東方酩酊宴 Crows Ogres and Phoenix (みたらしりんご)
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第一話 「取材開始」 雛罌粟雅


朽ちぬ雛罌粟の華、耐の鴉、絶対の恐怖

『雛罌粟 雅』

種族は鴉天狗、性別は女、能力は『耐える程度の能力』

性格は正直者だが嘘を吐けないほどバカではない、それ以外は怠惰でヘタレの癖に好奇心と負けず嫌いは人一倍の興味をもたれるとなかなかめんどくさい奴

特徴 おっぱい






第一話 朝、おはようございます

神無月の下旬、そろそろ息が白くなりそうなくらい寒くなってきた幻想郷、

秋には真っ赤に染まっていた妖怪の山の紅葉もすっかり葉を落としてしまった

 

 

 

朝、目が覚める

しかし体は起こさない

起きねば、起きねば、起きねば

と頭の中で自分に言い聞かせる

起きねば、起きねば、起きねば、、、、、、おやすみ

 

「雅起きてる?」

 

部屋の襖が開く

ああ、朝なんて嫌いだ

 

「起きてる、起きてます」

 

「そ、おはよう」

 

起こしに来たのは私の大好きな友人『射命丸文』ここ妖怪の山で文々。新聞を発行してる鴉天狗、綺麗な黒髪のショートカットに赤い瞳で綺麗な顔立ちで私より少し小さいがそれでも十分大きい胸、服装は白いシャツとネクタイ黒いスカート、すっかり普段着に着替えている、文の早起きには本当に感心する

 

「おはよう」

 

と返すのは私、『雛罌粟(ひなげし)雅』黒い長髪で文より少し暗い赤い瞳で普通に美人な文と同じ鴉天狗、

 

「起きてるなら体を起こしたらどう?」

 

「さむい」

 

さむい

 

「つべこべ言わないで起きる!」

 

掛け布団を豪快に剥がれる

 

「うわぁーさむいーさむいよー」ガタガタ

 

「何であんたそんな格好なのよ」

 

今の私?黒のインナー一枚にに半ズボンですけど

 

「記事書き終わったあとにお酒呑みたくなって、、、、文寝ちゃってたからしょうがなくちょこっとだけ一人酒してたら火照ってきちゃって、、、、」

 

昨日は遅くまで新聞の記事を書いてた

 

「ちょこっとって、、、、この一升瓶全部空なんだけど」

 

と、部屋に四、五本転がってる一升瓶をみて言う

 

「あとこれの四倍は呑みたかったかなぁ、、、あ、文のお気に入りの奴は呑んでないよ、全部この前もらった奴」

 

はぁっとため息付いた後に文が呟いた

 

「次からは起こしてくれたら付き合うわよ」

 

「今の聞いたからな、絶対誘うからな、二十日酔いするまで呑むからな」

 

「どれだけ呑むのよ、、、、いいわ、付き合ってあげる。 その前に仕事よ早く着替えなさい」

 

箪笥から私の着替えを取り出して投げる、見事私の顔にヒットする

 

「でへへ、ありがとう」

 

と答えて私は着替えを始める

 

 

インナーを脱ぎ下着をつけて新しいインナーを着るズボンを黒のスカートに履き替えベルトして椛の葉っぱの形をした団扇をベルトにさげ、オレンジのパーカーを羽織り、長く黒い髪を適当に梳かし後ろに束ねようとすると文が口を挟む

 

「髪を梳く時くらい鏡を見たらどう?寝癖直ってないわよ」

 

ああこれね、といわれてから初めて気づくびよんとはねまくった髪の毛をぽんぽん叩いて答える

 

「別に気にしない」

 

「私が気になるの」

 

貸して、と櫛を奪われ洗面台の鏡の前まで歩かされる

 

「ほんと地はいいのに何でこう大雑把になれるのかしら」

 

そう呟きながら、文は霧吹きを吹きつけて髪を梳かしだす

 

「大雑把にしても美人は美人さ」

 

と自慢げに答える

 

「その癖に櫛奪われた後はされるがままじゃない」

 

「文にしてもらうのは好き」

 

「褒めてもなにもでないわよ」

 

なんてそっけなく返されるが、私が邪魔で顔はよく見えないが尖った耳が赤くなってるのは見える、かわいいやつめ、それでも私は『照れた文が見れる』なんて返しはしなかったし文もこれ以上しゃべらなかった、言ったら言ったでかわいい反応は見られたんだろうが、そういうのは夜の二人酒のときとかに見たい、今みたいな後にやることがいっぱいの朝には、文にこうしてもらうだけで元気がでる、意気地なしとか言うなよ

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほーはほーふふほ」

 

歯磨きしながら言うと

 

「何言ってるかさっぱりわかんないわ」

 

と文に言われる

 

「はっへ」

 

歯ブラシを洗い口を漱ぐ

「今日はどうする、私が取材に行こうか?」

 

文はそうね、としばらく考えた後に口を開く

「私は今日は新聞配達をするから雅には博麗神社に行った後に魔法の森に行って欲しいわ」

「魔法の森?白黒ちゃんがまたなんかやらかした?」

「それがわかんないのよねぇ、あそこは人がいないじゃない、噂も曖昧よ、何かが起こったってことしか伝わってこないわ」

文の能力は『風を操る程度の能力』

風の速さで動いたり風を起こすことや向きを帰ることはもちろん風の噂なるものも知ったり操ったりできるそう、私たち鴉天狗はみんな『風を起こす能力』を持つがそれはやはり早く動いたり風を起こしたり向きを変えたりするだけだ、そう考えるとやはり文の能力は破格の強さだろう、文の速さには私も勝てないし、私が必死こいて複雑に風を操っても文はそれを片手間にやってみせるし、私には風の噂は聞こえてこない

「んで?博麗神社には何を」

「魔法の森の取材よ、もしかしたら相当大きな事件かもしれないし事前に知ってそうな人に聞きに行ってほしいわ、魔理沙もいるかもしれないし」

「なるほど、あいわかった」

 

「まあ神とかスキマ妖怪が出てこない限りあなたなら大丈夫でしょ」

 

「そんなこと言うと出てきそう」

「なんていってたら記者なんてやってられないわ、さぁ、いったいった」

「はいはい、いってきますいってきます」

 

 

少女移動中 ~Now flying~

 

博麗神社、幻想郷の東の端にある神社

幻想郷と現実を隔てる博麗大結界を管理する博麗の巫女が住んでいる、神社というもののいるのは巫女だけで神主もいなければ祀っている神はいないらしい

 

「魔法の森?あー魔理沙が何か言ってたわね、変な洋館があったーとかなんとか」

そう取材に答えたのは当代博麗の巫女『博麗 霊夢』脇の空いた紅白のおめでたい色をした巫女装束と頭の大きなリボンが特徴的な綺麗な黒髪の女の子、脇寒そう

「変な魔女が変っていうならそりゃ割と普通な洋館なんじゃないか?」

なんて冗談をかましてみる

「それが本当に変らしいの、魔理沙は鎧とか剣とか独りでに動く武器に襲われたとか言ってたわ」

 

独りでに動くねえ、確かこの前の逆さ城の異変の発端も道具が動き出すのからだったな、いやでもそれじゃあ私達の道具も動き出すな、じゃあ新参の魔女か?勝手に動く武器も魔術でできそうだ、、、飛躍しすぎだな、武器を触らずに動かすなんてがんばれば私でもできる。

 

やはりこれだけの情報でいくら考えても妄想の域はでないか

「うーん、他には何か言ってなかった?」

「いやこれだけ」

 

ええー、もっとがんばれよ魔理沙ちゃーん

「うそん、つかえないなぁ」

「あら、つかえないなんてひどいのね、悪い妖怪かしら」

「いいえわたしはいいようかいですわ」

 

「目が泳いでるわよ」

「御賽銭したいなぁって思っただけなのになぁ、、、、」

 

「そう、あなたはいい妖怪ね」

と言って手を差し出す霊夢ちゃん

「いや手渡しかい」

「いいじゃない別に、箱に入れても私が出すんだから」

「それは巫女としてどうなんだい」

「なんて言いながらも財布の紐を解くあんたもあんたよ」

「私がここにやる賽銭に賽銭をしてる感覚は一切なくてね」

「じゃあ何のためにお金を払ってるのよ」

 

「可愛い女の子にお小遣いをあげてる感覚」

 

「、、、、、いつまでたってもその子ども扱いは変わらないのね、文は最近は巫女として接してくれるわよ?」

 

「あの子は記者として博麗の巫女である霊夢ちゃんと話してるだけさ、私はそういうことは苦手でね、目の前に見えてることを馬鹿正直に捉えることしかできないのさ、だから霊夢ちゃんも霊夢ちゃんにしか見えないの」

 

「数千年生きてきて?」

 

「そう数千年生きてきて、まあ自覚ないんだけどね、これも言っちゃ文の受け売りさ、私の歳と張り合えるほど言われた気がするよ」

 

自分の年齢なんてもう数えてないから覚えてないんですけどね

 

「変な妖怪」

 

「妖怪は変だから妖怪なのよ、それじゃそろそろ現地にいってくるわ」

 

「そ、じゃあ私もお掃除はじめようかしらね」

 

「ほいじゃーね、お小遣い大事につかうんだぞー」

 

なんてやり取りをして神社を後にする

目的地は魔法の森、到着まで約五秒

 

 

 

 

魔法の森、幻想郷に存在する原生林で、空気はジメジメしていて昼間でも薄暗く、見たこともない植物が生えている、その見たこともない植物目当てか知らんがこんな辺鄙な場所に住み着く魔女もいるそう、、、、、、、ほらあそこにも

 

 

 

「なにしてるの?楽しそうね?魔理ちゃん♪」

 

目の前にあるのはものすごく大きい花の怪物、、、、、、とそれの触手に捕らえられた魔理ちゃんとよばれたモノクロの衣装に頭被った大きな黒い三角の帽子がトレードマークの金髪の少女

 

「た、助けてぇ」

逆さにされ帽子が落ち、私の頭に被さる

 

やれやれ、なんておてんばな子だろうね、どうせ好奇心のままに近づいた結果だろう、、、まったくもー、しょーがないなー

 

なんて頭の中でぼやきながら手ごろな枝を折る、そして

 

「やい、クソミドリ野郎、お前の命もここまでさ!恨むなら魔理沙ちゃんを襲った自分を恨め!」

 

そんな感じの挑発が効いたらしく標的を私に変えて襲ってくる

 

「おうおう、そんな攻撃止まって見えるよ!」

 

折った枝を妖力で補強し風の刃を纏わせて襲ってくる触手をで切り払う

 

「お前を倒すには素手すらもったいない!枝でも喰らっとけ!」

 

魔理沙めがけて力いっぱいの跳躍、

 

「風刃『小枝丸』!!!!」

 

邪魔になる触手、魔理沙を捕らえている触手諸共切り刻む

 

「どーよ!」

 

「おっ、おう」

 

さて敵を後ろに回してしまった、どうするか、、、、、、そうだな

 

「魔理沙!やれる?」

 

抱きかかえた魔女に聞く

 

「任せな!しっかりと消し飛ばすぜ!」

 

手のひらサイズの小さな魔力砲(八卦炉)を構え叫ぶ

 

「マスタースパーク!!!!」

 

 

「いやぁ、助かったのぜ、サンキューな」

なんて礼を言う魔女は霧雨魔理沙と言う、人里の『霧雨店』という大きな道具屋の娘さんらしいが魔法使いを目指す際に父親に勘当されたらしい、今ではここ魔法の森に自宅を構えて霧雨魔法店という何でも屋を営んでいるらしい

「それでお前がこんなところになんのようだ?」

「ただの取材、心当たりあるでしょ?魔理沙ちゃんにも協力してほしい」

 

「あの屋敷にか、ちょうど私も中身を見てみたいと思っていたところだ、協力してくれるならこちらとしてもありがたい」

 

「そう思ってくれると助かる」

 

「さあ、道案内してくんろ」

 

「それはいいがお前私を助ける前に何かしてなかったか?」

 

「いいや何も?」

 

「ならいいけど」

 

うそぴょん、しっかり撮らせてもらったよ

 

 

~少女移動中~

 

 

「なあさっきの枝のやつもう一回見せてくれよ」

 

「いいけど、そんなにめずらしい?」ペキ

 

枝を折りながら聞く

 

「もちろんだ、ただの小枝でものが切れるなんて見たことないぜ」

 

「私はよくやるんだけどね」

 

すれ違った木をこちらに倒れないように数本斬る

 

「ただの小枝をそんなに強く振っても折れないなんて大した能力だぜ、並みの魔法使いが全力で強化の魔術をかけてもそこまで強くできるかわからない」

 

「いい能力でしょ?」

 

私の能力は主に二つある。

 

一つ目はさっきも言った『風を起こす能力』

 

二つ目は私固有の能力、『耐える程度の能力』

字の如くあらゆる干渉から耐えることができるようになる能力、身体的、精神的なダメージ、毒物、魔術的なもろもろetc、一見強力な能力に見えるが干渉を0にするわけじゃなく、ただ耐えるだけ、痛いものは痛い、その干渉が続くことにより起こる結果を遠ざけるだけ、つまりただのがまんだ、しかも倍にして返せない、じゃあ弱いのかって言ったらそうでもない、確かに能力だけなら影響は私だけだから他の物を強くすることはできない、が私の中を流れる妖力は私の一部だから能力の影響を諸に受けていわば『耐える妖力』と化しているそれを武器に流して強化したりできる、でもまあそれでも妖力を使って物に我慢してもらってるだけ、妖力を流すのをやめると

 

ペキパキボキ

 

「やっぱ枝じゃそんなもたないか」

 

こうなる

私自身が無理して我慢し続けてもこうなる

めっちゃいたいよ

 

「そんなのよく使うのか?」

 

「いつもはもうちょっと短い奴を投げてる、ある程度距離がある雑魚ならこれで屠れる、さっきのは魔理沙ちゃんいたから投げなかっただけ、触手も邪魔だったし」

 

「なるほど、じゃあ近くの奴はどうするんだ」

 

「大体は素手だぁね、例外はあるけど」

 

「どんな?」

 

「それはまた今度ね」

 

「そのようだな」

 

そんな感じに話を切り上げた理由はもちろん目的地に付いたから

その洋館は、私たちがしっている湖のほとりにある洋館よりはすこし小さいものの十分大きいものだった

 

「紅魔館よりは少し小さ目がそれでも大きいな、住人は多いのかな」

 

と予測を立てると魔理沙がそれを否定する

 

「物を自動で動かす奴の館だ、大きくても小さくても住人の予測は『一人以上』から変わらないさ」

 

「そっか、まあいい、見つけた奴に片っ端から取材していこう、それじゃあとっとと行こうか」

 

「そうだな、よし、あけるぞ」

 

魔理沙ちゃんが門に手をかける

 

「よっしゃー!たのもー!!!」

 

なんて軽快に叫ぶと

 

「たーのもー!!!!」

 

と魔理沙も続いてくれる

 

客観的に見たらなんと愉快な客だ、さて洋館の主人はどんなお出迎えをしてくれるのやら

 

 

 

 

 




どうもみたらしだんごというものです
こういうサイトに小説を投稿するのは初めてですが書きたいものを書こうと思ったら主人公が三人になってしまいました、むずかしいとは思いますが。ペースをきっちり守りしっかり読みやすく仕上げようと努力します、至らぬ点があればアドバイスしていただけると幸いです




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第二話 「任務開始」 灯火 一

魂誘う闘志の灯、鬼神死神、走馬灯の正体

獄卒鬼改め迎えの死神『灯火 一』

性別:女
能力:明かりを灯す程度の能力
性格:生真面目
身長:高い
スタイル:バランスのよいスレンダーな体系


地を砕き

木々を吹き飛ばす

何かが爆裂するような轟音が鳴り響くのは幻想郷の人里の外れにある森の奥深く

その爆音の中心にいるのは1人の人間、、、、と言っていいものか、身長は約3mの巨人、その巨人はがむしゃらに大木のような腕を振るったり地面を巨岩のような拳で殴りつけたりと無茶苦茶だ、爆音の正体は間違いなくこいつだろう、腕を振るえば木がなぎ倒れ、足を踏み込めば地が砕ける、その迫力はすごいものだが、よく見れば体は傷だらけで足どりや表情からはどこか盲目で怯えているような感じがする、振るう腕には蚊を握りつぶすような余裕は感じられず、踏み込む足には獲物を追いかけるようない自信は無い、、、、

そう、獲物は彼の方だ

 

そして彼を狙う狩人が呟く

「こんなになってまで生きたいかね」

 

 

 

狩人は膝裏を蹴り飛ばしていとも簡単に巨人を転ばし、起き上がろうとする巨体の頭に乗り、幻想郷の住人に似つかわしくない近代的な形状のナイフを取り出し、脳天に突き立てる

 

そうしてようやく、それは死んだ

 

 

 

 

____、、、、、

 

「報告に来ました」

 

と一仕事終えた私は今の職場に戻る

此処は三途の川の向こう側に存在する是非曲直庁、幻想郷に存在する全ての魂を管理する機関、寿命を終えた魂を迎え、三途を六文で渡し、閻魔と呼ばれる役職が生前の行いで天国か地獄か、白か黒かを定め、判決を下す

 

「ご苦労さまです、そろそろ仕事には慣れましたか?」

 

と私を労ってくれるのは『四季英姫・ヤマザナドゥ』

此処是非曲直庁における裁判官、いわゆる閻魔である

 

「まあ地獄に比べたら楽っすね、それとこれ報告書っす」

 

と答えるのが私こと『灯火 一』 ここ是非局直庁で働く鬼である

 

こめかみの前辺りに生えた小さめの角が特徴の黒色長髪の鬼、服装は前身頃に真っ赤な彼岸花が咲いた黒のパンツスーツの下にその彼岸花を思わせる紅のYシャツという鬼とは思えないきっちりとした服装、この服装は私の役職である『迎えの死神』が組織されるに当たってデザインされたものだという

 

報告書にはさっきの巨人のことが書かれている、アレは人を喰らい魂を取り込むことで寿命を伸ばした挙句の姿そういう定められた死から逃れようとする者を迎えにゆく地獄の使者が私達『迎えの死神』

 

この迎えの死神という役職ができたのはかなり最近で、それまでは死神が迎えに来るというのは地獄の鬼が流した嘘だったらしい

 

映姫さまは目を通していた報告書とかけていたメガネをデスクにしまうとこう続ける

 

「一?あなたこれから仕事はある?」

 

「い、いえありません、これまでたまっていたものも最初のほうにあらかた片付けましたし」

 

「そう、真面目なのね、見てのとおり私もちょうど暇をもらったところよ、これから里のほうに降りようと思っていたの、あなたも一緒にこない?」

 

デスクの上には休暇と書かれた札が立ててある

 

「そうっすね、どうせ暇ですし、ご一緒させていただきます」

 

 

~少女移動中~

 

 

所変わって此処は人里、その名の如く幻想郷唯一の人の里、しかしこのでかさは里じゃねえよな

 

「あや?こんなところに鬼がいるなんてめずらしいですねぇ、人でも食べにきましたか?、あ、すいませーん!みたらしだんご二つー!」

 

甘味処で団子食ってると、誰かが話しかけてくる、ご丁寧に注文まで済ませて、野郎、隣に居座る気だよめんどくせえ

 

「この雰囲気じゃいくらでも食えそうだがあいにく、今はだんごの方がうまくてね」

 

鬼が居るってのに怖がる人間一人居ないってのはまあいい里なのだろうが、燃える里に逃げ惑う人間も悪くなかった鬼としては少し寂しく思える

 

「あや、鬼が人を食べるのは時代遅れですか、ではなぜここに?」

 

「ああ、あの人のツレだよ」

 

と店の前で薬屋らしい紅目のウサギにありがたいお話を説いている上司あごで指すと

 

「、、、、できれば話題にしてほしくなかったですね」

 

とボソッっとつぶやかれる、話を振ったのはお前だろ

 

「なんだ?あの人は有名かい?」

 

「そりゃもう有名ですよ、わざわざ里まで降りてきて説教しにくる口うるさい閻魔様なんてあの人くらいでしょう」

 

「そんなに口うるさいかね、しっかり聞けばためになる話さ」

 

「変な鬼ですね」

 

「焦熱地獄は、まともに会話してくれる奴のほうが少ないからねぇ、」

 

「あやや、あなたもしかして獄卒鬼ですか?なぜこんなところに?左遷ですか?」

 

「迎えの死神」

 

「あや?迎えの死神って嘘だったんじゃないんですか?鬼神長が地獄から来るとかなんとか」

 

何で知ってんだこいつ

 

「のはずだったんだけど、地獄勤めってみんな鬼だからその迎えに行くやつ、まあ元の私の上司なんだけど、やっぱ鬼はどこ行っても鬼なんだよな、しっかりやらないやつが多すぎたんだ、ほら最近柱みてえに見える局所的にすげえ勢いの雨が降ったんじゃないか?」

 

「ああ、ありましたね、確か邪仙が狙われたのがどうとかって」

 

「そうその邪仙を迎えるために水鬼鬼神長が出向いたわけなんだけど、まんまと逃げられたんだ、あの柱に閉じ込めて衰弱死でも図ったんだろうけど気づいたときにはもぬけのからだったそうじゃないか、閉じ込める何てことせずに殺せただろうに、そういうところにも怠惰さがにじみ出てるよなぁ、そんなんだから1000年生きてる仙人なんてのができちまうんだ」

 

「あの、、、愚痴になってません?」

 

「ん?ああすまん、で鬼神長が邪仙を逃がしてから十王機関が地獄側の怠けぶりを問題視して地獄の比較的真面目で強い人材を真面目な是非曲直庁に派遣し私ら『迎えの死神』を組織したのさ」

 

「つまり一さんもそれなりにやるのですね」

 

「ただの殴り合いならな」

 

「ただの殴り合いなら、、、弾幕ごっこはご存知なんですか?」

 

「ああ」

 

『弾幕ごっこ』

 

最近地獄に来る奴がそんな遊びをよくやってる、いろんな弾幕を飛ばしあって美しさを競うんだと、幻想郷で今流行ってるらしい、ああ言うのはだめだな、美しさとはかけ離れて生きてきた私にとって、その遊びを見かけたときは新鮮な気持ちにはなったができそうにはないなと同時に思った

 

「ふむ、これは記事になりそうですね」

 

「どこがだよ、もっとあっただろうに」

 

「あの遊びが地獄にも広まっているという点です、これにはあの胡散臭いスキマ妖怪も大喜びでしょう」

 

「そんなに大事なものなのかね、あんな遊びが」

 

「遊びだからこそ大事なのですよ、人も妖も神さえも平等に本気になれる、こんな不安定な世界にはもってこいでしょうに、それに私は地獄とか迎えとか血生臭い記事は嫌いなんです」

 

「そういうもんかね」

 

「そういうもんですよ、あ、安心してください、記事にするときは匿名で記載しますので」

 

「んなもん気にしてねえよ」

 

「ではなぜそんなに不満げなんですかね」

 

そんな顔になってたかね、私も顔に出やすいやつなのかねぇ

 

「いやなに、ただ昔みたいに簡単に気持ちよく殴り合えなくなるのが残念なだけだ、憂いだよ憂い、不満なんかじゃないさ」

 

「やってみたら殴り合いよりも楽しいかもしれませんよ」

 

「そんなもんかね」

 

「そんなもんですよ」

 

確かにそうかもしれないとちょっぴり思った、戻ったらすこし考えてみるか

 

「おや、今日はいつもの相方は今日は不在なのですね」

 

少し会話に空白が開くとそこに上司が割り込んでくる、お説教は終わったようだ

 

「あの子は今取材中でしょう、閻魔様の新聞どうです?」

 

「ええせっかくですしもらっておきましょう」

 

新聞を受け取ってもらうと彼女は私に近づき

 

「私こういうものです、また機会があればお話聞かせてくださいね!では私はこれにて!」

 

「あ!こらまだ話は、、、、」

 

私に紙切れを渡し、風のような速さで去っていった、その紙切れにはこうかかれている

 

 社会派ルポライター あや

 

口癖っぽいあれ自己紹介だったのか

 

「四季様これなんですか」

 

「それは名刺というものです、職業と名前を簡単に紹介するための紙です」

 

「るぽらいたーってなんすか」

 

「ブン屋です」

 

「へえ、、、」

 

「、、、、、」

 

「だんごたべます?」

 

「食べます」

 

 

 

 

団子をひとしきり食べ終わると四季様が話を切り出す

 

「さ、最近変わったことは無いかしら?」

 

「何がですか」

 

「何がといわれると、、、そうね、周りのこと、、、とかかしら?」

 

かしら?って、、、、この人にしては発言がぎこちないぞ、、、、、

 

「あー、そうっすね、うーん、、、、、あ、同僚を一人最近見かけなくなった「それよ!」

 

といい終わる前に四季様が言葉をかぶせてきた

 

「え?」

 

「あっ」

 

変な間が生まれる

 

「それとは?」

 

怪しげな目で上司を見つめる

 

「えーと、その、、、、」

 

「はっきりしてください、らしくないっすよ」

 

「、、、そうね、白状します、、、魔法の森は知っているかしら?」

 

「はいまあ」

 

「それなら話しが早いわ、そこに住むある魔女の調査をあなたの同僚と寿命を見ることのできる船頭役の死神の二人に行かせたのだけれどあなたの同僚は死亡、船頭のほうは重度の火傷を負ってしばらくは復帰できないわ」

 

「へえ、鬼を殺せるほどの魔女ですか、興味あります、、、、、ん?調査?迎えじゃなく?」

 

「ええ、調査、内容は彼女の寿命について」

 

「捨虫ではないのですか?」

 

「それはないわ、かろうじて生きてかえって来た船頭の子の話によると、寿命は捨虫の法の効果同様止まっていたらしいのだけれど、彼女の場合妙なことに寿命が減っても瞬時に元に戻ったらしいわ」

 

「減っても?殺しかけたんですか?」

 

「ええ、迎えの子が攻撃を加えたのだけれどそれによって吹き飛んだ頭は再び焔が燃え上がるように再生したそうよ、船頭の子は『焔を殴っているようにさえ見えた』とも言っていたわ」

 

「体は焔でできていたとでも言うんですか?」

 

「そうとしか言いようがないし、そんなのありえないといいたいのだけれど、ひとつだけそれに該当するものに心当たりがあるわ」

 

「あるんすか」

 

「竹取物語の最後を知っているかしら?」

 

「確か藤原のなんたらが兵を率いて不死の薬を月に一番近い山のてっぺんで焚いて、、、、、もしかしてその不死の薬ですか?」

 

「そのとおりよ」

 

「あれ実話だったんだ」

 

「幻想郷にいるわよ?かぐや姫」

 

「マジかよ」

 

「そのかぐや姫の従者が作った不死の薬、『蓬莱の薬』というのだけれど、それを飲んだ人間がいるのよ」

 

「そいつが魔女、もしくはそいつも魔女と同じく体が焔でできていたと?」

 

「いいえ、彼女は魔法なんか使えないわそれに彼女の場合は焔なんて不完全な体じゃなく完全な肉体を保っていた、その上蓬莱の薬を使用した者たちは例外なく寿命が見えなかったらしいのよ」

 

「では蓬莱の薬ははずれと?」

 

「それをあなたに確かめに行ってほしいわ」

 

まあそんなことだろうとは思ってたけど、、、、

 

「死にますよ?」

 

「、、、話を聞くだけじゃ戦闘にはならないわ」

 

「のはずなんすけど調査しに行って死んだ奴はなんで死んだんすか」

 

「、、、、、」

 

そう間を開けて目を逸らした彼女は情を搾り取るかのように、両の手をグッと握り、上司として冷酷に命令を下す

 

「命令です」

 

こんなはずではなかった、もっと楽な仕事ばかりなはずだった、命の危険なんてない、私はそれに確信を持っていたし、それを保証したのは他でもない上司である彼女自身。

 

私は死ぬかもしれない

 

それを目の前の上司は何より恐れている、それにつけ込み、『嫌だ』といえば引いてくれるかもしれない

 

けれど

 

「了解、任せてください」

 

天秤にかけられた自分の命と彼女の命令では思いのほか自分の命は軽かったようだ。

 

 

 

 




初っ端からいきなりかなり重めの雰囲気になって来ましたが、一さんの運命やいかに!死ぬかも知れません!〔嘘{嘘じゃないかも(嘘かも?)}〕


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第三話 「『想起』実験終了」 園田 朱


魔法使い『園田 朱』

性別:女
能力:命を燃やす程度の能力
性格:至極苛烈
身長:ちっさい(妖夢よりもすこし小さい)
スタイル:太すぎず細すぎずの健康的な体形。


立ち込める煙、燃え上がる家屋、その赤と灰に包まれた地に覆いかぶさる真っ黒な闇がこの情景の恐怖を煽る。

まさに絶望、私以外に生きているものなんていないだろう、最も、私も全身やけどだらけで傷だらけ、もう虫の息だが。

 

「あいや気の毒だね、謝りはしないが同情はしてやる」

 

そう無機質に吐かれるセリフを鼻で笑ってやる

 

「同情なんて、いらないわ、ただの諸行無常よ」

「ん?あまり喋るな、見た限りもうだめだが運がよけりゃ助かるかもしれん、無駄な体力を使うんじゃないよ」

「優しいのね、でも貴女が話しかけたのよ?」

「ただの独り言だよ、返事なんて期待してなかった」

「、、、、そう、本当に優しいのね、、、、、」

「どうかな、、、、、さて、もうここに用は無いし、ここ熱いし、帰るとするよ。じゃあな、人間」

「そう、さようなら、優しい天狗さん」

 

もうすぐ私は死ぬ、、、、、、

 

『気が向いたら使いなさい、必要なければ返しに来るといい、だがもし使うなら、代償は貴女の人生をいただくわ、、、、、』

 

そういえば、あの時は返事もせずに逃げ帰ってしまったな、彼女は怒ってはいないだろうか、今となってはどうしようもないが。

そうだ、もし、彼女が私のことをいまだに待っているとするなら、返事はこの焔で示すとしよう。

 

 

 

            月の姫君、、、、、、私の人生、あんたにくれてやる、、、、、、。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――、、、、、、

 

「悪いのは貴方よ」

 

時は移り今は現代、ここは幻想郷にある魔法の森のどこか、私の家の近く、の上空、雲が結構近い、私というのはこの首の辺りまである白髪、赤い両目の右目にはモノクルを掛けている、服装は朱色の着物の上に白衣を羽織り腰に一振りの刀を提げたおかしな格好の少女がそれ、名前は園田 朱(そのだあかね)

 

「撃ち落したのはお前だろ!!」

 

私の頭めがけて刀が飛んでくる

 

「最速を自称するなら弾になんか追いつかれてんじゃないわよ」

 

刀を避ける、使い魔からレーザーを撃って牽制して弾幕を張り接近対策をしておく

 

「自称した覚えはないよ!」

 

後退しつつ怒声と共に銃弾の如き早さの空気の塊を連続で飛ばしてくる、こんな見てのとおり喧嘩の最中である、相手は知人の天狗、名前は雛罌粟雅という

 

「そうだっけ?忘れちゃったわ」

「見た目の割には耄碌なんだな!やっぱババアかよ!」

「残念ながら貴方より年下よ!」

 

刀で空気の弾丸を打ち払いつつ、ビームを撃ち続け、さらに弾幕を追加する

 

「老化したモンから婆なんだよ!私はまだ何も衰えちゃいないっ!」

 

一瞬で距離をつめられる、ああくそ何のための弾幕か、近づかれるのはよくない、少々強引だが

 

「じゃあね」

 

魔力で斥力を発生させ押し飛ばしつつ反動で後ろに飛ぶ

 

「何のための刀なんだよっ」

「そうあせらずに」

 

弾幕の密度を高くして、威力の高い魔弾を生成

 

「そんなに近づいてほしくないか!」

 

そうよ

 

魔弾発射

 

「ん?」

 

と呟きながら、素手で魔弾を逸らした

 

「なかなか精度の高い射撃じゃないか」

「貴方がのろまなんじゃない?」

「馬鹿言え」

 

このセリフが聞こえてくるころには彼女の拳が私の下腹部にめり込んでいた

あの弾幕の檻を一瞬で抜けた、、、、ちがう被弾覚悟で一直線で飛んできたようだ、決してスペルカードルールなどで使われるような非殺傷の弾を一つとして使った覚えはない、むしろこの一発で死んではくれないものかと祈りを込めた弾、それをこうも容易く、、、、はないな、私が彼女にそこまでさせる地雷を踏んだのか、最速を自称しない割にはずいぶんと速さにプライドがあるじゃない

 

「私は最速じゃあないが遅かあないよ」

 

ええ、全くまったくもって、貴方たちの速さはやはり理不尽そのもの、半世紀以上も見てきているのに、貴方の駆ける姿はさっぱりこの目に映らないわ。

ともあれ遠ざけられたのは丁度いい、上向きに斥力と焔をジェット噴射し加速し3秒ほどで地面と激突する、追撃はすでに迫っている

 

「まあちょうどいい距離なんじゃないかしら」

 

では実験開始だ

魔力で弓と矢を編む

身体中に魔力を通し、肌に回路の様な光が浮かぶ

通した魔力で身体能力を弓であれを狙うのに最適な強化をかける

そして矢を番えて

よく狙い

ちゅん

その間1秒にも満たない

弓は一応使えるくらいには使える、がこいつ相手にはさっぱり当たらないので使わない、、、、、、が

 

「せめてかすっていたりしないかしr」

 

言い切る前に、また彼女の拳は私の下腹部にめり込む

 

ああ、、痛いわ、、、、、

 

「なぁるほど、あれが今回の実験か?」

 

そう、今回の実験は弓の技量をあげる魔法を試すのが目的

 

「あたった?」

 

彼女の頬が、、、、、すこし焼け焦げている

 

「ちょっと実用性低いんじゃないか?」

「まさか」

「弓を使って接近戦は非効率だと思うがなぁ」

「どうかしら」

「んー何かしらの策があってそれを思いついたのはいいが、やっぱ非効率だよ、鏡見てみな」

 

そんなものもってないのでとりあえず触って確認する

 

「あ」

 

つーっと鼻血が垂れていた、、この魔術は体の機能に弓矢で天狗を射るのに最適なブーストを予測できる限り効率よく身体に掛ける魔法、不死ならではの魔法なんだが、体に魔力を流しすぎたのが原因かな、特に脳に負担を掛けすぎるとこうなる

 

「興奮しすぎだろ、見たいなら見せてやるぞ、ほれほれ」

 

といって胸を強調する雅は無視、だが興奮のしすぎというのは間違いではない、これからは冷静に魔力を押さえてつかおう

 

「ったくつれねえ、、、のはいいんだがどうする?まだやるか?」

 

ちゅん

 

と、返答代わりに返した一矢は

 

「っと、危ない」

 

指でつままれてしまった、おかしい、さっきよりも冷静に、しかもきつめに魔法を掛けたはずなのに

 

「くっ」

 

確認のためもう一発

 

「三度も見りゃもう当たらんよ」

 

体を捻り避けてしまう

 

彼女の適応も予測には入れているはずあたらないはずは、、、、、そんな考えは経験と記憶が裏付ける私の考えの横に常にその全貌が伺えるはずの、私の実験の、魔術の、経験の、歴史の、今の前提が嗤って握り潰してしまう

 

「予測も驕れば慢心ということか」

 

にぃとわらってやる

それに気づいたうれしさと

気づけなかったことに対する自嘲と

まだ伸びれるうれしさを込めて

 

「弓はやめだ」

「なんやねん」

 

片手で腰に下げた獲物を抜く

 

「魔刀『朱』」

 

空いた片手には焔が噴出し、そして腰に下げてあったのと比べて短い刀になる

そしてその炎かできた方は刀身は赤く、朱く(あかく)染まり、熱を帯びている

 

 

具象魔法『炎熱武器庫(ヴァーミリオンズ)』No.01

 

「短刀『朱刃』」

「やはりこいつらでなくては」

 

これが私の魔法、具象魔法『炎熱武器庫(ヴァーミリオンズ)

私の焔を武器として具象する魔法

 

「やーいパクリ魔法」

「残念ながら貴方のよりも使い勝手は数百倍上よ」

「へん、言ってろ」

 

とつぶやき雅が刀を構えなおす

 

「妖刀『春紅葉』」

 

彼女が持つ長身の人一人分あるかと言うほどの刀、とは言っても『春紅葉』はこの刀に限った名前ではない、春紅葉は彼女が刀に妖力を流し、銘を刻んだものをそう呼ぶ、その妖刀はベースがどんな鈍らだったとしても、立派な名刀になる。

 

「へ?なんだいきなり」

「いやなにも、いい刀だなと思っただけよ」

「私が持てばどれも同じさ」

「ふふ、そうね」

「んじゃいざ尋常に」

「「勝負ッ」」

 

二つ重なる掛け声とほぼ同時に鋼が鳴く

雅の奇襲だ、天狗(かのじょ)が最大速度で放つ突撃剣

 

「雅風『春一番』、よく見切った」

 

見えてなんかない、しかし、幻想郷(ここ)において見えるものを斬るだけの刀はなにも斬れない刀と同意義だろう、私の刀はそんななまくらではない。

 

「それはどうもっ」

 

キンキンと数度甲高い音が響く、悔しいが剣の技量は雅の方が上だ、彼女の刀のリーチ、足運び、目線運び、使えるすべてを使って敷く間合いはまさに風の結界、守りは空気を切るが如く私の剣をいなし、それでいて吹き荒れる剣戟は嵐の如く私に襲い掛かる。

 

「だがっ」

 

雅の剛剣が閃く

 

「私の(けん)は風をも断つわ!」

 

灼刃『癇癪玉』

 

朱刃の刀身から炎が爆ぜるように噴出し、爆風に乗った剣戟が雅の一閃をそらす

 

「なんのぉ!」

 

すかさず蹴りで追い討ちを迎撃する雅

 

「やるわねっ」

 

だが

 

蹴りの体勢を戻す刹那、彼女の頭上、もとい頭があった場所に熱風が吹き荒れる、雅は直感で体を逸らした故か、はたまた慣れていないものに遭遇した故か、それが朱の放った一閃と認知するのにすこしずれが生じた。

 

「へえ、そういう」

 

その『熱風』の正体

 

炎熱武器庫(ヴァーミリオンズ) No.08 『ブレイズ』」

 

ブレイズと名づけられたそれは超大型の薙刀といったところか、彼女の1.5倍くらいあるそれは刃の部分が朱く染まっている、そしてそれを軽々と振り回して見せた彼女は

 

「どう?こういう使い方なら効率はよくなるんじゃない?」

 

先ほど弓で使って見せた技術を行使するための身体機能を拡張する魔法を、この超大型の薙刀で使っているのだ

 

この使い慣れた炎熱武器庫なら体のどこを強化すればいいか手に取るようにわかる、このブレイズなら筋力の拡張と視力と思考力の補助を取り付けるだけでいい、簡単だ、故に、さっきのような、蹴りの体勢を直すときに出来る刹那の隙に『朱』を仕舞い、このブレイズを具象させて、思いっきり振り抜ける。

 

「ッ」

 

雅の足元が弾け、彼女は即座に後方に飛び退いた

 

「逃がすかッ」

 

追撃に走る、短く持った小振りの横薙ぎ、、反動を上に逃がし振り下ろす、が距離を取られる。

 

「ならッ!」

 

「どうくるッ!?」

 

雅が凶暴な笑みを剥く

 

「瞬発力勝負よッ!!!!

 

― 灼人『癇癪玉』ッ!」

 

足元が爆裂し、その爆風に私が乗る、狙うは渾身の振り下ろし、隙が大きい大振りを速度で補う寸法、速度は十分、これな、、、、ら

 

「らしくないなぁ?」

 

雅は既に迫っている、構えからすると、、、、突きか、瞬発力勝負は負けね、確かに天狗(こいつ)に瞬発力勝負をしかけるなんてらしくない

 

そうね、らしくないわ、ええほんと

 

「らしくない、わ!!!!」

 

「ッ!」

 

二度目の癇癪玉、爆風は私を突き落とし、刃は雅に迫る、

 

「へぇ」

 

と迫る刃に笑顔で答える雅、その瞬間、彼女は無造作に剣を持った腕を振り下ろした

もちろん距離は足りず、私にかすりもしないが

 

「『突風の先導』!!!」

 

刹那、ぎゅんという音と共に彼女が消える、否、彼女は押し飛ばされた

 

彼女は刀を振り下ろしたのではなく、腕を振り下ろした、そこに風と私の起こした爆風を集め、下方向に投げた、そしてその集められた突風は彼女を突き落とす、地面にたたきつけられる彼女は衝撃を巧く使い後方に飛びのけ、遅れて迫る刃に対応するだろう。

 

いや、そうでなくては

 

「ハッ」

 

思わず笑みがこぼれる。

 

刃は焔、焔は燃え上がり、薙刀は焔と化す、、、、そして

 

「『灼破連刃』ッ!!!!」

 

焔は大地を裂く

 

「っつい」

 

彼女が飛び退く

 

「逃がさないわ」

 

焔は大地を裂き、地に立つ私を支えに、再び空を裂き、地を砕く、故に『灼破連刃』

 

そして彼女は、、、、

 

「今のはよかった、、、、、、、、今日はやけにアツいな?」

 

叩き付けられた刃の上に立っている、私の火を払う風を纏って、その美しさに反し、刃は強く踏み込まれていて持ち上がらない。

 

全く

 

「、、、っんたはどこまでッ」

 

きっと今の私はこの日最高の笑顔だろう

 

「さあ続けようか」

「無論よ」

 

ああ、楽しいわ、、、、、。

 

そして後数十分続くことになるその喧嘩の決着はあまりに予想外なものだった。

 

「双方それまで」

 

と凛とした声が響き

 

「「げっ」」

 

朱と雅の声が重なる

 

展開していた使い魔は無力化し、武器を持つ腕は『スキマ』によって縛られる。

 

そう、この喧嘩に割って入ったのは、この幻想郷を見守る妖怪の賢者『八雲 紫』である。

 

「喧嘩は好きにしなさいとはいったけれども、自然や他人の迷惑にならないようにともいったはずよ、周りをみなさい」

 

木は風や武器によってなぎ倒され、ところどころ火が着いている。

 

「森への被害は最小限に抑えました」

 

と私が反論と同時に指を鳴らすと辺りの火はすべて朱の体に吸収される

 

「これで最低限ねぇ」

 

と苦笑いをし

 

「もし貴方たちが場所を変えるという発想に至れば、被害は0だったはずよ」

「ぐぬ」

「それに」

 

とかぶせ気味に追い討ちをかける

 

「被害は自然だけじゃないわ」

 

あっ

 

「あっ」

 

雅がこちらをみる

 

「そういえば、誰か殺した気がする」

「確かになんか殺されてた気がする」

「割って入られたのよ、しょうがないじゃない!?」

「しょうがないな、喧嘩に割って入って死んだなら死ぬほうが悪い」

「そうね、私たちは悪くないわ」

 

紫さんは頭を抱え、私たちに罰を言い渡す

 

「倒した木をすべてちょうどいい大きさに切って炭にして里で配りなさい、しっかり二人でやるのよ、冬も近いからちょうど良いでしょう、そして、貴方達が殺したのは是非曲直庁の者よ、その件に関しての罰はあちらにまかせておくわ、せいぜい覚悟しておくことね、、、、次は、言いつけをしっかり守って喧嘩しなさい、あと雅、文には一応文句入れておくわね「紫様それは勘弁してください」

 

と言い残し紫さんはスキマのむこうに消えてしまう

 

「、、、、、あー、、、、、、うん、、、、、、、、、悪いのお前な!」

 

っと言い残し暴風を起こし雅も去っていく。

 

「、、、、、、、、は?」

 

既に適度な大きさにカットされた木材を残して、、、、、、、。

 

 

 

 

―――、、、、、

 

そんなことがあったのが三日ほど前である。

 

何故こんなにも長ったらしい回想をしたのかというと、死ぬ前の走馬灯みたいなものである

 

「ああ、、、えーと、どちら様でしょうか、、、、」

 

ノックをされた私の家のドアの先にいたのは

 

雅と同じくらいの長身に、キリっとしたスーツを纏った、『鬼』

 

「是非曲直庁の『灯火 一』ってもんだ、園田 朱ってのは、あんたであってるかい?」

 

「ええ、、、、、そうですわ、、、、、?」

 

いわゆる絶体絶命である。

 

 

 

 




どうも、みたらしだんごです。

久しぶりの投稿になります、すいません。
言い訳をするならスランプです、この三話をどう構成してもしっくりくるものができずにダラダラと時間だけを食っていました、ですが最近創作活動に関してで良いことがあったので、それを糧にどうにか書き終えることができました、自分なりにはうまく出来た一話だと思います、もし至らぬ点や感想などをいただけるのであればコメントしていただけるとありがたいです。
さて、いかがだったでしょうか、前回の最後を見た後だと、やはり肩透かしなオチですが、生真面目な映姫と一なので、こういうことが多々起きるのでしょう、さて今度は朱のピンチです!ですが次の話は雅の話をするのでその次に書くことになりますね、どうか楽しみにしていただけたら幸いです炎熱武器職人、反転の魔女、不尽の朱色


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第四話「スチールズパニック 前編」霧雨魔理沙・雛罌粟雅

できました第四話!超早い!でも今回は前編です、全部詰め込むと倍くらいになりそうだったので良さげなところで区切りました。こうも早いと駄文になっていないか少し心配です。


どうも!霧雨魔理沙です!

 

私は今魔法の森に現れた謎の洋館に来ております!内装は見た目とは裏腹に割と質素です!それもそのはず!飾ってあった鎧は全部玄関先で暴れてる天狗の撃退に向かったからな!

 

”ガシャリ”

 

パシャリと思わずシャッターを切る

 

一体の鎧と曲がり角で鉢合わせになった、なにしてんだお前天狗撃退しにいけよ、それともあれか、サボりか、けしからんな

 

「あ、どうも!館の人ですか!?私新聞記者(仮)の霧雨魔理沙と言うものですが、お話しを聞かせてもらってもよろしいですか!あとその鎧暑そうですね!脱いだらどうっ、でしょう!」

 

頭目掛けて箒をフルスイング

 

すこーんと兜は外れ飛んで行ってしまう

 

”ギ、ギギ、ギィィィ”

 

やはり中身は無い、しかしこう見ると

 

「結構ホラーだな」

 

”ギギギ、カシャリ、ギィィィ”

 

首無し騎士は剣を抜き、襲い掛かる

 

「ああくそギーギーうるせえな!油さしたらどうだ!?」

 

間一髪で回避

 

「これでも食らっとけ、魔廃『ディープエコロジカルボム』!」

 

産廃を使って作ったエコロジーな魔法瓶爆弾を鎧の中に投げ込んでやる、そして距離を取る

 

”ボンッ”

 

鎧の破片を魔法障壁で防ぐ

 

「こいつはもらってくぜ!こーりんが買い取ってくれそうだからな!」

 

さっき殴り飛ばした兜をかぶって、その上から帽子を被り、探索を再開する。

 

ちょうどこの角の先には扉があった、ん、結構重い扉だな、これはアタリな予感がするぞ

 

「どなたかいらっしゃいませんかー!」

「やあ、ようこそ客人、待っていたよ」

 

いた

 

 

第四話 『スチールズパニック』 霧雨魔理沙・雛罌粟雅

 

 

 

 

時はすこし戻り、謎の館突撃直後

 

「ッ!?」

 

あっぶない

 

「っふう・・・・・・・いきなり殺しにかかってくるとか、ちょっと物騒すぎやしない?」

 

鉄柵の門を開けた、その瞬間、館の扉を貫き中から剣が一本、魔理沙ちゃんの首元目掛けて飛んできやがった、私がキャッチしていなかったら今頃彼女の首に剣が刺さっていた。

 

「・・・・サンキュー、今回はマジで死ぬと思った・・・・」

「どういたしまして。と、そんなにのんびりしてる場合じゃなさそうだね」

 

扉が開き、中から堅牢な鎧を着た騎士の群れがぞろぞろと、受け取った剣を刀身をつまむ形から正しく持ち変える。

 

「あー、すいません、私新聞記者の雛罌粟と言うものですなんですが、館の人たちですか?話し聞かせてもらってもいいですかね」

 

首から提げたカメラで一枚騎士の群れを撮り、一応あいさつを済ませるが。

返事は無造作な騎士剣の横薙ぎ。

 

「っと、騎士にしては無作法な剣を振るじゃないか」

「雅!そいつら中身ないぞ!」

「なるほど」

 

剣で群れの一人の腕を落とす、落とした腕は動かなくなった、無力化はできるな。

 

「切れ味は良さげだな・・・・・魔理沙ちゃん!」

「なんだ!?」

「中に入って取材してきて!私はこいつら相手する!話聞くだけでいいから!」

 

鎧たちの無作法な剣をいなしつつ、カメラとかばんから取り出した石を投げる。

 

「これは!?」

「館で人を見つけたら魔力を流して!一瞬でも危険を感じたらそれっ、それをぶっ壊して!魔力流しすぎたら壊れるはず!」

 

ったく、話の途中に攻撃するんじゃないよ

 

「わかった!でもとりあえずどうにかして道を開け!これじゃあ先に進めない!」

 

あっという間に門から扉の道は鎧たちで埋め尽くされている。

 

「あいよ!任せな!」

「えっちょっと!」

 

と魔理沙の手を引き抱き寄せる、文、借りるぜ?

 

「『天孫降臨』!」

 

吹き荒れる大竜巻が鎧の群れを飲み込み空に打ち上げる

 

「ほら今だ!行ってきな!館の中で鎧に遭ったら腕と足を落とせ!それか跡形もなくぶっ飛ばせ!」

「おっ、おう!すぐに追いつけよ!」

「たりめえよ!」

 

魔理沙ちゃんは館に走っていく、私はかばんから石と一緒に取り出した首飾りを取り出し首につける、そしてガシャガシャと鎧が落ちて、何体かが館に向かって魔理沙ちゃんを追って走り出す。

 

「まあ、そうあせんな」

 

追いつき、すべて四肢を落とす、幸い武器は彼らが持ってきてくれた、一騎一つと考えれば十分持つだろう。

 

「さ、あんたらの相手は私だ」

 

鎧はこちらを標的と認めたようだ、全員が私に剣を向け、館の中からぞろぞろとまだ出てくる。

 

ぞろぞろとぞろぞろと

 

まだまだまだまだでてくる

 

いやまて、お前ら、全員私の相手をする気か?・・・中に魔理沙が入ったっていうのに数が異常だ・・・・・・

 

嫌な予感がする、単純に数が多いのか、全員が私を標的とするよう操作されたか・・・・・ああくそ、ほぼ間違いなく後者だろうが・・・・・最初に飛んできたこの剣、飛んできたということは誰かが操作したか、自立した警備装置か、これは前者で確定だ、もしそれが自立した警備装置なら一本だけなはずはなく、今頃剣の嵐に見舞われているだろう、そして一番不吉なのが、この剣には殺気があった、速度は遅かったが、それでも当てる気は満々だったに違いない・・・つまり、この剣を操作した奴は理由はわからないが魔理沙を狙っている、鎧を出すことによって私たちを分断した、そしてその鎧たちはその剣と同じ操作を受け私の足止めを目標としたという解釈を加えれば・・・・・。

 

「ああクソッ!誘い込んだな!」

 

うちわと剣を構える

 

「雅風『天孫降臨』」

 

吹き荒れる竜巻は刃を纏い、吞みこむすべてを切り刻む・・・・・。

 

と一瞬で鎧の群れを片付けた私の焦りは未だ消えず、私も館にはしるが・・・・・。

 

エントランスにて、それは私を待っているようだった

 

「・・・・・」

 

それは、真ん中に赤い宝石が埋まった金属の縦長の長方体、しかし、流動しているように見える・・・・・。

 

「あんたも私の足止めかい?」

「・・・・」

 

金属はしゅんしゅんと音を立て、玄関の前に散らかった鎧や剣、私が持っているものを含め、すべて吸収し、人の形に変形した、いいや、私の形をとりやがった

 

「クソ・・・・手加減できないからな」

 

 

同時刻、博霊神社にて

 

「派手にやってるわねえ、異変解決するときの貴方みたい」

 

と魔法の森の方向で見えた二つの竜巻を見た後に紫が口を開いた

 

「うるさいわね、あいつはどちらかというと魔理沙よ、文みたいな小賢しい感じの取材をしない代わりにとても騒がしいわ、そういうところが魔理沙そっくり」

「ふふっ、そうね、仲いいわよね~、あの二人、貴方も混ぜてもらえばよかったのに」

「混ぜてもらうって、何に」

「今いっしょに取材してるわよ?魔理沙、大丈夫かしらね~、危ない館っぽいわよ~?」

「大丈夫なんじゃない?」

「あら、即答?」

「嫌な予感はしないわ~」

「なーんだ、つまんないわねぇ」

 

ぼりぼりとせんべいをかじり、ずるずるとお茶をすする音が響く

 

「そろそろ冬眠するわね」

「そ、おやすみ」

「みんなによろしく言っといて頂戴ね」

「ええ、わかったわ」

「修行、忘れずにね」

「わかってるわよ」

「今年も寒くなるわ、体には気をつけるのよ」

「だーいーじょーうーぶー」

「そ、じゃね♪」

 

と私の額にキスをしてスキマに消えていく隙間妖怪、冬眠前にはいつもこうして何気なく現れ、額にキスをして帰っていく

 

「はぁ」

 

とため息がこぼれる

 

「なんでこういうときだけひかえめなのかなぁ?」

 

 

 

その頃、魔理沙は。

 

扉の先はかなり見慣れたような景色が広がっている。いやもちろんここに入ったのは初めてだが、どこか親近感の沸く部屋、魔道書や道具が乱雑に置かれた机に、ほこりかぶった本棚。住人はおそらく目の前の女、銀の長髪に黒の瞳、そして外の世界の衣装だろうか、こーりんの店で見たことのある制服という服に制帽という帽子よく似た衣装を纏っている、だがこちらの方は金が良く目立つ、そしてそれと同じくらいアクセサリーがよく目立つ、右手の人差し指と左手の中指に指輪がはめられ、ネックレスとイヤリングももちろんつけている、制帽のつばに乗せられた変な装飾のゴーグルが悪目立ちしている奇天烈な格好だ。

 

「ここはお前の研究部屋か?」

 

ポケットに手を突っ込み、中にしまった石の魔力を流す

 

「あ、やっぱりわかる?」

「もちろんさ!こんな魔術とほこり臭い部屋なんて、私の部屋かパチュリーの図書館と同じようなものに決まってる、だがいいのか?こんなところに敵を呼び寄せて、番兵をつけるほど大事なところなんだろ?私だったら敵はすべて外で撃退するがな~」

 

のんと指を振り、このほこりくさい部屋の主は問いに答える

 

「私は君を招待したんだ」

「馬鹿言え、お前は私を殺しかけたんだぞ?信じられるかよそんな言葉」

「なぜ私が殺そうとしたとわかるんだい?あの『剣』も鎧と同じような警備かもしれないよ?私はずっとここにいて君たちを待っていただけさ」

「待っていただけなら、剣が飛んできたなんてわかるはずないだろ?あれも警備だってんなら数を用意するべきだ、あの一本だけお前が操作してたんだろ?もっとスマートにいこうぜ?回りくどいのは嫌いだ、どうせ隠す気なんてないんだろ?それに私はもっと面白い話をしたいな」

 

わざわざ『剣』なんて強調しちゃってさ

 

「はっはっは、そうかそうか、これは参った!だが許してほしいな、ああでもしないと警備に彼女の注意をそらせなかったからね。だがよかった、人と話す機会なんて滅多にないからさ、どう会話を自然に魔法に持っていくか悩んでいたんだよ」

「へへ、所詮魔法使い同士さ、お互いの研究でも話し合っていれば盛り上がるだろ?最悪殺しあうくらいまでは」

 

ポケットから八卦炉を取り出そうとするが

 

「あーだめだぜ、君はもう私の腹の中さ、そーあせらずに、おとなしく私に付き合ってよ」

 

地面から無数の棘が生えて私の首に刺さる寸前まで伸びる。

 

「わーった、わあったよ、降参だ、好きにしろ」

「え、好きにしていいの、じゃ、じゃ「私は」

 

飛び掛ってくる制服女に思わず手が出てしまってこぶしが顔面にめり込む

 

「私は好きにはできないぞ」

「はい」

 

見るからにシュンとなる

 

「だーもう、めんどくさいやつだなお前!」

 

お前?そういやこいつ誰だ

 

「えーと・・・・・誰だお前」

 

彼女はキリッと立ち上がり

 

「あー、そっかまだだったね、私の名前は、クロム、『クロム=クラフトマン』、この館の主人、見てのとおりの魔法使いだ、君は?」

 

クラフトマン(職人)・・・どこかで聞いたことがある気がする

 

「私は魔理沙、『霧雨魔理沙』、普通の魔法使いだ。よろしく」

 

それを聞くとクロムは帽子を取り

 

「よろしく、魔理沙、そして改めてようこそ我が館へ、どうか警戒せずに、私たちは友を傷つけたりはしない」

「あー、だったら玄か

 

セリフは大きな音と振動にさえぎられる、それは一回ではなく複数回鳴り、明確にこちらに迫ってきている。

 

「ったく、『アル』!?館を壊すのは良いけ、良いけどもう少し穏やかに足止めできないのかい!?」

 

『アル』?

 

「え?もう1人?いつの間にッ」

 

というセリフと同時だった、私の後ろのドアが開いたのは。

 

「どうも、毎度お馴染み清く正しい射命丸です」

「人の家に勝手に上がり込むのは、清く正しいとは言えないんじゃないかな?」

「あや、鍵が開いていたもので入っても良いものかと」

 

新聞記者、射命丸文参上である。

 

 

 




どうも、作者のみたらしりんごです、早めの更新になりましたがいかがでしたでしょうか、感想やアドバイスなどがあれば是非コメントして行ってください。
今回前編という形になったわけですが、この回は視点がコロコロ変わるのであまり長くなると疲れてしまうかなと思い丁度いいところで区切らせて頂きました、次回は初めてのスペルカード戦になります、楽しみにして頂けたら幸いです。


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第四話中編「全力スチール」雛罌粟雅・アルギュロス

後編は全然すぐじゃありませんでした


眼前の銀色の私が一本の騎士剣を自分の体から取り出し、構える

ふんとため息を吐く

 

「その嘗めた態度は高くつくぞ」

 

パンッと銀色の上半身が弾ける、渾身の正拳、やわらかくはないが、あれはただの金属だ。

が、すぐに相手は形を戻し、左下段から剣の振り上げは体を逸らして避けられる

 

「はぁ」

 

そのまま振り下げようとする腕をつかむ

 

「力、速さ、反応、どれも私には遠く及ばない、勝ってるのは体重だけか?私はそんなに弱くはないぞ」

 

掴んだ腕を砕く

銀色の私が笑い、右目代わりにはめ込まれた赤いビー玉が光る、そしてそれは霧散する

 

「最初からそうしろっての」

 

無数の騎士剣が私を囲み、目の前には金属の人型が現れる、霧散した金属から生成された人型と騎士剣を見るに・・・

 

「ただの形の変わる金属じゃないな、質量すら変わってる、なんだお前は」

 

鉄人の赤い片目が光る、私を囲む無数の剣が私をめがけて発射される、対して私は素手、すべていなすか?できないことはないな、だが、もっとわかりやすくだ、空に私の妖力を霧散させ、形を崩れにくくし(掴みやすくし)、空を掴み、空を引っ張る、引っ張られた空は空を引っ張り、引っ張られるがままに吹き荒れる、遊ばれるカーテンのように。

 

「暴風『スカイカーテン』!」

 

そして私は暴風のカーテンを纏い、迫りくる無数の剣をなぎ払う、なぎ払われそこらに散らばる剣は次は一本や二本ずつ攻めてくる。それはいかんよ

 

一本目、キャッチして強化を施し、二本目三本目を弾く、そして四、五、六、と弾く、七、八、九、十の四本が私を囲むように飛んでくる、が、弾ける、十一、十二、十三、ああもう、とりあえずたくさん飛んでくる、がすべて弾ける、いい鋼だ、まだ壊れない。

 

「おっと」

 

私の剣だけが没収される

 

「んじゃ反撃」

 

今、既に、声とともに、私は迫る、拳は鋼の上半身を砕く

 

「天狗を相手取るときはまずどうにかしてスピードを殺すべきだ、さっきみたいな包囲を続けるとかな」

 

ただの包囲ではだめだということはさっきの包囲で知ったはず、さてどうする。

上半身を即時再生するが

 

「んじゃもっぱつ」

 

拳を打ち込むが

ずぶり

鋼の体が私の腕を飲み込んだ、こいつはやばい。

 

「形態まで自由かよッ!」

 

即座に引き抜く、が鋼の体から鋼が伸びでて腕に絡まりついたままどこまでもついてくる、引きちぎれやしない、不覚、これはヤバい、質量まで自在とすると、すぐに全身を飲み込まれるだろう、どうする、どうする、どうする。焦るな焦るな考えろ、液体の鋼からどう逃れる、全力で踏み出せば振り切れるか?いいや無理だ、逃げるだけならできるだろうが、殴ればまた同じだ・・・・・

 

ん?液体?

 

すぶり

 

腕に絡まった鋼が私の全身を飲み込んだ。

 

そうか液体なら、壊せる

 

卵状の私を包んだ液体の鋼の流動が止まり、ぼろぼろと崩れだす

 

「便利だな、私の能力は」

 

さっき気体を掴みやすくしたように私の妖力を全力で流せば液体を擬似的に固体のようにできるそして結合に差異が生じるように満遍なくではなくあえてまばらに流せば、液体は流れるのをやめ、留まり、留まれば、崩れる

 

首に掛けたネックレスの宝石が発光する

 

液状の鋼の刃が人形から伸び私を囲む、切り離さなかったのは考えたな、これじゃあ風じゃ払えない

 

「これ以上不覚はとれないからね、出し惜しみは無しだ」

 

刹那、雅が消え、液状の刃が飛び散る

 

「真刃 『(から)』 初式刀形 ”春紅葉 ”。刀だったら水だって空気だって斬れる」

 

膨大な、空を集め、空を纏め、空を(わたし)が鍛え、空に銘を刻んだ、(から)の妖刀

 

「私の前ではこの空中に満ちる空気でさえ武器なんだ、どうする?降参ならまだ受け付けるぜ」

 

返事は私を囲む剣だった、とびちった刃もそのまま刃の形を取り直し私を囲む、固体と液体の刃を混ぜ、そして人形自身からも刃が伸びる

 

「んなら」

 

「倒す」

 

雅風『春一番』

 

囲む刃をすべて切り刻み、人形の眼前に迫るが。

 

ガンッと鈍い音が響く

 

「ったくてめえ・・・・」

 

妖刀で斬れない、鋼の球体、人の形はやめたらしい

 

「なんなんだッ」

 

決して私の刀がなまくらというわけではないだろう、私の春紅葉は魂魄のところの極致の二振りには劣るが切れぬものなどほとんどないとは自負している、この空の刃に限って切れ味が落ちることなんて無い、が、こいつは斬れない、質量も形態も、硬度さえも自由自在ってのか?本当になんなんだこいつは。

 

「ほら、攻撃を止めない」

 

と後ろから声が聞こえた

ああクソ、かっこ悪いところを見られた

 

「だぁッ、わぁってるよ!」

 

ガンガンガンと斬りつける、球体から伸びる剣や鎖を避けつつ、斬りつける

 

「そ、貴方はそれでいいのよ、攻撃を止めず、思考を止めず、強者として生まれ持った理不尽な力も、弱者として積み上げ張り巡らせた知略も、時にはその場で得る経験でさえ、即時に活用し、勝つまでそれを続ける、そうでしょう?」

「ああ、そーっだよッ!」

 

ガンガンガンとまた数度響く、ただ打ち込んでいるわけではない、同じところに、全く同じところに攻撃を集中させる

 

「春一番派正『春風満帆(しゅんぷうまんぱん)』!」

 

距離を取り、最大速度の突撃の最大速度での連続

 

「そろそろッ壊れろ!雅風『天狗颪』!」

 

速度を乗せた全力で振り下ろす一撃、それでも壊れず、刀にひびが入る

 

「んなぁっクソーッ!刀形開放『天空穿ち』ッ!!!!!」

 

妖刀を形作る膨大な量の空気を突きに乗せて一点に解き放つ・・・・・それでも壊れない!

 

「ああああああ!!もう!」

 

あれしかないか

 

私が纏う妖力が黒いもやとなり可視化する

暗く紅い瞳が光を放つ

妖力、能力、すべてを使って作り上げた不壊の肉体、これが私の一番の武器であり、原点である

 

「『無双不尽』」

 

一発、二発、三発

 

と拳を同じところに打ち込んでいく。

防御に徹しているのか反撃に包囲攻撃と液化攻撃が無くなったのが幸いだ

 

「さっさと壊れろ!!!!」

 

と渾身の四発目

 

だが壊れず

 

「壊れろよッ!」

 

反撃の棘と剣をかいくぐり地面を踏み抜くほどの健脚から繰り出される飛び膝蹴りが鋼の球を蹴り飛ばす、かなりの硬度、そして重量だ、普通なら膝が粉々になってもおかしくはないが。

 

こちとら硬さに関しちゃ1000年ものの一級品だ、ちょっとやそっとじゃ傷一つつかないよ

 

「文!借りる!」

「あんたの技よ、好きに使いなさい」

 

へへっそりゃどうも

 

妖力の塊が二匹のカラスをかたどる

 

「雅式『幻想風靡』」

 

打ち上げられた鋼の球を絶え間なく襲うカラスの突進、私の拳、私の蹴り、そして風の刃、私が持てる最高速度をもって行う連撃、その一撃は瞬く間もなく放たれ、相手が知覚するころにはもう一撃、もう一撃と打撃と斬撃が襲う、本家に勝るとも劣らない凄烈な絶技。

 

まだ、まだ、まだ、鴉は連撃を止めない

 

「ぐっぅ」

 

まだ、まだ

 

「まだまだッ」

 

まだ、鋼は壊れていない

 

「なぁんのぉッ!!!!」

 

ぴきりとヒビが走る

 

「いィまッ!」

 

天狗の踵が鋼の球の天辺をえぐり、地面にたたきつける

 

「『一歩必穿』」

 

踏み込む脚は大地を穿ち、震わせ、放たれる不壊の拳は最強の矛、それは岩も鋼も、最強の盾さえ、一切の矛盾なく穿ち貫く

 

「しぃぃぃぃねっ!!!!」

 

砕ける鋼の球体はエントランスの壁とその奥の部屋、とそのまた奥の部屋のと計5枚の壁を貫いてようやく止まった。

そして鋼はすべて赤いビー玉を包むようにエントランスに集まってきて、かなりの量に包まれたはずだが包まれたビー玉とあまり変わらないサイズの鋼の玉になって地面に転がった、そして

 

”降参”

 

という二文字を鋼で模して、動かなくなった

 

「今日一番のいい写真がとれたわ」

 

後ろで見ていた人物、射命丸文が話しかける

 

「ッふぅ、はぁ、私は、、援助を求めたはずなんだがね」

「あなたは私が見てたら絶対負けないんでしょ、なら居ただけでも援助よ、ま、がんばったわね、お疲れ様、最後が鬼の技なのが残念だけど」

「はぁ、ひぃ、ふぅーぅ、文の技も、鬼の技も、人の技だって、盗んだら私の技なんだ」

 

そうしなければ私は何にも勝てなかったから

 

「そうね、貴方弱いもの」

「いいや、私は強いよ」

「そうね、だから貴方は強いわ」

 

そのセリフを聞いたら安心した、そのせいで力が抜けてしまって一気に筋肉が弛緩する

 

「っと」

 

文が倒れ掛かる私を受け止める

 

「でも、こういう勝ち方しかできないのはすこし難点ね」

「全く持って、もう今日は体を動かしたくないよ」

「じゃあ後はやっておくから、もし動けるようになったら手伝ってね」

「もちろん」

 

と私を玄関の前の門の前に横たわらせる。

 

「地べた・・・まいっか、結構寝心地は悪くない」

「大丈夫、すぐ終わるから、そこで待ってなさい」

「あーあと魔理沙ちゃんが中にいるから、危険そうだったら館の外投げるなりしてあげて」

 

それを聞くと彼女はため息をつき

 

「わかった、任せなさい」

「あんがと」

「どういたしまして」

 



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第四話「スチールズパニック 後編」霧雨魔理沙・射命丸文・クロム=クラフトマン

弾幕ごっこの描写が難しい!通常弾幕をどう表現しようかとか、スペルカードってどんな風に使えばいいのとか、考えてるうちに絵を描くのが楽しくなってておざなりになってました、そのうち挿絵描きます


「文、どうしてここに?」

 

突然現れた知り合いに困惑する魔理沙

 

「呼ばれたのよ、あの子に」

「雅か、あっちはどうだ?」

「それはもう完璧な満身創痍よ、大した使い魔よほんと、ねえ、魔法使いさん?」

 

と銀髪の軍服女に話を振る

 

「使い魔、うーん、まあそうなるのかな?でもまあそうだね、すごいだろ?『アルフレッド』は、(うち)の最高傑作さ、まあでもそちらの相方にはかなわなかったのは悔しいかな」

 

あの金属お化けはアルフレッドというらしい

 

「素直に本気で殺させれば良かったのですよ、それでもあの子の勝ちは変わらなかったでしょうが」

「へえ、あいつとそこまでする使い魔か、見てみたいな」

「見るかい?」

「見たい!」

「だそうだ!来い、『アルフレッド』!」

 

しかし何も起こらなかった

 

「んんぅ」

 

と軍服女が唸る

 

「もう!『アルギュロス』!これでいい!?」

 

銀色の紅いビー玉がはめ込まれた縦長の直方体、もといあの金属お化けが地面から生えてくる。

 

「どっちが名前なんです?」

「『アルフレッド』」

 

と言った瞬間、金属お化けから軍服女めがけて針が伸びる

 

「あーるーぎゅーろーすー」

 

針を収める

 

「私たちクラフトマン家は魔法使いの一族でね、こいつも代々研究成果代わりに受け継がれてきたものさ」

 

それを聞くと魔理沙が突然”あっ ”と声をあげた

 

「思い出した、クラフトマンって道具屋『クラフトマン』か」

「道具屋ですか、あんまりすごそうには聞こえませんが」

 

そんな私の感想をまさかと魔理沙が否定する

 

「パチュリーの図書館の蔵書の中でもマジックアイテムに関する本の半数はクラフトマンなんだ」

「はぁ、それはまた」

「クラフトマン家はマジックアイテム作成の名門、というかそれしかしてこなかった変態の一族さ」

「すごいのですか?それは」

「すごいもなにもおかしいぜ」

「おかしいのですか」

「ああ、私たち魔法使いは研究内容は違えど見据える目的は同じ、すべての始まりである『根源』を目指して研究を積み重ね、一人の人生では足りないからと自らの研究を魔術書やら、魔術的な刻印をつかって子孫に伝承していき、一族で根源を目指していくんだ、しかしこいつらは違う、根っこから違う、こいつらの目標は『実用性』唯一つ、一族の人間一人一人が人生をすべて掛けてアイテムをつくり、中でも特に優れたものを『職人たちの遺産(クラフトマンズ・レガシー)』として子孫に残していく、研究成果は一切遺さずにな、故にその『職人たちの遺産(クラフトマンズ・レガシー)』は一人の人間が人生を掛けて作り上げた魂の結晶なんだ、いくら私と言えど敬意を払わずにはいられないシロモノさ」

「なるほど、一念天に通ずる、ですか、私とて武に長ける者、いくつか覚えがあります」

 

これはあの子が好きそうな話ね、今夜聞かせてあげましょう

 

「そ、勉強熱心な子なんだね、魔理沙は」

「ああ!私もアイテム作成には力を注いでいてな」

「その小さな八卦炉も君が?」

「あーいや、こいつは違うんだ、これは人からもらった、魔法使いとしては私から見てもあれだが、道具使いとしては一流の奴のそれさ」

「へえそれは、とても興味がある、こんど会わせてはもらえないだろうか」

「それはかまわないが、私もそいつも『職人たちの遺産(クラフトマンズ・レガシー)』はいつか実物を見てみたいと思っていたんだ」

「遺産かい?いいとも!道具は見せてなんぼだからね、それにこいつも遺産だよ」

 

と金属お化けをなでる

 

「これは誰が作ったのですか?体積、形態、高度、質量、何もかも自在に変化させられるなんて人のたどり着ける領域をはるかに超えている」

「できるのか!」

「できてしまったのさ、それが」

「できてしまったって」

「『職人たちの根源(クラフトマンズ・オリジン) システム・アルギュロス』、クラフトマン家初代当主、アルギロス=クラフトマンの遺したものさ」

「アルギロス・・・彼は何者なのでしょう、たった一代で魔法の一つの極点にいたった、そして彼と同じ名前を持つこれがその極点の結晶、さぞよい研究対象なのでしょう?」

「ああ、そうだとも、もしこのアルフ。ん、アルギュロスを解明できたら、この時代の魔法は神代のそれに手を掛ける、いや、足を踏み入れることだってできる」

「妙な言い方だな、できないのか?」

「さっぱりだよ、さっぱりわからないのさ、こいつは、クラフトマン家のあらゆる金属の扱いに長けた人間がこいつと同じものを作ろうと試みたのだけれど、成功例は0、だからこのアルギュロスは最高の道具、そして私たちの最高の目標なの」

「なるほど、魔法使い(わたしたち)の目標が全ての根源なら、職人たちの目標は職人たちの根源と、だから『職人たちの根源(クラフトマンズ・オリジン)』」

「そ、私たちは人生を『実用性』という指標において結晶化させるが、それにも明確な基準があったってわけだ」

「へえ、俄然興味わいてきたな」

 

と、アルギュロスをべたべた触りだした魔理沙がこんな提案をする

 

「なあ、弾幕ごっこしようぜ、こいつ含めてちょうど二対二だ」

「あ、私自分の弾が写真に写るの嫌なんで二対一ですね」

「いや、こいつは私の道具だ、よって一体一だよ」

「そりゃずるいぜ・・・」

「まあ、そう言わずに。初心者の私に幻想郷(ここ)の先輩として一つご教授してくれよ」

「そういわれちゃ仕方ねえな、カードは三枚でいいな」

「や、まだ二枚しか考えてないよ、二枚にしてくれ」

「じゃあ三枚目は即興で考えろ」

「んんぅ、厳しいなぁ」

「貸しましょうか?」

 

と一枚ぴらぴらと見せつける

 

「使えないだろ」

「いい、自分でやる。ちょっとまっててくれ」

 

と奥の部屋にクラフトマン氏が奥の部屋に入っていく、中からがさごそ、がちゃがちゃと聞こえてきたあとにクラフトマン氏が出てくる

 

「よし、やろうか」

 

左腕に単純な装飾の施された篭手をはめ、篭手をはめられた左手には似たような装飾で先端に中に心臓らしきものが見える水晶をはめた杖、そして腰には西洋剣を一振り帯刀している。

 

「記者殿もいることだし改めて名乗らせてもらおう、クラフトマン家当主『クロム=クラフトマン』、これでも当家最高の金属使いだ」

 

その姿を見た魔理沙が。

 

「本物じゃないか!いいなぁいいなぁ!やる気出てきた!よーし、霧雨魔法店店主『霧雨魔理沙』!ただの普通の魔法使いだ!」

「では職人たちの魂の結晶、ご照覧あれ」

 

 

 

同刻・雛罌粟雅

 

「ぐぅ、痛え」

 

ああは言ったもののずっと寝転んでるわけにはいかない、のっそりと体を起こす

 

「んん、やっぱり普段から帯刀しておくべきか、、、、、、」

 

とすこし使いにくくなった両手の感覚を確かめて嘆く

 

「あっちはそろそろ動きがあってもいいが、最悪殺し合い、一番よくて弾幕ごっこでもしてくれればいいけども」

 

とはいえどこんな体では応援どころか足手まといだな、調査をすることにしよう

 

「あの金属おばけはどこに、、、、、」

 

確かこの辺に

 

「無い」

 

主の危険を察知して向こうにいったかな

 

「素直に壊しとくべきだったかなぁ?」

 

実のところ壊そうと思えば壊せた、我ながらおかしなことをしたと思う、あれは足止めとはいえ殺意は感じられなかった、殺す気だったら私を捕縛した時にあの超硬度になっちゃえば私はあんな脱出できなかったわけで、そのまま黒ひげ危機一髪でもなんでもできちゃうわけだし、、、、、あれは挑戦だったんだきっと、足止めだけと鎖につながれたあいつにできる、あいつが望んだ、あいつの挑戦。使い魔のくせに誘うのが上手だ

 

「んあーまあー、興味沸いちゃったししょうがないよねー」

 

独り言をぼやきつつ、金属お化けの見た限りの性能と考察をメモに記す

 

「あいつぁきっと魔法の中でも最上級に位置する使い魔だ、や、使い魔じゃないな、あれぁ・・・多分人が作ったものだろうな、兵器の類だ、使い魔にしては機械的・・・じゃないなぁ・・・?なんだろー、わっかんない」

 

あいつ、確かに

 

「笑った、よなぁ」

 

突如、外が光る

 

「魔理沙か!」

「雅!」

「あい!?」

「取材!援護よろしく!」

「へへ、できるか!」

 

と意気揚々に返事をしてかばんの中からカメラを取り出す、魔理沙に貸したのは普通の、こっちは普通じゃないのだ。

 

 

 

「転移完了、この杖は『職人たちの遺産(クラフトマンズ・レガシー)心臓魔力炉(デーモン・ハート)』、上位魔族をまるまる使った杖だ、半永久的に魔力を生産でき、そしてこの篭手にはいくつかの高等魔術の詠唱や魔方陣がストックしてあってね、杖の魔力を篭手に込めればある程度の高等魔術の即時発動が可能だ」

「・・・すげえな、転移魔法まで・・・・・」

 

ご丁寧に私ごと転移魔法で外に移動させたらしい、館上空か。

 

「その杖については後で聞かせてもらうとする!いまは弾幕ごっこだ!」

「参る!」

 

両者がビットを展開させる、クラフトマンはビットに加えてあの金属お化けが複数に分かれた液状になる

 

「先手必勝!」

 

魔理沙の弾幕が始まる、小手調べの星弾とレーザー、こんな昼間ではすこし栄えないわね

 

パシャ

 

「星か!夜に見たかった!」

 

迎え撃つクラフトマン、ビットと金属お化けが剣を飛ばす、速度は速いが直線的だ。

 

「光よりも遅い直線が私に当たるとでも?」

「剣は光を斬れるんだよ」

 

飛ばされる剣がビームを貫いて魔理沙に迫る

が、ほとんどがあと一歩のところで砕け散ってしまう

 

「強度による、だろ?」

「速度にも、ね?」

 

銃弾の如き速さの剣が魔理沙の使い魔すべて貫く

 

「げっ」

「さぁよけてみて!」

「言われなくとも」

 

降り注ぐ刃の弾幕を紙一重で躱す魔理沙

 

「こんなもんか!?」

「まさか!これから!銀符『シルバーズロンド』!」

 

スペル一枚目

 

金属お化けが6つに変化し、彼女の周りを回りながらそれぞれ対称の方向に高速で剣を飛ばす、彼女自身はお化けの回転よりもはやく逆回転するひも状のしなる弾、ワインダーと、米弾をばらまく、弾幕の光を剣が反射させて煌く、銀色で統一された綺麗な弾幕だ

 

パシャ

 

「回る弾幕か!好きだぜ私は!」

 

すらすらとよけていく魔理沙

 

「こんなのはどうだい!?」

 

あたらなかった剣、地上に刺さった奴や宙ぶらりの奴がすべて、クラフトマンに戻ってくる、あたらなかったものすべてなのでやはり密度は高いが

 

「今度は私の番だ」

 

切り傷一つ無い、流石といったところか

 

「天儀『オーレリーズソーラーシステム』!」

 

魔理沙が6つのビットを起動する、6つのビットは魔理沙(太陽)の周りを公転しながら標的に弾幕を撃つ

 

「太陽系の模倣か!いい道具だ!とても!」

「そりゃどうもっ」

 

クラフトマンは大雑把な動きだがある程度正確に弾をよけていく

 

「今よ!」

 

次々に飛来する剣にまぎれたあの金属お化けが人の形をとる

 

「げぇ、それありか!」

 

剣を手に取った人型が狙うのは

 

「星を落としなさい!アルフレッド!」

 

いい判断だ、というか呼び名はそっちでも反応するのか

 

「けどお前の守りは使い魔だけになった!」

 

好機ではあるが

 

「道具はその子だけじゃない!」

 

篭手をはめた腕で魔方陣を描く

 

「これこそ職人たちの道具箱『職人たちの遺産(クラフトマンズ・レガシー)・ツールボックス』」

 

魔方陣の中に手を突っ込み、引っ張り出したのは

 

「私の作品だ!クロム’s アイテム!『詠唱機・47』!」

「なんだッそりゃぁ」

 

その詠唱機・47と呼ばれるものは、竹林の月兎の資料にあった自動小銃と呼ばれるものにそっくりなデザインをしている

 

「こいつは引き金を引けば銃口から魔法を連続で放ってくれるものだ!」

 

と銃口を魔理沙に向けて引き金を引く、弾幕ごっこ用に調整されているのか銃の弾速ではないが速い魔弾が連続で発射される

 

「そいつはほしいな!」

「おっとよそ見するなよ!」

 

人型の剣が星を二つ落した

 

「げっ」

「ほらあと4つ!」

「ならっ、これでもくらえ!」

 

星が一つ、人型に堕ち、弾ける

 

「そんなのじゃそいつは倒せないよ!」

「こいつはな」

「なっ」

 

残った3つがクラフトマンを囲んでいる、第三者視点の私からならよく見えたが爆発に注意をひきつけられたクラフトマンは気づかなかっただろう

 

「クロム’s アイテム!『詠唱機・PK』!」

 

弾幕を避けつつ包囲から抜け出そうと試みるクラフトマンが次に取り出したものは、これまた月兎の資料にあった回転式拳銃と同じデザイン

 

「ビットなら実弾使ってもいいよね!」

 

と篭手のはめられてない右手を鳴らし魔術の一種だろうか、弾丸を三発作り出し装填する

 

「一機一発大丈夫か!外すんじゃねーぞ!」

 

弾幕や箒で人型を足止めしながら魔理沙が挑発を飛ばす

 

「君が言うのか、ま大丈夫っさ!」

 

ようやく三機のビットの包囲を振りぬいたクラフトマンが飛行スピードをあげる

 

「そんなんじゃ振り切れないぜ!」

 

いやちがう、あれは

 

「振り切らなくてもいい、これでも西部劇は大好きでね、よく練習したんだ」

 

クラフトマンが振り向き、拳銃を自らの腰にあてる

 

「さあて、お立会い」

「何を」

 

一度の銃声が響く、だが

 

「全滅だとぉ~」

 

三発の弾丸がそれぞれ三つのビットを貫いていた

 

「さあ!こちらのターンだ!金符『ゴールドラッシュ』!」

 

金色の小粒の弾の大波がうねり大蛇のように迫り

 

「うお、うおお、うおおお?」

 

魔理沙が金色のうねりに消える

 

「記者さん?あなたも遊ばない?」

「そうね、ちょっと付き合ってあげる」

 

金の波からこちらに波が伸びる

 

単調な弾幕だ、この距離じゃあまり映えない

 

”まかせな ”

 

こちらに迫っていた波が消える、まるごと

 

「何っ!」

「驚いてる場合ではありませんよ」

「行けっ、追え!」

 

今度は何本もの金が伸びて伸びてこちらに迫る

 

しゅん、しゅん、しゅんと彼女の周りを飛び回り

 

金の波も彼女を囲うように伸びる

 

「動きを封じたつもりかい?」

「いや?こっちのほうが映えるかと」

「へ?」

 

パシャ

 

囲む金が消える

 

「ベストショット♪」

「カメラか、いやしかし」

「そろそろ余所見は厳禁ではなくて?」

「そういうこった、二度とすんなよ?手が滑って殺しそうだ」

 

フラッシュにまぎれて魔女が迫る

 

「へへ、ごめんね」

 

邪恋『実りやすいマスタースパーク』

 

「身代わり頼んだぞアルギュロス」

「家宝ごとぶち抜いてやる」

「できるものなら」

「鋼程度じゃ及ばない、光にも、、、恋にも!」

「ぬおっ」

 

細い、とてもか細い恋が邪に爆ぜる

 

「はぁ、ほんとに、優秀だよ、、、、そいつ」

 

大したものだ、あの使い魔、防ぎきれないと見るや体を伸ばして主を投げて斜線から外した

 

「あいや失礼、君を侮っていた、まさか通されるとは」

「本日二度目ですよ、慢心が過ぎるのでは?」

「言いがかりは止せよ、君の相方はこいつの全力を貫いたんだ、あの場で戦闘を切り上げてこちらに来てもよかったものを、正々堂々こいつの挑戦を受け取って、そして勝った、そこに慢心なんてありはしない」

「私を侮ったのは間違いないってことだ、さっきの余所見といい、楽しくないな」

「ごめんね、私は戦士ではなくてね、戦ってる時もちらつく興味を抑えられないのさ、無礼?知らないよ、怒るんだったら、私にぎゃふんと言わせてみな」

 

金属お化け、アルギュロスが魔方陣を模る

 

「安心しな!訳あって有毒じゃない!水銀『輝けるハイドロカノン』!」

 

銀色のレーザーが放たれる、射手を守るように金色の大粒の弾幕が張られる、魔理沙のマスタースパークを参考にしたのか、即興にしてはいい出来だ。

 

が、しかし

 

道具使い、あなたは未だ幼い、前途ある魔法使いの闘争心に火を付けた、そして道具使い、あなたには不幸が一つ。

 

この幼い魔法使いは弾幕ごっこのエキスパートだ

 

「飛ばすぞ」

 

虹色の流星が奔る、銀と金の線と点の隙間を縫って、

 

「ほぉ、、、、これは、、、、、」

 

ようやく理解したか道具使い、この遊びの真意を

 

「綺麗だ、、、、、」

 

この己の心を象る弾幕で魅せる、相手の心に見せる、心と心の()せ合い

 

”彗星『ブレイジングスター』 ”

 

楽しいでしょう?弾幕ごっこは。

 

「ぎゃふん」

 

ベストショットは決まりね。

 

 



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