妖怪たちとの非日常生活 (”アイゼロ”)
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座敷童子

はい、どうも、アイゼロです。

懲りずにまた新シリーズですよ皆さん。現在進めているシリーズの息抜きで書いたものをそのまま出していると考えてください。
それではご覧ください。




人間誰しも、恋愛感情を抱く。クラスには認識されていなく、暗くて目立たない俺でも、その感情はきちんと持ち合わせている。

 

そいつは誰に対しても分け隔てなく、笑顔で接し、いつも一人の俺に対してもみんなと同じ、笑顔で話してくれた。

 

そう、俺はその皆のほんの一部に過ぎなかったのに、俺は特別だと勘違いしてしまい、そいつに本気で惚れた。

 

折本かおり。そいつは俺に嫌な顔一つせず接してくれた。それだけ。たったそれだけで好きになってしまったのだ。

 

そして1週間もしないうちに告白をした。

 

結果は、見事にフラれた。

 

その時、遅からず気付いた。俺は、ただ理想を押し付けただけなのだと。

 

気付くのがあまりにも遅すぎた。所詮は幻想だったという事を。

 

だが、告白をしてフラれるというのはよくあることだ。人によってはトラウマになったり、この悔しさをバネにまた次の恋に向かって頑張る人もいる。俺もそうしようと思った。・・・・・・今日までは。

 

あの折本は、俺が告白をしたこと、自分がフったことをクラスの連中に言いふらしたのだ。それで教室に入ったら、嘲笑の的。ナルガヤなどの不名誉極まりないあだ名まで付けられた。

 

その一日は、笑われて過ごした。陰口などもわざと聞こえるようにされた。不愉快で、怒りを覚える。

 

自分、俺自身にも。あの折本も、上辺だったことを見抜けなかった自分に。惨めだと感じてしまった自分に。

 

そして今も、ショックで体育座りをしている自分に、少しばかり怒りがある。

 

「大丈夫?」

 

突然横から可愛らしい声が聞こえ、頭に何かが触れた感触がした。それは右、左にと動いて、まるで頭を撫でているかのようだった。

 

「はは、ちょっと大丈夫じゃねぇかもな」

 

今日は色々とありすぎて、頭がパンクしそうで、傷心中だ。小学校でも仲間はずれなんて日常茶飯事だったのに、俺はあまり強くなっていなかったな。

 

「そっかぁ。痛い思いをしてるんだね。じゃあ私がしばらくナデナデしてあげるよ♪」

 

・・・・・・ん?待て。冷静に考えてみろ。俺の横にいて俺の頭を触っている奴の正体は何だ?家族は家にいるが俺の部屋には基本入らない。

 

恐る恐る、ギギギと機械のように横に目をやると、ショートヘアに黒を基調とした着物の、小学生並の身長の幼女が、俺の頭に手を伸ばしながら佇んでいた。

 

所謂、座敷童子だ。

 

「うわあああああああああ!!!」

「うきゃあああ!」

 

いや、驚いたのはこっちなんですけど。何でそっちも絶叫あげてんだ・・・。

 

「どうしたの!?お兄ちゃん!」

 

突然ドアを勢いよく開けてきたのは、我が妹、小町だ。

 

「こ、小町。・・・座敷童子が・・・」

「はぁ?・・・・何もいないじゃん」

 

え?・・・・・・もしかして、見えていないのか?

 

「いやいやいや、そこにいるだろ・・・」

「座敷童子なんているわけないじゃん。疲れてるんじゃないの?もう寝たら?」

「えー・・・」

 

全く信じてもらえず、憐れんだ目で俺を見ながら行ってしまった妹。ちょっとは信用してくださいよ。

 

でも、そうだな。座敷童子なんているわけない。きっと疲れているんだ。今日は色々あったからな。幻覚でも見ているんだろう。

 

ベッドに入り、布団を被って目を瞑る。

 

「・・・」じ~

「・・・」

 

しかし、先程の座敷童子がこちらをじ~っと見ている。

 

・・・・・・もう認めざるを得ない。この座敷童子、突如俺の部屋に現れ、俺にしか見えていない。という、信じがたい事実に。

 

「な、なんだ?」

 

布団と少し怖い思いを背負ったまま、その座敷童子に話しかけると、パァッと眩しい笑顔になった。あれ?座敷童子ってこんなに可愛かったっけ?

 

「こんばんは♪」

「こ、こんばん、は・・・」

 

史上初、妖怪と挨拶を交わした。沈んだ心と高揚した心がぐちゃぐちゃに体中を犯して、今にも倒れそうだ。もう横になっているけど、そのまま気絶したかのように意識が無くなりそうだ。

 

「私の事、見えるようになったんだね♪」

 

・・・・・見えるようになった?もしかして、ずっと前からいたという事か。だとしたら何故今見えるようになったんだ。

 

「お、おい・・・」

 

その座敷童子は当然のように俺のベッドに潜り込んできた。見えなくて本当によかった。もし見えてたとしたら間違いなく俺は容疑者扱いされる。

 

突然現れ、ベッドに潜り込んだ少女、座敷童に少し恐れながらも、俺は眠りについた。

 

だけど、このありえない状況に何故か対応できている俺が、妖怪よりずっと恐ろしいと思う。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

実は3泊4日の修学旅行があって、PC使えなかったんです。でも、ネタはたくさん持ってこれた。と思う。

また次回。


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雪女

はい、どうも、アイゼロです。

このシリーズは多分ラブコメは無いんじゃないかな?そこんところは作者自身よくわかってない状態です。

それではご覧ください。


朝、目を覚まし、カーテンの隙間から射してくる日差しを手で抑えながら、体を起こす。周りを見渡したら、昨日と変わりない部屋。

 

・・・・そうだ。夢に違いない。座敷童子なんて

 

「おはよう!」

 

・・・・夢じゃなかったか。夢だけど夢じゃなかったてきな?

 

「お、おはよう」

 

とにかく、相手が人間であろうと妖怪であろうと、挨拶はちゃんと返すべき。

 

顔を洗いに洗面所に行くと、目の前の鏡を見て驚いた。

 

昨日とは違い、虚ろな目をしている。

 

『絶望と失望』その両方がこの両目にはっきりと宿っていることが分かる。

 

 

 

小町の朝食を食べるべく、リビングへ向かう。一方座敷童子は俺の肩を掴んでぶら下がっている。全然重みを感じないため、そこまで苦ではない。

 

飯を食べる時は膝の上に乗っかってきた。そして茶碗に手を伸ばそうとしているが、どうせ触れないだろうと思って、油断した矢先、普通に触れていたので、急いで手を引っ込ませた。

 

 

学校へ行く途中、何やらきょろきょろと辺りを見回すようにうろついている女性がいた。全身ダボダボの白い服を纏っていて不思議な人だ。という感想を心の中で言いながら、その人に話しかけた。

 

「迷ってんすか?」

「え?・・・・はい、実はここに行きたくて」

 

そう言って女性が俺の方へ顔を向けると、俺は目を見開いて驚いた。とんでもない美人だ。黒髪ロングで、白くきめ細かな肌で端正な顔立ちをしている。

 

「ここでしたら、この道をまっすぐ行って、突き当りを右に行くとありますよ」

「どうもありがとう・・・」

 

普通に会話ができてしまった。いつもならどぎまぎして気持ち悪がられるんだが。・・・・昨日の学校での出来事でかなり俺のメンタルは強化されたらしい。

 

しかし、あの人、一体どこへ行くつもりなんだ?あの先は山しかないし、行く人なんてそうそういない。

 

 

なんだかんだで学校に着いた。・・・はぁ、やはり俺を的に嘲笑という名の矢を放っている。まぁ、半分は自業自得だと思っているし、嫌な気分にはなるが気にしないのが一番だ。とにかく無視。

 

教室に入り、自分の席に座る。すると、奥の方から男の3人グループがナルガヤという蔑称を俺に向かって叫び、教室を爆笑の嵐にした。

 

何故だ。何故ここまでされなくてはいけない。俺は、女子に告白をしただけだ。誰もが一度することを俺はしただけなのに。なんだよ。俺なんか告白する権利すらないとでも言いたのかお前らは。

 

さすがの俺も堪忍袋の緒が切れそうになり、立ち上がろうとした瞬間

 

「はちまんにいじわるするなー!!」

 

後をつけてきた、俺にしか見えてない座敷童子が、教壇に立って置いてあった鉛筆、ボールペン、その他の文房具などをクラスの奴らに一斉に投げつけた。

 

それにはクラスの奴らも大騒ぎ。物が浮いて自分たちを攻撃しているのだから、パニックになって当然だ。

 

そして、誰もいなくなった。

 

「ふふん。どんなもんだい!」

 

お返しに満足したのか誇らしげに胸を張って喜ぶ座敷童子。傍から見たら、俺が教室で暴走したと見て取られそうだったので、座敷童子を抱えながら、教室を出た。

 

それにしても、いちいち座敷童子言うの面倒だな。名前あるのか聞いてみるか。なかったらつけてやろう。恩返しだ。

 

・・・・・・・・・

 

学校七不思議に加えられてもいいくらいな怪奇現象が起きてから何時間か経った昼休み。俺は屋上に来ていた。

 

「なぁ、お前って名前あるのか?」

 

隣で足をパタパタと動かしながら座っている座敷童子に質問を投げた。

 

「え?ないよ」

 

ない・・・か。自分が分からない境遇は一体どういう気持ちなんだろうな。きっと寂しいと感じているのか。分からないけど、名前を決めよう。座敷童子だから・・・・・

 

「お前の名前は『シキ』だ」

「え?名前付けてくれるの!?」

「ああ、嫌か?」

「ううん♪ありがとうはちまん。今日から私はシキだー!」

 

両手を上げながら、年相応の喜び方をしている。あくまで見た目年齢だけど。見た目幼女でも、座敷童子は一体何歳なんだ?これで100歳とか言われたら、絶対に信じられない。

 

 

 

教室に戻り、席に座って本を読もうとしたら、俺の前に男3人が現れた。

 

「お前、屋上で誰と話してたんだ~?」

「お前以外誰もいなかったけど、どうしたんだ~?」

「とうとう頭までおかしくなったんじゃないか?」

 

はぁ、何だお前ら。俺の事大好きか?何で屋上まで来てんだよ・・・。そんで周りの奴らも便乗して笑うなよ。分かってるけどな。ここで笑わなかったら、今度は自分が敵になるって怯えているのだから。多分、この教室にいる奴らは9割本心だろうけど。

 

そして、教室の中の笑いは収まったと同時に、何故か奴らは顔色を変えて、冬のように、自分を抱き始めた。

 

「な、何だ急に寒くなったぞ・・・」

「お、おい、何でだよ」

「うお!見ろアレ!黒板が凍り始めたぞ!」

「ちょっと!何コレ!教室中氷漬けよ!」

 

またまた教室がパニック。今日で2度目だ。謎の怪奇現象2回目のせいで、今度は学校中が大騒ぎ。

 

しかし、不思議なことに、教室は氷漬けになったが、俺だけ何も感じていない。つまり、寒さを感じないのだ。俺だけ不思議な力で守られているのか?

 

「大丈夫?」

 

上から声が聞こえたので、そこに目を向けると、宙に浮いた全身白い服を纏った女性が、心配そうな目で俺を見ていた。

 

・・・・・・また妖怪?・・っつーかこいつ、朝道を教えてやった女性じゃん!マジで、この人も妖怪だったの!ということは、俺は何もない空間に向かって道案内をしていた男と見られてしまったことになる。

 

「あの、ありがとうございます・・・」

「いいのよ。私も、不愉快だったから」

 

そう言って頭を撫でてきた。姉御肌な妖怪だ。見た感じ、氷漬けにする白い服を着た女性、そして山に行ったから、雪女といったところか。

 

「最初は、あなたが話しかけてきたから、驚いたわ。あなたにも私が見えてるなんて」

「まぁ、見えるようになったのは昨日なんすけどね」

「そうなの?そろそろここを出た方がいいんじゃない?怪しまれるわよ?」

「そうします。改めてありがとうございました」

「どういたしまして。それと、敬語じゃなくていいわよ。私の事も、雪って呼んで」

「・・・分かった」

 

今日は妖怪に助けられた一日だったな・・・。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

多分11月中には完結します。

また次回。


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トイレの花子さん

はい、どうも、アイゼロです。

早めの更新、このシリーズは気まぐれに投稿していきます。

ところで、トイレの花子さんって妖怪?まぁいいや。

それではご覧ください。


妖怪

 

それは、日本で伝承される民間信仰において、人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす、不可思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在のこと。(あやかし)または物の怪、魔物とも呼ばれる。

 

妖怪は日本古来のアニミズムや八百万の神の思想に深く根ざしており、その思想が森羅万象に神の存在を見出す一方で、否定的に把握された存在や現象は妖怪になりうるという表裏一体の関係がなされてきた。

 

「やったー!上がりだよ!」

「あら?負けてしまいました・・・」

 

そんな恐ろしくも浪漫があふれる存在である妖怪、座敷童子のシキ、雪女の雪は、笑顔で平和にトランプのババ抜きをしている。

 

何で俺の家にいるのかはさておき、今は家に誰もいないからいいが、これ見つかったらとんでもないことになる。別の人から見ると、トランプがひとりでにババ抜きをしている光景が映るのだから。なんだったら俺が超能力者だって疑われる。

 

しかし、この先ないであろう不思議体験に何をしていいのか分からず、受け入れている俺だが、事実、俺を助けてくれたのだから悪い奴らじゃないんだ。

 

でも一つだけ困ったことにもなる。人間と妖怪の区別がつかない。容姿でわかる妖怪もいるが、雪やシキのような人間のような格好をした妖怪だと、一般人と勘違いして俺は空間に話しかける、わけのわからない人になる。

 

取り敢えず、トイレに行こう。

 

トイレのドアを開けたら、客人がいた。この家に家族はいない。という事は・・・

 

「またかよ!」

「あれ?見えてるの?」

「ああ、思いっきりな」

 

便座の上に座っていたのは、俺と同じ身長や年齢に見える女の子だ。

 

「トイレの花子さんか?」

「正解♪」

 

いやいや、花子さんそんな元気じゃないだろ・・・。人間をトイレに引きずり込むと言われて恐れられてる存在なんだぞ。

 

「花子さんって、学校にいるんじゃねぇのか?」

「気付いたらここにいたんだ~」

 

えー、何その迷惑極まりない話。

 

しかし、有名な都市伝説のトイレの花子さんまで見れるとは、光栄なのかもしれない。けど、想像していた人物よりもずっと違う。おかっぱじゃなくて艶やかな黒髪のセミロングだ。目がくりくりとして綺麗。はっきり言うと一番人間味があふれてて、めちゃくちゃ可愛い。服装は伝承通り赤色のスカート。

 

「それにしても、急に見えるようになったんだ。何で?」

「それは俺が一番知りたいことだな。・・・ん?お前いつからここにいたんだ?」

「一週間くらい前かな」

 

・・・・という事は、人が用を足す光景を見ていたという事になってしまうんじゃないのか?

 

その事実が発覚した途端、つい反射的に股間を抑えてしまった。そして、それを見た花子さんは顔を赤くしながら、捲し立てる。

 

「み、見てないから!ちゃんと目瞑ってたわよ!馬鹿じゃないの!?」

「ほ、本当かよ・・・」

「何で疑うのよ!」

「だって、ずっとトイレにいたって言われたらそりゃあ、な?」

「とにかく、見てないんだからね!」

 

急にツンデレみたいになったぞ。そして顔を赤くしながら、チラチラと下半身を見るな。俺まで恥ずかしくなる。

 

「ん?でも俺が見えるようになったのは2日前だぞ。どこに行ってたんだ?」

「いきなりここに来たんだもの。そりゃ気になるでしょ。家の中歩き回ってた」

 

凄い都合よく鉢合わせしなかったんだな。それはそれで助かった。

 

しかし、言い伝えられている花子さんとは180度違うな。なんか急に気が抜けたわ。全然怖くないし、トイレに引きずり込むような奴には到底見えない。誰だよ、都市伝説にして化け物にした奴・・・。めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか花子さん。

 

「あ、ありがとう・・・。可愛いって言ってくれて・・・」

「え?声出てた?」

「うん。私、ずっと前から恐怖の存在って言われてて、可愛いとは無縁だったから、嬉しい・・・」

 

花子さんは頬を掻きながら、はにかんだ表情で笑った。想像だけで決めつけるのは良くないと、思い知った。でも、何で都市伝説になるほど恐れられているのか分からない。

 

そのことを花子さんに聞いたら、ちょっと暗い顔になりながらも、話してくれた。

 

どうやら、昔、独りぼっちが嫌で寂しい思いをしていた時、とある女子が花子さんがいたトイレに入ってきたらしい。その場所が言い伝えられている三階のトイレの一番奥。花子さんにその気は無かったらしいが、腕を掴んでしまったらしい。そして逃げられたと。

 

まさかトイレの花子さんの真相がわかる日が来るとは思わなかった。

 

「一人は、今でも嫌か?」

「・・・うん。だから、あんたが私に反応してくれた時、素っ気ない口調だったけど、凄い嬉しかったんだ」

「そうか・・・。お前、トイレから出れるのか?」

「え?・・ちょっと体力使うけど、出られないことは無いよ」

 

どんな構造してんだ・・・・。

 

「上で他の妖怪が遊んでんだ。お前も行こうぜ」

「いいの?」

「別に問題ねぇよ。じゃあここにいるか?」

「ううん!行く!行きたい!」

「じゃ、行くか。えーっと・・・」

「花って呼んで」

「分かった。じゃあ行くぞ、花」

 

 

 

「おーい、シキ、雪、新しい妖怪だぞ」

「は、花子です。よ、よろしく・・・」

「あら?随分と可愛らしい妖怪ですね。ささ、一緒に遊びましょう」

「わーい!お姉ちゃん!トランプしよう!」

「うん♪」

 

平和だなぁ。新たに妖怪『トイレの花子さん』が加わった。今思えば花子さんって妖怪なのか?と思うところもあるが、考えてもしょうがねぇからいいや。

 

しかし、すっかり妖怪に慣れてしまったな。慣れって怖いな・・・。けど、不思議と心地がいい。人間不信になった俺の前に突如現れた、俺にしか見えない妖怪。気付いたら、俺の支えになっていた。人外は捨てたもんじゃない。

 

 

数時間後、花は汗だくになっていた。本当に体力を使うらしい。ちなみにトイレで回復するんだって。なんじゃそりゃ。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

先に言っておくと、妖怪による闇落ちや百鬼夜行などはありません。

また次回。


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人間の温もり

はい、どうも、アイゼロです。

今回はホッコリーする回です。←(スプラ脳)

それではご覧ください。


現在、学校に向けて登校中。俺の右には手を繋いでいるシキ、左には袖をつまんでいる花、そして真上には雪という、とんでもない面子が俺を守っているかのようについてきている。

 

お、落ち着かない。

 

「」ヒソヒソ

「」ヒソヒソ

 

はぁ、もうあれから一週間というのに、未だに俺への陰口、蔑視は止まない。人の悪口ほど、楽しくて飽きないという事がよくわかる。

 

「この!」

 

いなくなったと思ったら、花が陰口をしていた男の股間を思いっきり蹴った。うわぁ、アレは痛い。

 

「いってぇ!何すんだお前!」

「は?俺じゃねぇよ」

「お前以外誰がいるんだよ!」

「んなこと言われても知らないもんは知らねぇよ!」

 

喧嘩勃発。元凶の花は満足そうな表情で戻ってきた。

 

「ふふん。八幡を馬鹿にする奴は許さないんだから!」

「あほ。やりすぎだ」

「はぅ。だ、だってあいつらが!」

「けど、ありがとな。怒ってくれて」

「うぇ、・・・エへへ」

 

つい頭を撫でてしまったが、まんざらでもない様子だ。妖怪のくせに髪さらっさらだ。

 

 

 

そして、その後も、妖怪の暴走は続いた。

 

一回目の休み時間。

 

「」ヒソヒソ

「」ヒソヒソ

「」クスクス

「おりゃあー!」

 

文房具をとにかく投げるシキ。

 

「うわあ!」

「まただ!どうなってんだよ!」

「いてえ!はさみが!」

 

 

二回目の休み時間。

 

「寒!」

「またエターナルブリザードだぁ!」

「逃げろ逃げろ!」

「きゃああああ!」

 

いつの間にか名前が付けられてた。

 

 

昼休み。女子トイレの方から

 

「きゃああああ!」

「何よこれ!引きずられるわ」

「こわいよぉー!」

「誰か助けてーー!」

 

 

俺の悪口をいう奴を片っ端から制裁している。さすがに見過ごせないため、家に帰ったと同時に全員正座させている。

 

「やりすぎだ」

「ごめんなさい・・・」

「すみませんでした」

「うぅ、ごめん」

 

怒られたことがないのか、本気で落ち込んでいるように見える。

 

「なあ、何でお前らは俺のためにそこまでしてくれるんだ?俺には理解ができない」

 

俺がそう聞くと、何言ってるの?と言いたげな表情で首を傾げた。最初に口を開いたのは雪だ。

 

「八幡さんが特別だからです」

「・・・俺が?」

「はい。私たちは、誰にも見られず生きていました。ここにいるシキさんや花さんも、私も寂しい思いをしていたんです。ですが、八幡さんは私たちの事が見えてます。しかも、怯えずに優しく接してくれました。私たちにとってこれほどの幸福は無いと思います。だから、そんな優しい八幡さんを馬鹿にするような輩は許せません」

 

っ・・・。そうか、こいつらは俺よりも孤独の寂しさを知っているんだ。俺なんかが可愛く見えるくらいに。

 

「・・・ありがとうな。これくらいしか言葉がねぇや」

「いえ、お礼を言うのは私達です。孤独から救ってくれてありがとうございます。・・・その、ちょっとしたお願いがあるのですが、いいですか?」

「おう、いいぞ。可能な限り何でもする」

「抱きしめてもいいですか?」

 

・・・・・ふぁ!え?抱きしめていいかって?

 

「あ、私も!」

「わ、私も・・・いいかな?」

 

続いてシキと花も賛同してきた。

 

「ど、どうしてだ・・・?」

「人のぬくもりというものを味わいたいのです。いいでしょうか?」

「・・・・ま、まぁ、何でもするって言っちまったし。仕方がない」

「本当ですか!それでは、失礼します」

 

胡坐の体勢の俺に正面から抱き着いてきた雪。背中からは花。脇腹のあたりはシキが飛びつくように抱き着いてきた。

 

「ふふ。とても暖かいです」

「うん。なんか、安心する」

「あったかーい!」

 

俺も何だか温かいわ。妖怪なのに、とても安心できる心地よさと温かさ。・・・なんだか、眠くなってきた。

 

「あれ?寝ちゃったよ」

「あらあら。それではベッドで寝かせてあげましょう。ふふ、寝顔が可愛いです」

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

中々筆が進みません助けてください。そしてなんか、とっくに完結してるシリーズがお気に入り登録1000いってました。ありがとうございます。

また次回。


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戻った平穏な非日常

はい、どうも、アイゼロです。

シキ、雪、花の登場が多いですが、まだまだ妖怪は現れますよ~。

それではご覧ください。


朝、目が覚めると、俺はベッドで横になっていた。いつの間にか寝ていたのだろうか。雪たちが抱き着いてきてそこから記憶がないという事は、あれから寝てしまったという事か。

 

それにしても、妖怪のくせに柔らかかったなぁ。あー、いかんいかん。相手は妖怪相手は妖怪。

 

布団を剥ぎ、半身だけ起こすと、横に雪、花。俺の膝の上にはシキが眠っていた。

 

「おーい、お前ら起きろ」

「んぅ?あ、はちまん。おはよう!」

「おはようございます。八幡さん」

「おはよう八幡」

 

寝起きのタレ目が可愛い妖怪たちとの挨拶を済ませ、学校に行く。基本雪たちは風呂とトイレ以外俺の傍にいてくれている。

 

しかし、校門に入ったところまではいいが、何か違和感を感じた。昨日にはあって今日にはないもの。

 

俺への陰口が一切なくなったことだ。

 

いや、別にそれでいいんだけどね。だけど、こうもピタリと止まると、被害者が逆に気になっちゃうから。

 

「別にいいじゃない。日常に戻ったという事で」

「さらっと心の中を読まないでくれ」

「顔に出てたわよ」

「俺ってそんな単純なのか・・・」

 

そうだな。気にしたってしょうがない。日常に戻ったという事でいいだろう。ていうか、お前らがいる時点で日常かどうか定かじゃないがな。

 

今日も今日とて教室に向かうべく廊下を進む。そしてすぐに異変に気付いた。

 

俺を避けてる。

 

何故か俺が行く先、周りの奴らは俺を避けるように道を開けている。まるで学校のドンにでもなったように。

 

教室に入っても、ヒソヒソとされているが、陰口には見えない。俺を、恐怖の対象とでも見ているかのようだ。

 

「どうなってるんだ?」

「確かに、気にはなりますね。皆さん携帯を見ているようですが・・・」

「もしかして、そこに何か秘密が?」

「ちょっと見てきますね」

 

おっと、堂々と他人の携帯を見る雪。俺も気を付けなければ。別にみられて困るものなんてないけどね。本当だよ?

 

「あの、凄いことが書かれてました」

「え?何?」

「それが、『比企谷の陰口は絶対にするな。したら恐怖の怪奇現象に見舞われる』と」

 

チェーンメールか。しかし、昨日と今日でよく学校中にばら撒けたな。教師利用したのかって思っちまうわ。

 

けど、これでようやく心地よく中学校生活が送れそうだ。さすがの俺も毎日こんな目に合ってたら壊れちまう。こればっかりはシキたちに感謝だ。

 

だが、当の妖怪たちは浮かない顔をしている。

 

「どうした?そんな顔して」

「これで、八幡が人と関われなくなるって思うと・・・」

「八幡、寂しい思いしちゃう・・・」

 

・・・・え?そんなこと?そんなことで深刻そうな顔をしてたの?なんだよ心配して損したぞ。孤独、とっくの昔に受け入れている。そのことを認識させるべく、全員の額にペシッとデコピンした。いたっ、と小さく声を上げた。

 

「なーにが、寂しい思いだ。人と関われなくなるだ。そんなもん昔からそうで、これからもそうだ。気に病む必要ねぇよ」

「だ、だって!」

「なんだ?じゃあお前らも俺の前からいなくなるのか?」

「そ、そんな事ありません!私たちは八幡さんが大好きです!どこにもいきません!」

「やだ!はちまんと離れたくない!」

 

うぇえ!ちょっと悪戯が過ぎたかな?と思った質問なのに、過剰反応しすぎだ。そしてさらりと大好きと言われてしまった。いや、嬉しいよ、素直に。少し顔に熱が帯びた。

 

「あー、なんだ。俺にはお前らがいるから寂しくもなんともないし、一緒にいて楽しいというか・・・。あー、なんて言えばいいんだ・・・?」

 

初めてといってもいい感情に、はっきりとした言葉が出てこない。文系学年2位失格だなこれは。

 

目の前の妖怪たちは俺のはっきりしない態度を気にも留めず、静かに微笑んだ。

 

「ありがとう。八幡」

 

花が代表して、優しい笑顔で手を握った。

 

一時、こいつらの人間味あふれる雰囲気に、何故妖怪なのだ?と疑問に思ったことがある。

 

だけど、こいつらが妖怪で良かった。もし、妖怪じゃなかったら、俺はこいつらと絶対に関わらなかったし、俺の事も知ろうともしなかっただろう。

 

だから、この特別で、奇跡的な出会いを巡り合わせてくれた、妖怪の神に感謝だ。ありがとう。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

11月中には進行してるシリーズを投稿します。今しばらくお待ちをぉ。

また次回。


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口裂け女

はい、どうも、アイゼロです。

最近深夜にゲームをやることが多くなった。けど寝不足とは感じてない。俺の身体おかしい?

それではご覧ください。


おっかいもの♪おっかいもの♪

 

なんてCM昔あった気がする。そのCMを脳内再生しながら、現在妹に頼まれて買い物中。

 

安いからという理由だけで隣町まで買いに行かされ、疲労が尋常じゃない。しかも一気に買ったため、両手に大荷物。

 

「やっぱり、持ちましょうか?」

「いや、大丈夫だ。もしそれやったら、とんでもない光景になるから」

 

雪の心優しい助けに一言お礼を言いながら、日差しで熱されているアスファルトの上を歩く。ここからが本当の勝負だ。

 

道路から外れると、かなり高い石階段がある。これを登らなければ家へは帰れない。明日は筋肉痛だな。俺貧弱過ぎるだろ。重くなった足を一歩ずつ、重りのように持ち上げながら昇る。

 

しばらくすると、横からぞわりと気配がしたため、振り返ると

 

「私、綺麗?」

 

階段から外れた小道に白い服を着た女性が経っていた。黒髪ロングにマスク。そして今の言葉。

 

口裂け女か・・・。数秒の間。見つめながら沈黙が続く。

 

そこで俺がとった選択肢は

 

「・・・」

 

完全なる無視。もうその程度じゃ驚くどころか、何も感じなくなった。そのまま俺は階段を進む。

 

そして、何者かに肩を掴まれた。振り向くとさっきの口裂け女だ。

 

「私、綺麗?」

 

強引!この口裂け女強引だ!ていうか力強!

 

「ちょっと離れなさいよ!」

 

花が口裂け女を俺から離れさせた。その勢いでつけていたマスクを盗ると、俺らは戦慄した。

 

思った通りでも、思わずビビってしまう。口角が、普通の人よりずっと長く大きい。恐怖で足が動かない。妖怪には慣れたつもりだけど、ここまでリアルだとわけが違う。

 

「あれ?くーちゃん?」

「「は?」」

 

随分と親しげな口調の雪。俺も花も間抜けな声をあげてしまった。一方、雪にくーちゃんと呼ばれた口裂け女はビクッと肩を動かした。

 

俺は恐る恐る、雪に質問した。

 

「ゆ、雪の知り合いか?」

「そうです。幼馴染みなんです」

 

・・・お、幼馴染みぃ!うっそだろぉ・・・。雪女と口裂け女ってそんな関係だったのか?

 

また新たな衝撃事実に、もう俺の脳内許容量と順応性は人類で最強だと思った。

 

「ゆ、雪・・・」

「ほらほら。またこんなことして」

「んー」

 

雪が大きい袖で口裂け女の口周りを拭き始めた。すると、裂けているように見えた口は元通りになっており、雪の袖には赤い汚れが・・・。

 

「すみません。くーちゃんは元々私と似たような妖怪でして。それで、悪戯好きなので、よくこのようなことを・・・」

「成程なぁ。でも、俺以外には見えてないんだろ?意味なくね?」

「それが、くーちゃんは一時的に、普通の人にも見えるように姿を現せる力を持っているので・・・」

 

・・・マジか。まさかの能力系妖怪きましたか。

 

「てことは、まさか都市伝説で社会現象まで起こした口裂け女の正体って・・・」

「くーちゃんです」

 

まさに開いた口が塞がらない。あの、究極の選択肢を相手に責め、回答によっては残酷な殺し方をすると言われている口裂け女が

 

「ふふん!皆あたしにビビってねぇ。これほど楽しいことは無いよ!」

「くーちゃんやりすぎですよ」

「いいじゃんいいじゃん」

「もう!」

「あいた!」

 

無邪気な笑顔で、人を驚かすことを快楽として、雪とフレンドリーに接している。まるで、子供だ。容姿は雪と似ていて、顔は整っていて美人と言っても差し支えない。本当に綺麗なんだな。

 

「いやぁ~、それにしても驚いたよ。ずっとあたしのこと見えてるなんてさ」

「俺も口裂け女がここまで無邪気だったことに驚きだよ」

「あっはは。あんたといると面白そうだな♪ついてっていいか?」

「もう好きにしろ。今更増えたって問題ない」

「よし!よろしくね。くーちゃんって呼んでもいいよ」

「はいよ。くーちゃん」

「くーちゃん!これからはずっと一緒ですよ!」

「お、おい離れろ雪!恥ずかしいだろ!」

 

 

『仲睦まじいですねぇ・・・』

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話はちょっと特殊です。俺が妖怪の中で一番好きな妖怪が登場します。

また次回。


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猫魈と猫又

はい、どうも、アイゼロです。

俺が一番好きな妖怪、ずばりタイトル通りです。そして、猫魈と猫又と言ったらあのキャラですよね・・・。

というわけで、ちょこっとクロスです。

それではご覧ください。


今日は日曜日。共働きの両親は仕事が休み。つまり、家族で出かける機会がほぼここしかない。そんなわけで、親父、母ちゃん、小町は家族で出掛けに行っている。いつものように俺を置いていき、留守番扱い。自分から希望したから当然だ。夜も遅くなると言われた。

 

「そんなわけで、今日一日、家の中で好きなだけ遊んでいいぞ。いっつも俺の部屋だけだったからな」

 

その掛け声と同時に、一斉に散らばりだした妖怪たち。うーん、見慣れたとんでもない光景だ。妖怪たちだけで大丈夫なのかと言われたら、案外心配ではない。雪と花は面倒見がいいため、大事は起こさないだろう。

 

「ちょっとスーパー行ってくる」

「「「「いってらっしゃーい」」」」

 

ただいまをもって、比企谷家のお家は、妖怪屋敷と化しました。

 

 

 

不足していたマッカンと、夕飯の買い出しを済ませ、帰路に就く。1人だし、誰もいないから贅沢をしてしまおう。俺の家事えもんスキルを披露してやる。置いてあった金は全部使ってやった。お釣り残さず丁寧にな。

 

 

しばらく歩いていると、一匹の黒い猫が視界に入った。何かを探しているのだろうかキョロキョロしている。

 

目があってしまった。それと同時に、こちらを見た黒猫は目を見開いて驚き、煙幕を張った。・・・また妖怪か。

 

「さて、今回はどんな妖怪だ?」

 

そう思いながら、煙幕が晴れるのを待つ。そして、現れたのは、和服を着た女性。黒髪ロングに猫耳が生えていて、尻尾が生えている。なにより目を引くのが、そのスタイル。いうなれば、ダイナマイトボディ。おまけに和服を着崩しているため、露出が激しい。俺も一応男子だ。抗っても自然と目がいってしまう。

 

その妖怪がこちらに小走りで走ってきた。

 

「ねえ!私のこと見えてるの!?」

「あ、ああ・・・」

「この辺で妹・・・・、白い猫を見なかったにゃ?」

「いや、見てないが」

「そう・・・。どこに行ったのかにゃ・・・」

「はぐれたのか?」

「うん。妹なの。白音って名前で、可愛いにゃ」

 

まさに迷子の迷子の子猫さんだな。猫と人間両方変身できる妖怪か・・・。

 

「猫又か?」

「ぶっぶー。ちょっと違うにゃ。私は猫魈。妹が猫又にゃ」

「とんでもない姉妹だな・・・。それで、どこではぐれたんだ?」

「え?一緒に探してくれるのかにゃ?」

「お前1人だけで、探せるのか?猫って気まぐれオレンジロード並みに行動範囲広いんだぞ」

「なにそれ?ていうか、白音は賢い猫又にゃ!そこまで遠くに行ってないにゃ!」

「はいはい。その前に俺の家来るか?荷物降ろしたい」

「わかったにゃ!ありがとうにゃ!」

 

お、おい!抱き着くのはやめてくれ!別に嫌じゃないが、その男の理想をそのまま模ったダイナマイトボディが、俺の平常心をいとも簡単に、崩れさせる。

 

「忘れてたにゃ。私は黒歌。よろしくにゃ」

「・・・比企谷八幡だ」

 

自己紹介を終えた黒歌は猫の姿に戻り、俺の肩に乗っかってきた。ポケモンゲットだぜ!けど、さらに肩が重くなった。

 

 

「ただいまー」

「あ、おかえりなさい。あの、この子なんですが・・・」

 

雪が困ったような表情で、腕に抱きかかえている何かを見せてきた。

 

白い猫だった。

 

「なんか、いつの間にか家に入ってたんだよね」

「ねこちゃんかわいい!」

「ほ~ら、口裂け女だぞ~」

「・・・なあ黒歌。ひょっとして、あれ?」

 

現在白い猫を探している俺らの前に現れた白猫。一応黒歌に確認。

 

「白音!」

「っ!姉さん!」

 

黒歌は白猫を見るや否や、妹だと確信し、人間の姿になり、白猫へと一直線。対する白猫も人間に変身し、黒歌に抱き着いた。

 

白音と言っていたな。姉とは違い、身長も小さく、謂わばロリッ子。マスコットみたいだ。

 

「もう!心配したんだから!」

「ごめんなさい」

「あまり離れちゃだめにゃ!」

「はい。姉さん」

 

感動の再会。一方、雪、シキ、くーちゃん、花は目を見開いてポカーンとしている。珍しい表情なため、一枚記念に撮った。

 

「その男の人は?」

「あ、白音捜しを手伝ってくれた八幡にゃ。ありがとにゃ」

「俺、ただ帰宅しただけだぞ・・・」

「でも、私をここに連れてきてくれたおかげで白音を見つけられたにゃ」

「えっと、八幡?ありがとう・・・」

「お、おう・・・」

 

何だろう、ロリッ子のありがとうは何故こうも響くのだろう。俺はロリコンじゃない。シキと一緒に寝ているからって、ロリコン扱いは困るなぁ。

 

「んで、これからどうするんだ?」

「ん?何って、いつものように街を徘徊するにゃ」

「いつもって・・・。よく飽きないな」

「慣れにゃ。八幡、お世話になったにゃ。じゃあね」

「さよなら・・・」

 

そう言って、手を振りながら、手を繋いで帰ろうとする、猫又と猫魈。何故か、その背中が寂しく思えてしまった。

 

「ねえ、八幡」

「ん?」

「たまになら、ここに来てもいいかにゃ?」

「おう、いつでも来い。俺にしか見えてないんだからな」

「ふふ、ありがとにゃ♪」

 

最後に笑顔を見せた2人は、猫の姿に戻って、この家を去った。

 

はずだった。

 

 

翌日

 

「きたにゃ!」

「こんにちは」

「・・・・」

 

結局こうなるわけね。今までの過程を振り返ったら、そんな気がしてたんだよ。

 

「いらっしゃーい」

「あそぼあそぼ!」

「白音ちゃん可愛い~!」

 

雪たちは歓迎して、俺の部屋に招き入れる。

 

もういいよ!こうなったらどんな妖怪もどんとこいだ!もう俺は知らない!壁をすり抜けられるなら、勝手に入って勝手に出てってよし!

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

ここからは分岐です。現在2つルートを用意していてどっちに進もうか迷っています。

決まんなかったら・・・・・・両方書くか!!

また次回。


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コロポックル

はい、どうも、アイゼロです。

前回、分岐と言いましたが、決めました。ストックしていた話を消して、また新しく書くことにしました。およそ5話分くらい消しましたね(泣)

けど、それよりもいいものが書けると思っています。

それではご覧ください。


妖怪たちと出会って半年。今日は年明けのお正月。凍えるような寒さに参りながらも、多くの参拝者を避けながら、俺は初詣に出向いている。何故普段から家に籠っている俺がそんなことをするかというと、俺は現在中3。つまり受験生だ。2ヶ月後には受験を控えている。今日はその合格祈願だ。

 

前まではカッコつけて、神なんかには頼らない。自分の力だけで挑む。と、めちゃくちゃ恥ずかしい事を抜かしていたが、現状ここに妖怪たちがいるし、行きたいと言われたから来たのだ。

 

さて、初詣から帰って、俺の部屋にはシキ、雪、花、くーちゃん、黒歌に白音が普段通り遊んでいる。だが、また増えた。

 

「ラノベ、一杯ある。あ、これ私の好みっぽい」

 

俺の本棚を物珍しそうに物色しながら、目を輝かせている妖怪。そう、初詣の帰り道、会った。

 

しかも聞いてる限り、かなり日本のサブカルチャーに興味津々のようだ。どうやら、アニメや漫画が好きらしい。

 

目の前で物静かに口数が少ない妖怪、それはコロポックルだ。アイヌの伝承に伝わる小人。またの名は、の葉の下の人。

 

文字通り、(ふき)の葉を傘のように片手で持っている少女。神社からの帰り道にいつの間にか雪たちに紛れ込んでいたのだ。そして今に至る。

 

「ねえねえ、これ見てもいいですか?」

 

コロポックルはそう言って、本棚から取り出した一つのブルーレイBOXを見せてきた。

 

「いいぞ」

「ありがとう」

 

目を輝かせながら、それをテレビの前に持っていくが、やり方が分からないのか、困った表情でテレビとにらめっこしている。それを見かねた黒歌はやり方を教え、コロポックルの頭を撫でた。ふむ、実にほっこりする画だ。白音は少し頬を膨らましていて、可愛い。シスコンだな。俺と同じ。

 

「なんだか、また一段と賑やかになりましたね」

「八幡って、妖怪に好かれすぎじゃない?」

 

ベッドに座っている俺の双方に雪と花が、そう言って座ってきた。

 

「まぁ、好かれてるかは知らんが、たまに見かけるようになったな。何故か最終的に俺の部屋に暮らすようになってッけど」

「ほんとだね。さすがに少し狭くなってきたわね。嫌いじゃないけど」

「確かにそうですね。これだと八幡さんのスペースが無くなってしまいます」

「いんや、別に構わねえぞ。ベッドと机にいられればそれでいい」

「ですが・・・」

「変に気遣う必要はねぇよ雪。お前らが楽しんでるならそれでいい」

「・・・ふふ、ありがとうございます。凄く温かいですよ」

 

雪は優しい微笑みを浮かべ、俺の方に体を預けてきた。不意打ちをくらったため、何をしていいかもわからず、ただただ固まることしかできなかった。緊張しているのか雪の顔が見れない。相手は妖怪相手は妖怪相手は妖怪!花も今の雪の行動に顔を赤くしてあわわ、と口を震わせている。

 

「あー!雪ちゃんずるい!シキもはちまんにくっつく!」

 

それを見かねたシキは、俺の膝に飛ぶ就くように座った。

 

「お?雪~、大胆だな~♪お熱いね~」

「ち、違います!決してそのようなことは!」

 

くーちゃんがにやけながら、雪をからかうと、顔を赤くして俺から離れ、慌てて手を横に振る。普段冷静な雪がこんなに慌てるなんて珍しいため、見入ってしまった。可愛い。

 

「雪とシキだけずるいにゃ!私も!」

「わたしも」

「!?ま、待て!?」

 

今度は黒歌と白音まで勢いよくベッドに乗り込んできた。おかげで俺のベッドは大渋滞。

 

「八幡押し倒せー!ここでやらなきゃ男が廃るぞ!」

「うるせえ余計なお世話だ!あー!暑苦しい!・・・・・・ん?どした?」

 

一旦全員離れさせようと手と腕を動かし続けると、先程までアニメに熱中していたコロポックルが目の前に立った。すると、懐から何かを取り出し、俺に渡してきた。その正体は、自分自身同じものを持っている、蕗の葉の傘だった。

 

「くれるのか?」

「うん。使ってみて」

「・・・・こうか?」

『きゃあ!』

「ええ!」

 

傘と同じ扱いをするように、上に持っていた瞬間、周りで騒いでいた妖怪が一斉に衝撃を与えられたかのように吹き飛んだ。

 

よく見ると、俺の周りに薄い半透明の膜みたいなものが、俺を守っているかのように張っている。成程な。

 

「凄いですね。このような物を持っているなんて」

「頑丈にゃ」

「本当ね。この子の傘も同じだわ」

 

能力系ではなく不思議な物を持ってる系妖怪か。またとんでもない妖怪に会ってしまったようだな。害はないんだろうけど。こうしておそらく大事な物を俺にくれたわけだし。

 

コロポックルはそのまま何事も無かったかのように、テレビの前に戻っていった。

 

おそらく、いや、絶対ここに滞在することになるだろうからと言って、皆が名づけた名前は、『コロちゃん』。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

そろそろ男の妖怪も入れてもいいかな。

また次回。


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一反木綿

はい、どうも、アイゼロです。

今回は有名な妖怪です。ちょいとキャラを濃い目にしました。

それではご覧ください。


「あ~、大丈夫かな~・・・」

「大丈夫ですよ!あんなに頑張ったんですから!」

「そうにゃ、私たちが一番傍で見てきたでしょ!」

「でもなぁ・・・」

「あーもう!男のくせにうじうじするな!」

 

落ち着かない俺に容赦なく一斉に叱責をする妖怪一同。

 

けど、仕方がないじゃないか。今日は受験だったんだから。しかも、偏差値が高くて、有名な進学校なんだから。ちなみに雪たちはずっと校門で俺を見守っていたらしい。そのせいか不思議とペンを走らせている時は心強く感じた。

 

まぁ、それとこれとは話が別で現在不安なわけだけど・・・。

 

肌を攻撃する寒さに、手をこすらせながら帰路に就く。その後ろをついてくる妖怪たち。俺の背後では百鬼夜行が完成してしまっている。

 

信号を前にして足を止める。別に赤だからというわけじゃない。その信号に紙が引っかかっているのだ。

 

だからといって歩みを止めるなんてことは、普通ない。例えば、たまに道路に飛んでいるビニール袋のようなものだ。皆は見かけたことはあっても無視はしていただろう?

 

だが、俺は信号に引っかかっている紙を見逃せなかった。後ろの妖怪も同様。それも当然のことだ。

 

その紙に、手の形をしたものがくっついているのだから。手の形を切り取って貼り付けたように見える。

 

あー、もうわかってるから何も言うな。みなまで言うな。分かってるからその目で見るのはやめてくれ。

 

「雪」

「はい」

 

唯一宙に浮ける雪に、引っかかっている異様な紙を取ってきてもらい、俺がその紙を受け取った。

 

デ、デカい・・・。書初め用の半紙の2倍はある。丸まっているため、広げると、上から段々と小さくなっていき、超長い三角形ができた。・・・・・あー、こいつがあの・・・。

 

「はて?私は何を・・・」

「うお!」

 

突然紙から目が出現し、俺の目の前で浮き始めた。目は瞬きしており、両手も動かしている。俺もこいつは昔から知っている。

 

一反木綿だ。

 

「おや?何故こんなにも妖怪の集団が」

「あなた、信号に引っかかってたんですよ」

「その雪ってやつが助けてやったんだ」

「そうでしたか!それはそれは大変ご迷惑を。どうもありがとうございました」

 

やけに礼儀正しい一反木綿は雪に頭を下げ、こちら側を見渡した。この一反木綿、一反木綿のくせに目玉おやじの声にそっくりだぞ。

 

「凄いですね、こんなに妖怪が集まってるなんて、数百年前の百鬼夜行以来ですよ」

『す、数百年前!?』

 

一反木綿から発された言葉に、俺達は驚きを隠せず、大声をあげてしまった。数百年前の百鬼夜行。つまりこいつは、もう百歳を超えている。

 

「お前、一反木綿でいいんだな?」

「如何にも。私は一反木綿ですよ。・・・それにしても、不思議ですね。何故私が見えるのです?」

「自分でも分かんねえよ。取り敢えず、俺には妖怪が見える。とでも思っとけ」

「成程。分かりました。」

 

物わかりがいいのか、順応性が高いのか、一反木綿はポンッと手を内ながら理解し、後ろの妖怪たちを見回した。

 

「あのー、よろしければでいいんですが、私も混ぜてもらえませんかね?何しろ、気付いたらここで気絶してて、記憶が途切れ途切れで・・・」

「大丈夫だ。今更増えたって問題ないし」

「ありがとうございます!いやはや、貴方の寛大な心に私、感動です!お名前を教えてくれますか?」

「八幡だ」

「八幡さんですね。では、これからよろしくお願いします。私の事は気軽にモンちゃんとでも呼んでくださいな」

 

口調は面白いが、礼儀が正しいんだな。さすが数百年この世に存在してるだけの事はある。

 

それと初めてだな。女子以外の妖怪とは。何というか、今までの違和感がすべて払拭されたよ。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

最終回への道筋が見えてきたーー!他のシリーズも順調に書いてます。多分!

また次回。


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合否発表

はい、どうも、アイゼロです。

なんか11月中に終わらせると言いながら、もう12月になってるというね。あはは・・・。

それではご覧ください。


もうすぐ手放す中学の学ランを纏い、昨晩の大雪で積もった雪に凍った道路を注意深く歩きながら、受験校へ向かう。今日は受験の合格発表だ。受験票を片手に、あまり落ち着いていない気持ちを抱き、重い足を運ぶ。別に、自信がないとか、全くわからなかったなんてことはないのだ。寧ろ俺の頭のレベルなら受かる確率の方が高い。だが、常にネガティブシンキングな俺は、すぐに悪い事態しか想定しない。

 

受験番号は88という何とも奇跡的な数字だ。縁起がいいですねって皆言ってたな。妖怪なのに。

 

合格者発表。76、77、80、85、86、88・・・。あ、あった。

 

ホッと安堵をつき、入学確約書を提出し、数枚の資料をもらった俺は、速足で帰る。早速妖怪たちに報告だ。

 

 

『おめでとう!!!』

 

合格の報告をした途端、火をつけられたかのように祝福の言葉を叫びながら、騒ぎ始めた妖怪たち。まさか、合格しただけでここまで祝われるとは・・・。両親の方がよっぽど質素だったぞ。小町は別だったけど。

 

「ささ、お疲れの八幡さんはどうぞベッドへ」

 

と、雪を始め、周りの妖怪たちが一斉に俺をベッドに押し倒した。いや、これじゃ誤解を招くな。正確には俺をベッドの上で横にさせた。そして、身の回りの散らかった参考書などを片付けてくれている。なんだなんだ?

 

謎の行動に出た妖怪たちに疑問を抱えながら、立ち上がろうとすると、黒歌に押し倒された。今度は間違ってない。両肩を掴まれて、俺を覆いかぶさっている。俺は今、オタクが夢見るシチュエーションを体験しているだろう。

 

「八幡は休んどくにゃ。受験で疲れたでしょ」

 

労わってくれるのはありがたいが、この体勢を何とかしてほしい。黒歌の服装はいつも目のやり場に困る。

 

「姉さん。これだとかえって八幡が興奮する」

「誰が妖怪相手に興奮するか!」

「・・・へえ、八幡顔赤いよ」

「お前ぇ、何和服に手をかけてんだ?調子に乗るなよこの野郎!」

 

黒歌の両手首を掴み、無理矢理引きはがし、半身を起き上げた。

 

「八幡さん黒歌さん何してるんですか!?エ、エッチなことはこの雪が認めませんよ!」

「おいおい雪、水差しちゃ悪いだろ。八幡だって男だ。黒歌の身体見て興奮しないなんて逆におかしい事だぞ。っつーわけで、このまま黒歌ルート直行だ八幡!」

「何言ってるんですかくーちゃん!?」

「ねえねえ、るーとって何?」

「シ、シキちゃんにはまだ早い事よ・・・」

「さ、私は一旦外で風に流されてきますかね。一反木綿だけに」

「あーお前ら落ち着け一旦正座!」

 

ベッドから離れて立ち上がり、妖怪たちを一度正座させて落ち着かせる。

 

「労わってくれるのはありがたいが、少し落ち着けお前ら。いや、嬉しかったけどね。こんなに祝われるの初めてだから」

 

俺の嬉しいという一言に全員が笑みを浮かべた。あれ?説教のつもりだったんだが、かえって褒めてしまったのか俺は・・・。

 

「取り敢えず黒歌。お前は自分の服装を顧みて、少し抑えてくれ」

「善処するにゃ♪」

 

あ、これ無駄なやつだ。こいつらは基本俺に従順だが、自分勝手な行動をよくするのだ。別に束縛するつもりはないし、俺の所有物でもないから自由でいいんだけど。俺もそっちの方が嬉しいし。

 

「ま、疲れたのは本当だし、俺は寝るわ。片付けありがとな」

「じゃあ皆で寝ましょう!」

「・・・はい?」

 

俺がお休みと言う寸前に、雪が笑顔でそう言って、皆一斉に俺のベッドへ入り込んだ。右に黒歌と白音と花、左に雪とくーちゃん、それぞれ縦に並ぶように横になり、その空いた真ん中に俺が入って、俺の上にシキが横になれば完成形。一反木綿のモンちゃんは宙で寝ている。

 

もう、何なんでしょうね。今更だがお前ら一応女だろう・・・。妖怪に性別あるか知らないけど。いや、100%女だな。

 

暴露すると実はもうほぼ毎日こんな感じで寝ている。けど、思ったよりも気持ちよく寝れるんですよね。もうこいつら無くして眠れなくなる体になっちゃいそう。

 

「まぁ、こんな美少女妖怪と一緒に寝れるなら、この世で最も贅沢だけどな」

 

さて、寝よう。・・・・・ん?どうした?なんか皆顔真っ赤にしてんだけど。シキを除いて。どっちかというとシキは満面の笑みだ。

 

そして俺は、心の声が口に出てたことは知る由もなく、そのまま眠りについた。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

まぁ、最終回はどういう終わり方にするかは決めたので後は書くだけです。期末テスト明後日だけど。

また次回。


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高校生活

はい、どうも、アイゼロです。

あと4話で完結ですよぉ。ここからは高校編です。

これ以上は妖怪は増えません。書けません。勘弁してください。

それではご覧ください。


何事も無かった入学式から1ヶ月。さすがは進学校というべきか。勉強のレベルが格段に上がっている。ここ普通科でもそう感じるとは・・・。国際教養科はこれより凄いんだろうな。国際教養科というのは、普通科とは違い学力がさらに上のクラスだ。9割が女子。

 

上がったとはいえ、そこまで苦労するほどでもないな。俺頭いいし。数学は中学の頃から追いつけてないから諦めている。使うか?社会に出て?全部機械が計算してくれるんじゃねぇの?

 

 

昼休みになると、俺はテニスコート付近の階段に座り込み、購買で買ったパンを食べる。この時間になると近くの海からくる潮風が心地いい。なんていい場所なんだろう。この場所を見つけてくれたのはモンちゃんだ。マジ一反木綿リスペクト。

 

ちなみにそばにいるのはモンちゃんだけだ。さすがに高校にはついてはいかせられないしな。俺がそう言った時に皆から猛反発喰らった。そりゃもうすごかったな。もうあんまりにくっついてくるからコロちゃんの傘を使って、無理矢理引き剥がした。ていうか、あいつら俺の事好きすぎじゃない?

 

そんなことがあって、シキたちは留守番だ。何故今頃かって?一人で考えたいときもあるんだよ。人間だもの。

 

「で、何でお前がいるんだ?」

「・・・」

 

パンを食っている最中、ずっと俺の正面に立って無表情で見てくるコロポックルのコロちゃん。

 

「八幡といたいから」

「いや、まあ、それは嬉しい言葉だが、少し留守にするだけだからな?」

 

しかし、一向に動こうとしないコロちゃん。一瞬今の言葉にときめいてしまったことがちょっと悔しい。

 

なんとかコロちゃんを説得させ、モンちゃんの背中に乗せて帰ってもらった。

 

何故妖怪たちには留守番をしてもらったかというと、まず高校に慣れる事が目的だ。新しい環境だから、色々慣れが必要だし、妖怪たちの相手も余裕でできるようにしたい。次に人が滅多に歩かない場所を見つける。これは今いるモンちゃんが教えてくれた場所が一番いいと思った。屋上は鍵がかかっているし、ここの人通りも、見つけてから数週間モンちゃんと共に調べた結果、10分に1人か2人通りくらいだった。目の前がテニスコートでテニス部が練習しているが、テニス部部員は練習に集中しててこっちなんかは見向きもしないだろう。

 

 

家に帰ってそのことを妖怪たちに話したら、一斉に抱き着かれたのは言うまでもないだろう。危うく黒歌には接吻されそうになったが、白音が狐火を出して止めてくれた。俺初耳だったんだけど。妖術使えるなんて・・・。

 

そういや、一か月前のモンちゃんに会って以来、他の妖怪見てないな。これ以上増えられても困るんだけどね。日本は広いから、県外にもいたりするのかもな。そう思うと、千葉市内だけでどんだけいるんだよ・・・。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

もうすぐクリスマスですが、次回は夏休みです。ちなみに自分は彼女と過ごす。

また次回。


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夏休み

はい、どうも、アイゼロです。

前話の後書きで、彼女と過ごすと言いましたが、あれ嘘です。当日は普通にネットサーフィンっすね。

それではご覧ください。


「・・・・あぢ~」

 

テストも難なく終わり、迎えた夏休み。結局新たな妖怪に出会うことも無く、いつものメンバーと言えるような状態になった妖怪たち。学校でもいつも通り皆くっついて話に花を咲かせている。俺は保険という事でスマホを耳に当てながら、会話している。妖怪たちと話しているのは楽しいが、なんか虚しさが残る。

 

「暑いのでしたら、私が何とかしましょうか?」

 

お?さすが雪女。教室を凍えさせるほどだから、きっといい感じに涼しくしてくれるだろう。俺は早速涼しくしてもらうよう雪にお願いをした。・・・・のだが。

 

「涼しいですか?」

「あ、ああ。涼しいけど、こうする必要あるか?」

「あります」

 

ありますって・・・。今の俺は、ソファに座ってテレビを見ていて、膝の上で雪がこちらを向きながら抱き着いている状態だ。てっきり、室内を冷気で涼しくするかと思いきや、まさかのこれだからな。

 

それとさっきっから周りの視線が凄い痛い・・・。皆『ぐぬぬ』と顔で言ってるし、くーちゃんはずっとニヤニヤしてるし、コロちゃんは相変わらずの無表情だし。あ、でもちょっと頬膨れてて可愛い。

 

ていうかテレビ集中できない!

 

「雪、そろそろいいぞ」

「やです♪」

 

やですって満面の笑みで言われた。さらには胸板に顔を擦り擦りされ、抱擁が強くなった。やわらか・・・は!いかんいかん!相手は妖怪相手は妖怪相手は妖怪。・・・雪ってスレンダーだけど、結構あるんだな・・・。

 

「ちょっと雪!もう離れなさい!」

 

ちょっと苦しいと感じた矢先、花が声をあげて俺から雪を離れさせた。タイミング的にちょうど良かった。

 

「じゃあ次は私」

「は?なんでそうなる!?」

「雪だけずるいじゃない!私にも抱き着かせなさい!」

「何その意味わからんキレ方!」

 

結局この後、花にも抱き着かれ、それを見兼ねた他の奴らも、俺の部屋に俺を連れ去り、同じような事をされた。

 

「お兄ちゃんどうしたの!?」

 

さすがの俺も耐えきれず、叫び声をあげてしまったため、隣の部屋にいた小町が慌てて入ってきた。

 

「お兄ちゃん大丈夫!なんかベッドの上で凄い唸ってるけど!」

 

小町ビジョンには俺がベッドでうなされてるように見えている。小町は俺の傍まで近寄り、体をゆさゆさと揺らしている。

 

その光景を見た妖怪たちは申し訳なさそうな顔をして、俺から離れた。

 

「ああ、大丈夫だ小町」

「も~、お兄ちゃんったら。あんな叫び声されたら焦るじゃん!」

「ちょっと悪夢見てただけだって。心配かけてスマンな」

「小町にここまで心配させるなんてポイント低いよ!だから、アイスを要求します」

「はいはい、買ってくるよ」

「やったー♪」

 

小町は上機嫌で自室に戻った。現金な妹だ・・・。可愛いからつい許してしまう。

 

さて、それでは、妖怪たちの様子は。

 

「あ、八幡さん・・・」

「お前ら」

『は、はいぃ!』

「帰ったら説教な」

『はい・・・』

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

嘘ついたお詫びで連続投稿です。ちょっと急ぎ足で書き上げました。彼女欲しいとは今は思わないですね。高校生だもの。

また次回。


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クリスマス

はい、どうも、アイゼロです。

今回は八幡の変化がはっきりわかる回ですね。性格改変タグ付けるべきか……。

それではご覧ください。


時間の流れは残酷にも早いものだ。つい最近入学したと思ったら、気付けば月日は流れ、現在12月25日のクリスマス。俺のご両親及び妹は毎年恒例のクリスマス旅行。俺は当然留守番。

 

昔は寂しい思いをしたクリぼっちだったが、今は違う。俺には一緒に過ごしてくれる奴らがいる。

 

そう思うと、自然と笑みがこぼれてしまう。おっとマズいマズい、ここは路上だ。目つきの悪い高校生が急にニヤついたら、即通報されてしまう。

 

「ただいま」

『おかえりなさーい!』

 

両手に荷物を抱えた俺を出迎えたのは、サンタのコスプレをした妖怪たちだった。

 

「どうですか?これ?」

 

雪が代表して俺に感想を求めたが、今はそれよりも気になることがあった。まずサンタの服なんてないし……。

 

「どうしたんだ?それ」

「モンちゃんが作ってくれたにゃ」

 

モンちゃんが?一体どうやって……。もしかしたら、裁縫得意なのかな?想像してみたら意外と似合ってる。

 

だが、俺の考えとは裏腹に、結構とんでもない方法だった。

 

「私の力でいらない服をサンタにしたんです。人間が『いらない』と心の奥から想っている服は、どんな服にも変えられるんですよ」

 

何そのチート能力。最早魔法だよ。妖怪あんまり関係な……。いや、一反木綿だから衣服関係の能力なのか、成程。あれ?じゃあもしかしたら、小町のプリントTシャツとか作ってくれんじゃね?100%嫌われるからやめておこう。小町に嫌われたら、こいつらに泣きつく。

 

まあとにかく、感想を求められてるなら、素直に言おう。

 

「可愛いぞ」

 

女妖怪全員が顔を赤くして、モジモジしながら、サンタ服をいじり始めた。そうなるんだったら、何で自分から感想を求めたんだよ……。

 

「何照れてんだよお前ら…」

「し、仕方ないじゃないですか!八幡さん以外褒めてくれる人いないんですよ!」

「お前らめっちゃ可愛いぞ!もうお前ら大好きだ!」

 

ハチマンの口撃が妖怪たちに会心の一撃。皆、この瞬間、普通の乙女と化した。今となっては妖怪の面影すらない。俺はそれが少しばかり嬉しいと思った。

 

少しは人間らしい色々な事を経験させたいしな。

 

「あんまり調子に乗るなよ八幡!」

「お、おいくーちゃん落ち着けって。可愛い顔が台無しだぞ」

「だからそれを言うな!」

 

顔を真っ赤にしながら、俺の両肩を掴み、ぐらぐらと揺らすくーちゃん。さすがにやりすぎたかな?俺もいつもと違うクリスマスに少し浮かれていたのかもしれない。

 

「悪かったって。それよりほら、クリスマスだからプレゼント買って来たぞ」

 

皆それぞれ自分に合う物をプレゼントし、こうしてクリスマスは幕を閉めた。

 

それと同時に、妖怪たちのアタックがより激しくなって、冬なのに毎日暑い思いをしたのはまた別の話。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

ね、年内には完結…………か、んけつ。

また次回。


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節分

はい、どうも、アイゼロです。

いただいた感想に、『偉そうなこと言ってすみません』とありましたが、もっと言ってください。全然言ってくれちゃってOKです。その方が参考にもなりますし。

感想書いてくれてありがとうございます。

それではご覧ください。


今日は2月3日の節分の日だ。雑節の一つで、各季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日のこと。節分とは「季節を分ける」ことをも意味している。季節の変わり目には邪鬼が生じると言われており、悪魔祓いのため、豆をまいているのだそうだ。

 

てっきりこういった行事も妖怪たちは楽しむのだろうと思っていたが……

 

『…………』

 

妖怪一同、俺の持っている豆を涙目で見ながら、ぶるぶると震えている。この状態で近づこうとすると、『近づかないで!?』って本気で言われた。ちょっと傷ついた。

 

まさか悪魔祓いが妖怪にも通用するとは思ってもみなかった。試しに一粒モンちゃんにぶつけてみたが、『ギャーーー!』とめちゃくちゃ叫んでて、本気なんだと思い知らされた。コロちゃんの傘にも当ててみたが、傘のバリアがたった一粒で砕けてしまった。ちなみに花は即座にトイレに引きこもった。

 

「は、八幡さん!そんな物騒な物閉まってください!」

「はちまん、それ、やだ」

「「八幡そういう冗談は笑えないにゃ!」」

「っ………」

 

豆見せつけただけでこの有様である。ある意味鬼より弱いんじゃないか?妖怪って………。

 

「お前ら落ち着けって。分かった机の上に置いとくから。怖がんな」

 

俺はベッドのすぐそこにある勉強机の上に例の豆を置いた。はぁ、それにしても、まさかお祓いとかよりも効くとは。俺の中で豆まき用の豆は、最早魔除けの代物として認識した。

 

妖怪たちが縮こまるベッドの上へ、俺は寝転がる。もう緊張も意識もなんもしない。

 

「日本にはなんと恐ろしい行事があるのでしょう」

「廃止するべきにゃ……」

「しゃーねーだろ。邪鬼が悪戯なんてしたりしたから、こういう祓いの行事ができたんだ」

 

この俺の言葉に、皆一斉にとある妖怪に目を向けた。

 

「な、何であたしを見る!」

 

妖怪随一の悪戯好き、悪戯するためにあるような能力。もしかしたら、こいつが諸悪の根源なんじゃないか?妖怪って長生きらしいし。

 

「お前らって何歳なんだ?」

「さぁ、よくわかりませんね。少なくとも全員100歳超えてます。もちろんシキちゃんやコロちゃんも」

「へぇ、そうなのか」

「自分で聞いておいてその興味の無さは何ですか!」

 

妖怪って年取らねぇんだな。

 

「おーい、お兄ちゃん」

 

ベッドで横になってたら、眠くなってきたため、仮眠を取ろうとしたら、小町が入室してきた。

 

「あれー?豆まいてないじゃん!」

「あ?やだよ。掃除めんどい」

「ダメだよ!ちゃんとやっとかないと、鬼とか妖怪が居座っちゃうでしょ!」

 

遅い。もう居座ってます。

 

「おい待て小町。その握った豆をどうする気だ?」

「え?どうって、投げるんだよ。あ、お兄ちゃんにも当てて濁った眼を浄化しよっか♪」

「お前はっきりと俺をディスったな……。っつーか、こっちにはマジで投げるな!おいやめろ!」

「お兄ちゃん豆如きでビビり過ぎだよ。あはは♪おにはーそとー!」

『いやぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 

俺に向かって投げられた豆は、後ろで隠れていた妖怪たちに見事に当たった。その瞬間、今まで聞いたことのない悲鳴が部屋を埋め尽くした。当然俺にしか聞こえていない。

 

あくまで標的は俺なわけだから、急いで部屋を出て小町をおびき寄せた。

 

その後、あんまりにも俺が豆から逃げていたため、小町には本気で心配された。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回完結。

また次回。


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入部

はい、どうも、アイゼロです。

明けましておめでとうーー!今年もわたくしアイゼロの作品をよろしくお願いします。

今話にて、妖怪シリーズ完結となります。

それではご覧ください。


妖怪生活が1年半経過し、今日から高校2年生。昇る階段が一階増え、年下が入り、クラスメイトも変わる。俺には何一つ関係ないな。

 

進級して出された『高校生活を振り返って』の課題を提出し、颯爽と帰宅。

 

その後日。

 

 

『2年F組の比企谷八幡君。今すぐ職員室に来なさい』

 

俺にとっちゃ最悪でしかない放送呼びかけ。この声はおそらく俺のクラスの担任になった平塚先生だろう。この人は何かと俺に視線を送ってきて、怪しいとは思っていた。

 

 

職員室に入ると、平塚先生が凄い険悪な表情で睨んできた。やめろよ思わずひぃ!って情けない声出すとこだったじゃないか。

 

「なんだこの作文は?」

 

そう言って俺に見せてきたのは、俺が課題で描いた高校生活を振り返っての作文だ。なんだ?って普通の作文なんだがな。

 

「何か問題でも?」

「大ありだ。楽しい高校生活を送れましたしか書かれていないぞ。それに、君は1年間学校では楽しそうに見えなかったが?」

 

やだ何この人ずっと俺の事見てたの?怖い。もしかして妖怪とのやり取りも聞かれてたりしてるのか?だとしたら絶対問題児扱いされてる。

 

「大丈夫だよ八幡。モンちゃんがしっかり見回りしてくれたから、聞かれてることは無いよ」

「そうか、サンキュー花」

「何を1人でブツブツと喋っている?」

「いえ、何でも」

 

平塚先生はため息をつきながら、しばしこちらを見る。数秒そのままだったから、あれ?見えてんの?って疑った。

 

「君は色々噂されてるようだな。何でも、君の陰口を言ったら無差別怪奇現象が起きると」

 

あー、おそらく同じ中学の奴が流したんだろうな。そのおかげで人と関わることが無くなったから、俺にとってはありがたい。

 

「それがどうかしたんです?」

「どうかって…。君はそれでいいのか?このまま友達もいないまま卒業を迎えるのか?」

「はい」

 

俺がそう即答すると、額に手を当てて、ため息をつかれた。そもそもこの教師は何故そんな噂される俺を呼び出して、お節介なことをしているのか分からない。少なくとも普通の教師とは一味違うタイプなのかな?

 

すると、平塚先生はおもむろに立ち上がった。

 

「ついてきたまえ。もしかしたら君の助けになるかもしれない」

「いや、いらな……。はい、行きますよ」

 

きっぱり拒否しようとしたら、鬼のような形相で睨まれた。そういう顔を生徒にするのは感心しません。

 

「八幡、やっぱり友達は欲しいですか?」

 

平塚先生の後ろを歩いていると、白音が袖を引っ張って聞いてきた。そんな申し訳なさそうな顔しないでくれ。何で周りの黒歌たちも暗い雰囲気なんだよ。

 

「前にも言ったろ。お前らがいればそれでいい」

「着いたぞ。雪ノ下、入るぞ」

 

ガララ!と豪快に特別棟の空き教室を開けた先生。雪ノ下と言っていたな。確か学年1位で入学式には新入生代表で挨拶していた気がする。何で俺がそんな奴のいる場所に……。

 

「平塚先生、ノックをちゃんとして……。ッ!」

 

読んでいた本を閉じ、礼儀を知らない平塚先生を睨みながら、注意しようとした雪ノ下。だが、その言葉は途中で遮られ、驚いた顔で俺を見ている。これは、もしかして俺のあまりの目の濁りっぷりに驚愕せざるを得なかったのかな?

 

「先生、そこの男と2人にさせてください!」

「あ、ああ、分かった」

 

状況が呑み込めない先生は言われた通り、その場から去った。俺も何が何だか理解できないため、彼女の言う通りにするしかなかった。

 

今、俺は雪ノ下と対峙している。しかし、一向に沈黙が続くため、俺から口を開いた。

 

「なんだ?俺と2人になりたいなんて、お前もの好きなんだな」

「…ええ、そうね。あなたの後ろに大勢いるんだもの。興味が湧くわ」

 

その言葉が耳に届いた瞬間、目を見開き、戦慄した。それは、後ろで見守っていた妖怪も同様に、驚きが隠せていなかった。

 

自分以外にも妖怪が見える。俺以外にも自分が見える。その事実に、ただただ呆然とした。

 

「座ったら?」

「ああ…」

 

用意されている椅子に座り、雪ノ下と向かい合わせになった。

 

「私は雪ノ下雪乃よ」

「比企谷八幡だ。お前、妖怪見えるんだな」

「ええ。私以外にも見える人がいるなんて、驚いたわ」

「そりゃこっちの台詞だ」

「比企谷君は、過去に何かあったのかしら?」

「まぁな。っつーことは、お前もか」

「そうよ。……ところで、何とかしてくれないかしら?」

 

雪ノ下は眉を下げて、少し身を縮こませた。原因は、俺の連れている妖怪たちだ。もう1人の視認者を目の前にして落ち着いてはいられないらしく、皆一斉に雪ノ下の観察をしたり、触れたりしている。

 

「凄いですね。目は濁ってないようです」

「過去に何かあったとは思えないなー」

「いや、わずかに心の中の闇が見えるにゃ」

「雪ちゃんと声似てるねー!」

「おーいお前ら。一旦離れろ。雪ノ下困ってる」

 

俺がそう言うと、そそくさと俺の後ろに戻った。

 

「随分と懐いているのね。それに、ほとんど美少女なんて、ね…」

「おい、何故引いた。それに関しては本当に分かんねぇからな」

「冗談よ。ただ、多すぎないかしら?」

「やっぱそう思うか。そういや、お前は誰も連れてないのか?」

「いいえ。一匹いるわ」

 

雪ノ下はそう答えて、懐から鈴を取り出し、それを鳴らした。すると、窓から一匹の妖怪が現れた。狐の容姿をした妖怪、妖狐だ。

 

「妖狐は様々な種類があるけど、これは白狐よ。人々に幸せを運ぶという言い伝えがあるわ」

「でけぇな…」

 

俺の身長を余裕で越している……。2メートルはあるぞ。

 

「それはそうと、比企谷君は何故ここに?」

「さあな。何も聞かされてねぇし。逆に雪ノ下は何でこんなとこに?」

「部活をしているのよ。私1人で」

「部活?」

「名前は奉仕部。生徒の悩みを聞いて、それに答えてあげる。それがこの部の理念よ」

「随分面倒くさいことしてんだな」

「あら?そうでもないわよ。ほとんど人なんて来ないから」

「いや、それでいいのかよ……。っつーか、あの先生、もしかして俺をこの部に入れようとしたのか?」

「そうかもしれないわね」

 

俺の助けになるって言うのはここで奉仕活動して、噂を払拭させようって根端だったのか。さらに俺のぼっちを勝手に悩みと解釈してここに連れてきた。お節介すぎる……。

 

「あの、ちょっと……」

「ん?…あーあ」

 

困惑している雪ノ下が見ている方向に俺も向けると、妖狐と雪たちがめちゃくちゃ楽しそうに遊んでいた。コロちゃんとシキが妖狐に乗ったりしている。妖怪の戯れという絵ができて、名画になりそうだ。

 

「比企谷君の妖怪って、とても積極的なのね。あなたとは大違い」

「一言余計だ。で、あいつらは俺のじゃねぇよ」

「ふふ、そうね。それでどうするの?入部するのかしら?」

 

雪ノ下の笑みにドキっとされながら、俺は目の前の妖怪たちを見る。答えは決まっている。

 

「…入るか」

「そう、歓迎するわ。ようこそ奉仕部へ。よろしくね、比企谷君」

「…おう」

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

この度、このような作品を読んでくださり、ありがとうございます。楽しみが減るという感想に、感激しました。

これにて、妖怪たちとの非日常生活、完結です。ありがとうございました。


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