーカーデッキ作りたい


次回予告
ガイアナイトの攻撃により優勢にたった夏目さん。
しかし、大男の切り札はウルベルムではなかった。
突如として現れた凶悪なモンスターによって、夏目さんは窮地に追いやられてしまう。
「お前は俺には勝てない。さっさと闇に呑まれろ!」
「僕は諦めない。例え、ライフが1になったって!」

次回、悪魔の化身 ブラッドメフィストvsガイアナイト
デュエルスタンバイ!


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