【大空】と【白夜叉】のミッドチルダの出会い~改~ (ただの名のないジャンプファン)
しおりを挟む

プロローグ白夜叉編

 

「侍の国。僕らの国がそう呼ばれていたのは、昔の話かつて侍たちが仰ぎ夢を魅せた江戸の空には、異郷の船が飛び交う。かつて侍たちが肩で風を切り歩いた街には、今は異人がふんぞり返り歩く。...」

 

眼鏡をかけた青年、新村新八が自分が生まれた世界の環境を誰かに語っていると、

 

「あれ?ここまで言う前に必ず毒舌か木刀のツッコミが入って来るのに?」

 

彼はお決まりのツッコミがない事に不思議がり、辺りを見回すと、

 

「「Zzz~」」

 

ソファで銀髪に天然パーマな男とチャイナ服を着た少女が寝ていた。

 

「ちょっッッッとーーー何初っ端から寝てんの!!ほら起きて銀さん、神楽ちゃん。」

 

新八は銀髪で天然パーマの男、坂田銀時とチャイナ服を着た少女、神楽の体を揺すって2人を起こそうとする。

 

「うーん‥‥あと3日間」

 

「あと来週のジャンプ発売日まで‥‥」

 

揺すられながらも起きる気配の2人。

 

「いつまで寝る気なんですか、ほら起きて銀さん神楽ちゃん」

 

「ウ~ン‥うるさいネ!!オタク眼鏡!!」

 

ドゴォォォ

 

ポロッ

 

かつん‥‥

 

床に新八のかけていた眼鏡が落ちた。

 

「ふぁ~~仕方ねぇな~起きてやるよ。あれ?新八どこいった?」

 

と言いながらと神楽が寝ているソファの間を除き。

 

「なんだ?新八、そんな所に居たのか。そんな所に居ると定春に踏まれるぞ、神楽、おい神楽。新八を拾ってやれ。」

 

「ウ~ン」

 

銀時が神楽の体を揺すると、

 

ゴロッ

 

ドン

 

パリン

 

神楽が寝返りを打つと、ソファから転げ落ち、神楽は新八の眼鏡を押し潰してしまった。

 

「あいって!?‥‥ん?何アルか?銀ちゃん。なんでこここんなにガラスが‥‥?」

 

状況が掴めない神楽の前には青ざめた顔してる銀時が居り、そして‥‥

 

「オイ!!神楽お前なんてことを!!」

 

大声で神楽を叱った。

 

「っ!?しんぱちー!!お前なんでこんなところにいるアルか!!」

 

神楽は下を向くと其処には新八の割れた眼鏡があり、事の重大さに気づいた。

 

「い、今はそんなことより救急車を‥‥じゃなかった急いで修理屋に新八を連れていかねぇと!!」

 

 

 

 

 

「新八ィィィーーーーーーーーーーー!!!!」

 

神楽が割れた眼鏡を手にして涙ながら叫ぶ。

と、その時、天井から2人の頭めがけてチョップが放たれた。

 

「なに、下らない事で尺の時間を潰しているんじゃ!!己らは!!」

 

「黙れ、ゴミ!!今はそんなことよりお前の本体が大変なんだぞ!!」

 

「黙れ!!この世の粗大ゴミが!!いつまでそのネタをやってんだ!?もう、流行んねぇんだよ!!そのネタ!!」

 

「うるさいネ、ダメがね機。」

 

「だ、ダメがね機Σ(゚ロ゚;)」

 

新八が神楽の毒舌でショックを受けていると、

 

じりりりりん じりりりりん じりりりりん

と一本の電話が(真剣)

 

「なんで急に(真剣)なんて使ってんの作者は。」

 

「本当に()なんて使うのはヅラだけで十分ネ。」

 

「一体誰に言ってんですかハイハイ今出ますよ~。」

 

「一体どんな電話ネ。」

 

「どうせあれだろ下着ドロ捕まえてとか、ヅラを探して~とか、ネコを探して~とかだろ。」

 

 

~sideヅラ(桂)~

 

「ヅラじゃない桂だ!!」

 

(どうしたんですか?桂さん)

 

サッとエリザベスがそう書かれたプラカード見せる。

 

「いや何さっきからヅラヅラ言われた気がしてな。」

 

 

~side万事屋~

 

「はい、はい、わかりました。では、後ほど‥‥」

 

「どしたー?やっぱりネコ探しアルか?」

 

神楽が新八に電話の内容を尋ねる。

 

「いや、どうも源外さんが。なんかまた新しい発明品を作ったみたいで、ちょっと見に来てほしいどうですよ。」

 

「はぁ~なんだと!!また人を実験体にする気か!?んなモン誰が行くってんだ。」

 

銀時は電話での依頼を聞いて、依頼を拒否する。

 

「そうネ。またスケット〇ンスの時みたいに変な次元に飛ばされるかまた全自動卵かけご飯製造機の中に入れられてV字頭の中に魂に入れられるのがおちネ。」

 

神楽も銀時同様、これまで源外の発明品でひどい目に遭って来た為か、行かないという。

 

「でも、家賃も僕らの給料もたまっているんですよ。正直、僕らは今、仕事を選べる立場じゃないと思いますよ。」

 

 

 

じりりりりん じりりりりん じりりりりん

「あっまた。」

 

「なんだよ。」

 

「はい。もしもし。」

 

再び新八が電話に出ると、

 

「おぉメガネか悪いが銀の字に変わってくれんか?」

 

電話の相手は先程、電話をかけてきた人物と同じ人物だった。

 

「はい。わかりました銀さんなんか変わってと。」

 

「はぁ~なんだよ。ったく」

 

と言いながらいかに~もけだるそうに歩いていき

 

「はい、こちらの電話番号は現在使われておりません。番号をよくお確かめになって‥‥」

 

「何、下らん芝居しとんるんじゃ」

 

「ちっ」

 

と言いながら会話に入る。

 

「あれ?神楽ちゃんどうしたの?なんかいじけちゃって。」

 

銀時が電話で話していると、

 

「黙れヨ。どうせ私なんて空気ネ。もうお前らだけで話進めろヨ。」

 

神楽がいつの間にかいじけていた。

 

「神楽ちゃんここで気を落とさないでまだ始まだ始まったばかりじゃない。」

 

「作者ーーーー!!メインヒロイン放ったらかしとはどうゆう了見ネ!」

 

 

 

・・・・・・・・・(無言)

「まぁまぁ神楽ちゃん気を落ち着かせて。ほら定春よりは出ているじゃないか」

 

神楽を慰める新八と「ワ~ン」ファと大きなあくびをする定春。

 

「気休めはよせ、ダメがね。少し自分が私より出ているからって調子づきやがって!」

 

「なっなんだとー!!」

 

折角慰めてやったのに、神楽からはお礼どころか、毒が吐かれた。

 

「おーい、いつまでバカやってんだ。じいさんとこ行くぞ」

 

さっき、電話相手の依頼は拒否した銀時が何故か依頼を受けていた。

 

「えっなんで急に。」

 

「いいから」

 

「なんか胡散臭いネこうゆう時は特に。」

 

さっき蹴った筈の依頼を受ける‥‥これはきっと何か裏があると睨む神楽と新八。

 

「あっついでに定春の散歩もしとくか。行くぞー定春」

 

「ワン」

 

定春も連れ、外に出る銀時。

 

ガラガラガラ

 

「どうする?」

 

「まぁ行くしかないネ」

 

結局、神楽と新八も銀時について行く事にした。

 

 

万事屋の階段を降りると千年生きた妖怪みたいなのと、

ネコみみを萌え武器ではなく殺戮兵器として装備していた奇妙な人がいた。

 

「誰が妖怪だ。」

 

「オマエラニハ、コノギャップノヨサガワカンニーノカ!!」

 

「あんたら誰に話てんの?」

 

「こんにちはお登勢さん、キャサリンさん。」

 

「あぁ」

 

そうこの人は(妖怪の方)は銀さんの家主にしてスナックお登勢のオーナー。

昔は団子屋簪で働いていたらしく、当時はえらく美人だったとか‥‥。

そしてネコみみを殺戮兵器として使っているのがキャサリン。

この人は昔スナックお登勢で金を盗み役人に捕まったけど今は出所してここで働いている。

 

「あんたら店開けんの速すぎだろついに時間までわからなくなっちゃったの?いやだねぇ~年はとりたくねぇなぁ~」

 

「あんたに言われたくないんだよ。アンタの方こそいつもより天パに磨きがあって、いつもより死んだ魚のような目してんじゃたないのさ。」

 

煙草をふかしながら、銀時の言葉を切り返すお登勢。

 

「ソウダ、ソウダイツモトカワラズ、パットシナイメガネト、ギャップノギャノジノナイチャイナムスメダロウガ。」

 

「ちょっと何言ってんの?キャサリンさん。」

 

「そうネこんなぱっとしないメガネかけ機と一緒にすんじゃネーヨ。」

 

「ワーン」

 

神楽は新八と一緒にされるとは心外だと言い、何故か定春もそれに同調するかのように吠える。

 

「それはそうと銀時。あんた今まで滞納した家賃はいつ払うのさ。(怒)」

 

「あっ今日帰ってきたら払うよ。つーか今まで滞納したってより。まだ五ヶ月しか貯めてねーよ。」

 

家賃の事を指摘され、冷や汗を流しながらお登勢から視線を逸らす銀時。

 

「五ヶ月もじゃーねーかー!!」

 

「ダイジョーブだって今回の依頼終わらしたらちゃんと払うから。」

 

「まっいいかその代わり、出来なかったら腎臓置いていきなよ」

 

「わーたよ」

 

不貞腐れながら、依頼を受けた家へと向かう銀時と彼の後を追う神楽と新八であった。

 

 

side源外

 

「おぉやっと来たか銀の字たち」

 

「ウーぃっす来てやったぞ。」

 

「来てやったネ。」

 

「こんにちは源外さん。」

 

このゴーグルをかけたいかにも胡散臭いそうなお爺さんは江戸随一の発明家平賀源外。でも今はある時に、将軍徳川茂茂を暗殺しようとしてそれを銀さんたちに止められ、いまはただの指名手配犯だ。

 

「ほっとけ」

 

「んで、じいさんあの話は本当だろうな?」

 

「あぁ勿論だとも」

 

銀時は源外に何やら確認すると、源外はそれを肯定する。

 

「なんですか?あの話って?」

 

自分の知らない所で何やら、変なことが進んで切るようなので、気になった新八が銀時に尋ねる。

 

「ガキにはまだ早い。これは大人と作者しか知らなくていいことだ。」

 

と、いかにも何か隠していますと言った口調で誤魔化す銀時。

 

「意地汚いネ」

 

そんな銀時をジト目で睨む神楽。

 

「じゃ早速依頼の方だが試したい機械があってな。まぁこれは前に一度試したが。」

 

「なんですか?」

 

何処からともなくジャカジャカジャーンと言うBGMが流れ、そして何故か源外の手が丸くなって・・・

 

「タ~イ~ム~マ」

 

「ちょっとそれ以上言ったらダメ!!」

 

新八が源外の演出を慌てて止めた。

 

「何じゃ最後まで言いたかったのに‥‥」

 

演出を止められて不満そうな源外。

 

「それ以上言ったら色々なところに引っかかり訴えられますよ!!」

 

そう絵では書けないがこれは国民的アニメと形も性能も同じだ。

 

「なんでそんな形にしたんですか。前のコラボの時のような形でいいじゃないですか」

 

「バ~カか?お前は?」

 

と銀時が新八を否定する。

 

「何がです( •᷄ὤ•᷅)ショボーン」

 

「前と同じだとネタかぶるだろうが空気読め新八。」

 

「そうネ、それが出来ないからお前はいつまでたってもダメがね掛け機なんだヨ。ねぇ~定春ゥ。」

 

新八毒を吐き、定春の頭を撫でる神楽。

 

「うるせーよ!!馬鹿ども!!法にかぶるよりネタにかぶった方がいいだろうが!!」

 

「おぉ~うまい事言ったなほれメガネ、50円やろ~」

と財布から源外は10玉5枚取り出した。

 

「うるせーよ、いるか50円なんて!!」

 

「さて、おしゃべりはそのくらいにして、さっさと始めようかの‥‥」

 

「行くぞ、乗れ。神楽、新八」

 

「わかったネ。」

 

「ほ、本当に乗って大丈夫でしょうなんでしょうね?」

 

新八が源外にこの機械の安全性を尋ねる。

 

「心配すんな、ちゃんと行先はか〇めい学園にしとる。」

 

「オィィジジィテメェ。」

 

「全然大丈夫じゃないでしょうが!」

 

「そうネあそこ行ったら新八がマジで存在消えかかるンダゾ。」

 

「冗談じゃ冗談、行先はちゃんとお登勢の店の前に設定してある。」

 

「そこもやめてくれーー」

 

「なぜじゃ?」

 

源外が、転送場所がどうしてそこだとまずいのか尋ねようとした時、彼の手が不意にコンソールに当たり、

 

ポチッ

 

あるボタンを押してしまった。

 

「あれ?な、なんか今不自然な音がしませんでした?」

 

「私も聞こえたネ。」

 

「偶然だな、俺もだ。」

 

何やら嫌な予感に冷や汗を流す新八と銀時。

 

「「「ワッハッハー(笑)」」」

 

そんな事ないだろうと現実逃避して笑いだす万事屋一行。

しかし、嫌な予感は当たり、キュウイイーンと機械は作動し、周りが光りに包まれて行く‥‥

 

そんな中、

 

「ワン」

 

「あっこらイヌっころ。」

 

定春が無理矢理機械に乗り込んできた。

 

とその時警告音が鳴り、

 

「おい、ジジイ!!なんだ?この音は!?明らかにマズイんじゃねぇか!?」

 

「‥‥すまん銀の字定員オーバーじゃ(´>∀<`)ゝ」

 

テヘッと笑みを浮かべる源外。

 

「オイ、定春。お前なんてことしてくれてんだ。さっさと降りろ!!あとジジィそれキモイからやめろ!!」

 

「ちょっとどうなるんですか、どうなっちゃうんですか僕達。」

 

「ヘルパスミー!ヘルパルミー!!」

 

「ヘルプミーな」

 

源外に助けを求める銀時たちであったが、

 

『あーーーーーーーーー』

 

突如光と共に発生した空間の歪みに万事屋一行は吸い込まれて行った‥‥。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロローグ大空編

AM7:30

「おい、起きろ、ツナ。起きろ。」

 

と如何にも産まれたばかりの赤ん坊がツナと呼ばれる中学生を起こしに来た。

ここまでなら、小さな弟が年の離れた兄をお越しに来たように見える‥‥。

だが次の瞬間、ビリビリビリーと光った。

 

プシューーーードン

 

「何すんだリボーン!!」

 

寝起きにいきなり電気ショックを喰らいツナは飛び起きた。

 

「なんだ?せっかく起こしに来てやったんだぞ。少しは感謝しろ」

 

「だからって電気ショックですることないだろう!!」

 

「これぐらい普通だぞ。」

 

「普通なわけないだろう!!」

 

(まったく、どこの電気ネズミだよ、お前は!?)

 

この赤ん坊もといリボーンが中学生のツナを電気ショックで起こしたのだ。

 

「それよりもさっさと着替えて降りてこい。ママンの朝ごはんはとっくに出来てんぞ。」

 

リボーンはツナを起こし、伝える事は伝えたので、任務終了と言った様子で部屋から出て行く。

 

「おい、無視すんなよ !!」

 

いきなり人に電気ショックを喰らわしておいて、謝罪の無い事に腹が立った様子でツナは慌ててリボーンの後を追った。

 

 

~side沢田家 リビング~

 

「おはよう」

 

「おはようツナ」

 

「おはようツナ兄」

 

「ツナサンオハヨウ」

 

「やーい、ツナ寝坊助さんだもんね」

 

食堂であるリビングでは皆が既に待っていた。

上からピンクの髪の毛で長髪美人のビアンキ

薄い茶髪のフゥ太

お下げの中華服の子供のイーピン

牛柄の服を着た子供のランボ

そして、

 

「かあさんおはよう。」

 

「おはようツっ君。」

 

朝の挨拶をして、ツナは自分の席に座り朝食をとる。

ここまでなら普通の家族に見えるがこの家族の大半はマフィア関係者だ。

特にランボ、リボーン、そしてツナこの3人は特に別格だ。

 

ツナは、ある事情から自分がイタリア最強マフィアボンゴレファミリーの10代目候補だとゆうことを知らされる。

そしてリボーンは、そんなツナを鍛えるために9代目から司令を受けてきた。そして、ランボはツナのファミリーの『雷』守護者だ。

その見た目も中身も子供だが才能は光一のため選ばれた。さて、説明している間にツナはリボーンに朝食を取られ、あることを思い出した。

 

「あっ今日は風紀委員の持ち物検査の日だった!!」

 

朝一から仕事がある事を思い出し、慌てるツナ。

 

「早く用意しなきゃ、ヒバリさんに噛み殺される!!」

 

「ツっ君ももうそろそろで高校生か。学校頑張ってね。」

 

「うん。いってきまーす」

 

急いで身支度を整えたツナは慌ただしく家を出て行った。

 

「「「「「行ってらっしゃい。」」」」」

 

 

~side道~

 

「あぁーやばいよ、これは!!」

 

「もっと早くにおきねーからだぞ」

 

「うっさいよー!!ってかいつの間に」

 

「おいあぶねーぞ。」

 

「えっ」

 

ドン、

 

バタン

 

クルクル\( ´・ω・`)┐しゅたっ

 

「いっつつ‥‥あっ、すいません。大丈夫ですか?」

 

「こちらこそ、って炎真君」

 

「ツナくん」

 

この赤髪の少年は古里炎魔シモンファミリーのボスでそしてツナと同じものすごいダメな体質の持ち主であった。

 

「おはよう炎真君」

 

「おはようツナくんってそれどころじゃなかった。行こうツナくん。」

 

「えっ」

 

「ツナくん後ろ」

 

「後ろって」

 

振り返ると何かがすごいスピードで追いかけてきた。

 

「ワン」

 

そこには1匹の犬がいた。

話は変わるが炎真は犬に襲われる体質だ。そしてツナは、チワワ以上の大きさの犬は恐怖の対象だった。

 

「んなっ!?な、なんでこんな所に犬が!!」

 

「僕にもわかんない。」

 

「おい、どうでもいいが早く行かないとヒバリに噛み殺されるぞ。」

 

「「そうでした!!!!」」

 

 

~side学校~

 

ここは並盛中学3ーA

ヒバリは黒曜に行っていたため、何とか噛み殺されるのだけは免れた。

 

「おはようございます10代目」

 

「よっ、遅かったじゃねーかツナ、それに炎真も」

 

「おはようボス」

 

この人たちはツナの守護者で上から

嵐の守護者で自称右腕の獄寺隼人

次に雨の守護者の山本武

最後の女の子は霧の守護者のクローム髑髏

 

「おはようツナ君」

 

と天使の、笑顔で来たのはツナの秘密を知っている数少ない一般人の笹川京子。ツナはこの子に2度告白したが1度目は冗談と思われ、2度目はなんやかんやで出来なかった。

因みに彼女の兄は晴れの守護者笹川良平座右の銘は、

 

『極限』

 

である。

 

「席につけーHRを始めるぞ」

 

ぎぎードンキリーツレイチャクセキ

 

 

PM4:20~side教室~

 

「終わったーー」

 

「山本は部活?」

 

「あぁ」

 

「おぉ薫と一緒に頑張るぜ。」

 

「山本くんいつも薫としてくれてありがとう。」

 

「いいってことよ、あいつといると楽しいしな(笑)」

 

薫とはシモンファミリーの水野薫のことである。

 

「じゃ炎真君、獄寺君帰ろうか。」

 

「うん」

 

「はい。10代目」

 

「みぃーつけた、獄寺くん」

 

「げっ、シトピちゃん。」

 

シトピちゃんとは、獄寺の彼女・・・では無く彼にストーカーしているシモンファミリーのSHITT・Pだ

 

「やぁー綱吉君とボスそしてバイバイマチヤガレ獄寺くん★」

 

「誰が待つか!さいなら10代目。」

 

「うん。バイバイ獄寺くん。」

 

「やっぱり立場逆転しているな。」

 

「うん、っていつの間にリボーン!」

 

「ちゃおっス京子、クローム」

 

「こんにちはリボーンくん」

 

「こんにちは」

 

「私も一緒に帰りたいけど今日ケーキバイキングがあるの、だから」

 

「いいよいいよ無理しなくて。バイバイ」

 

「うんバイバイ。またねリボーンくん」

 

「ちゃおちゃお」

 

「ボス私も。」

 

「クロームもまたね。」

 

 

side下駄箱

 

「ふぅ~~~」

 

と一息ついて、うーんと背伸びをするツナ

 

「そういえば、他のシモンファミリーの人達はどうしたの?」

 

「みんな並盛高校に行ったよ。アーデルハイトはそのまま粛清委員会を立ち上げて、紅葉は了平さんと同じボクシング部へジュリーはナンパしてらうじはよくランボ君と遊んでいるよ。」

 

「なるほど」

 

ツナは笑いながら聞いていた。

そして悪夢は突然やってくる。

 

「ねぇ、君たち何群れているの」

 

という声を聞いて恐る恐る声のした方に顔を向けたら

 

「早く帰らないとかみ殺すよ」

 

「はいすいません雲雀さん。」

 

この雲雀はさっきまでのヒバリと同一人物で。

雲雀こと雲雀恭弥はボンゴレ最強の雲の守護者。

 

「帰ろうか炎真くん。」

 

「うん」

 

 

~side道~

 

道をわいわいしゃべりながら歩くと、道端に赤い宝石のような石が落ちていた。

 

「なんだ?これ?」

 

「見たことない石だね。」

 

そして、リボーンが少し怪訝な顔をして、

 

「ん、こいつは・・・」

 

いつものやかましい「がはははは!」と言う笑い声が聞こえてきた。

 

「ランボさんとーじょー!!」

 

「ランボかどうした。」

 

「さっきまでねーらうじと遊んでいたんだけど、らうじが急に「用事を思い出したから帰らないと」って言って帰っちゃったんだもんね」

 

「そういえばらうじ、今日ご飯当番だった。」

 

「あ~ヽ(`Д´)ノちねー!(死ね)リボーン!!」

 

と言いながら頭を探り手榴弾を取り出しジャンプした。

 

(久々に自分の指名思い出しる!!)

 

「ウゼェ、暴蛇烈覇(ぼうじゃれっぱ)」

 

暴蛇烈覇とはランチアと言う人が蛇鋼球と言う巨大な鉄球に回転をかけながら前に放つ技だ。

リボーンはこれを相棒である形状変化型カメレオンこと『レオン』変身させて放った。

 

「ぐぴぃゃぁぁぁ!!」

 

と空を舞、そして頭から何か紫の大筒が飛び出した。

 

「あ、あれは!?」

 

この大筒は10年バズーカと言いこれは撃たれた人が現在と10年後が5分間入れ替わると言うランボのもといた『ボヴィーのファミリー』の伝説の兵器だ。

そして、何故か急に踊り出した。

 

「んな!どうしっちゃったの!!」

 

と腰を抜かして赤い石を落とした。

そしてそれを見たかのように10年バズーカはそれを取り込み1発ドーンと

 

「んなー!10年バズーカが不発っー!!おいランボどうにかしろー!!」

 

「ぐぴゃぁ~!!」

 

と言いながら目を回し頭上には、星が飛んでいて、のびていた。

そしてそうこうしているうちに、10年バズーカが飛んできて、最初に腰を抜かしているツナを、次に「えっ、えっ。」と言って戸惑っている炎真を最後にただ難しいそうな顔をしているリボーンを取り込んだ。

 

そして、後には誰も残っていなかった。

 

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的1 空から降りてくる女はだいたい美人

 

 

~side銀時たち万事屋一行~

 

源外の発明により突如、変な所に飛ばされた万事屋一行。

 

「あってて‥‥お前ら大丈夫か?」

 

銀時は後頭部を抑えながら、新八と神楽の安否を確認する。

 

「は、はい何とか。」

 

「こっちもアル。」

 

「わ~ん」

 

どうやら、皆怪我もなく無事の様だ。

 

「さてと、ここはどこだ?」

 

次に銀時が現状を確認する為、辺りを見回す。

 

「見た感じは森ですね。」

 

確かに新八の言う通り、辺りは森でどこを見渡しても見えるのか木ばかりである。

 

「まずは人でも探すのがヨロシ。」

 

神楽が、此処は一先ず人の居る所に行くのがいいだろうと提案する。

 

とすると、定春が

 

「ワンワン」

 

少し警戒した吠え方を空にした。

 

「どうした?定春」

 

神楽は定春の頭を撫でて、定春を宥めつつ、空を見る。

すると、

 

「親方!空から女の子達が!」

 

「はぁ?なに言ってんだ?神楽。空から女の子なんて、お前、ラ○ュタの見すぎ‥‥うっ‥‥」

 

とここで銀時も驚いた表情に、

 

「銀さん?」

 

驚愕の表情で固まった銀時を見て、新八は首を傾げつつ、自らも空を見上げる。

すると、新八も目を見開いて驚愕の顔をして、鼻血を・・・

 

「出すかーーーー(怒り)そんなもんヽ(`Д´)ノ」

 

 

side少し前の????????

 

「次元震の反応はここから?はやてちゃん。」

 

『そや、そこら辺から反応がでとったで。』

 

「なのは、見てあそこに人が居る!」

 

「えっ」

 

金髪の女性が指をさし、なのはと呼ばれた女性もその指先へ視線を向ける。

其処には確かに三人の人間と犬の様な生物がいた。

 

 

~side万事屋一行~

 

銀時たちは呆然と空を見上げ、

新八は両手で鼻を抑えながら・・・

 

「出してねぇーつってんだろ。そんなもんヽ(`Д´)ノ!!いつまで引っ張る気だ!!読者たちが信じちゃうだろうが!!!!」

 

「おい、新八、お前いつまで1人ツッコミするつもりだ?傍から見ると、ちょっとヤバい人に見えるぞ」

 

新八のしょうもないひとりツッコミに対してしらけた顔をした銀時。

 

そうこうしているうちに天上人(?)が降りてきた。

 

「あのあなた達は「少し待つネ!」」

 

空から降りてきた人の内の1人が銀時達に話しかけてきたが、神楽がそれを大語で遮り、銀時達は円陣を組み、ひそひそ話を始める。

 

「オイィィなんで空から人が!シ〇タかそれともし〇かちゃんか!!」

 

さっきのしらけ顔から1点めちゃくちゃ焦った表情の銀時

 

「落ち着いて下さい。銀さん、あの人達しっかり見たらタケ〇プターもひ〇う石もないですよ。」

 

「じゃあなんで飛んできたんだよ。」

 

「じゃあ、きっとあれアルよ、ド○ゴン○ールの舞○術ネ。」

 

「マジでか!?って事は、此処はドラ○ンボー○の世界なのか!?すまん俺、少し亀ハ○スに行って、かめ○め波を教わってくる。アレを撃つのガキの頃からの夢だったんだ。」

 

「だから、落ち着けつってんでしょーーがー!!」

 

「取り敢えずあの人達に事情を「あの~何話して」」

 

新八が混乱しまくっている銀時と神楽を落ちつかせて、あの人達に此処が何処なのかを尋ねようとした時、向こうから話しかけてきた。

 

「「「ハイィィィィィ」」」

 

未知との遭遇に緊張している万事屋一行。

 

「あのあまり、緊張なさらずに。」

 

相手は緊張するなと言うが、それはちょっと無理な相談である。

 

「あっ、申し遅れました。私、高町なのはと言います。」

 

まず茶髪の方から自己紹介をしてきた。

名前からして日本人の様だ。

 

「そして私が、フェイト・T・ハラオウンです。」

 

と金髪の人が名を名乗る。

見た感じ、異国人なのに日本語が上手い。

 

「あっ志村新八です。」

 

「坂田銀時でーす。」

 

「神楽アル。」

 

「そしてこれが定春ネ」

 

ズドーン「ワン」

 

相手が名を名乗ったので、此方側も名乗るのが人としての礼儀である。

銀時達はなのはとフェイトに名を名乗った。

 

「わぁ~おっきい犬!!フェイトちゃん見たことあるこんな大きな犬。」

 

なのはは、目を輝かせて定春に興味津々の様子。

神楽が許可を出せば、定春に抱き付いてもおかしくない様子だ。

 

「ううん見たことない。ザフィーラの2倍くらいある...って言うかちょっと大き過ぎない...?」

 

なのはとは逆にフェイトは、ちょっと大きすぎる定春にちょっと引いている。

 

そんな中、新八が恐る恐るなのはとフェイトに質問をした。

 

「あの~すみません。ここはどこですか?江戸ではなさそうですが?」

 

(江戸?それにこの人達の服装‥‥まるで‥‥)

 

「えっ?江戸と言うより・・」

 

そこでフェイト達は銀時達の服装を見て少し違和感を感じた。(神楽は除く)

 

そしてなのはが

 

「ここはミッドチルダです。あなた達は多分次元漂流者ですね?」

 

此処が何処なのか、そして銀時達の現状を話した。

 

「ん?事件投稿者?」

 

しかし、銀時はあまり理解できていない様子。

 

「違いますよ、銀さん。次元漂流者ですよ。」

 

「で、それ何アルか?美味しいアルか?」

 

「‥‥」

 

新八は言葉が詰まった

漂流と言う単語を聞いて、自分達が遭難しているという現状を思い知らされた。

 

「はぁ~だからお前はいつまでたっても新一じゃなく新八何だョ。」

 

神楽が呆れ気味に新八に言って、まるで可哀想な目で言われた新八の方はと言うと、

 

「うるせぇー!!僕はどんなに言っても新八なの!!生まれた時からずっと新八で、これからもずっと新八なの!!」

 

自分の名前はどう頑張っても変わる事はないと主張する。

 

「あの~」

 

このままでは、話が進まないのでなのはが万事屋一行の会話の中に少し強引に割って入った。

 

「それで、次元漂流者ってなんですか?」

 

新八が自分達が置かれた状況、次元漂流者とは何なのかを尋ねる。

 

「平たく言えば次元漂流者とは次元を超えた迷子の事ですよ。」

 

「「「ッツ」」」

 

「マジでか!これじゃあまるでワ〇ピースのロロノ〇ゾロじゃぁねぇーか。」

 

銀時も自分が置かれた状況を理解して叫ぶ。

そんな中、此処でなのは達に突如、念話がまるで携帯の様に入る。

 

『なのはちゃん、フェイトちゃん。今ティアナ達の所に大量のガジェット反応があったんや!!急いでソッチへ戻ってや!!』

 

「「それは本当にはやてちゃん!!」」

 

はやてからの報告に思わず声を出してしまうなのはとフェイト。

 

「「「?」」」

 

銀時達には魔力が無いので、当然はやてからの念話は聞こえず、なのはとフェイトが一体何と喋っているのかわからないという顔をした。

そして、再び万事屋一行は円陣を組んでひそひそ話を始めた。

 

(ねぇ、突然叫び出しちゃったんですけど、あの2人。もしかして、ヤバい電波でも受信しているんじゃないの?)

 

銀時の読みはある意味当たっていた。

 

(い、いや、アニメやスパイとかにある時計に何か暗号か何かが送られてきたのかも‥‥)

 

(新八、此処は、お前は聞いてみるネ)

 

(えっ!?ぼ、僕がっ!?)

 

(そうだぞ、新八。お前普段から女の子と会話する機会なんてないんだから、こんな時こそ、積極的に声をかけるべきだ)

 

(それって、なんか、僕に厄介ごとを押し付けていませんか?)

 

(そんなことないって、さぁ行け、新八!!今こそ、男を見せる時だ!!)

 

(わ、わかりました‥‥)

 

「あの~誰と話しているんですか?」

 

恐る恐る新八がなのはとフェイトに話しかける。

すると、なのはが答える。

 

「あっ、すいません念話です。」

 

「「「念話?」」」

 

なのはの言う念話が理解できない万事屋一行。

 

「念話はテレパシーの様なモノです。それによると、今私たちの仲間が襲われてるらしくて‥‥。」

 

「え!?(;゚Д゚)大変じゃないですか?ソレ!!」

 

新八が声を上げる。

 

「フェイトちゃん、この人たちを本部までお願い」

 

「わかった。「待て」」

 

「「えっ?」」

 

と、銀さん止める。

 

「お前ら戦力が少しでも欲しいだろ?これも何かの縁だ。俺も手伝う。」

 

「えっ?いや でも‥‥」

 

なのはは銀時の協力要請に渋る。

局員でもない嘱託でもない一介の次元漂流者を連れていってもいいのだろうか?

見た所、魔導師には見えない。

 

「大丈夫だ。これでも戦場経験者だ。移動に関しても定春に乗っていくからその点も大丈夫だ。」

 

普段は死んだ魚の目をしていた銀時であったが雰囲気までは死んではいなかった。

なのはは少し悩んで、

 

(ここまで自信ありげに言うなら大丈夫かな?)

 

多少不安を抱えつつも、今は少しでも戦力は欲しい。

現にフェイトは新八と神楽の案内の為、離れる。

フェイトの戦線離脱は正直大きいので、

 

「なら、お願いします。」

 

と、銀時の協力要請を受けた。

 

「わかった。新八、神楽。お前らはそっちの金髪ねぇちゃんについて行け、あとそのポンコツも忘れずに持っていけよ。」

 

と下に転がっているカラクリを指さした。

 

「「わかりました。(わかったネ)」」

 

と言って、

 

「じゃあ早速行きましょうか。」

 

「オォ」

 

定春に乗り優雅に走った銀時であった。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的2 同い年でも背中は大きく見える

 

~side????~

 

ここはとある森の中なのだが、今は数が10体ぐらいの機械兵器、ガジェットと2人の少女が戦っていた。

 

バン

 

ビューン

 

ドンドカーン

 

「大丈夫、ティア!!」

 

「そっちこそ。大丈夫なの?スバル」

 

ティアと呼ばれた少女こと、ティアナ・ランスターは、見た目はオレンジ髪のツインテールで銃を使っている。

 

スバルと呼ばれた少女、スバル・ナカジマは青髪の短髪で武器は手甲に近いモノを装備している。

 

「くっ、数が多すぎる!!」

 

敵のガジェットの数の多さに思わずティアは苦虫を噛み潰したように顔を歪める。

 

「そんな事言っても仕方ないよ、でも、多分そのうち増援が‥‥」

 

スバルがガジェットを拳で殴りながら、すぐに味方が来てくれると言う。

 

2人がそんなやりとりをやっている時にガジェットのビームが、

 

「あぅ!!」

 

ティアナの足を掠める。

思わぬ敵の攻撃により、ティアナはバランスを崩し、その場に倒れる。

急いで体を起こそうとするも負傷した足には激痛が走る。

 

「ティア!!」

 

スバルが急いで駆けつけようとするが、周りのガジェットがスバルの行く手を阻み、スバルはティアナの下に近づけない。

倒れたティアナの所に数機のガジェットが迫る。

 

「ティアーーーーー!!!!」

 

スバルの絶叫が森の中に木霊する。

その時‥‥

 

「Xカノン!!」

 

 

 

~side5分前のこと~

 

「いつつ、って、ここはどこだ?」

 

ツナが辺りを見渡すと其処は、森の中だった。

 

「ツナくん、大丈夫」

 

そこへ、ツナの友人である炎真が声をかけてきた。

ツナとしてもまさか、こんな訳も分からない場所で炎真と出会えるとは思っていなかった。

その為、ツナとしてはちょっと嬉しかった。

 

「炎真くん!!炎真くんも10年バズーカに」

 

「どうやら見た所、何処かの森見てぇだな。」

 

リボーンが辺りを見回しながら言うが、それぐらいは直ぐに分かる。

問題なのは此処が何処の森なのかだ。

 

「リボーン!!」

 

「とにかく10年バズーカに当たったから一応5分後には帰れるんでしょう?」

 

此処が何処か分からないが、少なくとも5分後には戻れるのだから、大丈夫だと思いつつ、ツナはリボーンに尋ねる。

 

「多分僕は10年バズーカに当たった事はないからなんとも言えないけど。」

 

しかし、炎真は今回の転移が10年バズーカによる転移ではないと予測する。

 

「それって‥‥」

 

ツナが何かを言おうとした直後、

 

ドゴーン!!

 

「「「!!!」」」

 

突如、近くから爆発音が聞こえて来た。

 

「な、何?今の音。」

 

「爆発‥‥いや、戦闘音見てーだな。こっちから聞こえたぞ」

 

と言いながら音のした所にリボーンは行った。

 

「あっ、待てよ、リボーン。と、とにかく行こう炎真くん。」

 

「うん」

 

と言いながらツナと炎真はリボーンの後を追って走って行った。

すると少女2人が戦っているのを見たツナは「大変だ!!」と言いながらポケットの中からケースを取りその中から薬を2錠飲んだ。すると、額に炎が灯り目の色も炎と同じオレンジ色になった。

 

「リボーンはあの女の子たちを頼む。俺はあのヘンテコな機械を」

 

「わかったぞ」

 

「ツナくん僕も行くよ!!」

 

と言って炎真の額にも少し赤い炎が灯った。

 

 

 

~side5分後のティアナ&スバル~

 

「な、何?今の?」

 

何が起きたかよくわからないティアナ。

振り向くとそこには茶髪のつんつんした頭の人が立っていた。

 

(えっ?この人誰?)

 

「大丈夫か?」

 

ティアナが困惑している中、その人は突如、ティアナに声をかけてきた。

 

「えっ、あっ、はィ~。」

 

(えっ頭燃えている。・・でも何だろうあの炎見ていると何だか落ち着く。)

 

彼の言動から、彼が敵ではないと本能的に察するティアナ。

 

「少し下がっていろ。リボーン」

 

「あぁ」

 

「えっ?赤ん坊!?」

 

この場に余りにも似つかわしくない人物が出てきた事に思わず、ティアナは先程まで自分の命が危うい場面だった事さえも忘れてしまった。

 

「ちゃおっス。オレンジのお嬢ちゃん。一応、アンタの友人であるそこの青い髪のやつもちゃんと保護しといたぜ。」

 

「ティア~~!!」

 

赤ん坊(リボーン)の言う通り、自分に駈け寄る友人の姿があった。

 

「スバル!!」

 

「大丈夫だった?」

 

スバルがティアナに安否を確認する。

 

「うん、何とか‥‥そっちの赤い髪の人は?」

 

ティアナはどうやら無事の様子で、彼女はスバルの傍にいる赤髪の少年(炎真)が誰なのかを尋ねる。

 

「えっ?あっ、どうも~」

 

突然、自分の正体が誰なのかを尋ねられ、炎真はとりあえず、ティアナに挨拶をした。

 

「リボーンそっちは任せた。炎真援護を頼む。」

 

「わかった」

 

「さっさと倒してこい。」

 

「「あぁ!!」」

 

「えっでも?」

 

とティアナが心配そうに声をかけたら、

 

「心配はいらん‥大丈夫だぞ、あいつらならな‥むしろお前ら怪我をしているんだ。今はゆっくりしていろ。」

 

「「えっ?」」

 

赤ん坊(リボーン)からそう言われて、ティアナとスバルは信じられなかったが、それは直ぐに取り越し苦労となる結果となった。

 

「はぁー!!」

 

「「速い!!」」

 

「ね、ねぇ~ティア。あの茶髪の人もしかしたらフェイトさんより速くない?」

 

「う、うん‥多分」

 

六課のメンバーの中で一番の速さを誇るフェイト。

そのフェイトの速さを凌ぐ、少年。

彼の正体は一体何者なのか?

ティアナとスバルの興味と疑問は尽きなかった。

 

炎真は自分の手を少し上げ、

 

「はぁ!!」

 

すると数機のガジェットは地面にめり込んだ。

 

「「!!」」

そこに抑えられているうちにツナが壊していく。

 

「ツナくんこれが最後の1個だよ。」

 

「わかった、うぉー。」

 

ズガァーン!!

 

 

~戦闘終了~

 

しゅぅぅぅ~~、と言う音を出しながら、炎は消えてった。

 

「大丈夫ですか~?」

 

と戦闘が終わるとツナは、あたふたしながら2人に言い、

 

「男があたふたすんな!」

 

と言いながらリボーンはツナの顎を蹴り飛ばす。

 

「ぐはぁーー。」

 

「ツナくん大丈夫?」

 

「いつつ、あれ2人ともどうしたんですか?」

 

ツナがティアナとスバルの方へ顔を向けると、其処には唖然とした表情で自分を見るティアナとスバルの姿があった。

 

 

~side数秒前の念話~

 

ツナがあたふたしている時。

 

(ねぇティア‥彼、本当にさっきの人?)

 

(うーん同じように感じるけど、何か雰囲気が‥‥)

 

(だよね、さっきと違って、目の色も変わっているし‥ってゆうか目もさっきはキリッとしていたし、何より口調がさっきと全然違う‥‥)

 

ティアナとスバルの2人が戦闘中のツナと戦闘が終わった後のツナのギャップを感じ、唖然とした表情でツナを見ていると、

 

「いつつ、あれ?2人ともどうしたんですか?」

 

ツナが首を傾げながら自分らを見ていた。

 

 

~side会話再開~

 

ティアナが少し怪我したので座りながら

 

「では改めて」

 

「「ありがとうございました。」」

 

「いや当然のことをしただけですし、あっ、俺の名前は沢田綱吉。」

 

「僕は古里炎真。」

 

「俺はリボーンだぞ。」

 

「私はティアナ ティアナ・ランスター」

 

「わたしはスバル・ナカジマ。」

 

その場の皆は互いに自己紹介をした。

 

「えっと‥‥綱吉君でいいのかな?」

 

スバルがツナに声をかけると、

 

「ツナって呼んでもらえますか、みんなそう呼んでいるので。」

 

ツナは呼び慣れたあだ名で呼んでくれと言う。

 

「「わかった」」

 

「そうだな、ダメツナ」

 

「今はその呼び方はいらないよ!!」

 

リボーンから茶々をいれられ、ちょっと声を荒げるツナ。

 

「あの~?さっきから気になっていたんですが、この赤ん坊はなんで喋っているんですか?」

 

とスバルが聞く。

通常、赤ん坊が此処まで流暢に言葉を交わすのは余りにも不自然だ。

ティアナもそれが気にはなっていた。

 

「ちゃおっス、名前はさっきいったな。俺はヒットマンでツナの家庭教師だぞ。」

 

「えっ?って事は、リボーンくんはツナくんより強いの!!」

 

赤ん坊の体なのに、ほぼ自分と変わらない年頃のツナよりも強いのかをリボーンに尋ねるスバル。

 

「当たり前だ!!こんなダメツナに負けてたまるか。」

 

(スバルったら間に受けているし。)

 

一方、ティアナはリボーンの言う事がいまいち信じられなかった。

 

「えっとあの~すいません少し聞いて大丈夫ですか。」

 

と炎真がティアナとスバルに質問する。

 

「えっ、あ、はい。」

 

「あの~ここがどこだがわかりますか?」

 

「ここはミッドチルダよ。」

 

「「ミッドチルダ?」」

 

聞いたことのない地名に首を傾げるツナと炎真。

 

「えっと一応日本ですよね。」

 

来た事のない地名でも一応此処が日本だと思い、尋ねるツナ。

 

「少し違うかな、何?2人とも日本出身なの?」

 

スバルが日本と言う単語を聞いて、ちょっと興味津々な様子で尋ねてくる。

実は彼女、色々と日本には縁がある人物であった。

 

「はい日本の東京の並盛です。」

 

と炎真が自分達の出身地の事を言うと、

 

「大丈夫!!ティアナ、スバル。」

 

遠くから、また別の人物の声が聞こえて来た‥‥。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的3 この頃の犬はホームという前に戻ってる事がある

 

~sideなのは&銀時+定春~

 

急いでティアナ達の所に行こうとする銀時一行。

ティアナ達とまだ距離がある所で、

 

(なのはちゃん!なのはちゃん!ティアナ達の周辺のガジェットの反応が消えてもうた。)

 

はやてから念話が入り、それによると、ティアナとスバルの交戦相手のガジェットの反応が消えてしまったのだと言う。

 

「えっ?」

 

なのはは飛行を止めて、その場に立ち止まる。

もしかして、ティアナとスバルの2人がガジェット片付けたのだろうか?

しかし、数からいって、まだティアナとスバルの2人で対処できる数ではない。

ならば、ヴィータかシグナム辺りが自分達より先に現場に到着したのだろうか?

 

「ん?どしたー?」

 

突然、止まったなのはに銀時も定春の足と止めさせ、止まった理由を尋ねる。

 

(急になぁ~ガジェットの反応がなくなってな、それとなさっき、ティアナ達に気を取られていたから言いそびれたけどな、実はティアナ達のそばにも次元震の反応があったんや。)

 

「っ!?ちょっと待って、銀時さんと整理させてもらえる。」

 

「?」

 

なのはの狼狽理由がわからないという顔をしている銀時。

 

「えっと、今入って来た情報によれば、私の仲間たちを囲んでいた敵の反応が消えて、新しい次元震 多分次元漂流者が現れたらしいでいいのかな?」

 

(うん、バッチリやでなのはちゃん(๑•̀ㅂ•́)و✧)

 

「で、その事件投稿者は敵なのか?」

 

「だから、次元漂流者!!(次元漂流者!!)」

 

そんなやり取りがあり、確認の為、なのはと銀時+定春はティアナ達の所へと向かった。

 

「大丈夫!!ティアナ、スバル」

 

そして、なのはがティアナとスバルの2人の姿を確認し、声をかけた。

 

~side2組の深層心理~

 

ツナたちはあるものに注目していた。

それはなんて神がかった天パ .....じゃなかった白い巨大な犬に‥‥

 

((何!?あの巨大な犬!?と言うよりアレ犬なの?))

 

とティアナとツナ。

 

(犬、イヌ、いぬ、デッカイ犬!!)

 

と炎真は定春を見て、身の危険を感じていた。

 

(うわぁ~おっきいワンちゃん。触っても大丈夫かな?)

 

一方、スバルは目をキラキラさせていた。

 

反対に銀時達もあるモノを見て思っていた。

 

((何でこんなところに赤ん坊が!!))

 

そして互いの静寂を打ち破るかのように、

 

「ちゃおっス」

 

赤ん坊(リボーン)がなのはと銀時に声をかけてきた。

 

((しゃべった(´°Д°`)))+なのはは(かわいい!)

 

~深層心理終了~

 

 

合流したなのはは、ティアナに何があったのかを尋ね、ティアナはなのはに此処で何があったのかを説明し、反対にティアナもなのはがデカイ犬(定春)を連れている訳をなのはに尋ねた。

 

 

~説明終了~

 

話を聞き終えて現在は六課の本部の中にいる。

そして扉の前まで来たらなのはが扉をノックし、

 

コン コン

 

「はい、どうぞ」

 

「失礼します。高町なのは一等空尉任務の報告参りました。」

 

「お疲れ様。んで、その人達が残りの次元漂流者?」

 

「うんそうだよ。みんな自己紹介して。」

 

「どーも、坂田銀時でーす。」

 

「沢田綱吉です。」

 

「古里炎真です。」

 

「ちゃおっス、リボーンだ」

 

「ほんまに赤ちゃんが喋っとる。 ここの部隊長の八神はやてです。よろしく。」

 

八神はやてと名乗った女性は茶髪でショートヘアー、口調にはエセっぽい関西弁が混じっている。

 

「お前が此処の部隊長か?それで先に来たメガネとチャイナ服はどこだ。」

 

「あぁ~あの2人なら神楽ちゃんが「お腹減ったアル」って言うたから新八くんとフェイトちゃんが付き添って食堂に行ったで、多分もうすぐ帰ってくるやろ。」

 

はやてがそう言っているそばに、

 

コン、コンと、

 

ドアをノックする音が聞こえ、

 

「はいってええで」

 

はやてが入室を許可する。

 

「失礼します。」

 

するとフェイトが入ってきた。

フェイトの後ろからは、

 

「「銀さん(ちゃん)」」

 

神楽と新八が入ってきた。

 

「銀ちゃん定春は?」

 

「でかいから外。」

 

「何しているアルか!私、中に入れてくるネ。」

 

「あっ神楽ちゃん。」

 

「ほっとけどうせ道に迷って保護されるのがオチだ。そんなことよりお前もここにいとけ。」

 

そしてはやてが コホン、咳を一つして

 

「綱吉くんが言っていた並盛町を調べてみたんやけど、そんな街の名前は、私らが知る日本にはどこにもそれらしき町があらへんかった。」

 

「ッッッ!!」

 

自分達の町が無かったと聞き、炎真とツナは驚いたが、リボーンはキリッと睨んで

 

「やっぱりか‥‥」

 

と、1人納得しているように呟いた。

 

「どうゆうことだよ、リボーン。何か知っているの!?」

 

「色々あってわからなかったかもしんねーが、あれから何時間たったと思う?」

 

「「あっ」」

 

時計を確認すると、既に10年バズーカの効果が切れて、元の世界に帰れる時間は当に過ぎている。

にも関わらず、自分達は転移していない。

 

「でも原因が‥‥」

 

きっと何かの原因で帰れる時間が伸びているんだと思っているツナ。

 

「よく、思いだしてみろ、あの時10年バズーカに当たる前何があった?」

 

リボーンは10年バズーカに当たる前の事を思い出せと言う。

 

「えっと‥故障して何故か不発して‥‥」

 

ツナが記憶を遡っていると、

 

「あっ!?まさかあの時の赤い石!!」

 

先に思いだした炎真が声を上げて言った。

 

「「「赤い石!!」」」

 

「なぁ炎真くん赤い石ってこんな感じとちゃうん?」

と言いながらはやてはある画像を見せた。

 

「あっ、それです。ねぇツナくん。」

 

「はい、確かにこんな形をしていた」

 

「あんな、これはレリックと言ってな。用途はまだわからんけどとてつもない力を秘めた結晶体や」

 

「つまりそれが10年バズーカに変な影響を与えた訳か。」

 

「なぁ、さっきからちらほらでとる10年バズーカって一体何なんだ?あのドS王子がいつも使っているバズーカよりもスゲェバズーカなのか?」

 

銀時が10年バズーカについて尋ねる。

 

銀時の反応は当然だった。

あれだけの会話で10年バズーカの効果がこれでわかったら天才だろう。

 

「あぁ、えっと‥ですね‥10年バズーカと言うはですね(以下略)」

 

「なるほどな、つまり普通なら5分で帰れるけどレリックのせいで誤作動を起こしてさらには次元を超えていやったわけか。」

 

「ツナ君たちの世界ではそういうのが沢山あるの?」

 

とスバルがツナ達の世界の事を尋ねる。

 

「いやあれは特別だから・・・」

 

ツナはあんなモンがその辺にゴロゴロ転がっている訳ないじゃないと言う。

 

 

「さて、次は銀時さん達の説明をお願いします。」

 

はやてが銀時達にこの世界に次元漂流してきた経緯を尋ねる。

 

「あぁ~説明する前に、その『銀時さん』はやめてくれ、言われるとなんだかむずがゆい」

 

「ほんなら銀ちゃんで」

 

「あぁーあと新八ー頼む。」

 

「えぇ僕(;゚Д゚)!?」

 

てっきり銀時が説明するのかと思ったら、彼は新八に全て押し付けた。

 

「そのために此処に置いといたんだから」

 

「ったく、僕らがこの世界に来た経緯は・・・以下略」

 

「なるほどな」

 

新八がはやて達に自分達がこの世界に転移した経緯を説明した。

 

「つぅ訳だ、だから俺達はすぐに帰れる。新八あのタイム〇シンはどうした?」

 

っとここで新八は顔を青ざめ、フェイトは何とも言えない顔をした。

 

「ん?どしたーパッあぁん。ほら、早く出せ」

 

「あの‥ですね‥‥銀さん。その‥‥とても言い難いことですけどね‥‥」

 

新八は言いにくそうにこの場にあのカラクリがない事情を説明した。

 

 

~side六課に着く前のフェイト達~

 

銀時と別れフェイトに呼んで貰ったヘリに乗った新八と神楽。

 

「あの貴方達が所属している組織って一体何をしているんですか?」

 

「機動六課はねぇ、君達みたいな次元漂流した人の保護やロストロギアと呼ばれる物体の回収をしているの。」

 

「ロストロギアってなんですか?」

 

「ロストロギアって言うのは‥‥」

 

説明省略

 

「なるほどつまり取り扱い危険みたいなものを集めているアルか。」

 

「クス、えぇ、そうよ。」

 

と雑談している内にタイム〇シンが急に光り、

 

「「えっ」」

 

「何アルか!」

 

ゴォーーンと音を立てた後、ピシュンっと消えてしまった。

 

・・・・・そして

 

「何があった(アルか)ーーーー!!!!」

 

「た、大変だ!!タイム〇シンが無い!!」

 

と神楽と新八の叫びがヘリの中で響いた。

 

 

~回想終了~

 

何とも言えない表情の銀時が発した最初の言葉は、

 

「えっ?何?って事は、あの‥帰れないとかそゆこと?」

 

「はいそう言うことです。」

 

「オィィィ!!あのクソジジィ俺達を帰さない気か!!あンのジジィ帰ったら絶対殺してやる。」

 

「落ち着いて銀さんほかの人達みんなびっくりしていますよ。それに帰れないのにどうやって源外さんを殺すんですか?」

 

「知るかってんだ!!」

 

「あの~銀ちゃん。」

 

「あぁ(#゚Д゚)!?」

 

「それで銀ちゃんたちが来る前にな、あんたらたちを機動六課の民間協力者として入ってもらおうと話しててん。」

 

「話してったって誰と」

 

「このリィンと」

 

「はい」

 

「「「「「!!」」」」」

 

「あの~何ですかこの小人は!?」

 

「妖精?」

 

「ティンカーベルね!!」

 

「リィンは私のユニゾンデバイスや。」

 

「「「「「ユニゾンデバイス?」」」」」

 

「あっ、そっか銀さんたちは私達が魔導師と言うの知らんのか。」

 

「魔導師って事はなのはたちが空から来たのはそれのおかげか。」

 

「そや」

 

「でもツナくんたちは私達と同じ感じじゃないの?」

 

「えっ?」

 

「だってツナくん炎出したり、炎真くんはサイコキネシスみたいなことしてたじゃん。」

 

「あっあれは。「おい」」

 

「そこらへんは戦えばわかるぞ。ここも戦闘の絶えないところなんだろなら、どんな戦い方か見といた方がいいと思うぞ。」

 

とリボーンが提案すると

 

「そやな、なら模擬戦しよか。」

 

ツナはその実力を見せるために模擬戦をする事になった。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的4 信頼しきった師弟関係を見ると気持ちが和む

「そやな、なら模擬戦でもしよか?」

 

と言うはやての提案から模擬戦をする事になった銀時一行とツナ達。

 

なのだが、

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!!俺はまだ此処(機動六課)に協力するなんて言ってないよ!!」

 

と今更ながら言ってきた。

 

「何言ってんだ?ツナ。こいつらの協力無しにどうやってこの先、生きていくんだ?この世界の金も住む場所も無いのに‥‥」

 

「うっ‥‥」

 

リボーンが言ったことに言い返しにくいツナ。

 

「そ、それは‥‥それでも‥‥俺は‥‥」

 

どうしても六課への協力を渋るツナ。

 

「何で、綱吉くんは嫌なんや?」

 

とはやてがツナに理由を尋ねる。

 

「だって、これから此処に居て貴方達に協力するって事はまたあの機械と戦わないといけないってことですよね?俺は、その‥戦うのはあまり好きじゃないんです‥‥」

 

ツナは気まずそうにはやてから視線をそらして言う。

 

「何で?あんなに強いのに‥‥」

 

とスバルが折角力があるのに使わなきゃもったいないと言うが、

 

「強さは関係ないよ。俺は‥‥「仲間が傷つくのは嫌だからか?」」

 

「っ!?」

 

と銀時がツナの言いたかった事を言い当ててビクッと身体を震わせる。

 

「な、何で‥‥」

 

「わかるぜ‥お前さんのその目を見てればな‥‥」

 

「‥‥」

 

 

「俺もな‥昔、戦場にいた時に、今のお前と同じ事を思っていた‥‥大切なものを取り返したい、守りたい。だが、仲間が傷つくのは嫌だってな、そしてそんなもんを見るくらいなら、いっそ逃げちまえば楽になるんじゃないかとさえ思った。 でもな、ここでテメェが逃げても何も変わらねぇ、それどころか、テメェが逃げちまった分、仲間に苦労をしょいこませ、仲間は確実に傷つく‥‥」

 

銀時は昔の‥‥攘夷戦争の頃を思い出し、遠い目をする。

 

「だから、俺は逃げなかった‥‥だが、今のお前はどうだ?ここで逃げたら、お前の仲間は確実に傷つくぞ」

 

「‥‥」

 

ツナはチラッとリボーンと炎真を見る。

 

「仲間が傷つくならテメェが戦って仲間を守った方が後悔しねぇだろう?お前の仲間だって、お前を必死に守ってくれるんじゃねぇか?それこそが、本当のダチって奴だ」

 

銀時はツナの頭をクシャクシャと撫で、ニッと笑みを浮かべる。

ツナは少しうつむいて考えた。

 

そして、

 

「はい!!ありがとうございます銀時さん!!」

 

「銀時さんはよせ銀さんでいい。」

 

「はい、銀さん!!」

 

2人のこの光景はまるで兄弟の様に見えた。

 

そしてはやてが、

 

「それで、銀ちゃんはえぇんか?ここに組みしても。」

 

と銀時に尋ねる。

 

「嫌なら新八と神楽連れて勝手に出てくそれで、いいなら協力してやんよ。」

 

とふてぶてしく言う。

 

「ありがとうございます。炎真君は?」

 

「僕もツナくんが此処にいるというなら、此処に居ます」

 

「ほな、移動しよか。」

 

「ありがとな、銀時。」

 

リボーンがこっそりと銀時に礼を言う。

 

「いいってことよ。先生さん。」

 

銀時は照れ隠しせいか、リボーンから視線をそらしながら言う。

 

 

~side訓練場~

 

銀時達が模擬戦をする場所に着いたら、其処には子供3人とピンクの髪のポニーテールの女性と金髪の女性がいた。

 

「主はやて、そのものたちが例の‥‥」

 

「うん、そやで。銀ちゃん達、まず誰からやる?」

 

「神楽、新八お前ら先にやれ。」

 

「「えっ」」

 

「まっ、別にいいアルか行くぞ~ダメがね」

 

「おぉい、さらりと変な呼び方するな!!」

 

で何やかんやで準備が整い、

 

相手は数機のガジェット上からのやつには神楽が自慢の身体能力でビルの間をまるで飛んでいるかのように跳ねていた。

 

「何やあの身体能力あれで魔法を使ってないんか!?」

「神楽はなぁ、俺達の世界では宇宙最強の夜兎族だからな、あれぐらい出来て当然だ。あと、注意だがあいつはあの傘1本で大砲打ち返すぐらいの怪力だからな。」

 

「「「「はぁーーー!!」」」」

 

「まじか!?ドラ○ンボー○のサ○ヤ人みたいなもんか!?」

 

はやてが神楽の正体を聞き、驚愕した。

 

「あの新八君は?彼も一応戦い慣れしているように感じられるけど‥‥」

 

「あいつは俺と同じ正真正銘、普通の地球人だ。だが、小さい道場の師範代をやってるし、それにあいつはあいつで俺達と一緒にいくつかの修羅場抜けたからな。」

 

「へぇ~( ̄∀ ̄)」

 

(家のお兄ちゃんと似た感じかな?)

 

なのはは、自身の兄、月村恭也(旧姓 高町)と新八の境遇が似ていると思った。

そして新八達の訓練が終わって上にやってきた。

 

「お疲れ様~」

 

「新八、お前~足引っ張んなヨォ~」

 

「神楽ちゃんはともかく僕は普通の人間だから、いっぱいいっぱいなんだよ~」

 

「でも新八くんもなかなかに筋が良かったよ」

 

とフェイトが言ったら。

 

「ホントですか。ありがとうございます/////」

 

「なんネ、新八、ちょっと美人の女の人に褒められたぐらいで締まりのないデレ顔になって~キモいから、私の半径1キロ以内に近づくなよ、眼鏡オタク」

 

「ちょっ、なんで褒められただけで、そんな毒を吐かれないといけないの!?」

 

新八と神楽が口論していると、

 

「さて次は誰行く?」

 

はやては、それをスルーして次の挑戦者を尋ねる。

 

「んじゃ、次は俺が行くわ‥‥」

 

と銀時が言って、訓練場へと向かった。

 

「準備はええか~?銀ちゃん」

 

「あぁ~いつでもいいぞ。」

 

「じゃ始め!!」

 

銀時はまずその場所から動かず熱線が来たら最低限で躱しさらにチラッとその方向を見て何回かその作業が終わったら、次の瞬間、斜め前にある窓から狙って来た奴に洞爺湖を突き刺し、ガジェットが刺さったままの洞爺湖を持ったままジャンプして正面にいたガジェットに刺さっていたガシェットを投げつけ、ガジェット同士は一緒に爆発。

足場に着地してからそのまま右正面に走り出てきたガジェットを破壊して後ろから熱線を放って来たのでそれを躱し、そのままそのガジェットも破壊だがそこには、四方向から同時に来たので、迷わず正面、右、左、最後の上と壊し、

 

「ハイ終了~」

 

洞爺湖を肩に担いで、息一つ切らす事無く、けだるそうな声で模擬戦が終わった事を宣言する。

 

 

~side見学人~

 

「えっ?もう終わり?」

 

「最後のは何?」

 

「何が起こったの?」

 

そしてリボーンが、

「まず最初に、最低限しか動かなかったのはあの機械の把握のためだろう。下手に大きく動いたら機械たちも動くが、最低限なら撃って隠れて相手の動きを読み、更に1番厄介な空中のやつを壊し、そしたらもう1つがあいつを発見して攻撃するのに時間が空く、その間に投げつけて破壊。そして地上の敵も奴でまずおびき出された振りをしてあの機械達を罠に入れるそこに攻撃を入れる。まぁこんなもんだろ。」

 

リボーンが皆に銀時の一連の行動を解説する。

 

「すごいリボーンくんよくわかったな。」

 

「ほんとに。」

 

そこで新八が

 

「でも変だな、あの人がそこまで考えて戦うなんて。」

 

「そうネ、いつもこうゆうのは適当に流してるアルよ。銀ちゃんは。」

 

そしてなのはがチラッっと銀時のほうに目を移すと

 

「はぁ~、はやてちゃん」

 

深いため息とともに銀時の方を指さす。

 

「ん、何やなのはちゃ‥っっっってえぇいつの間に!?」

 

 

~side銀時~

 

「誰だ?お前?」

 

「私は烈火の将シグナム。私と剣を交えて欲しい。」

 

「「「またか!!」」」

 

はやて達、八神家の者と付き合いが長い者達ならば、彼女(シグナム)はああいう行動をとる事は分かっていた筈なのだが、まさかその場で挑むとは思っても居なかった。

早くても正式に嘱託契約を結んでからだと思っていた。

 

「嫌だ」

 

銀時はシグナムの誘いを速攻で断った。

 

「何!?」

 

まさか、挑まれて断るとは思っていなかったシグナムは眉を顰め、ちょっと不機嫌そうな顔になる。

 

「なんでそんなメンドーなのしないといけねーの?俺はもう糖分切れてやる気がないの~」

 

銀時はシグナムの誘いを断った理由を話すが、それを聞き益々機嫌が悪そうになるシグナム。

 

~side見学人~

 

「どうするはやてちゃん?」

 

銀時はやる気がないので、シグナムを止めるか尋ねる。

 

「どうするゆってもな‥銀ちゃんにやる気がないなら無理強いするわけにも行かんし。」

 

はやてもやる気が無い者をシグナムと戦わせてもあっという間に終わってしまうので、此処は無理に戦わせる必要はないと思っていたが、

 

「でも、あいつとピンク髪の戦いは此処の連中にいい影響を与えてくれると思うぞ。」

 

リボーンが銀時とシグナムを戦わせようと言う。

 

 

~side銀時~

 

そんなことを感じた銀時は

 

「しゃ~ね~な~おい、ピンク髪のねぇーちゃん。俺が勝ったらパフェ奢れよ。」

 

「あぁ約束しよう。」

 

銀時が戦うと知って、シグナムは少し喜んだら顔をする。

 

「あっ、その前に、おねーちゃんも魔導師って奴なの?」

 

「ああ、そうだが?」

 

「残念だが、俺はその魔導師って奴じゃない。だから、魔法は無しでヨロシク」

 

「むぅ~確かにそれではフェアではないな‥よかろう。では、暫し待て」

 

そう言ってシグナムは寮の方へ行き、再び訓練場に姿を現すと彼女の手には「京都みやげ」と書かれた木刀が握られていた。

 

(戦闘狂の相手はめんどいしなささっと終わらせよ。)

 

と思いながら、

 

どん、

 

すっ

 

「はい俺の勝ち~。」

 

あっという間に勝敗がついた。

 

 

~side見学人~

 

またも瞬殺劇だったのでぽかんとしている見学人たち、だがリボーン達は、

 

「見えたか?ツナ。」

 

「うん、ギリギリ。」

 

「すごく早い。」

 

「えっ見えたん今の!?ちょっと私らに解説お願いしてええか?」

 

「あっはいまず突撃したあの人の手首を木刀の柄の部分で衝撃を与えそしてそのまま刀を離した女性の首に持ってきた。と説明するならこのぐらいです。」

 

「ありえないだろそれが本当ならあいつはシグナムの攻撃を一瞬で見切ったってことだぞ。」

 

「まっ、それは経験の差だぞ。」

 

そして銀時が戻ってくると、

 

「お疲れ様」

 

「すまんな~シグナムは戦闘狂やさかい勘弁してな。」

 

「あぁそれは見てたらわかるな。」

 

「でも珍しいですね。銀さんいつもならこうゆうのは模擬戦すら渋りそうなのに」

 

「今日は気分が良かったからな糖分切れたけど それに‥‥」

 

「それに?何ですか?」

 

「いや何でもねぇよ」

 

と言いながら、ツナとリボーンを見る。

 

「ほら、次はお前の番だ!!さっさとやってこい、このダメツナ!!」

 

「そんな言い方しなくてもいいだろ!!」

 

「うるせー!!」

 

「へブッ」

 

と言いながらツナに蹴りを入れる。

 

 

~side銀時のアタマの中~

 

(俺とあいつとの関係とは少し違うがこの2人も俺らと同じぐらいの信頼関係はある。久々にこんなの見られたんだ、これぐらい良しとするか‥‥)クス

 

銀時は誰にも気づかれる事無く、口元をフッと小さく笑みを浮かべた。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的5 いやでも戦闘モードになると雰囲気が変わるがあれはないだろう。

銀時達の模擬戦が終わり、次はいよいよツナ達の番になり、ツナと炎真は先に行っていた。

 

「なぁ、ツナ達にもあの機械を相手にするのか?」

 

リボーンがはやてにツアの模擬戦相手に訓練用のガジェットを使用するのかを尋ねる。

 

「そうしてもらおうと思っとるんやけどなんでなん? それとも生徒さんが心配なん?」

 

「いや別に機械でもツナ達は余裕で勝てるが、ツナの戦闘能力を引き出してぇなら相手は「人」の方がいいぞ。」

 

「ん?わかった。ほんなら‥「フェイト、なのはお前ら相手してくれ。」」

 

はやてはティアナとスバルに相手をしてもらおうとしたが、リボーンはなんと、六課の体長格、しかも管理局のエース2人にツナの相手を指名した。

 

「っ!?いやいや、流石にフェイトちゃんとなのはちゃんの2人の相手はいくらなんでもきついで、おたくの自慢の生徒でも‥‥」

 

はやては慌てて止めるが、

 

「無理ならいわねぇ。それとさっきのヘタレている所を見て、舐めているかもしれないから言っとくがあいつは、俺の贔屓目無しでも強ぇぞ。」

 

リボーンは、はやてにツナをなめるなと挑発めいた言葉を含めて言い放つ。

 

「わ、わかったわ。ほんなら行けるか?フェイトちゃん、なのはちゃん?」

 

「うん。わかった。」

 

「ツナ君がそれでいいなら‥‥」

 

はやてに言われて、フェイトとなのははツナの模擬戦の相手をする事になった。

 

「ねぇ、銀ちゃんあいつら強いアルか?」

 

「さぁ、まぁ見た感じは冴えないがな。」

 

「だよネ~私、あいつから新八と同じ感じするアル。」

 

「ん?同じ感じ?」

 

「ぱっとしない、ツッコミしかない、ヘタレでダメなヤツ。大人になったら、絶対にマダオになるタイプね」

 

「なっ何だとー!! でも確かにあの子から強いとかは感じないですね。」

 

「百聞は一見に如かず。まぁ見とこうぜ。」

 

銀時達万事屋一行はツナが管理局の誇るエース達相手にどんな戦いをするのかじっくりと見学させてもらう事にした。

 

 

~sideツナ達~

 

フェイト達が訓練場に降り立ち、自分らがツナの相手だと教えると、

 

「えっ!?フェイトさん達が相手なんですか!?」

 

「うん、リボーンくんからのご指名で‥‥」

 

「あいつ余計な事を‥‥」

 

リボーンのした事に対し、ほんの少し顔を歪ませるツナ。

 

「それじゃあ、はじめよっか。」

 

となのはが切り出したらツナは「27」と書かれた手袋を付けて準備する。

 

((何で手袋をつけてんだろう?))

 

ツナの行動になのはとフェイトが首を傾げる。ツナはそんな、フェイト達の疑問を他所に準備を進めていき、死ぬ気丸と呼ばれる薬を飲みボォと額から炎が灯った。

 

「「「「!!」」」」

 

皆が驚くのも無理はないツナがまとっていた優しそうな雰囲気は全く無くなり、全てを圧倒するかのような威圧感が放たれていた。

 

 

~side見学人~

 

皆が驚いている中、神楽が、

 

「な、なんネあれ‥ほんとにあいつアルか。さっきまでとは別人ネ‥‥」

 

ツナの余りの変わりように神楽も思わず声が震える。

 

「さっきと全然違う。」

 

「改めて見ると本当に別人見たいね、ね、ティア」

 

「うん」

 

スバルとティアナは1度、ツナの戦いっぷりを見ているが、あの時は敵がいたため、ツナの様子をマジマジと見る余裕がなかったが、今回の模擬戦を見て、ツナの豹変っぷりを見て、驚いている。

 

「へぇ~コリャ先生のお墨付きも分かるってもんだ。」

 

銀時が感心する様にツナ達の事を見ながら言う。

 

「まだまだだぞ。強いとは言ったがまだ進化の余地はあるしな。ツナも炎真もな‥‥」

 

「あれでか!!」

 

「炎真さんも綱吉さんほど変わって無いけど、でも‥‥」

 

「2人とも凄い」

 

「うむ、後であの2人にも手合わせを願おう。」

 

シグナムはこの後もツナ達に模擬戦を挑もうとする。

 

「まだやる気かよこのバトルジャンキーが!!いい加減にしないとはやてに怒られるぞ。」

 

銀時が呆れながらシグナムに言い放つ。

 

「なぁリィンあの炎から魔力感じる。」

 

「いえ全く感じないです。」

 

はやてはリィンにあの炎に魔法反応があるのかを尋ねる。

しかし、ツナの炎からは魔法反応が一切感じられなかった。

つまり、あの炎は魔法の類ではないと言う事になる。

当然火炎放射器と言った物を頼ったモノでもない。

 

「なぁリボーンくんあの炎は?」

 

謎の炎の出所をはやてはリボーンに尋ねる。

 

「あれは炎であって炎じゃないぞ。あれは炎の形をした超圧縮エネルギー通称『死ぬ気の炎』。因みに今のツナたちの状態は『超死ぬ気モード』だ」

 

「はぁ?超死ぬ気モード」

 

単語の中に何やら物騒な言葉が出てきたので、はやては顔を引きつらせる。

 

「あとはあいつらが帰ってきたら説明するぞ。」

 

リボーンはもうすぐツナ達の模擬戦が始まるので、集中してみたいと言う事でこれ以上の質問は模擬戦後に答えると言って、訓練場をジッと見ていた。

 

~sideツナ達~

 

(す、凄いさっきまでとは全然違う。)

 

(これはちょっと手を抜けないな‥‥)

 

デバイスにバリアジャケットを展開したフェイトとなのはは、眼前の様変わりしたツナ達をジッと見る。

 

「どうした、フェイト、なのは‥来ないならこっちから行くぞ。」

 

「さてと、やりましょうか」

 

といいツナはフェイトに 炎真はなのはに向かい

 

((速い!!))

 

なのは達はギリギリガードして距離をかせごうとしたら、

 

「させない!!」

炎真が手を動かして

 

「「うわぁ!?」」

 

地面に押し付けられたそしてツナと炎真の蹴りをもろにくらう。

 

(速いだけじゃない攻撃の1つ1つが重い。)

 

「レイジング・ハート!!」

 

自らの愛機であるレイジング・ハートに指示を出す。

 

「アクセルシューター・・シュート!!」

 

なのはは無数の魔導弾を出現させて、その魔導弾、全弾は炎真を襲う。

だが、それを炎真が躱しながらなのはの懐へと近づいていた。だが桃色の鎖が炎真の両手を抑える。

なのははチェーンバインドで炎真の手を封じた。

 

「しまった!!」

 

「君の不思議な力を使う時、手を挙げていたから防がせてもらったよ。」

 

「くっ!!」

 

流石は管理局のエース、炎真の僅かな体の動きを見逃さなかった。

 

「ディバインバスター!!」

 

手を封じた事で、炎真はもう攻撃できないとふんで、なのははこれで終わりと言わんばかりに炎真にディバインバスターを撃ち込んだ。

 

 

 

~sideツナ~

 

少し前のツナとフェイトは、

 

「正直びっくりしたよ、ツナ!」

 

フェイトはツナの事を褒め

 

「ん?何がだ?」

 

「私よりも速いかもしれないそのスピード、そしてパワーのある拳‥ツナ自身が物凄く鍛えられているから」

 

「.....お褒めの言葉は有難いが、今は勝負の真っ最中...後の事は終わってからにしよう...」

 

「うん、そうだね。」

 

フェイトは意気揚々と答えた。

 

(今度はこっちから近接戦で戦おう)

 

とツナに向かいフェイトが、

 

フェイトはバルディッシュでツナを攻撃しているがツナはそれを最低限の動きで躱していった。

 

(全く当たらない、どうして‥‥)

 

と考えているうちに、

 

「ふん!」

 

ツナの拳がフェイトにヒットして、

 

「きゃ!」

 

バランスを崩す。更にツナは一回転してフェイトを蹴りあげた。

 

(動きに隙がない、近接戦じゃ勝てるかどうか...なら)

 

「プラズマランサー..ファイア!!」

 

フェイトの魔法弾がツナに向かい飛んできてツナはそれを当然のように躱していった。ツナが自分に接近して来たのを確認して

 

(今!)

 

魔法弾の行く方向を変えツナに向かわせた。

ツナは、

 

(あの光弾、追尾が可能なのかっ!?)

 

とフェイトに向かうのを止め、そしてふと炎真を見るとそちらもピンチになっていたので、

 

(ならっ)

 

ツナご自慢の超スピードの高速移動で更に速度を上げた。速さに自信のあるフェイトもこれに目が追いつけず

 

(消えた!?)

 

ツナはフェイトの背後に周り裏拳を入れた。

 

「くっ!」

 

魔法弾とフェイトを一瞬足止めさせて炎真の方に向かい、フェイトもそこは見ていたがフェイトから見ればなのはの攻撃にツナが代わりに盾になろうとしているようにしか見えなく魔法弾も動かさず...

 

「え?ツナ君」

 

「ナッツ形態変化、防衛モード!Ⅰ世のマント!!」

 

ドカーン!!

 

なのはのディバインバスターはツナに命中し、爆煙が起こる。

 

「もうなのは、あれはダメでしょ。流石にあの威力は」

 

「ごめんつい熱くなりすぎた。」

 

フェイトはいくらなんでもやり過ぎだと注意する。

 

~side見学人~

 

「あ、アカン、急いでツナ君達の確認を!!あの威力は洒落にならへんで!!」

 

はやてが急いで訓練場に行こうとしたら、

 

「待て!」

 

「あぁまだ終わってねぇかもよ。」

 

リボーンと銀時は、はやてを止める。

 

「えっ?リボーン君、銀さん、どうゆう意味ですか?」

 

「見てみろ‥‥」

 

「あいつらは無傷だ。」

 

「はぁ!?」

 

はやては信じられなかった。

なのはのあのディバインバスターを喰らいながらも無傷と言う事が‥‥

 

 

~sideツナ達~

 

「今考えたら結構やばいかな?」

 

「結構所じゃないよ!!」

 

となのはとフェイトが言い合っている間に、

 

「何をしている?まだ終わりじゃないぞ。」

 

「「えっ!!」」

 

突然、この場に聞こえる筈のない声がした。

 

「大地の重力」

 

と叫び4個ぐらいの球体が飛んできた。

 

「何これ引っ張られる。」

 

「ど、どういう事なの!?」

 

「Xカノン」

 

「っ!?」

 

「くっ!?」

 

ギリギリ交わしたがこれでは終わらない。この球体の引力のおかげでツナの技は曲がっていって最後には

 

ドーン!!

 

「あう」

 

「きゃっ!」

 

そしてツナと炎真は1発ずつ殴ってなのは達を地面に落として拳を前にし、

 

「「これで終わり(だ)」」

 

なのは達へと迫った‥‥。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的6 自己紹介は印象に関わるから大切に

「「これで終わり(だ)」」

 

ツナと炎真の拳がなのはとフェイトへと迫る。

思わず、目を閉じるなのはとフェイト。

しかし、いつまで待ってもその衝撃と痛みは襲ってこない。

恐る恐る目を開けると、其処には拳を寸止めしているツナと炎真の姿があった。そして

 

シュゥゥーンと炎が消えて

 

「降参、してもらえますか?」

 

ツナはなのはとフェイトに降参を呼びかけた。

 

「悔しいけど、私達の負けかな」

 

「う、うん」

 

なのはとフェイトはツナ達に降参し、彼らの模擬戦も終了した。

 

 

ツナ達が上に戻ると神楽が大興奮していた。

 

「お前らすげぇアルな!!かっけぇアル!茶髪の方最初見た時は『うわぁこいつゼッテー新八と同じツッコミしかできねぇヘタレ野郎だ』と思ってたけど、お前らすげぇ強いアル!!」

 

とこ興奮しながら言ってくるので、少し対応に困っていた。

 

「ちょっ、神楽ちゃんその人結構困っているから。」

 

「あはは、えっと」

 

「あっ、私の名前は神楽ネ。そんでこっちのダメがね掛け機が新八アル。」

 

「ちょっ、何!?その紹介、もっとしっかり紹介してよ!!」

 

「うるせぇメガネとツッコミしかないダメがねが。お前なんてせいぜい成分の95%メガネってことぐらいしか紹介するしかないネ。」

 

「んだとー!!お前なんて年がら年中酢昆布食っているだけだろうがこんペッタンコ娘。」

 

ギャーギャー ギャーギャー

 

新八と神楽との喧嘩が始まった。

 

「あっあの~」

 

「気にすんな。その内、新八が負けて終わる。」

 

銀時が新八と神楽の喧嘩の末路をツナ達に説明する。

 

 

「お疲れ様、なのはちゃん、フェイトちゃん。」

 

はやてはなのはとフェイトに労いの言葉をかける。

 

「にゃはは負けちゃった‥‥」

 

「私も完敗だよ~」

 

「まぁ、ツナ君達がなのはちゃんらの予想より強かった‥今日の敗北をきっかけになのはちゃん達も精進せなアカンな」

 

「うん」

 

「そうだね」

 

正直、なのは達がツナ達に対して非魔導士なのだから、自分らは決して負けないと言う慢心があった。

今回の敗北は非魔導士だからと言って、決して魔導士には敵わない、そんな概念はあり得ないと言う教訓を得た。

 

一方、管理局のエース達に勝ったツナ達は‥‥

 

「おめぇまだ、死ぬ気丸の飲まないとハイパー化できねぇのか!?まだまだあめぇな。これは明日からねっちょりしごかねえとな。」

 

とリボーンがまだまだ修行が足りないと言う。

 

「ねっちょりはやだ~。」

 

ツナの絶叫が響き、そしてその光景を見て微笑んでいる炎真であった。

 

 

~説明~

「さてと、じゃあ説明してもらおか?まず、君達は何もんなんや?力もそうやし明らかに戦闘なれしとったし」

 

ツナはこの質問で言葉が詰まり。

 

「えっえっとー「ツナはイタリア最強のマフィアの10代目だぞ。」ちょっ、リボーン!!」

 

「何だ?」

 

「『何だ?』じゃないよ!!何、勝手に言ってんの!?それに俺は継がないって言っているだろう。」

 

「うるせーなそろそろおとなしく継げ。」

 

「い・や・だ」

 

「まぁ、ツナくん他の人達がリアクションに困っているから。」

 

「なぁ、銀ちゃんマフィアって何アルか?」

 

「マフィアってのはな、怖い顔をして年がら年中サングラスつけてる人達のことだ」

 

「じゃあマダオもマフィアだったアルか!?」

 

「違います!!それはあんたのイメージでしょうが!!」

 

「ツナがマフィアってのはホント?」

 

とフェイトが聞いて。

 

「候補と言うのは本当です。継ぐ気は全く無いけど。」

 

「いい加減にしろ!!このヘタレ!!」

 

と言いながらツナの腹を蹴るリボーン。

 

「へブゥ!!」

 

カエルが潰れたような声を出して、ツナは腹を抑えながら前のめりになった。

 

「マフィアって事は綱吉くんあれか、イタリアの可愛い女の子をぎょーさん愛人にしてんのか!?」

 

「ぶふぅ」

 

はやての間違った印象にツナはふいた。

 

「えっ!?ツナくんまさか~」

 

とスバルがティアナも何も言ってないが警戒し、距離をとり始めた

 

「ちょっ、やめてください!!そんな汚物を見る様な目は!?だいたい俺は愛人所か彼女すらまだいません!!」

 

「まぁ、冗談はこのぐらいにして、炎真君もマフィアなん?」

 

「えっまぁ~その‥‥」

 

「かくさんでええよ。綱吉君たちがマフィアでも此処じゃあんま関係あらへんし。」

 

「えっでも、ここって犯罪者と戦う所じゃ。」

 

「だって君達の性格はわかっているし虫も殺せない顔しとる。第一君らは犯罪をおこしてへんやろう?」

 

と言いわれぼーっとしてる。

 

「何はやての顔に見とれてやがる。」

 

「ほんまかツナくん私に惚れてしまったか。」

 

と言いながらウインクをした。

ツナは慌てて、

 

「違いますよ!!ただそんな風に言われたのが嬉しくて ...って、いつの間にツナ呼び!! 」

 

「何や嫌か?スバルたちがそう呼んどったから。」

 

「あっいえ急にそう呼ばれたので。そっちの方がいいです。皆さんもそうしてください。」

 

「「「「「「わかった(アル)」」」」」」

 

「またはダメツナでも可。」

 

「リボーン!!。」

 

「「「「「「ははははヾ(≧▽≦)ノギャハハ☆」」」」」」

 

「さてと超死ぬ気モードと炎真くんのあの力とかも教えてもらうで。」

 

「僕から行くよ」と炎真が

 

「僕のあれは死ぬ気の炎の力何だ。死ぬ気の炎にも種類があってそして僕の力は僕のファミリーにしか使えない特別な大地の7属性の力で、僕の力は、大地の炎特徴は『重力』。だからさっきのようなことが出来たんだ。ただし、なのはさんの読み通り手を封じられると制御がきかなくなる。」

 

「炎真くんのファミリーのみ、といゆうことは、ツナくんのは、少し違うん?」

 

「俺の力は、大空の7属性の大空の炎特徴は調和」

 

「ちょうわ?」

 

リボーンが、

「すべてに染まりつつ全てを飲み込み包容するそれが大空だ。」

 

「なんかよく分からないけどかっこいい。」

 

スバルが目を輝かせながら言う。

 

「あっ、あはは。」

 

少しツナが苦笑い。

 

「次は、超死ぬ気モードについてだね、あれは内なる才能を起こすだったかな。」

 

「ツナの中には初代が持ったと言われるブラット・オブ・ボンゴレ通称超直感がある死ぬ気モードはこれを引き出すんだ。」

 

「超直感って?」

 

「ものすごく直感だと思えばいいぞ。例をあげるなら相手の動きを直感する。とかだ。」

 

「なるほど私達のレアスキルみたいなものか。」

 

「そうそう死ぬ気の炎は兵器のエネルギーにもなる。こんなふうにナッツ!」

 

ボゥ

 

「ガぅ。」

 

「「「「「っつ」」」」」

 

次の瞬間

 

「「「「「可愛い!!」」」」」

 

まず最初に、

 

「何アル!これめっちゃ可愛いアル。」

 

と、いいながら神楽がナッツを抱きしめた。そしてナッツの取り合いは、ナッツの炎がなくなるまで続いた。因みにそのナッツは最初の抱きしめで既に虫の息だった。

 

「次に銀ちゃんたちの世界について教えて。」

 

「俺の世界は、今は異国の天人 と呼ばれる宇宙人が地球に攻めてきて無理やり開国させたぐらいしかないぞ。」

 

「今さらっとものすごいこと言ったよ!!宇宙人ってホンマなんそれ。」

 

「お前らの目の前にもいるだろうが。」

 

と言いながら神楽を指指した。

 

「えっ?神楽ちゃんて宇宙人だったの!!」

 

「そうアル気が付かなかったアルか?」

 

「気付かないよまんま私達と同じじゃん。」

 

「さっきも言ったろう。こいつは宇宙最強の夜兎族だって。」

 

「そやけどそれは言葉のあやみたいなもんやと。」

 

「銀時たちのペットの定春と言う犬も?」

 

「あれは地球産だ」

 

「へっへぇ~そうなんだ‥‥」

 

(あっちの方が宇宙人に見えるんだけど‥‥)

 

とフェイトは苦笑いをした。

 

「なら次は私らの番やな。改めてこの機動六課の最高責任者の八神はやてです。そしてFWメンバーの」

 

「スターズ部隊長の高町なのはです。」

 

「私がスターズの副官のヴィータだ。よろしく。」

 

「へぇ~こんなちっさい子どもがぁァァァァアーー」

 

銀時がヴィータに感心し、頭を撫でながら言うと、銀時はヴィータの手痛い反撃を受けた。

 

「今のようにヴィータああゆうこというとあんな感じになるで。」

 

((言わなくてよかった~))

 

とツナと炎真が思っててるとリボーンが

 

「ヴィータ、こいつらが『言わなくてよかった』ってことを思ってたぞ。」

 

ギロッ

 

どうなったかは皆さんのご想像に、

そして死体になっていた3人も復活したら。

 

「改めて、スターズ3スバル・ナカジマです。よろしく~」

 

「スターズ4ティアナ・ランスターです。」

 

「私はライトニングの隊長のフェイト・T・ハラオウンです。」

 

「副官のシグナムだ。」

 

「ライトニング3のエリオ・モンディアルです!!」

 

「ライトニング4キャロ・ル・ルシエです。」

 

と言いながら炎真少しみた。炎真は気付いたのかニコッと返した。

 

「そしてこっちがフリード。」

 

「キュウー」

 

「「「えっドラゴン!?」」」

 

と言う下りがあり。

 

「そんじゃ明日からこのメンバーでがんばんでー」

 

「「「「「オォー!!」」」」」

 

 

機動六課にて、新たなメンバーが加わったその頃‥‥

 

 

~side???~

 

 

ベルカ地区 某山間部にある洞窟の中を進んで行くとそこは不気味な空間がひろがっていた。

通路の両脇には沢山の生態ポッドがあり、各ポットの中には全裸姿の女の人が入って居り、その周囲にはへんてこな機械が常に作動音を奏でている。

そこはまさに特撮ヒーローによくある悪の秘密基地そのものである。

そして、この不気味な場所こそ、管理局が広域指名手配をしているジェイル・スカリエッティのアジトであった。

そのアジトでは、このアジトの主でもあり、広域指名手配犯である、ジェイル・スカリエッティが一心不乱にキーボードを打ち込んでいた。

 

「手土産は気に入ってもらえたかな?」

 

すると、スカリエッティの背後から声をかけてくる1人の人物が居た。

 

「やあ、君か。勿論だよ。まだ全てのデータフォルダーを開けていないが、もう最初のデータを見た時から久しぶりに興奮したよ。このDNAデータを元に私の13番目の娘を誕生させる事も出来るし、『芙蓉プロジェクト』‥内容は兎も角、この『カラクリ』のデータは役立てそうだよ‥このDNAデータと『カラクリ』のデータを合わせて新型のガジェットも制作して、戦力の向上が図れるよ」

 

スカリエッティは狂気に満ちた笑みを浮かべながら背後に立つ人物に声をかける。

 

「君が突然、私のアジトに転移し、トーレ達をボコボコにした時は驚いたがね」

 

「アレは、此方の話を聞かずに襲いかかってきたアイツらが悪い」

 

「しかし、君の強さもなかなか興味深かったよ。まさか、戦闘機人が非魔導師の人間に負けるのをこの目で見るとはね‥‥さて、私はこれから新たな娘の製作に移るよ‥ウーノ、クアットロ、君達は新型ガジェットの製作をしてくれたまえ、データは君達の端末に転送してあるから」

 

「分かりました」

 

「お任せください、ドクター」

 

スカリエッティの傍には彼と同じ、紫色の髪に金色の目、秘書の様な女物のスーツ姿の女性と茶髪の眼鏡、青を基調としたボディースーツの上に白いマントを羽織った女性が居り、スカリエッティは彼女らに指示を出した。

その様子をデータの提供者と思われる人物がジッと見ていた。

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的7 今どき電車ジャックなんて流行んないそんなんするならイヤホンジャックでもつけてろ

 

 

「うっ、ウーン。もう朝か。」

 

朝早く目が覚めた炎真は、背伸びをした後、辺りを見渡すと、

 

「あれツナくん、それにリボーンもいない。」

 

同室となったツナとリボーンが居なかった。

 

 

~sideツナ&リボーン~

 

炎真が起きる1時間ほど前にリボーンによってたたき起こされたツナは、

 

「リボーン、何もこんな朝早くにやらなくてもいいだろ!!」

 

「うるせー!!お前が不甲斐ないから時間がいくらあってもたんねーんだろうが!!」

 

 

~炎真side~

 

ツナと一緒にリボーンもいないからまた何か鍛えられているんだろうな。そう思いながら、散歩してたら、炎真はなのは達に声をかけられた。

 

「あら、炎真君、おはよう。結構朝早いのね。」

 

「おはようございます。なのはさん。」

 

「おはようアル、炎真」

 

「炎真君おはよう。」

 

「おはよう神楽ちゃん、新八さん。FWのメンバーも、それで?こんな朝早くから何をしているの?」

 

「何を?って特訓アル。昨日のお前ら見たら、いってもたってもいられなかったネ!!」

 

「その割には僕が起こさなかったら起きなかったけどね。」

 

「うるせーよぉ、新八。」

 

「炎真君。銀さん知らない?朝起きたらいなくて。」

 

「さぁ、見てないけど。」

 

「そういえば炎真さんツナさんは?」

 

とエリオが聞くと、

 

「ツナくんも朝練じゃないかな。」

 

「ツナさんも!?」

 

「多分。まぁリボーンもいなかったから無理やりだろうけど‥‥」

 

(ツナ君、ご愁傷様)

 

炎真は心の中で、ツナにお悔やみ言葉をかけた。

 

「そうだ炎真君、炎真君が良ければFWの皆の相手してくれない?」

 

「えっ!?僕が‥ですか?」

 

「炎真君少し変わった力だし、FWの皆にもいい経験になるかもしれないと思って‥ダメかな?」

 

「僕はいいですけど‥‥」

 

「なら、お願い。ってことで今回は炎真君相手に10分間に1回攻撃を当てられたら成功と言うルール。あと炎真君、重力は出来るだけ加減してね?最初から全力でやったらついていけなさそうだから。」

 

「わかりました。」

 

さて、炎真相手にFWメンバー+新八、神楽はまず新八たちは飛べないので、スバルのウィングロードを走りながら戦っていた。そして、勝負の一時まず新八が打ち込むがこれは止められそして投げられそこに運悪くスバルが居て2人は衝突する。

 

「「うわぁぁぁ!!」」

 

「っと、ごめん!!」

 

するとストラーダを構えキャロに支援してもらっているエリオがいた。

 

「かなり加速するけど気をつけて。」

 

「大丈夫。スピードだけが取り柄だから、行くよ、ストラーダ!!」

 

ソレを見た炎真はとっさに重力をかけてスピードを抑え、エリオの突きを躱した。

だが、その上にはそれを待ちかねたかのように神楽が待っていた。

 

「ホワター!!」

 

ドーーーーん

 

「いつつ」

 

「はい終了。」

 

「お見事。」

 

「皆もよかったよ。そしてあの神楽ちゃんの行動‥あれはティアナの指示よね?」

 

「うん、『もしものことがあるから出来るだけ動かずに居ろ』って言ってたアル。」

 

「ティアナ、なかなかいい指示じゃない。こんど指揮官訓練受けてみる?」

 

「いえ、戦闘訓練だけでいっぱいいっぱいなんで‥‥」

 

「ん?何か焦げ臭くないアルか?」

 

神楽の鼻腔が何かが焼ける臭いを探知する。

 

「「「えっ」」」

 

神楽の指摘を受けて、皆は辺りを見回す。

すると、その焦げ臭いにおいの発生源は‥‥

 

「スバル、あんたのローラー!」

 

「えっ?ああああー!!」

 

スバルの履いているローラーからは黒い煙が出ていた。

 

「あっ!?あの時!!」

 

と言われ炎真と新八が同時に「「ごめんなさい」」と謝る。

炎真は新八を投げ、新八は炎真に投げられ、スバルと衝突したのが、原因だとおもった。

 

「新八、何やってるネ!!人のもん壊すなんて、サイテーアル!!向こう5年はスバルの下でタダ働きアルね!!」

 

「だ、大丈夫だよ、後でメンテスタッフに頼むから。」

 

「ティアナのアンカーガンも結構厳しい?」

 

「はい騙し騙しに使っていましたから‥‥」

 

「皆訓練にも慣れたからそろそろ実践用のデバイスに切り替えようか。」

 

となのはの言葉に皆は首をかしげた。

 

 

~ツナside~

 

リボーンがストップウォッチを片手に、

 

「10分経過」

 

カン、キン、グァン、ドーン

 

「流石にいい動きしやがる。」

 

「銀さんこそ。」

 

「んじゃ、朝はこのぐらいにするぞ。」

 

しゅ~とツナの炎が消えていき。

 

「はい、ありがとうございます。銀さんこんな朝早くから付き合ってもらっちゃって‥‥」

 

ツナは銀時に礼を言う。

 

「あぁ~別にいいって、今日は朝早くに目が覚めただけだ。」

 

「ハイパー化も死ぬ気丸無しでもだいぶ伸びたが、まだまだあめぇ~もっと鍛えないとな。飯食ったらこんどは、基礎の修行だ。」

 

「はぁ~」

 

(俺も昔は、あいつに負け続けたっけな‥‥)

 

ツナとリボーンその光景をみて昔を思い出す銀時であった。

 

 

~シャワールーム~

 

炎真とエリオそして新八は女子達のシャワーが終わるまで、近くの通路で彼女らを待っていた。

 

「あの炎真さん。炎真さんのマフィアの仲間ってどういう人なんですか?」

 

「えっ?僕のファミリー?」

 

「はい。炎真さんにとってそのファミリーってどういうモノなんですか?」

 

「急にどうしたの?」

 

「その‥僕、ほかの人と少し生まれ方が違っていてそれで親に捨てられたんです。」

そう言って、ものすごく悲しそうな瞳をしていたエリオに対して炎真は、

 

「エリオ君にとって家族って何だと思う?「えっ」家族も仲間もあまり変わらないよ。自分が支えたいと思う気持ちがあってほかの人も自負を支えてくると思える。ならそれが家族じゃないのかな?きみがどんな生まれ方したか知らないけど家族にとってはそんなのはあまり関係ないよ。僕自身はエリオ君を支えたいと思っているしね。」

 

と言って微笑む。

 

「なかなかいい事言うじゃねぇか。」

 

「銀さん!?どこいってたんですか?」

 

「ツナの相手をしてた。つーか、新八。お前もあれぐらい言えるようになれよ。そんなんだからモテねぇだよ。」

 

「うるせー!!あんたもモテてないでしょうが!!」

 

「あんだ~俺は天パじゃなかったらモテているよ!!」

 

と叫びあっている銀時と新八の言い合いを見てエリオは、はははと笑っていた。

 

 

 

~それから少し時間が経ち‥‥~

 

新デバイスを見に来たスバル達、そこへツナも途中で合流した。

 

「これが私達の新デバイス‥‥」

 

「そーでーす(*^o^*)設計は私、協力はなのはさん、フェイトさん、レイジングハートさん、リィン曹長」

 

楽しそうに解説をするのは、シャリオ・フィニーノ。皆は彼女をシャーリーと呼んでいる。

スバルとティアナのデバイスの形状は少し変わっていたが、エリオとキャロのデバイスは、見た目には特に変化はなかった。

 

「あれ?ストラーダとケリュケイオンは、変化はないのかな?」

 

「うん」

 

「違いマース。変化がないのは見た目だけです」

 

「リィンさん!?」

 

「2人はまだちゃんとしたデバイスを使用経験が無かったから感触に慣れてもらうため基礎フレームと最低限の機能だけ渡していたんです。」

 

「あっ、あれで最低限?」

 

「ほんとうに?」

 

リィンの説明を聞き、驚いた顔を見せる2人

 

「皆が使うことになる機体は六課の前線メンバーとメカニックスタッフが経験と技術の粋を集めて作った最新型!!部隊の目的に合わせてそしてティアナたちの個性に合わせて作られた文句無しの最高の機体です。」

 

デバイスがリィンの元に集まり、

 

「この子達はまだ生まれたばかりですが、色んな人の想いを込めてやっと完成したんです。」

 

デバイスがティアナ達に渡り、

 

「だから、ただの道具や武器と思わず大切に、だけど性能ほ限界まで全力で使って上げてください。」

 

「何かツナくんのナッツみたいだね。」

 

「そうだね、俺もナッツは一様兵器だけど仲間で相棒だし」

 

スバルが、

 

「神楽ちゃんと新八君はデバイスとか持たないの。」

 

と言ったが、

 

「私は何時でもアナログネ。」

 

「ぼくもカラクリは苦手だし。」

 

とのこと。

しかし、それ以前に、神楽と新八には魔力もリンカーコアも無いので、デバイスがあってもそれを起動する事は出来なかった。

 

「ごめんごめんお待たせ~。」

と言いながらなのはがやって来た。

 

「なのはさん!」

 

「今から説明しようとしていたとこ。」

 

「まず最初に、その子たちは何段かいかによって出力リミッターがついているのね。1番最初だとそんなにびっくりするほどのパワーが出るわけじゃないからそれで扱いを覚えていって」

 

「っで、各自扱えるようになったら、私やリィンそしてフェイト隊長そして、シャーリーの判断で徐々に解除していく。」

 

「レベルアップしていく感じですね。」

 

「あっ出力リミッターってなのはさんたちもついているよね。」

 

「私達の場合は、自分のリンカーコアにもだけどね。」

 

「「「「!!」」」」

 

なのはの自分自身にもリミッターがつけられている事を言うと、これにはツナ達も驚く。

 

「能力限定って言ってね、ウチの隊長達は皆にリミッターがつけられているんだよ。私とフェイト隊長とヴィータ副隊長とシグナム隊長・・」

 

「あとはやてちゃんもね。」

 

「うん」

 

「えっと」

 

ティアナ以外は何でと言う顔をしている。

 

シャーリーが漂流組にもわかりやすく説明する。

 

「ここは保有できる魔導師の統計規模は決まっているの。」

 

すると、リボーンが不機嫌そうな顔になり、

 

「つまり、お前らは全力の出せない相手にあの体たらくか、こいツナ、炎真。お前ら2人、お仕置きしてやる。」

 

「いやだぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

と言うツナ達の断末魔が聞こえた。

そんな時、

 

ヴーーーヴーーーヴーーー

 

突如、警告音が鳴った。

 

「これはっ!?」

 

「一級警戒態勢」

 

「グリフィス君」

 

「はい、教会本部からの出動要請です。」

 

「グリフィス君、状況は!?」

 

はやてはグリフィスに現状を尋ねる。

 

「教会の調査団が追っていたレリックらしきものが見つかったで!!場所はエイリム山岳丘陵地帯。対象は山岳をリニアレールで移動中や。」

 

「移動中って。」

 

「まさか。」

 

「そのまさかやガジェットが制御をのっとたんや!それに未確認型のガジェットもおるかもしれん。いきなりハードな初出勤になったけど行けるか?なのはちゃん、フェイトちゃん。」

 

「私は何時でも行けるよ!!」

 

「私も!」

 

「スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、そしてツナ君、炎真君。皆OKか。」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

「あれ?はやてさん、僕らの名前呼ばれなかったけど。」

 

新八が自分ら万事屋一行の名前が呼ばれなかったこちに首を傾げる。

 

「ごめん、銀ちゃん達の出撃は今回なしや。流石に剣でリニアを止めるのは無理やろう?

 

「た。確かに無理ですけど‥‥」

 

「新八!!何、弱きになっているアルか!?リニアぐらい素手で止めればいいネ。」

 

「ごめん神楽ちゃん。ソレ、マジで冗談に聞こえないから‥‥」

 

「グリフィス君は隊舎内での指揮、リィンは現場での管制!!あと銀ちゃんはおらんねん。せやったら伝えといて、グリフィス君の補助をしてやと。」

 

「聞こえているよ。はぁ~メンドーなもんやらせやがって。」

 

といつの間にか来ていた銀時。

 

「なのはちゃんフェイトちゃんは現場指揮や。」

 

「「わかった」」

 

「皆は先行してすぐ追いつく。」

 

「ほんなら、機動六課、出動や!!」

 

と叫び初出勤がはじまる。

 

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的8 不良を見かけたら目を合わせずにそっと離れよう

 

 

~side六課司令室~

 

「はやて隊長、リニア車内のガジェットの反応が突然、ロストしました!!」

 

「っ!?な、何やて!?いったい何があったんや!?」

 

「わかりません。ですがリニアに向かい大量のガジェットが接近しています。恐らく予備隊かと思われます」

 

「どうゆうこった。」

 

「わからねー‥ただその中にはだいぶ強いやつがいるだろうな。」

 

司令室にいるメンバーにはリニアの車内で一体何があったのか詳細は分からないが、ゲームで言うと頃の乱入者とステージのボスが登場したかもしれないと銀時はそう思った。

 

 

~sideリニア車内~

 

リニアの車内‥其処には何体ものガジェットの残骸と1人の人影があった。

 

「ちっ、何だよ、急に襲いかかってきたこのガラクタ共は‥‥」

 

とその足場にはガジェットの残骸が落ちていた。

その人物は残骸と化したガジェットを見下ろしながら、状況確認を始めた。

 

 

~side移動中のヘリ機内~

 

ヘリで現場に向おうとしていたなのは+FWメンバーとツナそして炎真達は司令室からのはやての通信を聞き、緊張度が増した。

 

「なのはちゃん!!きぃーつけて、リニアの車内に何かおるで!!」

 

「えっ!?」

 

「今さっき、車内のガジェット反応が突然消えたと思ったら、大量のガジェットが電車に向かっておる!!空中型だけじゃなく多分ほかの新型も色々居ると思うから十分に注意してや!!」

 

「こちらフェイト、機動六課司令室、こちらは現在パーキングに到着。車を止めて現場に向かうから飛行許可をちょうだい。」

 

「なら、私とフェイトちゃんとツナ君そして炎真くんが先に行って空中型を「いやそれはダメだ。」」

 

なのはの提案をリボーンが遮る。

 

 

~side六課司令室~

 

「あぁ電車内の物の事もあるし、どの道電車には行かなきゃならねぇ。だが、そこには絶対何か居やがる。新人メンバーだけで行くのは無理があんだろうしな。」

 

銀時が、通信越しでリボーンが言いたかった事をリボーンよりも先になのは達に教える。

 

「ってことで炎真、お前もFW陣について行ってやれ。あとツナ今回は、まだ死ぬ気丸で死ぬ気になってもいいぞ。」

 

最初は出鼻を銀時に挫かれたリボーンであるが、その後は何故かリニアへの突入メンバーを構成し、指揮をとった。

 

「えっ珍しい、こうゆう時は必ず無茶させるのに。」

 

「まだ、無理だろ。で、この作戦に何か異論はあるかはやて。」

 

「いや、無いです。(言いたくても言えないぐらいしっかりしとる。)」

 

(あれ?現場での指揮は確か私だよね?)

 

知らぬ間に指揮権をリボーンに奪われていたなのはであったが、あまりにリボーンの言っている事に理が叶っていたので、なのはもはやて同様、反論したくても出来なかった。

 

 

~side移動中のヘリの機内~

 

と言う事で、

 

「任務はレリックの回収。そして何者かがいると思うからそれの対処、敵なら迎え撃って。」

 

もうすっかり、現場での指揮権をリボーンに奪われてしまった前線部隊。

 

「ヴァイス君。お願い。」

 

「ウッス、なのはさん、ツナお願いします。」

 

リボーンにいつの間にか指揮権が移っていたが、そんな事を気にする様子もなく、準備は着々進んで行く。

 

「炎真君。」

 

「何」

 

そしてツナの額に火が灯り、

 

「皆を頼んだ。」

 

「任せて!」

 

そして空に飛び出した。

 

「現場の指揮は私がします。」

 

と言っていつの間にか服を着替えていた。

ようやく指揮官らしいセリフが言えたなのは。

 

「さて現場に着いた何がいるかわからない。覚悟はできたかお前ら。」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

そんな中でもやはり、リボーンは指揮官らしく突入メンバーを鼓舞するリボーン。

 

「スターズ3、スバル・ナカジマ」

 

「スターズ4、ティアナ・ランスター」

 

「「行きます!!」」

 

2人は新デバイスを起動させて、セットアップし、バリア・ジャケットを装着した。

 

次はライトニングの番なのだが少しキャロが少し不安がっていたので、

 

「大丈夫だよ。」

 

と炎真が、そしてエリオが手を差しのべる。

 

「一緒に降りようか。」

 

「「はい」」

 

「ライトニング3、エリオ・モンディアル。」

 

「ライトニング4キャロ・ル・ルシエ。」

 

「「行きます!!」」

 

「さて僕も行こうか。」

 

炎真も空に飛び出した。

 

 

~sideリニア車内~

 

「ん?何か来やがるな‥‥」

 

自分に向かって近づいてくる気配を感じ取ったその人物は、戦闘モードに入った。

 

リニアの上にはスバル、ティアナが先に到着していた。

 

「中の状況を少し見ます。」

 

「待って下さい、何がいるのかわからないのですよ。」

 

車内を見ると言うティアナにリィンは大丈夫なのかと尋ねる。

 

「大丈夫です。見るだけなんで、それに何かあれば連絡を入れます。」

 

と言って車内に侵入したティアナとスバル。

 

すると、そこにはthe不良と言う感じの人が立っていた。

 

「っ!?あなたは何者ですか!?」

 

「あぁ?そりゃあこっちのセリフだぜ。お前達こそ、誰だ?」

 

と言ってダイナマイトを取り出した。

それを見たティアナとスバルは、戦闘態勢になり。

 

「武器をしまいなさい。さもないと力づくで拘束するわよ。」

 

「あぁ、やってみろや。」

 

「もう、すぐに行動とは何事ですか!」

 

と言いながらリィンが来る。

すると、目の前の不良は、

 

「なっ、妖精だと!?」

 

と驚きながら、リィンの所に飛んで行った。

これには流石のティアナとスバルは驚いた。

 

「どうなってんだ、急に目の前が紅くなり変な所かと思ったが妖精がいるのか。」

 

と言いながらリィンの全体を見回した。

 

「リィンは妖精じゃないです。」

 

妖精と間違えられたリィンはその不良に抗議する。

 

「あれ?もしかして獄寺君!?」

 

「ん?お前まさか炎真か!?」

 

と獄寺と呼ばれた不良は炎真の姿を見て、驚き、

 

「何で‥‥」

 

あまりにも場違いなところで知り合いに出会った炎真も驚いた。

 

「お前がいるって事は10代目もいらっしゃるのか?どうなんだ?」

 

と鬼気迫る表情で炎真に言うものだから炎真は、

 

「うっ、うん。」

(びっくりした‥‥)

 

獄寺の対応に引きながらも、10代目‥つまり、ツナが居る事を肯定する。

 

「そっか‥‥よかっっっっっった!!。それで10代目は今どこに?どこにいらっしゃる?」

 

「つ、ツナ君なら外で戦っているよ。」

 

炎真がツナの居場所を獄寺に伝えると、

 

「なら、こうしちゃいられねぇー」

 

と言ってどこかに行ってしまった。

 

そして、

 

「ねぇ、炎真くん‥‥」

 

「さっきの不良、もしかして知り合い。」

 

ティアナとスバルが炎真に先程の不良、獄寺が炎真の知り合いなのかを尋ねた。

 

「う、うん。彼の名前は獄寺隼人って言って‥‥」

 

と、炎真が獄寺と知り合いだと言って、獄寺がどんな人なのかを説明した。

炎真が獄寺の事を説明していると、

 

「おい、炎真、具体的に10代目はどこら辺にいらっしゃるんだ?」

 

と、ツナの居場所を聞きに戻って来た。

そしてその時、この場に居る皆は思った‥‥。

 

((((あっ、この人結構馬鹿なんだ。))))

と‥‥。

 

 

~side六課司令室~

 

「こちらリィン、はやてちゃん。」

 

「何や?リィン。何かあったんか?車内はどうなってるんや?」

 

「落ち着いて聞いて下さい。まず、リニアの車内に、いたのは炎真くんの仲間みたいです。」

 

リィンの報告に「えっ」と驚き、ヘリの中でその通信を聞いたリボーンが、

 

「おい、誰がいた教えろ。」

 

リィンに誰が居たのかを尋ねる。

 

「えっと‥‥獄寺隼人さんって人です。」

 

「ふむ‥‥」

 

獄寺の名前を聞き、考えるポーズをとるリボーン。

 

「何?その子強いん?」

 

はやてがリボーンにその獄寺が強いのかを尋ねる。

 

「あぁ、つえ~ちゃっつえーぞ。」

 

とニヤリと笑うリボーン。

 

~sideリニア車内~

 

「さてと、はやてちゃんの報告は終わりました。次はレリックの回収そしてガジェットの破壊です。皆さん色々ありましたが最後まで気を抜かないでください。」

 

「「「「はい!」」」」

 

六課の任務はまだまだ続く‥‥。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的9 やっぱり支えは大事だよね。

~side空中~

 

ツナとなのは、そしてまた違う所から、フェイトが空の敵を迎え撃つような陣形をとっている。

 

「あっちが心配?」

 

なのはがツナにリニアへ突入したメンバーの安否を尋ねる。

 

「いや、あっちには炎真がいるから心配しなくても大丈夫だ。.....ただ‥‥なんだか懐かしい感じがした。」

 

「懐かしい感じ?」

 

「はい。それがなんなのかわからりません。ただ懐かしさを感じたとだけしか言えません。」

 

そう言っている間に、なのは達の肉眼でも見える距離に飛行型のガジェット、ガジェットⅡ型が姿を現した。

 

「来た!レイジングハート!!」

 

「行くぞナッツ」

 

2人は戦闘モードへとスイッチを入れ替えた。

 

 

~sideリニア車内~

 

獄寺と炎真が合流した。リニアの車内では‥‥

 

「まず、外に出ましょう。ここでは戦いにくいですし。私はまずこの列車を止めます。」

 

「おい、この戦いが終わればほんとに10代目に会えんだよな。」

 

「うん、それは間違えないよ。」

 

「ならさっさと終わらしてやる。」

 

獄寺も左腕にドクロの発射台みたいなのが巻いていた。

 

「わっ、私たちも行きますよ。」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「小型、そして新型多数接近。」

 

「えぇっ!!」

 

「ちょっと、これは多すぎでしょ!?」

 

隣の車両はもう占領されていた。

 

「はっ、ビビる事はねぇよ。」

 

「さぁまずは、嵐+晴」

 

ドドドっとマシンガンのように、弾が発射され小さいのが壊された。

 

「炎真!重力で動きを制限してくれ!!」

 

「わかった!」

 

「嵐+雲」

 

つぎは弾丸のようではなく。ビームに見えたが、次の瞬間増えてったのだ。ドドーンまた、数機落とされた。

 

「すごい!」

 

「感心してないで私達もやるわよ。スバル」

 

「OKティア!」

 

「僕達も!」

 

「はい。」

 

FW陣も2人に負けじとガジェットとの戦闘に入った。

 

 

~sideツナ~

 

なのはとフェイトそしてツナ達もガジェットとの戦闘に入っていた。

 

「数が多い、何でこんなに。」

 

「わかんない。なのは、後ろ!!」

 

「えっ」

 

と攻撃態勢の整ったガジェットが、レーザーを撃とうとする。

 

「やばっ!?」

 

「ナッツ!!」

 

GAOOooooo

 

ガジェットは石化して、動きが止まり、

 

「レイジングハート」

 

魔道弾が石化したガジェットを貫いた。

 

「大丈夫か?なのは」

 

「ありがとう、ツナ君。」

 

「にしてもまだ減った感じがしない。」

 

ガジェット一体一体の能力は低いが、こうして数の暴力で攻め込まれるとかなり厄介な相手だった。

 

「一体どうすれば。」

 

「俺に考えがある。少し時間をくれ、そして連中を1箇所に集めてもらえないか?」

 

「何をする気なの?」

 

「まとめて一気に潰す。」

 

ツナは握り拳を作りながら、敵を一気に殲滅すると言う。

 

「「えっ!」」

 

ツナの言葉に思わず唖然するなのはとフェイト。

 

「本気そんなことできるの。」

 

「あぁ、だから時間を稼いでくれ。」

 

なのは達は少し考えて、

 

(他に方法が無いし。)

 

「わかった。準備が出来たら言って。」

 

「あぁ、行くぞ。オペレーションX。」

 

「了解シマシタボス。X BURNER発射シークエンスヲ開始シマス。」

 

ツナは後に炎を放って、

 

(出来るだけ出力を抑えないと色んな所に被害が行く‥‥特に森林部分に当てたら、.....。)

 

「炎の逆噴射?」

 

「何で?」

 

なのはとフェイトはガジェットを誘導しながらツナの様すっとチラッと見た。

 

「ライトバーナー、炎圧上昇、3万、4万、4万5000、5万FV、レフトバーナー炎圧上昇、4万、4万5000、5万FVゲージシンメトリー。発射スタンバイ」

 

「なのは、フェイト、準備が出来た!!其処をどいてくれ!!」

 

「「わかった!!」」

 

「X BURNER!!」

 

ドォーン ヒュンヒュン バーン、ガーン

 

ツナが技を放つと、空中でいくつもの爆発が起き、ガジェットが次々と破壊されて行く。

 

「はぁ~やったか。」

 

空中にはガジェットの姿はなく、なのは達の戦闘は終わった。

 

「ふぅ~終わった。」

 

「はやてちゃん。こっちは終わったよ。」

 

「ごくろーさん。あっちも時期片付くから戻ってきてええよ。」

 

「了解。フェイトちゃん、ツナ君お疲れ様。」

 

戦闘が終わり、なのははツナとフェイトに労いの言葉をかけた。

 

 

~side炎真&ライトニング~

 

ツナ達の戦闘が終わる少し前、

 

「キャロ大丈夫?」

 

「うん。」

 

「はあ!」

 

キン

 

「硬いそれにAMFも」

 

「うわ!」

 

と、がけから落ちそうになり。

 

「エリオ」

 

「行くな!炎真」

 

リボーンが叫んだ

 

「どうして。」

 

「目の前の敵に集中しろ、それにあいつは大丈夫だ。」

 

「エリオくーーーーーん!」

 

(エリオ君を守りたいお願い私に力を)

 

「龍魂召喚いでよ、フリードリヒ!」

 

「えっ」

 

「なっ」

 

「はっ」

 

驚いた顔を見せる2人。そして獄寺は、

 

「ドラゴンだーーーー!!」

 

と目をキラキラキラと輝かせていた。

目の前には地球では空想上の生き物とされるドラゴンが存在していたので、獄寺のテンションは高まっていた。

 

「ブラスト・レイ」

 

「硬い」

 

「はぁ」

 

ドン、バーン

 

「よかったよ。キャロ」

 

「「炎真さん。」」

 

 

~side六課司令室~

 

モニターを見ていた。はやて達は、

 

「行くのが早すぎだ、炎真。」

 

ヘリの中からリボーンが炎真にダメ出しをする。

 

「まぁまぁえぇやんか。」

 

「ダメだ。自分立ちで乗り越えてこそ意味があるんだ。」

 

と真剣な顔で言うリボーンであった。

 

「まっ、これで、ひと段落ついただろ。」

 

「そやな。あとは車内のレリックを回収するだけやし‥‥」

 

周辺のガジェットが一掃され、あとはリニアの車内からレリックを回収するだけなので、今回の任務も、もう9割は終わったと判断したはやてであった。

 

~side六課隊舎~

 

「10代目ぇーーーーーー!!」

 

「獄寺君!?」

 

ツナは顔見知りがこの異世界に居る事と別のこの事に驚き、ソレを本人に尋ねた。

 

「.....何で頭から血が出ているの?って言うか?大丈夫?」

 

「大丈夫です!!問題ありません!!」

獄寺の顔の至るところに血が付着していた。

そして、彼は問題ないと言うが、血がドクドクと流れていてとても平気には見えない。

 

「そいつが定春にベタベタ触ったからそうなったアル。ソイツの自業自得ネ。」

 

神楽は呆れた感じで獄寺が血塗れになっている事をツナに話す。

どうやら、獄寺は定春を見て、興奮して定春に無理矢理抱き付いて、定春の逆鱗に触れた様だった。

 

「はぁ~そうなんだ‥‥」

 

(何だろう?このやっぱりかと思うこの感じ‥‥)

 

「だいたいの事はあの妖精に聞きました。災難でしたね、ですがもう大丈夫です。自分が来らには安心です。」

㌧と胸に手を当てて

獄寺がツナに自信ありげに言う。

 

「はは、ありがとう獄寺君。」

 

血を流しながらもテンションが高い獄寺にちょっと引き気味にのツナ。

 

「おい、獄寺、」

 

そんな獄寺にリボーンが声を掛ける。

 

「何ですか?リボーンさん」

 

「お前どうやってこっちに来たんだ?」

 

リボーンがどうやって異世界である此処へ来たのかを尋ねて、ツナと炎真も確かにと獄寺がどういう経緯でこの世界に来たのか気になった。

 

「俺達とシモンファミリーで10代目達を探してたんですよ。もちろん笹川妹や10代目のお母様には内密にそして俺も考えたんス、急に消えたこれは.......」

 

少し間をあけて、

 

 

 

 

 

 

「神隠しじゃないかと‥‥」

 

と手をぐっと握って力説する。

 

「「へ?」

 

急展開過ぎてついていけないツナと炎真。

 

「それで俺はありとあらゆる雑誌の神隠しスポットをチェックしてそれである場所に行ったら目の前が紅くなり気がついたらここにいました。」

 

「う、うん、そ、うなん、だ」

 

なんと言えばいいかわからないツナであった。

そしてスバルと合流して、

 

「お疲れ様ぁ~。今回はこれでひと段落着いたらしいよ。」

 

「大丈夫アルか?疲れたならシャワー浴びるネ。」

 

「そうね、キャロもどう?」

 

「一緒に行きます。」

 

女子たちは仲良くシャワールームへと足を運んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

~??????~

 

先程の六課があった所の空中に、

 

「ハハッ、やっぱり玩具程度じゃ、勝てないか。でも、情報通りだね。あぁ~早く君に会って、戦いたいな綱吉君。」

 

翼のはえた1人の青年がおり、彼はまるで新しい玩具を手に入れた様な無邪気でいて、そして、獲物を見つけた狩人の様な笑みを浮かべていた。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的10 男のたしなみはまず女を褒めてから始まる。

~side移動中のへりの機内~

 

「はやて、ほんとにそこでいいのか?」

 

「‥うん、ええで‥‥」

 

「そうか‥‥はい、また俺の勝ち!」

 

「ぬぁぁぁぁぁぁ!また負けてもうた!!」

 

はやては頭を抱え、負けたことを悔しがる。

 

「へっ、詰めがあめぇよはやて、俺に勝ちたかったら、もっと理論的に来い。」

 

「くそーもう1回や。」

 

「あぁ何度でも相手してやるよ。勝ち続けるのは気持ちいいからな。」

 

獄寺は、はやてを見下す様な目つきをした余裕面ではやてを挑発する。

 

「ムキーッ!!絶対にその余裕ヅラ崩したる!!」

 

「何やってんだ!?あんたら!!」

 

と言いながら新八ははやてと獄寺がやっていたオセロを土台事おもいっきりふっとばした。

 

「あっ、何すんだ!?メガネ!!」

 

連戦連勝していい気分になっていたのに、オセロを台ごとふっとばされて、折角の気分が台無しになれて声をあげる獄寺。

 

「そやで、これからまた始まる真剣勝負を邪魔するなんて。」

 

はやても不機嫌そうに新八へ抗議する。

 

「黙れ、真剣になるならこの後の任務で真剣になりやがれ!!豆狸!!」

 

「うるさいぞ~新八。ドロー2そしてUNO。」

 

「まじ、アルか!?‥ついでにドロー2ネ」

 

「えぇーそりゃないよ。神楽。って言う事で、ドロー2」

 

と、銀時、神楽、スバルは呑気にUNOをしていた。

 

「あんたらも何やってんの!?」

 

ティアナが新八同様、銀時達にツッコミを入れる。

 

「何怒っているアルか。ティアナこれも訓練ネ、こうUNOに興じながら冷静と情熱の丁度いい気構えを作る。」

 

「えっ、そうなの‥‥って、んなわけあるか!あんたらがいんのは馬と鹿の間。」

 

とノリツッコミを新たに覚えたティアナであった。

 

「あぁ~残念、ノーペア。」

 

「僕はワンペアです。」

 

「わたしはスリーカード。」

 

「ふふふ、私はフルハウスです。」

 

「えっ、すごいじゃんか、キャロ」

 

「ほんとに?」

 

「これは決まりですかね。でリボーンさんは?」

 

「ふっ、ストレートフラッシュ。」

 

リボーンは、そうは問屋が卸さないといった顔で手札を皆に見せる。

 

「「「「がはぁぁぁぁぁ!!」」」」

 

リボーンのストレートフラッシュの手札を見て、ポーカーをやっていたメンバーは悔しがる。

 

「ふっ、また俺の勝ちだな。」

 

そして、ドヤ顔をするリボーン。

 

「く~今度こそ‥‥」

 

「もう一回勝負だよ、リボーン!!」

 

「いいぞ。返り討ちにしてやる」

 

フェイトと炎真はもう一度、リボーンにリベンジを申し込み、リボーンはその挑戦を受ける。

そこへ、

 

「何をやらせてんだ、リボーン!?ってか、なんで、お前が此処にいんの!?」

 

ツナが此処でツッコミを入れる。

 

「だって~ひとりでお留守番はつまんないんだもん。」

 

リボーンは頬に両手をあてて、ぶりっ子の様な声をあげる。

 

「可愛い子ぶんな!!そしてなんで炎真君とフェイトさんも何をやっているんですか?」

 

「「面目ない。」」

 

ツナは炎真とフェイトに冷たい視線を送る。

2人とも真面目な性格故か、ツナの言葉に反論できずに縮こまる。

 

「で、俺らまだ今回の任務の内容聞いてないですよ。」

 

「あれ話してなかったっけ?」

 

「は・な・し・て・ま・せ・ん!」

ツナが言い。

 

「イダダダダ‥はなしゅ、はなしゅ、ましゅから、抓らんといて‥‥」

 

肝心の任務内容を話していなかったはやては、獄寺から両方の頬を抓られた。

 

 

~説明中~

 

「今回の任務は、これから向かうホテル・アグスタで骨董品やロストロギアのオークションがあるんや。その時にレリックと間違えてガジェットがホテルを襲撃するかもしれへん。なので、会場警備とオークションに参加する要人警備をするのが今回の任務や。ちなみに、シグナムとヴィータと他数名の隊員は昨夜からあっちにおる。何か質問は?」

 

「あの‥‥」

 

と炎真が手を上げて質問する。

 

「さっきロストロギアと言っていたけど、それってダメなんじゃ‥‥」

 

炎真はロストロギアを個人で所有‥ましてやオークションに出すなんて本来ならば、違反なのではないかと尋ねる。

 

「オークションに出展するロストロギアは、一応取引許可は出ているから大丈夫や。」

 

「他に質問は?‥‥ないようやな。なら、獄寺君続き行くで。」

 

「はっ、また負けさせるぜ。」

 

そう言ってはやては獄寺と向かい合ってオセロを始める。

 

「ならこっちも始めるアル。」

 

「次は勝つよ!」

 

「はっ望む所だ。」

 

銀時、神楽、スバルもUNOをやり始める。

 

プルプル( 'ω')

 

彼らの様子を見た新八とティアナはプルプルと身体を震わせ、

 

「「やんなーーーーーーーー!!」」

 

と言う2人の突っ込みが移動中のヘリの中に響いた。

 

 

~sideホテル・アグスタ~

 

ホテルのオークション会場に着いたら、ものーーすごく長い列が出来ていており、受付け係が招待状の確認をしている。

そして、

 

「あっ」

 

「こんにちは、機動六課です。」

 

そこにはドレスを着て少し化粧をした。フェイトそしてタキシードを着てがっちがっちに緊張したツナがいた。

本来ならば、なのはとはやてもドレスを着る予定だったのだが、シャマルが用意したドレスの箱を見て、リボーンが、

 

「お前らは此処に警備の仕事で来たんだろう?そんなドレスなんざ着て、いざという時にちゃんと動けるのか?特にはやて、お前は六課の顔なんだぞ!!もう少し、責任者としての自覚を持て!!」

 

と、指摘して、はやては、Σ(゚д゚lll)ガーンとショックを受けた。

確かに警備任務の時には目立つ制服で警備した方が、警備をしていると言うアピールになり、不審者に対しては、警告となる。

そんな中、シャマルが折角用意したドレスが無駄になってしまうとごねたため、なのはとフェイトのどちらかが客に潜入する形で着ろとリボーンは妥協案を出した。

じゃんけんの結果、ドレスを着るのはフェイトとなり、リアリティーを持たせるために、フェイトの相方役として、ツナが選ばれた。

そこで、ホテルの貸衣装屋から急いでツナの身体に合ったサイズのタキシードを借りてきたのだ。

 

「ツナ君そんな緊張しなくていいよ。」

 

「ハイ、いいえ。」

 

(((どっちだよぉ!?)))

 

一方、ツナの方はと言うと、

 

(直視できねーー!)

 

ドレス姿のフェイトを見ることが出来なかった。

未だに純情な少年のツナであった。

 

「ってか、何で俺なんですか?此処は大人な銀さんとかの方がいいんじゃ‥‥」

 

「銀ちゃんはオークション会場で動くよりも周辺警備の方がいいって言ってな、それにリボーン君達に頼まれたんや。」

 

「リボーンに?」

 

『入らせるならツナが一番いいぞ。マフィアになる以上こうゆうのには慣れてもらいてーからな。』

 

「リボーンか!!ってか俺はマフィアになんてならないって言っているだろ。」

 

「まぁまぁ、っで、ツナ君どうや?」

 

「えっどうって?」

 

「決まってるやんか、フェイトちゃんの格好や、マフィアになるならないにしろ。こうゆう時に言葉をかけんのは男子としての礼儀やん。」

そしてツナはチラッとフェイトを見る。

フェイトもドキドキしながらツナからの感想を待っている。

 

「そ、その‥‥に、似合っていますよ。フェイトさん‥‥//////」

 

顔を真っ赤にしながら、フェイトを褒めた。

 

 

その頃‥‥

 

~sideティアナ~

 

ホテルの外では少しくらい顔をしたティアナがいた。

 

(よくよく、考えれば六課の戦力は異常ね‥隊長達はSランクオーバー副隊長達もニアSレベル‥そして10歳でBランクのエリオ、特別なレアスキルのあるキャロ、潜在能力と可能性の塊で家族のバックアップもあるスバル。そして、ツナや銀さん達なんて言わずもがな。)

 

「やっぱり凡人は私だけか。」

 

ティアナは寂しそうにポツリとつぶやく。

 

六課のメンバーを見て、魔力、才能を見比べて自分だけが劣る存在なのではないかと思い始めてきたティアナ。

兄であるティーダ・ランスターは自分と違い、優秀な魔導師だった。

隊長陣レベルではなくとも、魔力ランクはAで空戦属性もあった。

将来は本局の執務官も夢ではないと期待されていた兄で、ティアナにとっても自慢の兄だった。

そんな兄がある犯罪者の追跡中に犯人の手により、返り討ちに会い、殉職した。

葬儀の中、兄の上司は、遺影の前で堂々と兄の事を批難した。

幼いティアナにとってそれは物凄く屈辱的な事だった。

その時から、兄に代わって自分が執務官になり、兄の名誉を傷つけた奴等を見返してやるんだと決意した。

しかし、その夢は士官学校の受験前の適性検査でペースを乱された。

ティアナには空戦属性が無かったのだ。

魔力至上主義の士官学校では、魔力ランクは当然のこと、空戦属性がなければ、入れなかった。

ティアナは泣く泣く、誰でも入れる訓練学校の方へ変更を余儀なくされた。

それでも訓練学校では、相方となったスバルと共に好成績を維持し続けた。

そして、六課への誘いが来た時、この部隊で功績と実績を残せば、執務官への道も近づくのではないかと思って来てみれば、メンバーは皆、エース級や将来のエース級の魔導師やバイトとは言え、魔法以外でなのはとフェイトを圧倒する能力を持つ、能力者。

それならばまだましで、非魔導師である者達にさえ、最近の訓練では後れを取っている始末だ。

ティアナがこうして落ち込むのも無理はない。

 

「おい‥‥おい!!」

 

「えっ?」

 

自己嫌悪に陥っていたティアナは突如、声をかけられて我に返る。

 

「何だ、ティアナか‥‥」

 

其処に居たのは獄寺だった。

 

「何か用?」

 

「いや、別に‥‥でも、お前‥‥」

 

「ん?」

 

「やっぱ何でもねぇ。」

 

獄寺はティアナに何かを言おうとしたが、やっぱりいいと言って言うのはやめた。

 

「何よ!!何かあるなら、はっきり言いなさいよ!!」

 

ティアナは獄寺の煮え切らない態度につい、逆ギレするように声を荒げる。

 

「何でもねぇって言ってんだろ!!もういい、俺は向こうを回る!!ただそれだけだ!!じゃあな!!」

 

獄寺もティアナの態度に少し、カチンと来て、不機嫌なままその場から去って行った。

 

「ふん。」

 

ティアナは獄寺の態度と自己嫌悪が混じった事により、情緒不安定な様子で、獄寺から顔を背けた。

何やら、不安要素が入り混じる感じのホテル警備となった。

 

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的11 友達でも嫌なものは嫌といえ。

~side??????~

 

ホテルから少し離れたとある場所にフード付きのマントを羽織った1人の男性と同じくフード付きのマントを着た1人の少女がいた。

 

「あそこかオークションが開かれるホテルは‥‥しかし、お前の探しものはアソコには無いのだろう?」

 

男性はそう言うが少女はジッとホテルから目を離さない。

 

「気になるのか?」

 

男性が尋ねると少女はコクリと頷く。

 

「ドクターのおもちゃが近づいている‥‥」

 

と少女ポツリと呟く。

彼女の指には虫(機械)?の様なよくわからないものが止まっていた。

 

 

~sideホテル・アグスタ~

 

ホテル屋上には、シャマルがホテル周囲の監視や索敵などをしていた。

そうしたら、彼女のデバイス(クラールヴィント)に反応があった。

 

「っ!センサーに反応あり。」

 

と言いながらロングアーチに連絡とり情報の解析してもらい、そしてFWメンバー+炎真と獄寺そして新八に連絡が入り、地下の警備をしていた。シグナム、ザフィーラ、神楽、エリオとキャロにも同じく敵の接近の情報が伝えられた。

 

「エリオとキャロと神楽は一緒に上に行ってティアナの指示に従ってホテルに防衛ラインを引け。」

 

「「「はい。」」」

 

「そして私とザフィーラで敵を迎撃するぞ。」

 

「心得た。」

 

「「「「えっ!」」」」

 

「ザフィーラって喋れたの。」

 

「気づかなかった。」

 

「あのバカが見たら発狂して喜ぶアル。」

 

神楽の言うあのバカと言うのは言わずもがな、最近会った銀髪の爆弾魔の事だ

「とにかく、防衛の要はお前達だ。」

 

「う、うん。」

 

「頑張る。」

 

「やってやるネ!」

 

「前線各員、状況は広域防御戦です。ロングアーチ1と合わせて私、シャマルが指揮を取ります。」

 

「スターズ3、了解」

 

「スターズ4、了解」

 

「ライトニング3、了解」

 

「ライトニング4、了解」

 

「あぁ・・・ん?おい坂田はどうした?」

 

「あれ?そういえば、何処に行ったんだろう?」

 

「いないアルね、銀ちゃん!!」

 

 

~sideシグナム~

 

シャマルが戦闘準備を完了したと同時に、シャマル、ヴィータはバリア・ジャケットに炎真はハイパー化して飛んで行った。

 

「さぁ、新人どもの防衛ラインまでは1機たりとも通さねぇぞ!!」

 

ヴィータはグラーフアイゼンをビュンと一回し、した後、構える。

 

「お前も結構過保護だな。」

 

そんなヴィータにシグナムは微笑し語り掛ける。

 

「うるせぇぞ、シグナム!」

 

「ふふ。」

 

そんなヴィータとシグナムの様子を見て、思わず炎真も苦笑する。

 

「何がおかしい、炎真!!」

 

「いや別に。」

 

炎真は苦笑しながら、ヴィータからプイッと顔を背けた。

 

 

~sideティアナ~

 

前線で戦っている副隊長陣の様子をモニターで見ていた、スバル、エリオ、キャロ、ティアナ、新八と神楽そして獄寺達。

 

「副隊長とザフィーラもすごい!」

 

「炎真さん、さすがです。」

 

「あれで能力リミッター付き‥‥」

 

戦闘の様子を誰も気づかないように悔しそうな顔をしていたティアナ。

だがこれに、1人気づいていたとはティアナ本人さえ知らなかった。

 

「・・・」

 

 

~side??????~

 

『やあ、騎士ゼスト、ルーテシア。』

 

「貴様か‥‥」

 

「何の用。」

ゼストと呼ばれた男性は不機嫌を露にしてルーテシアと呼ばれた少女は静かに答えた。

2人に連絡してきたのは有能な科学者でそれでいて、様々な犯罪に関わるとして管理局から広域指名手配されているジュエル・スカリエッティだった。

 

「相変わらずつれないね、折角君達の友、友人ジュエル・スカリエッティが連絡をしたのに。」

 

「よく平然とそんな事を言えたものだな!?」

 

「おお~怖い怖い。それと話を戻すが、君達、例のホテルの近くで状況を見ているんだろう?実は、あそこにレリックはなさそうだが興味深いモノがあってね、君達、協力してくれないか?君達なら人知れずにモノを取って来るなんて造作もないと思うんだが?」

 

「断る。レリックが関係ないのであれば、我々はお前の指示に従う義理は無い筈だ」

 

ゼストはきっぱりとスカリエッティの頼みを断ったが、ルーテシアは、

 

「いいよ。」

 

と、彼女はスカリエッティの頼みをきいた。

 

「いや~ルーテシア。君は素直でいいね。今度お茶とお菓子を奢らせてくれ‥‥」

 

「いらない。」

 

スカリエッティの頼みをきいたが、彼からのお礼はきっぱりと断るルーテシアだった。

 

「つれないなぁ~スカさん、泣いちゃうよぉ~。まっ、それよりも君のデバイス(アスクルピアス)に僕の欲しい物のデータを送ったから。」

 

彼女は紫の宝石の着いたグローブのデバイスを見て、またスカリエッティに視線を戻した。

 

「あと、今少し手を組んでいる人達が居てね、その人たちは少し過激なんだよ。だから、君達はあまり近づかない方がいい。巻き込まれたくないならね。ああ、それと、ルーテシア」

 

「なに?」

 

「騎士ゼストが断ると思って、君に騎士ゼストの代わりの護衛を送っておいたよ。まだ稼働したばかりの娘なんだけど、その娘の事もよろしく頼むよ」

 

「うんわかった。それじゃあね、ドクター。」

 

「それじゃあ吉報を待っているよ。」

 

そう言ってスカリエッティは通信をきった。

 

「いいのか?」

 

「ゼストやアギトはドクターを嫌っているけど、私はドクター‥あまり嫌いじゃないから。」

 

と言った後、ルーテシアは呪文(?)めいたものを唱えると、魔方陣が出現し、そこからまた虫(機械?)みたいなものが出現し羽ばたいていく。

 

虫(機械?)を送り出した後、2人の背後に草を踏みしめる音がして、振り返ると、其処にはもう1人、別のフード付のマントを羽織った人物が現れた。

ゼストはその人物を警戒しているが、

 

「貴女が、ドクターの言っていた新しい娘?」

 

ルーテシアは平然とした様子でその人物に声をかけると、その者は声には出さないが、ルーテシアの問いに頷く。

 

 

~sideジェイル・スカリエッティ~

 

「それじゃあ吉報を待っているよ。」

 

スカリエッティはルーテシアとの通信をきると、自らの背後に立つ人物に声をかける。

 

「さてと、あとは君たちに任せるよ『晋助君』」

 

「あぁ、わかったよ。」

 

「ふぅ~。何もあそこを壊さなくてもいいと思うんだが?」

 

「ふふ、俺はぁ~ただ壊すだけだ。この腐った世界を‥‥似非正義におぼれたこの世界をな‥‥」

 

かっ、かっ、かっ、と歩いていく。

 

「おい、作戦を始めるぞ。」

 

「りょ~かい。」

 

「さぁて、祭の始まりだ」

 

と狂気の笑を浮かべた狂人達は祭りの会場へと出陣して行った。

 

 

~sideツナ&フェイト~

 

ホテル内はツナ&フェイト、はやて&なのは、に分かれて警備を行っている。

ツナとフェイトはホテル中の会場でオークションのオープニングセレモニーが終わって会場に用意された席に座って、オークションの出展物を見ていた。

 

「へぇ~色々なものが出ているんですね。」

 

司会者からこれはどんなロストロギアなのかの説明をきいて、ツナは感心しながら言う。

 

「えぇ」

 

「今の所は異常なしですね。」

 

「うん、でも外は‥‥」

 

とフェイトが言ったらゾクとツナに寒気が襲った。

 

「どうしたの?ツナ。」

 

「‥‥来る‥‥何か来る‥‥血の匂いを纏った獣のような何かが‥‥」、

 

ツナは突然席を立つと、震えながら周囲を見渡す。

 

「えっ?」

 

フェイトは突然震えながら席を立ったツナの行動が理解できず、首をかしげる。

その直後‥‥

 

ドゴォーン!

 

大きな爆音と共に天井に大穴が空いた。

 

ウワ―!!

 

キャ―!!

 

オークション会場は突然の爆発で大パニックとなる。

 

「あっ、ごめーん。アニメみたく、傘を開いたら飛べると思ったんだけど、やっぱ無理だった。ハハハハ、失敗、失敗」

 

天井に大穴を開けて、オークション会場に乱入したその人物は天井から落ちてきたにも関わらず、骨折どころかかすり傷一つ負っていなかった。

その人物は片手に番傘を持ち、頭をかきながら笑っていた。

 

突然の爆発と乱入者の出現で恐怖に怯えながら司会者が、

 

「なっ!?な、何なんだ君は‥‥?」

 

震える声で、乱入者に正体を尋ねる。

 

「俺?俺の名は『神威』‥ただの海賊さ。」

 

と神威と名乗ったその男はニコニコしながら答えた。

神威の笑みはまるで無邪気な子供の様であった。

しかし、ツナは神威のその様子を見て、先程より強く寒気を感じた。

それはもう悪寒と言っていいほどのレベルだった。

 

(神威‥‥アイツはただの海賊なんかじゃない‥‥アイツは‥‥アイツは血に飢えた獣だ‥‥)

 

ツナは全身を震わせながら、神威から目を離す事が出来なかった。

 

 

 

・・・・続く

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的12 騒がしい時こそ鍵をしておけ

 

~sideホテル・アグスタ~

 

「ははっ、神威君も暴れ始めたか、それじゃあ、僕はゆっくりと高みの見物でもしとこうかな...」

 

とフードを深くかぶった男が外の様子を見始めた。

 

 

ホテルの周辺、オークション会場でドンパチが行われている頃、

 

~sideホテル・アグスタ 地下駐車場~

 

地下駐車場では、ゴソゴソ、ゴソゴソと何者かが駐車している一台のトラックを漁って居た。そして目的のモノを見つけたのかそれを何処かに転移した後、自らはトラックの荷台から出ようとした時に、

 

「見え透いた陽動だな、コソ泥」

 

そこには銀髪天然パーマの侍が立っていた。

 

「てめぇ何者だ。こんな所でコソコソしやがって!!やるならやるで、ちゃっちゃっとでてきやがれ!!」

 

銀髪天然パーマの侍が地下駐車場に響く大声で怒鳴ると、

其処から出てきたのは、

 

「ちっ、またこのカラクリか!?」

 

数機のガジェットが出てきた。

 

 

~sideティアナ~

 

防衛ラインとして、ガジェットどもを倒しているFWメンバー+獄寺、新八、神楽。

最初のうちはヴィータ達副隊長陣が押していたのだが、途中からいきなりガジェットの動きが機械らしくなく、不規則‥臨機応変な動きとなった。

キャロ曰く、自分と同じ召喚師がガジェットを動かしているのかもしれないと言う。

その臨機応変な動きと、相手側の召喚魔導師による転移魔法で、副隊長陣とFW陣との間は完全に分断され、シグナムとザフィーラはヴィータを急いでホテルへ戻し、FW陣の援護に向かわせた。

 

「もう少し、持ちこたえて!!そろそろヴィータ副隊長が戻って来るから。」

 

「守ってばっかじゃ‥‥攻めます。私が全部撃ち落とします。」

 

「おいティアナ、無茶すんじゃねぇ!」

 

獄寺が此処は無茶をせず、援軍を待てと言うが、

 

「うるさい。あんたは来たばかりだから知らないだろつけど、私はこうゆう時のためにずっと練習しているの!!」

 

ティアナは獄寺の言葉を切り捨て、指示を出す。

 

「エリオはセンターに下がって!スバルクロスシフトA 行くわよ!」

 

「は、はい」

 

「おぉ!!」

 

するとスバルがウィングロードを使いガジェットを引き付けた。その間にティアナがクロスミラージュを構え4発の魔導弾を出した。

 

(証明するんだ。特別な才能や魔力がなくても出来るんだって、一流の隊長がいるこの部隊で!!ランスターの弾丸は全てを貫くって!!)

 

「ティアナさん!!4発のロード何て無茶だよ。それじゃティアナさんもクロスミラージュも‥‥」

 

新八はティアナに獄寺同様、無茶な戦術は怪我の元であり、失敗する恐れがあるから、止めろと言う。

 

「私の‥‥ランスターの弾丸は敵を撃ち抜けるんだって。クロスファイヤー‥シュート!!」

 

その弾丸はガジェットを破壊していったがその一つはスバルに向かって飛んでいった。

やはり、新八が言うようにティアナにはまだ4つのロードには無茶があった。

スバルは思わず、目を閉じる。

 

「「スバルさん!!」」

 

エリオとキャロの絶叫が木霊する。

そして、スバルが覚悟したその時、

 

「でやぁぁぁぁ!!」

 

間一髪ヴィータが間に合って、ヴィータはスバルに迫るティアナの魔導弾をグラーフアイゼンでふっとばした。

 

「おい、ティアナ!!無茶やったうえに味方を撃ってどうすんだ!?」

 

同士討ちを仕掛けたティアナにヴィータは怒鳴る。

 

「あ、あの、ヴィータ副隊長、その、今のもコンビネーションの1つで・・」

 

スバルはティアナの魔導弾に当たりそうだったにも関わらず、ティアナを弁護する。

 

「ふざけろ!タコ、どう見ても直撃コースだよ!!」

 

とヴィータの説教の途中に、

 

ワ―!!

 

キャー!!

 

ニゲロー!!

 

タスケテクレ!!

 

「ん?何だ」

 

突如、ホテルの客達がホテルの外に出てきた。

そしてガジェットも大量発生していた。

 

「ちっ、新八、ティアナ、エリオ、キャロは客を守れ!!スバルは私と神楽でガジェットの破壊!!獄寺援護を頼む!!

 

(なのは達はどうした?それと客がなんでこんなにもホテルの中から出てきた?まさか、ホテルの中で何かあったのか!?)

 

ヴィータはこの不自然さにどうもしっくりこない。

 

「はい!」

 

「くそ、客が邪魔だ。」

 

「ヴィータ副隊長凄い。」

 

前衛でヴィータが主にガジェットを壊し、スバルと神楽はそれの補助、獄寺は取りこぼしを壊していた。

そしておおかたガジェットの殲滅が終わった時に、それは来た‥‥

 

「ん?」

 

最初に異変を感じたのは獄寺だった。

 

「おい、ヴィータ‥‥」

 

「何だ?」

 

「なんか‥ここら辺、急に寒くなってねぇか?」

 

腕をさすりながら獄寺がヴィータに尋ねる。

季節は春先で、しかも雲一つない快晴の天気で風もない。

そんな中、急に周囲がまるで冷蔵庫の中に居るかのように寒くなり始めた。

 

「確かに何か寒くなっている気が‥‥」

 

エリオも周辺の温度の変化に気づいた。

そうしたら急に地面の一部が凍った。

しかも瞬時に‥‥

 

「なっ!何なんですか!?何で急に地面が!?」

 

新八が眼鏡をクイっとあげて、見間違えじゃない事を確認する。

 

「IS発動‥アンジュレーション・フォー‥‥」

 

そこにはスバルと同じぐらいで、青を基調としたボディースーツの上にフード付きのマントを纏い、更に顔の部分には白い兎の仮面をした少女がいた。

 

「てめぇ何者だ!名を名乗れ!!」

 

獄寺が威嚇するかのように少女に噛み付いて、少女の名前を尋ねる。

 

「...トレディ、ナンバーズ13 トレディ、あなた達の命はここで...終わる‥‥」

 

トレディと名乗った少女は静かにそう告げて右手を向ける。

 

「?」

 

一同はトレディのこの謎の行動に警戒しつつ様子を見る。

 

「...」

 

無言でいたその時、

 

ボォォ!!

 

炎が急に飛び出した。

 

「なっ!?ちっ、」

 

獄寺も赤炎の矢をぶつけたが炎が相殺され、その場を見たらトレディと名乗る少女の姿は既になくヴィータが後ろを見ると、

 

「ティアナ!!」

 

「えっ?」

 

ティアナの背後にいつの間にかトレディが居た。

 

((コイツ、速い!!))

 

ヴィータと獄寺がトレディの速さに驚愕する。

 

「ちっ、」

 

獄寺は自らのSISTEMAC.A.Iでティアナを守った。

 

「スバル!ティアナを連れて此処から逃げろ!!」

 

獄寺が叫びスバルとティアナに此処から離れる様に言うと、ヴィータも、

 

「新八!エリオ!キャロ!お前らも下がってろ!!此奴はなんかヤベェ!!」

 

新八達に避難する様に言う。

その間もトレディはずっとシールドを高速の拳の連打で叩いていた。

 

(くそっ、なんつう重いパンチだ‥しかも、こんなに重いパンチを出しているにも関わらず、その拳の速度は乱れる事無く速ぇ‥‥)

 

「はぁぁ!!」

 

ヴィータもグラーフアイゼンを当てに行ったがやすやすと躱され、

 

「ホワタァ!」

 

神楽が追撃に蹴りを入れてトレディから離れたところを、

 

ズガガガァァン!!

 

傘のマシンガンをトレディに放つ。

 

すると、トレディは距離をとりつつマシンガンの銃弾を躱していき、そして一瞬の隙を突いて地面を叩いて砂塵を発生させる。

 

「目くらましだ!!」

 

獄寺が叫び、

 

ビューン

 

「くっ!」

 

そして、神楽に一気に近づいて今度は長近接の殴り合いになった。

しかし、どちらも拳や蹴りを入れつつ躱しながら、相手に打ち込んでいるので、今のところ、どちらにもダメージは無い。

そんな中、

 

(あの神楽ちゃん相手に互角に戦っている‥何者なんだ?あのトレディって言う奴は‥‥)

 

新八は避難するのも忘れ、夜兎の神楽と互角に長近接戦をやっているトレディの正体が気になった。

そして、事態は動いた。

 

「いい加減、そのふざけたお面取るヨロシ!!」

 

殴り合いの中、神楽の蹴りがトレディの頭部にヒットしようとしたら。トレディはその蹴りを躱し、逆に神楽の足を掴んで、

 

「IS発動‥‥」

 

カチカチ‥‥

 

「なっ!?」

 

神楽の足が凍った。

 

「一体どうなってやがる!?さっき奴は炎を出したのに、今度は氷だと‥‥?」

 

獄寺もヴィータもその光景に驚く。

 

「くぅう‥‥」

 

神楽もトレディの腕を離そうとしたが、一度掴まれたトレディの腕は離れず、反対に掴まれた足はどんどん凍っていく。

 

「此奴、とんでもない馬鹿力ネ‥‥」

 

夜兎族の神楽の腕力をものともせず、トレディは神楽の足を掴んだ状態を維持している。

このままでは、神楽の身体が全身凍ってしまうのも時間の問題だった。

 

「神楽を離せぇぇ!!」

 

ヴィータがグラーフアイゼンを振り回してやっと離れた。

 

「神楽ちゃん!!」

 

足が凍った神楽を新八が受け止める。

 

「新八、神楽を連れて逃げろ!!」

 

「は、はい!!」

 

「赤炎の矢!(フレイムアロー)」

 

獄寺が赤炎の矢!(フレイムアロー)を放ったら、

 

「ふ!」

 

トレディは自らの手を獄寺の技にぶつけると獄寺の炎はトレディの腕に吸い込まれていった。

 

「な、何だと‥‥」

 

「.....返す」

 

そして、獄寺にまた腕を向けると

 

(なっ、こいつは...そういや何で砂塵のあと最初のように炎を出さなかった。距離を取れば炎を出せばいいのに...待てよ、こいつまさか...)

 

「ヴィータ!神楽!!」

 

「どうした!獄寺!!」

 

「わかったぜ、こいつの能力がな!!」

 

獄寺が一連のトレディの技の動きを見て、冷静に言った。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的13 世の中には似た顔の奴が3人いると言うがそいつらに会う確率は無いに等しい

 

 

~side獄寺達~

 

「わかったぜ、こいつの能力がな!!」

 

獄寺が一連のトレディの技の動きを見て冷静に言放った。

 

「何!?本当か!?獄寺!!」

 

ヴィータが慌てた様子で獄寺に確認をとる。

 

「ああ、奴の能力は熱を吸収していたんだ。その吸収量は、俺の死ぬ気の炎までも吸い取っていやがる。」

 

「熱を吸収?どういう事アルカ?」

 

神楽がわからず首を傾げる。

 

「奴は触れたものを触れていた時間だけ熱を吸収しやがる‥‥それは氷点下までな‥‥だから氷点下以下にまでなった地面は...」

 

「凍りついちまうわけか‥‥ちっ、厄介だな。」

 

ヴィータがトレディに触れられたものは凍り付いてしまうと言う能力に近接戦は不利だと悟る。

 

「だが、奴の弱点としては炎を吸収しないと放出ができない。それは俺の炎を吸収した時、それと最初ここに現れた時に地面とかから吸収した炎を放出していた。」

 

「なるほど...」

 

ヴィータが、何か策を思いついた様子で、

 

「神楽も下がれ、獄寺、お前もだ‥アイツとお前は、相性は悪過ぎる。アイツの相手は私がやる」

 

と、ヴィータが前進して

グラーフアイゼンで魔法弾を打ち、トレディに向けた。

 

トレディはそれを当然のように躱したが、その隙にヴィータがトレディに急接近して、

 

「でやぁぁ!!」

 

ヴィータがグラーフアイゼン振り落としトレディを潰そうとするが、トレディはグラーフアイゼンを両手で受け止める。

 

「ちっ、」

 

「間違っている‥‥私の能力は吸収しないと放出できない...わけ‥じゃない‥‥」

 

「何!?」

 

トレディは左腕を離してそして、

 

「ふ!」

 

左腕から炎を放った。

 

「うわぁ!」

 

近くに居たヴィータはその炎をもろにくらう。

 

「「ヴィータ!!」」

 

「「「「ヴィータ副隊長!!」」」」

 

「ちくしょう!!」

 

(くそっ、俺が読み違えたせいで!!)

 

獄寺の足元に何やら丸いものが出てきた。

それに乗った獄寺はとても速いスピードでヴィータに駆けつけた。

 

「獄寺!」

 

「今度は俺がやる!」

 

髑髏の発射台を向けると

 

「くらいやがれ!」

 

ドン!ドン!とフレイムアローを放つが、

 

「無駄」

 

トレディは次々とフレイムアローを吸収していく。

 

「これならどうだ」

 

(嵐+晴れ)

 

とマシンガンのように撃った

 

「これぐらい吸収するまでもない。」

 

トレディも走り始めた。

そしてさっき獄寺がいた場所には、

 

ジジジと違和感のある音がした。

 

「...っ!?これはっ!?」

 

ダイナマイトがそこにはあり爆発した。

 

「...」

 

だがこの爆風も‥‥

 

(くそっ、こいつもか!?)

 

爆風でさえトレディは吸収した。そしてまた走り始めた。

だが1つさっきと違う点がある。

それはさっきよりスピードが上がっていた。トレディは地面を蹴り一気に加速して、

 

(なっ!)

 

現在獄寺はいつものシールドはティアナの元にあり自分はほぼ無防備状態だから腹にそのまま入れられた。

 

「グっ、ガハァ!!」

 

そして、

 

「これは貴方に返す。」

 

とトレディはさっき吸収した獄寺の死ぬ気の炎を獄寺に向けて放った。

 

「アァァ!はぁはぁ‥‥」

 

吐血した獄寺の右腕をトレディはガシッと掴んだ。

言うまでもなくその手はみるみるうちに凍っていき、獄寺はトレディの足に自分の足を絡め自分の腕を掴んでいる腕を掴み返して、トレディを羽交い締めにして、トレディの動きを封じる。

 

「...何をしているの?」

 

トレディは獄寺の行動を理解できずにいる。

このまま自分事凍らせるつもりか?

だが、そんなヘマをする様な自分ではない。

片腕が凍った死にぞこないなぞ、IS能力を使わずとも簡単に片づけられる。

そう思っていたトレディであったが、その予想は覆された。

 

「美味しいところはくれてやる。今だ!!やれ!!ヴィータ!!」

 

「おう!!ハァァァァー!!ぶっ飛びやがれェェェぇー!!」

 

「っ!?」

 

(コイツ、自分の体を使って私の動きを封じただと!?)

 

獄寺がそう叫びトレディが彼の行動を理解し、後ろを振り向いて強引に獄寺を引き剥がして下がろうとしたところにヴィータのグラーフアイゼンがトレディにクリティカルヒットした。

 

パリーン

 

「がっ‥‥」

 

トレディの仮面に罅が入り‥‥

 

カツン‥‥

 

地面に割れた仮面が落ち‥‥

 

ドーン!

 

トレディはグラーフアイゼンの一撃をもろにくらい後ろに吹っ飛んだ。

 

「はぁはぁ‥‥大丈夫か?獄寺」

 

ヴィータの息は荒くしながらも獄寺に無事かどうかを尋ねる。

獄寺自身も覚悟していたが、トレディが強引に自分を引き剝がしたおかげでヴィータのアイデンを避ける事が出来たがそれでもこれまでの戦闘でダメージは受けていた。

 

「はぁはぁ‥‥けっ、おまえこそ‥はぁはぁ‥‥息が荒れてんぜヴィータ。」

 

「そう言うお前もな‥‥」

 

しかし、そう言う獄寺も息を切らしていた。

 

「さあ、さっさとあいつを逮捕してこい。」

 

「言われなくても。とっ捕まえるさ」

 

そしてヴィータはトレディが吹っ飛んだ所に行ったが、

 

「‥‥私は‥‥私はまだ負けていない!!」

 

「っ!?」

 

「うわぁぁぁ!!」

 

トレディがこれまでにない大声を出すとヴィータにのしかかる。

ヴィータは地面に大の字に抑えられトレディの手足により自らの四肢全てが抑えられた。

 

「くっ」

 

ヴィータはトレディに全体重をかけられて押さえつけられたのでその苦痛により思わず顔を歪ませる。

それでも心の中ではヴィータも獄寺も『コイツ、まだ動けるのか!?』と驚いたがそれ以上に驚いたのは‥‥

 

「なっ!?お前‥その顔...」

 

トレディが被っていた兎の仮面が割れてついでにフードも取れ、トレディの顔が露になったのだが、その顔はヴィータがよく知っている人物にそっくりの顔だった。

 

「か、神楽と同じ顔‥だと‥‥?」

 

このトレディと言う少女の顔が少し大人びた神楽とそっくりだったのだ。

大きく違う点は髪の毛が神楽より長いのと、胸が大きいことぐらいで、数年後の神楽、神楽の姉と言われても違和感がないくらい、トレディと神楽はそっくりだった。

 

「ど、どういう事だ‥‥?」

 

トレディの顔が神楽に似ている事実に獄寺も驚く。

 

そして当の神楽達は、

 

「う、嘘‥‥神楽ちゃんとそっくり‥‥」

 

新八も目を見開いて、トレディの顔を見て驚いていた。

スバルは神楽に、

 

「ま、まさか、あの人、神楽さんのお姉さん‥とか‥‥?」

 

神楽にトレディは神楽の姉ではないのかと尋ねるのだが、

 

「私、あんなやつ知らないネ!パピィの子供は私とあの男だけの筈アル!!」

 

と、神楽は姉の存在を否定した。

皆がトレディの顔を見て驚いている中、

 

「IS発動‥アンジュレーション・フォー」

 

トレディはISを発動させる。

 

「っ!?まずい!!」

 

獄寺も急いで駆けつけようとしたがもう手脚が凍らされていてうまく動けず、

神楽も足をやられていたので動けず、

 

「ヴィータ副隊長!」

 

スバルとエリオが駆けつけようとしたが、

 

「来るな!!」

 

「「え?」」

 

「お前達じゃ此奴には敵わない、私はいいからさっさとはやて達を呼べ!!急げ!!」

 

トレディは今、自分に集中している。この隙にFW陣を逃がそうとヴィータはそう思い、FW陣に撤退を命じた。

 

「で、でも‥‥」

 

「はやくしろ!!これは副隊長命令だ!!」

 

そう言っている間にヴィータの胴体は全て凍らされて、

 

「見事ね、自分を犠牲にして仲間を守ろうとするの...あそこの銀髪もそうだったけど...でも私はやめる気は無い。またどこかで出会えたら会いましょう?小さな騎士さん」

 

ピキピキピキピキピキピキ‥‥

 

最期にヴィータに対してそう呟くとヴィータは完全に凍らされた。

 

「ヴィータ?おい、ヴィータ!!」

 

獄寺が必死に叫ぶ。

しかし、ヴィータからは、返事は一切返ってこない。

 

「大丈夫、私に凍らされても仮死状態のままで、氷を解かせば生き返る。だけど凍った体はとても脆く衝撃に弱い‥‥例えばこんな事をすると...」

 

トレディは凍ったヴィータに拳を向ける。

 

「なっ、やめろおおぉぉぉ!!」

 

トレディがなにをするのか察しがついた獄寺がトレディにむかって叫ぶ。

もし、凍ったまま砕かれたら二度と再生することは出来ない。

それはつまり、『死』を意味していた。

 

「新八!私の傘を持ってくるネ!早く!!」

 

「う、うん!!」

 

神楽も必死な口調で新八に頼み、新八も急いで神楽の傘を探しに行く。

 

「...もう遅い。まずは1人‥‥」

 

トレディの拳が振り落とされようとしたその時、

 

ギューン!!

 

とてつもないスピードでトレディに向かい何かが飛んできた。

 

トレディはそれを躱したがその直後に、彼女の身体に思いっきり蹴りが入り、

 

「くっ!」

 

吹っ飛ばされるが、綺麗に受け身を取り、誰が自分に蹴りを入れたのかを見たら、さっきまで地面にあった氷漬けのヴィータが奪われていた。

そして凍ったヴィータを担いでいたのは‥‥

 

「‥‥」

 

銀髪天然パーマの侍だった。

皆はその姿を見て、歓喜の声を出した。

 

「「「銀ちゃぁぁん!!(さぁぁぁん)」」」

 

其処に居たのは、いつもの死んだ魚の様な目をした銀時ではなく、すべてを睨み殺すかのような鋭い眼光をした坂田銀時であった。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的14 普段おちゃらけてる奴が怒るとマジで怖い

 

「「「「銀ちゃあぁぁん!(さあぁぁぁん!)」」」

 

「ふぅ~くそっ、間に合わなかったか‥‥」

 

到着が一足遅かった事に悔しそうに言って銀時は周りを見ると、

 

「獄寺と神楽、か‥‥」

 

そして目線を氷漬けにされたヴィータに戻すと

 

(よく頑張ったな。副隊長‥‥お前の仇は俺がとってやる‥‥)

 

と獄寺の元まで歩いて、肩に担いでいた氷漬けにされたヴィータをおろして、

 

「新八ィ!こいつらを安全な所で保護しとけ!!あとは俺がやる!!」

 

その声色は怒気が含まれていてスバル達や新八までも一瞬震えた。

 

そして洞爺湖を取りに行こうとして、

 

「おい、坂田!」

 

獄寺の言葉に反応して

 

「そいつに長時間触れんな!そいつの手は触れれば触れるほど熱を奪う力がある。もし、ずっと触われ続けるとヴィータの様に凍っちまうからな!!!」

 

獄寺はトレディの危険性を銀時に教える。

 

「ああ、わかった。」

 

と洞爺湖を手にとり、

 

「待たせたな」

 

洞爺湖の切っ先をトレディへと向ける。

 

「次の相手は貴方?少しは楽しませてね...」

 

とトレディは無表情であるが、言葉で銀時を挑発した。

しかも、トレディは銀時が一連の行動をとっている時、強者の余裕なのか一切攻撃はせずに、ただジッと静観していた。

 

「はっ!楽しむ暇なんてねぇよ!!」

 

「獄寺に神楽にヴィータ...ここまで俺の仲間を傷つけたんだ‥‥やった借りは必ず返す!!」

 

と銀時がダッシュしてトレディへと接近する。

 

「むっ!?」

 

ヒュン、

 

ドン!

 

トレディの左腕に木刀を当てて、ガードされたとなると銀時はすぐに引いて次の攻撃に移った。

 

(な、何これ!?攻撃が読めない。そして速い...)

 

銀時の無茶苦茶な剣筋に驚いているトレディは刀を捌くのに集中していたら、

 

「っ!?」

 

下から自分の顎に向かって蹴りがきた。

 

「どうした?隙だらけだぜ?神楽モドキ」

 

「くっ!」

 

「うおおぉぉぉお!!」

 

洞爺湖で横から横薙ぎの攻撃を受けてトレディは吹き飛ばされた。

 

ズドーン!

 

 

~side獄寺達~

 

「な、何だ?あの剣術はあんなの見た事ねぇ‥‥」

 

トレディ同様、獄寺も銀時の剣裁きを見て、驚く。

 

「銀さんの剣術はパターンが無いんです。銀さんの剣は、完全な我流です。」

 

新八が言うと。

 

「我流?ってことは、あれは自分で生み出した剣術ってことか!?」

 

「はい。」

 

(山本も昔時雨蒼燕流前は形が無かったそれにスクアーロも自分で作ったって言っていたな...だがこれはスクアーロよりも鋭い...しかも動きが読みにくい‥‥)

 

スペルピ・スクアーロ、ボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーに所属している2代目剣帝彼も独自の剣術だが銀時のはこれとも全く別物だと思いそして、

 

(それといつもの死んだ魚の目じゃなかった。あの目は完全に相手を殺る気の目だった...。)

 

と獄寺は銀時が普段の銀時ではない事に気づく。

 

「おい、メガネ」

 

「はい?」

 

新八は疑問に思い

 

「俺のポケットにライターが入っている。溶けきれねぇかもしれねぇができるだけ熱を与えとけ、そしたら神楽だけでも動けるかもしれなくなるからな。」

 

「わ、わかりました。」

 

「おい、いいアルか?お前だって冷凍寺になりかけているアル」

 

神楽は申し訳なさそうに言う。

 

「かまわねぇ、俺やヴィータは一気に解凍はできねぇが、お前の足程度ならできるかもしれねぇ。それに坂田がやられたらここに動けるのはいなくなる。エリオかスバル、お前らも高町かはやてを呼んでこい。戦況が悪すぎる。」

 

と獄寺が指示を出していた。

 

「わ、わかりました。」

 

と念話を入れようとエリオが動き

 

(さっきの客の慌て方からしたら望みは薄いができるだけ戦力が欲しい。)

 

獄寺はホテル内も戦場と化しているのではないかと推測したが、それでもトレディより厄介な奴はいないだろうと判断したが、それは甘かった。

 

 

~side銀時~

 

「どうした?楽しませてくれるんじゃなかったのか?さっさと来いよ、パチモン神楽!!あれぐらいでへばるわけねぇだろ?」

 

そして、

 

「くっ」

 

これまでの戦いで無表情だったトレディはここに来て初めて、悔しそうに顔を僅かに歪め、銀時を睨みながら、地面に手を置いて、

 

「IS発動‥アンジュレーション・フォー」

 

自身のIS能力を発動させる。

すると、辺り一帯の地面が一瞬で凍り始め、瞬く間に即席のアイススケート場が完成した。

 

「ちっ、地面を凍らせやがった。」

 

凍った事で、滑りやすくなり、これにより足場が悪くなる。

 

「足場の立地条件は最悪‥‥これで貴方はもう全力を出せない。」

 

「はっ、何を言っている?それはテメェも同じだろ?」

 

すると、トレディは何やら爪先をトントンと地面に数回打ち付けると、

 

シャキン

 

足から刃が出てきた

 

「なっ!?」

 

そして、トレディはアイススケートをするかのように氷を滑りながら銀時に近づいてきた。

 

「自分の能力よ。対策をしていない方がおかしいでしょ?」

 

「この野郎~ 」

 

トレディは銀時に向かい氷の上を滑ってきた。そして足の刃で銀時に切りつけた。

 

「くっ」

 

(あの足の刃もやっぱり武器になるのか!?)

 

銀時が紙一重でトレディの蹴りを避けても、

 

ツルッ

 

凍った地面のせいでバランスを崩してしまい、

 

ドン

 

銀時は倒れてしまいトレディはそれを見逃さず銀時に踏みかかってきた。

銀時は洞爺湖でガードして力任せでトレディを飛ばしてその後、洞爺湖を地面に突き刺してそれを軸に氷から出た。

 

「くそ、思った以上に厄介だな、あいつの能力」

 

銀時は流れ出る冷や汗を手の甲で拭う。

 

(だが、土俵が氷じゃなかったらまだ勝ち目はある。)

 

足場が不安定じゃなくしっかりとしているなら大丈夫だと思っただがトレディは、

 

ボォォ!!

 

距離を離したら炎で牽制してきた。

 

「何!?」

 

銀時は炎をよけると、トレディは溶けた場所をまた凍らせた。

 

地面が凍ったのを確認したトレディは銀時に向かい上から蹴りを入れようとした。

 

(こいつは、刃こぼれを気にしてんのか...ならこっちの土俵に入れるまでだ!!)

 

銀時も飛びトレディの足を洞爺湖で牽制して引いた瞬間足を掴んで凍っていない場所に投げた。トレディはこの時足に能力を発動させて銀時の左手を凍らせた。

 

「くうぅ、うおお!!」

 

地面に降りると直ぐにトレディに向かい地面を凍らせるのを防ごうとする。

 

まず上から振り下ろしてその次に地面に着地をして洞爺湖を凍らされないようにガードされていると思いきやすぐに引き次に移った、一見銀時の攻撃になすすべなしのように見える攻防だった。

 

だが、

 

銀時は右手のみで攻撃をしている為にやはり無意識に左手をかばい隙が前より多くなった。トレディはその隙を窺うかのように避けながら、

 

「...左手をかばっている...」

 

銀時に指摘する。

 

「ああ!!」

 

「ほら、」

 

トレディは銀時の攻撃を避けて、彼の左肩を掴み凍らせた。

銀時はトレディを引き剝がそうとしたが、今度はグーで腹を殴りそこも凍らせていった。

銀時は左半身と腹部が凍った状態となった。

 

「くっ!」

 

「へぶっ!!」

 

銀時は頭突きをして洞爺湖でトレディを振り払った。

頭突きを喰らったトレディは思わず変な声が出た。

両者は互いに距離をとり、睨みある。

そんな中、銀時は、

 

(コイツの白い肌、神楽そっくりの面‥間違いねぇ‥‥コイツは、やっぱ夜兎だな...拳の速さと言い、重さと言い、戦闘センスも申し分ねぇ...だが、夜兎にしては何でこんな妖術みてぇな能力が‥‥?機械の類を使っているわけでもねぇし‥‥それにお日様の下だって言うのに、コイツは笠をさしていねぇ‥‥)

 

戦闘能力の高さと神楽そっくりの容姿、そして白い肌から銀時はトレディが夜兎族では間違いないと確信を持つが、夜兎にしては、妙な術を使い、何より夜兎族の最大の特徴の一つとして、日光の光に弱いと言う弱点がこのトレディにはまったく作用していない。

しかし、この時、銀時は知る筈もなかった。

トレディがただの夜兎でないことを‥‥

トレディはある夜兎族のDNAデータを元にスカリエッティが生み出した戦闘機人であり、銀時が妖術だと思っていたのは、戦闘機人特有の能力、ISであり、スカリエッティが生み出したことにより、夜兎族最大の弱点である日光の光の下でも笠なしに活動できるように身体強化を施されていたのだ。

銀時がトレディに対して疑問に思っていると、

 

ドゴオォォォォォ!!

 

突如ホテルの壁の一部が壊れた。

 

「な、なんだ!?」

 

トレディを除く皆がその爆発がした方へと顔を向けると、其処から出てきたのはふらつく足で、何とか立っていることがやっとの状態のボロボロになったツナだった。

 

「くっ‥‥」

 

「つ、ツナ!?」

 

「ツナ君!?」

 

「じゅ、10代目!!」

 

獄寺達はボロボロになったツナの姿を見て、思わず声をあげる。

全門にはトレディ、そして後門にはツナを此処までボコボコにした謎の下手人。

銀時達は、何気にピンチになっていた。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的15 喉が渇いたならお茶を飲め

~sideツナ&フェイト~

 

時は遡ること何分か前‥‥

 

会場はオークションと言う空気では無く完全にパニックとなっていた。。

なぜならそこには先ほど天井から爆発と共にやってきた『神威』と名乗る海賊少年がいたからだ。

神威は周り見渡した。

ツナは、ハッと何かを感じたのか。

 

「みんなーーー逃げろーー!!」

 

大声で客に此処から逃げる様に言う。

 

神威は天井にあった鉄格子をヒョイと持ち上げるとそれを客席に向かって放り投げたのだ。

 

「っ!?いけない!バルディッシュ!!」

 

フェイトはとっさに魔道弾は放ったので被害はそこまでだが、神威の一連の行動を今見た客の混乱に拍車をかけ、ホテルの中は大混乱になる。

 

 

~sideはやて&なのは~

 

「今の所、ホテルの中は、異常はないな」

 

「うん。そうみたいだね」

 

ホテルの外では、ガジェットが襲撃してきたみたいだが、副隊長陣の活躍でガジェットは駆逐されているみたいなので、ホテル内には混乱は起きないだろうと思っていたはやてとなのは。

 

だが突如、ホテルの客達が大慌てで出てきた。

 

「な、なんや!?」

 

「え?なに!?どうしたの!?」

 

慌てて外へ逃げようとする客達。

しかし、外は今交戦中であるのでなのはとはやては、客達に落ち着くように指示を出すが、パニック状態の客達にはやてとなのはの声は届かなかった。

 

 

~sideツナ&フェイト~

 

「さてと、どうしようか?君達は逃げなかった所を見ると君達がこの世界の警察かな?えっと‥‥」

 

神威は自分のズボンのポケットから一枚の写真を取り出して、

 

「えっと、あっ、君か?フェイト・テスタロッサ・ハラオウンって」

 

「えっ?何で?貴方が私を‥‥?」

 

「俺の協力者が君を保護しろって言ってね、君の産まれ方にちょっと興味があるみたいなんだ...」

 

フェイトは神威の言葉に驚く。

 

「産まれ方?」

 

ツナは神威の言うフェイトの産まれ方と言う意味がわからず、頭に?マークを浮かべていた。

そしてフェイトをチラッと見ると、彼女は少し震えていた。

 

「フェイトさん?え?‥‥っ!?」

 

ドーン!

 

神威がツナに一気に近づいて思いっきり殴り飛ばした。

 

「モブはモブらしく背景として壁の中にめり込まれていなよ」

 

無邪気な笑みをフェイトに向けたまま神威はツナに視線を向けずに彼を壁に向かって殴り飛ばしたのだ。

 

「ツナ!!」

 

「君には同情するよ、母親の欲望のために作られた挙句、使えない人形と言われたんだから‥‥」

 

「バルディッシュ!!」

 

フェイトが神威を黙らせようとバルディッシュを振りかざし、一気に神威めがけて振り下ろす。

 

ドーン!

 

「なっ!?」

 

「おい、何だ?その攻撃は?」

 

すると神威はフェイトの一撃を傘でガードしていた。

フェイトは自分の一撃が笠一本だけで防がれた事に驚愕する。

 

「ほら、もっと本気を出せよ‥‥でなきゃ‥‥」

 

グワォーン!

 

傘でフェイトをぶっ叩いた。

 

「本当の人形になっちゃうぜ」

 

「キャア!」

 

フェイトは後ろに吹っ飛ぶ。

 

「やれやれ、警察のエースっていうからちょっとは期待していたのに、ぬるい、ぬるすぎるよ、お前‥‥全く期待外れだ‥‥」

 

神威は倒れ込んだフェイト見下し、失望したような顔をする。

 

「はぁぁ!!」

 

負けじとフェイトも魔法弾を放ったが片手で受け止められ弾かれた。

 

「これじゃ、俺は渇く一方だ...」

 

そして笠の連打でフェイトを叩きまくった。

 

(...なんて攻撃なの...重すぎる...このままじゃ...私は...誰か助けて...ツ.....ナ...)

 

意識が薄れゆく中フェイトが思ったら、

 

ズガァーン!

 

「ん?」

 

がん!

 

神威は殴られ蹴り飛ばされた。

 

「すまない、遅くなった。」

 

立っていたのはフェイトが薄れゆく中思った人物。

 

「ツナ.....遅いよ...」

 

フェイトの多数の打撲痕だけじゃなく血も出ていた。

 

「へぇ~生きてたんだ。しかもさっきと見違えるぐらいに、」

 

神威はまるでとびっきりの餌を見つけた肉食獣のような顔をしていた。

 

(やっぱり、こいつは、物凄くやばい...今まで戦って来たヤツらとは何か違う...)

 

「お前に聞きたい事がある。」

 

「ん?」

 

ツナは神威に対し質問をした。

 

「何故フェイトを狙う?」

 

ツナの質問に神威は、

 

「あれ?何だ?知らないのか?ソイツの正体‥‥」

 

「やめて!」

 

フェイトが叫ぶ。

 

「フェイト?」

 

「何だ、お仲間に隠し事か?冷たいねぇ~なら、俺が教えてあげよう...「すまない」」

 

「は?」

 

神威がフェイトの出生に関する秘密を言おうとした時、

 

「すまないフェイト、そこまで嫌がるなら俺は聞かない」

 

ツナは聞かないと言う。

 

「いいのか?そいつについては‥‥」

 

「あぁ、フェイトこれだけは言っておく、君がどんな産まれ方をしようと、俺の、俺達の仲間であることに変わりはない。」

 

「ツナ」

 

「ま、どっちでもいいか、どうせお前は此処で俺に‥‥刈られるんだしな!!」

 

神威は勢いよく地面を蹴りツナに近き殴りを入れようとしたが、勢いをいなされツナに腕を掴まれ、そして、

 

「ふ!」

 

腹に一発入れられた。

神威も負けずと頭突きを入れるそしてツナと距離をとる今度はツナが連発で殴ったが神威はガードした。

 

「ちっ、」

 

そして両手を抑えると、

 

「お前は一体何なんだ...お前は俺とは違う!!人を殺した事もない...」

 

「あぁ、」

 

「なのに何でお前はこんな強さがある。」

 

「俺は人を殺すために強くなったんじゃない。仲間を大事な人を守るために強くなったんだ!!」

 

ツナの額の炎が弾けそして色に深みがました。

 

神威はツナのこの答えに

 

「仲間を...守るため...そんな事で強くなれるだと...ふざけるなぁぁ!!」

 

無意識に神威の逆鱗に触れたツナ。

両者腕をがっしり掴みながら、

 

「「はぁぁ!!」」

 

次の瞬間、両者の周りには煙がたち激しい殴り合いが始まった。

 

ズガガガァァン!!

 

神威もツナも一歩も引かずマシンガンのように殴りあった。

そして一時距離をとって、

 

「ナッツ!」

 

「ガウ」

 

「形態変化!!」

 

ツナのグローブが変化した。

 

(何だ?)

 

神威にはわかる筈がなく、

 

「なっ!?」

 

次の瞬間神威の懐に潜り込んでいた。

 

(こいつ、スピードが上がった!?今までと桁違いだ。)

 

ツナのラッシュが神威を襲ったが神威は、

 

バシッ!

 

「軽いな...確かにスピードは大したものだがこれぐらい...」

 

ツナを蹴りあげ神威はツナより上に上がり両手を合わせて殴り落とした。

 

「グ!ガハァ!」

 

「ツナ!!」

 

フェイトはツナの身を案じてツナの元に行こうとしたが傷が深くあまり動けない。

そして、フェイトの意識がここで途絶え彼女はその場に倒れた。

 

 

~sideなのは&はやて~

 

こちらは客の誘導をしてから、

 

「一体どうなっている?」

 

「「リボーン君!?」」

 

「いつの間に!?」

 

ドーン!

 

「今のはっ!?ホテルの中から‥オークション会場からや!!」

 

「見に行くぞ、」

 

リボーンがオークション会場へと向かい、

 

「あっ、ちょお待ちぃ、リボーン君」

 

なのはもはやてもついていく形になった。そして扉の前になると、

 

「だいぶ、歪んでいるな」

 

強い衝撃のせいでドアが変形し開ける事が出来なかった。

 

「どいて、私が開けるよ」

 

なのはが魔法弾を出して無理やりドアを壊して、

 

「直ぐ入るぞ!」

 

とオークション会場に突入した。

 

その中では、

 

「な、なんやこれ!?オークション会場がめちゃくちゃやないか!!それに...」

 

ツナと神威が激しく戦っていた。

 

ドーン!

 

バン!

 

ドーン!

 

「くっ、」

 

ツナが苦しそうにそして何かを直感してふと見たらリボーンとはやてとなのはが入ってきた。

 

(なのはにはやて‥それにリボーンも‥‥)

 

リボーンの姿を確認するとツナは無線をリボーンに繋げて

 

(リボーン)

 

「ん、何だ?ツナ」

 

「え!?」

 

(フェイトがそこに倒れている、ひどい怪我だ。早くシャマルの所に運んでくれ、俺は‥‥)

 

ズガガガァァン

 

リボーンとの会話中に神威が傘で撃ってきた。

 

「戦いの中、何をしているの?余所見?随分と余裕だね?」

 

「ツナ君!?」

 

「あかん、私達もツナ君の援護に!!」

 

「待て!」

 

「何や!リボーン君!!このままやとツナ君が‥‥」

 

「アイツはツナが抑える、それよりもフェイトが怪我をしている様だ、俺達はフェイトを回収するぞ!」

 

「え!?フェイトちゃんが!?」

 

そしてなのは達がフェイトの元に行くのを確認したら、

 

「よし、なら‥‥」

 

ツナが神威に前進して神威の周りを回って、

 

「超Xストリーム!」

 

まるで炎の檻のように神威の周りを渦巻いた。

 

「行くぞ、ツナがアイツに見つからないように戦ってくれている」

 

そしてなのは達がフェイトの元に行くと、

 

「フェイトちゃん!」

 

「な...のはそれ...にはやて...とリボー...ン」

 

なのはに声をかけられて、フェイトは意識を取り戻す。

 

「大丈夫?」

 

とは聞いたがフェイトの傷は思ったよりも深い。

 

「とりあえず、ここから出るぞ、それからまず俺が応急処置をする。」

 

「えっ?リボーン君そんな事も出来るん?」

 

「あぁ、出来る、早く運ぶぞ、ツナがアイツを抑えてくれているうちに‥‥」

 

フェイトがはっとして

 

「ツナ!?ツナは大丈夫なの!」

 

「あぁ、今は俺達から敵を引き離そうと頑張っている。」

 

「ツナ...」

 

フェイトは申し訳なさそうに顔を歪める。

 

「大丈夫だ、あいつは守りたい仲間がいるならそれに比例して強くなるやつだ。」

 

そのツナの方はと言うと、

超Xストリームの炎が消えて、神威を確認する。

しかし、

 

(っ!?あいつがいない!まさかっ!?)

 

肝心の神威の姿が無く、ツナは神威が自分から目標をフェイトに変えたのかと思い、フェイトの方を見ると、

 

「残念、こっちだ!!」

 

横から神威が傘でツナをフルスイングする。

神威の標的はいつの間にか完全にフェイトからツナに変わっていた。

 

「ぐはァ!」

 

ドーン!

 

ツナが吹っ飛び、

 

「「「ツナ君!!」」」

 

なのは達が思わず声をあげる。

 

「あれ?何処に行くのかな?フェイト・テスタロッサ・ハラオウン‥‥」

 

そして神威がゆっくりとなのは達の方へ歩いていくと、

 

ズガァヒュン

 

「こっちだ、Xカノン!!」

 

「むっ!?」

 

神威は傘を開いてガードする。

 

「早く行け!!リボーン!!」

 

傘のためツナを見失った神威。

そのツナは神威の背後にまわりスープレックスを決めた。

 

「行くぞ!!」

 

リボーンが走り、

 

「くっ、行くでなのはちゃん!!」

 

「わかった!!」

 

はやてとなのははフェイトを背負いながら走った。

 

(ツナ...)

 

フェイトは最後までツナの身を案じていた。

 

「やれやれ、やっと邪魔者はどこかに行ったか‥‥」

 

神威がムクっと起き上がる。

 

「お前、やっぱり...」

 

「折角の戦いを邪魔させるのは嫌だからね...、」

 

神威は傘を直してからから突撃してきた。

 

(く!どんどん重くなっている、)

 

ツナも負けずと反撃するが、苦しくなる一方だった。

 

「それで終わりか?まだ行けるよな!」

 

「ぐ、ガハァ」

 

膝をつき、口から血を吐く。

 

「うおお!!」

 

ツナも反撃をしようと攻めに行った。

 

「本当にやるな、侍と言いお前と言い...だが、所詮は貧弱な地球人だな!!」

 

ツナの両手を受け止め膝蹴りを腹にぶち込んでグルングルンと振り回して外に飛ばした。

 

「うわぁぁぁ」

 

 

~sideリボーン達~

 

今リボーンがフェイトの応急処置を行っていた。

 

「打撲痕が目立つな、とにかく止血をしとくぞ。」

 

と、救急箱を開けて治療をしていた。

 

「フェイトちゃん...」

 

親友がここまで傷ついた為に物凄く心配をしていた、なのはとはやて。

 

「.....ごめんね、なのは...はやて‥私が負けちゃって...」

 

「気にしたらあかんよ、フェイトちゃん」

 

「本当に...ツナ達にしっかりしている所見せないといけないのに...私ってぶ‥「無様だなフェイト」」

 

フェイトが自身を無様と言う前にリボーンがき先に言った。

 

「リボーン君!!今のはあかんやろ!!仲間にーー」

 

はやてが怒ってるところにリボーンが

 

「お前、本当に死ぬ気で戦ったのか?さっきの奴‥アイツは強いかもしれねぇが、お前も強いのは俺もツナも銀時達も知っているぞ。お前戦いの中でアイツに何か言われたのか?」

 

「・・・・」

 

リボーンの問いにフェイトは黙り込む。

 

その時

 

((なのはさん!!))

 

となのはを呼ぶ声があった。

 

~side銀時~

 

「何ですか?急にホテルが...?」

 

新八がホテルの方を見ていると獄寺が、

 

「10代目ぇぇ!!」

 

ふらふら状態のツナを心配して声をかける。

声をかけられたツナは獄寺の方を見ると獄寺の手足が凍っていた。

 

「獄寺君!?どうしたんだ?それは!!それに神楽も...」

 

と言いかけているところに、

 

「まだまだ終わらせないよ!!」

 

神威もツナに追いつく。

 

「くっ!」

 

ツナは神威の拳を受け止めた。神威の姿を見た神楽は、

 

「か、神威ぃぃ!!」

 

怒気を含む大声で叫ぶ。

 

「誰だ?また神楽と雰囲気が似てやがる。」

 

神楽と容姿が似ており、神楽の様子から少なくとも味方ではない事は確かな様子。

 

「神楽ちゃんのお兄さんです!」

 

新八が獄寺達に神威が誰なのかを説明する。

 

「えっ!?神楽さんのお兄さん!?」

 

キャロ達が驚く。

 

 

~sideツナ&神威~

 

「へぇ、アイツもこっちに来ていたのか‥‥」

 

同じ異世界に偶然だが、妹も流れ着いていたにも関わらず、神威は神楽を興味無さそうな目で見ながら呟く。

 

「お前、本当に神楽の...」

 

獄寺はこの目の前の男は本当に神楽の兄なのかを尋ねる。

確かに容姿は神楽とどことなく似ているが、纏っている雰囲気は余りにも禍々しい。

トレディの兄と言われた方がむしろ、しっくりくる。

 

「あぁ、神楽は正真正銘、俺の妹だ...だが、アイツは...誰だ...?随分と神楽に似ているが、俺には神楽以外に妹はいねぇし、親戚にもあんな面を持つ奴は居なかった‥‥」

 

神威の見ている方を見るとソイツは今、銀時と戦っていた。

 

「銀さん!?」

 

銀時も体の一部が凍りついていた。

 

「10代目...すいません...俺の力が足らずに...ヴィータが...」

 

「ヴィータがどうしたんだ!?」

 

と獄寺がツナに凍った姿のヴィータを見せると、

 

「なぁ!?」

 

完全に凍りついたヴィータの姿を見て驚愕する。

 

「どうした...?気が動転しているよ。ダメだよ、そんなんじゃ‥‥」

 

神威は取りあえず、銀時と戦っている神楽のそっくりさんの正体はおいといて、今は自分の獲物であるツナに蹴りを入れようとすると、

 

ガシ!

 

神威の足を掴んで、

 

「お前達か?」

 

「ん?」

 

「お前達が...ヴィータを...」

 

「だったら、どうする?」

 

「ゆるさない...お前は絶対ここで倒す!!」

 

神威を睨みつけて神威の足にエルボーを決めて

 

「ぐふっ!」

 

ツナはまだ離さず、

 

「ナッツ!形態変化!攻撃モード、I世のガントレット!!」

 

と言いツナの拳の炎が丸くなりそして‥‥

 

百獣の一撃(コルボ・ディ・レオネ)!!」

 

獅子の形を模ったツナの怒りの一撃が神威に決まった。

 

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的16 追い詰められた鼠程慎重に狩らないと何をしでかすかわからない

 

 

~sideツナ~

 

「百獣の一撃(コルボ・ディ・レオネ)!!」

 

ツナの怒りの一撃が神威を襲った。

 

ビューン

 

ズドーン!

 

その一撃を受けて神威はホテルまでにぶっ飛ばされた。

ツナは追撃をかけようと無言で神威の方に飛んでいく、

 

一方、神威は‥‥

 

(目つきが変わった。仲間がやられて出てきたか...面白い‥‥)

 

ニヤッと口元を緩め、スッと立ち上がりツナに向かって行った。

 

ツナと神威の拳はぶつかり合いその衝撃で周りの反応は、

 

「くっ!」

 

スバルが倒れないように踏ん張り、

 

「なんつう衝撃だ。」

 

獄寺もその衝撃の大きさに驚き、

 

「ツナ...バカ兄貴と張り合っているネ。」

 

あの神威相手に張り合っているツナを呆然と見て、

 

「えっと‥‥本当に...ツナ君って僕達の世界とは違いますが、地球人何ですか」

 

新八が夜兎の中でも最強クラスに入る神威と張り合っているツナを見て、彼が本当に地球人なのか疑問に思った。

 

場面は戻りそのツナは、

 

「く、く~!」

 

「ふ、ははは、やっと出てきた...君の中に居る獣が‥‥」

 

神威は探し求めていたお宝が見つかったかのように嬉しそうな顔をし、神威の反応にツナは、

 

「何を言っている?」

 

神威の言っている言葉の意味が分からない様子だった。

 

「どうしんだ、この程度じゃまた仲間を殺しちゃうよ。」

 

神威はツナの中の獣を完全に引き出す為、再び笑顔でツナに挑発めいた言葉を投げかける。

 

「なんだと!!」

 

神威の言葉にツナはボォ左手に炎を集合させてその炎の拳で神威に殴り掛かる。

 

「X‥‥」

 

ガシッ

 

しかし、ツナが技を放つ前に神威拳を抑えられる。

 

「もっとだ。これぐらいの力じゃ、俺は倒せないよ‥‥」

 

「っ!?舐めるな!!」

 

ツナは神威から離れてラッシュの嵐で神威を攻撃するが見た目はツナの一方的に見えるが神威は、

 

(やはり、見立て通りだ。こいつの中にもちゃんと存在している‥‥獣の本能が‥‥拭いきれない血を求める獣の本能が‥‥)

 

ガシッ!

 

ツナは急にパンチを止められて投げ飛ばされたが炎で止まり神威の方を見たが神威はホテルの壁を剥がしてそれをツナに投げつけた。

 

「くっ、」

 

投げつけられたホテルの壁はツナにヒットした。

 

ズドォーン!

 

壁がツナにヒットした事で煙が立ち込める。

 

「じゅ、10代目...」

 

獄寺が信じられないと言う顔をし、

 

「ツナ.....」

 

神楽も目を見開いて体を震わせ、

 

「う、嘘でしょ‥‥」

 

スバルは開いた口を手で抑えていた。

 

「く、ツナぁーー!!」

 

銀時が叫んでツナの元に行こうとしたが其処をトレディが前に立ち塞がる。

 

「.....行かせない。貴方の相手は私‥‥」

 

自らの前に立ち塞がるトレディの姿を見て銀時は冷静さを取り戻して、洞爺湖を構える。

 

「く~、」

 

「さてと、」

 

神威もツナを倒したと思い、その場から立ち去ろうとしたら、

 

「オペレーションX」

 

煙がはれてオレンジの炎が見えた。

 

「っ!?」

 

「X BURNER!!」

 

ズドーン!!

ツナの炎は神威そしてホテルまで届いた。

 

「まだだ、俺...の仲間は...」

 

と膝をつきボロボロになりながらも技を神威に向けて放ったツナ。

 

「はぁはぁ、.....殺させない!!」

 

ギリギリの体力で叫ぶ。

 

「へ、」

 

ツナの様子を見た銀時がニッと笑う。

 

(言うじゃねぇかツナ、わけぇのが頑張ってんだ...俺もしっかりやらねぇとな)

 

トレディとの攻防の中、銀時がとった行動は残った右手から洞爺湖を離して懐をまさぐって、

 

(ヅラに感謝だな...)

出したのはんまい棒サラミ味だった。

それをトレディに向かって投げた。それを見たトレディは本能的に爆弾だと思い吸収体勢担ったがこれはただの駄菓子の為に、

 

ボーン!

 

失敗に終わった。

 

「えほ、えほ、何?コレ?爆弾じゃないの!?」

 

んまい棒サラミ味の粉塵が気管支に入ったのか、咳き込むトレディ。

 

(今のうちに)

 

とトレディを振り切り、ツナの方に向かう。

 

「大丈夫か?ツナ」

 

「銀さん...あいつは?」

 

「すぐに追って来るな...一瞬の足止めだ...。まだいけるか?」

 

「あぁ、だが勝てるかはわからない。」

 

ツナは続けた。

 

「銀さん俺ができるだけ抑える...みんなを連れて「馬鹿言うな!!」」

 

「どうせ俺が残っても...お前が残っても...抑えきれる相手じゃなない...だが2人なら...勝てるかもしんねぇんだ。協力しろ!!」

 

「.....銀さん腕やお腹が凍っている....それに‥‥」

 

「だから2人何だろうが俺の腕の分はお前が埋めろ、お前の分は俺が埋めてやる!!」

 

「できるのか...」

 

「舐めんなよ、少し俺より若いからって、」

 

「期待させてもらう‥‥」

 

ツナは立ち上がる。

立ち上がったツナを見て銀時は、

 

「さあ、見せてやろうぜあの戦闘狂どもに!!地球人最強コンビの力をな!!」

 

「あぁ!!」

 

とツナは神威の方に銀時はトレディに向かって行った。

 

「ちぃっ、死に損ないが!」

 

神威が言い

 

「死に損ないを舐めるなよ!!」

 

とツナは神威の目の前から消えて、

 

「例え速くても、わかるよ!!」

 

と神威は裏拳を入れたがツナの自慢の超直感で躱して、

 

(今だ!!)

 

ドゴッ

 

「ぐはっ!!」

 

腹に拳のラッシュを入れて最後にアッパーをやり神威は空中に飛んだ。

 

「銀さん!!」

 

「あぁ!!」

 

トレディから背を向けてツナの方に走った。

 

「逃がさない。」

 

銀時は急に飛び上がりそして目の前にいたのはツナだった。

 

「!?」

 

ツナはトレディに炎のブースト+エルボーを決めて

 

「ぐっ!!」

 

トレディが吹っ飛び空中の銀時にあわせて体位を変えてツナと銀時の足があわさりそして、

 

「頼んだ!」

 

「任せろ!」

 

2人は同時に蹴り合い

 

空中に飛び出し神威に向かった

 

「舐めるなよ...」

 

と空中で体勢を変えて完全なに銀時に向かい空中一点勝負となり、

 

「「はぁぁぁぁ!!」」

 

神威は傘の銃で牽制を入れて銀時はそれを弾いたそれを見ると神威は傘を振り下ろした。

 

「終わりだ!!」

 

「「「「「銀さあぁぁぁぁん!!」」」」」

 

銀時は静かに傘を洞爺湖にあてて回転をしていなした。そこから

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

神威の横っ腹にあててぶっとばした。

 

ズドォーン!!

 

「はぁはぁ...大丈夫か?銀さん?」

 

ツナが銀時の方にやってきた

 

「あ、あぁ‥‥」

 

「銀さん、すこし」

 

とツナは銀時の左腕を触り死ぬ気の炎を当てた。ツナの炎で銀時の氷が解けてきた

 

「おお~!!」

 

「死ぬ気の炎は燃やすことはできないが熱を帯びている」

 

とツナは手の平からとかしていった。

 

スガガガァァァン!!

 

急に神威が吹っ飛んだ方向から銃声がなった。

 

「ツナ!!」

 

銀時が覆いかぶさるように庇いツナを押し倒して庇った為にそこまで撃たれなかったが右肩を撃たれた。

 

「銀さん!?」

 

「まだだよ、地球人...」

 

ボロボロになりながらも神威が現れる。

 

「私もまだ...やれる‥‥」

 

トレディもまだ戦意を喪失していなかった。

 

「くっ!」

 

(とにかく銀さんを)

 

と飛んでいき、

 

「獄寺...神楽...銀さんを頼んだ...。」

 

「くぅ~ツナ」

 

「銀さん後は俺がやる。」

 

とグローブを外そうとすると

 

「待ってください!トレディの方は死ぬ気の炎も吸収します。それとは相性が悪すぎます!!」

 

「それでも時間稼ぎ位はできるだろ...ここでやられるぐらいなら...」

 

とツナが言っていると神威とトレディに突如、桃色のチェーンが飛び出した。

 

「「!?」」

 

「あ!なのはさん!!」

 

とそこには管理局のエースオブエースの姿があった。

 

「ディバイン...」

 

なのはが収束砲のチャージを行っている間、神威もトレディもバインドを引きちぎり、

 

「選手交代か?」

 

神威は手をポキポキと鳴らし、まだ戦えることをアピールし、トレディも戦意を失っていない目でなのはをジッと睨む。

互いに今日が初顔合わせの筈の神威とトレディなのに、そこは突っ込まないでいる。

 

 

「これ以上はやらせへんで」

 

はやてもバリアジャケットに着替えていた。

 

「お前はあの黒羽を‥‥俺はあのサイドテールをやる‥‥いいな?」

 

神威がトレディに尋ねると、トレディは了承したかのように頷く。

 

やがて、収束砲のチャージを完了したなのはは、

 

「バスター!!」

 

と収束砲ディバインバスターを放った。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、終了だよ、白拍手」

 

パーン

 

ディバインバスターが打ち消された。

 

「な!?」

 

そこにたっていたのは‥‥

 

「なっ、お前は白蘭!!」

 

「何!?」

 

白蘭の姿にツナと獄寺が過激に反応した。

 

「何でお前が此処に...」

 

とリボーンも駆けつけていた。

 

「やぁ、綱吉くんに獄寺くんにアルコバレーノ・リボーン、僕からしたら君達とは初めましてなんだよね~、変な感じだよね~初めて会ったのに初めてじゃないと言うのは~。」

 

「あいつは...まさかこの世界の白蘭!!」

 

「大せいか~い、そうだよ僕はこの世界に生まれ育った僕だよ~よって、君たちの知っている僕じゃないんだ。さてと、神威くんそれと君のことは知らないけどそこの君...そろそろお開きの時間だよ。晋助くんも帰ってこいって言っているしね」

 

と笑いながら言っていると

 

「お前...今、なんっつた。晋助って‥‥まさか‥‥」

 

今度は銀時が晋助の名前に反応した。

 

「そうだよ~君のよ~く知る人物だよ。それじゃ~ね~」

 

と白蘭は言いたい事を言って一足先に帰りそして、

 

「ちぇ、興が醒めた、またね、君の事は覚えておくよ、ツナ君。今度会った時には狩らせてもらうからね」

 

ツナに笑みを浮かべて去っていき、そしてトレディもいつの間にかいなくなっていた。

 

「神威‥‥」

 

ツナには今回の任務での出会いはまさに宿命と言える出会いがあり、

 

「やっぱり私は只の凡人なんだ‥‥」

 

ティアナの精神には傷と焦りを生じさせ、

 

「晋助‥‥だと‥‥アイツも‥‥アイツもこの世界に来ているのか?」

 

銀時はこの先の行く末に一抹の不安を覚え、

 

「白蘭‥‥まさか、アイツがこの世界に存在していてはと‥‥」

 

リボーンは白蘭の存在に頭を悩ませ、

 

「トレディ‥‥神楽ちゃんと同じ顔を持つ謎の少女‥‥あの子は一体何者なんだ?」

 

新八はトレディの存在が気になった。

様々な思惑が渦巻く中、ホテル・アグスタの攻防は神威、トレディらの撤退で幕を下ろした。

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的17 夢かどうか確かめようとして頬を抓るが夢の中で頬を抓ることは全くない

白蘭達が去り戦いが脅威は一旦去った現在、自分達のいたホテルは中と外共に前の様な姿は見受けられない.....それにホテルだけじゃなく仲間も負傷者多数中でも

 

「ヴィータ!!しっかりしぃ!!ヴィータ!!」

 

はやてが凍ったヴィータに叫び続けた。

しかし、凍ったままのヴィータは、はやての声に反応しない。ヴィータが生きてるのかそれとも最悪の状態なのか確認できてない

其処へ、シグナム達も戻ってきた。

 

「主はやて...」

 

シグナムは心配しながらはやてを見ていた。

 

「おい獄寺、凍っても死ぬ訳では無いんだな?」

 

「え、あ、はい‥敵からの情報なんで信憑性は低いですが、確かにトレディの奴はヴィータを凍らせた後、『凍らされても仮死状態のままで、氷を解かせば生き返る』と言っていました。」

だが最悪の状態は避けられたみたいだ。敵の情報の為に何処まで信ぴょう性があるのかはわからないが希望が持てた

そしてそれを聞いたリボーンが、

 

「そうか...はやてとなのはは、現場検証をしておいてくれ。シグナムとザフィーラは念の為、周辺の警戒を。スバル達はホテルからタオルとお湯、それから毛布とかを持ってきてくれ。ツナとフェイトはあんまり動かすな、傷に触る。全員が聞きたい事があるんだろうが、それは戻ったら情報の照らしあわせだ。炎真、お前はちょっと来い。」

 

「え?」

 

そしてリボーンがレオンをダウジングのバーに変化させて歩き回り

 

「ここだな、炎真ここを思いっきり殴れ!」

 

「わかった」

 

とハイパー化して、リボーンが言った地点を思いっきり殴る

 

「ふん!」

 

ドゴ!

 

殴ると、そこから、

 

ブシャー!

 

溢れんばかりの大量の水が出てきた。

 

「!?何したアルか?」

 

「水脈だな。」

 

「神楽、獄寺と銀時をまずこれで解凍するぞ。その後に戻れるならすぐに戻るぞ。」

 

「わかったネ」

 

神楽は獄寺に肩をかして新八は銀時に肩を貸して噴き出す水の下へと向かった。

 

「お湯とタオル、持って来ました!!」

 

「毛布持って来ました!!」

 

獄寺と銀時が水で凍った体の一部を解凍していると、スバルとエリオがホテルからお湯、タオル、毛布を持って来た。

 

「よし、しん.....神楽。ヴィータにお湯をかけて、その後タオルで擦って温めてやれ」

 

「おぉい、今何で僕を省いた。」

 

新八はリボーンが何故、自分の名前を言いかけたにも関わらず、ヴィータの面倒を神楽に変更したのかを尋ねる。

 

「そんなの決まっているネ。お前がヴィータに変な事するかもしれねぇだろうが!!この変態メガネ!!」

 

「しねぇよ!!何でこんな時までそんな扱い!!」

 

とぎゃあぎゃあ言っている時に、

 

「はは、「ドサ、」」

 

ツナが電池が切れたかのように意識を失ってしまう

 

「えっ?ツナ!」

フェイトが慌ててツナに駈け寄ると、

 

「ZZZ~」

ツナの寝息が聞こえる

 

「「「「寝たんかい!!」」」」

 

全員の全力のツッコミが空に響き渡る。

 

もう気力の限界だったんだろう

ツナ自身、最初神威の1発を死ぬ気じゃない状態のまま不意に受けたのと神威との戦いで体力の限界が来ていた。

 

「しょうがねぇ、帰ったらみっちりしごかねぇとな寝る間も惜しんで」

 

その後、全身が凍っていたヴィータの解凍と現場検証が終わり、代わりの部隊に引き継いだ後、皆は六課の隊舎へと戻った。

 

 

~side六課~

 

六課の医務室では、

 

「はい、弾の摘出は終わりましよ。」

 

「すまねぇな、シャマル、」

 

「別にいいですよ。これが私の仕事ですし、包帯もまいときますね。」

 

とシャマルが作業をしていると

 

「う、う~んシャマル...か?」

 

「「え?」」

 

ヴィータが目を覚ました。

 

「ヴィータちゃん!よかっっった!!」

 

と涙を流してヴィータの無事を喜ぶシャマル。

銀時もヴィータが目覚めた事に安堵の表情をして、

 

「俺は、はやて達を呼んでくる、」

 

と急いで医務室を出ていった。

 

「シャマル...此処は.....どこだ?」

 

ヴィータは虚ろな目で辺りを見回す。

 

「六課の医務室よ、」

 

「...医務室?」

 

とガバァ!起き上がり

 

「あいつは!ティアナ達は!!神楽達も無事なのか!!ん?フェイト!ツナ!!」

 

と意識が完全に戻り大声でシャマルに皆の安否を尋ねる。

 

「落ち着いて、皆無事よ、フェイトちゃん達も傷はひどいけど大事には至っていないわ」

 

「そうなのか?よかった~」

 

と皆の無事を来たヴィータは、

 

ボスっ

 

と再び布団の中に倒れた。

 

「‥‥なぁ、シャマル」

 

「何?ヴィータちゃん」

 

「‥‥トレディって奴の顔をお前は見たか?」

 

「私は直接見てないけど、話にはきいたわ。神楽ちゃんと同じ顔だったのよね?」

 

「あぁ、もしかして...いや、ほぼ100%アイツは‥‥「ヴィータ!!」」

 

とヴィータがシャマルにトレディの事を言う前に医務室にはまるで雪崩の様にはやて達が入ってきた。

 

「ヴィータ副隊長!!大丈夫ですか?」

 

スバルが言い、エリオとキャロもホッとしている様子。

 

「あ、あぁ、」

 

「ヴィータ、良かったネ!!目を覚まして!!私、心配したアルヨ!!」

 

ギュッー

 

と神楽が自分の思いの強さ分ヴィータを抱きしめた。だが夜兎である神楽に抱きしめられたら流石のヴィータもたまったもんじゃない。

 

「か、神楽ちゃん、ストップ、ストップ」

 

「えっ?」

 

シャマルが神楽を慌てて止めに入る。

 

「くる、苦しい、神楽‥‥ギブギブギブ!!」

 

と神楽に絞め殺されかけた。折角目を覚ましたのにまた意識を持っていかれかけた

 

「ヴィータ...」

 

「ん?どうした獄寺」

 

「すまなかったな、俺が相手の能力やしぶとさを読み違えたりして...もう少ししっかりしとけば、お前は...」

 

獄寺はヴィータに頭を下げて謝る。

 

「獄寺、あんま気にすんな、少なくとも大方はあっていたし、それにお前が居なければ、もっと被害は大きかったかも知んねぇし。あの後どうなったんだ?私が倒れた後は一体誰が奴を?」

 

「坂田が駆けつけてくれてな 、お前が凍っちまった後は坂田がトレディと戦ってくれた。」

 

と話していると、

 

「その話は明日やとにかく今回はこれで一旦終わろ、皆を疲れたやろ?ヴィータも今日明日はゆっくりしとき、明日、フェイトちゃんとツナ君が起きたら情報の照らしあわしをしよ。」

 

チラッとはやてが視線を逸らすと、はやての視線先にはツナとフェイトが静かに寝息を立てており、ツナの傍にはリボーンと炎真が居り、フェイトの傍にはなのはが見守っていた。

 

「あ、ああ」

 

「そうね」

 

「では、解散!」

 

とはやての号令の後、ヴィータを休ませるために皆は医務室から出ていった。

ただ、この時、医務室の中にティアナの姿が無かったのに気付く者はいなかった。

 

 

~side夜~

 

深夜、皆が寝静まった頃に医務室では、

 

「う、う~んあれ此処は、ゆめ?」

 

目が覚めたのはツナだった。

ツナは目が醒め辺りを見回して其処はさっきまでいたホテルとは全く違う場所だったので確認の為、1回頬を思いっ切り抓り、

 

「いてて、夢じゃないのか、なら運ばれたのかな?」

 

と起き上がり少し歩くと

 

「あっ、ヴィータさん‥‥」

 

ベッドではヴィータが思いっきり布団を蹴り飛ばして寝ていたので、

 

「良かった、大事には至らなくて...」

 

とヴィータがはだけた布団を彼女にかけなおして、

 

「フェイトさんも、ん?何か魘されているのかな?」

 

フェイトは寝苦しそうにしており、ツナは気になって少しフェイトの様子を見てみるとフェイトがバッと目を開け起きてしまった。

目の前にツナの顔があり、フェイトは、

 

「うぅ、ツ.....ツナ?えっ/////」

 

と慌てて起きてしまい、2人は‥‥

 

ゴン!

 

思いっ切り額をぶつけた。

 

「いてててて‥‥」

 

「つぅ~‥‥」

 

両者は額を手で抑えながら、

 

「す、すいません/////折角寝ていたのに...」

 

「う、ううん/////大丈夫あんまり気にしてないよ/////」

 

と言いつつ物凄く意識をしていたフェイトであった。お互い自分の顔が赤くなり暫く沈黙が続く

で、

 

「あの、フェイトさん?」

 

「何?」

 

「不謹慎な事を聞くかも知れませんが、何で魘されていたんですか?」

 

「え、あ、あぁ、魘されていたんだ‥‥別に大したことはないよ」

 

と隠すように言う。

 

「もしかして、ホテルで神威が言っていた『産まれ方』‥‥のことですか?」

 

ツナの言葉にフェイトが、

 

「う、うん」

 

小さく頷き、フェイトは俯く。

 

「そうですか.....あの‥‥もしよければ、話してくれませんか?」

 

 

 

「...え?」

 

 

「...フェイトさんが何に悩んでいるかを‥‥誰かに話したらスッキリする事もあります。俺はフェイトの力になりたいんです。仲間だから」

あの時は話さなくていいと言ったが多分塞ぎ込んでも進展しないだろうと直感するツナ

ツナの言葉にフェイトは、

 

「.....わかった。」

 

フェイトは話した。

自分がある少女のクローンである事を

最初は母親の傷を埋めるために作られた生命体だった自分

『プロジェクトFATE』の事を

昔、生みの親の命令で立場上なのはと敵対関係だった事をずっと使い魔と1人っきりだった事を

 

「そうだったんですか...」

 

「うん...」

 

(クローン人間...映画や漫画・アニメの中の存在だと思っていた。この世界にはそんな技術があるのか...)

 

ツナはフェイトが悩んでいた事を知りフェイトの気持ちを理解した。

1人という孤独の恐怖を.....

 

「俺の世界にはそんな技術はありません、クローン人間なんて映画や漫画・アニメの中だけだと思っていました。正直フェイトさんの抱く気持ちを全部は理解できません。」

 

ツナは正直にフェイトに対して言う。

 

「そうだよね...ごめんね...こんな話をして」

 

フェイトの声は涙声だった。

 

「でも、1人の恐怖はわかります。俺も昔はずっと1人でした。親は居ましたが...友達が全然できなくて...それであいつがきてから初めて友達が...仲間ができました。」

正直自分の過去はフェイトと比べたら小石と岩石よりもの重量差はあるだろう。でも過去の大きさに問わずどんな時でも1人というのは辛く厳しく切なく人を魔の海へと引きずり込み深みへと入ってしまう。だからこそその恐怖を見に染み込ませてるツナだからこそわかる引きずり込まれたとしても引っ張り戻してくれる存在の有り難さを

 

「仲間が友達がどれだけ自分を助けてくれるのかを俺はフェイトと同じ位わかってます。」

 

「え」

多分フェイトの事を救ったのはなのはだ。そんな事はこの2人を見てればわかる。そしてはやて共何かなのはと同じ位の絆の強さを感じる。でも彼女達が近くにいなかった今回、フェイトは1人で過去と無理やり向き合わせて壊れると思ってしまったらフェイトはここまで弱くなってしまった。自分と同じ位大きな戦いを越えて戦う力はとても強い...でも過去の影響だろう精神的には俺とあまり変わらない。

直ぐに崩れてしまうかもしれない。大きな傷はそう簡単に消えないのだから

 

 

だからこそ

 

 

そして立ち上がりフェイトの横に行った。

そしてフェイトの手を握り、

 

「え/////」

 

フェイトは顔を上げる。自分の手に入ってくる暖かみを感じながら

 

「フェイトさん、俺はずっとフェイトさんの仲間でいるつもりです。俺にとってのフェイトさんは暖かくて優しくて強い。それはどんな産まれ方をしても繋がりを守ろうとするフェイトさんは俺の憧れです。」

若しかしたら余計なお世話かもしれない。自分がフェイトの傷を治せる何て自惚れてる訳でもない。でもほっとけない見捨てられない、ここで自分が行かなかったら後悔してしまう様な気がしてならない。それに余計なお世話を躊躇ってちゃまず仲間なんて名乗れない。

 

だからこそツナは決心した。

 

フェイトは自分の生い立ちが人と一線を引いてしまう原因となるならと言うなら俺はその一線を越えるだけだ!

 

決意を固めたためか無意識に力を込めてしまう

 

「.....ツナ/////」

 

「だからその事で悩まないでください。皆ずっとフェイトさんと一緒にいますよ。」

こんな事を言った後でなんだが、どうやら本当に全て無意識だったらしい

少し少し我を取り戻してきて

 

「ご、ごごごごめんなさい、変な事を急に言って/////」

 

と慌ててフェイトの手を離してあたふたした。そんなツナをつゆ知らず、フェイトはさっきまで確かにあった手の温もりを確かめる様にもう一方の手で繋がらてた手を覆う。そして俯き確かにあった温かい感触をもう一方の手でも実感したためか頬が紅くなり微笑み少しわがままを言いたくなった。

 

「ありがと、ツナ...お願いがあるの」

 

「?、なんですか?」

 

「もう少しこのままでいてもらっていいかな?もう少しだけ‥‥」

 

と目を瞑った。

 

「...わかりました。」

フェイトは先程までツナに握ってもらっていた手を差し出してそれに応じて

ツナも再びフェイトの手を優しく握った。フェイトも自分に宿る他者の温かみを感じて眠りにつく。

 

あんな事があった1日だったがそんな事は過去の事もうこの2人は未来しか見えてない。そんな2人を祝福してるのか今日はまた1段と夜空が綺麗だ。

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的18 困った時は過去を振り返ろう何かあるかもしれない

 

 

 

 

 

 

ホテル・アグスタ事件の翌日、六課の会議室では昨日の事件の説明会が行われていた。

 

「白蘭...こいつと最初に戦ったのは10年後の未来でした。」

 

「ちょっっっと待って!!今なんて言った10年後の未来!!一体どういう事や!?」

 

はやてが話を一旦止めた。

 

「え、あ、はい」

 

「君らそんなんに行ったんか!!てか行けんのか!?」

 

そしてなのはが思い出したかのように

 

「あっ、まさか君達がこっちに飛ばされたって言う...」

 

「はい、10年バズーカです。」

 

そしてツナが説明を続けた。

 

「未来の世界を支配していたのが白蘭何です。白蘭の1番の脅威は他のパラレルワールドと知識を共有できる事この能力が1番厄介なんです。」

 

ツナの説明で皆が驚いていると神楽が、

 

「はい、先生」

 

手を上げて質問する。

 

「何神楽ちゃん...って先生?」

 

「共有って何アルか?あとそのパラソルワールドってのも」

 

と言うと新八が、

 

「神楽ちゃん、パラソルじゃなくてパラレルワールドだよ。」

 

と神楽の言うパラソルワールドを訂正した。

 

「簡単に言うとパラレルワールドってのは『もしもの世界』だ。お前がもし、昼を卵かけご飯で済ませるかそして何も食べないかお前はどっちを選ぶ?」

 

「断然食べるネ!」

 

「だがもし卵がなかったらそれ以前にご飯がなかったら?」

 

「うっ‥‥」

 

「こいつがパラレルワールドだ。『もし』の分だけパラレルワールドは広がっている白蘭はその全世界にいる自分の知識を知れるんだ」

 

「マジか...そんな能力何て...」

 

とはやてが驚いてると、

 

「だが気になる事もある。」

 

「気になる事?」

 

フェイトが首を傾げる。

 

「あいつは俺の事を『アルコバレーノ』って読んでいた。」

 

そして獄寺がはっとして

 

「そうかリボーンさんはもうアルコバレーノじゃないですし。」

 

また疑問が浮かぶ単語に、

 

「アルコバレーノ?」

 

事情を知らない者は首を傾げたり、?マークを頭の上に飛ばす。

 

「俺達の世界ではある物を守る人柱として世界最強の7人が選ばれそして呪いをかけられた人達を虹の赤ん坊アルコバレーノって呼ばれたんだ。」

 

「人柱...」

 

人柱と言う言葉を聞き、顔を青ざめる者達。

 

「でも今はその呪いも解かれた...それをあいつは知らない。」

 

「色々と辻褄が合わねぇな。ただこの情報が知られていないのではでけぇぞツナたちはあの戦いから随分パワーアップしているしな。」

リボーンに言われてツナと獄寺は照れて

 

「調子にのんじゃねぇ」

チャキン

銃を向けた。

 

リボーン達が白蘭について説明した後、次はツナが相手をした神楽の兄と言われる神威と言う少年。

神威については妹である神楽と何度か剣と拳を交えた銀時が説明する。

 

「正直...神威の詳しい事はあんまり知らねぇ、神楽と同じ夜兎族で、俺達の世界の一番の犯罪シンジケート、宇宙海賊春雨の一つの師団のトップ貼っているし...これだけ言ったからわかるだろうが強さは脅威的だな戦い方は神楽と変わんねぇだろうが、その強さ、技の速さは神楽以上だ。それとあいつらの親父の戦いは何度か見たし親父は完全なバケモノだな。此処にいる奴らよりは確実に上だろう...」

 

そして、白蘭が最後に口走った『晋助』と言う名の人物。

銀時はアイコンタクトで新八に「任せた」と言って新八自分が知っている限りの高杉晋助の大まかな説明をした。

 

「高杉晋助、彼は僕達の江戸の最も過激な攘夷志士として有名です。銀さんも参加した攘夷戦争の時から鬼兵隊と言う義勇軍を率いていました。今はそれを再構築してまた江戸を火の海にしようと画策しています。もし、鬼兵隊と共にきていたら...」

 

「私あそこの金髪は嫌いネ、いけ好かないアル!!」

 

そして、最後に議題に上がったのは、あの神楽そっくりの顔を持つトレディと言う名の少女だった。

 

「ほんま、神楽ちゃんにそっくりやな」

 

はやてがスクリーンに映るトレディの顔をみて呟く。

 

「本当に神楽ちゃんのお姉ちゃんじゃないの?」

 

「違うアルネ」

 

なのはが神楽に尋ねるが、神楽は改めてそれを否定する。

 

「もしかして‥‥」

 

「心当たりがあるんですか?フェイトさん」

 

新八がフェイトに尋ねる。

 

「‥‥確実とは言えないけど、もしかして、トレディは神楽のクローンなんじゃないかな?」

 

『クローン?』

 

そんな中、フェイトがトレディは神楽のクローンなのではないのかと指摘する。

クローンの事を知らない銀時達は首を傾げる。

 

「あっ、クローンっていうのはね‥‥」

 

そこで、フェイトがクローン技術について説明する。

 

「でも、私、DHAをとられた記憶はないね」

 

「いや、神楽ちゃんDNAだから‥‥むしろ神楽ちゃんはDHAをとっている側だから」

 

しかし、神楽はDMAをとられた覚えはない。

 

「神楽ちゃんでないとすると、神威って奴のDNAでしょうか?」

 

そこで、炎真からトレディの元となったDNAは神威のDNAなのではと言う意見が出る。

 

「でも、神威自身もトレディを見た時、知らない顔だといっていました」

 

ツナは神威がトレディの存在を知らない素振りをしていたことを話す。

 

「じゃあ、一体誰の‥‥」

 

この時、炎真の推理はある意味当たっていた。

トレディは確かに神威のDNAデータを元にスカリエッティの戦闘機人技術によって生まれた戦闘機人であった。

しかし、神威のDNAデータをスカリエッティに渡したのは別の人物であった。

その人物が六課の前に現れるのはもう少し先の事になる。

 

次にトレディが名を名乗った際の検証となった、

 

「此奴は名を名乗った時、ナンバーズ13、トレディと名乗った‥‥ナンバーズ13‥‥と言う事は少なくとも此奴の仲間には他に12人のナンバーズが居る可能性がある」

 

獄寺がトレディの名乗りからトレディの仲間の人数を推測する。

その次にトレディのISについての説明が行われる。

 

「アイツの特殊能力、熱吸収と熱放出‥‥アレは余りにも厄介だ。実際に戦ったアタシが保証する」

 

ヴィータはトレディのIS能力の厄介さを説明した。

 

「つまりソイツは熱源さえあれば、強力なエネルギー砲を撃てるし、熱を吸収する事により、相手を凍らせることもできる訳か‥‥」

 

シグナムがトレディのIS能力を簡潔にまとめる。

 

「ああ、アイツはシグナムやツナとは相性が悪いし、近接戦専門のアタシやスバル達とも相性が悪い‥‥アイツを倒すには長距離からの砲撃ぐらいしか、今は手段が思いつかねぇ」

 

『・・・・』

 

ヴィータにしては珍しく弱気な意見にFW陣は不安そうな顔つきだった。

今後、六課の行動方針は、レリックの回収及びスカリエッティに関する捜査に加え、神威、晋助、白蘭、トレディがスカリエッティと関わりがあるのかを調べる事となった。

 

 

 

 

六課がファーストアラート、ホテル・アグスタの事件に遭遇している頃、管理局の“陸”と呼ばれるある部隊でもとある邂逅があった‥‥。

 

 

~side陸士108部隊~

 

陸士108部隊では、ある連中が世話になっていた。

 

「ゲンヤのおっさんこれまとめといた。」

 

「おう、すまんねぇ土方君。其処に置いておいてくれ」

 

ゲンヤ・ナカジマ 108部隊の部隊長でスバルとギンガの父親である男だ。

 

「別にこれぐらいどうってことねぇよ。」

 

そう言ってぶっきらぼうに自分のデスクに戻る1人の男。

デスクに戻った彼に、

 

「トシさん!お疲れ様です。はい、これ」

 

そう言って差し出されたのは、マヨネーズがこれでもかと言うほど入ったコーヒー、マヨフロートだった。

コーヒーを差し出したのは藍色の長い髪に青いリボンを着けた女性、ゲンヤの娘の1人で、スバルの姉、ギンガ・ナカジマだった。

 

「ありがてぇがお前の仕事は?」

 

「大丈夫です。合間に淹れましたから、それじゃあ」

 

ギンガは再び仕事へと戻って行く。

そんなギンガとのやり取りを見て、ゲンヤは話しかける。

 

「‥‥なぁ、お前さん身を固める気はないのか?」

 

「それはギンガを嫁に貰えと言う事か?」

 

「お前さんらが来た時から凄くお前さんに懐いたしな」

 

「たまたまだろう?」

 

そう言ってギンガは淹れたマヨフロートを飲む。

 

(たまたま‥‥か‥‥あれはお前さん達が此処に来たばかりの頃だったな‥‥)

 

ゲンヤはしばし、過去の思い出にふけった。

 

 

此処で時間は過去に遡り、場所は銀時達の世界に移る。

 

 

~side江戸~

 

時は遡る事だいぶ前。

 

「桂ぁー待てぇー!!」

 

真選組は指名手配中の攘夷志士、桂小太郎を見つけて追いかける。

 

「今日こそしょぴぃてやる!!」

 

口には咥え煙草をして、桂へ刀を向けているのは真選組副長、土方十四郎。

攘夷志士や同じ真選組隊士からは鬼の副長と呼ばれる男だった。

 

「ふふ、すまんな、何時までも貴様らとチャンバラごっこを興じるつもりはない。」

 

といつもの爆弾を土方に向けて投げつけた。

 

「くっ!」

 

土方はそれを爆発前にキャッチし、

 

「ん?うぉぉ!」

 

一応人のいない場所に投げた。

 

そうしたら、

 

「あぶないですぜ。土方さんそんな所にいたら...」

 

土方の後ろから、聞き慣れた声がして、

 

ヒュ~ン

 

「ん?」

 

ドカーン!

 

「だから言ったのに。」

 

爆音と共にバズーカの弾が飛んできて土方にヒットした。

ちなみに桂は爆風に耐えていた。

バズーカを撃ったのは真選組一番隊組長 沖田総悟。

顔は良いが性格はドSな男だ。

 

「てめぇ、総悟!」

 

「ちっ、生きてやがった。」

 

バズーカを抱えながら総悟は小言で言った。

 

「お前!!今、舌打ちした!舌打ちしなかった!お前!!完全に俺を狙っただろ!!」

 

土方はキレながら沖田に詰め寄る。

そこへ。

 

「追い詰めたぞ、桂!!神妙にお縄につけ!!」

 

とtheゴリラ顔の男が来た。

このゴリラ面の男こそ、真選組のボス、局長、近藤勲であった。

 

「ふっ、真選組幹部総出とは、なかなか豪華な顔ぶれだな」

 

真選組の幹部に包囲される中、桂は余裕の笑みを浮かべる。

 

「そうだろ、お前を捕まえるためにわざわざキャスティングしてやったんだ。まっ、土方さんはサボっていましたが」

 

沖田が桂に格好つけながらそう言うが、

 

「サボっていたのはお前だろうが!!」

 

心外だと言わんばかりに沖田にまたもやキレる土方。

 

「だがまだ甘い!!見よ!!コイツをさっきまでのおもちゃとは違うぞ!コイツはある伝手で偶然手に入れた。新型爆弾だ!!」

 

と、桂は懐から出した新型爆弾を見せながら、この爆弾を手に入れた時の回想に入る。

 

 

~side桂~

 

「次元爆弾?‥だと?」

 

「そうきに、こげん爆弾はただの爆弾ではないぜよ」

 

陽気な土佐弁で桂に商品である爆弾の説明するモジャモジャ頭にサングラスをかけている何とも胡散臭い男。

彼の名は、坂本辰馬。

攘夷戦争では、桂浜の龍と呼ばれた男だ。

今は株式会社快援隊商事の社長にして快臨丸の艦長として、宇宙で星間貿易を行っている宇宙商人。

取り扱う商品は人身売買以外のモノならば、大抵揃えてくれる桂の知り合いだ。

桂は、先日、昔の好で彼に何か変わった新商品は無いかと坂本の船が地球に来た時、彼の下を訪ねていた。

そこで、坂本は桂にある商品を売った。

 

「惑星クロノスのテクノロジーの結晶で爆発に巻き込まれた相手を異次元に引きずり込むおっそろしい代物ぜよ。まだ試作段階だが威力は申し分ないぜよ」

 

坂本は手に入れたばかりの新型爆弾の説明を桂にする。

 

「この爆弾にそんな性能があるのかどうか怪しいモノだな」

 

桂が今、手にした次元爆弾は坂本言う性能を秘めている割には余りにも小さいので、彼の言っている事が本当なのか怪しい。

 

「疑うのであれば、今この場で爆発させてみようかぜよ?」

 

坂本が爆弾を手に取り、炸裂させようとすると、

 

「止めろ!!わかったから!!」

 

桂は慌てて止めた。

性能がどうあれ、此処で爆弾なんて炸裂させられたら、自分も吹き飛んでしまう。

まだやるべきことが山ほどある桂にとってこんな所で死ぬわけにはいかない。

とりあえず、性能は兎も角として、その大きさから携帯には便利だと思った桂はその爆弾を購入した。

 

 

 

 

「では、さらばだ!!真選組の諸君!!」

 

桂は爆弾を真選組メンバーに爆弾を放り、再び逃亡する。

 

「ちっ」

 

その爆弾に反応したのは、土方だった。

彼はさっきの要領で炸裂する前に爆弾を人気のない場所へ投げようとした。

しかし、土方が爆弾を掴む前にその爆弾は炸裂した。

炸裂した爆弾はまるでブラックホールの様に近藤、土方、沖田の3人を異次元の彼方へと引きずり込んだ。

 

 

~sideミッドチルダ~

 

「こちらは以上無し」

 

ミッドチルダでは“陸”と呼ばれる部隊の一つ第108部隊がとある事件を追っていた。

 

「ナカジマ陸曹、突入準備出来ています。」

 

「わかりました。‥‥全員突入!!」

 

ナカジマ陸曹と呼ばれた藍色長い髪に青いリボンを結んだ女性局員が突入命令を下し、局員達は一斉に突入する。

 

ガン!

 

どん!

 

「いない。」

 

そして

 

「まだ近くにいるかもしれない、搜索お願いします。」

 

ギンガは周辺の捜索を命じる。

そして散開して全員行きギンガも行こうとしたら、

 

どん!

 

何かが落ちた音がした。

 

「え!?」

 

犯人かと思ったら、そこには3人の男性が倒れていた。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

ギンガが男達に駆け寄り起こそうとした。

 

「う...うん。ここ...は何処だ?あんたは‥‥?」

 

土方が最初に目を開けてギンガに名前を尋ねる。

 

「私は108部隊所属のギンガ・ナカジマです。」

 

「ギンガ...108?何だ?それは?」

 

『なかじま』と言う姓を名乗るからには土方の目の前の女も同じ日本人だと判断する土方。

しかし、108部隊なんて部隊名は聞いたことが無かった。

 

「少し、気になる事もあるので私と同行して下さい。」

 

ギンガは土方に同行をお願いし、土方は近藤と沖田を起こして、ギンガについて行く事になった。

 

 

~side108部隊~

 

「失礼します」

 

ギンガは自分が所属している108部隊の部隊長室のドアをノックする。

そして、中から「おう」と返事があるとドアを開ける。

すると、其処には1人の男が机に座っていた。

 

「おお、ギンガ、帰ったか。んで、そいつらが報告にあった次元漂流者達か?」

 

「はい、皆さん、自己紹介をしてもらえますか?」

 

ギンガは土方達に自己紹介を促す。

 

「特殊警察、真選組局長の近藤勇です。」

 

「副長の土方十四郎だ。」

 

「沖田総悟でさぁ~。」

 

「ふむ、ギンガから聞いたと思うがお前らはこちらで言う次元漂流者だ。」

 

「はい、聞かせてもらいました。我々の為に任務を途中で中断させて誠に申し訳ない。」

 

近藤が頭を下げて謝った。

 

「いや、それはいい。それよりお前らはどういった理由で此方に流れて来た?」

 

「それはですね、(以下略)」

 

「なるほどな、お前らもあちらで犯人を追いかけている内に変な穴に吸い込まれた‥‥なかなか聞かない例だがそれを聞いて安心した。」

 

「安心?」

 

土方が疑問点に思い

 

「俺達もな、犯人を追いかけていた。で、此処が本題だが、お前達にもそれに参加して欲しい、もちろんただじゃない。これでいい働きをしたらここで雇ってやる。衣食住付きでな。」

 

「どうすんだ近藤さん。」

 

突然異世界でその世界の警察組織に協力しろと言われて素直にうなずくか、いきなり協力しろと言われて素直に協力するべきなのか?

土方は上司である近藤の判断を仰いだ。

 

「もちろん、俺達でいいなら協力させてもらいましょう。」

 

人の良い近藤は例え異世界でもそこの民の治安と平和の為、協力すると言う。

 

「ありがとう助かるよ。ギンガもついて行かせる。この事件の詳細を知っているしそれに腕もたつ。それにお前さん達には、此処は異世界だ。道案内人も必要だろう」

 

「ご厚意、感謝いたします」

 

近藤が礼を言っている中、

 

「ちっ、女も一緒かよ。」

 

土方がボソッと愚痴る。

これにカチンときたギンガは、

 

「ちょっと!!何ですか!それは!?女は役に立たないですか!!」

 

少し怒りを見せるギンガに対し、

 

「別に‥‥」

 

土方はそっけない態度で返した。

彼の態度で益々不機嫌になるギンガ。

 

「気にしないでくだせぇ~ギンガさん土方さんはツンデレなだけでさぁ~。」

 

「黙れドS。」

 

土方は沖田に一言ツッコむ。

 

 

~sideギンガ~

 

最初、私が土方さんに持った印象は決して良くなかった。

返事をするにしても何かとぶっきらぼうだし、私を女って言う理由で見下した言動をとるし、タバコ臭かったし、食べ物に大量のマヨネーズをかけて食べるし‥‥。

 

なんでこんな人がウチの部隊に来ちゃったんだろうって思っていたけど、でも、私はそんな土方さんを完全に嫌う事が出来なかった‥‥だって、あの人は、私の‥‥

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的19 マヨネーズは1日1本まで

 

 

~side作戦会議~

 

真選組がこちらに来て腕試しと言う名目でギンガが達が追っていた犯人を捕まえることになった。

 

「今、追っている犯人は質量兵器の横流し犯‥‥」

 

説明しながら写真を1枚見せて、

 

「この男がそうです。」

 

近藤達は犯人と思われる男が写った写真を見た。

 

「すいやせん。」

 

沖田が手を上げて質問する。

 

「どうしたの?」

 

「質量兵器って何ですか?」

 

沖田が質量兵器について尋ねる。

 

「質量兵器って言うのは魔力を使わない兵器のことよ。で目的は犯人を捕まえることとその仕入れもとを知る事です。って聞いてるんですか!?土方さん!!」

 

ギンガは声を荒らげて土方に尋ねる。

 

「あぁ、聞いているよ。」

 

「まぁまぁ、落ち着いて、これの情報はここまでなんですか?」

 

と近藤がこれ以上の情報はないのかと尋ねる。

 

「と言いますと?」

 

「横流しなら取引する場所やそう言った武器を一時的に保管している倉庫などの場所の検討とか‥‥」

 

「あなた達が倒れた所が取引現場だったんです...」

 

ギンガが言いにくそうに言うと、近藤と土方はいたたまれない気持ちになった。

沖田はあまり関心がない様子だったが‥‥

 

「わかりました。なら、情報を手に入れる事と効率を考えて2手に別れましょうか。俺と総悟が一緒でトシはギンガさんについて行ってくれ。」

 

「ちょっと待て、近藤さん!!何で俺があいつと一緒なんだよ!」

 

土方は近藤に詰め寄って文句を言った。

 

「お前と総悟が一緒だ町がめちゃくちゃになっちまう、あの子と総悟を一緒にすると少し不安だ。あの子の身がどうなるかわからんだろう?」

 

「た、確かに‥‥」

 

土方は近藤の言っている事が否定できない。

 

「そう言う訳だ。これが最善の組み合わせだ。」

 

土方少し納得しない顔をしたが、

 

「ちっ、わーたよ。」

 

渋々納得して出て行った。

 

「えっ?ちょっと!!土方さん!!」

 

「ギンガさん」

 

ギンガは慌てて土方を追いかけようとした時、近藤に呼び止められた。

 

「近藤さん。なんでしょう?」

 

「あいつは決して悪い奴じゃないんだ。ただ少し不器用なだけなんだ。まぁ、最初はとっつきにくいかもしれないが、仲良くしてやってくれ」

 

「わ、わかりました」

 

とニッと笑って言った。

そしてギンガも土方を追って出て行った。

 

(悪い奴じゃないって‥‥でも、げんに私侮辱されたし、あれ?資料室のドアが開いている。)

 

ギンガは気になり資料室を少し覗く。

すると、其処には、

 

「えっ、土方さん?」

 

「ん?あぁ、お前か。何してんだ?暇なら手伝え」

 

「えっ、あっ、はい‥‥じゃなくて何でこの場所知っているんですか?」

 

まだ案内も碌にしてないので気になった。

 

「ゲンヤのおっさんの所に行く前に通っただろうが。」

 

(えっ?確かに通ったけどあれだけでここの位置を把握したの?)

 

「どうした?」

 

「いえ、慣れているんですね。」

 

「似たような事件を追ったことがあったからな。」

 

土方は遠くを見た瞳をした。

 

 

~sideカフェ~

 

資料から見て、ある程度情報を土方なりにしぼってその場所に向かう途中に少しカフェに入って

 

「あ、あの、土方さんそれは‥‥?」

 

ギンガはグロテクスな動物を見てトラウマになるような顔をした。

 

「あぁ、ここにはねぇのか?これはマヨネーズだよ。」

 

土方は懐からマイマヨネーズを取り出し、コーヒーの中にブチ込む。

 

「いえ、マヨネーズはこの世界にもちゃんとあります。でもコーヒーにマヨネーズをかける人は普通いません!!」

 

「何言ってだ?マヨネーズはどんな食品にも合うように作られてんだ」

 

「いえ、そこまでマヨネーズは万能調味料じゃありませんよ!」

 

とギンガは手を左右に振った。

それから色々回ってまた同じカフェで少し休憩していた。

 

「ちっ、なかなか尻尾出さねぇな。」

 

犯人達に動きが無く、イライラし始めてまた1本吸い出した。

 

「そんなにすぐ出たら私達が捕まえていますよ。」

 

そしてもう1度資料を見て、

 

「ん」?

 

土方の目が資料のある一部に目が留まり、彼は目を細めた。

 

 

~side近藤~

 

一方、こちらはこちらで仕事をしていた。

 

「大丈夫ですかねぇ?」

 

「何がだ?」

 

「土方さんとあのギンガつぅ娘の事ですよ。」

 

「あの2人は問題ないだろう。そのうちに仲もよくなるだろうさ」

 

「いえ、そっちの心配じゃなくて土方さんの犬の餌見たらどんな反応すんだろうなって」

 

とぼやきながら地図で思い当たる所を探していた。

 

 

~sideギンガ&土方~

 

一方、こちらは今ちょっとした中小企業に来ていた。

 

「もうすぐ、社長が来ますからそれまで此方でお待ちください。」

 

秘書が出て行き、暫くすると

 

「すいません、お待たせしました。赤馬商会の赤馬有の助です。管理局の方が何故我が社に?」

 

と、社長と名乗る男が入って来た。

 

「いや、何今追っている事件でアンタの会社が最近になって手放した倉庫が関係していてな、少し気になってきただけだ。」

 

そして倉庫の写真を見せながら

 

「何故倉庫を手放した?」

 

「今、会社の経営が一杯一杯でして、その為泣く泣く手放した次第なんですよ」

 

「なるほどな、にしてはいい土台がなっている気がするんだが?」

 

「何のことでしょうか?」

赤馬は笑顔で返した。

 

「いや、社員の様子を見て苦しいなら社員を減らす...何て事は言わねぇが、少し多い気がしてな。」

 

「いやはや、確かに少し多いですね、しかし、彼らは私の為に頑張ってくれていますので、彼らの信頼を裏切る真似は‥‥」

 

とちょっと優柔不断な場面を見せる。

 

「それで、話はそれだけでしょうか?」

 

「あっ、すいませんでした。お時間を取りすぎましたね。」

 

とギンガ達はその会社から出ていった。

 

「赤馬商会‥‥特に目立った所はない様ですが?」

 

商会の資料を見ながらギンガは特に怪しい所はなかったと、赤馬商会の印象を口にする。

 

「かもしれねぇな。」

 

「え?」

 

「が、それは大半の社員共の事だ。」

 

「と言うと」

 

「もしかしたら、普通の社員は知らねぇ顔があるのかもな、あの会社」

 

「えっ?」

 

土方は長年培ってきた警官としての勘からあの会社が怪しいと目星をつけた。

赤馬商会が怪しいと思い張り込みをしているギンガと土方。

 

「動かねぇな」

 

「土方さん、ここが怪しいと思っているならほかの人達にも連絡を入れたらいいじゃないですか?」

 

「まだ証拠がねぇからな。無理に連絡する必要はまだねぇよ。あんま人数が居ると、かえって相手に警戒感を植え付けちまうかもしれねぇだろう?つーかお前も俺とじゃなく他の奴と居ても良いんだぞ」

 

「まだここに来て日が浅い人を放っておいて別行動はできません。」

 

責任感が強いギンガは近藤から土方の事を任されたので、次元漂流者の土方を放っている事が出来ないと言う。

張り込みの中、土方が煙草に火をつけようとすると、

 

「土方さん!張り込み中に煙草を吸わないでください。火や煙で張り込みしているのがバレちゃいますよ!!」

 

「そんなヘマしねぇよ。」

 

とそのまま煙草を地面に捨てて火を消す。

 

「土方さん!!ポイ捨てじゃありませんか!?煙草を吸うんなら携帯灰皿ぐらいもっていてくださいよ!!」

 

「わかったよ、次からはそうする」

 

「はい、近藤さんから聞いて、こんなこともあろうかと買っておいたので使って下さい。」

 

土方ギンガから携帯灰皿を受け取り、

 

「‥‥悪ぃな。」

 

懐に大事そうに仕舞った。

 

 

~side近藤&沖田~

 

一方、近藤達は手掛かりを求めて廃工場に来ていた。

 

「どうだ、総悟何かあったか?」

 

「いや、全然」

 

首を振り、何も手掛かりがない事を伝える。

 

「トシ達からも連絡はなぇし。」

 

「ヤロウはギリギリになって連絡を入れるか、連絡無しで突っ込んでいきますしね~‥‥ん?何だこれ?」

 

と言いながら落ちていた紙切れを捨てた。

そしてもう一つあった紙切れに目をやって

 

「近藤さん、これ‥‥」

 

「ん、どうした?」

 

 

~sideギンガ&土方~

 

「土方さん、動きありましたよ。」

 

社内から社長の赤馬が出てきた。

 

「奴1人か?」

 

「はい‥‥追いますか?」

 

「あぁ、行くぞ」

 

と尾行していった。

 

裏通りを歩いていって

 

「あっ!」

 

写真の男と赤馬が合流していた。

 

 

~side犯人~

 

「遅れて済まないね。」

 

「別に良いッスよ、赤馬の旦那。そんなことより他の場所、提供してくれるんですよね?」

 

「あぁ、あと2つ使ってない倉庫がある。場所は...」

 

と言い懐まさぐった。

 

 

~side土方&ギンガ~

 

「なるほどな、奴ら場所を提供して儲けの一部を受け取っているクチか‥‥」

 

「どうします?」

 

「とりあえず、近藤さん達に連絡を...」

 

ギンガが近藤達に連絡をとろうとして、少し動いた時、

 

キン!

 

「きゃ!」

 

鉄パイプとギンガの足がぶつかった音がその場に鳴り響いた。

 

「へいへい、色男、カワイイ子連れてのデートか?...にしても刀とは随分と前時代的だな?」

 

「ちっ、ギンガ!早くここから出て近藤さんにこの事伝えろ。」

 

土方は抜刀し、ギンガに指示を出す。

 

「冗談を言わないでください!私も加勢します。」

 

と言ってリボルバーナックルを装備し相手をぶっ飛ばした。

 

ドーン!

 

「ん、」

 

「あなた達は管理局の...こんな所までつかんだんですか、ずいぶん頑張りましたね。」

 

「いやいや、アンタが初心者のおかげでずいぶん楽だったぜ。」

 

「管理局にしては、魔力を感じねぇな。一応AMF使え!」

 

「エーエムエフ?」

 

「魔法を無効にする装置のことです。」

 

「なるほどな、まっ、俺には魔力なンつぅうもんはないから関係ねぇか。」

 

「はっ、まさかお前魔力がねぇのか?ハハハハ‥‥こりゃ傑作だな、魔力を持たないが局員がしゃしゃり出てくるたぁな」

 

犯人達からは笑い声が響いた。

しかし、土方は、

 

「魔力何て無くても俺にはこいつさえあれば充分だ。」

 

土方は刀を構える。

 

「おい、ギンガこいつらは生け捕りか?」

 

「えっ、当たり前です!」

 

「魔力も無い奴がいきがんじゃねぇよ!」

 

と犯人は土方に銃を向けくる。

 

「そんなに言うなら、まずはこれを躱してみろよ。」

 

バーン

 

と発砲した。

ギンガは慌てて駆け寄ろうとする。

犯人共はゲスな笑い声を響かせたこの時誰もが土方が撃たれたと思ったが土方は、

 

「おい、注文通りに躱してやったぜ」

 

「えっ?」

 

「う、嘘だろ。」

 

全員が顔をあんぐりと開けた状態で、

 

「今度はこっちからだ。」

 

と銃を持った犯人に向かって走っていった。

 

「まぐれがそう何度も続くか!!」

 

と何発か撃った。

数発は足元の付近に当たり、

 

「こんなものか!」

 

刀の柄の部分で犯人の溝を叩いた。

犯人はその1発で気絶した。

そして鉄パイプを持っていた奴が、

 

「うわぁぁぁ!!」

 

土方に行ったが

 

「おせぇよ」

 

かわして刀の峰で横っ腹を思っきり叩いた。

残ったのは赤馬だけになり

 

「凄い、魔力無しでここまで、」

 

「ま、まだだ!!」

 

ゾロゾロと不良達が入ってきた。そして今回の交渉人の一味も入って来た。

 

「これぐらいの人数だ。お前達に勝ち目はねぇさっさとあきら...」

 

赤馬が全部の台詞を言う前に赤馬の援軍はバタンバタンと半分が倒れた。

 

「な、なーーーー!!!」

 

「トシ、助太刀いるか?」

 

「別に。」

 

「土方さん、あぶねぇですぜ。」

 

手榴弾が飛んできた。

 

「ん?はーーー!!」

 

すぐさま別の場所に投げた。それがたまたまAMF装置に当たった。

 

「察すが、俺のパスした手榴弾を犯人に...」

 

「おい、お前!!今、俺を狙っただろ!!」

 

「な、何だ!?」

 

「お前かこれ」

 

と1枚のメモ落としたそこには取引先の候補や日時を記していた。

 

「何でお前がそれを」

 

「落ちてたんでね、拾いやした。」

 

そして赤馬が何故と考えた。

 

実は赤馬は横流し犯が証拠を片付けた後に何か利益になりそうな物が落ちてないかとその倉庫に足を運んでメモをうっかり落としていた。

 

「ちっ、だが、2人増えたぐらいでいい気になるなよ。やっちまえ!!」

 

「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」

 

沢山の不良たちが真選組のメンバーとギンガに迫って来た。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的20 犯人が援軍を呼ぶのはだいたい捕まるフラグ

 

 

~side真選組&ギンガVS不良~

 

「な、何だ?こいつらは、魔法も使わずに‥‥」

 

「ば、化け物だ。」

 

犯人達は、近藤、沖田、土方の戦いを見て、非魔導師である彼らの動きがもう人間離れしている事に驚愕する。

だが、それは犯人達だけでは無く、土方と行動を共にしていたギンガも同じであった。

 

(す、凄い‥‥この人達、魔法を一切使っていないのにこれだけの動きが出来るなんて‥‥)

 

ギンガはあまりにも現実離れしている光景に唖然とし油断をしていた為、

 

「くそっ、せめて1人だけでも‥‥」

 

犯人の一人の銃口が自身に狙い定められている事を気づいていないギンガ。

 

「死ね!!」

 

「っ!?ギンガ!!」

 

「えっ?」

 

ドン!

 

「ちっ」

 

プシュ

 

「今だ!!やっちまえ!!」

 

「「「「おおおおお!!」」」」

 

土方が負傷した事に犯人達が土方へと迫る。

 

「うおりゃぁぁぁぁぁー!!」

 

迫る犯人に対し、土方は刀の柄を取り出してそれで1人に当てて刀で斬りそして最後は柄を捨て相手を一本背負いで決める。

 

「はぁ‥はぁ‥」

 

負傷した事で多少動きが鈍る土方。

 

「土方さん!!」

 

ギンガが土方に駈け寄る。

 

「何‥して‥やがる。まだ終わってねぇぞ、戦場でボサッとしてんじゃねぇ」

 

「で、でも‥土方さん、血が‥‥」

 

「こんなもの、かすり傷だ」

 

「でも...」

 

「いいから、お前もさっさと犯人共を倒せ!!」

 

土方は再び刀を振りかざし、犯人達へと切込みを掛けに行った。

 

「トシ!あんまり無茶すんな!!」

 

負傷した土方を気遣い土方と合流する近藤。

 

「足引っ張ってますぜぇ、土方さん」

 

沖田が土方の眼前に居る敵をなぎ倒し不敵な笑みを浮かべる。

 

「すまねぇ、近藤さん、総悟」

 

「トシ、お前は俺達の背中を守れ!!行くぞ、総悟!!」

 

「あいよ。土方さん、遅れないでくだせぇ」

 

「総悟、テメェ誰に言っている?」

 

 

~sideその後~

 

近藤、沖田、土方の三人はまさに三身一体の連携でその場を蹂躙して行った。

その後、犯人は全員捕縛、護送車へと乗せられて行った。

最も意識のある者は、ほんのわずかな人数だった。

無事に捕物が終わり、108部隊本部に戻ってきた真選組とギンガ。

 

 

~side近藤~

 

「報告は受けたよ、期待以上じゃねぇか近藤君」

 

「ハッ、ありがとうございます」

 

部隊長室にて、ゲンヤは上機嫌で近藤を迎え、ゲンヤの言葉に近藤は近藤が頭を下げて礼を言う。

 

「これなら約束通り、お前達三人をウチで雇ってやる」

 

今回の事で、近藤達真選組の三人は、108部隊で雇ってもらう事になった。

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

近藤は再度、ゲンヤに深々と頭を下げた。

 

 

~sideギンガ~

 

その頃、ギンガは負傷した土方の事が気になり医務室へと来ていた。

今頃、治療を受けている頃だろうと思っていたギンガであったが、

 

「土方?」

 

「はい、いつも煙草を吸っている、黒い制服を着ている人です」

 

「ああ、あの人ね。あの人がどうかしたかい?」

 

「今日、捜査中にケガをしたんですけど‥‥」

 

「え?でも、彼は此処には来ていないけど?」

 

医務官からは、土方は来ていないと言われた。

 

「えっ?土方さん来てないんですか!?」

 

彼が医務室に来ていない事実にギンガは声を荒らげて医務官に尋ねた。

 

「ああ、来ていないよ‥あの服装なら来ていたら嫌でも目立つからね」

 

確かに真選組の黒い制服は陸の管理局員の茶色い制服と違い、隊舎の中では目立つ。

 

「あっ、ちょっと、ナカジマ陸曹」

 

ギンガは慌てて医務室を出て行き、隊舎の通路を走りながら土方の行方を探した。

 

「もう!どこに行ったのよ、あの人は!!」

 

ギンガは愚痴を零しながら、必死に土方の行方を追った。

 

食堂、資料室、オフィス、ゲンヤの部屋に行くが、いずれの部屋にも土方の姿は見えなかった。

 

(まさかっ!?)

 

ギンガは咄嗟に土方の行きそうな所を思い出すと、その場所へと向かった。

 

~side108部隊喫煙所~

 

隊の敷地内にあるこの喫煙所では、仕事の後の一服を楽しむ局員らの姿があった。

そんな喫煙所にギンガは息を切らしながら喫煙所に来ると、辺りを見回す。

そして、

 

「あっ、いた!」

 

ギンガは喫煙所で一服している一人の男の元に駆け寄った。

 

「見つけましたよ!!土方さん!!」

 

「ん?おう、ギンガか?」

 

「『ギンガか?』じゃ、ありません!!何で医務室に行かないんですか!?土方さん!!」

 

「別にあんなのかすり傷だ。わざわざ医務室に行く必要はねぇ」

 

そう言いながら煙草をふかす土方。

 

「撃たれたのは、かすり傷とは言いません!!ほら、行きますよ!!」

 

ギンガは強引に土方の腕を掴んで引っ張った。

 

「は、離せ!」

 

(い、言えねぇ‥‥医務室が‥‥注射が怖いから医務室に行きたくないとはぜってぇ言えねぇ‥‥って、此奴、見かけによらず握力強ぇ!!まるで万力に腕を握られているみてぇだ‥‥)

 

土方はギンガの見かけによらない腕の力に驚く。

 

「貴方は子供ですか!!」

 

「えっ?俺、今口に出していた?」

 

土方は慌ててギンガに今、自分が心で思っていた事を口に出していたのかを尋ねる。

 

「何がですか?」

 

ギンガは土方の問いに、「貴方は何を言っているんですか?」みたいな顔をする。

彼女の反応と表情から、どうやら口には出していない様だった。

 

土方の腕を引っ張って医務室に向かって行く途中、ギンガは、

 

「あ、あの土方さん‥‥」

 

土方に声をかける

 

「...何だ?」

 

土方はもう諦めた様子で黙ってギンガに腕を引っ張られていたが、彼女が声をかけてきたので、反応する。

 

「何であの時、私を庇ったんですか?その‥‥土方さんが、此処に来てからずっと見てきましたが、土方さんはその‥‥」

 

「ひどい人ってか?」

 

土方はギンガに不敵な笑みを浮かべ、彼女が言いたかった事の続きを言う。

 

「っ!?」

 

ギンガは気まずそうに土方から視線を逸らす。

 

「お前の言うひどい奴ってのは間違ってないし、否定もしねぇ‥‥でもな‥‥」

 

ギンガが自分から視線を逸らしたので、自らもギンガから顔をそむける。

 

「そんな小せぇ事で仲間を見捨てられるほど器用でもないだけだ」

 

「っ!?」

 

ギンガは土方の言葉を聞いて、彼の方へ顔を向ける。

 

(あいつは悪い奴じゃないんだ。ただ少し不器用なだけなんだ)

 

近藤の言葉を思いだしてまた悩んだ。

 

「それじゃあ、お願いします。」

 

「あいよ。」

 

医務室に着き、土方を医務官に任せて。ギンガは、

 

「近藤さん!」

 

近藤の元に行った

 

「ど、どうした?ギンガちゃん。そんなに慌てて」

 

「少しお話いいですか?」

 

「ん?あぁ別にいいぞ。で、話ってなんだ?」

 

「あの‥‥その‥‥近藤さん!!土方さんってどんな人なんですか!?」

 

「前に言っただろアイツは、不器用な‥‥」

 

「もっと詳しくお願いします!!」

 

「むっ!?」

 

ギンガは近藤が土方の印象を言う前にもっと詳しく土方の人となりを教えてくれと頼んだ。

 

「私にはわからないんです‥‥土方さんって人が‥‥最初は私が女だからって言う理由で侮辱してきてひどい人だと思いました。でも、そんな人なら私を庇ったりしない、だから知りたいんです。あの人は一体どんな人なのかを‥‥近藤さん、お願いします」

 

ギンガは近藤に頭をさげて、土方について教えてくれと言う。

 

「‥‥残念だが、ギンガちゃん、それは俺の口からは言えない」

 

「‥そう‥ですか‥‥」

 

近藤の返答にギンガは俯く。

 

「だが、一言だけ言うと不器用だが、本当に優しい奴何だなんだ‥アイツは‥‥だが、自己犠牲も強くてな、君が侮辱に感じたアイツの態度は。多分女性である君を戦場に送りたくないと言う無意識の行為だと思うぞ。元々俺達の居た場所では女子供を戦地に送り込むなんて事は滅多にないからな‥‥」

 

「‥‥」

 

「ギンガちゃん1つお願いがある」

 

「なんでしょう?」

 

「あいつのそばにいてやってくれないか?アイツは‥‥」

 

「わかりました!!」

 

ギンガは近藤の言葉を最後まで聞くことなく、土方の下に走っていった。

 

「あっ‥‥フッ、トシ‥‥羨ましいぞ」

 

近藤はギンガの後姿を見ながら、密かに悔し涙を流した。

 

 

~side土方~

 

「ちっ、あの医者、別にあそこまで言わなくてもいいだろにったく」

 

頭をかきながら医務官に悪態をついている土方。

なぜ彼が医務官に対して悪態を言っていたのかと言うと、撃たれたのにそれを隠していたからであり、彼の傷口を見た医務官は、

 

「バカモンが!!なんで隠していた!?破傷風になりたいのか!?」

 

「こんなモン、寝てりゃ治るっつぅの」

 

「んなわけがあるか!!バカモン!!」

 

「ちっ」

 

医務室でのやり取りを思い出し、忌々しそうな顔となる土方。

そこへ、

 

「十四郎さん!」

 

「ん、何だ?ギンガか?てか、十四郎さん?」

 

「べ、別にいいでしょ。少し呼び方を変えても‥‥」

 

ギンガは笑顔で、

 

「ねっ、十四郎さん」

 

と土方の名前を呼ぶ。

 

(十四郎さん)

 

土方はこの時、ギンガの姿が、ある茶髪の着物を着た女性と重なった。

 

「その呼び方はやめろ」

 

「えっ?じゃあ、トシさんで」

 

「‥‥まぁ、それで妥協してやる」

 

土方はそっぽを向いて歩きだす。

 

「あ、待ってくださいトシさん!!」

 

早歩きで行く土方をギンガは追いかけて行った。

一方の土方は、「フッ」と、小さく口元を緩めた。

 

これが、異世界の警察組織、真選組のメンバーが来た時の一連の出来事だった。

最初はギクシャクしていたギンガと土方の仲であったが、今じゃどっちが先輩なのかわからない。

土方達もこのミッドの地形には慣れてきたのだが、土方とギンガはコンビを解消することなく、今でもコンビを組んでいる。

それに最近のギンガは、どうも土方を相棒ではなく、1人の男として見ている節がある。

オフィスで互いにいる時、ギンガは土方をチラッと見ているのをゲンヤや近藤、沖田は何度か見ている。

当然、その視線に土方も気づいている。

ゲンヤは娘のその成長に嬉しさを感じていた。

通常、年頃の娘を持つ父親は、自分の娘に男の影がチラつくと心配になるが、ギンガはある特殊な事情があり、ゲンヤはギンガとスバルの将来に一抹の不安があった。

しかし、土方の仕事に取り組む姿勢から彼の人となりを見て来たゲンヤは彼にならば、娘を預けても良いと思っており、機会があれば、2人を何とか取り持ってやりたいと思い始めていた。

 

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的21 オシャレはまず足元から始まる

 

((な、何でこんなことに。))

 

今、ツナとフェイトはミッドの首都、クラナがンに来ていた。

 

何故こんな事にと言うと、

 

それは時が遡る事は何分か前の事・・・・

 

 

 

~side少し前の六課~

 

「ツナ、仕事手伝ってもらっていい。」

 

とフェイトが言い。

 

「俺でよければいいですけど。」

 

「ならお願い。」

 

ニコッと笑いながらツナを連れていった。

それを偶然見ていたのは豆狸と悪魔の教師の2人だった。

 

「なぁ、リボーン君。今の見た?」

 

「あぁ」

 

「あの2人、朝もご飯一緒に食べとったな。」

 

「あぁ。そうだな。」

 

「まさか、フェイトちゃんツナ君に」

 

「態度が昨日までと全く違うからな。」

 

「なぁ、リボーン君」

 

「なんだ?」

 

「こんなおもろいこと、首を突っ込まずにいられるか?」

 

「いや、教え子の青春にはちゃんとした教育が必要だ」

 

「フフフフ・・・・」

 

「クククク・・・・」

 

そう言って2人は悪魔の笑みを浮かべる豆狸と悪魔の教師。

 

 

~side部隊長室~

 

㌧㌧

 

「どうぞ」

 

「失礼します。はやてさん。俺達に用って何ですか?」

 

入って来たのはツナとフェイトだ。

 

「それはな、ツナ君ってさ、服とかはどうしているん?」

 

「えっ?ヴァイスさんか、グリフィスさんのお下がりを炎真くんと使っていますよ。」

 

バン!!

 

ビシ!!

 

「それや!」

 

「へっ?」

 

はやては、テーブルをたたき、人差し指をツナに突きつける。

 

「いい年した、年頃の男子がファションをしぃひんとかはあかん!!少しはファションとかにきぃつけなはれ!!」

 

「あ、あの・・・・」

 

いきない脈略の無い事に戸惑うツナ。

フェイトの方も、(はやては何の話をしているのだろう?)と首を傾げている。

 

「そこでフェイトちゃんとデ、ゴフンゴフン、・・・・フェイトちゃんと一緒に服を選んで貰い。」

 

(あれ?今何か聞こえたけど。)

 

「ちょっと待って。はやて私仕事があるん「免除したるわ。部隊長権限で。」」

 

「えっ?でも・・・・」

 

「あ、あの・・服なら俺1人でも・・・・」

 

「なら、お前は街までの行き方知ってんのか?」

 

といつの間にかドアの前にいたリボーン。

 

「それは・・・・」

 

ツナは言葉がつまる。

確かにこの世界に来てツナはまだ一度もこの世界の繁華街へは行っていない。

これまで移動した手段も六課のヘリを使っている。

まさか、自分が服を買いに行くのにわざわざヘリを出してもらうわけにもいかない。

 

「それに、フェイトは服のセンスいいってはやてが言ってたしな。」

 

「いやフェ「いいからとっとと行け」」

 

ゲシッ

 

「いてっ!!」

 

と半ば強引に(蹴り飛ばした。)ツナを部屋から出した。

 

ガチャ

 

「まさかはやて。」

 

「さて、準備は整った。私達にできんのはここまでや、あとはフェイトちゃん次第や。頑張ってツナくんを落としや」

 

とグッと親指を立てた2人。

フェイトはたちまち赤くなり

 

「いつから気づいてたの////?」

 

「「朝から。」」

 

「大丈夫や、私達はフェイトちゃんに幸せになって欲しいだけや。」

 

はやてはあくまでも親友の色恋を面白がっているのだが、馬鹿正直で馬鹿真面目なフェイトは本気ではやてが自分を応援してくれていると思い始めた。

 

そして、部屋を出る際、リボーンからイヤホンを受け取った。

何かあれば、アドバイスをしてやると言われて・・・・

確かにツナの事は自分よりもリボーンが良く知っているので、フェイトはありがたくイヤホンを受け取った。

 

ちなみにフェイトが出ていったあと、

 

「さぁ、行こか、リボーン君。」

 

「あぁ」

 

はやてが勇んでリボーンと共にフェイトの後をつけようとしたら・・・・

 

「ドコイクノ?ハヤテチャン」

 

ビクッ

 

あまりにも無機質な声がしたので、その声がした方を見たら。そこには目以外は笑っているなのはがいた。

 

(い、いつの間におったん!?なのはちゃん!!)

 

「はやてちゃんは仕事あるよね?ねっ?」

 

「はい」

 

ということではやては捕まった。

しかし、リボーンは捕まらず、1人、教え子とその教え子に恋する女性の後をつけて行った。

 

 

~side場面は戻って~

 

と言う事で、現在進行形でデートもとい買い物をしていた。

 

「すいませんフェイトさん付き合わせて。」

 

ツナがわざわざ自分のためにフェイトに仕事を放り投げる形になったことを詫びる。

しかし、

 

「・・・・」

 

フェイトは無言のままスタスタとツナの隣を歩いている。

 

「あの、フェイトさん?」

 

「ハッ えっと・・な、何かな?ツ、ツナ?」

 

「いえ、付き合わせてすいませんと・・・・」

 

「あっ、あぁ、大丈夫だよ。」

 

「そ、そうですか・・・・いや~それにしてもここのショッピングモールって結構でかいですね。」

 

「うん。ここはクラナガンでも一番大きなショッピングモールだからね。」

 

と少し落ちつたかフェイトが言うが、そこに、

 

ビービ

 

「こちらリボーン。おい、それじゃいつまで経ってもあの鈍感は落とせないぞ。手ぐらい繋げ!」

 

リボーンからの忠告でまた赤くなり。

 

「リボーン何で?////」

 

「暇だったから。おもし、応援したくなって。」

 

「あの、今一瞬、面白いって聞こえたけど?」

 

「まぁいいじゃねぇか。ツナとお前がくっつけばお前は幸せ、俺は面白い。万々歳じゃねぇか。」

 

「いや、全然そんな感じしないけど!!っていうか、今完全に『面白い』って言ったよね!?」

 

「まぁいいから「あのフェイトさん?」」

 

「な、何ツナ!!」

 

突然声をかけられてフェイトは慌てて答えた。

 

「あの服屋ってどこにあるんですか?」

 

「あぁ、こっちだよ」

 

(手を繋げ)と先ほどのリボーンの言葉を思い出しフェイトは、

 

ガシ!!

 

「フェ、フェイトさん!?」

 

フェイトは勇気を振り絞ってツナの手を握った。

 

「あ、あのね、ツナ、はぐれたらいけないと思って・・・」

 

「あぁそうですね。ではお願いします。」

 

ツナは一見何も感じていないように見えて、

 

(でも、なんか強く握りすぎてちょっと・・・・)

 

フェイトの方は力加減を気にする余裕などなく、ものすごくガチガチに緊張し、

 

「もっもひろん。」

 

とセリフを噛んだ

 

 

~side服屋~

 

「服屋だけにやっぱりいっぱいありますね。どれにしようかな?」

 

沢山ある服に目移りしてしまうツナ。

 

「うん。ちなみにツナくんの好みは?」

 

「う~ん、よくパーカーは来ていました。」

 

ザザ

 

「こちらリボーン、アドバイスだ。ツナは27の文字の入ったものを好んで着ていたぞ」

 

「パーカーね、ならこれは」

 

と言われ黒のパーカー左胸に『27』と中に白の服とジーパンと言うシンプルなのを渡された。

 

「そちら、今ものすごい人気なんですよ。弟さんにもきっとよく似合いですよ。」

 

店員に弟さんと言われフェイトは、

 

「あ、あの違います!!」

 

「あっ、失礼しました。その・・・・彼氏さんですか?」

 

「ちっ、違います。!!」

 

と赤くしてフェイトが答えた。

 

 

~sideショッピングモール・レストランゾーン~

 

ちょっとした。カフェで昼食をとった2人

 

「いい服買えて良かったね。」

 

「はい、選んでくれてありがとうございます。」

 

と言っている間にも注文した。品が来たので食べ始めた2人そこにまた、

 

ザザ

 

「こちらリボーン、フェイト『はい、あ~ん』ぐらいはしないとツナは気づかないぞ。」

 

っと言われ口の中に入れたモノを吹きかけたフェイト。

 

「どうしたんですか?フェイトさん?」

 

「いや、何でもないよ。」

 

そして同時に悩みまくった結果。

 

「あの、ツナ」

 

「はい?」

 

フェイトはツナの料理をスプーンで掬い、

 

「フェ、フェイトさん?」

 

ツナがガッチガッチになりながら言うと、フェイトもガッチガッチになって答えた。

 

「あ、あのね、ツナまだ怪我しているでしょだから食べにくいと思って・・・・」

 

そう言い忘れたがツナはこの前の戦いのダメージが残っていた。まぁ魔法でそこまで痛まないが・・・・。

 

「あっ、ありがとうございます。でも大丈夫・・ビクっ!?」

 

ツナがセリフを言い終わる前にリボーンがツナに向かって殺気を飛ばした。

 

「おっ、お願いします・・・・」

 

「う、うん。任せて・・・・」

 

(な、なんだろう?断ったら殺されそうな気がしたんだけど・・・・)

 

フェイトがツナに食べさせようとしたその時、

 

「あれ?もしかしてフェイトさん?」

 

フェイトは急に自分の名前を呼ばれ振り返ると、そこには・・・・

 

「あっ、ギンガ!」

 

ギンガと呼ばれたその女性は藍色の髪にロングの髪型でツナもよく知っている人と雰囲気が似ていた。

 

「あの知り合いですか?」

 

雰囲気は知っている人に似ているのだが、いまいちピンとこないし、向こうの彼女もフェイトも互いに知っている仲の様なので、ツナは尋ねてみた。

 

(あれこの感じ・・・・)

 

「あぁ、こちらはギンガ・ナカジマ。スバルのお姉さんよ。」

 

「あぁ、だから誰かに似ているって思ったんだ。それで、そちらの男性は?」

 

ギンガの隣には黒髪黒服そしてV字型の髪型で日本刀を帯刀してる男性がいた。

 

「俺の名は土方十四郎。ここでは次元漂流者ってやつで、今はコイツの所属している部隊でバイトをしている。」

 

ちょっとぶっきらぼうながらも土方と名乗る黒髪の男は名を名乗った。

 

「トシさんの言うとおり、今は私のお父さん預かりなの、でもこの人たちとても有能なのよ。」

 

「へぇ~」

 

「えっと...フェイトさんって弟さん、いましたっけ?」

 

ギンガが?マークを浮かべて

 

「えっ?」

 

フェイトは一瞬誰のことかわからなかったがすぐにツナが、

 

「あっ、俺は沢田綱吉って言います。俺も土方さんと一緒で次元漂流者なんです。それで今は機動六課にお世話になっています。」

 

「へぇ~そうなんだ。よろしく、綱吉君」

 

「あっ、よろしくお願いします。」

 

と立ち上がり深々と頭を下げた。

 

「俺の事はツナでいいです。」

 

「うん、わかった。」

 

とギンガはそう言ったが、土方は、

 

「.....」

 

ジッとツナの事を見ていた。

 

「トシさん?」

 

「ん、あぁ、いや何もねえ、」

 

ギンガとフェイトは話していた時にずっと固まっていた土方を気にしたのか土方に話を振った。

 

「それで、2人は此処で何しているの?まさかデート?」

 

「ち、違います/////」

 

「あぁ、ギンガの言う通り別にそんなんじゃねぇよ。」

 

「そんなんですか」

 

「お前らも熱々カップルいいけど程々になあんまハメ外しすぎると...」

 

 

「「ち、違います!!」」

 

2人そろって否定した。

 

 

~sideショッピングモール~

 

 

ギンガと土方と別れ、昼食が終わりモール内を歩いていたら、2人は突然思いもよらない人物と出会った。

 

前に出会った時の様なボディースーツ姿ではなく、ジーパンにTシャツ、パーカーとラフな服装でいるが、その人物は紛れもなく・・・・

 

「お、お前は!!」

 

「トレディ!!何でこんな所に!!」

 

とツナはXグローブをはめて、フェイトはバルディッシュをいつでも起動できるように手に握る。

 

「貴方はこの前の...」

 

出会ったのはオレンジの髪で、神楽とそっくりの容姿を持ち、この前の会議でも名前があがり捜査対象になっているナンバーズ13 トレディだった。

 

「.....私は、今回ドクターにこの世界がどんなモノなのかを知ってこいと言われてここに来たの.....でも、そんなに戦いたいのなら相手をしてもいいわよ...ただしここの人達の命ががどうなっても知らないけど。」

 

トレディは不敵な笑みを浮かべる。

 

確かにトレディの言うとおり、ツナ達が今いるショッピングモールの中で戦えば必ず周りの一般人を巻き込んで犠牲者が出てしまう。ザザ

 

「・・フェイト、今回はアイツの言うとおりだ。ここは見逃すしかねぇ、トレディの能力じゃ捕まえるために周りの被害の方がでかい。アイツの言う事を聞くのは癪だが、ここは大人しく引き下がるぞ」

とリボーンが無線で指示を出した。

 

「くっ、わかった今回は見逃すけどもし今なにかしたら...」

 

「私はこれでも親孝行な娘のつもり。ドクターの命令には背かない。今回は本当に戦闘目的ではないから・・・・それじゃあ、今度は戦場で会いましょう」

 

と言ってトレディはその場を去っていった。

ツナとフェイトは悔しそうに去っていくトレディの後姿を見ていた。

 

 

~side夕方~

 

夕方、噴水のある公園に来た(主にリボーンの指示で)そして休憩がてらベンチに座り。

 

「はぁ~買い物終わった。」

 

とツナはうーんと言いながら背伸びをした。

そんなツナの様子を見て、ふふと笑っているフェイト

 

「でも、本当に被害は出ませんでしたね...」

 

ツナが真剣な顔になり、トレディが約束を守ったことに安堵しつつ彼女が約束を持ったことに意外性を感じた。

 

「えぇ、」

 

ザザ

 

するとそこにまたリボーンから無線が入ってきた。

 

「こちらリボーン、折角の休日だぞ、そんな重い空気でどうする、それにこんなにいいシュチュエーションはなかなかないぞ。今なら行ける。告白して一気に空気を変えるべし。」

 

さすがにこれには、

 

「そ、それはまだ無理!!」

 

「フェイトさん?」

 

とその時何かを感じたのか。

 

「そこ、誰だ!?」

 

「ちっ、ばれたか。なかなかやるな、ツナ」

 

「リボーン!!まさかお前が」

 

「あぁ、今回は俺がやったぞ。」

 

「やっぱりか!!つーかフェイトさんを巻き込むなよ。」

 

「あっ、いやリボーンは悪くないよ。」

 

「いえ、仕組んだのがこいつなら絶対面白半分ですので、それからフェイトさんすいませんわざわざ付き合わせてこいつに。」

 

「いや、その。」

 

「でも、今回は楽しかったです、こいつにのせられたのは癪だけど、また、一緒に来てくれますか?」

 

フェイトは驚いた顔をしたがすぐに笑顔になり、

 

「うん、また来よ、ツナ。」

 

といった

 

(おっこれは脈ありか?)

 

2人の様子を見てリボーンはそう思った

 

 

~sideはやて~

 

「なぁ、もぉええやろ?いい機嫌直してやなのはちゃん」

 

と、下がり気味でいい。

 

「ダ・メ。まだたくさんあるよ。」

 

「ひぇー!!」

 

この日、ここの近辺に居たものは狸の悲鳴を聞いたとさ。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的22ドーナツの真ん中の穴は不要物と言われてるがあれはあれでおいしい

~side108部隊~

 

この前の事件以来ゲンヤはギンガと土方になにかしてやりたいと思い考えていた。しかし、当の土方は色恋沙汰にはあまり関心がない様子で、仕事以外には煙草とマヨネーズぐらいにしか興味を持たなくどうしたものかと考えた。

そしてゲンヤはある手を打った。

それは‥‥

 

「はぁ?私服調達‥‥ですか?」

 

「そうだ、これからは潜入や長時間の張り込みとかもあるからな、そこで服の調達をしといてくれ、ギンガと一緒にな」

 

と此処でギンガの名前が上がった。

 

「ちょっと待て、何でギンガの名をあげた!?」

 

「お前さんにとってはギンガが1番の知り合いだろう?この世界では?それに一緒に居る事が多いだろう?」

 

確かに土方はここに来てからギンガと行動する事が多くなった。

 

「っても何で俺なんだ?総悟とかの方が適任だろう?」

 

「沖田君なら‥‥」

 

「Hey、TOSHI~我が儘言うんじゃねぇよぉ~」

 

と少しチャラい感じの服装で入ってきた沖田。

 

「お前、いつの間にそんなもん買ったんだ!?つぅか誰がTOSHIだ!!」

 

「あぁ、トシ、俺の分まで買ってきてくれじゃ頼んだ。」

 

と最後に頼ろうとした近藤も土方の味方ではなく、

 

「はぁ、わかったよ。ギンガには言ってあるのか?」

 

「すまねぇな、お前さんから伝えといてくれ、ギンガもその事でなら今日は休暇にしとくって言っといてくれ。」

 

そう言われ何か納得しきれてないが土方はギンガを探しに行った。

で、

ギンガの姿を探して隊舎内を周りそして、ようやくギンガを見つけた。

 

「おい、ギンガ」

 

ギンガを呼び止めた土方。

 

「はい?何ですかトシさん?」

 

「いや、お前さ少し付き合ってくれねぇか?」

 

「え?//////」

 

ギンガは付き合っての言葉のみに反応した。

 

「ゲンヤのおやっさんがこれからは私服で捜査する事もあるから私服を調達してこいって言ってな、おやっさんもこの事でなら今日は休暇にしとくって言ってたし...って、おいギンガ、聞いているのか?」

 

「‥‥//////」

ギンガは無反応状態でそれでいて顔が真っ赤になりそして、

 

「えっ?/////あ、はい。わかりました/////そ、そ、それなら外で待っていてください!!すぐに用意してきますから。」

 

と言い残すと全速力でその場を離れ、女子更衣室へと走っていった。

 

「おい、ギンガ」

 

と振り向くとギンガはもう見えないぐらい遠くにいた。

 

「足速いな‥‥アイツ‥‥」

 

 

~sideギンガ~

 

そして、ギンガは今、女子更衣室の中で1人悶えていた。

 

「はぁはぁ、ど、どうしよぉ~‥‥こ、これって前に本で読んだ事のあるデ、デデデートよね‥‥? しかも/////トシさんから誘ってきてくれた。でもどうしよう‥‥今、私服はこれしかないし‥‥」

 

と今、着ている私服を見る。

 

「はぁ~こんな事なら、もっとお洒落して来ればよかった‥‥はぁ~仕方ない、これで行くしかないか‥‥ま、まぁ、外回りと思えば緊張がほぐれるかも‥‥」

 

財布の中身を確認して、財布をショルダーバッグに入れ、女子更衣室を出て土方と合流してギンガはショッピングモールへと向かった・

 

 

~sideショッピングモール~

 

「へぇ~結構でかい建物だな。」

 

ショッピングモールを見て土方は一言呟く。

 

「そうでしょう?此処はクラナガンで1番大きなショッピングモールなんです。ここに来れば欲しいものはだいたい揃います。そう言えば、トシさんの世界でこんな感じの建物ってあったんですか?」

 

とギンガは土方に無難な質問をした。

 

「ん?俺達の所と此処は街並みがぜんぜん違うからな、こういった建物はなかったな、ほらさっさと行くぞ‥‥」

とスタスタと先に歩いてショッピングモールの中に入って行った。

 

「あっ、待ってくださいよ!!トシさん!!」

 

とギンガ慌てて土方を追いかけた。

 

 

~sideショッピングモール内の服屋~

 

「こういうのは何か小洒落れているな。江戸じゃなかなか着ている奴は見ねぇな。」

 

と素っ気ないが少し興味があるのかマジマジと洋服を見ている土方。

そんな土方の様子を見て何だか新鮮だな、と感じるギンガ。

 

「トシさんってお洒落とかしないんですか?沖田君は早速というか、いつの間にか服を買っていましたし‥‥」

 

「ん?俺はそう言うのはしねぇな、てか、している時間が無いからな」

 

真選組の構図で土方は二番目に偉いが、下の問題児達そして上では上で近藤が何かと問題を起こしている為にソレのフォローばっかりしている土方である為、彼はあまり自分に時間を使おうとしない。

 

「そ、それなら私が選びましょうか?/////」

 

「ん?」

 

「その‥‥トシさんの服を私が選びましょうか?」

 

「ん?あぁ、それじゃあ頼むは‥‥」

 

「わかりました。」

 

ギンガは早速土方の服を選び始めた。

 

(うーん‥‥土方さんは動きやすい服装を好みそうね、だったら‥‥)

 

ズボンは黒いジーンズ、

上はTシャツの他にロング丈カットソー、プルオーバーシャツ、Vネックケーブル編みニット

上着にはデニムジャケット、チェスターコート、ダブルジャケット

をいくつか身繕った。

 

そして、ギンガの説明のもと、土方が試着すると、店員も

 

「お似合いですよ、お客様」

 

と、土方の私服姿を褒めた。

その後、近藤の私服も調達し、2人は服屋を後にした。

 

 

~sideショッピングモール内のレストランゾーン~

 

「昼食何にしますか?」

 

「別に何でもいいぜ」

 

土方の場合は食べ物にマヨネーズをかけられればそれで言い。

 

「う~ん、じゃあ‥‥ん?あれって‥‥」

 

ギンガは何を食べようかとレストランゾーンを見渡していると、彼女は見知った顔を見つけ、その人物に駆け寄って行く。

 

「お、おい、ギンガ」

 

土方もギンガを追いかけていった。

 

「あれ、もしかしてフェイトさん?」

 

とギンガは座っていた金色の髪の女性に声をかけた。

 

「あっ、ギンガ!」

 

「お久しぶりです!フェイトさん!!」

 

「こっちこそ」

 

と女性2人で盛り上がっている中、残された男性2人は、

 

「あの、お知り合いですか?」

 

フェイトと一緒に座っていた茶色の髪の少年がギンガが誰なのかを尋ねる。

 

「あぁ、こちらはギンガ・ナカジマ、スバルのお姉さんよ」

 

「あぁ、だから誰かに似ているって思ったんだ。それで、そちらの男性は?」

 

とやっと土方に会話が振られ、

 

「俺の名は土方十四郎。ここでは次元漂流者ってやつで、今はコイツの所属している部隊でバイトをしている。」

 

「トシさんの言う通り私のお父さん預かりなの、でもこの人達とても有能なのよ」

 

「へぇ~」

 

「えっと...フェイトさんって弟さん、いましたっけ?」

 

ギンガが?マークを浮かべて

 

「えっ?」

 

フェイトは一瞬誰のことかわからなかったがすぐにツナが、

 

「あっ、俺は沢田綱吉って言います。俺も土方さんと一緒で次元漂流者なんです。それで今は機動六課にお世話になっています。」

 

「へぇ~そうなんだ。よろしく、綱吉君」

 

「あっ、よろしくお願いします。」

 

と立ち上がり深々と頭を下げた。

 

「俺の事はツナでいいです。」

 

「うん、わかった。」

 

とギンガは言ったが土方は、

 

「.....」

 

(こいつは強いのか、フェイトって女はギンガと似た感じがするからたぶん魔導師ってやつだろうが...この沢田綱吉って言うのはどうも強いって感じがしねぇな。)

 

フェイトの事はだいたい見抜いたがツナの事はどうも強さって言うのを感じられずいた。フェイトと居るってことは少なくとも戦えるだろうが全く感じられないらしい。

 

「トシさん?」

 

「ん、あぁ、いや何もねえ、」

 

ギンガとフェイトは話していた時にずっと固まっていた土方を気にしたのか土方に話を振った。

 

「それで、2人は此処で何しているの?まさかデート?」

 

「ち、違います/////」

 

ギンガは顔を赤く染めて否定する。

 

「あぁ、ギンガの言う通り別にそんなんじゃねぇよ。」

 

土方はギンガと違って冷静に答える。

 

「そうなんですか」

 

「お前らも熱々カップルいいけど程々になあんまハメ外しすぎると...」

 

 

「「ち、違います!!」」

 

フェイトとツナはあっさりと否定した。

 

 

~side昼食終了~

 

土方とギンガはフェイトとツナと別れて、別の場所で昼食を食べた。

ギンガの昼食風景を見て、土方は、

 

(相変わらずよく食べるな‥‥)

 

と、ギンガの食事量にちょっと引いていた。

一方、ギンガの方も、

 

(トシさん、相変わらず、マヨネーズの量が多いな‥‥)

 

と、土方のマヨネーズ量にギンガもちょっと引いていた。

 

「さて、そろそろ帰るか」

 

と昼食が終わると土方が帰ろうときりだした。

 

「えっ!?も、もう帰るんですか...」

 

ギンガとしてはもう少し、土方と2人の時間を過ごしたかったため、ちょっと残念そうに言う。

 

「あぁ、もう用も済んだし、そろそろ帰んねぇと」

 

と言っているとトラブルが起こった。

 

「きゃー!!ひったくり!!ひったくりよ!!誰か捕まえて!!」

 

「「っ!!」」

 

「ギンガ!」

 

「はい!」

 

と女性の悲鳴を聞いて2人は走り出した。

 

「どけぇ!どきやがれ!!」

 

ひったくりは周囲の一般人を突き飛ばしながら走って逃げて行く。

 

「女ぁ!お前もどきやがれ!!」

 

ひったくり犯の前にジーパンにTシャツ、パーカーとラフな服装の少女が居た。

 

「.....ふっ!」

 

「ぐわぁ!」

 

するとその少女はひったくり犯に一本背負いを決めた。

 

「ちっ、このアマぁ!」

 

起き上がったひったくり犯は頭にきたのか、懐からナイフを出したが、

 

ドン!

少女はひったくり犯の鳩尾に腹パンを決めてひったくり犯は気絶した。

 

「ぐっ‥‥」

 

少女がひったくり犯を倒すと、そこへギンガと土方が追いついた。

 

「あれ?これ、もしかして貴女が?」

 

「急に襲いかかって来た‥‥正当防衛‥‥」

 

「ん?何だ?お前、万事屋の怪力娘に似てやがるな。アイツの知り合いか?」

 

「よろずや?何それ?」

 

と完全に知らない様子だったので、

 

(ちげぇのか?まっ、此処は異世界だからな、似た顔の奴ぐらいいんだろ)

 

「いや、すまねぇ、似た奴が知り合いにいてな」

 

「...そう、それじゃあ私はこれで」

 

と、その少女は踵を返して何処かへと行こうとする。

 

「あっ、ちょっとまって!」

 

とギンガはその少女を呼び止めて、その少女は振り返った。

 

「なに?」

 

「少しお礼させて」

 

と言われギンガの視線はドーナツ屋に向いていた。

ひったくり犯をショッピングモールの警備員に任せて、ひったくり犯を捕まえた少女はギンガに物凄い量のドーナツを奢ってもらった。

 

(顔もそうだが、食う量もあの怪力娘にそっくりだな)

 

大量のドーナツを食べる少女の姿を見て、この少女がますます知り合いの怪力娘に似ていると思う土方であった。

少女はドーナツを食べるとそれが意外にも美味しかったのか、ドーナツを気に入り、土産に買って帰ろうとしたら「私が出すよ」とギンガに言われたので、お土産のドーナツ代もギンガに奢ってもらった。

 

 

~side108部隊~

 

アクシデントはあったが、土方とギンガは無事に隊舎へと帰ってきた。

 

「あ、あの土方さん/////」

 

隊舎の玄関口でギンガは土方を呼び止めた。

 

「ん?どうした?」

 

とギンガはポケットをまさぐって

 

「これ/////あの...よかったら使ってください。」

 

と土方はギンガからプレゼントを渡された。

 

「ん?こいつは?」

 

「ど、どうぞ開けてください。」

 

「あ、あぁ」

 

ギンガからのプレゼントの中身は銀色のシガーレットケースだった。

 

「‥‥」

 

「‥‥土方さんはよくタバコ吸いますし...そのよかったら使ってください。」

 

だが土方から帰ってきた反応は、

 

「はぁ~」

 

ため息だった。

 

「な!?何ですかその反応は!!」

 

「えっ、あっ、わるいな別にそういう意味じゃねぇんだ。お互い似た考えだなって思ってな」

 

「え?」

そして買った袋の中から出したのは

 

「女に物渡すのは初めてでな」

 

と出したのは一本の簪だった

 

「お前のその長い髪ならよく似合うだろ。」

 

「あ、ありがとうございます!!大切にします!!」

 

とギンガは土方のプレゼントを喜んだ。

 

 

~side???~

 

山奥のいかにも秘密基地みたいな所で、

 

「あら、おかえりトレディちゃん」

 

「ただいまクアットロ」

 

「あら?トレディちゃん何か買ったの?」

 

「これ」

 

トレディは手に持っていたモノをクアットロに見せる。

 

「わぁ、ドーナツじゃん美味しそう」

 

「少しなら食べていい」

 

「そう、なら遠慮なく!!」

 

その後、数の子同士でドーナツを巡る戦いが起こった‥‥。

 

 

~ウラバナ~

 

土方が帰ったら、其処には待ち構えたかのように居たのは‥‥

 

「おかえりなせぇ、土方さん」

 

「ん?総悟か、どうしたまたサボってんのか?仕事をしろ」

 

沖田が居た。

 

「すいやせん...いや~面白いもんが見れたんで‥‥土方さんも見ますかい?」

 

とニヤニヤしながら沖田は土方に尋ねる。

 

「ん?何だ?その顔は?てめぇがその顔をする時はぜってぇ何か良からぬこと考えている顔だ」

 

「いや~、ただモテる男はプレゼントを渡す時もかっこいいなーと思いやして」

 

と言う。

 

「ん、てめぇ、何処から見てたんだ」

 

沖田の言葉を聞き、慌てだす土方。

 

「ここからでさぁ‥‥」

 

といつ買ったのか、沖田の手にはデジタルカメラがあった。

 

「いや~この時の土方さん、マジでかっこよかったですよ」

 

と連写した写真を丁寧に見した。

 

「総悟!!それを今すぐ消せ!!そして、テメェの頭の中もすぐに消しやがれ!!」

 

とブンブンと刀を振り回した

 

「あぶねぇですぜそんなもの振り回すと」

 

「やかましい!!」

 

沖田と土方の鬼ごっこは、この後3時間は続き、近藤が2人を止めた。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的24 思い出の品はしっかり管理しよう

久しぶりの更新です


~sideティアナ~

 

ツナとフェイトが買い物と言う名のデートに行っている時にある事件が起きていた、それは...

 

(兄さん...私...私は...)

 

食堂で大事そうにロケットを握りしめて今にも泣きそうな顔をして、それでも必死に耐えていたティアナ。

 

「ねぇ、ティア~ちょっといい?」

 

ティアナの心情を知る由もなく陽気な声でティアナに声をかけてきたスバル。

スバルから声をかけられてティアナは驚いて、手に持っていたロケットを机に置いて顔もいつも通りの表情に戻し、

 

「な、何、スバル?」

 

「ヴィータ副隊長が呼んでいたよ、行こ!!」

 

「え、えぇ‥‥」

 

ティアナもスバルについて行った。だがロケットをその場に置いていってしまいそれが事件の始まりだった。

 

少し間をあけて‥‥

 

「あれ?リボーンさんも10代目どこに行かれたんだ?」

 

食堂へとやって来たのは獄寺だった。彼はツナ達を探しながらここにやってきた。

そしてさっきティアナが座っていた場所に何気なく座る。

すると、彼はテーブルに置いてあったロケットに気づく。

 

「ん?何だ?これ誰かの忘れもんか?」

 

と何気なくそれを手に持ってロケットの蓋を開けると、

 

「こいつは...ティアナか?もう1人は...誰だ?この男?」

 

ロケットの中には小さい頃のティアナと同じくオレンジ色の髪をした青年のツーショット写真が入っていた。

獄寺がよ~く見ているとそのロケットが手から滑り落ちて、

 

パリーン

 

壊れてしまった‥‥

 

「あ!やべ!!」

 

これが事件の始まりだ。

運悪くその場にロケットを忘れた事を思い出して、慌てて戻ってきたティアナがこの場に居合わせた。

 

「あんた...」

 

「ティア...ナ」

 

「何して...っ!?それ‥‥」

 

「ち、ちげぇんだ、わざとじゃ‥‥」

 

獄寺が弁解する前に‥‥

 

バチーン!

 

食堂に乾いた音が響いた。

 

「いって!」

 

獄寺はティアナに目をやった。

壊した自分が悪いがここまで強くしなくてもと反論しようとしたがそれはできなかった。

ティアナの目には涙が零れ落ちそうになっていた。そして何の言葉も発さずにその場を去って行った。。

 

「何なんだ?あいつ...」

 

獄寺は壊してしまったロケットに目をやると、

 

「それぐらいのもんだったのか...」

 

と思いその場にずっといた。

 

 

 

~side夜~

 

この時からティアナは更に自主練に拍車がかかった。

 

「はぁ、はぁ、」

 

何の言い訳もしない。

それを心配なのか来たのは、

 

「ティアナちゃん、」

 

「シャマル先生...」

 

医者としてシャマルはティアナを放っておけなかった。

 

「あんまり根を詰め過ぎちゃだめよ」

 

「大丈夫です。これぐらい」

 

「だめ!!今日はもう休みなさい!!周りも暗いし明日も早いんだから」

 

「でも‥‥」

 

ティアナも何か言いたかったけど、シャマルの止めの言葉に

 

「これ以上はだめよ!やるならドクターストップをかけるから」

 

「はい...」

 

ティアナは渋々自室に戻っていった。

 

 

~side次の日~

 

昨日の事をなのは達に相談をしていたシャマル

 

「ティアナがそんな事を...無茶だけはしないでほしいのに‥‥」

 

なのははかつて自分がしでかしてしまった過去の失敗を思い出す。

 

「あんま無茶な自主練やったなら、こっちから荒っぽくなるやろうけど無理やり止めなあかんな」

 

なのはも今度ティアナに注意をしようときめた。もし、それでも無理ならはやてが言うつもりのようだ。

 

 

~side獄寺~

 

「おい、スバル!」

 

「ん?どうしたの?」

 

「これ誰だかわかるか?」

 

とロケットに入っていた写真を取り出していた獄寺はこれが誰なのかが気になっていた。

 

「これ...何処でこれを?」

 

「それは後で言うから今はこいつが誰なのか教えてくれ」

 

スバルは俯いていつもよりトーンの下がった声で答えた

 

「この人は、ティアのお兄さんのティーダ・ランスター、管理局でも結構なエリートだったんだ‥‥」

 

スバルのこの言葉に獄寺は疑問を感じ、

 

「だった?」

 

「ティアのお兄さん、ティアが小さい時にある事件で亡くなってしまったの、この時からティアは天涯孤独になったんだよ」

 

「.....あいつだからあんな顔を」

 

獄寺はティアナの涙ぐんだ顔を思い出した。

 

「これは言っていいかわからなけど‥‥」

 

「何だ?」

 

「ティアのお兄さんが死んだ時のお葬式でね、その当時のティアのお兄さんの上司が言ったんだ‥‥『犯人を追い詰めておきながら逃がすなんて首都航空部隊の魔導師としてあるまじき失態だ!!例え死んでも取り押さえるべきだった。お前は我が隊の恥だ!!役立たず!!』って‥‥小さい頃のティアには厳しかったんだと思う、この時からティアはお兄さんが役立たずじゃないって証明する為に今も頑張ってるんだ」

 

スバルの話した事に獄寺は、

 

「本当なのか?それ?」

 

「う、うん‥‥」

 

獄寺の声は静かだかスバルはビクッとなった。自分の怒気を無理やり鎮静させた声だったからだ。いつもの様に叫ばずにその場を去った

 

そして何やら部屋に一旦篭もり夜まで出てこなかった。

 

 

~side夜~

 

また夜遅くまで自主練をするティアナその時ある人物が通った。鼻歌まじりに来たのは

 

「~♪定春も元気だったネ、明日も早いしさっさと寝るアル」

 

神楽だった。

どうやら外で寝ている定春の様子を見て部屋に戻ろうとしていた。

そんな神楽の耳が遠くで物音を聞き取った。

 

「ん?何アルか?この音?」

 

音のする方に行くとティアナが自主練をしていた。

 

「こんな遅くまでよくやるアル」

 

何となく気になったのか神楽はティアナを見ていた。すると

 

 

~side獄寺~

 

「あいつ何処に行ったんだ?」

 

獄寺は人を探していた。

 

「どうしたの?獄寺君、こんな時間に?」

 

「あ、10代目、いえ何にもありませんので気になさらずに‥‥」

 

と獄寺は後ずさりその場を去った。

 

「どうしたんだろ?」

 

 

獄寺は少し走りながら

 

(部屋ならスバルに呼んでもらうか...ん?)

 

遠くにいたのはシャマルだ、何やら探しているみたいだが...

 

「あ、ちょうど良いところに獄寺君、ティアナちゃん見なかった?」

 

獄寺は探し人を言われ少し慌てたが、

 

「い、いや見てねぇが、どうしたんだ、お前がそこまで慌てて探すなんて、何かあったのか?」

 

シャマルは少し俯き

 

「この頃、ティアナちゃん、無茶をしているから心配で...」

 

下を向きそう話して

 

「おい、俺もティアナを探すぜ、あったらお前の所に行くように言っとくだから医務室に居てくれ」

 

「え、でも‥‥」

 

「いいから」

 

と走っていった獄寺。

 

「も、もしかしたら外にいるかもしれない!」

 

とシャマルが叫んだその言葉に獄寺は、

 

(外か...)

 

と隊舎から離れ木が並んでいるところに出たそこには‥‥

 

「やっと居たぜ、おい!」

 

声をかけるとティアナが振り向いたティアナは怪訝な顔をした。

 

「何か用?」

 

不機嫌な声で返したティアナ。

 

「シャマルが探してんぞ、お前こんな時間までやってんのか?」

 

「別に‥後で行くわ‥‥」

 

とまた練習しようと向き直した。

 

「おい、お前無理しすぎなんだよ」

 

(寶、ティアナを止めようと...)

 

「いいのよ、これぐらい」

 

「お前がここまでする理由はスバルに聞いた」

 

ティアナは一瞬驚いたが振り向かずに

 

「そう‥‥」

 

「お前の兄貴の事、確かにその上司はむかつくが兄貴はお前にここまでする事を望んでいるのかよ」

 

「何が言いたいの...」

 

「俺はお前の兄貴には会ったことがねぇけど、それでもこんな事を望んでないことはぐらいはわかる!」

 

「ア、アンタに何が分かるって言うのよ!!私の兄さんの事何も知らないクセに!私が執務官を目指すのをやめろって言いたいの!!兄さんの正しさの証明のために目指すなっーーー」

ティアナはいっぱいいっぱいだった。自分のミスこの前の事そして自分の事兄さんの事を何も知らない赤の他人がここまで否定してきた。だからもう半分は本音がさらけ出した何も知らない奴がとやかくゆうなと。だけど獄寺はそんなティアナの言葉に

 

「違う!お前が兄貴の為に体を壊すぐらい無茶している事だ!!」

獄寺もあった。ツナの為に命をかけることそれが右腕のやるべき事だとずっと思っていた。だがツナはそんな事を微塵も思ってなかった。ツナは獄寺に死んで欲しくなどなかった。ただ自分の為にそんな簡単に命をなげうって欲しくなかっただけだ。獄寺もそれに気付いてそれからは自分を失ったツナ達のことを考えて無茶をせずにそして仲間を助ける為に戦い始めた。

 

ティアナの事は正直あまり知らないだけどここにいる人は全員ツナと似た考えの人達だ。仲間を大事な人を守りたいそれは少しでも同じ戦場(ばしょ)を生きたからわかる。

 

「っ!?」

それはティアナも同じだ。

 

「これを見たらお前がどんだけ兄貴を慕っていたのかがわかる!!」

 

取り出したのはロケットだ。以前とは違うのは傷が目立つがテープでつけていた

 

「ったく、ちゃんと手入れしてんのかよ、塩が溜まりすぎている。お前が沢山涙を流した証拠だ。お前がここまで思ってんだ。これぐらいで兄貴がどんな奴かは大体分かる」

ティアナがここまで大事に思う人だ。とても優しくティアナに接してティアナの心の支えになった人だから

 

そして獄寺も下を向いた。

 

「兄貴は多分こう思っていると思ってるはずだ。」

 

上を向き直して

 

「『俺の為にここまで無理するなって、塞ぎこまずに周りを見ろ』ってな、今のお前は過去に囚われて現在(いま)を見てねぇんだよ...今の自分をよく見やがれ」

 

獄寺の言葉にティアナは

 

「でも私には...頑張らないと...人一倍頑張らないと皆に離される、才能のない私には‥‥」

 

「そんな事ないヨ」

 

突如その場に出てきたのは神楽だ。

 

「えっ、いつの間に...」

 

「私が最初来た時の炎真との模擬戦、あの時のティアナの指示は完璧だったアル、他にも全員の動き方とか、細かく指示しているネ、これ出来んのは凄いことアル、私にはできないネ」

 

と素直にティアナの功績を褒めた神楽。

 

「ち、いらねぇ世話だったか」

 

と頭に手をやりながら、

 

「周り見てんじゃねぇか、これはスバルやエリオ達の中でもお前しかできねぇことじゃねぇのか?」

 

ティアナは黙り込んで、

 

「ひとの指示聞くのは簡単だ、だが人に指示するのは頭もいるし常に冷静じゃねぇとな...」

 

「お前もなかなか言うアルな獄寺!ちょっとだけ見直したアル、ただの喧嘩しかできない不良だと思ってたのに」

 

「アァ!何処がだ!?」

 

「タバコ臭い、喋り方、服装、その他もろもろ‥‥」

 

とどんどん指摘して言った

 

「だとコラ!お前なんてただ大食いなだけだろ糞ガキが!!」

 

「こんな事で怒ってるアルか?これだからガキは、ガキにガキ言われたくないネ」

 

と今にも「へ、」と言いそうな態度で答えた神楽、神楽の方が余裕そうだ

 

「ぐぬぬ」

 

と睨んでいると、

 

「頭来た!こいつで」

とダイナマイトを取り出して

 

「上等だ!てめぇのそのタコ頭、茹でダコにしてやるネ!!」

と取っ組み合いの喧嘩に発展しかけたが

 

「ぷ、もうやめなさい、喧嘩は」

 

「ん?今笑わなかったか?」

 

「別に、何であんたが私を忘れて神楽と喧嘩してんのよ」

 

「あ、」

 

「はぁ、神楽もこいつが不良なのは生まれつきなのよ、それ以上は言わないでよし」

 

「わかったネ」

 

「テメェ、」

 

と吠えるがティアナは

 

「さてと、」

 

と歩き出した。

 

「どこに行くんだ?」

 

「シャマル先生が探していたんでしょ?何処にいるの?」

 

「医務室だ。」

 

と答えて、

 

「ありがと、私はもうあがるわ。貴方達もはやく戻りなさい」

 

と言われ神楽、

 

「わかったネ、」

 

「は、ちょっと待て、何か釈然としねぇんだけど!!」

 

夜の六課の敷地内に獄寺の絶叫が木霊した。

 

 

・・・・続く




出たよ常套句なんて思わないでね


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的25 騙すのならとりあえずカメラはいるよね

 

 

~side医務室~

 

「シャマル先生!色々心配かけてすいませんでした!!」

 

頭を思いっきり下げティアナが謝った。シャマルも戸惑ったが

 

「別にいいわよ...ただ今度から自分の体の事を考えながらしてね」

 

「はい」

 

そして医務室から出たそこには、

 

「あんた、まだ居たの?神楽は?」

 

そこには獄寺が居た

 

「神楽は戻った。俺はお前にこいつを返すの忘れていたからな」

 

とポケットからティアナのロケットを取り出した。

 

「これ‥‥」

 

テープでガラスを補修したロケットを見てティアナは、

 

「あんた‥もう少し、ちゃんと直せないの?」

 

と冗談っぽく言うと、

 

「るせぇ、それでも俺の精一杯のデキなんだよ」

 

と獄寺が間に受けて返したので、

 

「あんたって冗談通じないのね。見かけは不良っぽいのにそういうところは、馬鹿正直なんて、あんたって真面目何だか不良なんだが、分からない奴ね」

 

「へぇーてめぇが冗談言えんのかよ」

 

獄寺が抱いていたティアナはクラスに1人は居るクラス委員長か風紀委員(あの怖い人は除く)の様な堅物のバカ真面目な優等生だったので、そんなティアナが冗談を言うなんて意外だった。

獄寺がティアナに返すと、

 

「前に比べたらまだ言えるわ、肩の荷が少し軽くなったから」

 

ティアナは小さく微笑む。

訓練校に入りたての頃のティアナは仏頂面で獄寺の言う通り、委員長タイプの堅物であった。

しかし、スバルと共に仕事をして行く内にティアナの表情も変わり始めたのは事実であった。

 

「ふん、じゃあな」

 

と部屋に戻ろうとする獄寺にティアナは、

 

「おやすみ」

 

と一言言葉を交わして両者は寮へと帰っていった。

 

 

~side銀時~

 

深夜、突然目が覚めた銀時。

暫くはベッドの上でゴロゴロしていれば眠れるだろうと思ったが、なかなか寝付けない。

 

「くそっ、なんか眠れねぇな‥‥散歩でもしてくるか‥‥」

 

そこで、隊舎を一周してくれば眠くなるだろうと思い、ベッドから起き上がった。

こういう時は、酒でもカッ食らうのが一番なのだが、あまり酒を飲むとはやてとかがうるさいので、今晩は我慢することにした銀時であった。

夜の散歩をしていると、訓練場に薄明かりが見えてその場へと向かう。

そこには空間モニターに向かっているなのはが居た。

なのはは無心でキーボードを打っていた。

 

「おい」

 

銀時はそんななのはが気になって、なのはに声をかけた。

 

「あれ?銀さん?珍しいですねこんな時間まで」

 

「いや、ただ目が覚めただけだ?それよりも今、『珍しい』って言ったよな?まさかとは思うがお前もしかしてここ毎日‥‥」

 

「やっていますけど?」

 

「はぁ~少しは休め。マジ潰れるぞお前」

 

「大丈夫ですよ。こう見えても身体は頑丈ですし、それにこの仕事、私は本当に楽しいと思っていますから」

 

満面の笑みで答える。

この時、銀時の脳裏にはある人の顔が浮かびあがった。

 

「そうかよ、明日も大変かも知んねぇが、まぁ頑張れよ」

 

「はい。それじゃあ、おやすみなさい、銀さん」

 

「おう」

 

なのはにそう言って銀時はその場を去った。

 

 

~side翌日 (模擬戦当日)~

 

模擬戦前の最後の練習中のなのはは、すっきりした顔のティアナを見て一安心をした。

相棒のスバルやエリオ、キャロは『何で?』って顔をしていた。

新八もよくは知らない余り深く追求するのもあれなので全員はティアナに訳を聞く事なく一先ずティアナの調子が元に戻った事に安心した。

因みに関係した当人の獄寺は興味なさげにあくびをしていた。

 

「それじゃあ、この後は、FWメンバーはそれぞれチームごとに別れて模擬戦をするからね」

 

「「「「はい!」」」」

 

と元気よく答えた。

 

「獄寺、この後いい?後スバルも明日の作戦の事もあるし」

 

とティアナは獄寺とスバルに声をかけ、スバルは

 

「わかった...けど何で獄寺?」

 

パートナーである自分に声をかけるには当然だとして、何故獄寺にも声をかけるのかを疑問に思うスバル。

 

「射撃の事色々参考になると思って」

 

と返した。

 

「けっ、まぁ、いいけど」

 

と獄寺は素っ気なく返した。

その後何やら作戦会議をしてほっとけないのか獄寺も少しティアナに知恵をかしていた。

 

 

「あ、あのヴィータさん。なのはさんなんか何時もより疲れている様な感じがするんですけど‥‥」

 

新八がこれからティアナとスバルの相手をするなのはの様子が少し変なのに気づく。

確かになのはの目の下にしたにはくっきりと隈が出来ていた。

きっと寝不足なのだろう。

だが、そんな状態でこれからティアナとスバル相手に模擬戦を出来るのか?と疑問に思うのは当然のことだろう。

 

「あぁ、なのははここ最近、働き詰めだからな。朝から晩までお前らに付き合いそれが終わってもモニターで訓練内容を確認して次の日の為の訓練のメニュー作り‥‥3~4時間くらいしか寝ていねぇ」

 

「ああ、そう言えば昨日もやっていたな。」

 

銀時が思い出したかのように呟く。

 

「それ、大丈夫なんですか?」

 

明らかにオーバーワークだろうと新八が言う。

 

「アタシだって、そう思っている。だから、今日の模擬戦が終わったら、無理にでも休ませるさ」

 

ヴィータもなのはのオーバーワークの実態は知っていたので、せめて今日の模擬戦が終われば、なのはの仕事も一段落つくだろうと思い、

 

そんな中、模擬戦が始まった。

最初はライトニングからで、相手はフェイトが務めた。

エリオとキャロはまさにお手本通りな動きでフェイトを相手にするが、やはり年齢と経験の差があり、フェイトにあっさりと負けた。

そして、次はスターズ‥ティアナとスバルの番となった。

 

 

~sideティアナ~

 

「クロスファイアーシュート!!」

 

と叫び無数の魔法弾が飛んだ。

 

「おい」

 

「いつもよりなんか。」

 

「あぁコントロールはいいけど。」

 

ティアナの射撃はいつもよりキレがないのを観戦者達は見てわかった。

なのははその魔導弾を躱したが追尾するため躱し続けた。

その間にスバルが「ウィングロード」を出現させてかけてくる。

 

「フェイクじゃない、本物!?」

 

が攻撃をスバルに向ければいいことなので、それをスバルにぶつけた。

スバルは歯を食いしばりながらシールドをはってガードした。

その後スバルはリボルバーナックルで、

 

「うおぉぉぉぉおお!」

 

渾身の一撃をなのはにお見舞いするが、

 

「っつ」

 

なのははこれをシールドでガードした。

 

少し予想外だったがなのははスバルと競り合いスバルを弾き飛ばした。

 

「うぁぁぁぁ‥‥っと」

 

スバルはなのはとの競り合いに負けて飛ばされたが、ウィングロードの上に難無く着地する。

 

「コラ、スバル。危ないよ。そんな軌道」

 

「すいません!ちゃんと防ぎますから。」

 

「ティアナは‥‥」

 

なのははティアナを探してあたりを見回し、するとティアナが遠くのビルの中から砲撃しようとしていた。

 

「ティアナが砲撃!?」

 

「でりぁぁぁぁぁあああ!!」

 

気を取られた一瞬スバルがウィングロードを走ってリボルバーナックルをなのはに叩き込んだ。

が、なのははバリアをして防いだ。

そしてティアナの方を見るとティアナが居なくなっていた

 

「やっぱりあっちはフェイク。」

 

「じゃあ本物は?」

 

「あそこだ!!」

 

ウィングロードを走るティアナがいた。

 

「一撃必殺!!でぇぇぇぇいー!!」

 

「レイジングハート…モードリリース。」

 

いつもと違い感情のない、無機質ななのはの声が小さく響いた。

 

ドーン!!

 

「おかしいな。2人ともどうしちゃったの?」

 

片手でスバルを止めてもう一方でティアナを止めていた。

ただ、デバイスをリリースした為、なのはの手はクロスミラージュの魔導刃を受けた。だが、なのはの手からは1滴の血も流れていなかった。これはなのはの強さが伺えた。

 

ここまでは‥‥

 

シュン!

 

なのはが掴んでいたティアナの姿がだんだんと薄くなっていったと思ったらティアナの姿が急に消えた。

 

「えっ?」

 

流石のなのはもこれには驚いた。

 

(な、何で、もしかして今のは幻影!?そんな馬鹿な!!痛みも実感もあったのに‥‥じゃあ、本物のティアナは何処に!?)

 

本来ティアナの幻影は触れたり攻撃したりしたら一瞬で消えてしまう。

それはこれまでの訓練でなのはも見て、ソレを撃破してきた。

 

「スバル!あとお願い!!」

 

「任せて!!」

 

と言うと、なのはの死角からティアナの魔法弾が1発のみ飛んできた。

 

「っ!?」

 

なのははそれを躱した。

次はスバルが、

 

「でりやぁぁぁぁ!!」

 

スバルの渾身の攻撃がなのはにヒットした。

 

「くぅぅ」

 

殴り飛ばされたがなのはは何とか持ち堪えた。

 

「あれティア、攻撃は?」

 

ティアナからの援護射撃が無い事にスバルがティアナに声をかける。

 

「ごめんさっきの幻影でもう魔力が‥‥」

 

とヘトヘトになりながら答えた。

ティアナは‥‥バッテリー切れです。

切れたらさっさと入れ替えろ‥‥と言いたい所であるが、それは無理であった。

 

「ふぅ~スターズの模擬戦は引き分けで、今回は終了かな」

 

なのはが服のホコリをパン、パンと払いながら言う。

 

「ねぇ?ティアナのさっきのアレはなんなの?」

 

なのはは早速ティアナにさっきの幻術について問う。

これまでティアナの幻術、フェイク・シルエットを見てきたがあれは明らかに今まで自分が見てきたフェイク・シルエットとは異なる。

なのはの問いにティアナは、

 

「昨日作戦を練ったりそして獄寺にすこし練習付き合ってもらっていた時に獄寺が‥‥」

 

と回想に入る前に、

 

 

~side観客席~

 

「さっきの幻覚か?‥でも、あれは幻覚なのにまるで本物みたいだったぞ‥‥」

 

ヴィータは先程ティアナが見せた幻術がこれまで見てきた幻術と異なる事に疑問を抱いていた。いや、ヴィータだけではなくほぼ全員がティアナの幻術に疑問を感じていた。

すると言うとリボーンが、

 

「有幻覚だな。」

 

皆の知らない単語に全員聞きに入った。

どうやらリボーンには先程のティアナの幻術がなんなのか分かっている様だ。

 

「有幻覚ってのは、簡単に言えば実態を持つ幻覚の事だ。」

 

「実態を持つ幻覚!?そんなもの聞いたことねぇぞ!!」

 

ヴィータが今まで見たことも聞いた事もない幻術の技を聞いてリボーンに食いつく。

 

「とてつもない幻覚の制度がいるからなだがリスクとしてはあまりに近すぎるために本体以上の力が出せないって事だ...お前か獄寺これを教えたのは?」

 

と言い全員の視線が今度は獄寺に集まる。

 

「まぁ、教えたってより、何ていうか考え方を変えたって言った方がいいと思います。」

 

リボーンの問いに獄寺は頬を掻きながらティアナが有幻覚を使えるようになった経緯を話す。

 

 

~side昨日 練習場~

 

「じゃあ、明日の作戦はこうするから」

 

「OK」

 

とティアナとスバルは話していた。

 

「おい、」

 

「何?」

 

「お前、幻術使えんのか?」

 

「え、ええ‥一応‥‥」

 

「少し見せてくれねぇか」

 

「えっ?まぁ、いいけど...」

 

とティアナは集中して自分の幻影を1体だけ作った。

 

「成程、よくもまぁ死ぬ気の炎使わねぇで作れるもんだ」

 

「私達からしたら何で魔力も無いのにあんなに強いのか不思議だけどね」

 

そんな事言っている内に獄寺はティアナの幻影に触れた。するとたちまち幻覚は消えてしまった。

 

「おい、この程度で消えんのかよ。あまりにも脆すぎるぞ」

 

「う、うるさい!仕方ないでしょう!!幻覚何だし!!」

 

「ティアの幻術もさNA〇UTOの影〇身みたいに攻撃とかできたらね~」

 

「そんなの無理よ、所詮は幻覚、相手を騙すのみしか使えないわよ」

 

(って言うかスバルもティアナもNA〇UTOを知っているのかよ‥‥)

 

(そう言や、あの主人公の声、アホ牛の奴に声が似ていたななぁ‥‥)

 

スバルがNA〇UTOを知っていた事に意外性を感じると共にその主人公の声が自分の知り合いの声に似ていた事を思い出す獄寺。

 

「それは少し違うんと思うぜ」

 

「「え?」」

 

「お前の言う幻覚は今の所視覚とかを騙すのに使っているだろう?」

 

「え?だって、幻影ってそう言うモノじゃないの?」

 

確かに管理局やこの世界に魔法の時点には幻術は相手の視覚に影響を与え、相手をだます術と明記されている。

 

「騙すんならもっと本格的に相手を騙すんだな」

 

「ちょっと、それはどう言う意味よ」

 

「それぐらい自分で考えろ」

 

「なっ!?」

 

「仮に答えを知っていても教えねぇぜ俺は」

 

「えぇー何で?そんな意地悪しないで教えてくれてもいいじゃん」

 

スバルが頬を膨らませて獄寺に抗議する。

 

「あのなぁ~それじゃあ、意味がねぇんだよ。ティアナ、お前は確かになのはから教導を受けている身ではあるが、お前はもう訓練生じゃねぇんだろう?それなら自分で自分の戦術ってやつもう少し違う角度で見極めろ」

 

今までのティアナはこれまで自分の幻術はこれもう以上進歩しないと判断し、射撃訓練ばかりしていたが、獄寺は幻術の方にももう少し目を向けろと言う。

 

「そう言っても‥‥」

 

ティアナは獄寺の言葉に対してやはり、幻術に関してはもうこれ以上進歩のしようがないと思っており、彼の言葉に懐疑的だ。

進歩するにしてもどう進歩するのかがわからない。

 

「お前はスバルやエリオ、キャロ...神楽や10代目の能力を観察し、見極めて10代目達に嫉妬心を抱いて焦った‥‥なら、その観察眼をもう少し自分に向けろ。基礎は確かに大事だ。だが、いつまでも教科書どおりの戦法をやっていたらお前はそこまでだ。絶対に成長には繋がらねぇぞ」

 

「自分に‥‥」

 

「そうだ。まずは自分で自分を見るんだよ。でなきゃ、この先お前はずっとこのまま‥成長はしねぇ‥‥俺から言えるのは此処までだ。あとは自分で頭を捻って知恵を絞り出せ」

 

そう言って獄寺は去って行き、ティアナは未だに見ぬ新たな幻術の進歩に頭を悩ませる。

 

 

 

 

 

 

 

 

~side模擬戦会場~

 

「最初は獄寺の言葉の意味がわからなかったけど今わかったんです。」

 

ティアナはなのはにはっきりした顔で言った。

 

「あの言葉から今までの事だけじゃなくて新しくアレンジできるかもしれない可能性にかけてみました。」

 

「うん、でもそれもだいぶ魔力の消費が激しいみたいだし今は長続きしないみたいだからあまり多用しないようにしてね。やるにしても時間をかけて上手く魔力の調整をコントロールしていくことから始めよう。何事も基本が大事だからね」

 

「は、はい‥‥」

 

なのはは有幻覚の短所をティアナに伝え、尚且つあまり使用しない様に釘を刺し、今後は魔力の調整を上手くやって行く事を念頭においてそこから徐々に自分に慣れさせることから始めようと言う。

 

「それとティアナ」

 

「はい」

 

「後で個人的に話したいことがあるの‥‥夕食が終わったら、私の部屋に来てくれる?」

 

「えっ?あっ、はい‥‥」

 

「それじゃあ、解散」

 

こうして六課のFW陣の模擬戦は終わった。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的26 生徒は先生の忠告を先生は生徒の要望を聞くことから信頼関係ができる

 

 

 

~sideなのは~

 

自室で何か思い出の品なのか大事に抱えていた。

 

㌧㌧

 

「どうぞ」

 

「失礼します。」

 

ティアナが入ってきた。夕食が終わり模擬戦の後、ティアナはなのはに呼ばれたので、やって来たのだ。

 

「来たね」

 

「はい、あの‥すみませんでした!!」

 

ティアナはなのはの部屋に入るとなのはに思いっきり頭を下げた。

 

「え?」

 

急にティアナから頭を下げられて戸惑うなのは。

 

「なんで。なのはさんに呼ばれたのかさっきまで考えていてこの前までの...無茶なトレーニングが耳に入ってで.....」

 

「そうだけど、そこまで反省しているなら、いいよ。」

 

ここまでは暖かい笑みで微笑んでいた。

だが次の瞬間顔が引き締まって

 

「でも、これだけは覚えといて、ちょっとしたことが発端になってそれが一生関わるかもしれなくなるってことを...ティアナの先はまだ長いんだから今はゆっくり進んでね」

 

なのはの雰囲気に一瞬言葉が詰まっただけどティアナも

 

「はい、わかっています。今回の事でスバルにもシャマル先生にも神楽にも心配をかけてしまいました。」

 

(それに、あいつにも...)

 

ティアナは気まずそうになのはから少し目をそらした。

 

「なんで私がティアナだけにそんな事を言うのか‥それは私が過去に体験したからなんだよ」

 

「なのはさんが!?」

 

「うん‥魔法に出会う前の私は、運動もダメで、勉強も普通だった‥‥毎日をただ平凡に普通に生きていた‥‥そんな時、突然魔法に出会った‥‥それから私の周りは一変した‥‥自分にこんな取り柄があったんだ‥‥って、新鮮に思えた。クロノ君やリンディさん、ユーノ君とも出会って、みんな私の事を必要としてくれている。みんなが私の事を見てくれている‥そう思えたの‥‥」

 

(へぇ、なのはさんって運動音痴だったんだ‥‥)

 

なのはの過去の告白でティアナはなのはが運動音痴である事実を知った。

最も今のなのはも魔法が無ければ運動音痴に変わらないが‥‥

 

「私の家、今はお父さんもお母さんも喫茶店をやっているんだけど、私が魔法と出会う少し前、お父さん、ボディーガードの仕事をしていて、仕事中にテロに巻き込まれて大怪我をしちゃって‥‥それが元で私の家族は心が離れちゃった‥‥お父さんが無事に帰って来ても、私はやっぱり不安だった‥‥いつまた家族の心が離れちゃうのか‥‥」

 

(家族‥か‥‥)

 

なのはの家族の話にティアナは共感を覚えた。

 

「魔法に出会って必要とされていると感じてから、私は必死に頑張った‥‥魔法と言う取り柄を無くしたら、お父さんの時の様にみんな私から離れて行っちゃう‥‥誰も私の事を見てくれなくなっちゃう‥‥そんな不安が常にあった‥‥」

 

なのはは手を組んでティアナに当時の事を話すがその手は小さく震えていた。

 

「その結果がコレだよ‥‥」

 

なのははテーブルの上に置いてあったリモコンを操作する。

画面には当時10歳のなのはが病院のベッドに医療用機器のコードやチューブ、身体には包帯を巻かれた映像が映し出される。

 

「っ!?」

 

その映像を見て、ティアナは思わず絶句する。

管理局のエース・オブ・エース(または管理局の白い悪魔)と呼ばれているあの高町なのはが、この様な姿をするんなんて考えられなかった。

 

「みんなの事を信じ切れず、オーバーワークをした私は当時、まだ正体不明だったガジェットと交戦し、今までの無理がたたってこうなった‥‥この時、病院の先生からは魔法を使うどころか歩くこともできないかもしれないって言われたの‥‥」

 

「魔法を使えないって‥‥でも、なのはさんは‥‥」

 

「うん、必死でリハビリをして、歩くことも魔法を使うことも出来たよ‥‥でも、この時の痛みと辛さはこれまで体験して来た中でも一番の辛さだった‥‥」

 

「‥‥」

 

「もし、ティアナがあのまま無理をしていたら、ティアナもこうなっていたかもしれない‥‥私と同じ様な苦しみをティアナには体験してほしくない‥‥ティアナは無茶なトレーニングをしているって聞いて真っ先にこの事が脳裏をよぎったの‥‥」

 

「は、はぁ‥‥」

 

もはやティアナは余りにも唐突な事で思考がついていけなかった。

 

「だから、ティアナ、今後は絶対に無茶はしないで、困ったことがあれば、遠慮なく私を頼って!!お願い!!」

 

「は、はい‥‥」

 

なのはの勢いにティアナはそう答えるしか出来なかった。

 

「それと、今回の事でティアナはレベルアップした...だからティアナ少しクロスミラージュを貸して」

 

と言われ頭に?が浮かんだがティアナは渡した。

 

「もしもの時のために用意していたんだ。執務感になるならこれは必要、今のティアナにはこれが使いこなせるしね。」

 

と返されて

 

「命令してみてモード2って」

 

「モード2」

 

と言われて魔力でできた刃が出た。

 

「あの時は幻影だった...だけど貴方が目指すならこれも使いこなせるようにならないと」

 

なのはの顔は完全に先生のようだった。ティアナは驚き少し赤面となり

 

「...ありがとう...ございます」

 

頭を下げて少しこの場にいてその後ティアナは自室に戻った。

なのはも寝ようとしてる時にフェイトがタイミングを見計らったかのように入ってきた。

 

「お疲れ様。」

 

「フェイトちゃん...ティアナもこれで心配いらない...かな」

 

「そうね、あ、明日朝イチにはやての所に来て、はやてが言っていた。」

 

フェイトの話になのはは?を浮かべてフェイトも詳しい内容を知らない様子だ。

そしてその後二人は寝静まり...

 

 

~side翌日~

 

「何か用かな、はやてちゃん」

 

昨日フェイトに言われたように部隊長室に来たなのは因みにフェイトもついていった

 

「おお、来たな。」

 

中にいたのははやて、そしてヴィータだ。

 

「前々からヴィータに言われてたんやけど今回はヴィータが強く志願してきてな、この頃働き詰めやったさかい少しぐらい休暇を入れてもええやろなって」

 

はやてが言うと

 

「休暇?」

 

「そや、今日1日何処かで遊ぶとか、ショッピングとかしてきいや」

 

とはやてのに言われたがなのは自身は何をすればいいのかよくわからないので

 

「でも皆に悪いんじゃ...皆働いてるし...」

 

「何言ってんだ、お前は人一倍仕事してたんだ。少しぐらい遊んで来ても罰は当たらねぇよ。」

ヴィータが言うと

 

「それに1人で...てのも」

 

「確かにそれはあるな」

 

ヴィータも頷き

 

「それなら私がーー」

 

はやてが提案しようとしたら

 

「ごほん、ごほん」

 

フェイトが咳をして少しオーラが黒くなった。はやて自身がもうちょっと仕事しているなら行ってもいいがだいぶ仕事を貯めている為に...

 

「冗談です。」

 

「私はこの前ツナについて行ったし...」

 

フェイトもこの前休暇を使った。

 

「誰かいい人おらんかな」

 

と扉を開けて見るとそこには偶然起きたばかりの銀時がいた。

 

「ん?」

 

「あぁ、丁度えぇ人がおったわ!銀ちゃん、銀ちゃん!!ちょい来て!!」

 

と銀時を部屋に招き入れた。

 

「何だ?朝からテンション高けぇな。今日はクリスマスですかーコノヤロー」

 

「そやな、もうすぐでクリスマスやな...じゃなくて!!」

 

と手を右から左に動かして、

 

「今日1日なのはちゃんと遊んできてや」

 

「は?」

 

「...急に言われてわからないよね。実はカクカクシカジカで」

 

とフェイトの説明により銀時も理解して

 

「成程、それで粋な遊び人の銀さんに」

 

とキメ顔なのか(。 ・`ω・´) キラン☆とした顔になった。だけど

 

「いや、たまたまそこに居たから。それに銀さんは粋な遊び人やのうて、ただの暇人やないか」

 

とはやては真顔で手を振り否定した銀時は気分を害したのか、

 

ペシッ!!

 

と少ししばいた。

 

「まっ、そうゆことやから、なのはちゃん。銀ちゃんと2人で遊んできぃ~こっちはこっちで仕事しとくから。」

 

と言うことで、

 

 

~side駅~

 

「来ちゃった。」

 

「へぇ、これがね~結構賑わってんな」

 

物珍しそうに銀時が周りを見ていた

 

「んで、これからどうすんだ?」

 

「...ど、どうしよう?銀さんは何処か行きたい所ある?」

 

なのはは銀時に聞いた。

 

「.....良し、なら居酒屋かパチンコだな」

 

行先のチョイスが中年のオッサンレベルな銀時。

もし、この場に神楽かはやてが居たら、銀時はシバキ倒されていただろう。

 

「む、無理だよ!!私、まだ未成年だよ!?お酒もパチンコもお店には入れないって!!」

 

「ちっ、ならどうすっか、お前のおかげで折角休めんだ少しは考えねぇとな」

 

とこれから両者が考えていると、

 

トン

 

「あ、すいません」

 

「こっちこそ」

 

なのはにまだ9歳ぐらいの少年が当たった。普通になのはが通行の邪魔になったように見えたが銀時は見逃さなかった。

 

「はい~ちょっと待てボウズ」

 

と肩を掴んだ子供は掴まれた時にドキっとして

 

「ちっ、」

 

逃げようとするが、銀時が少年の頭を掴み

 

「おら、すったもんを返せ」

 

「うっ、」

 

「え?」

 

子供は銀時に捕まりそう言われて目をそらす。

反対にすられたなのはキョトンとしている。

 

「あんま大事にはしねぇから、なのはの財布を返せ」

 

銀時は死んだ魚の様な目で少年を睨んだ。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的27 財布は尻ポケットに入れとくな

久々の更新です。


~sideファミレス~

 

「さぁて、何でこんな事をした?」

 

なのはと銀時はとりあえず近くのファミレスに入り、銀時はパフェを頼み、彼はパフェを食べながらスリをした子供に尋問するが、スリをした子供は俯いき黙り込んでいるだけで何も言わない。

スリをした子供自身、まさかパフェを食べながら尋問して来る様な相手に尋問をくらうとは思いもしなかった。

一応子供の頭には、なのはの財布をすった罰なのか大きなたんこぶができていた。

 

 

「‥‥銀さんとりあえずパフェ食べるのをやめようか?」

 

と見かねたなのはが銀時からパフェを没収して、

 

「君は子供だけど、わかっているよね?スリはれっきとした犯罪だよ」

 

「‥‥」

 

なのはは、子供にやさしくスリは犯罪なのだと優しく諭す。

 

「君はどうして犯罪をしてもお金が欲しかったの?」

 

そして、お金が必要だった理由を尋ねる。

すると子供はしらを切ったかのように、

 

「あぁ、そうだよ!!金が欲しいから吸ったんだよ!」

 

物凄く大きな態度の少年。

 

「あんたの事はよく知っている!俺のような貧乏人にも名前ぐらい知る有名人だからな!そんなやつにわかるのか!?その日、その日を生きていくのに精一杯の俺達の様な貧乏人の気持ちがな!!」

 

子供は真剣な表情で怒鳴り散らした。周りの人もびっくりした顔でこちらを見ていた。

 

この言葉になのはは何を言えばいいかわからないただ説教するにもこの子にはまだ届かない。

それはなのは自身が、この子の様な貧困生活を体験していないからだ。

小、中は私立の学校へ行き、管理局に就職した現在もそれなりの給料とボーナスを貰っている。

そんな自分が此処でこの子に何かを言ってもこの子にとっては、ただの皮肉にしか聞こえないからだ。

そんな時、

 

「はは、確かにな‥‥」

 

銀時が子供の意見に同調するような口ぶりで言った。

 

「確かにエリート公務員様には貧乏人の気持ちはわかんねぇかもしれねぇな」

 

「‥‥」

 

銀時の言葉に今度は、なのはが俯き子供は驚いた表情で銀時を見た。

 

「だけどな、こいつは、今はわかんねぇかもしれねえが、お前の為にわかろうとしてるぜ」

 

ここから銀時は何時もの顔ではなく真剣な表情となり、

 

「いいかボウズよく覚えとけ、この世に楽だけで生きている奴なんていねぇんだ、全員何かしら背負っている。それをわからずに自分だけ『不幸だ』なんて言うんじゃ男が下がるぜ。」

 

銀時の迫力に子供はビビった。

だが、

 

「俺はボウズじゃない!!俺にはちゃんとしたダイゴって名前があるんだ!!よく覚えておけ!!」

 

虚勢せいかもしれないが、ダイゴは精一杯の声で銀時となのはに自分の名を名乗った。

 

「そいつはすまねぇな。で、ダイゴ。お前は何の為になのはから財布をすった?生き抜く為...の他にあるじゃねぇのか?」

 

「...妹もいるんだ.....だから自分はどうなってもあいつは...」

 

「親は?」

 

なのはがダイゴの両親についてきいた。

 

「母ちゃんは死んだ。父ちゃんはどこに行ったかわかんねぇ。」

 

ダイゴは泣きそうな表情で答えた。

 

「教会の孤児院には行かないの?」

 

なのはは優しげな瞳でダイゴを見た。

 

「...父ちゃんはろくでなしで犯罪者何だ。母ちゃんは父ちゃんに捨てられて...それでも俺達を捨てずにいてくれて去年過労で.....」

 

ついにダイゴの瞳から涙がこぼれ落ちた。

 

「あんなでも...妹はまだ父ちゃんを信じてんだ!だから見つけて家族3人で...住みてぇんだ。教会に...行くと情報が入りにくいから.....」

 

「そうか、なら協力してやる。」 

 

銀時が立ち上がり

 

「え?」

 

「俺は此処以外にもな、万事屋って言う頼まれれば何でもする商売してんだ。とりあえずなのはの財布分の金で動いてやる。父ちゃん見つけてしっかりとした大人になったらちょくちょく払いに来いよ。」銀時はダイゴの頭を撫で親のような表情をした。

 

「あ、ありがと...ありがとうございます。」

 

泣き始めそして目を擦りながら感謝し続けた。犯罪を犯したのに全く見ず知らずなのに助けになってくれたから...

 

「ならこれからの予定決まったね。」

 

となのはも立ち上がり、

 

「ん?いいのか?せっかくの休日なんだ。コイツの依頼ぐらい俺だけでも‥‥」

 

というがなのはは、

 

「冗談言わないで!こんな子供をほっといて休暇なんて楽しめないよ。それに私自身この子達の助けになりたいし。」

 

「う、うえぇぇぇぇぇんありがとう、ありがとうございます。ほんとに」

 

とりあえず、ここはファミレスの中なので、銀時となのはは、ダイゴを泣き止ませて、

彼と彼の妹が住む場所へと向かった。

 

 

~side裏町~

 

「おい、ミチル、ミチル!」

 

土管が多くそこにビニールシートやロープ等で作られた小学生が山の中や森の中に作る秘密基地みたいな所だった。

 

「よくこんなもん作れたな、」

 

銀時はダイゴの家を見て感心する。

 

「これぐらいはできる昔からよくやってたんだ、」

 

とダイゴは自慢げに語った。

そして

 

「あぁ!お兄ちゃん!!おかえりなさい!!」

 

と中から小さな女の子が出て来てダイゴを抱きしめた。

 

「ただいま、ミチル」

 

ミチルと呼ばれた少女黒い髪で朝の髪飾りが怪しく輝いていた。

 

「あれ?お客さん。.....あぁ!!エースのお姉さん!!よくいろんなところで見る!」

 

となのはを見て声を上げる。

 

「ありがとう」

 

となのはは優しく微笑んだ。

 

「少し食べ物買ったんだ。食べる?」

 

「ほんとにありがとう!!」

 

なのははミチルの頭を撫で、

 

「おい、もしかしてなのはをターゲットにしたのって...」

 

「ミチルがあいつを好きなのは全然知らなかった。」

 

そしてミチルが食べ物の用意をしている中、銀時、なのは、ダイゴの三人は外で話し合っていた。

 

「さて‥‥どうすっか?」

 

いきなりノープランの銀時。

 

「とりあえず、私がフェイトちゃん達に連絡を入れるよ。少なくとも犯罪者なら管理局のメインバンクに情報とかがあるかもしれないし‥‥」

 

「.....ドルゴ、ドルゴ・カールベルト。エースの姉ちゃんは父ちゃんを...」

 

「見つけたら、とりあえず逮捕はするよ、でもミチルちゃんに少し面会をさせるつもりだよ。ミチルちゃんにはちゃんとしたお父さんでいてほしいもんね。」

 

なのはが言うと

 

「あいつが改心しているとは思えないが、ミチルは父ちゃんを信じているからな。あったこともないし演技でも...」

 

「それは見つけてから言おう、まずはなのはがフェイトに連絡。俺は不良の溜まり場当たり探すさ。少なくともなのはの頭に引っかからないってことはそこまですげぇ犯罪者じゃねえしな。」

 

銀時はなのはが覚えていないような犯罪者なら、どうせ万引きか食い逃げとかの軽犯罪のコソ泥レベルの小物だろうと思っていた。

 

「わかった。」

 

となのはは離れてフェイトに連絡を入れた。

 

「俺はあんたについていく」

 

ダイゴが銀時について行くと言い張った。

 

「いいのか?俺の方は危険だぞ?それでも来るのか?」

 

銀時はダイゴの目をジッと見つめる。

 

「当たり前だ!!これは俺の...俺達の問題だ、俺が行かないでどうすんだ!!」

 

とダイゴも銀時の目を見て言う。

 

「ふっ、なのは、こいつは俺の所について行かす。妹の方は...」

 

「わかっているよ。私が一緒にいるから。」

 

そして銀時はダイゴを連れて走っていった。

 

「さてと、それじゃあフェイトちゃんに連絡入れよっと‥‥もしもし、フェイトちゃん?」

 

なのはは携帯でフェイトに呼びかけた。

 

「あれ?なのは?どうしたの?休暇は楽しんでいる?」

 

「あっ、うん‥‥ただ、少し調べて欲しいことがあるの」

 

「何?まさか問題が起きたの?」

 

「そこまでの事じゃないよ。ただ...ね‥‥」

 

「わかったよ。なのは」

 

とフェイトに調べて欲しい人物の名前をつげて、なのはは携帯を切った。

 

 

 

~sideフェイト~

 

なのはの連絡を受けてフェイトは

 

「もしもし、ゲンヤ部隊長ですか?」

 

108部隊のゲンヤと連絡をとった。

 

「ん?ハラオウンの嬢ちゃんか?どうした?」

 

「少しゲンヤ部隊長にお願いがありまして...」

 

「なんだ?言ってみろ」

 

「ドルコ・カールベルトと言う人物を調べるのに協力を要請したいのですが...」

 

「...嬢ちゃん。何でその名前を知ってるんだ?...そいつは今少し問題がある奴なんだが...」

 

「問題?」

 

「そいつの関わった組織が少し問題でな...... 」

 

「えっ?」

 

フェイトはゲンヤからの説明を聞き、目を見開いた。

 

 

~sideなのは~

 

「エースのお姉さん。ほかの人達は?」

 

ミチルは銀時やお兄さんがいないことに気がついた。

 

「少しどこかに行くって」

 

「そうですか」

 

ショボンとしてそして

 

「ならご飯はお預けですね。.....エースのお姉さん。お話して!!私いつかお姉さん見たいになりたい!!」

 

「ありがとう、そっか私が目標か...」

 

なのはは自分の弟子のスバルを思い出していた。

 

「じゃあね...」

となのはは今まで会ってきた人達やちょっとした悲しい戦いミチルはまるで絵本を読んでもらっている感じだった。

なのはがこれまで体験してきた戦いはミチルにとっては夢物語に近い

 

「そう言えばお姉さんにとってあの男の人って何ですか?」

 

「銀さんの事?」

 

「はい、あの銀色のおじさんはもしかしてお姉さんの彼氏とか何ですか?」

 

この言葉になのはは赤くなり、

 

「違うよ、お友達なのは変わらないけど...そこまでじゃないよ」

 

「そうなんですか?お似合いだと思いました~...私はママとパパが一緒にいる所は見た事が無いんですけど、それでもお似合いだと思いまししたよ。」

 

ミチルは曇り無き笑でなのはを見た。

 

「そっか‥ありがとう。」

 

とミチルをなでた言い方が悪いかもしれないが子供の言ったことをあまり間に受けずになのはは返した。

なのはは今の所、銀時に対して1人の男性と言うそこまでの感情を抱いてなかった。

 

「っ‥‥ミチルちゃん、少し此処で待っていて。」

 

なのはは外に多くの人の気配を感じた。

 

そして外に出すと其処には数十人の黒服に黒メガネをかけた怪しい男達がいた。

 

「何か用かな?」

 

なのはは固い表情で男達に此処に何の用で来たのかを尋ねる。

 

「ミチル・カールベルトに用がある。」

 

「ミチルちゃんに?」

 

「そうだ。俺達はそいつの親父の借金の肩代わりにそれを連れていく。」

 

「そんなことやらせないよ!」

なのははバリアジャケットを展開する。

 

「むっ!?その姿は‥‥成程、管理局のエースか‥‥お前自身も高く売れそうだ。」

 

相手が管理局のエースだと言うのに黒服の男達は驚く様子もなく、冷静にしている。

その様子からこの男達もプロなのだろう。

 

(ここじゃあの子に被害が行く...かと言ってこの人達が素直に場所を変えてくれるかどうか...)

 

なのはの得意の砲撃魔法はミチルにまで被害がいきかねない。

 

「どうした?来ないならこっちから.....」

 

と黒服達もデバイスを出して斧やら刀やら銃なんて者もいた。

 

斧を振りかざす男をなのははレイジングハートでガードして斧を弾き腹に一発入れ魔法弾で吹き飛ばした。

 

「「ウオォォ!!」」

 

刀で左右から斬りつけてきたので空に飛んでかわした。

 

「アクセルシューター...」

 

と魔法弾を生成していると狙撃をしてきた。

 

「どうした?管理局のエース・オブ・エースと言えば砲撃だろう?何でしてこない?」

 

男達はニヤニヤとした顔でなのはを見る。

なのはは周りを気にして本気を出せない。そして不運な事に外の騒がしさに不自然を感じたのかミチルが出てきた。

 

「ダメ!出てきちゃ!!」

 

「お姉さん?」

 

もう遅いこの人達はプロだった。目標が出てきたので速やかに標的を変えた。

 

狙撃をしてきた人がミチルを見るとミチルの元に走り出した。なのはもそれを阻止しようとするが、

 

「ショートバーー」

 

「焦ったな。今...」

 

「え?うっ‥‥」

 

此処でなのはの意識は途切れてしまった。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的28 会いたくないやつにあったらとりあえず顔だけは笑顔

更新です。


~side銀時~

 

スラム街っぽい所に足を運んだ銀時とダイゴの2人。

 

「おい」

 

そこで、銀時は近くにいたゴロツキに声をかけた。

 

「あぁん!てめぇ何もんだガキ連れてこんな所に何しに来やがった!!」

 

そこにはいかにもワルですみたいな格好の青年達が溜まっていた。

銀時が声をかけるとガラの悪い青年は銀時を睨みつけてくる。

 

「ドルゴ・カールベルトって男を探してんだ。少しでもいいからソイツの事、知らねぇか?」

 

しかし、銀時は全く動じない。

 

「知っていても教えねぇよ。まっ、財布を置いて行ってくれるなら別だけどな」

 

その言葉から下品な笑い声が響いた。

 

「すまねぇな、財布はいつも空なんだ。あんま目立つ事したくねぇ...」

 

「金がねぇんなら話になんねぇな!帰れや!!天パのオッサン!!」

 

この言葉に銀時が反応した。銀時に天パはタブーだ。

銀時は少し歩いて近くの土管に行くと洞爺湖を上げ振り下ろすと、

 

ズガーン!!

 

不良達はこれに驚いた。なんの手品も魔力も無くただの馬鹿力のみで破壊したからだ。

しかも木刀で‥‥

 

「あと二つ言いか?一つは俺の質問に答えるか答えないか、そして人のコンプレックスを簡単に言ってんじゃねえぞ!クソガキ共がぁ!!」

 

因みにこの時ダイゴもいたのだが土管の時になんて人を標的にしたのだろうと思った。

もし、あの時なのはではなく、銀時の財布をすっていたらと思うと、空の財布をすった挙句、自分もあの木刀でのされていたかもしれなかった。

それではあまりにも割に合わない結果だった。

 

「ドルゴ・カールベルトですね、聞いた事有ります。確か結構やばい奴隷商会に属していたんです。今は知らないですがちょくちょく商品にも手を出していたとか」

 

「そうそう」

 

ガラの悪い青年らは銀時のこの行動を見て態度を180度変えて、ドルゴ・カールベルトの事をペラペラと話す。

この答えにダイゴは、

 

「くっ、あのヤロウ‥‥やっぱり‥‥」

 

歯を噛み締めては震えていた。その時

 

「あれもしかして旦那?」

 

気の抜けた声をかけられた。

そしてそこに居たのは見たくもないし、会いたくもなかったあの不良警察の中のドS野郎の...

 

ヒューん

 

ドーン

 

土煙が立ち込めた沖田を確認するや間髪入れずに飛び蹴りが飛んだ。

 

「おっと、危ねぇじゃないですか旦那ぁ~」

 

ヒョイとかわして何時ものペースで話す沖田。

銀時としては何故、異世界であるミッドチルダに沖田が居るのか分からなかったが、一つ言えるのは異世界に来てまで会いたくない奴に出会ってしまった。

それだけだった。

 

「いや~ごめんごめん、何でこんな所にいるのかな?沖田君」

 

(なんでこのドS不良警官が居るんだよ。コイツが居るって事は、ゴリラとニコチンマヨラーも居るんじゃねぇだろうな‥‥)

 

表面上の表情は笑みを浮かべているが、心の中では苦虫を噛み潰したような顔をしている銀時であった。

 

「そのセリフそのままバットで打ち返しますよ」

 

「そのセリフをまたバットで」

 

「そのセリフを「もういい、しつこい!!」」

 

永遠と無限ループする会話を半ば強引に止めたダイゴ。

 

「俺は仕事ですよ、しっかりとバカが馬鹿しないようにとしたらお仕置きしねぇといけねぇですし。」

 

「次元超えてお役所仕事か、精が出んな」

 

「旦那程じゃありやせんよ。で、どうしたんですかそいつ?」

 

と沖田はダイゴを指さした。

 

「身寄りのないガキだよ。とりあえず親父探してんの」

 

「こんな所でもそう言う仕事ですかい?」

 

と少し笑い、

 

「おい、今馬鹿にしなかった」

 

と言うと首を振る。

 

「ま、どうでもいい事ですがこの所、子供の誘拐が目に余っていましてね...あんたらが探している奴かは知りやせんが...それとさっきあっちの方で戦闘音みたいな音がしてやしたよ」

 

と指さす方向はダイゴの家の方だ。

 

「な!?」

 

銀時はすぐに走り出した

 

「それとその商会最近また活動を始めたとか」

 

すれ違いざまに沖田が告げた。

 

 

~sideダイゴとミチルの家~

 

銀時とダイゴが着いた時にはもう遅しで‥‥

 

「ミチル...ミチルーーーー!!」

 

「なのはーー!!」

 

両者叫ぶが返答はないし、なのはとミチルの姿も見当たらない。

余り戦闘痕はないがちょっとした変化はあった。

 

「くそ!くそ!」

 

悔しさのあまり地面を叩きまくるダイゴ

 

「ん?あれは‥‥」

 

銀時が見つけたのはなのはの携帯だった。

そして着信が来ていた。

 

ピッ

 

「あっ、なのは!」

 

電話の相手はフェイトだった。

 

「いや、俺だ。」

 

「銀時!?なのははどうしたの?やっと出たと思ったら」

 

「フェイト、なのはに何があったかは俺も知らねぇがすまねぇ。どうも、なのはは攫われちまったみたいだ」

 

「えっ!?なのはが!?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

この言葉にフェイトは今の状況を理解した。そして親友を心配する前にまずは...

 

「銀時、なのはに調べてって頼まれたの、これが少しでもいい状況に転ばれば...ドルゴ・カールベルト自身はそこまでの大物じゃないでもその人が所属している組織が‥‥」

 

「有名な奴隷犯罪者だろ。それは俺も知っている」

 

「どうやって調べたの!?」

 

「そんな事より、それがどこら辺で活動しているかわかるか?」

 

「それは複数の可能性があるの。しかも決定打にかける」

 

「そういう時は場所を絞る。ダイゴここの住所は?」

 

と此処でダイゴに振った。

 

「ミッドチルダ、クラナガン南西地区の第4番地区‥‥」

 

「聞いていたか?」

 

「うん、なら銀時は」

 

とそこからフェイトの指示が入った。

 

 

~sideなのは~

 

日も差し込まない位に広い部屋の床になのはは倒れていたが、

 

「うっ、ウ~ン」

 

目を覚ました。

 

「う、う~...ここは...」

 

なのはの近くにミチルは居た。

ミチルは無事だが自分の方はバリアジャケットのままなのにうまく魔力が練れない。

辺りにはAMFが張られているみたいだ。

 

「え?」

 

「目が覚めたかね?」

 

そこに第三者の声がした。

 

「ここはどこなの?」

 

なのはが警戒しつつその人物に此処が何処なのかを尋ねる。

 

「此処はただの廃墟さ高町なのは」

 

と第三者の人物は此処が何処なのかを説明する。

 

「そして私が「あ、ミチルちゃん!」」

 

自分の隣で縛られているミチルに声をかけた

 

「あの、ちょっと私がーー」

 

また話を遮られて、

 

「起きたか、丁度いい。」

 

「ちょ!先生まで私にも名乗らせて!!」

 

「先生?」

 

「そうだこの方は伝説の殺し屋コードネームシノビ」

 

自分の自己紹介はできないが新たに現れたもう1人人物の紹介はできた。

 

「シノビ...聞いたことがある、管理局の手練れの魔導師や沢山の権力者を殺したっていうでもそれ自体昔の話よ!私自身リンディさんに聞いた程度しか‥‥」

 

リンディ・ハラオウン...管理局員で六課の後継人の1人であり、そしてフェイトの養母でもある。

 

「それは親父だ。おれは名前だけ借りてんだ。それよりお前、今魔法使えねぇだろ?何でだと思う?」

 

「...」

 

「お前を眠らせた時に使用したこの薬、これには魔力と言うよりリンカーコアに麻酔と似た影響を与えてんだ。」

 

「‥‥」

 

てっきりAMFだと思っていたら、別の手段でなのはは魔力を封じられていた。

 

なのはの魔力を封じたタネを言うと此処で何故か少し席を離した。誰かに連絡を入れている様子。

 

「いや~それにしてもいい女だ。少し胸が足りねぇがまた~」

 

と下劣な目でなのはを見ている。

 

「貴方、何でミチルちゃんを狙うの?」

 

「なぜって、そりゃこいつの親父の借金の肩代わりにだな。」

 

「借金‥‥それってどれ位の...」

 

「さぁな」

 

「ふざけてるの!」

 

相手の態度に怒りを向けたなのは。

 

「ふざけてねぇさ、こいつの親父はな、商品を幾つか勝手に持ち去って逃げたんだよ。それの一つにこいつの母親役がいたんだこいつの髪飾りもそうさ、これにも数百万と言う金が発生すんだから」

 

とこいつの見る目は人を見る目ではなかった、本当に物を見ている目だった。

ただ一ついい情報を得たこの子達の親についての‥‥

そしてミチルの目から少し涙がたれていた。その涙は恐怖の涙ではない嬉し涙だった。ミチルは知っていたのだだけど知らないふりをしていたそれは母親が常に言っていたからだ。父さんを恨まないでと

 

だがそんな気も知らないで、

 

「さて、返してもらおうかこの髪飾り」

 

とミチルから強引に髪飾りを奪う。

 

「やめて痛い!」

 

「こんな事で痛がってちゃダメだよ~ミチルちゃん、君はこれからいろんな人の相手をしてもらうんだから~」

 

と臭い息をふきかける。

 

「さいてーね。」

 

「?」

 

「最低よ、貴方、人を物としか見ないその態度、お金にしか目がないその心!!貴方は本当に「ドカ!」」

 

「お姉さん!!」

 

顔を殴られたなのはの今の状態は柱体をロープでぐるぐる巻の状態なので何も出来ない。

ただ、相手を睨む事しか出来ない。

 

「あん、言わせておけば、図に乗るなよこのアマぁ!!商品であるお前達、魔導師は魔法がなければなんの価値も残んないのさ、覚えておけ!!お前を商品にする男の名を「ヒュン!」」

 

ストン!

 

ツー

 

男のそしてなのはの横にはクナイが刺さっていた。

 

「なんつった?それをお前の商品にする、少し話が違うんじゃないのか?」

 

シノビは戻ってきた。

 

「冗談ですよ~先生、ほら私まだ自己紹介してないしできるだけかっこよくしたいなと思って、」

 

「それならいいが、さてと‥ん?何がおかしい?」

 

自分がピンチである筈なのに、なのはは怖がるどころか笑っている。

 

「ふふ、私達に『魔法が無ければ何も無い』って?‥‥あるよ、魔法より凄いものが‥‥」

 

「あん?」

 

「何負け惜しみを言ってんだ?この女?」

 

「とうとう、頭がおかしくなっちまったか?」

 

なのはの言葉の意味を理解していないのか、男達は首を傾げる。

その時、

 

ズドーン!

 

突然、爆発音が響いた。

 

「な、何だ!?」

 

「た、大変だ、襲撃だ!グホォ」

 

何が起こったのかを知らせに来た仲間が突然倒れた。

 

「おい、どうした!?」

 

すると倒れた仲間の後ろには、

 

「どうもーデリバリー地獄(ヘル)の坂田銀時で~す。」

白銀の髪を煌めかせ紅く鋭い眼光が緊張を張り巡らせるその緊張を切るかのようなのんびりとした声だがそこにいるだけで鳥肌の立つ殺気を放つ

 

 

白夜叉見参!!

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的29 親の心子知らず

更新です。


 

 

 

「よぅ、元気か?なのは」

 

「ミチル何もされてねぇよな!」

 

銀時の後ろをついてきたダイゴ。

 

「『元気か?』じゃないよ!遅いよ!!」

 

「大丈夫だよ」

 

なのはは銀時に声を荒らげるが、ミチルはダイゴを心配させまいと静かに答えた。

 

「そいつはすまねぇな。デートは30分前に行くのが流儀なんだが」

 

「な、何だ!?お前は?」

 

男達が怯えた顔で銀時に問う。

 

「何だ?お前は?てか、お前こそ誰だ?」

 

と銀時は怪訝な顔で男達に問う。

 

「私、私は「銀さん後ろ!?」」

 

なのはが叫ぶと同時に銀時は少し左に移動して洞爺湖の柄でクナイを止めた。

 

「ほう」

 

「おいおい、物騒だな~まだ自己紹介の途中だろう。」

 

「別にいらねぇだろ。お前は俺の名前知りたいのか?」

 

「.....全然」

 

「ならいいだろ。」

 

シノビは地面を蹴り銀時に突進してクナイで一刺ししようとしてきた。だが銀時はそれを当然のようによけカウンターを入れようとするがもう片方の手にクナイを持ちそれを止めた。

 

「ミチルーー!!」

 

「お、お兄ちゃん。」

 

目から涙が出てきたが顔は一瞬で笑顔に戻った。

 

「待っていろ!今...」

 

キーーン!

 

「え?」

 

ダイゴが目をやると銀時とシノビの戦いが激しくなっていた。

 

「ウオォォ!!」

 

この2人の戦いがヒートアップしてきていた。

銀時の斬撃を華麗にかわしていくシノビ。

シノビは防戦一方に見えるが、それは相手そして武器の性質上シノビの武器はクナイで、クナイは拳と同じぐらいの間合いや投擲なら協力な武器である。

だが刀や槍といった。間合いの広い武器相手では不利である。

クナイは基本的に相手の間合いに入り込んで至近距離で刺す。または数があるなら遠くから投げる。

銀時は知り合いに忍者やクナイを使う知り合いが大勢いるので、それを知っている。故に投げようと離れれば詰めて攻め、入り込もうとしても入り込めない環境を作り、攻めて行く。

 

(くっ、こいつ、剣筋が読めない上に速い...速すぎる。!?しまっ!?)

 

シノビの右手のクナイを上に弾き飛ばして、シノビのその横っ腹に一発入れた。

 

ズドーン!

 

「な!?」

 

誘拐犯は口があんぐりと空いた口が塞がらなくなっていた。

 

「ふぅ、」

 

「何てつえぇんだ。」

 

「銀さん。」

一方、銀時の戦いを見てなのは達も驚いていた。

なのはは1度シグナムとの戦いを見ていたがそれも瞬殺劇だった為にしっかりと見ていない。

だが、その銀時はシノビからまだ目を離さなかった。

 

「銀さーー」

 

ヒューん!

 

キン!

 

飛んできたクナイを弾いた‥‥だが、

 

ビヒューン

 

ブシャ

 

銀時の左肩から突如、血がふきだした。

 

「っ!?」

 

「なっ、クナイは弾いたんじゃねぇのか!?」

 

「あれは、クナイで出来た傷じゃない。」

 

「久しぶりだ。実に久しぶりだ‥‥魔力を使うのは‥‥」

 

シノビは底冷えする様な不気味で冷たい声をはく。

 

ゴゴゴ‥‥

 

なのはの肌は震えた。シノビのその魔力を感じて‥‥

その事から、シノビの魔力がとてつもなく強力で強大なモノだと肌で感じた。

 

(何て魔力、まさか今までリミッターで抑えていたの...?)

 

ミチルとダイゴもシノビの魔力に当てられて、冷や汗が流れていた。

 

「ダイゴ、妹を連れてはやく逃げろ。」

 

「な、あんた、まさかーー」

 

「自分を犠牲に逃がすつもりか。」

シノビは呆れた表情で銀時を見た。折角魔力を出して本気で殺れると思ったのに、自分が負けると自信喪失したように見えたからだ。だが‥‥

 

「そんなんじゃねぇよ。...CM後のBパートからは加減できそうにねぇんでな。」

 

洞爺湖を構え直して、

 

「こっからはR18指定タイムだ。そこの豚とお前をボコボコにしてやるよ。」

 

シノビの口角は少し上がる。

 

「何だろうな。お前からあのホラ吹きと似た感じがする。」

 

右手のクナイを前に左手を後ろに下げた。

 

シュン、

 

(((消えた!?)))

 

シノビの姿が消えた。全員の目からそう見えた。

ひとりを除いて...

 

グワァーン!!

 

激しく風が吹く。二人の獲物がぶつかる衝撃は子供たちには目を開くのがやっとだ。

 

今度は銀時が守りに入っていた。洞爺湖を使わずにかわす体制になっていた。

その理由は‥‥

 

「く、」

 

銀時の頬が少し切れた。

 

「また、武器には当たってないのに‥‥どうして?」

 

「ほら、どうした?防戦一方だな?」

 

シノビの猛攻は止まることなかった。シノビの攻撃は急所をつく攻撃ばかり。流石は暗殺で名がしれただけはある。

だからこそ銀時には読みやすかった。攻めないのはこうげきできないからじゃない。

 

ガシッ、

ブシュ。

 

銀時はシノビのクナイを手でそのまま止めた。

 

「な!?お前...」

 

「言っただろう。こっからはR18指定タイムだって。」

 

そのままシノビの右手を自分の方に引っ張りすぐに手首を掴んで。

 

「ぐっ!」

 

握りしめる勢いで手に力を入れて、

 

カラン

 

クナイを離してしまった。

 

「つーかまえた。」

 

銀時がそう言うとまずは左肩からそして腰最後に突きを入れようとしたが

 

「図に乗るな!」

 

魔法陣が浮かんで

 

「暴風圧!」

 

風の塊が銀時に襲いかかる。

 

「ぐ、ぐわぁぁ」

 

手を離してしまい後ろに吹っ飛んだ。

 

ズガァーン!

 

壁を壊して隣のビルまで吹っ飛んだ。

 

「銀さーーん!!」

 

「風魔手裏剣。」

目に見えたのは手のサイズほど気流が少し歪んでいた。さっきのは、これだった。空いた壁に投げこむ。

 

 

「くそ、早くほどけろ。」

 

ダイゴは、なのはを縛っている縄を外そうとするが変な結びのためになかなか解けない。

 

「お兄ちゃん、早くしないとあのお兄さんが!」

 

「わかっている...」

 

「ダイゴ君、私より今はミチルちゃんを」

 

「...今あの人を助けられのはあんただけだろ、あんたしかこの状況だはできねぇじゃねぇかよ!」

 

「ダイゴ君」

 

「無駄無駄、そいつは今魔力を出せないのさ。」

 

「は、」

 

「そいつの魔力は今薬で抑えられてんのさ。」

 

「なんだって、」

 

「わかったら大人しく、お前も捕まれ、男だろうがその歳だ、なんでもスポンジのように吸い込んでくれんだろう。それに世の中には男の子にしか欲情出来ない変態もいるんでな‥‥」

 

とダイゴの方に近寄って来たが、

 

ドン!

 

なのはは縛られた状態から足で鳩尾に一発蹴りを入れた。

 

「魔力なくてもこれぐらいできるよ。」

ドサッ

一発KO

カンカン!

 

 

「これ、多分何か特殊なものなのかも」

なのはが自分を縛っているものを分析していた。形状から見てバインドではないまず魔力を全く感じないしだからといって言ってこの包帯みたいなものは何なんだろうか?

 

 

~side銀時~

 

「~~つつ...!?」

 

何かが飛んでくる見えはしないが音はした為に洞爺湖で弾かずにその場を離れた。

二つ飛んできたがそれ以上の追撃はない

そしてとりあえず距離を見た。

 

(これ位なら行けるか)

 

そう思ってから少し下がると猛ダッシュしてジャンプしたそこから窓にライダーキックをして突入した。

 

パリーン

 

なのは達は音がした方を見ると、

 

「よかった、無事だった。」

 

安堵の表情をしてシノビは、

 

「凄いな、これでも死なないのか...」

 

銀時の生命力に感心した。

 

「は、これぐらいでくたばるかよ。でお前の目的は何なんだ、いつの間にやられてんのか知らねぇがそこのモブの手下ではないしそれにお前...」

 

「別にそこまでの目的はないが...そうだな強いてゆうなら面白いからだな。あそこのモブのような小さい事で威張るより、あそこのガキ共の親のようにやるのも面白そうだからな。」

 

とミチルとダイゴを指差す。

 

「お前!父ちゃんを知っているのか!!」

 

「あぁ、モブが吠えていた、しそれにお前の親父にも聞いた。お前の親父は裏で拾われ裏を生きてきた。犯罪は生きる為に当たり前、そんな考えを壊したのがお前の母親だ。お前の親父は母親に会ってからだ。奴隷を逃がしたりしたのはそして最後はそいつと駆け落ち、いろんな骨董品をとったのは生活費を稼ぐため...」

この話を聞いたダイゴは驚いた表情をした。自分はずっと親父は碌でもない奴と思っていたからだ。

 

「う、嘘だ...」

 

「ほんとさ、だから面白い、人との出会いが人を変えるその面白さを俺も体験しているからわかるんだよ。...あっ、そう言えばお前達に遺言があったな‥‥」

 

「ちょっと待て、遺言って...」

 

「そんなもの決まってるだろ、お前の親父はもう死んだんだよ、今頃は海の藻屑じゃないのか?」

 

「.......」

 

「お前達の遺言は『しっかりと生きろ』だ。死にゆくヤツに言われたく無いだろうが」

 

シノビは別に笑ってもなくそして悲しんでもなくただ無表情だ。

 

「おい、」

振り向きざまにすぐそこに銀時がいた。

 

「ん?」

ズガーン!

 

洞爺湖を振り下ろす。

 

「こいつらの親父の事を教えてくれた事は感謝するが俺の質問に答えてねぇぞ。何であれに従って妹となのはを拉致したかって聞いてんだ。」

 

「言っただろう?面白いからだ。」

 

ガン!バン!

 

銀時の追撃をかわしていく。

 

「てめぇの都合で、こいつらをきずつけてんじゃねぇ!!。」

 

グググ

 

「何で.....」

 

と、スタ

 

シノビは後ろに下がり手袋をとり手にまいていた包帯を伸ばして

 

キュルルル

 

「ん!?」

 

すれ違いざまに包帯で柱にくぐりつけた

 

きゅ!

 

「グググ」

 

銀時は抜け出そうと必死に前に行ったが、

 

「そいつは特殊加工でな、刃物にはめっぽう弱いが力にはとてつもなく強いんだ。...今度は俺からの質問だ。」

 

「何で戦う。お前はそこまで何の為に?」

 

「ふ、決まってんだろ、守る為だ。」

 

「今日知り合ったガキの命をかけて守るほどの価値があるのか?」

 

「時間なんて関係ねぇよ。そいつは俺の依頼人だからだ。.....ダイゴは妹を守りたい。ミチルは親父の尊厳を守りたい。俺はその想いを守るだけだ!!侍が動くのにこれ以上の理由がいるのかよ。」

 

「...つまらんな、買いかぶりすぎたようだ結局お前みたいなのは人の為に死ぬ口だろ。なら今死ぬが良い!」

 

シノビはクナイを銀時の口に向かって投げようとする。

 

「やめ、やめてくれよ」

 

か細い声でダイゴが声を出す。

 

「さらばだ!白夜叉!!」

ダイゴの声は聞こえず無感情にもそのまま投げた。

投げたクナイは銀時の顔に飛んでいき

 

キン!

 

つぅー

 

口から赤い液体が流れた。

 

「ぎ、銀...さん」

 

なのはも絶望した顔をした。

ミチルは声も出ないぐらいになっていた。

ダイゴも目を瞑り悔しそうに地面を叩く

 

だが、

それは次の瞬間希望に変わった。

 

グワァキン!

 

「おい、」

 

「は?」

 

見るとペッと口から鉄を吐き捨てた銀時。何と銀時はクナイを口で受け止めてそのまま噛み砕いた。

 

「はぁぁ!!」

 

なのは達は驚く。

あれを口で受け止めそのまま噛み砕くという神業をしでかしたのと生けていた安堵感で。

 

「おれの話はまだあるぜ。」

 

グググ‥‥

 

ビリ!

 

ビチ!ビチビチ!

 

「な!?」

 

「てめぇ、そのホラ吹きに伝えときな。」

 

走り出して、

 

「シコシコ仕込まずに堂々と来やがれコノヤロー!!」

 

グワァーン!!

 

ドーン!

 

パリーン!

 

シノビはそのまま窓の外へと放り出された。

 

その後、108部隊が来た。

 

「てんめぇ!ずっと外にいたんたら突入しやがれ!」

 

「いや、突入しようにも旦那のせいでタイミング失ったんですよ。」

 

沖田は悪びれる様子もなく言い放つ。

 

「ま、こっちはあんたらの要請で調べた様なもんだし、こっちの情報提供料としてそこのモブ共の首でwinwinという事で」

 

「おい、全然んな気しねぇぞ。」

 

と沖田と言い争いをしていた。

なのははダイゴとミチルといた。

 

「.....ミチルちゃんごめんね、わたしがもっとしっかりしとけば...こんな怖い思いは...」

 

だが、

 

「うんうん、そんな事ないです。お姉さんは私に怖い思いしないように居てくれた。それだけで.....」

 

「俺からもすまねぇな、」

 

「「え?」」

 

今度は銀時がいつの間にかダイゴとミチルの傍にいた。

 

「親父に会わせてやれなくて...」

 

銀時は頭を下げた。

 

「お前達は今回の事で大き傷を被っただけど...これだけは思っといてくれよ。お前達の親父は誇りに持てるかっこいい親父だ。そいつを失ったがお前達には支えて支えれる関係がまだある...妹には兄が兄には妹がいる。これからもこの血縁(繋がり)を大事にな.....」

2人はお互いを見合った。

銀時は立ち上がりボソッと

 

「出来ることなら欲しかったよ。俺もその血縁(繋がり)を...」

 

やがて、108部隊が駆けつけた後に救護班が来て

 

「ほら、銀さんも行かないと」

血まみれでいつもの着物もだいぶ汚れてる。

 

「んあ、別に大丈夫だよ、お前こそ行かなくていいの」

 

「?何で私が」

 

「お前、掴まっている時、ピ―――とかピ―――とかやられてないのかよ?」

 

「なっ!?//////」

 

銀時のこの言葉でなのはの顔が一気に赤くなり、

 

「そんなことやられてないよ!!」

 

と、真っ向から否定した。

 

「え?そうなのか?お前、お前けっこー可愛いじゃん。アイツら見る目がねぇな‥‥」

 

「え/////」

 

「俺ら男から見たらお前はだいぶ可愛い方だと思うぜ。」

 

「...../////」

 

銀時のベタ褒めでなのはは無言のまま黙り込んでしまった。

 

だけど次の瞬間ソレは怒りに変わった。

 

「まっ、胸はあんま無ェがな。ハハハハハ‥‥」

 

ブチッ!

 

「まぁ、そういうのはあんま気に「ドン!」」

 

と銀時が台詞を全て言い終わる前になのはが銀時に腹パンを決めた。

 

「グボラァ!!」

 

銀時は腹を押さえ込み倒れた。

この攻撃が今日一番のダメージとなったのは誰も思いもしなかった。

 

「あの、なのはさん.....その腕で世界とれる.....ぜ。あう」

昇天。自業自得なり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く」

少し目を背けて夕暮れの具合か少し頬が染まっていた。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的30 里帰りすると我が家が我が家というより親戚の家に感じる

更新です。地球編はとらハ要素を地味に含んでます。


 

 

~sideなのは~

 

この前の事件の当事者のミチルちゃんとダイゴ君はあの後聖王教会系列の孤児院に入ったらしい。

今度お便りや写真とかが来たら嬉しいな。

 

人買い組織の犯人達は検挙した。

あの沖田って人は、一応自分はただ調べたていただけと言って手柄は全部私達に譲るって言っていた。

それと銀さんがふっ飛ばしたシノビって言う犯人はあの後、108部隊の捜査員達が捜索したけどが、結局彼は今も見つからなかったらしい。

また何処かで人攫いでもしていると思うと、早くに捕まえなければ‥‥

 

私はと言うとあの時のあの人の寂しげな瞳が忘れられない。

今まで彼を見てきたが、よく皆と笑っている顔、仕事をめんどくさがってふてくされている顔。

そんな顔だけを見てきたけれど、あんな顔をしたのは初めて見た‥‥。

 

 

 

 

いつか私に話してくれるのかな‥‥?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side聖王教会~

 

ミッドのベルカ地区と呼ばれる土地にある聖王教会。

此処は古代ベルカ時代に実在した聖王オリヴィエ・ゼーゲブレヒトを崇拝する教会で、地球で言うカトリック系のキリスト教に似た宗教の教会である。

そして、今日、六課の部隊長であるはやては此処に呼ばれ、その要件を聞かされた。

 

「ほんまかそれ?カリム」

 

「ええ、貴方達の故郷の地球でロストロギア反応があったの」

 

カリムと呼ばれた女性は聖王教会の騎士であると同時に管理局では少将待遇を持つ人物で、六課の後継人の1人である。

彼女はレアスキル、預言者の著書(プロフェーティン・シュリフテン)と言う予知能力が使え、はやてが六課を立ち上げたのも彼女の予言が関係している。そして彼女とはやてとは8年の付き合いである。

 

「地球には、はやて達の顔見知りも居るしお願いしたいの」

 

「わかったわ、その依頼受けるで、カリム」

 

とはやては意気込む。

 

「ああ、そうだ。それともう1つ‥‥」

 

「ん?何や?」

 

「教会からも助っ人として1人、人材を出すわ...」

 

「ええけど...誰や?シャッハ?それとも教会の騎士さんか?」

 

「ふふ、どうぞ、入ってらっしゃい」

 

「はい!」

 

カリムに促され、部屋に茶髪の少年が入って来た。

しかし、顔立ちは女の子そっくりでいわゆる男の娘と呼ばれる少年だった。

 

「この子が今回、教会からの助っ人の‥‥」

 

「バジリコンです。バジルと呼んでください。お主がカリム殿の言っていた、はやて殿ですね今回はよろしくお願いします!」

 

「お、お主!?」

 

はやてはシグナムでも言わないような口調を吐いた目の前のバシルと言う人物に驚く。

 

「実は拙者、地球の出身者故、今回同郷の方と一緒に仕事が出来、光栄に思に思います。」

 

「拙者って‥‥」

 

一人称の口調は不殺を貫き通した赤毛の十字傷侍に似ていたが、外見はどう見ても日本人ではない。

 

(口調は変やけど、顔はまぁまぁやな、フリルのついた服とか似合いそうや‥‥おっぱいは‥‥あぁ~あかんわ~‥‥小さすぎる‥‥なんや、私のよりも小さいやんけ‥‥ちゅうことは、私はこのバジルちゃんに勝ったわけや!!ヤッタで!!)

 

心の中で、バジルに対して結構失礼な事を考えていたはやてであったが、後に彼女は、滝の様な涙を流す事になるとはまだこの時には知る由もなかった。

 

 

~side六課~

 

「っていう事なんや、次の任務は皆で地球の里帰り~みたいな?」

 

「はやてちゃん、ソレ本当!?」

 

次の任務内容を聞き、なのはが身を乗り出してはやてに尋ねる。

 

「あ、うん、本当や」

 

なのはの態度にちょっと引くはやて。

 

「久しぶりだよね、地球に行くのは‥‥そう言えばツナ達はどうするの?」

 

「う~ん‥ツナ君も銀ちゃん達も行きたいんなら連れていくんやけど、ホームシックとかになるかもしれんしな...。」

 

銀時達の地球の事は新八や神楽から聞いた限り雰囲気は全く違う様だが、ツナ達はほとんど似ている為にホームシックになるかもとはやては心配していた。

 

「まっ、1回聞いてみよか」

 

 

~sideツナ達~

 

「と言う事なんや、どうや。」

 

「面白そうじゃねぇか、」

 

リボーンは乗る気である。

 

「お前達にとってこういう経験はなかなか味わえねぇし、いい機会なんじゃねぇか?」

 

「そうだね、どんな感じか見てみたいしね。」

 

「僕も!面白そうだしね」

 

ツナと炎真は遠足前の小学生のように話していた。

 

「自分は10代目が行くならどこえでもついていきます。」

 

獄寺もこんな事を言ってはいるが少し興味津々な顔でいた。

 

はやてとなのはは念話で

 

(何か反応が...だいぶ楽しそうやな‥‥)

 

(でも、話してよかったね)

 

(う~ん、そや)

 

とここではやてはリボーンに

 

ボソッと耳打ちする。

 

「なぁ、リボーン君?」

 

「何だ?」

 

「大丈夫なん?ツナ君達は私らの故郷見せてホームシックとかになるんじゃ...」

 

「心配いらねぇぞ、ツナと獄寺はこういった経験はあるしな。」

 

ツナと獄寺は異世界の経験はないが未来に行き何度もホームシックになりかけていたためにそれぐらいじゃ動じない。

 

「どうした~皆ではしゃいで遠足前の小学生ですか~?」

 

と銀時達が入ってきた。

 

「あっ、銀さんちょうどいい所に実は次の任務だけど私達の故郷に行こうって話していたの」

 

「ふ~ん、なのは達の故郷ね~」

 

「えっ?それって僕達の地球とは違う世界の地球って事ですよね!?」

 

新八は驚いている感じだが、銀時は別次元の地球には大して興味がない様子。

 

「面白そうアルな!私、行ってみたいアル!!」

 

「まっ、せっかくの里帰りだ。楽しんで来いよ。」

 

「えっ?銀さんは行かないんですか?」

 

新八が銀時は別世界の地球には行かず、留守番をするのかと尋ねる。

 

「あんま興味もねぇしな~俺はここでゆっくりしているよ。」

 

やっぱり別次元の地球には興味がなく、銀時は留守番をすると言う。

 

「えぇ~銀ちゃんも一緒に行くネ」

 

と神楽が銀時の手を掴んで渋ってはいるがなかなか行こうとしない銀時。

そこでなのはが、

 

「そう言えば、私の実家は喫茶店やってるんだよね~。ケーキやシュークリームが美味しかったな~。多分この時期ならいちごパフェが大人気の筈...」

 

となのはがわざとらしく言うと銀時は既に目の前に居なくてツナ達の前にいた。

しかも衣装はいつの間にかいつもの着流しではなく、ワイシャツにネクタイ、スラックスを穿き、白衣を纏い、伊達メガネに咥え煙草の銀八先生スタイルで、後ろに置いてあるホワイトボードには、

 

「いいか!ピクニックじゃねぇんだぞ仕事だからな!!おやつは300円まで、スポーツドリンク類は認めん!!後こういうイベントは前日寝れなくて最悪風邪をこじらせる場合だってあるしっかりと羊が100までに寝るんだいいな!!」

と遠足の三原則的な事を書いて、それを言い何故か横にはリュックがパンパンになって置かれていた。

 

「何でてめぇが仕切ってやがる!坂田!!」

 

獄寺が噛みついてきた。

 

「銀さん...だいぶはしゃいでいますね」

 

「あそこまでいくとみっともないネ」

 

新八と神楽がやれやれといった感じで呆れながら銀時を見ていた。

 

「にゃはは、物凄くきいたね、パフェ」

 

なのはは苦笑しながら、なんとも言えない顔をしていた。

 

 

~side当日~

 

そして、地球への任務当日になりFWメンバーも行きたいと強く志願した(特にスバルが)為になら皆で行こうかとの事になった。

 

「東京か、並盛町じゃないけど...何か懐かしい。」

 

「そうっすね、10代目」

 

ツナと獄寺が話していると、

 

「皆元気かな‥‥」

 

ツナが自分の世界の仲間がどうなのか心配していた。

 

「大丈夫っスよ、直ぐまた皆に会えますって、ここから高町の世界に帰れるって事は俺達の世界も発見されたら帰れますよ。」

 

獄寺がツナにフォローを入れる。

 

「そうだよね」

 

此処で炎真が空気を変えようと、

 

「ところで、ねぇ、銀さん」

 

炎真が銀時に気になった事を尋ねる。

 

「何だ?炎真」

 

「何で目の下に隈があるの?」

 

「ちょっとそこでチンピラに殴られた。」

 

苦しい言い訳をする銀時。彼はまさに遠足前の小学生状態であった。

 

「楽しみで寝られなかったんだな」

 

リボーンがツッコミを入れた。

 

「楽しみだね~ティア。」

 

いつにもましてウキウキ気分のスバル

 

「スバルさんは地球に行くのそんなに楽しみ何ですか?いつも以上に顔に出でいますよ。」

 

新八がミッド育ちのスバルが何故行ったこともない世界に此処までウキウキしているのか不思議だったので、聞いてみた。

 

「私のお父さんの先祖は地球生まれだったんだ。それに、なのはさんの生まれ故郷だから興味があんの。」

 

「そう言えば、スバルさんの苗字は『ナカジマ』ですものね」

 

スバルの解答に納得した新八。

 

「へぇ~知らなかったアル。ティアナとかは違うアルか?」

 

「えぇ私は生まれも育ちもミッドよ‥当然、先祖もね」

 

「それでいつまでここにいるんだ?はやて?」

 

銀時がいつまで此処で突っ立っているのかを尋ねる。

 

「早くパフェ...じゃなくて仕事しねぇとな。」

 

「すっかりパフェ気分やな銀ちゃん...実は今回の任務で1人、協力者が来るからそれが来たら早速出発すんで。」

 

「協力者?」

 

ツナが聞いていた時に、

 

「すいません!遅くなりました。今日はよろしくお願い...し.....」

 

と今来た茶髪の人物を見たツナ達は、

 

「え、まさかバジル君!?」

 

「何でてめぇがこんな所に?」

 

「おぉ!!獄寺殿に沢田殿!それに古里殿にリボーンさんまで、どうしてミッドチルダに?」

 

バジルと言われた人物は、

 

「お前確か、俺達がこの世界に来る前‥‥1ヵ月ぐらい前から行方不明だったはずだぞ。」

 

リボーンがこのミッドに来る前のバジルの事を言う。

 

「え!?それ本当に!!」

 

ツナもまさか自分がこの世界に来る前の1ヵ月前にバジルが行方不明になっていたことは初耳で驚いた。

 

「実は、拙者ある任務の時に紅い光に飲まれてそしてこのミッドチルダに飛ばされたのです。そんな拙者を拾ってくれたのが聖王教会だったんですよ」

 

バジルは自分が行方不明になった経緯を話す。

 

「へぇ~そうだったんだ。でもまた会えるのは嬉しいよ、バジル君!!」

 

「拙者もです!沢田殿!!」

 

ツナとバジルは再会を祝して抱きあう。

 

「ぎ、銀さん‥あの人どう見ても日本人じゃないですよね?」

 

「ああ、しかも一人称が『拙者』‥きっとあれだ、侍の国を勘違いしている外国人に違いない」

 

「可哀想な人アル」

 

「気の毒に‥‥」

 

何故か万事屋一行に同情の眼差しを受けるバジルであった。

 

「ちょいちょい、ツナ君、その人知り合いなん?」

 

はやてがツナにバジルが知り合いなのかを聞いていた。

 

「あっ、はい俺達の世界の友達の」

 

「あっ、申し遅れました。はやて殿とは一度教会で顔合わせをしましたが、改めて‥拙者バジリコンと言うものです。皆さんにはバジルと呼ばれています。」

 

バジルは行儀よくお辞儀をした。

 

「今回は騎士カリム殿が気をきかせて貰い今回皆さんの任務に参加させて貰う次第です。皆さまどうぞよろしくお願い致します!!」

 

 

「「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」」」

 

と今回の任務の助っ人であるバジルの紹介と挨拶が終わった。

 

「あっ、それと、高町殿と坂田殿にお手紙を預かっています。」

 

「うん?」

 

「手紙?」

 

「これを」

 

と一通の封筒を渡した。

それを受け取ったなのはそして覗き込んでいる銀時。

 

「あ!ダイゴ君とミチルちゃん!!」

 

この前とある事件で知り合ったふたりがバジルに手紙を持たせていた。その手紙には一言と写真が入っていた。

 

『何時でも遊びに来いよ!!』

 

「ふ、いい顔してんなあいつら」

 

「よく言っておりますよ、将来はあなた達のようなサムライになりたいって‥‥」

 

「そうか‥‥」

 

銀時は吹っ切れたような表情で手紙を見ていた。

 

 

「いや~それにしても本当に久しぶりだね、バジル君」

 

「はい、沢田殿も息災のご様子でなにより」

 

バジルの紹介後、ツナとバジルは和気藹々と世間話をした。

 

「‥‥」

 

(どうしてなんだろう?ツナの行方不明になっていた友達が見つかったのに、何か素直に喜べない)

 

ただ、2人のその様子を見たフェイトは胸にチクリと小さな痛みと共に言い表せない気持ちが沸き上がってきた。

 

 

~side地球~

 

遂に着いたなのは達の故郷地球

そして‥‥

 

「わぁ~綺麗な所ですね~。」

 

現在はどこかの湖にいた。そこは湖だけではなく周りは緑に覆われていてコテージもあった所謂金持ちの別荘地であった。

 

「ここは?何処ですか?」

 

バジルが聞いた。

 

「此処は私達の親友の別荘だよ。此処を今回は捜査員待機所として貸してくれたの。」

 

となのはは嬉々として語った

 

「すごくお金持ちの友達何ですね。」

 

スバルはずっと周りを見まくっていた。

 

「銀ちゃん、私もこういうとこ住みたいネ。」

 

神楽が目を輝かせて銀時に強請る。

 

「はぁ!? 無理に決まってんでだろう、家の家計は常に火の車なんだからな。」

 

と銀時があっさりと言う。

 

「それはお前がパチンコとかに使うからすぐになくなるネ!ちゃんとお金を貯めるネ!!」

 

「って言うか、僕達の給料さえ、まともに払っていませんよね?」

 

神楽と新八がジト目で銀時を睨む。

 

「いや、お前と定春の食事代でなくなってんの。」

 

どっちもどっちである。

 

そうしたら一台の自動車がこちらに近づいてきた。

 

「ん?誰か来るぞ?」

 

獄寺が反応して

 

「へぇ~この世界にも自動車があるのね」

 

ティアナが感心をしていたが

 

「お前、此処が何処まで文明遅れてるって思ってんだ?仮にも此処はなのは達の故郷なんだろ、車ぐらいあるだろう?」

 

「つぅか、車ぐらい俺達の所にもあるぞ」

 

(えっ?江戸時代に車なんてあるの?)

 

銀時の世界の出身者以外の全員が疑問に思った。

自分達の知る江戸時代に車が存在する筈がないので、本当に銀時達は江戸時代出身者なのか疑問に思った。

 

「うっ‥‥」

 

リボーンと銀時の言葉に詰まるティアナ。

 

「はぁ~そんな事も考えらんねぇのか?」

 

獄寺が馬鹿にするように言う。

 

「うっさい!私はミッド以外あまり来たことがないの!!」

 

「苦しい言い訳だな」

 

とティアナと獄寺の2人が痴話喧嘩をしているうちに車が到着して、

 

「なのは、フェイト、久しぶり」

 

車から降りてきたのは金髪の美人であった。

 

「「アリサ(ちゃん!!)!!」」

 

どうやらなのはとフェイトの知り合いらしい。

 

「何よ~随分ご無沙汰じゃない!!」

 

「にゃはは、ごめん、ごめん色々仕事が忙しくて」

 

「私だって忙しいわよ、現役大学生だもん」

 

と井戸端会議に似た話をしていると全員がこの金髪美女に『誰だ?』という顔をしていたので、なのはが、

 

「あっ、こちらはアリサ・バニングス、私たちの幼馴染みなので此処を貸してくれる人なの。」

 

「アリサ・バニングスよ、よろしく」

 

「こっちこそよろしくネ!!」

 

神楽が元気よく挨拶をした。

 

「へぇ~結構可愛い子じゃない」

 

と撫で少し神楽と話していたら神楽とアリサ以外妙な違和感を覚えた。

 

「ん?なに?」

 

「?どうしたアルか?」

 

アリサと神楽が皆の様子を見て、一緒に首を傾げている。

 

そしてなのはが、

 

「いや、その‥‥神楽ちゃんとアリサちゃんの声がそっくりだなぁ~と思って‥‥」

 

「えっ?」

 

「ん?」

 

「「いやいや~そんなわけないよ~(アル)」」

 

アリサと神楽が一緒に否定する。

すると、

 

「「えっ?」」

 

2人とも今気付いたらしい

 

「ホントに声が一緒ですね」

 

「珍しいこともあるんだね」

 

「何か1人コントみたいだな」

 

とバジル、スバルが感想を言って獄寺は少し笑っていた。

しかし銀時と新八は、

 

「そうですか?アリサさんの方が大人っぽいですし」

 

「ゲロくさくないし」

 

「気品があるし」

 

「酢昆布臭くないし」

 

その他もろもろ神楽のダメ出しを言っていたら、

 

「ホワタァァ!!」

 

神楽がブチ切れて銀時と新八を思いっきり蹴りあげた。

 

「「うわぁぁぁぁ!!」」

 

ヒューン‥‥

 

ポチャーン

 

蹴りあげられた2人は湖に落ちた。

 

「ふん!レディにそんな事言うなんて最低ネ!しばらくそこで頭を冷やしなさい!!」

 

と途中から片言がなくなり皆は、

 

(((((お母さん?)))))

 

と、心の中でツッコミを入れた。

そんな中、

 

「わん!!わん!!」

 

はっ、はっ、はっ、と尻尾を振っているのは、

 

「きゃー!!何!?この犬!?可愛い!!」

 

定春であった。

 

「わたしのペットの定春ネ、定春挨拶するヨロシ」

 

「わん!わん!」

 

アリサは今まで見たこともない大きな犬に興奮し、しばらく定春を撫でまくった。

定春もアリサと神楽の声が似ていた為か獄寺程嫌がらずにアリサを受け入れていた。

 

「アリサさん!お久しぶりです!」

 

リィンが挨拶をした。

 

「リィン!!久しぶりね。」

 

アリサは、今度はリィンと話していた。

だが漂流組は1つ違和感があった。

 

「あの?ヴィータさん?」

 

「どうしたんだ?ツナ」

 

「リィンさん、なんか大きくなっていません?」

 

リィンは何時ものティンカーベルぐらいの大きさではなく、ヴィータと同じ位の大きさになっていた。

 

「お前達も地球出身者ならわかるだろ?いつものあのサイズなら此処じゃ違和感ありまくりだからな、だから魔法で大きくなってんだよ。」

 

「へぇ~魔法って便利ですね。まぁ‥‥」

 

とツナは納得したが、

 

「リィンさん以上に違和感のある奴ならあそこに居ますからね。」

 

とツナはが指さしたのはアロハシャツでレオンをサングラスに変身させた...リボーンだった。

 

「ん?何だ?」

 

「まっ、そいつは置いておこう。」

 

とヴィータが割り切る。

そして銀時達が湖から陸に上がり、

 

「ちくしょう、何でここまで来て泳がないといけねぇんだ。」

 

「そういう割には僕にしがみついていただけですけどね。」

 

銀時はカナヅチ何で泳げないのだ。

 

「銀さんって泳げないんですね」

 

「ん、あぁ、わりぃかよ。」

 

「あ、言え、そう言う意味じゃなくて、銀さんって戦いのセンスとかは高いのに...」

 

「そんなんあっても泳げねぇもんは泳げねぇんだよ。」

 

ツナと銀時が話している時に

 

「あ、それなら私が泳ぎ教えようか?」

 

なのはが申し出た。

 

「ん?別にいいよ、今更泳げるようになりたいとはおもんねぇし。」

 

となのはの誘いをあっさりと断った。

 

「そ、そっか。」

 

と納得した。それでもなのははやっぱり、ちょっと残念がった顔をした。

銀時となのはのそんな様子を見ていたアリサは、

 

(なのは...まさか、いや考えすぎかな?あんな目が死んだ魚みたいな男に‥‥)

 

アリサはそんな事を思っていた。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的31 俺はただ妹(姉)が心配なだけだと真剣に言う奴はだいたい無自覚のシスコンである

更新です。


色々有り、アリサは大学で講義があるとの事でまた夕方に会おうと言って別れ、こちらも作業を始めようとはやてが皆を集めた。

「とりあえず、ロストロギアの反応が広範囲にある為に全員バラバラになって探すで、ツナ君や銀さん達は私達と行動してな、ロストロギアを発見しても封印できひんし後定春とリボーン君はここから出んといてな、この地球じゃ色々不自然やし」

 

「わかりました。なら誰と…」

 

ツナが誰とペアーになるのかと質問すると、リボーンが、

 

「こう言うのは、クジで決めんのが手っ取り早いだろう」

 

とのことで漂流組はくじを引いた。

 

 

~side銀時~

 

引いた結果こちらは銀時と

 

「とりあえずここを探そう」

 

「いいけど...パフェは?」

 

「仕事が終わった後、家に帰るからその時食べさせてもらって」

 

銀時はなのはと組むことになった。そして雑木林を捜索していた。

 

「銀さん、」

 

「ん?」

 

「この前の怪我大丈夫?」

 

「あ?あぁ、別に大した事ねぇよ、神楽にぶっ飛ばされるより軽い。」

と言うが無意識に左手を庇ってる。

 

「.....」

 

 

 

 

~sideバジル~

 

バジルはスバルとペアーとなり、ロストギアを探していた。

 

「ナカジマ殿何かありましたか?」

 

「ううん、何も見つからない」

 

とこちらも探しつつすいませスバルが

 

「そういやさ?バジル君?」

 

「バジルでいいですよ...何でしょう?」

 

「じゃあ、遠慮なくバジルは何でそんな喋り方なの?」

 

当然全員が聞きたい質問をスバルがした。

 

「えっ?この喋り方ですか?これは親方様が日本人はこう喋るんだと教えてくれたので、親方様が教える日本語を勉強しました。実は拙者日本の文化が好きで...」

 

「えっ?てことは、バジルはツナとは違う世界出身なの?」

 

「いえいえ、地球にも色々国があります、拙者はイタリアという国育ちですが親方様は日本育ちなのでよく日本の文化について教えて貰っているんですよ。」

 

「へぇ、そうなんだ!色々あるんだ」

 

バジルの話を興味津々に聞いているスバルであった。

 

 

それから時が経って、

 

 

~side銀時~

 

夕暮れになり場面は戻る。

 

「ここが私の自家が経営している喫茶店の翠屋だよ」

 

「ほぉ~なかなかいい感じじゃねぇか」

 

「えへへ、そうでしょう」

 

で早速店に入ったが店内は客で混んでいた。

だが、

 

「あら、なのはおかえりなさい」

 

店にいたのはなのはと同じ茶色い髪の女性だ。

 

「お母さん!ただいま!!」

 

今でも抱きしめたいが客が多いためにそれは無理であった。

 

「とりあえず、手伝おうか?」

 

「大丈夫よ、あら、お客さん?」

 

「あ、どうも~はじめまして僕、坂田銀時です。」

 

いつもと違い手を頭の後ろにやりお辞儀をした。

 

「どうも、私なのはの母、高町桃子です。」

 

(うそっ!?若っ!?えっ?マジで!?お姉さんじゃないの!?)

 

桃子の容姿を見て、思わず銀時は心の中で驚愕した。

 

「なのは!帰ってきたのか」

 

そこにエプロン姿の男性が厨房の奥からやってきた。

 

「お父さん!!」

 

「ん?なのは、誰だ?あの男は?」

 

このエプロン姿の男の名は、高町士郎。

なのはのお父さんである。そして銀時の姿を見たとたん、彼は急に獲物を見る猛禽類の様な目に変わった。

 

「なのは、お前まさか!?」

 

「今、一緒に働いている人で坂田銀時さんって言うの」

 

「あっ、どうも」

 

なのはが銀時を紹介する。

そして、

 

「「なのは!」」

 

すると、今度は銀時と同じぐらいの年齢の男性と眼鏡をかけた黒髪の女性が来た。

 

「お姉ちゃん!えっ...お兄ちゃん!確か今はドイツにいるんじゃ…」

 

男性の方は兄の月村恭也(旧姓 高町恭也)そして眼鏡をかけた女性の方は、姉の高町美由希(現在、絶賛彼氏募集中)

 

「ちょっとな」

 

「へぇ~なのはの家族か...まっ、よろしく」

 

銀時が恭也達に挨拶をすると、

今度は恭也が、

 

「なのは、こいつは誰だ!?」

 

先ほどの士郎同様、猛禽類の様な鋭い目に変わり銀時をにらみながら、なのはに銀時の事を尋ねる。

 

「えっ?」

 

「まさかお前、男を紹介しようと帰ってきたんじゃないだろうな!?」

 

「なっ/////ち、違うよ!//////」

 

その様子を見ていた銀時は、

 

(何だ~こいつは声といい性格といいどっかのシスコン陰陽師と一緒だな~おい)

 

かつて自分が見たある人物と目の前のなのはの兄が被って見えた。

 

「まぁまぁ、お兄さん」

 

「誰がお義兄さんだ!お前など義弟なんて認めないぞ!!絶対に!!」

 

(おい、なんか字が違う気がするぞ、それよりこいつ完全に人の話をきいてねぇな…)

 

「まぁ、本当に落ち着きなさいよ、あっち…」

 

と銀時が指さした方向は待ちくたびれている客だった。

 

「俺に噛み付く前にこっちをどうにかした方がいいんじゃないのか?」

 

「くっ~~わ、わかった、美由希、なのはまずは母さんたちを手伝うぞ」

 

「「わかった」」

 

「あっ、でも美由希、お前は絶対に厨房には入るな。客を病院送りにされては困るからな」

 

「ちょっ!?恭ちゃん、それどういう意味よ!?」

 

「そのままのとおりだ」

 

実は、美由希は料理がとてつもなく下手だったのだ。

 

「それからお前!」

 

と、恭也は銀時にをビシッと指をさし、

 

「忙しいんだ、お前もついでに手伝え」

 

「え?俺も...」

 

とのことで銀時が巻き込まれる形でウェイターをして時間が経ってピーク時間が終わった。

以外にも銀時のウェイターは女性になかなかの好評であった。

 

「ふぅ~、助かったわ、ありがとう銀さん」

 

桃子と美由希は銀時に一瞬で馴染んだ。

 

「はァ~疲れた~俺、本当はいちごパフェ食いに来たんだけなんど・・・・」

 

銀時はけだるそうに本来、なのはの実家に来た理由を呟く。

 

「なのは、ちょっと待っていて後恭也とお父さんがやっておくから美由希も手伝って」

 

「は~い」

 

そして美由希達はどこかに行って

 

「ごめんね、何か手伝わせちゃって」

 

なのはが苦笑しながら銀時に謝る。

 

「パフェ2個で勘弁してやる。いちごとチョコな」

 

「ふふ、分かったよ」

 

銀時は怒る様子はなく、相変わらずけだるそうに報酬のパフェの数を増やす。

銀時となのはが話をしていると、

 

「おい、お前少し俺に付き合え・・・・」

 

と、恭也は銀時を高町家の敷地内にある道場へと連れ出した。

 

 

~side道場~

 

「はぇ~、なのはの実家は、こんなのもあるのか・・何か新八家見てぇだな」

 

そして恭也が小太刀の木刀を構えそして・・・・

 

グワァン

 

「くっ!」

 

銀時へと襲い掛かったが、銀時はそれを紙一重で躱す。

 

「やっぱり、お前...」

 

「ちょっと、いきなり物騒じゃないですかお兄さん!?」

 

銀時は、口調は驚いている様子な声だが、表情は普段通り、飄々としている。

そして、2人は互いに距離をとる。

 

「小太刀二刀流...どっかの忍びの頭見てぇだな」

 

「お前はなのはの何なんだ!?」

 

恭也は銀時になのはとの関係を尋ねる。

 

「えっ?何なんだって言われても...仕事仲間、いや、なのはが上司で俺がバイト・・まっ、そんな所だな」

 

「そういう意味じゃない!!」

 

「はぁ、じゃ何が聞きたいんだ?」

 

銀時は自分となのはの関係が、さっき自分が言った関係以外思い当たらない。

 

「だからその...愛人と...か!男女の関係・・とか・・・・」

と言いながら恭也は銀時にまた打ち込んできた。

だが銀時は、

 

「へ、んなわけねぇだろ。大体考えてみろ!!俺となのはがいくつ年が離れていると思っている!?」

 

確かに銀時となのははの年齢差で言うと恋人というよりは兄妹関係の方がしっくりくる。

もっとも銀髪天パとさらさら栗毛サイドテールでは、兄妹にも見えないが・・・・

銀時からの予想外の言葉に、

 

「いいや!なのはが久しぶりに帰ってくるそしたら知らない男がいた。これは」

 

と意外と聞く耳を持つかと思われたが、聞く耳をもっていなかった恭也。

互いに刀同士で力比べしてる時に

 

「結婚の前触れ」

 

(...ヤベェぞ、もしかしたら新八以上の...)

 

「こたえ...ろ!」

 

と銀時が後ろに飛び威力をやわらげ恭也は突撃してきた。

 

「いやいや、考えすぎだって、俺はパフェを食わしてくれるってなのはが言ったからついてきたんだよ」

 

「は、パフェ?」

 

「あいつがここのパフェは絶品だ言ってたから、楽しみにしてきたんだ!」

 

そして道場になのは達がやってきて、

 

「あっ、ここに居たの!銀さん、お兄ちゃん」

 

「なのは」

 

「もう何しているの~?」

 

そして銀時は洞爺湖を腰に差して、

 

「おい、お前」

 

「これ以上は、古傷にひびくぜお兄さん」

 

ボソッと恭也に呟いた。

 

「っ!?お前、気づいていたのか!?だから受け身で・・・・」

 

恭也は驚愕した顔で去っていく銀時の方を向く。

 

「さてと、待ちに待ったパフェだ」

 

銀時がやっとパフェを食べられると道場を出ていこうとしたら、

 

「最後にもう一つ聞きたい」

 

「なんだ?」

 

「お前の名は?」

 

「.....銀時.....坂田銀時だ。」

 

銀時は改めて恭也に自分の名を名乗った。

 

(坂田.....銀時...)

 

恭也は、今度は銀時の名をしっかりと頭の中に刻み込んだ。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的32 食卓とは一つの戦場

更新です。


 

 

 

 

 

 

~side銀時~

 

恭也との絡みが終わっていよいよこの世界へ態々やってきた目的である翠屋のいちごパフェかと思った矢先に、

 

「銀さん、これ運んで欲しいの」

 

なのはが差し出したのは、

 

「ん?何これ?」

 

「バーベキュー用品」

 

そう、なのはが銀時に差し出したのは、バーベキューコンロ・木炭・着火剤・軍手・チャッカマン・うちわ・食材が入っているであろうクーラーボックスなどのバーベキュー用具だった。

 

「え?あれ?なのはさん‥あの‥パフェは?」

 

( ゚д゚)ポカーンとする銀時を尻目になのははバーベキューに使う食材や機材を準備する。

 

「さっき、はやてちゃんに夕ご飯の用意は殆ど出来ているから早く道具を持ってきてって言われて...」

 

「.......」

 

「だから先に運ばないと」

 

「ちょっっっと待て!!何で、何でパフェ食いに来ただけなのにそれを運ばないといけねぇんだ!!俺はもう糖分がきれてきれて...ちくしょうめ!」

 

といじけた。

折角楽しみにしていたパフェを食べられると思ったら、店の手伝いをさせられ、その後はなのはの兄に絡まれて、やっと食べられるかと思ったら、今日の夕食の食材と機材運びで食べる事が出来ない。

まさに、銀時にとっては踏んだり蹴ったりの結果だった。

 

「ロストロギアが見つかるまではここに居るから、その間に食べればいいでしょう?」

 

となのはは子供を慰めるように銀時を説得した。

 

「あぁ、クソ、こうなりゃやけだ!!さっさと運んでやる!!」

 

と起き出した。

 

「そんで、奴らの分の肉も全部俺が食ってやる!!」

 

散々人の楽しみの邪魔をしたのだ。せめて一矢報いて、夕食の肉を全部食べてやると意気込んだ。

 

 

~sideコテージ~

 

少し前になのはと銀時以外こちらに戻ってきてはやてを中心に夕ご飯の準備を始めていた。

 

「とりあえず、食材はこれでええやろ。んじゃ皆てきぱき動いてな」

 

で全員動き始めた

 

「はやてちゃん私も何か手伝おうか?」

 

「大丈夫やですずかちゃん」

 

月村すずか、なのは達の友人の1人で、アリサ同様この人も金持ちで、姉の月村忍はなのはの兄、恭也の奥さんであり、なのはとすずかは義姉妹の関係でもある。

 

「あの、拙者達は何をすれば...」

 

バジルが何をすればいいか戸惑っていると

 

「とりあえず、この人数や、素材の下ごしらえだけでもぎょーさん時間くうし野菜の皮を剥いといて」

 

「わかりました。」

 

と聞いてバジルやツナが作業に入ろうとすると獄寺も入ろうとしたのでツナが

 

「ご、獄寺君は少し待っといて」

 

と、獄寺に待ったをかける。

 

「え?ですが...」

 

「いいから」

 

獄寺が以前厨房に入っただけで厨房がめちゃくちゃになったそれだけでなく料理の腕も壊滅的なのでツナがストップをかけた。

作業が進んでいくとリボーンがはやてに

 

「ほぉ~はやてにも特技があったんだな」

 

感心する様に言う。

 

「ひどっ!それは酷いでリボーン君!私かてそりゃ特技の1つや2つぐらいあるわ!」

 

元々はやては早くに両親を亡くしおり、当時、まだ闇の書であった夜天の書が稼働するまで1人暮らしをしていたので、家事に関してはお手の物であった。

はやてがリボーンに言い当のリボーンは、

 

「冗談だぞ。」

 

と返すが視線はやてから逸らしていた。

 

「何や?リボーン君のは冗談に聞こえへんけど」

 

ジト目でリボーンを睨むはやて。

 

「ねぇ、はやてちゃん?」

 

「なに?すずかちゃん」

 

「何でこの子はこんなに喋れているの?」

 

すずかは赤ん坊姿のリボーンがペラペラと喋っているのに疑問を感じたのだ。

その質問に対してリボーンの返答は、

 

「そういうのは気にしちゃダメだぞ、すずか」

 

お決まりの台詞を吐いた。

 

「あっ」

 

と炎真が声を出して何かと思えば皮をむいていた時に指を包丁でやってしまったらしい。

 

「大丈夫、炎真くん」

 

シャマルが心配そうに声をかける。

 

「だいしょーふでふ‥‥」

 

と指を咥えながら言う。そして、シャマルが絆創膏を渡した。

 

「古里殿はゆっくりしといてください。拙者がやっておきます。」

 

こういう行動はバジルの性格が伺える。

 

「新八~、何しているアルか、お前も手伝ってこいヨ」

 

「お前も何かしろよ!つまみ食いばっかしやがって!!」

 

と神楽は、流石に肉は生だから食わなかったが炊飯器の中はカラになっていた。

 

「ちょ、神楽あんたどんだけ食べるの!?」

 

アリサが驚いたように言う。

自分と声がそっくりの人物がまさか此処までの大食いだとは信じられなかったからだ。

 

「これぐらい普通ネ。私よりもスバルとエリオの方がもっと一杯食べるネ」

 

とあっけからんとした表情で言った。

 

「食べるってどれくらい?」

 

「いつもこんな山盛りのパスタを平気で食べているネ。あれは私でもお腹パンパンになるけど、スバルとエリオはへっちゃらな顔でしかもお腹もパンパンにならずに平らげているアル」

 

「へ、へぇ~」

 

神楽は山盛りパスタをジェスチャーでアリサに伝える。

そしてアリサは神楽の言っている事が本当なのか確かめようがないが、もし神楽の言っている事が本当ならばスバルとエリオの食欲に関しては恐ろしいモノを感じた。

特にエリオに関してはまだ10歳なのだから‥‥

 

「あぁ~!!私もつまみ食い期待してたのにぃ~」

 

神楽同様生肉は食えないので炊飯器のご飯を狙っていたスバルはアテが外れた事に落胆する。

 

「何言ってんのバカスバル!これじゃ私達のご飯完全になくなるでしょう!!」

 

「まぁまぁ、お米はまだあるし、また炊きなおすよ」

 

フェイトがそんな宥めて事態を収拾した。

 

「そういや、はやて」

 

「ん?どないしたん?リボーン君」

 

「バーベキュー用品はどこにあるんだ?」

 

バーベキューをやるにしても肝心のバーベキュー用具がこの場にはまだない。

これではバーベキューをしたくても出来ない。

 

「それはなのはちゃんが家から持ってくるって言っとったから...そのうちに来るやろう。まずはすぐに焼けるように食材の下拵えをすまさなんとな。」

 

と時間が経過していくらなんでも遅いなという事でなのはに連絡を入れたらあちらも手伝いで忙しかったらしく今やっとこちらに来てくれた。

 

「遅いヨ、銀ちゃん、私もうお腹と背中がくっつくアル。従業員を飢えさせるなんて、社長失格アルよ」

 

「うるせぇ、こっちも結構イライラしてんだよ!!」

 

と糖分がきれて半分八つ当たりになった。

 

そしてやっとバーベキュー大会が始まり‥‥

 

「銀ちゃん!!その肉は私のネ!!」

 

「へっ、教えただろう。食卓は戦場だ!!」

 

と銀時が言っていると銀時が焼いていた肉が横から何者かに掠めとられた。

 

「銀さん。甘いよ、そんなんじゃ」

 

スバルが自慢げに言うと

 

「なかなか、やるじゃねぇかスバルだが‥‥」

 

と今度はスバルからまた肉を奪い、

 

「ちょ、大人気ないよ!!さん~」

 

スバルがまた銀時から肉を奪おうとした。

 

「てめぇら!そんなに肉食うと、10代目の分がなくなるだろうが!!」

 

と言いつつ、ちゃっかり自分の皿にも肉が乗っていた獄寺。

 

「ちょっと、そんなに慌てないでください。みっともないですよ。」

 

と新八が皿の食べ物を食べようとすると皿には何もなかった。

 

「あ、あれ?僕の肉は!?」

 

新八は気付かなかった。隣にいた赤ん坊の口が動いていた事そしてその赤ん坊の皿にはまだ肉があったことを...

 

「う、う~ん、」

 

唸っていたのはエリオとキャロだ。両者はあの中に入れずに皿には肉も野菜も満足に取れてない状況だった。

 

「どうしよ、なかなか手が出せない銀さん達が...」

 

スバルと獄寺はまだいいだが銀時と神楽は鬼気迫る気迫で争っていた。一応言っておくが台は2つあるが両方抑えられている。そんな時に

 

「はい」

 

「君達の分は取っておいたよ」

 

と肉を差し出したのはツナと炎真だ。

2人はあの中から肉をとりエリオとキャロの分を分けていた

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

エリオとキャロはやっとご飯にありつけた。

しかし、スバル並みの大食いであるエリオにはちょっと少なかった。

そしてバジルも‥‥

 

「沢田殿達もしっかり食べないといけません、拙者の分少ないかもしませんが...」

 

「あ、ありがとうバジル君」

 

ツナがバジルから肉を貰おうとするとフェイトも

 

「わ、私のも食べていいよ、ツナ」

 

とバジルと少し張り合う感じで言った。

 

(ま、負けられない、この人凄く性格もいい...)

 

「ありがとうございます。フェイトさん」

 

ツナはフェイトからも肉を貰えた。

 

そして場面は変わるが

 

「なぁ、バジルちゃん」

 

「はい、何でしょう?はやて殿?」

 

(えっ?ちゃん?)

 

はやてから自分の言い方が「君」ではなく「ちゃん」であったことに疑問を感じながらもそれを口にはせずにいるバジル。

 

「バジルちゃんは何処の国出身なん?」

 

「拙者はイタリア出身です。」

 

「イタリアか~何やツナくん達と言い、あんたらの世界の地球はイタリア中心の世界何か?」

 

「た、たまたまですよ」

 

「それと、何でそんな喋り方なん?」

 

イタリア人のバジルが日本人ですらもう口にはしない江戸時代の武士口調なのに疑問をもつはやて。

はやてのこの質問には地球出身の人が何故か食いついた。

神楽と銀時は食っていたがツナがとくに過剰に反応した。

 

「スバル殿からも聞かれましたが...拙者日本のーー」

 

「そ、そんな事よりもバジル君もお肉を食べよ、早くしないと神楽ちゃんと銀さんが食べ尽くしちゃうよ」

 

「え?沢田殿?何ですか急に?」

 

「な、何でもないよ」

 

「ちょ、邪魔せんといて、ツナ君!」

 

「ほのひふもん、わらしもひましたよ」

 

と口にものを入れながら喋ったのはスバルだ。

 

「ちょ、スバル行儀が悪いわよ!食べ終わってから喋りなさい!!」

 

ティアナがスバルに注意した。

 

モグモグ‥‥ゴックン‥‥

 

「その質問なら私もしましたよ。確か親方様が教えてくれたって」

 

「ぐっ‥‥」

 

「親方...様?」

 

フェイトが疑問に持ち聞いた。

この時聞いた時に六課の地球組+何故か銀魂メンバーもバジルに日本の間違えた知識を教えたこの『親方様』はろくでもない人だなと思っていた。

 

「ねぇ、その人は誰なの?」

 

フェイトはバジルに間違った日本の知識を教えたその親方様の正体が気になりバジルに直接親方様が誰なのかを尋ねる。

 

「フェイトさん、その質問はちょっと‥‥」

 

ツナが言うとリボーンがニヤリと悪そうな笑みを浮かべて、

 

「なら、そいつが誰か教えてやろうか?」

 

「ちょ、やめろリボーン!!」

 

とツナがリボーンを抑えようとするがあっさりと返り討ちにあった。

 

「親方様ってのはな、本名は沢田家光ってんだ」

 

「さわだ‥いえみつ?ん?沢田?」

 

沢田と言う苗字を聞いて全員がツナを見た。

ツナの苗字も親方様と同じ沢田だからだ。

 

「ま、まさか親方様って‥‥」

 

フェイトは顔を引き攣らせてツナに尋ねる。

すると、涙ながらツナは答えた。

 

「はい、俺の父さんです...」

 

ツナにとっては恥ずかしい秘密だった。バジルに変な事を教えたり家光自身が変わった性格の為にツナは何度も振り回された記憶がある。

そんなツナを見ると新八が、

 

「変な父親持つと、息子は苦労するよね?ツナ君...」

 

同情の眼差しをしてツナの肩にポンと手を置く。

 

「新八さん?...わかってくれるんですか!?」

 

ツナは新八の言葉に地獄に仏と言わんばかりに、期待の目をして新八を見る。

 

「わかる。わかるよ。父親が変だと、どんだけ息子はが苦労するか‥‥」

 

ここに変わった友情が芽生えた瞬間だった。

 

「何やろう。何とも言えへん、確かにバジルちゃんを見ていると何となく想像がつく。」

 

はやてが微妙な顔をした。

一方フェイトは、

 

「ツナの...お父さん」

 

ツナの父親が変わり者だと言う事が分かったがそれはあくまでその人物の一辺であり、どんな顔なのか?どんな声なのか?そんな事を考えていた。

 

「まぁ、元気をだして下さい、拙者は沢田殿とこうして知り合うことが出来て嬉しいのですから」

 

「バジル君‥‥」

 

「さぁ、肉を食べて元気を出してください」

 

「う、うん」

 

バジルが皿に乗っていた肉をツナに食べさせる。

 

「‥‥」

 

バジルとツナのその行為をフェイトはジッと見ていた。

 

(ツナ‥私とショッピングモールの時はあんなに恥ずかしがったのに、バジルの時はあんなにあっさり‥‥やっぱりツナはバジルの事を‥‥)

 

フェイトの胸にモヤモヤした感情は渦巻いた。

 

そんなこんなで晩御飯を食べ終わりなのはが、

 

「じゃ次は皆でスーパー銭湯に行こう!!」

 

張り切って言った。

しかし、この銭湯が一部の人達にとって悲惨な結果を生む事をまだ知る由もなかった。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的33 戦闘の後の銭湯は最高の一言に尽きる

更新です。


~side銭湯出入口付近~

 

戦闘ともいうべき晩御飯を食べ終えて銭湯に着いた御一行。

 

「着いたよ」

 

なのはが事前に実家で調べてきたスーパー銭湯の玄関口にて、その建物を見た皆の反応は‥‥

 

「大きいですね~」

 

「色々ありそう!」

 

「面白そうだね、ティア。私、ワクワクしてきたよ」

 

「そ、そうね」

 

FWメンバーは楽しそうに話していた。

 

「銭湯か~」

 

「銭湯ですね~」

 

FW陣とは裏腹に銀時と新八は何か嫌なものを見るような目で銭湯を見ていた。

 

「どうしたんですか?銀さんも新八さんも銭湯に何か嫌な思い出でもあるんですか?」

 

炎真が暗そうな顔をしている銀時と新八に何か銭湯でトラウマでもあるのかと尋ねる。

 

「ああ、銭湯や温泉にはいい思い出がねぇんだよな」

 

「えぇ、本当に‥‥」

 

銀時と新八は何故か遠い目する。

神楽は知らないが銀時と新八は温泉旅館に泊まった時はスタンド(幽霊)に囲まれたり地元の銭湯では鬼の一家が地球に観光に来た際、銭湯に来て自分らもその鬼の一家に囲まれたりした挙句、銭湯なのに体が暖まらずむしろ寒気と痛い目にあった思い出がある。

 

「銭湯は寒気がする。」

 

「あの時は、体中の骨が砕かれるかと思いましたよ」

 

「それって本当に銭湯何ですか?」

 

「銭湯だ」

 

「銭湯でした」

 

炎真がちょっと引きながら銀時と新八に質問した。

銀時と新八は死んだ魚のような目でそう答えた。

そして男湯と女湯に別れる場所へと来ると、悲劇が起こった‥‥

 

「あれ、バジルちゃん。何でそっちに行こうとしてるん?バジルちゃんはこっちやろう?」

 

はやては平然とした様子で男湯に入ろうとしているバジルに声をかける。

 

「?はい?えっ?何故ですか?」

 

「何故って‥‥お前は女だろう?」

 

シグナムがバジルにそう言うと、

 

「えっ?」

 

バジルそしてツナ達は『何を言っているの?』と言う感じの顔をした。

 

「あの~皆さん、何か勘違いをしているようですが、バジル君は男ですよ」

 

ツナの一言で周囲は一瞬時間が止まる。

そして、

 

「「「「「「えええええぇぇぇぇぇ!!」」」」」」

 

バジル本人とバジルと交流があり彼の性別を知る者そしてスバル、銀時以外の皆は驚愕の声を上げた。

 

「う、嘘だろ!だって‥だってこんなに女顔じゃないか!」

 

ヴィータが震える指でバジルをさし、

 

「ほんとに美少女顔だよ。それに性格もあんなにいいし!」

 

「うん。私もてっきり、女の子だと思っていた」

 

アリサとすずかもバジルは女だと思っていた。

 

「いえ、拙者は正真正銘の男ですよ。」

 

「すまん、何か‥ホント、すまんな」

 

シグナムが本当に悔いるように謝りバジルの肩に手を置いた

 

「いや、あまり気にしていませんので大丈夫ですが...」

 

バジルはツナ達の方を向いて、

 

「拙者はそこまで女子に見えるでしょうか?」

 

ツナ達にそんなに自分は女に見えるのかを改めて尋ねる。

 

「う~ん‥‥俺は気にした事がないなぁ...」

 

「俺もあんまり考えたことはねぇな」

 

バジルとの付き合いがあるツナ達は特に意識していなかった様子。

 

「銀さんは気付いていたんですか?」

 

新八がバジルの性別が判明した時、銀時が驚いていなかったので、彼はあらかじめバジルの性別を知っていたのかを尋ねる。

 

「あぁ」

 

銀時は最初から男だとわかっていた。

 

「俺のセンサーを舐めんなよ」

 

銀時は以前にも男装した女性を見抜いたこともある。

そして1番大変なのは...

 

「どぅぅえええええ~!!」

 

大量のそれはもう滝のように涙を流していたはやてだった。

 

「ど、どうしたんですか?はやて殿」

 

突然号泣するはやてにタジタジの様子のバジル。

 

「えぐ、えぐ、バジルちゃん‥‥じゃなかったバジル君、なんでや、なんでこんなに女の子っぽいのに‥‥初めて美少女におっぱいで勝ったと思うたのに男やなて――――!!あんまりやぁ――――!!」

 

と本気で号泣しているはやてに対してバジルは、

 

「す、すいません」

 

ただ、ひたすらはやてに謝るしかなかった。

尚、この間フェイトは‥‥

 

(バジルは男の人だったんだ‥‥あっ、だからツナはバジルに恥ずかしがらない態度をとっていたんだ‥‥良かった~)

 

はやてが号泣しているのを尻目に物凄く喜んでいた。目の錯覚か彼女の頭上にはラッパを吹いている天使がいた。

 

バジルの性別が判明したがもう一つちょっとした問題があった。それはキャロが発したこの一声から始まった。

 

「そういえば、エリオ君はこっちにこないの?」

 

「え?」

 

キャロはエリオを女湯へと誘う。

 

「キャロは僕が男って知っているでしょう!?」

 

エリオは、自分は男なのになぜ女湯へ入らないといけないのかとちょっとムキになる。

 

「だって‥‥」

 

とキャロの目線の先にあったものは、

 

『男性は10歳以下のみ女湯の入浴を認める』

 

と書かれた注意書きであった。

エリオは10歳の為、ギリギリOKな年だったので、女湯に行こうとキャロは誘っていた。これに女達は嫌がるかと思いきや、反対にcome体勢でむしろ誘っていた。

特にフェイトが‥‥

 

「いや、それならリボーンもーー」

 

エリオは見た目も自分より子供なリボーンはどうなのかと尋ねようとした時、

 

「エリオ君!」

 

新八はテンションが高まったのか、

 

「女湯何て大人になるともう入る事の出来ない男の桃源郷何だよ!!一時の感情に身を負かしたら後で必ず後悔するよ!!男なら絶対に行くべきだよ!!」

 

エリオに詰め寄り、折角合法的に女湯に入れるのに入らないなんて勿体無いと力説する。

 

「メガネさん.....いくら僕でもそこまで言ったらちょっと引きますよ‥‥」

 

とまるで汚物を見る様な目で新八を見るエリオ。

新八の変に溜まった欲求そして優しさがあいまってしまい逆にポイントを下げてしまった。

その他のメンバーからも白い目で見られる新八。

彼は初対面のアリサとすずかの信頼さえも自らの発言で失った。

その後、新八は神楽に粛清された。

 

「それなら、私が男湯に行こうか?」

 

すると、逆の発想でキャロが男湯へ行くと言い出した。

 

「やめるネ、キャロ。そんな飢えた獣どもが居る所に行ったら、食べられちゃうネ!!」

 

「そ、そうよ、キャロ、世の中に小さな女の子にしか欲情出来ない変態もいるのよ!!」

 

神楽とティアナが必死にキャロを引き留めた。

しかし、キャロは神楽とティアナの言っている言葉の意味を理解していないらしく、

 

「銭湯って人を食べる所なんですか?」

 

と的外れな事を言っていたが、結局神楽とティアナに押し切られて女湯へと連れていかれた。

 

 

「けっ、女湯何て何がいいんだ?」

 

獄寺がアホらしいと言う顔と声質で言ったがリボーンが

 

「よく言うな、お前とツナはラルの水浴びシーンを覗いていたくせに」

 

ラルことラル・ミルチ、ツナ達の世界のバジルの同僚であり結構美人な女性である。

 

「「ぎく!」」

 

「リボーン」

 

「それ本当?」

 

ある女性2人がこの話にくいついてのらりくらりとしながらツナと獄寺の元に歩く2人。

 

実際の所獄寺は黒だがツナは変なものを口に入れてそれでふらふらとなりそのままそのシーンに出くわしただけだが...

 

「へぇ、獄寺は覗きを...ね」

 

どす黒いオーラを放出しているのはティアナだった。

そして、ティアナは無言で獄寺にグーを1発入れた。

 

「グフぉ!いてぇ‥‥てぃ、ティアナ、おまっ、何しやがる今、鳩尾に入ったぞ‥‥」

 

と腹を抱えながら悶えている。

 

「ツナお前‥‥」

 

「いや、あの銀さん」

 

「よかっった~」

 

「へ?」

 

「お前思春期の癖に新八みたいじゃねえし、純情すぎるしもしかしたら違う所に行きかけているんじゃねぇかって...お父さんは心配していたんだよ」

 

銀時はツナに同姓愛の気があるのかと思っていたがどうやら取り越し苦労のようだった。

ツナはまるで漫画・アニメの主人公の様に女性からの好意に対して鈍感なだけであった。

 

「いや、何言っているんですか!?ってか、お父さんって!?」

 

「ツナ」

 

今度はフェイトだ。

 

「覗きは絶対だめ!犯罪何だからそういうのはダメだよ!!」

 

「わ、分かりました」

 

と子供を叱るようにフェイトはツナを叱った。ティアナにやられた獄寺に比べたらまだマシだ。

 

 

~side女湯~

 

「ふぅ~やっぱお風呂はいいわね!疲れが吹っ飛ぶ!!」

 

とおばさんのような事を言うアリサ

 

「ほんとアル!」

 

「さっすが同じ声だけあってわかっているわね」

 

アリサと神楽は完全に意気投合した。

 

「はやてちゃん、そろそろ泣きやもう、ねっ?」

 

「うぅ~‥‥ぐすっ‥‥」

 

すずかは未だに泣いていたはやてを慰めていた。

 

「風呂に入ると多少肩こりがましになるな」

 

「そうよね~」

 

シグナムとシャマルがそんな事を言っていると、

 

「くそっ、それは私へのあてつけか!?はやて‥はやての悔しさ、よぉ~く分かるぜ」

 

ヴィータがくいついた。

女湯は女湯で楽しんでいた。

 

 

~side男湯~

 

「やはり日本の銭湯と言うのは良いですね」

 

バジルが興奮気味に言った。

 

「あれ?バジル君?銭湯来たことあったけ?」

 

「はい、前に何度かは」

 

「こういうのは、僕初めてです。」

 

「え?エリオ君銭湯来たことないの?あそこには無いの?」

 

「いや、そういうはあるんですが男どうしの付き合いみたいなのは...」

 

「なら面白いのをやるか」

 

リボーンがエリオをなにかに誘おうとした。

 

「え?」

 

リボーンが指したのはサウナだ。

 

「男ならではだ。あそこでまずは汗をかくぞ!」

 

「はい!」

 

エリオは楽しそうなのでリボーンの言った場所に一目散に行った。

 

「オメェらも来るんだよ」

 

と言うとツナ、炎真、獄寺、新八に言い

 

「え?」

 

「あいつは早速エリオと入って行くぞ」

 

「ここは男の勝負所と親方様は言っていました。日本人はみな根性や忍耐力はここで鍛えるんだと。」

 

「そうなんですか?」

 

「はい、ではいざまいらん」

 

とバジルとエリオもう入っていた。

 

「お前らも行くぞ」

 

とその他を蹴り飛ばした。

 

「銀時、お前はどうする。」

 

「俺はゆっくりしとくよ」

 

「そうか」

 

そしてリボーンも入ると銀時は辺りを見回して、ある看板が目に入った。

 

(ん?露天風呂もあるのかここは‥‥)

 

と銀時は露天風呂に入っていただが、彼はその看板に書かれた注意書きを見ずに行ってしまった...

 

露天風呂へと入った銀時は、

 

「ん?結構湯気が立ち込めているな...」

 

ザバァーン

 

「おっ?誰か居るのか?」

 

と先に露天風呂に入っている人を確認しようとすると其処に居たのは...

 

「ん?...えっ!?な、なのは!!」

 

「え?/////銀さん/////きゃあ!!」

 

なのはの渾身のビンタが銀時の頬にヒットした。

 

バッチぃーン!!

 

露天風呂に物凄い大きな音がした。

 

「ブベラ!」

 

「ななな、何で居るの?銀さん/////」

 

「何でってそれはこっちの...ん?」

 

壁を見たら一枚の紙が貼っており、其処に書かれていた文字は‥‥

 

『こ・ん・よ・く♡』

 

と書かれていた。

 

「「‥‥////」」

 

赤くなった2人は黙りこんだ。

 

で、

 

「ごめんなさい、銀さん思いっきり叩いて」

 

「いや、俺も確認し忘れた。」

 

表面上は落ち着いている銀時であったが、

 

(やっべ、不可抗力とは言え見ちまったよ!!なのはの裸!!...これじゃあまるで結〇リトじゃねぇか、こんなtoloveるご免だよ!?こんな事があのシスコンにばれたりしたら、今度は本当に地獄にトラベルしちゃうよ!?三途の川、バタフライアウェイしちゃうよ!!)

 

内面では物凄く動揺していた。

湯気で少し見えないが大まかな所はバッチリ見ていた銀時であった。

互いに気まずさがあり2人ともなかなか目を合わせようとしない。

ならば、銀時が戻ればよかったのだが、気が動転してそれさえも気づいていない。

 

「今日は何かごめんね」

 

銀時は思いもよらぬ言葉が来た。今は自分が謝りたいぐらいなのに

 

「な、何謝ってんだ。こいつは俺も確認し忘れたって」

 

「そ、そっちじゃないよ/////」

 

慌てて否定する。

 

「兄さんが迷惑かけたし。まだ約束のパフェも.....」

 

「別に...」

 

銀時が言うと

 

「でも」

 

「いい家族じゃねぇか、全員お前の事を優しく思ってくれている。」

 

またこの瞳だ。何でだろう?銀さんは何でそんな悲しげな目をしているの?それが聞きたくなって

 

「ねぇ、銀さん?」

 

「どうした?」

 

「あの、その銀さんは何で今そんな顔をしているの?何でそんなに悲しそうなの?」

 

「別に、パフェが恋しいだけだよ。」

 

「嘘、銀さん!話してよ!!」

 

なのはの性格が出てきた。

気弱だと思われるなのはであるが、なのはは自身が興味を抱いたモノに関しては、ズバズバと斬り込んで来るタイプである。

それはフェイトとヴィータと敵対していた時に覗える。

銀時は

 

「あぁ、ちっ、」

 

と頭を掻き回して

 

「俺は血の繋がった家族を知らねぇんだよ。」

 

「え?」

 

「だから、お前やあいつらの親みたいなのを見ていると少しな。」

そんな事を話しているとなのはを見ると今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「な、おい泣くなよ。」

 

ハッとなり、なのはを慰める銀時。

 

「別にただ、目にゴミが入っただけだよ.....」

 

と一旦顔を背けて一息つく。

 

「ごめん、そんな事知らないで家に招いちゃって。」

 

「別に、気にしちゃいねぇよ。」

 

「でも、」

 

「俺は今ものすげぇ幸せだぜ。新八や神楽と知り合えた。六課(此処)に拾われたおかげでお前達に会えた。何も無かった俺に仲間ができたんだからな。」

 

と笑みを浮かべる。この笑みは無理をしているわけでもましてや絶望を一つも混じってない笑み。

 

あぁほんとにこの人は楽しんでいるんだね

なのはは

 

「銀さん、」

 

大胆にも体を少し密着するなのは。

銀時の背中にはなのはの胸があてられる。

 

「ちょ、おまっ!?な、なのはさん!?」

 

慌てる銀時。

 

「ここに居る間は私の事...私達の事を家族と思ってくれていいからね。何かあれば私に相談してよ‥昔の私やティアナみたいにもう無理に1人で抱え込まないでね。」

 

「.....ありがとよ‥なのは‥‥」

 

2人は暫く露天風呂で混浴した。

 

 

 

 

 

 

~side風呂上がり~

 

女性達はコーヒー牛乳を飲んで気持ちよかった感をアピールしていたが男性陣はのぼせきっていた。

 

「あっっつ」

 

「はぁ、頭がクラクラする」

 

「誰か肩を貸してください。」

 

「サウナ...きつかったです。」

 

最後の最後までサウナに入っていた男達。因みに最後までいたのはリボーンであり、エリオも頑張ったが負けてしまった。

 

「大丈夫?ツナ」

 

「あ、ありがとうございます。フェイトさん」

 

フェイトに支えてもらいそんな様子を見ていたはやて達は

 

「フェイトちゃん大胆やな~」

 

「へぇ~フェイトはその子が...」

 

アリサとはやてのいじりにフェイトは、

 

「もう、からかわないで!!//////」

 

「ったく情ねぇな、ダメツナが」

 

「何でお前はそんなに平気なの?」

 

サウナに最後まで入っていながら平然としているリボーンにツナが尋ねる。

 

「まっ、気にするな。それよりものぼせているお前達に最高のイベントがあるぞ」

 

「ん?最高の?」

 

「イベント?」

 

銀時となのはが反応して

 

「あぁ、な、はやて?」

 

「何をするのはやて」

 

フェイトがはやてにこの後何をするのかを尋ねる。

 

「それはな、フェイトちゃん‥‥ズバリ肝試しや!!」

 

一行は季節外れの肝試しをする事になった。

しかし、この時まさか、その肝試しでまさかあの様な出来事を体験するとはこの時誰一人知る由もなかった。

 

 

・・・・続く




少しなのはさん大胆過ぎたかな...ま、大丈夫.....かな!


ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的34 怪談をすると霊はよってくる

更新です。


 

~side海鳴市郊外にある古い墓地~

 

「会場は此処にするで!」

 

はやてに先導されてやって来たのは荒廃した墓地で何年か前に完全に廃墟になった廃墓地だった。

 

「へぇ~こんな所もあったんだ。」

 

「来たことなかったわ。こんな所‥‥」

 

地元民のアリサやすずかさえもこんな場所があったのを初めて知った様子。

 

「よくこんな場所を知っていたな」

 

獄寺がはやてに尋ねると、

 

「私はよく、図書館に通っとったからな、海鳴の町の歴史や地形は本で何べんもみとるんや」

 

と、はやてが何故廃墓地の位置を知っていた訳を話す。

 

「今日、昼間にお前らが色々やっている時にはやてから聞いて面白そうな場所だったからな、折角の出張だ。記念にこういうイベントはやっとかないとな」

 

リボーンが白装束を纏い、地獄の亡者のコスプレをいつの間にか来ていた。

 

「リボーン...いつの間にそんなコスプレ衣装を持ってきたの?」

炎真が聞くと

 

「聞きたいか?」

黒い笑みで返す。リボーン自身は冗談のつもりだが現在いる場所とマッチして全然冗談に感じない。

 

「いえ、」

 

「お、おおおいかか、帰るならいいいいまのううちだぞぞぞぞ‥‥」

 

銀時はこれでもかというほど震えていた。

 

「どうしたの?銀さん」

 

なのはが物凄く動揺している銀時になのはは心配そうに銀時に言った。

 

「あれ?あれ?銀ちゃん、まさか‥‥」

 

はやてはニヤリ笑みを浮かべて、

 

「お化けが怖いんか?」

 

「ここ、怖くなんかねねねねぇよ。ここここここれは、むむむむ武者震いだ」

 

と強がりを言う銀時だったが、足がガクブル状態だった。

 

すると

 

ペチペチ

 

と頬を突っつかれたので、銀時がそっちの方向を見ると、

 

「バブ」

 

上目遣いで懐中電灯が顔のみを照らしたリボーンがいつの間にか肩に乗っていた。

 

「ひぎゃぁぁぁぁ!!」

 

銀時の物凄い悲鳴で全員驚いた。

 

「ちょっとうるさいんだけど!!いい年した大人がなに騒いでいるのよ!!大体この世にお化けなんている訳ないじゃない!!」

 

アリサが耳を塞ぎながら言う。

 

「銀さん...」

 

なのはも苦笑いを浮かべていた。

 

「情けないネ、たかだか赤ん坊の行為一つにそこまで驚くなんて‥ツナ、お前も何かこのヘタレパーマに言うアル」

 

と神楽はツナを見ると、

 

ツナもブルブル震えていた。

 

「大丈夫ですか?10代目」

 

「いや、あの‥やっぱり肝試しはもうやめよう、銀さんもあんなだし」

 

ツナは銀時を口実にやはり肝試しはやめようと言う。

 

「おい、あんなとは何だ、あんなとは、これはアレだ‥‥イベントを盛りあげる余興だ!!演技なんだよ!!」

 

と、銀時は先程驚いたのは演技だと言うが、とても演技には見えなかった。

 

「で、でも、もしも本当に幽霊が出たら...」

 

と幽霊やお化けが出た事を想像してさらに震えるツナ。

 

「だ、大丈夫よ、ツナ、霊なんているわけがないよ」

 

フェイトはツナを励ましてはいるがフェイトも少し冷や汗が流れていた。

 

がツナは

 

「いや、俺1回本当の霊見たんで...」

 

「お、俺も実は旅館のバイトをしている時に‥‥」

 

「「「「「え?」」」」」

 

ツナと銀時が本物の霊を見たと話し、なのは達は一瞬時が止まった。ここでリボーンが

 

「あれは、あれでスリリングで面白かったろう?」

 

「面白くない!!」

 

「そうかやはり、お前と銀時はそこまで怖いのか?女性陣は楽しそうなのにな」

 

と言うが一部の人はツナと銀時の話を聞いて怖がっていた。

 

「なら、止めるか?怖がりチキンの銀時も居るしな」

 

とリボーンがわざと大きな声で言うと銀時が

 

ブチッ!

 

「上等だ!!ゴラァ!!肝試しが何だ!お化けが何だ!!やるぞ、ツナ!!此処まで馬鹿にされて引き下がれるか!!」

 

「えぇ!ちょ、」

 

と銀時の気迫に半ば強引にツナも参加させられた。

 

「という事で、またクジでペアを組むぞ」

 

「ゴールにはザフィーラと定春そしてリィンが待機しとるで、まっ、驚かす道具があんまないけど、雰囲気で言えば此処は最高のロケーションやろう?私とリボーン君はゴールで待っとるからな。あっ、コレがルートを書き示した地図と灯りや」

 

リボーンとはやてがルールを説明し、昼間作った廃墓地の地図と小さなペンライトを出す。

 

「地図とペンライトはペアにそれぞれ一個ずつだ」

 

「1人で逃げるともう1人のペアにごっつい迷惑をかけるからな、これはチームワークの信頼も兼ねとるで」

 

そして

 

「なら一斉に引いてな!」

 

参加者達は一斉にクジを引いた。

 

 

~side最初のペア~

 

「ちょ、あまり先々行かないでよ!」

 

「うるせぇな、お前がモタモタ歩いているのが悪いんだろう」

 

獄寺とティアナだ。獄寺は早くゴールしようと早歩きで進むがティアナは怖いのか歩く速度が少しスローペースである。

 

「ち、ほれ」

 

獄寺が手を出した。

 

「え?」

 

「ほら、さっさと行くぞ」

 

獄寺はやや強引にティアナは手を握る。

 

(暖かい)

 

この様子を生暖かい光が2人をともしていた。

 

 

~side次のペア~

 

「銀さん、ちょっとこんな所で/////」

 

「俺から離れるなよ、なのは」

 

男らしいセリフを吐いている銀時であるが‥‥

 

「いや、物凄く歩きにくいんだけど‥‥」

 

銀時はなのはの後肩に手を置いて背をかがめて隠れるように歩いていた。

リボーンのドッキリで、一瞬で怖がってしまったようだ。

何とも情けない格好である。

 

「銀さん...何もそこまで怖がらなくても」

 

「バカヤロー、これはなお前の気を紛らわす為にやっているんだ、決して俺が怖いわけじゃない」

 

と必死に弁明しているが

 

「.....」

 

うまく返せないなのはであった。

 

「ま、まずはしっかり自分の足で歩こう、大丈夫だよ、お化け何ていないよ」

 

「あ、当たり前だ。此処は俺の知る地球とは別世界の地球なんだからからな‥‥お、お化けなんて‥‥」

 

と一旦なのはから離れるそして前に歩いて行くと、

 

「そもそも俺はそう言った非科学的なものは信じないんだ。ムー大陸は信じているけど...あれも実際はスタンドだったし」

 

ピコーン

 

なのはは一旦銀時から離れた。

 

「そんな異世界でも霊なんて信じていたら、こんなもん宝くじ...が...おい、なのは?」

 

と此処でなのはがいないのを気づいた銀時。

 

「おい、なのは...?」

 

突然なのはが消えていしまった事に銀時の顔が真っ青になった。

 

「おいおい、冗談がきついぞなのは、.....おい、そんなにくっついたのが嫌だったのか!?なぁ、そろそろ出てきてくれおい、謝るから!!お願いします!!なのはちゃーん!?」

 

銀時が声を上げるが、なのはの声はおろか姿も見えない。

暗い廃墓地に独っきり‥‥その環境が銀時から次第に余裕を失わせる。

 

「なのはちゃーん!?おーい、なのは様!!三百円あげるから、お願い出て来て!!」

 

と土下座をした時に後ろから

 

パン!

 

「ひゃゃゃぁ!!」

 

「ぷ、アハハ」

 

銀時が後ろを向くと。

 

「てめぇ、なのは!!何しやがる!!」

 

「アハハ、ごめん、ごめん。銀さんがあまりにも怖がっていたからつい...」

 

苦笑しているなのはが居た。

 

「何が“つい”だよ!こっちはなぁ‥‥」

 

銀時は揺れた。此処で認めて怖がっている事がばれるのが良いか、それともと意地を張るか、しかしこれ以上ビビらされるのもごめんだ。

そんなことを考えているとなのはが、

 

「あれ?」

 

「どうした?なのは」

 

「あそこに誰かいる」

 

なのはがある方向を指さす。

 

「おいおい、二度もそんな冗談に‥‥」

 

銀時が呆れながら、なのはが指さした方向を見ると其処には、確かに小学生くらいの赤いワンピースを着た女の子が1人ポツンと立っていた。

 

(おいおい、なんであんな所に女の子が1人いるんだよ)

 

銀時は廃墓地に1人で立っている女の子に不気味さを感じた。

その女の子はなのはと銀時の姿を確認するとクルッと踵を返して廃墓地の奥地へと走っていく。

 

「あっ、待って!!」

 

なのはは廃墓地の奥に走って行く女の子を慌てて追う。

先日のダイゴとミチルの事件を経験し、心配になったのだろう。

 

「おい、なのは」

 

銀時もなのはを1人にするわけにはいかず、なのはを追いかけて行った。

と言うか、なのはが女の子を追いかけて行くと必然的に自分も1人になってしまうので、必死になのはを追いかけたのであった。

 

 

~side三組目~

 

「あはは、本当に出そうだね~。」

 

能天気に話しているのは青髪の少女のスバルだ。

 

「スバルさんはこんな時でもいつもと変わらないですね。」

 

ペアはこの男とく~に何も無いぱっとしないしいても居なくても変わるのか変わらないのかわからないぐらいの新八である。

 

「うん、だってワクワクするし、なんか出ても面白そうだし、何もいなくても面白いし」

 

「はは」

 

苦笑いを浮かべる新八そしてほかのメンバーが心配なのである。特に銀時が...

しかし、彼らがゴールについた時、妙な事があった。

 

「あれ?銀さんとなのはさんは?」

 

ゴールについた時、先に出発した筈の銀時&なのはペアがまだゴールしていなかった‥‥。

 

 

~side四組目~

 

「何だか怖いよ、エリオ君」

 

次の組はエリオとキャロだ。

 

「大丈夫だよ。僕がいるし。」

 

何とも逞しい少年のエリオ。

 

「エリオ君、ありがとう」

 

と肩にもたれかかれるキャロ

 

「わ!?キャロ」

 

急に密着して来たので驚くエリオだった。風呂上がりのダイレクトな髪の匂いがまた変に緊張をよんだ。

 

 

~side五組目~

 

さて次の組は初の女性のみ神楽とアリサだ。

 

「え、やっぱりフェイトとあのツナって子はできてんの!?」

 

「そうアル、よく一緒にいるのを見かけるネ」

 

何やら恋バナのようだ。何もこんなところでしなくても...

 

「へぇ、あのぱっとしないしないのがね~」

 

「いや、あれはギャップルールネ」

 

神楽が腕を組みながら話す。

 

「ギャップルール?あの子にそんなにギャップがあるの?」

 

「普段はぱっとしないとしてないけど、戦っている時はすごいぐらいネ。」

 

「本当に?」

 

「本当アル」

 

「ね、ねぇ‥‥神楽」

 

「ん?何アル?」

 

「その‥‥なのはって、あの銀時って人の事、好きなの?」

 

「えっ?なのはが銀ちゃんを?ないない!!それは絶対にないアル。銀ちゃんは巨乳美女が大好きネ、なのはは銀ちゃんの好きなオッパイのレベルにはいってないネそれに銀ちゃんあるお天気アナにご執心ヨ。」

 

「そ、そう‥‥」

 

親友があんな死んだ魚の目の様な男とくっつかない事に喜んでいいやら、胸が小さいと言われて哀れんでいいやら複雑な心境のアリサだった。

 

 

~side六組目~

 

「やはりこういうのは面白いですね。」

 

「少し怖いけどいい雰囲気が出ている。」

 

次のペアはすずかとバジルだ。

 

「日本の墓地はイタリアと同じ石造りでも雰囲気がまたそれにあの木もなかなか風情がありますなぁ」

 

とバジルが言っていると、

 

「本当に日本はいい国です。」

 

「ありがとう。」

 

バジルは目を光らせて周りをみてそれを微笑むすずかであった。

 

 

~side七組目~

 

この組もまた女性ペアだった。

 

「ただ、墓場を歩くのがそんなに楽しいのか?」

 

人によっては夜に墓を歩くのが楽しい筈がないのだが、ヴィータは楽しさも恐怖も感じず平然とした様子でスタスタと歩いて行く。

 

「そういうな、主はなかなか楽しんでいた。」

 

「よくわかんねぇ、でもたまにはいいかもな、FWメンバーもなかなか気を緩めることできなかったし。これで少しでも気が楽になったら」

 

とヴィータが言っていると

 

「何だよ?」

 

「いや、やはりお前はだいぶ過保護だなと思ってな」

 

シグナムが少し微笑みながら言うと、

 

「う、うるせぇ////」

 

ヴィータは恥ずかしさか顔を赤く染めてシグナムからプイッと顔を逸らした。

 

 

~side八組目~

 

ラストの炎真&シャマルペアに見送られてツナ&フェイトペアは出発した。

 

「ハァックション!」

 

「大丈夫?ツナ」

 

「は、はい、大丈夫です。」

 

サウナから一点極寒の寒中肝試し寒気が止まらない。

 

「はい、コレ。使って」

 

フェイトはツナにティッシュを渡した。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「いいよ、気にしないで」

 

ガサッ!

 

風が草を揺らした。

 

「キャ!」

 

この音にフェイトは驚き

 

ギュッ

 

「フェ@#/&_#!?」

 

ツナの脳内は現在処理不可能になっていた。

 

そして3秒後に

 

「は、ごごごごごめんね、ツナ」

 

慌ててツナから離れるフェイト。

 

「いい、いえ、だだだ大丈夫です。」

 

ツナは今が肝試しの最中だと忘れるぐらい別の意味で動揺した。

すると、

 

ガサガサ

 

今度は風ではなく、誰かが草木を掻き分け、近づいてくる。

 

「だ、誰?」

 

ツナが震える声で尋ねる。

 

「き、きっと、野犬か野良猫だよ‥‥」

 

フェイトも震える声でこの音を出している者の正体をツナに言う。

 

「そ、そうですよね?こんな所に俺達以外の人なんて‥‥」

 

ツナは震えながらも必死に理性を保とうとする。

しかし、音は次第に自分達に近づいてくる。

そして、その音源が自分達の至近距離まで近づくと‥‥

 

「ギャー!」

 

今度はフェイトの胸に思いっきり顔が入り込んでしまったツナ。

 

「ちょ、ツナ!?」

でもフェイトも怖いためにそのままがっしりとツナを抱きしめた。

 

そして出てきたのは。

 

「あれ、銀時?」

 

「んぁ?フェイトにツナか?」

 

「どうしたの?なのはは?」

 

「いや、それが‥‥お前ら、なのはを見なかったか?」

 

「え?見てないけど‥‥」

 

「そうか、どこいったんだ?」

 

こんな会話をしていますが読者は忘れてないですよね現在ツナがどのような状況なのか‥‥

 

チーン

 

「おい、フェイトお前」

 

と指さすと動かなくなったツナが居た。

 

「あ!?ツナ!!」

 

胸から解放し、ツナが地面に激突してそこで意識が戻る。

 

「プハー、やっと息できた」

 

スーハーと息を吸い込んでいる。

 

「ごめんね/////ツナ」

 

「い、いえこちらこそ/////」

 

ツナが出した精一杯の言葉がこれだった。

最初の抱きしめで情報処理機能が壊れたのにさらに刺激を加えた。電化製品を塩水にうっかり落としてそこから復活させようと叩いたのと似た状態だ。

 

(コイツ、上手い事やりやがって‥‥羨ましい‥‥)

 

銀時はラッキースケベでフェイトの胸に顔をうずめたツナを羨ましがる。

もし、この場に新八が居れば、お化けよりも怖い生き霊が降臨したかもしれなかった。

 

「あれ?銀さん。なのはさんと一緒じゃなかったんですか?」

 

そこで漸く銀時の存在に気づき、ペアであるなのはの姿が見えない事に疑問を感じたツナ。

 

「それが、逸れちまったんだ」

 

「「逸れた!?」」

 

銀時が何故、なのはと行動を共にしていないのかを話、驚くフェイトとツナ。

 

「銀時、まさか肝試しが怖いからってなのはを置いてきぼりにしたの!?」

 

「銀さん流石にそれは...」

 

銀時を白い目で見るフェイトとツナ。

 

「ばっ、ちげぇよ!!なのはの方が俺を置いて行っちまったんだよ!!」

 

「なのはが!?」

 

フェイトは親友の名に反応する。

 

「...てかツナ、さっきの状況見たらお前の方が絶対に白い目で見られているからな!!新八が見たら絶対に殴られているからな、お前!!」

 

と銀時が言うと、ツナは赤くなる。

 

「それよりもなのはどこに行ったの!?」

 

フェイトが銀時に詰め寄り親友の行方を尋ねる。

 

「それが。ヴィータくらいの女の子がいて、その子を追いかけて行っちまって‥‥」

 

「ヴィータくらいの女の子?」

 

「それ、ヴィータさん本人じゃなかったんですよね?」

 

「ヴィータがなのはの姿を見つけて墓地の奥地へ逃げるか?しかもゴールとは全然違う方向だったんだぞ」

 

「確かに妙ですね」

 

「うん‥それ以前に、こんな時間‥しかもこんな場所に女の子がいるなんて‥‥」

 

「その女の子は1人だったんですか?もしかしたら。俺達みたいに肝試しをしていたんじゃ‥‥」

 

「い、いや、1人だった」

 

「「「‥‥」」」

 

銀時の台詞を聞き、何やら冷や汗を流すツナとフェイト。

台詞を言った銀時自身も冷や汗を流し顔を引きつらせる。

 

「あ、あの‥‥銀さん‥フェイトさん」

 

「なんだ?ツナ」

 

「な、何かな?ツナ」

 

「その‥‥言いたくはないんですけど‥‥」

 

「な、なら何も言うなツナ。黙っていろ」

 

「は、はい‥‥」

 

銀時は必死にツナを黙らせる。

恐らくこの場に居る全員が同じ事を連想したのだろう。

 

「もしかして、なのはと銀時が見たのって‥‥」

 

「ちょっ、フェイトちゃん!!それ以上言っちゃダメ!!」

 

今度はフェイトを黙らせようとする銀時であったが、

 

「もしかして‥幽霊?」

 

言ってしまった。

 

「言っちゃったよ!!この娘!!言っちゃったよ!!」

 

「それは言ってはいけない!!ここでそれを言ってしまったら!!」

 

「あっ、ご‥ゴメン」

 

NGワードを言ってしまったフェイトを攻める銀時とツナ。

フェイトは悪い事をしてしまったとシュンとする。

その時、

 

パキッ

 

廃墓地の奥で枝を踏む音がした。

 

「「「っ!?」」」

 

その音に反応する3人。

 

「今の音聞いたか?」

 

「う、うん‥‥」

 

「誰か‥来る‥‥」

 

ツナの言う通り、枝を踏む音の後、ザッザッと枯草や落ち葉を踏みしめて誰かが自分達の方へとやって来る。

銀時は洞爺湖を構えてツナはグローブをはめて警戒する。

フェイトは此処が管理外世界の為、不用意な魔法は使えず、デバイスを起動させることが出来ないので、何もできない。それでも誰かが近づいてくる方向を睨む。

そして廃墓地の奥から出てきたのは‥‥

 

「「「なのは(さん)!!」」」

 

そう、廃墓地の奥から出てきたのは、銀時と逸れたなのはだった。

 

 

 

~sideラスト~

 

「炎真君、昼間切った所はもう大丈夫?」

 

「はい、絆創膏をもらいましたし。」

 

ラストは炎真とシャマルだ。

 

「そう、よかった。」

 

と雑談をしていると

 

「!!?」

 

「どうしたの?炎真君」

 

炎真がなにかに反応した。

 

「炎?この炎はまさか!?」

 

と炎真は走り出した。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。

この頃なのはさんばっか事件に巻き込まれてる気がする。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的35 死んでからも色々あるさ!

更新です。


 

 

海鳴市の郊外にある廃墓地。

とある出張任務でこの地へとやって来た機動六課の面々は風呂上りにこの廃墓地で肝試しを行う事になった。

クジでペアを組み、肝試しに望んでいく機動六課の面々。

そんな中、銀時となのはのペアは1人の女の子の姿を見つける。

夜も遅い時間、しかも廃墓地に女の子が1人いるのは余りにも妙だった。

そして、その女の子は1人、廃墓地の奥へと消えて行く。

なのはは心配になりその子を追いかける。

銀時も追いかけたが、なのはを見失ってしまう。

1人、なのはを探す銀時はフェイトとツナのペアと合流。

3人はなのはが追いかけていった女の子の正体にもしやと言う思いが過ぎる‥‥

そんな中、探し人であるなのはが3人の前に現れた‥‥

 

 

「もう、銀時と逸れたって聞いて心配したんだからね」

 

「‥‥」

 

フェイトがなのはに声をかけるが、なのはは俯き、無言のまま何も答えない。

 

「なのは?」

 

そんななのはの態度にフェイトは怪訝そうな顔つきでなのはに声をかける。

 

「フェイトさん!気を付けて!!その人、なのはさんじゃない!!」

 

「え?」

 

ツナの言葉にフェイトは驚き

俯いたままのなのはは、いつもと何かが違う、いつもの優しい雰囲気ではなく、ましてやピリピリしているわけでもない。なんと言うか...一言で言えば何も無いと言う感じだ。

感情の一切を感じられない。

それどころか、生気も感じられないように思える。

 

「おい、なのは」

 

今度は銀時がなのはに声をかけると、

 

「‥‥」

 

なのはが手をスッとあげると突如、その変に放置されていた古い桶やらバケツやらが浮かび上がった。

 

「魔法!?」

 

フェイトが桶やバケツが浮かんだ現象を見て、なのはが魔法を使用しているのかとおもった。

 

「いや、違う!!これは何か別の力だ」

 

なのははデバイスを起動させておらず、この力が魔法以外の何か別の力であると判断したツナ。

やがて、なのはの近くに浮いている桶やバケツは3人に向かって飛んできた。

 

「危ない!!」

 

「ちっ」

 

飛んでくる桶やバケツを躱していく3人。

 

「止めて!!なのは、私だよ!!」

 

「‥‥」

 

フェイトはなのはに必死に声をかけるが、なのはからは返事が返ってこない。

今のなのはは明らかに様子がおかしい。

 

「くそっ」

 

銀時が止まり指示を出す。

 

「フェイト、お前は他の連中にこの事を伝えて来い!」

 

「わ、わかった」

 

フェイトは急いでゴールで待っているみんなの下へと向かう。

 

「ツナ、やるぞ。」

 

「わかっている。」

 

ツナは既にハイパー化している。

 

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

なのははずっと無言だ。

 

「なのは?」

 

銀時が怪訝そうな顔でなのはに再び声をかける。

すると、

 

なのはが顔をあげると。

その目は生気を宿している目ではなかった。その目には何も映ってない何も感じてなかった。

 

「なのは!!」

 

「.....」

 

なのはの様子がおかしいのは明らかであるが、その原因がもしかしたら自分にあるんじゃないかと思って

 

「もしかしてお前」

 

と声を出す。ツナはそれを聞いていた。

 

「この前の事件の時、なのはに胸が小さい事を指摘してまだ怒っているのか?」

 

「‥‥」

 

流石のツナも銀時に『何を言っているの?』見たいな顔をした。

 

「いや、銀さん。それは無いでしょ‥‥」

 

「そうか?それじゃあ、なのはのプリンを食べちまってその罪を獄寺にきせたことか?」

 

「あれ、銀さんが犯人だったの!?」

 

銀時の罪の告白に驚くツナ。

 

「いや、それかなのはが買ってきたケーキを食べちまってそれを獄寺の仕業に偽装した事かバレたのか?」

 

「それも!?銀さん、獄寺君になにか恨みでもあるのか!?」

 

事あるごとに自分の罪を獄寺に着せた銀時の行動にちょっと引くツナ。

 

「どれもこれも銀さんが悪いんだろうが、今回は違うと思う。‥‥あの目、何かに憑かれてるみたいな...」

 

「.....」

 

「いやいや、沢田君、それは無いな!」

 

銀時が虚勢を張る。

 

「.....憑かれてるにして何にしても、なのはさんを正常に戻す必要がある。」

 

「ねぇ、沢田君、聞いていた?おじさんの話聞いていた?てか、お前その状態だとめちゃくちゃ冷静だな。」

 

そんなことを言っていると

 

なのはの身体からは黒いモヤの様なモノが滲み出てきた。

そして‥‥

 

「アハ‥アハ‥‥あははははははははははははは‥‥」

 

なのはが突然高笑いをし始めた。

 

「な、なのはさん。それはどちらかと言うとティアナが似合っていると思いますよ‥声的に‥‥貴方は『にぱー☆』とか言って、あざとい笑みを浮かべている方がにあっていますよぉ~」

 

高笑いをしているなのはに対して思わず丁寧口調になる銀時。

 

「銀さん、何を言っているんです?」

 

「いや、何となくだ‥気にするな」

 

「はぁ‥‥」

 

「あはははははは‥‥ねぇ、私と遊ぼう‥‥」

 

高笑いをやめたなのはの顔は目は死んでいる魚の様な目であるが、表情は寒気が走る様な笑みを浮かべていた。

 

 

ボコっ

 

バキッ

 

そして、最初は桶やバケツであったが、なのはから出てくる黒モヤの量が多くなってくると、今度は墓石や朽木までもが宙に浮き始める。

 

「おいおい、マジかよ‥‥」

 

宙に浮く大量の墓石を見て顔を引きつらせる銀時。

 

「ナッツ!形態変化防衛モード!」

 

ツナも宙に浮く大量の墓石を見て即座にナッツを出した。

 

「I世のマント!」

 

ナッツをマントに変えて銀時より前に出て防御しただが量が一向に減らない。

 

「ちっ、すまねぇなのは」

 

銀時は今のままでは埒が明かず、なのはを正気に戻すことが出来ないので、やむを得ずなのはを攻撃し、彼女を失神させようとした。

すると、

 

パシッ

 

なのはは銀時の一撃を片手で受け止める。

 

「なにっ!?」

 

そして、なのははもう片方の手を銀時にかざすと、そこから黒炎の様なモノを出し、銀時を攻撃する。

 

「ぐはっ!!」

 

なのはの黒炎を喰らい銀時は吹き飛ばされる。

 

「銀さん!!」

 

銀時が攻撃を受けた事で、彼の様子が気になり、なのはから視線を逸らしてしまった。

その隙をついて、なのはツナとの距離を詰め、ツナの頭部を蹴った。

 

「ぐっ!!」

 

倒れた銀時とツナに大量の墓石が襲い掛かる。

 

「ちっ、」

 

「うわぁ!!」

 

銀時とツナは、最初は転がりながら墓石を躱し、タイミングを見て起き上がり、墓石を躱していく。

 

「もっと、もっと!!もっともっともっともっと!!」

 

「な、なのは?」

 

さっきとは一点まるで子供みたいに叫ぶ。

 

「どうしたんだ。」

 

「.....銀さん、少し」

 

「あぁ、」

 

ツナは銀時と耳打ちをして

 

「行けるのか、お前それは」

 

「大丈夫だ。」

 

ツナの真剣な表情をみて銀時も

 

「わかった。しっかりやれ」

 

と銀時が動く。銀時が動くとなのはも動きを見せた。銀時にもう1度あの黒炎をしかも大量に‥‥

 

「ち、」

 

放たれた黒炎を銀時が洞爺湖で壊しながら進むと崩れた墓石の破片で足をキズつける。

 

「ち!?...ウォォォォォ!!」

 

その足をものともせずに進む

 

「てめぇの相手は俺だ!」

 

銀時は急に右にそれた。それを追いかけるようになのはが行く距離が近づくと

 

ガァッキィーン!

 

銀時の洞爺湖となのはの腕をがぶつかる。

 

「すまねぇ、後で謝るから今は我慢してくれ!!」

 

銀時は本気で行った。銀時の洞爺湖に合わせて躱していくなのはそしてまた黒炎を出し

 

「ワンパターンすぎんぜ!」

 

銀時は腕を掴んでそのまま上に投げて空中で止まりなのははそこから放とうとすると

 

「ゲージシンメトリー、発射スタンバイ。」

 

「なのは!!」

 

急な声に反応してツナを見るとツナはX BUNERを放とうとするがなのはが右に旋回して

 

「く!」

 

標的がさだまらない。そんな時

 

「今だよ!!ツナ君!!」

 

なのはの動きが止まったのを見るとそこには球体が出てきてそこに吸い寄せられていた。シャマルと炎真が駆けつけてくれていた。炎真自身何があったのかわからなかったがツナが何も考えないでX BURNERを放つわけがないなので手を貸した。

 

「X BURNER Air」

空中でを放ちなのはに当たった。この炎はツナの調和の炎のみで構成されていていた。

 

なのははそのまま落ちてきた。

 

「く!間に合え!!」

 

銀時は走り出してなのはをダイビングキャッチ...したはいいがバランスを崩して

 

「お、あぁぁ」

 

ゴロゴロ転がった。

 

「なのは!おい、しっかりしろなのは!!」

 

となのはの名を叫んでいると

 

ヒュぅぅん~

 

ボワン

 

「は、」

 

まさに幽体離脱なのはの身体から小学生ぐらいの少女が出てきた。

 

「.....暖かかった」

 

と呟いてツナを見ると、

 

「さっきの炎、暖かかった。痛みも何も感じなかった。あれは何!?何なの!?」

 

少女は鬼気迫る顔でツナに尋ねた。ツナと銀時は面を喰らった表情でこう返した。

 

「あ、あの、貴方は何者ですか?」

 

「う、ウ~ン、あれ‥‥此処は‥‥?」

 

「お、目が覚めたか?なのは」

 

「う、うん?それよりここは.../////」

 

現在進行形でなのはは今銀時に抱っこされている状態だ。

なのはが目を覚ましたので銀時はなのはを下ろすがまだふらついていたので銀時が肩を貸した。なのはが目を覚まして少し経ったらはやて達が来た。ツナの炎を感じたバジルと獄寺そしてリボーンが先導してそして

 

「大丈夫か?」

 

「うん」

 

「あの‥‥それで、君...は?」

 

新八が聞く。この時期と全く噛み合ってない服装の少女

 

「...私の名はアリサ、アリサ・ローウェル」

 

「え?私と同じ名前...てか、声は違うけど、顔は小さい頃の私とそっくり!!」

 

見た目は小学生ぐらいだが確かに小さい頃のアリサにそっくりだった。

ただ幼少の頃のアリサと声が違うのと少し髪の色が違うという程度だ。

もし、アリサ・ローウェルとアリサ・バニングスが同じくらいの年頃に出会っていたら、双子の姉妹ですと言われても信じてしまうくらい似ていた。

 

「ほんとアル、でも、何か近くに変な火の玉が浮いているアル。熱くないアルカ?」

と女性陣の1部...というより天然の人達は盛り上がっていた。

 

「ね、ねぇ銀さん、あれって‥‥」

 

新八は耳打ちで話す。

 

「言うな、何も言うな、そんな事あるわけねぇよ。その証拠にちゃんと足があるじゃねぇか」

 

「でも見た目からしても‥‥それに彼女、なんか透けていますよ」

 

「バカヤロー、この時期でも半袖で過ごしたくなるよ。ちょっと暑いよ。それに透けているのは制作スタッフのミスだ、ミス」

 

「いやでも、100歩譲って暑いかったとしても、何で火の玉を出しているんですか?それに制作スタッフって何ですか?」

 

「じゃあいいよ、譲ってやるよ100歩ぐらい。きっと寒いんだろ。世の中ライターをストーブとして過ごしている人だって居るんだよ。火の玉ぐらいもありゃ完全暖房の効いた部屋になるさ。」

 

「そうですか、そうですね...て言うか火の玉出ている時点でおかしくないですか、何であの子あんなに自由に火の玉使っているんですか?」

 

「そりゃあれだろ。幽霊だからだろう。きっと‥‥」

 

銀時がこれまで認めたくなかった言葉を言い放つ。

すると、

 

ダッシュ!

 

新八と銀時はいきなりダッシュした。だが怖いのか足がすくんで転んでしまった。

 

「ちょ、何してるんですか!」

 

ツナが言う。

 

「ちょ、ちょっと厠に」

 

と一応銀時を立たせる。

 

「ツナお前も見ただろ、あの炎、あの格好、あれは」

 

「だだだだだだ大丈夫でですすよ。まだみと、みと、認めてないですし。」

というツナ顔は真っ青で足がガクブル状態そして何より冷汗ダラダラ。

 

「私...実は地縛霊なの」

 

アリサ・ローウェル本人が自らが幽霊だと認めた。

 

 

「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁでぇぇぇぇぇたぁぁぁぁぉ!」」」」

 

キーン

 

全員耳を抑えた。新八ツナそして銀時の悲鳴が全員を襲った。

 

「ちょ、叫び過ぎよ。」

 

「本当に出た。やっぱ出やがった!」

 

「どうしましょう?僕らどうすれば!?」

 

と勝手に盛り上がっている人たちはほっといてまた違う意味で盛り上がっている人物もいた。

 

「お前、マジで幽霊なのか...幽霊なのか!!」

 

こういうのが大好きの獄寺だ。

獄寺はまずまじまじと見てそこから

 

「すまねぇ、少し触っていいか?」

 

と聞くもんだからそれに反応して

 

「何言ってんの!?ダメに決まっているでしょう!!」

 

「って言うか!触れるの!?」

 

ティアナが獄寺に止めなさいと言い、アリサ・バニングスが幽霊であるアリサ・ローウェルに触れるのかを尋ねる。

通常、幽霊と言うのは一般の人には見えるものではないし、まして手で触れられるモノでもない。

 

「多分‥私にもわからないけど、この世の未練が強すぎるからそれに伴って...」

 

「この世の未練って?」

 

すずかがアリサ・ローウェルにこの世に地縛している訳を尋ねる。

 

「私は自分でも自覚できるぐらい天才だったの...でも、そのせいか私には友達がいなかった...私はずっと1人だった...そして私は誘拐され、殺された‥‥」

 

蘇る記憶は恐怖でしかない。不良グループにより誘拐され、薬物投与の後に強姦されたあげく、証拠隠滅のため殺害された。

 

「てことは、まさか犯人に復讐する為に?」

 

「そう、」

 

ひぃぃ~とツナたち以外もおののいた。

 

「ってことで片付けば私はここにはいない。」

 

と言うことは

 

「復讐...したの?」

 

「した、犯人全員、い〇きみたいな顎にしてやった。」

 

(ちっせぇぇぇぇ、やる事ちっさいよ。)

 

ここにいた人は全員そう思っただろ。

 

「そりゃそんな事で恨み晴れないでしょ。と言うか何で顎のみの復讐」

 

「いや、他にもしたけど...」

 

「だよねだよね、そんな事で恨み晴れないもんね」

 

「でも...あまりにもちっさい復讐だから」

 

(それ以上にちっさいってどんな事)

 

「一族郎党全員谷の下に送ってあげた。」

 

「「「「何でだぁぁぁぁぁ!!」」」」

 

「何で、顎変形させてから谷の下に送っているの。顎関係ねぇじゃねぇか!!」

 

銀時がおもわずツッコミを入れる。

 

「私と同じひとりの辛さを味合わせるために...谷の下に送ったの。そしてじわじわと不安、恐怖、疲労を与えて惨めに死んでいく様を味あわせた‥‥」

 

「だから顎関係ねぇだろ!!」

 

「でも成仏できなかった。」

その時

 

「自分に任せてください。」

 

獄寺が自信満々に言うと、獄寺がアリサ・ローウェルの前にでて

 

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列」

 

と手を振りながらお教を唱えた。

 

「この馬鹿!!」

 

とあちゃという感じでティアナは頭に手を置いた。

そしてリボーンが獄寺の頭に飛び乗り

 

「ガァッ!」

 

「お前、何で今回ツナ達に絡んだ?」

 

「わかんない。でも...楽しそうだったから、皆で騒いで、怖がって、笑いあっていた。何か...何か...」

 

「そうか、なら楽しそうな事すっか。」

 

にっと笑うリボーン。

 

「楽しい事って...言っても。何も無いよ、あるとしても缶ぐらい。」

 

「なら缶蹴りするアル。こんなに人数いるんだし。男VS女でやるヨロシ。」

 

「缶蹴りって...」

 

「いいんじゃねぇのか、缶蹴り」

 

「ちょい、リボーン君何で缶蹴り?」

 

はやてはボソッとリボーンに聞いた。

 

「死んでからは感情なんてねぇはず何だ。あるとしたら生前の未練で生まれた感情、ツナ達に感化されて出てきたかもしれねぇが...生まれた感情を刺激すれば成仏できるかもしれねぇだろ。」

 

「そ、それはそうかもしれへんが‥‥」

 

はやてはリボーンの提案に渋々乗る。

と言うか、幽霊の成仏のさせかたなんて管理局の士官学校で教わるような内容ではないので、これといった決め手がなかったので、リボーンの提案に乗るしかなかった。

 

「じゃあ私が鬼、見つけた人を祟っていく」

 

アリサ・ローウェルが、自らが鬼を務めると言うが、その際のペナルティも言うと、

 

「なんだよ!?そのルール!!そんなの缶蹴りじゃねぇよ!!もはやただのデスゲームだよ!!」

 

銀時が間髪入れずにアリサ・ローウェルのルールに異議を唱える。

 

「大丈夫、祟られてもい〇きみたいな顎になるだけ」

 

「ちっともよくねぇよ!!」

 

銀時の懸命な説得の末、普通の缶蹴りが行われた。

神楽の提案通りの男子VS女子で

 

~side男子~

 

男子が鬼で女子が逃げる役ただ全員捕まるまで終われない。

 

「はぁ、何でこんな事を、」

 

「ま、まぁいいじゃないですか、たまには」

 

「10代目自分にお任せください。全員捕まえますんで」

 

と手を胸に当てて

 

「そうか~、なら全部お前に任せる。」

 

「てめぇらは自分でやりやがれ、10代目限定だ!」

 

と銀時と獄寺は口喧嘩が始まって

 

「缶蹴り、拙者とても楽しみです。」

 

「あの缶蹴りのルールって?」

 

エリオは缶蹴りのルールがいまいちわからなかった。

 

「えっと確か、鬼が逃げている人を見つけたら缶に足を置くそしたら捕まったことになって、逆に逃げている人が缶を蹴ったら捕まった人は全員逃げられる。」

 

「それって逃げている人がとても有利なんじゃ」

 

「そうだね」

 

 

~side女子~

 

「ローウェル、神楽いくら遊びでも負けるのは癪だし本気で勝つわよ!!」

 

勝つルール要は相手に降参させるつもりである。

 

「本気で行くわよ!!」

 

「お、おぉ」

 

「わかったネ」

 

と神楽がそう言うと、彼女は傘の先を缶...と言うより男性陣に向けると、

 

ズガガガァァァン!!

 

銃弾を乱射した。

 

「ちょ、なんてもの撃ってんの!?ってかそれは銃だったの!?」

 

「でもアリサは本気出す言うたネ。」

 

「ごめん、まさかそこまでやるとは...てかローウェル、貴方も何してるの何浮かべているの!!?」

 

とアリサはアリサ・ローウェルを見ると墓石程ではないが小さな石を何個も浮かべていた。それを

 

ヒューん!

 

ドーン、

 

「ちょ、アンタまで何やっているの!?」

 

「大丈夫、これぐらいでも死にはしない。もし、死んでも私が面倒をみる。幽霊の先輩として」

 

「そういう問題じゃない!!」

 

やられた男性陣は

 

「な、何で」

 

「缶蹴りってこんなに命懸けでしたってけ」

 

「そりゃ命知らずの馬鹿がこんなにいりゃそうなるは」

 

そして獄寺が立ち上がりきれたのかダイナマイトを出して

 

「てんめ~やりすぎだバカ共が、果てな!!」

 

と大量のダイナマイトを放り投げた

 

「ちょ、それはやりすぎ、」

 

とツナは止めようとしたが無駄であった。そしてそれを見ていたはやて達は

 

「ちょ、今何時やと思ってんの!?そんな騒がしいと警察に通報されんで」

 

時間帯より銃刀法違反で捕まるだろう。

 

「あぁ、もう獄寺君も神楽ちゃんもやりすぎだよ。」

 

「ならお前が死ぬ気で止めてみろ」

 

久々のセリフそして銃を構えたリボーンが

 

「いっぺん死んでこい。」

 

ドン!

 

「ちょ、お前何やってんだ!」

 

銃弾がツナの額にヒットした。

 

「やばいこれ死んじゃったんじゃないんですか!!?」

 

新八がツナを抱き上げるとツナの額に炎のみが灯って

 

復活(リ・ボーン)!!死ぬ気で全員捕まえる。」

 

パンイチ姿で蘇った。

 

「イッツ死ぬ気タイム」

 

「?どうなってんの?」

 

「こいつは死ぬ気弾と言ってこれに脳天を撃たれた奴は死ぬ気になって蘇る、死ぬ気になる内容は後悔したことだ。」

ツナは走り出して草や木の影から

 

「発見!!缶踏んだ!!他はどこだ!!」

 

これにより最初は五分で終わった。ただ一部の女性から変態扱いされている...

 

「ハァックション!」

 

「ツナ」

 

「フェイトさん、うぅ~さ、寒い」

 

「もう、こんな所で裸に...なる.....か...ら」

 

「?フェイトさん」

 

とツナはフェイトを見るとフェイトは赤くなりツナをじっと見ていた。フェイトの今の気分はとりあえずカメラが無いか探したい気分だ。

ツナは、見た目は細く優男だがだいぶしっかりとした筋肉がついている。

 

「あの、どうしたんですか?」

 

「え/////あぁ、いや、大丈夫、大丈夫だよ。とりあえずこれ着て」

 

とフェイトは自分の上着をツナに渡すが、

 

「いや、大丈夫ですよ、慣れているんで」

 

「ダメ!!風邪ひいてからじゃ遅いから」

 

とフェイトが言うが一応リボーンがもう1着持ってきていた。

 

「情ねぇな、ボンゴレを継ぐつもりならこれぐらい自分で対応しやがれ!」

 

「お前が急に死ぬ気弾撃つからだろ!!後、俺は絶対継がないって言っているだろ!!」

 

とツナとリボーンが口喧嘩している時

 

「何やあっさり終わってしもうた‥‥どや、成仏できそうか?」

 

「ううん‥‥」

 

はやてはアリサ・ローウェルに聞くが首を横に振った。

それも当たり前だ。アリサ・ローウェルが楽しむ前に終わったのだから‥‥

 

「ならもう一回するか」

 

はやてのこの言葉に賛成意見と反対意見が飛び交った。

反対派は主に男性陣が...だが女性の数の多さそれとこのままほっとけない事で夜中ずっと缶蹴りをしていた。アリサ・ローウェルもとても笑っていた。それはもう年相応の子供のように‥‥

 

 

 

 

やがて、朝日が昇ると‥‥

アリサ・ローウェルの身体がさらに透けていき‥‥

 

「ありがとう‥‥とっても楽しかった‥‥」

 

アリサ・ローウェルは微笑み、そして消えていった‥‥。

幽霊の筈なのに‥‥怖い筈なのに、アリサ・ローウェルが消えた時、涙を流す者もいた‥‥。

ただ、この日、アリサ・バニングスとすずかは大学を休み、エリオとキャロは昼過ぎまで爆睡。

はやて達大人組はグロッキー状態のまま海鳴のどこかにあるとされるロストギアの捜索を行う羽目になった。

 

 

「やっと見つかった~。」

 

気のない声でだら~んと机にうつ伏せ状態のはやてが言った。はやての態度からもう全員が限界に近かった。そりぁ朝まで遊んで寝ずに缶蹴りしてそこから捜索だ。さすがのなのはもぐったりと倒れてた。

 

「封印も完了したしそろそろ帰んで~」

 

「わかりました~」

 

全員が帰る準備を始める前に倒れてしまった。その為夜に帰ることとなった。そのおかげでアリサとすずかとも別れの挨拶ができた訳だが...

 

「それじゃまたね、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

「えぇ、」

 

「そうね、神楽も元気でね」

 

「うん、またいつか絶対会うネ!アリサ」

と神楽が言うとアリサは神楽の頭を撫で

 

「すずかちゃんも体に気ぃつけてな」

 

「えぇ、はやてちゃんもね」

 

すずかははやてに微笑む

 

「それじゃ転送すんで」

 

別れを惜しむものまた会えることを期待するものそして中には

 

「あ、パフェ忘れてたぁぁぉぁぁ!!」

 

と嘆く者もいた。これは誰かは言わずもがなである。

 

 

その後、アリサとすずかが気になって調べてみた所、確かに20年ほど前、あの廃墓地の奥にある廃墟にてアリサ・ローウェルと言う名前の私立聖祥付属小に通う4年生の女子児童が殺害された新聞記事を見つけた。

 

「やっぱり、本当だったのね」

 

「みたいだね‥‥」

 

「あの子、生きている間も‥そして死んだ後もずっと一人っきりだったのね‥‥」

 

同じ名前と似た容姿を持つアリサは他人事には思えず、アリサ・ローウェルが犯人達に復讐するのも無理は無いと思った。

 

「でも、ちゃんと成仏できてよかったね」

 

「そうね‥‥」

 

後日、アリサとすずかはアリサ・ローウェルの殺害現場である廃墟を訪れ、花束とお線香を捧げ、アリサ・ローウェルの冥福を祈った。

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的36 恋のない所に煙はたたない

更新です。


~sideはやて~

 

「これか?カリム」

 

「ええそうよ。謎のロストロギア」

 

「これを少し、管理局の方で調べて欲しいの。」

 

「わかった。ええで」

 

「ごめんね、この前も頼み事してもらった後に」

 

「別に気にしんといて、うちとカリムの仲やん」

 

快くはやてはカリムの頼みを聞いてこの謎のロストギアを受け取った。

 

 

~side廊下~

 

ということで教会から謎のロストギアを持ち帰ったはやて。

 

「確かに、何か違う気ぃするな」

 

「あっ、帰ってたの?はやて。」

 

「あぁ、ツナ君とフェイトちゃん。ん?何や?2人っきりでお仕事とは妬けるなぁ~」

 

はやての言葉を聞き2人は忽ち赤くなり、

 

「いや別に、あの、え~と////」

 

「そ、そ、そういえばはやては何で出ていったの?////」

 

赤くなりフェイトがはやての外出した要件を尋ねる。

 

「ちっ、...(ボソ話題かえよったか)カリムにな、これを少し調べてほしいと頼まれてん。」

 

はやてがボヤキながらも外出した件とカリムから預かったロストギアをフェイト達に見せる。

 

「これは?」

 

「ロストロギアやと思うんやけどな」

 

フェイトに渡した。

 

「レリックとは少し違うね」

 

全体を見ながらフェイトはいいそしてはやてに返そうとしたら。

 

ポロ、

 

コンコン‥‥

 

手を滑らせてしまい、預かったロストギアを床に落としてしまった。

 

「はい、落ちまし‥‥」

 

ツナが落ちたロストギアを拾った途端、突然俯く‥‥

 

「ちょっ!?ツナ君?大丈夫か?」

 

「ツナ?」

 

突然、俯いてしまったツナにはやてとフェイトが声をかける。

すると

 

「フェイトさん!」

 

俯いていたツナがバッと顔を上げると‥‥

 

ドン

 

「えっ、えっ、」

 

ツナはフェイトを壁に追い込み、手で壁を叩く。

世間でいう壁ドンと言う奴だ。

 

「つ、ツナ君。何や?急に?」

 

「フェイトさん、いやフェイト、君を見ていたら胸が高まってきて・・・」

 

「ちょ、えっ、えっ」

 

ものっそいオロオロしているフェイト。

 

それを見てはぁ、はぁと興奮しているはやて

 

「ちょ、どうしたの?きゅ、きゅ急に」

 

瞳があっちこっち行き来していた。

 

「‥嫌なのか?フェイト?」

 

(凄い、口調がハイパー化しとる。)

 

「いや、じゃ、な...いけど/////」

 

フェイトの目はバシャバシャと言う音を立てていた

 

「なら俺を受け入れてくれ。」

 

もう密着していると言ってもいいぐらい近かった。

 

「これは一体」

 

「これのせいじゃないのか?」

 

リボーンが指を指して。

 

「う~ん、リボーン君!何やその格好。」

 

愛のキューピットのような格好していた。

 

「ちゃおっス、シャーリーに作ってもらった、でこいつは?」

 

「知り合いに調べてって頼まれてん。まっ、色々気になるし調べよか。」

 

 

~sideシャーリー~

 

ここにはシャーリー、そしてはやて、リボーン、なのはがいた。

 

「はやて部隊長!だいたいわかりました。これは男性のみで興奮状態にして恋愛に似た感情をもたらす効果らしいですね。」

 

「なるほどな、だからツナ君があんなにフェイトちゃんに。」

 

「これは男性の理性を抑えて獣に近くするぐらい強いのが問題、でして」

 

「それってヤバくないか!?このままだとフェイトちゃんの貞操が!!」

 

「恐らくそれは大丈夫だろ、あいつはどんなになってもな、度胸がねぇからな。」

 

やれやれとリボーンが言う

 

「「「ああ、確かに」」」

 

何故かみんなが賛同した。

 

「それよりそれは他の人にも効くのか?」

 

「多分効くと思うよ。」

 

ニヤっとして、レオンをマジックハンドに変えてロストギアを持ち去った。

 

「ちょ、えっ、リボーン君!?」

 

「何すんやー!!それはおもちゃとちゃうんやでー(棒読み)」

 

「はやてちゃん止めるき無いでしょ。( 'ω')」

 

なのははジト目ではやてを見た。

 

 

~sideなのは&はやて~

 

リボーンを追いかけている。なのはとはやて。(はやての頬にもみじがついているのは気にしない。)

 

「あぁ、もうどこ行ったの?リボーン君!あれがもし、男性の手に渡ったら‥‥」

 

「そやな、銀ちゃん達に渡ったら。」

 

ピク

 

ボン

 

となのはから煙が立あがる。

 

「ねぇ」

 

「どないしたん?」

 

「ツナ君ってどうゆう風になっていたの?」

 

「どうって...言うたらあれやな、ツナ君のパイパー化みたいな感じやった。そこに壁ドンとか大胆な行動もしとったし。」

 

 

~sideなのはの妄想~

 

どこか知らない場所。目の錯覚か、周りはピンクの煙がたっていてそこに2人のカップル。とベットが置いてあった。

 

「待たせたななのは。」

 

「銀さん...」

 

いたのは銀時となのは

しかも何故か両者裸!!

 

「俺はな、好物は最後にとって置くタイプなんだよ。フッ、待ったかいがあったぜ。」

 

「ぎ、銀さん‥‥」

 

ベッドに寝転んでいるなのはの上に覆いかぶさると、

 

「さて、メインディッシュをいただかせてもらうぜ。」

 

顔が少し少し近づいていきしまいには

 

「やっと...」

 

 

~side現実世界~

 

1人でハァー!キャー!と顔を赤くし、体をモジモジと悶える。

流石のなのはも隠しきれていなかった。そんな親友を見ていたはやては、

 

「なのはちゃん、なのはちゃん。私おるから...そのあんま大人の妄想の世界に入り込まんといて、この作品R18禁やないから」

 

しかし、はやての忠告も今のなのはには耳に入っていなかった。

 

「あっ、銀ちゃんの声や」

 

「えっ!?」

 

はやての『銀ちゃん』と言うこの言葉だけで、なのはは現実世界へと戻した。

 

「‥早いな。えっと‥‥こっちからしたで‥‥」

 

そこで、銀時の声がした部屋に入ると、

 

「銀さん」

 

そこには確かに銀時がいたが‥‥

 

「へい、シグナム。俺と今夜レッツパーリィしないか、ベッドで‥‥忘れなれない一夜にしてやるぜ」

 

「何を言っているんだ貴様は!//////」

 

シグナムは羞恥なのか怒気なのか分からないが、顔を赤くしていたし、狼狽えていた。

 

「おい、シャマルお前もどうだ?」

 

「『どうだ』と言われてもね‥‥」

 

シャマルはシグナムほど狼狽えてはいなかった。

 

「いいじゃねぇか、俺に体預けるぐらい。」

 

シグナムとシャマルにナンパをしていた。銀さん。

 

「‥‥」

 

「‥‥」

 

この光景を見たはやてとなのはは時が止まりそして、

 

「ん、なのはお前も一緒にどうだ?俺と‥‥」

 

と銀時が台詞を言い終わる前に、

 

「銀さん‥ちょっと頭を冷やそうか?‥‥レイジングハート‥‥」

 

「オーライ」

 

「淫獣滅殺。ショートバスター!!」

 

と叫び、銀時に魔砲を撃ちこむ。

 

「ぐわぁぁぁぁ」

 

一応手加減はされていた様だ。

 

「なのはちゃん!!ちょっ、落ち着いて!!」

 

更に追撃をかけようとしてレイジングハートを向けるなのはを頑張って抑えてるはやて。

 

なのはは他に被害がいってないか確認した。

 

「他に被害は?」

 

と見ると新八がいた。

 

「ねぇ、神楽近くにいたから気が付かなかったけどお前可愛いな。」

 

「急に何アルか!気持ち悪いネ!」

 

「うん、異常なし」

 

「あっ、はやてこいつらをどうにかするネ。リボーンに変な物渡されてからおかしくなったアル」

 

(リボーン君ナイス( *˙ω˙*)و グッ!)

 

ドーン

 

其処に新八へ蹴りが入った。

 

「おい、テメェ何してやがる!?」

 

「「「「銀さん(ちゃん)」」」」

 

「良かった、戻ったの!?」

 

なのは達は銀時が元に戻ったのかを思ったのだが、

 

「神楽も俺の女だぞ、ぱっとしない童貞メガネ掛けはピーーーーを1人でピーーーーしてろ、ただしピーーーーの女も俺の女だがなでぇへへへへへ」

 

銀時の台詞を聞き、また固まった。

そこに‥‥

 

「おい、ティアナお前が望むなら今夜一緒にいてやってもいいぞ。ディナーからベッドまでな‥‥」

 

「は、はぁー!?べ、別に一緒にいて欲しい訳ないでしょう!!勘違いしないでよね!////」

 

頬を赤くしてベタなツンデレの台詞をはく。

 

「ツンデレだねぇティアも~」

 

スバルは獄寺の異変に気付かず、ティアナを茶化す。

 

「ねぇ獄寺?ティアの事これから『ティア』って呼んであげてよ。」

 

「っつ、何を言い出すの!?バカスバル!!」

 

「えぇ、嫌なの~?」

 

カチン‥‥

 

「ティアナ、お前が嫌なら俺は・・・」.

 

この時ティアナはものすごく赤くなりまるでトマトが熟成仕切ったかのように赤かった。そして

 

「べ、別に、嫌じゃないわよ、ただ‥‥」

 

「「ただ?」」

 

「恥ずかしいのよーーー!!」

 

と叫んだ直後、

 

ガシッ

 

ティアナを後ろから抱きしめた獄寺

 

「恥ずかしがんなよ、俺だって恥ずかしいんだからさ...」

 

「//////////」

 

「なぁ、もう1度だけ言わせてくれ、俺を.....俺を受け入れてくれティア」

 

ティアナは生まれてからこれ以上ないぐらい赤くなり

 

「お前じゃねぇとダメなんだよ」

 

なるがままにやられるティアナその様子を見ていた人達は

 

「やばいで!!ちょっ、誰かとてつもなく苦いブラックコーヒーを持ってきてや」

 

「何だろうこの胸にある違和感は‥‥」

 

となのはが胸に手を置く

 

「ちゃおっス。これは返すぞ、実験の結果人それぞれらしいからな。」

 

「リボーン君!何してくれてんの。」

 

「だって~面白そうだったんだもん。」

 

と可愛子振るリボーン

 

「まぁまぁ」

 

とはやて

 

「てめぇ、獄寺おい何俺のティアナを口説こうとしてんだ。てめぇはタコのメスか火星人の女の尻でも追いかけていろ!!」

 

「んだコラ!てめぇこそスス〇タリか毛玉でも追いかけていろ、綿埃ヘッドが!!」

 

この時ティアナをギュと握りしめた獄寺

 

「誰が毛玉だ!?この銀だこ野郎!!」

 

「てめえに言われたかねぇんだよ。くるくるパーマぁぁぁぁあ」

 

と此処でティアナを離してから何かが獄寺に激突した。

 

「いい加減にしろヨ!お前みたいな奴が貢ぐ以外で私を落とせると思うなヨ!!ダメガネがぁ!!」

 

ブチ切れた神楽が新八を吹っ飛ばした。

 

「今度来る時は酢昆布1年分上納するヨロシ!!」

 

((酢昆布1年分ってどれくらい(なんや)!?))

 

神楽の上納分の酢昆布に疑問を抱くなのはとはやてだった

そこへ、

「た、助けてなのは!!//////」

 

フェイトが走っり込んできた。

 

「フェイトちゃん!どうしたの!まさかツナ君に?」

 

「どうした?フェイトやっぱり俺とは嫌か?」

 

「ドキドキしすぎて心臓が持たない」

 

「「そっちか!!」」

 

リボーンはツナには度胸が無いと言っていたが、この場合フェイトも同じだった。

そんなフェイトに、

 

「おいフェイト、どうだい?お前も俺と一緒に寝ないか?」

 

銀さんがやってきた。

 

「ぎ、銀時!?」

 

「いつの間!」

 

「銀さん、フェイトは俺の女だ。手は出させない。」

 

其処へツナが銀時に言い放つ。

 

「俺の...」

 

フラフラ、パタンついに嬉しすぎて倒れたフェイト。

 

「何だ?ツナ、いくらお前でも邪魔するならタダじゃおかねぇぞ」

 

と洞爺湖を構える。

 

ボッ

 

ツナもハイパー化した。

 

「これは」

 

リボーンとはやてが

 

「「おもろなってきた。(面白くなってきたぞ。)」」

 

 

 

 

「どうしても譲れないのか?」

 

ツナが銀時に尋ね、

 

「あぁ」

 

銀時がツナに返答する。

 

「「なら本気でやるぞ。!!」」

 

ドーン

 

 

~side観客席~

 

「おせんにキャラメル~」

 

「ジュースに弁当はいらねぇか。」

 

売り子姿のはやてとリボーン。

 

「「「ちょっと待たんかい!」」」

 

ヴィータとティアナとなのは(新八とツナがいないので代わりと思っといて下さい。)

 

「何アルか?ヴィータ。今から始まると言うのに。すいませんジュースと弁当プリーズ。」

 

「『何アルか?』・・・じゃないよ!何で急にこんなの・・どさくさにまぎれて何頼んでんの。」

 

「仕方がないよ。ティア、あの2人は今フェイトさんを取り合って決闘しているからね。」

 

「いや、100歩譲ってツナ君はいいよ!!ツナ君は!!でも、今の銀さんはただのナンパ師じゃん!!この世で一番最低のすけこましじゃん!!あの人フェイトさんを狙っているわけじゃなくてただ女だから欲しいだけじゃん!!」

 

「何や、なのはちゃん銀さん取られてやいとんのか?」

 

「違う!!」

 

「まあまあ落ち着いてくださいなのはさん」

 

炎真がおさえておさえてと宥めていた。その様子を見ていたスバルは

 

「あれ?炎真は?」

 

「あぁ、こいつにやっても面白くないだろ。」

 

うんうんとはやて

 

「始まるみたいだよ。」

 

※注、先程書いた様に新八、そしてフェイトは医務室です。

 

~side銀時&ツナ~

 

先手は銀時!

 

ツナはそれをグローブでガードし違う手で攻撃をする銀時もそれに反応して洞爺湖から片方手を離してその手でそのまま止めた。

 

「「ぐぬぬぬぬ!」」

 

両者一旦、距離をとり、

 

ツナが攻め直した。だがツナを自分の間合いより入れようとしない。銀時は洞爺湖をで牽制した。ツナもなかなかふところに攻めきれない。

 

(やはり、銀さんの剣筋は全く読めないだけど。)

 

だが攻撃が当たることは無かった。

 

 

~side観客席~

 

こちらも真剣な雰囲気だっただが

 

誰かが言った

 

「どっちが勝つと思う?」

 

この言葉に一瞬で賭けモードに入った。

 

「俺は銀時に賭けるぞ、」

 

リボーンと自分の生徒ではなく、銀時にかける。

 

「リボーン君、もうちょっと自分の生徒を信じたりーや、私はツナ君に賭けるで」

 

はやては、ツナへと賭けた。

 

「あのダメツナが勝てるとは思わねぇなこうゆう戦いは」

 

「ならリボーン君、晩メシかけようや」

 

「おもしれぇいいぞ。当然、お前らもな」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

「別にいいだろ、面白そうだしな。」

 

「私はツナ君かな?歳近いし勝ってほしいな~。」

 

スバルもはやて同様ツナに賭け、

 

「僕もツナ君に勝って欲しいけど。」

 

炎真。

 

「それぐらいで勝てるほどあいつは甘くねぇだろ。この勝負は銀時の勝ちだろう」

 

ヴィータがそう言って銀時に賭ける。

 

「10代目が負けるわけねぇだろ」

 

獄寺は当然ツナに賭ける。

 

「私はツナアル。あんなマダオに負けるわけないネ!!」

 

神楽も意外にも銀時ではなくツナに賭けた。

 

「でも銀さんも強いですよ!」

 

「うんうん」

 

エリオが負けずに言うとキャロもエリオの意見に賛同する。

よって2人は銀時に賭けた。

 

「私は.....//////」

 

なのはは遠慮がちに言葉を発すると、

 

「大丈夫や、言わんでもわかるよ。」

 

「ちょ、はやてちゃん違うって言ってるでしょ/////」

 

このように分かれてる。

 

「ツナ君にあれが無かったら銀さんが勝つってわかるんだけどね」

 

「確かに、銀ちゃんの剣筋は鋭くて速い...でも一番の長所は読めへん事や。でもツナ君にはそれが効かへんからな。」

 

 

~side銀時&ツナ~

 

(全く当たらねぇな、これが超直感)

 

「ちっ。」

 

(わかる・・・けど入り込めない。なら)

 

炎の推進力で一旦後ろに下がりまた高速移動で1発を入れた。

 

「ぐわぁ!」

 

ズン、ゴォーンガラガラビルに激突。

 

「「「「「当たった!」」」」」

 

「今だ。」

 

突撃。だが、

ヒュン、ヒュン、ヒュン ビルの破片が飛んできた。

 

「くそ、」

 

そして銀時が横から出てきて。

 

ザン

 

「喧嘩は武器だけでするもんじゃないぜ。」

 

カン、カンカンそして、蹴りを入れて。

 

「グフぅ!」

 

上から洞爺湖が来て

 

「ぐわぁ」

 

地面にうつぶせた。

 

だが、ツナも負けずと体を一回転させて、足を引っ掛けてこかし、そのまま足をつかんで

グルン、グルンと回して上に投げ飛ばして

 

「Xバースト!!」

 

炎圧を上げた拳が銀時に直撃した。

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

 

~side観客席~

 

 

 

「ねぇ、銀さんは何でビルの中とかに入らないの?あの中ならツナ君の動きを制限できるでしょ?」

 

「多分恐れてんだろ。」

 

「恐れる?何を?」

 

「X BURNERだ。あいつはそんな無茶はしないけど...だがやられたら逃げ場はない。」

 

「なるほどな。」

 

 

~side銀時&ツナ~

 

ガラガラ

 

破片から銀時がはい出てきた。

 

「ぐ、ゲホゲホ、ちっ、なかなかいいパンチじゃねぇか。」

 

しゆ~ん

 

「「「「あれ。」」」」

 

効果があった人はみんな正気に戻った。

 

「何で、俺。」

 

「(*'へ'*) ンー何かめんどくなった。」

 

 

~side観客席~

 

それはこちらも同じで‥‥

 

「っち、効果が切れたか。もう少し楽しめそうだったのに」

 

リボーンが残念そうに呟いた。

 

「俺は一体。」

 

「時間切れやな」

 

「ティアも夢の時間が~」

 

「黙れ!!バカスバル!!」

 

「ん~これで終わりか( ´・ω・`)」

 

「まっ、あいつにもいい経験になったな。結果オーライだ」

 

「よかったな、なのはちゃん。銀ちゃん戻って来るで。」

 

「いや、今日はツッコミすぎて疲れた。」

 

 

~side銀時&ツナ~

 

 

「あの~銀さんこれは?」

 

自分でも訳がわからずただ、正気に戻りだんだんとやった記憶が戻って来た。

ツナは頭から煙がたち。銀時は気だるそうに

 

「知らん。とにかく戻ろう。疲れた。」

 

 

 

~ウラバナ~

 

これは銀時達はが戻って帰るよモードになった時。

 

「そういえば。」

 

「どうしたん?リボーン君。」

 

「お前とスバルってさ、誰にも絡まれなかったよな?」

 

「「えっ?」」

 

「神楽でさせ新八に絡まれていたのに、お前達って誰にもナンパされなかったよな?はやてなんて銀時の目の前にいたのに...同様にスバルも獄寺が目の前に居たよな?」

 

リボーンの指摘を受けて、現実を飲み込めてない2人。

 

「お前達ってあいつらから『女』として見られていないのかもな。」

 

=(´□`)⇒グサッ!!

Σ(|||▽||| )

 

その一言で2人はこの夜。ベッドから顔すら出さなかった。

 

 

それから数日後‥‥

 

~side108部隊~

 

「ん?総悟、それは何だ?」

 

土方が六課へお使いに行って戻って来た沖田がケースに入った何かを持っている事に気づき、彼に尋ねる。

 

「なんか、あっちに行ったら、妙な赤ん坊が居て、帰り際に渡されたんでさ‥‥なんでも使うと面白いことが起きるって言って‥‥」

 

「あん?」

 

土方は怪訝そうな顔で沖田が持ち帰ったソレを見た‥‥

後に108部隊で大規模な演習が行われたらしいが、その演習後、ギンガが何故か土方の事を以前よりも強く意識するようになったらしい‥‥。

 

 

 




ではまた次回。

今回の獄寺のセリフらしくないと思ったら半分作者の願望なのであんま深くツッコまないでね


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的37 悪夢が終わればハッピーエンドが待っている。

更新です。


~AM5:00~

 

辺りには何もなく、何処までの続く暗黒の闇が広がるそこには1人の少女がいた。

少女はひたすら泣きそして‥‥。

 

「やめて、やめて、やめてぇぇぇ!!」

叫び声をあげていた。

 

ガバァ

 

「はぁ、はぁ何や夢か。ってかまだ5時やん。あかん完全に目ぇが覚めてもうた。」

もう夜が明けてきた様な時間帯でカーテンの隙間からちょっとした朝日が差し込まれていた。気が落ち着きただの夢だと認識して彼女は目を覚ます。何故かこんな夢を見た時に限り自分のトラウマを刺激するような事件に遭ってしまう。

 

 

 

~side部隊長室~

 

「はやてちゃんいる?ってあれ、手紙?」

 

なのはが部隊長に入ると、はやての姿はなく、デスクの上に一通の手紙が置いてあった。

 

『皆さんと読んでください。』

 

・・・・・・・・そう書かれていたので一応皆を呼び、手紙を読むことにした。

 

 

『今回この手紙を書いたのは皆さんに伝えたいことがあって書きました。なのはちゃんの様に休みを知らずに働き詰めになったりして、もし体調悪くしたりすると士気にも影響が...そこで皆にも休みというのを覚えて欲しくこの手紙を書きました。...でも、流石にいきなりは無理があると思い私にならい下さい。ということで今日は休みます。』

 

 

『PS、近くにに炎真君いたので誘いました。(誘うと書いて無理やりと読む)』

 

『PSのPS、甘いで、なのはちゃん。私は前ので諦めたと思うな。』

 

『PSのPSのPSおみやげは何がいいですか?』

 

『PSのPSのPSのPS、このPSってなんか使いたくなるよね。(笑)』

 

・・・・・・

 

はやてからの置手紙を見た後、皆は唖然としていたが、段々思考が戻り、手紙の内容を理解していくと‥‥

 

「「「「「ふざけんなぁぁぁぁぁ!!」」」」」

 

六課の隊舎が揺れる程の怒号が飛び出る。

 

「なんですかこれは!?結局のとこサボりですよね!?」

 

「何が習うだよ!!ちきショー!あの狸女め!つーかこの文体どっかで見たんだけどPSって使うやつは皆バカばっかだな、コノヤロー!!」

 

「てか、何で炎真君まで!!」

 

「おみやげ何かな?ティア~楽しみだよね」

 

「そこじゃないでしょうバカスバル!!」

 

「何が甘いよ。だよ帰ったら絶対~(゚皿゚#)」

 

このように様々な意見‥‥ほとんどがはやてに対する愚痴と怒号が飛び交う。

 

 

~sideはやて&炎真~

 

一方、その問題のはやてと炎真はクラナガンの繁華街に出ていた。

 

「さぁー!遊ぶで。炎真君」

 

久しぶりの休みと言う事ではやては生き生きとしていた。だが炎真はあまり気乗りがしていない何故なら

 

「あの‥やっぱりまずかったんじゃ~」

 

炎真は未だにはやてが行った行動が問題あるのでは?思いそしてそれをと指摘する。

 

「何言ってんねん!ここまで来たら楽しまな。」

 

ちなみに何で炎真は出ていこうとしたはやてを目撃した為にそのまま口封じを兼ねて連れていかれた。

だからこそだろう未だに気乗りせずにはやてを止められなかった罪悪感が彼の良心を蝕んでいるのは

しかしはやては変わらずに

 

「それに炎真君もこの機会に服とか見るとええ!ツナ君に聞いたで他の男性陣のお下がりやって」

 

「ん~そうだけど」

炎真の思考に畳み掛ける様に指摘して炎真もまた強く言えない。

 

「はぁ~あかんな~炎真君。こんな可愛い子と一緒に買い物できるんやから、素直に喜び!!」

もうある意味建前もへったくれもない

 

(でもみんなに悪いし...)

 

最後の手段である言葉は出さずに目で訴えようとしてはやての良心に訴えかけようと試みるが全く意味をなさなかった。

 

「さっ行くで」

 

はやては炎真の手を引いて繁華街を歩き回る。まだ納得はしていないがどう足掻いても無理なのは理解した。

 

「まず、ここや」

 

はやてが炎真を連れてきたお店は服屋‥と言うよりコスプレ衣装専門店に近かった。

 

「ちょ、はやてさん、流石にここは!!」

 

「何や?嫌か?」

 

と何ともは不思議そうにはやては炎真を見た。

 

「はやてさん。何その目?嫌に決まっているでしょう。一体いつから僕にコスプレの趣味があると思われてたの!?」

 

「なら炎真君がエスコートしてや場所は私が教えるから」

 

「はぁ~。」

 

ということで炎真がエスコートする事になった。『まず服屋に行ったら僕にはもう他にないから一旦戻ってまた考えて出直そう』と要は遠回しに炎真は帰ろうと勧めるが駄々こねられたのでどうするか考えている。もう付き合うしかないな

 

 

僕も帰ったら皆に怒られるのを覚悟しよう。

そう決心した。

 

それから時間が経って

 

 

「少し待っていて、僕ジュースでも買ってくるよ。」

 

「ほんなら私も」

 

「大丈夫だよ。」

 

と言い炎真は行った。

 

それを見送り少し目を閉じたらまた昔の事が

 

「はぁ、はぁ何や今日はこればっかやな。」

 

「どうしたの?」

 

炎真が戻って来た。

 

「いや、何でもないで。」

 

と笑顔を浮かべていたはやてだったが額や顔には薄っすら汗があった。

 

「次にはどっか遊べそうなところ行く?」

 

「なら、私が案内したる。」

 

と張り切っていった。まず映画に行ってゲームセンターそして昼食それからボーリングなどにもいった。

‥‥因みにゲームセンターやボーリングこれは炎真がぼろ負けしてはやては笑ってた。

 

少し間を、開けて、

 

「炎真君もハイパー化とかせぇへんとなんかイマイチやな」

 

「あまり言わないでください。」

 

 

~side夜~

 

「ねぇ、はやてさん?‥‥2人っきりになれる場所とかない?」

 

と炎真が聞いたのではやては赤くなり、

 

「ふっ、ふっ2人っきり‥‥////」

 

(どうゆう事やまさか、炎真君、私の事を‥‥//////)

と炎真を見たとうの炎真の頭の上には?マークが浮かんでいたが。

 

「あっ、ないなら」

 

「ある、あるよ」

 

と少し離れた街道を歩いていた。

 

「ここならいいか‥‥ねぇ、そろそろ出てきてもいいんじゃない。」

 

炎真は、はやて以外の人物に声をかけた。

 

「へっ?」

 

なにを言っているのかわからなかった。

 

「けっ、やっぱり気づいてやがった。」

 

ゾロゾロと人が出てきた。

 

「流石に視線がね。で、僕達に何かな?」

 

「お前に用はない。あるのは八神はやてお前だ。」

 

男の1人がはやてをビシッと指さす。

 

「え?私?」

 

「闇の書の主‥お前がやった罪は忘れてないよな?」

 

「っ!?」

 

「罪?」

 

炎真は男の言っている事が分からず、首を傾げるが、はやては明らかに動揺している。

 

「こいつはな、俺達や他の大勢の魔導師から魔力を奪った。自分が助かりたいがためにな!!それなのに管理局に入り、のうのうと生きてやがる。しかも、高給取りなうえにボーナスまで貰っていやがる!!そんなの許せるわけがないだろ!」

 

「俺の娘は魔力を奪われてその場に放置されてそのまま凍死した!!お前の部下の騎士のせいでな!!」

 

「ワシの孫は将来を約束された魔導師だったのに、お前の下僕に魔力を奪われ、魔導師としての道を断たれ、自殺した!!」

 

「だから俺達がかわりに仇をとるんだ!!こいつに死を持って償わせる。」

 

はやては震えていた。知られた事実や、やはり自分が、

 

その時炎真がはやての前に手をやって

 

「確かに僕ははやてさんの過去は知らない。君達が言ったことが事実かもしれない。でも自分が助かりたいだけって言うのは絶対ない!!それは断言出来る!!」

 

ボゥ

 

一瞬襲撃者達も驚いたが

 

「はっ、いい仲間を持ったな。凄く騙されやすくて、お前も随分助かるだろう。ソイツに厄介事を回して自分は常に日の光だけを浴びている」

 

「ふぅ、」

 

カッ!

 

ドゴン!

 

炎真の周りの地面が剥がれボコと炎真を中心に地面がめり込んだ。それを見た襲撃者達は

 

「まるで毛を逆立てて威嚇する猫だな。」

 

犯人はデバイスを起動させて

 

「よくその犯罪者を守る気になるな。」

 

「犯罪者...君達は知っているでしょ。はやてさんがどれだけ苦しんでいるか...」

 

炎真の言葉にはやてが反応する。がその人達はお構い無しに攻撃をしてくる。それを

 

「今日だって、彼女を一人にした時はやてさんは...うなされていたんだ。」

 

炎真はそう言うだけで攻撃を躱さなかった。

 

「っつ!!」

 

その人達は一瞬動きが止まるが攻撃はやまなかった。

 

「炎真君!」

 

何でよけへんの!

 

「貴様やる気が無いのか、」

 

「君達と戦う気は無いよ、だって貴方達も被害者だもん。戦う気になれないよ。」

 

炎真はそう言うがその人達は、

 

「ならそこをどけ!」

 

「できない」

 

「何故だ!!」

 

「貴方達にもわかってほしい。罪をという闇を背負いながらも必死に貴方達のような犠牲者を出さないように頑張ってるはやてさんの事を...」

 

この時炎真をグーで思いっきり殴った。

 

「邪魔をするな!!もう後には引き返せないんだよ!!俺はこの女を」

 

とナイフを取り出してはやてに向けるだが炎真がそれを受け止めた。

 

「引き返せるよ。犯罪を犯しても前に進める。今のはやてさんのように!!」

 

「っつ!!何でお前はそこまで...こいつの肩を持つ、何で俺達にも...」

 

「僕も理不尽に家族を殺されたからだよ。」

 

全員一斉に炎真を見る。

 

「家族を失うのは辛いよ、復讐もしたくなる。でもね、家族は貴方達の大事な人はそんな事を思うの、貴方達が犯罪が後に戻れないと言うなら、貴方達の大事な人達は自分の未来を犠牲にしてまで復讐をしてほしいと思うの...」

 

私はこの時の炎真君の瞳を忘れられなかった。必死に犯人達に訴えかけている彼の瞳はまるで殺意も怒りもすべてを静かに受け入れる大地のようなそんな瞳をしていた。

 

「く、うわぁぁぁ」

 

彼の顔を...彼の瞳を見た犯罪者はナイフやデバイスを落として泣き崩れた。

 

やがてその人達は騒ぎを聞きつけた局員に逮捕された。だが最後に

 

「まだ聞いていない。」

 

「?」

 

ナイフを持っていたひとが

 

「何故お前は彼女をそこまで...俺達をここまで」

 

「僕にとっての『誇り』だからだよ。」

 

この言葉に犯人もそしてまた私も一斉に炎真を見た。

 

以前、こんな言葉を残した人がいた。

『誇りだから譲れないんじゃない、譲れないから誇りなのさ。』

 

「お前の名前は」

 

「ーーー古里炎真。」

彼は静かに呟いた。

 

「ありがとう、古里。そしていい仲間を持ったな」

 

そしてその人達と別れた後に私もある事が聞きたくて仕方がなかった。

 

 

 

 

 

 

周りはすっかり夜。明かりが眩しく灯っていた。そしてそこのベンチではやては座り炎真が

 

「はい、コーヒー、落ち着けますよ。」

 

(あれ少し...)

 

ポツポツと雲はないけど雨が降ってきただけどはやてはそれにも気づかない、それぐらいの量

 

「ありがと...」

 

はやてはそう返して炎真からコーヒーを受け取った。

 

「.....あまり気にしないでくださいよ。」

 

「え?」

 

炎真はなんでもありませんとかえす。

 

「炎真君、なぁ、さっきの言葉の意味聞いてもええか?」

 

「?」

 

「炎真君にとって『誇り』ってなんなん、私のことを『誇り』って言ってくれたけど。」

 

「以前誇りって何なのか語ってくれた親友がいました。その人は自分の譲れないもの...仲間を誇りと言っていました。」

 

「僕もそれは同じです。仲間は譲れません。でももう一つ譲れないこともあります。それは罪を犯した僕だからこそもう一つあるんです。罪を犯してもどんなに苦しくても、前に進もうとする行動も僕にとっては譲れない。」

 

はやてを見ながら

 

「はやてさんは大きな罪を犯しても、その人達の思いを忘れること無く、むきあいながら、必死に頑張ってる。そんなはやてさんだからこそ僕は.....ってはやてさんどうしたんですか!!?」

 

炎真君の驚きでやっと気づいた。今私は泣いとるんやと

 

ポロ

 

一滴流れ落ちるとさらにさらに流れた。前とは明らかに違う。でも泣きやめない。

 

「あれ?おかしい、何で、何でこんなにも」

 

悲しくなんてない。痛いわけでもない。ただ、ただ嬉しい...嬉しいだけなんや!!

 

 

炎真がナイフを受け止めた時を思い出す。

こんな私の為に体を張ってくれた。

 

さっきの炎真の言葉が頭から離れない。

こんな私を誇りと思ってくれている。

 

「えっと、確か、あった!はやてさん。はい、ハンカチです。」

 

差し出されたハンカチを私は無言で受け取りそして

 

「ありがとう」

 

私は赤くなった頬と瞳が恥ずかしいから目を合わそうとしいひんかった。

 

「いえいえ」

 

「なぁ、少しお願いがあんねん、」

 

この時私は少し胸を抑えていた。

 

「何ですか?」

 

「今度から私の事、はやてって呼んでくれへん?」

何やろうこのドキドキは初めて感じたかもしれへん。胸が熱くなる。彼を見るとどんどん胸が高まってくる。

 

「え?別にいいですけど、」

 

「それから、その馴れ馴れしい思わんといてな、私もエンマって呼んでも...」

少しでも炎真君に...おこがましいかもしれへんけど、でも、でも

 

私の心はもう...

 

 

 

「別にいいですよ」

だけどまだ炎真は気づいてなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、はやては六課の後見人のリンディ提督とレティ提督に襲撃者達に対しては無罪放免を頼むと同時に、自分達が管理局に入った時、説明を受けた闇の書への被害者達へのアフターケアについても尋ねた。

すると、確かにアフターケアはされている筈なのだが、念の為調査をしてみると、その結果、その時の経理部門の一部の局員達が結託して密かに被害者や遺族達に支払われる筈の保証金や遺族年金を横領していた事が発覚し、それらの不正を行った局員達は全員粛清された。

はやてはそれでも自分から動けばこの人達は犯罪に手を染めなかったはずだと思い後日、騎士たちを連れて自分の足で被害者達に謝罪をしに行った。

 

 

・・・・続く




今回どうでした?正直炎真の動かしに自身がなく自分としてはかっこよさを追求しすぎて炎真らしくない!と読者も思われたかとまた不満があるのならどんどん言ってください。

ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的38 バカは時間が経てば変わるだけど大バカはどんなになっても変わりゃしない

更新です。


~side??????~

 

ここはとある船の中。

 

「やぁ久しぶりだね。高杉君。」

 

船に乗船していた高杉に連絡したのは管理局から広域指名手配をされている科学者のジェィル・スカイエッティだった。

 

「何のようだ。」

 

高杉がスカリエッティに対して興味さなげに答える。

 

「また君の力が借りたくてね。まぁ今度は陽動として、多分君の興味のある人も動くと思うからさ」

 

高杉が少し鼻で笑い、

 

「用件を言え」

 

「いつも通りのレリックの回収何だけど今度は僕の部下も動かす、だけどかられの協力者は僕の部下じゃおさえられないと思うからその人達の相手をお願い、」

 

「それだけか?」

 

「あぁ。今の所は‥‥ね。」

 

「わかった、その後の事はまた次に聞かせてもらうぞ。」

 

(ふん、『今の所』はねぇ‥‥)

 

とスカリエッティを睨みつけつつ、彼の言った言葉になにか裏があるのかそれとも追加の頼みをして来るのではと思う高杉。

 

「わかっているよ。私自身、君を敵に回したくないからね。それじゃあ‥‥」

 

と用件を伝えると画面が消えた。

 

「またあの変態科学者からか?」

 

「あぁ、」

 

「よくもまぁ、あれに合わせるなぁ。俺ならごめんだ。あいつは何を考えてるかわかんねぇからよ。」

 

「今日もまたよく喋るじゃねぇか、シノビ」

 

シノビ‥以前人身売買に手を貸していた男であり、管理局の包囲網から唯一逃走する事の出来たこの男は偶然にも高杉と出会い、彼の下に身を寄せていた。

 

「別に、ただの忠告だ。あんなのに沈められて心中すんのはゴメンだからな。」

 

「心中が嫌なら、俺の船に乗んなよ。」

 

「あぁ?」

 

「いずれやつの首そして管理局の正義もそして天から人を見下ろす奴らの首引っさげて地獄に行くんだからよ。」

 

と高杉は狂気の笑を浮かべた。

 

「面白いことを言うな。てめぇのオンボロ船でそんなに沢山の首が乗んのかよ?」

 

「オンボロ船も使い道によっては豪華客船を越えるぜ。」

 

ニヤッと相変わらず壊れた笑みを浮かべている高杉。

 

「そうかよ」

 

とシノビは一応は納得した様子で高杉に踵を返して歩き出す。

 

「ああ、それと‥‥言い忘れていた事があったぜ」

 

シノビは途中何かを思い出したかのような口振りで足を一度止める。

 

「なんだ?」

 

「お前の昔の同期にあったぜ、流石にだいぶくらっちまったが、...お前ならわかるか、守る為に抜く剣って奴が?」

 

「...はぁ~」

 

キセルから煙を吐き出す。そんな態度を見たシノビは肩を竦めその場をさった。

 

そして、

 

「よぉ神威」

 

カンフー服にオレンジ色の髪の青年に声をかける。

 

「また面白そうなことやろうとしてんの?」

 

神威はにこにこ顔でそう尋ねてくる。

 

(コイツも相変わらず何考えてんだか?)

 

「そうだが」

 

「いいねぇ、それはあいつも参加するの?」

 

またこの男も笑みが変わった。この時のこいつほど食われると思ったことは無い。

 

だが、

 

「お前もまた物好きだねぇ~たかが地球出身の‥しかも非魔導師のチューボー如きにご執心だとは」

 

「別に歳なんて関係ないさ...でもあいつは俺の獲物だから、誰にも殺らせないよ。横取り何てしたら‥‥どうなるか分かっているよね?」

 

殺気めいた笑みを浮かべながら尋ねてくる神威。

 

「分かっているよ。しっかし、あんなチューボーの何処に興味を抱いたんだか?」

 

「そういや、あの子に白髪はどこに行ったの?」

 

「白蘭か?さぁ、ホントここの連中は何考えているかわかりゃしねぇ」

 

シノビはまた肩を竦める。

 

 

~side白蘭~

 

雨降る森誰もいないぐらい静かな所でもいるね、彼は‥‥

 

「失礼、ゼスト・グランガイツとお見受けする。」

 

「‥‥人違いだ。ゼスト・グランガイツはもう死んでいる」

 

洞窟に雨宿りをしている男に声をかける。

 

「やだなぁ、ゼスト君。僕の声、死んでいる間に忘れたの?僕だよ僕。」

 

「ん?お前は白蘭!」

 

ゼストは眼前の白髪の青年に目を見開いて驚く。

 

「そうだよ、ゼスト君。久しぶり~」

 

「何故お前が此処に?」

 

ゼストは立ち上がって白蘭に問う。

 

「君に会いに来たんじゃないか、昔の幼馴染として‥‥ねぇ、こうして出会った訳なんだから少しお話をしようか?」

 

「旦那ぁ、誰だよ?こいつ」

 

リィンサイズの赤毛の少女がゼストに白髪の青年について聞く。

 

「俺の古い馴染みだ。アギト」

 

「へぇ~君、アギトって言うの‥‥まさかゼスト君がロリを超えるぐらいのロリコンだとは思わなかったよ。」

 

笑いながら冗談を言う白蘭。

 

「馬鹿を言うな、そんなわけ無いだろう。」

 

「はは、冗談だよ、冗談。それで?その子は?」

 

と今度はゼストの傍にいる紫の髪の少女に指を向ける。

 

「おい、テメェ!!ルールーに気安く指を向けんな!」

 

とアギトが噛み付いてきた。

 

「ルールー?」

 

「この子はルーテシア・アルピーノ」

 

「アルピーノ、あぁメガーヌちゃんの子かぁ!!へぇ~。そう言われてみれば、小さい頃のメガーヌちゃんそっくりだね。それで、ルーテシアちゃんのお父さんは誰なのかな?」

 

「‥‥」

 

白蘭はルーテシアの父親について尋ねるが、ゼストは答えなかった。

 

「まっ、いっか」

 

興味がないのか白蘭はそれ以上の事はゼストには聞かず、『よろしくね』とルーテシアに声をかけるが、ルーテシアは何も返さない。

 

「人が挨拶をしたのに答えないとは随分と失礼な子だなぁ~あっ、そう言えば、クイントちゃんの子にもあった?」

 

「いや。あれから一度も会っていない‥‥元気にしているのか?」

 

「うん‥‥あの2人も大きくなったよ。特に上の方のギンガちゃんなんてクイントちゃんにそっくりになったよぉ~。一度会ってあげたら?」

 

「態々そんな事を言いに此処まで来たのか?」

 

「別にぃ~ただ、古い友人に声をかけに来たんだよ、それとレジアス君の事どう思ってるかとかね」

 

「!」

 

「僕自身もだいぶ調べているんだ。彼があんなになっちゃった原因をね、で、君にも意見を伺おうと思って」

 

「さぁな、俺自身も知らん、だから直接聞くつもりでいる。」

 

「直接?それは結構難しいと思うよ、何せ彼は今、地上本部のトップだもん。君達部下の大勢の犠牲の下に彼は今の地位に居る」

 

「そんな事ぐらい知っている!!だからこそ、どうじても聞かねばならんのだ!!『お前はこんなことを望んでいたのか?』とな‥‥」

 

「そう、なら僕は何も言わないよ。でも、君が困っているのであれば僕は君にもちゃんと手を貸すよ。」

 

「『君にも』?お前、誰かと手を組んでいるのか...まさかあいつとか!?」

 

白蘭は自分が死んだ事を知っていたまさかと思い尋ねるが、彼の答えはゼストが予感しているのと違っていた。

 

「いや、少し違うね。僕が手を組んでいるのは彼と手を組んでいるもう1人、別の人物だよ。ゼスト君、今回の事で大きく管理局は動くと思うよ、それは右か左かにね」

 

「そう言えば、お前は昔からよく独り言をよくしていたな。」

 

「あぁ、その事か、それもだいぶいいところまで来ているんだ。やっと点と点が結んで1本の線となった所さ。僕はこの力で君の道標になるよ、」

 

「ふっ、相変わらず何考えているのか分からない奴だ。だがいいものだな‥友人が変わらないというのは」

 

ゼストはフッと笑みをこぼす。

昔と変わってしまった友人が居れば、変わらない友人も居た。

それが例え、常人には理解できない人物でも今のゼストにとってはうれしい出来事であった。

ルーテシアとアギトは2人のやり取りを黙って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

場面が変わるが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side並盛~

 

「み~どりたな~びくなみもりの~だ~いなくしょ~なくな~みがいい~♪」

 

鳥のさえずりが真っ青な空な響き渡る。そこには一羽の鳥と1人の男性がいた。

 

鳥は少年の指にとまり少年は大きなあくびをする。少年の腕には妖しく輝く紫のブレスレットがあった。

 

「雲雀恭弥!」

 

女性のいらだちの含む声がけ聞こえた。少年の気分はそれ一つで悪くなる。

 

「何?」

 

女性の名は鈴木アーデルハイト、古里炎真の守護者の1人で炎真のファミリーを支える大黒柱である。

そして彼こそ最強で最凶で最恐の風紀委員長の名で知られ裏ではボンゴレ10代目の雲の守護者である雲雀恭弥

 

因みにこの歌っている鳥はヒバード

 

「貴方も少しは協力しなさい!私たちのボスだけでなく貴方のーー」

 

「興味無い」

 

の一言で立ち去ろうとする雲雀。

 

「あ、待ちなさい!」

 

だが雲雀は一応草壁を使って捜索はしている最もツナが心配なのではなく並盛に危害を加えようとしている輩がいるかもしれないと言うことで調べている。そしてアーデルハイトを撒いて河原にでるとそこでまた昼寝をしようとする。

 

「ヒバリ、ヒバリ」

 

バタバタと雲雀の肩で羽を動かす。

 

「ん?」

 

次の瞬間少年の姿はなかった。

 

 

~side六課~

 

すこし前の六課はいつもの様に特訓をやっていた。だが少し違うのはツナとエリオの戦いからわかる。

 

「は!」

 

エリオがストラーダで突きツナを牽制する。ツナは当然のごとく避ける。

 

「だいぶ腕が上がってきているな。」

 

「ありがとう...ございます!」

 

エリオは頭の上にストラーダをやり回転させてから今度は刀と似た感じで振るう。

 

(攻撃の仕方が変わった!?)

 

「この前銀さんに見てもらったんですよ。」

 

銀時の教えは一応槍の基礎だが銀時と手合わせをしてもらった時に銀時の剣術を真似てみたらしい。

 

「それでか、だが」

 

とツナも拳を振るおうとするとエリオはストラーダをまるで棒高跳びの棒として扱いツナの肩を通り越してそのまま一回転をしながら斬りつけた。

 

「ぐ!?」

 

「そこまで、エリオもツナ君もお疲れ様、」

 

しゅ~

 

炎が消えたと同時にリボーンの制裁が顔面に直撃した。

 

「痛!何をするんだ!!リボーン!!」

 

「バカツナが油断しやがって」

 

「そ、そんな事」

 

「なら何であんな単調な攻撃をした。アメぇぞ、この年頃はすぐに成長するからな、お前達もそうだろ」

 

「...ごめんね、エリオ君」

 

「い、いえ、でもすぐに貴方にも本気になってもらいますよ。」

 

「ハハハ‥‥その時には御手柔らかに‥‥」

 

「模擬戦はここまでにしようか、だいぶ成果も見られているしね」

となのはの号令から

 

「じゃ朝はこれで終わりだよ。お疲れ様。」

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

とツナはその後

 

「あれ?フェイトさん何処かに行くんですか?」

 

「あ、ツナ、ちょっと外回りをね、ツナも来る?」

 

「え?」

 

「いいんじゃねぇのか、少し頭を冷やせるし」

 

リボーンがそう言うとツナもこの提案に乗っかった。

 

 

~side雲雀~

 

 

「うっ‥‥ここは‥‥?」

さっきまで河川敷にいたのに人気のないいわゆるゴーストタウンにいた。

雲雀は少し歩き目にしたことのある場所はないかを探すが何も見覚えがない。

 

「並盛じゃない...!」

 

キュン!

 

雲雀突如後ろに下がり先程の足元を見るとコンクリートが溶けていた。

 

「何?」

 

雲雀が見ると建物の隙間からゾロゾロとガジェットが出てきた。

雲雀の機嫌は一気に悪くなった。

その理由は‥‥

 

「弱いばかりに群れをなし咬み殺される」

 

雲雀がそう告げるとトンファーに一気に怪しく揺らめく紫の炎が灯った。この炎は雲の炎、特徴は増殖これの恐ろしさはすぐにわかるだろうそして雲雀のそばには可愛らしいハリネズミがいた。

 

「行くよ」

 

雲雀はダッシュして100を超えるガジェットに向かった。ガジェットは雲雀を捕まえようとするが雲雀は捕まらない躱しながらすれ違いざまに小さい傷をガジェットに残す。

ガジェットが硬いのか...それもあるだが、

 

雲雀は突如止まりガジェットの方を向かずに、

 

「球針態」

 

ガッ!

 

ドギャ!

 

ビシ!

 

ズザン!

 

ガジェットの内部から針の球が突如膨れ上がりガジェットを内部から壊した。

 

「群れるからそうなるのさ。」

 

雲雀は残骸に目を当てずその場を去ろうとする。

しかし、

 

「はい、お兄さん少し止まって」

 

「ん?」

 

見るとそこには薄い茶髪で腰に日本刀を携え黒い服装の自分より少し年上か同年代位の青年がいた。

 

「何か用かな?僕は今、虫の居所が悪いんだ。」

 

ただでさえ変なものにまた巻き込まれた上に目の前であんなにも群れられそして全然歯ごたえがない。なので、雲雀の今取る行動は...

 

「君はあれを知っているの?」

 

「ん?ま、知っているけど」

 

「そう、なら咬み殺す」

 

トンファーを構え青年に殺気をぶつけトンファーにはまた雲の炎が灯っていた。

 

「へぇ面白そうじゃねぇか?」

 

青年も先程の気の抜けた表情とは一点...まるで捕食者のような目つきとなった。

 

ビルの間を抜ける隙間風の音とヒバードのさえずりしか聞こえないしずかな場所に立つ二人の男、まだ若い身なりとは思えない殺気を飛ばし合うこの2人...

 

シュン!

 

ガキーん!

 

ビシビシ!

 

静寂を打ち破る激しい金属音と空間を揺らす衝撃に建物も地面もおののく

 

雲雀はそこから左手のトンファーで相手の顎を襲うだがそれを見抜いた青年は距離を取りそして雲雀を蹴り飛ばした。雲雀はビルに直撃するビルはその衝撃に耐えられなくて壁を突き抜け中に入った。

 

ガラ

 

雲雀は立ち上がるが青年は目の前に来ていた。雲雀は咄嗟に右手でガードした。だが雲雀は少し少しと押し負けていた。だから雲雀は自分の体制の優位を使った。本来倒れている自分に相手は上から攻められたら体重も乗り一気に不安定だがその分相手は上に重心が行く。雲雀はそれを見逃さない。

雲雀の足は青年の足を引っ掛け青年はそれに耐えようと一瞬のスキができた。

雲雀は笑みをこぼして左手で青年の頬を殴った。だけど青年は飛ばされる前に

 

ブシャア

 

雲雀を日本刀で斬りつける。だが傷は浅くその後青年も

 

「ぐ、」

 

ズざざぁぁ‥‥

 

雲雀は少し考えた。このままよりも...

 

「ロール、」

 

と言うと雲雀の相棒の雲ハリネズミのロールが勢いよく出てきた。

 

「なんでぇ、手品か?」

 

青年はいきなり出た動物に少しでも驚くがそこまで気にしなかった。それもここまでは...

 

「形態変化」

 

「クピぃーーー」

 

ハリネズミが叫びそして雲雀にボンゴレの紋章が浮かび上がると

トンファーの形も少し変わり、左下に『漂雲咬殺』そして背中には『風紀』の二文字が現れた改造長ランとなった。

 

「な!?バリア・ジャケットって奴か」

 

青年はいきなり服装が変わった雲雀を見て、一瞬驚いた顔をする。

 

「さぁ、始めようよ」

 

改造長ランを身に纏った雲雀は不敵な笑みを浮かべた。

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的39 ドSVS雲

更新です。


 

 

 

~side沖田&雲雀~

 

 

「さぁ、始めようか?」

 

「へぇ~なかなか面白そうだ。」

 

まず雲雀から仕掛けてトンファーで打ち込むが沖田はそれを軽くいなした。

 

「ワォ、意外とやるねぇ、君。」

 

沖田の動きを見て雲雀が目を輝かせた。

久々の歯ごたえのある獲物に出会えた事が何より嬉しいのだろう。

だが、

 

「なんだ、お前はその程度か?」

 

と、まるで期待外れだと言わんばかりの表情の沖田にそう言われて雲雀はムスっとして、

 

「これならどうだい?」

 

と言い何か小さいものを離しトンファーで打ち付ける。

沖田はこれを躱したが驚いた事にコンクリートに何かがめり込んでいた。沖田はこれに驚く暇もなく、躱してから飛んできた。

今度は最初のよりも少しでかい。

そして、

 

ザン!

 

1つの球態の針が急に伸びる。

それを咄嗟にバランスを崩して躱すが、

 

「マジかよ!?っと、あぶねぇ!!」

 

すぐに攻撃してきた雲雀の攻撃は、沖田に2発ほどヒットした。

 

「グっ!」

 

「どうした?君の方こそこの程度かい?」

 

と雲雀が不敵な笑みで沖田に尋ねる。

 

カチン 

 

「このやろう‥‥」

 

今度は沖田が不機嫌そうな顔をして雲雀を睨む。

 

「来なよ」

 

雲雀が沖田に指をクイクイと振って挑発する。

 

「上等!」

 

沖田を雲雀に斬りかかる。

 

カンカンカンカンキン

 

2人はとてつもない打ち合いをしていた。

 

 

~side土方・ギンガ・近藤~

 

108部隊では沖田を探していた。

仕事の途中で何処かに行ってしまった様なのだ。

捜索メンバーはギンガ、土方そして近藤の3人だ。

 

「ったく、あのヤロウ、仕事サボって何処に行きやがった。」

 

仕事を放り投げて行方不明になった沖田に対して愚痴る土方。

元々沖田は自由奔放な所があり、真選組に居た頃から巡察と名のサボりを良く行っていた。

土方は今回もそう言ったサボりなのだろうと思っていた。

 

「まぁまぁ、あまり怒らずにトシさん。」

 

とギンガが土方を宥める。

 

「そうだぞ、トシ。あまり怒っても仕方がない。それに総悟の事だ。大方、何処かで遊んでいるだけだ。そう心配する事はないだろう。」

 

近藤もギンガ同様、土方を宥める。

 

「相変わらず総悟に甘いんだよ!!近藤さんは!!」

 

「トシさんはいつもピリピリしすぎ何ですよ。もうちょっと肩の力を抜きましょう‥えいっ」

 

ギンガが少しからかいながら、土方の腕に抱き付く。

 

「ちょっ、ギンガ!?」

 

「えへへ」

 

土方の腕に抱き付き、ギンガは嬉しそうに笑みを浮かべる。

反対に土方は突然ギンガに抱き付かれてあたふたする。

 

「ったく。」

 

土方はギンガと近藤から視線を逸らして半ば諦めるように毒づく。

 

「いや~見れば見るほど恋人に見えますな~御二方~羨ましいぞ、トシ」

 

近藤は土方とギンガの様子を見てニヤニヤとする。

 

「いやだ。もう近藤さんたら!!」

 

ギンガが思わず近藤にツッコミを入れると、ドゴォーンと音と共に近藤が壁にめり込んだ。(笑)

 

「近藤さーん!!ちょっ、おい、ギンガ!!少しは力加減をしろ!!」

 

「あっ!!す、すいません!!近藤さん!!大丈夫ですか!?」

 

と2人は慌ててビルの壁にめり込まれた近藤に謝り。

ビルの壁から近藤を引きずり出した。

コンクリートのビルの壁にめり込んだと言うのに近藤は無傷だった。

 

「大丈夫だ。激しいツッコミは慣れている。」

 

と返して土方は「慣れないでほしい。」と頭を抑えた。

何で慣れているかって銀魂ファンならわかってもらえるでしょう‥‥

 

 

~sideツナ&フェイト~

 

「俺が来てもよかったんですか?」

 

ツナとフェイトは外回りで繁華街から少し離れた所を回っていた。

 

「いいよ。六課は今、人は足りているし、それに動ける人が多い方がいいでしょう?」

 

現場に直行するよりも、もし繁華街に何かが起きてもここの方が対処しやすいとの事だ。

 

「ガウ」

 

「あっ、ナッツいつの間に?」

 

急に出てきたナッツはフェイトの胸元に飛び乗った。

 

「あっ‥‥」

 

フェイトはナッツを受け止めた

 

「あっ、す、すいません。コラ!!ナッツ!!」

 

「いいのよ」

 

フェイトは微笑みながらナッツを撫でてナッツも

 

「がう~♪」

 

満更でもないご様子だ。

 

「ほっ」

 

ツナの頭の上に何かが乗ってきた。

 

「よっ」

 

「とっ」

 

「リボーン!?何でお前が居るんだよ!?」

 

「暇だからな、付いてきたんだ。それよりもナッツの奴、だいぶフェイトに懐いてんな。」

 

「そうだね、ここまで懐くのってエンマ以来だし。」

 

「ん?」

 

「どうしたんだよ、リボーン」

 

「ツナ、お前感じないのか?」

 

「え?あっ‥‥」

 

「?」

 

「炎‥しかもこれって‥‥」

 

とツナが呟くと、ツナとリボーンが走り出す。

 

「え?ツナ!リボーン!2人とも、何処に行くの!?」

 

突然走り出した2人に対してフェイトも慌ててそれについて行く。

 

 

~side雲雀&沖田~

 

こちらはさらにヒートアップしていた。周りの破壊など気にせずに。

 

「あんた、なかなか面白いな‥名前何て言うんだ?」

 

やりあっている最中に沖田に自分の名前を聞かれ雲雀は、

 

「‥‥勝ったら教えてあげるよ。」

 

「おもしれぇー!!ハァァ!!」

 

沖田が大きく振りかぶりそれを右手のトンファーで捉えて左のトンファーで攻撃するが、距離をあけてかわしたが、雲雀のトンファーの後の部分が外れチェーンとなり飛んできた。

これは沖田にとって予想外の攻撃だった。

 

「ぐふぅっ‥っち、その武器はなんでもありかよ。」

 

「はぁぁ!」

 

雲雀が沖田に襲い掛かると、またハイスピードの戦となり、両者の一進一退の攻防で周りの被害が激しく建物も大破していた。

 

「!?」

 

沖田に手錠がはめられそのまま引っ張られるそして雲雀のトンファーの先が刃物と変わり突き刺そうとするが沖田は刀を口にくわえて鞘でガードした。

雲雀はそのまま鞘を砕く沖田も手錠を壊した。

 

「ふん」

 

そこからまた雲雀がトンファーでの攻撃。躱されたとなるやチェーンを出してその状態から一回転をする。

沖田はそれを飛んで躱して電灯を掴んでそれを軸にして雲雀に飛びかかる。

 

「はぁぁ!」

 

ガキーン!

 

沖田の刀と雲雀のトンファーのぶつかりでさらに地面が凹む沖田は離れるやどこから出したのかバズーカを構えてそれを雲雀に撃つ。

雲雀は増殖させた棘でバズーカをガードして、

 

「ロール。」

 

「キュピー」

 

球針態を増やして、

 

「ち、目くらましか」

 

沖田はバズーカを乱発して煙で自分の正確な位置と球針態を隠す。

だが、雲雀は上に飛び球針態に乗りながら空を駆け抜ける煙など眼中に無いようだ。それは沖田も同じようだ。音と直感で雲雀の位置を知り、

 

「はぁぁぁぁ」

 

空からの雲雀と地の沖田の武器が交わる.....その時1人の人影が、

 

「「!!?」」

 

「やめろ」

 

「誰だ?」

 

「小動物」

 

入ってきたのはツナだ。

 

「誰だ?お前?」

 

「邪魔をしないでよ、小動物」

 

ツナはその場で両者の武器を握っている。

沖田もだいぶ力を入れるが、

 

(何だ?ガキにしてはだいぶ力がある、それに全く斬れねぇ)

 

「.....」

 

雲雀はツナから距離をとる。

 

「?」

 

「邪魔するものは何人たりとも潰すよ」

 

トンファーから刃を出す雲雀。

 

「そういうこった‥‥怪我したくないなら引っ込んでな」

 

標的が両者ツナに変わった。

 

「そこまでだ!!総悟!!剣を引け!!」

 

この場に響いた男の声を聞き、沖田はピタッっと止まった。

 

「なんでぃ、近藤さん。邪魔しないでくださいよ。折角、いいところなのに‥‥」

 

と文句をいいながら近藤を見る。

 

「いいところってお前周りを見てみろ!!」

 

土方が沖田に周辺を見る様に言う。

沖田は土方が言ったように周りを見る。

すると、

 

「あぁ~いつの間に?」

 

周辺は爆弾テロがあったかのようにボロボロとなっていた。

 

「『いつの間に?』じゃねぇだろう!!この確信犯!!」

 

周辺をこんなにボロボロにしたにもかかわらず、ソレを行った片割れである沖田はまるで自覚がなかった。

そんな沖田の態度にキレる土方。

 

「まぁまぁ、トシさん。それで総悟君そちらの方は?」

 

ギンガが沖田に雲雀の事を尋ねる。

 

「名前は知らねぇでさぁ。銃刀法違反で捕まえようとしてたところでぇ。」

 

「おい、お前名前はなんて言うだ。」

 

土方が聞いたが。

 

「そんな事はどうでもいい。」

 

雲雀はだいぶ機嫌が悪い様子。

 

「あぁ?どうでもよくない。さっさと名前を教えろ。」

 

「君は強いの?」

 

雲雀は今度、土方に噛みつこうとする。

そこへ。

 

「ちゃおっス、雲雀」

 

リボーンとフェイトも到着した。

 

「赤ん坊かい?僕は今虫の居所が悪いんだ。」

 

「1つ聞きたいんだが、お前どうやってこっちに来たんだ?」

 

リボーンの言葉にツナも気になっていた。

 

「君達がまた僕を巻き込んだんじゃ無いのかい?」

 

雲雀は今までの事からまたツナ達が自分を巻き込んだんじゃないのかと考えた。

しかし、ツナの方としては身に覚えのない事で、実際ミッドに雲雀が居る事に驚いている。

 

「ねぇツナ。もしかしてその子、ツナの知り合いなの?」

 

「あっ、この人は雲雀さん、俺と同じ学校の風紀委員です。」

 

「へぇ~ってことはツナの友達なの?」

 

フェイトのごく普通の質問に雲雀はツナに対して、

 

「.....」

 

無言でトンファーを向けてくる。

 

「ヒィィ、そんな滅相もない.....でも仲間です。」

 

この言葉に雲雀もリボーンも少し驚く。

 

「君少しかわったね」

 

「え?」

 

「で?どうすんだ?お前はこれから‥‥」

 

リボーンの言葉に雲雀は、

 

「別にここが何処だろうと僕には関係ない。好きにさせてもらう。」

 

「でも俺達といた方が‥‥」

 

「うるさい」

 

そんなやりとり見ていた近藤が

 

「なら俺達と居ないか?」

 

近藤の提案に対して雲雀は、

 

「やだ」

 

速攻で断る。

そこにすかさず、

 

「ちょ、何勝手に言ってんだ!」

 

土方が近藤を止めようとするも近藤は止まらない。

 

「まぁ待て、別に君の好きなようにすればいいさ、君が1人で居たいのならそれでもいい、だが俺たちの部署に所属という形を残してほしいんだ。」

 

ここからは声を潜めて、

 

「それに総悟との決着をつけたいだろう?俺達と来ればいつでもつけられるぞ」

 

この言葉に雲雀はピクッと反応した。

それにさっきからのこの男そしてV字の男にも今まで感じたことのない強さを感じていた。そこから近藤はツナの方を向き声も戻して、

 

「それに、ここに所属してれば何時でも連絡がつく君もその方が心配しなくても済むだろう?」

 

「え?」

 

近藤はこういった事を踏まえて雲雀を108部隊に誘った。

 

「ギンガちゃん、この子がうちに来ても問題は無いだろう?」

 

「はい、沖田君位の実力者が来てくれるのは嬉しい限りです。」

 

「.....僕の好きにそこの人とも戦っていいの?」

 

「あぁ」

 

雲雀はこの返事に、

 

「いいよ、いてあげる」

 

108部隊に居る事を了承した。

 

「んなぁぁぁ!?」

 

ツナは自分が説得しようとして何だが全くここまで素直に来るとは思ってなかった。

 

(雲雀さんは、あの人達をそこまで認めたってこと?)

 

ツナのやる事は一つだ。

 

「あ、あの」

 

ツナは恐る恐る近藤に声をかける。

 

「ん?何だね?」

 

「雲雀さんの事宜しくお願いします!!」

 

ツナは頭を下げ近藤は、

 

「いや気にしなくていい、こちらも自分の利点で動いたんだ。そこまでかしこまらなくてもいい、だから頭をあげなさい」

 

「はい」

 

「良かったな、雲雀の事も丸く収まって」

 

「うん、ほんとに」

 

リボーンの言葉に頷くツナ。

 

「うむ、では行こう‥‥えっと‥‥君の名は?」

 

「‥雲雀‥雲雀恭弥」

 

こうして雲雀は108部隊、真選組預かりとなった。

 

 

~sideウラバナ~

 

雲雀を連れ108部隊に戻った近藤はゲンヤに事の次第を報告するとゲンヤも雲雀の臨時雇用を認めた。

そして、カルタスとギンガに命じて108部隊隊舎の案内を行っている。

沖田はまた姿が見えず、恐らく何処かで昼寝でもしているのだろう。

そんな中、近藤と土方は108部隊の食堂に居た。

近藤がコーヒーを一口飲み、おもむろに土方に話しかける。

 

「なぁ、トシ」

 

「何だい?近藤さん」

 

「お前、以前よりギンガちゃんと仲良くなってなかったか?」

 

今日のギンガと土方のやり取りを見て、此処に来たばかりの頃を比較すると確実にギンガと土方の距離は縮まっている。

 

「ぶ、ゲホゲホ」

 

吸っていたタバコを灰皿に捨てて咳き込むぐらい驚く土方。

 

「別にんな変わんねぇよ」

 

「そうか?」

 

「あぁ、...この頃はまぁ、仕事の時よく一緒にいるが」

 

「.....トシ‥‥お前もしかして、ギンガちゃんとやったのか?」

 

「あぁ?やったって何を?」

 

近藤の言う『やった』に対してその言葉の意味が理解できないのか首を傾げる土方。

 

「そりゃお前、男女の信頼を確かにする...アレだ‥‥」

 

(夜の営みって奴を)

 

近藤の言葉に対して土方は、

 

「信頼ぃ?アレ?」

 

(模擬戦とかの事か?)

 

「まぁ、週に二、三度は‥‥」

 

これに過剰に反応する近藤。

 

「な、週に二、三度だとぉ!?」

 

(お前達そこまでの関係に発展していたのか!?羨ましいぞ!!トシ!!ギンガちゃんみたいな美人と‥‥でも、俺にはお妙さんと言う将来を決めた女性がいるから、むしろお前とギンガちゃんを応援してやるぞ!!)

 

「何暑くなってんだよ?近藤さん」

 

それを聞いた近藤はショックなのか、それともあの土方が1人の女性に対して恋心を抱いたのが嬉しいのか、何なのかよくわからずに固まった。

因みに後日から土方とギンガのカップルがもう100%と言う変な噂が流れこの2人を見る目が少し変わっていたのをこの2人が気づくのはまだは気のことであった。

なお、その間ギンガは女性局員から羨ましがられ、土方は男性局員から闇討ちをうけたり、模擬戦を挑まれる回数が増えたとか‥‥。

 

 

・・・・続く




すいません。昨日更新出来なくてこの頃平日より休日の方が忙しく感じるぐらい忙しく

ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的40 休暇だからってハメ外しすぎないように

更新です。


 

~side食堂~

 

今ここは歓喜の声で満ちている。

何故ならさっきまで朝練でFWメンバー+新八、神楽、獄寺がツナ、炎真相手に勝ったのだ。

この事だけでも喜べるがそれだけでなくそれが第2段階見極めのテストだったようでそれに合格結果が出た。で現在

 

「さぁみんな聞いてや!!」

 

はやてが大声で

 

「テストも無事合格そして今までちゃんとした休暇渡してなかったからな、なので今日1日は休暇を言い渡すーー! 」

 

「「「「いゃふぅーーーー!!」」」」

 

これが歓喜の拍車がかかった。

 

「FWメンバーと銀さんやツナ君達はたっぷり休んでや」

 

で、今日はどうするかの話になった。

 

「スバルはどうするかアル?」

 

神楽がスバルの予定を聞いて。

 

「私はティアと一緒に街に行こうと思っているよ。」

 

「なら、ついて行っていいアルか?」

 

「うん、いいよねぇティア。」

 

「えぇ」

 

「10代目はどうなさいますか?」

 

と笑顔で聞いて

 

「俺はどうしようか?」

 

ツナが休日の予定をどう過ごすか考えていると、

 

「何言ってんだ?お前は修行だ。」

 

リボーンのこの一言にツナは耳を疑った。

 

「え?」

 

「仕事がないならネッッッチョリできるよな?しゅ・ぎょ・う」

 

「嫌だーーーー!!助けて獄寺君、エンマ!!」

 

ツナは助けを求めるが、

 

「頑張って」

 

無理である。

どう頑張ってもこの状態のリボーンを止めるのは無理だ

 

「銀さんはどうします?」

 

「決めてねぇな。」

 

折角の休日の予定を興味なさそうに朝飯を食べている銀時。

まぁ、彼は年がら年中休日みたいなものなので、急に休日が貰えてもありがたみが薄かった。

 

 

~sideティアナ~

 

「ん?お前らどこかに行くのか?」

 

ティアナとスバルと神楽が何処かに行こうと支度をして外に居ると、

 

「あ、獄寺」

 

獄寺が3人に声をかけた。

 

「あ、あんたも何処かに行くの?」

 

「いや、別に散歩しているだけだ。」

 

素っ気なく獄寺は答える。

 

「そ、そう。」

 

「なら一緒に行くヨロシ。お前も」

 

神楽の提案に

 

「いいよ、別に10代目に悪い」

 

今頃、ツナはリボーンの厳しい修行をしているのに自分だけ休むなんてツナに気が引けているのだ。

 

「行ってきたら獄寺君。」

 

其処にツナが獄寺に声をかけた。

 

「10代目!?いつの間に!?」

 

気づいたら、すぐ傍にいたツナに驚く獄寺。

 

「獄寺君も楽しんできてよ。」

 

「どうしてここに?」

 

獄寺に代わってティアナがツナに聞いた。

 

「それは‥‥」

 

ヒュー、何か飛んできた。

 

「ぐへ」

 

「ちゃおっス!!」

 

飛んで来たのはリボーンだった。

 

「リボーン、何その格好?」

 

スバルが聞いた。格好は未来でとある男性を鍛えた時にしていた女子マネの格好をしていた。

 

「何逃げてんだ?ダメツナ行くぞ」

 

ツナが此処に居た理由‥‥それは、ツナはリボーンから逃げていたのだ。その途中で獄寺が神楽たちに誘われていたので、出かけるよう勧めたのだ。

 

「あと獄寺、お前も男ならちゃんと女性をエスコートしないとな」

 

「なっ!?」

 

獄寺が何か言おうとしたが、

 

「じゃ、ちゃおちゃお」

 

とスクーターをかけてレオンでツナの首元を引っ張って去って行った。

 

「行ってしまった。」

 

リボーンの行動に4人共呆然としていた。

 

「それで、どうすんの?獄寺?」

 

ティアナの質問に獄寺は頭をかきながら

 

「わかったよ。行ってやるよ。」

 

獄寺がこう返した時にスバルと神楽はアイコンタクトで

 

(わかっているよね?神楽)

 

(うん、何時でも)

 

((よし))

 

「あっ、ごめーん!!私、サイフ置いてきちゃった。(棒読み)」

 

「何しているアルか?スバル(棒読み)」

 

「ちょっとどうしたの?そんな棒読みで?」

 

何気なさを出そうとしたスバルと神楽であったが、ティアナにあっさりと見破られた。

 

「これはいけない、私ちょっと取りに戻るから(棒読み)」

 

「私もついていくネ(棒読み)」

 

と2人は隊舎に戻っていた。某有名のタコのごとくとてつもないスピードで‥‥

 

「ちょ、スバル!!神楽!!」

 

ティアナが慌てて声をかけたが、2人は止まる事はなかった。

 

「あいつら何焦ってんだよ」

 

そんな2人の行動に首を傾げている獄寺。

 

(スバルもしかして~)

 

とスバルと神楽の行動を理解したティアナの握る拳に力が入ってきていた。

 

「んで、どうやって行くんだよ?」

 

「え?」

 

「遊びに行くんだろう?バスで行くのか?まさか、徒歩で行くのか?」

 

「あっ、そ、そうね‥‥」

 

(公共交通機関...いやバイクの方がいいかな?移動に便利だし‥ヴァイスさんが貸してくれるって言っていたし問題ないわね。)

 

そしてティアナと獄寺の2人はヴァイスにバイクを借りた。

尚、その際、ヴァイスは獄寺を羨ましそうに見ていた。

 

「さぁ乗って。」

 

ティアナは獄寺にヘルメットを渡して、自分の後ろに乗る様に言う。

 

「いいのかよ?俺が運転してもいいんだぜ。」

 

「あんた今何歳?」

 

「15だが、んなモンどうしたんだよ?」

 

「何で15から乗り方知ってんのよ!?」

 

「別にいいだろう?」

 

「仮にも法律守らないといけない立場に所属しているなら、交通ルールぐらいは守りなさいよ」

 

「はぁ~めんどくせぇな。」

 

とティアナの後ろに渋々乗った時に感じた。

後ろからのダイレクトな体温が前のあの時みたいにほぼ密着状態なのである。

 

(ティアナもやっぱ女子なんだよな‥‥体も柔らかいし、なんか良い匂いがする‥‥って、俺は一体何を考えてんだ?//////////)

 

煩悩退散と心の中で葛藤中である獄寺だった。

赤くなるが、ティアナの方も、

 

(うぅ‥やっぱり、バスか電車で行くべきだった‥‥//////)

 

ティアナは此処に来て自分の行動の大胆さに気づいたが、もはや後の祭りだった。

 

「そ、それじゃ、出発するから、しっかりと捕まっていてね。振り落とされても知らないからね////」

 

「あ?何でんな赤くなってんだよ。////」

 

「それはあんなも同じでしょう。それより喋っていたら、舌噛むわよ//////」

 

ツンデレコンビはこうして出掛けて行った。

 

 

~sideフェイト~

 

「IDカード持った?お小遣いは足りる?足りないといけないから」

 

「大丈夫です。フェイトさん僕もお給料貰っていますし。」

 

出掛けようとするエリオとキャロにフェイトはものすごく過保護だ。

 

「あ、そっか。」

 

「大丈夫です。ありがとうございます。」

 

「エリオは男の子なんだしちゃんとキャロをちゃんとエスコートしてね。」

 

「はい!」

 

ここでキャロの支度が終わって、

 

「ごめんなさいお待たせしました。」

 

「あ、キャロ可愛いよ。」

 

「ありがとう、エリオ君!」

 

 

ツナと違い、エリオはもしかしたら将来、プレイボーイになるかもしれない。

 

 

~sideはやて&炎真~

 

ここは部隊長室.....ではなく隊舎のとある場所

 

「よっしゃ行くでエンマ!」

 

元気よく言ったのが皆さんご存知のサボり魔です。

 

「いいの?こんなことして。また怒られたりするよ。」

 

恐る恐るはやてに聞いてた。

 

「ええねん。私もたまにはガス抜きしな。」

 

「はやての場合いつもやっているような‥‥」

 

『気がする。』を言い終わる前に、

 

「ん?なんか言ったか?エ・ン・マ・く・ん?」

 

と迫って言った。

 

「ナンデモゴザイマセン。」

 

冷や汗がダラダラと流れる。

 

「それに...その」

 

はやてが珍しく指をもじもじと絡ませると、

 

「どうしたの?」

 

炎真が聞こうとすると、

 

「な、何でもないで‥‥/////さっ、行くで!!」

 

「ど・こ・に?‥行こうとしているのかな?は・や・て・ちゃん?」

 

皆さんワンパターンと思っているでしょう。

 

・・・・そのパターンです。

 

管理局の白の魔王さんがいたのだ。

そして、魔王からは逃げる事は出来ない。

 

「はやてちゃん。何処へ行こうとしていたのかな?‥かな?」

 

目のハイライトが無く、はやてをジッと見つめる。

そんななのはにはやては涙を流した。

 

「仕方ないよ。僕も出来るだけ手伝うから。」

 

と慰めはやてはエグ、エグと泣いていた。

 

「ありがと、エンマ」

 

と部隊長室に戻った。

 

「はぁ~全く。」

 

はやてが大人しく仕事をしたのを確認したなのはは、はやての部屋を出た。

 

「ん?なのは。何でこんな所に?」

 

其処にいたのは銀さんとメガネ。

 

「おい、しっかりと新八って書けよ。」

 

「銀さん達何で?」

 

「ブラブラ歩いてた。お前は今日休暇じゃ?」

 

「私たち隊長陣は普通に仕事があるよ。」

 

と返したが。

 

「お前も休まねぇとぶっ倒れるぞ・・・・しゃあねぇ少し手伝う。」

 

銀さんが銀さんらしくない事を言って

 

「え、」

 

30秒ぐらい間をあけて。

 

「「えええええええええ!!」」

 

なのはと新八はとてつもない叫び声をあげて銀時が耳を抑えていた。

 

「ちょ、どうしたんですか!!?銀さんなんか悪いものでも食べたんですか、やばいですよやばいです。明日もしかしたら.....世界が終わる。」

 

ここで飛んできた。銀さんからのDROPKICK。勢いよく壁にめり込んだ新八。

 

「てんめ、何勝手にまたボケに回ってんだよ。いくらこの小説でも出番少ないからってボケに回って出番増やそうとしてんじゃねぇよ。」

 

そしてくるりと振り向くと、

 

「で、どうだいんのかいらんのか?」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

赤くなりました。そして、2人で歩いていった。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

表的41 僕達です!!

更新です


 

 

 

~sideスバル&神楽~

 

「ティア、大丈夫かな?事故ったりしていないかな?」

 

とスバルが心配そうに言って。

 

ペロ

 

「大丈夫ヨ、ティアナもやる時はやる女の子ネ。」

 

と答えて。ペロ

 

「ちょっと二人共食べ過ぎですよ!!」

 

「うるさいヨ~新八、折角連れてきてやったんだから大人しくしていろよ」

 

何故いるのかと思った読者の皆さん説明すると長くなるし新八で尺とるのもあれなので...

 

「おい、この頃僕の扱いおかしくない!?」

 

銀時に蹴り飛ばされたあとふらふら歩いていると一芝居したこの2人と合流して一緒に行かないかとスバルに誘われて今現在進行形である。

 

「大丈夫だよ、これぐらいじゃ数にもならないから」

 

そう言って再びアイスに口を着けるスバル。

 

「そんな事言っていると...」

 

「スバルもなかなか、やるネ。」

 

「神楽こそ。」

 

両者新八の言う事全く聞かずにアイスをどれぐらい食べれるかと言う勝負をしていたり

 

結果2人はしばらくそこを動かなかった。頭痛で‥‥

 

「ほら、言わんこっちゃない。」

 

頭を抱えて苦しんでいるスバルと神楽を呆れた表情で見る新八だった。

 

 

~sideエリオ&キャロ~

 

こちらも違うところだが遊び楽しんでいた。

この2人は最初どんな風に遊べばいいかよくわからずそこにシャーリーが介入しシャーリーのアドバイスのもと楽しんでいた。

そして、現在買い物中‥‥

 

「いっぱいあるね。」

 

「うん」

 

「エリオ君、こんな服とかどう?」

 

と言いキャロからオレンジのシンプルな服を渡された。

 

「う~ん。」

 

そして悩んでいる内にそのまま更衣室に入れられ試し着させられた。

 

 

~side獄寺&ティアナ~

 

こちらはティアナ&獄寺のツンデレコンビ。

2人は今カフェに入って沈黙が続いていた。

 

「「・・・・・」」

 

((き、気まずい。))

 

と思いながら、

 

ズズ

 

獄寺はコーヒーをすすった。

 

「ねぇ、獄寺」

 

沈黙に耐えかねたか?ティアナが、

 

「ん?」

 

「獄寺って何であんなにツナに・・・」

 

「・・・昔俺は10代目の命を狙って日本に来た。」

 

「え?」

 

一番不意打ちの言葉が来た。

 

「で、10代目と戦っている途中にミスってダイナマイトを落としちまってその時に10代目は自分の命狙われていたにも関わらず俺を助けたそれが最初のきっかけだ。」

 

そう言って一気にコーヒーを煽り、飲み終えた。

 

「嘘、あんなに懐いているのに。」

 

ティアナの頭の中にはツナになついた猫があった。

 

ニャーン

 

「てめぇどんな想像してやがる!」

 

「でも、ツナって懐が深いと言うかなんというか。」

 

「あの人はそういう人だ。どんな人でも受け入れる。仲間と思い守ろうとする。だから俺達も少しでも支えたいと思ってついて行きたくなる。」

 

「そっか、あんたってさ、ツナの話している時が一番いい顔するよね。」

 

この時も笑顔で言うもんだから

 

そっぽ向いた。

 

「で、これからどうすんだ。」

 

慌てて言った。

 

「え?」

 

「せっかくの休日なんだろう、出来るだけ楽しましてやるからいい所教えろ。」

 

と何故か上から目線。

しかし、そう言う所が獄寺らしい。

 

「ん~ならゲーセン行こ。」

 

「あ、いいけど泣きみるぜ。」

 

「その台詞、そっくり返してあげるわ」

 

自信満々のご様子。

 

「‥あ、あとさ、この前////」

 

と、先日の事を思い出してティアナはトマト化して、

 

「スバルにさ////」

 

モジモジ

 

「ティアって呼んでって言われた‥こと・・なんだけど‥‥////」

 

何の事か分からない人は『恋のない所に煙は立たない』を読んでください。

 

「な、あれは、あの時はあの変なもんのせいでおかしくなっただけだかんな」

 

言い訳を述べた…虚しいね。

 

「だから、あの『ティア』ってさ、その‥呼んで…欲しい////」

 

ティアナは赤くなり違う所向きながらモジモジして言った。

もし、この場にスバルが居たら、きっと「ティアはツンデレだね」とからかわれていただろう。

 

「は?」

 

ティアナの言葉を聞き獄寺の時が止まった。

 

「だから呼んでって言ってんの!!いいでしょう!!それくらい!!‥別に、へるもんじゃないし‥‥////」

 

赤くなり獄寺がなんとも言えない顔をして

 

「・・・・ティ(ティアーーデートどんな感じーー!!)」

 

獄寺がティアナの事をティアと呼ぼうとしたその時、あぁ、あと1歩のとこでスバルが空気を呼ばずに、ティアナに念話を飛ばして状況を尋ねた。

 

ブチッ!!

 

ティアナの中で何かが切れた音がした。

 

(ティア、ねぇ、ティアったら。)

 

この時のティアナはあれですね。近くにいた全ての人がΣ(OωO )とするぐらいのオーラを出していたね、ある意味覇〇色ですね。

そんなティアナの姿を見る事が出来ない為、スバルはしつこくティアナに現状を聞いてくる。

 

(スバル‥‥)

 

(あっ、やっと返事してくれた!ねぇ、ティアー!今、どんな‥‥)

 

(後で覚えておきなさい‥‥バカスバル‥‥)

 

ドスのきいた声でスバルに言い放った。

 

(ご、ごめんなさい~!!)

 

この時少し涙が流れていた。

 

 

~sideスバル&神楽、新八~

 

「どうだったアルか?ん?何で泣いているネ?スバル」

 

神楽は念話が使えないのでスバルとティアナの間で何があったか分からない。

 

「ごめん神楽、今日が終わってもずっと友達だよね?」

 

「えっ?勿論アル」

 

「‥ありがとう」

 

 

で、場面は戻って

 

(あと少しだったのに。)

 

ここで獄寺が会計票を持って立ち上がり、

 

「ほら、行くぞ、ティア。」

 

獄寺は照れくさいのかそのまま振り向かずにレジまで歩いていった。

 

「う、うん」

 

この時結構嬉しかったらしい 。が、スバルの事は全然許してなかった。とりあえず帰ったらサブミッションでも食らわせよう。

絶対に喰らわせてやる。

そう意気込んでいた。

 

 

 

~sideクラナガンのとある事件現場~

 

この時にある一つの事件が起こっていた。

 

「陸士108部隊のギンガ・ナカジマです。」

 

「同じく、土方十四郎だ。」

 

この2人は交通事故の現場検証に来ていた。

 

「横転事故と聞きましたが?」

 

「えぇ、ただ少し状況が奇妙で」

 

現場にいた鑑識の人間が怪訝そうな顔をする。

 

「奇妙な状況?」

 

鑑識の人間の言葉を聞き、ギンガも首を傾げる。

 

「はい、運転手が何かに攻撃されて荷物の一つが爆発した。と言うんですが。」

 

「運んでいたものは缶詰めやペットボトル」

 

ギンガと土方は横転したトラックが輸送していた荷物のリストを見る。

 

「爆発するようなもんじゃねぇな。」

 

「それと下の方に妙な遺留品がありまして。」

 

「遺留品‥‥ですか‥‥それはどんな遺留品なんですか?」

 

「此方へ‥‥」

鑑識の案内の下、土方とギンガは今度は奇妙な遺留品が発見された現場へと向かう。

 

そこで2人が見たモノは‥‥

 

「これは!!」

 

「‥‥」

 

そこにあったのはガジェットの残骸と生体ポッドだった。

更には何かを引きずったような跡もその現場には残されていた。

 

 

 

 

~sideエリオ&キャロ~

 

所変わってエリオとキャロの2人がクラナガンの町中を歩いていると、急にエリオが立ち止まった。

 

「どうしたの?エリオ君」

 

「今何か音がしなかった?」

 

「えっ?」

 

と言って周りを見回してそして前方の建物と建物の間の隙間の裏路地を注視すると急に走っていった。

 

「あっ、待って!!エリオ君!!」

 

キャロもそれに黙ってついて行った。

 

ついた時に同時にマンホールが開かれてそこから何とまだ5歳ぐらいの少女がいた。それならまだましだったその少女の格好がボロボロの布切れの服に鎖で繋がれたケースがついていた。

 

「「あぁ!」」

 

「はやく連絡を!」

 

「うん、こちらライトニング4緊急事態につき報告します。サードアベニューF-32の裏路地にてレリックと思しきケースを発見!!ケースを持っていた少女は意識不明です。至急指示をお願いします!」

 

キャロが急いで六課へと連絡をいれた。

暫くするとキャロの連絡を受けた六課のメンバーがやって来た。

 

「大丈夫かなこの子。」

 

心配そうに少女を見るスバル。

 

「お待たせ。」

 

「そいつか?例の子供っつぅのは?」

 

獄寺とティアナもここで合流。

 

「ケースの封印処理は?」

 

ティアナがレリックは封印されているのかを尋ねる。

 

「私がしましたので大丈夫です。」

 

キャロが答える。

やがて、六課の医療担当のシャマルもその現場へと到着した。

 

「…うん、バイタルは安定している危険な反応もないし、大丈夫よ。」

 

「良かった~。」

 

シャマルの診察結果を聞き、胸を撫で下ろす一同。

 

「けど、問題は‥‥」

 

獄寺が鎖の方を見て、

 

「ケースがもう一つあった可能性がある事だな‥‥」

 

「そこはロングアーチに調べてもらっています。」

 

「まずは新八君この子をヘリに乗せてくれる。」

 

「わかりました。」

 

新八がヘリに乗せてからアラームがなりガジェット反応が出た。

その為にヴァイスとシャマルは一緒に乗って空はなのはとフェイトで迎え撃つそして海上の方は向かってきてるヴィータとで迎え撃つと決まった時にギンガが似た事件を追ってるとの事でその他の一つは地下で合流する事になった。

 

「さて、皆短い休みは堪能した!」

 

「お仕事モードに切り替えてしっかり気合いを入れていこう!」

 

「「「「おお(はい)」」」」

 

 

~side地下~

 

 

「そう言えばギンガって?人の名前か?」

 

獄寺がはじめて出てきた名前を聞いた。

 

「確かスバルさんの」

 

エリオがスバルに視線を向けながら、『ギンガさん』の事を尋ねる。

 

「うん、私のお姉さん」

 

走りながら『ギンガさん』についての情報を得る獄寺達だが、

 

ズガァァン!!

 

突如、壁が崩壊した。

そして、そこからは会いたくない人物が姿を現した。

 

「うわ!?」

 

「ちっ、神楽!」

 

「あら?久しぶりね」

 

「お、お前は」

 

其処に居たのは忘れもしない。

神楽と同じオレンジの髪、神楽と似た顔そして神楽と同じ声の‥‥

 

「トレディ!!」

 

「銀髪...あら?もう1人の銀髪は今回、居ないみたいね。それにあの小さな騎士も‥‥」

 

そうつぶやくとトレディはため息を吐く。

 

「歯ごたえのあるのが貴方しかいないようね。」

 

「おい」

 

「ん?」

 

ズドーン!

 

神楽がトレディを蹴り飛ばしトレディは壁を突き抜けもう一方の通路まで飛んでいった。

 

「どこ見ているネ、お前の相手はここに居るアル!!獄寺達は先にいくヨロシ。ここは私達が抑えるネ!!」

 

「ちょ、神楽無茶言わないでトレディはこの前全員で抑えるのがやっとだったじゃない!!」

 

ティアナが神楽の無茶を止めようとする。

 

「それにトレディと神楽の戦闘スタイルじゃ相性が悪いよ!!」

 

スバルもティアナ同様、神楽を止める。

 

「そうよ、お友達の言う通り‥‥」

 

トレディがまた攻撃をしてきた。

 

ドン!

 

「貴方如きが1人でやったって無駄なのよ。」

 

神楽の顔面にヒットして少し神楽が押し負けるだが、

 

「勘違いしないでください。僕『達』です!!」

 

「っ!!?」

 

今度はトレディの額に新八の木刀がそして神楽がトレディの腹を蹴り飛ばす。

 

「がはっ!!」

 

「早く!!」

 

「行ってください!!」

 

神楽と新八この2人の表情には覚悟が滲み出ていた。

 

「くっ、行くぞ!!」

 

獄寺が神楽と新八の意を汲んで、トレディの相手を2人に任せ、先へと急ぐ。

 

「え?」

 

「獄寺さん‥でも‥‥」

 

「2人を置いて行くんですか!?」

 

ティアナは獄寺の行動に唖然とし、エリオとキャロは心配そうに神楽と新八を見る。

 

「チンタラすんな!!走れ!!」

 

そんなFW陣に獄寺が大声をかけて、先頭を走り出す。

 

「ちょっ‥‥!!」

 

「キャロ」

 

神楽の言葉にキャロは、

 

「後で会うネ!!」

 

キャロは一瞬止まったがすぐに唸づき走り出す。

 

「イライラする‥‥大した力もないのに、あまり調子に乗らないで!!」

 

トレディは両手を広げて、

 

「IS、アンジュレーション・フォー」

 

みるみる内に周辺の温度が下がり始める。

 

「貴方達如き一瞬で氷漬けにしてあげるわ!!覚悟なさい!!」

 

トレディは不敵な笑みをこぼしながら、神楽と新八を見た。

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的42 通行料をとるやつはICか不良ぐらい

久々の更新です。


 

 

 

~side獄寺達~

 

「.....大丈夫かな、神楽と新八」

 

「あ?」

 

スバルの呟きに獄寺が反応した。

 

「お前まだ、んな事言ってんのか?」

 

「だって‥‥」

 

「お前今日のテストであいつらを見ていなかったのか?」

 

「え?」

 

「あの2人は以前とは動きが全然ちがっていただろう。それに神楽の方はリボーンさんが見てんだぜ。以前のアイツらと舐めてかかると痛い目に遭うぞ‥それにトレディの奴はその事を知らないんだ、もしかしたら今回は...」

 

と、獄寺の2人への評価は結構大きくもしかしたらが起きるかもと期待をしている。

 

「.....」

 

しかし、まだ心配を拭いきれないスバル。

どうやらこの前の戦いの時の事が頭から離れないようだ。

そんな時、

 

「あんたらしくないわね」

 

「ティア。」

 

「そんな事ばかり考えてないで目の前の戦いに備えなさい。レリックを見つけてガジェットを3秒で倒してすぐに神楽と合流する。これが今の最善策よ。」

 

「.....そうだね。すぐにガジェットを倒して神楽達の援護に行く!」

 

「その意気よ。やっぱりアンタは能天気な方がアンタらしいわ」

 

「能天気って、酷いよ~ティア」

 

「っ!?ガジェットの反応‥‥来ました。」

 

機械音に反応するエリオ角を曲がった先にいたのは機械ではあるのだが今まで見て来たガジェットとはあまりにも異質で、人に近いといえば近い形をしていた。

その証拠に人型の腕と足もあるだが、大きさは2mぐらいあり真っ白の装甲に黒い翼を生やすその姿はまるで堕天使の様な形状をしていた。

そしてやはり人型故か手にはそれぞれ違う形の武器を持っていた。

だが、いつものように多くの数がいるのではなくいたのはたったの4体のみだった。

ただ単に生産が追い付かなかったのか?

それとも試作品故に少ないのか?

いずれにしてもその能力は未知数のガジェットであった。

 

「人の形‥これって...もしかして新型!?」

 

「如何にもって感じがします。...」

 

「手にしているのは杖に戦斧に刀にハンマー...」

 

全員が新型ガジェットに驚いている時に、

 

「なにボサッとしている!?来るぞ!!」

 

獄寺の一言でティアナ達は我に返る。

すると、獄寺の言葉が合図の様に新型ガジェット達は襲ってきた。

 

ギギ

 

ズドーン!

 

「な!?」

 

「これって砲撃魔法!!?」

 

杖を持っている新型ガジェットからはなのはやスバルが得意とするディバインバスターの様な砲撃魔法を撃ってきた。

そして斧の奴がスバルに急接近し、襲いかかる

 

「速い!!」

 

キーン!

 

「く.....はぁ!」

 

スバルは何とか押しきるがすぐに背後に回られた。

 

「な!?」

 

だがエリオが、

 

「はぁぁ!」

 

ストラーダで壁にまで押し込む。

 

「大丈夫ですかスバルさん!!」

 

「うん、ありがとう。」

 

「油断すんじゃねぇ後ろだ。」

 

獄寺が叫び後ろを見ると刀の奴が炎を纏った斬撃を飛ばしてきた。

 

「危な!」

スバルとエリオはそれを避ける。

 

そして獄寺の方にもハンマーの奴がものすごい回転速度で襲ってきた。だがそれをジャンプしてかわすと

 

「あんまり図に乗んじゃねぇ!!」

 

とフレイムアローを三発放つが全くのダメージになってなかった。

 

「な!?まさかナノコンポジットアーマーか」

 

ナノコンポジットアーマーとは死ぬ気の炎や衝撃に強い構造の事。獄寺達にとっては厄介極まりない。

 

「獄寺、横!!」

 

と見るとさっきエリオが壁にまで追いやった斧の奴がすぐそこに迫っていた。

 

(シールド...間に合わねぇ、仕方ねぇ)

 

とポケットからミニボムを取り出してかわした。

 

「く!...こう纏まってこられたら...キャロとエリオは先に行って!」

ティアナの指示に

 

「え、何で、ですか!?」

 

こっちで最後まで戦うと言う意思を表しているエリオとキャロだが、

 

「多分だけどこいつらの目的は足止めと時間稼ぎ!!その間に...」

 

この言葉で察しがついた二人、

 

「でも‥‥」

 

「ゴチャゴチャ言うんじゃねぇ!!仲間の心配より仲間の強さを信じやがれ!!」

 

獄寺の一括が地下通路に響き渡る。その言葉そして身を呈してトレディを止めている神楽と新八と為に

 

「すぐに戻ってきます!」

 

「数分の足止め宜しくお願いします!!」

 

エリオの言葉に全員口角が上がり

 

「あぁ!!それどころか、お前らが戻ってくる頃にはコイツ等をガラクタに変えてやるぜ」

 

「えぇ!!」

 

「うん!!」

 

獄寺達の言葉を聞き、エリオとキャロは先を急いだ。

 

 

~side空中~

 

「なのは、皆から連絡入っている?」

 

「ううん、全くきてない。皆大丈夫かな...」

 

空を物凄いスピードで飛ぶこの2人。

 

「そう言えば、ツナ君たちは?」

 

「今向かってる.....!」

 

フェイトとなのはは急に飛んできた攻撃を避けると

 

「気付かれたか~♪」

 

軽いノリで現れたのは

 

「貴方は確か、」

 

「白蘭」

 

「金色の閃光に名前を覚えてもらってるなんて光栄だね」

 

全くそんな事を思ってない声色で話す。

だが次の瞬間、

 

「こっからは通行止めだよ、通りたければ通行料として...命置いていきなよ。」

 

「冗談」

 

なのはとフェイトは構えそして

 

「はァァ!」

 

バルディッシュを振りかざすそれを簡単に避ける白蘭。

 

「へぇ、速い早い、さっすが♪」

 

ガキーん!

 

バルディッシュと白蘭の腕が当たりあい激しい衝撃と火花が飛び散る。

 

「なかなかだね、でも」

 

白蘭がもう片方の手を前に出すとそしたらそれとは別に大きな手が猛スピードでフェイトに襲ったがフェイトはそれを躱す。

 

「どこに!?」

 

「言ったでしょ、通行止めだって」

 

「!?」

 

「気付かないとでも思った?ハハ、そんなわけないじゃん」

 

そう、その腕で掴んでいるはなのはであった。

 

「なのは!」

 

「うぅ、なんて強さなの...びくともしない」

 

どう頑張っても振り解けないむしろ締める力が強くなっている。

フェイトはすぐになのはの元に向かおうとしたけど

 

「動くな、動けばどんどん力を入れるよ~」

 

ギュッ

 

「あぁぁ!」

 

なのはを掴んでいる腕が力を込めてなのはを握り、その苦痛になのはは悲鳴をあげる。

 

「凄いね~これでも死なないのか、さてとフェイト・テスタロッサ、どうするこのままお友達が握り潰されるのを見るか、ここで大人しく僕に絞め殺されるのを待つかどっちがいい?」

 

苦虫を噛み潰した表情で白蘭を見る。

 

だが

 

「大地の重力」

 

急に白蘭がまるで地面に引き寄せられかのように地面まで降下した。

 

「え?」

 

ズドーン!!

 

「「大丈夫か(ですか)」」

 

「ツナ、炎真!」

見ると後から向かってきていたツナと炎真が到着していた。

 

「ありがとう、ゲホゲホ、ふぅ」

 

大きく息を吸いこむなのは。

 

「大丈夫、なのは」

 

「うん」

 

「ここは俺達がくいとめる。なのはとフェイトは先に行ってくれ」

 

「でも」

 

「ツナ君、君もいって」

 

炎真がそう提案して

 

「彼は僕が抑えとく」

 

ツナは炎真の顔を見て引かない事を察し

 

「...わかった、なのは、フェイト行くぞ」

 

とツナは飛んでいきそれにフェイトとなのはもついて行った。

 

「君、僕を舐めているの?」

 

復活した白蘭が炎真に尋ねる。

心なしか彼は怒っている様で声のトーンが低い。

 

「いいや」

 

炎真は首を横に振る

 

「へぇ、ってことは相当な自信家かな?」

 

「そうでもないよ」

 

「変なの、まっ、直ぐにその態度改めさせてあげるよ」

 

「ツナ君達のためにも、君はここで倒す!!」

 

炎真は構えて白蘭を睨む。

 

 

~side獄寺~

 

一方、獄寺、ティアナ、スバルの3人は新型ガジェットに未だに苦戦していた。

 

「くっ、コイツ等本当にガジェットなのか?別惑星の生物って言われた方がしっくりくるぜ」

 

獄寺が愚痴る。

新型ガジェットは杖が後衛でハンマーが中堅、前衛に刀と戦斧の陣形だ。

 

「‥‥ねぇ、獄寺、スバル」

 

「なんだ?」

 

「何?ティア」

 

「気づいた?あの新型ガジェットが持っている武器、アレ‥なのはさん達のデバイスに似てない?」

 

「そう言われてみれば‥‥」

 

「似ているかも」

 

ティアナの指摘を受け、新型ガジェットが手にしている武器を見て見ると、確かに新型ガジェットの獲物はなのは達六課の隊長陣の使用しているデバイスに似ていた。

 

杖型はなのはのデバイス、レイジングハート

 

ハンマー型はヴィータのデバイス、グラーフ・アイゼン

 

戦斧型はフェイトのデバイス、バルディッシュ

 

刀型はシグナムのデバイス、レヴァンティン

 

しかも先程から使用している魔法もなのは達隊長陣が得意とする攻撃魔法ばかりだった。

 

「まるで、隊長陣と模擬戦をやっているみたいね」

 

ティアナが無理にでも苦笑いをする。

 

「け、ガラクタ共め」

 

獄寺も新型ガジェットを睨みつける。

 

「か、勝てるかな」

 

しかし、スバルはやはり不安な様子だった。

 

 

~sideツナ達~

 

スピードをあげてヘリそして獄寺達に合流する為に急ぐが、

 

「っ!?」

 

「どうしたの?ツナ」

 

急にツナが急ストップをかけた

 

「‥‥フェイト、なのは‥先に行ってくれ‥‥」

 

「「え?」」

 

「あいつがいる。」

 

ツナの見る方向にはある男が立っていた。

 

「あの人確か...」

 

「神楽ちゃんのお兄さん‥‥」

 

神楽の兄、神威が立っていた。

 

「ふふ」

 

と傘の先端を向けて発射してきた。

だが、

 

キン!

 

ツナがそれを受け止めた。

 

「あいつには少し話があるんだ。」

 

「...わかった。私達は先に行くからすぐに来て」

 

「あぁ」

 

フェイト達が先に行き、ツナは神威に目を向き直す。

 

「やぁ、久しぶりだね」

 

「...」

 

ツナは地上に降りて神威にもビルから飛び降り、神威はあの狂気が含まれる笑みをツナに向けて来る。

 

「あれ?無視?ねぇ、何か反応してよ」

 

挨拶をしたのに何の返答もしてくれなかったツナにちょっと不満な様子の神威。

 

「戦うしかないのか?」

 

そんな神威に対してツナはあくまで冷静に尋ねる。

 

「そうだね、君が嫌って言うのなら他の人に相手してもらおうかな」

 

神威の言葉にツナは苦虫を噛み潰したような顔をしてかまえる、それを見た神威は相変わらず笑顔を壊さない。

 

「だが、いいのか?」

 

「ん?なにが?」

 

「神楽から聞いたぞ、君達一族の特徴を‥‥この太陽の光の中、傘をさしながら片手で俺と戦うつもりか?この前の俺だと思っていると痛い目に遭うぞ」

 

「へぇ~心配してくれるんだ。君って結構と親切なんだねぇ~でも、心配無用だよ」

 

そう言って神威は1本の注射器を取り出し、腕に突き刺し、中の薬液を体内に注入する。

 

「此奴は、ある科学者は作った強化液だ‥時間制限はあるが、効き目があるうちは太陽の光を浴びても平気なんだよ」

 

薬を打つと神威は傘を折りたたんだ。

 

(神楽の話じゃ、夜兎族は太陽の光には弱い筈‥‥前の時も奴は外に居る時は傘をさしていた‥‥でも、今の奴は太陽の光を浴びているのに平気だ‥‥どうやら、奴の言っている事は本当の様だ)

 

「さっ、準備は出来た‥‥やろうか?」

 

「くっ」

 

2人が構えたその瞬間、

 

シュン!

 

ドド!

 

ミシミシと言う音をたてながらも2人の拳は一歩も譲らないまるでこの1発で勝負が決まるかのような激しいぶつかり合う。

2人の拳は互いに違う方向にそれて

 

ドゴ!

 

両者の頬を傷つけ合いそして

 

ズドーン!!

 

ビルに吹き飛ぶ

 

ガラガラ

 

「神威、お前は何で神楽の声を聞こうとしないんだ?」

 

「何だよ急に...弱いからに決まっているじゃないか。弱者の言葉なんて聞くだけ無意味だよ」

 

「本当にそれだけか?」

 

「何が言いたい?」

 

今まで笑みを浮かべていた神威の様子が明らかに変わった。

 

「他にもあるんじゃないのか?」

 

「何だと...」

 

「お前を見ているとそんな感じがするんだ。」

 

この言葉を発した時に神威の笑顔が崩れた。

 

「黙れよ、何でも知ったように、俺の何を知っているんだよ?お前は!?」

 

「そう感じるんだ。お前を見ていると」

 

ツナの瞳を見るや

 

「何も知らないくせに知ったふうな口を聞くなぁ!!」

 

神威は明らかにイラついていた。

 

「その減らず口、二度と開けないようにしてやる!!」

 

「やれるものならやってみろ」

 

再び拳がぶつかり合う男と男の勝負が再開された。

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


新型ガジェット

見た目は白のボディで黒の翼がありこのつばさで空も自在に飛行できる。スカリエッティが白蘭の情報の元入れたナノコンポジットアーマーの為に硬さが以前のものと比較しても何倍にも膨れ上がっている。
さらに今までの隊長人達のデータのもと動いている。


model
エヴァ量産形すこし大きさは縮んで入るがそこはご了承ください。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的43 真打ちが登場するときのBGMはとてつもなくカッコイイ

更新です。


 

 

 

~sideエリオ&キャロ~

 

「あ、あったよ!!エリオ君!!」

 

「ホントだ!」

 

エリオとキャロはようやくケースを見つけて、

 

「早く封印しなきゃ」

 

早速キャロが中のレリックを封印しようとするが、

 

「っ!?」

 

タッ!

 

「キャロ!」

 

エリオは何かの気配を感じ取り、咄嗟にキャロに向かって走り出し、

 

「えっ?」

 

キャロとケース抱えてそのまま後ろに下がる。

 

「え?」

 

そこにはまた二足歩行でまた人に似ていてなんと言うか忍者のコスプレをした何かがいた。

 

「誰?」

 

「それを渡してほしい」

 

そして、そいつの後ろからは紫の髪をしたエリオやキャロと同じ位の年頃の少女がやって来た。

 

「誰だかわからないけどこれは渡せない!!」

 

エリオがキャロを守ろうと前に出てキャロも支援体制になるだが、

 

「ルールー!!」

 

今度は、

 

「アギト‥‥」

 

「勝手に出ていくなよ、心配するだろう」

 

リィンと同じ位の大きさの小悪魔の恰好をした妖精(?)の様な奴が現れた。

 

「.....ごめん」

 

「ま、それはいい、今はこいつらを片付ければいいんだな?」

 

そう言って小悪魔は両手に火球を出現させる。

その行為にエリオとキャロは再び警戒する。

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

「「!」」

 

「ヴィータ副隊長!リィンさん!」

 

空からヴィータとリィンが降りてきた。

 

「お待たせしました。」

 

「他のヤツらも時期に来る。んでスバル達はどうしたんだ?」

 

ヴィータはこの場に居ない他のFWメンバーの行方を尋ねる。

 

「「...」」

 

すると、エリオとキャロは俯く。

 

「どうしたんだ?」

 

「それが...」

 

ヴィータに状況を話すエリオ。

それを聞いたヴィータが、

 

「なっ!トレディだと!?」

 

トレディの名前を聞き思わず声をあげるヴィータ。

以前トレディに氷漬けにされたヴィータは彼女の強さを文字通り、身をもって知っている。

 

「くそ、なら私がコイツ等の時間を稼ぐ!リィン!」

 

「はいです!」

 

ヴィータがリィンと融合しようとする。

だが、

 

「まぁ、待ちなって」

 

ブォー!

 

突如大きな風が壁となった。

 

「な!?」

 

「援護なんて行かせねぇぜ、」

 

其処に居たのは以前銀時とやりあったシノビだ。

 

「真打ち登場」

 

「くっ、援軍か…」

 

此方の増援が来る前に敵の援軍が来たことにヴィータは思わず舌打ちをした。

 

 

~side獄寺達~

 

なかなかの厚さのナノコンポジットアーマーの新型ガジェットに苦戦する3人。

スバルを主体として攻めるが決め手のあと1歩が行かない。

それほど、この新型ガジェットの陣形とコンビネーションはバッチリなのだ。

機械のクセにと思う獄寺達であったが、機械ゆえに完璧なコンビネーションがとれるのだ。

 

「はァァ!」

 

スバルがヴィータ型と殴り合う。

殴り合っている中、スバルが思ったのが、もしかしたら持久力も本物そっくりに作られているのではないかと‥‥

 

「スバル!」

 

「おお!!」

 

ティアナの掛け声にスバルは横に言って後ろの2人が、

 

「ヴァリアブルシュート」

 

カードリッジを2つ消費してしまうがその分貫通力が高くこのような状況にはうってつけだ。

 

「嵐+雷、フレイムサンダー!!」

 

フレイムアローの最大火力嵐属性の分解に雷の硬化コーティングされた弾だ。

 

この2つがヴィータ型そして近くにいたシグナム型を襲う。

だが、これでも‥‥

 

「ぶち抜け!振動拳!!」

 

シグナム型にあてるこの拳は任意対象のみを振動粉砕する技半分できるかわからなかったがどうやらこうやら成功のようだ。

 

バーン!

 

大きな音と共に腹部が大量に破損される。

 

「はぁはぁ...はぁ!」

 

そしてそのまま回し蹴りをヴィータ型に食らわせる。

 

「やっと1体...」

 

1体壊すにもこれぐらいの時間と体力と魔力の消費が掛かった。

 

「っ!?スバル後ろ」

 

スバルがティアナの声で後ろを見ると、

 

ギギ

 

シグナム型はまだ動けたようだ刀を天にやりそして

 

「く」

 

一気に刀を振り下ろす。

ティアナもスバルを庇おうと走るが間に合わない。

だが、

 

ドン!

 

突然スバルが押されそして見ると、

 

ブシュッ!!

 

横っ腹を斬られ苦しそうにしている獄寺だ。

 

「く~」

 

ミニボムを使い加速してスバルを庇ったようだ

 

「「獄寺!!」」

 

だがどんな事をしても敵には関係ないフェイト型が獄寺に戦斧を

 

「クロスファイアー」

 

溜めようとすると

 

ギギ

 

なのは型がそれを邪魔する。

そしてヴィータ型も復活して、

 

「獄寺!」

 

今度はスバルが獄寺を押して

 

「うわ、」

 

スバルが覚悟を決めた時にヴィータ型のボディーに

 

ブスッ!

 

1本の日本刀が刺さった。

 

 

~sideツナ~

 

両者の激しくぶつかり合う

 

ガガガ!

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

「ふぁぁぁぁ!!」

 

片や成長の限界を知らない大成を秘める体

一方、こちらは常人とはかけ離れた頑丈さとそれを突き動かすセンスの塊

どちらも可能性が込められ勝負の決着は...

 

「はぁはぁ、神威」

 

「何だよ、まだまだ何かあるのか?」

 

二人とも息が荒くなっていた。

 

「何度でも言う。神楽の話を」

 

「そんなにあいつが気になるのか?」

 

「当たり前だ。俺がお前と戦う理由はこれだけだからな。.....うぉぉぉ!」

 

「はぁぁぁ!!」

 

両者の殴り合いが始まろうとした瞬間神威の動きが悪くなった。

 

「うっ‥‥」

 

ドックン‥‥

 

「「!?」」

 

神威が打った強化液の時間切れのようだ。

しかし、制限時間があるとはいえ、両手を使用した神威と此処までやれた事にツナはリボーンのあの修業は確かに意味があったのだと実感した。

 

「ちっ、時間切れか‥‥こんな幕引きは好きじゃないが...まぁいいや、また今度会う時はもっと強くなっといてね、それにあいつが気になるならお前がもっと強くするんだな。」

 

と神威は傘を広げて何処かに去って行った。

ツナも追いかけたいがそれよりもやる事がある。

 

「皆」

 

ツナはフェイトとなのはが飛んでいった方角へと飛び2人を追いかけた。

 

 

~side神楽達~

 

「ホワたァ!」

 

神楽が上からトレディを回し蹴りしようとだがトレディは掴む体制となる。

 

「はァァ!」

 

そうすれば今度は新八が突きをしてきて

 

「ち、」

 

なかなか凍らせることができずにいる。

 

「単体じゃ弱いのにこう来られると面倒臭い。」

 

「以前の僕達と思っていたら」

 

「火傷じゃ済まないネ!」

 

この言葉を聞くと

 

「ふふ、確かに強くなっているわね、でも‥‥」

 

また両手を前にして

 

「Is発動」

 

手のひらから炎を出して攻撃する。

 

それを飛んで躱す2人

 

「でも個々で殺ればいいだけの事」

 

トレディはまずは新八の方に行って

 

「な!?」

 

木刀でガードするも木刀が壊れそのまま腹に入れられる

 

「ぐはァ!」

 

「新八ぃ!!はっ!?」

 

トレディはそのまま壁を蹴って神楽までいった。

神楽は反射的に殴るがトレディに受け止められて、

 

「捕まえた~♪」

 

「くっ」

 

神楽の腕を掴んだトレディはニヤリと笑みを浮かべる。

反対に神楽は苦虫を噛み潰したように顔を歪める。

 

「Is発動‥‥」

 

そして、トレディはISを発動させて神楽の右手を凍らせる。

 

「ふぅ!」

 

だが神楽はそのまま空中で一本背負いの要領でトレディにエルボを入れながら、

 

ズドーン!!

 

トレディを地面に叩き付けた。

 

「ガはァ!」

 

トレディも血を吐き神楽はトレディの腕から解放される。

 

「腕の1体や2本凍らせようが関係ないネ!残った部分でお前に勝つ!!勝負はまだまだこっからアル!トレディ!!」

 

神楽の肉を切らせて骨を切る戦法にトレディはさっきのような冷酷な表情でも怒っているわけでもない

 

「どうやら、貴女を舐めすぎていたようね‥‥」

 

真剣な表情となってまた

 

ヒューン

 

カチ‥カチカチカチ‥‥

 

地面を氷のスケート場の様にした。

 

「それでも貴方達に勝ち目を与えない。」

 

前と同じように足から刃が出て神楽に向かっていった。

 

「神楽ちゃん!」

 

「はぁはぁ...ん~!」

 

地面に自分の足を突き刺してトレディの蹴りに対して血を流しながら止めた。

トレディはもう一方で攻撃しようとするが紙一重でかわす神楽。

 

「うぉぉ!!」

 

そのまま投げ飛ばす砕かれた為か踏ん張りが効くその為神楽は飛び上がり

 

「うぉぉ!!」

 

血が出るも力いっぱい握りしめた拳がトレディを襲う。

 

「行けぇ!神楽ちゃん!!」

 

だが、

 

「甘い!!」

 

トレディは空中で紙一重でかわしてカウンターを決めた。

 

「ガはァ!!」

 

ヒューん!

 

ズドーン!!

 

神楽は壁に激突する。

 

「そ、そんな‥神楽ちゃん‥‥」

 

壁に叩き付けられた神楽を心配する新八。

 

「はぁはぁ‥‥」

 

息を切らしながら壁にもたれるように立つ神楽。

 

(や、やっぱり、コイツ強いネ‥‥)

 

肉を切らせて骨を切る戦法で血を出し過ぎたせいか神楽の体力はあとわずかとなっていた。

足元はガクガクと震え、目の焦点も霞んで来る。

 

「これで終わりよ!」

 

「神楽ちゃん!!」

 

トレディが神楽に突撃しようとすると、

 

バキバキ‥‥

 

神楽がもたれていた壁が突如壊れて出てきたのは日本刀を持った黒髪に黒い服の男の姿だ。

 

「なっ!?」

 

いきなりの出来事に今度はトレディが逆の壁に追いやられた。

突然壁の向こうからやって来たこの男の姿を見た神楽と新八は、

 

「なっ!?」

 

「何でお前が此処に居るネ!?ニコチンマヨラー!?」

 

「土方さん!!?」

 

「ぺっ、それはこっちのセリフだ。何でお前らがこの世界に居る?お前らが此処に居るって事はあのヤロウも来ているのか?」

 

タバコを吐き捨てて、刀を構える土方。

そして、新八と神楽が居ると言う事はあの銀髪パーマの男もこの異世界に来ているのだと予測した。

 

「ギンガ、そいつらを頼む。」

 

土方は眼前のトレディをジッと睨んだまま、ギンガに神楽と新八の手当てを頼んだ。

 

「はい。」

 

そして、

 

「あ、貴方が、スバルさんのお姉さんの‥‥」

 

「あら?スバルを知っているの?私はギンガ・ナカジマ宜しく。」

 

神楽と新八に微笑みかける。

 

「は、はい。よろしくお願いします////」

 

「新八、なに赤くなっているネ。キモいアルよ」

 

美人のお姉さんから微笑みかけられて思わず赤面する新八。

そんな新八に神楽は普段通りの毒を吐いた。

 

「んで、お前も何処かで見たツラだな。」

 

「本当に、この前はどうも」

 

礼儀正しく土方に一礼するトレディ。

 

「一応聞くが、お前一般市民じゃねぇよな?間違って一般人を刺しちまったなんて始末書や減俸じゃすまねぇからな」

 

「刀で突き刺してから聞くセリフ?そうよ、私は一般人じゃない」

 

「それを聞いてホッとしたぜ」

 

「では、改めて、ナンバーズ13トレディよ。貴方は?」

 

「俺は土方十四郎だ。」

 

「へぇ~貴方とも遊びたいけど、残念時間切れよ」

 

トレディは後ろに飛び、

 

「またいつか会いましょう土方。それと貴女とも何時か‥‥ね」

 

最後に神楽を見て何処かに走り去る。

 

「ち、逃がすか!!」

 

土方はトレディの後を追うが、

 

ボー!

 

炎が来てそれを躱したらすでにトレディの姿は消えていた。

 

「くそっ、どこ行きやがった。」

 

土方は辺りを見渡すが、トレディの姿はどこにも見当たらない。

 

「ちっ、逃がしたか‥‥」

 

土方はトレディを逃がしてしまった事に苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。

 

「ギンガ、そいつらの具合はどうだ?」

 

「命に別状はありませんが、病院で手当てが必要です」

 

神楽の手当てをしていたギンガは怪我の具合から病院へ連れて行った方が良いと言う。

 

「やれやれ」

 

土方は髪の毛を搔きながらめんどくさいが、人命に関わる事なので無視できないと思い、新八に肩を貸し、ギンガは神楽に肩を貸した。

 

 

~side獄寺達~

 

「え?」

 

スバルは飛んできた日本刀を見るとそれは日本刀ではなく竹刀だった。

 

「こいつはまさか」

 

「よ、久しぶりだな、獄寺」

 

「てめぇは!?」

 

見るとたっていたのはさっぱりとした黒髪の少年が居た。

 

「山本!!」

 

「助っ人登場」

 

其処にはツナ達の知り合いの山本武が立っていた

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的44 嵐ノチ雨

更新です。


~side炎真~

 

「はァァ!」

 

グワァン!

 

白蘭を重力でこっちに引っ張りパンチを入れる。

だが、

 

「ざ~んねん。」

 

右手でガードする。

そして炎真を殴り飛ばす。炎真も勢いを殺すも、

 

「ぐ!」

 

少しダメージとなった。

 

「ハハ、君の情報は少なくてね、はっきり言って舐めていたよ。でも君も面白いね♪」

 

「はぁはぁ、貴方はどうして僕のこと知らないんですか?パラレルワールドから知識を共有できる貴方なら僕の情報ぐらい知っていてもおかしくない。」

 

「...いいよ。答えてあげる。僕は他の僕と違って僕からのみ僕の知識にアクセスできる。つまり僕は共有じゃなくてアクセスって言った方がしっくりくるかな。でもこれはここに君達のところにあったマーレリングがここにないからできた言わば異質の能力何だよ。他にも欠点とかあるしそれに今は見ることもできないしね.....さて、おしゃべりは終わりだよ。白龍」

 

手が龍に変わり

 

「匣兵器、何で貴方はそれを使えるんですか?」

 

炎真の質問は最もだ。

ここには炎を灯すリングがないはずそれなのに匣兵器を使えるのはおかしい。

 

「全く君は質問が多いね、僕は1度もこの世界に炎を灯すリングがないなんて言ってないよ。」

 

と手を見せる。

 

「ここにも一応はあるんだ。でも君の友達のやつやマーレリングより遥かに劣る僕お手製のリング、ここには彫金師もいないし制度で言えばBランクぐらい、でも僕の匣はただの匣兵器じゃないんだ。」

 

白龍が白蘭の体の中に入り込む。

 

「セットアップ。」

白光りするなか

少しずつ浮きでる鱗の様な模様先程までとは違う幾千のついた羽の翼ではなく少し羽毛に覆われた程度の翼になっていた。これではまるで、まるで

 

 

半人半龍

 

 

 

「すごいでしょ、これは君達の部隊長のデバイスと同じユニゾンデバイス何だよ。」

 

「ユニゾン?」

 

「ま、そこははやてちゃんに聞きなよ。彼女もユニゾンデバイスを所持しているからね」

 

「はやてが?」

 

「まっ、君は彼女に会う事はもう無いだろうけどね」

 

笑顔の状態でそんなことを言うと手を挙げて

 

「天に導、白き道よ、我らのいかなる罪を浄化したまえ」

 

何やら唱えると上にはどでかい魔法陣が出ていた。

 

(これって)

 

ツナのような直感力はなくても分かる自分の身に迫る死の恐怖が

炎真は自分においすがろうとする死神を追いつけないぐらいのスピードで飛んでいく

 

白の架け橋(ポンテ・ディ・ビィアンコ)

 

とてつもなく広い空間を支配する白い柱炎真もその中に飲み込まれてしまう。

 

(しま!?)

 

バッ!

 

覚悟を決めた時に何者かが自分を引っ張り空間の外に出されて

 

「今は静かにしとき」

 

ビルの影に身を潜める。

 

ムニュ

 

(!?/////)

 

何やら柔らかいものの中に顔を埋め込まれてしまう。そして大きな音が鳴り響く

 

ヒューん!

 

シュン!

 

 

「はぁはぁ、流石に魔力を使いすぎたね。ま、時間稼ぎにはなったでしょ、こんだけやれば数の子達もしっかり仕事できたでしょう。あとはし~ら~な~いと」

 

そう言うと白蘭は飛んでいった。

 

「はぁ~、行ったようやな。大丈夫か?エンマ」

 

炎真を助けたのはバリア・ジャケット姿のはやてだった。

 

「ありがとう、はやて////」

 

「ん?何でそんなに赤くなってるん?」

 

「な、何でもないよ/////」

 

一向にはやてに目を合わせようとしない炎真。

そんな態度をとっていたのではやては気づいた。

 

「ははぁん。なんや?そんなによかったんか?」

 

指に口をやり片目を閉じてさらに上目遣いで

 

「私のか・ら・だ。」

 

そこまで豊満ではないけれどやはり女の子なのか胸の弾力が炎真の顔を直に襲った

炎真自身こうゆうのに慣れないまだ子供なのだ。

 

「ぶふぅ」

 

「エンマのエッチ」

 

「なっ////」

 

あたふたする炎真はやても炎真をもう少しからかいたいんだがそうもやってられない。

 

「もうちょいエンマをからかいたいんやけど、そうもやってられへんねんな」

 

はやてが先程攻撃があった所に目をやりそして珍しく冷や汗を垂らした。炎真もそっちを見ると

 

「え?な!!?」

 

言葉も出ない光景だ。一見何も無いように見えるがそうではない

完全な白一色、ガラスもコンクリートも少し衝撃を与えれば砕けそうな石にとなっていた。

 

「ホンマ冗談キツイは」

 

 

~sideなのは達~

 

時間は少し戻るツナと別れてすぐにヘリを見つける。

 

「あ、追いついた」

 

だがヘリに銃口を向ける女の影が二つ

 

「え?」

 

「Is発動、ヘヴィパレス。」

 

大砲と言ってもいいぐらい大きな銃口をヘリに向けて放つ!!

銃口からはなのはのディバインバスター以上スターライトブレイカー未満のエネルギー砲が発射された。

 

ズドーン!!

 

「うふふ~のふ~♪どう?ディエチちゃんこの完璧な計画」

 

「黙って。今命中確認中」

 

クアットロを黙らせて砲撃が当たったかどうかを確認するディエチ。そして、煙が徐々に晴れていくと

 

「ふぅ、危機一髪」

 

「「っ!?」」

 

ディエチが砲撃をしたヘリは無傷だった。

 

「市街地での危険魔法使用、及び殺人未遂の現行犯で逮捕します!」

 

「逮捕は遠慮しときま~す。Isシルバーカーテン」

 

「あ!?」

 

姿が見えなくなり

 

「どこに?」

 

なのは達は探そうといろんな方に視線をやる。

 

 

 

~side2人組~

 

「あ~あ、失敗しちゃった。」

 

「どうするの?」

 

「あっちはもう無理そうだしルーお嬢様の所に加勢に行きましょう。ディエチちゃん」

 

「わかったよ、クアットロ」

 

「わん!」

 

2人組は何故か犬の声がしたために後ろを見ると其処には犬とは思えないぐらい大きな白い犬がいた。

 

「は、は、」

 

尻尾を振りながら2人を見ている。

 

「何これ?」

 

感情が薄いディエチであるが、今まで見た事のない大きさの犬にちょっと驚いている様子。

 

「あら?ディエチちゃん。知らないの~?コレは犬って言う生物なのよ」

 

「それは知っているが何故こんなところに?しかもこんな巨大な‥‥」

 

「さぁ~」

 

「わぉ~ん」

 

2人が謎の巨大犬に疑問視していると、その巨大犬は急に遠吠えをすると

 

「エクセリオン...」

 

「トライデント...」

 

「「な!?」」

 

いつの間にか自分達の居場所がバレていた。

 

「まさかこの犬は管理局の!?」

 

「「バスター!!(スマッシャー!!)」」

 

ズドーン!!

 

「やったかな?」

 

「ううん、逃げられた。」

 

煙が晴れてもそこには人影はなかった。

 

「全く、油断し過ぎだぞ」

 

「ありがとうございます。トーレ姉様」

 

「面目ない」

 

なのはとフェイトのダブル攻撃からクアットロとディエチを救ったのはトーレであった。

ナンバーズ1のスピードを誇るトーレのスピードは流石のなのはとフェイトでも追う事は出来なかった。

 

 

~sideヴィータ達~

 

「でりやぁぁぁぁ」

 

ドゴーン!!

 

地面に穴が開くぐらいの勢いでグラーフ・アイゼンを振り下ろす。

 

「あ、ぶね、おっかないな」

 

一回転してヴィータのグラーフ・アイゼンを躱した後、

 

「風魔手裏剣」

 

風の手裏剣をヴィータに向けて放つ。

それをヴィータはグラーフ・アイゼンで弾き飛ばす。

 

「ふっ!」

 

シノビは、今度クナイを飛ばす。

 

「ち、」

 

「ちょこまかと」

 

今度は

 

「はぁぁ!!」

 

今度はエリオがストラーダで背後に周り、渾身の一撃を放つ。

 

「へぇ、」

 

キン!

 

クルクルクル

 

シュタ

 

「なかなか筋がいいなお前」

 

「それはどーも!」

 

キーン!

 

「くっっ!」

 

(あの人、僕とヴィータさんとでは)

 

シノビはほぼ遊んでいるかのようにエリオと戦っている。

ヴィータの時と反射速度が違う

 

「キャロ!」

 

「うん!」

 

「行きます!」

 

ストラーダにキャロの加速を加えて

 

「うぉぉ!一撃必中!!貫けぇぇ!!」

 

「ふ、」

 

魔法陣を展開して

 

「暴風圧!!」

 

風圧VS加速

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

「くっっ、うわぁぁ!!」

 

しかし、エリオはパワー負けしてしまい後ろに吹き飛んでしまった。

そして

 

ドン!

 

「大丈夫か?エリオ」

 

「ヴィータさん、は」

 

ヴィータの背中には大きな切り傷ができていた。

 

「どうやら、この壁ただの壁じゃないみたいだな」

 

「あぁ、言い忘れていたな、それは俺以外が通ろうとする奴は、かまいたちで切り刻んでしまうぜ、ま、よく途中で受け止めたな」

 

「部下の1人ぐらい受け止めらんねぇで副隊長なんて名乗れねぇよ。」

 

「いいね~いいね~そう言うの~」

 

特大の魔力を練っている。

 

「く、」

 

「心配すんな」

 

「え?」

 

「言ったろ、後から来るって」

 

ヴィータが上に目をやると

 

「うおぉぉおぉぉ」

 

「つくづく思うぜ、サムライってのはいいとこ取りしかしねぇのかよ」

 

「でりゃぁぁ!!」

 

ギン!

 

ドン!

 

ズザザザァァ!

 

「よぉ、ロリコン忍者、こんなに幼児集めてお遊戯会ですか~コノヤロー」

 

「よぅ、穴から落ちてくるとは優雅だな、白夜叉」

 

そして銀時が

 

「またお前に負担かけちまったな、副隊長」

 

「は、私は時間稼ぎの方がしょうにあってるらしい、銀時...てかお前さっきの言葉に私も入ってんじゃないだろな!!」

 

「さてと、まだやんのか?」

 

と聞いて入るが殺気をバリバリ放ち

 

「それがそのセリフ言う奴かよ~」

 

「ま、今日は辞めとくよ。お嬢様もさ、行きましょうか」

 

激しい旋風が吹くとそこにはシノビの姿も少女の姿もなくなっていた。

 

 

~side獄寺達~

 

「よ、やっと見つけたぜ、獄寺、ツナ達もここにいんのか?」

 

あいも変わらない能天気な喋り方である。だが

 

「!?おい、大丈夫かよその怪我!」

 

獄寺が手で抑えている横っ腹からドクドクと血が流れる。

 

「な、何のことだよ」

 

呻きながら起き上がると

 

「何の事ってお前」

 

「俺が怪我しているように見えんのかよ?」

 

山本はこの言葉そして獄寺の表情を見てまた

 

「はは、元気そうだな」

 

「たりめぇだ。」

山本に心配されたくないと強く思う本能が麻酔となり今は平気のようだ。山本もこれぐらいじゃ獄寺は何ともない事がすぐにわかる。この一定の過程のみでもこの2人は相当な信頼関係があるのがわかる。

 

「んで?その2人は」

 

「え?」

 

「あ、」

 

「俺達の仲間...だ。」

 

「そか俺は山本武、よろしくな」

 

「スバル・ナカジマです。」

 

「ティアナ・ランスターです。」

 

戦いの最中だというのに一応自己紹介が終える。

 

「んじゃ、どうすればいいん...だ!」

 

キン!

 

「決まってんだろ、」

 

立ち上がると

 

「あのポンコツを壊すだけだ!!」

 

「わかった。」

 

「次郎・小次郎」

 

山本のネックレスから犬と燕が出て

 

「瓜」

 

獄寺のバックルから猫が出てきて

 

「「形態変化!」」

 

シューーん

 

「朝利雨月の変則四刀」

 

犬から受け取った小刀3本と1本の刀と燕が合体して長刀のなり

 

「Gのアーチェリー」

 

瓜と発射台が合体して弓となり

 

「ティアナ、スバル下がっていろ」

 

「「え?」」

 

「いいから任せとけって♪」

 

「んじゃ、俺が行くぜ」

 

「言っとくが結構硬いぜ」

 

「わかっている」

 

と小刀からでる炎を軸に加速する。

フェイト型が戦斧でヴィータ型がハンマーで攻撃するが

 

「守式四の型、五風十雨」

 

「全く当たらない。」

 

「あれは、相手の呼吸に合わせてかわす技だ。」

 

そして

 

キン!

 

「でも、僅かな切れ目しか入れられない。」

 

「いや、あれでいい」

 

そして山本になのは型が砲撃魔法を撃つだがそれもかわす

 

そして

 

「時雨蒼燕流、総集奥義、時雨之化」

 

青く光ると全てのガジェットの動きが‥‥

 

「え?何が起こったの?」

 

「あの炎は鎮静作用があるんだ。少しの切れ目からでも内側に流れれば」

 

急に止まる、精密には停止に近い動きになっているだけだが

 

「さてと、果てろ!トルネードフレイムアロー!!」

 

普通のフレイムアローとは比べ物にもならない貫通力を誇る獄寺の弓いくらナノコンポジットアーマーでも

 

バーン!

 

「んで、あれって何なんだ?」

 

「後で説明してやる今は10代目達と合流するぞ、痛っ」

キズが痛むらしい

 

「もう、無茶して‥スバル、私は獄寺を病院に運ぶからアンタは彼をなのはさん達の所に案内して」

 

「わかった。」

 

とスバルはティアナと別れて先に行く

 

 

 

 

 

~ウラバナ~

 

ティアナは別れて少しすると

 

「馬鹿、無茶して」

 

「あぁ?」

 

ティアナは俯きながら呟くと

 

「何でそんなに無茶するのよ」

 

獄寺を支える腕そして声も震えていた。

 

「お願い.だから..もう...無茶しないで」

 

獄寺は思い出した。ティアナの兄は...

 

「すまねぇ」

 

獄寺もバツが悪そうに答えるが

 

「だけど、それは無理だ」

 

ティアナは涙が少し流れた瞳で獄寺を見る。

 

「10代目もあの時はそうするだろうし、それに仲間が危なくなってんだ。頭より体が動いちまうんだよ。」

 

「でも、それで死んだら」

 

「これぐらいで死んでちゃ俺の目標には届かねぇからな」

 

「あんたこの前言ってたじゃない。いくら仲間の為って言ってももし死んじゃったら」

 

ギュッ!

さらにまた力強くなり

 

 

「私はもう.....」

 

「失わねぇよ、失わせねぇよ、俺の目標は『皆と共に笑いその為に生き抜く』仲間が死んじまっても俺が死んじまってもそいつには届かねぇからな」

 

少し恥ずかしいのかばつが悪そうに答える。

 

 

 

 

「バカ////」

 

 

 

 

そんな獄寺にティアナは小さな声で一言呟いた。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的45 子供のワガママを優しく受け入れて初めて人は親となる

更新です。


 

 

 

 

~side六課~

 

市街地の戦いも終わり機動六課の隊舎をスバルに案内されている山本。

 

「へぇ、すげぇところだな。」

 

周りを見ながら山本が呟く。

 

「さっき、ツナもこっちに戻ってきているって、連絡があったよ」

 

「お、ほんとか!?」

 

「うん!」

 

そして

 

「あ、山本!!」

 

「久しぶり、山本君」

 

「よぉ!元気そうだな!!ツナ、エンマ!!」

 

「ちゃおッス」

 

「あっ、ついでに小僧も元気そうだな」

 

久々にあった親友同士積もる話もあるが

 

「まず、私達の紹介済まさせてもらおうか?山本君」

 

「ここの責任者の八神はやてと言います。」

 

はやてが頭を下げそして

 

「わたしはフェイト・テスタロッサ・ハラオウン、宜しく」

 

「宜しくっす、後、俺の事は山本でいいっすよ」

 

「わかった。とりあえず、山本も此処にとどまるでええんかな?」

 

「ウス」

 

「あれどうしたんですか?皆さん集まって」

 

「あ、新八さん、神楽ちゃん、紹介します。俺の友達の山本です。」

 

「よろしくな」

 

山本は笑顔で二人に挨拶して

 

「こちらこそ」

 

「よろしくアル」

 

新八は山本と握手を交わして神楽もしたいのだが

 

「神楽ちゃん、手ぇ大丈夫?」

 

「大丈夫ネ、こんなの擦り傷アル」

 

トレディとの戦いで神楽は片方の手は凍らされ、もう片方の手は傷を負った。だが神楽自身が頑丈な夜兎族の出身の為そこまでひどくはない

 

「他にも人はおるけど今はこんな感じで」

 

「ウス、わかりました。」

 

長い休日はたくさんの傷を残したがまた頼もしい仲間を増やして幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side銀時~

 

日が変わり銀時となのはそしてシグナムは今、車で移動中だ。

先日の市街戦にて保護した少女に会いに行こうとしていたのだ。

 

「すいませんシグナムさん車出してもらって。」

 

「気にするな。テスタロッサからの借り物だしな。それに向こうにはシスター・シャッハがいらっしゃる。私が仲介した方がいいだろう。それよりなぜ銀時を連れてきた。」

 

シグナムは後部座席に座っている銀時をチラッっとバックミラー越しに見る。

 

「そうだぞ、何で俺を。」

 

銀時は無理矢理お見舞いにつき合わされてちょっと不機嫌そう。

 

「だって銀さんこの前仕事手伝うって言ってくれたじゃん。」

 

意気揚々となのはが言う。

 

「そりゃ言ったが・・・ま、いっか。」

 

ボソッ「ほんとにそれだけか?」

 

「なんか言いましたシグナムさん」

 

目のハイライトがまた消えた。

 

「い、いや、何も・・・しかし検査が終わり何かしらの白黒ついたらあの子はどうなるんだろうな。」

 

もの凄い殺気を出していたので直ぐに話題を変えた。

 

「当面は六課か教会が預かるでしょうね。」

 

「・・・・・・」

 

「養子の受け入れ先を探すにしても長期の安全確認取れてからじゃないと。」

 

そして突然モニターが現れて

 

「騎士シグナム!聖王協会のシャッハ・ヌエラです」

 

「どうかしましたか?」

 

「こちらの不手際がありましてあの子が検査の合間にあの子が姿を消しました。」

 

 

~side聖王医療院~

 

「お久しぶりです銀時殿、なのは殿、シグナム殿」

 

「あぁ、確かバジルでいいんだっけ?」

 

「はい!!」

 

バジルは挨拶したがすぐに、

 

「申し訳ございません。拙者もう少し見とけば...」

 

となのは達に深々と頭を下げた。

 

「そんな、それは私が目を離したからバジル君は悪くないよ」

 

「とりあえず状況を説明してくれないか」

 

「わかりました。...別病棟とその周辺の避難はシャッハ殿の指示で出来ております。今の所侵入者の気配もありません。」

 

「外には出られないはずですよね。」

 

シャッハは頷いて

 

「はい。転移も飛行も感じませんでしたし、出入口は警備員が固めていますが、まだ発見の報告は受けていません」

 

「なら近くにいるということか」

 

「なら、手分けをして探しましょう。」

 

シグナムとシャッハは病棟内をなのはと銀時は裏庭を手分けして探した。

 

「検査では危険反応は無かったんですよね。」

 

「えぇ、魔力数値はそれなりに高かったんですが、身体能力は普通の子供の範囲でした。」

 

「しかし、それでも」

 

「悲しいですが人造生命体なのは間違いありません。どんな危険を持っているかは」

 

「‥‥」

 

シャッハの人造生命体だから危険だと言う発言になのははちょっと複雑な思いを抱いた。

なのはの親友であるフェイトだって人造生命体である。

もし、この場にフェイトが居れば、きっと居たたまれない気持ちになっただろう。

しかし、地球でも生まれつき足の速い者、美しい者、親が貧しい者、病弱な身体を持つ者と生まれる家を選ぶことが出来ないゆえの差別が存在する。

それでも、まだ小学生に満たない女の子に「お前は人造生命体だから危険だ」なんて言えない。

フェイトだって今は立派に管理局の執務官として働いている。

それは決して恥ずべき事ではない。

育て方や周りの環境で、人は天使にも悪魔にもなれるのだ。

それはきっと人造生命体だって同じな筈。

なのははそれを信じていた。

 

 

~side銀時~

 

裏庭をなのはと別れて探していた銀時とバジル。

 

(ったく、どこにいるんだ?この年でかくれんぼの鬼をやる羽目になるなんてなぁ)

 

気怠そうに周辺を見渡していると、

 

「銀時殿、あそこに‥‥」

 

バジルがある方向を指さす。

 

「ん?」

 

ガサッ

 

音のした方向を見ると病院服を着た左右で瞳の色が違う目を持ち、うさぎのぬいぐるみを持った少女がいた。

 

「んな所にいたのか‥‥おーい、ちびっ子、かくれんぼの時間は終わりだぜ」

 

「っ!?」

 

銀時の声に反応して金髪少女はビクッと身体を震わせる。

 

「ちょっ!?そこまでビビる!?おじさんもちょっと心にグサッてきちゃったよ!!」

 

「ハハハ‥大丈夫ですよ、銀時殿はこう見えても優しいお方です。」

 

「バジル君、君さりげに俺をディスってない!?」

 

バジルの真っ正直な言葉に更に心にダメージを喰らう銀時。

 

「そんな事よりも、そこまでビビらなくてもいいぜ、おじさんこれでも小さな子には懐かれやすい体質なのよ。どうした何か困っている事があるのか?あるなら相談して見ろよ。俺は万事屋をやっているんだ。人様の困り事を解決するのが俺の仕事だ。たとえそれがちびっ子だろうと関係ないぞ」

 

銀時は少し近づくと後ろに下がり、座り込むと少女と目線を合わせた。

銀時の言葉を聞いて少女はテクテクと歩き出した。

 

「パパとママが...」

 

「ん?いねぇのか?」

 

「.....うん」

 

「そうか、それはいけねぇな.....よし、俺も一緒に探すの手伝うぞ。」

 

「.....ホント」

 

「あぁ」

 

銀時が女の子の両親を探すと言うと警戒心が薄くなってこちらに来た。

 

(なんか、前にもこんな事をした覚えがあるな‥‥)

 

両親を探す‥‥そんな依頼に銀時はデジャヴを感じた。

彼は以前、万事屋の前に置かれている自分そっくりの赤ん坊の親を探す依頼をやったことがあったのだ。

 

「って言う訳でバジル。お前さんはなのは達に知らせて来い」

 

「承知」

 

バジルはなのは達に保護した女の子が見つかった事を知らせに行った。

 

「俺は坂田銀時って言うんだ。お前の名前教えてくれねぇか?」

 

「‥‥ヴィヴィオ」

 

「『ヴィヴィオ』か、いい名前だな。」

 

優しく微笑んで。

 

「うん。」

 

銀時がヴィヴィオの頭をなでた。

 

「よし、ホラよ」

 

手を出した銀時。そしてヴィヴィオも手を出してヴィヴィオの小さい手を包み込むように握りしめた。

 

(コイツはあの時の俺だな)

 

それは昔の拾われた自分を思い出していた。

その後なのは達と合流してヴィヴィオの事を話して六課に連れていくことにした。

ただ、ヴィヴィオを見つけた時、シャッハが武装してヴィヴィオを攻撃しようとしてきたので、反射的に銀時は洞爺湖でシャッハをのしてしまったが、これは明らかにシャッハに非があったので、特に大きな問題にはならなかった。

 

 

~side部隊長室~

 

「臨時査察?」

 

「ここにか?」

 

「うん、地上部隊にそんな動きがあるみたいなんよ」

 

部隊長室にははやて、フェイト、そしてリボーンと炎真がいた。

 

「地上部隊の査察は厳しいって聞くけど。」

 

「うちはただでさえツッコミ所満載やからな~」

 

「ねぇ...これ査察対策にも関係するんだけど六課設立の理由、そろそろ聞いてもいいかな?」

 

「そやね、いいタイミングかな。これから聖王協会本部のカリムの所に報告に行くんよ。クロノ君も来る。」

 

「クロノも」

 

「なのはちゃんとついてきてくれへんか」

 

「うん。」

 

「んで、なのは達は戻ってきたのか。」

 

「多分戻ってきたと思うけど。」

 

とフェイトは空間モニターをつけた。

そこには・・・

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああん!!』

 

あの泣き叫ぶ声が静かだった部隊長室を包み込んだ。

 

 

~sideヴィヴィオ~

 

銀時にしがみつきながら泣き叫ぶヴィヴィオ。

その場にいる全員泣くヴィヴィオを宥めようと頑張ってはいるが...

 

「ほらヴィヴィオ、泣くなよ頼むから」

 

「ヴィヴィオ~ほらお人形さんだよ」

 

「おねが~い泣き止んでよ。」

 

「新八ぃお前が変な目でヴィヴィオを見るからいけないネ」

 

「なっ!?僕いつそんな目した!?」

 

「あぁ、いい加減泣き止まやがれ!」

 

獄寺がなかなか泣き止まないヴィヴィオにイラつき声を荒げるが、かえってヴィヴィオを泣かせてしまう。

 

「ちょ、馬鹿、そんなふう言うと余計怖がるでしょう!!」

 

「はは、こいつは手強いな」

 

あの山本ですら苦笑いを浮かべているそんな状態をモニターで見ているはやて達

 

『何の騒ぎ?』

 

「あ、フェイトさん。この子が、銀さんが仕事で少し離れるって言ったらーーー」

 

「行っちゃやぁだぁぁぁ」

 

何とも可愛らしい我儘である。この為に強く言えない銀時なのだが.....

 

 

~side部隊長室~

 

「とりあえずあっちに合流しないと‥‥はやて、私ちょっと行って来る」

 

「あっ、うん。任せたわ、フェイトちゃん」

 

モニター越しに向こうの惨状を見たはやてとフェイトはあっちに行かないことには何もできないので、フェイトはなのは達と合流する事にした。

 

 

~side銀時達~

 

「あれ?どうしたんですか?」

 

「あ、10代目」

 

フェイト達が来る前にツナが先に来た。

 

「どうしたの?この騒ぎ?」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ヴィヴィオの泣き声に思わず耳を抑える。

 

「そ、それが‥‥」

 

と獄寺の説明で状況を知ると

 

「成程。え~と、ヴィヴィオ?」

 

ツナは臆せずにヴィヴィオに話しかける。急に話しかけられたヴィヴィオだが何故かそこまで警戒することもなく一旦は泣き止む。

 

「俺はツナ、よろしくね」

 

「ツ...ナ」

 

「そう、ツナ」

 

ふふと微笑みかけてさらに警戒心を解きながら

 

「ヴィヴィオは銀さんと離れたくないんだよね?」

 

「...うん」

 

「でも、ヴィヴィオが我儘言っていると銀さんも迷惑するよ」

 

ツナの言葉にまた泣きそうになるが

 

「よかったらさ、銀さんが帰ってくるまでお留守番しとこ、寂しいなら俺もずっと一緒にいとくよ」

 

「ほんと」

 

「うん」

 

「ヴィヴィオが寂しくないように俺の友達も紹介するね」

 

とツナは後ろに手をやって

 

がう

 

「俺の相棒のナッツ」

 

「がう~」

 

ヴィヴィオもナッツも両方少し怯えているがヴィヴィオの方からナッツに恐る恐る近づく

 

「ネコさん?」

 

「‥ライオン...何だけど」

 

「ライオンさん」

 

ナッツにふれあい始める。ナッツもこの事からそこまで警戒することなく

 

「がう~♪」

 

「えへへ」

 

「俺とナッツと一緒にお留守番しとこっか」

 

「うん!これ私の友達!!」

 

とヴィヴィオは喜びながらツナに自分のうさぎの人形を見せるとツナも微笑みながら

 

「いいお友達だね」

 

ヴィヴィオの頭を撫でる。

 

「ふぅ、サンキューツナ」

 

「いえ、大丈夫です。」

 

「ヴィヴィオすぐ帰ってくるからな」

 

と銀時もヴィヴィオの頭を撫でるとヴィヴィオは嬉しそうに自分より大きな手に自分の手を重ねる。

 

銀時と入れ違いにフェイトがやって来た。

 

「その子が銀時が言っていた女の子」

 

「そうですよフェイトさん」

 

ヴィヴィオをジッと見るフェイト。

 

(私と同じ金髪‥‥)

 

ナッツと戯れるヴィヴィオ。

 

そしてそれを見守るツナ。

 

フェイトちゃんは、

 

(きっとツナと家庭を持ったらこんな感じなのかな~)

 

ほんわかとしたアットホームを妄想した。

 

自分とツナ、そしてツナとの間に出来た子供‥‥

 

三人で仲良く食事をして、休日には一緒に買い物へと行き、

 

そして夜は・・・・

 

夜の事を想像し「イヤン、イヤン」と1人悶えるフェイトをヴィヴィオとツナ、ナッツが唖然とした表情で見る。

 

「あの~フェイトさん?」

 

「はっ!?」

 

ツナの言葉で我にかえるフェイト。

 

顔を赤くし、悶えるポーズから平然を取り繕う。

 

「こほん、えっと君がヴィヴィオかな?」

 

フェイトがしゃがみ、ヴィヴィオを目線を合わせて尋ねる。

 

「う、うん」

 

先程1人で妄想劇をしたためか、フェイトを警戒するヴィヴィオ。

 

「私はフェイトって言うんだよ。ツナの友達だよ(本当は恋人って言いたいんだけどね‥‥)」

 

「ツナの友達?」

 

「そう、友達。だから、私もヴィヴィオとお友達になりたいな」

 

「う、うん」

 

ぎこちなく答えるヴィヴィオであるが、フェイトとのぎこちなさは、時間が解決するだろうと思ったツナであった。

 

 

 

 

・・・・続く




とりあえず、豆撒きはしときました。

ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的46 占いは悪い方によく当たる

更新です


 

 

~side ベルカ地区 聖王教会~

 

ヴィヴィオの事も無事に方がつきはやて達はベルカ地区にある聖王教会へと出向いていた。

 

「失礼します。高町なのは一等空尉です。」

 

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です。」

 

なのは達が会議室に入るとフェイトが

 

「お久しぶりです。クロノ提督」

 

入るとカリムの他に黒髪の青年そして緑の髪をした男が居り、彼女はその男に挨拶をした。

 

「あぁ、フェイト執務官」

 

黒髪の青年、クロノ・ハラオウンはフェイトの義理の兄である。

 

「ふふ。御2人共、そう固くならないで。私達は個人的にも友人だから、いつも通り平気ですよ」

 

「と、騎士カリムが仰せだ。普段通りにしていいぞ」

 

「わかった、クロノ君」

 

「ほんま久しぶりやな、クロノ君にロッサも」

 

ロッサと呼ばれた緑の髪をした彼はヴェロッサ・アコースはやての知り合いでカリムの義弟である。

 

「やぁ、はやてそれに高町一尉とフェイト執務官」

 

「どうも」

 

ひとしきり挨拶が終わり本題に入る。

 

「六課設立の表向きの理由はロストロギア『レリック』の対策と独立性の高い少数部隊の実験例」

 

口調とトーンが先程まるで違い事の重みをわからせる。

 

「知っての通り、六課の後見人は僕と騎士カリム。それで僕とフェイトの母親で上官、リンディ・ハラオウンだ。それに加えて非公式であるが、かの3提督も設立を認め、協力の約束をしてくれている」

 

モニターに映る数人の用心。この説明を初めて聞いた3人は多少驚く。

 

「その理由は私の能力と関係があります」

 

 

カリムが席を立ち、先程まで移し出されていたモニターの位置に立ちながら古いお札のような紙束を全員に見えるように前に出す。彼女は縛っていた紙の紐をゆっくりと解くと札は光を放ちながらカリムを中心に円を描き始めた。

 

「私の能力で最短で半年、最長で数年先の未来。それを詩文形式で書きだした予言書の作成を行う事が出来ます。2つの月の魔力がうまく揃わないと発動できませんから、ページの作成は年に1度しか出来ません」

 

カリムが説明している途中に二枚の札がなのはとフェイトの前に飛んでくる。その札に浮かび上がったのは幾何学的な文章で全員何が書いてあるのか分からない。

 

「予言の中身も古代ベルカ語で解釈によって意味が変わる事もある難解な文章。世界に起こる事件をランダムに書き出すだけで、解釈ミスも含めれば的中率や活用性は割と良く当たる占い程度。つまりは、あまり便利な能力ではないんですが…」

 

「聖王教会はもちろん、次元航行部隊のトップもこの予言には目を通す。信用するかどうかは別として、有識者による予想情報としてな」

 

「ちなみに、地上部隊はこの予言がお嫌いや。実質のトップがこの手のレアスキルとかお嫌いやからな」

 

「レジアス・ゲイズ中将、だね」

 

「そんな騎士カリムの予言能力に数年前から少しずつ、ある事件が書き出されている」

 

彼女は羊皮紙に書かれた予言書をゆっくりと読んでいく。

その内容が以下の様な内容だった。

 

旧い結晶と無限の欲望が交わる地、

死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る

死者達は踊り、中立つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち

それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる…

 

「それって…」

 

「まさか…」

 

「ロストロギアをきっかけに始まる管理局地上本部の壊滅と、管理局システムの崩壊…」

 

「本来ならそれになるはずでした…」

 

「?」

 

「ここ数日の間に彼女の予言の内容が変化しているんだ」

 

「変化?」

 

「はい。内容はこう変化しています。」

 

カリムは引き続き、変化した予言の内容をなのは達に伝える。

 

紅き結晶、無限の欲望、狂人達が交わる地

 

死せる王の下、聖地より彼女の翼が蘇る。

 

死者達は踊り、鳴り止まぬ豪雨の元大地の法の塔は虚しく焼け落ち

 

大地は白き翼と狂人達の宴により 混沌と化す

 

白き翼を持つ者は大地を破壊し彼の願通づる時法は壊れる。

 

白き夜叉は王と対峙し狂人と死闘を行う時運命は動く

 

オレンジの炎を纏いし者、狂人との戦いの後地に眠る時異界の支配者天より現れる...

 

(白き夜叉ってまさか‥‥)

 

(オレンジの炎を纏いし者って‥‥)

 

なのはとフェイトには予言に出てきた者達に何となく心当たりがあった。

 

 

少しずつ変わっていく予言になのは達は夜遅くまで意見を出し合った。

 

 

~side六課~

 

場面は変わり、なのは達が教会にて予言の翻訳と意見交換粗をしている時、六課の隊舎では‥‥

 

「ヴィヴィオ、走ると危ないよ」

 

「だいじょうぶ」

 

隊舎の敷地内をヴィヴィオが走り、ツナがそれをハラハラしながら追いかけつつ見守っていた。

 

「あれ?」

 

すると、ヴィヴィオは何かを見つけて立ち止まる。

 

「ん?ヴィヴィオ、どうしたのかな?」

 

「あれ‥‥」

 

「あれ?」

 

ツナはヴィヴィオが指さした方向を見る。

そこにはお昼寝をしている定春の姿があった。

近くには飼い主である神楽の姿は見当たらない。

 

「ツナ、見て!!おっきなワンちゃん!!」

 

定春を見て、目を輝かせるヴィヴィオ。

そして、ヴィヴィオは定春へと近づいていく。

 

「あっ、ヴィヴィオ‥‥」

 

ツナには一抹の不安があった。

定春はプライドが高いのか、人を選ぶ性格なのか、今のところ、神楽とアリサぐらいにしか懐いていない。

以前、獄寺が定春を撫でようとしたら、逆に定春からガブリとやられた。

もし、ヴィヴィオが定春にガブリとやられでもしたら、管理局は定春を危険生物と認定し、処分するかもしれない。

そうなれば、神楽が暴れ出す事は必須であった。

 

「ヴぃ、ヴィヴィオ、定春は寝ているみたいだから‥‥」

 

ツナがヴィヴィオを止めようとしたら、間に合わず、ヴィヴィオは定春に抱き付いていた。

 

「んぅ?」

 

寝ていた所を突然抱き付かれた定春は目を覚ました。

定春の視界には自分の身体に抱き付いている小さな女の子の姿があった。

 

「ツナ!!見て見て!!おっきなワンちゃん!!」

 

「あ、ああ‥そうだね」

 

「おっきなワンちゃん!!モフモフだよ!!」

 

幼女に抱き付かれて起き上がる定春。

すると、ヴィヴィオは定春の背中に上り始めた。

 

「あわわわわ‥‥定春、お願いだから、振り落としたり、ガブリ‥なんてことはしないでね~」

 

ツナは定春に祈りながら、事の成り行きを見守った。

すると、ツナの願いが届いたのか、定春はヴィヴィオを乗せたまま、ノッシノッシとツナの方へと歩いてきた。

そんな中、

 

「むっ!?(キュピーン)」

 

医務室で寝そべっていたザフィーラが突如起き上がり、辺りを見渡す。

 

「あら?どうしたの?ザフィーラ?」

 

シャマルがザフィーラに声をかける。

 

「なんだか、私の役割をとられたような気がした」

 

辺りを見渡しながらそんなことを言うザフィーラ。

原作の世界では確かにザフィーラはヴィヴィオを見守り、時には背中に乗せたりもしたが、残念ながら、その役割を定春に取られてしまったザフィーラであった。

 

「ツナも乗ろう」

 

ヴィヴィオはツナにも定春の背中に乗らないかと誘うが、

 

「お、俺はいいよ‥‥」

 

と、万が一、自分が乗った事で定春が暴れては大変だと思い、ヴィヴィオの誘いを断った。

ヴィヴィオは定春の背中に乗り、ツナが隣を歩いて散歩を続けていると、

 

「おや?ツナさん」

 

「あっ、リィンさん」

 

ツナとヴィヴィオはリィンにあった。

 

「およ?その子がこの前、保護された子ですね?」

 

「はい」

 

「こんにちはです」

 

リィンはヴィヴィオに声をかける。

 

「ん?妖精さん?」

 

ヴィヴィオは小さな姿のリィンに絵本で見た妖精の姿と重ね合わせる。

 

「違うですよ、リィンはユニゾンデバイスなのです」

 

リィンが自分は妖精ではなく、ユニゾンデバイスであることを伝えるが、まだ幼いヴィヴィオにユニゾンデバイスがどんなものなのか分かる筈もなく、ただの興味本位な対象でしかなかった。

 

「ひゃ、ひゃめるです、ひょ~~~!!」

 

「キャハハハハ♪」

 

リィンはヴィヴィオに捕まり、その小さな体を弄ばれていた。

 

「あらら‥‥」

 

リィンを助けるでもなく、微妙な表情でつぶやくツナ。

 

リィンの小さな体が珍しいのかヴィヴィオはリィンの頬を抓ったり伸ばしたりしていた。

そんな中、意図しないヴィヴィオの手がリインの背中や首筋、わきの下を撫でた。

 

「ひゃん!?」

 

「ん?コチョコチョコチョコチョコチョコチョ!」

 

リィンの反応が面白かったのか、ヴィヴィオはリィンの脇の下をくすぐった。

 

「っ、きゃははははははははははははは!! つ、ツナさん!!た、助けてください―――――!?」

 

くすぐられ、目に涙を浮かべながら、ツナに助けを求めるリィン。

 

「ヴィヴィオ、リィンさんも嫌がっているからその辺で‥ねっ?」

 

見ている分には微笑ましい光景なのだが、やられているリィン本人にはたまったものではない。

ヴィヴィオから解放されたリィンはげっそりした様子で隊舎へと戻って行った。

散々リィンで遊んだ後、

 

「それじゃあ、ヴィヴィオ。今度は中でお絵かきでもして遊ぼうか?」

 

「うん!!おっきなワンちゃん!!バイバイ!!」

 

ヴィヴィオは定春の背中からおりて、定春に手を振ると、ツナと共に隊舎の中に戻っていった。

隊舎の中に戻ったヴィヴィオはツナから渡されたクレヨンと画用紙で絵を描いていた。

そして、

 

「できた~!!」

 

絵が完成し、満足そうな表所を浮かべるヴィヴィオ。

 

「どうしたの?」

 

「ツナさん、これ」

 

ヴィヴィオの手にあったのはアートと呼ぶべき絵が描かれた画用紙があった。

その画用紙には、

 

「うまいね、これは銀さんかな?」

 

「うん!後これも!!」

 

ともう1枚ツナに見せるそこには

 

「これって...もしかして俺とナッツ」

 

「うん!あげる」

 

とヴィヴィオがツナにわたそうとして

 

「ありがとう。」

 

ツナも受け取ろうとするが

 

「がう」

 

横からナッツが加えてそのまま何処かに行ってしまった。

 

「ふぇ」

 

「あはは、」

 

ヴィヴィオはなんで急にと言う顔をしてツナは苦笑いを浮かべる。

 

(ナッツいつの間に‥‥)

 

ナッツと入れ違いに

 

「よぉ」

 

銀時が帰ってきた。

 

「あ!パパ!!」

 

ヴィヴィオは銀時を確認するや直ぐに飛びつき銀時もそれを優しく受け止める。

 

「ヴィヴィオ、ツナには迷惑かけてねぇな?」

 

「うん!」

 

「ヴィヴィオとてもいい子で待っていましたよ(リィンさんにとっては散々な目でしたけど‥‥)」

 

ツナもヴィヴィオを褒め、褒められたヴィヴィオは嬉しそうな表情をする。

 

「そうか、それはよかった。」

 

「ほんとうちの奴にも見習って欲しいぐらいです。」

 

聞こえない程度に愚痴を呟く。

 

「どうした?」

 

「え?あ、いや何でも無いです。」

 

ツナは必死に平然を取り繕った。

丁度その頃、

 

「へッくシュン!!」

 

六課の隊舎のとある部屋で1人の赤ん坊が大きなくしゃみをした。

 

 

 

 

・・・・続く




リボーンファンならナッツの行動わかるでしょ?

ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的47 子供のできた友達は少し変わって見える

更新です。


~side隊舎~

 

朝早く皆朝練をしてから朝スズメがさえずる頃にみなは食堂にて朝食をとっていた。

 

「ヴィヴィオ、好き嫌いはダメだな。確り食べないと新八見たいに目が悪くなるぞ。」

 

銀時がピーマンを残すヴィヴィオに注意する。

 

「だって~‥むぅ~‥」

 

ヴィヴィオがしぶり、皿の上のピーマンをまるで親の仇を見る様に睨む。

 

「あの~銀さん?」

 

ツナが恐る恐る銀時に声をかける。

この時のツナは銀時の前にある物体に釘付けとなっていた。

 

「お前からも言ってやれ、ツナ好き嫌いはダメだってな。」

 

「いや、あの好き嫌い以前に何をご飯に乗せているんですか?」

 

「これか?見りゃわかんだろ、ほくほく小豆が乗った宇治銀時丼だ。お前はやんねぇのか?」

 

「いや、普通しませんよ!ていうかなんで小豆!!」

 

「この前スーパーで大量に買い込んだ。」

 

「それを聞いてんじゃありません!!」

 

(なら、お萩を買えばいいじゃないのか?)

 

とここでヴィヴィオが

 

「ヴィヴィオもパパのやつする~。」

 

銀時の宇治金時丼を見て、ヴィヴィオまでもが真似をしようとした。

 

「ヴィヴィオは、あれはしなくていいからまずピーマン食べよっか?」

 

「ぶ~」

 

なのはの言葉にヴィヴィオは頬を膨らませる。

 

「はやて部隊長もそれは...」

 

ティアナはドン引きしている中、はやてにご飯の上に何をかけているのかを尋ねる。

 

「これか?これこの前、地球で久々に見つけて買ってん、納豆や」

 

「な、なっとう」

 

「見た目はあれやねんけど、栄養豊富やねん」

 

「そ、そうですか‥‥」

 

「これが納豆、すいません、少し食べていいですか?」

 

エリオが納豆に興味を抱いてはやてから納豆を分けてもらう。

 

「ええよ」

 

「ん、んネバネバしているけど意外と美味しい。」

 

「はやて部隊長お客さんが来てまいすよ。」

 

そこへ、グリフィスがはやてに客が来た事を知らせに来た。

 

 

「久しぶりやね~」

 

「うん。」

 

ここには来客と銀時と炎真とはやてとシグナム、ヴィータとフェイトがいた。

 

「あのこの人は?」

 

長い金髪を後で束ねた眼鏡をかけた男性がいた。

 

「あぁ炎真と銀ちゃんは会うのは初めてやねこの人はユーノ・スクライア私達の幼馴染みやねん。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「よろしくな。」

 

「ユーノ君!」

 

「あぁなのは久しぶりだね。」

 

「あの「あぁはやて今回来たのは...」」

 

この事になのはは少し残念そうにしていた。

 

 

~side食堂~

 

ユーノも朝早くと言う事で朝食をここで貰うことにした。

 

「幼馴染みかツナさん達にも幼馴染みとかいるんですか?」

エリオが聞くと

 

「俺にはいないな」

 

「俺もいないな。」

 

山本も言った。

 

「銀さんにはいないんですか?」

 

スバルが聞いて

 

「ん、あ、いるっちゃいるが...」

 

と下を向き悲しみの表情になり

 

「あ、すいません。」

 

「いや、気にすんな。」

 

銀時はなのはの方を少し見た。

 

 

~side銀時~

 

朝食が終わり皆仕事をしていた。ユーノは持ってきた資料の整理の為にシャーリーと作業をしていたなのはも手伝うと言ったが断られた。

 

「どうした?なのはションボリとした顔して。」

 

銀時がヴィヴィオを連れて歩いていた。

 

「あっ、銀さん、あの...いや何でもない」

 

そしたらヴィヴィオがなのはの裾を引っ張り

 

「大丈夫?」

 

「え?ありがとう、でも大丈夫だよ。」

 

 

とその場を去っていった。

 

 

~sideユーノ~

仕事も終わって帰るといいはやて達が外まで見送った。なのははその場にいなかった。そして電車に乗ろうと駅に向かっていた。

 

「おい待てよ」

 

「え、あぁ確か銀さんだったよね?僕に何か用かな?」

 

「単刀直入に言わせて貰う。なのはを何で避ける。」

 

銀時の言葉を受け、ユーノは少しピクッと身体を震わせる。

 

「何の事かな?」

 

「とぼけんな~お前の行動見ていたらわかるよ。」

 

少し考えて

 

「不快にさせたなら謝ります。」

 

「俺に謝らずになのはに謝れ。」

 

と、ここでユーノ少し

 

「僕は彼女に合わせる顔は無いんですよ。なので、貴方からなのはに伝え‥「ガン」」

 

銀時は首の裾を思いっきり上に上げて

 

「お前、ふざけてんのか?合わせる顔がないだぁ~ちげぇだろお前はただ逃げているだけだ。」

 

そこでユーノをおろしてユーノは尻もちをついて

 

「...だって僕は彼女にとても大きな傷を負わしてしまった。僕が出会わなければ彼女をあんな目に合う必要は無かったんだ。」

 

「何があったかは知らねぇが、一言だけ言っとく、あいつはそんなやわじゃねぇよ。」

 

「え、」

 

「お前ならわかってんじゃねぇのか?ちゃんと向き合え、お前ならお前達ならまだ間に合う」

 

そして銀時はその場から歩いていった。

 

 

~sideユーノ~

 

その場で少し考えていたユーノ

銀さんの顔を思い出して

 

「確かに向き合ってなかったかもしれないな」

 

ユーノは吹っ切れた顔をした。

 

 

~sideなのは~

 

FWメンバーの練習が終わって後片付けをしていた。

 

(ユーノ君今日も会ってくれなかったな私の事もう)

 

「なのは!」

 

振り向くとそこには息を切らせたユーノがいた。

 

「ユーノ君帰ったんじゃ」

 

「ハァハァ、少し時間いけるかな?」

 

「うん、何?」

 

「なのは!ごめん!」

 

「え、」

 

「僕はずっと考えていたんだ。『魔法と出会わなければ、僕と出会わなければ君にあんな目に合わせずに済んだのに』ってずっとそう思っていたんだ。だから少し距離を置いたんだ。」

 

「...」

 

黙ってユーノを見ているなのは

 

「顔を上げて、」

 

 

「私はね魔法に会えて良かったと思っているよ。魔法に会えたから友達ができた、自分に自信を持てた...」

 

「なのは」

 

「ユーノ君、ありがとう魔法に会わせてくれてフェイトちゃん達に会わせてくれて...銀さん達に会わせてくれて本当にありがとう」

 

潤んだ瞳でそして真っ直ぐな瞳でなのはは言った。

 

 

~side少し時間をあけて~

 

「あのさ‥なのは」

 

「何?」

 

「銀さんってどんな人なの?」

 

「え?なんで急に」

 

「ここに来る前に銀さんに会ったんだ。」

 

ユーノはその時の銀時の顔を思い出していた。

 

「彼のあの時の顔何か...」

 

「よくわかんないんだ。あの人前に1回自分の事少し話してくれたけど...」

 

「そっか、あの人の顔はとてつもない業を背負っているように感じる。」

 

「うん、たまにするんだ。でももう1人で背負わせないよ」

真っ直ぐな瞳のなのはに

 

「ふふ、変わんないね、なのはは‥‥」

 

「えっ?」

 

「フェイトの時も、ヴィータの時もいつもそうだね、相手の事をズカズカと知ろうとして最後は相手が折れるしかない。」

 

「う、」

 

「憧れるよ、人の為にそこまで一途になれるなんて...多分君なら銀さんの事もう少し助けら「ヴィヴィオ!」」

 

何とヴィヴィオがここまで来ていた。

 

「どうしたの?何でこんな所に?」

 

「ふぇ、あの」

 

「もしかして銀さんを探して」

 

「...うん」

 

ここでユーノは帰ろうとした。

 

「ユーノ君、もう帰るの?」

 

「うん、司書長の仕事があるしね。その子って六課で預かっているの?」

 

「うん。」

 

「なら、銀さんに保護責任者になって貰えば」

 

「え?」

 

「聞いた限り銀さんに一番懐いているようだしね...それに銀さんは特別なケースだからもう一人必要になるから...」

 

「それになのはが加わればよりいっそう距離が縮まるよ。」

 

と笑顔でとんでもないアドバイスを送った。

 

「にゃ、ちょっとユーノ君!」

 

「じゃあねなのはまた」

 

とその場を去っていった。

 

 

~side銀時~

 

こちらも隊舎でヴィヴィオを探していた。

 

「ヴィヴィオ、なのはといたのか。」

 

「うん、あのさ、銀さん」

 

「何だ?」

 

「私と一緒にヴィヴィオの‥保護責任者になってくれない?」

 

「保護責任者?」

 

「エリオとキャロにとってのフェイトちゃんみたいなの」

 

と頭を働かせて

 

「あれか、っても何で俺だ?」

 

「ヴィヴィオが一番懐いているのは銀さんだから。」

 

「ツナとかは」

 

「ツナ君にもいけそうだけどこう言うのは大人の方がいいじゃないかな?」

 

「俺でいいのか?いつ元の世界に戻るかもしれねぇけど」

 

「その場合は私だけでヴィヴィオを育てていくよ」

 

「...ならいいか。」

 

「本当に」

 

「あぁ」

 

ここまでの話を全然理解出来ないヴィヴィオは?マークを浮かべてた。

 

「銀さんがヴィヴィオのパパになるってことだよ。」

 

「パパ」

 

「あぁそうだ、お前の本当の親が見つかるまで俺がパパだ。」

 

「う、うぇぇぇんパパ」

 

と泣きながら銀時にしがみついたヴィヴィオ

 

「おっと、」

 

そして優しくヴィヴィオを抱いて頭をなでた

そしてなのはを見て

 

「ママ?」

 

「え、」

 

「違うの?」

 

「なのは、お前は嫌か」

 

「私何かがヴィヴィオのママでいいの」

 

俯きながら

 

「いいも悪いもヴィヴィオがお前を選んだ。」

 

「そうか、そうね、そうだよヴィヴィオなのはママだよ。」

 

「ママぁぁ!」

 

ヴィヴィオはなのはに嬉しそうに抱き付いた。

 

 

 

 

 

~ウラバナ~

 

「そういや」

 

銀時が思い出したように声を上げた。

 

「どうしたの?」

 

「ヴィヴィオの声って、さっきの奴の声と似ていなかったか?」

 

「ユーノ君と?...そういえば似ているかも‥‥」

 

なのはがユーノの声を思い出しながら脳内で再生すると確かにユーノとヴィヴィオの声は似ていた。

 

「もしかしてあいつがヴィヴィオの父親なんじゃ...」

 

「いや、それは無いよ、それなら母親は誰になるの?ユーノ君が結婚したなんて話、聞いていないけど?」

 

「.....えっ?お前じゃないの?」

 

「なんで?私?」

 

「いや、幼馴染み何だろ?もしかしたら‥‥」

 

「銀さん?ちょっとO・HA・NA・SHIする?」

 

なのはの全身からものすごい黒いオーラがこれでもかと言うぐらい湧き出ている。

しかも、このときなのはは笑みを浮かべている割には蟀谷に╬ を浮かべていた。

 

「す、すいませんしたァァ ○| ̄|_ 」

 

急いで銀時が頭を下げ、

 

「あっ、もしかしたらフェイト...とか?」

 

金髪繋がりからフェイトではないかと予想する。

 

「えっ?フェイトちゃん」

 

「まっ、んなわけねぇよな」

 

「そうだよ、フェイトちゃん結構鈍感な所があるし、それにフェイトちゃんは今、ツナ君の事が.....」

 

なのはが『好き』と言おうとした時、そのフェイトの想い人であるツナが登場した。

 

「俺がどうしたんですか?」

 

「「え?」」

 

「俺に何か用があったんじゃあ‥‥?」

 

「いいい、いや何でも無いぜ、最近その...ツナ缶..そうツナ缶食ってねぇなと思ってさ、な、なのは」

 

「そそ、そうだよ、アハハ‥‥」

 

「はぁ」

 

(あっっぶね)

 

(ギリギリセーフ)

冷や汗ダラダラの銀時と安堵の息を吐くなのは

 

そんな様子を見ていたツナは

 

(何かそれ久しぶりに 言われたような)

久々にマグロネタがきたと思ってた。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 聖夜の夜は.....ウイスキーブラックコーヒー割で

番外編初めてですがお楽しみください。


 

 

 

~side12月24日~

 

「おい、神楽」

 

「何アルか?」

 

「この飾り1cm大きいからもっかいやり直せ」

 

獄寺が神楽が作ったクリスマスツリーの飾りにダメ出しをした。

 

「何細かい事言ってるネ、あんま変わらないアル」

 

「変わるから言ってんだよ。ほら、さっさとやれ」

 

「グチグチいうなヨ、そんなんじゃ新八みたいにモテない男になるアルヨ」

 

「余計なお世話だ。」

 

「はいはい、喧嘩はいいから手を動かす。獄寺こんな感じでどう?」

 

「ん?あぁいいぜ」

 

ティアナのおかげでこの話は終わると今度はスバルが

 

「でもさ、せっかくのパーティなのに飾りが紙だけってのもさ」

 

折角のクリスマスツリーの飾りが紙製の飾りと言うのに味気無さを感じるスバル。

 

「だからフェイトさん達が買いに行ってくれてるでしょ。」

 

あくまで紙製の飾りはおまけであり、本命の飾りはフェイト達が買い出しに行っている様だった。

 

 

~sideフェイト達~

 

この前来たショッピングモールでフェイトそしてツナが

 

「ツナこれはどう?」

 

「いいと思いますよ。」

 

なるべくクリスマスに近いものを探していた。

 

そしておおかた見終わり買い終わると。

 

「あ!?」

 

「どうしたの?」

 

「すいません、手袋落としちゃったみたいで...少し探してきます!!」

 

ツナは今まで見た店をまわると言うのでフェイトも手伝い

 

「どうだった。」

 

「なかったです。」

 

結果は見つからなかった。

 

「Xグローブは?」

 

「置いてきちゃったみたいです。」

 

ツナは冷たくなる手に息をかけるそんな様子を見たフェイトが手袋を外して...

 

「え!?フェイトさん/////」

 

ツナが買い物袋を持つ手を握った。

 

「これなら冷たくないでしょ?」

 

「え...あ、ありがとうございます/////」

 

にっこりと微笑むフェイトに頬を染めながら見つめるツナするとフェイトが上を見上げて

 

「見てツナ」

 

ツナも空を見上げると額に白く冷たくふわふわした物が当たり

 

「ん、雪ですか」

 

「えぇ、今夜はホワイトクリスマスね」

 

雪降るなか2人は雪も溶けるぐらい暖かい空気を醸し出しながら車に乗るまで手を繋いでいた。

 

 

~sideはやて~

 

一方六課では夜に備えての料理に勤しんでいた。主にはやてが

 

「はやてこれの盛り付けこれでいいか?」

 

「うん、ええ感じやでヴィータ」

 

「主これも」

 

「ありがと、シグナム」

 

「はやてちゃん、私も何か...」

 

「ありがたいけどこっちは大丈夫やシャマルは向こうの手伝ったって」

 

シャマルにさりげなくあっちの手伝いを勧めるはやて

折角のクリスマスを食中毒で終えたくはない。

それはこの場に居るみんなの願いでもあった。

 

「はやてさん、これできましたよ。」

 

山本が実家直伝の寿司を作ってくれた。

 

「流石や~、いや~どれも美味しそうやな」

 

「どもっス。」

 

「んじゃ後はなのはちゃん達がお菓子買ってきてくれたらおおかた終わりそうやな。」

 

 

~sideなのは~

 

料理がおおかた出来上がる十五分ぐらい前になのはそしてヴィヴィオと銀時は

 

「これぐらいでいいかな」

 

「ママこれも」

 

「うん、わかった。」

 

ヴィヴィオの可愛らしいおねだりに答えるなのは

 

「んじゃ帰るか」

 

銀時が切り出すが流石に買いすぎたいくら銀時でも両手からはみ出るほどは持ちようがなかった。

 

「にゃはは、買いすぎちゃった。」

 

「大丈夫だ。」

 

もういるだろと呟きながら外を見ていると...

 

「わん」

 

「よく迷わずに来たな。」

 

定春が来ていた。

 

「あ、定春~」

 

ヴィヴィオも喜びながら定春に抱きついて定春もヴィヴィオを

 

「あ、くすぐったい。」

 

定春は嬉しそうにヴィヴィオの頬を舐める。何ともほんわかとした絵になる光景だ。

 

「んじゃ、これ頼むは、お前の分も帰ったらあるからつまみ食いはすんなよ。」

 

「わん、」

 

ドッドッド、大きな音をたてながら走っていった。

 

「バイバイ~」

 

定春を見送りながらヴィヴィオは大きく手を振るそして

 

「あ、」

 

喜びの声を上げて

 

「ママ、見て!!雪だよ!!」

 

「え?ほんとだね」

 

「はは~、」

 

喜びながら駆け回ると

 

「くシュン」

 

「ヴィヴィオ、もうだからマフラーをしなさいてって言ったのに」

 

「ごめんなさい」

 

「はい、ママのを貸してあげる。」

 

なのははヴィヴィオに自分の巻いていたマフラーを巻いて

 

「えへへ、あったか~い」

 

ヴィヴィオは気持ちよさそうにマフラーを触る。

だが、急にマフラーを外して外環の寒い空気が首に来てなのはが寒くなるそんな様子を見ていた銀時は

 

「ほらよ」

 

「え?」

 

銀時が自分の巻いていたマフラーをなのはに巻き付ける。

 

「風邪引くといけねぇからな‥‥」

 

銀時はさぶ、と自分の両手で震える肩に手を当てる

 

「銀さん...このマフラー長いよ」

 

「な!?文句ーー」

 

「だからさ‥‥」

 

銀時の言葉を遮って

 

「一緒につけよ」

 

なのはは自分と銀時の首にマフラーを巻き始めた。

 

「お、おい、ちょっ‥‥」

急にやられてびっくりする銀時

 

「ふふ」

 

「あ~、ヴィヴィオもヴィヴィオも」

 

ヴィヴィオもせがむ様に両手を伸ばして

 

「~~、はぁ、わかった。」

 

器用にも右手でヴィヴィオも持ち上げて背中にやり

 

「これでいいだろ。」

 

「うん!」

 

ヴィヴィオは銀時の背中で目を閉じて

 

「あったかい。」

 

そしてなのはも銀時に気づかれないように寄り添い

 

(ほんとに)

 

こうして彼ら一家は電車まで歩いていった。

ただ、彼女のいないボッチに対してはこの光景は有害でしかなかった。

 

 

~side夜~

 

「いい飾りつけじゃねぇか」

 

「たりめぇだ。誰がやった思ってんだ。」

 

「楽しみなのな」

 

「そうだね」

 

「パパ」

 

「どうした?」

 

「ママは」

 

「そういや、居ねぇな。」

 

なのはだけでなく女性陣全員いなかった。

 

 

~side女性陣~

 

「ほんとにこれ着ないといけないの!?」

 

「そやで、せっかくリボーン君が作ってくれたんやから」

 

「うぅ、恥ずかしい。//////」

 

「えぇ、可愛いと思いますよ。」

 

「こういう時、能天気ってほんといいわね。」

 

色々な意見が飛び交いそして

 

「着替えはすんだな」

 

「はい!」

 

「いつでもOKネ」

 

キャロとスバルそして神楽は楽しそうにしているが他のものはまだ気が乗らない。

 

「んじゃ、行くで!」

 

勢いよく扉を開けて

 

「「「「「「メリークリスマス!!(メ、メリークリスマス)」」」」」」

 

急にこられた男性陣は空いた口が閉じない状況になっていた。

 

「え、これは」

 

「私らからのプレゼントや」

 

女性陣の姿は皆統一されていて半袖の赤い服に白のボンボンがボタンがわりななってるようで下もミニスカと言うなんともこの季節には合わなさそうだが

 

「え、これって」

 

「見りゃわかるやろ、サンタコスや」

 

はやては堂々と答える。

そう、そして頭に赤い帽子も身につけていた。

 

「いや~この頃男性陣もそしてFW陣も休めること無かったし、息抜きにこれもいいかなって因みにこれ作ってくれたんはリボーンくんや」

 

「ちゃおっス」

 

そしてリボーンもサンタの格好で違うといえばしっかりとズボンを履きそしてレオンでヒゲをつけていた。

 

「はやてにレシピ貰ったが全部作るのに2日もつかっちまった。ほら見ろくまもできてる。」

 

と自分の目元を見せる。

 

「ねぇ、銀さん」

 

「どしたー、新八」

 

「サンタっていいですね」

 

「例えばここに4点の女子がいるだろだがサンタコスすることで10点になるわけだ。」

 

「マジアルか?なら私は何点になるアルか?」

 

「「3点」」

 

「おい、どうゆう意味だコラァ!0突き抜けてマイナスからの出発か!?」

 

「ご、獄寺ど、どう//////」

 

「ん?」

 

「?どうしたの」

 

「は、い、いやよくそんな格好できんなと思っただけだ。」

 

そういうけど獄寺は全く目を合わせようとしない。

 

「な!?私だって好きでこんな格好するわけないでしょ!!//////」

 

「おい、獄寺どうした?顔真っ赤だぞ熱でもあんじゃねぇのか?」

 

山本が獄寺の顔が赤いのに気づいて

 

「ん、んなわけねぇだろ、コレは、あれだ暖房が効きすぎてんだ。」

 

「だけどよ」

 

山本の天然が発動した。

 

そしてここで

 

「ドーン」

 

スバルがティアナを押して

 

「きゃ!」

 

獄寺ごと押し倒す。

 

「てぇ、な、何しや...」

 

ここで初めてティアナのはっきりと見る。ティアナの少し紅い顔にちょっと荒い息遣いが直で伝わる。

 

「「/////」」

 

両者一歩も動かない。

 

「ティア~」

 

「は、ご、ごめん」

 

「き、気ぃつけやがれ」

 

ティアナが起き上がり獄寺も起き上がる。

 

 

 

「それにしても珍しいですね」

 

「どうした?」

 

「シグナムさんやヴィータさんがこういう格好するなんて」

 

「主に無理やりな」

 

「右に同じで」

 

「な、なるほど」

炎真がどんまいと言う表情を浮かべている

 

「シグナムもヴィータちゃんも照れ屋さんなのです。」

 

「リィンさん」

リィンもサンタコスになっていて何かサンタの妖精みたいでとても可愛らしい。

 

「リィンさんも着てるんですか?」

 

「はいです。私だけじゃないですよ、ザフィーラも」

ザフィーラもしていると聞いて、え!?と驚きザフィーラを見ると

 

「何だ」

トナカイの鼻と角をつけさせられていた。炎真は苦笑いを浮かべて

 

「はは」

そんな時後から

 

「エ~ンマ」

 

はやてが抱きついてきた。

 

「は、はやて!?」

 

「どや、この格好?」

 

「え?えっと...に、にやってるよ」

 

「え~それだけ~」

いじわるそうにはやてが

 

「え、」

 

「もっと何かあるやろ?」

もう少し色んな言葉を要求してきた。

 

「もっとって...あの~そろそろ離してくれても...」

 

「いやや、もう少しまともな感想言うまで離さんで」

さらに強く抱きしめる。

 

「//////////」

炎真がこれ以上ないぐらい赤くなりそしてプシューと言う効果音と共に半分意識が飛んだ。

 

「え、エンマーエンマーー!!」

 

「¿♪♩™™✿♯®®❀❀‼‼✲」

 

 

 

「ツナ/////」

 

「フェイトさん/////」

 

「あの、やっぱり変...かな」

 

「い、いえ、あ、あのとってもお似合いです/////」

 

「ほんとに」

フェイトはばつが悪そうに少しだけツナに目線をやり

 

「はい、とってもか、可愛いと思います。」

ツナも答える。

 

「嬉しい。」

照れてる自分が恥ずかしのか余り顔を上げずにツナに少しだけ目線をやる。

 

 

 

「エリオ君食べないの?」

 

「ぼ、僕は...もうお腹いっぱいだから。」

 

「でもいつもあんなに食べてるのに?」

 

「きょ、今日はその」

エリオはお腹がいっぱいではなく頭の方がいっぱいいっぱいなのだ。

 

「ちゃんと食べないと」

そんな気もわからずにさらにご飯を盛り付けてエリオに渡す。

 

「だ、大丈夫だから。」

 

 

「あ、ママ」

 

「ヴィヴィオ」

 

「ママとっても可愛い!!」

 

「ありがとう、ところで銀さんは?」

 

「パパなら」

 

のされてた‥‥神楽に

 

「あ、はは」

 

苦笑いしか出ない。

 

 

 

パーティも進んでいく中此処である事件が起こる。それは料理も無くなりお菓子に切り替わった時に起こる。

 

「ツナ、チョコ食べる。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

フェイトからチョコを受け取り

 

「ん?何だこれ?変な味がする。」

 

いつもより苦く...というより

 

「お酒」

 

「ウイスキーボンボンだな。」

 

リボーンも一つ食べて

 

「これが、初めて食べた、あんまり美味しくない。」

 

「お前にはまだ早いってことだ。お子ちゃまが」

 

「ちぇ、」

 

ここから異変が始まる。

 

「ツ...ナ//////」

 

「フェイトさん?」

 

「何か...熱い。////」

 

「そう...ですか」

暖房かなと思うが

あんまりわからなかった。

 

「そうだよ」

 

と言いながらフェイトが自分の服の前ボタンを少し外していく。

 

「え!?ちょフェイトさん!?/////」

そして自分の胸の谷間からもう少しで完全に見えるという所まで来ると。

 

「えへへ、へへ」

 

「だ、ダメですってどうしたんですか急に」

 

「こいつで酔ったんじゃねぇのか?」

 

「え?いや、流石にそれは」

 

「へへ、酔ってらいよ~」

 

完璧に酔っている。

 

「うう、どうしよ、この状況周りに気づかれてないのが奇跡なぐらい」

 

「俺が水汲んできてやるから、それまで我慢しろ。」

 

「え?リボーン」

 

もうそこにはリボーンがいない。

 

「ツナ~、」

 

「ととと、ととりあえずフェイトさんボタン閉めて」

 

「やらよ~、熱いんだし。」

 

「お願いします。」

 

此処でフェイトはツナを押し倒して

 

「ねぇ、ツナ2人きりだね」

 

「いや、他にも居ますって」

 

「もう、静かにしてよ~皆にきるかれるから~」

 

ペロ

 

「ひゃ」

 

フェイトがツナの頬を舐めるとツナは変な声をあげてしまい。

 

「ツナのほっぺとっても柔らか~い」

 

「あの、そろそろ離して...」

 

「ら~め」

 

目のやり場に本気で困っているツナ

 

「ねぇ、ツナ」

 

顔が急に近ずき

 

「いいでしょ?」

 

「え?ちょ、まさか、フェイトさんそれはダメですってフェイトさんそう言うのは」

 

ツナの言葉を遮るように

 

「私はツナが良いの、」

 

「え?」

 

「ねぇ、いいでしょ」

 

どんどんと唇が近ずきそして

 

ドサッ

 

「あれ?フェイトさん」

 

「Zz」

 

意識が無くなり寝ていた。

 

「た、助かった~」

 

わけでもない。

 

「えっと...ツナ君」

 

「え?エンマ」

 

ツナとフェイトの状況を見たエンマはこの一言を残す

 

「ご、ごめんなさい」

 

それ以上目も合わせてくれない。

 

「ご、誤解だ~」

 

 

 

ともう一つ

 

 

「これにが~い」

 

「どうしたの?」

 

「これ苦い」

ヴィヴィオが少し顔を歪めた原因をなのはに渡す。

 

「チョコレートでしょ」

 

試しに一つ食べる。

 

 

「あ~いつつ、あいつ本気で殴りやがっておい、ぱっあぁん」

 

と少し叩きながら起こそうとするが目を覚まさない。

 

「返事が無いただの屍のようだ。」

 

「銀さん」

 

「お、なのは、悪ぃけど少し新八を医務室に連れてくからヴィヴィオ頼むは」

 

「そんな事より。銀さん、私の格好どう?」

 

「へ、」

 

「『へ』じゃない!!」

 

なのはのなのはらしくない一喝で

 

「はいぃ、とってもお似合いですよ。」

 

「それだけ?」

 

「え、いや、あの」

 

「もっろ~色々あるでしょ~、綺麗ぃとか美しいとか可愛いとか可愛いとか可愛いとか」

 

(太夫、後半可愛いしかありません。)

 

「あの~なのは太夫どうしたんですか?お酒でも飲んだんじゃないですか?」

 

「らまってきからいと~」

 

とレイジングハートを杖にして

 

「ね」

 

(ね、だけで言いたいことがすげぇわかるんだけど)

冷や汗と鳥肌が抑えられずにいた。

 

「銀さ~ん」

ふらふらと銀時にもたれかかり

 

「ちょ、飲みすぎですよ太夫」

 

「銀さ~ん確にわらひ、お胸とかあまりないけど、スタイル他の所は結構自信あるんらろ~」

 

と銀時に身体を密着させて

 

「ちょ、そろそろやめようかなのは太夫、僕も男の子だからこれ以上やると本気でやばいよ、僕の中の鳴り止まない何かが太夫襲っちゃうよ。」

 

「良いじゃん、来てよ~」

 

「ほ、ほんとにいい加減に」

 

「黙って聞いてって言ったでしょ?」

 

完全にバリア・ジャケットを展開して、手にはレイジングハートを握りしめ、

 

「え?」

 

「O・HA・NA・SIしよっか」

 

顔を赤くし、目が据わっているなのははユラリと銀時に近づいてくる。

 

「ちょ、それやばい、それダメなやつだから俺以外にも吹き飛んじゃうから」

 

「大丈夫だよ~私の銀さんはこれぐらいじゃ死なないでしょ?」

 

「そういう問題じゃないの!!しかも『私の』って」

 

「行くよ~」

 

銀時が覚悟を決めた時なのはも意識かなくなった。

 

(え?あ~助かった。なのはの奴何でこんなに酔ってんだ、そこまで酒なんてあってけ)

 

この時銀時とツナは身をもって『酒は飲んでも呑まれるな』を体感し

そこから今後この2人にアルコールの入ったものは絶対渡さない事を誓った。

 

 

 

・・・・続く




恋もお酒も似たようなものです。

浸りすぎて悪酔いしないように悪酔いしすぎたら小悪魔が降臨するやも

また次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編2 聖夜の夜は...飲み友1人で十分

番外編2です。


 

 

 

~side108部隊~

 

六課がクリスマスパーティの準備をしている頃、108部隊の隊舎では‥‥

 

「ひじかたさ~ん」

 

沖田が土方に手を振りながら近づいてきた。

 

「あん?何だ?総悟」

 

「ん」

 

沖田は土方に向かって手をさし出す。

 

「ん?何だ?その手は?」

 

「やだな~、今日はクリスマスじゃないッスか、だからクリスマスプレゼント下さいよ。俺、こんなナリでもまだ5歳なんッスから」

 

土方にプレゼントを催促する。

 

「んなモンあるわけねぇだろう!!大体そんな老けている5歳児が居てたまるか!!」

 

「えぇ~」

 

土方の返答に本気でがっかりしている様子の沖田。

 

「あっ、もしかしてニコチンとマヨネーズばっか買って金がねぇんすか~?それで、年末まで大丈夫ですかい?法外な利子付きですが、援助しましょうか?」

 

「あぁ?」

 

沖田は闇金並みの利子付きで、土方に金を貸してやろうかと言うが、沖田の言葉に土方は不機嫌そうな顔をする。

 

「それとも恋人にプレゼント渡して金がねぇ...とか」

 

次に沖田は、ニヤッとした顔をして土方に金がない訳を尋ねる。

 

「はぁ!?んなわけねぇだろ!?だ、大体、俺にんな相手いると思ってんのか!?//////」

 

そう言い残して土方は去っていった。

だが、明らかにこの時の土方は何かを隠そうとして動揺しているのは明白だった。

 

「ったく、トシの奴、素直じゃねぇな」

 

沖田と土方のやり取りを物陰から見ていた近藤は土方が居なくなったのを見計らって沖田の前に姿を現した。

 

「近藤さん」

 

そして此処であの男も‥‥

 

「んっ?おい、雲雀」

 

「ん?」

 

沖田に声をかけられて雲雀は沖田の方を振り向く。

 

「お前も土方さんにクリスマスプレゼントねだらねぇのか?」

 

「そんなモノに興味無いな」

 

沖田の提案に雲雀はいつもの調子で返す。

 

「ちぇ、どいつもこいつもつまんねぇなぁ‥折角のクリスマスなのによぉ」

 

沖田としては折角年に一度のクリスマスなのにイマイチ盛り上がりに欠ける事に落胆気味な様子。

 

「でも、君の制服をサンタクロースのように赤くしてあげてもいいよ‥‥君の真っ赤な血でね‥‥」

 

トンファーを構えながらうすら笑みを浮かべる雲雀。

 

「あぁ?聖夜の夜までやんのか?お前、随分と暇人なんだな」

 

「殺らないの?もしかして怖気づいたかい?」

 

「おもしれぇ、やってやろうじゃねぇか」

 

雲雀に挑発されて沖田は、今度はニヤリとダークスマイルを浮かべる。

そして、2人は練兵場へと歩いていった。

 

「はぁ~血なまぐさい聖夜になりそうだな。」

 

近藤が止めようにも2人は止められそうにない。

それにどうせ片は付くことなく、大方互いに腹が減った頃には戻って来るだろう。

 

 

~side夜~

 

夜まで隊舎の執務室にて1人残り事務仕事をしていた土方も仕事も終わり、

 

「ふぅ~、終わった。」

 

両手を上げて大きく背伸びをした。

 

「ん?もう、こんな時間か?」

 

時計を見ながら呟く。

辺りにも誰もおらず自分1人だけ。

クリスマスであるがそんなの自分には関係ない。

さっさと帰って風呂にでも入り晩酌でもしようかと思っていると、

 

「トシさん」

 

「ん?ギンガ、まだ居たのか?」

 

ギンガはドアの前にお酒の瓶とそしてグラス一つを持って立っていた。

 

「はい」

 

「ん?その手にあるのはなんだ?」

 

「折角のクリスマスですから、注ぎますよ。」

 

ギンガは微笑みながら土方に酒瓶とグラスを見せる。

そして2人は応対用のソファーに腰掛ける。

 

「俺はあんまこういうのはしねぇんだがな‥‥」

 

土方はやれやれと言った様子でギンガからグラスを受け取る。

だが、内心は嬉しかった。

なんだかんだ言ってやはり美女にお酌をしてもらうのは男としては気分がいいからだ。

 

「いいじゃないですか。クリスマスなんですから」

 

そう言いながらグラスに酒を注ぐ

 

「まっ、悪くはねぇな‥たまにはこういうのも‥‥」

 

土方はグラスを受け取りグラスの中の酒を飲む。

 

「どうですか?」

 

「うめぇな」

 

こう返す。

土方の返答を聞きギンガは、

 

「よかったです。」

 

満足そうに笑みをこぼす。

 

「お前は良いのか?飲まなくて」

 

「わ、私はまだ未成年ですから」

 

大人っぽく見えてもギンガはまだ17歳の未成年‥お酒を飲むのはまだあと3年早かった。

因みに、なのは、はやて、フェイトも19歳の未成年者なのでお酒は飲めない。

 

「そうか‥それじゃあ、アレを開けるのはもう少し先になるな‥‥」

 

「アレ?」

 

「お前が成人したら、分かるさ」

 

そう言って土方はグラスに残っていた酒を一気に飲み干す。

ギンガが成人するまであと3年あり、土方は何時元の世界に戻ってもおかしくはない身の上だったのだが、土方はこの時既にミッドに住む事を覚悟していた。

その理由はこの後、本編で語られることになる。

そして、

 

「ちょっと、待っていろ」

 

「えっ?」

 

土方は一度執務室から出て、自販機でジュースを買ってきた。

そして、

 

「ほれ」

 

執務室に備え付けのグラスをギンガに渡す。

 

「えっ?」

 

「1人で飲むのも良いが、俺ばかり飲んでいてはつまらん。それに今日はクリスマスだ。酒ではないが、お前も付き合え」

 

「トシさん‥‥はい!!お付き合いさせてもらいますね」

 

土方はギンガのグラスにジュースを注ぎ、ギンガは土方のグラスに酒を注ぐ。

そして、

 

「メリークリスマス。ギンガ」

 

「メリークリスマス。トシさん」

 

カチンっ‥‥

 

2人のグラスは静かに当たり、

土方とギンガは肩を寄り添って2人だけのクリスマスを過ごした。

だが、その場所が隊舎の執務室と言うのが男女のクリスマスとしては色気がないかもしれないが、それが何とも土方とギンガの2人らしいと言えば、2人らしい場所であった。

 

 

~side108部隊隊舎屋上~

 

雪が降る寒い夜に1人の男がミッドの夜景を見ながらふけていた。

沖田との模擬戦をして近藤の予想通り、今回も引き分けで終わり不完全燃焼なのか雲雀は1人ムスッとしていた。

 

「お~こんなとこにいたのか?探したじゃねぇか」

 

「ん?」

 

雲雀に声をかけたのは先程まで死闘をしていた沖田だ。

 

「どうでぃ?一緒にやんないか?」

 

沖田の手にはケーキと皿とフォークがあった。

 

「何か用かい?僕は今、非常に機嫌が悪いんだけど?」

 

「ケーキ、1人で食べんのもあれだから、態々クリボッチを誘いに来てやったんだ。感謝しな」

 

「君の仲間と食べれば?」

 

「土方さんは大切な女と酒盛りを始めていたよ。ありゃ、入れる余地はねぇし、声をかけるのは無粋ってもんだぜ」

 

(ありゃ、乳繰り合う寸前だったな‥‥明日土方さんをからかういいネタが出来たぜ)

 

「じゃあ、君の上司は?」

 

「近藤さんはゲンヤさんと一緒に呑んでいる。付き合ったら、無理矢理飲まされて明日には大変な目にあうぜ。それなら、余りモン同士で、丁度いいじゃねぇか」

 

「‥‥君の事だからなにか仕込んでいるんじゃないの?」

 

雲雀は日頃、沖田が土方に行っている悪戯の類を見てこのケーキにも何か変やモノが混入されているか変な仕掛けでも仕込まれているのではないかと疑ってしまう。

 

「折角のクリスマスの日にそんな野暮な事はしねぇよ」

 

とケーキを切り分けて皿に盛る。

 

「メリクリ、メリクリ」

 

ヒバードも美味しそうにケーキをついばむ。

 

「ほら、ハリネズミ。お前も食いな」

 

ロールにもわける。

 

「キュー」

 

ロールもヒバード同様ケーキを美味しそうに食べた。

 

「ほら、お前も食えよ。変なもんは入ってねぇからよ」

 

「‥‥」

 

沖田の促しに雲雀は無言で受け取り食べ始めた。

ヒバードもロールも普通に食べているし、ケーキも沖田自身が切り分けていたので本当にこのケーキには何も仕掛けられていないと判断した雲雀はケーキをフォークで刺して口へと運び一言呟いた。

 

「‥‥甘い」

 

「そりゃケーキだからな」

 

沖田と雲雀は屋上でケーキを食べつつ夜景を見ていた。

腐った女子が居れば興奮するようなシチュエーションであった。

 

 

~side108部隊 隊長室~

 

「まっ、まずは一杯やろうか?近藤君」

 

「はっ」

 

一方、108部隊 隊長室、つまりゲンヤの部屋では近藤とゲンヤがしみじみと酒を飲み交わしていた。

 

「お前さん達が来て、ホント色々あったな‥‥」

 

ゲンヤはこの半年間の事を振り返る。

 

「そうですね‥ですが、突然異世界に跳ばされ、行くあてのなかった俺達を受け入れてくれたゲンヤ殿には感謝しております」

 

近藤はゲンヤにペコリと頭を下げる。

 

「いや、お前さん達には感謝をしている。ウチの隊員達も士気も腕も上がったし、毎日が騒がしくも面白おかしい日々だからな。ただ‥‥」

 

「ただ?」

 

「ただ‥修繕費がかさむのが‥な‥‥」

 

ゲンヤは近藤から視線を逸らして何とも言えない表情をする。

 

「も、申し訳ありません。アイツらには気を付ける様に言っているのだが、何分若いせいか血の気の多い奴等でして‥‥」

 

近藤も気まずそうに言う。

確かに自分が止めるように言えば、止めるのだが、自分が現場に行き止めるまでタイムラグはあるし、その場で止めてもその後、再び彼らはドンパチするのだ。

 

「まっ、それ以上の戦果があるし、お前さん達が来てくれたおかげで、ギンガも毎日楽しそうだし、何より土方と‥な‥‥」

 

ゲンヤとしては娘のギンガの変化と成長が嬉しかった。

 

「ええ、俺もあのトシが‥と思っております。トシはある出来事がきっかけで、恋愛に対して負い目を感じていました‥ですが、ギンガちゃんのおかげで、それを乗り越えることが出来ました‥トシに代わってお礼を申し上げます。ゲンヤ殿‥ありがとうございました」

 

「い、いや、俺としてもギンガの事を理解して、愛してくれる奴が現れた事には感謝している。‥まぁ、親としては複雑な気持ちでもあるがな‥‥」

 

「フッ、そうですね‥俺もトシの兄貴分として嬉しくもあり、トシの奴が俺達から離れて行ってしまうと思うとちょっと複雑です」

 

「そうだな‥だが、土方とギンガの間に子供でも出来れば、やはり俺は嬉しいがな‥出来ればクイントの奴にも今のギンガの姿‥見せてやりたかったぜ」

 

ゲンヤはデスクの上のクイントの写真が入った写真立てをチラッとみる。

 

「ゲンヤ殿‥‥」

 

「すまねぇ、折角のクリスマスなのにしみったれた話は無粋だな。さっ、飲もう」

 

そう言ってゲンヤは近藤のグラスに酒をついだ。

 

「そうですね、今日は飲み明かしましょう」

 

「ああ」

 

近藤とゲンヤは買いだめした酒を飲んだのだが、調子こいてしこたま飲んだせいで、沖田の予想通り、翌日2人は酷い二日酔いになった。

そして、土方とギンガの2人はと言うと‥‥

クリスマスの翌日、隊舎に出てきた土方は何故かゲッソリとしており、反対にギンガは顔色がツヤツヤとしており血色が良かった。

 

(えっ?まさか、この2人あの後本当に乳繰り合ったのか!?)

 

そんな2人の様子を見て沖田はちょっと引いていた。

 

 

 

 

・・・・続く




番外編は今はこれで終わりです。
また次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

情報の重さを知って人は成長する。

「ちゃおっス、リボーンだ。今回はお前らに今まで出た敵キャラのおさらいをするぞ、まず」

 

シノビ

 

「風の魔力変換に魔導士からかけ離れた身体能力が武器だぞ」

なのはがフェイトの義母リンディに聞いた昔の殺し屋の息子魔力にリミッターをつけていて銀時より下の身体能力だがリミッターを外せば銀時とやりあえるぐらい急激に上がる。

武器は普段はクナイだが稀に自分の腕に巻いた包帯を拘束具のように使ったりもする。

 

この包帯はチカラに強いが刃物には滅法弱い。

 

風魔手裏剣

普通の手裏剣とあまり変わらないが風の鎌鼬による攻撃なので目で見るのが難しい

 

モデル、ゲッコウガの水手裏剣(ゲーム)

 

暴風圧

風圧を相手にぶつけて相手を吹き飛ばす技、威力は銀時も耐えられなくそして支援状態のエリオの突撃すら吹き飛ばしてしまう。

 

モデル、フランキーのクー・ド・ヴァン

 

「後は風の壁を使って自分専用の闘技場にしたりもするぞ、次はこいつだ。」

 

トレディ

「夜兎族最強のDNAで生まれたこいつは炎を操るぞ」

 

 

 

神楽の兄である神威のクローンと思われる人物誰が作ったのかは言わずもがな、だが誰がかれのDMAを渡したのかは不明である。

 

Isアンジュレーション・フォー

熱エネルギーを吸い取りそれを放出が基本だが熱を奪わずにも炎の放出もできる。だがそれだと威力が弱くなる。

熱吸収状態なら自分の身体能力を上げることもできる。

 

「こいつはツナ達の死ぬ気の炎も吸収できるからな

ツナ達にとっても厄介だぞそれにこいつも地面を凍らせ自分が得意のフィールドにしちまう、自分は足から刃を出してそれを武器にしたりもしやがる。」

 

 

「そして最後はこいつだ。」

白蘭

ツナ達の世界にもいるがこの人はここで生まれここで育った白蘭だ。何やらいろんな過去があるような...

 

リング精度はBランク属性は大空

 

白の架け橋(ポンテ・ディ・ビィアンコ)

広域空間魔法に大空の属性を追加した白蘭専用技

光が包み込んだ空間は大空の調和により全て石化する。ただ白蘭自身消費が大きいと言う欠点がある。

 

そして此処では他のパラレルワールドの自分と知識の共有できると言う能力ではなく他のパラレルワールドにいる自分の知識をアクセスすると言う能力がある。

 

「俺達の世界でも厄介な相手だったがツナはあの時よりも成長してんだ。舐めてっと痛い目見るぞ。」

 

「後はここでのオリジナルガジェットも紹介するぞ」

ガジェットなのは型

なのはのレイジングハートそして今までのなのはの戦闘データを元に作られた。

 

フェイト型

フェイトのバルディッシュそして今までのフェイトの戦闘データを元に作られた。

 

シグナム型

シグナムのレヴァンティンそして今までのシグナムの戦闘データを元に作られた。

 

ヴィータ型

ヴィータのグラーフアイゼンそして今までのヴィータの戦闘データを元に作られた。

 

「一体一体は本人には及ばないがデータを元に作られてるから纏まられると厄介だぞ。」

 

「さて、いろんな奴の紹介をしてきたがどいつもこいつも厄介な相手だが、ツナ!お前はお前の死ぬ気を貫いて全員無事に自分の世界に帰れるようにするんだぞ。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的48 少女達は少女漫画を1度は夢見る

更新です。


 

 

 

 

 

 

~side六課隊舎~

 

銀時となのはがヴィヴィオの見受け引受人となった翌日、先日あった市街戦の映像解析が終わり、その検討会が行われた。

 

ティアナ、スバルのデバイスに残されていた新型ガジェットの映像がスクリーンに投影された。

 

「これやな?ティアナ達が遭遇した新型ガジェットは‥‥」

 

「確かにこれまでのガジェットとは違うね‥‥」

 

「なんか、不気味‥‥」

 

はやて、なのは、フェイトの3人が新型ガジェットのシルエットを見て感想を述べる。

 

「ふむ、人型になったわけで、手足が使える様になり、武器を持つこともでき、更には蹴りも使えると見た方がいいだろう‥‥」

 

「おまけに羽も生えているから空も飛べる‥‥かなり厄介な相手だな‥‥」

 

シグナムとリボーンもこの新型ガジェットの形状からこれまで相手にしてきたガジェットよりも苦戦が強いられると予想する。

 

「だが、厄介なのはコイツの形状だけじゃないんだろう?」

 

ヴィータがこの新型ガジェットの相手をした獄寺に尋ねる。

 

「ああ、こいつらの表面装甲は、ナノコンポジットアーマーで覆われている」

 

『ナノコンポジットアーマー?』

 

獄寺の言うナノコンポジットアーマーという言葉にこの装甲を理解していない者達が首を傾げる。

 

「ナノコンポジットアーマーってのは‥‥」

 

獄寺は皆にナノコンポジットアーマーについて説明をする。

 

「それに厄介なのはナノコンポジットアーマーだけじゃねぇ‥‥」

 

獄寺はチラッとティアナに視線を向ける。

すると、ティアナは頷き、補足説明をする。

 

「この時、相手にした新型ガジェットは、なのはさん、フェイトさん、ヴィータさん、シグナムさんのデバイスを装備していました」

 

「なっ!?」

 

「私たちのデバイスを!?」

 

「はい」

 

ティアナが映像を進めると、確かにこの新型ガジェットの手には色は違うが、レイジングハート、バルディッシュ、グラーフ・アイゼン、レヴァンティンに似た武器を持っていた。

 

「ど、どうして‥‥」

 

「私たちのデバイスを‥‥」

 

「なんでこいつらが‥‥」

 

敵のガジェットが自分達のデバイスを装備していることに驚きが隠せなかった。

 

「ナノコンポジットアーマーだけでなく、なのは達のデバイスまで‥‥こいつはどう考えても素人が作れる代物じゃねぇな‥‥」

 

リボーンが新型ガジェットの映像を見ながらつぶやく。

 

「敵にはあの白蘭がいる‥‥恐らく奴からナノコンポジットアーマーの情報が流れたんだろうが、なのは達のデバイスだが‥‥」

 

ナノコンポジットアーマーの情報源は見当がついたが、なのは達のデバイスには見当がつかない。

 

「お前ら、誰かにデバイスを貸したことはないか?」

 

銀時がなのは達に自分のデバイスをこれまで誰かに貸したことが無いかを尋ねる。

 

「局のメンテナンスには何度か出したことはあるけど、誰かに貸したことはないよ」

 

「それに私達のデバイスは、いわば専用機みたいなものだから、他人がそう簡単に使いこなれるモノじゃないし‥‥」

 

なのははメンテナンスに出したことはあるが、ユーノからもらって以降、誰かに貸したことはないと言うし、フェイト曰く、自分らのデバイスは、訓練校のストレージデバイスと違い、個人専用のデバイスの為、自分達以外の人間は使いこなせないという。

 

「確かにはやてさんのデバイスを装備したガジェットはいませんしね‥‥」

 

「ああ、主のデバイスはそれこそ、我々のデバイスよりも扱いが難しい」

 

シグナム曰く、はやてのデバイスは自分達の専用デバイスよりも更に特別なものであり、複製なんてできない代物だという。

まさにオーダーメイド・オブ・オーダーメイドのデバイスなのだ。

 

「こいつらのデバイスは回収できなかったのか?」

 

リボーンが獄寺達に新型ガジェットの使用していたデバイスを回収できなかったのかを尋ねると、

 

「こいつ等が機能停止した後、デバイスも自爆して粉々になりました。どうやら、徹底的な証拠隠滅プログラムが仕込まれていたみたいで‥‥」

 

獄寺が新型ガジェットのデバイスを回収できなかった経緯を話す。

 

「‥‥」

 

そんな中、新八が顎に手をあて難しい顔で考え込んでいる。

 

「どうした?新八、険しい顔して、腹でも痛いのか?ウ○コを我慢しているアルカ?だったら、すぐにトイレに行くネ、此処で洩らされたら皆が迷惑するアル」

 

神楽が新八に声をかけると、

 

「違うよ!!それよりもなのはさんは、局のメンテナンスにデバイスを出したんですよね?」

 

「ええ」

 

「もしかして、フェイトさん達も局のメンテナンスに出しているんですか?」

 

「そうだよ、一応規則だから。でも、それがどうかしたの?」

 

「いえ、それなら、局のコンピュータになのはさん達のデバイスのデータって残っていると思って‥‥」

 

「えっ?うん‥多分残って‥‥っ!?」

 

新八のこの質問にフェイトは何かを察した。

 

「ま、まさか‥‥」

 

「ええ、そのまさかと思います」

 

「ん?どうしたの?フェイトちゃん」

 

「まさか‥管理局の中に敵と内通している裏切り者か敵のスパイがいるのかも‥‥」

 

『っ!?』

 

フェイトの指摘に新八を除く、皆が驚愕の表情を浮かべる。

 

「確かにそれなら、敵がなのは達のデバイスを使用していてもおかしくはねぇな‥‥」

 

「グリフィス君」

 

「はい」

 

「大至急、リンディ提督に連絡してデバイスのデータ管理を徹底する様に伝えてや‥この新型ガジェットの映像を添付してな」

 

「わかりました」

 

管理局の中に内通者またはスパイの存在があるかもしれないという疑惑の中、このまま放置すれば、データが次々と奪われ、数多くの専用機デバイスを装備したこの新型ガジェットが出現するかもしれない。

その事態は何としても避けなければならなかった。

 

「でも、スパイなんてそう簡単に潜入できるものなんですか?」

 

ツナがはやてに質問する。

 

「‥‥恥ずかしい話、管理局ならそれが可能かもしれへん」

 

「どういうことです?」

 

はやてが言うには管理局は慢性的に人手不足なので、過去に凶悪犯罪を行っても魔力レベルが高い者は管理局が司法取引を行い、局員になることで、その罪を帳消しにすることがある。

フェイトやはやて達もそうした司法取引があり、現在に至る。

しかし、皆がフェイト達のように真面目な局員になるとも限らない。

局員となっても裏では犯罪行為を続けている者も少なからず居る。

だが、管理局は優秀な魔道師を手放すわけにはいかないので、そうした違法局員の違法行為を放置している気概が見られた。

こうした違法局員が他の世界などでもめ事を起こす火種となっている。

また、テロリストに大金で買収されたり、ハニートラップに引っ掛かって重要情報を渡してしまう局員も居ると言う。

はやての話を聞いて呆れる銀時達。

 

「この体制は何とか変えなアカンと私らも思っておるんよ」

 

「まぁ、そんな体制なら、局の中に内通者かスパイが居てもおかしくはないな‥‥」

 

「ま、まぁ、デバイスについてはリンディ提督らに任せよう‥‥次や次‥‥」

 

そして、映像が新型ガジェットから今度はヘリを狙撃したスナイパーに変わる。

 

「こいつらの服装、トレディの奴と似ているな‥‥」

 

スクリーンには青を基調としたボディースーツを身に纏った眼鏡をかけた女とバズーカを持つ少女の姿が映る。

 

「それだけじゃねぇ、奴らの首元をよく見てみろ‥‥」

 

リボーンの指摘に皆は彼女らの首元に注目する。

すると、眼鏡の女の首元には『Ⅳ』バズーカ少女には『Ⅹ』の数字が書かれていた。

 

「恐らく、こいつらはトレディの仲間‥ナンバーズだ」

 

「4と10‥‥やっぱり、トレディの他にも12人の仲間が‥‥」

 

「今回出てきたのはこの2人だけなんか?」

 

「いえ、あともう1人確認されています」

 

グイフィスと同じ、バックヤードのシャリオ・フィニーノがキーボードを操作すると、そこには定春の姿に驚いている眼鏡の女とバズーカ少女、そこへなのはとフェイトの攻撃が炸裂するが、2人の姿は一瞬の内に消えた。

 

「消えた!?」

 

「瞬間移動か!?」

 

「いえ、違います。スローで再生します」

 

映像がスロー再生されると、眼鏡の女とバズーカ少女の2人を青髪の女が抱いて逃げる映像が映し出された。

彼女の服装もやはり、青を基調としているボディースーツだった。

その映像を見て、銀時は、

 

(あの姉ちゃん、なかなか良い尻をしているじゃねぇか)

 

ボディースーツにより、青髪の女のボディーラインがそのまま映し出され、中でも彼女の尻は安産型な体系だった。

彼女の姿を見て銀時の頬が思わず緩む。

だが、それを見逃さないのが、管理局の白い悪魔。

 

「むぅ~」

 

なのはは不機嫌そうな顔をして、銀時の太ももを抓る。

 

「イテッ!?」

 

突如、体に走る激痛に銀時は辺りを見渡す。

すると、隣には白い悪魔が居た。

 

「銀さん‥‥あとでちょっと、O・HA・NA・SHIしようね?」

 

「い、いや、なのはさん?何故にそんな不機嫌なんですか?」

 

「いいから、あ・と・で・ね」

 

「は、はい」

 

銀時はこの検討会の後、地獄を見た。

 

「こちらの女性の首元には『Ⅲ』の番号が確認できます」

 

シャリオが映像を停止させ、青髪の女の首元をズームする。

すると、そこには確かに『Ⅲ』の番号が描かれていた。

 

「ホントだ‥‥」

 

「やはり、この女もナンバーズか‥‥」

 

「それに、このスピード‥‥もしかしたら、私よりも速いかも‥‥」

 

「なんにしてもこれからはこの新型ガジェットとナンバーズとの戦闘が予想されるわけか‥‥」

 

敵も着々と戦力を強化してきている。

今後は一層戦いが激化することが予測された。

 

 

検討会が行われてから数日後‥‥

 

 

~sideクラナガン 繁華街 某所~

 

ここはクラナガンの少し外れにある場所

 

「えっと‥‥確かここにあるはずなんだけど‥‥」

 

と眼鏡をかけてニットを被っている少女が辺りを見回しながら言う。

因みに彼女は管理局員でなければ、六課にも全く無縁の少女であり、手にあるのはケーキ屋のちらしだった。

 

「ここら辺であっているよね?」

 

チラッとチラシに書かれている地図を見た。

その時、

 

「おや~こんな所にどうかしたの~お嬢ちゃん~」

 

といかにも下劣そうな男性に囲まれた。

少女は本能的に身の危険を感じ、

 

「あの急いでいるんで‥失礼します」

 

足早にその場から逃げようとしたら、

 

パシッ、

 

腕をつかまれて、

 

「まぁまぁ焦らないでお兄さんが相手をしてあげるからさ」

 

胸糞悪い下衆な表情で少女を見ている。

 

(いや‥誰か!誰か助けて!!)

 

声を上げたくても恐怖で声があがらない。

自分はこのままこの男に好き勝手されてしまうのだろうか?

とこの時

 

バン、ドン、

 

「グワァ」

 

男が急に倒れて

 

「はしって!!」

 

手を掴まれて引っ張られていった。少しして曲がり角を曲がり、不良を巻いたと思って走るのを止めて

 

「ハァハァ、あの‥ありがとうございます。」

 

少女は自分を助けてくれた少年に礼を言う。

 

「いいよ、気にしなくて、仕事だしね、じゃ気をつけて帰って。」

 

「あ、あの、名前聞いても」

 

「機動六課の古里炎真だよ。」

 

ニコッと笑ってその場を離れた。

 

(古里炎真‥‥)

 

 

~side翌日~

 

「えっ?六課の見学?」

 

「そうやねん、六課に見学したいって子達がいてな。」

 

「私達はいいけど、何で?」

 

「まぁ1番は管理局のイメージアップやな、その子達は今「「失礼します。」」」

 

「お、来た来た。」

 

「今日お世話になる夏野春香です。」

 

「冬島秋です。」

 

「あれ、この子達って確かTVで‥‥」

 

「そう!今人気のアイドルユニットSIKIの2人や」

 

 

~side招集~

 

見学が来た‥しかもその見学者がミッドでは有名なアイドルとのことで今の六課はすごく賑わっていた。

 

「何で見学受け入れたんでしょう?」

 

新八がスバルに今回、はやては何故アイドルの六課見学を受け入れたのか疑問視をする。

 

「さぁ?わからないけど何かワクワクするねティア!」

 

「別に」

 

スバルはワクワクしている様子だが、ティアナは相変わらずドライな反応。

 

「どんな人か聞いている炎真君?」

 

「有名人としか聞いてないよ。」

 

「ドキドキするね、エリオ君」

 

「う、うん。」

 

「パパ?」

 

「知らない人が来るって事だ。いい子にしとけよ」

 

銀時はヴィヴィオの手を握りながらヴィヴィオに先に注意を入れた。

 

上から新八、スバル、ティアナ、ツナ、炎真、キャロ、エリオ、ヴィヴィオ、銀さん、そして

 

「注もーーーーく!!」

 

はやてが叫んで

 

「今日1日見学をすることになったアイドルの夏野春香ちゃんと冬島秋ちゃんや!!仲良ぅしたってな!」

 

「「「「「アイドル!?」」」」」

 

「よろしくお願いします。」

 

「よろしく、は、やった!会えた!!」

 

と言いオレンジに近い茶色い髪の少女の方が炎真に飛びついた。

 

「へ、」

 

「「「「「「えぇーー!!Σ(  Д )ﻌﻌﻌﻌ⊙ ⊙」」」」」」

 

「え、あの何ですか急に」

 

「この前はありがとうございました。」

 

「え、この前?」

 

「ちょっ!エンマ!!何、私に黙ってアイドルとコネクション築いてんねん!!」

 

炎真がアイドルと自分の知らぬ間にアイドルと知り合いになっている事に驚愕するはやて。

 

「え、これ僕が悪いの...ん?君は、あの時の‥‥」

 

「はい。この前ケーキ屋を探している時、怖い人に絡まれている時、あなたに助けられたんです。」

 

「へ、へぇ‥そうだったんだ‥‥」

 

炎真はあの時、何故、彼女が不良に絡まれていたのか、理由を知らなかったが、今ここで訳を知った。

そして、炎真はチラッと違う所を見てそこには自分以上に赤くなっている親友や物凄い形相で睨んでくるはやてとキャロそして何故かそれを超えるぐらい怒って.....いや後ろに炎を燃やした新八などなど、この場は一気にカオスと化した。

 

「あ・ま・り、近づかないでもらえるかな~エンマが仕事できひんやろ!」

 

とはやてが強引に炎真とアイドルとの間に割って入った。

 

「あ、すいません。忙しいのに見学さして貰っている身なのに」

 

と直ぐに離れた。

 

「はる~そんなに直ぐに離れちゃていいの?」

 

「うん、秋ちゃんもしっかり働かないと」

 

どうやら一瞬で仕事モードに入っていた。

 

ボソッ「こういう所、はやてちゃんにも見習って欲しいよね」

 

「うん。」

 

となのはとフェイトが話していた。

 

「あの、」

 

「何?」

 

「私達はどうすればいいんですか?」

 

「そうね、何処か見学したい所とかある?」

 

「ん~、なら今回私達はイメージアップで来たので何か自慢できるところとか教えてください!」

 

「なら、私と炎真君で設備を...」

 

なのはが言った時にはやてが

 

「己は何タブーいっとんのじゃ!!」

 

なのはの提案にキレるはやて。

 

「は、はやてちゃん?」

 

突然キレたはやてに戸惑うなのは。

 

「いかにも、炎真に色目使いそうなのと何で一緒にさせんねん。あぁ!!」

 

なのはに詰め寄るはやて。

管理局が誇るエース・オブ・エースが物凄い勢いで壁際へと追いやられる。

 

「はやてちゃんキャラが、キャラが、壊れているよ!!」

 

「エンマの一大事にキャラ何ぞ気にしていられるか!!」

 

はやては社交辞令を捨て、完全に1人の八神はやてと成り果てている。

其処には、六課の司令官と言う肩書など紙屑並みの価値しかないのだろう。

 

「私も行きます!!」

 

ここで以外にもキャロが出現。

 

「キャロ!?」

 

キャロが自ら虎の穴の様な所へ行く事に志願したのに驚くエリオ。

 

そして、炎真、はやて、キャロ、なのは、はアイドル達に六課の隊舎を案内した。(はやて達が、アイドル達に危害を加えるかもしれないので)

 

「まずここが食堂。」

 

「色々置いてあるよ。ここは」

 

「なら、お昼一緒にいいですか?」

 

「べ「アカン」」

 

「炎真は私の部屋で私と一緒に私の料理を食べるんや!」

 

めちゃくちゃな事を言い出した

 

「はやてさん、何言っているんですか!」

 

キャロもこれに食いついた。

取りあえず、昼食は皆で摂る事になったが、その際、炎真の脇を誰が座るかで一悶着があった。

 

「とりあえず、次に行こうか」

 

そして模擬戦場や寝室なども回っていった。そして次にインタビューみたいなのを行い、なのはそしてフェイトやはやてがそれに答え、機密に関わらない程度に六課の設立の理由などを聞いていた。そして

 

 

 

~side夕方~

 

夕方になって夏野にとある場所に呼び出された炎真

 

「あの、今回はありがとうございました。私達の我が儘を聞いて貰って」

 

「僕は何も、はやてが決めた事だし。」

 

「それであの、今度の日曜日空いていますか?」

 

「僕は非番だけど。」

 

「なら、一緒にお出かけできませんか。」

 

「え、でも君はアイドルでしょう?そういうのはゴシップネタになるんじゃ‥‥」

 

「大丈夫です。事務所は気にしないですし、だから、お願いします!!」と顔が近づき

 

「わ、わかったいいよ。」

 

「はぁー!本当ですか?やったーー!!」

 

「なら今度10時に駅集合でお願いします。」

 

と帰って行った。猛ダッシュで帰っていった。

 

 

 

「はぁ~なかなかの子だったな。お出かけか女子とはこの前のはやて以来か...あれあんまり時間たってような。」

炎真は思い出しながら呟く

 

 

~ウラバナ~

 

朝の事

 

「何で炎真君がアイドルを~」

 

目に嫉妬の闘士が浮かんでいる新八。

 

「何やっているアルか?アイドルオタク、どんだけ頑張ってもお前はアイドルに名前すら覚えてもらえねんだヨ。」

 

「な、なんだとまだ新までは覚えてもらって...あれ?そういえばキャロちゃんとお通ちゃんて似てる気がする。」

 

「そうか?」

 

「今度キャロちゃんにお通ちゃんの歌を歌ってもらって声録音させてって頼もう」

 

新八の意見に対して神楽は、

 

「キモいアル!!私の半径10メートル近づくなヨ!!ロリコンオタク!!」

 

神楽が過剰に反応した。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的49 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ

更新です。


 

 

 

この日、ツナが今日の分の仕事を終え、寮に戻ろうとした時、反対側からはやて、キャロ、新八が歩いてくるのに気付いた。

随分と珍しい組み合わせだと思っていると、

 

「おっ?ツナ君やないか。お仕事終わったんか?」

 

「はい」

 

「そうか‥ちょうどええ、ちょっと付き合い」

 

「えっ?」

 

訳の分からないままツナははやてに連行された。

 

そして、六課の部隊長室‥つまり、はやての部屋にて密談が行われた。

部屋は電気もつけずに、蝋燭の明かりだけが灯され、何やら不気味である。

 

「さて、みんなを呼んだのは他でもない」

 

準備が整いはやてがメンバーらに声をかける。

 

「いや、俺は巻き込まれただけなんですけど‥‥」

 

ツナがはやてに自分は此処に来たくて来たわけではないと言う。

 

「奴が遂に動くでぇ‥‥」

 

「ちょっ!?はやてさん!!スルー!?」

 

ツナは自分の意見が無視された事に対してツッコム。

 

「はやてさんそれは確かですか?」

 

キャロがはやてに確認する。

 

「間違いない。奴の周りには常に犬(ザフィーラ)が張っておった‥奴もそれに感づいてナリを潜めていたが、我慢出来ずに動き出したみたいや‥‥私はもう後手に回るつもりはない、上の連中がガタガタ言うつもりなら辞表を出す覚悟やで」

 

はやては一息入れてからその決意を皆に言う。

 

「ふぅ~‥‥決戦や。奴も奴の企ても全て潰すで」

 

「そうですか、はやてさんがそう言うのなら僕らの命もはやてさんに預けます」

 

新八が珍しく真剣な表情ではやてに意思を伝える。

 

(え?え??な、何かやばいことに巻き込まれてない?俺?)

 

はやて達の真剣な雰囲気にこれはかなり危険なことだと判断したツナだった。

 

 

~sideクラナガン リニア駅 ロータリ付近~

 

日曜日になり前回、アイドルである夏野と炎真が約束した日になり、駅前広場にて、

 

「炎真さん!」

 

夏野が炎真に声をかけながら走って来た。

 

「ごめんなさい、待ちました?」

 

「いや、今来たところ?」

 

炎真はデートではお決まりのセリフを言う。

 

「そうなんですか?良かった~炎真さんをまたせちゃったかと思いました。実はリニアが遅延して‥‥」

 

夏野はもしかしたら炎真を待たせてしまったのではないかと思ったが、彼の言葉を信じ、炎真を待たせていなかったと思い安堵する。

 

2人のそんな会話を物陰から聞いていたはやては、

 

「あのアマぁ~ふざけやがってぇ~エンマはなぁ~己が来るのを15分待っていたんやでぇ~エンマの貴重な15分を無駄にした罪ぃ~‥‥己の残りの人生できっちり償って貰おうやないか!!」

 

顔を引き攣らせながら、デバイスを起動させるはやて

 

「おい、ツナ君ちょっと土台になり」

 

はやてがツナの方を向き、彼に自分の土台になる様に言う。

 

「待たんかい!!『奴』ってこの前来たアイドルの夏野春香さん!?」

 

はやて達の言う奴の正体を知り、ツナがはやてにツッコム。

 

「アイドルなんかやない!!あんなアバズレ、私はアイドルなんて認めないで!!」

 

「いや、れっきとしたアイドルですから!!って言うか、炎真君と彼女のデートを邪魔しに来たんですか!?」

 

「ちゃうで」

 

ツナの質問にはやては即答で否定した。

 

「じゃあ、何しに来たんですか?」

 

「私はエンマに近づくあのアバズレを抹殺しに来たんや!!」

 

「私も同じです」

 

「僕は気になって‥‥」

 

(まさか、炎真さんを仲介にしてアイドルとお友達になりたかったなんて言えない‥‥)

 

「アンタらそれでも治安維持組織の人間か!?」

 

新八はともかく、はやてとキャロの言動はとても管理局員らしからぬ言動であった。

 

「でもな、ツナ君、考えてもみてや、あんなアバズレがエンマを幸せにできると思うか?いや、私だってエンマが好きになった相手を認めたいんや‥‥それでも悩んで色々考えた‥‥そんで抹殺しかないって結論に‥‥」

 

「考えが物騒すぎ!!」

 

はやての考えにツナがツッコム。

本来ツッコミ役は新八の役なのだが、今日の新八は、はやて側についているためかどうにもツッコミのキレが悪い。

 

「はやてさん、ターゲットが移動し始めました」

 

キャロの報告を聞き、はやてが炎真達の方に視線を向けると、

 

「よし、行くか!」

 

「はい!!」

 

キャロの言う通り、炎真達は、どこかへと行こうとしていた。

 

「あ、あかん、追うで!!」

 

「「了解です」」

 

「あっ、ちょっと‥‥はぁ~仕方ないなぁ~」

 

はやてはデバイスをしまい、他のメンバー達と共に炎真らを追った。

ツナはやれやれと思ったが、このままはやてとキャロを放置しておくと本当に夏野を抹殺しかねないので、渋々後を追った。

 

 

~sideオープンカフェ~

 

現在ここでお茶をしている炎真と夏野を少し離れた席で監視をしているはやて達

 

「こんな所もあったんだね。」

 

「はい、気に入りましたか?」

 

とここで紅茶が来て飲もうとしたら炎真のカップのトッテが壊れて炎真にかかる。

 

「あ、あつ。」

 

「大丈夫ですか!?」

 

と夏野が駆け寄りかかった部分を拭いていた。

 

「ありがとう、夏野さん。」

 

「いえいえ」

 

と戻った時にテーブルにあたりカップが倒れて

 

「きゃ、」

 

「大丈夫」

 

と炎真も持っていたハンカチで拭いてあげた。

 

「何か一緒ですね。」

 

「そうだね。」

 

 

~sideはやて~

 

「あのアマぁ~エンマにくっつき過ぎやろ。」

 

「全くです!」

 

目の前でイチャラブを見せつけられてはやてとキャロはドン、ドンとあるものを叩いていた。

 

「ちょっ、やめ、息が‥‥」

 

叩かれていたのはツナだった。

構図ははやてがツナにヘッドロックして、キャロがツナの腹に腹パンをしていた。

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて」

 

「そうですよ。2人共、あんまり物音を立てると気づかれちゃいますよ」

 

新八がはやとキャロに注意する。

 

 

~side???~

 

はやて達が馬鹿をやっている近くの席で、

 

「はる!そうよ『同じ』と言う事は妙な連帯感を生むそれは男心くすぐるのよ!」

 

いたのはこの前影が薄かった冬島秋だった。

 

「ちょっと!!誰よ!!今影が薄いって言った奴!?」

 

天の声に思わず反応する冬島。

すると、

 

「「ん?」」

 

炎真と夏野を尾行していたはやて達と目が合った。

 

「あっ、この前の六課の人達ではないですか!」

 

「君はこの前の確か」

 

「冬島です。」

 

「そうだったね」

 

アイドルなのにすっかり忘れていたツナであった。

 

「で、あんたが何でこんな所におんの?」

 

「同僚の恋の応援です。」

 

バキッと何かが折れた。

 

「へ、へぇ~そうなんや」

 

「彼女はね、天然で図太くてそして何より少女漫画が大好きなんでそれでこの前の事に運命を感じているの‥それで、恋の応援してあげようって‥‥」

 

「へぇ~少女漫画かだからあんなベタな惚れ方したのか」

 

「あ、移動するみたいです。」

 

とキャロが言い皆(はやてとキャロと冬島が)直ぐに移動した。

 

 

~sideクラナガン 繁華街 裏町地区~

 

何かいかがわしいホテルが並んでいる所にやってきた2人

 

(何だろう?色々なホテルあるけどこれって前に銀さんが言っていた‥‥)

 

ツナがラブホを見ながら、以前銀時に言われた『大人のホテル』が脳裏に浮かぶ。

 

「あ、あ、あのあそこで休みませんか」

 

と『男と女の巣』と言うホテルを指さした。これには炎真もキョトンとなり、何を言っているのと弁明した。

 

「だ、だって秋ちゃんが男の人はああいう所で2人っきりになったらいいって」

 

(秋ちゃん、この娘に一体何を教えているの!?)

 

炎真は夏野にしょうもない知識を植え付けた『秋ちゃん』に心の中でツッコんっだ。

 

 

~sideはやて達~

 

もちろん行動を覗いていたこちらはの反応は‥‥

 

「ちょ、アンタ!!純情そうな同僚になんて事教えてんの!?」

 

ツナが炎真と同じ事を冬島にツッコム。

やはり、今日の新八のツッコミはどうもキレが悪い。

 

「男なんて単純だからね、ちょっとかわいい子にピ―――をピ―――したら簡単におちるのよ」

 

すると、冬島はアイドルらしからぬ、銀さん並の禁句用語を並べた。

 

「いい加減にしてくださいそんな事、羨ま‥‥R18タグをつけなきゃいけないでしょ本当に羨ま‥‥けしからん」

 

と新八が鼻血を出しながら言った。

 

「本音がダダ漏れやで。新八君」

 

これにはここにいた全員がひいた。

 

 

~side炎真~

 

「ねぇ、ここじゃなくてもいいかな?」

 

「え、」

 

「2人っきりになりたいならいい場所知っているんだ。」

 

と笑顔で炎真が答えた。

 

 

そんなわけで‥‥

 

 

~sideはやて~

 

「ここは」

 

はやてが少し驚いて

 

「どうしたのはやてさん?」

 

「いや、何もない」

 

(エンマまさか‥‥)

 

としょぼんとして

現在地は前にはやてと出掛けた時に襲われた街道である。

 

「あ、動きがあるみたい」

 

「はる行くのよ!!こくれ!」

 

 

~side炎真~

 

場面はこちらに戻り

 

「夜景綺麗ですね。」

 

「うん、僕もはやてに教えてもらったんだ。」

 

「はやてって部隊長さん」

 

「うん。」

 

「ここなら」

 

「ん、」

 

「あの、炎真さん!私とお付き合いしてもらえませんか!」

 

「え、」

 

「私、男の人とは無縁でそれで、よく少女漫画何かで知識を得てたんですが、この前の運命的な出会いをしてから私、炎真さんのことが...」

 

突然の告白で炎真は

 

「ごめんね、それはできないかな。」

 

炎真はあっさりふった。

 

「それは他に好きな人が」

 

炎真を見る目は潤んでいた。

 

チラッ

 

「どうだろうね、でも好きかもしれないかな」

 

 

~sideはやて~

 

「あれ、今こっち見なかった。」

 

「え、」

 

「今、好きかもって」

 

「それって」

 

「誰の事?」

 

ツナ、はやて、新八、キャロが言う。

 

「あの子が振られた‥‥」

 

冬島はそこに意識がいっていた。

 

 

~side炎真~

 

「そうですか、なら友達とかは」

 

「それはいいよ、僕でいいなら。」

 

「お願いします」

 

少し涙が出てたがとてもいい笑顔で答えた。

 

「さっ、暗いから帰りな、あそこの友達に送ってもらったら。」

 

と隠れている方向を指さした。

 

Σ(・ω・;)ギクッ

全員驚いて

 

「秋ちゃん、皆見ていたんですか!?」

 

「こ、これはね、はる~。」

 

夏野に見つかり狼狽える冬島。

 

「‥‥」

 

すると、無言で近づいて

 

「今度ケーキおごってね」

 

ダークスマイルを浮かべて、そのまま帰って行った。

 

「あっ、待ってよはる~、あっ、皆さんさようなら。」

 

と一礼して 夏野を追いかけてそのまま帰って行った。

 

で炎真の方に目を向けて、

 

「炎真君‥その‥‥さっきの事なんやけど‥‥」

 

ツナが恐る恐る炎真に尋ねる。

 

「ん?何のこと?」

 

「好きかもってまさか。」

 

とはやても炎真に恐る恐る尋ねると。

 

「さぁね、人の恋路を覗く趣味の人はあまりね...」

 

と少しイタズラぽい笑みを浮かべてそう答える。

 

「いや、これは新八君がな、行こう行こうってしつこいから来たんや」

 

「え、責任をなすりつけんの!」

 

自らが主犯格の筈なのに、新八(一般人)に責任を擦り付けるはやて(管理局員)。

 

「まさかはやてさんの事が‥‥」

 

「それじゃあ帰ろうか。」

 

炎真ははやて達と共に帰路へとついた。

 

 

~ウラバナ~

 

これは夏野達が見学に来てそのまま帰って行った時の事

 

「ねぇキャロちゃん、この曲歌って」

 

「嫌です。今はそれどころじゃ」

 

「何の騒ぎ?」

 

新八がキャロに迫っていたところにフェイトが入っていった。

 

「助けて新八さんが!」

 

「え、新八、何しているの?」

 

「新八がロリに目覚めたネ。」

 

「いや僕は、キャロちゃんにこの曲を・・・」

 

「嫌がっている私に無理やり‥‥」

 

と涙目で訴えた。

 

「新八、幾らモテないからってお前ここまで‥‥」

 

銀さんは新八から距離を取る。

 

「バルディッシュ‥‥」

 

フェイトは怒りをあらわにしてデバイスを起動させる。

 

「いや僕は、キャロちゃんに『歌って』って言っただけ‥‥」

 

「「問答無用!!」」

 

「ぎゃ――――!!!」

 

フェイトの怒りの一撃を受けてもメガネ(新八の本体)は攻撃を免れ何とか無事だった。

 

 




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的50 娘の反抗期に親父はショックを受ける

更新です。


 

 

~side六課~

 

この日、機動六課の隊舎には、とある所用から108部隊に所属しているギンガ・ナカジマが来ていた。

そしてその用も終わって、自分の所属している隊舎に帰ろうとしたら、なのはに「少し訓練を見ていかない?スバルもいるし」 と誘われ、六課に所属している妹のスバルの顔を見るのも良いかな?と思い、ギンガは六課の訓練場へと来ていた。

 

「あっ!ギン姉!!久しぶり!!」

 

「そうね、スバルも元気にしていた?」

 

「うん!!」

 

訓練場でギンガの姿を見つけたスバルはギンガに近寄り声をかける。

この前の市街戦にて、ギンガはスバル達のすぐ傍まで来ていたのだが、神楽を病院へと運んだため、スバルはギンガと出会っていなかった。

故にこうしてギンガと直接会うのはスバルが六課に入る直前以来だった。

 

「相変わらず仲がいいわね」

 

ナカジマ姉妹の行動を見てティアナは一言呟く。

 

「あっ、ギンガさん。お久しぶりです」

 

そこに新八もギンガの名前を聞いてギンガに声をかける。

 

「新八君も久しぶり、もう怪我は大丈夫?」

 

あの時、神楽同様、新八もトレディとの戦闘で怪我を負っており、ギンガは新八にあの時の怪我は大丈夫なのかと尋ねる。

 

「はい、もう大丈夫です」

 

新八はもう怪我の具合は大丈夫だとギンガに答える。

 

「ん?ギンガ?何処かで聞いた様な名前だな?」

 

「忘れたの?ホラ、この前、ヴィヴィオの時に話したスバルの姉さんよ」

 

ティアナが考え込んでいる獄寺にギンガの事を説明する。

 

「あっ、そう言えばそうだったな」

 

ティアナに促されてギンガの事を思い出す獄寺。

だが、実際にギンガの名前は出たが、ギンガ本人と面識がなかった獄寺はすっかり忘れていた。

 

「あっ、ギンガの姉御」

 

そこへ神楽がやって来てギンガに気づくと、神楽はギンガに声をかける。

 

「姉御、あの時は世話になったアル」

 

神楽はギンガに一礼し、あの時、病院へ運んでくれた礼を言う。

 

(なんで姉御?)

 

ギンガを含め神楽が何故、ギンガを姉御と呼ぶのか不思議がった。

 

「神楽ちゃんも久しぶり、もう怪我の具合は大丈夫?結構酷い怪我だったけど?」

 

「大丈夫ネ。頑丈なのが私の取り柄アルヨ」

 

神楽は新八同様、あの時の怪我はもう治ったとギンガに伝えた。

 

やがて、訓練時間となり、訓練が始まる。

 

「さてギンガ、スバルの腕前がどこまで成長したのか見て見ない?」

 

なのははギンガにスバルと模擬戦をしていないかと言う。

 

「え?」

 

「いいんですか!?なのはさん!?やろうよ!!ギン姉!!」

 

なのはの提案にギンガよりも先に食いつくスバル。

スバルはこの六課に来て自分の腕が上がったことをギンガに見せたかったし、ギンガ自身も今のスバルがどれくらい強くなったのかも気になったので、

 

「じゃあ、お願いします。」

 

と、ギンガもスバルとの模擬戦を受け、ギンガとスバルは共にバリアジャケットを纏い、デバイスを起動させ、互いに向き合う。

ギンガ、スバル共に準備が整い、ナカジマ姉妹の模擬戦が始まろうとしていた。

 

 

~side機動六課訓練場~

 

「ん?どうした?何の騒ぎだ?これは?」

 

ナカジマ姉妹の模擬戦が始まろうとした時、訓練場にヴィヴィオを連れた銀時がやって来る。

 

「あっ、銀さん。今からスバルさんとスバルさんのお姉さんが模擬戦をするらしいですよ。」

 

ツナがこれから訓練場で行われるナカジマ姉妹の模擬戦の事を伝える。

 

「へぇ~あいつに姉ちゃんなんていたのか。」

 

スバルに姉が居たことをこの場で初めて知った銀時は他の見学者同様、訓練場に視線を向けた。

 

そして、

 

「こうして模擬戦をするの、久しぶりだね、ギン姉。」

 

スバルは手を組んだ後、構え、

 

「そうね‥でも、手は抜かないわよ。スバル」

 

ギンガもスバルと同じ構えをとる。

 

「抜かせないよ!」

 

スバルはローラーで一気に加速して、ギンガへと接近し、

拳をギンガ向けて、

 

「はぁ!」

 

放つ。

しかし、

 

パシッ!!

 

スバルの拳をギンガはそれを腕で受け止める。

 

(拳が重いし速くなっている‥‥スバル、貴女は確実に強くなっているわ。)

 

スバルの拳を受け止めて、妹が確実に成長している事を実感する。

嬉しそうな顔をして2人は距離をとって、

 

「「ウィングロード!!」」

 

2人は空に道を作りその道をローラーで駆け抜けながら、

 

「「はぁぁ!」」

 

加速したスピードが乗った拳をぶつけあった。

六課の空には藍色と青色のウィングロードがまるで航空ショーの飛行機雲の様に広がった。

 

 

~side観客~

 

「ほぉ~スバルにしてはなかなかいい勝負してんじゃねぇか。」

 

「スバルもスバルの姉ちゃんもいきいきしているじゃねぇか」

 

「こういう勝負は見ていて気持ちいな。」

 

「ほんとうに」

 

獄寺、銀時、山本、なのはがナカジマ姉妹の感想を述べた。

 

 

~side模擬戦~

 

こちらも今は拮抗していた。

スバルが拳から蹴りに移行してもそれにきっちり反応するギンガ。

 

「やっぱギン姉は強いね。」

 

「スバルもだいぶ腕が上がっているわよ!でも、そう簡単に私を越えさせないわ!!」

 

今度は完全な近接戦闘に変わって拳をぶつけあった。

 

 

~side???~

 

「‥‥」

 

六課の訓練場にて行われているナカジマ姉妹の模擬戦。

この時、模擬戦の様子を観戦していたのは六課の関係者だけでなく、別の所からじっくりとナカジマ姉妹の模擬戦を観察している者がいた。

しかも、模擬戦をしているナカジマ姉妹、そしてそれを見学している六課の関係者に気づかれる事無く‥‥

 

「‥‥あの動き‥‥あの魔力‥‥そして、あの力‥‥あの者ならば、アレを使いこなせるかもしれないな‥‥」

 

低い声で口元をニヤリと不気味なうす笑いを浮かべてナカジマ姉妹の模擬戦を観戦しながら、

 

「おい、スカリエッティ‥見つけたぞ‥アレを使いこなせる人物を‥‥ああ、ちゃんとデータは取っている。戻ったら、お前に見せる‥‥」

 

その人物は管理局から広域指名手配されているあのジェイル・スカリエッティに連絡を入れた。

 

 

~side模擬戦終了~

 

模擬戦が終わり結果はギンガの勝ちだった。

スバルが強烈な一撃をギンガに叩き込むより前に、ギンガの拳がスバルの顔面に寸止めされて、スバルが降参した。

そして、勝敗がついた頃、ナカジマ姉妹の模擬戦を誰にも気取られず観戦していたあの人物は人知れず消えていた。

 

「やっぱり、ギン姉にはまだ勝てないなぁ~」

スバルは負けたけど、それを悔しそうには言わず、むしろ笑みを浮かべながら言う。

勝敗よりも久しぶりに姉と模擬戦を出来て嬉しい様だ。

 

「でも、だいぶ腕が上がっていたわよ、スバル。私もうかうかしてられないわね」

 

「ホント!?」

 

「ええ」

 

ギンガに褒められて嬉しそうなスバル。

 

「2人とも、お疲れ様です。」

 

ツナがタオルと飲み物をギンガとスバルに渡した。

 

「ありがとう!ツナ」

 

「ありがとう。」

 

「あのギンガさん‥‥」

 

「何かしら?」

 

「雲雀さんはどうしていますか?元気ですか?」

 

ツナはギンガと同じ108部隊にいる雲雀の事を聞いた。

 

「雲雀君ね、今はものすごい実績を残しているわよ。犯罪者には容赦ないし‥‥」

 

ギンガは雲雀にボコられた犯罪者に同情する様な顔をする。

 

「はは‥‥」

 

ギンガ同様、雲雀にボコられた犯人が不憫に思えたツナ

 

「そして、訓練の相手もしてくれているし。」

 

「あの雲雀さんが!?」

 

これには近くにいた獄寺と山本も驚いて

 

「彼の性格からも彼はただ戦っているだけだけど」

 

納得した。

 

「ウチの部隊にも彼の戦いに憧れている人が増えてね、あの子には何か妙なカリスマ性?みたいなのがあるのかもね。」

 

「へぇ~あいつにもそんなのがあったのか‥‥」

 

「けっ、気に食わねぇ。」

 

ギンガとツナ達が話し合っている所をじっと見ている銀時。

特に彼の視線はギンガを捉えていた。

 

「どうしたの?銀さん。さっきからギンガの事をジッと見ているみたいだけど?」

 

なのはが気になって銀時に声をかける。

 

「ん~あの声、何処かで‥‥」

 

銀時は顎に手を当て、考え込む仕草をとる。

 

「えっ?声?」

 

銀時の呟きに首を傾げるなのは。

彼はギンガの声を聞き、『う~ん』と唸りながら考え込んでいたが、直接確かめようとギンガに声をかけた。

 

「あの、すみません。スバルのお姉さん」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「えっと‥‥もしかして、お姉さん、子供とかっていません?」

 

「えっ‥‥え―――!!な、何いっているんですか!?突然//////」

 

突然、銀時から『子供がいませんか?』と言われて驚くギンガ。

 

「いや、ほら、あれだ‥俺みたいな、銀髪の天然パーマで俺とそっくりな赤ん坊が‥‥」

 

銀時は自分を指さしてギンガに子供がいないかを尋ねる。

この言葉の意味を完全に勘違いした皆は、

 

「銀さん、まさかギン姉と‥‥」

 

と、涙目+汚物を見るような目で銀時を見るスバル。

彼女はギンガの手を持ってまるで姉を庇うかのように銀時から距離を取っている。

 

「銀さんにはヴィヴィオだけかと思っていたのに他にも子供が居たんですか!?」

 

ツナが驚いたように銀時に尋ねる。

 

「ちゃんと認知しないと子供がかわいそうじゃない!!」

 

フェイトは銀時に声を上げる。

 

「腐っていやがる」

 

「腐っていますね」

 

獄寺とティアナはもう完全に汚物を見るような目で銀時を見る。

心なしかエリオとキャロも銀時から距離を取っている。

 

「銀さん‥‥僕の事を散々ロリコン呼ばわりしていたのに、自分はもっと最低な事をしているじゃないですか‥‥」

 

新八は軽蔑する視線を銀時に送り、

 

「最低アルな銀ちゃん、子供(ヴィヴィオ)が居るのに外で女と別の子供を作るなんて、もうこれ以上子供が出来ない様にそのチ○ポ、むしり取って殺るヨぉ~」

 

神楽は怒気を露わにして手をポキポキと鳴らす。

 

「はっ!?いや、違う、違う、俺が言いたいのは‥‥って、言うか神楽と新八は会った事あるだろう!?ほら、アイツだよ!!アイツ!!」

 

銀時がギンガに尋ねた意味を神楽と新八に説明していると、

 

「言い訳は聞かないよ、銀さん‥‥」

 

目のハイライトが消えたなのはが銀時に迫る。

しかもほんのさっきまで、管理局の制服姿だった筈なのにいつの間にかバリアジャケットを展開し、手にはレイジングハートを握っていた。

 

「あれ?なのはさん、何?その目?目つきがヤバいんですけど!!光が消えているんですけど!!般若みたいな顔になっているんですけど!!」

 

「それは自分の胸に‥‥.」

 

そしてレイジングハートが起動して、まるで般若みたいな顔になり、

 

「聞け――――!!」

 

「ぎゃ――――」

 

そしてなのはの魔法弾にフルボッコされて、

 

「しばらく、ヴィヴィオに話しかけないで!!ついでにヴィヴィオにも近づかないで!!」

 

銀時に死刑判決に等しい強烈な一言を浴びせる。

 

「ぐわぁ!」

 

止めを刺された銀さんの心臓あたりに日本刀が刺さった様に見えた。

 

「ついでに私らにも近づくなよ、万年発情天パーが!!」

 

神楽が六課女性陣代表のように銀時に言い放つ。

 

「パパ‥‥」

 

「ヴィ、ヴィヴィオちゃん!!ヴィヴィオちゃんはパパの事を分かってくれるよねっ?ねっ?」

 

銀時はヴィヴィオに縋るような目をする。

ヴィヴィオも皆の言っている言葉の意味はよく分からなかったが、皆の態度から銀時が何か悪い事をしたのだと思い、

 

「パパ‥不潔」

 

幼児らしからぬ台詞が銀時に吐かれた。

 

「ちょっ!!ヴィヴィオちゃん!!パパはまだ童貞だから!!初心な少年の体だからね!!って言うか、どこでそんな台詞覚えたの!?」

 

ヴィヴィオに手を伸ばし自らの無実を叫ぶ銀時であったが、ヴィヴィオはなのはに抱っこされて物理的に銀時から離れて行った。

 

「賑やかねぇ~」

 

「飽きないですよ。」

 

「本当に」

 

そしてこの後、ギンガを含めたFWメンバーとツナ達が模擬戦をしたのは別の話。

全ての模擬戦が終わったのはもう昼時に近かったので、ギンガは六課の食堂で昼食を食べる事にした。

食堂のテーブルには一人で食べきるには難しい量の山盛りパスタが3つ乗っかっていた。

 

「いや~スバルのお姉さんって聞いたから‥‥」

 

「まさかと思いましたけど‥‥」

 

「やっぱ姉妹か‥‥」

 

万事屋メンバーの中でも結構食べる方の神楽でも六課に来た当初はスバルとエリオの食事量を見て、驚いていたが、まさかもう1人、スバルと同じ量の食事量を摂る人物がこんなにも身近にいるとは予想外だった。

ツナ達はスバルやエリオとほぼ同じ量の山盛りパスタを食べているギンガにちょっと引いた。

 

そして色々ありながらもお使いを終えたギンガが六課の隊舎を出た時、

 

「よぉ、お使いにしては随分と長かったな」

 

タバコを吸う1人の人物がおり、その人は隊舎を出たギンガに声をかけた。

 

「と、トシさん!どうしたんですか?」

 

「ゲンヤのおやっさんに頼まれたんだよ。お前の帰りが遅いから向かいに行ってくれってな。帰ったら、おやっさんの説教ぐらいは覚悟しておけ」

 

「そうでしたか、すいません。ご迷惑おかけして‥‥」

 

ギンガは遅くなる連絡をゲンヤに入れるのを忘れて居た事を思いだし、わざわざ自分を迎えに来てくれた土方に頭を下げ謝る。

 

「別に構わねぇよ‥ほら、帰るぞ。」

 

「はい」

 

ギンガは土方の隣に立ち108部隊の隊舎へと帰っていった。

 

(子供か‥‥)

 

土方と一緒に帰る中、ギンガは先ほど銀時に振られた会話を思い出す。

 

(今度の検診の時、マリーさんに聞いてみようかな‥‥戦闘機人の私でも子供を産むことは出来るのかな?もし、出来たら‥‥)

 

ギンガはそう思いながら土方の方をチラッと見る。

 

「ん?どうした?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

ギンガは子供を産める産めないは、兎も角として、今は土方とこうして寄り添えることを優先した。

 

ちなみに銀時がヴィヴィオに誤解を解くに3日の時間を有したのも別の話だった。

 

 

 

 

・・・・続く

 




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的51 女心と秋の空

更新です。


 

 

~side108部隊隊舎~

 

「おい、ギンガ」

 

この日、108部隊隊舎にて部隊長のゲンヤがギンガを呼び出す。

 

「なんでしょうか?」

 

「すまねぇが、此奴を六課の豆狸はやての所に持って行ってくれねぇか?」

 

ゲンヤはギンガに大きめの茶封筒を手渡す。

 

「いいですけど、FAXかメールじゃ送れないモノなんですか?」

 

「重要な要件が書いてある書類なんでな、直接手渡しをしてもらえてぇ」

 

「わかりました」

 

こうしてギンガは機動六課へお使いに行く事になった。

準備が出来、六課へと向かう途中、隊舎の通路にてギンガは土方と出会った。

 

「ん?ギンガ、何処かに出掛けるのか?」

 

土方がギンガに声をかけた。

ギンガは管理局の制服姿であるが、肩にショルダーバッグを下げていたので、これから何処かに出掛けようとしているのが直ぐに分かった。

 

「はい、ちょっと機動六課にお使いに」

 

「付き合うか?」

 

土方が自分も一緒に行くかと尋ねると、

 

「大丈夫です。直ぐに終わる用件なので、お昼前には戻りますから」

 

「そうか」

 

ギンガは土方に大丈夫だと言って一礼し、108部隊の隊舎を後にし、機動六課へと向かった。

 

ギンガが機動六課にお使いへ向かってから時間が経ち‥‥

 

キンコーンカンコーン

 

隊舎にお昼を告げるチャイムが鳴る。

 

「うーん‥‥トシ、総悟、昼飯に行くぞ」

 

デスクワークしていた近藤が背伸びをした後、土方と沖田を昼食に誘う。

沖田は立ち上がったのだが、土方はデスクに座ったままだった。

 

「うぃーす‥‥ん?土方さん、どうしたんですかい?昼飯、行かないんですか?」

 

沖田は立ち上がらない土方に声をかける。

 

「いや、俺はもうちょっとやる事があるんで、昼飯はいい」

 

と、土方はパソコンの画面を見ながら近藤と沖田に今日は昼ご飯を食べないと言う。

 

「むっ?そうか?まぁ、あんまり無理をするなよ、トシ」

 

近藤は沖田と共に食堂へと向かった。

オフィスに食事で人が少なくなった後も土方はひたすらパソコンの画面を見ていたが、チラチラとギンガのデスクや時計を見て、集中しているとは言えなかった。

それから昼休憩が終わり、オフィスに人が戻って来たが、ギンガが戻って来る気配はない。

 

「ちっ」

 

どうにもギンガが気になり、仕事に集中できない土方は、

 

「すまん、ちょっと巡察に行ってくる。」

 

と、一言断りを入れて、オフィスを後にした。

 

そして、機動六課の隊舎の受付にてギンガが帰ったかの確認をすると、ギンガはまだ帰っていないと言う。

呼び出しますか?と聞かれ、土方は、

 

「いや、大丈夫だ。ただ、確認しに来ただけだからな」

 

そう言って隊舎から出て、隊舎の出入り口にて、ギンガを待った。

そして、ギンガが出てくると、彼女に声をかけた。

 

「よぉ、お使いにしては随分と長かったな」

 

タバコを吸う一人の人物がおり、その人は隊舎を出たギンガに声をかけた。

 

「と、トシさん!どうしたんですか?」

 

「ゲンヤのおやっさんに頼まれたんだよ。お前の帰りが遅いから向かいに行ってくれってな。帰ったら、おやっさんの説教ぐらいは覚悟しておけ」

 

「そうでしたか、すいません。ご迷惑おかけして‥‥」

 

ギンガは遅くなる連絡をゲンヤに入れるのを忘れて居た事を思いだし、わざわざ自分を迎えに来てくれた土方に頭を下げ謝る。

 

「別に構わねぇよ‥ほら、帰るぞ。」

 

「はい」

 

ギンガは土方の隣に立ち108部隊の隊舎へと帰っていった。

そして、隊舎に戻ったギンガは土方の言う通り、父親でもあり、108部隊の部隊長であるゲンヤから厳重注意を受けた。

その日の夜、父と娘との関係に戻ったギンガはゲンヤに、

 

「でも、お父さん。わざわざトシさんを迎えに寄こさなくてもちゃんと1人で帰れましたよ」

 

ギンガはゲンヤにわざわざ迎えを寄こす必要は無いと言う。しかし、その反面、土方と2人っきりの時間が出来て嬉しかったりもした。

すると、

 

「へぇ~アイツ、ギンガのところへ迎えに行ったのか」

 

ゲンヤはギンガの言葉を聞き、クックックッと笑みを零しながら言う。

 

「えっ?どういう事?」

 

「アイツ、お前が予定時間になっても戻らないから心配そうにお前のデスクや時計をチラチラ見ていてな、そんで急に立ち上がったと思ったら、『巡察に行ってきます』って言って1人で出ていっちまいやがったんだからな」

 

「トシさんが‥‥」

 

土方としてはまさかギンガがゲンヤに今日の事を尋ねるとは思ってもおらず、土方はゲンヤとギンガ双方に異なった言い分をしていた。

 

「アイツ、普段はお前にぶっきらぼうな態度をとっているが、何かとお前の事を思っている奴だよ」

 

「‥‥」

 

「なぁ、ギンガ」

 

「なに?」

 

「アイツなら、お前の事を受け入れてくれるんじゃねぇか?」

 

「‥‥」

 

「お前だって、アイツの事、何だかんだ言っても気に入っているんだろう?」

 

「‥‥」

 

「余計なことかもしれないが、俺から見てもアイツは良い奴だ。ちょっとぶっきらぼうで不器用な所があるが、アイツは真面目で馬鹿正直で‥‥ホント良い奴だよ‥‥アイツになら、お前を嫁に出しても良いと俺はそう思っている‥‥」

 

これまで、ギンガと土方‥男女が共にコンビを組んで仕事をしている為かギンガの彼氏は土方で、土方の彼女はギンガではないかと108部隊で噂にはなったが、いずれも本人達が否定し、噂はすぐに鎮静化している。

尚、ギンガは照れ隠しで否定していた。

 

「ちょっ、お父さん!!余計なことはしないで!!//////」

 

ギンガは声を上げ、顔を赤くして部屋に戻って行った。

 

部屋の戻ったギンガはベッドに飛び込むと枕に顔をうずめた。

ギンガの脳裏には土方の姿が浮かぶ。

ぶっきらぼうで、常に煙草の臭いを漂わせて、食事の時はマヨネーズばかりを食べて、それでいて仕事に関しては実直で‥‥あの人は、摘発の際、真っ先に先頭をきって切り込んでいく。

そんな彼の姿勢を見て、部隊の隊員達も自然と彼に信用を寄せている。

でも、ちょっと危ういところもある。

この前の摘発の時、土方は自分を庇って傷ついた。

にも関わらず、彼は最後まで離脱することなく、現場に居続け、摘発が終わり、隊舎に戻った後、医務室に運び込まれ、医務官に治療されながら、叱られていた。

そんな彼を見ていていつしか自分は彼を支えたいと思い始めていた。

その思いをいつ抱いたのかはギンガ自身にも分からない。

敢えて答えるならば、いつの間にか、だろうか。

気付けば視線は彼を追い、胸の中には彼への想いが満ちていった。

そして、少女が自分の中に芽生えた、甘く、淡く、切ない気持ちが恋だと気付いたのはつい最近の事だった。

 

「トシさん‥‥//////」

 

ギンガは土方への思いを抱きながら、その日も眠りについた。

 

それから数日後‥‥

 

「ふぅ~‥‥」

 

夕刻の茜の光が差し込む陸士108部隊のオフィスで、彼女の口から疲労を孕んだ息が漏れた。

今日の仕事を終えたギンガはオフィスチェアの上で、うーん、と背を伸ばし、身をしならせる。

デスク上で人工光を放つディスプレイの電源を落とし、ギンガは周囲を見渡した。

窓から差し込む光は既に陽光から月光に移りつつあり、同僚の姿はほとんど見当たらない。

もう残っているのは自分だけだろうか?

そう思った彼女の思慮は、だがすぐに裏切られた。

 

「あっ、トシさん」

 

ギンガの腰掛けた位置から数メートル先には集中した面持ちで机上のディスプレイを見つめ、キーを叩いている土方の姿があった。

ギンガの呟きを聞いたのか、彼は視線を上げた。

 

「おう、ギンガまだいたのか」

 

「あ、はい」

 

土方の言葉に、ギンガはやや口ごもりつつ答える。

 

「あ、あの……良かったら一緒に帰りませんか? その……たまには一緒に夕食でも……」

 

ギンガは土方を夕食へと誘った。

 

「わりぃ、まだ仕事が残ってんだ。先に帰っていいぞ、ギンガ」

 

咥え煙草のまま、目の前の画面しか見ぬ土方に、ギンガは何度か声を掛けようと口を開く。

 

「‥‥」

 

しかし、ギンガは何度か声を掛けようと口を開こうとするが、紡ごうとした声は出でる事無く。

 

「じゃあ‥‥お先に失礼します。お疲れ様です」

 

ギンガは蚊の鳴くような声でそう告げてオフィスを後にした。

 

「おう、お疲れ‥‥」

 

土方はギンガの方に視線をむけず、片手をあげて、ギンガを見送った。

 

「「‥‥」」

 

そんな二人の様子を近藤と沖田は物陰から見ていた。

ギンガは近藤と沖田の存在には気づかなかったが、土方は気づいていた。

 

「おい、いつまで其処で盗み見ている?」

 

土方が声をかけると物陰から近藤と沖田が出てきて、

 

「おい、トシ。ありゃねぇだろう?ギンガちゃん、どう見てもお前さんに気があるだろう!?恋する乙女だろう!?今時、ギンガちゃんみたいな純情な娘は絶滅危惧種だぞ!!」

 

「そうですぜ、土方さん。いらないなら俺が貰っちまいますぜ、そんで調教して、俺に従順な雌犬にしてあげまさぁ」

 

沖田がそう言うと土方は殺気の籠った目で沖田を睨む。

 

「総悟、テメェそんな事をしてみろ、ぶった切るぞ」

 

「おぉ~こわぁ~男の嫉妬は見苦しいですぜぇ、土方さん」

 

「ちげぇよ。俺達に居場所を与えてくれたゲンヤのおやっさんに迷惑をかけるなって言ってんだよ!!」

 

「だがな、トシ。ギンガちゃんの気持ちも察してやれ。それにお前さんもそろそろ身を固めても良い頃だろう?自分に素直になれ」

 

「‥‥俺には、人を好きになる資格なんてねぇよ近藤さん」

 

土方は哀愁が漂う空気で近藤に呟く。

 

「‥‥まさかと思うが、トシ。お前、まだミツバ殿の事を引きずっているのか?」

 

「‥‥」

 

土方は気まずそうに近藤と沖田から視線を逸らす。

そんな土方の態度に沖田は不機嫌‥と言うより、少し怒っている様子で、

 

「土方さん、姉上を言い訳に逃げんのはやめてくれませんか?正直、不愉快でさぁ。あの人はあんたに惚れてんのは、勘の良いアンタもわかってんでしょう?アンタもしっかりとあの人に向き合ってくだせぇ。少しでも姉上にすまねぇと思うなら‥‥姉上もきっとそれを望んでますぜぇ‥‥」

 

と、土方に言い寄る。

 

「‥‥さて、仕事も終わったし帰るか」

 

しかし、土方はそんな沖田の言葉なんぞ何処吹く風な様子で、オフィスを後にした。

 

「ちっ、気に入らねぇ‥‥」

 

オフィスから去って行く土方の後姿を見て、沖田は忌々しそうに呟く。

 

「まぁ、総悟。トシの事も少しは分かってやれ」

 

「何がですかい?近藤さん?あんな卑怯で腰抜けな奴の何処を理解しろと!?」

 

「そう言うな、ミツバ殿の事で、トシはお前に負い目を感じているのだ‥‥自分だけ好きな女子と一緒になってもいいのかとな‥‥」

 

「フン、格好つけやがって、あの人のそんな所が嫌いなんでさぁ‥‥俺は‥‥」

 

「しかし、珍しいな。お前がトシに肩入れするなんて」

 

「別にヤロウに肩入れするつもりはありませんぜぇ、近藤さん。ただ‥あの人は姉上に似ている‥素直で真面目で面倒見が良くて、誰にもでも優しい所が‥だからこそ、あの人には姉上の分まで幸せになって欲しいだけでさぁ~」

 

「そうか‥‥」

 

近藤と沖田は土方が去って行った通路をジッと見つめていた。

 

そして通路すぐに

 

「クッ!」

 

殺気が飛んできて半戦闘体勢をとるが

 

「何だ、お前か?」

 

うっすら光る暗闇から出てきたのは

 

「また相手して欲しいのか?」

 

「そうしてもらおうと思ったけどね」

 

雲雀だ。夜遅くまでこんなところで何してるのかはわからないが、こいつが人に会う時はだいたい同じ理由だな。

 

「ソレならこんな時間じゃなくて、明日にでも‥‥「いや」」

 

「?」

 

土方が言う前に雲雀の方から、断って来た。

 

「今の君はつまらない。」

 

「あ?」

 

(コイツ何言ってんだ?)

 

雲雀の言葉の意味が分からず、顔をしかめる土方。

 

「何に迷っているか知らないけど‥‥」

 

少し少し歩きすれ違いざまに

 

「僕に咬み殺される前にその迷いは断ち切っといてね。腑抜けた奴を咬み殺しても、殺り甲斐がないから」

 

「なっ!?」

 

雲雀は、それ以外何も言わずに歩いていった。

 

「ったく、なんだ?」

 

土方が108部隊の隊舎のロビーへと出ると今度は

 

「よぉ、お疲れさん」

 

「‥‥あっ、どうも」

 

土方をまるで待っていたかのようにゲンヤが土方に声をかけて来た。

そんなゲンヤに土方は一礼する。

 

「土方、お前さん今日の夜は暇か?」

 

「ん?あぁ、まぁ‥‥」

 

「だったら、ちょっと付き合え」

 

ゲンヤは片手でクイッと手を動かして、飲みに行こうと言う仕草をとった。

 

「う、うっす」

 

別に夜の予定は何もないし、上司からの誘いなので、土方は、ゲンヤの誘いを受けた。それに今日は昼飯抜きだったので、早く腹に何かを入れたかった。

 

そして、ゲンヤの誘いでやって来た居酒屋。

ゲンヤが酒とおつまみを注文し、おしぼりで手をふく。

土方もゲンヤ同様、おしぼりで手をふく。

そして、まず酒が2人の下に届いた。

 

「まっ、今日もお疲れさん」

 

「どうも‥‥」

 

ゲンヤは土方のグラスに酒を注ぐ。

 

「おやっさんも‥‥」

 

「おっ、悪いな」

 

土方もゲンヤのグラスに酒を注ぐ。

 

「それじゃあ、乾杯」

 

2人はグラスをぶつけ合い、今日の仕事を互いに労う。

ゲンヤも土方もグラスに注がれた酒を一気に煽る。

やがて、注文したつまみが来ると、

 

「すみません。マヨネーズもお願いします」

 

と、土方は店員にマヨネーズを頼む。

そして、マヨネーズが来ると、焼き鳥の上からマヨネーズをこれでもかって言う量をかけて食べる。

 

「‥‥」

 

その様子を見たゲンヤは顔を引き攣らせるが、早速今日、土方を呑みに誘った本題に入る。

 

「なぁ、土方」

 

「なんだ?」

 

「お前さん、今、好きな女とか付き合っている女はいるか?」

 

「またその話かよ?」

 

「酒の席ですまねぇがこちとら真剣に聞いているんだ。答えろ‥‥」

 

ゲンヤの目はまさに猛禽類を思わせる鋭い目であった。

 

「いねぇよ‥それに俺には女を好きになる資格なんざ、ねぇしな‥‥」

 

そう言って、土方は二本目のマヨネーズをかけた焼き鳥を食べ始める。

 

「‥‥だがな、お前さんはもう気づいているんだろう?ギンガの事を」

 

「‥‥」

 

「親父の俺が言うのもなんだが、アイツは良い娘に育った‥‥男手一つで育ったとも思えねぇ程だ‥‥それこそ、何処の家に嫁に出しても恥ずかしくないぐらいの自慢の娘にな‥‥」

 

ゲンヤはギンガの成長を懐かしむかのように目を細める。

 

「そんな大事な娘をお前さんになら、本気で嫁に出しも良いと思っている。お前さんなら、きっとギンガを幸せにしてくれると俺はそう信じている。なぁ、この話、受けてくれねえぇか?」

 

「おやっさん、ギンガはまだ20歳(はたち)にもなってねぇんだぜ、この先、俺よりも良い男が現れるだろうさ‥‥それにあの容姿と器量だ。貰い手は引く手数多じゃねぇのか?」

 

「‥確かに、これまで色んな部署から見合い話が来た。どれもこれも将来が約束されたようなエリートばかりの男共からな‥‥だが、全部ギンガ本人が蹴っちまった」

 

「蹴った?」

 

土方は玉の輿かもしれない見合い話をギンガ本人が蹴った事に驚いた。

 

「ああ、どいつもこいつも皆、ギンガの顔と体目当てのろくでもねぇ奴だったからな、アイツはそう言うのには敏感な奴だ。まぁ、俺としてもそんな野郎にギンガを渡したくはなかったから丁度よかったんだがな‥‥そんなギンガが初めて惚れた男がお前だ‥土方‥だから‥‥」

 

「‥‥おやっさん‥少し、昔話を聞いちゃくれねぇか?」

 

土方はゲンヤの言葉を遮って、話し始めた。

 

「此奴は、俺の知り合いのロクデナシの男の話なんだがな‥‥」

 

土方はグイッとグラスの中に残っていた酒を一気に煽った後、かつての自分とミツバの話をゲンヤにした。

勿論自分とミツバの名前を隠して‥‥

しかし、ゲンヤは土方の言うロクデナシの男が土方を指している事は直ぐに察しがついた。

 

「‥それで、ソイツは、仕事にかまけて、その惚れた女の婚約者をぶった切って、挙句の果てその女の死に目にも立ち会えなかったどうしようもねぇロクデナシだった‥‥だからよ、そんなロクデナシが人を好きになる資格なんざねぇんだよ」

 

最後はもはや、正体を隠す事無く話を終える土方。

 

「‥‥」

 

「さあ、この話はこれで終いだ。折角の酒が不味くなるからな」

 

そう言って土方は空になっていたゲンヤのグラスに酒を注いだ。

 

 

「ひ~じ~か~た~ウチのギンガじゃ~不満かぁ~」

 

「ああもう、しっかりしろ!!飲み過だ!!おやっさん!!」

 

居酒屋を出た時にはゲンヤはベロンベロンに酔っており、土方はゲンヤに肩を貸しながら、ナカジマ家を目指した。

そのナカジマ家では、ギンガが自室のベッドの上に物憂げな顔をしていた。

 

「はぁ~‥‥やっぱり今日も駄目だったかぁ~‥‥トシさんったら、私の気持ちも知らないで‥‥」

 

そして、誰にでもなく、独り言を呟く。

 

「今度は休日に買い物でも誘ってみようかな‥‥あっ、でもいきなり2人でなんて‥‥それに、私の正体を知ったら‥‥」

 

顎先に指を当て、ギンガは歩みながら思慮を巡らせた。

どうしたら彼と一緒の時間を作れるか、どうしたら彼に自分の事を意識させられるか、どうしたらこの想いを実らせられるか、そればかりを思っていた。

しかし、それと同時に浮かんでくるのは自らの出生にまつわる秘密‥‥。

この秘密を土方が知った時、彼は自分を受け入れてくれるだろうか?

そんな思いと不安が交差している中、

 

ピンポーン

 

と、来客を告げるインターホンが鳴る。

 

「はーい」

 

ギンガは急いで部屋から出ると、

 

「ギンガか?」

 

「と、トシさん!?」

 

思いもよらない人物の来客に思わず声が裏返るギンガ。

 

「すまねぇギンガ、開けてくれ!!ゲンヤのおやっさんが酔い潰れちまって」

 

「なにぉ~、ひ~じ~か~た~、俺は酔ってなんかいねぇぞ~」

 

直ぐ近くから酔った父の声がする。

 

「い、今すぐに開けますから」

 

ギンガは玄関のドアを開けて、土方を招き入れ入る。

 

「ほら、おやっさん、しっかり歩け!!」

 

「おぉ~マイホーム~そして、愛しの愛娘ギンガちゃぁぁぁん~」

 

「‥‥完全に酔っていますね」

 

ギンガも酔った父の姿にドン引きしている。

 

「ギンガちゃぁぁぁん~、ほら、お帰りのチューは?チュ~」

 

ゲンヤがギンガにキスを迫ると、

 

「フン!!」

 

ギンガはゲンヤの頭に拳骨をくらわした。

 

「ちょっ、おまっ!!」

 

ギンガの拳骨をくらったゲンヤは1発でノックアウトされた。

 

「すみません、トシさんわざわざ」

 

「い、いや‥‥」

 

実の父親に拳骨をして沈めたギンガにちょっと引く土方。

 

「あっ、ロビーで待っていて下さい。お礼にお茶でも淹れますから」

 

「いや、俺はこれで‥‥」

 

「トシさんも飲んでいるのでしょう?だったら、少し休んで行って下さい」

 

ギンガはノックアウトしたゲンヤに肩を貸して、彼を寝室へと運んで行く。

 

「‥‥」

 

なんか妙な事になりつつもギンガの言っている事も最もであり、ナカジマ家のロビーで休ませてもらう事にした土方。

 

「お待たせしました。どうぞ」

 

「おう」

 

土方はギンガから差し出されたお茶を飲む。

 

「どうも、父がご迷惑をお掛けしました」

 

「いや、こういうのは慣れている」

 

土方は淡々と答え、茶をすする。

江戸に居た頃は上司の松平片栗虎の接待に近藤と共によくつき合わされ、酔った片栗虎や近藤の面倒をさせられていた彼にとって酔っ払いの相手は慣れたモノだった。

 

「それじゃあ、ごちそうさん」

 

茶を飲み終え、席を立つ土方。

 

「あっ、じゃあ玄関までお見送りします」

 

ギンガも席を立ち、土方に近寄る。

 

「わざわざそこまでしなくても大丈夫だ」

 

土方は玄関に向かって歩くが、やはり彼も飲んでおり、ゲンヤを届けた事への安堵感から酔いが回り、足がもつれた。

 

「おっ?」

 

「えっ?」

 

バタン‥‥チュッ‥‥

 

「「んっ?」」

 

土方は足がもつれ、そのまま倒れると、其処に運悪く?ギンガが居り、ギンガを押し倒す形となり、しかも倒れた土方とギンガの唇が重なり合った。

 

「す、すまねぇ!!//////」

 

事故とはいえ、ギンガとキスしてしまった事実に土方は一気に酔いが醒めた。

土方はギンガからバッと離れ、

 

「じゃ、じゃあな、ギンガ//////」

 

慌ててナカジマ家を後にした。

 

「‥‥//////」

 

ギンガはその場で放心しつつ自らの唇を指で触れる。

 

(キス‥‥キスしちゃった‥‥トシさんと‥‥//////)

 

ギンガのファーストキスは酒と煙草の味がした。




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的52 恋を体験して少女は女性となる

すいません、少し遅れました。


 

 

この日、六課にて早朝訓練が終わった後、スバルがなのはに何かを伝えた後、他のFW陣と合流した。

 

「どうしたの?なのはさんと何か話していたみたいだけど?」

 

ティアナが合流してきたスバルに尋ねると、

 

「うん‥‥今日、あの日‥だから、この後、マリーさんのところに行かなくちゃならなくて‥‥」

 

「そう‥それじゃあ今日1日はずっと外ね」

 

「うん」

 

スバルは気まずそうにティアナに今日1日、自分は休むことを伝える。

 

「あの日って事は、今日は夕食まで、食事は抜きなのね、アンタ」

 

スバルの出生の秘密を知っているティアナはスバルに今日の朝食と昼食が抜きの事実に対して同情するかの様に言う。

 

「そうなんだよね~‥‥あぁ~めんどいぃ~」

 

スバルは今日の夕飯まで食事抜きという現実に対して辛そうに言う。

そして、ティアナが言った通り、朝食の席にスバルの姿はなかった。

 

「あれ?スバルさんは?」

 

スバルの姿が見つからないことに気付いたエリオが辺りを見回しながら、スバルを探す。

 

「そういえば、見えないネ。どうした?ウ○コがなかなか出なくて、トイレに立て籠もっているアルカ?」

 

神楽もスバルがいないことに気づき、スバルがいない予測を言うが、内容が女の子らしくなく、しかも朝食の席で言う内容ではない。

案の定、神楽の傍にいた人は神楽にドン引きしている。

 

「か、神楽ちゃん、ご飯食べている時に『ウ○コ』はないよ」

 

『うんうん』

 

新八の指摘に他の皆も首を縦に振った。

その後、食堂を出てロビーに差し掛かると、私服姿のスバルが居た。

 

「あれ?スバルさん」

 

「私服ってことはこれからどこかに行くのか?」

 

ツナと山本がスバルに声をかける。

 

「うん。ちょっと健康診断にね‥‥」

 

「健康診断?」

 

「へぇ~スバルさんって意外にも健康とかに気を付けているんですね」

 

「『意外』にもって随分な言いかただなぁ~私だって結構、健康には気を付けているんだよ」

 

「「えええぇぇぇぇー!!」」

 

スバルの発言に驚くツナ達。

 

「な、なに?その反応?」

 

ツナ達の反応があまりにもオーバーリアクションの為かスバルはジト目でツナ達を見る。

 

「だって普段のスバルさんを見ていると‥‥ねぇ‥‥」

 

「まぁ、食べている印象が強ぇからな」

 

女の子なのに通常の男性よりも沢山食べるスバルから「健康」というキーワードはあまりにもかけ離れていた。

 

「みんな、ひどいよぉ~‥‥ま、まぁ、そんなわけだから、今日は私1日、留守にするね、それじゃあ」

 

そう言ってスバルは隊舎から出て行き、検査が行われるある場所へと向かった。

 

一方、ミッドチルダの西部、エルセアにあるナカジマ家の方でも、

 

「はい、お父さん」

 

「おう」

 

ギンガがゲンヤに朝食を用意していたが、ギンガの前には朝食はなかった。

 

「ん?どうした?ギンガ。ダイエットか?」

 

ゲンヤがギンガの自分の朝食を用意していないことに対して、ギンガがダイエットをしているのかと尋ねると、

 

「ち、違います!!今日はあの日、なんです!!」

 

と、声をあげてダイエットではないことをゲンヤに伝える。

 

「ああ、そうか‥‥」

 

ゲンヤもギンガの言葉の意味を理解して納得した様子。

 

「それじゃあ、お前さん今日は休みか?」

 

「はい。ずいぶん前に休暇届を出したはずですけど?」

 

自分の娘(部下)のシフトを把握していなかったのかと、ゲンヤをジト目で見るギンガ。

 

「あっ、わりぃ、わりぃ。それじゃあ、土方にも今日はお前さんが休みだとちゃんと伝えておくよ」

 

「なんでそこにトシさんが出るんですか?」

 

「そりゃおまえ、アイツがお前の事を心配するからだろうが」

 

「‥‥本当に心配してくれるでしょうか?」

 

「するさ、アイツはな‥‥何せ、この前、六課にお使いに行った時、時間になっても戻らないお前を心配して、嘘までついてお前を迎えに行ったぐらいだからな」

 

「‥‥」

 

その後、ゲンヤは108部隊隊舎へと出勤し、ギンガは隊舎ではなく、ある場所へと向かった。

 

 

「おはようさん」

 

「おはようございます」

 

ゲンヤは自らが部隊長を務める108部隊の隊舎に着くと、オフィスには近藤達、真選組の面々が先に来ていた。

 

「あれ?ギンガは今日、休みか?」

 

土方が、ギンガが来ていないことに気づき、ゲンヤに尋ねる。

 

「おう、今日、ギンガは休みだ」

 

「そう‥か‥‥」

 

「ん?なんだ?ギンガが心配か?」

 

ゲンヤがニヤニヤした顔で土方に尋ねる。

 

「ま、まぁ‥‥一応、な‥‥」

 

(この前、事故とはいえあんなことをしちまったからな‥‥気まずさもあるんで、まぁよかったと言えばよかったんだが‥‥)

 

土方は気まずそうというか明らかに照れ隠しをしている様に言う。

 

「心配すんな、別に病気とかじゃねぇ、ちょっとした健康診断に行ったんだよ」

 

「べ、別に俺は心配なんて‥‥」

 

「ゲンヤさん、仕方ありませんぜ、土方さんはツンデレな性格なんで」

 

沖田がやれやれと言う感じでゲンヤに言うと、

 

「誰がツンデレだ!?」

 

と、土方は即行で自分がツンデレだということを否定する。

そんな沖田と土方の様子をゲンヤは苦笑しながら見ていた。

 

 

その頃、クラナガンにある管理局の研究施設の一つでもある先端技術医療センターのロータリで、ギンガはスバルの姿を発見し、声をかけた。

 

「あっ、スバル!!」

 

「ギン姉!!」

 

ギンガに気づいたスバルは手を振ってギンガに応える。

そして、姉妹仲良く施設の中に入ると、

 

「私、どうも、この検査の日って嫌なんだよねぇ~」

 

と、スバルが愚痴る。

 

「どうして?」

 

「だって、夜までご飯食べられないんだよ!!皆が美味しそうに朝ごはんや昼ご飯を食べている中、私達だけ、ご飯抜きなんだよ!!それってちょっと不公平じゃない!?」

 

「ま、まぁ‥確かに‥‥」

 

ギンガもスバルが愚痴る気持ちが何となくだが、分かる気がした。

やがて、ナカジマ姉妹がとある部屋に入ると、そこには眼鏡をかけて白衣を来た1人の女性が待っていた。

 

「ギンガ、スバル、元気だった?」

 

「あっ、マリーさん。お久しぶりです」

 

「はい、元気でした」

 

彼女の名前は、マリエル・アテンザ。(愛称はマリー)

本局第四技術部主任・精密技術官であり、戦闘機人であるギンガとスバルのメンテナンスも手掛けている人物でもあった。

ギンガとスバルが言っていた「あの日」とは2人の健康診断の日だったのだ。

ナカジマ姉妹とマリーとの関係は深く、2人の母、クイントとマリーが知り合いでもあり、クイントが保護したギンガとスバルの事を調べ、2人の出生にクイントのDNAデータが使用されていることを調べたのも彼女だった。

 

「それじゃあ、いつものようにね、私は検査機器の準備をしておくから」

 

「「はい」」

 

マリーは手慣れた手つきで検査機器の準備を行う。

尚その時、ナカジマ姉妹はというと更衣室にて身に着けていた服を脱いでいた。

そんな中、スバルはギンガを何気なく見ると、ギンガは黒い大人っぽい下着を身に着けていた。

 

「‥‥」

 

大人っぽい下着を身に着けていたギンガにスバルは呆然とした。

この前までそんな下着なんて身に着けていたかったギンガが突然、大人っぽい下着を身に着けていたのだから、妹としては姉の身に何か心境の変化があったのではと思うのに十分な出来事であった。

 

「ん?どしたの?スバル」

 

スバルの視線に気づいたギンガはスバルに声をかける。

 

「あっ、いや‥その‥‥随分、大人っぽい下着だね、ギン姉」

 

「えっ?そう?」

 

「う、うん‥ねぇ、ギン姉」

 

「なに?」

 

「もしかして好きな人でもできたの?」

 

「えっ?////」

 

スバルのこの一言にドキッとするギンガ。

 

「その反応‥やっぱり、好きな人が出来たんだね!?ねぇねぇ、どんな人?かっこいい?」

 

姉の恋愛に興味津々なスバルはぐいぐい食い込んでくる。

 

「そ、それは‥‥」

 

ギンガが返答に困っていると、

 

「準備できたわよ」

 

マリーから準備が出来たと知らせが入る。

 

「そ、それじゃあ、スバル」

 

「あっ‥‥」

 

ギンガは身に着けていた残りの衣類を脱ぎ、ロッカーにしまうとそそくさと行ってしまう。

 

「むぅ~後で絶対に聞き出してやるんだから」

 

スバルは検査が終わったら、ギンガが好きになった人を聞き出してやると意気込んで、自らも残った衣類を脱ぎ、ロッカーに入れるとギンガの後を急いで追った。

 

「それじゃあ、いつものようにリラックスしてね」

 

「「はい」」

 

マリーの指示通り、一糸纏わぬ姿のナカジマ姉妹は検査器の台の上に横になる。

やがて、マリーが機器を作動させると、ナカジマ姉妹を検査の機械が覆うように被さり、ナカジマ姉妹の健康診断が始まった。

検査は長い時間がかかり、終わったのは夕方だった。

 

「おつかれさま、2人とも。検査結果はすぐに出るから、服を着たら取りに来てね」

 

「「はい」」

 

検査機器の台から降りたナカジマ姉妹にマリーがねぎらいの言葉と共に検査結果について伝える。

 

「あっ、マリーさん」

 

片づけを行おうとしているマリーにギンガは声をかける。

 

「なにかしら?ギンガ」

 

「その‥後で、個人的に聞きたいことがあるんですが‥‥」

 

「いいわよ。結果を渡した後、聞いてあげる」

 

「ありがとうございます」

 

そして、更衣室にて着替えをしている中、スバルは思い出したかのように、

 

「それで、ギン姉、誰が好きなの?」

 

と、検査前に聞いてきたことをまたギンガに聞いてきた。

 

「また?もう、誰でもいいでしょう?」

 

「ってことはやっぱりいるんだね!?ねぇ教えてよぉ~」

 

「もう、しつこいわよ、スバル。ほら、さっさと着替えないと風邪ひくわよ」

 

「ちぇ~」

 

ギンガにこれ以上、尋ねてもギンガは多分答えないだろうと思ったスバルは面白くないと言った様子で服を着た。

 

「はい、コレ、今回の検査の結果ね、2人とも特に異常はなかったわ」

 

マリーは2人に今回の診断結果が書かれた紙を渡す。

 

「あっ、ギン姉!!見て!!見て!!私、この前よりも胸のサイズ大きくなったよ!!」

 

スバルはギンガに自分のバストサイズが上がったことを見せびらかす。

 

「そ、そう‥よかったわね‥スバル」

 

一方、ギンガはそんなスバルに対して顔を引き攣らせていた。

なぜならば、ギンガのバストサイズは前回の検査の時と同じ横ばいだったからだ。

 

「くっ‥‥」

 

ギンガは今回の結果を見て、人知れず悔しがった。

 

「それで、ギンガ、何か聞きたいことがあるって言っていたけど‥‥」

 

「あっ、その‥‥あまり、他の人には聞かれたくないので‥‥」

 

「分かったわ。それじゃあコッチの部屋で‥‥」

 

「はい。それじゃあ、スバル。貴女は先に帰っても良いから」

 

「あっ、うん‥‥」

 

マリーと共に歩いてゆくギンガを寂しそうに見つめるスバルであった。

 

「それで、何かしら?聞きたいことって」

 

とある個室に入ると、マリーはギンガのために椅子を用意し、座らせると、自らもギンガと対面する様に椅子へ腰かける。

 

「その‥‥マリーさん‥あの‥‥私達、戦闘機人も、その‥‥妊娠‥することは出来ますか?」

 

「えっ?」

 

ギンガの質問に一瞬唖然とするマリー。

 

「えっと‥‥もしかして、ギンガ‥その‥‥好きな人が出来たの?」

 

「‥‥//////」

 

マリーの質問にギンガは顔を赤くし俯く。

彼女の脳裏に蘇るのは先日、事故とはいえ、土方とキスをした事である。

ギンガの様子を見て、もう一目瞭然と思ったマリーは結論をギンガに言う。

 

「そうね‥今までの検査結果から理論上、貴女達、戦闘機人も妊娠できる可能性は十分あるわ」

 

「本当ですか!?」

 

「ええ、ただ、あくまでも理論上よ」

 

「理論上‥ですか‥‥?」

 

「ごめんなさい、何分前例が無いのよ‥管理局の歴史史上、戦闘機人の妊娠、出産記録が‥‥」

 

「‥‥」

 

マリーの前例がないと言う事実にギンガの表情が少し曇る。

 

「私が把握している戦闘機人は貴女達姉妹とクイントさんがかつて追っていた戦闘機人の数人のみ‥‥しかも相手の戦闘機人はただ、戦闘機人という事だけで詳しい情報が一切無いの‥‥」

 

「そう‥ですか‥‥」

 

「本当にごめんなさい」

 

「でも、理論上でも、私達は子を身ごもり、産むことは出来るんですよね?」

 

「え、ええ」

 

「では、今はその答えが聞けただけで満足です。ありがとうございました。それじゃあ、また‥‥」

 

ギンガはそう言って立ち上がった。

 

そして、ロビーに出ると、

 

「ギン姉」

 

「スバル‥待っていたの?」

 

「うん」

 

先に帰ったと思ったスバルがロビーでギンガを待っていた。

 

クラナガンが夕暮れ深まるなか、

 

「はぁ~」

 

「どうしたの?スバル。ため息何てついて」

 

ナカジマ姉妹は、2人仲良くクラナガンの繁華街を歩いていた。

 

「私にも恋の季節が訪れないかな~」

 

「またその話?いい加減しつこいよ」

 

「だって~あのティアも恋する乙女になっているし‥‥」

 

スバルは自分の相棒の赤面した表情を頭に浮かべながらギンガと話している。

 

「ティアナも?」

 

「ティアだけじゃなく隊長陣全員もだよ」

 

「えっ!?フェイトさんも!?」

 

自分の憧れの人が恋していたとは‥‥

 

「うん」

 

「えっと‥それってこの前のあの茶色い髪のえっと‥‥」

 

ギンガの脳裏には以前、ショッピングモールで出会った優しそうではあったがちょっと頼りなそうなあの時の少年の姿がチラついた。

 

「ツナだよ。」

 

「ああ、そう。ツナ君‥とても優しそうな感じだったわね」

 

「うん、いつもみんなの事を気にしているし、ヴィヴィオの面倒みもいいし、それにとても強いしね」

 

「へぇ、でもフェイトさんみたいな美人ならそこまで悩まなくても」

 

「そうでもないよ、フェイトさん結構苦労しているみたいだし‥‥」

 

フェイトが色々と振り向いてもらおうと努力しているのだがツナがものすごく鈍感な為に一向に平行線なのだ。

 

「その点じゃ、1番進んでいるのはティアかな?もうほぼ付き合っているみたいなもんだし」

 

六課のメンバーから見たら確かにティアナと獄寺は素直になれない不器用なカップルにしか見えない。

 

「へぇ、何かいいな」

 

獄寺とティアナの現状をそこまで詳しく知らないギンガはティアナがドラマや少女漫画の様な恋愛をしているのだと思い、ティアナを羨んだ。

 

「で、ギン姉の好きな人ってどんな人なの?」

 

スバルはさりげなく聞いたつもりではあるが、

 

「それは言わないわよ」

 

「えぇ、いいじゃん~」

 

ギンガは引っかからなかった。

その後、小腹がすいたナカジマ姉妹は屋台で売っていたチョコレート菓子を仲良く食べ、ギンガはスバルに六課での出来事を聞き、久しぶりの姉妹間の時間を楽しんだ。

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的53 それぞれの領域

更新です。


~side山本&銀時~

 

珍しい組み合わせであるが、リボーンの頼みで銀時は山本を見てほしいと頼まれて断ろうと思っていたが、ちょっと手合わせをしてみたら、山本は中々見所があり、ある程度の基礎を終えた現在、2人はガチ模擬戦をしている。

 

「中々やるな!新八にも見習って欲しいぜ!」

 

銀時は山本の相手をして、もしかしたら、新八よりも強いかもしれないと思う。

 

「どもっス。」

 

山本が銀時に一言礼を言った後、ここから攻める

 

「時雨蒼燕流攻式五の型五月雨」

 

最初掴んでいた手から一旦刀を離してもう一方の刀で相手を攻撃すると言う時間差を入れた変幻自在の太刀筋。

 

(!?)

 

それでも人を超えた反射神経と今までの経験からなる直感力のある銀時は山本のこの技に対して、洞爺湖を使いガードする。

 

だが、

 

ガァキィン!

 

「な!?」

 

手の動きがおかしい‥‥自分の反応に体がついてこない。

 

「今だ!時雨蒼燕流攻式八の型」

 

さらにそこから篠突く雨で勝ちを取ろうとするが、

山本に突如、悪寒が襲う。

そして一瞬の内に勝負が決まっていた。

当の本人も山本も気づかなかった。

山本は押し倒されて銀時が洞爺湖で山本を制していた。

 

「あ、わりぃ大丈夫か?」

 

「いえ‥‥」

 

銀時が山本に手を差し伸べ山本を立たせる。

 

「はは、参りました。流石は本物の侍‥強いっすね」

 

「お前もな、最後は本気でやりに行っちまった。」

 

 

~side山本~

 

1人さっきの反省を兼ねて素振りをしていた。

 

(さっきのあの瞬間‥‥)

 

銀時にとどめをしようとして逆に銀時にやり返されたあの瞬間‥‥

 

「完全にビビっちまった。」

 

久しぶりなのか、実戦ではない為かよくわからないがどんな理由でも一瞬のスキを作ってしまった。

 

怯えるという感情は決して悪い事ではない。むしろ危機回避本能として必要不可欠な感情だ。

問題は怯えてスキを作ってしまった事、実戦ならこの瞬間に致命傷または死んでるだろう。

素振りを止め、考え込む山本。

そんな山本の様子を見ていたリボーン。

そこに来た銀時は、

 

「よぉ」

 

リボーンに声をかける。

 

「銀時‥山本の相手してもらって悪ぃな」

 

「別にいいぜ」

 

木陰からひっそりと見ていた銀時とリボーン。

 

「山本が気になんのか?」

 

「ん?」

 

「あいつは剣士じゃない俺から見ても剣士としての才能はすげぇあると思うぞ。それに‥‥」

 

「そんなんじゃねぇよ、ただ、似てんだよ」

 

「似ている?お前の友達にか?」

 

「いや、あのバカにな‥‥」

 

銀時の脳裏にはいつも高笑いしている土佐弁にモジャモジャヘアーの戦友(バカ)の姿がよぎった。

 

 

視点は山本に戻る。

 

 

「ふぅ~」

 

一息ついている時に、

 

「よぅ精が出るな」

 

水筒が飛んできてそれを受け取り飛んできた方向には銀時が立っていた。

 

「あざっす。」

 

山本は水筒の水を飲みながら

 

「少しいいか?」

 

銀時に尋ねられて

 

「ん?いいスッよ。」

 

2人は一旦座り

 

「お前は何で剣を握る?」

 

「何ッすか?突然、...そんなのダチの為に決まっているじゃないですか」

時雨金時の柄を握りしめて

 

「ツナは俺達の為にずっと頑張っている、怖くても、痛くても俺達の為に無理してるからさ、だから俺はあいつの力になりたいんスよ。」

 

「.....それがテメェ自身を苦しめるかもしれねぇのにか?」

 

「確かに辛い時もあったし、負けたりもしました。でもあいつがやる限り俺は「剣士の命を失ったとしてもか?」」

 

「っ!?」

 

銀時の声がいつもと違う。いつもの気だるそうな声とは似ても似つかない。

まるで闇の底から死を誘うかのようなドスのきいた声だった。

ヴィヴィオが見たら、涙目になりそうな雰囲気である。

 

「お前に聞く‥もし、さっきまで死闘したヤツが目の前で死にそうになった。そこで第三勢力が介入、お前ならどうする?」

 

銀時は手で二を表して

 

「1つ、見捨てて逃げる。2つ、敵と一緒に心中する。さぁ、お前ならどうする。」

 

山本に質問する銀時の顔つきも戦っている時のように普段の銀時からは考えられないほどの真剣さが伝わってくる。その為か希薄がとてつもない。普通ならビビってしまうだろう。

だが、山本は‥‥

 

「んじゃ、3のそいつを助けて自分も助かるかな」

 

銀時の質問の回答に無い、第三の答えをいつもと変わらない表情で答えた。

 

「多分1を選んでも2を選んでも俺は死ぬと思う。これぐらいで見捨てたら、もうそいつは今までの俺じゃねぇ、だから」

 

「んな甘い考えで行けるとでも思っているのか?」

 

「だって、どんな道でも死んじまうなら、生きてあいつらといたいじゃないっすか」

 

山本の笑顔は変わらず飄々と答える。

 

「.....昔、お前と同じ行動をした奴が俺の知り合いにいた。」

 

「えっ?」

 

銀時が俯きながら話し始めた。

 

「そいつは敵の負傷兵を見捨てられないっつてそいつらごと戦場から離れようとした時に敵の剣喰らっちまって、剣士として大事な利き腕を失ったんだ。」

 

自分の過去を自ら話そうとしない銀時が山本に話をしている、これだけでも何かを伝えたいという事がわかる。

 

「それでもお前はその道を行くのか?もしそれで、剣士として生きていけなくなってもいいってのか?」

 

「だってさ、俺がそうしてぇから‥‥俺が決めた生き様(ルール)を俺自身が破っちまったら、その時点で、もう俺は死んだも同然ッすから‥‥」

 

「っ!?」

 

「だから、自分の心に偽りながら剣を振るってもなんの意味もないだから俺はずっとこのままで行くつもりッス例え剣が握られなくても俺は満足しねぇんすよ」

 

山本にとっては重い選択だろう、山本は野球もやっている昔ある時腕を故障して半分自暴自棄となり自殺しようとしたぐらいだ。でも今の山本は自暴自棄に何てなってない。相も変わらず真っ直ぐ前を見ている。そんな瞳をした男にこれ以上言うのは野暮である。

 

「そうかよ、ならもうなんも言わねぇ、だが手は出させてもらうぜ」

 

銀時が立ち上がり山本に洞爺湖を向け、

 

「てめぇの考えがどこまで通じるか、俺に見してくれ」

 

山本もすぐに立ち上がり、

 

「お願いします!!」

 

2人は対峙し、

 

「「はぁぁぁ!!」」

 

互いに剣を交えた。

 

その様子を影から見守っていたリボーンは、

 

「ここからは剣士の領域だな。」

 

「リボーン‥‥」

 

山本を探していたツナは何かをジッと見つめているリボーンに声をかける。

 

「どうした?ツナ」

 

「山本は?」

 

そう聞くとリボーンは無言で親指を向けてその方向では山本と銀時が激しくやりあっていた。

 

「今はあいつらしか入れない世界になっているんだ。くれぐれも邪魔はすんなよ」

 

「え?」

ツナも少し見て

 

「わかった。」

あんな顔をした山本は久しぶりに見た気がした。

 

これ以上自分達が介入する余地が無いと判断して2人は先に隊舎に戻って行った。

 

彼等の戦いは夕暮れすぎて月が登り始めた頃に終わった。

2人はその場に大の字で倒れ、息も荒く呼吸を整えていた。

やがて、ある程度会話が出来るくらい回復した山本が、

 

「惜しいじゃねぇか?」

 

「はは、何処がっすか?」

 

山本は汗だくで地面に大の字となり寝転んで銀時を見上げている。

 

「最後の方はマジで一旦すけど、まだまだ遠いっすね」

 

「年季の差だな。若い連中にそう易々と追いつかれるのもだめだろ。」

 

「ハハ」

 

「はぁ、はぁ、銀さん」

 

「なんだ?」

 

「その銀さんが言っていた昔の友人は‥‥その‥死んでしまったんですか?」

 

山本は銀時が言っていた剣士としての道を断たれてしまった友人について尋ねた。

 

「いや、剣士としての道は絶たれたが、ソイツは今でもしぶとく生きている」

 

「どんな人なんですか?」

 

「ん?アイツはな‥‥一言で言うと詐欺師だな。」

 

「詐欺師?」

 

「あぁ、バカのくせに人を誑し込む才能があってな、それに金にがめつかった。」

 

今の所、昔の友人の悪口をしか言ってない銀時。

 

「はは、なんッすかそれ?」

 

「でもな、あいつのおかげで俺達は戦えたんだ。あいつの戦いは俺達とは全然ちげぇんだ。今は宇宙をまたにかけて商売しているよ。」

 

「へへ、やっぱ世界は広いっすね、銀さんや、銀さんの友達みたいな俺よりもすげぇ人はいっぱいいる。何かすげぇワクワクしてくる。」

 

疲れきってはいるが相も変わらず笑顔が崩れずに本当に楽しそうに笑顔を浮かべる。

 

「若ぇのはいいな、」

 

銀時も満足な表情を浮かべながら

 

「「ハハハハハハ」」

 

2人は高らかに笑い合う。夜も深く鳥のさえずりも聞こえない中も二人の笑い声が静寂を打ち壊していく。

 

「それで、その人の名前はなんて言うんです?」

 

山本が銀時の友人の名を尋ねる。

 

「ん?アイツの名前か?アイツの名は、坂本辰馬ってんだ‥‥」

 

「坂本辰馬?」

 

「ああ、ソイツは土佐の国の生まれでな、家は土佐では名の知れた商家でソイツはその家のボンボンで、話すときは流暢な土佐弁で話していたな‥‥」

 

辰馬の事を話している内に銀時は初めて出会った時の辰馬の事を思い出した。

彼と初邂逅の時はあまりにも印象的だった。

あの高杉でされ、当時、辰馬と出会った時、ドン引きしていた。

何せ、船で到着した途端、彼は銀時と高杉にゲ○をぶちまけたのだ。

それも自分達の顔面に‥‥

忘れられるはずがない。

 

「‥‥」(イラッ)

 

その時のことを思い出した銀時は急に辰馬に対して、憎らしさがこみ上げてきた。

 

「今は商人って事はその人はは親の会社を継いだんですか?」

 

そんな銀時の事など知る由もなく、山本は辰馬の今を詳しく尋ねる。

 

「いや、ソイツは自分で会社を立ち上げた‥‥株式会社『快援隊商事』とか言う貿易会社で、社長兼社船『快臨丸』の艦長をやっている」

 

「へぇ~」

 

山本は剣士の道を断たれた後も貿易会社を立ち上げ、自らも社長兼社船の艦長を務めている辰馬に感心していた。

もしも自分の腕が使い物にならなくなり、野球と剣が握れなくなった時、自分は新たな道を探し出せるだろうか?

そんな事を思った山本であるが、その時はその時に考え、悩めばいいと楽天主義な山本はすぐに考えを切り替えた。

 

 

「銀さんも山本もまだ戦っているのかな?もうすぐ夕食の時間なのに‥‥」

 

銀時と山本の2人はツナが、夕食が出来た事を呼びに来る。

 

「ん?」

 

すると、ツナの視線の先には訓練場で寝ころびながら、銀時と会話を楽しんでいる山本の姿があった。

 

(山本清々しい顔してる‥‥)

 

山本の顔を見てそして

 

「銀さん!!山本!!もう夕飯の時間ですよ!!」

 

と、2人に夕食が出来た事を伝えた。

 

「おう、今行く!!」

 

「腹減ったッすね!!」

 

ツナから夕食が出来た事を聞くと2人は起き上がり、ツナと共に食堂へと向かった。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的54 自分のモノには名前を書け

何時ものこたついつもと変わらぬ風景

「はぁ、今年も終わったアルな」
変わらぬ風景

「速ぇなもうやんなっちゃうな~、年取るごとに速くなってくよ一年過ぎるのが」
変わらずみかんをバクバクと食べる2人。

「この調子じゃジジィになった時はF一カーが通り過ぎる並のスピードで1年が過ぎるんじゃねぇの~」


「俺はまだまだ大丈夫だぞ」
何故かお父さんコスプレしたリボーンそして

「私もまだ大丈夫かな」
なのでまでもがこたつでゆっくりしていた。

「いやいや、俺なんてもうベン・ジョンソンが通り過ぎるぐらいまで来てるよ、すぐそこに来てるよベンが、お前らも若いからって調子に乗ってるとすぐくるよ」

「マジかよ、私ベンよりカールの方がいいネ、カッケェアル」
そんな風にみかんを丸のみして

「用は今年も充実した一年をおくればってことでいいんじゃね」
銀時が締めようとすると

「「おくってねぇでしょうが!!」」
二人のツッコミが行かずちのように鳴り響く

「ったくるせーな新年早々ダブルツッコミかよ、もう少し芸のあるやつ頼わぁ」
そんな事も気にせずにむしろ飽き飽きしながら銀時がいい

「うるせーよ、お前らこそもう少し違うのやりやがれ原作でもなんども何度使い回しやがって」
半分言っていいのかわからないが新八もかえす

「あん、んなわけねぇぞ、見てみろ、ここにはいつもと違い、なのはとリボーンというゲストを呼んでんだ。」

「この調子でゲスト変えれば何度も使えるネタアル。今年は作品の主人公2人、来年はヴィヴィオとアイン.....」
神楽が次回案を提案しようとすると

「いや、神楽ちゃんまだその子出てないから、今言っちゃダメだから、」
すかさずツナのツッコミが

「じゃ、この2人で」





「神楽ちゃん?こっちは小次郎、そっちは?」

「ビチグソ丸アル。今年は酉年、去年は申年、夢のコラボネ」


「「・・・・」」

「何で何も喋らないアルか?」

「「そりゃそうだろ(でしょ)」」

「まるまる違う動物だから、話も意思も通じないよ」

「キキ、」

「あ、どうしたの?ヨシヨシ」

「キキ」
びちゃ

「て言うか何であの猿出てきたんですか、銀さん頭拭いて下さい」

「だってこういう小説であいつ出番ないだろ、だから出してやろうと..新八メガネ拭き貸せ...つうかあいつえらくなのはに懐いてんな」

「あれじゃないですか、九兵衛さんと同じで女性に」

「あぁ、姉御と似てるからじゃないアルか?」

「え?姉上と」

ポン
銀時が何かにひらめき手を当て

「あぁ『まな板みたいな胸した女』だから.....懐い....て...」

ゴゴゴゴゴゴゴ

「へぇ、銀さん私の事そんなふうに...ふふ」
新年早々ご降臨なされた

「あれなのはさん、どうしたんですか新年早々そんな邪気纏ってハハハハハ、冗談ですって、新年だからね、最初はぱぁっと笑いを飛ばそぅと」
という銀時は冷や汗びっちょりで目もなぜな合わせようとしない

「そうだね、年明けだもんね、なら年明けらしくあれやろっか」
なのははバリア・ジャケット姿となり

「「あれ?」」

ジャキン!

「ちょ、なのはさん!?」
急になのはは銀時を1本のバインドで拘束する。

「あれ、えっと...これって」

「皆で凧上げしよっか」

「え...?でも何で俺だけバインドされてるの?」

「凧に紐はつけないと風で飛んじゃうよ(吹き飛ばされるよ)?」

「あの今吹き飛ばされるってまず風ぐらいじゃ人間...なのはさん、何溜めてるの、何撃つ気なの!?」

「ディバイン...」

「やめ」

「バスター!!」

「ぎゃゃゃゃぁぁぁぁぁ!!」

「「銀さん!!」」
はるか彼方まで吹き飛ばされるも一応命綱をつけてるので安心だ。


「こんな感じでまた今年もよろしくな。」
最後にリボーンがまたでてきて

「ってお前何もしてないと思ったらお前が締めんのかよ!!」
ツナのツッコミがさく裂した。






~side銀時~

 

その日、銀時は機動六課の保管庫にいた。

 

「ったく、はやてのヤロー、人使いが荒いったらありゃしねぇ‥‥ほんの一時間半寝坊しただけなにによぉ~」

 

銀時はブツブツとはやてに対する愚痴を零しながら、棚に並べられた物品を確認していく。

この六課が保有している保管庫には、六課が活動途中で見つけて収容したロストロギアや地上の各部隊から集められこの後、本局に送られるロストギアを一時的に預かり保管しておくための倉庫であった。

そして今、銀時はその倉庫で保管物のリストを片手に、物品確認を行っていた。

なんで彼がそんな事をしているのか?

それは、彼が今朝の朝礼を寝坊してすっぽかした為の懲罰だった。

 

「くそっ、こんな事なら、夕べあんなに飲むんじゃなかった」

 

どうやら、銀時は昨晩、しこたま酒を飲んで今朝の朝礼に寝坊した様だ。

だが、今更後悔しても仕方がなく、居候でもありバイトの身であるので、銀時は愚痴を言いながらも淡々と作業をこなしていく。

そこへ、

 

「銀さん」

 

なのはがやって来た。

 

「ん?なのはか?なんだ?」

 

「これ、朝ご飯‥銀さん、朝ご飯食べそこなったでしょう?」

 

なのはは数個のおにぎりとお茶の入ったペットボトルお盆を近くのテーブルに置く。

ただ、そのテーブルにも物があったので、なのはは比較的に物が置けるスペースにおにぎりとペットボトルのお茶が乗ったお盆を置く。

この時、なのはがテーブルの上に乗っていたモノにもう少し注意すれば、そして、銀時もなのはからの差し入れを確認していれば、この後の惨事は起きなかったのかもしれない。

 

「ん、あっ、ああ‥‥」

 

「作業が一段落したら食べてね」

 

「おう、サンキュー」

 

「それじゃあ、私は訓練に行くから」

 

なのはは倉庫から出て行った。

そして、銀時は作業を続け、ようやく一段落ついた時、なのはの差し入れを食べようとテーブルへと近づく。

すると、其処には、

 

「ん?なんだ?こりゃ?ドリンク剤?」

 

そこにはなのはの差し入れの他にコンビニやドラッグストアで良く販売されているドリンク剤と同じドリンク剤が入った箱がテーブルにポツンと置いてあった。

 

「ん?もしかして、これもタッちゃんを気遣う南ちゃんか物陰から飛馬を見守る姉ちゃんの様になのはがそっと置いていった差し入れ!?」

 

銀時はこのドリンク剤も保管庫の作業をする銀時の為にと、なのはがそっと置いていった差し入れと思った。

しかし、銀時は失念していた。

此処がロストギアの保管庫であると言うことを‥‥

そして、この保管庫には敵対組織等から押収した違法薬物等も保管されていた事を‥‥。

銀時はなのはからの差し入れのおにぎりとお茶を飲んだ後、そのドリンク剤も手に取り、蓋を開けてドリンク剤を一気に煽る。

 

「おっしゃあ!!もうひと踏ん張りするか!!」

 

ドリンク剤は意外にも効果があり、銀時は体が軽くなった感覚を覚え、気合を入れ直して、作業を再開していく。

そして、ようやく作業が終わり、残りのドリンク剤が入った箱を持って保管庫を出て六課の隊舎を歩いていると、すれ違う人全員が自分の姿を見て、ギョッとした表情や唖然とした顔をする。

 

「えっ?誰!?あの人!?」

 

「あんな人、居たか!?」

 

(なに?なんなの?この視線?めっちゃ気になるんですけど‥‥なに?俺の顔に何かついているの?それとも背中に何か恥ずかしい言葉が書かれた貼り紙でもされているの!?)

 

慌てて背中を触って、背中に貼り紙がないかを調べるが背中に何か貼られている様子はない。

 

(一体何なんだ?ったく)

 

銀時は周りの視線を気にしつつ、労働で疲れた体を癒すため、ドリンク剤の箱を食堂の冷蔵庫に入れた後、ヴィヴィオを探した。

 

「ドリンク剤なんて若造共が飲むにはまだ早いから大丈夫だろう」

 

銀時は、食堂の冷蔵庫と言う共有スペースにドリンク剤を入れたが、他の皆はドリンク剤なんて飲まないだろうと思っていた。

しかしこの時、銀時が箱に名前でも書いておいてくれれば、この後起きる騒動を最小限の犠牲で防げたのかもしれなかった。

 

銀さんが食堂を出てヴィヴィオを探しに行った後、食堂には‥‥

 

「あぁ~坂田のやろう、昨日あんなに飲ませやがって」

 

ツナ達がやってきた。

そして、ツナ達は昨日酔った銀時に絡まれて無理やり酒を飲まされた。

その為、彼らは二日酔いにでもなっているのか顔色が悪い。

だが、銀時と違って寝坊しなかったのは彼らが学生の性分故、朝には決まった時間に目が覚め、銀時は自堕落な生活を送っている為寝坊したのだ。

 

「確かに結構酔っていたね」

 

「うぅ~気持ち悪ぃ~頭がくらくらしてる気がする。」

 

山本は手で口を抑えて、顔色も少し悪い。

 

「なんか、ねぇかな?」

 

獄寺が食堂の冷蔵庫をあけると、其処にはドリンク剤が入った箱があった。

 

「おっ?10代目いいもんありましたよ!!」

 

獄寺がドリンク剤を手に取る。

 

「でも、良いのかな?勝手に飲んで?」

 

ツナが誰かのドリンク剤かもしれないと指摘する。

 

「ん?でも、箱にも瓶にも誰も名前も書いていませんよ」

 

獄寺が箱と瓶を調べるが、六課の人間の名前は書いていなかった。

誰かの者であれば、勝手に飲まれない様に名前ぐらいは書くはずだ。

 

「此処に有ったんだから、共有して飲めってことじゃないんですか?」

 

そう言って獄寺は瓶の蓋を開け、ドリンク剤を飲んだ。

 

「うっめぇ!!それに何か体が軽くなった感じがする」

 

「本当?」

 

「マジです。10代目もどうですか?」

 

「うーん‥‥」

 

ツナは飲むか飲まないか迷ったが、

 

「別にいいんじゃねぇのか、ダメだったら後で謝ればいいんだしさ」

 

山本も軽く言い手に取り

 

「結構効くんだろ、なら俺も」

 

深く考えず山本もドリンク剤を飲んだ。

 

「おっ、すっげぇうめぇ、コレ」

 

飲んだ後、やはり山本も体が軽くなった感じがした。

 

「じゃあ、俺も飲もうかな?」

 

そしてツナもドリンク剤の瓶をとり、蓋を開けて中身を飲んだ‥‥。

 

 

その頃、銀時の探し人であるヴィヴィオは‥‥

 

「パパ―――どこ~~~」

 

銀時を探していた。

ママであるなのはは訓練でお仕事中なので、ほぼ半無職状態&暇人の銀時(パパ)ならば、自分と遊んでくれると思い、彼を探していたのだ。

そしてヴィヴィオは訓練場へとやってきて其処で銀時を探した。

 

「あっ、ヴィヴィオ、そんなに走ると転――」

 

走っているヴィヴィオに注意しようとなのはが声をかけるが、全てを言い終える前にヴィヴィオは、

 

「フギャッ!!」

 

盛大にこけた。

幸い、使用していた空間シミュレーターの設定では地面は柔らかい芝生に設定されていたため、怪我を負うことはなかった。だが、ヴィヴィオは突如体に走る痛みで泣きそうな顔を動かすだけで中々立ち上がろうとしない。

 

「ヴィヴィオ!」

 

慌ててヴィヴィオに近づこうとするフェイトであったが、なのははそれを片手で止めた。

 

「大丈夫。綺麗に転んだから大きな怪我は無いはずだよ」

 

「でも、なのは‥‥」

 

やはり転んだことにフェイトは心配そうな顔をする。

 

「ヴィヴィオ、私はここにいるよ。頑張って起き上がってみようか?」

 

ヴィヴィオから少し遠目に離れた位置からなのはは手を広げてヴィヴィオに声をかける。

 

「うぅ~」

 

ヴィヴィオは自分に近づいて起こしてくれないなのはの行動に不満を感じたのか、目尻に浮かべた涙を大きくした。

涙を浮かべるヴィヴィオにとうとう我慢できず、彼女の下へと飛び出そうとするフェイトであったが、それよりも先にヴィヴィオの近くに銀時が両膝を折り曲げてしゃがみこんだ。

 

「ほら、ヴィヴィオ、立てるか?」

 

「ふぇ?」

 

聞き覚えの無い声にヴィヴィオは反応する。

 

「人生は七転び八起きだ。例え転んで失敗しても立ち上がれば、また歩み出せる。ヴィヴィオは強い子だもんな。だから、ホラ、頑張って立ってみろ」

 

そう言って銀時は両手をヴィヴィオの顔の前に差し出す。

 

「‥‥」

 

銀時の顔と差し出された手を数回視線で往復させ、ヴィヴィオは決心したかのように両手を目の前の手に乗せて自分で立ち上がろうとする。

しかし、ヴィヴィオからは困惑している雰囲気があるが、銀時は気づいていない。

だが、自分の事を気にかけていると言う事でヴィヴィオはうつ伏せの状態から上半身を起こし、次は銀時の腕にもたれる様に体重をかけて立ち上がる。

 

「よし、よく頑張ったな、ヴィヴィオ」

 

銀時は1人で立ち上がることが出来たヴィヴィオの頭を撫で、ヴィヴィオは嬉しかったのかその顔を笑顔で染めた。

しかし、自分の立ち上がりを見守ってくれた銀時の顔を見て、ヴィヴィオは改めてキョトンとした表情になる。

 

「ん?‥‥パパ?」

 

「えっ?そうだけど、ヴィヴィオちゃん。パパの顔忘れちゃったのかな?」

 

「?」

 

銀時は少し焦った顔でヴィヴィオを見る。

しかし、ヴィヴィオは銀時の言葉の意味を理解していないのか首を傾げている。

 

(ま、まさか、これが反抗期って奴!?『パパ、体臭いから私の近くによらないでよぉ~』『洗濯する時、パパと私の下着分けて洗濯してよねぇ~』みたいなことを言われちゃうの俺!?)

 

ヴィヴィオから毒舌を言われたもう、死んじゃうよ俺、みたいな顔をする銀時。

すると、フェイトが近寄って来て、

 

「あの‥‥此処は管理局の敷地内ですので、許可の無い一般の方が入られると困るのですが‥‥」

 

(えっ?なに?フェイトちゃん!?今の発言!?俺、ハブられているの!?コレは虐め!?パワハラってやつ!?今朝、朝礼を寝坊しただけでこの仕打ち!?ちょっと管理局!!あまりにもブラック企業じゃない!?)

 

フェイトの言葉にショックを受けている銀時。

そこへ、

 

「どうした?何を騒いでいるアル?誰か犬のクソでも踏んだアルか?」

 

「って、銀さん!?なんで、またその姿に!?」

 

騒ぎを聞きつけ、神楽と新八が現れた。

 

「えっ?この人、2人の知り合いなの!?」

 

「ちょっ、フェイトちゃん!!それ、あまりにも酷いから!!俺だよ!!俺!!」

 

「俺って言われても‥‥あっ、もしかしてコレが有名なオレオレ詐欺!?」

 

突然、俺、俺と言われて困惑するフェイト。

 

「ちげぇーよ!!目の前でオレオレ詐欺をする奴なんていねぇよ!!直ぐに別人だってバレるじゃん!!」

 

「あ、あの‥フェイトさん。その人、銀さんです‥‥女になっていますけど‥‥」

 

新八がフェイト銀時(?)の事を伝える。

 

「えっ!?」

 

「おいおい、新八君、いくらツッコミに飽きてボケに回ろうとしても今のボケは全然笑えないよ」

 

「いや、ボケじゃなくて事実なんですが‥‥」

 

「ホントね、銀ちゃんまた女になっているアルよ。そんなに女の体が良かったアルか?それともヴィヴィオにおっぱいあげたかったアルか?」

 

「おい、神楽までなにを言って‥‥」

 

「ハイ、これで、自分の顔を見て‥‥」

 

フェイトがコンパクトを渡し、銀時は自らの顔を見る。

すると、そこに写っていたのは普段見慣れている坂田銀時の顔ではなく、かつて、とある宗教集団によってかぶき町に性別を逆転させる謎光線が放たれ、その光線を浴びたせいで男女が入れ替わってしまった時の銀時の女の顔‥‥坂田銀子の顔であった。

 

「な、なんじゃこりゃ~!!」

 

六課の訓練場に坂田銀時改め、坂田銀子の絶叫が木霊した。

 

 

 

 

・・・・続く




前書きながながとすいませんが作者の一言は

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

そして良いお年をお過ごしください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的55 コンプレックスを乗り越えて人は大きくなる

更新です。


 

 

~side銀時~

 

「ほ、ほんとうに銀さんなの?」

 

なのは達は目の前に居る銀髪の女性が本当に坂田銀時なのかと不審がる。

 

「マジだって!!正真正銘、本物の銀さんだってば!!」

 

「えっ?でも‥‥」

 

なのはは、坂田銀時改め、坂田銀子の身体を上から下まで見る。

確かに銀髪とくせ毛は銀時と通ずるところはあるが、それでも目の前に居る銀髪の女性が銀時とは思えなかった。

一方、神楽と新八は性別が入れ替わった銀時の姿を見た事があるので、慣れた様子で銀子にどうして性別が入れ替わったのかを尋ねる。

 

「でも、銀さん。なんでまた女の人の姿に?」

 

「きっとアレね!!銀ちゃんは1500年前に若い娘が溺れたという悲劇的な伝説のある泉に落ちたアルね!!だからお湯をかければ元の銀ちゃんに戻るヨ!!」

 

「此処は中国じゃねぇから呪○郷なんてねぇし、俺はそんな泉に溺れてもいねぇよ!!」

 

銀時は何故自分が女に性転換したのか全く心当たりがない。

 

「本当に心当たりないんですか?」

 

「ねぇよ。はぁ~それにしてもまたこの姿かよ~‥‥面倒なんだよなぁ~トイレとか、おしっことか、おしっことか、おしっことか、おしっことかが‥‥」

 

『‥‥////』

 

銀時‥もとい、銀子は性別転換した時に苦労したトイレ関係について面倒だった事を思い出して後頭部を掻きながら、本当に面倒そうに言う。

 

「おい!!全部面倒な事が、おしっこだけになっているぞ!!」

 

新八がいつものように銀子にツッコム。

 

「あ、あの、銀さん‥いや、この場合は銀子さんなのかな?あんまり女の人が『おしっこ』とか言わない方が‥‥//////」

 

ティアナは銀子にあまり下品な単語は出さない方がいいと言う。

たしかに此処に居るメンバーの中で、新八と神楽とヴィヴィオ以外のメンバーは皆、顔を赤くしている。

だがしかし、

 

「それもそうだな、あ、お前ら今の俺は銀子じゃなくてまん「それをやめろって言ってんでしょ!!」」

 

相変わらず下ネタを言う銀子とすかさずツッコミをいれる新八。

 

「わかったよ。でもコレ、邪魔でしょうがないんだよなぁ~」

 

銀子は忌々しそうに自らの胸に目をやる。

すると、ブチッと言う血管がキレた様な音がして、

 

「ほぉ~そんなに邪魔か?その胸にぶら下がっているでかい兵器は‥‥?」

 

「それなら、私達がそり落としてあげようか?」

 

自分の胸を邪魔モノの様に見る銀子に対して、ヴィータとなのははユラリと幽鬼のように近づいてくる。

 

「えっ?ちょっ、なのはさん!?ヴィータさん!?な、なんか怖いんですけど!!背後に魔界の瘴気みたいなオーラが出ているんですけど‥‥」

 

「「気のせいだ(よ)」」

 

「いやいや、気のせいじゃないよ!!出ている!!出ているよ!!魔界の瘴気が!!」

 

確かに銀子の言う通り、なのはとヴィータの背後からは嫉妬と言う名の瘴気が浮き出ていた。

 

「オラァ!!潰れろや!!デカブツ!!」

 

「ちょっと潰れようか?」

 

ヴィータはグラーフ・アイゼンをギガントフォームにし、なのははシューターを多数出現させ、銀子に襲いかかる。

 

「ぎゃぁぁぁー!!」

 

ロリータ狂戦士と白い悪魔の餌食となる銀子。

 

「なんで、なんで、銀さん胸が女の私よりも大きの!?」

 

「これがあの銀時だと!?ふざけんな!!男の分際でこの胸だと!?」

 

なのはとヴィータは銀子の胸が大きい事にショックを受け、銀子のさっきの発言が気に入らなかったのだ。

 

「そんなに邪魔なら寄こせぇ~」

 

「そうだよ!!いらないなら頂戴よぉ~」

 

「ちょっ、お前ら!!イタタタタタ‥‥」

 

ヴィータとなのはは銀子を倒すと手でその胸をむしり取ろうとする勢いで、銀子の胸を鷲掴みする。

そして、銀子をひたすらボコボコにした2人は、その後訓練場の隅で2人して泣いていた。

 

「なのはさん‥‥ヴィータ副隊長‥‥」

 

スバルが心配そうに声をかけるが、フォローするにも言葉が見つからない。

 

「スバル、今は2人を放っておきなさい。」

 

ティアナがスバルになのは達は放置しろと言う。

 

「でも、ティア‥‥」

 

「今あの2人を立ち直らせることできるの?寧ろ変に声をかけたりしたらアンタも銀子さんみたいに胸を揉まれるわよ」

 

「わ、私は揉まれるより揉む方だよ」

 

「そうね、アンタよく私の胸を揉むものね‥‥」

 

ティアナのこの一言にスバルは先程、銀子が受けた制裁を思い出し、ブルッと震えた後、ティアナの言う通りなのは達を見守る事にした。

そしてティアナはスバルによく胸を揉まれていたことを思い出し内心イラッとしていた。

 

「パパ、だいじょうぶ?」

 

ボコボコにされた銀子にヴィヴィオは声をかける。

 

「ヴィヴィオちゃーん!!マジ、君は天使だよ!!そこの隅っこで泣き崩れている狂戦士や白い悪魔とは大違いだよ!!」

 

「銀子さん‥さりげなく、なのはさん達に毒を吐いているわね‥‥」

 

ティアナがボソッと呟く。

そんな中、ヴィヴィオは銀子の胸を凝視している。

 

「ん?どうした?ヴィヴィオ」

 

銀子もヴィヴィオの行動に首を傾げると、ヴィヴィオは突然、

 

ムニュ、ムニュ、

 

「おぉー‥大きい‥‥」

 

「ヴぃ、ヴィヴィオちゃん!?」

 

突然ヴィヴィオがその小さな手で銀子の胸を触り始めた。

 

「キャ、キャロ?いきなり僕の目を抑えてどうしたの?!」

 

「エリオ君は見ちゃダメ!」

 

エリオはキャロに目を抑えられていた。

 

「新八、お前も目を閉じるネ!!」

 

神楽はご丁寧に新八の眼鏡をはずして、彼に目潰しを喰らわす。

 

「ぎゃぁぁぁー!!神楽ちゃん!!コレ、目を閉じるじゃなくて失明するから!!」

 

両眼を抑えてその場に転がりながら悶える新八。

 

「大丈夫ネ、新八。お前の本体(メガネ)は無傷ある」

 

悶える新八に対して神楽はメガネ(新八の本体)は無事だから大丈夫だと言う。

 

「ソレ(メガネ)は僕の本体じゃねぇ!!」

 

悶えつつもツッコミ入れる新八。

 

「おぉ~柔らかい」

 

「ちょっ、ヴィヴィオちゃん~銀さんそんな趣味はないの~あのドM変態忍者とは違うの~ で、でも、何か良い気持ちになってきて、このままじゃ銀さん目覚めちゃうよ~新しい扉が開いちゃうよぉ~//////」

 

ヴィヴィオのお触りに何か新たな世界に目覚めようとする銀子。

 

「ヴィ、ヴィヴィオこっちにおいで!//////」

 

フェイトが銀子からヴィヴィオを引き剥がす。

 

「銀ちゃん大丈夫アルか?」

 

「ハァ、ハァ、ハァ‥‥だ、だい、じょう、ぶ‥‥これくらい、何ともねぇ‥‥//////」

 

今度は胸を優しく揉まれたせいか、銀子の息は上がり、顔はほんのり朱に染まり、目は少しトロンとしていた。

それは同性から見ても色っぽいもので、フェイト達も思わず赤面する。

 

「と、とりあえずはやての所に行って事情を説明して来た方が良いよ//////」

 

「あ、ああ‥そうするわ‥‥」

 

銀子は立ち会がり、はやての所に説明するために向かった。

ただ、この時フェイトは銀子に重要な事を言い忘れていた。

親友が女性のある部分に対して特に執着している事を‥‥

 

 

「ったく、はやての奴、部下にどんな教育しているんだ?次の給料に慰謝料を上乗せさせてやる!!」

 

銀子は先程のなのはとヴィータにされた仕打ちをはやての監督不行だと思い、クレームと共に慰謝料をふんだくってやると意気込みながら部隊長室を目指す。

 

「たのもー!!」

 

銀子は勢いよく部隊長室のドアを開けた。

 

「ああ、銀さん。話はフェイトちゃんから聞とるよ、なんや今回は随分と災難やったなぁ」

 

はやては部隊長室の机で顔を俯かせゲンドウポーズをしながら銀子に声をかける。

 

「ああ、本当に災難だ‥‥女の姿にはなるわ、お宅の従者(ヴィータ)と部下(なのは)にボコボコされるわで‥‥」

 

「そら、すまんかった‥‥にしても随分とええ女になったやないか」

 

はやては顔を俯かせているがその視線は密かに銀子のある部分にロックオンしていた。

 

「んな訳ないだろう。此奴のせいでお宅の従者(ヴィータ)と部下(なのは)が狂戦士と白い悪魔に変貌するは、此処に来るまで男共には変な目で見られるにはでまったく災難だぜ‥‥ったく、次の給料には慰謝料を上乗せして貰わないと割に合わないぜ‥‥」

 

「‥‥ほんなら、お詫びに‥‥私が銀子ちゃんを気持ちよくしたるわー!!」

 

すると、いきなりはやては銀子にルパンダイブをかましてきた。

 

「ちょっ!!はやてちゃん!?」

 

咄嗟に銀子ははやてのルパンダイブを躱した。

 

「なかなかええモンぶらさげとるやないか、銀子ちゃん。ぐへへへ‥‥」

 

銀子の目の前に居るはやてはいつもの部隊長らしさはなく、ただの変態になり下がっている。

ルパンダイブを躱されても即座に体制を立て直して銀子にロックオンをしている。

 

「はやてさんってまさかソッチ系の人!?百合なの!?女の子じゃないと燃えないタイプの人なの!?」

 

「ちゃうねん‥‥私が好きなのは、エンマと‥‥大きなおっぱいや!!」

 

はやては再び銀子に襲いかかる。

 

「うわぁぁぁー!!変態だ!!此処に変態が居る!!お巡りさーん!!」

 

銀子は身の危険を感じてたまらず、はやての部屋から急いで飛び出て、周囲に大声を出して助けを求める。

 

「私がそのお巡りさんや!!」

 

「ぎゃぁぁぁー!!そうだったー!!」

 

「まてぇー!!おっぱい!!」

 

「うわぁぁぁぁー!!」

 

銀子はまたもや災難に見舞われる事となった。

そして、六課の隊舎には銀子の悲鳴が木霊した。

 

 

~side六課隊舎の通路~

 

「ぎゃぁぁぁぁーーーー!!」

 

「待てーーーー!おっぱい!!」

女性になった銀時は今、変態に成り果てたはやてに追いかけられていた。

 

「いつまで追いかけてくんだあの変態狸は!?」

 

この物凄い追いかけっこに周りは‥‥

 

「何だ?何だ?」

 

「部隊長が美女にセクハラしようとしている!!」

 

「はやて部隊長にあんな趣味が!?」

 

「えっ、でもはやてさんって、あの漂流者の少年の事が好きな筈じゃあ‥‥」

 

と2人の追いかけっこを見て通路の端によけながら様々な意見が飛び交っている。

 

そして曲がり角が重なっているところで、

 

「く、こうなりゃ」

 

と曲がったら、

 

「「いて、(いた)」」

 

誰かに当たった。

 

「あ、すまねぇ~‥‥」

 

ぶつかった人と違うもう1人は

 

「てめぇどこに目ぇつけてやがる10代目にもしものことがあったら‥‥」

 

銀子は口調からするに獄寺だと思って当たったのはツナと思い

 

「すまねぇ‥えっと‥‥お前もしかしてツナ‥‥か?」

 

と前を見たらそこには小動物の♂ではなく完全に言うなればクラスにあまり人と関わらずひっそりと物静かにいてそして男子達の間ではそれが密かに受けてクラスでも人気の高い感じの女子がいた。

 

「あの‥‥君はツナくん達だよね?」

 

「はい、えっとあなたは‥‥」

 

そしてここではやても到着した。

 

「やっと見つけたでおっぱい!!さあ、たんまりと揉ませてもらうで‥‥って、あれ?アンタらは?」

 

「ん?何を言っているッス」

 

「あれ?この人、はやてさんの知り合い?」

 

「いや、オタクらこそこそ誰や?誰かの知り合いか?」

 

全員が全員誰かわからずにただこの現象を1人だけ理解していた銀子は、

 

「とりあえず話をはやての部屋でまとめようか‥‥ついでになのは達も呼ぼう‥‥」

 

ってなわけで、

 

 

~side部隊長室~

 

部隊長室には、この部屋の主であるはやての他に男女が入れ替わった銀時、ツナ、獄寺、山本の他になのは、ヴィータの姿があった。

 

「その茶髪の子がツナ君で、黒髪でちょっとオッパイが残念な子が山本君、そして銀髪くせっ毛が獄寺君やな?」

 

「はい」

 

「はは」

 

「あぁ‥‥」

 

絵がないために読者にわかりやすく説明すると、

くせのある茶髪でやや中性的な顔立ちをしているツナ。

黒髪少し身長高め胸はややつつましい大きさであるが、スレンダーな美脚の山本。

そして、銀髪くせっ毛のショートヘアーで何故か胸が銀さん並にあるのが獄寺である。

さしずめ、呼び名は、ツナはツナ子、獄寺は寺子、山本は武子と言ったところだろう。

 

「何故女性になったかはわからないんですけど...」

 

「はは、気付いたらこうなってたんすよね~、」

 

「お前何でそんなに能天気でいられんだ野球バカ!」

 

「ん?だってそのうちに元に戻るだろう?」

 

「戻れねぇかもしんねぇだろ!!」

 

「大丈夫だって」

 

「この四六時中能天気野球バカが!!」

 

獄寺は頭を抑え、ツナも微妙な表情をしていた。

 

「あぁ~最悪だぜ、女になっちまうし、おまけに胸にはこんな邪魔なもんもできちまうしよぉ~」

 

「ちょっ、おまっ、それは‥‥」

 

忌々しそうに自分の胸を見て、銀子がその台詞は禁句だと言う前に

 

ガシッ!!

 

「ねぇ、これは嫌味なのか?嫌味なの?どいつもこいつも‥ねぇ?そう思わない?ヴィータちゃん。」

 

まるで般若の様な怖い顔でなのはは獄寺の胸を握り潰すかのように掴み、

 

「ああ、全くだな!!」

 

ヴィータも同じく獄寺の胸を掴む。

 

「イタタタタやめ、やめろって...高町、ヴィータ」

 

「君ってまだ中学生だよね?いくら成長期でもこれはないでしょ!!」

 

「本当にな、何でお前らは男の分際でそんな立派なモンをぶら下げてんだぁ!?あぁ!!それとも銀髪か?銀髪の男はみんなこうなのか!?」

 

全くやめる気配のない2人。

それを見てツナは、無謀にもなのは達を止めにかかる。

 

「なのはさん、ヴィータさんそのへんにしときま...」

 

「「黙れ!!」」

 

「はい」

 

無理であった。

寺子の胸を揉んでいるなのはとヴィータをはやては羨ましそうに見ていた。

そして嵐はさってなのは達は、

 

「やっぱり、銀髪だからかな?髪の毛染めたら胸も」

 

と不気味に笑いながらやり取りをしていた。

が寺子の災難はまだ続いた。

 

「け、やっとかいほ~「ドン」」

 

今度は銀子に蹴られた。

 

「おい、テメェ~ふざけてんのか?あぁ!!」

 

「てぇな!!何しやがる!」

 

「薄々感じていたが、今日という今日は言わせてもらう!!」

 

「あぁ!」

 

「てめぇ!俺とキャラかぶりすぎなんじゃボケ~!!」

 

と大声で叫んだ

 

「はぁ~」

 

「よく見てみろ、銀髪!美人!くせっ毛!そして短い髪!!これでもかと言うぐらいの巨乳!!」

 

銀子が寺子の部分を指さす。

胸の指摘をした時、

=(´□`)⇒グサッ!!

=(´□`)⇒グサッ!!

どこかで2人の心臓に矢が刺さったが気にしない。

 

「お前、いちいち俺にキャラかぶせないと気がすまねぇのか?あぁ?いい加減にしねぇと肖像権の侵害で訴えるぞ!!コラァ!!」

 

「んなっ事、知るかよ!!てめぇの方が、オレの真似をしてんだろ!坂田コラァ!それにな、俺はお前みたいなアバズレのおばさんじゃねぇ!!」

 

寺子がセクシーなポージングをして銀子を挑発する。

すると、

 

ブチン

 

銀子の蟀谷辺りでキレる音がした。

 

「上等だ!!ゴラァ!どっちが銀髪ショートヘアー美人か決着つけたら~!!逆ナン勝負だ!!」

 

「やってやるよ!!」

 

と2人は部隊長室を出ていった。

 

「で、はやてさん.....その手のカメラは何ですか?」

 

2人が出て行った後、ツナは、はやての手に握られているカメラに対して質問する。

 

ニコニコ顔ではやては

 

「まぁまぁ、細かい事はきにせぇへんの。それより2人とも、女の子がいつまでもそんな服装はアカンで、こっちに着替えがあるから好きな服を着るとええ」

 

はやては一見、親切そうに言うが、用意されている衣装はどれもこれもコスプレ衣装だった。

 

 

 

「貴女は俺達にコスプレをさせたかった訳か!?」

 

「そうや」

 

「お前達も、こいつで女心を理解するといいわ」

 

背後から聞き覚えのある声と聞き覚えのある効果音とともに現れたのは

 

「何故にリボ子!」

 

其処にはルーズソックスに女子高校生っぽい制服を着たリボーンことリボ子が居た。

 

「最近の男共を見ていて思っているのよね~、ヤレ草食系男子だ。ヤレインテリタイプだ。そんなんじゃいつまでたって女心も人の心理もわかりゃしないわよ」

 

「それとコスプレは別だろ!!」

 

「まぁまぁ、ええやん、コスプレをして普段どうやってメイド喫茶のみつ...男性の気を引かせているかとかようわかんでそれにな」

 

ここでまた変態親父の顔になりさがって、

 

「こんな美少女達や萌えへんわけあらへんやろ!!」

 

もう言い訳すらしていない。

はやてさものすごい勢いでツナ達にコスプレ衣装を着せて写真を取り始めた。

はやてのその行動になのはとヴィータはドン引きしつつも面白そうなので止めなかった。

 

「さぁて、ほらほらあんまりかくさんと、恥ずかしがらずに」

 

「ちょ、やめ、」

 

「流石にそれは‥‥」

 

山本も顔をひきつる。

 

と撮っている時に

 

「はやて、仕事終わったよ...」

 

と炎真が扉を開けた時にカメラを懐になおしてそして顔も部隊長顔になった。この間わずか0.3秒

 

「ありがとエンマ。なぁ、この人達誰かわかる?」

 

((切り替え早!!))

 

切り替えの速さに驚いていた2人。

なのはとヴィータは慣れているのか驚かない。

 

「え、お客さん?」

 

「炎真君も気付ないか‥‥」

 

友達が今の自分の姿を見ても気づいてくれない事にがっくりと項垂れるツナ。

 

「えっ?僕のこと知っているの?」

 

「俺達だよ!!エンマ」

 

「俺達?」

 

「ツナ君と山本君やで、炎真!」

 

すこし間を置いて

 

「えーーーーー!!嘘!?女の子‥‥まさか女装?」

 

「違う!」

 

「原因はわからないけどこんなのになっちゃった...」

 

「嘘~あっ、でも確かに雰囲気が似ている。」

 

ツナがクラっとして

 

「あれ?」

 

炎真にもたれかかった。

 

「え、どうしたの?ツナ君?」

 

「う~ん昨日、銀さんの絡み酒にあってしまって無理やり俺と山本と獄寺君が少し」

 

飲んでしまった。

 

「それで気分が悪くて」

 

(完全に二日酔いやな)

 

「そして獄寺君が冷蔵庫に栄養ドリンクを持ってきてくれてそれを飲んだんですけど...」

 

「へぇ~、てあれ?ツナ君、お胸が縮んでするで山本君も」

 

はやてが

 

「「え、」」

 

とツナは髪が逆だって来てそして少し身長も山本も体格が何時ものしっかりとした筋肉に戻った。

 

「も、戻った!!」

 

「はは、やっぱ戻った。」

 

「良かったね、ツナ君、山本君も‥‥ただ‥みんな、着替えた方がいいよ」

 

「「「あっ」」」

 

男に戻った三人ははやてに施されたコスプレ衣装のままで今度はツナ達が変態っぽく見えていた。

 

 

~side銀時&獄寺~

 

少し時間を巻き戻し‥‥

 

「ねぇね、お兄さん」

 

「え、オレの事?」

 

突然後ろから話しかけられたのはヴァイスだ。

 

「ねぇ、これからJK(嘘)と一緒に遊ばないですか?」

 

といかにもあざとく銀子は自慢の胸を押し付けていった。

 

「いや、コレからヘリのメンテがあるし‥‥」

 

突然見知らぬ銀髪美女に声をかけられてしかも胸を押し付けられたヴァイスはドキッとする。

 

「え、パイロットなんですか!?」

 

ヴァイスは誰かわからないけど銀子は知っていた。

 

「すっごい、私ヘリコプター超気になるんで見ていいですか?」

 

そして同時にも1人は

 

「おい、てめえ!」

 

と話しかけられたのはグリフィスだ。

 

「え?」

 

わけもわからずグリフィスは曖昧に返して獄寺は、

 

「お前、俺が少し遊んでやるからこっちに来い!!」

 

とものすごい上から目線で言った。

 

「誰だか知らないけど、此処は関係者以外立入禁止だよ」

 

当たり前にかえした。

しかし声はちょっと震えている。

 

「なっ!?だ~か~らー!!」

 

「ふっ、その様子じゃあ、この勝負うちの銀子の勝ちね。」

 

寺子に対して勝ち誇ったかのようにほくそ笑む銀子

 

「あ~!!」

 

「だから言ったでしょ。私のほうがモテルって」

 

銀子は先程の仕返しなのか、寺子にポージングをして自らの勝利をアピールする。

 

「んだとこらぁ~(#゚Д゚)ゴルァ!!俺が男なら絶対お前みたいなアバズレには食いつかねぇよ!!」

 

「はっ、負け惜しみにしか聞こえないんですけど。」

 

と言っている間にドリンク剤の効力の時間が来て‥‥

 

「「ん?」」

 

「「お前!!元に戻ってんぞ!!」」

 

声がぴったりあって

 

「さてと‥‥」

 

「男に戻ったんなら」

 

「「こっちで勝負だ!!」」

 

と獄寺は、ダイナマイトをそして、銀時は洞爺湖を構えた。

がその時、

 

「えぇ~こちらの写真はどうや?物凄い美人でしょ?」

 

其処にいたのははやてだった。

何をしているかと思い、見て見たら‥‥

 

「この銀髪の2人なんて特にかわええやろう‥‥」

 

いつの間にか自分らが女になった時の写真を売りさばいていた。

 

それを見た2人は、

 

「なぁ‥‥」

 

「俺らにも頼むは‥‥その写真‥‥」

 

「はい毎度‥‥えっ!?」

 

「俺達が欲しいのは‥‥」

 

「狸の恥ずかしい写真だな。」

 

「その写真はちょっと~品切れ中や‥‥」

 

「無いなら‥‥作ろうか?銀さん?」

 

「あぁ、そうしようぜ、獄寺君」

 

ほんのさっきまで互いにいがみ合っていた筈なのに、息が合っている2人。

そんな2人に迫られて、はやては冷や汗ダラダラと流す。

 

「えっ、その‥‥」

 

「「覚悟しやがれ!!豆狸!!」」

 

「ぎ、ぎゃゃゃーー!!」

 

余談だがこの時初めてこの2人は気があってそしてはやてはしばらくおとなしくなったとさ。

 

‥‥と思ったら、

 

「フェイトちゃん、ティアナ」

 

「なに?はやて?」

 

「なんでしょう?」

 

「コレ、買わへんか?」

 

そう言って取り出したのは、女体化したツナと獄寺の写真だった。

 

「っ!?」

 

「こ、これは‥‥」

 

「どや?それに今なら、これも付けるで‥‥」

 

はやては、ドリンク剤の瓶をフェイトとティアナに見せた。

ツナから男女入れ替えとなった原因がこのドリンク剤の効果だと知ったはやてはすぐにこのドリンク剤を抑えたのだ。

そして、今フェイトとティアナにこのドリンク剤の効果を説明した。

 

「か、買うよ!!はやて!!」

 

「わ、私も買います!!」

 

「毎度~」

 

男共の災難はこの先まだ続くかもしれない?

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的56 迷子の迷子の子猫ちゃん

更新です。


此処で時系列は過去へと遡る。

ギンガが所用で六課へと赴き、なのはの誘いでスバルと模擬戦をしたあの日‥‥。

 

 

~side???~

 

ベルカ地区 某山間部にある洞窟の中あるジェイル・スカリエッティのアジト。

そこにこのアジトの主、ジェイル・スカリエッティが一本の日本刀が入ったカプセルを見ながら一心不乱にキーボードを打ち込んでいた。

 

「順調かな?ドクター」

 

すると、スカリエッティの背後から声をかけてくる1人の人物が居た。

 

「やぁ、君か。勿論、順調だよ。新型のガジェットの生産も始まり、君から貰った手土産のデータもようやくここまで見る事が出来たよ」

 

スカリエッティは狂気に満ちた笑みを浮かべながら背後に立つ人物に声をかける。

 

「君の話を聞いた時はまさかこんなモノが存在するなんて思ってもみなかったよ。やっぱり世界は広いねぇ~ただ、私としてはもう少し、アレンジを加えたいところだね」

 

「ほう?」

 

「実は気になる人物が居てね‥‥」

 

スカリエッティがまたキーボードを操作すると、今度は空間パネルが開き、其処にはツナの映像が映し出される。

 

「彼の能力‥実に素晴らしい‥興味深い‥‥彼のデータ‥‥欲しいな‥‥」

 

スカリエッティはツナの映像をニヤニヤしてみる。

 

「だから、ちょっとしたゲームを仕掛けて見たよ」

 

「ほぅ~ゲーム‥ねぇ‥‥」

 

「セッテ、オットー、ディードの3人も、もうすぐで起動をするので、彼女らの実戦訓練にもなるいい機会となるだろうからね」

 

「しかし、そう簡単に釣れるかな?」

 

「正義の味方の公務員って言うのは、我々テロリストとは違って、縦社会で随分と窮屈なモノだからね‥故に上からの命令には逆らえないんだよ」

 

「お前の言うスポンサーとやらの力を使う‥か‥‥」

 

「使えるモノは何でも使わないとね‥折角の権力なのだからねぇ‥‥それはそうと、君が見つけて来たと言うこのコの器‥早速そのデータを見せてはくれないか?」

 

「いいだろう‥‥」

 

そう言ってその人物はスカリエッティにUSBメモリーの様なモノを手渡す。

スカリエッティがコンピューターに差し込み、データを読み取ると、空間ディスプレイにある映像が映し出された。

それは、六課の訓練場にて繰り広げられていたナカジマ姉妹の模擬戦であった。

 

「へぇ‥なかなかの腕前だね‥‥ん?」

 

スカリエッティはこの模擬戦の様子をジッと見ていた。

そして、模擬戦をしているナカジマ姉妹‥‥特にギンガの事をジッと見ていていた。

 

(この容姿‥‥あの時の‥‥)

 

スカリエッティの脳裏に浮かび上がるのは、9年前‥地上本部のエースと言われた部隊‥ゼスト隊‥‥その部隊が当時のアジトへと強襲を仕掛けてきた事があった。

しかし、いくらエースとは言え、高密度のAMFの前ではなすすべなく、トーレとチンク、クアットロの前に敗れ去った。

その部隊の中にギンガと似た容姿を持つ女性局員が居た。

クイント・ナカジマ‥‥ゲンヤの奥さんでもあり、ギンガとスバルの母親であった人物。

アジトが強襲される2年前、自分以外の誰かが製造した戦闘機人プラントが同じくゼスト隊の強襲を受け、そこで製作されたタイプ・ゼロと呼ばれる2人の戦闘機人は管理局に保護されたと言う噂を聞いた。

また、ノーヴェの製作に当たってもこのクイントのDNAデータが参考とされた。

 

(この子達は、もしや‥‥だとすれば‥‥)

 

スカリエッティの中である仮説が生まれた。

 

「一応、聞くが、どちらを器として選んだんだい?」

 

「あの髪の長い女だ‥‥魔力、そしてあの力、機動力、器として申し分ない」

 

「フフ、そうかい」

 

「随分と嬉しそうだな?」

 

「いや、良い拾いモノが出来るかもしれないと思ってね‥‥それに私の仮説が正しければ、彼女達は只の人間ではない」

 

「ん?それはどういう事だ?」

 

その人物はスカリエッティの言葉に眉をひそめる。

 

「彼女達も、私の娘達と同じ存在‥‥戦闘機人と言う事だよ‥しかも私が造ったモノではない、別の誰かが私の理論も基にして造ったのだよ‥‥フフ、他人が造った別の戦闘機人‥‥フフ、益々興味深い‥一体どちらが優れているのかな?」

 

「さあな‥‥」

 

スカリエッティの隣に立つ人物は冷ややかな視線でスカリエッティを見ていた。

しかし、当のスカリエッティは気づいていなかった。

 

「スカリエッティ‥‥」

 

「なんだい?」

 

「器の件は私に任せてもらいたい‥‥この器を見つけて来たのは私なのだからな‥‥」

 

「構わないよ。確実に手に入れられるならね」

 

「今の言葉、忘れるなよ」

 

「ああ、分かっているよ」

 

相変わらずスカリエッティはその狂気な笑みを絶やす事無く、空間パネルとカプセルの中にある日本刀を見ていた。

 

それから暫くして‥‥

 

 

~side六課~

 

六課に地上本部から依頼が来た。

 

「地上本部から依頼?」

 

「そうや。しかも人選まで指定してきおったわ」

 

地上本部からの依頼についてはやて、なのは、フェイトは何とも腑に落ちない顔をしている。

元々六課と地上本部はあまり仲が良くない‥‥と言うよりも地上本部の本部長であるレジアス中将が本局所属の魔導師を物凄く毛嫌いしており、六課はその本局の魔導師が地上本部のテリトリーに入り込んできた異物。

彼は隙あらば、六課を潰そうと画策している節もある。

そんな彼が本部長を務める地上本部からの依頼だ。

疑うなと言う方が、無理がある。

もしかしたら、この依頼を失敗させて六課を潰そうとしているのか?

しかし、依頼を蹴れば、それを理由に六課を潰すかもしれない。

ならば、六課が助かる道はこの依頼を受け、それを成功させなければならない。

 

「それで、受けるの?はやて、この依頼」

 

フェイトがはやてにこの依頼を受けるのかを尋ねる。

 

「癪やけど、受けないと六課が潰されてしまうかもしれへんからな‥‥」

 

はやてはため息をつきながら地上本部からの依頼を受ける事をフェイトとなのはに伝える。

 

「それで、人選指定があるって言っていたけど、誰が行くの?」

 

「フェイトちゃんとツナ君や」

 

「えっ!?私とツナが!?」

 

「そうや‥なんでフェイトちゃんとツナ君なのかは私にも分からへんが、この2人以外の同行は認めずと言ってきおった」

 

「やっぱりその依頼怪しいよ」

 

「私もそう思う、けど、依頼を蹴ればそれを口実にあの本部長様のことや、命令不服従とか言って騒ぎ出しそうや。そうなれば、後見人のリンディさんやクロノ君にも迷惑がかかる」

 

「はやて‥‥」

 

「フェイトちゃん、すまへんが六課の命運‥フェイトちゃんとツナ君に委ねてもええか?」

 

「‥‥うん、任せて‥必ず私とツナで六課を救ってみせるよ」

 

「ありがとう」

 

「それで、どんな依頼なの?」

 

「資料によると、どうもあるカジノ船でロストギアをかけた違法取引があるみたいで、その中にレリックも取引商品として入っとるみたいなんや」

 

はやてはフェイトに今回の依頼の内容を映像と画像を見せながら説明した。

 

 

~sideスカリエッティ~

 

はやてがフェイトにその証拠画像を見せたのと同時刻、スカリエッティのアジトでは、

 

「随分と気前がいいんだな?レリックとやらを1つ差し出すとは‥‥アレはお前が固執して収集しているものではないのか?」

 

スカリエッティにある刀の情報を渡した人物が話しかける。

 

「なあに、仮に向こうに回収されてもスポンサーを通じて私の手元に再び戻って来る手筈になっているから、問題は無い」

 

「そうか、連中はその事を知らずにレリックとやらを必死に集めている訳か‥‥哀れだな」

 

「そうだね、全く滑稽な連中だよ」

 

スカリエッティ達が局員達を小馬鹿にしていると、

 

「ドクター‥セッテ、オットー、ディード、の3名、準備が出来ました」

 

空間パネルが開くと其処には銀髪で眼帯をつけた少女が映し出される。

 

「では、早速セッテ達を連れて、現場に向かってくれ、出来れば、彼とFの遺産の身柄を抑えることが出来れば良いのだが、今回の任務はあくまで、彼の能力のデータ収集‥それを忘れないようにね」

 

「はい」

 

「ドクター‥‥」

 

そこにトレディがやって来た。

 

「ん?何かな?トレディ」

 

「私も行こうか?」

 

戦いが不可避な事に夜兎の血が騒ぐのか、トレディが自分も志願するが、

 

「いや、トレディ‥お前は連中に顔を覚えられている。それに今回はセッテ達の初陣だ。お前が来ては全てお前だけで終わらしてしまう。それではセッテ達のためにならない。今回は我慢しろ」

 

「まぁ、そう言う訳だ‥チンク、3人をよろしく頼むよ。何せ彼女らはまだ起動して間もない。お目付け役の君がしっかりと引率をしてくれたまえ。トレディも其れでいいね?」

 

「了解しました」

 

チンクはスカリエッティの指示を聞き、空間パネルを閉じる。

 

「わかりました」

 

トレディもスカリエッティの指示に従い、今回は出動しないと言う。

 

「うん、いい子だ。トレディ」

 

スカリエッティはトレディの頭を撫でた。

 

「さあ、今夜は楽しいパーティーが起こりそうだよ」

 

スカリエッティは今夜、起きるであろうドンパチに胸を躍らせた。

 

 

~side六課~

 

そして、六課の隊舎では、

 

「わぁ、フェイトさんよく似合っていますよ」

 

「そ、そうかな?//////」

 

フェイトは管理局の背服では無く、ドレスに身を包んでいた。

FW陣らを始めとして六課の女性達はドレス姿のフェイトの

 

「フェ、フェイトさん、い、いいですか?入りますよ」

 

フェイトの部屋がノックされる。

今日の任務の相棒であるツナがフェイトを迎えに来た様だ。

 

「あっ、うん。どうぞ」

 

「失礼します」

 

部屋に入って来たツナも高そうなタキシードを身に着けていた。入ってすぐに目に入ったのはドレス姿のフェイトであった。ドレス姿のフェイト何とも美しくツナはじっと見とれていた。

 

「‥‥」

 

そこでリボーンから

 

ドン!

 

「イテッ!!」

 

「何じっとりみてんだ?男ならまず先に言う事をいえ。」

 

ツッコミと男の甲斐性を示せと忠告を受けた。

 

「う、うっさい/////わかっているよ‥‥フェイトさんその‥そのドレスとても良く似合っています。/////」

 

少し赤くなり目を背けて

 

「あ、ありがとう‥‥そ、その‥‥ツナもその恰好良く似合うよ‥とってもカッコイイ//////」

 

「そ、そうですか/////」

 

フェイトもツナも両者褒め合いながら

 

「そ、それじゃあ、行きましょうか?フェイトさん//////」

 

「う、うん//////」

 

ツナはフェイトに手を出しだし、エスコートし、フェイトは嬉しそうにツナの手を取った。

 

(((いいなぁ~)))

恋する乙女は皆が同じ事を思っていた。

 

 

シグナムが運転する車で今回の依頼の現場となるカジノ船が停泊する港へと着き、そのカジノ船を見上るツナ。

 

「でっかいなぁ~」

 

ツナ達の前には巨大な豪華客船が停泊していた。

その大きさにツナは感心する様に船の印象を口にした。

豪華カジノ客船『ディグニティ』。

この船が今回、フェイトとツナが仕事を行う現場である。

この船のどこかに違法取引されるレリックを含むロストギア。

それらの回収とバイヤー達の検挙、それは地上本部からの依頼だった。

 

ツナとフェイトは腕を組んで乗船タラップを上がり、搭乗口で船員にチケットを見せ、乗船した。

ツナは早速調査に入ろうとするが、そこをフェイトが待ったをかけた。

彼が言うにはまだ出港前で船内は何かとバタバタして警戒も厳重な筈、よって動くのは船が出港した後、船内でパーティーが行われる時間帯に動こうと言う。

その時間帯ならば、多少警備や警戒も緩むだろうと判断した。

それにまだ船内の詳しい状況を掴んでいないので、やみくもに動いても時間の無駄であり、失敗する可能性がある。

今は情報収集に務め、作戦を練る事になった。

 

「船倉は大きく分けて2つ、船首側と船尾側か‥‥」

 

フェイトとツナは船室でこの船の案内図を見て、船内の配置を掴む。

 

「かなり大きいし、2人で1つずつ確認して居たら、時間を大幅に失いますね。‥‥」

 

「ちょっと危険かもしれないけど、その時は、此処は二手に分かれよ」

 

「わかりました。‥‥それでいつ行きますか?」

 

「まずは、パーティーに出て、其処で少し時間を潰そう‥それにパーティー会場なら、もしかしたら、密売人がいるかもしれない」

 

「わかりました。」

 

そして、船は出港し、日没と共にパーティーが始まった。

フェイトとツナはパーティー会場を二手に分かれて見回った。

この会場内に密売人と取引相手がいるかもしれない。

ならば、その人物を見つけてマークすれば、ブツも発見しやすいし、すぐに検挙も出来る。

ツナがパーティー会場を見回っていると、彼の視線の先に、困った表情で辺りを見回している少女がいた。

年はティアナと同じ位で、栗色のストレートヘアに赤いカチューシャをしている。

着ているドレスもなかなかのモノで、何処かのお金持ちのお嬢さんなのだろう。

彼女が気になったツナはその困っている様子のお嬢さんに声をかけた。

 

「あの‥‥どうかしましたか?」

 

「あっ‥‥その‥‥実は連れとはぐれてしまいまして‥‥」

 

その少女は困った表情で事情を話す。

 

「お連れさん?」

 

「はい」

 

「それはお困りでしょう。どんな方なんですか?」

 

「身長は私と同じ位で髪の毛の色も私と同じ栗色で、髪型は貴方に似た方なんですけど‥‥」

 

その少女はツナにはぐれてしまった連れの特徴を説明する。

 

「この会場内にいるんですか?」

 

「多分‥‥」

 

「もしよければ俺も一緒に探しますよ。」

 

「ありがとうございます。あっ、私の事はリコとお呼び下さい」

 

「分かりました。俺の事は気軽にツナって呼んで下さい」

 

ツナにもやることがあったがこちらの方が最優先事項と思い協力する事にした。

ただ、ツナはこの少女に少し違和感の様なモノを覚えた。

 

その頃、フェイトも会場内で不審な人物がいないか探していると、

 

「お客様、お飲み物をどうぞ」

 

と、ピンク色の髪の毛をした長身の女性バーテンダーがフェイトに飲み物を差し出して来た。

 

「あ、ありがとう」

 

フェイトはその女性バーテンダーから飲み物を受け取った。

喉も乾いていたので丁度良かった。

フェイトはその女性バーテンダーに背を向けて再び不審者探しへと向かった。

故に彼女は気づかなかった。

その女性バーテンダーがフェイトの事を背後からジッと見ていた事に‥‥。

 

一方、ツナの方も密売人は見つからなかったが、今連れ添っている少女の連れは見つかった。

 

「リコ、見つけたよ」

 

「ジャン」

 

ツナとリコに近づくスーツ姿の男の娘?

確かに特徴はリコの言っていた連れの特徴と一致する。

 

「どうも、連れがお世話になりました」

 

「い、いえ、見つかって良かったです‥‥」

 

ツナはリコの連れ、ジャンに対しても言い表せない違和感を覚えた。

と言うか、連れを探している時のリコもそうであったが、連れのジャンと呼ばれるこの人もあまり感情を表に出さない人だった。

 

(違和感の正体はこの人達の感情の無さかな?‥‥いや、違う‥‥もっと別の何かだ‥‥でも、それが何なのか明確に答えを出せない‥‥)

 

連れと共に去って行くリコをツナはジッと見ていた。

 

それから暫くして‥‥

 

「どう?ツナ、怪しい人物とかはいた。」

 

二手に分かれてパーティー会場にて、密売人を探していたフェイトとツナは一度合流した後、フェイトはツナに首尾があったかを尋ねる。

 

「それらしい人は見かけませんでした。」

 

ツナの方も首尾なかった。

 

「ほかに見ていない場所は...」

 

とフェイトは船の船内案内図を見た。そしていよいよ本命である船の船倉を調査する事にした。

 

「ツナ、私は船尾の船倉に行くから、ツナは船首の船倉を頼んでいい?」

 

「わかりました。」

 

2人はそれぞれ船首と船尾に別れた。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的57 人の過ち、過去の過ち、んなモンどうだっていい、大事なのは今も間違い続けてるかどうかだろ

すいません。少し遅れました。


 

 

 

此処で時系列は少し巻き戻す。

 

 

~side六課~

 

ツナとフェイトが地上本部からの依頼でシグナムの車に乗り任務に行ったそれとほぼ同時にまた地上本部から査察前に行う打ち合わせと言う名目で六課に一通のメールが届いた。

それを見たはやては、

 

「なんやこれ!?」

 

思わず声を上げた。

 

「どうしたの?はやてちゃん」

 

「ちょっ、なのはちゃん。コレ見てや!!コレ!!」

 

「何‥‥?

 

はやてに言われてなのはが送られてきたメールの内容に目を通すと、

 

「こ、これはっ‥‥」

 

「流石に横暴すぎやろ!ツナ君とフェイトちゃんを任務に出させといて、今度は地上本部に私らと銀ちゃんを連れて来いやと!!」

 

「どうする?はやてちゃん、一応、監査に関わる事だし...」

 

なのはは此方は一応、監査に関わる事なので、下手に断ることは出来ないのではないと思い、はやてに尋ねる。

こちらの方も断れば、それを理由に六課を潰す理由を与えてしまう事になるかもしれない。

 

「はぁ~とにかく銀ちゃんを呼ぼか。」

 

はやてには地上本部からの命令を断る事は出来なかった。

 

 

~side銀時~

 

はやてに呼ばれた銀時は、

 

「何だ?はやて。俺に用って?」

 

ポリポリと頭をかきながらはやてに呼び出した要件を尋ねる。

 

「...さっき、ツナ君達が地上本部からの依頼で任務に行ったあとなんやけど...今度は地上本部に私らの他に銀ちゃんが呼ばれたんや...」

 

「なるほど...それで俺にもそこに行ってくれと...」

 

「ごめんな...」

 

はやてが珍しくシュンとして

 

「別にあれだろ、用はおっさんに文句でも1ついえばいいんだろ。」

 

「は、はは、それはええかもな、シグナムが帰ってき次第行くから、銀ちゃんは出掛ける準備をしといてな...」

 

「了解」

 

そして部隊長室から出たら其処にはヴィヴィオがいた。

 

「ん?どうした?ヴィヴィオ」

 

腰を落としてヴィヴィオの目線にした銀時。

 

「パパとママ出かけるの?」

 

「あぁ、お仕事だからな」

 

銀時がそう言うと泣きそうになったら

 

「泣くな泣くなヴィヴィオ、ヴィヴィオは強い子だろそんなすぐに泣くな、なっ?」

 

「ヴィヴィオ、いい子にお留守番しといてね」

 

なのはがいい子いい子と言いながらヴィヴィオをなでてあやす。

 

「いい子で、お留守番できるなら何かお土産買ってきてやるよ。」

 

銀時がそう言いヴィヴィオは目を拭いて

 

「約束だよ、パパ」

 

「あぁ、侍はできない約束はしねぇよ。」

 

そして新八にヴィヴィオを預け遊んでいた。

 

「銀さん?」

 

銀時がヴィヴィオを見る目は少し

 

「いや、話すことじゃねぇよ。」

 

と歩いて行った。

 

「そうですか...」

 

なのはは下を向き、ちょっとがっかりする。

私は銀時の過去を知らない。

あの人がこれまでどんな人生を歩んできたのか?

過去にどんな事があったのか?

銀時は決して自分の口から語ろうとしない。

 

「なのはちゃん」

 

親友のそんな顔をあまり見たくない。だから自分は、

 

「大丈夫やて、あんま気にしたあかんよ」

 

「はやてちゃん、ありがとう。」

 

自分はこんな事しかできひん、

 

「ほんま銀ちゃんも罪深い男やで」

 

「え?」

 

「だってこんな可愛い子にここまで心配してもらえるんやからな」

 

はやてにそう言われて少し頬を染めるなのは

 

「急に何言い出すの!?」

 

「大丈夫やで、なのはちゃんのその性格のおかげで、リィンフォースも、フェイトちゃんも助けられてんやからな、だから銀ちゃんも...な」

 

ウィンクをしてイタズラっぽい笑顔でなのはにそう言うはやて

 

「はやてちゃん、ありがとう。」

 

なのはも幸せだろう、こんな風に思ってくれる親友が2人もいるのだから。

 

外に出るとスバルとリボーンがいた。

 

「よぅ、てめぇらもお出かけか?」

 

随分と珍しい組合せだったので、銀時は声をかけた。

 

「あぁ、おもちゃがひとつなくなったからな、スバルと少し行くのもたまにはいいかと思ってな。」

 

リボーンは銀時の肩に乗り、

 

「気をつけろ」

 

「あ?」

 

「嵐の予感だぞ。」

 

銀時にそう告げて離れた

 

「え、ちょ、待ってよ、リボーン」

 

スバルは慌ててリボーンの背中を追いかけて行くそんな様子を銀は見ながら

 

「やれやれ」

 

そこへ、ツナ達を送り届けたシグナムも戻ってきた。

 

 

~side車~

 

現在地上本部へと向かう車中には運転席にシグナム、助手席にはやて、後部座席にはなのはと銀時が乗っていた。

 

「んで?これから向かう地上本部?だっけか?それはどんなところなんだ?」

 

銀時が地上本部について尋ねる。

 

「うーん‥それを教えるにはまず、管理局の構図を銀ちゃんに説明しよか?」

 

はやてが管理局全体の説明を銀時に行う。

まず、本局と呼ばれる部署、それは俗に『海』 『空』と分かれ、『海』は次元世界(宇宙)へ出て他の惑星に赴き、其処にロストギアがないか?また、新たな管理世界になりえないかを調査することが主な任務であり、『空』はその現地調査に同行し、その世界の現地にて『海』の隊員の護衛や調査任務の補助を行う。

また、『空』は『陸』の補助も行っているが、本局所属と言う事で、ミッド(『陸』)に居る『空』の隊員は『海』に居るよりも少ない。

そして、ミッドの治安維持を主任務としている『陸』。

『陸』は簡単に言えば、警察組織と同等の組織であり、これから向かう地上本部はその『陸』の総本山と言える場所であった。

 

「へぇ~‥‥」

 

はやての説明を聞き、銀時は一応、納得する。

 

(警察か‥‥となると、そこのドンはあの近藤(ゴリラ)の上司みたいな破天荒な中年おやじなのか?)

 

銀時はこの後会う予定の地上本部、本部長のレジアスのイメージを近藤達の上司、松平片栗虎みたいな男なのかと想像した。

そこで、

 

「なぁ、はやて‥‥」

 

「なんや?」

 

「もしかしてそこのお偉いさんって娘とかいるのか?」

 

「娘さん?おるで。因みにその人も局員で、レジアス中将の第一秘書をしとるから、多分、今日会うとちゃうんかな?」

 

(ゲッ、娘がいるのかよ!?)

 

娘が居ると言う事でますます、レジアス=松平片栗虎 のイメージが強くなる銀時。

 

「なんや?銀ちゃん、オーリス三佐(レジアスの娘)がそんなに気になるんか?」

 

「銀さん?」

 

銀時がレジアスの娘であるオーリスに興味を抱いたのかと思ったなのはは、銀時に向けて魔王の笑みを浮かべる。

 

「ち、ちげぇよ!!俺の世界の警察のドンが無茶苦茶な奴で、ソイツにも一人娘がいるんだよ‥それで、はやての話を聞いてソイツとこれから会う‥レイアースだっけ?ソイツが被ったんだよ」

 

銀時は急いでオーリスについて聞いたことを早口で言う。

なのはも車の中と言う事でレイジングハートを出して魔法弾をぶっ放す事はなかった。

 

「銀時、レイアースではなく、レジアスだ」

 

シグナムが運転しながら、銀時の間違いを指摘する。

 

「そんなに無茶苦茶な人なんか?銀ちゃんの世界の警察のお偉いさんは?」

 

はやてが銀時の世界の警察のトップについて銀時に尋ねる。

 

「ああ、アイツは警察と言うかヤクザでキャバ好きだな」

 

銀時は松平片栗虎のイメージを一言ではやて達に伝えた。

 

「や、ヤクザで‥‥」

 

「キャバ好き...」

 

「大丈夫なんか?銀ちゃんの世界の警察は‥‥その人、ホンマに警察のお偉いさんなんか?」

 

「ああ‥ソイツは間違いなくヤクザじゃなくて、警察のお偉いさんだ」

 

銀時の言葉を聞き、はやてとなのはは顔を引き攣らせて銀時の世界の警察を心配する。

 

 

~sideはやて~

 

そして車は地上本部へと到着した。

 

「ほな、シグナムはこのまま車で待っていてくれるか?」

 

はやてはシグナムにはこのまま車で待つように言う。

 

「しかし‥‥」

 

「レジアス中将は私らを偉く嫌っておる‥針の筵に座るのは私らでええ‥‥」

 

「主‥‥」

 

シグナムは、はやての言葉に感動している。

 

「‥んじゃ俺も?」

 

銀時は出来れば自分もシグナムと一緒に車に残りたいと言うが、

 

「残念やけど、銀ちゃんは来てもらうで」

 

ガシッと銀時の肩を握るはやて。

 

「やっぱり?」

 

「うん。来てもらうで」

 

こんなコントしてる中、

 

「八神はやて二佐ですね?」

 

1人の女性がやって来てはやてに声をかける。

 

「ん?そうやけど?アンタは?」

 

「私、レジアス中将の第二秘書をしております。カローラ・アクシオと申します。八神二佐をご案内するようにと中将から命を受けております」

 

「あん?そうなん?ご苦労様です」

 

「では、参りましょう」

 

カローラ・アクシオと名乗るレジアスの第二秘書の案内の下、レジアスの部屋へと向かうはやて達。

 

「失礼します。」

 

そして、はやて達はレジアスの部屋へと入った。

 

「レジアス・ゲイズ中将、機動六課の方々と民間協力者を連れてきました」

 

「おう、来てやったぜ~」

 

「フン、何ともでかい態度だな、機動六課の司令官は部下の躾もできんのか?」

 

銀時の態度にレジアスは明らかに不快感を現す。

 

「.....能書きはいいからさっさと用件を言え」

 

銀時は耳をほじりながらレジアスに態々自分を呼んだ理由を尋ねる。

 

「その前に、八神二佐、高町一等空尉」

 

「何でしょう?」

 

「君達は少し席を外してもらえないか?」

 

「はい?」

 

「実は君達を呼んだのは私ではなく、最高評議会の方々でね、君達には別室で‥‥」

 

レジアスの言葉にはやて達はレジアスを睨むが、

 

「ん?何だね?その目は?」

 

レジアスの眼光ではやてを黙らせる。

 

「いえ、失礼しました‥」

 

「フン、では、君達2人は別室で待機していてもらいたい」

 

「わ、分かりました」

 

はやて達はレジアスの指示に従い本部長室から出る。

 

「いいの?はやてちゃん」

 

「しゃーない、私達に何の用かは知らんけど、管理局のトップの命令は無下にはできんしな」

 

はやての言葉に黙るなのは

 

「八神二佐、高町一等空尉」

 

はやてとなのはは、先程自分らを案内したカローラが声をかける。

 

「お2人はこの個室で少々お待ちください。」

 

とある一室に迎え入れられた。

 

その頃、本部室では‥‥

 

「それで俺に何のようだ?」

 

「お前、地上本部に来ないか?」

 

「あ?」

 

「お前の戦闘は見せてもらった。他の次元漂流者や彼女達とは違い、魔力も無い特別な力もないそれでもあの鬼神の様な戦い、」

 

モニターが降ろされてきてモニターに写ったのは銀時のここに来ての戦闘動画だ。ご丁寧にしっかり全て載せられ編集されていた。

 

(何だ?こいつ、俺のストーカーかよ)

 

若干顔がひきつる銀時。

レジアスは銀時が抱いたイメージとはかけ離れていたが、それでも筋肉モリモリ マッチョマンの中年オヤジに絡まれるのはあまりいい気分ではない。

 

「あんな犯罪者達とは居たらお前は腐ってしまう、お前の態度のでかさは後で教育すばいい」

 

そして、レジアスはデスクから立ち上がり、銀時の前に来て

 

「いい話だろ?」

 

と、銀時をスカウトする。

 

「.......だから?」

 

「なに?」

 

「話がそんだけなら、俺は帰るぜ。」

 

銀時はレジアスのスカウトには興味も抱かず扉に向き歩きはじめる。

 

「ま、待て!一体何が不服なんだ!?それなりの地位をお前につける!金も名声も手に入るだろう!!」

 

「金だと?」

 

金という言葉に反応するもいつもと全然様子が違う。

普段の万年金欠の銀時ならば、即座に飛びついたはずである。

 

「あぁ、契約金は言い値で払う。それにお前の活躍次第では幾らでも上乗せもあるぞ。あんな犯罪者共が作ったごみ溜よりもずっと待遇はいいぞ」

 

「俺が嫌いな奴を教えてやるよ、1つは学園祭ではしゃぐ女子、2つはそれに便乗する男子、3つ目はそれ全てを受け入れるバカな教師。だがな、こいつはただ嫌いなだけだ。本当に嫌いで見るに堪えなねぇ奴は、権力振りかざして自分が正しいと思っている奴だ。この豚野郎、ごみ溜だぁ、上等じゃねぇか、んな上部だけの小綺麗な場所より、外観少し汚れた方が住みやすいんだよ。」

 

「貴方!先程から中将に向かい何という口の聞き方をしているの!!少しは「黙れ!!」」

 

銀時がレジアスの近くにいたオーリスをまるで獲物を仕留めるかのような目で睨みつける。

 

「!!?」

 

オーリスはその場で座り込んでしまう。

 

「テメェらの方こそ一体何様だ?あいつらの今を見ずに今までだけで決めつけやがって、次にんな口開いてみろ、俺達ァ国だろうと世界だろうとぶち壊すぜ」

 

「ふん、貴様は管理局の実態を知らぬからそんな事を言えるのだ」

 

「ん?」

 

「いいか、アイツら、本局の奴等はな、常に魔力やレアスキル、魔法が正しいと思い込み、私や此処に居る者は皆そこから省かれた者達だ!!奴らは魔力があるだけで、自分達がエリートだと勘違いし、力のない奴はゴミクズと扱う!!そして、力があるモノは何をしても許されていると思い込んでいる!!」

 

「‥‥」

 

「大体、奴らは正義の名を借り、時空世界でやりたい放題をして、他の世界の住人から憎しみを買い続け、その鎮圧に『陸』の魔導師達を引き抜いているのだ!!おかげでミッドの治安は乱れに乱れている!!にも関わらず、奴らはそれを我々『陸』のせいにしているのだ!!私はそれを変えたくて今、戦っている!!さぁ手を取れ、お前もこの腐った正義を打ち壊す協力をしろ...いや、するんだ!!」

 

レジアスの言葉を聞き銀時は、

 

「.....大層ご立派な演説だな。だが付き合う気はねぇぜ。」

 

「なぁに!!」

 

「『海』とやらがどんな闇抱えているのかは分かった。テメェの思いもわかった。だがな、さっきの言葉、はやて達を1度の過ち程度で、犯罪者呼ばわりしたテメェと変わりゃしねぇんだよ。」

 

「くっ!だが犯罪は犯罪だ!」

 

「うるせぇ!!」

 

「っ!?」

 

「いいか、覚えとけ、饒舌演説者、本当の罪ってのはな、償いたくても償えねぇんだ。」

 

「後で後悔するなよ」

 

「その台詞、そっくりお前に返すぜ」

 

この時、銀時はレジアスの言う事を全て信じる事は出来なかった。

だが、後に銀時はレジアスのこの言葉が当たっている事を知る事になる。

 

銀時はこれ以上、レジアスの話を聞く必要はないと判断し、扉を開き部屋を出る。

レジアス達は呆然とただ見ていることしかできなかった。 一瞬でも目を背ければ狩られる。何か口にすれば殺される。そんな恐怖に震えていた。

 

「あら?もうお帰りですか?」

 

銀時が部屋から出てすぐにいたのは先程はやて達を別室に案内したあのカローラと言う女性秘書だった。

 

「折角、お茶とお菓子をお持ちしたのに‥‥」

 

確かに彼女の言う通り、彼女が持つお盆の上にはお茶が入った湯呑み茶碗とお菓子がある。

 

「ん?なのは達はどうした?」

 

「まだそちらの用件は済んではいませんので、終わるまで少しお待ち頂けませんか?」

 

「あぁ?」

 

不機嫌そうな声を出すがこの女性には全く意味をなさなかった。

 

(この女、何者だ?ただのお偉いさんの秘書じゃねぇな‥‥)

 

先程のオーリスと違い、全く動じないこの女秘書に銀時は警戒するも此処は相手のお膝元、暴れたりすれば、かえってはやて達に迷惑がかかる。

 

「御2人が来るまで、待合室でお待ちください。」

 

「ちっ」

 

銀時は舌打ちをしつつ、カローラの案内の下、待合室へと向かい、其処でとりあえずお茶請けも食べようとするがそこでも警戒をする。

 

「‥‥」

 

「ふふ、どうぞ遠慮なさらずに‥毒など盛ってはいませんので」

 

そう言われて、

 

「.....んじゃ、遠慮なく食わせてもらうぜ。」

 

お茶請けのお菓子を食べ始めた。

 

 

~sideスバル~

 

「異常なし...かな!!」

 

外回りに来ているスバルとリボーン。

 

「みてぇだな」

 

「今日は六課全員がバタバタしているよね、何かあるのかな?」

 

「さぁな」

 

「ねぇ、リボーン」

 

「何だ?」

 

「銀さんと別れた時の言葉あれはどうゆう意味なの?」

 

「聞いていたのか?」

 

「バッチリ。これでも目と耳は良いんで」

 

「今回ツナ達が呼ばれた任務、銀時達が呼ばれた用件がただの偶然とは思えねぇんだ」

 

「じゃあ、誰かが仕組んだの?」

 

「さぁな。俺は管理局の人間じゃねぇから詳しい事情までは知らねぇ」

 

「え~」

 

スバルは役に立たないと内心思う。

 

「そもそも仕組んだにしては一貫性が無えしな。「いや、実はあるんだな~これが」」

 

「「っ!!?」」

 

リボーンの言葉を遮っって突如、のんびりとした口調の声がする。

 

「やっほ~」

 

「あ、貴方は」

 

「白蘭か!?」

 

空にはバリア・ジャケット姿の白蘭がいた。周りの人達は白蘭の姿を見て少しざわめきだすがスバルは至って普通でいた。

 

「やぁ、スバルちゃん...とリボーン、」

 

「何の用だ。」

 

「そろそろ鬱陶しいからね、消えてもらおうと思ってこんな感じで!!」

 

白蘭は指を向けて指から出た光線それをビルに当てる。

すると、ビルで大爆発が起き、周りの人々はパニックに陥り、辺りは忽ち大混乱となる。

 

「な、なんて事を!!マッハ・キャリバー!!」

 

スバルはトップスピードで爆破されたビルへと行く。

 

「はは、指が滑っちゃった。」

 

「白々しい‥‥相変わらずえげつねェな。」

 

ドン!間髪入れずにリボーンご自慢の早撃ちだが、

 

「おっと、危ないなァ~」

 

それを躱す。

 

「君と向きあえば何が来ても不思議じゃないからね。」

 

余裕なのか笑顔を全く崩さない白蘭。

 

「大丈夫ですか!?」

 

スバルは破壊されたビルから救助していた。

だが、被災現場はまさに地獄と化していた。

 

「うぅ~」

 

「痛い~‥‥」

 

「助けてくれ~‥‥」

 

周囲には血塗れの人々が周囲にあふれおり、突然の爆破で現場は混乱している。

 

「ひどい...何でこんなことが.....」

 

「そ、それは‥‥」

 

スバルは被災者に事の真相を伝える事が出来なかった。

それは自分でさえ、混乱しているのだから‥‥

 

「私は機動六課所属スバル・ナカジマ、貴方達を助けに来ました。援軍もすぐに駆けつけます!皆さん安心してください。私達が命を懸けて貴方方をお守りします。」

 

手に拳を当て、少しでもこの場に混乱を宥める。

そして、

 

「こちらスターズ3につき緊急事態報告します!白蘭が現れ一部被害を受けました。至急救助隊と医療班を私はすぐに敵と応戦します!!」

 

応援を呼ぶと、今回の爆破の犯人、白蘭の下へ向かった。

 

 

 




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的58 どんなに特別でも、普通と何も変わらない。

更新です。


~side白蘭~

 

「う~ん‥君の自慢の生徒さんも、銀髪侍もいないねぇ~」

 

これだけの騒ぎならば、ツナ達が来てもおかしくはないと思っていた白蘭だったが、何時まで経ってもツナも銀時も現れない事にちょっと疑問を感じている白蘭。

 

「お前何をしに来やがった。」

 

「別に、近くを立ち寄ったらたまたま君達を見かけたから声をかけたんだよ。」

 

「テメェ、ふざけているのか?」

 

白蘭の言葉がどうしても信じられないリボーン。

 

「ふざけてなんかいないさ、ただ僕個人としてもどうしても譲れないものがあるのさ」

 

「譲れないものだと?」

 

白蘭の言葉に眉を顰めるリボーン。

 

「うん、それはもう1人来てからね。確かに今日此処に居るのは偶然だけど、前々から用がある人物が居たから、今日はその用事を済ませようと思ってね‥‥」

 

「?」

 

白蘭の言う『もう1人』と言う言葉に首を傾げるリボーン。

そこへ、

 

「リボーン!!」

 

「スバル、」

 

ビル爆破現場から戻って来たスバルがリボーンと合流した。

 

「皆の避難はだいたい終わったよ。六課に連絡も言ったからすぐに来るって」

 

「いやぁ~ソレは面倒だねぇ~君の生徒やあの銀髪の侍が来るのは正直好まない。だから要件をさっさと終わらせないとねぇ~♪」

 

 

「要件?」

 

「?」

 

白蘭の要件とは何なのだろうか?

しかも彼の様子からどうも、用があるのは自分ではなく、スバルに有る様だ。

リボーンの予想通り、白蘭は顔をスバルに向けると、

 

「スバル・ナカジマ、僕と一緒に来ないかい」

 

突如、彼はスバルに自分達の側につかないかとスバルをスカウトしてきた。

 

「え?」

 

いきなり白蘭からスカウトされたスバルはキョトンとする。

 

「やはり、スバルが目的か!?」

 

「何言っているの?私は貴方と何て絶対行かない!!皆を傷つけ、皆に恐怖を与えた貴方と何て.....「フフ‥若いねぇ~」」

 

最初はキョトンとしていたスバルであるが、次第に白蘭の言葉の意味を理解すると、白蘭を睨んで、彼の誘いを拒否するが、スバルの言葉を遮って白蘭はやれやれと呆れた態度をとる。

 

「え?」

 

「やっぱり君は若すぎるね、もうすぐ起きる戦争はこれぐらいじゃ済まないよ」

 

「戦争?」

 

「うん♪」

 

「白蘭、テメェ一体何を企んでやがる。」

 

「ねぇ、スバルちゃん。正義って何かわかる?」

 

リボーンは白蘭を睨みつけるが、白蘭はリボーンを無視して尚もスバルに話しかける。

 

「え?」

 

「正義だよ、正義‥‥スバルちゃんは一般人の命を守る管理局が正義って思っているでしょう?」

 

「.....」

 

「でもね、それは夢見る子供達と何ら変わんないのさ、本当の正義っていうのは、勝者が作った虚言さ、正義は正しい?そりゃそうさ、勝ったものが正しているんだから‥‥よく言うだろう?『死人に口なし』『勝てば官軍負ければ賊軍』って‥‥」

 

「一体何が言いたいの?」

 

正義理論を語る白蘭を睨むスバル。

彼の言う事はスバルなりに理解はしている。

それでも管理局が正義と信じているのは、自分の父も母も姉も管理局を信じてきたからだ。

 

「僕が言いたいのは、これから勝者が‥正義がガラッと変わるってことさ~♪この腐りきった正義の崩壊と共に新たな時代がやってくるのさ!!」

 

「皆を傷つける貴方達テロリスト何かの所に行くわけない!!」

 

「へぇ~テロリストねぇ~」

 

「そうだ!!お前達は皆を傷つけた!!それでいて何が正義だ!!私は戦う!!貴方達から皆を守る為に!!」

 

「スバル」

 

「ハハ‥ハハハハハハハハハハハ‥‥スバルちゃんの大層ご立派な考えは分かった。だからこそ言っておくけどね、管理局は人なんて守ってなんかいないよ」

 

「え?」

 

「奴らが守っているのは税金を払う人間と自分たちの地位を確立させる人間だけなんだよ。まぁ、中にはスバルちゃんのような人もいるけどね。だけど、どんなに偽善者が居てもあまり意味は無いのさ、寄せ集めの偽善より個人のどす黒い欲望や執着の方が強い!!この世界はそう出来ているからね!!」

 

「嘘だ!!」

 

「落ち着けスバル、管理局がどんな闇を抱えていようと関係ない。お前はお前だろ。」

 

「リボーン...うん!」

 

「私はバカだから難しい事はよくわからない。」

 

「...」

 

「でも私が知っている人達はね、欲望の大きさだけの優しさを持っているよ、」

 

「管理局が何とか、そんなの私には関係ない、私は機動六課所属、スバル・ナカジマ、私の力は壊すためじゃない。」

 

スバルは己の信念に従い、管理局を信じ、自分の正義を貫くと白蘭に宣言する。

 

「ふ~ん‥‥ところで君はミッドから出て他の管理世界に行った事があるかい?」

 

「えっ?」

 

すると、突然白蘭は話題を変えて、スバルにミッド以外の管理世界に行ったことがあるかと尋ねてきた。

 

「君は、他の管理世界‥‥特に辺境に近い管理世界へと行った事があるかと聞いているんだよ」

 

「‥‥」

 

「どうなの?」

 

「‥ない」

 

スバルはこれまでミッド以外の管理世界に行ったことがなく、この前任務で赴いた地球がスバルの初の世界旅行であった。

それ故に他の管理世界がどういった世界なのかは管理局がテレビ放送で流しているPVや旅行のパンフレットの写真でしか見た事がない。

 

「やっぱりね、だから君は管理局が正義なんて思えるんだよ」

 

白蘭は上から目線でスバルに語る。

 

「まぁ‥‥もしだけど、僕達が戦争で負けた後で良い‥‥他の管理世界‥‥そうだな‥‥管理世界番号が末端の世界にでも行ってみるといい、君の信じる管理局のいう正義が揺らぐさ‥‥絶対にね」

 

最後の台詞を吐いた時の白蘭の顔はまさに狂気に満ちる笑みを浮かべていた。

その笑みに思わずビクッと身体を震わせるスバル。

リボーンでさえも冷や汗が一筋流れた。

 

「でもさ‥‥」

 

そして白蘭は再び話題を変えてきた。

 

「そもそも君の存在自体って矛盾しているよね?」

 

白蘭は、クスッと小馬鹿にした笑みを浮かべてスバルの存在を否定し始めた。

スバルは白蘭の言う『存在』という部分に反応した。

 

「ん?何を言っている?白蘭」

 

「あれ?君、もしかしてお仲間に自分の正体を教えていないの?」

 

白蘭の言葉にスバルからは脂汗が滲み出て、身体も小刻みに震えている。

この場に居るのが父であるゲンヤ、姉のギンガ、そしてスバルの出生の秘密を知っているマリー、ティアナならば、此処までの反応は示さなかったが、今此処に居るのはリボーンだ。

彼が自分の正体を知れば、そこからツナ、フェイト、なのは、はやて達に自分の正体が知れ渡ってしまうかもしれない。

自分の正体がバレた時、皆は自分の事をどう思うだろうか?

皆が皆、ティアナの様に自分を受け入れてくれるとは限らない。

もしかしたら、自分の事を化け物の様に見るかもしれない。

スバルはそれが怖かった。

 

「へぇ~だったら、僕は親切だからね、リボーン‥君にこの子の事を教えてあげよう。実はスバルちゃんはね‥‥」

 

「黙れ!!ディバインバスター!!」

 

スバルは白蘭の口を黙らせようと白蘭に渾身のディバインバスターをお見舞いする。

だが、

 

「フンっ!!」

 

白蘭はスバルのディバインバスターは片手で弾き飛ばした。

 

「っ!?」

 

「なんなんだァ?今のはぁ?」

 

「スバルの‥ディバインバスターを片手で‥‥まるで、虫を払うかの様に‥‥」

 

白蘭の行動にリボーンも少し驚いた。

 

「やれやれ、いきなり撃つとは乱暴だなぁ~ まっ、それが君の本性なのかもしれないけどね」

 

「っ!?」

 

「おい、さっきから何訳の分からないことをベラベラ言っている!?」

 

「そうだね、リボーン君が待ちくたびれているみたいだから、教えてあげよう」

 

「い、嫌!!止めて!!」

 

スバルは大声をあげて白蘭に自分の正体をバラすのを止めようとするが、白蘭は止める事無く、リボーンにスバルの正体を教えた。

 

「其処に居るスバルちゃんはね、ただの人間じゃない‥‥戦闘機人と呼ばれる存在なんだよ」

 

「戦闘機人?‥‥だと?」

 

「そう‥‥簡単に言えば、殺戮人形‥人間モドキの兵器さ」

 

「‥‥」

 

リボーンに自分の正体を知られたスバルは顔を俯かせる。

 

「スバルが‥‥って事はまさか、姉の‥‥」

 

「そう、スバルちゃんのお姉さん、ギンガちゃんもスバルちゃんと同じ、戦闘機人‥‥君達がこれまで何度か戦ってきたあのトレディとか言う子と同じ存在なんだよ」

 

「‥‥」

 

白蘭の言葉に完全に意気消沈しているスバル。

 

「全く、管理局は勝手だよね?自分からクローンや戦闘機人研究は禁止しているくせにその戦闘機人やクローンを局員として雇っているんだから‥‥それとも管理局員は自分達が決めた法律を破っても良いって言う暗黙の了解でもあるのかな?ねぇ、その点どう思う?戦闘機人のスバルちゃん」

 

「‥‥」

 

「でも、その暗黙の了解があるからこそ、今の君達がある訳だ‥‥もし、管理局が厳しく法律を施行していたら、君達姉妹は処分されていてもおかしくはなかったからねぇ。ハハハハハ‥‥よかったね、スバルちゃん。管理局が正義の味方で、ハハハハハ‥‥」

 

管理局に対する皮肉をたっぷりと含んだ言い方をしながら、白蘭は腹を抱えて笑う。

 

「ん?ちょっと、ねぇ、こんな事で簡単に壊れないでよ、君は戦うと言ったんだから、この後の戦争には是非とも参戦してくれないと困るんだけど?」

 

「おい、いい加減にしろよ!!白蘭!!」

 

リボーンは意気消沈しているスバルを守るかのように彼女の前に立ち白蘭を睨む。

 

「嫌だなぁ~僕は君にスバルちゃんの真実を教えてあげたのになぁ~そこまで言われるのは心外だよぉ~」

 

「確かにお前が言った事はスバルの出生に関する真実かもしれない。だが、どんな生まれをしようよと関係ねぇ。これまで管理局員としてのスバルを見れば、スバルは決してお前の言う殺戮人形でも兵器でもねぇ」

 

「まぁ、どう解釈しようが、君の勝手さ‥でも、この世界の人間全員がスバルちゃんの様に異端を受け入れるわけじゃない。それはスバルちゃん、君自身がよく分かっている筈だ」

 

「‥‥」

 

確かに白蘭の言う通り、この世界全ての人間がスバルの様な異端の存在を受け入れてくれるわけではない事をスバルだってちゃんと認識している。

 

「そんな連中もスバルちゃん、君は今後も助けるのかい?」

 

「‥‥」

 

「君に助けられた人間が、君の正体を知った途端、『化け物』『人のふりをした人形』『汚らわしい、触るな!!近づくな!!』と罵倒してくるかもしれないのに‥‥ねぇ、そんな連中、救う価値はあるの?」

 

「そ、それは‥‥」

 

「ないよね?そんな恩知らず‥‥」

 

「‥‥」

 

「もう一度言うよ‥‥スバルちゃん、僕らの仲間にならないかい?僕らの作る新しい世界は君にとって‥いや、君達姉妹にとってきっと住みやすい、優しい世界になるよ」

 

そう言いながら、白蘭はゆっくりとスバルの傍に寄り、手を伸ばす。

 

「スバル、コイツの言う事なんて信じるな!!」

 

「うっ‥‥でも‥‥リボーン‥‥」

 

スバルの心は揺れていた。

白蘭の言葉はまさに麻薬の様に甘美で危険な言葉であった。

そこへ、

 

「クロス・ファイヤーシュート!!」

 

オレンジ色の魔法弾が白蘭に向かって数発向かって来た。

 

「チッ」

 

白蘭は飛び上がり、その魔法弾を躱す。

 

「スバル!!アンタ、なにやっているのよ!?アンタらしくもない」

 

「ティア‥‥」

 

其処にはバイクに跨りながら、クロスミラージュを構えるティアナの姿があった。

 

 

 

~side地上本部ビル~

 

 

スバルとリボーンの下にティアナが駆け付けた頃、地上本部ビルの一室で待たされているはやてとなのはは‥‥

 

「ええい!!何時まで待たせるねん!!」

 

かれこれ、一時間以上、別室で待たされているはやてが、遂に切れた。

 

「は、はやてちゃん、落ち着いて!!」

 

「大体、人を待たせておいて、茶の一杯も出さんてどういう事や!!」

 

「そ、それはそうだけど‥‥」

 

「あぁ~もう、ちょっと自販機で何か飲み物でも買って来るわ!!お偉いさんが来たら、なのはちゃん、ちょっと時間稼ぎ頼むで!!」

 

「えっ!?ちょっと!!はやてちゃん!!」

 

なのはの言葉を背中に受けながら、はやては乱暴に部屋のドアを開けると、ズカズカと大股で自販機の下へと向かった。

その途中で、はやては見てしまった。

 

「うぅ~ん‥流石、『陸』の総本山、良い素材を使ってんなぁ~そこら辺のファミレスのパフェとは一味違うぜ」

 

てっきりレジアスの部屋にいると思っていた銀時が待合室でパフェを食べている姿を‥‥

しかも、テーブルには空の器がいくつもおいてあり、自分達が待ちぼうけを喰らわされている間、彼はスイーツに舌鼓をうっていたのだ。

 

「ん?おっ、はやて。もう終わったのか?」

 

銀時もはやてに気づき、片手をあげて声をかけてきた。

 

「‥‥」

 

銀時と自分達の対応の差に理不尽を感じたはやては、

 

「ぎぃ~ん~とぉ~きぃ~!!」

 

シュベルトクロイツを片手に握りしめ、凄い形相で銀時に迫って来た。

 

「えっ!?ちょっ!?はやてさん!?なんでそんなに怒っているの!?」

 

何故、はやてがあそこまで怒っているのか理解できない銀時。

 

「ちょっ!!お巡りさん!!殿中!!ここ殿中ですよ!!」

 

「やかましいわ!!」

 

はやてが銀時に迫っていると、

 

「何をしているのですか!?八神二佐」

 

「ぐぇ」

 

はやての後ろ襟をカローラが掴む。

突然、後ろ襟を掴まれたせいではやてはまるでカエルが潰れた様な声を出す。

 

「仮にも管理局の左官とあろう方が、地上本部ビルでデバイスを起動して、民間協力者に襲い掛かるなんて」

 

「す、すんまへん‥‥」

 

「で、何故、この様な蛮行を?」

 

はやてはカローラに訳を話すと、

 

「それは此方の配慮に欠けました。申し訳ございません。後で其方にも何か届けますので、もうしばらくお待ちください」

 

「は、はい」

 

カローラに諌められ、はやては再び部屋へと戻って行った。

 

「いや~助かったぜ、サンキュー」

 

銀時は自分の事を助けてくれたカローラに礼を言う。

当初は、この第二秘書を警戒していたが、自分を助けてくれたことにより、ほんの僅かだが、この秘書に対する警戒を緩めた銀時だった。

 

「い、いえ」

 

「あっ、そうだ。ちょっと頼みたい事がるんだけど‥‥」

 

「なんでしょう?」

 

「帰りにこのケーキ、幾つか土産にしたいんで、箱に詰めておいてくれる?」

 

銀時はカローラにヴィヴィオの土産様にケーキの箱詰めを頼んだ。

 

「しょ、承知しました」

 

カローラは銀時の頼みを聞き、彼に一礼するとその場から去って行った。

 

 

場面は再びスバル、リボーン、白蘭、そして現場に駆け付けたティアナの所へ移る。

 

~sideスバル~

 

「アンタ、なにやっているのよ!?アンタらしくもない」

 

「ティア‥‥」

 

「アンタ、スバルに何をしたの!?」

 

スバルの様子が変だったことにティアナは白蘭がスバルに何かをしたのだと思い、白蘭を睨みつけながら尋ねる。

 

「別に何も」

 

「嘘ね!!」

 

「やれやれ、邪魔が入ったね。今回は時間切れってところかな?それじゃあまたね、スバルちゃん、今度また答えを聞きに行くよ」

白蘭そう言い残して飛び去っていった。

 

「‥‥」

 

「おい、スバル」

 

「‥‥」

 

「スバル!!」

 

リボーンはスバルの頬をしばき

 

「キャ!」

そしてスバルの首裾を思いっきり掴む。

 

「ちょっ、リボーン!!あんた何を!?」

 

「少し黙っていろ!」

 

ティアナに一喝した後、リボーンがスバルから視線を逸らさず、

 

「おい、スバル。俺を見てどう思う?」

 

「え?」

 

「お前は俺の姿を見てどう思う!?お前は俺の姿を見て気持ち悪いか!神楽を見てバケモノと思うか!魔力ではない別の力を持つツナ達を見て不気味に思うか!!」

 

 

「何を...」

 

「いいから答えろ!!」

 

「.....思わない」

 

「声が小さい!!」

 

スバルは俯いていた顔を上げて、

 

「思わないよ!!」

 

「俺達もお前と同じだ。この世界じゃ異端だ。ティアナともお前とも違う、それでもな俺の生徒ならこういうだろうな『貴女がどんな生まれ方をしても、俺はずっと貴女仲間でいるつもりです。』ってな」

 

「‥‥」

 

「人が人である為の定義があるとしたら、喜怒哀楽の感情をもち人を思える心があり、自分の曲げたくねぇ信念、それだけあれば十分だ。お前にはそれがあんだろ」

 

「リボーン...でも他の人は」

 

「そんな奴絶対に居ねぇ...とは言いきれないだが、人は慣れる生き物だ。お前が皆に受け入れられたいと思うなら何時かは絶対受け入れられる。お前は確かにバカな奴だが、あいつ以上の努力家だ。」

 

「う、うん‥‥ありが‥とう‥?」

 

リボーンの褒めている様な、褒めていない様な内容に戸惑いながらも一応、礼を言うスバル。

 

「それにだ、スバル。この世に万人に慕われる人間なんていねぇぞ、もしお前が万人という人から疎まれたとしても、少なくとも俺達は周お前を慕ってるぞ。そうだろティアナ?」

 

「‥‥」

 

「えぇ、リボーンの言う通りよ、スバル。少なくとも私はあんたの事、嫌いじゃないから」

 

「うん‥ありがとう。ティア、リボーン」

 

(私にはこんなに強いつながりがあるんだ。)

 

そんな事を思いたがらティアナとリボーンはスバルの身体に身を寄せて彼女を抱きしめた。

彼女の瞳から一つの筋を引くかのように泪がこぼれ落ちてそれをティアナとリボーンは優しく拭き取る。

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的59 幾千の言葉より一発の拳

すいません。一日あけてしまいました。
更新です。


 

 

 

~sideはやて~

 

現在地上本部での待機命令が出ているなのはとはやて。

先程まで堅苦しい部屋に待たされていたのにお茶の一杯、茶菓子すら出んのか!?と怒りに燃えていたはやてが先程と打って変わって、今はご機嫌に菓子を食べていた。

 

「いや~さっすが地上本部や、いい材料つこぅてはるなぁ~それに作るシェフも腕がええから、尚更具材の味が引きたっとる~」

 

「はやてちゃん、もう少し遠慮しようよ‥‥」

 

その遠慮の無さになのはもたじたじである。

 

「なのはちゃんも食べな損する美味さやで」

 

「う~ん」

 

正直に言って、なのはだって食べたい。しかし、ここまで遠慮無く食べている人を前にしたら食欲が無くなるものだ。

 

「はやてちゃんいい加減にしないとさぁ‥‥」

 

これだけは言いたくない、流石に無神経だと思えるがそれでも遅くなってはいけない。だから決意した。

 

 

「太るよ」

 

 

なのはのこの一言で、はやての手の動きピタッと一瞬で止まり、

 

「やっぱり、最近横腹が気になり始めてんや‥‥私、大丈夫かなぁ?なぁなのはちゃん」

 

また先程とは打って変わって今度は泣き始めた。

はやての言う通り、最近はやては主にデスクワーク中心で現場にも訓練にも出ていないので、運動不足となっている。

そのうえ、朝、昼、夜の三食はちゃんと食べているので、最近ちょっと脇腹が気になっていた。

そんな中、大量のお菓子となのはの「太るよ」のこの一言は、はやてに強烈な一撃を与えるのに十分な威力であった。

こんな時に管理局のお偉いさんが来た時どうしよう?

本当に賑やかな人だ。

なのはがそう思っていると、

 

コンコン‥‥

 

部屋のドアがノックされ、

 

「失礼します。...あの‥‥」

 

カローラが部屋に入って来た。

 

「はっ!いや何でもないです、どないしましたん?」

 

はやては一瞬のうちに涙顔から普段の顔に戻り、カローラに応対する。

 

「誠に勝手ながら最高評議会の方々は急用が入り、本日は会見できなくなりました。六課の査察については、『運営に関して問題ない』とおっしゃっていました」 

 

「そうですか」

 

何事も無かったかのように笑顔を浮かべるはやて。

もし、はやてがキレるタイミングが遅かったら、恐らくはやてはカローラに待ちぼうけを食らわされた怒りをぶつけていただろう。

だが、美味しいお菓子のおもてなしで機嫌が直ったはやてはカローラに怒りをぶつける事はなかった。

 

「あの銀さ‥坂田銀時さんは?」

 

なのははカローラに銀時の事を尋ねる。

 

「先に伝えました所、『先に駐車場にて待っている』と仰っていました」

 

「そうですか、ほな、これで失礼します」

 

「ご足労おかけしました」

 

はやてとなのははカローラに一礼し、銀時とシグナムが待つ駐車場へと向かった。

 

そしてシグナムを呼び銀時と合流して、

 

「銀さん、何もされへんかったか?」

 

レジアスに何かされなかったかを尋ねる。

 

「え?あぁ、にしてもあそこのパフェ美味しかったなぁ~」

 

まぁ、待合室であれだけのスイーツを食べていたのだから、何もされていないだろう。

 

「確かに、メッチャ美味しかったわ」

 

銀時同様、別室でお菓子を食べまくっていたはやても銀時に同調する。

 

「んで?お前らの方も何もなかったのか?」

 

「うん、査察の方も今の所問題なしって、後は‥‥」

 

「あっちか」

 

銀時達は、地上本部からの依頼を受けたフェイトとツナの方を心配した。

 

 

~sideツナ~

 

船首の船倉に行くには一度船外から出て船首の入り口から入らなければならない。その途中で、ツナは‥‥

 

(それにしてもあの子達は一体何だったんだろう?)

 

先程、パーティー会場ではぐれていたリコと言う名の少女と彼女の連れのジャンのことを考えながら歩いていた。

 

(あの2人‥‥普通の人とも魔導師とも違う何かを感じた‥‥)

 

ツナはその違和感に似た感覚を普段、身近に感じている様な気がしていたがその違和感をどうしても思い出せない。

そんな中、

 

カッ カッ カッ カッ

 

「な、何?」

 

ツナが船外に出ると突然、自分に向かって幾つものナイフが投擲された。

 

「1つだけ聞くが、お前が沢田綱吉か?」

 

立っていたのは銀髪の長い髪に眼帯をした少女と‥‥

 

「き、君はさっきの!」

 

パーティー会場にて『リコ』と呼ばれた少女が立っていた。

しかも服装は先程、パーティー会場で着ていたドレスではなく、青を基調としたボディースーツだった。

そして、リコの首元には『Ⅻ』隣に立つ銀髪眼帯少女は『Ⅴ』の数字が書かれていた。

 

「先程はどうも、それで私たちの質問に答えなさい‥‥それと私の名前は、ナンバーズ12、ディードと申します。此方は姉のナンバーズ5 チンクです‥‥」

 

リコ‥‥もとい、ディード名乗った少女は無機質な声でツナに尋ねる。

 

「だったらなんだと言うんですか?」

 

ツナは少し声を下げて答えて

 

「私達の目的は貴方とFの遺産であるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの2名‥‥」

 

「っ!?」

 

フェイトの名前が出てツナは、

 

「お前達が何故俺達を狙うか知らないがフェイトに危害を加えるつもりならここで倒す!!」

 

ツナはハイパー化して戦闘態勢を整えた。

 

(雰囲気が変わった!?)

 

(気をつけろ。ディード)

 

2人は念話をしながらツナを警戒した。

 

「はぁ!」

 

グローブに炎が灯り次の瞬間

 

「なっ!」

 

「バカなッ!?」

 

一瞬で2人の目の前にいた。

 

「フン!!」

 

そして2人を吹っ飛ばして、

 

「どうした、お前達の力がこんなものなら拍子抜けだぜ。トレディの方がもっと強いんじゃないのか?」

 

(あいつ!!)

 

ディードはツナの挑発めいた言葉にカッとなり、

 

(落ち着けディード!戦場では冷静さを欠いた者の負けだ!!)

 

(くっ‥‥)

 

チンクに止められ、

 

(ディード、姉が陽動かける。隙ができたら奴を仕留めろ!!最悪手足の1本は切り落としても構わん!!)

 

ディードはチンクの作戦を聞き、一旦考えて、

 

(わかった。)

 

ツナを睨んだ。

 

 

~sideフェイト~

 

一方、船尾の船倉に向かったフェイトの方では‥‥

 

「あ、あなたは!?」

 

フェイトが目にしたのは2人の女性。片方は見た事が無かったが、もうひとりは先程自分に飲み物を渡した女性のバーテンダーだった。

2人の服装はやはり、青を基調としてボディースーツを身に纏っていた。

 

「貴女がFの遺産‥フェイトお嬢様ですね?よけしければ、我々とご同行を願います。」

 

「く!あなた達は何者!」

 

「ナンバーズ7、セッテ。」

 

ピンクの髪をした女性と

 

「同じくナンバーズ8、オットー」

 

茶色の髪の子が、それぞれフェイトに名を名乗る。

 

「ナンバーズ‥‥バルディッシュ」

 

フェイトもバリアジャケットを展開して戦闘態勢をとった。

 

 

~sideツナ~

 

船首では完全にツナが有利に思われたが、

 

「Isツインブレイズ発動。」

 

(ら、ライ○セーバー!?)

 

ディードはビームで出来た刃のようなものから刀の柄から出てツナに襲いかかった。

 

(何なんだ?さっきから感じるこの違和感は?)

 

考えているうちにディードは2本の刀の片方がツナの頬をかすった。

ツナの頬からはツゥーっと血が流れる。

 

「戦いの中で考え事か?随分と余裕だな。ボンゴレ10代目。」

 

「っ!?な、何故それを!?」

 

ツナが聞こうとしている間に2本のナイフが飛んできた。

それをツナはキャッチをして

 

「もう1人いるのを忘れるなそして‥‥」

 

(何だ?)

 

ツナは直感的に危険を感じてナイフを離した。

 

「IS発動!ランブルデトネイター」

 

ドーン!!

 

ナイフが突如爆発した。

もしあのまま手に持っていたら、手がどうなっていたか考えるだけでも恐ろしい。

 

「くっ‥‥」

 

ツナの頬に冷や汗が流れた。

 

 

~sideフェイト~

 

一方のフェイトも苦戦を強いられていた。

 

「Isスローターアームズ」

 

セッテからブーメランのようなものが出てきてフェイトを襲うがフェイトはこれを魔法弾で壊してセッテに近づくが

 

「Is、レイストーム」

そう言うと複数の光線がフェイトを襲うそれをかわしていったがそしたらセッテのブーメランも復活をしてフェイトを襲うがフェイトのスピードはそれを超えた。

 

(私のもツナのように速く的確に...ここ!)

 

攻撃の間にできた隙間から

 

「トライデント...スマッシャー」

 

直線的な魔法弾が二人に向かい

 

ズドーン!!

 

爆発が起きた。

 

 

~sideツナ~

 

「はぁぁー!!」

 

チンクのナイフ攻撃とIS能力、そして、ディードのツインブレイド、この攻撃がツナを追い詰めて行き、

 

「ディード、ソイツから離れろ!!」

 

チンクがディードに離れる様に言うと、ディードはツナから距離をとる。

 

(一体何を考えている?)

 

チンクの行動の意味を理解できないツナ。

だが、答えは直ぐに分かった。

 

「IS発動!ランブルデトネイター」

 

チンクが自身のIS能力を発動させる。

すると、ツナの周りには最初にチンクが投擲したナイフが刺さっていた。

 

「しまっ‥‥」

 

ツナが急いでその場から逃げようとすると、

 

ドカーン!!

 

爆発が起き、ツナはその爆発に巻き込まれた。

 

「‥‥決まった。案外あっけなかったね、チンク姉。」

 

チンクのISが完全にヒットしたのを見てディードががっかりしたように呟く。

 

「ああ。裏社会のボスと聞いていたが所詮は魔力を持たぬ人間‥こんなものか...」

 

「何故俺のことを知っている?」

 

「っ!?」

 

「な、何だと。何故‥‥」

 

「あの程度の攻撃でやられる程、俺はやわじゃない。」

 

「くっ、舐めるな!!」

 

とホコリを払いそしたらディードが刀をツナに振りかざした。

 

「はぁぁ!」

 

だがツナはそれを受け止めディードを自分の元に引っ張り、ディードの首を狙った。だがディードは残っていたもう一方の刀でそれをツナに誘うとした。が

 

「...狙い通りだ。」

 

「何!?」

 

もう一方も受け止めて、

 

「死ぬ気の零地点突破初代エディション」

 

受け止めた刀を凍らせた。

 

「これでお前の武器は無くなった。」

 

ツナはディードを離して

 

「何故!武器を無くなった私を攻撃しない。」

 

「...戦意の無い人を傷つけるつもりは無い、お前も戦う気がないならもう辞めてくれ。」

 

ツナのその言葉を聞きチンクは、

 

「ふざけるな!!これは戦いだ!そのような甘い考えが戦場で通ると思うなよ!!」

 

とまたナイフを投げ得意の爆発をさせようとしたが、

 

「ふっ!」

 

腕を大きく振りグローブから出る炎でシールドをはって

 

バンバンバン!

 

「くっ!」

 

「これがお前の言う戦いか?」

 

「‥何が言いたい。」

 

「お前達からは意思を全く感じない...最初は何かわからなかったが...お前達の意思の無い攻撃など俺には通じない!!」

 

ツナの炎が急に大きく揺らぎ色に深みがました。

 

 

~sideチンク~

 

「私達の意志がないだと‥‥?どういう意味だ!?貴様!!」

 

「‥‥」

 

ツナの言葉に対して、チンクは怒気を含んだ声でツナを睨む。

それはディードも同じで彼女もツナの事を睨んでいる。

元々、感情をほとんど植え付けられないまま稼働したディードであったが、ツナの言葉は理由もなく無性にディードをイライラさせた。

 

「...この世界に来てからいろんな人に会った。」

 

ずっと疲れても練習をするティアナそれに飛びつくスバル、

ツッコミ役である新八にいたずらをして彼と追いかけあっている神楽、

フリードを撫でながらエリオと喋っているキャロ、

何か大きなものを背負い今もたまに悲しい瞳をする銀時、

調理場所で料理とはいえない何かを作っているシャマル、

まだ二十歳前ながらも一部隊を指揮しているはやて、

自分の身が傷つきながらも部下を思うヴィータ、

剣を振りたまに自分にも模擬戦を挑むシグナム、

ふぁ~とあくびをして自分を認識して走ってくる定春、

ずっと夜遅くまで訓練計画を練っているなのは、

いつも優しくにこやかに迎えてくれるフェイト、

 

そして、オレンジの髪で傘を携えた神楽と似た面影を持つあの男の背中も...

 

「黙れ!お前如きに私達の何がわかる!!」

 

チンクとしては稼働した時から自分は人間では無く強力な兵器として生まれ、その存在価値を示す為には常に勝ち続けなければならなかった。

彼女が、かつてゼストと戦い再生治療が可能な筈の右目をそのままにしているのは、自分への諫めだった。

眼前の非魔導士なんかの男に敗北、同情なんてされたら、これまでの稼働年月がすべて無駄となり、自分の存在が否定されている気がしてならなかった。

 

「俺はお前達の事はわからない...だが、迷っているならこれ以上戦おうとしないでくれ...」

 

悲しげな瞳をそして炎の勢いも弱まった。

チンクは苦虫を噛み潰したよう顔でツナを睨んだまま。

その時、

 

(ディード)

 

ディードの下に突然、オットーから念話が届いた。

 

(オットー、どうしたの?)

 

(Fの遺産を捕まえた。)

 

(本当に!?)

 

(あぁ、そっちの状況は?)

 

(ごめん、こっちは正直ちょっと苦戦している...)

 

(なら、僕達のところに呼んで‥‥セッテと一緒に四人でやろう)

 

(...うん)

 

(どうしたの?)

 

(ううん、何も無い...今から行くから‥‥)

 

(うん、待っている‥‥)

 

(‥‥チンク姉様)

 

ディードはオットーとの念話を切り、次にチンクへと念話を繋いだ。

 

 

~sideフェイト~

 

時は少し遡り

 

「くっ、データ通り、確かに速くて強い‥だが‥‥オットー、AMFの濃度を上げて」

 

セッテは声を潜めてオットーにAMFの濃度を高める様に頼む。

 

「わかった。」

 

オットーはAMF発生装置を調節し、AMFの濃度を強めていく。

それはガジェットが発するAMFの濃度を遥かに超えるモノだった。

 

「何!」

 

バルディッシュの機能が低下し、フェイトは体が重く感じた。

 

(AMFのせいで魔力が...)

 

AMFのせいで魔力が下がって行く事に気づいた。

しかし、その時には既に遅く、オットーのIS能力は結界にも使用する事が出来、フェイトは完全にオットーが作り出した空間に閉じ込められた。

戦闘機人達の独自能力であるISは魔法と違う能力であり、AMFの効果を一切受けない。

魔導師によくありがちな体質で、魔法のみに頼り、身体の基本的な訓練をしていない者が多く、フェイトも全く訓練はしていない訳では無いが、戦闘機人と比べて身体機能は余りにも差があり、とても戦闘機人は、ほぼ丸腰状態で勝てる相手では無かった。

 

「くっ‥‥」

 

ガク!

 

セッテとオットー2人相手に格闘戦をやっても勝てる筈も無く、フェイトは膝をついてしまった。

 

「はぁ‥はぁ‥はぁ‥はぁ‥‥」

 

「フッ、だいぶ苦しそうだな?」

 

セッテがフェイトに近づいて、彼女を蹴り飛ばした。

 

「ぐっ」

 

戦闘機人の蹴りをモロに喰らったフェイトは転びながら吹っ飛んでいった。

 

「無様‥あれが管理局のエースの姿なんて‥‥」

 

吹っ飛んで行ったフェイトを見ながら、オットーは呆れながら言う。

 

「オットー、確実にとらえる為、もう少し弱らせよう」

 

とまたブーメランをだして、オットーも無数の弾を出した。

 

「わかった...ISレイストーム!!」

 

「スローターアームズ!!」

 

「くっ‥‥」

 

フェイトのバリアジャケットは彼方此方破れ、身体も出血している箇所が目立つ。

必死に体を起こそうとするフェイトだが、予想以上のダメージで体が言う事をきかない。

2人の攻撃がフェイトに向かった時に、

 

ズガァーン!!

 

壁の一部が爆発し、チンクとディードがやって来た。

そして、2人の後を追うように‥‥

 

シュン!

 

1人の男が割り込んできて、戦闘機人達を思いっきり睨んだ。

 

「やっと来たか?」

 

オットーが男の方を向いて言う。

 

「待っていた。」

 

セッテの言葉に疑問を抱いたツナ

 

「何故俺達を狙う?」

 

「愚問だね。敵である僕らが答えると思う?」

 

オットーが無表情に答える。

そこでフェイトが痛みをこらえながら、上半身を起こす。

 

「う、う...ん、ツ...ナ///」

 

まだ少しぼやけているのか、

 

「気がついたか?フェイト」

 

「うん、...え!?」

 

フェイトの意識がはっきりして今の自分の体制に驚いた。フェイトは今ツナにお姫様抱っこされていた。

 

「え、/////」

 

「大丈夫そうだな。」

 

「.....ごめん。」

 

フェイトは顔を俯かせてツナに突然謝る。

 

「えっ?何が?」

 

「私‥また、ツナの足引っ張っちゃった」

 

バツ悪そうにフェイトは言いツナは、

 

「ふっ、気にするな何度でも、何度でも、君を助けるさ、フェイト」

 

暖かい笑みでフェイトを見た。

 

「ツナ//////」

 

フェイトも赤くなりツナを見た。

 

「さて、そこで少し待っていてくれ」

 

そう言うとフェイトをその場に下ろして、

 

「すぐ終わらせる。」

 

と戦闘機人達の前に歩いて行った。

 

 

「もう用は済んだか?」

 

チンクがツナに尋ねる。

 

「ああ、待たせたな。」

 

ツナは4人の戦闘機人達と向かい合い。

 

「オットー、私とディードが肉弾戦で戦う。」

 

「わかった。」

 

そしてセッテとディードがツナにめがけてパンチをしたがツナはそれを紙一重で避けそしてディードが回し蹴りをして、それを受け止め反撃をしようとするとセッテがまたきたのでディードを離し距離を置く。

 

「オットー!」

 

「チンク姉様」

 

「わかっている!!」

 

「任せろ!!」

 

オットーのレイストームとチンクの投擲の弾を操りながらツナを襲うがツナにはあまり当たらずセッテもスローターアームズを投げて

 

「どうだ!」

 

レイストームとチンクの投擲は炎のシールドでセッテのブーメランは、

 

カチーン!

 

またも零地点突破で凍らせた。それをセッテに投げた。

 

「オットーあの氷から魔力反応は」

 

セッテが、

 

「全く感じない...」

 

そしてセッテがツナに殴りかかり

 

(この人たちも...)

 

ツナはそんな事を思いながら悲しげな瞳をしながら攻撃をかわしていった。

だからこそ、セッテ達をなるべく傷つけずに捕縛しようとした。

 

「それはさせない」

 

オットーがレイストームでツナを拘束した。

 

「何!?」

 

「わからなかったよね...僕のISはこう言う事もできるんだ。」

 

「これで当たる!」

 

「終わりだ」

 

セッテがブーメラン、チンクがナイフをツナにまた投げつけてツナはオットーのレイストームを引きちぎって躱そうとしたが後にフェイトがいるので

 

ズドーン!

 

「当たった」

 

「やったか?」

 

「お前達に加減がいらないのはわかった、ならば、手加減はなしだ!!」

 

「なっ!」

 

「速いっ!?」

 

2人の懐に入って

 

「Xバースト!!」

 

ツナの拳がセッテに当たりそして後ろのオットーとぶつかった。

 

「これで終わりだ、大人しくしてくれ。」

 

その時ナイフを持ったチンクが

 

「!?」

 

(身柄を確保できなくてもコイツのデータだけでもとる)

 

ナイフでツナを襲うがツナはそれをいなして最後に手を受け止め、

 

「まだやるのか!?」

 

(くっ、残念だが、これまでか‥‥)

 

チンクはナイフを投げやすいように持ち替えツナの頬をかすらせ床にナイフを突き刺した。

このナイフも爆発させるのかと思ったツナはチンクと距離をとるが、チンクはナイフを爆発させず、チンクもツナと距離をとる。

 

(ん?なんだ?)

 

「時間切れだ.....今回は潔く負けを認めよう…だが、私達の任務も成功だ‥‥貴様の身柄とFの遺産の確保はあくまでもついでだったからな‥‥」

 

チンクが負け台詞とは思えない意味ありげな台詞を吐く。

 

「?...どういう意味だ?それはっ!?」

 

ツナがチンクの言っている意味が分からず、答える訳はないが、反射的にチンクに尋ねる。

 

「敵にそう簡単に情報を教えると思うか?」

 

「ならば、お前達を捕まえて、情報を聞き出す。」

 

ツナがチンク達の身柄を確保しようと駈け寄るが、一歩間に合わなく、チンクの刺したナイフが眩い光を発する。

 

「ぐっ‥‥」

 

その眩しさにツナとフェイトは思わず目を閉じる。

2人が怯んでいる隙にチンクはディード達と共にその場から去って行った。

 

(くっ、逃げられたか‥‥だが、チンクが言ったあの言葉意味は一体?)

 

ツナはチンクが最後に言った言葉の意味が分からなかった。

ツナ達とチンク達のドンパチがあり、船は大混乱となり、現場にはミッドの『空』、首都防空隊が船に来て、混乱は何とか収まった。

そして、その後、船倉を調査した結果、あるケースからレリックが見つかり、管理局に回収された。

フェイトはセッテ達との戦闘で負った怪我により、少しの間、病院へ入院する事になった。

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的60 お見舞いは一気に来られるより時間をずらして来てくれた方が嬉しい

更新です。


 

 

 

 

先日、地上本部からの依頼を受けた任務においてフェイトは怪我をした為に入院する事となり、ツナとリボーンがフェイトの見舞いに来たのであった。

 

~side病院~

 

コン、コン

 

フェイトが入院している病室のドアをノックすると中からフェイトの声がした。

 

「どうぞ」

 

「失礼します。」

 

フェイトの許可を得て入室するツナとリボーン。

 

「ツナ来てくれたの?」

 

フェイトは水色のパジャマの上に薄ピンク色のカーディガンを羽織って、上半身をベッドから起こした状態でツナ達を迎えた。

 

「はい」

 

「ちゃおっス」

 

リボーンがシュタッと片手をあげてフェイトに挨拶する。

 

「リボーンも」

 

「怪我の具合はどうですか?」

 

ツナは早速、フェイトに怪我の具合を尋ねる。

 

「大丈夫、明日には退院できるって。それにもうすぐで公開陳述会だもん、のんきに入院なんてして居られないよ」

 

「そうですか‥よかったです。」

 

もうすぐ退院と聞いてツナは安堵の息を吐きとりあえず落ち着いた。

 

「ツナの奴、フェイトの事が、気が気じゃなくてずっと心配していたぞ」

 

「え?」

 

「おい!リボーン!!//////」

 

「//////」

 

ツナはリボーンに「余計なことは言うな」と言いたげにリボーンに声をかける。

少し照れくさいのかツナの顔は赤くなる。

それはフェイトも同じで、互いに赤面しあった表情がお互い目に入り余計照れくさかった。

よく見るとツナの目の下には隈ができていた。

それがフェイトにとって不思議と嬉しくもあった。

 

「その、大事に至らなくてよかったです。」

 

「ありがとうツナ‥‥」

 

ピンクの空気が病室を満たしてきた時にリボーンが、

 

「おい、お前ら」

 

声をかける。

「空気を読めよ」と言いたい所であるが、この後の事も考えると、色々面倒なので、さっさとこの桃色空間を破壊する事にしたのだ。

 

ビクッ!

 

リボーンの声に2人とも驚き、ビクッっと体を震わせる。

 

「イチャイチャすんのはいいがそう言うのはーー」

 

「してないよ!!//////」

 

「違うから!!//////」

 

「あっそう‥‥それとフェイト、はやてとなのは達も後から来るって言っていたぞ。良かったな、他の奴等にツナとの桃色空間を見られなくて」

 

「‥‥//////」

 

「俺は飲みモン買ってくる、フェイトも飲めるか?」

 

「うん、大丈夫。」

 

「そうか」

 

そう言ってリボーンは病室を出て行った。

 

「「‥‥」」

 

沈黙が続く。そんな時に

 

コン、コン

 

再び、フェイトの病室のドアがノックされる。

先程、リボーンがはやてとなのはが見舞いに来ると言っていたので、フェイトとツナはてっきりはやてとなのはが来たのかと思った。

 

「はい、どうぞ」

 

フェイトが入室を許可すると、入って来たのははやてとなのはではなく、

 

「フェイトさん!!」

 

勢いよく病院のドアが開けられて入って来たのはギンガだった。

 

「ギンガ」

 

「スバルからフェイトさんが大怪我したって聞いて‥あっ‥‥」

 

ギンガはフェイトの病室を見て、何かを察した。

 

「その‥私‥‥」

 

「ん?どうしたの?ギンガ」

 

「ごめんなさい。」

 

とりあえず謝った。

ギンガはスバルにフェイトが彼を想っている事を聞いていたために空気読まずに2人の時間を潰してしまったと思った。

 

「えっ?どうしたの?」

だが、ツナはおろかフェイトも気がついていない。

 

「その...2人の時間を.....邪魔してしまって‥‥」

 

ギンガがここまで言うとフェイトの方はギンガの謝罪の意味に気付き、

 

「いや、その、気にしなくていいから/////」

 

「ギンガさんは1人出来たんですか?」

 

ツナは結局ギンガの謝罪の意味が分からないまま、ギンガに1人で来たのかを尋ねる。

 

「トシさんと一緒に来たんですけど、『女同士の会話にはついていけねぇ』って、それで、『一服して来る』って喫煙所に言って、私は先に来たの」

 

「そうですか」

 

「ん?何だ?客か?」

 

そこへ、手にエスプレッソが入った紙コップを持ったリボーンが戻って来た。

 

「え?赤ん坊?」

 

「ん?何度か見かけたな顔だな。俺の名前はリボーンだ。よろしくな。お前、スバルの姉なんだってな」

 

「はい。ギンガ・ナカジマです。こちらこそよろしく」

 

リボーンは違和感バリバリの存在だが、ギンガはすぐ慣れたようだ。

 

「それにしてもフェイトさんがここまで負傷するなんて...相手はどんな人だったんですか?」

 

ギンガがフェイトを此処まで追い込んだ下手人について尋ねる。

フェイトは管理局が誇る若手の魔導師の中でも実力はトップクラスである。

そのフェイトに此処までの大怪我をさせたのだから、相手も只者ではない筈だ。

 

「あ、うん、皆ツナより少し年上ぐらいの女性だったんだけど.....彼女達からAMFが出ていてね、恥ずかしい話それで.....」

 

「え?魔導師がAMFを?」

 

「魔導師なのかな‥‥?正直、彼女達からはそんな感じがしなかった」

 

「あっ、俺もそれを感じました」

 

「.....」

 

(魔導師の様で魔導師じゃない‥‥まさか‥‥)

 

「どうしたの?ギンガ」

 

ギンガが俯きながら深く考えている様子なので少し気になり、フェイトはギンガに声をかける。

 

「あっ、いえ...その‥‥母が生前追っていた任務にも、魔導師とは少し違う‥‥所謂戦闘機人の事件を追っていまして‥‥」

 

「戦闘機人?」

 

「あ、戦闘機人というのはですね.....」

 

ギンガが説明している中リボーンの脳裏にはある事が浮かんでいた。それはこの前の白蘭との出来事の後‥‥

 

「リボーン、ティア、勝手で悪いんだけど、私とギン姉の秘密誰にも言わないでほしいんだ。」

 

「え?どうして?ツナ達なら‥‥」

 

「わかっている。だからこそ、自分でちゃんと向き合って話したいんだ。今回の事もあるけど、やっぱりこれは自分の問題だしね」

 

「そうか、あいつらは何時でも待っているからな、お前が自分の事を言うのを待っているだろうさ」

 

「うん」

 

場面は戻りちょうどギンガの説明が終わり、

 

 

「そう、ってことは多分、彼が関わっているね」

 

フェイトは管理局から指名手配されているあの男の名前が真っ先に頭に浮かぶ。

 

「でも、彼女達‥‥」

 

ツナが呟き出すと注目の的がツナに移った。

 

「悪い人達じゃないと思います。」

 

「「え?」」

 

ツナの発言にフェイトとギンガが唖然とする。

 

 

「え?あっ、いや、俺個人の感想ですけどね、そんな感じがしたんです。」

 

 

不思議な少年、一見、ただのことばに聞こえるけど、証拠を1000揃えているぐらいの説得力がある。

 

「あっ、すみません。私、用ができたので今日はこれで帰らせてもらいます。それではフェイトさんお大事に」

 

そう言い残すギンガ

 

(戦闘機人が関係しているってことはお母さんが追っていた事件に関係があるかもしれないんだ。調べないとあの事件の真相を‥‥)

 

この時のギンガの顔は完全に捜査官の顔をしていた。

そして出て行こうとした部屋の前には土方がいた。

 

「トシさん」

 

「行くぞ、ギンガ」

 

「え?」

 

「仕事何だろ手伝う」

 

土方はそう言うと先々と歩き出しギンガは、

 

「はい!」

 

後を追うように駆け出す。

その後、隊舎に戻ったギンガと土方は資料室に籠り、かつてゼスト隊が捜査していた戦闘機人事件の資料を探したが、その殆どが何故か地上本部からの許可が無ければ閲覧不可となっていた。

 

「なんで?閲覧できないんだろう‥‥?」

 

『閲覧不可』と表示されたパソコンの画面を見ながら、ギンガは何度もアクセスをするが、やはり、結果は変わらなかった。

 

「‥‥」

 

(この事件、なんか裏があるな‥‥)

 

土方はゼスト隊壊滅事件の裏に何かがあると睨んだ。

地上本部のデータベースにアクセス出来なかったので、此処で捜査は終わりかと思いきや、ギンガは以前、母、クイントが事件の資料を纏めている事を思い出し、土方と共に家に戻り、母の部屋から昔の事件の資料を引っ張り出して来た。

 

(お母さん‥‥私、お母さんの意志を受け継いで、この事件、解決してみせるからね)

 

ギンガは母が纏めた資料のファイルをギュッと握り、母が追っていた戦闘機人事件の解決を誓った。

 

 

~sideフェイト~

 

「それじゃ俺達も先に戻りますね、今度は隊舎で会いましょう。」

 

「うん」

 

「んじゃなフェイト」

 

「えぇ」

 

ギンガが帰り、ツナとリボーンも問題ないだろうと判断し、帰って行った。

 

 

「ゴメン、フェイトちゃん遅くなっちゃった。」

 

「なのは、はやて」

 

ツナとリボーンも帰った後、フェイトの病室になのはとはやてがフェイトの見舞いに来た。

 

「おぉ、元気そうやんか今回はありがとな、フェイトちゃん。六課を救ってくれて」

 

「大丈夫だよ。」

 

「それでななのはちゃんと話したんやけど、今回の事もあるしな、フェイトちゃんに退院してから一日休暇をあげよう思うんやけどな、どうやろ?」

 

「え?何で?」

 

「隊長が不完全な健康状態でもし何かあってみぃ、士気に影響を与えるかもしれんやろ?それにもうすぐ公開陳述会や、私ら六課も公開陳述会が開かれる地上本部ビルの警備に駆り出される。2日続けての徹夜警備はなかなかしんどいでぇ」

 

「だからフェイトちゃん、少し体を休めたらっと思って」

 

「...なのは、はやて、ありがとう」

 

「因みに、ツナ君も休みやからな」

 

「え?」

 

「いや~、ほんまにたまたま偶然な、もちろうしくんだりしてないで、ま、お互い、両者関わったし、それに」

 

「頑張ってね、フェイトちゃん」

 

グッと自分の拳を握るなのはと絶対仕組んだであろうという態度をとるはやて

 

「フェイトちゃん」

 

「この機に、ツナ君の事もっと知りや、例えば、挙式は何時にするとか?」

 

「それ、聞いているんじゃなくてもう決めてるじゃん/////」

 

「好きな女性のタイプとか、もしくは.....好きな人がいるかとかね」

 

「//////////」

 

この夜ふたりが帰った後、フェイトの体温は急激上がっていた事は誰も知らない事であった。

 

 

フェイトが退院した後、すぐに休暇かと思われたが、フェイトはどうしても病室でギンガから聞いた彼女達、ナンバーズについての情報を六課のみんなに伝えたかった。

そこで、フェイトは休暇を1日ずらしてナンバーズについての検討会を開いた。

 

「この子達が今回、私とツナの任務の時に現れたナンバーズ」

 

スクリーンにはやはり、青を基調としてボディースーツを身に纏った少女達が映し出される。

 

「この4人の中で、この銀髪の子‥‥チンクと呼ばれていた彼女ですが、この子がこのセッテ、オットー、ディードの姉に当たる存在でした」

 

「こんな小っちゃな子が?」

 

「はい」

 

「てっきり、このセッテって言う子が姉だと思ったわ」

 

「外見で物事を判断しちゃあダメだってことだ。ドラ〇ンボールのフ〇ーザさまだってそうだろう」

 

銀時が分かりやすい例えを言う。

 

「それで、このチンクとう子はナイフを投げるスタイルかと思っていましたが、彼女の投げたナイフは爆発物に代わる能力を有していました」

 

「2段構えの攻撃か‥‥」

 

ツナの説明を聞き、獄寺がチンクの姿が映し出されているスクリーンを睨むように見る。

 

「いや、それだけじゃないかもしれないぜ」

 

リボーンがチンクのIS能力はそれだけではないと推測する。

 

「どういう事かな?リボーン君」

 

なのはの質問は皆が注目する。

 

「此奴はもしかしたら、手で触れた金属ならナイフに限らず爆発物に変える事ができるかもしれないぜ」

 

「手で触れた‥‥」

 

「金属全部‥‥」

 

「そいつはおっかねーな。」

 

エリオとキャロが少し震えた声を出すがら山本は冷や汗を一つ流してるものの口角は少し上がっている。

 

「ああ。トレディの能力の様に1つだと思ったら、意外な盲点があるかもしれないって事だ」

 

「なら、このチンクって人に対して接近戦は‥‥」

 

新八の言葉に

 

「トレディ同様、危険だな」

 

リボーンがら答える。

 

「次はこの子、ディード‥‥武器は二刀流のライ○セーバーで接近戦専門の子でした」

 

「動きもはやく、感情が欠落しているのか、動きが読みにくいです」

 

(ほぉ~なかなかいい胸しているじゃねぇか)

 

銀時はディードが動く度に揺れる彼女胸のを凝視していた。

 

「‥‥はぁ、銀さん、この前ので、まだ懲りないの?」

 

「っ!?」

 

銀時の横から冷たい声が聞こえ、彼がゆっくり声がした方を見ると、其処には‥‥

 

「また後でO・HA・NA・SHI しようね?」

 

ニッコリと微笑み白い悪魔が居た。

 

「続いてはこのセッテ、彼女もディード同様、感情が読み取れにくく、スピード、パワーは今回のナンバーズ1の力だった‥‥彼女の持つブーメランはまるでそのブーメラン自体にまるで意思があるかのような動きをしていた」

 

「ブーメランばかりに目を奪われると、セッテ本人からの体術にやられるって事ですね?」

 

ティアナがフェイトにセッテに対しての質問をする。

 

「ええ、私自身、AMFで魔力が上手く使えなくなった後、セッテの攻撃が一番きいたから‥‥最後にこのオットーって子‥‥」

 

「ん?コイツは男なのか?」

 

獄寺がオットーを見て、女ではなく男かと判断する。

 

「ふん、まだまだ、あめぇなお前は‥‥」

 

銀時がやれやれと言った様子で獄寺に呆れる。

 

「なんだと!?」

 

「此奴は一見、男の娘と見せかけて、れっきとした女だ」

 

「何でそんな事が言い切れる!?」

 

「俺のセンサーが反応しているからだよ!!」

 

『‥‥』

 

既に白い悪魔からのお仕置きが確定している為か、銀時は完全に吹っ切れていた。

そんな銀時を皆は白い目で見ている。

 

「ま、まぁ、男か女かはともかく、このオットーは攻撃や拘束に使える光線を多数放つ能力を有していた。それにガジェットの様にAMFも起こす事が出来ていたの。そのAMFはガジェットよりも強力なモノだったわ‥‥」

 

銀時の発言で一瞬、場が白けたが、フェイトは続けてオットーの説明をする。

 

「成程、コイツはどちらかと言えば支援型と言う訳か‥‥」

 

「ええ」

 

「でも、AMFがある中、何故彼女らは魔法が使えたんですか?」

 

「その事についてなんだけど、彼女達の正体は108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹からの意見で、戦闘機人じゃないかって事なの」

 

フェイトの口から発せられた戦闘機人と言う単語にスバルはビクッと反応し、ティアナはチラッとスバルの様子を窺った。

スバルからは冷や汗が流れて、手も小さく震えて平然を保とうと必死だった。

 

(ギン姉、もしかしてフェイトさんに私達の事を教えたの?)

 

そんな事も脳裏に過ぎったが、フェイトがスバルに全く質問を振らなかった事で、それは思い過ごしだと分かった。

 

「戦闘機人ってなんですか?」

 

新八が戦闘機人について尋ねる。

 

「ナカジマ陸曹によれば、戦闘機人って言うのは‥‥」

 

フェイトは病院でギンガから聞いた戦闘機人について皆に話した。

 

「なるほど、AMFがある中、魔力に左右されない力、IS‥‥つまり、連中は魔導師の弱点であるAMFがある中、そのISを使って、魔導師以上の力が出せる訳か‥‥」

 

「それってなんか卑怯アルネ」

 

「戦争に卑怯もクソもねぇよ‥‥AMFはあくまで魔導師の魔力を下げるだけなんだろう?なら、俺や10代目の力なら、奴らと対抗できるって事か」

 

「かもね‥でも、油断はできないよ。俺達は何度もトレディに苦戦を強いられてきた。それに相手にはナンバーズだけじゃなくて、アイツらも居る‥‥白蘭‥それに神威‥‥」

 

「それにあの人型の新型ガジェット」

 

「他にもアギトって言う子とルール―って呼ばれていた召喚士の子も居ました。あの子もレリックを集めていました」

 

キャロがヴィヴィオの時、下水道で会ったルールーと呼ばれていた召喚士とリィン同様、ユニゾンデバイスのアギトと言う子の存在も示唆する。

 

(あと、変態ロリコン忍者に高杉の野郎もな‥‥)

 

銀時はこの他にも強敵‥特に自分と因縁があり、まだその存在を現さないかつての親友の姿が脳裏に浮かぶ。

 

次々と上がって来る強敵達に自分達はいかに対抗できるか?

それに今度、地上本部ビルで行われる公開陳述会‥‥はたして毎年の様に何事もなく終わるだろうか?

六課の皆に言い表せない不安が過ぎった。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的61 感情は人と関われば関わるほど豊かとなりそして心も広がる

いや~銀魂アニメ再開しましたね~、いつも健康の為に10時、11時に寝てるんですがこれの為に1時まで起きてました。ので現在進行形で寝不足ですが更新です。



此処で時系列は過去へと遡る。

 

 

~side ベルカ地区山岳部 某所 スカリエッティのアジト~

 

カジノ船での任務を終えたチンク達、ナンバーズがスカリエッティのアジトへと帰還した。

帰還したばかりのチンク達を赤い髪をした2人の少女らが出迎える。

 

「おかえりチンク姉」

 

「お疲れッス」

 

1人はスバルの髪を赤くした様な容姿で青を基調としてボディースーツの首元には『Ⅸ』の番号が書かれている少女、ノーヴェ。

彼女はスバルがギンガを慕っている様にノーヴェは数多いナンバーズの姉の中でチンクを一番に慕っていた。

もう1人はノーヴェ同様、赤い髪でまるでパイナップルの様な髪型で青を基調としてボディースーツには『Ⅺ』の番号が書かれている少女、ウェンディ。

 

「ん?ノ―ヴェにウェンディか‥うむ、戻ったぞ」

 

「それで、今回の首尾は‥どうやら、Fの遺産は手に入らなかったみたいッスね」

 

ウェンディはチンク達がFの遺産‥つまり、フェイトを連れていない事から、フェイトの拉致は失敗したのだと悟った。

 

「ああ、残念ながら‥‥だが、Fの遺産はあくまでついでだ。主目的はちゃんと果たして来た」

 

主目的‥今回のスカリエッティがチンク達に下した任務は、セッテ達の初陣とツナのデータの入手‥‥フェイトの身柄確保はあくまでもついでだった。

その中で、セッテ達に戦場を体験させることが出来、尚且つ、ツナのデータも入手できた。

スカリエッティがツナのデータを何に使用するのか自分達は知らされていないが、自分達の創造主であるスカリエッティからの命令なのだからそれを実行し、成功させるのが、自分達ナンバーズの役割だった。

だが、ディードに至っては今回の任務に関しては不満と言うか、モヤモヤしたモノが残った。

故にノーヴェが冗談半分で言い放ったこの一言にカチンと来て、ノーヴェに食いついた。

 

「お前ら、チンク姉に迷惑をかけたり、足を引っ張らなかったか?」

 

「なんですか?その言い草‥まるで、私達がチンク姉様の迷惑になったみたいな言い方ですね、ノーヴェ姉様」

 

「なっ!?」

 

ディードのこの態度にディードの双子の姉妹であるオットーもギョッとした。

まさか、ディードが姉のノ―ヴェに対してこのような態度をとるとは思わなかったからだ。

オットーの他にもチンクやウェンディでさえもディードのこの態度には驚き、言われたノ―ヴェ本人は唖然とする。

 

「大体今回の任務について何も知らないノーヴェ姉様にそんな事を言う資格なんてありません‥‥文句を言うくらいなら今回の任務に参加すればよかったではないですか?トレディ姉様はドクターに志願したんですよ。それなのに、まるで、私達がチンク姉様のお荷物の様な発言‥‥一体何様のつもりですか?」

 

「な、なんだと!?」

 

ナンバーズの中で短気なノーヴェはディードのこの発言にカチンときて思わず声を荒げる。

 

「私が役立たずかそうでないか、ノーヴェ姉様の身体に聞いても良いんですよ」

 

そう言ってディードはツインブレイドを展開する。

 

「でぃ、ディード!?」

 

武器を展開したディードにオットーは完全にタジタジ。

セッテは無表情のまま事の成り行きを見守っている。

だが、心の中で密かにディードを応援していたりもする。

 

「上等だ!!生意気な妹に姉の偉大さを教えてやる!!」

 

ノ―ヴェもギンガやスバルのリボルバーナックルに似た武器、ガンバナックルを展開する。

 

「の、ノーヴェ!?」

 

ウェンディもオットー同様、ディードに殴り掛かる寸前のノーヴェに驚く。

ノ―ヴェとディード互いに一触即発の事態に、

 

「止めんか!!2人とも!!」

 

チンクが声を上げて2人を止める。

 

「いい加減にしないか!!姉妹同士、いがみ合うなんて姉は悲しいぞ」

 

「でも、チンク姉‥‥」

 

「‥‥」

 

「ノーヴェ、お前も言い過ぎだ。ディードはまだ稼働したてで、今日初めて戦闘を経験したんだ。姉から見てもディードはよくやってくれた」

 

「むぅ~」

 

チンクに注意を受け、ノーヴェは少し不満の様子。

 

「‥‥チンク姉様、私は疲れたので先に休みます」

 

ディードは1人、テクテクとアジトの奥へと歩いて行った。

 

「‥‥ディード」

 

オットーはそんなディードの様子を心配そうに見つめていた。

チンク達よりも先に別れたディードは、

 

「くっ」

 

ドゴッ

 

パラパラ‥‥

 

体の中からくるモヤモヤにイラつき、アジトの壁に拳を叩き付ける。

戦闘機人の拳を受け、通路の壁が壊れる。

 

「あら?ディードちゃん」

 

「クアットロ姉様‥‥」

 

そこにクアットロが通りかかり、ディードに声をかける。

 

「随分と荒れている様だけど、何かあったの?」

 

「別に‥‥なんでもありません」

 

クアットロに素っ気ない態度をとり、その場から去って行った。

だが、ディードは明らかに不快感を露わにしていた。

 

(変ね、ディードちゃん達には感情を刷り込んでいない筈なのに‥‥)

 

ディード達の起動に関わっていたクアットロはディードに不満、怒気の感情があった事に疑問を感じていた。

 

(あの男‥次に会った時は必ず殺す!!)

 

ディードにはツナに対する明確な殺意が芽生えていた。

それは自分の初陣に黒星をつけたツナへ対する恨みなのか

それとも、ツナの言動に対して自分の存在を全否定されたように思ったからなのか?

自分の中に渦巻いてくるツナに対するモヤモヤにディードは答えを出すことは出来なかった。

 

 

 

 

それから時系列は元に戻る‥‥。

 

 

~side隊舎~

 

波乱と不安に満ちた公開陳述会の前に休日を貰ったフェイト。

場面はそれを明日に控えた晩のこと‥‥

 

「フェイトちゃん、お疲れ様。」

 

「なのは」

 

「もうすぐだね」

 

「うん」

 

なのはとフェイトにはどうしても予言の事がどうしても頭から離れない

 

(白き夜叉は王と対峙し狂人と死闘を行う時運命は動く)

 

(何もなければいいけど、銀さんにもしもの事があったら‥‥)

 

不安を拭いきれない、普段はおちゃらけているが彼が戦っている時は必ず彼は大怪我をしている、彼の本心はなのはにもわかる。

わかっているのは自分より仲間を守る。ここにいる皆そうだが、彼が1番自分の事を考えていない。

 

(オレンジの炎を纏いし者、狂人との戦いの後地に眠る時異界の支配者天より現れる)

 

(ツナ...)

 

フェイトも感じていた。この世界で今考えられるオレンジの炎を使う人はただ1人ツナだ。とても戦闘が似合わない、優しい少年、戦っている時は普段とは別人のように感じられるがそれでも本心から戦いを拒否している。

彼が喜んで戦っているのを見た事がない。正直、この戦いに巻き込みたくない、それはエリオ、キャロ達にも思える。自分が不甲斐ないせいで巻き込んでいるとも思う時もある。

 

「それもあるけど」

 

急にフェイトは背中に寄りかかられ後ろを見ると

 

「明日、乙女の大事な決戦やろ?」

 

「「はやて(ちゃん)!!」」

 

いつの間にか、はやてがその場に来ていた。

 

「しっかりとデートをしてツナ君を落として、自分の虜にしいや」

 

「えっ?」

 

「何や?その反応、まさかフェイトちゃんまだツナ君を誘ってないんじゃ‥‥」

 

「はは」

 

苦笑するフェイトに呆れているはやて。

 

「そんなんで、どないすんねん。フェイトちゃん、早めに手をつけとかな、どっかの女が先に手をつけかねんで。」

 

「え?」

 

「ほんまに、見張っとかな...何処でフラグ立てるかわからんからな」

 

メラメラと炎が燃え滾っているはやて。

以前、炎真がアイドルに取られそうになった経験からフェイトに忠告するはやて。

 

「はやて」

 

「はやてちゃん、何か経験者っぽい」

 

「それとここから真面目な話、ツナ君達も、銀ちゃん達も、元は違う世界の人間や、ウチらは今、協力してもらっているけど、本当は元の世界に戻れるようにしなあかん立場や。それを忘れちゃあかんで」

 

「「‥‥」」

 

はやての言葉に黙ってしまう2人。

これまで一緒に居た為、フェイトはツナが自分の世界とは違い世界の出身だったことを忘れていた。

いずれは、ツナを元の世界へ帰さなければならない。

その世界にはツナを待つ人が居る筈だ。

自分のエゴでツナを引き留める権限なんて自分にはない。

 

「銀ちゃんだって最初ヴィヴィオを預かる時、元の世界に戻るかもしれん言うてたんやろ」

 

「...うん」

 

「そしてツナ君の強さで忘れかけているかもしれんけど、ツナ君だって戦いたくないって最初ここに協力するのを渋ってんで、本当はもっと青春したいお年頃や、私らが不甲斐ないせいで巻き込んでしまってんねん」

 

「そうだね」

 

「そう考えると私ツナに嫌われているのかな」

 

「ホテルの時もこの前の時も、いつもツナに負担をかけちゃったし‥‥」

 

「フェイトちゃん」

 

「それは本人に聞かなわからんな、だからこそ2人だけの時間を作らなあかんやろう。明日ゆっくりと話をしてきたらええ、デートと考えず、本人の気持ちを浮き彫りにする、誰だってプライベートは油断するからな」

 

「うん」

 

フェイトは歩き始めた、だが正直不安だ。もし本当に嫌われていたらと思えてくる。でも、いつか来るであろう別れをこの気持ちのまま過ごしたくはない。

 

 

~sideツナ~

 

「10代目、明日はお休みらしいですね」

 

「うん」

 

「本当は今回の任務にもついて行きたかったんですが、ティアやはやての野郎に止められたんすよ」

 

自分の握りしめる拳から血が出そうなぐらい強く拳を握っている獄寺

 

「まぁ、ゆっくり休めよ、明日は俺達ができるだけフォローするし、な、獄寺」

 

「たりめぇだ!!10代目、自分の命にかけても10代目のプライベートの時間を潰させませんから!!」

 

「そこまで大事にしなくてもいいから、」

 

「いえそんな、あ、部屋に着いちゃいましたね」

 

「そうだね」

 

「んじゃ、寝るか」

 

「あ、俺少し飲みモン飲んでくるから、先に寝といて」

 

「え?自分がとって...」

 

「大丈夫だよ」

 

ツナは走り出して食堂でお茶を飲んでいると‥‥

 

「あれ?フェイトさん?どうしたんだろう?」

 

何やら探しているみたいだった。

 

「フェイトさん」

 

「キャ!」

 

つい探し人から声をかけられ思わず声を上げる

 

「どうしたんですか?」

 

「あ、あははは」

 

(どうしよ、まだ心の準備が...)

 

とりあえず笑顔を取り繕って

 

(平常心、平常心っと‥‥)

 

一旦深呼吸をする。

 

「フェイトさん?」

 

「あのさ、明日ツナがよければ何だけど...そのデートしよ」

 

「え?」

 

「え、あ、/////また、遊びに行こう!うん、遊びに行こう!!//////」

 

「あ、遊びに行く‥ですか?そうですよね、はい俺はいいですよ」

 

(デートって聞こえたけど...気のせいかな?)

 

ツナはフェイトの発言の中に普段のフェイトっぽくない発言が含まれていた様な気がした。

 

そして、翌日‥‥

 

 

~sideクラナガン~

 

次の日を迎えフェイトの車で繁華街に遊びに来たツナとフェイトの2人。

 

だが、

 

「それで今回はどうしますか?何処か楽しめそうな.....」

 

「ねぇ、少し静かな場所に移動しない?」

 

フェイトにそう言われ場所を変える2人

 

「ねぇツナ」

 

「はい」

 

「私の事どう思う?」

 

「え?そ、それは...」

 

「ツナは元の世界に戻りたいんだよね?」

 

「.....正直そう思います。」

 

「そう」

 

少し下を向き瞳が潤んで来る野を実感する。

 

「でも、今じゃない」

 

「え?」

 

「だってフェイトさん達はまだ戦わないといけないんでしょ?俺はできる限り手伝いたいですから」

 

「ツナ...」

 

「あ、足で纏いかもしれないですが」

 

あたふたと慌て出すツナだがフェイトを見るとすぐに落ち着いた。

 

「そんな事ないよ」

 

元気なく声も少し震えていた。

 

「フェイトさん?」

 

「寧ろ...私がツナの足を引っ張っているよ、ホテルの時も前の船の時もいつもツナの足を引っ張っているよ。本当は私がツナの事を守らないといけないのに...私が...しっかりとしないといけないのに」

 

ぽたぽたと涙が零れ落ちていた。

 

「ごめんね、私が弱いばかりに」

 

「そんな事ないですよ、フェイトさんは強いです。」

 

「慰めはいいよ」

 

「違いますよ」

 

「俺はフェイトさんと戦ったからわかるんです。」

 

フェイトは見上げツナを見ると真剣な眼差しでこちらを見ていた。

 

「え?」

 

「あの時だって僅かな隙をつけたから勝てたんです。前の時も戦闘機人達はだいぶダメージを受けていました。そのおかげで俺は勝てたんですから」

 

微笑む顔ツナの顔にまたときめいてしまったフェイト。

 

「/////あ、その、えっと、ごめんまたみっともなかったね。」

 

慌てて涙を拭く

 

「大丈夫です。俺が言うのも何ですが、泣きたい時は泣いてください。」

 

また心が暖かくなるのを感じた。でもあまえてばっかじゃだめだ。

 

「ありがとう、でも大丈夫、ツナには感謝しないといけない事ばかりだね」

 

「そうですか?」

 

「うん、いつも勇気づけてくれる。」

 

「俺の方こそ、フェイトさんが思っているよりも弱いですよ」

 

「えっ?」

 

「リボーンの修業にはヒィヒィ言って、『おまえはヒーローになんてなれない男』なんて言われた事もあるし。それに獄寺君の様に常に度胸が据わっている訳じゃないし、山本君の様に何かに一心で夢中になるものなんてないし‥‥それに勉強も運動も苦手で何をやらせても冴えないから、同級生からは『ダメツナ』って言われているんですよ」

 

「‥‥」

 

考えてみればフェイトはツナの学校生活の事を全く知らない。

彼がちょっと触れたツナの学生生活‥‥それはフェイトには興味がある話題であった。

 

「俺に比べたら、フェイトさんの方がやっぱり凄いですよ」

 

「えっ?」

 

「だって、フェイトさん、その歳で執務官って言う職務に着いているんでしょう?」

 

「え、ええ‥‥」

 

「管理局の事はあまり詳しくは知らないけど、執務官になるには色々大変だってグリフィスさんから聞きました」

 

「そんなことないよ。私だって執務官試験は何回か落ちたし、それに車の免許の試験だって‥‥」

 

「いや、俺だって‥‥」

 

と、2人は互いに自分のダメな所を教え、反対に互いの良い部分を褒め称えた。

 

「‥‥そろそろ、止めましょうか?」

 

「そうだね」

 

互いの黒歴史を教え合う様な言い合いは段々虚しくなってきたので、ツナがここいらで止めないかと提案し、フェイトもそれを承諾した...だが

 

「ごめん、最後に聞かせて」

 

「何をです?」

 

「ツナって何でそんなに強いの?戦っている時...何ていうか、迷いがないって言うか、ブレない強さは何で.....」

 

フェイトの質問を聞いた時に自分のポケットに手を入れあるものを出す。

 

「それは?」

 

「これ、俺の友達が俺の為に作ってくれたお守りです。」

 

ツナはお守りを優しく握りしめて

 

「俺が戦えるのは支えがあるからです。フェイトさん達が俺を支えてくれているから俺は思いっきり力を出せるんです。」

 

「私が...ツナの」

 

「はい」

 

「あ、フェイトさんこれ」

 

「これは?」

 

「さっき買ってきました。昨日からよく暗い顔をしていたから、だから‥‥」

 

「お守り?」

 

「俺裁縫とかできないんで買ったものですが、よければ」

 

「...ありがとう。」

 

「元気出ましたね」

 

「うん」

 

ぐぅ~

 

「「あ」」

 

両者緊張の紐が解けて腹の虫がなり

 

「結構朝早くから来ていたのに‥‥」

 

「お昼だね」

 

フェイトはツナの手を引っ張り、

 

「何処かに入ろっか」

 

走り出す。

 

 

 

 

私はこの時のようにまたツナと笑い合える日がずっと続くと思っていた。

だけど.....

だけど、運命は残酷だった。

そんな事、プレシア母さんの時に経験していた筈なのに‥‥

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的62 人の価値観

久しぶりの更新です。
ここで一つみなさまにこの作品を楽しんでもらってるのですがかすいません。暫く1週間更新にします。
なぜならこの作品所々烙陽決戦編もかぶるのでできるだけ避けれるからと

後こっからすこしシリアスになりますが楽しんでください。


 

 

 

 

 

 

~side六課~

 

「明日はいよいよ公開陳述会や」

 

六課の全員を集めてはやてが明日に控えた公開陳述会の予定を伝え始めた。

 

「明日14時からの開会に備えて、現場の警備はもう始まっている。なのは隊長とヴィータ副隊長、リィン曹長とフォワード4名、にツナ君と山本君と銀さんはこれから出発、ナイトシフトで会場の警備を開始や」

 

「「わかりました。(OKっす)」」

 

「はぁ~、徹夜は美容の大敵だぜ。」

 

「銀ちゃんは男なんやし、美容なんて気にしなくてええやろう」

 

「それで私とフェイト隊長、シグナム副隊長とエンマと獄寺君に、リボーン君は明日の早朝に会場入りするで。」

 

「あれ?僕らは?」

 

名前が呼ばれてない2人

 

「神楽ちゃんと新八君は、お留守番お願いするわ」

 

はやてに頼まれるが、

 

「私じゃ足手纏いというアルか!?」

 

トレディに2度も敗北した自分は足手纏いなのかと思う神楽。

 

「そうじゃねぇ、ここもいろんなもんを保管してんだ。はやて達が留守の間に此処を狙う賊が来るかもしれねぇだろう。神楽みてぇな奴が居ると居ねぇとじゃ、全然違う、このダメツナじゃ役に立たねぇだろ」

 

リボーンがツナに指を向けて神楽に言う。

 

「リボーン!!」

 

「この場で言うことじゃないだろう」と思いツナがリボーンに声を上げる。

 

「.....わかったネ、この私がいる限り、此処には誰にも近づけさせないアル!! やるぞメガネ!!」

 

「わかりました」

 

リボーンの声援を受けて神楽はやる気を出した様子。

 

 

~sideヘリポート~

 

銀時達がヘリにて地上本部ビルへ向かおうとしていると、

 

「パパ、ママ」

 

ヴィヴィオが声をかけてきた。

 

「ん?まだ寝てねぇのか?ヴィヴィオ」

 

「またお仕事?」

 

「あぁ」

 

「帰るのは明日の夜になるかもな」

 

「ふぇぇ」

 

泣きそうになるヴィヴィオを見た銀時となのはは慌て出す

 

「帰ってきたら絵本読んでやるよ、明日の夜は一緒にいような」

 

「私もヴィヴィオの好きなキャラメルミルクを沢山作ってあげるから」

 

「ほんと?」

 

「「あぁ、(うん)」」

 

「ヴィヴィオいい子でお留守番する。」

 

「じゃあな、行って来る」

 

銀時はヴィヴィオの頭を一撫でした後、そしてヘリに乗り込み地上本部ビルへと向かう。

 

「ヴィヴィオほんとにお2人に懐いていますね」

 

ヘリで移動中、スバルがそう言うと、

 

「確かに」

 

「親子みたいですね」

 

ティアナと山本も頷く。

 

「あ?それならツナにも懐いてんじゃねぇか?」

 

「でも、これ以上懐かれるのもあれだな」

 

「え?」

 

「帰る時になったらどうしても別れちまう‥‥ツナも元の世界に帰る訳だしな」

 

「そうなるとやっぱり納得しない気が...なのはさんがいるにしても、銀さんと別れるのは‥‥」

 

「うん。ヴィヴィオはきっと悲しみますね」

 

「えぇ」

 

「はい」

 

「だな」

 

「そうも言ってられねぇよ、出会いがあれば別れもある。あいつは本当は本当に強いからな、きっと大丈夫だ...」

 

銀時はヘリの窓からクラナガンの夜景を見ながら、そう呟いた。

 

それから公開陳述会は始まり、プログラムは何事もなかったかのように消化されていく。

そして、残り1時間となった午後16:00‥‥。

此処まで、スカリエッティ側も反管理局のテロリストも未だに何の動きが無い。

そんな中、

 

「‥‥ドクター、総員配置につきました」

 

スカリエッティのアジトにて、紫色の髪をして秘書の様な服装をした女性、ナンバーズⅠのウーノがスカリエッティに報告をする。

 

「フフフ‥‥では、始めようか?華麗なるフェスティバルの前夜祭を!!ウーノ、全員に作戦開始を伝えてくれたまえ」

 

「承知いたしました」

 

スカリエッティが作戦開始の号令を発した‥‥。

 

警備をしている局員の間にもあと1時間で公開陳述会が終わると言う事で段々と緊張も抜けてきたその時にそれは起きた。

多数のガジェットが突如出現し、地上本部ビルへと張り付くと、ビルを覆っていた結界をAMFで中和し始めた。

 

「うふふのふ、『陸』の総本山なんて、御大層な二つ名みたいですけど、私達にかかれば、ちょちょいのチョイで崩せますわ~」

 

地上本部ビルの近くの上空では、クアットロがおり、彼女の周りには空間パネルとピアノの鍵盤の様なキーボードが現れ、ガジェットによって機能が低下した地上本部ビルのコンピューターにハッキングをかけ始めた。

そしてパスワードの部分が表示されると、クアットロはまるで当たり前の様にパスワードを打ち込み始めた。

 

「ウフフ…流石、ドゥーエ姉様、見事な潜入技術ですわ‥‥管理局の連中、自分達の重要情報が私達に流れているとは知らずにいるとは呑気な連中です事‥‥」

 

クアットロが地上本部のメインコンピューターにやすやすとハッキング出来たのは、管理局に潜入しているナンバーズⅡのドゥーエによる潜入活動によるものであった。

 

クアットロのハッキングを受けてビル内の電気が止まり、エレベーターは停止、防火扉が降ろされて、彼方此方で警備の局員が分断される事態となった。

その異常事態の中、

 

「っ!!?」

 

山本が周囲の異変を感じ、剣を抜き臨時戦闘態勢をとり出す。

 

「どうしたの?山本」

 

スバル達にはまだ感じていないが、その時、

 

「やぁ、スバルちゃん、久しぶり元気だった?あの時の答えを聞かせてもらうよ」

 

スバル達の前に白蘭が現れ、スバルは覚悟を決めた顔で白蘭を睨む。

 

「何度来ても同じだよ。私は貴方の所には行かない、私は信じる仲間と共に今を戦う、これが私の答え!!」

 

「ふぅ~ん、ほんとにそれでいいんだね?...って聞くまでもないか、後悔は先に立たないよ、まぁ君がそう言うなら、仕方がない。強引に君を連れて行くだけだよ」

 

(それにアイツもどうやら、スバルちゃんには興味を抱いている様だけど、あんな狂人科学者にスバルちゃんはちょっと勿体無いかな)

 

白蘭はそう言ってスバルに指を向けて、

 

「白指」

 

「小次郎頼む!!」

 

山本がスバルの前に立つと、彼のネックレスから燕が飛び出して白蘭の攻撃を受け止めた。

 

「ここは俺が抑えておくから、お前らはなのはさんに届けモンしてきてくれ」

 

「え?」

 

「それ、届けねぇといけねぇんだろ?」

 

と山本が微笑んでスバル達を見る。

スバルの手にはなのは達のデバイスがあった。

陳述会場には防犯上デバイスの持ち込みが禁止となっており、スバルはなのは達からデバイスを預かっていたのだ。

 

「うん」

 

「頼んだ!」

 

「無事でいてね」

 

「あぁ、次郎!」

 

ワン!と次郎が山本に小刀を渡して山本が受け取り白蘭に向かい飛んでいく。

 

「邪魔だね、山本武。僕の楽しみを邪魔してくれた礼はたっぷりと受けてもらうよ」

 

「へっ、やれるものならやってみな」

 

白蘭の涼しい顔が崩れ険しくなり第一の戦いが開戦した。

 

 

~sideギンガ~

 

場面は変わり敵が地上本部ビルに出始めたころ、クラナガンの市街地に居てもガジェットが多数出現し、周辺の『陸』の部隊はこの鎮圧と住民の避難誘導に駆り出されていた。

それはギンガ、土方のいる108部隊も同じだった。

 

「行くぜ、ギンガ」

 

「は、はい、そういえば近藤さん達は?」

 

「庁舎の中でお偉いさんを守っている。ギンガ、お前はそっちを頼む!!」

 

「は、はい」

 

土方とギンガは二手分かれて行動した。

 

土方と分かれ戦場となった市街地をかけていると、

 

「うぅ~‥‥た、助けてくれ‥‥」

 

どこからから、助けを求める声が聞こえて来た。

ギンガは立ち止まり周囲を見渡すと、そこには瓦礫の傍で倒れている人が居た。

 

「大丈夫ですか?」

 

ギンガは急いで倒れている人に駆寄り、その人を抱き起した。

 

「管理局です!!救助にきました!!」

 

「た、助かったよ」

 

ギンガに介保され、その人は彼女に礼を言う。

 

「何があったんですか?」

 

「わ、分からない‥‥と、突然の事で‥‥」

 

ギンガは救助したその人に事情を聴くが、残念ながら、その人は詳しい事情を知らなかった様だ。

 

「あっ、ただ‥‥」

 

しかし、何か思い当たる事がある様で、

 

「こんなものが近くに落ちていたよ」

 

ギンガに一振りの日本刀を見せた。

 

(コレってトシさん達が持っているニホントウ‥でも、トシさんはさっき自分のニホントウを持っていたし、近藤さんや沖田さんのモノでもない‥‥とすると、やっぱりこのニホントウは犯人の‥‥)

 

ギンガはこの日本刀は犯人の遺留品だと判断し、そこから犯人の手掛かりがつかめると思い、倒れていた人からその日本刀を受け取る。

ただ、その時、被災者は小さく口元を歪ませニヤリと小さな笑みを浮かべた。

そして、ギンガが鞘から刀を抜いた瞬間、鞘と刃から黒い瘴気の様なモノがブワッと出てくると、それはあっという間にギンガを包み込んだ。

 

「っ!?」

 

ギンガは手にした日本刀を離し、その場から離れようとしたが、身体の自由はきかず、手も足も動かす事が出来ず、そのまま瘴気に包まれてしまった。

 

(と‥‥トシ‥‥さん‥‥)

 

黒い瘴気に包まれていく内にギンガの意識がだんだん遠のいていった‥‥。

 

 

~side銀時&ツナ~

 

「おぉ、団体さんが御出でなさった。しかも物騒な」

 

「そんな事言っている場合ですか!?」

 

ツナはハイパー化して、銀時も腰から洞爺湖を抜き、構える。

彼らの前には大量のガジェットが居た。

 

「まぁ、数だけだな」

 

「そうだな。」

 

「どうする?」

 

「とりあえず、なのはとフェイトはデバイス持ってねぇんだろ、そっちに一旦合流してぇが、魔導師にとってこいつらは天敵だしなぁ、ツナ俺達はとりあえず前に進むぞこのカラクリ共壊しながら、お前も前に進んでいけ、そんでどちらかがあいつらと合流したらデバイスが手元に戻るまで護衛しとくぞ」

 

「分かった。」

 

2人は背中合わせでお互い振り向かず前に走り出しガジェットを壊しながら進む

 

「うぜー、俺を倒したいんならもっと強いのを持って来やがれ!!」

 

次々と来るガジェットを薙ぎ倒し怪我をしている局員を助けていき、

 

「おい、お前ら!!動けるならさっさと動け!!重傷者には手を貸してやれ!!」

 

「アンタは...」

 

「機動六課バイトの坂田銀時だ。助かりたいなら此処を離れろ」

 

「魔導師でもない奴が前に助けられるとは...」

 

皮肉‥いや、自身のプライドが許さないのだろう、これがなのは達の言っていた魔力史上主義者の奴らかと銀時は思った。だがそういうのは銀時にはどうでもいい事だ。

 

「あ?」

 

銀時は少しそいつを見て、

 

「俺は魔力が無くてもお前らより強いから大丈夫だよ、テメェらは‥‥」

 

ガン!

 

そいつの背中から撃とうとしている奴を刺し壊す。

 

「もう一度言う‥テメェらは邪魔だからどっかに行け」

 

魔導師達が見た銀時の瞳は血のようにおどろおどろしく紅い。殺気と相まって見える彼の背中はまるで鬼のようだ。

こんなのを見せられた魔導師達は、

 

「は、はい」

 

体が言う事ができずただここから離れたいという本能のみで動いた。

 

「はぁ~プライドだけは一級品だな。」

 

そんな事を思っていると、

 

「っ!?」

 

ガァッキィン!!

 

「来たな、こいつがなのは達の劣化品か」

 

この前とは比べ物にならない程の数の新型ガジェットが銀時達の前に現れた。

 

「おい!!どいつもこいつも、あいつらと全然似てねぇじゃねぇか、パクるならもっとアイツらに姿を似せろってもんだ。」

 

大量の新型ガジェットの中でまずはシグナム型が切りかかって銀時を斬ろうとするが、

 

「でもよかったなお前ら‥俺が相手になった時点でテメェらはスクラップ決定だ。P〇A訴えられなくて済むぜ。」

 

銀時は動きを止められない。彼は速く移動しているだけでなくナノコンポジットアーマーをもモノともしない。

銀時の刃はヴィータ型が上からグラーフアイゼンを振り下ろしてきたので銀時はシグナム型を拾い上げてそれを盾にした。

 

「ん?」

 

今度はなのは型が砲撃魔法を放ってきたので

 

「ちっ」

 

体を捻りながら飛んでなのは型の後ろに飛びそのまま突き刺してそれをフェイト型をも貫く。

 

「くそっ、全然数が減らねぇな。」

 

数は一向に増えてばかりというより不自然なほど新型が銀時に集中していた。

確かに先程、銀時は『俺を倒したいんならもっと強いのを持って来やがれ』と言ったが、まさかこうも早くガジェット連中がそれを実行して来るとは思わなかった。

 

 

~side FWメンバー~

 

走り抜けるエリオ、その訳はどこからか襲ってくる魔法弾を避けていた、どうやらこちらの戦闘も始まっているようだ。

 

「ちっ、ちょこまかと」

 

相手は2人両者同じ赤毛のショートの戦闘機人のようだ。片や大きな乗り物のような銃でエリオを攻撃して

 

「ウェンディ、このグズ!!さっさと仕留めろ!!」

 

「うるさいッスよ!!ノーヴェ!!」

 

もう1人はそう言いながらギンガやスバルと同じ様な魔法、黄色いウィングロードみたいな道をかけながらティアナを背中から狙った。だが攻撃が当たった直後ティアナが消え彼女も驚いた。

 

「なっ!?幻影‥だと?」

 

すると次の瞬間、幻影がさらに増える。

 

「嘘ぉ!?」

 

周りをキョロキョロと見ている

 

「くっ‥‥」

 

「うぅ‥‥」

 

どうやらこの幻覚はティアナの幻覚をキャロが支援しているようだだが、思ったよりも魔力の消費が激しく、効果が切れるのも時間の問題であった。

 

(あともうちょっと)

 

(脱出タイミングができるまで頑張って)

 

そんな思いにデバイスは答えるようにフル稼働する。

 

「あたしらの目を騙すってこの幻術使い戦闘機人システムの事を知っているみたいッス。」

 

「めんどくせぇ!!幻術だろうが何だろうが要は全部潰しゃいいんだろうが!!」

 

と魔法弾を生成した隙に

 

「うぉぉぉ!!」

 

スバルがノ―ヴェに攻撃を入れた。

 

「うわぁぁ」

 

「ノーヴェ!」

 

ノーヴェは後に吹っ飛びウェンディがそちらに目を奪われると、

 

「サンダーレージ!」

 

エリオが上から狙うウェンディは自らの武器でそれを受け止めるが周りのガジェットは破壊されていた。

 

「撤退!!」

 

ティアナの言葉に幻術に紛れながら撤退した。

そして走っていくと、

FW陣はやっとなのはとフェイトの隊長2人を見つける事が出来た。2人の傍にはバジルとシャッハも居た。

 

「いいタイミング」

 

「お久しぶりです。皆さん」

 

「はぁはぁ、お待たせしました。」

 

「お届けです」

 

「うん」

 

「ありがとう皆」

 

2人は自分のデバイスを受け取る。

 

「それで皆さん、沢田殿達の状況は?」

 

「はぁはぁ、ここに来る途中で白蘭と2人の戦闘機人に遭遇して、山本が白蘭と交戦、戦闘機人とはさっきやり過ごしてすぐ来るかも」

 

「他はわからないです。」

 

「山本って...まさか山本殿が!?こちらに来ているんですか!?」

 

「はい」

 

すると少し自分の姉に連絡を入れて確認するが返事がない。

姉からの最後の連絡は、「市街地にも多数のガジェットが出現したので、自分達もガジェットの殲滅と住民の避難指示を出す」と言うモノであった。

地上本部ビルの方も体制を立て直し始め、粗方ガジェットは掃討されている。

そこでスバルは姉の方を手伝おうかとギンガに連絡を入れたのだが‥‥

 

「ギン姉!!ギン姉!!」

 

「どうしたの?スバル」

 

「ギン姉と通信が繋がらないんです。」

 

ギンガとの通信が繋がらない事に焦っている様子のスバル。

そんな中、追い打ちかける様に最悪の知らせが入った。

 

「ロングアーチ、こちらライトニング1」

 

六課隊舎からの通信なのだが、ノイズがひどく聞こえるのは僅かな声だけだった。

 

「ライトニング1こちらロングアーチ」

 

「グリフィス君、どうしたの!?」

 

「こちらは多数のガジェットと戦闘機人3名の攻撃を受けて持ち堪えていますがもう‥‥し、至急救援を!!‥‥し‥‥きゅう‥う‥‥」

 

「グリフィス君!?どうしたの!?応答して!!グリフィス君!!」

 

グリフィスからの通信はそこで切れてなのはがいくら呼びかけてもグリフィスが答える事はなかった。

 

「なのは」

 

「フェイトちゃん‥‥」

 

2人は顔を合わせて頷き合い、

 

「分散しよう」

 

「スターズはギンガの安否確認と襲撃戦力の排除と被災者の避難誘導!!」

 

なのははスバルとティアナに指示を出し、

 

「ライトニングは私と一緒に六課に戻るよ!」

 

フェイトはエリオとキャロに指示を出す。

 

『はい!!』

 

だがその時、

 

「見つけたぜ!!」

 

「もう逃がさないッスよ!!」

 

先ほどの戦闘機人の2人が追いついた。

 

「くっ」

 

なのは達は事構えるようにするが、

 

「行ってください。」

 

「え?」

 

「皆さんは仲間を助けてください。此処は拙者が」

 

バジルが制して、なのは達に此処は自分に任せろと言う。

 

「でも‥‥」

 

「拙者の相棒は足止めや時間稼ぎにぴったりです。」

 

「‥‥分かった。バジル君、此処はお願い」

 

「はい」

 

ニッコリと返して

そしてなのはは、

 

「シスターシャッハ、上の皆を宜しくお願いします。」

 

と言い、はやて達のデバイスを託した。

 

「はい。この身にかけて」

 

「急いで!!」

 

全員が別れそれぞれの目的のために走り出す。

 

「あっ!待やがれ!!」

 

動き出すなのは達を追撃しようとするノーヴェとウェンディ。

 

「此処は行かせぬ!!いくぞ、アルフィン!!」

 

「きゅゅ」

 

自分の指輪から飛び出したのはイルカだ。だが以前とは少し形状が違う。それは

以前には体の部位を覆うような美しく透き通った鎧が装備されていた。

 

「雨イルカVr水晶鎧」

 

思わず見とれるほど美しいバジルの相棒。

 

だが攻撃はその姿から見受けられないぐらい激しい。

バジルは、

 

「ここから先に通りたいのなら拙者を倒してからいけ」

 

「生意気な‥‥ウェンディ、コイツをさっさと倒して、連中を追うぞ!!

 

「了解っス!!後悔しても知らないッスよ!!」

 

バジルと戦闘機人2人の戦いが始まった。

 

 

~side土方~

 

「くそっ、この辺には敵も被災者も見つからねぇ‥‥しょうがねぇ、此処は一旦ギンガの奴と合流するか」

 

土方はガジェットや敵の姿が見つからない事に悪態をつき、一旦ギンガとの合流を図る事にした。

 

「ギンガ、そっちの状況はどうだ?」

 

土方はギンガの方に連絡を入れるが、

 

「‥‥」

 

「ん?ギンガ、おい、どうした!?返事をしろ!!ギンガ!!」

 

「‥‥」

 

土方がギンガに連絡を入れてもギンガは土方の問いに答えない。

 

「ちっ」

 

土方は胸騒ぎを覚え急いでギンガの下へと向かった。

ギンガの位置は彼女のデバイス、ブリッツキャリバーからのGPS機能から直ぐに分かった。

そして、土方がギンガの下に向かうと、ギンガは戦場と化したクラナガンの繁華街にポツンと立っていた。

 

(なんだよ、無事じゃねぇか心配かけさせやがって)

 

土方はそう思いながらも、彼女が無事だった事に安堵した。

 

「おい、ギンガ。こんな所でなにサボっていやがる!?」

 

「‥‥」

 

「ったく、おいギンガ」

 

土方はギンガに声をかけながら、彼女に近づくが、やはりギンガは土方の問いに答えない。

そして、土方はギンガが一振りの日本刀を手に持っている事に気づく。

 

「ん?おい、ギンガ。その刀はどうした?誰のだ?」

 

土方がギンガに手に持っている刀について尋ねると、ギンガが土方の方に振り向いた瞬間と同時に、彼女は土方に抜刀術をしていきなり切りかかって来た。

 

「っ!?ちっ、」

 

咄嗟に土方はバックステップを踏み、後ろへと逃れたが、ギンガの抜刀術は土方の上着を切り裂き、腹部に小さな切り傷を作った。

土方の腹部には彼の血によってつぅっと赤い横一文字が浮かび上がる。

 

「おい、ギンガ!!テメェ!!何考えていやがる!!こんな時に総悟か雲雀の真似事か!?悪ふざけも時と場所を選べ!!」

 

「‥‥」

 

土方はギンガに向かって怒声をあげるが、ギンガは全くの無表情のまま刀を構え直し、土方に切りかかって来る。

 

「そうかい、テメェがそのつもりなら、相手になってやらぁ!!」

 

土方も抜刀し、ギンガを迎え撃つ。

そして、何合か切り合っていく内に土方はギンガの様子に不信感を抱く。

 

(コイツ、いつものギンガじゃねぇ‥‥人間らしさが全く感じられねぇ‥‥まるで自動絡繰り人形みてぇだ‥‥)

 

市街地に刀と刀がぶつかり合う音が響き渡る。

 

「くっ‥‥ん?」

 

そして、土方はギンガとの鍔競合いをしている中、ギンガにもう一つの変化に気づいた。

 

「ギンガ、お前‥‥目が‥‥」

 

鍔競合いをしてギンガの顔をよく見た土方はギンガの目が普段のエメラルドグリーンから金色に変わっている事に気づく。

しかもその目は光を宿さず、濁っているように見えた。

 

「くっ、おらっ!!」

 

鍔競合いをして強引にギンガを押し退けた後、2人は互いに距離を取る。

 

「おい、いい加減にしろよ!!そんなに剣を振り回したきゃ、後で相手になってやるよ!!」

 

「‥‥」

 

土方はいい加減うんざりしてきたが、やはりギンガは無表情のまま刀を構えている。

 

「くそっ、なんなんだよ?一体‥‥」

 

「‥‥」

 

此方からの言葉に一切答えず、切りかかって来るギンガに土方も段々イライラしてきたその時、

 

「無駄だ」

 

その場に第三者の声が響いた。

 

「あん?」

 

土方が声のした方を見ると、街灯の上に虚無僧の様な服装の男が1人立っていた。

 

「はじめましてだな、真選組副局長、土方十四郎君」

 

「何者だ?テメェ?俺の事を知っているって事は、俺達の世界から来た奴で間違いないんだな?」

 

「いかにも‥我が名は朧」

 

「で?その朧だかオンボロだか知らねぇが何の用だ?今は見て分かる通り、取り込み中なんだが?」

 

「それは知っている。先程からお前達の切り合いを見せてもらっていたからな‥‥もっともそうなるようにけしかけたのは、この俺だ」

 

「ん?どういう意味だ?それは?」

 

「その娘が持っているその刀‥お前も真選組ならば噂程度には聞いたことがあるだろう?かつて、江戸の町を恐怖の底に陥れた妖刀、紅桜」

 

「ああ、それがどうした?そいつは確か攘夷志士同士の乱闘で折れたって聞いたぜ」

 

「ところがだ、今お前が戦っているその娘の持つ刀‥それは紛れもなく妖刀、紅桜なのだよ」

 

「はぁ?何ホラ吹いていやがる」

 

「事実だ。この世界で知り合った者に凄腕の科学者が居てな、紅桜の事を話したら、かなり興味を持った‥そして、ソイツは特徴だけで、紅桜を作ってしまったのだよ」

 

「‥‥」

 

土方は朧の話とギンガの様子を見聞し、朧の言っている事が強ち間違いではないと判断する。

 

「君も紅桜の事は噂程度には聞いたのなら知っているだろう?紅桜は、血肉を求める妖刀だ。鞘から抜いたら、その者の身体を乗っ取り、殺人兵器へと変え、ただひたすら血肉を求める」

 

「そういや、さっき『けしかけたのは俺だ』って言っていたな?それじゃあ、テメェがギンガに‥‥」

 

「左様、紅桜を渡した。その娘は魔力、体力、機動力‥その全てが紅桜の器として相応しかったのでな」

 

「っ!?」

 

朧のその言葉を聞き、土方は瞳孔を開き、殺気を朧へと飛ばす。

 

「ふむ、心地よい殺気だが、お前の相手は俺では無くその娘だ」

 

「っ!?」

 

朧がギンガの方を指さすとギンガは物凄い勢いで再び土方に切りかかって来る。

 

「ちっ、おい、やめろ!!ギンガ!!目を覚ませ!!」

 

「無駄だ、紅桜に体を乗っ取られた者はちょっとやそっとでは正気には戻らん。しかもそれは、お前の知る紅桜よりも数段パワーアップされている」

 

「くっ」

 

切りかかって来るギンガに土方はこれまで攻める場面もあったが、事情を知った途端後手に回った。

操られているのでは下手にギンガを斬ることは出来ない。

 

「らしくないじゃないか、鬼の副長ともあろう者が、後手に回るとは」

 

「うるせぇ‥‥」

 

「別に構わぬではないか、そのような物の代わりなど幾らでもいるではないか」

 

「物だと!?」

 

「そうだ、物だ」

 

土方は朧の発言を聞き、かつて自分が愛した女性、沖田ミツバの婚約者、蔵場当馬の事を思いだした。

彼もミツバの事を人では無く物扱いしていたからだ。

 

「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!!テメェ!!」

 

「何を怒っている?俺は事実を言っただけだ‥‥ん?もしかして、お前、まさかその娘が人間だと思っていたのか?」

 

「どういう意味だ!?」

 

「そうか、お前は知らなかったのか。では、教えてやる。その娘の正体は人間ではない。戦闘機人と呼ばれる種族だ。早い話、精巧な絡繰り人形と同じ存在なのだよ」

 

朧から伝えられたギンガの正体‥‥

それを聞いて、土方には迷いが生じる。

敵のハッタリか、それとも事実か?

もし、事実なら‥‥

いや、そんな訳がない‥‥

アイツが精巧な絡繰り人形?

そんな訳がない。

アイツは怒ったり、笑ったり、泣いたりしてちゃんと感情があるじゃないか!!

それに馬鹿みたく沢山食っているじゃないか!!

そんな奴が絡繰り人形?

そんな訳がある訳がない!!

 

土方の脳裏にこれまでギンガと共にした時間と光景が過ぎる。

 

「どうした?剣に迷いが生じているぞ。そんなにショックだったのか?そいつが人間でない事に?もしかして、惚れていたのか?その絡繰り人形に?」

 

「勝負の最中にいちいち横から口を挟むんじゃねぇ!!」

 

「まぁ、俺の言っている事が嘘かもしれんが、確かめるにはそいつを切ってみれば分かる事だ。戦闘機人は体の中に機械の部品とやらが入っているらしいからな」

 

(ギンガを斬るだと!?そんな事出来る訳ねぇじゃねぇか!!)

 

例え、朧の言う事が事実であったとしても土方にはギンガを斬るなんてことは出来なかった。

ギンガが紅桜に身体を乗っ取られた事と彼女の正体に疑惑を持ち、剣に迷いが生じた土方は、隙も生じやすくなる。そして、その隙を殺人兵器となったギンガは見逃さず、彼の心臓に紅桜の刃を突き立てた。

ブシュッっと言う鈍い音が辺りに小さく木霊する。

 

「ぐっ‥‥がはっ‥‥」

 

口と傷口から血を流し、その場に倒れる土方。

彼の周りにはあっという間に血溜まりが出来る。

そして、そんな土方を無表情のまま見下ろすギンガ。

 

「ふん、鬼の副長もこの程度か‥‥だが、これで少しは奴らの戦力を削る事は出来たか」

 

朧は倒れている土方を見下ろしながらそう呟く。

そして朧は、

 

「では、行くぞ。タイプゼロ・ファースト」

 

「‥‥はい」

 

ギンガに声をかけると、彼女は頷き、朧と共に去ろうとした時に、

 

「ねぇ、何しているの?」

 

その場に突如、別の男の声が聞こえた。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的63 悪党VS悪党

お久しぶりの更新です。

先日天野明展in京都に行きました!!本当に良かったですね!!何がよかったかってそれはもちろん生きてて!!本当にあいうのを見るとあぁ、時間が流れが速く感じそして殺す昔を思い出す。青かったあの頃を

とまぁ色々言いましたがアニメの展覧会っていいですよね~生原稿見放題ですし、限定グッズ置いてますし何より京都がモデルとなったグッズが良い。金さえあればとりあえずあの着物欲しかった。


 

 

 

~side地上本部ビル 公開陳述会 会場~

 

「あかん、完全にとじこめられてもうた」

 

システムダウンにより会場内に閉じ込められたはやて達。

はやてが扉を押しても扉はうんともすんとも動かない。

閉じ込められたと言う事で会場内がざわつく。

 

「僕がこじ開けるよ」

 

炎真は額に炎を灯して扉の前に立つと、

 

「はァァ!!」

 

扉はこじ開けられたがそこに問題が一つ起こった。

 

ヒュウウォン

 

激しい突風の結界がはられていた。

しかもこの風の結界には鎌鼬があり、不用意に手を出せば、鎌鼬により手をスッパリと切り落とされてしまう。

 

「この風まさか...」

 

「シノビという奴か」

 

シグナムが苦々しく呟くと

 

「これを張っているのが彼ならば今頃外は‥‥」

 

炎真の言う事に

 

「最悪の事態だけは何としても避けなアカンな‥‥」

 

冷や汗を垂らすはやて。

だが、会場の周りが鎌鼬の結界で囲まれ、デバイスが無い中、彼らには何も出来ず、外に居る局員らの奮闘を祈る事しか出来なかった。

 

だが、この時はやて達は知らなかった‥‥。

 

自分達の隊舎が別働隊に襲撃されていることを‥‥

 

 

~side地上本部周辺 上空~

 

地上本部を見下ろすように下を見ている2人組。

 

「連中の尻馬に乗るのは、どぉ~も気が進まね~けど」

 

ゼストとアギトだ。

どうやら彼らの目的も此処にあるらしい。

 

「それでも、貴重な機会ではある。今日ここで全てが片付くのであれば、それに越した事は無い」

 

「ま~ね。つか、アタシはルールーの方も心配だ。大丈夫かな?あの子?」

 

「心配ならルーテシアについてやればいい」

 

ゼストの言い分に少し腹が立ったのか、

 

「ルールーには蟲やガリューが居るけど旦那は1人じゃんか!?」

 

空間モニターにいる1人の男性を指さしながら、

 

「旦那の目的はこの髭オヤジだろ?そこまではアタシが付いて行く。旦那の事、ちゃんと守ってやるよ」

 

「.....お前の自由だ。好きにしろ」

 

「するともさ!旦那はアタシの恩人だから...っ!?旦那何かがこっちに来る」

 

「ん?あれは‥‥」

 

ゼスト達の目の前に来たのは‥‥

 

「なんだ?ありゃ?白い蛇?」

 

「いや、あれは龍だな。」

 

「龍!?あれがっ!?」

 

ミッドを始めとする管理世界では、ドラゴンと言うと地球の西洋式の竜が一般的で蛇の様に長い身体を持つ東洋式の龍は見かけない為、アギトが此方に向かって来る白龍を蛇と間違えるのも無理はなかった。

ゼストでさえ、この白龍の飼い主と交流を持つまで知らなかったぐらいだからだ。

すると白龍からモニターが映し出されて、

 

「やっほー、ゼスト君。元気?」

 

「こいつ、この前の‥‥」

 

アギトは白蘭がゼストの知り合いであることは以前、彼と出会った時に知った。

ゼスト自身は白蘭の事を嫌っている様子はなかったが、アギトはどうもこの薄気味悪い青年の事が好きになれなかった。

 

「白蘭か‥‥」

 

映し出されたのは白蘭だ。

どうやらゼストに当てたメッセージらしく事前に録画されたものだった。

 

「久しぶりだね、ゼスト君、今日多分決行するだろうと思って僕のペットも君の戦力に加えてあげようと思ってね、そっちに送っておいたよ。大丈夫、役に立つからさ~♪お礼なら用が済んだらしに来てね、それじゃあ.....またね~」

 

最後の顔はいつもの彼らしくない寂しそうな表情を一瞬だけ見せた。

 

「あぁ‥‥その内にな‥‥」

 

ゼストも気づいた、白蘭が自分の体の事をやはり知っていた事を‥‥

 

 

~side六課~

 

公開陳述会が開かれている地上本部ビル及びその周辺市街地が被害を受けているその頃、機動六課の隊舎も襲撃を受けていた。

スカリエッティにしては地上本部の方はむしろ局員を引き付ける囮でこちらが本命と言ってもよかった。

ルーテシアの召喚魔法によって突如、敷地内にガジェットが転移してきたと思ったら、ガジェットは真っ先にヘリポートへと向かい、ヘリ及び周辺設備を破壊した。

そして、今の六課は‥‥

 

身も凍る程の冷気の中、地面にも氷が張られザフィーラそしてシャマルも倒れ新八も木刀で自分の体を支えるのがやっとのようだ。

 

「よく、4人で戦い抜いわね。その頑張りには褒めてあげるわ」

 

そんな傷ついた4人にトレディは無傷のままその場に立ち、『よく戦った』と讃頌する。

 

「だけど、もう‥‥」

 

「まだ.....まだ、終わっていません!!」

 

どんなに傷ついても新八の目からは闘志は失われていない。

 

「守るんだ...皆の帰る場所を.....」

 

「はぁ~よく見てみなさいな。廃墟となった居場所、傷ついた仲間、そして3度も膝をつく貴方の姿を‥‥」

 

「トレ...ディ‥‥」

 

神楽がぐぐぐっと起き上がり、トレディの名をまるで地の底から這うように呟く。

 

「フン!!」

 

ドカッ!

 

しかし、神楽は完全に起き上がる前に顔面から蹴り飛ばされ吹き飛ぶ。

 

「「「神楽(ちゃん)!!」」」

 

「うわぁぁ!!」

 

新八は最後の力を振り絞ってトレディに向かって走り、そして木刀を高々と振り上げた後、目一杯の力を込めてトレディめがけて木刀を振り下ろそうとするが、

トレディは達観した様に目を閉じる。

まるで新八の攻撃は自分には当たらない事を確信するかのように‥‥

それはまさにトレディの予測通りで、新八の目の前には攻撃体勢を無数のガジェットが立ち塞がる。

 

「!!?」

 

「新八君!!」

 

新八は覚悟を決めて目をつぶり周りが眩しいぐらいの光に包まれた時に

 

ズドーン!!

 

「!!?」

 

「あれは!?」

 

目を開くと新八の前にシールドがあり、

 

「嵐+晴」

 

マシンガンのような音と共に新八に群がっているガジェットが次々と破壊された。

 

「すまねぇ、少し遅くなった。」

 

「獄寺...君」

 

「中のガジェットはほぼ破壊した。ヴァイスがこっちに手を貸せって言ってきたんでな。」

 

「何で...はやてちゃんに」

 

「リボーンさんに言われた、はやてにも伝えてある。」

 

シャマルとザフィーラを担ぎ後ろに下がり、

 

「新八、お前も引け、後は俺がやる」

 

「はぁ、はぁ後は頼むよ...獄...寺く‥‥」

 

新八は力尽き地に倒れる。

 

「よく、頑張ったな‥新八‥‥」

 

「うぅ、獄寺...いたアルか?」

 

「わりぃな、少し遅くなっちまって、だが中は多分大丈夫だ。ヴァイスも居るしな」

 

「お前、絶対女にモテないネ、デートの鉄則は大体女が遅れてくるもんアル、男が時間守れなくてどうするアルか」

 

神楽がフラフラと立ち上がりながら、獄寺に近づきながら言う。

 

「るせぇ...そこまで冗談言えんなら新八を担いで後ろに引っ込んでいろ」

 

「お前こそ冗談言うなヨ、私が怪我しているように見えるアルか?こちとらお前らと違ってダイヤモンド素材アル。」

 

「そうかよ」

 

「お話は終わった?」

 

獄寺と神楽の会話が一段落つくとトレディが2人に声をかけてきた。

 

「よく会うわね、銀髪さん」

 

「ああ、そうだな、トレディ。‥‥今度こそお前をぶん殴ってやるよ‥‥」

 

そして声を潜めて、

 

「神楽あいつは...」

 

「トレディとは‥‥あいつとは私がやるアル、産まれ方は違ってもアイツは私の同族ネ‥‥夜兎の尻拭いは同じ夜兎の私の役目アル」

 

「そうか‥だが、傍から見ると姉妹喧嘩にしか見えねぇな‥‥」

 

「じゃあ、私が姉さんアル。妹の不始末は姉がつけるアルネ」

 

「身体つきから言うと、お前の方が妹に見えるがな」

 

獄寺はトレディの身長その他もろもろから神楽の方が妹なんじゃないかと言う。

 

「うるさいアル!!」

 

神楽が駆け出して、獄寺は、

 

「しょうがねぇ、俺はくず鉄狩りをするか」

 

獄寺はまだ周辺に居るガジェットを狩る事にした。

 

「瓜、形態変化」

 

叫ぶと瓜は姿を変え獄寺に巻き付き大量のダイナマイトを背負った獄寺の姿が現れた。

 

「新型がいねぇなら、フルボッコ確定だぜ、くず鉄共が!!ロケットボムVer.X!!」

 

神楽を躱す用にボムが飛んでいき周りのガジェットを破壊していく。

 

「相も変わらず、そんな攻撃‥熱源を出せば出すほど、私に有利だと学ばないのかしら?」

 

「何処見ているネ!!お前の相手は私アル!」

 

爆風の熱を吸収しようとしたトレディに神楽は蹴りを入れ、

 

「さぁ、第2R始めアル」

 

「ちっ、調子に乗るなよ!!死にぞこないが!!」

 

トレディも神楽を迎え撃つ。

 

「IS‥レイストーム」

 

魔法弾を発生させて雨のように降り注ぐが獄寺のシールドに阻まれる。

 

「やっと、くず鉄以外の奴が出てきたか」

 

ナンバーズの中でも支援型のオットーが前線入りをする。

傍には双子のディードも控えている。

双子のナンバーズを見て獄寺はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「なぁ、お前‥確かオットーって言ったっけ?」

 

獄寺はそんなオットーに声をかける。

 

「‥‥なに?」

 

突然敵である獄寺に声をかけられ、オットーは警戒しつつも返答する。

 

「1つお前に確認したい事があるんだけどな‥‥お前、本当に女なのか?」

 

「‥‥一応、ディードとは同じ性別‥‥ディードが女と言われる性別ならば、僕も女になる」

 

オットーはディードをチラッと見て、自分より女性っぽい体つきの双子のかたわらを見て、

 

「くっ‥‥」

 

悔しそうに顔を少し歪ませた。

 

「そうかい、なら話は終わりだ」

 

(くそっ、坂田の奴が正しかったなんてちょっと癪に障るな‥‥)

 

そしてオットーめがけて、

 

「2倍ボムVer.X!!」

 

「っ!?」

 

オットーはそれを喰らう。

 

「うわぁ!!‥‥くっ‥‥」

 

だがオットーも負けずに以前ツナにした拘束具で獄寺を縛る。

 

「こいつか?10代目から報告があったのは‥‥」

 

そして身動きの取れなくなった獄寺をディードが斬りかかろうと来るのを見て

拘束具をできるだけ引っ張り隙間からボムを落とす。

 

「チビエアボム」

 

の風圧の勢いで拘束具を外してその勢いを殺さずにディードの方に走り、

 

「ボムスプレッズVer.X」

 

ディードの剣を躱しながらすれ違い様にボムを空間に置くように放つ。

 

「うわぁ!!」

 

躱しようがなくモロにくらい。

 

「んなモン、どっかの野球バカの剣筋の方がまだ鋭かったぜ」

 

「ディード!!はっ!?」

 

「果てな」

 

ボムをオットーに投げそれは周りのガジェットをも巻き込む。

 

「3倍ボムVer.X」

 

まるで嵐が過ぎ去ったかのような爆風だ。

だが嵐はまだ終わってはいない。

 

シュン!

 

ドン!

 

「ぐはぁぁ!!」

 

突如獄寺が何者かに殴り飛ばされる。

 

「獄寺!!」

 

「やぁ~」

 

「くっ、バカ兄貴...」

 

神楽が悔しそうに歯ぎしりをして呼んだ。

 

「アイツらが居ないから、本当は出しゃばる気は無かったんだけど、なかなかレアなモンが居たからね。それにしも不甲斐ないなぁ~そこの双子は‥‥」

 

獄寺に負けたディードとオットーを憐れむ様な目で見る神威。

 

「‥‥」

 

「くっ‥‥」

 

負けた事は事実なので、反論できないディードとオットー。

 

神楽が噛み付こうと神威に向かおうとするがトレディがそれを許さない。

 

「どこを見ているの?貴女の相手は彼じゃない、私なんでしょう?」

 

「ちっ」

 

神威に殴り掛かりたかったが神楽の前にはトレディも居る。

 

「なら、お前をさっさとぶっ飛ばして、あのバカ兄貴もぶっ飛ばすネ!!」

 

神楽は神威から再びトレディに視線を向けた。

 

「ほら、立ち上がれよ、まだ踊れるんだろ?君のお友達はそんなんじゃなかったよ」

 

神威は獄寺に対して挑発を含んだ様に言う。

 

「痛えぇな、くそ」

 

右手の感覚が少しおかしい肩が外れたようだ。

 

「ちっ‥‥フン!!」

 

ゴキっ!

 

獄寺は外れた肩を強引に戻す。

 

「くそったれが!」

 

今までの情報を推測しても片手で戦える相手じゃない、味方を援護するのも、味方からの援護ももう無理だろう。かと言ってすぐに倒せる相手でもないのにガジェットは増えオットー達もすぐに立ち上がるだろう。

 

「!?」

 

(こいつ、速さが10代目ぐらいありやがる。)

 

夜兎という戦闘部族は戦えば戦うほど強くなる。神威はツナと言う今まで体感したことのない速度を2度味わい、反射速度そして自身の速度が急激に上がっていた。

しかも今は日が落ちているので、神威は傘も強化液も必要としていない。

向こうにすればコンディションは最高で、此方にしてみれば最悪な状況だ。

 

「くそ!」

 

捉えようとボムを投げるが、

 

「はは、遅い遅い」

 

余裕でボムを躱す神威だが、

 

「かかったな!!」

 

「っ!?...こいつは!?」

 

獄寺はシールド2枚で神威をサンドウィッチに挟む。どうやらボムで誘導していたらしい。

 

「でもこれで捕まえてどうするの?」

 

神威はシールドを壊そうと攻撃を入れ始めた。

だがその衝撃は凄まじいモノだった。

 

(何つぅパンチだよ。見た目よりずっと重い...けどな‥‥)

 

ぶち壊そうと本気の拳で攻撃し続ける神威

 

「瓜!!」

 

「ニャァ」

 

獄寺の相棒瓜がシールドの隙間に入り込んで、

 

「瓜ボム!!」

 

獄寺の相棒の瓜は自らの尻尾を導火線として爆発する獄寺の新しいボム。

それと同時にシールド離して、

 

「ロケットボムVer.X」

 

流れる用に次の攻撃に入りそして、

 

「2倍ボムVer.X」

 

また次とやまない嵐は休まず攻撃に入る。

何度も何度も神威が地上についた時までボムを投げ続けた。

 

「どうだ!?化け物兎!!」

 

だがその爆風は、

 

「ありがとう。」

 

トレディに吸収されていた。

 

「な!?くそっ!!」

 

トレディは熱源を全て吸収し終わると、ISを発動させてそのまま神楽を殴り飛ばす。

 

「ぐはっ!?」

 

神楽は吹き飛びそのまま意識を失った。

 

「おい、誰が手を貸せと言った?」

 

不機嫌そうに呟く神威にトレディは表情を崩さずに言い放つ。

 

「戦場では利用するモノは何でも利用するモノなんじゃないの?ソレが例え、味方であっても‥それにあの連続した爆発じゃあ、例え夜兎の貴方でも危なかったんじゃない?」

 

「ふん、余計なことを‥‥」

 

「貴方には一応、恩がある‥‥」

 

「恩‥だと?」

 

トレディの恩と言う言葉に神威は反応する。

神威は確かにトレディとホテルにて初めて邂逅したが、それ以降出会っておらず、そこまで親しい間柄でもない。

にも関わらず、自分に恩があるとはどういう事だろうか?

 

「ドクターから聞いた‥‥私のDNAは貴方のDNAデータを基にしていると‥‥つまり貴方がいなければ、私はこの世に生まれなかった‥‥」

 

トレディは以前、ホテルで神威とあった時、彼にはナンバーズ以上に強い絆の様な何かを感じた。

DNAレベルでは神威とトレディはほぼ同一人物‥‥しかも夜兎という事で、共鳴の様なものを感じたのだろう。

そこで気になったトレディはスカリエッティに尋ねたところ、自分の誕生秘話を話してくれた。

 

「貴方はもう1人の私でもあるし、私は貴方の兄妹でもあり、貴方の娘でもある‥‥」

 

「へぇ~‥‥じゃあ、俺がもし、女で生まれていたら、お前の様な容姿になっていた訳か‥‥だが、もう1人の俺でもこれ以上の邪魔をするな。お前も夜兎の血を引いているならこの意味が分かる筈だ。いいな?」

 

「わかった」

 

トレディの返答を聞き、神威は獄寺の所に向かい、トレディは神威の姿をジッと見ていた。神威も

 

(どうりでな)

 

 

~sideヴァイス~

 

「オーケーまだ腕は落ちてねぇ」

 

獄寺と分かれ、隊舎に残り、バックヤードである非戦闘員の避難の為の時間を稼いでいたヴァイスは隊舎にせまるガジェットを狙撃しては破壊していた。

だが、彼は知らなかった。

既にこの六課攻防戦は味方の圧倒的不利であると‥‥

 

ドン!

 

更にもう1発とガジェットを破壊していく。

チラっと後ろを見て、逃げ遅れている人がいないことを確認する。

 

「頼むぜ、ストーレレイダー」

 

だが急にストームレイダーが大きな魔力を確認すると

 

「っ!!?な、何だ?あのドでかい弾は!?」

 

ヴァイスは間一髪それを躱す。

 

と同時に

 

パリーン

 

「やるじゃないか」

 

そこに立っていたのは以前ヘリを狙撃したナンバーズのディエチだ。

 

「あんな派手な弾出していたら、こっちに自分の居場所を教えているようなもんだぜ」

 

ヴァイスは躱す前にディエチにスコープを破壊した。

 

「でも、おしい‥此処ではスコープは寧ろ邪魔だったからね、逆に礼を言っとくよ」

 

ディエチは皮肉なのか負け惜しみなのかスコープ1つぐらい壊れてもなんの支障もないと言う。

 

「あんまり強がんなよ、お嬢ちゃん。次はそのライフルをぶっ壊してやるぜ」

 

また構えるヴァイス。

しかし、

 

「ディエチ」

 

「ルーテシアお嬢様‥‥」

 

間に入る様に紫の髪の少女の存在が突如、ヴァイスの冷静だった理性を狂わせた。

 

「は...」

 

その少女を見たヴァイスに何故か焦りが見えてくる。引き金に置いている指が震え額から一滴のしずくも流れ落ちてまるでまるで悪夢を見ているかのような表情を浮かべている。

その理由はヴァイスの過去にあった。

彼は以前、シグナムと共に本局武装隊のスナイパーとしてエリート街道を走っていた。

しかし、ある日に起きた立てこもり事件がヴァイスの人生を狂わせた。

人質に取られたのはヴァイスの妹のラグナだった。

彼はこの時、ラグナの兄ではなく、一局員としてこの事件の鎮圧へと乗り出した。

しかし、妹が人質にとられていることに気が動転してしまったのか、狙いを僅かに外してしまった。

外れた魔法弾は妹の右目に命中し、彼女は右目を失明してしまった。

事件はその後、片付いたが、狙いを外し、人質‥自分の妹を撃ってしまったヴァイスは、本局武装隊を去り、『陸』のヘリパイロットに転属した。

そして、今ヴァイスの目の前に居る紫の髪の少女は自分が失明させてしまった当時の妹と同じぐらいの年頃だった。

同じ年頃の少女をスコープ越しで見たせいで、かつての大失態が脳裏を過ったのだ。

そんなヴァイスの事情など知る由もなく、少女は気にせず

 

「ガリュー‥片付けて‥‥」

 

自分の召喚獣に命を下す。

ガリューもそれに従いヴァイスを蹴り飛ばす。

 

「ぐわぁ!」

 

反撃する隙を自らの過去の失態で逃したヴァイスは壁を突き抜け意識を失った。

 

「ルーテシアお嬢様、手助け感謝します。」

 

「大丈夫、それよりあの子の保護を」

 

「は、はい」

 

ディエチは何か目的があるのか...それとも‥‥

 

 

~side ヴィヴィオ~

 

六課の隊舎が敵襲を受け、大混乱となっている中、ヴィヴィオは定春と寮母のアイナと共に避難をしていたのだが、混乱のさなか、アイナとはぐれてしまった。

そして、定春の背中に乗り、戦場と化した六課の敷地内を逃げ回っていたが、子供のヴィヴィオでは、どこに避難すればいいのかわからない。

 

「パパ‥‥ママ‥‥怖い‥‥早く来て‥‥」

 

定春の背中に乗りながら涙を流すヴィヴィオ。

そんなヴィヴィオにガジェットが襲い掛かる。

定春はガジェットを踏み潰し、噛み砕くがいかんせん数が多い。

やがて、定春は何かを悟り、背中のヴィヴィオを下す。

 

「定春‥‥?」

 

不安そうに定春を見るヴィヴィオ。

定春はまるでヴィヴィオを守る聖獣のようにヴィヴィオの前に立ちふさがる。

そして、チラッとヴィヴィオを見る。

それはまるで、「ここは自分にまかせて逃げろ」と言っているかのように‥‥

襲い掛かってくるガジェットに定春は獅子奮迅の働きを見せた。

ヴィヴィオは当初、呆然としていたが、定春が戦っている間に逃げることが出来た。

 

「定春‥‥ゴメン‥‥ゴメンね‥‥」

 

しかし、六課の敷地内を逃げ回っている中、ヴィヴィオがあったのは局員ではなく、青を基調としたボディースーツを纏った少女、ディエチであった。

まだ子供のヴィヴィオが戦闘機人から逃れられるわけもなく、ヴィヴィオはあっさりとディエチに捕まってしまった。

 

 

神威と獄寺の戦いを観戦しているトレディの下に、

 

「トレディ姉様」

 

「何?オットー」

 

オットーが声をかけた。

 

「ディエチ姉様から連絡が‥‥ルーテシアお嬢様のおかげで、聖王の器を確保したと‥‥」

 

「そう、なら後は‥‥」

 

トレディは六課の隊舎に向かって先程獄寺から吸収した炎を放つ。

そしてオットーもまた魔法弾をまた降り注がせる。

 

「終わってたまるかぁぁぁぁ!!」

 

トレディとオットーの攻撃をシールドで守り自分にはシールドを張らずに神威と向き合う獄寺。

 

「ケンカっぅのはどちらかがまいったっていうまで勝負は決まらねぇ。行くぜ!!」

 

またボムを投げるが神威に当てるのは、

 

「いいや‥ケンカじゃないさ‥‥」

 

グサ

 

獄寺の腹に鋭い突きのようなパンチが入った。

 

「ごハァ」

 

「殺し合いだよ。これは‥‥」

 

更に回し蹴りを入れ、

 

「地球じゃこういうの『窮鼠猫を噛む』って言うんだっけ?」

 

とポケットに入れられたボムを取り出して、

 

「君との戦いもなかなか楽しかったよ。じゃあねぇ~」

 

そのまま笑みを浮かべて獄寺に向かい投げた。

それと同時に今まで守って居た獄寺のシールドも機能を停止して六課に降り注ぐ魔法弾と炎を止めていた最終防壁は崩された。

 

 

 

・・・・続く




ではまた来週


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的64 何処までも広がる烏の翼は雲をも真っ黒に染め上げる

更新です。


 

 

 

~sideはやて~

 

「はっ!?」

 

公開陳述会の会場に閉じ込められているはやてが突如、胸騒ぎを感じた。

 

「どうしたの?はやて」

 

そんなはやてに炎真は心配そうに声をかける。

 

「シャマル‥ザフィーラ‥‥そんな‥‥まさか‥‥いいや、ありえへん‥あの2人に限ってそんなこと‥‥」

 

はやてが六課の隊舎で留守番をしている2人の異変に気づき膝をつく。

 

「なにかあったのか?あの2人に‥‥?」

 

「‥‥」

 

あの2人に何かあったという事は六課の状況が良くないことを示す。

リボーンが自分の指示で獄寺に六課を任せとはいえこのはやての様子は.....最悪な事態を意味しているのかもしれない。

そんな様子を見ている炎真はある事を決意した。

 

 

~sideフェイト~

 

一方、なのは達、スターズ分隊と分かれ、現在襲撃を受けている六課へと急いで向かっているフェイト達、ライトニング分隊。

 

だが、

 

「っ!?」

 

フェイトが相手の攻撃に気づきソニックムーブで相手の攻撃に合わせながらガードした。

 

ズドーン!

 

そして煙がはれそこにいたのは、以前の市街地における戦闘でデェイチとクアットロの2人を助けに入った女性とこの前の船上パーティであった戦闘機人が目の前にいた。

 

「お久しぶりです、フェイトお嬢様」

 

「貴女は‥‥」

 

セッテに声をかけられるとフェイトは彼女を睨む。

 

「あの時の傷は回復された様で何よりです」

 

「貴女がつけたんでしょう」と言いたいフェイト。

 

「紹介します。此方は、私の姉様の1人の‥‥」

 

セッテは隣にいるもう1人のナンバーズの女性をフェイトに紹介する。

 

「ナンバーズ3‥‥トーレです。フェイトお嬢様」

 

セッテの隣にいるもう1人のナンバーズの女性がフェイトに自らの名を名乗る。

 

「我々が来たと言う事は話の内容はもう、お察しなのでしょう?」

 

「‥‥『あなた達の所へ来い』って事?」

 

「お話が早くて助かります」

 

今回はあの時の様にツナのデータではなく、フェイト本人に用がある。

よって、フェイトはエリオとキャロに‥‥

 

「‥‥エリオ、キャロ先に行って」

 

フェイトは、トーレとセッテの目的が自分である事から、2人には先に六課の援軍へと向かう様に指示を出した。

 

「でも‥フェイトさん」

 

キャロは戦闘機人2人相手にフェイトを1人この場に残す事は心配な様子。

 

「すぐに追いかけるから、2人は先に行って‥‥あの2人‥用があるのは私みたいだから‥‥」

 

そんなやりとりをしている中、エリオがフリードに指示を出して、心配そうにフェイトを見るキャロにエリオは「自分達がいた方がかえってフェイトさんの足手纏いだ。」とキャロを説得させた。

 

六課へと向かうフリードを見たフェイトは、

 

「バルディッシュ、サードフォーム」

 

と告げると今まで戦斧型だったバルディッシュが黄色い刃をだして大剣へと姿を変えた。

 

「答えはあなた達も分かっているんじゃない?‥‥私はあなた達の所には行かない‥よ」

 

「確かに‥此方も素直に来てくれるとは思っていませんよ、フェイトお嬢様。ならば‥‥」

 

「力尽くで来てもらうだけ‥‥」

 

トーレは四肢から翼の様なモノを生やし、セッテは固有武装であるブーメランブレードを構えた。

 

 

~side地上本部ビル 周辺 上空~

 

「こちらは管理局。あなた方の飛行許可と個人識別表が確認できません!速やかに停止し個人識別表を送られたし」

 

「ん?この声...!」

 

管理局側も自分達の存在を気づいた様だ。だが、それを気にせずにそのまま飛び続けるゼストとアギトそれに白龍。

そこへ、

 

ヒュン!

 

数発の魔法弾が迫って来た。

 

「むっ?」

 

「にゃろ」

 

それをひょいと避け、

 

シャァァ

 

白龍が調和の炎のブレスで魔法弾を石化させた。

 

「な!?」

 

アギトは白龍がそんな事ができるのかと驚いているがそんな暇はない。

 

「ギガントハンマー!!」

 

「外したです、相殺と防御で防がれました。」

 

「だが、ダメージは通った。続けてぶち抜くぞ!!」

 

煙がはれそこに立っていたゼストは先程までとは髪の色が違い、まるでスーパーサ〇ヤ人の様に金髪になっており、アギトの姿もなくなっていた。

 

「痛って~」

 

リィンと同じ融合機何だろう、アギトは咄嗟にゼストと融合して

 

「ちくしょう、思いっきりぶん殴りやがって~!!」

 

ゼストの中でヴィータに対して文句を言っていた。

 

「すまんなアギト、助かった。」

 

白龍も心配そうにゼストを見るが

 

「大丈夫だ。」

 

とまた前を向き直す。

 

(やっぱりアイツはリィンと同じユニゾンデバイスか‥‥)

 

以前、アギトの姿を見た時から、もしかしたらと思っていたヴィータはゼストとユニゾンをした事により、アギトがリィンと同じユニゾンデバイスだと確信を得た。

 

(リィンと同じユニゾンデバイスがあるなんて‥‥)

 

自分以外のユニゾンデバイスを初めて見たリィンは他のユニゾンシーンを見て驚いていた。

 

「管理局機動六課スターズ分隊、副隊長ヴィータだ!!ちょっと事情を聴かせてもらおうか?」

 

ヴィータはゼストに名を名乗り、指示に従わなかった理由を聞く為、事情聴取への同行を求める。

 

「ゼスト‥‥そちらの指示に従う訳にはいかない‥‥押し通る」

 

「ならば、ぶっ潰して事情を聴かせてもらおうか?リィン行くぞ!!」

 

「は、はい」

 

ヴィータもリィンとユニゾンすると、彼女のトレードマークである真っ赤なゴスロリの様なバリアジャケットが真逆の真っ白いゴスロリ風のバリアジャケットへと変わった。

両者睨み合い武器を構え直した。空を駆け回りながら武器を交えた。

 

ガン!ガキぃん!

 

一歩も譲らない2人の騎士の攻防。

 

「ゼストっつたか?お前、何企んでんのか目的を言えよ、納得できる内容なら管理局はちゃんと話を聞く!!」

 

「フッ、若いな」

 

ゼストは腰から炎を灯してそれを見たヴィータも何やら受ける体勢で

 

ズドドドン!

 

煙が巻き起こり2人とも同時に煙から飛び出た。

 

「だが、いい騎士だ。」

 

「旦那、褒めている場合かよ」

 

その間、ヴィータとリィンはある事に気付く、それはゼストとアギトのユニゾンアタックが微妙にずれている事だ。多分この2人の相性がそこまでよくないのかもしれない、だがヴィータとリィンは相性もよく練度も高いこれを見たアギトは更に魔力をあげて

 

「炎熱、烈火刃」

 

燃える気持ちで語るアギト。

 

「旦那の命は削らせねぇ、どけぇ」

 

 

~side朧~

 

「何者だ、貴様」

朧の目の前に居たのは黒髪で黒ラン袖に風紀の文字が入って肩には小鳥が囀り名を呼ぶ

 

「ヒバリ、ヒバリ」

 

「君かい?この騒ぎを起こしているのは?」

 

「そうだとしたら?」

 

「咬み殺す。」

 

雲雀はトンファーを構えて

 

「ほう、ひよっこにしては随分と粋がるな‥」

 

此処でギンガが雲雀を敵対者と判断し前に出ようとしたが、そこを朧が制した。

 

「お前は先に戻っていろ」

 

そう言われるとギンガは頷きその場を立ち去る。

 

「ねぇ、彼女そこで寝転んでいる人の相棒だったんだけど、何故君達の方についているの?」

 

雲雀はチラッと倒れている土方を見た後、朧に何故、ギンガが朧の指示に従っているのかを尋ねる。

 

「気になるか?」

 

雲雀は目を瞑りそして

 

「‥別に、僕には関係ないよ‥‥ただ、君は風紀を乱した‥‥よって、僕が鉄槌を下す‥‥咬み殺してあげる」

 

雲雀はまるで捕食者のような笑みを浮かべて、朧へと向かって行く。

 

「ふん、身の程を知らぬひよっこが、粋がるのは良いが、噛み付く相手は選んだ方がいいぞ」

 

朧は刀を抜き、

 

キィィィン!

 

耳を貫くような鋭い金属音が鳴り響く。

 

「我は天に仕える八咫烏、地べたを這って、天を見上げるだけのひよっこが、あまり図に乗るな!!」

 

雲雀を押し切り雲雀が後ろに少し下がると目にも留まらぬスピードの剣劇、だが、雲雀はそれをも躱す

 

「ねぇ、遊んでいるの?ひよっこに舐められる八咫烏って随分とひ弱な八咫烏だね?これらな都会の鴉の方がまだ強いんじゃない?」

 

雲雀は朧の剣を止め

 

「ほぉ~なかなかやるな、ひよっこ。あれを躱すとは‥‥」

 

雲雀は朧の言葉に耳を貸さずにもう片方のトンファーで朧を攻撃するが朧は雲雀の持ち手に掌を当てて

 

「!!?」

 

当てるだけで雲雀の手を弾き雲雀はそれによりバランスを崩してしまう。朧はその隙をつくかのように雲雀を蹴り飛ばし

 

ヒュッ!ガッ!ガッ!

 

雲雀に向かい針を投げその針は雲雀の体の至る所に刺さる。

 

「八咫烏を舐めるなよ、ひよっこ」

 

「っ!!?」

 

カランカラン

 

トンファーから手が離れる。

雲雀を刺した針はただの針ではない。

早期に治療しなければ死に至る毒針だ。

 

「終わりだ‥ひよっこ。下手に動かなければ若干ではあるが寿命も延びる。その間に仲間が来る事でも祈っているんだな」

 

朧の言い分に雲雀がここに来て一番の怒りを顕にする。

 

「仲間?何それ?」

 

トンファーを手に取り言うことの聞かない足を無理やりうごかして立ち上がり

 

ボォッ!

 

トンファーに紫の綺麗な炎が灯る。

 

「ここまでしてまだ抗うか?ひよっこ」

 

雲雀は朧に向かい走り出してトンファーで攻撃するが...いつもよりキレがないそれどころか、膝をついてしまう。

朧の攻撃を喰らった事と先程受けた毒針の毒が大きく影響してきた。

 

「地を這う虫ケラがこれで終わりだ」

 

雲雀は少し後ろに下がりそれを躱す。

 

「ふん、悪あがきを」

 

朧は雲雀に迫る様に歩く...が、

 

ザン!

 

突如地面から針が延びて朧の脚を貫くそれを見て雲雀は立ち上がりトンファーで朧を思いっきり殴り飛ばした。

朧はビルの残骸を貫く。

 

「ゲホッ」

 

だがもう限界なのか、自分の攻撃の振動にも耐えられずに血を吐く。

そのタイミングで朧はまた針を飛ばして雲雀を攻撃するがヒバリもそう何度も同じ手をくわないようにと躱そうと動くが運悪く足が血で滑り転び1本くらってしまった。

 

「ひよっこにしてはよくここまで噛み付いた、だがこれで終わりだ。」

 

雲雀の元にまで歩いてきた朧は雲雀の首元をつかみ

止めの攻撃を入れようとした時に持っていたトンファーで雲雀はまた攻撃した。

 

「まだ動けるのか?だが、下手に動けば、その分だけ毒が体を回り、自分の死期を早めるぞ」

 

「うるさい‥僕に指図するな‥‥」

 

だが雲雀の攻撃は躱され腹に先程と同じ掌からの攻撃をくらい、その後は刀で

 

「さらばだ。ひよっこ。八咫烏の毒でその翼を羽ばたかせぬまま地べたで死ね」

 

肩から腹にかけて大きく斬られてその場に倒れた。

 

「く、‥‥」

 

雲雀の目には悠々と刀を収め、その場から去って行く朧の後姿が見えたが、やがて瞼が重くなり、目を閉じた。

 

 

~sideスバル ~

 

「見つけたぞ、タイプ・ゼロ・セカンド」

 

ドドド、大きな爆発音とともに現れたのは以前フェイト達と戦ったチンクだ。

 

「貴女は確か...」

 

「ドクターの命によりお前を回収する。」

 

またナイフを構えるのを見るとティアナとスバルもデバイスを構える、だが

 

「スバル、ティアナ。2人は行って」

 

なのはがそれを手で制して2人には先に行くように促す。

 

「えっ?でも、3人で戦った方が‥‥」

 

「今の目的は仲間の安否の確認だよ。目の前の事に目を奪われて、目的を忘れないで、早くギンガを助けに行って」

 

「なのはさん‥分かりました。行くわよ、スバル。なのはさんなら大丈夫よ!!」

 

「う、うん、お願いします。なのはさん」

 

「えぇ‥スバル達も気を付けてね」

 

「むっ?逃がすか!!」

 

チンクは他の2人...と言うよりスバルを追いかける...がなのはがそうはさせない

 

ドン!

 

「貴女の相手は私よ」

 

「ちっ、私の邪魔をしたツケはきっちり払ってもらうぞ」

 

「そう簡単に払えないよ。逆に色々貴女に聴かせてもらうよ」

 

チンクは忌々しそうになのはを見て、逆になのははニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

~sideツナ~

 

辺りは暗くライトもついていない。そんな中に灯るオレンジの炎その下にはいくつものガジェットの残骸が転がっていた。

しかし、銀時とガジェットを掃討している間、ツナはいつの間にか銀時をはぐれてしまった。

 

「はぁはぁ、機械だから加減なくやれたが‥‥「ゾク!」」

 

急に寒気がツナを襲い、それと同時に、

 

「ぎゃぁぁぁ!!」

 

「た、助けぐわぁぁ」

 

「な、何だ!?」

 

気のせいじゃない、確かに聞こえる人の悲鳴と刃の木霊‥そして血が飛ぶ音‥‥

ツナが、音がする方に走っていくと‥‥

 

「やれやれ、まるで豆腐を切っているようだ。コレがこの世界の役人だと?笑わせるな。まだ幕府の狗の方が手応えがあるぜ」

 

「な、何だ?...これは‥‥!?」

 

吐き気がする。

辺りはまさに地獄絵図、周りは血で水たまりができるぐらい溢れて死体の部位も誰のかがわからなくなっていた。

其処に立っていたのは1人の男‥女物の着物を着崩し黒髪を巻く包帯も返り血で赤くなり、

 

「ん?今度はガキか、こんな所で何やってんだ?」

 

その笑顔は神威よりも禍々しく恐ろしく感じた。

 

「こんな所に迷い込んだのが運の尽き、悪く思うな‥‥」

 

「っ!!?」

 

一瞬で目の前に来て自分に刀が振り下ろされていた。

 

「へぇ~、俺の一太刀を止めるとはな、おめぇただのガキじゃねぇな」

 

(何だ?こいつは、ただ速いだけじゃない、まさかっ!?)

 

ツナは一旦この男から距離を取り、

 

「お前が‥‥」

 

「あ?」

 

「お前が高杉晋助か?」

 

恐る恐る男に名前を尋ねる。

 

「へぇ~、俺の事を知っているのか?」

 

「銀さんの昔の仲間だって聞いた。」

 

「ほぉ~仲間‥ねぇ‥‥」

 

高杉はツナに向かいそして‥‥

 

シュンシュン!

 

上、下、左右から斬られるが全てかわす。

だが、

 

「ぐっ」

 

腹に蹴りが入りそのまま突きをしようとしてきた。ツナはギリギリ躱すも顔に擦り血が流れる。

 

「二度とそんな呼び方すんじゃねぇ‥んな、甘い関係じゃねぇんだよ俺達は‥‥」

 

「はぁはぁ、ナッツ!」

 

ナッツを出して肩にのせ、

 

「何だ?今度は動物ショーか?ふふ‥いいぜ、見せてみろよ」

 

高速移動で高杉の背後に回るも高杉はそれに反応する

 

「速ぇな、だがそれだけだ。」

 

ツナの拳を躱すそして高杉が刀を振り下ろすとツナはそれを片手で止め、

 

「ナッツ、形態変化、攻撃モード、I世のガントレット、バーニングアクセル!!」

 

を放とうとすると、高杉は鞘で上に逸らして火の玉は天井を砕き、

 

「なっ!!?」

 

一瞬の気の緩みは高杉が刀を引き抜くには充分な時間だ。そのまま上に逸らした腕に刀を突き刺して壁に激突させられた。

 

「ぐうぅ」

 

「くぅ、お前は何故ここまで、何が目的なんだ。この管理局が目的‥‥」

 

「俺達の目的はテメェらみてぇに、正常に動く手足だ。元々腐っているこの世界はテメェらをほんの少し斬るだけで勝手に腐り落ちるさ。」

 

「ふ!」

 

グローブに炎を灯して自分の腕を突き刺している刀を殴り折りおった刃を投げ高杉がそれを躱すと、顔面にパンチが入り高杉は吹き飛ぶ。

 

「もう武器はない...おと‥カハ」

 

高杉を倒したと思ったツナは、血を大量に吐き膝をつく、腕の傷口部分を自分の服をちぎり、きつく縛りとりあえず止血はしておいた。

だが‥‥

 

「軽いな」

 

高杉は立っており、狂気の笑みではなく、まっすぐこちらを睨みつけ、

 

「ペッ」

 

さっきツナの攻撃で口の中を少し切ったのか血を吐き出す。

 

「はぁはぁ」

 

ガジェットとの連戦、高杉の放つ殺気と狂気、プレッシャー‥極めつけに今の右腕もう体力が残ってない。

 

「フン、軽すぎるな‥おい、ガキ。迷いがあるなら戦場(ここ)に立つな。戦場(ここ)に立つなら甘さ(それ)を捨ててから来な」

 

ドゴォ!

 

「ぐはっ!!」

 

1発の拳を入れられ壁を突き抜けそのまま外に飛ばされた。

 

ガラガラガタン!!

 

瓦礫に埋もれ薄れていく意識の中最後に見たのは立ち去ろうとする奴の背中だった。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次来週


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的65 大敗北

更新です。


 

~sideヴィータ~

 

この戦いもがだいぶ長引いて流石のヴィータも限界の様子で息が荒い。だが、ゼストの方はまだそういった態度を表に出さない。それどころかさらに大きな魔力がこちらに近づいてきているのを感知した。

それはリィンも感じて、

 

「ヴィータちゃん、シグナムがこっちに来るですよ」

 

少し魔力が感じられる方を見るヴィータ

 

「むっ?援軍か?‥どうやらここまでの様だ。今日の所は撤退するとしよう」

 

ゼストの言葉に納得のしないアギトは、

 

「なら、最後にとっておきの置き土産をアイツらにプレゼントしてやるぜ!!」

 

アギトはゼストとのユニゾンを解除し、

 

「ヴィータちゃん!上!!」

 

見ると特大の火の玉を出しているアギトがヴィータを見下ろしていたヴィータはそれを防ごうと前に行くと、

 

「GAOO!!」

 

塞がるように白龍が出てきて吠えるとヴィータのグラーフアイゼンが石となった。

 

「なっ!?」

 

自分の愛機が突如石化した事に驚愕するヴィータ。

だが、白龍自身の炎が少なく全て...とはいかずにヴィータ自身は無事であった。

そしてアギトの特大の火球とゼストの一撃がヴィータを落とす。

 

「アギト、撤退だ。」

 

「...わかった。」

 

まだ納得してはいないがこれ以上戦えばゼストが奥の手を使いかねない。

 

「この...やろ...」

 

ヴィータはこのままゼストとアギトを逃してたまるかと思い、彼らを追撃しようとしたその時、彼女のバリア・ジャケットに異変が起こる。

自分の身を白く包んでいたバリア・ジャケットが急に元との赤色に戻った。

リィンとのユニゾンが強制的に解除されたのだ。

 

「リィン、おいリィン!!」

 

強制的に解除された理由はリィンのオーバーヒートで意識を失い、ぐったりしているリィンをヴィータは受け止めて必死に声をかけた。

だが、リィンがヴィータに返答することはなかった。

 

 

~sideシグナム~

 

急いで向かっている途中もう1つ別の方向に向かって飛んでいく人影を見た。

 

「ん?あれは‥‥」

 

「シグナム!!」

 

急にヴィータから念話が届くのだがその声はいつもと違い、震えていた。

 

「リィンが...それにアタシのアイゼンも‥‥!!」

 

傷つき倒れる仲間と少し石化して砕かれた相棒を前にヴィータは絶望の表情を浮かべ、その光景を前にシグナムは唖然とした。

 

 

~sideなのは~

 

「ISランブルデトネイター」

 

彼女の投げるナイフは情報通りそれを投擲させる攻撃と爆発させる攻撃してきている。

 

「アクセルシューター...シュート」

 

無数の魔法弾でチンクの投げるナイフと彼女自身の動きを牽制して、

 

開いた真ん中を貫く!

 

「ディバインバスター!!」

 

ズドーン!!

 

「なかなかだな。」

 

だが、チンクはそれをガードしてきた。

流石に地上本部ビルの中で全力を出すわけにはいかず、なのはのディバインバスターは普段よりも威力が抑えられている。

だが、それを見越したなのはは、

 

「バインド」

 

でチンクを縛り、彼女を捕縛する。

 

「大人しくしてくれるならもう何もしないよ」

 

優しく説得しようとチンクに近づくと、

 

ビヒュュュゥン!

 

風が突然巻き起こり何かが自分の利き腕を縛る。

 

「久しぶりだな。エース・オブ・エース」

 

「貴方はシノビ!?」

 

「一緒に夜のお供と思ったけど、別にいいや、やりたい事は終わったし、前哨戦としては、なかなか楽しめたしな。」

 

「前哨戦?」

 

「おい、シノビ、余計な事は言うな!!」

 

「おっと~失礼。俺とした事がまた話しすぎたぜ」

 

そんな事を呟きながらチンクのバインドを解く

 

「ふん、助けなどいらぬ心配だ。」

 

「そうかよ。相変わらず、可愛くねぇロリっ娘だ」

 

「誰がロリだ!!」

 

チンクはむきになってシノビに掴みかかる。

その隙になのはは魔法弾をシノビの周りに無数出して、シノビとチンクを仕留めようとするが、

 

「気づいているぞ‥‥お前に最後に言っておく‥今度はこれぐらいじゃすまねぇぞ」

 

シノビがそう言い残すと同時になのはは一斉にシノビとチンクに向けて魔法弾を打ち込むが、魔法弾は旋風で塞がれる。

そんな中、シノビは、

 

「おい、モグラ娘!!どうせ近くで見ているんだろう!?さっさとお前のロリっ娘姉貴を連れて此処から逃げろ!!」

 

「モグラ言うな!!」

 

「ロリ言うな!!」

 

シノビの言葉にまるでツッコむ様に地面の中から水色の髪をした少女が生えてきた。

服装は他のナンバーズ同様、青を基調としてボディースーツを纏い、首元には『Ⅵ』の番号が描かれていた。

 

「ナンバーズ!?」

 

「セインか!?」

 

「おまたせ、チンク姉。逃げるよ」

 

セインと呼ばれたナンバーズ少女はチンクの腕を掴むと再び地面へと潜って行った。そしてなのはの魔法弾を防いでいた風が消えるとシノビも風と共に消えていた。

 

 

~side山本~

 

ガン!キン!

 

「アンタ、本気出してねぇだろ」

 

「はは‥‥やっぱり、わかる?」

 

「何となくだけどな」

 

「う~ん、君を殺したいけど、どうやら時間切れだね。運が良かったね、君」

 

「ん?そうなのか?」

 

「そうなんだ。ってことで僕は帰るね」

 

「はは、流石に逃がさねぇよ、アンタ此処でもいろいろやってんだろ?その話、詳しく聴かせてもらおうか?」

 

(一筋縄じゃいかないか、流石は綱吉くんの守護者)

 

白蘭は山本の言葉にやれやれと思いつつ、もう少し相手をしてやることにした。

 

 

~sideバジル~

 

「な、何だ?意識が遠のく‥‥」

 

「頭がボォーっとするッス」

 

「テメェ何しやがった‥‥」

 

ノーヴェとウェンディはバジルを睨みつける。

ダメージもそこまでくらってはいない筈なのに‥ここまで体力を消耗しているのがおかしいと思いしっかりするよう体に命じる。

 

「さぁ、大人しくしてください。これ以上は」

 

「フッ、ざけんな!!このアタシが、テメェみてぇなもやしヤロウに負けるわけねぇだろ!!」

 

バジルは自分の武器でノーヴェの蹴りを止めノーヴェは急に飛ぶとウェンディが

 

「はぁ!!」

 

大砲で攻撃してくる。

 

「う、」

 

バジルはもろに喰らうが致命傷ではない。

 

ガラガラガラ

 

バジルは立ち上がった時に

 

「へぇ、面白そうな奴がいんじゃねぇか」

 

「貴方は?」

 

「ん?あん?俺か?俺は真‥いや108部隊所属の沖田だ。」

 

立っていたのは沖田総悟だ。

庁舎で護衛をしていたのだが、地上本部の応援に回されてやって来たのだ。

 

「さて、殺るか」

 

と鞘から刀を取り出した時に

 

ズドーン、突如大きな音が鳴り響く。

そして壁から、

 

「ノーヴェ、ウェンディ」

 

「セイン」

 

「セイン姉」

 

チンクを無事に安全地帯に送った後、まだ残っている妹達を助けにセインが再び登場した。

 

「チンク姉も撤退した。もう行くよ」

 

「でも奴らを‥‥」

 

「いいから!!」

 

「あっ、待て!!」

 

「テメェら、逃げきれると思ってんのか!?」

 

沖田とバジルが共にノ―ヴェ達を逃すまいと向かって行く。

だが、セインはノーヴェとウェンディを抱えると3人は地面を潜るように消えた。

 

「なっ!?消えた!?」

 

「どこ行きやがった!?ちくしょう」

 

まるで地面に溶けるように消えたセイン達に沖田とバジルは唖然とした。

 

ズドーン!!

 

そこでまた大きな音が鳴り響く。

 

 

~side銀時~

 

此処で時系列は少し戻る。

 

「はぁはぁ、まだまだ減りやがらねぇ」

 

新型ガジェットの残骸の上に立つ銀時だが、その足はもうフラフラ状態でそれでも溜まりに溜まり

 

「くそ、全く減りやがらねぇ」

 

そんな事を思っていても、ガジェットの攻撃が止む訳では無い。

だが急に事態が急変した。既に破壊したと思ったなのは型が急に上に飛び上から銀時を狙い撃ちしようとしてきた。

 

ピピ

 

「はぁ!?ちょ、待て!!」

 

ガシ!

 

「な、離せ!」

 

下に転がっていたほぼ残骸化した新型ガジェットの1機が銀時の足を掴んできた。

銀時は腕を斬り逃げようとするがもう遅い

 

なのは型のチャージは完了して強力な収束砲を放ってきた。

 

「こんのぉ!!」

 

銀時は自分の足を掴んでいた半壊している新型ガジェットを放り投げ、なのは型が放って来た収束砲にブチ当てた。

 

「グワぁぁぁ!!」

 

それと同時に残っていた残存していた新型ガジェットは空に飛び去り、脅威は無くなったと思うが、

 

ピピピピ、ピピ

 

ドカーン!

 

「あ!?」

 

新型ガジェットの残骸が爆発を起こした。

 

「くそったれが!!」

 

逃げる銀時だが全てを飲み込みながら爆発の衝撃波と爆風は襲ってやがて銀時おも飲み込んだ。

 

 

~side白蘭~

 

「何だ!!?」

 

空から急に何体ものガジェットの団体が押し寄せてきた。

それは新型ガジェットから今までのガシェット、全ての型が集まってきた。

 

「ゲリラ戦は終わり、今度は拠点の完全破壊に変わったのさ。って事は数の子達は皆逃げた後みたいだね」

 

「拠点の完全破壊?」

 

白蘭からは物騒な単語が飛び出てきた。

 

「そ、君もここから離れたほうが身の為だよ。死にたくなかったらね」

 

ヒュン

 

確かにもう人を対象としてない。対象としているのはこの地上本部ビル。

山本はすぐにガジェットを壊していくが何分数が多い。

 

「それじゃあ頑張ってね。」

 

「あっ、待て!!」

 

白蘭はそんな山本に笑顔で手を振ってその場から去って行った。

 

 

~sideエリオ&キャロ~

 

エリオとキャロの眼前には新築のピカピカだった機動六課の隊舎の姿はなく、瓦礫とガジェットの残骸、そして燃え盛る六課の隊舎の姿だった。

燃えて崩れていく隊舎を見て、

 

「.あぁ...ひどい」

 

「っ!?あれはっ!?」

 

「あの子...ヴィヴィオが!」

 

ヴィヴィオがデェイチの手によって連れ去られる光景を見たエリオは自分と重なる。自分が違法の実験から生まれた存在だと知りその後連れ去られて行く時の姿に‥‥

 

「ストラーダ!フォルムツヴァイ!!」

 

そう叫ぶとストラーダから噴射口が出てきて

 

「キャロ、フォローお願い!!」

 

と勢いよく飛んでヴィヴィオの元に行くが、

 

「邪魔はさせない」

 

「ぐっ‥‥トレディ‥‥」

 

トレディに蹴りと峰打ちを喰らい、その後、彼女のISの炎で燃やされ、

 

「遅い」

 

更にもう一回蹴りを喰らい海に突き落とされてしまった。

 

「エリオ君!!きゃぁ!!」

 

キャロもオットーによりフリードごと拘束され海に落ちた。

 

「トレディ姉様、あれはもう1人のFの遺産ですよ」

 

オットーがエリオもフェイト同様、Fの遺産‥プロジェクトFによって生み出された人工生命体であると忠告をいれるが、

 

「そうなの?でもいいんじゃない。ドクターは、女の人にしか興味無さそうだし‥‥」

 

トレディは、自分の誕生のきっかけとなったDNAデータの持ち主が男にも関わらず、自分は女として生まれてきた事から、スカリエッティは男よりも女の方に興味があり、同じFの遺産でもきっと男のエリオよりも女のフェイトの方に興味があると思い、エリオは放っておいて構わないと言う。

 

「さあ、目的も果たしたし、帰りましょう。愛しのホームへ‥‥」

 

「「はい」」

 

トレディ達は海に沈んでいった2人を見てその後飛び去った。

 

 

~sideフェイト~

 

激しい空戦の中

 

「スカリエッティは何処にいる何故こんな事件を起こす!!」

 

「お望みでしたら何時でもご案内します。」

 

「勿論貴女が我々に協力してくれるのなら」

 

「彼は犯罪者だ。それも最悪の」

 

「悲しい事を言わないでください、ドクターは貴女やあの少年の生みの親みたいなものです。」

 

「あなた方の命はドクターが生み出したプロジェクトFの基礎を組み上げたから」

 

「黙れ!!」

 

「仕方ありませんね。また会うことになると思いますのでその時ゆっくりと」

 

光が集まりそして最後に

 

「あぁ、もうお気づきかも知れませんが」

 

光が強くなり

 

「くっ‥‥なに‥‥」

 

「貴女はもう私達には勝てません。」

 

意味深しな言葉と共に光が収まると其処に2人の姿はもうなかった。

 

そしてこれと同時に地上本部ビルでも

スカリエッティの演説と共に焼かれる地上本部ビル。

それは人がいようといまいと関係ない。ただ壊していた。焼き尽くしていた。その場に助かる命があろうと

 

「いい眺めだ。ちっぽけな灯火が集まってここまで燃え盛る。いずれ世界も...烏共の翼もあの剣も燃やし尽くしてやるよ」

 

それを見ていた高杉の高笑いが不気味に夜に響く。

 

 

~Sideスバル&ティアナ~

 

「ギン姉!!何処!!返事をして!!ギン姉!!」

 

「ギンガさーん!!」

 

戦場となった市街地にスバルとティアナの叫び声が木霊する。

相変わらず、ギンガに通信を送っても返答はない。

故にスバル達はこうして足で直接戦場と化したクラナガンの市街地を回るしかなかった。

 

「マッハキャリバー、ギン姉のブリッツキャリバーの反応は無い!?」

 

スバルは愛機であるマッハキャリバーにギンガのデバイス、ブリッツキャリバーの反応がないかを尋ねる。

この時、スバルは少し期待していた。

ギンガが通信に出れないのは通信機の故障だと‥‥

ギンガはどこかで怪我をしていて動くことが出来ないのかもしれないと‥‥

だから、自分がギンガの居場所を見つけて姉を早く助けないと‥‥

しかし、現実は非情だった。

 

「周囲ニブリッツキャリバーノ反応ハ確認デキマセン」

 

「そんな‥‥」

 

マッハキャリバーからの返答は周囲にギンガのデバイス、ブリッツキャリバーの反応は無い。

と言う事は、ギンガはこの近くには居ないと言う事だ。

もしかして、入れ違いになったのではないかと思い、ギンガが所属している108部隊にも連絡をいれたが、ギンガは未だに帰還していないと言う。

 

「ギン姉‥‥一体何処に‥‥」

 

愛しの姉の消息が掴めにことに意気消沈するスバル。

そんな中、スバルとティアナは倒れている2人の男性を発見する。

 

「っ!?ティア!!こっちに人が倒れている!!」

 

「えっ!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

スバルが倒れている人に駈け寄ると、ティアナももう1人の男性に駈け寄る。

 

「酷い怪我‥‥」

 

スバルとティアナがそれぞれ倒れている男たちに駈け寄ると、2人とも酷い怪我を負っていた。

 

「スバル!!ボサッとしていないで!!手当てを!!」

 

「う、うん」

 

「リボーンに言われて持っていた応急キットがまさかこんな所で役に立つとは思わなかったわ」

 

そう言ってティアナは応急キットを取り出す。同じくスバルも応急キットを取り出し、倒れている男の手当てを行った。

この応急キットは公開陳述会前にリボーンから忠告を受けた為、FW陣があらかじめ持っていたモノだ。

リボーンはこの公開陳述会でスカリエッティ達が何かしらのリアクションを起こすのではないかと予測していたのだろうか?

今思えば、リボーンはやはり今回の様な事態を読んでいたのではないだろうかと思うティアナ。

応急キットを渡された時、ティアナもスバルも必要はないだろうと思っていたが、公開陳述会はスカリエッティ達の襲撃を受け、こうして応急キットは今役立っている。

 

「くっ、この人‥出血が激しい‥‥応急キットだけじゃ、治療は無理だわ‥‥スバル!!」

 

ティアナが治療している男の人は胸部からの出血が激しくとても応急キットでは傷口を完全に塞ぐことは出来ず、病院に連れて行かなければ命が危ない。

 

「なに?ティア」

 

「そっちの人はどう?」

 

ティアナはスバルが手当てをしているもう1人の男性の状態を尋ねる。

もし、スバルの診ている男の人が軽傷ならば、スバルにこの男の人を担いでもらって病院へ送ってもらおうと考えたのだ。

 

「彼方此方骨折している。それに体中打ち身だらけ...あと、この人も血を流しすぎている!!それに患部が紫色に腫れているの!!」

 

スバルが見ている男の人も、腕の骨は骨折して上半身にかけて大きな切り傷からは大量の血が流れていた。

 

「紫色に腫れている?」

 

スバルの言葉に疑問を感じたティアナはスバルが手当てをしている男の傷口を見る。

 

「この患部の腫れ方‥それに部位の変色‥これは毒によるものだわ!!」

 

「毒!?」

 

ティアナの毒と言う見立てに思わず声をあげるスバル。

ティアナは訓練校卒業後、スバルと共に六課へ来る前は災害救助隊に所属していた事もあって怪我の状態や手当に関しては詳しかった。

 

「ど、どうしようティア」

 

「あっちの人も出血が激しいの‥応急キットだけじゃあ手遅れになるかも!!」

 

「そ、そんな‥‥」

 

(スバルの機動力なら、間に合うかもしれない。でも、連れて行けるのは1人‥‥だけど、2人とも早く止血をして輸血をしないと‥それにこの人は早く解毒処置もしないと‥でも、応急キットには解毒剤は入っていない‥‥どうする‥どうすればいい‥‥)

 

どちらも命にかかわる重傷を負っている。

しかし、運べるのは1人‥‥。

ティアナは今、究極の選択を突きつけられていた。

その時‥‥

 

ババババババババ‥‥

 

空の彼方からヘリコプターのローター音が聴こえてきた。

 

「ティア、ヘリが来たよ!!」

 

スバルが空の彼方から此方に近づいてくるヘリの姿を確認した。

管理局の『空』と『陸』のヘリを装備している部隊が災害救助のヘリが来たのだ。

そこで、ティアナがクロスミラージュを空に向けて魔法弾を信号弾の代わりに放ち、ヘリに此方の存在を教えた。

 

「スバル、もうすぐヘリが此処に来るわ。その人を運ぶ準備をして!!」

 

「う、うん」

 

スバルとしてはギンガの事が気がかりであるが、目の前で死にそうな人が居る中、その人を見捨ててギンガを探して見つけてもきっと、ギンガは自分の事をきっと怒るだろう。

故にスバルは一時、ギンガよりも目の前の男の人を優先にした。

 

「大丈夫ですか?ヘリが来たのですぐに病院へ連れて行きますから」

 

スバルは倒れている男の人に駈け寄り、声をかける。

 

「うぅ‥‥」

 

倒れていた男の人がうめき声と共にうっすらと目を開ける。

すると、その男の人は、一言呟いた。

 

「うぅ‥‥ギン‥ガ‥‥」

 

「えっ?」

 

その男の人は今確かにギンガと言った。

 

(この人、ギン姉を知っている!?)

 

スバルが男の人にギンガの事を聞きたかったのだが、その男の人は再び意識を失ってしまった。

ギンガの行方を知っているかもしれないこの男の人をスバルは死なせてならないと思い、彼を背中に背負うとスバルは近くに不時着したヘリに背負っていた男の人を乗せて、自らもヘリに搭乗し、病院まで連れ添った。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的66 久しぶりだな

更新です。


 

 

 

~side機動六課 隊舎~

 

スカリエッティ一味による地獄の様な公開陳述会襲撃があった翌日‥‥

被害はこれまでのテロに比べ大きいモノとなり、多くの死傷者が出た。

何しろ襲われたのがミッドのお膝元である地上本部ビルを中心とする市街地なのだから‥‥

復旧作業も管理局の局員だけでは手が回らず、民間の工事会社にも急遽委託を行い市街地の彼方此方では復旧作業が行われている。

そんな中、動ける機動六課のメンバー達は、朝早くから全壊してしまった六課隊舎の現場調査をしていた。

六課のメンバーにおいては、幸い死者は出なかったものの、やはり大勢の局員が負傷して病院で手当てを受けているか入院中の身となっている。

ティアナ・ランスターは六課のメンバーの中でも無傷であの襲撃事件をくぐり抜けた幸運な者の1人であり、彼女は現在六課の隊舎正面玄関周辺の調査を担当していた。

 

「ランスター陸士、こちらの確認をお願いします」

 

「わかりました」

 

渡された書類を確認し、そう言って持っていたパネルのモニタに触れてチェックする。

六課メンバーの殆どが現場調査をしているとはいえ、その人数は決して多くなく、ティアナの仕事は思っているよりも多かった。

ティアナは手元のパネルから視線を上げた。

 

「‥‥」

 

彼女の視線の先には廃墟と言うか瓦礫の山となった機動六課の隊舎が無残な姿を晒していた。

機動六課に配属になってから、まだ半年も経っていない。

それなのに、この隊舎を見ているだけで、様々な思い出がティアナの頭を駆けていく。

配属されてから直ぐの内は、厳しい訓練の日々と自分に務まるだろうかという不安。

周りは高魔導士のエリートだらけで凡人は自分だけと言う劣等感。

その劣等感から来る焦り‥‥

そんなマイナス面しかない思い出の中にもスバルと獄寺との思い出が蘇り、マイナス面な思い出が次第に楽しかった思い出へと変わり始めた。

スバルは自分と同じく無傷であったが、彼女の姉、ギンガ・ナカジマは未だに行方不明になっており、ギンガの行方を知っていそうな男の人は未だに目を覚まさずに意識不明の重体。

スバルはあの男の人が目を覚ますと信じ、一刻も早く姉の居所を知りたいがためにあの男の人に付きっきりとなっている。

そして、獄寺も重傷を負い、まだ意識を取り戻さない。

ティアナ自身もスバルの様に病院へ行き、彼の傍にいたい。

だが、これ以上人員を割くわけにはいかない。

ティアナは自分が皆の為に頑張らねばと思い作業を続ける。

 

「……酷い事になってしまったな」

 

「えっ?……あっ、シグナム副隊長」

 

ティアナが被害報告を纏めている端末に目をやっていると、不意に後ろから声をかけられる。

声のした方に視線を移せば、そこには眉を寄せて心配そうな表情をしているシグナムの姿があった。

彼女も自分やスバル同様、無傷であの襲撃事件をくぐり抜けた数々少ない隊員の1人だ。

 

「シグナム副隊長‥病院の方は……」

 

「重傷だった隊員達も、無事に峠は越えたそうだ。だが、獄寺はまだ意識を取り戻していない」

 

「‥‥」

 

「やはり、心配か?獄寺の事が」

 

「いえ、アイツは殺しても死なない男ですから、大丈夫です」

 

ティアナはそう言うが、シグナムにはそれが強がっているように見えた。

 

「‥‥ここは私が引き継ぐ。お前も病院に顔を出してくるといい」

 

「えっ?ですが……」

 

ティアナは今ここで自分までもが復旧作業から離れても大丈夫なのかと思っていたのだが、やはり獄寺の事も気になる。

 

「いいから、行ってこい」

 

「……わかりました。それじゃあ、お願いします」

 

ティアナはシグナムの厚意に甘え、これまでの被害報告が纏められた端末を彼女に手渡す。

 

「任されよう。キャロやエリオも向こうに居るから、相手をしてやってくれ」

 

「はい」

 

ティアナの背中を見送りって、溜息を1つ吐き、シグナムはティアナから受け取った端末へと視線を落とすのだった。

しかし、心の中では、

 

(この受けた屈辱は必ず晴らすぞ、覚悟しておけ)

 

襲撃を行ったスカリエッティ一味に対しての怒りを溜めていた。

 

 

~side 土方~

 

 

此処で時系列は一時、襲撃事件のその日に戻る。

 

 

「大丈夫ですか?ヘリが来たのですぐに病院へ連れて行きますから」

 

ギンガとの戦闘に敗れ、彼女を正気に戻せなかった土方。

彼はギンガに胸を突かれ、その場に倒れた。

そんな彼に声をかける人が居た。

うっすらと目を開けると、ぼんやりであるが、彼の目には相棒である彼女と同じエメラルドグリーンの目と青い髪が見えた。

 

「うぅ‥‥ギン‥ガ‥‥」

 

エメラルドグリーンの目と青い髪を見て土方は相棒である少女の名を口にするがその直後、彼の意識は真っ暗闇に落ちた。

 

それから一体どれくらいの時間が経っただろうか?

 

「‥‥さ‥ん‥‥とう‥‥し‥‥ろ‥‥」

 

「とうし‥‥さん‥‥十四郎さん‥‥」

 

土方は誰かに呼ばれている感覚を覚え、瞼を上げる。

あれだけ重かった瞼や体が嘘のように軽くなっていた。

目を開けた土方は上半身を起こし、体中を見る。

そこにはギンガによって傷つけられた傷は全て消えており、自分は普段着慣れている真選組の幹部服を着ていた。

辺りは何もない真っ白な空間が広がっていた。

いや、何もないは語弊がある。

この真っ白な空間には土方十四郎と言う存在と彼の目の前に着物を来た1人の女性が立っていた。

その女性を見て、土方は理解した。

此処は夢の世界か、あの世であると言う事を‥‥。

 

「お前が居るって事は、此処は夢か?それともあの世か?」

 

土方は目の前の女性を見て、1人ごちる。

 

「まぁ、久しぶりにお会いしたのに、そのぶっきらぼうな所は治っていませんね」

 

「これは生まれつきの性分だ」

 

「フフ、そうですね」

 

「まぁ、なんだ‥‥久し振りだな。元気だったか?」

 

「元気じゃなくなったから、こっちに来たんですけど‥‥」

 

「フッ、そりゃそうだ」

 

言いたかったことは沢山あった筈なのに、いざ本人を前にして何一つ言えなかった。

口を開いて出てくる言葉はいつも通りのぶっきらぼうな言葉。

しかし、目の前の女性はそんな土方の性格を理解しているのか、あくまで自分のペースを崩さない。

 

「しかし、よりにもよってお前が出てくるとはな‥‥ミツバ」

 

「はい」

 

土方の目の前に居るのは、沖田総悟の死んだ姉、沖田ミツバだった。

 

「あれからずっと、十四郎さんの事を見守り続けてきました‥‥十四郎さんは何も変わらず、ご自分の信念を貫いてきましたね」

 

「剣を振るうしか取り柄のないどうしようもない男だからな、俺は‥‥」

 

「そうですね。でも、そう言う所が十四郎さんらしいですよ」

 

「それで、お前が出てきたって事は、此処はやはりあの世か?」

 

土方がミツバのこの場所を尋ねると、

 

「いいえ、正確にはあの世とこの世の境界線です。それを十四郎さんは夢を通じてこの場に居るのです」

 

ミツバはこの真っ白な空間を説明する。

 

「そうかい、それじゃあさっさと案内してくれ」

 

「残念ですが、私は十四郎さんを案内できません」

 

「あん?」

 

「だって‥‥十四郎さんはまだ生きていますもの」

 

「‥‥」

 

「その理由は、十四郎さん自身が一番わかっているんじゃないかしら?」

 

「‥‥」

 

「それにあの娘の気持ちも‥‥」

 

「だが、俺にはそんな資格はねぇよ‥‥自分勝手に生きて、気ままに剣を振って悪人を切って生きて来た挙句、お前を捨てた‥‥『惚れた女にゃ幸せになってほしいだけだ』なんて大口叩いておいてあの様だったんだからな‥‥お前の死に目にも立ち会えなかったどうしようもない男さ‥‥」

 

「十四郎さんらしくありませんね、諦めるなんて」

 

「‥‥」

 

「少しでもあの娘の事が気になるなら、戻って下さい。十四郎さん」

 

「なんで、そこまで、俺の世話を焼く?俺はお前に何もしてやれなかったんだぞ」

 

「十四郎さんの言葉を借りるなら、『惚れた男にゃ幸せになってほしいだけ』‥‥ですよ。さあ、早く戻って下さい。あの娘は十四郎さんが助けに来るのをまっているんですから‥‥」

 

ミツバはとても嬉しそうに笑って、光の彼方へ消えていった。

すると、土方の目の前も真っ白い光に包まれた。

 

「ん‥‥」

 

土方が次に目を開けると、彼の目には白い天井が目に入った。

 

(‥‥此処は‥‥診療所か‥‥)

 

土方は周囲から漂ってくる薬の匂いから此処が病院であると気づく。

 

(‥‥やっぱ‥アイツの言う通り、俺は生きていたのか‥‥)

 

あの世とこの世の境界線でミツバに言われた通り、土方は生きていた。

ふと、視線を下げると自分の身体には包帯や点滴、輸血パック等の治療機材が着いていた。

自分の傷を見てあの朧とか言う男の言葉が土方の脳裏に蘇る。

 

(そのような物の代わりなど幾らでもいる)

 

(その娘の正体は人間ではない、戦闘機人と呼ばれる種族だ。早い話、精巧な絡繰り人形と同じ存在なのだよ)

 

(いや、ちげぇ‥‥アイツは絡繰り人形なんかじゃねぇ‥‥俺がこうして生きているのが何より証拠だ‥‥それにアイツは‥‥)

 

土方はあの時の市街戦‥‥ギンガが自分の心臓を突き刺した時の事を思いだす。

あの時、ギンガの紅桜は的確に自分の心臓を捉えていた。

しかし、紅桜の切っ先が刺さった瞬間、紅桜を持っていない左手が紅桜を持っていた右手をガシッと押さえていたのだ。

ギンガが左手で紅桜を持った右手を押さえた故、威力が減速され、自分の心臓は紅桜に貫かれる事がなかったのだ。

そして、ギンガは土方の心臓に紅桜を突き立てた時‥‥

 

(アイツは、泣いていた‥‥)

 

ギンガは紅桜に体を乗っ取られていたにも関わらず、左手で右手を抑え、無表情な筈なのに目からは涙を流した。

 

(アイツは決して、絡繰り人形なんかじゃねぇ‥‥アイツは‥人間だ‥俺よりも立派な人間だ‥‥)

 

土方がギンガの事を思っていると、

 

「ん?なんだ?土方さん、生きていたんですかい?」

 

沖田が土方の病室に入って来た。

ヘリで病院に運び込まれた時、看護師が土方の服の中から身分証明書を見つけ、そこから108部隊のゲンヤに連絡がいき、土方が病院に担ぎ込まれた事実をゲンヤ達は知る事が出来たのだった。

 

「あとほんの少し呑気にそこで寝ていたら介錯してやりやしたのに‥そうしたら真選組副局長の座は俺が継いでいたんですけど」

 

「うるせぇ!!お前なんぞに譲ってたまるか!!俺はお前より1分1秒でも長く生きてやる!!」

 

「トシィィィー!!生きていたか!!」

 

沖田に次いで近藤が入って来た。

 

「お?目が覚めたか?お前さん。発見された時、かなり危ない状態だったんだぞ」

 

最後にゲンヤが土方の病室に入って来た。

 

「おやっさん‥‥部隊の長がバイト(嘱託)の見舞いに来る余裕なんてあるんッスか?」

 

「そのバイト(嘱託)1人がやられて残るバイト(嘱託)連中が、仕事に身が入らなくて困ってな、お前さんから言ってもらいたいと思って来たんだよ」

 

ゲンヤが此処に来た理由を話したが、あくまでもそれは形式上の理由だった。

 

「それでトシ。一体何があった?お前さん程の奴が此処までやられるなんてどんな奴だったんだ?」

 

近藤が土方に一体誰にやられたのかを尋ねると彼の口からは意外な人物の名前が出てきた。

 

「‥‥ギンガだ」

 

『えっ!?』

 

ギンガの名前を聞いた近藤とゲンヤは驚愕したが沖田は、

 

「土方さん。一体あの娘に何したんですか?まさか、むりやりあの犬の餌(土方スペシャル)を食わしたんですかい?」

 

「お前と一緒にするな!!ちげぇよ‥‥紅桜だ‥‥」

 

「紅桜‥だと‥‥?」

 

「なんでアレがこの世界に‥‥」

 

近藤と沖田は紅桜の名前を聞き、顔を引き攣らせる。

 

「な、なんだ?その紅桜って‥‥?」

 

話についていけないゲンヤが紅桜について土方達に尋ねる。

 

「俺達の世界にあった妖刀です」

 

近藤がゲンヤに紅桜の事を話した。

とは言え、近藤も紅桜の事詳しくは知らないので、ゲンヤに全てを教える事はできなかった。

ただ、土方が朧から聞いた話をゲンヤ達に話した。

 

「ギンガちゃんが‥‥」

 

「ギンガ‥‥」

 

「‥‥」

 

ギンガが紅桜に体が乗っ取られた事を知り、近藤、ゲンヤ、沖田は意気消沈した。

 

「それで、ギンガの嬢ちゃんはどうすれば元に戻るんでぃ?土方さん」

 

沖田が土方に戻す方法を尋ねる。

 

「さあ、分からねぇ‥‥でも、俺はこんな事でアイツを諦めるつもりはねぇ‥‥アイツは‥アイツは俺が絶対に取り戻す。この命にかえてもな‥‥」

 

「トシ‥‥」

 

「土方さん‥‥」

 

「土方君‥‥」

 

3人は土方の決意に満ちた目を見て、

 

「ふん、相変わらず負けず嫌いですね、土方さんは‥‥剣の稽古‥必要なら相手になりますぜぇ‥‥」

 

沖田はフッと笑みを零し、土方が起きたと言う事で普段の調子に戻った様子で病室から出て行った。

 

「ギンガちゃんを取り戻すのは良いとして、今は療養に専念しろ。それではギンガちゃんを取り戻せんぞ」

 

「ああ‥‥あっ、ゲンヤのおやっさん」

 

「なんだ?」

 

「ゲンヤのおやっさん、ちょっと、アンタに聞きたい事があるんだが‥‥」

 

「ん?何だ?」

 

土方はゲンヤに話があると切り出し、チラッと近藤を見る。

近藤は土方の視線に気づき、

 

「じゃあ、トシも起きた事だし、俺達は仕事に戻るか‥‥」

 

近藤も土方が無事に目を覚ました事に安堵し、土方の意を汲んで、病室から出て行った。

2人が病室から出た後、土方はゲンヤに朧が言っていたもう一つの事を尋ねた。

 

「ギンガに紅桜を渡した奴が言っていたんだがソイツはギンガが人間じゃないって言っていたんだ‥‥おやっさん‥奴の言っていた事は本当なんですか?」

 

「‥‥それを知って、お前さんはどうする?ギンガを軽蔑するか?それとも助ける事を諦めるか?」

 

ゲンヤがドスの効いた声と鋭い視線で土方に尋ねる。

彼は決して侍ではないがその目からは侍並みの殺気を感じる。

これが父親の威厳なのだろう。

 

「関係ねぇ‥‥ギンガが人間だろうとなかろうと俺がギンガを取り戻す事に変わりはねぇ‥‥ただ、奴が言っていた事が本当なのか知りたいだけだ」

 

「‥‥本当だ」

 

ゲンヤは土方にギンガの出生について話した。

自分の妻で、同じく管理局員だったクイント・ナカジマが所属していた部隊が追っていた戦闘機人事件‥その最中、ある研究所で助けた2人の戦闘機人の少女達‥それがギンガとスバルだった。

その出生は謎で誰の命令でギンガとスバルが生まれたのかは未だに不明。

しかし、1つ判明した事は、ギンガとスバルの2人はクイントのDNAデータを基にして生まれていた。

当初は管理局の中に内通者かスパイが居るのかと疑ったが、結局その真相も分からず、どういった経緯があってクイントのDNAデータが外部に流出したのか分からなかった。

その後もクイントは戦闘機人事件を追いかけたが、ギンガが8歳、スバルが6歳の時に所属していた部隊は全滅しクイントも殉職した。

ギンガは今でもクイントの仇を執る訳では無いが、同じ戦闘機人として生まれた者として彼女も戦闘機人事件を追う為に管理局へと入ったと言う。

 

「‥‥」

 

(成程、だから戦闘機人が関わったとされるあの事件を必死に調べていたのか‥‥)

 

土方はギンガがカジノ船での事件に戦闘機人が関わった事でカジノ船の事件、そしてクイントが殉職した事件の資料を取り寄せ、読み漁っていた。

ゲンヤの話を聞きギンガのあの行動に納得した土方。

それと同時にゲンヤからギンガの出生を聞いた土方はギンガの事を見直した。

女ながらも己の中の信念を通すその度量と気概‥‥

 

(ホント、女にしておくには勿体ない奴だよ)

 

ギンガ本人が聞いたら怒りそうだが土方はだからこそ何が何でも彼女を取り戻してやると心の中で自分自身に誓いをたてた。

 

「土方君」

 

「ん?」

 

「ギンガの事をよろしく頼む」

 

ゲンヤは土方に深々と頭を下げる。

 

「ちょっ、おやっさん。大将がそう簡単に下っ端に頭を下げるな」

 

「いや、これは人としての礼儀だ‥‥部隊長もバイト(嘱託)も関係ねぇ」

 

「‥‥分かった。ギンガの事は俺に任せろ」

 

「ああ、俺の方でも紅桜についての情報を探ってみる」

 

ゲンヤは土方にギンガを託して、彼の病室を出ようとした時、

 

「あっ、ゲンヤのおやっさん」

 

土方がゲンヤを呼び止めた。

 

「ん?なんだ?」

 

「血が足りなくてちょっとクラクラすんだ。あと、腹が減った‥‥何か食い物をくれ。あっ、マヨネーズも忘れないでくれよ」

 

「ったく、お前って奴は‥‥」

 

ゲンヤは呆れながらも売店で食べ物を買ってきた。

 

バクバク‥‥ハムっ、バクバク‥‥

 

ゲンヤは土方が血液不足と言う事で肉と乳製品の食べ物を多めに買ってきた。

土方はゲンヤが買ってきた食べ物にマヨネーズをかけてバクバクと食べている。

 

「そんなに慌てて食うなよ、胃が受け付けねぇぞ」

 

「今は1分1秒でも時間が惜しい‥‥早いとこ調子を取り戻さねぇとな」

 

土方はそう言って再び食べ物にガッツク。

すると、土方の顔色が次第に悪くなった。

 

「ほら、言わんこっちゃねぇ、洗面器か?」

 

ゲンヤが呆れながら土方に尋ねると土方は、

苦しむ様な声を出しながら、

 

「ん?何だ?えっ?」

 

「食ったからもう寝る‥‥」

 

そう言って無理矢理口の中の食べ物を胃の中に流し込むとそのまま寝た。

 

「ったく、コイツは大物なのか馬鹿なのか分からんな」

 

ゲンヤは苦笑しながら、土方の病室を出た。

すると、

 

「お父さん」

 

「ん?スバルか‥‥」

 

土方の病室の前にスバルの姿があった。

 

「お父さん。あの人‥目が覚めたの?」

 

スバルとしては、直ぐに姉の行方を聞きたくて仕方がなかった。

 

「ああ‥‥」

 

「それじゃあ、あの人にギン姉の行方を‥‥」

 

スバルが土方の病室に入ろうとすると、

 

「待て、今はゆっくり休ませてやれ」

 

ゲンヤはスバルの腕を掴んだ。

 

「どうして!?お父さんはギン姉のことが心配じゃないの!?」

 

ゲンヤの行動にスバルは思わず声を上げる。

 

「心配していない訳ないだろう。アイツだって俺の大事な娘なんだ‥だが、ギンガは大丈夫だ」

 

「なんで、そんな事が分かるの!?」

 

「ギンガはきっと、アイツが救い出してくれると信じているからだ」

 

ゲンヤは土方の病室の扉をジッと見て、彼がギンガを救い出してくれると信じていた。

しかし、スバルはまだ納得していない様子だった。

 

 

それから数日後、傷が酷く直ぐには退院できない土方。

しかも病院は指定された場所以外の喫煙が出来ない。

土方は喫煙の為、中庭にでてベンチに座ると煙草が入ったシガーケースとライター、そして携帯灰皿を取り出す。

ギンガが今の自分を見たら、きっと小言を言って来るだろう。

そんな事が土方の脳裏を過ぎった。

 

「‥‥ギンガ」

 

土方は煙草に火をつける事無く煙草を咥え、シガーケースと携帯灰皿をジッと見る。

このシガーケースと携帯灰皿はギンガからの贈り物だった。

あれは、ギンガと共に張り込みをして居た時、

 

「もう、土方さん、張り込み中ぐらい、煙草を止めて下さい。煙や火で犯人にバレます!!」

 

「そんなヘマはしねぇよ」

 

「って、土方さん!!煙草ポイ捨てじゃないですか!!ちゃんと携帯灰皿ぐらい持ち歩いてください!!」

 

「ああ、次から気をつける」

 

「もう、こんなことだろうと思いまして、私が買っておきました」

 

ギンガは土方に携帯灰皿を渡した。

今、土方が手にしている携帯灰皿はその時のモノだった。

そしてシガーケースは以前、ギンガと共に私服を買いに行った帰り‥‥

 

「これ/////あの...よかったら使ってください。」

 

顔をほんのり赤く染めて自分にシガーケースを差し出すギンガの姿が土方の脳裏によみがえる。

咥え煙草をして、空を見ていると、

 

「あ、あの‥‥」

 

土方は、声をかけられた。

 

「あん?」

 

声のした方を見ると、其処には短髪の青髪の少女が立っていた。

 

「お前さんは?」

 

「スバル・ナカジマです。ギン姉‥いえ、ギンガ・ナカジマの妹です」

 

「‥‥そうか‥すまなかった‥お前の姉ちゃんをみすみす敵の手中におとしちまって‥‥」

 

「い、いえ‥‥土方さんは怪我をしてまで、ギン姉の為に戦ってくれたって、お父さんから聞いて‥‥その‥‥私達の生まれも知っているって‥‥それであの‥‥」

 

「お前さん達姉妹がどんな生まれかなんて、俺には関係ねぇ‥俺は只、奪われたモンを取り返す‥‥それだけだ‥‥だから、お前に言えるのはこれだけだ‥‥お前の姉貴は俺が必ず救い出してやる」

 

そう言って、土方は懐に煙草とライター、携帯灰皿を仕舞い、スバルの頭を撫でて病室へと戻って行った。

 

「‥‥」

 

立ち去って行く土方の姿を見て、スバルは確信した。

自分の姉が‥‥ギンガが惚れた男の人は彼なのだと‥‥

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的67 死の間際になると人は子孫を残そうと本能が働く

すいません。久しぶりの更新です。

今回事件終わって空気もピリピリと思われたんですが...正直全く緊張感がありません。お前ら何やってんねん!!ってツッコミたくなるでしょうが...まぁ、うん

あまり気にしないで読みください。


 

 

 

 

 

~side病院~

 

六課に所属する局員らが入院中の病院でフェイトは新八と神楽の病室を見舞った。

 

「ごめんアル、私達何もできなかったヨ」

 

「僕達がもっとしっかりしていれば‥‥」

 

期待されていたにも関わらず、3度も自分達はトレディに敗北した。

しかもヴィヴィオまで攫われてしまった。

その事実が神楽と新八を精神的に傷つけ、2人は物凄く落ち込んでいた。

 

「神楽達のせいじゃないよ、それよりも皆大事に至らなくてよかったよ」

 

確かにヴィヴィオが攫われてしまった事は辛い事だが、死者が出るのはもっと悲しい事だ。

今回の襲撃では六課から死者が出なかった事がせめてもの幸いでフェイトは傷ついた新八と神楽を励ますが、2人にはかえってその励ましが辛く聞こえる。

フェイトはスバルの姉であるギンガが行方不明になっている事も2人に伝えようかと迷った。

神楽はギンガの事を「姉御」と呼んで慕っていたので、ギンガの事を知らせようかと思ったのだが、2人の様子を見て、これ以上追い打ちをかけるのは酷だと思い止めた。

 

「うぅ~これじゃあ、なのはと銀ちゃんに合わせる顔が無いアル。」

 

「‥‥それでフェイトさん。ツナ君や獄寺君、エリオ君やキャロちゃん‥‥皆はどうなったんですか?」

 

新八からツナ達の容体を聞かれ、フェイトは少し俯き、

 

「ツナは何とか無事峠は越したって、獄寺君は身体のダメージが大きくて、まだ意識が戻っていないって‥‥エリオとキャロは打ち身と打撲が酷いけど、ちゃんと意識はあるみたい。山本もバジルも特にそこまで酷い怪我はしていないよ」

 

「くっ、馬鹿兄貴...トレディ、次はぜったいぶっ飛ばす。じゃないとあいつが繋いでくれた意味が無いアル」

 

神楽は拳を強く握り神威とトレディの再戦を誓う。

 

「フェイトさんはエリオ君やツナ君達の所にいてあげてください。」

 

「そうアル、私達はもうへっちゃらネ」

 

神楽と新八は、フェイトに自分達は大丈夫だと告げる。

 

「...わかった。2人とも今はゆっくり怪我を治してね」

 

「「はい」」

 

フェイトは新八と神楽の病室を後にしてツナの居る病室へと向かった。

 

 

~sideリボーン~

 

リボーンは1人集中治療室でいまも生死の境をさまよい続けている雲雀を見ていた。

 

「この傷、肩にかけての刀傷、おそらく銀時達の世界の奴だろう‥しかも腕はかなりの手練れだ‥‥」

 

腹に出来ている刀傷を見てその傷は無駄な切り口を入れずに綺麗な刀傷これを見ているだけで常日頃から刀をもち、刀を振っている人物だが、

 

「だが雲雀に打ち込まれた毒、コイツは相手をマヒさせるなんて生易しいモノじゃねぇ‥コイツは相手を殺す毒だ。」

 

それともう1つ、

 

「しかも人体の急所を的確についてやがる、これはもう侍の仕業じゃねぇ、俺と同じ...殺し屋の仕業だ。」

 

だが、リボーンには腑に落ちない所があった。

 

(これまでも目撃情報からも毒を使う殺し屋何て聞いてねぇ、最初に聞いた時にはシノビかと思ったが、アイツはなのはの所にいた‥‥まさか、連中にはまだ俺達の知らない仲間がいるのか!?)

 

これまでの戦闘経験、目撃情報の無さから、リボーンは敵にはまだ自分達の知らない未知の仲間がいるのではないかと言う推測をたてた。

 

「なぁ、雲雀...お前は一体誰にやられたんだ?」

 

ベッドの上で眠っている雲雀を見ながらリボーンはまだ見ぬ敵を想像した。

 

 

~sideツナ~

 

峠は越えたものの目を覚まさずにずっと寝ているツナ。

そんな彼を見つめるのは‥‥

 

「ツナ...起きてよ」

 

彼を一途に想う悲しげな眼差しで見ているフェイトだった。

 

「皆心配しているよ、お願い早く起きて」

 

ツナの頬に手をやり撫でるフェイト。

 

「お願いだから!」

 

そう叫びするとフェイトの頬に暖かいそして心地の良い感触が‥‥

 

「‥‥フェ‥‥フェ‥イト...さん‥‥?」

 

ツナが手をフェイトの顔にやっていた。

 

「ツナ!?」

 

「.....また...泣きそう...何です...か?フェ‥イト‥さん‥‥」

 

「え?...もうあ大丈夫だよ、ありがとう。ツナ」

 

彼女の目からは自然と涙が出てくる。

フェイトの回答を聞きツナは、

 

「よかった...です」

 

満足そうな笑みをうかべる。

 

「痛っ!」

 

「あっ!?」

 

急に声を上げるツナにびっくりするフェイト。

フェイトは涙を拭いツナの手を握り、

 

「無理しないで」

 

「大丈夫です。」

 

そういう態度をとるツナの顔はみるみるうちに青くなり、

 

「たかす...痛つつ‥‥」

 

ガバっと起き上がるツナ。

高杉と対峙したあの時の光景が蘇ったのだ。

そんなツナを見て、

 

「だから無理しちゃダメだって」

 

ツナは腕を見ると左腕とは明らかにおかしい。

 

(そうか、あの時‥‥)

 

高杉に自分腕を突き刺された事を思い出していると、

 

ぐぅ~

 

「あ/////」

 

今度はお腹がなるツナ、ツナはすこし赤面しフェイトが、

 

「先生に食べていいか聞いてくるよ」

 

「ありがとうございます。」

 

フェイトそう言って病室を出る。

フェイトが出た後、またツナはベッドに寝っ転がる。

 

「.....」

 

「お?目が覚めたのか?寝坊助」

 

声がしたので、ツナは声が聞こえた方を見ると、其処には‥‥

 

「リボーン!」

 

「ちゃおっス」

 

リボーンが片手をシュタッと上げて起きたばかりのツナに声をかける。

 

「なんだ?思ったよりも元気そうじゃねぇか」

 

リボーンは少し笑いながらツナに言うとツナは、

 

「コレの何処が元気そうに見えるんだよ」

 

腕に巻かれた包帯をリボーンに見せ不機嫌そうに返すがすぐに、

 

「そうだリボーン、皆は、皆は大丈夫なのか!?」

 

他の人の安否を尋ねる。

先程、フェイトに皆の事を聞きそびれたので、事情を知っていそうなリボーンにツナは皆のことを尋ねたのだ。

 

「.....」

 

その時病室のドアが開かれ、

 

「あっ!目が覚めたの?ツナ君!!」

 

「エンマ!」

 

「よかった。実は獄寺君はまだ目が覚まさないから...」

 

「え、今、獄寺君って、獄寺がどうかしたの!?」

 

立ち上がろうとするツナを必死で止める炎真。

 

「落ち着いて、今ティアナさんが見てくれているから」

 

「落ち着いてなんかいられないよ!リボーン!!皆は‥皆は大丈夫なの!?」

 

炎真から獄寺の状態を知り、益々他の皆の様子が気になったツナはリボーンに詰め寄る。

リボーンは俯きそして、今自分が知っている限りの皆の状態をツナに話す。

 

「獄寺は意識を失っているが命に別状はねぇ、時間が経てば目が覚める。神楽達も同じく怪我をしているが特に心配いらねぇ。山本もバジルも無事だ。エリオやキャロ、スバルにティアナも何の心配もいらねぇ」

 

「そう...あれ?」

 

まだ自分と同じ世界の仲間の名前が出てない、だが彼に限って...

 

「雲雀...さんは...?雲雀さんは無事なの?」

 

ツナはあの雲雀なのだからきっと無傷なのだろうと思った。

しかし、ツナが雲雀の事を聞くと2人はまた黙り込みリボーンが雲雀の容体をツナに話す。

 

「肩から腹にかけての大きな切り傷で血を多く出し過ぎての出血多量‥しかも猛毒を受けていたそうだ。手術は無事に終えたが、医者の話では助かるかは微妙だそうだ」

 

リボーンの言葉を聞きツナの顔は一気に青ざめてそしてベッドを飛び出した。

 

「ちょっ!?ツナ君!!」

 

 

「待て!!お前、そんな体でどこへ行く気だ!?」

 

いきなり飛び起きたツナの姿を見て炎真とリボーンは驚きツナに声をかける。

 

「雲雀さんの所に決まっているだろう!!」

 

重症の体を引きずりながら雲雀の元に行こうとするツナ。

 

「待ってツナ君!!今はじっとしてなきゃ、ツナ君はさっきまで意識不明だったんだよ!!」

 

そんなツナを炎真は止める。

 

「じっとなんてしていられないよ!!雲雀さんの元へ!!」

 

「行ってどうすんだ?」

 

炎真の静止も振り切って雲雀が居る集中治療室へと向かおうとするツナをリボーンは冷めた目をしてツナに尋ねる。

 

「リボーン」

 

「お前が行って雲雀は目が覚めるのか?お前は一体何時から医者になった?」

 

「うっ‥‥」

 

「お前も知っているだろう?雲雀はあの程度じゃ死なない、あいつの心配より今は自分の心配をしろ、無理して体を壊しちゃ元も子もねぇぞ」

 

「‥‥わかった。」

 

「炎真、はやてにツナが目を覚ました事を伝えてくれ」

 

「うん、あれ?リボーンは何処に?」

 

「ちょっと野暮用だ。」

 

そう言い残しリボーンはツナの病室を後にした。

 

「‥‥それじゃあ、僕もはやての所に行くよ。ツナ君、お大事に」

 

「あ、うん。ありがう」

 

炎真も病室を後にして、はやての所に向かった。

病室で再び1人になったツナはベッドの上に横になった。

 

 

その頃、とある病室では‥‥

 

~side獄寺~

 

病室にしてはうるさくて通る人は皆全員驚いて見てしまうぐらい騒いでいた。

 

「アンタ、そんな怪我でどこに行くつもりよ!?」

 

「テメェ、邪魔すんな!」

 

看護師も注意しようと覗き込むと中を見たら、

 

「だいたいそんな怪我で何が出来るってのよ!?アンタ、少し前まで意識不明の重体だったのよ!!」

 

「るせぇ!10代目がお怪我をなさっているのにじっとなんてしてられっか!!」

 

大怪我を負った男が女性に包帯やら何やらでベッドにくぐりつけられそうになっていた。そんな様子を注意しないといけないんだが割って入るタイミングがない。

六課の隊舎の被害調査をしていたティアナはシグナムの行為から獄寺の見舞いに来た。

シグナムの話では獄寺は意識不明の重体だったのだが、ティアナが獄寺の病室へ来てみると、彼は意識を取り戻しており、しかも病室から脱走しようとしていたのだ。

例え意識を取り戻しても出歩けるような体ではないにも関わらず‥‥

 

「ティア、皆‥その...迷惑しているからなるべく静かに...」

 

そこへ丁度良くスバルが来てティアナは、

 

「丁度良かった。スバル、アンタもコイツを取り押さえるのを手伝いなさい!」

 

スバルに獄寺を一緒に止める様に言う。

 

「えぇ!」

 

「おまっ、ふざけんなよ!あんな怪力で縛られたら死ぬじゃねぇか!!お前らは俺を殺す気か!?」

 

「‥‥大丈夫、八割で済ますから」

 

スバルだってうら若き乙女だ。

獄寺の言葉はそんなスバルの乙女心を傷つけ、彼女はまるで銀時とO・HA・NA・SHIを宣言する時のなのはと同じ笑みを浮かべながら獄寺へと迫って行く。

なのはよ‥‥君の弟子はちゃんと君の教えを受け継いでいたぞ、良かったな、結果がちゃんと出て‥‥。

 

「ふざけんなァァ!!イテテテテテ‥‥ギャァァァー!!」

 

病院全体に響き渡るような悲鳴が木霊した‥‥。

スバルとティアナは獄寺が上手く動けない事をいい事にスバルは彼を押さえ込み、動きを完全に封じてティアナが獄寺にヘッドロックをかけて意識を刈り取った。

そして獄寺は再び意識を失いベッドにぐったりの状態だった。

 

「ティア~何もここまでしなくっても...」

 

獄寺を押さえつけていた自分が言うのもなんだが、スバルはヘッドロックで獄寺の意識を強引に刈り取ったティアナにちょっとドン引きした。

 

「いいのよ、変に意識残していたら、コイツまた抜け出すかもしれないし」

 

と意識のない獄寺を同情的な目で見て、

 

「スバル‥‥」

 

「何?」

 

「何で‥何で男の子って無茶するんだろう‥‥」

 

(コイツのこんな痛々しい姿、本当は見たくはないのに‥‥)

 

ベッドで眠る獄寺の髪を撫でながら、ティアナはスバルに尋ねる。

 

「...」

 

獄寺の髪を撫でるティアナの姿は母性が溢れているように見え、まさに恋する乙女の姿であった。

 

今回、怪我を負ったのは神楽とシャマルを除けば皆男、しかも話を聞く限り誰もが無茶をして重症を負っていた。

 

「そんなの‥‥わかんないよ、私だって女だもん」

 

スバルは獄寺に先程言われた事を気にしているのだろうか?

だが、スバルは昔、傷つくのも傷つけるのも嫌だったので、クイントが生きていた頃、ギンガと共にシューティングアーツの訓練をする事はなかった。

彼女がその転換期を迎えたのは、ゲンヤの職場である108部隊の隊舎に見学へと行く途中に巻き込まれた空港火災でなのはに助けられたことが切っ掛けで局員となった。

だが、局員となって人々を救うと決めた今でも無用な戦いは避けたい、傷つけなくていいのであれば、傷つけたくないは、今でもスバルの心情である。

でも、自分の周りに居る男たちは敢えて自分から傷つく道へと突き進んでいく。

どうして、そんなに痛い思いをしてまで、棘道を突き進んでいくのか?

ティアナと同じくスバルにはどうしてもその思いは理解できなかった。

 

「.....そうね」

 

「それじゃあ、アタシはあの人の所に行って来るから」

 

「ん?アンタまた、あの人の所に行くの?」

 

「うん」

 

「あの人もまだ意識取り戻していないんでしょう?」

 

「それでも、このままジッと待っている事なんて出来ないから‥‥」

 

「そう」

 

スバルはギンガの行方を知っているかもしれない男性の居る病室へと向かった。

ギンガの事も気になるし、眠っているとは言え、折角、獄寺とティアナを2人っきりに出来るのだから、自分はあの場に居ては無粋だと思ったのだ。

しかし、スバルが例の男性の病室へ行ってみると、其処には父、ゲンヤが居り、彼の話では、例の男性は意識を取り戻したが、スバルはこの日、あの男性と会うことは出来なかった。

スバルがその男性と出会う事になったのはそれから数日後のことであり、そして、その男性が姉の想い人であることも知る事になる。

 

スバルが病室から出て行き、獄寺と2人っきりになったティアナ。

 

(スバルの奴、気を利かせてくれたのかな‥‥?あっ、でも、コイツが起きた時のストッパー役がいないわ‥‥)

 

獄寺は死んでいる訳では無いので、いずれは目を覚ます。

そうなれば、再び彼はツナの下へと向かおうとするだろう。

今度はスバルがいないので、彼を止める手立てがない。

 

「はぁ~しょうがないわね‥‥」

 

ティアナはそこで、看護師に頼んであるモノを用意してもらった。

それからしばらくして‥‥

 

「うっ‥‥うーん‥‥」

 

獄寺がめをさました。

目を開けた時、彼が最初に見たのはベッド脇の椅子に座り、本を読んでいたティアナの姿であった。

 

「あっ、ティアナ!!テメェ!!よくもあの怪力女を俺に差し向けたな!!おまけにあんな強烈なヘッドロックをかけやがって!!」

 

と、彼はスバルを自分に差し向けた事、ヘッドロックをかけた事に対して抗議をしてきた。

 

「その台詞、スバルの前でもう一度言うと、アンタ今度は安眠じゃなくて永眠するわよ」

 

ティアナは呆れながら獄寺に答える。

 

「ん?お前、こんな時に何読んでいるんだ?」

 

獄寺はティアナが何の本を読んでいるのかを尋ねる。

 

「執務官試験の問題集よ。こんな時だけど、時間は無駄にしたくないから」

 

「執務官?ああ、確かお前がなりたいって言う役職だったな」

 

「そうよ」

 

「なぁ、その執務官試験ってやつはそんなに難しいのか?」

 

ティアナが執務官を目指している事は獄寺も知っていたが、管理局員でない獄寺にとって執務官になるにはどのくらい難しいのか分からない。

 

「ええ、かなりの難関よ。毎年受験者の10分の1ぐらいしか受からないんだから」

 

「そんなにかっ!?」

 

余りの合格倍率の低さに驚く獄寺。

 

「そうよ、あのフェイトさんでさえ2回も落ちたのよ」

 

「へ、へぇ‥‥」

 

「しかも試験後は執務官の下で執務官補佐として経験を積んで、実務試験に受からないと、ずっと執務官補佐のままで執務官にはなれないんだから」

 

(司法試験みたいなものか‥‥)

 

ティアナの話を聞き、獄寺はティアナがこれから受けようとしている執務官試験は地球で言う司法試験の様なモノだと思った。

 

「あっ、それよりも今は10代目の所に行かなきゃ‥‥きっとあの人の事だ、俺がやられたって聞いて心配しているに違いねぇ‥それに10代目御自身も心配だ!!」

 

獄寺は再びベッドから飛び起き、ツナの下へ行こうとする。

 

「やっぱり、アンタは馬鹿ね」

 

そんな獄寺の行動にティアナは呆れる。

 

「なんだと!?お慕いしている人の事を思って何が悪い!!」

 

「その慕っている人に無茶して心配させちゃ、本末転倒じゃない」

 

「うっ‥‥」

 

ティアナの正論に反論できない獄寺。

 

「私が悩んでいる時、あんなに大口叩いた癖にいざ、自分の事になると無頓着になるアンタはやっぱりバカよ、バカ」

 

「一々うるせぇんだよ!!女のお前に、俺の気持ちが分かってたまるか!!」

 

「分からないし、分かりたくもないけど、人を思って気遣う所はアンタの優しいところだって分かるわ。だから‥‥」

 

ティアナはそう言って執務官試験の問題集を閉じて、看護師にあらかじめ用意してもらったモノを獄寺の前に出す。

 

「私が連れて行ってあげるわ」

 

ティアナは獄寺の為に車イスを用意した。

 

「ば、バカやろう!!そんなみっともない姿を晒せるか!!」

 

「じゃあ、自力でいくの?」

 

「当たり前だ!!」

 

「そう‥ただ、ツナが入院している病室は此処とは反対側の病棟よ。今のアンタのその体でそこまで行けるの?途中で行き倒れるのは目に見えているわよ。そうなれば、看護師さんに見つかって此処へ逆戻り、退院までツナとは会えないかもね」

 

「グヌヌヌ‥‥」

 

ティアナはドヤ顔で獄寺に現状を伝えると、彼は悔しそうに唸りながら顔を歪める。

 

「さあ、どうするの?私の力を借りてツナに会いに行く?それとも退院まで待つ?」

 

「うっ‥うぅぅ~」

 

「さあ、どうするの?男ならさっさと決めなさい」

 

「うっ‥‥ね‥が‥します‥‥」

 

「えっ?何?聞こえないけど?」

 

「連れて行ってください!!お願いします!!」

 

結局獄寺が折れて、ティアナに連れて行ってくれと頼む。

 

「最初から素直にそう言えばよかったのに‥‥」

 

ティアナは「勝った」と言う思いで獄寺を車イスに乗せ、ツナの居る病室へと獄寺を連れて行った。

その顔は清々しいと言うかやや嬉しさが混じっている年頃の女子の顔だった。

 

(くそっ、覚えていやがれ~怪我が治ったら、ぜってぇ泣かしてやる!!)

 

一方、獄寺の方は、ティアナから受けた屈辱を怪我が癒えたら絶対に返すとリベンジを誓っていた。

 

 

その頃、ティアナと獄寺が向かっているツナの病室では‥‥

 

 

~sideツナ~

 

リボーンも炎真も出て行き1人っきりの状態の中、

 

「ツナ」

 

フェイトが病室に戻ってきた。

 

「フェイトさん」

 

「少しなら食べていいって」

 

「ありがとうございます。」

 

くぅ~

 

とまたお腹がなり赤くなるツナを見て微笑むフェイト。

 

「リンゴ...でいいかな?」

 

「はい」

 

フェイトはリンゴの皮を剥き始めて

 

「今」

 

「え?」

 

「今言うことじゃ無いけど、いずれわかるから言うね、怪我人が多く出てヴィヴィオが攫われたの」

 

「え...」

 

突然の事に驚くツナ、皆、傷ついたのは聞いていたがヴィヴィオが攫われたなんて聞いていない。

 

「それにスバルのお姉さんも行方不明なんだって‥‥」

 

「そう.....ですか」

 

ツナは俯き下を見る。

親しい者達が傷つき、居なくなるのはやはり悲しく辛い。

 

「犯人の名前は管理局が以前から追っていたジェイル・スカリエッティ‥‥ヴィヴィオが何で攫われたのかは正直わからない‥‥もしかしたら、ギンガも攫われたのかもしれない‥‥ツナ‥その‥‥こんな時に聞くのは何だけど、ツナは誰にやられたの?」

 

「俺は、以前銀さんの友達って言っていた高杉って人に負けました。」

 

「っ!?」

 

「とても強くて、次に戦っても勝てるかわからない位にその人は強かった‥‥敵には神楽ちゃんのお兄さんも居るのに‥‥」

 

「でも、いくら強くてもツナならきっと‥‥」

 

フェイトはツナなら勝てると言おうとすると、

 

「いえ、無理だと思います。何か、力じゃない何かを‥‥彼を止めるには「ぐぅ」」

 

ツナは今の自分では、高杉にも神威にも勝てない。

ただ力対力の勝負ではなく、何か別のモノが自分よりも彼らの方が勝っており、彼らに勝には力だけでは勝てない。

それを言う王とした時、タイミングが悪くツナのお腹がなった。

 

「/////」

 

「あ、はい剥けているよ」

 

「ありがとうございます」

 

とツナが取ろうとするが利き手が負傷している為に左で取ろうとすると

 

「あっ」

 

慣れてないせいかリンゴを落としてしまった。

 

「すいません」

 

「いいよ.....」

 

フェイトが何やら決心を決めたかのような顔つきとなるや

 

「ツナ」

 

「?」

 

「口開けて」

 

「え?」

 

有無を言わせずに少し開いた口にリンゴを突っ込まれた。

大胆にも突っ込まれた為にフェイトの指が口内に侵入してツナもなるがままにフェイトの指を舐めた。

 

「ごめんね/////その...食べづらいかと思って、あの、その、え、決して悪気があった訳じゃ」

 

「ぷしゅ」

 

「え?」

 

ツナを見ると頭から煙が出ていた。どうやら起こった事に情報処理が追いついてない様子。だが表情はすぐに戻り情報処理が追いついてきたと同時に顔は赤面となり

 

「.../////あ、あの」

 

「はい/////」

 

「ありがとうございます。後すいません。その指を」

 

「え/////あ、気にしないよ、次食べる」

 

「いや、その自分で...」

 

後半声が沈んでいってしまい、正直こんな所あのメガネさんに見られたらと思うと...思わず背筋がゾッとする。

敵ではなく、味方に殺されるかもしれない。

ツナのそんな思いを知らずフェイトは、

 

「だ、ダメだよ!!まだ上手く手が使えないんだから、ほら、ツナ、あーん」

 

今度は爪楊枝に刺したリンゴをツナに食べさせようとする。

 

「うっ‥‥」

 

「ほら、ツナ」

 

「‥‥」

 

「あーん」

 

「あ‥あーん」

 

これ以上言っても押し問答となるのは目に見えているので、ツナは諦めてフェイトの行為に甘んじる事にした。

ツナにリンゴを食べさせるフェイトとフェイトからの『あーん』でリンゴを食べさせてもらうツナ。

其処へ‥‥

 

「10代目!!」

 

タイミングが悪く獄寺が入ってきた。

その獄寺が見たのはフェイトにリンゴを食べさせてもらおうとしているツナの姿だった。

 

「「なっ!?////」」

 

突然の乱入者にツナとフェイトは顔を赤くして固まり、

 

「「あっ!?////」」

 

乱入してしまった獄寺とティアナもツナとフェイトの姿を見て、ツナとフェイト同様顔を赤くして固まった。

 

そこへ、

 

「あっ、此処に居た!!ティアも獄寺も居ないから病院内探し回っちゃったよ」

 

獄寺の病室に獄寺とティアナが居なかった事から、病院内を探し回ったスバルが合流した。

そして、彼女が見たのは互いに顔を赤くし固まっているツナ、フェイト、ティアナ、獄寺の姿だった。

そんな4人の姿を見て、スバルは、

 

「い、一体何があったの?」

 

と、一言呟いた。

 

 

 

・・・・続く

 




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的68 人には人のスタイルがある。

お久しぶりです。色々諸事情があり更新できずすいませんでした。


 

 

 

 

 

 

 

此処で時系列はあの公開陳述会会場である地上本部ビル、機動六課隊舎襲撃事件の日まで遡る。

 

 

~sideベルカ地区 某山間部 スカリエッティのアジト~

 

ギンガに被災者を装って紅桜を渡し、彼女を殺人兵器へと変え、雲雀を倒した朧はギンガと共にスカリエッティのアジトへと戻った。

地上本部ビル、機動六課隊舎を襲撃したスカリエッティ側の被害はガジェットが多数破壊されたが、所詮使い捨ての末端兵器で量産もすぐに出来る為、大した損害には当たらず、被害的被害と言えば機動六課隊舎襲撃の折、獄寺との戦いでディードとオットーが軽傷を負った程度であるが、それも半日もあれば回復する程度の傷であった。

首尾に関しては、主目的であった聖王の器であるヴィヴィオの奪取、そして紅桜の器として相応しい人物、ギンガ・ナカジマの確保が成功し、管理局全体の規模を考えると今回の襲撃事件は、スカリエッティ側の大完勝ともいうべき戦果であった。

唯一の心残りと言えば、フェイトとスバルの身柄が確保できなかったぐらいであるが、それも時間の問題だろうとスカリエッティはそう思っていた。

 

「やあやあ、朧君」

 

「むっ?スカリエッティか‥‥」

 

アジトへと戻って来た朧をスカリエッティと数の子達が出迎える。

 

「まさか、タイプゼロを無傷で手に入れてくるとは思わなかったよ」

 

スカリエッティはギンガの確保について、多少は荒事になり、ギンガの手足の一本は仕方がないと踏んでいた。

だが、例え手足の一本が無くなっても自分なら、一週間の時間があれば、切り取られた手足を再生させることが出来ると思っていたのだが、朧はスカリエッティの予想を上回り、ギンガを無傷で確保してきた。

これにより、スカリエッティはギンガの治療に割く時間を削る事が出来た。

この戦果は、ほんの僅かであるが、スカリエッティは時間的余裕も手に入れた事になる。

 

「あれが、タイプゼロ‥‥」

 

「私達とは違う戦闘機人‥‥」

 

ディエチとセインは自分達と違う創造主が誕生させた戦闘機人にちょっと興味津々の様子だった。

 

「こいつ、人形みたいになっちまっているな。本当に人間として暮らしてきたのかよ」

 

一方、ノーヴェは無口、無表情となっているギンガを見てその印象を口にする。

ノ―ヴェは以前、朧が録画してきた六課の演習場にて行われたギンガとスバルの模擬戦の映像を見た事があり、その時に見たギンガの様子と今のギンガの様子があまりにも違い過ぎていた。

彼女の言葉にはたかが刀一本を持たせただけで、あの人間味にあふれていたギンガが本当にこうなるものかという懐疑の意味も含まれていた。

確かに今、目の前に居るギンガは無口、無表情で人間性を感じさせない。

だが、実際には、彼女は純然たる殺人兵器としての自我を持っており、ガジェットの様な完全的なロボットとは異なる状態にある。

スカリエッティの手によって改良された紅桜にはちゃんと味方識別機能があり、無差別に襲い掛かったりはしない。それ故にギンガは朧の指示に従っており、こうしてスカリエッティのアジトに居る時もスカリエッティや数の子達に襲い掛かっていないのだ。

それにある程度自主的な行動も行える。だからこそ、雲雀を敵対者と認識して、彼と戦おうとしたのだ。

だが、感情の殆どを排斥されている今の彼女はセッテやオットー、ディード以上に機械的であり、人間性の欠如は同じ戦闘機人でも数の子達の中で最も大きい。

 

「早速ですまないが、朧君。タイプゼロのデータを取りたいのだが‥‥」

 

スカリエッティは自分以外の誰かが誕生させた戦闘機人のデータを取りたいので、ギンガを数の子達の調整カプセルにいれて調べたいと言う。

しかし、

 

「すまないが、スカリエッティ、それはもう少し待ってくれ」

 

「ん?何故だね?」

 

「器が紅桜を手にしてまだ、間がない‥紅桜が器に馴染むまでもう少しこのままにしてもらいたい。今、下手な事をすると、器と紅桜が拒絶反応を起こすかもしれない。そうなれば、データをとるどころではないぞ‥器も紅桜も使い物にならなくなってしまう」

 

「うーん‥そうか、それは残念~まぁ、楽しみは後に取っておくとしよう」

 

スカリエッティはこの戦いに勝利すれば、誰も自分の邪魔をする者はいない。

ギンガを詳しく調査するのは何時でも出来ると思い此処は朧の言葉通り、ギンガを調べるのを止めた。

 

「それで、こいつの戦闘能力はどのくらいだ?」

 

紅桜によって、ターミネーター化したギンガの戦闘力が気になるトーレは朧に現在のギンガの戦闘力を尋ねる。

 

「まだお前程ではないが、其処の赤髪よりは明らかに上だ」

 

朧は現時点では、ギンガの強さはまだトーレ程ではないが、ノーヴェよりも上だと告げる。

 

「なっ!?アタシよりも、コイツの方が上だって!?」

 

ノーヴェはギンガが自分よりも強いと言われて朧とギンガに食って掛かる。

 

「当然だ。コイツは元々お前よりも稼働年月があり、更にお前達の創造主であるスカリエッティが製作した紅桜を装備しているのだぞ」

 

「くっ‥‥」

 

朧の言葉にノーヴェは苦虫を噛み潰したように顔を歪ませる。

 

「まぁ、いいじゃないっスか。 今は強い味方が必要な時っスよ、ノーヴェ」

 

ウェンディがノ―ヴェを諌めるが、

 

「うるせぇ!!だったら、テメェが言っている事が本当かどうか試してやる!!」

 

「ほぉ~、つまりそれはお前とファーストが戦うと言う事か?」

 

「当然だ!!」

 

「ドクターよろしいのですか?」

 

ウーノがスカリエッティに止めなくていいのかと尋ねる。

 

「面白いじゃないか。朧君、今のファーストは戦闘をさせても問題はないかい?」

 

「ああ‥戦闘だけなら、問題ない」

 

朧は下手に解析機にかけると不味いが、模擬戦ならばやっても問題はないと言う。

 

「そうかい。それじゃあ、やってみようじゃないか」

 

「へっ、そうこなくっちゃ!!」

 

朧が戦闘に関しては紅桜と器(ギンガ)の関係に問題ないと言うとスカリエッティはギンガの戦闘データを取るためにもノーヴェに戦わせてやると許可を出した。

そして、ノーヴェ自身もやる気満々であった。

 

「ノーヴェ、本当に大丈夫ッスか?」

 

しかし、ウェンディは心配そうな様子。

今のギンガは仲間とは言え、なんだか怖いからだ。

戦闘機人からくる本能で今のギンガを敵に回してはならないような気がしていた。

 

「大丈夫だよ!!あんな道具に頼っている奴なんか一捻りにしてやるぜ!!」

 

だが、ウェンディの心配を余所にノーヴェはウェンディが感じていた危機感を感じていない様子だった。

ノ―ヴェはあくまでも強気だ。

 

「では、その前に少し準備をして来る‥今のコイツの服装はどうも紅桜を使うにしては似合っていないからな」

 

朧はギンガのバリア・ジャケットは紅桜の器として相応しくないと言う。

 

「えっ?防護服なら私が用意したのだが‥‥」

 

スカリエッティはすでにギンガの為にバリア・ジャケットを用意していたと言うが、

 

「お前が用意したのはどうせ、そいつらと同じ服装だろう?」

 

朧がスカリエッティに用意したのは数の子達が身に纏っている青いボディースーツだろうと尋ねる。

 

「そうだよ」

 

朧の言う通り、スカリエッティはギンガ用に数の子達が今着ているボディースーツを用意していた様だ。

 

「この防護服は一見薄そうに見えて防御力もあり、その分、軽状だから動きやすい、まさに合理的な機能を持っていて‥‥」

 

スカリエッティが数の子達のボディースーツの素晴らしさを朧に語るが、語られている彼自身はそんなモノに興味無さそうな様子で、

 

「兎に角、そいつらの服装も紅桜の器には相応しくないので、此方で新たに用意する。赤髪、お前は先に練兵場で待っていろ」

 

そう言って朧はギンガを連れ、その場から去って行く。

 

「ふん、アイツ何様のつもりだよ」

 

遠ざかっていく朧とギンガの後姿を見てノーヴェは独り毒づく。

ノ―ヴェはスカリエッティの協力者達に対してあまりいい印象を抱いていなかった。

戦闘機人の自分がこういうのもなんだが、どいつもこいつ胡散臭そうな連中か薄気味悪い連中ばかりで、自分が信じられるのは精々チンクとウェンディぐらいだった。

そして、そんな薄気味悪い連中たちと親しくするスカリエッティに対しても不安視というか疑問視をし始めていた。

因みにノーヴェの主観でセインは自分よりも下の存在だと思っていた。

やがて、練兵場で待つノ―ヴェの下に黒い着物袴を纏ったギンガが姿を現した。

 

「へっ、やっと来やがったか!」

 

ノーヴェの強気な態度とは裏腹に静かに紅桜を構えるギンガ。

 

「ファースト、本来ソイツはお前の味方であるが、今回はお前の強さを知らしめるため、戦ってやれ、だが、決して殺すなよ」

 

「‥‥はい」

 

朧がギンガに命令を下すと、ギンガは無表情のまま答える。

 

「ちっ、気に食わねぇ、気に食わねぇ、気に食わねぇ、その能面みてぇなツラを泣きっ面に変えてやるよぉぉ!」

 

ノーヴェはギンガを上から蹴りを入れるが紅桜でガードするノーヴェはすぐ様次の行動に移り地に手をつけムーンサルトのように飛んで距離をとるもののギンガの行動を移すスピードはそれを許さない。

 

「ち、鬱陶しいなぁ!」

 

 

ギン!

 

ガン!

 

 

紅桜の刃とノーヴェの拳がぶつかり合い火花を飛ばす。

ノーヴェはギンガの刃を躱すように体を低くして足を引っ掛けてギンガを倒すと、ノーヴェはギンガの足を掴み投げ飛ばす

 

ズドーン!

 

ギンガは壁に衝突して土煙が上がりノーヴェはすかさず、

 

「貰ったぁぁぁぁ!!」

 

飛び込んで拳を入れる...だが、

 

「い、いねぇ!?くそっ、あのヤロー、何処に行きやがった!?」

 

ノーヴェの風圧で煙が晴れそこにはギンガは居らず、

 

「はっ!?」

 

自分の背後から禍々しい殺気に気づき後ろに目をやる前に自分の首元に紅桜が当たる。

 

(や、殺られる‥‥)

 

ノ―ヴェが死を覚悟したその時に、

 

「そこまでだ!」

 

スカリエッティがギリギリで止めが入った為に助かった。

 

「どうだ?赤髪。少しは身の程をわきまえたか?」

 

「くっ‥‥」

 

朧の言っていたことが正しく、今の自分では目の前の相手には勝てない現実を突きつけられ、それを指摘された事にノーヴェは顔を悔しさで歪める。

 

「いやぁ~凄いねぇこれは、彼女の動きどんどん研ぎ澄まされていたよ、まさにそれは『完璧な人型兵器になれた』の一言では説明がつかない位にね。まさに、私の理想とした戦闘機人本来の姿だったよ」

 

スカリエッティは今回の模擬戦におけるギンガの動きを見て、大満足した様子で少し興奮した様子で朧に語りかける。

紅桜のデータをくれた事、そしてその紅桜の器として自分以外の誰かが誕生させた戦闘機人を無傷で確保してくれた事など、スカリエッティは珍しく朧に感謝していた。

他人に感謝すると言うこの行為は、もしかしたら、彼が生まれてからこれが初めてのことだったかもしれない。

 

「フン、当たり前だ。それが紅桜と言うものだ。では、俺はそろそろ消える。奴らと鉢合わせになるのは避けたいからな、お前達も紅桜のデータや製造方法を奴らに漏らすような事は...」

 

「わかっているよ、そんなヘマはしない」

 

朧は立ち去り再びノーヴェに場面は移る。

練兵場からギンガが立ち去り、入れ替わりにウェンディがやって来てノーヴェに近づく。

 

「いやぁ、危なかったスねぇ~もうちょっとで、ノーヴェの首が斬り落とされるかと思ったスよ~」

 

「あぁ、...?」

 

ノーヴェはウェンディの言葉を適当にあしらいながら立ち上がると首に違和感があった。なんだと思い触ると触った指は血で赤く染まっていて首にはさらに流れ落ちていた。

 

「ノーヴェ、それって‥‥」

 

ウェンディが息を殺した様に驚きながらノ―ヴェに尋ねる。

 

「黙れ、言わなくてもわかってらぁ!」

 

またノーヴェの表情は歪みノーヴェの心の中ではスカリエッティが止めなかった場合の自分の姿が脳裏をよぎりそれに少し震えてしまう自分にまた虫唾が走る。

ノ―ヴェの脳裏には確かに自分の首が切断されるヴィジョンが鮮明に浮かんだのだ。

それとは別の姉妹では、

 

「すごかったね、あのファーストの動き‥ん?どうしたの?ディード」

 

オットーは隣に立つ妹が何の返事もしないのでどうしたんだろと思い覗き込むとディードは

 

「あれだ、あれさえあれば私は‥‥」

 

「ディード?」

 

「あれさえあれば、私は‥‥私は完璧な兵器になれる‥‥無敵になれる‥‥」

 

「‥‥」

 

ディードは隣に立つオットーには目もくれずギンガの持つ紅桜をジッと見ていた。

そんなディードの様子をオットーは心配そうに見つめていた。

まだ、稼働してから間もないが最近のディードはオットーから見ても何かおかしかった。

スカリエッティがギンガの事を『完璧な人型兵器になれた』と言ったように、ディードの目標は自分も完璧な兵器となる事だった。

思えば、カジノ船でツナに敗北し、今回の機動六課隊舎襲撃においても獄寺に敗北し、神威から嫌味と哀れまれた事が戦闘機人としてのディードのプライドを著しく傷つけていた。

だが、今ディードの前に彼女が目標としていた理想的な完璧な兵器が現れた。

しかもそれはあの彼女が手にしている一振りの日本刀が決め手だと言う。

自分の武器も2本のビームサーベルなので、きっとあの刀と相性はいい筈。

ギンガは1本だが、自分はきっと2本使える。

2本使えれば、自分はギンガ(タイプゼロ・ファースト)よりもより完璧な兵器になれる。

その思いが今のディードを突き動かした。

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的69 想いの拳

更新です。


~sideベルカ地区 某山間部 スカリエッティのアジト~

 

朧からの管理下から離れたギンガはスカリエッティ、そして彼が生み出した数の子達と共にこの後、行われるフェスティバルまでスカリエッティのアジトで生活する事になった。

 

「それじゃあ、ファーストの面倒はノーヴェ、君に見てもらおうか?」

 

「は?」

 

模擬戦の後、スカリエッティのこの一言にノーヴェは唖然とした。

だが、少しずつ時間が経ち、彼の言葉の意味を理解していくと、

 

「はぁぁぁぁー!?ちょっと、ドクター!!なんで、アタシがこんな奴の面倒を見なきゃならないのさ!!他の奴にやらせてくれよ!!」

 

ノ―ヴェはスカリエッティの言葉に異議を唱えた。

相手は元管理局員‥つまり、敵対者で今は紅桜の力で彼女本人の感情と意識を封じ込めているが、その様子があまりにも無口、無表情で気味が悪い。

そんな奴の面倒を見ろと言う。

そんなの真っ平御免だ。

 

「ノーヴェ、貴女はドクターの言う事がきけないの!?」

 

ウーノがノ―ヴェに対して注意するが、

 

「嫌なモノは嫌だ!!そんなに言うならウーノ姉がやってよ!!ウーノ姉、ちょっとファーストに声が似ているし、丁度いいじゃん!!」

 

ノ―ヴェは、はっきりと明確に自らの意思を示す。

 

「見苦しいぞ、ノーヴェ。お前はファーストと戦って負けたのだ。勝者の世話をするのは敗者たるお前の役目だぞ!!」

 

トーレは先程の模擬戦の結果を引き合いにしてノ―ヴェにギンガの面倒を見ろと言う。

 

「うぅ~‥‥チンク姉‥‥」

 

「トーレの言う事も最もだ」

 

敬愛するチンクからもそう言われ、ノーヴェは自分の味方はこの場に居ないと知り、渋々ギンガの面倒を見る事にした。

ウェンディやセイン、ディエチでは、自分同様年上組に勝てるわけがない。

 

そして、ここ数日、ノーヴェはファーストとウェンディと行動を共にしたのだが、ノーヴェは能天気で楽天的なウェンディとほぼ機械的に命令に従うだけファーストに少々イライラしていた。

 

「おい、ファースト。お前、もう少し言動には気を使えよ。それじゃあ、お前完全に機械だぞ!!」

 

ノーヴェがいくら怒鳴り声を上げても、ファーストから返って来る返事は決まって、

 

「かしこまりました。以後気を付けます」

 

の一言だけである。

しかも表情は変えずに‥‥

 

「ちっ」

 

何の変化もないファーストの態度に対して、

 

(コイツ、学習能力ないのかよ、これじゃあマジで新型ガジェットの最新版じゃねぇか)

 

ノ―ヴェは心の中で毒づく。

姿形は自分達と同じ筈なのに、中身は完全にガジェットとほぼ同じ‥‥こんな奴と四六時中行動を共にしなければならないと思うと、ノーヴェのストレス数値はドンドン上っていく。

 

「もう仕方ねぇっスよ。今のファーストはアタシらとちょっと違う状態なんッスから」

 

「フン、それならまだ洗脳していた方が良かったぜ」

 

確かにウェンディの言う通り、今のギンガは洗脳とはちょっと異なる状態であるため、微妙な立場と言うか状態であった。

 

「全く、ある程度自分で判断してもらわねぇーとこっちが困るんだよ。アタシが最初から全部教えねぇといけないからな」

 

ノ―ヴェは実にめんどうそうに顔をしかめるのだった。

 

 

~side スカリエッティのアジト 温水洗浄施設~

 

スカリエッティのアジトの中にある温水洗浄施設‥つまり風呂では、セインとディエチの2人が入浴していた。

 

「ふぅ~一汗かいた後の温水洗浄は最高だね」

 

「まったく~」

 

何ともおっさんっぽい台詞を吐く2人である。

そこへ、

 

「ひゃっほーおじゃまするッス!!」

 

「ちょ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ウェンディがノ―ヴェを抱きかかえて湯船の中にダイブしてきた。

 

「ん?仲良しコンビか?」

 

ウェンディとノーヴェが飛び込んだことにより、お湯が跳ね、ソレを浴びたディエチが迷惑そうに顔をしかめる。

一方、セインは少し離れた所に居た為、難を逃れていた。

 

「テメェ、ウェンディ!!何しやがる!!」

 

ウェンディに抱きかかえられ、湯船に強制ダイブさせられたノ―ヴェが怒鳴る。

 

「ノーヴェはファーストの面倒でストレスが溜まって居た様だったから気分転換させてあげたんじゃないッスか、アタシに感謝するッスよ、ノーヴェ」

 

「うるせぇ!!あんまし調子に乗っているとジャンクにすんぞ!!テメェ!!」

 

此処最近ストレスがたまり続けているせいかノーヴェはご機嫌斜めであった。

はたして彼女の胃は大丈夫だろうか?

 

「おい、けんかすんなよー」

 

セインはノーヴェとウェンディのやり取りを見て笑っているが、ディエチは静かに入浴していたのに、騒がしくされてはた迷惑なのか、2人を仲裁する。

 

「あれ?ノ―ヴェ、ファーストは?」

 

此処でセインはノーヴェが世話をする事になったギンガこと、ファーストが居ない事に気づいて彼女の行方を尋ねる。

 

「あん?アイツはまだ、着替えているよ。まったく、あんな面倒くさい服なんてモノを押し付けやがってあの白髪野郎」

 

ファーストは数の子達が着ているボディースーツと違って黒い着物袴を着ているので、着替えに戸惑っている様子。

そこへ、

 

「相変わらず騒がしいな」

 

チンクと着替え終えたファーストが入って来る。

 

「チンク姉‥だってこのバカが‥‥」

 

ノ―ヴェは騒がしくした原因はウェンディにあると説明するが、

 

「妹を捕まえてバカはないだろう。お前も姉と言う立場なのだぞ」

 

「う、うん‥‥」

 

チンクに怒られてシュンとするノーヴェ。

そこへ、シャンプーやボディーソープの詰め替えにオットーがやって来た。

 

「オットーは入らないんッスか?」

 

ウェンディがオットーに風呂に入らないのかと尋ねるとオットーは、

 

「僕は後で‥‥集団洗浄は苦手です」

 

と、後で入ると言ってきた。

 

「そうなの?」

 

「ちゃんと入らないとばっちぃよ」

 

「ご心配なく、後でちゃんとディードと入りますので」

 

やる事をやってオットーは浴場から出て行こうとする。

そんな中、

 

「そーいえばさーオットーは」

 

「なんでしょう?」

 

セインがオットーに声をかける。

 

「前から気になっていたんだけど、オットーってアタシらと同じ、女性体なの?」

 

セインはオットーに女なのかと聞いてきた。

今現在、オットーが女だと知るのはスカリエッティ陣営の中ではスカリエッティとウーノ、クアットロぐらいなので、オットーの本当の性別を知らない数の子達からすれば、もし、オットーが男性体とすれば、今自分達は異性に裸を見られている事になり、ちょっと恥ずかしかった。

現にノーヴェは顔を赤くして湯船の中に沈んでいる。

 

「‥‥秘密です」

 

「えー!!何で!?」

 

「クアットロ姉様が秘密にするようにと言っていたので」

 

「おのれ、あの駄眼鏡め」

 

「略してメガ姉ッスね」

 

「では、これで」

 

オットーは今度こそ、浴室から出て行った。

 

「双子のディードは間違いなく女性体ッスよね」

 

ウェンディはオットーの双子の妹、ディードの姿を思い浮かべる。

ボディースーツ故に主張する彼女の二つの山は間違いなくディードが女性である事の照明であった。

 

「ファーストも間違いなく女性体ッスね」

 

続いてウェンディはファーストに絡み、彼女の胸を揉む。

と言うか、今のファーストは裸なのだから男か女かなんて一目でわかる。

 

「‥‥はい」

 

紅桜に意識を奪われていてもファーストは自分が女性と言う事は認識している様だった。

 

「ノーヴェの言う通りやっぱ表情が固いっスね。もっと普通に喋って欲しいッス」

 

「‥‥了解しました‥では‥‥貴女の事はあまり尊敬しない事にします。とりあえず、胸部接触の中止を求めます」

 

「うっ‥‥」

 

機械的な言葉と無表情のファーストにウェンディは失敗かと思い、彼女の胸から手をどけた。

だが、彼女は自らの行動で新参者のファーストから信頼を失った様だった。

 

 

一方、その頃‥‥

 

~side神威~

 

ベルカ某所の山岳部で月を見上げながらいつもとは違う雰囲気を彼は醸し出していた。

そこへ‥‥

 

「やっと見つけた‥‥」

 

「ん?」

 

急に後から声をかけられ後ろを振り向くと、其処には‥‥

 

「何だ?お前か?」

 

トレディが立っていた。

 

「何‥しているの?」

 

「別に‥でも、こうして月を見ていると、月を見て大猿に変化する戦闘民族と戦いたいなって思っているだけさ‥‥居ねぇかな?そんな奴等‥‥」

 

「?」

 

神威の冗談があまりわからないトレディは首を傾げている。

 

「そんな連中本当にいるの?」

 

「いたら面白いじゃん。どっちが本物の戦闘民族かはっきりできるし」

 

と神威は立ち上がりその場を去ろうとすると、

 

「あっ、待って‥貴方に話があるの‥‥」

 

トレディが神威に声をかけて、呼び止める。

しかし‥‥

 

「...いやだよ、俺は興味無いし、お前と話す事なんて何もないから」

 

そう言ってトレディの話を聞こうともせず、歩き出した。

それでもトレディは神威に声をかけた。

 

「この戦いが終わったら私と一緒に暮らさない?」

 

神威はトレディの言葉を聞き、ピタッとたち止まり振り向くと、

 

「それってもしかして、愛の告白ってやつ?」

 

普段浮かべている仮面の様な笑みを浮かべながらトレディに尋ねる。

 

「受け止め方は貴方の好きにすればいい、私と貴方は兄妹であり同一人物でもあり、娘でもある‥‥」

 

「違う‥‥」

 

神威はボソッと呟く。

 

「それなら‥‥」

 

トレディは尚も神威に言葉をかけ続ける。

神威の「違う」とう言葉にトレディは、「神威は自分の事を他人と思っている。それなら‥‥」と思い、意を決した様に彼に言い放つ。

 

「貴方の子供を私が孕む」

 

「っ!?」

 

なんとトレディは神威との間に子供を作りたいと言う。

その時の彼女の顔は、戦闘機人ではなく、1人の女の顔をしていた。

だが、神威はトレディの言葉を聞き、ピクッと反応しただけで何も言わないし、それ以上のリアクションはとらない。

それでもトレディは神威に語り続ける。

 

「私と貴方の血を引いていたら、きっと強い子供が生まれる。貴方が私と同じ考えを持っていることは知っている。だから、私を‥‥」

 

トレディが神威に自らを『抱いて』と言う前に、

 

「うるさいよ」

 

神威はトレディに傘の先を向けて、彼女の言葉を遮った。

しかし、今のトレディの言葉は戦闘機人らしくない発言であり、もしスカリエッティが聞いていたら、卒倒するか「新しい研究テーマだ」と言って興奮するかのどちらかだろう。

何しろ彼女は数の子達の中でも今まで抱かない感情を今、抱いている。

彼女は自分が戦闘機人であることを忘れ、1人の女として彼に抱かれたい、彼との間に子供を設けたいと願っている。

だが‥‥

 

「いい加減、その口を閉じないと殺しちゃうよ‥‥たとえ、お前でもな‥‥」

 

いつもの彼ならば仮面の笑顔で言うおきまりのこのセリフだが、今の神威の顔は全く笑顔ではなく殺気を放出しまくって威嚇する肉食動物の顔だった。

それは普段よりも彼が怒っているからだ。

 

「別に俺の子供が欲しいなら作ってもいい...だけど、俺はお前やそいつを殺してでも上に行く。」

 

「‥‥」

 

(そうだ、俺はあんな男とは違う)

 

神威の脳裏には自分の前に立ちはだかる大きな壁ともいうべき、最強を掲げたあの男が写る。

 

「いいか、夜兎って言うのはそういう奴らのことを言うんだ。お前のその腑抜けた考えがあるんならお前は俺どころか夜兎ですらない。少しでも夜兎の血が流れているならそれに恥じない事だ。」

 

神威はそう言うが、彼の言葉にトレディは全てを納得する事が出来ず、

 

「.....それは、貴方が男だから」

 

トレディが震える声で、神威に反論する。

 

「ん?」

 

「貴方は夜兎の男だから、そう言える‥‥でも、私は夜兎の女‥‥強い雄と交わり、強い子供を後世に残したい!!それが夜兎の女の本能!!私はその本能に従っているだけ!!言葉でわからないと言うのなら、力で分からせる!!」

 

トレディは背後から飛び神威に殴りかかろうとしてきた。神威はそれに気付いて躱してそれから、

 

「そう、それでいいんだ。生まれ方はちょっと違ってもお前も夜兎なんだから余計な事は考えるな。お前は自分が1番だと証明するために動けばいいんだ。」

 

トレディの拳をかわしながら神威が喋って神威も反撃に移り、

 

ドン!

 

トレディと拳をぶつけながら力比べに持っていくとトレディは神威の腕を掴んで投げ飛ばして神威が投げ飛ばされて地面に激突して、

 

「ガハッ!」

 

トレディはすかさず飛び込んで来たので神威は転がりそれを躱す。

 

ズドーン!

 

トレディの攻撃で土煙が風と共に舞い。神威の姿を一瞬見失ってまた目で追っている最中に横から腹にかけて手刀が入り、

 

「ぐっ」

 

回し蹴りと流れる動作で続く神威だがトレディも負けていない。ガードはできなかったが吹き飛ばずにその場で耐えてIsを発動して神威の足を凍らせる。

神威は少し驚くがその程度という態度で自分の足を見て一旦下がり、

 

「へぇ~それがあの科学者につけてもらった能力の本性か?」

 

「そう、相手の熱を奪って自分のモノにする。これと夜兎の力があれば誰にだって勝てる...貴方にもね‥自分が最強と言うのであれば、私を倒して見せろ!!」

 

「それは楽しみだな‥お前が無様な姿で地面に横たわる姿を見るのがさぁ!!」

 

「私は負けない!!絶対に勝って貴方を手に入れてみせる!!」

 

余裕の笑みを崩さない神威、またトレディから飛び出して神威もまたそれを避け続ける。

 

「何故?」

 

「ん?」

 

「攻撃をしてこない!!私をバカにしているの!?」

 

凍らしてから1度も攻撃移ろうとしないそれどころか腕を組んでいた。

 

「...確かに共通するものはあるなって思っている。お前は攻撃しているだけだから気付いてないでしょう。お前はあれに改造されているんだろうけど、軸は俺、体勢も、特徴、癖までも、殆ど俺と同じ」

 

神威はトレディの足を引っ掛けて倒す。そして腹を踏みつけて

 

「ぐはっ!」

 

「今のままじゃ勝てないよ。」

 

「くっ、言ってくれる!!」

 

凍っている方の足を攻撃しようとするが神威はジャンプする。

 

「ならこれはどう?」

 

手を神威に向けて、

 

「IS発動アンジュレーション・フォー!!」

 

巨大な火炎が神威に向かって放出される。

 

「ふふ」

 

神威はその炎を見て少し口角が上がり腰の傘に手をやるとそれを取り出して

 

「はァァ!!」

 

大振り1発の風と衝撃で火炎を消し飛ばして、

 

「きゃぁぁっ!!」

 

あまりの風に驚く

神威はそれをもう一回行いトレディの動きを抑えトレディを押さえつけている間に

 

「これが本当の夜兎の力だ。」

 

殴り飛ばす。

 

「ぐっ‥‥」

 

「これで分かっただろう?夜兎の力が‥‥夜兎の本質が‥‥」

 

(俺はあの男とは違う‥守るべき者、子供や家族なんて重荷を背負っても邪魔なだけだ‥‥そんなものを背負っちゃあ最強になんてなれない‥‥家族を持てば必ずそいつを不幸にする‥‥この俺がいい例だ)

 

トレディを倒し、何処かへと去ろうとする神威。

だが、

 

「ま、待て‥‥私はまだ、負けていない‥‥」

 

トレディが起き上がる。

 

「‥‥まだやるのか?お前も懲りない奴だねぇ~」

 

「自分が1番(最強)だと証明する‥‥そして‥‥海賊は狙った獲物は絶対に逃さない!!」

 

「それは海賊じゃなくて怪盗だ」

 

神威は呆れながらトレディにつっこむ。

 

「そんなのどちらでも関係ない!!私が貴方を手に入れると言ったのだから、それは絶対だ!!」

 

トレディはなりふり構わず神威に殴り掛かる。

神威はもはや、攻撃をするまでもないと躱してばかり。

 

「お前、やっぱり私をバカにしているのか!?」

 

「そんなんじゃないよ、もう、お前に攻撃をする必要がないだけさ」

 

「何を言って‥‥うっ‥‥」

 

神威から受けたダメージは後からトレディの身体に来て、彼女はガクッと膝をつく。

 

「くっ‥‥」

 

「無理をするな‥‥それ以上やると、子供を孕む前にお前の身体がイカれちまうぞ。まぁ、お前は女にしてはよく戦った方だよ、俺のバカ妹にも見習わせてやりたいぐらいにね」

 

「‥‥」

 

「それじゃあね」

 

神威は片手をあげて、トレディに別れの挨拶を言うと、その場を後にしようとする。

 

(諦めてたまるか!!此処まで来て諦めてたまるか!!)

 

トレディはその思いだけで、笑う膝に喝を入れ、立ち上がり、神威に渾身のタックルをする。

そして、

 

(届け!!)

 

トレディは神威を引き留める為、必死に手を伸ばす。

当然、彼女の行動は、神威はとっくに察しているが、今のトレディに自分を倒すだけの力は残っていない。

それは彼女にダメージを与えた神威自身が一番に理解していた。

故に何のリアクションもとらず、平然と歩いていた。

だが、彼にも予想外のことがあった。

それは、トレディの腕が神威の背中の服の裾に達した事だった。

ガシッと服の裾を掴まれた神威は振り返る。

其処には、倒れながらも必死に自分の服の裾を掴むトレディの姿。

神威は今のトレディの姿を、彼女の目を知っている。

今、この場で必死に裾を掴んでいるのは昔の自分だ‥‥

去って行く親父の背中をただ黙って見つめているだけしか出来なかった昔の‥‥弱虫の頃の自分の姿だった。

 

「かむ‥い‥‥」

 

トレディはまるで捨てられた仔犬の様な目で神威を見る。

そして神威はそんなトレディの様子を黙って見つめる。

 

「‥‥」

 

(そうだ、俺はあの男とは違う‥‥あんな奴とは‥‥)

 

自分と親父とは違う。

その思いが神威を動かし、彼の口を動かした。

 

「はぁ~ほんと、しつこいなぁ、君は‥‥」

 

「だ、だって‥‥」

 

「そんなに俺との間に子供が欲しいのか?俺に抱かれたいのか?」

 

「‥‥」

 

トレディは無言のまま首を縦に振る。

 

「ふん、いいだろう‥‥ただし‥‥お前を抱くのはお前が俺を倒してからだ」

 

「‥‥」

 

「お前が俺を倒す事ができたら。子作りでもなんでもしてやるよ」

 

「ほ、本当?」

 

「ああ‥だから、今は‥‥」

 

ドスッ

 

「ゆっくり寝ろ‥‥」

 

ドサッ

 

神威はトレディの首筋に手刀を入れ、彼女の意識を刈り取った。

 

 

「うっ‥‥うーん‥‥」

 

トレディが目を覚ますと、辺りは既に夜が明け始め、太陽が昇り始めていた。

 

「神威!?」

 

トレディが慌てて起き上がり、辺りを見回すと、そこに神威の姿はなく、

 

「あっ‥これは、神威の‥‥」

 

彼の上着が自分に掛けられていた。

 

「神威‥‥絶対にお前を倒してみせる」

 

纏っているボディースーツの上から彼の上着を羽織り、昇って来る朝日にトレディは打倒神威を誓ったのであった。

 

その後、トレディは自分のマイホームであるスカリエッティのアジトへと戻った。

アジトへと戻ったトレディを見て、他の数の子達は、

 

「なぁ、トレディの奴、何か変じゃないか?」

 

「ん?何処が変なんッスか?」

 

「いや、その‥‥身体つきとかじゃなくて‥‥纏っている雰囲気が‥‥」

 

「そおッスか?」

 

「わからんのなら、ウェンディはまだまだ修行不足だ」

 

「そんな!?酷いッス!!」

 

「確かにトレディはなんだか、一皮むけたように思える」

 

「無断外泊したこの数日、トレディに一体何があったんだ?」

 

数の子達はトレディの姿を見て首を傾げた。

 

 

「ここ数日、無断外泊をして一体何処へ行っていたのかね?」

 

トレディは帰ってきた早々、スカリエッティにお説教される羽目になった。

どうやら、彼女はスカリエッティや他の数の子達に無断で外に出て神威を探していた様である。

 

「探しモノを探しに‥‥」

 

「探し物って、今君が着ているその上着かい?」

 

「ううん、違う」

 

「そうかい、それで、探し物は見つかったのかね?」

 

「見つかったけど、この手をすり抜けて逃げていきました」

 

「‥‥」

 

「でも‥‥」

 

「でも?」

 

「でも、この戦いが終わったら、今度こそ、逃さない。この手できっちりと掴んでやる!!」

 

「この戦いが終わった後で‥か‥‥ならば、この戦いを終わらせるためにも君の力が必要だよ、トレディ」

 

「はい」

 

スカリエッティの言葉にトレディは力強く頷くのであった。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。

因みに現在のギンガの服装はBLEACHのルキアと思い下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的70 病院ではよくあってはならない場面に遭遇する

またまた更新です。


 

 

此処で時系列は元に戻る。

 

 

突然のラブコメ現場に出くわしてしまった獄寺とティアナ。

そして、その現場を見られてしまったツナとフェイト。

4者は気まずさと恥ずかしさで固まる。

そこへ何も知らないスバルもやって来て現場は尚混乱する。

 

「じゅ、10代目‥‥/////」

 

「ご、獄寺君‥‥こ、これは‥‥その‥‥//////」

 

「フェイトさん‥‥//////」

 

「ティアナ‥‥あの‥‥これはね‥‥//////」

 

「どうしたの?何があったの?」

 

病室で出入り口を固めていた獄寺とティアナの姿に首を傾げたスバルは背伸びをしてツナの病室を覗く。

すると、スバルの目にリンゴを食べさせようとしたまま顔を赤くして固まるフェイトとフェイトからリンゴを食べさせてもらおうとしたままの姿勢でフェイト同様、顔を赤くしたまま固まるツナの姿があった。

 

「‥‥ティア、獄寺、どうやら私達、お邪魔だったみたい‥少し時間が経ってから出直そう」

 

「そ、そうね//////」

 

「10代目、ごゆっくり//////」

 

ティアナ達がツナの病室から出て行こうとする。

 

「「ちょっ、ちょっと待って!!」」

 

ツナとフェイトが声を揃えてティアナ達を止める。

変に気づかいされた方がかえって気まずい。

 

その後、ティアナがフェイトの買って来たリンゴを剥き、みんなでリンゴを食べながら、フェイトがさっきの事情を説明した。

 

「ツナ、今腕が上手く動かないから食べさせていただけなの!!」

 

「そ、そうですよ!!獄寺君達が思っている様な事は一切ないよ!!」

 

「そうなんですか…むしゃむしゃ‥‥」

 

ティアナが剥いたリンゴを頬張るスバル。

リンゴの殆どがスバルによって消費されている。

フェイトの話を聞いてティアナは何か思いついた様でニヤッと口元を歪めると、

 

「獄寺、アンタも食べさせてあげようか?」

 

爪楊枝で刺したリンゴを獄寺に差し出すティアナ。

 

「ばっ、お前突然何言ってんだよ!?そんな恥ずかしい事出来るか!?」

 

「あら?でも、ツナはさっきフェイトさんにしてもらっていたみたいだけど?」

 

「むっ?」

 

「尊敬する人がアンタの言う恥ずかしい事をしたのに、アンタは平気なんだぁ~」

 

「うっ‥‥」

 

(ティア、獄寺を完全に操作している!?)

 

(あんなに慌てふためく獄寺君、初めてかも‥‥)

 

(ティアナ、凄く大胆だ)

 

(く、くそ、10代目だけに辱めを受けさせるわけにはいかねぇ‥‥)

 

「こ、今回だけだからな!!」

 

「えっ?」

 

獄寺のこの予想外の返しに悪ふざけをしたティアナは一瞬フリーズした。

 

(えっ?なんで?なんで?受けるの?コイツの性格なら、絶対に突っぱねると思ったのに‥‥)

 

自分の予想が外れテンパるティアナ。

 

(ど、どうしよう~は、恥ずかしい‥‥で、でも此処まで来て今更やらない訳にもいかないし‥‥あぁ~私のバカ、なんでこんな事をやっちゃったのよぉ~)

 

心の中で頭を抱えるティアナ。

 

(くっ、こうなったら、やるしかない!!女は度胸よ!!ティアナ!!)

 

ティアナは自分を奮い立たせ、

 

「じゃ、じゃあ、いくわよ‥‥あ、あーん////」

 

「‥‥////」

 

ティアナの差し出すリンゴに獄寺は無言のまま口を開ける。

その様子を見ているフェイト、ツナ、スバルはドキドキしながらその様子を見ている。

 

(なんで、リンゴを食べるだけで、こんなにもドキドキしなきゃならねぇんだ?別にロシアンルーレットをしている訳でもねぇのに‥‥)

 

(なに?なんなのよ!!この公開処刑は!?もう、私のバカ!!)

 

そんな思いを抱きつつ獄寺はティアナの差し出したリンゴを食べた。

 

「‥‥////」

 

一方、食べさせたティアナは茹蛸の様に顔を真っ赤にした。

何しろギャラリーのフェイト、ツナ、スバルがティアナと獄寺の様子をジッと見つめていたからだ。

 

(ティアってば顔を真っ赤にしちゃって可愛いなぁ~)

 

スバルはリンゴを食べながら、ティアナの様子に苦笑した。

今回、ティアナは悪ノリをするのも時と場所を考えろと言う事を学んだ。

リンゴを食べた後(ほとんどスバルが消費した)エリオやキャロの様子が気になったフェイトは『エリオ達の病室に見舞いに行く』と言い、ツナやティアナ、スバルもそれに付き合い、ツナが行くなら当然、『俺も行く』と言って獄寺も付き合う事になった。

 

 

~sideエリオ キャロ~

 

六課襲撃時、ヴィヴィオを助けようとして、トレディの妨害により、海へと叩き落とされたエリオとキャロは偶然近くを通りかかった漁船により救助され、事なきを得た。

その2人の下にフェイト達が見舞いに訪れた。

エリオとキャロも海に叩き付けられた衝撃で身体を強く打ったのか、身体の彼方此方に打ち身と打撲を負い、エリオに至っては肋骨に罅が入っていた。

頭や身体の彼方此方に包帯を巻き、ガーゼを張り付けたその姿は痛々しかった。

 

「すみません、フェイトさん。私達の到着が遅れて‥‥ヴィヴィオを‥‥」

 

「きゃ、キャロは悪くないよ、ヴィヴィオを助けられなかったのは僕の責任です。僕があの時、トレディに気づいていれば、こんな事には‥‥」

 

2人とも目の前で攫われて行くヴィヴィオを見つけながらも彼女を救うことが出来なかった事に対してやはり、負い目を感じており、フェイトに頭を下げ、謝罪する。

 

「ううん、ヴィヴィオが攫われた事は確かに辛く悲しい事だけど、今はエリオとキャロがこうして無事だったことが私にはなにより嬉しいと言うか安心したよ。スカリエッティはこの後、必ず行動に移す筈、その時にヴィヴィオは必ず取り戻す。だから、今は治療に専念してね、2人とも」

 

「は、はい」

 

「わかりました」

 

フェイトに励まされて少しは持ち直したエリオとキャロの2人だった。

フェイト、ティアナ、スバルの3人はこの後まだ被害調査があるため、六課の隊舎へと戻って行った。

獄寺ももう少し、ツナと一緒に居たかった様子だが、ツナ自身が獄寺に「獄寺も今は治療に専念して」と言って病室に戻した。

そして、1人になったツナは‥‥

 

(リボーンは俺が行っても何もできないって言っていたけど、やっぱり、ジッとなんてしていられないよ)

 

リボーンから言っても無駄だと言われた集中治療室のある病棟へと足を運んだ。

 

(雲雀さんの居る病室は‥‥ん?)

 

雲雀が居る病室を探していると、ガラス越しに集中治療室の中をジッと見ている栗毛色の髪をした男を見つけた。

 

(あっ、あの人は‥‥)

 

その男は、以前雲雀と市街地でドンパチしていた沖田と言う名の男だった。

 

「沖田さん‥ですよね?」

 

「ん?」

 

ツナは恐る恐る沖田に声をかけた。

 

「なんでぇい雲雀の連れの確か‥‥ロープだっけか?」

 

「ツナです」

 

沖田のボケに速攻でツッコミを入れるツナ。

 

「んで、どうした?アンタ、まだ怪我が治りきっていないんじゃないか?」

 

沖田はツナの姿を見て、まだ彼が完治していないにも関わらず、どうして此処に来たのかを尋ねる。

 

「その‥‥雲雀さんの様子が気になって‥‥」

 

ツナは沖田に自分の怪我を押してまで此処へ来たわけを話す。

 

「そうかい、随分と友達思いなこって」

 

「い、いえ」

 

「でも、奴がそれを知ったら、きっと感謝なんてせず、『余計なことを』なんて言っていたかもしれやせんぜ」

 

「うっ‥た、確かにあの雲雀さんならそう言いそう」

 

自分が怪我をしてまで雲雀の見舞いに来ている事を知った時咬み殺して来そうだ。

反対に自分が怪我をしていない場合でも雲雀の場合、怪我をした姿を見せまいと『態々見舞いなんてして来るなんて随分暇なんだね、そんな事をしている間にも何かやる事はあるんじゃないか?』なんて言って、自分の怪我よりも事件の解決を優先させるだろう。

 

 

「お前さんは雲雀の奴と同じ世界からきて、アイツとは知り合いなんだろう?」

 

「は、はい」

 

ツナが雲雀の事を思っていると沖田がツナに確認するかのように雲雀との関係を聞いてきた。

 

「お前さんから見たアイツはどんな奴だ?」

 

すると、沖田はツナに雲雀の事を尋ねた。

 

「えっ?僕から見た雲雀さん‥ですか?」

 

「おう」

 

「うーんと‥‥そうですね‥‥」

 

ツナは自分が抱いた雲雀のイメージを思い浮かべる。

 

「雲雀さんは真っ直ぐですね」

 

「ん?真っ直ぐ?」

 

「はい、どんな事があっても自分の誇りを曲げずにどんな事がしがらみとなっても自分を貫いてる」

 

「ふっ、確かに、自分のやり方しかして無かったな」

 

沖田は苦笑する。

 

「でも、雲雀さんは僕にとっては憧れの人でもあるんです」

 

「ん?髪型とかか?」

 

「いえ、其処じゃなくて‥‥」

 

「じゃあ、あのおっかねぇ、ヤクザの若頭みてぇな顔か?それとも似非っぽいヤンキースタイルか?」

 

「いえ、其処でもなくて‥‥」

 

「じゃあ、どんなところでぃ?」

 

「雲雀さんの強くて、自分の信念を曲げずにただひたすらその信念を信じて突き進む所です」

 

「ほぉ~」

 

ツナの回答に沖田は目を細める。

 

「俺自身、何かにつけて弱気で逃げ腰かつ諦めがちで、知り合いから『おまえはヒーローになんてなれない男』なんて言われる始末で‥‥でも、雲雀さんは、僕がある策略で厄介事に巻き込まれていく内に色々協力してくれたりして、頼りになる人なんです。最初はその‥‥怖かったですけど‥‥」

 

「確かに奴は普段から『弱くて群れる草食動物は嫌い』とか言っているが俺のバイト先でもなんだかんだ言って面倒は見ているツンデレ野郎でさぁ」

 

「ツ、ツンデレ!?」

 

「あぁ、俺のバイト先にもアイツそっくりなツンデレ野郎がいるんだよ。アイツを含めて2人だ‥付き合うこっちも大変なんでさぁ」

 

「へぇ~雲雀さんにそっくりな人‥なんですか?」

 

ツナは沖田の言う雲雀そっくりなツンデレ野郎に興味を持った。

 

「ああ、面もどことなく似ているな‥‥んで、ソイツは口下手で不器用で‥でも、自分の仕事には信念を持っている実直な奴だ。俺と違って仕事も一切サボらねぇし、そういう面では雲雀の奴同様、融通が利かない堅物だな」

 

「確かに雲雀さんと似ていますね、その人‥‥でも、雲雀さんではないんですよね?」

 

「ああ、別人だ。ソイツはこの前、1人の女に対して自分の思いも素直に言えないどうしようもねぇ腰抜けでな」

 

「へ、へぇ~」

 

女性関係という面に関してツナも沖田の言うその雲雀に似ている人の気持ちが何となく分かる。

それと同時に、

 

(うん、確かに雲雀さんじゃないな)

 

ツナはあっさりと沖田の言う雲雀に似ている人と雲雀は別人だと判断した。

あの雲雀が女の人に惚れるなんてありえない。

もしも、彼のハートを射止める様な女性が居るのであれば、是非会ってみたいものである。

 

「でも、ソイツは不器用な所が災いして、大事なモノを永遠に失っちまった‥‥だからこそ、女に関してはより一層不器用になっちまったのかもしれねぇな」

 

「えっ?」

 

沖田の表情には哀愁が漂っていた。

 

「まぁ、二度も逃げて相手を傷つける様な奴だったら、俺が叩き切ってやろうと思ったが、今度はちゃんと向き合うみてぇだ‥‥ただそうするには、肝心なあの人を取り戻さねぇといけねぇが、そこまで面倒は見切れねぇ‥惚れた女を取り戻すのはあのヤロウの義務だからなぁ」

 

(その人は、ちゃんと前へ踏み出そうとしているのか‥‥でも、取り戻さないといけないってどういう意味なんだろう?)

 

ツナは沖田の言葉の中で気になるワードが出てきたが、沖田の纏う雰囲気に圧されて気軽に聞けなかった。

それに人様の恋愛に他人である自分が深く突っ込むのは野暮と言うモノである。

これもリボーンの教育の賜物なのかもしれない。

 

「ただ、訓練の相手にはなってやるつもりだ。俺も今回、奴等のしたことにはちょっと堪忍袋の緒が切れかけているからなぁ」

 

沖田がニヤリとサディスティックな笑みを浮かべる。

その笑みを見て、ツナは、

 

(この人も決して敵には回してはならない人だ)

 

と沖田の危険性を肌で感じた。

 

「雲雀の奴も今のところは安定しているみてぇだし、それじゃあ、俺はこれで、戻るわ」

 

沖田は集中治療室の中の雲雀をチラッと見た後歩き出すが、途中で立ち止まり、ツナの方へ顔を向けると、

 

「‥‥おい、マグロ」

 

「だから、ツナです」

 

最後までブレない沖田に最後までツッコミを忘れないツナ。

 

「この先の奴等との戦いで決して死ぬんじゃねぇぞ」

 

ボケを入れていた時の沖田とは打って変わって、真剣な表情でツナに言葉をかける沖田。

 

「は、はい。沖田さんも死なないで下さいね」

 

「おう」

 

沖田はツナに激励をした後、片手をあげて去って行った。

 

(好きな人‥か‥‥)

 

ツナは沖田の言葉を聞いて何故かフェイトの事を思い浮かべる。

 

(あれ、何でフェイトさんが...?)

首を傾げるツナ

もし俺達の帰り道が見つかったらどうしよう?フェイトさんとはもうお別れか...何か寂しいな

自分はこの世界の人間ではない。

いつか、自分の世界へ戻る日がくるかもしれない。

その時、自分はどうする?

この世界に残るか?

いや、フェイトを自分の世界へ連れて行くか?

でも、自分の世界では、元の自分の生活がある様に、フェイトにもこの世界での生活がある。

大切な友達が‥仲間がいる。

自分のエゴのように感じるでも別れたくないな

 

「銀さんも同じ思いなのだろうか?」

 

ツナの脳裏にはふと、ヴィヴィオに好かれ、なのはが思いを寄せている銀髪の侍の姿が思い浮んだ。

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的71 母強しではなく女が強いのだ!

やっとゆりかごの目覚めに移行できます。


 

 

~sideはやて~

 

 

病院にてツナ達の無事を確認した炎真は、はやてにこの事を伝えた。

はやては、炎真の報告を聞き、胸をなで下ろしていた。

今回の襲撃では、殉職者も多数出た為、自分の部隊から殉職者を出さなかった事は部隊長として不幸中の幸いな報告だった。

だが、隊舎は半壊し、ヴィヴィオは敵に連れ去られ、師匠ともいうべき、ゲンヤの娘のギンガは行方知れず。

この報告ははやてに少なからずの衝撃を与えた。

 

「エンマ‥‥」

 

「はい」

 

「この後、ちょっと付き合ってや」

 

「はい?」

 

はやての誘いに炎真は首を傾げた。

そしてその日の夕方、はやては炎真を連れて本局へと赴くと、通路にてレジアスの娘でもあり、彼の第一秘書を務めているオーリスの姿を見つけ、はやては彼女に声をかけた。

 

「オーリス三佐」

 

「八神二佐、それとその少年は誰です?」

 

はやての隣に立つ炎真は管理局の制服を身に纏っていないので、オーリスが不審がるのも無理はなかった。

公開陳述会の会場である地上本部ビルが襲撃対象になった事で次はこの本局が狙われるのではないかと本局の警備も強化されて建物内はピリピリした空気が張り詰めている。

 

「私の隊に所属する民間協力者です。それより、オーリス三佐。お時間よろしいでしょうか?三佐にお伺いしたい事がありますので」

 

「これから会議ですのでこちらから時間が出来ましたらその時にご連絡します。」

 

「‥‥わかりました」

 

素っ気ない態度をとり、オーリスは会議室へと向かっていった。

 

「‥‥」

 

はやてとオーリスのやり取りを炎真は見ていたが、彼女の言う『時間が出来ましたら』という発言を疑問視した。

本当にはやてに費やす時間をオーリスは作るのだろうか?という疑問を‥‥

それははやても同じだった。

 

だが‥‥

 

オーリスははやての時間を割くことはないと思っていたが、意外にもオーリスはちゃんとはやての為に時間を割き、はやての話を聞いた。

いや、これはもしかしたら、今後はやてが自分に付き纏うかもしれないと予測し、さっさと要件を済ませてしまおうと言う魂胆だったのかもしれない。

何はともあれ、はやてはオーリスにスカリエッティの協力者にオーリスの父であり、地上本部本部長のレジアス中将が関係しているのではと話を切り出した。

レジアスは戦闘機人、人造魔導師の研究・製造をかつて、局の戦力と人材補強のために採用しようとしたものの人道的・倫理的観点からそれを中止された経験がある。

だが、戦闘機人、人造魔導師の研究・製造‥そこにうってつけなのがスカリエッティだった。

彼は歪んだテロリズム思想に染まってなければ本物と言ってもいいほどの天才だ。

はやては、レジアスは秘密裏にスカリエッティと協力し、『陸』の人員不足を解消するためにこの計画を進めていたのではないかと言う事でオーリスに直に尋ねる。

だが、それでも何ら動揺しないオーリスは、はやての推理をくだらない妄想と決めつける。

 

「貴女は入局10年目でしたか?」

 

「はい」

 

「中将は40年です。10年前貴女が自分の命を‥「今はそんな事どうでもいい!!」

 

「「!?」」

 

ずっとはやてについてきていた少年口も開かずじっとしていて何か言いたそうな目をしていた。

 

「エンマ」

 

「はぁはぁ、はやての過去が今回の事件に関係あるんですか?僕達は今回の事件を解決したくてここに来たんです。関係の無い話で逸らさないでください!!」

 

「年上に対しての口の聞き方を知らないのですか?まったく、この前の銀髪の方と言い‥‥貴方こそ関係無いのでは?二佐は本局に一般市民を連れてきて何がしたいんです?」

 

「...僕の友達は...今回の事件の首謀者によって殺されかけて、ついさっきまで目を覚まさなかったんですよ!それにもう1人はまだ目を覚まさず、集中治療室の中で治療中です!!」

 

「...それが?」

 

自分の友達が傷ついた事実を炎真は必死な思いで伝えたのだが、オーリスはまるで興味が無いと言う様子。

 

「っ!!?」

 

オーリスの平然としている態度と言葉に怒りを燃やす炎真。

 

「避難勧告はちゃんと出していました。怪我をしたのはそれに従わなかった貴方の友達の行動が悪いんでしょう?そうなったのは自己責任です。此方側には一切の責任はありません」

 

オーリスのこの言葉に炎真はついに我慢の限界か手を挙げようとすると

 

「彼の友達は彼同様、私の隊の民間協力者であり、もう1人は“陸”の‥‥108部隊の民間協力者です」

 

オーリスは改めて炎真を見ると確かに資料に載っていた。だがあの写真ではいかにも気弱そうだったのに雰囲気がまるで違う。

 

「これは失礼、ですがルールはルール、調査をしたいのなら調査許可証か特別令状を持ってきてください。話はこれまでです。」

 

と歩いていくオーリスの後ろ姿を見つめている2人だが、すぐにはやては、

 

「ええ、近いうちに必ず、貴方のお父様の裏の顔を表にさらしてみせます」

 

そう言い残した。

そして帰る途中で‥‥

 

「...ごめん‥はやて」

 

「ん?どないしたん?エンマ」

 

「その‥‥つい熱くなって‥‥もし、あの時、彼女を殴っていれば、はやてにとんでもない迷惑をかけたよね?」

 

「あぁ、何やその事かいな」

 

何時ものはやてに戻り、

 

「別にええよ、友達がそんな事言われたらそら普通は腹が立つやろう?それに下のしでかした失敗の責任をとるのが上に立つ責任者の仕事や」

 

「はやて」

 

「と言いたいけど、六課の責任者として少し説教せなあかんな」

 

「はい」

 

言い返すことができない炎真。

 

「ポケットから手ぇ出して」

 

「え」

 

「いいから」

 

「.....」

 

「はぁ」

 

強情な炎真にため息を吐き、はやては炎真の手を引っ張り出して、

 

「痛っ!?」

 

手を見るとやはり‥‥

 

「はは‥‥」

 

笑って誤魔化すが手は包帯で巻かれていて隙間から血が滲み出ていた。

 

「この前、無理にシノビの結界を壊した時の傷やな?」

 

「.....」

 

炎真は気まずそうにはやてから視線を逸らす。

 

「そうやな!!」

 

「はい‥‥そうです‥‥」

 

はやてが怒鳴るとびっくりして炎真もつい声を上げてしまった。

 

「六課の責任者として、隊員が怪我してんのを見過ごす事は出来ひん」

 

「うん」

 

「エンマはこれから病院に行って包帯巻き直してからツナ君達の様子を見てきて」

 

「わかった」

 

「エンマ」

 

「どうしたの?」

 

「私達の世界の為に今回エンマも皆も大怪我した。でも、今の私らの戦力じゃあの人らを捕えられへん、だから今度も力を貸してくれへんか?」

 

「僕とはやての仲でしょう?」

 

何の迷いもなく炎真ははやてにそう告げる。

 

「なら、早く手ぇ治してな、これから思いっきりこき使う予定やさかい」

 

微笑むはやてのスマイル顔頼み事はとてつもなくえげつない。

 

「え!?」

 

「ほら、早ょう行きなさい!!」

 

そして動きの止まっている炎真をまた怒鳴り、

 

「は、はい!!」

 

走って行く炎真の背中を見てそして自分も振り向き小声で

 

「ありがと」

 

と誰にも聞かれることなく呟くはやてだった。

 

 

~sideスカリエッティ~

 

薄暗くもその黄緑色が周りを照らし微かに見えたのは台の上で喚く少女、それを見ながら怪しげな笑みを零す白衣を着た男性と青いボディースーツに眼鏡をかけた女性それに全く興味がなく煙管を咥え、紫煙を吐いている男性が居た。

 

「さて、始めようか」

 

「本当にそんなガキが役に立つのか?」

 

煙管を咥えた男が懐疑的な言葉で白衣の男に問う。

 

「ん、君は彼女がただの子供に見えるのかい?」

 

「それ以外に見えねぇよ」

 

「ん~ドクターそんな戯言ほっといて早く進めましょう」

 

メガネの女性がまるで焦らされた彼女が彼氏に甘える時のような声で話しかける

 

「まぁ待ちたまえ、クアットロ、少し昔話したって変わらないさ」

 

と作業を進めながら話し始める。

 

「いいかい、この子は普通の子じゃない、彼女は違う人物の遺伝子で生まれたクローン、クローン人間なのさ」

 

「ふぅ~だから?」

 

紫煙と共にまるで吐き捨てるような言葉使い、

 

「クローンだろうが何だろうが俺には、親鳥から離れ迷子と気づいた小鳥にしか見えねぇよ」

 

不機嫌そうな声で話す高杉に違和感を感じたのか、

 

「あっら、以外~高杉さん、貴方はそんな小鳥に同情するような人なの?」

 

クアットロが挑発する様な口調で高杉に問う。

 

「別に、俺がキレてるのは、そのガキの為に俺達を囮に使った事だ。今回手を貸したのは今の何倍もの戦力を手に入るって、それと最初にこうも言ったな‥‥」

 

「約束が違えた場合私の命はない...まぁ待ちたまえ話は最後まで聞くものだよ。君は彼女をいつものおもちゃ(実験体)と思っている様だ。そんなに急ぐんじゃない、焦って大局をひっくり返させることなんてよくある方だ。だから手を収めなさい...クアットロ」

 

スカリエッティの視線の先には先程とは打って変わって怪訝な表情で高杉を睨みながら手を向けたクアットロを沈めるように声をかける。

 

「君と彼はどうも相性が悪い」

 

「あ~ら、心外、ドクター。私がこんな奴に負けるとでも、試しても良いならすぐにコイツの首を撥ねますよ」

 

「負けているさ、もう、彼は怒っているものの冷静さをかけてない、だが君はもう冷静さを失っている、自信過剰な性格は良いけど傲慢とも取れるその性格は直した方がいい、一体誰に似たんだか」

 

「ごじょ~だんを」

 

また笑顔を取り繕うクアットロ。

 

「で、さっさと話を進めろ」

 

「おっと失礼‥えっと‥‥何処まで話したか.....そうそう、ではこの子は誰のクローンかという事だったね‥‥」

 

白衣の男こと、スカリエッティは、再び高杉に台の上の少女の正体について高杉に説明をした。

 

 

~side六課陣~

 

襲撃により半壊した六課の隊舎は司令部としては機能するには難しい状態となった。そこで、はやては、本局の艦船ドックから退役し、廃艦処分される寸前のL級巡航艦アースラを急遽現役復帰させ、其処に司令部を置いた。

はやてが本局へ行ったのはオーリスに話を聞くのと、アースラを引き取りに行ったのだった。

 

スカリエッティが高杉にヴィヴィオの正体を教えているその頃、同時刻に同じ様に不信感を抱いた者が六課にいた。

 

「はやて、ちょっといいか?」

 

「リボーン君?どないしたん?」

 

「少々気になった点があってな、話...いいか?」

 

「別にええけど」

 

2人は外に出て、周囲に誰もいない事を確認した後、リボーンが口を開いた。

 

「それで、リボーン君、話ってなんや?」

 

「1つは警告だ」

 

「警告?」

 

「俺達の仲間の1人が今も目を覚まさない」

 

「それはエンマから話は聞いとるで」

 

リボーンは雲雀の事を話した。

雲雀がどれ位強いのかをそれを聞いたはやては‥‥

 

「なんや?それはそこまで強いって言う警告?」

 

雲雀が少々性格等に問題があっても今はゲンヤの所でバイトとして所属しているなら、戦力として十分期待できるではないかと思うはやて。

しかし、リボーンの警告ははやてが予想していたモノとは違った。

 

「いや、注意するのは雲雀自身ではなく、雲雀をやった奴の事だ」

 

「どういうことや?」

 

「雲雀の傷を確認した。そして俺は妙な違和感‥いや、親近感を感じだ。今ある情報を照らしても、雲雀をやった奴はこれまでの情報で該当する奴はいなかった。しかも厄介な事に恐らくソイツは猛毒を使う殺しのプロだ」

 

「その根拠は?」

 

以下にリボーンの推測が当てになることでもそこまで自信げに言い切る証拠は、

 

「同業者の俺が言うんだ間違いない」

 

リボーンは所謂「刑事の勘」「主婦の勘」と似たような勘と言う理由だった。

そして、両者は三秒ほど見つめ合い、

 

「...ふぅ~未確認の猛毒使いの殺しのプロ、確かに厄介やな」

 

はやてはリボーンの言う謎の猛毒使いの殺し屋の存在も視野に入れた。

 

「もう1つはお前も気付いているんだろ?ヴィヴィオの事だ。」

 

「!!?」

 

はやては驚くもすぐにやはりという顔になった。

 

「スバルの姉貴ならわかるが、ここまで派手にやらかす奴らが小娘一人を攫ったって言うのは妙だ。」

 

リボーンは半壊した隊舎を見ながら、何故ヴィヴィオは攫われたのかその疑問点をはやてに言う。

スバルの姉、ギンガならまだ使い道がある。

陸のお偉いさんの娘、そして何より管理局の情報を豊富に持っている人物だ。敵の情報を得るため攫って情報を奪う。

または、何かしらの交渉の材料にする為の人質としては、十分である。

だが年端のいかないヴィヴィオにはそれが無い。

せいぜい人質としての盾となるぐらいのメリットしかないが、その盾の役割もギンガで十分こと足りる筈だ。

まさか、誘拐して身代金を要求なんてせこい真似をこれだけの被害を出しておいて連中がするはずがない。

 

「じゃあ、何でヴィヴィオを攫ったか?それは何かヴィヴィオに特別な事情か力があるからだ」

 

とここでリボーンは資料を取り出して

 

「ここにはこんな技術があるんだな『プロジェクトF』」

 

「っ!!?」

 

以前、スバルがリボーンに自分の正体を伝えた時、スバルは「自分は母(クイント)のクローン体をベースに作られた戦闘機人」と言ったので、リボーンはミッドのクローン技術について密かに調べた。

その結果、ヒットしたのが、『プロジェクトF』だった。

 

「こっから先を言うつもりは無い、だが、せめて親には教えたいからな」

 

リボーンの言葉にはやては

 

「...はァ」

 

ため息をはいて

 

「ヴィヴィオは普通の子供や」

 

「あぁ」

 

「これを前提に聞いてほしい」

 

「わかったぞ」

 

「ヴィヴィオを最初に預けた病院での検査によると、魔力とかもあまり変わらん、ただ一つ気になったのは元になったその遺伝子‥‥」

 

「遺伝子?」

 

はやての言葉にリボーンは目を細め、怪訝な表情となった。

 

 

場面は戻り、六課の敷地内からスカリエッティのアジトへと移る。

 

 

「この子の本当の親と呼べる者は、はるか昔まだここが今よりも酷い戦場だった時代」

 

スカリエッティの話を聞いている高杉。

 

「古代ベルカ戦争、」

 

「古代?」

 

「ベルカ戦争?」

 

リボーンとはやての話に戻り

 

「兵器技術が発展して別世界をも領土に加えようとして起きた戦争、ベルカという国が無くなり戦争は終戦したけど暫くは人も住めん状態だったとか、ヴィヴィオの遺伝子はその時代それもだいぶ高貴な人の奴やと思うねん」

 

はやて達の話は此処で終わるもスカリエッティsideでは、

 

「彼女の本当の母親は聖王オリヴィエ、古代ベルカ時代の王の1人さ」

 

スカリエッティは高杉にヴィヴィオの正体を告げた。

 

「王‥だと?この小娘がか?」

 

高杉はまたもや懐疑的にヴィヴィオを見る。

 

「そうとも、正確に言えば彼女は聖王オリヴィエの娘でもあり、オリヴィエ本人でもある」

 

「どういう事だ?」

 

「私は以前、聖王教会から聖王の聖骸布を私の娘の1人に盗ませた‥‥その聖骸布には聖王の髪の毛が付着していた。その髪の毛からDNA‥つまり、遺伝子情報を抜き取り、クローン再生をした。そして生まれてきたのがこの子と言う訳さ」

 

「で?その王とやらは強かったのか?」

 

「勿論だとも。ただ強いのは王個人ではなく、王が有していた兵器‥‥聖王の『ゆりかご』さ、そしてそのゆりかごは聖王がいなければ動かない‥‥」

 

「成程、ソイツは動かす為の始動キーか‥‥」

 

「そうだよ‥では、そろそろ戴冠の儀式を行うことにしよう‥‥」

 

スカリエッティが近くのデスクに置かれていた箱を持ち、鍵のような部分を操作して開く。開かれた箱の中に入っているのは赤い結晶体‥‥レリック‥‥。

赤く輝くソレは、中空に浮かびながら妖しい光を放つ。

まるで、レリック自体が意志を持っているかのように‥‥

 

「――――っ!? イヤアアアアアアアッッ!!」

 

レリックの結晶体を見た瞬間、今までにも増してヴィヴィオが激しく暴れ、叫び声を上げる。

彼女は本能的に察したのだ。

あの怪しげな赤い光を放つ物体が自分という存在を脅かす物だと。

だからこそ彼女は必死になって叫び、逃げ出そうともがく。

だが、体は強力なバインドで縛られており、声を上げてももがいてもそれは何の意味もない。

 

スカリエッティがレリックの結晶体をその手に持ち、

 

「聖王の器に今、王の証を譲り渡す……」

 

レリック結晶体を持ったスカリエッティがヴィヴィオに近づくと、レリックはまるで主の身体に自分を戻せと主張するかのように、その輝きを増していく。

 

そして‥‥

 

「さあ、ヴィヴィオ‥‥今こそ、君は、私の最高傑作となるんだよ」

 

狂気的な笑みを浮かべたまま、手に持ったレリックをヴィヴィオの胸へと下ろした。

その瞬間、レリックは歓喜するような輝きを放ちながら、彼女の胸の中へと吸い込まれていく。その時、ヴィヴィオの体中を激痛が駆け抜け、スカリエッティのアジトにヴィヴィオの絶叫が木霊した。

 

 

~side六課~

 

月夜の晩、今日も輝く月とは対照的に黒ずんだ箇所が目立つ破壊された六課の隊舎。崩落する危険もあり、誰も寄り付かないような廃墟と化した機動六課の隊舎には「keep out」の黄色いテープが張られ人は入ってこない。

そんな中、1人の男が何かを見ながら、

 

「すまねぇ」

 

壊れた廃材を殴り続けていた。

 

「約束したのに、約束しちまったのに、俺は...俺は‥‥俺はまた守れなかった‥‥」

 

殴り続ける拳からは赤い液体がポタポタと流れ落ちている。

だが、彼は止めようとしない。

 

「くそっ、待っていろよ、今行くからな」

 

一体どれくらい殴ったのか分からない。

だが、彼は拳が血で赤くなってもそれを痛がる様子も治療する様子もなく、何処かへと向かおうとする。

その時、

 

「こんな時間に何処行くんだ?銀時」

 

突然後ろから声をかけられ、銀時が振り向くとそこにリボーンが立っていた。

 

「...別に‥‥此処がもう気に入らなくなったか出ていくだけだ。」

 

銀時が此処に協力する時言った条件だ。

気に入らないなら出ていくと‥‥

リボーンの横を通り過ぎ、何処かへと歩いて行く銀時をリボーンは振り向かずに、

 

「ほぉ~新八と神楽を置いてか?」

 

ポツリと呟く。

リボーンのこの問いに銀時の足はピタッと止まる。

 

「短い付き合いだがな、これでもお前の考えていることぐらい予想がつく。」

 

「ふん、それは見当違いだぜ、マフィアの大先生。あいつらは此処が気に入っている様だから残していくだけだ‥‥俺の所(万事屋)とは違って、此処(機動六課)ならちゃんと給料(バイト料)は出るし、3食の飯も出る。アイツらが此処を出て行く要素はねぇだろう?」

 

リボーンにまるで吐き捨てるかのように新八と神楽を置いていく理由を話しまた歩き出す銀時。

 

「別にお前の過去を詮索する気はねぇが‥‥俺から1つ言える事は‥‥」

 

リボーンは思いっきりジャンプし、銀時の頭に

 

ゴン!

 

「へぶっ!!」

 

ズザザザァァ‥‥

 

げんこつを入れる。

そして地面に着地する。

 

「イッテェなぁ!!テメェ、いきなり何しやがる!?」

 

と吠えたが目の前にはリボーンが居た。

リボーンはそのまま銀時を睨み、

 

「半端な覚悟でダチの前や娘の前に立とうとすんじゃねぇ!!」

 

「っ!?」

 

(半端者が)

 

その時銀時の頭には勢いよくあるビジョンが流れ込む、何千何万と言われたことが何億何兆受けたであろう拳を‥‥

 

「お前のその道に背負う事から目を背けたお前に何が残る。ツナがやられたのはお前のせいじゃない。ヴィヴィオが攫われたのは決してお前だけのせいじゃないぞ。」

 

「そうだよ。」

 

また違う人物の声が聞こえた。

 

「やっと来たか、なのは」

 

「なのは‥‥ど、どうして此処に‥‥?」

 

銀時としてはなぜ、この場所に、このタイミングでなのはが来たのか分からなかった。

だが、その理由は直ぐに分かった。

 

「ありがと、リボーン君教えてくれて」

 

「テメェ、余計なことを‥‥」

 

どうやら、リボーンがなのはに銀時の姿を見つけた後、連絡してこの場になのはを呼び寄せ多様だ。

 

「娘と旦那の事は妻に任せるのが1番だからな」

 

「誰が旦那で妻だ!!誰が!!そもそも俺は結婚なんてしてねぇぞ!!」

 

リボーンの言葉に思わずツッコむ銀時。

 

「そ、そうだよ。リボーン君。私と銀さんはまだそんな関係じゃ‥‥」

 

「ほぉ~『まだ』ねぇ?つぅことは近々、お前達は交際の予定はある訳だな?」

 

「////」

 

なのはは銀時から視線を逸らし、ゴニョニョと言葉を濁らす。

そして、リボーンのツッコミにトマトの様に顔を真っ赤にするなのは。

 

「まぁ、後はお前達の問題だぞ。俺は知らん‥‥」

 

リボーンが言う表情は笑ってはいるが雰囲気がビリビリ伝わる。

リボーンがその場を立ち去ると、銀時となのはの2人がその場に取り残された。

 

「な、なぁ‥なのは‥‥」

 

銀時がなのはに話しかけた瞬間、

 

バチーン!

 

辺りに乾いた音が鳴り響く。

銀時はリボーンの拳骨に引き続き、今度はなのはからのビンタをくらったのだった。

 

「...」

 

だが銀時は何も言おうとしない。

 

「何で、何処かに行こうとしたの?私達を巻き込みたくないから?自分の友達の事にかかわらせたくないから?それに今まで姿を見せないで!!私がどれだけ心配したと思っているの!?」

 

「.....なのは」

 

「逃げないでよ、目を背けないでよ、言ったでしょ!!ここにいる間は私の事を‥‥私達のことを家族って思ってくれていいって!!」

 

大粒の涙を溢れさせながら銀時に訴えかける今まで色んな経験をしてきた銀時、なのははその事を全然知らないだけど、彼の優しさは、彼の今はわかる。

ずっと見てきたから、皆とはしゃいでいる時も、何かを守る背中にも彼は映し出される。ほんとは皆と笑いたい、皆と居たい、でも自分のことは教えない。

なぜ教えないかはもうわかった気がする。自分1人背負わないといけない業としているからだ。

でもだからこそ一緒にいたい、苦しまないで欲しい、いつからだろうそんな気持ちが淡い恋心に変わったのは...

なのに彼は話すどころか遠い所に行こうとした。なのはにとってはそれがどうしても許せない。

 

「あの子は絶対に死なない。だってあの子には(私達)がいるから私達は絶対死なない貴方がついているから貴方はもう何も失わない...だって...だって家族(私達)がいるから」

 

「...すまねぇな、また捨てる所だった。そうだな、ヴィヴィオは俺だけの問題じゃねぇ、俺達の問題だ。」

 

「銀さ/////」

 

銀時はなのはを抱き寄せて

 

「ありがとな、お前が居てくれて、お前達に会えて本当によかった。」

 

「銀さん‥‥」

 

なのはは銀時の温もりに抱かれ、そして彼の温もりを感じつつ、彼を抱きしめた。

 

「ふぅ~これで一件落着だな」

 

(だが、はやて辺りが居たらこのまま覗き見を続けたいシチュエーションだが、これ以上は無粋と言うモノだな)

 

その様子をリボーンは物陰からジッと見ていたが、もう問題ないだろうと判断すると、その場からひっそりと去って行った。

 

 

・・・・続く




ではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的72 やっと始まる最終決戦

皆さんお久しぶりですでは更新です。


 

~sideリボーン&はやて~

 

「そうか、この事は俺が二人に伝えとくぞ」

 

「お願い...ん?」

 

此処ではやてに連絡が入る。

 

「ちょっと失礼。私や、どないしたん?」

 

「はやてさん、シャッハです。」

 

連絡先は聖王教会のシスターのシャッハからだった。

 

「どないしたん?シャッハ、なにか手がかりがつかめたんか?」

 

「敵の‥スカリエッティのアジトを見つけました。」

 

「「っ!!?」」

 

シャッハからのこの何よりの情報に2人は驚きを隠せない。

リボーンがはやての肩に乗り、直接シャッハから詳しく聞こうとする。

 

「そいつは本当か?」

 

「はい!!えっ?赤ん...「はい。間違いありません」」

 

シャッハは空間パネルに表示されたリボーンを見て驚く。

そのすぐ後ろから聞き慣れた声がした。

 

「バジルか‥‥?」

 

「お久しぶりです。リボーンさん、はやて殿」

 

バジルもシャッハと行動を共にして居たようで、リボーンの姿を見ているシャッハに代わりバジルが通信にでる。

 

「どうやって見つけた?」

 

「アコース殿の能力です。」

古代ベルカ式のレアスキル「無限の猟犬(ウンエントリヒ・ヤークト)」この能力は犬のような思念体?みたいなの使い人が入れない場所まではいりこめる情報収集には最適だ。

 

「‥‥バジル。お前は何とかこっちに合流できるか?」

 

リボーンはバジルに此方に援軍に来る事が出来るかを尋ねる。

 

「はい?」

 

「はやて、こっちからメンバーを出す。バジルはこっち来て戦闘機人を抑える手伝いをしてくれ」

 

リボーンはスカリエッティのアジトには代わりの者を向かわせるかわりにバジルには市街地にて戦闘機人達の相手を頼もうとした。

 

「承知...っ!?」

 

「ん?どうした?バジル」

 

返答した時、バジルの顔つきが緊張した顔色に変わる。

 

「すいません、どうやら敵に気付かれた様です」

 

バジル達の周りに多数のガジェットが現れた。

 

「どうやら、そちらへ行くのは少々遅れるかもしれません」

 

「わかった。私らも‥‥」

 

「そうだな...今度は‥‥」

 

また連絡が入ってきた今度はグリフィスからだ。

 

「どないしたん?グリフィス君」

 

「はやて部隊長、今すぐ戻ってきてモニターを見てください」

 

その連絡を受けてすぐ戻ると

 

「はやてさん、リボーン」

 

既にツナ達が居た。

 

「こいつは!?」

 

「ヴィヴィオ‥‥」

 

銀時そしてなのはは絶句してフェイトもいつもの穏やかな雰囲気ではなく怒りに燃えた顔で見ていた。

それはスカリエッティからのメッセージ‥いや、宣戦布告を含めた大々的なパフォーマンスだった。

自らが発見し手にした巨大な戦力そして王座に無理矢理座らされているヴィヴィオの姿。

 

「なるほどな、ヴィヴィオはこの為に攫われたのか‥‥」

 

「おい、それはどうゆう事だ?」

 

銀時が食いつきリボーンに迫る

 

「さっき、はやてと話していたんだが、ヴィヴィオは作られた生命体‥所謂クローンって奴だ。」

 

リボーンの言葉に一同は色々な反応を見せる。驚く者、納得している者、そのものを見つめる者など反応は様々である。

 

「あの空飛ぶケーキみたいなモノが何なのかはわかんねぇが、スカリエッティの説明を聞くと、あの空飛ぶケーキはヴィヴィオ‥聖王の力がねぇと動けねぇ代物のようだ。簡単に言えばヴィヴィオは車のキィーの役割を果たす為に作られた存在と言う訳だ」

 

冷静なリボーンそれに対する銀時

 

「そんな‥‥そんな事の為に...そんな事の為にあいつを‥ヴィヴィオを傷つけたのか!?あいつら!!」

 

銀時がさっき見たのはヴィヴィオの姿だけではない、寂しげな表情、求める瞳、まるであの時の自分‥‥

 

「銀さん」

 

「モタモタしている暇ないで、すぐ助けなアカン!!」

 

「はやてちゃん」

 

「私らが離して、守れんかった手や‥‥私らが...いやアンタら親子がしっかり掴み返しいや‥船も用意している皆を、スターズ、ライトニング全員、ツナ君の仲間そして万事屋も作戦を言い渡す!!」

 

はやてが司令官の顔をすると、皆は緊張した面持ちではやての命令が下るのを待つ。

 

「機動六課、司令官として命令する!!ヴィヴィオちゃんの保護、並びにスカリエッティの一味を何としてでも逮捕せよ!!」

 

『はい!!』

 

『了解!!』

 

はやての命令を聞き、皆は真剣な顔つきで返答する。

また、ゆりかごの出現と共に地上でも動きがあった。

レジアス中将がクラナガンを守るために設置したアインヘリアル砲台。

その砲台が突如戦闘機人の奇襲を受けて警備に当たっていた局員は倒され、砲台は完全に破壊された。

この砲台を破壊したのは機動力のあるウェンディとディードだった。

本来ならばノーヴェも参加するかと思いきや、彼女はギンガと行動を共にして別ルートからクラナガンへの侵攻をする事になり、砲台破壊の任務には参加できなかった。

そして砲台破壊の任務を受けたディードはと言うと‥‥

 

「ハハハハハ‥‥コレだ‥この力だ‥私が求めていたモノは‥遂に‥遂に手に入れたんだ!!無敵の力を!!最強の力を!!ハハハハハ‥‥」

 

「‥‥」

 

光を宿さない目に狂気に満ちた顔で高笑いをしていた。

妹のそんな姿にウェンディはドン引きしていた。

そしてそんな彼女の両手には小太刀の長さに改良された紅桜が握られていた。

何故、彼女の手に改良された紅桜があるのか?

それは少し時系列を過去に戻す‥‥。

 

 

機動六課、管理局が対スカリエッティの対策を着々と整えているその頃‥‥

 

「ドクター...」

 

「ん?どうしたんだい、ディード」

 

「お願いがあるのですが‥‥」

 

「お願い?」

 

ディードが無表情に近いながらも真剣な表情でスカリエッティに頼みごとをしてきた。

 

「私にも...私にもファーストが持っているあの刀を貰えないでしょうか?」

 

何とディードはギンガが使っている妖刀紅桜を自分も貰えないかと頼んできた。

 

「ほぅ、何故あれを?あんな道具を使わなくても君は私の最高傑作の一つだ。今の君の装備では何か不満があると言うのかね?」

 

スカリエッティは一応、ディードが何故、紅桜を欲しがるのかを尋ねた。

 

「はい、ドクターから頂いた力も、装備も感謝していますし、私自身も管理局の魔導師には負けないと言う自負がありました。ですが、それでも私は二度負けました。」

 

ディードは苦虫をかみ潰した様な表情でスカリエッティを見て

 

「今度こそ彼らを殺すために...私も力が欲しい‥ファーストとノ―ヴェ姉様の戦いを見て、あの時のファーストこそ、私が目指す理想の兵器の姿でした。ですから、ドクター私にもあの刀を‥‥あの力を私に下さい!!」

 

「.....ふふ...ふははは、いいねぇ、ディード、その向上心、力に対する貪欲さ、私は嫌いじゃないよ。良いよ‥実はあの刀はまだ何本か作ってあったのだよ。なかなかの兵器だからね、君があの力を欲すると言うのであれば後で君にアレを渡そう」

 

(本当はFの遺産(フェイト)を手に入れたら彼女に持たせるつもりだったが、その時はまた作ればいいか‥‥)

 

スカリエッティがディードにこれから渡そうとしている紅桜は本来、フェイト用に作っていたモノであったが、スカリエッティはフェイトを捕らえた後、また新たに紅桜を作ればいいと考えた。

紅桜のデータは自分の手元にある。

作ろうと思えば紅桜を何本もこの先量産できるのだから‥‥

 

「感謝します、ドクター」

 

相変わらずの無表情であるが、紅桜をもらえると言う事でディードは喜んでいるように見えた。

 

(これで私もあの力を得る事が出来る‥‥もう誰にも負けないあの力が‥‥)

 

彼女はその場を去り、スカリエッティはディードの後姿を見ていた。

 

(時間の関係上、ディード、オットー、セッテには感情を入れていないのに、周りの環境に影響されて、ディードには感情が‥自我が芽生えてきているね、面白い実に面白い例だ。)

 

この様な経緯があり、ディードは紅桜・小太刀を手に入れたのだった。

 

アインヘリアル砲台破壊の知らせは直ぐに管理局全体に衝撃を走らせた。

クラナガンの守護神と期待されていたアインヘリアル砲台が一発も撃つことなく破壊されたのだから無理もない。

また、別ルートから侵攻してくる戦闘機人達も管理局の監視網には引っかかりその映像がとられた。

その中には黒い着物袴を身に纏ったギンガの姿も映し出されていた。

当然、ゲンヤ、スバル。そして土方達、ギンガと交流のある者達は驚いた。

スバルは、はやてに自分がギンガの相手をすると進言したが、そこへゲンヤかたの通信が入り、ギンガに関しては此方で対処すると言ってきた。

スバルは渋々ながら、父に姉の事を任せた。

 

 

~side最後の集会~

 

「作戦は伝えたとおりや」

 

全員集まり戦力の確認そして作戦を伝えて

 

「それじゃ武運を祈る。」

 

はやては出ていくが他のものはその場にいた。

特に FW陣はここまで大きな戦いは初めて。思う所もある

そんな時

 

ガタ

 

銀時が最初に立ち上がり

 

「銀さん」

 

「先に行っている‥‥」

 

目も当てずにその場を去る。

 

 

~sideツナ~

 

「.....はァァ!!」

 

ボォオ

 

「いい感じだぞ、ツナ」

 

訓練室でリボーンと2人で最後の追い込みようにリボーンと特訓していた。

 

「今の感じを忘れるな」

 

「はぁはぁ「お、いたいた」」

 

その時入ってきたのは

 

「山本、どうしたの?エリオ君にキャロも」

 

「ちょっとな‥小僧、ツナを連れていっても?」

 

「あぁ、いいぞ」

 

とツナを連れていきそのまま出ていった。

 

「おっ、いい所に」

 

「何しているアルか?」

 

「ちょっとな‥新八、神楽。お前達もちょっと付き合え」

 

神楽と新八は互いに目を合わせ

 

「後は、スバルとティアナだな」

 

「2人ならさっき見ましたよ。呼んでこようか?」

 

新八が言うと

 

「お願いしゃっす!!」

 

そして数分後

新八に連れられてスバルとティアナがやって来た。

 

「何、用があるって?」

 

「山本、まさか‥‥」

 

「はは、んじゃ皆隣のヤツの肩に手を置いいて」

 

言われるままに流されて皆は円陣を組み、

 

「用意はいいな...んじゃ、ボンゴレーー!ファイト!!」

 

「「「「オォーー!!」」」」

 

試合前の球児か何かのようにノリノリな1名、それに流された5名、恥ずかしくて何も言えなかった2名がそこに居り急なフリで戸惑う中、

 

「な、何?これ?/////」

 

「おぉ!何か気合いが入ってくるアル」

 

「はは、だろう?やっぱ決戦となるといつものヤツしねぇとな!!」

 

「えっと、いつもって事は、ツナ君は‥‥」

 

新八の問に

 

「やっています。全く慣れませんが‥‥」

 

苦笑いを浮かべながらツナは返す。

 

「やっぱ大事な戦いの前はこいつは欠かせないは、ホントはもっと入れたかったんだけどな」

 

山本は自分の握りこぶしを握り締めなおして、

 

「これをやるとさ、俺たちは一人で戦ってんじゃないってのを再認識させてくれるっていうか、すっげぇ落ち着くんだよな」

 

(あ、手の震えが消えている‥‥)

 

山本の言葉を聞いてスバルは自分の手を見ると震えが止まっていた。

スバルはこの戦いに勝てるのか?

姉は無事に帰って来るのか?

そんな不安がひしめき合っていた。

だが、皆でこうして円陣を組んで声を上げると自然と自分は1人じゃないと言う安心感が湧き出てきた。

 

「そうよね」

 

「どうしたの?スバル」

 

「ううん、何でもないよ」

 

スバルはいつものペースに戻る。

 

 

~side土方の病室~

 

「トシ、コイツを‥‥あれ?トシの奴は何処に行った?」

 

近藤が土方の病室に入ると其処には土方の姿はなかった。

 

「ヤロウならもう出ていきましたよ」

 

「なっ!?総悟、お前なんで止めなかった!?」

 

「しょうがないでしょう。ギンガさんの姿を見た瞬間、物凄い勢いで出ていっちまいやしてね、声をかける暇なんざぁありやせんでした」

 

「だ、だがトシは‥‥」

 

近藤は土方がまだ完治していないのではないかと彼の怪我を心配した。

 

「そっちも心配いりやせんぜ」

 

「は?」

 

と沖田は自分の右手を近藤に見せる。

彼の手は赤く打ち付けたようになっていた。

 

「どうしたんだ?そいつは?」

 

「訓練に付き合った結果ッスよ。近藤さん」

 

不貞腐れるような感じで沖田は近藤に言った。

 

 

~side獄寺の病室~

 

こちらも病室から

 

「行くのか?」

 

ヴァイスが獄寺に声をかける

 

「彼女に止められてたんじゃなかったのかよ」

 

「うっ‥だ、誰のことだか知んねぇな。大体俺には彼女なんていねぇよ」

 

「お前、まだ怪我治りきってねぇんだろう?特に腰が」

 

「テメェよりましさ」

 

ヴァイスを見ると腕の固定だけでなく松葉づえをつき、火傷の怪我も酷い状態だ。

 

「今なら小うるさいアイツもいねぇからな、抜け出すには絶好のチャンスって訳だ。じゃあな」

 

「待ってくれ」

 

「あん?」

 

病院を抜け出そうとする獄寺にヴァイスが声をかける。

 

「行く前に1つ聞かせてくれ」

 

「なんだ?」

 

「お前は何でそこまで戦えんだ?人間ってのは嫌なことになると自分の都合のいいように考える。今回も、仲間が何とかしてくれる何て考えしねぇのか?」

 

雰囲気とともに重くなる沈黙の中出た答えは

 

「考えねぇな、10代目も頑張ってんだ。そんな事できっかよ」

 

「!?」

 

「それに、ここで寝ている何てアイツらに知れれば‥‥」

 

獄寺の頭の中には銀時と神楽が浮かぶ

 

そして浮かび上がったのは‥‥

 

「はぁ~俺達が必死に戦っていたのにオタクは病院のベッドでぐったりお休みですか?いい身分ですねぇ~そう思いませんか?神楽さん」

 

「ほんとアル、これだから口先だけのチンピラは役に立たないアル」

 

鼻をほじりながらツバを吐きかける銀髪侍の姿とチャイナ服の毒舌娘の姿が頭に浮かんでいた。

 

「とか、ぜってぇ言いやがるからな」

 

「はは、確かにあの2人なら言うだろうな‥‥」

 

(やべぇ俺もこんな所でおねんねしている暇じゃねぇかも‥‥)

 

ヴァイスはそれを否定はしない。

 

「あと、現実逃避しても意味なんかあんのかよ?」

 

「っ!?」

 

そう言い残し獄寺はまた歩き出し病院から抜け出した。

 

「はぁ、旦那なら止められましたか?」

 

ヴァイスが声をかけた先にはザフィーラがいた。

 

「無理だな」

 

「ガキのくせに覚悟だけは一人前だな。はぁホント勘弁してほしいぜ、ガキが頑張れば頑張るほど大人へのプレッシャーは重く何のによぉ」

 

とヴァイスもまた

 

「ちょっとトイレに行ってきます」

 

と手をあげてトイレとは全くの別方向へと向かって行った‥‥。

 

・・・・続く




ヤベェよ、ディードがキャラ崩壊で済むか...


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的73 女性もマッドサイエンティストも笑顔の裏に何かを隠してるもの

お久しぶりです。更新です。


~sideクラナガン空中~

 

 

 

青く広がる大空と飛ぶ影が前方と後方に分かれて飛んでいた。前はなのはとフェイトそしてヴィータ。そして後ろには…

 

「なぁ」

 

「ん?どうした?銀時」

 

「お前たちの提案でこれを即興で作ったけど‥‥」

 

銀時は自分の腰に巻いているロープを手で掴む。そして自分の後ろ飛んでいる二つのパラシュートに目をやる。

 

「大丈夫だ。俺よりは安全だぞ」

 

「そりゃまぁ、そう思えるが……」

 

リボーンの方は、ツナにのしてもらっている状態だ。口で説明するのは簡単だがこれはめちゃくちゃ危ない。言うなればジェットコースターを安全バーなしで乗っている…よりも危ないだろう。

なのでツナもだいぶ減速している。だが、流石リボーンそれでも危ないのに片手で帽子を抑えて片手で自分の体を支えている。

余談であるが真選組の沖田は以前、とある事情で上司の娘のデートを邪魔する際、彼氏をジェットコースターに無理矢理乗せた時、自身はベルトをつけるのを忘れて大変な目に遭った事がある。

 

「まぁ、ヘリよりはましか‥‥」

 

一か所に集まっていて恰好の標的となるへりよりこちらのほうが自分で対処もしやすい。

もっとも六課が所有していたヘリは隊舎襲撃の際にガジェットと戦闘機人の攻撃で破壊されているので、空戦が出来ない銀時を運ぶにはこれが一番手っ取り早いのかもしれない。

 

「銀さん…」

 

「あん?どした?ツナ?」

 

ツナが銀さんに話しかける

 

「……」

 

だが一方的に黙ってしまうツナ。銀時は何かを悟ったかのように「ふっ」と言葉を出す。

 

「大丈夫だ‥‥お前はお前の仕事をしてくれ、ヴィヴィオの事は俺に任せろ」

 

ツナは目を見開いて銀時を見る。

 

「そうだ、お前にそんな余裕はないだろ?…あいつと約束したんだろう?」

 

リボーンがそうツナに告げツナは俯きながら頷こうとした時、

 

「ん?おい、フェイトが進路を変えたぞ」

 

フェイトはなのはと二、三言葉を交わすとゆりかごとは別の方向へと飛んでいく。

急に言われ動揺するがすぐさま自分もフェイトの後を追う為に進路を変えようとすると、

 

「おい、行く前に‥‥」

 

と拳をツナに突き出す銀時

 

「え?」

 

「これ終わったらヴィヴィオを泣き止ますのを手伝ってくれよな‥アイツは泣き虫な所があるからさ、俺となのはだけじゃ無理かもしれねぇ」

 

優しく微笑む銀時それは親の様な顔をして、まるで兄に妹の世話を頼むような…そんな顔をしていた。

 

「あぁ、わかった‥‥ただ、銀時」

 

「なんだ?」

 

「‥‥死ぬなよ」

 

ツナは病院で沖田からかけられた言葉を銀時に言う。

 

「誰に言ってんだ?俺は不死身だぜ?お前こそ、死ぬなよ」

 

「あ、ああ」

 

ツナも銀時に微笑み返して銀時の拳を当て返しそして自分もフェイトを追いかけように進路を変える

 

(待っていろよ、ヴィヴィオ)

 

フェイトとツナを見送って銀時は再び眼前に浮かぶ聖王のゆりかごに目やる。

 

 

~side土方~

 

病院にてクラナガンへと迫って来る戦闘機人の中でギンガの姿を見た土方は動揺していた。

ギンガの姿を見た土方は居ても立っても居られずに急いで寝間着から真選組の制服を纏うと病室を飛び出そうとした。

だが、そこを沖田に止められた。

1人で行く気なのか?

相手は確かにギンガかもしれないが、今のギンガは紅桜に操られている。

しかもギンガは戦闘機人であり魔導士‥更には紅桜まで装備している。

反対に土方は非魔導士‥‥で装備は刀が1本‥‥。

これまで自分達が相手をして来た攘夷志士とは訳が違うのだ。

確かにあの襲撃事件の後、沖田と土方は手合わせはした。

だが、土方の怪我の元でそんなに長時間は出来なかった。

そんな中、ケガもまだ完全に完治していないのに1人で行く気なのか?

確かにギンガの事は土方に任せると言った沖田であったが全部土方1人に任せる訳では無い。

精々最後の一撃を土方に譲るつもりだった。

だが、土方は最初から最後まで1人で片をつけるつもりだった。

沖田にとって土方の行動はあの時の‥‥自身の姉のミツバの時のことを彷彿とさせる。

自分で全部抱え込んで、1人で何とかしようとする。

そんな土方のやり方と態度が沖田を無性にイラつかせる。

だが、土方は強引に沖田を振り払って土方は決戦の地へと赴く。

土方はどうしてもギンガとの戦いは他人に譲れなかった。

ギンガを敵の手中に落してしまったのは自分の判断ミスによるものだ。

あの時、別れずに一緒に行動していればギンガを敵の手中に落す事はなかったかもしれない。

ギンガを取り戻すのは自分の責任なのだ。

戦いと共にギンガと再会する事による興奮する気持ちを落ち着かせるためか、土方は徐に煙草を取り出して火を着ける。

そして足取りはゆっくりである。

彼にはもう分かっている。

自分の対戦相手がこの先で待っていると言う事を‥‥。

やがて、土方の前に黒い着物と袴を纏ったギンガがまるで土方を待っていたかのように立っていた。

 

「よぉ、ギンガ。来てやったぜ」

 

「‥‥」

 

土方が声をかけてもギンガは相変わらず無表情のままで、言葉も返さない。

 

「へぇ~袴姿もなかなか似合うじゃねぇか‥」

 

「‥‥」

 

「だが、お前にその腰のモノは似合わねぇ‥‥」

 

土方が刀を抜き、ギンガへと迫るとギンガも抜刀して土方を迎え撃った。

 

ガキーン!!

 

土方の刀とギンガの紅桜がぶつかり辺りに金属音が響く。そして火花が散ってる中土方は煙草の煙を吐き捨てるようにため息をついて

 

「はぁ~、色男はあれやこれやと言葉でやるんだろうが、だめだ‥何も思いつかねぇ。だからよぉ‥ギンガ、見せてやるよ‥今までの俺を‥ミッドチルダ(此処)での俺じゃない。真選組副長、土方十四郎の全てをな!!」

 

土方は覚悟を決めた顔をする。

それはギンガとはいつ離れてもいい‥どうせいつかは別れるだろうと距離を置き嫌われてもいいという覚悟ではない。どんな自分を見せても大丈夫。そんな覚悟を決めてギンガに面と向かっている。

 

「俺も‥‥そしてまがいなりにも今のお前も侍なんだ。剣に生き剣で語るのが侍の流儀だ。ならば、お前も全力でかかって来い!!ギンガ!!いや、妖刀紅桜!!」

 

(アイツはそう簡単に呑まれちまうような軟な女じゃねぇ‥‥絶対に生きている‥‥俺の中にトッシ―がしぶとく生き残っていたみたいにな‥‥だから、ギンガ‥俺が絶対にお前をそこから助け出してやる!!もう少しの辛抱だ!!待っていろ!!ギンガ!!)

 

土方は例え紅桜に体は乗っ取られていてもギンガの精神は生きていると信じ、彼女を必ず取り戻して見せると意気込んだ。

 

 

~side市街地~

 

FWメンバーそして新八、神楽、山本がともに行動している。

 

「銀さん達大丈夫かな?」

 

僅かな心配が口から零れるそれもそのはず

敵の本拠地でもある聖王のゆりかごへと向かったのだ、彼との付き合いの長さ的にも心配する新八。

 

「新八、何を言っているネ。お前、今は他を心配する余裕なんてあるのか?それに銀ちゃんに心配なんてするだけ無駄アルよ」

 

「そ、そうだよね‥あの銀さんだもんね‥‥」

 

神楽の言葉を聞き新八は確かに銀時の事を心配するなんて取り越し苦労だと今までの経験からそう思う。

いや、そう思いたかった。

そうでもしないと今の自分も不安で押し潰されそうだから‥‥

皆が市街地を進んでいると急に道路が‥‥

 

「っ!?みんなここから離れろ!!」

 

山本がティアナをスバルが新八を庇いそして神楽は高くジャンプしてエリオとキャロはフリードに飛び乗りそれぞれ回避した。

 

「きゃあ!!」

 

「スバルさん!?」

 

「山本さん!!」

 

突如の事で何が起こったかわからない、ただ自分達が宙に放り出されてさっきまであった地面が急に崩壊したのだ。

 

「く!?」

それでも焦ることの無い山本はすぐ様次の行動を起こす

今度は山本がスバルを突き飛ばす。

 

「きゃっ!!」

 

スバルは突き飛ばされた為勢いそのままに着地に失敗して地面を大きく転んでしまう。

 

ガキーン!!

 

そしてすぐにスバルの耳に金属音が無理やり入り込む。スバルは山本の方を見ると刀で張り合っている。

張り合っている相手を見るとそれは画面越しに何度も見たことのある戦闘機人だ。

確か名前はディードと言ったか?

だが、彼女の様子は明らかにおかしい。

画面越しだが、そこから見た印象は冷静で物静か、あまり表には感情を見せるタイプではない印象を山本はディードに抱いていた。

だが今、自分の目の前にいるディードは全くの別人のように思える。

 

「うふふふふ‥‥アハハハハハハハ‥‥なかなかやりますね」

 

ニヤリと狂気の笑みを浮かべながらまるで子供の様な無邪気にはしゃいでいるようにも見える。

その様子は親から新しく買ってもらったおもちゃを喜び、それを他人に見せびらかす様だ‥‥。

だが、これだけは間違いない。

先程から感じるかまいたちの様に見えない鉄を斬る様な殺気だ。

 

「山も…はっ!?」

 

ディードの一撃を受けた山本を心配したスバルの方にも敵が現れる。

 

「ぶっとべぇぇぇ!!」

 

「くっ、この‥‥!!」

 

この重い相手の拳の力を受け流すかのように地面をへこませてでも受け止める。

 

「うぅぅ」

 

こちらは前に見た通りの印象‥自分とどこか似た感じのする短い赤髪それに似合う荒々しい性格の少女ノーヴェ。

彼女は容姿もそうだが、装備している武器も自分とそっくりだ。

ローラーブーツに右手にはナックルを装備している。

ギンガとの模擬戦とは違う、ミラーマッチをしているかのようだ。

 

「スバル!!っ!?くっ‥‥」

 

山本はスバルに何とかフォローを入れようとするが…目の前のディード相手に簡単にスバルの方へ援護はできない。

 

「ツナ‥そしてあの銀色の爆弾使いじゃないのね。」

ディードが敗戦をしてしまい屈辱を負わされた2人。今回は以前の二の舞にならないーー何て甘いものじゃない彼女の殺意には殺意以外の言わば負の感情全てが笑顔として出ていた。殺す気と共に含まれる邪気

 

「!?」

 

その名と共にディードの邪気に反応するが山本はいつものような笑顔を浮かべる。

 

「はは」

 

「ん?何がおかしいの?」

 

「別に‥随分眼中にないのな、だけど俺も結構強いぜ、舐めていると痛い目に遭うぞ」

 

「へぇ~‥まぁいいわよ‥相手になってあげる‥‥たっくさん、血を出してね‥‥この子が血を欲しがっているの‥‥沢山の人の血をね‥‥」

 

そう言ってディードは紅桜・小太刀を舌で舐めた。

ディードの雰囲気に山本は寒気を感じた。今までに無い寒気だ。以前感じた恐怖とは違うまた別の恐怖だからこそ

彼女は此処で止めなければならない。

それはディードの為でもあった。

山本は生唾を飲み込んで

 

「ヤベェ、ゾクゾクしてきやがった。」

口角を少し上げながらと呟く。だが別に恐怖に負けかけてるわけじゃない、むしろその逆、比喩や例えを入れずにこの顔は上を目指し強敵と遭遇した剣士の顔だ。その据わった目でディードを見るがその顔は笑っていた。

 

 

キョロとエリオの二人はなんとかフリードに乗り上空へと逃れる事に成功した。

 

「皆は!?」

 

「分からない‥バラバラにされたみたい」

 

「兎に角、降りて皆と合流を‥‥」

 

エリオが着地して皆と合流をして体制を立て直そうと言いかけたその時、

 

「エリオ君!!アレ!!」

 

「ん?っ!?あの子は!?」

 

ある高層ビルの屋上にあの紫色の召喚師の少女が居た。

その子はまるで『あなた達の相手は私よ』と言わんばかりエリオとキャロの事をジッと見ていた。

 

「キャロ‥‥」

 

「う、うん」

 

キャロはフリードにあの召喚師の少女が居るビルへ行く様に指示を出すと少女の待つビルの屋上へと到着する。

 

「‥‥」

 

少女の傍には仮面ラ○ダーの様な昆虫人間が少女を守るかのように立っていた。

キャロの相手は同じ召喚師の少女でエリオの相手はあの昆虫人間と言う訳だ。

互いに対峙している時、召喚師の少女、ルーテシアの下へクアットロから念話が入る。

 

(ルーテシアお嬢さま)

 

(クアットロ)

 

(お嬢さま、まずは目の前の相手を片付けてもらえますか?この戦いが終わればきっとお母様も目を覚ましてくれますわ。お嬢様が探しているⅪ番レリックは恐らく管理局の保管庫に有る筈ですから)

 

(うん‥‥頑張る)

 

「‥‥お母さんの為‥負けるわけにはいかない」

 

無表情ながらもルーテシアはグッと拳に力をいれた。

 

 

~sideフェイト~

 

スカリエッティの基地に攻め込むフェイトとツナ。既に自分達の動きが知られている事は知っているようなので大胆にも走りながら駆け込む。

 

(スカリエッティを早く、見つけてこの戦いを終わらせないと…)

 

「やぁ待っていたよ」

 

突如目の前から声がする。驚くも冷静さをかけさせないフェイトだが動揺は少ししていた。何故なら探していた人物が彼方から現れたのだから

 

「やぁ、Fの遺産‥いや、フェイト・テスタロッサ」

 

「ジェイル・スカリエッティ!!貴方を今回の事件の主犯として拘束させてもらう。」

 

とバルディシュを振りかざしスカリエッティに攻撃するがその攻撃はヒットしなかった。驚くことにフェイトの渾身の一撃は彼の体をすり抜けた。

だがフェイトは直ぐに気づく。

 

「‥ホログラムか?」

 

フェイトとスカリエッティのやり取りは続いている。

 

「ご名答、あいにく私はここに居なくてね、だけどどうしても君に会いたくてね。失礼ながらこうしてホログラムで会せてもらったよ」

 

「どこにいるの?」

 

「すまないね、それは教えられないな。もし知りたいならこの子たちを…」

 

と言おうとするが今度は背後から奇襲を受けた。

 

「待っていたぁぁぞ!!」

 

何度も目にしたことがある。神楽と同じぐらい綺麗なオレンジの髪を持ち普段は爽やかに笑いそこには静かに殺意が含まれてるが今は荒々しく激しい嵐の様で隠していた牙をむく男‥‥

 

「神威!?」

 

とっさに防ごうとするが間に合うかどうかそんな時今度はフェイトの後ろから

 

「フェイト!!避けろ!!」

 

と、とっさに緊急回避の要領で躱す

 

「ツゥゥナァ!!」

 

ドゴーン!

 

ツナと神威の拳がぶつかり合う

両者全力で押し合うが二人共一歩も引かない。

 

「やれやれ、彼の動きは私の想定を超える…だが想定外じゃない」

 

スカリエッティがそうつぶやくと指を鳴らす。

 

「!?」

 

急に床が青白く一つの模様が浮かぶ様に光りだす。ツナの超直感がそれは大穴とツナに伝えそこを離れようとするが神威ががっしりとツナを掴んでいる。

 

「ツナ!」

 

後ろからリボーンがツナに飛び乗り

 

「そのまま行くぞ」

 

そしてツナ、リボーン、神威が突如消える。

 

「ツナ!?」

 

「安心するといい、ただの転送魔法だ。彼らにここで暴れられると色々壊れてしまうからね」

 

「くっ」

 

フェイトはスカリエッティを睨みつけると共にツナの身を案じた。

 

 

~sideゼスト・グランガイツ~

 

クラナガンの空、そして市街地でスカリエッティ一味と管理局との戦闘が今まさに始まろうとしている中、空から地上本部を目指している者が居た。

以前白蘭から借りた白龍の背中に立つゼストは次第に近づいてくる地上本部のビルをジッと鋭い眼光で見ている。

 

(レジアス‥もうすぐだ‥‥もうすぐ会える)

 

(お前には色々聞きたい事がある‥‥あの時の事件の真相‥そして貴様とスカリエッティとの繋がり‥すべてはいてもらうぞ)

 

ゼストは地上本部のビルが近づくにつれてあの日の事を思い出す。

アレは忘れもしない‥‥自分が率いる部隊が当時のスカリエッティの研究所を摘発した際、スカリエッティがまるであの日、あの時間に自分達が来るのを知っていたかのように万全の迎撃態勢を整えていた。

それ以前にレジアスには色々変な噂があった。

確かに自分も彼同様、ミッドの平和については頭を悩ませていた。

だが、彼とレジアスとの違いは、レジアスは理想の為ならば手段を選ばないと言う方法で管理局が禁止にしている人造魔導師や戦闘機人の研究・製造に手を伸ばしていたと言う噂まで立っていた。

ゼストは、最初その噂を信じていなかったがスカリエッティの研究所の摘発の少し前からその噂が次第に事実ないのではないかと疑い始めていた。

スカリエッティの研究所摘発の前日も彼とレジアスは激しく口論をした。

やっとつかんだスカリエッティの研究所の摘発をレジアスは止めるように言ってきたのだ。

それが、ゼストがレジアスを見限った原因だった。

地上での局員の戦力不足を補うためゼストは、時間はかかるが後任の人材の育成に力を伸ばしていた。

だが、レジアスはゼストのやり方では時間が掛かりその間にも罪のない一般人が犠牲になる。

やっと育てた人材も『海』にとられて結局は無駄に終わる。

だからこそ、例え違法と知っても人造魔導師や戦闘機人の研究・製造に密かに手を染めていた。

そして、ゼストを失った時、彼にはもう止まると言う選択肢は消えていた。

だが、スカリエッティは此処で手の掌を返して牙を剥けてきた。

アインヘリアル砲台も破壊された。

レジアスは絶望の淵に立たされていた。

そんな彼の下に今まさに過去の亡霊が迫りつつあった。

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的74 憤怒の大空と行く末を見る大地

更新です。


 

 

 

 

 

 

 

~sideゼスト・グランガイツ~

 

「やぁ、ゼスト君」

 

白龍とアギトを連れてビルへ到着したゼストは後ろから声をかけられ振り向くと其処に居たのは‥‥

 

「白蘭か」

 

「やれやれ、他人のペットなんだからさぁ、もっと大事に扱って欲しいなぁ~こんなに弱らしちゃってぇ~」

 

白龍はご主人様のもとに行ってやっと死ぬ気の炎にありつけ機能を回復した。

ゼストと行動を共にしていた時は死ぬ気の炎にありつけなかったので白龍は機能停止間近だった。

 

「すまないな、何を与えればいいのかわからなかったんでな‥‥」

 

ゼストも流石に悪かったのか気まずそうな顔をする。

 

「ホントコイツ何あげてもなんも口に入れようとしねぇんだもん」

 

反対にアギトは白龍が何も口にしなかったのが悪いと言う。

 

「まぁいいよ、この子は魔力とは異なる特殊なエネルギーが稼動源だからさ♪」

 

と自分のリングからでる死ぬ気の炎を与えながらゼストに話しかける。

 

「因みに何あげようとしたの?」

 

白蘭はゼスト達が白龍に何を食べさせようとしたのかを尋ねる。

アギトの口ぶりから最初は何かを与えようとしていたことが窺えるからだ。

 

「えっと‥‥その辺の木の枝や草とか水とか...炎とか?」

 

「はは、アギト君。君は動物を飼わない方がいいね♪」

 

白蘭はアギトが白龍の口の中に無理矢理木の枝を突っ込む姿を想像して笑い出す。

 

「‥‥(イラッ)」

 

笑顔で言う白蘭にイラつきがわくアギト。

 

「‥‥それで、行くのかい?昔の親友の所に?」

 

白蘭は白龍の頭を撫でながらゼストに尋ねる。

 

「あぁ」

 

「確かに今なら会えそうだね。皆の注意があのゆりかごに向いて‥‥っ!?」

 

白蘭は上空から自分に鞭のようにしなって襲ってくる鎖のような攻撃を躱す。

 

「へぇ、闇の書の守護騎士……いや機動六課の所属‥烈火の騎士シグナムそしてユニゾンデバイスのリィンフォースツヴァイだっけ?」

 

「どこに行かれるのですが?元地上本部武装親衛隊隊長、ゼスト・グランガイツ、そして元地上本部科学班所属、白蘭‥お前、いや貴方の活躍は調べれば調べるほど貴方は本来‥‥」

 

シグナムが白蘭の過去の経歴を口にした時、

 

「別に言わなくていいよ、管理局にはあんましいい思い入れがないしね♪そんな事より、先輩の武勇伝を語りに来たの?違うでしょう?」

 

白蘭がうんざりした様子で会話を打ち切った。

そして白蘭が先程からシグナムと会話をしている間にゼストはアギトとユニゾンして戦闘モードを完了させていた。

 

「えぇ、これ以上は先に‥‥」

 

シグナムも愛刀であるレーヴァテインを抜く。

 

「行かせません!」

 

「行くぞ!!リィン!!」

 

「はい!!」

 

リィンはシグナムとユニゾンするとシグナムに変化が起こる。

シグナムの鮮やかな桜よりも濃いピンク色の髪が怪しげな雪の様な薄紫の色に変化させる。

リィンとユニゾンしたシグナムはゼストへ早速攻撃しようとする。

そしてゼストもシグナムを迎え撃とうとした時、白蘭が手で制して、ゼストを止める。

 

「白蘭、どういうつもりだ?」

 

「ゼスト君。君は先に行きなよ、親友と大事な話があるんだろう?ここは僕に任せて」

 

「白蘭‥‥すまぬ‥‥」

 

「行かせぬ!!」

 

シグナムがゼストに攻撃を仕掛けようとすると…

 

「白指」

 

人差し指から白い光線が飛び出す。この攻撃はシグナムには当たらずに、いや、わざと外してシグナムの横スレスレを掠める。

 

「ゼスト君の邪魔をしないでほしいなぁ~彼はこの後親友と大事なお話があるんだから」

 

「くっ」

 

白蘭に邪魔された事でシグナムは悔しそうな表情を浮かべる。

だが次の瞬間それは驚きの表情へと変わる。

 

「っ!?」

 

突如、白蘭は物凄い力で引っ張られ、引っ張られるがままその方向へと行く。

 

ガン!

 

その方向の先に待ち構えていたのは真紅の炎を纏った炎真の拳だ

白蘭は寸前のところでそれを受け止める。

 

「シグナムさん、此処は僕に任せて奴を追ってください!!」

 

「すまん、恩に着る」

 

シグナムは頷きゼストの背中を追いかけた。

 

「君は…君は前にもしたよね…?僕の邪魔を‥‥」

 

白蘭はイラついた様子で下唇を思いっ切り噛む。

彼の下唇からは赤い液体が流れ落ちそして‥‥

 

「君は!!何処まで僕の邪魔をぉ!!」

 

鋭い眼光で炎真を睨みつける。

炎真は臆することなく白蘭を見続ける。

 

「邪魔をするなら先に君を消すだけさ!!ゼスト君の邪魔はさせない!!お前をさっさと消してあの闇の書のプログラムも消してやる!!」

 

「やらせないよ、僕が君を食い止める」

 

一方、白蘭も憤怒を露わにして炎真を睨んだ。

 

 

~sideゆりかご~

 

銀時達は何とか無事にゆりかごの真上についた。

 

「さて、どうやって入るか‥‥」

 

「何処かに突入口が有る筈だ」

 

バチ!

 

「「え!?」」

 

不吉な音が一瞬耳をよぎる。

 

ヒューン

 

銀時が自分のロープを自分で切断した音のようだ。

 

「な!?ちょっ」

 

「おい、銀時」

 

(待っていろ、ヴィヴィオ!!)

 

銀時は一人で先に突入しようとする。

だが‥‥

 

「あっ、やっべ、着地の事考えてなかった~!!」

 

格好良く飛び出したはいいが肝心なところが抜けている銀時。

少しずつ青くなっていく銀時の顔

 

「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

迎撃の攻撃などもあるがそれは自分で対処して、

 

ガシッ

 

「ふぅ~あぁ~助かったぁ‥‥」

 

だが先程とゆりかごの中間地点でなのはが受け止める。

 

「何してんの!?銀さん!!」

 

「すまん、少し焦っちまった」

 

「焦る気持ちはわかるけど、慎重に行かないと」

 

「なのは、そのまま着地しろ、ここなら降りられる」

 

直ぐに着地点を見極めてそのまま降りる。

ゆりかごに着地をする。

 

「さてと、入り口は…」

 

だが見当たらない。いくら探しても見つからず

 

「ちっ」

 

洞爺湖で壁を壊して無理やり入ろうとするが少し傷がついた程度だった。

 

「ちっ、どんだけ固いんだよ!?このケーキは!!ケーキならケーキらしくもっとこうふんわり、しっとり滑らか且つやわらかにだな‥‥」

 

銀時がゆりかご(ケーキ)の装甲にクリームならぬクレームをつけていると、

 

「どいて」

 

なのはがレイジングハートを構えてディバインバスターを撃ち込んでゆりかごの壁を壊して突入口を強引に作る。

 

「さあ、早くいこう!!」

 

「「‥‥」」

 

ヴィータと銀時はなのはの行動に唖然とするが互いに頷きあい、ゆりかごの中に入ると三つの別れ口があった。

 

「うーん‥どうすっかな‥‥」

 

銀時は三つの別れ口を見てこの後の選択肢を考える。

三人で一つずつ調べるか?

それとも三人で別れて一つずつ調べるか‥‥

 

「そんなの答えは決まっているだろう」

 

とヴィータが三つの内一つの前に出て先に行こうと背中を見せる。

 

「えっ?ちょっと、ヴィータちゃん?」

 

なのははヴィータの行動に困惑する。

 

「それじゃあ、俺も‥‥」

 

銀時も自分の道を選ぶ。

 

「えっ?銀さんも!?」

 

「時間がない、早くこのバカ騒ぎを終わらせねぇと取り返しのつかないことになる」

 

「あっ‥‥」

 

なのはも心配する顔から覚悟を決めたような顔つきへ変わる。

 

「そうだね」

 

「次ぎに会う時は‥‥」

 

「四人で、外で会おうね!!」

 

「ああ、勿論だ!!」

 

「当たり前だろう!!」

 

なのはとヴィータは飛びながら自分達が選んだ入口へと進み銀時は自分の足で走り始め通路の奥へと消えていった。

 

 

~sideティアナ~

 

「見事に分断されてしまいましたね」

 

緊張し生唾を飲み込む新八。

スバル、山本、エリオ、キャロとは分断されたこの状況。

しかも相手は此方の動きを既に掴んで今も何処からか自分達を見ているかもしれない。

 

「どうするアル?ティアナ」

 

「……ここは逸れた皆との合流が望ましいわね」

 

自分達だけであと何人か残っている戦闘機人を相手にしなければならないこの状況下で分断されて戦うのは不利だ。

もし分断されている中、戦闘機人達が集団で各個撃破してくる戦法を取られたら自分達だけでなく皆も危ない。

だからこそ自分たちは反対に固まって相手を各個撃破または集団対集団の戦いに持っていきたい。

それに相手側にはこれまで何度も自分達を破って来たあのトレディがいるのだから‥‥

 

「っ!?やばい、新八!!神楽!!」

 

だが、ティアナが気付いた時には既にもう遅かった。

辺りには自分達を覆うように冷気が広がる。それはあまりにも寒く、地面のコンクリートがみるみるうちに氷で侵食されていく‥‥

 

「くっ‥‥」

 

「うわぁ!!」

 

「この能力‥まさかっ!!」

 

金属と緑の雨が自分たちに降り注ぐ

安否の確認をする暇もない。

 

「エリアルキャノン!」

 

最後の砲撃により完全に分けられてしまう。

ティアナは故意か事故か建物の中に追いやられその建物ごと結界に入れられた。

 

「残念だが、お前が次の日を見ることはない。お前は此処で死ぬのだからな」

 

「でもまぁ安心するっス。全員纏めて一緒にあの世に送ってあげるっス。だから寂しくはないッスよ」

 

「戦闘‥機人…」

 

ティアナの相手は以前ツナが以前クルーズ船で戦った戦闘機人のチンク、先日の公開陳述会で目にしたウェンディの2人がティアナの前に立ち塞がった。

 

(あ~あ、殺気と狂気を滲みだしちゃって‥少しはスバルみたいな能天気なポンコツぶりを見せてくれないかしら?)

 

2人の戦闘機人を前にしてティアナは引き攣った笑みを浮かべた。

同じ戦闘機人でも自分の知るナカジマ姉妹とは雰囲気が大違いだ。

育った環境の違いで此処までも違いが出るとは‥‥

数は1対2と俄然としてティアナが不利であるが、相手は見逃してはくれない様だ。

それに無理に倒す事はない。

此処に2人居ると言う事は、他の誰かは戦闘機人と接触しない可能性がある。

自分に援軍が来ないとは言い切れない。

 

(やるだけやってみないとね‥‥幸い相手の戦闘機人の情報ある!!ランスターの弾丸は全てを貫く!!それは自身の信念もね!!)

 

ティアナは深呼吸をして2人の戦闘機人と対峙した。

 

 

~side新八・神楽~

 

そして別れたもう片方の新八と神楽の前には‥‥

 

「トレディ」

 

「よりにもよって、なんで僕達の方にコイツが!?」

 

「やれやれ、また貴方達が相手なの?」

 

神楽と新八の前には因縁の相手でもあるトレディが現れた。

トレディを前に神楽は闘争本能を剥き出しにして、新八はややビビっている。

 

「‥でも探す手間が省けたわ」

 

「ん?手間が省けた?」

 

「どういう事ネ!?」

 

「私のターゲットは貴女よ!!神楽!!」

 

トレディはビシッと神楽を指さす。

 

「わ、私アルか?」

 

「ええ‥まぁ、そこの眼鏡君は運が無かったわね」

 

(僕って敵キャラからも眼鏡って認識なのか‥‥orz)

 

トレディからの新八の認識を聞いた彼はちょっと心にグサッときた。

突然指名されて戸惑う神楽であるが、今までのツケを払ういい機会であるし、折角の御使命だ。

此処で今までのツケを払ってやる。

 

「いいアルよ。相手になってやるアル。これまでのツケ此処できっちり払って貰うネ!!覚悟するヨロシ!!」

 

「覚悟しろ?それは私の台詞よ!!」

 

トレディは神楽の台詞がスイッチになったのか彼女は明らかに不機嫌を通り越してむしろ殺気を滲みだしている。

 

「ど、どういう事ネ?」

 

「私はお前の存在が許せない‥神威の心を震わせるお前と言う存在が‥‥お前を殺せば彼の心からは不安と闇が晴れる‥‥そうすれば彼は私をもっと見てくれる‥私を認めてくれる‥‥」

 

「お前、まさかあのバカ兄貴に惚れたアルか?それにお前が着ているその上着は神威のモノとそっくりネ‥ペアルックを狙っているアルか?」

 

「.....好きになったかどうかわ分からない、こんな気持ち初めて‥‥彼の事を思うと胸の辺りが疼くの‥‥これが好きという感情なら私は彼の事を好きなんだと思う‥‥ちなみにこの上着は彼のモノよ‥彼から貰った大切な上着なの‥‥」

 

自分の胸に手を当てて語り始めるトレディ。

そして、神威があの時自分に掛けてくれた上着を大切そうに触る。

 

「くっ‥‥」

 

自分とそっくりな顔なのに胸のサイズは相手の方が歴然という現実に神楽は顔を僅かに歪ませる。

 

「私は彼のDNAデータから生まれた戦闘機人‥‥私と彼はまさに一心同体の存在‥私は彼自身でもあり、私は彼の娘でもある。そして彼は私に力‥強さ‥夜兎としての存在を教えてくれた‥‥私はそんな彼の強さに惹かれたわ‥‥彼に思いっきり抱かれたい‥‥私の体をメチャクチャに蹂躙されたい‥‥そして彼の子供を身籠りたい‥‥そんな気持ちが日増しに増大していったわ‥‥」

 

「そ、それって‥近○相○じゃ‥‥」

 

新八本来のツッコミが炸裂するがトレディを前にビクついている。

でも、内心では‥他にも色々いらぬ事を思っていたかもしれない。

 

「そんなものは関係ない‥私は絶対に彼を手に入れて、彼の子を身籠る‥そう決めたのよ!!その為には管理局に勝つと共に神楽!!お前を此処で殺す!!」

 

トレディの周りに漂う冷たい気そして冷気とは明らかに違うものに身震いする2人。

だがトレディの殺気がこの空間を支配している中でも逃げる訳にはいかない。

このバカ騒ぎを終わらせるためにもトレディとは此処で決着をつけなければならない。

それでも‥‥

 

「これはちょっとヤバいかもネ‥‥」

 

これまでにないトレディの姿に神楽と新八は冷や汗を流す。

まさかトレディがあの神威に此処まで好意を抱いていたなんて予想外だった。

そしてその思いが此処までの思いとは‥だが、此処でトレディの思い通りにさせる訳にはいかない。

神威との恋愛については好きになったのであれば好きにすればいい‥だが、スカリエッティの野望は打ち砕かなければならない。

その為には、今はトレディを倒す事に集中しなければならない。

 

「トレディ‥あんなバカ兄貴欲しけりゃくれてやるネ‥でも、小さい子(ヴィヴィオ)を泣かせるような奴と組んでいるお前を許す訳にはいかないネ、バカ兄貴といちゃつきたいなら、あの紫頭と手を切るネ!!」

 

神楽は目つきを鋭くして拳を構える。

 

「そうはいかない。あの人は私の創造主‥私にとっては神威と同じもう1人の父親なのよ‥‥管理局を倒して自由になるのがあの人の夢‥‥だから、此処で負ける訳にはいかないの‥‥私達の未来のために、お前達は此処で朽ち果てろ!!」

 

(家族愛を求めている辺りやっぱりこの子も神楽ちゃんとどこか似ているな‥‥)

 

トレディの言葉を聞きやはり、容姿もさることながら求めているモノも似ていると感じた新八。

 

「そうはいかないネ!!私も此処でお前に負けるわけにはいかないアルよ!!」

 

「そう‥ならいいわ‥‥夜兎同士‥‥夜兎の解決方法でケリをつけましょう?」

 

「望むところネ!!」

 

「いざ‥‥」

 

「尋常に‥‥」

 

「「勝負!!」」

 

神楽とトレディは同時に駆け出して行く‥‥。

 

 

~side獄寺~

 

「っ!?くそっ、走りずれぇ」

 

自分の腰を抑えながら先に行こうとする獄寺。

 

「くそ、何で今日はこんなに風が強いんだよ」

 

不自然なほどに風が強い今日だが自分で思ったことに疑問に思う。

 

(この風‥あまりにも不自然だ)

 

辺りを見渡しながらこの風に対して不信感を抱く。

病院を出る(脱走)した時には此処まで風はなかった。

それがいきなり予兆もなく突然吹き出したのだ。

 

「ちっ」

 

突如自分に向かって突風が向かってくる。

獄寺はそれを躱して、

 

「そこか!?」

 

目線をやる。

 

「ほぉ~よくあの攻撃に気付いたな」

 

ビルの間から人影が現れそして獄寺の前にソイツは姿を現す。それは以前何度か銀時が相手したシノビだ。

 

「風には敏感何だよ。なんたって俺は嵐の守護者だからな」

 

シノビを見て獄寺は不敵な笑みを浮かべた。

 

「ほぉ~嵐の守護者ときたか‥‥しかし、俺も曲がりなりにも風を制する者‥‥どちらが真の風使いか勝負といこうか?」

 

獄寺の言葉を聞き、シノビは目を細める。

 

「ふっ、望むところだぜ!!この忍者モドキが!!」

 

獄寺は拳を打ち付けた後、構えを取り、シノビは無言のまま構えを取った。

 

 

 

・・・・続く

 

 

 




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的75 久しぶりに更新しようとするといつすればいいか分からなくなる

皆々様お久しぶりです!

現在、リアルでは銀魂が休んで一番の休息が遊戯王の後にちょこっとあるリボーンのブルーレイボックス発売CMになっただの〜〜〜(以下略)です。

それではこんな感じでまた更新しま〜す。


 

 

 

 

 

 

 

突然の攻撃で皆と分断されたエリオとキャロは、他のフォワードとの合流を目指していた。

成竜となったフリードの背中に乗り、2人は他のフォワード陣を探していた。

急いで移動している間であっても、エリオは冷静に現状の把握に努めていた。

 

(完全に罠にかかってしまったのは確かだけど……どうしてこんな中途半端な場所に放り出したんだろう?)

 

「エリオ君、どうしたの?」

 

考え込むエリオに何かの異常事態と勘違いしたキャロが話しかける。

 

「え?あっ、うん、ちょっと考え事‥僕達を分断するのが目的なら、もっと遠くに飛ばすことが出来る筈なのに‥って思って‥‥」

 

スカリエッティの下にはあの召喚師の少女が居る。

その腕は少なくともキャロと同じかそれ以上の実力を有している。

にも関わらずエリオはこの状況に対して解せない所があった。

 

「僕たちの分断を優先するなら、それこそ戻るのに時間が物凄くかかるほどの遠くに飛ばせば良いだけなのに、向こうはそれをしなかった……きっと何か意図があっての行動なんだと思うんだけど‥‥」

 

フォワード陣を分断させるなら彼女の能力でクラナガンの広範囲に分断させることが出来る筈だ。

だが、相手はそれをあえて行わなかったからには何か意図があるに違いない。

しかし、現時点ではその意図を見抜くことが出来ない。

その為、今は相手の出方を警戒するしか出来なかった。

 

「そう言われると、確かに何かおかしいね……エリオ君!!アレ!!」

 

「ん?っ!?あの子は!?」

 

その最中、2人はスカリエッティに協力していると疑わしい召喚師の少女を見つけた。

分断された他の皆の様子も気になったが、エリオとキャロは彼女の事も気になった為、あの召喚師の少女の下へと向かう。

彼女は何故、スカリエッティに協力するのか?

スカリエッティとの関係はどういったモノなのか?

彼女は能力や服装を見てもナンバーズではない。

純粋な魔導師であり、キャロ(自分)と同じ召喚師。

まさかと思うが彼女はスカリエッティの娘ではないよな?

様々な疑問を抱きながらエリオとキャロの2人は召喚師の少女の前に降り立った。

 

(まるで僕らに対して相性のいいスタイルで戦う人が居る相手を直ぐ近くに忍ばせていたみたいだ)

 

此処に来てエリオは相手の目的が召喚師の能力で広範囲に分断しなかったのか分かった気がした。

エリオの見解は正解にほとんど近いものであった。

 

「貴女は‥どうして、スカリエッティに協力するの?」

 

キャロが召喚師の少女、ルーテシア・アルピーノに尋ねる。

 

「‥‥母さん」

 

「「えっ?」」

 

すると、ルーテシアは一言だけ呟いた。

 

「‥‥母さんを起こす為」

 

「お母さん?」

 

「もしかして君のお母さんはスカリエッティに捕まっているの?」

 

2人はルーテシアの母親がスカリエッティに人質にとられているのかと思った。

血の繋がった家族と言うのは2人にとっては無縁に近い存在であったが、例え血が繋がらなくても家族と言える存在であるフェイトは2人にとっては大事な存在である。

2人にとってのフェイトの様に何事にも代えがたい存在がルーテシアにとって母親なのだろう。

家族愛に無縁な2人でもフェイトと言う大事な存在があるからこそ、2人はルーテシアが母の為に戦っている事に関しては共感できる部分があった。

 

「スカリエッティにお母さんを人質にとられているの?だから、スカリエッティに協力しているの?」

 

「それなら、僕達が君のお母さんを助けるから無駄な戦闘は止めよう」

 

2人はルーテシアに投降と保護を申し出る。

しかし、

 

「‥‥それは無理‥母さんを起こす方法はドクターしか知らない。それにはナンバーⅪ番レリックがどうしても必要。クアットロがⅪ番レリックは管理局が持っているって言っていた。邪魔をするなら容赦しない。ガリュー!!」

 

ルーテシアは隣に立つ召喚獣、ガリューに命令を下す。

ガリューは物凄い勢いで2人に迫って来る。

 

ガキーン

 

「くっ‥‥」

 

「エリオ君!!」

 

エリオのストラーダとガリューの拳がぶつかり合う。

ガリューの外皮はまるで鋼鉄の鎧みたいに堅く、エリオのストラーダを受けても平然としていた。

 

「キャロ、コイツは僕が相手をするから、キャロはあの子の相手を!!」

 

「う、うん。フリード」

 

キャロはフリードをルーテシアへと向かわせ、ルーテシアは飛行型のガジェットⅡ型に乗り、

 

「‥‥召喚‥‥地雷王‥インゼクト」

 

地雷王と呼ばれる大きな昆虫とインゼクトと呼ばれるクラゲの様な小さな昆虫を召喚してフリードを迎え撃つ。

 

「フリード! ブラストレイ!」

 

炎が凝縮され、巨大な火球となる。

目標は当然、ルーテシアの操る地雷王である。

 

「ファイアッ!」

 

凝縮された炎が開放され、空が赤く染まる。

 

しかし、地雷王やインゼクトはその炎を回避するでもなく、何の躊躇もなく飛び込んで行った。

 

「そんなっ!?」

 

地雷王とインゼクトは炎に焼かれているが、ルーテシア本人にその炎は届いていない。

前衛の地雷王やインゼクトが焼かれてもルーテシアはすぐに新たな地雷王とインゼクトを召喚する。

 

「聞いて、貴女はスカリエッティに騙されている。管理局にⅪ番レリックは無いの!!」

 

機動六課の任務はスカリエッティの捜査と共にレリックの収集も任務の内でフォワード陣がこれまで管理局が収容したレリックの番号は控えていた。

その中でⅪ番レリックは存在していなかった。

つまり、スカリエッティはルーテシアをだまして自分の駒として利用していたのだ。

その事実からスカリエッティが本当にルーテシアの母親を目覚めさせる方法を知っているのかさえ怪しいものだ。

 

「嘘だ!!」

 

だが、ルーテシアの中では管理局員であるキャロよりもスカリエッティ達の方がまだ信頼がおける様だ。

 

「ゼストも、アギトもいずれはいなくなっちゃう」

 

ゼストと行動を共にしていたルーテシアは彼女なりに気づいていた。

ゼストの命がもう長くはない事に‥‥

アギトに命じて薬湯を煎じさせて飲んでいるが、それは気休めにもならない。

ゼストが死ねばアギトはまた新たな主を探しに自分の元から去って行き自分は1人ボッチになってしまう。

自分の下には目を覚まさない母親だけが残る。

その母親を起こす方法を知っているのはスカリエッティだけ‥‥

だからこそ、ルーテシアがスカリエッティに信頼を寄せるのも無理はなかった。

 

「Ⅺ番レリックを探し当てれば母さんが目を覚ます。そして母さんが帰ってきたら私は不幸じゃなくなる…1人ボッチじゃなくなる!!幸せになれる!!お前達に邪魔はさせない!!」

 

今まで無表情だったルーテシアの表情に怒気が含まれている。

 

「違う!そんなのは幸せなんかじゃない!!」

 

「キャロ!もっと語りかけて!君の想いの言葉を!」

 

エリオはガリューと戦いつつやはり、キャロとルーテシアの事が気がかりで会話だけは耳に入れていた。

 

「犠牲の上に成り立つ幸せ何てそんなの本当の幸せじゃない!!貴女のお母さんだってそんな事をきっと望んでいない…だからそんな間違った道を進んじゃダメ!」

 

「でも、母さんを起こすにはそれ以外に方法は‥‥」

 

ルーテシアは母親の事を言われ迷いが生じ始めていた。

 

「スカリエッティに頼らなくても‥‥レリック以外の方法を諦めちゃダメだよ!!他にも必ずお母さんを起こす方法はあるはずだから! だからそれを私達と一緒に探そう?」

 

「ドクターもレリックも必要としない方法‥‥そ、そんなのある訳が‥‥」

 

「あるよ!!絶対にある筈だよ!!」

 

ルーテシアが否定するまえにキャロが有無を言わさずにスカリエッティもレリック以外にもルーテシアの母親を助ける方法がある筈だと言う。

 

「‥‥本当にあるの?」

 

「えっ?」

 

「母さんを起こす方法‥‥本当にあるの?ドクターにもレリックにも頼らない方法‥‥一緒に探してくれるの?」

 

ルーテシアの心は揺いでいた。

やはり、スカリエッティの下では同世代がいない為、彼女の中には無意識のうちに友達が欲しいと言う欲求があったのかもしれない。

ナンバーズの皆は自分の事を「お嬢様」と呼んでどこかよそよそしい態度ばかりとっていたし、スカリエッティの協力者達は胡散臭い連中ばかりでルーテシア個人はあまり関わりたくなかった。

アギトは自分のことをそれなりに気遣ってくれてはいたが身長が釣り合わないし、どちらかというと自分よりもゼストと居る事が多かった。

ガリュー達召喚獣は会話することが出来ない。

故にルーテシアは腹を割って話せる同世代の友達が欲しかった。

これまでは母親のためにとⅪ番レリックを探し回っていた為、こうして同世代の人間と話した機会が極端に少なかった。

それが今はこうして話している。

ルーテシアにはそれが新鮮に感じたのだ。

 

「‥‥名前」

 

「えっ?」

 

「貴女の名前‥‥教えて」

 

「アルザスの竜召喚士、管理局機動六課の魔導師キャロ・ル・ルシエ。貴女は?」

 

「‥‥ルーテシア・アルピーノ」

 

キャロはルーテシアに手を差し伸べて、ルーテシアがその手を握ろうとした時、

 

『あらあら?ダメですよ~? ルーテシアお嬢様。そんな連中の言葉に惑わされちゃ~』

 

「クアットロ‥‥」

 

突如、空にモニターが現れる。

表示されたモニターにはゆりかごに居るクアットロの姿が映し出される。

 

「で、でも、キャロの言う通りⅪ番レリックが無くても母さんを起こす方法があるかもしれない」

 

『ルーテシアお嬢様。そんな方法はあるわけありません。ドクターがしてくださる方法が最善なのです』

 

「デタラメを言うな!きっとあるはずよ!!」

 

キャロがクアットロに声を荒げて彼女の言葉を否定する。

 

『ピーピーうるさい小娘ね。ルーテシアお嬢様、そんなガキどもなんて貴女には必要はありません。ぶっ殺しちゃってくださいな、貴女には私達やドクター‥そしてお母様がいれば十分なんです』

 

「で、でも‥‥クアットロ‥‥」

 

『おやおや、いけませんねぇ~ルーテシアお嬢様。どうやら、貴女は迷いが生じているみたいですね~そんな不必要な感情を持っていてはお母様を助ける事は出来ませんよぉ~でしたらその迷い、私めがその迷いを消してあげましょう』

 

そう言うとクアットロの前にピアノの鍵盤の様なモノが出現して、何かを操作し出す。

 

「うっ…うわぁぁぁー!!」

 

するとルーテシアが突如苦しみだす。

彼女のデバイス、アスクレピオスにはあらかじめある細工が施されていた。

それは一種の催眠‥いや、洗脳装置ともよばれる代物であり万が一、ルーテシアが自我を持ち始めた時の為に彼女を意のままに操るために仕込まれた細工であった。

 

『さぁ、ルーテシアお嬢様!そのガキどもを殺してくださいな!そいつらは貴女から大事なお母様を奪おうとする敵ですよ』

 

「なんてことを!!」

 

「あなた達は‥‥私の敵‥‥母さんは私が守る!!」

 

ルーテシアは光を宿さず憎しみのこもった瞳でキャロ達を睨んできた。

 

「インゼクト、地雷王、ガリュー、白天王…………殺して、こいつらを殺して―――――――――!!」

 

クアットロに悲しみや怒りと言った感情を増幅され、正気を失ったルーテシア。

彼女の叫びに呼応するように荒れ狂い、だが同時にそんな主の姿を悲しむ様な素振りを見せる召喚獣達。

特にガリューに関してはこれまでずっとルーテシアに付き従ってきた為か、クアットロのせいでルーテシアがこうなった事を見ていたので戸惑いが隠せない。

しかし、召喚獣である以上主の命令は絶対なのだ。

ガリューは目の前の小さな騎士と桃色の召喚師の少女に期待を抱きながらも主の命令を実行するしかなかった。

 

(必ず元に戻してあげるから‥‥)

 

キャロはルーテシアを元に戻す為に覚悟を決めた。

その為に彼女はヴォルテールを召喚する。

ヴォルテールはそれに匹敵するルーテシアの白天王と対峙し、フリードも次々に姿を現す巨大甲虫「地雷王」を止めている。あとは、エリオが向かい合うガリュー。

そして自分自身はルーテシアと対峙する。

ルーテシアさえ止めれば、召喚獣達も止まるかもしれない。

そんな一縷の希望に願いを託し小さな騎士と桃色の召喚師の少女第二ラウンドが始まった。

 

(心が乱れて感情的になっているなら‥‥)

 

一歩踏み出すと同時に襲い掛かってくる地雷王とインゼクトの大群。

それを前にしながら、キャロの心に怯えの色はなかった。

クアットロはある大きなミスをした。

確かにルーテシアを洗脳し、エリオとキャロに差し向ける事は出来たがクアットロの捻くれた性格が災いして負の感情を高めてエリオとキャロの2人に絶望を与えてやろうと感情を暴走させたのは悪手であった。

負の感情を強化され、心の乱れたルーテシアの攻撃はかえって単調になっている。

キャロは六課に来てからなのはからのシュートイベーション訓練やフェイトからの高速移動訓練で回避技能は高められていた。

そして、キャロは地雷王の電撃やインゼクトの攻撃を躱しつつシールドや魔力弾で迎撃しつつ前に出た。

しかし、如何に単調になっているとはいえ、次々と地雷王とインゼクトを召喚し、それらの召喚獣の壁で守られたルーテシアに攻撃を当てるのは一苦労だ。

だが確実にルーテシアを止めようと思うなら、至近距離まで接近して一撃で意識を断つしかない。

 

(一撃で意識を刈りとるなら、狙いは蟀谷か顎。手の届く距離まで近づければ、私にだって……!)

 

キャロは以前、格闘戦を得意とするスバルから聞いた事を思い出す。

例え、洗脳されていても人体機能は正常のままの筈、ならば頭部に強い一撃を与えればルーテシアの意識は混濁して気を失うかもしれない。

インゼクトの羽根に頬を浅く斬り裂かれながらも、キャロは臆することなくフリードの背中に乗り、ガジェットⅡ型の上に立つルーテシアへと向かう。

単調になっているとはいえ、その数だけでも十分過ぎるほどの脅威。

それでもキャロは、波濤の如く押し寄せるそれらを時に回避し、時に強引に掻き分けて行く。

服を、肌を、髪を切り裂かれても尚引くことはなく前に進む。

そして、ついにその手がルーテシアの横顔に届いた。

 

「っ!?」

 

「たぁっ!」

 

頭の側頭部‥ルーテシアの蟀谷の辺りに手を押し当てて、キャロは思い切り魔力を宿した拳を思いっきり叩きつける。

殴り合いのスキルを持たず、そもそもそう言った行為に不慣れなキャロにとってこれが精一杯のことだが、ルーテシアの意識を刈りとるにはそれで十分だった。

ゼロ距離から放たれた魔力の衝撃がルーテシアの脳を揺さぶり、彼女の意識を闇へと沈める。

同じ召喚士であり尚且つまだ成長途中の同世代で打たれ強くないと見たキャロの読みは正しかったのだ。

意識を失ったルーテシアはガジェットから落ちていく。

そこをキャロは空中で彼女をゲットし、近くのビルの屋上にフリードと共に着地する。

ルーテシアが意識を失った事で彼女の召喚獣は消えるか行動を停止する。

ルーテシアの召喚獣たちが行動を停止したのを見てキャロも、ホッと胸をなで下ろし自らが召喚したヴォルテールを返還する。

丁度その時、キャロの背後で対峙するエリオとガリューの闘いもまた、決着が付こうとしていた。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

空中で激しくぶつかり合う2人。

エリオの横薙ぎをガリューは脇と腕で挟み込むようにして止め、その状態で空いた逆腕の刃をエリオの肩を突く。

辛うじてなんとか貫かれる事を免れたエリオだが、彼はその状態で得物を握る手に力を込める。

電気変換資質持ちの本領は「麻痺」。

強力な電撃を受ければ身体が麻痺して動きが鈍るのが物の道理。

それは例え召喚獣で、外皮が堅いガリューも例外ではない。

エリオは電気へと変換した魔力をストラーダに流し込み、そのままガリューの身体へと送る。

 

「――――――――っ!」

 

強力な電撃を浴び、声ならぬ声を上げるガリュー。

外皮が鉄の様に堅いせいで電気を通しやすい身体だったのかもしれない。

一瞬の麻痺で相手が怯んだのをエリオは見逃さず、ストラーダを手元に戻す。

槍を右手に持ち、そのまま肩へと担いで穂先を背中まで下ろす。

続いて空いた左手で背中越し柄を掴み、右手に力を込める。

肩を支点に、テコの原理でしなる槍を必死に抑え込む。

やがて、もうこれ以上は抑えられないという所で…………左手を離した。

 

「だぁぁあぁぁぁぁぁあ!!!」

 

ガリューの左手の拘束から解放された槍は勢いよく跳ねあがり、衰えることなくガリューの肩目掛けて振り下ろされる。

シグナムから短時間であるが稽古をつけてもらい習得した紫電を帯びた強烈且つ痛烈な一閃の一撃。

とはいえ、師匠であるシグナムのモノと比べたら隙だらけの一撃でありガリューの身体が麻痺していなければ、とてもではないが成功しなかった大技だろう。

また、今回の戦いにおいては麻痺の他にもガリューの心情も影響していた。

小さな体躯からは想像もつかない重い一撃を受け、ガリューの身体がビルの床を突き破って落下する。

着地したエリオは、ストラーダを支えに荒い息を突きながらも確かな手応えに拳を握るのだった。

その後息を整えたエリオは、

 

「キャロ」

 

「エリオ君」

 

エリオはキャロの下へと戻る。

 

「ルーテシアは?」

 

「大丈夫。今は気を失っているだけ」

 

キャロは自らの膝枕で静かに目を閉じて眠っているルーテシアに視線を移すとエリオも自然とルーテシアを見る。

眠るルーテシを見てエリオもホッと一息ついた後、ある決意を固める。

 

「キャロ、フリードを少し貸してくれる?」

 

「えっ?エリオ君、どこかに行くの?」

 

「フェイトさんの所に行く」

 

「えっ?」

 

エリオの言葉に驚くキャロ。

エリオはスカリエッティのアジトへと向かったフェイトの事、そしてルーテシアの母親の事が心配になったのだ。

公開陳述会の時、スカリエッティの目的はヴィヴィオの他にフェイトも捕獲目的の様だった。

フェイト程の魔導師ならそう簡単に負ける筈がないと思っているが、それでもあのスカリエッティの下へと向かったフェイト、そしてスカリエッティの下に捕まっているであろうルーテシアの母親を助ける為、エリオは行くと言うのだ。

 

「わかった。でも絶対に帰って来てね」

 

「うん。必ずフェイトさんもルーテシアのお母さんも連れて戻るから」

 

キャロにルーテシアを託したエリオはフリードの背中に跨り大空へと舞い上がっていった。

エリオがフリードでフェイトの下に向かったすぐ後、瓦礫の中からガリューが姿を現す。

 

「っ!?‥が、ガリュー‥‥」

 

ガリューの出現でキャロは一気にピンチになった。

フリードもエリオも居ない、ヴォルテールを召喚したくてももう、魔力もほとんど残っていない。

しかし、意外にもガリューはキャロに対して危害を加えるような事はしなかった。

ガリュー自身も主であるルーテシアを救ってくれたキャロに恩義を感じたのだろう。

キャロはガリューに管理局への投降と保護を伝えるとガリューは頷き、眠っているルーテシアを抱きかかえるとキャロと共に市街地に設けられた救護所へと向かった。

 

ルーテシアの敗北‥その光景をゆりかごからクアットロは見ていた。

 

「まさか、ルーテシアお嬢様があんなガキどもにやられるなんて‥‥ふん、所詮はお嬢様も役立たずのガキというわけですわね。でも、まだ此方が優位な事にかわりはありませんからねぇ~そうでしょう?陛下?」

 

クアットロはゆりかごの玉座の間にある玉座にぐったりとした様子で座らされているヴィヴィオを見ながら呟いた。

 

 

 

・・・・続く




それじゃまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的76 地獄に送るのは死神天国に送るのは...

更新です。

いよいよ上映『リリカルなのはReflection』これをどんだけ楽しみにしていたことか.....いつかこれでもReflectionに出てくるキャラクターを使いたいものだ。

更新です。


 

 

 

 

 

聖王のゆりかごが突如ミッドの空に浮上し、戦闘機人達によるアインヘリアル砲台が破壊された時、時空管理局地上本部の最深部でもある動きがあった。

時空管理局地上本部の最深部、そこは最早人の出入りはほとんどない、古い時代の遺産が鎮座する場所であり、管理局員の中でも特別な権限と許可がない者以外立ち入りが許されないミッドでも神聖な場所と言えるような場所だった。

そこには薄明かりに照らされた大きな3つのシリンダー型の生体ポットがあり、その中に大量の溶液の他に人の脳みそが浮いていた。

この3つの脳みそは只の脳みそではない。

脳みそ達の正体は『管理局最高評議会』。

旧暦の時代、次元世界を平定し時空管理局設立後一線を退いた3人で管理局の中で英雄とも言える存在だった。

管理局最高評議会は彼らが、その後も次元世界を見守るために作った事実上の最高意思決定機関なのだった。

しかし、ここ数十年の間に居るとされながらも最高評議会のメンバーの姿を見た者はおらず、現在、管理局で英雄とされる三提督、法務顧問相談役のレオーネ・フィルス、武装隊栄誉元帥のラルゴ・キ-ル、本局統幕議長のミゼット・クローベルですら最高評議会のメンバーの姿を見ていない。

だが、最高評議会の決定事項や命令はどこからか指示されてくることから最高評議会は確かに存在していた。

でも、そのメンバーの姿を見た者は居ないと言う矛盾がある‥‥それもその筈だ。

何しろ彼らはとうの昔に肉体を捨て、脳髄だけの姿になって生体ポットの中に浮いて生きているのだ。

だが、そんな現実を知られれば、何かと不都合が生じる。

管理局がクローン研究や戦闘機人の研究を禁じているように生命に関する道徳から外れているような事は、管理局では法律で禁止している。

だが、彼らは永遠の命欲しさに自分達で築いた法律を破り、こうして生き長らえていた。

権力の象徴は上の方から腐敗していく‥‥彼らの存在は管理局の闇とも言える存在で、決して表に出る事無く、あくまでも裏方に徹し、表舞台に立つ役者たちに時には助力し、時には助言し手を回してきた。

当然その行為の中には自分達が定めた法律を破る行為が多く含まれていた。

 

「ジェイルは少々やりすぎたな」

 

「レジアスとて、我らの重要な駒の一つであるというのに」

 

「我らが求めた聖王のゆりかごも、奴は自分の玩具にしようとしている」

 

「止めねばならんな」

 

暗い虚空に足場だけが浮かぶ不気味な空間に機械混じりな声が響く。

脳みそだけとなり声帯を持たない彼らは、機械により合成された感情を感じさせない声で淡々と会議を進めている。

 

「だが、ジェイルは貴重な個体だ。消去するにはまだ惜しい」

 

「しかし、彼の人造魔導師計画もゼストは失敗、ルーテシアもまだまだ成功の域には至らなかった。まぁ、聖王の器に関しては完全に成功の様だ。そろそろ、良いのではないか?」

 

ジェイル・スカリエッティ‥またの名を開発コードネーム「アンリミテッドデザイア(無限の欲望)」。

最高評議会が失われた世界、アルハザードの技術と知恵を使って生み出した遺児。

あの天災科学者のスカリエッティでさえ、最高評議会が秘密裏に推し進めて来たプロジェクトの1つに過ぎない。

別に彼を弁護するわけではないが、彼は管理局の手によって生み出され、管理局の為にこれまで違法行為を行う事を押し付けられ、その管理局によって犯罪者に仕立て上げられた言わば必要悪の存在だった。

元をただせば彼だって管理局の局員と言ってもおかしくはない。

今回の事件、これは彼にとっては自由を得るための反乱だったのかもしれない。

そして、今回の事件は手駒の1つでしかない彼が、今その手から離れ自分達に反旗を翻そうと画策していた事に彼らはようやく気付いた。

とはいえ、例えスカリエッティがゆりかごを復活させて動かそうが、それすらも掌の上の事。

自分達の絶対的優位という認識に揺らぎはなく、彼らの様子に『焦燥』の色はなくむしろ『余裕』さえある。

 

「我らが求むるは、優れた指導者によって総べられる世界。我らがその指導者を選び、その陰で我らが世界を導かねばならん」

 

「左様、その為の生命操作技術、その為のゆりかご」

 

「旧暦の時代より、世界を見守る為に我が身を捨てて永らえたが、もうさほど長くは持たん」

 

「だが次元の海と管理局は、未だ我らが見守って行かねばならん」

 

「「「次元世界の平和と正義のために!!」」」

 

彼らの主張と理想は今を生きる人々‥‥機動六課のメンバーや真っ正直に生きている人々にとって酷く傲慢な考えである事に彼らは気付かないし、気づく必要もないのだろう。

元は崇高な理念と意思、正義、人々や世界の平和を信じてそれを志して歩んできたのかもしれないがそれも今は大昔の事だ。

彼らの思想がいつからこうして歪んでしまったのかは定かではないが、推測できるのは恐らく彼らが老いを感じ始めた頃だろう。

例え、高い魔力を誇る魔導師でも老いには勝てない。

そして人間である以上いつかは必ず『死』はやってくる。

彼らはその死に恐怖し、そしていつまでも高い権力の椅子に座っていたいと言う強く傲慢な欲望から今の姿となったのだろう。

1つ言えるのは、彼らは最早旧時代の有害物であり、今の時代に必ずしも必要不可欠な存在ではないという事だ。

 

「ん?」

 

その時、最高評議会のメンバーの1人(?)が何かに気付く。

それは、評議会3名が浮かぶ生体ポットにゆっくりと近づく移動式の床であり、その上に立つ1人の女の存在だ。

 

「失礼いたします。メンテナンスのお時間です」

 

「おお、そうか」

 

「では、手早くやってくれ」

 

「左様、今は会議中なのでな」

 

「承知しました」

 

(ふん、最高権力者と言うモノはどの世界でも変わらず、永遠の命を求めるものだな)

 

最高評議会のメンバーの下にやって来たのはレジアスの次席秘書官のカローラ・アクシオだった。

しかし、今日この場に居るカローラは普段のカローラとは何だか纏う雰囲気が異なったが、最高評議会のメンバーはその事に気づくことなく会議を続けている。

そんな中、

 

ガシャーン!!

 

突如、ガラスが割れるような音が辺りに響いた。

 

「ぐあぁぁ!!」

 

「むっ、き、貴様!!」

 

ガラスが割れる音の次には機械音声の悲鳴が響き、次に機械音声の怒鳴り声が響く。

 

「何をする!?」

 

「『何を?』‥だと?知れた事、既に用済みの廃棄物を処理しに来たまでよ‥‥」

 

なんと、最高評議会の生体ポットのメンテナンスに来たはずのカローラがメンバーの1人の生体ポットに日本刀を突き刺し、ポットの中にあったメンバーの本体である脳みそを日本刀で串刺しにしたのだ。

脳と言うのは生物にとって重要な器官であり、それが傷つけば生物としての機能に支障をきたすか死んでしまう場合もある。

それは脳みそだけとなった最高評議会メンバーも例外ではない。

カローラはそんな哀れな最高評議会の1人を日本刀ごとポットの外へと出すと刀を振り、メンバーの1人を強引に床へと落とすとソレを足で踏みつぶした。

そしてカローラの姿は管理局の制服から白い胴に水色の八咫烏の絵が描かれた黒い忍び装束を来た銀髪の男となる。

 

「貴様…何者だ……!」

 

「おのれ、痴れ者めがぁ!!名を名乗れ!!」

 

「我は天に仕える八咫烏、管理局を設立した偉大なる老害共、もはや貴様らの時代はもう終わった。その醜い姿で生き恥を晒す前に八咫烏の爪で地獄へと旅立つがいい‥‥」

 

忍び装束の銀髪の男こと朧は刀を構え残った最高評議会のメンバーに言い放つ。

朧の言葉を聞き残るメンバー達は瞬時に理解した。

掌の上にいたと思っていたあの男も世界もずっと昔に彼らの手を離れていた。

この場から動くことも出来ず、外の情報を得るのにも他人を頼らなければならない彼らの致命的なミスだった。

こういう意味においても彼らは老いていたのかもしれない。

抵抗する為の肉体を捨てた彼らに、最早この運命を覆す術はない。

彼らが生き残るには何とか朧を説得する方法しか残されていなかった。

 

「何故だ、何故我らを討つ! 我らは次元世界の為、この身を捨てて尽力してきた。その我らを討つ道理が、貴様にあるのか!?」

 

「そ、そうだ!!まだ世界には我らが必要だ!」

 

「今、我らを欠けば世界がどうなるか貴様はわかっているのか!?その責任を貴様は取れると言うのか!?」

 

「お前達の死は天が定めた運命‥お前達の死後、この世界が栄えるも滅びるも天が定めし天命に従うべし」

 

「や、やめろ…やめろ―――――――――――――――――っ!!」

 

「ま、まだ死にたくな‥‥」

 

そうして数秒後。

もはや人と呼べるかすら、分からなくなった最高評議会の面々は今度こそ本当に物言わぬ肉塊となり果てた。

 

「ふん、結局は欲に従い大義を元に生きていただけか。さて間もなくだ、間もなくあの御方も此方に来られる‥天の導きはどちらに転ぶか」

 

日本刀から滴る溶液を振り落としながら、朧は無表情のまま呟きそのまま暗闇に姿を消した。

この日、長年時空管理局を見守り、影から牛耳ってきた最高評議会は人知れずその歴史に幕を下ろしたのである。

 

「こ、これは‥一体‥‥何が‥‥」

 

それから少しして、本物のカローラが降りてくると彼女の目に写ったのは割られたポットに床に散らばる脳みその肉片だった。

 

「誰が私よりも先に‥‥」

 

どうやら、カローラ自身も最高評議会のメンバーを殺す為に此処へ来た様だ。

 

「まぁ、いいわ。連中をバラす手間が省けたし‥‥さて、そろそろ用済みの中将閣下にも老害共の後を追ってもらいましょうか?」

 

カローラは冷たく、そして不気味にニヤリと笑みを浮かべその場を後にした。

スカリエッティが動き出し最高評議会のメンバーも葬った今、レジアスもスカリエッティにとっては用済みとなっていた。

 

 

それから暫しの時間が過ぎ、地上本部の本部長、レジアス・ゲイズ中将は自らの執務室である男と対面していた。

その男の名はゼスト・グランガイツ。

かつてのレジアスの親友だった男‥‥。

そして今はスカリエッティによって蘇生させられた幽霊とも言える存在。

彼はどうしてもレジアスに尋ねなければならない事があった。

その為に彼は今日まで生きていたようなものだった。

 

「ぜ、ゼスト‥‥」

 

目の前に死んだと思っていた親友の姿を見てレジアスは顔を青くしている。

 

「レジアス‥9年前……俺と、俺の部下達を殺させたのはお前の指示で間違いないのか?」

 

ゼストの言う9年前の出来事‥‥それはナカジマ家も関わりのある出来事だった。

9年前のある日、ゼストは今のようにレジアスに詰め寄っていた。

レジアス、ゼスト‥この2人は昔から共に正義を志してミッドの平和のために力を尽くそうとしていた。

しかし、彼らがどんなに頑張ろうと優秀な人材は本局の『海』へと次々と流れて行き、ミッドの治安は一向に回復することなく反管理局のテロが横行し、罪もなく、力のない一般市民が犠牲となって行く。

そのくせ、『海』からは「自分達の足元も綺麗にすることも出来ない役立たず共」と蔑まれる日々。

高魔導師のゼストならいざ知らず、非魔導師ながら地上本部のトップに登り詰めたレジアスにとっては『海』からの皮肉や罵倒は耐え難い苦痛だったのだろう。

元々は優秀な人材、多額の予算を根こそぎ奪っていく本局が根本的な原因なのだが、本局の魔導師達はそれに気づくことなく、自分達の足元よりもまだ見ぬ空ばかりを見上げ続けていたのだ。

レジアスがそれをどんなに上申しても伝説の三提督さえもそれを真剣に取り合わず、

 

『レジ坊がまた我儘を言っている』

 

と言って取り合わなかった。

レジアスがはやての機動六課を目の敵にするのは、機動六課の構成メンバーが本局の魔導師が多い事だった。

本局は『陸』の縄張りに自分達の先兵となる機動六課を送り込み、『陸』の全権を乗っ取るつもりだとレジアスは考えた。

決定的だったのが、『陸』の縄張りに部隊と隊舎を置くのにも関わらず、『陸』のトップであるレジアスは機動六課の創設会議には一度も呼ばれず、気づいたら創設されていたと言う事態だった。

これらの事で彼が機動六課に対して好印象を抱けと言うのが無理である。

ミッドの平和と市民の安全はレジアスとゼストの長年の悲願でもあった。

権力を持っても魔力を持たぬレジアスは等々管理局の闇とも言える最高評議会そしてスカリエッティと関わりを持つようになり、プロジェクトFATE及び戦闘機人の技術を『陸』の人員不足解消の為利用しようと考えたのだ。

しかし、黒い事実は何処からか漏れたのかゼストの耳にも入る事となった。

もしかしたら、最高評議会またはスカリエッティが何らかの意図か目的があって故意に流したのかもしれない。

そんな中、ゼストは当時のスカリエッティのアジトの場所を突き止めそこを強襲する計画を立てた。

だが、それに待ったをかけたのが他ならぬレジアスだった。

今、ゼストにスカリエッティのアジトを強襲されて彼が捕まる事があれば自分がこれまで築いて来た地位が崩れるだけでなく、彼が密かに進めてきた戦闘機人、人造魔導師の導入計画が水の泡になってしまう。

そうなればミッドの平和は更に遠のいてしまう。

レジアスはそれを恐れゼストにスカリエッティのアジトの強襲に待ったをかけたのだ。

だが、レジアスのこの行動がゼストに不信感を抱かせた。

ゼストはレジアスを問い詰め、どういう理由でスカリエッティのアジトの強襲を中止にするのか?また最近噂になっているレジアスの黒い噂について、それが事実なのか嘘なのかを問いただした。

しかし、レジアスは噂については否定も肯定もせず、アジトの強襲の中止についても明確な答えは出さなかった。

煮え切らないレジアスの態度に業を煮やしたゼストは予定通りスカリエッティのアジトの強襲を敢行すると行ってレジアスの下を去って行った。

だが、2人のやり取りはスカリエッティ側に全て筒抜けだった。

レジアスはスカリエッティにゼスト隊が強襲する前に逃げてくれと言うが、彼は当時起動したばかりのトーレ、クアットロ、チンクの相手に相応しいと言ってそのままゼスト隊を迎え撃ち、彼らを返り討ちにした。

ゼストを含む、隊員の死体を前にスカリエッティはレジアスに戦闘機人の凄さをアピールにしてそのままアジトを変えた。

この事件でゲンヤの妻であり、ギンガ、スバルの母親であるクイント・ナカジマは殉職したが、スカリエッティ側もチンクがゼストとの戦闘で右目を失った。

スカリエッティはチンクに敗北したとは言え、AMFで満たされた空間で彼女の右目を失わせるほどの腕を持つゼストにレリックを移植してレリックウェポンとして蘇生させ、そして当時まだ乳飲み子であるルーテシを生んだばかりのメガーヌの召喚師としての腕前を見て、娘のルーテシアもメガーヌ同様、凄腕の召喚師になると判断し、最高評議会の力を使い、ルーテシアを誘拐した。

スカリエッティの読みは的中し、ルーテシアはメガーヌ同様、凄腕の召喚師となった。

そして今、ゼストは9年前の事を含めてスカリエッティとレジアスとの関わりをこうしてと問いただしていた。

レジアスの執務室にはレジアスとゼストの他にもう1人‥次席秘書官のカローラがいた。

秘書としてレジアスの傍にいたカローラが2人に気づかれぬよう密かに動き出す。

 

「ゼスト‥‥ワシは‥‥ワシは‥‥」

 

レジアスがゼストに何かを言うとした時、

 

ザシュッ

 

肉を突き刺すような鈍い音が執務室に響く。

 

「がはっ!!」

 

レジアスの口からは赤い血が吐き出され、彼の腹部からは鋭い鍵爪が姿をのぞかせる。

彼女が何故ゼストの前でレジアスを殺したのか?

それは彼に親友の最後をまざまざと見せつける為であった。

 

「レジアス!!貴様!!」

 

真相を聞き出す前に‥ましてや親友を目の前で殺されたゼストはカローラを睨みつける。

そしてカローラの姿は管理局の制服からナンバーズが纏っていた青を基調とするボディースーツへと変貌し容姿も髪の色も変化した。

 

「騎士ゼスト‥貴方も最高評議会や中将のようにもはや利用価値のない過去の遺物‥‥私、ナンバーズⅡ、ドゥーエが親友や部下達の下へと送って差し上げますわ」

 

カローラ改めナンバーズⅡ、ドゥーエはレジアスの腹部から鍵爪を抜くと不敵な笑みを浮かべながらゼストに言い放つ。

彼女のISは『偽りの仮面(ライアーズ・マスク)』。

自分と似たような体型ならば容姿も髪の毛の色、そして声さえも変える事が出来る潜入・暗殺に特化したIS能力だった。

ドゥーエはこの能力を駆使してかつては聖王教会にシスターとして潜入し聖王の聖骸布から聖王、オリヴィエの髪の毛を入手した。

ドゥーエが手に入れたその髪の毛がプロジェクトFATEの技術で生み出されたのがヴィヴィオだった。

こうした経緯とスカリエッティの技術がヴィヴィオを誕生させた事からスカリエッティがヴィヴィオの父親でドゥーエがヴィヴィオの母親に当たるのかもしれない。

そしてその後は管理局員として管理局に潜入し、管理局の動きや機密情報をスカリエッティに送っていたのだった。

 

ゼストと対峙するドゥーエには焦りの色はなかった。

その理由はかつて妹のチンクに敗北しスカリエッティの手によってレリックウェポンとして蘇生したゼストならば自分でも簡単に葬れるとドゥーエは踏んでいた。

しかし、ゼストとてこの9年間何もしなかったわけではない。

チンクが右目を治さなかったようにゼストも己の敗北から腕を上げなければならないと思いレリックウェポンになりながらも腕を磨いていた。

 

「レジアスの仇だ」

 

「へぇ~局員なのに投降を呼びかけないのね」

 

普通局員は犯罪者に対してまずは投降を呼びかける。

しかし、ゼストはドゥーエに投降を呼びかける事無く最初から彼女を殺すつもりだった。

 

「俺はもう局員じゃない」

 

「そうだったわね‥‥」

 

ゼストとドゥーエは互いに駆け出す。

 

ガキーン!!

 

ゼストの槍型のデバイスとドゥーエの鍵爪、ピアッシングネイルがぶつかり合う。

ドゥーエは今の自分でもゼストに勝てると思っていたが失念していたことが2つあった。

1つはゼストが9年間の間レリックウェポンになりながらも鍛練と修業を忘れなかった事

そしてもう1つはこの部屋がAMFで満たされていなかった事だ。

ゼスト隊の時にはスカリエッティのアジトはAMFで満たされていた。

それ故、ゼスト隊の隊員は満足に力を出すことが出来ずに敗北したのだが、ここでは違う。

彼女の敗北はそれが大きな原因だったのかもしれない。

 

「ふん」

 

競り合っていた中、ゼストがピアッシングネイルを振り払い、次いでピアッシングネイルを一刀両断にするとドゥーエの腹部に深々と槍を突き刺す。

 

「がはっ!!」

 

「レジアスが味わった痛みだ。貴様もとくと味わってから逝くがいい」

 

ゼストは一撃で終わらせるのではなく、敢えて苦しんで死ぬように槍を突き刺したのだ。

ドゥーエは自分の腹に突き刺さった槍を引き抜こうとしたが、ゼストはそれを許さず、両手でグッと抜けないように槍を抑える。

ドゥーエの周りには忽ち彼女の血だまりが出来上がり、彼女は苦痛に顔を歪めるが、やがて槍を握っていた彼女の手はパタッと床に落ちそのまま息絶えた。

これがナンバーズⅡ、ドゥーエの最後だった。

 

(俺はここまでだ。後は頼んだぞ、白蘭‥‥)

 

親友の口から直接真相は聞き出せなかったが、ドゥーエの言動から既に聞きたい事は推測できた。

やはり、レジアスは自分の推測通りスカリエッティと繋がっていた。

アギトやルーテシア、スカリエッティに囚われの身となっているメガーヌの事など心配事は多々あるが、ゼストにはもう残された時間がなかった。

 

(出来れば、もう少しお前達の行く末を見届けたかったが……詮無い事か)

 

彼はもう一人の親友に後の事を託すことにした。

 

 

白蘭を炎真に任せたシグナムはゼストの後を追う。

彼が向かったのは十中八九、レジアスの下‥‥。

やがて、レジアスの執務室前に到着すると、扉の前にはリィンと同じ融合機のアギトが陣取っていた。

アギトはシグナムの姿を見つけるとシグナムに向けて火球を投げてきた。

 

「よせ、融合機のお前では私には勝てん!!」

 

「そんな事は分かっている!!でも、旦那は今、古い友達と大事な話をしているんだ!!そいつを邪魔しよぅってんなら容赦しねぇぞ!!」

 

(やれやれ、こうも頑なでは話し合いどころではないな)

 

アギトの火球を躱しながらシグナムはアギトが相手の言い分など、元より精神的に聞く余地がないのだと推測する。

とはいえ、シグナムもあまり悠長にしてはいられない。

シグナムが現れた事で、アギトはその小さな体を精一杯広げ、自身の背後にバリアを展開している。

身を呈してでもシグナムを阻む、アギトの意思の表れだろう。

アギトの決意と覚悟は認めるが、それでもここを通してもらわなければならないのだから。

無言のままレヴァンティンを上段に構え、アギトが自身の背後に展開するバリアに狙いを定める。

アギトを倒すことが目的なのではない。目的はあくまでも、この先にいるであろうゼストだ。

僅かな時間ぶつかり合っただけだが、それでもこの健気で一途な融合騎の事をシグナムは決して嫌いではない。

アギトを傷つけることなく、ただ背後のバリアだけを斬る。

その意思をこの一太刀に込め、シグナムは愛機を振り下ろそうとしたその時、アギトにゼストからの念話が入る。

 

(アギト‥‥)

 

「旦那!!」

 

アギトが思わず口に出し、バリアを解除する。

バリアが解除された事でシグナムも構えを解く。

 

(レジアスとの用件は済んだ‥‥だが、お前の下にはもう戻れないようだ‥‥)

 

「そんなっ!!旦那!!」

 

アギトがレジアスの執務室へと入っていくとシグナムもそれに続く。

 

「これはっ!?」

 

シグナムがそこで見たのは既に事切れているレジアスとナンバーズらしき女の死体。

そして、本棚に背中を預けて床に座っているゼストの姿だった。

 

「旦那!!」

 

アギトはそんなゼストにしがみついている。

 

「すまんな、アギト。苦労をかけた」

 

目に涙を浮かべるアギトに、ゼストはその武骨な手を乗せて労う。

 

「レジアス中将は貴方が?」

 

シグナムはゼストにレジアスを殺したのはゼストなのかと問うとゼストは、

 

「ああ、俺が殺した‥‥」

 

ゼストはレジアスを殺したのは自分だと言う。

 

「俺とレジアスは同罪だ。俺達が奉じる正義は同じものであり、俺はその正義に殉じるつもりだった。もし、その正義が歪もうとしていたのなら、俺がそれを正さなければならなかった。俺はそれを出来ずに挙句の果てスカリエッティと手を組ませてしまった‥‥レジアスは俺が殺したも同然だ」

 

「‥‥」

 

シグナムは黙ってゼストの懺悔の言葉に耳を傾ける。

 

「旦那‥‥」

 

「アギト‥お前は‥お前達は未来へと進まなければならん。俺の様な過去の遺物にいつまでも囚われるな」

 

「でも‥でも‥‥」

 

「烈火の将と言ったか?」

 

「ああ」

 

「アギトとルーテシアの事を…頼めるか?巡り合うべき相手に巡り合えなかった、不幸な子どもだ‥‥貴殿ならば俺よりもアギトと心を通わせることが出来るだろう‥‥」

 

ゼストの頼みに、シグナムは無言のうちに首肯を返す。

それに満足そうな、安心したような微笑みを浮かべるゼスト。

だがそこで、アギトがうつむきながら涙を堪えている事に気付く。

 

「そんな顔をするな。お前達と過ごした日々、存外…悪くなかった。俺などには、勿体無い‥程に‥な‥‥」

 

そう言ってゼストは静かに目を閉じた。

彼が再び目を覚ます事はなかった‥‥。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的77 馬鹿げた夢を追う馬鹿程馬鹿にしたくなるがそれでも追う奴程応援したくなるのが2次元の定番

更新です。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side炎真~

 

空中に二閃の真紅の赤とオレンジ色の光が飛び交りぶつかり合う。

炎真と白蘭の空中戦では、炎真の炎である大地の重力操作を上手く躱している白蘭の方に軍杯がある。

幾ら大空の対をなす大地の炎と言えど、タネがバレていると効き目も失う。

前の戦いで白蘭はほぼ完全に炎真の能力を学習しており対炎真戦については攻略していた。

その上、戦闘力に関しても差があった。

炎真が使えるのは大地の炎一つだけ‥‥対して白蘭は精度の低いリングとはいえ大空の炎+魔力(しかも管理局員ではないので、なのは達とは違い普段からリミッターをつけている訳ではない)更に物量的にも炎真は不利なのだ。

 

「くぅぅぅ」

 

「ははは、僕を止めたのは勢いだけかい?そんなんじゃあ僕には勝てないよ」

 

白蘭の技である『白指』を飛ばしてくると炎真はそれを躱す。

炎真が躱したのを確認すると白蘭はビルの隙間を飛んでいき炎真もそれを追ってビルの隙間を入っていくとその間には、飛行型のガジェットⅡ型が5機も飛んできていた。

 

「なっ!?」

 

炎真は急ブレーキをかけて、

 

「大他の重力!!」

 

重力をかけてガジェットを地に落として白蘭をすぐに追う様にするが、

 

「遅いよ」

 

側面のビルの窓ガラスが割る音共に白蘭の声と動物の様な声が聞こえてくると、

 

「っ!?」

 

白蘭の相棒である白龍に顔を噛まれそうになり咄嗟に腕でガードするがその後にきた白蘭の拳をモロにくらい、その次に腹に回し蹴りを入れられる。

 

「ガバッ!」

 

更に白龍の尾を持ち遠心運動で投げ飛ばされた。

炎真はビルの壁にめり込んで動きを取れず重力操作の解けたガジェットドローンが目の前に来てビームを発射しようとしてきた為に自分の腕だけでも出して重力操作でやり過ごそうと思ったが、

 

(くっ、ダメだ‥‥間に合わない‥‥)

 

そう判断した炎真は敢えて自分に重力をかけてやり過ごした。

 

「へぇ~なかなかの判断力だね。まさに肉を切らせて骨を切るってヤツだね」

 

地面に膝をつく体勢から白蘭を睨みつける。そして、白蘭も炎真のその眼光から一切の負の感情が見受けられないので彼は炎真に対して、

 

「ねぇ、何で君は必死に管理局の味方をするの?」

 

と、単純な質問をした。

 

「貴方には関係の無い事です」

 

炎真は何故敵である白蘭にそんな事を応えなければならないのかと白蘭の質問を突っぱねる。

 

「よく分かんないだよねぇ~綱吉君はまぁ分かるよ、彼のお人好しは全平行世界共通だったからね。まっ、それが彼の美徳でもあるんだけどねぇ~‥‥」

 

炎真はそれを聞くと警戒心を少しといたのかフフと笑みを零して賛同している事を雰囲気で表す。

白蘭はそんな炎真を不思議に見つめて、

 

「何がおかしいの?」

 

「いや、ツナ君の事を聞いたらね、やっぱり何処でもそうなんだね、彼は‥‥」

 

楽しそうにそう言いながら続ける。多分この事は沢田綱吉と関わった人物全員が思う共通認識なのだろう。

 

「確かに、僕は此処に最初に来た時は確にツナ君に判断を任せたよ。でも今なら僕も即答するかな、『助ける』って」

 

「何故だい?」

 

「僕自身此処に助けたい人が出来たからね」

 

炎真も思い出している彼がここに来て関わってきた人達や自分が1番関わってきた彼女、そんな彼女の少しでも助けになりたい為に自分は此処に立っていると言い張る。

その答えが気に食わないのか白蘭は苦虫を噛み潰した表情をして体が少し震わせて炎真に言う。

 

「それは助ける価値もない犯罪者混じりの組織の事かい?あんまり調子のいい事ばかりだね、何も知らず、何も知ろうとしないくせに、いい気なもんだ。教えてあげようか?さっきの彼女の正体、矛盾だらけのこの世界の真髄を‥‥「知っているよ」」

 

「ん?」

 

白蘭は、今度は驚いた表情で炎真を見て、

今の炎真の瞳に嘘を浮いていると思えない。

 

「彼女達が色んなものを乗り越え今を掴んでいることは‥‥」

 

はやてはよく笑う、エリオ達FW陣達は勿論フェイトやなのはの様な親友の前でもシグナム達家族の前でも、僕達の様に余り繋がりのなかった人の前でも、別に彼女が強がりって訳でもない。

戦いの場面では類希ないリーダーシップで皆に指示を出している。

たまにお巫山戯が過ぎて周りの人から怒られている時もある。

それでも彼女は頼れるリーダーであり、皆と隣にいる普通の女の子でありとても幸せに見える。

でも以前見た彼女の辛い過去が露になり孤独にやられかけた時に見せた弱さを...彼女は自分の強さと同じ位の暗闇を持っている。

 

炎真も同じだ、過去に友達を傷つけてしまった。

だからなのだろう‥彼女に親近感みたいなのが湧いているのは、でも多分僕よりもっと深いんだろうね、その闇は‥‥

だからこそ彼女達が言葉で語れないぐらいの大きな暗闇に居た彼女の為に出来ることを全力でやる!

 

「本当にこの世界の人は罪を償う辛さを知らないで!!!自分の価値観だけではやて達を図るな!!」

 

額とグローブの真紅の炎が弾け飛び彼の周りの地面がとてつもない重りが乗ったようにめり込んで飛び散る破片は宙に浮き、

 

「はァァ!!」

 

炎真の手に呼応して破片は一気に白蘭の方に飛んできた。

先程から俯きながら何もやってこない白蘭。

だが、さっきのほんの僅かな瞬間、眩いほどの白い光に炎真も堪らず目を閉じてしまう。光に飲み込まれた破片は塵となり光が消えたとともに空へと消えていった。

 

「君こそ自分の知っている事だけでこの世界全てを知っているみたいに言わないでほしいね。力があるものだけが重宝されて地べたで頑張る人達の事なんて眼中にも入れないこのクソ溜めみてぇな世界の事をね」

 

自分の友達がどれだけ頑張っていたかも知らず、それを認めない、見ない、見ようともしない、知ろうともしない、この世界の上っ面の平和には白蘭も反吐が出る位嫌悪感を抱いているようだ。

 

「この世界は1度壊れないといけないんだ!!そして、破壊の後、彼等が夢見た真の平和な世界を彼等に変わって作ってあげるんだ。それはこの僕にしかできない!!」

 

ギュン!とスピードをあげて炎真に飛んでくる。

炎真も炎圧をあげて、

2人の拳がぶつかり合う。

2人は拳を離して息付く暇もない激しいぶつかり合い。

これはいわば誇りと誇りの戦いでもあった。

炎真が白蘭の顔面に1発入れるとそれに対してお返しと言わんばかりの様に白蘭も炎真の顔面に1発打ち込む。

 

(ん?何だ?この違和感はっ!?)

 

だが白蘭は炎真の攻撃に違和感を感じていた。

何故なら炎真の拳は異様に重い。まるで重りのリストバンドでも付けているように彼の拳から考えられないぐらいの重さにそれだけでないスピードも速い。

 

(くそっ、一体、彼の何処にこんな力が!?)

 

「はァァ!!」

 

両腕を大きく広げ近くのビル2つから大きくコンクリートを抉りとり2つで板挟みにして。更に多く四方八方からも瓦礫で包み込み1つの球体になった。

 

「大地の牢(カルチェラ・デッラ・テラ)」

 

隙間からの光も中の人には届かない位ガッチガチに固めて次に本命の、

 

「うぉぉぉ!!」

 

自分の拳に重力をかけた真紅の鉄槌を振り下ろし球体事地面に叩きつけ瓦礫の檻も壊れ白蘭にもそれなりのダメージを与えるがあると思われたが、

 

「白拍手」

 

大地の収容所は翅で自分のスペースを作り白蘭の絶対防御技である白拍手、手のひらの圧力で攻撃を止めるこの技で攻撃を受け止めていた。

 

「なる程ね、君は自分の力をよく使いこなしているね。自分の拳に重力をかけているとは‥‥振り下ろす時は重力をかけて重く振り上げる時は重力を外して速くなる様に緩急を付けていた。だからあたかも速くなり重くなった様に感じたんだね。でもタネさえ分かれば対処は簡単なんだよ」

 

「それはどうかな?この時点で僕は君を拘束している‥大地の重力!!」

 

自分の体重の3倍にも4倍にもどんどん重くして白蘭の動きを封じる。

 

「フン、温いね‥君は魔力の凄さを全然分かってないようだね‥‥魔導師を舐めるなよ!!」

 

白蘭は指を地面に立てる。

炎真は更に重力をあげて動きを止めようとするが、

 

「無駄だよ」

 

口角が上がったと同時に地面から白い光柱が地面から伸びてきた炎真はそれに少し動揺してしまう。

 

「君、今動揺したね?」

 

その動揺が炎真の重力操作に支障をきたして白蘭がその隙を逃す訳はなく頭突きを入れ蹴り上げて炎真は光柱に飲み込まれた。

 

「ぁ ぁ ぁ」

 

光柱が消えて炎真が地面に落ちたら今度は透明な腕が炎真を掴み、

 

「ははは、そのまま握り潰してあげるよ」

 

炎真を握る腕に力が入り炎真から声にならない叫びが上がる。

その時ふと白蘭は何かを感じたのか炎真を握る腕から視線を逸らす。

 

「っ!?ゼスト君‥‥君も逝ってしまったんだね‥‥レジアス君とは話せたかい。後は僕が君達の夢を‥理想を受け継ぐから、天国から見ていてくれ!!」

 

その時、白蘭の口からたらりと血が流れる。そしてすぐに掴んでいる炎真を見る。

 

「君もすぐにあの世に送ってあげるよ、君だけじゃない、君の仲間も‥あの科学者も…そして、彼等が夢見た『陸』を!!ミッドの平和を僕が実現する!!」

 

まるでカエルを握り潰すかの様に力を加えていく。

余程の力を入れているのか白蘭骨もミシミシと音を立ててきている。だが炎真の表情からまだ抗う意志は消えていない。

炎真は握る力に必死に抗い続ける。

 

(お願いだ。せめて腕がだけでも...腕だけでも出てくれたら...ツナ君、皆.....力を)

 

「無駄だよ、今の君じゃどうすることも出来ないんだから」

 

(あの時のツナ君の様に.....はやてをはやての思いも全部守りたいんだ!!)

 

「ぐぐぐ」

 

少し少しだが隙間が出来てきた。

 

(むっ?炎圧が少し上がったか‥‥?)

 

「なら僕ももっと力を込めよう」

 

白蘭も炎圧をあげて魔力で強化して炎真に対応している。

だが、

 

「まだだ!!」

 

少しずつであるが確実に手を押し返して来て遂には白蘭の力を上回る。

 

「ば、バカな!?彼にはもうこんな力は残ってはいない筈!?」

 

これは単純な力ではない。

リングから発する死ぬ気の炎の強さは人やリングにもよるが最後にたどり着くのは『覚悟』その覚悟が強ければ強いほどそれに比例するように炎も大きくそして純度を増しその炎の特性をより引き出す。

炎真の守りたいと思う覚悟が炎真に秘めた力を引き出した。

そして先に片手だけ出して、

 

「大地の重力」

 

だがそれは白蘭にはかからず、外してします。

 

「ははは、外してんじゃん、もうへばってきたのかな?」

 

だが炎真は笑う。

それは希望を見たかのように‥‥

 

「いや、僕達の攻撃はこれからだよ」

 

「なにっ!!?」

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

その瞬間蒼光が空から地に一閃を描いて落ちてきた。

その蒼光は翼を切り裂き、

 

「き、君はっ!?」

 

「もう1つ!!貰い受ける!!!」

 

次は弧を描いてもう片方の翼を切り裂こうとする。

 

「させないよ!!」

 

白蘭は飛び上がりそれを回避する。

 

「すいません、遅くなりました。」

 

白蘭との戦場に現れたのは、茶色い短髪でブーメランに似た武器を使い、額には武器と同じ色の青い死ぬ気の炎を灯している少年‥‥

 

「いや、タイミングバッチリだよ。バジルくん」

 

「彼はたしか.....門外顧問の」

 

バジルの登場は流石の白蘭も予想してなかったようだ。

だがそれほど驚きがあったわけでもなく、

 

「へぇ~まさか君もこの世界に来ていたんだ。バジル‥ボンゴレ門外顧問組織の一員。」

 

やはりバジルの役職は知っているらしい。

 

「拙者もお主の事は知っている。だが同一人物と考えて良いのか?」

 

「別に好きに捉えていいよ、でも君が知っている僕と捉えて負けても僕は知らないからね」

 

はははと笑い余裕な事を示す白蘭。

翼が1つ無くなっても全然動揺していない。

 

「大丈夫ですか?古里殿」

 

「うん」

 

炎真も立ち上がり構え直しバジルの横に並び立つ。

 

「ふん、今更子供2人で何が出来るのさ?」

 

手にオレンジと白の混ざった光が炎の様にゆらりと灯しバジルと炎真を見る。

 

「「貴方(お主)に勝つ事!!」」

 

2人は叫び、炎真はグローブに炎を灯してバジルは自分の相棒であるアルフィンに乗り、白蘭に突撃して彼をコンクリートへと叩きつけると周りには砂煙がおきる。

白蘭は地につき煙立つ中、正面からバジルが飛び出した。バジルの刃を躱しバジルの腕を掴む。すると後ろから炎真が飛び出してきた。

白蘭はそれを回りながら躱してバジルを炎真に投げつける。

 

「ぐはっ」

 

「ぐっ」

 

炎真とバジルの2人は衝突し、痛そうに顔を歪める。

だが、バジルは咄嗟に自分の武器を白蘭に投げつけるが、

 

「はは♪そんなの当たんないよぉ~」

 

白蘭は少し体勢をずらしてそれを躱す。

炎真はそれを見ると手を白蘭に向ける。球体が数個飛び出し白蘭は球体から離れると、

 

「ん?重力がかかってない‥‥!?ま、まさか!?」

 

炎真が重力をかけたのは白蘭を抑えるためではない。バジルの武器に重力をかけて白蘭を追いかけている。

 

(さっき翼をやられたから上手く抗えない。)

 

その場から離れたいのだが離れようにも翼が片方の為、離れようにうまく力が働かず、引き寄せられないようにするので一杯一杯であった。

 

「今だ!!」

 

重力で白蘭を地に這いつくばせた。膝を付き地面もメリメリと音をたてながらめり込んでいた。

 

「チャンス!!」

 

バジルが自分の武器を掴んで炎真と共に地を蹴り、白蘭を攻撃しようとするが、不気味にも白蘭の口角が少し上がったように見えた炎真はすぐにバジルを引っ張りその場を離れようとした。

 

「古里殿!!?」

 

「すぐにこの場を離れるんだ!!」

 

「ふふ...もう遅いよ」

 

白蘭の威嚇の笑みと共に白蘭から白い光が放ち更に掌に凝縮していった。周りの不気味な地鳴りと共に心臓がなり勢いが止まず胸騒ぎも消えない。

これは、あの時の‥‥

 

「白の架け橋」

 

白い光に飲み込まれたら最後光が消えてもそこには白が残る。大空の調和の中に魔力を込めて放つこの技は空間内全てを石化させて最後は風と共にすべて消え去るというぐらい恐ろしい。

凝縮された光は途轍もない域を覆い光の中は眩しすぎて見ることが出来ない、炎真達は背後を見る余裕もないがそその場を離れようとしているがこれじゃ無理だしかも以前と違いスピードが段違いこれでは飲み込まれてしまう。

 

「かん―――!!」

 

光に声も飲み込まれて暫く光は消えなかった。

 

「ハァハァ」

 

白蘭は一息ついてから

 

「待っていてね」

 

スタミナ全てを持っていかれたようで疲れきっていた。彼はその身を引き摺るように地上本部に行こうとした。

その時、

 

「何処へ行く!!」

 

「僕達はまだ倒れてないぞ」

 

「!?」

 

大声が白蘭の耳に届くと振り返り声の持ち主を探す。すると青い炎が弾け飛んで赤い拳が白蘭の腹に入る。投げ飛ばして思いっきり重力をかける。

 

「く、な、何故‥‥」

 

「僕達の炎...いやバジル君の形態変化のお陰だよ」

 

バジルは咄嗟に形態変化をして単純な炎の出力アップだけでなく純度をあげた炎と炎真の炎でシールドを張り、命を繋いだ様だ。

 

「以前の時もそうだったね、その攻撃をした後君は大分疲れきっていた‥‥白蘭!!この勝負、僕達の勝ちだ!!」

 

「君だって体力と魔力をひどく消耗している。大人しく降伏してくれ」

 

「くっ‥‥」

 

悔しがる白蘭を見ながら拘束の力を少し緩め

 

「バジル君、大丈夫?」

 

「はい、何とか‥‥」

 

2人は話し合いとりあえず人を呼んで白蘭の拘束を変わってもらい他の人の援軍に行こうと言う話となった。

そんな2人の背中を見ながら

 

「負けない‥‥負けないよ‥‥僕は‥‥負けるわけにはいかないんだ‥‥」

 

白蘭がブツブツと何かを呟く。

 

(負けないよ...この嘘と欺瞞で出来たメッキの世界を壊して...ぐちゃぐちゃにして新しい僕達の世界をバカな人間でも単純な人間でもそんな人が苦労しない。本当の平和な世界の為に...)

 

白蘭から不吉なオーラが漂い初めその気に当てられ後ろを見ると、

 

「彼らの夢をかなえる為、僕は頑張なければならないんだ!!」

 

ズドーン!!

 

「うぉぉぉぉー!!」

 

白い羽が吹っ飛び黒い液体みたいなのが飛び出した。炎真達は首根っこを捕まれ白い砂とかしたビルを何個も貫き、終いにはバジルは投げ飛ばされ、

 

「バジル君!?」

 

「はははは、死んじゃいなよ♪この腐った世界を理解できない不要物が!!」

 

指を向けて白指を放とうとしたので炎真は暴れて、

 

「止めだ!?」

 

抵抗するが白蘭の指から、

 

「白指」

 

ズドーン

 

だが、

 

「匣兵器に助けられたね」

 

アルフィンが雨の炎でガードしてくれた。だが炎が切れたのかバジルの武器からアルフィンが離れて指輪に戻った。

 

炎真は噛みつき、

 

「っ!?」

 

白蘭は慌てて炎真を離して、

炎真はバジルを回収して離れた場所に寝かせておいた。

 

「バジル君‥ありがとう。」

 

とまた白蘭を睨みつける。

ドス黒い羽と雰囲気の白蘭を睨みつけ合いながら両者ビルから飛び出して上空高くまで飛んで、

 

「行くよ。こっからは全力だ、君か僕が落ちるまで終わらないよ」

 

「僕に落ちる気はありません。例え落ちるとしても貴方より後です」

 

まずは炎真が風を切りながら白蘭に向かう。白蘭も炎真を迎え撃つ。二人の拳から激しい衝撃波がたちながらも止めることなく殴り続ける。そしてまた球体を出す炎真。

 

「重力」

 

白蘭の腕が黒い龍へと変化して炎真の腕に噛みつき少し後ろに下がってしまい白蘭が下から上へと回し蹴りを喰らわせて、

 

「はぁぁ!!」

 

白い光線を飛ばしてくる、だけど左に逸れて擦れるもすぐに白蘭を殴る。まだ星の重力が生きているようだ。

 

(あれが動くならここは彼のテリトリーか‥でも、さっきので確信したよ。あれは彼の腕があってコントロールできる)

 

今度は3匹翼から飛び出す龍達。

 

(これで誘導すれば)

 

この3匹に重力をかける炎真、だが龍の後ろから黒い腕が自分の首根っこ掴んだ。炎真はその腕を焼き切り、炎を纏った腕で白蘭を殴り飛ばす。

白蘭がビルに叩き付けられ白い煙が立ち込める。

 

「まだ、後もう少し」

 

炎のブーストで突入して行く。まだ煙が立っている中動きはまだ無く、

 

ブぉお!!

 

急に煙が晴れると2人は拳をお互いの顔に拳を構えた状態で止まっていた。

炎真も白蘭も距離を取り直してビルに降りる。

もう2人ともスタミナが残ってないのだ。

飛んでいるのもぎりぎりなぐらいに、息遣い荒くなる2人。

心なしか炎真の方の炎が小さくなっている気がする、白蘭はさっきの魔法でスタミナの殆どを使ったようだ。

お互いスタミナ切れに近い状態でもうこれ以上戦いが長引くことはないだろう。

でも2人はお互い息を切らしていても、少し震えていてももう殴り倒せるぐらい弱っている、でもお互い雰囲気がそれを感じさせない。

 

「1つ疑問に思ったんだけど聞いていいかな?」

 

白蘭のいきなりの問いかけに炎真は少し気を緩める。

 

「今の君を見ていてどうしても聞きたいんだ。君の覚悟の源って何?」

 

「.....」

 

「僕は君より炎の出力は抑えられている。ここのリングの制度じゃこれで精一杯なのさ、でもその分あまりある魔力が僕にはあった。だから綱吉君でも勝てると踏んだ。それが君に抑えられた。君は僕を抑えられるぐらいの覚悟がある。それが何なのか気になるんだよね」

 

と笑みを浮かべて炎真に聞く。

炎真に答える気配が感じない。

 

「愚問だったね。確かにそれが何なのか、今は関係ないか」

 

白蘭の薄いオレンジ色に右腕が輝き始めた。どうやら片腕に力を集中している様だ。更に黒い魔法陣が浮かんでいる。

炎真は右手を前に出すが白蘭に重力がかからない。

 

「ふふ、僕の勝ちだね!!消え失せろ!!!」

 

空間を引き裂く大きな魔力と炎の混合砲が物凄いスピードで撃たれた。魔法陣を通してそれは更に大きくなり炎真は飲み込まれた。

周囲に黒い煙が立ち込める。

やがて、大きな煙が晴れると全てが吹き飛ばされて景色の見晴らしが良くなっていたがそこには二人となった人影があった。

 

「なっ!?お前は闇の書の‥‥」

 

「シグナム...さん」

 

炎真を守ったのはいつもの濃いピンクの髪ではなく、薄いオレンジそれに燃えたぎる炎を纏った剣からでた鎖が炎真を守った。

炎真は驚いてシグナムを見ているとその視線に気づいたようで、

 

「すまない、余計な手助けだったな」

 

優しく微笑んだ。

そして、

 

「まだ終わってないのだろ?」

 

炎真はすぐに切り替えて、

 

「バジル君!!」

 

その呟きを最後に空から地面に落ちていった。

それと…

 

「はい!」

 

「!?」

 

「死炎隕石」

 

青い彗星の如く一つの隕石が解き放たれる。

先程炎真が重力を掛けたのは前に出した球体にバジルを吸い寄せた。

その後バジルは重力の切れた球体を足場にメタルエッジの刃の部分を白蘭に向けて突進する。

バジルは最大の炎を出し続ける。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

黒い翼は消えて、バジルと白蘭は地面に直下した。

炎真はシグナムに肩を借りながら下に降りてバジルの様子を聞いた。

 

「バジル君!」

 

「ここです。古里殿、それにシグナム殿も助太刀感謝します。」

 

「良かった。」

 

ホッと息をついて一安心するが...

 

「ははは♪闇の書の守護騎士まで来ちゃったか、あっちの2人は...って聞くまでもないか、君が此処にいるのだから」

 

全てを悟ったように白蘭は笑う。シグナムもそれに答えるように黙って頷く。

 

「あの2人は‥‥あの2人の最後は幸せそうに逝ったかい?」

 

目を閉じたまま何も言わないシグナムに白蘭は怒りをぶつける訳でもなく、ただシグナム達に彼らの事を語る。

 

「そう。あの2人はいつもバカみたいな理想主義者だった。最初は僕も笑ったさ、そんな事、出来っこないって‥‥でも、それでもあの2人はそれでも語り合う事を止めずにそれに向けて努力していたんだ。僕はそんな彼等を見ていて最初は興味本位だったんだけどさ、少しずつ興味が湧いてきてね。ホント、馬鹿な人程人を惹きつける。まるで漫画か小説みたいなんだけど、実際彼等と話すと本当に楽しかった。そんな事が実現できたらどれだけ楽しいか、まるで超難解なゲームするみたいで面白くってね、僕も全力でやったんだ。でも何処からだろうレジアス君が力とかに固執しちゃって、チートな力を手に入れようとしたんだ。僕もゼスト君も彼を止められなかった。彼を止めきれずに関係が壊れていったんだ。そこから僕は能力に目覚めてきてそれが何なのかわからずに一旦、管理局を辞めてその後ゼスト君の事を聞いた」

 

3人は黙って彼の‥彼らの過去を聞いていた。

その間白蘭は顔を手で覆い隠して震えながら喋り続ける。

彼らが強いられた理不尽な行為に対して悲しみを堪えるかのように‥‥

 

「ゼスト君の情報聞いて居ても立ってもいられず、彼に会いに行ったんだ。彼がレリックウェポンでも何でも彼にまた会えたのは嬉しかった。それでも彼には時間が無い。だから僕は彼の最後の望を聞いてあげたんだ‥‥何にさぁ‥‥何で‥何であんな風に‥‥」

 

声を震わせて静かに言う白蘭、それだけでも心に刃が突き刺さる位痛く悲しいのが伝わってきた。

 

「レジアス君も同じだ‥‥彼はただ純粋にミッドに住む人々の平和を望んでいただけなんだよ.....それだけで最高評議会と関わりを持ったせいでアイツらの玩具のコマみたいに扱われて死んだんだ‥‥そこまで彼を追い詰めたのは一体誰だ!?」

 

最後は少し声を荒らげて言った。バジルと炎真はじっと白蘭を見て、シグナムは静かに目を閉じる。

本局に務めるシグナムは白蘭の言葉を聞いて思い当たる節は多々あった。

しかし、本局の所属で魔導師と言う立場上、レジアスに意見には賛同できない部分もあったが、それは只の言い訳‥自己保身に過ぎなかったのかもしれない。

 

「おかしいと思わないのか?子供でもわかる正しい事をやっている人が辛い目に遭い虫けらのように死んで、大義名分だけは立派な私欲の無能な連中が生き続けるなんて!!だから僕はせめて彼等の無念を晴らしてあげようと.....」

 

白蘭の言葉を聞いて炎真は深く考えさせられる。

 

正しいってなんだろう?

今回の事件‥法を正義としたら悪いのはテロ行為をした彼等だ。

法を破りこんな騒ぎを起こした。

でも、その法って誰のためなんだろうか?

白蘭は悪いと思う。

自分の夢を叶えたいと言う欲望のために関係の無い大勢の人を巻き込みすぎた。

でもそれなら彼の全てが悪なのだろうか?

いやそんな訳ない。

彼が思った事には共感できるし同情もする部分もある。

もし、自分の大切な人が白蘭の友人の様な目に遭えば、自分も白蘭と同じ事をしたかもしれない。

ならば管理局が悪なのか?

だが、管理局の中に法を守り平和を守る為に力を尽くした人達だっている‥‥彼の言うゼストやレジアス、はやてやなのは、フェイトの様に‥‥

 

今回の戦いはそれを考えさせられた。

そして、彼に対して『自分の価値観だけではやて達を図るな』と言った自分が今は恥ずかしい‥‥

彼の言う通り、自分は何も知らなかったし、知ろうともしなかった。

これでは彼の事を偉そうに一方的な悪と決めつけるに分けにはいかなかった。

 

「古里炎真だったね、改めて聞きたい。君にとってこの世界を‥‥いや最高評議会や無能な管理局上層部を守りたいと思う気持ちは少しでも残っているかい?」

 

白蘭に改めて聞かれた。

悩んでいる事を実直に聞かれた。

しかし、流石の白蘭も既にこの腐敗の元凶でもある最高評議会のメンバーが既に殺害されている事については知らなかった。

 

「古里殿」

 

「古里、好きに答えろ、答えを強制する事はできんし、その答えを否定したりせん」

 

「シグナムさん」

 

炎真はシグナムに聞きたいことがある。

 

「シグナムさんは彼の言う、最高評議会や管理局の存在に疑念を抱いたことは?」

 

何秒か間を開けてシグナムは答えてくれた。それも自分と似た答えを

 

「あるにはあるさ、組織というのは色々な思想があり、色々な人が集まる。上が常に正しい何て思わないし、元々管理局には信じられるぐらいの信頼もない。それでも主は...主はやてはここを守りたいと言ったのだ。だからこそ私は主はやてを信じ、主はやての意思に従い剣を振るう...それが私だ。」

 

シグナムの目は真っ直ぐでいつも以上に綺麗な瞳をしていた。バジルから見たらそれは炎真にも言えた。

 

「僕も同じです」

 

答えに驚く白蘭はまるで裏切られたみたいに炎真を見る。

 

「な、何でさ‥君なら‥「わかっている」」

 

「多分はやてもね‥はやてはその1番上の人に従っているんじゃないと思う。貴方の友人と同じと思うよ」

 

微笑みながら白蘭に言う炎真。

 

「百歩譲って彼女があの2人と同じだとしても、彼女も地位と権力を手に入れたら変わるかもしれないよ。あの最高評議会のメンバーがそうだったようにね」

 

声に疑心暗鬼が感じる。

でもそれは無いそれは考えなくてもわかる。

 

「それはないと思います。だって彼女が間違えそうになったら僕やシグナムさんが彼女を怒るからさ」

 

少し赤くなった頬で宣言しバジルは待っていた答えが来て満足そうなそして輝く目で見て、シグナムもまた満足そうに微笑む。

 

「僕に聞いたね、僕の覚悟が何なのか、それが信じる証拠になると思うよ」

 

白蘭は諦めたのかいつもの様にいつも以上に高笑いする。

 

「はははははは♪アハハははは、これは1本取られたね確かに炎は嘘をつかない。管理局は信用できない、でも僕を倒したしこれだけ信じられるものを並べたんだ、いいよ、君は信じてあげる。でも君の思い通りになるとつまんないし僕もイタズラしたくなるよ」

 

とポケットの中をゴソゴソと漁る。そして何かUSBみたいなものを取り出した。

 

「これ何だか分かる?」

 

『分かる?』と言われても何かの記憶媒体と言う事しかわからない。

 

「これはね~僕のいる世界のデータを収集したもの‥僕の能力を使って並行世界の謎と並行世界があるという証拠を掴もうとしたんだ。そのデータにはデータ状の座標位なら入っているよ~♪もちろん、あの銀髪の侍の世界もね~♪」

 

と炎真達が驚いている。急に帰れる目処が立って今自分の気持ちを整理していた。帰りたい気持ちは確かにある、あそこには待っているファミリーがいる。でもここでも別れたくない人がいる。

 

「立場って言うのはそう簡単に割り切れるもんじゃないのさ~♪」

 

白蘭はUSBを投げつけて炎真はそれを慌てて受け止める。

同時に

 

「それじゃあね~♪」

 

「何!?」

 

白い光が自分の視界を遮る。それが消えるとそこにはもう白蘭はいなかった。

 

「くっ!逃げられた。」

 

「どうします?」

 

白蘭を追うか、それとも彼を見逃すかシグナムに意見を求めるバジル。

シグナムは少し考えて、

 

「深追いはよそう、白蘭も弱って入るだろうがそれはお前達も同じだろう?」

 

シグナムが言うようにもうスタミナが切れてもうガス欠状態に近い。

いくら白蘭もスタミナが切れかけており、人数も此方が多い有利性はあるが、相手はあの白蘭‥誘い込まれた先に罠がある可能性もある。

此処はやはり、シグナムの言う通り深追いは止そう。

それに元の世界に戻れるかもしれない情報を自分に与えてくれた事を差し引いても白蘭には借りが出来た。

ならば、今回は見逃そう。

 

「すまんな、私を行かせるために無理をさせた」

 

「いえ、大丈夫です。あの‥シグナムさんその髪は?それに鎧の色も違っていますし、リィンさんの姿も見えない様ですが‥‥」

 

炎真がシグナムの髪の毛の色とバリアジャケットの色が変わっている事に質問する。

 

「ん?あぁ色々あってな‥あと、リィンは先に主はやての所に行かせた。そんな事よりお前達はシャマルの所に行って‥‥「あの‥‥」ん?なんだ?」

 

「僕もはやての所に行きます。」

 

「だが、お前は‥‥」

 

「シグナムさんのお陰で防御用の炎を使わなくてすみました。だから‥‥」

 

真に迫る勢いでシグナムにまだ戦えると伝える。

その後諦めた様に言葉をため息と同時に吐く。

 

「はやてに言われたんですよ、こき使うってだからまだ動けるうちははやての手助けをしないと後で何されるか...だから僕は‥‥」

 

「...わかった、だが無理ならすぐに戻って治療を受けてもらう。いいな?」

 

「はい」

 

「バジル。お前はどうする?」

 

「拙者は騎士カリムの元に行きます。預かってもらっている立場なのであの人の指示で動かせてもらいます」

 

「そうか、わかった。では行くぞ、古里」

 

「はい!!」

 

シグナムと炎真ははやての下へと向かい、そしてバジルはカリムの下へと向かった。

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。

補足

バジルの形態変化はワールドトリガーのレイガストと思ってください。シールドモードで守る範囲を大きくするのではなく、死ぬ気の炎で守を固めるみたいな感じだと思ってください。

ワールドトリガー早くやってくれないかな〜


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的78 恵の村雨

更新です。


 

 

 

~side山本~

 

キン!キン!キン!

 

山本は愛刀、時雨金時にてディードの二刀流を捌いてはいるがディードの刀はただの刀ではなく、彼女は小太刀を使用している。

小太刀は一見、脇差しの様に短く普通の刀より見劣りするがその刀身の短さを長所にして自分の間合いである空間を完全に支配できる。

つまり防御に特化した刀であった。

それをディードは両手に持っている事で彼女の防御力も2倍となっている。

その為、山本はディードに対して未だに決定打どころかかすり傷1つ負わせる事さえ出来ていない。

しかもそれだけではない。

元々機動力が高いディードのスピードが更に上乗せされて防御に優れている筈の小太刀が付け入るスキのない攻撃型の小太刀となっている。

一方の小太刀で山本の一撃をガードしてもう一方小太刀で山本を斬りつける。

山本は持ち前の反射能力にて何とかディードの攻撃を躱しているがそれも一杯一杯の状態でいつディードの一撃を喰らっても不思議ではない状態だった。

何合か打ちあった後、両者は互いに距離をとる。

しかし、互いにいつでも斬りかかれる間合いギリギリの距離だ。

 

「ふふ、この程度なの?貴方、全然弱いじゃない」

 

ディードは相変わらず狂気に満ちた笑みを浮かべているがその言葉からは明らかに落胆の色が窺える。

 

「す、すっげぇ‥‥」

 

山本は無理に笑ってはいるが額から冷や汗が一滴零れる。

だがしかし、その反面、

 

「やべぇ、何かゾクゾクしてきた」

 

紅桜を持つディードを前にして怖い筈なのにその反面興奮している自分が居た。

山本はかなりの負けず嫌いな性格なので、目の前の強敵に対しても絶対に倒す‥必ず勝ってみせると言う意欲が燃えてきたのだ。

 

「口達者な人ね。でも今の貴方の状態を見てみなさい」

 

山本の少し荒くなった息遣いを指摘するディード。

 

「刀1本だけで私の攻撃を捌くのは見事だけど、それもいつまでもつかしら?」

 

「はは、言ってくれるぜ、だけどな‥‥」

 

山本は首からぶら下げているネックレス、雨のVGに手をやる。

 

「?」

 

ディードはそんな山本の行動に首を傾げる。

 

「あら?最後のお祈りかしら?」

 

「はは、どうだろうなぁ‥まぁ、俺は宗教とか入ってねぇからな神や仏がいるのかは分からねぇ‥‥まっ、信じるなら‥‥次郎、小次郎!!」

 

ネックレスに青い炎灯して山本の相棒の犬の次郎と燕の小次郎を出して、

 

「形態変化」

 

次郎と小次郎が山本の刀の時雨金時と合体して二刀流となる。

 

「自分の今までの行いだな。さぁ、これでお互い二刀流同士‥‥本番はここからだぜ、お嬢さん」

 

「へぇ~そういえばあの銀髪もそんな事をしていたわね‥‥魔力を感じさせない不思議な力‥ドクターが興味を引きそう‥‥」

 

完全に狂った様な目とニヤッと薄気味悪い笑みを浮かべて山本を見るディード。

 

「貴方を手土産にしてもいいかもね‥‥大丈夫よ、死んでもドクターならレリックウェポンか私と同じ戦闘機人に改造して蘇生させてくれるかもしれないから‥‥貴方が私達の側に立った時、あの男や銀髪はどんな顔をするかしら?」

 

ディードは山本を殺してスカリエッティの手によってゼストと同じレリックウェポンか自分と同じ戦闘機人に改造してツナや獄寺と戦わせる場面を想像する。

しかし、山本はそんなディードの言葉に一切動揺せずにジッと状況を見定める。

普段は相当な天然かつ気楽な性分でいつも笑顔を絶やさない山本であるが危機的状況では鋭さをのぞかせる。

そう言った面においてリボーン曰く「生まれながらの殺し屋」と言われる山本の一面なのだろう。

 

「さあ、休憩はもういいでしょう?続けましょう?血で血を洗う剣舞を」

 

「っ!」

 

やはり最初に仕掛けてきたのはディードだった。

彼女は神速で山本との距離を詰めて彼の間合いへと一気に飛び込んできた。

だが山本もいつまでも防戦一方ではない。

ディードが飛び込んできたのと同時に山本もディードに向かって飛び込み剣をぶつけ合う。

 

キーン!

 

金属音が鳴り響き山本がディードの刀を下にそらしてすぐ様斬ろうとするが小太刀が短い文すぐに抜けて逆に山本を襲う。

しかし、彼の反射神経は彼の世界でもトップクラス少々の切り傷と服を残すがなんとか躱すそして後ろに下がり、

 

「攻式一の型車軸の雨」

 

2本の鋭い突きに吹っ飛ばされる刺さりはしないが威力は強く耐えきれない反動とともに壁に衝突する。

ディードも負けずと飛び上がり上から振り下ろす。

 

「守式七の型繁吹き雨」

 

大きな雨の炎の水しぶきが空間を埋め尽くし両者は両断されて見えなくなる。

だが、山本は違う。

彼の繁吹き雨を放ったのは左の太刀、柄には彼の相棒の1匹でもある次郎がいた。

この次郎が放った雨の炎はニオイで空間の完全把握を可能とすることが出来る。

つまり彼は相手の視界を奪い息付く暇なく攻める準備を整えていたのだ。

 

「くっ!」

 

ディードは視界を奪われてしまいそれにこれがただの炎ではないことは百も承知していた。

何度も戦い、何度も痛い目を見たからこそこれが違う種類でも大げさに避けてしまう。

 

「そこだ、特式十一の型雨の嘴!!」

 

激しい豪雨のような燕の嘴の突きを放つ山本目の前は雨の炎で覆われているが確かに人影があった。

この攻撃は回避不可能なので相手は絶対に手傷は負う筈だ。

 

「っ!?」

 

「ふっ」

 

不気味な薄ら笑いが山本の耳に入り込む。その声に反応してしまうが山本の剣は止まらずディードに向かう。

そのディードは特別な事は一切せずにただ山本に向かい直しただけだ。

 

それだけの筈だった‥‥

 

だが次の瞬間信じられないことが山本の目に映る。

ディードは山本の雨の嘴を全て捌いた。しかもそれだけでなく山本の顎を蹴り上げてからすぐさま2つの紅桜で山本を斬りつけたのだ。

 

「ぐぁぁ!?」

 

(な、何故‥‥)

 

山本は堪らず声を上げてしまいその場に膝をつく。

それと同時に山本はどうして回避が不可能な筈の技の中をディードが捌くことが出来たのか不思議で仕方がなかった。

 

「惜しかったわね。あの攻撃‥少なくとも前の私ではこうは行かなかったわ。私が前の私なら、この勝負は貴方の勝ちで終わっていたわね」

 

その不気味にも妖艶にも見える表情でディードは紅桜に付着した山本の血をペロッと舐める。

山本自身は傷を抑えて静かに相手の出方を伺っているが、

 

「はぁ、はぁ、何で...どうしてわかったんだ?」

 

山本はまだ腑に落ちない。

別に自負している訳でも自惚れている訳でもまして慢心していた訳でもない。

あの型は前にも止められたこともあるしこういう風に斬りつけられるのも前にもあった。

そこが、山本が今1番引っかかっている部分‥ディードのあの躱し方には一切の無駄がなく...と言うより無駄が無さすぎる。

まるで技が把握されているような躱し方‥機械やコンピューターの様な感じだった。

幾ら体の中に機械の部品を組み込んでいる戦闘機人とは言え、完全な機械のターミネーターやロボットとは異なる存在の筈だ。

 

「そうね、いいわ。特別に教えてあげる‥それは貴方の攻撃が閃いたのよ。直感でね」

 

「直感だと?」

 

そう答えるディードは悪ふざけをしている様にも見えるが...

 

「この刀は紅桜、これ1本で戦艦10隻を落とせる代物。この刀が厄介なのはね、自分で学習し進化する電魄と呼ばれるものが入っているだけじゃなく...ドクターお手製のある機能も入っているの」

 

「ある機能?」

 

もったいぶるのかギリギリまで言わないディード。

終いには余程嬉しい為なのか体まで震え始めていた。

 

「そうよ、ある人をベースに作られた機能‥彼の天性によってさずけられた。彼だけが持つレアスキル、私もそのせいで屈辱にあった。彼の...沢田綱吉の超直感にね」

 

「なっ!?」

 

超直感、ボンゴレの血であるブラット・オブ・ボンゴレを持つものだけが継承されるボンゴレが最強である由縁のもの、名前だけならただの凄い直感に見えるがこれは普通直感とは二味も十味も違う、自分だけじゃなく周りにも危険が訪れても働く予知と言っても過言ではないそれだけじゃなく、血の動きや筋肉の歪を感じ取り相手の行動すらわかってしまうつまり出し抜くことはほぼ不可能とも言える。彼自身この力に何度も助けられた。

だがおかしい‥‥この情報源が誰なのかはわかるが何時、ツナの力をスカリエッティは見たのだろうか?

 

「前に彼との接触時にこの力を見せられた時は屈辱と共に見せつけられた。この力を...今ここにドクターの頭脳と技術により私のものとして完璧に再現したの!!」

 

デイ―ドとツナの戦闘経験とスカリエッティの天才的な頭脳の元にツナのレアスキルとも言える力が相手の手に渡ってしまった。

それでも普通はこうは行かないだろう。

何故ならこのチカラが宿っているのは紅桜であって彼女自身ではない。

いかに刀が相手の攻撃がわかり回避行動に移そうともそれには何秒かの歪ができて体が追いつかない。

だが紅桜は彼女の体を乗っ取り始めている為、その誤差すら無理やり動かして埋めていく。

ただこれは以前の紅桜よりも何倍も負荷がかかる。常人なら数十分でアウトだ。だがディードは常人とは少し普通と違う。

彼女の体は常人よりも頑丈な戦闘機人。この奇跡の様な組み合わせが擬似超直感を実現させたのだ。

ギンガは戦闘機人そして紅桜を使用する試作型とも言える存在だが、ディードは戦闘機人そして紅桜の使用者のまさに完成形とも言える存在となった。

これは何という皮肉だ。今まで何度も彼と彼の仲間を守ったこの力が今度は彼の仲間に牙を向けている。

 

「なるほどな」

 

「辛そうね?まぁ、本来仲間のレアスキルにやられればショックを受けるのも分かるわ。ましてそれが、貴方の命の灯を奪うのであれば尚更ね」

 

山本は足を震わせながら立ち上がる。

その様子はディードの気分を高揚するには充分だった。

傷ついた山本を見るだけで自分は強者なのだと実感できるからだ。

山本は剣を支えに立ち上がり、

 

「ふふ、どう足掻いても勝ち目なんてないのに随分と諦めが悪いのね。いい加減にさっさと諦めたら一瞬の内に楽になれるのに‥‥足掻く分だけ苦しむだけよ」

 

「生憎と俺は諦めの悪いしぶとい男だからな」

 

ディードは誇張するかのように自分の胸に手を当てて

 

「そう‥でも貴方は私には絶対に勝てない。貴方より優れた戦闘機人の肉体に加えてこの紅桜の力‥‥私は、遂に遂に遂に完全無敵な兵器としてドクターの力になれる!!もう沢田綱吉の戯言にも惑わされない!あの銀髪爆弾魔にも劣らない最強の!!そして他のノーヴェ姉様いえ、ノーヴェにもトレディにも負けない最強無敵の戦闘機人として生まれ変わった!!」

 

両手をバッと広げてそう空に叫ぶディード。

敬愛していた筈のトレディでさえ、もう姉様とは呼ばずに呼び捨て状態。

もう以前の冷静差が1グラムも感じられないぐらいに感じる。

そんな彼女を心配する双子の肉親もいるというのにもう誰の声も届かない、彼女の目にも入らない、彼女が聞くのは紅桜の被害にあったものの最後の言葉、彼女の目に入るのは紅桜の標的だけだ。

既にディードのほぼ全ては紅桜と同一しているのだろう。

 

「はは‥‥」

 

山本の言葉に反応するディードは先ほどとは違い山本を睨みつける。

 

「何がおかしいの?それとも死の恐怖でおかしくなった?」

 

「アンタは俺と...いや俺達と同じ何だなって思ってさ‥‥」

 

「聞いてなかったの?何処が同じなの?私は貴方達みたいな貧弱で下等な人間とは‥「いいや同じさ」」

 

「むっ!?」

 

彼女の言葉に割って入るように山本は声を出す。

 

「負けてスッゲェ悔しいって思うのも...自分の大事なモンを守りたいって思うのも...そしてどんなに自分を見失ったとしても最後に剣を選んだんだからな...アンタは紛れもねぇ俺達と同じ『剣士』だ!」

 

山本はディードを自分と同じ剣士だと言う。

だがディードはそれに否定的な感情を抱いている。

確かに負けたのは悔しかった。でも、大事なモノのために戦っている訳では無い。

ディードが戦っているのは自分はその為に生まれたのだから、紅桜を選んだのはこれが自分の理想とする存在に近づくのに手っ取り早いからと言うだけだ。

 

「だけどアンタは間違えた。アンタは自分の剣を信じずに楽な道を選び道具なんかに頼った」

 

「古臭い考えねぇ。そんな事にこだわるなんて‥‥そこに絶大な力があるのに手にしない方が間違いよ。短時間で楽に最強の力が手に入るなら、それを選ぶに決まっているじゃない」

 

「いや、こだわるさ、こだわんねぇといけねぇモンがあんだからな、それとこいつを加えさせてくれ」

 

また剣を構え直す山本。

 

「あんたが言った、完全無欠最強無敵ってのは俺の時雨蒼燕流の事なんだからな!!」

 

「減らず口を!!」

 

山本の日本の刀にはコバルトブルーの海の様な色が灯り山本が突っ込んでいく。

 

キン!

 

またぶつかり合う剣と剣、思いのある人間の剣とただ人を斬る事を楽しみとしているだけの剣がぶつかりあい火花が散っていた。

 

「はァァ!!」

 

山本の激しい連続攻撃ディードはそれを難なく捌きながら彼の好きを窺う。

 

(貰った!!これで終わり!!)

 

好機と思い攻めるが少し屈めた体制だった為に山本は上にジャンプしてディードの肩に手を置きながら1回転して背後に回る。

 

(なっ!?)

 

そして横薙ぎを1発剣の峰から入れる。吹き飛ばされるも体制を戻してすぐに迎え撃つ左右の刀を上手いタイミングで攻撃して山本の右手の刀を上に弾く。

 

(くっ、これで‥‥)

 

終わりと思ったら、山本はかかがみ込んで、

 

「攻式五の型五月雨」

 

剣の持ち手を入れ替える事により相手のタイミングを外す技だがディードは顔に掠らせながら避け紅桜で山本の顔を掠らせるが山本も躱して、

 

「うぉぉ!!」

 

力いっぱい両手で握りしめた左太刀でディードにぶつける。

そしてディードもまた2本の紅桜で受け止める。

 

(おかしい、先までとは動きが全然違う、何であんな傷を負っているのに‥‥私の方が押されているというの?そんなバカな事が有る筈ない!?)

 

ディードは彼を見誤った。

自分の持つ紅桜が電魄の元に進化するのと同じく、彼もまた自分より上の相手がいるならそれに合わせて成長するそれが彼らの本当の武器なのだ。

 

「気付いたか?アンタ、今すんげぇ悔しそうな表情しているぜ」

 

「う、うるさい!!」

 

声を荒らげながら山本に叫ぶディード、そしてそのまま彼を睨みつけながら一気に距離を縮める。

 

「どうした?最強?こんな怪我人1人を仕留めるのに随分と時間がかかっているじゃねぇか」

 

山本は敢えてディードを挑発して彼女の心を‥精神をかき乱す。

 

「だ、黙れ!黙れ!!黙れェ!!!」

 

自分の気持ちを勢いよく振り回す様にディードは紅桜を振るう。

その姿は見ているだけで痛々しい光景だ。自分の根源が自分に芽生えかけているものを否定して、紅桜がその芽に黒い霧をかけているのだ。

 

「もう止めにしようぜ、アンタの剣は見ているだけで辛いぜ」

 

正直彼は今までこんな剣を受けたことがない、ここまで自分を否定するために振るのは彼女自身の気持ちを組んでも彼女の為にはならない。

だがディードにとってはその山本の好意すら自分に侮辱を与える行為に思え、マグマの様に煮えたぎる殺意と怒りが沸々と湧いてくる。

先程、山本は彼女を剣士だと言った。それは本当の彼女であって今の自分を認めようと機械に徹する彼女ではない

 

「さあ、剣を...武器をとれ!!今度こそ、お前を切り刻んでやる!!」

 

ディードは自分の付近にある山本の剣を蹴り飛ばして剣を渡す。山本は渋い顔でそれを受け取り、

 

「今のアンタ「お前が偉そうに私を!!」」

 

山本に向かい走り出すディード手にした剣で迎え撃とするが...

 

「語るなぁァァ!!」

 

ディードの両腕から何やら触手のような物が勢いよく飛び出してそのまま山本を襲う。

 

「な、何だ!?」

 

剣2本で受け止めるが壁にまで追いやられ激突する。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「コロス‥ブッコロス」

 

もう完全にディードはそこには居ない。

今彼の目の前に立っているのはディードではなく、力に溺れ、力と血を求める妖刀紅桜だった。

 

「お前...でやぁぁ‥‥」

 

触手を切り裂いてそこから脱出するもディードの次の行動に出るのがとても速く、

 

「ウワァォォ!!」

 

「守式二の型逆巻く雨」

 

2つの雨の炎の水柱を立てて最後に3つ目を立てて完全にディードの視界から外れ、

 

「その子から離れろ!!化け物刀!!」

 

とディードの前から突撃するだがディードは難なくそれを斬った山本の映った水柱を

 

「攻式九の型うつし雨」

 

本当の山本は背後にそしてそのまま斬ろうとするもディードも負けずと山本の首元を狙うがそれて左肩の上を深く斬り裂く山本の攻撃は決まるには決まったがディードの深い触手の前では斬り通り彼女にダメージを与えることもできない。

いくら触手に深く突き刺さっても彼女には届かなかった。

そのまま山本は象の足もある太さの触手に押されまた壁にまで追いやられると思いきや、

 

「へへ、何度もやられっかよ」

 

と地面に踏ん張りを効かせて彼女を触手事投げ飛ばす。

ディードは1回転して勢いを殺して壁を飛び台として扱い突っ込んでいく、山本も躱すがそこには小さなクレーターができていて紅桜は自分自身を振りまして、

 

「コロォォォォォス!!」

 

山本もガードするもパワー単体で言うのであれば以前の数倍はある。その上、攻撃の面積もとてつもなく広い。だからこそ山本は剣を上に投げて少しでも視線が上に行けば勝手に攻撃も浮上する。

 

「やっぱりな」

 

と呟き紙一重で攻撃を避け剣の着地点にて、

 

「攻式三の型遣らずの雨」

 

丁度柄の部分を蹴り飛ばしてもう一方のディードの肩に突き刺さる。

 

そしてそのまま触手に乗っかり、

 

「お前は彼女の体だけを乗っ取りすぎたせいで彼女が本来持っていた冷静な判断を失っているんだ、そんなんじゃあいくらツナの力があっても意味ねぇな」

 

そのまま走りディードの前に出て、

 

「やっぱしツナが1番だな」

 

と両肩に刺さっている剣を上から下にやりディードに引っ付いている触手事斬り裂き彼女の青い服が露となる。だが喜びもつかの間すぐにそこを隠すように触手が出てきて彼を捉える。

 

「そろそろ勝たせてもらうぜ!!妖刀!!」

 

ぶつかり合い火花飛び散る中山本は後ろに飛んでその間にディードの紅桜が戻ってきた。

山本は腰に手をやり、刀をほぼ納刀状態にして突き進む。

 

ディードは紅桜を飛び出させずに、

 

「コレデオワァリダァァ!!カトウナニンゲンガぁァァァ!!」

 

触手のみで山本を捕縛してその後突き刺す様だ。

だが、

 

「攻式八の型篠突く雨」

 

文字通り篠突く様な雨が触手を完全に斬り伏せてからの

 

「特式十の型燕特攻!!」

 

迎え撃つは2本の紅い桜、それの飛び込んで行く燕激しくぶつかり合う。

 

「うおおおお!!」

 

ビクン!

 

一瞬だがディードの紅桜に揺れが生じる、それを見逃さない山本は更に1歩踏み込んで、

 

「よく見ておけ、自称最強!!こいつが本当の完全無欠最強無敵だ!!」

 

ディードの紅桜を砕き割り山本の雨の炎がまるで空に固まった水が中心を失い弾けんた様に周りにとんでいた。

 

その炎が消えると共にディードは膝をつき倒れた。

もう紅桜は折れていて彼女を覆っていた触手も砕け散り空の藻屑と消えていた。

 

「おい、アンタ!大丈夫か!?」

 

とディードに慌てて駆け寄るも

 

「来ないで!!」

 

雷のようにその言葉を切り裂かれる。まだ意識はあるようだ、だがそれでも紅桜の後遺症により彼女は暫くの間は這うことすらできないだろう。

しかし、

 

「私は...まだ‥‥まだ‥‥負けていない‥‥負けるわけには‥いかない‥‥」

 

と既に柄の部分しか残ってない紅桜を取り彼女はそれを山本に向けて山本に負けをまだ認めていない。

 

「.....ははは」

 

「何が可笑しいの!?無様に地面に這いつくばる私の姿がそんなにも可笑しいと言うの!?」

 

地面に這いつくばりながらもディードは戦意を失わず、山本を睨みつけている。

 

「やっぱアンタは根っからの剣士だなって思ってさ」

 

この期に及んでまだそんな事をとディードは思い山本を見る。普通、剣士という生き物は剣を魂としてそれが折れたらもう何も魂だけじゃなく精神すら崩れるぐらいまでに陥る。

 

「アンタ、さっきと違ってしっかりと誇りを守ろうとしている」

 

地面を這う屈辱を味わおうとも彼女はまだ負けを認めずに山本に剣を向けて真剣な眼差しで山本の首をとろうとしている。

 

「アンタは、さっきとは明らかに違う。剣士の誇りを持ったアンタと今度は正々堂々の勝負をやってみてぇよ」

 

「何を言い出すかと思えば...私が剣士?見当違いもいい所だわ!!剣が向いているから剣を武器にしただけなのよ。紅桜をとったのは自分をより最強の兵器になるために...その為だけなの.....私はアンタ何かとは違う...私は剣士なんかじゃない!!」

 

「なぁ、何でそこまで最強になろうとしてんだ?」

 

「そんなの私が戦闘機人だからに決まっているでしょう!!戦って相手を殺し破壊するために生まれた兵器、私はその為にしか存在する価値が...」

 

俯き力の限りそう山本に言う彼女の顔は悲しんでいるようにしか見えない。

 

「そうか?俺はそうとは思わねぇよ。だって剣だって人を斬る為の道具だけど使い方によっちゃダチを守ることだってできるんだからな」

 

そう爽やかに言う山本はディードを支えながら熱弁する。

 

「アンタのそのセントウキジンって言うのは少し変わった人間って事だろ?俺はそれいいと思うぜ、俺達の周りにも変な奴がいっぱい集まっているしさ」

 

そう言う山本の顔はいつもの様に明るく笑う。

ディードの手からは紅桜の柄がポロッと落ち、彼女は両手で目を覆いながら、

 

「簡単に...言わないでよ.....私は...私は‥‥」

 

「アンタの目から流れているモン‥それがある奴が心の無い兵器な訳あるかよ」

 

溢れんばかりのその涙はディードにとってはもしかしたら恵の村雨がもたらしたものかもしれない。

そんなディードを山本は優しく抱きしめる。

 

「まず自己紹介からやろうぜ、俺は山本武って言うんだアンタの名前は?何て言うんだ?」

 

「ディード...ただのディード...うわぁぁぁん...ぁぁぁん」

 

ディードは強く強く山本の服を握りしめ山本の胸の中で泣き続けるのであった。

最後は彼女自身の雨が自分の心を雁字搦めにしていた岩を優しく溶かしていっていた。

戦闘機人のディードはこの日、兵器でも機械でもなく1人のディードと言う存在として新たな一歩を踏み出せたのかもしれない。

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的79 ジャンプ漫画はゴールと思ってたらそこから新たなラスボスが出てくるのが当たり前

更新です。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次ぎに会う時は‥‥」

 

「4人で、外で会おうね!!」

 

「ああ、勿論だ!!」

 

「当たり前だろう!!」

 

ゆりかごの中で、銀時とヴィータの2人と分かれたなのは。

3人の任務はゆりかごの停止、ないし高度上昇の停滞。

スカリエッティ一味に囚われているヴィヴィオの救出と保護。

そして、ゆりかご内にいるかもしれないスカリエッティ及び敵の戦闘機人、スカリエッティの協力者の確保である。

その為に最も有効な方法として考えられるのは2つ。

動力源である駆動炉を破壊するか、ゆりかご起動の鍵であるヴィヴィオを救出して保護すること。

このどちらか一方を果たせば、ゆりかごは止まるかもしれないし、両方果たさねばゆりかごは止まらないかもしれない。

だが、なのは達はゆりかごの内部構造を知らなかった。

3人で固まって行動していては時間が足りない。

かと言って、3人の後に続く突入隊の編成には時間がかかる為、援軍を此処でのんびりと待つわけにもいかない。

そこで、なのは達は3つに分かれた通路をそれぞれ分かれて探すことにした。

ヴィヴィオは王座の間に居る。

そして、船の構造上、機関室は艦尾に有る筈だ。

そして、このゆりかごにはヴィヴィオの他にスカリエッティと戦闘機人、彼の協力者が潜んでいる可能性が極めて高い。

当然、妨害するためのガジェットや罠の存在も考慮しなければならない。

1人がそれぞれ1つの目標を達する為にそれぞれの眼前にある通路を進んだ。

 

 

なのはが通路を進んでいくと、大きな踊り場の様な所へと出た。

 

(踊り場?いや、違う‥‥此処は‥‥)

 

なのはが辺りを見回していると、

 

「っ!?」

 

なのはの上からシグナムのデバイス、レヴァンティンに似た剣型のデバイスを持った例の新型ガジェットがなのはを突き殺そうと迫って来た。

咄嗟の判断でなのははその場から飛びのいて新型ガジェットの突きを躱す。

すると、そこへ間髪入れずに今度はフェイトのデバイス、バルディッシュを模した新型ガジェットが襲い掛かる。

鎌型のハーケンフォームを持った新型ガジェットは横薙ぎの攻撃をする。

なのはは、しゃがんでその横薙ぎの攻撃を躱す。

シグナム、フェイトのデバイスを模した新型ガジェットが居たのだから、当然あの時、確認された機体‥自分(なのは)のレイジングハートとヴィータのグラーフアイゼンに似たデバイスを持っている機体も居る。

しゃがんだなのはを潰そうとグラーフアイゼンを持った機体がグラーフアイゼンを高く持ち上げ、一気に振り下ろしてくる。

 

「くっ」

 

なのはは、床を転がりグラーフアイゼンの一撃を躱し体制を整えようとすると遠距離からレイジングハートを持った新型がディバインバスターを撃ってくる。

新型のディバインバスターを飛んで躱すなのは。

 

「此処はやっぱり、闘技場」

 

「その通りですわ、管理局のエースさん」

 

なのはが呟いた瞬間、モニターが出現し其処にはクアットロが映る。

 

「戦闘機人‥ナンバーズ」

 

なのははクアットロがマントの下に纏っているボディースーツから彼女もナンバーズの1人だと判断する。

 

「初めまして、管理局のエースさん。私はナンバーズⅣ、クアットロと申します」

 

丁寧な言葉なのだが、その口調はなんだか人を見下し、小馬鹿にしている感が含まれている。

そして、そこはかとなくスバルの声に似ている気がした。

 

(こういう場合、スカリエッティ本人が出てくると思っていたんだけど‥‥まさか、スカリエッティはゆりかごには居ない!?それじゃあ、今どこに‥‥もしかして、スカリエッティはアジトの方に‥‥フェイトちゃんの方に居るの!?)

 

てっきりスカリエッティ本人が出てくるのかと思ったなのはであったが、出てきたのはスカリエッティ本人ではなく、ナンバーズの1人‥その事からなのはの脳裏には、スカリエッティはゆりかごには居ないのではないかと言う憶測が出る。

 

「何の用?今、忙しんだけど?」

 

なのははクアットロを無視して4機の新型ガジェットを睨みつける。

 

「人が挨拶をしたにもかかわらず、随分と失礼な方ね、これだから管理局の人間は傲慢なのよ」

 

「テロリストである貴女に敬意を表する必要はないと思うけど?」

 

「そうですか‥まぁ、貴女が陛下にもそして私にも辿り着くことはないでしょうけどね。その新型は貴女達管理局のエースのコピー‥もちろんデバイスだけでなく、動きもそして、耐久性も貴女上回る性能となっていますわ。前回倒した試作型とは大違いの実力を有しておりますの。精々頑張って下さいな」

 

そう言ってクアットロはモニターを閉じた。

クアットロが言うには今、なのはの目の前の新型は前回よりもパワーアップしているとの事だ。

なのはにとって状況はミラーマッチの他にフェイト、シグナム、ヴィータの3人を一度に相手をしている事になる。

 

(これはちょっとヤバいかもね‥‥)

 

なのはは引き攣った笑みを浮かべる。

そして、頬からは一筋の冷や汗が流れた。

例え、なのはがそんな事を思っても相手のガジェットは攻撃を止めることは無い。

レヴァンティンを持った機体が炎の斬撃を飛ばしてきたのでそれを横に飛んで躱すと、バルディッシュを持った機体が鎌から戦斧の状態に変更して振り下ろして来る。

なのははバク転をして下がりバルディッシュを持つ機体もまた追うように振り回してきた。

 

(くっ、隙が無くてなかなか攻撃に移れない)

 

収束砲のチャージをする時間も与えず、それどころかシューター1つ生成させる時間も隙も与えない新型ガジェットの攻撃。

すると突然バルディッシュを持つ機体はなのはから距離をとるとチャージを完了した。レイジングハートを持った機体の砲撃がなのはめがけて飛んできた。

 

「プロテクション!!」

 

咄嗟にシールドを張りガードするもきつい。

模倣されてもやはり自分の砲撃、プロテクションがいつまで持つか...だが以外にも砲撃は早く終わり不信感すらも抱くなのは。

しかし、不信感など抱いている暇もない。

 

「っ!?」

 

急に後ろからグラーフアイゼンを持つ機体がグラーフアイゼンを振りかざし、なのははそれを喰らってしまい壁に激突する。

 

「あぅ!!」

 

飛ばされた衝撃で壁にめり込んで身動きがとれない状態に陥ってしまうなのは。

何とかそこから這い出ようとするも変な形で挟まったのかそれともグラーフアイゼンの攻撃が予想よりも重くダメージをもらい体が動かないのか分からないがその場から出られない。

バルディッシュを持つ機体が追い討ちをかけようと蹴りを入れてきてレヴァンティンを持つ機体も剣を斜め上から振り下ろしてくる。

絶体絶命のピンチであるが、なのはは諦める事無く、

 

「ショートバスター!!」

 

溜める時間を極力無くした収束砲撃でレヴァンティンを持つ機体を吹っ飛ばすがダメージはそこまで無いようだ。

だが、回避する必要が無く魔法弾を生成する時間が出来た。

それから桃色の光の球体である魔法弾を4、5個生成し、その内1つを残してバルディッシュを持つ機体へと攻撃した。

残り1つは自分の直ぐ下である部分の壁を破壊して脱出そこから宙に浮き自分と同じ機体に向かっていく。途中グラーフアイゼンが攻撃してくるも空中戦では空のエースの方に軍配がある様だ。

 

「そんなの当たんないよ」

 

空中戦でギリギリまで引き付け紙一重で躱した。杖であるレイジングハートを棒状の武器として扱い本家には劣るが見事な剣戟と言える裁きで攻撃している。

 

(やっぱり、連携の時はスカリエッティのプログラムで動くけど1人の時は私よりの動きだ)

 

どうやらこのガジェットの連携はオリジナルであるが1人の時は本人のデータで動くらしい。

 

(こういう場合、私なら!!)

 

相手の攻撃を躱してレイジングハートを上下回転させて人の顎ともとれる部分を叩き上げ、

 

「そして、彼ならきっとこうする!!」

 

相手を掴みすぐ後ろまで来ていたグラーフアイゼンを持つ機体に投げつけ、振り下ろそうとしているハンマーを代わりに受けさせた。

なのははすぐ上まで飛んでグラーフアイゼンを持つ機体そして自分のコピーとも言える機体を一直線に狙える所まで飛んで

 

「ディバインバスター!!」

 

自分の得意砲撃を雷のように落とし両者を襲う。

レイジングハートを持つ機体は完全に破壊され、多少残ると思われたグラーフアイゼンを持つ機体はレイジングハートを持った機体の爆発に飲み込まれ機能停止となった。

予想以上の爆発の規模だったはこれは以前銀時にしたように最悪は巻き込み心中するつもりなのだろう。

 

「!!?」

 

安心するのはまだ速い、2機落としてもまだ2機残っている。しかもそっちは完全に近接型でスピードもある単調な攻撃はしてこないし組まれれば厄介だろう。

レヴァンティンを持った機体が攻撃してくる、なのははガードするも後ろから二刀流となったバルディッシュを持った機体が攻撃してくる。

先程のようなことはまず無理だ。

 

よって、

 

「プロテクション」

 

シールドで攻撃を受け止めていた。

 

(一瞬の勝負)

 

ガードしたシールドと杖で攻撃を弾き飛ばしてスピードをあげて距離を取り離れるもバルディッシュを持った機体のスピードよりは遅くすぐに追いつかれてしまう。

 

(やっぱりフェイトちゃんをコピーした機体だけあって速い)

 

レイジングハートの杖先をバルディッシュを持った機体に向けて、

 

「アクセルシューター...シュート!!」

 

魔法弾で牽制を入れるもあまり効果は見えない。すぐに追いつき、回転加えて突撃してくる。大きな範囲である為に直後は躱すことができずに擦る。

 

「っ!?」

 

その隙にバルディッシュを持った機体は距離を縮めレヴァンティンを持った機体がチェーンで両者を覆う。

 

(まさかっ!?)

 

2人を巻き付けた後、バルディッシュを持った機体は自爆するつもりなのだろうか?

まったく特攻精神も甚だしい。

だが、そうやすやすと自爆させる訳にはいかないし、巻き込まれる訳にはいかない。

なのはは上に飛ぶが下からアッパーの様に振り上げたバルディッシュを持った機体の攻撃を喰ってしまう。

 

(フェイク!?)

 

どうやら先程の攻撃はフェイクで本命はバルディッシュを持った機体の攻撃を当てレヴァンティンを持った機体でなのは1人を巻き付けてしまう事のようだ。

なのははまんまと策に嵌り鎖に巻き付けられ身動きがとれない様になってしまう。

 

(なりふり構っていちゃ、ここで落とされちゃう.....)

 

「ブラスター1起動」

 

この声と共に壁に足をつけて止まりなのはを巻いていた鎖は切り裂かれ...と言うより砕け落ちた様に近いそれから残った鎖を持ち今度はなのはがグルングルンと回りバルディッシュを持った機体へとぶつけて、

 

「エクセリオンバスター!!」

 

さっきの何倍もの威力の砲撃が2つの機体を巻き込むと、2機の新型は跡形もなく消し飛ばした。

 

「ハァ・・・・ハァ‥ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥か、勝った‥‥」

 

なのはは、息を切らしながら改めて新型ガジェットを倒した事を確認した。

ヴィヴィオの救出、ナンバーズ、スカリエッティの関係者の逮捕の前にガジェット如きで此処までのダメージと魔力消費をするなんてあまりにも予想外だった。

この戦いは自分達が予想していたよりも結構厳しいものになるかもしれない。

しかし、此処で立ち止まる訳にはいかない。

なのはは、息を整えて再び通路の先を目指した。

 

 

~side獄寺~

 

 

激しい気流の荒波に飲み込まれる赤い炎。

獄寺とシノビの戦いはシノビの方が押している。

獄寺のよく使うフレイムアローは大きな風波に穴を開けられず更には周りのビルが獄寺の行動を制限している。

 

「くっ」

 

(何つぅ風だ、幾ら建物が多く集中しているからってこれじゃ近づくのも‥‥)

 

この風も獄寺が苦戦の1つだ。

向い風が荒波の如く身体に纏わりつき自分を前に進ませてくれない。

ただでさえ前の傷が治りきっていないので身体も不安定で吹き飛ばされないのがやっとだ。

 

「よう、そこがお前の墓場でいいのかい?」

 

「っ!?」

 

「遅い!」

 

フレイムアローを向けた瞬間にシノビの常備している包帯の様な拘束具に巻かれてビルに叩きつけられる。

更に追い討ちでクナイを投げつける。

 

「無駄だぜ、そんぐらいの力じゃあ、俺はビクともしないぞ」

 

拘束具から感じる力加減で獄寺が一体何をしたいのかをシノビには手に取るようにわかる。

おおかた、自分を武器事縛っているコレを外しかわしてカウンター、獄寺の武器は見るからに中長距離射程の武器だ。

 

ならば‥‥

 

「狙い定まる前にやればいいぃ!」

 

漁師の一本釣りの様に引き投げ飛ばそうとしたが、獲物の体重が全く感じられなかった。

それもそのはず拘束具の先は切断されもう既に獄寺はいなく代わりにダイナマイトが付けられていた。

 

「っ!?」

 

ダイナマイトが爆発し飲み込まれる。

 

「ちっ、あのバカの情報を頼りにすんのは癪だが、何とか助かった‥‥」

 

シノビの投げたクナイの内、幾つかは刺さったが1本だけキャッチしてそれを使い、切り裂き先端にダイナマイトを取り付けた。

これが致命傷になる訳でも、場が好転する訳でもないことは獄寺自身がよくわかっている。

それに腹が立つことにアイツは...

 

「おいおい、質量兵器を禁止にしてんのはお前らの方だろう?そんなお前が犯罪者の前で規則を破っていいのかよ」

 

「るせェ、テメェの拘束具もバインドの類いじゃなくて質量兵器じゃねぇのかよ?てめぇの世界のルールも守れないのかよ」

 

「ルールを守っていちゃ悪人名乗れないだろう?それに、ルールと記録は破る為に存在するんだぜ」

 

「けっ、悪人の自覚はちゃんとあんのかよ」

 

シノビはふわりと宙を舞いビルの上に立つ。

 

「善人じゃない事ぐらいの自覚はちゃんとあるぜ、何故なら‥‥」

 

シノビはそう言い指を鳴らすと歪が生まれる様な音が上から地に伝わり、ビルが揺れ崩れていく。

 

「な!?」

 

「こういったこと平気でするからなぁ!!」

 

ビルが崩れていくもシノビは宙に浮き続けしたから瓦解するビルに埋もれていく光景を上から見下ろしていた。

 

「いやぁ、すまないな。ついつい焦ってしまって大人気なかったな。でも、期待外れだなぁ~嵐の守護者がこれぐらいでやられちまうとは.......」

 

突如、赤く光り瓦礫が灰燼と化した。

 

「へぇ~やっぱりこれだからやめられねぇんだよ。悪人ってのは‥‥」

 

「形態変化、Gのアーチェリー。柔な石ころ程度じゃ止めらんねぇぜ。忍者モドキがぁ!!」

 

獄寺はアーチェリーをシノビに向けて風を切り裂きシノビを貫こうとする。

だが軽々とかわして余裕な笑みを浮かべる、まるで傲慢な鷹の如き笑いは獄寺に緊張を張り詰めさせ構え直す。

 

「ガトリングアロー!!」

 

無数の連射弾を放ちシノビを襲う。

威力を貯めようと弦を引き絞り狙いをつける。

その様子も目に入ったシノビは焦る様子もなく受け止めるのか風を両手に巻き付かせて、

 

(威力を抑えて数で勝負、まぁ風に負ける位なら狙いをつけさせない。捉えたら大技か...まぁ仕込みもなさそうだし威力もどれ位か俺にはわかんねぇし...力比べも悪くねえが...)

 

手の風を抑えて脚に風が発生する。

 

「疾風」

 

爆風のように疾走、更に空中地上関係なく駆け抜けていた。

狙いが定まらず先手の攻撃も軽く躱される。

 

「マジかよ!?こんな事も出来るのかよ!?」

 

「風にとっては場所関係ねぇんだよ。どんな場所も吹くし肌は感じられるが目には止まらねぇ。向かう敵は抑えつけ従う相手は優しく押し出す‥これが風だ。そして、風は俺自身でなんだよぉ!!」

 

シノビが獄寺の背後に回り、獄寺も思わず向くがそこにはもういなかった。

その時にはもうシノビは再び獄寺の背面に回って彼を背面から殴る。

獄寺の周りにまく旋風みたいに吹いている。

 

「お前は嵐みたいな奴なんだろうが、風そのものである俺には敵わねぇ...なぜなら嵐を起こすのも風だからだぁ!!」

 

したから地面突き抜けて、

 

「暴風圧上昇!!」

 

鉛のハンマーに叩き上げられた衝撃が獄寺の全身を襲い空中に吹っ飛ばされるが獄寺はまだ弦を離してなかった。

 

「瓜!!」

 

篭手にいる瓜が炎を放出して空中で回転して方向転換する。

 

「トルネードフレイムアロー!!!」

 

獄寺も負けずと赤い炎の大竜巻が周りを巻き込んでシノビの風を貫き風穴を開ける。

獄寺は爆風をクッションにして地面に降り立つ。キッとシノビのいた所を見据える。

 

「これでちったァ風向きも変わっただろう?」

 

「そいつはどうかな?そういやお前達の世界には『身代わりの術』って言うのがあるのだろう?」

 

「それを言うなら、『変わり身の術』だ!!」

 

「ん?そうだっけ?まぁいい兎に角、俺は仮にもシノビと名乗ってんだ...」

 

自慢げに話すシノビに獄寺は「まさか」と驚き煙が晴れるとそこには

 

「‥‥何で石の人形なんだよ!?そこは普通、木を使う所だろうがぁ!?」

 

そこにあったのは人の形をした石。

手足もしっかり彫られており目とかのパーツは無いものの顔もある無駄に手の込んだ石人形であった。

しかし持ち運ぶには重くて不便そうだった。

 

「『何で』ってお前、普通木なんて常備してないだろう?重たいし、アニメじゃねぇんだからいつでもどこでも木でやれる訳ないだろうがぁ!!」

 

「いや、石を常備している方がおかしいだろう!?大体、木よりも石の方が重たいだろうが!!それとも何か!?此処(ミッド)の石は地球のモノよりも軽いのか!?全部、軽石なのか!?」

 

シノビの言動に獄寺は、つい戦闘を忘れいつも山本に絡むみたいにツッコンでしまう。そんな獄寺にシノビも緊張の糸を切らしたのか吹き出して大笑いした。

 

「ハハハハハ、何言ってんだよお前。その石はさっきその辺で拾ったヤツだよ。それはお前を翻弄(遊んでた)していた時にクナイで彫って作ったんだよ。おかげで1本刃が悪くなっちまったがな、ハハハハハ‥‥」

 

獄寺は何かすごく腹が立った。

コイツの言い分を含めてコイツ自身もそうだが必死にあのスピードを攻略しようと頭を使っていた時にそんなものを作る余裕を与えていた自分自身に物凄く腹が立った。

 

「このヤロウ!!」

 

苛立つ獄寺は3本の弓矢をシノビに放つが普通に避けられた。

 

「さ~て、そろそろ大詰めだな。嵐の守護者」

 

シノビは勝利を確信したのかニヤッと思わず口元を緩めた。

 

 

その頃、ゆりかごの中では‥‥

 

 

~Sideヴィータ~

 

「くそっ、なげぇ通路だな、一体何処まで続くんだ?コレ?」

 

ヴィータが選んだ通路はなのは同様、下層に続く通路であったのだが、いつの間にかゆりかごの艦首から艦尾方向へと続く通路になっていた。

ただ此処までの間、トラップの類や敵の戦闘機人、ガジェット、スカリエッティの協力者の誰とも接触しなかった事にヴィータは不気味さを感じていた。

此処までトラップも敵の誰とも出会わないのは何かの罠か?

ヴィータがそう警戒するのも無理はなかった。

やがて通って来た通路より広い場所へと出る。

其処には機械に覆われた巨大なクリスタルの様なモノが轟音を立てながら存在していた。

 

「もしかしてコイツが‥‥」

 

今、自分の眼前にある巨大なクリスタル‥これがヴィヴィオの他にゆりかごを動かしているもう1つの原動力、ゆりかごのコアではないだろうか?

このコアを壊せばゆりかごは止まるかもしれない。

だったら、自分がやるべきことはこのクリスタルを粉々に粉砕する事だ。

此処まで敵と会わなかった違和感を忘れ、ヴィータは眼前にあるコアの破壊を第一優先目標とした。

 

「最初から全力で行くぞ!!アイゼン!!」

 

「ヤー!!」

 

ヴィータは愛機、グラーフアイゼンのモードの中でも破壊力のある大槌状のギガントフォルムにして一気にゆりかごのコアであるクリスタルを粉々にしようとする。

しかし、

 

バチバチバチ‥‥

 

「ぐあっ!!」

 

ヴィータはコアに辿り着く前に何かで遮られる。

 

「くっ、バリアか‥‥」

 

重要な部分である筈のコアの周辺に戦闘機人もガジェットも警備していなかった事に不審を感じていたが、やはり最後の最後で防衛プログラムはちゃんと存在していた。

 

「ちっ、此処で諦める訳にはいかねぇんだよ!!」

 

ヴィータはコアを破壊するにはまず、コアを守るバリアの突破からやらなければならなかった。

ギガントフォルムのグラーフアイゼンを幾ら打ち付けてもバリアはうんともすんとも言わず、なかなか突破できない。

 

「くそっ、くそっ!!」

 

ヴィータがバリアを叩いてもバウンドするかのような衝撃がするだけでバリアは破れない。

 

「こうなりゃ‥‥アイゼン!!」

 

「ヤー!!」

 

ヴィータはグラーフアイゼンのモードの中でも切り札とも言えるツェアシュテールングスフォルムへと変更させる。

これは破壊力のあるギガントフォルムと貫通力のあるラケーテンフォルムを合わせ持った形状となっている。

 

「行くぜ!!」

 

ツェアシュテールングスフォルムのドリルの部分とバリアがぶつかり合い、火花が散る。

 

「アイゼン!!頑張れ!!」

 

「や、ヤー!!」

 

バリアの反動で吹き飛ばされそうになるが、ヴィータは必死にそれを堪え、前へ前へと進もうとする。

 

「鋼鉄の伯爵、そして鉄槌の騎士に破れないモノ、壊せないモノはないんだぁぁぁぁ!!」

 

アイゼンの後部からもロケットの様にブースターが全開で点火され勢いとパワーが増す。

しかし、流石ゆりかごのコアを守るバリア。

その強度も半端ではない。

やがて、ミシッと鈍い音がするかと思ったら、アイゼンのドリルの先端部に小さな罅が入り始めた。

 

(アイゼン‥‥くっ、もう少し‥‥もう少しだけ頑張ってくれ!!)

 

このままでは罅が広がりグラーフアイゼンが砕けてしまうかもしれない。

それでもヴィータは止める事無くグラーフアイゼンをバリアに打ち続ける。

 

「ぐっ‥‥うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

バリーン!!

 

パリーン!!

 

そして、グラーフアイゼンのドリルの先端部が砕けるのと同時にバリアも罅が入り、ガラスが割れるかのように砕けた。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥や、やったなぁ‥‥アイゼン」

 

「‥ヤー」

 

ドリルの先端部と大槌部分の一部は壊れたがグラーフアイゼン自体が壊れた訳ではない。

 

「さぁ、この落とし前はきっちりとつけてもらうぜ!!聖王のゆりかごさんよぉぉぉ!!」

 

ヴィータは残った大槌部分のグラーフアイゼンでゆりかごのコアを思いっきり叩いた。

守る手段が無くなったゆりかごのコアはグラーフアイゼンの一撃を受け、全体に罅が入る。

 

「もう一丁!!」

 

完全にコアを砕くことが出来ず、ヴィータはもう一撃コアに加える。

すると、コアに入った罅は大きくそして広がり、

やがて‥‥

 

バリーン!!

 

コアが砕け散った。

 

「や、やった!!」

 

目的の1つであるゆりかごのコアを破壊した。

コアを破壊してもいきなりゆりかごが墜落する事はなかった。

あとはゆりかごがこのまま此処で停止するか、ゆっくり地表に降下するかのどちらかだろうと思ったヴィータ。

 

「後はヴィヴィオを助けるだけだな」

 

ヴィータがなのはか銀時の援軍に向かおうとした時、何かが作動する音がした。

 

「なんだ!?」

 

機関室の制御盤がコアの破壊と同時に作動し画面には、

 

『主動力破損、現状維持のため、補助動力を作動』

 

と表示された。

しかもそれはゆりかごが存在していた時代の古代ベルカ語ではなく、現代のミッド語と日本語の両方が表示されていた。

 

「古代ベルカ語じゃない‥‥表示されているのは日本語に現代ミッド語‥‥ってことはスカリエッティの仕業か‥‥!?」

 

ヴィータはゆりかごが停止しないのはスカリエッティがゆりかごに補助動力を追加装備したことだと判断した。

このままではせっかくコアを破壊してもゆりかごを止められない。

 

「くそっ、スカリエッティのヤロウ、いらねぇ手間をかけさせやがって」

 

ヴィータは毒を吐きながら制御盤のキーボートを叩いて補助動力の在処を探索する。

すると、ゆりかごの全体の艦内見取り図が表示される。

 

「コイツはもしかして、ゆりかごの艦内図か!?」

 

思わず手を止めて画面を見るヴィータ。

 

「よ、よし、コイツで補助動力の在り処を‥‥」

 

ヴィータが再びキーボートを操作して補助動力源の場所を検索する。

すると、すぐに場所が分かった。

 

「おしっ、此処だな」

 

ヴィータはゆりかごの艦内見取り図のデータを自分のデバイスに転送した後、

 

「そうだ、なのはの奴にも‥‥」

 

ヴィータは自分以外にもなのはのデバイスにゆりかごの見取り図のデータを転送した。

これならなのはもヴィヴィオの救出にやりやすいだろう。

だが、銀時はデバイスを持っていなかったので座標を送る事はできなかった。

なのはにゆりかごの見取り図のデータを転送したヴィータはゆりかごの補助動力がある区画へと向かった。

そして、補助動力源のある区画へと辿り着くと、

 

「な、なんだ‥‥?あれは‥‥!?」

 

ヴィータはゆりかごの補助動力を見て目を見開き、愕然とする。

ゆりかごの補助動力は大きな銀色の筒にコードが沢山ついた動力炉で、覗き窓のような所からは怪しげな緑の光が見える。

その光源が恐らく今、ゆりかごを動かしている原動力なのだろう。

だが、この補助動力は先程壊したゆりかごのコアなんかよりも禍々しいモノを感じる。

しかもこのエネルギー源からは一切魔力を感じない。

一体このエネルギーが何なのかを知りたいと思う反面、知ってはならないとヴィータの騎士としての本能がそう告げていた。

このエネルギー源が何なのかはわからないが、やることは変わらない。

ゆりかごを動かしているこの不気味なエネルギー源を破壊する事だ。

グラーフアイゼンを構え、この不気味な緑色の光を放つ動力炉を壊そうとした時、

 

「それを壊されると非常に困るのだがね‥‥」

 

ヴィータの背後から突如、声がした。

ほんのさっきまで人の気配なんてなかった。

勿論転移系の魔法の反応もない。

今、ヴィータの背後に居る人物は気配を一切断ち切り、ヴィータに気づかれる事無く、平然と彼女の背中を捕っていた。

 

「っ!?」

 

ヴィータが振り返ったその瞬間、

 

ブシュッ

 

「がっ‥‥」

 

ヴィータの身体中に痛みが走ると同時に彼女の意識は暗転した。

倒れたヴィータの姿を見て、彼女を倒したその人物は小さく口元を緩め、うっすらと笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的80 想い人はすぐ側に

 

 

 

 

 

 

 

~スカリエッティ アジト フェイト視点~

 

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥」

 

荒い息のフェイト。

それもそのはずで、現在フェイトが戦闘機人と向かいあっている部屋はAMF濃度が強く通常よりも魔力の消費も膨大だった。

それに比べて戦闘機人は魔法とは違う戦闘機人独自の能力、ISはAMFの影響を一切受けない。

その為、戦闘機人はAMFの影響下では魔導師と互角以上の戦闘が可能なのだ。

いや、AMFの影響下では戦闘機人の方が魔導師よりも遥かに強力な存在となる。

レジアスもこの能力に目をつけてスカリエッティと密かに手を結んで、本来管理局の法律で禁止されている戦闘機人の研究を彼にさせて、常に人員不足であえぐ『陸』の戦力補強に当てようとしていたのだ。

その証拠が当時『陸』のエースとされたゼスト隊は戦闘機人の前に敢え無く全滅した経緯がある。

アジトに突入する際、聖王教会のシスターであるシャッハとカリムの義弟で管理局の監査官であるヴェロッサ・アコースとは分断されてしまっていたフェイトであるが、シャッハもヴェロッサもそれなりの魔導師だ。

フェイトは2人の無事を信じ、自身の任務の為、先を進んだ。

そして、この部屋に誘い込まれてしまったのだ。

フェイトは2人の戦闘機人相手に雷撃の如くバルディシュを振る。

だがいつもの繊細さは全く見えず、焦り苛立っている様子だ。

 

「いい格好だね、フェイト・テスタロッサ」

 

またフェイトの前にスカリエッティのホログラムが現れた。

スカリエッティはフェイトのその姿を嘲笑するように笑みを浮かべて、フェイトは彼の笑みに屈辱を感じながら歯を食いしばっている。

 

「くっ!?」

 

「おぉ、そこまで怖い顔をしないでくれ。折角の美人が台無しだよ」

 

別に怖い訳でもないがフェイトに不快な気分を与える為にスカリエッティはわざと言っているのだ。

案の定フェイトはそれが挑発行為であるが分かっていても怒りは消えない。

 

「どこを見ている?」

 

「貴方の相手は私達です。戦いの最中、余所見とは随分と余裕ですね。それとも私達など眼中にはないと言う訳ですか?」

 

「我々も随分と舐められたものだな」

 

そんなフェイトの様子を指摘するのはスカリエッティの配下特有の青いボディースーツ状の戦闘服を着ていて、方や足の方に翼が生えていて女性とは思えない頑強な肉体と青色にも近い紫の髪のトーレ。

一方、可愛らしい桃色の髪でトーレ程の頑強な肉体ではなく足元には翼などもないトーレとの共通点はせいぜい服ぐらいだ。そして両腕には中中大きそうなブーメランが2つ装備されているセッテ。

 

「ふぅ~‥‥」

 

フェイトは一旦目を瞑り深く深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

(焦ってはダメ、此処はただでさえAMF濃度が濃いのにこれ以上精神を乱したら‥‥)

 

更に戦闘が不利になるだけじゃなく最悪魔力がそこをついて魔法が使えなくなる。

そうなる前に自分の気を落ち着かせて目の前の敵を見る。

 

「バルディッシュ、モードチェンジ!!ライオットフォーム!!」

 

「イエッサー」

 

そしてバルディッシュの形状を戦斧から二等の刀へと変化させて、

 

「やぁぁ!!」

 

「ISライドインパルス」

 

激しく飛び散るフェイトの金色の光と同じ力でぶつかり合うトーレの紫色の拳が起す花火、若干フェイトの方がトーレの力に圧されて分が悪い様だ。

加えて‥‥

 

「フェイトお嬢様、私が居ると言う事もお忘れなく」

 

「っ!?」

 

セッテのブーメランは弧を描きながらフェイトに向かって飛んで行くがそれにいち早く気づきトーレから離れて対応する。

だがそちらに注意が行けばもう片方には隙が出来る。

しかもスピードとスピードの戦いにおいてほんの僅かな一瞬の隙でも致命的な隙となる。

 

「隙が大きい!!」

 

その隙にキレのある動きとスピードで、フェイトはトーレに背後へと回りこまれ拳を背中から入れられる。

 

「ぁぁ‥‥」

 

落ちて行くフェイトに休む暇を与えないセッテは自分のブーメランをフェイトに向けて飛ばす。

今度の攻撃は流石に躱すことができずにもろに攻撃をくらってしまいフェイトは床へと叩き落とされてしまう。

勢いよく床に落とされて激突した所には瓦礫と粉塵が舞い上がり、フェイトの姿を覆い隠す程の粉塵はトーレ、セッテ、スカリエッティの3人の視界を眩ませる。

 

「良くやった、トーレ、セッテ」

 

フェイトを撃墜させた2人を褒めてフェイトの方に目をやるとまだ煙は立ち込めていてスカリエッティは2人にその場で様子を見る事を指示する。

これほどの勢いで地面に叩き付けたのだからフェイトも無事ではないと思う3人。

やがて煙晴れてフェイトの姿が見える前に、

 

「プラズマランサー..ファイアー!!」

 

雷を纏った魔法弾を生成し意思の持った雷の魔法弾は煙の中からトーレ達を狙う。

 

「ちっ」

 

「ぐっ」

 

「ほぉ~‥‥」

 

トーレは躱す事ができるがセッテは喰らってしまいノックアウトされる。

何とか躱したトーレは、

 

「大人しく...ぐっ」

 

180度回転した魔法弾にトーレは当たってしまう。

トーレは膝をつかせフェイトはバルディッシュの片方の剣先をトーレに向けている。

そしてトーレ達に投降を勧めようとするが、

 

「トーレとセッテ2人相手によく奮戦したが、君はもう限界なのではないか?」

 

「なっ!?」

 

赤いバインドが地面から飛び出してフェイトの体を囲うようにして徐々にフェイトの体に巻き付いていく。

早目に斬ろうと思えば斬ったのだがフェイトはここでやられる訳には行かない。

ただでさえ戦闘機人は他に11人、それに他にも敵はいる。

ここでの戦闘は他の戦場にも影響を与えるだろう。

特にフェイトという人物は良くも悪くも物事を深く考えてしまう。

後、他にも迷いを生む何かがフェイトの心を酷く揺らしている。

 

「大丈夫かい?無理はよくないよ。無理は‥ね」

 

甘い言葉に毒のような悪意を載せた気遣いをフェイトにかけフェイトはその言葉に顔を曇らせてゆっくり回る毒が彼女の顔を歪ませていく。

 

「あぁフェイト・テスタロッサ。今の君の顔はまさにあの時の彼女そっくりだ」

 

「彼女?」

 

フェイトは薄っすらと分かっていた。

スカリエッティが取り上げた『彼女』と言う人物が誰なのかを‥‥

 

「賢明な君のことだ。誰だか分かっているのではないか?プレシア・テスタロッサ‥‥かつて君を生み出した女性の事さ‥‥自分の愛娘を失い、ポッカリと開いた心の穴を自分の知識と技術で埋めようとした何とも愚かな女だったよ‥‥」

 

フェイトの耳には「何とも哀れ」そんな言葉が聞こえてきそうな気がした。

 

「今の君もそうだね。唯一の肉親、血の繋がりのある母を失いその悲しみを埋める為に君はあの幼い2人を引き取った。」

 

此処で彼が言っているのは彼女の家族と言える存在のキャロとエリオの事だろう。彼の言葉に否定の意思を立ててフェイトは行動する。

 

「ち、違う!!私はそんなつもりじゃ...「君は!!」」

 

だがそんな言葉を意に返さず、スカリエッティはすぐに彼女の否定を受け入れまた笑みを浮かべてフェイトを見る。

 

「君は自分に都合のいい駒が欲しかったんだよね?それとも路頭に迷う小さな子供を引き取って育てていますと世間にアピールをして誰かに称賛されたかったのかい?」

 

悪意が含まれたその言葉はフェイトの心にグサッと突き刺さる。

 

「ち、ちが‥私は‥‥わたしは‥‥「本当にそうなのかい?」」

 

フェイトの力を振り絞って出した言葉にスカリエッティは聞き耳を立ててそのまま投げ返す。

 

「‥‥」

 

「ならば何故、あの2人をこの様な場所へ‥‥危険な戦場に送り出した?何故、嘱託でもなく正規の局員にした?何故、他の子供の様に学校へ通わせていない?余計な知識をつけられると何か不味い事でもあるのかね?」

 

スカリエッティは見下す様な目でフェイトに尋ねる。

フェイトにとって彼の言葉はまるで極寒の吹雪が吹き荒れる地に叩き込まれたかのような悪寒を感じさせる。

 

「何故、君はあの子達に知識ではなく戦い方を教えた?」

 

「あっ‥‥ハァ‥‥ハァ‥ち、ちが‥わた‥‥わたしは‥‥わたしは‥‥」

 

次第に呼吸が‥‥息遣いが荒くなってくるフェイトに対して畳み掛ける様にスカリエッティは続ける。

 

「何故、君はあの子達に武器を持たせた!?答えろ!!答えてみるがいい!!フェイト・テスタロッサ!!今、君がしている事はかつて、プレシア・テスタロッサが君にした事と同じなんだよ!!」

 

スカリエッティはフェイトの目の前まで歩いてきてそして彼女の前で膝を折り、フェイトと目線を合わせて彼女の悲観な瞳を確認する。

 

「私と君は同じだ‥」

 

「ち、ちが‥‥私は‥‥貴方なんかとは‥‥」

 

フェイトは必至に自分とスカリエッティは異なる存在だと否定するがその口調はあまりにも弱々しい。

 

「いいや、同じだよ‥自分の目的の為に駒を揃え、知識ではなく武器を与え、戦い方を教え、戦場に立たせているいのだから‥‥私が戦闘機人を生み出し、彼女達を戦わせているのと君が幼い子供を引き取り戦わせている事‥‥それの一体何が違うと言うのかね?納得いく答えを是非とも私に聞かせてくれ」

 

無残で残酷な言葉が彼女の心をベキベキとゆっくりと確実にへし折っていく。

スカリエッティは最初からこのつもりだったのだろう。

彼女の精神をチクチクと突き、爪楊枝のようにへし折りながら彼女をまずは肉体的に追い詰めて弱ったところを次に精神的に追い詰めて再起不能として貶める。

その為に部屋にはAMFを充満させ、仲間と分断させて1人にして、2人の戦闘機人を彼女にけしかけた。

スカリエッティの言葉攻めの精神攻撃の前にフェイトの目から段々と光が失われ始める。

スカリエッティの言っている言葉に反論できず、彼の言っている事は客観的には事実である以上反論できないのだ。

 

(動揺は心の歪を生み、後悔は心を黒く染め、頭の中には霧をかける)

 

フェイトの心を落とし精神を壊し、ただの人形として彼女を捕らえる。まずはそこからだ、そしてあともう一押しもう一押しで彼女は完全に落ちる。

心を失った人間はただの人形となる。

そうなれば、自分が新たな心を入れてやればフェイトを意のままに操れる。

生物学研究の過程の中で心理学も熟知しているスカリエッティらしいやり方だ。

たいした労力を入れずに彼は管理局のエースを手に入れられる寸前の所まで手を伸ばした。

それにはやはり、

 

「君の大事なものは全て壊れる。君は何1つ守る事は出来なんて出来ない。かつて、プレシア・テスタロッサが愛娘を守る事出来なかった様に‥‥君がそのプレシア・テスタロッサを助けることが出来なかった様にね‥‥君は再び悲劇を‥喪失を体験するのだ」

 

「そ、そんなことは‥‥」

 

「証拠を見せよう‥‥これを見たまえ‥‥」

 

空中にスクリーンが写りそこには煙だらけで中は全くライトがついているかも怪しいぐらい暗い。

そして何か石の転がる音と共に誰かが膝を付く音が聞こえる。

 

『ハァ‥‥ハァ‥‥』

 

灯籠の炎ゆらりと明るい1つのオレンジ色の炎が視界に入り次に2つの炎も見え出して誰がそこにいるのかがすぐにわかる。

 

「ま、まさか!!?」

 

「そう、ここは地下深くのスタジアムでね、先程転移させた2人がいるのさ」

 

先程転移された2人そんなのは彼等しかありえない。

ツナと神威の2人だ。

彼等の戦いをフェイトに見せてフェイトの最後の希望であるツナが死ぬ瞬間をフェイトに見せようとしているのだ。

そんな事も知らないスクリーンの向う側の人達は先程から動きが無い様子。

もしかしたら‥‥フェイトが心の奥でそんな事を思ってしまう。

 

だが次の瞬間その思いと共に煙を吹き飛ばし勢い良く燃え上がるオレンジ色の炎!!

 

「「!!?」」

 

「どうした神威?お前の力はそんなものか?」

 

そして勢い良くカメラのアングルが変わりツナの見る方向へと向けるとそこには大きな穴が空いた形跡がありそして何か爆発でも起きた様に瓦礫が飛び散り、

 

「黙れぇ!!」

 

神威は飛び出して来た。

何やら彼は酷く怒っている様子だ。

彼は勢い良く飛び出してきて大きく拳を振り下ろしてツナのそれとぶつけ合い激しい衝撃波でカメラの画面も揺らいでいる。

2人は大きく後ろに追いやられブレーキをかけるように地面に摩擦をかけながら停り

 

「ツナ、上を見ろ」

 

ふと第三者のリボーンの言葉にツナは上を見るとそこにはフェイトの捕らわれた様子が映り出しているスクリーンがあった。

ようやくそちらに目をやりフェイトが自分達の姿を見ていたのに気付くが、ツナはすぐに神威の方に視線を戻す。

 

「おやおや、彼はこちらに気づいたのに何の言葉も無しか‥随分と冷たいね。まぁ確かに彼にとって弱い君の存在なんて眼中に無いのだろう?」

 

フェイトはスカリエッティの言葉に身を震わせて言葉を失ってしまう。私は弱い、今囚われてしまい膝をつかせて彼の言葉に自分を見失い武器を持つ事もできずにいる。

そして何より彼に言葉をかけてもらう事を期待してしまった。

いつもの様に彼の一言で救われる自分を期待してまた彼に助けてもらおうと心の奥底で思ってしまう。

 

「おや?今、君は彼に救われたいと願っているね?」

 

フェイトは体をビクッと震わせて反応する。

彼女はスカリエッティにあからさまに分かる反応を見せてしまった。

 

「自分の弱さに気付き、自分の弱さに嫌悪感を抱いているね?」

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥わたしは‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥わたしは‥‥」

 

フェイト声を震わせながら激しい息遣いで反応する。

 

(ふむ、あともうひと押しって所だね)

 

「弱さに身を震わす少女‥そんないたいけな女性に言葉をかけないなんて流石はマフィアのボス。非情な男だ。まぁ、マフィアの世界は弱肉強食みたいだからね、弱い者は切り捨てられる。どうやら君は彼にとって切り捨てる弱者と認識されたみたいだ。それと‥‥」

 

スカリエッティはまだ何か付け足す様にフェイトに言い放つ。

彼の言葉はフェイトにショックを与えるには十分な威力だった。

 

「私の協力者の中で彼の事をよく知る人物がいるのだが、それによると彼には既に意中の異性がいるみたいだよ。フェイト君」

 

「っ!?」

 

スカリエッティは今、何て言った?

ツナには既に好きな人が居る?

 

「そ、そんな‥‥うそ‥‥嘘よ!!全部お前の出鱈目だ!!」

 

「嘘ではないさ。これを見給え」

 

フェイトの前にもう1枚のスクリーンが表示される。

そこにはツナと共に栗毛色のショートカットの少女の画像が映し出されている。

 

「彼女が彼の意中の人、ササガワ・キョウコだ。彼とは同じ世界、同じ学校に通っているらしいよ」

 

何枚か写真が自動再生されて行くと京子とツナが仲睦まじい様子の画像が表示されていく。

 

「‥‥」

 

表示されていく画像をフェイトはただ黙って見ている。

 

「まぁ、彼は元々異世界の住人でマフィアのボスなのだから正妻の他に愛人が居てもおかしくはないがね、だが君と彼とでは住む世界が違う。彼はいずれ自分の世界に戻らなければならない」

 

「っ!?」

 

(そうだ‥‥ツナは‥‥いずれ元の世界に‥‥)

 

スカリエッティの言う通り、ツナは確かに異世界の住人だ。

自分の世界に戻る方法が分かればその世界へ戻らなければならない。

これまでのツナとの生活でフェイトはすっかりその事を失念していた。

 

「おぉ~可哀想に君は母親だけでなく好意を寄せた男にも捨てられる運命みたいだね。フェイト‥全くプレシア・テスタロッサも皮肉めいた名前を君につけたものだね」

 

皮肉っぽくスカリエッティが呟きその音を拾うスクリーン。

 

「おい、あのマッド‥あんな事言っているがどうするツナ?しかも京子の事までフェイトにばらしているぞ」

 

リボーンはツナに何か言いたいことはないか聞くとツナから思いもよらない返事が返ってくる。

 

「必要ない」

 

「‥‥そうか」

 

リボーンはツナの言葉に微笑みを浮かべて満足そうに答える。

 

「伝えたい言葉ならもうフェイトに伝えた‥‥後はフェイト次第だ」

 

ツナは真っ直ぐ自分の向き合わないといけない相手を見て自分の覚悟の炎を燃やす。

 

「マスター」

 

自分の相棒の言葉に反応するフェイトの目の前にある物が落ちてきた。

 

「これは‥‥」

 

前にツナに貰った御守り...フェイトの瞳に徐々に光が宿ってくると共に彼の精神を支えようと思い出も溢れてくる。

ツナと初めて向き合った模擬戦最初はとてもひ弱そうで戦うには向かない人だと思った、だけど敗北とともに知った彼の強さを‥‥

ホテル・アグスタの戦いの後、あの晩の時に知った。

魘されている自分を心配してそして私の過去をしっかり受け入れ私の手を優しく包み込んでくれた彼の優しさを‥‥

それだけじゃない、普段の日常では強い彼とは裏腹に色んなおっちょこちょいな所もあるのを知った。

だけどそれでも彼は止まらなかった皆と笑いながら時には笑われながら自分も笑い渡しや皆の隣にいてくれる。

フェイトの目には次第に光が戻り始めてくる。

 

「ツナはずっと私を支えてくれている‥‥」

 

ぎゅっとツナから貰った御守りを握りしめて立ち上がりフェイトから眩い金色の光が溢れ出て彼女震えを吹き飛ばす。

 

(ありがとうツナ、こんな私の事をずっと支えてくれて‥‥だったら、期待に答えないと‥‥ツナが誰を好き何て今は関係ないじゃない!!)

 

ツナに言われた私は凄いって

ツナに言われた私は憧れだって

今度は私がツナに言うんだ。『ありがとう』って

私がここで立ち上がれたのは『貴方のお陰だ』って

そして私が何を思っているのかを余すこと無く彼に伝えるんだ!!

ツナが元の世界に戻るのだって、あの子を選ぶのだって、それはツナ自身の意思だ。

私はツナの意思には文句はない。

ツナがあの子を選んで私を選ばなかった時‥‥その時は、所詮私はその程度の女だったって事じゃない。

そんな些細な問題よりも今は‥‥

今は成すべき事があるじゃない!!

だから私は!!

 

逆立つ髪と溢れんばかりの光が彼女の意志を肯定するように激しさを増す。

 

「バルディッシュ!!行くよ!!」

 

「イエッサー」

 

「真ソニックフォーム!!」

 

フェイトの体が眩い光に包まれ、身体を縛っていた赤いバインドが千切れる。

そして、フェイトのバリアジャケットが変化を始める。

マントと上着が消え、バリアジャケットとしての機能が可能な限り削られた最低限の装甲‥手甲と脚鎧のみとなり、身に纏う衣装は空気抵抗を減らす為、レオタードの様な衣装となる。

 

「な、なにっ!?あの状況から立ち直っただと!?」

 

スカリエッティが思っていたよりも人と言うのは強かった。

 

「私は弱いから……迷ったり、悩んだりを、きっと……これからもずっと繰り返す‥‥」

 

膨大な魔力の奔流は、風となって周囲の空間を満たしていく。

AMFで充満されていた筈の環境でこの光景はあまりにも異常だった。

 

「だけど……いいんだ」

 

そして、雷光を纏いし戦場の女神は……今、舞い降りた。

 

「それも全部……私なんだ!アリシア・テスタロッサのクローンじゃなくて、フェイト・テスタロッサである私なんだ!!」

 

「ば、バカな‥‥AMFが満たされている中、あれほどの力が出せる筈が‥‥」

 

フェイトの変化にスカリエッティ同様、トーレも思わず驚愕する。

 

「くっ、トーレ。手足の1本は構わない。どんな手段をもってしても彼女を仕留めろ!!」

 

そして、それはスカリエッティ本人も精神崩壊一歩手前まで追い込んだのにまさかそこから復活するなんてあまりにも予想外の出来事であった。

彼はもはや手段を選んでいる暇はないと判断しトーレにフェイトの身体がどれだけ傷つこうが後で再生と治療を施せるので、強引にフェイトを倒せと命じる。

 

「は、はい」

 

トーレの方もスカリエッティの命令と現状を見てやはりここは完膚なきまで叩きのめさなければならないと判断した。

四肢に紫色の羽根の様なモノを出しトーレはフェイトへと向かう。

しかし、フェイトの姿は突如フッと消え、いつの間にかトーレに背後をとっていた。

 

「なっ!?」

 

トーレが振り向くと同時に背中に激痛が走る。

 

「くっ‥は、速い……人間に対応できる速度を超えているだと‥‥?だが、私とてナンバーズ1の速さを誇る者として速さ比べで負けるわけにはいかない!!」

 

トーレは拳を構えフェイトへと向かっていく。

フェイトは迫りくるトーレの拳をスッと無駄のない動きで躱しトーレの懐へと入り込む。

 

「ここだぁ!」

 

「くっ!?」

 

しかし、そこは戦闘機人、人並み以上の反射神経でフェイトの一撃を受け止める。

フェイトの雷光とトーレの紫電がぶつかり合う。

そのぶつかり合いも、すぐに終わり、2人は再び間合いを広げた。

 

「‥‥貴女は」

 

「ん?」

 

「貴女は何故、スカリエッティに協力する?彼のやっている事が酷い事だと思わないのか!?」

 

フェイトはトーレに何故スカリエッティの味方になっているのかを問う。

 

「愚問ですね。フェイトお嬢様。それは貴女も理解できている筈です。かつて、お嬢様がプレシア・テスタロッサの命令でジュエルシードを集めていたように私達もドクターの手によって生み出され、ドクターによってその存在意義を見出せた‥それだけで私達がドクターと共にある十分な理由となり得ると思いますが?ドクターの脅威となる者は全て排除する!!それが戦闘機人として生まれた私の使命だからだ!!」

 

トーレの四肢の羽根が一回り大きくなる。

恐らく次の一撃で決めようと言う事だろう。

ならば、

 

「バルディッシュ!」

 

「イエッサー」

 

フェイトの指示を受け、2本のライオットザンバーが1つとなる。

フェイトの方も次の一撃で一気に勝負にでることにした。

どのみちこれ以上の長期戦をやれば魔力が枯渇する。

魔力が無くなる前にトーレを倒さなければ自分の敗北は必至なのだから‥‥

 

「行きますよ、フェイトお嬢様」

 

「次の一撃で一気に決める」

 

「「勝負!!」」

 

トーレとフェイト、互いに神速で相手との距離をつめると紫電の拳と雷光の剣が激突する。

お互いに防御力を捨てた捨て身の戦いをしているため、少しでも気を抜けは相手の攻撃と衝撃波で吹き飛ばされる。

 

「負けられない……私は、絶対に……」

 

「私とて負けられぬのだ!!」

 

互いに負けられない誇りと誇りがぶつかり合う。

それは短くも長い時間に思えた。

だが、1つの要因から均衡が崩れ……決着が付いた。

 

「がはっ!!」

 

宙を舞う体。

そして床にドサッと倒れたのはトーレだった。

 

「がふっ!? ば、バカな……なぜ‥‥なぜ、この私が‥‥」

 

トーレ自身、自分の敗北が信じられなかった。

 

「差があったとすれば、想いの差だよ」

 

「な、なに?」

 

「ただ、与えられているだけの想いと自ら進んで新たな想いを見つけ、それを守ろう、信じようとする想い‥‥その差が、貴女と私の戦いに明確な差となって現れたのよ」

 

「くっ、そんなモノに私は負けたのか‥‥」

 

トーレは自らの敗因をフェイトから聞くと同時にガクッと意識を失った。

 

「フハハハハハ……素晴らしい!!やはり素晴らしいよ!!君は!!……まさか、あのトーレを倒すとは思わなかったよ!!」

 

スカリエッティは拍手をしてフェイトの奮闘ぶりを称える。

 

「スカリエッティ!!」

 

「だが、この代償はいずれ払ってもらう。今回はこれで退散させてもらうよ」

 

そう言い残してスカリエッティの姿は消えた。

 

「くっ」

 

フェイトは悔しそうに顔を歪める。

しかし、あのスカリエッティは実体のないホログラム。

今のフェイトにはどうする事も出来なかった。

それにトーレを倒したことで魔力ももうスッカラカンの状態だったし、かなりの無茶をした為か身体中が悲鳴をあげている。

ガクッと膝から倒れるフェイト。

バルディッシュも既に機能を停止している。

 

「ツナ‥‥私‥勝ったよ‥‥だから、ツナも‥‥絶対に‥‥勝‥って‥‥ね‥‥‥」

 

ドサッ

 

魔力を使い果たしこれまでの戦いで疲労したフェイトはその場に倒れた。

愛する者の勝利を信じて‥‥。

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的81 親子の絆ァァァなぁァァァァァめェェェんなぁァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

~side銀時~

 

「はっ、はっ、はっ‥‥」

 

ゆりかご内部の長い通路を走り続ける銀時。

なのは、ヴィータと別れてから大分経つが、今の所肝心のヴィヴィオどころかガジェットにもナンバーズにもそしてアイツにも遭遇していない。

 

「くっそ、何処まで続いてんだこの通路は!?どんだけ大きいケーキなんだよ!?ケーキならケーキらしく床や壁、天井をお菓子にして食わせろってんだ!!」

 

何処までも広いしそして大きいそれに‥‥

 

(くそっ、何か違和感あんだよな。誰かに誘導されている気がする)

 

なのは達と別れてから3、4回壁に当たり進路を変更している。

銀時の予想通り彼らその行動を監視カメラから覗き見ている人物がいた。

 

「んふふ、そう、こっち、こっちに来なさい。貴方の大事な娘はここですよぉ~」

 

全く覗きとは彼女の趣味を疑う。

銀時の様子を見ていたのはナンバーズⅣのクアットロだ。

そして彼女の傍にはもう1人‥六課が、銀時となのはが死に物狂いで探しているヴィヴィオもそこにいた。

王座ともとれるその座席に座していた……というより意識があるのかも疑える、眠らされている様にもとれるがその苦痛や悲しみを含んだ顔を見なければ‥‥

その表情を見れば見るほどクアットロの口角は上がりその微笑みは何の混じりけもなく黒に染まる。

 

「さあ、もうすぐ楽しい、楽しい舞踏会の始まりですよ陛下。御父上と娘による舞踏会‥‥さぞ面白いでしょうね、会場はゆりかごの王座の間…いや私の手の掌の上ですわ。フフフフ‥‥」

 

「お?今度は扉か?」

 

次に自分の進路を阻むものは扉だった。

しかもその扉は装飾が施された大きな扉であった。

その扉から見るにこの扉の向こう側に何か大事なモノ‥または部屋があるのは明白であった。

扉ぐらいならば蹴り破る。

 

「おらぁ!!」

 

ドカーン!

 

目の前の扉を蹴り破って銀時は部屋の中を見渡すまでもなく一直線にそこを見た。

そこには自分となのはが探していたヴィヴィオが居たのだ。

 

「ヴィヴィ…ん?誰だ?オメェは?」

 

ヴィヴィオに気を取られてしまい銀時はほんの一瞬、気付くのが遅れてしまう。

 

「ご機嫌様。坂田銀時さん。貴方を待っていましたよぉ~」

 

玉座の間にはヴィヴィオと自分以外にもう1人居たのだ。

その人物は銀時を小馬鹿にした口調と目線で銀時を出迎える。

 

「ん?お前、どっかで見たツラだな。声も何となくだが、スバルの奴に似ているし‥‥美人の顔と連絡先は覚えるようにしているんだが、生憎とそんな悪趣味な服装の変態はフィルターにかけていて覚えていねぇんだ。変態女はアイツだけで十分なんだけどなぁ~‥‥」

 

銀時は呆れた顔でクアットロのボディースーツの上にマントと言うスタイルを見て彼女を変態と決めつめる。

その理由は成熟した女性そしてメガネと言う共通点が自分の世界のあのドMな女忍者を思い出させるからだ。

 

「お褒めに預かり光栄です。さぁ、陛下。お昼寝の時間は終わりです。そろそろ…」

 

クアットロは銀時の皮肉をスルーしてヴィヴィオに人差し指が当たりそうになるとすぐさま銀時の殺気がクアットロの手を貫く。

 

「おぉ、恐ゎ~そんなに眉間にしわを寄せていますと陛下が泣いてしまいますよぉ~白夜叉さん」

 

クアットロの視線がヴィヴィオから銀時に移ると、彼は既にクアットロの目の前にいた。そしてクアットロの反応よりも先に彼女の頬には洞爺湖が当たる。

だが、その手応えはまるで霧を払う様な軽さだった。

それはクアットロのIS能力『シルバーカーテン』で出来た幻覚が消えたと同時に王座の間に空間パネルが現れた。

スクリーンにはクアットロが映し出されている。

恐らく画面の先に居るクアットロが本物なのだろう。

 

「女性の顔に何てものを当てるのよぉ!!信じられない!!これだからサムライと言う野蛮人は度し難いのですわ!!」

 

クアットロは顎に手を当て嘲笑い銀時に囁く。

銀時はその言葉を静かに聞きながらクアットロを睨み続ける。

 

「くっ、その目‥‥」

 

(気に入らないわねぇ‥‥)

 

微笑みとは一転、先程まで哀れな虫けらの生き様を嘲笑うかの様な態度だったのに今度は険しい表情と態度で銀時を見続ける。

 

「くっ‥似ているわ‥彼に‥‥殺してやりたいぐらいに憎いあの男に‥‥」

 

クアットロがその目に、いやその殺意に見たのは以前口論し殺意をぶつけ合った隻眼のサムライの目つきにそっくりだ。

 

「でも、これを見てもそんな顔ができるかしら?」

 

クアットロはいつものペースに戻ると、

 

「ああああぁぁ!!?」

 

ヴィヴィオの苦痛の叫び声がこの空間に鳴り響く。

 

「ヴィヴィオ!?」

 

「フフフ‥‥この子の体は貴方の仲間魔導士のバリア・ジャケットそして貴方達みたいな常人離れをした体、私たち戦闘機人とも違う、特殊な能力が備わった『聖王の鎧』の持ち主。聖王の鎧はレリックとの融合を得てその力を完全に取り戻す。古代ベルカの王族が自ら肉体を作り替えた究極の生態兵器、レリックウェポンとしての力を!!」

 

「ヴィヴィオ!?」

 

「さあ、すぐに目を覚ましますよ。私たちの王が無限の力をふるい続ける究極の戦士に‥‥」

 

突如ヴィヴィオの体が七色の光に覆われる。

 

「パパぁ!!」

 

「!!?」

 

光の中にもう銀時の声は聞こえない。

聞こえるのはクアットロの悪魔の様な囁きと自分の声のみだがうっすらと外を認識できる。

 

「パパ!!ママ!!」

 

迷子になり逸れた両親を探し求めるかのような声を出すヴィヴィオの傍に再びクアットロの幻影が姿を現す。

 

「陛下、いつまでも泣いてないで陛下の家族が助けてっていっていますよ。陛下の家族を連れ去ったあの男から、あの鬼から『助けて』って言っていますよ。陛下にはそれが出来る力が備わっています。心のままにその力を解放して、あの鬼から陛下のパパとママを救ってあげてください」

 

ヴィヴィオの幼い体がしっかりとした筋肉そしてメリハリのついた体へと変化し始めた。

しかも変化は体だけではなく声が幼いソプラノ調の声からアルト調のやや低い声になる。

今のヴィヴィオは見た目が16~18歳前後の姿にまで一気に成長を遂げる。

 

「ど、どうなってんだ!?こいつは!?ヴィヴィオがいきなり幼女から美少女に‥‥しかも胸はなんかなのはより大きくねぇか?」

 

流石の銀時もヴィヴィオのこの変化には瞳孔を開いて驚きを隠せない。

やがてヴィヴィオの体は黒い光に包まれ光が消えたところには長い髪をサイドポニーで結って、黒を主とした青いラインの入った服が身に付き腰には1本の長剣が備わっていた。

この剣の存在に関してはクアットロにも分からず完全なイレギュラーであった。

 

(あ、あの剣は一体何?あんな剣の存在は予定にはなかったけど‥‥でもサムライに引導を渡すにはちょうどいいわね)

 

しかし、ヴィヴィオが握っているからには決して此方側にとって不利ではない筈だと思い剣に関してはそのままスルーした。

ヴィヴィオが持つ剣は紅桜程ではないが、それでも刀身はエメラルドグリーンの禍々しい気配を感じさせる剣であった。

 

「この子を止めればこの船も止まるかもしれませんねぇ~まぁ、精々頑張ってくださいねぇ~」

 

と憎たらしく銀時に言うと彼からは思いもよらない答えが返ってきた。

 

「あぁ?何?お前まだ居たの?」

 

気の抜けた声をクアットロに吐き捨てる。

 

「なっ!?」

 

開いた口が塞がらない状態になったクアットロ。

 

「お前のくそどうでもいい話なんざぁ、こっちは毛ほども興味ねぇんだよ。どうせお前なんてドフ〇ミンゴにいたあの参謀気取りの小物だろ?最後は結局3ページオツになるんだからさっさと失せろ。邪魔だ」

 

クアットロの体はワナワナと震え始めた。そりゃあんなに銀時を挑発するように言い続けたのにそれに乗るどころか、どうでもいい、興味ない、挙句の果てに認識すらされていなかったのだ。

 

「ちょっと貴方!!これから何するかわかってんの!?」

 

クアットロは柄にもなく声を荒げる。

 

「ん?」

 

「殺し合いよ、こ・ろ・し・あ・い、愛情注いだ大事な娘に自分という存在を消されるか、それとも自分の手で愛娘ごと思い出を壊すか、私をここまでコケにした貴方がどんな悲惨な道を選ぶか楽しみね」

 

「殺し合いだぁ、ンなモンやるわけねぇだろう。バーカ!!これからやんのは親子のじゃれ合いだよ。じゃ・れ・あ・い。それより高みの見物を決め込んでいるとこ悪ぃが、お前の方こそこれからどう何のかわかってんのか?」

 

にやりと笑っていたが今度はクアットロの首をへし折る勢いで睨む。

その目線はクアットロだけでなく今回自分の敵全てを睨んでいる様にもとれる。

 

「お前は俺の仲間を傷付けた‥‥そんだけじゃなくヴィヴィオを物の様に扱った。そんだけの為にヴィヴィオを連れ去った‥‥お前達は夜叉(パパ)から娘(宝)を攫って行った‥‥お前達‥この世に原形を留められると思うなよ」

 

銀時がクアットロに宣戦布告をしていたその時、

 

「っ!?」

 

ヴィヴィオが銀時に斬りかかって来た。

 

ガキーン!!

 

「くっ」

 

咄嗟に銀時はヴィヴィオの剣を受け止める。

 

「ちっ、おい、ヴィヴィオ。人が話している時に斬りかかるなんてパパはそんな子に育てた覚えがありませんよ」

 

「嘘つき!!」

 

ヴィヴィオはこれまで銀時が見たことのない悪意で満ちた眼をして声を荒げて言い放つ。

 

「っ!?」

 

「この鬼が!!」

 

その言葉に一瞬気を取られてしまいヴィヴィオに力負けしてしまい銀時の洞爺湖が弾かれ懐に斬りかかろうとするが足で受け止め後ろに一回転して跳ぶ。

 

(何なんだ?あいつの剣筋はまるで‥‥)

 

ヴィヴィオが止まることはない剣を振り続ける。

銀時はそれを躱しながら、

 

(こいつの剣は俺と同じじゃねぇか)

 

そう、ヴィヴィオの剣は銀時のそれと同じ我流だ。

元々聖王が剣術をしていたという記録なんてものは当然ない。

ましてや銀時と同じ剣筋なんてもってのほかだ。

この剣を振るえるのはあの人の下で剣を習った人間だけだ‥‥

ならば何故、ヴィヴィオがここまでの剣術が出来るのかと言う疑問になる。

それはヴィヴィオの親となったのが銀時だったからだ。

レリックが反応した近くの人間そしてヴィヴィオの記憶というデータで最も強い組み合わせが形となった。

 

「ん?」

 

ヴィヴィオが剣を地面に突き刺す。

その行動に銀時はヴィヴィオの行動が理解できなかったが、

 

「アクセルスラッシュ!!」

 

地面をこすりあげる様に剣を振ると虹色の小さな竜巻が起こる。

 

「おいおい、マジかよ!!?」

 

躱しきれずに打ち上げられてしまうそれどころかこの竜巻はただの風ではなく斬撃に近い為に擦り切れる。

 

「くっ!」

 

ヴィヴィオの手には手のひらサイズの魔法弾が生成されていた。それもヒットしたのを確認したヴィヴィオは上に跳びあがり背後から斬りつける。

 

だが、

銀時は腰を思いっきり捻り洞爺湖を‥ヴィヴィオを剣ごと吹き飛ばす。

 

「来いよ、ヴィヴィオ」

 

銀時は洞爺湖をヴィヴィオに向けて言い放つ。

 

「足捌きがなっちゃいねぇぞ、俺が稽古つけてやるよ」

 

ヴィヴィオが立ち上がり剣を構えて苦虫を噛み潰した表情で銀時を見る。ヴィヴィオの表情には目にはもう敵しか映ってないだが一瞬だけ驚きを含んだ表情をした何故ならそれは銀時を見たからだ。銀時は自分に敵意を向けるわけでも将又悪意を含んだ表情をしていた訳でもない。

ただ笑っていた‥‥。

別に侮りや侮蔑とかではない、そこに含まれているのは、

 

「さぁて、親子のスキンシップと行きますか?なぁ、ヴィヴィオ」

 

愛娘の成長を嬉しみ、子育てを楽しむ父親の顔だった。

鳴り響く剣戟は収まらず寧ろその空間からもはみ出すぐらい激しさを増していた。ヴィヴィオの剣を捌き続ける銀時。

 

「うぅぅ…!?」

 

立ち上がろうとするが動けない。

 

「はは…確か鮫衝撃つったか?」

 

以前山本から受けた攻撃を銀時の体は忘れていなかった。

 

「さて、これでゆっくり話せるな」

 

「うふふ、今更説得なんて出来る訳ないでしょう」

 

その光景を高みの見物と洒落込んでいるクアットロが話しかける。銀時の反応は相も変らぬ

 

「るせー!って言うかまだ居たのか?変態メガネ!いつまでそのかったりぃ画面越しで見てんだ?つぅか、お前の方が顔に皺あるように見えんぞ、若作りの手入れ怠っているんじゃねぇか?」

 

ブチっ!

 

クアットロの中で何かが切れた。

彼女は額に青筋を浮かべ口をひきつけながら、

 

「ホントにムカつくわね。サムライって生き物は‥‥」

 

「テメェが勝手にムカついているだけじゃねぇか‥‥」

 

これ以上は銀時も聞く耳を立てない。銀時はヴィヴィオの方に歩いていきヴィヴィオの胸倉をつかみあげる。

 

「よぅ、いい加減目ェ覚ましたか?ヴィヴィオ?」

 

ヴィヴィオも引きはがそうとするが体が思うように動かない。

 

「は…はな‥‥」

 

ガン!

 

ヴィヴィオの腹に一発拳を入れる。

 

「がはっ!」

 

血こそ吐かなかったが息苦しくなり地面に転がり銀時はすぐさまヴィヴィオを床に抑えつける。

今の銀時の姿をなのは達が見たらきっと戦慄するだろう。

あれほど可愛がっていたヴィヴィオに対して彼は躊躇することなく攻撃をしているのだから。

だが、これは銀時が決してヴィヴィオを嫌っている訳ではない。

彼は全力でヴィヴィオに語り掛けようとしていたのだ。

そんな中で生半可な攻撃はかえって自分に大ダメージを与える。

なのは同様、やるからには全力全開で銀時もヴィヴィオの相手をしていたのだ。

 

「聞け」

 

「い…いや!!」

 

「王様のてめぇに言ってんじゃねぇ!!話があるのはヴィヴィオだ!!ヴィヴィオ!!俺だ!お前の自慢のパパだ!!お前はいつも俺が寝坊したときよく起こしてくれたよな?だから、たまには俺がお前を起こしてやるよ!!パパが寝坊助さんを叱ってやる!!」

 

息を一旦吸い込んでいつも以上に腹に力を入れて叫ぶ。

 

「耳の穴かっぽじってよぉく聞け!!ヴィヴィオぉ!!!俺となのは達と一緒に作った思い出はマッドや変態共のまやかしに負けるぐらい薄っぺらなもんだったのか!!あぁ!!」

 

先程まで暴れていたヴィヴィオも銀時の声に負けたのか、はたまた銀時のあの死んだ魚の様な目が瞳孔開いて血の様に赤い瞳で自分を睨む銀時に恐れを抱いているのか

 

「俺達との思い出がお前にとってダイヤモンドかどうかわかんねぇ…けどなこれごときで折れる軟なもんじゃない!!俺たちがぶつかって紡いで作った思い出はそんじょそこらの剣にも負けねぇ鋼の思い出この世のどんなモンでも斬ることができねぇ!!思い出せ!!引き寄せろ!!」

 

「!?」

 

ヴィヴィオは目を見開き眼前の銀時を見る。そして

 

「パ…」

 

これが出たとき銀時も一瞬力が緩んでしまう。

だがヴィヴィオはすぐ目を閉じて首を横に振り銀時を蹴り上げる。

どうやら鮫衝撃の効果もきれたらしいすぐさまヴィヴィオは剣を握りしめて銀時の肩を貫く。

 

「ぐっ‥‥」

 

銀時の肩を貫いたヴィヴィオは銀時と距離を取り、剣を構える。

 

「ったく、話の最中に斬りかかわるわ、不意打ちで人の肩突き刺すわ‥‥いくら子煩悩なパパでもこれはちょっとお仕置きが必要なレベルですよぁ~ヴィヴィオさん」

 

銀時は肩の出血をものともせずに不敵な笑みを浮かべた。

今のヴィヴィオを見て漸く希望が確かとなった。例え操られても俺達はヴィヴィオの中に存在していた。後はアイツを叩き起すだけだ。

 

「虐待で訴えんなよ、管理局、なのはさまよ」

 

飛び上がり上からヴィヴィオを刺そうとする。

そしてヴィヴィオは彼を迎え撃ち自分の剣をぶつけ合いまた激しい衝撃と火花は美しく散る花火の様だ。

花火が消えると同時に次の行動に入る2人

両者剣を振り切り両者の鋭い眼光は両者を突刺す。

 

 

 

~sideクアットロ~

 

なのはと新型ガジェットとの戦いが終わったその頃、

クアットロはゆりかごの最深部から全ての戦場を1人で覗いているのに今は1つの戦場から目を離せない。

先程からある意味では目が離せなかったが今は明らかな誤算が生じたからだ。

だが、既にもう片方で誤算が既に生じていた事を彼女は見落としていた。

 

「な…何?‥いま…今一瞬‥‥」

 

クアットロは目が離せなかったのは銀時とヴィヴィオの戦いだ。

先程一瞬だがヴィヴィオの正気が戻りかけたこと、もう記憶の片隅の紙屑程度は残っているのはわかっていたが、それでもその程度の事ほっておいても些細な事で寧ろそれも相手の油断を誘ういい餌と思っていたが、まさか無理やり引っ張り出すとは‥‥

 

「で、でも陛下はアイツに深手を負わせた。多少の誤差はあったけど、あ…あまり意味はないわね‥そうよ、私達が優勢なのは紛れもない事実の筈‥‥」

 

(そう、そうよ、意味はない…ない筈なのに………何よ‥何が一体、私を此処まで不安にさせるの?不安要素なんてないどこにもない筈なのに‥‥)

 

そう自分に言い聞かせるように口にするが手の震えが体の震えが止まらない。

戦闘機人である筈の自分が此処まで嫌な寒気を感じるなんて‥‥

必死に振り払おうとしてもこの嫌な感じの寒気は体を覆うように迫ってくる。

そして、その寒気の正体はやがて、彼女の前に姿を見せた。

 

ドカーン!!

 

「っ!?」

 

その寒気をも吹き飛ばす様な大爆発が起こり振り向くとそこに立っていたのは機動六課の中で最も警戒していた人物‥‥きれいな茶色の髪を2つに束ね、その天使の装束にも見える純白のドレスは味方に希望を与え鼓舞して犯罪者を恐怖で煽り戦意を喪失させる。

そして手に持っている杖一振りで地形も変える砲撃を放つ。

 

「何処までも計算どおりにいかないものね、管理局のエースさん‥いや、高町なのは」

 

管理局のエースがクアットロの前に降臨した。

 

「大規模騒乱罪の罪で貴女を逮捕します。大人しく投降してください」

 

なのははクアットロの罪状を述べてクアットロに降伏を勧める。

しかしクアットロは慌てふためく様子もなく

 

「ふふふ‥‥」

 

笑い声が聞こえるがその笑い声は今のディードよりも狂気じみた笑い声だった。

 

「正直ここまで追い込まれるなんて、貴女達を見くびりすぎたのかしら…でも!!最後に笑うのはこの私ナンバーズⅣ、クアットロよ!!」

 

クアットロはかけていた眼鏡を徐にとるとそれを踏み壊して纏めていた髪を下ろし始めた。

 

「計算違いが起きたなら自分の手で戻せばいいのよ!!ISシルバーカーテン!!」

 

叫ぶとクアットロの姿が1人から2人、2人から4人、4人から8人まだ止まらずその数は小規模の軍隊ほどの数へとなった。

 

「さぁ、どれが本物の私か当てられるものなら当ててみなさいよ!管理局のエースさん」

 

この数だ、探すのも一苦労だろう、仮に探すとしてもフェイクに気を取られている間に自分の命がかすめ取られているだろう。

その辺なのははどう対応するのだろうか?

 

「1、2、3…うん。この数なら」

 

なのははクアットロの数を数えはじめ自分的に納得するとレイジングハートを上に掲げて

 

「ブラスター1起動!!」

 

「イエス、ブラスターモード」

 

なのはの奥の手であり最終奥義の限界突破。

 

「アクセルシューター…」

 

こちらも桃色の火の玉の様な魔法弾を生成していく。

 

「これぐらいでいいかな?」

 

クアットロの分身よりも数は少ないがこの道10年の人が見たら開いた口が塞がらず『どれだけ作るの!?』とかすれる声で言うだろう。

 

「シュート!!」

 

レイジングハートを振り下ろすと同時にその魔法弾は四方に散り次々とクアットロを(分身を)消していく。

一個一殺ではなく1人消したらまた次へまた次々と消していきもう消し終えた所に、

 

「今!!」

 

なのはの懐に上から飛び込んでくるクアットロ、そしてなのはの首をとるかの様に腕を振り着地の体勢から回し蹴り、更にはなのはの心臓を短刀ともとれる腕の構えで何度も突き刺そうとなのはを襲う。

しかし、なのははそれを躱し続けるが何度か掠る。

 

「貴女の噂はかねがね聞いておりますは、貴女の十八番といえば砲撃魔法、先程の目にしたあの魔力量で砲撃を撃たれたら一溜りもないかもですけど砲撃の泣き所はこの近接戦闘…」

 

一瞬クアットロの口角が上がったと思ったら、

 

「もらった!!」

 

後ろにもクアットロがいた。クアットロのシルバーカーテンだろうがどちらかが本物かは解るが判断が別れてしまう。その一瞬を狙っていたクアットロ。

 

「死んじまぇ!!」

 

前後の攻撃前から心臓を後ろから首を狙う。

 

「ふふ‥‥」

 

ガシャン!

 

両者の前に魔法陣がありそこから桃色の鎖が飛び出していた。

 

「近接は確かに専門には入ってないけどね、でもそれを突かれて終わり…じゃ話にならない。それに私だって何もしてなかったわけじゃないんだ。貴女以上の体術使いなら私の生徒にも私の仲間にもいる」

 

5歩ほど離れてレイジングハートに魔力を溜めて桃色の光はどんどん大きくなる。

 

「え、待って‥‥」

 

「ごめん、貴女は私の大事な人を傷つけすぎた‥私は貴女を許さない。ううん、許す事は出来ない」

 

珍しく笑顔ではない怒りを見せるなのは。

 

「あ...悪魔」

 

「女の人に言う台詞じゃないよね?その台詞‥でも、私の仲間の為ならヴィヴィオ達の為なら私は喜んで悪魔でも何でもなってあげる!!それに悪魔でいいよ。悪魔らしいやり方で貴女に思い知らせてやる‥管理局のエースの力を!!」

 

「ひっ‥‥」

 

「‥‥ちょっと頭冷やそうか?」

 

3...2...1

 

「スターライトブレイカー!!」

 

悪魔の...いや天使の裁きがクアットロに降り注ぎ桃色の光がクアットロを飲み込む。

 

「キャァァァァぁァァァ―!!」

 

絶叫と共に桃色の閃光にクアットロの姿は消え、光が収まると其処にはボロボロの姿で倒れるクアットロの姿があった。

かつてフェイトにもトラウマを植え付けたなのはのスターライトブレイカー。

この先、クアットロは桃色に対して拒絶反応を示すかもしれない。

 

「悪魔...でも銀さんが白夜叉なら私は...」

 

なのはクアットロ、そして昔、ヴィータに言われた『悪魔』という単語に対して思う所があった。

しかし、なのはは管理局内でも既に『管理局の白い悪魔』と密かにそう呼ばれている事を知らなかった。

クアットロVSなのはの結果は、

 

勝者 なのは

 

と、なった。

 

クアットロを倒したなのはは銀時の下へと向かおうとしたが、

 

「うっ‥‥」

 

なのははガクッと膝をつく。

此処までの戦いで大量の魔力消費によって体に負荷がかかっていた。

でも、向かわない訳にはいかない。

そこへ、レイジングハートがグラーフアイゼンから何かを受信した。

開いてみると、それは、ゆりかごの艦内図だった。

 

「ヴィータちゃん‥‥ありがとう‥‥待っていてね、銀さん‥ヴィヴィオ」

 

バインドでクアットロを捕縛し、なのはは銀時とヴィヴィオの下へと向かった。

 

 

 

 

そのなのはの目的地であるゆりかごの王座の間では、

 

 

 

 

 

〜side銀時〜

 

お互いの激しい剣戟が行われてる中ここで一つ、この勝負で初めて銀時が本気で斬りに行った。もちろん銀時は意識下では本気でヴィヴィオを取り戻す為に刀を振っていたが幾千の戦いで培われた殺す為の剣を娘に向けたくないという気持ちが激しいブレーキとなっていた。

だが今の銀時の思考はヴィヴィオが一考える間に銀時は三も四も先を考えている。先程の会話以降銀時の迷いは消えていき銀時の意識を縛り付けた迷いと言う鎖に歪が入り今にも引きちぎりそうにもなる。

 

床をめり込ます勢いで踏み込んで先に懐に入り込む銀時に1歩遅れて反応するヴィヴィオ。

今のヴィヴィオの異なる色の眼に映るのは黒い影に光る赤い瞳は死を呼び込み、彼の剣は死神の釜のように見える。

 

「あぁ!?」

 

釜を受け止めるも受け止めきれず吹き飛ばされ銀時はすぐさま走り

 

「っ!!?」

 

鋭い一閃を入れる銀時にヴィヴィオは、

 

「アクセルスラッシュ!!」

 

虹色の竜巻を迎え撃たせるヴィヴィオ、だがそれでも止まらない銀時。

 

「うぉぉおおぉおおぉ!!」

 

船全体をも揺らしかねない衝撃が銀時とヴィヴィオの肌にビリビリと感じさせる。

 

「ぐっ」

 

肘が曲がる、足が後ずさる、顔がゆがむ。風が自分を斬りつけ、擦り傷の数が増えていく。

 

(負けねぇ、ヴィヴィオも必死で戦ってんだ‥‥俺も...俺も全力で‥‥)

 

瞳孔開きまくって歯を食いしばる、衣類から足が顕になるも1歩を踏み込む、流れる血が紅く染めた腕を押し出す。

 

(お前を引きずり出してやる!!)

 

銀時はヴィヴィオの攻撃を打ち消す一閃を繰り出す。

竜巻をも打ち消す風はまるで銀時を守る鎧のように纏わり風を纏った洞爺湖はヴィヴィオ事壁を突刺す。

否、聖王の鎧がヴィヴィオを守りダメージはあるものの完全には突き刺さらずに洞爺湖はヴィヴィオの両手で握られ、銀時は引き抜こうとするがガタガタ震えるだけでなく引き抜ける気はしない。

ヴィヴィオはそのまま洞爺湖を押し込んで銀時の腹に突っ込む。

 

「ぶはァ」

 

洞爺湖は鳩尾に突き刺さり空気が腹から押し出され思わず膝を付いてしまう。

 

「貴方を倒して私は...私は‥‥」

 

虹色の光が腕に灯りそのまま上から銀時を殴りつける。地面にうつ伏せになってうつ伏せた所から血が流れ続け血溜まりが出来ていた。

 

「とりもどす...私はとりもどす.......とりもどす.........とりもどす...........とりも.....どすとり.............誰を‥‥私は一体誰を取り戻そうとしているの‥‥?」

 

先程までの憎しみが篭った瞳からうって変わり瞳孔が開いて頭の中に一気に情報が流れてきている。今、現状の事ではない。

自分の顔を手で覆い、滝のように流れ込んでくる記憶に、いや、湧き水のように湧いてきていた。そして指の隙間から倒れ込んでいる男を見ると

 

「ぱ、パパ‥‥?」

 

一緒に遊んだ。一緒にご飯食べた。夜寝るまで隣にいてくれた。自分にいっぱい色んなものをくれた人だ。

そうだ、私は‥‥私は‥‥

 

「あ、あ...あぁ...ぁぁぁぁぁぁぁああああー!!」

 

そうだ‥‥もう居ないんだ‥‥。

 

生まれたのは遥か前。私であって私でないのが最初の記憶。

 

ヴィヴィオの私は何なの?

 

ねぇ、教えて私は何者なの?ママ、パパ‥‥ねぇ教えてよ‥‥

 

あれ?それ以前に私のママとパパは何処にいるの?

 

「あ?」

 

そこで目に入ったのは血を垂れ流し倒れている銀時であった。

 

「あ、あぁ‥‥」

 

そうだ私がパパを傷つけたんだ。

私を拾ってくれたのに‥‥

私を育ててくれたのに‥‥

私に大切な物沢山くれたのに‥‥

必死に助けようとしてくれたのに私は...

私は私が殺してしまったの?

私の大事な人を…

私がこの手で‥‥

この手で‥‥

 

「 」

 

空気を吸っても吸っても肺に入らないカラカラの肺からでる空気はただ声の代わりに喉を通り外に排出される。

力が入らずに立つ事すら出来ない、動くことが出来ない。

ヴィヴィオはただ後退るだけだった。

目をつぶり両手で頭を抑えて必死に今を否定している。

目を背けたい、信じたくない、こんなの現実じゃない

 

いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや

 

ガシッ

 

急に誰かに握られ思考が停止するヴィヴィオ。

 

「あ...ああ‥‥」

 

握られた腕を見てその腕の持ち主を見るとヴィヴィオは何と表現していいのかわからない表情をしていた。

そのまま持ち主はもう一方の腕で彼女の目元から下を優しく撫でる。

 

「よぉ、久しぶりだな。」

 

この時初めて彼女に希望の光が灯りその明かりが目から輝きを放とうとすると彼女はすぐさまその輝きをシャットアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「触らないで!!」

 

銀時の手を拒絶するヴィヴィオに、

 

「何だ?お前はまだ王様気分でいたいのか?」

 

銀時の問いに唇を噛み締めてヴィヴィオは言う。

 

「そう、私は聖王‥何年も前に死んだ人なの。今の私はこの兵器を動かす為に作られた鍵。私が貴方達の元にいたのは私に必要な戦闘力を手に入れる為に...私は‥‥」

 

ヴィヴィオは自分の耐えられない悲しみや後悔を悲痛の叫びと変えて銀時に言う。もう裏切った自分は彼の彼女の娘にもなれないと思っているからだ。

 

こんな時彼女にどう声をかければいいか分からなくなるのが大抵の人だ。

だが、銀時の様に不器用で優しい男はこういう時に伝えるのは、

 

「ンな寂しい事言うなよ」

 

―――ただの本音。

 

(こんな時は考えたって仕方がない。ならシンプルに自分の事を伝えればいい。俺の娘なら分かってくれんだろう...)

 

「何年も前に死んだだぁ、なら俺の目の前にいんのは誰だよ、これ動かす兵器だぁ、俺の知り合いには江戸滅ぼすよう作られた兵器も今じゃ汚ぇスナックの定員だよ。戦闘力が欲しいんなら俺がじっちゃんに紹介してやんよぉ、あ、かめはめ波覚えたら俺に伝授してくれ」

 

何を言っているか分からない...最後のは本当にわからないが

彼は何を...

いや心のどこかでは分かっているかもしれない、だが罪の意識がその心を邪魔して心を開かせようとしない。

 

「パ、貴方は‥‥?」

 

「いい加減嘘はやめろ」

 

「えっ?」

 

「ヴィヴィオ、俺は管理局の局員じゃねぇんだ。俺はお前が生まれたこことは違うずっと遠い場所で生まれた人間だ。」

 

自分の生い立ちを話し始める銀時にヴィヴィオは言葉を発するのをやめてただ聞いた。

 

「こんな綺麗な場所でも無ければこんなかたっくるしい人達が集まる場所じゃねぇ」

 

遠い日々を思い出しながら語る銀時

 

「汚ねぇ場所でバカな人間どもが集まる場所で俺は万事屋っつのをやっていたんだ。」

 

彼は管理局でも鬼でもましてや死神なんて物騒なモンでもない。

彼はただの‥‥

 

「俺は万事屋銀ちゃんオーナーの坂田銀時、仕事内容は頼まれれば何でもする。その為には依頼人には嘘ついてもらっちゃ適わねぇ、なぁ依頼人(ヴィヴィオ)」

 

溢れんばかりの涙が遂に決壊を破壊して漏れだしてきた。

 

「私は貴方を傷付けた、そこまでボロボロにした」

 

「俺の地元じゃこういうのをスキンシップっつうだよ」

 

「私は...ずっと昔の‥‥」

 

「俺の目の前に今いんのは‥‥」

 

「私は悪い子なんだよ。それでも前みたいにツナさん達に甘えても‥‥?」

 

「―――あぁ」

 

「パパ私を助けて!!私これでみんなとお別れなんて嫌だよ!!」

 

「あぁ、引き受けたぜ、ヴィヴィオ!!」

 

銀時は地面に落ちてあるヴィヴィオの剣を拾い構えて、

 

「お代はこれからの日常で‥なッ!!」

 

走り出しヴィヴィにまた突きを繰り出そうと走り込む。

そんな時一つの奇跡が起った。

ヴィヴィオの魔力を吸い上げたヴィヴィオの剣に反応してヴィヴィオと同調して体に溶け込んでいたレリックが浮かび上がる。

 

「あ...ああぁぁぁぁぁぁああ!!」

 

一早くにその存在に気づいた銀時はすぐ様、攻撃目標をレリックに変えて、

 

ぶつけ合う!!

 

レリックが放つ赤い光と銀時の持つヴィヴィオが持っていた剣が放つ光に目をくらませながらも力を緩めることは無い銀時。

 

「おおおぉぉぉぉぉ!!砕けやがれ!!」

 

先に折れたのは銀時が持っていたヴィヴィオの剣だが、

 

「銀さん!!」

 

そこに第三者の声が乱入してきた。

 

「っ!?おぉぉぉぉー!!」

 

負けじと柄で押し込んでいく銀時。

 

次の瞬間、

 

ドカーン!!

 

銀時、ヴィヴィオ、そしてもう1人をも巻き込む大爆発が起こり、

 

「えほ、えほっ‥ヴィヴィオ!!大丈夫か!?」

 

煙が晴れて漸くいつものヴィヴィオを見つけ出してすぐ様ヴィヴィオの下に走り出し、彼女を抱き起こそうとする銀時。

だが、

 

「来ないで!!」

 

ヴィヴィオからは拒否の声が上がる。

でもその拒否は銀時を拒絶するものではなく、

 

「ななころ...びやお...き.....な...なかこ...ろんでも.....はちかいで立ち上がる‥‥」

 

そして必死に自分の足で立ち上がるヴィヴィオを抱きしめずにはいられない銀時はすぐにヴィヴィオを抱きしめて、

 

「パパ、私...偉い?」

 

「あぁ、偉いぞ!!流石俺となのはの自慢の娘だ!!」

 

「えへへ」

 

抱きしめる銀時に第三者のいやもう1人の家族である、

 

「良かったね、銀さん、...良かったね、ヴィヴィオ」

 

涙を流しながら祝福を祝うなのは。

彼女が此処に来たと言う事は恐らくクアットロを倒したと言う事だろう。

ヴィヴィオが元に戻ったにも関わらずなんのリアクションも起こさないのはあまりにも不自然だからだ。

なのはが2人に声をかけておかえりと伝えようとしに行こうとすると、

 

 

 

ブシュ‥‥

 

 

―――――不幸が突き刺さる。

 

「えっ?‥‥がはっ‥‥」

 

なのはの純白のバリア・ジャケットがみるみるうちに彼女の血で赤く染まり始める。

彼女は赤くなった所に‥‥自分の身体から生えている鉄の刃に目を向ける。

 

「よぉ~待ちくたびれたぜ‥‥銀時‥‥」

 

そこに第四者の介入にまた彼等は不幸に突き落とされる。

その人物はなのはに突き刺した日本刀を引き抜く。

引き抜いた際、彼女の傷口から血が流れ出る。

なのは自身は自分の身に何が起きたのか分からずその場に倒れる。

銀時の目の前にはあまりにも意外すぎる人物が不敵な笑みを浮かべて立っていた。

 

「た、高杉ぃぃぃぃ!!」

 

高杉晋助‥‥かつて銀時と共に学問と剣術を学び、天人との戦いで共に肩を並べて戦場を走り抜いた戦友であったが今では袂を分かちあった男。

その男は今何をした?

コイツは背後からなのはを突き刺した。

自分達の因縁とは無関係のなのはを‥‥

ヴィヴィオの母親であるなのはを‥‥

 

 

「ママごと遊びは締めぇだぜ銀時」

 

「テメェェェェェー!!」

 

洞爺湖を握りしめて高杉に斬りかかる銀時。

ゆりかごの中で完全にイレギュラーでもあるが、因縁の決着をつける為の戦いが始まった。

 

 

 

・・・・続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





※ヴィヴィオの持つ剣は、映画 ワンピース 呪われた聖剣 の登場人物、サガが持っていた七皇剣をイメージして下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的82 赤と青のデュエット

 

 

 

~sideスバル~

 

空中を赤、青と色とりどりの橋が架かり交わるときに金属と金属がぶつかり合った音と火花が飛び散る。

空に架かっている橋を鳥のようなスピードで走っている少女が2人いた。

他ならぬノーヴェとスバルの2人だ。

2人は時には離れ時には交差してその都度、互いに己の拳と蹴りをぶつけ合っている。

なかなか粘るスバルに対してノーヴェの方はイラつきを隠せなく焦っている様子だが、スバルの方は表面上は怒りこそ見えないがそれでも焦りが見える。

 

「このっ!!いいかげんに落ちやがれ!」

 

(山本とも分断されちゃったし‥ティア達も大丈夫かな?大丈夫‥だよね…)

 

仲間と分断されその不安と分断された仲間の安否を気にするあまりスバルは悲しげな瞳を数秒見せてしまう。

だが、スバルのその瞳もノーヴェの怒りを焚きつけるには十分のようだ。

 

「おい、余所見とは随分余裕だな!?ハチマキ!」

 

「えっ?きゃあ!」

 

3回転を加えながらジャンプしてスバルの首元を蹴り飛ばす。

仲間の心配をするあまり、スバルはノ―ヴェの前で隙を見せてしまったのだ。

 

パリーン

 

ガラスを突き破り近くの廃ビルの中まで蹴り飛ばされたスバル。

 

「ちっ、外したか」

 

だが、スバルは寸前の所を加えられた力と同じ方向に跳んで力を逃がした。

しかし、それでも間に合わなくて力全てを逃がしきれずに残った反動と衝撃でビルの中にまで飛んで床に叩き付けられてしまう。

 

「いっっ‥‥」

 

首元を抑えながら上半身をまず起き上がらせる。

ガラスを突き破ったせいでスバルの体の彼方此方に小さな切り傷が生じる。

しかし、スバルは戦う姿勢を崩さない。

すると、すぐにノーヴェが追いついてくる。

スバルの行動を見てノーヴェは呆れる様に言い放つ。

 

「しつけぇな、お前ごときじゃアタシには勝てねぇんだよ」

 

窓から光が指す方を見ると一筋の影があった。

自分を追いかけてきたノーヴェだ。

 

「アタシとアンタじゃ戦闘機人としての出来が違うんだよ。出来が!!」

 

ノーヴェが勝ち誇った言葉を発するがスバルはこの言葉を違う意味に聞こえた。

 

「確かノーヴェ‥だっけ?」

 

「あぁ!?」

 

「それはどういう意味かな?」

 

「ふん、どうもこうもお前らゼロシリーズの姉妹は所詮、アタシ達が生まれる為の試作品だって事だ」

 

「‥‥」

 

「そうそう、アジトに居た時、お前の姉貴の世話をやらされていたんだけどよぉ~」

 

「っ!?」

 

ノーヴェが言う『お前の姉貴』‥それはつまり、ギンガの事を指している。

ギンガの事がノーヴェの口から出されピクッと反応するスバル。

そんなスバルを尻目にノーヴェは彼女に対して小馬鹿にしたような感じでアジトでの出来事を話し始める。

ノーヴェの話をスバルは俯きながら耳を傾ける。

スカリエッティに捕まっていた時、姉がどんな生活を送っていたのかが気になったのだ。

ちゃんと食事はもらえたのだろうか?

体に変な事をされていないか?

痛い事や辛い事をされていないだろうか?

それがどうしても気になったのだが、ノーヴェの口から出てきたのはスバルが心配している様なものではなかった。

 

「全く滑稽だったぜ‥お前の姉貴の姿はよぉ‥何をするにしても機械的なのにアタシの言っている事を全く理解できていない‥‥」

 

模擬戦でギンガに負けたにも関わらずその時のことを話さないノーヴェ。

意外と小物っぽい。

そしてノーヴェの言う『アタシの言っている事を全く理解できていない』は機械的な態度を改めろと言う事を指していたのだが、あの時のギンガに対してそれは無理な注文だった。

 

「まるでガジェット以下のロボットの様だったぜ‥‥まさに試作品のガラク‥‥」

 

(なっ!?消えた!?)

 

ノーヴェがギンガの事を『ガラクタ』という前に眼前のスバルの姿が消えたと思ったら、

 

ドコーン!!

 

「ガハッ!!」

 

「‥‥」

 

ノーヴェの腹部に凄まじい衝撃と痛みが襲い掛かる。

スバルがノーヴェの腹部に強烈な一撃を食らえたのだ。

 

「ぐっ…て、テメェ‥‥」

 

ノーヴェにとっては不意打ちをくらうかたちになったが、スバルとしては姉が此処まで酷く言われた事に対してどうしても我慢できなかったのだ。

 

「ごめん‥‥少し気を抜いていた。でも、こっからは全力でぶつかるよ‥‥ノーヴェ‥‥」

 

スバルは構え直してノーヴェに向き直す。

先程までのスバルと違い彼女の目は真っ直ぐとノーヴェに向ける。

ノーヴェもまたスバルを見つめる。

 

「ちっ、この試作品のガラクタ風情が!!舐めるなぁ!!」

 

「うおりゃぁぁ!!」

 

マッハキャリバーのローラを最大限回しそのスピードを乗せた拳をノーヴェは紙一重で躱すが次の最小限の旋回からの回し蹴りがヒットして柱に激突して頭から血が出ていた。

ノーヴェは頭を抑えながらスバルを見てから2人同時に違う方向に走り出してスバルは自分が入ってきた穴からノーヴェは近くの壁を破壊して、

 

「「ウィング・ロード(エアライナー)」」

 

両者お得意の魔法を空中に線の様に出してビルの周りを螺旋階段のように巻かれていた。

 

「だぁぁあぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぅおりゃああぁぁぁぁっぁぁぁぁあぁぁ!!」

 

スバルから勢いを殺すことなく放たれる上段回し蹴り。

ノーヴェもまたそれに合わせる形で蹴りを繰り出す。

 

「テメェもファーストと同じようになるんだから、抵抗しても無駄なんだよ!!抵抗すればするだけ痛い目を見るだけなんだからいい加減に諦めろ!!」

 

ノーヴェはスカリエッティがスバルを捕まえたらきっとセッテ、オットー、ディード達後発組の様に感情を消すと判断した。

彼女と敵対している自分が言うのもなんだが、スバルはあまりにも感情が豊かすぎる。

つまりそれほど、スバルは人間社会に適応していたと言う事だ。

そんなスバルをスカリエッティが感情をそのままにして洗脳するだろうか?

いや、答えは『NO』だ。

彼にとって感情は興味を持たない限り邪魔なモノ。

時間が無かったとはいえ、後発組のセッテ、オットー、ディードの3人は喜怒哀楽の感情を1つも入れていないのがその証拠だ。

姉のディエチは感情が薄い中、自分や妹のウェンディがこうして感情を持って生まれてきているのが不思議なレベルである。

ただ、最近ディードの様子がおかしかったのはノーヴェにとって意外であった。

稼働したての頃は寡黙で無表情だったディードがあの日、初任務から帰った後、自分にあそこまで突っかかって来た以降、ディードは様子が変わった。

スカリエッティが感情をプログラムしたわけでもないのに感情らしきものが勝手に芽生え始めているのだから‥‥

それでもスカリエッティはそれを踏まえてスバルを洗脳した時は感情を芽生えさせることなく調整するだろう。

それこそ、本当の殺人兵器として‥‥

 

「誰がお前らなんかの手駒になるか!!それにギン姉だってあの人がきっと元に戻してくれる!!」

 

「はん、誰だか知らねぇがソイツは無理だな!!今のファーストは血も涙もない殺人兵器だ。お前の言うあの人とやらも今頃は返り討ちにされている筈だぜ!!もしかしたら、ファーストもこっちに向かってきているかもしれないぜ」

 

ノーヴェはあの時の模擬戦の経験から今のギンガがそう簡単に負けるとは思えなかった。

 

「っ!?」

 

「まぁ、その場合、お前は姉貴と戦う訳だがな、その時はお前が無様に姉貴にぶちのめされるのを見学させてもらうぜ」

 

ニヤついた顔でギンガがこの場に来る可能性を指摘するノーヴェ。

 

(ちっ、本当だったら、そうなる予定だったのに、ファーストの奴、途中で何処かに蒸けやがって‥‥)

 

表情とは反面、心の中では直前で計画にはない独自の行動をとったギンガに対して毒づくノーヴェだった。

 

「そんなことない!!それにギン姉はファーストなんかじゃない!!ギン姉はギンガ・ナカジマって名前だ!!」

 

スバルがノーヴェにギンガの呼び方を訂正しろと言いながらノーヴェに拳を繰り出し、ノーヴェもスバルを迎え撃つかのように拳を繰り出す。

やがて、両者の拳がぶつかり合うと激しいスパークが発生する。

 

「くっ‥‥」

 

「このっ‥‥ポンコツ・セカンドの分際で‥‥」

 

スバルもノーヴェも一歩も引かない構えだ。

ノーヴェはそんなスバルの姿を忌々しそうに睨みつける。

 

「セカンドじゃない!!私はゲンヤ・ナカジマ、クイント・ナカジマの娘‥そしてギンガ・ナカジマの妹、スバル・ナカジマだ!!」

 

スバルは堂々と自らの名をノーヴェに告げる。

 

「ふん、だったら、テメェをぶちのめした後、ドクターに頼んでセカンドって名前に改名させてやるよ!!」

 

そう言ってノーヴェはジェットエッジに搭載されたスピナーを唸らせながらの蹴りを振り抜きながらスバルに迫る。

 

「おらぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ぐぅっ……!?」

 

スバルはノーヴェの蹴りを受けて床に叩きつけられる。

 

「ほら、いい加減に諦めろ。これ以上痛い思いをするのは嫌だろう?」

 

ノーヴェがスバルを挑発‥いや、見下した目で見下ろす。

 

「諦めて‥‥たまるか‥‥私は‥お前を倒して‥‥あの人とギン姉の帰りを待つんだ‥‥」

 

ボロボロに傷つきながらもスバルは立ち上がる。

そして全身が軋むような痛みに耐えつつ、スバルは構えを取る。

スバルのバリアジャケットはフェイトの真ソニックフォーム同様機動力を重視しているため、装甲部分や布の部分がほとんどなく露出が多い。

その為、ダメージが直接身体に行きやすく、スバルの身体の彼方此方から出血が見られる。

 

「確かに‥‥ノーヴェ‥貴女の言う通り‥‥私は痛いのも‥相手に痛い思いをさせるのも嫌い‥‥」

 

息を切らしながらノーヴェに自分の心情を語る。

 

「それでも‥‥それでも、私は負けない!!スカリエッティの思い通りに何てさせない!!私の大好きな人達の頑張りや、想いを踏みにじるようなスカリエッティを……私自身が認めたくない!!行くよ、マッハキャリバー!」

 

「OK」

 

スバルはウィング・ロードでノーヴェとの距離を詰める。

 

「ほざけ!!ポンコツの分際で!!ジェットエッジ!!」

 

「OK」

 

するとノーヴェの方もスバルを迎え撃つかのようにエアライナーを展開させてスバルへと迫る。

そして両者の距離が近づくとノーヴェは腕に装備されたガンナックルでスバルを銃撃してくる。

寸前の所で回避したり、防御をすれば確実に隙を作る事になりノーヴェの大技を受けてしまう。

スバルは肉を切らせて骨を切る手段に打って出た。

ノーヴェのガンナックルの弾は容赦なくスバルの身体を傷つける。

しかし、スバルはそれに怯むことなくノーヴェ目掛けて距離を詰めていく。

 

「なっ!?」

 

その行為にノーヴェは驚愕する。

つい先程まで、口では『痛いのは嫌い』と言っていた奴が、自分が傷つくことを気にすることなく迫って来るのだから

 

「いくぞ!! リボルバーシュート!!」

 

「しゃらくせぇー!!」

 

スバルの拳とノーヴェの拳がぶつかり合う。

 

「くっ‥‥」

 

スバルは肉を切らせて骨を切る手段で負傷した事とやはり、心の中では相手を傷つけたくないと言う心理が働き自分の心に強力なリミッターをかけていた為、この拳のぶつかり合いはスバルがノーヴェにやや押されていた。

その証拠にスバルはまだ戦闘機人としての本能を発揮していない。

それはスバル自身が昔クイントに言われた事を律儀にちゃんと守っている為だった。

生まれた当初スバルはちゃんと自分は普通の人間ではなく戦闘機人である事を自覚していた。

だが、クイントの手によって助け出され、姉のギンガと共にナカジマ家に養子入りしてからはクイントに自分が戦闘機人である事を忘れ1人の人間として生きて行く様に教えられた。

それはギンガも同じだった。

スバルは当初、自分が生まれた研究所では、自分は戦闘機人であり、戦闘機人はただ戦う為の存在で人間ではなく道具だと教えられてきた。

しかし、生まれた時からスバルは自身の存在が人間でも道具でもどちらでもいいとして、傷つくのも嫌だし傷つけるのも嫌と言う戦闘機人としては不出来な心を持っていた。

研究者としてはこのままでは兵器として大きな支障をきたすと感じスバルを精神改造しようとしていた。

だが、研究者たちがスバルを精神改造する前に当時、クイントが所属していやゼスト隊が研究所を摘発しスバルは無事に保護されたのだった。

クイントに保護された後、姉のギンガはスバルを守るためにクイントからシューティングアーツの手ほどきを受けた。

しかし、スバルはやはり、傷つくのも嫌だし傷つけるのも嫌と言う事でギンガと共にクイントからシューティングアーツを習わなかった。

ギンガとスバルにとって姉妹以外の家族が出来て平和に暮らせると思ったが、その2年後、クイントは任務中に殉職し還らぬ人となってしまった。

ギンガは母が自分達と同じ戦闘機人の事を追っている事を母が父に話している事を聞いており、母に変わって自分が戦闘機人事件を追いかけ解決すると決めて管理局の訓練学校へと進学して行った。

スバルは母を失った悲しみはあったが、ギンガのように母の意思を継いで戦闘機人事件を追いかけようとは思わなかった。

そんなスバルに転機が訪れたのは4年前の空港火災に巻き込まれた事だった。

訓練校を卒業するギンガが配属先となる父の部隊、108部隊の隊舎に行くのでスバルも一緒についてきたのが、その際空港で起きた爆発火災事故に巻き込まれてしまった。

この時、ギンガはフェイトに救助され、スバルはなのはに救助された。

そしてなのはの魔法を見て、なのはに憧れてスバルも自分の力は、なのはが自分を助けてくれたように他の人を助けられるんじゃないかと思いそこから魔法の勉強とギンガにシューティングアーツを習い始めたのだ。

だが、戦闘機人としての力は封印してきた。

でも、今回ばかりはそうはいっていられないかもしれない。

ノーヴェはスバルを傷つける事、倒す事に一切の躊躇が無い事から全力を引き出している。

このままでは自分はノーヴェに負けてしまうかもしれない。

負ければノーヴェが言うように自分はスカリエッティの手によって洗脳されてしまうだろう。

そうなれば、なのはやティアナに迷惑をかけてしまう。

スバルにとってこの勝負は絶対に負けられなかった。

 

「ぐっ‥‥」

 

「くそっ‥‥」

 

スバルとノーヴェの間で青と黄色のスパークがバチバチバチとぶつかり合う。

 

「くっ‥‥」

 

「おらぁぁぁぁぁぁ!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

ノーヴェとの拳の競り合いにスバルは負けてしまい吹き飛ばされる。

 

ドカーン!!

 

吹き飛ばされたスバルはビルのコンクリートの壁に叩き付けられる。

 

「ぐっ‥‥」

 

余りの痛みと衝撃でスバルの意識が朦朧となる。

 

(やっぱり私じゃ勝てないの‥‥?)

 

(私はノーヴェの言う通り試作品のガラクタなの‥‥?)

 

(もう‥どうでもいいや‥‥)

 

(これ以上傷つくのも痛いのも嫌だし‥‥)

 

スバルが諦めかけたその時‥‥

 

 

貴女らしくないわね、スバル。

 

スバルの脳裏に1人の女の人の声が響いた。

 

(えっ?)

 

その声はスバルにとって忘れられない人の声だった。

 

戦いなさい!!スバル!!

 

(お‥お母さん?)

 

そう、スバルの脳裏に聞こえたのは亡き母、クイントの声だった。

 

どんなに辛くても決して現実から目を背けてはダメよ!!スバル!!

 

(お母さん‥やっぱりお母さんだ!!)

 

スバル、貴女の優しさは1つの美徳でもあるわ。でも、時には力を使わないと大事なモノを守れない事だってあるのよ。

 

ギンガだって貴女を守るために力を求めたのよ。

 

貴女だってそうだったんじゃないの?

 

(‥‥)

 

クイントの問いかけにスバルは何も答えられなかった。

でも、クイントの問いかけはスバルを局員にさせた原点を思い出させてくれた。

 

さぁ立ち上がって1歩前に出なさい!後ろから私が支えてあげるから!!

 

(そうだ、私はなのはさんみたいに人を助ける為に局員になったんだ!!)

 

あの子(ノーヴェ)もスバルやギンガと同じ人としてやり直せる。ただそのやり方を知らないだけ‥‥

 

だから、私に代わって貴女達が教えてあげなさい。

 

戦いだけが全てじゃないって‥‥彼女も人間として、人として皆と一緒に暮らしているって‥‥

 

(お母さん‥‥うん、わかったよ!!私、もっと頑張るから!!)

 

ええ、お母さんはいつでも貴女達の事を見守っているからね。

 

 

姿は見えなかったけどクイントの声は確かにスバルに聞こえた。

それは例え幻聴だったとしてもスバルにとっては関係ない。

自分の傍には常に母が居てくれて、その母はノーヴェの事を自分に託したのだ。

ならば、母の想いに応えなければならない。

スバルは再び前に踏み出した。

 

「これくらいじゃあ、くたばってはいないだろうが、機能停止ぐらいにはなっただろう?さて、さっさと回収して‥‥」

 

スバルを吹き飛ばしたノーヴェはこれでもう勝負はついたと思っていた。

後はスバルの身柄をスカリエッティの所に持って行くだけだ。

ノーヴェがスバルの身柄を確保しようとしたその時、スバルが吹き飛ばされたビルの瓦礫から溢れんばかりの青い魔力光が輝きだした。

 

「な、なんだ!?」

 

やがて、瓦礫が吹き飛ぶとそこには青い魔力光のオーラを纏ったスバルの姿があった。

 

「コイツ、まだ動けたのか?」

 

スバルのしぶとさにノーヴェはうんざりする想いと共に僅かに恐怖が芽生え始めた。

コイツは何度倒してもゾンビのように復活して自分の前に立ち向かって来るのではないか?

そんな恐怖だ。

そしてスバルをよく見ると魔力光のオーラを纏っているだけでなく目の色がエメラルドグリーンから金色に変わっていた。

スバルは長年ずっと封印してきた戦闘機人としての力を覚醒させたのだ。

 

「コイツ、ポンコツの分際で今までアタシに手加減していたのか?」

 

格下相手のスバルに手加減されていたことを知り、ノーヴェの怒りのボルテージは上がっていく。

 

「ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく!!テメェのその態度マジ、ムカつくんだよ!!いい加減に沈めやコラァ!!」

 

ノーヴェはジェットエッジを吹かしてスバルへと向かう。

ノーヴェの回し蹴りを右手でガードしてから両腕で彼女の足を絡みとってから投げ飛ばして柱に衝突し、

 

「がハッ!」

 

ノーヴェは吐血する。

 

「て、テメェ!!」

 

スバルはそのまま追撃をするもノーヴェは地面にひれ伏しスバルの攻撃を躱し、ノーヴェはスバルの足を引っ掛けてスバルを転ばそうとするが、スバルは片腕を軸に回りバク転をして後ろに下がり拳を構え、その隙にノーヴェも立ち上がる。

 

「テメェ!!このクッソがァぁ!!もういい、任務なんざぁ、忘れた!!ぶっ殺す‥ぜってぇーぶっ殺してやる!!」

 

血管が切れるのではないかと言うぐらいノーヴェの怒りのボルテージは益々上がっていく。

怒りが頂点に達したのかノーヴェは自分に与えられた任務を放棄する宣言まで言い放つ。

そんなノーヴェの姿を見てスバルは、

 

もし、あの時、白蘭の手を取っていたら私はあんな風になっていたのかな?

もし、リボーンやなのはさんギン姉、お父さん、お母さんそれにティアがいなかったら私は.....

戦闘機人として彼女と向き合って初めて感じる、彼女の拳は何か嫌だ‥‥

彼女の拳は破壊する為だけ振っている。

でも、その拳は何だか虚しく、泣いているようにも思える。

ノーヴェの姿はまさにスバルのIfを表していた。

 

「これが最後の勝負‥‥マッハキャリバー‥いくよ?」

 

スバルは落ち着いた様子で愛機へと声をかける。

わかって欲しい今の自分(ノーヴェ)の拳がどれぐらい濁っているかを‥‥

 

「OK」

 

ノーヴェを迎え撃つかのようにスバルもマッハキャリバーを加速させる。

 

 

ノーヴェに勝って、分かり合うんだ!

私の拳は決して人を傷つける訳じゃない。破壊のためじゃない! そう、分かり合う為にあるんだ!

 

 

「いくよ!!ノーヴェ!!これが私の全力全開だぁぁぁぁー!!IS発動ぉぉぉぉー!!」

 

「なっ!?」

 

スバルのリボルバーナックルが唸りを上げてノーヴェへと迫る。

 

「ちっ」

 

「振動拳!!」

 

「ぐっ‥‥」

 

またもやスバルの拳とノーヴェの拳がぶつかり合う。

しかし、今度のぶつかり合いはこれまでのとはわけが違った。

スバルの拳とノーヴェの拳がぶつかり合った時、ノーヴェの身体全体にこれまで経験した事のない激痛が走る。

 

「ぐっ‥‥ガぁァァァー!!」

 

あまりの激痛にノーヴェは耐えられずに吹き飛ばされ、地面を何度も跳ねて転がる。そして起き上がろうとしても身体中が激痛と痺れで起き上がれない。

スバルの戦闘機人としての力、IS 『振動破砕』

その振動破砕の共振波をナックルスピナーの周囲に留め、任意対象“のみ”を確実に粉砕する応用攻撃。

咄嗟の思い付きの攻撃であったが上手くいった。

 

「て、テメェ‥‥」

 

ノーヴェは痺れと激痛の中、何とか立ち上がろうとする。

 

「ノーヴェ‥私と貴女は同じ戦闘機人‥でも、戦いだけが戦闘機人の全てじゃないよ‥‥私やギン姉だって同じ戦闘機人でも人として暮らしていけるんだよ。それを分かって欲しい」

 

そんなノーヴェにスバルは戦闘機人の可能性を説く。

 

「い、今更そんな話信じられるか!!」

 

「信じて!だって私達は人間何だから‥‥」

 

「あぁ!?何言ってんだ!?テメェは!?アタシは戦闘機人‥ナンバーズⅸのノーヴェだ!!人も殺す為に作られた殺人兵器なんだ!!テメェら甘ったれと一緒にすんな!!」

 

「ノーヴェ、それは本気で言っているの?」

 

「えっ?」

 

不意の迫力に気圧されるノーヴェ。

スバルは怒るように言葉をたたみ掛ける。

 

「本当にノーヴェは殺す為だけが自分の存在の証明だなんて何て本気で言っているの?」

 

「あぁ、そうだ!!アタシ達はその為に作られたんだ!!だから、お前らみたいな平和ボケの甘ちゃんとは違うんだよ!!」

 

ノーヴェはそう言った瞬間、パチーンと乾いた音が周囲に響く。

スバルはノーヴェの頬を平手打ちしてノーヴェは毒を抜かれたようでただ驚いた顔でスバルを見た。

 

「人殺しの力も矛先を変えるだけでどんな道にも使えるノーヴェが本気で人の為にやりたいと思うならば私はいくらでも力を貸すよ」

 

すると時から一転、慈愛に満ちたスバルの顔を見惚れていたノーヴェはプイと顔を背けて、

 

「アタシは戦闘‥「人が人である定義があるなら」」

 

以前自分の迷いを断ち切ってくれた言葉をノーヴェに伝える。

 

「喜怒哀楽の感情を持って人を思える心があり、自分の曲げたくない信念、それだけあれば十分だよ」

 

「私にそんなモン‥‥」

 

「無いんなら一緒に探そうよ、ノーヴェ!!」

 

ビルの隙間から僅かだが光が差し込まれた。

満面の笑みで倒れているノーヴェに手を差し述べるスバル。

ノーヴェはスバルの手を取るか迷うが、

 

「しゃあねぇ、でも説き伏せられたとかじゃねぇぞ負けたからだ!!今度はぜってぇ勝つ!!」

 

差し出されたスバルの手を握り、ノーヴェは表の世界に一歩踏み込んだ。

だがまだ恥ずかしいか顔を赤くして目をつぶっていた。

 

(くそっ、ファーストだけでなくセカンドにまで負けるなんてなぁ‥‥でも、いつかは必ずコイツ等を越えてやる)

 

ノーヴェはこれまで感じたことのない感覚とナカジマ姉妹にいつかリベンジをすると心に誓いそのまま気を失った。

 

(ノーヴェ‥寝ちゃったんだ‥‥)

 

「‥‥やっぱり慣れない事はするもんじゃないね‥‥ティアが居たらきっと『アンタらしくない』って言っていたね、きっと‥‥」

 

「確かに‥でも相棒はよく頑張った」

 

「えっ?マッハキャリバー今、相棒って‥‥」

 

マッハキャリバーに相棒だと認められて思わず微笑むスバル。

 

「ありがとう‥‥そしてお疲れ、マッハキャリバー」

 

「お疲れ様、相棒」

 

ノーヴェを倒したスバルであったが、ずっと封印してきた戦闘機人モードを初めて発動させた事とノーヴェとの戦闘ダメージで此方も身体中がギシギシといっている。

 

「ティアや山本を助けたいけど、ちょっと無理‥かな‥‥?ゴメン‥みんな‥‥」

 

ノーヴェを倒したが、まだまだナンバーズは居るし、スカリエッティの協力者も居る。

それに姉であるギンガも‥‥

でも、この場に他のナンバーズや協力者、ギンガが来る気配がない事から皆は既に連中と戦い勝っているのかもしれない。

そう思うと不安から一転、安心感がスバルを包み込む。

 

(お母さん‥私、頑張ったよ‥‥)

 

そう言ってスバルは倒れ、少しの間空を見上げていたが、次第に眠くなりそのまま目を閉じて意識を手放した。

でも、その表情はとても満足そうに微笑んでいた。

そして、彼女の手はノーヴェと仲良さそうに繋がれていた。

その様子は先程まで生死をかけて戦っていた仲には見えず、試合をしてそのまま疲れて寝てしまった姉妹の様に見えた‥‥。

 

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的83 錯覚は人のここから映し出される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ミットチルダ 首都 クラナガン 再開発地区 とある廃ビル ティアナSid~

 

 

ティアナは故意か事故か建物の中に追いやられその建物ごと結界に入れられた。

 

「残念だが、お前が次の日を見ることはない。お前は此処で死ぬのだからな」

 

「でもまぁ安心するっス。全員纏めて一緒にあの世に送ってあげるっス。だから寂しくはないッスよ」

 

「戦闘‥機人…」

 

ティアナの相手はツナが以前。フェイトと共にクルーズ船で戦った戦闘機人のチンク、先日の公開陳述会で目にしたウェンディの2人がティアナの前に立ち塞がった。

 

(あ~あ、殺気と狂気を滲みだしちゃって‥少しはスバルみたいな能天気なポンコツぶりを見せてくれないかしら?)

 

2人の戦闘機人を前にしてティアナは引き攣った笑みを浮かべた。

同じ戦闘機人でも自分の知るナカジマ姉妹とは雰囲気が大違いだ。

育った環境の違いで此処までも違いが出るとは‥‥

数は1対2と俄然としてティアナが不利であるが、相手は見逃してはくれない様だ。

それに無理に倒す事はない。

此処に2人居ると言う事は、他の誰かは戦闘機人と接触しない可能性がある。

自分に援軍が来ないとは言い切れない。

 

(やるだけやってみないとね‥‥幸い相手の戦闘機人の情報はある!!ランスターの弾丸は全てを貫く!!それは自身の信念もね!!)

 

ティアナは深呼吸をして2人の戦闘機人と対峙した。

 

(ふぅ~……じゃ、まずは状況分析から始めようかしら)

 

敵と対峙しながらもティアナは冷静に状況を分析している。

裏をかかれこそしたが、ティアナは一切動揺していない。

正確には動揺を押し込め平静を保っていると言うべきだろう。

この敵に囲まれている状況下で動揺やパニックを起こせばそれは死活問題となる。

ましてや相手は自分を気絶させたり、捕縛しようとしているのではなく、殺そうとしている相手なのだから、こんな時こそ冷静さを失う訳にはいかない。

視線の先の敵に気取られないよう注意しながら大きく息をつき、さりげなく周囲の様子に気を配る。

場所はコンクリートで囲まれたビルの屋内で結界が貼られている為、移動範囲は限られている。

壁や床の傷み具合などからして、廃ビルのうちの1棟。

この場所を切り抜けさえすれば、仲間たちとの合流は難しくないし、ナンバーズ2人を仕留められれば戦況は一気に此方へ有利になる。

まぁ、問題はどうやってこの場を切り抜けるかなのだが……。

 

「私の相手は、アンタ達って事で良いのかしら?」

 

ティアナは念の為に自分が相手のするのはチンクとウェンディの2人なのかを尋ねる。

まぁ、敵であるあの2人が正直に『そうだ、我々2人がお前の相手だ』と言うことは期待していない。

それにこのビル全体を結界で包み込んでいるのは恐らく目の前の2人の戦闘機人ではない。

小柄で髪は銀髪、眼帯をつけているチンクの能力は金属を爆発物に変える能力。

そして隣に居るもう人の赤髪でパイナップルの様な髪型の戦闘機人は、手に持っているボードの様なモノからどう見ても結界を張っているのはこの赤髪のパイナップルでもない。

 

(多分、この結界を張っているのはオットーって言う戦闘機人ね‥‥)

 

事前に情報を持っているのと持っていないのではやはり、違いが出る。

赤髪のパイナップル髪に関してはまだ情報がないが、チンクの情報は重要だった。

何も知らずに彼女の傍に行けば爆発と衝撃に巻き込まれることなど直ぐに予想できる。

そして、この結界を張っている別の‥3人目の戦闘機人‥‥オットーの存在。

オットーはナンバーズの中でも後方支援型の戦闘機人でこうした結界やガジェットの様にAMFを発生させることが出来る能力を有している。

結界がある限り、ティアナはこのビルから出る事は出来ないが、これだけ大きなビル全体を結界で包み込むほどの力だ。

いくら戦闘機人とはいえ、これだけ大きなビルの結界を維持するのは大変な筈。

その証拠にオットーは結界だけでAMFは出していない。

オットーがAMFを出せないから確実に自分を仕留める為に態々2人の戦闘機人を自分にぶつけてきたのかもしれない。

また、オットーが結界を張っている間はオットー自身が無防備になっている可能性もあり、その場合オットーの護衛をしているガジェットか戦闘機人もいる可能性もある。

つまり、ティアナは眼前の2人の戦闘機人の他にオットーらとの第二ラウンドも視野に入れなければならなかった。

だが、まずはこの状況を切り抜けるしかない。

 

「これは、出し惜しみなんかしてられる場合じゃないわね。いける?クロスミラージュ?」

 

「オーライ、マイ・マスター」

 

ティアナは小声で自らの愛機に呼びかける。

 

「さあ、どうだろうな」

 

そしてチンクはティアナの問いに答えるがやはり、はぐらかすような答えだった。

まぁ、最初から素直に答えてくれるとは期待していなかったのでティアナとしては、落胆はしないし、チンクの回答は予想の範囲内の回答だった。

 

「行くぞ、ウェンディ」

 

「了解ッス」

 

(……来る)

 

放たれたスティンガーには誘導性が付与されており、様々に角度を変えてティアナへと殺到する。

またそれにやや遅れてウェンディもライディングボードに乗って疾走を開始。

相手が動きを見せたことでティアナも行動を開始する。

あの赤髪のパイナップルはスバルとは異なるが、機動力重視の戦闘機人。

あの戦闘機人が前衛でチンクがその隙を突いてスティンガーで攻撃すると言う戦法なのだろう。

 

(あのナイフ‥‥恐らく触れたり、あの戦闘機人の自由意思で起爆する筈‥‥それを防ぐには届く前に仕留めないと!!)

 

「クロスファイアシュート!!」

 

ティアナが自分に迫るスティンガーを次々と撃ち落していく。

案の定ティアナの予想通り、チンクの投げたスティンガーはティアナの魔法弾に当たった瞬間に爆発を起こす。

そこへ、スティンガーに続いてライディングボードに乗ったウェンディが迫る。

とはいえ、この程度はティアナにとっては想定の範囲内の事。

まずは機動力のあるウェンディを仕留めれば、中距離・近距離が得意なチンクだけとなる。

彼女1人ならば、遠距離が得意な自分1人でも何とか対処が出来るとティアナはそう考えていた。

此方へ暴走特急の様に突っ込んで来るウェンディ。

こういった機動力が得意な奴の相手は相棒との訓練で慣れている。

ティアナは一気に勝負をかけようと砲撃準備に入る。

だが、当のウェンディはティアナを目前に突如進路変更を行った。

 

(えっ?)

 

あまりの呆気なさ‥‥と言うか、ウェンディの行動に理解が追い付かずに一瞬ティアナの思考が停止する。

その為、僅かに気付くのが遅れた。

突然進路を変えたウェンディが残して行った置き土産に‥‥

視界一面を埋め尽くすほどの大量のスティンガーに‥‥

 

「やばっ!!」

 

ティアナが行動する前に視界が眼を焼く程に強烈な白一色の光で塗りつぶされる。

チンクは遠距離攻撃を行う際にウェンディに爆撃機の様な役目を任せていたのだ。

ウェンディの機動力を使い目標(ティアナ)の近くにスティンガーを運ばせて、近くにスティンガーをばら撒き離脱、そしてチンクがスティンガーを起爆させる。

流石は姉妹‥ウェンディの機動力を熟知している戦い方であり、息の合ったコンビネーションだ。

しかし、事前にチンクの情報を得ているティアナだってこれで終わりではない。

爆炎が収まるとそこにはティアナの姿はない。

スティンガーの爆発で木端微塵になったのかと思われたがそれも違う。

いくら木端微塵になっても何かしらの形跡は残る筈だ。

血液やティアナの身体を構成している肉片が‥‥

それさえも無いと言う事は、ティアナは上手く回避する事が出来たのだ。

 

「居ないッス!!まさかさっきのは幻影!?」

 

着弾の衝撃によりティアナの姿が消失した事で、2人はそれが幻術によるものであった事を遅ればせながら理解する。

ティアナがチンクの情報を得ていたようにスカリエッティ側も当然、六課のメンバーの情報ぐらいは把握しており、ティアナがガンナータイプの魔導師でその他に幻術使いである事も事前に知っていた。

しかし、2人にとっての予想外は自分達戦闘機人のシステム眼をだます程の能力を有しているとは思っていなかった事である。

 

「逃げられたか‥‥オットー、敵の位置はモニターできるか?」

 

チンクは結界を張っているオットーと連絡を取る。

このビルは今、オットーの箱庭と言っても過言ではない状態だ。

故にこのビルに居る限りはオットーの目から逃げ隠れする事は不可能だ。

 

「大丈夫です、チンク姉さま。逃げられたと言っても、そこはあくまでも結界の中。所詮、相手は袋のねずみ‥‥逃げ切る事は不可能‥‥」

 

オットーは早速結界内のティアナを探す。

しかし、

 

「ん?」

 

「どうした?オットー」

 

「すみません、チンク姉さま。ちょっと面倒な事になっています」

 

「どうした?」

 

「どうも、相手は光学迷彩の魔法を掛けているみたいで現在位置が特定できません。すみませんが解析できるようになるまでは直接探してもらうしかなさそうです」

 

「嘘っ!?アイツ、私ら戦闘機人のシステム眼を騙しているんッスか!?」

 

「なるほど、了解した。まぁ、それでも悪あがきに過ぎんがな」

 

「それくらいやってもらわないと面白くないッスからねぇ~セカンドと組んでどうにか半人前のへっぽこガンナーがどこまでやれるか、楽しませてもらうッスよぉ」

 

そう言葉を交わしながら、ウェンディとチンクはティアナを探し始める。

廃墟のビルには静寂が取り戻される。

だが、静かな空間の一部に、突如として小さな歪みが生じた。

それはまるでターミネーターが未来から送られて来たかのような光景だった。

その歪みは瞬く間の内に巨大化し、人1人分の大きさとなり、その歪みの向こうから姿を現したのは未来からやって来たターミネーター‥‥ではなくティアナだった。

 

「ったく、アイツら言いたい放題言ってくれるわね。まぁ、半人前以下って言うのは否定できないけど……」

 

悪態をつきながら、壁に背を預けるティアナ。

彼女はあの時、スティンガーが爆発する直前にある魔法をつかい、この難を逃れたのだ。

 

(オプティックハイドⅡ‥‥アイツの言う通り、幻術にはまだまだ進化の余地があったって事ね‥‥)

 

ティアナの脳裏に以前行った模擬戦前の獄寺の言葉が過ぎる。

彼女はスティンガーが爆発する直前に幻影と入れ替わって難を逃れ、今はステルス能力の魔法、『オプティックハイド』にてチンクとウェンディをやり過ごした。

しかし、チンクとオットーの会話からこのステルス機能の魔法もそう長くはもたない様だ。

それに幻影と入れ替わるオプティックハイドⅡは有幻覚魔法、『ファントム・シルエット』同様、かなりの魔力と集中力を必要とする為、そう何度も使用はできない。

事実、ティアナが実戦でこれを行うのは初めての事だし、元々ティアナは魔力の量が魔導師としては多い方ではない。

 

「それでもムカつくことには変わりないし、落とし前は後でしっかりつけさせてもらうわよ」

 

あの2人を倒して捕らえる為の策を考える。

敵が自分の正確な位置を捉えるまでに、恐らくそう時間はないだろう。

それに敵はあの2人だけではない。

少なくともビルの外でこの結界を張っている戦闘機人、オットーも居る。

 

「とりあえず、好き放題言ってくれたお礼に1発ぶん殴ってやりたい所なんだけど……っ!?」

 

そこでフッと、ティアナはある事に気付く。

射撃型の自分が、「ぶん殴る」は流石に無い。

そう言うのはスバルがお似合いである。

戦闘スタイル的にもそうだが、そういう直情的な行動選択は治すべき悪癖だ。

どうやら無意識のうちに頭に血が上り熱くなっていたらしい。

訓練校時代も上位の成績を取った時に周りの連中から、

 

「あの子、士官学校も空隊も落ちたんでしょう?」

 

「格下の陸ならトップ取れると思っているんでしょう?」

 

「恥ずかしくないのかしらね」

 

なんて皮肉と嫉妬を含んだ罵倒を浴びた事がある。

その時も思わず暴言を吐いた同期生を殴り掛かろうとしたが、この時はすぐ隣に居たスバルに止められた。

それに六課に来た時や獄寺が自分の大事なロケットを壊した時の1件でも自分は冷静に事を運べなかった。

そう思うと自分は意外と短気なのかもしれない。

 

「いけない、いけない。心を落ち着けなさい、ティアナ‥苛立ちも怒りも深く秘めておかないと‥‥」

 

ティアナは頭を振ってこみ上げて来た怒りを抑える。

例えどれほど感情を刺激されようと、それを呑み込んで冷静沈着に物事を達観した視点で見る。

なにより、熱くなっていては良い策など思い浮かぶ筈も無い。

 

(さて、あのチンクとか言う銀髪眼帯についてはある程度の情報は解析できた‥‥この結界を張っているオットーについてはまだ、無視していいわ‥‥問題はあの赤毛パイナップルのウェンディね‥‥)

 

六課はまだウェンディとの交戦機会がないので、ウェンディに関して情報がなかった。

 

(基本はあのラィディングボードによる機動戦だと思うけど、彼女、手には何も持っていなかったわね‥‥まさか、あのボードによる体当たりだけが攻撃手段なんて思えないし‥‥)

 

これまでの動きでウェンディはボードによる移動でスティンガーをばら撒くことしかしていない。

確かにあのボードの機動力で体当たりをされれば自動車に轢かれるぐらいのダメージを受けるかもしれない。

だが、これまでのナンバーズの攻撃能力としてはあまりにもショボい。

 

(となると、あのボードに何かしらの武装か仕掛けが施されているとみた方がいいわね)

 

ティアナはウェンディのボード自体に何かしらの武装が施されていると予測する。

しかし、まだ確証がない。

この目でちゃんと見て確証を得なければならない。戦場で都合のいい憶測は判断を謝らせる元になりかねない。

その他にもあの2人の連携の完成度、それぞれの傾向など、欲しい情報は幾らでもある。

圧倒的に不利な状況である事に違いはない以上、それらを少しでも多く揃える事が生死を分けるだろう。

 

(いっそ、幻術を囮に使うべきかしら?)

 

ティアナはウェンディの能力を見る為にファントム・シルエットを使うべきかと迷う。

だが、あまり多用すればこっちが魔力切れを起こす可能性もある。

あの模擬戦からティアナは鍛練を怠らず、あの時の模擬戦では1回使っただけで魔力切れを起こしたが、今では数回ならば使用しても魔力切れは起こさないレベルにまで上達していた。

それでも基本魔力が少ないティアナにとっては重要な問題だ。

それに情報収集のみならば、従来のフェイクシルエットだけでも事足りる筈だ。

 

「じゃ、やることも決まったし…………行きますか!」

 

ティアナはその場を後にする。

幻術を駆使し、誘導弾で牽制しながら情報を収集していたのも僅かな時間。

相手もバカではない。

不完全ながらも対策が為され始め、幻術の効果は激減し始めた。

疾駆するウェンディを惑わそうと出現させた幻影がボードに装備されていた大口径の砲撃よって吹き飛ばされる。

 

(やっぱり、ボードに武装が施されていたわね)

 

ティアナの予想通りウェンディのライディングボードは移動手段だけでなく攻守も兼ね備えた武器だった。

 

「さすが、オットー、仕事が早い」

 

「そうッスね。でも、初めに比べればだいぶマシとはいえ、やっぱりめんどい奴ッス。なんかもっと手っ取り早い方法はないもんッスかねぇ」

 

あまり気の長いちまちました戦いは好まないのかウェンディがぼやく。

オットーが組んだプログラムのおかげで、大体5割の確率で幻影を見抜けるようにはなって来た。この調子で行けば、遠からず完全に見抜けるようになるだろう。

だが、現状ティアナの幻術から完全に抜け出せたわけではない。

戦闘機人の自分らが格下と思っていた相手に今なお踊らされて、良い気分がする筈もない。

ティアナ同様、チンク達としたら、さっさとティアナを片付けて他のナンバーズの援軍に向かいたいのだ。

かと言って、ここで苛立ちに身をまかせれば相手の思う壺。

それがわからない程、チンクもウェンディもバカではない。

そんな2人の下にティアナのクラスファイヤシュートがいくつも飛来する。

線を向ければ、ティアナが瓦礫や柱の影から姿を見せていた。

ただしその数、実に5人。

幻術を使用しているのは明らかなのだがそこに居るティアナが全員偽物なのか、それとも本物が紛れ込んでいるのか。

幻術使い特有の戦法に、2人は知らず知らずのうちに眉をしかめた。

もう何度も繰り返してきた事なのだが、この様な謎掛け染みた戦闘はやはりやり辛い。

いくら5割の精度で幻影を見抜けるとは言え、逆に言えばまだ半分は見抜けないと言う事である。

チンクのスティンガーにも数に限りがある。

こうなれば確実に幻影とわかる物だけは無視し、残る判然としないものは残さず切り捨てていく。

スティンガーの投擲距離外のティアナもいるが、それらはウェンディがしっかり対処している。

これなら、本体がいるのなら本体にダメージを与えられるし、いなくても幻影はすべて消失する。

 

「くっ」

 

チンクが眉をしかめ、改めてティアナの居所を探ろうとする。

すると、着実に性能が向上しつつある対幻術プログラムが、ある1点に不審な存在を発見した。

 

「そこだ!!」

 

「なっ!?」

 

「やっと見つけたッスよ!!」

 

チンクのスティンガーの投擲がティアナを襲う。

左肩を掠め、今まで姿を消していたティアナが姿を現した。

ステルス魔法のオプティックハイドが解けたのだ。

チンクの後ろにはボードを構えているウェンディの姿。

ティアナの戦術に落ち度はなかった。

ミスがあったとすれば、対幻術プログラムの学習速度を見誤ったと言う1点のみだ。

 

「このっ……!」

 

思い切り後ろに飛び下がりながら、銃口を向けるティアナ。

だが、チンクも今更誘導弾や幻術を使う隙を与えるつもりはない。

これまでの戦いからティアナにこれ以上時間をかけている暇もないし、あの幻術にも誘導魔弾にも正直イライラしていた。

こんな厄介な敵の相手はもうたくさんだった。

AMFが使用できればこんな奴、もう片付いていた筈だ。

その肝心のAMFが使用できないので発生用にガジェットを連れて来ればよかったと今更後悔したが、その片ももうすぐに着く。

確実に息の根を止める為、チンクは迅速に容赦なく徹底的に心をぶらすことなく一足飛びでティアナとの距離を詰める。

IS能力ではなく直接スティンガーでティアナの心臓を突き刺すつもりだった。

そして、ティアナの周囲に誘導弾が展開されるより速く、ティアナの心臓にスティンガーを突き立てようとして‥‥

 

「っ!?」

 

全身を駆け巡った危機感に従い半歩身を引いた。

その直後、チンクの右頬にツゥッと薄らと刻まれた一筋の赤い線。

チンクの視線の先には、先ほどと変わらずクロスミラージュを向けるティアナの姿。

ただし、その銃口からは見るも鮮やかな燈色の光が放たれている。

 

「なるほど。直射型の弾丸は、何も実体弾だけではないと言う事か」

 

「そのとおりよ」

 

ティアナが再度引き金を引くのに先んじてチンクはスティンガーを投擲しようとする。

しかし、引き金を引く指とナイフを投げる手、どちらの方が早いかなど自明の理だ。

銃口から次々に吐き出される光弾に晒され、チンクはスティンガーの投擲を諦めてティアナと一端距離をとった。

代わりにチンクの背後から放たれたウェンディの砲撃がティアナの直射弾を相殺する。

 

「確かに早いけど、甘いッスよ!」

 

「実体弾と魔力弾の違いはあれ、同様のものは先ほどの戦闘で見ている我々に 同じ手が何度も通用すると思ったら大間違いだぞ」

 

「ちっ」

 

ティアナとウェンディの撃ち合いは、幻術で魔力を消費しているティアナの方がやや不利。

分の悪さを悟り、ティアナはフェイクシルエットで己の幻影を作る。

先ほどよりさらに数が減り、幻影の数は4体。

本体と合わせて5人のティアナは、敵を惑わす為に方々に散るのだった。

だが、時間が経つにつれ対幻術プログラムの解析が進んでいくと戦況は徐々に戦闘機人達へと傾いて行く。

当初は情報収集する程に余裕があったのが、やがて正面から戦わざるを得なくなり、等々逃げの一手を打たねばならない程にティアナは追い詰められていく。

そして、ついにフロアの片隅へと追い詰められていた。

 

「まったく、随分とてこずらせてくれたな」

 

「ホントっスよ。とはいえ、長かった鬼ごっこもこれで終わりなわけっスけど‥さぁ、覚悟は良いッスか?」

 

一応は警戒しながらも、勝利を確信するチンクとウェンディ。

2人が勝利を確信するのも当然で、今のティアナがいるのは決して横幅が広いとは言えない廊下の突き当たり‥‥まさに袋の鼠だ。

背後と両脇は壁に阻まれ逃げ道などある筈もなく、正面にはチンクとウェンディが立ちふさがっている。

 

「貴様の幻術は厄介だからな、確実に息の根を止めさせてもらうぞ」

 

スティンガーを構えたチンクが前に出る。

ことここに至っても尚、2人の心に慢心はない。

眼前のティアナが幻影ではない事は、闘いながら幻術パターンを解析した事で明らかだ。

ティアナはこれまでの戦闘で既に満身創痍の状態となっていた。

大混戦の中、クロスミラージュも1丁何処かに落してしまった。

あとはもう仕留めるだけで終わるが、たとえどれだけ有利な状況にあろうと、最後の最後まで気を緩めてはいけない。

陣形を見る限りウェンディが後ろから援護しつつ、チンクが詰め寄って仕留めるというプランなのだろう。

堅実に、手堅く行けば絶対的に有利なチンクとウェンディの勝利は揺るがない。

だが、

 

(なんとかここまで誘導できた。あとは連中が手堅く出てくれれば……)

 

ギャンブルではあるが、一発逆転も不可能ではない。

一見すると袋小路に追い込まれ、不利な要素ばかりに思えるティアナ。

しかし、2人が並んで動くには狭い通路内であるこの状況はティアナにとって決して不利な状況ではない。

敵が選択可能な戦術の幅を狭まった事で、相手の手を読みやすくなった。

また、満身創痍のティアナを相手に数的にもコンディション的にも有利な2人が奇策に賭けに出る意味はない。

堅実に行けば十中八九を勝てる状況だからこそ、更に相手の手の内が読みやすくなる。

 

「死ねぇぇぇー!!」

 

「っ!?」

 

ブシュッ‥‥

 

チンクのスティンガーがティアナの心臓に深々と突き刺さる。

 

(殺った!!)

 

チンクには確かな手応えがあった。

しかし‥‥

心臓をスティンガーで突き刺された筈のティアナは何故かニヤッと笑みを浮かべると次第にその姿は消え始めた。

 

「なっ!?」

 

「幻術!?そんなバカなっ!?」

 

チンクとウェンディは信じられなかった。

あのティアナは確かに幻術ではないと確認出来ていたし、スティンガーを刺した時、チンクには確かな手応えがあった。

 

「ならば奴は何処だ!?」

 

「此処よ!!」

 

「「っ!?」」

 

その時、2人の背後からティアナの声がした。

ティアナは此処でファントム・シルエットを使い、チンクに攻撃をさせてオプティックハイドⅡにてファントム・シルエットの幻影と入れ替わりチンク達の背後に回ったのだ。

高等幻影魔法の連続しようとこれまでの戦いでティアナにはもう魔力がほとんど残されていない。

故にこれがティアナの最後の攻撃となる。

此処で失敗すれば自分は確実に殺される。

だからこそ、ティアナは出し惜しみすることはない。

 

「クロスファイア―――――――――――!」

 

愛機を構え、自身の周囲に大量の誘導弾を布陣するティアナ。

チンクとウェンディは即座にそれに気付き、対応するべくそれぞれに動き出す。

チンクはスティンガーを構え真っ直ぐティアナへと走り出し、その背後からウェンディが援護するべく武装を持ち上げる。

放たれる誘導弾を、チンクを迂回するようにウェンディが打ち落とすことで道を通す。

その道を通ってチンクが接近し、今度こそ、ティアナの心臓にスティンガー突き立てる。

多少予定が変わったが、最終的には自分達の勝利で終わるシナリオの筈だった。

だがそれは、予想外の事態で変更された。

それまで廃ビル全体を包み込み、内外を隔てていた結界が消失したのである。

 

「結界が!!」

 

「まさか、オットーがやられたッスか!?」

 

結界の消失はオットーの身に何かがあった事を知らせていた。

突然の結界の消失に勝利を確信していた2人の心に僅かにブレが生じた。

ティアナはその隙を身のがさす愛機の銃口を暗い灰色の天井に向けた。

 

「シュ――――――ト!!」

 

「「えっ!?」」

 

自分達に向けられると思っていた魔力弾の半分が次々に天井へと突き刺さる。

元々風雨に晒され劣化していたこともあって脆くなっていた天井は容易く瓦解し、ティアナを含め、その場にいる3人に容赦なく降り注ぐ。

この余りにも予想外なティアナの行動と事態に2人の動きが僅かに鈍り、ウェンディとチンクは反射的に頭を守ろうと腕が持ち上がりかけた。

しかしティアナだけは、降り注ぐ瓦礫もお構いなしに敵から目を逸らさない。

大ぶりの瓦礫が肩に当たり、鈍痛が走る。

頭部を掠めた瓦礫により、ようやく塞がりかけていた傷が開き、血液が再度彼女の左目を塞ぐ。

それでもなおティアナは真っ直ぐに狙うべき敵へ視線を固定し、痛みを振り払って愛機を構える。

そして、残る半分のスフィアを自身の正面で収束砲撃に変えて撃つ。

 

「だぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

収束された極太の燈色の光の奔流は、降り注ぐ瓦礫を砕いてチンク目掛けて迫りくる。

 

(私のミス…だな……)

 

分散配置するかAMF発生用にガジェットを連れて来ればこんなことにはならなかっただろう。

チンクは、そんな悔恨の全てを飲みほした上で、自身と後ろに居るウェンディを守る為急ぎ防御外套「シェルコート」を翻して身を守る。

 

「くっ‥‥ぐっ‥‥」

 

両足を踏みしめ、なんとか砲撃に耐える。

だが、徐々に砲撃の威力で身体が後ろへと押されていく。

チンクはさらに踏ん張る脚に力を込める。

僅かな時間拮抗する両者だったが、間もなく均衡が崩れた。

ティアナの砲撃はその場で破裂、同時にチンクもその煽りを受けて大きく後方へと吹き飛ばされる。

 

「チンク姉!!」

 

ウェンディは吹き飛ばされる姉を咄嗟に庇い、身体でチンクを受け止める。

かなりの速度で飛ばされたせいだろう。チンクを受け止めた時、ウェンディの顔に苦悶の色が浮かぶ。

そして、チンクはウェンディの腕の中で気を失っていた。

一方、辛うじて倒れこむことなく姉を支え切ったウェンディだったが、彼女は自身の背後から忍び寄る何かに気付かない。

姉の無事を確認しようとした所で、後頭部で衝撃が爆ぜた。

 

「がっ‥‥」

 

ウェンディは自身の身に何が起こったか理解する前に、狙い澄ました一撃により意識を断たれ、力なくその場に崩れ落ちる。

その正体は、ティアナが最初に天井に向けてはなった誘導弾。

より正確には、魔力弾の外郭を更に膜状バリアで覆う『ヴァリアブルショット』。

誘導弾は直射弾と違い、術者の意思で軌道を変える事が出来る。

また、ヴァリアブルショットは膜状バリアで覆われている性質上、通常の魔力弾に比べて頑丈だ。

それらの特性を利用し、天井を破壊しながらも膜状バリアを引き換えに、まだ消えていなかった1発でウェンディの意識を刈りとったのだ。

 

「ハァ…ハァ……戦闘機人…2名、撃破。貴女達を確保します……って、聞こえてないか」

 

既に意識の無いチンクとウェンディに逮捕する事を宣言したが、意識の無い2人は当然聞いていない。

乱れた息を整えながら、肩や頭に掛かった埃を落とす。

緊張の糸が解けたのか、ティアナはその場に腰を落とす。

魔力は尽き、体中はボロボロであちこち痛い。

 

「どう?へっぽこだってやる時にはやるのよ」

 

ティアナは気を失っているチンクとウェンディにドヤ顔で言い放った。

 

「あぁ~ヤバ‥‥もう魔力が残っていないわ~‥‥それに身体中がメチャクチャ痛い‥‥」

 

そして、ティアナ自身もその場に大の字で倒れた。

 

「スバル達の所に行きたかったけど、この状況じゃ、足手纏いになりそうね‥‥でも、この状況‥ちょっとヤバいわね‥‥敵が来なければいいんだけど‥‥」

 

この状況で敵が来たらヤバいが今のティアナは満足に動くことさえ出来なかった。

ティアナは敵が来ない事を祈りながら、目を閉じた。

 

 

・・・・続く



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的84 モブ達の戦いは邪魔に見えて意外と重要な伏線を引いてたりもするがやはりくどくて鬱陶しい

お久しぶりの更新です。


 

 

 

獄寺が病室を出て行った後、少し遅れて病院を脱走‥‥もとい、病院から外出して戦場へと向かったヴァイス。

クラナガンの市街地と再開発地区の境目の彼方此方ではガジェットと管理局員との戦闘が繰り広げられている。

それは地上だけではなく、上空では『空』の首都防空隊と飛行型のガジェットⅡ型が戦っており空中では数多くの空戦魔導師による魔法弾と被弾して爆発したガジェットⅡ型の爆炎がまるで花火の様にクラナガンの空の彼方此方で見られる。

都市中心部には避難警報が出され、市民は地下のシェルターへと避難するように指示が出される。

ミッドが戦闘と避難する市民で混乱している中、ヴァイスは乗り捨ててあったバイクを走らせて戦場へ‥‥機動六課の仲間が戦っているであろう戦場へと急ぐ。

六課のメンバーはきっとガジェットではなく戦闘機人と戦っている筈。

奴等の実力はこれまでの戦闘データの記録と隊舎襲撃の際に経験済みである。

その為、連中との戦闘は十中八九、苦戦は必至の筈‥‥ならば、今は1人でも多くの戦力が少しでも必要な時‥‥

それに自分の得意分野は狙撃‥‥。

狙撃手ならばそこまで激しい動きはしないので、怪我に大きく響く事はない筈である。

何よりも自分より若い者や子供達が戦場で必死になって戦っている中で、これしきの傷如きで大人しく病院のベッドで大人しく寝ている訳にはいかなかった。

そしてバイクで戦場へと向かっている中、ヴァイスが抱いている不安‥‥

自分はちゃんと撃てるのか?

また妹の時の様に味方に誤射してしまうのではないか?

そんな不安は不思議にも戦場が近づくにつれ徐々に薄れていった。

ヴァイスがバイクを飛ばして戦場へと向かっている中、

 

「ヴァイスさん!?」

 

ヴァイスは突如、声を掛けられてバイクを止める。

声がした方向にはシャマルが立って居た。

 

「ヴァイスさん!?どうして此処に!?貴方、確かケガで入院していた筈じゃあ‥‥」

 

シャマルが病院に居る筈のヴァイスを見つけて駆け寄って来る。

 

「しゃ、シャマル先生‥‥あの‥ですね‥‥えっと‥その‥‥これは‥‥」

 

まさか、此処で医務官のシャマルに見つかってしまうとはヴァイスとしては何かと都合が悪かった。

この場からバイクで逃げてもシャマル程の魔導師ならばすぐに捕捉されてしまい、病院へ連れ戻されるかもしれない。

ヴァイスがどう説明したらいいかとあたふたしていると、

 

「まさか、ヴァイスさん‥‥貴方、病院を脱走してきたんじゃないでしょうね‥‥?」

 

シャマルに図星を指されてギクッと身体を震わせるヴァイス。

そして、そんなヴァイスをジト目で見るシャマル。

 

「全く何を考えているんですか!?貴方は本来怪我人なんですよ!!」

 

ヴァイスのその態度を見て十中八九、彼が病院を脱走して来たと判断したシャマルはヴァイスに説教をする。

 

「で、でも、シャマル先生。俺らよりも若い奴等が今、必死になって戦っている中、呑気に病院のベッドでおねんねしている訳にはいかないッスよ。相手はマジでヤバく危険な連中なのはシャマル先生も知っているでしょう!?」

 

「それは‥そうですけど‥‥」

 

「シャマル先生と怪我人(俺)の2人を足して1.5人‥敵1人には十分勝てるでしょう?今は少しでもコッチの戦力が必要な大事な時ですから、今回だけは大目に見てもらえませんか?」

 

「まったく‥‥ホントに今回だけですからね‥‥」

 

シャマルはヴァイスの言葉に呆れはしたが、確かにヴァイスの言う通り、今は1人でも味方の戦力が欲しい所であった。

 

「あまり無茶はいけませんよ。貴方は怪我人なんですからね。その事を忘れないでください。いいですね?」

 

医務官としては心苦しいがシャマルは渋々と言った様子であるが、ヴァイスの戦線復帰を一時的に認めた。

 

「りょ、了解です。さっ、乗って下さい」

 

ヴァイスはシャマルをバイクの後ろに乗せて六課のFW陣が戦っている戦場へと向かった。

そして、再開発地区において1棟のビル全体が不自然に結界に包まれているのを目撃した。

 

「あれは‥‥!?」

 

「多分、敵の仕業ですね‥‥」

 

「それじゃあ、あのビルの中に六課の誰かが‥‥」

 

「恐らく‥‥それと敵もね‥‥」

 

あれだけの大規模な結界を無人のビルに張る訳がなく、六課のFW陣であそこまで大規模な結界を張れる者も居ない。

となれば、ビルの中には敵の戦闘機人と六課の誰かがおり、ビルの中で戦っている筈だ。

あの結界は恐らく逃走防止の為に張られたものだろう。

敵に気づかれない様にもう少し現状を確認できる位置へと移動するヴァイスとシャマル。

そして、他のビルから結界が張られたビルを見ると、そのビルの屋上に1人の戦闘機人の姿を確認できた。

 

「あれは確か、オットーとか言う戦闘機人」

 

以前六課のミーティングの時に議題に上がり獄寺が男の子と間違え銀時が、下ネタが含まれるが初見で女子と見破った戦闘機人だったので2人は印象に残っていた。

 

「周りに護衛のガジェットや他の戦闘機人がいない‥‥妙ね‥‥」

 

シャマルはオットーの傍に他の戦闘機人やガジェットが居ない事に不自然を感じた。

議題ではオットーは後方支援型の戦闘機人であると推察されたので、ああしてビル1棟に結界を張っているのであれば、集中力はかなり使うはずでありオットー自身もそう簡単にはあの場からは動けず、素早く攻撃手段には移れない筈。

それにも関わらず自分の傍に護衛を立てないとは、此方側を舐めているのか?

それとも何か罠があるのだろうか?

シャマルがそう思っていると、

 

「いや、シャマル先生‥奴にはちゃんと護衛がいますぜ‥‥」

 

「えっ?」

 

ヴァイスは狙撃手として匂いを感じていた。

同じ狙撃手の匂いを‥‥

オットーの護衛をしているのはあの時‥隊舎襲撃時に自分と戦ったあのディエチとか言う戦闘機人。

シャマルも探知魔法を使うと確かにヴァイスの言う通り、もう1人の戦闘機人の反応を確認した。

のこのことオットーの前に姿を見せて彼女に攻撃を仕掛けようものなら忽ちディエチの狙撃の的になる。

オットーを倒し、ビルの中の味方を助けるにはまず、オットーの護衛をしているディエチを倒すか彼女の持つ武器を破壊しなければならない。

 

「シャマル先生、狙撃手(ディエチ)の相手は同じ狙撃手である俺に任せて下さい」

 

「でも‥ヴァイスさん‥‥貴方は‥‥」

 

シャマルはシグナム経由でヴァイスのトラウマを知っていたし、その経緯から彼のカウンセリングをした事もある。

 

「大丈夫です‥‥」

 

ヴァイスは愛機であるストームレイダーをグッと握りしめてシャマルに言う。

 

「わかりました‥‥では、貴方を信じましょう。でも、無茶はいけませんよ」

 

「了解っス」

 

シャマルはヴァイスを信じ、作戦を伝えた。

そして、作戦を実行した。

オットーが結界を張っているビルの中でティアナ、チンク、ウェンディの戦闘が行われている中、

 

 

~ミッドチルダ 再開発地区 とあるビルの屋上~

 

 

「ん?」

 

ビルの結界を維持しているオットーの前に、

 

「管理局です。大人しく投降してください」

 

シャマルが姿を現した。

 

「投降?‥‥すると思っているの?」

 

オットーは無表情ながらも余裕の様子だ。

ディエチがオットーの前に立つシャマルにイノーメスカノンの銃口を向けた時、別方向から魔法弾が飛んできてイノーメスカノンの砲身に当たった。

 

「っ!?」

 

ディエチが、魔法弾が飛んできた方を見ると其処にはストームレイダーを構えているヴァイスの姿があった。

シャマルとヴァイスの作戦はシャマルが囮となりオットーの前に姿を現し、シャマルを狙ったディエチの武器をヴァイスが使用不能にしてオットーを捕まえる。

その後、2人でディエチを捕らえると言う作戦だった。

 

「アイツはあの時、ルーテシアお嬢様のガリューにやられた筈じゃあ‥‥」

 

ディエチとしては六課襲撃の際、ガリューによって重傷を負ったと思っていたヴァイスが戦線に出ていた事はディエチにとってはあまりにも予想外な事だった。

イノーメスカノンが壊れ、ディエチからの援護がなくなったオットーであるが、オットー自身、まるっきり戦えない訳ではない。

 

(ディエチ姉さまからの援護が来ない‥‥まさか、別の局員と接敵したのか‥‥)

 

(くっ、此処はやむを得ない‥‥結界を一時解くしかない)

 

オットーはディエチからの援護がなくなった為、自身でシャマルの相手をする事になり、ビルを覆っていた結界を一時解くことにした。

しかし、オットーのこの行動がビルの中で戦っていた姉妹達の戦況に大きな影響を与えてしまった事をこの時の彼女は知る由もなく、彼女がそれを知ったのはもっと後になってからの事だった。

結界を解いた後、ビルの中で何かが崩れる様な音がしたが、オットーはビルの中で戦っているのがチンクとウェンディである事から特に気にする様子はなかった。

ティアナを片付けるためにチンクがISを作動させたのか、それともウェンディが中で砲撃でもしたのだろうと思っていたのだ。

もし、この時オットーがビルの中のチンクとウェンディに自分の置かれた状況を説明したら戦況は変わっていたのかもしれない。

だが、チンクならばたかが魔導師1人相手に負ける筈が無いと言う思い込みがビルの中の戦況に大きな影響を与えていた。

 

「IS・レイストーム」

 

オットーがシャマルに向かって風の一陣・レイストームを放った。

それに晒されてシャマルは大きく吹き飛ばされそうになる。

両手で防御するシャマルの腕に突如、鋭い痛みが生じる。

 

「っ!?」

 

シャマルのバリアジャケットが深く切り裂かれ、腕からは血が流れ出ている。

 

「ドクターの協力者の中に『カマイタチ』とか言う風の技を使う人が居てね‥‥その人の技を真似てみたんだけど、なかなか使えるね」

 

オットーはシノビと同じかまいたちをシャマルにぶつけて来た。

しかし、本来のかまいたちは刃物で切られたような鋭い傷を受けるが、痛みはなく、傷からは血も出ないものなので、オットーのかまいたちは雑なかまいたちと言える。

 

「くっ‥‥」

 

シャマルはオットーのまさかの攻撃に驚きつつも後方支援型と思って油断した自分を恥じた。

その頃、ディエチを相手にしていたヴァイスは‥‥

 

「おいおい、マジかよ‥‥アイツ、とんでもねぇモノを持ち出しやがって‥‥」

 

ディエチの装備を見て顔を引き攣らせていた。

イノーメスカノンが壊されディエチにはもう武器が無いと思っていたが、彼女はもう1つの武器を用意していた。

 

「隠れても無駄だよ。諦めて出てきたら?」

 

ディエチはバックから回転式機関銃(チェーンガン)、バルカンスマッシャーを取り出してソレを構えながらヴァイスを探していた。

ディエチはギンガやスバル、ノーヴェの様にローラーブーツを穿いている訳でもなく、ウェンディの様にライディングボードに乗っている訳でもないが、やはり戦闘機人であり、あの重そうな回転式機関銃を持ちながらも動きは俊敏である。

それにヴァイスと同じ狙撃手と言うだけあってこっちの狙撃ポイントを見抜く力がある為、ヴァイスは狙撃でディエチをなかなか仕留めきれずに接近を許してしまった。

ディエチのバルカンスマッシャーはその見かけから分かる様に弾の発射速度が半端ない。

しかもイノーメスカノンと同じく魔力と実弾の両方を使用できるため、弾切れもあまり期待できない。

 

「こりゃあ、ちょっとやべぇかもな‥‥」

 

顔を引き攣らせたヴァイスの頬を一筋の冷や汗が流れた。

ヴァイスは一か八かの賭けでオットーが結界の張っていたビルの中へと逃げ込む。

このビルには敵がいるが、味方もいる。

うまくすればその味方と合流して敵を倒せるかもしれない。

だが、このビルの味方が既に負けていたら‥‥

まだ、交戦中だったら‥‥

その場合、此方が不利になる可能性が大きかった。

ヴァイスがその辺に落ちている小石を拾い、遠くへと放り投げる。

すると、小石はカツンと音を立てて地面にぶつかる。

小石の落ちる音を聞いて、

 

「其処だ!!」

 

ディエチがバルカンスマッシャーを乱射する。

辺りには回転式機関銃の回転音と轟音、破壊音、薬莢の排出音が辺りに響く。

 

「怖ぇ‥‥あいつ、トリガーハッピーかよ‥‥」

 

バルカンスマッシャーを乱射するディエチを見てヴァイスは思わず身震いする。

ヴァイスはバルカンスマッシャーを乱射するディエチに向け、ストームレイダーを向けディエチを討ち取ろうとしたが、あの轟音の中、僅かな物音を聞きつけたディエチは小石が囮だと気づき、バルカンスマッシャーの銃口をヴァイスへと向ける。

 

「そこっ!!見つけたぁ!!」

 

「やべっ!!」

 

ヴァイスは急いでその場から離れ、床に空いていた穴の中へと飛び込む。

その直後、さっきまでヴァイスが居た場所には何十、何百発のバルカンスマッシャーの弾が撃ち込まれた。

穴から下の階に逃げたヴァイスは直ぐにその場から離れる。

 

「っ!?」

 

ただ、その時の衝撃でヴァイスの傷口が開いてしまった。

ヴァイスが穴から下の階に降りてから直ぐに、

 

ジャリッ‥‥スタッ‥‥

 

ディエチも降りてきた。

 

「ん?血の跡‥‥」

 

床にはヴァイスの傷口から落ちた血の跡が残っていた。

ディエチは床に落ちている血の跡でヴァイスを追いかけた。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥くっ‥‥やべぇな‥‥まさか、こんな時に傷口が開くなんて‥‥」

 

壁に寄りかかりながら、手で自分の傷口を抑えるヴァイス。

彼の手には真っ赤な血が付いていた。

傷口を抑えていた包帯にジワリと彼の赤い血が滲みだす。

 

「くそっ、こりゃ早いうちに決着をつけねぇと‥‥」

 

しかし、自分は手負いで相手は無傷。

隠れてやり過ごそうにもディエチは血の跡で自分の位置を割り出してくる。

絶対的に不利なヴァイスと絶対的に有利なディエチ。

 

「何か‥‥何か手は‥‥何か‥‥」

 

ヴァイスが何か逆転する手はないかと辺りを見回しながら作戦を考えていると、

 

「ん?アレは‥‥」

 

彼は床に落ちている何かを見つけた‥‥。

 

 

 

 

ヴァイスはあるフロアの柱の影からそのままディエチを狙撃しようとする。

彼はこのフロアでディエチと決着をつけるつもりだったが、ストームレイダーの銃身が長く、柱からその銃身が出てしまう。

その隙をディエチは見逃す事無く、ヴァイスが隠れている柱に向け、バルカンスマッシャーを乱射する。

その内の1発がストームレイダーの銃身に当たり、ヴァイスの手からストームレイダーが弾き飛ばされてしまう。

 

「くっ‥‥」

 

「もう、武器は無いみたいだし、降参したら?下手に動いても傷口が開いて苦しいだけだよ」

 

「ちっ‥‥」

 

ヴァイスがストームレイダーを拾いに出ると、ディエチはバルカンスマッシャーを撃つ。

しかし、それはほとんど牽制でヴァイスには掠り傷程度の傷しか負わせていない。

ヴァイスはストームレイダーを拾うのを断念して掠り傷の傷口を押えながら柱の陰に再び隠れる。

明らかにディエチは自分の絶対的有利な立場からヴァイスをじわじわといたぶっている。

 

「傷口はどんなだ?貴方は此処までよく戦ったよ。あまり苦しませるのも可哀想だから、1発で眉間をぶち抜いて楽にしてあげるよ」

 

「だったら、こっちへ来て確かめてみたらどうだ?」

 

ヴァイスの言葉に何か裏があるのではないかと警戒するディエチ。

しかし、相手は手傷を負っているし武器も弾き飛ばした。

ヴァイスが自分に勝てる筈がない。

そう思っていたのに‥‥絶対的に有利なのは自分なのに‥‥

それなのに何故、彼は降参もせず、あんな挑発的な言葉を口に出せるのか?

ヴァイスの行動が理解できず、ディエチの中にこれは何かの罠なのではないかと言う不安が過ぎり始めた。

 

「さあ、どうした?怖いのか?」

 

「っ!?」

 

「恐れを知らぬ奴かと思っていたら、戦闘機人の癖に随分と怖がりなんだな?そのデッカイ銃は見せかけか?」

 

「いいよ、やってあげる。私は戦闘機人‥‥私に恐怖なんか無い!」

 

ヴァイスに挑発されて彼に近づくディエチ。

そして柱に寄りかかっているヴァイスにバルカンスマッシャーの銃口を向ける。

 

「さぁ、最後のお祈りは済んだ?それじゃあね、バイバイ」

 

ディエチは勝利を確信して引き金に指をかける。

その時、

 

「‥‥くっくっくっ」

 

ヴァイスは俯きながら突然笑い出した。

 

「恐怖で可笑しくなった?」

 

「いや、ディエチ‥お前は狙撃手失格だよ」

 

「むっ!?」

 

「お前は、余裕ぶちかましてまんまと俺の罠にはまっちまったんだからな!!」

 

「減らず口を!!」

 

ディエチが引き金を引くその瞬間、

 

ガシッ

 

「なっ!?」

 

ヴァイスは左手でバルカンスマッシャーの銃身を掴み、右手にティアナのクロスミラージュをディエチの額に突きつけ、ゼロ距離からディエチを撃った。

当然、非殺傷設定だったので、クロスミラージュのヘッドショットを受けてもディエチは死んではいない。

 

「ど、どうして‥‥お前の武器は‥‥確かに‥‥」

 

ディエチはヴァイスが何故、ティアナのクロスミラージュを持っているのかを理解する前に意識を失った。

 

「ふぅ~‥‥まさか、あの場にティアナ嬢ちゃんのコレが落ちていなかったらヤバかったな‥‥でも、これが落ちていった事はこのビルのどこかにティアナ嬢ちゃんが居るって事か‥‥」

 

ヴァイスはあの時、このビルの床に落ちていたティアナのクロスミラージュを見つけて、それを拾っていたのだ。

ディエチを倒したヴァイスはクロスミラージュをポケットにしまい、ストームレイダーを待機モードにして、ディエチを担ぐとティアナを探しに行った。

 

 

ヴァイスがディエチを倒したその頃、ビルの屋上では‥‥

 

「くっ‥‥」

 

シャマルがオットーの手によってボロボロになっていた。

オットーのかまいたちによりバリアジャケットは悉く切り裂かれ、身体は傷だらけで彼方此方から出血している。

 

「いいかげん飽きたから、今度はその首を飛ばして一気に終わりにしてあげる」

 

オットーは両腕に風を纏い、シャマルへと迫る。

その時、オットーとシャマルの間のビルの床が陥没し、粉塵が巻き上がる。

突然の出来事にオットーは進撃を止めて、後方へと飛ぶ。

 

「大丈夫ですか?シャマルさん?」

 

「えっ?え、炎真君?」

 

其処には白蘭との戦いを終え、はやての下へ向かっていた筈の炎真がシャマルの前に立っていた。

 

「ど、どうして此処に?」

 

「敵を倒してはやての所に行こうとしていたんですが、急にここから戦闘音がしたから駆けつけたんです。僕は、シグナムさん達のお陰で余力を残していましたので‥‥」

 

「そう、シグナムが‥‥」

 

余力があると言う炎真だが、全くの無傷と言う訳ではない。

身体の彼方此方には白蘭との戦闘によって負った傷や怪我がある。

 

「今更、怪我人が1人来て、何が‥‥」

 

オットーは怪我をしているシャマルと炎真が来ても何も戦況には影響しないと言う。

しかし、

 

「いや、例え怪我人でも1人対2人じゃ、ちょっと訳が違うぞ‥‥オットー」

 

「くっ、負け惜しみを‥‥そんな下手な挑発で僕が狼狽えると思ったの?」

 

炎真は、自分達は決して不利ではなく、むしろ不利なのはオットーの方だと言い放つ。

彼の言葉にオットーは思わず顔を歪める。

 

「君の言う事がただの負け惜しみである事を証明してやる。そして、僕が2人ともあの世へ送ってあげるよ」

 

オットーは再び両腕に風を纏うと炎真とシャマルへと迫っていった。

炎真もまた大地の炎を灯してオットーとぶつけ合う。押し合う風と炎が混じり合い弾け合う。

オットーは力じゃ押し切れないと分かったらすぐにレイストームで生成した魔法弾を時間差で発射させた。

 

「くっ」

 

炎真は躱すことができずにモロに食らってしまった。

砂塵が舞いビルの屋上が崩れ炎真とオットーが落ちてしまう。

 

「炎真君。大丈夫!?」

 

シャマルは炎真を心配で下を覗き込んだ。下では炎真は瓦礫の上に仰向けに倒れ反対にオットーは綺麗に着地していた。

 

「だ、大丈夫‥‥です」

 

口では大丈夫と言っているが、正直大丈夫ではないだろう。先程の白蘭との戦いで死ぬ気の炎は殆ど使ってしまい、それだけでもピンチなのに今にも倒れそうなぐらいダメージも溜まっていた。

そんな炎真の状態をシャマルはおろかオットーも気づいている。

 

「貴方、立っているのもやっとなんでしょう?今ここで降参してくれるなら楽に殺してあげる。僕は君達、管理局ほど非道ではないからね」

 

非道ではないと言っているにも関わらず「殺す」と言う時点でかなり酷いと思う。

 

「無駄に力を誇示して自分の感性を押しつける人間、敵である僕達より強い人が現れれば僕達なんて眼中に無い。そんな貴方達があの子を追い込んで別人の様にした‥‥お前達のせいで、あの子は‥‥あの子は‥‥」

 

「あの子?一体誰の事を‥‥?」

 

炎真にはオットーが誰の事を言っているのか分からないけど、ほぼ無表情だったオットーの表情が崩れ、心境が滲み出た彼女の態度で、どれ位「あの子」が彼女にとって大事な人かは分かった。

更にISで炎真を縛ろうとしてきたので炎真も力を振り絞りながら重力をかける。

 

「お、重い‥‥」

 

いつもの炎真ならこんなビルを貫通させるぐらいの重力をかけられるのだが炎の限界なのかオットーはなかなか膝をつかない。

だがそれで十分だ。

炎真は上にいるシャマルに、

 

「シャマルさん今です。」

 

「クラールヴィント!縛って!!」

 

シャマルは炎真の合図をしてバインドでオットーを縛り上げた。

 

「し、しまった!!」

 

更に炎真はその虚をつき、オットーの背後に回り込んで首筋を叩いて意識を落とさせた。

 

 

シャマル、炎真がオットーを倒したその頃、ディエチを肩に担ぎながらビルの中でクロスミラージュの反応を頼りにティアナを探しているヴァイスは、床で倒れているティアナを見つけた。

ティアナは意識を失っているが、呼吸はしているので生きている事が分かる。

そして、ティアナの傍には戦闘機人らしき2人の少女が倒れているのも見つけた。

 

(ティアナの嬢ちゃんは2人も相手にしていたのかよ‥‥)

 

起き上がってはいないが、この場にティナアと戦闘機人2人が倒れている事からティアナが2人の戦闘機人を相手にしていた事が窺えた。

此処にはティアナを含め、3人倒れている。

しかも今自分は肩にはディエチを担いでいる状態‥‥。

しかし、今の自分が無理をしてでも担げるのはあと1人‥‥

ヴァイスはシャマルに念話で現状を伝えた。

すると、炎真が向かうと言う返信が来たので、ヴァイスは炎真が来るのを待った。

そして、炎真が来ると彼はティアナとチンクを肩に担ぎ、ヴァイスはウェンディを担いでシャマルの下へ戻った。

担ぎ方は雑だが、この際仕方がない。

それに当人達は意識を失っているので文句が来る事は無いだろう。

ヴァイスと炎真がシャマルの元に向かっている最中、

 

「ヴァイスさん血が‥‥」

 

炎真はヴァイスから出血している事に気づく。

 

「ああ、ちょっとドジっちまってな‥‥」

 

ヴァイスは小さな笑みを浮かべるがそれがやせ我慢である事はすぐに分かった。

 

「なんでそんな無茶を!?」

 

「お前ら、ガキ共がこうして頑張っているんだ‥‥大人の俺達もそれ以上の事をしねぇと示しがつかねぇだろう?」

 

「だからって‥‥」

 

「まっ、どの道この後シャマル先生のお説教が待っているんだ‥‥大目に見てくれ」

 

「‥‥」

 

炎真はウェンディとディエチを担ぐヴァイスを心配そうに見守りながらティアナとチンクを担ぎシャマルの元へと向かった。

 

 

暫くしてオットーはバインドで縛られてはいたがそこまで不自由のない状態で目が覚めた。

炎真はもうそこにはおらず代わりにザフィーラが座り込んでオットーの頭を乗せて枕代わりとなっていた。

 

「うっ‥‥」

 

オットーが目を覚ましたらシャマルが声をかける。

 

「あら?起きた?」

 

オットーはまだ頭が朦朧としているが、ただ此処が敵中である事に気づき無理に起き上がろうとする。

 

「あっ、まだ起きちゃダメよ。あまり目立った外傷はないけど意識がはっきりしないんでしょう?」

 

優しく声をかけるシャマルに対してオットーは反抗する様に無理にでも起き上がろうとする。

 

「敵に‥‥情など‥‥」

 

「戦えなくなった人を敵になんて認識しないわよ。」

 

「先程の男は‥‥?」

 

「炎真君はザフィーラと入れ替わりで仲間の救助に向かったわ」

 

炎真はダメージとスタミナ消費が激しかったためにシャマルが休んでいてと言ったので渋々シャマルの護衛も兼ねて一緒にいた。

だけどザフィーラが来たためにそれも御役御免になったかと思いきや、其処にヴァイスから連絡があったのでビルの中で伸びているティアナ達の救助に向かったのだ。

 

「ねぇ、炎真君が言っていた貴女の大事な人の事なんだけど‥‥」

 

オットーがシャマルの言葉にピクッと微かに反応した。

更にオットーは殺気立ってシャマルを睨みつけた。先程までの朦朧とした目だったが今は獲物を見つけた猛禽類のように睨みつける。

感情に疎い筈のオットーが此処まで『怒』の感情を露わにしたのはもしかしてコレがはじめてなのかもしれない。

 

「ディードに何かしたの!?ディードに何かしたのなら‥‥」

 

例え紅桜の力で別人の様になってしまったディードであったが、オットーにとってはスカリエッティや他のナンバーズよりもディードに対しては強い絆と信頼を抱いていた為に、ディードが酷い目に遭っていると言うのであれば、オットーは自分の命を懸けてでも報復する気満々であった。

 

「さっき私達の仲間が救護所に運んだって連絡が入ったわよ。身体の疲労が激しく衰弱しきっているけど命に別状はないみたい。多分他の人よりも身体が丈夫なんでしょうね」

 

シャマルからディードの様子を聞いたオットーから殺意が薄れていく。

 

「本‥当に‥‥?本当にディードは無事なの‥‥?」

 

「ええ」

 

幸いシャマルはディードの名前も姿も知っていた。なぜならフェイトとツナが遭遇した戦闘機人であり、六課襲撃の時にも相見えた。だからシャマルはディードの事を山本からオットーの話を炎真から聞いたらすぐにピンときた。

 

「‥‥分かった‥貴女を信じる‥‥」

 

オットーは大人しくシャマルに投降した。

やがて、ビルの中からティアナ達を肩に担いだヴァイス達が戻ってきた。

意識を失っているチンクとウェンディ、ディエチの姿を見て、オットーは、

 

(チンク姉様達までもが負けるなんて‥‥この戦い、ドクター‥いや、僕達の負けかな‥‥)

 

ディードの状況と姉達の敗北した姿を見て、自分達の陣営の敗北を悟った。

 

負傷者達は早速シャマルが診ると皆、負傷はしているが命には別条はない様子だ。

だが、

 

「だから、あれほど無茶をしてはダメだって言ったのに!!」

 

「す、すみません。シャマル先生‥‥って、イテテテテ‥‥もう少し優しくして下さいよぉ~シャマル先生」

 

「自業自得です」

 

ヴァイスは案の定シャマルに治療されながらお説教をされていた。

そこへ、管理局の災害ヘリが差し掛かる。

ヘリはビルの屋上に居るヴァイス達を確認すると屋上へと着陸する。

 

「アルト!?」

 

ヴァイスがヘリを操縦しているパイロットを見て思わず声をあげる。

ヘリを操縦していたのは六課にてヴァイスの助手を務めていたヘリパイロット見習いのアルトだった。

アルトもヴァイス同様、人員が足りない中、自分も何かできる事はないかと思った結果、こうして災害ヘリのパイロットを買って出たのだった。

アルトの操縦するヘリにティアナ達を乗せていると、ティナアが目を覚ます。

 

「こ、此処は‥‥」

 

「管理局の災害ヘリの中だ」

 

炎真がティナアに此処が何処なのかを伝える。

 

「っ!?戦闘機人達は!?」

 

横になっていたティアナがガバッと上半身を起こしてチンクとウェンディの行方を尋ねる。

 

「大丈夫‥念の為拘束しているが、命に別状はない」

 

「そう‥‥良かった‥‥あっ、スバルは!?それに山本やキャロやエリオ、それに神楽や新八達も‥‥」

 

チンクとウェンディの事を聞いたティアナは一瞬ホッとした顔をしたが、この場に逸れた山本、エリオ、キャロ、スバルや神楽、新八が居ない事に気づき、彼らの事も尋ねる。

 

「山本とキャロちゃんは市街地に設けられた救護所にいるらしい‥エリオ君はフェイトさんの応援に‥‥スバルちゃん達は‥‥」

 

炎真はチラッとシャマルの方を見る。

すると、シャマルは頷き、スバル達の居所を探る。

スバルは戦闘機人とは言え、魔力があるので、シャマルは何とか探知する事が出来た。

彼女はこの近くで反応があったが動いていない為、倒れているモノと推測で来た。

スバルは何とか探知で来たが神楽と新八は非魔導師故か、シャマルの探知魔法では居場所を探知する事が出来なかった。

一先ずスバルは居場所が判明しているので、スバルの様子を見て、連れてくることになった。

 

「私が行こう‥‥」

 

ザフィーラが一言そう呟くと、彼は獣形態から人獣形態へと変わる。

人獣形態へと変わったザフィーラは筋肉モリモリマッチョマンのへんた‥‥男性となった。

それからほどなく、ザフィーラはスバルと彼女のすぐ傍で倒れていたノーヴェを肩に担いで戻ってきた。

神楽と新八の事が気になるが、これ以上ヘリには人員を乗せる事が出来ない為、心苦しく思うがヘリは発進して、市街地に設けられた救護所へと向かった。

 




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的85 鬼に芽生えた心の芽はやがて木となり花を咲かす

更新です。


 

此処で時系列は少し時間を巻き戻す。

 

 

~sideギンガ~

 

 

ノーヴェと共にクラナガンへと侵攻していたギンガは突如、その侵攻速度を落とし、その場に立ち止まった。

 

「‥‥」

 

「ん?おい、どうしたんだよ?ファースト」

 

突然立ち止まったギンガに対してノーヴェは訝しみ彼女自身もその場に立ち止まる。

 

「‥‥いる」

 

「あん?」

 

ギンガは一言そう呟くと突如、予定されていた侵攻ルートから外れて1人で何処かへと行ってしまった。

 

「ちょっ、おい!!ファースト!!お前、どこ行くんだよ!?おい!!テメェ、何勝手な事をしてんだよ!!おい!!」

 

ノーヴェはギンガを呼び止めるが、ギンガはノーヴェの方を見る事無く足早に何処かへと行ってしまった。

 

「‥‥ちっ、勝手にしやがれ」

 

元々スカリエッティや上の姉達に押し付けられたギンガのお守役であったが、こうして管理局との決戦が始まった以上、自分に与えられた任務の方が最優先となる。

もうギンガがどうなろうとノーヴェにとってそれはもう知った事ではない。

それにギンガと模擬戦をしたノーヴェは今のギンガの実力を十分に知っている。

あの強さがあれば1人でも十分に管理局の魔導師相手には負けないと思っていた。

ギンガのお守はもう此処でお役御免だと判断したノーヴェは当初の予定通りの行動をとり、別ルートから侵攻している他のナンバーズと合流を図った。

合流した姉からお小言を言われてもルートを勝手に離れたギンガが悪いし、ギンガを追いかけるよりも今は管理局との戦いが優先される筈だ。

ノーヴェは、『自分は悪くない』と自分に言い聞かせてその場から去った。

 

その当初の行動をいきなり変更したギンガは市街地のある区画にてまるで人を待っているかのように静かに佇んでいた。

この宿主の身体が妙にざわつく‥‥

ギンガ‥いや、紅桜は本能的に何かを感じ取ったのだ。

この方向‥そして此処で待てば強者がやって来る‥‥

 

やがて‥‥

 

「よぉ、ギンガ。来てやったぜ」

 

「‥‥」

 

口に煙草を咥え、腰には日本刀を帯びた黒服に黒髪の男がギンガの前に姿を現した。

 

「へぇ~袴姿もなかなか似合うじゃねぇか‥」

 

その男は今の自分の服装を不敵な笑みを浮かべて褒める。

 

「‥‥」

 

「だが、お前にその腰のモノは似合わねぇ‥‥」

 

すると男は腰の日本刀を抜き、自分に迫って来るが此方も刀を抜き迫りくる男を迎え撃つ。

 

ガキーン!!

 

辺りに金属音が響く。

 

「はぁ~色男はあれやこれやと言葉でやるんだろうが、だめだ‥何も思いつかねぇ。だからよぉ‥ギンガ、見せてやるよ‥今までの俺を‥此処(ミッドチルダ)での俺じゃない。真選組副長、土方十四郎の全てをな!!」

 

男は覚悟を決めた顔で言い放つ。

 

「俺も‥‥そしてまがいなりにも今のお前も侍なんだ。剣に生き剣で語るのが侍の流儀だ。ならば、お前も全力でかかって来い!!ギンガ!!いや、妖刀紅桜!!」

 

この男の顔は見覚えがあった。

確かこの肉体を得たその時に心臓を貫いて殺した筈の男だ。

それが何故、今自分の目の前に居るのか?

殺した筈の男が生きている事が理解できない。

でも何となくだが察しはつく。

恐らくこの肉体の本来の人格意識があの時はまだほんの僅かに残っており、手加減でもしたのだろう。

あの時はまだこの肉体を得たばかりなので、完全な制御が出来なかった。

しかし、今は違う。

今度こそ確実にこの男を地獄に叩き落としてやる。

刀身があの男の熱い血を浴びたがっている。

だからこそ、自分はあの男の気配を感じ、此処へ来たのだ。

誇り高き侍の熱きその血を身体に浴び、そして刀身に吸わせて貰う為に!!

気がかりなのはこの身体の持ち主の意識である。

いずれはこの紅桜に食われ、消滅するだろうが、やはり、日がまだ必要だったのかこの肉体の本来の人格意識はまだ完全には消滅していない。

今は深層意識の中で眠らせている。

あの男と戦っている最中にこの肉体の本来の人格が起きないかだが、たかが人間如きがどう足搔こうが、この身体の本来の主の意識を起こすことなど不可能だ。

貧弱な人間の身体ではなく、戦闘機人と呼ばれる強靭な肉体に魔力、機動力、そしてこの手に握られている紅桜がある限り、この紅桜の勝利に揺るぎはない。

 

「でりゃぁぁぁぁ!!」

 

「‥‥」

 

ガキーン!!

 

大きな叫び声と共に刀と刀がぶつかり合う。

土方と紅桜によって身体を乗っ取られたギンガの戦いが始まった。

土方の刀が上から振り降ろされたらギンガは紅桜でガードする。

ギンガの方が、力が強いのか受け流すために後ろに飛び近くのコンクリートの破片を弾き飛ばした。

ギンガはそれを紅桜で斬り伏せていると、

 

「ギンガぁ!」

 

土方が突撃してきてギンガと交差すると。

 

シュ

 

真選組の制服に切れ目が入り、ギンガは肩から少し血が垂れる。

両者は腰をひねりお互い向き直して先に先手を取ったのは土方だ。

 

「貰った!!」

 

だが、ギンガは紅桜を持ってない方の手で‥‥リボルバーナックルが装備されている左手で土方の刀をはじき飛ばして紅桜を懐に入れようとすると、

 

「ふっ!!」

 

咄嗟に鞘で上にそらして上空一回転でギンガの顎に蹴りを入れて距離を取ろうとするがギンガはすぐに距離を詰めてきて、

 

「しまっ!!?」

 

完全にギンガの間合いに入り過ぎ、土方は腹に強烈な1発を決められビルにまで突っ込んでいった。

 

「がはっ‥‥」

 

土方はビルの壁を突き破りビルの中にまで追いやられ、ギンガも慎重に中に入り土方を探すが中にはもう影も形も見えない。

当たりを見ながら中を歩いていると柱から突如刀が伸びてきてそれを躱すと、

 

「ちぃっ、こいつでも当たんねぇのかよ‥‥」

 

土方はそのまま刀をふり抜きビルの柱を切り裂く。

対するギンガも柱を土方ごと斬ろうとするも刀のリーチが届かない。

土方もそれは分かっていたがこれは只の刀ではない紅桜だ。

普通とは違うからくり兵器であり妖刀だと言う事を‥‥

だが、この時だけは土方はそれをすっかり忘れていた。

 

「なっ!?伸びただと!?」

 

ブシュ!

 

突如、刃が伸びた紅桜の斬撃を受け、胸に大きな切り傷を負ってしまう。だが足を止めたらその時点で自分の死が確定する。すぐに立ち上がりギンガに斬り掛かる。

今の紅桜は伸びているためにこの狭い空間では不利の筈だ。

 

「ギンガぁぁ戻ってこい!!!」

 

しかし、ギンガはそんな事お構い無しに紅桜で自分軸に回転して辺りの障害物関係なく振り回した。

さながら彼女の攻撃は小規模な竜巻の様でビルの石柱など土方が居ようが居なかろうがお構い無しで斬れていた。

竜巻が止むと綺麗になった一帯を見たが土方はどこにも上下左右各種方向を見たが彼はいないだが感じる彼のこの人を突き刺す殺気が迫る。

 

「っ!?」

 

まさかと思い背後に回っていた紅桜の剣先を見るとそこには片膝をついた土方が刀を首から後ろに持って構えていた。

 

「ふっ!!」

 

すぐさま真上にやり、突き刺そうとするとギンガの腕を触手が覆って完全に突き刺さらなかった。

 

「ちっ、紅桜のヤロウ、どんどんとギンガの身体を侵食してやがる。おい、ギンガ聞こえてんなら返事をしやがれ!!お前は本当に強ぇんだ!!こんな妖刀に負けんじゃねぇ!!」

 

だが、その声も聞こえず彼の乗ったまま紅桜を壁にぶつけようとしたので一旦降りて土方はビルの2階に登った。ギンガも付いていくように上へと上がり、

 

「なぁ、ギンガ‥病院でテメェの妹に会ったぜ‥お前と違って妹の方はまだまだガキだな、精神的にも未熟で直ぐにでもぽっきり折れそうなぐらい弱そうに見えた‥‥ただ、お前に似て優しいんだろうな‥テメェの心配ばっかしていたぜ。ゲンヤのおやっさんもそうだ!!近藤さんも、総悟も、お前の帰りを首長くして待ってんだぜ!!」

 

ガン!

 

刀同士がぶつかるも今度は触手が土方を飲み込もうとしてきた。

土方はその触手に捕まり首を絞められる。

そのまま窒息死させるのかと思ったら触手は、

 

「ぐわぁ」

 

土方を放り投げた。

紅桜がどういった意思があって土方を絞殺さずに放り投げたのかは不明だが、土方を一思いに殺さずにじわじわといたぶって殺したかったのか?

それとも今度こそ、心臓に刃を突き立てて殺したかったのか?

はたまたその両方か?

真相は残念ながら不明である。

そして投げ飛ばされた土方は壁に激突した。ギンガはすぐに彼を追うがこれまでの戦闘でどうやら1階も相当ガタがきているらしい。

まぁ、無理もない。元々ここら辺にある建物は全て再開発地区にある為、廃墟となり、風雨にさらされ続け、更には土方とギンガがビルの内の柱をほとんど斬り倒してしまったのだから‥‥

ビルの崩壊にギンガは巻き込まれ床が砕けて落ちそうになる。

 

「っ!?」

 

「ギンガぁ!!」

 

ガシッ!

 

土方が彼女の腕を取り、ギンガは何とか落ちずに済んだ。

今までの土方十四郎からは考えられない土方らしい行動‥否‥以前も一度あった。

それは真選組内部に攘夷志士との繋がりがある反土方派のグループが真選組内で謀反を起こし近藤の殺害を計画して真選組を乗っ取ろうとした時だ。

この時の主犯、伊東鴨太郎にも彼は情けをかけ仲間として助けようとした。

でもそれは自分の大将である近藤が彼を斬ろうとしなかった事、最後は武士らしく剣によって斃れるべきだという情けも少なからずある行動だったのだろう。

だが今回の場合、ギンガは自分に敵意が向いていようと彼が己の意思だけで彼女を助けようとしている。

そんな事をつゆ知らないギンガは紅桜で突き刺そうとしてきたがその攻撃は土方の頬と肩をかすり土方は、

 

「でりゃぁぁぁ」

 

引っ張りあげて投げ飛ばして自分の刀を拾い上げ、

 

「本当、何で俺が‥‥くそっ、こんな所、他の隊士に見られりゃ士道不覚悟で切腹もんだぜ」

 

息を切らしながらそう言う彼の顔は笑っていた。

 

両者は別々の方向に走り出して石柱を挟みながら斬り合い火花を散らしてギンガが大きく振りかぶると土方は転がりながら躱して背後に回り込んで斬り掛かると背面跳びで躱して背中を斬る。

 

「ちぃ!」

 

背中を抑えて座り込んでいると、

土方は次のギンガの行動に戸惑うなぜならギンガは下に降りていった。

 

「何だ?いきなり下に降りて‥‥?」

 

だが、次の瞬間大きな音がしてギンガがやりたいことが分かった。

 

「あの野郎、このビルごとやるのかよ!?」

 

そう彼女はあと数本の支えでぎりぎり立っていたこのビルの石柱を切り落としてビル諸共、土方を亡きものにしようとしていた。

ギンガはすぐさま外に出て被害の受けない場所まで下がり崩壊していくビルを眺めていた。

ビルが完全に崩壊していき、ただの瓦礫の山になったのを確認して彼の生死の確認、または瀕死の土方にトドメを刺そうとして瓦礫の山に行こうとすると、

 

タッタッタッタッタッ‥‥

 

キン!!カン!!カン!!キン!!

 

「っ!?」

 

横を向くと土方が飛び出してきて彼の連続の太刀を受けきり両者はザザっと地面をすりながら後ろに下がる。

土方はどうやらギンガの目的がわかった瞬間に2階から飛び降りてビルの崩壊に巻き込まれず、尚且つギンガに見つからないようにとその場から離れギンガに奇襲をかけたようだ。

だが、その奇襲もギンガには致命打を与える事は出来なかった。

 

(ちっ、ギンガの奴、俺の動きに対処しやがった‥ギンガ相手に模擬戦をした時同様、コイツの反射神経は相変わらず抜群だな)

 

ギンガの斬撃を皮一枚掠らせて避けながら、土方は心の中で悪態を吐く。

ここまで土方が追いつめられている原因は、間違いなくギンガ本人だ。

ミッドに流れついて、ギンガとパートナーを組んでから土方はギンガとは何度も模擬戦をしていた。

紅桜はギンガの身体を乗っ取るだけではなく、ギンガがこれまで経験して来た土方との模擬戦の記憶さえも読み取り、土方の行動パターンを学習し始めた。

今避けられているのは、土方が模擬戦でギンガの相手をしてきて、彼女の癖をなんとなく掴んでいる事とこれまで攘夷志士相手に潜って来た修羅場で経験して来た侍としての本能と勘によるものだ。

しかし、それもいつまでも長く続きはしない。

土方の受けるダメージは徐々に‥そして確実に彼の事を蝕んでいき、体力は消耗されていく。

 

「ちっ、滅茶苦茶やりやがる。おい、ギンガ!!んな事やってどんだけ始末書を書かねぇと行けねぇと思ってんだ!?いい加減、さっさと戻ってこい!!これ以上、始末書の量を増やそうとすんなよ!!」

 

(くそっ、マジでやばいぞこりゃ‥早くしねぇとギンガの身体が完全に紅桜に乗っ取られちまうかもしれねぇ‥‥)

 

あとどれくらいのタイムリミットがあるのか分からない為、焦る土方。

ギンガが紅桜に身体を乗っ取られてからそれなりの時間が経っている。

あまり悠長に時間をかけているとギンガの意識が完全に消えて身体は紅桜に乗っ取られて、紅桜本体を壊してもギンガが元に戻らない可能性もある。

事実、紅桜は先程の土方の奇襲に関してもギンガの記憶を読み取って難なく対処していた。

もし、ギンガの身体、意識が紅桜に完全に乗っ取られてしまい、その後で紅桜を破壊した場合、ギンガは精神崩壊を起こして廃人になってしまうかもしれない。

だが、土方の焦りなど知る筈もなく彼女は気にせずに刀を振るう。

 

「おい、ギンガ!!いつまでお前の大事な身体を妖刀なんかに貸しているつもりだ!?いい加減に早く戻って来い!!ギンガァァァ!!」

 

土方は刀を振りつつ必死にギンガを呼び続けた。

その頃、ギンガの深層意識の中では‥‥

ギンガの身体には幾つもの黒い紐状のモヤが彼女の身体を十字に縛り付けていた。

黒いモヤに縛られているギンガはぐったりとして意識を失っていたが‥‥

 

うっ‥‥

 

此処は‥‥何処‥‥なの‥‥

 

私は‥‥確か‥‥

 

ギンガが自らの記憶の最後の出来事を思い出そうとしていると、

 

「‥‥ガ!!」

 

ギンガの意識がうっすらと覚醒すると、外から声が聞こえて来た。

 

「ギ‥‥ン‥‥ギンガァァァ!!」

 

誰‥‥?

 

私を呼ぶのは‥‥誰‥‥?

 

「ギンガ!!戻って来い!!」

 

‥‥トシ‥さん?

 

ギンガは重い瞼を開けると、自分と戦っている土方の姿が目に映った。

それはまるでテレビの画面を見ているかのような感覚であるが、残念ながらそれはまぎれもない現実で、土方は必死に自分に声をかけながら戦っている。

自分の身体なのに言う事をきかず、自分の身体は土方を傷つけている。

 

トシさん!!

 

自分の斬撃で傷つく土方の姿を見て、覚醒するギンガの意識。

しかし、黒いモヤは強力なバインドの様に自分の身体をきつく縛りつけており身動きが取れない。

 

うっ‥くっ‥‥このっ‥‥

 

ギンガは身体をよじらせ、黒いモヤの呪縛から逃れようと必死にもがく。

 

トシさん!!トシさん!!

 

何度も土方の事を呼び続けながら身体を縛っている黒いモヤのバインドを解こうともがくギンガ。

ギンガの意識が覚醒し、紅桜の呪縛から逃れようともがき始めた時、外で行われているギンガと土方の戦いでも変化があった。

先程まで鋭い攻撃をしていたギンガの動きが最初と比べると動きも攻撃も鈍くなり始めた。

土方はギンガのこの動きを見逃さなかった。

 

(ふっ、どうやら、ギンガの奴が漸く起きたようだな‥‥ったく、寝すぎだっつぅの‥あの寝坊助が‥‥)

 

動きが鈍くなったギンガを見て、やはりギンガはまだしぶとく生きていた事、

そしてそのギンガの深層意識の中で彼女の意識が覚醒し始めた事に確信を持つ土方。

だが、いつまた紅桜がギンガの意識を乗っ取るかわからない。

ギンガの意識が戻り始めたこの時が絶好のチャンス。

 

「悪ぃなギンガ、余裕も時間も無いから此処からは加減はできねーぞ!!」

 

多少、荒事やゴリ押しになってでもギンガを元に戻す。

土方にとってギンガを取り戻す最後の戦いが始まった。

 

「いくぞ!!ギンガァァァ!!」

 

刀を構えてギンガへと向かっていく土方。

一方で、ギンガの方も深層意識の中で必死に戦っていた。

黒いモヤはギンガの意識を再び眠らせようと、ギンガがもがく度に彼女の身体に深くめり込み身体は底なし沼に沈むかのように黒いモヤの海に沈み始める。

血は出ないが、黒いモヤのバインドがめり込む度にギンガの身体に電流を流されたかのような激しい痛みが体中に走り、思わず意識を失いそうになるが、土方が外で自分の身体と必死に戦いながら、意識の中に居る自分に必死に呼び掛けて、自分の帰りを待っている。

此処で意識を失う訳にはいかない。

意識を失えばもう二度と元には戻れず、目を覚ます事はない。

土方やスバル、ゲンヤ達の下へ戻れなくなる。

 

うっ‥‥くっ‥‥うぅ‥‥う…あ……ああああああああああああああああっ!!

 

苦しむ声をあげ黒いモヤを無理矢理振りほどこうとするギンガ。

やがて、左腕がモヤからの拘束を脱する。

 

外の戦いはギンガが意識を取り戻した事、そして左腕をモヤから脱した事で、完全に土方に傾きつつある。

殺人兵器だったギンガの剣撃は真選組の新米隊士並に衰えており、後は完全にギンガの意識が戻ったら、紅桜をヘシ折るだけだ。

 

「ギンガ!!戻れ!!戻って来い!!」

 

うっ‥‥ああああああっ!!‥‥出ていけ!!

 

私の中から‥‥‥出ていけぇぇぇ!!

 

自由になった左手でギンガは右手に絡みつくモヤを引き剥がし、両手で身体に絡みついている黒いモヤを引き剥がす。

 

「ギンガァァァ!!」

 

「うっ‥くっ‥‥トシ‥‥さん‥‥い、いまの‥‥うち‥です‥‥」

 

土方に声をかけられるくらいギンガの意識が漸く表に出てきた。

金色だった筈のギンガの目は左目がギンガ本来のエメラルドグリーン色の目になっている。

そしてギンガはあの時の市街戦同様、左手で紅桜を持つ右手を抑え、紅桜の動きを牽制する。

だが、紅桜もこのままギンガに意識を取り戻されるのを防ぐため、触手を左手に絡ませて引き剥がそうとするのと同時に首にも巻き付けて締め付ける。

ギンガは触手で首を絞められている事と紅桜に意識を再び乗っ取られまいと苦痛で顔を歪めながらもこのチャンスを逃さない為にも左手でグッと紅桜を抑える。

土方はギンガが必死の思いで作り出してくれたこのチャンスを見逃す事無く、

 

「うおりゃぁぁぁぁぁー!!」

 

土方の渾身の一撃を紅桜の刀身へと当てると、

 

ベキン!!

 

と、音を立てて紅桜は折れ、その瞬間、ギンガの身体から黒い瘴気が抜けていき、触手はまるで氷が溶けるようにドロドロと溶け出し、ギンガの首と左手は解放される。

そして瘴気が完全に抜け切ると、糸が切れたように崩れ落ちるギンガ。

 

「ギンガ!!」

 

土方はそんな彼女に駆け寄って彼女の体をそっと抱き止める。

 

「ギンガ!!おい、しっかりしろ!!」

 

「うっ‥トシ‥さん‥‥?」

 

「ギンガ!!大丈夫か!?」

 

「なんか‥‥からだ‥‥じゅうが‥‥いたい‥です‥‥それに‥あたまも‥‥ぼぉっと‥‥して‥‥なんだか‥‥とても‥‥ねむい‥‥です‥‥」

 

ギンガは目を開けているのもやっとの感じで土方に自分の状況を伝える。

 

「もういい、ギンガ‥少し休め‥‥お前が起きるまで俺が傍に居てやるから」

 

「‥‥はい‥すみませんが‥‥そうさせて‥も‥‥らい‥‥ます‥‥」

 

土方にそう言われ、ギンガは安心したかのように静かに目を閉じた。

ギンガは目を閉じているようだが、胸はちゃんとゆっくりと上下しているところを見る限り心配する様な事態にはなっておらず、彼女はただ単に眠っているだけの様だった。

土方は眠るギンガの姿に安堵の息を漏らし、右手でギンガの頬をそっと撫でる。

 

「ったく、心配させやがって」

 

土方の頬は自然と小さく緩んだ。

 

それから暫くして‥‥

 

「うっ‥‥うーん‥‥」

 

ギンガが目を覚ました時、彼女は土方の背中に背負われていた。

 

「と、トシさん!?」

 

「ん?おう、やっと起きたか?ギンガ」

 

「えっ‥‥あ、あの‥‥」

 

何故自分が土方に背負われているのか状況が掴めない。

 

「今、救護所に向かっている最中だ‥‥それまで大人しくしていろ‥‥」

 

土方は振り返る事無くジッと前を見ながらギンガに状況を説明する。

 

「‥‥トシさん」

 

「ん?」

 

ギンガは土方の背中に顔をうずめて土方に声をかける。

 

「私‥‥覚えているんです‥‥おぼろげながらも‥‥トシさんに酷い事をしたことを‥‥」

 

恐らくギンガは紅桜に乗っ取られた直後の事を言っているのだろう。

 

「‥‥そうか」

 

「意識は薄っすらあるのに、自分の身体なのに、何かをすることができなくて。私の意思とは関係なく身体が動いて、自分の身体なのに自分のじゃないみたいで‥‥すごく怖かったです‥‥」

 

ギンガは身体を震わせながら、紅桜に体を乗っ取られて居た時の事を語る。

 

「だが、お前のその意識が残っていたからこそ、俺はこうして生きている‥‥そして紅桜をへし折る事も出来たし、お前を救う事が出来た‥‥やっぱ、お前は大した女だよ‥‥」

 

「‥‥」

 

土方がギンガに見えない様に前をジッと見つつフッと思わず口元を小さく緩め笑みを零す。

しかし、ギンガはそんな土方の様子に気づかず、思いつめた顔である。

 

「‥‥トシさん」

 

そして、ギンガは意を決した様な表情で土方に再び声をかける。

 

「ん?」

 

「‥‥こんな状況ですけど、聞いてくれますか?」

 

ギンガは土方をギュッと強く抱き付いて彼の耳元で囁く。

 

「ん?なんだ?」

 

「‥‥私‥トシさんの事が好きです‥‥1人の男の人として‥‥」

 

「‥‥」

 

ギンガは勇気を振り絞って土方に告白をする。

それを土方は黙って聞いている。

そして、ギンガは土方に異性として好きだと言う事を告白するのと同時にもう1つ、自分の正体について告白し始める。

 

「‥でも‥‥私‥‥本当は‥‥人間じゃないんです‥‥私‥‥私の正体は‥‥」

 

「関係ねぇよ‥‥」

 

「えっ?」

 

土方はギンガが自分の正体が普通の人間ではなく戦闘機人である事を伝える前にギンガの言葉を封じる。

事前に知っていたとはいえ、自分が普通の人間ではない存在だと告白するギンガの表情は窺えないが、声からして沈痛な思いが伝わってくる。

だからこそこれ以上、ギンガを傷つけたくはない。

その思いが土方を突き動かす。

 

「関係ねぇよ、そんな事‥生まれがどうとか気にすることなんかねぇ。ギンガ‥‥俺を見てみろ、大した学もなく、ただ剣を振り回しているだけのロクデナシだ‥‥それに比べてお前はどうだ?ちゃんと学もある、魔法だって使える‥‥お前は十分に誇れる人間だよ。それにお前は強くて‥‥イイ女だ‥‥」

 

「トシさん‥‥でも‥‥私なんかとじゃ、釣り合いません‥よね?」

 

「フッ、俺から言わせてみりゃ、俺の方がお前さんと釣り合わねぇよ‥‥こんな田舎侍なんかと‥」

 

「‥‥」

 

ギンガは告白が失敗したのかと思い黙り込みグッと唇をかみしめる。

だが、ギンガの予想に反して土方は、

 

「でもなぁ‥それでも良いって言うなら、ギンガ‥‥」

 

先程、ギンガは自分に勇気をもって告白したのだ。

ならば、自分もギンガのその思いに応えなければならない。

土方も覚悟を決めてギンガに伝える。

自分がギンガに抱いた思いを‥‥

土方は振り向き、

 

「は、はい」

 

「俺の所に来い‥ギンガ‥‥俺にお前の全てを寄こせ」

 

土方の真剣な表情と先程の彼の言葉の意味を理解したギンガの目からは涙が流れ始め、

 

「はい!!私、トシさんの所に行きます!!それに私の全部を貴方にあげます!!」

 

ギンガはギュッと土方を抱きしめた。

土方もギンガには顔を見られまいと、ギンガの方には顔を向けずに口元をフッと緩めた。

 

(ミツバ‥‥こんな俺でも幸せになっていいか?)

 

(こんな俺でも、もう一度、この最高の女に恋をしてもいいか?)

 

ギンガを無事に取り戻せた事と同時に今まで意識しない様にして来たギンガに対する思いをかつて自分が愛した女‥沖田ミツバに許しを乞うかのように心の中で問う土方。

許しを乞わずともミツバならばきっと惚れた男の事を祝福してくれるだろう。

 

 

土方はギンガを背負って市街地に設けられた救護所へと向かう。

その際、土方は背中に背負ったギンガを落とさない様に片手で上手く上着のポケットからタバコを取り出しその内、1本を口に咥えるとタバコを再び上着のポケットにしまい、次にジッポライターを取り出してタバコに火をつける。

土方がタバコをふかしながらギンガを背負って歩いていると、

 

「‥‥トシさん」

 

ギンガが再び土方に声をかけた。

 

「あん?」

 

「‥‥タバコ‥けむいです」

 

土方の背中に居るギンガがタバコの煙が当たり煙たいと言う。

 

「それぐらい我慢してくれ‥‥戦いが終わった後の一服はクセだからな‥この瞬間こそが俺にとっては、至福の時間だ‥‥それに今日のタバコは‥‥なんだか、今までのモノとは違って一段と美味く感じるんだ‥‥」

 

「もう、しょうがないですね‥‥」

 

ギンガは土方の背中でクスリと笑ったが、この嗅ぎ慣れたタバコの匂いこそが、自分が土方の下に帰って来たのだと言う何よりの証明となった。

彼女はそれが嬉しくもあり、ギンガは土方の背中に顔をうずめながら、土方の温もりと彼の愛煙しているタバコの香りに包まれながらもう一度、目を静かに閉じた。

 

 

~side~スバル~

 

市街地に設けられた救護所‥‥

そこにはガジェットとの戦闘で負傷した局員が大勢担ぎ込まれている。

その中には、戦闘機人と戦った六課の局員も含まれている。

そして救護所にある救護テントの中で、

 

「うっ‥‥」

 

ノーヴェと激戦をしたスバルがストレッチャーの上で目を覚ました。

 

「‥うっ‥‥こ、此処は‥‥?」

 

「気がついた?スバル」

 

「ティア‥‥」

 

スバルの目には自分の顔を覗き込んでいるティアナの顔が映る。

 

「ティア、無事だったんだ‥‥」

 

「当たり前でしょう。そう簡単にやられてたまりますか」

 

ティアナの顔を見てホッとするスバルであったが、

 

「‥‥っ!?」

 

スバルがバッと上半身を起こして、

 

「此処は何処!?」

 

「市街地に設けられた救護所よ」

 

「ノーヴェは!?」

 

「ノーヴェ?」

 

スバルは自分と戦ったノ―ヴェがどうなったのかをティアナに尋ねた。

 

「私と戦った戦闘機人‥赤い髪の子なんだけど‥‥」

 

「その子なら、アンタの隣で寝ているわよ」

 

「えっ?」

 

ティアナがスバルの隣を指さすと、スバルもティアナの指先の先へと視線を向ける。

そこには、静かに眠っているノ―ヴェの姿があった。

ただ、敵の戦闘機人と言う事でノ―ヴェが眠っているストレッチャーにはバインドがかけられていた。

 

「他の皆は!?」

 

ノーヴェの安否を確認した後、ティアナ以外のメンバーの事を尋ねた。

 

「キャロはルーテシアっていう召喚師の女の子の面倒を見ているわ。山本もディードって言う戦闘機人と一緒でその子の面倒を見ている。エリオはフリードでフェイトさんの援軍にスカリエッティの所に行ったって‥‥」

 

「神楽と新八君‥それにギン姉は?」

 

「‥‥まだ、戻って来ていないわ‥助けに行きたくても皆、魔力もなくボロボロでとても他の所へ援軍に行ける状態じゃないわね‥‥」

 

そう言うティアナ自身も身体の彼方此方に包帯やガーゼをつけている。

 

「じゃあ、私が‥‥うっ‥‥」

 

スバルはティアナの話を聞いて起き上がろうとするが、身体に力は入らず、上手く起き上がれない。

そして、スバルはバランスを崩してストレッチャーから転がり落ちてしまう。

 

「いっつぅ~‥‥」

 

ノーヴェとの戦闘で負った傷とストレッチャーから転がり落ちた事による痛みがスバルの身体に走り、思わず顔を歪める。

 

「ほら、言わんこっちゃない‥スバル、アンタだってボロボロなのよ」

 

「‥‥」

 

最愛の姉を助けに行きたくても助けに行けない。

この状況にスバルは歯痒い気持ちとなる。

もしかしたら、この戦場の何処かに姉が居るかもしれない。

あの人ならきっと姉を助け出してくれると信じているが、やはり心配にはなる。

そこへ、

 

「すまないが、シャマルって奴は此処にいるか?」

 

ギンガを背負った土方が救護所にやって来た。

 

土方は救護所に向かっている中、背中のギンガがまた眠っている事に気づいてそのまま眠らせていたのだが、救護所が近くに来た時、自分は嘱託(バイト)、しかも着ている服は局員の制服ではなく真選組の幹部服なので、108部隊の局員以外の局員から不審者扱いされるのを防ぐために自分の身元を証明してもらう為、背中で眠っているギンガを起こして自分の身分を証明してもらい、救護所へと入ったのだ。

機動六課のメンバーも戦っていると言う事で救護所には八神シャマルと言う人が居る筈だとギンガから聞いてその人を探す土方。

ギンガ曰く、その人とは知り合いであり、凄腕の治癒師でもあるらしい。

そして、救護所のとある救護テントの1つを尋ねた時、そこには見知った顔があった。

 

「えっ?‥‥ギン‥‥ねぇ?」

 

突然救護テントの中に入って来た男の人は背中に姉を背負っていた。

そんな光景に目を疑うスバル。

姉を助けてくれると父が絶大な信頼を置いていたとしても今目の前にその人物と姉が現れ自分は夢を見ているのではないだろうか?

または怪我のせいで質の悪い幻影を見せられているんじゃないだろうか?

目をこするのも忘れて自分の目の前の姉を見ていると、

 

「スバル?」

 

優しく声をかけられ意識せずに声を返すスバル。

 

「ギン姉‥なの‥‥?本当にギン姉なの!?」

 

「うん、ただいま‥スバル‥‥」

 

ギンガは微笑みながらスバルに声を掛ける。

間違えない、決して見間違えたりしない、聞き間違えたりしない。

帰ってきてくれた。

無事に自分の下に戻ってきてくれた。

スバルは自分の頭が考えるより先に、

 

「ギン姉ぇぇぇぇぇ!!」

 

「えっ?ちょっ‥おまっ‥‥ふごっ‥‥」

 

土方は自分に迫るスバルに落ち着くように言おうとしたが、スバルの目に土方の姿なぞ映ってはおらず、今スバルの目に映るのは姉のギンガのみである。

先程まで怪我の為、動けなかった筈のスバルなのだが、愛しの姉を抱きしめに行き、土方の背中に居る彼女もまた妹を土方の肩越しに優しく抱き締め返していた。

 

「ギン姉、ギン姉、ギン姉!!良かった!!無事だった‥帰ってきてくれたぁ!!アタシ、物凄く心配したんだからね!!」

 

目から優しい雨のように涙が流れギンガもまたスバル程ではないが涙を流していた。

 

「スバル‥ごめんね‥‥ごめんね‥心配かけて‥‥」

 

「ううん‥こうして無事に帰って来てくれただけでアタシは満足だから‥‥」

 

姉妹感動の対面にティアナも思わずもらい泣きする程の感動をしていたがふと途中で思った。

 

「あっ‥‥」

 

多分読者の方々も分かるだろう。

ナカジマ姉妹の間に現在も彼が挟まれているままの状態である事を‥‥

例え疲労が溜まっていても戦闘機人であるナカジマ姉妹が互いに力一杯抱きしめあっているのだ。

その間にいたらたまったもんじゃない。

前後からの豊乳プレス‥‥ある意味では天国な状態なのだが、実際は前後からプレス機でプレスされている様な地獄だった。

 

「スバル‥ギンガさんも‥‥間‥間‥」

 

「間?あっ‥‥」

 

「えっ?」

 

ここでようやくスバルとギンガは土方の存在に気づいた様で、怪我をしていた為、万力程ではないにせよ最初にギンガを抱きしめに行った時に丁度鳩尾に頭突きされその後絞められ窒息にまで追いやられた。

彼はこれが今日の最大ダメージだと思えるぐらい苦しかったようだ。

 

「ゴホッ‥‥ヴ‥ゲホッゴホッゴホッ‥‥」

 

土方はやっと息ができてその顔に生気が戻ってきた。

 

「あぁ~死ぬかと思った‥‥」

 

「あっ、そのごめんなさい」

 

「すみませんトシさん」

 

スバルがぺこりぺこりと頭を下げ、土方の背中のギンガは謝罪する。

土方は独り言を呟くように、

 

「姉妹揃ってどんな馬鹿力何だよ。くそっ‥」

 

スバルには聞こえなかったが土方とほぼ密着状態な背中に居るギンガにはちゃんと彼のボヤキは、はっきりと聞こえたようでスルッと土方の首に腕を回して首を絞めた。

 

「それってどういう意味ですか?トシさん」

 

「ちょっ、やめろ‥ギンガ‥‥」

 

笑顔で聞いているものの腕の力は緩めない。

いや、緩める気配すらないギンガ。

ティアナとスバルはしばし土方とギンガのじゃれ合いを唖然とした表情で見ていた。

そしてギンガからのお仕置きが終わり、土方はギンガを近くのストレッチャーの上に乗せる。

 

「えっと‥‥病院で会った‥‥確かギンガの妹だったな」

 

「はい。スバル‥‥スバル・ナカジマです」

 

土方に名前を名乗るスバル。

 

「ゲンヤのおやっさんから聞いているかもしれないが、俺は土方‥土方十四郎だ。で?そっちのオレンジ髪のアンタは?」

 

実際土方はスバルにまだ自分の名を名乗っていなかった。

 

「スバルの同僚のティアナ・ランスターです」

 

ティアナも土方に名を名乗る。

互いに自己紹介が終わり、シャマルが着て早速ギンガの診察を行う。

しかし、その診察を行うシャマルでさえ、身体の彼方此方に包帯を巻いている事から、今回のこの戦いの激しさを物語っている。

勿論、ギンガの診察が終わると、土方も強制的にシャマルの治療を受けた。

 

「すまねぇが、お前らギンガの事を頼めるか?」

 

診察と治療が終わると土方はスバルとティアナにギンガを託す。

シャマルは他にも治療する患者がいるのか土方の治療が終わると次の現場に向かっている。

 

「えっ?それはまぁ‥‥」

 

「いいですけど‥土方さんは何処へ?」

 

土方の言葉からこの後、彼が何処かに行こうとしている事が窺える。

 

「どうしてもケリをつけなきゃならない奴がいるんでな‥‥」

 

「トシさん‥‥」

 

そんな土方を心配そうに見るギンガ。

 

「心配すんな、お前の仇は俺がとってやる」

 

そう言い残し土方はギンガの頭を撫でるとそそくさと救護テントから出ていった。

土方は救護所を歩きながら、

 

(あの野郎にはちゃんと落とし前をつけさせてやる!!)

 

彼はギンガに紅桜を持たせた張本人である朧を探しに市街地へと向かった。

 

 

土方が出て行った後、救護テントでは‥‥

 

「ねぇ、ギン姉」

 

「なに?」

 

ストレッチャーに横になるギンガに対してスバルはストレッチャーの上に腰掛けながらギンガに声をかける。

 

「もしかして、ギン姉が好きな人って‥土方さん?」

 

「っ!?」

 

スバルの問いにギンガは思わずビクッと身体を震わせて頬を赤らめてしまう。

 

「その反応‥やっぱり、ギン姉が好きなのは、土方さんなんだ!!」

 

スバルは以前行われた健康診断でギンガに想い人が居る事は知っていた。

でも、それが誰なのかをギンガは教えてくれなかった。

そして、スバルが病院で土方と会った時、『もしかして』と思ったが、今のギンガの反応を見て確信を得たスバル。

 

「いやぁ~土方さんがお義兄さんかぁ~これからは土方さんを『トシ兄』って呼んだ方が良いかな?」

 

にやけ顔でギンガを茶化すスバル。

ティアナもほんのりと頬を赤く染めてギンガを羨ましそうに見ている。

そんなスバルを尻目にギンガはあの時の土方の言葉が脳裏を過ぎる。

 

(トシさんのあの言葉ってもしかして、プロポーズの言葉‥‥なのかな‥‥?)

 

土方の言葉を思い出し、意識してしまったギンガの顔はすっかり茹で蟹状態となる‥‥

そんな自分の姿を妹のスバルや後輩のティナアに見られまいと、毛布で顔を覆うギンガ。

 

(トシさん‥‥絶対に戻って来てくださいね‥‥)

 

そして、ギンガは想い人の帰りを信じて待った。

 

 

 

・・・・続く




ふぅ。一人目のカップリング成立した。長かった主に自分のせいだが長かった。

この調子でガンガンいちゃLOVEさせるぜコノヤロー!(もう半分変なテンション!!)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的86 久しぶりに再開するとなんて顔でやればいいかわからないが取り敢えず遅くなりすいませんっしたァァァァ

えぇ〜、題名で謝ったので久しぶりに投稿します。


 

 

 

~神楽Side~

 

 

「ぬァァァァァァァ!!」

 

振り下ろされる神楽の傘を両手で受け止めるトレディに新八は銃弾の様にとてつもないスピードでトレディを貫こうとする。

しかし、トレディは地面を凍らせて新八のスピードを遮る。

新八もぎりぎりの所で反応して躱して木刀を投げつける。トレディは手を前に出して炎をちらつかせる。

それを見た神楽は傘を離して投げた木刀を掴み取る。

 

「っ!?」

 

「歯ぁ食い縛るネェ!!トレディ!!」

 

神楽は一回転してバットを振り抜くようにトレディの横っ腹を殴りつけた

 

「目指せ甲子園ンンンン!!」

 

トレディはビルまで吹っ飛び掴んでいた神楽の傘は宙を舞い神楽はそれを掴んで木刀を新八に返した。

ただ1つ、神楽は新八に木刀を投げ捨てたために新八は木刀を受け取る時落としかけ慌ててキャッチしてメガネをクイッとかけ直して神楽に聞いた。

 

「神楽ちゃん!トレディは...」

 

「...これぐらいでくたばるならこの前で倒せているネ。そんな事も分からないアルかメガネヒッター」

 

「メガネヒッターって何だよ。別にメガネは要らないだろう!?そもそももう甲子園終わっているよ!!」

 

「バカヤローが!!秋の選抜があるだろう!!そんな事も知らねぇのか?この7番バッター!!」

 

「秋の選抜って...てかなんで7番なの!?」

 

神楽の言った中途半端な番号、特にどうでも良いが彼の天性のさがというか性格というかそのようなものが律儀に聞き直した。

 

「打順7番の下位打線で特にランナーも殆ど堪って無くてヒットを打っても全く目立たたず、次のバッターがアウト取られてスリーアウトになって意味がなく虚しくなっていく順番のバッターのことネ。」

 

「無駄に長いよ!!それに失礼だよ!!7番もチームの為に頑張ってランナーになろうとしてるんだよ!!」

 

「私はコツコツ派じゃなくて1発逆転ホームラン狙う派ネ。」

 

2人の長々した会話を伸びてくる氷が遮る。地面を侵食していく氷は2人にすぐ様彼らの影を凍らせた。

 

「お前の長々したツッコみのせいで追撃できなかっただろうが!!新八!!どうするネ!!折角のチャンスだったのに!!」

 

「ええぇぇ!!僕のせいなの!?」

 

鋭くそれでいて足を掴み触手の様に絡みつくかの様に凍らせようとしてくるので後ろに飛び続けて躱して距離を取り続ける。

 

「いつまでくるアルか!?このストーカー氷は!?」

 

傘の引き金を引いてガトリングの様に連射して弾の豪雨がトレディの飛んでいった所を降り注ぐ。

鳴り響く銃音はやがて金属がぶつかり合う音に変わった。多分トレディが足の底に仕込んでいる刃物で弾いているのだろう。

 

「新八!」

 

「うん」

 

「「うああぁぁぁぁぁあ!!」」

 

冷気と煙が視界を遮っていても新八と神楽は力一杯地面を踏み締めて進む。

ゆらり揺れる影を視界に捉えると神楽と新八思い切り振り下ろす。

余りある力はトレディを捕えられず凍った地面に大きくヒビが入り霧が晴れた。晴れるやすぐにトレディが神楽の頬に1発入れる。

 

「ぐうぅ」

 

だが神楽はトレディの腕を掴んで引っ張り神楽もトレディの顔面に拳を入れ込んだ。だがそれだけでは終わらない多少凍るのを覚悟でまだ離さずにラッシュの嵐でトレディを袋叩きにする。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 

トレディはやられるがままだったが神楽の足を地面に押し込むように踏みつけた。ぐりぐりと足をねじ込んでいく。

 

「そんなんじゃ私は止められないネ!!」

 

確かに言葉の通り拳の豪雨は降り止まらずトレディを襲っていた。だが殴られているなかトレディが怪しく笑うと神楽の手が止まった。

 

「トレディ...私の足を‥‥!?」

 

トレディに踏まれたところから氷が神楽の体を侵食して氷で地面と身体が繋がった。

それと共に凍った所からじわじわと激痛が登ってくる。恐らく凍傷の痛みだろう。

 

「大丈夫よ、神楽ァ~貴女の氷像はできる限り傷つけないようにするから...せめてもの姉からの慈悲よ。」

 

それでも神楽は止まらずに頭突きをトレディの頭にするがトレディはそれを読んでいたかのように自分も頭突きした。

 

「私と貴女の思考はよく似ているのよ。私は貴女の兄のDNAから生まれた貴女の姉の様な存在‥貴女は神威と似てそして私と似ている。だから貴女がしたい事なんて猿よりもわかりやすい。」

 

痛みで無意識に頭を抑えながらトレディを睨みつける神楽。

トレディはそんな神楽に拳を振り下ろすが...

 

「僕もいますよ」

 

新八が横から突き刺す。

トレディはその場に踏みとどまり新八をまるで虫を睨むかのように睨みつける。

 

「邪魔よ。兎の喧嘩に猿が入れるわけがないでしょう?」

 

そこからトレディは新八を上から手刀を振り下ろし新八はあまりの威力に意識を切断されかけた。

だがそれを根性でつなぎ止めトレディにタックルをする。

 

「神楽ちゃんを離せ!!」

 

「っ!?鬱陶しい猿がぁ!!」

 

新八のタックルに体制を崩してしまい倒れ込んでしまう。その為に神楽の足から離れて、神楽を凍らせていた氷の侵攻も止められた。

神楽はすぐに自由となった足を上げてその場を踏んで足に振動を与えて氷を砕き割った。

多少はだが傷つき血も出たが考え通り氷は砕かれ無くなって足が自由に動く。

 

「はっ、いくら私の事が分かっても私のパシリ(家族)の事は全くわからないだろうネ?」

 

「今何て文字でルビふった!?ゲロうと」

 

トレディと掴み合いながらも律儀にツッコむ新八を見てしてやったりみたいな顔でトレディを見ている神楽はすぐに新八を引き離して氷結を防ぐ。

更にトレディが手を支えに足の底についてある刃で首を突き刺そうとしてきたので神楽は体制を低めて回し蹴りで地面の手を弾き体制を崩そうとしたが流石にそれだけならすぐに距離を取りながら体制を戻し神楽の腹に拳を突き刺して炎でぶっ飛ばした。

 

「あつ!?」

 

爆風の為か神楽は異様なまでに吹っ飛ばされ、新八は一瞬視線で神楽を追ったがその為にトレディを見失ってそれに気付いた時には背後から声をかけられていた。

 

「貴方に余所見をしている暇なんてあるの...」

 

トレディは新八を蹴り上げ更に地面に思いっきり叩きつける。更に追撃として彼をガードレールへ蹴り飛ばした。

だいぶ強く蹴られたのか新八は口から吐血する。

正直トレディの攻撃をまともに何発も入れられた身体は彼方此方痛むし、重りを付けられたように動きにくくて立つのも苦しくなってきている。

それでも新八は木刀を手にして立ち上がり走り出す。

彼はまだ折れずにどこまでもしがみついてくる。

それは神楽も同じだ。

先程の攻撃はゼロ距離で塊のダイナマイトを爆発されたぐらい効き意識までも吹っ飛ばされる感覚だった。

でも意識を手放さずに地面を砕きわる勢いで立ち上がった。

 

ここで1つ彼らが倒れなかったのは装備の1つのお陰でもある。

それはリボーンがツナとの特訓の片手間で作ってくれたこの服だ。

この服はリボーンのペットのレオンの体内で作られた糸で出来ているこの服は普通の服なんかとは比べ物にならないぐらい丈夫で熱などにも強い。

トレディの攻撃に対する最後の要であり命を守る為の切り札であった。

というのは既に頭から離れる程の興奮状態の2人。

 

「.....いい加減にしなさい。こんなにしても貴方達が私に勝てる事なんてないのよ!!」

 

トレディはまた地面を凍らせる。

自分の高ぶる気持ちごと凍らせる勢いで地面を凍らせる。

新八は真正面ではなく横にそれながら氷の浸食を躱した。

今回だけで何度も地面を凍らせようとしてきたのだ。

氷の侵食速度もどんなふうに凍らせる規模だってわかってきた。

トレディは新八を目で追うと視野から外れた神楽が拳を振り下ろす。

 

「子供をさらう卑怯者に負けるわけには行かないネ。」

 

「ぐっ‥‥」

 

トレディはそれをもろに食らった。

だが氷を砕いてでも衝撃を受け止めに留まり拳を振り上げた。

 

「攫われたのは弱い貴女達が悪いのよ!!あの子を守れなかった弱い貴女達が!!」

 

神楽も腹にモロ、トレディの拳を喰らい、氷で滑ってしまった。

だけど膝を付かずに、

 

「やぁァァ!!」

 

踏ん張りをきかせトレディに向かっていく。

それと同時にトレディは気付いた。

新八が自分の射程範囲に入って来ていることを...どちらかを対処しただけじゃ絶対片方に遅れをとってしまう。

 

「甘いわ!!」

 

2人の攻撃が届きそうな距離になった瞬間屈んで手で体を支え空いた足で2人の足を突く。

2人はバランスを崩してお互い顔がぶつかった。

 

「あぅ」

 

「いっ」

 

更にトレディは手だけでクルクルと回りながら体勢を変えて神楽の腹を蹴り飛ばして更に回転と手の力で飛び上がりその勢いで新八も殴り飛ばした。

 

「くそ」

 

「後、ちょっとが遠すぎる。」

 

ずっと負けずに攻撃を入れる2人。

だが、ずっとトレディの急所も致命傷も与える事が出来ない状況だった。

彼女達の攻撃は致命傷を避けられ逆にこちらは致命傷どころか攻撃を回避するのにギリギリだった。

夜兎の力に加えてこの温度を操る能力の厄介さ。更に底知れない戦闘センスもある。これが神楽達とトレディのとてつもない壁となり超えられないでいた。

 

「ぺっ」

 

神楽は口を切ったのか口から血を吐きだして口元を拭う。

新八もメガネをかけ直した。

此処までボコボコにやられても2人ともまだ諦めていなかった。

実力の差は嫌でも分かっている。

今まで何度も苦渋を舐めて膝を付き人に助けられてきたのだ。

自分達がそんなに強くなっていないなんてわかっている。

例え覆せなくても勝てる見込みも無いかもしれない、それでも2人の雰囲気から読み取れるのは負けるつもりは毛頭ないという事だけだ。

そんな2人の雰囲気はこの戦いが始まってからずっと優勢にたっているのにこの雰囲気が消えずに今も雰囲気が醸し出せていた。

これだ‥この雰囲気がトレディにもはっきりと感じるから油断できず、その上恐怖すら感じていた。

 

 

〜sideツナ〜

 

スカリエッティのアジトの地下‥‥此処にはツナと神威、それとツナと共にここに転移させられたリボーンがいた。

 

「ここに赤ん坊を連れてくるなんて意外だね。観客なのかな?」

 

「ちゃおっス。お前が神楽の兄の神威か?」

 

「へぇ~赤ん坊なのに喋れるんだ‥‥あぁ、そう言えば君には赤ん坊の変わったセンセーがいるんだっけ?」

 

「そうだ。ツナのかてきょーのリボーンだ。」

 

「俺は神威。よろしくね。で?君も強いって話を聞いたんだけど?」

 

「あぁ」

 

「なら君とも」

 

「やるなら、少なくともまず俺の生徒を倒さねぇとな。」

 

「そうだね、デザートはメインディッシュの後だもんね。」

 

リボーンは神威とツナの戦いには手を出す気は無いのか2人の事をジッと見守っていた。

ツナと神威は今、鬼気迫る雰囲気の中で睨み合う。

お互い睨み合うだけで動く気配はない。

いや、微かに様子を伺っている感じもする。

お互いに何度もの戦いでお互いの強さを知っていて更に戦い方も熟知している為に、動かずに相手の動きを待っているのだ。

両者は互いの間合いギリギリの位置で睨み合う。

無謀に先に出たら相手に先手を譲ってしまう。

だからこそ相手を誘うちょっとした動きを見せて頭の中では思考を張り巡らせている。

だが、このまま動かなければ長引くだけだ。

神威は別に構わない。彼からしてみれば強い奴‥強敵と認めたツナと戦い勝てれば何でもいい。

しかし、ツナの場合はここで神威を抑えられるという事、それが最低目的である。

神威を早々に倒して他のメンバーの所に加勢に行かなければならないし、空に浮かんでいるゆりかごの事も気になる。

この地下深くに送られたのは運が悪い。

外の情報も分からないし、どこに飛ばされたかも分からない。

周りから地下深くだと思われるが構造がわからないから出口もわからない。

ツナとしては早く神威との戦いを終わらせてフェイトに合流したい。

 

「ふっ!」

 

ツナは走り出して神威に殴り掛かる。

駆け引きもなくただの様子見の攻撃、神威も真正面に受け止めた。

 

「漸く、覚悟が決まったか。ツナ」

 

餌を与えられた肉食獣の様な顔でツナを見る神威。

片やツナは表情を崩さずにじっと見ながら左足をあげて神威の頭を狙うが神威は右腕でガードする。

神威は腕でツナの足を弾くやいなツナの腕を引っ張り自分の元へ寄せてツナの腹に膝を入れた。

 

「ごふっ!」

 

神威の蹴りがもろに入ると、ツナはお腹から強烈な衝撃がダメージと共に背中へ伝わる。

神威は有無を言わさず、ツナをグルングルンと回して壁に投げ飛ばそうとするがツナは自由であるもう片方の手から炎を放出して勢いを殺して足を地面につけて支えをしっかりとして神威を貫手で突く。

 

「くっ‥‥」

 

突くとすぐに離れて構え直して真っ直ぐ神威を見据える。

 

「神威、本気を出さないなら俺は先に行かせてもらう。お前と遊んでいる暇はないからな。」

 

「待ちなよ、少しは余裕を持たないと。俺相手に切羽詰まる気持ちはわかるが.......余裕のない奴が仲間を守れると思えないよ。」

 

刹那、ツナは神威に拳を入れ、神威もまた受け止めている。

 

「別にお前と向き合わないという訳では無い。お前はこれでしか気持ちを表せないのに、それすらも通じなくなれば俺がここにいる必要は無い。」

 

「へぇ、俺が何かを伝えたがっているとでも?」

 

「あぁ、微かに寂しく切ないって」

 

ツナの言葉に神威は驚愕の表情を浮かべ直後先程の肉食獣の様な表情とはまた違う、睨みをきかし殺意を放っているがそれは人の悪感情に満ちた表情であった。

神威はすぐにツナの手を離してすぐさまツナの頬を切りつける勢いで貫手を放ち、ツナはそれをギリギリ掠め、ギロッと睨み神威に拳ぶつけようとするが紙一重で躱した。

そこから二人の攻撃は怒涛へ発展して殴り殴られながらも休むことのない怒涛のラッシュに怯まずに殴り合う。

入れて入れられ2人はお互いの顔面に拳をねじ込み地面がすり減りながらも強引に押し込む。

だがその刹那の瞬間、ツナは力一杯握っていた拳を開き、自分の発揮できる限りの握力で握りしめ、また空いている手の炎をジェットの推進力として壁にまで追いやる。

追いやられた神威は壁にめり込みツナの手を引か剥がそうとする。

 

「神威、お前が何を思いどうして今に至ったかなんてのは知らない。だけど神威、お前は殺意の中に少しの優しさがある。お前は何でそんなに苦しそうに拳を振るうんだ!?」

 

「ふん、そんなの決まっているさ、『最強』の為、俺はあの男を殺す。その為にまずお前に勝てなきゃ‥‥そしてその次はそこで観客気分で見ている赤ん坊!!そして俺はアイツを‥‥あの男を殺して、真の最強となる!!それが俺の目標で、それが俺の存在意義だ!!」

 

ツナを蹴り飛ばすが、ツナは衝撃に合わせて後ろに飛ぶ。

 

「本当にそれだけか?」

 

「何?」

 

神威はそれを追いツナは躱しながら反撃している。

 

「お前の望む『最強』って言うのは願望なのか?」

 

一進一退の目にも止まらない速度の攻防に響くツナと神威の声。それを黙って聞くリボーンは一切手を出さずに見守り続けている。

 

「俺はお前が本当に純粋に強さを求めている気がしない。」

 

「黙れ‥‥」

 

掠れる声で遮る神威の言葉にも喋ることを止めない。

 

「お前の目の先に写っている目標は何だ!?お前は何を思って拳を振るっているんだ!?」

 

神威にとって今のツナの声は雑音よりも酷く気分を害してくる。あの日から封じ込めた自分の優しさ(愚かさ)、彼はその塊だ。彼の言葉を聞くたびに身体中に虫唾が走り、無駄な力が湧き上がり、自分の腕の圧力へと変わる。

 

「お前にどうこう言われる筋合いはない!!喋る義理もない‥ましてお前の様な奴に分かってもらおうなどと思っても居ない!!」

 

神威はそれを発散するかのようにツナを蹴り上げ背後に周り地面へと叩きつけた。

 

「一々喋りながらじゃないとお前は殺し合えないのか!?マフィアのボス候補が聞いて呆れる!!」

 

やまぬ追撃、雷のようにただ真っ直ぐツナの腹の中に蹴りをねじ込もうとする神威。

 

「俺は殺し合いなんてしない!!」

 

だが、ツナもまた起き上がり炎の推進力で神威を蹴り上げた。

神威はそれをモロに喰らい地面に背をつけながら地面を擦る。

起き上がり口を拭ってツナの方を見ると、ツナは構え直してまた...あの目で神威を見ていた。

 

「お前を思う神楽の為だ、神楽はお前を心配していた。」

 

「でも、あいつは来なかった。」

 

「あぁ、お前にちゃんと向き合うのは今じゃなくていい。神楽は他に相手にしないといけない相手ができたからな」

 

「だから俺が神楽の代わりに此処に来た。お前の狙いと神楽の思いが重なっている俺が...お前の狙いを砕き神楽の思いを遂げさせるために!!!」

 

飛び散る大空の炎に一瞬怯みを見せた神威。

ツナはその一瞬を見逃さない。

神威の懐にもぐり込み神威の顎をアッパーが襲う。

更に背後に周りツナが拳を振り下ろそうとしてきたので神威は持ち前の身体能力と反射神経を活かして、体を無理やり捻り自分の拳をぶつけた。

2人の力は均衡しお互い痛み分けで地に足をつけた。

神威はすぐにツナに向かって飛び出してきたのでツナは炎のシールドで神威の目を覆い自分の姿をくらまして、ツナは神威の背後に周りエルボーで神威を突くが神威は横に躱してツナを殴り上げようとしてきた。

 

「ぐはっ!!」

 

「吹っ飛べ!!」

 

余程拳に力を入れていたのかツナは血を吐いてしまう。

だが、ツナは鋭い目はまだ消えてなかった。痛みに屈すること無く次の行動に移る。

ツナは今の体勢から縦に一回転して神威を地面に叩きつけた。

更にツナは飛び上がり利き腕に炎を収束しやすいようにグローブの形状を変化させる。

 

「ナッツ!攻撃モード I世のガントレット!!バーニングアクセル!!!」

 

上空から収束させた炎の球体を神威にねじ込んだ。

ツナの攻撃はあまりの威力に地面を割り亀裂が入る。

だが、この程度でくたばるほど神威は甘くはない。

それでも、大分ダメージになったことは確かだ。

先程の余裕が無くなりダメージを喰らった部位を手で抑えている。

 

「ツナ。」

 

「お前がこれぐらいで終らないのは分かっている。」

 

ツナは静かに口を開き神威に話しかける。

声をかけられた神威はニヤリと、やっと欲望が満たされたそんな顔をしている。

 

「そうだ。これぐらいでお前も終わりじゃないだろう?やっとだ‥やっとこの強さをだしたお前を俺は叩き潰したかったんだ。」

 

神威は立ち上がる。神威の欲望は今かなえられた。自分が求めた強さとは真逆で、最初の印象も雑魚、殺したことの無いような綺麗な目をして、甘い理想論が叶うと本気で信じている甘いガキ。それでも自分と並び拳をぶつけ合えるぐらいの強さ。

だからこそ叩きつけて自分が迎えさせてやる生涯の最後にこう思わせたい。理想は結局理想なんだと。

 

「俺は殺さないと止まらないぞ!!」

 

「止まる。止めてやるぞ!!神威!!」

 

神威の貫手がツナの懐を深々と射し込む。ツナもまた神威の顔面を思い切り殴っていた。

今のふたりにとっては挨拶がわりのようだ。ツナは距離を取り神威は距離を詰め左こぶしがツナを襲う。ツナはそれを紙一重で躱して、神威の顎を蹴り上げた。だが神威は空中で勢いをつけるために回転して裏券をツナの右頬に叩き込んだ。

 

「くっ‥‥」

 

ツナは着地寸前の神威の足を狙い神威の体勢を崩そうとするが、夜兎の反射神経がそれを妨げる。神威はしまっていた傘を抜き横薙ぎでツナを吹っ飛ばした。

更に追撃を加える。神威は傘の銃口をツナに向けるとツナの肩を撃ち抜いた。

 

「!?」

 

撃ち抜かれた肩からポタリポタリと血が流れる。流れる部位からはジンジンと鈍い痛みが体を‥脳を刺激してくる。

 

「休んでいる暇はないよ!」

 

だが、こんなことに意識をそらしている暇はない。

神威の声で意識が戻ってくると神威はまだ銃口を向けていた。

そこから放たれるのは弾丸の雨霰。

ツナは転がりながら躱していき体勢が良くなれば飛び立つ。

いつまでも降り続けるこの雨をギリギリで躱していくが遂に追いつかれてしまう。

逃げ回る先に神威が先回りをしてきた。どうやら銃撃自体はカモフラージュで本当の狙いは先回りして...ズドーンと大きな音が鳴り響くぐらい壁に殴りつけた。

しかし、ツナは怯まない。

猛禽類のような眼光で睨みつけ神威に頭突きし蹴り飛ばす。

神威それの衝撃を素直に受け止め衝撃を殺した。

更に追撃で、

 

「Xカノン!!」

 

炎の光弾を放つ。

放ち終わるとツナの腕は力が抜けたように重力に従いブランと垂れ下がる。

 

「ハァハァ‥‥」

 

ツナの体は既にスタミナが限界へと淡々と近づいている。それに気づく神威は嗤みを浮かべ挑発する。

 

「どうした?息が上がってきれているよ。」

 

だが、そんな挑発を弾け飛ばす様に勢い良く燃え上がるオレンジ色の炎!!

 

「「!!?」」

 

「どうした神威?お前の力はそんなものか?お前の限界がこれなら拍子抜けだぜ。」

 

唇を拭いながら虚勢で神威を圧倒させる。

何か爆発でも起きた様に瓦礫が飛び散り神威は飛び上がる。

 

「黙れぇ!!」

 

神威は飛び出して来た。

何やら彼は酷く怒っている様子だ。

神威は勢い良く飛び出してきて大きく拳を振り下ろして、

 

「ツナ、上を見ろ」

 

ふと第三者のリボーンの言葉にツナは上を見るとそこにはフェイトの捕らわれた様子が映り出しているスクリーンがあった。

ようやくそちらに目をやりフェイトが自分達の姿を見ていたのに気付くが、ツナはすぐに神威の方に視線を戻す。

 

光景からして、フェイトが敵に捕まり追いやられている...と言ったところだろう。

だが、そんな事に屈する彼女じゃないのは自分もよく知っている。閃光の光があの程度の闇に落ちるわけがない。

気になるのは彼女への精神攻撃に何故彼女の名前を出すのかだが、どんなにここで彼女の名前を出したところで彼女に危害は及ばない。

 

「おい、あのマッド‥あんな事言っているがどうするツナ?しかも京子の事までフェイトにばらしているぞ」

 

リボーンはツナに何か言いたいことはないか聞くとツナから思いもよらない返事が返ってくる。

 

「必要ない」

 

「‥‥そうか」

 

リボーンはツナの言葉に微笑みを浮かべて満足そうに答える。

 

「伝えたい言葉ならもうフェイトに伝えた‥‥後はフェイト次第だ」

 

ツナは真っ直ぐ自分の向き合わないといけない相手を見て自分の覚悟の炎を燃やす。

 

(フェイト‥今、俺は貴女を助けに行けそうにない。でも貴女には送ったはずだ。折れそうになっても支えてくれる想いを、不安ならそれで励ましてくれ俺はずっとお前を支える。)

 

ツナは自分の胸の中にある篤い想いがこもったお守りの熱を感じている。コンマ数秒だけでも沸沸と感じる今までここに込められた熱を‥‥

その熱こそツナの炎の原動、この思いから始まりこの思いを今も貫くためにツナは戦う。

傷つけたくないのに傷つけないと行けない矛盾に眉間に皺を寄せ悩む。

神に誓えるほど自分は信仰的ではないが神に祈りを訴える為に拳を振るう。

一刻も一秒でも早く自分の仲間達を戦いから解き放てと

 

「行くぞ!!神威!!これが最後の勝負だ!!!」

 

ツナはもうボロボロと成り果てた服を脱ぎ捨て、タンクトップ1枚の状態で神威に向かう、もう全てを失う覚悟でお前に向き合う。だからお前も全力で来いそう言い表す風格に神威は心の底から悦びを見せた。

 

「やっとだ‥‥これを‥これを待ってたんだ!!この状態のお前を完膚無きまでに叩き潰すこの時を!!」

 

神威は傘を投げ捨て裸一貫、もう隠すものは無い拳だけでアイツを圧倒してやるという想いが意識と感覚と脳を支配している。

 

「うおあおおおおおおおお!!」

 

ツナが先に仕掛けた振り上げた脚を斧のように振り下ろし神威の頭を襲う。

神威はそれを回し蹴りで当て返し弾き飛ばす。だがそれでもツナは止まらない着地をしてから左手で神威の左頬を殴りつける。神威もまたツナの鳩尾に拳をねじ込む。

 

「ぁ ぁ ぁ」

 

掠れる声で悲痛を表す。ツナは意識できる範疇で周りの酸素をかき集めようとする生本能を押さえ付け、微動だけうごく右手と離れてない左手を引き、勢いをこの両腕に集中させ

 

「ぁ ぁ ァ アああぁああ!」

 

槍のように突き刺す。それだけでツナは止まらない。何度も何度も引っ込めては押し込み引っ込めてはねじ込み、やる度に勢いと力を込めて神威の胴全てを狙う。

でも神威も何発も何発もやられ続ける様な人ではない。神威はツナの両腕を一気に掴み取り腹を蹴り上げ、宙へやる勢いを与えその勢いのまま脳天からそのまま地面に突き刺す。

 

「ぐわぁぁ!!」

 

だがツナはまだ目は死んでないさらに激しく燃える覚悟の炎が目に現れまだ滾っているからだ。ツナは地面に手を添えできる限り激しく燃え噴射し体を持ち上げ神威の顔面を蹴り飛ばす。

 

「「まだだだァァァァ!!」」

 

両者体勢を整え直してまた激しく殴り合う。

彼らの長い戦いはスタジアムも大破させ、もう壁と呼べる程原型をとどめておらず、ドアの形も変形し開くかどうかも怪しいくらいだ。

薄らに自分達を照らしていた点灯もほとんどが壊れ、光すらも斑にしか残って居ない。その中で群れ動く3つの炎が空間に線を焼き刻む。繊細な色合いにそぐわない豪快なラインに見るものは目を奪われてしまうぐらい。

 

「まだ、生易しい拳だ。そんなんじゃ俺は殺せないぞ。」

 

「拳が力み過ぎているな。そんなんじゃ俺に当たることは無い。」

 

神威の蹴りがツナの顎を蹴りあげる...のを未然に受け止め神威は顔を顰める。だが神威はそれを軸にして飛び上がりツナを地面に押し付ける。急にかかる重力にツナは

 

「さぁ、終わりだ。」

 

「ぐっ...」

押さえつけられた腕からツナは炎を噴出させて神威の力を緩ませる...が腕をやられたのか右腕が動かずに神威に足を掴まれ振り回され地面に何度も叩きつけられた。

それから宙に捨てられ、

 

「それがお前の限界だァァァ!!!」

 

ツナは神威に真正面から殴り飛ばされた。

 

「さぁ、俺の勝ちだ。次は赤ん坊の先生の番かな?」

 

荒い息遣いでリボーンを睨みつけて未だに臨時体制をとかずに殺気を放出させている神威、

そんな神威にリボーンは静かに告げた。

 

「お前、何でツナをそこまで目の敵にしていたんだ?」

 

「...別に、理由なんてないさ。強いそれだけだ」

 

神威はそれ以上に理由はないと言った。

 

「いや、違うな。」

 

だがそれは違うとはっきりと断言するリボーン。

そんなリボーンを訝しげに見る神威。

 

「お前はツナを否定したかったんだ。お前はお前が捨て閉じた道で強くなったツナを受け入れちまったら今までやってきた自分を否定してしまうから...そうだろう?」

 

ニヤリと口角を吊り上げて余裕の笑みを浮かべるリボーンに神威はまた拳に力を込めていく。

 

「だったら?別にどんな理由でも関係ないだろう?どんな理由で絡んでも今はもう結果を果たした。やっぱりあんな理由で強くなんてなれない。強さを求め続けた俺を超えるなんて...「いいや‥」」

 

「いいや、お前じゃツナには勝てねぇぞ。ツナはな、自分じゃ出来ない事があることを知って地に足をつけ自分に出来ることを必死にやって足掻き続けていた。それに対してお前は何だ?お前は弱い自分を隠す盾として『最強』なんて名前にすがったんだろう?ただ、すがっているだけの人間にアイツは負けやしないさ」

 

『ゲージシンメトリー、発射スタンバイ。』

 

突如、不穏な機械音が神威の耳に入ってくる。すぐ様そこの機械音がする方向を見ると

 

「!!?」

 

「言っただろう?ダメツナでもお前には負けないって」

 

リボーンはそう言うとすぐにその場を離れた。

神威は危機を感じた野獣のようにツナに飛びかかるが0コンマ1秒遅かった。

 

「X BURNER」

 

神威を包み込むオレンジの炎が部屋を貫き神威を飲み込んだ。

 

「それが独り(お前)の限界だ。」

 

ボロボロになったツナが鋭い目つきで一言言い放った。

 

 

〜saidフェイト〜

 

先に戦い終えて脱出していたフェイトは外から来たエリオと今しがた合流したシャッハが外で情報交換していた。

シャッハの元には戦闘機人の1人と思われる人物と、

 

「フェイトさん。」

 

「シャッハ、無事だったのね。」

 

「皆さんこそ。ご無事で何よりです。」

 

シャッハはスカリエッティのアジトに突入された際、セインの手によって分断されたが、何とかセインを倒してこうしてフェイトと合流したのだ。

同じくヴェロッサもウーノを先程捕縛したと連絡があった。

 

「シャッハ、ジュエル・スカリエッティを見なかった?彼だけ未だに何処にも姿を見せていないのよ。」

 

「何ですって!?」

 

「ふふふ、私ならここに居るよ。」

 

「!!?」

 

「スカリエッティ!!」

 

憎そうに睨むフェイト。

他のエリオ達も皆洞窟の上にいるスカリエッティを睨んでいる。

 

「ふふふ、フェイト・テスタロッサ。何で私がこのタイミングまでなりを潜めていたかわかるかい?」

 

「どうせ、悪趣味な見物をしていたのだろう!?だがそれもここまでだ。」

 

「君達では無理だ。断言しよう何故ならもう魔力が何のだろう?」

 

図星を疲れて少し怯むが勇ましい姿勢はそのままである。

 

「まぁ、今となってはどうでもいいさ。」

 

スカリエッティはポケットからあるリモコンを取り出しそれのボタンを押す。

 

「何だ?それは?」

 

「今しがたこの基地の最後の戦いが終えた所だよ。」

 

「それって...ツナ」

 

「そうだ。結果は沢田綱吉の勝利。よかったね。」

 

そう告げるスカリエッティの言葉を疑わないフェイトは歓喜の涙を浮かべた。

スカリエッティの言葉が嘘かもしれない。

だけどそれよりもツナが負けるはずない。

そんな気持ちがフェイトの心にしかない。

 

だがスカリエッティの一言が無慈悲にもその涙を踏みにじる。

 

「さて、ここで1つ。もう役に立たない兎と敵が1人。敵に噛みつけない兎でどうやって相手を殺すか...答えは簡単道ずれだ。」

 

そう言ったそばから基地内から不穏な地鳴りが鳴り響く。

 

「何をした!!?」

 

「今、この基地の自爆スイッチを押したんだ。ベタだが、このタイミングでこれ以上の最終手段はないだろ?」

 

下劣な笑みがフェイトの心を蝕んでいく。その鋭い眼光は今にもスカリエッティを殺しに行きそうなぐらい。

それどころか彼は此処で自分達と彼の為に戦ったナンバーズさえも切り捨てたのだ。

唯一の救いは彼女らが意識を失っていることだろう。

もし、彼女らが今のスカリエッティの話を聞いていたらと思うと一体彼女達は何のために生まれ、何のために戦ってきたのだろうか?

 

「何て卑劣な...ツナさんが」

 

「スカリエッティィィィィィ!!」

 

スカリエッティの映像が消えた空間に向かってフェイトは大声で吠えた。

 

 

〜saidツナ〜

 

地鳴りはフェイト達より先に気づいているツナ達は何が起きたか大体理解していた。

 

「やばいな。多分ここ壊す気だぞあいつ。早く脱出した方がいいだろうな」

 

「なら、神威も」

 

そう言って神威を運ぼうとした矢先にツナは蹴り飛ばされた。

 

「どうした.......こいつはやばいな。」

 

リボーンは神威の姿を見てポツリと呟いた。

 

 

~神楽Side~

 

スカリエッティのアジトでツナと神威が激戦を続けている中、トレディと神楽達との戦いも白熱していた。

トレディは近くにある道路標識を引き抜くと、それを振り回して煙をぶっ飛ばした。

神楽も負けじと近くの道路標識を引っこ抜いて振り回す。

 

「トレディ!」

 

「ふん」

 

ぶつかり合うたびにとてつもない音が耳を殴りつける。だがそれは瞬く間に終わった。

何故なら2人の力に道路標識は耐えきれず砕け散り破片が飛び散る。

神楽は顔をしかめるがトレディは一切表情を変えずに氷を踏み割り力いっぱい地面を蹴り跳ねて神楽を襲う。

だが神楽もまた入れ替わり新八が飛び出して来た。

 

「邪魔だ。どきなさい!!」

 

トレディは冷気を纏った拳で新八の木刀を凍らせて粉々に粉砕し、虚しく塵となった木刀に驚きを隠せない新八をトレディは更に襲う。がら空きとなった新八の腕を掴んで凍らせてもう一方の腕で身体を叩きわろうとしてきたので新八も片手でガードする。当然ガードした手も凍らされた。

 

「うぅぅ」

 

「いい加減離すネ!!この馬鹿力ガァァァァ!!」

 

この一瞬の出来事に新八は完全に無力となり果てた。

神楽は冷気を出している腕を注意しながら上から銃弾を二発威嚇で放ってそれから顔面を殴りつけた。

 

「大丈夫アルか?新八」

 

「手が...はぁ...はぁ...動かない」

 

当たり前だ。新八の上半身ほぼ凍らされていて少しの衝撃簡単に吹き飛んでしまいそうなのだから

 

「貴方達は2人で私の格下になれるぐらいなのよ。貴方を今すぐ砕いてあげてもいいけど...私が神楽を凍らして砕きわるところを見せてあげるわ。」

 

トレディはボロボロになりながらもまだその闘志は燃えていた。

 

「くっ‥‥」

 

一方の神楽もボロボロになりながらも歯を食いしばって戦う姿勢を崩さなかった。

 

 

 

・・・・続く




ふざけるなぁ!(メガネ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的87 重い拳に詰まっているもの

こーしーんーでーすー。


 

〜said神威〜

 

突如視界はオレンジ一色に包まれた。

暖かく、優しくほんのり懐かしいと感じさせてくれる炎の中、自分はこの中で眠ってもよいと感じてしまう。

だが、そんな炎の中で自分は心地良さとは裏腹に嫌悪感を抱いてくる。

虫酸の走る暖かさと吐き気のする優しさが神威の意識を無理矢理に覚醒させた。

それと同時に神威の中にある者も呼び覚ます結果となった。

それは者と言ってもよいものなのか?

ただこれだけは言えるこれは誰の中にも必ず居る者、人に限らず生物皆全てに共通し、人はこの者を本能の片隅に理性の中に封印しているモノ‥‥

それは決して目覚めさせてはいけない。

目覚めてしまえばそれは人と獣の境界線を消し去ってしまう。

これは邪気とは違い狂気よりも純粋である。

 

神威の中のソレはこれまでの彼の人生の中でずっと彼の真相意識の奥底に潜んでいた。

狩人を餌とする獣のそれはまた目覚める時をただ待っていた。

 

今はそれを必要としなかっただけだ。

だが、

 

 

 

 

 

(今のお前じゃ無理だ。)

 

 

 

低く重低音のような声はまるで夜の森に潜む獣のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(優しさだの愛だの、下らないあの頃を思い出してきたお前じゃ何も出来ない。)

 

 

 

(アイツには勝てない‥‥)

 

 

聞いたことがある声だが聞いたこともない気がする声だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(だが知っているはずだ。それでは何も出来やしないという事を...そして教えてやれ、最後に勝つのは偽善に満ちた下らない理想論ではなく、圧倒的な暴力による力であると言う事を!!)

 

 

 

そうだ、それではあの頃と何も変わらない。

 

 

本当に勝つのは‥‥

 

 

 

 

「(それすらも食い破る本能だと)」

 

 

 

 

その時、神威の視界は曇り‥ただ一点のものしか見えなくなっていた。

 

 

 

 

「まずいな。」

 

訝しげに見るリボーンから見てもわかる。今最も時間が無いのに最も最悪な状況になってしまったという事を‥‥

 

「リボーン、わかるのか?今の神威を‥‥?」

 

その非常事態を生み出したのは他ならぬ彼自身だ。

だが今の彼からは先程のような覇気やオーラの様なものは一切感じない。

ツナに告げる超直感がこう言っている‥‥あれはただの血に飢えた獣だと‥‥

 

「あぁ、あれはお前じゃ戦ったことのない敵だ。一切の感情はなく、思考もない。本能に飲み込まれ、敵を喰い殺すだけの獣に成り下がっちまった。あれを止めるのは骨が折れるだけじゃすまねぇな‥‥アイツ、理性を捨てやがった」

 

そう言ってリボーンは崩壊し始めた天井に目をやり微かに聞こえる爆発音に身を済ませた。

嫌に広いこの基地と言えどこのペースで爆発してきたら20分間もしない内に此処まで到着するだろう。

 

 

 

〜said外〜

 

「まぁ、心配しなくてももう死んだということは無い。これはゲームだ。」

 

「ゲーム?」

 

泥水が溢れ出たような邪気を混じったスカリエッティの顔に、鋭い眼光で睨みつけて聞き返すエリオ。

今、フェイトは悲しみと喪失感入り交じり絶望に膝をつけている中、エリオはただ眼前の敵を見据え冷静にツナを救う方法を考えている。

 

「もう1人のFの遺産‥エリオ・モンディアルか…なかなか、いい顔をしているな。」

 

「答えろ!?ツナさんを助ける方法があるのならすぐに言え!!」

 

エリオにしては珍しく荒々しい咆哮にスカリエッティはますます顔を歪めて笑顔を見せる。

 

「そんなに焦らなくても教えてあげるさ。私は君達と違い寛大なんだ。1つ1つ親切かつ丁寧に教えてあげるよ。この基地は都合上、幾つもの出入口がある。でもまぁ外からではわからないようカモフラージュはしているけどね。つまりここ以外にも出口はある。爆発する場所はランダムだ。ただ、決まっているのは最後があのコロシアムだと言うことだけ。沢田綱吉の命運は爆発箇所を上手く避けたら時間内に出てこられるというわけだ。もっともその前にあの兎男に勝つことが前提だがね」

 

嘲笑するかの様な口振りで挑発しスカリエッティは楽しんでいる。

ツナ達を鼠と見て脱出する事をゲームとして悦に浸りっている。

そんな彼を見ると言わずもがなフェイトは激昂する。

 

「巫山戯るな!!?お前は人の命をなんだと思っているんだ!?」

 

「ふふ、そう怒らないでくれたまえ。これはゲームと言っただろう?そんなに心配なら入って伝えればいいではないか。彼の身が心配なのだろう?フェイト・テスタロッサ。この入口は、今は爆発していない。何なら私が親切丁寧に案内してあげようか?フフフ‥‥」

 

これは明らかにスカリエッティの挑発である。

それに先程彼はランダムと言った。

爆発は自分にもわからないと言った。

そんな訳ないだろう。

彼は恐ろしい程に計算をしつくし策略網を張り巡らしてはそれで漁をするかのように相手を手中に捕獲し弄ぶ。

正直今現在優位に立っているのはフェイト達だが、これすらも彼は計算しているように思えてくる。

何故ならこの言動の真髄はこうだろう。

フェイトを基地に入れて、彼女諸共に爆発させる。

シンプルだがこんなものだろう。

そしてスカリエッティは知っている。

フェイトには突入するしか選択肢が無いことを...例え魔力が無くなろうとも例え足が切断されようとも、彼女は知っているのだ。

愛する者を喪う気持ちを...そしてそれが永遠に心に突き刺さる杭となる。

大切な人を二度も目の前で喪えばフェイトの心にはそれ以上の棘となり深く突き刺さるだろう。

 

一度目は自らの生みの親であるプレシア・テスタロッサがアリシア・テスタロッサと共に虚数空間へと墜ちて行った時の事だ。

あんな気持ちになるのは嫌だ‥‥

こんな所で自分の不甲斐なさでまた誰かを失うのは嫌だ‥‥

もう離したくない‥‥

ずっと居たい‥‥

手放すぐらいならここで彼と共に私は眠ることも厭わない。

フェイトは前進しようとする。

死の道を歩もうと口を開く。

足には力が入り今にも駆け出しそうだ。

 

それにはエリオ達も気がついたこのままでは彼女は間違いなく死を選択する。

 

「皆は先に逃げて‥ツナは私が‥「いえ、私が行きましょう。」」

 

突如聞こえた第三者の声。

 

「シャッハ、貴女‥‥」

 

「私の魔法なら例え爆発で道が塞がれても進めますし、自由自在にあの中を行けるのなら、幾つかの脱出ルートを調べて彼を助けられる。」

 

「‥‥分かった。シャッハ、ツナをよろしく」

 

「はい」

 

フェイトはシャッハにツナの事を託した。

 

 

 

 

〜saidツナ〜

 

さてと、場面はこの局面に戻る。

獣と化した神威、その様子を静かに伺うツナとリボーン。

 

ここでツナは決断した。

今回は多分死ぬかもしれない。

自分は別にいい...何て言うつもりはないがツナはここで死んでもいいと不思議とそんな気持ちになっていた。

何故なら彼を見捨てて置いては行けない。

約束をした、必ず想いを伝えると、勝手に決めた。

神威が次に神楽と会う時それは兄弟として、兄と妹として再開を果たさせると...それなのに、何もなさえない、勝利の報告しか持って帰られない中途半端な状態なんて自分にとっては死よりも重いものに感じる。

だがもし、自分が違う立場なら‥‥例えば外にいるのが自分で此処に立って居るのがフェイトなら...なんて事を考えてしまった。

彼女なら必ず俺と同じ選択をしているに違いない。

それでは駄目だ。

自分すら助かる確率が低いのに彼女まで来てしまったら...

 

「リボーン、頼みがある。」

 

じっくり静かに頼むツナと同じでリボーンも静かに返した。

 

「なんだ?言うだけ言ってみろ。」

 

「俺と神威との戦いでドアが壊れてズレていた。お前ならあの隙間から外に出られるはずだ。外に出たらフェイトに伝えてくれ‥「巫山戯るな、バカツナ」」

 

ここでリボーン激怒したかのようにツナの頼みを激しく拒否した。

まるであの時のように...

 

「お前は何の為に戦っていると思っているんだ?また皆で花火見るんだ!雪合戦するんだ!だから戦うんだ!!だから強くなるんだ!!!また皆で笑いたいのにお前が死んだら意味が無いだろ!!!!」

 

それは嘗て自分の仲間が自分のために命を犠牲にしようとした馬鹿な守護者を叱った言葉だ。

 

「お前は自分の部下に言った言葉をもう忘れちまったのか?お前は失う事が怖かったんだろう?失う怖さをお前はフェイトに味あわせるつもりか?此処はお前の死に場所じゃない。お前の越えないといけない道の1つだ。」

 

「リボーン‥‥だが、このままじゃ俺もお前も...」

 

「いつも言ってんだろうが、バカツナが!!死ぬ気にできないことなんてない。お前の死ぬ気はいつも死地を乗り越えさせてきた。それはここでも同じだ。」

 

ツナがこれまで潜り抜けてきた修羅場の数々‥‥そうだツナは死んでもおかしくない状況を‥‥リボーンすらも乗り越えられないと思った大きな壁でさえツナは死ぬ気になりこれまで乗り越えてきたんだ。

 

「ツナ、やるぞ。死ぬ気で生きて帰るんだ。皆でな‥‥」

 

リボーンのいつもの矛盾な無茶振り。

彼の言葉に迷っていた目は前を向き緩くなった眼光は引き締まり、ツナの覚悟が決まった。

 

「あぁ、あいつを元に戻して俺はここを出る。死ぬ気で生き残る!!」

 

「お前のその覚悟がホンモンならもう切っ掛け(死ぬ気弾)はいらねぇな。大事なもんを守ると決めた時のお前の覚悟はホンモンだってのは分かっている。お前はこれ迄の戦いで培った経験が体に染み付いている。だからこそ、お前の細胞全てが死を覚悟したのなら行けるはずだ。この俺が直々に何度も特訓してやったんだからな。これで負けるようなら、お前、此処で責任をとって死ね」

 

「‥‥」

 

ツナは黙って頷く。

武器を置き人の起源に立ち返る。

意識は自分の奥底に沈んでいき自分の最初を思い出す。

ツナは人の奥底にある本能に‥‥生存本能に呼びかける。

 

(死ぬ気とは覚悟の強さ、俺の覚悟は仲間を守ること、俺の誇りとは仲間の存在。)

 

振り返れ‥そして、思い出せ呼び覚ませ‥今までなってきた死ぬ気を細胞1つ1つに刻み込んだ手の指の数の死闘、手には収まりきれない死闘を‥戦いを思い出す度に帰ってくる‥‥理不尽という凶器に振り回されてどうしようもない運命に翻弄されてここまで来た。

 

悔いとか後悔があるかと聞かれれば首を縦に振るしかない運命がどれだけ自分を変えたか、平凡を望む中学生にとって受け止めきれないぐらい大きな事柄。

 

でも、運命がくれたのはそれの引き換えに絶対の絆‥‥

今までの生き方なら手に入ることは無かったし受け入れるかもわからない。

 

ツナの覚悟とはこれを捨てないこと...失わせない事。

 

 

 

『死ぬ気の到達点』

 

 

「神威、お前を連れて帰るために俺は命をかける。俺の全身全霊の覚悟の炎にかけて絶対に此処から生きてお前を連れて帰るぞ!!!神威!!!!」

 

 

 

 

 

 

〜saidリボーン〜

 

自発的な死ぬ気の到達点の発動を目にしたリボーン。

生徒の成長したその先を目にしたリボーンは少し目尻が熱くなっているのを感じた。

教師として少しほんの少しだけ感動という奴をツナに感じている。

そんな中で彼には少し後悔もあった。

 

(すまねぇなツナ‥お前の頼みを聞いてやった方がお前の心の負担は少なかったし、その方が良かったのかもしれねぇ‥‥でもなぁ、俺は見たくなっちまったんだ。お前は常に限界も俺の想像も超えて今の今まで修羅場を生き抜いたんだ。だからこそ、俺に見せてくれ‥‥この死地をも軽く退ける奇跡ってヤツをよ‥‥)

 

生徒の頼みを聞き入れるか、

生徒の成長を最後まで見てやるか、

この2つの教師の要素でリボーンは後者をとった。

 

 

 

ツナは地面を蹴り砕き自分に飛びかかってくる獣の顔面に拳を入れる。

だがそれはあちらも同じ、神威もまたツナの懐に足をねじ込んでいた。

 

「っ!?」

 

2人は二人の力を受け止めきれずに吹っ飛ぶが、ここでツナは神威に違和感を感じた。

それは先程よりも明らかに力が上がっている事だ。

戦いも明らかに終盤を迎え、お互いに出し切るものは出し切ったはずだ。

神威は特殊な一族であるが、フェイトの様な魔力がある魔導師やトレディの様な戦闘機人みたいな特殊な力はない。

ましてや自分の様な死ぬ気の炎も無いはずだ。

それなのに追い込まれた人間が出せる最後の‥火事場の馬鹿力にしては明らかに大きすぎる。

 

「ツナ、まずいぞ。あいつは‥‥自分体の事を全く気にしていない。」

 

突如耳に入ってくるリボーンの声をきっかけにツナは神威の体を見ると...蹴りを入れた足、特に膝の関節付近なんて見るに堪えないぐらい血が流れていた。

 

そういう事だ。

神威は自分の体を壊してでもツナを殺すつもりだ。

リミッターを外し、人が本来出し切れない力を出しているのだ。

だがそんな都合よく引き出せるわけがない。

力に耐えきれず体が壊れている。

無意識に行う体への気遣いも神威の獣の本能が消し飛ばしている。

自分の事を完全に見失うぐらい彼は力と本能に呑まれていた。

リボーンが先程、「理性を捨てた」と言ったのはこの事だった。

まるで流れる血が涙なように見えるぐらい痛々しいその姿、それすら何も感じずにただ獲物を捉え、仕留める事しかない狂気の目付き。

理性のタガが外れて痛感が麻痺したのか、どれだけダメージを受けても倒れる事もない。

このままではツナをここで倒したとしても相打ち‥長引いたら彼の体が持たないし、自分もヤバい。

ツナの思考がどうやって彼を押さえつけるかを考えている間に彼はまた飛び出してくる。

 

「まずいっ!?」

 

ツナは咄嗟に神威の腕をつかみ彼を放り投げて地面に叩きつける。

それからツナは手を離そうとしたのだが、

 

「っ!?」

 

ツナの手は離れずに神威にガシッと強く握られたままとなり、今度はツナが神威に地面に叩きつけられた。

 

「がはぁっ!」

 

それからも神威は手を離すことはなくツナの腕を握り潰すかのような力で掴みながらまるで布切れのようにツナを振り回して投げ飛ばした。

 

「くそっ!!」

 

ツナは空中で体勢を立て直して地面を剃りながら勢いを殺した。

それからツナは精神統一をするように目を瞑り意識を集中させていく。

その様子を一瞬伺う様子を見せた神威だがすぐに飛び出してきた。

神威の振り上げた拳をツナはそのまま喰らう。

 

「っ!?」

 

神威は今度、ツナの右肩へ向けて蹴りを入れる。

ツナはそれを黙って受け止めた。

神威はそれを不思議がったが止めることは無かった。

腹に拳を入れて、顎を蹴り上げて、右肩に貫手を突き刺し、左肩に回し蹴りを入れこまれてもツナは黙って受け止めた。それはまるで地に根をはりそびえ立つ大樹のようだった。

動きはしない、だが折れることも倒すこともできそうにないように思えてくる。

 

「バカツナが、無茶をしやがる。」

 

そうツナは自分の身体を犠牲にして彼が彼に受けるダメージを軽減させていた。

これはツナの力が目覚めるきっかけとなった戦い『六道骸との戦い』で行ったことだ。

この時はツナの大事な仲間の体を敵に乗っ取られて仲間の体でツナに攻撃をするという卑劣な手で戦っていた。

だが力の目覚めがツナの超直感を覚醒させてツナはそれと共に格段に上がった格闘センスにより相手の負担を自分の体で軽減させる戦いを身につけた。

今、ツナは躱しても防いでもダメージを受ける神威の体に自分の体をクッションとしてダメージを軽減させていた。

 

「ツナ、そんな事をしていても長くは持たないぞ。」

 

「分かっている!!」

 

ツナは流れるように防御から神威の神経を麻痺させる攻撃へと移り変わる。

 

「神威、これで終わりにしよう。」

 

ツナは腹に一瞬だけ力を込めた拳で意識を奪おうとしたが神威はそれを両手で絡めた拳のハンマーを振り下ろして攻撃を妨げる。

だが、ツナは即座に後に回り込み首に手刀を叩き込もうとしたが神威は回し蹴りでツナを蹴り飛ばす。

ツナは今の攻撃で完全に神威を熟知した。

細胞1つ1つが死を覚悟するこの奥義は通常よりも身体は動き体は覚え、頭よりも先に反応させている。

 

神威のどんなラッシュもツナは難なく受け止め躱していた。

 

神威の拳を受け止めツナは神威を弾くように肘で神威の額を突く。

更にツナは神威を蹴り上げ状態を崩した所を地面に押さえつけた。

それでも暴れ出す神威にツナは自分の頭を力の限り振り下ろした。

そこからツナは距離を話さずに神威に話しかける。

語りかけた。

 

「神威!!いい加減に目を覚ませ!!このままじゃ俺もお前も一緒に死ぬぞ!!」

 

ツナの問いかけでも獣は止まらない。

理性を失った神威には前にも増して死への恐怖は消え、恐れ、怯み、戸惑いという感情は一切ない。

彼は追い込まれた動物とは違う。

追い込まれた動物はその命の危機の元に足掻くが、神威は自分の命そのものに目を向けていない。

 

「お前のやりたい戦いというのはこんなことか!?お前という人間を消して動物の様に暴れることか!!お前のゴールはこんな所か!!!こんな所で命を捨てて無駄死にすることがお前のやる事なのか?違うだろ!!?」

 

神威は自分の体の上に乗っかっているツナの両腕をがっしりと掴んで自分が上になるように転がり状態を逆転させる。

そして今度は神威がツナの上になった。

 

「うがぁぁぁー!!」

 

そこから神威はツナの顔を何度も何度も殴りつけた。

獣のような彼だったのだが..今ツナを殴っている神威は見たくもないものを壊しているように見えてくる。

そんな彼を見たツナの目は更に引き締まり地面を自分から溢れ出す炎で砕き空間を作った。

そして、そこから彼は空いた空間で体を動かし巴投するようにツナは神威を引き剥がした。

 

更にツナはすかさず神威の懐に潜り込むために地を蹴り走り込み、彼の懐に入り込んだ。

しかも今までよりも数段早く、神威はツナのその動きに反応出来なかった。

そしてツナは神威を突き刺す。

それは今までと同じ手をしっかりと握りしめできるだけ傷をつけないようにと思う心からできた彼の拳だったがそれは深く彼の意識にまで突き刺さるように深く突き刺した。

 

「神威‥俺は自分の事を弱いと思っている。」

 

その言葉はもうそこにはいない彼を僅かに反応させた。

 

「俺は、仲間がいないと武器を持つ勇気もない。誰よりも弱いと思っているし、戦いの中でも甘い事を考えてしまう。仲間は傷ついて欲しくないし、敵は死んで欲しくない。リボーンからはよく甘いなと叱られても無くならない。」

 

ぽつりぽつりと零れる雨の様な言葉は神威の心に染み渡り彼の意識に届かせた。

 

巫山戯るな!?

 

何が弱いだ!?

 

俺の届かない所まで突き詰めたその強さを持ってなんの嫌味だ。

 

 

(何でだ!?何で、俺とこいつはここまで‥‥?)

 

(俺は戦闘民族夜兎で、アイツはひ弱な地球人の筈なのに!?)

 

(何故!?)

 

蓋を開ければパカばかりだ。

ツナの奥義であるこの状態になると今までの倍以上の距離が離れた。

夜兎の本能に身を委ね、肉食獣の如く暴れ回る獣まで堕ちても、彼は落ちる所まで落ちることは無かった。

寧ろ彼は本能とは真逆の何かを力に変えて俺と戦っている。

何でこんなに差がでるんだ?

何でこんなに埋まらないんだ?

何でそこまで行けたんだ。

何で、

何で、

何で、

何で!?

 

 

何で俺はそこに行けないんだ!?

 

 

何で!?

 

 

 

 

「自分の弱さを認めたからこそ、俺は強くなれたんだ!!」

 

靄の中に図りが入り込み視野が広がった気がした。

ツナは神威を捉え、思いっきり顔面に拳を叩き込む。

だが、神威も足腰に力を入れその場にとどまり真正面からツナの顔に拳をねじ込む。

 

「強くなりたいなら背けるな!どんなに苦しくても、どんなに痛くても、それから目を背けて何が最強だ!!」

 

が、ツナは優しく神威の腕を掴んで手を下ろさせた。

その諭す様な目に敵意なんて今の神威でも見当たらない。その柔らかな瞳に、神威の狂気の境目の底にあるバカ兄貴(神威)が見えてきた。

 

 

「言っただろう?軽いんだよ、お前の拳は...そんな軽い拳で倒しきれないぐらい重たいものに俺は支えてもらっている。お前にもあるんだろう?それ程になっても捨てられない最強への執着となった動機が?」

 

見透かす瞳が、神威を神楽が求めた神威捉えることができた。

そしてその中にある思い出に神威は手を伸ばす。

父親と妹、その2人の先にいる今は亡き母。

暖かなその手に何度心を癒されたことか、

 

「.....俺には」

 

「大丈夫だ。捨てたのならまた拾える。これから拾えばいいだろう?生きていればきっとお前が捨てたモノだって拾える」

 

拾う?

俺にはそんな事をやっている暇なんて...いや、そうやって俺が今まで目を背けて言い訳を繕って選択肢から除外して走った結果、俺の選べなかった選択で俺は自分をここまで追い込んだ。

 

おい、その道には何も無いだろう。

 

黙れ、今更そんなものを選んでなんの意味があるんだ?

 

あぁ、遅すぎたかもな‥でも、今がいい時期なんだ?

 

巫山戯るな、お前が‥俺が、何故あんな奴に‥‥あんなひ弱な奴なんかに‥‥

 

お前を負かした時点で俺の道の先は見る事が出来た。

だからこそ俺は立ち止まり振り返る。

そして、戻り、拾う。

 

バカな!?昔の戻るつもりか!?

昔の弱い自分に戻るつもりか!?

 

ちげぇよ‥‥戻って拾って、見つめ直して、今よりも強くなるんだよ‥‥

真の最強になる為にな‥‥

じゃあな‥眠れ‥‥もう1人の俺‥‥。

 

 

 

 

「フッ...最後に聞かせろ。お前の名前を‥‥」

 

「沢田...綱吉」

 

「そうか‥ツナヨシ。覚えたぞ‥俺を負かした男の名をそして覚えておけ.....次は負けないからな。」

 

神威は最後に振り絞りツナの胸中を叩く。

誰からを見てもその力は弱々しく、パンチというには余りにも力無かった。

でもその拳はツナの中に深くに押し込まれた再戦の意思。

これまでの様な殺し合いではない。

ただ純粋な勝負の申し込み。

 

その最後の一撃で神威はついに力尽きた。

 

この勝負の分かれ目、それは力の強さでも、技量の差でもまして死ぬ気の炎でもない。

 

ただどんな凶風に見舞われても倒すことの出来ない位強いものに支えられているか、その支えがないか...

 

それが分かれ目となったとツナは思った。

 

 

 

 

 

「やったな、ツナ」

 

2度の死闘でも着くことのなかった決着は今ようやく着いた。

そして1つのケリが着いた今だが、もう1つ問題は残っている。

戦いの中も雨のように降り続ける天井と、雷のようになる爆音がどんどん近づいてきている。

近づく度にツナもリボーンも心象に焦りが混じってくる。それだけでないツナはもう既に底がつきそうな位スタミナが無い。

死ぬ気の到達点を発動したからだろうしかも自発的な為に殆どのスタミナを持っていかれた。

飛ぶことすらもツナにはできそうにない。

まぁ、飛べたとしても道がわからないために行く宛もなく瓦礫を避けながら飛んでも待っているのは死だけ...

 

「さて、どうやって戻るか?流石にこのままだと本当に死んじまうぞ」

 

「はぁはぁ、リボーンあっちのドアの隙間から光が見えた。多分あっちなら...」

 

「わかった。」

 

もうドアの隙間から見えた光を蜘蛛の糸の様に縋るしかツナ達が助かる道はない。

リボーンが銃弾でドアを弾き飛ばした。道は周りに土砂が崩れなだれ込んでいるが通れないわけではなかった。

 

「急ぐぞ!」

 

リボーンが先に銃で少し大きめな岩などがあれば撃ち抜いていきその後をツナが進む...

 

「どうしたツナ?」

 

「すまない、あいつを置いていけない。」

 

ツナは倒れている神威を拾い肩にかけて行く。ついでにXグローブと神威の傘も拾い走っていく。

 

「いいから急ぐぞ、何故か爆発の影響が少ない。」

 

土砂が多いだけで通れないことのない道だがそれでも時間が喰われている事は事実。

歩きにくい通路と蝋燭の炎状態の死ぬ気の炎と比例しているスタミナのツナ。

 

「ツナ、でかい部屋に出るぞ!」

 

リボーンはバズーカでドアを破壊して部屋に突入するとそこには人が入った水槽のようなものがいくつも並んでいる。

そして、その中に居る人達は死んでいる事が培養槽に取り付けられている心電図から見て取れる。

 

「な、何だ?この部屋は‥‥?」

 

「どうやら、あのマッドの研究室みたいだな」

 

ツナがこの異様な光景に絶句しているなかリボーンは冷静にこの場がなんなのか状況分析をする。

此処はまるで理科室でよく見かけるホルマリン漬けの生物の標本の陳列棚の様だ。

それも最も悪趣味で胸糞が悪く思わず吐き気を催す様な‥‥

そんな中、ツナが正面にある培養槽に近づく。

その培養槽の中には純紫の髪をした成人女性が入っていた。

 

「っ!?この人!!」

 

「ああ、生きてるっぽいな。」

 

リボーンが視感での判断だが生きている可能性が‥生きているというより他の培養槽の中の人と違い心電図が反応していることから生きていると判断した方がいいかもしれない。

ツナはリボーンの判断をそう聞くと培養槽を叩き割った。

普段のツナならば、助ける事はするだろうが、少しは躊躇する。

なぜならば、培養槽の中に居た女性は一糸纏わぬ姿だったからだ。

しかし、今は少しでも時間が惜しい状況下の為、そんな事を気にしている余裕はなかった。

 

「おい、何してんだ?」

 

「見捨てられないよ。このままじゃ、この人も死んじまうからな」

 

「だが、そいつまで連れていったら俺達の助かる可能性はいよいよゼロになり此処で全員お陀仏だぞ。」

 

ツナはスタミナがきれてそんな中ギリギリで神威を運んでいるのにもう1人なんて...当然赤ん坊姿のリボーンでは大人1人なんて背負えるわけがない。

 

そんな時、奇跡の兆しが声をかけてくれる。

 

「見つけました。貴方が沢田綱吉ですね。私は聖王教会のシャッハと申します。私の魔法で外に連れ出します」

 

ここで希望が1つ繋がれた。

彼女なら何とか

 

「お願いします。彼女をできれば彼とリボーンも」

 

切羽詰まっているツナはその勢いでシャッハに迫ったためシャッハはそれに両手をあげて落ち着けと言う。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。聞いていたより人が多くありませんか!?」

 

ツナはこれまでの経緯を話した。

 

「成程、難しいですね。正直私が運べるのは大人1人が限界です。」

 

シャッハも戦闘機人との戦いで魔力が元に戻っていないそんな中でもツナとリボーン位なら運べると思っていたのだがこれは流石に無理があった。

 

「なら、この人だけでも」

 

ツナは先程助けた女性を救ってくれとせがんだ。

シャッハはその行動に胸を打たれる。

聞いた限りその女性は偶然助けただけの人で縁もゆかりもない他人にも関わらず、目の前の少年は自分よりも他人を優先させることなんてこんな事をするのは局員でも少ない。

 

(何て純粋で真っ直ぐで優しい人なんでしょう?フェイトさんが惹かれるわけですね)

 

(だからこそ自分はこの子の願いを無にするわけには行かない。)

 

「分かりました。私が彼女を助けます。」

 

「宜しく。」

 

「ならそこの子も」

 

そしてシャッハの目線はリボーンに移る。

するとリボーンは壁を自前の銃で撃ち抜く。

 

「俺はツナと残るぞ。ツナといた方が幾分かコイツの生存率が上がるからな。」

 

リボーンはツナの隣にいた方がツナの生存率を少しでも上げられる事をアピールした。

 

(この人もまたまだ生きる事を諦めていないみたいですね)

 

「分かりました...沢田さんをお願いします。」

 

「おう、任せておけ」

 

シャッハは助け出した女の人と共に先に外へと出た。

 

「さあ、俺達も急ぐぞ」

 

「ああ」

 

ツナは神威を担いで脱出口を探した。

 

 

〜side外〜

 

外ではツナを連れ戻しに行ったシャッハが来るのを今か今かと待っているフェイト。

速まる鼓動を抑えることも出来ず両手の指を絡めながら待ち続けるフェイトの姿は何と美しいだろうか?

あぁ早く見てみたい彼女がまた目の前で大切な人を失った時の絶望した顔を...絶対が期待を越える位綺麗な顔をしてくれるだろう。

 

「おやおや、誰か来たみたいだね。」

 

スカリエッティの顔は口角を少し上げ歪んだ笑みと瞳で来た魔力を感じ取って誰かが来たことがわかった。

やがて出入り口からは一人の成人女性を抱えたシャッハが戻ってきたが、ツナの姿は見えなかった。

 

「シャッハ!ツナは!?ツナは一緒じゃないの!?」

 

「すいません。」

 

俯くシャッハはただそう告げるだけだった。

 

 

 

・・・・続く




で〜はまたじかーい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的88 最近のアニメは作画崩壊が酷い!

長らくお待たせしました。やっと続きがかけました!


 

 

 

白銀の世界に立つ2人の可憐な少女。

2人は同じ明るい夕焼けの様な髪をして、同じ顔つきをしている。

違いがあるとすればしている表情と体つきの年齢に差があるだけ‥‥

2人は、この冷えきった空間の中荒い息遣いで発する白い息からは熱が感じられる。

 

「神楽、もうおしまいね」

 

神楽は急に膝を崩し、その場に足をつく。更に力尽いたのかそのまま上半身まで地面にもたれかかる。

それを見たトレディは口角が歪み遂には笑みをこぼす。

 

「は、ハハハハ‥ハハハハハハハハ‥‥!やっと、やっと、なのね神楽。ここで貴女の人生を終わらしてあげるわ。神威、やったわ‥私はついにやったわよ!!神楽、貴女がいなければ、邪魔者は消える!!彼の中には私しかいない。さぁ、神楽凍りなさい!!そして一撃で終わらせてあげるわ!!苦痛もなく一撃でね!!これがせめてもの私からの情けよ!!」

 

トレディは地面を伝って神楽に氷を伝わせる。

氷はゆっくりと地面を歩くように神楽の元へ行く。

神楽はそれから逃れようと、体を無理やり起こしそこから離れようとするも足しか動かせず、地面を這うように後退る。

 

「うぅ、体が...うごかない‥‥これまマジでヤバいネ‥‥」

 

「さぁ凍りなさい。凍れ!凍れぇ凍れぇぇ!!」

 

黒く、純黒く染まっていくトレディの顔。

神楽は苦渋に満ちた顔で凍っていく足時ごと凍らせる氷は体温を奪い凍らされた箇所から感覚が奪われている。

 

「神楽ちゃん!」

 

ひゅ〜ん

 

新八の叫び声が虚しく響き渡ると同時に空を優雅に飛ぶ弾の音。

着弾するとそこから放たれる光と風圧と大きな音。周りの冷えきった気温に熱を与え、そこにあった全てを吹き飛ばした。

それは当然その場にいたトレディと神楽も吹き飛ばされた。これは運が良かったのか氷の侵食は阻まれ、上手く爆風を避けたために体が破損することは無かった。

 

「えぇ〜と、なんなんだかこの惨状は、凍ったビルや地面とかはさて置き、ムカつく顔が2つ並べて立ってやがる。調教しがいのある雌豚2匹ががん首揃えていると思えばいいか?」

 

「「ドS(沖田さん)!!」」

 

「何でぇチャイナ?調教して下さいって言っているような顔して」

 

「あぁ!?ドS、オメェの目は節穴か?それなら今すぐ眼科に行ってその腐り目をガラス玉に変えてもらえ!!」

 

「お、沖田さん、どうしてここに?」

 

「カラクリ仕掛けの娘とやり会いたくってね。でもただのカラクリとばっかやってたら殆どの所から爆音や煙が消えちまってなぁ唯一!ここが!!未だに!!!終わってなさそう思って来てみたら合点がいった。まぁお前らじゃあれは倒せねぇよな。」

 

さっきまでのトレディよりもドス黒い笑いをする沖田。正直に言って、言われている本人じゃなくても凄く腹が立つ。

 

「まっ、そんな所での転がっていても邪魔だしな。」

 

沖田は懐をまさぐりながら新八の元へ、そして新八の方にあるものを向けた。

それはライター、見た目は普通のライターだった。それは見た目が少しマヨネーズの容器だったがそれ以外は普通のライターだった以前獄寺がやってくれたようにライターの熱で溶かしてくれるのだろうが、それは意味が無いのはわかっていた。ライターの小規模な炎じゃ体の芯まで凍らせている氷相手じゃ力不足である。

 

が、そんな心配は無用であった。

そのライターはまるで火炎放射器の如く炎を発射し、半端ない熱量が新八を襲う。

 

「あっつぅぅ!ちょっ!?何でそんな火吹いてんですか!?そのライター!!?」

 

「土方さんが、お疲れで一服しようとした時に使おうと思っていたライターでさぁ。でもその肝心の奴さんが何処かにいっちまったから、仕方ねぇからメガネを溶かすのに使ったんだよ。ほら動けんならこの場から離れるこったな。どうせ動けても奴さんにだいぶやられてんだろう?」

 

沖田の言う通り新八のダメージは既に限界に近いぐらい蓄積されている。

沖田にしてみたら足を引っ張られる方が大きいので早く避難しといてほしい。

ついでにそこに寝っ転がっているそこの馬鹿も連れて行ってくれたら儲けもんだ、借りを作れる。

 

「おい待て、ドS!!」

 

だが神楽は沖田を呼び止めた。

沖田は振り返ると神楽は少し照れているようで、目を背けていた。

 

「ん?何でい?」

 

「うっ、その‥‥」

 

神楽が言葉に詰まる。

これだけで沖田は大体わかったのかまた嫌な顔で神楽を見る。

神楽も変な目論見を企んだ沖田に顔が凍りつく。

 

「何なんだよ。いいてぇい事があるならさっさと言ってほしいもんだ。ほら、ほら、ほら」

 

「その、私の氷も解かせアル。」

 

「え、今何て?え、もしかして頼み事?頼み事ですかぃ?人に物頼む時はそれなりの態度を示せって田舎の母ちゃんに教わらなかったんかチャイナ?」

 

神楽は眉を釣り上げる。

 

「た、頼むアル。」

 

「いんや、駄目だね。取り敢えず『お願いします。この冷凍食品として出来上がった雌豚を解凍して下さい。そして酢豚にでもして犬のエサとして下さい。』って言いながら土下座したら考えて...ん?」

 

じっと沖田を見つめる神楽。

いつもよりも鋭くそしていて、殺意などは篭っていなかった。

普段、神楽は沖田を見たらとてつもない嫌な顔をして威嚇をする。

いつか自分の目の下に跪かせてやる。そんな事を思っているだろう。でも今回は違う。

ライバルに、それでいてめちゃくちゃ腹が立つ相手に目で懇願を訴える。

 

「はぁ、仕方ねぇ。貸しにしといてやるよチャイナ。」

 

沖田はそう言って予備のライターを自分のポケットから取り出す。

 

「まぁ後悔はすんなよ。後で絶対に泣く位じゃ収まんねぇぜ。」

 

「やってみろアル。その前にお前を抹殺してやるネ」

 

「まだ立ち上がるか?神楽何彼はまさか彼氏か何か?」

 

「あぁ?何ネ、その胸糞悪い冗談は誰がこんなのを選ぶアルか?」

 

「そうでぃ、こんな奴は俺のペットか獲物だよ。」

 

沖田は手元にあるバズーカ砲を開始の合図としてぶっぱなした。

立ち込める煙の中トレディの元に飛び込んできた神楽は下から斬りあげる様なアッパーを紙一重でトレディは避け、手刀を横薙ぎで神楽を襲うが、振り終えた瞬間に日本刀の刃が煙を切り裂いて目の前に入ってきた。

それを勢い通りに綺麗に躱すと、トレディは態勢を無理やり崩された。

何故なら神楽が足に絡んで右足を腹に当て少しの力と、倒れる勢いでトレディを地面に倒す。

それから勢いを切らさずに沖田は首元に向かい突き刺そうとする。

 

「「っ!?」」

 

が、刃は届か無かった。

トレディは手を犠牲にして刃をギリギリの所で止めただけに済まさずトレディは空気中の水分を凍らせて小さな氷柱を作り出してその尖った先で沖田の頬を掠める。

すると、沖田の頬から血が流れる。

 

「こいつ‥‥」

 

天敵である神楽と似た顔の奴に傷をつけられ、静かに怒りの炎を燃やす沖田。

 

「へぇ~結構やるわね。」

 

神楽は沖田を蹴り上げてすぐさま離れる。

 

「お前何しゃがんだ。」

 

「お前が私にもたれかかってるのが悪い。」

 

神楽にとっては沖田何て壁同然である。

それは沖田とて同じ事だ。

2人は相手の事なんてそこまで考えていない。

普段も目が合うだけで火花を飛び散らせて、何か都合があったら殺し合う仲の二人、そんな2人邪魔なら普通に相方を切り捨てる。

 

「そうかよ」

 

次は沖田から攻めた。

沖田の刀とトレディが先程作った氷を長い槍に形を変化させて迎え撃つ。

 

「そん脆っちぃ武器じゃすぐに壊れちまうぜ。」

 

鉄と氷、どちらの方強度が強いかなんて子供でもわかる問題だ。

だが、上手いこと勢いを逃がすように振っているために、トレディ武器は中々砕かれずにそして決定打を決めきれていない。

それだけでなく刃を逸らされて態勢を崩された沖田に隙を見つけたトレディはすかさず次の行動に打って出る。

 

「これならどう?」

 

トレディは槍の先に大きな鎌に刃を付けたし、それをそのまま振り周りした。

 

「変幻自在の武器か‥‥おもしれぇ。」

 

だが沖田がこんな事で負けるはずはない。

トレディが鎌を振り抜いたら、刀を地面に突き刺してそれを軸に空中へ飛ぶ。それにより鎌はせき止められ沖田の蹴りがもろに入る。

 

「だけどな、初心者がそんなもん振り回しても俺は殺れねぇぜ。」

 

「そうみたいね‥‥でも、貴方は見たところ、非魔導師‥‥そして、私は殺しの専門家の戦闘機人‥私から見たら貴方の方こそ三流よ」

 

「随分と生意気な事を言うじゃねぇかチャイナもどき‥‥俺が三流かどうかはテメェの身体に聞いてやるよ」

 

トレディは足を深く地面に差し込んでトレディのIsが地面に伝わり地面から氷柱が何本もまた立ち上り、沖田のピンポイントに立ち上がり空中に放り投げられた。

 宙に出された沖田にトレディは飛び上がり足の後ろに隠されている刃を取り出した。右足を振り上げて沖田は刀で迎え撃つ。

ぶつかり合う金属音が空中でシンフォニーを奏で、お互い1歩も譲らない。

 

「はァァァァ!」

 

「ふふ!」

 

勝負が動いたのは沖田が上から振り下ろした刀をトレディが白刃取りをした時だ。

 

「溶かしてあげる。」

 

「は!」

 

トレディが自慢の熱で沖田の刀を溶かそうとすると、沖田は刀から手を離して、空中で身を屈める。

沖田の行動の一部始終かわかったのは沖田が屈めることによって現れた人影によって気がついた。

 

「何!?」

 

後にいたのは神楽だ、しかも傘の銃口をこちらに向けすぐさま放った。

鉄の体を持つ戦闘機人には、銃などそこまでの致命傷にはならないが、やはり痛みを感じる。

空中で撃たれたトレディは沖田の刀を離してしまい、すかさずそれをチャンスと捉えた沖田は刀を取り返して、峰から刃に持ち替えて上に振り上げた。

トレディの戦闘機人としての反応で致命的なダメージを負う事はなかったが、上に着ていた神威の上着が一部切れた。

 

「オマエ‥‥よくも‥‥よくも‥‥よくもぉぉぉー!!」

 

神威の上着を傷物にされ、トレディは怒りの声をあげる。

 

「何でぇ、マント1枚破れた程度で随分とまぁお気に入りだったんだな。」

 

「うァァァァァァ!!」

 

「何アルかあれ!?」

 

「竜巻...トレディさんの周りを竜巻が舞っている。」

 

「へぇ、中々の化け物じみた事しやがるな。、」

 

突如発生した竜巻は、まるでトレディを守るかのように中心彼女はに合わせて吹き荒れていた。

これは、トレディにより急激に冷やされた空気に彼女が多大な熱を放出、さらに冷気を上乗せして作り上げたもの。熱が上昇気流を作り上げて冷気が留めている。これはトレディの鎧だ。

 

トレディは消えたかのように、沖田達の視界から消えた。

 

「「「!?」」」

 

トレディはすぐさま、神楽、沖田、新八の真ん中に立っていた。彼女は彼女が発生させている竜巻で彼らを引き裂き、新八と神楽を吹っ飛ばした。

 

「神楽ちゃん!」

 

「新八ぃ!」

 

「っ!?お前ら」

 

「ヒトのシンパイできるタチバか?」

 

トレディが拳を引き、威力を溜めた重い一撃が沖田の余裕を裂く。神楽達のことが気になるがそんなことを気にしていたら間違いなく自分は殺されてしまう。

 

トレディ重い一撃を逸らしながら突破口を探る沖田、だけどこんな重い一撃あと何発耐えられるか...

 

ピキっ

 

「!?」

 

「ふ、隙を見せたな!」

 

不自然な金属音を逃すことなく聞いていたトレディは、拳を貫手に変えて彼の心臓を穿つ。

当然、そんなことをさせては自分は死んでしまうので彼は刀でガードするが、幾千のダメージを蓄積させてきた刀に限界が訪れた。

トレディの威力に耐えきれずに刀はポッキリ折れてしまう。

 

「ふ。」

 

だがこれを敗北の兆しと見たトレディにもまた好きが生まれた。沖田はこの隙を活かして好機に出る。

折れて宙を舞う刃をトレディの肩を抉りこませて、残っていた半分を腹にねじ込み、さらに柄を使って彼女の喉をぶち壊そうとする。

 

「おしい」

 

沖田渾身の連撃は致命傷を与えたが命には届かなかった。トレディの喉もに触れた瞬間氷の結晶となり空に散った。トレディは嗤い、沖田は驚愕目を見開く。

だけど今度は新八が隣から切り込んできた。

空気を切り裂きトレディの目のスレスレを通りながら沖田とトレディを引き離した新八、トレディは次に標的に定めたのは新八だ。

トレディは彼の懐に拳をぶつけ、彼はそれをもろに喰らう。

トレディは体を逆立ちさせ足から出る刃を広げて、そして手だけで回り回転させる。回転している足からは当然刃が出ていて、致命傷をくらえば絶命するだろう。

新八は何とか刀だけで防ぐが、一撃一撃の威力が乗りしかも連撃系の攻撃だ、ガードするだけで精一杯である。

こんな受け方をしていたらいつか限界が来る。

 

「終わりよ」

 

トレデの攻撃を受け続けたかガードは上に弾かれ、トレディ宙に浮き、鋭い鞭の様に足を新八に繰り出した。当然刃がある。これを喰らえば間違いなく彼の顔は切り裂かれる。

死の恐怖に新八は目を閉じてしまう。

 

「何目を閉じてんだ死にていのか!」

 

おそんな窮地を救ったの沖田だ。沖田は新八の足にスライディングをして、彼のバランスを崩して転ばせた。

そのおかげで窮地を逃れ今も生きている。

新八は一旦離れて今度はまた沖田がまた時間稼ぎ兼仕留めようと動く。

 

「またアナタ、ブキをウシナイニクダンセンだけでワタシとやろうナンて、どういうシコウをしているの?アラガっていればカテルとオモッテいるの?バカね、レイセイに恵三しなさいよ。私と貴方の距離をね。」

 

「生憎、田舎侍は剣を振ることしか頭になくてね。勘定は苦手なんだよ。」

 

「そう、なら都会の土になれる喜びを噛み締めて死になさい田舎者!!」

 

トレディは沖田の腕をしっかりと掴み両手共に完全に拘束して手から広がる氷に侵食により凍された。

 

「沖田「トレディぃぃぃぃ!!」」

 

空から響いてくる神楽の声にトレディは反応した。

空中を蹴ったかのような勢いのまま飛来してくる神楽。

彼女は先程ふっ飛ばされた際にビルに飛ばされ、上に登り屋上から飛び降りたのだ。

 

「カグラァァァァ!!」

 

トレディも地面を凹ませる勢いで飛び上がり拳をぶつけ合う。

力と力の力場の衝撃は逃げる場所を失い、衝撃となって空気を伝って新八の所にまで伝わってきた。

空中で行われる激しい連撃は息をつく暇もなく行われた。

それは空中にいられずに地上に足を下ろしてからも続く。

拳が入っては、蹴りが入り。蹴りこまれたかと思えば頭突きをされている。

まるで子供のじゃれあいのような内容だが凄まじい力の応酬で、お互いの瞳に写っているものは相手だけ...否神楽は違った。神楽は信じた。

新八と沖田が自分に好機を作ってくれる事を、だからこそ自分はそれに答えられるように...

 

「無駄よ、アンタを含めた全員満身創痍、1人は完全に凍らせたてしまったし、メガネ何てもう戦力に数えられないわよ!!」

 

トレディの蹴りでビルに突き刺さってしまい神楽はちょっとやそっとでは抜けられなくなってしまった。

 

「とどめ...くれてあげる。」

 

ゆっくりと近づき右拳を振り下ろした瞬間なにかにせき止められた。

 

「あら、よく防いだじゃないメガネ。」

 

新八が、神楽に振り下ろそうしていたトレディの右腕を刀で止めた。だがケロッとした顔で今度は左手で神楽の心臓を貫こうとする。

だが、これもまた止められる。

 

「何!?お前は凍らせた筈よ!」

 

そう止めたのは何食わぬ顔をしていた沖田だ。

沖田が新八の解答に使ったあのライター、実はあれは沖田が土方を焼死体にして、その死骸をマヨネーズサイズにまで消失させるために用意したもの。

そんなものがあの程度の氷を溶かした程度で終わるわけない。沖田は新八にライター上げていたために残った火を使って沖田を溶かした。

 

「見えていなかったのはお前アルトレディ!私とやりあえる連中があの程度なわけないネ。さてと、はぁ食いしばれトレディ!!うぉぉぉぉりゃぁぁぁ!!」

 

ち思いっき力の乗った拳はトレディの額にぶつかりトレディは吹き飛んだ。

 

 

 

「しょ、正直ここまでとはおもっていなかったわ。」

 

膝をつかせて満身創痍になっているトレディ。もう既に何かをできるほど体力は残っておらず

 

「へ、口だけは強がりみていだな。でもお前ももうなにもできねぇだろう。」

 

「確かに、体を動かすのがやっとって感じね。」

 

と口は言っているが、それでも何か畏怖を所々に感じさせる物言いの沖田も新八もそして神楽も気が緩められない。

 

「だからこそ、私もまた抑えが利かなくなってきた。」

 

「抑えだぁ?」

 

「一体何の事だ。」

 

「私のISは熱を限界まで吸収するか放出する。私はここ周辺の熱を全て吸収しきった。今ここはマイナスと言ってもいい位に冷え込んでいる。」

 

確かにトレディは、二度の戦いで地面を凍らせるか、炎で敵を焼いていた。今回の戦いで彼女は地面をそして自分達を凍らせようとした。

なら、そうしてため込まれているはずの熱量はどこに蓄積されているのか?トレディはちょくちょく少量の炎は吐き出していたが、まだ吸収した熱の十分の一も使っていない。

 

「今の私なら溶岩だって凍らせる事ができる。貴方たちの死骸を消し飛ばしてしまうかもしれないからやりたくなかったんだけどね、神威貴方に神楽の死体を見せたかったんだけど。」

 

「まずいな、あいつ自爆する気だ。」

 

「沖田さんどうしましょう。」

 

「…あいつを殺して」

 

「むだよ、私を殺してももう間に合わない。逃げ場のない熱の爆発が早まるだけ。さぁ時間よ死になさい。」

 

「チッ」

 

「うわぁぁぁぁ」

 

定刻となり、トレディから荒れく狂う熱が爆発となり放出された。

それは半径数キロにも及び、炎球により地面は剥がれクレーターができていた。周りにある幾つものビルは破壊され塵となり、ものも、人も空気でさえも全てを飲み込み焼き尽くした。

 

「ふふっ、これこそ力よ神威貴方にもできない…「終わらせない。」!?」

 

「今の声、まさか」

 

「これがお前の力なら…私は止められる。」

 

熱風が去ると現れた人影、沖田と新八を守るように神楽が前に立ち、髪留めは両方とも吹き飛び、服ははだけて綺麗な美脚に粗々しい火傷が大きく刻まれていた。手に持つ傘は完全に吹き飛び残った骨組みは塵となって神楽の手から消え去った。

 

「借り…は返した……後はあのんだアル。」

 

「何で」

 

「神楽ちゃん!?」

 

「メガネ、チャイナを頼んだぜ。」

 

「沖田さん彼女は」

 

「わかっている拘束するだけだ、チャイナにでけぇ借りができちまった。」

 

「くそ、何で何で「もう貴様は使い物にならないな。」

 

「誰だ!?」

 

 沖田が殺気に気が付いた時にはもう遅かった。西の方から飛来した刀が動けないトレディの体を貫いた。

 

「ガハッ‥‥」

 

身体に刀が突き刺さり、口から血を吐き出しその場に倒れるトレディ。

 

「憐れな小娘よ、生まれたばかりにして夜兎の求める本能に囚われる様にスカリエッティに仕組まれた娘よ、だが欲望の為に命の価値を見出せず捨てられる運命‥‥その運命通り処分の時が来た。」

 

そこへやって来たのは忍び装束の朧だった。

 

「テメェ‥‥」

 

先程まで死闘を繰り広げていた沖田や神楽でさえ、朧の所業に対して胸糞悪い想いを抱く。

朧がトレディに止めを刺そうとしたその時、

 

ガキーン!!

 

朧の刀はトレディを貫くことはなかった。

 

「むっ?貴様はっ!?」

 

朧の刀のを止めたのは‥‥

 

「ニコチンマヨラー!?」

 

「土方さん!?」

 

ギンガを救護所へと連れて行き、紅桜を使い、彼女を戦闘兵器に変えた張本人を探していた土方だった。

 

「総悟、コイツは俺が仕留める‥‥」

 

「土方さん、どこをほっつき歩いていたんですか?それにギンガの姉さんはどうしたんでぃ?」

 

「ギンガなら、元に戻した‥‥今、他の奴に面倒を看てもらっている‥‥」

 

「まさか、生きていたとはな‥‥」

 

朧は、土方はてっきり紅桜に乗っ取られたギンガの手によってあの時死んだと思っていたのだが、土方は今もこうして生きていた。

しかも彼の話を聞くかぎりでは、紅桜の器は正気を取り戻した様だ。

つまり、紅桜は折れ、器は元の陣営に戻った。

 

「ギンガをあんな風にした落とし前‥‥きっちり払ってもらうぜ‥‥」

 

タバコのフィルターを強く嚙みしめ、土方は刀を構え、朧を睨みつけた。

 




で〜はまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的89 鴉宴

こう...しんです。


〜sideはやて〜

 

 

ゆりかごの進行を止めるために沢山の魔導士達をまとめあげて指揮を執っていたはやて、自分の部隊である機動六課と民間協力者の銀時やツナ達のことは時々雑音の中に混じって入ってくる連絡とリィンが教えてくれた。

今の所死人も負けたという連絡も入っていない。

皆、シグナムやなのは達やツナや銀時達だけじゃなく新人であるフォワード陣達も期待以上の働きと誇るべき勝利をしてくれたためにはやても気合を入れ直し激化する戦況の流れを渡さずに今まで持たせている。

そんな中、

 

「はやて!」

 

「炎真、無事やってんな!」

 

炎真の生きている姿し実際に見ると話だけで聞いた時の安堵感は全然違う。やはり本人を見たら今が戦闘中という中でもほつとする。

 

「良かった無事で。」

 

「お互い様やで、それは」

 

炎真が自分を見た時に笑顔を浮かべてくれたのではやても笑顔で答えた。

自分よりもボロボロで息遣いも荒く、多くの傷を負っているが相も変わらず優しく声をかけてくれる彼には本当に胸がドキドキしてくる。

これだけで自分の気力は完全回復できるから。本当に単純だな自分って。

 

「それでこっちの状況は?」

 

未だに魔導師たちは、ガジェットの軍団と交戦している。激しい団体戦はまだ終わっていない。

 

「ガジェット戦は押し切れそうなんやけど中の様子がな...。」

 

全員が命をかけてここを抑えてくれているおかげで、ここは何とか押し切れそうなのだが、中に入った人たちから未だに突入連絡しか入っていない。

ただ、ゆりかごはまだ止まっていない。任務継続なのかそれとも失敗か、失敗の場合は...。

中に入ったのは3人。管理局のエースとして有名な高町なのは、自分の八神はやてが信頼を置くヴィータ、それから民間協力者として作戦に参加した坂田銀時。このうちの2人は連絡手段の念話ができるのだが、魔力のない坂田銀時だけはどうやっても連絡ができない。

ただ、元々AMFの酷い所だ念話など届かない場合もある。1番はヴィヴィオを背負って戻ってきてくれればそれが1番なのだが...

 

「はやて、次来たよ。」

 

中の事ばかり気にしていたらいつの間にか波のように団体さんが流れ込んできた。

 

「うわぁ、団体様のお越しや〜。炎真はあとどれ位いける?」

 

ガジェットは魔導師の苦手とするAMFを常に放出している。

魔導師に多大なる負荷を与えるAMFは魔力の量に限らず魔法発動に不可を与えてくれるのでどんな魔導師もガジェットは弱体化をしられる。

だからこそ炎真が戦えるか戦えないかでこの先の戦いに大きく左右される。

魔力とは全く違う魔導師から見たら異質な力死ぬ気の炎は未知数で未知の領域だ。それはスカリエッティも同じ事だ、スカリエッティの計算には死ぬ気の炎何てものは思ってもみなかったことだろう、その証拠にガジェットは後付けで対策死ぬ気の炎のガジェットが作成された。でもそれ強度を上げたただけに等しい。

でもそれならば炎真からみたら壁を1枚挟んだ程度力制限をかけるタイプしじなゃい力の強いものから見たら壁とてただの紙と同じだ。

炎真が戦えたらここから掃討にうつる。

ガジェットを殲滅してゆりかごを畳み掛ける。

 

「ごめん、正直僕も結構きついんだ。炎も殆ど使っちゃって...」

 

だが現実はそんな上手くいかない。炎真は既に二つの戦場を駆け抜けている。

白蘭との戦いシャマルへの加勢、はやてのところに急いできたために気力を回復させてる時間がなかった。正直全力はもう出すことが出来ない。

やれてもはやて達のサポートぐらいである。

大地の重力もフルパワーとは程遠く魔力や死ぬ気の炎持ちの人を抑えられるほどは残っていない。

 

「わかった、なら」

 

炎真に指示を出そうとした。

数を縦に一対三を1番低い数にして炎真は遠くからサポート兼自分のボディガードをして貰う。

ここからなら炎真補助できる範囲内だろうし、視野が全体に広がり力を必要としている人を見つけやすいだろう。

炎真に先にゆりかごに侵入して中の人達の脱出経路を確保しながら中の人達の保護をしてもらいたいが、中にいるのは自分の自慢の騎士ヴィータと管理局のエースである高町なのは、そして歴戦の猛者の坂田銀時だ。生きていると楽観する訳では無いが、死ぬ姿を想像できない。嫌な予感はしているが...ここを押されてしまったら彼女達が脱出できたとしても意味なくなってしまう。

だからここを一刻も早く切り抜けて自分彼女達を迎えに行く。

はやては早速炎真に指示を出し手に持つ杖を高らかに振り上げて声を張り士気を高めようとした。

だが、その声は兵士に届けることができなかった。

はやての声を吹き飛ばしたのは空気を震わせる大砲の音、それと同時に雲の上から大きな黒船がやって来た。

「なんやあれ...」

この光景にはやては唾を飲み込み、炎真は空を覆う黒い物体を愕然と見ていた。

兵士達も動揺を隠せない。

この第三勢力の登場に空気が完全に固まった。

スカリエッティ軍の援軍なのか、少なくとも自分の勘はこの船は味方出ないと訴えている。

ゆりかごよりは小さいとはいえ、そこら辺の船よりも大きなこの船はこの世界の技術でできてている船じゃないと気がついた。

魔力を感じず質量兵器の代表と言ってもいい大砲をいくつも備わっているのが見えた。

ゆりかご相手もしんどいのにまだあんなのが出てきたら、

船に積まれている大砲に粒子が集まる。

あの砲台は圧縮粒子法だ。普通の砲撃魔法並みの威力が溜め込まれている。それを見た兵士達は顔を青ざめてその場を離れる。将であるはやての指示を聞かずに恐怖に突き動かされたのだ。

 

そんな人たちを気にせず、砲門全てはあたりを気にせずゆりかごを狙った。

 

このことは今ある全戦況に何らかの影響を与えていた。

 

〜side獄寺〜

 

「てめぇ待やがれ!」

 

獄寺は白蘭達の協力者であるシノビと交戦している。

怪我持ちの獄寺にはきつい機動力を囮とした一発タイプだ。風を操る、いや風を発生させる体質とそれを組み合わせた体の動き、に対してひとつの好きを確実につこうとする暗殺者の戦い方という組み合わせ今の獄寺にとってぶつかりたくないタイプの相手である。

 

ただ、どことなく違和感を感じていた。攻撃に転じるのは、本当の本当に一瞬という感じで殆ど攻めてこようとしない。しかも中長距離型の武器の獄寺に対して距離をとって逃げ回っている。

その違和感には獄寺も一応気がついていた。気がついていたのだが...

 

「おいおい、精度の低いダイナマイトだな。銃よりも速くないのにコントロールまで終わってちゃ話にならんぜ。ほらここだよここ。」

 

「っ!?やろうぶっ殺してやる!果てろ!!」

 

余裕のひけらかしか、もしくは他になにかあるのか...

単純な挑発もまた獄寺の調子を崩すためか、それとも他から気を反らせるためなのか...。

そんな時にここにも同じ砲撃音が聞こえる。

 

「な、何だ。」

 

「ついに来たか。」

 

〜side土方〜

 

沖田や神楽たちは撤退して、トレディも大きな傷が負っててしまい命の保証もしかねるが、まぁなるようにしかならない。

だがこの問題よりも土方の目は目の前の敵しか捉えていない。ギンガに紅桜を渡した犯人が目の前にいる。自分が不甲斐ないために前は煮え湯を飲まされたが、今度はこいつを地獄の窯に叩き込んでやる。

 

「さてと、さしの勝負だ。てめぇをぶった切ってやる!」

 

「生憎だな、俺にお前と付き合ってやる気はない。」

 

「知るかァ!俺は返さないといけない借りがあんだよ!!」

 

朧の元まで走り込んで上から叩き切るように振り下ろす土方に、朧は飛び上がりさらに距離を離れた。

 

 

 

「何をしようと無駄なことだ。もう余興は終わった、貴様達の運命は八咫烏の爪に引き裂かれる。」

 

 

~saidはやて~

 

 何処から来たのか、東の空からゆりかご並みにでかい船が何隻飛んでくる。

やばい、この状況とあの飛翔してくる船たちには嫌な予感しかしない。はやては知っている。この勘は最悪で最も信頼できる勘だ。

 

「炎真、ごめんやけど中の人らを迎えに行ってくれへんか?」

 

「いや、僕も「いいから早く行って。」え」

 

炎真はここに残ってはやてを守ろうとした。

この船の狙いはわからない信用なんてできない。敵かもしれないが味方では決してない。

はやても同じだった。読み切れない、はやてはこの先は予知も情報もない誰もが想像できないこの先の状況に最悪の状況を想像してそれを避けるために選択をする。

 

「はやく頼むわ、中の人がヴィータがなのはちゃんが危ない気がすんねん。大丈夫私が抑えるから、炎真は中の人を助けたって。」

 

震えそうな声を必死に抑えてはやては炎真に指示を出した。

前までの自分なら最悪を予測して心が折れていたかもしれない。

炎真がいてくれて本当に助かった。

シグナムたちだったら鼓舞をしてくれる彼女達に甘えていたかもしれない。

なのはやフェイトが近くにいたら一人で行かさせていたかもしれない。自分は動けずになってしまい全員に逃げることを指示していたかもしれない。

炎真だからこそ自分は部隊長として正しい指示を出せた気がする。格好の悪い姿を見せたくない、彼の前なら彼に頼られる人でありたい。

単純で不純な動機かもしれないが、自分の中にある女の子の部分が引っかかって私に勇気をくれた。

 

「わかった。」

 

炎真は短い返事をして私を信じてくれた。

そんな炎真を見送りながら何故か攻撃の手を止めている新しく来た船の方を見つめた。

なのはや銀時は炎真に任せた。ちゃんと皆をヴィヴィオを連れて出てきてと願う。

 

誰も死なせない、誰も失わない。

離れ離れなんかさせへん。

理不尽になんて負けへん。

勝ってくれる。みんな勝ってくれる。

私も勝つ!炎真そっちは頼んだで!

 さて、私は腰の重そうな重鎮様方と目線合わせてお話せなあかんなぁ。

 私は、何がどうなっているかわからずに呆けている全員に一旦様子見させるように指示を出して彼らを待機さえて私は彼らの船に乗る。

 

「私は機動六課の部長をしている八神はやてと言います。私達の事を助けてくれた事に礼を言いに来ました。と同時に貴方方は何者ですか。」

 

「これはこれはご丁寧にどうも、私達は天導衆。こことは違う世界の統治者です。突然の無礼申し訳ない。」

 

「さてと、腰を据えて話したい所ですが、何やら争いごとのようだ。どれ私達も少々手を焼かさせてもらいましょうか?」

 

「いえ、その点は大丈夫ですよ。いいから座ってください。」

 

はやては魔力を高め、威圧をする。

魔力を感じられるかどうかわからないが戦闘経験のあるものならば、牙を向けた猛獣を野放しにはしないだろう。

それも有能な番犬なら特に。

奈落達はすぐに反応してはやてに一斉に武器を構えたが、天導衆が手で合図を送ると全員引き下がった。

 

「まぁ慌てずとも良い。私達もそなたらと剣を交わるつもりは無い。牙を収めよ、その状態で話を受けるとでも?」

 

「...ふぅ。」

 

警戒心は切らず緊張の糸は保ちながら力を抜くように息を吐いた。

そうすると天導衆は船の中を案内してとある部屋にはやてを連れ込んだ。

ここに入れと言ってくるが罠が仕掛けられているとしか思えない。だけどはやてには断る断るという選択肢はできない。

中に入るしかないのだ。

部屋の中に入ると傘の集団達は部屋に入らず1:1で話してくれるようだ。

椅子と机だけというシンプルな部屋だが罠が仕込めそうな作りだ。

ただ一点でラッキーなのが、ここには全くAMFが通っていない。つまり、はやてを制限するものは何も無い。

 

「少し警戒しすぎかと思われるが?」

 

「無礼やったらすみません。ただ、私耳はいい方なんです。天導衆...聞いたことがありましてね、確か宇宙を支配...いや大きすぎたかな。地球の幕府を裏から支配している組織が天導衆と」

 

「ほぉ、我らのことを既に耳にしているのか。耳を自慢するだけはありますな...ただ、少し偏りすぎて耳に入ってますぞ、我等は支配などしていない。我らが行っているのは共存だ。地球人とそしてあなた方と共に共存したいのでね」

 

「共存...それはどのような感じでの共存ですか?」

 

「何、そなたらの技術はたいへん素晴らしい。我らが望むのはそれらの提供、そちらが望むものはなんなりと要求してもいい。要は簡単な外交ですよ。」

 

「なるほど、要求は分かりました。ですが私も舞台を率いる長ですが何分末端中の末端このような大きな事で簡単に首を振ることはできません。」

 

「まぁ、そうでしょうな。」

 

「わざわざ御足労いただいたうえに待たせるなんて申し訳ない。」

 

「構いませんよ。国の行く末にも関わることですから色々な事情が介入することでしょう。」

 

「ありがとうございます。あのうその間にこちらからも尋ねてもいいでしょうか?」

 

「先程のそちらの兵士達。皆さん変わった刺青してはりますね。三足の鴉、八咫烏ですか?珍しいですね。それは組織にくみしてる人達は皆付けてるんですか?」

 

「えぇ、私らの剣であり盾であり足にもなってくれる。組織名は奈落と言います。それがどうかしましたか?」

 

「こちらミッドチルダでは八咫烏の刺青なんて見ませんから、それともう1つ目撃情報があるんですよ。...確か紅い日本刀を所持している女の人とどこかに行こうとしている姿を、いや〜こちとらミッドには八咫烏何てものはないからわかりやすいわ〜。そちらさんの組織に所属してる人なんですよね。」

 

不覚にも天導衆は同様を見せた。

そしてその動揺ははやてが引き出したかったもの。

実は言うと目撃情報何てのは嘘だ。そんなものを見た人もいないし話すら来ていない。

だけど、このタイミングの良さ、そして暗躍していた人物が浮かんできた瞬間のタイミングが合いすぎて、彼女は勘だけど何かあると考えていた。

そして繋がった、彼らとスカリエッティ一味との間には繋がりがある。

利害一致の同盟みたいなものだろうが、だからこそこの人達は黒である。

そしたらそれでひとつ疑問が浮かぶがそれは今はいいだろう。彼らが敵だと言うならばここから出て早く次の指示を打って先手を打つ。

 

「はやて殿、そう慌てるな。こちらとてやり方があり言い分がある。」

 

「その返答、貴方方はうちの兵士に手ぇ出したことは認めるんですね。」

 

「最初に言った通り我々はそなたらとことを荒立てるつもりは無い。」

 

「まだ言いますか!?私の部下の家族を攫って、私ら預りの子供達の仲間にも手を出したんですよ。しかも攫われた彼女は犯罪組織の一員として働かされてる。これで荒立てる気はないと!もう割れてるんですよ。私らの追っているスカリエッティとあんたらは繋がっているということは!!」

 

「スカリエッティ?...あぁあの科学者ですか。いやはやはやて殿早とちりの上にひとつ勘違いをしておりますぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜side医療部隊〜

 

 

ここには戦闘により傷ついたものや、非戦闘員が沢山密集している。

戦況が長引けば長引くほど、戦いを続行するのが不可能な人が増えてきてその陣営の弱点となる場所でもある。

ここを敵陣営が落とせば一気に崩れ落ちる場所であるが今は管理局側に流れが来ている。殆どの人はここを人数でおして殲滅しようとするために医療部隊の守りが弱まっていた。

スカリエッティはその一点をガジェット軍で叩いてきたのだ。

AMFは医療魔法にも影響を与えてしまうかもしれない。少しだが魔力の戻ったティアナとスバルが2人でガジェットに立ち向かった。

ドローン型から最新のガジェットまで迫り来ていたが、スバルのIsを軸にしてティアナが補助をしながら耐久戦に持ち込めた。

その間に医療班をできるだけ遠ざけるつもりなのだ。

先導はギンガに任せた。

ギンガにも戦って貰いたいところだが紅桜のダメージはまだ抜け切っていないためにまだ戦える状態ではない。

幸い2人でもそこそこ持っていた。避難完了の連絡が来たら自分達も退却するつもりで戦っているからこその現状だ。

昔のティアナならこんな場面は任せられない。功に焦って無駄に命を散っていただろう。

だけど今のティアナは、自分の一番の武器である冷静な判断を活かしてこの場面の被害を最低限に抑えようとしている。

そんなティアナだからこそスバルは100%の信頼で答えられる。

この2人はこの死地をコンビの成長で乗り越えようとしている。

 

「いくわよスバル!」

 

「うんティア!」

 

そんな二人にデバイス達も最高の結果を与えようとする。

ティアナの周りにはいくつもの魔法弾が浮かび上がり、スバルの目の前には一つの魔法陣が組み上がっていた。

 

「クロスファイアー...シュート!」

 

「ディバインバスター!」

 

スバルの一撃を邪魔しようとするガジェット達を撃ち落とすティアナの乱弾は全てを撃ち落とせるように計算されて放たれていた。

スバルの魔法は憧れの象徴、自分を救ってくれた大好きな人のように強くなりたいと誓い、歩み続けた証だ。

彼女の様に魔法を使いたい。誰かを助けるために放ってくれた魔法を自分も明日を見るために放った。

 

「ナイス!」

 

「さすがティア!」

 

二人はバトンタッチを交わして、土煙が立ち込める間に撤退し始める。

「ギン姉、時間稼ぎはもう十分だよね。」

 

「十分よ、ありがとうスバルそしてティアナも」

 

「いえ、まだなのはさん達も戦っているんです。自分も負けてられませんから。」

 

聞いてるだけで頼りになる。

今の二人にはそれだけの力がある。

ちょっと前までし自分の後ろで守ってあげる存在だったのに...本当に時間の流れは早いものだ。

 

「二人とも本当に強くなった。」

 

「ギンガさん。」

 

「ギン姉...」

 

「さてと、この先は後でね。移動地点を伝えるわ!」

 

「はい!」

 

「りょ、了解!」

 

「そこから数キロ地点にある○座ひょ...2人とも上を見て!」

 

ギンガは今ティアナ達がいるであろう地点にあるビルの上にいつの間にか黒服の集団が編成を組んで矢を構えていた。勿論下を狙って弦を引いていた。

 

そして放たれた。

 

 

「ふぁあ、はあぁ!」

 

矢に向かって飛び上がったスバルは利き足に力を貯めてできるだけ引き付けて、まるで砲弾を放つように空気を蹴り飛ばした。

矢は空気の壁ぶつかり、何とかスバルもティアナも無傷で済ますことが出来た。

 

「大丈夫ティア?」

 

「あんたこそ、まだ戦える?」

 

(この黒服集団、何者かはわからないけど相当の手練たちだと思う。私はもうファントム・シルエットは使えない。使えてもフェイク・シルエットだけ、でも無理をしすぎたら魔力はすぐに無くなる。)

 

「大丈夫、ティア立ってるだけで辛そうだよ。」

 

ティアナが強がっていることなんてスバルから見たら直ぐにわかった。

だけどティアナもティアナで、スバルが自分のことを置いて気を使っている事をすぐにわかる。

 

「アンタもだいぶやられてんでしょ。」

 

「私は大丈夫だよ。普通の人よりも頑丈だし、でもティア魔力もまだ回復しきっていないんでしょ。」

 

「あんたがいけるならあんたの隣にずっといるわよ。私たちコンビなんでしょ。」

 

泣いても嘆いても助けが来る可能性なんて殆どない。

確率の少ない希望よりも、しっかりと敵を見て生き抜いてやる。

2人は臆すことなく戦闘体制を整えて敵軍団の前に立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜sideスカリエッティ〜

 

 

静かな睨み合いが続いていた。

今現在、シャッハが爆破された洞窟の中を探索している。その目的は中で戦闘を行って取り残された沢田綱吉救出だ。

生存確率は正直低いかもしれない。でも彼ならば生きているとフェイトは信じていた。

だからこそフェイトはスカリエッティを睨み据えていた。

生きて自分のもとに来てくれる事を...こんな犯罪者の余興のために彼が死ぬわけない。

スカリエッティはフェイトとは全く逆、睨みつけてもいなければ、戦意もあまり感じられない。まるで映画を見てるように、ただ次のシーンを楽しみにしている。

爆破した基地の中に生き埋めになっていると知った時のフェイトの崩れ落ちる心を...

シャッハが洞窟から出てきた。

1人の女性を担いで、その他に人を確認することはなかった。勿論背負われているのはツナでもリボーンでもない見たことの無い若い女性だった。

 

「ふふふ、生存は確認できたみたいだね。」

 

皮肉な笑をフェイトに向けるスカリエッティ。フェイトは歯を噛み締めてに彼を睨みつけた。

 

「ツナ...ツナは」

 

現実に希望を残すように彼女はシャッハに訊ねた。

すがりつく希望は見せかけとして崩れるのか...それとも

 

「どうやら、状況からみたら彼女を助けて岩の下敷きになったというところかね。」

 

スカリエッティの言ったことは正解だ。今に至るまでの現状はそのままの通りでツナは彼女が助かるためにさらに危険な道に行った。

自己犠牲を簡単に行う人間性を下に見るのを通り越して、哀れに感じた。

 

「っ!?」

 

「大丈夫、彼を信じてください。彼らほどに生きるという意志のお強い人を私は見たことありません。必ず生きてまた会えます。」

 

「さてと、まぁ生きていても、死んでいてももう意味はないと思うけどね。」

 

フェイトの絶望顔も見れたことだし、スカリエッティにとってはもうツナの命に微塵も価値も感じていなかった。

 

「何!?」

 

黒服の傘をかぶった集団。暗殺組織奈落だ。

群れのように大軍でスカリエッティの背後に現れた。

 

「お迎えだ君たちは、天国に私たちは天にカラスが迎えに来た。」

 

フェイトの中では遂に点と点が繋がった。

ツナの仲間である雲雀恭弥をやったのはあの集団だ。

これが繋がったのならギンガを攫ったのも、スカリエッティはやはり1枚だけにかんでおらず、更に背後に違う組織と繋がっていた。

 

「カラス」

 

「新手!?」

 

シャッハとエリオは現れた敵に武器を向けて臨時戦闘態勢をとる。

フリードも高らかに咆哮をあげて敵を威圧する。

 

「さてと、後は頼んだぞ。」

 

スカリエッティの逮捕、後一歩の所まで追い込めたのにそれでもまだ届かなかった。

ここで彼を逃がしたら、また一般市民に被害が起きる。まだ届かない、管理局が総力を上げて殲滅作戦も彼の興になるだけなのか...自分自身の決着も未決着をつけることがてできないのか...

 

スカリエッティの為に黒服の集団は二つに割れて歩いて行けるようにスペースをあけた。

1歩、また1歩と遠のいていく。そして踏みしめる度にさらに口元が緩んでいた。

この世は全て自分の思い通りになっている感覚だ。フェイトも沢田綱吉も管理局も全てスカリエッティの手の平の上で踊らすことができた。

笑を浮かべるなと言う方が無理だろう。

レジアスは死にそれと共に倒れたゼスト、戦闘機人ではフェイト捕らえることはてできなかったが、まぁ彼らに頼めばあのような少女簡単に捕らえることはできるだろう。

ゆりかごはまだ動き自分の目的はまだ潰えていない。娘達の奪還は直ぐにできるだろう。

 

 

 

勝利目前、敗北寸前この戦いは管理局の敗北に終わってしまう。

フェイトもシャッハもエリオもスカリエッティを逃してしまったらそうなってしまうのはわかっている。だけど未知数の戦力を前にして1歩も動けずに三人は脳裏に最悪の二文字が浮かんでいた...

 

 

だがこの時フェイト達も戦闘機人達もここにいる全員誰もが思わなかった事が起きた。

 

 

 

 

ブシュリ!

 

 

 

スカリエッティの腹のあたりに鈍い痛みを感じた。

彼の白衣がどんどん赤く染まっていく、

鈍い痛みは、腹に刀が刺さったから。腹からどくどくと流れて血が流れて白衣をどんどん染めていく。

 

 

「「「「「!!?」」」」」

 

当人も、フェイト達も、勿論ナンバーズの全員もこの現状が飲み込めない。

笠を頭にした異形な集団は、スカリエッティの腹に一刺しすると次々ととどめを刺すかなように刺していった。

そのあまりの光景にフェイト達は思考がついていけず、彼らは何なのか本気でわからなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜sideはやて〜

 

「勘違い、この世に及んでまだそないな事言いますか?」

 

核心ついて攻めている...とはやては思っている。状況証拠はつながりを見せて真実を紡ぎ、はやての目には天導衆が黒く卑しい烏のように見えてきている。

引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、全てが思い取りになると思っているその傲慢の皮を引き剥がす。

 

「...ふふ」

 

「ははは」

 

「くくっ」

 

だが零れてくるのは皮ではなく、笑いだった。嘲笑、道化を見ている気分だと小言で言ったのをはやてには聞こえなかった。

鴉の羽は魔導士ですら掴むことすら出来ない。

 

「くくっ...いや失礼はやて殿。貴公は若すぎますなぁ部隊を率いるには肩の荷が重すぎやしないか?」

 

言葉は優しいがこれはまるで「図に乗るな小娘!!」と言われているように感じる。含まれている嘲りを感じた。

 

「何が言いたいですか!?」

 

「まず1つ貴女は早とちりをしている。言ったであろう我らの目的は友好関係にある。」

 

「故に我らは或手段を取って1人をスパイに送った。」

 

「我らの目的はただ一つスカリエッティ一味の討伐である。」

 

運命は交差された。絶対に交わることの無い並行世界は、奇跡という形で結ばれ、誰も予想しなかった脅威が全てを黒く染め上げる。

脅威は見下ろす。天に座す神のように人々の争いを見ていた。

脅威は嗤う。自分達の手の平の上で踊っている彼等を見て。

脅威は何食わぬ顔で侵略する。彼らが求めるものを手に入れるまで進軍を止めることは無く、命を蹂躙して心をへし折り自分達の思い通りになる人形を作り上げ命付き果てるまで吸い尽くす寄生虫である。

鴉の羽は果てしなく黒く広い。人は光を見失い黒に染め上げれる。

鴉が飛び立った後に残るのは荒野骨の残骸のみである。死体を啄み、骨をしゃぶり肉片すら残らない。

雑食で大食らい賢く強かな鴉の羽を見たら既にもう遅い。鴉の羽に魅入られたら最後人は陽の光を見ることは無い。

 

 

・・・・続く

 

 




では.....また次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的90 お札って1万と千円の人が有名すぎて5千円の人を知らないことが多い


皆様お久しぶりです。
えぇ、久しぶりに投稿するのですが令和初所か今年初となったこと誠に申し訳ございません。
それでもお気に入りを外さなかった人達のために私顔を上げられずにまた更新させてもらえ、そして読んで頂く皆様に大変深い感謝を心に留めながらまたお付き合いさせていただければという所存であります。


えぇ、何が言いたいかと言うと





更新です。


 

 

ミッドにおける戦況は急変した‥‥

状況事態は誰もが思いもよらない方向へと向かい、管理局もスカリエッティ一味だけの戦いではない。

これは管理局側、そしてスカリエッティ側も予期していない事態で、現状は、様々な思惑やかける想いが渦巻いていた戦争‥‥ミッドはまさに阿鼻叫喚の地獄の様な戦場となっていた。

小さい命、家族、仲間、悦楽、人命をかけて守ると誓ったもの、自分の存在意義、人それぞれに戦う動機があった。

正義には正義の‥悪には悪の譲れない信念が明確にあった。

それを鴉は何食わぬ顔で啄んだ。

ほくそ笑みながら上から見下して、満身創痍になり、死に体となった所を鴉は餌を漁るかの様に突如、舞い降りてきた。

鴉は一言だけ鳴く‥‥

 

全てをよこせと‥‥

 

天から突如、舞い降りた鴉の瞳には捕食するものしか映ってない。

領分も言い分も関係ない。

それは全て我らのものだと言ってくる。

 

(まずった、予想以上にこの人らタチ悪いわ。)

 

「我々はこの世界に交渉に来たのですよ。我らの世界の星々には無かった魔力技術‥それを用いて発展したこの世界の文明、科学と魔法の融合したこの技術は我らも目から鱗が落ちる思いでしたよ。我らも宇宙の交通の成功により目覚しい発展をしましたが、いやはや世界は広いものだ。」

 

天導衆は、この世の全てを見てきた筈だったが、ミッドを始めとする管理世界の存在はまさに寝耳に水であったが、それはこれまで誰も見たことのない秘宝を発見した様な感覚だった。

 

「我々は、どのような交渉手段を用いれば良いか悩んでいたところ、我らの世界の犯罪者がここのマッドサイエンティストと手を組んで粗相を犯していると聞いて、これは我らの問題でもあり貴女方の問題でもある。故に共に協力し対等な立場の同盟を築かせてもらおうと思いましてね。」

 

「成程、話はわかりました。確かに今は猫の手も借りたい思いでしたので援軍には感謝します。でも1つ疑問があります。」

 

「何でしょう?」

 

「何故このタイミングなのですか?出れるならもう少し早くでも良かったんとちゃいますか?」

 

息を抑えよう、憤るな。

怒りを見せたら相手に隙を見せたと同じようなものだ。

彼らは感情を手に取るように転がし弄ぶ。

はやては天導衆を見る。

そして認める、彼らは仮にも管理局よりも多くの宇宙をまとめあげた人たちだ。

陸だの海だのと、ちょっとした派閥争いに躍起になっている管理局の幹部とは違う。

その口で、その手で、多くの星々を弄してきた。

自分が今から交渉で挑むのは宇宙という代名詞がつく大きな組織のトップなのだ。

そう決意を改め、はやてはその両眼で敵を見た。

 

「あの船‥我らが追いかけているあの船が思ったよりも巨大でなこちらは其方らに表から攻めてもらい裏から奇襲を起越すつもりだったからだ。我らはお互い手の内を知らぬ者同士‥‥その様な二つが手を組むなら役割分担が1番良い手であろう。」

 

正面に座する天導衆がはやてに答えた。

天導衆の主張を言い直したらこうだ。

『敵の敵は味方』ということ、そして利害だけ一致している勢力同士なら、お互いの領分を侵略せずに敵を殺す1番好ましい手である。

 

「そうですか‥‥」

 

はやては軽く相槌を打つ。

 

だけどこれは私らから見たら戦いをこちらに任せて美味しいところだけを持っていくとも言える。

現に今やっているのはいいとこ取りだ。

 

考えろ‥‥考えて、解決策を見つけろ‥‥

はやては、思考をフルに回転させて、考える。

今、彼等が入ってしまったら戦場は余計に混乱する。

もしくはもう既に混乱しているかもしれない。

彼等を一分一秒でも早くミッドから自分たちの世界へ帰さなあかん。

しかし、彼らと戦っても勝てない。

故に力で追い返すことはできない。

ならば、私がやらなあかん。

今こそ頭脳と話術‥‥思考をめぐり合わせる交渉で戦う時だ。

氷の様に冷たい空気と彼らの鋭い目線がはやてにずっしりと重圧をかける。

この緊張感に満ちた空気の中、ヒヤリとするぐらいギリギリな綱渡りの交渉に流石のはやても冷や汗が流れた。

圧倒的なまでの威圧感を放つ天導衆は本局の重鎮たちよりも重たく感じる。

彼らに比べたら、伝説の三提督やレジアス中将なんて、まさに若造やはなたれ小僧のレベルだ。

いや、これまで向かい合ったどんな人たちとも違う。

言い表せない異質な威圧感、360°の角度からも感じる視線が肌に緊張感を走らせ、彼らの発する言葉はまるで誘惑だ。

言葉、目線、仕草、雰囲気から常に死の香りを醸し出して、楽になろうと囁きかけてくる。

それはまさに麻薬の様な甘い囁きに感じる。

 

「戦いももうじき終わる。八神殿、機動六課の長よ、よくぞここまで戦い抜いた。若輩にして見事な采配だったよ、八神殿‥‥クックックッ‥‥」

 

これが宇宙を支配した支配者たちの姿‥‥あまりにも異質で、今まで機動六課を守るためにやってきた処世術や交渉術が非常識だったぐらいに通用しない。

低く反響する嗤い声、まるで私たちの全てを笑っているように聞こえてくる。

管理局の目指す姿はこんな異質な存在になることなのだろうか?

天導衆を見て、管理局が目指している方向性に疑問が浮かび上がるが、それはまた後で考えればいい。

今はこの局面を乗り切らなければならない。

 

彼らの態度は嘲笑、嘲り、侮蔑、卑屈かと自分でもそう思った。

格下だと自分で思い床のシミに視線を向けていた。

馬鹿だ、自分でもそう思う。

権力者の耳は都合よくできている。

権力者の頭は憎いほど姑息に回る。

下に見られている奴がどれだけ訴えても、彼らは耳を傾けないし目も向けない。

大義を名目にして弱者を黙らせる。善も悪も彼らが決めて彼らが線を引いてきた。

彼らが正義と言えばそれが全てが正義となり、彼らが対価を与えたと言えば与えたことになってしまう。

つまり交渉なんて最初から形だけだったのだ。

彼らは対談の場を設けはしたが、対談なんてする気はなかった。

ただ要求を伝えてのみこませ、何事もなく叶える力が彼らにはあるのだろう。

全くの無駄だった‥‥この対談もこの面会もこの席もここに来た足すらも無駄だったのだ。

管理局も長い歴史の中でこうしたことをしてきたのかもしれない。

 

 

 

 

炎真はゆりかごに潜入した銀時となのはとヴィータの三人を探すために一人でゆりかごに侵入した。

ゆりかごの内部はまるで迷路みたいで廊下を走っている今では方向感覚も狂って今自分が何処からどこに向かっているかがわからない。

しかもここを照らしている照明はチカチカと灯ったり消えたりしてゆりかごの電気系統に問題が生じたようで、艦内は結構薄暗く不気味で、まるで無人の廃病院の中にいるみたいな感覚となっていた。

暗くて同じような道に炎真はどうやってなのはたちを探そうかを考えるがあまりいい案は浮かばない。

はやてたちの様に、魔法が使えたら念話でどこに居るのかなど現状をすぐに理解して、上手く見つけられるかもしれないが、あいにくと自分にはそんな力はなく、リボーンの様にすごく頭が回る訳でもない。

だからこそ炎真は走ってなのはたちを見つけるしか方法がない。

せめてもの手段で、炎真は大声で呼びかけながら気配を探っている。

しかし、いくら名前を叫んでも返しは聞こえてこないし、探し人であるなのはたちの姿も見えない。

 

「銀さーん!なのはさーん!ヴィータ!!」

 

通路の奥から返ってくるのは自分が出した声のこだまが返ってくるだけだ。

それでも諦めずに声を張って通路に轟かす。

そんな時に視界の端に炎真は大きな光を見つけることが出来た。

今、自分が走っている廊下よりもクリーンに光が灯り、広がる空間が見えた。

ようやく通路じゃないものが見つけることができた。

その部屋に出るとそこには激しい戦闘痕を見つけることが出来た。

欠片しか残っていないガジェットの残骸と天井、壁、そして床全てに焼痕みたいなものがある。

これはこの狭い部屋で空中戦が行われた形跡であり、故にここで戦ったのは魔導師ではない銀時では無い。

そしてヴィータならガジェットはこんなふうに壊れはしないだろう。

ヴィータなら破壊痕は大きくて荒々しく残骸はプレス機で潰されたように残されているはずだ。

彼女の武器であるハンマーはたたきつぶすものだ。

これまでヴィータの戦い方を見てきたからこそ、そう断言できる。

これはどちらかと言うとかき消した感じだ‥‥それも圧倒的な力で消し飛ばした。

ならば、ここで戦ったのは、なのはしか考えられない。

なのはの砲撃魔法の後なのだろう。

しかし、此処になのはの姿はない。

それならば、彼女はこの先を通ったのは間違いない。

他に何かここに手掛かりがないかと辺りを見たら炎真は唖然とした。

 

これもなのはがやったのだろうか?

 

壁に大きな穴が空いている。

もしかしてここから壁をぶち抜いたのか?

いくらあの人でも‥‥いや、あの人だからこそ、やりかねない。

 

「もし、なのはさんが、これを自分からやったのならここを進んだに違いない。」

 

炎真は穴の中に飛び込んだ。

そして拳に赤い炎をともして穴の中を突き進む。

廊下よりも暗くどこに繋がっているかもわからない穴はそこまで長くなかった。階数を三階降りてからまた廊下に出てさっきよりも大きな部屋に出た。

 

そしてまた大きな部屋に出た。

この場所はなのはがクアットロと戦ったあの部屋だ。

その部屋ならクアットロがやっていたこと、全部の部屋の状況をみることが出来てそれを動画としてみることができる。

上手くいけば船内の地図を手に入れることだってできるだろう。

 

「えっと‥‥ここは‥‥」

 

部屋には何か空間ウィンドウみたいなのが中に浮かんでそこに迷路が映っていた。

 

「これはまさか、ゆりかごの地図!?」

 

炎真は食いつくように空間ウィンドウを見た。

これさえあれば自分が今いる位置だけでなくなのはたちを見つけるのも今よりももっとスムーズに見つけることが出来るだろう。

更に言えば出口だってわかるはずだ。

だけど炎真は地図を見るのを僅か3秒で止めた。

顔を引き攣らせて大きなため息もつく。

 

「僕、地図の見方がわからないんだった‥‥」

 

地図の見方もわからず、方向感覚も全く信頼できない中で地図の読み方も全くわからない。

ここにもし他の誰かがいたのならばなのはたちの居場所だってすぐにわかったかもしれないのだけれど‥‥

こうしている間にも状況は刻一刻と時が進んでいる。

一刻も早くなのはたちの無事を確認してこの船から脱出したい。

この焦る気持ちが炎真の心をかき乱し、冷静さを失わせる。

 

(落ち着け‥落ち着くんだ‥‥ここで焦れば見えてくるモノも見えてこないぞ‥‥)

 

乱れた心を整えるために、自分の目的であるなのはたちを一心不乱に探した。

近くに浮いてあるパソコンのキーボードのようなものを適当にいじりまくった。

カタカタとタッピング音が聞こえるので、いかにもコンピューターに達者な様に見えるがシステム構造何て全く理解していない。

しかし、それが今回偶然な奇跡を生んだ。

炎真は気が付かなかったが、ゆりかご内の全扉がオープンになった。

クアットロが銀時とヴィヴィオを戦わせる様に組まれた状態だったのを完全に解除したのだ。

因みに当の本人はそのことに全く気が付いていない。

 

 

 

カツン、カツン

 

 

 

 

~said獄寺~

 

 

「だァァくっそ!!逃げられた!この編み笠野郎たちのせいで!!クソッタレが果てやがれ!!」

 

戦場は第三者の混入により混乱し始めていた。

魔導士たちは念話を使えるので多分ティアナたちは情報共有ができているだろうが、獄寺は連絡をする手段をもっていない。

耳につけている無線機は「ザザザー」という雑音しか聞こえてこない。

 

「シノビをかるく倒してカッコよく10代目に合流するつもりだったのによぉ~。」

 

乱戦になるや、その人の数にまぎれたのかいつの間にか姿が見えなくなっていた。

探したくても今目の前にいるわけのわからない編み笠の集団に邪魔されてしまい追うに追いかけられなくなってしまった。

しかも、編み笠たちもただの雑魚とは一線を引く強さであった。

無駄のない走り方、一級品な剣筋、一糸乱れのない動き、素人が放つことのできない不穏感が獄寺に警戒心を抱かせる。

既に何人も何人も束になってきていい加減うんざりしていた。

ダイナマイトで倒しても、建物を壊して行く道を塞いでも何をしてもコイツ等は次々とゴキブリの様に湧いてくる。

このまま一々相手にして馬鹿みたいに付き合うのは得策じゃない。

それでは先に獄寺の方が参ってしまう。

シノビとの戦闘での疲労のうえにあの奇襲事件での神威にやられた傷口がまた開くかわからない状態なのだ。

それだけではない、獄寺のバトルスタイルはあくまで中長距離の武器を駆使した戦い方で、遮蔽物のある所が得意なのだが、今獄寺が走っているのは街のド真ん中の大通りである。

特に何もない日だと車が何台も走っている広い道で遮蔽物のないところは獄寺が苦手なバトルフィールドである。

それにダイナマイトだって本数には限りがある。

 

だが、苦手だ、何だ、言っていられる状況ではないし、獄寺だって機動六課の中ではまだ修羅場をかいくぐってきた穂である。

こういった場合の機転もよく働く。

まずは撒くにしても、自分の得意なフィールドにおびき出すにしてもこんなに数がいたのでは数につぶされてしまう。

そのためにまずは足並みを崩す為に牽制をしかけているのだが

 

「ちっ、さっきから気持ち悪い奴らだぜ。」

 

獄寺が気持ち悪いと指摘するのも無理はない、幾らか攻撃をしてわかった彼らには個人個人の意思といったものまるで感じられない。

まるであの集団で一つの意思を共有しているように見えてくる。

その片鱗を見せているのが彼らの統率力である。

どんなことをしても乱れないで追いかけてくる。

それはもうチームワークとか足並みが揃っているといったレベルじゃない。

まるで例の人型ガジェットを大量に相手にしているみたいだ。

だが、連中は服装と動きからして人間‥‥しかもなのはたちの様に魔法を一切使用していないことから非魔導師だと判断できる。

それこそ、カリオ○トロの城に出てきた暗殺者軍団や故郷の歴史に登場した忍びと呼ばれる陰の存在‥‥

連中の動きは、例えば獄寺がダイナマイトを投げ込む敬遠で投げ込んだだけのダイナマイトに対して、ただ躱すだけでなく爆風を計算された無駄のない躱し方、更に煙と目の前に言う奴らを囮にして上から仕掛けてくる。

獄寺はそれを、身を屈めて回転して躱した。

俗に言う緊急回避というやつだ。

そこから建物の隙間に逃げ込んで粘着物で角にダイナマイトをくっつけて爆破して道を封じた。

 

「ふぅ~ようやく、撒けたか?」

 

と、思ったら次の曲がり角で両側からまた来た。

 

「またかよ!?おい!!」

 

右も左も行けなくなりましたので真ん中を突っ切った。

細い道の為にあの大所帯は二列にまで絞れたのはよかった。

このまま振り切れたら楽なのだがそううまくはいかない。

編み笠の一人が短刀を投げてきた。

その狙いは獄寺の足、足にダメージを与えて速度を落とそうという狙いだ。

一本目は腿を掠めた。

 

「これ以上当たるかよ、ミニボム。」

 

だが投げる様子を見た時に、すぐ様火薬量の少ない小さなダイナマイトを背中に当てて爆風で加速する。

それと同時に爆風で短刀を吹き飛ばした。

そしてまた角まで来たので道なりに曲がったのだが、

 

「なっ!?ここで行き止まりかよ!!」

 

右も左も行き止まり前には自分よりも数メートル高い壁があった。

手や足を引っ掛けられる所も見当たらない。

ジャンプして飛び越えられそうだがさっきのが、チクチクと来て難しい。

来た道を戻ろうと思ったが、その道からはさっきの編み笠達がいる‥‥と言うよりもう目の前にいた。

 

「追い詰めたぞ、小僧」

 

「あぁ~クソッタレが!!」

 

獄寺は今の状況を理解した。

後ろは壁、正面からは撒いても、撒いてもキリがない気味が悪い編み笠集団たち。

もはや、ここはもう笑うしかない。

この絶望的な状況に「へへへ‥‥」と力のない笑いが口からこぼれてきた。

壁を背にして膝を崩して座り込んだ。

これが絶望‥‥

これが死と言う感覚なのかと否が応でも実感させられる。

 

「一応聞くぜ、見逃すって選択肢はあるか?」

 

相手からは当然、返事は返ってこなかった。

代わりに真正面の奴が黙って手を上げる。

殺る合図だ。

ダッと連中は動き出し獄寺の命を狩りに来た。

 

 

 

 

シャン

 

 

 

 

壁の上からも、刃をむき出しにして獄寺の死角となっている壁の向こう側からの刺客達、奴らはどんな獲物にも油断はしない。

『窮鼠猫を噛む』という言葉がある。

追い詰められた獲物こそ真に油断してはならない瞬間だ。

これは狩りの鉄則であり、これを疎かにしている者なんてのは半人前も良いところだ。

彼らは正しかった‥‥仕留めるための算段、獄寺の追いつめ方、ジワジワと追い詰めて心を削り取るやり方、逃げても、逃げても逃げきれないというのを頭に染み込ませて諦めさせる。

そして最後の最後まで手を抜かない。

 

間違いはなかった、なかったのだがまだ甘い。

ボンゴレファミリー嵐の守護者の命を取るものとしてはこれだけじゃ足りない。

 

「ロケットボム!」

 

獄寺は真上と正面の敵を爆破させた。

獄寺自身は身を低くして自分の頭を守った。

それから爆風が消えないうちに壁を越えた。

 

「エアーボム」

 

沢田綱吉のファミリーが命を諦めるなんてことは無い。

特に山本や獄寺がツナの悲しむことは絶対にしない。

たとえ勝利のためであっても仲間の命を犠牲にした勝利を望まない。だから彼らはどんな状況でも命を優先して行動する。

編み笠集団、奈落達の落ち度は彼らの命に対する執念を侮ったことだ。

 

「くそっ、足をやったのはミスったな‥‥」

 

服の袖を引きちぎり傷に巻く。

 

「こいつら一体何だったんだ?‥‥どうみても、これまでの連中とは違うぞ‥‥」

 

これまでの相手‥‥ガジェットやスカリエッティ側の刺客ではない。

 

「どうやら流れが変わったらしいな、早く10代目に合流しねぇと、こりゃあ、取返しのつかないことになりそうだぜ。」

 

まずは仲間と合流して情報の共有をする。

そしてツナかはやてにどうするかの方針を決めてもらう。

今の状況で単独行動は自殺行為だ。

相手から狙ってくださいっていう札をぶら下げている様なものだ。

魔力を感じることは出来ないが、炎エネルギーなら感じられる。

ツナはわからないが山本なら結構近い。

ティアナやスバル、神楽や新八はどうしているのだろうか?

魔導師は魔力を感じることが出来るっぽいが、普通の人間である神楽たちにはそれがない。

 

「まずは山本と合流して、そんで神楽たちを迎えに‥‥」

 

壁に体を預けながら歩く。

思った以上にダメージが体に蓄積しているらしい。

アドレナリンがまだ流れているが、体自体は休みたいと言っているみたいで足が鉄でもぶら下げているかのように重い。

だけど休むなんてできるわけが無い。

今も仲間たちは戦っているのだ。

傷つき血を流して顔を歪まして戦っているかもしれない。

そう思うだけで彼のプライドが彼を奮い立たせる。

動かないなら痛覚を刺激して体を起こす。

 

 

 

起きろ!!まだ戦いは終わっていない!!

まだまだこれからだへばっている暇なんてねぇぞ!!

 

 

 

自分の身体に鞭を打ち、渇を入れて、獄寺はまた戦場へ向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ‥‥っ!?マジかよ!?」

 

路地を出るとそこにはまた絶望が広がっていた。

 

鴉の目はまだ獲物を見ていた。

まだ奴らの視野からは外れていなかった。鴉の視野とても広くどこまでも遠くを見据えている。羽は悠々と空を飛び鳴き声を響かせる。

 

「おい、その恰好‥‥今、ミッドチルダでその服装が流行っている‥‥って訳じゃないよな?」

 

編み笠と黒服に錫杖の仕込み刀の集団が右を見ても左を見ても奴らはいた。

自分は完全に包囲されている。

一体何人位いるんだ?コイツ等‥‥ただの戦場に潜り込んだ第三の勢力にしては大きすぎる。

こんな連中が兵隊として存在している組織があるのなら既にはやてが目を付けないはずがない。

 

「ふぅ、考えるのは一先ず後だ。とりあえず果てな!2倍ボム」

 

あいつらの事はこの危機を脱してから考えるとして、どうやって抜けようか?

右中心に突破口を開こうとする。

こんな状況、一人で切り抜けられるわけが無い。

ならば何をする?

どうやって生き残る?

術や策はあるのか?

そいつは実行可能なのか?

成功の可能性は低い、成功しても生存率は限りなく低い。

 

「でもまぁ、それしか方法がねぇからなぁ‥‥やってやらぁ!」

 

その方法とは、山本との合流である。

山本の炎の属性である雨属性には沈静させる特性がある。

以前、代理戦争の序盤でやったことだが、その効果でアイツらの足を鈍らせてその間に逃げ切るか、もしくはもう一手をうつ。

 

「ちっ、瓜形態変化!」

 

スモーキンボムはダイナマイト装備から装備を変えた。

 

「Gのアーチェリー。」

 

獄寺は矢を構えながら飛び上がる。

電柱、ビルの窓から隣のビルを駆け抜ける。

身の軽さを活かしながら空へ登る。

だが八咫烏の本当の狩場は地上じゃない空だ。

鴉の一部が獄寺よりも更に上から奇襲を仕掛けてくる。

 

「チクショ!!」

 

獄寺のGのアーチェリーの機能は、弦を長く引けば引くほど炎が溜まり威力が増す。

獄寺は奴らの上をとると同時に時間を稼いでいた。

ここで迎え撃つために矢を放っては溜めた力がなくなってしまう。

だがここで何もせずに切り抜けられるとは思わない。

 

「フレイム「クロスファイアーシュート!!」」

 

八発の魔法弾が獄寺を襲っていた鴉たちをなぎ倒した。

 

「獄寺ァ!」

 

気を失った鴉たちを踏み台にして、獄寺は矢を放つ体制を整えた。

深紅の矢を下に向け炎を迸らせる。

 

「嵐+雷」

 

バチバチとまるで帯電しているかのような炎の矢を獄寺は今、放った。

 

「フレイムサンダーアロー!!」

 

嵐からの雷の鉄槌は地面を裂き、邪魔な鴉たちを一掃した。

獄寺が地面に足を着いた時にはあんなに居た鴉たちは一切なく、直ぐに煙から二つの影が飛び出した。

鴉たちはそれを見逃さずに執念深く追いかける。

煙で何も見えないかそれでも足並みを崩すことは無く影を追いかけて行った。

 

「行ったかな?」

 

「もう少し、様子を見ようぜ。」

 

今、獄寺は廃墟の中に入っている。

獄寺は大技を放ったあと直ぐに手を引っ張られて建物内に引きずり込まれた。

奴らが獄寺たちだと思ったのは、幻覚による影である。

獄寺の仲間でこんなことが出来る人は一人しかいない。

 

「それにしても間一髪だったわね。」

 

「‥‥まっ、助かった。今回は素直に礼を言うぜ、ティアナ。」

 

「あいつらが魔導師じゃないおかげね。バレずに済んだわ。」

 

ティアナの使うフェイク・シルエットは魔力で紡がれた幻影に過ぎない。

その為に幻覚に強いものや戦いの経験が多い者にはあまり騙すことは出来ない。

だが、奈落には効いたようだ。

彼らは殺しのプロであっても魔力というものに触れたことがない。

その為に今回はティアナの幻術に引っ掛かったのだろう。

 

「まぁ、そんなことは後回しにして、お礼の前に『ごめん』は?」

 

「は?」

 

獄寺はティアナの言うことが理解できなかった。

何故、自分はティアナに礼を言うのは兎も角、謝らなければならないのだろうか?

その理由をティアナはちゃんと話す。

 

「貴方、今頃病院にいるはずでしょう?‥‥なんでこんな所に?い・る・の・か・な?‥かな?」

 

命の危険はまだ脱してなかった。

この世には怒らせてはいけない者たちがいる。

それは男性と女性の異性間の関係が築かれた時代からある常識である。

 

女だ!!

男は女の怒りには勝てない。

 

「ま、まぁ、そんなことは置いて‥「置けると思っているの?」‥‥ど、どうすればいいんだよ?」

 

「まぁ、アンタの言う通り、今はいいわ。後で引きずっても病院に縛り付けるから。罰はその時にしてもらうから、せいぜい覚悟しておきなさい」

 

「わーったよ。んで状況は?」

 

「とりあえず、スバルたちと合流しましょう。山本もそこに一緒にいるわ。ツナとフェイトさんはまだ分からずじまいで、そっちにはエリオがフリードで向かっている。炎真はゆりかごに侵入して、なのはさんたちを迎えに行っているわ。」

 

「あの、編み笠たちは一体なんだ?あのサイコ野郎の仲間か?」

 

「知らないわ。なにせ、突然現れたんだもの。ただはやてさんが奴らの拠点っぽい船に向かったらしいけど‥‥」

 

「たった一人でかっ!?」

 

「えぇ。」

 

「なんつぅ無謀な‥‥」

 

ここまであの編み笠連中とやりあってきた獄寺だからこそ、連中の身体能力のレベルがすぐれていることを知っている。

非魔導師ながらも連中の戦闘能力はかなり高い。

そんな奴らの本拠地へ一人で行くなんて、いくらはやてが凄腕の魔導師でも無茶である。

 

「はやてさんのことだから何か作戦があるのだと思うけど‥‥」

 

「‥‥んで、お前はこれからどうすんだよ。」

 

「シグナムさんがまずは全員の合流を優先して欲しいって言っていた。それでその後にシャマルさんとザフィーラさんがいる医務拠点を確保してそこをメイン拠点に移すらしいわ。」

 

「俺は10代目を迎えに行くぞ。」

 

「わかっていたけど、やっぱりツナを優先するのね」

 

「ったりめぇだ。俺は10代目の右腕だからな!」

 

「ツナやフェイトさんたちはエリオが迎えに行ったわ。獄寺は私とこのまま山本たちと合流してザフィーラさんの元に行くの。」

 

「俺たちとテメェらとの協定は10代目が結んだもの。俺は10代目が無事に戻るっつうから10代目を守る為にテメェらに力を貸してんだ。つまり俺は10代目の為に動いている。10代目が危ねぇなら10代目を優先して助けに行く!」

 

「ダメよ。今の状況で独断行動は許さないわ!!第一危険よ!!私が来なかったら、貴方、あの編み笠連中に殺されていたのよ!?」

 

「なんで俺がテメェらの指示に従わねぇといけねぇんだよ!?俺は10代目の右腕だ!ティアナ、何か勘違いしていると思うから言うが、俺も10代目も山本も管理局に所属しているわけじゃない。俺たちはボンゴレファミリーだ!!ここまでの事態までなったんなら、俺は10代目の為に動くぞ!!」

 

獄寺は個人の感情を無視して言うのなら、あくまで元の世界に戻る為にツナがこの組織に力を貸すと言ったから獄寺はここで戦っている。

お互い利の上で関係を結んだみたいなものなのだ。

確かに個人的にはここに居心地の良さを感じている。ティアナやスバルだけではない銀時や神楽だって同じ鎌の飯を食べた仲って言われる位心を許している。

でも、それでも自分達のボスを助けられるかもしれないのに、助けに行かないなど右腕を名乗る身としてはプライドから許されない行いなのである。

 

「獄寺、貴方の気持ちは私もわかっているつもりよ。だから私が貴方を助けに来たんだから。貴方たちがあくまで民間協力者だってこともわかっている。だから信じて私たちが貴方たちを必ず元の世界に帰すから。」

 

ティアナは立ち上がりそして獄寺の手を引っ張った。

 

「私たちは仲間でしょう?機動六課は貴方たちを見捨てたりしない。はやてさんもシグナムさんも皆、誰一人かけることなく生き延びる為に戦っているのよ。」

 

「あぁ、クソ~‥‥」

 

獄寺は自分の髪をわしゃわしゃと乱暴に掻き乱した。

今、獄寺は認めたのだ。

ティアナの言ったことが正しいと10代目もそうすると、自分が焦ってティアナよりも近くのことしか見えていなかったのだと。

 

「訳分からん事態のせいで焦っていた。んで、スバルたちはどこにいやがる?さっさと合流して、その後、俺は10代目のところに行くからな」

 

「少し離れているから走るわよ。行ける?」

 

「なめんなよ、これぐらいどうってことねぇよ。」

 

「そう。じゃあ、行くわよ。足、引っ張らないでよね。」

 

「それはこっちのセリフだっつぅの」

 

獄寺とティアナはひとまず、スバルたちと合流するため、戦場となっている市街地を駆け出した。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

標的91 明日の方向

お久しぶりです。
更新が遅くなり申し訳ありません。
何だかんだとグダグダしていたら平成が終わりもう令和になっているとは...しかも令和2年であと1ヶ月で今年もも終えるなんて
いや〜時間が経つのはあっという間なのですなぁ。
というわけで更新です。


 

 

「うっ‥‥こ、ここは‥‥?」

 

目が覚めると私が見たのは、見知らぬ天井だった。

 

どうやら、ここはどうやらドクターの研究所じゃない様だ。

 

それに他のナンバーズたちの姿もない。

 

寝起きは意識がはっきりしてないため、眠る前の事がぼんやりとしている。

 

まるで靄がかかっているみたいだ。

 

それになんだか体がとても重い。

 

全身が鉛みたいで手を動かすのも一苦労だ。

 

いったい私はどうしたんだろう。

 

あぁそうだ‥‥。

 

思い出した。

 

私は負けたんだ。

 

身に余る力を無理やり自分のものにしてもなお負けてしまった。

 

しかも、魔導師ではない人間相手に‥‥

 

また負けてしまったんだ。

 

負けてしまった‥‥でも、不思議と不快感はない気がする。

 

最初負けた時はあんなにも悔しくて憤慨したのに今のこの気持ちはなんだろう‥‥?

 

叫んでぶつけて、怒って、そして泣いて受け止めてもらった。

 

そしてその時の事を思い出すと胸がざわつく。

 

本当になんなのだ?私は戦闘機人だ‥‥。

 

戦う為の人型の兵器で、この体も心もドクター道具として作られた計画の礎となるために生きてきた。

 

それなのにあいつは私の事を 『人』 と言った‥‥兵器である筈の私を‥‥

 

あいつに向けた怒りも、作られた体も私がどういう存在か知ってもなおあいつは私をただの 『人』 と言ったんだ。

 

そして彼の持つ剣で私の怒りを真っ二つにした。

 

そのせいで今の私はわからない。

 

私自身の事なのに‥‥

 

私はどう在りたいんだ?

 

人なの?それとも兵器である戦闘機人なの?

 

戦う以外に一体どんな選択肢があるというの?

 

この私に‥‥

 

人なのか兵器なのか存在があやふやな私に‥‥

 

「おっ、起きたのか?」

 

そんな時、部屋に私を負かしたあの男‥‥山本武が入ってきた。

 

相変わらずのほほんとした顔で私を見てくる。

 

「.....」

 

「ん?どうした?どこか具合でも悪いのか?」

 

抜けているのか?

 

それともこれがこの男の素なのか?

 

私にはわからないがさっきまで殺し合いをしていた相手にかける言葉ではない事ぐらい私でもわかる。

 

紅桜が私の一部から離れて少し自分を取り戻しているけど、こういう風に見られたら私はどうすればいいかわからない。

 

怒れば良いのか?

 

それとも悔しがればいいのか?

 

「別に‥‥」

 

どういう態度を取ればいいのか分からなかったので、私は素っ気なく彼から顔をそむけた。

 

「そっか、何かあんなら言ってくれよ。一応絶対安静ってことらしいからな」

 

「治療してくれたの?」

 

「俺がしたんじゃないけどな」

 

「私を何でここに連れてきたの?」

 

「だって怪我酷かったし」

 

「私は貴方たちの敵よ」

 

「あぁ知っている」

 

「なら何故?」

 

「怪我をしている奴はほっとけねぇよ。うちのボスはそういう奴だからな。だから俺もそうしているだけだ。」

 

「ふん、甘いわね」

 

「あぁよく言われるよ」

 

「‥‥貴方はよくバカって言われるでしょう?」

 

「おう!」

 

「何がそんなに嬉しいのかよくわからないけど貴方考えなかったの?」

 

「ん?」

 

恍けているのか?

 

それともふざけているのか?

 

山本は首を傾げて私を見る。

 

だけどすぐに彼の目付きが変わった。

 

なぜなら少しだけ私が殺気を飛ばしたからだ。

 

この殺気に気がつけると言うのは流石と言うべきだが、やっぱり何だかんだ言ってまだ私を警戒している。

 

ここにいるのは私と彼だけ、この状況も軟禁と考えるのが妥当か?

 

あくまで傷つけないようにしているのは、私が数少ない希少な戦闘機人の素体なのだから‥‥研究材料の一つだからだろうか?

 

「私は貴方たちと敵対している者‥戦える限り今後も戦うかもしれないのよ」

 

心中で私は思う。

 

多分、目が覚めて彼を見た時から彼が私を助けた理由なんてのはわかっていた。

 

私が頭の中でごちゃごちゃ考えるよりシンプルな理由で私を助けたんだろう。

 

でもそれを私自身が素直に受け入れられなかった。

 

この私を利用したいからだ。

 

作られてから今までこの私を作ってくれたドクターの目的の遂行を使命として、今まで生きてきた。

 

私が生きるのには何か理由がいるんだ。

 

だってこの身は利用されるためだけの道具なんだから‥‥

 

「はぁ~‥‥そりゃ!」

 

バチン!

 

私は急に目の前に立った山本に額を指ではじかれた。

 

地味に痛い。

 

「痛い」

 

ジト目で彼を睨む。

 

「はっはっはっ、俺のデコピンは結構効くからな」

 

にししと笑顔を向けてくるがなぜここで笑顔を浮かべるのかが私にはよくわからなかった。

 

「どうだ、これでごちゃついた頭の中少しはすっきりしたか?」

 

「えっ?」

 

「難しく考えすぎたってあんまりいい事ねぇよ。負けた直後で踏ん切りがついたかもしれないけど、お前みたいなのは少しリラックスしている方がいいと思うぞ」

 

「ずいぶんと簡単に言ってくれるわね。そんな風に出来れば苦労はないわよ」

 

「ん?そんなに難しいことか?」

 

「言ったでしょう。私は道具として‥兵器として産まれて生きてきた。私に心はなく意思は他人に従属している。だから私にはわからない、私はどうするべきなのか?どう生きればいいのか?」

 

「‥‥」

 

情けない、その一言が私の頭を過ぎる。

 

これではまるで幼い子供のようなものだ。

 

自分の事なのに自分で決めることも出来ない。

 

そう言う面では私は機械なのかもしれない。

 

でも、私の葛藤する心はそれすらも受け入れられないようだ。

 

自分で自覚しても、こうなった原因を作り上げ彼のせいにして、敵である彼に決定を委ねようとしている。

 

「‥一つ聞いていいか?」

 

「なに?」

 

「今、生きたいって思うか?」

 

「‥‥わからないわ」

 

ただ今少しふと思った。

 

だけどこれを言葉にしてしまっていいだろうか?

 

道具としての言葉ならまだしも、だけどこの言葉は今まで私の中にいなかった私の言葉。

 

それを言うのが少し怖い。

 

だって‥‥

 

「‥‥死にたくないって‥‥思っている」

 

「ふっ、そっか」

 

私は自分の中に悲しいって気持ちがあるのを知った。

 

死への恐怖がある事を知った。

 

私は涙を流せることがわかった。

 

私にも優しく接してくれる人がいることがわかった。

 

道具にはいらない気遣いで道具としてでは見つけられない世界。

 

でも何も感じない訳では無い。

 

暖かいのは心地がいいし、優しいのは存外悪くないってのがわかった。

 

わかってしまったのに、わかった直後で死ぬなんて勿体ない。

 

今はそう思う。

 

「わかった。少し待ってな、もう少し落ち着いたらゆっくり話そうぜ」

 

「戦いはまだ続いていたの?」

 

「あぁ」

 

今一瞬彼の雰囲気が変わった。

 

彼の脳裏が戦いという言葉で、普段の彼から戦闘態勢の彼に切り替わったんだろう。

 

そしてそれだけで戦場の情景がわかる。

 

まだ彼らにとって油断ならない状況ということ、それはこちら側の優勢というふうに一見見ることが出来るが、果たしてそれはどうだろうか。

 

「外の様子を聞いていい?」

 

「ん?もう少し待っていてくれ‥‥ん?今、連絡が入った」

 

私達戦闘機人は、ドクターを含めたナンバーズ間にある念波が繋がっているお互いの位置や連絡のやり取り等他にもいろいろとできることがあるが今重要なのは生存しているかどうかだ。

 

ノーヴェやディエチ達はすぐに感じられたのだが、肝心のドクターを感じることができなかった。

 

ドクターを感じられない‥‥それはナンバーズにとって一番深刻なのは問題だ。

 

私達は主人あってこそ存在して、主人を守り主人に変わり戦う。

 

私達の誇りと言ってもいい。

 

その存在が今は感じられない。

 

ノーヴェ達ならもう少し詳しく知っているのだろうか?

 

少し聞いてよう。

 

幸い彼も連絡中だ。

 

私が目を瞑り念話にふけていても気が付かないだろう。

 

『ノーヴェ』

 

『...』

 

『ノーヴェ!!』

 

『ん?その声はディードか!?』

 

『えぇ‥‥』

 

『念話が通じるってことは、どうやら生きてんだな!?』

 

『えぇ‥‥体が少し重たく感じけど特に問題は無い』

 

『そっか、今どこにいる?』

 

『‥‥敵に負けて捕虜にされているところ』

 

『敵って!?どんなやつだ!?』

 

ノーヴェが慌てた様子で聞いてくる。

 

『管理局よ。他に誰かいるの?』

 

私達は管理局と戦って来たのだから、捕虜になるとしたら、管理局以外どこの勢力に捕虜となると言うのだろうか?

 

『そっか‥‥管理局の連中か?ならまだよかった』

 

ノーヴェの事だから、『あれだけ大口叩いたくせに管理局の捕虜になるなんて情けない奴だ』 くらいの罵倒は覚悟していたが、何故かノーヴェはホッとした様な感じだ。

 

『その言い方、戦場では他の敵が現れたの?』

 

『あぁ、よくわかんねぇ編み笠集団が突如蛆虫のようにわいてきてな』

 

『ナンバーズは皆戦っているの?』

 

『皆ってわけじゃねぇな。つーか戦っているのは私ぐらいだし』

 

『皆は?』

 

『ナンバーズの死亡報告は一人‥‥ドゥーエ姉だが、少なくともチンク姉やウェンディ、オットー、ディエチは管理局と戦って負けてその後拘束された』

 

『そう、では貴女は今後どうするの?ナンバーズの皆を取り返すために管理局戦うつもり?』

 

『あぁ?急にどうしたんだ?悪いが今は少し先の与太話に付き合えねぇんだが』

 

『答えて、今貴女は一人で戦っているの?』

 

『......』

 

『そう、今聞いた情報を纏めてまさかとは思ったけど』

 

『私は今管理局に手を貸している。いや助けてもらっている』

 

『意外だったわね。貴方が管理局に手を貸すなんて』

 

『私自身もそう思う』

 

『ドクターを裏切る気?』

 

『そう捉えちまうよな』

 

『貴方の口から聞かせて、私達の創造主を裏切るの?』

 

『あぁ、今後は私の意思で戦っている』

 

『そう、わかった』

 

『なんだ?私を殺しにくるか?裏切り者の私を‥‥』

 

『......いえ』

 

『は?』

 

『裏切り者を始末なんてそんなベタな展開があるとでも?』

 

『そりゃあ、まぁ‥‥だって管理局と敵対していたドクターに与していたんだし。そういうのが暗黙のルールなんじゃねぇかと‥‥』

 

『嫌よ、貴女を殺すなんて絶対』

 

『ディード‥‥お前‥‥』

 

『めんどくさそうだし』

 

『あぁ!?』

 

『それに、私も裏切り者だし』

 

『は?ってお前まさか!?』

 

『ねぇ、ノーヴェ。私達は人間だと思う?』

 

『ん~どうだろうなぁ~人間とは根本的に生まれは違うし、かと言って私達のベースは人間の遺伝子だ』

 

『私は少し揺れている。武器としての存在のはずなのに、私自身がそれを拒み始めている人間がいや人に憧れを抱き始めている‥‥のかも‥‥』

 

『あっそ、まぁ今は詳しく聞かねぇことにする。こっちは今、忙しいんでな』

 

『貴女こそどうなの?管理局に負けて改心したんでしょう?』

 

『はぁ!?誰が改心なんかするかよ!?お前はどうだか知らないが私はノーヴェだ!!ナンバーズの戦闘機人だし、多分今後も戦う事はやめらんねぇだろうが私は私だ。人であり戦闘機人でもある今までもこれからもな‥‥』

 

『そういう所は敵わないな』

 

『お前はどうすんだ?もう少し休むのか?』

 

『いいえ』

 

『そうか‥‥ディード、死ぬんじゃねぇぞ』

 

『貴女ね、ノーヴェ‥‥』

 

念話はここまで、ノーヴェのおかげで少し迷いが晴れた気がする。

 

気が楽になるとさっきよりも体が軽い感じがする。

 

それにだいぶ休んだから気力も回復した。

 

「ねぇ‥‥」

 

「おっ、どうした?」

 

「連絡はすんだのかしら?」

 

「あぁ、すまねぁが暫く俺はここを離れなきゃならねぇ。悪ぃな、俺がいなくても大人しくしといてくれよ」

 

「謝罪はいらない。でもその代わりお願いがある」

 

「お願い?それも悪いけど後にして‥‥」

 

「いいえ、今じゃないとだめ、というか意味がないわ」

 

「‥‥OK、何が願いなんだ?」

 

「私を貴方と一緒に戦場に連れて行って‥‥山本武」

 

ディードの目を見る山本。

 

その時のディードの目はついさっき、戦ってきた時と違い、まだ迷いがあるものの湧きだした清水のように澄んでいた。

 

 

~said銀時~

 

 

剣客はその存在自体が剝きだしの刃だ。

 

人の中に紛れていようともその独特な雰囲気を隠す鞘はなく、触れてしまった全てを断ち切り、侍となったものは主人のもと一本の刀として粉骨砕身の思いで折れるまで主人の敵を切り裂いていく。

 

だが今、ここにいる二本の刀は守るべき主人を失い納めてくれる者が居なくなった刀はその刀身を晒し続けた。

 

方や失った物の大きさに心が押しつぶされてしまい、その憎しみの矛先が一本の刀ではどうしようもない所に向いてしまった。

 

しかし、その刀はただ闇雲にぶつかり粉々に粉砕したわけでも‥ましてや諦めもしなかった。

 

刀は待った。

 

どんな物にも脆いところがある。刀は見つかるまで待ち続けた。

 

ただ待ち続けただけではなくその刀身を鍛え続けて、いつか届くであろう心の臓をいつでも貫けるようにするために。

 

方や心を失い拠り所がなくなってしまい、持ち主を失った刀はふらふらと世界を彷徨った。

 

雨に降られ風に吹かれ刀身は錆び付き斬れる物も斬れなくなった。

 

刃は零れ落ちて錆だらけになり果ててしまいそれでもこの世界にい続けた。

 

天地振動雷鳴が如く天災のような困難に巻き込まれても折れることのなかったその刀は誰もが認めるこの世で最も硬い鉄となっていた。

 

ボロボロの刃は敵を前にして、錆だらけの峰は常に仲間の前に立っていた。

 

今その二本の刀はぶつかり合っている。

 

狂気と信念鍛えてくれた思いは違うが、何者にも負けないまでとなった刀同士で粉々になるまでぶつかり合うつもりだ。

 

折れては行けない。

 

折れるわけにはいかない。

 

例えそれでもまた大事なものを失うことになったとしても、もう彼らは止まることがないだろう。

 

既に覚悟は決まっている。あの船の上でもう戻らないとわかったから、彼は自分がやるべき事を悟ったのだ。

 

 

銀時と高杉がぶつかり合っているのは、ゆりかごのとある一室、銀時がヴィヴィオと戦った部屋よりは一回り小さく彼らがこの部屋にたどり着いた道しか帰り道がない。

 

床は所々血が飛び散り赤く染まり、血が溜まっている所は刀で斬られた痛々しい跡が残っている。

 

この空間は完全に支配されていた。

 

どうやっても第三者が介入できる余地が見当たらず、この死闘は例え神であっても止めることはできないだろう。

 

殺気が充満して呼吸をするのも苦しいような空間で銀時と高杉は殺しあっている。

 

もう既に両者血まみれで刀を持つ手も握れるのが不思議なくらい手も斬られた跡がある。

 

見る人が見ればゾッとするだろう。

 

まるでゾンビのようにどれだけダメージを受けても屍のような身体に鞭を打ち相手だけを見て死に物狂いで戦い続けていた。

 

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁァァァ!!」

 

侍の激しい剣戟は美しい火花が飛び散り、高々しく金属音が耳に叩きつけられ、部屋全体に鳴り響いている。

 

この鬼気迫る殺し合いでは守るという行為すらしない。

 

体を貫かれれば貫き返し、足が切られようなら相手の手を切り裂きお互い致命傷と言える傷はいくつもあるなかで命を晒しながら命を奪い合っている。

 

まるで肉にしか目が入っていない獣の様な‥‥いや、獣では手緩い、獣は凶暴ながらも最終的には自らの命を優先して行動するが、彼らは生き抜くなど二の次だ。

 

獣よりも憐れで愚かな哀しい、自分よりも大切だからこそ自分よりも相手の為に命を懸けて戦っている。

 

血で滑り落ちそうな刀をギュッと握りしめて、足に力を注ぎ込んで立ち上がる。

 

曇りそうな視野を振り払って刮目して前の高杉は銀時を‥‥銀時は高過ぎを見続ける。

 

アイツが止まらねぇのに何で先に俺が止まるんだよ。まだやれるまだ戦い続けられる。

 

「銀時ィィィィィィー!!」

 

「高杉ィィー!!」

 

心の叫び声が雄叫びのようにあがる。

 

それと同時に刀同士ぶつかりある。

 

両社拮抗する力で一歩も引かずに押し切ろうとするが刃が相手の心臓を貫くことができない。銀時は高杉よりも早く次の攻撃に移る。

 

刀を引かせて突く。

 

高杉は、自分の刀を縦に持ち、突きを逸らす。

 

逸らされたことにより銀時の攻撃は意味がなくなり突きに威力を与えた勢いが返って銀時を無防備にした。

 

自分を護る刀を引くよりも高杉は自分の腰に差している鞘を銀時の顎を打ち上げる。

 

「ぐぅっ‥‥」

 

「ふひ」

 

銀時の隙を見つけた高杉は犬歯をぎらつかせて笑みを浮かべる。

 

顎は人体の司令塔である脳に一番衝撃を与える部位、そこをとても強く打ってしまったら一般人でも例え訓練された兵士でもぐらついてしまう。

 

だが銀時はこの隙以上の隙を見せることなく反撃をした。

 

すぐさま回し蹴りを腹にきめて洞爺湖を引き足に力を入れて地面を蹴り飛ばして先程以上の突きを繰り出す。

 

ズガガガガアン!ズドーン!!

 

銀時は攻撃で高杉は壁に追いやり激突した。

 

二人の姿を隠すほど大きな土煙が立ちこもる。

 

だが次の瞬間二人の大きな振りかぶる刀の動きで土煙は吹き飛んでまた激しい剣劇が始まった。

 

今不利なのは壁にまで追いやられている高杉の方、刀を振るには力がいる、特に刀の殺し合いでは大きく体を動かさねばならないその為に体を動かせる位の空間が必要だ。

 

銀時は上手く立ちまわる。高杉に窮屈な思いをさせながら、この有利はできるだけ継続させたい。銀時は高杉の剣筋と共に足元にも注意を払う、例えば斬りあいのさなか足が横に抜けようものなら斬りあいの中地面に警告をするように亀裂をつける。

 

「ふ、随分せこい戦いをするようになったなぁ~その目の通り、性根も腐り切ったか?銀時」

 

「はっ、巧妙って言ってほしいもんだぜ」

 

「巧妙何てそんなこと言われるほど頭よくねぇだろう?テメェはよぉ~」

 

相も変わらずの皮肉ヤローだった。

 

ああ言えばこう言う俺達はそんな関係だった。

 

それでお互い喧嘩腰を引かずに拳を出して殴るだの蹴り飛ばすだの同期の攘夷志士たちに随分迷惑をかけた。

 

高杉は昔から変わってない。

 

真っ直ぐだ。

 

一点先の道しか見てねぇ、だからわからない。

 

「おい高杉、お前は何でこの世界に喧嘩を売った?この世界には幕府も天人もねぇ~俺やお前の事情にこの世界には関係はねぇだろう?」

 

「関係ない事はねぇよ。」

 

「何?」

 

「俺をこの世界に送ったのは天導衆の連中だ」

 

「な、何だと?」

 

高杉の告白に銀時は一瞬思考が停止する。

 

天導衆‥‥警察庁、真選組の幹部が知っているように幕府を‥‥いや、自分たちの地球を影から支配している天人の総称‥‥

 

管理局で言うと最高評議会と同じような連中だ。

 

その連中が高杉達をこの世界に送りこんだ?

 

天導衆は異世界ともいえるこのミッドチルダすら地球の様な植民地にするつもりなのだろうか?

 

いや、天導衆と高杉は本来ならば相容れぬ存在の筈だ。

 

ならば、どうやって?

 

どうして、天導衆は高杉をこの世界に送り込んだ?

 

ギギギとなる刀と刀の音がするぐらい拮抗している中、銀時は天導衆と高杉の関係が分からず力が一瞬緩んだ。

 

殺し合いの最中、相手から目をそらしてしまうのは完全な悪手だ。

 

拮抗が破れ、高杉に自身の刀を弾かれまた腹に隙ができた。

 

「殺し合いの最中で、気ィ抜いてんじゃねぇぞ!!銀時ィィィィィィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ブシャァ

 

 

 

 

二匹の凶獣が戦っている部屋に血しぶきが立つ。

 

 

~saidなのは~

 

銀時達が走り去った部屋にはなのはとヴィヴィオがいる。

 

ヴィヴィオは疲労が大きく、なのははこれまでの戦いで大きく負傷してしまいその場から動けずにいた。

 

傷がなければいち早くこの船からヴィヴィオを早めに脱出させたい所だが、この傷のせいで足腰に力が入らずに立てずにいる。

 

その為に今は魔力の回復を待っていた、傷が直ぐにふさぐものではないが魔力は徐々に回復していく。

 

魔力が回復し次第直ぐ飛んで脱出したいのだが

 

「ママ、大丈夫?」

 

「うん大丈夫だよ。」

 

壁に寄りかかる母を純粋に心配する娘。

 

この美しい絆はようやく取り戻せた大切なモノ‥‥とても固くダイヤモンドの様に絢爛なつながりはキャンパスには留めきれない。

 

思いやり、優しさ、一途、純粋他にも様々な温情が詰まっている。

 

「私よりも銀さんが‥‥」

 

「パパが心配?」

 

「えっ?…う、うん。心配だよ」

 

「大丈夫!パパは強いから絶対帰ってくるからさ!!」

 

ヴィヴィオなりの励ましなのだろうが、きっとヴィヴィオはなのは以上にあの銀髪のサムライの事を信じているのだろう。

 

「ありがとう。」

 

なのははヴィヴィオの頭の頭を撫でて、ヴィヴィオは気持ちよさを表す様に目を細めてなのはの手の上に両手を重ねた。

 

ヴィヴィオのこの表情がどれだけなのはと銀時の心にどれだけの癒しになってきた。

 

この笑顔を失いかけた時ある種誓いのようなものを心に建てた。

 

それは自分達の心を照らしてくれる太陽を曇らせないこと、ヴィヴィオには今まで以上の心労をかけさせたくない。

 

だからこそ、心に一つ不安がよぎる。

 

高杉晋助、銀時の旧友であり今死闘をしている人物その人である。

 

新八が言うには昔新八たちの世界で起きた戦争の仲間だったらしいのだが、彼と対峙した時の銀時には明らかにそれ以上を感じさせる何かがある気がした。

 

銀時は過去の事を話そうとしない。

 

それとなく聞いてみようとしたのだが簡単にはぐらかされしまった。

 

多分彼が話したくない過去に高杉が深く介入しているのだと今は思う。

 

坂田銀時と高杉晋助の間に一体何があったかをなのはは知らない。

 

高杉の事もよく知らないが銀時という人物ならよく知っている。

 

銀時は性根が曲がっていて、いつもけだるげで、それでいて何事にもやる気のない人だけど、周りをよく見てフォローに回り誰かを気遣ったりもする。

 

普段は死んだ魚のような目をしているくせに何でそんなに人のことがよくわかるのか正確に言うと人の心の奥を剝き出しにして本心を露わにさせる。

 

それでいて何より優しいのだ。本人に言えば速攻で否定しそうだが、彼は本心から話したことなら、その人の助けになるような事をする。

 

話を聞いて寄り添って一緒に歩いてその人が呆れるぐらい彼は寄り添ってしまう性質がある。

 

その点が銀時の美点でなのはが惹かれた一つであり今回ではそれが裏目に出そうなのだ。

 

高杉の過去もそして過去から募った恨みも銀時は理解しているのだろう、だからこそ1人で彼はその全てを受け止めて応えようとしかねない。自分の命も問わずに...

 

(銀さん...無事でいてね。)

 

 

~side銀時~

 

銀時からできた一瞬の隙をついての高杉の突き‥‥体を貫く威力を纏った突き。

 

あまりの威力に銀時は壁まで衝突して土煙が立ち込める。

 

「ぐぐぐっ‥‥」

 

「ふふ、はは。」

 

これには、銀時も致命傷を受けたと思ったが銀時は既のところで高杉の刀を握りしめて内臓までは届かなかった。

 

たがその傷からはどくどくと血が流れ落ちて高杉の刀にまで侵食していた。

 

銀時は歯を食いしばりながら痛みに耐えて呻き声のように高杉に先程の事を聞いた。

 

「うぅ、高杉...何で天導衆がお前をここに‥‥?」

 

「ここに来る前に幕府のある拠点を潰しに行ってなぁ、そいつは天導衆も関わっての極秘実験場。春雨のコネを使っても何の実験場かは知ることができなくってな。表向きは小規模な武器量産工場だからその施設とその武器だったんだがな。」

 

高杉がそこで見たのは明らかに小規模というには必要以上の設備と莫大な実験データを含んでいたコンピューターそこには攘夷戦争前からそこが稼働していたらしく、長い間あることについて研究していた。

 

「今地球にあるターミナルはその過程で産まれたってのも書いてあったな。」

 

「ターミナルが!?」

 

ターミナルとは地球の宇宙交易の港のようなものだ。

 

地球人と天人の繋がりを深くして侍達から誇りも名誉も奪い去った、まさに攘夷志士にとって敗戦の象徴であるターミナル。

 

ターミナルを簡単に説明すると莫大のエネルギーで船を宇宙に飛ばす施設である。

 

宇宙から飛来した船もここを目印にして地球に着陸をする。

 

 

ただそれだけの施設だ。

 

 

「教えといてやるよ、銀時。重要なのは転送。奴ら天導衆は地球に来る前から次元転移について研究をしていて今奴らはその技術を完成させた。わかるか銀時奴らの計画は今始まった。」

 

「高杉、テメェ何でそれを俺に言った?お前はどこを見てんだ!?どこに剣を向けてんだ!?」

 

「ふ、何言ってんだ?俺の眼前に映ってんのはあの時から何一つ変わっていねぇよ。」

 

高杉晋助は虚ろな目で過去を見ていた。

 

「鬼兵隊がどうなったのかもわかんねぇ。俺はこうして生きているが奴らはもう死んじまっているかもしれねぇ。不甲斐ねぇ大将のせいで俺が踏み越えた屍の一つになっているかもしれねぇ。けど絶対犬死にはさせない。あいつらはいつまでもどこでも俺の為に尽くしてくれた、なら俺は‥‥」

 

目は一つ閉じたが耳はよく聞こえる。

 

世界は勝ち組共のいいように作られている。

 

負け犬たちは媚びるか死ぬかの選択しかない、そんなの嫌だ!

 

惨めな選択しかできない世界は間違っている。

 

 

「奴らの叫びを届かせる!!」

 

勝者よ!!聞け!!敗者の絶叫を!!

 

負け犬の遠吠えを!!

 

お前たちの作り上げた世界には綻びがある。

 

その綻びに目を向けないからお前達は崩れ落ちるんだ。

 

「俺はなぁ~ただ壊すだけだ。この腐った世界を‥‥幕府も天人も異世界も全てだ!!」

 

高杉晋助とは無念の上に立つ英雄、空虚な十年間でも彼が失った物は埋まることはなく肥大に彼の喪失感は狂気を宿した。

 

そんな彼の元に集まったのが世の中で散りばめられた暴力の残骸、残骸は一つに集まり統制を得て、鬼となった腐った者ども穿つ鬼どもの集団鬼兵隊。

 

どこにいてもどんな世界でも高杉晋助は変わらない。

 

腐ったものをその刀でたたっ斬り、世界の全てを崩すまで彼は止まらない。

 

宇宙一のはみ出しもの彼は、同じはみ出し者を従えて世界に喧嘩を売った。

 

 

「どんな世界でも変わんねぇ根性の曲がったはみ出し者はいるもんだ。それは腐りきった権力者がきったねぇ尻で座ってやがるからだ。スカリエッティ、シノビ、神威、白蘭こいつらと共に俺は全てを討つ。邪魔する奴らは全員叩っ斬ってやる!」

 

そうして高杉は、鞘を引っ張り銀時の顎を叩き上げる。

 

ダメージに怯んだ銀時から高杉は自分の刀を引き抜き直ぐに首元を狙う。

 

キン!

 

だがこれ以上は銀時も殺らせない。

 

銀時は洞爺湖で受け止めて、そのまま前進して高杉の目の前にまで走った。

 

「!?」

 

「ドオリャァァァアァ!!」

 

激しい勢いで、高杉に頭突きをかます銀時。

 

銀時の自慢の石頭は高杉の額から血を流させる。

 

「うぅ」

 

そのまま、銀時は高杉の腹を蹴り飛ばした。

 

「ぶほぉ!」

 

腹にめり込む威力の蹴りにもなんとか踏ん張りを聞かせて膝をつかずにいたのだが、威力を殺しきると逆に三歩後退り足から力がぬけたのか床に倒れ込んだ。

 

これは銀時には大きなチャンス。

 

これ程大きな隙を高杉は今後見せるのか、否ダメージが溜まれば溜まるほどアドレナリンを溢れ出させて激しい興奮状態になり、時間が経てば経つほど高杉晋助という男は厄介になるだろう。

 

今でも痛覚が通っているか微妙なラインなのにさらに時間が経てば本当に死体にならなければ彼は止まらない。

 

今この機こそ最大のチャンスなのだ。

 

「ぶふぉ。」

 

だけどそれは無理だった。

 

銀時もダメージが足にまで来ていたのか膝をついて血を吐き出す。

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥」

 

激しい息遣い、酸素を取り込むのを一苦労な状態だ。

 

洞爺湖を杖のようにして体を支えながらどうにか立ち上がろうと力を再び込める。

 

「銀時」

 

「高杉ィ。」

 

血だらけで焦点の合ってない瞳をした二人。

 

それでも何故だろう。彼らの目はまるで獰猛で腹をすかした肉食獣ですら気圧されそうなぐらいの威圧感を放っていた。

 

そんな時、銀時はフッと口元が緩む。

 

「高杉、テメェは変わらねぇなぁ~だが、納得はした。お前が何で胡散臭い科学者どもと手を組んでこの世界で暴れているのは何も血迷ったわけじゃなかったんだな。」

 

高杉のこっちの世界での所業、前の世界ならば銀時にも思う所があり、互いの道を進み続けて筋がまかり通らなければその時は命をかけて戦おうと思っていた。

 

この世界での高杉の行いにはただ子供のように引っ掻き回しているだけだと思い銀時はそれをぶん殴って止めようと思った。

 

だが違った‥‥彼の行いは彼らの信念から歩ませた一歩だったのだ。

 

屍の無念、無力な叫び、高杉が動くにはそれだけで十分だ。どこにいても次元を超えても高杉は変わらない。

 

 

「半端な覚悟で俺の前に立つなよ銀時、家族ごっこの父親じゃここでは役不足だぜ。」

 

「高杉ィ、確かに俺がこの事件に首突っ込んだのは確かになのはやヴィヴィオのためだった。あいつらが武器を持つなら俺が先に相手をブッ倒す。あいつらがピンチになったら俺が誰よりも先に動く。共に生きる人の隣立ちその人を何があっても守り抜け」

 

「お前ェ」

 

『私はその為の剣を教えます。剣は人を殺し触れたもの切り捨ててしまうそれは変わることのない事実です。しかし人は変えることができる、なぜならば人はどこまでも成長する生き物ですから、学びなさい私の生徒達君達はこれから色々なものを吸収して心鍛えなさい。剣筋は心から成り立っています。人が優しければ剣もまた答えます。」

 

耳に胼胝ができるぐらい聞いた言葉で、二人の原点となった教えであり彼らの強い共通点となった教えである。

 

「俺とお前がどんな風に変わっちまっても昔あった事はなくなんねぇ。俺達の道が別れても歩いてきた道は変わんねぇんだよ。俺もお前も松下村塾で吉田松陽の弟子だ。」

 

銀時は高杉に宣言するかのように言い放った。

 




ではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。