仮面ライダーウィザード ~Magic Girl Showtime~ (マルス主任)
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第0話 プロローグ

今回はプロローグです。
物語は全体を通してウィザードメインで進行します。
アニメで絶望した皆様の涙を希望に変えることを約束します。
読みづらい文章かと思いますが温かく見守って頂けると嬉しいです。



 操真晴人は今も旅を続けていた。

ファントムとの戦いにも一段落つき、仲間達と別れて一人で旅に出ていた。

最初はコヨミの指輪を安全に保管できる場所を探す目的だったが、その目的も終わり、自分にとっての安息の地を探すものになっていた。

 だが、今回晴人は仲間の一人である大門凛子から連絡を受け、国安0課に向かっていた。

国安0課とは、警視庁国家安全局0課の略称であり、凛子も所属している。

連絡の内容は聞かされなかったが、自分と同じ魔法使いの真由達や仁藤でなく、自分に連絡が来るのは何故かと思っていたが、全ては行ってみないと分からない。

「またファントムが暴れだしてなければいいんだけどな…」

そんな不安を感じつつ、晴人は国安へバイクを走らせた。

 

 

 国安へ到着した時、既に凛子が入口で待っていた。

「お、久し振り、凛子ちゃん」

「久し振りね、晴人くん」

前に会ったのはファントム·オーガの時以来で約3年近く会っていないことになるが、再開の余韻に浸ることなく、凛子は早速話を始めた。

「それで晴人くん、今回の話なんだけど…。」

「あぁ、何かあったのか?」

「それが、木崎さんがファントムを見たって言っていて…」

 木崎とは、凛子の所属する国安0課の刑事であり、これまでにも晴人達に協力してくれていた。

「やっぱりか、嫌な予感はしてたんだ。真由ちゃん達や仁藤には伝えたのか?」

「それが、みんなにも連絡したんだけど、山本さんは家族旅行、仁藤くんと譲くんは遺跡探索で今はいなくて、真由ちゃんと木崎さんが探しにいってるわ」

「じゃあ俺は真由ちゃん達の援護に行けばいいわけ?」

「それもあるけど、晴人くんにはもう一つ頼みたいことがあってね」

「えっ、何々?」

「ファントムが出たっていう街は、名深市って言うんだけど、そこで奇妙な噂が流れてるのよ」

「噂?」

「ええ、そこでは魔法少女が人助けをしてるって話なのよ」

「魔法少女?真由ちゃんみたいなやつか?」

「いいえ、それが、本当に魔法少女みたいなのよ」

 そう言うと凛子は自身の携帯の画像を晴人に見せた

そこに映るのは、ぼかしが入っているが全身が白い姿の少女、大剣を持った騎士のような少女の姿だった

「うわぁお、本当に魔法少女っぽいね」

「だから晴人くんには、ファントムと魔法少女のことを調べてほしいの。何か関わりがありそうって木崎さんも考えてるし」

「確かに、何かあったら大変だ。任せてくれ…それに俺も名深市には用があるから」

「へぇ、晴人くんが用って珍しいね」

「まぁな、たまたま颯太っていう知り合いが出来てな、そいつにサッカー教えに行くんだ」

「そうなんだ、ありがとう晴人くん。木崎さん達にも連絡しておくわ」

「あぁ、こっちも何かあったら連絡するよ」

「任せたわ、晴人くん。よろしくね」

 こうして晴人は、名深市に向かうことになる。だが、その先ではまた新たな戦いが待ち構えていた……

 

 

 

~名深市のとある中学校にて~

「最近、魔法少女育成計画ってめっちゃ流行ってるよな」

「本当に魔法少女が出た噂もあるんだぜ」

「聞いた聞いた、数万人に一人がなれるんだろ?」

「へぇ、そうなんだ、面白そうだな」

「適当に返事すんなよwまぁ颯太はサッカー大好きだから魔法少女なんて見ないよな」

「て、適当じゃねえし!…まぁそう興味はないけど」

「やっぱ興味ねえじゃねえか。あ、そういえばお前ら、指輪の魔法使いって知ってるか?」

「指輪の魔法使い?なんだそれ?」

「結構前にどっかで化け物騒ぎが1年ぐらいあったらしいんだけどよ、それを食い止めたらしいぜ」

「なんだそれ!超カッケー!颯太もそう思うよな!」

「う、うん…それと一応聞くけど、もしかして手みたいなベルト使ってたりする?」

「よく知ってるな!確かウィザードとかいう名前だったような…」

「一度でいいから会ってみたいな~」

「(ウィザード…魔法使い…か…)」




次回はいよいよウィザードに変身(予定)です。
どうぞこれからよろしくお願いいたします!


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第1話 戦いの始まり

これより本格的に物語をスタートさせます。
何度も言いますが物語設定等はオリジナルですのでご了承を。


国安で凜子と別れた後、晴人は早速名深市へバイクを走らせていた。

ネットの掲示板等の書き込みによると、魔法少女は日没後から深夜にかけて目撃情報が多いらしい。

「日が暮れるまでまだ時間がある、まずは真由ちゃん達に連絡するか」

そのままバイクで1時間程、やっと名深市へ到着した晴人は、出発前に買ってきたドーナツ、プレーンシュガーを頬張りながら公園で真由達と待ち合わせをしていた。

「晴人さん!」

「よっ、二人共久し振り」

「久しいな、操真晴人。お前が来てくれると頼もしい」

真由、木崎と合流した晴人は、本題を切り出す。

「それはどうも。ところで捜査は順調か?」

「大門から話は聞いているそうだな。こちらはあまり進展がなかった」

「そうか。それは残念だな…」

少しの間沈黙が続いたが、真由の言葉がその沈黙を破った。

「でも、妙な話を聞いたんです」

「妙な話?」

「操真晴人、お前は魔法少女育成計画ってのを知っているか?」

「魔法少女育成計画?知らないが、魔法少女の目撃に関係してそうだな」

「あぁ、その魔法少女育成計画というのはスマートフォン向けのゲームアプリらしい」

「ゲーム?へぇ…」

「その妙な話っていうのは、そのアプリ使用者の数万人に1人が本物の魔法少女になれるらしいってものなんです」

「本物の…?つまりそれが名深市の魔法少女の正体ってことか」

「恐らくはそうだろうと私も睨んでいるんだが、それにしては情報の信憑性が薄くてな」

「信憑性?」

「そうだ。このアプリの運営会社はこの件には全く返事を寄越さない。それに目撃談もネット掲示板でしか確認出来ていないんだ」

「それも不思議な話だな。まぁその辺は俺も調べてみるよ」

「了解した。それとすまんが私達は一度国安に戻ろうと思う。稲森真由も私もここ3日は捜査ばかりでな。彼女を休ませたいのもあるが、私自身も少し休息を取りたい」

「すいません晴人さん…。ここはお願いできますか?」

「分かった。また何か情報を掴んだら連絡してくれ」

「あぁ。ではこちらは頼んだ、操真晴人」

 

 真由達が国安へ帰っていったのを見送った後、晴人は右手に指輪を装着し、ベルトのバックル部分へ手をかざした。

 ガルーダ、プリーズ!

バックルから電子音声が流れ、魔方陣より赤い鳥のようなモンスターが現れた。

「ガルーダ、ファントムを見つけたら教えてくれ」

ガルーダと呼ばれた赤いモンスターは、頷いたような動きを見せると、何処かへ飛んでいった。

そして晴人が再び情報収集に戻ろうとした時…

「晴兄!」

晴人は声のした方へ振り向くと、1人の少年がこちらに向かってきた。

「晴兄、久しぶり!」

「おお、颯太、元気にしてたか?」

その少年は岸辺颯太。前にファントム残党に襲われていたところを晴人が助けて以来、時々サッカーを教えたりしている仲である。

「うん、それと晴兄って結構有名だったんだね。学校でも時々ウィザードの噂話が出るよ」

「そうなのかね?俺は今回は魔法少女とファントムを探しに来たんだ、一応お前も何か知ってたりするか?」

「ま、魔法少女?…あんまり、知らないな…」

一瞬颯太の顔が驚いているようにも見えたが、颯太は魔法少女については何も知らないようだ。

「そっか、後これからはしばらくこの街に居させてもらうから、宜しくな」

「うん!それと、試合が近いから練習相手になってくれる?」

「おう、任せろ」

 

 その後しばらくの間、颯太と晴人はサッカーを楽しんだ。

そして気付けばもう午後5時を過ぎ、日が暮れ始めていた。

「やべっ、もう5時過ぎてる!晴兄、今日はもう僕帰らなきゃ。」

「もうそんな時間か。じゃあまたな、颯太。」

「うん、今日はありがとう。またな!」

 

颯太と別れ、いよいよ夜を迎える。

晴人は最新鋭の注意を払い、街を歩いていたが、これといって変化も無く、時間だけが過ぎていった。

 

 

 

 

 午後9時を過ぎた頃、街に突然悲鳴がこだました。

晴人はそれに気づき、戻ってきたガルーダの行き先に付いていくと、そこにはファントムらしき影と数人の少女がいると思われる鉄塔にたどり着いた。

「もしかして、あれが魔法少女…?」

晴人は驚きつつも鉄塔の上部へ急いで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スノーホワイトは驚愕した。まさか目の前に怪物が現れるとは。

しかも急に開いた魔方陣のような場所から現れたのだ。驚きを隠せない。

見た目は全身緑色で、腹部が妙に膨らんでいる。

この場にいるのはラ・ピュセル、トップスピード、リップルと自分の4人である。正直4人で戦って勝てる相手かも分からず、おまけに攻撃魔法持ちはラ・ピュセル、リップルの2人のみ。正直分が悪い。

「ラ、ラ・ピュセル…どうしよう…」

「スノーホワイト、君は隠れてて。こいつは私が倒す!」

「悲鳴聞いて来たものの、なんじゃこいつは…」

「ちっ…やるしかない…!」

そういうとリップルは手裏剣を怪物へ投げつける。

狙ったものへ百発百中で当たるというリップルの魔法が発揮され、怪物に直撃するものの、びくともしない。

「何でリップルの攻撃が効かないんだ…?」

「分かったぞ、こいつ、自分の腹で攻撃を吸収してるんだ」

「だから腹がぷっくりしてんのかよ、チクショー!」

「ちっ…これじゃラ・ピュセルの攻撃でも私の攻撃でも、物理攻撃が通じない…」

「来るぞ!気をつけろ!」

その声と共に怪物は緑色の触手を4人に向けて発射した。

ラ・ピュセル、トップスピード、リップルは避けたものの、スノーホワイトは逃走手段、攻撃手段両方が無いため、避けきれない。

「スノーホワイト!危ない!」

ラ・ピュセルは全力で剣を投げつけるが、触手はするりと避け、スノーホワイトへ絡み付く…

 

と思われたが、触手はスノーホワイトの目の前で破壊されていた。

「えっ…?」

困惑を隠せないスノーホワイトの前に銃のような武器を構えた1人の男が現れる。

「危ないところだったな。大丈夫か、君」

「あ、はい…」

「他の3人も、大ケガは無さそうだな」

ラ・ピュセルは、その男の顔を見ると、一瞬驚きの表情を見せたが、それはすぐ、安堵の表情へ変わった。

「(晴兄…来てくれたんだ…!)」

「やっぱりいたんだな、ファントム。これ以上はやらせないぜ」

男は腰に装着されているベルトを使い、指輪を左手に付け、指輪の顔のようなバイザーを下ろす。

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

「変身!」

 

フレイム、プリーズ!

 

 

 指輪をベルトにかざすと、魔方陣が現れ、晴人を包む。

そして晴人は、赤い宝石のような顔を持った戦士、仮面ライダーウィザードへ変身した。

「なんじゃありゃ!マジの魔法使いじゃねえか!」

トップスピードが驚きの声をあげる。スノーホワイト、リップルも状況を理解しきれていないようだ。だが、ラ・ピュセルだけは、ウィザードの登場に安堵の表情を見せた。

「さて、ファントム。これ以上暴れてもらっちゃ困るから、ここで倒させてもらう」

「指輪の魔法使い、まさかここで会うとはな…!」

「俺もこんなとこで会うとは思わなかったよ。だからとっとと、片付ける」

 

「さぁ、ショータイムだ!」




ということで変身させました。
眠気の中書いていたので文章おかしいところあるかもしれませんが、そこは後日修正していくと思うのでご了承ください。


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第2話 魔法少女と魔法使い

お待たせしました、第2話です。
ウィザードの魔法(物理)炸裂。
そしてラ・ピュセルの正体にウィザード驚愕!?


「さぁ、ショータイムだ!」

 ウィザードへ変身を遂げた晴人はファントム・ファットソウに向かって変身前から持っていた銃の武器、ウィザーソードガンを構えて銃弾を発射する。

攻撃を受けたファットソウであったが、自分のとても肥えた腹でなんなく跳ね返す。

「赤いの!あいつは攻撃がなかなか通じない!気をつけろ!」

これまで沈黙を保ってきた魔法少女達だったが、箒を持った魔女に近い見た目をしている魔法少女、トップスピードがウィザードへアドバイスを送った。

「残念だったな、魔法使い共め!俺には攻撃は効かないんだぜ!」

ファントムは余裕のある声でウィザードを煽る。

「だったら魔法で押し通すだけさ!」

するとウィザードは左手に装着されていた赤い指輪を黄色の指輪に付け替え、ベルトの端にあるパーツ、シフトレバーを上下を動かし、もう一度手をかざした。

 

ランド…プリーズ!

 

するとウィザードの下に魔方陣が現れ、ウィザードを包み込んでいく。

魔方陣が通り過ぎると、ウィザードの顔は黄色い宝石のようなものとなった。

さっきまでの赤い姿、フレイムスタイルからランドスタイルへと変化した。

「黄色い!?」

「…魔法使い放題だな、あいつ」

 ウィザードの変化にスノーホワイト達も驚きを隠せない様子。

しかしラ・ピュセルは驚き一つ見せずに、慎重にファントムを見つめる。

「そうちゃん、そんなに険しい顔してどうしたの?」

「い、いや…一瞬の隙をついてあの魔法使いの援護をしようと思ってさ…」

 

 一方、ウィザードはファントムの攻撃を避けつつ、ウィザーソードガンの攻撃を的確に命中させていく。

「なかなか効いてないな…」

「魔法使い!私が隙を作る!」

ラ・ピュセルが叫び、自身の魔法である剣の大きさを変化させる能力を使い、巨大化した剣をファントム目掛けて切り付ける。

「サンキュー!女騎士さん!」

だが攻撃は弾かれてしまう。

「だから俺にはそんなの効かないって言ってるだろ!」

「いいや、十分だ。これで決着をつける」

ウィザードは右手の指輪を付け替え、ベルトにかざす。

 

ドリル…プリーズ!

 

 ウィザードの足はドリルのような回転を始め、隙を見せたファントムの背後に突撃する。

「何…!?」

「これでフィナーレだ!」

指輪をもう一度付け替え、必殺を放つ。

 

チョーイイネ!キックストライク!サイコー!

 

 ウィザードは回転しつつ必殺技のキック、ストライクウィザードをファントムに直撃させる。

「だぁぁぁぁぁ!」

「何だと…これが魔法使いの力…ギャァァァァァァァァァ!」

 背後から体を貫かれたファントムは、断末魔をあげて爆発した。

「…ふぃー」

 そう一言発した後、ウィザードは魔法少女達に駆け寄る。

「君たち、大丈夫だったか?」

「はい、あなたのおかげで助かりました!魔法使いさん!…あ、自己紹介しないと!私はスノーホワイトです!」

 そう礼を言うスノーホワイトは白い衣装を纏っており、正に正統派魔法少女という感じである。

「私はラ・ピュセル。私からも礼を言うよ、魔法使い。危ういところだった。」

スノーホワイトに続いて礼を言うラ・ピュセル。その見た目は騎士のようであり、立ち振舞いや仕草からも清楚さが伝わってくる。

ラ・ピュセルはとても美しい少女なんだろうな、とウィザードは思った。

「あんたすげーな!ありがとよ!俺はトップスピードだ!そしてこいつはリップル。こいつもありがとうだってさ!」

トップスピード、そしてその後ろにいるリップル、この二人も魔女のような姿であったり忍者のような姿であったりともはや何でもありだなとウィザードは感じていた。

「ちっ…まぁ、正直助かった、どうも。」

リップルは少し素っ気ない態度であったが、すぐさまウィザードへ質問を発した。

「それで、さっきの怪物は何だったの…?あんなの、前まではいなかった…」

「あいつらはファントムっていう化け物だ。そいつらの親玉は俺達で倒したんだが、まだ生き残りがいるみたいでな…俺はそいつらを追ってここまで来たわけだ。」

「そりゃあんたも大変だったんだな。ところで名前はなんて言うのさ?」

「俺か?俺はウィザード。仮面ライダーウィザードだ。」

「仮面ライダーウィザードか!なんかかっこいいな!ま、俺達仲良くしていこうぜ!」

「おう、そうだな」

ウィザードとトップスピードはお互いに握手を交わした。

「トップスピード、もうそろそろ帰ろう。化け物…ファントム退治は終わった」

「はいはい、せっかちだなぁ…じゃあ、俺達は帰るわ、またなウィザード!」

「あぁ、じゃあな!トップスピード、リップル」

トップスピードはリップルを箒に乗せ、とてつもない速度で帰っていった。

「ラ・ピュセル、私ももう帰らなきゃ。ウィザードさんも、またね!バイバイ!」

「スノーホワイト、またな」

「バイバイ!スノーホワイト」

スノーホワイトも帰っていった。やはり魔法少女も人間なのだろう。

「ラ・ピュセル、お前は帰らないのか?」

「いや、帰るけど、その前に…」

そう言うと、ラ・ピュセルは突如光に包まれた。変身を解除したのだろう。

その姿に、ウィザードは驚かざるを得なかった。

「嘘だろお前…颯太なのか?」

「うん、実は…魔法少女になったんだ…」

 

「へえ、それは良かった…って…」

 

「ええええええ!」

 

ウィザードの叫びが夜の名深市に響いた。




というわけで、第2話でした。
次回はあのムカつくマスコットやその他の魔法少女登場!
今回も閲覧ありがとうございました!


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第3話 魔法少女の世界

お待たせしました、3話です。
土日は出来るだけ投稿していくので宜しくです。


 ラ・ピュセルの正体にウィザードから変身解除した晴人の思考は完全に停止した。

日中は一緒にサッカーをしていた颯太が、魔法少女になっている。

颯太は紛れもない男である。

何故彼が…?そう思っていると、変身解除した颯太が顔を赤らめながら呟く。

「やっぱ、変かな…?僕が魔法少女って」

「い、いや…別にそうでもないと思うぞ」

「ほ、本当!何か嬉しいよ」

 颯太は恥ずかしがりながらも、どことなく嬉しそうである。

「みんなに知られたら、絶対引かれると思ってたから…」

「そうだったのか。というかお前は魔法少女とか興味無さそうに見えたんだがな」

「隠してただけだよ。DVDとか借りに行くのも一苦労だったんだよ…」

「それは大変だったんだな…。というか何で魔法少女になったんだ?」

「魔法少女育成計画っていうスマホのアプリがあって、それで遊んでたら急にファヴっていうアプリのマスコットが出てきて、僕を魔法少女にしたんだ」

「魔法少女育成計画…やっぱりそれと魔法少女には関係があったんだな」

「え?何か知ってたの?」

 颯太は晴人の予想外の返答に驚く。

しかし晴人は颯太の質問に首を横に振る。

「いいや、俺は名前しか知らないんだ。ファントムと一緒にこっちも調査してくれって仲間に言われてな」

「そうなんだ。晴兄も大変なんだね」

「まぁな…もっと話したいことはあるけど、もう時間も時間だ。今日は帰った方がいいぞ、家の近くまで送ってくよ」

「分かった。ありがとうね」

「あぁ、また明日でも会えたらまた話そう」

 

 

 その後颯太を家まで送り、晴人は木崎に連絡を入れた。

日付はとっくに変わった後であったが、木崎は着信に応じてくれた。

「魔法少女とファントムの関係性は分からないが、とりあえず魔法少女と接触できた。」

「そうか、ご苦労だったな。悪いが私は当分そちらに行けそうにない。引き続き調査をお願いできるか?」

「もちろん、任せてくれ。俺もやりたいことがあるし」

「分かった、では今後も宜しく頼む」

 

 木崎との電話を終えて少し休憩していた晴人だが、気づけばもう朝日が昇っていた。

その日も晴人はファントムを探していたが、日中はやはり何の動きも無かった。

「魔法少女の活動は夜が多いみたいだな。また夜にふらっとしてみるか」

 時間が経ち、夜がやってきた。晴人はバイクで街を散策していたが、民家で火事が起きているのを発見した。

「おい!まだ中に人がいるんだ!」

 中には人が残っているらしく、かなり危険な状況のようだ。

「ありゃやべえな、ちょっくら行ってくるか。変身」

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

ウォーター、プリーズ!

 

 晴人は青い姿の、ウィザード・ウォータースタイルに変身して民家へ突入する。

「お、おい!あの家に誰か入っていったぞ!無謀すぎる!」

民家を近くで見ていた人々がウィザードを発見し、驚きの声を発するが、ウィザードは気にせず入っていった。

「こりゃ早めにやんないとな…こいつでやってみるか」

ウィザードは指輪を付け替え、魔法を発動する。

 

リキッド、プリーズ!

 

 ウィザードは液状化し、中を捜索する。

「た、す…けて…だ、れか…」

声を聞き取ったウィザードは聞こえた方向へ進むと、夫婦が倒れていた。

「まだ息はあるな、さて、一気に終わらせるか」

ウィザードはリキッドをもう一度発動し、夫婦を包み込み、民家から脱出した。

「ふぃー、救助活動は初めてだったがやれるもんだな」

ウィザードは夫婦を安全な所まで連れていき、民家から離れた

「お、おい!二人が見つかったぞ!さっきの人が助けてくれたんだ!」

その声が聞こえ、ウィザードは安心してその場を後にした。

今日はもう休むか、そう思っていたウィザードは、背後から声を掛けられた。

「ウィザードさん!」

声の主はスノーホワイトだった。その隣にはラ・ピュセルもやって来ていた。

「おお、二人とも。どうしたんだ?」

「さっきの火事で救助してくれたのは晴兄だったんだね」

「え、そうちゃん晴兄って…」

「スノーホワイトには言ってなかったね。ウィザードは僕の知り合い、晴兄なんだ。」

「そうなんだ。私、そうちゃんの幼なじみの姫河小雪です!」

「俺は操真晴人、宜しくな」

「スノーホワイト、そうちゃんはあんまり言わないでよ…」

そういうラ・ピュセルは少し恥ずかしそうである。

「ごめんね、ラ・ピュセル。晴人さんも宜しくお願いします!」

「あぁ、というか二人共、その丸いのが光ってるぞ」

 ウィザードがそう言うと、二人も丸い端末のようなものが光っているのに気付く。

「チャットルームに集合だって、行こうスノーホワイト」

「うん!」

「チャットルーム?何だそりゃ」

ウィザードはいきなり分からない話になり、困惑している。

「チャットルームっていうのは、このマジカルフォンの機能の一つで、他の魔法少女と会えるんです」

「へぇ、じゃあ俺はそれ見てるよ」

 ウィザードは二人のマジカルフォンという端末を覗き込んだ。

そこは意外にもファンシーな雰囲気だった。

スノーホワイト達魔法少女はデフォルメされ、二人も会わせて10人程居ると見える。

昨日居た魔女っぽい魔法少女と忍者っぽい魔法少女も居るようだ。

すると端末にデータ映像のようなもので丸くて動く生き物のようなのが現れた。

恐らくこの生き物がラ・ピュセルの言うファヴというマスコットだろう。

~チャットルーム内~

『みんな今日もご苦労ぽん。今日はみんなにご報告があるぽん』

『昨日、スノーホワイト、ラ・ピュセル、トップスピード、リップルの4人が怪物に襲われたぽん』

「何ですって!?」

「物騒だねー」

「怪物って何よ!」

魔法少女達はざわつき始めていたが、トップスピードがその場を収める。

「まぁまぁまぁ、怪物っていってももう倒されたし」

「というかファヴは何であの時居なかったんだよ」

『ファヴだって忙しいぽん。いつもいつもお助け出来ないぽん』

「で、怪物を倒したのは誰なのよ」

多くの魔法少女の中でも見た目から女王感のすごい魔法少女が話を戻す。

「…俺だよ」

男の声が聞こえた。魔法少女達がその声の方向を見ると、ラ・ピュセルが居た場所に見慣れない赤い顔をした魔法使いが立っていた。

「ラ・ピュセル!?どこいった?」

「あんた、昨日の…」

リップルが声を発し、続いてファヴが質問する。

『誰ぽん?思いっきり魔法少女じゃないぽん』

 

「俺はウィザード、魔法使いさ」




というわけで3話でした。
次回からもオリジナルをぶっこみつつ書いていきますよ。
民家の火事は魔法少女育成計画2話から頂きました。
今回も閲覧ありがとうございました!


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第4話 出会いと裏の顔

第4話です。
平成ライダージェネレーションズ、楽しみです。


 ファヴは、ラ・ピュセルがウィザードという魔法使いへの変化を信じれなかった。

ウィザードへ質問を投げつける。

『ラ・ピュセル、アバターキャラ変更は出来ないはずぽん。まさかのチート使ったのかぽん?』

「いや、俺はラ・ピュセルじゃないから」

『じゃあ乗っ取りってやつぽん?』

「悪く言えばそうなるな。俺の魔法で少しの間だけラ・ピュセルのデータを変身させたんだ」

 

~少し前~

 

「ラ・ピュセル、それ面白そうだな。ちょっと借りていいか?」

「え、いいけど晴兄には使えなさそうだよ」

「まぁ見てな。こいつでどうかな?」

 

ドレスアップ、プリーズ!

 

 ウィザードはドレスアップの魔法をマジカルフォンに使い、アバターのラ・ピュセルをウィザードに変身させた。

「うわっ!本当にウィザードに!」

「じゃ、ちょっと借りるぞ」

 

 

「というわけで今はラ・ピュセルのデータを借りてるんだ」

『なるほど、分からないぽん。』

 ファヴが困惑の表情を見せていると、銃を持った少女がウィザードに近づいてくる。

「ん?どうしたんだ?」

ウィザードは声を掛けるが無視され、その代わり顔に銃を突きつけられた。

「おっと、これは一体…?」

「自己紹介だよ。あたしはカラミティ・メアリ。とりあえずあたしを煩わせるな、ムカつかせるな、オーケイ?」

「ちょ、姐さんやめて!落ち着いて!」

「あんたには聞いてないよトップスピード。ほら、ウィザードだっけ、オーケイ?」

トップスピードが収めようとしたが聞く耳を持たない様子。

「ウィザード!ここは謝っとけ!じゃないと撃たれる!」

「えぇ…なんだかよくわかんないけど、撃たれるのは御免だね」

「あんた、なんかムカつくね…さっさと答えろ」

「じゃ、お詫びに魔法を見せてやるよ」

ウィザードがそう答えた瞬間、カラミティ・メアリは銃の引き金を引いた。

「ウィザードさん!」

チャットルーム内に銃声が響き渡り、同時に大きな光が魔法少女達を包んだ。

トップスピードら魔法少女は声も発することなく硬直し、唯一スノーホワイトはウィザードに声を掛けたが、そこにウィザードの姿は無い。

「あたしをムカつかせたのが死因だね…」

そう言い、足を動かそうとしたカラミティ・メアリだったが、足が動かない。

おまけに銃を持った手すら動かせない。よく見ると鎖で拘束されており、足下は魔方陣で囲まれていた。鎖も魔方陣から出ているようだ。

「くっ…まさか…」

「言ったろ、魔法を見せてやるって」

カラミティ・メアリの目の前には、さっき撃ったはずのウィザードが現れた。

「ウィザード!何で生きてるんだ!」

トップスピードは驚きの声をあげる。スノーホワイトも、ウィザードの無事に安心した様子。

「撃たれる前に、まず光を生み出す魔法で視界を眩ませて、テレポートで避けてからカラミティ・メアリを少し動けなくしただけだ。どうだ、俺の魔法は」

カラミティ・メアリは怒りの表情を見せたが、その後どうすることも出来ず、ただ無言で黙っていた。

『これはとんでもないのがやって来たぽん…』

「ウィザード!お前とことん強いな」

トップスピードがウィザードに駆け寄る。

「これがこの指輪の力だ。魔法なら結構使えるぞ」

「ひえー、恐れ入るぜ」

 

「すごい魔法ですね、ウィザードさん」

 ウィザードの前に今度は二人の魔法少女がやってきた。

「私はシスターナナと申します。どうぞ宜しく」

「ヴェス・ウィンタープリズンだ。ウィザード、その力で例の怪物とやらを倒したのか」

ウィンタープリズン、シスターナナと名乗った二人は、特にウィザードと戦う気配は無いようだ。

「あぁ、そんなもんだな。というか二人共…」

ウィザードは二人に小声で話しかける。

「あのカラミティ・メアリってのはいつもあんな感じなのか?」

「そうだな。前にシスターナナもメアリの縄張りに入って撃たれかけたこともある」

「うわぁ…そりゃ恐ろしいな」

「まぁ、その時はウィンタープリズンが助けてくれたんですよ」

そういうシスターナナは更にウィンタープリズンの武勇伝を語りだした。余程仲が良いのだろう。

「いい仲間だな、二人は」

ウィザードがそう言うと、シスターナナは更に顔が赤くなった。

微笑ましいと思っているウィザードに、またまた声を掛ける少女達がいた。

「あなた、カラミティ・メアリを封じるなんて、すごい力を持っているのね」

そう言うのは、いかにも女王の見た目をした少女である。

「そりゃどうも。しっかしメアリって奴はみんなに怖がられてんだな」

ウィザードは先ほどまでカラミティ・メアリが居た方を見たが、その姿は無かった。

もう帰ったのだろう。どうやら彼女自身も今日のような敗北は初めてだったようだし、今の状況に耐えきれなかったのではないだろうか。

「あいつには少し恨みがあってね…何だか今のでスカッとしたわ。それだけ」

「わーツンデレー」

「ルーラがデレた!」

後ろにいた4人のうちの双子の天使のような魔法少女がルーラをからかった。

「うるさい!後で痛い目に遭わせるわよ!」

「ひえー!」

「冗談だよルーラ!」

「ふん、まぁいいわ。私はルーラ、覚えておきなさいウィザード」

「ユナエルでーす」

「ミナエルでーす」

「「二人合わせてピーキーエンジェルズでーす!」」

「漫才するな!」

ユナエルとミナエルの双子にルーラがツッコミを入れる。仲が良さそうな雰囲気である。

「あ、あの…たまって言います…宜しくお願いします…」

「私はスイムスイム…」

ルーラの近くにいた残りの二人もやってきた。

たまと名乗る少女は犬の着ぐるみのような格好で、愛らしい見た目である。

一方、スイムスイムはスクール水着のようなものを着用しており、かなり胸が強調されている。

「おう、宜しくな」

ルーラは4人も仲間を連れていて、人望が厚いのだろうとウィザードは感じた。

 

「他にも魔法少女はいるんだけどよ、今日は来てないみたいだ。」

トップスピードにそう言われ、どんだけいるんだよとウィザードは思っていたところ、今まで沈黙を保っていたファヴが話を始めた。

 

『挨拶は終わったみたいだぽん。これから超重要な話をするぽん。ラ・ピュセルにも伝えたいから、ウィザードは変わって欲しいぽん』

「そうか、分かった。じゃあなみんな」

そう言うとウィザードはチャットルームから消え、ラ・ピュセルが再び現れた。

 

 

「全く晴兄、死んじゃうかと思ったじゃないか」

「悪い悪い。でも今こうやって生きてるから問題無しさ」

現実では、颯太が晴人に説教をしていたが、小雪の一言で遮られる。

「二人とも、始まるよ」

 

~チャットルーム~

 

『今居ない魔法少女には後で誰かが伝えて欲しいぽん』

『今回召集をかけたのは、ある情報を知らせるためだぽん』

『現在魔法少女は、昨日新しく入った魔法少女含めて16人いるぽん』

『さすがに多すぎるとファヴは考えたぽん』

 

 

『そこで、魔法少女の数を減らすことにしたぽん』

 

 

『詳細は後日また教えるぽん。じゃあシーユーぽん』

 

そう言ったのを最後にファヴは消えてしまった。

そしてファヴの言葉をすぐに理解したものは、誰もいなかった。

 

 

~ある廃屋にて~

 

 

『まさかお前の警告していた魔法使いがこんなに早く現れるとは思ってなかったぽん』

「私にとっても予想外です。魔法少女を乗っ取って行動していれば、ウィザードに嗅ぎ付けられることは無いと思っていたんですが…」

『恐らくはファットソウが暴れ出したからだぽん。ファントムが出たと知られたら、来るのは当たり前ぽん』

「申し訳ないですね。こうなったらしょうがないですね、計画を早めましょう」

『本当はもう少し魔法少女共の仲を深めてから一気に突き落とすつもりだったんだぽん』

「でもまだ大丈夫です。これからでも十分でしょう」

『こっちも出来るだけ隠密にやってくつもりだぽん。でも恐らくあいつは現れるぽん』

「その時は、私自ら倒すのみです」

『楽しみぽん。魔法少女共の絶望する顔が早くみたいぽん』




というわけで4話でした。
いよいよゲスぽんが本性を出しました。
次回もお楽しみに!


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第5話 悪夢の序章

5話目となりました。
ねむりん登場!


 スノーホワイトとラ・ピュセルは、街にある大きな鉄塔に二人で座っていた。

「スノーホワイト、君のおかげで本当に助かってるよ」

「そんな、私だけじゃ出来ない事もあったし、そうちゃんのおかげだよ」

「そ、そうちゃんはやめてくれよ、調子狂っちゃうじゃないか」

 ラ・ピュセルは頬を赤くする。どうもスノーホワイトに礼を言われると調子がおかしくなってしまう。

「そうだね、ごめんラ・ピュセル。これからもキャンディー集め頑張ろうね!」

「あぁ、私も善処しよう。スノーホワイト」

 

 魔法少女達は困っている人を助けたりすることによってマジカルキャンディーを得ることができる。

前から二人はキャンディー集めをしていたが、今日は特に張り切っている。

こうなったのも、全ては昨日のあの出来事からだ。

 魔法少女を減らす。ファヴがそんなことを言い出したのは突然であった。

魔法少女達は、ファヴが何を言っているのか分からなかった。

そしてしばらくしてファヴから再び連絡が入った。

その連絡は魔法少女を現在の16人から、半分の8人へ減らすというものだった。

そして魔法少女を辞めなければならない者の基準は、毎週マジカルキャンディーを集め、ランキングを発表し、キャンディー所持数が一番少ない魔法少女から辞めていくというルールだった。

ランキングは週に1回、つまり2ヶ月間マジカルキャンディー所持数ランキングを行わなければならない。

 ラ・ピュセルもスノーホワイトも、まだ魔法少女を続けたい。その気持ちを胸にキャンディー集めに勤しんでいた。

落とし物探しやゴミ拾いなど、優しい内容のものから、強盗犯捕獲などハードなものまで何でも取り組んでいった。

そのおかげもあってか、スノーホワイト、ラ・ピュセルの二人のキャンディーは3万を越えており、ランキング中間発表では1位2位を二人で独占していた。

 しかしランキングというものは1位もいれば最下位もいるもの。

中間発表で最下位だったのはねむりんという魔法少女だった。

以前の集まりではねむりんは姿を現さなかった。

その後チャットルームに顔出したねむりんにスノーホワイトが理由を聞いたところ、寝ていたから知らなかったということだそうだ。

ねむりんはその名前の通り、眠っていることが多く、魔法少女としての活動場所も夢の中というのが多かった。

魔法少女には一つだけ特有の魔法が使える。

例えばスノーホワイトは他人の心の声が聞こえる、ラ・ピュセルは自身の武器の大剣の大きさを自由に変更できるなど、魔法少女によって様々だ。

ねむりんの魔法は人の夢の中に入れることであり、悪夢を見ている人を助けてあげたり、その人にとって良い夢を見せてあげることが多い。

夢の中のマジカルキャンディー所持数は5億を越えており、断然1位だが、夢の中のキャンディーは現実に反映されず、現実では0個であり、ぶっちぎり最下位である。

現実での活動の無さはファヴにも心配される程である。

ねむりんはそもそも家の外から出ることがほとんど無いのだとか。

このままでは、最下位決定で魔法少女を辞めなければならないのだが…

 

「晴人さん、大丈夫かな」

「そういえば晴兄ってねむりんに会いに行くんだっけ。ねむりん現実では顔見せないし、どんな人かよくわからないけど。」

「キャンディー集めの手伝いするなんて、本当に晴人さんは優しい人なんだね」

「そうだね、晴兄こそ、正義の鑑だよ」

 

 

 晴人は市街地から少し離れた人気の無い路地裏で待ち合わせをしていた。

待ち合わせ相手はキャンディー所持数ランキング現在最下位のねむりんである。

ラ・ピュセルのマジカルフォンを借りて再びチャットルームに行った際に知り合った。

現実でキャンディーが集まらないのは集めかたがよくわからないというねむりんに、一度会ってみないか。と誘ったのは晴人の方であった。

なかなか現実では顔を見せないと聞き、断られるかと思っていたが、意外にもすぐOKをくれた。

向こうは家族以外に人と会うのが大分久し振りなようだ。

ウィザードへ変身した晴人が少し待っていると、パジャマを来て、周りには雲のようなものがついた少女が現れた。彼女こそがねむりんである。

 

「君がねむりんかい?」

「うん。ねむりんだよ、宜しくねー」

「俺はウィザード。宜しくな」

一通り挨拶を済ませ、晴人は早速本題に入る。

「キャンディーが今は一番最下位なんだよな。キャンディー集めの良い方法を思い付いた。少しでもいいから、やってみないか?」

「分かった、いいよ。初めてだからいろいろ迷惑かけるかも」

「今回はねむりんの為にやることだ。気にすんな」

 

 こうしてウィザードはねむりんを連れて街のトラブルなどを解決しに回った。

最初は慣れないねむりんだったが、段々手数をこなせるようになり、なんと崩れ落ちてきた鉄骨をウィザードと共同で防ぎきることも出来た。

キャンディーも少しではあるが500貯まり、まぁまぁなものとなっただろう。

「今日はありがとー、ウィザードって優しいんだね」

「まぁ、色々あったからな。これぐらいは御安い御用さ」

「じゃあ、この辺でお別れだね」

「あぁ、キャンディー集め頑張れよ」

「でも、もう集めないかも」

「えっ、何でだ?」

意外な返答にウィザードは驚く、しかしねむりんは続けた。

「実は私、これで魔法少女辞めようかなって思ってて…私はもう大人なんだけど、働いてなくてね…でもいつまでもこのままじゃダメだと思って、面接行ってくることにしたんだ」

「そうなのか…」

ねむりんは自らの正体をウィザードに語った。

「それはねむりんの選んだ道なんだろ?だったら応援するよ。会えなくなるのは残念だけどな」

ウィザードに落胆されるかと思いきや、逆にウィザードはその考えを認めてくれた。

「そう?なんか嬉しいな。本当にウィザードは優しいんだね」

「俺には人の考えを否定する権利は無いしな。それにいつまでも立ち止まってるより前に進む方が良いと思ってる。俺もそうだったしな」

「ウィザードもいろいろ大変だったんだね」

「まぁな。残りの期間、ねむりんがどう動こうとも、俺はそれを尊重するよ」

「うん。ありがとー、ウィザード」

 そのような話をしながら、ウィザードはねむりんを家まで送った。

「悪いな。今日会ったばっかの奴が家まで来ちゃって」

「良いよ、気にしてないし。じゃあね、ウィザード。またチャットで会えたら会おうね」

「あぁ。面接頑張れよ!」

 

 こうして二人は解散した。

これまで6日間が経過し、一時ランキング最下位脱出をしたねむりん。

 

 残り1日、魔法少女達はキャンディーを集める。魔法少女を続けていく為に。

そして一人は、自分の未来を大きく決める選択をした。それが魔法少女を辞めることになっても、その選択が正しいと信じて。自分の考えを認めてくれた家族や知り合いの為、自分の為に。

 

運命の7日目がやってくる。結果発表は、もうすぐそこに迫っていた。

 

その後に待っている悪夢の始まりを知らずに…




以上、5話でした。
そのつもりで書いてないのになんだかウィザードがねむりんを口説いてるようにしか見えなくなりました。すいません。
次回は結果発表、その先に待つ運命を変えられるのか、ウィザード…


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第6話 エンゲージ

第6話です。
ついに最初の脱落者!?


 三条合歓、24歳

これまで就職活動をしたことが無く、当然働いていない。

自分の家で母親の家事手伝いをしている。

家事手伝いというのも、掃除や洗濯、などの母親の仕事を手伝っており、その他は自室でパソコンを使ってまとめサイトを漁ったり動画サイトで動画を見て過ごしたりと、だらだらとした生活を送っていた。

世間で言うところの「ニート」というやつだ。

そんな彼女が出会ったスマートフォン用ゲームアプリ、魔法少女育成計画。

彼女はすぐにこのゲームにハマり、毎日プレイしていた。

しかしある時、このゲームのマスコット、ファヴが本当に現れ、本当の魔法少女にならないか?という勧誘があった。

そして彼女は本当の魔法少女になった。

名前はゲーム本編で使用していたねむりんという名前で活動していた。

しかしファヴから突然魔法少女を減らす。という連絡があった。

周りの魔法少女達は皆困惑を抑えきれないようだった。

ねむりん自身も全く驚いていないと言えば嘘になったが、ねむりんはこれを機に魔法少女を辞め、散々世話になった家族へ恩返しをしたい。その思いで就職を決意した。

元々ねむりんの活動場所は夢の中であって、現実では人助けなどで貰えるマジカルキャンディーがあまり集まらなかった。

このままなら最下位となり、魔法少女を辞めることになるだろう。そう思っていた彼女に一人の人物が声を掛けてきた。

その人物とは、仮面ライダーウィザード。自身を魔法使いと名乗っており、ファントムと呼ばれる怪物を追って、名深市を訪れ、自分達魔法少女と関わることとなった。

そんなウィザードが、自分のキャンディー集めを手伝いたい。と言い出したのは昨日だった。

恐らくランキング最下位の自分を心配してくれているのだろうと思い、断るわけにはいかないと思って、OKの返事を返した。

そしてその日の内にキャンディー集めを行った。

ウィザードに手伝ってもらったおかげもあり、500個キャンディーを集めることが出来たが、その帰りにウィザードに自分の思いを話した。

しかしウィザードはその考えに賛成してくれた。

後悔するより前に進もう。そう言ってくれた。

そのおかげで、前よりもっと自分の選択に自信が持てるようになった。

 

 目が覚める。またふとした時に眠りについていたのだろう。

そして今日はランキング発表の日。自分の魔法少女生活最後の日になるかもしれない日。

するとマジカルフォンからファヴが現れ、合歓に語りかける。

『今日でランキング最終日だぽん。昨日はキャンディー貯めたみたいだけど、また最下位になっちゃったぽん。どうするぽん?』

「まぁいいよ。辞めてもいいし」

『そうなのかぽん、残念ぽん。でもまだ時間があるから、気が変わったりしたらまた集めるぽん。』

 それを最後にファヴはマジカルフォンに消えていった。

「さて、もう一眠りするかな」

合歓はもう一度ベッドに潜り、眠りに着いた。

 

 

 

 時刻は夜11時を回った。魔法少女達はファヴから集合が掛けられていた。

チャットルームに続々と入室する魔法少女達。

魔法少女達は緊張のあまり震えていたり、浮かない顔をしている者もいた。

一方、スノーホワイトとラ・ピュセルは、ただ静かにチャットルームを見つめていた。

 

「そうちゃん、ランキングどうだろうね」

「私達は、君のおかげで恐らく最下位は無いだろう。本当に感謝する」

「も、もう、そんなに畏まらなくても…」

スノーホワイトとラ・ピュセル、そしてウィザードは、よく集まっている鉄塔でその結果を見ていた。

「おい、ファヴが来たぞ」

ウィザードがそう言うと、二人は真剣な顔となり、チャットルームを見つめた。

 

~チャットルーム内~

 

『みんなお待たせぽん。ドキドキの結果発表だぽん』

「おいファヴ、やけにお前嬉しそうだな」

何故か上機嫌のファヴに、トップスピードが早速不満を露にする。

『そんなわけないぽん。今日辞めてしまう魔法少女が出るなんて悲しいぽん』

「ファヴ、お前の事情はどうでもいい。さっさと始めろ」

カラミティ・メアリが銃を構える。この前ウィザードに返り討ちされたのに反省していないようだ。

ファヴは少しだけ驚きながらも、こう告げた。

「では、発表するぽん。まずはキャンディーを一番集められなかった魔法少女からぽん」

 

 全員が息を飲む。静まり返ったチャットルームは、森の音楽家クラムベリーという魔法少女が奏でる音楽のみが流れていた。

当のクラムベリーは緊張している様子もなく、悠々と音楽を奏でている。相当自信があるのだろう。

 

『一番少なかったのは…』

 

 

『ねむりんだぽん。』

 

 

 ファヴがそう告げた。魔法少女達は皆ねむりんの方を向いた。

「あはは、やっぱりね~」

当のねむりんは少しだけ恥ずかしそうにしていた。

 

「やっぱり、あいつはこの道を選んだんだな」

ウィザードはねむりんの選択に納得したように声を発した。

「晴兄、ねむりんから聞いてたのか?」

「あぁ、これで魔法少女をやめるきっかけが出来たって。自分にとってやりたいことを見つけたらしい」

「そうなんだ…」

そう言うとスノーホワイトは、チャットルームにいるねむりんに声を掛ける。

「ねむりん、本当にお別れなの?」

「うん、そうだね。でもスノーホワイトやみんなといれた時間は楽しかったよ」

「いっつも私の話ばっか聞かせて、悪かったな」

トップスピードもねむりんに駆け寄る。それなりに話していた二人だったので、別れは寂しいのだろう。

「いやいや、トップスピードの話は面白くて聞いてて楽しかったよ」

「これからもまとめサイトで、みんなの活躍見てるからね!」

 

『みんな、お別れは済んだぽん?それではねむりん、さようならぽん』

 

 

そのファヴの言葉を最後に、ねむりんが消去されました。という表示でねむりんはチャットルーム内から消滅した。

 

消去されました。という表示に、魔法少女達は驚きを見せる。

「おい、いくらなんでもあんまりな消しかただろ!」

『消しかたにどうもこうもないぽん。もうねむりんは魔法少女じゃないぽん』

「何だよそれ、お前本当に無責任だな」

 

 魔法少女達のブーイングの中、これまで沈黙を保っていたリップルがファヴに話しかける。

「そういえば、脱落した魔法少女はどうなるの?」

予想外の質問だったが、ファヴは少し口を歪め、こう言った。

『魔法の力などを吸収して、マジカルフォンを通じてファヴに戻ってくるぽん』

『その時は魔法の力を一気に吸収するから、こっちは大変だぽん。つまりねむりんは日付が変わる頃に、完全に魔法少女でなくなるぽん』

 

 その返答に、魔法少女達はただ頷くしか出来なかったが、ウィザードだけは、嫌な記憶が思い浮かんだ。

サバトやゲート、そして幻の世界ではあったが魔法使いの世界での魔法使いの一斉ファントム化計画…

 

 

これはマズイ。ウィザードはスノーホワイトとラ・ピュセルに安全に帰るように告げ、急いでねむりんの家へ向かった。

前のキャンディー集めのときに寄った事があるねむりんの家。バイクなら5分で着くだろう。

現在は11:40分。後20分しかない。

ウィザードはバイクを走らせた。ファヴに質問などしている場合ではない。

 

 

 恐らくねむりんは、魔力以外に命も吸収され、12時に死ぬ。またはファントム化する。

 

 

11:45分、ねむりんの家に着いた。

ウィザードは家族の人どころか、素顔のねむりんすら面識が無いため、家族の人に不審がられるかもしれないが、今はそんなことを言っている場合ではない。だが一応変身解除し、家に向かう。

玄関から突入しようとすると、家から女性が顔面を蒼白にし、晴人に助けを求めた。恐らくねむりんの母だろう。

「ど、どうかしたんですか!?」

「家の子が、合歓が、合歓がぁ!」

かなり取り乱している様子。不審がられるどころではなく、誰でもいいから助けを求めているのだろう。

晴人も急いで家の中に入り、ねむりんの部屋を教えてもらって突入した。

 

 そこには、顔や体に紫色のヒビが入ったねむりんと思われる女性が倒れていた。

この感じ、やはり絶望しかけているゲートと似ている。

そう思った晴人は女性の元へ駆け寄る。

しかし幾らかファントムと違う点も見かけたが、これがファヴの言う魔力吸収というやつだろう。

 

「変身!」

 

晴人はウィザードへ変身した。

そして女性、三条合歓の右中指にウィザードの使う指輪を付ける。

 

しばらくしてやってきた合歓の母親は、ウィザードに驚きを隠せない。

「あ、あなたは…」

「この人は、絶対に助けます」

 

 

「俺が最後の希望だ…」

 

 

そう言うと、ねむりんに付けた指輪をベルトにかざした。

 

エンゲージ、プリーズ!

 

その瞬間、合歓の上に魔方陣が浮かび上がり、ウィザードはその中へダイブした。

エンゲージの魔法は相手のアンダーワールドと呼ばれる心の中の世界へ入ることができるのだ。

そしてウィザードは合歓のアンダーワールドへ突入する。

そこは何だか、会社のオフィスのような所だった。

「ねむりん、将来の希望を持っていたんだな」

しかし、ウィザードにアンダーワールドを見学している余裕は無い。

突如現れた巨大ザメのようなモンスターにウィザードは吹き飛ばされる。

「くそっ、結局これか!」

ウィザードは右手の指輪を付け替え、魔法を発動する。

 

ドラゴライズ、プリーズ!

 

ウィザードは、巨大な魔方陣を出現させて、中から自分の魔力の源、ウィザードラゴンを召喚した。

 

「ドラゴン、俺に力を貸せ」

『よかろう、操真晴人。俺の力を存分に使うといい』

そういうとドラゴンはサメのモンスターに飛び掛かり、攻撃を仕掛ける。

ウィザードは自身のバイク、マシンウィンガーをドラゴンに合体させた。

そこに飛び乗ったウィザードはウィザーソードガンでモンスターへダメージを少しずつ与えていく。

モンスターは段々よろめき始め、ついには地面に倒れた。

「今しかない!フィナーレだ!」

ウィザードはもう一度指輪を付け替えて、とどめの必殺技を放つ。

 

チョーイイネ!キックストライク!サイコー!

 

するとドラゴンは巨大なドラゴンの足の形へ変形しする。

そこへウィザードがキック技の体勢を取り、そのままモンスターへキックを放った。

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ウィザードのキックはモンスターへ直撃。無事にモンスターを破壊した。

 

するとボロボロになったアンダーワールドは元に戻った。

そこには大変ながらも笑顔を見せて会社で働いている合歓の姿があった。

いつかこんな風になれるといいな。そうウィザードは思い、アンダーワールドを後にした。

 

合歓の自室に戻ってきたウィザード、そこにはヒビもなく、息も止まっていない合歓がこちらを見ていた。

 

時計を見たウィザード、11:58分だった。

間に合った。消えそうな命を、希望を救えた。

ウィザードに気付いた合歓は声を掛けてきた。

「もしかして、ウィザードが私を助けてくれたの?」

「あぁ、君はねむりんだろ?助かって良かった」

「チャットから抜けた後、ファヴからもう少し魔法少女になれるって聞いたから他の人の夢に入ってたんだけど、気付いたらとても息が苦しくて、倒れたみたい」

「そうか、でももう魔法少女の能力は失われちまった、すまない」

「良いよそんなの、本当にありがとうね、ウィザード」

「本当にありがとうございます!なんと礼を言えば良いのか…」

合歓と母に感謝され、変身解除した晴人は久々に心からの笑顔を見せた。

まだこれから、ファヴやファントムのこと、いろいろやらなければならないことがある。

それでもこうやって、誰かの希望を救えたことが、晴人にとっての一番だ。

 

 この先は、彼女自身の望む未来だ。

しっかりと会社に就職し、家族に尽くしていくだろう。

魔法少女ねむりんはもういない。だがこれからは三条合歓としての新しい生活が始まる。

 

三条合歓の物語はこれから始まる…




完成しました。第6話でした。
これが皆様の期待に沿えたのかは分かりませんが、自分なりに頑張りました。
これからはファヴVSウィザード、魔法少女の戦いが始まっていきます。
ご期待ください!
閲覧ありがとうございました!


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第7話 進む陰謀

お待たせしました。第7話です。
プレミアム前売り券は買い逃しちゃいました…
ウィザードは今回出ません


 仮面ライダーウィザード、操真晴人が魔法少女ねむりんの命を救った日の深夜、魔法少女達のほとんどが退室したチャットルームで、ファヴは一人の魔法少女と話をしていた。

 

 

『…思いの外魔力を吸収できていないぽん。何でだぽん』

「ねむりんの魔力がその程度だったのでは?」

『まぁいいぽん。計画は進めるぽん』

「いいでしょう。では私もそろそろ戦わせてもらいましょうか」

『それはまだ早いぽん。二人目が死んでからだぽん。』

「…分かりました。では私はもうしばらく外野で音を奏でるだけの存在でありましょう」

 

 

 そう言った一人の魔法少女、クラムベリーは一瞬だけ化け物のような姿となり、チャットルームから退室した。

 

 

『グッバイぽん、クラムベリー…いや、もう奴はクラムベリーじゃないぽん』

 

 

 ファヴもそう言い残してチャットルームから退室した。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、チャットルームにて…

 

 

『魔法少女のみんな、ねむりんは脱落してしまったけど、今週も頑張るぽん!』

「何が脱落だ…」

「ねむりん、死んじゃうところだったんだよ!」

 

 

 ラ・ピュセル、そしてスノーホワイトの意外な言葉に魔法少女達は騒然となる。

 

 

「お、おいスノーホワイト、死ぬってどういう事だ?」

 

 

 トップスピードが理由を尋ねる。しかしスノーホワイトからは衝撃の返答が帰ってきた。

 

 

「キャンディー集めで最下位になった魔法少女は魔法少女を辞めさせられるどころか、死んじゃうんだよ」

「はぁ!?何だよそれ!」

「おいファヴ、説明して!」

 

 

魔法少女達は驚きを隠せない様子。そして質問の矛先はファヴへと変わる。

 

 

『言いがかりは止して欲しいぽん。それにそんなの誰が言ったんだぽん』

「ウィザードだ。実際に彼がねむりんを救ったと聞いている。」

『でも、本当にファヴは何も知らないぽん。』

「じゃあ今回ねむりんがこうなったのは誰がやったんだよ!」

『そんなの余計に分からないぽん』

「じゃあせめて、魔法少女を減らすのを延期出来ないのか!」

『それは出来ないぽん。一度決めたルールは変更が難しいぽん』

「何でよ!じゃあ私達どうなるのよ!」

「死ぬくらいなら魔法少女やめるわ!」

「やめるわ!」

「勝手に魔法少女にされて、今度は死ぬかもなんていい加減にしてよ!」

 

 

 

「…もういいじゃないですか、そういうの」

 

 

そう言って怒りの収まらない魔法少女達を制止したのは、クラムベリーだった。

 

 

「ファヴは分からないと言っているのです。これ以上探っても何もなりません」

「でも何も分からない状態でキャンディー集めなんか出来ないじゃないか!」

「ねむりんが助かったのはたまたまかもしれないし、次の脱落者が助かる保証も無いじゃない!」

「第一クラムベリー、あんたも死ぬ危険性があるんだ。それでもいいのか」

 

 

「だったら、なんだって言うんです?」

「…え?」

 

 

クラムベリーは全く動じていないようだった。

 

 

「生き残るには死なないようにキャンディーを集めるしかない、そういうことではないのですか?」

「それはそうだが…」

「自分が生き残るには他人の心配なんてする必要は無いのです」

「あんたは人の命がどうなっても良いのか!」

『ま、待つぽん!今日はチャットルームお開きということで頼むぽん!』

『ファヴもこの状況を打開できるようにいろいろやってみるぽん』

 

 

そのファヴの言葉を最後に、今日のチャットルームは終了となった。

魔法少女達は強制的に退室させられた。

しかしクラムベリーとファヴは、チャットルームに残っていた。

 

 

『危ないところだったぽん。助かったぽん』

「いいえ、こんなところで計画が崩れるのも困りますし」

『おかげで、ねむりんからの魔力が少なかったのはウィザードのせいってことも分かったぽん』

「やはり、ウィザードは邪魔な存在です…多くのファントムを葬って来ただけあります」

『君達ファントムも苦労してたぽんねぇ…』

「私の正体が知られる日も近いかもしれません…私もそろそろやるしかないですね」

『すまないぽん。君の力も借りるぽん』

「これもウィザードを倒し、計画を進めるためです…」

『こちらもどんどん計画を進めていくぽん。』

「宜しくお願いしますよ…」

『勿論だぽん。クラムベリー…いや、ファントム・オーガ』

「その名前は出すんじゃねぇ…いや、出さないで貰えませんか?」

『失礼したぽん。では、また宜しく頼むぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ見えてきたかな?名深市とやらは」

「待ってろ、晴人!そして…」

「俺も早く魔法少女に会いてぇー!でもその前に寝る!おやすみなさい!」




というわけでウィザードが全く登場しない7話でした。
クラムベリー衝撃の正体と、最後のアイツは一体!?
ご閲覧ありがとうございました!


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第8話 支配するもの、されるもの

第8話です。
ドライブサーガやっと見ました。ブレンの最後の言葉はVシネ3弾の伏線?(適当)


 チャットルームでの一件から1日経っただろうか。

魔法少女達のマジカルフォンへファヴから連絡メールが届いた。

 

 

『昨日の一件は申し訳なかったぽん。今日の連絡は、新ルール適用のお知らせだぽん』

『新ルールとは、マジカルキャンディーの交換機能、そして魔力増大システムぽん』

『交換機能は、魔法少女のマジカルフォンを通じてキャンディーを渡せる機能だぽん』

『魔力増大システムは、魔法少女の力を3時間増大させて、自分を強化したりできるぽん』

『その代わり、使い終わるとオーバーヒートを起こして半日行動不能になるぽん』

『機能説明は終了だぽん。これからもみんな頑張るぽん。バイバイぽん』

 

 

メールの内容はこれだけであった。

唐突な新ルール適用であったが、返信は出来ず、おまけにファヴを呼び出せなくなった魔法少女達は、黙って適用を受け入れるしかないのだ。

 

 

「そうちゃん、これって意味あるのかな?」

「そうちゃんは止めろって…まぁいいや。例えば君がマジカルキャンディーの所持数が少なくて、ランキング最下位として、たくさん持ってる僕が君のマジカルフォンにキャンディーを送れば、最下位から浮上もできるって訳だね」

「そういうことなんだ!そうちゃ…ラ・ピュセル頭良い!」

「う、うん…ありがとう…でも君はキャンディー所持数ぶっちぎり1位だから大丈夫だよ」

 

 

 スノーホワイトとラ・ピュセルの二人は使い方をこう考えたが、別の捉え方をするものもいる。

 

 

「今回の新ルール適用の件だけど」

「キャンディー交換機能…このシステムが何を意味しているか分かるかしら?」

 

 

 ルーラの一味である。名深市の王結寺と呼ばれる寺にアジトを作り、ルーラの他にたま、ユナエル、ミナエル、スイムスイムの5人で集まっていた。

 

 

「たくさん持ってる子が少ない子に分けるってこと?」

 

 

 犬のような魔法少女、たまがルーラに恐る恐る答えを言う。

 

 

「0点」

 

 

 しかしルーラからは冷たい返答が返ってきた。ルーラの考える答えとは違うようだ。

 

 

「じゃあチームでキャンディーのやりくりする系?」

「多分それ正解だよ。やっぱお姉ちゃんマジクール」

 

 

「30点」

 

 

 たまより点数は高いものの、やはり正解とは程遠いようだ。

 

 

「スイムスイム、あなたはどう思うの?」

「………」

 

 ルーラはスイムスイムに話を振ったものの、スイムスイムは何も分からないと言わんばかりに無言で首を左右に振った。

 

 

「どいつもこいつも馬鹿ばかり…」

「ルーラ、それってだじゃれ?」

「うるさい!」

 

 

 ユナエルは場の空気を和ませようとしたのだろう。だが余計に空気が悪くなってしまった。

 

 

「これはファヴからのメッセージよ。これでキャンディーの奪い合いをしろってね」

「無理やり奪っちゃうの?大丈夫なの?」

「怒られない?」

「そんなの気にしてたらどうにもならないでしょ。他人の端末を奪って自分の端末に送りちけるようにすればいいのよ。既に実験済み」

「マジで!?」

「そりゃすごい」

「相槌しか打てないなら黙ってろよ、クズ」

 

 

 ルーラがユナエル、ミナエルに冷徹な言葉を浴びせる。あくまで対応は辛辣である。

 

 

「奪い合いよ…つまりは一番キャンディーを持っている奴から奪えばいい…」

「一番持ってる奴…スノーホワイト!」

「マジで!スノーホワイト狙えるの!」

「少しは黙ってなさい…でも、まぁそういうことよ」

 

 

「明日の夜、スノーホワイトを襲撃する」

 

 

 ルーラから発せられた言葉に、ユナエル、ミナエルは目を輝かせ、たまは驚いたように顔を上げ、スイムスイムはただ黙って話を聞いていた。

 

 

「でもラ・ピュセルいるし強そうじゃね?」

「勝てなくね?」

「誰が正面からまともに戦うって言った馬鹿、作戦を作るのよ」

「そこであんたらピーキーエンジェルズとたまにラ・ピュセルの陽動をお願いするわ」

「分かったルーラ!」

「任せて!」

 

 たまは、1人だけ賛成しきれていなかった

 

「で、でも…本当にやるの…?」

「たま、これは私達が生き残るため。あなただって死にたくないでしょ?」

「そ、それはそうだけど…」

「たま。ルーラの言葉は絶対。やるしかない」

「スイムちゃん…ルーラ…」

「決行は明日。覚えておきなさい。では今日は解散」

 

 

ルーラの言葉で今日の集まりは解散となった。

ルーラとスイムスイムはそそくさと寺を後にして、その後たまとピーキーエンジェルズも寺から居なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルーラはあまり人目の多いところに出ないよう、路地裏や狭い小道を走っていた。

しかし、その時だった。

 

「きゃっ!な、何よ!」

 

ルーラの目の前に槍が降ってきた。

 

「貴様か、魔法少女ルーラというのは」

「誰よ、お前は!」

「ふん、教えた所で貴様の命はここで絶える。だが冥土の土産に教えてやろう」

「我らはファントム。人間の絶望から生まれた存在」

 

 槍の持ち主はファントム・ランサーだった。その名の通り、槍を自由自在に操る。

 

「ファントム!?この前ファヴが言っていた…」

「ほう、知っているのか、まぁいい。これも我らの為、貴様の魔力を頂く!」

 

 そう言うとファントムは槍をルーラの体に突き刺そうと飛びかかってきた。

咄嗟に杖を出すが槍に弾かれてしまい、ルーラは尻餅をついた。しかしファントムはすぐさまもう一度攻撃をするため飛びかかって来た。

もう一度来る、速すぎる、避けれない…そうルーラが思い、死を覚悟した瞬間だった。

 

 

 

 ハリケーン!ドラゴン…!

 

 

 空中から何かがこちらへ飛んでくるのをルーラは見た。

それはファントムよりも速く、翼を広げた緑色の戦士…!

 

 

「やらせるか!だぁぁぁぁ!」

 

 

「ぐぉっ、き、貴様はァァァ!」

 

 

 緑色の戦士が地上に着くと同時にファントムを遠くへ蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされたファントムは地面にめり込む程の攻撃を受けた。

 

 

「あ、あなた…確か…ウィザード…」

「危なかったな、ルーラ」

 

 

 ルーラを救った緑色の戦士は、ウィザード、ハリケーンドラゴンスタイルだった。

通常のハリケーンスタイルとは少し外見が変わり、翼を纏っている。

 

 

「指輪の魔法使い…やっぱり出てきやがったか」

「悪いけど、お前らファントムの好き勝手にはさせないさ」

「ルーラ、君は下がってろ」

「え、あ、分かったわ…」

 

 

「さぁてファントム、今度は俺が相手だ」

「良いだろう。かかって来い!」

 

 

「さぁ、ショータイムだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~、もうそろそろだけど、結構疲れてきたぜちくしょう…」

「くっそぉ…俺の疲れを癒してくれよ魔法少女ぉ…」

 

 

「どうかしましたか?」

 

 

「お、いるじゃんいるじゃん…俺を癒してくれよぉ…ってえええええええええ!」

「魔法少女さん!本物!うそおおお!」

「本物ですよ。癒してって声が聞こえたので。何をすれば良いですか?」

「い、いやその…お名前を…」

「な、名前ですか?スノーホワイト…ですけど…」

「(あれ?名前って言って良かったっけ?まぁいいか)」

「スノーホワイトさん…ですか!俺、仁藤っていいま…ってあれ?」

「スノーホワイトさーん!どこ行っちゃったのー!」

「ま、まぁいいか…やっぱピンチはチャンスだ!」

「絶対魔法少女スノーホワイトさんにもう一度会うぞぉ!待ってろぉ!」




以上、8話でした。
最後のはもう正体バラしちゃいましたね(笑)
小雪さんはたまたま名深市の外に居たのでたまたまアイツに遭遇しました。
ご閲覧ありがとうございました。次回もお楽しみに!


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第9話 リーダーの教え

第9話目です。
アニメ本編はもはや殺戮パーティーと化してますね(笑)


 ルーラは物陰に隠れてウィザードとファントムの戦いを見ていた。

先ほど突然襲いかかってきたファントム。自分ではどうにもならなかった槍による強襲攻撃を、闘牛士の如く避け続け、一瞬の隙をついて素早く剣撃を入れていくウィザード。

自分にも何か出来る事は無いか…そう考えたルーラは、ウィザードに連携の合図を送る。

 

 

 

「ウィザード!そいつの動きを止めて!」

「おっ、分かった。任せろ!」

 

 

 

 

バインド、プリーズ!

 

 

 

 バインドの魔法を放ったウィザードは、ファントムを拘束する。

 

 

「フン、こんなもので俺を拘束しても、5秒程しか持たぬだろう」

「悪いな、どうやら5秒持てば十分らしい…!」

 

 

「ルーラの名の下に命ずる。武器を捨てて身動きをとるな!」

 

 

 そう、ルーラの魔法は目の前の相手に何でも言うことを聞かせられる能力。

自身の杖、王笏を相手に向けながら魔法の行使を宣言することで、魔法を発動させられる。

発動には時間がかかるため、テクニカルな魔法ではあるが、その威力は強力である。

 

 

「うおっ、槍が…何故動けない…!本当に魔法の力で…!」

「そのまさかさ。俺達魔法使いなんでね」

「何でもいいわ。ウィザード、後はあなたが倒しなさい!」

「OK。さぁ、フィナーレだ!」

 

 

 

チョーイイネ!サンダー!サイコー!

 

 

 

 ウィザードは動けないファントムを上空から魔方陣で包み、必殺魔法、サンダーを直撃させた。

サンダーの雷撃を避けることも出来ずにまともに受けたファントムは、叫び声を上げながら爆散した。

 

 

「無念…!ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぃー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いを終えたウィザードにルーラが声をかけた。

 

 

 

「ウィザード。今回は申し訳なかったわ。それと、あなたと少し話がしたい」

「分かった。俺は別に構わないよ」

「それなら助かるわ。人通りの無いところでも行きましょう」

 

 

 

そう言ったルーラは、ウィザードと共に公園に向かい、ベンチに座って話を始めた。

 

 

 

「ウィザード、あなたの力が借りたい。少しだけ協力してくれないかしら」

「はぁ。俺は何をすればいいんだ?」

 

 

「明日、私達はスノーホワイトを襲撃するわ。キャンディーを奪う為にね」

 

 

「その為にも、あなたに少しの時間でも良いからラ・ピュセルの注意を引いて欲しいの」

 

 

ルーラから告げられたのは衝撃の言葉だった。ウィザードはただ黙って聞いていたが、納得出来ずに反対の言葉を発した。

 

 

「…悪いが、それには協力出来ない」

「俺はキャンディー集めなら幾らでも手伝う。でも他人から奪うような事は俺はしない。もし、その作戦を本当にするなら、俺は絶対止める」

「…そう。分かったわ」

「なぁ、そんな事は止めて、キャンディー集めはしないのか?」 

「…しないわ。」

「キャンディー集めだったら俺も手伝うよ。お前らがそんな事するぐらいなら、キャンディー集めぐらい手伝えるさ」

「そう?そんなに言ってくれるのなら…」

「じゃあ、明日の9時にここに集まれるか?」

「えぇ、あなたが良いのなら」

「分かった。じゃあ明日の9時にここで会おう」

「また明日」

 

 

 

 その言葉で会話は終わり、明日またここで集まるという約束が作られたが、これはルーラの嘘であった。

ルーラの作戦に反対したウィザードは、必ず止めに来る。そう感じたルーラはウィザードをここに誘導し、その間に決着をつけるというものであった。

ウィザードには悪いが、これも生き残る為である。

 

 

これが、ルーラの答えであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、王結寺には帰ったはずのルーラ以外の4人が再び集まっていた。

その会話の内容はとても恐ろしいものだった。

 

 

「作戦はこれ。私が鉄塔に行ったとき、スノーホワイトのキャンディーをスノーホワイト、ラ・ピュセル、ルーラ以外の全員に配る。そうすればルーラは最下位。そこで一気に叩く」

「うわぁお、スイムちゃん外道」

「マジ外道」

「いや、これはルーラの教えを守るためにやること」

「ルーラの教えを守るためには、ルーラ自身を倒すことも必要」

「ルーラは私が片付けるから、たまとピーキーエンジェルズはラ・ピュセルの陽動をお願い」

「OKリーダー!」

「任せてリーダー!」

「…う、うん…スイムちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、ルーラ達の作戦当日。

 

 

 

「ピーキーエンジェルズとたまから連絡が来たわ。そろそろ作戦開始よ」

 

 

 

 ルーラはスイムスイムと共に待機をしていた。

そもそも作戦とは、ピーキーエンジェルズ、たまがスノーホワイト襲撃の邪魔になるラ・ピュセルの陽動を行い、

スノーホワイトが一人の隙をついてキャンディーを奪いに行くというものだ。

 

 

 

「スイムスイム…そろそろよ」 

「…うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、まだ何も知らないスノーホワイト、ラ・ピュセルは、鉄塔で二人で話していた。

 

 

 

「そうちゃん、今日もお疲れ様」

「そうちゃんはやめろって…でも、お疲れ様」

「ねぇ、今日の結果発表、一緒に見よう。私、怖くて…」

「いいよ。こっちも全く怖くないわけじゃないし」

「ありがとう。ラ・ピュセル」

「こちらこそ、スノーホワイト」

 

 

 

 

「ヒューヒュー!お似合いだねぇ!」

「超クール!」

 

 

 

 急に聞こえた声に二人は驚き、ラ・ピュセルは剣を構えた。

突然二人の前に現れたのは、ピーキーエンジェルズだった。

 

 

「ピーキーエンジェルズ。どういうつもりだ」

「へへへっ、気になるならついておいで、ラ・ピュセル!」

 

 

ピーキーエンジェルズは、そう言い残し、誘導場所の方向へ逃げていった。

 

 

「お、おい!待て!スノーホワイト。君は絶対ここから動かないで!」

 

 

 ラ・ピュセルもピーキーエンジェルズを追っていってしまった。

ルーラ達の作戦通りである。

 

 

一人になり、少し不安なスノーホワイトであったが、今度はそこへルーラとスイムスイムが訪れた。

 

 

 

「えっ!な、何?」

 

 

「あなたのキャンディーを頂くわ」

 

 

そう言うルーラは、杖をスノーホワイトへ向け、魔法を発動した。

 

 

「ルーラの名の下に命ずる。身動きをとるな」

 

 

「ま、待って!何でこんなこと…」

 

 その魔法が発動し、スノーホワイトは動けなくなってしまった。

今すぐにでも逃げたいスノーホワイトだったが、動けずにただルーラ達の計画を見守るしか無かった。

 その間にスイムスイムはスノーホワイトのマジカルフォンから自分やルーラのマジカルフォンへキャンディーを移動させ始めた。

 ルーラは魔法発動のポーズのまま、スイムスイムが移動を終わらせるのをじっと待っていた。

ピーキーエンジェルズ達から陽動成功という連絡以降何も連絡が無いのが多少気になっていたが、今はこれが終わるのを待つしかない。

だが、短気なルーラは苛立ちを抑えられなくなってきた。

 

 

 

「スイムスイム!まだなの!?この態勢疲れるんだけど!」

「…もう少し」

「くそっ!早くなさい!」

 

 

 

 

「終わった…」

 

 

 

 スイムスイムのその一言を聞き、ルーラは魔法を解除した。

一方スノーホワイトは魔法を解除されたものの、地面に膝を付いて動かなかった。

 

 

「ふぅ、撤退よ。3馬鹿は向こうで合流すればいいわ」

「…了解」

 

 

 ルーラとスイムスイムはすぐに撤退していった。

残されたスノーホワイトの下にラ・ピュセルが帰って来た。

 

 

 

「あ、そうちゃん…ってその傷は?」

 

 

 ラ・ピュセルの腕や体には何ヵ所か傷が出来ていた。

 

 

「何ともないよ。ちょっと擦り傷をね…でもそんなことよりも…」

「スノーホワイト、守りきれなくてすまない。君の騎士だと言うのに…」

「そんなのいいよ…でも、キャンディー取られちゃった…」

「え!?そんな…」

 

 

 そう言うラ・ピュセルはスノーホワイトのマジカルフォンを確認する。

しかし、5万あったキャンディーは全部ではなく、半分持っていかれただけで2万5000残っていた。

 

 

「でも、キャンディーは2万5000も残ってるよ」

 

スノーホワイトのキャンディー所持数はとんでもなく、2万5000も持っていれば十分ランキング上位陣でいられるはずである。

 

 

 スノーホワイトのキャンディーを奪い、最下位にする。目的がそれでないなら、何のためにスノーホワイトのキャンディーを奪ったのか。その理由が分からない二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな二人の所へ、大急ぎでウィザードがやってきた。

 

 

「二人共!大丈夫か!」

「うん。私はケガしたけど、スノーホワイトは無事だ」

「そうか。良かった…」

 

ウィザードはその言葉に安堵したが、すぐに話を切り替える。

 

「所で二人共、ルーラがいつもどこにいるか知ってるか?」

「ルーラなら、王結寺っていう寺にいつもいるよ。でもキャンディーを取り返さなくても…」

「いいや、このままじゃルーラが死ぬ。それだけは絶対に避けたい」

「えっ!でもルーラはさっきスノーホワイトからキャンディーを…」

「ルーラは多分スイムスイム達に裏切られる」

「何だって!」

「時間が無い、場所教えてくれてありがとうな!」

 

 

 

そう言うと、ウィザードはバイクに乗って行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、王結寺には、作戦を終えたルーラ達が再び集まっていた。

 

 

 

「さて、作戦は終わったわ。後はランキング発表を待つだけ」

「これでスノーホワイトは脱落、そして死亡だね」

「そうだねーお姉ちゃんマジクール」

「少しは黙ってなさい。さぁ、ランキング発表の時間よ」

 

 

 

 

 

『みんな、お疲れ様だぽん。ランキング発表だぽん』

『今週も色々あったけど、最下位の発表だぽん』

『最下位は…』

 

 

 

 

 

『ルーラだったぽん』

 

 

『色々頑張ってたみたいだけど、残念ぽん』

 

 

 

 

 

 この瞬間、ルーラの思考は完全に停止した。

何故だ、作戦は成功したはず。なのに何で自分が最下位に…

そんなことを考える内に、スイムスイムが自分の背後にやってきた。

 

 

「何で…どうして…」

「ルーラ、私はルーラのようにすごい人になりたい。でもその為にはルーラを殺さなければいけない…許して」

「ミナエル、剣になって」

「OK、新リーダー」

「ちょっと…スイムスイム…ミナエル…何を言って…」

 

 

 怯むルーラに、スイムスイムはミナエルが変身した剣を突き付け、そのまま切り裂こうとする。はずだったが…

 

 

 

 

 

「ちょっと待ちな。そいつの処理は俺がやる」

 

 

突然聞こえたその声に、スイムスイムは後ろを振り向く。その瞬間、何かにスイムスイムは吹き飛ばされた。

 

 

 

「ルーラとやら、てめぇはもう魔力を失い、死ぬ。だったら、お前の魔力を無駄にしないように、俺が喰ってやるよ」

「一体何者!またファントム!」

「そうさ、俺はオーガ。さっさと喰ってやるから黙って死ね!」

 

 

 

なんと、ファントム・オーガがルーラの前に現れたのだ。しかし、勿論味方な訳もなく、襲いかかってくる勢いである。

 

 ルーラにとって最大の危機が訪れた。

この場にはルーラの味方は1人もいない。スイムスイムに殺されるか、ファントムに喰われて殺されるか、或いは12時を過ぎて魔法少女の力を失って死ぬか。

ルーラの選択肢には、もう助かる未来は残されていない。

 

 もし、スノーホワイトを襲わずに、ウィザードとの約束を守っていれば…

 

 

 生まれて初めてルーラに後悔という思いが生まれた…。




というわけで9話でした。
ラ・ピュセルVSピーキーエンジェルズ&たまは次回以降に書かせて頂きます。
そして唐突に現れたオーガ。正体は某森の格闘家さんです(笑)
今回もご閲覧ありがとうございました!


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第9.5話 ビースト

ルーラの生死に関わる重要な話の前に、今回は前回描写しなかったラ・ピュセルVSピーキーエンジェルズ、たまの戦いとタイトルの通り奴の登場編です。


 ルーラ一行にキャンディーを奪われ、最下位にはならなかったものの、心に傷が出来たスノーホワイト。

彼女を慰めながら、ラ・ピュセルは自身の行動の甘さを悔やんでいた。

自分の使命は彼女を守り抜くこと。その筈だった。

ピーキーエンジェルズの煽りにまんまと嵌まった自分が情けない。

自分自身もアニメや漫画のように敵と戦いたい。そんな欲に支配された自分が情けない。

とにかく自分が情けなかった。

それにもし、あの時の金色の魔法使いに助けて貰ってなかったら、スノーホワイトどころか、自分の命すら危なかった。

 

 そういえば、あの時の魔法使いはどこにいるのだろう。もう一度会えるならばお礼が言いたい。

同じ魔法使いのようであったし、ウィザードに聞けば分かるだろうか。

 

 

 

 名前は確か、《ビースト》と言ったか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラ・ピュセルはピーキーエンジェルズを追って、鉄塔から離れた工業地帯へ足を踏み入れていた。

飛べるだけあってピーキーエンジェルズはなかなかに速く、追い付くのに時間が掛かった。

やっと追い付き、双子の姿を捕捉する。

 

 

「おい!お前ら一体何のつもりだ!」

「いやぁ、なんとなく察してくれると嬉しいな」

「キャンディーちょうだい!」

「なん…だと…」

 

 

 ラ・ピュセルは怒りという感情をこれ程までに感じたことは無かった。

同じ魔法少女の中でもキャンディーを奪うという考えを持った者がいるのが信じられなかった。その事への怒り。

しかし、それと同時に思い切り剣を振れるという喜びの感情が渦巻いていた

 

 

「お前達の思い通りにはさせないぞ…」

「おお、カッコいいねぇ、でも無駄だよ…たま!」

 

 

 ミナエルはたまに呼び掛けた。

どこかにたまがいるのか?ラ・ピュセルがそう考えている間に突如地面が崩壊し、大きな穴が出来た。

地面の崩壊により砂ぼこりが大量に立ち込め、ラ・ピュセルは視界を塞がれ、自分が今どこにいるのかすら分からなくなった。

 

 

 

「ごめんね…ラ・ピュセル」

 

 

 そんなことを呟くたま。

彼女の瞳からは涙が溢れていた。

 

 

 たまの魔法はを巨大な穴を作る能力である。

そんなたまの魔法でラ・ピュセルのいた場所に穴を作り、ラ・ピュセルを落とすことに成功した。ピーキーエンジェルズ達の作戦は予想以上に上手く行った。

 

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

 

 

 

 砂ぼこりが消えて、穴が露になる。

しかし、そこにはラ・ピュセルの姿が残っていた。

巨大化させた剣を足場代わりにして、咄嗟にその場を凌いでいた。

 

 

 

「う、嘘ぉ…」

「マジクール…」

 

「こんな奴らに、やられるわけにはいかない!」

 

 

 ラ・ピュセルは穴の近くにいたたまを蹴り、ピーキーエンジェルズにとてつもない速さで斬りかかる。

ピーキーエンジェルズはギリギリの所を避け、空中に散開する。

散開したピーキーエンジェルズは、直ぐ様急降下を始め、ラ・ピュセルに襲いかかる。

ラ・ピュセルは剣を巨大化させ、斬りかかる体勢を作った。

ピーキーエンジェルズとラ・ピュセルが激突しようとしたその瞬間…。

 

 

 

 

「ちょっとちょっとぉー!何やってんすか!」

 

 

 

 

 突如男が乱入してきた。

一般人の乱入にピーキーエンジェルズとラ・ピュセルも思わず攻撃を止めてしまい、ピーキーエンジェルズは勢いを止められず地面に激突した。

 

 

 

「あ、あなた…何をしてるんですか?」

「皆まで言うな、それはそちらの方だろ。魔法少女同士が何で戦ってるんだ!」

「え、えぇと…アハハ」

「ラ・ピュセル…今回のは無かったってことで…」

 

 

 男を不審がり、帰ろうとするピーキーエンジェルズだったが、男に止められる。

 

 

「待ってくれよぉ!せっかく会えたんだ!話ぐらいは聞いてくれよ!」

「うわあ!お姉ちゃん!こいつに掴まれたよ!」

「な、名前も言わずに待ってって言われても困るんだけど!」

「お、おう!すまねえ!俺は仁藤攻介!」

「まず何の用なの!」

 

 

 

 仁藤という男に乱入され、もはや戦いどころではない3人。

しかし、そんな所へ…

 

 

 

 

「見つけたぞ…魔法少女…」

 

 

 

 

 

 

「何だお前!」

「何か怪物がぁ!」

「これが噂に聞くファントムだよお姉ちゃん!」

 

 

 更なる乱入者、しかもファントムに驚く魔法少女。

しかし、この男は違った。

 

 

「やっぱり晴人から聞いてた通り、ファントム共が湧いてるじゃねえか」

「…ん?何だ貴様は…」

「仁藤さん…って言ったっけ、今、晴人って…それにファントムのことも知ってるって…」

「皆まで言うな、お前らは逃げろ。こいつは俺の獲物だ」

 

 

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて…」

「ルーラが良く言う戦略的撤退って奴だね。まぁルーラは今日で死ぬわけだけど。たまもほら、急いで」

「う、うん…」

 

 

 そう言う仁藤に、ピーキーエンジェルズとたまは逃げていった。

しかし、ラ・ピュセルは逃げないでファントムと対峙している。

 

 

「おい、お前は逃げないのか。」

 

 

 先程までとは雰囲気の変わった仁藤に忠告されるが、ラ・ピュセルの意志は変わらない。

以前のファントムとの戦いは、ウィザードに終始助けられながらだった。

だが今回はもう違う。ここで逃げれば騎士の恥だ。

 

 

「私も戦う。もう逃げない」

「そうかい。じゃあ頼むぜ」

 

 

 そう言うと仁藤は右手に付けていた指輪を自分のベルトにかざした。

多少指輪の形状が違うが、仁藤もやはり魔法使いだった。

 

 

 

ドライバー、オン!

 

 

 

仁藤は体を大きく動かしポーズをとる。そして左手の指輪をベルトに装着し、指輪を回して変身する!

 

 

 

「変 身!」

 

 

 

セット、オープン!

 

 

L・I・O・N ライオン!

 

 

 

 仁藤は魔方陣に包まれ、ライオンをモチーフにした魔法使い、仮面ライダービーストへ変身した!

 

 

「俺は仮面ライダービースト…さぁ、ランチタイムだ!」

 

 

 ビーストは自身の武器、ダイスサーベルを呼び出しファントム・ウォールに突っ込む。

ウォールは名前の通り壁のような装甲を持つファントム。

並大抵の攻撃では破れない。

ビーストの剣撃も、効いてはいるものの、決定的な大ダメージは与えられない。

 

 

「くっそ、こいつ硬ぇな…」

「ビースト!私もサポートする!」

「うおっ、サンキュー!」

 

 

 ラ・ピュセルは剣を鉄塔並のサイズにする。そして巨大化した剣をファントムに直撃させる。

 

 

 

「この攻撃力…ぐわっ!」

「ファントムが怯んだ!チャンスだビースト!」

「おうよ!さっさと行くぜ!」

 

 

 ビーストは再び右手の指輪を付け替えて、その指輪をベルトに押し込む。

 

 

 

バッファ、ゴー!

 

 

 

 

 ビーストは、バッファローの力を借りて、赤いマントを羽織り、ビースト・バッファマントへ変化した。

そしてダイスサーベルにあるルーレットを動かし、指輪で止める。

ダイスサーベルはルーレットの数字によって威力が変わる。1~6で数字が多い方が威力も大きい。

 

 

 数字は5。十分必殺を狙える威力だ。ビーストは一気に攻める。

 

 

ファイブ!バッファ、セイバーストライク!

 

 

そしてラ・ピュセルももう一度剣で相手に斬りかかる。

 

 

「これで終わりだ!おりゃぁぁ!」

「はぁぁぁぁぁ!」

 

 

 ビーストとラ・ピュセルの同時攻撃が炸裂し、ウォールは一瞬にして塵となった。

倒されたウォールは、ビーストのベルト、ビーストドライバーに吸い込まれていった。

 

 

「ごっつぉ!」

「ふぅ…何とかなったな。ビースト」

「おう、というか、あの鉄塔の上、何かやってないか?」

 

 

 

 ビーストの一言で、ラ・ピュセルは我に帰った。

そうだ、スノーホワイトが危ない。救出に向かわなければ。

 

 

「ビースト!すまない!また何処かで会おう!」

 

 

 

 そう言うと、ラ・ピュセルは鉄塔へ向かって走り去った。

 

 

「お、おう!またな、魔法少女!…あ、名前聞き忘れた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いを終えた仁藤は、のんびり夜の景色を見ながら街を散策していた。

すると前方から、見覚えのあるバイクが一台…そう、ウィザード・操真晴人だ。

 

 

 

「ん?…お前仁藤!」

「おっ、晴人じゃねえか!久しぶりだな!」

「あぁ、来てくれた早々に悪いんだが、ルーラって子の情報知ってるか?」

「ルーラってファントムのことじゃないのか?」

「何でそうなる」

「いや…だって双子の魔法少女が、ルーラは今日で死ぬって言ってたからさ」

「何!?サンキュー仁藤!」

「あ、ちょっと待って!晴人どこ行くんだよぉ!」

 

 

 晴人は急に焦りだし、急いでバイクに乗って行ってしまった。

 

 

「何だかみんな急用が多いなぁ…ま、気にしたら負けか」

「晴人にも会った事だし、しばらくはここのファントム潰しでもするかな」

「それにしてもあの騎士みたいな魔法少女、可愛かったなぁ…」

「きっと普段から、可愛い女の子なんだろうなぁ…」




というわけでちょっとした番外編でした。
次回はいよいよルーラ編ラストです!
今回もご閲覧ありがとうございました!


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第10話 本当の思い

平成ジェネレーションズ、晴人と進ノ介出演決定!
…あれ?神様はどこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ


 木王早苗は自身の生活に不満を抱いていた。

難関とされた小学校、中学校、高校、大学に入学し、そして大企業へと就職した。

学校の試験で満点なんていうのは当たり前だった。

周囲の人間は最初は興味深々で早苗に話しかけていたりしたものの、すぐに離れていった。

 それは早苗自身が周囲の人間を馬鹿と見下していたからだ。

早苗は自分の価値も分からない人間と何故付き合わなければならないと思っており、自分から人間が離れて行くのは構わなかったし、むしろ邪魔者が消えて良かったと思っていた。

そんな性格もあってか、学校や会社ではいつも一人だった。

 そんな社会でのストレスを発散させるためになんとなく始めたスマートフォンアプリ、「魔法少女育成計画」。

その中でファヴが現れ、自分を本当に魔法少女した。

魔法少女・ルーラとなった早苗はようやく自身の答えを見つけ出し、すぐに会社を退職した。

自分の魔法少女の姿が本当に誇らしく、これ程までに喜びを感じたことは無かった。

 そんな早苗の気持ちは、カラミティ・メアリによって粉々に打ち砕かれた。

カラミティ・メアリはルーラの教育係だった。だが、魔法少女としてのいろはを教える気など無さそうに、酒瓶を何本も飲み干し、本当に魔法少女なのかとルーラは思っていた。

何か言ってやろうかと近づいていった瞬間、銃声が響き、振り返ると後方のビルに大きな穴が空いていた。

 そしてカラミティ・メアリから告げられたのは、こんな言葉だった。

 

 

 

「カラミティ・メアリに逆らうな、煩わせるな、ムカつかせるな。オーケイ?」

「これが、あなたの魔法…?」

「質問してんのはこっちだよ、お嬢さん。答えろ。黙って頷けばいい。オーケイ?」

 

 

 逆らえば撃たれる…。ルーラはただ頷くしか出来なかった。

ルーラにとって、これが最大の屈辱だった。そしてルーラは、いつか必ず奴に復讐してやる。そう誓ったのだ。

 それからルーラは、新しく加入する魔法少女の教育係に立候補し、たま、ピーキーエンジェルズ、スイムスイムの4人を従え、派閥を作った。

自身の所にいれば、皆有意義な活動を行える。そんな思いだった。

それからは特に状況の変化は無かったが、つい最近のことだ。

 仮面ライダーウィザード・操真晴人が現れたのは。

ウィザードは自分たち魔法少女とは違い、幾つもの魔法を操り、こちらも最近現れたというファントムという怪物をあっさり倒したのだとか。

そしてウィザードは、ルーラ自身でも従うしかなかったカラミティ・メアリを呆気なく返り討ちにした。

 ルーラはそんなウィザードを見て、人生で初めて自分よりも価値のある人間なのではないかと思った。

そしてウィザードは、自分がファントムに襲われそうになった時も、颯爽と現れ、自分を救ってくれた。

 こんな人間の力を借りたい。そう思ったルーラはウィザードに自身の計画に協力してくれないかと誘ったが、断られた。

誰かから奪うなんてできない。そんなことを言うウィザード。

こんなことを言うのだから、必ず計画を阻止しに来る。だからルーラはウィザードを騙すことにした。

いつもなら見下した態度をとるルーラだが、ウィザードにはこの件に関わってほしくない。

そんな気持ちだった。

 

 

 

 

 その後計画を終えて、完全に成功したと思っていた。

しかし、そんな考えはすぐに消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今のルーラの周りには敵しかいない。

ミナエルが変身した剣を持つスイムスイム。突如現れ自分の魔力を喰らう等と言い出したファントム・オーガ。

 更には自分の派閥のメンバー全員に裏切られ、キャンディー所持数最下位になってしまい、

魔法少女の資格を失ってしまう。しかも下手をすれば魔力を吸いとられ死んでしまう。

ファヴの想定外の事態らしいが、このままでは間違いなく自分は死ぬ。

自分の魔法である相手を従わせる力。使えるものの隙が大きすぎる。

更には、こんな状況では使う時の隙で一斉攻撃を受けて確実に持たない。

今やルーラの思考は完全に混乱している。

今までこんなことは無かった。こんな筈じゃなかった。

そんな思いばかりが頭を巡り、肝心の答えが浮かばない。

 

 

 

 

「じゃあ、魔力喰わせて貰うぜ。」

 

 

 不意にそんな声が聞こえてくる。気付けばオーガがこちらへ向かってくる。

このままではマズイ。本当に死んでしまう。

しかしそう言う時に限って体すら動かない。嫌だ、死にたくない。

だが無情にもオーガはどんどんこちらへ近づいてくる。

諦めの感情が生まれた刹那、予想外の事態が起こった。

 

 

 

「うおっ、何だァ!」

 

 

 オーガが突然発生した巨大な穴に落ちていった。

端から見ればシュールな光景ではあるが、ルーラにとっては一安心である。

しかし、穴に落ちていったオーガ。つまり穴を作ったのは…

 

 

 

「ル、ルーラ大丈夫!?」

「…た、たま!?あなた何で…」

 

 

 たまが自分を助けてくれた。たまも自分を裏切るための計画に加担していたのでは無いのか。

 

 

「た、確かにそうだけど…でも、ルーラが死んじゃうのは耐えられないよ!」

 

 

「何でルーラを助けたのさ!」

「たまも嫌だったんでしょ!ルーラにいつも馬鹿にされるのが!」

 

 

 剣への変身を解除したピーキーエンジェルズがそんなことを言う。完全にルーラを殺す気だったようだ。

 

 

「確かにルーラは厳しくて怖いけど、でも何でルーラがキャンディーを盗むなんて言ったか、それがやっと分かったよ」

「何それー?」

「こんなことやらなくても、ルーラのキャンディーは結構あったんだよ。でも、ルーラは私達を脱落させないためにこうやってくれたんだよ!」

 

 

 たまの思わぬ言葉にルーラは驚いた。今までは小心者でろくな意見も言わない馬鹿だと思っていたが、意外にも仲間思いなのかもしれない。

 

 

「ルーラを裏切っちゃった私なんかが言えることじゃないかもしれないのは分かってる」

「でも、ルーラは考えややり方が強引すぎるかもしれない。酷いことも言うけど…!」

「本当は私達のことを考えてくれてるんだと思うんだ!」

 

 

「たま…」

 

 

 そんな言葉にピーキーエンジェルズは黙りこんでしまった。スイムスイムもずっと黙っている。

そしてルーラはここまでたまが自分のことを思ってくれているのに驚きだった。

 

 しかし、そんなことを思っている間に…

 

 

 

 

「魔法少女め!よくもやってくれたな!」

 

 

「えっ!あの穴から出て来たの!?」

 

 

 オーガが穴から抜け出した。かなり深い穴であったが、倒すどころか時間稼ぎにしかならなかった。

 

 

「もうお前の戦法は効かんぞ…」

「”ウロボロス”…」

 

 

 オーガは巨大ファントム・ウロボロスの力を引き出した。

オーガは自身で喰ったファントムの能力を扱える。それは巨大ファントムでもだ。

ウロボロスは高速で空中を飛行できる能力を持っており、オーガもその能力を使い、高速で飛行してたまへ襲いかかった。

 

 

「うわぁ!」

「た、たま!」

 

 

 たまは腕を足を切り裂かれた。かなりの出血である。

更にオーガは攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「お前も俺が喰ってやるよ!」

 

「危ない!たま!」

 

 ピーキーエンジェルズとルーラが叫ぶが、たまは足の負傷で動けない。

このままではたまも死んでしまう…

 

 

 

 

 

 

ディフェンド!プリーズ!

 

 

 

 

 

 

 たまの前に壁が作られ、オーガの攻撃を防いだ。

 

 

 

 

「な、何だ!」

 

 

 

 

「…よく頑張ったな。たま」

「あ、あなたは…」

 

「お、お前は…!」

「操真晴人ォ!」

 

 

 

 オーガの攻撃を防いだのは、ウィザード・ランドドラゴンだった。

 

 

 

「オーガ、お前が何で甦ってるのかは知らないが、この娘達はやらせない」

「フン、だったらやってみろ!」

 

 

 

そう言うとオーガは無防備だったルーラに突っ込んでいく。

 

 

「”レギオン”…」

 

 

 オーガはファントム・レギオンの力でルーラのアンダーワールドに強制侵入した。

ルーラはその場に崩れ落ちる。

 

 

「しまった!ルーラ!」

 

 

ウィザードはルーラに駆け寄る。たまやピーキーエンジェルズ、スイムスイムもゆっくりとルーラの下にやってきた。

 

「ルーラはどうなったんですか!?」

「変な裂け目みたいなのに入ってったけど、あいつ」

「奴の能力はマズイ。最悪ルーラもファントムになっちまう」

 

 

 ウィザード自身もレギオンの能力は何度も経験しており、危険なのも把握している。

急いでルーラの右手に指輪を付ける。

 

 

「みんなはもう戻れ。ここは俺がなんとかする」

「ウィザードさん。ここはお願いします!」

「なんか、色々ごめんなさい!」

「ごめんなさいー」

「私も帰る。後はお願いします…」

 

 

 たま達はウィザードに任せて寺を離れた。

 

 

「絶対助ける!俺が最後の希望だ」

 

 

 

 

エンゲージ、プリーズ!

 

 

 

 

そうしてウィザードもルーラのアンダーワールドに入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがルーラのアンダーワールドか。急いでオーガを見つけないと…」

 

 

 

奥へ進むと、アンダーワールドに発生した巨大ファントムを従えたオーガが待ち構えていた。

 

 

 

「オーガ!お前の思い通りにはさせない!」

「面白い!以前お前に倒された屈辱、ここで返させてもらおう!」

「さぁ、ショータイムだ!」

 

 

 

フレイム、プリーズ!

 

 

 

ドラゴライズ、プリーズ!

 

 

 

 ウィザードはフレイムスタイルに戻り、ドラゴンを召喚してオーガへ突撃する。

ウィザードはソードガン、オーガも自身の剣で応戦する。

ドラゴンに乗ったウィザードはオーガ目掛けてソードガンを切り付ける。

ソードガンはオーガの胸部へ直撃したが、オーガもウィザードへ攻撃を直撃させた。

直撃を受けた二人は、地面に落とされた。

 

 

 

「やるじゃねえか!」

「この程度じゃない!」

 

 

ウィザードはソードガン、ガンモードで隙を見せたオーガに銃撃を撃ち込む。

オーガもさすがに回避出来ず、直撃した。

 

 

「今だ!」

 

 

スラッシュストライク!ヒーヒーヒー!

 

 

ウィザードはソードガンの必殺技、スラッシュストライクを放ち、一気に畳み掛ける。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ま、マズイ!」

 

 

 ウィザードの一撃はオーガに当たったものの、直撃はしなかった。

そして、オーガは消えていた。隙を突いてアンダーワールドから離脱したのだろう。

しかし、まだ巨大ファントムが残っている。

ドラゴンが足止めをしてくれていたおかげでアンダーワールドに被害は出ていない。

 

 

「ドラゴン、来い!」

 

 

 

フレイム…ドラゴン!

 

 

 フレイムドラゴンに変化したウィザードはファントムに乗り、背部から攻撃を加える。

ファントムの両腕、両足を切り裂き、ファントムを達磨状態にして動きを止めた。

そのままウィザードはファントムにゼロ距離で必殺技を放つ。

 

 

 

チョーイイネ!スペシャル!サイコー!

 

 

 

「フィナーレだ!」

 

 

 

 ウィザードの胸部にドラゴンの顔が合体し、炎を直撃させた。

ファントムは跡形もなく爆発した。

 

 

 

「…ふぃー」

 

 

 アンダーワールドから離脱したウィザード。

寺に戻ると、ルーラは変身解除されており、早苗の姿に戻っていた。

 

 

「やっぱり魔法少女のまま助けるのは無理か…すまない、ルーラ」

「…私は、助かったの?」

「まぁな。ただルーラとしての力は失ったみたいだ…」

「そう…私はもう魔法少女じゃないのね」

「もう少し早く俺がここに来れていれば…ルーラ、本当にすまない」

「…早苗でいいわ。ウィザード」

「…え?」

「もう私はルーラじゃない。私は木王早苗」

「でも、感謝してるわ。本当は死んでたかもしれなかったのに…」

「そうか…早苗、あんたの希望は守れたのかな」

「えぇ。ありがとう。これからは、私ももう少し考え方を変えてみるわ」

「あんたも今まで色々あったのかもしれないけど、周りをもっと信じてみてもいいと思う」

「確かにあんたの思い通りに行かない事もあると思う。でもきっと悪いことだけじゃないさ」

「そうよね。ウィザード、あなたには本当に世話になったわ。ありがとう」

「俺も晴人でいいよ。操真晴人。これからも頑張れよ」

「分かったわ、晴人。ありがとう」

 

 

 この時の早苗の笑顔を見て、晴人はまた一つ大切な命を守れたのだと実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日後~

 

 

 

 

「ルーラが魔法少女やめてから、しばらく経つね…」

「何だかんだでルーラは結局居なくなっちゃったし、計画通りじゃね?」

「やっぱお姉ちゃんマジクール!その通りだね」

「ちょ、ちょっと二人とも…」

 

 

 

「ルーラが死ななくて、良かった…」

「スイムちゃん…」

 

 

「でも、ルーラがいないなら、私がルーラになる…」

 

「え…?」

 

 

 

 

 

 

 

「ルーラの意思や教えは、私が受け継ぐ…」




というわけで10話でした。
皆さんのご期待に沿えたかは分かりませんが、ルーラ編は取り敢えず終了であります。
来週からは、いよいよ皆さん大好きあのキャラ編に突入します。
そして16人目も登場します(出番が多いとは言ってない)


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第11話 新しい参加者

タイトルの人は本当に少ししか出ないです。
そしてラ・ピュセル編突入ですが今回は下準備回です。


~ある廃墟にて~

 

 

 

 

『全く、あんたが直々に出ていったのにこれとは…残念だぽん』

「申し訳ないです。ウィザードが現れたのが想定外でした」

『まぁいいぽん。魔法少女共には誤魔化しておくから、心配するなぽん』

「すいません。宜しくお願いします…」

『でもあんた、ウィザードとの戦い、嫌じゃなかっただろぽん』

「…え?」

『あんたは最初、復讐心だけで動いていたはずぽん。でもウィザードとの戦いに喜びを感じていただろ…?ぽん。どうやら元のマスターの性格までコピーしたんだろ…ぽん』

「…ええ、そうみたいです。私は確かにウィザードとの戦いが楽しかった…」

『やっぱりそうかぽん…あんたのコピー元は強敵との戦いをいつも楽しみにしてたぽん。』

「そうでしたか…」

 

 

 そう言うと、会話していた一人…クラムベリーはオーガの姿へ変貌した。

 

 

 

「俺としたことが、あいつを喰らい過ぎたか…」

『でも、こちらとしては面白いぽん。だったらあんたも、クラムベリーとして戦えばいいぽん』

「俺がファントムを殺せってか?」

『そうじゃないぽん、戦うなら、魔法少女を倒せばいいぽん』

「…は?」

『魔法少女は強いぽん。ウィザード程では無いかもしれないけど、充分な強さだぽん』

「ファヴ、何でお前がそんなこと言うんだ?」

『何で?…そんなの決まってるぽん…』

 

 

 

 

 

 

『魔法少女の苦しみ、傷つき、絶望する姿がみたいだけだぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、チャットルームにて…

  

 

 

『今日は、みんなにお知らせがあるぽん』

「そんなことはいい。これまでの2週間のこと、ファヴはなんとも思わないのか」

チャットに来ていたウィンタープリズンが話を遮り話題を変える。

「ねむりんもルーラも一度死にかけた。それにファントムとやらも乱入してきたらしいな」

「こんな状態でも今まで通りキャンディー集めしろっていうのか」

『何か問題でもあるぽん?』

「お前狂ってるのか!最下位は死ぬんだぞ!」

『でも対策法が何も無いぽん。どうしようもないぽん』

「せめて、この街のファントムが全滅した後まで延期を…」

『それは出来なかったぽん。絶対に毎週一人脱落してもらうしかないぽん』

 

 

 その言葉で、集まった魔法少女達は押し黙ってしまった。

ファヴは話題を変えて話を続けた。

 

 

『それは本当にごめんなさいぽん。でも、仕方ないぽん』

『続いて、今回のお知らせだぽん。』

『前から言っていた16人目の魔法少女の件だけど、やっと都合がついたから教育係を募集するぽん』

 

 

 しばらくは誰も立候補しなかったが、やがて手を挙げた者がいた。

 

 

「新しい魔法少女の教育係は、私にやらせてください」

「なっ、ナナ!?」

 

 

立候補したのはシスターナナだった。シスターナナと一緒に行動しているヴェス・ウィンタープリズンは驚いた素振りを見せる。

 

『じゃあ、シスターナナに決定だぽん。では今回の集会はお開き、グッバイぽん』

 

 そう言うとファヴは退出し、逃げるかのように集会はお開きとなった。

魔法少女達も続々退出していき、クラムベリーだけが残った。

そして5分程経った時に、ファヴがチャットルームに戻ってきた。

 

 

『なんとか耐えたぽん。無駄に面倒な連中だぽん』

「そうですね…お手数おかけしました。そういえば気になったのですが…ここで会話をするとログが残って気付かれるのではないのですか?」

『それに関しては心配いらないぽん。この会話には閲覧出来ないようロックを入れたぽん』

「さすが、警戒に怠りが無いですね」

『褒められるのは嬉しいぽん。所で…』

『例の話だけど、うまく行ってるぽん?』

「それなら順調ですよ。ウィザードが頻繁に現れてくれるおかげで、予想以上に早まりそうです」

『それは良いことだぽん。では、引き続き宜しく頼むぽん』

「ええ、勿論です。ではまた…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナナ、待ち合わせ場所はここかい?」

「ええ、確かこの辺り…」

 

 

 シスターナナとウィンタープリズンは、直接会いたいという森の音楽家クラムベリーと合流するため、高波山という山の採石場に来ていた。

クラムベリーについてはチャットでよく見る人という認識で、実際に会ったことは無い。

また、チャットでも滅多に発言することはなく、時々する発言で、みな黙ってしまう。

そのため、どんな人物なのかもあまり分からない。

よく分からない者程危険な場合もある。ウィンタープリズンは細心の注意を払っている。

そんなウィンタープリズンの気も知らず、シスターナナは仲間が増えると浮かれていた。

 

 シスターナナは現在の魔法少女の状況を打開するべく、自分達の協力者を集めようと、多くの魔法少女達に協力を要請していた。しかし、結果は決して良くはなく、協力をしてくれる魔法少女は少なかった。

唯一協力してくれたのは、スノーホワイトとラ・ピュセルだけだった。

そして今回のクラムベリー、明日会う予定の新人魔法少女。二人共加勢してくれるかは分からないが、話してみる余地はある。

そんな思いでシスターナナは今回の事、そして新人魔法少女の教育を了承したのだ。

 

 クラムベリーとの集合時間は午前2時、真夜中である。

そして、クラムベリーは時間ちょうどに現れた。

 

 

「現実でお会いするのは初めてですね。シスターナナ、ヴェス・ウィンタープリズン。」

「初めまして、森の音楽家クラムベリー。」

「どうも…」

シスターナナに比べ、ウィンタープリズンはかなり警戒しているようだが、クラムベリーはそんなこと気にしてない様子。

「クラムベリーで構いません、シスターナナ」

「分かりました、クラムベリー。今まで話したことが無くて、どんな方かと思っていたんですが、お優しそうな方ですね」

「いえいえ、お二人も私の想像通りの方で驚いております」

「ありがとうございます。それでは、早速お話ししたいことがございまして…」

 

 その後、シスターナナはクラムベリーに一通り伝えたい事を話した。

内容は今まで話してきた内容と同じだが、今こそ一致団結して、協力し合うべきだ。というものだ。

 

 

「まだ、スノーホワイトとラ・ピュセルしか協力者はいないのですが…どうかご協力願えますか?」

「スノーホワイトと、ラ・ピュセル…ですか。それでは私からも質問をさせて頂きたいのですが、宜しいでしょうか」

 

 一瞬クラムベリーが笑みを浮かべたのを、ウィンタープリズンは見逃さなかった。

 

 

「はい、私に答えられる範囲のものであれば、何でも」

「では、単刀直入に言わせてもらいます」

 

 

 

 

 

 

「やめませんか、こういうこと」

 

「…え?それはどういう意味でしょうか…?」

 

 

 ウィンタープリズンは手をポケットから出し、シスターナナを守るように前に出た。

 

「そのままの意味ですよ。私はあなた方のようにゲームに水を指すような行為が嫌いでしてね…。止めていただけませんか」

 

 

 シスターナナは言葉の意味が分からず、ウィンタープリズンに助けを求める。

するとウィンタープリズンは、一瞬で自身の目の前に魔法で壁を作った。

 

「ナナ!逃げろ!」

「えっ!?」

 

 その瞬間、壁が打ち破られ、クラムベリーがウィンタープリズンへ襲いかかる。

壁を一瞬で破壊されたことに驚くウィンタープリズンだったが、クラムベリーをなんとか押し返し、腹部にパンチを入れる。

 

 

「グッ…!さすがですね、ウィンタープリズン」

「やっぱり端から協力する気は無かったか。」

「私の目的は、ただあなたと戦いがしたかっただけです」

「何…?」

「確か、あなたが以前カラミティ・メアリを撃退したと聞きました」

「私はそんなあなたと是非戦ってみたかった」

「そんな理由でナナを利用したのか…!」

「申し訳ありませんが、そういうことになりますね」

「お前…!」

 

 そう言い合う間にもクラムベリーとウィンタープリズンの殴り合いは続く。

その途中、隠れていたシスターナナが、ウィンタープリズンへ祈りを捧げる。

すると、ウィンタープリズンの攻撃力が上昇し、クラムベリーを徐々に圧倒し始めた。

 

 シスターナナの魔法は、他人を1人強化できる能力であり、サポート能力である。

そしてクラムベリーは、ついにウィンタープリズンの一撃に吹き飛ばされた。

 

 

「ぐぅっ!」

「お前の敗因は、ナナを無力と判断したことだ!」

 

 

 もう一度クラムベリーの顔面にパンチを与えた。クラムベリーは採石場の大きな岩にめり込んだ。

砂煙でクラムベリーがどうなっているかがよく分からないが、ここは危険と判断したウィンタープリズンが、シスターナナを抱えて採石場から離れていった。

 

「これ以上の戦闘も話し合いも無意味だ!これで失礼する!」

 

 

 広範囲に響くような大きい声でそう叫び、シスターナナとウィンタープリズンは危機から脱した。

抜け出したクラムベリーが再び辺りを見回しても、もう二人はいなかった。

 

 

「…フッ」

 

 

 クラムベリーは、追うのを諦めた。

そして顔に笑みを浮かべながら、止まらない鼻血を抑えながらその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラ・ピュセル、もう謝らなくていいよ…」

「本当に済まなかった、スノーホワイト…」

 

 

 ラ・ピュセルとスノーホワイトは海岸で背を合わせて話していた。

あの日、ルーラとスイムスイムに襲われた時、自分は陽動に見事に引っ掛かり、スノーホワイト、小雪にとても辛い思いをさせてしまった。

あれから数日経つが、今は集合場所を日替わりで変えるようにしていた。

またいつキャンディー目当てに強襲されるか分からない。

そして、保険としてキャンディーは二人で半分ずつ持つことにしていた。

シスターナナ達の協力要請は今までの彼女を知っているからこそ協力したが、他の奴らは何を考えているか分からない。

こんな警戒しなければいけない状況が、とても大変だった。

ウィザードばかりに頼っているわけにもいかない。自分達のことは自分ええ守るしかない。

そう思い、ラ・ピュセルは、改めてスノーホワイトを守る剣になることを誓った。

 

 

「よっ、スノーホワイト、ラ・ピュセル」

 

 

 不意に声をかけられ、思わず剣を持つラ・ピュセルだったが、それがウィザードだと知ると、すぐに剣を置いた。

 

 

「晴兄!」

「晴人さん!」

「なんとかやれてるか、二人共」

「うん…まぁまぁ」

「そうか、ファントムをよく見る。二人も気を付けろよ」

「うん、晴兄もファントム退治頑張って!」

「おう、任せろ」

「所で二人共、たまから聞いたんだが、ラ・ピュセルが陽動されたときに、俺じゃない魔法使いが出たって聞いたんだが…そいつって金色で、目が緑だったか?」

「あ、あぁ、確かビーストって言ってたような…」

「そっか、ありがとう。やっぱあいつだったんだな…」

「何かあるの?」

「いいや、今度そいつに会ったら礼を言っておいてくれ…」

「うん、分かった」

「ありがとうな。にしてもあいつ、今どこだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな3人の会話を、遠くから眺める黒い魔法少女がいた。

 

 

 

 

 

「白い…魔法少女…見つけた…」

 

 

 




11話でした。
次回はいよいよ…!?


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第12話 騎士の役目

12話です。お待たせしました。
エグゼイド、面白いですよね。お気に入りはレーザーです。


「やっと見つけた…白い魔法少女…」

 

 

 

 黒い姿に身を包んだ魔法少女、ハードゴア・アリス。

見た目は”不思議の国のアリス”のアリスが黒くなったような見た目をしている。

そして彼女こそが、16人目の魔法少女である。

アリスはずっとスノーホワイトの姿を見つめていた。

話しかけることもなく、ただ、ずっと見つめていた…

 

 

そして、気付かれないように、そっとその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数時間前~

 

 

 シスターナナとウィンタープリズンは、廃工場で新人魔法少女と待ち合わせをしていた。

しかし、シスターナナは先日のクラムベリーとの一件でかなりのショックを受けていた。

ウィンタープリズンは予定延期を提案したのだが、シスターナナは譲らず、予定延期はしなかった。

シスターナナ本人は勿論、ウィンタープリズンもショックを受けていないわけでは無かった。

自身の得意分野である近接戦だったのだが、自身の力だけでは、クラムベリーとは互角どころか押されてしまった。

シスターナナの援護が無かったら、下手をすれば殺られていたかもしれない。

そして、そんなクラムベリーが許せなかった。

シスターナナの思いを無駄にしたこと、傷つけたこと。それが何よりも許せなかった。

今度会ったら絶対叩きのめすと、ウィンタープリズンは誓った。

 そして、これから会う新人魔法少女もどんな奴か分かりはしない。

クラムベリーのようなクズかもしれないし、スノーホワイトのように心優しい人かもしれない。

だが、もしシスターナナに牙を剥くようであれば、容赦はしない。そう考えていた。

 

 しばらくして、シスターナナ達の前に、一人の魔法少女が現れた。

全身黒一色の彼女こそが、新人魔法少女、ハードゴア・アリスだった。

アリスは、目の下に隈があり、体型などを見ても、不健康そうな見た目である。

しかし、問題はそこではない。アリスは協力者か、はたまた敵になるのか。シスターナナ達にとってはそこが問題である。

 協力してもらうために、シスターナナは精一杯情熱を込めて語った。

しかし、アリスは相槌一つ打たない。

ウィンタープリズンからしてみれば、ただボーッと突っ立っているようにしか見えなかった。

そんな態度に、ウィンタープリズンは段々苛立ち始めた。

元々と言えば、16人目の魔法少女が現れたことが、今回の騒動の原因となっていた。

 

 

「おい!元々と言えば君が原因でこういうことになったんだ。少しは責任を感じてはいないのか?」

 

 

 アリスの態度に苛立ちを覚えたウィンタープリズンは、ついに怒りを露にした。

しかし、シスターナナによって抑えられる。

 

 

「まぁまぁ、彼女だって意図して魔法少女になったわけではないんだから…」

「…まぁ、そうだな。すまない」

 

 

「さぁ、アリスさん。あなたも私達に協力してくれませんか?スノーホワイトさんや、ラ・ピュセルさんだって協力してくださります」

 

 

 スノーホワイト。その名前を口にした途端、アリスは初めて反応した。

 

 

「スノーホワイトというのは…白い魔法少女ですか?」

「ええ、そうですよ」

「今…どこにいるか分かりますか?」

「担当地区は倶辺ヶ浜だったはずです…ですよね?」

 

 

 ウィンタープリズンが頷くと、ありがとうと言い残して、走り去っていった。

 

 

「あいつ…敬語なんか使えたのか」

「ひょっとして…スノーホワイトを助けに行ったのでしょうか?」

 

 

 ウィンタープリズンは、キャンディー保有数トップのスノーホワイトを襲いに行ったのではないかとも考えたが、これを話すとシスターナナを困らせることになるので話さないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スノーホワイトはアリスが先ほどまでいたことにも気付かず、ラ・ピュセル、ウィザードと話していた。

魔法少女の悩みや、普段の生活の雑談など、内容は様々だった。

そんなことをしているうちに、日付を跨ぐ0時になった。

 

 

 

「うわっ、こんな時間だ。私帰らなきゃ!」

「そうだね。そろそろお開きにしようか」

「そっか。気をつけてな」

「はい。そうちゃん、晴人さん、またね!」

 

 

 スノーホワイトはそう言って帰っていった。

今日はここで解散になるかと思っていたウィザードだったが、ラ・ピュセルに声をかけられた。

 

 

「晴兄、ちょっといいかな…」

「あぁ、俺は別に良いけど…どした?」

「その…この前のルーラ達にスノーホワイトが襲われたのは知ってるよね」

「ああ、助けに行けなくてすまなかったな…」

「いや、晴兄が悪いんじゃないんだ。僕が身勝手に動かなければ…」

「僕はあの時どうにかしてたのかもしれない、スノーホワイトを守らなきゃいけないのに、目の前の戦いにばかり気をとられて…」

「颯太…」

「この先、まだまだ危険なこともあるはずだし、僕は本当にスノーホワイトを、小雪を守れるのかな…」 

「そうか…お前もそんなこと思ってたんだな。以外だよ」

「え?そうかな…」

「お前は真っ直ぐ突き進む人間だと思ってたし、魔法少女の時は尚更だ」

「でも、僕はまだまだ未熟で…」

「だったら、自分の思った通りにやってみればいいさ、ずっと下向いて後悔するより、絶対マシだよ」

「晴兄…」

「未熟でも弱くても、その気持ちが大切だと思う」  

「…うん。僕だって、小雪を守ってみせる…例え命に代えても!」

「あぁ、その感じだ。でも、本当に命は落とすなよ?」

「分かってるよ。僕も小雪も死なないよ」

「なら良いよ、死んだら取り返しつかないしな」

「うん…。今日は話しを聞いてくれてありがとうね」

「また何かあったら話を聞くさ…これからも頑張れよ!ラ・ピュセル!」

「うん!ありがとう、ウィザード!」

 

 

 

 その日は、それで解散になった。

しかし、別れて帰っていく二人は遠くから何者かに見つめられているのを気付かなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日後~

 

 

「今日もありがとう、そうちゃ…ラ・ピュセル。キャンディー集めも手伝ってくれて」

「こんな状況とはいえ、キャンディー集めは続いてるしね…」

「そうだね。しかも今日は家の近くまで送ってくれてありがとう」

「私は、あなたを守るって決めたから、スノーホワイト」

「ふふっ、何か照れちゃうよ」

「やっぱり君の笑顔は一番だ。それじゃあ、気をつけて」

「じゃあね!ラ・ピュセル!」

 

 

 

 

 

 

 

 スノーホワイトを家に帰したラ・ピュセル。彼女をここまで送ったのには理由があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出てこい。いるんだろう?」

 

 

 

 

 

 

「……やはり気付かれてましたか。お見事です。ラ・ピュセル」

 

 

 

 ラ・ピュセルは、こちらを見ていた視線の正体を暴くため、スノーホワイトを安全な場所へ帰したのだ。

そして、その視線の正体は、森の音楽家クラムベリーだった。

 

 

 

「目的は何だ?」

「目的…そうですね、あなたと戦いたい。それだけでしょうか」

「キャンディーが欲しいんじゃないのか?」

「あなたはキャンディーを盗られないよう、スノーホワイトを逃がしたのでしょう?」

「ですが、私にとっては好都合だったんですよ」

「じゃあ、お前は最初から…」

「そうですね。私はキャンディーなどどうでも良いのです」

 

 

 

 

「私が欲しいのは…強敵です…」

 

 

 

 

「ルーラ達の襲撃を耐えきったその力…存分に見せてもらいますよ…」

 

 

 

 

 少々読みが外れた。だったらなんだ。

今この場には狂人と自分のみ。

一番守りたいあの人を守れた。

傷付くのは自分だけでいい…なんとしてでも奴を倒す。

今、ラ・ピュセルが戦う理由は、好奇心などではない。悪を止める為だ。

そして…スノーホワイト、小雪の笑顔の為。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いだろう。我が名はラ・ピュセル。森の音楽家クラムベリーよ、相手になろう」

 

 

 

「ありがとうございます…それでは、全力で行かせてもらいましょう…!」

 

 

 

 

 

 ラ・ピュセルの運命を決める一戦が、幕を開けた……。




さて、次回でラ・ピュセルの運命が決まります。
お楽しみに!


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第13話 信じる道のために

ラ・ピュセルVSクラムベリー、開戦です。
結末はいかに…


 住宅街から離れ、工場へと戦いの場所へ変わっていた。

ラ・ピュセルが剣を抜く。クラムベリーが拳を握って戦闘態勢を作る。

秋の冷たい夜風が二人の下を通り抜けて、クラムベリーの装飾の花が揺れる。

スノーホワイトを連想させる花飾りだが、スノーホワイトの花飾りよりも鮮やかで、生々しい花。

沈黙がしばらく続いた。ラ・ピュセルもクラムベリーも、構えたまま動かない。

 

 ふと、風が止んだ。

その瞬間、クラムベリーはラ・ピュセルに襲いかかった。

一つ動きが遅れたラ・ピュセルだったが、剣を縮小し、短刀のようにしてクラムベリーの猛攻を防ぐ。

クラムベリーの攻撃は一つ一つが大きい。一発でも当たれば直ぐにクラムベリーのペースに持っていかれる。

短刀で防いでいるため、クラムベリーの手は傷つき、血が滲み出ていた。

ダメージは少しずつ与えているはずなのだが、クラムベリーは痛がるどころか、寧ろ笑みを浮かべている。まるで戦いを楽しんでいるかのように。

このままでは押し切られる。

危機を感じたラ・ピュセルは剣を巨大化させ、クラムベリーを切りつけるように剣を振り回した。

クラムベリーはなんとか避けたものの、右腕を切り裂かれた。

右腕から出血しているにも関わらず、気にもしない様子でラ・ピュセルに話しかける。

 

 

 

「さすがはルーラ達に勝利した腕前ですね」

「あんなものは、勝利とは到底言えないものだ」

「謙遜も卑下も必要ありません。私にはその事実さえあれば十分です。だからこそ私はあなたと戦いたい」

 

 

「そして…完膚なきまでに叩きのめしたい!」

「クラムベリー…お前…!」

 

 

 クラムベリーは他の魔法少女とは違う。というよりもネジが外れているというのか。

こいつを野放しにしてはならない。ラ・ピュセルはそう直感した。

 

 

「だが、ここでやられるわけにはいかない。クラムベリー、お前を止める」

「ふふっ、それでこそです…だからこそ倒しがいがある!」

 

 

 そう言ったクラムベリーは、再びラ・ピュセルに殴りかかった。

ラ・ピュセルは攻撃を避けながら、クラムベリーの顔面に蹴りを入れる。

クラムベリーが怯んだ隙に、ラ・ピュセルはクラムベリーの視界から消えた。

 

 

「ほう…どこから来るか…」

 

 

 クラムベリーは周囲を警戒し始める。

しかし、突如クラムベリーを巨大な剣が襲う。

その剣の正体は、ラ・ピュセルの剣。

ラ・ピュセルは遠くまで離れて、剣を遠距離からクラムベリーに向けて放ったのだ。

突然の襲撃ではあったが、クラムベリーは避けきったが、その直後…

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

「何…!」

 

 

 上空から、ラ・ピュセルが剣をクラムベリーに向けて突き刺すように飛び降りてきた。

しかし、クラムベリーも避けているだけではない。

剣を避けた後、隙を見せたラ・ピュセルを殴り飛ばした。

クラムベリーの一発を受けたラ・ピュセルは、吹き飛ばされてしまった。

なかなか立ち上がれないラ・ピュセルの前にクラムベリーは容赦なく襲いかかる。

一撃、また一撃とダメージを受けるラ・ピュセル。

クラムベリーはラ・ピュセルを蹴り飛ばした。

 

 

 

「ぐっ…うぅ…」

「さすがの攻撃でした…ですが、ここまでです」

「くそっ…でも…」

 

 

 ラ・ピュセルは首を絞められ、投げ飛ばされる。

 

 

「ぐぁぁぁぁ!」

 

 

 このままでは殺されてしまう。死にたくない。こんなことで死ぬわけにはいかない。

ラ・ピュセルの心に、少しずつ恐怖心が生まれて始めていた。

今すぐにでも逃げたい、怖い、戦いたくない。

だが逃げようにも体が動かない。しかしクラムベリーはどんどん近づいてくる。

ラ・ピュセルはもうどうすれば良いのかすら分からなくなった。

 

 

「さようなら、ラ・ピュセル…」

 

 

 ラ・ピュセルは死を覚悟した。怖かった。今の恐怖が終わるなら死んだっていいとすら思えた。

 

 

 

 

 

《「そうちゃん、これからも宜しくね!」》

 

 

 

 

 ふと、そんな声が聞こえてきた。

そうだ、彼女を守る為に戦うんだ。これ以上こいつの好き勝手にさせはしない。

自分はスノーホワイトの騎士だ。彼女を守る剣だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラ・ピュセル、岸辺颯太は、スノーホワイトこと姫河小雪の幼なじみだ。

昔から小雪とよく遊んでいた時に、魔法少女のアニメや本をよく見ていた。

そのせいか、中学生になった今でも魔法少女のアニメを借りる為に、隣街のレンタルビデオ店へ行ったりと、彼にとっては魔法少女が大切な存在になっていた。

そんな時だ。魔法少女育成計画を見つけたのは。

すぐにハマった颯太は、毎日欠かさずプレイしていた。

そんな時、ファヴが現れて、自分を魔法少女にした。

最初は戸惑った。自分が性別が変わって女になっているのだ。

勿論思春期男子である颯太は、ラ・ピュセル状態の自分が気になって仕方がなかった。

一度鎧を脱いでラ・ピュセル状態で風呂に入ったこともあった。

なんとか自身の体に慣れてきたものの、他の魔法少女達の体も魅力的で、今でも目を反らしてしまう。

そしてスノーホワイト、小雪が魔法少女として現れた時はとびきり驚いた。

スノーホワイトと共に活動し始めてから、いろいろ楽しいことがあった。悲しいこともあった。でもそんな日々が幸せだった。

それに、晴人との出会いを通して、特別な力を持つことの重大さを知った。

だからこそ、この力を正しく使おうと考えた。

平和や、人々を守る為に。

そして、スノーホワイトを守る為に。

そう誓ったから。彼女の剣となることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんなところで死んでたまるか。やるべきことがまだある。

こんな奴はここで倒さなければいけない。

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

 ラ・ピュセルは立ち上がり、剣を持ってクラムベリーに走りかかる。

剣をクラムベリーに向けて切りつける。かと思いきや、剣を上空に投げ、クラムベリーの注意を引き付けた。

そしてクラムベリーを蹴り飛ばし、上空の剣を持ってクラムベリーを一気に切り裂いた。

しっかりとクラムベリーの肉が引きちぎれる音を聞いた。

返り血を浴びるラ・ピュセル。完全に倒したと油断していた。

 

 

 

 

 

「ふふっ…これがあなたの力でしたか…ですが、油断しましたね」

「……何?」

 

 

 確かにクラムベリーを切り裂いたはずだ。何故クラムベリーは生きている。

そんな事を思っている間に、首を掴まれ、身動きが取れなくなった。

 

 

「な…んで…確かに…お前を…倒したはずだ…」

「残念でしたね…私の魔法は音を操れる…肉が引きちぎれる音なんていくらでも出せるのですよ」

「く…そ…お前…なんか…を…野放し…にしたら…スノー…ホワイトがぁ…小雪がぁ…」

「なかなか楽しめました…ありがとうございました。ラ・ピュセル」

 

 

 そう言ったクラムベリーは、ラ・ピュセルを思い切り殴り飛ばした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付くと、颯太は変身が解けていた。

ここがどこか、何でここにいるのか分からない。

今、颯太はどこかの山道を歩いている。

何かをしようとも思わない。逃げようとも思わない。

 

 

 

 

 ふと、後ろから車の音が聞こえてきた。

このままでは轢かれて死んでしまう。

逃げようと思っても体が動こうとしない。

颯太の近くに大型トラックが、もう目前に迫っていた。

どうすることも出来ない。ただ颯太はトラックを見つめることしか出来なかった。

 

 

 

「ごめ…ん…小雪…」

 

 

 

 そう思った瞬間、颯太は自分の体が飛んでいるような感覚を感じた。

いや、本当に飛んでいるのかもしれない。

だが、多分トラックに吹き飛ばされたのだろう。

何か声が聞こえる。それは男の声である。トラックの運転手だろうか。

でも、どこかで聞いたことがある気がしたが、そんなことはもはやどうでも良かった。

 

 

 

もう少し生きたかった。小雪と魔法少女をしたかった。他にも何かあった気がするが、もう何も考えられない。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな後悔だけが、颯太の心に錘として残り、颯太の意識は闇に消えていった…




以上、13話でした。
僕はこのまま終わらせるつもりはありません。それだけです。
ヒントはライオンです。
そういえば、ここ最近あいつ出番少ないような…?


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第14話 失った大きなもの

14話です。
ラ・ピュセル、脱落…?


「くっそぉー、誰もいねぇじゃねえか…」

 

 

 

 仮面ライダービースト、仁藤攻介は空中からファントムなどがいないか捜索していた。

元々は凜子に晴人の増援に行って欲しいと頼まれて来たものの、晴人に会ったのはほんの少しの間で、それ以降全く会っていない。

あの時晴人が言っていた、ルーラが危ない。という一言。

それ以外にも色々気にはなっているのだが、会えずじまいで、聞くことすら出来ていない。

今回仁藤がこんなことをしているのは、ファントムが暴れているのは夜が多いという噂、そして晴人や魔法少女に出会うため。

その中でも仁藤は、前に会った騎士の魔法少女に、もう一度会いたがっていた。

 

 

「あの騎士さん、絶対美人だよなぁ…」

 

 

 理由は安直であり、ただあの美しい姿をもう一度拝みたいだけであった。

しかしその魔法少女どころか、他の魔法少女にも、あれ以来出会えていない。

そんなことを思っていたら、人気の少ない山まで来てしまった。

通っているのは車が数台、人はほとんどいない。

しかも夜中であり、車すら通っていない。

しかし、こういう場所だからこそ以外にも魔法少女がいるかもしれない。

 

 

 

「なんかここらへんにいる気がする!待ってろよぉ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、今週もチャットのお時間だぽん。』

『ファントムが現れたりして大変だけど張り切っていくぽん』

『今週は良いニュースと悪いニュースがあるぽん』

『…というかクラムベリー以外来てないぽん。寂しいぽん』

『まぁいいや、まずは良いニュースから』

『新しくアイテムを購入出来るようになったぽん』

『まずは対ファントム用に作ってみた武器ぽん。武器が無い魔法少女でも戦えるようになるぽん』

『まずは魔法の国で使われている薙刀ぽん。リーチが長いぽん』

『次に、魔法の国の資料から再現してみた武器ぽん』

『相手を拘束できたりする便利な剣、名前はファイズエッジっていうらしいぽん』

『カードをスキャンして戦えるブレイラウザーっていう剣。カードは13枚付属ぽん』

『相手を追尾してくれるトリガーマグナム、Ver.ルナトリガー。ルナトリガーの意味は知らないぽん』

『ハンドルを回しすぎると制御が難しいハンドル剣。これを名付けた人のネーミングセンスを疑うぽん』

『以上の5つぽん。最初の薙刀以外はファヴもよくわからないから注意ぽん』

『今度は便利アイテムだぽん』

『被れば誰からも見えなくなる透明外套』

『大ピンチの時に良いことあるかも?兎の足』

『とにかく何でも入って重くない。四次元袋』

『元気が出る薬。決してそういう危ないものではないぽん』

『以上ぽん。入手は早い者勝ちだぽん。でもその代わりに払ってもらうものもあるぽん』

『魔法少女育成計画は無課金だから金は取らないぽん。けど、魔法の国の物には寿命を、資料から作成した武器は魔力を使わないからキャンディーを頂くぽん』

『一応アイテム表ぽん』

 

 魔法の国のアイテム(寿命)

 

・武器(薙刀)...5年

・透明外套...25年

・兎の足...6年

・四次元袋...10年

・薬...3年

 

 武器(キャンディー)

 

・ファイズエッジ...1500

・ブレイラウザー...1300

・トリガーマグナム...2000

・ハンドル剣...1100

 

 

『能力が強いもの程高価になってるぽん。キャンディー集めなのにキャンディー使うってどういうことだよ。っていう突っ込みはいらないぽん』

『薙刀以外の武器が安めなのは武器性能が保証できないからぽん。ご了承くださいぽん』

『全て先着1つぽん。お早めにぽん』

 

 

『長くなったけど最後に悪いニュースぽん』

 

 

 

『ラ・ピュセルが事故で死んじゃったぽん。悲しいぽん。辛いぽん』

『ファヴは悲しすぎて涙が出ちゃったぽん』

『そして今週はラ・ピュセルが死んだから脱落者は無しぽん』

『みんな、この犠牲を無駄にすることなくこれからも張り切って欲しいぽん』

『それでは、また来週ぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スノーホワイト。姫河小雪はこの意味を理解出来なかった。いや、理解しようとしなかった。したくなかった。

突如知らされた幼馴染み、大切な人の死を、認めたくなかった。

スノーホワイトは待ち合わせ場所だった海岸で、一人で泣いた。

ラ・ピュセルの、岸辺颯太の死が、悲しくて悲しくて、ただ泣くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、小雪は颯太の家を訪れた。

颯太の事を両親に尋ねると、正確には行方不明ということで、どこに行ったのかも、分からず、勿論遺体も何も見つかっていない。

遺体が見つかっていない為、颯太の両親もどこかでまだ颯太は生きていると信じていた。

それを聞いて、小雪も希望を捨てないことにした。

いつか颯太は帰ってくると信じて。

そして、晴人にもこの事実を伝えた。

 

 

 

「そうか…本当にすまない、小雪ちゃん。俺はなんとかできたはずだ…」

「そんな、晴人さんは悪くないよ…」

「でも、あいつ何で…小雪ちゃん。最後にあいつに会った時、何か異変は無かったか?」

「異変ですか?…いつも通りだったはず…」

「そっか…そうなると、手掛かりが見つからないな…」

「やっぱり、そうちゃん見つからないんですか…」

「いいや、絶対に俺が探して見せる…」

「小雪ちゃんも、何かあったら連絡してくれ。」

「はい。晴人さんも、気を付けて下さい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日以降、晴人は必死に市内を捜索した。

だが、全く手掛かりは見つからなかった。

 

 

 

「くそっ、颯太…どこにいる…」

 

 

 晴人にも、焦りが見えてきた。

もう3日経つが、こんなに手掛かりも見つからないと、流石に命の危険性に及ぶ。

誘拐されたという場合もあるが、あの颯太がそう簡単にやられるとも思えない。

更には、消えたのは夜であり、恐らくラ・ピュセルの状態であったはずだ。

と、ここで晴人の頭に、嫌な予想が浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法少女の誰か、またはファントムに消されたのではないか…。

ファントムに殺されたという場合。そして、魔法少女に消された場合。

今、魔法少女達は死ぬかもしれない状況になっている。

誰かが脱落しないために、ラ・ピュセルを消した可能性も考えられる。

もしそうなら…もう颯太はいない。

 

 

 

「いや、そんなことは…」

 

 

 

 一気に最悪の状況が浮かんできた晴人。

そんな彼の所に、一人の男が現れた。

 

 

 

「よっ、晴人!」

「仁藤!」

 

 

 そう、仁藤攻介である。

しばらく会ってなかったが、あの時の礼を言わなきゃならない。

 

 

「仁藤、ルーラの情報ありがとうな。おかげで助けられた」

「おっ、そうか。なんかよくわからんが、それは良かった」

「まぁ、今も人探ししてるんだけどな…」

「そうなのか…お前も大変だな」

「お前もって…何かあるのか…?」

「つい最近、死にそうなのをビーストの力で助けた奴がいてな。隣街の病院に入院させてるんだ。そいつの看病にな」

「へぇ、そりゃ大変だ。でも、お前のおかげで助かった命があるなら、それは良いことじゃないか」

「おう、もうちょっと話したいこともあるんだが、生憎もう病院行かなきゃならねえ。またどっかで会おうぜ。当分は俺もここら辺いるからさ。じゃあな!」

「お、おお、じゃあな、仁藤」

 

 

 

 

 

「おう!またな!…ふぇー、2日連続でサッカーはもう辛いって本当に…」

 

 

 そんな事を嘆きつつ、仁藤は行ってしまった。

仁藤もああやって人助けしている。自分も颯太を探さなければ。

晴人は、再び颯太を探し始めた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラ・ピュセルは脱落した…ということになっている。

これを聞いた魔法少女達の多くはこう思うだろう。

自分が脱落しないためには、他人を殺してしまえばいい…と。

生きるためには殺すしかない。生きるためには戦うしかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファヴ」

『何かご用かぽん?』

「これで本当に魔法少女達を選抜出来るのですか?」

『大丈夫ぽん。全体的に若い奴らばかり集まったし、ちょっと高齢なのもいるけど戦闘狂だし』

「期待してますよ。生き残るということはそれなりの力を持つもの。そんな強力な魔力を回収出来れば、いずれは我々の悲願も達成できる…」

『楽しみにしてるぽん。それと、質問いいぽん?』

「何でしょう」

『何でラ・ピュセルを自ら殺して、魔力を喰わなかったぽん?それなりに強い魔法少女だったぽん』

「彼女が戦わなくなったら、何故だか興が覚めましてね…」

「全力の相手を潰さなきゃ、面白く無いじゃないですか。気絶した相手を喰ってもつまらないです」

『あんた、段々マスターに似てきたぽん。コピーし過ぎたんじゃないかぽん?』

「ふふっ、馬鹿な。そんなはず無いですよ」

『まっ、こっちとしては計画が進めば何でもいいぽん。これからも頼むぽん』

「ええ、なら、次の魔法少女は喰って差し上げましょう」

『それは良いぽん。楽しみぽん…』




さて、14話でした。
着々と伏線貼ってくスタイル。
そして武器の件は僕の遊び心です。お気に召さなかったらすいません。
後進兄さんハンドル剣ディスってごめんなさい。


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第15話 VSファントム

平成ジェネレーションズの鎧武の声は鎧武本編の佐野さんの声の流用説が浮上しておりますね。
一応本人集結ですね。


「…ねぇ、これ本当にキャンディーだけで買えるの?」

『心配しらないぽん。キャンディーで買えるぽん』

 

 

 

 スノーホワイトは、よくラ・ピュセルと一緒にいた鉄塔で一人、ファヴと話していた。

スノーホワイトが見ているのは、マジカルフォンのアイテム購入ページ。

魔法のアイテムは開始直後に無くなってしまい、残されたのはキャンディー交換の武器である。

キャンディーは生死に関わる為か、どれも売れずに残っている。

そのため、キャンディー所持数ダントツのスノーホワイトは、この武器を見ながら悩んでいた。

現在5万も持っているスノーホワイトにとって、一つぐらい購入するのにデメリットは無い。

 

 

 

 

「やっぱり、持ってた方がいいのかな…?」

『そりゃ、持ってた方が安全ぽん。キャンディーを大量所持しているスノーホワイトは、余計に有利ぽん。でも一人一つまでぽん』

『今回のアイテム導入はスノーホワイトのように、戦闘魔法を持っていない魔法少女用のイベントぽん。いつ誰に襲われるかも分からない状況で、丸腰は痛いぽん』

『自分を守るためぽん。いつまでも他人に頼っていてはいけないぽん。』

『ラ・ピュセルはもういない。あの魔法使いだっていつも君の近くにいるわけじゃないぽん』

 

 

 

 ラ・ピュセルはもういない。その一言が、スノーホワイトの心に突き刺さる。

ラ・ピュセルのことを思い出すと、自然と涙が溢れてくる。

これまで魔法少女として共に活動してきたラ・ピュセル。自分の剣となって、守ってくれることを誓ってくれた。

でも、もう会えないかもしれない。もう3日も行方が分かっていない。

不意にラ・ピュセルと颯太の笑顔を思い出した。

もう、涙を抑えられなかった。

 

 

 

「そうちゃん…そうちゃん…」

『名前を呼んだってラ・ピュセルは来ないぽん。自分は自分で守るしかないぽん』

「うぅ…そう、だよね…戦うのは、好きじゃないけど…」

「(私を守って、そうちゃん…)」

 

 

 そんな思いを込めて、スノーホワイトは、ブレイラウザーの購入ボタンを押した。

 

 

 

『購入完了ぽん。毎度ありぽん。』

 

 

 

 すると、マジカルフォンが光に包まれ、スノーホワイトの手には大きなスペードの付いた長い剣、ブレイラウザーが握られていた。

 

 

 

「これが、ブレイラウザー…」

『魔法の国の物じゃないから、使用方法とかは全く分からないぽん。でも、持ち手の辺りを展開させると、カードが13枚収納されてるぽん。能力は未知数ぽん』

「分かった…。でも、これは本当にピンチの時にしか使わない」

『使用するのはスノーホワイトの自由ぽん。これからの活動に良い影響が出ることを期待してるぽん』

 

 

 

 そういうと、ファヴは消えてしまっていた。

スノーホワイトがもう一度アイテム購入ページを見ると、なんと他の武器ももう売り切れてしまっていた。

恐らく他の魔法少女達も、貴重なキャンディーを使って購入したのだろう。

 

 

 

 果たしてそれは人助けをする為か、それとも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく時間が経っただろうか、突然ファヴから連絡が入った。

 

 

 

『ファントムが現れたぽん!みんなで倒すぽん!キャンディーは弾むぽん!』

『場所はマジカルフォンに転送するぽん!』

 

 

 

 心機一転、人助けをしていたスノーホワイトは、マジカルフォンを開いて場所を確認した。

場所は市街地。一般の人が襲われる危険性もある。

スノーホワイトは急いで市街地へと向かった。

 

 

 

 しかし、その後ろから、スノーホワイトを追うように向かっていった魔法少女がいたことを、スノーホワイトは知らなかった。

そして、その手にはファイズエッジが握られていたことも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 市街地では、やはりファントムが暴れまわっていた。

棍棒を振り回すファントム・バルバトス。

そしてもう一体は両手剣を使って人々を襲うファントム・アサシン。

そして二体の他にも、下級ファントム・グールが大量にいた。

 

 

 

 スノーホワイトが到着した時、もう既に各地区から魔法少女達は集まっていた。

手裏剣を投げてファントムに攻撃するリップル。今日はトップスピードとは別行動なようだ。

購入した薙刀を振り回して次々となぎ倒していくスイムスイム。

巨大な穴にグール達を落としていくたま。

ミナエルの変身した剣を使ってグールを切り裂くユナエル。

自身の魔法で呼び出した銃でファントムを消していくマジカロイド44。

壁を作って攻撃を防ぎつつ、ファントムを撃破していくウィンタープリズン。

そして、見慣れない青い銃を構えてファントムに直撃させていくシスターナナ。

青い銃は避けようとしたファントム達を追尾し、確実に当てていく。

能力からして、あの銃はトリガーマグナムと呼ばれる物だろう。

 

 自分も援護に行こうとするスノーホワイトだったが、あまりスイムスイムの一味には関わりたくなかった。

しかし、そんな事を言っている場合ではない。

スノーホワイトはファントムを避けつつ、シスターナナ達の元に向かった。

 

 

 

「シスターナナ!ウィンタープリズン!大丈夫?」

「スノーホワイト!こいつら、何だか数が減らなくてな!」

「って、スノーホワイトも武器を買ったのですね」

「うん。シスターナナも?」

「はい。この銃、自動追尾で役立つんですよ」

「そうなんだ。」

「でも、今のままじゃ押されています。スノーホワイトも手助けしてもらえますか?」

「あまり戦いたくはないけど…このまま関係無い人が傷付くのは黙ってられない…!」

 

 

 

 

 スノーホワイトは、ブレイラウザーでファントムを切りつける。

威力は絶大であり、一撃でグールを仕留めた。

確実にグールを撃破していくスノーホワイト。

 

 

 グールのほとんどを殲滅した魔法少女達。

彼女達にマジカルキャンディーが2500個追加された。

 

そして、残ったのはバルバトスとアサシン。

しかし、スイムスイム達は…

 

 

 

 

 

「雑魚は倒した。キャンディーは十分。ウィンタープリズン達に後は任せる」

「「お願いしまーす」」

「あ、あの、ごめんなさい…」

「私、レアキャラデスノデ。コレデ失礼シマス」

 

 

スイムスイム達4人と、マジカロイドは帰ってしまった。本当にキャンディー目当てだったようだ。

 

 

 

「あいつら…薄情な奴らだ」

「十分ありがたい支援でしたよ」

「邪魔なのが消えただけだ…」

「4人になっちゃったけど…あいつらを倒そう」

「チッ…仕方ないか…」

「はい。スノーホワイト」

「一気に攻めよう!」

 

 

 4人になってしまったが、こうなったらやるしかない。

そんな彼女達の前に、思わぬ増援が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドリフトカイテーン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああああああ!」

 

 

 

突如トップスピードが回転しながらこちらに現れた。

 

 

 

「待って待って待って!回りすぎぃぃぃ!」

「トップスピード?」

 

 

トップスピードは回転しながらファントムに攻撃を与え、何とかリップルの前に降り立った。

 

 

「…遅い」

「悪ぃ悪ぃ…この剣の回転凄すぎだろ…危うくぶつかる所だったぜ…」

 

 

 そんな彼女が持っているのは、ハンドルの形を模したハンドル剣である。

 

 

「この剣、なんかごちゃごちゃ音がするけど、性能は半端ないぜ」

 

 

 援護にやってきたトップスピード。そして…

 

 

 

 

 

「お前ら!大丈夫か!?」

「おっ、ウィザードじゃねえか!良いところに来たなぁ!」

「トップスピードが回転しながら飛んでいくもんだから何だと思ったら…まさかこんなことになってるとはな」

 

 

ウィザードも助けに現れた。しかし、彼が驚いたのはトップスピードのことだけではない。

 

 

「…お前ら、その武器どこで手に入れた?」

「キャンディーで買ったのですが…何かありました?」

「えぇ…そうだったのか」

 

 

平然と答えるシスターナナに、ウィザードは答えた。

 

 

「いや、これは俺の仲間達の武器なんだ。まさかファヴ達がこんなもん持ってるとはな。」

「これ、ウィザードさんの仲間が使ってたんですね…使い方って分かったりします?」

 

 

 スノーホワイトがウィザードに使い方を尋ねた。ウィザードは勿論。と答えてブレイラウザーを手に取り、展開させた。

 

 

「こうやって展開させて、入ってるカードを剣先の細い間にスキャンしてみて」

「分かりました。やってみます!」

 

 

 スノーホワイトは、カードの絵柄はよく分からなかったが、展開したカードの中から強そうなカードを選んでスキャンした。

 

 

 

サンダー!

 

 

 

その瞬間、ブレイラウザーが稲妻を纏い始めた。これがこのカードの能力のようだ。

 

 

 

「どうよ。二枚以上同時スキャンすると、コンボ技が使えるぞ。」

「はい!じゃあ、次はこれかな?」

 

 

 スノーホワイトはもう一枚選んで、カードをブレイラウザーにスキャンした。

 

 

スラッシュ!

 

ライトニングスラッシュ!

 

 

 ブレイラウザーは輝き始め、稲妻も一層強くなっている。

 

 

「もしかして、必殺技?」

「そうだな。そのまま切りかかれ!」

「えっ、わ、分かりました!」

 

 

 スノーホワイトはアサシンに向かって必殺技を放つ。

アサシンも二刀流の剣で迎え撃つ。

 

 

「くらえぇぇ!」

 

 

 スノーホワイトの一撃が、アサシンの剣を破壊し、アサシン本体も一刀両断した。

アサシンは一瞬にして爆発した。

 

 

「やった…んだよね」

「おぉ、やるじゃん」

「後は一体だぜ!リップル!みんな!俺たちもやろうぜ!」

「あぁ、協力しよう!」

「こういうの、私大好きです!」

「チッ…邪魔くさいけど、仕方ないか…」

「トップスピード!シスターナナ!使い方は分かるのか?」

「ある程度はな!」

「私も、撃つだけなら…」

「分かった。でも、シスターナナの銃にはUSBメモリみたいなのが刺さってるだろ?」

「えぇ…これが何かあるんですか?」

「銃先を上に上げてみて。それで必殺技が撃てる」

「トップスピードのは、ハンドルがUターンっていうまで回してみてくれ」

「はい。分かりました」

「了解!」

 

 

 

 こちらの隙を見て飛びかかってきたバルバトスを、ウィンタープリズンの壁で防ぎ、リップルの手裏剣で吹き飛ばす。

そして、シスターナナとトップスピードはウィザードが言った通りに武器を使った。

 

 

 

トリガー!マキシマムドライブ!

 

 

ターン!ターン!ターン!Uターン!

 

 

 

ウィザードも負けじと必殺技を放つ。

 

 

 

フレイム…!スラッシュストライク!ヒーヒーヒー!

 

 

 

「受けてみなさい!」

「フィナーレだ!」

「また回転かよぉぉぉ!」

 

 

 

 トリガーマグナムからは何発もの追尾弾、トップスピードは一回転してハンドル剣で切りかかる。ウィザードも炎の剣撃を放った。

避けたバルバトスをトリガーマグナムの追尾弾が遅い、トップスピードが追撃を与え、ウィザードの一撃が直撃した。

ウィザードの一撃が致命打となったバルバトスは燃え盛る炎の中で爆発した。

 

 

 

「ふぃー…」

「勝ったんだな、ナナ」

「そうみたいですね。皆さんの協力のおかげです」

「目が…回るぅ…」

「大丈夫…?」

「サンキュ、リップル。やっぱ相棒って最高だわ」

「やりましたね。ウィザードさん」

「あぁ、みんなお疲れ」

 

 

 

 その場の全員に、キャンディーが3000追加された。

魔法少女達はしばらく雑談した後、自分の担当地区へ帰っていった。

 

 

 

 

 

 その後、スノーホワイトとウィザードは残って話をしていた。

 

 

「そうちゃんの手がかり、何か見つかりましたか?」

「ごめん、まだ何も見つかってないんだ…」

「そう、ですか…やっぱり、そうちゃんはもう…」

「いや、何も手がかりが無いのが怪しいんだがな…」

「もう少し、せめて何か見つかるまでは、絶対に探し続けるから」

「すいません。晴人さん。よろしくお願いします」

 

 

 

 

 ウィザードは、ラ・ピュセルの手がかりが何故どこにも無いのかが気になっていた。

死んでいるなら、どこかに遺体があってもおかしくない。

有り得る可能性は、本当にオーガに喰われてしまったか、或いはまだどこかで…

とにかく、今は探すことしか出来ないが、仁藤にも協力してもらい、せめて何か見つけてみせる。そう晴人は誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、今日も来たぞ」

「あ、仁藤さん!観てよこれ!魔法使いプリキュアだよ!」

「お、おぉ…すげえな」

 

 

 仁藤はさすが魔法少女マニアだな。と思いつつ部屋にやってきた。

大きな病院の一室ではあるが、外からは街が一望できる。

元々は車に轢かれそうなのを助けたことから知り合ったのだが、サッカーと魔法少女が大好きという珍しい趣味であった。

時にサッカーをしたり、時に魔法少女アニメを観賞したりと、スポーツマンとオタクの生活を交互にしている。

助けた時には満身創痍であったが、傷の治りも早く、明後日には退院できるだろう。

 

 

「みらいちゃんは本当に可愛いなぁ、でも、他の二人も捨てがたい…。仁藤さんは誰が好き?」

「お、俺はみんな大好きだなぁ。みんな揃ってプリキュアなんだし」

「あぁ、それもいいね!みんなでプリキュアだもんね!誰が一番とか無いよね!」

「おう、というか、お前確か身分を知り合いに言うなって約束だったよな?何でなんだ?」

「それは退院してからしか言えないよ。だってそういう約束でしょ」

「それもそうだな!まっ楽しみにしとくわ!」

 

 

 仁藤は話が気になって仕方がなかったが、今は彼の健康が一番。

気長に待つことにした。

 

 

 

 

 それが、意外な展開を巻き起こすとも知らずに…




はい、焦らしていくスタイルです。
プリキュアは友情出演です。本編には出ません。


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第16話 逆襲の時

さぁ皆さんお待ちかね、彼が復活します。


 ウィザードは今日も名深市の各所を巡り、岸辺颯太の行方を追っていた。

颯太が行方不明となってもう1週間も経つ。

なのに、手がかり一つ見つからなかった。

ウィザード自身、何も見つけられない自分に腹が立った。

スノーホワイトも、心を入れ替えて人助けをしているようだが、シスターナナやトップスピードに慰められている姿を何度も見た。

だからこそ、見つからなくてもウィザードはここで諦めるわけにも行かなかった。

自分が諦めたら、誰が希望になるのだ。

仮に、もう颯太がこの世にいなかったとしても、彼の手がかりを見つけてみせる。

ウィザードとしても、晴人としても、彼の心だけでも救ってみせる。そう誓ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 元々、晴人と颯太が出会ったのは、ファントムに襲われている所を救った時だった。

公園でサッカー練習をしていた颯太に襲いかかったファントムの残党。

残党が生き残っていることは、当時の晴人も知っていたため、騒ぎを聞きつけ直ぐに助けに入れた。

戦いの後、再びサッカーを始めた颯太を昔の自分と重ね合わせた晴人。

サッカー経験もあった為、颯太にサッカーを教えてやろうかと言った所、快く受け入れてくれた。

その後は、友人関係となった二人。時々ではあったが会ってサッカーを教えていた。

サッカーも上手く、将来有望なスポーツマンだと思っていた晴人。

しばらくして魔法少女好きというのを明かされた時は驚いたが、そんなのは個人の趣味であり、他人がどうこう言う必要も無いと思い、純粋に受け入れた。

明かした時の颯太の顔は真っ赤であり、中学生と言えどまだまだ幼さを見せる颯太に、晴人も思わずほっこりしていた。

 

 しかしその時は、この先の未来など誰も予測がつかなかっただろう。

本当に彼が魔法少女となっているなんて、誰も予想がつかなかっただろう。

 

 

 

 

 

 そして、その後に悲惨な運命を迎えることも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、こんな所で彼の人生は終わってはならない。

残された希望を信じて、晴人はウィザードとなり、今日も走る…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ!元気か?」

「仁藤さん!いつもありがとう!」

「おう…ってお前、またプリキュア見てるのか、それって前もやってなかったか?」

「うん。この病室のテレビ、レコーダーまで付いた豪華仕様だからね。存分に使わせてもらうよ!」

 

 

 仁藤攻介は再び病室に顔を出していた。

病室にいる彼が見ているのは、魔法使いプリキュア。しかも先週放送分である。

普通の病院には、テレビにレコーダーなんて付いておらず、テレビそのものを見るのでさえテレビカードで有料なのがよくあるのだが、ここの病院はテレビ無料どころかレコーダーの使用すら無料であるのだ。

確かに使い勝手は良いが金を掛ける箇所を間違えていないか。と仁藤は思っていた。

 

 

 

「というか、一回見ただけで大体内容分からねえか?」

「いやいや、二回目を見ることによって気付かなかった部分、伏線とか様々な所を発見出来るからね。二回目からが本番だよ」

「お、おう…そうなんだな」

「分かってくれたなら良いんだ。…というかはーちゃんの声って何処かで聞いたことあるような…あっ!シスターナナか。やっと分かった」

「は?シスターナナ?誰だそりゃ」

「あっ…いやいやいやいや!何でもないよ!うん!何でもない!」

「はいはい皆まで言うな。というかお前今日で退院なんだぞ?ギリギリまでプリキュア見るのか?」

「まぁね…後1時間はあるしね。そうだ仁藤さん聞いて!この前たまたま見たアニメのココアってキャラの声が、すごい僕に似てたんだよ!後チノってキャラの声もスイm…知り合いの声に似てて驚いたよ。人間の声ってみんな似たり寄ったりなのかな?」

「たまたまじゃねえか?声優って色んな声出せるんだろ?」

「そうなのかな?声優さんってすごいね」

「そうだな…。後、お前に聞いときたい事がある」

「何?」

 

 

 

 

「今日退院した後、お前何をするつもり何だ?家に戻らずに行きたい所があるって…」

「それはまだ秘密。夜になったら教えるよ」

「あ~何か一番気になるなそういうの…」

「また迷惑かけるかもだけど、どうしてもやりたい事だから。お願い」

「まぁいいか!どうせだし、とことん付き合ってやるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が訪れた。ウィザードは今日も何の成果も得られなかった。

しかし、ウィザードがふと目をやった先には、何かが大量に発生している。

どうやら廃工場で何かがあったらしく、ウィザードは出来るだけ近づいていった。

近くに着いて、よく見てみると、そこには衝撃の光景が広がっていた。

 

 廃工場に無数に湧いたファントム・グール。

そして、グール軍団に囲まれたスノーホワイトだった。

その中には、ファントム・オーガもいるように見える。

まさか、スノーホワイトを喰って魔力の足しにするつもりなのだろうか。

そんなことはさせない。ラ・ピュセルに続いてスノーホワイトも失いたくない。

 

 

 

 

ハリケーン…ドラゴン…!

 

 

 

 ウィザードはハリケーンドラゴンとなり、空中からグール軍団にウィザーソードガンで強烈な一撃を浴びせた。

次々倒れていくグールであったが、ウィザードの攻撃はオーガに止められた。

 

 

 

「スノーホワイト!大丈夫か!?」

「はい…なんとか…」

 

「久しぶりだな、指輪の魔法使い。前回の再戦と行こうじゃないか」

「望む所だ。さぁ、ショータイムだ!」

 

 

 オーガはウィザードとの再戦を宣言した。ウィザードも負けじと戦闘態勢だが、しかし…

 

 

「引っ掛かったな…!お前ら、やってしまえ!」

「…何!?」

 

 

 突如発したオーガの声と同時に、グール軍団、そしてファントム・ウォーリアがスノーホワイトに襲いかかる。

突然の事に驚くスノーホワイトだったが、直ぐ様ブレイラウザーを使ってファントム軍団に立ち向かって行く。

 

 

「オーガ!お前ら!」

「へっ、元々お前の注意を引き、奴らにあの魔法少女をぶっ潰して貰う為の陽動だったんだよ!」

「ふざけるな!退け!」

「退けといって退くバカがいるか!」

「くそっ、スノーホワイト!逃げろ!」

「余所見してる場合か!喰らえ!」

 

 

 ウィザードの少しの隙から攻撃を入れていくオーガ。

しかし、以前の時とは違い、雑な攻撃ではなく、的確に、また強烈な一撃である。

 

 

「ぐわぁぁぁ!」

「どうした魔法使い!前のような力はどうした!」

「だったらこの指輪で…!」

「させるかよ!おらっ!」

「ぐわぁぁ!」

 

 

 ウィザードは指輪を交換しようとしたが、オーガに攻撃され、指輪を落としてしまった。

更にオーガはウィザードに攻撃を仕掛けていく。

 

 

「もっと行くぜ!指輪の力は使わせねえよ!」

「なっ、止せ!」

「止めるわけねえだろ!」

 

 

 オーガの攻撃は隙を与えずウィザードに直撃してしまう。

ついにはウィザードは変身指輪を全て落とし、オーガに奪われてしまった。

 

 

 

「これでお前は力を使えない!」

「お前…!」

 

 

 ウィザードが苦戦するのと同様に、またスノーホワイトも苦戦を強いられていた。

 

 

「魔法少女…倒ス…」

「全く攻撃を受けてない!?」

「ソンナノ、効カナイ…」

 

 

 ウォーリアは鉄壁の防御力を誇り、攻撃を出すタイミングは早くは無いが、その威力は強烈で、スノーホワイトを一撃で吹き飛ばした。

 

 

「きゃああ!」

「弱イ…魔法少女…コンナモノ…」

「スノーホワイト!」

「お前は黙ってろ魔法使い!」

「がぁっ…」

 

 

 スノーホワイトは持っていたブレイラウザーを落とし、攻撃のせいで起き上がれない。

そんな間にも、ウォーリアはどんどん近づいてくる。

ウィザードもオーガで精一杯であり、スノーホワイトの援護に回るどころか、押され始めていた。

 

 

「おいおいィ!どうした魔法使い!指輪が無ければただの雑魚かぁ!?オイ!」

「ぐっ…こいつ、前より強くなってる…」

「そうこうしてる内に、あの魔法少女が死んじまうぞ!」

 

 

 ウィザードはどうにかしてスノーホワイトの所へ向かいたいが、オーガの攻撃は避けきれず、自分が動くことすら困難となってきた。

そして、ウォーリアはスノーホワイトの目の前にまで迫っていた…

 

 

「コレデ…終ワリ…」

「や、やめて…来ないで…死にたくない…死にたくないよぉ…」

「やめろぉ!ぐはっ!」

「やっちまえ!ウォーリアァ!」

 

 

「嫌だ…嫌だ…」

「サヨナラ、魔法少女…」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

 ウィザードの叫びも虚しく、ウォーリアの鈍器から鈍い一撃が放たれた…。

 

 

「ハハハハ!どうだ魔法使い!守ろうとしたものが為す術も無く死ぬのはよぉ!」

 

 

 オーガの勝ち誇った声が響く。

しかし、ウィザードは困惑した。

何故奪われたはずの指輪が自分の手元にあるのか…。

そして…

 

 

「…ん?……ぐおぉ!」

 

 

 オーガが突然唸り出した。何処からか攻撃を受けたようだ。

そしてオーガを攻撃した武器。それには見覚えがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「調子ぶっこいてんじゃねえよ。俺の存在を完全に忘れてやがったな!」

「…な、何だと…!」

「お前…仁藤か!」

「大分派手にやられてたみたいだな。でも、ピンチはチャンスだろ、晴人!」

 

 

 そう、オーガを攻撃したのは、仮面ライダービースト、仁藤攻介だった。

 

 

 

「何とか間に合った。やっぱり作戦変更して良かったぜ」

「作戦変更…?というかスノーホワイトは!」

「皆まで言うな。よく見てみろ」

 

 

 ビーストはスノーホワイトとウォーリアがいた方角を指差す。

砂煙が立ち込めてよく見えないが、スノーホワイトは生きていた。

そして、ウォーリアはこちらに吹き飛ばされてきた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あれ…私、生きてる…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅くなってすまない、スノーホワイト。いや、小雪…」

 

 

 

「…えっ、まさか…」

 

 

 

 

ウォーリアを吹き飛ばした者の正体は、ウィザード達がずっと探してきた人間…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が名はラ・ピュセル…。スノーホワイトを守るたった一つの剣…!」




露骨な伏線で皆様お気づきだったと思われますが、復活です。
決して皆様を絶望させませんよ。
そして中の人ネタは私の趣味だ。いいだろう?(プロフェッサー風)
次回から逆襲開始です。


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第17話 復活の騎士

平成ジェネレーションズ見てきました。
良かった所は全部です。はい。
神様やっぱ神様


 スノーホワイトの絶体絶命の危機。

それを救ったのは仮面ライダービーストと、行方不明となっていたラ・ピュセルであった。

 

 

 

「そ、そうちゃん!」

「ラ・ピュセル…お前生きてたんだな。良かった」

「心配させてしまってすまない。だが私は健在だ」

「そうちゃん…心配したんだよ…本当に…本当に…」

「スノーホワイト…」

「皆さん方、話は後回しにした方がいいぜ。奴らをぶっ潰すまではな」

 

 

 

「な、何故貴様が…!?」

 

 

 

 オーガは驚いたように見える。しかし、ウォーリアは狼狽えずに続ける。

 

 

「増エタトコロデ、潰スノミ…!」

「そうだな、ウォーリアよ。奴らを叩き潰してやれ!」

 

 

 オーガは再びグール軍団を呼び出して、再びウィザード達に襲いかかった。

 

 

 

「仕方ない、話はまた後だ!」

「スノーホワイト!一緒に行こう!」

「うん、そうちゃん!」

「さぁ、ランチタイムだ!おもいっきり食わせて貰うぜ!」

 

 

 

 ウィザードはオーガ、ビーストはグールの軍団、スノーホワイトとラ・ピュセルはウォーリアに戦いを挑む。

ウィザーソードガンを構えてオーガに応戦するウィザード。

先ほどまでの焦りが無くなり、ウィザードも冷静にオーガの攻撃を避けて的確にオーガにダメージを与えていく。

 

 

 

「ぐっ、魔法使いめ…!」

「今度はやらせないさ。次はこれだ!」

 

 

 

 

 

ウォーター…ドラゴン…!

 

 

 

 

 ウィザードは青い指輪でウォータードラゴンへ変化した。

続けて素早く剣撃を入れていく。

オーガは避けることしか出来ず、先ほどとは逆にウィザードが優勢となる。

 

 

 

「そろそろ決めるか…」

「くそっ、まだだ!」

 

 

 

 

チョーイイネ!ブリザード!サイコー!

 

 

 

 

 ウィザードはブリザードの力で周囲を凍らせる。

そしてウィザーソードガンで一撃を与えた…が。

 

 

 

「ぐぅっ!覚えてやがれ!」

 

「…また逃げやがったか、あいつ」

 

 

 

 オーガはまたしても攻撃を間一髪避け、消えてしまった。

しかし、ラ・ピュセルとビーストが現れた際、何故オーガも驚いていたのだろうか。

些細な事だが、ウィザードはそれが気掛かりだった。

 

 

「さっさと頂くぜ!」

 

 

 ビーストはグール軍団を次々となぎ倒し、魔力を手に入れていく。

そして、残りのグールに必殺技を仕掛けた。

 

 

 

キックストライク!

 

 

 

「どりゃああああああああ!」

 

 

 

 ビーストの一撃がグールを全員巻き込み、一瞬にして殲滅した。

残った魔力がビーストドライバーに吸い込まれていった。

 

 

「ごっつぉ!たくさん食ってお腹いっぱいだろ!な!キマイラ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スノーホワイト、一気に攻めよう!」

「うん!私も戦うよ!」

「カカッテ…コイ…」

 

 

 

 ラ・ピュセルは自身の剣を、スノーホワイトはブレイラウザーを再び拾い、二人でウォーリアに挑む。

ウォーリアも鈍器を振り回して襲いかかる。

 

 

 

「やっぱり、これじゃあ通じない…」

「だったら任せて!斬れないならぶっ飛ばす!」

 

 

 やはりブレイラウザーの剣攻撃は通じない。

だがラ・ピュセルは少し距離を置き、剣を巨大化させてウォーリアを剣で叩きつけた。

 

 

「グォォォ…マサカ…」

 

 

 さすがに耐えきれず、吹き飛ばされるウォーリア。

ラ・ピュセルは更に追撃した。

 

 

 

「そうか…斬れないなら剣を使わなければ良いんだ…剣と雷以外のカードは…」

 

 

 いい案を思いついたスノーホワイトは、ブレイラウザーのカードの中から、普段使っていたスラッシュリザード以外のカードを探す。

 

 

「あっ、これだ!」

 

 

 スノーホワイトが見つけたのが、キックローカストというカードである。

ブレイラウザーのカードは、全てに動物のようなものが描かれており、使える力は、恐らくこの生物達の力なのだろう。

早速スノーホワイトは、雷の攻撃能力を持つサンダーディアー、そしてキックローカストのカードを使った。

 

 

 

"キック"

 

"サンダー"

 

 

"ライトニングブラスト"

 

 

 

「はぁぁぁ…!」

 

 

 スノーホワイトの足下に雷の力が宿る。

 

 

「そうちゃん!合わせて!」

「わ、分かった、スノーホワイト!それっ!」

 

「ナ、ナニ…!」

 

 

 

 ラ・ピュセルがウォーリアを吹き飛ばしたタイミングで、スノーホワイトのキック攻撃、ライトニングブラストが炸裂する…!

 

 

「お、おりゃぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

「ガハァ!魔法少女…ゴトキニ…!」

 

 

 

 

 スノーホワイトのキックを受けたウォーリアは、地面に叩きつけられると同時に爆発した。

 

 

 

 

「スノーホワイト…すごい…(掛け声可愛かったなぁ…)」

 

 

 

 ラ・ピュセルはスノーホワイトの攻撃を見つめ、そんなことを心の中で呟いた。

しかし、ウォーリアを倒し、帰ってきたスノーホワイトの顔は、なんとなく赤くなっていた。

 

 

 

「スノーホワイト。お疲れ」

「う、うん…」

 

 

 スノーホワイトは、ラ・ピュセルの横を通り過ぎる際、小声で呟いた。

 

 

「やめてよそういうの…照れちゃうじゃん…」

 

 

 

 ラ・ピュセルは、はっとした。

スノーホワイトの魔法の能力を完全に忘れていた。

そして、心の声が聞こえてしまったようだ。

やってしまった…そうラ・ピュセルは思っていた。

 

 

「…でも、嬉しいな…」

 

 

 そんなことも言われてしまい、ラ・ピュセルの心は恥ずかしさと嬉しさで爆発しそうだった。

 

 

「何話してるのか分かんねぇけど、思春期ですなぁ、晴人」

「あぁ、そうだな。何話してるのか分かんないけどな」

 

 

 二人を見ながら、ビーストがそんな事を言う為、ウィザードも頷いて賛成した。

戦いが終わって、変身を解除した4人。

 

 

 

「あれ?仁藤。お前って颯太みたいなタイプ気にならない系か?」

「はぁ?最初はビビったよ。当たり前だろ」

「というか、颯太を助けたのは俺だからな!そこは誉めてくれて構わねえぜ!」

「ちょっと待て、いろいろどうなってるのか分からない…」

「分かった分かった。皆まで言うな。最初から話すから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数時間前~

 

「退院おめでとうって一応言っておくぜ、颯太。」

「颯太、本当に家に帰らないのか?もう10時だぞ」

「いいや、これからだよ。それと仁藤さん、話したかったことを話すね」

 

 

 

 そう言うと、颯太の体は急に光に包まれて、魔法少女ラ・ピュセルの姿になった。

その姿に、仁藤は目が飛び出る程驚いた。

 

 

「…え、えええええええええええええええええええ!」

「仁藤さん…実は、僕魔法少女なんだ」

「お、おう…なんか凄い展開が待ってると思ってたが予想外過ぎるわ…」

「そう…?やっぱ気持ち悪いかな?」

「い、いや…じゃあ俺の事も知ってたのか?」

「実はね。前にも助けてくれた事あったから、お礼を言いたかったんだけど、病院じゃあね…」

「そうだったのか…なんかしてやられたな。で、でも魔法少女なのになんであんなボロボロの死にかけだったんだよ」

「そうだ!それだ!スノーホワイトを探さないと!」

「スノーホワイト?誰のことだ?」

「魔法少女は今いろいろ危険なことになってるんだ!スノーホワイトって魔法少女と行動してたんだけど、僕がいない間に大変なことになってないと良いんだけど…」

「じゃあその子を探そう大作戦ってわけか」

 

 

 

 そんな時、少し離れた工場地帯で爆発音が聞こえた。

何やら一騒動起こっているようだ。

 

 

 

「まさか、ファントムの野郎が暴れてんのか!?」

「じゃあ、急ごう!誰かが襲われてるかもしれないし」

「よっしゃ!運が良ければスノーホワイトって子とか晴人もいるかもしれないしな!」

「晴兄を知ってるの!?」

「お前こそ!というか俺ら共通点ありすぎんだろ!」

「世界って意外と狭いのかもね!」

「そうだな!じゃあ急ぐぜ!ついてこいよ!」

「うん!仁藤さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということがございまして…」

「わお、意外だな。とにかく意外だな」

「そうちゃんを助けて下さってありがとうございます!仁藤さん!」

「そうだ、ありがとうね!仁藤さん!」

「みんなに褒められると、照れるな」

「いいことじゃないか仁藤。俺からも礼を言っておくよ。ありがとな」

「そういえば、晴兄って呼んでるのに仁藤さんっていうのはおかしいかな」

「そうか?構わないけどよ」

「じゃあ、攻介兄ってどうかな?」

「攻介兄か…別に良いけど新鮮味ねえな…」

「え、そうなの?」

「お前と同じくらいの年頃の奴にも似たような呼ばれ方してるんだよ。まぁ嫌いじゃあないけどな」

「じゃあ攻介兄でいいね!宜しく!」

「おう!改めて宜しくな」

 

 

 改めて挨拶を交わした颯太と仁藤だった。

だが、小雪ははっと思い出したように颯太に迫り…

 

 

「というかそうちゃん、今日は家に帰ろうか…」

「うん。分かったよ」

「後、お母さんがそうちゃんの部屋で物を整理してたら魔法少女物の本とDVDが見つかったって…」

「えっ!嘘だろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

 颯太は涙目になりながら家に走り去って行った。

小雪も後を追うようにして走っていく。

 

 

「あっ、そうちゃん待って!晴人さん達、おやすみなさい!」

「あぁ、またな!」

「なんか、愉快な奴らだな」

「あぁ。でも、颯太が生きてて本当に良かった。仁藤には本当に感謝してるよ」

「お前が探してるって言ってた奴って颯太だったんだろ」

「そうだ。手がかりも何も無くて本当に焦ったんだよ」

「まさか隣街の病院に入院してるなんて思わなかったろ。それに、あいつが自分の状況を隠してくれって言ったんだぜ」

「そうだったのか。でも、何でだろうな」

「確か、ファヴとかいうのに自分の存在を知られない為とかなんとか…」

「ファヴだと?そういえば…颯太が消えた週の脱落者は出てないんだったな。やっぱりあいつは何か隠してるかもしれないな」

「ちょっと何言ってるのか分かんねえけど、今回倒す敵がなんとなく見えてきたのか?」

「あぁ、オーガが甦った理由とかも分かってくるかもな」

「俺も手伝うぜ、晴人。お前一人じゃ難しいこともあるだろ」

「そうだな。頼むよ、仁藤」

「おう、頑張ろうぜ、晴人」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、何でラ・ピュセルが生きてやがるんだ」

『君が完全に死ぬのを見なかったからだぽん。正直ファヴも驚きだぽん』

「くそっ、やらかしたか」

『というかファヴはもう一人魔法使いがいるとは思わなかったぽん』

『スノーホワイトを喰うどころか、やり返されてどうするぽん』

「今回は完全に俺の過失だ…。しばらくはこの姿で活動することはできないだろうな」

『まぁいいぽん。この際君には魔法少女の争いを煽ってくれればそれでいいぽん』

 

『こんなところで計画を潰すわけにはいかないぽん。まだまだこれからだぽん…』




はい、ラ・ピュセル復帰の17話でした。
ビーストも本格参戦し、仲間が頼もしくなってきました。
そしてそうちゃん、親に趣味がバレる
今回もご閲覧ありがとうございました。


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第18話 ゲームの意味

ラ・ピュセル復活。ファヴはどう出る?


「ラ・ピュセル。生きていらしたのですね」

「生きていて良かったよ。知り合いが死ぬのは心が痛い」

「本当にそうだぜ。お前がいない間のスノーホワイトは見てられなかったんだからな」

「そうだったのか…みんなにも、心配をかけたんだな。申し訳ない」

 

 

 

 ラ・ピュセルが生きていたことを知り、チャットルームには多くの魔法少女が集まっていた。

一人になったスノーホワイトを心配してくれていたシスターナナ、ウィンタープリズン、トップスピードは特にラ・ピュセルの生存を喜んでいた。

ここ最近はチャットルームに集まる人数が減っていたが、今日はほとんどがルームに来ていた。

その理由としては…

 

 

 

『みんなすごい集まってるぽん。そしてラ・ピュセルは生きてて嬉しいぽん』

「何が嬉しいだ。ファヴ、今日は話をしたくて来た。他にもこれだけの魔法少女が集まってくれた」

『本当だぽん。クラムベリー、カラミティ・メアリ、ハードゴア・アリス以外は全員来てるぽん。クラムベリーはついに皆勤賞じゃなくなったぽん。残念ぽん』

 

 

 この場にはクラムベリー、カラミティ・メアリ、ハードゴア・アリス以外の11人が集まっていた。

また、ハードゴア・アリスについては会った魔法少女も数少なく、存在そのものを知らなかった者もいる。

 

 

 

 

「じゃあ早速本題に移らせてもらう」

『何だぽん?』

「まず、お前は以前、このキャンディー集めは毎週絶対脱落者が出るって言ったよな」

『それが何ぽん?』

「私が消えた週、脱落者は出なかったそうだな」

『…』

「矛盾してないか?それにスノーホワイトの話では、私を完全に亡き者扱いしていたそうじゃないか」

「た、確かに!どういうことなんだファヴ!」

 

 

 

 ラ・ピュセルの指摘に、トップスピード達も声を上げる。

しかしファヴは何も答えない。無言である。

更にラ・ピュセルは続けた。

 

 

 

「どうして私の遺体も確認せずに死んだと判断したんだ?」

『…』

「それに、クラムベリー。奴は危険過ぎる。言うなれば殺人鬼だ。あんな奴がいればこのランキングが正常に進むわけない、奴を何故放っておくんだ」

『…』

「結局このゲームの意味って何なんだ?おかしい所がありすぎる」

 

 

 

 ラ・ピュセルがここまで言うと、魔法少女達もファヴに疑問を持ち始めた。

しかしファヴは何も答えない。もはや抜け殻なのではと思うほどに動こうともしない。

 

 

 

「おい、いい加減答えたらどうなんだ!」

 

 

 

 ついにラ・ピュセルが声を荒げた。

場が静まり返った。すると…

 

 

 

『だったら逆に何なんだぽん』

 

 

 

 急に雰囲気が変わり、ファヴが静かに話し出す。

 

 

 

『脱落しないでもいいならしなくていいじゃないか。そう言いたいんだろぽん』

「要約すればそうなる…実際はどうなんだ」

『…くだらない、ぽん。』

「何だと…!?」

『そんなくだらないことでファヴを呼ぶとは呆れたぽん』

『こっちは魔法少女を減らしたいだけぽん。正直今まで言った言葉に嘘があったことは認めるぽん。でも、だからなんだって言うんだぽん?』

『ゲームを操作出来ないってのも勿論嘘だし、こっちは人数が減るならなんでもいいぽん』

 

 

 

 

 その一言に、ラ・ピュセルは脳に血が登る感覚を感じた。

俗に言う、激昂状態という奴だ。

 

 

 

「お前は人の命を何だと思ってるんだ!実際に人が死にかけてる!元々勝手にお前が私達を巻き込んだくせに、責任を感じてないのか!」

『あー、もうラ・ピュセル黙っててくれないかぽん。あんまり調子に乗ると温厚なファヴも怒っちゃうぽん』

『ファヴがこのゲームの管理者だぽん。脱落とかは全部ファヴが処理するぽん。ゲームにフェアじゃないからやってなかっただけで、その気になれば今すぐにでもラ・ピュセル。君を脱落させてもいいんだぽん』

『君達魔法少女はただ減らし合ってくれれば良いんだぽん。黙ってこっちに従ってればいんだぽん』

「貴様…!」

 

 

 

 ラ・ピュセルが怒りを露にする。

その目は屑を見る目である。

しかし、ファヴは気にせず続けた。

 

 

 

『それに、責任とか言ってたけどこっちは強制してないぽん。君達が一瞬でも魔法少女になりたいと思ってスマホをタップした時点で契約は成立だぽん。結局は君達の責任ぽん』

『クラムベリーを消して欲しいとか言ってたぽん。でもこちらとしては脱落すれば何でもいいからクラムベリーのような戦闘狂は大歓迎なんだぽん。殺し合いで消しあってくれても何も悪いことはないぽん。こっちも見てて楽しいぽん』

「何て奴だ!」

「こんなんだったら魔法少女になるんじゃなかった!」

「なるんじゃなかった!」

 

 

 

 

 そんなことを言い出すファヴに、多くの魔法少女からの罵声が浴びせられる。

 

 

 

「魔法少女は清く、正しく、美しくなきゃダメなんだよ…ファヴはそんなこと思ってなかったの?私達を最初から玩具としか見てなかったの?」

 

 

 スノーホワイトも続けて反論する。

すると、ファヴからの返答は意外なものであった。

 

 

 

『スノーホワイト。それにはファヴも賛成ぽん』

「じゃあ、何でこんなこと!」

『魔法少女はみんなのヒーローでなきゃいけないぽん。どんなピンチになっても必ず悪を打ち倒す戦士だぽん。でも、今までの君達は新しい玩具を買ってもらってはしゃいでる子供と変わらないぽん。この魔法少女の力はそんなにくだらないものじゃないぽん』

『ファヴはこうやって強い魔法少女を探し出してるんだぽん。みんなで楽しくのんびりやるなんて脳内お花畑の奴がやることだぽん』

『君達には強大な力を持ったという自覚がないぽん。この力は遊びじゃないぽん。』

「そんな…」

 

 

 スノーホワイトは言葉を失った。あまりにもファヴの言葉が衝撃的であり、自身の頭を巡っている。

自分はそんなに強大な力を持ってしまったのか。

魔法少女はアニメやマンガで見ているものとは違うのかもしれない。

 

 

 

 

『とにかく、そういうわけだからこれからも頑張ってぽん。じゃあ、シーユーぽん』

 

 

 

 そのファヴの言葉を最後に、チャットルームは閉められた。

魔法少女達も強制退場させられた。

戻ったスノーホワイトは、涙を流しており、それを見たラ・ピュセルは、ファヴへの怒りを露にしたが、それ以上に、自分がスノーホワイトを守ってあげなければならないと改めて決心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、そんな面白い話が聞けたのなら、行けば良かったかね」

「そうデスカね…?」

「で、あんたの要件は何だい?」

 

 

 

 とあるバーの中で、椅子に腰かけていたのはチャットに来なかったカラミティ・メアリであった。

そしてその隣には、マジカロイド44が話をしていた。

 

 

 

「宜しければ、私もあなたに協力しようと思うんデスが…」

「こんなのと一緒に組もうって言う物好きは珍しいねぇ」

「いえいえ、強い方と一緒に組んだ方が良いかと思いマシテね」

「…分かったよ。付いてくるなら好きにしな」

 

 

 

 メアリの一言で一瞬喜びの顔を見せたマジカロイドだったが、メアリは更に続けた。

 

 

「その代わり…一つ条件がある」

「…何デス?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一人、殺ってこい…」




というわけでゲス部分が解放されましたね。
ウィザードとビーストは登場しませんでしたが、許してください。
そしてこれからは魔法少女の戦いが…!?


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第19話 生き残る為には

大変お待たせしました。申し訳ないです。
アニメもいよいよ最終回が近づいてきてますね。
スイムスイムを許すな(概念)


 ファヴから明かされた真実。

魔法少女の数を半分に減らす。その真の目的は、強い魔法少女を選び出す為のものだった。

更に、脱落した魔法少女は、力を失うことだけではなく、自らの命も落としてしまう。

ねむりん、ルーラの一件から、察していた魔法少女も少なくはないが、もし二人をウィザードが救っていなかったら、両者共に死んでいただろう。

このゲームを終わらせることが一番安全な策なのだが、主催者であるファヴは、ゲームを止める気など全く無い様子。

魔法少女の中にも、クラムベリーのような戦闘狂がいることも、ラ・ピュセルにより伝えられ、魔法少女同士でも、今まで以上に牽制し合っており、協力しよう等とも思えない状況である。

そして、以前のラ・ピュセルの一件により、魔法少女達の思考には、こんな考えも生まれていた。

 

 

 

”誰かを殺して脱落させれば、自分は生き残ることができる。”

 

 

 

 元々は魔法少女同士で時には協力し合ったりして、平和な時を過ごしていた。

しかし、何を何処で間違えたのか、今ではサバイバルゲームになりつつある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スノーホワイトは泣いた。こんな筈じゃなかった、と。

魔法少女の世界は、自分が思っていたものとかけ離れていた。

こんなの終わらせなきゃならない。でも死にたくない。

自分でも何をすればいいか分からなかった。

泣き続けるスノーホワイトは、一緒にいるラ・ピュセルに抱きついた。

 

 

 

 

「そうちゃん…私分からないよ…これからどうすればいいの…」

「私にも分からないよ。これからのことなんか誰も分かりはしない」

「でも、一つだけ分かることがある…」

「何…?」

「スノーホワイト、絶対に君だけは守る。君を死なせはしない」

「そうちゃん…!」

「これからは、他の魔法少女達が私達を殺しに来るかもしれない。以前のクラムベリーのように。でも、絶対に君だけは守り抜く。この剣に誓って…!」

「…ありがとう…!でも、そうちゃんも無理しないで…」

「もう…一人になるのは嫌だから…」

「当たり前さ。絶対に生き残ろう」

「うん!」

 

 

 そう言うとスノーホワイトは、もう一度ラ・ピュセルに抱きついた。

そしてラ・ピュセルもスノーホワイトに抱きつかれ、内心緊張しているものの、絶対にスノーホワイトを守ると心に誓った。

 

 しかし、二人は気付いていなかった。近くに別の魔法少女が一人、少しずつ迫って来ていることを…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人、殺ってこい。それがカラミティ・メアリからの条件だった。

当時は承諾したものの、いざ殺すとなると気が引ける。

ニュースでよく見る殺人事件の犯人は、どんな気持ちなのだろうか。

マジカロイド44は、この時だけはそんな彼らの気持ちを知りたくなった。

取り敢えず、魔法少女を適当に探していると、スノーホワイトとラ・ピュセルの姿を捕捉した。

何やら話しているようだが、そんなことはこの際どうでもいい。

どちらを殺すか。マジカロイドはそんなことを考えていた。

スノーホワイトの魔法は心の声が聞こえるという魔法らしく、戦闘能力も大して無さそうであり、殺しやすい相手ではある。

だが近くにいるのはラ・ピュセル。彼女は恐らくかなりの実力者だろう。

容易に戦闘を仕掛ければ一刀両断される可能性も無くはない。

どちらかを殺すにしても、スノーホワイトもラ・ピュセルも、どちらを殺しても必ず自分に復讐するべく襲いかかってくる。

それにウィザードという魔法使いも彼女達とは関係が深そうであり、ウィザードに目を付けられればこちらに勝ち目はもう無いだろう。

ならば、どちらも殺してしまえば良い。

今は隙だらけだろうし、殺れなくもない。

マジカロイドは自分の魔法、一日一回だけ、未来の道具を呼び出せる能力を使い、道具を取り出した。

 

 

 

 

「おやおや、これは当たりじゃないデスか?」

 

 

 

 

 取り出したのは、透明にできる刀だった。

十分過ぎる程の道具である。

こうなれば決行するしかない。

マジカロイドは覚悟を決め、二人の近くへ一気に接近する。

 

 

 

 

 

 

 ディフェンド!プリーズ!

 

 

 

 

 

 急に目の前に巨大な壁が現れ、マジカロイドは勢いよく衝突した。

弾き飛ばされ、地面に倒れる。

この壁は誰が作ったんだ。ウィンタープリズンか?いや、違う。

ウィンタープリズンは魔方陣を使わない。

まさか…。

マジカロイドが感じた嫌な予感が、的中したようだ。

 

 

 

 

「おいおい、あの状態の二人に突っ込むなんて、趣味悪いなあんた」

「お、おやおや…コンバンワ…ウィザード。」

 

 

 

 そう、ウィザードが現れたのだ。前にみた赤い姿ではなく、黄色い姿をしているが、間違いなくウィザードだ。

しかも、一番出会いたくない状況で会ってしまった。

 

 

 

「なんか二人に用でもあったのか?」

「まぁ…そんな感じデスね。でもまた今度にシマス。デハデハ~」

 

 

 

 面倒なことになる前に、さっさと逃げてしまおう。

マジカロイドは帰ろうとしたが、何故だか体が動かない。

そう、マジカロイドは足を鎖で縛られてしまった。

 

 

 

 

「待て。このまま逃がすわけないだろ」

「あ、アハハ…何でしょうカネ…」

「…マジカロイド、あんた二人を襲おうとしたろ。」

「な、ナンデ…」

「スノーホワイトから話は聞いてるよ。こんな状況で事前連絡も無しに他の魔法少女に会いに行くのは怪しいと思ってな。案の定だったな」

「何か理由があるなら聞いてやる。言ってみろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、カラミティ・メアリと組むために一人殺さないといけなかった…というわけか」

「ウィザード、あなたの言う通りこの状況では一人では厳しくてデスね」

「確かにそうかもな。でも、そんな事言う奴と組んでどうするんだ」

「強い味方がいれば、それだけこれからも安泰だと思ったのデス」

「他にも方法があったと思うんだが。カラミティ・メアリは危険だ」

「危険な人程、味方に付けたいじゃないデスか」

「はぁ…だったらこれならどうだ。俺がお前を守ってやる。キャンディー集めも手伝ってやるよ」

「…と、言いマスと?」

「あんたに協力してやるから、あんまり危険なことはするなよ」

「…それなら、別に構いまセンガ?」

「意外と軽いんだな、まぁ良いけど」

 

 

 

 

 

 そんな事を話すウィザードに、どこからか銃弾が襲い掛かる。

 

 

 

「ウィザード、危ないデスよ!」

「うおっ!何だ!」

 

 

 

「…何だい何だい…散々馬鹿にしてくれた見たいだねぇ…」

「あちゃー…来ちゃったか…」

「か、カラミティ・メアリ…」

 

 

 

 正体は、カラミティ・メアリだった。かなりイライラしている様子である。

 

 

 

「カラミティ・メアリに逆らうな。煩わせるな。ムカつかせるな。そう言ったはずだよ」

「前にも言ってたが、相当の自信家だな」

「…!あんた、本当にムカつくねぇ…」

 

 

 そう言うと、メアリは銃をもう一度構える。

勿論標的はウィザードである。

 

 

 

「前にやられた時からずっとあんたにはイライラしてたんだよねぇ。こんだけ忠告して変わらないってことは…そういうことだね」

「やるなら、仕方ないか。掛かってこいよ。今度も返り討ちにしてやる」

「ぶっ潰してやるよ…」

 

 

 

 

 

 ウィザードはウィザーソードガンを、メアリは銃弾を構える。

 

 

 

「さぁ、ショータイムだ」

「ここであんたを消してやるよ…」

 

 

 

 

 一瞬の沈黙が流れ、その直後にウィザードとメアリは引き金を引いた…




はい、引きが少し適当感ありましたがウィザードVSメアリ開始です。
メアリ編には入ってないのであしからず。


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第20話 思わぬ横槍

まほいく最終回とエグゼイド11話を見ましたよ。
ファヴさん案の定イッテイーヨされてましたね。
一方エグゼイド、次回12話はクリスマスとかいってお気楽回かと思いきや…
レーザー死亡…?まさかの鬱回かも。


 銃声が鳴り響く。カラミティ・メアリは後方に下がりつつウィザードに向かって引き金を引き続ける。

 

 

 

「ウィザード、私はどうスレバ…?」

「マジカロイド、あんたはちょっと離れてろ!流れ弾に当たるぞ!」

「あ、ハイ」

「よそ見してる場合かい!」

 

 

 

 ウィザードに銃弾が撃ち込まれる。ウィザードはなんとかマジカロイドを遠くに離れさせた。

強力な銃弾が何発もウィザードに襲い掛かるが、攻撃はワンパターンであり、華麗に避けて一気にカラミティ・メアリへ近づく。

ウィザーソードガンをガンモードからソードモードへ変形させ、カラミティ・メアリの銃弾を弾き、メアリの銃を切断した。

しかし、カラミティ・メアリは懐に隠していたナイフを取りだし、ウィザードの攻撃を防いだ。

 

 

 

 

「舐めるなァ!」

「うおっ!?あんた持ち物物騒だな、オイ」

「最初に会った時からずっとムカつくんだよねぇ、あんたの行動全てが!」

「随分ご立腹じゃないか。最初に負けたのがそんなにイライラするか?」

「そのふざけた口を黙らせてやろうかァ!」

 

 

 

 カラミティ・メアリは自身の魔法でナイフを強化し、零距離で投げつける。

魔法で強化されたナイフの一撃を受けてしまえば、かなりの大ダメージだろう。

 

 

 

「やっべ、だったらこれでどうだ!」

 

 

 

 

 

 

 ディフェンド!プリーズ

 

 

 

 

 

 ウィザードは間一髪ディフェンドの魔法で直撃を防いだが、衝撃で少し後方に吹き飛ばされる。

 

 

 

 

「とんでもない威力だ…あんた殺し屋と大差無いぞ…」

「フン、少しは驚いたかい。というか、この力で実際に人殺しをしたことはもうあるんだよ」

「はぁ?そんなんで良くキャンディー集まってたな」

「殺した、とはいってもテロ組織やマフィアを滅ぼしたのさ。悪を倒せば、キャンディーなんかいくらでも手に入るみたいでねぇ」

 

 

 少しだけウィザードより優位に立ち、カラミティ・メアリはウィザードを見下すように話す。

しかし、ウィザードもただやられるだけではないのだ。

 

 

 

「でも、そんな事はやめておいた方が良いだろ。魔法少女のすることじゃないぞ」

「はぁ…そうやって偽善ぶるのがねぇ、一番嫌いなんだよォ!」

「待て、やめろ!別に偽善ぶってるわけじゃない!」

「シスターナナだってあんたと同じような事をほざいてたよ。そういうのが一番鬱陶しいんだよォ!」

「全員黙ってあたしの言うことだけ聞いてれば良いんだよ!カラミティ・メアリに逆らうな!」

 

 

 

 カラミティ・メアリは怒りを爆発させ、銃弾を乱発する。

ウィザードは少し被弾しながらもカラミティ・メアリを止めるべく飛び込む。

 

 

 

 

 ウォーター、ドラゴン…!

 

 

 

 

 ウォータードラゴンスタイルに変化したウィザードは、カラミティ・メアリを抑え込む。

 

 

 

「この世界が何でもお前の思い通りに動くと思うな!」

「うるさい!黙ってろ!」

「今お前が言ってるのは駄々を捏ねてる子供と変わらない!考え直せ!」

「耳障りだァ!消えろォ!」

「そういうわけにもいかないんだ!」

 

 

 

 ウィザードは指輪を取り替え、必殺技を放った。

 

 

 

 

 チョーイイネ!スペシャル!サイコー!

 

 

 

 ウォータードラゴンに尻尾が現れ、銃弾を全て弾き返し、カラミティ・メアリをも吹き飛ばした。

予想外の一撃に、カラミティ・メアリは対処し切れず、地面に倒れこむ。

 

 

 

「まだだ…まだァ!」

「おい、もうよせ…」

「死ねぇ…ウィザードォ!」

 

 

 

 もう一度カラミティ・メアリが銃弾を放とうとした時…銃が弾かれ、落としてしまった。

 

 

 

「もうやめてよ!」

 

「なっ、スノーホワイト、ラ・ピュセル…」

 

 

 

 ウィザード達の所に現れたのは、スノーホワイトとラ・ピュセルだった。

遅れてマジカロイドも現れた。

 

 

 

「危ないからって止めたんデスケドね…」

「マジカロイドまで…」

「スノーホワイト!何をしてるんだ!」

 

 

 

 どうやら銃を落としたのは、スノーホワイトの持つブレイラウザーのサンダーの能力だった。

 

 

 

「スノーホワイト…あんたに会うのは初めてだね…あんまり関係ないあんたが何であたしを止めに来たんだい…」

「そうだね。でも、魔法少女はこんな戦いをしちゃいけないと思うんだ」

「そうかいそうかい…あんたもそんな馬鹿げた事を言うんだね…」

「え…?」

「スノーホワイト!危ない!」

 

 

 

 カラミティ・メアリは、落としたナイフを再び拾い、魔法で強化し、スノーホワイトへ投げつけた。

ラ・ピュセルとウィザードが叫び、スノーホワイトの下へ向かうものの、間に合わない。

スノーホワイトも油断していた為、ブレイラウザーを構える前にナイフが迫ってきてしまう。

カラミティ・メアリは笑みを浮かべた。このままではスノーホワイトに直撃してしまう。

 

しかし、そのナイフと銃弾は弾かれた。

 

 

 

 

 

 

READY…

 

 

 

 

 何者かがとてつもない速度でスノーホワイトを守ったのだ。

ラ・ピュセルでも、ウィザードでも、マジカロイドでもない。

その正体は…

 

 

 

「スノーホワイト…白い魔法少女は死なせない…死んじゃいけない…」

 

「誰だい…あんたは…!」

 

 

 

 

 それは、一人の魔法少女だった。

その魔法少女は、全身が黒く、手に持っている武器のみが赤く光っている。

彼女の持つ武器を見て、ウィザードは驚く。

 

 

 

「何でだ…何で巧の武器を…」

「…買いました。キャンディーで」

 

 

 

 黒い魔法少女はそう答える。

声音は低く、体も青白く、死者のような見た目の彼女は持っている武器、ファイズエッジを、カラミティ・メアリに向かって斬りつけた。

 

 

 

「スノーホワイトを傷つける者は許さない…」

「な、何だこいつ…」

「…!危ないぞ!」

 

 

 

 カラミティ・メアリは攻撃を避けた後、再び引き金を引いた。

ラ・ピュセルが注意したが、もう遅い。

ほぼ零距離の銃弾が黒い魔法少女に直撃してしまった。

 

 

 

「おい!」

「何で避けなかった!」

 

 

 ウィザード達が声をかけるものの、黒い魔法少女は首を撃ち抜かれた。

首を撃たれては流石に生き残れないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

しかし…。

 

 

 

 

 

 

 

 黒い魔法少女は、びくともしない。完全に死んでいてもおかしくない攻撃を受けてもだ。

しかし、全く動じていないのだ。

 

 

 

「容赦しない…」

「何だい…こいつは一体!?」

 

 

 黒い魔法少女はファイズエッジでもう一度斬りかかる。

しかし、カラミティ・メアリは煙幕を放った。

その場全員の視界が封じられる。

しばらく経ち、煙幕が消えると、もうカラミティ・メアリは消え去っていた。

 

 

 

 

「メアリ!逃げたのか!」

「何やら悪役感のすごい逃げ方デシタね」

 

 

 

 ウィザードとマジカロイドはカラミティ・メアリを追ったが、遠くまで逃げたようだ。

一方で、スノーホワイトは、黒い魔法少女に話しかける。

 

 

「あ、あの…助けて、くれたんだよね…?」

「…はい」

「ありがとうね…。でもあなたと会うのは初めてだよね」

「…はい」

 

 

 黒い魔法少女は「はい」としか答えない。

不気味ではあるが、スノーホワイトは自己紹介しておくことにした。

 

 

 

「私はスノーホワイト。あなたは?」

 

 

 

「…私は、ハードゴア・アリス…。会いたかった、スノーホワイト…」




20話目にしてアリス登場です。
アニメでもちゃんりなの演技も相まって不気味なキャラクターでしたね。
これからどう関わっていくのか。ラ・ピュセルやスノーホワイトとの関係にも注目ですよ。


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第21話 裏切りの代償

お待たせしました。
マジカロイド編です。衝撃のラスト。

遅くなりましたが、仮面ライダーディケイド・門矢士役の井上正大さんがご結婚なされたそうです。
おのれディケイドオオオオオオオオオオ!おめでとう!


スノーホワイトを助けた魔法少女は、ハードゴア・アリスだった。

スノーホワイト達は、彼女と面識は無く、助けられるようなこともしていないはずだ。

しかし、彼女がいなければどうなっていたことか。

 

 

 

「ハードゴア・アリスね、さっきはありがとう。でも、何で私を助けてくれたの?」

 

 

 

 どうしても気になったスノーホワイトは、理由を尋ねた。

やはり、助けられたとはいえ理由は知っておきたい。

だが、アリスからは拍子抜けするような返答が返ってきた。

 

 

 

「気が向いたから…」

「えっ、気が向いた…?」

「はい…でも、強いて言うなら、スノーホワイトを守りたかったから…」

「私を…?」

「アリス、嘘をついてないか?他にも理由があるんじゃないのか?」

 

 

 

 ラ・ピュセルはアリスに詰め寄る。

ルーラチームやクラムベリーの一件から、魔法少女の中にも悪意のある行動に出るものもいることを知ったラ・ピュセルは、余計に勘繰ってしまう。

 

 

 

「そうちゃ…ラ・ピュセル!そんなこと言っちゃダメだよ!」

「だって、もし君の身に危険が迫ったらいけないから…」

「ラ・ピュセル…!」

 

 

 

 スノーホワイトは頬を赤らめた。ラ・ピュセルの言葉が意外にも嬉しかったのだろう。

そんな二人を見つめるアリス。そしてアリスを見つめるマジカロイドとウィザード。

ウィザードとマジカロイドにはアリスの目線から、なんとなくアリスが嫉妬しているように感じた。

 

 

 

「ラ・ピュセル、騙し討ちの可能性は低い。じゃなけりゃわざわざメアリを撤退させたり、スノーホワイトを守ったりしないだろ」

「その通りデス。そんなことよりも気になる事がありマス、ハードゴア・アリス」

「…何でしょう?…」

 

 

 

 マジカロイドはアリスに尋ねたいことがあった。

それは勿論先程の戦闘のことだ。

 

 

 

「何故直撃を受けたのに、びくともしないどころか、傷が再生してるのデスか?」

「そ、そうだよ、大丈夫だったの?」

 

 

 

 スノーホワイトもはっと思い出したようにアリスに質問する。

 

 

 

 

「…お気になさらず…あれは私の魔法です…。どんな攻撃でも治ります」

「えっ、それってすごい能力だね。…てことはつまり」

「私は死にません。余程の事がない限り…」

「なんじゃそりゃ…すげえな…」

「恐ろしい能力デスね。もはや反則の域デハ?」

 

 

 

 ウィザード、マジカロイドが驚愕の声を上げるが、アリスは淡々と続ける。

 

 

 

「なので、私はこの力でスノーホワイトの盾になります…」

「「えっ」」

 

 

 

 スノーホワイトとラ・ピュセルが驚きの反応を見せた。

特にラ・ピュセル。直ぐにアリスに反論した。

 

 

 

「ま、待て!いきなり何を言い出すんだ!」

「それは仲間になりたいってこと?」

「…はい」

「そうだったんだね。分かったよ、宜しくね!」

「あっさり賛成!?良いのか!」

 

 

 

 スノーホワイトの賛成に、思わず突っ込むラ・ピュセル。

スノーホワイトの言葉を聞き、安堵したかのようなアリスはスノーホワイトの手を握る。

 

 

 

「よろしく…お願いします」

「うん、宜しくね。ハードゴア・アリス」

「スノーホワイト…ありがとうございます…」

「…待った!」

 

 

 

 アリスとスノーホワイトに、ラ・ピュセルが待ったをかける。

 

 

 

「スノーホワイト。つまり私達は3人で行動するということだな」

「そういうことになるね」

「…何故ですか?」

「何が言いたい…?」

 

 

 

 不意にアリスがそう呟く。

そしてラ・ピュセルも反応する。少し喧嘩腰である。

 

 

 

「ラ・ピュセル…あなたが何故スノーホワイトと行動しているのか分かりませんが、これからは私がスノーホワイトを守る騎士になります…お疲れ様でした…」

「はぁ!?何を言ってるんだ!」

「あなたまでスノーホワイトを守る必要はありません…」

「アハハ…つまり私は用済みと…?」

 

 

 

 ラ・ピュセルは笑顔でアリスに話しかけているが、顔がひきつっている。

 

 

 

「…いえ、そういうわけではありません…。守るのに二人も要らないと言っているんです…」

「やっぱりそういうことじゃないか!お断りだ!私はスノーホワイトの剣となることを誓ったんだ!」

「…剣?」

「君が現れるずっと前からだ!スノーホワイトを守るのは私だ!」

「何故あなたが守るのですか…?」

 

 

 

 何故か言い合いが続く中、アリスの一言でラ・ピュセルは言葉を詰まらせた。

理由を話せば正体を知られる。今日初めて出会ったような奴に正体を知らせるわけにもいかない。

 

 

 

「そ、それは…」

 

 

 

 ラ・ピュセルは黙ってしまった。

しかし、アリスはどんどん詰め寄って来る。

 

 

 

「何故あなたが…スノーホワイトを…?」

「…あぁ!もう!人を助けるのに理由が要るか!私はスノーホワイトを守りたいから守ってるだけだ!」

 

 

 

 ラ・ピュセルは何かが吹っ切れたように反論した。

そんなラ・ピュセルの顔は真っ赤になっていた。

 

 

 

「あいつら…仲良くなればいいんだけどな…」

「何だか私達、置いていかれてる感すごくないデスカ?」

 

 

 

 遠目に3人を見ていたウィザードとマジカロイドからしてみれば、3人の会話が小学生の口喧嘩並みの言い合いだったので、思わず笑ってしまうことしばしばあった。

 

 

 

「何だか、いても意味無さそうなので帰りマスね。では明日、キャンディー集め宜しくお願いシマス」

「うおっ!?…まぁ良いけども。集合場所はここでいいよな。時間は22時だ」

「了解デス。デハデハ~」

 

 

 

 マジカロイドは面倒くさくなったのか、ウィザードとの用事を決めて帰っていってしまった。

 

 

 

「えー…帰っちゃった…まぁいいか。おい!3人共、今日はもう解散したらどうだ」

 

 

 

 残されたウィザードは、3人を宥めるほか無かった。

 

 

 

「私は剣!君は盾!これでいいじゃないか!」

「いいや、私が剣も盾も兼ねますから、ラ・ピュセルは別に…」

「何で私に役割をくれないんだぁ!」

「ちょ、ちょっと二人共!やめてよ!」

 

「あーあ、だめだこりゃ…」

 

 

 

 

 

 

   

 

なかなか止まらない会話に、ウィザードも笑うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうも、ウィザード。宜しくお願いシマス」

「あぁ、キャンディー集め頑張ろうな」

 

 

 

 次の日、ウィザードとマジカロイドは約束通りキャンディー集めの為に集まっていた。

今週のランキング発表も近づいて来ており、取り敢えず最下位にならないぐらいの数を集めるという目的である。

 

 

 

「よし、それじゃあ早速始めるか」

「そうデスね。ちゃちゃっとやりましょうカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウィザードとマジカロイドは、キャンディー集めに勤しんだ。

落としてしまった駅のチケットを探したり、邪魔な酔っぱらいを家に帰したり、強盗犯を捕らえたりと、正義のヒーロー的な活躍も出来た。

ある程度のキャンディーが集まったので、ウィザードとマジカロイドは夜の静かな公園で休憩していた。

 

 

 

 

 

「所で、昨日はあの後どうなったのデスカ?あの3人は収まりましたカ?」

「まぁ…大喧嘩にもならず、どうにか止まってくれたよ、大分疲れたけどな」

「それは…御愁傷様デス」

「他人事だなぁ…さっさと帰っちゃうし、まぁいいけど」

「面倒ごとは苦手デスので。まぁ人助けは別デスがね。キャンディーも集まるし、礼を言われるのも悪くないデスよ」

「お前、意外にも優しいんだな」

「そうデスカ?でも一度スノーホワイト達を殺そうとしたんデスよ?」

「いいや、人間誰しも自分が死ぬかもしれないなんて状況になったら判断を誤ることだってあるさ」

「判断を誤る…デスか」

「でも、道を間違ったとしてもきっとやり直せる。俺の仲間にそう教えてくれた奴がいた」

「ウィザード。あなたには優しい仲間がいるんデスね。そして、あなた自身も…」

「そうかな。確かに、仲間がいてくれたおかげで、今の俺がいると思うんだ」

「仲間…大事な存在デスね。私にも仲間っていうのが欲しくなってきマシタよ…」

「だったら、俺が仲間になるよ。いや、俺達はもう十分仲間か」

「いいんデスカ…?でも、ウィザードがそう言うなら、ぜひ私からもお願いシマス」

「あぁ、勿論だよ。宜しく頼む」

 

「ウィザード、今日は本当にありがとうございマス。そして、これからもよろ…」

 

 

 

 

 一瞬のことであった。街に銃声が響いた。

ウィザードは驚いて辺りに銃弾が落ちていないか探したが、それは…

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 銃弾は、マジカロイドの左足に突き刺さるように残っていた。

ロボットの体ということもあってか、貫通しなかったようだ。

 

 

 

 

 

「なっ、おい!マジカロイド!」

 

 

 

 

 

 地面に崩れ落ちるように倒れたマジカロイド。

そして、マジカロイドは変身を解除し、10代くらいの女性の姿になった。

 

 

 

 

「ハハハハハハ!いい気味だね!」

 

 

 

 

 笑い声にウィザードが振り向くと、そこにはカラミティ・メアリがいた。

その手に持つライフルが凶器だろうか。

 

 

 

「遠くから魔法少女を撃つのは楽しいねぇ。それに、マジカロイドは私を裏切った。当然の報いさ」

「メアリ!お前なんてことを!」

「今日は戦いに来たわけじゃないのさ。ただこれがしたくて来ただけさ。じゃあなァ!」

「おい、待て!」

 

 

 

 ウィザードはフレイムドラゴンへ変化し、メアリに襲いかかった。

しかし、メアリに戦意はなく、ウィザードの攻撃を避けて逃げ去っていく。  

 

 

 

「あたしを追っていたらそいつは死んじまうよ!ハハハハハハ!」

「…くそっ…絶対に許さない!」

 

 

 

 メアリに逃げられたウィザードは、マジカロイドに駆け寄った。

 

 

「おい、マジカロイドしっかりしろ!」

 

「ウィ…ザード…どうやら私は…あなたの言う…通り…本当に…危険な人に…関わったよう…で…」

「すぐに病院連れてってやる。待ってろ」

「迷…惑を…掛け…て…ごめん…なさい…」

 

 

 

 そう言うと、気を失ってしまった。

辛うじて息はしているが、危険な状態である。

 

 

 

「しっかりしろ!…くっ、急がないと」

 

 

 ウィザードは女性を担ぎ、病院へ急ごうとした。

そんなウィザードの前に、仲間達が現れた。

 

 

 

 

 

 

「晴人!どうしたんだ!」

「何かあったんですか!」

「晴兄!大丈夫?というかその女の人は?」

「仁藤!スノーホワイト!ラ・ピュセル!」

 

 

 

 現れたのはビースト、スノーホワイト、ラ・ピュセルでありアリスはいないようだ。

銃声を聞いたからだろうか、3人共非常事態なのは理解している様子である。

 

 

 

「こいつはマジカロイドだ。でもメアリに撃たれた…」

「マジカロイド!?本当なの?」

「そんな…このままじゃ死んじゃうよ!」

「何!?そいつはやべえじゃねえか!」

 

 3人共驚いた反応を見せた。

そして、ビーストが話を続けた。

 

 

 

「そいつはもう逃げたのか?」

「あぁ、逃げられた。でもそんなことよりも、マジカロイドが心配だ…!」

「じゃあ颯太を入れた病院に!」

「いいや、俺の知り合いがいる病院がある。そっちの方が近い。俺から伝えておけば俺の知り合いがどうにか入院手続きくらいはしてくれるはずだ…」

「お、おう!じゃあ俺達はそいつを追う!」

「こちらは任せてください!」

「晴兄、気を付けて!」

「ああ、頼む!それと仁藤!メアリってのはガンマンみたいな魔法少女だ!迂闊に近づくと撃たれる!気を付けろ!」

「おう、分かったぜ晴人!絶対命を救えよ!」

「勿論だ。俺が最後の希望だ!」

 

 

 

 

 その一言で、ウィザードは病院へ、ビースト達はメアリを追うために動き出した。

マジカロイド44の命を救うために、ウィザードは走る…。




メアリファンの皆様、申し訳ございません。
しばらくメアリはヘイト集めするだけのキャラと化します。
そして、晴人の知り合いがいる病院ってのは、アレですよ。
平成ジェネレーションズの後の話という設定ですので。


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第21.5話 再会の戦士

今回はウィザードがマジカロイドを病院へ送るという本編の中の番外編です。
現役戦士のあの人が登場!?
一応今作は名深市と病院は近いという設定です。許して下さい。


 仮面ライダーウィザード、操真晴人は、カラミティ・メアリの凶弾に倒れたマジカロイド44を救うべく、以前共に戦った仲間が働く、‘聖都大学附属病院’に足を運んでいた。

マジカロイドは未だに意識は戻っておらず、出血は止まったものの、ウィザードは医療知識を持っておらず、どういう状況なのかもあまり分からない。

病院に到着したウィザードは、変身を解除した後院内へ入り、白衣を着た恐らく医者だと思われる男へ声をかけた。

 

 

 

「すまない、緊急で治療をやってほしいんだが…!」

 

「うおっ!?急に声かけられるもんだからびっくりしたぁ…珍しいねぇ、患者を自ら連れてくるなんて。でも悪いな、自分は監察医なんだ」

 

 

 

 監察医だと言う白衣の男、よく見ると白衣の下にはアロハシャツのような服を着ていた。珍しい趣味をしている。

 

 

 

「監察医…?じゃあ他の医者にこの娘を治療して貰えないだろうか。足を銃で撃たれてるんだ」

「銃だって?何があったのさ。怪物か何かに襲われたりした?」

「いいや…怪物ではないけど、とにかくヤバそうなんだ。頼む」

「よし、ちょっと見せてみ。手術は他に任せるが、怪我の状態くらいは自分にも分かるはずだ。生きてる人のは久しぶりだがな」

「分かった。状態だけでも知りたい」

 

 

 

 そう晴人が言うと、監察医の男は抱かれていた女性の怪我を確認し始めた。

暫くして、監察医は確認を終え、晴人に結果を伝える。

 

 

 

「うーん、今すぐ死ぬってのは無さそうだから安心してくれ。だがこのまま放置も良くない。せめて弾を摘出しておかないとな。知り合いに外科医がいるから、そいつ呼んでくるわ。今日はまだ病院に残ってるみたいだしな」

「分かった、宜しく頼む。あっ、それと…宝生って医者は今いるか?」

 

 

 

 晴人が尋ねると、監察医は一瞬驚いていた。彼も知っているのだろうか。

 

 

  

「宝生…永夢のことか?知り合いなのか、あんた」

「まぁそんなもんだ。挨拶だけでもしておきたい」

「なら丁度いい。多分二人とも同じ場所にいるからまとめて呼んでくるわ。その女の子は受付の近くのソファーに寝かしといてくれ。担架も持ってくる」

「悪いな、色々してもらって」

「気にすんな。これが医者の仕事だからな」

 

 

 

 そう言って、監察医は院内の奥へ走っていった。

晴人は言われた通り、受付の近くのソファーに女性を寝かした。

すると、彼女の服のポケットから、手帳が落ちてきた。

丁寧に名前も書かれており、‘安藤真琴’と書かれていた。

 

 

 

「マジカロイドの本名か…?」

 

「おーい、連れてきたぞ!」

 

 

 

 晴人が手帳を拾った直ぐに、監察医が二人の男を連れてきた。

 

 

 

「おい監察医、何故俺を呼んだ。緊急外来なら他の医者に任せているだろう」

 

「というか、僕に用事って一体誰なんですか?貴利矢さん」

 

「まぁまぁ、詳しくはあいつに聞いてくれ」

 

 

 連れて戻ってきた監察医に、晴人は礼を言った。

 

 

「ありがとう。ここまでしてくれて」

「あぁ。じゃ、俺はやることがあるんで戻るわ。後は二人に任せる」

 

 

 貴利矢と呼ばれた監察医は、自分の仕事に戻るべく、帰っていった。

 

 

「待て監察医!結局俺は何をすればいいんだ!」

「あっ、あなたは確か…」

「久しぶりだな、エグゼイド。操真晴人だ」

 

 

 晴人に驚く彼は、小児科の研修医である宝生永夢。

そしてもう一人は、貴利矢が呼んできた外科医、鏡飛彩。

 

 

 

「研修医、お前ら知り合いか」

「えぇ、以前のパックマン事件の時に僕達に協力してくれた人です」

「そうだったのか。で、それで何の要件だ」

「あの娘を治療してくれないか、足を銃で撃たれてる」

「銃か…それは危険だな…。分かった、治療しよう」

「助かるよ」

「所で、彼女の名前は」

「安藤真琴だ」

「了解した。大事を取って数日は入院させることになるが、大丈夫か?」

「ああ。宜しく頼んだ」

「よし、じゃあ俺は手術室に向かう。手術が終わってしばらくしたら連絡する」

 

 

 飛彩はそう言い、担架に真琴を乗せて手術室へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、銃で撃たれるなんて一体何があったんですか?」

「ちょっといろいろあってな…名深市の事なんだが」

「最近噂になってる怪物騒ぎですか?だったら、僕も手伝います」

「いいや、大丈夫だ。お前はお前のするべき事があるはずだ。こっちの事で迷惑を掛けるわけにもいかない」

「でも、もし危険な事があったら…」

「心配するな。それを片付けるのが俺のやるべき事だ。それにお前の敵はまだ残ってるんだろ?」

「まぁ、そうですけど…」

「だからここは俺がなんとかする。でも、もし何か情報を聞いたら連絡をしてくれ」

「分かりました。って、どこに行くんですか?」

「今、俺の仲間が敵を探してくれてる。俺も急がなきゃならない。真琴が目覚めたらある程度伝えておいてくれ!」

 

 

 

 そう言って、晴人は病院を後にした。

一人残された永夢は、やはり名深市と晴人の事が心配だった。

 

 

 

「(もし、何かあったら…。そうだ、あの人に聞いてみるのも良いかもしれない)」

 

 

 

 永夢も、自身のルートで情報を探ることにした。

何か、役に立つ情報や秘密を知ることが出来れば、と信じて。




はい、もう完全に今回は出てきちゃったお医者さん。
医療には僕も詳しくないので色々おかしなところがあったらすいません。
ガシャット寄越せのお医者さんと社長さんは出ません。
こちらのルートはオマケ程度なので、あまり期待しないで下さい。
あくまでも今作はウィザードメインですので。
次回から本筋に戻ります。
ビースト達はメアリを見つけられるのか、お楽しみに。


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第22話 強敵の再来

クリスマスは用事も多く投稿出来なくて申し訳なかったです。
エグゼイドではついに貴利矢が…。アイコン15個集めなきゃ(使命感)
しかし貴利矢の最期の言葉を聞くに、永夢君実はとんでもない事になってそうですね。
今回はビーストサイドのお話です。ラ・ピュセルが一番会いたくない相手と再開!?
そしてまさかの人物に強化フォーム。


 ウィザードを見送ったビースト、スノーホワイト、ラ・ピュセルは、カラミティ・メアリが逃げたと聞いた方向へ向かっていく。

少し時間が経っているため、メアリには逃げ切られたかもしれないが、暴走を止めるために急いで移動していた。

すると、ビーストがビルのヘリポートらしき場所に人影を見つけた。

 

 

 

「おい、あいつじゃねえのか!?」

「うん、カラミティ・メアリだ…!」

 

 

 ビーストが指差す場所には、メアリが立っていた。

しかし、何かを持っている。そして、それはこちらに向けられていて…。

 

 

 

「…おい!伏せろ!」

「う、うわぁ!?」

 

 

 

 突然こちらに向かって銃弾が飛んできた。

メアリはビースト達の存在に気付いていたのだ。

間一髪避けた三人は、銃弾の当たらない場所へ隠れた。

 

 

 

「ウッソだろおい…まさか気づいてやがるとは」

「攻介兄、これじゃあ近づけないよ」

「多分…また撃ってくるよ」

「じゃあこいつを使うか!」

 

 

 

 するとビーストは、指輪を取り出してビーストドライバーの右のスロットに差し込んだ。

 

 

 

ファルコ!ゴー!

 

 

 

 ビーストの腕を魔方陣が通り過ぎ、ビーストはオレンジ色のマント、ファルコマントを羽織った。

するとビーストはスノーホワイトとラ・ピュセルの手を掴んだ。

 

 

 

「二人共、しっかり掴まってろよ!」

「えっ、うわあぁぁぁぁぁ!」

「攻介兄、これはすごすぎぃぃぃ!」

「皆まで言うな!一気に飛ばすぞ!」

 

 

 

 ビースト・ファルコマントの能力は空を飛ぶことが出来る。

ビーストは二人を連れて一気に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だい、随分飛ばすねぇ…」

 

 

 

 カラミティ・メアリはこちらに向かってくるビースト達を見て、再びライフルを構えた。

ビースト達を撃ち落とすべく。

 

 

 

「鬱陶しいのは嫌いだよ…」

 

 

 

 そう言うとメアリはライフルの引き金を引いた。

銃弾はビースト達を目掛けて飛んでいったが、避けられた。

 

 

「あぁ…ムカつくねぇ!」

 

 

 その後も連続で銃弾を発射するも、全て避けられて、結局ビースト達を撃ち落とすことは出来ず、ヘリポートまで来られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたがメアリとやらか。散々撃ちやがって、危ないだろ」

「そうさ、あたしがカラミティ・メアリさ。ここまで来るなんてしつこい奴らだね」

「晴人…ウィザードにあんたを追ってくれって頼まれたからな」

「くだらないねぇ。マジカロイドをちょっと撃っただけでここまでされるとは、意外だよ」

「貴様!」

 

 

 

 ラ・ピュセルが声を荒げた。メアリの言動に怒りを感じているのだろう。

 

 

 

「あんたら、そこまで仲良くなかったんじゃないのかい?他人のために怒れるってスゴいねえ」

「どれだけ人を馬鹿にしたら気が済むんだ!」

「やめてラ・ピュセル!」

「まぁまぁ、皆まで言うな」

 

 

 

 怒りのあまりメアリに飛びかかろうとしたラ・ピュセルをビーストが収める。

 

 

 

「こっちはあんたを止めるために来てるんだ。何をするかは、分かってるよな」

「ほう…あたしとやり合おうってのかい…見ない顔だが、分かってるじゃないか」

「乗り気で助かるぜ。さぁて、勝負だ」

 

 

 

 ビーストはダイスサーベルを、メアリはライフルを構えた。

しかし…

 

 

 

「待ってください」

 

 

 

 何者かに声をかけられ、その場にいた全員が同じ方向に視線を移す。

そこから現れた人を見たラ・ピュセルは全身の血の気が引いていくのを感じた。

それは、もう出来れば会いたくなかった人物、顔も合わせたくなかった人物…。

 

 

 

 

「あんたは、クラムベリーじゃないか」

「どうもこんばんは、カラミティ・メアリ。スノーホワイトにラ・ピュセルも」

 

 

 

 

 クラムベリーは何事も無かったように挨拶をする。

ラ・ピュセルはそれに応じず、ただただ青ざめた顔で震えている。

 

 

 

 

「ラ・ピュセル、まさかあなたが生きているとは、驚きましたよ」

「元々は、あなたがラ・ピュセルを倒したんでしょ!」

 

 

 

 スノーホワイトはクラムベリーに怒りをぶつける。ラ・ピュセルから話を聞いており、クラムベリーは危険人物であることを知り、ラ・ピュセルのことで許せないことが多々あった。

 

 

 

 

「それで、何の用だ…!」

 

 

 

 ラ・ピュセルはクラムベリーに問う。

前回もそうだったが、録な返答ではないはずだ。

 

 

 

 

「私はラ・ピュセル、そしてスノーホワイトと戦いたい。それだけです」

「前に戦ったじゃないか!それにスノーホワイトを何故巻き込む!」

「巻き込む?違いますね。彼女も戦う力を持っている。だから、あなた方をどちらも倒すことに意味がある」

「何を言ってるんだ…」

 

 

 

 やはりクラムベリーは戦う気しか無いようだ。

こちらが戦いの意思を見せれば直ぐにでも襲いかかってくるだろう。

 

 

 

 

「なんだか面倒になってきたわ、あたしは帰る」

「それは助かります。今の状況では、あなたは邪魔でしかなかったですから」

「つくづくムカつくよ、あんたは」

 

 

 

 クラムベリーに言われ、余計に気を悪くしたメアリは、直後に何処かへ消え去った。

そしてクラムベリーは、スノーホワイト達に近づいてくる。

 

 

 

「さぁ、どうですか?あなた方にとってはリベンジマッチになるのでは?」

「私は…」

「ラ・ピュセル。止めよう?また傷つくだけだよ」

「その通りだ。だったら俺がやってやるよ」

 

 

 

 悩むラ・ピュセルが決断するより前に、ビーストが名乗り出た。

クラムベリーは驚きの表情を見せる。

 

 

 

「何故あなたが戦うのですか?」

「お?何だ、仮面ライダーと戦うのは怖いか?」

 

 

 

 ビーストの煽りに、苛ついたような素振りを見せたが、クラムベリーはこう告げた。

 

 

 

「…いえ、良いでしょう。その代わり、がっかりさせないでくださいよ」

「よっしゃ、じゃあ一戦頑張るか」

「ビースト!何で!?」

 

 

 

 ラ・ピュセルがビーストに尋ねた。スノーホワイトも同様に、驚いている。

 

 

 

「お前らをこいつと戦わせるわけにはいかない。もうお前らは帰れ!ここは任せろ!」

「…ごめんなさい!…行こう、スノーホワイト」

「うん。ビーストさん!お願いします!」

 

 

 

 ラ・ピュセル達は、ビーストにこの場を任せ、足早に帰っていった。

 

 

 

「さぁて、そろそろ勝負だ。あんたのことは色々聞いてるんだ。このまま野放しには出来ねえな」

「随分と私が悪と噂されているようですね…」

「悪?まぁそんなもんだな」

「私の期待を裏切らないでくださいよ。ビースト」

「その心配は必要ねぇな。俺は死なない」

 

 

 

 一瞬の間が空き、その直後、対峙する二人は相手に目掛けて攻撃を仕掛けた。

夜の静かなビルの屋上で、二人の戦いの音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、スノーホワイト、ラ・ピュセルはビルから離れて街の外れへ逃げ込んでいた。

 

 

 

「…攻介兄、大丈夫かな…」

「大丈夫だと思う。仁藤さんは私達を逃がすために引き受けてくれたんだよ」

「そうだね」

「もう帰ろっか、そうちゃん」

「うん。じゃあ家まで送るよ」

「ありがとうね、いつも送ってくれて」

「う、うん…いきなり言われると照れるな…」

 

 

 

「見つけたぞ、魔法少女共…!」

 

「だ、誰!?」

「お前、まさかファントム!?」

 

 

 

 帰ろうとした二人の前に、ファントム・フェンリルが現れた。

フェンリルは二人を見つけると、直ぐに襲いかかってきた。

 

 

 

「貴様らは散々我々の仲間を消してきた!その恨みを今この場で!」

「お前たちファントムが先に襲って来たんだろ!」

「問答無用!」

 

 

 

 二人は避けようとするも、フェンリルの素早い攻撃が何度か当たってしまう。

 

 

 

「くそっ、このままじゃ…!スノーホワイト、やるしかない!」

「分かった…ラ・ピュセル!」

 

 

 

 スノーホワイトはブレイラウザーを、ラ・ピュセルは大剣を持ってフェンリルに挑む。

しかし、フェンリルの大きい牙の攻撃は強烈であり、なかなか倒すことが出来ない。

 

 

 

「ぐぁぁ!」

「ラ・ピュセル!」

「私の事は気にするな!私が注意を引き付けるから、その隙に君は必殺技を!」

「この俺に、貴様一人でどうにかなるというのか!」

「どうにかするんだよ!ハァッ!」

 

 

 

 ラ・ピュセルが大剣でフェンリルに向かって斬りかかる。

負けじと応戦するフェンリル。

スノーホワイトはブレイラウザーのカードを選ぶ。

 

 

 

「この前のキックじゃ、あの牙で弾かれそうだし、空を飛べたり出来れば…」

「あぁ…どうしよう…でも、いつまでも悩んでたらラ・ピュセルが危ない…これ、鳥っぽいし、もうこれに決めた!」

 

 

 

 するとスノーホワイトは、ブレイラウザーからJのカード、フュージョンイーグルと、Qのカード、アブソーブカプリコーンを取りだし、ブレイラウザーにスキャンした。

 

 

 

”アブソーブ”

 

 

”フュージョン”

 

 

 

 

 すると、スノーホワイトの身体が光に包まれ始め、紋章が浮かび上がった。

光に包まれたスノーホワイトは、背中に翼が装着され、全体的にカードのモチーフであった鷲というよりも、天使のような外見になった。

装飾の花など、全体的に金色になっている。

 

 

 

「スノーホワイト!?なんだその姿!?」

「私、強くなった気がする!力がみなぎってくる!」

「姿が変わった所で同じだァ!」

 

 

 

 フェンリルは標的をスノーホワイトに変えて襲いかかってくる。

しかし、スノーホワイトは翼で空を飛び、軽々と攻撃を避けると、そこから急降下してブレイラウザーで斬りつける。

 

 

 

「ラ・ピュセル!私飛べるよ!すごーい!」

「う、うん、そうだね(あ、ヤバいこれ天使だ)」

「舐めやがって!喰らいやがれ!」

 

 

 

 フェンリルが炎の球を発射しようと標準を定める。

 

 

 

「スノーホワイト!危ない!」

「うわっ、じゃあこれで決めるよ!」

 

 

 

 スノーホワイトは、ブレイラウザーにサンダーディアー、リザードスラッシュのカードをスキャンした。

 

 

 

”サンダー”

 

”スラッシュ”

 

 

 

”ライトニングスラッシュ”

 

 

 

 

 ブレイラウザーが雷を纏い、スノーホワイトはフェンリルに向かってもう一度急降下する。

フェンリルが放った炎の球をも切り裂き、真っ二つに両断する。

そしてそのままフェンリルに攻撃を直撃させる。

 

 

 

 

「おりゃああああ!くらえー!」

「がぁぁぁぁ!まさか、俺までもが…魔法少女共にぃ…」

 

 

 

 そう言い残して、身体を切り裂かれたフェンリルは爆発した。

 

 

 

「やったぁ!そうちゃん!」

「小雪…君は凄いな…うん、色々凄いよ」

 

 

 

 ラ・ピュセルは、ほとんど一人でファントムを倒したスノーホワイトに驚くしかなかった。

彼女が強いのか、はたまたブレイラウザーと呼ばれる剣が強いのか。

 

 

 

「…そういえばそうちゃん。私が空を飛んでる時にそうちゃんの心の声が聞こえたんだけど」

「えっ、そうなの?」

「ヤバい、天使だ。とか思ってなかった?」

 

 

 

 不意にそんなことを言われてしまい、ラ・ピュセルは顔が赤くなっていくのを感じた。

 

 

 

「えっ、いやいやいや、天使みたいだなぁって思っただけだよ!これ本当」

「そうかなぁ…?もう、そうちゃんのえっち」

「何でそうなるんだぁ!違うぞ!絶対違う!」

 

 

 

 この後、結局心を読まれてしまったラ・ピュセルが、スノーホワイトに説教を受けたのは、また別の話である…。




というわけで久しぶりの投稿でした。
スノーホワイト・ジャックフォームが気に食わなかった方がいらっしゃったら、すいませんでした。
見た目はスノーホワイトの色が金色になって翼が生えただけです。はい。
ジャックフォームへの変身音は、DXブレイラウザーにフュージョンイーグル、アブソーブカプリコーンをスキャンしたときの音声にしました。
また、仮面ライダーブレイド本編とは、ブレイラウザーやラウズカードの設定等が大幅に異なっております。ご了承下さい。

最近ビーストさん足止め係になってますが、次回こそ活躍させます。
クリスマス回とか投稿出来ずに申し訳ございませんでした。


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第23話 激突

ビースト、クラムベリーの対決です。
勝つのはどっちだ!?

どうでもいい話ですが、この前Fate/grand orderをクリア致しました。
スマホゲームとは思えない良いシナリオで楽しかったです。
マシュ、生きてて本当に良かった。


 スノーホワイト、そしてラ・ピュセルを逃がした後、ビーストはクラムベリーとの激しい戦いを繰り広げていた。

ビーストがダイスサーベルをクラムベリーに向かって振りかざすものの、クラムベリーは確実に避けていく。

そして、何故かクラムベリーは反撃を仕掛けない。

ひたすらにビーストの攻撃を避け続けている。

 

 

 

「おい、何で反撃しない」

「何故…ですか。小手調べという所ですね」

「へぇ…随分と舐めてくれてるじゃねえか」

「ですが、それもここまでです。小手調べは終わりました」

「何…?」

 

 

 ビーストの放つ攻撃を受け止め、背後に回るクラムベリー。

ビーストが後ろを振り向くが、もう遅かった。

 

 

 

「さぁ、ここからが勝負です」

 

 

 

 クラムベリーがビーストを全力で殴り飛ばす。

ビーストは後方まで飛ばされ倒れこむ。

しかしクラムベリーは隙を作らず、ビーストに襲いかかる。

 

 

 

「危ねっ!なかなかやるじゃねえか…」

「いつまでそんな余裕を出せますかね!」

 

 

 

 クラムベリーは続けて猛攻を仕掛ける。

先程とは一転、ビーストはクラムベリーに押される展開になっている。

ビーストは反撃どころかクラムベリーから次々と繰り出される拳を避け続けるしかない。

 

 

 

「くそっ、さっきまで避け続けてたのは、これのためか!」

「それに近いですね。あなたの行動パターンを読んでいました」

「行動パターンだと?」

「そうです。あなたの行動はほぼワンパターンでした。だからこうやってあなたの行動を先読みしているんです」

「何だと!?」

「今のままではあなたは私に勝てない。さぁ、見せてください。仮面ライダーとやらの力を」

「だったらこれだ!」

 

 

 

 ビーストはなんとかクラムベリーの攻撃を避けきり、新しい指輪を使う。

 

 

 

カメレオ!ゴー!

 

 

 

 ビーストの今まではファルコマントだった所に、新しく緑色のマントであるカメレオマントが装着された。

ビースト・カメレオマントになったビーストは、マントに付いているカメレオンの顔から長い舌を伸ばし、クラムベリーに巻きつけた。

そして、クラムベリーを空中に浮かせた後、地面に叩きつける。

 

 

 

「いつものファントムだったらそろそろ倒せるんだが、お前はそうは行かなさそうだ」

「その通りですね。やっと面白くなってきました」

「ご期待に沿えそうで何よりだ。まだまだ行くぜ!」

 

 

 

 飛びかかってくるクラムベリーに、ビーストも応戦する。

両者隙を見せることなく、攻撃を出し合い、避け合い、五分五分の戦いが続く。

すると、先に動いたのはビーストであり、再びカメレオマントの舌を伸ばしてクラムベリーを巻きつけて、動きを封じた。

 

 

 

「一先ずこれだ!」

 

 

 

 ビーストはダイスサーベルのスロット部分を動かし、指輪でサイコロのスロットを止めた。

出た目は3。1~6のサイコロの中で、目が多い方が威力は大きいのだが、今回は微妙である。

 

 

 

 

 

 スリー!カメレオ!セイバーストライク!

 

 

 

 

「あちゃー、まぁいいか。くらえ!」

 

 

 

 

 ビーストがダイスサーベルをクラムベリーに向かって振りかざすと、魔方陣より現れた小さいカメレオンの群れがクラムベリーに飛びかかった。

しかし、威力はサイコロの3相当であるため、クラムベリーへの致命打になりはしなかった。

少しばかり後ろに仰け反るクラムベリーであったが、直ぐに体勢を立て直した。

 

 

 

 

「どうしました?その程度ですか?」

「運が悪かっただけだ!悪いか!ってぐわぁ!」

 

 

 

 

 ビーストが言い終わる前に、クラムベリーから攻撃を受けた。

 

 

 

 

「せめてもう少し待ってくれてもいいじゃねえか!」

「この戦いに容赦は必要ありません。さぁ早く次の力を見せてください」

「仕方ねえな…じゃあこれでどうだ!」

 

 

 

 

 バッファ!ゴー!

 

 

 

 ビーストは指輪を再び付け替え、ビースト・バッファマントへ変化する。

クラムベリーの攻撃を、バッファマントの力技で押し返す。

そのままダイスサーベルでクラムベリーの体を切り裂く。

 

 

 

「これならどうだ!おりゃあああ!」

「ふふっ、やっと本気を出してきましたか。いいですよ、楽しくなってきました」

「一気に終わらせるぜ!」

 

 

 

 ビーストはペースを戻し、一気に攻めに入る。

バッファマントの力もあってか、徐々にクラムベリーを押し始める。

 

 

 

 

「これがライダーの力だ!」

「先程より攻撃が避けられるようになった…?一体何故…」

「何か知らねえが、俺も攻撃パターンってのが分かるようになってきたのかもな」

「…それと、お前の攻撃といい雰囲気といい、どっかで会ったことある気がするんだよなぁ」

「!?…ですが、あなたとは会ったのは初めてですよ…」

「でも、どっかで会った気がするんだよ…お前というか、お前に似た雰囲気のやつに」

 

 

 

 

 ほんの一瞬だけ焦りを見せたクラムベリーだったが、体勢を立て直して防御に徹する。

しかし、ダイスサーベルの威力は増していき、ついにはクラムベリーに直撃する。

後退りするクラムベリーを、ビーストは逃がさなかった。

 

 

 

 

「今さら逃げたって遅いぜ、さぁ、メインディッシュだ!」

 

 

 

 

 ビーストは、再びダイスサーベルのスロットを回した。

今回止まった数字は6。最高威力である。

 

 

 

 

 シックス!バッファ、セイバーストライク!

 

 

 

 

「さぁ喰らえ!」

 

 

 

 ビーストの放った一撃から、大きなバッファローの大群がクラムベリーを襲う。

カメレオンの群れより大量で、しかも強力な攻撃である。

さすがのクラムベリーも大きく吹き飛ばされた。

そして、最後にビーストが自ら一撃を与えた。

その一撃は、クラムベリーを完全に捉え、右腕を完全に切り裂いた。

魔法少女とはいえ人の腕を切った音がビーストに伝わった。

 

 

 

「ふぅ…これで分かったろ、仮面ライダーの力を」

「…」

 

 

 

 クラムベリーからの返事は無い。クラムベリーを吹き飛ばした衝撃で砂煙が立ち込めており、クラムベリーの姿を確認出来ない。

 

 

 

「ありゃ、もしかしてやり過ぎちゃった?おーい、大丈夫か?」

 

 

 

 ビーストは、砂煙の中に入っていく。

 

しかし、その直後である。

 

 

 

「ぐおっ…!お前、マジかよ…」

「フフフ、残念でしたね。仮面ライダー」

「これは…死んだフリって…やつか…」

 

 

 

 ビーストは、突如飛び込んで来たクラムベリーに首を絞められる。

突然の事で、対処仕切れなかった。

 

 

 

「お前、その腕…確か俺が切ったハズだが…」

「私は魔法少女ですよ?魔法を使えなくてどうするんですか」

「実はあなたが切ったと思っていたもの。それはただの偽装」

「何…だと…?」

「しかし、本来この偽装戦術は実戦には使用しないんです。私が危険になったときを除いて」

「それは…」

 

 

 

 ビーストが尋ねると、クラムベリーは笑みを浮かべて続けた。

 

 

 

「あなたがもう少し用心していれば、こうなることも無く、あなたは私に勝っていた」

「残念でしたね…仮面ライダーの力…とても強力でしたよ。ですが、強敵を倒してこそ私の王道…あなたは殺すには惜しいですが、ここで消えてもらいます」

 

 

 

 

 クラムベリーがとどめの一撃をビーストに与えようとするが、ビーストは全く動じない。

 

 

 

「あなた、死ぬのが怖くないのですか?」

「…死ぬ?逆にこれで俺を殺せると思ってんのか」

「え?」

 

 

 

 ドルフィ、ゴー!

 

 

 

 ビーストの予想外の返答に驚くクラムベリー。

するとビーストはクラムベリーの体をすり抜け、あっという間に脱出した。

ビーストは新たな姿、ドルフィマントへ変化している。

 

 

 

 

「その力は…?」

「どんな場所でも水みたいに潜れたり出来るのさ!」

「まだ力を持っていたのですか…しかもスイムスイムと似ている…」

「私も本気を出しましょうか」

「だったらこっちも更に本気を出してやる!行くぜ、キマイラ!」

 

 

 

 

 ビーストは、今までの指輪とは一回り大きい指輪を付け替えて、スロットに装着した。

 

 

 

 

 ハイパー!ゴー!

 

 

 

 

 ビーストが大きな魔方陣に包まれ、今度はマントではなく、全身が青と金をモチーフとした姿、仮面ライダービーストハイパーへと変化した。

手にはビーストハイパーと同じカラーの銃、ミラージュマグナムが握られている。

 

 

 

 

「さぁて、第二ラウンドだ。クラムベリー、こんなんでくたばらないよな?」

「いいでしょう…やはりあなたと戦うのは面白い…!」

 

 

 

 

 ビーストハイパーとクラムベリーは再び対峙し、両者共に相手に飛びかかっていく。

クラムベリーは今までより強力な拳を振るうが、ビーストハイパーは腕に備わっているフリンジスリンガーと呼ばれる紐を自由自在に伸縮させ、攻撃を弾き返していく。

更にミラージュマグナムから銃撃をクラムベリーへ着弾させていく。

 

 

 

 

「うっ、まさか…今までとここまで威力が違うとは…」

「お前も仮面ライダーを侮ったのがいけなかったな!」

 

 

 

 

 ミラージュマグナムで更に攻撃するビーストハイパー。クラムベリーも押されるだけでなく、反撃の機会を伺い、隙を突いてビーストハイパーに攻撃を与える。

 

 

 

 

「なかなかですね…。ここまで緊迫する戦いは久し振りです…!」

「結構タフじゃねえか、だったら限界までやってやるよ!」

 

 

 

 

 ビーストハイパーは、ミラージュマグナムの装着口に指輪を装着させて、必殺技を放った。

 

 

 

 

 ハイパー!マグナムストライク!

 

 

 

 

「うおりゃあああ!」

 

 

 

 ビーストハイパーは、渾身の必殺、シューティングミラージュをクラムベリーへ発射した。

必殺技が直撃したクラムベリーは倒れてこそいないものの、かなりダメージを受けており、フラフラとしている。

 

 

 

 

「流石ですね…仮面ライダービースト…覚えておきましょう…」

「やっと勘弁してくれたか…」

「フフッ、今日は楽しかったですよ…では、またどこかで…」

 

 

 

 

 クラムベリーは、そう言うと何処かへ去っていった。

戦いを終えたビーストは変身解除して地面に倒れこむ。

 

 

 

 

「うへぇ…ここまで戦ったのは久しぶり過ぎて疲れるわ…」

 

 

「おい、仁藤!大丈夫か!?」

 

 

 

 仁藤の所へウィザードが帰ってきた。

ウィザードは倒れている仁藤を見て驚く。

 

 

 

「あぁ、心配すんな…小雪ちゃんと颯太は帰したよ」

「お前はどうなんだ、メアリにここまで…?」

「いいや…クラムベリーってのにだ。颯太を一度倒したってだけはあるわ…」

「クラムベリーだと…?」

「なんとか勝ったけどな…でもこっちも腹がペコペコだよ…」

「分かった分かった…。ほれ」

 

 

 

 

 ウィザードは、コネクトの魔法でヘルヘイムの実とマヨネーズを取りだし、仁藤に与えた。

 

 

 

 

「おっ、サンキュー晴人…ほらキマイラ、食えよ…っていうか何でこれ持ってるんだ?」

「久しぶりの仲間に会ってな、そいつ神になっててヘルヘイムの実を自由に生産出来るようになったからいつでも持っていっていいってさ」

「へぇ…そりゃすげぇ…って神!?」

「うん、神。そりゃ驚くよな」

「晴人、お前神と友達なのか」

「まぁな、というか…仁藤、お前が颯太を助けたのっていつだ?」

「え?そういや、そろそろ一週間くらい経つな」

 

 

 

 

 

「!…じゃあ、そろそろ次の脱落者が…!」

 

 

 

 

 

 そう、明日は、ランキングの発表であった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森で作られているヘルヘイムの実。少し前に地球に戻った際に仲間にヘルヘイムの実を作っておいてくれ、と頼まれて数個作っている。

本当に使うのか?なんてことを考えていると丁度、魔方陣が現れてヘルヘイムの実を5つ持っていった。

一瞬だけ出てきた手がこちらに手を振っていたが、すぐに魔方陣と消えていった。

 

 

 

「大食いだなぁ…ビーストって言ったっけ?ウィザードも大変だな…にしても魔法ってすごいな…あ、舞!ヘルヘイムの実、追加で10個頼む!」

「え…」




気づけば大晦日ですね。皆さん今年もお疲れ様でした。
最後のあの人はただのサプライズ登場ではないので今後にご期待下さい。


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第24話 どうせ消すなら

遅くなりましたが、皆様、明けましておめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。

さて、僕のやってるソシャゲで福袋ガチャ等で早速貯めたお金が吹き飛びそうな年始でございます。

僕は、大晦日はガキの使いを見て年を越しましたが、皆様は如何お過ごしだったでしょうか。

そんな今回は脱落者の発表です。
今まで散々放っておいた彼女に、アイツが…!
そして、意外な奴の今作品初変身がありますよ。


 仮面ライダービーストとの戦いから数時間が経過しただろうか。

クラムベリーに、カラミティ・メアリから連絡が入ったのだ。

メアリの性格上、お礼を言いに来ることなどあり得ない。恐らく別の目的があるのだろう。

 

 

『行くのかぽん?罠かもしれないぽん』

 

 

 

 ファヴがそんなことを聞いてくる。

確かにその可能性も捨てきれないのだ。

メアリはかなり凶暴であり、その話は魔法少女達にも深く広まっている。自分が言える事ではないが。

だが、クラムベリーの結論は決まっている。

 

 

 

「当たり前じゃないですか。こういうのは断りません」

 

 

 

 そう。いざとなればこちらが逆にメアリを殺してしまえば良いのだ。

実はクラムベリー自身も、そうなることを少し望んでいたのだ。

 

 

 

「最悪、倒して魔力を頂くことも出来ますしね」

 

 

 

 そう答えたクラムベリーもといファントム・オーガに、ファヴは高らかに笑う。

 

 

 

『全く、前のマスターと姿は同じなのに、中身は彼女以上に末恐ろしい奴だぽん』

「そうですか。ですがこれは私の目的の為でもあるのです」

『でも、そういうところは嫌いじゃないぽん』

「お褒めいただき、光栄です」

『じゃあカラミティ・メアリに伝えておくぽん』

「宜しくお願いしますね。ファヴ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しして、カラミティ・メアリの待つ場所へクラムベリーがやって来た。

しかし、クラムベリーは少し落胆していた。

それは、メアリに敵意が無いのを感じ取ったからだ。

 

 

 

 

「こんな時間に、何の用ですか?」

「マジカロイド44のいる場所を教えてほしい」

 

「…は?」

 

 

 メアリの質問には、疑問しかなかった。

何故自分になんだろうか、と。

 

 

 

「そんなの私は知りません。ファヴにでも聞けば良いのでは?」

「…そう言うと思ったよ。まぁ、あんたに聞く気は元々無いけどね。出てこいよ、ファヴ」

 

 

 

 クラムベリーには、最早メアリの目的は分からなかった。何故自分を呼んだのか。

しかし、それは直ぐに分かることになる。

 

 

 

『何だぽん。マジカロイドの場所は言えないぽん。プライバシーぽん』

「へぇ、じゃあ仕方ないねぇ…」

「というか、あなたの目的は何ですか。用が無いなら私はこれで…」

 

 

 

 クラムベリーが帰ろうとするも、その考えはメアリの次の一言で消え去った。

 

 

「ファントム・オーガはあんただろ。クラムベリーさんよ」

 

「『えっ…?』」

 

 

 

 クラムベリーとファヴは同時に声を発した。想定外である。

 

 

 

「何故そんなことが…?第一私は魔法少女ですよ…?」

「いやぁ…実はさっき、ビーストと戦いを終えた後、あんたがファントムに変わるのを見ちゃったんだよねぇ」

「なっ、あなたは帰ったのではなかったのですか?」

 

 

 

 衝撃的な一言に、クラムベリーはどうにかしてこの事態を打開すべく、頭を巡らせている。

 

 

 

「確かにここからは離れたけど、このビル街の外れ、路地裏であんたを見たんだよ」

「なっ…」

 

 

 

 クラムベリーはついに言い返せなくなってしまう。

それは、自身が変身を解いた場所が、メアリの言う場所と合致しているからだ。

 

 

 

『で、でも見間違いの可能性もあるぽん。パッと見で決め付けるのは良くないぽん』

 

 

 

 ファヴも言い訳を必死に考えている。

しかし、それが決め手になってしまった。

 

 

 

「あのさ、ファヴ。何であんたがクラムベリーを庇うわけ?しかも必死になって」

『あっ』

 

 

 

 ファヴが黙りこむ。やってしまった。

 

 

 

「ハァ…これで決まりだね。あんたらグルだって事も」

 

 

 

 一番弱みを握られたくない人物に知られてしまった。しかも一番知られたくないことを。

 

 

 

「あたしを脳筋だと見くびってたんだろうねぇ、残念だったね」

「目的は何ですか…?」

「目的?だから言ってるじゃない。マジカロイドの場所を教えろって」

『本当に、それだけでいいぽん?』

「あぁ、あんたらが教えてくれればそれ以上何もあたしは望まないよ」

「但し、あんたらがあたしを消そうとするなら、今回の事をマジカルフォンを通じて魔法少女達に拡散する。あたし一人が消えた所でもう手遅れって訳だ」

「分かりました…ファヴ、お願いします」

『了解ぽん。マジカルフォンの位置データから…あ、見つけたぽん』

「どこにいるんだい?」

『名深市から離れた、聖都大学附属病院ってところの病室ぽん。多分入院中だぽん』

「そりゃあどうも。じゃあ失礼するよ」

 

 

 

 情報を教えると、メアリは直ぐに何処かへ行ってしまった。恐らくは病院に向かったのだろう。

 

 

 

『メアリをどうするぽん?面倒なことになったぽん』

 

 

 

 ふとファヴがそんな事を聞いてくる。ファヴ自身もこの事態に驚きを隠せない。

 

 

 

「確かに彼女を放ってはおけません。ですが、もう少しだけ、泳がせても良いのでは?」

『しばらくは様子見ってことでいいぽん?』

「構いませんよ」

『後、一ついいぽん?』

「何でしょう?」

『今週の脱落者って現状メアリなんだぽん』

「そうなんですか。じゃあ、脱落しないために、行動不能なマジカロイドを選んだってわけですか」

『なかなかメアリも悪だぽん』

「悪と言うのか…卑怯と言うのか…」

『どっちでもいいぽん。面白けれはいいぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カラミティ・メアリ自身、今週はキャンディーを集めきれていない事を理解していた。

正直もう合法的な手段ではキャンディーを手に入れるのは時間が少なく、難しい。

こうなれば、以前のルーラ一行のように、キャンディーを奪うしかない。

だが、現状活動中の魔法少女達は警戒心が強いはず。

だったら活動していない魔法少女を狙うしかない。

先日重傷を追い、ウィザード達に救助されたマジカロイドはどうだろうか。

仮に動けたとしてもあの傷では万全ではあるまい。

しかし、マジカロイドの居場所等分かるわけもない。

その為、ファヴとクラムベリーの秘密を偶然知ったメアリはファヴに交渉し、マジカロイドの居場所を突き止めた。

ファヴとの交渉が終わった頃には、既に陽が昇ってきていたため、直ぐに行動するのは諦め、陽が暮れるまでは体を休め、夜に行動することにした。

聖都大学附属病院、少し離れてはいるが行くしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太陽は沈み、再び夜が訪れる。

カラミティ・メアリは聖都大学附属病院に来ていた。

時計の時刻は21時を回った。タイムリミットは近い。

夜の病院は人気は少なく、メアリもあっさりと忍び込めた。

マジカルフォンの発信があった場所は病院の3階であり、メアリは一つの個室に辿り着いた。

"305 安藤真琴"と立て札に書いてある。

恐らくはこの部屋の患者がマジカロイドの正体。

メアリは何の躊躇もなく部屋に入った。

部屋には少女が眠っていた。勿論メアリに気付く様子もなく、ぐっすりと眠っている。

ベッドの近くを隈無く捜索するメアリ。

すると、ベッドの近くに掛けられていたバッグから、マジカルフォンを発見した。

 

 

 

 

「さて、これかね…」

 

 

 

 マジカルフォンを取りだし、操作してメアリのマジカルフォンにキャンディーを1500奪い取った。

大した活動は聞いていなかったのだが、何故ここまで貯めてあったのか知らないが、取り敢えずこれでメアリの脱落は免れた。

 

 

 

「あんたには悪いが、生き残る為だ。許せ」

 

 

 

 キャンディーを得たメアリは、さっさと病室を出ていこうとするが…。

 

 

 

「待て」

 

 

 

 突如声をかけられ振り向くメアリ。

そこにはここの病院の医者と思われる若い男が立っていた。

 

 

 

「ここで何をしている」

「何だい?あたしは見舞いに来たんだよ」

「残念だがこの時間は緊急外来以外は院内には入れないはずだ。何者だ?」

「というか、あんたにあたしの姿が見えているのかい?」

「…どういう意味だ、お前の姿ははっきり見えているが?」

 

 

 

 魔法少女の存在は、一般の人間には認識阻害の力が生じ、はっきりと存在を確認するのは出来ないはずだ。ウィザードやビースト等の仮面ライダーと呼ばれる者は別かもしれないが。

 

 

 

「まぁいいさ。あんた只の医者じゃないね。いつからあたしに気付いてた」

「お前の存在に気付いたのはさっきだ。消灯時間なのに灯りが付いてるのが不審でな、来てみたらこの通りだ」

「結局はたまたまかよ…面倒くさいねぇ」

「お前、彼女に何をするつもりだったんだ」

「何でもいいだろ。引っ込んでな」

「職業柄、そういうわけにもいかない。医者は患者の命を救う仕事だ」

 

 

 

 この女は普通じゃない。患者が何をされているか分からない。

そう感じた医者、鏡飛彩は、電話で研修医である宝生永夢に連絡をした。

 

 

 

『飛彩さん、何かあったんですか?』

「研修医、お前は操真晴人に連絡を入れろ。お前の患者が危険だって伝えておけ」

『えっ!?わ、分かりました!何が起きているか分かりませんが、気を付けて!』

 

 

 

「チッ、余計な事をしてくれるねぇ…」

「お前が何者かは知らんが、このまま見過ごす訳にもいかない。止めさせてもらうぞ」

 

 

 

 そう言うと、飛彩はピンクと黄緑を基調とした派手なベルトを腰に巻き付け、一昔前のゲームソフトのような機械のスイッチを押した。

 

 

 

 

 タドルクエスト!

 

 

 

 機械から音が流れる。そして、飛彩はその機械をベルトの左側にあるスロットに突き刺した。

 

 

 

「変身」

 

 

 

 

 ガシャット!

 

 レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?

 

 アイムア、仮面ライダー!

 

 

 

 飛彩は自身の前に現れたパネルを突き破った。

すると、体が変化し、着ぐるみのような姿の戦士、仮面ライダーブレイブ・レベル1へ変身した。

 

 

 

「何だい、それ。どっかのお遊戯会か何か?」

「舐めるな。しかし、見たところお前はバグスターでは無さそうだな」

「バグスター?何の話だい」

「知らないのも当然か。まぁいい、お前が何なのか、教えてもらおうか」

「おっと、先にこっちの質問に答えるのが常識だろう?兄ちゃん」

 

 

 

 メアリはピストルを手に持ち、今すぐにでも撃たんばかりの体勢である。

 

 

 

「なっ、ここじゃ危険だ…」

 

 

 ブレイブはベルトの左端についたスロットのスイッチを押した。

 

 

 ステージ、セレクト!

 

 

 すると、メアリとブレイブが、病室内から森林へ転送された。

病室には、真琴だけが残されていた。

 

しかし、彼女のマジカルフォンに表示されているキャンディーの数は、0を示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、仮面ライダーウィザード・操真晴人と仮面ライダービースト・仁藤攻介は、スノーホワイト、ラ・ピュセル、ハードゴア・アリスと共に行動していた。

 

 

 

「なぁ、今日脱落しそうな魔法少女を知ってないか?」

「今日が発表らしいから、俺と晴人で助けにいきたいんだ」

「すいません、私達は知らないです…」

「この状況になってからは、他の魔法少女達とはあまり出会ってないからな。すまない」

「…私も知りません…」

「なぁ、アリス。君は何故スノーホワイトの隣にいた僕を押し退けているんだ?」

「…知りません」

「いや知ってるよね。ただスノーホワイトの隣行きたいだけだよね」

「スノーホワイトの隣に行くのはダメですか?」

「いや、構わないけど行くなら私に言えばいいじゃないか。無言でやらなくても…」

「…スノーホワイトとラ・ピュセルには固い絆があります。だから私は、その中に押し入りたいのです」

「何いってるのか分かんない!スノーホワイトと私には特に何も無いから!」

「え、ラ・ピュセル…私と何も無いって…酷い」

「スノーホワイトォォォォ!そういうことじゃないからぁぁ!」

「3人共、じゃれるのはそれくらいにしとけよ」

「とにかく、悪いな。くそぉ、晴人、どうするよ」

 

 

 

 スノーホワイト達は、勿論のこと何も知っておらず、ウィザード、ビーストは落胆した。

しかし、そんな時である。晴人の電話に、永夢から連絡が入ったのだ。

 

 

 

「永夢…?出てみるよ」

『もしもし晴人さん!緊急です!』

「お、おいどうしたんだ!?」

『晴人さんが連れてきた患者さん、安藤さんが危険な状況にあるかもしれません』

「何!?本当か!」

『今すぐに病院に来てください!』

「あ、あぁ分かった!」

 

 

「晴人、一体どうしたんだよ」

「マジカロイドが危ないそうだ」

「何だって!?」

「マジカロイドが!何で!」

「病院にいれば大丈夫なんじゃなかったんですか?」

「恐らく、想定外の事が起きたんだ。俺は病院へ急ぐ。みんなはどうする?」

「俺はスノーホワイト達に任せる。どーする?」

「私達も、付いていきます!良いよね、ラ・ピュセル、アリス」

「あぁ、私は大丈夫だ」

「…私も問題ありません」

「そっか。じゃあ全員で行こうや、晴人」

「そうだな。急ごう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく時間が経過し、時計の時刻は23時になろうとしている。

病院へ到着した晴人達を、永夢が迎えた。

 

 

 

「晴人さん!来てくださったんですね!」

「あぁ、マジカロイド…真琴の部屋に急ごう」

「はい…というか、あの、後ろの皆さんは…」

「俺の仲間だ。気にするな」

「そうだったんですか。すいません。では急ぎましょう」

 

 

 

 

 

 病室へ急ぐ晴人達。そんな時、スノーホワイト達のマジカルフォンからファヴの声が聞こえた。

 

 

 

『さてさて、ちょっと早いけど今週の脱落者の発表ぽん』

 

「なっ、こんな時に!」

「今回は、本当に誰なんだ?」

 

『さっさと発表ぽん。今週の脱落者は…』

 

 

 

『マジカロイド44だぽん。残念ぽん』

 

 

 

「え?」

 

 

 

 マジカロイドの脱落。これは晴人達には想定外だった。

マジカロイドこと真琴の入院後、スノーホワイト達のキャンディーを集め、1500ものキャンディーをマジカロイドに転送したのだった。

1500ものキャンディーがあれば大丈夫だろうと思っていたのだが…。

 

 

 

『今日の朝時点では1500個あったのに、まるで誰かにあげたかの様に、一気に0になってるぽん。お人好しが過ぎるぽん』

『というわけで、今週は以上ぽん。じゃあねぽん』

 

 

 

 

「おい…0個ってどういうことだよ…」

「どうかしたんですか?晴人さん」

「永夢。真琴が危ない。本当に死んじまう…」

「えっ!?」

 

 

 

 真琴の病室に着いた晴人達。

そこには、真琴の姿のみで、飛彩はいなかった。

 

 

 

「飛彩さん、まさか…」

「真琴に以上はまだ無さそうだ…でも一体誰が…」

「多分、飛彩さんが連絡をくれた時に、この部屋にもう一人誰かいたんです。それが安藤さんの命を…」

「そんな人が…!?」

「晴人、多分魔法少女の中の誰かだ…」

「そうだろうな。永夢、真琴は俺に任せてくれ」

「晴人さんだけで大丈夫ですか?」

「心配するな。俺には仲間がいるから。お前はここにいた奴を追ってくれるか?」

「…分かりました。気をつけて下さいね」

「あぁ、お前もな」

「じゃあ行くか、晴人」

「分かった。真琴、絶対助けるから…」

 

「あ、あの…私達は…?」

「スノーホワイト達は、永夢に付いていってくれ。お願い出来るか、永夢」

「え、えぇ…大丈夫です。じゃあ、早速行きましょう」

「あ、はい!」

 

 

 

 晴人と仁藤はベルトを起動させ、そして永夢は飛彩と同じ色のベルト、ゲーマドライバーを腰に巻き付けた。

永夢も飛彩の持つ機械と同じ形ではあるが、ピンク色の機械、ライダーガシャットのスイッチを押す。

 

 

 

 マイティアクションX!

 

 

 

「「「変身!」」」

 

 

 

 晴人、仁藤、永夢が同時に叫び、それぞれウィザード・フレイムスタイル、ビーストに変身する。

そして永夢も、ゲーマドライバーのスロットにガシャットを差し込む。

更に、ゲーマドライバーのレバーを動かした。

 

 

 

 ガシャット!

 

 レベルアップ!

 

 マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!

 

 

 永夢はパネルに触れると、体が変化し、一瞬レベル1に変身した後、直ぐにピンク色の姿の戦士、仮面ライダーエグゼイド・レベル2へ変身した。

 

 

「ウィザード、そっちは任せたぞ。さぁ、俺たちも行こうか!」

「はい!行こう、ラ・ピュセル、アリス!」

「あぁ、宜しく頼む、ピンクの仮面ライダー」

「あぁ!場所は俺が探す!こっちは心配すんな!」

「永夢、じゃあそっちは頼む!」

 

 

 

 ウィザードは真琴に指輪を装着させ、ウィザードライバーにかざした。

 

 

 

 エンゲージ、プリーズ!

 

 

「俺が最後の希望だ…!」

 

 

 ウィザードとビーストは、真琴のアンダーワールドに入っていった。

 

 

 ステージ、セレクト!

 

 

 そして、エグゼイド達は、でエリアチェンジで別の場所に転送されていった。

 

 

 

 

 

 それぞれの場所での、新たな戦いが始まる…。




というわけで、エグゼイドとブレイブ登場です。
メアリさんは有能なのか小物なのかよく分からない立場ですが、最初にクラムベリーの正体に気付きましたね。
気付き方は某監察医の人みたいですね(笑)
そしてマジカロイド44、唐突な脱落で申し訳ないです。
次回はマジカロイド救出編です。そしてエグゼイド、ブレイブは魔法少女達と初対面!?
(現在エグゼイドは魔法少女達をコスプレした人としか思ってません)
それでは今年も宜しくお願い致します。


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第25話 天才ゲーマーと天才外科医

先日、ローソンで仮面ライダーの一番くじを引いてきました。
ウィザードのグラス、そして龍騎、ディケイドのフィギュアが当たりました。
個人的に当たりで嬉しかったです。(強いて言うならカブトのフィギュアが欲しかった)

それはさておき今回はエグゼイド、ブレイブ登場です。
すいませんがマジカロイド救出は次回となります。申し訳ございません。
何やら今回はギャグ多めの予感です。ご注意を。


 ウィザード、ビーストがマジカロイド44もとい、安藤真琴のアンダーワールドへ入っていくのを見届けたエグゼイド、宝生永夢は、残された3人の少女とブレイブ、鏡飛彩の行方を追っていた。

ベルトの左側に装着されているスロットホルダーのスイッチを押すと、場所を移動出来る。

ブレイブもこれで移動したはずだ。

今何が起こっているのかエグゼイドは理解出来ていない部分も多いが、取り敢えずはブレイブに会わなければならない。

しかし、エグゼイドは一緒に行動する少女達が気になって仕方がなかった。

ピンクの髪をした少女や、葬式帰りかと言わんばかりの全身に黒い衣装を着ている少女。

剣を持っている少女に至っては、肌の露出が多く、尻尾も生えている。

ウィザードから聞いた話では、彼女達は名深市出身だとか。

名深市ではこれが普通なのだろうか?

 

 

 

「あの、ちょっと聞きたいんだけど…」

「はい、何でしょうか?」

 

 

 

 ピンクの髪の少女、スノーホワイトと呼ばれていた少女が振り向いてくれた。

早速本題を切り出してみる。

 

 

 

「もしかして、コスプレショーか何かの帰り?」

「いえ、違いますよ」

 

 

 

 スノーホワイトは笑顔で答えてくれた。

しかし違った。早速思っていた事が外れた。

この娘達は何者なんだろうか。

ウィザードからも大したことは聞いておらず、正体は本当に分からない。

だが、この娘達の見た目は、最近名深市で噂になっているという魔法少女とやらに似ている気がする。

魔法少女育成計画をやっていれば魔法少女になれる。とかいう変な噂の張本人達かもしれない。

 

 いやいや、そんなはずがない。第一あの噂こそ嘘に決まっている。

ソーシャルゲームの知識もあるエグゼイド、もとい永夢だが、どのゲームにしたって、ああいうプレイ中の抽選等に関しては、課金者が優遇されるはずだ。

課金をすればするほど、運営に気に入られてプレゼント等がよく当たるはずだ。

だが魔法少女育成計画はプレイ無料。

つまりゲーム内ランキングの上位者に魔法少女の権利が与えられるのではないか、と永夢は踏んでいた。

ゲームの事になるとつい熱中する永夢は、使える時間の全てを使って、ゲーム内ランキングで3回連続1位を獲ったのだ。

しかし、運営からの通告等何もなく、ただランキング報酬が配られただけだった。

 

 恐らくは、ただプレイ人口を増やしたい運営のガセネタであると感じた永夢は、ランキングに挑戦するのを諦め、普通にプレイしていたが、何やら最近緊急メンテナンスが多く、プレイ出来ない時が多くなってしまい、自然にプレイをやめていた。

 

 この娘達は魔法少女が大好きなのだろう。だからこういう格好をしているんだろう。

コスプレショーが無くたって好きなキャラの格好をするのも変ではない。

永夢は自然解決して、もう気にしないことにした。

 

 

 もう、考えるのは止めた!

 

少し前に自分達を助けてくれたあの人の言葉を借りてみる。

そう言えば、あの人にウィザードの事を相談出来ていない。

明日にでも一度行ってみようか。

 

 

 

「すまない…あなたに話したい事が」

「え?何?」

 

 

 

 今度は、騎士のような格好をした少女が話しかけてきた。

ラ・ピュセルと呼ばれていた気がする。

 

 

 

「さっきは、私達の事をコスプレショー帰りか?って聞いてきましたよね?」

「あ、あぁ…そうかなって思って。そんな格好してる人、あまり見ないから」

「つかぬことを聞きますが、もしかして私達を夜なのにコスプレしてる痛い人って思ってないですか?」

「えっ…いやそんなことはないよ。別に痛い人とは…」

 

 

 

 ヤバい、結構バレてた。

あの騎士の娘、察しが良すぎる…。

今度は、先ほどこっちが質問した少女、スノーホワイトが話しかけてきた。

 

 

 

「お医者さん。もしかして私達が魔法少女って気付いてなかったんですか?」

「えっ」

「スノーホワイト。何でそんなことが分かったんだ?」

「だって、お医者さんの心の声が、完全に私達を哀れんでるんだもん」

 

 

 

 えっ、魔法少女だったの…。

衝撃的な事実に、再びエグゼイドの頭は混乱した。

彼女達は、どうやら魔法少女だったようだ。

しかし、スノーホワイトやラ・ピュセルといった名前はランキング上位にはいなかった。

判断基準が余計に分からなくなってきた。

と、ここで今まで考えてもなかったが、まさに結論という答えが頭に浮かんだ。

 

 

 

 男じゃ、魔法少女になれないじゃないか。

 

 

 

 そうだ、今まで何を思っていたのだろう。

なれるわけないじゃないか。自分は男だ。あぁ、スッキリした。

 

 

 

 

「というか、あの人に魔法少女って言っても良かったのか?」

「大丈夫だよ、お医者さんも仮面ライダーだし」

「…なんなら、ラ・ピュセルが男ってことも明かしても大丈夫なんじゃないでしょうか…」

「おい!アリス!それはよせ!絶対にいけない!…って、もしかして聞いてました?」

 

「…何の事?俺は聞いてないよ」

 

「なら良かった…アリス、次からはこのような事をするのは止せ」

「…あなたがスノーホワイトを諦めてくれるなら…」

「だから君は私とスノーホワイトを何だと思ってるんだ!大丈夫!いくらでもあげるから!」

「あ、あげるって…そうちゃん…私のことを…ひどい…」

「いやぁぁ!そういうことじゃないんだな!アリスも何か言ってくれ!」

「…最低です」

「アリスゥゥゥゥ!君達実はグルだろ!私を陥れる為に何か仕組んでるだろ!」

 

 

 

 

 盛り上がっている三人を差し置いて、エグゼイドは一人再び悩んでいた。

咄嗟に聞いてないって嘘をついたが、バッチリ聞こえていた。

 

 

 真実が人の人生を狂わす事だってあるんだよ…!

 

 

 今日のこの瞬間ばかりは、この言葉にすがりたくなった。

実際にあの騎士の娘が男ならば、もはや性別は関係ない。

だったら判断基準は余計に分からない。

あのゲームを頑張りすぎたせいで、実際に研修中の小児科の医者に怒られたこともあった。

あの努力と恥は一体…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく経ち、森林ステージに移動したエグゼイド一行。

なんとそこには、ガンマンの女性と戦うブレイブの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この女、力が尋常じゃない。

レベル1で戦うブレイブは、相対する女の拳銃攻撃に、苦戦を強いられていた。

しかもあの拳銃、威力も恐ろしく、そう簡単には倒れそうにもない大きな樹木を、あっという間になぎ倒し、一面焼け野原が広がる。

 

 

 

「どうしたどうしたァ!威勢が良かった割にはそこまでだねぇ!」

「くそっ、レベル1では分が悪いか!」

「そんなお遊戯会みたいなので歯向かうからさ!消えな!」

「調子に乗るな!」

 

 

 

 銃弾をなんとか避け、女に蹴りを浴びせる。

後ろに飛ばされた女は、少し怯んでいるようだ。

今しかない。

ブレイブはゲーマドライバーのレバーを動かした。

 

 

 

「術式レベル2!」

 

 

 ガッチャーン!

 

 レベルアップ!

 

 タドルメグル!タドルメグル!タドルクエスト!

 

 

 

 

 ブレイブはレベル1から、青を基調にした戦士、仮面ライダーブレイブ・レベル2へと変身した。

 

 

 

「へぇ、それが本気ってかい」

「こんなところで倒れるわけにはいかないからな!」

 

 

 

 ブレイブは自身の武器であるガシャコンソードを持って女に攻撃を仕掛ける。

女は次々と銃弾を発砲してくるが、ガシャコンソードを持つブレイブの逆襲が始まる。

ガシャコンソードを氷モードへ変化させ、銃弾を凍らせた。

 

 

 

「おぉおぉ…やるじゃないの…余計にイライラしてきたねぇ…」

「お前…本当に何者なんだ…」

「私に勝ったら教えてやるよ!」

「くっ…ならば…そろそろ終わらせたい所だ!」

 

 

 

 ブレイブはガシャットをゲーマドライバーから取りだし、ガシャコンソードに装着した。

ガシャコンソードが炎と氷を纏い、必殺技が発動する。

 

 

 

 キメワザ!

 

 タドル!クリティカルフィニッシュ!

 

 

 

「ハァァァァァ!」

「なっ…!」

 

 

 

 ブレイブの周りに、氷の道が作られ、女を拘束する。

ブレイブは氷の道に駆け込み、一気に剣の一撃が、女の完全に炸裂した。

 

 

 

「やったか…」

「…残念だったねェ!消えなァ!」

「何ッ!?」

 

 

 

 ブレイブの一撃を受けた女ではあったが、直撃は避けていた。

女は一瞬油断したブレイブに向かって、強力な銃弾を放った。

しかし、その銃弾は弾き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 マイティ!クリティカルフィニッシュ!

 

 

 

 

 

「ハァッ!」

 

 

 

 銃弾を弾き返したのは、エグゼイドだった。

エグゼイドの持つ武器、ガシャコンブレイカーで銃弾を弾き返したのだった。

 

 

 

「お前…研修医!」

「ブレイブ!大丈夫か!」

「俺は問題無い。というかお前の後ろの奴らは仮装大会にでも行ってたのか!?」

 

 

 

 ブレイブはエグゼイドの背後にいるスノーホワイト達に気付くと、驚きの声をあげた。

 

 

 

「何故一般人を連れてきた!?」

「一般人じゃない!魔法少女だ!」

「魔法少女…?お前、ついに頭までおかしくなったのか!?」

「いいや、そいつの言うことは本当だよ」

「どういう意味だ!」

 

 

 

 ブレイブは状況が理解出来ないようだ。

すると、先ほどまでブレイブと戦っていた女が口を開いた。

 

 

 

「どういう意味もないさ、私も魔法少女だからね。そいつらと一緒だよ」

「カラミティ・メアリ…!」

「ラ・ピュセル、待って!」

「あいつがマジカロイドをやったんだろ!許せるか!」

「…スノーホワイトを苦しめる奴…」

「お前ら、知り合いか…?」

「そうですけど、メアリは私達の敵です…」

「はっきり言ってくれるじゃない…。私は悲しいよ…」

「今更何を!」

「止せ。激情しても何も変わらない」

「フッ、5対1じゃ敵わないなぁ…あたしは帰らせてもらうよ…」

「おい、待て!結局お前はあの患者に何をしたんだ!」

「キャンディーを奪っただけさ、でも、どうせあの魔法使いがどうにかするんだろ?」

「魔法使い…晴人さんのことか!」

「そうさ…しっかしつまんないねぇ…もっと刺激が欲しいもんだ…じゃあな、お医者さん方」

 

 

 

 

 メアリはそう言うと、遠くへ飛び去っていった。

一方エグゼイド達は、病院へ戻り、変身を解除した。

 

 

「しかし、魔法少女等と言う存在が実在しているとは…」

「飛彩さんにはケガも無くて安心しました。でも珍しいですよね」

「何がだ」

「その…一人の患者に対して飛彩さんから助けようとするなんて」

「結局はあいつ…ウィザード頼りなんだろ?…それに…」

「自分が救える命を救うのは、医者としての義務だからな」

「じゃあ、俺は失礼する。お前らも早く帰って休め。人間、無理は良くない」

 

 

 そう言うと、飛彩は病室を出ていった。

 

 

 

「あの人…かっこ良かったよね…ラ・ピュセル、アリス…」

「ま、まぁまぁだね」

「…嫉妬でしょうか?」

「余計な事を言うなァァァ!」

「ハハハッ、君達って仲が良いんだね」

「それは無いです!」

「…ひどい…です…そうちゃんさん…」

「うわぁ…そうちゃんひどい…」

「二人とも僕をいじめて楽しいかあああああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~次の日~

 

 

 

 

 永夢は警視庁に来ていた。

来客用の椅子に座っていてくれと言われた永夢は、やがて資料を持ってこちらに来る一人の男を見ると、立ち上がって挨拶をした。

その男は、永夢を見ると申し訳なさそうな顔をしたが、やがてネクタイを締め直し、椅子に座った。

 

 

 

 

「すまないな、来てくれたっていうのに待たせてしまって」

「いいえ、良いんです。こちらこそ、お忙しいのにすいません」

「話はある程度こちらでも調査してあった問題だ。お前が協力してくれて嬉しいよ」

「いえいえ、先日こちらであったことや、晴人さんの事を話しておきたいと思って」

「分かった。今日は頼むよ、永夢」

「はい、こちらこそ。泊巡査部長」




はい、エグゼイドの戦闘が少なくてすいません。
ですが、後でたっぷりご用意するので許してくだせえ
そして、最後でいよいよあの男が参戦です。
どこまで絡んでくるか、お楽しみに。
そして永夢の魔法少女育成計画ランカー化は感想でのご意見を参考にしました。ありがとうございました。


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第26話 全龍融合

今回はウィザードサイドのお話です。
マジカロイド、一体どうなる!?
そしてタイトル通り、ウィザードのあのフォームが初登場。

※何度でも言いますが、今作は魔法少女育成計画本編とは、設定を改変してあります。ご了承下さい。



 仮面ライダーウィザード、操真晴人と仮面ライダービースト、仁藤攻介は、魔法少女マジカロイド44・安藤真琴を救うべく、彼女のアンダーワールドへ入っていた。

河川敷に降り立ったウィザードとビースト。

ここが真琴のアンダーワールドであろう。

そして、救出までのタイムリミットは日付の変わる12時まで。

一秒でも過ぎれば、彼女の命は失われるだろう。

恐らく真琴も、今までの二人の魔法少女と同じ状態になっているだろう。

 

 脱落となった魔法少女は、体内の魔力を完全に吸いとられてしまうのだ。

しかも、魔力だけでなく、命すらも…。

だが、こうやってアンダーワールドに入り、魔法少女の魔力の塊である怪物を倒してきた。

ウィザードはふと思った。

この魔法少女達を救う戦いは、ファントムを撃破し、ゲートを救ってきたこれまでの戦いと似ているのではないのか。

アンダーワールドで戦う怪物も、ファントムに酷似している。

 

 ただ魔力を吸収しているだけではないはずだ。

自分も、魔法少女達も知らない別の目的が、ファヴにはあるのではないか。

早くファヴの目的を突き止めなければ。でなければ魔法少女達は次々に消えていく。

 

 

 

「おい、晴人!来たぞ!行くぞ」

「あ、あぁ。とっとと片づけよう。真琴を死なせるわけにもいかない」

 

 

 

 今は考え事をしている場合ではない。

先のことを考えるより、先ずは今の命を救わなければ。

ウィザードとビーストは、アンダーワールドの空に現れた巨大な二匹の龍との戦いに備える。

 

 恐らくはあの龍が真琴の魔力の結晶、ウィザードのドラゴンと同じ存在だろう。

脱落した魔法少女は、体内の魔力を全て吸いとられる。魔法少女になると、体の構造そのものが今までと書き換えられてしまうとファヴが言っていた。

魔法少女となった人間は、魔力を吸いとられると生命の危機に陥るらしい。

ならば、魔力を体から消し、吸いとられないようにするしかない。

以前のゲートだった人間と同じやり方で。

実際にそれは成功した。ねむりんとルーラは、それによって命を救われたのだ。

だったら今回も同じやり方で救ってみせる。

それがウィザードの、希望の魔法使いの役割だ。

 

 

 

「二匹居やがるぜ…気を付けろよ、晴人」

「片方は、お前に任せてもいいか…?」

「当たり前だろ。お前ばっかに食わせるかってんだ」

「だったら良いさ。気を付けろよ!」

「お前も無茶すんなよ!最悪二匹共食ってやるからよ!」

 

 

 

 

 ウィザードとビーストは、それぞれの龍に向かって行く。

出来るだけ早く決着をつけなければいけない。

 

 

 

 

 フレイム…ドラゴン!

 

 

 

 

 ウィザードはフレイムドラゴンに変化し、龍に立ち向かっていく。

龍は口から炎をウィザードに向けて放つ。

ウィザードは炎を避け、龍に飛び移った。

ウィザーソードガンで龍の背部を切り裂いていく。

攻撃を受けている龍はたまらず咆哮し、体を大きく動かしてウィザードを振り落とそうとしている。

ウィザードは必死に耐えていたが、龍の動きに耐えきれず、振り落とされてしまった。

 

 

 

 

「とんでもない暴れん坊だな…でも、まだやられるわけにはいかないぜ」

 

 

 

 

 ウィザードは、指輪を付け替えてウィザードライバーにかざした。

 

 

 

 ハリケーン!ドラゴン…!

 

 

 チョーイイネ!スペシャル!サイコー!

 

 

 

 ハリケーンドラゴンスタイルに変化したウィザードは、スペシャルの魔法で翼を使って龍に向かって飛んでいく。

 

 

 

「無駄にすばしっこい奴だ…これでもくらえ!」

 

 

 

 バインド、プリーズ!

 

 

 

 バインドの魔法で龍を拘束するウィザード。

動けなくなった龍に、すかさずウィザードは追撃を与える。

 

 

 

 チョーイイネ!サンダー!サイコー!

 

 

 

 龍の真上に巨大な魔方陣を生成させ、魔方陣から強力な電撃を浴びせる。

攻撃を直に受けた龍は地面に倒れこんだ。

だが、まだまだ龍に決定的な一撃は与えられておらず、今にもまた動き出しそうである。

 

 

 

「なかなかタフだな、じゃあもう少し魔法をお見舞いしてやるよ」

 

 

 

 ウォーター!ドラゴン…!

 

 

 チョーイイネ!ブリザード!サイコー!

 

 

 今度はウォータードラゴンスタイルへ変化したウィザード。ブリザードの魔法で龍を凍らせて、再び動きを封じる。

そして、ウィザーソードガンで必殺を放った。

 

 

 

 スラッシュストライク!ザバザババシャーン!

 

 

 

「受けてみろ!はぁぁぁぁ!」

 

 

 

 放たれた一撃が、龍に直撃した。

だが、まだ龍は倒しきれていない。

今度は起き上がった龍が放った炎の弾を受けてしまい、ウィザードは吹き飛ばされる。

 

 

 

「ぐわっ!こいつ、なんて力だ…」

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!」

「仁藤!大丈夫か?」

 

 

 

 もう一体の龍と戦っていたビーストも、こちらに吹き飛ばされてきた。

もう一体も、かなりの強敵のようだ。

 

 

 

「こいつら、攻撃が効いてんのか分かんねえな」

「そうだな…時間が無い時に限って…」

「こうなりゃごり押しで行こうぜ!」

「ごり押しか?」

「ほら、お前分身出来るだろ?あれだよ」

「あぁ…あれね。分かった」

 

 

 

 フレイム!ドラゴン…!

 

 コネクト、プリーズ!

 

 

 

 ウィザードはフレイムドラゴンスタイルに変化した後、魔方陣に左手を突っ込み、腕にドラゴタイマーを装着した。

ドラゴタイマーのダイヤルを回し、ダイヤルの針が青、緑、黄色を指した時にハンドルを押す。

 

 

 

 ウォータードラゴン!

 

 ハリケーンドラゴン!

 

 ランドドラゴン!

 

 

 

 すると、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴンの3人のウィザードが現れた。

ウィザードが4人に分身したのである。

 

 

 

「さて、ここから本気だすか!」

「よっしゃ、二体まとめてやっちまおうぜ!」

 

 

 

 4人のウィザード、そしてビーストが並び、再び龍を倒すべく立ち向かう。

 

 

 

「「「「さぁ、ショータイムだ!」」」」

「さぁて、ランチタイムだ!」

 

 

 

 二体の龍の吐く炎の弾をそれぞれの武器で弾き、ウィザード達は龍目掛けて攻撃を始める。

まずは、ランドドラゴンが龍の動きを止める。

 

 

 

 チョーイイネ!グラビティ!サイコー!

 

 

 

「手始めにこれだ!」

 

 

 

 グラビティの魔法で、二体に重力を掛けて飛べないようにしたランドドラゴン。

続いてウォータードラゴンが魔法を放った。

 

 

 

 チョーイイネ!ブリザード!サイコー!

 

 

 

 ウォータードラゴンが、前と同じように、ブリザードの魔法で二体の龍を完全に凍らせる。

これで龍は、飛べないどころか完全に動けない。

ウィザード達はウィザーソードガン、ビーストはダイスサーベルで総攻撃を仕掛けた。

 

 

 

「足止めは終わったぞ!後は一気に片付けるぞ!」

「「「ああ!行くぞ仁藤!」」」

「任せろ晴人!って、俺以外はみんな晴人だったな。ややこしいわ!」

 

 

 

 バッファ!ゴー!

 

 

 

 バッファマントに変化したビーストと、4人のウィザードは一気に必殺を放つ。

 

 

 

 スラッシュストライク!ボー!ボー!ボー!

 

 スラッシュストライク!ザバザババシャーン!

 

 スラッシュストライク!ビュウ!ビュウ!ビュウ!

 

 スラッシュストライク!ダン!デン!ドン!

 

 シックス!バッファ!セイバーストライク!

 

 

 

 

「「「「くらえ!ハアッ!」」」」

「どりゃああああ!」

 

 

 

 

 ウィザード達のスラッシュストライク、ビーストのセイバーストライクが二体の龍に炸裂した。

動けない状態の龍に直撃し、かなりの大ダメージを与えた。

 

 

 

「…やったか?」

「いいや…あいつらまだ完全に死んでない…!」

「おいおいマジかよ…どうすんだよ晴人」

「くそ…こうなったらもう一つの手だ」

「もう一つの手…?あっ!今度は合体か!」

「その通り。フィナーレはまだ先だ!」

 

 

 

 今度は、フレイムドラゴンが、ウィザードライバーの変身モードで、ドラゴタイマーをかざした。

 

 

 

 オールドラゴン…!プリーズ!

 

 

 

 すると、4人のウィザードが大きな魔方陣に集まり、一つに融合した。

フレイムドラゴンをベースとした体に、ウォータードラゴンの尻尾、オールドラゴテイル、ハリケーンドラゴンの翼、オールドラゴウィング、ランドドラゴンの大きな手、オールドラゴヘルクロー、胸部にはウィザードラゴンの頭、オールドラゴスカルが装着された。

合体した、というよりもドラゴンを纏ったかのような姿。

それこそが、ウィザードの最強形態の一つ、オールドラゴンである。

 

 行動出来るようになった二体の龍は、ビーストとウィザード目掛けて襲いかかる。

しかし、オールドラゴンが二体を尻尾で弾き飛ばす。

動けてはいるものの、かなりの攻撃で龍は限界を迎えている。

やるしかない。今がチャンスだ。

 

 オールドラゴンはオールドラゴヘルクローで龍を切り裂き、蹴り飛ばす。

ビーストも協力し、一撃一撃が龍に刻まれていく。

ついに瀕死となった二体の龍。

ここでウィザード達は一気に必殺を放つ。

 

 

 

「仁藤!決めるぞ!」

「おう!同時必殺だ!」

 

 

 

 ウィザードは、龍を上空へ蹴飛ばした。更に、自分も空を飛んで追いかける。

ウィザードの足下から、4つのスタイルの色の魔方陣が現れ、ウィザードラゴンの幻影が飛び出す。

 

 

 

 キックストライク!

 

 

 

 ビーストも、変身指輪を再度ドライバーのスロットへ装着。

必殺技を発動した。

ウィザードは、龍よりも高い上空から地上に向かって必殺のキック、ストライクエンドを、

ビーストは地上から上空へ向かって必殺のキック、ストライクビーストを放った。

 

 

 

「フィナーレだ!だぁぁぁぁぁ!」

「メインディッシュだ!どりゃあああ!」

 

 

 

 二人のキックが、二体の龍を貫くように炸裂した。

強力な一撃で、さすがの龍も断末魔をあげて爆散し、撃破することができた。

 

 

 

「ふぃー…」

 

 

 

 倒した龍の魔力が、ビーストドライバーに吸い込まれる。

 

 

 

「ごっつぁん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真琴のアンダーワールドから脱出し、病室へと戻ったウィザードとビースト。

そこには、スノーホワイト、ラ・ピュセル、ハードゴア・アリス、そして永夢がいた。

 

 

 

 

「終わったんですね、晴人さん」

「あぁ、真琴も直に目を覚ますと思う」

「いやぁ~疲れた疲れた。ま、助かって万々歳だな」

「でも、晴兄聞いて、キャンディーを奪ったのはメアリだったよ…」

「…それに、また逃げられました」

「そっか…あいつが…」

「お、おい晴人、真琴ちゃん?が起きるぞ」

 

 

 そう、真琴が目を覚ましたのだ。

そして、突然の状況に驚いているようだ。

 

 

 

「あ…あれ?私…そういえば撃たれたんでしたっけ?」

「あぁ…しかもお前はもうキャンディーを奪われて脱落した。もう魔法少女じゃない」

「えっ…あらら…まぁ、元々運悪く選ばれただけだから、別にいいんですけどね」

 

 

 

 意外な返答に驚いたが、変身解除した晴人は気を取り直して話す。

 

 

 

「とにかく、お前が助かって良かった。死ななくて良かった」

「こちらもお礼が必要ですね。ウィザード。助けてくれてありがとうです」

「気にすんな。というか、お前って若かったんだな。もっと人生の先輩かと思った」

「それは私がおばさんみたいということでしょうかねぇ…」

「い、いやいや、違うよ。若いのに世界を広く見てるなぁと思ってさ」

「そんなもんでしょう。人生は色々経験が大事ですしね」

「それと、スノーホワイト達とお医者さんも、お見舞いすいませんね」

「いいよ、生き残れて良かったね、マジカロイド!」

「あぁ、私からもおめでとうと言っておくよ。色々世話になったからな」

「…無駄な死者が出なくて良かったです…」

「助かって良かったね。僕からもお祝いするよ」

「アハハどうもです。…じゃあ、明日からは私はまた普通の生活に…」

 

「それはダメだ」

 

 

 

 突然の乱入に驚く一同。

正体は病室に戻ってきた飛彩だった。

 

 

 

「飛彩さん。戻ってきたんですか?」

「まだお前達がいるようだから見に来たら、丁度良かった」

「というかお医者さん…まだダメって…」

「安藤さん、あなたはまだ足の傷が完治していない。一週間ぐらいは入院生活だな」

「あら~…そうですか」

「そういうことだ。…研修医、そしてウィザード、ビースト。この患者は後は俺に任せてくれ。ここからは医者の仕事だ」

「分かった。頼む」

「それじゃあ、私達は帰ろうか」

「そうだね。私がお見送りするよ。私は君の騎士だ。何かあったら守る為にな」

「そうちゃん…///ありがとう!」

「あぁ。君の事は守り抜くよ」

「アリスも一緒に帰ろっ!じゃあ晴人さん達、おやすみなさい!」

「おう、おやすみ」

「…ラ・ピュセル…いいライバルになりそうです…」

「だから何のライバル!?」

 

 

 

 スノーホワイト達3人は、なんだかんだで家に帰っていった。

真琴は飛彩に任せ、永夢と晴人は院内の廊下で話をしていた。

 

 

 

「晴人さん。僕、明日にでも泊さんにこの事を話そうと思うんです」

「泊…ドライブか。でもあいつも忙しいだろ」

「もしかすると、何か知ってるかもしれませんし…」

「まぁ、そうだな。じゃあ、そっちは任せるよ」

「はい。晴人さんは…?」

「俺もこの一件の事を調べていくよ。後、最悪の場合はあいつを呼んでくる」

「あいつって…あぁ、あの人ですか。そんな簡単に来てくれるんですか?」

「故郷がヤバいことになりそうなんだ。流石に無視ってことはないだろ」

「そうですか、分かりました。こっちでも、出来るだけ協力できる人を探します。泊さんと、もう一人は目星ついてます。まぁ休日しか呼べないと思いますけど、この一件はどうも気になりますから…」

「休日しか?学生か何かか?」

「ええ、高校生ですから、しかも他の人より勉強が遅れてますから」

「…あいつのことか、学生だったんだな」

「はい。何かあれば連絡しますね」

「分かった。じゃあ、お互い頑張ろうな」

「はい!」




というわけでマジカロイド救出完了です。
今作初登場のオールドラゴンも強くしてみました。
今回のラストから、前回のラストの泊と接触に繋がります。
ラ・ピュセルのいろいろ世話になった発言の意図は、魔法少女育成計画episodesや、16人の日常をお読み下さい(ダイマ)
あんまり素の真琴は知らないので、敬語調にしてみました。異論は受け付けます。


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第27話 それぞれの場所で

今回は一旦箸休め回です。戦闘はありません。
ラ・ピュセルの災難、巡査部長と研修医の捜査記録等、番外編に近いです。

そういえば、何やらTwitterで春の映画の撮影バレが相次いでますね。
アマゾンオメガにアルファ、斬月・真と電王ガンフォームと、何やらオールスター映画感半端ないですね。楽しみです。


 マジカロイド44を救うための戦いから一夜明け、今日から再びキャンディー集めが始まるのだ。

今夜も集まったスノーホワイト、ラ・ピュセル、ハードゴア・アリス。

集合場所は、いつの間にやらラ・ピュセルこと岸辺颯太の自宅前になっていた。

 

 

 

「そうちゃん、アリス、今日も宜しくね」

「あぁ、すっかり僕の家が定着しちゃったな…」

「…では行きましょうか。スノーホワイト、ラ・ピュセル…いや、小雪さんとそうちゃんさん」

「何で僕だけそれで呼ばれるのかな?」

「親密度が深まるかと思いまして…」

「散々弄っておいて親密度もクソも無いよ」

「そうちゃんダメでしょ、そんな汚い言葉遣い。アリス…亜子ちゃんが泣いちゃうよ」

「ねぇ、小雪は僕のお母さんにでもなったつもりなの?」

「ふっふっふっ…そうちゃんと亜子ちゃんは、このスノーホワイトママに甘えていいんだよぉ~」

「分かった、分かったから僕モフモフするのはやめて、色々危ないから…」

「(実は結構嬉しいなんて言えない、小雪可愛いよ小雪)」

「…私も、モフモフしてください…」

「ん~?そうちゃんが何か言った気がするけどまぁいっか、亜子ちゃんモフモフ~」

「…暖かい…です…」

「(完全にスノーホワイトの能力を忘れてた、ナイスアリス!)」

「しかし、アリスも正体明かしてからは大分積極的になったよなぁ…」

「そうだね。…でも、まさかあんな事になるとはね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは数日前の事だった。

いつものようにキャンディー集めを終わらせて、解散になったのだが、いつもラ・ピュセルとスノーホワイトが一緒に帰るのがふと気になったアリスは、少し後を追ってみることにしたのだ。

ただのパートナーにしては、仲が良すぎる。

もしや、そういう関係なのか…。

ちょっとした好奇心であった。

 

 ずっと追っていくと、一つの家の前に辿り着いた。

すると、スノーホワイト達もそこで止まった。

ここがスノーホワイトの家なのだろうか。

 

 

 

「今日もお疲れ様。じゃあ私は家に帰るよ」

「…う、うん…」

「どうしたんだ、スノーホワイト。体調でも悪いのか?」

「そうじゃないの…その、えっと…」

 

 

 

 何やらスノーホワイトが顔を紅潮させてもじもじしている。

そして、その仕草を見てか、ラ・ピュセルも少しばかり顔が赤い。

 

 

 やっぱそういう関係か。

 

 

 アリスは自身の思っている以上に二人の関係性が深いのではないかと感じていた。

以前、アリスになる前にスノーホワイトに助けてもらったことがある。

家の鍵を一生懸命探してくれた。

そんな姿に憧れて魔法少女になった。

憧れの存在と一緒に活動したい。しかし、そんな程度では割り込めない関係かもしれない。

 

 

 

「本当に大丈夫か…顔が赤いぞ…?」

「その…そうちゃん…。今日は、お母さんもお父さんもお仕事で居ないんだ…」

「だ、だからさ、その…無理かもしれないけど、そうちゃんの家に行っていいかな…」

 

「一人は、さみしいから…」

 

「えっ…き、奇遇だね。実は、こっちも両親が旅行に行ってて居ないんだよね…」

「だから…良いよ。来なよ、僕の家。こっちも寂しいし」

「そうなの…!?そうちゃん、ありがとう!」

「う…うん。じゃあ準備したら行こうか。僕も手伝うからさ」

「分かった!行こっ、そうちゃん!」

「ちょ、早いよ小雪!」

 

 

 

 二人は、そのまま家に入っていった。

話も少し聞いてしまった。

どうやら家にお泊まりするらしい。

それと、ラ・ピュセルが「そうちゃん」と呼ばれていたこと、スノーホワイトが「小雪」と呼ばれていたことも気になった。

家で女子会でもするのだろうか。やっぱりスノーホワイトは自分とは違う。

俗に言うリア充なのだろう。

自分とは程遠いなと感じていたアリス。

すると、家から二人の男女が出てきた。

 

 あれが二人の変身を解いた姿なのか。

いやおかしい。何故男がいる。

しかし、男女の見た目はスノーホワイト達と変わらない。

もしや、あの二人のどちらかが男だったのだろうか。

ならば「僕」と名乗っていたラ・ピュセルか。

それなら「小雪」と呼ばれていたスノーホワイトより説得力が有るし、「そうちゃん」という名前からも、「ソウタ」「ソウゴ」「ソウマ」等、男の名前でも通用する。

 

 まさか、女子会どころかカップルだった。

そう思った時、少し体勢を崩してしまい、隠れていた電柱にぶつかって倒れてしまった。

 

 

「えっ、アリス!?大丈夫?」

「なななな、君が何でここに?」

 

 

 気付かれてしまった。やってしまった。

 

 

「そ、その…お二人がいつも一緒に帰るものだから…少し気になりまして…」

「一応聞いておくけど、今までの話、全部聞いちゃった?」

「はい。まさかお二人がお付き合いしてらっしゃるとは…そしてラ・ピュセルが男だとは…」

 

 

 そう言うと、急に二人の顔は真っ赤になって、同時にこう叫んだ。

 

 

「「つ、付き合ってなんかないから!!!」」

 

 

 夜の住宅街に、二人の叫び声が重なって響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、あの時はいろいろ酷かった」

「でも、亜子ちゃんがあの後正体を自らバラすなんて思わなかったよ」

「私だけが、秘密を知るのも不公平ですから…共有しようと思いまして…」

「まぁ、これでアリスが完全に敵じゃないって確証が出来たし」 

「そうだね、でもまさか、あの時の鍵を探してた女の子がアリスだなんて思わなかったよ」

「あの節はお世話になりました…。本当にありがとうございました」

「所で…私は帰った後のことを知らないのですが…やっぱりお二人に進展があったんですか?」

「し、進展?」

「何の事かな?」

「いや、男女が同じ屋根の下で眠るとなると、何かと進展があるというのをテレビで見たことあったので、お二人もそうなのかと思いまして…」

 

 

 

 アリスの言葉で、二人はまたしても目を逸らし、顔を紅潮させた。

 

 

 

「べ、別に何も無かったよ…ね、そうちゃん」

「う、うん、そうだね。僕たちは健全だからね…」

「そうだったんですか…てっきり保健体育で習った事ぐらいはする仲かと…」

 

「アリス、それ以上はいけない」

「ほ、ほら二人共、早くキャンディー集め行こう!」

「ちょ、待ってスノーホワイト!焦ってるの丸わかりだから!」

「…やっぱり何かあったんですね…」

「もうやめてくれぇ!アリスゥゥゥゥゥゥ!」

 

 

 

 なんだかんだ言いながらも、三人はキャンディー集めに向かっていった。

 

 

 

「…なんだか僕たち、変わってないな…」

 

 

 

 

 

 

 なお、小雪の家にも颯太の家にも家族がいなかったのは、姫河家と岸辺家の両親が二人を想って企てた計画であったことを、まだ二人は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で、前に共に戦った仲間、泊進ノ介の元へ足を運んでいた永夢。

自分が体験したことなどを伝える為に、再び集まったのだ。

 

 

 

「こちらの情報は以上です、泊さん」

「そうか、確かにこっちで調べたことに合致するな…」

「魔法少女のことについては、泊さんはどこまで調べてたんですか?」

「存在、そして活動場所くらいかな。他の刑事達に名深市を捜査してもらったんだが、みんな何故か決定的な証拠を手に入れられなかったみたいでな」

「この写真を見てくれ、永夢」

 

 

 

 進ノ介は資料の入ったファイルの中から、一枚の写真を取り出した。

その写真には、白い姿の魔法少女、竜騎士の魔法少女の姿が残されていた。

 

 

 

「あっ、この娘達は…!」

「やっぱりそうか、お前の会った魔法少女はこの二人だろ」

「えぇ、会ったときはもう一人いたけど、この二人です」

「試しに聞いておく、この二人の姿ははっきりと見えるな?」

「はい。でも何でそんなことを?」

「実はな、他の刑事達は、この二人がぼやけているようにしか見えないらしいんだ」

「えっ」

「俺にははっきり見えるんだが、何でか伝わらなくてな」

「そうなんですか…そういえば、飛彩さんもそんなような事を聞かれたって…」

「飛彩?お前の仲間か?」

「あ、はい。その飛彩さんと戦ったガンマンみたいな魔法少女にも、何故姿が見えるって聞かれたそうなんです。ちなみに、飛彩さんもしっかり姿が見えたそうです」

「そうか。じゃあ個人差なのか…?」

「永夢。その飛彩ってのはただの医者か?」

「まぁ…医者ですね。あっ、飛彩さんも仮面ライダーですよ」

「仮面ライダーか…そうか、そういうことか!」

「何か分かりましたか?」

「あぁ…恐らく、魔法少女を見れるのは、一度でも仮面ライダーに変身したことがある人だけかもしれない」

「確かに、この件に関わっている人は、仮面ライダーだけでした」

「だからみんなが行っても証拠を掴めなかったのか…?」

「泊さんも、前は仮面ライダードライブとして戦っていたから、はっきりと見えるんでしょうか…」

「そうだろうな…」

「つまり、この事件の真相を探れるのは、仮面ライダーだけってことか」

「僕も晴人さん達に…」

「魔法少女がどんなものなのか、そして名深市の怪物騒ぎも探りだしてやる!」

「でも、魔法少女達の中には危険な人もいました。今の変身出来ない泊さんは危険ですよ…」

「心配するな、変身出来るとか出来ないとかじゃない。例え変身出来なくても、俺は仮面ライダードライブだ。この事は、絶対に変わらない」

「(変身出来るとか出来ないとかじゃない…タケル君と同じだ…)」

「…分かりました。何か少しでも助けになるように、頑張りましょう!」

「あぁ。何かあったら、また連絡をくれ。直ぐに駆けつけるよ」

「はい。泊さんも、くれぐれも気を付けて下さい」

「勿論、こんなことでは死なないよ。大切な家族も待ってるしな」

 

 

 

 今日はそのまま解散した永夢と進ノ介。

と、ここで進ノ介はある相手に一通の電話を入れた。

 

 

 

 

「もしもし…あぁ、俺だよ」

 

「悪いんだが、また大きい仕事が出来てな…。しばらく夜は遅くなりそうだ」

 

「…え、またかって?まぁそう怒るなよ」

 

「俺の心配はいいさ、お前はもう少しなんだから、自分を心配しろ…」

 

「夜中には帰るからさ。また色々一段落ついたら、美味い飯でも食べにいこう」

 

「…は?俺が帰るまで起きてるなよ!?今のお前は健康第一だからな!」

 

「あぁ。分かった分かった。別に当分会えないってわけじゃないんだし…」

 

 

 

「じゃあ、おやすみ…霧子」

 

 

 

 

 そういって進ノ介はゆっくりと通話を終えた。

もう少し調べものをしようと戻ろうとする進ノ介。

そんな彼の元に、一人の女性が現れた。

 

 

 

「えっ!何でこんな所に!?」

「進ノ介君がまた大きい仕事やるってゲンパチから聞いて飛んできたのよ」

「…もしかして何か知ってるんですか?」

「内容については詳しく知らないけど…これを届けに来たのよ」

 

 

 

 そう言うと、女性は手に持っていた大きいトランクケースを差し出し、進ノ介に渡した。

その中身を見ると、進ノ介は驚きの声をあげたのだった。

 

 

「なっ、これは…」

「きっと役に立つから。でも、急ピッチで作ったから、一度しか使えない。ごめんね」

「いいや、一度で十分だ。ありがとう、りんなさん」

「いいのいいの。私達、いつまでも仲間だからね、じゃあね!」

 

 

 そう言い残し、白衣を着た女性、沢神りんなは帰っていった。

彼女の渡してくれたトランクケースを眺めながら、進ノ介は心の中で呟いた。

 

 

 

「(霧子、少し危険な仕事をするなんてお前に言ったら怒るかもな…。)」

「(すまない。でも俺はやるよ…)」

 

 

 

 

「(俺は、仮面ライダードライブだから…!)」




以上、今回はストーリーは進展無しでした。
次回からは、進ノ介がちょっとずつ絡んでいきます。
※まだベルトさんことドライブドライバーは復活しません。ごめんなさい。

そして、この話だけのオリジナル設定、魔法少女は仮面ライダー変身者(一度でも)にははっきり見えるという設定を追加しました。
今作のアリスは、鍵を探していた時にスノーホワイトに会ったけど、なんとなくの雰囲気しか覚えていなかったっていう設定です。
多少原作と違いますが気にしないで下さい。


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第28話 覚悟を決める時

エグゼイド、最近衝撃の展開に驚かされております。まだ2クール目の2話目なのに、かなりハードですよね。
一番ショックだったのはバイクゲーマー(目無し)が出てきちゃった事ですね。
これじゃあ元々貴利矢はいらなかったみたいじゃないか!


いつものように、王結時へ集合したスイムスイム、ピーキーエンジェルズ、たまの4人。

前リーダーであるルーラが脱落してからもう2週間ほど経っただろうか。

二代目リーダーとなったスイムスイムに、3人はもう違和感は無くなっていた。

 

 

 

「今日は、みんなに報告したいことがある…」

「どうしたの、スイムちゃん?」

「もしかして、リーダー辞めるの!?」

「マジで!?嘘でしょリーダー!」

「ちょっと二人共…ち、違うよ…ね?」

「…うん。辞めない」

 

 

 

 茶々を入れるピーキーエンジェルズにも、スイムスイムはこれといった反応は見せない。

ルーラであれば、怒っていただろうか。

 

 

 

「でも、みんなにも協力してほしいこと…」

「今まで私達は、ルーラがいなくなった後、ただキャンディーを集めているだけだった」

「それが、どうかしたの?」

「でも、前にラ・ピュセルが行方不明になった時は、その週の脱落者はいなかった」

「ってことは…?」

 

 

 たまやピーキーエンジェルズの問いに、スイムスイムは表情を変えることなく、淡々と話す。

 

 

 

「…誰かが死ねば、脱落者は出ないってことになる」

「でも、死ねばっていっても…」

 

 

 

「じゃあ、私達が殺せばいい…」

 

 

 

「え?」

 

 

 

 たまは、スイムスイムの言うことを理解出来なかった。

少しの間沈黙が流れ、たまはようやくスイムスイムが人殺しをしようとしているのに気付いた。

 

 

 

「だ、ダメだよそんなこと!第一、今はみんながどこにいるのかすら分からないし」

「シスターナナが、私達に会いたいって連絡してきた…」

「え?何で?」

「詳しくは分からない…。でも、シスターナナの事だから、協力しようとかそんなのだと思う」

「でも、ウィンタープリズンもいるしどーすんの?」

「それにはいい考えがある…。だから、みんなに協力してほしい」

「分かった。一人消えればその週は楽になるし、さっさと殺っちまおう!」

「だよねー。お姉ちゃんマジクール!」

「ちょ、ちょっとみんな!人を殺すことになるんだよ!」

 

 

 

 たまは必死に訴えかける。

人殺しなどやってはいけない。

それも、今まで一緒にやってきた仲間だから尚更である。

 

 

 

「たま。前も言ったことだけど、これは生き残るため」

「そうだよ。死ぬのは嫌でしょ?」

「うんうん。死んだらどうしようもないんだよ」

 

「うぅ…でも…」

 

 

 

 たまの必死の訴えも通じず、スイムスイム達は考えを変えることはなかった。

その場に泣き崩れるたま。

 

 

 

「シスターナナ達は明日ここに来る。その時に一気に決着をつける」

「オッケー!」

「あの二人のイチャイチャ、結構イラっとくるんだよねぇ。明日が楽しみだぁ!」

 

 

 

 たまは、自分の仲間がどんどん遠くへ行ってしまうような気がして、余計に心が痛かった。

もし本当に、この世界に神様という存在がいるのならば、こんな辛い状況から救って欲しい。

そんな願いを持った所で、現実は甘くない。

そんな世界を悲観しながら、たまは泣き続けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 河川敷に置かれている不法投棄された古い家電や雑貨。

それを一つ一つ大きな袋に入れていく魔法少女がいた。

 

 

 

「うーん…リップル、今日は風邪で来れないって大丈夫かねぇ…」

 

 

 

 それはトップスピードだった。

今日はパートナーのリップルが風邪を引いたらしく来れない為、一人で活動を行っていた。

 

 

 

「しっかし、この袋は本当にすげえなぁ…多少の命を支払っただけあるぜ」

 

 

 

 トップスピードは、アイテム販売が始まった時に四次元袋を購入していたのだ。

効果としては、どんなものでも無数に入り、尚且つ重くない便利ものである。

この袋を使ってトップスピードとリップルは何度もこうした不法投棄物の回収、そして分別して正規に廃棄したり、リサイクルすることを繰り返している。

酷い時はナンバープレートを剥がされた車が置かれていたこともあり、結構大変な仕事ではあるが、その分報酬のキャンディーも多く、仕事効率としては悪くない。

 

 

 

 

「おーおーすげー。こりゃいいわ」

 

 

 

 今回の報酬で得たキャンディーは2500個。

1万個以上を毎週獲得するスノーホワイト達に比べると見劣りするものの、以前のファントム討伐時並の量である。

 

 

 

 

「さてと、お次はどうしようかなっと…」

 

 

 

 不法投棄物を回収し、次の場所へ移動しようとしたトップスピード。

そんな彼女の目の前に、一人の男が現れ、声をかけた。

 

 

 

「すまない、人違いだったら悪いんだが、少しいいか?」

「はぁ…何だ…ってヴェェ!!」

「な、何だ、どうした?」

 

 

 

 トップスピードは奇声をあげる。

その声に、話しかけてきた男は逆に驚いた。

 

 

 

「い、いや…俺らって基本一般の人には分かりづらい存在というか…だから何であんたが俺のこと見えてるのかなって思ってな…」

「そ、そうか…やっぱり君は魔法少女か…」

 

 

 

 勿論のことトップスピードがその程度で驚いているわけもなく、真意は別にあった。

すると、男がネクタイを締め直し、自己紹介を始めた。

 

 

 

「俺は、警視庁の巡査部長の泊進ノ介だ。実は君たちに聞きたいことがあってな」

「お、おう…俺が見えてるってことは、あんたただ者じゃないな…」

 

「(う、嘘だろおい…何でこういうときに限ってあんたに会うんだよ…泊刑事…)」

 

 

 

 トップスピードは目の前の男、泊進ノ介を見て驚いていたのだった。

突然の再開にトップスピードは平静を保っていないようだ。

その様子に、進ノ介も不思議がる。

 

 

 

「な、なぁ…君、本当にどうしたんだ?」

「…流石に、この姿じゃ俺のこと分かんねえよな」

「何を言ってる…?」

「ったく、しょうがねえなぁ…」

 

 

 

 すると、トップスピードは魔法少女状態から変身を解除した。

光に包まれるトップスピードを見て、進ノ介は再び驚く。

 

 

 

「光った!?おい!どうなってるんだ!」

 

 

 

 すると、トップスピードを包んでいた光が消えて、一人の女性の姿となった。

その姿は、進ノ介の脳細胞を一瞬にしてフリーズさせた。

 

 

 

「久しぶりだな、泊刑事。俺だよ、室田つばめだよ」

 

「はは、つばめが魔法少女?ないない…ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

「泊刑事、それはノリツッコミと解釈していいんだな?」

「そんなわけないだろ!何でお前が!」

「こっちこそ聞きてえよ!何であんたがこっち来てるんだよ!」

「魔法少女の調査で来たんだよ!そしたらお前が魔法少女って…」

「何か文句あるか!」

「というかお前、そのお腹はどうした…」

「これか?妊娠したんだよ。結婚もしたし」

「はぁ!?嘘だろお前!今何歳だ?」

「まだ成人式はやってねえよ。ピチピチの未成年だよ」

「お前その年でか!早いな!というか相手は誰だ!お前の隣の家に住んでたあいつか!」

「そうだよ。昇一って名前覚えてやれよ。今はなかなか幸せだよ」

「やっぱりか!良い雰囲気になってたもんな!でももう少し待てなかったのか!」

「泊刑事、もしかしてあんた嫉妬してんのか?未だに彼女0なのか?」

「残念だったな。俺も結婚したんだ。最高の相手とな」

「嘘だぁ!あんたでも結婚出来るのか!」

「そういうわけだ。…というか妊婦さんが彷徨くなよ。危険だろ」

「そこは魔法少女の能力的なアレでどうにかなるんだよ」

「…そうだ、魔法少女のことを聞きたかったんだ。つばめ、少しいいか」

「別に構わないぜ。ちょっと落ち着こうや」

「あぁ…そうだな」

 

 

 

 

 少し落ち着いた二人は、これまでの事を色々と話し合った。

 

 

 

「そうだったんだな。昔はあれだけ口の悪い不良だったのに、成長したもんだ」

「泊刑事こそ、巡査部長になったんだな。出世したな」

「言うほどだろ。色々あって大変だったんだからな…」

 

「そういえば、早瀬刑事はどうしたんだよ。あの人こそ結婚してんだろ」

「早瀬か…あいつは結婚なんかしてないさ…」

「何かあったのか?」

「実はな…俺のせいで、あいつに大怪我させちまってな…」

「マジかよ…。大丈夫なのか?」

「もうほとんど回復してて、また一緒に捜査とかしてるよ」

「そりゃあ良かった…あんたも大変だったんだな」

「じゃあこっちも質問させてもらうよ」

「おう、基本は何でも答えられるはずだぜ」

 

「ある程度、仲間から話は聞いてるんだが…怪物が出たってのは本当か?」

「何度か見たことはあるぜ。それにウィザードってのにも助けてもらってるな」

「ウィザードか。あいつもやっぱり関わってたんだな」

「泊刑事もウィザードと知り合いだったのか」

「あぁ。前に知り合ったんだ」

「あいつ人脈すげえなぁ…。あっ、そうだ!」

「どうした?」

「人助けを手伝ってくれないか?」

「あぁ、構わないよ。何をするのかしらないけども」

「おう!行こうぜ!」

 

 

「いいや、待て…何か来るぞ!」

「へ?ってうわぁ!」

 

 

 

 なんと、二人の前に、大量の下級ファントム、グールが襲いかかってきた。

 

 

 

「何でこんな奴ら湧いて出てきてるんだよ!多すぎだろ!」

「こいつらがファントムか…!」

「今までは一体だったのに…どうなってんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつら、さすがにビビってやがるな…」

『オーガ、君ってこんなチキン野郎だったかぽん?』

「言ってくれるな…だがこれは小手調べっていうんだよ…」

『言い訳ツラいぽん』

「だが、あの男は何者だ?トップスピードと会話してやがったが…」

『もしかすると、また面倒なやつかもしれないぽん』

「もう魔法使いの仲間は勘弁してほしいがな…」

『まぁいいぽん。ここで死ぬならその程度の奴ってことぽん。こっちはのんびり観賞させてもらうぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、トップスピードに再び変身したつばめと進ノ介は、大量のグールと対峙していた。

 

 

 

 

「泊刑事、あんたは逃げろ」

「は?何言ってるんだ!」

「生身のあんたじゃ奴らには勝てない」

 

 

 

"生身じゃ勝てない"

いいや、勝ってみせる。

つばめには言ってなかったが、進ノ介は仮面ライダードライブである。

今は変身出来ないが、ベルトが無くたって戦える。

りんなさんから貰った道具があるが、ここでは使わない。それでも行けると信じる。

人々を救いたい。その思いがあれば。

 

 

 

「いいや、俺も戦うさ。お前みたいな力が無くたって、こんな戦線いくつも潜り抜けてきた」

「でも、あんた…!」

「お前だけに任せられるか!ここで逃げたら警察官の恥だ」

「…あぁもう!分かったよ!でも無理するなよ!」

「あぁ!お前こそな!」

 

 

 

 

 こちらに向かってきたグールに対し、進ノ介は拳銃、トップスピードは、自身の魔法の箒、ラピッドスワローを構える。

 

 

 

「よし!行くぞ!」

「おうよ!」

 

 

 

 進ノ介とトップスピードは、グール軍団に立ち向かっていく。

拳銃で撃ち抜き、格闘技でグールをノックアウトしていく進ノ介。

 

 

 

「泊刑事、あんたすごいんだな…よっしゃ、負けてられるか!」

 

 

 

 ここでトップスピードは、以前獲得した武器を召喚する。

 

 

 

「来い!ハンドル剣!」

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

 

「よっしゃ、行くぜぇ!」

 

 

 

 ハンドル剣を手にしてグールを切り裂いていくトップスピード。

進ノ介は唖然とする。

そして、トップスピードに向けて叫ぶ。

 

 

 

 

 

「何でお前がそれ持ってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




トップスピードと進ノ介のやり取りが長く、正直前半のスイムスイム忘れられてそう…すいません。
実はトップスピードにハンドル剣選ばせたのはこの為だったり違ったり。
今回はちょっとギャグテイストになりましたが許してください。
ハイテンションな時にやるんじゃなかった…
進ノ介とトップスピードの出会いの経緯は次回やります。
そして次回は奴が乱入からの、トランクケースのアレが明らかに!
ジェネシスとサプライズフューチャーで使ったアレですよ。


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第29話 この男、刑事で…

お久しぶりでございます。
この1週間、インフルエンザに感染してしまいずっと寝込んでおりました。
少し楽になったら書こうと思ってたんですが、全然回復しなくて更新が1週間以上遅れるという事態になってしまい申し訳ございません。
インフルエンザ、怖いですね。


「な、何でそれを持ってるって言われても…キャンディーと交換してもらったんだけど…」

「交換!?キャンディーってどんなキャンディーだ!」

「え、えーっとなぁ…」

「お前がコアドライビアの封印を解除できるはずがない…」

「今は敵を倒すことに集中しろよ!後で話すから!」

 

 

 

 トップスピードが手にした武器、ハンドル剣を見た進ノ介は再び驚く。

何故封印されたはずのハンドル剣が…?

しかし、その前にまずはこの怪物共を撃退しなければ。

精神を落ち着かせ、限りある銃弾を一発一発確実に命中させていく。

一方のトップスピードは、ハンドル剣でグール達をなぎ倒していき、ハンドルを回転させて自身の回転攻撃をお見舞いする。

 

 

 

「つばめ!ハンドル剣を貸してくれ!」

「おうよ、ほれっ!」

 

 

 

 トップスピードからハンドル剣を受け取り、その力を確認する。

前まで自分が使っていたものと同じだ。

 

 

 

「何でこれがあるかは知らないが…力を貸してくれ!」

 

 

 

 進ノ介は思いっきりハンドルを回転させて、自分が今まで使っていたように、素早い動きでグール達を翻弄して倒していく。

その姿は、トップスピードが使う時とはまた違い、回転攻撃を自由自在に操っている。

 

 

 

「すげぇ…使いこなしてる…!」

「これで…どうだ!」

 

 

 ドリフトカイテーン!

 

 

 

 

 進ノ介の攻撃で一体、また一体と倒れるグール達。

ハンドル剣の攻撃は凄まじく、あっという間にグールを殲滅していき、現れた時には軽く50体はいたグールを完全に倒していた。

 

 

 

「あぶねぇ…なんとかなるもんだな、泊刑事」

「あぁ。なんとかなったな…」

「ていうかあんた強すぎだろ…」

「言うほどでもないさ。それに、お前もなかなかじゃないか、つばめ」

「一応この姿の時につばめはやめてくれ。トップスピード、それが今の俺の名前だぜ」

「あ、あぁ…分かったよ、トップスピード」

「おう。というかあんた、さっきハンドル剣見てめっちゃ驚いてたよな」

「おっと、そうだった。トップスピード、これを手に入れた経緯を教えてくれ」

「…やっぱりそれか。分かったよ、教えてやるよ」

 

「簡単に言うとレプリカだ。魔法の国ってところで作られたらしいぜ」

「レプリカ…か。だとしても性能が全く同じだなんて、魔法の国ってのはすごいところなんだな」

「俺もよく分からねえよ。ていうかあんたハンドル剣を何で知ってるんだよ」

「…そうか…お前にもそろそろ話しておくか…」

「何を?」

「俺が前にやってた事の話だよ。お前には言ってなかったからな」

「それとハンドル剣が関係あるのか?」

「あぁ。実はな、俺もウィザード達と同じ…」

 

 

 

 そう言いかけた進ノ介は、何かを察知してトップスピードを庇って地面に伏せる。

間一髪でエネルギー弾のようなものを避けた。

 

 

 

「ちょ、泊刑事!どうしたんだ!」

「危なかったな…。お前は何者だ!」

 

「俺の攻撃を避けるとは、なかなかじゃないか…」

 

 

 

「お前は確か…オーガ!」

「オーガ?…まさか、お前がファントムってやつなのか…!」

 

 

 

 二人の前に突如現れたのは、ファントム・オーガだった。

 

 

 

「ご名答だ。俺はファントム。その名はオーガだ!」

「一体何の用だよ!ウィザードはここにはいねえぞ!」

「魔法使いに用は無い。今日はお前の魔力を喰いに来たんだよ!」

「何!?俺の魔力だって…」

「そうさ。お前の魔法は役に立つ。ここでお前を倒して魔力を頂く!」

「魔力…?一体どういう意味だ!答えろ…!」

「関係ねえ奴は黙ってろ!」

 

「あっ!危ねぇ泊刑事!」

 

 

 オーガは進ノ介に向かって大きなエネルギー弾を放った。

しかし、間一髪でトップスピードが進ノ介を庇ってエネルギー弾を避けた。

普通の人間では到底避けれないであろう速度の攻撃ではあったが、トップスピードの素早い動きで、なんとか無傷で避けられた。

 

 

 

「うっ…危ないところだった…すまん」

「気にすんな…おいオーガ!何で泊刑事を狙った!狙いは俺だろ!」

「お前の精神を痛め付ける為…ではダメかな?」

「てめぇ!だったら俺と1対1で勝負しろ!」

「ほう…自ら一人で戦うというのか…良いだろう、相手になってやる!」

 

「トップスピード、お前…!」

「もうあんたに迷惑はかけられない。ここから逃げてくれ」

「そういうわけにもいかない、あいつはなかなか強そうな奴だろ」

「強い奴だからこそ、もうあんたじゃ勝ち目無いだろ!」

「だからって、お前だけに無茶させられるか!お前の体はもうお前だけのものじゃない!」

 

 

 

 進ノ介のその一言で、トップスピードは一瞬だけ目を大きく開いたが、首を横に振り直ぐに元に戻った。

 

 

 

「この力で戦ってるうちは大丈夫さ、ヤバくなったら逃げてやる…だから心配すんな」

「おい!トップスピード!」

 

 

 

 トップスピードは、ラピッドスワローに乗り、手にはハンドル剣を持ってオーガへ突撃した。

しかし、トップスピードは何者かの一撃によって地面に叩き落とされた。

そして、直ぐに進ノ介に襲いかかった。

 

 

 

「トップスピード!くそっ、なんだこいつ!」

「ぐっ…誰だのよ…」

「ハハハハ!誰があの男を逃がすと言った!」

「何だと…?」

「こいつもファントムだ。その名もオルトロス。さぁ、地獄を見せてやれ!」

「…了解。オーガ」

「泊刑事!早く逃げろ!」

「余所見をしている場合か!」

「ぐわぁ!」

「トップスピード!…どうすれば…!」

 

 

 

 新しく現れたファントム、オルトロスの襲撃にただただ攻撃を避けることしか出来ない進ノ介と、オーガに押されつつあるトップスピード。

オルトロスは2つある自身の頭部から交互に炎の放ち、進ノ介に反撃の機会を与えることなく攻撃を繰り返す。

 

 

 

「くそったれぇ!」

 

 

 ドリフトカイテーン!

 

 

 トップスピードはハンドル剣で反撃を始める。

回転攻撃が何度かオーガに直撃したものの…

 

 

 

「”ガーゴイル”…」

 

 

 オーガは、ファントム・ガーゴイルの能力、自身を石化させて、攻撃を防いだ。

 

 

「くそっ、攻撃が全然効かない!」

「その程度か魔法少女!」

「ぐわぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 オーガは強力なパンチをトップスピードに命中させた。

トップスピードは避けきれず、進ノ介のいる場所まで吹き飛ばされた。

 

 

 

「トップスピード!しっかりしろ!」

「う…やっぱりあいつ、尋常じゃない…」

「フッ、魔法少女もその程度か。良いだろう、お前達2人共ここで葬ってやる!」

「来い、オルトロス!」

「大したことはなかった…殺す」

 

 

 

「不味い…トップスピード、動けるか?」

「悪い…ちょっと攻撃受けすぎた…」

「おい!何言ってる!逃げるぞ!」

「泊刑事…あんただけで逃げてくれ…二人死ぬよりよっぽどいい…」

「馬鹿を言うな!」

「魔法少女のみんなと…昇一に宜しく言っておいてくれ…」

 

 

 

「さぁ、お前達はもう死ぬ。さらばだ!」

「…死ね!」

 

 

 

 オルトロスとオーガは共に大きな炎の弾を放とうとしている。

そして、それをただ待つしか出来ないトップスピード。

 

 

 

 しかし、進ノ介は自身の着ているスーツのポケットから何かを取り出そうとしていた。

だがそれは、一度しか使えない一発勝負であった…。

 

 

 

 

 

《一度しか使えない。ごめんね》

 

 

 ふとこの道具をくれたりんなの言葉を思い出した。

ここでこれを使えば、これからの時にもう自分は何も出来ない。

敵はこいつらだけじゃない。きっと更なる悪がこの事件には関わっている。

ここで本当に使っていいのか…?

進ノ介の心は迷っていた。

 

 

 

 

「昇一…ごめん…」

 

 

 

 

 

 トップスピードの死を覚悟した一言で、進ノ介は目が覚めた。

そうだ、ここで逃げればトップスピードの命は失われる。

例え一人でも、救える命を放っておくなんて出来ない。

そう、大切なのは今だ、今何をするかだ…!

今を救えない人間に、未来を語る資格はない。

 

 

 

 その時、進ノ介の何かが吹っ切れた。

そして、ネクタイを締め直して叫んだ。

 

 

 

「もう、考えるのはやめた!」

 

「何ィ…命乞いか何かか!鬱陶しい!やってやれ!」

「失せろ…!」

 

「泊…刑事…?」

 

 

 

 進ノ介は腰に青と銀を基調にしたベルト、マッハドライバー炎を巻き付けた。

そして、マッハドライバーの蓋部分を開けて、スーツから取り出した鍵の形をしたアイテム、トライドロンキーをドライバーに装填した。

 

 

 

 

〈シグナルバイク!シフトカー!〉

 

 

 

 

 そして、マッハドライバーの蓋を閉じる。

しかし、そのタイミングと同時にオーガ達の攻撃が放たれた。

だが進ノ介はそんなこと気にせず大声で叫んだ。

 

 

 

 

「変身!」

 

 

 

 

 その時、進ノ介達にオーガ達の攻撃が直撃した。

辺り一面が炎に包まれる。

オーガ達は勝利を確信したが…。

 

 

 

 

 

 炎が突っ切って何かがオーガ達に向かって近づいてくる。

その姿は、以前オーガを倒した魔法使いとは似ても似つかない姿だが、あの魔法使いと同じ、平和や、自由への思いを持った存在であるのはオーガにも分かった。

そう、それは‘仮面ライダー’と呼ばれし戦士…。

 

 

 

 

 

 

 

〈ライダー!〉

 

 

 

 

 

〈超!デッドヒート!〉

 

 

 

 

 

 進ノ介は、赤色と黒色の混ざりあった色をした戦士、仮面ライダー超デッドヒートドライブ

へと変化した。

 

 

 

「俺は、仮面ライダー…ドライブ!」

 

「その声…あんた泊刑事か…?」

「あぁ。危なかった。あと少し判断が遅れていたら、俺もお前も焼け死んでただろうな」

「なんか…状況掴めねえんだけど…」

「話は後だ。こいつらは俺がどうにかする!

 

「言ってくれるじゃないか。オルトロス!行け!」

「ライダー…消す…!」

 

 

 

 超デッドヒートドライブに襲いかかるオルトロス。

オルトロスは再び火を放ち攻撃する。

 

 

 

「それくらいで、俺のエンジンは止められない!」

「何ィ!」

 

 

 

 攻撃をあっさりと跳ね返し、超デッドヒートドライブがマッハドライバーのボタンを叩き、今度はオルトロスに攻撃を仕掛けた。

 

 

 

〈超!デッドヒート!〉

 

 

 

 ジャンプした超デッドヒートドライブはオルトロスの頭の一つに強化したパンチを浴びせた。

パンチを受けたオルトロスの頭は粉々に破壊され、オルトロスの頭は一つになってしまった。

 

 

 

「ライダー…許さん!」

「何っ!?」

 

 

 

 すると、破壊された頭部の跡から、無数の蛇が現れて超デッドヒートドライブを拘束する。

しかし、超デッドヒートドライブはマッハドライバーのボタンを何回も叩き、新たな力を発動する。

 

 

 

〈バースト!キュウニ!超!デッドヒート!〉

 

 

 

「だぁぁぁぁぁぁぁ!」

「な、何故だ…」

 

 

 

 超デッドヒートドライブは、自身を拘束していた蛇達を引きちぎり、拘束から解放された。

そして、マッハドライバーの蓋を開け、ボタンを押してから蓋を閉めた。

超デッドヒートドライブの必殺技が発動する…!

 

 

 

〈ヒッサツ!バースト!フルスロットル!〉

 

 

〈超!デッドヒート!〉

 

 

 

「ハァァァァァァッ!」

 

「おのれ…無念…ウァァァァ!」

 

 

 

 必殺技のキックがオルトロスに直撃した。

当然避けきれるはずもなく、オルトロスは断末魔をあげて爆散した。

 

 

 

 

「はぁ…なんとかやったか…?」

 

「この俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 

「なっ、ぐわぁ!」

 

 

 

 超デッドヒートドライブはオーガの攻撃を受ける。

倒れこむが、立ち上がってオーガに戦いを挑む。

しかし、オーガの攻撃に少しずつ押されていく。

 

 

 

「くそっ、こいつ…やっぱり強い」

「楽しいねぇ!戦いってのはよぉ!」

 

 

 

 オーガは大きな一撃を超デッドヒートドライブに浴びせた。

吹き飛ばされて、倒れる超デッドヒートドライブ。

 

 

 

「ぐっ、この装備でだめなら…こっちだ!」

 

 

 

 マッハドライバーの蓋を開けると、トライドロンキーを取り出し、今度は赤と白の車の機械、シフトデッドヒートを装填する。

そして、蓋を再び閉じて、ドライブは次の姿へ変身する。

 

 

 

〈シグナルバイク!シフトカー!〉

 

 

 

〈ライダー!デッドヒート!〉

 

 

 

 

 今度は超デッドヒートドライブのようなゴツゴツとした姿ではなく、少しスマートな姿へ変化した。

赤と白を基調としたスーツと装甲を持つ戦士。

その名を、‘仮面ライダーデッドヒートドライブ’。

 

 

 

 

「この力で、お前を倒す!」

「面白い。かかってこい!」

 

 

 

 襲いかかってくるオーガに、デッドヒートドライブが立ち向かう。

先ほどは押されていたデッドヒートドライブだったが、今は形勢逆転し、オーガを少しずつ追い詰める。

 

 

 

 

「うおっ!?この俺が押されるだと!」

「まだ俺のトップギアは終わっちゃいない!」

 

 

 

 マッハドライバーのボタンを叩き、デッドヒートドライブの力を強化する。

 

 

 

〈デッドヒート!〉

 

 

 

 赤い稲光に包まれ、デッドヒートドライブは更に強化されたパンチをオーガに叩き込んだ。

一発、二発、そして三発。

それはオーガを吹き飛ばした。

 

 

 

「ぐわぁ!な、何だと…」

「これでどうだ!ハァッ!」

 

 

 

 マッハドライバーの蓋を開け、ボタンを押して蓋を閉じる。

今度はデッドヒートドライブの必殺技が発動する。

 

 

 

〈ヒッサツ!バースト!フルスロットル!〉

 

 

 

〈デッドヒート!〉

 

 

 

 

 赤いタイヤの幻影を作り出し、オーガに当てて拘束する。

そこからジャンプしたデッドヒートドライブは、オーガ目掛けてライダーキックを放った。

 

 

 

 

「終わりだ!ハァァァァァッ!」

「な、なにぃ!?」

 

 

 

 必殺技が炸裂し、デッドヒートドライブは地面に着陸する。

しかし、オーガを倒した手応えが無かった。

案の定、その場にはオーガの姿はもう見当たらなかった。

 

 

 

「逃げられたのか…?」

 

 

 

 デッドヒートドライブは、変身解除し、進ノ介の姿に戻った。

そして、もうマッハドライバーは腰に巻き付かなかった。

変身する術を完全に失ったが、危機を脱する事ができた。

これも、マッハドライバーを急遽製作したりんなのおかげだ。

 

 

 

「りんなさん、おかげで助かったよ…」

 

 

 

 進ノ介はそう呟いた。

 

 

 

「あんた、まさか仮面ライダーだったなんてな」

 

 

 

 振り向くと、トップスピードから変身を解除した、室田つばめがこちらに歩いてきていた。

 

 

 

「つばめ、お前さっきの怪我はどうしたんだ?」

「魔法少女の時に負った怪我だから、変身解けばこんなもんよ」

「魔法少女ってやっぱ不思議だな…」

「それよりも、さっきはありがとうな。泊刑事」

 

 

 

 つばめは進ノ介に笑顔でそう伝えた。

進ノ介は、一瞬照れながらも、それに答えた。

 

 

 

「あぁ。だがつばめ、その笑顔はお前の旦那に取っておけよ」

「ははっ、なんだそれ。もしかしてあんた俺をそういう目で見てたのか?」

「んなわけないだろ!折角良いこと言ったのに…」

 

 

 

 進ノ介は、また一人の命を救えた事に安堵し、同時に、これからまた長い戦いになりそうだ。と思い、再び覚悟を決めていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラックを開く。

そこから見える景色は、かつての仲間である仮面ライダーウィザードや、前に会った時とは姿が違うが、恐らくは仮面ライダードライブであろうライダーの戦う姿。

そして、色々な姿をした少女達の姿。とてもじゃないが一般人とは思えない。

更に、そこから見えるのは、インベスとは違った怪物の姿。

どうやらまた地球で何か起こっているようだ。

このままウィザード達に任せるのが良いのかもしれない。

だが、何やら嫌な予感がする。

彼らの戦いに割り込むと言ったら悪い言い方だが、少しだけ手助けする。という言い方の方が良いかもしれない。

それに、‘助けて’という無視する事は出来ない。

助けを求める人々を救う。それが、仮面ライダーの役割だ。

 

 

 

 

「…舞。俺ちょっと行ってくるわ。こっちは任せた」

「分かった。気を付けてね…紘汰」

「あぁ、勿論。絶対帰ってくるよ」

 

 

 

 

 

 

「…変身」




はい、大変久しぶりの29話でした。
え、何?ウィザード全然出てこないじゃねえか!って?
本当にすいません。次回から活躍させるんで許してください本当に。
平成ジェネレーションズ感すごいですが、ウィザードメインなのは忘れてないので活躍させます。
ではでは次回からも宜しくお願い致します。


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第30話 立ち向かう為の勇気

1月29日は、ラ・ピュセル役の佐倉綾音さんのお誕生日だったそうですね。おめでとうございます。

話は変わりますが、超スーパーヒーロー大戦のポスターが公開されたようです。
レーザー復活や、アマゾンズ登場など話題が盛りだくさんですが、気になるのはアギト、龍騎、ディケイド、ドライブ、ゴースト、ゾルダの存在。
彼らもオリキャスなのでしょうか?


「ぐぅ…まさか、あの男が仮面ライダーだったとは…」

 

 

 

 ファントム・オーガは、傷ついた体を休ませながら、呼び出したファヴと会話していた。

あちこちに傷が残っており、戦いの激しさが目に見える。

 

 

 

『オーガ。控えめに言って君はバカだろぽん?』

「…は?」

 

 

 

 ファヴの予想外の返答に驚くオーガ。

その言葉に納得出来ていない様子のオーガにファヴは続けた。

 

 

 

『グール軍団を圧倒した時点で、あいつは危険だって分かったはずぽん。』

「…だがそれは…」

『こちらとしても簡単に死んでもらうのは困るんだぽん。勝手にマスターを殺して成りすましておいて、それはないぽん』

 

 

 

 ファヴの注意に、オーガは言い返せなくなってしまった。

それは本当に図星であったこと、そして、いつものファヴとは違う話し方。

どうやらファヴは、本当に怒っているようだ。

 

 

 

「…すまない」

『まぁ傷が治るまではこの廃屋でのんびりしてて欲しいぽん。これ以上勝手に返り討ちに遭うのは御免だぽん』

「分かったよ…一応だが、ファントムは好きに使ってくれ。魔法少女の足止めくらいは出来るだろ」

『じゃ、遠慮なくだぽん』

「任せるぞ、ファヴ。魔法少女共を動かすのは、お前の選択次第だ」

『いや、もう動いてるぽん』

「どういう意味だ…?」

 

 

 

 尋ねたオーガに、ファヴは口元を歪めて答える。

オーガはこの表情をみて、なんとなく状況が分かっていた。

これは悪い笑みだ。

 

 

 

「上手く行けば、魔法少女が自ら殺し合ってくれるぽん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「毎日大変だな。お前らだってゆっくり寝たい時はあるだろ」

「大変ですけど、魔法少女だってこんな状況ですし、何より脱落は嫌だから…」

 

 

 

 ふと思った事を言ってみる。それに答えた魔法少女、スノーホワイトの表情は真剣だ。

仮面ライダーウィザード、操真晴人は今日も魔法少女達の手助けをしていた。

 

 ここ最近は、以前よりも一層戦いが激しい。

この騒動の発端、ファヴも解決案を提示することなく、毎週脱落者が出るのも変わらない。

そして、魔法少女同士の関係も悪化している。

トップスピードとリップル、シスターナナとウィンタープリズンのコンビには会うことも多く、協力関係にはあるのだが、ルーラを失ったスイムスイム達や、ラ・ピュセルを襲ったクラムベリーは、今や姿を見せなくなった。

警戒している者がほとんどだろう。

 

 辛い状況ではあるが、スノーホワイト、ラ・ピュセル、ハードゴア・アリスの3人は、めげずに今日もキャンディーを集めている。

そんな姿に、ウィザードも共感し、主にこの3人と行動している。

 

 

 

「そうか。俺にも出来ることがあるなら、精一杯手助けするよ」

「ありがとう、晴兄」

「感謝します…ウィザード」

「あぁ。みんなで生き残るのが、何より大事だしな」

 

 

 

 再び決意を固めた4人。

そんな所に、二人の来訪者がやってきた。

 

 

 

「お久し振りです。スノーホワイト、ラ・ピュセル。ハードゴア・アリスは最初に会った時以来ですね。それにウィザードさんも、お疲れ様です」

「どうも。お互い大変だな、みんな」

「シスターナナ、ウィンタープリズン、こんばんは」

 

 

 

 やってきたのは、シスターナナとヴェス・ウィンタープリズンの二人だった。

この二人には、スノーホワイト達も世話になっている為、警戒心もなく話せる数少ない魔法少女仲間である。

 

 

 

「久しぶりだな。キャンディー集めは順調か?」

「まずまずだ。そちらも、見る限りなんとかなってそうだね」

「まぁね。ところで、今日はどうしたんだ?」

 

 

 

 ウィンタープリズンと話していたラ・ピュセルが尋ねた。

 

 

 

「いや、大したことではないんだが…」

「何かあるのか?」

「明日、私達はスイムスイム達の所へ行くんでな…」

「そうだったのか。そういえば、最近見かけてないが大丈夫なのか?」

「私もナナも最近は全く…。だからこそ、ナナは気になるみたいでな」

 

 

 

 そういうウィンタープリズンに、シスターナナが続ける。

 

 

 

「恐らく彼女達もルーラを失った悲しみで、なかなか立ち直れないんだと思うんです。だから、こんな悲しみを繰り返さない為に、私達に協力してもらえないか交渉するんです」

「そうなんだ…。シスターナナは優しいんだね」

「…人助けは良いことだと思います」

 

 

 

 スノーホワイト、そしてハードゴア・アリスの反応に、シスターナナは笑顔を見せた。

 

 

 

「ありがとうございます。皆さんも、活動頑張ってくださいね」

「はい!」

「そちらもお気をつけて…」

 

 

 

 一方、そのやり取りを聞いていたウィザード。

そこにウィンタープリズンがやってきた。

 

 

 

「ウィザード、この事で、少し話したいことがある」

「何かあるのか?」

「その…スイムスイム達に会う時に、護衛をしてもらえないだろうか」

「護衛?」

 

 

 

 意外な言葉に驚くウィザード。

ウィンタープリズンに理由を尋ねる。

 

 

 

「構わないが、何で護衛なんだ?」

「正直、スイムスイム達が協力してくれるとは思わないんだ」

「なっ…」

「あいつらは前にもスノーホワイト達を強襲しているのは知っているはずだ」

「あ、あぁ…」

「あれを計画したのはルーラと聞いているが、もしスイムスイムがそれを踏襲していたら…」

「シスターナナとお前の訪問を許可したのは…罠だってことか?」

「絶対とは言わないが、その可能性も無くはない…だから、もし何かあったら、ナナだけでも助けて欲しい」

 

 

 

 

 ウィンタープリズンの言葉で、ウィザードも思い出した。

確かに、ルーラを助けた時も、スイムスイムはルーラに攻撃していた。

今までのリーダーだったルーラを躊躇なくいきなり襲う姿。

スイムスイム、もしや彼女も危険な存在なのだろうか。

 

 

 

「ナナだけでも…って、お前はどうするんだ」

「…最悪、私が囮になる」

「そんなことさせられるかよ。…分かった、俺が何かあったらお前達をすぐに助ける」

「出来るのか?私とナナ、どちらも救うなんて…」

「危険が迫ってるなら、それを救えないとな。そんなことで命を落としてほしくない」

 

 

 

 手の指に付けている指輪を見せて話すウィザード。

少し驚いているウィンタープリズンだったが、すぐに表情を戻して答えた。

 

 

 

「少々強引だったかもしれないが、明日は頼む」

「気にしなくていいさ。まぁ、何も無いのが一番だけどな」

「私も、それを望んでいるよ…あ、それと」

「何だ?」

「スノーホワイト達にも、内緒にしておいてくれ。この事を知ったら彼女達にも迷惑をかける」

「分かった。勿論シスターナナにもだな」

「あ、あぁ。察しが良くて助かるよ」

 

「ウィンタープリズン!行きましょうか!」

「あぁ!待っててくれ!」

「じゃあ、また明日な」

「すまないな、では宜しく頼む」

 

 

 

 挨拶を済ませ、ウィンタープリズンはシスターナナと共に戻っていった。

残ったウィザードは、ウィンタープリズンが残した言葉を思い出していた。

スイムスイム達は確かにルーラを殺そうとしていたが、もうそんなことはしないはずだ。

だが、何が起こるかなど分からない。

もし本当にシスターナナ達の身に危険が訪れるようならば、助けなければいけない。

そして、スイムスイム達を止めるためにも。

 

 

 

「晴兄!そろそろ私達も行こう!スノーホワイトもアリスも待ってるよ!」

「あぁ。今行くよ」

 

 

 

 例え何が起こっても、絶対に魔法少女達を守ってみせる。

仁藤や永夢達も手助けしてくれるが、ずっと頼るわけにもいかない。

必ずこの騒動を解決させて、みんなの希望を守る。ウィザードはそう誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスターナナとウィンタープリズンを襲撃する作戦の前夜、魔法少女たまの変身者である犬吠埼珠は、眠れない夜を過ごしていた。

明日はスイムスイムの企てた作戦で、二人を殺さなければならない。

珠自身は、そんな計画賛成したくはなかった。

そのため、何度も止めるように訴えたのだが、その願いは届かず、結局この作戦は決行となってしまった。

本当に人を殺してしまうのは嫌だった。そう考えると余計に頭が痛くなって苦しくなる。

スイムスイムやピーキーエンジェルズはどう思っているのだろうか。

こんなことを平気で考えられるスイムスイムは、良くも悪くもすごい人だと感じていた。

色々頭で考えていたら、急に涙が溢れてきた。

更には、自分自身の無力さ、そしてどうにもできない絶望感に襲われた。

色々な感情に襲われて、気づけば珠は意識が遠くなっていくのを感じた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 珠が再び気付くと、大きな湖や森林に囲まれた場所に立っていた。

まさに楽園というべき場所なのだろう。

ここは一体どこなのだろうか。

そんなことを考えていた珠であったが、謎の声が聞こえるのに気づいた。

 

 

 

 

「おーい、聞こえてるか?」

「…え?」

 

 

 

 

 声のする方向へ向くと、そこには金髪、銀色の姿でマントを羽織った謎の人物が立っていた。

全く出会った事の無い人物ではあるが、ただならぬ気配を感じる。

 

 

 

 

「やっと気付いたか。大丈夫か?」

「あ、あの…すいませんが、どなたでしょうか…?」

「うーん、まぁ神様って感じだな」

「えっ…神様?」

 

 

 

 予想外の返答に驚く。

夢でも見ているんだろう。それならこんな場所に立っている理由も分かる。

 

 

 

「そう、神様。宜しくな」

「神様…というか、ここって夢の世界なんですか?」

「まぁ、そんなもんだな」

「やっぱりそうですか。だったら、色々お話ししたいことが…」

「あぁ、知ってるよ。君も大変だったな、これまでさ」

「は、はい…でも、何で私の夢に来てくださったんですか…?」

「助けてって声が聞こえた…じゃ理由にならないか?」

「いえ!そんなこと無いですよ!嬉しいです」

「そりゃ良かった。でも、あんまりこうしてられる時間も長くは無いから、話したい事だけを手短に話すぜ」

「はい。でも、私…これからどうにか出来る気がしないんです…」

「どうにか、か…。俺もそうやって色々やってた時もあったな」

「神様にも、そんな事が…?」

「まぁな。でも、どうにか出来ないと勝手に思って諦めちゃいけない」

 

 

 

 神様と名乗る男は珠に語りかける。

珠も不思議と心が落ち着き、話に耳を傾ける。

 

 

 

「これからも何があるか分からないし、君にとって辛いこともあると思う」

「はい…」

「でも、君も自分を信じて前に進むんだ。俺もそうやって救えたものもあった」

「それでも私、自信がなくて…」

「そうか。だったら今の自分を少しずつ変えることから始めるんだ。俗に言う変身だよ」

「変身…?」

「そう、俺も昔とは大分変われたんだ」

「そうなんですね…」

「すぐに変わるってのは難しいかもしれないけど、少しずつでも動くのはいいと思う」

「私でも、変われるでしょうか…」

「君の気持ちが強ければ、きっと大丈夫さ」

「気持ち…分かりました。頑張ってみます!」

「その意気なら大丈夫だな。頑張れよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういうと光に包まれて、珠の意識は現実に引き戻された。

外は陽が昇って朝が訪れている。

やはり先程までのは夢であったが、あの神様が言っていた言葉は、1つ1つ覚えている。

今まで悩んでいたことの錘が、少し軽くなった気もした。

ただ諦めるんじゃなくて、もう少し足掻いてみよう。そう感じた。

今日は作戦決行の日、どうなるかは分からない。

それでも珠は、変われるように努力する事を決めた。

あの神様が言っていたように、自分も変わるんだ。

珠はそう心に決めて、前に進む。

1人の人間としても、魔法少女・たまとしても。




はい、最近忙しくて更新が遅いのは申し訳ないです。
次回はいよいよスイムスイムチームの作戦決行です。
ウィザードは、たまは、一体どう動くのか!?


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第31話 これは殺し合い

某掲示板にて既にエグゼイドの最終フォームの画像バレがあって驚きました。
ここでは言いませんが、この時期にもう分かっちゃうんですね。


 スイムスイム、ピーキーエンジェルズのミナエル、ユナエル、たまは今日も王結寺に集合した。

しかし、雰囲気はいつもよりも重い。

それもその筈、今日はシスターナナとヴェス・ウィンタープリズンを殺す為の作戦当日である。

全員が集合したのを確認したスイムスイムは、3人を集めて話を始めた。

 

 

 

「シスターナナ達はもうすぐここにやってくる。その時に一気に倒す」

「いいねー!モチベ上がって来たぁ!」

「心が踊るねぇ!」

 

 

 

 やる気いっぱいのピーキーエンジェルズであるが、たまは乗り気でないのが見た目だけでも理解出来る。

それを感じ取れていたのかは分からないが、スイムスイムは続けた。

 

 

 

「ウィンタープリズンが厄介なのはみんな理解しているはず。だから先にシスターナナを潰す」

「でも、シスターナナってこの前変な銃持ってなかったっけ?」

「追尾するとか言ってなかったっけ?面倒じゃね?」

 

 

 

 ピーキーエンジェルズが異論を唱えた。

2人は、シスターナナの持つトリガーマグナムを警戒しているようだ。

 

 

 

「心配要らない。シスターナナは戦い慣れはしていない。私が直ぐに殺す」

「うわぁ、リーダーこえぇ」

「こえぇ」

 

 

 

 殺すと言い切ったスイムスイムは、自身の武器である大きな薙刀を掲げた。

結構なサイズである薙刀は、寺の電気の光を浴びて輝く。

 

 

 

「ところでさ、リーダー。その武器ってなんて名前なの?」

「気になるー。カッコいい名前なんだよね?」

 

 

 

「…ルーラ」

 

 

 

 スイムスイムのまさかの答えに、ピーキーエンジェルズも一瞬硬直した。

薙刀に付けられた名前は、スイムスイム達の元リーダー、ルーラを踏襲しているのだろう。

 

 

 

「ま、まさか…元リーダーの名前とは…」

「ま、マジクール…」

 

 

 

 しばらく、“ルーラ”を見つめていたスイムスイムだったが、目線はたまへと移った。

今日は全く発言していないたまに、さすがにスイムスイムも声をかけた。

 

 

 

「どうしたの、たま」

「うぅ、スイムちゃん…。」

 

 

 

 ずっと顔を下に向けていたたまが、今日初めて顔を上げて言葉を発した。

その声音は震えていた。

 

 

「私、この作戦を抜けよう思うんだ」

「…何で?」

 

 

 

 あくまで冷静なスイムスイム。

たまは緊張でもしているのだろうか、体が小刻みに震えているが、再び話を始めた。

 

 

 

「やっぱり、魔法少女同士で殺しあうのはダメだと思うんだ」

「今さら何言ってんだよ!」

「たまは死ぬのが嫌じゃないの!?」

「…」

 

 

 

 たまの言葉でピーキーエンジェルズが猛反発した。

しかし、スイムスイムはその言葉に怒るわけでもなかった。

 

 

 

「そう思うなら、たまは抜ければいい」

「えっ…」

 

 

 

 予想外の返答に呆気にとられるたま。

もう少し反発されると思っていたからか、呆然としている。

 

 

 

「戦いたくないのに、無理にこの作戦に参加させるのは良くない」

「でも…スイムちゃん達は?」

「戦う。二人を倒せば大分楽になる」

「そーだね!あの二人、ムカつくし」

「そーいうこと、まぁ後は任せて!」

「みんな…」

 

 

 

 たまは3人の意見に押され、結局自分だけが戦いに参加しないという形になってしまった。

こんなつもりで言った筈じゃなかったのに。

 

 

 

「今日はここから離れた方がいい。ここは危ない」

「う、うん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スイムスイムに促され、たまは寺を後にした。

3人は残ってやはりシスターナナ達を襲うようだ。

たまは、本当はスイムスイムとピーキーエンジェルズにも、戦うのをやめてほしかった。

しかし、現実はそんなに甘くはなかった。

これでは今までと同じ、ただの臆病者ではないか。

そう思っていても、スイムスイム達に言い返せなかった。

心の何処かで恐怖心を感じていた。

自分が異論を唱えることで、今まで築き上げてきた仲間との関係が崩れてしまうのではないだろうか。

たま自身も、仲間がいなくなるのは嫌だった。

だからこれまでも、色々な言うことを聞いてきたのだ。

そして、今回も。

 

 

 

 

《変身だよ。》

 

 

 

 

 夢の中で出会った男がそう言って自分を励ましてくれた事を思い出した。

結局、自分は変われなかった。

たまは、そんな自分が悔しかった。

 

 

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

 

 

 そう嘆いて、寺から少し離れた通りの公園で泣き始めるたま。

その心には、後悔の感情しか残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ着くぞ、ナナ」

「結構掛かりましたね。ウィンタープリズン」

 

 

 

 一方、シスターナナとウィンタープリズンは、スイムスイム達と合流するために、王結寺へと向かっていた。

シスターナナは、協力者が増えると思っており、気分は良い様子。

だが、同行するウィンタープリズンの表情は優れない。

それはスイムスイム達を警戒しているためであり、もしシスターナナの身に何か起こっては遅い。

そんなことは起こってはいけない。

だから今回は“彼”に助っ人を頼んだのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し時間が経ち、ウィンタープリズンとシスターナナはやっと王結寺に辿り着いた。

この中で、スイムスイム達が待っている。

 

 

 

 

「ナナ。私の後ろについてきてくれ」

「えぇ。じゃあ行きましょうか」

 

 

 

 ウィンタープリズンが先に、一歩一歩ゆっくりと寺に足を踏み入れる。

その後にシスターナナも続く。

そして、寺の内部へ入った二人。

老朽化の為か、歩く度に軋む床が不気味な雰囲気を醸し出す。

 

 

 二人は、そのまま広間までやってきたが、そこには誰もいない。

何やら嫌な予感を感じているウィンタープリズン。

しかし、シスターナナはそんなこと気にもしないで奥へ進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時だった。

広間にあった電灯の一つが、姿を変えて、天使の姿になってシスターナナへ襲いかかった。

その正体は、ピーキーエンジェルズのミナエルだ。

 

 

 

 

「かかったなぁ!バカめ!」

「えっ…」

 

 

 

 ミナエルに気付いたシスターナナだったが、反応が遅く、このままでは攻撃を受けてしまう…。

ウィンタープリズンが必死にシスターナナへ駆け寄ろうとするも、間に合わない。

それを悟ったウィンタープリズンは、大声で叫んだ。

 

 

 

「頼む!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の出番みたいだな。ハァッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビッグ、プリーズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスターナナの横に魔方陣が現れる。

その魔方陣の中から、仮面ライダーウィザードが現れた。

直ぐ様ウィザードはウィザーソードガンでミナエルの攻撃を防ぐ。

 

 

 

「えぇ!?何でウィザード出てくるんだよ!テレポートなんて卑怯だぞ!」

「奇襲してきたお前が言えた事じゃないだろ!それに俺はテレポートじゃないさ」

 

 

 

 ウィザーソードガンでミナエルを押し返したウィザードは、宙を舞いながらキックをお見舞いした。

蹴り飛ばされて後退したミナエル。現状はウィザードが優勢だ。

 

 

 

「俺は最初から居たさ。ただ、お前には見えないくらい小さくなってたけどな」

「ハァ?やっぱあんた反則だよ!魔法たくさん使いやがって!」

 

 

 

 そう、ウィザードは最初からシスターナナ達に同行しており、スモールの魔法で蟻程度の大きさに縮小していたのだ。

気に食わない。とでも言いたげな顔で、ミナエルはウィザードに襲いかかる。

ウィザードはミナエルの攻撃を避け、ウィザーソードガンで一撃を与えた。

 

 

 

「んぐぅ…シスターナナをさっさと殺すつもりだったのにぃ!」

「ひっ…」

「やっぱりお前達は最初からナナの話を聞くつもりなんてなかったのか!」

 

 

 

 ミナエルの言葉を聞いて怯えた声を挙げたシスターナナ。

ウィンタープリズンはミナエルに憎悪の眼差しを向ける。

ミナエルは、口を歪めて笑みを浮かべる。

 

 

「誰がお前達なんかに協力するもんかバーカ!鬱陶しいんだよ!」

「貴様ァ!」

「おぉおぉお怒りだねぇ!ヒューヒュー!」

 

 

 ウィンタープリズンを散々挑発するミナエル。

そしてウィンタープリズンは、今にも襲いかかりそうな勢いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、そんなミナエルの顔を一発の銃弾が掠めた。

 

 

それは、ウィザードの放った銃弾である。

 

 

 

 

「おいミナエル…いい加減にしろ」

「え…へっ…」

「お前が今やろうとしていることは人殺しだぞ…」

「だったら何だ…効率の良いやり方を選んだだけだ!」

「よくそんな事が言えるな…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレイム…ドラゴン…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウィザードはフレイムドラゴンスタイルに変化してミナエルと相対する。

 

 

 

「もうこんな事はやめろ…」

「ヤダね。こうでもしないと、生き残れないから…」

 

 

 

「そうか…死にたくないのは分かる」

「だが、お前がシスターナナを殺すのは間違ってる。だから俺はお前を止める」

「ふーん。でもね、私ばっかに気を取られると、痛い目見るよ」

 

 

 

 ウィザードはその言葉ではっとした。

後ろを振り向くと、シスターナナとウィンタープリズンに向かって、大きな薙刀が振りかざされた。

 

 

 

 

「危ないっ!」

「きゃあ!」

 

 

 

 間一髪、ウィンタープリズンの壁を作る魔法で防いだものの、二人の目の前には、薙刀“ルーラ”を持った魔法少女が一人。

 

 

 

「スイムスイム…」

「ちょっと予想と違ったけど、ミナエル、ありがとう。こっちは私が相手する」

 

 

 

 そう、スイムスイムだ。

無表情なスイムスイムは、ルーラを構えて、ウィンタープリズンに襲いかかる。

シスターナナを守るようにしてウィンタープリズンは壁を作って攻撃を防ぐ。

しかし、壁は次々と破壊されていき、スイムスイムの猛攻が続く。

ついには、ウィンタープリズンはルーラによって切り傷を与えられてしまう。

 

 

 

「うぁぁぁっ!」

「ウィンタープリズン!」

 

 

 

 シスターナナが悲鳴を挙げる。

しかし、怯むことなくスイムスイムは再び襲いかかる。

 

 

 

「…遅い」

「……フッ…」

 

 

 

 ウィンタープリズンは小さく笑うと、シスターナナを寺の外に押し飛ばした。

そして、スイムスイムを思いっきり蹴り飛ばした。

 

 

 

「ウィンタープリズン!?いきなりどうしたの!」

「君は逃げろ!ここは危険だ!」

「逃げろって…でも、あなたは…!」

「絶対に生きて帰る!だから心配するな!」

 

 

 

 そう言ったのを最後に、ウィンタープリズンは寺の入口に壁を複数作った。

これで、シスターナナはもう寺に入れなくなってしまった。

だが、シスターナナは最後に、ウィンタープリズンに向けて祈りを捧げた。

 

 

 

「絶対…帰ってきて…雫」

 

 

 

 

 

 シスターナナの祈りは、ウィンタープリズンに届いた。

不思議と力がウィンタープリズンにみなぎる。

 

 

 

「ありがとう。奈々…」

「ウィンタープリズン!行けるか?」

「勿論さ」

 

 

 

 ウィザードに、ウィンタープリズンは笑みを浮かべて返事を返す。

ウィンタープリズンの言葉には、自身が籠っている。

 

 

 

「ウィザード…あなたも邪魔をするなら容赦しない」

「やっちゃえ!スイムスイム!」

「俺はお前達を止める。こんなところではやられない!」

「ナナを襲った報い、受けてもらうぞ」

 

 

 

 2対2で向かい合うウィザード、ウィンタープリズン。

そしてスイムスイム、ミナエル。

 

 

 

 一瞬訪れた沈黙を突き破り、スイムスイム、ミナエルが先に動く。

ウィザード、ウィンタープリズンがそれを迎え撃つ。

 

 

 

 

 

 

 スイムスイム達はこちらを殺す気でいる。

だからと言って食い下がる訳にもいかない。

ここで負けるわけにはいかない。

ウィザードはウィザーソードガンを構えてウィンタープリズンと共に応戦に入る…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、ウィザードとウィンタープリズンは、この戦いすらもスイムスイム達による陽動作戦であることを知らない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつまで泣いていたのだろうか。

たまの気分が落ち着いたのは、寺から帰ってきてしばらく時間が経っていた。

今頃、スイムスイム達はシスターナナ達を殺すべく、作戦を実行しているのだろうか。

 

 

結局自分は何も出来ずにここで咽び泣くだけだった。

たまが今いるここは寺から少し離れた住宅街の公園。

昼間の活気は全く無く、一つしかない電灯に照らされる遊具が不気味さを際立てる。

魔法少女であっても、夜中にこんな場所は訪れたくはないところだ。

あまりこういう場所が得意ではないたま。

直ぐにでも家に帰ろうと思って立ち上がった時、寺の方から誰かが走ってくるのを見かけ、慌てて隠れた。

 

 こんな時間に一体誰だろうか。

恐る恐る覗くと、なんと走ってきていたのはシスターナナだった。

とにかく一心不乱に走ってきたのか、かなり疲れている様子だ。

だが、シスターナナがここに来たということは、作戦は失敗したのだろうか。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…ここまで来れば、大丈夫かしら…」

 

 

 

 

 シスターナナの声が近付いてきた。

そして、それと同時に別の人物の声も聞こえてきた。

 

 

 

 

「ナナ!おーい!」

「あ、雫!」

 

 

 

 

 雫と呼ばれる女性の声だ。

だが、明らかにヴェス・ウィンタープリズンの声だ。

ウィンタープリズンの本名は雫というのだろう。

 

 

 

 

「無事だったのね!雫!」

「あぁ、生きて帰れて良かったよ」

 

 

 

 

 再びたまが覗くと、やはりウィンタープリズンとシスターナナであり、抱き合っている。

どうやら作戦は失敗したようだが、二人が生きていて、たまは内心嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、それからは二人の声が聞こえなくなった。

ちょっと前に大きな音がしたため、もう帰ってしまったのかと思い、もう一度たまはシスターナナ達がいた場所を覗いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、たまがそこで見た光景は、たまの想像を絶する、衝撃の光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスターナナは、ヴェス・ウィンタープリズンに言われて、寺から離れた場所に逃げてきた。

そして、そこで自分の後に恐らく逃げてきたウィンタープリズンと再開した。

ウィンタープリズンが死んでしまうのではないか、と心配してただけあり、生きて会えたのは本当に嬉しかった。

 

 

 

「雫、本当に生きていて良かった」

「ナナ、君もね」

 

 

 

 シスターナナは、あまりの嬉しさにウィンタープリズンに抱き付いた。

そして、ウィンタープリズンも、優しく抱きしめてくれる。

これ程幸せな時間はない、と思っていた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 右の脇腹に、違和感を感じた。

最初は、全く気にならなかったが、段々その違和感も大きくなったので、ゆっくりと右の脇腹を見てみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シスターナナの衣装も、ウィンタープリズンの衣装も、こんなに赤い箇所は無い。

 

 

 

 

 

 その赤い何かは、段々と大きくなっていき、シスターナナの衣装に侵食していく。

そして、息苦しさを感じ始めた。

 

 

 

 

 

 

 そんな時である。

 

 

 

 脇腹から何かを抜かれた感触がした。

 

 

 

 

 

 そして、シスターナナはその抜かれた物を見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 包丁だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウィンタープリズンを見ようとした。

 

 

 

 

 

 だが、もうそこにウィンタープリズンはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 白い羽に天使の輪を付けた魔法少女の姿が、そこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 その魔法少女は、こちらを見て満面の笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこで全てを悟った時は、もうシスターナナの意識が遠のく寸前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 地面に倒れる感触。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰かの叫び声が聞こえる。

誰なのか、そんなのは分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な……ん、で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出せた言葉はこれだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう視界が暗くなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これから自分はどうなるか、そんなの考える余地はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、最後に頭に浮かんだのは、一人の女性の名前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雫………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の笑顔を思い浮かべ、シスターナナの意識は暗く深い闇に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやああああああああああああああああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜、ほとんどの人間が眠った時間。

 

 

 

 

 静かな住宅街に、魔法少女・たまの悲鳴が轟いた…。




あれあれ?最後のはどういうことかな?(すっとぼけ)
僕は魔法少女を救済するとは言ったけど、生かすとも殺すとも言って無いんですよ(暗黒微笑)

これからの展開、どうなるのか、お楽しみに。



最近仁藤が出てませんが、理由はあるのでご了承を。



最後に、ピーキーエンジェルズ、シスターナナのファンの方々、申し訳ございませんでした。


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第32話 舞い降りし者

前回の皆様のご感想を読む限り、なかなか衝撃的だったようですね。
今回は、大いなる希望が降りてきます。
大事な事なので二度言います。降りてきます。


 仮面ライダーウィザード、ヴェス・ウィンタープリズンと、スイムスイム、ミナエルによる戦いが始まっている。

戦況は、若干スイムスイムとミナエルが押されているというところだ。

ウィザードが放つ多彩な魔法攻撃により、スイムスイムは苦戦を強いられる。

また、ウィンタープリズンの隙も与えぬ攻撃を浴び、ミナエルも決して優勢ではない。

 

 

 

「ミナエル、スイムスイム!いい加減諦めたらどうなんだ!」

「やだね!」

 

 

 ウィザードと戦うミナエルは、ウィザードに押されているにも関わらず、反抗している。

 

 

「これ以上の戦闘は無意味だ!俺はお前達を傷つけたくない…」

「うるせー!とにかくこっちもあんたらを止めないと全部パーになるんだよ!」

「なっ…何?」

 

 

 

 “止めないと”の言葉に違和感を覚えるウィザード。

まさか、相手が本当に自分たちを足止めしているなら。

こちらが足止めと思っていた行動を逆手に取られているのなら。

逆にこちらが罠に掛かったというのか…。

そして、ウィザードの推測を決定付ける証拠がもう一つある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもミナエルと共に行動しているユナエルがこの場に居ない。 

そして、ユナエルの魔法は、生物に変身することの出来る魔法。

 

 

 

 

 

 シスターナナが危ない…!

 

 

 

 

 

「くそっ!しまった!」

「ウィザード!どうしたんだ!」

「今すぐシスターナナの所へ行かないと…彼女が危険だ!」

「何だって!?」

 

 

 

 

 

 シスターナナが危険。その言葉を聞いた瞬間に、ウィンタープリズンの目の色が変わった。

ウィザードはドラゴタイマーを召喚し、操作する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウォータードラゴン!

 

 ハリケーンドラゴン!

 

 ランドドラゴン!

 

 ファイナルタイム!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウィザードは、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴンを呼び出し、4人に増加した。

 

 

 

「なっ、増えたぁ!?」

「…厄介」

 

 

 

 ウォータードラゴンはスイムスイム、ランドドラゴンはミナエルと対峙する。

フレイムドラゴンとハリケーンドラゴンは、シスターナナを追う。

 

 

 

「ウィンタープリズン!ここは二人で食い止める!お前はフレイムドラゴンとハリケーンドラゴンについていけ!」

「分身とは…すごいな。ならここは頼む!」

 

 

 

 フレイムドラゴン、ハリケーンドラゴン、そしてウィンタープリズンは、自身の作った壁の一つを破壊し、寺から脱出した。

 

 

 

「な、待て!」

「…行かせない」

 

 

 

 ミナエルとスイムスイムが追ってくる。

しかし、残ったウォータードラゴン、ランドドラゴンが立ち塞がる。

 

 

 

「行かせるか!」

「悪いけど、追い付かせるわけにはいかないんでな」

 

 

 

 

 

 ディフェンド!プリーズ!

 

 

 

 

 

 ランドドラゴンが土の壁を作って再び寺の入り口を塞いだ。

 

 

 

 

「げげぇー!面倒なことしやがって!」

「こうなったら…戦うしかない…」

 

 

 

 怒るミナエルを横目に、スイムスイムは薙刀“ルーラ”を構える。

そして、ウィザード二人もウィザーソードガンを出し、更にコピーの魔法でもう一つ作り出す。

二刀流でウィザーソードガンを使い、応戦状態を整える。

 

 

 

 

「「さぁ、ショータイムだ…!」」

 

 

 

 

 今度は二人のウィザードが、スイムスイム達に立ち向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見てしまった。

目の前で、シスターナナがユナエルに刺された。

倒れたシスターナナの周りが、少しずつ赤く染まる。

襲いかかる恐怖のあまり、たまは叫び声を挙げてしまった。

認識阻害のお陰で、一般の人間には気付かれないが、ユナエルには気づかれてしまった。

 

 

 

 

 

「うおっ、誰かと思えばたまじゃん!」

「ひっ…ゆ、ユナちゃん…」

「作戦成功だよ!これでシスターナナは死んだ!うざいのが消えてスカッとしたよ!」

 

 

 

 

 

 振り向き、たまに話しかけるユナエルは、笑顔だった。

たまには今のユナエルが理解出来ない。

何故笑顔なのか。

何故人を殺しておきながら平然としているのか。

今のたまに渦巻いている感情は、怒りなのか、それとも悲しみか。

 

 

 

 

「さーて、一人殺ったし、もーどろ!」

「…んで…」

「ん?何か言った?」

「何で…人を殺しても平気なの…?」

 

 

 

 

 たまはユナエルに向かってそう言った。

そんなたまの目からは、涙が溢れていた。

 

 

 

 

「な、何でたまが泣いてるんだよ…」

「だって…だって…」

「たまって、シスターナナと仲良かったのか?大して仲良くもない奴が死んでも、別になんとも思わないでしょ?」

「そういう問題じゃないよ…」

「は?」

「ユナちゃんもミナちゃんもスイムちゃんも、なんで平然と人を殺すなんて言えるの?」

 

 

 

 

 

 ユナエルは黙りこんだ。

たまは、泣きながらユナエルに訴える。

 

 

 

 

「こんな事に、何の意味があるの…!」

「意味も何も、生き残る為だよ!」

 

 

 

 

 ユナエルがたまに言い放つ。

 

 

 

 

「たまだって死にたくないだろ!私だって死にたくない!」

「それは、そうだけど…」

「今のままじゃ毎週誰かが死ぬ。だったら仕方ないじゃないか!」

「ユナちゃん…」

「自分たちが生きるには、誰かを脱落させるしかない…戦わないと生き残れない!」

「でも、他にも方法はあるよ!それを探す為にシスターナナ達はみんなと協力しようって言ってたんだよ…」

「…何だよ…たまもそんなこと言い出すのかよ…」

「え…?」

 

 

 

 ユナエルが、ゆっくりとたまの方へ近づいてくる。

 

 

 

「そういう偽善ぶった事言うのが、私は一番嫌いなんだよ…」

「ユナ…ちゃん…?」

「シスターナナだってそうだ。あんな事言いながら、いざトラブルが起きれば、全部ウィンタープリズンに任せっきりで自分はさっさと逃げやがって」

 

 

 

 

 ユナエルの言葉に、たまは返す言葉が無くなってしまう。

 

 

 

 

 

「とにかく、私達は生きる為に戦う。それが嫌ならこのチームから抜けるなりすればいいよ」

「ま…待って…」

 

 

 

 

 そう言い残して立ち去ろうとするユナエル。

しかし、そんなユナエルの目の前を、槍が通り抜けていった。

 

 

 

 

「うあっ!何だよ!」

「あ…アレは…」

 

 

 

 

 いきなりの攻撃で尻餅を付いたユナエル。

そして、たまが槍が飛んできた方向へ目を向けると…。

 

 

 

 

「ま、マジかよ…」

「嘘…」

 

 

 

 

 そこには、下級ファントム・グールの大群がいた。

明らかに、ユナエルを狙っての攻撃である。

そして、グールはユナエル目掛けて襲いかかってきた。

 

 

 

 

「数が多すぎるだろ!くっそ…こうなったら!」

「ユナちゃん!?」

 

 

 

 ユナエルは、真っ正面からグールの大群へ立ち向かう。

まずは一体のグールから槍を奪い、ユナエルが槍を使ってグールを切り裂いていく。

だが…。

 

 

 

 

「くっそぉ!何だよこいつら!どんだけいるんだよ!」

 

 

 

 

 倒しても倒しても、どこからかグールが現れ、ユナエルに襲いかかる。

そして、ユナエルも戦う内に疲労が増し…。

 

 

 

 

「うっ、ぐあぁ!」

「ユナちゃん!」

 

 

 

 グールの数による集団攻撃で、ユナエルもダメージを受けてしまう。

一度攻撃を受けると、避けきるのは不可能で、次々とダメージを受けるユナエル。

ついには、ユナエルはグールの攻撃でたまのいる場所まで吹き飛ばされてしまった。

 

 

 

 

「う…ぐっ…」

「ユナちゃん!しっかりして!」

「あいつら…ヤバいぞ…」

 

 

 

 

 グールの大群は、こちらに向かってゆっくり歩いてくる。

このままではいずれやられてしまう…

 

 

 

 

「…たま、今のうちに逃げて。私が時間を稼ぐ」

「えっ!ユナちゃん何言ってるの!」

「二人まとめて死ぬか、どっちかだけでも生き残るか。どちらを選んだ方が良いかなんて、たまなら分かるだろ」

「だけど…ユナちゃんだって死にたくないんじゃ…」

「死にたくないよ…でもこうするしかないんだ!」

「ユナちゃん…」

 

 

 

 

 そう言うと、ユナエルは再び立ち上がる。

そして、もう一度グールに向かう。

 

 

 

「私はどうすることも出来なくて、こうやって戦いに参加して、人殺しをするしかなくなったんだ」

「そんな…ユナちゃんも…」

「それにさ、さっきは言わなかったけど、たまの言葉には本気の気持ちが籠ってた。だから、たまが戦いを止める方法を探ってよ。きっと見つけられるよ」

「待って…ユナちゃん…突然過ぎて…頭が回らない…」

「じゃあな、たま」

「お姉ちゃんやリーダーにも、宜しく言っておいてよ」

 

 

 

 ユナエルは、再びグールの大群へ立ち向かう。

強力な武器を持たないユナエルでは、いずれやられてしまうことも分かっている。

それでも、ユナエルは立ち向かう。

 

 

 

「かかってこい!化け物共!」

 

 

 

 まずはグールを蹴り飛ばす。

そして、さっきと同じく槍を奪って戦う。

しかし、結果は変わらなかった。

先ほどよりも増殖したグールに、次第に押されるユナエル。

槍を落としてしまい、再び丸腰の状態になってしまう。

そんなユナエルに、背後から襲いかかるグールが二体。

これでは避けきれない。

 

 

 

「ごめん、お姉ちゃん…」

 

 

 

 ユナエルがそう呟いた。しかし…

 

 

 

 

 二体のグールが腹部に穴を開けて倒れて消滅した。

ユナエルは、辺りを見回した。

穴を作る魔法を使えるのは、一人だけだ。

グールが次々倒れていく。

そして、ユナエルの側に、一人の魔法少女が。

 

 

 

「ユナちゃん、しっかりして」

「たま…お前、なんで…」

「見捨てるなんて出来ないよ。二人で一緒に、いや、三人で生きるんだよ」

「三人?」

「ほら、シスターナナもってことだよ」

 

 

 

 ユナエルを救った魔法少女、たまはシスターナナが倒れている方向を指差す。

 

 

 

「もっと早く止血すれば良かったけど、一応まだ息はあるよ」

「…分かったよ。一緒に行こう」

 

 

 

 

 ユナエルと共に立ち上がるたま。

しかし、劣勢なのは変わらない。

たまは、これから始まるとされる戦いの前に、夢で出会ったあの人物に心の中で呟いた。

 

 

 

 

「(神様、どうか私達が生き残れる力を、私にください)」

 

 

 

 しかし、そう願った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう。でも、今回はヤバそうだから、俺も手を貸すよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

 たまが不思議に思った瞬間、オレンジ色の光が差し込み、そこから何かが飛び出してきた。

現れた何かは、今まで数えきれない程だったグールを、全て一瞬で殲滅した。

たまもユナエルも、気づいた時には全てが終わっていた。

 

 

 

 

「な、何だ?」

「ゆ、ユナちゃん!あれを見て!」

 

 

 

 

 たまが指を指す方向、そこには光に包まれて現れた、銀色の鎧を纏った者がいた。

その姿は、夢でたまが出会った人物と酷似していた。

しかし、何やら兜のようなものを装着している。

でも、あれは絶対…。

たまがそう思った時、その人物が振り返った。

顔こそ違うが、あの雰囲気…やはりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 たまの祈りが届いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は仮面ライダー鎧武。みんな、大丈夫か?」

「か、神様…」

「あぁ、そうさ。よく頑張ったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 神様、もとい仮面ライダー鎧武の言葉は、たまにとっては本当の神の如く暖かかった。




はい、神が降りてきました。
次回も結構なチート能力発動です。ご期待下さい。


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第33話 出陣・鎧武

PCの不具合による買い換えで、二週間程更新出来ませんでした。申し訳ございません。
お待たせ致しました。いよいよ神のステージです。

そして、仮面戦隊ゴライダーなるものが発表されましたね。
ブレイド復活は非常に嬉しいですね。



「た、たま、あの鎧武ってのと知り合いなのか?」

「まぁ、そんなものだよ。でも…本当に助けてくれるなんて…」

 

 

 

 たまとユナエルは、自分たちを救ってくれた戦士、仮面ライダー鎧武を見る。

鎧武は二人の方を向いて頷く。

 

 

 

「助けてって声は見過ごせない。そして助ける。それが仮面ライダーの役目さ」

 

 

 

 そう言った鎧武は、倒れているシスターナナを見つけた。

驚いて、慌てて駆け寄る。

 

 

 

「おいおい、とんでもないやられ方じゃないか」

「神様…鎧武さん。その人を助けてください!」

「あぁ。任せてくれ」

 

 

 

 たまの願いを聞き入れた鎧武は、自身の力でオレンジ色の光をシスターナナへ浴びせた。

光を受けたシスターナナは、まだ倒れているが、止血していた所の出血が治まり、刺されていた傷口も完全に消えていた。

どうやら、傷を修復したようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 丁度その時に、ヴェス・ウィンタープリズンとウィザードがやってきた。

ウィンタープリズンは、光を浴びて倒れているシスターナナに。

また、ウィザードは鎧武の存在に驚いている。

 

 

 

 

 

「な、ナナァ!」

「待て、ウィンタープリズン!って鎧武!?」

「ん?うおっ、ウィザードじゃねえか!久しぶりだな。ていうか何で分身してんだ?」

 

 

 

 ウィザードは今にも鎧武に飛び掛かりそうなウィンタープリズンを制止し、鎧武へ話しかける。

 

 

 

「ナナに何をしてるんだ!」

「落ち着け!なぁ鎧武!彼女は生きてるんだよな!」

「あ、あぁ勿論。血を流して倒れてたから治療してるだけだよ」

「治療…?ナナに一体何があったんだ!」

 

 

 

 シスターナナの事になると、途端に冷静さを欠くウィンタープリズン。

鎧武の言葉で収まるかと思いきや、より一層強くなってしまった。

すると、ウィンタープリズンの前にユナエルがやってきた。

 

 

 

「…シスターナナは、私が殺そうとナイフで刺した。ごめんなさい…」

「やっぱりお前らだったのか…!許さない…!」

 

 

 

 ユナエルの言葉で更に怒りをぶつけるウィンタープリズン。

 

 

 

「私のことはどう思ってくれたって構わない。…でも、たまの事は恨まないでくれ」

「…どういう意味だ…」

「ユナちゃん…」

 

 

 

 ユナエルは、一瞬だけたまを見ると、話を続けた。

 

 

 

「たまは、シスターナナの出血を止めようとしたりしてた。それに、さっきまでいた化け物から、シスターナナを守ろうともしてた。あいつは良いやつだから…」

「ウィンタープリズン、言いたい事はよくわかる。でもお前も一旦落ち着け。シスターナナだって死んじまったわけじゃない」

「…あぁ、そうだな。済まない、取り乱して」

 

 

 

 

 ユナエル、そしてウィザードの話で落ち着きを取り戻したウィンタープリズン。

今度はウィンタープリズンがユナエル、たまに詫びの言葉を伝える。

 

 

 

 

「ユナエル。君のしたことは許されるものではない。それでも、化け物…ファントムからナナを守ってくれたことは、感謝しよう。それと…」

「…?」

 

 

 

 ウィンタープリズンは、目線をたまに向ける。

たまは少し不思議そうな表情をしてウィンタープリズンを見つめる。

 

 

 

 

「今回のこと、君がいなければどうしようもないことになっていた。助かったよ、たま」

「えっ…いや、私なんか、全然力になれなくて…」

「そんなことないさ。たまがいなかったら、本当にどうなっていたか…」

 

 

 

 たまは驚きながらも感動していた。

これまでの人生、称賛されたことなど、ほとんど無かったからだ。

魔法少女となっても、誰かの指示に従うだけの“犬”だったたま。

それが今回、初めて自分の意見を貫いた。

直接的ではないが、結果として人の命を救うことが出来たのだ。

 

 

 

 

「おーい、これで大丈夫だ」

 

 

 

 鎧武が声をかける。

どうやらシスターナナの治療が終わったようだ。

 

 

 

「ナナ…」

「傷が治ってる!」

「あ、あんたが治したんだな…」

 

 

 

 目を覚ましはしないものの、傷が消えているシスターナナを見て、驚いている。

 

 

 

 

「あれだけの傷を治すなんて、鎧武、お前やっぱとんでもない力だな」

「まぁ、そりゃ神だしな」

 

 

 

 

 鎧武の能力に改めて驚くウィザード。

そして、安全を確認したウィザードはフレイムスタイルに戻り、分身を解除した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王結寺で戦うウォータードラゴン、ランドドラゴン、そしてスイムスイム、ミナエル。

スイムスイムの猛攻が続くも、劣勢という訳ではなくカウンターで押し返すウォータードラゴン。

ミナエルをグラビティの魔法で封じ込め、ソードガンでダメージを与えるランドドラゴン。

 

 

 

「ぐうぅ…」

「どうだ、俺の魔法は」

「邪魔…!」

 

 

 

 スイムスイムが猛スピードで襲い来る。

薙刀“ルーラ”の攻撃は強力であり、丸腰で喰らえばかなりの威力になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 バインド、プリーズ!

 

 

 

 

 

 

 バインドでスイムスイムを拘束する。

なんとかスイムスイムを押さえ込んだウォータードラゴン。

ランドドラゴンも、ミナエルを圧倒して吹き飛ばした。

 

 

 

 

「こいつら…強い…」

 

 

 

 再び戦闘態勢を整える二人だったが、相対するウィザード二人の前に魔方陣が現れた。

 

 

 

「おぉ、どうやら上手いこと行ったみたいだな」

「じゃあな、お前ら。もうこんなことはするなよ」

 

 

 

 

 そう言い残し、二人のウィザードは魔方陣に消えていった。

 

 

 

 

 

「なっ…待てよ!」

「…逃げられた」

 

 

 

 

 完全にしてやられたスイムスイム達。

向こうの思い通りに事が進んでしまったようだ。

 

 

 

 

「上手いこと行ったって…ユナは大丈夫なのかな…」

 

 

 

 ミナエルが相方、ユナエルの心配をしている。

もしユナエルに何かあったらと思うと、ミナエルも気が気でないのだろう。

 

 

 

 

 

「(ルーラだったら、もう少し上手に出来たのかな…)」

 

 

 

 

 スイムスイムには、そんな思いが頭を過っていた。

足止めされた挙げ句、現在ユナエルとも連絡が取れず、どうなっているのかも分からない。

まだまだ未熟なんだなと思いつつ、スイムスイムは新たな作戦を考えようとしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…こ、ここは…?」

「ナナ!目を覚ましたんだな!」

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、そこには自分の最も愛する女性が寄り添ってくれていた。

周りには、ウィザードにたま、更には見慣れない白銀の鎧を纏った戦士の姿。

そして、ピーキーエンジェルズの一人、ユナエル。

 

 

 

「あっ…!」

 

 

 

 ユナエルを見た瞬間に、先程までの出来事を思いだし、驚いた表情を見せるシスターナナ。

それに気付いたのか、ユナエルは詫びの言葉を話す。

 

 

 

「ごめんなさい…シスターナナ。あんたを騙すような事しちゃって…」

「いえ…いいんですよ。人は誰しも間違うこともありますしね」

「シスターナナ…ありがとう」

 

 

 

 シスターナナは、すぐに受け入れた。

これが彼女の包容力なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 何はともあれ、シスターナナは救われた。

これも、たまや駆けつけて来てくれた鎧武のお陰だろう。

 

 

 

 

「鎧武、ありがとうな。助けてくれて」

「気にすんなよウィザード。俺達ライダーだって助け合いが大切だしな」

「あぁ、そうだな」

 

 

 

 鎧武に礼を言うウィザード。

鎧武もそれに応えた。

 

 

 

 

 しかし、鎧武は近くに何かが接近してきているのを察知した。

それは、数は少ないが、巨大な何かだ。

 

 

 

 

 

「おい、ウィザード。何かが来るぞ。あの娘達を避難させてくれ」

「何…?分かった。でも一体どんな奴が…」

「ただの化け物じゃない、とんでもない大きさだ…」

 

 

 

 

 ウィザードにも、ついにその化け物の姿が見えた。

正体は、巨大ファントム・ウロボロス。数は3体。

 

 

 

 

「マズイ、お前ら!今すぐここから逃げて家に帰れ!」

「ウィザードさん?どういうことですか?」

「とんでもない化け物が来やがった…!」

「化け物!?」

「とにかく急げ、ここは危険だ」

「ウィザードさん達は?」

「俺達はここで奴らを食い止める」

「大丈夫なんですか?」

「心配するな。俺達は負けない…」

「私達も力にはなれないか?」

 

 

 

 

 たまやユナエル、ウィンタープリズンが訴える。

ただ逃げるだけというのも性に合わないのだろう。

しかし、ウィザードは首を横に振った。

 

 

 

「お前らを助ける為だ、こんな所で死なせるわけにはいかない」

「ウィザードさん…分かりました。気をつけて下さい!」

「生きてまた会おう、ウィザード!」

「あぁ!任せろ」

 

 

 

 

 たま達を逃がした後、ウィザードは鎧武と共にウロボロスに立ちはだかる。

 

 

 

 

「一難去ってまた一難だな」

「悪いな、鎧武」

「気にすんなって言ったろ?さっさとやっちまおうぜ」

「そうだな。行くぞ、鎧武」

「あぁ!ここからは俺達のステージだ!」

「さぁ、ショータイムだ!」

 

 

 

 

 

 

 ウィザード、鎧武はウロボロス3体に立ち向かう。

ウィザードはドラゴタイマーを呼び出し、オールドラゴンへ変化する。

 

 

 

 

 

 

 

 《ウォータードラゴン!》

 

 《ハリケーンドラゴン!》

 

 《ランドドラゴン!》

 

 《ファイナルタイム!》

 

 《オールドラゴン!プリーズ!》

 

 

 

 

 鎧武はベルト、戦極ドライバーに装着されている極ロックシードを操作して、アームズウェポンと呼ばれる武器を呼び出す。

 

 

 

 

 《大橙丸!》

 

 《バナスピアー!》

 

 

 

 

 オレンジモチーフの刀、大橙丸。そして、バナナをモチーフにしたバナスピアーを召喚し、鎧武は空を飛ぶウロボロスへ飛び込む。

 

 

 

 

 

「鎧武、お前空も飛べるのかよ」

「まぁな。神だからな」

「何でもアリかよ神…」

 

 

 

 

 ウィザードもオールドラゴンの力でウロボロスに立ち向かう。

オールドラゴヘルクローでウロボロスの頭部を攻撃する。

 

 

 

 

「コイツら、でっけえな…」

「まだまだ行けるだろ、ウィザード!」

「あぁ、この程度、大したことないさ!」

 

 

 

 

 鎧武はウロボロスの尻尾を大橙丸で切り裂く。

ウィザードはオールドラゴスカルから炎を放ち、頭部を焼却する。

 

 

 

 

「3体なのが面倒だな…さっさと倒さないと…」

「よっしゃ、任せろウィザード!」

 

 

 

 

 鎧武はヘルヘイムの植物を呼び出して3体のウロボロスを全て拘束する。

動けなくなったウロボロスに鎧武はバナスピアーと大橙丸で斬りかかる。

戦極ドライバーのカッティングブレードを一回倒し、必殺技を発動する。

 

 

 

 

 

《極スカッシュ!》

 

 

 

 

 

 オレンジとバナナのエネルギー波で、鎧武はウロボロスを吹き飛ばした。

ウロボロスの1体はそのまま爆発した。

 

 

 

 

 

「おいおいすげえな鎧武…。俺も負けてられないな」

 

 

 

 

 ウィザードは、オールドラゴテイルでウロボロスを弾き飛ばし、魔方陣で拘束する。

ドラゴンの幻影と共にウィザードはウロボロスに必殺、ストライクエンドを放つ。

 

 

 

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 ウィザードの必殺の一撃が、ウロボロスに炸裂する。

蹴り飛ばされてウロボロスは大きく爆散した。

 

 

 

 

「後は一体だな!」

「あぁ!一気に決めるぜ!」

 

 

 

 鎧武は再び極ロックシードを操作して、新たな武器を召喚する。

 

 

 

 

 《火縄大橙DJ銃!》

 

 《無双セイバー!》

 

 

 

 

 無双セイバー、火縄大橙DJ銃を呼び出して、合体させる。

大剣モードに変形した火縄大橙DJ銃を持ち、残り1体に立ち向かう鎧武。

今度はウロボロスの動きをヘルヘイムの植物で抑え込み、植物を使ってウロボロスを自由自在に操り、更に上空へ突き飛ばす。

ウィザードも、鎧武の援護をしてウロボロスに一撃一撃を与えていく。

ほぼ瀕死の状態までウロボロスを追い込んだ二人。

 

 

 

 

「さぁて、終わらせようぜ」

「あぁ、フィナーレだ」

 

 

 

 

 鎧武は火縄大橙DJ銃に、オレンジロックシードをセットする。

 

 

 

 

《ロックオン!》

 

 

 

 

《一、十、百、千、万、億、兆…フルーツバスケット!》

 

 

 

 

 

 

 大剣にエネルギーが籠る。

果物のオーラに包まれて、鎧武は一気に必殺技を放つ。

ウィザードも、オールドラゴヘルクローに力を込めて、一撃を放つ。

 

 

 

 

「セイハァァァ!」

「ハァッ!」

 

 

 

 

 ウィザードと鎧武の一撃がウロボロスに直撃する。

真っ二つに切り裂かれたウロボロスは為す術も無く爆散した。

 

 

 

 

 

「うっへぇ…つっかれた…」

「ふぃー…なんとかなったな」

 

 

 

 

 ウィザードと鎧武は地上に降りる。

二人は変身を解いた。

 

 

 

「久しぶりだな…って本当にすげぇ格好だなお前」

「この格好で会うと大体驚かれるよ…」

「そりゃそうだろ、多分永夢とかにもそんな反応されるぞ」

「ははっ…まぁとにかくお疲れ、ウィザード、いや、操真晴人」

「こっちこそ、お陰で助かったよ、葛葉紘汰」

 

 

 

 

 晴人は、変身を解いた鎧武、葛葉紘汰に感謝の言葉を述べた。

紘汰は、それに笑顔で応えた。

 

 

 

 

「そういえば、結局お前って何で地球に来てたんだ?」

「たまって娘の願いを聞き入れたってのが第一かな」

「そうなのか。たまも成長出来たみたいだし、本当にお前のお陰だな」

「まぁ、人助けが仮面ライダーの使命だからな。それに、この騒動も気になるしな」

「魔法少女とファントムの一件か?」

「あぁ。何やら嫌な予感がするんだ。俺にも協力出来ることがあると思ってな」

「そうか、それは助かる。これからもお願い出来るか?」

「勿論さ。一緒に戦おう」

 

 

 

 

 晴人と紘汰は、握手を交えて、協力を誓った。

 

 

 

「じゃあ晴人、俺は今からやることがあるから行ってくる」

「やること?」

「あぁ。でも、後に俺達の助けになることだ」

「そうか、分かった。そっちは任せる」

「おう、それと、たまの事も俺に任せてくれ」

「そりゃ助かる。じゃあ頼むな」

「あぁ。また会おうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、一体どこに連れてく気なんだよ…」

「すいません、仁藤さん。この先ですから…」

「全く、この男を連れてくる必要があったのか研修医。ウィザードと合流させれば良かっただろう」

「あぁ!?お前、この俺が邪魔って言いたいのか!?コノヤロー、今度お前のケーキにマヨネーズぶっかけてやる!」

「お前、それはやめろ!そんな物食えるか!」

「まぁまぁ二人共やめてください。もう少しですから」

 

 

 

 

 聖都大学附属病院の研修医、宝生永夢と外科医、鏡飛彩、そして仮面ライダービーストこと仁藤攻介は、ある場所に向かっていた。

目的は、永夢の知り合いに会って、この魔法少女の一件の手助けをしてもらうためだ。

 

 

 

 

「あっ、見えてきましたよ」

「なんだここ?」

「寺じゃないか。結構な大きさだな」

 

 

 

 目的地に到着した3人。そこには大きな寺があった。

ここが目的地である。

寺を散策していると、寺の掃除をしていた一人の男がこちらに話しかけて来た。

 

 

 

「お前達、何をしているんだ。参拝か、参拝なのか」

「い、いえ…その…」

 

 

 

 返答に困っている永夢の前に、また一人、住職らしき男が現れた。

 

 

 

「これ、ジャベル。お客方には誠意を込めて対応するのです」

「あの、すいません…」

「って!おやおや、あなたは!つまり何かあったのですな。呼んできましょうぞ、お待ちくだされ!」

「あっ、ちょ…」

 

 

 

 住職の男と、ジャベルと呼ばれた男は、寺の中へと入っていった。

 

 

 

「あぁ…行っちゃった…」

「ここの奴らは話を聞かない奴らばかりなのか…」

「融通きかない奴らだな!」

「お前が言うな、仁藤攻介」

 

 

 

 暫くして、寺から一人の青年がやってきた。

 

 

 

「ごめんね…騒がしくて大変だったでしょ?」

「いやいや、気にしないで」

「ところで、今日は何かあったの?」

「うん。忙しいところ悪いんだけど、君に協力してほしい事があるんだ。協力してくれる?」

「分かった。大変な事だってのは分かるから」

 

 

 

 その青年は、永夢の願いをすぐに受け入れてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう。タケル君」

「困った時はお互い様だよ、永夢先生」

 

 

 

 

 

 

 

 永夢が尋ねた青年、天空寺タケルは、笑顔で協力することを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 晴人、紘汰、進ノ介、タケル、永夢。

5人の戦士が次々とこの騒動に巻き込まれていく。

彼らが一同に会する日は、遠くないかもしれない…。




はい、お久しぶりの投稿でございます。
ちょっと今回は仮面ライダーメインで進めました。とにかく神を強くしました。
そして最後の一人が登場したことにより、いよいよ…!?
ですが、集合するのはもう少し後になります。
その日までお楽しみに。


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第34話 思い出話と掘り起こし

まほいくキャラソンライブ行って参りました。
あやねること佐倉綾音さんの男装、中々良かったです。

さて、今回は熱血刑事と不良娘の出会いが明かされます。
そして、神がついにあのキャラクターを…!


『何なんだぽん。あの仮面ライダーは…』

「随分と、お困りのようですね」

 

 

 

 ファヴは、ある廃屋の中で、森の音楽家クラムベリーと会話をしている。

ファヴの声音からは、焦りというよりも、怒りの感情が溢れている。

 

 

 

『せっかくユナエルがシスターナナを刺して、心が踊ってたのに、シスターナナの治療とかチートだぽん。能力半端ないぽん』

「あなたがせっかく送ったグールとウロボロスも、全て無駄になってしまいましたね」

『まだグールがやられることは分かってたぽん。でも瞬殺はないぽん。全滅まで10秒かからなかったぽん』

「そして、ウロボロスまで倒されてしまった…と。分が悪すぎましたね」

『元は魔法少女同士の殺し合いを期待していたんだけど…。甘かったぽん』

「ですがファヴ。こちらには動かしやすい駒が一人いるじゃないですか」

『動かしやすい…かは知らないけど、それは良い案だぽん。どうせそろそろ切り捨てるつもりだったぽん』

「では、早速連絡を取りましょうか…」

『良いぽん。これでもっとゲームは面白くなるぽん…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、泊刑事!」

「おぉ、トップスピードじゃないか!」

 

 

 

 刑事、泊進ノ介は、再びトップスピードに出会い、行動を共にしていた。

そして、トップスピードの横には、以前出会った時にはいなかったリップルが立っていた。

 

 

 

「隣の娘は?」

「あぁ、リップルっていうんだ。俺の相棒さ!」

「…チッ」

 

 

 

 突然の舌打ちに進ノ介は驚く。

何か気に障る事を言ってしまっただろうか?

すると、トップスピードが慌ててフォローを入れる。

 

 

 

「あぁ、気にしないでくれ。こいつは見た目怖いけど、中身は良いやつだから」

「…余計な事を言わなくてもいい」

「全く、素直じゃない奴だなぁ。ほれほれ~」

「…チッ」

 

 

 

 頭を撫でるトップスピード。しかし、リップルは再び舌打ちをする。

良い顔はしていないが、トップスピードから避けないあたり、二人にはかなりの信頼関係があると見た。

 

 

 しばらくして、リップルが進ノ介に尋ねた。

 

 

 

「ところで、あなたとトップスピードは何処で出会ったの…?」

「出会いか?」

「そうだなぁ…あの時はいろいろ大変だったなぁ…」

 

 

 

 

 すると、トップスピードと進ノ介はリップルに向かって語り出した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは昔の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 警視庁の刑事、泊進ノ介と、その相棒である早瀬明は、名深市をパトロールしていた。

近頃、この付近では暴走族が暴れており、夜間であったが為に周辺地域に住む住人からの苦情を受け、二人が暴走族の沈静化の任務を受けたのであった。

 

 

 

 

 

「着いたぞ進ノ介。この辺りらしいぞ」

「やっとか。でも静かじゃないか。とてもじゃないが暴走族なんていないような…」

「というか、この仕事受けておいてアレだが、このくらいの仕事は市の職員とかがやるんじゃないのか?」

「どうやら苦戦してるらしくてな。リーダーの女の子が厄介なんだそうだ」

 

 

 

 進ノ介の問いに、早瀬は答える。

すると、なにやらバイクの爆音が響いてくる。

地響きかのような音に、進ノ介と早瀬も思わず耳を塞ぐ。

 

 

 

「おいおい…これってまさか」

「来ちゃったか…」

 

 

 

 バイクが止まり、暴走族が二人の前に現れた。

リーダーらしき少女が先頭であり、恐らく彼女らが言われている暴走族であろう。

 

 

 

 

「おい、君たち。こんな夜に何をしてるんだ。こんな音じゃ周りの人に迷惑だろう」

 

 

 

 

 進ノ介が呼び掛ける。だが、リーダーらしき少女がこちらに向かって来た。

 

 

 

 

「はぁ?何だあんたら。邪魔くせえんだよ、どっかいけよ」

「ヒャッハァ!リーダーの邪魔すんじゃねえぜヒャッハー!」

 

 

 

 リーダーと部下らしき男二人が反論してくる。

部下の雰囲気がレトロ過ぎではないかと思った二人だったが、そんなことを言っている場合ではない。

 

 

 

「人の迷惑も考えたらどうだ?」

「俺らにとっちゃ、お前らが一番迷惑だよ!」

 

 

 

 早瀬が注意するも、聞く耳を持たない。

まさに不良というところか。

どうにかして抑えようとする二人であったが、なかなか収まらない集団。

 

 

 

 と、そこへ懐中電灯を持った男が近寄ってきた。

その男を見ると、リーダーの少女はあからさまに嫌な顔をした。

 

 

 

 

「君達、いい加減にしろ!」

「またお前かよ…」

 

 

 

 どうやらその男は、前々からこの件に関わっていた市役所の男のようだ。

その男は、こちらに気付くと声をかけてきた。

 

 

 

「あの…あなた方は?」

「警視庁から来ました、泊です」

「同じく早瀬です。パトロールで巡回していた所、彼女達に遭遇しました。なので説得をしております」

「それはそれは…ご苦労様です。そして我々の力が及ばず申し訳ない。自分は、名深市役所の室田と申します」

「そちらも、連日ご苦労様です…って室田さん!彼女達がいなくなってる!」

 

 

 

 進ノ介達が気付くと、不良集団はいなくなっていた。

こちらで話している隙に逃げてしまったのだろう。

 

 

 

「また逃げたのか…!」

「とにかく探しましょう。いくら集団とはいえ夜間は危険ですから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一旦話を止めたトップスピードと進ノ介。

リップルは反応こそ薄いものの、かなり話に集中していた。

 

 

 

「っていうのが、泊刑事と俺の出会いってワケよ」

「あぁ。色々大変だったよ」

「でも、そこから今のような関係性になるとは思えない。何かもっと重大なことがあったの?」

「まぁな…そこで泊刑事と仲良くなったし、そして昇一に惚れた…あっ」

「それ…言っちゃダメな奴じゃ…」

 

 

 

 

 昇一という新しい人物の登場で、リップルは更に疑問が出来た。

 

 

 

「昇一…?」

「あーあ、言っちまったよ。そこは後でするから、しょーがねえ、話を続けるぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 進ノ介達と、不良集団“エンブレス”の騒動はしばらく続いた。

しかし、そんな中のある日、大きな事件が起こった。

 

 

 

 いつも通りパトロールをしていた進ノ介達。

そんな所に、不良集団の一人が現れたのだ。

しかも、ボロボロの状態で。

 

 

 

「刑事さん達…助けてくれ…」

「お、おい!何があった!」

「リーダー達が…強盗に捕まっちまって…」

「何だと!?」

「進ノ介、恐らく今日の昼にあった銀行強盗だ。まだ犯人は捕まってなくてな」

「どこにいるんだ、そいつらは」

「ちょっと向こうの廃屋に…」

「分かった。早瀬、お前は他の刑事と、室田さんに連絡を。それと、こいつを休ませてあげてくれ」

「あ、あぁ。お前はどうするんだ」

「あいつらを助けに行く」

「大丈夫なのかよ。危険だ」

「あいつらはもっと危険な目に遭ってるんだ…!」

「お、おい!進ノ介!」

 

 

 

 進ノ介は走っていってしまった。

早瀬はしょうがなく、不良と共にパトカーに乗った。

 

 

 

「あーもう!行くぞ!」

「すまない…あの刑事さんにも、あんたにも迷惑かけちまって…」

「そんな事は気にするな。それに、あいつはああなったらもう止まらない」

「…?」

 

 

 

 首を傾げる不良に、早瀬はこう答えた。

 

 

 

「いわゆる、脳細胞がトップギアってやつだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前…俺達を捕まえて楽しいか?」

「ほざくな小娘。てめえらは人質なんだ、黙ってろ」

 

 

 

 

 一方、不良集団エンブレスのメンバーは、強盗犯に捕まり、人質にされていた。

強盗犯の手には拳銃が握られており、迂闊には動けない。

 

 

 

 

「リーダー、どうしよう…」

「いつかチャンスは来る…その時までは…」

「おい、コソコソ何を話してやがる」

 

 

 

 強盗犯の男が近づいてきた。

しかし、そこに一人の男が現れた。

 

 

 

「おい、その娘達を解放しろ!」

「誰だてめえは!」

「なっ、あんた…」

 

 

 

 現れたのは、進ノ介…ではなく、室田だった。

 

 

 

「早瀬さんから話は聞いた。大人しく投降しろ」

「この状況見て、良く言えるよなァ!」

 

 

 

 強盗犯は、拳銃をリーダー達に向ける。

 

 

 

「お前が余計な事をすれば、こいつらの命は無い」

「くっ…卑怯な…」

「卑怯もラッキョウもあるものか!」

「だったら、俺が変わりになってやる!だからその娘達を解放しろ!」

「笑わせる、だったらここでお前から先に葬ってやる!」

 

 

 

 拳銃の引き金が引かれた。

弾が発砲され、室田の腕に当たってしまった。

 

 

 

「ぐあぁ!」

「お、おいあんた!」

 

 

 

 腕から血が流れ、室田は倒れる。

 

 

 

「てめえ…本気かよ…」

「あぁ…本気さ…この娘達を守るためなら…」

「この野郎ォォォ!」

「危ない!」

 

 

 

 再び強盗犯が拳銃の引き金を引こうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、その時だった。

一発の銃弾が拳銃を弾き飛ばした。

驚く強盗犯の目線の先には、進ノ介が立っていた。

 

 

 

 

「そこまでだ、強盗犯」

「て、てめぇは…警察かよ…」

「お前を逮捕する…!」 

「このぉ…調子に乗りやがって…」

「動くな。もう直にお前は包囲される」

「くっそぉ…」

 

 

 

 進ノ介は直ぐに強盗犯を捕らえた。

反抗されないように、手錠をかける。

 

 

 

「どうせ、彼女達を人質にして、逃走用の車でも用意するつもりだったんだろ。詰めが甘い。警察を舐めるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく経ち、早瀬達が駆け付けて、強盗犯は逮捕された。

室田は腕に全治2週間のケガを追ったものの、命に別状は無かった。

また、犯行の動機は遊ぶ金が欲しかったという理由であり、実にありきたりだった。

こんな下らない悪意が室田やエンブレスのメンバーを苦しめたのだと考えると、改めて人間の悪意の恐ろしさを感じる。

 

 

 

 

 

「室田さん…すまない、もっと俺が早く行ければ…」

「気にしないで下さい。それに助かりましたから」

 

 

 

 

 話している二人の元に、エンブレスのリーダーがやってきた。

 

 

 

 

「…助かった。ありがとう」

「今回は無事だったが、これからは何が起こるか分かったもんじゃない、もうこんな事するのはやめろ」

「…分かったよ」

「やっと分かってくれたんだな」

 

 

 

 

 頷いたリーダーに、進ノ介と室田はやっと安心する。

すると、リーダーは室田に話しかけた。

 

 

 

「何で、俺達をあそこまでして救ってくれたんだ?」

「…ただ純粋に助けたかったってだけじゃダメか…?」

「ふふっ…あんた、名前は?」

「昇一。室田昇一だよ。でも何で?」

「聞いてみただけだよ。…俺はつばめだ。宜しくな!」

「お、おぉ…宜しく。ていうか何でお前の名前も?」

 

 

 

「…気付けよバカ」

 

 

 

 

「え?何か言った?」

「なーんも!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トップスピードは話を終えた。

全員が話に集中していた。

 

 

 

「長くなっちまったな、悪い、これが俺達の出会いだな」

「結局俺もこの後に昇一と仲良くなってな」

「ところで、その昇一って人は?」

 

 

 

 リップルはそこが気になっていた。

昇一という人物、つばめという人物。

なんとなくトップスピードの正体がつばめということは分かったが、結局昇一という人間とはどういう関係なんだろうか。

 

 

 

 

「そうだったな、それを言っとかないとな」

「おい、良いのか?」

「良いよ、リップルは相棒だしな」

 

 

 

 そう言うと、トップスピードは、光に包まれ始めた。

変身を解除したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リップルは目を疑った。

トップスピードの人間体は、マタニティドレスを着た女性だった。

お腹が膨らんでおり、その見た目は“妊婦”としか言い様がない。

 

 

 

 

 

「トップ…スピード?」

「おう。俺は室田つばめ。見た通り妊婦さ」

「…ごめん、思考が追い付かない」

「おいおい、そんな驚かなくても…」

「まぁまぁ、最初は驚くだろ」

「そうかなぁ…でも、活動には支障ないから安心してくれ」

「そうなんだ…それは良かった」

「おう、だからこれからも一緒に頑張ろうぜ!」

「…分かった」

 

 

 改めてリップルとつばめは共に活動する事を決めた。

 

 

 

「そう言えば、リップルも大分丸くなったよな」

「…そんなことない」

「まぁ素直じゃねえなあ…」

「…ちょっと、やめて、お腹を大事に…」

 

 

 

 そんな二人を見ながら、進ノ介は考え事をしていた。

 

 

 

「(俺も、彼女達を守れる力が必要か…?)」

「(でも、俺は変身出来ない…)」

「(ベルトさんはもういない…でも、変身出来なくても、俺にもやれることがあるはず…)」

「(今は少しでもアシストする事が、俺の役割だ…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここに来るのはそんなに久し振りという訳でもない。

相変わらず全てが無のような空間である。

やはり、これくらい静かな方がゆっくり眠れるのだろう。

今度こそ平和を祈って眠ったはずなのだが、こうしてまた目覚めさせるのも申し訳ないと思う。

だが、これも敵の野望を止める為だ。

そして、彼のエンジンをもう一度呼び起こすためだ。

ロックを強制的に開き、地下に降りる。

地下フロアに到着した。

そしてそこには、機械類が多く置かれている。

その中の一つに触れようとしたときである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…君は!?…と、よく見たら鎧武じゃないか、勝手に入ってくるのは驚くからやめてくれ』

「すまない、でも、俺が来たってことはどういう事か分かってくれると思うんだが…」

『また何かあったのかね…』

「あぁ、今度は前の戦いよりも危ない。地球全体の危機になる可能性がある」

『地球…全体…』

「頼む。また力を貸してくれるか?」

『私は中々深い眠りには着けなさそうだね…』

「すまない…でも、あいつの危機でもあるんだ」

『そうか…。分かった、私にも出来ることはしようか』

「ありがとう、助かるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鎧武が機械に触れると、地下フロアに灯りが付き、赤色のスーパービークルのエンジンが再び起動した…。




今回は過去話を書きましたが、トップスピード関連の設定も弄らせて貰いました。
リップルもここでトップスピードの秘密を知るという構成にしました。
最後のアレは、察してください。


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第35話 始まる戦乱

どうでもいい話ですが、超スーパーヒーロー大戦の試写会に行ってきました。
まぁ…良くも悪くもいつもの春映画でした。
ブレイブやジュウオウタイガーファンの方は楽しめるかも?
…アマゾンズには期待しない方が吉です。


「ところで、俺が手を貸すって言っても何をすればいいの?」

 

 

 

 

 

 天空寺タケルは、協力してほしいと大天空寺に訪れた宝生永夢、鏡飛彩、仁藤攻介を招き入れ、話をしていた。

 

 

 

「魔法少女って呼ばれている子達を助けて欲しいんだ」

「えっ、魔法少女…?」

 

 

 

 タケルは困惑の表情を浮かべる。

まるで、何を言っているんだとでも言いたげである。

 

 

 

「意味が理解出来ないのも分からなくはない。だが真実だ」

「おう、俺達も実際に出会ってるからな」

「うん。正直僕も理解出来て無いから大丈夫」

 

 

 

 飛彩や仁藤もフォローを入れて対応する。

 

 

 

「そ、そうなんだ…じゃあ、俺は魔法少女の娘達を助ければ良いのかな?」

「うん。それに晴人さんや泊さん達も一緒に行動してるんだ」

「泊さん達まで?そんなに大事に…」

「どうやら、晴人さんが戦ってきた敵が、この事に関わってるみたいだし…」

「分かった。俺も名深市に行くよ」

「それは助かる」

「晴人達も喜ぶぞ」

「ありがとう、タケル君」

 

 

 

 永夢達は、出発の準備を整える。

そして、タケルは、寺の住職、御成の元へ話を伝える。

 

 

 

 

「たっ、タケル殿、何処へ向かわれるのですか!」

「ゴメン、御成。ちょっとやらなきゃいけない事が出来たから行ってくる」

「やらなきゃいけない事?もしかして、また眼魔が…?」

「いや、分からない。とにかく、寺のことは任せたよ!ジャベルと喧嘩しないでね!」

「あっ、ちょ、お待ちくだされええええええええ!拙僧もお供しますぞぉ!」

「御成はここにいて!こっちは俺達が頑張るから!」

「ハッ、いきなり要らない子宣言…ならば拙僧はこちらでやることを成しますぞ!御武運を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タケルは先に寺から出ていた永夢達と合流した。

 

 

 

 

「お待たせ、じゃあ行こうか!」

「うん!」

「急ぐぞ、向こうで何が起こっているか分からん」

「おう!待ってろよ~みんな!」

 

 

 

 タケル達は、名深市に向かう。

だが、この時はこの先起こる戦いをまだ知らない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ…リップル。そんなに俺の体を心配しなくても大丈夫だって…」

「でも…万が一何かあったらいけない」

「リップル…お前ってそんなキャラだったっけ?」

「トップスピードには色々恩もある…。だから私も恩返ししたい」

「な、なんかありがとうな、リップル」

 

 

 

 

 リップルとトップスピード、そして泊進ノ介は今日も行動を共にしていた。

トップスピードが妊婦であることを知って以降、リップルはトップスピードをやたらと護衛するようになった。

 

 

 

 

「…分かった。そっちは任せる」

 

 

 

 二人が話している間、進ノ介は電話で警察仲間と通信していた。

 

 

 

「泊刑事、どうしたんだ?」

「こっちの事件の前に調べてた事なんだけど、そっちに進展があったらしくてな」

「へぇ…大変なんだな、刑事ってのも」

「あぁ…しかもその事件もこの近くでな」

「ちなみに、どんな事件なんだ?」

「自分の子供に虐待して失踪した女を探してるんだ。名前は確か…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「山元奈緒子…って言ったかな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何の用だい…あんたら」

「突然ですいませんね。カラミティ・メアリ」

『お話したいことがあるぽん』

 

 

 

 

 カラミティ・メアリは、活動中に現れたクラムベリーとファヴに話しかけられていた。

 

 

 

 

「話…?」

「あなたにもメリットのある話です」

『そうだぽん。暴れまわりたい君にはぴったりの仕事ぽん』

「随分な物言いだねぇ。良いさ、話は聞いてやるよ」

「どうも。というのもあれですが、簡単な話です」

『市街地でとにかく暴れてテロをしてほしいぽん』

「…はぁ?」

「何か不満ですか?」

「…いや、そういうんじゃないさ。つまり、あんたらは一番動かしやすいあたしを選んだってことかい?」

『お見通しかぽん。暴れたいだけの単調な奴かと思ってたぽん』

 

 

 

 ファヴがそう言った瞬間、メアリは持っていたショットガンの引き金を引いた。

ファヴに向けられた銃弾であったが、ファヴは一瞬で避けた。

 

 

 

『ま、待つぽん。君をイラつかせるつもりじゃなかったぽん、申し訳ないぽん』

「相手があんたらだからって容赦はしない。次は無いと思いな」

「ご無礼を致しました。ですが、今回の事はあなたにもメリットはあると思うのです」

『そうだぽん。散々な目に合わされたウィザードやリップル達にも復讐できるぽん』

「…確かに、それは悪くない話だ」

「そう言って下さると思っていましたよ」

『それなら決まりぽん。決行は明日で宜しくぽん』

「分かった。やってやるよ。それにしても、あんたらの秘密を知ってるあたしを信頼していいのかい?いつ裏切るか分からないよ?」

 

 

 

 メアリは二人に問う。

ファヴが答える。

 

 

 

『そうなったら、君を消すだけぽん。よっぽど、君のような人間は裏切らないと思ってるぽん』

「そうかい…まぁ、せっかくの機会だ、手を貸してやるよ」

「では、宜しくお願いします。カラミティ・メアリ」

『楽しいゲームを期待してるぽん』

「なぁ、ファヴ。あんたの目的は一体何なんだい?あんたは魔法少女を育てたいのか、殺したいのか…」

『何を言ってるぽん。ファヴとしてはこのゲームを面白く出来れば、それでいいぽん。そこから最強の魔法少女を作り出せれば満足ぽん』

「ファヴ…お前は…」

『元々は君も含め、魔法少女達で殺しあって貰うつもりだったぽん。でも、あの仮面ライダーとかいう奴等のせいで、計画は破綻したぽん。君にはファヴの恨みも込めて、仮面ライダーを殺してほしいぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 そう言うファヴの表情は変わらないが、そこからは狂気が滲み出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、名深市のある廃墟の屋上に、カラミティ・メアリは立っていた。

そこからは、街や高速道路を見渡すことが出来る。

市街地では今も、多くの人や車が往来している。

そんな光景を見ながら、メアリはそこにいる人々に向けてスナイパーライフルを構える。

今回はファヴやクラムベリーに協力する形となってしまったが、自分にもメリットがある以上、やるしかあるまい。

 

 

 

『一般市民を狙い撃ちすれば、ウィザード達も、魔法少女達も集まってくるぽん』

 

 

 

 ファヴはそう言っていた。

騒動を起こせば、恐らく魔法少女達がやってくると考えたのだろう。

メアリは、ここで仮面ライダー達に仕返しが出来るなら何でもやってやろうと思っていた。

そしてリップル。彼女も、魔法少女になった最初の頃から何度もメアリに突っかかって来ていた。

ほとんどの魔法少女は自分に楯突くことは無かった。

だが、リップルだけは違った。

彼女は自分に何度も反抗し、攻撃してきた。

今のメアリに渦巻いているのは殺意に近いものだった。

ムカつく人間は全て消す。

それが、カラミティ・メアリの本質である。

 

 

 

 

「かかって来な…あたしがぶっ潰してやるよ…」

 

 

 

 

 スナイパーライフルを構え、メアリは引き金を引いた。

市街地に放った銃弾は、人を撃ち抜く。

何人もの人が倒れていく。

また、高速道路に放った銃弾は車に当たり、車が燃え始める。

人々の悲鳴が聞こえ始める。

だが、メアリは人々の悲鳴など気にもしていない。

 

 

 

「ハハッ、ハハハハハァ!」

 

 

 

 メアリの笑い声が町中に響く。

狂気の戦いが、幕を開ける…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、街から爆発音や悲鳴が聞こえ始めた。

今日も活動の為に集まっていたウィザード、スノーホワイト、ラ・ピュセル、ハードゴア・アリス。

異変に気付き、街へ急ぐウィザード達。

 

 

 

 

「何だ、どういうことだ!」

「何が起こってるの…?」

「これは一体…」

「危険な予感がします…」

「なんかヤバそうだな、急ごう、スノーホワイト、ラ・ピュセル、アリス!」

 

 

 

 

 

 

 

 この異常事態に気付いていたのは、ウィザード達だけでは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、何だ今の音…」

「泊…さん、多分市街地の方…」

「マジかよ…泊刑事、リップル、行こうぜ。何か嫌な予感がする…」

「嫌な予感…?トップスピード、お前がそんな事言うのは珍しいな」

「とにかく急ごうぜ…なんか大変な事になってるし…」

「あぁ…」

 

 

 

「(俺に何が出来るか分からない…。今の自分でどれだけ役に立てるかも…)」

「(ベルトさん…あんたがいるたら、どれだけ良かったことか…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、何かヤバいことになってんな…」

「っていうか、この格好じゃ怪しまれるな、戻っておくか」

 

 

 

 銀色の鎧を着けた男、葛葉紘汰は、神のような武装から、人間の姿に変化した。

 

 

 

「晴人も、進ノ介も、みんな向かってんのかな。…よし!こうしちゃいられない」

「あの人は車ごと進ノ介のところに行くって言ってたし、俺は街の人を助けるか!」

「それに、ただの事件じゃなさそうだしな…急ぐか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リップル、トップスピード、進ノ介は市街地にまでやってきた。

周りには、救急車や、消防車、倒れている人や血を流している人と、悲惨な状況である。

 

 

 

「なんてことだ…」

「一体何でこんなことに…」

 

 

 

 予想以上の事態に、唖然とする進ノ介、トップスピード。

そんな中、リップルは、ある場所を一点見つめていた。

リップルが見ている先。そこには…

 

 

 

「どうしたんだよリップル?」

「あの廃墟の屋上を見て…」

「屋上?…誰かいるぞ!」

「リップル。もしかしてあいつって…」

「うん…この事件の元凶は、あいつだったんだ…」

 

 

 

 見つめる先は、ただ一つ。

そこには、スナイパーライフルを乱射して、大声で笑っている魔法少女。

トップスピードや進ノ介も驚いているが、今すぐに止めなければいけない。

リップルの表情が驚きから怒りに変わっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カラミティ・メアリ…!」




はい、投稿遅れた割には薄い内容で申し訳ございません。
次回からは、いよいよゲリライベントです。
ついに皆様ご期待の場面が…!?


まさかまさかの、この作品のスピンオフを、流離太さんという作者さんに書いてもらうことになりました。
リンクは(https://novel.syosetu.org/116258/)です。
話の時系列、整合性は気になさらず、こちらも応援していただけると幸いです。


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第36話 因縁

最近本当に忙しくて投稿が出来なくて申し訳ございません。
今回はメアリ戦でございます。
前回登場しなかった魔法少女達は、この次以降に出します。
今回は登場しませんのであしからず。


「カラミティ・メアリ…!」

 

 

 

 リップルが睨み付ける先には、カラミティ・メアリの姿が。

メアリはスナイパーライフルを乱射し、市街地に被害を及ばせている。

 

 

 

「早く奴を止めないと…」

「止めるって、リップルお前…」

 

 

 

 メアリのいる場所へ駆け出すリップルを、トップスピードが止める。

 

 

 

「無茶だリップル、お前じゃ勝てない」

「だからって放っておいたら、被害が増える…」

「確かに、このままじゃ酷いことになる。元凶のあの魔法少女を止めなきゃな」

 

 

 

 

 リップル達と行動を共にしている進ノ介も、リップルの意見に賛同する。

この事態を収めるには、カラミティ・メアリを倒すしかない。

トップスピードは反対していたが、やがて…

 

 

 

 

「…もう、分かったよ。やるんならやるぞリップル!」

「うん。メアリを倒そう」

「ここは危険だ。泊刑事、メアリのことは任せてくれ、あんたは街の人を避難させてくれ」

「あ、あぁ…分かった。気を付けろよ」

 

 

 

 

 トップスピードとリップルは、トップスピードの使う箒、ラピッドスワローに乗り込む。

そして、トップスピードはラピッドスワローのエンジンを掛けて飛んでいった。

 

 

 

 

「行くぜ、相棒!」

 

 

 

 

 一人残された進ノ介は、行ってしまったトップスピード達を見つめる。

 

 

 

 

「…ここは危険か…。確かに、今の俺じゃ魔法少女に太刀打ち出来るだけの力はない…」

「くっ…あいつらに頼る事しか出来ないのか、俺は…」

 

 

 

 そして、進ノ介の脳裏には、これまで共に戦っていた相棒とも呼べる人物が浮かび上がっていた。

 

 

 

 

「…ベルトさん。あんたの力を借りたいよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 そんな進ノ介の思いは、まだ【彼】には届かない。

嘆いていても仕方ない、進ノ介は被害が拡大しつつある市街地へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カラミティ・メアリは暴走にも近い形でスナイパーライフルを乱射し、街に被害を与え続けている。

道路の車が炎に包まれて破壊されていく。タイヤが燃え盛りながら道路を転がっていく。

そこから聞こえるのは人々の悲鳴。

その声が鬱陶しく感じ、まずは甲高い声を出す女をスナイパーライフルで撃ってみる。

下半身に銃弾が直撃して、足を無くして倒れる女。

余計に騒がしくなったから、今度は頭部を狙い撃つ。

一人の女が撃たれて死んだ。その光景を見た人々も、パニックになっている。

面倒だから、まとめて撃ち殺してやった。

よく見えないが、恐らく内臓等が飛び散っているだろう。

端から見れば、地獄絵図としか言い様のない光景。

 

 

 しかし、メアリは不満だった。

このスナイパーライフル、ドラグノフの威力は絶大だ。

しかし、ドラグノフを試すには普通の人間じゃ脆すぎる。故につまらないと感じていたからだ。

人間ではつまらない。ならば車等の機械を狙えば良い。

しかし、その機械ですらつまらない。ならば、魔法少女や仮面ライダーを狙えば良い。

そんな事を考えていた矢先…

 

 

 

 

「カラミティ・メアリィ!」

「おいおいリップル危ないって!」

 

 

 

 

 リップルとトップスピードがやって来た。

メアリは、それを見ると、口元を歪めて笑顔を見せた。

そして、大いに喜んだ。

このスナイパーライフルの標的に値する、絶好の獲物が現れた、と。

 

 

 

 

「…やっと来たのかい…待ちくたびれたよ…」

「お前…一体何の為にこんなことを…」

 

 

 

 

 リップルはメアリを問い詰める。

その答えは、至ってシンプルだった。

 

 

 

 

「何の為にって、簡単なことさ…お前をおびき寄せて殺す為だよ…」

「何…!?」

「これだけ騒ぎを起こせばあんたらみたいなのが勝手に寄ってくるだろ、それを叩き潰すだけさ」

「ってことは…今回の騒動は…」

 

 

 

 トップスピードが驚きながらも訪ねる。

 

 

 

「そうさ、街の人間共は前座に過ぎなかったんだよ、死のうが生きてようが知ったこっちゃないね」

 

 

 

 カラミティ・メアリは淡々と答えた。

しかし、その時だった。

刀がスナイパーライフルに直撃し、メアリの手から弾かれた。

そう、リップルが刀を投げてメアリのスナイパーライフルを攻撃したのだ。

メアリは一瞬だけ気付くのに遅れたが、直ぐに拳銃を取りだしてリップルに銃弾を発射する。

リップルは銃弾を避けて、先ほど投げた刀を取り戻し、メアリに正面から飛び込む。

メアリも拳銃の弾を出し惜しみせずにリップルに向けて連射する。

銃弾を刀で弾き、リップルはメアリの懐に飛び込んだ。

 

 

 

 

「…お嬢さん、あんたはそういう奴だったねぇ…!」

「何が言いたい…!」

「あたしと最初に会った時から…あんたはあたしをムカつかせる奴だったって言ってんのさァ!」

 

 

 

 

 メアリは更に銃弾を零距離で乱射する。

辛うじて避けきったリップルだったが、銃弾に完全に気を取られて蹴りを浴びてしまう。

リップルはそのまま吹き飛ばされて倒れ込む。

そこに追撃を加えようとするメアリ。

立ち上がろうとするリップルに拳銃で発砲したメアリ。

しかし、リップルはその場に居なかった。

驚いて辺りを見回すメアリ。

しかし、その場には誰も居ない。

そこには、トップスピードの姿も無かった。

メアリはそれを確認すると、ニヤリと口元を歪めた。

 

 

 

「…まさか、これで終わりなんて無いだろうな、お嬢さん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無茶すんな、リップル!」

「トップスピード…?」

 

 

 

 

 リップルは気付いた時には空を飛んでいた。

そして、今はメアリに気付かれないような場所にいる。

リップルの危機を救ったのは、トップスピードだった。

銃弾がリップルに到着する前に、ラピッドスワローに乗ったトップスピードがリップルを拾って逃げてきたのだ。

リップルとメアリの戦いに付いていけなかったトップスピードは、撤退のチャンスを窺っていたのだ。

 

 

 

 

 

「リップル、やっぱり危険だ、ここは退いとけ」

「ダメ。今ここで仕留めないと…」

「何言ってるんだよお前。さっきでさえあんなんだったんだ、勝てるわけない」

「トップスピードだって聞いたでしょ。あいつの目的は私達魔法少女だ。私達を誘き寄せる為にあんなテロみたいな事やってるんだよ」

「落ち着け、リップル!」

 

 

 

 

 トップスピードに叫ばれ、やっと平静を取り戻したリップル。

一息付いたリップルに、トップスピードはもう一度警告する。

 

 

 

 

「どのみち危険だ。今は退いた方が良い」

「でも…私はこのまま逃げるわけにもいかない」

「リップル…お前何でそこまで…」

 

 

 

 トップスピードは撤退を頑なに拒むリップルに驚いている。

リップルが、今まであまり見せた事の無い表情をしているからだ。

 

 

 

 

「私は、世界中の人を救えるとは思ってない。でも、こうやって苦しんでいる人が目の前にいるのに逃げ出すなんて出来ない。助けられる人達がいるなら、私はその人達に手を伸ばす」

「逃げ出したら、魔法少女なんかじゃない」

 

 

 

 

 リップルは、かつて憧れていた正しい魔法少女の姿、そしてそれを具現化したような魔法少女、スノーホワイトの姿を頭に思い浮かべた。

 

 

 

 

「…私は、魔法少女だ」

 

 

 

 

 トップスピードは、リップルのその言葉を聞くと、少しの間黙りこんだが、やがてため息を吐いた。

 

 

 

 

「…そうかい」

 

 

 

 

 トップスピードは、右手で帽子を押さえた。

そして、少し笑って答えた。

 

 

 

 

「言うようになったじゃねえか…お前がこんなに喋るの、初めて見たわ」

「…ただ、ちょっと言葉が足らないね」

 

 

 

 

 ラピッドスワローを起動させ、リップルに乗るように手招きする。

少し戸惑っているリップルに、トップスピードが答えた。

 

 

 

 

「俺だって魔法少女だぜ、相棒」

「トップスピード…?」

「お前にあそこまで言われたのに、逃げるわけにもいかねぇだろ。俺もとことん付いてってやる」

「でも、トップスピードには…」

「あ、お腹のことか?変な事しなけりゃ大丈夫さ。魔法少女なんだし。たまには俺を信じろ」

「…分かった。ありがとう」

「よし、行くぜ相棒!」

 

 

 

 

 ラピッドスワローは全速力でカラミティ・メアリのいる場所へ向かって進む。

メアリのいる建物へ近づくに連れて、殺気を強く感じるようになった。

すぐそこにメアリがいる。そう感じた時だ。

拳銃の弾が何発もこちらへ放たれた。

 

 

 

「トップスピード!」

「分かってる!しっかり掴まっておけよ!」

 

 

 

 ラピッドスワローの速度を早め、銃弾を避ける。

猛スピードで最上階に向かう。

そこには、やはり拳銃を構えたメアリが立っていた。

 

 

 

「トップスピード、一旦降りる、あいつの相手は私がする!」

「あ、ちょい相棒!」

 

 

 

 ラピッドスワローから飛び降り、メアリに向かっていくリップル。

相変わらずメアリは拳銃を乱射してくる。そしてその顔は笑っている。

その顔を見ると、余計に腹立たしくなる。

刀で銃弾を弾き、飛び蹴りをメアリに浴びせる。

体勢を立て直しながら、メアリは拳銃を再び乱射した。

 

 

 

 

「メアリ…!」

「やっぱり来ると思ったよ、お嬢さん。それに、今度は二人がかりみたいだねぇ」

「おいおい、勝手に降りるなよ相棒。びっくりするだろ…って、んな事言ってる場合じゃねえか」

 

 

 

 

 ラピッドスワローを停車させて降りて駆け寄ってきたトップスピード。

現状、メアリは分が悪いのにも関わらず、余裕の笑みを浮かべている。

まるで、この状況を楽しんでいるかのように。

 

 

 

「じゃあ、第二ラウンドと行くかい…お嬢さん方」

「私はお前を許さない。ここで絶対仕留める」

「相棒、無茶だけはすんなよ。ハンドル剣、来い!」

 

 

 

 リップルは刀と手裏剣、トップスピードはラピッドスワローに乗り、片手にはハンドル剣を構える。

しかし、メアリは戦う素振りを見せない。

 

 

 

「いや、ちょっと待て。せっかくだ、もう少し場を盛り上げようかね」

「…メアリ、何をする気だ!」

「なぁに…ちょっと爆弾を仕掛けさせてもらっただけさ」

 

 

 

 

 メアリは何かのスイッチを取り出した。

嫌な予感がする。そうリップルは感じた。

あれを押されてしまったら大変な事になる。そんな気がした。

 

 

 

 

「待て、メアリ!やめろ!」

 

 

 

 

 リップルの叫びは、メアリに届くはずもなく…。

メアリは笑いながらスイッチを押した。

それと同時に市街地の方で爆発音が響き渡った。

 

 

 

「何だ…今の音!?」

「トップスピード…市街地の方を見て!」

「市街地って確か…さっき泊刑事が向かっていった方だよな…」

「嘘……?」

 

 

 

 リップルとトップスピードは言葉を失った。

先ほどまでは健在していた市街地が、炎の海になっている。

 

 

 

 

「ハハハハッ!ハハハハハハハハァッ!用意しておいて正解だったよ!」

 

 

 

 

 メアリの笑い声が響く中、リップルとトップスピードは、思わぬ悲劇に、ただただ絶句するしかなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いて移動してください!焦らずに落ち着いて下さい!」

 

 

 

 

 進ノ介は、被害が拡大している市街地で救助活動をしている。

怪我を負っている人等は助ける事は出来るが、既に息絶えていたり、上半身や下半身のみが残っていたり、体の内臓部分が飛び散っている遺体があるなど、殺伐とした状況となっている。

ある程度の人を避難させることは出来たが、完全に避難させるにはもう少し時間が掛かりそうだ。

 

 

 

 

「後少しか…あいつらは大丈夫かな…」

 

 

 

 

 今頃はリップルとトップスピードがカラミティ・メアリと戦っているのだろうか。

彼女達に頼るしか無いのが情けないが、避難するまでは、メアリを抑え込んで貰いたい。

と、進ノ介が考えていた時だった。

何か地面が揺れている感覚がした。

地震とは違った、また別の感覚。

…嫌な予感がする。

他の人々を避難させるにも、パニック状態になっており、とてもじゃないが避難させられるのは難しい。

やってしまった。これでは危険だ。

 

 

 

「しまった!皆さん逃げて!」

 

 

 

 

 自分たちのいる反対側の道が爆発し始めた。

他の人々は逃げられるかもしれないが、自分はもう無理かもしれない。

回りが爆発する。視界が炎に包まれる。

…せっかくここまで生きてきたのに、ここで終わるのだろうか。

 

 

 やがて自分がどこにいるのかの感覚が分からなくなった。

朦朧とし始めた意識の中、進ノ介の目の前には赤い見慣れた車が映った。

…だが、恐らく幻覚だろう。

でも、本当に彼が戻ってきてくれたら、こんな状況でも生き延びられただろうか。

 

 

 

『進ノ介!しっかりするんだ、進ノ介ェ!』

 

 

 

 自分を呼んでいる声がする。

それも、一番会いたかった人物の声で。

でも、恐らくこれも幻聴なのだろう。

進ノ介は、その声の主のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

「…ベルトさん…」

 

 

 

 

 

 

 進ノ介の意識は、ここで途切れてしまった…。




雑に且つ強引に締めましたが、とりあえずゲリライベント開始です。
モブ厳です。
最後の最後で登場しましたが、次回は正式にアイツの復活です。お楽しみに。


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第37話 復活する戦士は何の為に走るのか

ご報告ですが、この作品の感想が200件を突破しました!
皆さんの応援があったからこそのこの作品です。
どうぞこれからも応援宜しくお願いします!


「おい、今の爆発はなんだ!」

「分かりません。でも向こうの方で何かが起こったんじゃ…」

 

 

 

 市街地についたウィザード、スノーホワイト、ラ・ピュセル、ハードゴア・アリス。

突然の爆発に驚く4人だったが、その場所へ急いで向かう。

その場所とは、高層ビルが建ち並ぶ、如何にも街という場所である。

しかし、そこには割れたビルの窓ガラスが散らばっており、横転している車から炎が燃え盛り、地面には血痕が残されている。

 

 

 

「なんだこれは…」

「酷い…」

「まるで、爆発でも起こったような…」

「…皆さん、向こうに何かいます」

「本当だ、何かあるかもしれない、急ごう」

 

 

 

 ウィザード達が進んだ先には、赤い車が止まっていた。

ウィザードはその車に近づく。

すると、車の中から、小さいミニカーが飛び出してきた。

 

 

 

「わわっ、なにこれ?」

「何なんだこの車…?」

「以外にも…かわいいミニカー…」

 

 

 

 スノーホワイト達3人は不思議がっているが、ウィザードはこのミニカーに見覚えがあった。

 

 

 

「確かこれって…ドライブの…」

 

 

 

 ウィザードがそう呟いた途端、その小さなミニカーから声が聞こえた。

 

 

 

『やぁ、仮面ライダーウィザード。久し振りだね』

 

「うわぁ、喋った!?」

 

 

 

 スノーホワイト達は突然話はじめたミニカーに驚いているが、ウィザードは久々の再開である。

 

 

 

 

「あぁ、久し振りだな。でもあんたはまた封印されたんじゃなかったのか?」

『財前との戦いの後、確かに私はもう一度ドライブピットの地下に自らを封印した』

『でも、また鎧武に呼び起こされてね。緊急事態だと聞いているよ』

「そうだったのか、やっぱ神って何でもアリなんだな」

『そのようだね。科学的な思考では理解出来ない領域に行ってしまっているよ』

 

 

 

「…ねぇそうちゃん。話分かる?」

「分かるわけないよ、晴兄の仲間ってことしか分からないよ」

「…でも、仲間が増えるのは良いことなのでは?」

 

 

 

 

 話に付いていけない3人に気付いた晴人はミニカーに3人を紹介する。

 

 

『彼女達が、魔法少女かい?』

「あぁ、よく分かったな」

 

「あ、あの…私はスノーホワイトって言います!」

「私はラ・ピュセル」

「…ハードゴア・アリスです」

『そうか、私はクリム・スタインベルトだ、今はこうやってシフトカーというメカを通じて君達と会話しているが…』

 

 

 

 

ㅤそう言うと、赤い車の中からベルトがシフトカーに連れられてやって来た。

 

 

 

 

『私はこのようにベルトだ、ベルトさんとでも呼んでくれ』

「は…はい。分かりました」

「すごいな…仮面ライダーって何でもありなんですね」

 

 

 

スノーホワイトとラ・ピュセルが驚いている一方、晴人はある男の存在をクリムに問う。

 

 

 

「そういえば、進ノ介は来てるのか?」

『あぁ…進ノ介はこのトライドロンの中に休ませているよ』

「休ませてる?どういう事だ…?」

『実はだね、さっきの爆発に進ノ介が巻き込まれたみたいでね…』

「何!?大丈夫だったのか?」

『負傷はしているが、命に別条は無い。シフトカーに治療をさせているよ』

「そうなのか…でも一体何で爆発なんて…」

『何者かが事前に爆弾を仕掛けていた可能性があるな…』

「事前にか…」

 

 

 

 

 

 と、晴人達とクリムが話していた時だった。

晴人達の前に、突然グール軍団が現れた。

それも、今までに無いくらいの

 

 

 

「こいつら、一体どこから!」

『ロイミュード…ではないな…』

「こいつらはファントム。人々を絶望させようとする怪物だ」

「クリムさん、ここは私達に任せて下さい!」

『君達…』

「進ノ介を安全な所に移動させてやってくれ」

『了解した。こちらもやれることはやってみよう』

「あぁ。またどこかで合流しよう」

 

 

 

 

 クリムはトライドロンに戻り、グール軍団を弾き飛ばしながら進んで行った。

残ったウィザード達はグール軍団を殲滅するために戦い始めた。

 

 

 

「みんな、行けるか?」

「大丈夫です!晴人さんだけには戦わせません!」

「晴兄、一緒に戦おう!」

「…みんなで力を、合わせましょう」

「よし、行くぞ!」

 

 

 

 ウィザード、スノーホワイト、ラ・ピュセル、ハードゴア・アリスの4人は、ウィザードの掛け声で、一斉にグールに向かって走り出す。

グール軍団と、ウィザード達の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい声を聞いたような気がして、進ノ介は目を覚ました。

自分は死なずに済んだのか…。

しかし、そんな進ノ介の考えは一瞬で吹き飛んだ。

 

 

 

「ここ…トライドロンの中か…何で…」

『やあ進ノ介。やっと目を覚ましたかい』

「…!?」

 

 

 

 

物音に気付き、クリムが進ノ介に声を掛ける。

一方進ノ介は、クリムの声を聞き、完全に思考が停止している。

 

 

 

 

「ベルトさんの声…やっぱ俺死んだのか…」

『勝手に殺さないでくれたまえ。私も君もまだ死んでいないさ』

「すまないベルトさん…ちょっと混乱し過ぎた。でも何でベルトさんがいるんだ…?」

『また鎧武に呼び起こされてね。君達が危険だと聞いて飛び出してきたんだ。それと、爆発に巻き込まれた他の人々もディメンションキャブの力で安全な場所へ移動させた、安心したまえ』

「ありがとう、ベルトさん、キャブ。それに神様…やっぱあいつすごいな…何でもありじゃないか

…」

 

 

 

 

 

進ノ介が改めて鎧武こと紘汰の凄さを実感していたが、進ノ介の脳裏にリップルと、トップスピードの姿が思い浮かぶ。

確か、カラミティ・メアリとかいう魔法少女と戦っていたはずだ。

 

 

 

「ベルトさん!力を貸してくれ!行かなきゃいけないところがある!」

『無茶はしちゃいかんよ進ノ介。軽傷だったとはいえ君は爆発に巻き込まれているんだぞ』

「大丈夫だ、それに、俺の側にマッドドクターがいるってことは、俺の傷を治してくれたんだろ?」

『まぁ、それはそうだが…』

 

 

 

 

進ノ介は、シフトカーのマッドドクターを撫でながら話す。

 

 

 

 

「助けなくちゃいけない仲間がいる。頼む、ベルトさん」

『…やはり君は、変わってないな』

 

 

 

進ノ介の熱意に押されたのか、クリムもやがては諦めたのか…。

 

 

 

 

『ここで止めても、君には無意味だろう。1度ギアが入れば、君はもう止まらないんだろう?』

「ベルトさん…ありがとう」

『ならば急ごう、進ノ介。ここからの運転は君に任せるよ』

「よし、行こうベルトさん!」

「(待ってろよ、2人とも…)」

 

 

 

トライドロンの運転席に乗った進ノ介は、トライドロンの速度を上げて、リップルとトップスピードがカラミティ・メアリが戦う場所へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の一部が、メアリの爆弾で一瞬にして火の海になった。

爆発が起こった近くには、人々の救助に向かった進ノ介が居たはずだ。

みんな爆発に巻き込まれて死んでしまったのだろうか。

リップルは、絶望感と共に、メアリへの怒りの感情も湧いていた。

 

 

 

「ハハハハハァ…ファハハハハハハァァ!」

 

 

 

 メアリは狂気のような笑いを見せる。

明らかに隙を見せているメアリにリップルは攻撃を仕掛ける。

 

 

 

「メアリィィィ!」

「おい、リップル!」

 

 

 

 リップルの行動に、トップスピードは呼び掛けるも、リップルは聞かずに特攻する。

 

 

 

 

「フゥハハハハァー…いいねいいねぇ…!」

「お前だけは許さない!」

 

 

 

 メアリの攻撃を掻い潜り、接近戦に持ち込んだリップル。

メアリの腹部に拳を与え、怯ませた…が。

メアリが右手に隠し持っていたのは、手榴弾で…。

 

 

 

「詰めが甘いね、お嬢さん…」

「ッ!?」

 

 

 

 リップルはメアリによって蹴飛ばされ、手榴弾を投げつけられた。

リップルの近くで爆発を起こし、リップルは大ダメージを受けたのか…

 

 

 

「どうだいお嬢さん、流石に限界かね?」

「…残念だね、俺を忘れんなっての!」

「何?」

 

 

 

 そう、再びトップスピードがリップルをギリギリで救いだし、致命傷には至らなかった。

トップスピードは、メアリが放ってくる銃弾を避けながらリップルに喝を入れる。

 

 

 

「お前、また無茶しやがって!今のは本気で危なかったぞ!」

「…ごめん」

「街の人をやられた怒りは分かる泊刑事だって助かってるか分からない。でもお前まで死んだらどうしようもないだろ!」

「そう…だね」

 

 

 

トップスピードの本気の説得に、リップルは自分が冷静さを欠いていた事に気付く。

自分がトップスピードを守らなければならないのに、これでは迷惑をかけているだけじゃないか…。

なんて自分は情けない奴なんだ、と自分を責め立てた。

 

 

 

「トップスピード、本当にごめん」

「…へへっ、何言ってんだよ、相棒らしくねぇぞ」

「えっ…?」

「ほら、行くぜ、メアリを倒すんだろ?」

 

 

 

そうだ、自分にはやる事がある。

自分を責めている場合では無いと奮い立てるリップル。

そして、空気を読んだかのように、メアリの弾丸が再び2人を襲う。

 

 

 

「お説教は済んだかい、お嬢さん方よォ」

「あぁ…第二ラウンドだ、メアリ」

「よっしゃ、一丁ド派手にやっちまおうぜ相棒!」

 

 

 

メアリに言い放つ2人。

その言葉を聞き、再びメアリは笑みを浮かべて銃を構えた。

 

 

 

「ぶっ潰してやるよ…あんたら2人も、この街の連中もなァ!」

 

 

 

そして、メアリは再びスイッチを取り出した。

それも、2つ。

 

 

 

「何っ!?」

「まだ持ってやがったのか!」

「だァれが1つなんて言ったのさ!」

 

 

 

リップル達の驚きの表情とは正反対に、メアリは睨みつけるような形相でこちらに視線を向ける。

 

 

 

 

「2度も同じ手に引っかかる気分はどうだい!ヴァハハハハハハァ!」

 

 

 

 

リップルとトップスピードは焦っていた。

このままでは被害が拡大してしまう。

なんとかしてあのスイッチを破壊しなければ…。

だが、正面から飛び込んでもメアリの銃で蜂の巣にされるだけだ。

 

 

 

 

「一か八かだ…!」

 

 

 

リップルは一瞬の動きで手裏剣をメアリ向けて投げつけた。

メアリはそれに直ぐに気付き、銃で破壊する。

その瞬間、リップルはトップスピードの箒に飛び乗った。

 

 

 

「トップスピード!」

「よっしゃぁぁ!全速前進!特攻だァ!」

 

 

 

手裏剣にメアリが気を取られた隙に、2人の乗った箒は直進する。

箒の両脇から現れた推進装置が火を噴く。

その速度は、メアリが銃の次の弾を発射するよりも早く、銃を構えたその時、スイッチを握っている左手にはリップルの小刀があった。

スイッチは真っ二つに両断され、その横を箒が通り過ぎていく。

スイッチを破壊されてしまったメアリ。

しかし、メアリが銃の照準を向けていたのは…

 

 

 

「やったぜ、相棒!これで仕切り直しだぜ!」

「うん…!?いや、トップスピード避けて!」

「は?…何で…って…!?」

 

 

 

トップスピードが気付き、回避しようとした時には、もう弾は発射されていた。

そう、メアリはこの動きを予知していたのか、見切ったかの如くリップルとトップスピードに向けて弾を発射していた。

最大速度とはいえ、弾の速度から逃げ切るのは困難だった。

このままでは2人諸共撃ち殺される。

 

 

 

「残念だったね…あの世に2人仲良く送ってやるよ!ヴァァァァァハハハハハ!」

「クッソぉ…!」

 

 

 

 

 

 

この状態では、2人共死んでいただろう。

しかし、あの男が2人を死なせなかった。

 

 

 

 

「…!?」

 

 

 

 

メアリの銃弾を、赤い小さなミニカーが破壊する。

その赤いミニカーに続き、炎のような橙の色、深い紫色、明るい緑色をした、様々なミニカーがメアリに襲いかかり、注意を逸らす。

邪魔されながらも、メアリは再び銃の引き金を引き、弾を発射したが、それは最後に飛び込むように現れた大きな赤い車が弾き飛ばした。

その車はメアリを牽制するかのように彼女の目の前で一回転し、リップルとトップスピードを守るような形で停車した。

 

 

 

 

「何が起こったんだ…?取り敢えず、俺達は死んでないみたいだけど…」

「あ、あれは…!」

 

 

 

予想もしない事態に、ただ困惑するリップルとトップスピード。

小さなミニカーを追い払ったメアリも、緊急事態に驚いている様子。

そこにいる全員が困惑した中、大きな赤い車から現れたのは、リップルとトップスピードには見覚えのある男だった。

戻って来た小さなミニカー、シフトカーが男の右腰のホルダーに装着される。

そして、赤いシフトカー、シフトスピードを男は手に取る。

そのまま、男の腰に巻かれているベルトのイグニッションキーを回した。

 

 

 

 

『Start Your Engine!』

 

 

 

 

ベルトから声が聞こえた。そして、機械音が流れ続ける。

シフトカーの後部を回転させ、腕に付けられているシフトブレスにセットする。

そして、セットしたシフトカーをレバーのように倒すと同時に、大声で叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変身!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『Drive!Type、Speed!』

 

 

 

 

 

 

派手な音と共に、赤い装甲が装着されていく。

その後は、大きな赤い車、トライドロンからタイヤが形成され、赤い戦士の胸部に装着された。

 

 

 

 

「何なんだい、あんたは…!」

 

 

 

メアリが声を荒らげて口を開いた。

現れた戦士は、手を動かしながらこう名乗った。

 

 

 

「俺はドライブ…仮面ライダー、ドライブだ!」

 

 

 

“仮面ライダー”という言葉を聞いた途端、リップルとトップスピードが安堵の表情を見せ、反対にメアリは怒りで腸が煮えくり返るような感情に支配された。

 

 

 

「また、お前らか…仮面ライダー…!」

「悪いが、お前の悪事もここまでだ、魔法少女」

「なぁあんた、泊刑事なんだよな…?」

「あぁ、そうだ」

「助かったけど、何で変身出来たの…?」

『それは私から説明しよう』

「…喋ったァ!?」

 

 

 

 改めて、仮面ライダードライブ、泊進ノ介のベルトが話し出したことに驚く二人。

 

 

 

「やっぱりみんな似たような反応するな…」

『鎧武に最初会った時もそうだったね、まぁ、簡単に言うと私は進ノ介の使うこのベルトに意識を移したのさ』

「それで、こうやって戦ってたんだ。戦いが終わって、ベルトさんは眠ってたんだが、今回はこうやってもう一度力を貸してくれてるんだ」

 

 

 

 

と、ドライブが話している中を、1発の銃弾が通り抜ける。

 

 

 

 

「お話は終わったかい?あんたら」

「メアリ…!」

「悪いな、今からが本当の勝負だ、フルスロットルで行くぞ」

 

 

 

話を断ち切るかの様子でメアリは弾を放った。

ドライブは気を取り直して対峙する。

 

 

 

「仮面ライダーはムカつく奴しかいないのかい…!」

「…行くぞベルトさん」

『あぁ、そしてあの魔法少女はガンマンだ。銃には銃。ドア銃を使いたまえ』

「分かった。来い、ドア銃!」

 

 

 

ドライブはトライドロンから送られてきたドア銃を手にしてメアリに挑む。

メアリの銃弾は早いが、ドライブの敵ではない。

イグニッションキーを回し、シフトブレスのシフトカーを3回倒す。

 

 

 

『SpeedSpeedSpeed!』

 

 

 

加速して銃弾を避ける。

そのままメアリに接近してこちらもドア銃から銃弾を放つ。

銃弾はメアリを掠めたものの、完全な直撃はしなかった。

メアリもただ避けるだけじゃなく、次々に銃弾を発射してくる。

ドライブも、メアリも、避けつつ、撃ちつつの一進一退の攻防が続く。

 

 

 

 

「あぁ!面倒だ、こうなりゃタイプテクニックだ!」

 

 

 

 

ドライブは、今度は緑のシフトカー、シフトテクニックをシフトブレスに装着した。

 

 

 

 

『Drive!Type!Technic!』

 

 

 

 

 

緑のドライブ、タイプテクニックに変化したドライブ。

更に、水色のシフトカー、シフトロードウィンターを装着してタイヤ交換する。

 

 

 

 

『タイヤコウカーン!ロードウィンター!』

 

 

 

 

タイプテクニックのタイヤから、ロードウィンターのタイヤに付け替えたドライブ。

そこに、リップルとトップスピードも駆け付ける。

 

 

 

 

 

「よし、一気に畳み掛けるぞ!」

「俺達も手伝うぜ」

「数が多い方が奴を倒しやすい」

 

「随分安く見られたもんだねェ」

 

 

 

メアリは更に怒りに支配され、大量に銃弾を発射した。

大量に襲いかかる銃弾だが、ドライブはシフトブレスのボタンを押し、レバーを倒す。

 

 

 

『ヒッサーツ!フルスロットル!ウィンター!』

 

 

 

ドライブは、ロードウィンターの力で銃弾を全て凍らせた。

そして、ドア銃で凍った弾を撃ち砕いた。

上空に、銃の砕けた欠片を吹き飛ばし、メアリに向けて上空から降り注がせた。

 

 

 

「うぐっ…面倒な…」

 

 

ガラス片のように降り注ぐ欠片を撃ち落とすメアリだが、全てを避けきれるはずもなく…

次々に身体に掠っていき、突き刺さり、ダメージとなっていく。

 

 

 

「リップル、トップスピード、今だ!」

「オッケー!やっちまおうぜ相棒!」

「ハァァァァァ!」

 

 

 

メアリが攻撃を受けている隙に、箒に乗ってリップルとトップスピードが突撃する。

そして、そのままメアリに突撃した。

更に、箒から飛び降りたリップルがメアリに蹴りを与えた。

 

 

「グアアアッ!」

 

 

 

 

廃墟の屋上で、蹴り飛ばされるメアリ。

かなりのダメージを与えたようだ。

 

 

 

「ハァ…ハァ…余計に、イライラさせてくれるねぇ…」

「もう一押しか…」

「よし、ナイスだ相棒!」

「トップスピード、泊さん、ありがとう」

「だが、まだ終わってないぞ、気を引き締めて」

 

「あっ、泊刑事、このハンドル剣使ってくれ!」

「いや、それはお前が使え」

『我々にもハンドル剣は用意出来る。君もハンドル剣を持っていたまえ』

 

 

 

ドライブは、一度受け取ったハンドル剣をトップスピードに返す。

ドライブ達3人は、各々武器を構えて体勢を整える。

一方メアリはライフル銃を構える。

 

 

 

そんな時だった。

メアリの後ろから、ある人物が現れた。

 

 

 

 

「…こんばんは、リップル、トップスピード、カラミティ・メアリ。そして、仮面ライダーさん」

 

「なっ、なんだこいつ?」

「クラムベリー…!?」

「気を付けろ泊刑事。こいつは前に俺達の仲間を殺しかけた奴だ」

 

 

 

現れたのは、森の音楽家クラムベリー。

ラ・ピュセルを倒そうとした、という話が出て以降、チャット等から姿を消していた。

 

 

 

「お前、何をするつもりだ…まさか、お嬢さん達を殺すのに、乗ってくれるのかい?」

「いいえ、私はリップル達にそんなことをする為に来たのではありません」

「じゃあ、なんだってんだい?」

 

 

 

メアリがそう聞いた瞬間、ドライブ、リップル、トップスピードの思考は固まった。

そして、肝心のメアリは、銃を落として倒れ込んだ。

何故なら、クラムベリーは、メアリの腹部に強烈な一撃を与えていたからだ。

 

 

 

「な…何すんだ…あんた…」

 

 

 

 

 

呻きながらの、メアリの驚きとも、怒りとも取れる質問にクラムベリーは淡々と答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カラミティ・メアリ。貴方に死んでもらう為です…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜王結寺〜

 

 

 

こちらでは、スイムスイム、たま、ミナエル、ユナエルが、以前の作戦以来の計画を立てていた。

 

 

 

 

「今、あの街はすごい。混乱に乗じて魔法少女を減らすのに最適。前回はミスがあったけど、今回こそ、成功させる」

「そうだね!一気に行こうぜリーダー!ねっ、ユナ!」

 

 

 

スイムスイムとミナエルは、魔法少女を減らすべく、この作成に乗り気のようだが…

 

 

 

「ごめんなさい、スイムちゃん、ミナちゃん、私は嫌だ…」

「またたまはそうやって逃げるのかよ…で、ユナは?」

 

 

 

謝りながらも断るたまに、如何にも“ノリが悪い”とでも言いたそうなミナエル。

ユナエルにも賛同を求めたが、意外な返答が帰ってきたのだ。

 

 

 

「ごめん、お姉ちゃん。私もパス。もう、そういう無益な戦いをしたくないわ…」

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

これが、スイムスイムチームの一大事のきっかけを作る事になったのを、まだ誰も知らない…。




はい、てなわけで、今回はドライブ登場メインでした。
まだまだ次回も活躍させるので、戦闘は次回から本気出します。
そして、最後のはどういうことかな?
スイムスイムチームは、原作とは少し違った動かし方をしようと思うので、そこら辺宜しくです。


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第38話ㅤ罪を背負って

Vシネマの仮面ライダースペクターを見終えました。
ゴーストのスピンオフ関連作品は大体名作というのはあながち間違っては無いですね。
今までのゴースト関連作品をよく見ている方ほど楽しめるのではないでしょうか。
ですが、この作品の完成度はとても高く、おすすめの作品です!


貴方に死んでもらうため、という言葉と共にカラミティ・メアリを攻撃したクラムベリー。

ドライブ、リップル、トップスピードは状況の理解に時間が掛かった。

メアリの口調からして、クラムベリーはメアリの仲間だと思っていたドライブだったが、予想外だった。

リップルとトップスピードは固まったように動かない。

衝撃で動けないのか、わざと動かないのかは分からない。

ただ、今分かっているのは、メアリはこのままでは死ぬという事だ。

 

 

 

 

「くっ…不意打ちなんて卑怯な手を使うねェ…!」

「これまで不意打ちや騙し討ちで多くの人々を葬ってきた貴方が言えた事では無いのでは?」

「ぐっ…調子に乗って…がぁぁぁ!」

 

 

 

 

抵抗しようとしたメアリをクラムベリーは容赦なく踏みつける。

 

 

 

 

「貴方はもう用済みですから。障害は排除しますよ」

「くそっ…がああああ!」

「貴方が私達の秘密を知った時点で、既に終わっていたのです。では、さようなら…」

 

 

 

踏みつけていた脚を上げ、今度はメアリの顔面を踏み潰さんとする。

リップルとトップスピードは、その瞬間をただ見つめるしか無かった…。

そして、クラムベリーの一撃がメアリに届く。

 

 

 

 

 

…と思われたその時。

クラムベリーは突然トライドロンに吹き飛ばされ、後ろに倒れ込んだ。

そして、ドライブは倒れているメアリを背負ってメアリを休ませるように地面に寝かせ込んだ。

 

 

 

「と、泊刑事!?」

「な、なんで…?」

 

 

 

リップルとトップスピードもこれには驚くしかない。

ドライブが、メアリを助けたからだ。

 

 

 

「二人共、そいつを連れてここから離脱しろ!」

「でも…泊刑事は」

「いいから早く行け!時間稼ぎは俺がする!」

「時間稼ぎって…」

「後で俺も合流するから、急げ!」

「…ああ分かったよ!これ使ってくれ!行くぞリップル!」

「サンキュートップスピード!リップルも、頼んだぞ!」

「…分かった」

「付いてこいメアリ!行くぞ!」

「…」

 

 

 

 

リップルとトップスピードは、メアリを担いで遠ざかって行った。

そして、トップスピードは自分のハンドル剣をドライブに投げ渡した。

ドライブはハンドル剣を受け取り、自身のハンドル剣と二刀流を披露する。

そして、再び立ち上がったクラムベリーの前に、ドライブが立ちはだかる。

 

 

 

 

「貴方は何を考えているんですか?私は貴方達の敵を排除しようとしただけですが…?」

「そういう問題じゃない。俺は人を守っただけだ」

「あそこで仕留めなければまた誰かが死にますよ?仮面ライダーは正義の味方じゃないんですか?」

「いや、俺は…俺達は、正義の為に戦うんじゃない、人々を…自由を守るんだ!」

「…?」

「悪人だからって、人間を殺してしまえば、そこで自分も罪人だ」

「…私には、貴方の考えが理解出来ません」

「理解なんてしなくていいさ、これが俺の戦い方だ」

 

 

 

 

ドライブがそう言い切った刹那、クラムベリーがドライブに襲いかかる。

すると、シフトカーがクラムベリーを牽制する。

 

 

 

 

『シフトカー、Go!』

「ベルトさん…!」

『進ノ介、君も言うようになったね…。以前は怒りで我を忘れる事も多々あったがね』

「なっ、せっかくキメてたのに、そういうこと言うかベルトさん?俺だって成長するし、余裕だって出てくるよ」

『そうだね、進ノ介。さぁ、君のトップギアを見せる時だ』

「あぁ、行くぞベルトさん!」

 

 

 

 

タイプスピードへ戻ったドライブが、クラムベリーへ立ち向かう。

ハンドル剣を使って、回転しながらクラムベリーに攻撃を仕掛けていく。

しかし、クラムベリーも攻撃を避けて、反撃の機会を伺っている。

そして、クラムベリーがドライブへ反撃を始める。

素早い連撃でドライブに徐々にダメージが与えられていく。

 

 

 

 

「スピード勝負なら、こっちも負けてられない!」

 

 

 

『スピード!スピード!スピード!』

 

 

 

 

シフトレバーを倒し、シフトスピードの高速攻撃を手に入れる。

クラムベリーを上回るスピードで戦うドライブ。

やがてクラムベリーを圧倒し始め、一気に追い込む。

 

 

 

 

「なかなかですね…」

「だったら次はこれだ!来い!デッドヒート!」

 

 

 

 

『Drive!type dead heat!』

 

 

 

 

ドライブは、タイプデッドヒートに変化する。

タイプスピードより攻撃を重視したタイプで、クラムベリーに猛攻を仕掛ける。

 

 

 

「ハァァァァァ!」

 

 

 

ハンドル剣でクラムベリーを切り裂き、次はパンチでクラムベリーを吹き飛ばす。

 

 

 

「うっ…!」

「そろそろ決めるぞ!」

 

 

 

「dead heat!」

 

 

 

ドライブはシフトブレスのボタンを押し、必殺を発動する。

タイヤでクラムベリーを拘束して、2つのハンドル剣で切りかかる。

 

 

 

「ハァァァァァ!」

 

 

 

ドライブはオーラを纏ったハンドル剣で、クラムベリーを両断した。

 

 

 

 

 

 

…はずだった。

 

 

 

 

攻撃が当たったように思いきや、何故かクラムベリーは姿を消していた。

とてもじゃないが、あの状態から単独で脱出出来たとは思いにくかった。

だが、この場所に誰かがいる気配も無い。

 

 

 

 

『…逃げられたようだね』

「そうみたいだな…。逃げたのは気になるが、それよりもリップル達を追わないと」

『そうだね、トライドロンで急ごう』

 

 

 

クラムベリーから切り替えたドライブは、トライドロンを駆り、リップル達の逃げた方向へ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやー、テレポートはやっぱ強いぽん。こればかりはウィザードに拍手ぽん』

「貴方も魔法が…?というよりも、何故私を助けたんですか、ファヴ」

『何で…とはどういうことぽん?』

「私はまだ戦えました。なのに…」

『そういう戦闘狂感は良いけども、ちょっと今死なれては困るんだぽん』

「?…それはどういう…」

『まぁ、これを見てくれぽん』

 

 

 

 

クラムベリーを助けたのは、ファヴであり、なんとウィザードの魔法の力を駆使したようだ。

そして、そのファヴが今度テレポートで呼び出したのは…。

 

 

 

 

「こ、これは…」

『どうぽん?驚いてもらえたぽん?』

「な、何故このファントム達が…」

 

 

 

 

クラムベリーの前に姿を現したファントムは、なんと、赤い不死鳥のモチーフのファントム、フェニックス。

緑色を基準にしたファントム、グレムリン。

頭に蛇を無数に飼っている、ファントムメデューサ。

白色を基準にしたファントム、カーバンクル。

4体のファントムは、何も言葉を発さず、ただこちらを見つめている。

クラムベリー、もといオーガはこれに驚くしかなかった。

自分もではあるが、このファントム達は以前ウィザードによって完全に倒されたファントムであるからだ。

 

 

 

 

 

「蘇らせた…のですか?」

『その答えでは間違いぽん。正確には、造ったというのが正しいかもだぽん』

「造った?」

『砕いて説明すると、このファントム達はウィザード、ビーストの戦闘記録からデータを再構築して造った人造ファントムだぽん。魔法に関しても、データから偽造して作り上げただけぽん』

「…馬鹿な」

『今までただウィザード達にボコボコにされてただけじゃないぽん。ファヴは頑張ってたんだぽん』

「…フッ、面白くなってきたじゃないですか」

『さぁ、ニューステージの始まりぽん。君達には、もっと頑張ってもらうからぽん。覚悟しておくぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市街地から少し離れた外れの場所で、リップルとトップスピードはメアリを休ませていた。

メアリは戸惑いというよりも、なんとも言えない感情が渦巻いていた。

 

 

 

「そろそろ休めたか、メアリ。…あ、お前の武器は俺達が没収しといたから反撃なんて出来ねーぞ」

「…そうかい。それよりも、あのドライブとかいうのは何であたしなんかを助けたんだか。あのまま手を出さなければ、あたしは完全にくたばってたのに」

「そんなの、私達は知らない。泊さんが言ったから、それを守っただけ」

「泊さんが言ったから、ねぇ…。あんたらはこれで良いのかい?散々人殺しに近い事をしでかしたあたしを助けるってのに協力してさ」

 

 

 

 

助けて以降というもの、卑屈な話しかしないメアリにトップスピードは穏やかに答えた。

 

 

 

「まぁ、正直お前への恨みが無いっていったら嘘になるかな。でも、泊刑事の選択には、何も反対は無いさ」

「へぇ、何で?」

「俺にはあの人の考え全てが分かるわけじゃねえけどさ、今まで散々悪事働いて高笑いしてた奴が、いざ死ぬとなったら、罪から逃げるみたいにすぐにくたばっちまうってのも、卑怯じゃねえか?」

「はぁ…」

「なんていうかよ、ハッキリ言わせてもらうとさ、しっかり生き残って、自分の罪を償えってことだよ」

 

 

 

自分の罪を償う。その言葉を聞いたメアリは、以前の自分を思い出していた。

 

 

 

 

この世の全てがどうでも良くなり、自暴自棄になって自分の娘や、夫に八つ当たりした記憶。

結果、唯一の居場所だった家庭すら失った。

そんなことすらどうでもいいと思っていたが、今になって、家族で過ごせていたあの時が恋しくなった。

これも、自分が招いた結末なのだが。

 

 

 

 

「…あたしには昔、娘と夫がいたんだ」

「えっ…?」

 

 

 

メアリは、トップスピード達に昔の話をすることにした。

少し驚いたような表情を見せたが、トップスピード達は、話に耳を傾けた。

 

 

 

 

「最初は、結構楽しく暮らせてた。でも、気付けば全てを失ってた」

「何かあったのか?」

「あたしが、娘を虐待したのさ…何を思ってたのか知らないけど、もう動機すら忘れちまったよ」

 

 

 

娘を虐待した、そのメアリの言葉でトップスピードの目の色が変わった。

 

 

 

「…それで、その子は今何してるんだ…」

「そんなの知らないさ。でも、きっと楽しく生きてるんじゃねぇかな。もうあたしの事なんか、とっくに忘れてるだろうけどね」

「メアリ…お前は…」

「でも、あたしとなんか生活しなくて正解だよ。今も一緒だったら、もっと辛い思いさせてたろうし…」

 

 

 

メアリは、大きく息を吸い込んで、リラックスすると、再び口を開いた。

 

 

 

「結局、母親らしいこと何も出来なかったのさ…滑稽な話だよ」

 

 

 

「…そうだな、滑稽だな」

 

 

 

 

メアリはトップスピードの方を向いた。

トップスピードが放った言葉に驚いている。

 

 

 

「やっぱりそう思うかい?」

「おう。それに虐待したなんて、俺は許せない」

「…」

「でもさ、メアリ。あんたの話を聞くに、今も娘さんを大事に思ってるんじゃないかって思うんだ」

「何でそう思う?あたしなんか人間の屑だよ、もう自覚してるよ」

「普通、気にしてなかったら今も娘の心配なんかしないだろ。少なくとも、あんたにまだ少しは母親としての心が残ってんだろ」

「…そうかねぇ。でも、もうきっと会えないんだろうさ…」

 

 

 

 

「それはどうかな?」

 

 

 

 

メアリ達が新たな声が聞こえた方向へ向く。

そこには、トライドロンから降りたドライブ、泊進ノ介が立っていた。

 

 

 

 

「あんたは、仮面ライダー」

「泊刑事!クラムベリーは?」

「逃げられた。後少しで追い詰められたんだがな」

「そっか。でも、ありがとうな」

「あぁ。お前達全員無事で良かったよ」

「仮面ライダー、ドライブだっけ。あんたもお人好しだね」

「そうかもな。お前は確かに罪人だ。それに何人かの人間も殺している。許された事じゃないし、罪も重いだろう。でもな…」

「でも…?」

「人は変われる。俺の仲間が言ってた言葉だ」

「…変われる…か」

「あぁ、きっと変われる。いつか、お前が罪を全て償いきった時に…俺はそう信じてる」

「ふふっ、案外、そう思えてきたよ。感謝しとくよ、ドライブ」

「そう思ってくれたなら何よりだ」

 

 

 

 

進ノ介達が話を、続けている途中、3人の魔法少女のマジカルフォンから、連絡が届いた。

 

 

 

「トップスピード、連絡だ」

「何だろうな、一体」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『魔法少女のみんな、救助活動ご苦労様ぽん』

『でも、ここで悪いお知らせぽん』

『今回の騒動、原因はカラミティ・メアリだというのを魔法少女から情報提供されたぽん』

『よって、カラミティ・メアリのマジカルキャンディーを強制で0個にするぽん』

『また、同時に最下位なので、メアリの脱落も決定ぽん。運営からの制裁だぽん。その場で脱落ぽん』

『悪い魔法少女が消えてスッキリぽん。じゃあシーユーぽん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ!?」

「どういう事だよ!」

「魔法少女の誰かが、ファヴに密告したんだ」

「お、おいどうなるんだよ?」

 

 

 

突然の事態に混乱する一同。

すると、メアリの様子が一変した。

 

 

 

「ぐっ、ぐぁぁぁぁぁぁぁ!」

「メアリ!おい、どうした!?」

「マズイ、これは魔力を吸われてる。このままじゃ死んじまう!」

「くそっ、どうすればいいんだ!」

 

 

 

 

 

 

しかし、突然の緊急事態に襲われる進ノ介一同を、少し離れた場所から見つめる影が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メアリが死ぬみたいだね、リーダー」

「うん。人間が近くにいるけど、今のうちにリップルとトップスピードもまとめて倒す」

「オッケー!2人でも頑張っちゃうよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…やっと全部倒せたか」

「やったね、みんな」

「あぁ、スノーホワイト、アリス、それに晴兄もお疲れ様」

「…やりましたね」

 

 

 

 

 

メアリの脱落が発表される少し前、襲い来るグール軍団を倒しきったウィザード達一同。

そんな所に、2人の魔法少女がすごい勢いで走ってきた。

 

 

 

 

「う、ウィザード!大変だ!」

「お、お前らは確か、ユナエルとたま!どうした?」

「リップルとトップスピードが危ない!スイムスイムとお姉ちゃんに殺されちゃう!」

「何だって!」

「それは本当か!?」

「はい。スイムちゃんとミナちゃんが、次の相手はその2人だって…!」

「分かった。お前達を信じる。行くぞ、みんな!」

 

 

 

 

正直ウィザード達は、スイムスイムチームに何があったのかは分からない。これも罠かもしれない。

だが、2人の必死な顔を見て、ただ事では無いと判断したウィザード達は、急いでリップル達を探すことにした。

場所は分からないが、必ず見つける。

その思いを背負い、ウィザードは走る。

 

 

 

 

 

新たな戦いが、仮面ライダー達と、魔法少女達を包み込んでいく…。




出張でまた遅れたのをお許し下さい!
えぇ、暫く出番の無いシスターナナ達ですが、本当に次回こそ出番を作ります。
メアリは死ぬのか、生き残るのか、スイムスイムチームに何があったのか。
全ては次回です。ではでは。


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第39話 微かな希望

とにかく投稿が遅れ申し訳ございません。
今回はメアリ救出の前に、ヒーロー達の合流でございますよ!


「ぐあっ、あぁぁぁぁ!」

 

 

苦しみ始めるカラミティ・メアリ。

トップスピードとリップルはこの状態を知っている。

マジカルキャンディー所有数最下位となり、脱落した魔法少女は、このような症状に陥り、魔力を吸い取られている。

この症状を解決出来るのは、ウィザード、ビーストの2人の仮面ライダーだけだ。

 

 

 

「これはマズイぜ…ウィザード達を呼んでこねえと…」

「とにかく、何処かで合流しないと!」

 

 

 

「へへっ、させないよ!」

 

 

 

 

その時だ、リップル達に向かって、双子の天使の片割れ、ミナエルが襲いかかってきた。

 

 

 

「うぉっ!?何だお前!」

「ミナエル…何の用だ」

「何って、お前らを倒しに来たに決まってるでしょ」

「何だとお前!今はそんなのに構ってる場合じゃねえんだ!」

 

 

 

激昂するトップスピード。一方、リップルは何かの気配を察知していた。

 

 

 

「(ミナエル単体では、いくら疲労しているとはいえ、私達二人を倒すのは……まさか!)」

 

 

「勝負だ!リップル、トップスピード!」

「だからそんな時間無いんだって!メアリが苦しんでんの分からないのか!」

「何言ってんだ?ライバルが1人減ってラッキーじゃん!」

「ミナエルてめぇ!」

「トップスピード、駄目!」

 

 

怒りに身を任せ、ミナエルに突っ込むトップスピード。

リップルが静止したものの、既に遅く…。

 

 

「リーダー、今だよ!」

 

 

 

トップスピードの真下から、大きな薙刀が現れる。

トップスピードがそれに気づいた時、トップスピードの目の前には、薙刀を構えたスイムスイムが薙刀を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

「させるか!変身!」

『drive type speed!』

 

 

 

 

 

トップスピードに薙刀が当たる寸前に、ドライブがトップスピードを守りつつ、スイムスイムを蹴り飛ばす。

 

 

 

「泊刑事!」

「危機一髪だったな。お前ら二人はメアリ連れてウィザードに会いに行け!とにかくここから離れろ!」

「わ、分かった!すまねえ、あんたにばっかそんな役やらせて」

「それは気にするな!急げ!」

「分かった。トップスピードはメアリを乗せて」

「おう!俺のスピードを舐めんなよ!」

 

 

 

 

「行かせるかよ!」

「…逃がさない」

 

 

 

大剣に変化したミナエルを片手に、追跡しようとするスイムスイム達を、ドライブが抑え込む。

 

 

 

「邪魔しないで…」

「それはこっちのセリフだ!」

『進ノ介、気をつけろ!この魔法少女の殺意は尋常じゃない!』

「分かってる!こっちもフルスロットルだ!」

 

 

 

ハンドル剣を手に取り、スイムスイムの攻撃を回避するドライブ。

 

 

 

「頼むぞ、2人とも…!ハァァ!」

 

 

 

剣の音が響く。

スイムスイムとドライブの一騎打ちが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…間に合ってくれ!」

 

 

 

マシンウィンガーを駆り、リップル達を探すウィザード一行。

ユナエル、たまの言う事が本当なら、あの二人が危険だ。

それに、先程脱落を言い渡されたカラミティ・メアリも。

 

 

 

「晴人さん、こっちです!」

「あぁ!」

 

 

 

しかし、ウィザード達が進もうとした時、突然目の前で爆発が起こり、行く手を阻まれた。

 

 

 

「なっ、何だ?」

「晴人さん、アレを見て!」

「ん…?って、お前らは!?」

 

 

ウィザードがその場にいた誰よりも驚きの声を上げた。

そう、何故なら、ウィザード達の前に現れたのは…

 

 

「フェニックス、メデューサ、グレムリン、ワイズマン…!」

「どうだ、驚いたか?魔法使い」

 

 

現れた4人のファントムの後ろから、オーガも現れた。

 

 

 

「オーガ…これはどういうことだ!こいつらは何故生き返っている!」

「それを言って何になる。どうせここで死に行く分際で!」

「何だと!?」

「そのままの意味だ。お前達はここで俺達が殺す。いくら魔法使いの貴様や魔法少女共がいようが、俺達には敵わない」

「へぇ…だが、俺達もお前らの相手してる場合じゃないんだ!」

「だからと言ってお前達を先に行かせはしない。ファントム達よ、行け!」

 

 

ウィザード達を行かせないと言わんばかりに、フェニックス達が立ち塞がる。

彼らは人形かのように言葉を何も発さず、無言でこちらに襲いかかってくる。

 

 

 

「くそっ、やるしかないのか…」

「みんな気を付けて!」

「スノーホワイト、下がって!ここは私が!」

 

 

ウィザード達が身構える。

と、その時だった。

 

 

 

ファントム達が何かに吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

『アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!』

 

 

 

 

ファントムを吹き飛ばしたパーカーのようなものが、そこに現れた1人の男の所に戻っていく。

 

 

 

 

 

「変身!」

 

 

 

 

 

『カイガン!オレ!』

 

 

 

 

ベルトのレバーを操作し、男の姿が変化する。

変化したボディが、パーカーを被って変身した。

 

 

 

 

『レッツゴー、覚悟!ゴゴゴゴースト!』

 

 

 

 

変身した男がファントム達を蹴散らして、ウィザード達の前に現れた。

その姿は、ウィザードも知っている男だ。

その名前は…。

 

 

 

「大丈夫でしたか!?」

「あぁ…ありがとう。ゴースト、いや…タケル」

 

 

 

 

そう、ウィザード達の前に現れたのは、仮面ライダーゴーストだ。

 

 

 

 

「永夢先生達に、話は色々聞きました。それと、君達が、魔法少女だね?」

「え、はい」

「スノーホワイトさん、ラ・ピュセルさん、アリスさん、それに、君達はユナエルさん、たまさんだよね」

「はい。でも、何で私達の名前を…?」

 

 

 

「それは、私達がお教えしましたよ」

 

 

 

と、今度は、シスターナナとヴェス・ウィンタープリズンがやって来た。

どうやら、ゴーストと合流していたようだ。

 

 

 

「シスターナナ、ウィンタープリズン!」

「お前達も来てたのか…」

「あぁ。しばらくはナナを休ませていたから、最低限のキャンディーを集めていただけで、あまり顔を見せられていなかったね。でも、今回の騒動は放っておけなくてね」

「丁度私達も向かっていた所に、タケルさん達と合流しましてね」

「タケル達…ってことは…」

 

 

 

「おう、他にも仮面ライダーがいるってことだぜ!」

 

「仁藤!」

「よっ、晴人!なかなか良いタイミングじゃねえか!おーい、お前らも急げ!」

 

 

 

シスターナナ達に続いて、仁藤もやって来た。

そして、更に二人…。

 

 

 

「ちょっと、仁藤さん!待ってください!」

「お前達、急に急ぎ出したかと思えば、なんだこれは…」

「永夢!それに真琴の医者さんも!」

「…鏡飛彩だ。とにかく、この状況を打破する。行くぞ研修医」

「はい、飛彩さん!」

「おっ、俺も混ぜろ!行くぜぇ!」

 

 

 

仁藤と共にやって来たのは、永夢と飛彩だった。

そして、3人はそれぞれの変身アイテムを構えた。

 

 

 

『ドライバーオン!』

 

『マイティアクションX!』

 

『タドルクエスト!』

 

 

 

 

「「「変身!」」」

 

 

 

 

 

仁藤は、ビーストドライバーにビーストリングを装着、永夢と飛彩はガシャットをゲーマドライバーに差し込み、ドライバーのレバーを展開した。

 

 

 

 

「大変身!」

「術式レベル2…」

 

 

 

 

『L・I・O・N ライオン!』

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション!X!』

 

『タドルメグル、タドルメグル、タドルクエスト!』

 

 

 

仮面ライダーエグゼイド、ブレイブ、ビースト。

3人の仮面ライダーがファントム達の攻撃を凌ぐ。

 

 

 

「ウィザード!魔法少女達を連れて行け!ここは俺達に任せろ!」

「お前にはやるべき事があるんだろ?こいつらは俺達が食い止めてやる」

「そうだな!晴人、また暫しのお別れだが、行ってこい!」

「…分かった!頼む!行くぞ、みんな!」

「はい!」

 

 

ウィザードと魔法少女達は、共にこの場から離脱し、再びリップル達の捜索に戻っていった…が。

 

 

 

「確か、シスターナナとウィンタープリズンと言ったか。お前達は残っていいのか?」

「私達はあなた達の援護をしますよ」

「人数が多い方が楽じゃないか?」

「それはそうだな。なら任せる」

「お前らが何で蘇ってるのか知らねえが、お前らをぶっ倒して、久しぶりにキマイラにファントムの魔力を食わせてやる!」

 

 

「そう簡単に行くと思うな!魔法使いと魔法少女を逃がした以上、貴様らはまとめて地獄に送ってやる!」

 

 

 

オーガが叫び、他のファントム達がエグゼイド達に襲いかかる。

そして、ライダー達はそれを迎え撃つ。

 

 

 

「みんな、行こう!」

 

「あぁ!ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」

「さぁ、ランチタイムだ!」

「これより、ファントム切除手術を開始する…!」

「命、燃やすぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ったくどいつもこいつも…俺達、今日だけで何回逃げてるんだか…」

「何とかあいつらの視界からは外れたみたい。それに、スイムスイム達は泊さんが引き付けてる。もう大丈夫だと思う。でも…」

「はぁ…はぁ…」

 

 

 

2度にも渡る逃走で、やっと安全な場所へ逃げ延びたリップル、トップスピード、そしてメアリ。

だが、メアリは以前苦しみ続けている。

 

 

 

「確かこれって、日付が変わるとマズイんだよな…?」

「日付が変わったら…って、後30分しかない…」

 

 

 

メアリ救出のタイムリミットまでは、残り30分となってしまった。

と、そんな時…

 

 

 

「リップル、トップスピード、メアリ!」

「ウィザード!」

 

 

ウィザードがついに現れたのだ。

後ろには、スノーホワイト、ラ・ピュセル、ハードゴア・アリスもいた。

 

 

「よく、ここが分かったな。ウィザード」

「細かい話は後だ。とにかくメアリを助ける」

「…あんたも、何であたしを助けるんだい…」

「は?」

 

 

ウィザードがエンゲージウィザードリングを取り出した時、メアリがふとそんな事を言った。

 

 

「あたしは何度もあんたの邪魔をした。あたしを救う義理は無いはずだよ…」

「義理とかそういう問題じゃない。俺はあんたの希望を救う」

「希望…?あたしに希望なんてないよ…人の心すら、もう無くしかけてるのにかい…?」

「…確かにお前は、人の心を無くしかけているかもな…でもな、進ノ介から話は聞いた。お前はまだ家族を愛する気持ちを失っちゃいない」

「家族…?」

「その気持ちを、その希望を俺は救いたい。それじゃ理由にならないか?」

 

 

 

ウィザードがそう言うと、メアリは一瞬クスッと笑う。

 

 

 

「そうかい、なら勝手にすればいいさ。救えるもんなら救ってみな」

「当たり前だ。お前の希望を絶対救ってみせる」

 

 

 

ウィザードが、エンゲージウィザードリングをメアリに付けた。

 

 

 

『エンゲージ、プリーズ』

 

 

 

 

「俺が、最後の希望だ…」




かなり久々な投稿だった割に内容が薄くて本当にすまない…(某ジークフリート並)
投稿ペースが悪かったのもそろそろ断ち切り、もう少し頑張っていきますので、どうか応援宜しくお願い致します。

次回は、メアリ救出とスイムスイムチームのごたごたをメインにします。
今回書いてない部分も、次で書きますので、お楽しみに!


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第40話 いつかその日まで

はい、今回はメアリ編ラストでございます。
先に言いますが、今回は魔法少女達は終盤空気気味ですので、ご了承を。
そして、メアリの運命や如何に!?

せっかく投稿頑張ると言って息巻いていたのですが、こちらのミスでデータが飛んでいきまして、結局投稿が延びたことをお詫びします。


仮面ライダーウィザード、操真晴人は、魔法少女カラミティ・メアリを死から救うため、彼女のアンダーワールドに突入して行った。

 

 

 

一方、仮面ライダードライブ、泊進ノ介は魔法少女スイムスイム、ミナエルと激闘を繰り広げていたが…。

 

 

 

「お姉ちゃん…」

「…ユナ…」

 

 

 

ミナエル、そしてスイムスイムの前に対峙するユナエルとたま。

ドライブはそれを黙って見つめている。

 

 

 

…何故こんな状況になったのか、というのも、少し前。

 

 

 

「おい!ドライブ!」

「お、お前はウィザード!」

 

 

 

ドライブがスイムスイム達と戦っている最中、現れたウィザード、そしてスノーホワイトを始めとした魔法少女達。

その中には、ユナエル、たまの姿も。

 

 

「久しぶりの再開ってとこだが、それは後だ。ドライブ、一体これはどういう状況だ…?」

「この二人がいきなり襲いかかってきたんだ、取り敢えず、リップル達は避難させたが、メアリが突然苦しみ出してな…リップル達はお前しか対処出来ないって言ってた、早々悪いが、そっちに行ってくれるか?」

「あぁ、分かった。メアリの事は任せろ。行くぞ、みんな!」

「晴人さん、メアリを助けに行くんですか?」

「当たり前だ、今までの事があったとはいえ、死なせられるか」

「やっぱ凄いな、晴兄…いやウィザード。私達も行こう」

「すまん、こっちはなんとか抑えるから、メアリの事は任せる」

「あ…それと、この2人はここに置いていくから」

 

 

 

そう言って、晴人はユナエルとたまを送り出す。

 

 

 

「何故、この2人を?ていうか、双子か?」

「まぁな。とにかく、自分達のトラブルは自分達でケリを付けたいらしい。二人を頼む。じゃあな」

「あ、あぁ…気を付けろよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この状況となったのだ。

対峙していたユナエルが、先に口を開いた。

 

 

 

「お姉ちゃん、もう分かってるでしょ、こんなこと無駄だって…」

「ユナこそ、何今更善人ぶってんのさ。そっちこそ無駄な足掻きなんじゃないの?」

「だからって、魔法少女を殺していったって意味無いよ…虚しいだけだよ…」

「じゃあ何もせず死ねって言うのかよ!ここまでやってきて、もう私達は戻れないんだよ!ルーラを殺そうとしたその時から!」

「何で…何でよ…お姉ちゃん」

 

 

「たまちゃん…だよな?話を聞いた感じ、君たちは元々仲間だったのか?」

「はい…元々はルーラっていう魔法少女とも一緒に組んで、5人で活動してたんです…でも、ケンカとか色々して、今ではこんな風に…」

「そうか…深い事情は分からないが、苦労してるんだな」

『君たち魔法少女にも、色々あるのだね…』

 

 

 

同情するドライブとクリムから視線をスイムスイムへと移したたま。

なんとかスイムスイムにも交渉出来ないものか、とたまは声を掛ける。

 

 

 

「ねぇ、スイムちゃん…」

 

 

 

ゆっくりとスイムスイムへ近づくたま。

しかし、そんなたまに、攻撃が迫る。

 

 

「危ないっ!」

 

 

ドライブの援護で、なんとか攻撃を避けたたま。

しかし、攻撃を与えてきた主は…

 

 

 

「…たま。よく聞いて」

 

 

 

 

攻撃してきたのは、スイムスイムだった。

そして、たま達を見つめてこう言う。

 

 

 

「今日はもう終わり。これから二人がどうするのかは、二人で決めて」

「スイム…ちゃん…?」

「だけど、もしこれからも私達を邪魔するようなら…その時は容赦しない」

 

 

 

スイムスイムから放たれた言葉は、実質チーム解散を宣言されているようなものだった。

 

 

 

「ミナエル、帰ろう」

「…分かった」

 

 

 

ユナエルから視線を外し、スイムスイムと共に帰ろうとするミナエル。

ユナエルは堪らずに声をかける。

 

 

 

「お姉ちゃん!」

 

 

 

ユナエルが声を掛けたが、ミナエルは振り向くことは無かった。

そしてたまもユナエルも、スイムスイム達が帰っていくのを見つめる事しか出来なかった…。

 

 

 

「お姉ちゃん…私は…」

「…」

 

 

 

たまもユナエルも黙り込んでしまい、沈黙の時間が流れる。

 

 

 

「あの二人の事は、また話し合えばいい…」

「そうですよね…分かってくれますよね…?」

「あぁ、きっとな。今はメアリやウィザードの元へ急ごう」

「…はい」

 

 

 

ドライブ達はウィザード達に合流するため、移動を始めた。

しかし、たまには、先ほどのスイムスイムの言葉が、心の中に錘として残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エンゲージ、プリーズ』

 

 

 

仮面ライダーウィザード、操真晴人はたった今、魔法少女カラミティ・メアリのアンダーワールドに突入した。

彼女のアンダーワールドへダイブし、世界に足を踏み入れる。

そこに広がっていたものは…。

 

 

 

 

「…へぇ、これが彼女の“希望の世界”か…」

 

 

 

 

目の前に広がるのは、家族と思われし3人が、幸せに暮らしている風景である。

娘らしきまだ幼い少女と遊ぶ父。

そして、それを見守る母。恐らく彼女が、カラミティ・メアリだろう。

 

 

 

 

「やっぱり、誰にだってこういう希望は残ってるんだ。だから…」

 

 

 

ウィザードが振り返る。

そこには、アンダーワールドの景色を破壊しながら進むファントム、サイクロプスの姿が。

しかし、以前ウィザードはサイクロプスを撃破している。

 

 

 

 

「こいつらはやっぱ人造ファントムか…だが、そんなの関係ない。大切な希望を、こんな所で無くしてたまるか!」

 

 

 

 

ウィザードは指輪を付け替える。

付け替えた緑の指輪をベルトにかざし、形態を変化させる。

 

 

 

『ハリケーン…ドラゴン!』

 

 

 

ハリケーンドラゴンへ変化したウィザードは、サイクロプスの攻撃を華麗に避けて、ソードガンで脚部を攻撃する。

巨大な図体をしているサイクロプスは、脚への的確な攻撃でよろめき、バランスを崩す。

その隙を付き、ウィザードは必殺魔法を発動する。

 

 

 

『チョーイイネ!スペシャル、サイコー!』

 

 

 

翼を生やしたウィザードがそのままサイクロプスに突撃する。

しかし、サイクロプスが手に持っていた棍棒を振り回して応戦したため、棍棒に弾かれウィザードは吹き飛ばされた。

 

 

 

「うおっ!?全く、とんでもない暴れん坊だな…だったらこっちも力技だ!」

 

 

 

ウィザードは青い指輪を付け、姿を変化させる。

 

 

 

『ウォーター…ドラゴン!』

 

 

 

「さてと、早速で悪いが、動きを封じさせてもらうぜ…」

 

 

 

『チョーイイネ!ブリザード、サイコー!』

 

 

 

ブリザードの魔法で、サイクロプスを凍らせていく。

最後まで抵抗を続けるサイクロプスの攻撃を避けていきながら、ブリザードの魔法を放ち続ける。

そして、最後まで暴れ続けていたサイクロプスも、ついには完全に凍ってしまった。

 

 

 

「よし、フィナーレだ!」

 

 

 

『チョーイイネ!キックストライク、サイコー!』

 

 

 

魔法陣が現れ、ウィザードは水の力を増大させる。

そして、そのまま回転しながらサイクロプスに必殺、ストライクエンドをお見舞いする。

 

 

 

「だあああああああ!」

 

 

 

凍った状態のサイクロプスは、断末魔を挙げることも無く、氷のようになった全身を砕かれて消滅した。

 

 

 

「ふぃー…」

 

 

 

壊されかけていた世界が修復されていく。

そして、アンダーワールドの中には家族の暖かい空間が戻ってきた。

 

 

 

「…この笑顔が、今のメアリにも戻ると良いんだがな…」

 

 

 

アンダーワールドから戻ってきたウィザード。

そこには魔力を失い、人間の姿に戻ったメアリの姿があった。

その姿は、あまり綺麗な姿とは言えず、暗い雰囲気を醸し出していた。

 

 

「お疲れ様でした、晴人さん」

「上手く行ったようで何よりだよ」

「ウィザード!なんとかなったみたいだな!」

「あぁ、トップスピードもリップルも、ありがとな」

「やるべき事をしただけ」

 

 

 

 

待っていたスノーホワイト達が声を掛けてくる。

彼女達と話した後、リップルとトップスピードに礼を言ったウィザード。

そして、メアリに声を掛けた。

 

 

 

「あんたがメアリの人間体か。取り敢えず、あんたが死ぬことはもう無い、安心してくれ」

「そうかい。一応感謝しておくよ。こんなあたしでも助けた事をね」

「どういたしまして。って言っておくよ」

 

 

「おーい!ウィザード!」

 

 

 

ウィザードが振り向くと、ドライブ達がやって来ていた。

 

 

 

「ドライブ!それにたま、ユナエルも。あいつら、どうだったんだ?」

「それがだな…」

「…これ以上邪魔するなら、容赦しないって…」

「そっか…スイムスイム達、一体何考えてるんだか」

「そういうお前は、メアリを助けられたようだな」

 

 

 

そういうドライブは、メアリの人間体を見て、驚きの声を挙げた。

 

 

 

「おっ!?お前まさか…山元奈緒子…?」

「…そうだよ、あたしが山元だよ」

「泊刑事、山元奈緒子って…」

「あぁ、警察が探してた人間だ。まさかお前とは…」

「あたしを捕まえるんだろ?」

「…そうなるな。今回の1件もそうだが、お前には児童虐待の罪も重なっている」

 

 

 

ドライブの告げた言葉に驚くウィザードや魔法少女達だったが、当のメアリこと山元奈緒子は冷静だった。

 

 

 

「ドライブ、あんたにやられた時にもう分かってた事さ。どの道あたしに残されたものはもう無い。どうぞ捕まえてくれ」

「メアリ…」

「いや、もう無い、なんてことは無いかもしれない」

「…は?」

 

 

 

ウィザードにそんな事を言われ、驚く奈緒子。

そのままウィザードは続けた。

 

 

 

「確かにあんたは全てを失ったかもしれない。でも、その無くしたものを、また1から取り戻していけばいいんじゃないのか?」

「ハハッ…面白い事言うね。でも、私はもうそんな事出来る状況じゃないのは、あんたも分かってるだろ?」

「今は、な…だからお前が罪を償って、もう一度戻ってこれる時が来たら、またやり直していけばいいさ」

「…そうかね。まぁ、いつかそんな日が来るならね」

「来るさ。絶対な」

 

 

 

ウィザードがそう言うと、奈緒子は笑って応えた。

…少し経った後、ドライブこと泊進ノ介によって奈緒子はやって来たパトカーに収容されていった。

最後の別れの際に奈緒子は、世話になった。とウィザードや、魔法少女達に告げていった。

そしてウィザードは、いつか彼女にも希望が再び灯る事を信じて見送っていた。

 

 

 

 

「これで、取り敢えず一段落だな」

「確かに、今回はドライブ。お前のお陰で助かった事もある。ありがとうな」

「礼には及ばないさ。それに、まだ全部は終わってないだろ」

「…そうだな。この件の元凶含め、まだ解決してない事がたくさんだ」

「俺も協力するよ。せっかくベルトさんが帰ってきたんだ、俺たちにも出来ることがあるはずだ」

「俺からも頼む。これからも手を貸してくれ、ドライブ。いや、進ノ介」

「こちらこそ。晴人」

 

 

 

晴人と進ノ介は、固い握手を交わした。

そして、今起こっている出来事を整理する。

 

 

 

「取り敢えず、俺はスイムスイム達の件をどうにかしたい。進ノ介、お前は永夢や仁藤達の方に向かってくれ」

「それは構わないが、スイムスイムってのも結構厄介だぞ、あれを止めるのは相当…」

「…宛がある」

「えっ、そうなのか?」

「完全に止めるのは困難かもしれないが、現状のあいつらをどうにか出来るかもしれない」

「そんな人がいるのか?」

 

 

「あぁ。1人、スイムスイムが目標にしてる奴がな…」




というわけで、メアリ編は終了し、無事に?メアリは罪を償うでしょう。
少々メアリの過去関連は情報が少ないので、オリジナル設定を適用しました。
次回は、今回描写しなかったゴースト、エグゼイド達の戦いを主にやっていきます。
そして、久々にあのキャラの登場もあります。


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第41話 大激突

大仕事を終えて三週間ぶりの投稿です。
お待たせしました。
そんな中僕は大装動エグゼイドを買えなくてテンションダウンです。


仮面ライダードライブ、泊進ノ介は、ファントム達と戦っていた仮面ライダーゴースト、エグゼイド達と合流する為に再び移動中であった。

進ノ介自身も、ここまでウィザードや魔法少女達と共に戦って来たが、この案件の黒幕の正体を全く掴めなかったのだが…。

 

 

 

「…」

『どうしたんだい進ノ介、何やら思い詰めているようだね。やはり彼らが心配か?』

「勿論、それもある。だけど、さっきの彼女が言ってた言葉がどうも気になってな…」

 

 

 

 

 

そう、これはメアリこと山元奈緒子がパトカーに連行されていく時の事だった。

 

 

 

「…あんたはこれで魔法少女の戦いから解放される。今は罪を償うんだ。いつか、お前の希望が報われる日が来る」

「そうかい…でも、まだあんたらの戦いは終わってないだろ?」

「あ、あぁ…現状は敵の情報が少なすぎる。ファントムってのが蘇ってる理由すら分からない」

「…助けてもらった礼さ。いい事を教えてやるよ…」

「何?どういう事だ」

 

「…ファヴとクラムベリーに注意しろってウィザードに伝えておきな」

「ファヴと、クラムベリー…?」

「あぁ、そうさ。ファヴってのはこの魔法少女育成計画のマスコットキャラ…ってナリしてるが、恐らくあいつが裏を引いてる。それとクラムベリーってのは参加してる魔法少女だが、ファヴと何かしら繋がってる上に、あれは偽者だ。本物は多分、とっくの前に死んでる」

「何だって!?お前、なんでそこまで知ってる…?」

「偶然あいつらが話してる所を見ちまってね。一旦は向こうの側に付いてた時があってねぇ、私に街でテロをしてみろって提案したのも、ファヴだ」

「なっ…それじゃあ…」

「まぁ、マッチポンプに近いね。奴らが何を考えてるかは知らないけど、今のあたしにはもう関係の無い情報だ。信じるも信じないもあんたら次第さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の言っていた情報が真実なら、この事件の解決への大きな鍵となるだろう。

早く他のライダーや魔法少女達に伝えなければならない。

その為にも、まずはゴースト達を助けに行かなければならない。

 

 

 

「急ごう、飛ばしていくぞ、ベルトさん!」

『OK!Go!トライドロン!』

 

 

 

進ノ介は、彼らの元へ急ぐため、トライドロンのアクセルを踏み直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃…

 

 

 

「うぉっ!?こいつら、無駄に強いじゃねえか!」

「仁藤さん、気を付けて!」

「皆まで言うな!こっちもただやられるだけじゃねえってことを教えてやるよ!」

 

 

 

仮面ライダービースト、ゴースト、エグゼイド、ブレイブの4人とシスターナナ、ヴェス・ウィンタープリズンは、蘇ったファントム達との戦いに身を投じていた。

 

 

 

『バッファ!ゴー!』

 

 

 

「よし、今度こそお前らを喰ってやるぜ!行くぞ、タケル!」

「はい!」

 

 

 

ビーストはバッファマントに変化し、ゴーストはガンガンセイバーを構えて、オーガとグレムリンに挑む。

 

 

 

「よしっ、俺達もやってやろうぜ!」

「分かっている、だが気を付けろ研修医。こいつらはバグスターとは違うぞ…」

「あぁ、行くぜブレイブ!」

「あの赤いファントムはお前に任せる。俺は白いファントムを切除する!」

 

 

 

 

『ガシャコンブレイカー!』

『ガシャコンソード!』

 

 

 

エグゼイド、ブレイブは両者の専用のガシャコンウェポンを呼び出して、フェニックス、カーバンクルに挑む。

 

 

 

「ナナ、君は物陰に隠れながら私を援護してくれ。あのファントムの頭から伸びる触手は危険だ」

「えぇ。トリガーマグナムと魔法で援護するわ」

 

 

シスターナナ、ウィンタープリズンと対峙しているのは、メデューサ。

購入したトリガーマグナムを片手に、魔法を使いウィンタープリズンを強化するシスターナナ。

 

各々が分担してファントム撃退にあたる。

対するファントム陣営は、それを迎え撃つ。

 

 

 

「行け!仮面ライダー共に地獄を見せてやれ!」

「まぁ待てよオーガ。今回は俺が相手だ」

「ビーストか。お前1人で俺を止められるのか?」

「やってやるぜ、お前の魔力を食ってキマイラのご馳走にしてやるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、ゲームスタートだ!行くぜ!」

「お前は、俺が切除する…!」

 

 

 

エグゼイドはフェニックス、ブレイブはカーバンクルと対峙している。

ガシャコンブレイカーを構えたエグゼイドは、飛びかかってきたフェニックスの大剣からの攻撃を防ぎ、素早く避けてフェニックスを切り裂く。

しかし、大ダメージには到らず、フェニックスの一振りでエグゼイドは押し戻される。

 

 

 

「流石ウィザードと互角以上に戦っただけはあるな!でも、負けないぜ!」

 

 

 

無言で襲い掛かってくるフェニックス。エグゼイドはその突進を避けて、ゲームエリアに広がるエナジーアイテムを手に入れる。

 

 

 

『高速化!』

 

 

 

「エナジーアイテムゲット!これならどうだ!」

 

 

 

すると、エナジーアイテムの文字通り高速化し、今まで以上に素早く移動出来るようになったエグゼイド。

フェニックスの重い一撃を軽々と避け、ガシャコンブレイカーでフェニックスに連続攻撃をお見舞いする。

 

 

 

「これなら行ける!続けてフィニッシュだ!」

 

 

 

ドライバーからガシャットを取り出し、ガシャコンブレイカーのスロットへ装着し、必殺技を繰り出す。

 

 

 

『キメワザ!』

『マイティ!クリティカルフィニッシュ!』

 

 

 

「受けてみろ!ハァァァァァァ!」

 

 

 

連続で切り裂かれ、大きな一撃を与えられたフェニックス。そのままエグゼイドが切り裂き、フェニックスはそのまま爆散した。

 

 

 

「よし!ファントム撃退一番乗り!」

 

 

 

…と、エグゼイドが勝利を確信する。

完全にフェニックスを倒したはずだったが…。

 

 

 

爆発の中から、再びフェニックスが現れたのだ。

しかも無傷であり、まさに完全復活といったところか。

 

 

 

「えぇーっ!?何で復活してるんだよ!」

 

 

 

フェニックスの復活に驚くエグゼイド。

すると、オーガと戦っているビーストが声を掛けた。

 

 

 

「そういやそうだった!おいエグゼイド!そいつはフェニックスって言ってな。何回でも復活する面倒な奴だ」

「おいおい嘘だろ…?じゃあどうやって倒すんだよ?」

「そう言われてもなぁ…あ、晴人は太陽まで吹っ飛ばして戻ってこれなくしたらしいぞ!」

「そんなの出来るか!…こいつはバグスターじゃないからリプログラミングも出来ないし…あー!どうすりゃ良いんだよ!」

 

 

 

エグゼイドが混乱している間に、フェニックスは攻撃を仕掛けてくる。

なんとか回避し反撃するも、再生を繰り返すフェニックスに勝機は見当たらない。

 

 

 

「くっそぉ…こうなったら仕方ない!」

 

 

 

何やら覚悟を決めたように呟くエグゼイド。

すると、他のファントムと戦っているブレイブに声を掛けた。

 

 

 

「ブレイブ!ドラゴナイトハンターZのガシャットを貸してくれ!

「…ドラゴナイトハンターZだと?今更お前が使うまでも無いだろう?」

「お前話聞いてなかったのか?フェニックスを太陽まで吹っ飛ばすんだよ!」

「なっ、お前…。まぁ良い、せいぜい足掻け」

 

 

そういうブレイブはドラゴナイトハンターZのガシャットをエグゼイドに投げた。

 

 

「サンキューブレイブ!よーし、やってやるぜ!」

 

 

 

『ドラゴナイトハンターZ!』

 

 

 

エグゼイドはドラゴナイトハンターZを掴み、ゲーマドライバーの二つ目のスロットへ装着する。

 

 

 

「大・大・大・大・大変身!」

 

 

 

ドライバーのレバーを1度戻し、再び開く。

現れたハンターゲーマがエグゼイドのアーマーに装着される。

 

 

 

『アガッチャ!』

『ド・ド・ドラゴナ・ナ・ナ・ナイト!ドラ・ドラ・ドラゴナイトハンター!Z!』

 

 

 

エグゼイドはレベル2の姿から、ハンターゲーマーレベル5の姿に変化した。

 

 

 

「さーて、行けるか知らないけど、ちょっくらやってやるぜ!」

 

 

 

エグゼイドは、背中の翼で飛びながら両腕でフェニックスを捕らえる。

そのままフェニックスと共に空中へ上昇するエグゼイド。

名深市全体を見渡す事が出来る程の高さまで上ったエグゼイドは、フェニックスを腕のブレードで更に上空へ切り上げる。

そして、ドラゴナイトハンターのガシャットを、腰に付けてあるキメワザスロットホルダーへ装着する。

 

 

 

『キメワザ!』

『ドラゴナイト!クリティカルストライク!』

 

 

 

「フィニッシュを決めてやるぜ!吹っ飛べぇぇぇ!」

 

 

 

エグゼイドはフェニックスを追撃する必殺キックを放った。

フェニックスは反撃する間も与えられず、大きな攻撃を受けて更に高い場所へ吹き飛ばされた。

フェニックスの視界からは段々と街が見えなくなり、やがては地上の景色が見えなくなった。

宇宙空間に放り出され、太陽の中に放り込まれた。

そして、放り込まれたフェニックスは、太陽の熱で再び死を迎え、蘇る。

このフェニックスも、以前ウィザードによって太陽に飛ばされたオリジナルのフェニックスと同じ道を巡る。

蘇る度に強くなるフェニックスだが、太陽の熱の前には為す術もない。

フェニックスには、終わりは永遠に訪れない。

 

 

 

エグゼイドは、フェニックスが戻ってこない事を確信し、ビースト達のいる場所へ戻ってきた。

 

 

 

 

「よし、フェニックス撃破!」

「ふん、やったようだな、研修医」

「ああ。あいつも俺が倒してやるぜ!」

「いいや、研修医は下がっていろ。奴は俺が切除する」

「あ…はいはい。分かったよ、ここは任せる」

 

 

 

エグゼイドを押し退けて、ブレイブがガシャコンソードを構えてカーバンクルへ挑む。

カーバンクルの攻撃をガシャコンソードで凌ぎ、ダメージを的確に与えていく。

カーバンクルは左腕を剣にして応戦する。

ブレイブとカーバンクルはほぼ互角の戦いを繰り広げる。

 

 

 

「くっ、埒が開かないな…ならば!」

 

 

 

『ドレミファビート!』

 

 

 

ブレイブはレベル3のガシャット、ドレミファビートを使う。

ビートゲーマが現れ、カーバンクルを翻弄する。

 

 

 

「術式レベル3…!」

 

 

 

ゲーマドライバーのスロットにドレミファビートガシャットを装着し、ゲーマドライバーのレバーを操作する。

 

 

 

『ド・ド・ドレミファ・ソ・ラ・シ・ド!OK!ドレミファビート!』

 

 

 

ブレイブはレベル3、ビートゲーマーへ変化した。

右腕に新しく装着されたスクラッチを回転させてリズムに乗りつつカーバンクルに攻撃する。

リズムに合わせて攻撃を与えてカーバンクルを追い詰めていく。

今までとは少し変わった攻撃パターンに、カーバンクルも対処し切れてしないようだ。

 

 

 

「心臓マッサージのリズムには慣れている。このまま終わりにする…!」

 

 

 

ブレイブは、ドレミファビートガシャットをガシャコンソードのスロットへ装着する。

ガシャコンソードに必殺のオーラが宿る。

 

 

 

『ドレミファ!クリティカルフィニッシュ!』

 

 

 

「ハァァァァァァ!」

 

 

 

ブレイブが放つ必殺技の連撃に、カーバンクルは打つ手無しのまま倒されていった。

最後の一撃を加えたと同時に、カーバンクルの体は炎に包まれて爆散した。

 

 

 

「…完璧なオペだったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

エグゼイド、ブレイブがファントムを撃破した頃、ゴーストはグレムリンとの一体一の戦いを繰り広げていた。

ガンガンセイバーでグレムリンを攻撃する。

グレムリンは素早く移動して攻撃を回避する。

なかなか攻撃が命中しない上に、グレムリンの素早い攻撃で苦戦を強いられている。

 

 

 

「うわっ!…このファントム、動きが早い…!」

 

 

このまま倒される訳にもいかない。

ゴーストはニュートンアイコンを取り出し、ゴーストドライバーに装着する。

 

 

 

「ニュートンさん!力を借ります!」

 

 

 

『カイガン!ニュートン!』

『リンゴが落下!引き寄せまっか!』

 

 

 

ゴーストはオレ魂からニュートン魂に変化した。

高速移動するグレムリンを、ニュートンの能力で封じ、動きを止めてゴーストの近くに引きずり込む。

近くまで引っ張られたグレムリンを、ゴーストが再び吹き飛ばす。

 

 

 

「引き寄せてから…吹き飛べ!」

 

 

 

吹き飛び、近くにあった木に全身激突するグレムリン。

しかし、致命打には至らない。

再び起き上がり、グレムリンが反撃を開始する。

先程よりも色々な方位に移動して攻撃を仕掛けてくる。

しかし、ゴーストも負けてはいない。

グレムリンが襲い掛かってくる方面に斥力の力を浴びせて吹き飛ばした。

そのまま引力でグレムリンを捕らえ、重力を操作して地面に叩きつける。

 

 

 

「よし、最後に止めだ!行こう、弁慶さん!」

 

 

 

今度はベンケイゴーストアイコンを取り出して新しい姿へ変化する。

 

 

 

『カイガン!ベンケイ!』

『アニキムキムキ仁王立ち!』

 

 

 

数回の攻撃でボロボロになっているグレムリンに向けて、ベンケイ魂へ変化したゴーストは、ガンガンセイバーをハンマーモードにして、紋章をゴーストドライバーにかざす。

 

 

 

『ダイカイガン!ベンケイ!オメガボンバー!』

 

 

 

ゴーストはガンガンセイバーを振り回して、よろめくグレムリン相手に叩きつけた。

 

 

 

「ハァァァァァ!」

 

 

 

 

思いきり叩き潰されたグレムリンは爆散して消滅した。

ゴーストの勝利である。

 

 

 

「ふぅ…ニュートンさん、ベンケイさん、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

「行くよナナ!ファントム、掛かってこい!」

「はい!どうか、ウィンタープリズンに勝利を…」

 

 

 

メデューサと戦っているのは、仮面ライダーではなく、魔法少女シスターナナと、ウィンタープリズンである。

シスターナナの支援魔法で、能力が強化されたウィンタープリズンが、メデューサへ突っ込んで近距離戦を仕掛けた。

強化されたウィンタープリズンからの攻撃は、素早い攻撃ながら一撃一撃が的確にヒットし、メデューサは少しづつ後退する。

しかし、メデューサの頭の蛇がウィンタープリズンに伸びて、彼女を絡めとる。

動きを封じられて戦えないウィンタープリズン。

 

 

 

「ぐ…このっ…」

「ウィンタープリズン!すぐに助けます!」

 

 

 

少し離れてウィンタープリズンを見守っていたシスターナナが、マジカルフォンで手に入れたトリガーマグナムを呼び出し、メデューサの触手に向けて銃弾を発射する。

仮面ライダーW、ルナトリガーの能力を使用できるこのトリガーマグナムは、自動追尾で目標を狙う事が出来る。

見事にメデューサの触手を打ち破るようにヒットし、ウィンタープリズンは解放された。

 

 

 

「ウィンタープリズン!大丈夫ですか?」

「何も心配は要らないよ。それよりも、今度は私が借りを返す番だ」

 

 

 

 

再びウィンタープリズンは立ち上がり、メデューサに反撃を仕掛ける。

先程のトリガーマグナムの一撃が効いていたようで、今はウィンタープリズンが優勢である。

メデューサがエネルギー波を放ってきたが、ウィンタープリズンの魔法、壁の生成により防がれた。

ウィンタープリズンはもう一度メデューサを強く殴りつけた。

吹き飛び、地面に倒れ込むメデューサ。

 

 

 

「ナナ、止めは君が決めるんだ。恐らく君の武器の方が高い威力を発揮できる」

「分かったわ。じゃあこれでおしまいです!」

 

 

 

シスターナナはトリガーマグナムに付属していたトリガーメモリをセットし、先端を持ち上げた。

 

 

 

『トリガー!マキシマムドライブ!』

 

 

 

「くらいなさい!ハァッ!」

 

 

 

 

シスターナナより放たれた何発かの必殺で、メデューサは避けきれず被弾する。

そのまま為す術もなく、メデューサは爆散した。

 

 

 

「…ファントムは倒せたようだね。お疲れ様、ナナ。ありがとう」

「ウィンタープリズンこそ、助かったわ」

 

 

 

 

 

 

 

オーガに単独で突撃するビースト。

ダイスサーベルで先制の一撃を与える。

更に、バッファマントの力でオーガを押し飛ばす。

勢いに押されつつあるオーガだが、負けじと反撃する。

ダイスサーベルの攻撃を避けて、ビーストの腹部を蹴る。

 

 

 

「ぐおっ!相変わらず一筋縄じゃ行かねぇな!」

「お前如きに俺は倒せんさ。さぁ来い!その程度か!」

「言うじゃねぇか!だったらこいつでどうだ!」

 

 

『ハイパー!ゴー!』

 

 

指輪を付け替えて、ビーストはビーストハイパーへと変化する。

ミラージュマグナムを手にしてオーガに銃撃を連射する。

連射攻撃でオーガは反撃の機会を失う。

ビーストは腕のフリンジスリンガーの連撃でオーガに隙を与えない。

腕を振り回してダメージを与え、最後にミラージュマグナムの1発を加える。

 

 

 

「おのれっ…!その姿は…」

「出し惜しみしてられねぇからな。このまま決めさせて貰うぜ!」

 

 

 

『ハイパー!マグナムストライク!』

 

 

 

ビーストはハイパーの指輪をミラージュマグナムに装着して、必殺技を放った。

 

 

 

「くらいな!どりゃぁぁぁぁ!」

「ぐっ…!」

 

 

 

必殺技、シューティングミラージュがオーガに炸裂した。

吹き飛び、倒れるオーガ。

 

 

 

「俺の勝ちだな。他のみんなもファントム共を倒したみたいだし、全面的にお前らの負けだ」

 

 

 

ビーストは勝ち誇ったように言うが、対してオーガは全く動じていなかった。

 

 

 

「…残念だったな。今回は元々お前達を倒すのが目的では無かったのさ」

「何だと…?どういう意味だそりゃ」

「今回はお前達仮面ライダーのデータ収集さ。そしてそれは成功した」

「データなんか集めてどうするんだよ!」

「そこまでお前達に伝えても意味は無い。お前達には無意味な事だ」

「余計気になるだろ!」

「フン、くだらん茶番はここまでだ。さらばだ、仮面ライダー!」

 

 

 

オーガはまだ力が残っていたらしく、エネルギー波をビースト達に浴びせて消えた。

 

 

 

「あぶねっ…」

「仁藤さん!大丈夫ですか?」

「何が起こった…?」

 

 

ビーストの元に、変身解除した永夢や飛彩達がやって来る。

仁藤は永夢に気にするな、と言い立ち上がる。

 

 

 

「くっそぉ…また逃げられちまった…」

「でも、一応窮地は脱せたんじゃないですか?」

「まあそうなんだが…何か俺達ライダーのデータ収集がどうとか言ってやがったな…」

「分かってはいたが、やはりまだ終わらないという事だな」

「まぁ、そういうこった。取り敢えず晴人達に合流しようぜ、話はそこからだ」

 

 

 

そう言いつつ、仁藤達は晴人や他の仲間との合流を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、仁藤達との戦いから1日が経った。メアリを救った晴人は今…。

 

 

 

「いやー、こんな洒落たカフェで待ち合わせなんてほとんど無かったし、なんだか新鮮だな…」

 

 

 

名深市の街にあるカフェに来ていた。

晴人にはあまり馴染みの無い店だが、何故こんな所にいるのかは理由がある。

 

 

 

「おっ、来たかな。おーい、こっちだ」

「…あら、そこに居たのね。待たせたわね」

 

 

 

ある人物との待ち合わせをしていたのだ。

そして晴人の元にその人物がやって来た。

 

 

 

「気にすんな、こっちが急に頼んだ事だ。…ていうか、最近はどうなの?新しい職場、上手くやれてんの?面接は上手いこと行ったらしいけど」

「まぁまぁね。気持ちを切り替えて1から頑張ってるわ。会社のみんなで助け合うのも、悪くないわ」

「そっか。そりゃ良かった」

「どうも。…それよりも、聞きたい事って何?」

「あぁ…思い出したくも無いかもしれないが、頼めるか?」

「勿論よ。あなたに助けてもらった礼があるもの。手伝ってやらなくもないわ」

「ありがとうな。ルーラ…いや、早苗」

「それで、何となくは察してるけど、聞きたいことは?」

 

 

 

そう、待ち合わせていたのは、元魔法少女ルーラ。木王早苗である。

そんな彼女から晴人が聞きたいのは、一つだった。

 

 

 

「スイムスイム。あいつのことについて教えて欲しい…」




はい、お久しぶりの投稿でした。
夏前の仕事が立て込んでまして、なんとか耐えきって復活出来ました。
…ん?なんでウィザードが苦戦した奴らがエグゼイドライダーやゴーストにあんなにボコられてたのか…?
そりゃ、再生怪人だからに決まってます!
次回はオーガやファヴの目的、そしてルーラが語るスイムスイムとは…?
是非ご期待下さい!


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第42話 決意

またまた随分とお待たせしてしまいました。
毎度毎度逃亡したんじゃないかと思われているかもですが、生きてます。
これも仕事とFGOのせいなんです(責任転嫁)


「スイムスイム…ね…あの子は今何をしてるの?」

「…あんたの消えた後のチームを引っ張ってたが、あいつらにも思う事があったんだろうな。今では内部分裂しちまってる」

 

 

 

晴人は、元魔法少女、ルーラこと木王早苗と再開し、スイムスイムについての情報を聞き出そうとしていた。

少しずつではあるが、団結しつつある魔法少女達の中でミナエルと共に孤立し、魔法少女を襲っているスイムスイム。

スイムスイムについて、ルーラとして活動していた時に協力していた早苗なら、何か知っているのではないかと晴人は踏んでいた。

 

 

 

「まだ大変みたいね。あなたも、あの子達も」

「この事件の元凶を絞れてきてはいるんだ。ただ、今のスイムスイムを放っておくわけにはいかない。どうにかして説得したい」

「私もあなたの言う事を否定したりはしないわ。後戻り出来なくなる前に止めないとね」

「助かるよ。早速だが、スイムスイムがどんなやつだったか教えてくれるか?」

「えぇ。…スイムスイムは不思議な子だったわ。私がチームに勧誘したのはいいけど、何の目的を持っているのかも、私に何で従ってくれていたのかも分からなくて」

「そうなのか…?」

「だから、スイムスイム達に裏切られて殺されかけたのも、想定外でね」

「そっか。あんたでもスイムスイムについてはよく知らないとなると、あいつは一体何を…」

 

 

 

スイムスイムの目的が読めず、困った素振りを見せる晴人に、何かを思い出したように声を出した早苗。

 

 

 

「どうかしたか…?」

「一つだけ。スイムスイムが言ってた、私がルーラになるって言うのが気になっててね…」

「ルーラになる、か。純粋にお前に憧れてたってわけじゃないか?」

「ただ、もしかするとあの子は純粋に生き残りたいだけかもしれない…」

「生き残りたいだけ?」

「えぇ。私にはあの子がどう考えてるのかは分からないけど、そんな気がするわ」

 

 

 

そんな話を最後に、その日は解散となった。

別れる際に、晴人はもう一度早苗に告げた。

 

 

 

「今日はありがとうな。情報を得られただけでも充分だ」

「そう言ってくれるなら良かったわ。もしスイムスイムを止めるんだとしたら、あまり無茶しないでね」

「分かってる。じゃあ、また」

 

 

 

バイクに乗って去っていった晴人を見送った後、早苗は1人考え込んでいた。

 

 

 

「私にも、何か出来ることはないかしら…」

 

 

 

しかし、魔法少女への変身能力を失った以上、もはや晴人達の力になれることは無いに等しい。

だが、何もしないわけにはいかなかった。

1度は無くしかけた命を救ってくれた恩、返したいと思っていた。

きっと何か出来ることがある。その考えを胸に、彼女は次なる1歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…ファヴはいるか!」

『オーガ、お疲れ様ぽん。まぁ、酷いやられ方みたいだけどぽん』

 

 

 

先のビースト達との戦いでダメージを背負ったファントム・オーガは、ある廃屋で、ファヴと会話をしていた。

オーガ以外のファントムは皆、ライダー達との戦いで倒れ、完全敗北となってしまった。

 

 

 

「確かにやられたが、お前らもデータを集められたんだろ?」

『そっちはばっちりだぽん。良いデータを取れたぽん』

「それなら目的は達成した訳か。しかし、ライダーのデータはかなり集まったのか?」

『今回新しく手に入ったゴーストのデータで、今までこの件に絡んできたライダーの戦闘データ、もとい記録も手に入れられたぽん』

「ファヴ、データを採集した以上、奴らを叩き潰せるんだろうな?」

『まぁまぁ、待ってろぽん。今度こそ君にウィザードとの決着を付けさせてやるぽん』

「そうか。ならば、決戦が近いというわけか」

『そうぽん。どの道、君の正体もファヴの事もバレちゃうのは近いぽん。例の計画の完成も近いから、君には…いや、君たちには最後の足止めを頼むぽん』

「たち…だと?」

『言っただろぽん?オーガ、あくまで君はウィザードの相手をしてもらうぽん』

「つまり、他のライダーには他の奴が対処するというわけか」

『その通りぽん。しかも、ライダー達に立ち塞がるのは、そのライダーと因縁がある奴らだぽん』

「それは面白いな。待っていろ…ウィザード。散々伸びてしまったが、今度こそ決着を付けてやる」

『いい心意気ぽん。戦いを大いに楽しめばいいぽん』

「そうさせてもらおう…。だが、その前にだ…」

 

 

 

そう言ったオーガは、魔法少女クラムベリーの姿へ変化した。

しばらくはこちらの姿で活動していなかったが、何故わざわざ変身したのだろうか。

 

 

 

『クラムベリーの姿になってどうするぽん?正直、もう君にはその姿は必要無いと思うぽん?』

「えぇ…確かにもうこの姿は必要無いかもしれませんね。ですが、もう少しだけこの姿で動きたいので」

『誰と戦う気ぽん?正直、今の魔法少女達の大半は仮面ライダーの味方に付いてるはずぽん?無闇に襲いかかっても、返り討ちに遭ってそれこそ終わりぽん』

「ふふっ、まだいるじゃないですか。孤立して行動している魔法少女達が…」

『…まぁ、好きにすればいいぽん。ただし、仮面ライダー達に出くわしてもしらないぽん』

「ご心配なく。その時は、クラムベリーとして、決着を付けます。」

「分かったぽん。まだこっちが動くのには時間が掛かるから、肩慣らししてくるといいぽん」

 

 

 

ファヴのその言葉を聞いたクラムベリーは、口元を歪め、名深市の中に消えていった。

クラムベリーを見送ったファヴは、自身が投影されているマジカルフォンの隣に置いてある少し大きな黒い石を見た。

その石は、まるでウィザードの指輪制作に使われていた魔法石に類似していた。

そして、その石に映し出されたある人物に向かって話しかけた。

 

 

 

『クラムベリー…オーガが行っちゃったぽん。特に問題は無いぽん?』

『…案ずることは無い、ファヴ。しかし、オーガにはまだ働いてもらわねばならない。もしもの事があれば、君に動いてもらおうか』

『分かったぽん。でもこの状態で行った所で、ウィザード達にオーガ共々袋叩きにされかねないぽん』

『…それもそうか。ならば、これを持っていくが良い』

 

 

 

石に映し出された人物は魔法陣を作り出すと、その中から、あるベルトをファヴのいる場所へ転送した。

ファヴの目の前に現れたそのベルトは、ウィザードが使用しているウィザードライバーと同じ形をしていた。

色合いはウィザードライバーとは違い、バックル部分の手の色は赤く、その他の箇所は、全体的に黒くなっている。

 

 

 

『これは…もしかして例のモノかぽん?』

『その通り、君が求めていた、君専用のドライバーだ』

『感謝するぽん。そっちが使っているのと同じ物を頂けるとは、驚きぽん』

『指輪も転送してある。それを使ってくれ』

『了解ぽん。来るべき時に使わせてもらうぽん』

 

 

通信を切ったファヴは、置かれたドライバーを見つめる。

見つめる先にある指輪、チェンジウィザードリングが、怪しく輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、みんな大丈夫だったか!」

「あっ、泊さん!」

 

 

 

一方、進ノ介は、戦いを終えたゴースト達の元へ来ていた。

 

 

「遅くなって悪かった。戦闘は…もう終わったみたいだな」

「いえ、泊さんだって大変だったんですから、気にしないでください」

「そうですよ。泊さんの方は、なんとかなったんですか?」

 

 

 

変身を解いた永夢も、進ノ介に問いかける。

 

 

 

「あぁ、なんとかな」

『ウィザードや魔法少女達が協力してくれたからね。君達にも、魔法少女が手助けしてくれたみたいだね』

 

 

 

進ノ介の腰に巻かれたベルト、クリムがシスターナナとウィンタープリズンの方を見ながら話し始めた。

 

 

 

「えぇ、仮面ライダーさん達にはお世話になりましたから…」

「借りは返したいから、これからも協力させてもらうよ」

「そうか、ありがとう。ちなみに、君達を助けたライダーってのは…」

「確か、鎧武とおっしゃってましたよ」

「瀕死だったナナを、助けてくれたんだ、感謝してもし切れない…」

「神様、やっぱ半端ないな。俺もあいつには礼を言わなきゃいけないし。ベルトさんを持ってきてくれたからな」

『そういえば、彼には掘り出されて以降出会っていないな。君達も、鎧武に出会ってはいないかね?』

「僕達も見てないです。少なくとも、ここには来てないかと…」

「そうか。あいつ、どこで何やってんだか」

「きっと、あの人にしか出来ない事をやっているんですよ」

「それもそうか。まぁ、この件に協力してくれてるなら、いずれ会えるかもな」

「そうだな。所で、あんたはどこへ行くんだ?ドライブ」

「俺は、これからウィザードの所にもう一度行こうと思う。タケル達はどうする?」

「俺もついて行きます。晴人さんの助けになればいいなって」

「僕も行きます。飛彩さんはどうしますか?」

「すまないが、俺はここで一旦病院に戻らせてもらう。患者の術後経過も確認しなければならない。ここはお前に任せるぞ、研修医」

「あ、はい。分かりました。そっちの事は頼みます」

「私とナナも、一旦戻って良いか?後で必ず合流する」

「そうか、分かった。ビースト、あんたはどうする?」

「みなまでいうな。俺も同行するぜ」

「分かった。じゃあ、ウィザード達の所へ行こう」

 

 

 

飛彩達と別れ、ウィザード達のいる場所へ向かって移動している進ノ介達。

バイクという移動手段が無い以上、トライドロンの助手席に乗る仁藤。

その時に、進ノ介は仁藤にある情報を提供した。

 

 

 

「そういえば、カラミティ・メアリって魔法少女から、お前と晴人に伝えた方が良いって情報を仕入れてな」

「ほ?何だ?」

「魔法少女にクラムベリーってのがいるんだよな?」

「あぁ。だが、颯太を本気で殺そうとしたいけ好かない奴だけどな」

「そうか…。ただ、そのクラムベリーってのは偽物だ」

「へー、そうなのか…ってはぁ!?お前今何言った!」

「取り敢えず結論だけ言うと、今いるクラムベリーは偽物で、本当のクラムベリーとされる人物は、恐らく既に死んでしまっているかもって話だ」

「おいおいマジかよ…で、正体は誰なんだよ」

 

 

食い気味で仁藤が尋ねてくる。

進ノ介はそのまま答える。

 

 

「メアリが言うには…オーガだ」

「オーガだと…!?」

「恐らく、クラムベリーとオーガの姿の二つを使い分けて、この戦いを裏から操作していたんだろうな」

「じゃあ…颯太をあんな目に遭わせたのも、オーガって訳か…!」

「だが、今回の1件の首謀者はオーガだけじゃないはずだ」

「あいつだけじゃない…?」

『その見解には私も同意する。オーガは1人の魔法少女として参加している。この状態では、その他の魔法少女達と同じ立場だ。彼1人で操作しようとしても、どうしても参加者の立場では不可能な部分がある』

 

 

 

進ノ介の言葉にクリムが意見を付け足す。

それを聞いた仁藤は少しの間黙り込んだ後、何かを閃いたらしく、それを口に出した。

 

 

 

「それって、この戦いの主催者って事か!?」

『Exactly!君の考えていることは正解だ』

「あぁ。恐らくは魔法少女育成計画の運営側にも、オーガに手を貸している奴がいる…とは言っても、そこまで来たら結論は1人なんだけどな」

「まさか、ファヴか!」

「…そうなるな」

『言い方が悪いが、魔法少女として今まで活動してきた彼女達は、ずっと運営に踊らされていたのだろう』

「何だって…それは許せねぇ…!」

「このまま晴人達に伝えに行こう。魔法少女達にも協力を仰げるはずだ」

『先程までいた2人にも伝えておくべきだったか…誤算だったね、進ノ介』

「あぁ…」

「皆まで言うな。取り敢えずは晴人の所に…」

「そうだな。フルスロットルだ、ベルトさん!」

 

 

そう言うと、トライドロンのスピードを上げて、タケルや永夢と共に晴人の元に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その晴人はと言うと…。

 

 

 

「…行くか」

 

 

晴人は、マシンウィンガーに乗り、ある場所へ向かおうとしていた。

と、そんな彼の前に現れたのは。

 

 

「晴人さーん!」

「スノーホワイト、ラ・ピュセル、アリス…」

「どこに行くんだ?晴兄」

「…私達も、お供します」

 

 

やって来たのは、スノーホワイト、ラ・ピュセル、アリスの3人。晴人とよく行動しているメンバーである。

 

 

「王結寺に行こうと思う。たまとユナエルが、スイムスイム達と話し合いをしたいって言ってたからな、何が起こるか分からないから、着いていこうと思うんだ」

「そうだったんですか…。それじゃあ、一緒に行きましょう」

「…あぁ。構わないけど、良いのか?話し合いで済めば良いが、最悪戦いに巻き込まれる事になる。今までもそうだったけど、危険な目に遭うかもしれない。無茶をするなよ…」

「分かってます。でも、だからこそ連れて行って下さい。晴人さんも、1人で抱え込んだり、無茶はしてませんか?」

「そうそう、私達だってただ見てるだけじゃないよ。それに、これまでも色んな戦いを切り抜けてきたんだからね」

「助け合い…って大切ですよ。人だって助け合いが大切だって、前に会った旅人の方が言ってました」

 

 

 

スノーホワイト達に言われた事が、晴人には心に刺さった。

彼女達の言う言葉は、以前にも言われた事がある。

1人で抱え込み過ぎるのは良くない。いつか、自分の大切な所を腐らせてしまう、と。

かつての自分の恩師の言葉。

そして、もっと頼っていい、という仲間達の言葉。

これまでの戦いで、ほぼ毎回と言っていい程、スノーホワイト達にも辛い思いをさせてしまっている気がする。

そう感じた晴人は、心の中では分かっていても、やはり彼女達を危険な目に遭わせたくないという気持ちが強くなっていた。

危険な目に遭わせたくないのは、今も変わらない。

だが、彼女達はもう自分にとってただの知り合いでは無いのだ。

 

今は、晴人の信頼し合える仲間だ。

 

 

 

「…そうだな。助け合いだな」

「そうですよ、晴人さん。他のライダーさん達より役には立てないかもしれないですけど、私達だって、晴人さんの役に立ちたいんです」

「あぁ。ありがとう、みんな」

「お互い様です。さぁ、行きましょう!」

「よし、付いてきてくれ!」

 

 

晴人の言葉に、3人は大きく頷き、マシンウィンガーに付いていく。

 

 

 

 

 

 

「所で、アリス…」

「…何でしょうか」

「さっき言ってた、旅人ってのは、パンツ大量に持ってなかったか?」

「…そう言われると、持っていたような…少しのお金とパンツがあれば、なんとかなる…とか言ってました」

「やっぱあいつか」

「…ご存知なのですか?」

「まぁな。あいつも、自分の目標の為に頑張ってるんだな…」

「…良いですね、仲間って」

「どうした?急に」

「今まで、仲間とか、友達と呼べる人と色んな事をして過ごすって体験が少なかったので…」

「そうか。どうだ?こうやって一緒にいるのも」

「楽しいです。だから、私も頑張ります。こんな体験をさせてくれたあなたや、スノーホワイト達の為に…」

 

 

 

 

…例え、この命が尽きる事があっても………。




今回は本当に久しぶりの投稿でした。
なんとか8月に入り、休みに入ったので急いで書いて投稿しました。
今回のように、更新がこれからも遅れるかもしれませんが、気長に待って頂けると、こちらもとても嬉しいです。
次回は、スイムスイム達に重点を置き、話を進めていきます。


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第43話 狙われたのは

お久しぶりです。
気付けばエグゼイドが終わり、ビルドが始まりましたね。
結局トゥルー・エンディングは3回見てしまいました。
最終回の後に見直すと、また違った観点から楽しめました。



日はすっかり落ち、夜が訪れる。

そんな中、王結寺には、4人の魔法少女が集まっていた。

スイムスイム、ミナエル、ユナエル、たまの4人である。

元リーダー、ルーラによって集められた4人である。

リーダーとして君臨していたルーラを失った後も、着々と活動していたが…

 

 

 

「スイムちゃん…」

「全員、集まった…。」

「そ、そうだね。全員で集まれるのは」

 

 

 

少し前の事、ある戦いでの一件が原因で彼女達4人の意見が食い違い、チームでの活動がほぼ無くなっていた。

だが、こうしてもう一度集まった4人。

目的は和解なのか、それとも…

 

 

 

「お姉ちゃん…」

「…ユナ」

 

 

 

しばらくの沈黙の後、初めに口を開いたのはユナエルだった。

姉のミナエルとは、今までの間、共に寝泊まりするという事も無く、ユナエルはたまの家で生活をしていたのだった。

久しぶりにミナエルに会い、内心ホッとしていたのだった。

しかし、それも束の間、表情を変えて真剣な眼差しでミナエル、そしてスイムスイムを見つめる。

 

 

 

「2人共、ごめんなさい」

「わ、私からも言わせて。ごめんね、2人共…」

 

 

 

ユナエル、そしてたまも頭を下げて謝る。

突然の事で、驚きを見せるミナエル。

スイムスイムは表情を一切変えることなくユナエル達を見つめるままだ。

 

 

 

「なっ、ユナ…たま…」

「2人とも、何で謝るの?」

 

 

 

スイムスイムは至って冷静に質問を返す。

頭をずっと下げていたたまとユナエルだったが、再び頭を上げてスイムスイムに答えた。

 

 

 

「スイムちゃんにも、ミナちゃんにも迷惑を掛けちゃったから…」

「う、うん。仲間割れみたいな事になっちゃったから、このままじゃ嫌だと思ったんだ」

「…そう」

 

 

 

あくまでスイムスイムは感情的な態度を見せずに、反応も冷静であった。

しかし、たまは再び顔を引き締め、スイムスイムに語りかけた。

 

 

 

「でもスイムちゃん、これだけは言わせて。このまま同じ事を続けていくのは良くないよ…!みんなに協力していかない?」

「…仮に協力した所で、私達全員が助かる確証はある?」

「でも、今のままよりは絶対に助かる確率は上がるよ。…だから!」

「確率が上がるだけじゃダメ。必ず生き残らないといけない。絶対に」

「スイムちゃん、何でそこまで…」

「私はルーラになりたい。でも、ルーラになるからには、チームのみんなを必ず生き延びさせないといけない」

「スイムちゃん…」

「私はみんなと生き残って、ルーラになる。ルーラだって、それを望んでる…」

 

 

 

たまは苦悩していた。

どうすればスイムスイム達と和解出来るのかが分からなくなった。

スイムスイムの意志は固い。何が彼女をそこまで狂わせるのか分からないが、その異常なまでの意志が、彼女を強くさせているのだろうか。

 

しかし、諦めてはならない。ここで諦めたら、スイムスイム達はウィザード達との和解する道を失いかねない。相手が折れるまで、自分は折れてたまるか。

たまは再び覚悟を決めて、もう一度語りかけようとした。

 

が、その瞬間にたま達に聞こえてきたのは、意外な人物の声だった。

 

 

 

 

「いや、私は…“あなたの憧れの”ルーラはそんなの望んでないわよ」

「えっ…!?あなたは…」

「うっそでしょ…」

 

 

 

そう、彼女達の目の前に現れた人物は、外見こそ初めて見る格好だが、声だけで、4人はこの人物が誰なのか理解していた。

 

 

 

「…ルー、ラ…?」

「えぇ、そうよ。私は元魔法少女、ルーラよ。まぁ、今は早苗とでも呼んでくれればいいわ」

 

 

 

現れた人物の正体は、魔法少女ルーラの元変身者、木王早苗だった。

驚きの人物の登場で、みな困惑を見せ、スイムスイムですら、少し動揺があるようだ。

 

 

 

「何でここに来たの?」

「何でって…貴女達に仲間割れしてもらいたくないからよ」

「ルーラって、そんなキャラだっけ?…ほら、もう少し毒舌だったような…」

 

 

 

少し雰囲気の変わったルーラ、もとい早苗に、4人は驚かされるばかりであった。

 

 

 

「随分な言われようね…まぁ、今までの感じじゃあ、言われても仕方ないわね」

「本当にどうしたんだよルーラ…」

「そうね…一つ言えるとしたら、魔法少女をやめて、0からやり直したのよ。そうしたら、考え方が変わってね」

「そうだったんだ…でも、私達を恨んでないの?正直、ウィザードがあの場に居なかったら、ルーラは本当に…」

 

 

 

たまの問いかけに、早苗は少し間を空けたが、こう答えた。

 

 

 

「そりゃ、あの時は混乱してたし、少なくとも貴女達への戸惑いもあったわ。…でも、その事もだけど、全て私が悪かったと思ってるわ。私こそ謝らなきゃいけないわ…みんな、本当にごめんなさい」

「そこまで…ルーラ…」

 

 

謝り、頭を下げた早苗。再び頭を上げると、再び4人に語りかける。

 

 

「こんな私が言えることなのかは分からないけど、言わせて」

「何…?」

「…貴女達が仲間割れなんてしてちゃいけないわ。なんだかんだ言ってても、貴女達が一緒に活動してるのは楽しそうだもの。これが最後の命令…いや、願いよ」

 

 

早苗がそう言うと、たま、ユナエル、そしてミナエルも頷こうとしていた。

しかし、スイムスイムは…。

 

 

「ルーラ…」

 

 

そう一言呟き、薙刀を取り出して早苗に猛スピードで飛びかかった…。

 

 

「スイムちゃん!?」

「何やってるんだ!」

「…え?」

 

 

魔法少女の動きは素早い、いくら元魔法少女とはいえ、早苗にはそれを避けきれる余裕など無かった…。

そのまま、薙刀が早苗の首を刈り取った。

 

 

 

 

…かに見えたが…。

 

 

 

「ん……え?スイムスイム…?」

 

 

 

スイムスイムからの攻撃から目をつぶっていた早苗だったが、目を開けた先では、驚きの光景が広がっていた。

早苗の首を狙っているように見えた攻撃は、それとは裏腹に早苗を守るようにしてある攻撃を防いでいた。

またスイムスイムも早苗を守るようにして構えている。

 

 

 

「スイムスイム…!?」

「ルーラを狙っているのは分かってた。…私に不意打ちは通じない」

 

「おやおや…誤算でしたか…少々貴女を侮っていたようですね」

 

 

スイムスイムは薙刀で相手を吹き飛ばす。

そのルーラを襲おうとした本人とは…

 

 

「お、お前はクラムベリー!」

「何の用だ!」

 

「何って…貴女方と戦いたいだけですよ」

 

 

その正体は、4人の前には久々に現れたクラムベリーだった。

今までの間で、隙を伺って早苗を抹殺する気だったようだ。

 

 

「何でルーラを狙った。私が目的なら傷つくのは私だけでいい…」

「私は本気のあなたと戦いたい。あの方を殺せば、貴女も戦う気になるかと思ったんですが…」

 

 

その言葉を聞いた瞬間に、スイムスイムはクラムベリーに薙刀を構えて一気に襲いかかった。

 

 

「…おっと、既にその気のようですね」

「スイムスイム!」

「ユナエル、ミナエル、たま。ルーラを連れてここから離れて」

「何言ってるんだよ、いくらスイムスイムとはいえ、1人じゃ…」

「いい、大丈夫。こいつは私だけで倒す。倒さやきゃいけない…」

「ちょ、ちょっとスイムスイム!あなた…」

「みんな、急いで…!」

「わ、分かった…。ルーラ…早苗さんも着いてきて!」

「ユナ、行くよ!」

「分かった、お姉ちゃん!」

 

 

ミナエル達に運ばれ、スイムスイムとの距離は離れていく中、スイムスイムは早苗にこう呟いた。

 

 

「…ルーラ。ありがとう…。お陰で、私のやる事が分かった…」

「ちょっと…スイムスイム!」

 

早苗に聞こえるか、聞こえないか程の声で呟いたスイムスイムは、やがて早苗達が離れていくのを確認し、クラムベリーへ飛び込んでいく。

 

 

「急に本気を出し始めましたね…なんの理由があってでしょうかね?」

「クラムベリー。あなたは許さない」

「もしや、ルーラの事ですか?もしそうなら、あなただって1度は彼女を殺めようとしたのに…何故です?もはやただの人となった彼女に、この場にいる資格は…うっ!?」

 

 

クラムベリーが話し終わる前に、スイムスイムは素早く蹴りを加えて吹き飛ばす。

 

 

「あなたに、ルーラを語る資格は無い…!」

 

 

スイムスイムの攻撃は更に猛烈になり、クラムベリーを倒すべく突撃する。

対してクラムベリーは、少し口元を歪めると、スイムスイムに飛び込んで行く。

スイムスイムと、クラムベリーの一騎討ちが始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、スイムスイムに場を任せ、寺から脱出した早苗達。

寺からは大分離れただろうか。ミナエルとユナエルが周囲の安全を確認し、異常は見当たらなかったので、少し休む事にした。

 

 

 

「みんな、怪我は無いね?ルーラも大丈夫だった?」

「私はもうルーラじゃないわよ…早苗って呼んでくれてもいいのに」

「いやー、なんか慣れなくてね。やっぱりルーラって言うのがしっくり来てさ。なっ、たま」

「そ、そうだね。私もルーラって言う方がなんか良いかなぁ」

 

 

 

たま達にそんな事を言われたので、顔を少し赤くしながらも、早苗は返事をした。

 

 

 

「ま、まぁ貴方達がそれでいいなら、好きにしてもらって良いけどね…」

「ならいいや!ルーラで決定!」

「そ、そうね。…でも、スイムスイムが心配だわ。クラムベリーと一騎討ちだなんて」

「ルーラはクラムベリーが悪いヤツだったって知ってるの?」

「ま、まぁね。ウィザードから色々聞いてるのよ」

「そうなんだ…。でも、スイムちゃんなら勝てるよね、きっと」

「スイムスイム…。あの子、私を倒そうとした時もそうだけど…何だか純粋過ぎるのよね」

「…え?どういう事?」

「なんて言うのかしら…不思議というか、悪く言えば、少し子供みたいな…」

 

 

 

と、言いかけたが。

 

 

「…ん?あれってたま達じゃない?」

「確かにそうだ。ウィザード!たま達がいるよ!」

「何?…ってホントだ。お前ら!どうしたんだ!」

 

「ウィザード!それにスノーホワイト達も!」

 

 

現れたのは、ウィザードと、スノーホワイト、ラ・ピュセル、アリスだった。

 

 

 

「何だか分からないですが、集合されてるみたいですね…」

「お前ら、こんなところでどうしたんだよ。…それに、何でお前がいるんだ」

 

 

 

ウィザードは何故かたま達と一緒にいた早苗に声を掛ける。

 

 

 

「私も何か役に立ちたかったから。じゃ足りないかしら」

「いや、よく頑張ったな。見た感じ、丸く収まった…訳じゃなさそうだが、何があった」

「それが…スイムスイムがクラムベリーと戦ってるわ」

「なんだって!」

「私達を逃がす代わりに、スイムちゃんが残って戦ってるの…」

「分かった、俺が行くから、お前らはここに居てくれ」

 

 

 

そのままマシンウィンガーに乗り、その場を離れようとするウィザード。

しかし、ウィザードに、ラ・ピュセルは声を掛け

 

 

 

「ウィザード、待って欲しい」

「ラ・ピュセル?どうした」

「私も連れて行ってくれ。クラムベリーには借りがある」

「そうちゃ…ラ・ピュセル!危険だよ!」

「心配しないで、スノーホワイト。私は今度こそ負けない」

「ラ・ピュセル…本当に行くのか?」

「えぇ。行こう、ウィザード」

「待ってラ・ピュセル!これを…」

 

 

ラ・ピュセルに、スノーホワイトはブレイラウザーを渡した。

マジカルキャンディーで以前購入した武器である。

 

 

「スノーホワイト…。良いのか?」

「うん。絶対役に立つから」

「そっか…。ありがとう」

 

 

そう言い残して、ラ・ピュセルとウィザードは王結寺に向かって行った。

 

 

「ウィザードさん。お願いします…」

「きっと帰ってくるよ。それまでは待っていよう。みんな」

「そうですね…。きっとここなら安全ですから…」

 

 

と、残ったスノーホワイト達は、ウィザード達の帰りを待つのみである。

しかし、そんな彼女達にも危機が迫っている事に、まだ誰も気付いていない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一方で戦い続けていたスイムスイムとクラムベリー。

両者の攻撃は相殺し合い、均衡を保ち続けている。

スイムスイムは無表情ではあるが、その中にも少し焦りが見える。

対してクラムベリーは、薄ら笑いを浮かべながら不気味に攻撃を続ける。

少しではあるが、クラムベリーに形勢が傾こうとしていた。

そんな戦いの中、クラムベリーがふと口を開いた。

 

 

「ふふっ、中々いい戦いですね」

「…それはあなたが有利だから」

「それはそうかもしれませんね。ですがせっかくなので、少し良いことを教えてあげましょう」

「…?」

「もうしばらくすれば、あなたを援護する為に、助けが来るでしょう。恐らくそれはウィザードかと…」

「だったら何…」

「きっと逃げた彼女達にも、1度は合流するでしょう」

「ルーラ達に?」

「恐らくウィザードが去ったら、彼女達は無防備でしょうね」

「…何を考えてる…」

「どうせこの姿で戦うのはこれで最後でしょう。あなたには教えてあげましょうか」

 

 

 

警戒をし始めるスイムスイムに、クラムベリーは本当の姿である、ファントム・オーガの姿を見せた。

 

 

 

「…!?」

「私はファントムです。そして、逃げた彼女達に配下のファントム達を送る事も出来る…」

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、全てを悟ったスイムスイムは姿が戻ったクラムベリーに向かってこれまでとは比べ物にならない速度で詰め寄る。

 

 

 

「最初からそのつもりで…クラムベリー…!」

「言ったでしょう?本気の貴女と戦いたいと。貴女の全力を引き出すスイッチは、やはり仲間の事でしたか…」

 

 

 

スイムスイムを吹き飛ばしたクラムベリーは、更に優位に立ったように笑う。

 

 

 

「さぁ、ここから本気で戦いましょうか。貴女が私を倒して彼女達を救うか。ここで貴女も死に、彼女達も死んでいくか。楽しみですね…」




はーい、なんだかんだしてたら1ヶ月以上放置してました。本当に申し訳ありませんでした。
本当に不定期更新になりつつありますが、皆さん変わらずご応援の程宜しくお願い致します!
次回は久しぶりにあの方が登場しますよ〜


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第44話 本当のチーム

お久しぶりです。
そして皆様、あけましておめでとうございます。

様々な用事が重なり3ヶ月以上おまたせしてしまう形となった事、申し訳ないです(おのれFGO)
さて、今年の冬映画も面白かったですが、今回はそんな平ジェネFinalにも登場した鎧武も少し活躍します。

後、最後のあとがきにちょっとしたお知らせも御座いますので、宜しければご覧下さい。


仮面ライダーウィザード、操真晴人と魔法少女ラ・ピュセル、岸辺颯太は魔法少女スイムスイムの救援と、クラムベリーと決着を付けるために共に王結寺に向かっていた。

 

 

 

「ウィザード、すまない。私のワガママを聞いてもらって…」

「気にすんな。お前はクラムベリーと決着を付けたいんだろ?…そういう気持ちも分からなくはない」

「そうか…ありがとう」

「ただ、無茶だけはするなよ。二人でスイムスイムを助けよう」

「そうだね…」

「…ん?どうしたんだラ・ピュセル」

「…ウィザード、スイムスイムはこれまで何度か私達を襲ってきたり、邪魔してきたり、敵対した事もある。正直私は彼女を助けるのに多少躊躇がある…」

「そうか…」

「私はそう思う…ウィザードはどうして、そこまで戸惑いも、躊躇もなく助けに行けるんだ…?」

「そうだな…ラ・ピュセル、お前は人を助けるのに理由がいると思うか?」

「え…?」

「助けたいから助ける。守りたいから守る。それが俺かな」

「そうか…。やっぱり凄いな、仮面ライダーって。私はこんなんじゃ立派な魔法少女になれないな…」

「いいや、そんな事はないさ。お前だって立派な魔法少女になれる」

「でも…」

「助けたい、守りたいってのは俺の願望さ。実際は俺一人じゃ全ての人の希望を守るってのは難しい。だから俺に守れるものは絶対守りたいって思う。それと、お前が言うようにスイムスイムを助けても、また邪魔されるんじゃないかって思うんだろ?」

「…あぁ」

「確かに、この世界の人は皆が皆善人じゃないかもしれない。中には悪意を持った人を助ける事もあると思う。でも俺は、そんな悪意も希望に変えられたらなって思うんだ」

「ウィザード…晴兄…」

「それは難しい事かもしれないけど、力を持ってるのに何もしないってのは違うと思ってさ。それに、スイムスイムの事は、たま達に託されたからな」

「託された?」

「スイムスイムを助ける事が、あいつらにとっての希望でもあるし、スイムスイム自身にとっても、チーム全員で生き残る事が希望だと思う。俺はそんな願いや希望を守りたいんだ」

「たま達の願いの為に戦う…」

「まぁ、戦えない人の分まで戦うって事だ。俺の仲間も良く聞く言葉だ。きっとそれが、希望を守る魔法使い、そして仮面ライダーである事なんだろうなって」

「戦えない人の分まで…私にも、できるかな…?」

「あぁ、きっとな。それに、何も戦う事が全てじゃない。困ってる人の力になってあげることも必要だ。そして、それが魔法少女の役目でもあるんだろ」

「うん。勿論。その為に私も、小雪…スノーホワイトも魔法少女になったんだ」

「…そっか。ならいい。さて、お話はこれくらいにして、飛ばすぞラ・ピュセル!」

「分かった。急ごう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィザード達が急ぐ一方、肝心の王結寺では。

 

 

 

「うぐっ…」

「やはり、貴方は中々の力をお持ちで…。ですが、こちらも負ける為にこんな事をしているわけではないのです」

 

 

スイムスイムは、クラムベリー相手に苦戦を強いられていた。

強さ自体はあまり大差は無いが、スイムスイムは一つだけクラムベリーに劣っている事があった。

それは“音”の効果である。

水を操れるスイムスイムの唯一の弱点、それは音と光だった。

よりにもよって相手はクラムベリー、音を操る魔法少女(の能力を使うファントムなのだが)。

互角に見えた戦いが、能力の差でほぼ勝敗が決まるのである。

スイムスイムはこの事に勿論気付いていたし、クラムベリーもそれを知った上での戦いであろう。

このままではスイムスイムが倒れるのも時間の問題かもしれない。

 

 

 

「みんなの為に…クラムベリー、あなたを…!」

「不利だと分かった上で、まだ戦い続けるとは…ですが、あなたが守ろうとしている魔法少女達も、果たして生き残れるんでしょうかね?」

「ッ…!卑怯な…!」

「勝つ為の戦略と言っていただきたいものです。さぁ、戦いを続けようではありませんか…」

 

 

クラムベリーはスイムスイムを蹴飛ばして攻撃を続ける。

防戦一方のスイムスイムは徐々に追い詰められていく。

ついに、クラムベリーの攻撃を避けきれず、ダメージを受けて一気に倒れ込んでしまった。

 

 

「うっ…このままじゃ…」

 

 

逃げようにも、この状態では能力を使った所でクラムベリーに対抗されてしまう。

打つ手が無くなってしまい、スイムスイムに危機が訪れる…かに思われたが。

 

 

「ハァッ!」

 

 

遠くからクラムベリーに向かって放たれた銃弾が的確にクラムベリーにヒットする。

後ずさりしたクラムベリーが銃弾が流れてきた方向を見ると、そこにはウィザード、フレイムスタイルの姿が。

そしてその隣には、大剣とブレイラウザーを構えたラ・ピュセルも。

彼らが到着したのだ。

 

 

「随分と派手にやってるじゃないか、クラムベリー」

「スイムスイムは何とか倒れてないみたいだね」

「ウィザード…ラ・ピュセルまで…」

「おやおや、来ましたかウィザード。それに、また珍しい方も」

「クラムベリー、お前と決着を付けに来た…」

 

 

 

クラムベリーはウィザード達を見ると、待ちくたびれたと言わんばかりの表情を見せて口元を歪める。

その表情を見たラ・ピュセルは敵対心を露にする。

 

 

「クラムベリー…!」

「その感じからするに、どうやら俺達を呼び寄せる気満々だったみたいだな」

 

 

何の目的だ。とウィザードが聞こうとしたのを、スイムスイムが遮り、ウィザードに詰め寄る。

 

 

「ルーラ達はどうなったの…!生きてるの…?」

「…どういう事だ?」

「ルーラ達がいる場所に怪物の大群を送り込まれた…!魔法少女だけじゃ勝てない…」

 

 

間髪入れずにスイムスイムが続けた。

その言動から、焦りが見える。

 

 

「戻らないと、ルーラ達がやられる…私の事は良いから、早く戻って!」

「何だって!?」

 

 

ラ・ピュセルはそれを聞き、驚いているようだ。

更に、クラムベリーも続けた。

 

 

「彼女の言う通りです。ですが、今から戻った所で、間に合わないでしょうね…」

「ッ…!」

 

 

言葉にならない怒りをぶつけるラ・ピュセル。

そんな中でも、ウィザードは冷静であった。

 

 

「へぇ…やっぱりそういうことか」

「ウィザード…?」

「私の目的を察していたという訳ですか?」

「だとしたら?」

「なら何でルーラ達を放っておいた!」

「少し落ち着けスイムスイム。あいつらだってこれまで戦い抜いてきたし、俺達はアイツらを見捨てない」

「つまりは貴方は彼女達だけでもファントムを倒せるとでも…?」

 

 

バカにしたかのようにクラムベリーは笑う。しかし、ウィザードは続けた。

 

 

「アイツらは強いさ、お前が思ってる以上にな。…それに、お前は俺を誘導して、アイツらの元から仮面ライダーを離れさせるつもりだったみたいだが、仮面ライダーは俺だけじゃないのを忘れたか?」

「忘れるはずないでしょう。ですが、そんなに都合良く彼女達の元に辿り着けるライダーが?」

「あぁ。どんな命も見捨てずに、どこにいても必ず助けに来る奴がな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、何なのよ!何でこいつら急に湧き出てきたのよ!」

「ルーラ、落ち着いてよ!」

「でもお姉ちゃん、この数はヤバいよ!」

 

 

ウィザード達を見送った少し後、スノーホワイト達魔法少女は突如現れたファントム軍団に襲撃されていた。

グールだけでなく、どこから蘇ったのか、今までに倒したファントムも混じっている為、数は相当なものだ。

 

 

 

「スノーホワイト、気をつけて下さい…」

「アリスも気をつけて!…よりにもよって、ラ・ピュセルとウィザードさんがいない時に…!」

「たまはルーラを守って!」

「うん、分かった!」

「ちょっと待って!あなた達、こいつら倒す気なの!?」

 

 

 

早苗は驚いた。ざっと見る限り100以上はいるファントム達を倒すというのだから。

ファントム退治に慣れているであろう仮面ライダー達ならともかく、魔法少女5人では、とてもではないが勝機は薄い。

 

 

 

「ここで死ぬわけにはいかないでしょ!だから戦うんだ!」

「お姉ちゃんの言う通りだよ!ルーラだってこんなところで死にたくないでしょ!」

「せ、せっかくまた会えたんだから…すぐお別れは嫌だよ」

「ミナエル、ユナエル、たま…」

 

 

 

早苗はその言葉を聞くと、昔の彼女達の事を思い出した。

確かに喧嘩をしたり、意見が食い違う事もあった。

でも、チームとして共に活動していた時は、なんだかんだで楽しかったのかもしれない。

そして、必死に生き残ろうと全員で協力する姿。

これこそが、本当のチームなんだろう、と早苗は思った。

だからこそ、もう一度5人のチームに戻るために、死ぬわけにはいかなかった。

もう迷いも、疑問も無くなった。後は彼女達を信じるのみだ。

 

 

 

「分かったわ。みんな、お願い!」

「了解!」

「オッケー!」

「うん!」

 

 

早苗の声を聞いたミナエル達は大きな返事を返し、ファントム達に立ち向かっていく。

更に、スノーホワイトとアリスもミナエル達の手助けをしつつ、ファントムをなぎ倒していく。

 

 

 

「スノーホワイト!アリス!」

「戦いは慣れてないけど…私達も死ぬわけにはいかないから!」

「はい。援護はお任せを…」

「サンキュー!」

 

 

スノーホワイトは倒れたグールから手に入れた槍を、アリスは購入していたアイテム、ファイズエッジを手にファントムと戦う。

ミナエルが変身した刀を振り回して戦うユナエル、ルーラを守りつつユナエル達の援護をする。

スノーホワイトとアリスは、協力してファントムを1体、また1体と倒していく。

一見順調に見えるのだが、ファントムは減っても減っても襲い来る。

いくら戦えると言えど、魔法少女達の体力は減っていくばかりである。

 

 

 

「くそっ…どんだけ出てくるの…?」

「流石に、キツいかなっ…!」

「もう…無理…」

 

 

ルーラはたまの近くに隠れ、その戦いを見守っていたが、たまも体力が減ってきているのか、ファントム達に苦戦している。

スノーホワイト達の攻撃も、段々精度が落ちてきていた。

相手の数がやはり尋常でなかったのだ。

今までは押し通せていた敵達が、更なる勢力で襲いかかる。

ダメージを受け始め、ミナエル達の体力も後僅か。

 

 

 

万事休すかと思われた、その時………。

 

 

 

 

《ロック・オン!》

 

 

 

その場に和風テイストの謎の音が響く。

上空から何かオレンジ色の球体が降ってくるのを見たたま達。

 

 

「あれ…もしかして…」

「たま?」

「いや、あの球体…多分…」

 

 

たまは、あの球体が何なのか分かった気がした。

そして、それはたまの予想通り…。

 

 

「変身…!」

 

 

静かな掛け声と共に、球体が地上に降り立つ。

そして同時に、その球体から果汁が弾け、光が覆い、ファントム達を吹き飛ばす。

 

 

 

《オレンジアームズ!花道・オンステージ!》

 

 

 

球体の中から現れる者。

その正体は…。

 

 

「よく頑張ったな。みんな」

「その声…やっぱり鎧武さん!」

 

 

仮面ライダー鎧武・オレンジアームズ推参。

以前たま達に姿を見せた際は、極アームズの姿であったが、今回はオレンジアームズで現れた。

 

 

「その通り、鎧武だ。久しぶりだな」

「なんか…姿変わってませんか?」

「そうだな〜、晴人…ウィザード達にはこの姿の方が馴染みあるかもな、まぁ基本の姿だと思ってくれ」

「あなたもウィザードさんの仲間さん…ですか?」

「お前達二人は初めて会うな。まぁ、ウィザードの仲間だ。ここがどういう状況かは大体把握したよ。後は俺に任せてくれ」

「この数を1人で倒すんですか!?」

「みんな頑張ってくれたからな。俺も負けてられないさ」

「分かりました!お願いします!」

「あぁ!ここからは、俺のステージだ!」

 

 

鎧武はアームズウェポン、大橙丸と腰に携えた無双セイバーを抜刀し、グール、ファントムの交じる大群に一人飛び込んだ。

無双セイバーのガンモードで牽制し、接近したら2つの刀で大群を切り裂いて倒していく。

自分達が苦戦を強いられた大群との戦いを、あっという間に制圧していく姿に、たま達はただただ驚くのみだ。

更に、鎧武は無双セイバーと大橙丸の接続部分を結合し、ナギナタモードになった無双セイバーを振り回す。

 

 

 

「行くぜ!うらぁぁ!」

 

 

 

グールの大群であろうが、ファントムであろうが薙ぎ倒していく鎧武。

倒しても倒しても増え続けていたファントム達の数も少なくなってきた。

 

 

「あと少しだ、一気に片付ける!」

 

 

鎧武はドライバーからオレンジロックシードを取り外し、無双セイバーのコネクタ部分に取り付ける。

無双セイバーの必殺技を発動させる…!

 

 

《一…十…百…千…万!!》

 

 

オレンジのオーラを帯びた無双セイバーがファントム達に向けてそのオーラを解き放つ。

 

 

《オレンジチャージ!》

 

 

「ハァッ…!」

 

 

オレンジのオーラはファントム達の動きを止め、拘束する。

鎧武は無双セイバーを振るってファントム達に飛び込み、そのまま完全に切り裂いた。

 

 

「セイハーッ!」

 

 

あれだけの数群がっていたファントム達は鎧武の一撃で木っ端微塵に爆散した。

 

 

「ふぅ…どうにかなったな」

 

 

鎧武は変身を解き、紘汰の姿に戻った。

紘汰の周りに、スノーホワイト達が駆け寄る。

 

 

「すごいです…あの数を倒しちゃうなんて!」

「なんとかなって良かったよ。みんな大丈夫か?」

「また助けられちゃったよ、ありがとう」

「鎧武さん、本当にありがとうございます…!」

「私からも礼を言わせて。貴方がいなければ危なかったかもしれないわ」

「あぁ。アンタがルーラだったか?」

「そうよ。まぁ、魔法少女の力はもう無いのだけれどね。それでもやれる事があるんじゃないかと思って、こうしてここにいるわ」

「そうか。確かに、力だけが全てじゃないからな。諦めなければ、きっとそれが力になるさ」

「ありがとう、鎧武」

「ああ。…それにしても、なんでファントムはあんなに湧いて出て来たんだか」

「そうなんですよ。私達も急に現れて驚いて…」

「やっぱりか、向こうで何かあったのかもしれない。ウィザードは?」

「ウィザードさんは、私達の仲間を助けに…」

 

 

そう言ったスノーホワイトは、王結寺に向かったウィザードとラ・ピュセルの身を案じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その王結寺では…。

 

 

 

「まさか、本当に倒してしまうとは…」

 

 

クラムベリーが見つめるのは作り出した魔法陣から見える、スノーホワイト達の居場所。

そこには、魔法少女達を守りながら、ファントムを殲滅する鎧武の姿があった。

 

 

「だから言ったろ、仮面ライダーは絶対諦めない。命を見捨てないためにアイツは戦ってるんだ」

「流石、と言っておきましょうか…」

「それにしても、えらく便利な魔法を使うんだなお前。魔法少女としての能力じゃなさそうだが…」

「えぇ。ある人に頂いたものですからね」

「まぁ、この際それはいいさ。問題はお前自身だ。ファントムの大群を操れる以上、お前はただの魔法少女じゃないのは分かってる。そろそろ正体を明かしてもいいんじゃないか?」

 

 

核心へと迫るウィザード。すると、ラ・ピュセルに支えられて休んでいたスイムスイムが口を開いた。

 

「そいつは…クラムベリーじゃない。ファントムがクラムベリーの姿に化けてる…!」

「やっぱりか…。そんな所だろうと思ったよ。なぁ、オーガ?」

 

 

ウィザードは得意気に答え、クラムベリー?を見据える。

その言葉が真実なのか嘘なのか、困惑するラ・ピュセル。

そして、当のクラムベリーはしばらく黙り込んだ後、大きな笑い声をあげる。

そしてその直後、クラムベリーはファントム・オーガの姿に変貌した。

言葉通りにオーガに変わり果てたのを見て、ラ・ピュセルは驚く。

 

 

「まさか本当にオーガだったなんて…」

「俺の正体、いつから見破っていた?」

「さぁな。ただ、クラムベリーとオーガは必ず同時に現れない、襲撃してきてはすぐに姿を消したり、行動がなんとなく似てたからな。それだけじゃ不十分か?」

「いいや、問題無いな。…さてどうする。このまま戦闘続行か?」

「ちょっと待ってくれ」

「…ラ・ピュセル?」

 

オーガとウィザードの間に、ラ・ピュセルが割って入った。

 

 

「私はオーガじゃなく、クラムベリーに借りがある。クラムベリーとの決着を付けさせてくれ」

「ラ・ピュセル!?お前…」

「いいだろう…それに乗ってやるよ」

 

 

そう言ったオーガは、再びクラムベリーの姿に戻る。

ラ・ピュセルの提案に乗るようだ。

 

 

「…それではこの姿で良いでしょう。ですが、貴方一人で私を倒すと…?」

「あぁ。私自身で、お前とのケリを付ける」

「ほぅ…ならば本気でお相手しましょうか」

「ラ・ピュセル…本気なんだな」

「あぁ。スイムスイムを頼んだよ」

 

 

 

そう言ったラ・ピュセルは、クラムベリーと対峙する。

静かに剣を構えて戦闘態勢を整える。

 

 

 

「では…始めましょうか」

「あぁ。行くぞ…!」

 

 

 

クラムベリーとラ・ピュセルは、同時に飛び出して相手に向かって突っ込む。

先に攻撃を始めたのはクラムベリー。

素早くラ・ピュセルに殴りかかる。

ラ・ピュセルは間一髪剣を地面に突き刺し、反動で飛び跳ねてクラムベリーの後ろを取る。

突き刺した剣を引き抜き、剣の大きさを小さくし、レイピアサイズになった剣でクラムベリーを少ない動作で切り裂いた。

 

 

「以前よりも動きが素早く…」

「当然だ。いつまでも同じ私だと思わないでもらおう!」

「それでこそです。それでこそ戦いがいがあるというもの…!」

「来い!今度は負けない!」

 

 

ラ・ピュセルとクラムベリーは互いに一進一退の攻防を繰り広げる。

以前のラ・ピュセルは、クラムベリーの強大さ、恐ろしさに怯えていたのかもしれない。

しかし今はそんな気持ちは全くなかった。

ただ目の前の敵を倒す。その思いは強く、次第にクラムベリーを押して行く…。

クラムベリーの素早い動きの攻撃を剣でことごとく弾き、キックを浴びせて蹴り飛ばす。

 

 

「まさか、ここまでついてくるとは…!」

「よし、小雪に借りたこれも!」

 

 

ラ・ピュセルは、小雪から借りたブレイラウザーを呼び出し、二刀流でクラムベリーを攻撃する。

2つの剣から繰り出される連続攻撃を受けるクラムベリー。

そのままラ・ピュセルは大剣をクラムベリーに振り下ろすが、クラムベリーも押されるだけではなく、その大剣を掴んで防いだ。

 

 

「ぐっ…防いだ!?」

「貴方の独壇場にする訳にもいきませんよ…!」

「でも、私は負けられないんだァ!」

 

 

ラ・ピュセルは大剣を持ったクラムベリーを、そのまま突き飛ばす。

少し怯んだクラムベリーを見ると、すぐさまブレイラウザーからラウズカードを取り出し、スキャンする。

 

 

「確かこうすればっ!」

 

 

《サンダー!》

 

《スラッシュ!》

 

《ライトニングスラッシュ!》

 

 

ブレイラウザーにサンダーの雷とスラッシュの力が宿る。

ラ・ピュセルはすかさず、大きく飛び、クラムベリー目掛けて必殺、ライトニングスラッシュを浴びせた!

 

 

「これで終わりだ!でやぁぁぁぁぁ!」

「そうです…こんな戦いがしたかった!」

 

 

クラムベリーはなんと、ライトニングスラッシュの直撃を受けながらもラ・ピュセルに抵抗し、強烈な蹴りを与えた。

 

 

「ぐぁぁっ!…まだだ、まだァ!」

「貴方もやるように…うぐっ!」

 

 

ラ・ピュセルも倒れず、クラムベリーをもう1つの剣で切り伏せる。

2つ目の攻撃の威力も凄まじく、クラムベリーは遂に倒れた。

 

 

「…ふ、ふふっ…まさか私が貴方にここまで圧倒されて…」

「…これが、今の私の…いや、私だけの力じゃない。私を助けてくれた、色んな人の思いの力だ…!」

「この姿では完敗…ですね」

 

 

そう言ったクラムベリーは、再びオーガの姿に戻り、ウィザード達に告げた。

 

 

「これでこの力を使うのは最後だ。魔法使い、そして魔法少女共。次に会う時は、俺はこの姿で貴様らを叩き潰す!」

「意外に律儀なんだな、お前。分かったよ、次は本当にお前との決着を付ける」

「フン、それも良い。待っていろ魔法使い。次こそその力は俺が頂く…」

 

 

そう言い残したオーガはこの場所から消えていった。

一段落付いたウィザードは、戦いを終えたラ・ピュセルと共にスイムスイムを介抱する。

 

 

「ラ・ピュセル。よくやったな、スイムスイムも無事で良かった」

「あぁ。さて、スノーホワイト達の所に戻ろうか」

「私も…戻るの?」

「何言ってんだ。当たり前だろ。早くアイツらと仲直りりしておけよ」

「私、あなた達も、みんなも傷つけた…それでもいいの?」

「それを決めるのは俺じゃない。だからこそ、アイツらの所に行くんだ。さ、早く」

「う、うん…」

 

 

スイムスイムは、今までやってきた事を悔んでいるのかもしれない。

だが、自身を許すのは仲間達自身だ。というウィザードの言葉に頷き、共に戻ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎧武の協力を得て、大量のファントムを倒したスノーホワイト達の所に、ウィザード、ラ・ピュセル、スイムスイムが帰ってきた。

ウィザードは鎧武と再び再開した。

 

 

 

「あ、ラ・ピュセル!ウィザードさん!戻ってきてくれた!」

「スイムちゃん!生きてて良かった!」

「心配させたな。だが、ラ・ピュセルもスイムスイムも無事だ」

「ウィザード。お疲れ」

「お前もな、鎧武。来てくれてありがとう。助かったよ」

「お互い様だって。何かあったら飛んでくるって言ってたし」

「心強くて助かるよ」

 

 

 

そして、早苗、スイムスイム、ミナエル、ユナエル、たまの5人は、再び生きて会えた事を喜んでいる。

そんな中、スイムスイムが口を開く。

 

 

「みんな…ごめんなさい。私のせいで、色んな人に迷惑かけた…」

 

 

突然の謝罪に驚く一同だったが、少しの間の後、彼女達には笑顔がこぼれていた。

 

 

「気にしないでよスイムスイム!実際は私達にも良くないところはあったわ。こちらこそ、ごめんなさい」

「そうだよそうだよ!私達チームでしょ!」

「だからさ、これからも一緒に高めあって、協力し合っていこうよ!」

「じゃ、じゃあ…私の変身前を見ても殺さない?」

「当たり前よ!なんで素顔知っただけで殺しあわなくちゃいけないのよ!」

「え、でもルーラがそうしろって…」

「時と場合に寄るのよ。チームの仲間なら信じられるでしょ?それに、今はこんな状況だし、信じあっていかないとね」

「そう…なんだ…」

「スイムスイム。あなたは物事を固く考えすぎよ。もう少し柔らかく考えて見なさい」

「…うん。じゃあ、私の本当の姿を見せる…」

 

 

スイムスイムは、変身を解き、人間としての姿に戻った。

その姿は、実際のメンバーの中で最も幼い、小学生くらいの姿の少女だった。

 

 

 

「…私、坂凪綾名。私がスイムスイム」

「そう。あなたはこんな幼いのに、チームの為に頑張ってくれてたのね、ありがとう」

 

 

早苗は、スイムスイムもとい綾名に優しく微笑む。

すると、たま達も変身を解き、人間の姿となった。

 

 

「私、犬吠埼珠っていうんだ。名前難しいかな?」

「天里優奈だよ!この際みんな素の姿を見せちゃおうよ!」

「天里美奈。優奈とは普通に双子でーす!」

「改めてだけど、木王早苗よ。宜しくね」

「みんな…いいの?」

「えぇ。少しは気が晴れたかしら?」

「うん。ありがとう…!」

「じゃあ、改めて宜しく、みんな」

「勿論!…でも、ルーラは変身できないけどね!」

「ちょっと!今そういう事は言わないの!」

 

 

はしゃいで、共に楽しそうにしている彼女達の姿を見ていたスノーホワイト達とウィザード、鎧武。

 

 

「…なんだ。聞いてたより仲良いじゃないか」

「意外とあんなもんさ。スイムスイムもこれで仲直り出来たろうし、良かったよ」

「そうですね。やっぱりウィザードさん達はすごいです!」

「俺は大したことはしてないさ。あれはアイツらが選んだ選択だよ」

「所で、これでほとんどの魔法少女がウィザードを通じて仲良くなった気がするんだが…?」

 

 

と、ラ・ピュセルが呟く。

何かあるのか?とウィザードが問おうとした時だった。

 

 

「…!?ファヴからです…」

 

 

アリスが最初にマジカルフォンに入った連絡を確認する。

続いてラ・ピュセル達も確認する。

そこから現れたのは…。

 

 

『はいはいぽん。スイムスイム達は正体バラシすぎなのはどうかと思うぽん』

「ファヴ!今まで何をしてたんだ!」

「まぁいいぽん。どうせもうそんな話は関係なくなるぽん」

「おい、どういう意味だ」

 

 

ラ・ピュセルが問う。

すると、ファヴは陽気に答えた。

 

 

『もう皆さんご存知かもしれないけど、最近は週末の脱落魔法少女を決めてなかったぽん。怪物退治に忙しそうだったから仕方ないぽん。でももうそんなの関係ないぽん』

「…は?」

『その辺についての詳しい話を明日行いたいぽん。生きている魔法少女達は、明日の朝、すぐにチャットルームに集まるぽん。あくまで、魔法少女だけぽん!他の人は立ち入り禁止ぽん!では、シーユーぽん!』

 

 

 

唐突に始まり、唐突に切れたその連絡。

 

 

 

実はこれが、これから待ち受ける最後の戦いの開始の合図だった…。




本当にお久しぶりだった44話でした。
いつもよりは長めにさせて頂きましたが、雑な仕事なのはご愛嬌という事で。
実は次回からは終盤に突入します。意外にも、もう終わりが近かったりするのです。
最後の戦い、どうなっていくのかご期待下さい!

そして、こんなに投稿ペースが遅いのに何言ってるんだと言われるかもしれませんが、この作品が終了した後に書きたいと思っている次回作の構想を始めました。
次もクロスオーバー作品なのですが、次はエグゼイドのお話です。
気になるクロスオーバー先は…
《いらっしゃいませ!ラ○ット○ウスへようこそ!》
ヒントは以上です。モロバレですね。
エグゼイドとこの作品を絡ませるのは、ただの自分の趣味です。

取り敢えず詳しい事が決まり次第お知らせしますので、そちらも頭の片隅に置いて頂けると嬉しかったりします。

では、今回も閲覧ありがとうございました!
次回はもっと早くお会い出来るように頑張ります!


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第45話 決戦前夜

結局前回投稿から1ヶ月経ってしまいました。すいません。
今回からいよいよ物語もラストに向けて加速していきますよ〜
いよいよ明かされるこのゲームの真実に、魔法少女達は何を思う…?


久々に姿を現したファヴは、魔法少女達に明日、チャットルームに集まるように。という言葉を残してまた姿を消した。

その言葉の中には、魔法少女のみの参加を強調していた。

仮面ライダー達の介入を嫌っているのが丸わかりの魂胆ではあるが、どのみちライダー達に情報が伝わるのはファヴも分かりきっているだろう。

チャットルームで何かを起こさないとも限らない。

ウィザード達はスノーホワイト、ラ・ピュセル、ハードゴア・アリスを集め、3人のチャットの動向を覗く事になった。

珍しく朝に集合な為、少しばかり眠気を感じさせる3人だったが、そんな事言っている場合でもないのは分かっていた。

時計の針が朝の8時を指す頃、姫河家の付近に集合した晴人、仁藤、小雪、颯太、亜子の5人。

仁藤はしばらく別行動であったが、今は晴人達と合流していた。

晴人はこの3人と共に行動しているが、他の魔法少女達にも、最低限の警戒はするようにと伝えてあった。

 

 

 

「多分、みんな集まってる頃だね」

「僕達も入ろうか」

「はい…」

「流石にチャットルームで何か起こるとは思わないけど、どうなんだ晴人?」

「そりゃ分からないけど、注意深く行った方がいいだろ。相手はもう何をしてくるか分からないからな」

「チャットルームに入りましたよ」

「おう。じゃあ、見せてもらいますか…」

 

 

 

 

〜チャットルーム〜

 

 

 

『みんなほぼほぼ時間通りに集まってくれて嬉しいぽん。円滑に進められるぽん』

「…」

 

 

 

チャットルーム内ではファヴが調子良く振舞っていたが、魔法少女達は言葉を発さずにファヴを見つめる。

集まった。とは言うものの、クラムベリーだけは姿を現していない。

既にスイムスイム達4人、そしてラ・ピュセルに襲撃を掛けた際に、正体がファントム・オーガであったことは知れ渡っている。

そして、クラムベリーとファヴが何やら企んでいる事も分かっていた。

何かを隠しているのは明白だった。

 

 

「ファヴ。最初に1ついいか?」

『なんだぽん?正直ここにいるみんなが聞きたいことが何なのかはある程度目星付いてるから、こちらからそれを含めて説明したいんだけども…だめぽん?』

「…分かったよ」

 

 

初めにファヴを問い詰めようとしたのはトップスピードだった。

しかし、ファヴが説明すると言うのなら、それを聞くことにした。

 

 

『まぁ、取り敢えず話させてもらうぽん。ここ最近は脱落者という脱落者は出てなかったぽん。まぁこの時点で気付いてたりするかもしれないけど、脱落者なんてものは、本来無くてもいいものだったぽん。要するに魔法少女を選抜する為のテストだったぽん。ごめんなさいぽん』

 

 

場が固まる。脱落者は本来必要無かったという言葉は、魔法少女達の色々な思いを全て無に帰した。

困っている人を助けてキャンディーを集めるのはまだ良いとしよう。

それ以外にも、生き残る為に良心を殺し、他の魔法少女を蹴落そうとし、裏切り、殺し合った者達もいた。

それが全て無駄、無意味だったのだ。

ウィザードに救われたものの、魔法少女としての生命を終える事となったねむりん、ルーラ、マジカロイド、メアリ達の犠牲は本来無かった筈だったのだ。

 

 

 

『必要の無い戦いを強いてしまった事は申し訳無かったぽん。でも、結果的に死者はゼロ。不幸中の幸いぽん』

 

 

そんな無神経な事を言うファヴに、魔法少女達の一部は怒りを抑えきれなくなった。

 

 

「幸いなわけないでしょ…。事実ねむりん達は死にかけたんだぞ!ウィザード達がいなかったら本当に命を落としていたのかもしれないのに!」

『だから、結果的にはウィザード達仮面ライダーがいたから良かったと言ってるんだぽん』

「そういう話じゃない!本当は殺す気だったんだろ…」

「意味が…無いなら…私はルーラを倒さなくて良かった…の?」

「うん…スイムちゃんも、私達も、他の魔法少女達を襲ったりする必要なんて無かったんだよ…?」

「そう…。ルーラは生きててよかったのに、殺そうとしてしまった…」

 

 

この話に敏感に反応したのはスイムスイム達。

彼女達は生き残る為に、ルーラを、そして魔法少女達を1度殺しかけた。

そんな事をする必要は無かったのだ。

スイムスイムは落胆し、ミナエルとユナエルは怒りでいっぱいである。

 

 

 

「ふざけんな!私達の戦いに意味は無かったってのか!」

『ちょ、ちょっと落ち着くぽん。だからこそ、最後のミッションを与えたいと思うぽん』

「これだけ言われても、まだ殺し合いを見たいのか!」

『違うぽん違うぽん!1度静かにしてほしいぽん』

「う、うん。みんなも、落ち着いて。ここで怒っても、も、もう仕方ないよ…」

 

 

ファヴを庇うわけでは決して無いが、このままいつまでも騒がしいままではファヴの意図は汲めない。

スノーホワイト達の呼びかけで、静寂がやって来るチャットルーム。

ファヴはこの隙に話を続けた。

 

 

『最後のミッションと言っても、後はこの街に現れたファントム達を討伐するだけぽん!』

「討伐って…そもそもファヴはファントムと組んでたんじゃ無かったのか」

「あれはオーガってファントムに脅されてたんだぽん。この土地、そして魔法少女達の魔力を喰いたいだけのアイツに、逆らえなかったぽん」

 

 

その言葉に、一同はまた静まり返る。

魔法少女達はこの言葉を信じているのか知らないが、スノーホワイト達の端末から会話を覗いている晴人にとっては、このファヴの言い訳は嘘だろうと断定していた。

メアリと接触したドライブ、泊進ノ介の言葉によれば、オーガを暴れさせていたのはファヴ本人であるとのこと。

分かりきった嘘をつくのなら、向こうにも何か意図があるのかもしれない。

本来ならここで攻め入るのも手かもしれないが、敢えて晴人達はファヴの言葉を信じたフリをする事にした。

 

 

 

『その肝心のオーガを中心にした残存ファントム。そいつらの討伐、完全撃破が最終目的ぽん。それが終われば、みんな魔法少女としてめでたく合格だぽん』

「何処もめでたい事なんてあるか。…まぁファントム達を倒せば、この戦いもお終いなんだな?」

『そうだぽん。その後は、みんな正式に魔法少女として活動できるぽん。色々ファヴ達の責任だけど、これで最後ぽん。詳しくはまたお知らせするから、宜しく頼むぽん!』

 

 

 

そう言い残し、ファヴはチャットルームから退室した。

最後までファヴへの罵倒は止むことは無かったが、最終目的のファントムの討伐。これを信じた魔法少女達は、ファントム討伐への最終準備を行うべく、順に退室して行った。

 

 

 

「何がファントム討伐だ…本当はなにか隠してるんだろうに!」

「そうちゃん落ち着いて」

「焦っても仕方ないと思います…」

「小雪…亜子ちゃん…そうだね。ごめん」

「落ち着いたか。…にしても、ファヴは自分が絡んでるのは最後の最後まで隠し通すつもりか…?」

「やっぱりあの野郎、ゲスだな…!でも晴人、あの時に乱入しなかったのは…」

「あぁ、少しアイツの口車に乗ったフリをする。それに、下手に動いてみんなに被害が及んじゃまずい」

「そういう事か。取り敢えずは様子を伺うんだな」

「そうしようと思う。小雪ちゃん達も、この策に乗ってくれるか?」

「はい!そうちゃん達も、それでいい?」

「うん。晴兄達に乗るよ」

「私も…皆さんに協力します…!」

「ありがとうな。あいつらはいつ仕掛けてくるか分からないから、慎重に行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、晴人、仁藤と別れて家に戻った小雪。

しかし、そこには颯太と亜子の姿も。

 

 

「…そうちゃん、亜子ちゃん。魔法少女って…何だろう…?」

「小雪?」

「…どうしたんですか?」

 

 

しばらく無言だった3人だが、最初に口を開いたのは小雪だった。

 

 

「私さ、今までこうやって魔法少女になって色んな事を経験したけど、私の信じる魔法少女って何なのか分からなくなっちゃった…」

「小雪…」

 

 

小雪が発した言葉は、颯太と亜子の想像とは違っていた。

 

 

「晴人さん達の前では、あんな事言っちゃったけどさ、本当は怖いんだ…私」

「どうしてですか…?」

「魔法少女として色んな人の助けになりたかったんだ。でも実際は怪物と戦ったり、生き残る為に他の魔法少女達とも殺し合いになって!…こんなの魔法少女じゃないよ…!」

 

 

1度叫ぶと、思いは止まらない。

泣きそうになりながら宛もない怒りをぶつける姿は、魔法少女スノーホワイトとしての面影を失っていた。

 

 

「次の戦いもどうなるか分からない…本当はもう戦いたくない!逃げ出したい!」

「小雪、落ち着けって…」

「そうちゃんだって!仁藤さんがいなかったら死んでたかもしれないんだよ!…もう誰かが傷つくのは見たくないよ…死にたくないよ…!」

 

「小雪ィ!」

 

 

怒りと怯えの収まらない小雪を止めたのは、颯太だった。

颯太は強く、また優しく小雪を抱きしめた。

突然の事で小雪は驚いていた。

 

 

「そうちゃん…?」

「…ごめんな、お前の気持ちに気付いてあげられなくて」

 

 

泣きそうになっている小雪を支え、優しく囁く颯太。

そして、そのまま続けた。

 

 

「ここまでの事は、多分小雪が夢見てたモノとは違う世界だと思う。嫌になるのも…分からないわけじゃない。でも、魔法少女も、仮面ライダーと同じなのかもしれない」

 

 

こう話す颯太の脳裏には、いつの日か晴人から聞いた、晴人自身の戦いの話を思い浮かべていた。

 

 

「晴兄が言ってたんだ。苦しくて、辛くて、逃げたくなる事もある。でも後悔したり、諦めたりするよりも、前に進むんだって。その通りかもしれない」

「でも…私…」

「無理に戦え、なんて僕は言えないよ。でもこれだけは言わせて…!小雪。君の事は絶対僕が守る。魔法少女としても、1人の人間としても、僕は君の剣になるよ」

「う…うん。ありがとう、そうちゃん…本当に…!」

「あ、あぁ」

 

 

あまりにも素直に礼を言われるものだから、少しばかり照れている颯太。

そこに、今まで2人を静観していた亜子も加わった。

 

 

「…私も、スノーホワイトの、小雪さんの力になりたい…です。だって、私が魔法少女になりたいって思ったのは、貴方の優しい笑顔と、前向きな気持ちに憧れたからなんですから…」

「亜子ちゃんも、ありがとう…」

「いいんです。それに、颯太さんはあなたの剣になると言いました。なら、私はあなたの盾になります…。怖がらせてしまうかもしれませんが、ある程度の攻撃なら、再生します…」

「それはまずいだろ!」

「ふふっ…ありがとうね、そうちゃんも亜子ちゃんも。私も元気出たよ!」

「それでこそ、小雪だよ」

「その笑顔が一番ですよ…!」

「うんっ!最後まで絶対生き残ろうね。そうちゃんも亜子ちゃんも、そして魔法少女みんなと晴人さん達で!」

 

 

消えかけていた小雪の希望を取り戻したのは、仲間であり、大切な幼馴染でもある颯太と、新参ながら小雪の身を案じ、彼女自身に憧れている亜子であった。

再び最後の戦いへの決意を固めた彼女ら3人。

 

 

また一方で、他の魔法少女達は…。

 

 

「はぁ…こりゃまた随分と大変な事になっちまったなー…なぁ、リップル」

「ファントムを倒せば終わるんでしょ…?だったら、言葉通り、倒せばいい」

「それ言っちゃそうなんだけどもな…」

 

 

トップスピードとリップルは、街から少し離れた公園に集まっていた。

今の時間は誰も来ておらず、人気は全く無い。

それを狙ってこの場所にした、という事もあるのだが。

 

 

「なんか、色々あったなー…俺が魔法少女になってから。まさかここまで壮大なモンになっちまうなんて」

「何でそう思うの…?」

「ほら、最初は魔法少女になったこと自体に驚いてて、でもゆったりと人助けしていって…気付いたらファントムって奴らと戦ったり、魔法少女同士で戦ったりさ…それにここから先も、どうなるか分からないからな」

 

 

そう言ったトップスピードは自分のお腹を見つめてそう言った。

それに気付いたリップルは、慌てて言葉をかける。

 

 

「トップスピード…。何かあったら、私が守らないと」

「あんがとよ、リップル。でも心配には及ばないぜ。俺だってそう簡単にくたばるつもりは無いさ」

「うん。絶対生き残る…!」

「その為には、お前の力も必要だ。改めて宜しくな、リップル」

「…こちらこそ。トップスピード」

 

 

2人は改めて生き残る事を誓った。

そしてリップルは、トップスピードの大切な新しい家族を守り抜く、その決意と共に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーダー…私達、大丈夫かな?」

「何で?」

「ほら、だって私達さ、今までどちらかと言うと他の魔法少女達を襲ったり殺そうとしてた立場だったじゃん?…その、今更他のみんなと同じ場所にいていいのかなって」

 

 

王結寺に再び集まっていたスイムスイム達。

明日の最後の戦いを前に、彼女達は様々な思いを打ち明けていた。

自分達は他の魔法少女達と同じ場所に立っても良いのか。そう話したのは、ピーキーエンジェルズのミナエル、ユナエルであった。

 

 

「じゃあ…やめる?」

「えっ」

「行きたくないなら、やめればいいと思う」

 

 

2人にそう言い放ったのは、スイムスイムだった。

今までもスイムスイムのハッキリとした言動はあったが、これは彼女の幼さ故の感情から来ているのかもしれない。

 

 

「そこまでストレートに言われるとは思わなかったわ…」

「わわわっ!ほら、ミナちゃんもユナちゃんもさ、私はみんなと一緒に戦うべきだと思うよ!迷惑をかけてきたからこそ罪滅ぼし…にはならないかもだけど、助けになる事が大切だと思うよ」

「そう…だよね、たま」

「要するに、恩返しって事だね。そう考えたら良いかも!」

「そういう事なら…たまも戦う?」

 

 

スイムスイムはたまに聞いた。

たまは大きく頷き、了承する。

すると、スイムスイムも頷き、口を開いた。

 

 

「なら、私も恩返しする。全員で協力して戦う」

「そう…みんな成長したのね」

 

 

そう言ってスイムスイム達に声をかけたのは、先程まで後ろで静観していた早苗だった。

 

 

「ルーラ…」

「私にも、何か手伝える事ってあるかしら?」

「いや、ルーラは来ない方がいい。変身出来ない以上危険。死んで欲しくない」

「…そう、分かったわ。じゃあ私はあなた達を応援するわ」

 

 

命の危険を語られた以上、流石に早苗も素直に頷いた。

そして、早苗からの激励に、スイムスイム達は笑顔で応えた。

 

 

「絶対に戻ってくるから、ルーラ」

「何があっても、絶対生きて戻るよ」

「当たり前よ、死んだら許さないわよ!」

「死んじゃったら分かんないよー!」

「ちょっと、ユナちゃん!不謹慎だよー!」

 

 

こうして、彼女達は必ずもう一度5人でここで会うと約束した。

そして、必ず約束を守る為に、生き残る覚悟を決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、別の場所でも、戦って生き抜く覚悟を固めた2人がいた。

 

 

「奈々、ここまで色々あったけど、私はこうやって奈々といれることが1番嬉しいんだ」

「私も。雫といれるのが本当に嬉しいわ」

「あぁ。ありがとう」

 

 

ヴェス・ウィンタープリズンの変身者、亜柊雫と、シスターナナの変身者、羽二重奈々。

同じマンションで同居している2人は、性別は女性同士でありながら、性別を越えた関係を持っていた。

お互いに信頼し合い、また愛情を持っている2人は、これまでの戦いを共に乗り越え、生き延びて来た。

ここから先の戦いに、彼女達が出した答えは…。

 

 

「次が最後の戦いになるかもしれない。それが終われば、私達は争いから解放される…と私は思ってる」

「ええ。やっと魔法少女の本来の役目に戻れるかもしれないのね」

「ただ、相手はファントムの軍団だ。得体のしれない奴らだから何をしてくるか分からない。何が起こるか分からない以上、奈々を戦わせたくないっていう気持ちもあるんだ」

「雫…。でも、私だって魔法少女よ。雫を1人で戦わせるわけにはいかないし、私の力も役に立つはず。行くなら一緒よ。それに、仮面ライダーさん達への恩返しもしなくちゃいけないし…」

「確かにそうだね。君がいてくれたら、私はもっと強くなれる」

「なら、決まりね。一緒に行きましょう!」

「分かった。持てる全ての力で、君を守り抜く」

「私も頑張るわ。あなたの力になりたいから」

「ああ。それと奈々、この戦いが終わったら、また何処かに2人で出掛けよう」

「ふふっ、そうね。その為にも絶対に生きて戻ってきましょう、雫」

 

 

 

奈々と雫。2人の出した答えも戦い、生き残る事だった。

こうして、ここまで生き抜いてきた魔法少女達は、決戦に向けて準備を整えていた。

1度は殺し合おうとしたり、憎みあったりもしていたが、今の彼女達の目的は再び1つになろうとしている。

そして、ここまで魔法少女達をサポートし、助けてきた男達も、準備を整えていた。

それは操真晴人と仁藤攻介である。晴人は颯太と連絡を取り合い、仁藤は街の夜景を眺めながら、黄昏ていた。

 

 

「小雪ちゃん、大丈夫だったみたいだ」

「へ?何かあったのか晴人?」

「ほら、なんとなくではあるけど、あんまり調子良くなさそうだったろ?気になったから、颯太に先に連絡を入れておいたんだ」

「いつも通りっぽく振舞ってたけど、確かに調子悪そうだったな…にしてもお前、気配りのプロだな」

「戦いたくないのに、無理に戦わせるのは酷だろ?小雪ちゃんの本心がどうなのかは分からないが、このメールを見る限り、とっくに覚悟は決まってるみたいだ」

「なら安心だな。じゃあ俺達もあいつらをぶっ倒さないとな!」

 

 

 

ファントム達と、真の黒幕を倒すと高らかに宣言した仁藤であったが…。

 

 

 

「だからと言って特攻するのも良くないですよ、仁藤さん」

「おっと…聞かれちまってたか。なぁ永夢」

「正確には、永夢だけじゃないんだけどな」

 

 

 

晴人達の姿を少し遠くから見ていたのは、永夢、タケル、進ノ介、紘汰の4人だった。

これまでは、それぞれ別行動を取っていた彼らだったが、やっとの事で合流を果たしたのであった。

 

 

 

「皆さん、また会えましたね」

「あぁ。でも、出来ればいい知らせとして会いたかったな」

「そうは言っても神様、あんた地球に危機が訪れないと帰ってこないだろ?」

「…まぁ、そうだな。今回も舞に向こうの世界を預けてるからな」

「にしても紘汰。最初に会った時から、お前が1番進化してるよな、色々。武神の世界であった時には、まさか神様になるとは思わなかったよ」

「え?そうか?みんなだって色々あるだろ?」

「確かに色々ありますけど、神様って聞いて驚きましたからね、僕。最初に会った時は空から降りてきましたし」

「パックマンの時は、急いでたからさ。ダイナミックに来るのもいいかなーって。俺としては、永夢のムテキゲーマー?とやらが凄いと思うんだけどな。だって、ダメージ受けないんだろ?」

「えぇ。まぁ、常時無敵って感じです。凄いのはお互い様かもしれませんね。紘汰さんは、本当に神様って感じがしますもん」

「本当にって、何かあるのか?」

「まぁ、僕達の所には自称神がいるんですけど、これまたうるさくて…。でも、その人がこのハイパームテキを作ったんですけどね」

「へぇ、そりゃすごい。充分神じゃないか?」

「え?ガシャットを作ったって事は…。永夢先生、もしかして、幻夢の社長さんが?」

「うん…。黎斗さんが作ったんだ」

「アレ…そんな人でしたっけ?」

「まぁ、色々あってね…今は社長じゃなくなったし、あの人の技術は凄いんですけど、何せうるさくて…」

「ははっ、みんな色々あったもんなんだな」

 

 

今までの話や思い出話をしていた、晴人、紘汰、進ノ介、タケル、永夢。

そんな彼らに、仁藤が割り込んだ。

 

 

「ちょっとお前ら、何5人で楽しそうに談話してるんだよ!全く混ざれねぇ!」

「しょうがないだろ、ほとんどお前がいなかった時の話なんだから」

「くっそー!パックマンとやらが出てきた時も、俺には連絡無しで行っちまうし、晴人羨ましいぞ!でも、紘汰が神になったってのは分かったぞ!」

「結局そこかよ!」

「さーてと、思い出話もこんくらいにしとくか。ここからは何が起こるか分からない。最後まで、手伝ってくれるか?」

 

 

晴人が、他の5人に問う。

分かっていたが、全員の答えは同じだった。

 

 

 

「当たり前だ!ファントム食って、キマイラのランチにしてやる!」

「僕も戦いますよ、パックマンの時にお世話になりましたから」

「俺もです。みんなの為に、最後まで戦いますよ!」

「あぁ。トップスピード達も心配だし、俺からも協力をお願いするよ」

「魔法少女のみんなを助ける為にも、この街の怪物共を倒す為にも、俺も戦うぜ」

 

 

仮面ライダー達の答えを聞いて、晴人も同意した。

 

 

「みんな、ありがとう。ここからは後少しだ、取り敢えずは明日、ファントム達を倒す!」

 

 

晴人の言葉に、5人も頷く。

そして、晴人はこう呟いた。

 

 

「本当のショータイムはここからだ…!」

 

 

 

 

いよいよ、最後の戦いの火蓋が、切って落とされる…!




という訳で、次回から終章に入っていきます。
仮面ライダー集合の乱戦バトルはもう少しだけ先ですので、もう暫しのお待ちを!
ちなみに、この話の時系列は平成ジェネレーションズFinalよりも前の話で、エグゼイド組は最終回からトゥルーエンディングまでの間に起こった話という事で最終決定です。(色々ズレてたりしてる気がしますが、すいません。御容赦を。)


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第46話 仕組まれたラストバトル

年度末から新年度に向けてのゴタゴタだったりで、気付けば2ヶ月以上放置しておりました、申し訳ない。
そんなこんなで今回からはバトルしたり、まさかの奴らが…!


最後の戦いに向けて決意を固めた魔法少女と仮面ライダー達。

それから一夜明け、魔法少女達は警戒体制を整えていたが、決戦の時は突然訪れた。

 

 

『みんな、ファントム達が街の至る所に現れたぽん!すぐにでも迎撃をお願いするぽん!』

 

 

魔法少女達のマジカルフォンに、ファヴからの緊急連絡が入る。

名深市各地にファントムが大量出現したとの事。

その日は日曜日、世間一般では休日であり、魔法少女達が全員即行動出来る状況ではあったが、街にも人々が多く訪れている。

人々に被害が及ぶ前にファントムを殲滅しなければならない。

魔法少女達は即座に分散し、名深市の各地へ飛んで言った。

 

 

 

 

 

「ナナ、着いたぞ」

「これは…ファントムがたくさん…」

「これは想像以上だ…私がファントム達と戦う。君は人々を避難させつつトリガーマグナムで援護してくれるか?」

「えぇ、私に出来る事なら!」

 

 

まず、市内の住宅街に現れたファントムを撃破すべく、ウィンタープリズンとシスターナナが到着し、ウィンタープリズンはファントム軍団に戦いを挑む。

しかし、ウィンタープリズンはファントム達を見ると、目を丸くした。

 

 

「どういうことだ?これ…同じ奴が何体も…それに、今までに倒してきた奴らばかり…」

 

 

その通りだった。ウィンタープリズンが目にしたのは、これまでの戦いで魔法少女や仮面ライダー達が倒してきたファントム達と同じ姿をしているものばかりだった。その上、一体だけでなく、同じ個体が何体も。

ウィンタープリズン自身は知らないファントムもいたが、もはや認知しているかしていないかの問題ではない。なんとしてでも一般市民に被害が及ぶ前に撃破しなければならない。ウィンタープリズンはファントム軍団に殴りかかっていく。

シスターナナが援護をしてくれているとはいえ、ウィンタープリズン1人ではファントム軍団にはかなり不利だ。

 

 

「しょうがない、だったらこっちも手がある!」

 

 

ウィンタープリズンは、自身の魔法で壁を生み出し、大量のファントムの中から数体を囲み、閉じ込めて戦う。

全てをまとめて相手にするよりも、少しずつ倒していく方が良いと考えたウィンタープリズン。

徐々にグールはなぎ倒しているのだが、ファントム達は、グール程簡単には倒せない。

善戦しているウィンタープリズンであったが、他のファントム達に壁を破壊されてしまう。

 

 

「くっ…この数は流石に捌けないか…」

「ウィンタープリズン!大丈夫?」

「ナナ!」

 

 

周囲の人をこの場所から逃がす事が出来たシスターナナは、トリガーマグナムをファントムに向けて連射する。

仮面ライダーW ルナトリガーの力が宿ったこのトリガーマグナムは、誤射が起きること無く、的確にファントム達にダメージを与えていく。

…が、やはり全てを倒すまでには至らない。

ファントムの中の一体、ランサーが槍を構えてシスターナナに襲いかかった。

ウィンタープリズンがそれに気付き、食い止めようとするが、他のファントム達に邪魔されて動けない。

 

 

「あっ…」

「ナナ!避けろ!」

 

 

ひたすら援護に徹していたシスターナナは、突然のランサーの強襲に気付くのが遅く、その上戦闘経験も少ない為、避け切るのは難しい。

万事休すかと思われたシスターナナ。

 

 

…だったが。

 

 

直後、ランサーは上半身と下半身を両断、自前の槍も見事に破壊されて爆散する。

またしても突然の事で驚くシスターナナとウィンタープリズン。

シスターナナは、横に自分を守ってくれた人影が1人立っていることに気付いた。

その正体は…。

 

 

 

「…大丈夫?」

「あなたは…スイムスイム!」

「うん。助けに…来た」

 

 

シスターナナの横に立っていたのは、スイムスイムだった。

そして、助けに来たのはスイムスイムだけでなく…。

 

 

「ウチらもいるぞー!」

「お姉ちゃん!いっくよー!」

 

 

ユナエル、ミナエルの2人も現れ、同時攻撃でファントムを蹴り飛ばす。

続いてたまが素早くファントム達に浅い傷を付けていく。

見た目はほぼノーダメージ。何をしているのか分からないかもしれないが、たまの魔法を忘れてはならない。

ウィンタープリズンが彼女の魔法に気付いた時、周りにいたファントムは体に巨大な穴を空けられ、よろめき倒れていった。

 

 

「大丈夫?ウィンタープリズン、シスターナナ」

「たま…ありがとう、それにスイムスイム達も」

「少し前に迷惑かけたから…それのお詫びだよ」

「でも、まだまだ数はいる。油断は禁物」

「勿論。出来るだけ素早く仕留めよう…!」

「オッケー、手伝うよ!」

 

 

スイムスイムは薙刀を、ユナエルはミナエルが魔法で変身した太刀を、持ち加勢する。

これまでは自分自身が生き残る為に、1度は殺そうとした敵だった。

だが、今は共に生き残る為に協力し合う仲間として、ファントム軍団に対峙する。

まずはウィンタープリズンが先行し、ファントム相手に格闘戦に持ち込む。

そして再び魔法で壁を作り出し、ファントム達を閉じ込める。

さっきは破られた戦法。だが今は違う。

ファントム達が壁を破壊する前に、スイムスイムが薙刀で壁ごとファントム達を切断する。

 

 

「よし、いい感じだスイムスイム!」

「この戦法、なかなか良い…」

 

 

そして、シスターナナがトリガーマグナムでファントム達に乱れ打ち。

更にユナエルがミナエルの変身した太刀を振り回す。

この2人の攻撃に気を取られるファントム。

この攻撃は、ファントム達を1つの場所に集中させる為の策であった。

ある程度まとまった瞬間、ユナエルが叫ぶ。

 

 

「たま!お願い!」

「わ、わかった!えいっ!」

 

 

少し離れた場所からたまがファントム達目掛けて突っ込み、攻撃を与える。

そしてすぐさま魔法を発動し、巨大な穴を空けて倒していく。

連携の取れた技により、ファントム達は次々と倒されていく。

溢れるほどに湧いていたファントム達は、次第に数を減らしていき、ついには…

 

 

「これで最後!」

「いっけぇー!」

「私もこれを使うわ!」

 

 

トリガー!マキシマムドライブ!

 

 

スイムスイム、ウィンタープリズン、シスターナナの同時攻撃。

魔法の力で作られたトリガーメモリをセットしてトリガーマグナムから放たれた必殺、トリガーフルバースト。

残っていたファントム達全てにダメージを与えていく。

そのままスイムスイムの薙刀とウィンタープリズンの拳で、見事にファントムは全て爆散し、撃破する事が出来た。

 

 

「ふぅ…やっと、倒した」

「ナナ、大丈夫か?怪我はないか?」

「えぇ、私は大丈夫。それにスイムスイム達も、ありがとう…!」

「こちらこそ、ありがとう。ウィンタープリズン、シスターナナ」

「いい連携だったね、さっすがー!」

 

 

この区域のファントムを殲滅し、一段落付いたかと思われたが、実際はまだまだである。

他の区域にもファントムは出現し、ここにいない魔法少女や、仮面ライダー達も戦っている頃だろう。

自分達も援護に向かわなければならない。

 

 

「どうやらまだファントムは残ってるみたいだ、援護に向かおう」

「そうね。急がなきゃ」

「きっとスノーホワイト達も手こずってるよ…」

「リーダー、行くよね?」

「うん。助ける…!」

 

 

全員の意見が一致し、彼女達は他にファントムが発生している区域へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、その肝心のスノーホワイト達だったが…。

 

 

「な、なんて数なの!」

「…想定以上です…」

「斬っても斬っても出てくるなんて…!」

「突っ込むぞ、リップル!」

「任せて…!」

 

 

既にトップスピード、リップルと合流したスノーホワイト、ラ・ピュセル、アリス。

こちらも同じく、大量に現れるファントム達に苦戦を強いられている。

日中の市街地に現れたおかげで、街はパニック状態になっている。

スノーホワイト達は、逃げ遅れた人々を助け出しつつ、ファントム達と交戦している。

急いで逃げ隠れる人々もいるかと思えば、今までは都市伝説程度でしかなかった魔法少女が戦っているのを一目見ようとしたり、写真に収めようとカメラを構える命知らずまで現れて余計に状況が混沌と化している。

しかし、人々にしてみれば、魔法少女が近くにいる、という事は分かっているが、何故か鮮明な姿を映す事が出来ない。どれだけカメラを構えても、ぼやけた写真しか写らないのだから、余計に謎は深まっているばかりだ。

当の本人達は、そんな事気にしている場合では無いのだが。

 

 

「いつまで人が残ってるんだ!」

「死ぬかもしれないってのに、物好きも居たもんだな!」

「出来れば離れてほしいんだけどなぁ…」

「色んな心の声が聞こえる…。写真を撮りたいだとか、大スクープだとか…」

「本当に見境ないな!」

「もう気にしてる余裕は無いよ!被害を最小限に抑えてアイツらを倒す!」

「その通りだとも。行くぜ相棒!」

 

 

スノーホワイト達は、各自武器を構えて改めてファントム達に挑んでいく。

スノーホワイトはブレイラウザーで敵を切り裂いていく。ただ斬り掛かるだけではなく、内蔵されているラウズカードを使い、多彩な攻撃を繰り出す。

リザードスラッシュのカードを使い、強力な斬撃を与える。

そして、更にカードを使って必殺技を仕掛けた。

 

“キック”

 

“サンダー”

 

“マッハ”

 

 

“ライトニングソニック”

 

 

「よし、おりゃあー!」

 

 

マッハの力で高速で動き、多くの敵を巻き込みながら電撃の込もったキックを浴びせる。

直撃させられたファントム達はそのまま爆散していく。

 

 

「よしっ、取り敢えずは倒せた!」

「すごいな!スノーホワイト!俺達も負けてらんねぇ!」

「うん、トップスピード!」

 

 

スノーホワイトの戦いに感化され、トップスピードとリップルも敵を撃破していく。

リップルは手裏剣を投げつけたり、接近して間合いを詰めて戦っていく。一方のトップスピードは、ハンドル剣を持ち、箒に乗って猛スピードで敵陣へ突っ込む。

ハンドル剣のハンドル部分を回し、回転しながら攻撃を与えていく。

 

 

“ターン!”

 

 

「そろそろ回転にも慣れてきたぜ!くらいやがれ!」

「援護するよ!」

 

 

トップスピードの回転攻撃で切り裂かれていくファントム達に、リップルの手裏剣も襲いかかる。

確実にダメージを与えて優位に立つ。

とどめの追撃を加えて各個撃破していく。

 

 

 

「よし、ナイスだぜ相棒!」

「まだまだ、気を抜かずにいこう」

 

 

そして、ラ・ピュセルとアリスは、スノーホワイトの援護をしつつ、各々で敵を撃破していた。

剣のサイズを自在に変化させて敵を薙ぎ払っていく。

アリスはダメージを受けても復活するという魔法の為、敵の攻撃を気にせずにファイズエッジを振り回す。

 

 

「アリス、敵を拘束してくれ!」

「分かりました…」

 

 

“Ready…Exceed Charge”

 

 

ファイズポインターをセットし、必殺技を使う体勢に入る。

まずはファイズエッジの攻撃で敵を拘束する。

その後に、剣を巨大化させたラ・ピュセルの一撃と、アリスの必殺、スパークルカットの同時攻撃を放つ。

 

 

「ラ・ピュセル!アリス!私も助けるよ!」

 

 

とどめには、スノーホワイトのブレイラウザーから放たれた一撃が、ファントム達を切り裂き、撃破した。

これで、市街地の敵を全て撃破することが出来た。

 

 

「やった!全部倒せたね!」

「取り敢えずこの近くの敵はいなくなったみたいだ。後の場所はスイムスイム達がきっとやってくれてるよ」

「取り敢えずは一段落ですね…」

「やったな、リップル」

「う、うん…」

「ん?どうしたんだ?」

 

 

リップルの返事があまり良いものでは無かったので、トップスピードが問うた。

リップルは少し不審そうに、先程まではファントム達が屯っていた場所を見つめる。

 

 

「…いや、気のせいかもしれないけど…敵の現れ方とか、不自然に感じるんだ」

「不自然かー…言われてみれば、何かに誘導されてるような気も…」

 

 

と、リップルの一言を一同が気にし始めた時、マジカルフォンから、再び連絡が入った。

 

 

『みんなご苦労だったぽん!でも、新しいファントムが出現したぽん。みんな、そこに向かってほしいぽん!』

 

 

ファヴがマジカルフォンの上に表示したマップに、その場所を指し示して、ファイト!と言い残して再び姿を消した。

 

 

「えっ!?また出てきやがったのか!」

「ラ・ピュセル、この場所って…!」

「あ、あぁ…昔よく集合場所に使っていた海岸だ…」

 

 

そう、最後にファントムが出現したとされる場所は、スノーホワイトとラ・ピュセルが、魔法少女として合流する際に使っていた場所である、海岸であった。

 

 

「なんか怪しいが仕方ねぇ、みんな行くぞ!リップルもそれでいいな?」

「うん…いざとなれば、どんな奴でも倒す!」

 

 

少しばかり警戒心が無い訳では無いが、ファントムを倒さなければならない。

そして、スノーホワイト達は海岸に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふぅ…勘づかれちゃったかぽん?』

「さぁな…だが、いずれ奴らは現れるだろ」

 

 

魔法少女達にメッセージを送り、ため息を付いたファヴ。

そんなファヴはオーガと共に、先程魔法少女達に指定した集合場所である海岸にいた。

周りは魔法の力で生み出されたファントムが埋めつくしている。

 

 

『このグールやファントムを作り出せる力、本当に使えるぽん』

「…ふん。よくもまぁお前も、俺達ファントムの存在を嗅ぎつけて、こんな魔法を作ったもんだ」

『確かにファントムの存在を知ったのはファヴ自身だけど、この魔法を作り出せたのは、マスターとあの方のお陰ぽん』

「マスター呼びはよせ、気持ち悪い。元々のクラムベリーの事だろうが」

『でも、結局今のファヴのマスターはオーガぽん』

「お前、よくもそんな早く切り替えれるな、クラムベリーに少しは何か無いのか」

『確かにマスターとしてはとても面白かったけど、死んじゃったから別に…って感じぽん。というか殺した、というか喰ったのはオーガだぽん』

「ハハッ!そうだったなぁ…まぁ、力は大事に使わせて貰ってるぜ」

 

 

オーガは自分の肩付近に手を当て、そんな事を呟いた。喰われたであろうクラムベリー本人には、もう届かないのであろうが。

 

 

『まぁ、ファヴがいつまでもここに居るのはバレたらまずいぽん。後は任せるぽん、オーガ』

「そうかい、まぁいいさ。魔法少女もライダー共も、まとめて倒してやる…!」

 

 

その言葉を聞いたファヴは口元を歪め、そのままどこかに去っていった。

オーガは、特にそれを気にする事も無く、海岸に溢れるファントムを見つめていたが、ふと何かの気配に気付き、背後を確認する。

すると、そこに立っていたのは…。

 

 

「おっと…まさかお前が最初に来るとはな、魔法使い!」

「ガルーダ達にお前らの居場所を探してもらったからな、スノーホワイト達が来る前に見つけられたよ」

 

 

そう、オーガの前に現れたのは、晴人だった。

そして、晴人の方には赤い鳥のプラモンスター、ガルーダの姿もあった。

 

 

「…他のライダー共はいないみたいだな。何の用だ」

「決まってるだろ…。お前と決着を着けに来た」

 

 

晴人はそう言うと、ドライバーを呼び出して、指輪を指に付ける。

するとオーガもそれを察知し、戦闘態勢に入る。

 

 

「そうか、ならここで終わらせてやろう、何もかも!」

「あぁ。だがフィナーレを迎えるのはお前だ、俺は負けない…変身!」

 

 

フレイム、プリーズ!

 

 

ウィザード・フレイムスタイルに変身した晴人は、ウィザーソードガンを構えてオーガと対峙する。

 

今度こそ決着を付けるべく、ウィザードとオーガの一騎打ちが始まるのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

オーガの姿は完全に見えなくなっただろうか。

ウィザードがあの場に近付いているのを悟ったファヴは、急いで離れた森までやって来ていた。

ウィザード自身にはもう自分の正体はバレているのだろうが、あの場で遭遇すると色々と面倒だ。

何とかオーガを盾にして逃げ切ったファヴ。

そこに、ファヴの持つ黒い魔法石から声が聞こえ始めた。

 

 

『ファヴ。順調か?』

『まぁまぁぽん。でも、ウィザードがオーガと戦い始めたぽん。正直もうオーガは…』

『…そうか、だがお前にとっては悪くは無いだろう。それに、例の彼らも、既に完成した』

『という事は、こっちも色々面白くなりそうぽん!』

『これでライダー達にも対抗出来るだろう。そしてファヴ、後はお前だ』

『分かったぽん。遂に計画もラストスパートぽん』

『引き続き任せたぞ、ファヴ。完成した奴らを今から送ってやろう』

 

 

そう言い残し、黒い魔法石との通信は絶えた。

だが、魔法陣が現れ、その中から、ある者達が現れた。

 

 

『おぉ…これはなかなかぽん。前の再生怪人とはスケールアップしてるぽん』

 

 

その者達とは、ウィザード達ライダーにとっての味方ではなく、敵として暗躍したライダー達…。

その名も、仮面ライダーマルス、ゴルドドライブ、仮面ライダーエクストリーマー、仮面ライダークロノス…。

 

 

『これからが楽しみだぽん。だからオーガ…』

 

 

ファヴは、黒い魔法石と共に保管してあるドライバーと指環を見つめながら、ここにはいないオーガに言い放った。

 

 

 

『早く死んで、ファヴの新しい姿の礎になるぽん』

 

 

そんな事を言うファヴの瞳と共に、指輪、チェンジウィザードリングが妖しく光った。




今回はあんまりライダー達の活躍がありませんでしたが、次回はウィザードVSオーガの決着です。
いよいよウィザードのあのフォームが登場します!


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第47話 煌臨・インフィニティ

えー……皆様……大変お久しぶりでございます……
そして同時に2年以上放置という形となり本当に本当に本当に申し訳ございませんでしたァァァァ!
アカウント管理が甘くログインパスワードを忘れ、リアルの忙しさも相まって事実上全くこちらに触れておりませんでした○| ̄|_
2年も放置した作品の続きを待ち続けてらっしゃった方々、繰り返しになりますが本当に申し訳ございませんでした。
やっとの続きとなります、どうぞ……!


ウィザードのウィザーソードガン、そしてオーガの大剣がぶつかる音が鳴り響く。

両者互角の状態。もはやウィザードもオーガも、手の内は知り尽くしていると言ったところか。

最初に遭遇した時は、ドラゴタイマーで分裂した4つのドラゴンスタイルに変身してもなお敗北した相手だが、今ではフレイムスタイル1つでも互角に戦える。

ウィザードの戦闘スキルが上がったのか、それとも別の要因か。

一つだけ言える事は、オーガの戦闘スタイルそのものが、変化してきているという事だ。

コヨミの魔法石を巡って戦っていた時とは何かが違う、となれば原因は恐らくこの事件が関わっているに違いない。

…そもそも、何故オーガが復活したのかすらも謎のままだ。

ウィザードは、膠着している状態を打ち破り、一気にオーガに攻め込んだ。

 

 

 

「ぐっ…!魔法使いめ、やはり手練のようだな!」

「お前の本当の目的は何なんだ!そもそも、何故クラムベリーという魔法少女に化けてこのゲームに参加していた!」

「今更そんな事を…!だったら教えてやるよ…」

 

 

 

と、その言葉を皮切りに、オーガはクラムベリーについてを語り始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ、魔法少女同士の争いが起こるどころか、スノーホワイトすらこのゲームに参加していなかった頃の話。

山の奥地で突如目を覚ましたオーガ。

確か自分はウィザードに倒され、そのまま死んだはず。何故無傷で生きているのだろうか。

そんな疑問が浮かんだが、それを遮ったのは、別の者の声だった。

 

 

「おや?貴方は一体…?」

 

 

声の主は、可憐な美少女というような見た目、全身には彩られた薔薇を身に付けている。

とてもただの人間とは思えない。更に言うにはファントムに進んで近付いてくるほど愚かな人間は恐らくいないだろう。

そして極めつけは、莫大な魔力の塊であること。

この時点でオーガは、この少女をウィザードと大差ない存在であるのでは無いか、と認識した。

それが分かった以上、オーガが取る行動は一つだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女クラムベリーは違和感を覚えた。

こんな山奥の小さい小屋の近くに自分以外の生物が現れた事に。

しかも、とてもじゃないが人とは言えないような容貌。

あまりにも不自然かつ怪しい。

近くでリンプンを撒き散らしながら飛んでいるファヴに疑問を投げかけた。

 

 

 

「これも、ファヴが呼んだものですか…?」

『いやいや、んな訳ないぽん。魔法少女を呼ぶことはあっても、こんな化け物みたいなのとは面識ないぽん』

「おいおい、化け物だのなんだの酷い言われだな」

「しかも人語を話すとは。本当に何者ですか、貴方」

「さぁな…だが丁度良い」

「丁度良い…?」

「あぁ、目覚めていきなり大当たりの魔力に出会えたからな…」

 

 

 

クラムベリーは異様な雰囲気を感じ取った。

未知数の相手にはここで退いておく、というのが普通ならば最適解だったのだろう。

しかし、クラムベリーの思考にはそんなもの存在しなかった。

未知の存在、危険な雰囲気。クラムベリーの気分を昂らせるものばかりだった。

戦ってみたい...目の前にいる未知数の存在と手合わせしたい、そんな思考がクラムベリーを支配し始めていた。

 

「貴方の目的は分かりませんが、ここは1つ私と手合わせ願えませんか…?」

 

戦いに飢え、強敵を求める彼女だからこその言葉である。他の魔法少女であったなら、どうあれ戦おうとなどは思いもしないだろう。

予想外の返答が来たオーガは少し困惑したが、くすりと笑ってそれに答える。

 

 

「思った以上に当たりだったみたいだ。いいぜ、そっちもその気みたいでなァ!」

「ふふっ…ではお望み通り…!」

『ま、待つぽん!一旦落ち着くべきぽん!』

「こんな絶好のチャンス、私に逃せと言うのです…?」

『マスターが戦闘狂なのは知ってるぽん。でもいきなり戦闘になるのはおすすめしないぽん』

「ファヴ、貴方がそんな事を言うとは。私に幾度となく似た経験をさせておきながら…」

 

 

その通りであった。元々クラムベリーが戦いを求めるような性分になったのはファヴが原因でもある。

過去、クラムベリーが魔法少女の力を得て、採用試験に参加していた頃。

採用試験用に召喚された悪魔の暴走により他の参加者や試験官を皆殺しにしてしまった事件があった。

そんな中、暴走する悪魔をクラムベリーはたった1人で撃破した。

強大な敵を討ち果たす快感。達成感に支配され、魔法少女として正式に採用された後に試験官を引き受けた。

今回名深市で開催されているこの試験にも、魔法の国の人間でありながら、強い魔法少女を打ち倒したいというだけで参加者側に属する奇妙な存在である。

 

 

「こんな機会はもう無いかもしれない。やらせてもらいますよ…」

『あっ、ちょっと、説得無意味ぽん!?』

「なんだか分からんが面白い!かかって来な!」

 

 

ファヴの言葉は聞いているようで聞いていないのか。クラムベリーはオーガに飛びかかる。

こうなったらもう止められない。しかしクラムベリーなら何とか勝つであろう。これまでもそうだったように。

そう思い込み少し離れて2人の戦いを見守るファヴ。

何やらよく分からない能力を駆使して戦うオーガと名乗る怪物と善戦しているように見える。これなら安心である。

 

 

「へっ、何者だか知らんが、とてつもない猛攻だな。さてはお前、楽しんでるだろ」

「こんな体験は久しぶりです...。楽しくないわけないでしょう…!」

「おいおいマジかよ…ってうおっ!?」

 

 

オーガとしてもイカれた奴を相手にしていると感じ取ったが、突然鋭い痛みを感じ、自身の腹部を見る。

素手で完全に貫かれているのだ。

そんな光景を見たファヴ。やはり自身の仕え主は勝ってくれた。

毎度毎度ヒヤヒヤする。

 

 

「これでおしまいですね...楽しかったですよ...」

「へへっ...そりゃどうも...」

 

 

オーガが弱っているのが確認出来るほどだ。クラムベリーは勝利を確信した。

そう、確かに勝ったのだ。

 

 

 

...これがファントム・オーガで無ければ。

 

 

「じゃあ、頂くぜ」

「何をです?...ッ!」

 

 

クラムベリーは自身が勝利したと思い込んでいた。そう、思い込んでいただけだった。

オーガは“メデューサ”と呟くと、ファントム・メデューサの幻影を映し、その能力を使う。

まずい。そうクラムベリーが気付いた時にはもう遅い。四肢を固められたのか、動かせない。

ファヴも同じく、驚きを隠せずにいた。

今回も勝ってくれると思い込んでいた思考が一気に崩れ去る。

焦っているのが丸わかりな程リンプンを撒き散らす量が増える。

 

 

「ふ...ふふっ...そうでしたか...」

「こいつはとんでもねぇ魔力量だ…ありがとよ!」

 

 

もはやクラムベリーは笑うしかなかった。自身の慢心がこの結果を生んだのだから。

オーガの左肩が大きく開く。クラムベリーは次に何かを考える暇も与えられず、その開いた中に吸収されていってしまった。

 

 

「ふぅ〜…目覚めて早々だったが、眠気覚ましにはなったぜ。…さて、と」

『あ、つ、強いぽん!君はつよいぽん!』

 

 

クラムベリーを文字通り喰ったオーガ。先程と態度を急変させるファヴに目を向ける。混乱しているのだろうか、動きが激しい。

 

 

「いきなり何言ってんだ…?おい、そこの丸いヤツ!次はお前も喰ってやろうか」

『ままま、まずは落ち着くぽん!第一ファヴはマスターと違って魔力もクソもないぽん!』

「ふん、まぁそれもそうか、そんなちっこいの食べても意味ねぇか」

『そう、そうだぽん!今度は君がマスターにならないかぽん!』

「…は?」

 

 

ファヴ自身も焦りに焦った結果の発言だろう。それ以上にオーガも困惑している。てっきりあの女の仇でも取りに来るのかと思っていたが、思っていた返事とは違うものが返ってきたからだ。

 

 

「前の相方が死んだ途端に鞍替えか?変わったヤツだな」

『どうもこうもないぽん、死んじゃったマスターに思いを馳せても何の意味もないぽん。それこそ、君の力は強大ぽん。強い方に付いた方がファヴも上手くやって行けるぽん』

「図太い神経してんな、まぁいい。そのマスターとやらは何をすればいいんだ?人助けとかは御免だが」

『まさか、そんな事君がするわけ無いことはなんとなくわかってるぽん。簡単な事ぽん、魔法少女の採用試験の担当試験官になってほしいぽん』

「なんだと…?割と面倒そうだが…」

 

 

よくもまぁそんな事を得体の知れないやつに依頼するな、とオーガは思う。さっきよりも饒舌になったファヴがこれでもかと言いくるめようとしてくる。

 

 

『聞く分には面倒かもしれないけど、君自身が動くことはほぼないぽん、何なら、さっきみたいに強力な魔力を持った魔法少女を自分で倒してもらっても構わないぽん』

「お前らが見定めようとしてる奴らを喰っていいのかよ?」

『もちろんぽん、そこでやられるようならその程度だっただけぽん。ファヴは強い魔法少女を見つけたいだけぽん、正直君の存在はよく分かってないけど、負けちゃった元マスターも結局は弱かったんだし、今となってはいらないぽん。だから敵討ちとか復讐とかそういうのはないぽん』

 

 

少し前まで自身と組んでいた魔法少女の事をここまで言うとは。オーガはなんだか愉快に思えてきた。

 

 

「フン、なんだか知らんが面白そうだ、乗ってやるよ」

『わかって貰えたみたいで何よりぽん。改めて、名前はファヴというぽん。よろしくぽん、新マスター』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりファヴが裏を引いてたのか…!それにお前も、わざわざ取り込んだ魔法少女に化けてるなんて、回りくどい奴だな!」

「正直退屈だったさ、でも魔法使い、お前達が現れてくれてラッキーだったぜ、今度こそ地獄を見せてやれるってなぁ!」

 

 

フレイムドラゴンに姿を変え、2つのウィザーソードガンでオーガの攻撃を凌ぎ、はたまた猛攻を仕掛ける。

オーガも同様に、攻撃を避けつつ攻めることも忘れない。いつまでも互角が続いている。

そんな中、ウィザードはオーガの僅かな変化を感じ取っていた。

 

 

「楽しいなぁ、魔法使い!これだから戦いはやめられないなァ!」

「…やっぱり、俺の見立ては合ってそうだな」

「あ?」

「お前、少しずつ人格がクラムベリーとやらに似てきたんじゃないのか?」

「…何だと?」

 

 

オーガの動きが少し止まった。その隙をついてウィザードがソードガンで的確に攻撃を繰り出す。

防ぎきれず、大きく吹き飛ぶオーガ。その姿を見つつ、ウィザードは続けた。

 

 

「以前戦ったお前とは戦い方が変わったように思えてな。前まではとにかく力で押し込んで来るタイプだと思ってたが、今は俺の動きを読みつつ戦ってる。俺の動く音に反応してるだろ」

「まさか、この最強である俺が、あんな魔法少女如きに…!」

 

 

明らかに動揺しているオーガ。そんな姿を見ながらウィザードは続ける。

 

 

「ただ取り込んだだけならこうはならなかったろうさ。わざわざその姿に化けて行動なんかしてるからだ。2人分の人格を使ってたら、いずれ自分がどっちか分からなくなる。有り得なくもないだろ?」

「黙れ!俺はオーガ、最強のファントムだ!魔法少女なんぞと同じにするなァ!」

 

 

激昂したオーガは猛攻を仕掛ける。防ぎきれずに少し後ずさるウィザード。

事実、オーガにこちらの攻撃が読まれつつある。以前から見せている姿でもあるから当然だろう。

しかし、ウィザードはまだオーガに“1度も”見せていない姿があるのだ。

 

 

「オラ、どうした魔法使いィ!お前の動きは音で丸分かりだァ!…なに、音…?俺にそんな力は…」

「だんだんどっちがどっちか分からなくなってきたろ。ここで決着を付けさせてもらうぞ!」

 

 

フレイムドラゴンの指輪を外し、次の指輪に付け替える。

そう、その指輪こそ、ウィザード・晴人にとっての希望の指輪。

1度は別世界の自分に預けて手放した力。そしてまた、別の世界で“ウィザード”と共に戦っていた者から託された最後の希望。

ダイヤモンドのように美しく輝くウィザードリング。

 

その名を…インフィニティウィザードリング。

 

ウィザードライバーのレバーを動かす。流れる待機音と共に、ウィザードは最後の希望が宿った左手をドライバーにかざす。

 

 

 

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

インフィニティ!プリーズ!

 

 

 

 

 

大きく魔法陣が展開し、ウィザードを包む。

同時に白銀に輝くウィザードラゴンが現れ、オーガを弾き飛ばし、そのままウィザードを覆う。

一瞬の大きな輝きの後、オーガは再びウィザードを見つめる。

そこに立つウィザードの姿は、自身の知らない、白銀と薄い水色のような姿…。

仮面ライダーウィザードの最強形態。インフィニティスタイルである…!

 

 

「な、何だその姿は…!?」

「お前にはまだ1度も見せてなかったな。これが俺の希望の力だ…!」

「なぁにが希望だ!そんなもの打ち砕いて地獄にしてやる…!」

「さぁ、ショータイムだ…!」

 

 

ウィザードは右手に自身の武器、アックスカリバーを呼び出す。そして、インフィニティリングを再びドライバーにかざした。

 

 

インフィニティ!

 

 

これまでのスタイルとは桁外れのスピードで、こちらに向かってくるオーガを強襲する。

カリバーモードのアックスカリバーの剣撃が一閃、もう一閃。

仕上げに大きく目では感知できない程の速さで切り刻んで蹴り飛ばす。

 

 

「うぐっ…な、何故だ…何故何も出来ない…!」

「言ったろ、お前は気づかない内にクラムベリーの音の力に頼りきってたんだ。今までは見せたことのある姿でしか戦っていなかったが、存在すら知らなかった姿じゃ、対応出来ないだろ」

「ふざ、けるなァァァ!」

 

 

もはや我を忘れたかの如く狂った攻撃を仕掛けてくるオーガ。大きな剣を振って襲い来るが、アックスカリバーで弾き返す。

攻撃が通らないことを悟り、少し冷静さを取り戻すオーガ、今度は“レギオン”と叫びファントム、レギオンの力で強引に攻撃を仕掛けてくる。

確かに、あの攻撃には何度もウィザードは苦しめられてきた。だが、だからこそ…

 

 

「これでアンダーワールドに行ってお前を絶望させてやる!」

「おぉ、今のお前にしては考えたな」

「舐めるなァ!」

 

 

レギオンの力を使ったオーガ渾身の攻撃。しかし、インフィニティスタイルとなったウィザードにもはやそんなものは通用しない。

インフィニティスタイルのボディに、オーガの剣は弾かれ、砕け散った。

 

 

「ば、馬鹿な…」

「お前の魔法はこれくらいか?次はこっちの番だ!」

 

 

今度はアックスカリバーにインフィニティリングをかざすウィザード。

ターンオン!という掛け声と共にアックスカリバーをアックスモードへと変化させる。

 

 

「はぁぁぁぁッ!」

「ガアッ!?」

 

 

アックスカリバーの一振りで、オーガの体は大きく吹き飛ぶ。

そしてウィザードは再び高速移動。オーガが吹き飛ばされ、倒れる地点に先に辿り着き、もう一度アックスカリバーでの強力な一撃を叩き込む。

 

 

「うっ…うぐっ…こんな、こんなはずでは…」

「長かった追っかけっこも、そろそろお開きにしないとな…!」

 

 

オーガは逃げの姿勢を取る。ウィザードの必殺を受ければ、恐らくは自身が持たないことを感じ取ったのだろう。

 

 

「もう逃がさない、フィナーレだッ!」

 

 

アックスカリバーに搭載されているハンド部分を5回叩く。

アックスカリバーは五色の輝きを放ちはじめ、必殺技が発動する…!

 

 

ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイタッチ!

プラズマシャイニングストライク!

 

 

「だぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 

巨大化したアックスカリバーが逃げようとするオーガを追尾、その足を捉え、ウィザードは腕を左に大きく振る。するとそれに応えるようにアックスカリバーも左に大きく動き、オーガを切り裂く。

今度は右に大きく振る。同じように再びオーガを切り裂く。

もはや動けないオーガに向かって、ウィザードは最後に腕を上に振り上げ、そのまま下に振り下ろす。

避ける術もないオーガはその一撃を受けるしかなかった…。

必殺、プラズマシャイニングストライクがオーガを一刀両断。

大爆発と共に、ウィザードのショータイムは幕を閉じる…。

 

 

 

「…ふぃー」

 

 

 

 

「す、すごい…」

「あれが晴人さんの力…!」

 

 

スノーホワイトとラ・ピュセルが感嘆の声をあげる。

実は少し前に海岸に到着し、グール達を殲滅していたが、ウィザードとオーガの一騎討ちを見守っていたのだ。

 

 

「あれでオーガも倒せた…?」

「いいや、まだ…」

 

 

安堵の声を上げようとしたリップルをトップスピードが制す。

まだオーガが生きているのだ。

 

 

「うっ…ぐっ…がっ…」

「おっと、しぶといやつだ。まさかまだ動けるなんて…」

 

 

ウィザードが驚いていると、オーガに突然魔法陣が浮かび、どこかへ移動させられ始めた。

構えるウィザード。そして、そこに現れたのは…

 

 

『いやいや、まさかこんなショーが見れるなんて、感激ぽん』

「な…んのつも…りだ…ファヴ…!」

「やっとお出ましか、マスコットキャラクターさん…いや、黒幕と言うべきかな?ファヴ」

 

 

そう、先程この場所から離れたと思われていたファヴが、再び姿を現したのだ。

しかし今度は、あるひとつのアイテムを隣にうかばせている。

それはウィザードにとっては何度も目にしてきた、自分のものとは違う、白い魔法使い、笛木奏が使っていたもう1つのドライバー…。

 

 

「何でお前がそれを持ってる…!」

『ま、何でもいいぽん、それじゃあいいもの見せてもらった事だぽん…』

 

 

『次はファヴのショータイムぽん…!』

 

 

そう言ってリンプンを撒き散らすファヴは、口元を大きく歪めて笑うのだった…




というわけで47話でした。年月は人のボキャブラリーを貧しくしますね(白目)
まほいく本放送から数年、ライダーも平成20作品目が放送され、元号も変わりビルドどころかジオウどころかゼロワンどころかセイバーが現在放送されています。
毎度毎度ペースを上げるどころか失踪に近い形となりもはや何の信頼もないかもですが、完結までどうか見守っていただけると幸いです。

それではまた次回……!


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第48話 ファヴの狙い

えー、めっちゃお久しぶりでした。
実は終盤戦真っ只中。今回は色々種明かしです。
いよいよ黒幕出現…!?


笛木こと、白い魔法使いが使っていたベルト、その名をワイズマンドライバー。

今現在これを使うことができる人物は限られているが、そんなものが何故かこの場にある。ましてや、ファヴが持っているのだ。

 

 

「何でそのベルトが…」

『簡単な話ぽん。マスターに作ってもらったぽん』

「マスター?まさかお前が…」

「何の…話だ…俺はそんなもん…」

 

 

マスターが作ったという言葉に反応し、ウィザードはオーガに目線を移したが、当の本人は何も知らない様子だ。

するとファヴは口元を歪めてこう続けた。

 

 

『その通りぽん。こっちのマスターではないからぽん』

「は…?」

『というか、さっさと実行に移させてもらうぽん。変に死なれちゃ困るからさっきは守ってあげたぽん』

「なんなんだ…ッ!ぐぁぁぁ!」

「お、おい!」

 

 

ファヴが話終えると、オーガが突然苦しみ始めた。

そのオーガの体に魔法陣が大きく浮かぶ。

 

 

「どうなってるんだ…!?」

「がッ!あぁぁ!や、やめ…ろ…!」

『何やかんや楽しかったぽん、元マスター。いや、元からマスターでも何でもなかったぽん』

 

 

苦しみ続けるオーガにファヴはこう言い残した。

そして、オーガは光に包まれ、それにファヴ、そしてワイズマンドライバーは溶け込むように入り込んでいく…

 

 

『じゃあ、シーユーぽん』

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

目を開けていられないほどの光に、ウィザードは目を伏せる。

そして、収まった後に再び目を開けたウィザードが見たものは。

 

 

「オーガ、なのか…?」

「………」

 

 

目の前に立っているのはオーガそのものだった。

困惑するウィザードの元に、スノーホワイト達魔法少女がやってくる。

 

 

「ウィザードさん!」

「スノーホワイト!それにみんな!」

「なんかすごい光が見えたけど、どうなってるの…?」

「ん?あそこにいるのってオーガか…?」

 

 

スノーホワイトと共にやってきたラ・ピュセル、アリス、リップル、トップスピードも、微動だにしないオーガに目線を向ける。

その瞬間。

 

 

「トップスピード!」

「ん?ってうわっ!」

 

 

いきなり動いたオーガから光弾が放たれたのだ。

いち早く気づいたリップルがトップスピードを抱えて離脱した為、何とか攻撃を避けられたものの、完全な奇襲であった。

 

 

「なっ…」

「どうなってるんだ…」

 

 

スノーホワイト達を後ろに退かせ、構えるウィザード。

沈黙を破り、オーガが声を発するが…

 

 

「ふー、これがファントムの体ってやつかぽん」

「お前…まさか…!?」

「なんでお前の声が聞こえるんだよ…ファヴ!!」

 




今回少し短めでした。
というのも管理ミスで予約投稿の分を書き終える前に投稿されてしまいました…
今後気をつけます…


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第49話 それでも、私は

前回が予期せぬ予約投稿によって中途半端になってしまいました。申し訳ございません。
そんなこんなで49話です。
色々モリモリでお送りします。

※この物語は魔法少女育成計画の原作やアニメ設定から変更したり、都合よく解釈したりしています。繰り返しになりますがご了承の上お読みください。


「ファヴ…お前、オーガの体を乗っ取ったのか!」

「お、察しが早くて助かるぽん」

 

 

ウィザード・インフィニティスタイルの一撃で瀕死となったファントム・オーガ。

かろうじて息絶えてはいなかったのだが、その体は呆気なくファヴによって乗っ取られてしまったのだった。

オーガの体から聞こえるファヴの声。電子的な音ではなくなったが、確かにファヴの声をしている。

そして、乗っ取られた体の腰部には、ワイズマンドライバーが巻き付いていた。

 

 

「最初からこうするつもりだったのか」

「初めからではないぽん、ただ使えなくなったものを再利用したくなっただけぽん。リサイクルは大事ぽん」

「ふざけてる場合か!それに、やっぱりお前が裏で何かしてたんだな!」

 

 

そんなふざけた口調のファヴに、ラ・ピュセルは怒りの声を上げる。

他の魔法少女たちも何か言いたげだったが、フレイムスタイルへと戻ったウィザードはそれを制止した。

 

 

「みんな落ち着け。ようやく種明かしってところだろうし、聞かせてもらうぞ。俺も、なんでお前がそのベルトを持ってるのか気になるしな」

 

 

 

少し前までしらを切っていたファヴがここにきてウィザードや魔法少女たちの目の前に現れたのだ。おそらく何かをしでかす気ではあるのだろう。

目的から何から、まずは聞く必要があるとウィザードは判断した。

 

 

「みんな、大丈夫か!」

「何か重い雰囲気だし、ファントムいるしでどうなってんの?」

 

 

このタイミングで、シスターナナやスイムスイム達も合流した。

それと同時に、ファヴは口を開いた。

 

 

「都合よくみんな揃ってくれたみたいだし、お話させてもらうとするぽん」

「都合よく…だと?」

 

 

ウィザードはファヴの妙な言い回しが気にかかった。

そんな素振りを一切気にせずファヴは続けた。

 

 

「こうなった以上隠しても仕方ないから結論から言うと、そもそも魔法少女のみんなを集めたのは優秀で強い魔法少女を選んで魔法の国の正式な魔法少女になってもらうためだったぽん。まぁ、選抜試験ってやつだぽん」

「選抜試験って、どういうことなの?」

「今までは正式なものじゃなかったってことなのか…?」

「あれ、言ってなかったぽん?まぁどうでもいいぽん」

 

 

スノーホワイト達は驚く。選抜試験、正式な魔法少女、理解に時間がかかる単語ばかりが飛び出しているためだろう。

だが、ファヴは彼女たちに考える隙を与えず言葉を続ける。

 

 

「ついでに言うなら選抜試験もここまでハードなものにする必要もなかったぽん。試験に落ちて脱落になっても元々は死んだりはしなかったぽん。」

 

「え?」

「今、何て…」

 

「そんなに驚かなくてもいいぽん、というかファヴが前に問い詰められてごまかした時点で何となく察してくれてると思ってたぽん。今更そんな無意味なことでショック受けられても困るぽん」

 

 

魔法少女たちは言葉を失う。呆然としている者や言葉を失い俯く者などそれぞれの反応を見せる。それも当然であろう。生き残るために誰かを犠牲にしようとしたり、辛くても悲しくても必死に生き残ろうとした日々は、無意味なものであったと突き付けられたからだ。

そんな彼女たちの姿を見て、ウィザーソードガンをファヴに向けるウィザード。

 

 

「何でそんなことをした。無意味だとお前も分かっているなら、こんなこと必要なかったろ」

「何でって、簡単だぽん」

 

 

今一度問い詰めるウィザードに対し、ファヴは無機質に返事を返すのだった。

 

 

「つまんなかっただけぽん。みんなだって簡単なゲームをずっと続けてると飽きちゃうと思うぽん。くだらないなれ合いやおままごとみたいな事を何度も繰り返してたらファヴだって飽きちゃうのは当たり前ぽん。だからこそ刺激が欲しくなるぽん。魔法少女同士の殺し合いや裏切り、それを乗り越えて生き残っていくゲーム!そういうのが見たかったんだぽん!」

 

 

 

その場にいた者がみな沈黙する。理解が追いつかない様子だ。

しかしファヴは全く気にすることなく、続けて言い放つ。

 

「まぁ、これはあくまでファヴの目的ぽん。ここから先は、協力してくれたファヴの本当のマスターの目的を果たさせてもらうぽん」

「何…?」

 

 

ファヴが言葉を言い終えたと同時に、オーガの右手に指輪を出現させる。そして、そのままワイズマンドライバーにかざす。その瞬間、何かを察したウィザードは魔法少女達に向かって叫ぶ。

 

 

「避けろ!」

 

 

チェイン…ナウ!

 

 

 

 

 

突如スノーホワイト達魔法少女に鎖が巻き付き、腕と脚を狙う。

一瞬の事で誰もその鎖を避けることは叶わず、みな拘束されてしまった。

 

 

「えっ!?なにこれ!」

「ぐっ、動けねぇ…」

「何するんだよ!」

 

 

魔法少女たちは抵抗するも、ワイズマンドライバーから発動した魔法は強力で、身動きが取れない。

 

 

「みんな!くそっ…ファヴ!どういうつもりだ!」

「どうもこうも、これがマスターの目的らしいからぽん」

「目的だと…!?それに、マスターって誰だ!」

「マスターのことは結局後でわかる事ぽん。それよりも、今から何が起きるか知りたいんじゃないぽん?」

 

 

そんなことを言いながら、ファヴはウィザードにある指輪を見せつけた。その指輪はかつて、笛木が使っていたある儀式に用いるための指輪、エクリプスウィザードリング。

効果は日蝕を発動させるというもの。

ウィザードは一瞬でファヴ、そして裏に隠れている黒幕の目的を察した。

 

 

「お前ら、まさか…サバトを!?」

「ご名答だぽん。このドライバーも、マスターがサバト用にって作った模造品ぽん」

「サバトには膨大な魔力が必要だ!スノーホワイト達を使って補うっていうのか!」

「そうなるぽん」

「スノーホワイト達がどうなるか分かってるのか!」

「面白いじゃないぽん?運よく生き延びたけど、結局仲良く魔力を吸われて死ぬって滑稽ぽん」

「ふざけるな…!」

 

 

ウィザード自身もかつてサバト発動のための柱となってしまったことがある。だが当時は賢者の石を宿したコヨミを蘇生するための儀式だった。

サバトを引き起こして、ファヴ達は何を狙っているのか。ましてや自分たちと違う仕組みの魔法少女達が人柱とされようとしている。

 

 

「私たち、どうなるの…?」

「死なないよね?大丈夫だよね?」

「どうだろうぽん。マスターもいつもとは勝手が違うからどうなるかわからないらしいぽん。死なないことを祈ってるといいぽん」

「う、嘘…」

 

 

少しずつ怯えていく魔法少女達。誰にもこの先どうなるかが分からない時ほど恐ろしいことはない。

 

 

「みんな!…ファヴ!お前らの好きなようにはさせない!」

「威勢がいいのは別にいいぽん。まぁ、人柱をここだけに密集させるわけないけどぽん」

「まさか…おい、よせ!」

 

 

ファヴが指輪を付け替える、テレポートの指輪だ。

ウィザードがそれに気づき、ファヴを攻撃したが…間に合うはずもなく。

 

 

テレポート…ナウ!

 

 

「ちょ、何!?」

「えっ…?」

 

 

抵抗することもできず、魔法少女達はそれぞれのそばに浮かんだ魔法陣の中に吸い込まれ、どこかへ転送されてしまったのだった。

 

 

「ラ・ピュセル!アリス!みんな!」

「…チッ」

 

 

この場に残ったのは、スノーホワイトとリップルの二人のみ。残りの魔法少女は別のどこかへ消えた。

叫ぶスノーホワイトと、舌打ちをするリップル。彼女たちを見て、ファヴは愉快そうである。

 

 

「いやー、うるさいのが減って心地いいぽん」

「みんなをどこへやった!」

 

 

ウィザードはフレイムドラゴンへ変化し、ファヴに詰め寄る。ウィザーソードガンで攻めるが、ひらりと躱されてしまう。

 

 

「そんなに怒る事ないぽん。このサバトは範囲をこの名深市に限定してるぽん。この街のどこかにみんな一人ずつ移動しただけぽん。ま、ここは中心だから少し強い魔力がいるし、二人残しただけぽん」

「魔法少女から魔力を奪ってここに集めるつもりか!」

「そうぽん。そして集まった魔力でサバトを起こし、この街の人間から更に魔力を奪うらしいぽん。ついでにファントムが生まれたらラッキーぽん。結局魔法少女のみんなが生き残たところで、サバトのリソースになってもらうのは変わらないぽん。必死にあがく姿は面白くて良かったぽん」

「ふざけるな!みんなをサバトの生贄になんてさせてたまるか!」

「なら頑張って止めるぽん。運のいいことにこれから魔力を集めるからしばらくは実行に移せないぽん。今のうちにファヴを止められたらきみの勝ちぽん」

「言われなくてもそうさせてもらう!」

「まぁ、ファヴの操作一つで魔力を一気に吸収することもできるんだけどぽん」

「なんだと…」

「ウィザード、君が変に抵抗したらこの二人の命は保証できないぽん」

 

 

ウィザードはファヴの一言で動きを止めざるを得なかった。

二人の命が危険にさらされている以上、下手な動きをしてはいけないと判断したのだ。

 

 

「それでいいぽん。魔法少女の命綱を握ってるのはファヴだって分かってもらえたぽん?」

「相変わらず卑怯なことを…」

「なんとでもどうぞぽん」

 

 

 

ファヴはウィザードの攻撃を止めたウィザードを蹴り飛ばした後、ワイズマンドライバーを操作する。

待機音が流れ、左手に変身用の指輪であるチェンジウィザードリングを装着する。

 

 

「いよいよお披露目ってやつだぽん」

「ファヴ、お前がオーガを乗っ取った本当の狙いか…!」

「黙って見てろぽん」

 

 

シャバドゥビタッチヘンシーン…

 

 

「変身」

 

 

チェンジ…ナウ!

 

 

チェンジウィザードリングをドライバーにかざす。そのままファヴは魔法陣に包まれていく。

そして、ファヴの姿は魔法使いへと変化した。

ウィザードにとっても強く記憶に残っているその姿は、白い魔法使い、またの名を仮面ライダーワイズマン。

 

 

「ふ…ふふっ…あははは!案外簡単に手に入っちゃったぽん!これが魔法使いの力!」

「お前…」

「今まで散々邪魔してくれたぽん。今度はファヴがとことんまでサンドバッグにしてやるぽん」

 

 

ファヴが、ウィザードに宣戦布告する。

白い魔法使いは笛と剣どちらでも使える武器、ハーメルケインを駆使してウィザードに猛攻を仕掛ける。

変に抵抗しようものならスノーホワイト達が危険だ。ウィザードは何もできないまま、攻撃を受け続けるしかできない。

そんな時だった。

 

 

「うぁぁぁぁ!」

「がっ…あぁ…」

「おい!スノーホワイト、リップル!?」

「あー、魔力を吸われはじめたみたいだぽん」

 

 

苦しみ始めるスノーホワイトとリップル。サバトに必要な分の魔力を吸収され始めたのだ。

これはこの二人に限った話ではない。恐らく名深市各地に転送された他の魔法少女達も同じであろう。

そんな中ファヴは、ウィザードに対してさらに猛攻を仕掛ける。

 

 

「いやーいい気味ぽん!何も抵抗できないまま痛めつけられる気分はどうぽん!」

「お前…話が違うぞ!」

「お前が抵抗したらすぐに魔力を全て奪うって言っただけで、あの二人の安全を保障するなんて一言も言ってないぽん、引っかかったぽん」

 

 

そのまま白い魔法使いは、指輪を付け替えて魔法を発動する。

 

 

「これで終わり、くたばれぽん!」

 

 

エクスプロージョン…ナウ!

 

 

エクスプロージョンの魔法が炸裂する。ウィザードの辺り一面に大爆発が起こった。

いくらウィザードとはいえ一たまりもないような威力のものであった…。

 

 

「ハッ!大爆発ぽん!」

「うっ…ウィザードさん…!」

「あーあ、元から魔力を集めるには時間がかかるって言ってたのにぽん、嘘だって見抜けなかったお前の負けだぽん、ウィザード!」

「人を騙して…酷いよファヴ…!」

「なーに言ってるぽん?お前らが無様に捕まって何の抵抗もできてないからこんな事になったんだぽん。自分たちのせいぽん…ん?」

 

 

スノーホワイトの訴えを一蹴するファヴ。しかし…

 

 

「こんなもので、俺は絶望なんてしない!」

 

 

今のウィザードはこの程度で倒れるはずもなかった。

爆炎の中から尚も立ち上がるウィザードの姿がそこにはあった。

 

 

 

「まさかぴんぴんしてるとは思わなかったぽん。流石は正義のヒーローぽん」

「そりゃどうも。ちょっと冷静さを失ってたとはいえ、騙されちまった分をここで返させてもらうぞ」

「第二ラウンド突入は構わないぽん。でもいいぽん?こんなとこで時間かけちゃったらみるみる魔力が吸われていっちゃうぽん?」

「黙ってろ、お前の煽りに乗る気はない!」

「煽りじゃないぽん。実際そうぽん?まぁお前の頼れる仲間達が頑張ってくれるといいぽん」

「何が言いたい!」

「少なくともこの場所で必要な魔力はもう直に集まるぽん!お前らがくたばるのが先か、魔法少女共がくたばるのが先か、見ものだぽん!」

「ここからは本気で行かせてもらうぞ!ファヴ!」

 

 

ウィザードはインフィニティリングを装着し、ドライバーにかざす。

 

インフィニティ!プリーズ!

 

インフィニティスタイルへ再び変化したウィザード。アックスカリバーを構え、高速移動で一瞬にして白い魔法使いに詰め寄る。ハーメルケインで攻撃を捌く白い魔法使いと、アックスカリバーで果敢に戦うウィザード。少しずつウィザードが優位に立ちつつあるのだが…

白い魔法使いの言う通り、今もスノーホワイトとリップルの魔力は吸収され続けている。限界が近いことは確かである。

苦しみながらもウィザードの戦いを見つめることしかできないスノーホワイトとリップル。そんな中、スノーホワイトはリップルに語りかける。

 

 

「リップル…うっ…私たち…利用されてただけなのかな…?」

「スノー…ホワイト…」

 

 

弱ったスノーホワイトの言葉はもはや独り言に近いくらい小さなものだったが、リップルは耳を傾けた。

 

 

「私は、ずっと魔法少女に憧れてた…。周りのみんなが少しずつ興味をなくしていっても…いつか魔法少女になれたら…色んな人たちを…助けたりして…今度は私が誰かの憧れになれたらって…でも、こんな事に…なって…ファヴ達の操り人形みたいになって…もう死んじゃうかもしれない…」

「…」

「私…魔法少女に…憧れなんて持たなきゃよかったのかな…リップルも、私みたいなのは嫌いだったでしょ…?私は…魔法少女になるべきじゃなかったのかな…」

 

 

スノーホワイトの口からこぼれたのは、後悔と諦めのような言葉。

しかし、それを聞いたリップルの返事は…

 

 

「嫌いなんかじゃ…なかった…」

「…え?」

「むしろ逆…。私は…貴方が憧れだった…私みたいな…怖い魔法少女じゃなくって…みんなに優しくしてて…正義感が強くて…貴方ほどに魔法少女って言葉が似合う人はいない…!」

「私…が…?」

「そう…!私にとっての…憧れ…!私だけじゃない…アリスって子も…きっと…そう思ってる!貴方はもう誰かの憧れなの…!」

「私が…憧れ…」

「だから…なるべきじゃなかったなんて…言わないで。貴方は魔法少女スノーホワイト、私たちに…希望をくれた…憧れの魔法少女…!」

 

 

スノーホワイトは驚いていた。会うたびに舌打ちされたり、あまり1対1での関わりがなかったのもあって、嫌われていたんだろうなと思っていたリップルから励まされるとは思ってなかったからだ。

だが、スノーホワイトにとって、それは今この状況において最もうれしかった。

憧れ、希望…知らずのうちに、スノーホワイトは自分の目標に近づいていたのだ。

 

 

「そっか…ありがとうリップル。私…まだ、諦めない!」

「そう…それが貴方…私の知ってる…スノーホワイト」

「だったら…いつまでも…こうしてられない!はぁーっ!」

 

 

スノーホワイトは今あるすべての力を集中させ、拘束から脱出しようと試みたのだ。

強力な魔法で作られた頑丈な鎖はなかなか壊せない。だが、今のスノーホワイトは諦めない。

 

 

「何だ!?」

「スノーホワイト!?」

「いつまでも助けてもらってばかりじゃだめだと思ったんです!自力で脱出します!」

「は!?何言ってるぽん!?そんなもん無理に決まってるぽん!このベルトの魔法に敵うわけ…」

「それでも…私は!」

 

 

スノーホワイトは全身全霊をかける。そしてついに…

 

 

「はぁーっ!」

 

 

魔法の力で作られた鎖が千切れる。拘束は解かれ、スノーホワイトは解放された。

そしてすぐに、隣のリップルの元へ向かう。

 

 

「リップル、あなたも!」

「う、うん…分かった!」

 

 

スノーホワイトの力とリップルの力で、鎖を破壊した。これでリップルも解放されたのだった。

 

 

「大丈夫?」

「私は大丈夫。それにしても、スノーホワイト、貴方はやっぱりすごい」

「リップルが励ましてくれたからだよ。私こそ、ありがとう」

 

 

ウィザードは白い魔法使いから距離を置き、スノーホワイト達の所へ駆け寄った

 

 

「スノーホワイト、リップル!二人共、やるじゃん」

「ウィザードさん、ごめんなさい。いつも負担ばかりかけて…」

「いや、今回は二人のお手柄だよ。俺の方こそ、ごめん」

「そんな…ウィザードさんは謝る事ないですよ」

 

 

そんな会話を始めた3人に、ファヴは魔法で攻撃を仕掛ける。

 

 

イエス!サンダー!アンダースタンド…!

 

 

サンダーの魔法を放たれたが、3人はとっさに避けるのだった

 

 

「おっと危ない、ファヴ、スノーホワイト達に抜け出されて悔しかったのか?」

「まさか、ふざけたこと言うんじゃないぽん。意味の分からない謎パワーを使ってお前ら二人が抜け出したところで、他の奴らの魔力があるぽん!」

 

 

そういった白い魔法使いだったのだが…

 

 

「ん?なぜだ、さっきから魔力が増えていないぽん?」

 

 

魔力を吸収しているはずなのに、必要な分の魔力が集まり切らないことを不思議がる白い魔法使い。

すると…

 

 

「増えてないのはこういうことだ!」

「何ぽん!?」

 

 

シックス!バッファ、セイバーストライク!

 

 

白い魔法使いめがけて、まずはビーストが一撃。そして…

 

 

オレンジチャージ!

 

ヒッサーツ!フルスロットル!

 

オメガブレイク!

 

マイティ!クリティカルフィニッシュ!

 

 

鎧武、ドライブ、ゴースト、エグゼイドが追撃を加える。

不意に必殺級の攻撃を5発も受け、白い魔法使いは大きくよろける。

 

 

「今しかない!」

 

ターンオン!

 

 

その瞬間を突き、ウィザードはアックスカリバーで白い魔法使いの持っていたエクリプスウィザードリングを破壊したのだった

 

 

「なんてタイミングの悪い合流ぽん!」

「仁藤!それに鎧武達も!」

「すまねぇ晴人、遅くなった!…んでこのワイズマンは誰?」

「こいつがファヴだ。どこからかドライバーを持ってきてオーガの体を乗っ取った」

「なんだそりゃ、何でもありってか」

「お前ら、こんなとこに集まってきてもいいのかぽん?この街に魔法少女は散りばめられてるはずぽん!」

 

 

焦りながらも白い魔法使いはまだ威勢を張っている。そんなファヴに、ドライブが答える。

 

 

「それに関しちゃ心配いらないさ。…な、みんな!」

「…は?」

 

 

困惑している白い魔法使い。すると、ライダー達から少し遅れて、ラ・ピュセル、アリス、トップスピードなど魔法少女達全員が合流したのだった。

 

 

「トップスピード!無事でよかった…」

「当たり前だ!こんなんで死ぬかっての!お前こそ、無事でよかったぜリップル!」

「ラ・ピュセル!アリス!みんな!」

「見ての通り、私達は無事だ。スノーホワイトも無事で安心したよ」

「なーんでお前らそろいもそろって生きてるぽん!ライダーなんかせいぜいウィザード抜いて5人しかいないのに、すぐに救助されてるなんてインチキぽん!」

 

 

激昂する白い魔法使い。そんな姿を見て、エグゼイドが煽るように続けた。

 

 

「インチキじゃない。それこそ、裏技だよ。う ら わ ざ。」

「舐めてんのかぽん!」

「ここには合流してないけど、みんな思いは一つだったんだ」

 

ゴーストが答え、鎧武はウィザードの横に並び立つ。何があったのかウィザード自身も気になって尋ねた。

 

 

「実際、どうやってみんなを助けたんだ?」

「仮面ライダーは俺たちだけじゃないって事さ。さぁウィザード、反撃と行こうぜ!」

 

 

鎧武の言葉にウィザードは一瞬で何かを察し、ふふっと笑って仕切り直す。

 

 

「そうだな、ここからが本番だ。ファヴ!」

「散々寒い友情ストーリーを聞かされるのはうんざりぽん。サバトは上手くいかなかったけど、こっちにだってまだ隠し玉はあるぽん!」

 

 

そう言うと、魔法陣が4つ浮かび上がる。そこから現れたのは…。

 

 

「お前らライダーに因縁がある敵を呼び出してやったぽん。これでいい勝負ぽん」

 

 

現れた4人の敵。

仮面ライダーマルス、ゴルドドライブ、仮面ライダーエクストリーマー、仮面ライダークロノス。ファヴが隠し持っていた切り札である。

そして、数えきれないファントムやグールの大群も続々と呼び出された。

 

 

「そっちも戦力総出ってわけか、だが俺たちはここで負けるわけにはいかない…そうだよな?」

「当たり前だ!まだ食い足りないしな!」

「俺達は絶対に諦めない!」

「さて、走るぜベルトさん!」

『OK、いくらでもついていこう!』

「俺達の、思いの力を見せてやる!」

「この戦いも、俺たちが攻略して見せる!」

 

決意を固める仮面ライダー達。そして、

 

「私達だって戦います!」

「幾度となく助けてもらったんだ、借りは返す!」

「…生き残るために、私も戦います…」

「やるよ、トップスピード」

「ノリノリじゃねえかリップル!よし、飛ばすぜ!」

「みんな、やるよ」

「もちろん、リーダー!」

「恩返し、だもんね」

「わ、私も、みんなと戦うよ!」

「ナナ、私達も!」

「もちろん。最大限の援護を!」

 

魔法少女達も、共に並び立つ。全ての元凶を打倒するため。この戦いを終わらせるため。

ウィザードがマントを翻す。

 

 

「さぁ、ショータイムだ!」

 

今、仮面ライダーと魔法少女達の総力戦の幕が上がるのだった。




というわけで49話でした~。お待たせしてました!
ちょっと魔法少女の影が薄かったかなー…すみません
ここから最終決戦!というところなのですが、次回は49.5話、少し巻き戻ってどのようにしてラ・ピュセル達魔法少女が救い出されたのかのお話になります。
短めにはなるかもしれませんが、ビーストや鎧武達はもちろんのこと、最近登場していない外科医ライダーや、主人公達と共に戦ったあのライダー達の姿が見れるかも…!
お楽しみに!


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