AIは夢を見るのか (不知火 椛)
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登場人物紹介

第12世代M型(男)code;tw16913 ハルキ

12世代目にAIを搭載したアンドロイド。現行の最新型は16世代。ある日突然夢の様な物を見るようになった。それを見ている間は反応しないので心配されメンテナンスのため倉島重工へ行く事に。そこで待ち受けたものとは?

 

第18世代F型(女)code;et11406 ナルミ

18世代目のAIを搭載したアンドロイド。現行の最新型は20世代。実は生産当初から深刻なエラーを抱えているが、何と隠して過ごしてきた。感情表現が豊かで他のアンドロイドとは一線を画す。

 

第11世代M型(男)code;el28036 タケル

11世代目のAIを搭載したアンドロイド。ハルキの1つ前の型のアンドロイド。なぜかF型のアンドロイドの評価を行っている。面倒見が良く周りから慕われている。ハルキとは古い付き合い。

 

第1世代F型(女)code;01(初期(ファースト)ロット) ミサキ

ハルキが倉島の研究所で再起動させてしまった。アンドロイド。初期ロットのためか色々とすごい。ナルミの様に感情表現が豊か。クルミ曰く、双子みたい。REIとは仲がよろしくない、と言うよりも敵対している様子?博士は複雑そうである。クルミとミライの姉であるが若干ポンコツぎみ。だが、処理スペックは最新型の能力を軽く凌駕するほどに高性能。オーバースペックの物を積み過ぎている。

 

第1世代F型(女)code;02(次期(セカンド)ロット) クルミ

ナルミとは友達である。ハルキは倉島重工で会うまで謎のアンドロイドと思っていたが解決した。性格はお姉さんと言った感じ。お茶目が行き過ぎて時に大変な事になるが自力で何とかしてきた。ミサキ同様第1世代のアンドロイドのためすごい。

 

第1世代F型(女)code;03(末期(サード)ロット) ミライ

第1世代の最終ロット。一番下の妹とあってか、姉たちよりもしっかりしている。博士曰く、反面教師にして学習したのでは?とのこと。誰の趣味化はわからないが童顔で幼く見える。可愛いもの好き、普段の行動とは考えられないくらいデレる。姉たち同様に高性能のスペックを誇る。

 

倉島 忍(くらしま しのぶ) 倉島重工代表取締役

倉島重工の社長。当の本人も技術者である。アンドロイドの開発に力を入れている。ミサキ、クルミ、ミライの第1世代はオリジナルの3体しか存在しない。

 

開発code;REI 

第2世代~のAI及びアンドロイドを統括するシステムである。システムではあるものの、本人もAIを搭載しているため、性格がありわがままである。その性格故に第1世代のミサキ、クルミ、ミライとはよく衝突する。難点はあるものの仕事はしっかりとこなすので何も言えない。



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第一部
1話 日常と夢見


「ほら、行くよ・・・ハル君!」そう呼ぶ声があった。

 

夢を見ていた気がした・・・そう、子供の頃姉さんに連れられ遊びに行く夢だ。

子供心にとても嬉しかったのを覚えている。遊びに行った公園は確か・・・

 

「――おい、ハルキ、ハルキ!」そう呼ぶ声を聞き、我に返る。

 

「え?あ、うん。どうしたの、タケル」ひとまず僕は呼びかけに応答する。

 

「どうしたの?じゃねーよ!一瞬、本格的に壊れたかと思ったぞ。」とタケルに突っ込まれる。

 

「いや、・・・その、ごめん・・・夢を――」と答える事が出来ずに僕は謝る。

 

「夢?そんなわけないだろ?お前、本当に大丈夫か?人間ならともかく()()()()()()の俺たちが見るわけないだろ?大感染の時みたいに変なのに感染とか・・・じゃないだろうな?」と心配しているタケルに

 

「大丈夫だよ。システムチェックに何か引っかかっているわけじゃないし、問題が報告されているわけでも無いから、タケルが神経質になりすぎなだけだよ。」と笑って返す。

 

大感染――かつて第六世代が感染した

artificial intelligence virus 通称AIV 

AIにのみ感染するウイルスで当時はパニックに陥るほどに混乱した。理由はメインのプログラムの改変と改変不可能とされていた安全装置(リミッター)の解除だったのだ。本来AIはAI統括システム――開発code;レイが一括管理していたのだが、感染した第六世代のアンドロイドには開発者権限(マスターコード)が使えなかったのである。開発元の倉島重工は事態収拾のため、開発中だった第八世代のプロトタイプと発売済みだった第七世代そして、第一世代(オリジン)と言われる3体が投入、即座に事態を収拾させた。即座に対応したと言えど、被害はあった。死者1名、負傷者(重症102名、軽傷1564名)、監禁被害者2万3078名、拘束被害者7万8419名――総被害者10万3164名第六世代アンドロイド―破壊措置1475体、部分損傷8733体、機能停止及び無力化2万1451体、決して軽い被害とは言えなかった。安全と言われていたアンドロイドの信頼を失墜させるには簡単な出来事であった。

 

「そー言って、何か変なのに掛かってるんだぞ~」とタケルは恐ろしいことを言う。

 

「嫌なこと言うなよ、怖くなってくるじゃないか」と言った。

 

「いやいや~、こう言うときの俺の予感は当たるんだよ。」自信満々に言う。

 

「おいおい、そう言って本当になったらどうするんだよ。恨むからな。」と言うと。

 

「ははは、ま、冗談だけどな~」と言って茶化した。

 

「たちの悪い冗談はやめてくれよ。本当に不安なんだからな。」とトーンを変えて言う。

 

「悪い悪い、でも、色々とおかしかったぞ?大丈夫か?」と先程とは違い真剣な目になる。

 

「大丈夫だって。」と大丈夫アピールをする。

 

「まあいいや、あんまりくどいとあれだしな。」とタケルは引き下がる。

 

と、2人が座っていたテーブルに

 

「やっほー、2人ともそんな所で何やってんの?」と明るい声が掛かった。

 

「いや、聞いてくれよナルミ。それがよ、ハルキの奴がさおかしいんだよ。さっき呼びかけても上の空でさ~」とナルミに話しだしたのだ。

 

「ダメだよ~、ハル君無理なんかしたら~」と注意が飛んできた。

 

「はははは、大丈夫だよ。無理なんかしてないって、システムチェックも大丈夫だったし、タケルが誇張し過ぎだったんだって。」と笑って返す。

 

「そうなの?それならいいんだけど・・・」と少し安心した様に言う。

 

「そうそう、タケルが心配し過ぎなんだって。」と笑って返す。

 

「で、なんでこんな所に?」と聞いてきた。

 

「ああ、いつものアレだよ。」

 

「ああ~、アレね・・・。」と微妙な表情で答える。

 

アレとはタケルが何故か行っている女性型アンドロイドの評価である。まず、大前提としてわかって欲しいのがタケル自信もアンドロイドである。にもかかわらず、TAKERU@TELと言うハンドルネームで新作の女性型アンドロイドの評価を行っており、何故かその評価が好評なのである。その理由はよくわかっていないのだが、ユーザー曰く、「一番評価が分かりやすい」や、「どのアンドロイドにするか非常に参考になった」、「TAKERUの評価を待ってからアンドロイドを買う。」と言うユーザーまで居る始末である。(無論高評価を貰っているのは大半が男性ユーザーなのは言うまでもない。)本人曰く、「みんな俺の意見がわかる奴は浪漫をわかってるな!流石だぜ兄弟!」と意味不明の供述をしており、実際の所は謎である。しかし、その評価はメーカも無視できない規模になっており、直々に交渉に来る始末である。(本人は断ってはいたが)

 

「なるほど、だからハル君も上の空だったんじゃないの~?」とタケルの方を見るナルミ。

 

「なっ!そんなことないよな!なあ、ハルキ!」と必死に言ってくる。

 

「あははは。」と笑って返す。

 

「うう、否定も肯定もされなかった・・・だと!?」とガックリとうなだれた。

 

「ほらやっぱり、だからそうだって言ったのに。ね、ハル君?」と顔をのぞかせて来た。

 

「あ・・・、うん。」と一瞬夢の姉と重なって見えたが、何とか返した。

 

「(え?姉ちゃん?)」とまた考え込む。

 

「ハ、ハル君?やっぱり、ハル君どこかおかしいんじゃない?一回本格的にメンテ行った方がいいと思うよ。」とナルミもそう言いだした。

 

「なあ、やっぱりこいつ今日変だろ?明日でもいいから行って来いよ!悪い事は言わねえから。」とタケルも便乗し言ってきた。

 

「う、うん。2人がそう言うなら、明日辺りにでも行って来るよ。」とハルキは折れた。

 

「そう、ハル君ちゃんと――」とナルミが言葉を紡ぐ事は出来なかった。

 

「ナ、ル、ミ~」とナルミに飛びかかって行く影があった。

 

「ク、クルミ姉!?」とナルミは飛びかかってきた人物に声を掛ける。

 

「そうだよ、あなたとみんなの頼れるお姉さん!クルミさんだよ~」と明るく言った。

 

「あ、クルミさんこんにちは。」

 

「クルミさんちーす。」と2人ともあいさつした。

 

「タケルもハル君もこんにちは。3人居るって事は・・・タケルの新作アンドロイドの評価を先に聞いてたのかな?」と笑いながら聞いてきた。

 

クルミさんは神出鬼没で普段は何をやっているかナルミも知らないらしい謎多きアンドロイド。実際タケルも何世代目かはわからないらしい。が、特に怪しいと言う訳でもないので親しくしている。

 

「私もさっき来たばっかりなんです。って、聞いてよクルミ姉。ハル君が少しおかしんだよ!」と早速言ってしまった。

 

「ん?どうしたんだい?」と聞く。

 

「ん~、上手く言語化出来ないんだけど、何か・・・」と言うと。

 

「そうなんっすよ。何か上の空みたいな感じで。」とタケルも言う。

 

「そうか、2人ともそう言うとなると、確かに何かありそうだね。」とクルミは考え込む。

 

「一応完全スキャンとログを洗ってみたんですけど。不具合も上がって来なくて何ともないんですよ。」と結果だけ伝える。

 

「ちょっと、ログ見せてくれる?」クルミさんが言った。

 

「はい、これがログのデータです。」と言ってデータを渡す。

 

「どれどれ、そうね。見た感じは――問題なさそうね。」とクルミさんに言われる。

 

「ですよね?ログに不審な所もないし、2人の心配し過ぎなんですよ。ねえ、クルミさん?」とハルキはクルミに聞くが

 

「でも、ちょっとメモリが怪しいわね。だから、明日ここにいらっしゃい。倉島の紹介状あげるから、ちゃんと来るのよ。」と言ったのだ。

 

「え?もしかして、倉島重工の本社の紹介状ですか?」と聞いてみる。

 

「そうよ、丁度知り合いが居てね。あの人なら受け持ってくれそうだし。大丈夫、周囲から天才って言われてるくらいだから凄腕よ。」と言った。

 

「は、はあ。」とハルキは曖昧に頷く。

 

ナルミもタケルも突然の話に着いていけていない様だ。まあ、俺も着いていけてないんだけど、誰かHELP!

 

「まあ、そう言う事だから、明日倉島重工の本社のホールに来ておいて、なるべく午前中がいいわ。開いてる?」とクルミさんは聞いてきた。

 

「あ、はい。明日は大丈夫です。午前中ですね。」とスケジュールに記録する。

 

「ホールに着いたら受付に私の紹介で来たって言ってもらえれば大丈夫だから。」そう言うと

 

「はい、じゃあ、この話はおしまい!で、タケルは今回の評価どんな感じなの?」とすぐにクルミさんは話題転換をした。

 

「あ、ああ。聞いてくださいよ!今回のやつはやばいですよ。気合入れて評価しましたよ!」とタケルは我に返り今回の評価について熱弁を始めた。

 

「一時はどうなるかと思ったけど、よかったねハル君」とナルミはそう言うとタケルの熱弁を聞き始めた。

 

「これは、いつまでかかるかな?」とハルキは苦笑いしながらタケルの熱弁を聞くのであった。

 

―――――

 

「(ここは?)」ハルキは休眠状態(スリープモード)の中なぜか目が覚めた。いや、目が覚めたと言う表現はアンドロイドにはふさわしくないが、他に形容できる言葉が見つからなかった。そんな不思議な空間で意識が覚醒した。

 

「倉島重工なのか?それにしても周りに何も無いような・・・」と辺りを見渡す。

 

目の前の建物は確かに倉島重工と表記されていた。辺りの光景が現在と異なっていることに首を傾げていると、突然建物から子供が2人出て来たのだ。

 

「ほら、ハル君、行くよ!どっちが速いか競争ね。じゃあ、よーい、ドン!」と姉らしき子供が小さい子にそう言うと走り出してしまった。

 

「あ、ミサキ姉ちゃんずるい!待ってよ!」と走って追いかけて行った。

 

「(人間の中のいい姉弟ってあんな感じなのかな。でも、それにしてもさっきハル君って・・・)」と先程の言葉に首を傾げた。

 

そう、ハルキはアンドロイドである。無論幼少期などあるはずもなく、記憶があるのは起動されてからである。それ以前の記憶などあるはずもなかった。

 

しかし、先程の2人の顔は霞がかったように思い出せない。

 

「(ただの偶然か?それとも、本当に何か・・・)」と深い思考の海に潜って行った。

 

――――――

 

System Start UP・・・ Waiting・・・ NowLoading・・・ Load Complete!

 

ハルキは起動した。現在の時刻は7時である。人間であれば普通の時間である。

 

「さて、今日が始まったか。午前中には倉島重工に行かなきゃいけないんだよな。」と今日のスケジュールに書き込まれた、午前中 倉島重工本社へと書かれたスケジュールをみる。

 

「あまり早すぎても迷惑だろうから10時くらいに行くか。」とそう決めると早速行動に出る。

 

まずは、現在のパラメータをみる。特に異常動作をしている部分は無い様だ。

 

「ひとまずは大丈夫かな?」と声に出して言った。

 

その後趣味である読書をし、(アンドロイドの趣味が読書と言うのも変ではあるが)時間を潰した。丁度9時半を過ぎたころ

 

「ん?ちょうどいい時間だな。」そう言い本を閉じ部屋を出た。

 

2話へ続く・・・



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2話 倉島重工

「さて、こっちの方に来るのは久しぶりだな~」そう言って辺りを見渡す。

 

現在ハルキが向かっている倉島重工本社は研究区と言われる区画に位置しており、倉島重工の他にも医療研究や他のアンドロイドの企業もここに研究所を構えている。

 

「ここを曲がってすぐだったな・・・」そう言い角を曲がると

 

ひと際大きな建造物が目に入ってきた。社名の所は倉島重工と書かれている。

 

倉島重工――アンドロイドのシェアNo.1を誇る一大企業で始めてAIを搭載したものを出して既に20年が経過した。一度は危機に陥ったがその後何とか持ち直し現在の状態を維持している。現在の代表者は倉島 忍(くらしま しのぶ)で倉島重工のアンドロイド研究の第一人者である。

 

「やっぱり、ここは大きいな。まるで夢の時と同じだ。」と言ってハッとする。

 

「(え?なんで今夢なんて言葉が・・・)」とそうこう言っているうちに本社の中に入っていた。

 

「本日はどの様なご用件でいらっしゃいましたか?」と受付のアンドロイドに聞かれた。

 

「あ、クルミさんの紹介で来るように言われました。」とハルキが言うと。

 

「え、クルミが・・・ですか?少々お待ちください。」とそう言うと何やら端末を操作しだした。

 

そうして、しばらく待っていると、

 

「お待たせしました、ハルキ様。本社本棟45Fにあちらのエレベーターからどうぞ。こちら、入館証となります、退館時に返却ください。」と言われカードを受け取る。

 

そして、言われた通りエレベーターに乗ると、自動で目的の階まで登っていった。ここのエレベーターは最新の自動エレベーターらしく、自動で人や物を運ぶ。一々ボタンを押す必要が無い。研究所などはこの方式を多く採用している。理由は表向きは部外者が立ち入った際の事故や、ケガの防止目的だが、本当の理由は、部外者が万が一立ち入った際の機密の漏えいの対策である。

 

「本棟45Fです。」とアナウンスがあり、扉が開く。

 

そして、エレベーターを降りるとすぐにホログラムで案内図が表示され、矢印が現れた。その通りに進んでいくと突き当りの部屋にたどり着いた。

 

「この部屋・・・なのか?」と扉の前で思案する事5分

 

「おっそーい!」急に扉が開いたかと思うとクルミさんが飛び出してきた。

 

「うおっ!びっくりした!」と外開きの扉にぶつかりそうになったので回避した。

 

「あ、ごめん!大丈夫だった?」とクルミさんは扉越しに顔を覗かせて言った。

 

「あ、はい。何とか大丈夫です。」と返事を返す。

 

「そう、早速で悪いんだけど、早く入って。」と手招きされる。

 

「は、はあ。わかりました。」とそう言われ部屋の中に入った。

 

「ちょっと特殊な所だけど、っとこっちよ。」と様々な機械が乱雑に置かれたり、積まれたりしている場所を抜けていかにも研究室と言った計器やモニターが並ぶ部屋に通された。

 

「ここよ、ちょっと待っててね。」とクルミさんはモニターのそばでホログラムキーボードを叩いている男性のそばに行き何か耳打ちしている。

 

そして、何か話した後戻って来た。

 

「ごめんね。今少し立て込んでるみたいで忙しいみたい。もう少ししたらひと段落つくらしいから、申し越し待っててくれる?」と聞いてきた。

 

「は、はあ。あの方は?」とハルキは先程の人物について聞く。

 

「ああ、あの人ね。あの人はここの代表取締役、倉島忍よ。」ととんでもない人物の名前が出て来た。

 

「え?ええ!?倉島氏なんですか、あの方が。」とハルキは驚いた。

 

それもそうだろう、確かにメンテをしてもらえると聞いたが、まさかそれがその会社の最高責任者とは誰も思うまい。

 

「えへへ、驚いた?凄いでしょ。」と自慢そうに笑った。

 

「いや、流石にスケールが大きすぎて少し戸惑ってます。」と正直な感想を述べる。

 

「まあ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。あ、しばらくこの辺見てても良いんだってさ、その辺の物いじったりしなければ触ってもいいんだって。どうせ動かないって言ってたから。」とそう言ったクルミさんは最初は明るく言っていたのだが、部屋の奥を見たときに寂しそうに言ったのだ。

 

「そうですか。それなら、この部屋はとても興味があるので少し見てみる事にします。」そう言うとハルキは広い部屋の中を見て回る事にした。

 

「そう、私は博士を手伝ってくるね。」そう言うと倉島氏の元へ戻って行った。

 

「あ、はい。」と返事をしてどんなものがあるか見て回る。

 

部屋の中は改めて見ると乱雑に物は積まれているがきちんと分類があるらしく、パーツごとに分類されているみたいであった。アンドロイドの足や手のパーツ顔から胴体、中身の基盤に至るまで様々なパーツが区分けされて置かれていた。

 

「意外に整理されてるんだな。」と言いながらどんどん奥に進んでいく。すると、

 

『この先の扉にはね――』ふと声が聞こえた気がした。

 

「え?」と声がした方を向いた

 

すると、そこには何故かそこだけ妙に物が片付けられていて部屋に出入りした跡があった。

 

何故かその部屋に引き付けられるように近づいて行った。

 

『この部屋の事は私たちの秘密だよハル君!』今度ははっきりと聞こえた。

 

「え?」その瞬間世界が暗転した。

 

―――――――

 

「ハル君、ハル君。ここは何をする部屋か知ってる?」とミサキ姉ちゃんが聞いてくる。

 

「え、そこは父さんが入っちゃいけないって言ってたよ。」とボクは言った。

 

「そんな事はいいの、ほらこっち、早くはやく!」ミサキ姉ちゃんは部屋に入ってしまった。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!ミサキ姉ちゃん!」ボクは追いかけてその部屋に入る。そこには――

 

3話に続く・・・



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3話 始まりの目覚め

「え?」急に意識が覚醒したかと思うと、いつの間にか先程見ていた部屋の中に居た。

 

辺りを見渡すと生活感がある部屋であった。その部屋のベットに一体のF型のアンドロイドが横たわっていた。埃の無い部屋でまるで眠っているように。

 

「こんな所にアンドロイド・・・?」と首を傾げつつも近づいていく。

 

そして、気がつけば手を伸ばせる位置にいた。そのまま見るだけに留まれば良かったのだが、ハルキは手を伸ばして()()()()()()()

 

System Reboot Please waiting ・・・ System Restart・・・ Warning! Memory Corruption・・・ Retry・・・ OK! Restart Sequence Complete!

 

そう、システム音が聞こえたかと思うとその子が起動した。

 

「おはようございます。初期(ファースト)ロットcode;01ミサキ起動します。」と言った。

 

「え?ファーストロット!?何でこんな所に!」とハルキは驚いた。と、同時に

 

External Connection Mainmemory No.7,No.13・・・No.16・・・Error can not be solved.

Release Memory Leak Resolution! ReLoading・・・OK!

 

「え。」と今まで見たことのない記憶が流れ込んできた。いや、閉ざされていた記憶が開かれたと言った方が正しい。()()()()()()()()()()

 

「み、ミサキ姉ちゃん・・・?」と声を掛ける。

 

「は、ハル・・・君?ハル君なの?」と先程起き上ったアンドロイドは声を発した。

 

しかし、次の瞬間

 

「あー、ハル君だ!もう、どこ行ってたの!探したんだよ!」と熱烈なタックルをかまされた。

 

「ちょ、あぶ――グボ!!」と突然のタックルを避けきれなかったハルキは突き飛ばされる。

 

「ハル君、ハル君、ハル君!」とハルキがミサキと呼んだアンドロイドは離れようとしない。

 

先程の騒ぎを聞きつけてか、クルミさんが駆けつけて来た。

 

「ちょっと、ハルキ君この部屋は・・・って、ミサキお姉ちゃん!?」クルミさんは飛び込んでくるも、ミサキの存在を確認すると、とても驚いた。

 

「あ、クルミちゃん、どうしたの~?そんなに驚いて...まるで、お化けを見てるみたいだよ。」とそうクルミを見てミサキは笑う。

 

「うそ、そんな・・・博士も無理だって言ってたのに。一体どうして。」そう言うとすぐに戻って行った。

 

「え、この状況をどうにか――わっぷ。ちょっとどいて。誰か助けて!」とハルキの助けを求める声は聞き届けられることはしばらくなかった。

 

――――――

 

「そんな、馬鹿な・・・」とクルミさんが倉島博士を連れて戻ってくるとミサキを見た博士はそう漏らした。

 

「何が馬鹿なの博士?変なこと言うのね。」とミサキは答える。

 

「ね、だから言ったでしょ。ミサキお姉ちゃんが起きたって。で、どうするの?」と倉島博士にクルミさんは問いかける。

 

「ひとまず、考える時間が欲しい、ミサキの事はクルミとミライに任せるよ。」とクルミさんに倉島博士はそう言うとハルキの方を向いた。

 

「すまないね、こんなに慌ただしい所を見せてしまって。」と博士は何故か謝罪から入った。

 

「い、いえ。とんでもありません。こちらこそ勝手に入り込んでしまって。あまつさえ、不用意な行動で博士を困らせる様な事を・・・」とハルキの方も謝った。

 

「いや、それに関しては感謝しているよ、何せミサキは・・・いや、今はよそう。」と倉島博士は言かけたが首を振り言うのをとどまった。

 

「は、はあ。それで、メンテは後日になりそうですかね。」とハルキは言ったが

 

「いや、一応この状態では仕事も満足にこなせなくてね。君のメンテナンスをして気分転換をする事にするよ。さ、来たまえ。ええっと・・・」と倉島博士は苦笑いすると、

 

「あ、はい。ハルキです。第12世代M型code;tw16913です。」とハルキは答えた。

 

「・・・ハルキ君か・・・これは、偶然か・・・?」と倉島博士は呟いたまま考え込む。

 

「あ、あの、博士、倉島博士!」とハルキは倉島博士に呼びかける。

 

「あ、ああ。すまない、少々考え事をしていた。」と倉島博士は答えた。

 

「博士今日はやはり、止めておいた方がいいのでは?」とハルキが問いかけるが、

 

「いや、大丈夫だ。っと、code;tw16913だったね。」とそう言い打ち込んでいく。

 

「はい、code;tw16913です。」

 

「ん、ふむ。・・・な、ん・・・いや。ええっと。確かに報告通り、メモリが少し・・・成程、メインメモリの1番~5番を換装しよう。そうすればこの問題も無くなるだろう。じゃ、そこに寝てくれないかい?」そう言うと倉島博士は診察台の様な場所を指差した。

 

「はい、わかりました。」そう言いハルキは台の上に寝た。

 

「じゃ、一回シャットダウンしてくれないかい?電源はこちらで入れるから。」そう言い台に寝たままシャットダウンを行った。

 

System Shutdown・・・ Save・・・OK!Power Off

 

「さて、換装作業を始めよう。」と一人になった倉島博士は作業を始めた。

 

「おや?いや、そんなはずは無いか・・・。」

 

――――――――

 

「ねえ、ハル君!ハル君!?しっかりして!」と悲痛な叫びが聞こえた。

 

「ミサキ姉ちゃん・・・僕は大丈夫だからさ・・・」とそう言ったボクの声は弱々しかった。

 

「ハル君!?ハル君!誰か・・・誰か!!」ミサキノの悲痛な叫びを最後にボクの記憶は途絶えた。

 

――――――――

 

Power On System Starting・・・OK! Load Complete! Hello!

 

「こんにちは。第12世代アンドロイドcode;16913起動します。」とハルキは起動した。

 

「やあ、ハルキ君調子はどうだい?」と目を開けると倉島博士が視界に入った。

 

「各種接続、デバイスの確認をしています。今しばらくお待ちください・・・。」感情の(こも)っていない返答が倉島博士に帰ってくる。

 

「おや、まだ起動作業中だったか。」と苦笑いを浮かべる。

 

すると、間もなくして

 

「倉島博士ありがとうございました。」とハルキは感謝の言葉を言った。

 

「いや、礼には及ばんよ。これも、責任の内だ。」と言われた。

 

「博士、今いいですか?」と一人女の子が入って来た。

 

「ああ、構わないよ、ミライ。どうした?ミサキに何かあったか?」と問いかける。

 

「いえ、ただ、ハルキさんに会いたいあいたいとうるさくて手に負えないのです。私たちではどうにもなりません。」とちらっとミライと言われたアンドロイドはハルキを見た。

 

「はあ、すまないがハルキ君。少し付き合ってもらえないだろうか・・・?」と若干疲れ顔の倉島博士がハルキを見て言った。

 

「はい。」ハルキにはここで断ると言う選択肢は浮かばなかった。

 

「では、向かうとしよう。REI後は頼んでいいかな?」とモニターの方へ博士が声を掛けると

 

「はい、後の事は開発code;REIにお任せ下さい。」と女の人の声がした。

 

「ああ、REIはね、ここで作られたアンドロイドの統括システムなんだ。他にも色々仕事を任せているAIだ。」と倉島博士は紹介してくれた。

 

「そうだったんですか。」

 

「さ、急がないとミサキに何を言われるかわからないからな。」とそう言い向かった。

 

「行ってらっしゃいませ。」そうREIの言葉に見送られ研究室を後にした。

 

その後ハルキは案の定ミサキに捕まり、日を跨いで帰る事になったのは別の話。

 

―――――――

 

その日の夜

 

真っ暗な研究室のモニタが突然点いた。すると、

 

初期ロットのcode;01ミサキが再起動、現在不具合もなく稼働している模様。これは完全に予想された計画とは外れた物である。また、これには第12世代code;tw16913ハルキが関係していると思われる。該当のアンドロイドに関して検索・・・該当なし・・・再度条件を変えて検索・・・ヒット。該当164件・・・なお該当にアンドロイドではなく人間が検索に該当、これを検証中...検証の結果イレギュラーとして認定。今後の対処を考える必要がある。現状は維持の方向で行動するものとする

 

――――第18次レポート 作成者・開発code;REI

 

そうして、また再び研究室に暗闇が訪れる。

 



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